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初発統合失調症患者の約40%が治療抵抗性の可能性あり

 初回エピソード統合失調症(FES)患者における治療抵抗性統合失調症(TRS)の有病率は、国際的およびオーストラリア国内で十分に調査されていない。オーストラリア・Graylands HospitalのMirza Detanac氏らは、FES患者コホートにおけるTRSの有病率を評価し、TRS患者の社会人口学的および臨床的特徴について、治療反応が認められたFES患者との比較を行った。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年8月28日号の報告。 2020年10月、西オーストラリアの早期精神疾患介入サービス(EPIS)4施設において、統合失調症と診断されたすべての患者(ICD-10)の人口統計学的、臨床的、治療関連のデータを2年にわたり収集した。TRSの診断には、慶應義塾大学の鈴木 健文氏らが2012年に報告したTRSの修正版診断基準を用いた。データ分析は、記述統計、マン・ホイットニーのU検定、Studentのt検定、False-Discovery Rateモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・FESと診断された167例におけるTRSの有病率は41.3%であり、EPIS間で差は認められなかった(p=0.955)。・TRS患者は、治療反応が認められたFES患者と比較し、自立度が低く(p=0.011)、失業期間が長く(p=0.014)、障害年金受給者になる可能性が高かった(p=0.011)。・さらに、症状がより重症であり(p=0.002)、精神症状の持続期間が長く(p=0.019)、入院回数が多く(p=0.002)、累積入院期間が長かった(p=0.002)。 著者らは「EPISでマネジメントされているFES患者では、抗精神病薬に対する治療抵抗性を示す患者の割合が、非常に多いことが明らかとなった。とくに、TRSと臨床的重症度の上昇、心理社会的および治療上の負担との関連性が確認された。これらの結果は、TRSの早期発見と、精神保健サービスにおけるTRSに対するよりタイムリーな専門的介入の必要性を浮き彫りにしている」と結論付けている。

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膀胱がんへの周術期デュルバルマブ併用、EFS・OSを改善(NIAGARA)/NEJM

 膀胱全摘除術が可能な筋層浸潤性膀胱がんにおいて、術前化学療法への周術期デュルバルマブ併用は、術前化学療法単独の場合と比較して、無イベント生存期間(EFS)と全生存期間(OS)の有意な改善をもたらしたことが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のThomas Powles氏らNIAGARA Investigatorsによる第III相非盲検無作為化試験で示された。術前化学療法に続く膀胱全摘除術は、シスプラチン適応の筋層浸潤性膀胱がん患者における標準治療だが、周術期免疫療法の追加によりアウトカムを改善する可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。術前化学療法+周術期デュルバルマブvs.術前化学療法単独 研究グループは、シスプラチン適応の筋層浸潤性膀胱がん患者を、術前補助療法としてデュルバルマブ+ゲムシタビン+シスプラチンを3週ごと4サイクル投与し、その後に膀胱全摘除術と補助療法としてデュルバルマブを4週ごと8サイクル投与する群(デュルバルマブ群)、または術前補助療法としてゲムシタビン+シスプラチンを投与し、その後に膀胱全摘除術のみを施行する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は2つで、そのうちの1つがEFS(もう1つは病理学的完全奏効)だった。重要な副次評価項目はOSとした。EFS、OSが有意に改善 2018年11月~2021年7月に22ヵ国で1,063例が無作為化された(デュルバルマブ群533例、対照群530例)。両群の被験者のベースライン特性は全体的にバランスが取れており、試験対象は欧州、アジア、北米、オーストラリアおよび南米から登録された筋層浸潤性膀胱がんの代表的な患者集団であったが、黒人患者の割合は小さかった。 24ヵ月時点の推定EFS率は、デュルバルマブ群67.8%(95%信頼区間[CI]:63.6~71.7)、対照群59.8%(55.4~64.0)であった(病勢進行、再発、膀胱全摘除術の非施行、死亡のハザード比[HR]:0.68、95%CI:0.56~0.82、層別log-rank検定のp<0.001)。 24ヵ月時点の推定OS率は、デュルバルマブ群82.2%(95%CI:78.7~85.2)、対照群75.2%(71.3~78.8)であった(死亡のHR:0.75、95%CI:0.59~0.93、層別log-rank検定のp=0.01)。 Grade3または4の治療関連有害事象の発現頻度は、デュルバルマブ群40.6%、対照群40.9%。死亡に至った治療関連有害事象は、各群で0.6%報告された。 膀胱全摘除術を受けた被験者は、デュルバルマブ群88.0%、対照群83.2%であった。

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急性心筋梗塞による心原性ショック、MCSデバイス使用は有益か/Lancet

 急性心筋梗塞による心原性ショック(AMICS)の患者に対する積極的な経皮的機械的循環補助(MCS)デバイスの使用は、6ヵ月死亡を抑制せず、大出血および血管合併症を増加したことが、ドイツ・ライプチヒ大学ハートセンターのHolger Thiele氏らMCS Collaborator Scientific Groupが行った個別患者データのメタ解析の結果で示された。ただし、低酸素脳症のリスクがないST上昇型心筋梗塞(STEMI)による心原性ショックの患者では、MCS使用後に死亡率の低下が認められた。積極的な経皮的MCSは、死亡への影響に関して相反するエビデンスが示されているにもかかわらず、AMICS治療での使用が増加しているという。本検討で研究グループは、AMICS患者における早期ルーチンの積極的な経皮的MCSと対照治療の6ヵ月死亡率への影響を確認した。結果を踏まえて著者は、「MCSの使用は、特定の患者のみに限定すべきである」としている。Lancet誌2024年9月14日号掲載の報告。MCS(VA-ECMOなど)vs.対照治療の6ヵ月死亡率をメタ解析で評価 個別患者データのメタ解析は、言語を制限せず、PubMed経由のMEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Embase、ClinicalTrials.govの電子データベースを2024年1月26日時点で検索し、適切な無作為化比較試験(3つの検索単語群を用い、各群の少なくとも1単語がマッチした試験)を特定した。 解析には、AMICS患者の治療について早期ルーチンの積極的な経皮的MCS治療(無作為化後カテーテル検査室でただちに施行)と対照治療の6ヵ月死亡のデータを比較しているすべての無作為化比較試験を組み入れた。 主要アウトカムは、対照治療を受けた場合と比較した、早期ルーチン積極的経皮的MCS治療を受けたAMICS患者の6ヵ月死亡率で、デバイスタイプ(loadingタイプ[venoarterial extracorporeal membrane oxygenation:VA-ECMOなど]、unloadingタイプ)および患者の選択(すべての心筋梗塞、低酸素脳症リスクがないSTEMI)に焦点を当て、Cox比例モデルを用いてハザード比(HR)を算出し評価した。MCS使用の6ヵ月死亡率への影響に有意差は認められず 無作為化比較試験の報告9件(患者1,114例)が詳細に評価された。 全体として、VA-ECMO治療と対照治療の試験が4件(611例)、左室unloadingデバイス使用治療と対照治療の試験が5件(503例)であった。2試験に含まれていたAMICSではない患者55例(44例がVA-ECMO、11例が左室unloadingデバイスで治療を受けていた)のデータは除外された。 患者の年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:57~73)、データが得られた1,058例のうち845例(79.9%)が男性で、213例(20.1%)が女性であった。 ITT集団において、早期MCS使用の6ヵ月死亡率への影響について有意差は認められなかった(HR:0.87[95%信頼区間[CI]:0.74~1.03]、p=0.10)。VA-ECMO治療と対照治療(0.93[0.75~1.17]、p=0.55)、左室unloadingデバイス使用治療と対照治療(0.80[0.62~1.02]、p=0.075)でも有意差は観察されなかった。 低酸素脳症リスクがないST上昇型心原性ショックの患者では、MCS使用による6ヵ月死亡率の低下がみられた(HR:0.77[95%CI:0.61~0.97]、p=0.024)。 大出血(オッズ比:2.64[95%CI:1.91~3.65])および血管合併症(4.43[2.37~8.26])は、対照治療群と比べてMCS治療群で多くみられた。

