サイト内検索|page:513

検索結果 合計:11797件 表示位置:10241 - 10260

10241.

放射線照射後における白髪化誘導の最初のターゲットとなるものは?

 電離放射線照射後の白髪化誘導の最初のターゲットは、色素幹細胞ではなくケラチノサイト幹細胞であると報告された。岐阜大学の青木仁美氏らによる報告。放射線に誘発される白髪は、毛包のバルジ領域のニッシェ(微小環境)における色素幹細胞の異所性分化によって引き起こされる。バルジ領域のケラチノサイト幹細胞はニッシェを形成する重要な要素であるが、放射線誘発白髪に関して、色素幹細胞の分化とケラチノサイト幹細胞のニッシェとの関連についてはこれまで十分に解明されていなかった。The Journal of investigative dermatology誌オンライン版2013年4月2日掲載報告。 主な結果は以下のとおり。・毛包色素幹細胞、ケラチノサイト幹細胞は放射線照射により影響を受けた。なお、免疫組織化学的検出には遺伝毒性マーカーとしてγH2AXが用いられた。・放射線照射したマウスから調整したケラチノサイト幹細胞において、放射線照射により培養下でコロニー形成率の減少、生体で毛周期の遅れがみられた。・ケラチノサイト幹細胞での放射線照射の影響は一時的であったが、メラノサイトに増殖・分化した色素幹細胞の母集団では照射後も影響が持続した。・コロニー形成率の減少に加え、照射を受けたケラチノサイト幹細胞を含むケラチノサイトは、色素幹細胞のコロニー形成を抑制した(in vitro)。・放射線照射したケラチノサイト幹細胞、ケラチノサイトの存在下では着色した毛髪は再生成されなかった(in vivo)。

10242.

Aβ沈着は認知機能にどのような影響を与えるか

 米国・ピッツバーグ大学のBeth E. Snitz氏らは、認知症発症前のアミロイドβ(Aβ)沈着が認知機能低下と関連しているか否かを検討した。その結果、画像検査で認知症が確認される前の段階で、Aβ沈着が認められる患者は認められない患者に比べて実行機能が大きく低下していることを報告した。Neurology誌オンライン版2013年3月20日号の掲載報告。 認知症を発症していないがAβ沈着が高頻度(55%)に認められる超高齢者(90~100歳)のコホートにおいて、画像検査で確認される前の認知機能低下とAβ沈着との関連について検討を行った。Ginkgo Evaluation of Memory Study(GEMS)に登録され、試験を完了し認知症を認めない194例(平均年齢:85.5歳、範囲:82~95)を対象に、PIB(Pittsburgh compound B)-PETを施行した。また、神経画像検査の7~9年前のGEMS登録時に完了したさまざまな神経心理学的検査を基に、Aβ沈着の状況と実行機能との横断的関連を検討した。さらに、毎年認知機能を評価し、線形混合モデルを用いて長期的な評価も行った。 主な結果は以下のとおり。・2009年にAβ沈着が確認された症例についてGEMSスクリーニング期(2000~2002年)の状況をみたところ、Stroop test(p<0.01)、Raven's Progressive Matrices(p=0.05)において実行機能の低下、空間能力レベルの低下傾向が認められた(p=0.07)。・長期解析の結果、Rey-Osterrieth図形テストにおける即時再生および遅延再生、意味流暢性、Trail-Making TestのパートAおよびBにおいて有意な直線の傾きが認められた。・すなわち、Aβ沈着が認められる患者は認められない患者に比べて、画像検査で確認される前の段階で、実行機能が相対的に大きく低下していることが示された(ps<0.05)。・Aβ沈着が高頻度に認められる超高齢者では、視覚的記憶、意味流暢性、精神運動速度などの認知機能が低下しており、これは画像検査で認知症が確認される7~9年前から始まっていることが示された。・すなわち、Aβ沈着が認められる患者と認められない患者における、実行機能を主とする非記憶領域平均の差は、画像検査で認知症が確認される7~9年前に検出しうると考えられた。関連医療ニュース ・ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性 ・抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か? ・認知症患者に対する抗精神病薬処方の現状は?

10243.

脊椎大手術における硬膜外麻酔および持続硬膜外鎮痛の有用性

 硬膜外麻酔は、術後硬膜外鎮痛の有無にかかわらず手術侵襲反応を軽減する可能性があることが示唆されているが、脊椎大手術を受ける患者については十分な研究がされていなかった。今回、ロシア・Nizhny Novgorod Research Institute of Traumatology and OrthopedicsのAnna A.Ezhevskaya氏らによる前向き無作為化試験の結果、硬膜外麻酔/全身麻酔+術後硬膜外鎮痛の併用は、全身麻酔+麻薬性鎮痛薬の全身投与と比較して、疼痛をより良好にコントロールでき、出血量ならびに手術侵襲反応も少ないことが示された。Spine誌オンライン版2013年3月19日の掲載報告。 本研究の目的は、脊椎再建手術における臨床転帰と手術侵襲反応に対する麻酔ならびに鎮痛法の有効性を比較検討することであった。 85例が次の2群に無作為に割り付けられた。 ・E群(45例):セボフルラン(商品名:セボフレンほか)による硬膜外麻酔と気管内麻酔+術後ロピバカイン(同:アナペイン)、フェンタニル(同:フェンタニルほか)およびエピネフリン(同:ボスミンほか)による持続硬膜外鎮痛 ・G群(40例):セボフルランによる全身麻酔+術後フェンタニルおよびオピオイド全身投与 術中および術後にコルチゾール、グルコース、IL-1β、IL-6およびIL-10濃度を測定するとともに、術後の疼痛、悪心、運動性および満足度を評価した。 主な結果は以下のとおり。・E群ではG群と比較して、疼痛、悪心が有意に少なく、より早期に運動を開始することができ、満足度も有意に高かった。・E群は、術中および術後の出血量が有意に少なく、術後のグルコース、コルチゾール、IL-1β、IL-6およびIL-10濃度も低値であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

10244.

統合失調症認知評価尺度SCoRS、臨床での有効性を実証

 イタリア・ブレシア大学のAntonio Vita氏らは、統合失調症患者の認知パフォーマンス測定に有効とされる統合失調症認知評価尺度(Schizophrenia Cognition Rating Scale:SCoRS)について、臨床における有効性を検証した。その結果、有効性が示され、心理社会的機能の評価にも有効で、とくに安定期の統合失調症患者に有用であることを報告した。Schizophrenia Research誌オンライン版2013年3月16日号の掲載報告。 研究グループは、イタリアの精神科医療システムの代表的な治療設定下において、SCoRSの有効性を検証することを目的とした。病期や治療環境が異なる統合失調症患者86例にSCoRSを適合し、その信頼性を評価し、SCoRSの総評価値と神経認知、臨床的、心理社会的機能との関連を調べた。 主な結果は、以下のとおり。・SCoRSの評価者間信頼性、および再テスト信頼性は高かった。・臨床的に安定期にある患者において、SCoRS総評価値は下記の評価に関して有意であった。  認知パフォーマンスの複合スコア(総認知指数:r=-0.570、p<0.001)  症状[陽性・陰性症状スケール(PANSS):r=0.602、p<0.001]  心理社会的機能[機能の全体的評定尺度(GAF):r=-0.532、p<0.001/Health of the Nation Outcome Scale(HoNOS):r=-0.433、p<0.001]・一方でこうした関連は、直近の入院患者では認められなかった。・神経心理および機能的測定値について、症状が重度な患者、とくに陽性症状が重度である患者では、ほとんど関連が認められなかった。関連医療ニュース ・統合失調症患者の社会的認知機能改善に期待「オキシトシン」 ・統合失調症の遂行機能改善に有望!グルタミン酸を介した「L-カルノシン」 ・認知機能への影響は抗精神病薬間で差があるか?

