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分娩前の低分子量ヘパリン、合併症を抑制せず/Lancet

 血栓性素因を有するため合併症のリスクが高い妊婦に対する低分子量ヘパリン・ダルテパリンの分娩前予防投与は、これらの合併症の発生を抑制しないことが、カナダ・オタワ大学のMarc A Rodger氏らが行ったTIPPS試験で示された。血栓性素因は妊婦によくみられる病態で、妊娠関連静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクを増大させ、胎盤介在性妊娠合併症(重症妊娠高血圧腎症、在胎週数に比し小さい新生児、胎盤早期剥離)のリスクをも増加させる可能性がある。低分子量ヘパリンは胎盤を通過せず、大出血やヘパリン起因性の血小板減少、骨粗鬆症のリスクが低いとされるが、皮下注射の手間や費用などの問題がある。Lancet誌オンライン版2014年7月25日号掲載の報告。ダルテパリンの有用性を無作為化試験で評価 TIPPS試験は、血栓性素因を有し、妊娠合併症のリスクが高い妊婦に対するダルテパリン予防投与によるVTEおよび胎盤介在性妊娠合併症のリスクの抑制効果を検討する非盲検無作為化試験。 参加者は、分娩前に予防的にダルテパリンを投与(自己注射)する群または非投与群(対照群)に無作為に割り付けられた。ダルテパリンは、妊娠期間20週までは5,000 IU/日を1日1回投与し、その後は最短でも妊娠期間37週まで5,000 IU/日を1日2回投与した。 治療割り付け情報は患者と試験関係者にはマスクされなかったが、アウトカムの審査担当者にはマスクされた。主要評価項目は、重症または早期発症の妊娠高血圧腎症、在胎週数に比し小さい新生児(出生時体重<10パーセンタイル)、妊娠喪失、VTEの複合アウトカムとした。小出血リスクは増大 試験期間は2000年2月28日~2012年9月14日で、5ヵ国(カナダ、オーストラリア、米国、英国、フランス)の3次医療機関36施設が参加した。このうち21施設から292例が登録され、適格基準を満たさなかった3例を除く289例(intention-to-treat集団、ダルテパリン投与群:146例、非投与群:143例)が解析の対象となった。 全体の平均年齢は31.8歳、割り付け時の平均妊娠期間は11.9週、平均妊娠回数は2.2回、平均分娩回数は1.0回であり、妊娠合併症歴を有する妊婦は61%(176/289例)であった。実際に治療が行われた患者は284例(on-treatment集団、ダルテパリン投与群:143例、非投与群:141例)だった。 intention-to-treat集団およびon-treatment集団のいずれにおいても、ダルテパリンは主要複合アウトカムの発生を抑制しなかった。 すなわち、intention-to-treat集団における主要複合アウトカムの発生率は、ダルテパリン投与群が17.1%(25/146例)、非投与群は18.9%(27/143例)であり、両群のリスク差は-1.8%(95%信頼区間[CI]:-10.6~7.1%)と有意な差は認めなかった。on-treatment集団では、それぞれ19.6%(28/143例)、17.0%(24/141例)で、リスク差は2.6%(95%CI:-6.4~11.6%)であり、有意差はなかった。 安全性解析(on-treatment集団)では、大出血(ISTH基準)の発生率は両群間に差はなかった(2.1%[3/143例]vs. 1.4%[2/141例]、リスク差:0.7%、95%CI:−2.4~3.7%、p=1.0)が、小出血(大出血以外の出血)はダルテパリン投与群で多く認められた(19.6%[28/143例]vs. 9.2%[13/141例]、リスク差:10.4%、95%CI:2.3~18.4%、p=0.01)。 著者は、「分娩前のダルテパリンの予防投与は、血栓性素因を有するため、VTE、妊娠喪失、胎盤介在性妊娠合併症のリスクが高い妊婦においてこれらの合併症の発生を抑制せず、小出血のリスクを増大させた」とまとめ、「これらの知見は、既報の質の高いエビデンスと一致する」と指摘している。

