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コーヒー5杯/日以上で脳梗塞リスクが高まる!?

 大規模な国際症例対照研究であるINTERSTROKE研究で、コーヒー、紅茶、緑茶などの摂取量と脳卒中の関連を検討したところ、コーヒーを多量摂取(1日5杯以上)する人は脳卒中全体と脳梗塞のリスクが高く、逆に緑茶を摂取する人ではこれらのリスクが低かったという。カナダ・McMaster University and Hamilton Health SciencesのAndrew Smyth氏らがInternational Journal of Cancer誌オンライン版2024年6月18日号で報告した。 INTERSTROKE研究はすでに発表されている国際症例対照研究で、2007 年 3 月~ 2015 年 7 月に32ヵ国 142施設から初回脳卒中症例を募集し、対照は脳卒中既往歴のない人を性別・年齢でマッチングした。本研究では、参加者にコーヒー、紅茶、緑茶、その他のお茶を「1日何杯飲むか?」と質問し、「まったく飲まない」「1~2杯」「3~4杯」「5杯以上」に分類した(症例では脳卒中発症前の摂取量)。各飲料の摂取量と脳卒中(脳梗塞または脳出血)との関連について、多変量条件付きロジスティック回帰を用いて、「まったく飲まない」人を基準にオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・症例1万3,462例および対照1万3,488例で、平均年齢は61.7歳、男性は59.6%だった。・コーヒーは、1日摂取量が1~2杯もしくは3~4杯の人では脳卒中との関連はみられなかったが、5杯以上の人は、脳卒中全体(OR:1.37、95%CI:1.06~1.77)および脳梗塞(OR:1.32、95%CI:1.00~1.74)のオッズが高かった。・緑茶は、3~4杯の人における脳卒中全体(OR:0.73、95%CI:0.57~0.93)および脳梗塞(OR:0.75、95%CI:0.57~0.99)、また5杯以上の人における脳卒中全体(OR:0.70、95%CI:0.54~0.90)および脳梗塞(OR:0.69、95%CI:0.52~0.91)のオッズが低かった。・お茶全体(紅茶、緑茶、その他のお茶)では、1~2杯、3~4杯、5杯以上のすべてのカテゴリーにおいて脳卒中全体および脳梗塞のオッズが低かった(5杯以上での脳卒中全体のOR:0.81、脳梗塞のOR:0.81)。 今回の結果から著者らは、1日5杯以上のコーヒー摂取を避けることを検討するよう提案している。

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HIV感染症完治と見られる7例目の症例が報告される

 あるドイツ人男性が、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症が完治した7人目の患者となったと、シャリテ・ベルリン医科大学(ドイツ)のOlaf Penack氏らが報告した。報告書の中で「次のベルリンの患者(next Berlin patient)」と表記されているこの60歳の男性は、2015年10月に急性骨髄性白血病の治療のため幹細胞移植を受けていた。彼は2018年9月、エイズを引き起こすウイルスであるHIVを抑制するために必要な抗レトロウイルス薬の服用を中止したが、それ以来、約6年間にわたってHIVが検出されていないという。この症例については、同医科大学のChristian Gaebler氏が、第25回国際エイズ会議(AIDS 2024、7月22~26日、ドイツ・ミュンヘン)で報告予定。 男性の治療を担当した医師らは、この症例からHIV感染症の遺伝子治療が全ての患者に治癒をもたらす可能性を示す新たな知見が得られたと話している。これまでに報告されているHIV感染症の完治例とは、白血病などの血液がんの診断後に幹細胞移植を受けたという点が共通している。これらの症例でHIV感染症が完治に至ったのは、幹細胞提供ドナーが、白血球の表面に存在するCCR5(C-Cケモカイン受容体5)をコードする2つのCCR5遺伝子にCCR5-delta 32と呼ばれる変異を保有していたからだった。この遺伝子変異は、HIVが免疫細胞に侵入するのを阻害することで、この変異を保有する人にHIVに対する免疫を与えるとPenack氏らは説明している。 今回報告された「次のベルリンの患者」は、CCR5-delta 32を1コピーのみ持っているドナーから提供された幹細胞が移植され、完治に至った初めての例であるという。1コピーのみ持つドナーからの幹細胞の場合、HIVに感染する可能性は残るが、感染しても病気の進行は遅くなる。Penack氏は、「われわれはHIVに対して免疫を持つ幹細胞ドナーを見つけることはできなかったが、細胞にCCR5受容体の2つのバージョン、つまり正常なものと遺伝子変異したものの2種類を持つドナーを見つけることはできた」と言う。 遺伝子変異のコピーを2つ持っている人よりも1つだけ持っている人の方がはるかに多いため、将来的に血液がんを併発したHIV感染者のHIV感染症が完治する確率が高まる可能性があるとPenack氏らは期待を示している。 Penack氏は、「この患者が良好な健康状態で元気に過ごしていることを、われわれは極めて喜ばしく思っている」と話す。また同氏は、「彼は5年以上にわたって経過観察下にあるが、その間ずっとHIVが検出されない状態が続いている。このことは、彼の体からHIVを完全に消滅させることに成功したことを示している。したがって、われわれは彼のHIV感染症は完治したと考えている」としている。 Gaebler氏は、「幹細胞ドナーがHIVに対する免疫を持っていなかったにもかかわらず、この患者が完治に至ったことは極めて驚くべきことだ」とシャリテ・ベルリン医科大学病院のニュースリリースの中で述べ、「免疫のないドナーから提供された幹細胞の過去の移植症例では、移植の数カ月後にはHIVが複製を再開していた」としている。 国際エイズ学会会長のSharon Lewin氏は、「幹細胞移植は白血病のような他の疾患の患者に対してのみ行われる治療ではあるが、『次のベルリンの患者』の経験から、このような症例に対してドナープールを拡大できることが示唆された」と話す。また、同氏は、「このことは、将来的にHIV感染症を治癒に導く戦略につながり得るという点で有望だ。それは、寛解を達成するためにCCR5をひとつ残らず除去する必要はないことが示されたからだ」と同学会のニュースリリースの中で付け加えている。 ただし、このことはCCR5遺伝子の変異がHIV感染症の治癒には全く関与していない可能性も示しているとGaebler氏は指摘。その場合、ドナーから移植された免疫細胞が「次のベルリンの患者」のHIVに感染した全ての細胞を排除したことで、患者が治癒に至ったと考えられるとしている。

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iPS細胞による心筋補填療法で脱・心不全パンデミックへ/Heartseed