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高齢NSTEMI患者に、侵襲的治療は有益か/NEJM

 非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)の高齢患者では、保存的治療と比較して侵襲的治療は、心血管死または非致死的心筋梗塞の複合のリスクを改善しないことが、英国・ニューカッスル大学のVijay Kunadian氏らBritish Heart Foundation SENIOR-RITA Trial Team and Investigatorsが実施した「SENIOR-RITA試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2024年9月1日号で報告された。約3分の1がフレイルのNSTEMI患者集団で侵襲的治療の有用性を評価 SENIOR-RITA試験は、高齢NSTEMI患者における侵襲的治療の有用性の評価を目的とする非盲検無作為化対照比較試験であり、2016年11月~2023年3月にイングランドとスコットランドの48施設で参加者のスクリーニングを行った(英国心臓財団[BHF]の助成を受けた)。 年齢75歳以上のNSTEMI患者1,518例(平均年齢82歳、女性44.7%、フレイル32.4%、認知機能障害62.5%)を登録し、侵襲的治療戦略を受ける群に753例、保存的治療戦略を受ける群に765例を割り付けた。侵襲的治療群は、冠動脈造影と血行再建術を施行し、有効性が最も高いと考えられる薬物療法を行った。保存的治療群は薬物療法のみを行った。 主要アウトカムは、心血管系の原因による死亡と非致死的心筋梗塞の複合とし、time-to-event解析で評価した。心筋梗塞は少ないが主要アウトカムに差はない 追跡期間中央値4.1年の時点で、主要アウトカムのイベントは、侵襲的治療群で193例(25.6%)に、保存的治療群では201例(26.3%)に発生し、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.77~1.14、p=0.53)。 心血管系の原因による死亡は、侵襲的治療群で119例(15.8%)、保存的治療群では109例(14.2%)に発生し(HR:1.11、95%CI:0.86~1.44)、非致死的心筋梗塞はそれぞれ88例(11.7%)および115例(15.0%)に発生した(0.75、0.57~0.99)。手技に関連した合併症は1%未満 副次アウトカムである全死因死亡と非致死的心筋梗塞の複合は、侵襲的治療群で319例(42.4%)、保存的治療群で321例(42.0%)に発生し(HR:0.97、95%CI:0.83~1.13)、致死的または非致死的心筋梗塞はそれぞれ100例(13.3%)および124例(16.2%)に発生した(0.79、0.61~1.02)。 また、一過性脳虚血発作は、侵襲的治療群で18例(2.4%)、保存的治療群で9例(1.2%)に発生し(HR:2.05、95%CI:0.92~4.56)、出血イベント(BARCタイプ2以上)はそれぞれ62例(8.2%)および49例(6.4%)に発生した(1.28、0.88~1.86)。侵襲的治療群では、手技に関連した合併症の発生率は1%未満だった。 著者は、「臨床医は、出血や手技関連合併症への懸念からフレイルの高齢者に侵襲的な処置を行うことに消極的だが、本研究では最新の血管造影とインターベンション戦略を用いたためこれらの合併症の発生は最小限であった」とし、研究の限界として「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、とくに併存疾患の負担が大きいフレイルの高齢患者の募集に影響を及ぼし、予定されていた症例数に達しなかった」と述べている。

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僧帽弁閉鎖不全症を伴う心不全、経カテーテル修復術の追加は有効か/NEJM

 中等症~重症の機能性僧帽弁閉鎖不全症を有する心不全で薬物療法を受けている患者では、MitraClipデバイスを用いた経カテーテル僧帽弁修復術を追加することにより、薬物療法単独と比較して24ヵ月後の心不全による初回または再入院と心血管死の複合の発生率が改善し、12ヵ月後の健康状態が良好であることが、ドイツ・シャリテ大学のStefan D. Anker氏らRESHAPE-HF2 Investigatorsが実施した「RESHAPE-HF2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年8月31日号に掲載された。国際的な医師主導型無作為化対照比較試験 RESHAPE-HF2試験は、9ヵ国30施設で実施した医師主導型の無作為化対照比較試験であり、2015年3月~2023年10月に参加者のスクリーニングを行った(Abbott Laboratoriesの助成を受けた)。 ガイドライン推奨の治療を行っても心不全の症状および徴候があり、グレード3+または4+の機能性僧帽弁閉鎖不全症を有し、左室駆出率が20~50%で、血漿中のナトリウム利尿ペプチド濃度の上昇(BNP濃度≧300pg/mLまたはNT-proBNP濃度≧1,000pg/mL)を認める患者を対象とした。 被験者を、経カテーテル僧帽弁修復術+薬物療法を行う群(デバイス群)または薬物療法のみを行う群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは3項目で、(1)24ヵ月間の心不全による初回または再入院と心血管死の複合の発生率、(2)24ヵ月間の心不全による初回または再入院の発生率、(3)カンザスシティ心筋症質問票総合サマリー(KCCQ-OS、0~100点、点数が高いほど健康状態が良好)スコアのベースラインから12ヵ月の時点までの変化量であった。3項目とも有意に改善 505例が登録され、デバイス群に250例、対照群に255例が無作為化された。ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は70(±10)歳、20%が女性で、35%が非虚血性心筋症、29%が心臓再同期療法デバイスを装着していた。左室駆出率中央値は31%(四分位範囲[IQR]:25~37)、KCCQ-OSスコア中央値は43点(IQR:26~63)だった。 24ヵ月の時点で、心不全による初回または再入院と心血管死の複合の発生率は、対照群が100人年当たり58.9件であったのに対し、デバイス群は37.0件と有意に低かった(率比:0.64、95%信頼区間[CI]:0.48~0.85、p=0.002)。 24ヵ月時の心不全による初回または再入院の発生率は、対照群が100人年当たり46.6件だったのに対し、デバイス群は26.9件であり有意に低率だった(率比:0.59、95%CI:0.42~0.82、p=0.002)。 また、12ヵ月後のKCCQ-OSスコアの平均値の変化量は、対照群では8.0(±24.5)点の上昇であったのに比べ、デバイス群は21.6(±26.9)点上昇しており有意に良好だった(平均群間差:10.9点、95%CI:6.8~15.0、p<0.001)。手技に関連した有害事象は4件 12ヵ月の時点で、僧帽弁閉鎖不全症がグレード2+以下の患者の割合(デバイス群90.4% vs.対照群36.1%、p<0.001)、およびNYHA心機能分類クラスI/IIの心不全の患者の割合(74.5% vs.58.5%、p<0.001)は、いずれもデバイス群で高かった。 全死因死亡(デバイス群22.3% vs.対照群29.6%)、心血管系の原因による死亡(17.8% vs.20.4%)には両群間で差がなかったが、心血管系以外の原因による死亡(4.5% vs.9.3%、p=0.04)、予期せぬMitraClip留置(2.0% vs.6.5%、p=0.004)、すべての予期せぬ経カテーテル僧帽弁修復術(2.0% vs.10.0%、p<0.001)はデバイス群で少なかった。 デバイス群では、手技に関連した有害事象が4件(1.6%)報告された。内訳は、血腫が2件、心嚢液貯留が1件、右房穿孔が1件(デバイス留置終了後に開胸手術)であった。 著者は、「機能性僧房弁閉鎖不全症が未治療のままであると、心不全の増悪や不良な予後につながる心臓の構造や機能の変化を引き起こす可能性があるため、今回の試験の知見は重要である」と述べ、「ガイドラインに準拠した薬物療法と併用した経カテーテル僧帽弁修復術が、心不全による入院を1件予防するための治療必要数(number needed to treat)はわずか5.1件であった」としている。

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腎ドナーの死亡リスク、過去最低に

 腎臓提供者(ドナー)が死亡するリスクは、これまでになく低下していることが新たな研究で明らかになった。腎ドナーの死亡率はすでに10年前から低かったが、現在では、さらにその半分以下になっていることが示されたという。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部Center for Surgical and Transplant Applied Research Quantitative CoreのAllan Massie氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月28日掲載された。 臓器調達・移植ネットワークによれば、毎年およそ6,000人の米国人が腎臓の提供を志願している。Massie氏らは今回、1993年から2022年までの生体腎ドナーに関するデータを用いて、腎臓提供後90日以内のドナー死亡率を算出した。データは1993~2002年、2003~2012年、2013~2022年の3つの期間に分類して解析した。 研究対象期間中に16万4,593人が腎臓を提供しており、36人が提供後90日以内に死亡していた(ドナー1万人当たり2.2人の死亡)。期間別に死亡数と死亡率(ドナー1万人当たりの死亡数)を比較すると、1993〜2002年では13人(1万人当たり3.0人)、2003〜2012年では18人(1万人当たり2.9人)であったのが、2013〜2022年には5人(1万人当たり0.9人)と、統計学的に有意に減少したことが明らかになった。さらに、男性では女性よりも、また、提供前に高血圧の既往があった人ではなかった人よりも、腎臓提供後90日以内の死亡率が統計学的に有意に高かったが、年齢、人種/民族と死亡リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 Massie氏は、「腎臓提供が安全であることは分かっていたが、今回の調査結果は、ドナーが死亡することは極めてまれであり、その処置はかつてないほど安全なことを示唆している」と話す。 Massie氏は、このような死亡率改善の背景には、手術方法の向上があるとの見方を示す。同氏によると、1990年代以降、手術方法は劇的に変化したという。例えば、以前は腎臓の摘出には6〜8インチ(約15〜20cm)の切開が必要だったが、現在では、より侵襲性の低い腹腔鏡手術による臓器の摘出が主流となり、切開創はかなり小さくなったと同氏は説明する。また研究グループは、医師によるドナー希望者の健康状態の確認や手術後のドナーに対するケアの向上も、死亡率低下に寄与しているとしている。 NYUグロスマン医学部の外科副部長であるDorry Segev氏は、「これらの結果は、腎臓提供の可能性があるドナーにリスクを知らせるために使用されている現行のガイドラインを、過去10年弱の間に成し遂げられた安全性の向上を反映した内容に更新する必要があることを示している」と述べている。 一方、2009年に従兄弟に自身の腎臓を提供した経験を持つ、論文の共著者でNYUグロスマン医学部のMacey Levan氏は、「腎ドナーとして、またこの分野の専門家として、進歩を目の当たりにするのは心強いことだ」とNYUのニュースリリースの中で述べている。