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ステージIV大腸がんの位置による予後の違い

 右側結腸がんは左側結腸がんとは生物学的に異なると考えられているが、予後の違いについては矛盾する結果が報告されている。東京大学の石原 聡一郎氏らは、ステージIV結腸がんにおいて腫瘍位置が予後に及ぼす影響を明らかにするために、多施設共同研究による傾向スコア分析を実施した。その結果、ステージIVの右側結腸がんは、左側結腸がんに比べて、同じステージIVでもより進行した状態で診断され、予後が有意に不良であったことから、腫瘍学的に左側結腸がんより侵攻性であることが示唆された。International Journal of Surgery誌オンライン版2014年8月1日号に掲載。 著者らは、1997年1月~2007年12月に治療されたステージIV結腸がん治療(n=2,208)を後ろ向きに検討した。右側結腸がん(盲腸、上行結腸、横行結腸)と左側結腸がん(下行結腸、S 状結腸,直腸 S 状部)における臨床的および病理学的特徴を比較した。がん特異的生存率に及ぼす腫瘍位置の影響について、多変量解析と傾向スコア分析で分析した。 主な結果は以下のとおり。・右側結腸がんは、高齢者、女性、サイズの大きい腫瘍、低分化腺がん、粘液性腺がん、印環細胞がん、ステージIVの中でより進行した状態、より低いがん特異的生存率に関連していた。・背景の臨床病理学的特徴の傾向スコアによりマッチさせたコホートでは、姑息的原発巣切除を受けた患者において、右側結腸がんはより低いがん特異的生存率と有意に関連していた(ハザード比:1.2、95%信頼区間:1.1~1.4、p=0.008)が、R0切除あるいは非切除例では関連していなかった。

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疑わしい皮膚病変には、かゆみ・痛みの評価を

 かゆみは皮膚上層部で生じる一方、皮膚の痛みはより深い部位と関連しているとのセオリーを支持する所見が、米国・テンプル大学医学部のGil Yosipovitch氏らによる検討の結果、示された。皮膚のかゆみと痛みについて、皮膚がんにおける組織学的特徴との関連を調べた結果で、「今回得られた所見は、疑わしい病変にはかゆみと痛みという簡便な臨床評価を行うべきであることを強調するものであった」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2014年7月23日号の掲載報告。 検討は、皮膚腫瘍摘出時のアンケートでかゆみと痛みの評価調査に回答した患者を対象とした大規模前向き臨床病理研究で、2010年7月1日~2011年3月31日の間にWake Forest University Baptist Medical Centerの皮膚科手術部門を受診した患者集団から登録して行われた。 被験者は268例で、組織学的検査で確認された皮膚腫瘍数は339個(基底細胞がん166個、有棘細胞がん146個、メラノーマ27個)であった。 主要評価項目は、摘出時におけるかゆみおよび痛みと皮膚がんとの関連で11ポイント(スコア範囲:0~10)の数的視覚アナログスケールで評価し、また各腫瘍について組織学的解析(炎症の程度とタイプ、潰瘍、神経周囲浸潤、浸潤の深さを評価)を行った。 主な結果は以下のとおり。・かゆみの有病率は36.9%、痛みの有病率は28.2%であった。・しかし、かゆみと痛みの症状は、メラノーマではほとんどみられなかった。・痛みの強度は、炎症の程度と有意に関連していた(軽度またはなしvs. 中等度または顕著のp<0.001)。また、炎症性細胞浸潤における好中球の存在(主として単核細胞vs. 混在または好中球のp=0.003)、好酸球の存在(存在するvs. しないのp=0.007)、潰瘍(ありvs. なしのp=0.003)、神経周囲浸潤(ありvs. なしのp<0.001)、浸潤の深さ(p=0.001)、皮膚病変の最大径(p<0.003)とそれぞれ有意に関連していた。・かゆみの強度は、炎症の程度(軽度またはなしvs. 中等度または顕著のp=0.001)、好酸球の存在(存在するvs. しないのp=0.02)と有意に関連していた。

