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小児の双極I型障害、アリピプラゾール有用性の定義は

 先行研究において、成人と小児の双極性障害に関する治療反応について複数の異なる定義が用いられている。米国・ノースカロライナ大学のEric Youngstrom氏らは、小児の双極I型障害と関連する躁病あるいは混合エピソードに関するアリピプラゾールの臨床的に意義のある治療効果について、異なる評価尺度の結果を対比し有効率の定義付けを行った。その結果、ヤング躁病評価尺度(YMRS)の50%スコア低下などが臨床的に意義のある治療効果であると認められたことを報告した。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌2013年3月23日号(オンライン版2013年3月12日号)の掲載報告。 本検討は、小児および青年期若者の大規模サンプルにおいて、臨床的に意義のある改善の有効率を定義することを目的とした。4週間にわたる複数施設でのプラセボ対照試験のデータを探索的に解析した。被験者は10~17歳の急性躁病もしくは混合エピソードを呈した双極I型障害患者296例。アリピプラゾール(10あるいは30mg/日)とプラセボに無作為化され評価を受けた。主要有効性エンドポイントは、4週時におけるベースラインからのYMRS総スコアの変化の平均値とした。また、Clinical Global Impressions-Bipolar Disorder(CGI-BP)Overall and Mania scales、Child Global Assessment Scale(CGAS)、General Behavior Inventoryの上位および下位項目の評価も解析に組み込み、有効性の比較は、7つの定義について行われた。さまざまな治療反応の定義またはアウトカム評価における変化と、臨床的に意義のある改善(CGI-BP Overall改善スコア1または2で定義)との関連に関する検証は、Cohen's κ係数およびスピアマン相関係数にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・有効率は定義によって異なったが、スコアの変化に関する95%確度変化(既存評価からの個々の変化を評価するための統計的手法)は高値であった。YMRS総スコアは、≧33%の低下がみられた。・臨床的に意義のある改善を予想するという観点に立った最も妥当な有効率は、次のように定義された。 YMRSスコアが≧50%低下(κ=0.64)、 複合尺度による定義[YMRS<12.5、Children's Depression Rating Scale-Revised (CDRS-R)≦40、CGAS≧51(κ=0.59)、CGASおよびYMRSスコア33%低下の95%変化確度(κ=0.56)]・また、症状の下位項目は症状改善時の評価において、上位項目よりも概して良好であった(CGI-BP Overall改善スコアとの比較時のκ=~0.4-0.5vs.~0.2)。症状改善の評価は、下位項目による評価が信頼できるようであった。関連医療ニュース ・小児双極I型障害に対するアリピプラゾールの効果は? ・自閉症、広汎性発達障害の興奮性に非定型抗精神病薬使用は有用か? ・治療抵抗性の双極性障害、認知機能への影響は?

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小児に多いスピッツ母斑、保存療法戦略を支持

 小児に多く発現するスピッツ母斑の診断と管理については、戦略をめぐって論争がある。Brook E. Tlougan氏らは匿名WEB調査にて、世界中の小児皮膚科医にスピッツ母斑に関する信条、行動および診療経験についてサーベイを行った。その結果、保存療法を支持する結果が得られたことを報告した。JAMA Dermatology誌2013年3月号の掲載報告。 調査は、米国その他の国の民間および大学の皮膚科医を対象に行われ、342人のうち175人(51.1%)から回答を得た。そのうち、スピッツ母斑の診療症例の半数以上が18歳未満児であるとした144人の回答について分析した。 主要評価項目は、スピッツ母斑に関する、診断頻度、一般的な信条、評価の技法(ダーモスコピーや生検など)、マネジメント戦略、確認されたアウトカムであった。 主な結果は以下のとおり。・回答者がみたスピッツ母斑は、総計約2万例であった。・67.6%(96/142人)が、年間6例以上のスピッツ母斑を診断していた。一方で90.1%(128/142人)が、過去5年間で診断した思春期前悪性黒色腫は2例に満たないと回答した。・回答者の96%(95.8%、136/142人)は、対称性のスピッツ母斑を良性に分類していた。・また回答者の80%(79.6%、113/142人)はダーモスコピーを評価に用いており、96.5%(137/142人)が部分生検を回避していた。・スピッツ母斑が疑われた小児において、小型・非放射状・非着色の病変について臨床的フォローアップを選択していたのは49.3%(69/140人)であった。・ダーモスコピーにより、対称性の星形パターンが認められた着色病変については、臨床的フォローアップを選択していたのは29.7%(41/138人)であった。この場合のフォローアップの予測因子には、スピッツ母斑はメラノーマの前駆症ではないと確信していることが含まれていた(p=0.04)。・回答者の47%(62/132人)は、スピッツ母斑が退縮したことを確認した。・回答者91人(大学もしくは病院ベースの診療に従事)が診断したスピッツ母斑あるいは非対称性spitzoid腫瘍約1万例において、死亡例はみられなかった。・今回のサーベイの結果は、小児におけるスピッツ母斑について保存療法を支持し、対称性病変では臨床的フォローアップは1つの選択肢であることを示す。これは、成人における同様の病変のマネジメントに用いられる戦略とは大きく異なることを意味する。

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エキスパートに聞く!「関節リウマチ」Q&A part2

CareNet.comでは4月の関節リウマチ特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より関節リウマチ診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、慶應義塾大学 花岡 洋成先生にご回答いただきました。今回は生物学的製剤の投与方法や新規薬剤に関する質問です。生物学的製剤の開始時期について教えてください。また、開始時にルーチンで実施する検査を教えてください。日本リウマチ学会より、関節リウマチに対するTNF阻害薬、トシリズマブ、アバタセプト使用ガイドラインが発行されている。これに基づくと、1.既存の抗リウマチ薬通常量を3ヵ月以上継続して使用してもコントロール不良の関節リウマチ患者(コントロール不良の目安として、圧痛関節数6関節以上、腫脹関節数6関節以上、CRP 2.0mg/dL以上あるいはESR 28mm/hr以上)や、画像検査における進行性の骨びらんを認める患者、DAS28-ESRが3.2(moderate disease activity)以上の患者2.既存の抗リウマチ薬による治療歴のない場合でも、罹病期間が6ヵ月未満の患者では、DAS28-ESRが5.1超(high disease activity)で、さらに予後不良因子(RF陽性、抗CCP抗体陽性または画像検査における骨びらんを認める)を有する患者には、メトトレキサート(MTX)との併用による使用を考慮するとある。開始時のルーチンで施行する検査は、上記ガイドラインに記されている禁忌・要注意事項に該当する患者を除外する目的で、以下の検査を行う。白血球分画を含む末梢血検査、β-Dグルカン、胸部X線、ツベルクリン反応、クォンティフェロン(QFT)、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体また開始後の骨破壊の進展を評価するために、生物学的製剤開始前の関節X線を撮影することが多い。生物学的製剤の休薬や中止の判断基準を教えてください。いくつかの生物学的製剤で、休薬後、寛解や低疾患活動性を維持できるか(バイオフリー)を検証されている。日本発のエビデンスで最初の報告はRRR studyである(Ann Rheum Dis. 2010; 69: 1286-1291)。これはインフリキシマブによって低疾患活動性および寛解を24週間以上維持できた患者を対象に、インフリキシマブを中止し、その1年後の休薬達成率を確認したものである。その結果、55%が休薬を達成し続けた。ここで、休薬を達成し続けられた群は、そうでない群と比較して罹病期間が短く(4.7 vs 8.6年、p=0.02)、mTSS(modified total sharp score)が低値(46.9 vs 97.2、p=0.02)であると報告されている。他の製剤については検証中のものが多く確定的なことは言えないが、早期例で骨破壊が少なく、深い寛解を維持できた症例はバイオフリー寛解を維持しやすいようである。生物学的製剤投与中の感染症の早期発見方法について教えてください。わが国で施行した市販後全例調査の結果、生物学的製剤使用者の1~2%で重篤な細菌性肺炎の報告があった。ただし、早期発見する確実な手段はない。重要なことは感染症のリスクを評価し、リスクが高い症例は注意深く慎重に観察していくことである。さらに、事前の肺炎球菌ワクチンや冬期のインフルエンザワクチン接種を推奨する。生物学的製剤において感染症のリスクとして共通しているのは、ステロイドの内服、既存の肺病変、高齢、長期罹患などである(Arthritis Rheum. 2006; 54: 628-634)。さらに、インフリキシマブでは投与開始20~60日に細菌性肺炎の発症が増加する(Ann Rheum Dis. 2008; 67: 189-194)。よって投与2ヵ月以内は注意しながら診療する。また、トシリズマブ投与例ではCRPは上昇しないことが知られているため、スクリーニングの画像検査を積極的に行うことが望ましい。また、ニューモシスチス肺炎も0.2~0.3%程度報告されている。これについては、β-Dグルカンの測定を定期的に行い、労作時呼吸困難や咳嗽などを訴えた症例は慎重に精査を進めていく。間質性肺炎を合併した関節リウマチ患者に対して、どのように治療したらよいでしょうか?間質性肺疾患合併例ではMTX肺炎を誘発する懸念があるため、MTXを軸とした管理ができないことがある。米国リウマチ学会の治療推奨(Arthritis Care Res. 2012; 64: 625-639)などに基づき治療戦略を決定するが、一般的にわが国では、まず推奨度Aの抗リウマチ薬(ブシラミン、サラゾスルファピリジン、タクロリムスなど)で疾患活動性のコントロールを試みることが多い。これで活動性が抑制できなければ生物学的製剤の適応を考慮する。例外的に、活動性がきわめて高く、予後不良因子を有する症例や短期間で骨破壊が進行する症例などでは、生物学的製剤を積極的に第一選択薬として用いることもある。この場合、MTX併用を必須とするインフリキシマブは投与できない。よって、残りの製剤のどれかを選択することになるが、「既存の肺病変」の存在は生物学的製剤において重篤感染症やニューモシスチス肺炎などのリスク因子になりうる(N Engl J Med. 2007; 357 : 1874-1876)ため、リスクとベネフィットを考慮して治療方針を決定する。JAK阻害薬(トファシチニブ)など、新規薬剤の可能性について教えてください。生物学的製剤の登場によって関節リウマチの診療は大きく変わった。これらは劇的な効果をもたらしたが、無効例も存在することは間違いなく、TNFやIL-6などの阻害だけでは病態を十分制御できないことを示唆している。これを受けて、現在、新規治療薬として1,000kDa以下の低分子化合物の開発が進行しており、なかでもJAK阻害薬の有効性が臨床でも確認されている。FDAが、2012年11月に関節リウマチの治療薬として、JAK1/JAK3阻害薬であるトファシチニブを認可した。承認用量である5mg 1日2回12週間の投与によって、12.5%の寛解率を示した(Arthritis Rheum. 2012; 64: 617-629)。その効果は生物学的製剤に匹敵する。一方、JAK阻害によって多数のサイトカインシグナルが阻害され、炎症と免疫に与える影響は複雑である。高分子化合物である生物学的製剤が細胞外の受容体に作用するのに対して、低分子化合物であるJAK阻害薬は細胞内で作用する。細胞内で作用した同薬剤が、最終的にヒトにおける長期安全性にどのような影響を及ぼすのか、今後の解明が待たれる。

