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CRT-D早期介入vs. ICD単独の長期生存ベネフィットは?/NEJM

 心筋症で軽症心不全、左室機能不全を有する患者への、両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の早期介入による長期生存ベネフィットは、左脚ブロックを有する患者において有意であることが明らかにされた。米国・ロチェスター大学医療センターのIlan Goldenberg氏らが、心臓再同期療法による多施設共同自動除細動器埋め込み試験(MADIT-CRT)の参加者を長期(7年)追跡した結果、報告した。MADIT-CRTの評価(2.4年)では、CRT-Dの早期介入は植込み型除細動器(ICD)単独群と比較して左脚ブロック患者における心不全イベントを有意に抑制したことが報告されていた。NEJM誌オンライン版2014年3月30日号掲載の報告より。MADIT-CRTの中央値2.4年追跡後、中央値5.6年追跡を延長し評価 研究グループは、CRT-D早期介入vs. ICD単独を検討したMADIT-CRT被験者の追跡を延長し、CRT-Dの長期生存ベネフィットを評価する検討を行った。 MADIT-CRTは、2004年12月22日~2009年6月22日に行われ、米国88施設から1,271例、欧州・イスラエル・カナダの24施設から549例の合計1,820例が登録されて行われた無作為化試験だった。被験者は、虚血性(NYHA心機能分類IまたはII)/非虚血性心筋症で、LVEF 30%未満、QRS幅130msec以上、またICD治療ガイドライン適格の患者であった。 試験終了後、1,691例の生存患者について2010年9月10日まで追跡を延長し(第1相)、さらに同日以降854例を追跡し2013年9月時点で評価した(第2相)。 追跡期間はMADIT-CRTが中央値2.4年、試験後追跡延長期間の中央値は5.6年だった。全分析報告は、intention-to-treatをベースに行われた。左脚ブロックCRT-D群の累積全死因死亡ハザード比は0.59 最初の登録時から追跡7年時点において、累積全死因死亡は、CRT-Dを受けた左脚ブロックのある患者で有意に低かった。同患者の同死亡率は18%であったのに対し、ICDを受けた患者では29%であり、左脚ブロックCRT-D群の補正後ハザード比は、0.59(95%信頼区間[CI]:0.43~0.80、p<0.001)だった。 また、左脚ブロックCRT-D患者の長期生存ベネフィットは、性別や心筋症の原因、QRS幅の違いによる有意差はみられなかった。 一方、非左脚ブロック患者では、CRT-Dを受けたことによる長期生存ベネフィットが認められないばかりか、有害である可能性も示唆された。非左脚ブロックCRT-D群の補正後ハザード比は、1.57(95%CI:1.03~2.39、p=0.04)だった(QRS幅の所見による治療の相互作用p<0.001)。

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高齢者への向精神薬投与、認知症発症リスクと強く関連

 向精神薬の使用はその後の認知症発症に影響を及ぼすのだろうか。国立台湾大学のFei-Yuan Hsiao氏らは、この仮説を検証するために、国民健康保険データベースに基づきpropensity scoreを用いた症例対照研究を行った。その結果、向精神薬の曝露は将来の認知症発症リスクと強く関連することが示された。Journal of the American Medical Directors Association誌2014年3月27日号の報告。 対象は認知症高齢者3万2,649人および非認知症高齢者3万2,649人。向精神薬(抗不安薬、抗精神病薬、睡眠薬、抗うつ薬)の使用、向精神薬の1日投与量、認知症の診断、propensity scoreを測定した。 主な結果は以下のとおり。・向精神薬の使用は非使用者と比較して、将来の認知症発症のより高いオッズと関連していた(オッズ比[OR] 3.73、95%信頼区間[CI]:3.59~3.88)。・重要なことは、認知症発症は向精神薬への長期的な曝露と強く関連していた。曝露期間別のORは90日未満 3.14(95%CI:3.01~3.28)、90~180日 5.48(95%CI:5.07~5.93)、180日超 7.54(95%CI:6.73~8.44)であった。・向精神薬の累積投与量も同様に将来の認知症発症リスクとの強い関連が確認された。・そのため、向精神薬を高用量で使用している高齢者、とりわけ2種類以上の向精神薬を併用している高齢者については、注意深く観察することが強く推奨される。・さらに、向精神薬を使用中の高齢者では、適切なタイミングで認知機能を評価することが非常に重要である。関連医療ニュース 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット 高齢者のせん妄に対する抗精神病薬のリスクは? 認知機能への影響は抗精神病薬間で差があるか?

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メロンアレルギーの主要アレルゲンを確認

 近年みられるようになった接触アレルギーとして、植物性食品との関連がある。口腔アレルギー症候群は、果物アレルギーの最も特徴ある症状の1つであり、全身性反応も引き起こす。植物性食品アレルギーは、花粉アレルギーとともに増大してきており、同様に果物が引き起こすアレルギー性の蕁麻疹も増大しているといわれる。こうした背景を踏まえて、スペイン・フエンラブラダ大学病院のGandolfo-Cano M氏らは、1つの特異的アレルゲンとしてメロンの皮が接触蕁麻疹の原因であることを確認する検討を行った。British Journal of Dermatology誌2014年3月号(オンライン版2013年10月31日号)の掲載報告。メロンアレルギーの原因はメロンの皮の脂質転写蛋白質 検討は、メロンの皮に触れた後に蕁麻疹を呈した14例のメロンアレルギー患者を評価して行われた。 メロンの皮からエキスを抽出し、メロンアレルギー患者の血清を用いて免疫ブロット分析を行った。また、IgEバインディング領域の分子的特徴を質量分析にて描出した。 メロンの皮の脂質転写蛋白質(LTP)を精製し、阻害試験および接触テストを行い、精製アレルゲンに対するIgE反応を確認した。 メロンアレルギー患者14例を評価した主な結果は以下のとおり。・全患者の血清免疫ブロット分析にて、IgEバインディング領域は約8~9kDaであり、LTPとして確認された。・メロンの皮のLTPは、2つのクロマトグラフィステップにて精製された。・阻害試験によりLTPはメロンの皮による接触皮膚炎患者において主要なアレルゲンであることが確認された。・メロンの皮のLTPとの接触テストは、5例のメロンアレルギー患者で行われた。全例が陽性反応を示し、接触部位にかゆみを伴う紅斑、発疹を認めた。・本検討において、メロンの皮のLTPは、主要なアレルゲンであり、接触アレルギーの原因であることが確認された。・知見は、メロンアレルギー患者の診断と治療の改善に寄与する可能性がある。

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Dr.香坂の循環器診療 最前線

第10回「忘れられがちな心臓疾患・・・心膜疾患と右室」第11回「この方、手術しても大丈夫?…周術期管理の真髄」第12回「みんなの心エコー」 循環器領域の診断・治療法について、最新の研究結果をカバーしながら疾患概念の本質(コア)を押さえる大好評の循環器シリーズ。最終巻では、3つのテーマについて解説します。「心膜疾患」では、心タンポナーデを中心に血行動態のしくみを身体所見に絡めて解説します。「周術期管理」では、術前評価のポイントやカテーテル手技の考え方を大きく変えた臨床試験(CARP試験)の本質と循環器内科医としての考え方や心構えについて、鋭く迫ります。そして「心エコー」では、原理を復習し、様々な評価などの基本を動画を活かして解説します。第10回「忘れられがちな心臓疾患・・・心膜疾患と右室」今回は、忘れられがちな「心膜疾患」にフォーカスを当て、心タンポナーデを中心に「心膜疾患」を血行動態のしくみを身体所見に絡めて解説していきます。タンポナーデと心嚢液貯留の境界線、心タンポナーデに特徴的な「奇脈」の測定ポイントや、心タンポナーデのエコーによる評価のポイントなどを復習していきます。また、右室そのものの疾患に関して、右室の重要性を“心原性ショック”、“移植待機症例”という2つのシナリオから、右室梗塞やStrain Patternといった新しい概念を紹介などしながら考えていきます。第11回「この方、手術しても大丈夫?…周術期管理の真髄」循環器内科に依頼がある中の一つに、「この方を手術しても大丈夫かどうか?」という依頼があります。最近、循環器内科の中でも考え方が変わってきているので、その具体的な内容を含めて説明します。香坂先生が実際に経験した症例をベースに、、術前評価に必要な新しいガイドラインの解説とそのポイント、そしてこれまでの循環器内科の考え方を大きく変えた臨床試験(CARP試験)の本質と循環器内科医としての考え方や周術期管理における心構えについて、鋭く迫っていきます。第12回「みんなの心エコー」大好評の循環器シリーズも最終回。最後に取りあげるテーマは「心エコー」です。心エコーの原理を復習し、プローブを充てる位置や角度の切り替えなどで画像を三次元に再構成する壁運動の評価や、弁や壁の異常を発見できるドップラー効果を用いた血流評価、右室、大動脈解離、卵円孔開存などの形態評価など、心エコーの基本を症例動画を用いて解説します。さらにエコーを適切に利用するためにはどのようなデータを元に考えていけば良いかを学ぶことで、さらにその先へ進むヒントも示します。