2024年7月30日に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしたHeartseed株式会社。このタイミングでの上場は、代表の福田 恵一氏(慶應義塾大学 名誉教授)が約30年の歳月を掛けて開発してきた心筋再生医療Remuscularization(心筋補填療法)の第I/II相臨床試験LAPiS試験が着実に歩みを進め、実臨床での実装が現実味を帯びているからであろう。今回、「再生医療で世界を変える」を目指す福田氏に、同社が誇る心筋再生のメカニズムや今後の展望について話を聞いた。―心筋培養の臨床開発における世界的な状況について教えてください。iPS細胞を用いた心筋再生というのは世界各国で開発が進められています。しかし、それらの開発状況について、前臨床試験や第I相臨床試験が走っていることは知っていますが、それ以降の報告は聞こえてきません。その理由はおそらく、心筋細胞の培養方法や投与方法が影響しているからでしょう。心筋細胞は、心房筋、心室筋、ペースメーカー筋の3つに大きく分けられますが、心不全を治療するためには心室筋だけを作らなければなりません。そうでないと、心室のなかに性質の異なる心房の筋肉を入れることになります。われわれが開発した他家iPS細胞由来心筋球HS-001は、心筋細胞の中から拍動に直接寄与する心室筋だけを分化誘導する技術はもちろんのこと、目的外の細胞を死滅させる純化精製技術、細胞の生着率を高めるために心筋の微小組織(心筋球)を作製する技術を用い、重症心不全患者に新たな希望を提供しようとしています。(表)Remuscularization(心筋補填療法)に必要な技術画像を拡大する他家iPS細胞由来心筋球HS-001の発明が、福田氏の約30年間に及ぶ世界最先端の再生心筋研究の賜物であることがうかがい知れる上記の表に示すような“心室筋だけを選択的に分化誘導する”という特徴的な製造法にたどり着くまでには多くの年月がかかりました。再生医療の研究を1995年より始めましたが、この頃はヒトES細胞もなければiPS細胞もありません。最初の研究では、間葉系幹細胞に対して脱メチル化剤を使って無理やり心筋細胞を作っていました。確かに拍動する細胞が出てきて心臓の遺伝子を発現した心筋を作ることはできましたが、大量に作ることは難しかったです。結局、臨床応用には至らず、2001年からヒトES細胞を用い、どういう風にしたら心臓の筋肉ができるのかという研究を5年ほど行いました。2006年には山中 伸弥先生のiPS細胞の発表を機に作り方などを教えていただき、iPS細胞の研究にシフトしていきました。iPS細胞による課題は、すごいスピードで増殖し、いろいろな細胞に分化して心臓の中に奇形種という特殊な腫瘍を作ってしまう点です。それを取り除くために純化精製方法を開発し特許を取得しました。若かりし頃の福田氏―聞き慣れない“心筋球”、開発された“心筋補填療法”について教えてください。心筋球は1,000個程度の心筋細胞を塊にした微小組織で、工場の中で凍結された後に生きている心筋細胞だけが細胞の塊になるよう作られています。この微小組織を作ることで元気な状態の心筋細胞を移植することができます。また、細胞が心筋球になると非常に強くなり、生着率も高まります。心筋細胞自身が分泌した細胞外マトリックス(コラーゲンやフィブロネクチンのような細胞と細胞の間を満たし、生体組織を包み込む高分子の構造体)が存在している状態の心筋細胞は心筋細胞自体を元気にするため、心筋球という微小組織を作って移植するということは非常に理にかなっており、心筋細胞にとって好ましい環境下での移植は高い成着率につながり、臨床効果を出しやすいと言えます。次にRemuscularization(心筋補填療法)とは、不足した心室筋を直接、心臓壁内に移植して心筋を補填する画期的な方法です。心筋球を専用の注射針(SEEDPLANTER®)とガイドアダプターを用い、開胸手術(現在は冠動脈バイパス術と同時)にて投与します。投与した心筋球は患者の心筋と結合し、再筋肉化することで心収縮力を改善すると共に、種々の血管新生因子を分泌して投与部位周辺に新たな血管を形成する作用機序(neovascularization)も期待されます。(図)心筋補填によるRemuscularization[心筋補填療法]画像を拡大する特許を取得した技術の集大成―治験の最終関門を迎えますが、問題点は何でしょうか?心不全のなかでも心筋梗塞による広範囲の壊死を起こしたり左心室が拡張し悪化したりした重症心不全は、現時点で心臓移植しか根本治療は存在しません。今回、われわれは安全性評価委員会により第I/II相LAPiS試験での低用量群(心筋細胞数にして5,000万個を投与)5例における安全性について評価いただき、承認申請前の治験の最終ステージ、高用量群(1億5,000万個を投与)の試験へ移行可能となりました。近い将来、重症心不全患者さんの希望となるよう努めていく次第です。7月30日の記者会見での様子グロース市場上場の同日、第I/II相LAPiS試験での高用量群開始を発表した当研究の治験実施状況については、今年3月に第88回日本循環器学会学術集会でもホットトピックとして発表する機会をいただきました。そのおかげもあり、治験参加に関する問い合わせを受け、これまで関東圏で実施していた治験の範囲を拡大して行うことになりました。これから実施する高用量群の治験は当初の8施設に4施設が加わり、全12施設を対象に実施します。ただしこれにもいくつかの課題がありました。たとえば、輸送に関する問題です。米国では細胞を液体窒素で凍結させて運搬したのですが、解凍させた時点で3割の心筋細胞が死滅してしまいました。死滅した細胞を含んだ心筋細胞を移植すれば、当然、生着率の低下に繋がります。また、壊死した細胞が心筋に残れば、そこで炎症が起こりIFN-γが上昇、HLAが誘導されてしまいます。通常の心筋細胞にはHLAが発現していないため、強い炎症によってHLAが発現すれば、生きている心筋細胞に不整脈が生じたり死滅しやすくなったりしてしまいます。また、塊にした細胞をバラバラにするにはトリプシンなどの酵素を用いることが一般的ですが、そうすると細胞接着因子も破壊されてしまいます。心筋球の作製技法はこれらの点を回避し、元気な状態の心筋細胞で微小組織を作り、凍結させずに生きたままの細胞を運搬できるように開発されています。近い将来、全国各地の実臨床へこの技術を提供できればと考えています。なお、本研究は同士である分子神経生物学の岡野 栄之先生(慶應義塾大学再生医療リサーチセンター 教授、センター長/日本再生医療学会 理事長)のサポートあってこそで、岡野先生に深く感謝しています。世界の期待を背負いグロース市場へ上場HS-001の治験1例目の投与にNature誌が注目するなど、グローバルでも高い評価を受けるHeartseed社は、7月30日、ついに東京証券取引所グロース市場への上場を果たした。サイエンスと臨床の両輪をこなす福田氏率いる心不全改善治療という期待もあるのか、上場当日は好調な滑り出しを迎えた。同社はメインパイプラインとなるHS-001を筆頭にHS-005などの他家iPS細胞由来心筋球の国内ならびに全世界における開発・製造・販売を目指し、ノボノルディスク エー・エスとライセンス契約を行うほか、HS-001の保険償還や新たなHS-040(自家iPS細胞由来心筋球[開胸手術/カテーテル])などの開発加速に務める。上場セレモニーにて今後の将来ビジョンとして、福田氏は「他家iPS細胞由来心筋球HS-001はもちろんのこと、抗がん剤治療に伴う心不全への適用を目指し自家iPS細胞由来心筋球HS-040などの開発にも着手している。また、心筋が線維化してしまうHFpEFへの治療応用も視野にいれている」と、グローバルな製品展開のみならず、身近な患者に目を向けた思いを述べた。医師紹介(取材・執筆:ケアネット 土井 舞子)

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MASLD患者の飲酒は肝線維化リスクが高い

 過体重、糖尿病、脂質異常症などの代謝異常とアルコール摂取はどちらも脂肪性肝疾患(steatotic liver disease:SLD)の原因となるが、肝線維化に対するそれらの影響は不明である。今回、スペイン・バレンシア大学のINCLIVA Health Research Instituteに所属するDavid Marti-Aguado氏らは、代謝異常関連脂肪性肝疾患*(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease:MASLD)患者においてアルコール摂取量が中程度の場合、代謝リスク因子との相加効果を超え、肝線維化進展リスクが指数関数的に増加したことを示唆し、MASLD and increased alcohol intake(MetALD)患者と同程度に病気の進行リスクが高まることを明らかにした。Journal of Hepatology誌オンライン版2024年7月4日号掲載の報告。*日本語名は仮の名称。現在、日本消化器病学会、日本肝臓学会で検討されている。 研究者らは、アルコール摂取量がSLDの重症度に与える影響と代謝疾患との関連性を評価するため、スペイン(導出コホート)および米国(検証コホート)で登録された集団のうち肝臓検査装置フィブロスキャンでMASLDと診断された患者のエラストグラフィデータを用いて研究を行った。SLDは超音波減衰量(Controlled Attenuation Parameter:CAP)を測定してCAP≧275dB/mと定義。また、心代謝系リスク因子が1つ以上ある患者をMASLDと定義し、MASLD患者のうち、アルコール低摂取群は平均5~9杯/週、中等度摂取群は女性が10~13杯/週、男性が10~20杯/週、高摂取群(MetALD)は女性が14~35杯/週、男性が21~42杯/週とした。肝線維化は肝硬度測定(Liver Stiffness Measurement:LSM)でLSM≧8kPaとし、肝線維化進展リスクを有するmetabolic dysfunction-associated steatohepatitis(MASH)はFASTスコア≥0.35**と定義した。**肝線維化進展NASH患者の可能性を予測するスコア1) 主な結果は以下のとおり。・導出コホートにはMASLD患者2,227例(低摂取群:9%、中程摂取群:14%)とMetALD患者 76例が含まれた。・全体的な有病率として、肝線維化は7.6%、肝線維化進展リスクを有するMASHは14.8%であった。・多変量解析によると、アルコール摂取量は肝線維化および肝線維化進展リスクを有するMASHと独立して関連していた。・肝線維化および肝線維化進展リスクを有するMASHの有病率は、1週間の飲酒量と心代謝リスク因子の数で用量依存的に増加した。・検証コホートにはMASLD患者1,732例が含まれ、そのうち肝線維化があった患者は17%、肝線維化進展リスクを有したMASH患者は13%だった。・検証コホートでは、アルコールの中等度摂取と肝線維化進展リスクを有するMASLDとの関連が検証され、オッズ比は1.69(95%信頼区間:1.06~2.71)であった。 研究者らは「代謝異常があるMASLD患者の場合、毎日のアルコール摂取量に安全な範囲はない」とも結論付けている。 なお、昨年に欧州肝臓学会で発表され、国内でも病名や診断基準の検討が進められている(1)MASLD、(2)MetALD、(3)alcoholic liver disease[ALD]、(4)cryptogenic SLD、(5)specific aetiology SLDは、アルコール摂取量、代謝異常などに基づき区分されている。