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“重症にきび”はうつ病のリスク!?

 汗腺の膿瘍として知られるにきびinversaは慢性炎症性疾患であり、生活の質に影響を及ぼす疾患である。ドイツ・シャリテ大学のAgata Kurek氏らは、にきびinversa患者はうつ病発症リスクが高いかどうかを検討した。Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft誌オンライン版2013年4月9日号の報告。 対象は、自主的に研究に参加したにきびinversa(AI)患者90例。うつ病の発症を評価するために、患者の精神症状について不安と抑うつのスクリーニングテスト(HADS:Hospital Anxiety and Depression Scale)を行った。コントロール群は年齢、性別、BMIで調整し、マッチングした。また、うつ病とうつ病に影響を及ぼすと推測される要因との相関関係を評価した。主な結果は以下のとおり。・AI患者はコントロール群と比較し、うつ病を有する割合が高かった。・コントロール群のうつ病有病率は2.4%であったのに対し、AI患者のうつ病有病率は38.6%であった。・AIの持続期間および年齢とは対照的に、不安や性的苦痛はうつ病の重症度と強い相関が認められた。関連医療ニュース ・視機能喪失の訴えは、うつ病のリスク!? ・うつ病治療に「チューインガム」が良い!? ・仕事のストレスとうつ病リスク:獨協医科大学

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余暇の身体活動量は2型糖尿病における死亡率と脳卒中リスクの予測因子となりうる?―JDCSによる分析

 日本人2型糖尿病患者において、余暇における週15.4METs・時以上の身体活動は、部分的な心血管リスクの改善を通じて、脳卒中リスクを有意に低下させることが新潟大学医歯学総合研究科 曽根 博仁氏らの研究で明らかになった。余暇の身体活動量は、全死亡率の有意な低下とも関連を認めたが、心血管リスクや心血管イベントとは独立していた。これらの結果は、欧米の糖尿病患者との違いを示唆しており、東アジア地域の糖尿病の臨床管理において考慮されるべきである。Diabetologia誌2013年5月号(オンライン版2013年2月27日号)の報告。 本研究は、日本人糖尿病患者における余暇の身体活動と心血管イベント、全死亡率との関係について検討した全国コホート研究である。 Japan Diabetes Complications Study(JDCS)に登録された2型糖尿病患者1,702例(平均58.5歳、女性47%)を対象に、8.05年(中央値)にわたり追跡調査を行った。質問票を用いて、余暇身体活動や職業を含むライフスタイルの調査を行った。アウトカムは、冠動脈心疾患(CHD)発症・脳卒中発症・全死亡率とした。ハザード比と95%CIはCox比例ハザードモデルにより算出した。 主な結果は以下のとおり。・年齢、性別、糖尿病罹病期間で調整後、余暇の身体運動が週15.4METs・時以上の群(三分位数の最大値)における、週3.7METs・時以下の群(三分位数の最小値)に対する脳卒中のハザード比は0.55(95%CI: 0.32~0.94、p=0.03)、全死亡率のハザード比が0.49(95%CI: 0.26~0.91、p=0.02)と有意に低かった。CHDのハザード比は0.77(95%CI:0.48~1.25、p=0.29)で有意差を認めなかった。・ライフスタイルあるいは食事・血清脂質を含む臨床的変数で調整後、脳卒中のハザード比の有意性は境界領域であった。・余暇の身体活動による全死亡率の有意な低下は、これらの変数とは独立しており、少なくとも主として心血管疾患の減少に帰するものではないと考えられた。※MET(Metabolic Equivalent)身体活動量と運動量の基準値で、運動強度を示す単位。普通に歩くなど日常的な運動の強度は3METs程度。

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北欧の夏の日光浴40分/週、高用量ビタミンD3サプリ1ヵ月間摂取と同程度の効果

 夏季の太陽光紫外線およびビタミンDサプリメントは、いずれも北欧の住民にとって重要なビタミンDの補給源であるが、それらの相対的な効果についてはほとんど明らかとなっていなかった。ノルウェー・オスロ大学病院のZ. Lagunova氏らは、無作為化クロスオーバー臨床試験を行い、同地の夏季の太陽光を全身に累積で週に40分間浴びることと、高用量ビタミンD3サプリメントを1ヵ月間摂取することが、同程度の血清25ヒドロキシビタミン(OH)D濃度の達成・維持をもたらすことを報告した。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年4月1日号の掲載報告。 本研究は、経口高用量ビタミンD3サプリメント摂取(2,000 IU/日×30日)と、シミュレーションによる夏季の太陽光紫外線(UV)曝露(週1回のサンベッド・セッションを10回行い総計23.8 SED曝露)の、ビタミンD状態の改善効果について比較することを主な目的とした。 健康なボランティア被験者を無作為に、ビタミンDサプリメントを摂取した後に全身への10回サンベッド・セッションを受ける群(グループ1)、または全身への10回サンベッド・セッションを受けた後にビタミンDサプリメントを摂取する群(グループ2)に割り付け検討した。 主な結果は以下のとおり。・経口高用量ビタミンD3サプリメント摂取により、血清25(OH)D濃度は平均25.3nmol/L(SE ±5.4 nmol/L)上昇した。・シミュレーション夏季UV曝露後も、同程度の上昇が認められた(19.8nmol/L、SE ±5.4 nmol/L)。・試験終了時の、血清25(OH)D濃度は両群で同程度であった。・血清25(OH)D濃度を75nmol/L超達成・維持(症例の55%)するには、2週にわたる全身へのサンベッド・セッションによる総計4.8 SEDの曝露が必要であり、これは経口高用量ビタミンD3サプリメント2,000 IU/日×30日と等しかった。・この値は、オスロの緯度において夏季の正午、累積で週に全身に3.4 SEDの太陽光を浴びること(~40分)と一致することが、著者らの試算により示された。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(86)〕 メラトニンの分泌低下は糖尿病の発症を促進するか