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英語で「脳神経は正常です」は?【1分★医療英語】第149回

第149回 英語で「脳神経は正常です」は?《例文1》Although the patient presented with mild dizziness, her cranial nerves were grossly intact on initial evaluation.(患者は軽度のめまいの訴えがありましたが、初回の診察では脳神経の明らかな異常は見られませんでした)《例文2》The cranial nerves were not intact on neurological exam, as the patient showed facial asymmetry.(神経学的検査において、患者は顔面の非対称性を示したため、脳神経に異常が見られました)《解説》今回は脳神経に関する単語の解説です。救急外来などでは、身体検査で脳神経系を評価する場面がしばしばあるかと思います。「正常な脳神経所見」はどのように伝えればよいでしょうか。医療英語では、I~XIIの12の脳神経のことを“cranial nerve”と呼びます。副詞の“grossly”は単語としては「甚だしく/著しく」といった意味ですが、これを“intact”(=「損なわれていない/完全な」という意味の形容詞)と組み合わせて“grossly intact”とすると、「(脳神経が)異常なし/正常である」という意味になります。この“grossly intact”は“Cranial nerves are (were) grossly intact.”(脳神経所見は正常です)というお決まりのフレーズとして、カルテでも口頭のプレゼンでも頻用されます。ただ、“grossly”という単語は基本的に脳神経所見に限って使われる単語であり、ほかの身体所見ではあまり使われないので注意してください。なぜ脳神経のみがこの表現なのかは明らかではないのですが、米国の医療現場で広く使われているのでそのまま覚えてしまいましょう。一方、“intact”のほうは、ほかの部位の正常所見を示す際にも使われます。直訳すれば、“physically and functionally complete.”(身体的、機能的に完璧である)という意味になりますが、実際にカルテに記載されている例を挙げると、“Skin is moist and intact.”(皮膚は湿潤、損傷なし)や、“Extraocular movements is intact.”(眼球運動は正常)といった使われ方をしています。講師紹介

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15の診断名・11の内服薬―この薬は本当に必要?【こんなときどうする?高齢者診療】第5回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年8月に扱ったテーマ「高齢者への使用を避けたい薬」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。老年医学の型「5つのM」の3つめにあたるのが「薬」です。患者の主訴を聞くときは、必ず薬の影響を念頭に置くのが老年医学のスタンダード。どのように診療・ケアに役立つのか、症例から考えてみましょう。90歳男性。初診外来に15種類の診断名と、内服薬11種類を伴って来院。【診断名】2型糖尿病、心不全、高血圧、冠動脈疾患、高脂血症、心房細動、COPD、白内障、逆流性食道炎、難聴、骨粗鬆症、変形性膝関節症、爪白癬、認知症、抑うつ【服用中の薬剤】処方薬(スタチン、アムロジピン、リシノプリル、ラシックス、グリメピリド、メトホルミン、アルプラゾラム、オメプラゾール)市販薬(抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、便秘薬)病気のデパートのような診断名の多さです。薬の数は、5剤以上で多剤併用とするポリファーマシーの基準1)をはるかに超えています。この症例を「これらの診断名は正しいのか?」、「処方されている薬は必要だったのか?」このふたつの点から整理していきましょう。初診の高齢者には、必ず薬の副作用を疑った診察を!私は高齢者の診療で、コモンな老年症候群と同時に、さまざまな訴えや症状が薬の副作用である可能性を考慮にいれて診察しています。なぜなら、老年症候群と薬の副作用で生じる症状はとても似ているからです。たとえば、認知機能低下、抑うつ、起立性低血圧、転倒、高血圧、排尿障害、便秘、パーキンソン症状など2)があります。症状が多くて覚えられないという方にもおすすめのアセスメント方法は、第2回で解説したDEEP-INを使うことです。これに沿って問診する際、とくにD(認知機能)、P(身体機能)、I(失禁)、N(栄養状態)の機能低下や症状が服用している薬と関連していないか意識的に問診することで診療が効率的になります。処方カスケードを見つけ、不要な薬を特定するさて、はっきりしない既往歴や薬があまりに多いときは処方カスケードの可能性も考えます。薬剤による副作用で出現した症状に新しく診断名がついて、対処するための処方が追加されつづける流れを処方カスケードといいます。この患者では、変形性膝関節症に対する鎮痛薬(NSAIDs)→NSAIDsによる逆流性食道炎→制酸薬といったカスケードや、NSAIDs→血圧上昇→高血圧症の診断→降圧薬(アムロジピン)→下肢のむくみ→心不全疑い→利尿薬→血中尿酸値上昇→痛風発作→痛風薬→急性腎不全という流れが考えられます。このような流れで診断名や処方薬が増えたと想定すると、カスケードが起こる前は以下の診断名で、必要だったのはこれらの処方薬ではと考えることができます。90歳男性。初診外来に15種類の診断名と、内服薬11種類を伴って来院。【診断名】2型糖尿病、心不全、高血圧、冠動脈疾患、高脂血症、心房細動、COPD、白内障、逆流性食道炎、難聴、骨粗鬆症、変形性膝関節症、爪白癬、認知症、抑うつ【服用中の薬剤】処方薬(スタチン、アムロジピン、リシノプリル、ラシックス、グリメピリド、メトホルミン、アルプラゾラム、オメプラゾール)市販薬(抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、便秘薬)減薬の5ステップ減らせそうな薬の検討がついたら以下の5つをもとに減薬するかどうかを考えましょう。(1)中止/減量することを検討できそうな薬に注目する(2)利益と不利益を洗い出す(3)減薬が可能な状況か、できないとするとなぜか、を確認する(4)病状や併存疾患、認知・身体機能本人の大切にしていることや周辺環境をもとに優先順位を決める(第1回・5つのMを参照)(5)減薬後のフォローアップ方法を考え、調整する患者に利益をもたらす介入にするために(2)~(4)のステップはとても重要です。効果が見込めない薬でも本人の思い入れが強く、中止・減量が難しい場合もあります。またフォローアップが行える環境でないと、本当は必要な薬を中断してしまって健康を害する状況を見過ごしてしまうかもしれません。フォローアップのない介入は患者の不利益につながりかねません。どのような薬であっても、これらのプロセスを踏むことを減薬成功の鍵としてぜひ覚えておいてください! 高齢者への処方・減量の原則実際に高齢者へ処方を開始したり、減量・中止したりする際には、「Stand by, Start low, Go slow」3)に沿って進めます。Stand byまず様子をみる。不要な薬を開始しない。効果が見込めない薬を使い始めない。効果はあるが発現まで時間のかかる薬を使い始めない。Start lowより安全性が高い薬を少量、効果が期待できる最小量から使う。副作用が起こる確率が高い場合は、代替薬がないか確認する。Go slow増量する場合は、少しづつ、ゆっくりと。(*例外はあり)複数の薬を同時に開始/中止しない現場での実感として、1度に変更・増量・減量する薬は基本的に2剤以下に留めると介入の効果をモニタリングしやすく、安全に減量・中止または必要な調整が行えます。開始や増量、または中止を数日も待てない状況は意外に多くありませんから、焦らず時間をかけることもまたポイントです。つまり3つの原則は、薬を開始・増量するときにも有用です。ぜひ皆さんの診療に役立ててみてください! よりリアルな減薬のポイントはオンラインサロンでサロンでは、ふらつき・転倒・記憶力低下を主訴に来院した8剤併用中の78歳女性のケースを例に、クイズ形式で介入のポイントをディスカッションしています。高齢者によく処方される薬剤の副作用・副効果の解説に加えて、転倒につながりやすい処方の組み合わせや、アセトアミノフェンが効かないときに何を処方するのか?アメリカでの最先端をお話いただいています。参考1)Danijela Gnjidic,et al. J Clin Epidemiol. 2012;65(9):989-95.2)樋口雅也ほか.あめいろぐ高齢者診療. 33. 2020. 丸善出版3)The 4Ms of Age Friendly Healthcare Delivery: Medications#104/Geriatric Fast Fact.上記サイトはstart low, go slow を含めた老年医学のまとめサイトです。翻訳ソフトなど用いてぜひ参照してみてください。実はオリジナルは「start low, go slow」だけなのですが、どうしても「診断して治療する」=検査・処方に走ってしまいがちな医師としての自分への自戒を込めて、stand by を追加して、反射的に処方しないことを忘れないようにしています。

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第233回 コロナワクチンとがん免疫治療患者の生存改善が関連/ESMO2024