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若年者の砂糖入り飲料摂取、世界的な動向は?/BMJ

 世界185ヵ国の小児・思春期児(3~19歳)における砂糖入り飲料(sugar sweetened beverage、SSB)の摂取量は、1990~2018年の間に23%増加しており、このことと同年齢層における世界的な肥満症有病率の上昇が対応していることを、米国・タフツ大学のLaura Lara-Castor氏らがGlobal Dietary Databaseを用いた検討で明らかにした。また、世界の小児・思春期児のSSB摂取量は、年齢や親の教育レベル、都市居住か否かによりばらつきがみられたという。BMJ誌2024年8月7日号掲載の報告。1990~2018年の185ヵ国の小児と思春期児について分析 研究グループはGlobal Dietary Databaseを用いた連続横断分析で、世界の小児・思春期児におけるSSB摂取量と経時的な傾向を定量化した。1990~2018年の185ヵ国の3~19歳を、年齢、性別、親の教育レベル、および地方または都市居住によって地域レベルで層別化し分析した。世界の若者人口の10.4%が7サービング/週以上を摂取 2018年において、世界の平均SSB摂取量は3.6(95%不確定区間:3.3~4.0)サービング/週であり(標準化サービング=248g[8オンス])、地域別にみると、南アジアの1.3(1.0~1.9)サービング/週から中南米・カリブ海地域の9.1(8.3~10.1)まで大きくばらついていた。 SSB摂取量は、年少児よりは年長児で、地方居住者よりは都市居住者で、両親の教育レベルは低レベル群よりは高レベル群で高かった。 1990~2018年に、世界の平均SSB摂取量は0.68サービング/週(22.9%)増加していた。最も増加していたのはサハラ以南のアフリカ諸国で2.17サービング/週(106%)であった。 解析に含んだ185ヵ国のうち、56ヵ国(30.3%)の平均SSB摂取量は≧7サービング/週であった。これら摂取群には小児・思春期児2億3,800万人、世界の若者人口の10.4%が含まれる。 結果を踏まえて著者は、「本研究は、とくに中南米とカリブ海地域の都市および地方居住で、教育レベルを問わずSSB摂取量が多い若者へのSSB摂取量を減らすための政策や、サハラ以南のアフリカ諸国において拡大しているSSBの問題に役立つだろう」とまとめている。

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腰椎変性すべり症、除圧術単独は固定術併用に非劣性/BMJ

 腰椎変性すべり症に対する除圧術単独vs.固定術併用を検討した多施設共同無作為化非劣性試験「Nordsten-DS試験」の5年間の追跡調査で、除圧術単独群の固定術併用群に対する非劣性が示され、indexレベルまたは隣接腰椎レベルでの新たな手術実施の割合に群間で差はなかったという。ノルウェー・Haukeland University HospitalのEric Loratang Kgomotso氏らNordsten collaboratorsが報告した。BMJ誌2024年8月7日号掲載の報告。術後5年でOswestry disability index約30%低下達成の患者割合を評価 Nordsten-DS試験は、ノルウェーの公立整形外科および脳神経外科16ヵ所で腰椎変性すべり症患者を対象に、固定器具を用いて行う除圧術(固定術併用)に対して除圧術単独が非劣性であるかを、初回手術から5年後の時点で評価した。対象は、症候性腰部脊柱管狭窄症を有し、狭窄レベルで3mm以上のすべりがある18~80歳の患者であった。 主要アウトカムは、ベースラインから追跡5年時点のOswestry disability indexの約30%の低下。事前に規定した非劣性マージンは、主要アウトカム達成患者の割合の差が15%ポイントであることとした。副次アウトカムは、Oswestry disability index、Zurich claudication questionnaire、脚部・腰部疼痛の数値的評価スケール、およびEuroQol Group 5-Dimension(EQ-5D-3L)質問票の平均変化値などであった。修正ITT解析の達成患者割合は両群63%、事前規定の非劣性マージン達成 2014年2月12日~2017年12月18日に、267例が1対1の割合で除圧術単独群(134例)または固定術併用群(133例)に無作為に割り付けられた。このうち230例(88%)が5年時の質問票に回答した(除圧術単独群121例、固定術併用群109例)。ベースラインの平均年齢は66.2歳(SD 7.6)、女性は69%を占めた。 欠損データに対する多重代入法を用いた修正ITT解析において、除圧術単独群84/133例(63%)と固定術併用群81/129例(63%)が、Oswestry disability indexの30%以上低下を達成し、群間差は0.4%ポイント(95%信頼区間[CI]:-11.2~11.9)であった。per protocol解析の結果は、除圧術単独群65/100例(65%)、固定術併用群59/89例(66%)で、群間差は-1.3%ポイント(-14.5~12.2)であった。修正ITT解析およびper protocol解析のいずれにおいても、95%CI値は事前規定の非劣性マージンである-15%を下回らなかった。 ベースラインから5年時までのOswestry disability indexの平均変化値は、両群ともに-17.8だった(平均群間差:0.02[95%CI:-3.8~3.9])。その他の副次アウトカムの結果は、主要アウトカムと同様の傾向を示した。 新たな腰椎手術は、追跡2~5年の間に除圧術単独群で6/123例(5%)、固定術併用群で11/113例(10%)に行われた。ベースラインから5年時までの同手術の総数は、除圧術単独群21/129例(16%)、固定術併用群23/125例(18%)であった。

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対話型テキストメッセージの禁煙介入、青少年の禁煙率を上昇/JAMA

 ソーシャルメディアを通じて募集したベイピングの中止を希望する青少年に対して、対話型のテキストメッセージによる禁煙介入は、評価のみの対照と比較して、自己申告によるベイピングの禁煙率を上昇させることが、米国・Truth InitiativeのAmanda L. Graham氏らによる無作為化二重盲検比較試験の結果で示された。電子タバコは、青少年の間で最も一般的に使用されているタバコ製品である。10代の青少年のニコチン曝露による有害性は知られているものの、検証されたベイピングを中止するための介入法はなかった。JAMA誌オンライン版2024年8月7日号掲載の報告。対話型テキストメッセージの介入群と、評価のみの対照群に無作為化 研究グループは2021年10月1日~2023年10月18日に、13~17歳で現在(過去30日)電子タバコを使用し、30日以内の禁煙に興味があり、テキストメッセージプラン付きの携帯電話を有する米国居住者を、介入群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 参加者は、Instagram、Facebook、Snapchatの広告を通じて募集された。 フォローアップ率を最適化するために、電子タバコの使用に関するインセンティブ付きのテキストメッセージ調査(1通5ドル)を、無作為化14日後、以降は6ヵ月間の追跡期間中毎月、すべての参加者に送り評価した。 対照群は、上記の研究継続テキストメッセージのみを受信した。介入群は、研究継続テキストメッセージに加え、認知および行動的対処技術トレーニングと社会的サポートを提供するベイピング中止のための自動対話型テキストメッセージプログラムを受信した。 主要アウトカムは、7ヵ月時点での自己申告に基づく30日間のベイピングの禁煙率。欠測値はベイピングの使用としてコード化しITT解析を行った。7ヵ月時点の30日禁煙率は介入群37.8% vs.対照群28.0% 適格基準を満たした1,503例が、介入群(759例)と対照群(744例)に無作為化された。平均年齢は16.4歳(SD 0.8)、女性50.6%・男性42.1%・ノンバイナリーまたはその他7.4%、黒人またはアフリカ系アメリカ人10.2%・白人62.6%・多民族18.5%・その他8.7%、ヒスパニック16.2%、LGBQ+42.5%で、76.2%が起床後30分以内にベイピングを使用していた。7ヵ月間の追跡調査率は70.8%であった。 主要アウトカムである7ヵ月時点の30日禁煙率は、介入群で37.8%(95%信頼区間[CI]:34.4~41.3)、対照群で28.0%(24.9~31.3)であり、相対リスクは1.35(95%CI:1.17~1.57、p<0.001)であった。 30日禁煙率に対する治療効果に影響を及ぼす、ベースラインにおける変数はなかった。また、ベイピングをやめた参加者が、燃焼式タバコ製品に移行したというエビデンスは確認されなかった。