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スタチン投与対象者はガイドラインごとに大きく異なる/JAMA

 臨床ガイドラインによって、スタチン投与の対象となる人は大きく異なることが判明した。2013年に発表された新たな米国心臓病学会と米国心臓協会(ACC/AHA)ガイドラインを順守した場合には、55歳以上男性コホートの約96%に相当する一方で、従来の米国高脂血症治療ガイドライン(Adult Treatment Panel III:ATP III)に則した場合は、スタチン投与の対象者は男性の52%に留まるという。オランダ・エラスムス大学医療センターのMaryam Kavousi氏らが、約5,000例のコホート試験を基に分析して明らかにした。JAMA誌2014年4月9日号掲載の報告より。「Rotterdam Study」の被験者4,854例を対象に各臨床ガイドラインを適用 研究グループは、オランダのロッテルダム在住の55歳以上に行った住民ベースの前向きコホート試験「Rotterdam Study」の被験者4,854例を対象に、各臨床ガイドラインを適用した場合のスタチン投与対象者を割り出すなどの検討を行った。被験者の平均年齢は、65.5歳(SD 5.2)だった。 結果、同集団に対してACC/AHAガイドラインを順守した場合、スタチン投与の対象となったのは男性の96.4%(1,825例)と女性の65.8%(1,523例)だった。 一方、ATP IIIガイドラインを適用した場合、男性52.0%(985例)、女性35.5%(821例)に、欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインでは、66.1%(1,253例)、39.1%(906例)と、いずれもACC/AHAガイドラインとの間に大きな格差があった。3種ガイドラインのリスクモデル、イベント発生を過剰予測 また、ACC/AHAリスクモデルでは、男性の動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)イベント発生率の予測値は21.5%だったのに対し、実際の累積ASCVDイベント発生率は12.7%、女性ではそれぞれ11.6%と7.9%と、予測値が実測値を上回っていた。ATP IIIモデル、ESCモデルでも、冠動脈性心疾患(CHD)やアテローム動脈硬化性心血管疾患(CVD)死亡イベントについて、同様の過大予測が認められた。 ACC/AHAリスクモデルのASCVDに関するC統計量は、男性が0.67、女性が0.68だった。ATP IIIモデルのCHDに関するC統計量は、それぞれ0.67と0.69、ESCモデルのCVD死亡に関するC統計量は、それぞれ0.76と0.77と、いずれも改善の余地があったという。

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治療抵抗性高血圧に対する効果の比較、腎除神経術vs擬似的手技/NEJM

 治療抵抗性高血圧に対する腎デナベーション(腎除神経術)の降圧効果を、盲検下でプラセボ(擬似的手技:シャム)と比較した「SYMPLICITY HTN-3」試験の結果が、同研究グループの米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDeepak L. Bhatt氏らにより発表された。6ヵ月時点の評価において、腎除神経術による有意な降圧は認められなかったという。先行研究の非盲検試験では、カテーテルベースの腎除神経術の降圧効果が示唆され、現在80ヵ国以上で臨床導入されている。しかし先行研究は、サンプルサイズが小さく、限定的な24時間血圧の評価で、盲検化不足、シャム対照の不足といった、試験結果の信頼性を損なう多くの点が散見されていた。本試験は、先行研究の方法論の問題を解消するようデザインされた、前向き単盲検無作為化シャム対照試験であった。NEJM誌オンライン版2014年3月29日号掲載の報告より。全米88施設で535例対象、前向き単盲検無作為化試験で検討 SYMPLICITY HTN-3試験は、18~80歳の治療抵抗性高血圧患者を無作為に2対1の割合で、腎除神経術群とシャム群に割り付けて行われた。無作為化以前に患者は、利尿薬を含む3剤以上併用の降圧療法(最大投与量あり)を受けていた。 主要有効性エンドポイントは、6ヵ月時点で評価した診察室血圧の変化で、副次有効性エンドポイントは、24時間血圧平均値の変化であった。 主要安全性エンドポイントは、主要イベントの複合だった(死亡、末期腎不全、末端臓器障害による塞栓症イベント、腎血管系合併症の複合、または1ヵ月時点の高血圧クリーゼ、あるいは6ヵ月時点での新規の70%以上の腎動脈狭窄)。 2011年10月~2013年5月に全米88施設で、1,441例がスクリーニングを受け、そのうち535例(37.1%)が試験に登録され無作為化を受けた(腎除神経術群364例、シャム群171例)。6ヵ月時点の診察室血圧、24時間血圧とも有意差示されず、安全性も 結果、6ヵ月時点の収縮期血圧値の変化(±SD)は、腎除神経術群-14.13±23.93mmHg、シャム群-11.74±25.94mmHgで、両群ともベースライン時から有意な変化が認められた(p<0.001)。腎除神経術群のシャム群に対する差は-2.39mmHgで、群間の有意差は認められなかった(95%信頼区間[CI]:-6.89~2.12mmHg、優越性マージン5mmHgのp=0.26)。 24時間血圧平均値の変化(収縮期血圧)は、それぞれ-6.75±15.11mmHg、-4.79±17.25mmHg、群間差は-1.96mmHgで有意差は認められなかった(95%CI:-4.97~1.06mmHg、優越性マージン2mmHgのp=0.98)。 同様に安全性についても、主要有害イベントの発生は腎除神経術群5/361例(1.4%)、シャム群1/171例(0.6%)で、群間の有意差は認められなかった(%差のp=0.8)。

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自殺リスクの高いパーキンソン病患者の特徴は

 トルコのパーキンソン病患者において、若年発症、罹病期間、うつ、衝動制御障害(ICD)が自殺念慮の高いリスクと関連していることが、トルコ・Erenkoy Mental Health and Neurology Training and Research病院のBetul Ozdilek氏らによって明らかとなった。Neuropsychiatric disease and treatment誌2014年3月26日号掲載の報告。 本研究は、トルコのパーキンソン病患者において、自殺念慮と自殺企図を予測する因子を調査することを目的とした。 120例のパーキンソン病患者を対象とした。臨床所見は統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)を基に評価を行った。重症度はホーエン・ヤール(H&Y)分類、障害の程度はSchwab & England ADLスケールを用いて評価を行った。精神鑑定は、精神障害の診断・統計マニュアル(DSM-IV)第1軸障害に基づいた構造化面接を基準とし、一人の精神科医によって行われた。うつの重症度は、ハミルトンうつ病評価尺度を用いて評価した。自殺念慮と自殺企図については、患者が生存期間中に経験した場合を「あり」とした。自殺リスクを評価するために、自殺確率尺度を用いた。データは、自殺念慮と自殺企図に関連する変数を識別するために、ロジスティック回帰モデルによって解析した。 主な結果は以下のとおり。・ロジスティック回帰分析の結果、教育レベル、病気の発症年齢、罹病期間、うつ病、および過去にICD行動が認められることが、自殺念慮の有意な予測因子であった。・とくに、うつ病および過去にICD行動を認めた患者では、自殺念慮リスクはそれぞれ5.92倍、4.97倍に増加した。・自殺企図患者は一人もいなかったが、パーキンソン病患者のうち11.6%(14/120例)の患者が生涯の間に自殺念慮を経験していた。