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果物・野菜の摂取量が多いほど長寿に/BMJ

 果物や野菜の摂取量が多いほど全死因死亡リスクが低下し、とくに心血管死が有意に抑制されることが、中国・山東大学のXia Wang氏らの検討で示された。がん死リスクへの影響はなく、1日5食以上になると抑制効果はなくなることも確認された。慢性疾患の予防における重要な健康食として、果物や野菜を多く摂取することが広く推奨されている。その一方で、果物や野菜の摂取と死亡リスクの関連を評価した試験は多いものの、この関連を摂取量の程度に基づいて検証したメタ解析はこれまで行われていなかったという。BMJ誌2014年7月29日号掲載の報告。摂取量に基づく死亡リスクをメタ解析で評価 研究グループは、果物や野菜の摂取量と全死因死亡、心血管死、がん死の関連を検討するために、臨床試験の論文を系統的にレビューし、メタ解析を行った。 データの収集には医学関連データベース(~2013年8月30日)を用い、選出された論文の参考文献リストも調査した。対象は、果物や野菜の摂取量の程度に基づき全死因死亡、心血管死、がん死のリスクを予測した前向きコホート試験とした。 ランダム効果モデルを用いて全試験の統合ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出。果物と野菜を合わせた解析と、それぞれ個別の解析を行った。リスクが5%ずつ低下、高い異質性や出版バイアスに注意 日本の3試験を含む16の前向きコホート試験に登録された83万3,234人が解析の対象となった。フォローアップ期間は4.6~26年で、この間に5万6,423人が死亡し、このうち心血管死が1万1,512人、がん死が1万6,817人含まれた。 果物や野菜の摂取量が多いほど全死因死亡のリスクが有意に低下した。すなわち、果物と野菜の摂取が1日に1食分(1サービング)増えるごとに全死因死亡リスクが平均5%ずつ低下した(HR:0.95、95%信頼区間[CI]:0.92~0.98、p=0.001)。ただし、異質性が有意に高かった(p<0.001、I2=82%)。また、Begg’s rank correlation testでは出版バイアスを認めなかった(p=0.76)が、Egger’s linear regression testでは有意な出版バイアスの可能性が示唆された(p=0.006)。 1日に果物1食分(HR:0.94、95%CI:0.90~0.98、p=0.002)および野菜1食分(同:0.95、0.92~0.99、p=0.006)が増えた場合にも、全死因死亡リスクがそれぞれ平均6%および5%ずつ有意に低下した。しかし、いずれも異質性が有意に高く(果物:p<0.001、I2=77%、野菜:p<0.001、I2=86%)、出版バイアスは野菜ではみられなかったが、果物で認められた(Egger’s linear regression test:p=0.02)。 全死因死亡リスクは果物、野菜の摂取量依存性に低下し、1日4食までは有意差がみられた。一方、5食以上を摂取してもそれ以上リスクは低下せず、1日5食が閾値と考えられた。 心血管死のリスクは果物や野菜の摂取が1日1食分増えるごとに4%有意に低下した(HR:0.96、95%CI:0.92~0.99、p=0.02)。果物1食分(同:0.95、0.91~1.00、p=0.03)、野菜1食分(0.96、0.93~0.99、p=0.01)増えた場合にも、それぞれ有意なリスク低下が認められた。 これに対し、果物や野菜の摂取が1日1食分増えても、がん死のリスクとの間には明確な関連はみられなかった(HR:0.97、95%CI:0.90~1.03、p=0.31)。果物1食分(同:0.99、0.97~1.00、p=0.06)、野菜1食分(同:0.99、0.97~1.01、p=0.19)との間にも有意な関連はなかった。 著者は、「果物や野菜の摂取量が多いほど全死因死亡リスクが低下し、なかでも心血管死が抑制されるとのエビデンスが得られた」とし、「これらの結果は、健康の増進や寿命の延長のために果物や野菜の摂取量を増やすべきとの現行の推奨を支持するもの」と指摘している。

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日本の血液由来MRSAの感受性動向

 北里大学の花木 秀明氏らは、2008年1月~2011年5月の3年間にわたり、全国の病院から集めた血液由来のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)830株について薬剤感受性調査を実施した。その結果、血液由来のMRSAにバンコマイシン軽度耐性黄色ブドウ球菌(VISA)が蔓延していること、バンコマイシンへテロ耐性黄色ブドウ球菌(hVISA)とβラクタム薬誘導性バンコマイシン耐性MRSA(BIVR)の2つの表現型を示す株の割合が高いことが認められた。Journal of infection and chemotherapy誌オンライン版2014年7月22日号に掲載。 薬剤感受性は、CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute:臨床検査標準協会)の推奨基準により判定した。 主な結果は以下のとおり。・MRSA株の99%以上が、テイコプラニン、リネゾリド、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、バンコマイシンに対して感受性を示し、97%以上がダプトマイシン、アルベカシンおよびリファンピシンに感受性を示した。・MRSA株の大部分が、ミノサイクリン、メロペネム、イミペネム、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、セフォキシチン、オキサシリンに耐性を示した(それぞれの耐性率:56.6%、72.9%、73.7%、78.7%、89.0%、99.5%、99.9%)。・MRSA株のうち72株はバンコマイシンに対する感受性が低下していた。このなかには、8株(0.96%)のVISA、54株(6.51%)のhVISA、55株(5.63%)のBIVRが含まれる。・54株のhVISAと55株のBIVRのうち、45株(それぞれ、83.3%、81.8%)がhVISAとBIVR両方の表現型を示した。

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ラテックスフルーツ症候群だったレストラン店主【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第24回