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映画「心のままに」(その1)【どうハイテンションになるの?そのあとは?(双極性障害)】Part 3

なんで双極性障害になるの?ジョーンズは、これまで入退院を20回以上繰り返してきたことが判明します。ボーエン先生は、ジョーンズが双極性障害になった原因を、彼のかつての恋人エレンとの失恋ではないかと考えました。しかし、さすがにこれでは、入退院を繰り返すわけを説明できません。また、ジョーンズは、双極性障害によって、仕事やお金の管理ができなくなり、社会的なトラブルを繰り返してしまいました。それでも、公聴会では「生まれつきなんです」「これがおれなんだ」と言うのです。躁状態は気分が良いので、このままがいいと思う気持ちは理解できるのですが、それにしても、もはや双極性障害が彼らしさ(アイデンティティ)になっています。実際には、双極性障害の遺伝率は、約80%です1)。つまり、原因はストレス(環境)よりも遺伝が大きいことになります。ただし、その発症メカニズムについては、現時点で詳しくわかっていません。なお、ジョーンズが一時持ち歩いていたリチウム(気分安定薬)は、薬理メカニズムは不明なのですが、予防効果が確かにあり、治療薬として使われています。このリチウムはアルカリ金属の1つであり、地中に広く微量に存在します。実際の疫学研究において、水道水に含まれる微量のリチウムの濃度が相対的に低い地域ほど自殺率が高くなるという結果が出ています2)。これを応用して、自殺予防の医療政策として、水道水に微量のリチウムを人為的に添加するというアイデアがあります3)。虫歯予防にキシリトールを水道水に添加する医療政策をすでにしている国もあるくらいなので、一見合理的に思われます。しかし、キシリトールとは違い、リチウムは高濃度で胎児奇形性などのリスクがあります。この点も踏まえて、やはり倫理的な議論を呼ぶでしょう。1)「標準精神医学 第8版」p.306、p.337:医学書院、20212)「飲料水中の天然リチウムと自殺率との関連 生態学的研究の系統的レビューとメタアナリシス」:the British Journal of Psychiatry、20203)「水道水に含まれるリチウムが自殺防止に?」:松丸さとみ、ニューズウィーク日本版、2020<< 前のページへ■関連記事ツレがうつになりまして。【うつ病】

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乳がん遺伝子パネル検査の前向き研究、推奨治療到達率は?(REIWA study)/日本乳癌学会

 転移・再発乳がんにおけるがん遺伝子パネル検査の有用性を評価する前向き観察研究であるREIWA study(JBCRG C-07)の中間解析結果をもとに、乳がん治療におけるゲノム医療の現状や問題点、今後の展望を東北大学病院の多田 寛氏が第32回日本乳癌学会学術総会のシンポジウムで発表した。 標準治療が終了した進行・再発乳がん患者を対象に、2019年6月からがん遺伝子パネル検査が保険で利用できるようになった。本研究では、FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル(F1CDx)およびFoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル(F1LCDx)を行うことが決定したde novo StageIVまたは転移・再発乳がん患者を2020年1月~2023年7月に前向きに登録し、変異情報、変異にマッチした治療の情報、後治療、予後などの項目を現在も収集している。主要評価項目は遺伝子変異に対応する治療(推奨治療)が存在した集団における推奨治療が施行された割合、および推奨された治験や臨床試験に参加した割合であった。本シンポジウムでは、第2回の中間解析時点の結果やがんゲノム情報管理センター(C-CAT)の乳がん症例データをもとに、転移・再発乳がんに対するゲノム医療の現状と問題点、今後の展望についての考察が示された。 主な内容は以下のとおり。・解析対象は576例で、Luminalタイプが310例(53.8%)、HER2タイプが93例(16.1%)、トリプルネガティブタイプが173例(30.0%)であった。年齢中央値は56歳(50歳以上が70.1%)、再発は74.1%、再発後の治療レジメン数中央値は3レジメン、F1CDxが選択されたのは85.2%であった。F1LCDxが選択された群では50歳以上の割合が多く、再発後の治療レジメン数も多かった。・推奨治療が提示された割合は61.0%(350/574例)で、複数の推奨治療が提示されたのは23例であった。・全体において、推奨治療(主治医判定)が実際に施行されたのは18.1%(104/574例)であった。・HER2タイプに対する抗HER2療法など既知のものを除くと、治療到達率は13.8%(78/574例)であった。F1CDx群では14.1%(69/489例)、F1LCDx群では11.8%(10/85例)であった(p=0.543)。・主要評価項目である推奨治療が存在した集団における推奨治療が施行された割合は29.7%(104/350例)、推奨された治験や臨床試験に参加した割合は4.0%(14/350例)であった。・治験以外の推奨治療の内訳(n=79)は、免疫チェックポイント阻害薬が29.1%、mTOR阻害薬が21.6%、抗HER2療法が20.2%、PARP阻害薬が13.9%、NTRK阻害薬が5.1%、CDK4/6阻害薬が3.8%、SERDが2.5%、その他が2.5%であった。・F1LCDxを選択した理由(n=85)は、「組織の保存期間が長い」が49.4%、「生検による組織検体の採取が困難」が32.9%、「組織標本は得られたが解析が困難であった」が24.7%、「遺伝子変化の状態をよりよく理解することができる」が8.2%であった。・F1CDx/F1LCDx後の治療の選択理由は、「actionableな遺伝子変異がなく承認薬を施行した」が1stラインでは26%、2ndラインでは19.5%、「actionableな遺伝子変異があり対応する治療を施行した」が13.5%/4.3%、「actionableな遺伝子変異があり対応する治験・臨床試験に参加した」が1.9%/1%、「actionableな遺伝子変異があったが対応しない承認薬を施行した」が25.7%/20%であった。 多田氏は、C-CATについては、「遺伝子変異状況や推奨治療の予測にはC-CATのような大規模なデータベースが有用と考えられる。C-CATの乳がん症例における入力ベースの推奨治療到達率は9.7%であったが、推奨治療薬の薬剤名の未入力が多く、また標的治療に殺細胞性抗がん剤が入力されているなど、入力内容の不十分さが散見される」と見解を示した。 最後に、「REIWA studyは治療歴や予後情報などがクエリ作業のもとに正確に入力されており、転移・再発乳がんにおけるゲノム医療の貴重なデータとなる。今後、全生存期間や個々の標的治療の治療効果を含めた副次評価項目の解析を行い、がん遺伝子パネルの有用性を正確に評価していく」とまとめた。

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臓器不全の重篤患者、ICU治療にSGLT2阻害薬追加は有益か?/JAMA

 急性臓器不全を呈した重篤患者に対し、標準的なICU治療にSGLT-2阻害薬ダパグリフロジンを追加しても臨床アウトカムは改善しなかった。一方で、信頼区間(CI)値の範囲が広く、ダパグリフロジンに関連する有益性または有害性を排除できなかったという。ブラジル・Hospital Israelita Albert EinsteinのCaio A. M. Tavares氏らDEFENDER Investigatorsが多施設共同無作為化非盲検試験「DEFENDER試験」の結果を報告した。SGLT-2阻害薬は、糖尿病、心不全、慢性腎臓病(CKD)を有する患者のアウトカムを改善するが、臓器不全を呈した重篤患者のアウトカムへの効果は不明であった。JAMA誌2024年8月6日号掲載の報告。ダパグリフロジン10mg+標準ICU治療vs.標準ICU治療のみ DEFENDER試験は、ブラジルの22ヵ所のICUで行われた。2022年11月22日~2023年8月30日に、少なくとも1つ以上の臓器不全(呼吸器、心血管、腎臓)を呈した予定外のICU入室患者を登録し、2023年9月27日まで追跡調査した。 被験者は、ダパグリフロジン10mg+標準ICU治療を受ける群(ダパグリフロジン群)または標準ICU治療のみを受ける群(対照群)に無作為化され、最長14日間またはICU退室のいずれかの初発まで治療を受けた。 主要アウトカムは院内死亡率、腎代替療法の開始、および28日間のICU入室の階層的複合で、解析にはWin Ratio法(win比で評価)を用いた。 副次アウトカムは、主要アウトカムの各項目、臓器サポートを要さない日数、ICU入室期間、入院期間などで、ベイズ回帰モデルを用いて評価した。主要複合アウトカム、ダパグリフロジン群で有意に減少せず 507例が無作為化された(ダパグリフロジン群248例、対照群259例)。平均年齢は63.9歳(SD 15)、女性は46.9%。39.6%は感染症の疑いによるICU入室であった。ICU入室から無作為化までの期間中央値は1日(四分位範囲:0~1)。 最長14日間のダパグリフロジン10mgの使用は、主要複合アウトカムの発生を有意に減少しなかった。無作為化後28日間のダパグリフロジン群のwin比は1.01(95%CI:0.90~1.13、p=0.89)であった。 すべての副次アウトカムにおいて、ダパグリフロジンの有益性の確率が最も高かったのは、腎代替療法の使用に関するものであった。腎代替療法導入の報告は、ダパグリフロジン群27例(10.9%)、対照群39例(15.1%)であった(ダパグリフロジンの有益性の確率0.90)。