10245.

院内心停止後生存高齢者の1年生存率58%、3年生存率は心不全患者と同程度/NEJM

 Paul S. Chan氏らAssociation Get with the Guidelinesの心肺蘇生研究グループによる調査の結果、院内心停止を起こした高齢の生存者について、60%近くが1年時点で生存しており、3年時点の生存率は心不全患者と同程度であったことが明らかにされた。生存率と再入院率は、患者の人口統計学的特性と退院時の神経学的状態によって異なることも示された。院内心停止後の高齢生存者についての長期予後については、これまでほとんど明らかとなっていなかった。研究グループは、予想される転帰や予後因子を明らかにすることで、診療の評価と蘇生治療の目標がより明確になるとして本検討を行った。NEJM誌2013年3月14日号掲載の報告より。65歳以上生存退院者の1年生存率と再入院率を調査 院内心停止生存者における長期生存率と再入院率を調べ、それらが人口統計学的特性と退院時の神経学的状態によって異なるかについて検討された。全米心停止登録とメディケアファイルのリンクデータから、2000~2008年の間に院内心停止を起こした65歳以上生存退院者を特定して行われ、1年生存の予測因子と再入院の予測因子が調べられた。 評価コホートに組み込まれたのは、6,972例であった(男性55.5%、黒人11.8%、平均年齢75.8±7.0歳)。3年時点の生存率、院内心停止後生存群43.5%、心不全群44.9%、リスク比0.98(p=0.35) 結果、退院後1年時点で58%が生存しており、34.4%が再入院をしていなかった。 リスク補正後1年生存率は、より若い患者群よりも高齢である患者群のほうが低率だった(65~74歳群:63.7%、75~84歳群:58.6%、≧85歳群:49.7%、p<0.001)。また女性(60.9%)よりも男性(58.6%)のほうが低く(p=0.03)、白人(60.4%)よりも黒人(52.5%)患者のほうが低かった(p=0.001)。 さらに、退院時の神経学的状態が軽度~なしの患者のリスク補正後1年生存率は72.8%で、同中等度患者は61.1%、同重度患者は42.2%、昏睡または植物状態であった患者では10.2%であった(すべての比較p<0.001)。 1年再入院率については、黒人、女性、顕著な神経障害があった患者で高率だった(すべての比較p<0.05)。 これらの生存率と再入院率の差は、2年時点でも認められた。なお3年時点では、院内心停止後生存患者の生存率は、心不全で入院し生存退院した患者と同程度であった(院内心停止後生存群43.5%vs. 心不全群44.9%、リスク比:0.98、95%信頼区間:0.95~1.02、p=0.35)。

10246.

アジスロマイシン、非嚢胞性線維症性気管支拡張症の感染増悪を抑制/JAMA

 非嚢胞性線維症性(non-CF)の気管支拡張症の維持療法として、マクロライド系抗菌薬であるアジスロマイシン(商品名:ジスロマック)の12ヵ月間毎日投与法が有用なことが、オランダ・アルクマール医療センターのJosje Altenburg氏らが実施したBAT試験で示された。気管支拡張症では、小~中径の気管支にX線画像上特徴的な病的拡張と粘膜肥厚を認め、気管支壁の構造的異常により下気道クリアランスが低下して慢性的な細菌感染や炎症を来すという悪循環を呈する。マクロライド系抗菌薬は嚢胞性線維症やびまん性汎細気管支炎に対する効果が示されているが、non-CF気管支拡張症にも有効な可能性が示唆されている。JAMA誌2013年3月27日号掲載の報告。マクロライド系抗菌薬維持療法の有効性を無作為化試験で評価 BAT(Bronchiectasis and Long-term Azithromycin Treatment)試験は、成人のnon-CF気管支拡張症に対するマクロライド系抗菌薬による維持療法の有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験。 対象は、前年に下気道感染症に3回以上罹患し抗菌薬治療を受けた18歳以上のnon-CF気管支拡張症の外来患者とした。これらの患者が、アジスロマイシン250mg/日を投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、12ヵ月の治療が行われた。 1次エンドポイントは12ヵ月の治療期間中に感染増悪を来した患者数とし、2次エンドポイントは肺機能、喀痰培養、炎症マーカー、有害事象、QOLなどであった。治療期間中の感染増悪率:46 vs 80% 2008年4月~2010年9月までにオランダの14施設から83例が登録され、アジスロマイシン群に43例(平均年齢59.9歳、女性63%)、プラセボ群には40例(64.6歳、65%)が割り付けられた。 治療終了時に感染増悪を認めた患者数中央値はアジスロマイシン群が0例、プラセボ群は2例であった(p<0.001)。治療期間中に1回以上の感染増悪を来した患者数中央値はアジスロマイシン群が20例(46%)、プラセボ群は32例(80%)であった[ハザード比(HR):0.29、95%信頼区間(CI):0.16~0.51]。 混合モデル解析では、予測値に対する1秒量の経時的な変化に両群間で差を認め、アジスロマイシン群では3ヵ月ごとに1.03%ずつ上昇したのに対し、プラセボ群は0.10%ずつ低下した(p=0.047)。 消化管の有害事象の発生率はアジスロマイシン群が40%と、プラセボ群の5%に比べ高頻度であり、腹痛の相対リスクが7.44(95%CI:0.97~56.88)、下痢の相対リスクは8.36(95%CI:1.10~63.15)であったが、治療の中止を要する患者はいなかった。 薬剤感受性試験では、アジスロマイシン群(20例)のマクロライド系抗菌薬耐性率は88%(53/60例)と、プラセボ群(22例)の26%(29/112例)に比べ有意に高かった(p<0.001)。 治療終了時のQOLはアジスロマイシン群がプラセボ群に比べ有意に良好であった(p=0.046)。 著者は、「non-CF気管支拡張症の成人患者に対するアジスロマイシン12ヵ月投与はプラセボに比べ感染増悪率が良好であった」とまとめ、「感染増悪の抑制がQOLの改善をもたらした可能性があり、生存への良好な影響も期待されるが、薬剤耐性の影響を考慮する必要がある」と指摘している。

10247.