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特発性肺線維症(IPF)への挑戦

 2014年4月3日(木)都内にて、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社主催のメディアセミナー「呼吸器領域における難病への挑戦~特発性肺線維症(IPF)~」が開催された。当日は、自治医科大学呼吸器内科 教授 杉山幸比古氏、東邦大学医学部呼吸器内科学分野 教授 本間 栄氏が、特発性肺線維症(以下IPF)について、それぞれ疫学・病態、治療の進歩に関して講演した。 杉山氏は、IPFの疫学と病態について紹介した。IPFは特発性間質性肺炎に属するが、その中でも症例数が最も多く、また予後が不良な病態である。本邦におけるIPFの発症率はおおよそ10万人対2人、有病率は10万人対10人であり、全国で1万3,000人以上の患者がいるとされる。杉山氏は実際には、それ以上の患者がいるとも考えられると述べた。 IPFの生存中央値は鑑別診断後35ヵ月であり、予後不良のがんと大きな差はない。とはいえ、進行パターンはさまざまで、緩除に進行するものもあれば急速に進行するケースもある。主な症状は労作時呼吸困難、乾性咳嗽であるが、初期には年齢のせいとされることも少なくないという。IPFの死亡原因は慢性呼吸不全、急性増悪、肺がんが多くを占めるが、重要な問題として挙げられるのが、急性増悪と肺がんの合併といえる。急性増悪では、緩除に進行していたケースが急激に死に至ることも少なくなく、IPF患者では通常の喫煙者に比べ数十倍肺がんを発生しやすいという。 本間氏はIPFの治療について紹介した。IPFは特発性間質性肺炎の中でも最も治療反応性が低く、ほかの病型とは異なった治療戦略がとられる。IPFの治療ゴールは、生存期間の延長、呼吸機能の維持・低下の抑制、急性増悪の予防である。 治療法としては、酸素療法、呼吸リハビリテーション、薬物療法が主なものである。呼吸リハビリテーションについては近年、運動耐容能、症状、健康関連QOLの改善など、その有効性が明らかになってきている。 薬物療法については、従来ステロイドパルス療法が中心であったが、近年N-アセチルシステイン(NAC)、ピルフェニドンの有効性が明らかになってきている。さらに、本年5月に開催されるATS(米国胸部学会)では、INPULSIS試験(チロシンキナーゼ阻害薬)、ASCEND試験(ピルフェニドン)、PANTHER試験(NAC単独療法)などの臨床試験も発表予定であり、IPFの薬物療法に関するエビデンスが一気に充実してくると期待される。

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てんかん患者の精神疾患有病率は健常人の8倍

 アイルランド・ボーモント病院のMaurice J Clancy氏らが行ったシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、てんかん患者において精神疾患を有する人は最大6%存在し、そのリスクは健常対照と比較して8倍高かったことが報告された。また、側頭葉てんかん患者で7%と、とくに高かったことも判明した。てんかんは、精神疾患のリスク因子であると思われてきたが、著者は、「今回明らかになった関連は、さらなる検討により、精神疾患の病因学的な手がかりが得られる可能性を示唆するものである」とまとめている。BMC Psychiatry誌オンライン版2014年3月13日号の掲載報告。 リスクとしてのてんかんのエフェクトサイズについては、試験方法の違いやてんかんの診断基準の変化などもあり、試験間の所見にはばらつきがみられる。研究グループは、システマティックレビューとメタ解析にて、てんかん患者の精神疾患有病率、ならびに対照群と比較した推定リスクを評価する検討を行った。2010年9月時点でPubMed、OVIDMEDLINEなどの電子データベースをソースに文献検索を行った。検索キーは、有病率、発生率、割合、率、精神疾患、統合失調症、統合失調様障害、てんかん、発作、側頭葉てんかんであった。 主な結果は以下のとおり。・参考文献、文献参照リストも含めた検索の結果、215論文が特定された。そのうち58本(27%)がレビューに関連したデータを有していた。157本はさらなる詳細評価の結果、除外された。・レビュー包含試験のうち10%は、住民ベースの試験であった。・対照と比較した、てんかん患者の精神疾患リスクに関するプールオッズ比は、7.8であった。・てんかん患者における精神疾患のプール推定有病率は、5.6%(95%CI:4.8~6.4%)であった。・試験間の不均一性は大きかった。・側頭葉てんかん患者の精神疾患有病率は7%(同:4.9~9.1%)であった。てんかん患者の発作間欠期の精神疾患有病率は5.2%(同:3.3~7.2%)、発作後の精神疾患有病率は2%(同:1.2~2.8%)であった。関連医療ニュース 扁桃体腫大を伴う側頭葉てんかんの特徴は:国立精神・神経医療研究センター てんかん患者の頭痛、その危険因子は?:山梨大学 難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か

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進行NSCLC1次治療のプラチナダブレット:VNR+CDDP vs DTX+CDDP

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、VNR+CDDP(VC療法)とDTX+CDDP(DC療法)の効果の同等性については議論の残るところである。中国・安徽省立医院のGuodong Shen氏らは、進行NSCLCの1次治療におけるVCとDC療法の比較を目的としてメタアナリシスを行った。Molecular and Clinical Oncology誌2014年1月2日号の掲載報告。 論文は、PubMed、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、EMBASE、Chinese Biomedical Literature database(CBM)を通し2013年5月分まで検索され、9件の無作為比較試験(総患者数1,886例)が分析された。エンドポイントは、全奏効率、生存率と毒性であった。 主な結果は以下のとおり。・奏効率はDC群で有意に高かった(RR=0.83、95%CI:0.73~0.95、p=0.007)。・2年生存率はDC群で有意に高かった(RR=0.65、95%CI:0.50~0.84、p=0.001)。・1年生存率は同等であった(RR=0.90、95%CI:0.81~1.01、p=0.07)。・毒性については、VC群でグレード3/4の白血球減少(OR=1.26、95%CI:1.02~1.54、p<0.05)、貧血(OR=3.40、95%CI:2.42~4.76、p<0.05)、嘔吐(OR=1.58、95%CI:1.14~2.20、p<0.05)が多く、DC群でグレード3/4の下痢が多かった(OR=0.31、95%CI:0.18~0.55、p<0.0001)。グレード3/4の好中球減少、血小板減少、悪心については両群間で有意な差はなかった。 DC療法がVC療法と比較してQOLを改善するというエビデンスはないが、このメタアナリシスではDC療法の進行NSCLCの1次治療としての利点が示された。近年、がん細胞シグナル伝達研究の進化により、分子標的治療が新たな治療選択肢として現れた。著者らは、将来、これらのレジメンは標的治療を追加する際の潜在的プラットフォームとなる可能性があるとしている。

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慢性腰痛に対する超音波治療のエビデンスの質は?