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1型糖尿病の子どもたちは「糖尿病の苦痛」にさらされている

 1型糖尿病の子どもは、いくつかのメンタルヘルス上の問題を抱えることが多いとする研究結果が報告された。英ケンブリッジ大学およびチェコ共和国国立精神保健研究所のTomas Formanek氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Mental Health」に7月17日掲載された。 報告された研究によると、1型糖尿病の子どもは糖尿病のない子どもに比べて、気分障害を発症する可能性が2倍以上高く、不安症に苦しむ可能性は50%高く、また摂食障害や睡眠障害などの行動上の問題が発生する可能性は4倍以上高いという。ただし、この研究結果は同時に、このようなメンタルヘルス疾患が、1型糖尿病という病態が原因で引き起こされるものではないことも示唆しており、「子どもたちが抱えるこのようなリスクは、むしろ慢性疾患を継続的に管理し続けることに伴う『糖尿病の苦痛』が原因のようだ」と、著者らは述べている。 1型糖尿病は、インスリンを生成している膵臓のβ細胞を免疫系が攻撃することで発症する。β細胞がダメージを受けると、インスリンを生成する能力が失われるため、生存のためにインスリン療法が必要となる。治療は生涯にわたり、日々、絶え間ない自己管理の負担に直面する。また、偏見や差別、自己効力感の低下、将来の合併症の不安、経済的な負担などによるストレスが生じやすく、これらを「糖尿病の苦痛(diabetes distress)」と呼ぶことがある。これまでにもこのような糖尿病の苦痛が、1型糖尿病の子どもたちのメンタルヘルス状態を悪化させたり、自己管理に悪影響を及ぼしたりする可能性が指摘されていた。 Formanek氏らの研究では、チェコ共和国の1型糖尿病の子どもたち4,500人以上の患者登録データが用いられた。データ解析の結果、1型糖尿病の子どもたちに見られるメンタルヘルス関連の問題は、この病気を発症後には常に食事の摂取量を判断したり、血糖値をチェックしたり、インスリンを注射したりしなければならないといった、生活に大きな変化を強いられることに起因するものである可能性が見いだされた。また、社交行事へ参加する機会が減ったり、ほかの子どもたちや教師、さらには家族からも孤立していると感じたりすることも少なくないという実態が明らかになった。 その影響もあって前述のように、1型糖尿病の子どもたちの間で、不安症や摂食障害、睡眠障害などが多く見られた。ただし、統合失調症などの精神疾患を発症するリスクは低く、同年代の子どもたちの約2分の1だった。 論文の上席著者であるケンブリッジ大学のBenjamin Perry氏は、「1型糖尿病患者は『糖尿病の苦痛』を経験しやすいことが知られている。その苦痛には、血糖値に対する極度のフラストレーションや孤立感なども含まれると考えられ、成人でも燃え尽き症候群や絶望感、あるいはコントロールの放棄につながる可能性がある。そのため、1型糖尿病の子どもたちが成人するまでの間に、メンタルヘルス上の問題が顕在化するリスクが高いとしても、不思議なことではない」と述べている。

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第225回 徳田虎雄氏死去、地域医療にもたらしたインパクトとその功績を考える(後編)

徳田虎雄氏が作り上げた徳洲会、僻地医療、救急医療を半世紀にわたって展開こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、愛知県の実家にお施餓鬼のために帰省しました。92歳になった父親が一人暮らしをしているのですが、1週間ほど前に「運転免許の返上を決めた」と電話で話していたにもかかわらず、会ってみると「来年の車検までは乗る」というのでまた親子喧嘩に。挙句の果てに、「車を乗るのを止めたら、電動自転車を買おうと思っている」と言い出す始末。「90歳は自転車で転んで大腿骨を骨折すると、死期がぐっと早まるぞ」と脅したのですが、田舎の超高齢者の交通手段問題が解決する日は遠そうです。さて、今回も徳田 虎雄氏が作り上げた徳洲会が半世紀にわたって展開してきた離島をはじめとする僻地医療や、救急をはじめとする地域医療における功績について、私自身の取材経験(少々偏りはありますが)も踏まえ、考えてみたいと思います。早くから北米型ERを導入、日本の救急医療に与えたインパクト「生命だけは平等だ」をスローガンに、40年近くにわたって「年中無休・24時間オープン」の医療を全国展開してきた徳洲会。その特徴の1つは早くから北米型ER(救急外来)を導入したことでしょう。1970〜80年代、まだ日本の救急医療は増加する交通事故の外傷に対応することが第一の目的とされ、外傷三次救急以外の、内科系や小児の二次救急は整備途上でした。そんな中、徳田氏は、全国に北米型ERのある病院を展開しました。そのあたりの事情を薬師寺 泰匡氏(薬師寺慈恵病院院長、元岸和田徳洲会病院救急科医長)が日経メディカルの連載「だから救急はおもしろいんよ」の2018年1月18日付の記事で書いています。氏は「徳洲会が立ち上がった頃は、夜間休日の救急医療体制が整っておらず、患者はどこに行っていいのか、救急車も呼んでいいのかどうかという状況だったことがうかがえます」と振り返り、「徳田虎雄は、実際に米国留学などでかの地の救急医療に触れた医師を独自に集め、救急医療を担保するとともに、各地で米国式の研修医教育を広めていきました。現在のスーパーローテート方式が始まるずっと前から、独自に各科ローテート研修を行っており、僕自身もそうした歴史の恩恵にあずかりました」と記しています。同記事などによれば、日本において一次・二次・三次救急の整備が始まったのが1977年、消防法の改正によって救急隊の搬送業務の対象が小児科・内科系疾患を含む救急患者一般にまで拡大したのは1987年のことです。徳洲会の最初の病院、徳田病院(現在の松原徳洲会病院)の開設が1973年ですから、徳洲会の全国各地の病院は、日本の救急医療の先駆けとして機能し、その基礎を形作ったと言えるかもしれません。都市部の大病院で研修医を集めて、へき地・離島に期限付きで送る救急医療に加え、へき地医療と地域医療でもその貢献は小さくありません。徳田氏の故郷である鹿児島県の離島に赤字覚悟で複数の病院を開設、初期研修医や後期研修医を「へき地・離島研修」という独自のプログラムのもと一定期間派遣し、その地域の医療を支えたのです。医療機器が充実した都市部の大病院で研修しようというシステムは、人口減少や医師の働き方改革などを背景に、地方での医師不足が急速に進む今の日本でも参考になりそうです。地域医療展開の拠点と言われた野崎徳洲会病院徳洲会の病院は都市部の巨大病院ばかりではなく、地域の中小病院も数多くあります。1980年代後半~1990年代前半、そうした病院を取材すると、徳洲会の地域医療展開の拠点と言われた野崎徳洲会病院(大阪府大東市)でプライマリケア・地域医療を学んだ医師が少なからずいたことを覚えています。たとえば1990年代前半、北海道静内町(現在の新ひだか町)の静仁会・静内病院(現在の医療法人徳洲会 日高徳洲会病院)には、野崎徳洲会病院OBの院長がいました。彼は、野崎徳洲会病院で学んだプライマリケアを実践しながら、徳洲会が買収した老人病院を、救急から在宅まで、包括医療を提供する病院に作り変えようと奮闘していました。今で言う地域包括ケアです。介護保険ができる10年も前に、医療と介護を一体化した診療を行っていたわけです。東日本大震災で際立った徳洲会の活躍救急医療だけではなく、地域医療、家庭医療に力を入れる方針は徳洲会の中で脈々と受け継がれていったようです。2011年の東日本大震災の時、被災した気仙沼市立本吉病院(現在は本吉医院)に、不在となった院長の代わりに赴任したのは、徳洲会系(現在は医療法人徳洲会)の庄内余目病院の家庭医養成プログラムを修了した医師でした。この医師も「町民全体の家庭医を目指したい」と、通常の外来診療を済ませた後に積極的に訪問診療を行っていた姿を覚えています。東日本大震災の被災地ではまた、災害直後から徳洲会の災害派遣チーム・TMATの姿をあちらこちらで見かけました。その支援の規模は、民間病院チェーンの中では最大だったと聞いています。日本赤十字社や済生会の病院では起こり得なかったこと徳洲会は、その規模を生かすかたちで親族が経営するMS法人に莫大な利益を還流し、同時にまた、徳田氏や長男の選挙に大量の人員投入を行っていました。それは批判すべきことではありますが、徳洲会の救急医療や地域医療のノウハウが全国各地に広がっていったこと自体は評価されるべきことでしょう。強烈な個性とリーダーシップのあるオーナー理事長が率いる全国チェーンゆえに、いわゆる医療の”均てん化”が起こっていたわけです。同じ全国チェーンでも、地元大学医学部のジッツとしての役割が大きい日本赤十字社や済生会の病院では起こり得なかったことです。「社会福祉法人恩賜財団済生会などの公的病院を規模でも質でも凌駕したい」と現理事長徳洲会事件を契機として徳田家の支配から脱却した医療法人徳洲会は、「生命だけは平等だ」の理念はそのままに規模拡大を続けており、その経営は順調のようです。日経ヘルスケア2023年2月号掲載の記事、「創業50年を迎えた徳洲会の今(上)」で現理事長の東上 震一氏は「規模は一つの断面に過ぎないが、目標は100病院。1兆円の収益を上げて、社会福祉法人恩賜財団済生会などの公的病院を規模でも質でも凌駕したい」と今後の抱負を語っています。しかし一方で、カテーテル治療後に複数の患者が死亡するなど医療過誤が相次いだ神戸徳洲会病院に神戸市が医療法に基づく改善命令を出すなど、その医療の“質”に疑問が投げかけられる事態も生じています。オーナー経営ではなくなった巨大チェーンを、勤務医出身のサラリーマン経営者が統治していくのは並大抵のことではないはずです(内規で医療法人徳洲会の理事長は3期までと決まっているそうです)。神戸徳洲会病院で起こっていることが、統治・経営の綻びから来ているものでなければいいのですが…。徳田家の支配から離れて、徳田氏の理念や経営方針はいつまで引き継がれていくのか、これからの50年間に救急医療におけるパイオニアワークのような徳洲会らしい新たな功績は生まれるのか――。今後の動きにも注目したいと思います。