概日リズム(サーカディアンリズム)と2型糖尿病の発症との間に関連があることが、この数年の研究で明らかになっている。 睡眠覚醒のサイクルを調節するメラトニンは、夜間に松果体から産生され、睡眠後3~5時間でピークとなり、起床時には低下する。メラトニン受容体の1つであるメラトニン受容体1B(MTNR1B:MT2)遺伝子は、インスリン抵抗性と関連しており、受容体の変異によりメラトニンのシグナル伝達が阻害された場合にはインスリン抵抗性が増強し、2型糖尿病の発症リスクが高まることが報告されている(Bonnefond A, et al. Nat Genet. 2012; 44 297-301.)。 サーカディアンリズムの障害と糖尿病の発症との関連が注目されているなかで、コホート研究というデザインでメラトニンの分泌の低下と2型糖尿病の発症リスクとの関連を示唆する研究が発表された。米国の大規模臨床試験の1つであるNurses' Health Studyをデータベースとした症例対照研究である。 2000年の時点で糖尿病を発症しておらず、尿および血液サンプルがそろっている登録者のうち、2000年から2012年に2型糖尿病を発症した370人を抽出し、年齢・採血時期・人種をマッチさせた糖尿病を発症していない370人を対照群として設定している。ベースラインのメラトニン分泌と2型糖尿病の発症の相関について、ライフスタイル、睡眠の質、炎症マーカー、内皮機能などについて多変量ロジスティック回帰がなされている。夜間におけるメラトニンの分泌を推定する指標として、代謝産物である尿中メラトニン分泌(6-sulfatoxymelatonin)/クレアチニン(Cr)比を測定している。 その結果、糖尿病を発症した群のメラトニン分泌/Cr比は28.2ng/mg(95%信頼区間:5.5~84.2ng/mg)、対照群は36.3ng/mg(95%信頼区間:6.9~110.8ng/mg)であり、メラトニン分泌/Cr比が低い場合には糖尿病の発症リスクが1.48倍(95%信頼区間:1.11~1.98)、メラトニン分泌/Cr比が26.1以下の群では2.17倍(95%信頼区間:1.18~3.98)になるという。また、糖尿病の推定発症率はメラトニン分泌/Cr比が49.1ng/mg以上の場合は4.72人/1,000人年、26.1ng/mg以下では9.27人/1,000人年と報告されている。 メラトニンの分泌低下が2型糖尿病の発症における独立したリスク因子であるとの結論であるが、前向きのデザインでのさらなる臨床研究の積み重ねが必要であろう。

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治療抵抗性の双極性障害、認知機能への影響は?

 双極性障害患者では認知機能障害を呈することが少なくないが、これらの関係については十分に報告されていない。Ute Kessler氏らは、治療抵抗性の双極性障害I型およびII型の患者における、神経認知障害を評価した。その結果、認知障害はII型と比べてI型患者でより多く、とくに処理速度に関する障害の頻度が高かった。所見を踏まえて著者は「本結果は、臨床家は、とくに双極性障害I型の治療抵抗性の患者において神経認知障害が重度であることに留意すべきであることを示すものである」と述べている。BMC Psychiatryオンライン版2013年4月号の掲載報告。 本研究は、治療抵抗性の急性双極性障害が認められた入院患者の神経認知プロファイルを評価し、同I型とII型患者の神経認知について比較を行い、人口統計学的および臨床的疾患特性と認知機能との関連を特定することを目的とした。DSM-IV-TRで大うつ病エピソードが認められた急性期の双極性障害I型(19例)と同II型(32例)の入院患者について、MATRICS Consensus Cognitive Battery(MCCB)、Wechsler Abbreviated Scale of Intelligence(WASI)、National Adult Reading Testなどで評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・神経認知障害は、MCCBの全評価において双極性障害I型およびII型の患者で明らかであった。・すべてのMCCB測定スコアが、II型群よりI型群で低値であった。あるカテゴリーについて名詞をどれだけ言えるか(category fluency)についての測定スコアは有意差が認められた。・I型患者の68.4%で、2つ以上の領域で障害(標準平均値より>1.5 SD低下)がみられ、これはII型患者の37.5%と比べて有意に多かった(p=0.045)。・発症前から直近にかけてのIQ低下は、I型患者では有意であったが、II型患者では有意ではなかった。・年齢が高いと、神経認知障害は年齢調整後標準値に比して大きかった。関連医療ニュース ・難治性双極性障害患者への併用療法は? ・双極性障害の再発予防に対し、認知療法は有効か? ・双極性障害の治療アドヒアランスを改善するには?

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ステロイド依存性皮膚症に対するトリアムシノロンアセトニド筋注、適正使用に道筋?

 米国・ボストン大学医学部のShalini Reddy氏らは、ステロイド依存性皮膚症に対するトリアムシノロンアセトニド筋注(商品名:ケナコルト)の有効性と安全性を評価する前向き観察試験を行った。その結果、6週間隔で2回にわたる接種についての安全性と、有意な改善が認められたことを報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2013年3月29日号の掲載報告。 Reddy氏らは、皮膚疾患に対するコルチコステロイド筋注に関して、投薬・投与に関する勧告がないことや、接種による視床下部・脳下垂体・副腎系への影響のリスクが不明なこと、および有効性が明らかになっていないことが使用を制限している可能性があるとして本検討を行った。 トリアムシノロンアセトニド筋注(IM TAC)を受けた患者の医原性クッシング症候群および続発性副腎機能低下症の発症と期間を評価することを目的とし、医師と患者のアウトカムの報告についても評価した。 試験は、ステロイド依存性皮膚症の診断を受けている14例に対し、IM TACを6週間隔で1回または2回の接種を行い、コルチゾル量、副腎皮質刺激ホルモン、医師・患者の全般的疾患活性評価尺度によるスコア、かゆみの視覚的アナログスケールスコアを、ベースラインと6週、12週時点で評価した。 主な結果は以下のとおり。・総コルチゾル値の平均値は、ベースラインと比べて6週、12週時点で有意に減少した。・一方で、IM TACによる医原性クッシング症候群や続発性副腎機能低下症は、いずれの患者においてもみられなかった。・医師・患者の全般的疾患活性評価尺度スコアの平均値は、ベースラインと比べて6週、12週時点で有意に改善した。・視覚的アナログスケールかゆみスコアの平均値は、ベースラインと比べて6週時点で有意な改善が認められた。・本試験はコホートサイズが小さく比較群がないという点で限定的なものであるが、以上の結果から、IM TACは6週間隔で2回の投与は安全であり、ステロイド依存性皮膚症について有意な改善をもたらすことは明らかであった。・今回の結果は、IM TACの臨床での適正使用を考慮している皮膚科医に対して、接種対象患者、接種回数および投与に関する指針となる可能性がある。