 慢性腰痛の治療において超音波は最も広く用いられている電気物理的治療法の1つであるが、超音波治療が慢性腰痛患者の疼痛あるいはQOLを改善するという質の高いエビデンスはないことが、イラン・テヘラン大学のSafoora Ebadi氏らによるシステマティックレビューの結果、明らかとなった。Cochrane Database of Systematic Reviews誌オンライン版2014年3月14日号の掲載報告。 研究グループは、2013年10月、CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、PEDroおよびPsycLITデータベースを用いて検索し、慢性腰痛患者を対象に超音波治療とほかの治療を比較した小規模な無作為化比較試験7件(計362例)をレビューに組み込んだ。 主な結果は以下のとおり。・超音波治療は、短期的にはプラセボと比較して腰部特異的機能を改善した(標準化平均差[SMD]:-0.45、95%信頼区間[CI]:-0.84~-0.05、エビデンスの質:中)。・超音波治療による短期的な疼痛の改善は、プラセボと同程度であった(0~100点満点で評価の平均差[MD]:-7.12、95%CI:-17.99~3.75、エビデンスの質:低)。・超音波治療+運動療法は、運動療法のみと比較して、短期的な疼痛の改善(0~50点満点で評価のMD:-2.16、95%CI:-4.66~0.34)、または機能障害の改善(%評価のMD:-0.41、95%CI:-3.14~2.32)のどちらも認められなかった(エビデンスの質:低)。・超音波治療をプラセボのみまたは運動療法のみと比較した研究では、治療またはQOLに関する全体的な満足度は報告されなかった。・短中期的には、超音波治療より脊椎徒手整復術のほうが疼痛や機能障害を減少させた(エビデンスの質:低)。・超音波治療と比較しフォノフォレーシスによりSF-36が改善した(エビデンスの質:非常に低い)。

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うつ病患者、SSRI治療開始1年以内に約半数がセカンド治療に

 大うつ病性障害(MDD)患者において、ファーストライン治療でSSRI投与を受けた人のうち、約半数がセカンドライン治療を受けており、その多くがアドオン療法を受けていることが明らかになった。米国・イーライリリー社のSusan Ball氏らが診療報酬支払請求データベースを分析して報告した。ただしセカンドライン治療は、残存症状の寛解を目標としたものと思われ、著者らは「今回の分析結果は、寛解を達成するために、医師と患者がもっとよりよきパートナーとなり付加的介入を行う必要があることを示唆するものであった」とまとめている。Annals of General Psychiatry誌オンライン版2014年3月19日号の掲載報告。 本検討は、2010年にSSRI単独治療を開始したMDD患者の、治療パターン、治療コストとセカンドライン治療との関連を調べることを目的としたものであった。MDDの診断を受け、SSRI単独治療を受けており、初回処方日が特定できた患者の支払請求データベースを分析して行われた。被験者は、18歳以上で、初回処方特定日より1年前(pre-index)から同1年後(pro-index)の間の治療が保険でカバーされており、pre-index期間中に抗うつ薬の処方を受けていなかった患者であった。患者特性、SSRI開始薬、セカンド治療で最も処方頻度が高かった薬、および年間医療費を分析した。 主な結果は以下のとおり。・分析には5,012例の患者が組み込まれた。女性が65.2%、平均年齢は41.9歳であった。・最も処方頻度が高かったSSRIは、シタロプロム(30.1%)、セルトラリン(27.5%)であった。・SSRI初回処方特定日後の1年間(pro-index)に、セカンドライン治療を受けた人は52.9%であった。・セカンドライン治療は、アドオン療法の頻度がスイッチ療法の2倍で、アドオン療法において最も多くみられた処方薬は、抗不安薬(40.2%)および抗うつ薬(37.1%)であった。・セカンドライン治療(アドオンまたはスイッチ)を受けた患者は、SSRI治療を継続した患者または治療を中断した患者と比較して、年間医療費が高かった。・なお本検討は、支払請求データベースを用いたもので、投薬量や臨床症状、有害事象、治療反応に関する情報はなく、限定的なものであった。関連医療ニュース 抗うつ薬が奏効しないうつ病患者への抗精神病薬追加投与は本当に有効か SSRI/SNRIへの増強療法、コストパフォーマンスが良いのは 各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学