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日本の社会経済的指標と認知症リスク

 生涯にわたる社会経済的指標(Socioeconomic status:SES)の推移が、認知症の発症リスクと関連するかどうかを調査した、日本発の研究結果が発表された。大阪大学の坂庭 嶺人氏らによる本研究結果はJAMA Network Open誌2024年5月1日号に掲載された。 2010年8月~2016年12月に実施されたこの前向きコホート研究では、日本老年学的評価研究のデータを使用し、日本の31地域の65歳以上の参加者を対象とした。参加者は介護保険や医療福祉サービスを使用しておらず、認知症の診断を受けていない人とされ、自記式質問票で回答した。データ解析は2022年4月~2023年4月に実施された。SES値欠落者、追跡不能者、ベースラインから1年以内の認知症発症者は除外された。主なアウトカムは認知症発症リスクと、それに伴う生涯にわたる認知症のない期間の減少または増加だった。認知症の発症は介護保険のデータによって特定された。 主な結果は以下のとおり。・計9,186例(男性4,703例[51.2%])が対象となった。ベースライン時の平均年齢は74.2(SD 6.0)歳だった。・SESの推移は、上昇(upward)、安定上流(stable-high)、上位中流(upper-middle)、下位中流(lower-middle)、下降(downward)、安定下流(stable-low)の6つに分類された。・追跡期間中に800例の認知症が特定された。生活習慣、併存疾患、社会的要因など、多くの認知症リスク要因がSESの推移パターンと関連していた。・下位中流のSESと比較したとき、認知症リスクが最も低かったのは上昇(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.57~0.74)、次いで安定上流(HR:0.77、95%CI:0.69~0.86)であり、下降(HR:1.15、95%CI:1.09~1.23)、安定下流(HR:1.45、95%CI:1.31~1.61)ではリスクが上がった。上位中流への推移と認知症リスクとの関連は認められなかった。・生涯にわたる認知症のない年数は、SESの上昇への推移で最も増加した(例:65歳時点で1.8年[95%CI:1.4~2.2])。一方、75歳以上の生涯にわたる認知症のない年数は、SESの下降への推移で最も減少した(例:85歳時点で-1.4年[95%CI:-2.4~-0.4])。 研究者らは「この日本の高齢者のコホート研究では、SESの上昇と下降が生涯にわたる認知症リスクと認知症のない期間の長さと関連していることが判明した。この結果は、社会的流動性と健康寿命の関連を理解するのに役立つ可能性がある」としている。

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ゲーム療法は統合失調症患者の認知機能改善に有効か

 統合失調症患者における認知機能は、機能的アウトカムや日常生活機能の低下の主な原因であり、治療対象として有望である。近年、精神疾患の治療において、さまざまな認知機能領域をターゲットとしたデジタル介入(ゲームベースの介入など)の使用が増加しつつある。そして、統合失調症患者に対するゲームベースのデジタル介入は、治療価値があるとの見解が示唆されている。中国・首都師範大学のJunkai Wang氏らは、統合失調症患者の認知機能をターゲットとした新たなオンライントレーニングプログラム(Komori Life)の利用可能性と初期の有効性を評価した。Translational Psychiatry誌2024年7月16日号の報告。 統合失調症入院患者を対象に、ゲーム介入群(セッション完了:40例)または通常療法群(セッション完了:40例)のいずれかにランダムに割り付け、20回のセッションを実施した。すべての患者に対し、登録時および介入完了後に認知機能、臨床症状の評価を行った。また、健康対照群32例を含むすべての対象に対し、感情情報への注意バイアスを評価するためアイトラッキングを用いた。 主な結果は以下のとおり。・ゲーム介入群および通常療法群において、認知機能または臨床症状の評価で差は認められなかった。・ゲーム介入後も、認知機能または臨床症状のスコアに群×時間の相互関係は認められなかった。・アイトラッキングについては、ベースライン時の注意維持に関して、ゲーム介入群および通常療法群は、健康対照群と比較し、脅威刺激に対する注意力の増加が認められた。・ゲーム介入群は、通常療法群と比較し、介入後の脅威場面への注意バイアスが大幅に改善した(脅威刺激への総持続時間の割合、総注視の割合が減少)。・ゲーム介入の有効性が、認知機能改善と関連しており、脅威への注意維持の向上が認知パフォーマンスの低下と関連していることが部分的に示唆された。 著者らは「本研究は、統合失調症患者の認知機能改善に対する遠隔オンライン認知機能トレーニングプログラムの利用可能性および有効性に関する初めてのエビデンスである。本介入は、既存の精神科治療の補完療法として機能する可能性がある」としている。

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活動制限の有病率に、性差や国の経済水準による差はあるか/Lancet