ラテックスフルーツ症候群だったレストラン店主私はトマトアレルギーです。……というのはウソで、トマトが嫌いです。トマトだけでなく、ピーマンも嫌いです。なに子供みたいなことを言ってるんだとお思いの方もいらっしゃると思いますが、ダメなものはダメなんです。息子が大きくなったときにどう説明しようか悩んでいます。アレルギーだとウソをつくのはよくないでしょうし。うーむ。Tavidia S, et al.Latex, potato and tomato allergy in restaurateur.Contact Dermatitis. 2002 ;47:109.主人公は39歳の女性レストラン店主。彼女はフィッシュ・アンド・チップスとピザのレストランを経営していました。もともと金属アレルギーを持っているらしく、またアレルギー体質ということもあって手指には慢性的な皮膚炎を患っていました。ニッケルやコバルトなどのパッチテストが陽性で、主治医からは金属には極力触れないよう指導を受けていたそうです。しかし、それでも慢性的な皮膚炎はよくなりませんでした。そのため、彼女はゴム手袋をつけてレストラン業務を行っていたようです。ある日トマトを口にしたところ、口腔内にえもいわれぬ掻痒感と顔面の発赤腫脹がみられました。論文には詳しい記載はなかったのですが、レストランを経営している身でありながらこれまでトマトを口にしたことがなかったのか疑問が残ります。とにもかくにも、相談を受けた主治医はトマトアレルギーを疑いました。そして、RASTでトマトアレルギーであることが判明しました。また、トマトだけでなくジャガイモ、ラテックスアレルギーがあることが明らかになりました。日々の業務でゴム手袋をつけるだけでなく、トマトやジャガイモなんて味見もすることもあるでしょう。主治医は、金属だけでなく、トマト、ジャガイモ、ラテックスを避けるよう指導しました。その後、彼女の皮膚炎は軽快したそうです。レストラン経営がどうなったのかは不明ですが……。アレルギー疾患に詳しい方はピンときたと思いますが、この症例はラテックスフルーツ症候群です。キウイ、バナナ、アボカドなどの特定の食物に含まれるタンパクと交差性を持つことがあり、ラテックスアレルゲンに感作されることで、これら食材によって蕁麻疹やアナフィラキシーショックを起こすことが報告されています。慢性的に皮膚症状を呈する例もあるそうです。というわけで、レストランで使用していた手袋だけでなく、トマト、ジャガイモまでがアレルゲンとわかった不幸なレストラン店主の症例報告でした。

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スタチン時代にHDL上昇薬は必要か/BMJ

 スタチン治療中の患者に対し、HDL値の上昇効果があるナイアシン、フィブラート系薬、コレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬の併用はいずれも、全死因死亡、冠動脈疾患死、また心筋梗塞や脳卒中を減少しないことが示された。英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのDaniel Keene氏らが患者11万7,411例のデータを含む無作為化試験をメタ解析し報告した。「観察研究では、HDL上昇と心血管アウトカム改善の相関性が示されているが、スタチンが広く使用されるようになった現在では、HDL値を上昇するこれら3つの薬剤の有益性を裏付ける試験はなかった」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年7月18日号掲載の報告より。スタチン治療有無を問わず、HDL値上昇薬の心血管アウトカムへの効果をメタ解析 研究グループは、HDL値上昇のために用いられるナイアシン、フィブラート系薬、CETP阻害薬の3つの薬剤の心血管イベントへの有益性をメタ解析にて評価した。 2013年5月時点で、Medlineなどのデータベースを検索し、試験発表の有無、また対照群のスタチン治療の有無を問わず(すなわちスタチン発売前の試験も含む)、これら3つの薬剤について比較検討した無作為化試験を特定した。 主要アウトカムは、intention to treat解析ベースでの全死因死亡とし、副次アウトカムは、冠動脈疾患死、非致死的心筋梗塞・脳卒中、および重大有害事象報告とした。スタチンがなかった時代の試験結果と有意な差 検索により、39試験、11万7,411例の無作為化試験データを特定した。全介入でHDL値の上昇がみられた。 解析の結果、ナイアシン(オッズ比[OR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.92~1.15、p=0.59)、フィブラート系薬(同:0.98、0.89~1.08、p=0.66)、CETP阻害薬(同:1.16、0.93~1.44、p=0.19)ともに、全死因死亡への効果は認められなかった。 また、冠動脈疾患死についてもナイアシン(同:0.93、0.76~1.12、p=0.44)、フィブラート系薬(同:0.92、0.81~1.04、p=0.19)、CETP阻害薬(同:1.00、0.80~1.24、p=0.99)ともに効果は認められず、脳卒中アウトカムについても同様であった[ナイアシン(同:0.96、0.75~1.22、p=0.72)、フィブラート系薬(同:1.01、0.90~1.13、p=0.84)、CETP阻害薬(同:1.14、0.90~1.45、p=0.29)]。 非致死的心筋梗塞について、スタチン治療を受けていなかった患者の試験において、ナイアシンと有意な減少の関連がみられたが(同:0.69、0.56~0.85、p=0.0004)、スタチン治療を受けていた患者の試験では効果は有意ではなかった(同:0.96、0.85~1.09、p=0.52)。また、これらサブグループ間には有意差がみられた(p=0.007)。 非致死的心筋梗塞に関する同様の傾向は、フィブラート系薬でもみられた。スタチン非服用群のORは0.78(95%CI:0.71~0.86、p<0.001)、全員または一部服用群のORは0.83(同:0.69~1.01、p=0.07)であった。サブグループ間の差は有意ではなかった(p=0.58)。