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Vol. 2 No. 2 心房中隔欠損症の最新治療戦略

赤木 禎治 氏岡山大学病院循環器疾患集中治療部はじめに国内におけるAMPLATZER® Septal Occluderを用いた心房中隔欠損症(atrial septal defect:ASD)に対するカテーテル治療は、治療症例数が3,500例を超え、成績も安定してきた。治療経験が増加していく中で、開始当初の小児を中心とした治療対象から、成人さらに高齢者までの幅広い年齢層が治療対象になってきた。本症は年齢によってその臨床像が大きく異なるため、特に成人期の患者では不整脈を中心とした心合併症に対する対応が重要となる。カテーテル治療に伴う合併症も報告されており、治療適応と合併症に対する知識と対応策を十分に理解しておく必要がある。カテーテル治療では経食道エコーを主体とする心エコー図の役割は極めて大きく、治療の安全な実施と確実な成功を直接左右する要素となる。心房中隔欠損症に対するカテーテル治療の歴史AMPLATZER® Septal Occluderはニッケル・チタン合金からできた形状記憶合金(Nitinol®)のメッシュで構成された円形の閉鎖栓である。金属メッシュ内部には血栓形成性を高めるポリエステル製の布製パッチが縫着されており、より速やかな完全閉鎖を導くことが可能である。閉鎖栓の末端は、ねじ状の接続部でデリバリーケーブルとつながっているため、閉鎖術中に閉鎖栓の位置を変更したり、カテーテル内に回収したりすることが可能である。日本への導入は欧米に比べ大幅に遅れたが、2005年に承認され2006年からは保険診療として収載された。2012年末までに国内での留置実績は約3,500例であり、年々症例数も増加している。国際的にはすでに10万例をはるかに超える実績があり、安定した治療成績が実証されている1)。海外にはこのほかにもゴアテックス膜とNitinol®ワイヤーから構成されるHELEX® Device、その改良型となるGORE® Septal Occluder、AMPLATZER®Septal Occluderと同じNitinol®メッシュで構成されるOcclutech®などさまざまなデバイスが存在する。カテーテル治療の適応基準AMPLATZER® Septal Occluderを用いたASDのインターベンション治療対象は、2次孔型心房中隔欠損症で、(1)欠損孔のバルーン伸展径が38 mm以下、(2)肺体血流比が1.5以上、(3)前縁を除く欠損孔周囲縁が5mm以上あるもの、または(4)肺体血流比が1.5未満であってもASDに伴う心房性不整脈や奇異性塞栓症を合併するもの、である。高度の肺高血圧を合併する例などASDの治療そのものが適応にならない場合は、インターベンション治療も適応とはならない。欠損孔の正確な部位診断と欠損孔周囲縁の評価には、経食道エコーによる評価が重要である2)。欠損孔周囲縁の評価で常に問題となるのは、大動脈周囲縁(前上縁)欠損例に対する適応判断である。経食道心エコー図で大動脈周囲縁が欠損した症例は、後述する心びらん穿孔を合併する可能性があるとして慎重な判断を要求されている。ただ、欠損孔の解剖学的特徴のみで、心びらん穿孔の発生をすべて説明することは困難である。また、大動脈周囲縁欠損は最も頻度の高いタイプであり、治療対象例の多くを占める。このような事実を踏まえ、2012年に米国FDAよりAMPLATZER® Septal Occluderの取扱説明書(instruction for use)の改訂が行われ、「前上縁欠損症例をカテーテル治療する場合には心びらん穿孔合併の発生に十分注意し、慎重なフォローアップを行うこと」という警告が表示されることになった。カテーテル治療の実際閉鎖術は、原則として全身麻酔下に施行する。サイジングバルーンを用いて欠損孔の伸展径を測定し、この径と同一もしくは1サイズ大きめの閉鎖栓を選択する。大腿静脈から左心房へ8~12 Fr(閉鎖栓の大きさで異なる)のデリバリーシースを挿入し、このデリバリーシース内に閉鎖栓を挿入し、留置部位までアプローチする。まず左心房側のディスクを開き、つづいて右心房側のディスクを開いて心房中隔の閉鎖を行う(図1)。それぞれのディスクが適切な位置で開いているかどうかを確認するためには、経食道エコーによるモニターが重要なポイントとなる。最近では、心腔内エコーによるガイド下に閉鎖術を施行する試みも行われている3)。 閉鎖栓が適切な位置に留置されたことが透視像および経食道エコーで確認されたら、デリバリーケーブルを回転させデバイスを離脱し、閉鎖術を終了する。閉鎖術後は抗血栓を目的に、アスピリンを6か月間服用する2)。心房性不整脈の合併などがなければ、ワルファリンなど抗血栓療法を用いる必要はない。図1 閉鎖術の実際画像を拡大するa. サイジングバルーンを用いて 欠損孔の伸展径の測定b. 左房側ディスクの展開c. 右房側ディスクの展開d. 留置形態が安定したのを確認して、ケーブルから離脱させる治療成績と合併症国内では、2012年末までに約3,500例のASDに対してカテーテル治療が実施されている。多くは小児期の患者であるが、80歳を超す高齢者まで幅広い年齢層で治療が実施されている。使用されたデバイスの平均径は17.5mmであり、30mmを超える閉鎖栓も数は限られるが使用されている。術中の急性期合併症として、留置術中のデバイスの脱落がある。脱落した閉鎖栓は経皮的、もしくは外科的に回収されている。また心びらん穿孔は術後72時間以内に発生する可能性の高い重要な合併症(発生率約0.2%)である。米国における外科治療との比較検討によるとカテーテル治療による重大な合併症(処置が必要な合併症)として、不整脈(心房細動や房室ブロック)、デバイスの脱落、脳血管塞栓症が報告されている4)。これら合併症の発生率は、外科手術の合併症発生率と比較し有意に低いものであったと報告されている。成人における心房中隔欠損症の特徴ASD患者の多くは、成人期までほとんど無症状に経過する。しかし、その生命予後は必ずしも良好であるとは限らない5)。未治療でも20歳までの自然歴は比較的良好であるが、30歳を過ぎると心不全死が増加し、生存率は急速に低下する。高齢者の卵円孔開存で明らかなように、欠損孔自体が加齢とともに拡大していくことも知られている。40歳以降には心房細動や心房粗動を合併する頻度が増し、それによって心不全が増強する6)。成人期ASD患者では、50代で15%、70代以降では60%以上と非常に高率に心房細動(atrial fibrillation:AF)を合併する。近年カテーテルアブレーションの技術が進歩しており、AFに対する肺静脈隔離術(pulmonary vein isolation:PVI)が一定の有効性を示している。このため、われわれはAFを合併したASD患者では、アブレーションの適応がある状態であればカテーテル閉鎖術に先立ってPVIを行い、再発がないことを確認して(通常3か月)、その後にASDのカテーテル閉鎖を実施している。一方、カテーテルアブレーションの適応とならない永続性AFの場合には、抗血栓療法を継続しながらASDのカテーテル治療を実施することができる。永続性AFを合併したASD患者においても、カテーテルによるASD閉鎖を行うことで、通常の成人症例と同様に有意な自覚症状の改善、BNP低下や心室のリモデリングが得られる7)。早期治療が重要であることに変わりはないが、AFが慢性化した病期においても、カテーテル治療は有用であり、積極的に考慮すべきである(図2)。図2 慢性心房細動患者に対するASDのカテーテル閉鎖術の効果画像を拡大する心房細動は継続しているが、ASDを閉鎖することでNYHA classは有意に改善する。肺高血圧合併例に対するアプローチ肺高血圧症はASDの約6~37%に認められ、予後、自覚症状、心房性不整脈発症に影響を及ぼす。一方でASD患者における肺高血圧の多くは非可逆性ではなく、閉鎖後にほとんどの症例において有意な肺動脈圧の低下が認められる。これまで、一般に肺血管抵抗が8~10単位以上の症例は、外科的閉鎖の禁忌とされてきた。しかしながら近年、エポプロステノール、シルデナフィル、ボセンタンなど肺高血圧に対する画期的な薬物治療が進歩しており、カテーテル治療を併用することにより、これまで治療の難しかった高度肺高血圧を合併した症例に対する治療適応の拡大が起こってくる可能性がある8)。高齢者に対するカテーテル治療の問題点高齢者ASDにおいて常に危惧される血行動態変化は、欠損孔閉鎖に伴う急性左心室容量負荷に対して、加齢のために拡張機能の低下した左心室がスムーズに対応できるかどうかである。実際にこれまでの閉鎖による急性期合併症として急性左心不全、肺水腫が懸念される。これはASD閉鎖による左室への急激な前負荷の増加に対し、左室が急性適応できないことが原因とされる。これらの疾患を有する症例や左心不全の既往がある症例において、われわれはSwan-Ganzカテーテルによる肺動脈楔入圧モニタリング下にASD閉鎖を施行している(図3)。術後術中のみならず術後急性期の管理も重要であるため、このようなハイリスク症例の術後は原則としてICU管理としている9)。図3 高齢者(82歳女性)ASDに対するカテーテル治療画像を拡大するa. 術前の胸部レントゲン像b. 左房側のディスクを開いたところ。36mmの閉鎖栓を留置している。c. 右房側のディスクを開いたところ。手技中は肺動脈楔入圧をモニターしている。d. 術後6か月の胸部レントゲン像特殊な心房中隔欠損症例(周囲縁欠損、多発性欠損)に対するカテーテル治療これまでのわれわれの検討から、従来カテーテル治療に適したと考えられていた心房中隔の中心部、あるいは欠損孔周囲縁がすべて5mm以上あるASDは治療対象全体の24%に過ぎず、多くの欠損孔は周囲縁の一部あるいは複数部の周囲縁が欠損していることがわかってきた(図4)。最も多いケースは大動脈側縁(前上縁)が欠損したタイプである。このような形態の欠損孔では、たとえ前上縁が欠損していても閉鎖栓が大動脈をまたぐように留置して閉鎖することが可能である(図5)。反対に、後縁が欠損したタイプでは、欠損した領域が小さい場合であれば閉鎖栓が心房壁を摘み上げるように留置され、閉鎖可能である。後下縁の欠損の場合も同様に、多くの場合は閉鎖栓の留置は可能であるが、広範囲な下縁欠損では留置を断念する症例も経験している。欠損孔が複数個存在する多発性欠損例では、欠損孔の位置関係、閉鎖栓の選択で慎重な判断が要求される。お互いの欠損孔が近接し(通常7mm以内)、1個の閉鎖栓で同時に覆うことが可能な場合には、1個の閉鎖栓を留置することで閉鎖可能である。しかしながら、それぞれの欠損孔が独立して存在する場合には、それぞれの欠損孔に別々の閉鎖栓を同時に留置して閉鎖する。さらにより多数の欠損孔がメッシュ状に存在する欠損孔の場合には、AMPLATZER® Cribriform Deviceを用いて、1個の閉鎖栓で同時にカバーすることも可能である。図4 カテーテル治療を実施したASD症例の欠損症周囲縁の評価(n=227)画像を拡大するすべての周囲縁が存在するのは全体の23%で、最も多い症例は大動脈周囲縁の欠損例である。図5a. 大動脈周囲縁欠損例の経食道心エコー図所見画像を拡大するb. 閉鎖栓留置後の所見。閉鎖栓が大動脈にまたがるように(Aサイン)留置されているのがわかる画像を拡大する心びらん穿孔(cardiac erosion)遠隔期合併症としては、閉鎖栓の脱落、不整脈や房室ブロックの合併などが報告されてきたが、最も注目されているのはデバイスに起因する心臓壁のびらん穿孔(erosion)の問題である10)。Aminらは、製造元のAGA Medical社に報告された合併症をもとにその成因を検討している。それによると28例中25例(89%)は大動脈側の辺縁(rim)が欠損していた症例であった。デバイスに起因するerosionで直接死亡した症例は断定されていないが、erosionそのものが全症例の0.1~ 0.2%に発生しているのは事実であり、慎重な対応が必要である。Erosion発生時期の多くは術後72時間以内である。術直後は穿孔に伴う胸痛、息苦しさなどの症状に注意し、さらに術後のエコー所見で心嚢液の貯留についての評価が重要である。Erosionを起こした症例は、欠損孔に対する使用デバイスのサイズが明らかに大きかったことが指摘されている。欠損孔に対して大きすぎるデバイスの選択・留置により(over sizing)、デバイスと心房壁の過度の圧迫、さらに大動脈壁との間の経時的な摩擦によって、心房もしくは大動脈壁の穿孔が起こるのではないかと推測されている。心房中隔欠損症に対するカテーテル治療の今後ASDに対する治療は、今後カテーテル治療が主流となることは間違いないと思われる。AMPLATZER® Septal Occluderは安全性が高くデバイスとしての完成度も高いが、今後より安定した治療効果が得られるような技術改善も期待される。カテーテル治療の場合、心腔内に金属異物を留置することが将来的な不整脈の原因となるのではないかとの危惧もあるが、これまでのわれわれの検討では、少なくとも成人期のASDでは、カテーテル治療は外科治療よりも術後の不整脈の発生率は有意に低いことが確認されている。カテーテル治療では、術後の不整脈の大きな原因である心房切開線を避けられることが大きな要因であると思われる。今後はカテーテル治療と外科治療の適応をどのように判断するかが主要なテーマになってくると思われる。成人例(特に高齢者)のカテーテル治療では、循環器内科医、心臓外科医、麻酔科医による同時に存在する併発症の管理、術後合併症の管理が重要であり、複数の領域にまたがる新しいチーム医療の構築が重要である。文献1)Akagi T. Catheter intervention of adult patients with congenital heart disease. J Cardiol 2012; 60: 151-159. 2)Oho S et al. Transcatheter closure of atrial septal defects with the Amplatzer Septal Occluder –A Japanese clinical trial–. Circ J 2002; 66: 791-794. 3)Kim NK et al . Eight-french intracardiac echocardiography: safe and effective guidance for transcatheter closure in atrial septal defects. Circ J 2012; 76: 2119-2123. 4)Du ZD et al. Comparison between transcatheter and surgical closure of secundum atrial septal defect in children and adults. J Am Coll Cardiol 2002; 39: 1836- 1844. 5)Murphy JG et al. Long-term outcome after the surgical repair of isolated atrial septal defect. N Engl J Med 1990; 323: 1645-1650. 6)Gatzoulis MA et al. Atrial arrhythmia after surgical closure of atrial septal defects in adults. N Engl J Med 1999; 340: 839-846. 7)Taniguchi M et al. Transcatheter closure of atrial septal defect in elderly patients with permanent atrial fibrillation. Catheter Cardiovasc Interv 2009; 73: 682–686. 8)Hirabayashi A et al. Continuous epoprostenol therapy and septal defect closure in a patient with severe pulmonary hypertension. Catheter Cardiovasc Interv 2009; 73: 688-691. 9)Nakagawa K et al. Transcatheter closure of atrial septal defect in a geriatric population. Catheter Cardiovasc Interv 2012; 80: 84-90. 10)Amin Z et al. Erosion of amplatzer septal occluder device after closure of secundum atrial septal defects: Review of registry of complications and recommendations to minimize future risk. Catheter Cardiovasc Interv 2004; 63: 496-502.