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エキスパートに聞く!「関節リウマチ」Q&A part1

CareNet.comでは4月の関節リウマチ特集を配信するにあたって、事前に会員の先生より関節リウマチ診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、慶應義塾大学 花岡 洋成先生にご回答いただきました。2回に分けて掲載します。プライマリ・ケア医がリウマチを疑うポイント、実施したほうがよい検査、専門医へ紹介するタイミングを教えてください。関節リウマチは骨破壊性の多発関節炎を主徴とする疾患である。発症早期に骨破壊が進行することが報告されて以来、早期診断・早期治療の重要性が認識されている。しかし、その早期診断は容易でなく、専門的知識と経験が要求される。現在、2010年の米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会新分類基準(Arthritis Rheum. 2010; 62: 2569-2581)(表)に基づき、分類(診断)を行うのが一般的である。この新分類基準ではおおまかに、罹患関節の種類と数、持続期間、血液検査所見(リウマトイド因子、抗CCP抗体、CRP、ESR)をスコア化し、分類する手法をとっている。血液検査所見のみでは診断できないことがポイントで、必ず1つ以上の関節炎の存在が必要である。しかし、プライマリ・ケア医が関節炎(滑膜炎)を識別することは困難であるため、以下のポイントを参考にしていただきたい。このスコアリング法では、とくに小関節の関節炎が多いほうが高くスコア化される。関節リウマチの好発罹患関節が小関節だからである。ここでの小関節とは、第2~5中手指節関節(metacarpophalangeal joint:MCP関節)、近位指節間関節(proximal interphalangeal joint:PIP関節)、第2~5中足指節関節(metatarsophalangeal joint:MTP関節)、第1指節間関節(interphalangeal joint:IP関節)、手関節を含む。簡単に言うと、指の第2・第3関節、手首、足趾の関節である。ここに何らかの症状がある場合は、専門医に紹介が必要である。さらに、上記血液検査で異常がある場合は積極的に紹介していただきたい。表画像を拡大するリウマトイド因子陽性でも、関節痛やほかの症状がなければ問題ないでしょうか? もしくは、リウマトイド因子陽性の場合はすべて、専門医に紹介したほうがよいのでしょうか?リウマトイド因子(RF)は、関節リウマチの診断において頻繁に測定されるバイオマーカーの1つである。1987年の米国リウマチ学会の関節リウマチ分類基準に唯一採択されていた血清マーカーであるが、その感度は60~70%、特異度は70~80%と必ずしも高くない。重要なことは、たとえRFが陽性であっても、それだけでは関節リウマチとは診断されない点にある。2010年の米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会新分類基準では、1つ以上の関節炎の存在が関節リウマチと診断する必要最低限の条件となっている。よって、RF陽性かつ1ヵ所以上の関節の腫脹・圧痛がある場合は専門医に紹介すべきである。一方、RAを発症する1.5年前からRFが陽性である患者が約30%存在するとの報告(Arthritis Rheum. 2003; 48: 2741-2749)もあるとおり、発症前からRFが陽性になることが知られている。よって、RF陽性で関節炎がない場合でも、患者さんに、1ヵ所以上の関節の腫れ・痛みが出現した際には再来院するよう伝えておくことが必要である。外来診療での治療効果(疾患活動性)の“簡単な”評価法があれば教えてください。昨今、関節リウマチの診療においてもTreat to Target(T2T)の概念が広く流布され、実臨床でも応用されている(Ann Rheum Dis. 2011; 70: 1999-2002)。T2Tとは目標達成に向けた治療のことである。1~3ヵ月毎に疾患活動性を評価し、寛解(長期罹患例は低疾患活動性)を達成・維持することを目標とするものである。疾患活動性の評価方法として、いくつかの指標が存在する。DAS28、SDAI、CDAI(Clin Exp Rheumatol. 2005; 23: s100-108)などが代表的なものである。DAS28は複雑な計算式により算出される指標(Ann Rheum Dis. 1990; 49: 916-920)で、計算機がないと日常診療では使用しづらいという難点がある。質問にある“簡単な”指標としてはCDAIが候補になる。採血結果も不要で、VAS(Visual Analogue Scale)の測定さえできれば簡便に行える。これは腫脹関節数、圧痛関節数、医師のVAS値、患者のVAS値を純粋に足し算したものである。10以下が低疾患活動性、~22が中等度疾患活動性、23以上が高疾患活動性、2.8以下が寛解である。メトトレキサートの増量の基準や方法について教えてください。関節リウマチの診療において、メトトレキサート(MTX)はアンカードラッグである。2011年2月より、日本でも第一選択薬として使用可能となり、用量も1週間に16mgまで増量可能となった。増量の基準は、T2T(Ann Rheum Dis. 2011; 70: 1999-2002)の概念から、低疾患活動性・寛解に至っていなければ、安全性を配慮しながら増量する。日本リウマチ学会MTX診療ガイドラインに基づくと、6mg/週から開始し、4~8週経過しても効果が不十分であれば適宜増量する、とある。ただし、これはあくまで推奨であり、初期投与量についても患者の保有する副作用危険因子や疾患活動性、予後不良因子を考慮して、適宜増減する、と付記されている。昨今、Intensive treatmentやRapid dose escalationと呼ばれるMTXの増量方法の有効性が検証されつつある。これは欧州を中心に行われた研究だが、早期関節リウマチを対象にMTX7.5mg/週から開始し、寛解を達成するまで5mg/週ずつ1ヵ月毎に増量するプロトコールである。このプロトコールで治療された群は、3ヵ月毎での診療群と比較して治療成績がよい(Ann Rheum Dis. 2007; 66: 1443-1449)。ただし、MTXによる有害事象での脱落例は強化治療群でより多く(39 vs 24%)、この強化治療の有益性がどこまであるか、世界規模での検証が必要かもしれない。専門医からの紹介で、引き続きメトトレキサートを処方する場合の注意点、専門医への受診間隔、専門医に紹介すべき所見(副作用出現や症状増悪の目安など)を教えてください。この患者さんが、メトトレキサート(MTX)内服によって低疾患活動性や寛解など、安定している状態と想定してお答えする。T2Tリコメンデーション(Ann Rheum Dis. 2011; 70: 1999-2002)によると、低疾患活動性もしくは寛解であっても、3~6ヵ月での活動性の評価が推奨されている。さらに治療方針の決定には、総合的疾患活動性の評価に加えて、関節破壊などの構造的変化および身体機能障害も併せて考慮すべきだと記載されている。つまり、関節X線も半年~1年に1回は撮影し、骨破壊の程度を詳細に評価することが望ましいとされている。これら「疾患活動性の評価」や「関節X線の読影」は専門的知識と経験が要求される。よって現実的には、状態が安定しているのであれば1年に1回程度の専門医への受診間隔が望ましいのではないかと考える。次に、副作用出現についてである。MTXの代表的な副作用は、肝酵素上昇、口内炎、消化管障害、血球減少と感染症である。日本におけるMTX承認以降、3年毎の副作用死亡例の内訳をみると、間質性肺炎は減少し、感染症とリンパ増殖性疾患の割合が増している。骨髄障害は減少していない。消化管障害、肝酵素上昇は葉酸の予防効果が確実であり、血球減少についても葉酸依存的との報告があるため、これらが出現した際には葉酸の追加や増量が必要である。骨髄障害の背景には腎機能障害などのハイリスク例があり、脱水を契機に突然、骨髄障害を発症することも経験する。よって、葉酸補充によって改善が見込まれる肝酵素上昇や口内炎などであれば、葉酸投与量を増加し改善するか確認する。改善しない例や、重篤な骨髄障害を認めた際などには、専門医受診を勧めるのが妥当であろう。また、長期MTX内服例でリンパ節腫脹が出現した場合も専門医へ戻すほうがよい。

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メラトニン分泌の低下が2型糖尿病発症リスクを増大/JAMA

 メラトニン分泌の低下と2型糖尿病発症リスクの増大が独立して関連していることが明らかにされた。米国・ハーバード公衆衛生大学院のCiaran J. McMullan氏らが行った症例対照研究の結果で、夜間のメラトニン分泌低下とインスリン抵抗性の増大との関連も明らかになったという。メラトニンは体内時計のコントロール下にあり、一般的には夜間の就寝後3~5時間で分泌はピークに達し日中はほとんど産生されない。先行研究において、メラトニンの糖代謝における役割の可能性が示唆され、またゲノムワイド研究ではメラトニン受容体の機能喪失と2型糖尿病発症率との関連などが報告されていたが、メラトニン分泌と2型糖尿病との関連を前向きに検討した報告はなかった。JAMA誌2013年4月3日号掲載の報告。ベースライン時と2型糖尿病発症時とのメラトニン分泌の関連について評価 本検討は、看護師健康スタディ(Nurses' Health Study)コホートを対象とし、2000年のベースライン時に糖尿病を発症しておらず、尿および血液検体を提供しており、その後2000~2012年の間に2型糖尿病を発症した女性参加者を特定して行われた。 ベースライン時と2型糖尿病発症時とのメラトニン分泌の関連について、人口統計学的特性、生活習慣、睡眠の質、炎症性と内皮機能障害のバイオマーカーで調整後に多変量条件付きロジスティック回帰分析にて評価を行った。 症例群370例を特定し、リスク適合対照群として特定した370例と比較検討した。メラトニン分泌低値群の糖尿病発症率は高値群の2.17倍 ベースラインでのクレアチニン値は両群で同程度であった(p=0.20)。しかし、尿中メラトニン分泌(6-sulfatoxymelatonin)/クレアチニン比の中央値は、症例群28.2ng/mg(5~95%範囲:5.5~84.2ng/mg)に対し、対照群36.3ng/mg(同:6.9~110.8ng/mg)だった(p<0.001)。 メラトニン分泌/クレアチニンの推定ログ比率三分位(低中高)に階層化し検討した結果、同値が低い被験者のほうが、2型糖尿病のリスクが増大する関連が認められた。調整後のリスクは同比率1低下につき1.48倍であった(多変量オッズ比:1.48、95%信頼区間:1.11~1.98)。 また、同比率低下三分位の高値群(≧49.1ng/mg)と比べて、低値群(≦26.1ng/mg)の2型糖尿病の発症率は2.17倍であった(多変量オッズ比:2.17、95%信頼区間:1.18~3.98)。 メラトニン分泌高値群の2型糖尿病発症率は4.27/1,000人・年に対し、同低値群は9.27/1,000人・年と推定された。 著者は、「メラトニン分泌低下と2型糖尿病発症の高リスクに独立した関連が認められた。メラトニン分泌が一般集団における糖尿病の修正可能なリスク因子であるか、今後のさらなる研究が求められる」とまとめている。

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統合失調症“再発”の危険因子は?