 活動制限(activity limitation)の世界的な有病率は、男性よりも女性で、高所得国よりも低所得国や中所得国で大幅に高く、歩行補助具や視覚補助具、聴覚補助具の使用率のかなりの低さも手伝ってこの傾向は顕著であるため、活動制限の影響を軽減するための公衆衛生キャンペーンの焦点となりうる重要な課題であることが、カナダ・マクマスター大学のRaed A. Joundi氏らが実施した「PURE研究」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2024年8月10日号に掲載された。25ヵ国の35~70歳を対象とする前向きコホート研究 PURE研究は、活動制限の有病率と補助具の使用、および活動制限と有害なアウトカムとの関連の定量化を目的とする前向きコホート研究で、経済水準の異なる25ヵ国の個人データの解析を行った(カナダ・Population Health Research Instituteなどの助成を受けた)。 現在の住居に今後4年以上住む予定の35~70歳の17万5,660例を対象とし、活動制限に関する質問票への回答を求めた。追跡調査は3年に1回、電話または対面で行うこととした。 活動制限の調査は、7つの制限(歩行、把持[指で物をつかんだり扱うこと]、屈伸[かがんで床から物を拾う]、近くを見る、遠くを見る、話す、聞く)と補助具の使用(歩行、視力、補聴器)の自己報告による困難に関する質問で構成された。屈伸困難が最も多く、近くを見るや歩行の制限も高頻度 2001年1月~2019年5月に、17万5,584例が活動制限質問票の少なくとも1つの質問に回答した(平均年齢50.6歳[SD 9.8]、女性10万3,625例[59%])。すべての質問に回答した集団の平均追跡期間は10.7年(SD 4.4)だった。 最も高頻度に自己報告された活動制限は屈伸(2万3,921/17万5,515例[13.6%])であり、次いで、近くを見る(2万2,532/16万7,801例[13.4%])、歩行(2万2,805/17万5,554例[13.0%])、把持(1万6,851/17万5,584例[9.6%])、遠くを見る(1万3,222例/17万5,437例[7.5%])、聞く(9,205/16万7,710例[5.5%])、話すまたは理解してもらう(3,094/17万5,474例[1.8%])の順であった。これらの制限の有病率は、年齢が高いほど、また女性で高かった。 年齢と性別で標準化した活動制限の有病率は、聴覚を除き、低所得国と中所得国で高く、社会経済的因子で補正しても一貫して同様の所見が認められた。また、歩行補助具、視覚補助具、聴覚補助具の使用は、低所得国と中所得国で少なく、とくに女性で使用率が低かった。低所得国では視覚制限が多く、眼鏡使用率が低い 近くを見ることの制限の有病率は、低所得国では高所得国の約4倍(6,257/3万7,926例[16.5%]vs.717/1万8,039例[4.0%])で、遠くを見ることの制限の有病率は約5倍(4,003/3万7,923例[10.6%]vs.391/1万8,038例[2.2%])であったが、眼鏡使用の割合は低所得国(30.9%)と中所得国(30.3%)で高所得国(71.1%)の半分にも満たなかった。 歩行制限は、全死因死亡率と最も強く関連し(補正後ハザード比[aHR]:1.32、95%信頼区間[CI]:1.25~1.39)、他の臨床イベント(心血管疾患死、非心血管疾患死、心血管疾患、非致死的心血管疾患、心筋梗塞、肺炎、転倒)とも強い関連を示した。これ以外の顕著な関連として、遠くを見ることの制限と非心血管疾患死(1.12、1.03~1.21)、把持の制限と心血管疾患(1.15、1.05~1.26)、屈伸の制限と転倒(1.11、1.03~1.21)、話すことの制限と脳卒中(1.44、1.18~1.75)などを認めた。 著者は、「とくに低所得国と女性に重点を置いて、世界的に活動制限を予防し、その影響を軽減する必要がある」「世界の60歳以上の高齢者人口の3分の2は低・中所得国であるため、活動制限の大きな負担とこれに関連する結果を軽減するための公衆衛生戦略が求められる」としている。

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シェーグレン症候群、抗CD40抗体iscalimabが有望/Lancet

 シェーグレン症候群の治療において、プラセボと比較して抗CD40モノクローナル抗体iscalimabは、疾患活動性に関して有意な用量反応関係を示し、忍容性も良好であることが、英国・University Hospitals Birmingham NHS Foundation TrustのBenjamin A. Fisher氏らが実施した「TWINSS試験」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2024年8月10日号で報告された。2つのコホートの無作為化プラセボ対照第IIb相試験 TWINSS試験は、23ヵ国71施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第IIb相試験であり、2019年10月~2022年2月に参加者のスクリーニングを行った(Novartis Pharmaの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)の2016年のシェーグレン症候群診断基準を満たす患者273例を登録した。 このうち用量設定を行うコホート1には、ESSDAI(EULAR Sjogren's Syndrome Disease Activity Index)スコアが5点以上、ESSPRI(EULAR Sjogren's Syndrome Patient Reported Index)スコアが5点以上の患者173例を登録し、iscalimab 150mgを皮下投与する群に44例、同300mg群に43例、同600mg群に43例、プラセボ群に43例を無作為に割り付けた。各群の年齢中央値の範囲は52.0~56.0歳、女性の割合の範囲は93~95%であった。 また、概念実証を行うコホート2には、ESSDAIスコアが5点未満、ESSPRI(乾燥症状または疲労)スコアが5点以上で、日常生活へのドライアイの影響スコアが30点以上の患者100例を登録し、iscalimab 600mgまたはプラセボを皮下投与する群に50例ずつ割り付けた。各群の年齢中央値の範囲は49.0~55.5歳、女性の割合の範囲は96~100%だった。 主要エンドポイントは、コホート1がベースラインから24週目までのESSDAIの変化に基づきiscalimabの用量反応関係を示すこと、コホート2が24週目のESSPRIの変化に関してiscalimab 600mgの効果を評価することであった。150mg群と600mg群で、ESSDAIスコアが有意に改善 コホート1では、4つのモデルのうち1つ(Linlogモデル)においてプラセボで補正したESSDAIのベースラインからの変化が、多重比較法(MCP)で有意な用量反応関係を示した(片側p=0.0041)。 また、ESSDAIスコアはiscalimabの3つの用量群ともベースラインから24週目まで経時的に低下し、150mg群と600mg群では有意な改善を認めた。プラセボで補正した最小二乗平均差は、150mg群-3.0(95%信頼区間[CI]:-4.9~-1.1、p=0.0025)、600mg群-2.9(-4.9~-1.0、p=0.0037)であった。ESSPRIの総スコアも改善傾向 コホート2では、ESSPRIの総スコアがiscalimab 600mg群で改善する傾向がみられた(プラセボで補正した最小二乗平均のベースラインからの変化:-0.57点、95%CI:-1.30~0.15、p=0.12)。ESSPRIの下位尺度の解析では、iscalimab 600mgによるESSPRI改善の主な因子は、乾燥症状(最小二乗平均差:-1.0点、95%CI:-1.8~-0.2、p=0.016)および疲労(-0.8点、-1.7~0.1、p=0.067)であった。 重篤な有害事象は、コホート1で9例(プラセボ群1例[2%]、iscalimab 150mg群1例[2%]、同300mg群3例[7%]、同600mg群4例[9%])、コホート2で4例(各群2例[4%]ずつ)発現した。有害事象による投与中止は、コホート1で8例(プラセボ群1例[2%]、iscalimab 150mg群1例[2%]、同300mg群1例[2%]、同600mg群5例[11%])、コホート2で4例(プラセボ群 3例[6%]、iscalimab 600mg群1例[2%])でみられた。 著者は、「抗CD40標的療法は、シェーグレン症候群の主な症状(乾燥、疲労)および全身症状の治療に有効である可能性が示唆される」としている。

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QT延長症候群患者の高強度の運動は心停止のきっかけにはならず

 不整脈の一種であるQT延長症候群(LQTS)の患者が高強度の運動をしたとしても、それによって突然死や心停止のリスクがさらに上昇することはなく、安全であることが米イェール大学医学部心臓病学教授のRachel Lampert氏らによる研究から明らかになった。詳細は、「Circulation」に7月25日掲載された。Lampert氏らは、「適切な治療を受けていたLQTS患者では、高強度の運動をしていた人と、中強度の運動をしていた人や座位時間の長い人のいずれにおいても、不整脈イベントの発生は少ないことが示された」と結論付けている。 米クリーブランド・クリニックの情報によると、LQTSは心拍のリズムを正常に保つための電気的なプロセスに遅れが生じる病態で、それにより、危険性の高い不整脈が引き起こされる可能性がある。LQTSの多くは遺伝性であり、疾患をコントロールするための治療法には薬物療法のほか、植え込み型デバイスの留置、手術などがある。 Lampert氏らによると、LQTSは約2,500人中1人に発生する疾患で、最も高頻度に検出される遺伝性の心臓の電気的異常であることが、ある欧州の研究によって明らかにされているという。また、複数の先行研究で、高強度の運動がLQTS患者の心停止を誘発する可能性のあることが示唆されている。しかし、これらの研究は、そのような心イベントの発生後にLQTSと診断された患者を主な対象としていた。 では、すでにLQTSがあることが判明していて、それに対する適切な治療を受けている患者の場合はどうなのだろうか? この疑問に対する答えを明らかにするため、Lampert氏らは5カ国の37カ所の医療機関でLQTSと診断された患者1,413人の転帰を3年間にわたって追跡した。 対象者の年齢は8~60歳で、LQTSの原因となる遺伝子を保有していることが明らかになっているか、心電図検査でLQTSのあることが判明しているかのいずれかであり、研究実施時点で、全対象者が薬物療法か除細動器などの植え込み型デバイスによる適切な治療を受けていた。このうち約半数以上(52%)はランニングなどの高強度の運動を行っていたが(高強度運動群)、残りの人は中強度の運動(ウォーキングや庭仕事などの活動)を行っているか、ほとんど座位で過ごしている人で、非高強度運動群とされた。 3年間に及ぶ追跡の結果、高強度運動群と非高強度運動群の間で、突然死、突然の心停止、不規則な心拍を原因とする失神、植え込み型除細動器による治療が必要と判断されるほど困難な状態の不整脈、の4つの心臓の問題の発生率について、統計学的な有意差は認められなかった。全般的な心イベントの発生率は高強度運動群で2.6%、非高強度運動群で2.7%といずれも低かった。この研究を通じて心臓突然死に至ったのは、31歳の女性ただ1人だった。この女性は、後に別の深刻な心臓症候群を持っていることが判明しており、また亡くなる前に「意図的に治療を無効化」していたという。さらに、対象者のうち116人は「競技アスリート」であったが、これらの人の心イベント発生率も極めて低かったとLampert氏らは説明している。 こうした結果を受けてLampert氏らは、適切な治療が行われていればLQTSは激しい運動の障壁にはならないとの考えを示している。その上で、LQTSの患者がスポーツや激しいワークアウトに取り組むべきかどうかの判断は、医師のみで行うのではなく、そのような活動の必要性に関して患者と医師の間での「共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)」を通じて行われるべきであると付け加えている。