コロナワクチンとがん免疫治療患者の生存改善が関連/ESMO2024がん患者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を生じ易いことが知られます。幸い、がん患者の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種の安全性はおおむね良好です。いまや可能な限り必要とされるがん患者のSARS-CoV-2ワクチン接種が、その本来のCOVID-19予防効果に加えて、なんとがん治療の効果向上という思わぬ恩恵ももたらしうることが、今月13~17日にスペインのバルセロナで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)での報告で示唆されました1)。報告したのは米国屈指のがん研究所であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのAdam J. Grippin氏です。Grippin氏らは今回の報告に先立ち、mRNAワクチンがその標的抗原はどうあれ、腫瘍のPD-L1発現を増やして抗PD-L1薬などの免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果を高めうることを、げっ歯類での検討で見出していました。そこでGrippin氏らはCOVID-19予防mRNAワクチンがPD-L1発現を促すことでICIが腫瘍により付け入りやすくなるのではないかと考え、StageIII/IVの進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者2,406例や転移黒色腫患者757例などの記録を使ってその仮説を検証しました。予想どおり、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種から100日以内のNSCLC患者の腫瘍では、PD-L1がより発現していました。また、5千例強(5,524例)の病理報告の検討でもSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種とPD-L1を擁する腫瘍細胞の割合の55%上昇が関連しました。SARS-CoV-2 mRNAワクチンとICI治療効果の関連も予想どおりの結果となりました。ICIが投与されたNSCLC患者群のうち、その開始100日以内にSARS-CoV-2 mRNAワクチンを接種していた患者は、そうでない患者に比べて全生存期間(OS)がより長く(それぞれ1,120日と558日)、より多くが3年間を生きて迎えることができました(3年OS率はそれぞれ57.2%と30.7%)。一方、ICI非治療の患者の生存へのSARS-COV-2 mRNAワクチン接種の影響はありませんでした。黒色腫患者でも同様の結果が得られており、ICI治療開始100日以内のSARS-COV-2 mRNAワクチン接種はOS、無転移生存期間、無増悪生存期間の改善と関連しました。SARS-COV-2 mRNAワクチンはPD-L1発現亢進と黒色腫やNSCLC患者のICI治療後の生存改善と関連したとGrippin氏らは結論しています。Grippin氏らの研究はmRNAワクチンに的を絞ったものですが、昨年9月に中国のチームが報告した解析結果では、mRNA以外のSARS-CoV-2ワクチン接種とICI治療を受けたNSCLC患者の生存改善の関連が認められています2)。不活化ワクチン2種(BBIBP-CorVとCoronaVac)を主とするSARS-CoV-2ワクチンを接種してICI治療を受けたNSCLC患者は非接種群に比べてより長生きしました。中国からの別の2つの報告でもmRNA以外のSARS-CoV-2ワクチンのICIの効果を高める作用が示唆されています。それらの1つでは抗PD-1抗体camrelizumab治療患者2,048人が検討され、BBIBP-CorV接種と全奏効率(ORR)や病勢コントロール率(DCR)が高いことが関連しました3)。ただし年齢、性別、がんの病期や種類、合併症、全身状態指標(ECOG)を一致させたBBIBP-CorV接種群530例と非接種群530例のORRやDCRの比較では有意差はありませんでした。同じ研究者らによる翌年の別の報告では、抗PD-1薬で治療された上咽頭がん患者1,537例が調べられ、CoronaVac接種とORRやDCRの向上が関連しました4)。参考1)Association of SARS-COV-2 mRNA vaccines with tumor PD-L1 expression and clinical responses to immune checkpoint blockade / ESMO Congress 20242)Qian Y, et al. Infect Agent Cancer. 2023;18:50.3)Mei Q, et al. J Immunother Cancer. 2022;10:e004157.4)Hua YJ, et al. Ann Oncol. 2023;34:121-123.

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フレイル女性では台所で過ごす時間が長いほど食生活が健康的

 高齢の日本人女性を対象に行われた研究から、台所で過ごす時間が長いほど健康的な食生活を送っていて、この関連はフレイルの場合により顕著であることが分かった。高崎健康福祉大学、および、お茶の水女子大学に所属する佐藤清香氏らが行った横断研究の結果であり、詳細は「Journal of Nutrition Education and Behavior」に7月20日掲載された。 フレイルは、「加齢により心身が老い衰えた状態」であり、健康な状態と要介護状態の中間のこと。フレイルを早期に発見して栄養不良や運動不足に気を付けることで、フレイルが改善される可能性がある。フレイルの初期には、台所で行われる調理作業の支障の発生という変化が生じやすいことが報告されており、調理に手を掛けられなくなることは栄養の偏りにつながる可能性がある。また、台所での作業は身体活動の良い機会でもある。そのため、台所で過ごす時間の減少を見いだすことは、フレイルの進行抑止につながる可能性がある。これらを背景として佐藤氏らは、高齢女性が台所で過ごす時間と健康的な食事を取る頻度との関係を調査し、その関係にフレイルが及ぼす影響を検討した。 2023年1月に、調査会社の登録者パネルを用いたオンライン調査を行い、国内に居住している65歳以上の女性600人(平均年齢73.8±5.7歳)から回答を得た。食生活については、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度を質問して、それが1日2回以上の場合を「健康的」と判定した。なお、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が高いほど「日本人の食事摂取基準」に示されている栄養素量を満たしていることが多いと報告されており、また「健康日本21(第三次)」でも「ほぼ毎日主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上摂取する人の割合を令和14年度までに50%とする」という目標が掲げられている。 フレイルの判定は、市町村の介護予防事業対象者の抽出に用いられている25項目の質問から成る基本チェックリストを用いた。その結果、21.2%がフレイル、34.0%がプレフレイルと判定された。主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上摂取する頻度については「ほぼ毎日」が77.5%を占めていたが、フレイルの有無別に比較すると、健常群では84.8%であるのに対して、プレフレイル群では77.0%、フレイル群では63.8%と少なかった(P<0.001)。台所で過ごす時間(P=0.02)や台所の使用頻度(P=0.004)についても、健常、プレフレイル、フレイルの順に低値となるという関連が認められた。なお、台所で過ごす時間は「1日2時間」が最も多く選択され(44.8%)、台所の使用頻度は「毎日」が最多(95.0%)だった。 次に、1日に2回以上主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を摂取する頻度を従属変数として、フレイルの判定および1日に台所で過ごす時間との関連を検討した。結果に影響を及ぼし得る、年齢、BMI、婚姻状況、独居/同居、就労状況、介護サービス利用状況の影響は調整した。 解析の結果、健常であること(b=0.61〔95%信頼区間0.34~0.89〕)と台所で過ごす時間が長いこと(b=0.38〔同0.23~0.53〕)はともに、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度の高さと有意な関連が認められた。また、フレイルと台所で過ごす時間の交互作用が認められた(b=-0.10〔-0.17~-0.035〕)。これは、フレイルまたはプレフレイルの人において、台所で過ごす時間が長いほど主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が高いという関連が、より強いことを示している。 著者らは、台所で過ごす時間が減少する背景因子が調査されていないことや、横断研究であるため台所で過ごす時間が長いことと健康的な食生活の因果関係は分からないことなどを限界として挙げた上で、「高齢女性、特にフレイルの女性に対して、料理や盛り付け、後片付けなどのために台所で過ごす時間を増やすという推奨が、健康的な食生活につながり、フレイルの進行抑制につながる可能性があるのではないか」と総括している。

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不眠症と心血管リスクとの関連~メタ解析

 不眠症と心血管疾患(CVD)との関連性は、観察研究により示唆されているが、その原因やメカニズムは明らかになっていない。中国・The First Affiliated Hospital of Xinxiang Medical UniversityのXuejiao Zhang氏らは、不眠症とCVDの潜在的な因果関係を調査するため、システマティックメタレビューおよび観察研究のメタ解析とメンデルランダム化(MR)研究を組み合わせて分析を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2024年8月21日号の報告。 2023年7月11日までに公表された英語論文をPubMed、Web of Science、Embaseより検索した。独立した2人の査読者により論文をスクリーニングし、潜在的なバイアスを最小限に抑えた。観察研究のメタ解析とMR研究により、不眠症と冠動脈疾患(CAD)、心房細動(AF)、心不全(HF)、心筋梗塞(MI)、高血圧(HTN)、脳卒中との関連性を評価した現在のエビデンスをまとめた。 主な結果は以下のとおり。・最終的な分析には、観察研究のメタ解析4件、MR研究9件を含めた。・観察研究のシステマティックメタレビューにより、不眠症は、AF、MI、HTNを含む多くのCVDの独立したリスク因子であることを裏付ける強力なエビデンスが得られた。・MR研究のメタ解析では、不眠症は、CAD、AF、HF、HTN、大動脈性脳卒中、虚血性脳卒中、原発性頭蓋内出血と潜在的な因果関係を有する可能性が示唆された。【CAD】オッズ比(OR):1.14、95%信頼区間(CI):1.10〜1.19、I2=97%【AF】OR:1.02、95%CI:1.01〜1.04、I2=94%【HF】OR:1.04、95%CI:1.03〜1.06、I2=97%【HTN】OR:1.16、95%CI:1.13〜1.18、I2=28%【大動脈性脳卒中】OR:1.14、95%CI:1.05〜1.24、I2=0%【虚血性脳卒中】OR:1.09、95%CI:1.03〜1.14、I2=60%【原発性頭蓋内出血】OR:1.16、95%CI:1.05〜1.27、I2=0%・不眠症と心原性脳塞栓症、小血管性脳卒中との因果関係を示唆するエビデンスは見当たらなかった。 著者らは「不眠症とCVDリスクとの間に因果関係のある可能性を裏付ける強力なエビデンスが得られた。不眠症の治療戦略は、CVD予防の有望なターゲットとなる可能性がある」と結論付けている。

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人間なら死んでしまうほどの高血糖にコウモリはどう対応している?