18~50歳成人の脳卒中後20年累積死亡率、一般成人の予測死亡率の2.6~3.9倍/JAMA

 18~50歳成人の脳卒中後20年間の累積死亡率は、一般成人の予測死亡率よりもかなり高いことが明らかになった。オランダ・ナイメーヘン・ラットバウト大学医療センターのLoes C. A. Rutten-Jacobs氏らが報告した。これまで同年代成人の初発脳卒中後の死亡率についての報告は不十分で、一般的には脳梗塞に限られたものであったという。脳卒中は主に高齢者で発生するが、約10%は50歳未満の若・中年者で発生している。JAMA誌2013年3月20日号掲載の報告より。脳卒中後の連続生存患者959例の20年累積死亡率と、適合一般集団の予測死亡率を比較 研究グループは、18~50歳成人の急性脳卒中後の長期の死亡率および死因を調べ、年齢・性でマッチさせた全国死亡率と比較することを目的とした。 1980年1月1日~2010年11月1日のFollow -Up of Transient Ischemic Attack and Stroke Patients and Unelucidated Risk Factor Evaluation(FUTURE)研究[一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞、脳出血後の予後の前向き研究]の参加者で、ナイメーヘン・ラットバウト大学医療センターに入院した18~50歳成人を対象とし、連続生存患者959例(TIA群262例、脳梗塞群606例、脳出血群91例)について、2012年11月1日に評価した。同患者群で観察された死亡率を、年齢・性・暦年特性で適合させた一般集団から算出した予測死亡率と比較した。 主要評価項目は、脳卒中後30日生存者における20年間の累積死亡率であった。TIA群2.6倍、脳梗塞群、脳出血群はいずれも3.9倍 平均追跡期間は11.1(SD 8.7)年(中央値8.3、範囲:4.0~17.4)であり、同期間中の患者群の死亡は192例だった。 脳卒中後30日生存者における20年累積死亡リスクは、TIA群24.9%[95%信頼区間(CI):16.0~33.7]、脳梗塞群26.8%(同:21.9~31.8)、脳出血群13.7%(同:3.6~23.9)であった。 観察された死亡率は、いずれも予測死亡率と比べて有意に高かった(p<0.001)。両死亡率を比較した標準化死亡比(SMR)は、TIA群では2.6倍、脳梗塞群、脳出血群はいずれも3.9倍であった。 脳梗塞群では、男性が女性よりも有意に死亡率が高かった[33.7%(95%CI:26.1~41.3)対19.8%(同:13.8~25.9)、p=0.03]。SMRについては、女性は4.3倍、男性は3.6倍だった。 また脳梗塞群において、病型サブタイプ別にみた場合も観察された死亡率はすべて、予測死亡率を有意に上回っていた(病型別のSMRは2.2倍から9.2倍にわたった)。 著者は、「18~50歳成人における急性脳卒中後の20年累積死亡率は、予測死亡率よりもかなり高かった。本知見は、これらの患者における2次予防戦略評価のさらなる検討を支持するものとなるだろう」と結論している。

10248.

肥満の重度精神障害者の減量に行動的介入が有効/NEJM

 過体重または肥満の重度精神障害者の減量法として、行動的減量介入が有効なことが、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のGail L Daumit氏らが実施したACHIEVE試験で示された。欧米では、統合失調症、双極性障害、大うつ病などの重度精神障害者は一般人口に比べ死亡率が2~3倍以上高く、主な死因は心血管疾患だという。肥満の割合も一般人口の約2倍に達しており、ライフスタイル介入が必要とされる。一方、重度精神障害者は記憶や実行機能の障害および精神症状により新たな行動の学習や実践が困難なことが多いため、一般人口を対象とするライフスタイル介入試験からは通常除外され、これまでに行われた数少ない重度精神障害者限定の試験は、試験期間が短い、症例数が少ないなどの限界を抱える。NEJM誌オンライン版2013年3月21日号掲載の報告。行動的減量介入の有用性を無作為化試験で評価 ACHIEVE(Achieving Healthy Lifestyles in Psychiatric Rehabilitation)試験は、重度精神障害患者における行動的減量介入の有用性を評価する無作為化試験。 米国メリーランド州の10地域の精神科リハビリテーション通院プログラムに参加する18歳以上の過体重および肥満者を対象とした。これらの患者が、介入群または対照群に無作為に割り付けられた。 介入群には、各患者に合わせた体重管理指導がグループおよび個別に行われ、グループでの運動指導が実施された。対照群には、ベースライン時に標準的な栄養管理と身体活動に関する情報が提供され、3ヵ月ごとに体重とは無関係の健康教室への参加機会が与えられた。主要評価項目は6ヵ月後と18ヵ月後の体重の変化とし、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月後に体重測定が行われた。対照群に比べ介入群で3.2kg有意に減量 2009年1月~2011年2月までに291例が登録された。統合失調症または統合失調感情障害が58.1%、双極性障害が22.0%、大うつ病が12.0%であり、服用中の向精神薬数の平均値は3.1剤であった。 介入群に144例[平均年齢46.6歳、男性48.6%、平均体重101.3kg、平均体格指数(BMI)36.0kg/m2]、対照群には147例(44.1歳、51.0%、104.0kg、36.5kg/m2)が割り付けられた。18ヵ月後の時点で279例(介入群137例、対照群142例)から体重の測定データが得られた。 介入群では18ヵ月にわたり徐々に体重減少が進み、3回の測定時のいずれにおいても、体重がベースライン以下であった患者の割合が対照群よりも有意に高かった(6ヵ月:62.6 vs 51.1%、p=0.05、12ヵ月:73.0 vs 53.4%、p=0.001、18ヵ月:63.9 vs 49.2%、p=0.02)。 ベースラインからの減量の平均値は各測定点において介入群で優れ、両群間の減量の差[(介入群)−(対照群)]にはいずれの測定点でも有意差を認めた[6ヵ月:−1.5kg、p=0.007、12ヵ月:−2.5kg、p=0.004、18ヵ月:−3.2kg、p=0.002]。 18ヵ月後の5%以上の減量の達成率は介入群が37.8%と、対照群の22.7%に比べ有意に優れ(p=0.009)、10%以上の減量達成率も介入群(18.5%)が対照群(7.0%)よりも有意に良好だった(p=0.007)。 試験期間中に介入群の2例、対照群の3例が死亡し、心血管イベントがそれぞれ6件および8件認められたが、試験に関連するものはなかった。精神科への入院が介入群の14.8%、対照群の20.6%から報告されたが、有害事象の発現については両群間に差はみられなかった。 著者は、「過体重または肥満の重度精神障害者に対する18ヵ月間の行動的減量介入により、治療期間を通じて有意な減量効果が得られた」と結論づけ、「この知見は、重度精神障害者に肥満や体重関連疾患が多くみられる場合には、これら高リスク群を対象に行動的減量介入を行うことを支持するもの」と指摘している。

10249.