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ギラン・バレー症候群〔GBS : Guillain-Barre syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome: GBS)は急性発症の四肢筋力低下を主徴とする単相性の末梢神経障害である。多くの症例で呼吸器系、消化器系などの先行感染を有し、自己免疫機序によって発症する。■ 疫学頻度は人口10万人当たり年間1~2人前後であり、男女比は約3 : 2で男性に多い。平均年齢は40歳前後であるが、あらゆる年齢層にみられる。■ 病因GBSの病因には液性免疫・細胞性免疫、感染因子・宿主因子が複合的に関与していると考えられている。GBS患者の急性期血清では、50~60%にヒト末梢神経に存在するさまざまな糖脂質に対する抗体が検出される。中性糖脂質であるガラクトセレブロシドや、シアル酸を有するスフィンゴ糖脂質であるガングリオシドのGD1bやGM1などで免疫され、血中に抗体の上昇を認めた動物では、補体の活性化などを介して、末梢神経障害を生じることから、これらの抗体の病態への直接的関与が示唆されている。GBS患者では先行感染を有することが多いが、先行感染因子として同定されたものとしてはCampylobacter jejuni、Mycoplasma pneumoniae、サイトメガロウィルス(CMV)、EBウィルスなどが知られている。なかでもC. jejuni やM. pneumoniaeの菌体外膜には末梢神経構成成分の糖脂質と分子相同性を有する糖鎖が発現しているため、感染による免疫反応により糖鎖に対する抗体が産生され、自己抗体として働いて本症候群が発症するという、分子相同性機序が考えられている。C. jejuniやM. pneumoniaeの感染者の一部にしかGBSを発症しないことから、宿主側の免疫遺伝学的背景も発症には関与していると考えられている。■ 症状先行感染の後に、四肢の進行性筋力低下を呈する。運動麻痺が優位であるが、感覚障害もみられることが多く、さまざまな脳神経障害(顔面神経麻痺、眼筋麻痺、嚥下・構音障害など)や、洞性頻脈や徐脈、起立性低血圧、神経因性膀胱などの自律神経障害もみられる。通常1~2週間で症状が完成し、4週間を超えて症状が増悪することのない単相性の経過をとるが、ピーク時には寝たきりになるケースも多く、呼吸筋麻痺を来す重症例もみられる。■ 分類非典型的な臨床症状を有したり、障害の分布が特異なものが特殊病型として認識されている。急性発症の外眼筋麻痺・運動失調・腱反射消失を3主徴とするFisher症候群がGBSの亜型として広く知られている。ほぼ運動障害のみの純粋運動型(pure motor GBS)や、感覚障害のみを呈する純粋感覚型(pure sensory GBS)、運動失調症状のみを呈する運動失調型(ataxic GBS)、深部感覚障害による運動失調が前景に立つ病型(sensory-ataxic GBS)、球麻痺を伴い上肢および上肢帯に筋力低下が限局する咽頭頸上腕型(pharyngeal-cervical-brachial [ PCB ] variant of GBS)や、上肢のみ脱力を呈する上肢型、下肢のみの脱力を来す下肢型、脳神経障害のみを来す多発脳神経麻痺(multiple cranial neuritis)などが知られている。急性に自律神経障害を来す急性汎自律神経異常症(acute pandysautonomia)もGBSの亜型と捉える考えもある。■ 予後多くの症例で数ヵ月以内に社会復帰が可能であるが、なかには重篤な後遺症を残す例も存在する。死亡例も数%あり、2~5%で再発がみられる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)典型的な経過、症状を呈する症例では病歴と臨床症候のみから診断が可能であるが、種々の検査を施行し、他疾患を除外することが大切である。電気生理学的検査では、神経伝導検査(nerve conduction study : NCS) においてH波・F波の消失・潜時延長、遠位潜時の延長、複合筋活動電位振幅の低下、伝導ブロックなどが高率に認められる。脳脊髄液検査では、細胞数は上昇せず蛋白レベルが上昇する「蛋白細胞解離」を認める。NCS、脳脊髄検査いずれにおいても、発症早期では異常を示さないことがあり、初回の検査で異常がないことをもってGBSの診断を否定的に考えるべきではない。経過をみて再検査を施行することも必要である。過半数の症例で、さまざまな糖脂質に対する抗体や、単独の糖脂質ではなく2種類の分子が形成する複合体に反応する抗体の上昇がみられる1)。発症初期より陽性となることが多く、初期診断において有用である。これらの抗体は、先行感染因子のもつ糖鎖に対する免疫反応の結果として産生されることが多く、標的抗原の局在部位を選択的に障害して、独特の臨床病型を来すと考えられる。IgG GD1a/GD1b複合体、GD1b/GT1b複合体に特異的に反応する抗体は人工呼吸器装着の必要な重症例に多いことが報告されており、臨床経過観察に重要な指標といえる。表に抗糖脂質(ガングリオシド)抗体および抗糖脂質複合体抗体と関連が報告されている臨床的特徴を示す。画像を拡大する鑑別疾患としては、血管炎性ニューロパチー、サルコイドニューロパチー、膠原病に伴うニューロパチー、ライム病、神経痛性筋萎縮症、傍腫瘍性ニューロパチー、悪性リンパ腫に伴うニューロパチーなどの各種末梢神経障害、脊髄・脊髄根を圧迫する頸椎症性脊髄症や椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、転換性障害(ヒステリーなど)など急性~亜急性に筋力低下を来す疾患が挙げられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)急性期治療として免疫療法が有効である。免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)と血液浄化療法のいずれかを第一選択とする。高齢者、小児、心血管系の自律神経障害を有する例、全身感染症合併例ではIVIgが、IgA欠損症や血栓、塞栓症の危険の高い例などでは血漿交換が選択される。そうした要因がない場合では、身体への負担の少なさや、特別な設備を必要としないことからIVIgが施行されることが多い。IVIgと血液浄化療法では有効性に差を認めない。いずれの治療も発症から2週間以内に治療が開始された場合に、効果が高いとされている。4 今後の展望GBSでは発症早期に正確に診断し、急性期に適切な治療を開始することが重要であり、急性期の診断技術の向上が期待される。血中抗糖脂質抗体は急性期に陽性となるため、急性期診断では、抗体の検出率の向上が大事な役割となる。糖脂質にリン脂質を混合することにより抗体が検出可能となることがあり、これらの手法を用いることにより検出率が向上する。今後も抗体検出率の向上や新たな抗体の発見が予想される。また、少数ではあるが、重症例や難治例、後遺症が残るケースが存在する。重症例や難治例を予測することにより、さらに強い治療を施行したり、人工呼吸器装着へのリスク管理も可能となると考えられる。予後予測因子としてmodified Erasmus GBS Outcome Score (mEGOS) 2)やErasmus GBS Respiratory Insufficiency Score (EGRIS) 3)が発表され、また、前述のように陽性となる糖脂質(ガングリオシド)抗体によっても人工呼吸器装着が必要な症例の予測に使える可能性がある。治療に関しては、明確なエビデンスは得られていないが、IVIgとステロイドの併用がIVIg単独治療よりも有効であることを示唆する報告がある。神経障害に関与する補体系を抑制する治療の開発も考えられる。また、Naチャネル阻害薬(flecainide acetate)の軸索変性の保護作用の報告や、シクロオキシゲナーゼ2阻害薬(celecoxib)による炎症細胞浸潤の抑制が報告されており、これらの新規治療薬の有効性のさらなる検討が待たれる。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Kaida K, et al. J Neuroimmunol. 2010 ; 223 : 5-12.2)Walgaard C, et al. Neurology. 2011 ; 76 : 968-975.3)Walgaard C, et al. Ann Neurol. 2010 ; 67 : 781-787.日本神経学会監修.「ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン」作成委員会編. ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン2013. 南江堂; 2013