 コウモリの中には、人間なら死に至るほどの高血糖状態で生存している種がいる。これは、コウモリがどんな環境でも生き延びられるように適応してきた結果と考えられ、このような変化は糖尿病治療に役立つ可能性があるという。米ストワーズ医学研究所のJasmin Camacho氏らの研究の結果であり、詳細は「Nature Ecology & Evolution」に8月28日掲載された。同氏は、「ある種のコウモリの血糖値が、自然界でこれまで見られた中で最も高いことが分かった。その血糖値は哺乳類にとっては致命的で昏睡を引き起こすレベルだ。われわれは、これまであり得るとは思いもよらなかった事実を目にしている」と語っている。 Camacho氏らは29種のコウモリ、約200匹を捕獲し、昆虫や果物、花の蜜などの糖分を与え、血糖値を測定した。すると、ある種のコウモリは750mg/dL以上、あるいは測定可能範囲を超えて「high」とのみ表示されるほどの高値を示した。この研究の具体的な内容について、論文共著者の1人で同研究所のAndrea Bernal-Rivera氏は、「コウモリの体内で糖が吸収、貯蔵、利用されるプロセスが、摂取した糖の種類によってどのように異なるかを観察した」と説明している。 研究によりコウモリは、それぞれが置かれた環境の中で、得られる餌に適応して生き残るような戦略を進化させてきたことが示唆されたという。例えば3000万年前、新熱帯区(主に南米)に生息していたある種のコウモリは、昆虫だけを餌として生き延びていたが、その後、餌を変化させることで、多くの異なる種のコウモリへと進化した。その結果、餌は果物や花の蜜、肉、さらには他の動物の血液に至るまでに広がった。そして、それらを摂取した際に生じる血糖変動のコントロールに役立つ、さまざまな適応を遂げたと考えられるとのことだ。 Camacho氏によると、あるコウモリは血糖値を下げるためにインスリンシグナル伝達経路を発達させ、別のコウモリは高血糖状態に耐えられるように変化したという。そして「このような変化は、血糖値のコントロールが困難な糖尿病患者に見られる変化に似ている」としている。ほかにも、糖分を多く含む餌を摂取するコウモリは腸が長くなって、腸管の表面積も大きくなる傾向が見られた。また花の蜜を摂取するコウモリは血糖輸送を司る遺伝子が活性化していた。 この研究報告について、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のNadav Ahituv氏は、「餌の異なるさまざまなコウモリの代謝特性だけでなく、腸の形態、食性の適応に関わる可能性のあるタンパク質構造やゲノム領域の違いも明らかにした研究と言える」と論評。また、「これらのデータは、ヒトのさまざまな代謝性疾患に対する新たな治療法の開発につながる可能性がある」と付け加えている。

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騒音曝露は心臓の健康に影響を及ぼし心筋梗塞後のMACEリスクを高める

 ドイツとフランスの住民を対象にした2件の研究から、都会の騒音は心臓の健康に悪影響を及ぼす可能性のあることが明らかになった。これらの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表された。 1件目の研究は、ブレーメン心臓血管研究所(ドイツ)のHatim Kerniss氏らが、急性心筋梗塞(MI)によりブレーメン市の心臓センターに入院した50歳以下の患者430人を対象に実施したもの。研究グループが対象者の居住地の騒音レベルを調べたところ、これらの対象者は、同じ地域に居住する一般住民よりも高いレベルの騒音に曝露していることが判明した。また、糖尿病や喫煙などの従来の心血管疾患(CVD)リスク因子に関する評価指標(LIFE-CVD)のスコアから低リスクと判定されるMI患者では、スコアが高い人に比べて騒音レベルが有意に高いことも示された。 Kerniss氏は、「都会の騒音は、CVDのリスク因子として確定している因子が少ない若年層でのMIリスクを有意に増加させる可能性がある」とESCのニュースリリースの中で結論付けている。研究グループは、従来のリスク評価モデルでは、低リスクと考えられる若年層の心血管リスクを過小評価する可能性があると指摘。騒音曝露をモデルに組み込むことで、MIのリスクが高い若年層をより正確に特定でき、予防策や介入をより効果的に行うことができる可能性があるとの見方を示している。 2件目の研究は、ブルゴーニュ大学およびディジョン病院(フランス)のMarianne Zeller氏らが、フランスのMIに関するデータベース(RICO)を用いて、初発のMI後の患者における環境騒音の影響について検討したもの。対象は、急性MIによる入院後28日以上生存していた患者864人で、1年後の追跡調査の結果が分析された。 入院から1年後の時点で、19%の患者に主要心血管イベント(MACE;心臓突然死、心不全による再入院、MIの再発、緊急血行再建、脳卒中、狭心症/不安定狭心症)が生じていた。対象者の自宅の住所を基に騒音レベルを算出すると、平均騒音レベルは24時間を通して56.0dB、夜間で49.0dBと中程度であり、ヨーロッパの大部分の人口を代表する騒音曝露レベルであった。解析の結果、大気汚染や社会経済的レベルなどの他の因子に関わりなく、夜間の騒音レベルが10dB増加するごとにMACEリスクが25%増加することが明らかになった(ハザード比1.25、95%信頼区間1.09〜1.43)。 Zeller氏は、「これらのデータは、騒音曝露がMIの予後に影響を及ぼす可能性に関する初めての洞察となるものだ」と述べている。また同氏は、「より大規模な前向き研究によりこの結果が裏付けられれば、MIから回復した患者に対する治療の一環として、騒音低減に取り組むべきことが支持されるかもしれない」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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片頭痛は最初の兆候が現れたときのケアで抑制可能か

 片頭痛が始まる前の最初の兆候(プロドローム)が現れた時点で治療薬のubrogepantを使用すると、患者はほとんど症状を感じることなく普段通りの生活を送れる可能性のあることが、新たな臨床試験で明らかになった。Ubrogepantは、抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide;CGRP)受容体に結合し、痛みの伝達に重要な役割を果たしているCGRPを遮断することにより効果を発揮する。米アルバート・アインシュタイン医科大学のRichard Lipton氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に8月28日掲載された。 Lipton氏は、「今回の結果に基づくと、片頭痛のプロドロームが現れた時点で患者にubrogepantによる治療を行うことで、片頭痛発作を初期段階で迅速に治療することができ、患者は不快感や混乱をほとんど感じることなく日常生活を送ることができる可能性がある。これは、片頭痛を持つ人の生活の質(QOL)の向上につながるかもしれない」と述べている。 この臨床試験では、片頭痛発作を月に2〜8回経験する18〜75歳の患者518人が対象とされた。対象者全員が、片頭痛が生じる1〜6時間以内にプロドロームとして、光や音に対する敏感さ、疲労感、首の痛みやこわばり、めまい、視覚前兆などを定期的に経験していた。試験では、対象者の2回の片頭痛のプロドロームに対して治療を行った。患者は、治療順序として、1回目のプロドロームにはプラセボ、2回目のプロドロームにはubrogepant 100mgによる治療を行う群と、その逆の順序で治療を行う群にランダムに割り付けられた。解析は477人を対象に行われた。片頭痛による日常的な活動への制限の程度は、対象者が5段階のリッカート尺度により、0(全く制限なし)から4(極端に制限されている)で評価した。 その結果、治療から24時後の時点で日常的な活動について「制限なし」と答えた対象者の割合は、ubrogepant 100mgによる治療を受けた場合には65.4%だった一方で、プラセボによる治療を受けた場合には47.8%にとどまることが明らかになった。Ubrogepant 100mgによる治療効果は、薬の投与後2時間で現れ、ubrogepantによる治療を受けた人ではプラセボによる治療を受けた人に比べて「制限なし」を報告する可能性が76%高かった(オッズ比1.76、95%信頼区間1.32〜2.35、P=0.0001)。 Lipton氏は、「片頭痛は世界的に最も患者数の多い病気の一つであるが、この症状に苦しむ非常に多くの人が治療を受けていないか、治療に満足していないことが報告されている」と話す。その上で、「片頭痛のプロドロームが現れたときのケアを改善することが、予後を改善する鍵になる可能性がある。この研究結果は、ubrogepantが、片頭痛を持つ人が普段通りに日常生活を送るのに役立つ可能性のあることを示唆している」と述べている。