疥癬治療、局所イベルメクチンがマラチオン0.5%ローションより優れる

 疥癬治療の有効性について、局所イベルメクチン*とマラチオン0.5%ローションを比較した結果、2週時点では同様の効果があることが示され、治療を繰り返して追跡した4週時点ではイベルメクチンのほうが優れていたことが示された。イタリア・ローマ大学のMohamad Goldust氏らが340例の疥癬患者を対象とした無作為化試験の結果、報告した。疥癬治療については種々の薬物療法があるが、治療選択については依然として議論の的となっている。Goldust氏らは本検討において、局所イベルメクチンとマラチオン0.5%ローションの有効性を比較することを目的とした。Journal of Dermatological Treatment誌オンライン版2013年3月8日号の掲載報告。 研究グループは、疥癬患者340例を登録し、無作為に2群に割り付けた。第1群にはイベルメクチン1%局所塗布となる治療を、第2群にはマラチオン0.5%ローションの治療を行った。各被験者は、同治療を1週間隔で2回行うよう伝えられた。 治療の評価は、2週時点と4週時点で行われた。2週時点で治療が奏功しなかった場合は再度の治療が行われた。 主な結果は以下のとおり。・局所イベルメクチンの2回塗布(2週時点)の治癒率は、67.6%であった。再治療後の4週時点の治癒率は、85.2%まで上昇した。・マラチオン0.5%ローションの2回塗布(2週時点)は、44.1%の患者で有効であった。再治療後の4週時点は、67.6%であった。・2週時点において、局所イベルメクチンの2回塗布は、マラチオン0.5%ローション単回治療と同様の効果が認められた。・再治療後の4週時点では、局所イベルメクチン治療がマラチオン0.5%ローション治療より優れていた。*商品名:ストロメクトール。本邦では錠剤のみ承認販売

10250.

脳梗塞再発予防のための卵円孔開存閉鎖術vs.薬物療法/NEJM

 これまで有効性が明らかとなっていなかった、原因不明の脳梗塞を起こした成人患者に対する再発予防目的の卵円孔開存閉鎖術について、薬物療法と比較した無作為化試験の結果が報告された。intention-to-treat解析では閉鎖術の有意なベネフィットは認められなかったが、事前に規定したper-protocolコホートなどでは有意差が認められたという。米国・コロラド・デンバー大学/コロラド大学病院のJohn D. Carroll氏らが、980例を対象とした前向き多施設共同無作為化オープンラベル試験の結果、報告した。NEJM誌2013年3月21日号掲載の報告より。25件の主要エンドポイントが確認された時点で解析 研究グループは、18~60歳の患者において、脳梗塞の再発および早期死亡の予防を目的とした卵円孔開存閉鎖術が、薬物療法単独よりも優れているか評価することを目的とした。 2003年8月23日~2011年12月28日の間に、米国・カナダの医療施設69ヵ所で被験者が登録され、1対1の割合で卵円孔開存閉鎖術群または薬物療法単独群に無作為に割り付けられた。 主要有効性エンドポイントは、非致死的脳梗塞の再発・致死的脳梗塞・早期死亡の複合であった。 主要解析は、25件の主要エンドポイントのイベントが確認された時点で行われた。主要intention-to-treatコホートでは、閉鎖術群の有意な有効性は認められず 試験には980例(平均年齢は45.9歳)が登録された。閉鎖術群に499例、薬物療法群に481例が割り付けられ、薬物療法群の被験者には、1種類以上の抗血小板薬服(74.8%)またはワルファリン(25.2%)が投与された。 追跡期間中央値は2.1年であった。本検討では薬物療法群の途中脱落率が高く、治療曝露は閉鎖術群1,375患者・年、薬物療法群1,184患者・年と2群間に格差があった(p=0.009)。 発生が確認された25件の主要エンドポイントは、すべて非致死的脳梗塞再発であった。intention-to-treatコホート解析において、脳梗塞再発例は、閉鎖術群9例、薬物療法群16例であったが有意差は認められなかった[閉鎖術群のハザード比(HR):0.49、95%信頼区間(CI):0.22~1.11、p=0.08)。 脳梗塞再発率の両群間の差は、事前に規定したper-protocolコホート(6例対14例、HR:0.37、95%CI:0.14~0.96、p=0.03)、as-treatedコホート(5例対16例、HR:0.27、95%CI:0.10~0.75、p=0.007)では有意であった。 一方で、重大有害事象の発生率は、閉鎖術群23.0%、薬物療法群21.6%であった(p=0.65)。閉鎖術群における手術関連あるいはデバイス関連の重大有害事業は21/499例(4.2%)の発生であり、心房細動やデバイス塞栓症の発生はなかった。 以上を踏まえて著者は、「主要intention-to-treatコホートにおいて、卵円孔開存閉鎖術の有意な有効性は認められなかった。しかしながら、2つの事前規定したper-protocolコホートとas-treatedコホートでは優越性が認められた。施術に関連したリスクも低率であった」とまとめている。

10251.

むち打ち関連障害(外傷性頸部症候群)の治療、活動への恐怖心軽減が重要

 外傷性頸部症候群(whiplash-associated disorders:WAD)では、活動への恐怖と回避が障害を助長する一因となる可能性がある。米国・ワシントン大学のJames P. Robinson氏らは、WAD患者を対象に恐怖の役割について検討し、恐怖を軽減させることが治療効果に影響を及ぼすことを明らかにした。Pain誌2013年3月号(オンライン版2012年12月1日)の掲載報告。 Robinson氏らは、WAD後の恐怖の役割を検討するため、3つの治療法の有効性を評価した。 対象は約3ヵ月間症状を有するグレードI~IIのWAD患者191例で、次の3群のいずれかに無作為に割り付け、Neck Disability Index(NDI)等の質問票を用いて評価した。 IB群:WADおよび活動再開の重要性を解説している小冊子の提供 DD群:小冊子提供+医師による説明 ET群:小冊子提供+恐れている活動に対する想像および直接的な曝露療法 (DD群およびET群の患者は2時間の治療を3回受けた) 主な結果は以下のとおり。・NDIスコアの改善は予想どおりET群が最も大きかった(絶対値:ET群14.7、DD群11.9、IB群9.9)。・治療後の疼痛スコアは、ET群がIB群ならびにDD群と比較して有意に低かった(ET群vs IB群:1.5 vs 2.3、p<0.001/ET群vs DD群:1.5 vs 2.0、p=0.039)。・NDIスコアの改善における最も重要な予測因子は、恐怖心の軽減(β=0.30、p<0.001)で、次いで痛みの軽減(β=0.20、p=0.003)、うつ症状軽減(β=0.18、p=0.004)であった。・以上から、亜急性期の外傷性頸部症候群においては、曝露療法や教育的介入による恐怖への対処が重要であることが示唆された。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

10252.