 統合失調症治療において再発を抑制することはきわめて重要な課題である。フィンランド・ヘルシンキ大学のTiina Talaslahti氏らは、高齢の統合失調症外来患者に対する第一世代抗精神病薬および第二世代抗精神病薬の使用状況を明らかにし、再発との関連を検討した。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2013年4月5日号の報告。 フィンランドのレジスタより、統合失調症または統合失調感情障害を有する64歳以上の患者サンプル8,792例を抽出した。第一世代抗精神病薬(FGA)と第二世代抗精神病薬(SGA)の使用データは、1998年から2003年の期間で追跡調査した。精神科入院に関する因子は、1999年の再発データよりロジスティック回帰分析を用い検討した。 主な結果は以下のとおり。・SGAの使用率は2.8%から12.4%に増加し、FGAの使用は57.5%から39.4%に減少した。・SGAとFGAの併用率は4.0%から8.5%に増加した。・抗精神病薬の投与を行っていない患者の割合は35.8%から39.7%の間で変化した。・1年以内に精神科病棟に入院した患者は8.8%であった。・再発に関する独立した危険因子は、FGAとSGAの併用(OR:1.70、p=0.001)、抗うつ薬の使用(OR:1.27、p=0.019)であった。・心血管疾患の診断は、統合失調症の再発リスクと負の相関を認めた(OR:0.84、p=0.040)。関連医療ニュース ・統合失調症の再燃や再入院を減少させるには:システマティックレビュー ・10年先を見据えた抗精神病薬選択のポイント ・抗精神病薬と抗コリン薬の併用、心機能に及ぼす影響

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Vol. 1 No. 1 ACSの治療-急性期のPCI/薬物療法

石井 秀樹 氏名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学はじめに急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)に対する急性期の治療として血栓溶解療法と経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)の出現、それらの技術向上は、患者の予後改善に大きく寄与している。東京都CCUネットワーク(http://www.ccunet-tokyo.jp/)の統計では、急性心筋梗塞の死亡率は1982年には20.4%であったものが、2010年にはわずか6.0%にまで低下している(図:本誌p15参照)。安静が治療の主体であった冠動脈の再疎通療法以前の院内死亡率が3割強であったことを考えると、治療法の変遷と治療成績には極めて密接な関連があることがわかる。わが国では、医療保険制度をはじめとし、交通網や救急搬送システムなどの点で欧米とは異なることから、ACS、特に急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI)の治療法としてPCIを第1選択とする施設が多い。10年ほど前のデータではあるが、欧米のデータベースのよる統計ではAMIに対するprimary PCI施行率は5.5~49.6%であったが、わが国では日本の施行率は75~94%と高率であり、さらに年間施行件数の少ない施設においてもPCIを選択することが多いという特徴がある1)。これは欧米では広大な医療圏内の中にPCIを行える施設が限られているため、AMI患者には血栓溶解療法が行われることが多いが、わが国ではかなりの地域でPCIを行うことができる施設に収容可能であることにも起因する。そして、このことはわが国のACS患者の予後改善に対して大きな貢献をしている要因と考えられている。これまでの知見で、ST上昇型のAMI(STEMI)に対するPCIの有効性は確立している。しかしながら、現在でも非ST上昇型AMIや不安定狭心症では、早期のPCIを含む侵略的戦術がよいのか、保存的加療を経てから症例を選んで冠動脈造影などの処置を行うのがよいのか、一定の見解は得られていない。わが国ではそのような症例に対してもSTEMI症例同様に侵略的戦術にシフトしていると考えられている。PCIなどによる再灌流は非常に有用な手段であるが、再灌流自体が再灌流障害という新たな心筋障害を生じさせることも知られており、薬物の併用などが検討されるべきである。急性心筋梗塞に対する再灌流療法ACS、特にAMIの治療において、冠血流の途絶を早期に開通、すなわち再灌流を得ることが重要なことである。このことにより、梗塞心筋の縮小効果や、左室リモデリングを抑制し、結果として長期的な予後改善効果が得られる。再灌流の手段としては、PCIが確実な方法であるが、PCIを行う施設まで搬送時間がかかる場合またはPCIまでに時間がかかると判断される場合には、血栓溶解療法単独あるいは血栓溶解療法とPCIのハイブリッド治療法であるfacilitated PCIを選択肢とするべきであるとされる2)。現在ACSに対して行うPCIは、血栓吸引のみあるいはバルーン単独での治療で終了することは少なく、ステントによる治療がほとんどの場合に行われており、PCI後の急性閉塞の低減や、再狭窄率の減少など心血管イベントの低減に貢献している。その際に考慮すべき問題として、ACSに対してbare metal stent(BMS)を使用するか、drug eluting stent(DES)を使用するのかという問題がある。ACSに対しても、安定狭心症症例同様に、本邦ならず世界的に見てもDESの使用が増加している。一時、ACSに対するDES使用は、血栓閉塞のリスクが高まるのではないかと論議されたものの、近年はDES留置も安全であるとする報告が相次いでいる3)。確かにDESは再血行再建術などに対してはBMSよりも有用であることは間違いない。しかしながら、DESが内皮障害やspasm発生に関与していることを示唆する報告があり4, 5)、spasmが多いと考えられる日本人の使用に対しては、今後も有効性と副作用の十分な検討を行うべきである。また筆者は、DES留置後の長期の予後改善が未だ不明であり、2剤併用抗血小板療法(dual anti-platelet therapy:DAPT)をいつまで行うかがまだ確立されていないことや、ACSという緊急の対応が必要ななかで出血の素因があるのかどうかを判断したり、近いうちに手術が必要なのかどうかなど確認することが困難な状況のなかで、DESを安易に使用すべきではないと考えている。加えて、近い将来に吸収性ステントや薬剤溶出性バルーンなどが日常診療において使用可能になりそうな状況において、特に年齢が若い症例に対しては、急性閉塞などには十分な注意を払いながら、バルーン単独でのPCIも考慮するべきとも考えている。再灌流療法と再灌流障害再灌流療法により、梗塞心筋の縮小効果や、左室リモデリングを抑制し、結果として長期的な予後改善効果が得られる。しかしその一方で、再灌流自体が新たな心筋障害を生じさせる。これを再灌流障害といい、PCIなどによる再灌流療法のメリットを減弱させてしまうものである。最近の知見では、1.no-reflow phenomenon:no-reflow現象(血管内皮などの障害による血管性障害)→TIMI flow grade、TIMI frame countなどによる造影所見からの判断、myocardial blush grade(造影剤による心筋染影度)、心電図によるS Tresolution(ST上昇の改善の程度)などで判断可能2.reperfusion arrhythmia:再灌流性不整脈→心電図によるモニターで判断可能3.lethal reperfusion injury:致死的心筋障害(不可逆的な細胞障害)→核医学検査法などによりにより評価可能4.Myocardial stunning:心筋スタンニング(虚血解除後に生存心筋で認められる機能低下で気絶心筋ともいわれる)→核医学検査法などにより評価可能6)に分類される。再灌流障害の発生を抑えるため、PCIの際に工夫することや、薬物を追加で使用することが重要と考えられる。特に虚血プレコンディショニング、ポストコンディショニングのメカニズムを応用することが近年注目されている(図)。虚血プレコンディショニングとは、本格的な虚血に先行して起きる短時間の虚血が心筋ダメージを軽減することであり、臨床の場でも、梗塞前に狭心症がある患者ではそれがなかった患者と比較して予後が良いことが知られている7)。また、ポストコンディショニングとは、心筋梗塞症例に対して、冠動脈再灌流直後に虚血と再灌流を短時間・複数回繰り返すことで、梗塞範囲の縮小効果など再灌流障害による心筋ダメージが軽減する現象のことをいう8)。図 プレコンディショニングとポストコンディショニングの概念画像を拡大する再灌流障害に対する戦略1.段階的再灌流 一気に再灌流するのではなく、虚血と再灌流を複数回繰り返すことで細胞内Ca2+ overloadを予防し、再灌流障害が低減する。臨床試験で良好な結果が認められているが、数十秒から数分間での冠動脈内におけるバルーンのinflation、deflationが必要で、血栓吸引療法が行われた場合にはこの機序による心筋保護は難しい可能性がある。2.血栓吸引カテーテル、末梢保護デバイス ACSの発症のほとんどに血栓が関与している。血栓のある冠動脈病変をバルーンで拡張した場合、破砕された血栓が微小循環において塞栓を生じ、再灌流障害の原因になることがある。そのため、バルーン拡張の前にあらかじめ血栓を吸引する方法や、末梢で血栓やデブリスをtrapする方法が開発された。 早い時期に発表されたEMERALD研究では、末梢保護デバイスの有用性が示されなかったが、2008年発表のわが国から報告されたVAMPIRE trialでは、TVAC™による血栓吸引をSTEMI患者に対して行うことにより、行わない群と比較して、brush gradeの有意な改善と8か月後のMACEの有意な低下を示した9)。また、TAPAS研究でも血栓吸引カテーテルがmyocardial blush gradeの有意な改善が示された。 わが国では血栓吸引療法は他国と比較しても汎用されている手技と考えられ、以下に示すような薬物の追加療法を行うことで、より質の高い再灌流が得られるものと考えられる。3.再灌流障害に対する薬物による追加的保護療法 再灌流障害に対して、さまざまな薬剤がこれまで試みられてきた10)。アデノシンはプレコンディショニング作用を持つ薬物として海外から多くの報告がなされている。また、ポストコンディショニング作用を持つ薬物もさまざまある(表)。 近年、わが国からも再灌流障害の予防、慢性期の左室リモデリング抑制と予後改善を目的とし、さまざまな検討がなされている。そのなかでもニコランジルとカルペリチドは本邦で開発、臨床の場で幅広く使用され、それらを使用した研究成果報告はわが国からの報告が極めて多い。以下一部を紹介する。表 RISK pathwayの活性化とmPTP開口阻害(文献6, 10より)画像を拡大するa.ニコランジル ニコランジルは、低血糖治療薬であるジアゾキサイドなどのK-ATPチャネル開口薬とは異なる、NOドナーである点が大きな特徴である。K-ATPチャネルは先に述べた虚血プレコンディショニングに関与しており、K-ATPチャネル開口薬であるニコランジルが薬理学的プレコンディショニングを生じるということがIONA試験などで証明されてきた。 AMIにおける再灌流障害に関する研究として、コントラストエコーによるno reflow現象の抑制効果や、左室梗塞部位における壁運動改善効果が1999年に発表され11)、その後もACSをはじめとした虚血性心疾患に対するニコランジルの有用性が数多く発表された。我われは、STEMI患者に対してPCIによる再灌流を行う直前にニコランジルを静注で約30分かけて12mg投与することにより、PCI後の微小循環障害予防、慢性期の左室リモデリング抑制と心不全発症予防などの効果があることを報告した12)。その後、J-WIND-KATP研究(ニコランジル0.067mg/kgボーラス投与後、24時間1.67μg/kg/min静注)13)では、ニコランジルの有効性は示されなかったものの、用量や投与法などのさらなる検討が必要であると考えられる。また、現在は、ニコランジルは急性心不全の適応が認められ、用量もより高用量の使用が可能となっている。 また、冠動脈内注(冠動脈注は緩やかな投与が重要!)による冠微小血管抵抗指数改善作用も報告されており14)、slow flow等の改善などに対しても臨床的に幅広く使用されている。筆者の見解であるが、ACSまた待機的な症例に対してもニコランジルはPCI前から投与しておくことがコツであり、再灌流障害やslow flowを発症しないためには、予防的な投与が極めて重要であると考えている。 最近のニコランジルのトピックとして、2011年のAHAで、岐阜大学より造影剤腎症の予防効果が発表され、世界的にも注目を集めた15)。b.カルペリチド(ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド:hANP) カルペリチドは血管拡張作用、利尿作用があり、急性心不全に対する治療薬として広く使用されているが、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の抑制効果、交感神経系の拮抗作用、そして虚血プレコンディショニング、ポストコンディショニング効果と同様の作用をすると考えられているreperfusion injury salvage kinase(RISK)を活性化させる作用もあることが報告されている。この効果により、再灌流障害や左室リモデリングが抑制され、急性心筋梗塞に対して有効であるとする報告が数多く報告されている。J-WIND-ANP(AMI患者にカルペリチド0.025μg/kg/minで3日間投与)13)では、AMI患者の梗塞サイズがプラセボ投与群に比べ、14.7%の有意な減少と、慢性期の左室駆出率で、プラセボ群と比較して5.1%の有意な増加が見られ、長期にわたって心臓死・心不全による再入院も、有意に減少させることが報告されている。また、カルペリチドにも造影剤腎症予防効果の報告もある16)。c.その他 スタチンの中には、ポストコンディショニング様の作用があることがわかっている。海外のARMYDA-ACS研究では、PCI前のアトルバスタチンの投与により心筋障害が予防できることがわかっていた。本邦からは弘前大学より、AMI患者に対するdirect PCIの直前にプラバスタチンを投与することで再灌流障害が予防されたとする大変興味深い結果が報告されている17)。 また、本邦で開発され、脳梗塞治療薬として使用されているフリーラジカルスカベンジャーであるエダラボンが、direct PCIに伴う再灌流障害を抑制したとする報告がある18)。4.ACS患者に対する抗血小板療法の重要性 ACSの急性期では、血小板活性・凝固能の亢進と線溶能低下が起こっているため、血栓が非常に形成されやすい状況である。血小板が活性化すると膜表面の糖蛋白が発現し、血小板からADP、トロンボキサンA2などの生理活性化物質が放出され、血栓形成がさらに強まる。本邦では使用できないが、GP IIb/III阻害薬はその流れのなかで効果を示す薬剤である。 急性期ではアスピリン162-200mgの咀嚼投与が行われているが、PCIでステント治療となる場合には治療直前からチエノピリジンの投与が推奨される。特にクロピドグレルの場合には初期にローディングとして300mgの投与、以降75mgの投与が必要である2)。韓国からのデータではあるが、DESを用いたPCIを施行したSTEMI患者の検討では、抗血小板薬3剤(アスピリン+クロピドグレル+シロスタゾール)の投与が、2剤群(アスピリン+クロピドグレル)と比較して、8か月における主要心血管イベントを有意に低下させた(図:本誌p19参照)19)。ACSによる入院30日以内の消化管出血があると予後が悪化することも知られているが20)、わが国においても、出血に注意をしながら抗血小板剤の3剤投与も検討されてもよいかもしれない。おわりに日本ではSTEMIをはじめとするACS症例に広くPCIが行われている。特にSTEMI症例に対しては、ガイドラインでdoor-to-balloon timeは90分以内にすることが求められているが、わが国全体でもかなりの割合でそれがクリアされているものと考えられる。ACS治療が海外と比較して、日本で良好な成績を上げているのもそれが大きく起因していることは間違いない。また、多くの施設が24時間体制で緊急カテーテル・PCIに対応し、夜間や休日でも質の高いPCIを常に心がけており、循環器医療に携わるわが国の医師・パラメディカル・関係者の意識が高いことも寄与しているものと考えられる。さらに、薬物の使用においても、急性期には症例ごとにきめ細かな対応がなされ、慢性期にはエビデンスが構築された薬剤が高い比率で投与されているものと考えられる。これらのことはACSに限ったことでなく、わが国の医療レベルが非常に高い要因とも考えられる(図:本誌p19参照)21)。最近ACS症例に対しては、PCIや薬剤のみでなくremote ischemic conditioningや、再生医療に関する話題も豊富である。わが国からACS患者の予後改善に関する新たなエビデンスが構築されることが期待される。文献1)Ui S, Chino M, Isshiki T. Rates of primary percutaneous coronary intervention worldwide; Circ J 2005; 698(1): 95-1002)日本循環器学会ほか. 急性心筋梗塞(ST上昇型)の診療に関するガイドライン(2006-2007年度合同研究班報告). Circ J 2008; 72(supplIV): 1347-14643)Mauri L, Silbaugh TS, Garg P, et al. Drug-eluting or bare-metal stents for acute myocardial infarction. N Engl J Med 2008; 359 (13): 1330-13424)Yoshida T, Kobayashi Y, Nakayama T, et al. Stent deformity caused by coronary artery spasm. Circ J 2006; 70(6): 800-8015)Lerman A, Eeckhout E. Coronary endothelial dysfunction following sirolimus-eluting stent placement: should we worry about it? Eur Heart J 2006; 27(2): 125-1266)Yellon DM, Hausenloy DJ. Myocardial reperfusion injury. N Engl J Med 2007; 357 (11): 1121-11357)Ishihara M, Sato H, Tateishi H, et al. Implications of prodromal angina pectoris in anterior wall acute myocardial infarction. Acute angiographic findings and long-term prognosis. J Am Coll Cardiol 1997; 30(4): 970-9758)Yang XM, Proctor JB, Cui L, et al. Multiple, brief coronary occlusions during early reperfusion protect rabbit hearts by targeting cell signaling pathways. J Am Coll Cardiol 2004; 44(5): 1103-11109)Ikari Y, Sakurada M, Kozuma K, et al. VAMPIRE Investigators. Upfront thrombus aspiration in primary coronary intervention for patients with ST-segment elevation acute myocardial infarction: report of the VAMPIRE (VAcuuM asPIration thrombus Removal) trial. JACC Cardiovasc Interv 2008; 1(4): 424-43110)Ishii H, Amano T, Matsubara et al. Pharmacological intervention for prevention of left ventricular remodeling and improving prognosis in myocardial infarction. Circulation 2008: 118(25): 2710-271811)Ito H, Taniyama Y, Iwakura K, et al. Hori M, Higashino Y, Fujii K, Minamino T. Intravenous nicorandil can preserve microvascular integrity and myocardial viability in patients with reperfused anterior wall myocardial infarction. J Am Coll Cardiol 1999; 33(3): 654-66012)Ishii H, Ichimiya S, Kanashiro M, et al. 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統合失調症の治療ターゲット、新たな遺伝要因を特定