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子どもの成績向上には知能だけでなく非認知能力も必要

 子どもが学業で良い成績を収めるために重要なのは知能だけではないことが、英ロンドン大学クイーン・メアリー校心理学分野のMargherita Malanchini氏らの研究で示された。良い成績を収めるためには、知能に加えて意欲や自己管理能力などの非認知能力も知能と同じくらい重要であることが、遺伝的データで示されたという。この研究結果は、「Nature Human Behaviour」に8月26日掲載された。 Malanchini氏は、「われわれの研究は、知能こそが優れた学業成績の主な要因であるとする長年の仮説に疑問を投げかけるものだ」と言う。その上で、「われわれは、根性や忍耐力、学問への関心、学ぶことに対する価値観などの非認知能力が優れた学業成績を予測する重要な因子であること、さらに、その影響力は、時の経過とともに徐々に強くなることを示す説得力のあるエビデンスを得た」と付け加えている。 この研究は、学業成績の追跡調査が行われた7~16歳のイングランドとウェールズの子ども1万人以上を対象としたもの。Malanchini氏らは対象者のDNAを分析し、それぞれの子どもが学校でどの程度の成績を収められるかを予測する多遺伝子リスクスコア(PRC)を構築した。 その結果について、論文の共著者である英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のAndrea Allegrini氏は、「われわれは、非認知能力に関連する遺伝的な影響が小中学校時代の学業成績を予測すること、その予測能は年齢とともに徐々に強まることを突き止めた。例えば、7歳時から16歳時までにその影響力はほぼ2倍に高まっていた」とロンドン大学クイーン・メアリー校のニュースリリースの中で説明。「義務教育が終わる頃には、非認知能力に関連する遺伝的要因が、認知能力と同程度に学業成績を予測する上で重要になっていた」としている。 研究グループはさらに、兄弟姉妹の比較により、遺伝的要因とは別に、共通の家庭環境がどのように影響を与えているかを調べた。その結果についてAllegrini氏は、「家族全体のプロセスが重要な役割を果たす一方で、家族内でも、非認知的な遺伝的特徴が学業成績に与える影響が徐々に増すことが明白に示された。このことは、子どもが自分の性格や気質、能力に基づいて自らの学習経験を積極的に形成し、自分の強みを強化するフィードバックループが生まれている可能性を示唆している」と指摘している。 「これらの結果は、優秀な成績を収めるためには知能だけでは必ずしも十分ではなく、意欲や好奇心などの特性も大きな役割を果たすこと、また、その一部は遺伝的な要因にとどまらず、家庭や学校の環境にも左右されることを意味する」とMalanchini氏らは説明する。 Malanchini氏は、「われわれの教育システムは、これまで認知発達に重点が置かれてきた」と指摘。「今こそ重視すべき点を見直し、非認知能力を育むことも同等に重視すべきだ。それによって、あらゆる生徒にとって、より包括的かつ効果的な学習環境を作り出すことができる」と述べている。

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第229回 迫る自民党総裁選、立候補者の言い分は?(前編)