統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定

 ゲノムワイド関連解析(GWAS)により、統合失調症と強く関連する頻度の高い多型(common variants)が同定されているが、それらが個々の患者における統合失調症発症に及ぼす影響は小さい。現在、頻度は低いが発症への影響が大きい多型(rare variants)が注目されている。理化学研究所脳科学総合研究センター・分子精神科学研究チームの高田篤氏らは、統合失調症の発症に、より大きな影響をもって関与する遺伝子変異の同定を試みた。その結果、NMDA型グルタミン酸受容体のサブユニットをコードするGRIN3A遺伝子中のR480G変異が、統合失調症の発症により大きく関与することを報告した。Biological Psychiatry誌2013年3月号(オンライン版2012年12月11日号)の掲載報告。 1,000件のゲノムプロジェクトのデータから、1)頻度が低い(マイナーアレル頻度が5%未満)、2)アジア人に特異的である、3)障害が予測されるミスセンス変異、ノンセンス変異またはスプライスサイトの変異、4)統合失調症および双極性障害の候補遺伝子に位置する、という4つの条件を満たす47の候補一塩基多様性(SNVs)を抽出した。日本人ケースコントロールコホート(統合失調症患者2,012例、健常対照2,781例)において、これらと統合失調症との関連を検討した。さらに、漢民族ケースコントロールコホート(統合失調症患者333例、健常対照369例)および家系(トリオ家系9家系 、クアドロ家系284家系)の独立したサンプルのジェノタイピングデータを用いて、メタ解析を行った。 主な結果は、以下のとおり。・NMDA型グルタミン酸受容体のサブユニットをコードするGRIN3A遺伝子中に、疾患と関連するミスセンス変異を同定した[p.R480G、rs149729514、p=0.00042、オッズ比(OR):1.58]。これは、研究全体において統計学的に有意であった(閾値p=0.0012)。・メタ解析においても、GRIN3A遺伝子中の変異と統合失調症との関連を支持するデータが確認された(統合p=3.3×10-5、OR:1.61)。・FAAH、DNMT1、MYO18BおよびCFBの各遺伝子中にミスセンス変異が認められる場合、疾患発症リスクが1.41~2.35倍高まることが示され、有意な関連が認められた。・SNVsの中でもとくにGRIN3A R480G変異は、今後の再現性確認試験および機能評価におけるよい候補になると思われた。・本結果から、頻度の低いSNVsに着目した研究は、疾患発症への影響がより大きな多型を発見するうえで有望な方法であることが示唆された。関連医療ニュース ・グルタミン酸トランスポーター遺伝子と統合失調症・双極性障害の関係 ・統合失調症患者の体重増加、遺伝子との関連を検証! ・統合失調症の診断・治療に期待!新たなバイオマーカー

10253.

〔CLEAR! ジャーナル四天王(78)〕 大規模臨床試験で試される新規抗血小板薬はわが国で必要か?

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行において、ステントを使用することが標準となった現在では、急性期および亜急性期の血栓性閉塞を予防するために、アスピリンとADP受容体阻害薬であるチエノピリジン系の抗血小板薬の2剤併用(Dual Antiplatelet Therapy:DAPT)の使用が標準とされ、後者の標準薬としてはクロピドグレルが使用されている。 しかし、クロピドグレルはプロドラッグで、肝臓で代謝されて初めて効果が発現するため早期の抗血小板抑制作用が弱いこと、さらに、CYP2C19の遺伝子多型による代謝が遅延する症例があることが欠点とされていた。 この点を補うべく、経静脈的に投与可能で、直接血小板のADP受容体を阻害する薬剤であるカングレロールが、早期のイベント予防に役立つであろうと期待され、CHAMPION PHOENIX試験が計画された。 カングレロールを使用することで、48時間以内の死亡、心筋梗塞、ステント血栓症が、通常のクロピドグレル使用群に比べ有意に減少したことが示された(クロピドグレル群5.9% vs. カングレロール群4.7%: 補正後オッズ比:0.78、95%信頼区間:0.66~0.93、p=0.0005)。また、出血を含めた安全性にも差はなかった。 この結果からカングレロールが優れているように思われるが、ほとんどのイベントがPCI施行後2時間に発生しており、その頻度もクロピドグレル群で5.9%と、わが国では考えられないほどの高率である。心筋梗塞が4.7%、ステント血栓症1.4%であり、心筋梗塞はCPKの3倍の上昇と定義されているために高率となっている可能性もあるが、ステント血栓症の1.4%はわが国では非現実的な値である。本邦で施行された安定型狭心症を対象としたJ-SAP研究はもとより、急性心筋梗塞が対象でも本邦での急性期イベント発症は1%未満である。 本試験が急性冠症候群を対象にしているのでなく、50%以上が待機症例であること、しかもカングレロールが非急性冠症候群で有効であることを考えれば、PCI後高率に血管イベントが発症している本試験のデータをそのままわが国に適応して、カングレロールがクロピドグレルに代わることはないであろう。ただ、可逆的であることは、緊急的なCABGに移行した場合に出血リスクを減少させることは利点であり、今後の検討が必要である。

10254.