 統合失調症に関連する新たな遺伝要因を明らかにするため、Andrew E. Timms氏らは、頻度の少ない疾患関連遺伝子変異の同定を試みた。その結果、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体と関連するフレームシフト変異ならびにミスセンス置換が存在することを報告した。統合失調症は顕著な遺伝率を示す複雑な遺伝性疾患である。遺伝学的研究により、関連する種々の遺伝子および伝達経路が示されているが、遺伝的罹病性の多くの部分は依然として不明である。著者は、今回の統合失調症発症リスクと関連する遺伝子の存在の発見は、新たな有用な治療ターゲットとなるものだと報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2013年4月3日号の掲載報告。 統合失調症の遺伝形式の検討は、背景にある分子経路に関するよりよい理解につながり、疾患の予防と治療における標的アプローチを可能にすると考えられる。 本研究は、統合失調症家系を強く示唆する新たな遺伝因子の同定を目的とした。 academic medical centersから統合失調症の発端者とその家族を登録し、単一遺伝子による遺伝と思われる統合失調症の多発家系5家系において病因性突然変異の同定を試みた。主要アウトカムは頻度の少ない疾患関連遺伝子変異とし、ゲノムワイドアレイCGH法によるコピー数多型の同定、エクソンシーケンスによる変異の同定、そして連鎖解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・コピー数多型は検出されなかった。・5家系すべてにおいて、タンパク質コード領域に頻度の少ないシーケンス変化が認められ、3遺伝子のうち1つはNMDA受容体と関連していた。・1家系において、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGluR5)をコードし、NMDA受容体に結合してそのシグナル活性を増強するGRM5のミスセンス置換およびフレームシフト置換が認められた。なお、フレームシフト置換は、足場蛋白タマリンとの結合を妨げ、mGluR5内在化を促進することが知られている。 ・その他の家系では、カルモジュリン結合蛋白ホスファターゼをコードし、mGluR5レベルに影響を及ぼすPPEF2のミスセンス置換が認められた。・3家系において、NMDA受容体にも結合する低密度リポタンパク質(LDL)受容体関連タンパク質をコードするLRP1B内に異なるミスセンス置換が認められた。なお、LRP1Bは統合失調症と強い関連が示されている染色体2q22領域に位置する。関連医療ニュース ・統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定 ・日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに ・統合失調症の診断・治療に期待!新たなバイオマーカー