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アトピー性皮膚炎児に多い併存疾患は?

 フランス・ブレスト大学のLaurent Misery氏らは、一般開業医を受診するアトピー性皮膚炎小児患者と適合対照者を9年間追跡し、頻度の高い併存疾患や医療費などを調べた。その結果、呼吸器および眼系の臓器に疾患を伴う頻度が高いことを報告。また医療費はアトピー性皮膚炎患者で高かったが、年齢とともにその差は縮小することも明らかになった。これまでアトピー性皮膚炎患者における併存疾患と治療コストとの関連について、プライマリ・ケア設定での検討はほとんど知られていなかった。Dermatology誌オンライン版2014年3月20日号の掲載報告。 研究グループは、アトピー性皮膚炎患者における併存疾患と治療コストとの関連を調べるため、フランスの一般開業医を受診した患者の電子カルテデータベースを用いて、後ろ向きコホート研究を行った。 生後1歳未満でアトピー性皮膚炎を診断された全乳児と、疾患の有無を問わず性別で適合した乳児を対象に分析した。 主な結果は以下のとおり。・被験児(患児群、適合対照群とも1,163例ずつ)を、9年間追跡した。・分析により、関連疾患、薬剤費、治療費が判明した。・患児群と適合対照群を比較した結果、患児群のほうが併存疾患をより多く有しており、とくに呼吸器系、眼系の臓器に関する疾患が多かった。・皮膚科疾患領域における処方を伴う治療件数および全体的な医療費(一般開業医の診察および治療薬処方)は、アトピー性皮膚炎患者において高かった。しかし、その差は年齢とともに縮小していた。

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初発の心血管疾患の予測にHbA1c値は寄与しない/JAMA

 従来の心血管リスク因子にHbA1c値の情報を加えても、初発の心血管疾患(CVD)リスク予測改善にはほとんど寄与しないことが判明した。英国・ケンブリッジ大学のJohn Danesh氏らEmerging Risk Factors Collaborationが、73件の前向き試験に参加したCVDまたは糖尿病歴のない被験者約30万人のデータを分析した結果、明らかになった。高血糖と高率のCVD発生との関連性から、初発のCVDイベント予測のためにその測定を推奨する動きがある。一方で、ACC/AHAが2013年に改訂した心血管リスク評価に関するガイドラインでは推奨がされていないなど、HbA1c値測定に対する評価は定まっていなかった。JAMA誌2014年3月26日号掲載の報告より。従来の心血管リスク因子にHbA1c情報を加えた場合のリスク予測改善を検討 本検討は、従来の心血管リスク因子にHbA1c値の情報(<4.5、4.5~<5、5~<5.5、5.5~<6、6~<6.5、≧6.5%)を加えることで、糖尿病非既往の中高年における初発のCVDアウトカム予測を改善するのかについて確定することが目的だった。また、HbA1c値測定と、その他によく行われている血糖値測定(空腹時、ランダム測定、またはブドウ糖負荷試験)との比較も行われた。 研究グループは、73件の前向き試験に参加した、ベースライン時には糖尿病またはCVDが非既往であった29万4,998例のデータを分析した。従来リスク因子だけ(年齢、性別、喫煙状況、収縮期血圧値、総またはHDLコレステロールなど)とHbA1cなど血糖値情報を加えた場合のCVDリスク予測モデルを作成し、アウトカムのリスク層別化(C統計値)および10年リスク予測(低:5%未満、中:5~7.5%未満、高:7.5%以上)の再分類(ネット再分類改善)について検討した。他の血糖値測定法と比べても、リスク予測改善は同程度かより良好 全被験者のベースライン時の平均年齢は58歳(SD 9)、49%が女性、86%がヨーロッパまたは北米の住民であり、HbA1c平均値は5.37%(SD 0.54)であった。 追跡期間中央値9.9年(四分位範囲:7.6~13.2)で記録された致死的・非致死的CVDの発生は、2万840例(冠動脈心疾患1万3,237例、脳卒中7,603例)だった。 従来の心血管リスク因子補正後分析において、HbA1c値とCVDリスクとの関連性は、ほぼJカーブの関連が認められた。また同関連性は、総コレステロール、トリグリセリド、またはeGFR値で補正後のみわずかに変化がみられ、HDLコレステロール、C反応性蛋白で補正後は減弱が認められた。 CVDリスク予測モデルのC統計値は、従来の心血管リスク因子のみでは0.7434(95%信頼区間[CI]:0.7350~0.7517)だった。HbA1cに関する情報を追加した場合のC統計値の変化は0.0018(95%CI:0.0003~0.0033)で、10年リスク予測分類のネット再分類改善は0.42(同:-0.63~1.48)だった。 なおCVDリスクの予測にHbA1c情報を加えた場合の改善は、その他の血糖値測定法における情報を加えた場合と比べて、同程度かより良好ではあった。

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内視鏡中に音楽をかけると不安が減少する【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第16回