Vol. 1 No. 1 緒言

森野 禎浩 氏岩手医科大学内科学講座循環器内科分野本邦における急性冠症候群(acute coronarysyndrome: ACS)の治療実態を客観視する機会が訪れた。冠動脈インターベンション(percutaneous coronaryintervention:PCI)は国内で急速に普及したが、大都市にとどまらず、比較的中小の都市に点在する基幹病院でもprimary PCI(ACSの再潅流療法)を行うことができるのが日本の最大の特徴だ。欧米と異なり、年間PCI症例数300例に満たない小規模施設が散在するため、人的リソースが分散しがちで、スタッフ1人にかかる負担が増すばかりか、教育効率低下の恐れもある。一方、各地域に治療可能施設が分散することは、時間との闘いであるACS治療には潜在的なメリットも多い。ACS患者が来院すれば、主に若い専門医が昼夜を問わず集まり、心臓カテーテルで診断・血行再建を行うことが日本型診療の通例となっている。その代償として、現場スタッフはオンコール体制に縛られ街から外に出ることすら制約を受け、朝まで緊急カテをしてもそのまま午前の定時仕事に就くというのが通常で、それに見合う十分な報酬体制も整っていない。要するに、PCI 施行医やコメディカルの自己犠牲のもとに日本の急性期循環器医療は成り立ってきた。 日本のACSの治療実態を把握するため、約100施設で、連続症例登録を基本とした前向きレジストリー(PACIFIC試験)が行われ、その結果が最近公表された。同様の大規模国際レジストリー(GRACE試験:施行時期が異なるが大勢に大きな差はないはずである)と比較し、諸外国に比べて日本のACS治療体制がいかに特殊なのか、いかに好成績を収めているのか容易に理解できる。日本の代表的施設では94%ものACS患者が緊急PCIを受けているのに対し、欧米を含む諸外国においてはカテーテル検査ですら56%、PCIとなると全体の33%にしか行われていない。この著しい治療スタイルの違いが、ACS患者の院内死亡率に大差をつけた最大の誘因と考察されている。こうした事実を実感していないであろう日本の多くの現場スタッフに、日本型ACS医療の素晴らしさをできるだけ速く伝達しなければならないと考えていた。幸いなことに、新しく発刊されるCardioVascular Contemporary誌にこの分野の特集をしていただけることになり、さらに同試験を企画・指導した宮内先生ご自身に、PACIFIC試験に見る日本のACS治療の実態について詳説いただけることとなった。 ACSの急性期治療の大原則は、一刻も早い再潅流療法である。それに付随して、アスピリンとクロピドグレルのローディング投与のように、万国共通の確立された薬物療法が基礎を占める。しかしながら、ACS治療の具体的工夫となると、日本が牽引する分野が少なくない。primary PCIは大量の血栓を末梢に飛ばさないよう処理する必要があるが、血栓吸引や末梢塞栓防止の保護フィルターの臨床応用は、日本で盛んに進められてきた。また、ニコランジルやhANPといった薬剤の心筋保護作用を証明するために臨床試験も精力的に仕掛けられてきた。恐らく、生命予後のみならず、「心筋壊死量を少しでも少なくする」ことを目的に、これだけ精緻に、かつ二重・三重の追加療法を具体的に実践してきた国もないだろう。日本の良好なACS治療成績は、PCIの施行体制のみならず、このようなさまざまな集学的アプローチの複合結果だと思われる。こうしたACS治療の最新コンセンサスについては石井先生に明快にまとめていただいた。 救命し得たACS発症患者の外来管理のゴールは、血管イベントの2次予防であり、本質的にはそこまでACS治療と呼ぶべきである。彼らは安定狭心症の血行再建後の患者に比べても、血管イベントの再発率が高いことが知られ、より積極的な薬物治療介入が求められる。日本の動脈硬化性疾患の特徴として、脳血管障害の比率が高いことがREACHレジストリーで指摘されたが、薬物溶出性ステントによるPCI後の患者においても、脳血管障害の発生頻度が冠動脈イベントより高いことがj-Cypherレジストリーで明らかとなった。アテローム血栓症(ATIS)という疾患概念が提唱され随分経つが、脳血管合併症をかなり意識した薬物療法が日本の循環器内科医には必要である。ACS発症後の2次予防治療として、抗血小板薬やスタチンを中心とした積極的薬物介入の必要性やその他動脈硬化因子の改善が必要であることは周知の事実だが、この分野を画像診断に造詣の深い大倉先生にまとめていただけることとなった。 ACS、特にST上昇型心筋梗塞(STEMI)の場合、発症から閉塞血管の疎通にかかる時間が予後を左右する。そのため、「door-to-balloon時間(来院からバルーンなどによって血行の再疎通を果たせるまでの時間)を90分以内にしよう」ということが国際的スローガンとなってきた。筆者は最近岩手県に転勤したが、STEMI患者のpeak CPK値が、今まで経験した患者群より明らかに高いと実感している。これは広い医療圏ゆえの搬送問題、我慢強い患者さんの気質など、種々の時間的ハンディキャップに基づいていると考察できる。管轄地域のACSの医療体制構築が自身の最大のテーマであり、実現のためには1人でも多くのPCI施行医を育成するとともに、primary PCI施設の効率的再配置、患者啓蒙活動、初診医との連携強化など、時間短縮を目指したトータルな医療設計が不可欠である。地方の内科医数の減少に歯止めがかからないなか、過酷な診療実態から特に循環器内科医になることが敬遠される傾向にある昨今だ。今回の特集で、日本型ACS治療体制がどうやら世界に誇れる素晴らしいものであることがわかってきたが、現場スタッフの献身的努力に極度に依存する体質など、課題も山積みである。本来、循環器医療は非常にやり甲斐があり、おもしろく、若い医師の人気が集まる分野のはずである。今こそ、急性期循環器診療体制のグランドデザインを、行政も交えて皆で熟考していく必要があるのではないか?そんなことばかり考えて、初めての北国の冬を過ごしている。

10255.

Vol. 1 No. 1 ACSの実態-PACIFIC Registry からわかったこと

宮内 克己 氏順天堂大学医学部循環器内科はじめに本邦における急性冠症候群(ACS)を含めた虚血性心疾患は、生活習慣の欧米化に伴い増加している。その予防や、発症した場合の急性期治療、および2次予防治療は日々実践されている。しかし、この領域における技術革新や薬剤開発は目覚ましく、診断法や治療法は日々変化し、薬剤あるいは治療法の有効性を検証する大規模臨床試験も世界中で施行されている。このような試験をまとめるかたちでevidence based medicine(EBM)は形成され、やがてガイドラインが作成される。したがって、進歩する医療から形成されたガイドラインを、そのときどきの治療実態や結果である予後を調査することで検証し、現状の問題点や今後の課題を見いだすことがわれわれには求められている。一方、ACSは冠動脈の不安定プラークの破綻とそれに続く血栓形成が主因となるが、こうした病態は全身の血管で発症しうることであり、脳血管で発現すれば脳梗塞、末梢動脈であれば急性動脈閉塞と診断される。すなわち、これらの疾患はそれぞれ独立の疾患ではなく、全身の血管に広がり、生涯進行するアテローム血栓症という臨床的症候(アテローム血栓性イベント)としての概念が確立してきた。従来、ACSに限定した調査は行われているが、他臓器のアテローム血栓性イベント再発の実態まで捉える報告は少ない。そこでアテローム血栓性イベントとその危険因子に焦点を当てた国際観察研究REACH Registryが施行され、わが国からも約5,000症例が登録され、世界との比較において新たな知見が得られた。また、日本の実臨床におけるACSの治療実態と、アテローム血栓性イベントの再発の実情を把握する目的で施行された観察研究がPACIFIC Registryである。本稿では、わが国におけるアテローム血栓性イベントの発症に関する前向き観察研究であるPACIFIC(Prevention of AtherothrombotiC Incidents Following Ischemic Coronary attack)について概説する。日本における急性冠症候群(ACS)を対象に、2年間の観察期間での治療実績や予後を観察するものである。日本人の予後-REACH Registry国際大規模観察研究1)で、対象疾患は45歳以上の確定した冠疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患(2次予防患者と文中では定義する)、または1次予防ハイリスク患者で、登録時の背景、治療内容、予後を追跡した。対象患者は6万人を超える大規模なもので、登録期間は7か月、44の国、参加医師は5,587名に及んだ。2003年12月から2004年6月までの間に67,888名(うち55,499名が2次予防、12,389名が1次ハイリスク患者)が登録され、5年追跡まで学会報告されている。登録時の患者背景をみると、冠硬化症単独が59.3%と大半を占めるが、冠・脳・末梢動脈疾患単独例は全体の80.8%であり、3者の合併は1.6%であった2)。1年後の予後を心血管死、心筋梗塞、脳卒中、またはこのイベントに入院を加えたものをエンドポイントにすると、2次予防患者は1次予防患者に比べ、1年、2年ともに有意に発症率が高率であった(4.7% vs 2.3%, p

10256.