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今後の日焼け対策キャンペーンはより若い年齢層を対象に

 英国・Royal Free Hampstead NHS TrustのD. P. Butler氏らは、皮膚がん予防を目的とする日焼け対策プログラムを今後どのように展開するべきかを企画するため、かかりつけ医(GP)を通じて幅広い患者を対象に、皮膚がんに対する認識や向き合う姿勢などの現状を調査した。その結果、プログラムはより若い年齢層を対象とすべきであり、またすでに皮膚がんを呈する患者に対してヘルスケア専門家は、安全な太陽光曝露の重大性の認識が強化できるよう働きかける必要があることを報告した。Clinical and Experimental Dermatology誌オンライン版2013年3月27日号の掲載報告。 調査は、さまざまな患者における皮膚がんに関する知識および認識、対策に向き合う姿勢を明らかにし、今後の英国日焼け対策キャンペーン(UK sun-awareness campaigns)を企画することを目的とした。 2010年6月1日~7月31日の期間に英国内3つのGP(2施設は都市部、1施設は地方)のうちの1施設で受診した16歳以上の患者を対象に、太陽光曝露に関する行動データを集めるため質問票への回答を求めた。 主な結果は以下のとおり。・総計1,000人(男性327人、女性673人)から回答を得た。・16~30歳群が高齢者群よりも、より有意に多く日焼けしている可能性があった。・また16~30歳群は、皮膚がん回避の方法の理解が、他の年齢群よりも有意に不良であった。・さらに同群は高齢者群との比較において、日中の太陽光の回避(p<0.001)や日なたでは日差しをカバーする(p<0.001)ということが有意に少なかった。・皮膚がんの病歴や家族歴の有無による、太陽光曝露や日焼けの頻度に有意差はみられなかった。・皮膚がんの病歴を持つ人で、日焼け止めを使って対策をしている傾向がみられた(p<0.001)が、日差しの完全防備や回避はしていなかった。

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てんかんと寄生虫感染との関連説を確認

 システマティックレビューとメタ解析の結果、線虫オンコセルカ(回旋糸状虫)の寄生虫感染によるオンコセルカ症と、てんかんとの関連説を支持する知見が得られたことを、ウガンダ・Basic Health Services Kabarole & Bundibugyo DistrictsのChristoph Kaiser氏らが発表した。未治療者における小結節の触診とミクロフィラリア数で定義する感染の強度が、てんかんの病因に関与していることが確認されたという。PLoS neglected tropical diseases誌3月号(オンライン版3月28日号)の掲載報告。 研究グループは、オンコセルカ症とてんかんとの関連について入手可能なすべてのケースコントロール試験を対象にシステマティックレビューとメタ解析を行うことを目的とした。感染に関して年齢および居住地域の感染レベルが重要な規定因子となることを踏まえて、追加解析を行い、これら交絡因子の調整を満たした試験に限定した。文献の検索は2012年5月までにアップされたものについて、African Neurology Database、Institute of Neuroepidemiology and Tropical Neurology、Limogesの医学データベース、および参考文献リスト、商用検索エンジンにて行った。てんかんを有する患者(PWE)と有さない患者(PWOE)におけるオンコセルカ症の感染状態を調べており、ランダムエフェクトモデルを用いたプールオッズ比(ORp)、標準化平均差(SMD)が算出可能なデータを提示している試験報告を適格とした。 主な結果は以下のとおり。・解析には、オンコセルカ症の診断について定量的皮膚生検データを提示していた11試験を特定し組み込んだ。・総サンプル(PWE患者876例、PWOE患者4,712例)の複合解析の結果、ORpは2.49(95%CI:1.61~3.86、p<0.001)であった。・年齢、居住者、性について調整していた試験に限定した解析(PWE患者367例、PWOE患者624例)においては、ORpは1.29(95%CI:0.93~1.79、p=0.139)であった。・オンコセルカ症の診断で小結節を評価していたのは4試験で(PWE患者225例、PWOE患者189例)、ORpは1.74(95%CI:0.94~3.20、p<0.076)であった。限定解析に組み込まれたのは2試験で(PWE患者106例、PWOE患者106例)、ORpは2.81(95%CI:1.57~5.00、p<0.001)であった。・ミクロフィラリア未治療の患者についてミクロフィラリア数を調べていたのは1試験であり、PWOE患者よりもPWE患者のほうが有意に数量が高値であった。関連医療ニュース ・てんかん患者、脳内ネットワークの一端が明らかに ・抗てんかん薬の長期服用者、80%が骨ミネラル障害 ・検証!抗てんかん薬の免疫グロブリン濃度に及ぼす影響

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PCI施行後の大出血で院内死亡率が上昇/JAMA

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後の大出血により院内死亡率が有意に上昇し、出血関連死は推定で約12%にのぼることが、米国Saint Luke’s Mid America Heart InstituteのAdnan K. Chhatriwalla氏らの検討で示された。出血は最も高頻度にみられるPCIの合併症で、死亡率の上昇や医療費の増大をもたらす。米国では、これまでPCI後の出血関連死のデータはなく、出血リスク、部位と死亡率の関連も不明であった。JAMA誌2013年3月13日号掲載の報告。338万件以上のCathPCIの登録データを解析 研究グループは、PCI施行後の大出血と院内死亡の関連を評価し、PCI施行後出血関連死の調整済み人口寄与リスク(出血関連死リスクとして推算)、リスク差、有害必要数(NNH、1件の院内死亡に要する出血件数)について検討を行った。 2004~2011年までに米国で行われた338万6,688件のCathPCIの登録データを解析した。人口寄与リスクはベースラインの人口統計学的、臨床的、手技的な変数で調整して算出した。出血関連死のNNHの算定には傾向マッチ分析(propensity-matched analysis)を用いた。とくに高出血リスク群、非アクセス部位出血群で死亡リスクが高い 338万6,688件のPCI手技のうち、出血イベントは5万7,246件(1.7%)、院内死亡は2万2,165件(0.65%)で発生した。全体の大出血に関連する死亡の調整済み人口寄与リスクは12.1%であった[95%信頼区間(CI):11.4~12.7]。 傾向マッチ分析[大出血イベント群:5万6,078件、対照群(非出血群):22万4,312件]では、大出血と院内死亡の関連が示された[院内死亡率:5.26 vs 1.87%、リスク差:3.39%(95%CI:3.20~3.59)、NNH:29(95%CI:28~31)p<0.001]。 大出血と院内死亡の関連は、手技前の出血リスクが低~高の群のすべてで認められた[低リスク群の院内死亡率:1.62 vs 0.17%、リスク差:1.45%(95%CI:1.13~1.77)、NNH:69(95%CI:57~88)、p<0.001、中リスク群の院内死亡率:3.27 vs 0.71%、リスク差:2.56%(95%CI:2.33~2.79)、NNH:39(95%CI:36~43)、p<0.001、高リスク群の院内死亡率:8.16 vs 3.45%、リスク差:4.71%(95%CI:4.35~5.07)、NNH:21(95%CI:20~23)、p<0.001)]。 出血部位別の解析では、アクセス部位[院内死亡率:2.73 vs 1.87%、リスク差:0.86%(95%CI:0.66~1.05)、NNH:117(95%CI:95~151)、p<0.001]および非アクセス部位[院内死亡率:8.25 vs 1.87%、リスク差:6.39%(95%CI:6.04~6.73)、NNH:16(95%CI:15~17)、p<0.001]のいずれにおいても出血と院内死亡の関連を認めたが、NNHは非アクセス部位で低いという違いがみられた。 著者は、「PCIの合併症としての出血の頻度は1.7%と低かったが、出血関連の院内死亡率は12.1%と推定された。すべての出血リスク群で出血と院内死亡の関連を認めたが、死亡リスクは高出血リスク群および非アクセス部位出血群で実質的に高く、1件の院内死亡に要する出血件数はそれぞれ21、16と低値を示した」とまとめている。