さて前回は立憲民主党代表選挙の立候補者が掲げる社会保障、医療・介護政策を取り上げた。となれば、いま一番熱い? 自由民主党(以下、自民党)の総裁選を取り上げないわけにはいかないだろう。自民党総裁選は、1955年の結党以来、今回で45回目。ちなみに現在のような推薦人制度に基づく立候補制となったのは1972年の第12回総裁選(田中角栄が当選)以降であり、これ以降で現在まで最も立候補者が多かった時は2008年の第38回と2012年第40回の5人である。しかし、今回は9人。形式的には派閥解消後初の総裁選ということもあってか、異様な賑わい、まるで東京都知事選化である。9人の立候補者を50音順に挙げると、石破 茂氏(67)、加藤 勝信氏(68)、上川 陽子氏(71)、小泉 進次郎氏(43)、河野 太郎氏(61)、小林 鷹之氏(49)、高市 早苗氏(63)、林 芳正氏(63)、茂木 敏充氏(68)。国会議員当選回数(参院も含む)は石破氏の12回が最多、次いで茂木氏の10回、河野氏と高市氏が9回、加藤氏と上川氏が7回、林氏が6回、小泉氏が5回、小林氏が4回。ちなみにこの中で世襲議員は、石破氏、加藤氏(娘婿として)、小泉氏、河野氏、林氏で過半数を占める。立候補者全員が閣僚経験者だが、小泉氏と小林氏は経験1回である。自民党で総裁を除く最高幹部である、幹事長、総務会長、政調会長という党三役経験者は、石破氏と茂木氏がともに幹事長・政調会長、加藤氏が総務会長、高市氏が政調会長の経験者である。総裁選立候補回数は石破氏が今回で最多タイの5回(同じ5回は小泉 純一郎氏)、河野氏が3回。両者とも第12回総裁選以降導入された決選投票方式で過去3回行われた決選投票経験者である。このようにしてみると、改めて、ベテランから若手まで幅広い候補者が並んだことがわかる。ちなみに自民党自体が総裁選特設ページを設けている。「THE MATCH」とややエンタメ化を意識したページで、各候補の政策は通常の一般選挙の選挙公報を模したような紙ペラ1枚が掲載されている。ちなみにこれとは別に各候補とも自前の総裁選特設ページを開設している。当然ながら、多くの候補は自前ページのほうの内容が充実している。ということでこの自前ページを前提に、自民党の特設ページや日本記者クラブが主催した総裁選立候補者の公開討論会なども参考にしながら、恒例の各候補の社会保障、医療・介護政策を見ていき、独断と偏見の評価も加えたい。なお、あまりに候補者が多過ぎるので、2回にわけてお届けしたい。となると、2回目は総裁選投票当日になってしまうが、9人全員を一気に紹介したら1万字超となるので、ご理解いただきたい。石破氏(鳥取1区選出)まず、石破氏の略歴だが、父親の石破 二郎氏は旧建設省事務次官を経て、鳥取県知事、自民党参院議員に当選し、旧自治相などを歴任した人物。旧三井銀行を経て、父の跡を継いで自民党から政界入りした。しかし、今の若年世代は知らないかもしれないが、1993年の宮澤 喜一内閣の政治改革停滞に伴い野党が提出した内閣不信任案決議に自民党議員のまま賛成票を投じた。直後の衆院選では党公認を得られなかったものの無所属で当選。その後、自民党の下野に伴い細川連立政権入りした、自民党離党組の羽田 孜氏・小沢 一郎氏らが率いる新生党に入党した。新生党が野党各党と新進党を結成した際にもそのまま同党に参加したが、安保政策の不一致から新進党を離党し、橋本 龍太郎氏が総裁の時の自民党に復党している。私が大学4年時、宮澤政権の崩壊直前に自民党若手政治家たちを代表した石破氏が、政治改革実現を訴えるために宮澤氏の私邸を訪問し、テレビカメラに囲まれていた映像が鮮烈に記憶に残っている。さてその石破氏の特設ページでは、「5つの『守る』」をキャッチフレーズに掲げている。その中の「03 国民を守る」に“社会保障制度改革”がある。以下に列挙する。従来の家族モデルを前提とした社会保障の在り方を脱却し、多様な人生の在り方、多様な人生の選択肢を実現できる柔軟な制度設計を行います。医療DXの推進により、ビッグデータも活用しつつ、予防と自己管理を主眼とした健康維持のための医療制度を構築し、医療費を適正化するとともに、遠隔医療の拡充、医師偏在の是正、健康寿命延伸、薬価制度の見直しなどに取り組み、国民一人一人に最適な医療の実現を目指します。併せて医療人材の処遇改善、医療機関の負担軽減にも取り組みます。国民が必要とする医薬品の安定供給を実現するため医薬品の原材料の確保にも万全を期します。子ども・子育て支援に加えて、結婚・出産支援にも重点を置き、結婚、出産、育児と一貫した支援で少子化対策を拡充します。一番目と最後の少子化対策を併せて考えると、少なくとも既存概念からやや脱却したリベラルな思考のようである。石破氏というと安全保障政策でやや保守的な政策が目立つとの印象を持つ人も少なくないようだが、一応そちらの分野も取材テーマである私からすると、石破氏の安全保障政策は徹底したリアリズムである。その意味で社会保障政策でもあくまで現在の社会状況に立脚している印象である。そして医療DXは誰もが言いそうだが、私個人の注目点は薬価制度見直しと医薬品安定供給に言及している点である。ちなみに医薬品安定供給については、自民党の特設ページの簡易版公報では削除されている。その意味では、この問題の優先度は高くないということか? やや皮肉的に言えば、安定供給で問題が生じていることを「知らないわけではないよ」という意思表示と解釈できるかもしれない。とはいっても、厚生族でもないのにこの問題を認識している点が、当選回数が多く政策通と呼ばれる石破氏らしいとも言える。そのためか、ほかの候補と比較しても石破氏の公報は文字で溢れかえったビジーなオジサンパワーポイントのごとしである。その意味では、石破氏は宮澤政権の崩壊前夜のあの時とまったく変わっていないのかもしれない。加藤氏(岡山3区)加藤氏は東大卒業後に旧大蔵省入り、退官後に当時自民党衆議院議員だった加藤 六月氏の秘書となり、同氏の娘と結婚して改姓。初の国政選挙では無所属で参院選に出馬するも落選。後に自民党の衆院選比例候補となるもこれも落選し、その後、ようやく比例区で当選した。途中からは小選挙区に転じ、今に至っている。議員当選後は一貫して厚生族畑を歩み続け、省庁再編による厚生労働省発足後、最多となる3度4代、厚労相に就任した(最長在職期間は初代厚労相の坂口 力氏)。さてその特設サイトでは「ニッポン総活躍 国民の所得倍増を柱とした8つのプラン」を掲げている。この中では「プラン3 こども・教育改革」で「三つのゼロ』給食費・こども 医療費・出産費負担ゼロの実現へも掲げているが、メインは「プラン4 社会保障改革」の人生100年を“健幸”で過ごせる社会保障改革である。以下、政策内容の原文である。2040年を見据え、必要な人に必要なサービスが提供され、能力に応じて負担し支えあう新たな仕組みを構築。医療・介護のDX推進、人材の確保や処遇改善、物価に連動した薬価の見直し、創薬推進と薬の安定供給、5大がん検診・生活習慣病健診・国民皆歯科健診の推進、多職種連携による医療・介護の充実、低年金者の年金水準改善など、人生100年を健やかに暮らせる“健幸”社会を実現。医療・介護・福祉職員などのさらなる処遇改善、医療・介護DXの推進などによる医療福祉人材の確保AIを活用した診断・診療強化による医療水準の向上地域において必要な医療が受けられる地域医療構想の推進保険給付と自己負担の組み合わせ方式(保険外併用療養)の活用による最先端医療の提供物価に連動した薬価の見直し、創薬の推進と薬の安定供給5大がん検診や生活習慣病検診の無償化、プッシュ型の保健指導国民皆歯科検診の導入栄養管理・口腔ケア・リハビリを含めた多職種連携による医療・介護の充実専門的支援も含めたメンタルヘルスの充実低年金者の年金水準改善私見ではざっと見ても、さすがはたたき上げの厚生族で元厚労相である。地域医療構想、薬価制度の見直しと医薬品安定供給、栄養管理・口腔ケア・リハビリの三位一体提供などへの言及など、かなりの玄人である。そして「保険外併用療養」という用語の使い方もまた絶妙である。この言葉、混合診療と混同されがちだが、基本的に解釈の違う言葉である。若手議員あたりが勢い余って混合診療と言ってしまい、あとで医師会関係者から叱られるポイントだったりする。ただし、玄人過ぎて、党員や下手をすると国会議員にも伝わるかどうかはやや懸念点である。また、個人的には地域医療構想の推進の中身が気になる。というのも、私個人は将来の適切な医療提供のためには病院再編は避けられないと考えているからだ。しかし、この点は日本医師会の会員内でも温度差があるので、そちらと関係が深い加藤氏はどう考えているのだろうか?また、冒頭ではさらっと言及した「プラン3 こども・教育改革」の中でこどもの死を予防するための検証制度(CDR)の促進も私自身は頷いた点である。少子化対策というと、すぐ「産めよ、増やせよ」になるが、まず今を生きている子供が不慮の死を迎えないよう予防措置を推進することも少子化対策ではないかと思っているからだ。実はこの視点が多くの政治家に欠けている。上川氏(静岡1区)今回の候補で最年長の上川氏。東大卒業後に三菱総合研究所研究員を経て、ハーバード大学で政治行政学修士号を取得。米・上院の民主党マックス・ボーカス議員の政策スタッフを務めた。1996年の衆院選に静岡1区から無所属で出馬して落選。その後、自民党に入党するも、2000年の衆院選では自民党公認が得られず、再度無所属で同区から出馬して初当選した。自民党公認候補がいながらの出馬強行と、その当選で自民党公認が落選したことで自民党を除名。2001年に復党した。上川氏の特設ページに掲げられたキャッチフレーズは「一緒に創りませんか 日本の新しい景色」と何ともほんわかとしている。関連する政策は『7つの政策の柱』の筆頭の「1. 新しい経済の景色を創りましょう!」で、成長産業の育成として7分野を挙げ、この中にバイオ、ヘルスケアを含んでいる。上川氏はこうした産業育成に向け、”『令和版産業構造ビジョン』を策定し、科学技術イノベーションと社会実装を飛躍させます“と宣言している。社会保障制度そのものについては「3. “誰一人取り残さない社会”の景色を創りましょう!」と題する項目で健康長寿日本への社会保障として以下の2点を掲げている。「令和の財政強靭化」を通じて、 国民皆保険制度、年金制度を堅持しますヘルスケアサービスを推進するほか、病に至る前の予防・健康増進、自立支援を強化し、「健康寿命」を延伸しますちなみに「令和の財政強靭化」とは、経済政策の中で言及しており、“世界・金融市場の信認を維持しながら、しなやかで力強く成長する『令和の財政強靭化』に乗り出します”との記述がある。なんともふわっとした「強靭化」である。日本記者クラブの公開討論会では「(社会保障制度が)持続可能になるためには、給付と負担の関係の見直しということは極めて重要であると認識をしております」と発言しているが、給付削減に重点を置くのか、負担増に重点を置くのか、給付削減と負担増を等分で行うのかは不明である。外交畑が得意とはいえ、衆院厚生労働委員会委員長の経験者でもあるので、もっと分厚い政策が欲しかったところである。小泉氏(神奈川11区)もはや説明も不要なほど、今回の総裁選の台風の目である小泉氏。変人とまで称された元首相・小泉 純一郎氏の次男である。関東学院大学卒業後、米コロンビア大学大学院に進学し、政治学修士号を取得。その後は米国戦略国際問題研究所(CSIS)研究員、純一郎氏の私設秘書を経て、2008年に純一郎氏の引退を受けてその地盤を引き継ぎ初当選し、今に至る。さて小泉氏の特設サイトで掲げるのは「決着 新時代の扉をあける」とのキャッチフレーズ。社会保障関連で掲げる政策は、自民党の特設サイトの公報、本人の特設サイト、出馬会見全文のいずれでも「社会保障」「医療」「介護」という言葉はゼロである。正直、目を疑って何度も読み返したがゼロである。大事な事なのでもう1度言うと、ゼロである。ちなみに前述の公開討論会では、進行の都合などもあるだろうが、やはり何も言及していない。新たに開設された本人のYouTubeチャンネルにアップされている街頭演説2本でも同様。いやいや、ライドシェア解禁よりもはるかに国民生活にとって重要なテーマではないだろうか?「若さ」「改革」という言葉が並び、加えてイケメンだと、こうも有利に事が運ぶのかと感心しきりである。河野氏(神奈川15区)河野氏は自民党総裁を務めながら首相にはなれなかった河野 洋平氏の長男。父・洋平氏は若き頃、ロッキード事件に失望して自民党を離党。新自由クラブを組織し、一時自民党が衆院で過半数割れになった時に同クラブとして連立を組むなどして政界のキャスティングボードを握ったが、後に自民党に復党している。河野氏自身は日本で大学を中退して渡米。米・ジョージタウン大学に進学して在学中は米・民主党の大統領選にボランティアで参加したり、交換留学生として共産圏時代のポーランドに渡るなど、どちらかというとリベラル思考である。大学を卒業して帰国後は富士ゼロックス(現・富士フイルムビジネスイノベーション)、日本端子(洋平氏が大株主、現社長は河野氏の弟)を経て、1996年の小選挙区比例代表制が初めて導入された衆院選で、洋平氏の選挙区が分割されたことを受けて出馬。ここで当選し、今に至る。河野氏の特設サイトで掲げられているキャッチフレーズは「有事の今こそ、河野太郎 国民と向き合う心。世界と渡り合う力」。まず、経済として「投資拡大ができる環境整備」を掲げ、“データに基づいた投資を行いやすくするために、地域におけるサービスの需要をオープンデータ化し、企業と共有しながら地域活性化につながる産業を創り出す(交通、医療・介護、教育、小売)”と産業面からの医療・介護支援を提言。さらに社会保障で第一に掲げているのが、「社会保険料が『現役世代の賃金課税』となっていることを改める」として、“『前期高齢者納付金』と『後期高齢者支援金』が現役世代に重くのしかかっていることを考慮して、応能負担の観点から世代間移転のあり方を検討する”としている。ここから察するに高齢世代に応分負担を求めて行く考えであろうことが想像できる。この問題は従来から各種審議会などでも指摘されていることで、最終的には政治決断でやるかやらないかだけの問題とも言えるかもしれない。これ以外では以下のようになる。社会課題が集中する厚労省を厚生と労働に分割し、それぞれ専任の大臣を設置する電子カルテ、電子処方箋の推進や、福祉施設の業務効率化など、医療・介護DXを更に進めることで、人手不足の中でも活力ある健康長寿社会を実現する医師確保計画の深化、医師の確保・育成、実効的な医師配置により、日本中どこでも確実に医療を受けられるようにする皆保険を維持しながら医療の高度化に対応するため民間医療保険を活用する心臓死からの臓器移植を増やす一番目の厚労省分割は、当時の省庁再編時に会社員記者として旧厚生省に出入りしていた立場として、なかば結論ありきで進められた雰囲気がありありだったと体感している。厚生行政と労働行政は、関連はあっても完全に別物であり、1つのゲージに犬と猫を同居させるやや無理ゲーのようなもの。また、厚生行政は国会会期中の対応が突出して多く、明らかに業務過多であり、私個人も分割して人員を強化すべきという立場である。医療DXは、ほかの候補よりもやや具体的だが、基本的に現在の施策のスピードアップ化と解釈できる。この辺に関連し、例のマイナ保険証推進での河野氏に役割について、日本記者クラブ主催の討論会では、記者との間でやや尖ったやり取りがあった。以下に引用する。 記者 突破力があるということでは、もうこれは自他共に認めるところでありましょう。ただマイナ保険証に一本化することを唐突に表明されたり、それから防衛大臣時代にイージス・アショアの問題で配備の中止をアメリカとまったく調整しないまま打ち出したりで、これに対していろんなご意見があります。突破力があるというばっかりに、悪い言い方をすると、自分を誇示すること、あまり異なる意見に耳を傾けないというそういう感じがあるんではないかという具合に思われている。このことについてどうお考えですか。河野氏(イージス・アショアについては省略)マイナ保険証についても、これは当時の厚労大臣、総務大臣、あるいは官房長官と調整をして、最終的に総理のご了解をいただいて、こういうふうにやっていこうということにしたわけでございますから、私が何か誇示をするというよりは、一番批判を浴びやすいところを私が記者会見などで受持ってお話を申し上げてきたというのが正しいところだと思います。またまた河野氏らしい受け答えではあるが、通称ブロック太郎と呼ばれるX(旧Twitter)でのブロック姿勢を眺め、若干やり過ぎと考えている私としては、これに通じる印象、どちらかというと質問した記者と同様の印象を受けてしまう。さて医師確保と民間医療保険の活用は既得権益の抵抗大は必至。とはいえ、ここはもっとも河野氏らしいと言える。詳細な考えはこの中では述べられていないが、もし総理になったら、どのような中身でどう進めるか? を間違うと、政権崩壊に繋がる危険性のある事案である。最後の心臓死からの移植増は、今回の河野氏の政策のなかで、正直、私がもっともナンセンスと思った点である。心臓死からの移植であれ、脳死からの移植であれ、提供はあくまで亡くなった本人の生前の意思か家族の承諾に基づくのが現在の法令上の規定。河野氏の主張は生前意思不明の場合の家族承諾をなくすということかもしれないが、人の内心に手を突っ込むということであり、「増やす」と宣言して増やせるものでもない。とりあえず今回はここまでにしておこう。