【ご案内】医療介護多職種交流会 第5回MLB×Kobe(メディカルラーニングバー神戸)

 一般社団法人LINKは、4月13日に医療・介護現場で働く方々を対象に、学びのイベント「医療介護多職種交流会 第5回MLB×Kobe(メディカルラーニングバー神戸)を開催する。 開催概要は以下のとおり。【日時】2013年4月13日(土) 17:00~20:00(受付:16:45~)【講師】飯塚 三枝子 氏(ビオラ奏者・音楽療法士)【テーマ】「病院における音楽療法の一つの形として ~音で楽しく 音で楽に~」【参加対象】医療・介護関係者【定員】先着50名様(定員に達し次第、締め切らせていただきます)【開催場所】神戸三宮 イタリアンレストラン&バー CROSS(クロス)神戸市中央区山本通1-7-21 水木北野シルクハイツB1F地図はこちら【参加費】当日払い 5,000円(2DRINK+バイキング+お土産)【参加申込方法】http://the5thmlbkobe.peatix.com上記URLの「チケットを申し込む」からご登録ください(事前登録制)【Medical Learning Barについて】MLB公式Facebookページ:https://www.facebook.com/MedicalLearningBar一般社団法人LINKウェブサイト:http://www.link-japan.coプロモーションビデオ:http://goo.gl/apaEU【お問い合わせ】E-mail : info@link-japan.co専用フォーム:http://goo.gl/Bj9w3

10257.

統合失調症、双極性障害の急性期治療に期待!アリピプラゾール筋注製剤

 非定型抗精神病薬であるアリピプラゾール(商品名:エビリファイ)は、統合失調症患者や双極性障害患者に対し広く用いられている。海外では筋注製剤も承認されており、急性期治療における有用な選択肢として期待されている。イタリア・サピエンツァ大学のSergio De Filippis氏らは、統合失調症または双極性障害の急性期治療として、アリピプラゾール筋注の有用性をオープランラベル試験により検証した。Pharmacotherapy誌オンライン版2013年3月15日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症または双極性障害で急性の興奮状態にある患者について、非定型抗精神病薬アリピプラゾール9.75mgの筋肉注射の有効性と安全性を評価した。試験は、一大学の精神科病棟で行われ、筋注後の治療反応を評価した。評価は、初回筋注後30、60、90、120分および24時間後にPANSS陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale)の興奮項目(PANSS-EC)と興奮/鎮静評価尺度(Agitation/Calmness Evaluation Scale:ACES)にて、また2、4、6、24時間後に臨床全般印象度(Clinical Global Impressions scale:CGI)にて行われた。また、サブサンプルにおいて血中アリピプラゾール値とデヒドロアリピプラゾール値を測定した。 主な結果は以下のとおり。・201例(統合失調症79例、双極性障害122例)を対象とした。・PANSS-ECのスコアは、40%以上減少した。・アリピプラゾール筋注は、臨床指標を有意に改善した。・PANSS-ECの改善は、30分後から始まり進行していった。・ACESの改善は90分後で、その後は維持された。・CGIスコアの減少は絶え間なく着実に24時間後まで続いた。・治療反応率は2時間後時点で83.6%であった。再投与後は、統合失調症群、双極性障害群とも90%超まで上昇した。・PANSS-ECの個別指標別にみた場合に、治療反応に性差が認められる項目もあったが、全体的には同程度であった。・臨床モニタリングにおいて、副作用の報告をした患者は皆無であった。ただし、あらゆる副作用が報告されなかったのは、観察期間が短かったことと関連している可能性がある。・治療領域は特定されなかった。また、治療レベルはいずれの臨床指標とも関連していなかった。・本研究結果は、二重盲検試験に十分に匹敵するもので、おそらくプラセボを対照と していない試験においてより高値が期待できる。関連医療ニュース ・アリピプラゾール筋注に関するコンセンサス・ステートメント(英国) ・抗精神病薬投与前に予後予測は可能か? ・アリピプラゾールvsその他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー

10258.

Genome to bedside: lost in translation (Daniel F. Hayes, USA)

ゲノムから臨床へ:我々は翻訳によって混乱するか個別化医療とは、適切な患者に、適切な時期に、適切な量とスケジュールで、適切な治療を行うことである。そのような個別化を行うために、バイオマーカーは治療と同じくらい重要なものとなる。患者がすべての毒性も効果も進んで受け入れるのであれば、すべて行えばよい。しかし患者が一定の毒性を避けるために、一定の治療を控えようとするのであれば、治療を慎重に選択することが求められる。そのために必要なものは予後因子、効果予測因子であり、治療に関するリスクとベネフィットおよびコストに関する患者、医師そして社会の評価である。治療を正当化するためにどの程度の絶対的な利益が存在するか(例:Adjuvant online)という判断が重要である。しかし不適切なバイオマーカーは、不適切な治療と同じくらい有害である。たとえば、ある薬剤をどのように混ぜたらよいかが不明である、濃度がわからない、どのようにその薬剤が役立つかを示す臨床データがない、治療効果と毒性に関するレベルの高いエビデンスがない、といった状況のときに、われわれはその薬剤を使うだろうか。バイオマーカーがその意義を持つためには、その測定系が鋭敏かつ再現性があるのか、実際に臨床的意義のあるような生物学的違い(陽性/陰性)を示すのか、予後を改善するための高いレベルのエビデンスをもって臨床的な決定ができるのか、といった条件が必要である。網羅的な生命分子についての情報を意味するオミックス(Omics)の試験は、もともとデューク大学で、化学療法の感受性を予測するために開発された。オミックス試験には3つの段階があり、発見、検証、そして臨床的有用性と使用に関する評価である。このようなオミックス試験は、通常の試験とは異なり、生物学者、遺伝学者、臨床家/臨床研究者、統計学者、生物情報学者、臨床病理学者といった多くの領域の専門家が協力していく必要がある。検証の段階では、候補となる試験を発見に関わったサンプルで評価し、次に別のサンプルを使って再評価する。発見から検証まで、統計と生物情報学による検討が行われる。またオミックス試験は薬剤とは異なり、2通りの規制監督(regulatory oversight)があり、1つはFDAによるレビューであり、もう1つはlaboratory developed test(LDT)研究室で開発したテストのように、臨床検査室改善法(CLIA)が定めた研究施設における検証である。臨床的有用性については、評価可能な臨床的アウトカムが、オミックス試験を用いない場合と比べて改善するかということであり、FDAやLDTの過程では評価されないが、FDAによるレビューがないことが臨床的有用性がないことを意味しない。臨床的有用性を支持するエビデンスを集めるという過程は、臨床に導入される前に行われるべきである。試験を試験するという過程は、過去に行われた臨床試験から得られた試料を後ろ向きに集めて、前向きに検討するという段階と、マーカー自体が主要評価となる前向き臨床試験の2つである。後者の例として、TAILORx、MINDACT、RxPONDERがある。トランスレーショナルのオミックスの評価に関する報告はwww.nap.eduからダウンロード可能である(コメント:「Evolution of Translational Omics: Lessons Learned and the Path Forward」というタイトルで有料である)。画像を拡大するレポート一覧