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英語で「やることがたくさんある」は?【1分★医療英語】第143回

第143回 英語で「やることがたくさんある」は?《例文1》She has a bunch of stuff to do before the appointment.(彼女は予約の前にたくさんの用事をこなさなければなりません)《例文2》We have a bunch of patients to see this morning.(今朝は多くの患者さんを診察する予定です)《解説》“I have a bunch of stuff to do.”は、「やることがたくさんあります」という意味を表す口語的な表現です。ここで登場した“bunch”と“stuff”という単語、あまり聞き慣れない方も多いかもしれません。まず、“bunch”は本来、「束」や「房」を意味する単語ですが、口語においては「たくさんの」という意味で使われることがあります。たとえば、“a bunch of grapes”といえば「ブドウの房」となりますが、そこから転じて「複数の物事や人を1つのグループ(房)」として表現する際に“a bunch of”が使用できるのです。“a lot of”よりもカジュアルで、話し言葉らしい印象を与えます。次に、“stuff”は非常に汎用性の高い単語で、具体的に名前を挙げたり特定したりしない「物事」を指す際に使われます。「仕事」「タスク」「モノ」など、あらゆるものを“stuff”で表現できるため、日常会話でよく使用されます。“I have a bunch of stuff to do.”は、自分の忙しさを簡潔に伝える際に役立ちます。たとえば、ストレスや時間の管理に関する話題の中で「やらなきゃいけないことがいっぱいあってさ…」といったトーンで頻用されます。ただし、あくまで口語表現なので、よりかしこまったメールの文面や診療記録などで使うのは不適切です。このような口語表現を適切に理解し、状況に応じて使い分けることで、コミュニケーションがより円滑になります。“A lot of things”の代わりになる表現として頭に入れておけば、ネイティブの口から聞くことがあってもびっくりせずに済むでしょう。講師紹介

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第227回 いわば毒をもって毒を制す斬新なHIV治療手段がサルで有効

いわば毒をもって毒を制す斬新なHIV治療手段がサルで有効いわば毒をもって毒を制す新たなHIV治療手段がサルを使った検討1,2)で有望な成績を収め、ヒトに投与する試験の計画が進められています。HIV感染をHIV投与によって封じるというその斬新な手段はさかのぼること15年以上も前にカリフォルニア大学サンフランシスコ校の生物物理学者Leor Weinberger氏が思い付きました3)。Weinberger氏はインフルエンザウイルスがときに不完全なウイルスを生み出し、それが正常ウイルス(野生型ウイルス)の邪魔をするということを大学院のときに知ってその手段を思いつきました。欠損変異のせいで半端なそのようなウイルスは自力では複製できませんが他力本願で増えることができます。半端ウイルスは感染細胞内の野生型ウイルスに押し入り、複製や身繕いに不可欠なタンパク質を奪って野生型ウイルスを減らします。ゆえに都合よく増えるように仕立てた半端ウイルスは一回きりの投与で長く治療効果を発揮すると予想され、Weinberger氏らは2007年に研究に取り掛かり、それから約10年を経た2018年に求める特徴を備えた治療用の半端HIV(以下、治療用HIV)を手にしました。Weinberger氏らは複製を助ける配列を残しつつHIV遺伝子一揃いを切り詰めることで治療用HIVのゲノムを作製しました。治療用HIVは構造がより単純なため、野生型HIVの先を越してより早く複製することができます。治療用HIVの効果は幼いサルを使った検討で検証されました。6匹にはまず治療用HIVが投与され、その24時間後にサルのHIV同等ウイルス(SHIV)が投与されました。4匹にはSHIVのみ投与されました。30ヵ月後の様子を調べたところ、治療用HIVが投与されたサル6匹中5匹は健康で、SHIV濃度はピーク時のおよそ1万分の1で済んでいました3)。一方、治療用HIVが投与されなかった4匹のうち3匹は病んで16週時点で安楽死させられました。治療用HIVは増えずに居続けることもでき、いざとなれば復活して潜伏感染HIVの再現を封じうることも患者細胞などを使った検討で確認されています。また野生型HIVと同様に治療用HIVはヒトからヒトに伝播することができます。その特徴は望まないのに治療用HIVをもらってしまうという倫理的懸念を孕みます。しかし経口ポリオワクチンの弱毒化ウイルスが他のヒトに移って免疫を助けるのと同じように、治療用HIVの伝播はHIV感染の世界的な蔓延を減らす助けになるかもしれません。今後の予定としてWeinberger氏らは治療用HIVをサルでさらに検討するつもりです。また、カリフォルニア州からの助成により実施される臨床試験に関する米国FDAとの話し合いも進んでいます3)。HIV感染に加えてその他の末期の病気も患う患者が被験者として想定されています。それら被験者にまず治療用HIVを投与し、次に抗レトロウイルス薬を中止してウイルス量がどう推移するかが検討される見込みです。被験者が亡くなったらその組織を解析し、治療法HIVと関連する炎症やその他の問題が生じていないかどうかが調べられる予定です。試験が来年早々に始まることをWeinberger氏は期待しています。参考1)Pitchai FNN, et al. Science. 2024;385:eadn5866. 2)Study: Single experimental shot reduces HIV levels 1,000-fold / Oregon Health & Science University 3)Bold new strategy to suppress HIV passes first test / Science

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日本におけるベンゾジアゼピンと向精神薬の併用状況

 さまざまな精神疾患のガイドラインでは、少数のケースにおいてベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZD)単剤療法による短期介入が推奨されている。対照的に、BZD多剤併用療法は、いかなる場合でも推奨されていない。しかし実臨床では、BZD多剤併用療法が用いられることが少なくない。秋田大学の竹島 正浩氏らは、BZD多剤併用療法と向精神薬併用との関連を明らかにするため、本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年7月4日号の報告。 JMDCの請求データを用いて、レトロスペクティブ横断的研究を実施した。2019年6月、BZD治療を行った健康保険加入者の医療情報を抽出した。BZD多剤併用療法の定義は、2種類以上のBZD使用とした。年齢、性別、保健者および睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬の併用数(0、1、2以上)を共変量とし、BZD多剤併用療法と関連する因子を特定するため、二項ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、BZD治療を行った成人患者10万4,796例(平均年齢:47.0±11.7歳、女性の割合:52.8%)。・BZD多剤併用療法患者の割合は、12.6%であった。・ロジスティック回帰分析では、BZD多剤併用療法と有意な関連が認められた患者は次のとおりであった。【睡眠薬単剤療法患者】調整オッズ比(aOR):1.04、95%信頼区間(CI):1.001〜1.09、p=0.04【抗うつ薬単剤療法患者】aOR:1.57、95%CI:1.51〜1.63、p<0.001【抗うつ薬多剤併用療法患者】aOR:1.98、95%CI:1.88〜2.09、p<0.001【抗精神病薬単剤療法患者】aOR:1.12、95%CI:1.07〜1.19、p<0.001【抗精神病薬多剤併用療法患者】aOR:1.41、95%CI:1.30〜1.54、p<0.001・睡眠薬多剤併用療法患者では、BZD多剤併用療法の割合が低かった(aOR:0.86、95%CI:0.81〜0.91、p<0.001)。 著者らは「抗うつ薬や抗精神病薬の併用数が増加すると、BZD多剤併用療法との関連性が上昇することが示唆された。抗うつや抗精神病薬との併用療法は、一般的に推奨されていないため、このような患者では薬物療法に対し抵抗性を示すと考えられる。そのため、推奨される非薬物療法を実施することで、BZD多剤併用療法を軽減できる可能性がある」としている。

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