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重度皮膚有害反応の医薬品特定にパッチテストが有用・安全

 重度皮膚有害反応(severe cutaneous adverse drug reactions:SCAR)の医薬品特定にパッチテストが有用かつ安全であることが、フランス・ナンシー大学のA. Barbaud氏らによる多施設共同研究の結果、示された。検討されたのは3つの主要なSCARである、急性汎発性膿疱性発疹症(AGEP)、薬剤性過敏症症候群(DRESS)、スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症(SJS/TEN)であった。British Journal of Dermatology誌2013年3月号の掲載報告。 パッチテストは、遅延型薬物過敏症を再現できる可能性があるが、患者の医薬品に対する中程度の再曝露を伴う可能性がある。著者らは、SCARを引き起こしている医薬品の特定に、パッチテストが有用であるかについて調べた。 複数施設において、発症から1年以内のDRESS、AGEP、SJS/TENで紹介されてきた患者を対象とした。SCAR発症前2ヵ月から前週まで服用していたすべての医薬品について調べた。 主な結果は以下のとおり。・被験者は134例で、男性が48例、平均年齢は51.7歳であった。パッチテストに用いられた医薬品は24種類であった。・パッチテストで陽性反応が確認されたのは、DRESS患者64%(46/72例)、AGEP患者58%(26/45例)、SJS/TEN患者24%(4/17例)であった。・再発が起きたのはAGEPの1例のみであった。・パッチテストの有用性は、医薬品の種類およびSCARの種類により異なった。たとえば、カルバマゼピン(商品名:テグレトールほか)は、DRESS症例では11/13例で陽性反応がみられたが、SJS/TEN症例では0/5例であった。・陽性反応の頻度が高かったのは、βラクタム系抗菌薬(22例)、プリスチナマイシン(11例)、DRESS症例におけるプロトンポンプ阻害薬(5例)であった。・一方で常に陰性であったのは、アロプリノール(商品名:ザイロリックほか)とサラゾスルファピリジン(同:サラゾピリンほか)であった。・DRESS患者18例のうち8例では、ウイルス再活性化とパッチテストの陽性反応が認められた。また、DRESS患者では、複数の薬品の有害反応の頻度が高く(症例のうち18%)、長年にわたって感作が持続していた。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(83)〕 運動療法の効果:深層を読む

本研究は、重度の精神疾患の患者(統合失調症あるいは統合失調感情障害58.1%、双極性感情障害22.0%、大うつ病12.0%)で地域の精神科リハビリテーションに外来で参加している291名を対象とし、無作為に介入群(グループでの体重管理のセッション、個人での体重管理のセッション、グループでの運動セッション)と対照群(健康一般の講義)に分け、体重減少をメインアウトカムとして6、12、18ヵ月で評価したものである。 結果は、もちろん介入群での優位が示されている。18ヵ月の時点での両群の体重減少の差は3.2kgであったらしい。 確かに、一部の非定形抗精神病薬(上記全ての疾患で高い確率で使用される)においては、肥満や糖尿病が最も注意するべき有害事象である。高度に肥満した精神疾患患者を診察したことのある各科医師は多いのではないかと思う。 そのような危険な薬は使わなければいい、という意見もあるかもしれないので背景を説明すると、統合失調症は、脳内のドパミン過剰が病態と関連しているという古典的仮説があり、その治療薬として開発(発見)されたハロペリドールなどの定型抗精神病薬(Typical Antipsychotics;第1世代抗精神病薬(First Generation Antipsychotics)ともいう )は強力なドパミン遮断作用を持っていた。しかし脳内のドパミン受容体を遮断すれば、まさにパーキンソン病と同じ病態になるので、薬剤性パーキンソン症候群が出現する。かつて精神病の治療は、このパーキンソン症候群との闘いであった。パーキンソン症候群は、誤嚥・転倒リスクを高めるのみならず、独特の歩行障害や顔貌を呈するため、偏見を助長するという悪影響もあり、きわめて有害である。 パーキンソン症候群のリスクを少なくしたものが、非定型抗精神病薬(Atypical Antipsychotics;第2世代抗精神病薬(Second Generation Antipsychotics)ともいう )である。当初は肥満や糖尿病に関してはそれほど注目されていなかったが、徐々に致死的な有害事象であることが判明した。しかし両者の全般的な安全性の差は明らかであり、今ではほぼすべてのガイドラインの選択肢が非定型薬に置き換わったといっても過言ではない。これにより肥満が精神科臨床のきわめて重要な論点となったのである。肥満がなぜこのように重大なこととして取り上げられたのか、お分かりいただけただろうか。 さて、以上で一般的な解説は終わりであるが、はたしてこの論文は「薬剤の有害事象と関連して注目されている肥満が、行動療法で治った」というだけのものなのであろうか?それに、この介入は激しすぎないか?個人の特性に合わせた個別のセッションをして、さらに部活まですれば、何もしない対照に比べて痩せるのが当たり前ではないだろうか?また、著者らも書いているが、現実的にこのプログラムを行うのは経済的にも無理だろう。 ここからは私個人の意見だが、この論文の隠れた重要知見は、「一般人口での類似プログラムと比較すると、一般人口では6ヵ月で効果が無くなるのに対して、重度精神疾患では18ヵ月減少し続けた」という部分ではないかと思う。 つまりこの論文は社会的排除と健康格差の論文として劇的に読み替えることができるのではないか。一般人口では6ヵ月で息切れした効果が18ヵ月も続いているのは、伸び代が大きいということである。これは精神疾患という偏見によって社会的に排除された集団においては、失われた健康も大きいと考えられないか。 イメージしてみよう、精神疾患が重度で働くことができず(経済的貧困、社会参加の減少)、住居も不安定となり、偏見のため外出機会も減り、運動機会も失われ、肥満が悪化し、生活習慣病に罹患し、人的ネットワークが小さくなり、(青年期に発症したものは)教育機会も制限されていて、遺伝負因もあり、これらは世代間で再生産される・・・まさにこれは「複合的不利」(英国ブレア政権の社会的排除対策室の定義等より)である。だからこそ、介入はとても効いたのではないか。 つまりこの集団の方が、専門家と自分の健康について語り合い、仲間とスポーツをするということは、とても貴重な、前向きな体験(大きく言えば社会的包摂)であったのではないだろうか。 そう考えると、この介入前後の主観的ソーシャルサポートの変化などは測定されていないであろうか、とても気になる。(研究全体ではなく本文のみを読んでのコメントです)  この論文から、小生は現代文明の大きな潮流を感じた。論文は深読みするのもまた面白い。

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下腿潰瘍治癒を促す新たな抗菌薬療法として、PDTが有望

 慢性下腿潰瘍や糖尿病性足潰瘍の創傷部の細菌コロニーへの光線力学的療法(PDT)は、創傷部の治癒をもたらす有意な滅菌効果があり、新たな抗菌薬療法として有望視されることが、英国・ダンディー大学ナインウェルズ病院のS. Morley氏らによる第IIa相無作為化プラセボ対照試験の結果、報告された。耐性菌の問題が増す中で、新たな抗菌薬療法として開発されたPDTは、光線活性化による滅菌作用によって広範囲の抗菌スペクトラムを発揮し、さまざまな臨床的適用が可能とされている。British Journal of Dermatology誌2013年3月号(オンライン版2013年1月18日号)の掲載報告。 研究グループは、慢性下腿潰瘍または糖尿病性足潰瘍の細菌コロニーへのPDT適用(光増感剤PPA904使用)により細菌数が減少するかどうか、および創傷治癒をもたらすかどうかを検討した。 慢性下腿潰瘍患者16例と糖尿病性足潰瘍患者16例を、それぞれ8例ずつ盲検下にてPDT治療群とプラセボ群に割り付けた。細菌数の量的測定を行った後、15分間、創傷部に局所的にPDTまたはプラセボ治療が行われ、直後に赤い光線による50Jcmからの照射を行い、再び創傷部の微生物学的定量測定が行われた。 創傷部について、治療後最長3ヵ月間追跡した。 主な結果は以下のとおり。・全被験者(32例)は、3ヵ月超の潰瘍症状、10cm超の細菌コロニーを有していた。・PDT群の忍容性は良好で、疼痛、その他の安全性上の問題に関する報告はなかった。・またプラセボ群と比べてPDT群では、治療後の細菌数の有意な減少が認められた(p<0.001)。・3ヵ月後の時点で、慢性下腿潰瘍でPDT治療を受けた患者では50%(8例のうち4例)が完全な治癒を示した。一方でプラセボ群では12%(8例のうち1例)であった。・以上のように、創傷治癒に向かわせる明らかな傾向が観察され、より多数の患者による、さらなる検討が妥当であることが示された。

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