内視鏡中に音楽をかけると不安が減少する私は呼吸器内科医なので、内視鏡といえば基本的に気管支鏡を意味します。当院では気管支鏡の手技中には音楽をかけていませんが、咽頭喉頭にリドカインを噴霧する際に音楽をかけています。いわゆる癒し系ミュージックやクラシック音楽が主体です。Triller N, et al.Music during bronchoscopic examination: the physiological effects. A randomized trial. Respiration. 2006; 73: 95-99.気管支鏡検査は事前に「咳が出る検査だ」という情報を得るため、声が出せずに息が止まってしまうのではないかと不安を覚える患者さんは少なくありません。気管支鏡中の患者さんの不安を軽減することができれば気管支鏡検査を滞りなく行うことができるのではないか、と考えた筆者らによってこの研究が報告されました。この研究は、気管支鏡中にリラクゼーション音楽をかけることで不安症状の改善が得られるかどうか、血圧や心拍数の変化を抑制できるかどうかを調べたものです。試験期間中、200人の成人患者さんが登録されました。気管支鏡後、患者さんには気管支鏡の手技について0点(問題なかった)から10点(最悪だった)のスコアリングをお願いしました。200人のうち、93人が音楽群、107人が非音楽群にランダムに割り付けられました。これら2群の患者背景に差はみられませんでした。平均手技時間もそれぞれ12.7±6.5分、11.9±6.0分と同等で、スコアリングについても4.6±2.5点、4.6±2.6点と差はありませんでした。しかしながら、手技後の平均心拍数(87.7±14.4/分 vs. 92.7±17.4/分、p = 0.03)、平均収縮期血圧(142.9±21.9 mmHg vs. 149.6±22.4 mmHg、p = 0.03)、平均拡張期血圧(77.6±12.8 mmHg vs. 82.3±12.7 mmHg、p = 0.01)は音楽群のほうが有意に低いという結果でした。確かに手技後のバイタルサインに差はあるようですが、これをもって音楽による不安症状の軽減というには少し飛躍があるような気がします。過去にも同様の研究結果が発表されたことがあるのですが、その結果は一定していません。咳嗽や不快感を軽減したという報告もあれば(Chest. 1995; 108: 129-130.)、ヘッドフォンで音楽を流しても不安症状の軽減がみられなかったとする報告もあります(Chest. 1999; 116: 819-824.)。気管支鏡ではなく消化器内視鏡ではどうかというと、上部消化管内視鏡検査でも同様に不安の軽減がメタアナリシスで報告されています(Endoscopy. 2007; 39: 507-510.)。下部消化管内視鏡にいたっては、内視鏡時の疼痛を軽減したという報告まであります(Dig Liver Dis. 2010; 42: 871-876.)。検査中に音楽を流しても決して害はありませんので(ヘビメタなどはもしかしたら好き嫌いがあるかもしれませんが)、手技の邪魔にならない程度であればリラクゼーション音楽を流してもよいのかな、とも思います。患者さんの音楽の好みも配慮できれば、なおよいですね。

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多発性硬化症におけるシンバスタチン高用量の有用性/Lancet

 二次性進行型多発性硬化症(MS)患者に対し、シンバスタチンの高用量投与により、全脳萎縮率は約4割低下することが明らかにされた。英国・ロンドン大学のJeremy Chataway氏らが、140例の二次性進行型MS患者を対象に行った第II相臨床試験の結果で、忍容性、安全性も良好であり、第III相試験を進める根拠が得られたと報告した。二次性進行型MSについては満足いく治療法がなく障害を有しているのが現状である。シンバスタチンは血管性疾患に広く用いられており、安全性プロファイルに優れ、免疫調整や神経保護の特性を有していることが知られていた。Lancet誌オンライン版2014年3月18日号掲載の報告より。シンバスタチン80mgを24ヵ月投与 Chataway氏らは2008年1月28日~2011年11月4日の間に、英国3ヵ所の神経科学センターを通じ、18~65歳の二次性進行型MS患者140例を対象に、二重盲検無作為化比較試験を行った。被験者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはシンバスタチン80mgを、もう一方にはプラセボをそれぞれ24ヵ月間投与した。被験者の平均年齢は51~52歳、女性の割合は69~70%だった。 主要アウトカムは、容積MRI検査による年換算全脳萎縮率だった。シンバスタチン群とプラセボ群の年換算全脳萎縮率の差は-0.254ポイント その結果、年換算全脳萎縮率は、プラセボ群0.584%(標準偏差:0.498)に対し、シンバスタチン群は0.288%(同:0.521)と有意に低率だった。同萎縮率の補正後群間格差は-0.254ポイント(95%信頼区間:-0.422~-0.087、p=0.003)で、年換算43%の減少だった。 なお、重度有害事象の発生率は、プラセボ群で14例(20%)、シンバスタチン群で9例(13%)であり、両群で有意差はなかった。 これらの結果を踏まえて研究グループは、「第III相臨床試験の実施を支持するものだった」と結論づけた。

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小児のアトピーにも低用量メトトレキサート治療は有効

 ニュージーランド・ワイカトホスピタルのManeka Deo氏らは、同国内で行われた小児および若者のアトピー性皮膚炎に対するメトトレキサート治療について、後ろ向きレビューを行った。31例(平均年齢10歳)を対象とした分析の結果、著者は、「低用量投与では安全性/忍容性は良好であり、有効であると思われた」と発表し、今後の公式の比較試験の必要性を提言した。International Journal of Dermatology誌オンライン版2014年3月6日号の掲載報告。 低用量メトトレキサート治療は、成人のアトピー性皮膚炎ではセカンドラインの治療として確立されるようになっている。 一方でその投与について、小児への導入も支持する一部のデータがあることから、著者らは、ニュージーランドの病院の皮膚科部門をベースに、18歳未満の患者で、メトトレキサート治療を受けた患者について後ろ向きにレビューを行った。対象期間は2005年1月~2010年4月の間であった。 主な結果は以下のとおり。・レビュー対象となったのは、31例(女子17例、平均年齢10歳、範囲3~18歳)であった。・メトトレキサートが有効であった(effective)または非常に有効であった(very effective)は、75%で認められた。25%は、無効例(ineffective)であった。・最も頻度の高い有害事象は、軽度の悪心で報告は4例(14%)であった。肝酵素の増加は4例報告があったが有意ではなかった。・重篤な副作用は報告がなかった。

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ドナーの年齢や性別の不一致は予後に影響する?HCV感染/非感染者への肝移植

 C型肝炎ウイルス(HCV)感染者への肝移植は、50歳以上のドナーからの移植を回避することで、予後を向上させる可能性があることが、ポーランド・ワルシャワ医科大学のMichal Grat氏らの報告により明らかになった。一方、ドナーとレシピエントの性別の一致/不一致で予後が左右されることはなかった。Annals of transplantation誌2013年12月23日号の報告。 著者らは、ドナーの年齢やドナーとレシピエントの性別のマッチングが肝移植後の予後に与える影響について、HCV感染/非感染者の違いに着目し、後ろ向きコホート研究を行った。 対象は、肝移植レシピエント622例。HCV感染群(164例)とHCV非感染群(458例)に分け、ドナーの年齢(30歳以下、31~50歳、51歳以上)、ドナーとレシピエントの性別構成によってさらに細分化した。予後の指標は、レシピエントの5年生存率および移植片生着率とした。 主な結果は以下のとおり。・5年生存率は、HCV感染群83.1%、HCV非感染群81.6%であった(p=0.614)。・移植片生着率は、HCV感染群81.2%、HCV非感染群79.3%であった(p=0.538)。・HCV感染群における50歳以上のドナーからの移植は、31~50歳のドナーからの移植と比較して、5年生存率(p=0.035)および移植片生着率(p=0.006)が有意に低かった。この差異は、HCV非感染群では観察されなかった(5年生存率:p=0.994、移植片生着率:p=0.878)。・ドナーとレシピエントの性別構成別の予後は、HCV感染群(5年生存率:p=0.751、移植片生着率:p=0.592)と非HCV群(5年生存率:p=0.217、移植片生着率:p=0.249)で差はなかった。・ただし、非HCV感染群における男性から女性への移植は、女性から女性への移植よりも、5年生存率が低い傾向を認めた(p=0.064)。・31~50歳のドナーからの移植において、HCV感染群の予後はHCV非感染群よりも有意に優れていた(5年生存率:p=0.080、移植片生着率:p=0.026)。

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