10259.

p53 and breast cancer subtypes and new insights into response to chemotherapy (Philippe Bertheau, France)

p53と乳がんのサブタイプ、そして化学療法への反応に関する考察p53の変異は乳がんの20~30%に認められるが、いまだ乳がん治療のためのバイオマーカーとしては使われていない。ヒトのがんにおける2万以上のp53変異を調べた研究では、73%がミスセンス変異であり、次いでフレームシフト変異9%、ナンセンス変異7%、サイレント変異5%、スプライス変異2%と続く。Dumayら(2013年)は乳がんのサブタイプ別に検討し、luminal A 17%,luminal B 41%,HER2+ 50%,molecular apocrine 69%,basal-like 88%であった。変異は非短縮型と短縮型があって、短縮型は新たな機能を持ちうるが、蛋白の発現は非常に低かった。Ellisら(2013年)の研究では、luminalの腫瘍において、MDM2の変異または増幅によるp53の不活化はluminal Bの原因であるようである。Changら(2011年)とHerschkowitzら(2012年)の研究から、basal-likeとclaudin-low typeにおいて、p53はmiR-200の上方調節を通してEMT(Epithelial-Mesenchymal transition,上皮間葉移行)とstem cellの性質を調節している。Martinsら(2012年)は、55例のBRCA1グループを調べ、 p53の変異が、luminalでは最初の最も重要なイベントであり、basal-likeではPTENの消失の後に起こっていた。従来は、p53のwild typeではDNA損傷があるとアポトーシスが起こるため治療効果が高く、p53変異があるとアポトーシスを起こさないため、治療への反応が悪いと考えられてきた。しかしER陽性乳がんでは、しばしばp53 wild typeであるが、p53変異が高頻度であるER陰性乳がんと比べて化学療法への反応性が不良である。p53と化学療法への反応を考えるとき、乳がんのサブタイプ、治療の目的、化学療法のレジメン、そしてp53評価の方法を考慮する必要がある。進行性または炎症性乳がんにおけるdose-dense ACの効果とp53の状況をみたとき、p53 wild typeではpCRが0であったのに対し、p53変異があったものでは15/28でpCRがみられた。予後もp53変異のあったもので良好であったが、タキサンベースでは予後に差がなかった。アルキル化剤の量はER陰性p53変異乳がんにおいては極めて重要である(pCR率:E 7/57,FAC 1/17,dose-dense EC 15/21)。アントラサイクリンを投与したとき、p53 wild typeでは細胞周期の停止が起こり、シクロホスファミドに抵抗性のため、一時的な停止が起こるだけで、また増大する。反対にp53変異ではアントラサイクリンで細胞周期の停止もアポトーシスも起こらないが、シクロホスファミドによりmitotic catastrophe(細胞分裂の異常により染色体分離ができず大きな細胞となる)が起こりpCRとなる。しかし、それを免れると腫瘍の急速増大をきたす。Baileyら(2012年)は、エストロゲン受容体がp53依存性のアポトーシスを防いでいることを見出した。Bonnefoiら(2011年)は、p53の状況を調べた2,000名の患者のうち、p53変異のある方の中でT-ETとFECの術前化学療法の効果を比較したところ、生存率にまったく差はみられなかった。しかしこの結果は症例選択が適切でない可能性があり、TNBCやluminal Bの進行乳がんにおいてdose-dense ACのレジメンで臨床試験を行うべきである。レポート一覧

10260.

Influence of genomics on adjuvant treatments for pre-invasive and invasive breast cancer (Lajos Pusztai, USA)

浸潤前および浸潤性乳がんの補助療法におけるゲノミクスの影響Hassettら(2012年)は、21遺伝子を用いたOncotype Dxの使用を2006年から2008年の期間で調査したところ、アカデミックセンターよりもむしろコミュニティーがんセンターで増えていた。化学療法の使用もそれと並行して増加していた。Oncotype Dx を受けた患者の割合は2006年では14.7%であったのに対し、2008年では27.5%となっていた。StageⅠが30.5%であり、腫瘍径が2cm以下で組織学的異型度が低い場合に多かった。リンパ節転移陰性が95%であり、転移1~3個では5%であった。本検査の結果20~25%の症例で補助治療の推奨が変化していた。では、数あるテストの中でどれを用いるのがよいだろうか。すべてのテストは増殖とERシグナルを定量化して予後を算出しており、類似したエビデンスで立証され、臨床的有用性は強いが間接的な推測に基づいたエビデンスによってのみ支持されている。そのため、MINDACT,TAILORx,RxPONDER,POETIC,OTIMAといった臨床試験が、level 1のエビデンスを出すために進行中である。Kellyら(2012年)は、103名のER陽性のStageI~IIの乳がんでOnocotype DxとPAM50を比較し、約20%でリスク評価に不一致があった。しかし現状ではどの予測がより正確かを証明する方法はない。次にER,PgR,HER2およびKi67は同様の結果をもたらすだろうか。それはYesともいえ、Noともいえる。IHC4 soreを用いて計算するならYesであり、標準化された方法で行うならYesである。ER,PgR,HER2およびKi67を2値のカテゴリーとして解釈するならNoであり、Ki67の閾値は当てにならず、最大の情報をもたらさない。近い将来、より長期の補助療法のためのER陽性患者の選択やDCISの再発を予測する、臨床とゲノミクスのモデルを組み合わせた検査が開発されるだろう。Bianchiniら(2011年)は、増殖とER関連遺伝子の時間依存性の効果を、673名のER陽性StageI~IIIでタモキシフェンを服用した患者で調べたところ、晩期再発のリスクを最も有する患者は、増殖性が高くER発現の高いがんであり、次いで増殖性が低くER発現の低いがんであった。高い増殖性と低いER発現は早期再発に関係していた。低い増殖性と高いER発現では再発率は早期も晩期もきわめて低かった。Courtesyら(2012年)は、ATAC試験を用いてBreast Cancer Index(BCI)とOncotype DxおよびIHC4を比較し、晩期再発の予測をみたところ、5~10年の再発はBCIで有意に再発を予測していた。EndoPredict(EP)もまた晩期再発を予測し、EP highで5~10年の再発が多かった。DCISの再発を予測するものとして、21の遺伝子の中から12の遺伝子を選択して用いたOncotype Dxの成績が報告され、Courtesyら(2012年)は、ECOG5194試験の中において327例のDCISで調べたところ、浸潤がんの再発率は低リスク/中間リスクでは低いが、高リスク群で有意に高かった。しかし腫瘍サイズと閉経も重要な因子であった。これは単施設の小さな研究であり、さらなる検証が必要であろう。画像を拡大するレポート一覧

検索結果 合計:11797件 表示位置:10241 - 10260