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9月20日 子供の成長啓発デー【今日は何の日?】

【9月20日 子供の成長啓発デー】〔由来〕内分泌疾患の患者や家族の支援団体で構成する国際組織“International Coalition of Organizations Supporting Endocrine Patients(ICOSEP)”が設立された日を記念し、2013(平成25)年に「子どもの成長啓発デー実行委員会」が制定。子どもの内分泌疾患に関する正しい知識の普及、内分泌疾患の早期発見・早期治療の促進、成長曲線の普及と利用促進を目的に啓発活動が行われている。関連コンテンツビタミンD依存症【希少疾病ライブラリ】週1回投与のヒト成長ホルモン製剤「ソグルーヤ皮下注5mg/10mg」【下平博士のDIノート】見分けづらい・見逃しやすい酵素欠損がもたらす疾患『ムコ多糖症』

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β遮断薬長期服用MI既往患者、服薬の中断vs.継続/NEJM

 心筋梗塞既往の患者において、長期β遮断薬治療の中断は継続に対して非劣性が認められなかったことを、フランス・ソルボンヌ大学のJohanne Silvain氏らABYSS Investigators of the ACTION Study Groupが、「Assessment of BetaBlocker Interruption 1 Year after an Uncomplicated Myocardial Infarction on Safety and Symptomatic Cardiac Events Requiring Hospitalization trial:ABYSS試験」の結果、報告した。心筋梗塞後のβ遮断薬による治療については、適切な投与期間は不明である。合併症のない心筋梗塞既往患者において、副作用を軽減しQOLを改善するために、長期β遮断薬治療を中断することの有効性と安全性に関するデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2024年8月30日号掲載の報告。約3,700例を、β遮断薬中断群と継続群に無作為化 ABYSS試験は、フランスの49施設で実施されたPROBE(Prospective Randomized Open-label Blinded End-Point)デザインの多施設共同非劣性試験である。 研究グループは、2018年8月28日~2022年9月12日、登録6ヵ月以上前に心筋梗塞既往でβ遮断薬の投与を受けており、左室駆出率が40%以上、過去6ヵ月以内の心血管イベントがない患者を、β遮断薬中断群または継続群に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月後、12ヵ月後、以降は最後の登録患者が1年以上の追跡を完了するまで毎年評価した。 主要エンドポイントは、死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中または心血管疾患による入院の複合で、非劣性マージンはイベント発生率の群間差(中断群-継続群)の両側95%信頼区間(CI)の上限が3%ポイントとした。主な副次エンドポイントは、6ヵ月時および12ヵ月時のEuropean Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D)質問票スコアのベースラインからの変化量とした。 計3,698例が無作為化され、1,846例が中断群、1,852例が継続群に割り付けられた。平均(±SD)年齢は63.5±11歳、17.2%が女性で、心筋梗塞発症から無作為化までの期間中央値は2.9年(四分位範囲[IQR]:1.2~6.4)であった。主要複合エンドポイント、中断群の非劣性は確認されず 追跡期間中央値3.0年(IQR:2.0~4.0)において、主要エンドポイントの複合イベントは、中断群で23.8%(432/1812例)、継続群で21.1%(384/1821例)に発生した。群間差は2.8%ポイント(95%信頼区間[CI]:<0.1~5.5)、ハザード比は1.16(95%CI:1.01~1.33、非劣性のp=0.44)であり、中断群の継続群に対する非劣性は認められなかった。 最終追跡調査時におけるEQ-5Dスコアのベースラインからの変化量(平均±SD)は、中断群0.033±0.150、継続群で0.032±0.164であり(群間差:0.002、95%CI:-0.008~0.012)、中断によるQOLの改善は示されなかった。 なお、著者は研究の限界として、非盲検試験であること、1ヵ国のみで実施されたこと、潜在的なバイアスの可能性がある心血管イベントによる入院が主要エンドポイントに含まれていることなどを挙げている。

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二次性僧帽弁逆流症、TEER vs.僧帽弁手術/NEJM

 心不全および二次性僧帽弁逆流症を有する患者において、経カテーテルedge-to-edge修復術(transcatheter edge-to-edge repair:TEER)は、1年時の複合エンドポイント(死亡、心不全による入院、僧帽弁再治療、補助デバイス植込み、脳卒中)に関して、僧帽弁手術に対し非劣性であることが示された。ドイツ・ケルン大学のStephan Baldus氏らが、前向き多施設共同無作為化非劣性試験「Multicenter Mitral Valve Reconstruction for Advanced Insufficiency of Functional or Ischemic Origin trial:MATTERHORN試験」の結果を報告した。二次性僧帽弁逆流症を有する心不全患者に対する現在の推奨治療には、TEERおよび僧帽弁手術が含まれるが、この患者集団においてこれらの治療法を比較した無作為化試験のデータは不十分であった。NEJM誌オンライン版2024年8月31日号掲載の報告。外科的僧帽弁手術に対するTEERの非劣性を評価 研究グループは、2015年2月~2022年12月に、臨床的に重大な二次性僧帽弁逆流症を呈し、左室駆出率が20%以上、ガイドラインに従った薬物療法にもかかわらずNYHA心機能分類クラスII以上の心不全を有する患者を、TEER(介入群)または外科的僧帽弁修復術/置換術(手術群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、術後1年以内の死亡、心不全による入院、僧帽弁再治療、補助デバイス植込み、脳卒中の複合で、非劣性マージンは推定平均群間差の90%信頼区間(CI)の上限が17.5%ポイントとした。 安全性の主要エンドポイントは、術後30日以内の主要有害事象(死亡、心筋梗塞、大出血、脳卒中/一過性脳虚血発作、再入院、再インターベンションまたは非待機的心血管手術、腎不全、深部創感染、48時間超の機械的人工換気、外科手術を要する消化管合併症、心房細動の新規発症、敗血症、心内膜炎の複合)とした。主要エンドポイント、介入群16.7% vs.手術群22.5%で非劣性を確認 計210例が無作為化されたが、無作為化後に2例が同意を撤回し、ITT集団は介入群104例、手術群104例で構成された。患者の平均(±SD)年齢は70.5±7.9歳、39.9%が女性、平均左室駆出率は43.0±11.7%であった。 有効性の主要エンドポイントのイベントは、介入群ではデータが得られた96例中16例(16.7%)に、手術群では同89例中20例(22.5%)に発生し、推定平均群間差は-6%(95%CI:-17~6、非劣性のp<0.001)であった。 安全性の主要エンドポイントのイベントは、介入群では101例中15例(14.9%)に、手術群では93例中51例(54.8%)に発生した(推定平均群間差:-40%、95%CI:-51~-27、p<0.001)。

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