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低炭水化物食 vs 低脂肪食

低炭水化物ダイエットの善しあしについては、よく議論されているが、BMI 30以上の肥満例では、よい選択肢かもしれない。ただし、本試験は24週の結果であり、より詳細な試験結果が待たれる。低炭水化物食と低脂肪食の効果を、肥満2型糖尿病患者を対象に24週間比較した。その結果、とくに低炭水化物食群で血糖変動の減少など有意な効果が認められた。なお、どちらも血糖指標やCVDリスクマーカーへの好影響が認められた。方法:24週にわたる食事療法●対象:肥満の2型糖尿病成人115例●平均BMI:34.4±4.2●平均年齢:58±7歳●期間:24週間(運動プログラムも同時に実施)●試験:無作為化試験 ・低炭水化物食群 : 炭水化物14%[<50g/日]、タンパク質28%、脂肪58%[飽和脂肪<10%] ・低脂肪食群 : 炭水化物53%、タンパク質17%、脂肪30%[飽和脂肪<10%]▼評価項目▼HbA1c、血糖変動(48時間の持続血糖モニタリングによる評価)、糖尿病治療薬の減薬(medication effect score[MES]により評価)、血清脂質、血圧結果:低炭水化物食群で血糖変動の減少に有意な効果●低炭水化物食群で血糖変動が有意に減少・TG:-0.5±0.5 mmol/L vs. -0.1±0.5 mmol/L、p≦0.03・MES:-0.5±0.5 vs. -0.2±0.5、p≦0.03・血糖変動は低炭水化物食群で少なかった(p≦0.03)※低炭水化物食群 vs. 低脂肪食群 ●サブグループ解析でHbA1c値に有意差あり(ベースライン値HbA1c>7.8%およびHDL-C<1.29mmol/Lの被験者で比較)・HbA1c:-2.6±1.0% vs. -1.9±1.2%、p=0.002・HDL-C:0.2±0.3 mmol/L vs. 0.05±0.2 mmol/L、p=0.007※低炭水化物食群 vs. 低脂肪食群 ●試験終了率は両群間で有意差なし(p≧0.50)・24週時点での試験終了者:93例・試験終了率(低炭水化物食:79%、低脂肪食: 82%)・体重減少(低炭水化物食: -12.0±6.3kg、低脂肪食: -11.5±5.5kg)・両群ともに下記指標が減少(p≧0.10) 血圧(-9.8/-7.3±11.6/6.8mmHg)、空腹時血糖値(-1.4±2.3mmol/L)、 およびLDL-C(-0.3±0.6mmol/L)考察:「低炭水化物食」は低脂肪食よりメリットをもたらすかもしれない本試験は、BMI平均34.4の高度肥満例に対する24週の検討であった。結果、低炭水化物食による介入は低脂肪食以上に、血糖変動などへの好影響が期待できることが明らかになった。低炭水化物ダイエットの善しあしについては議論が続いている。ただし、肥満例の2型糖尿病患者に半年程度の食事療法を行う場合に関していえば 「低炭水化物食」 は低脂肪食よりも効果的なアプローチかもしれない。

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コーヒーを多く飲む人は顔のシミが少ない

 日本人中年女性131名を対象とした検討の結果、コーヒーおよびポリフェノール摂取量が多い人ほど顔のシミが少ないことが明らかにされた。ネスレ日本の福島 洋一氏らが報告したもので、「コーヒーは、日焼けによる皮膚の老化の予防に役立ち、クロロゲン酸を含むポリフェノールにはシミにみられる色素過剰を減じる可能性があると思われる」とまとめている。International Journal of Dermatology誌オンライン版2014年7月11日号の掲載報告。 日焼けによる皮膚の老化には活性酸素が関与しており、シミやしわの形成に結び付いていることは知られている。コーヒーは最大のポリフェノール摂取ソースであり、日常生活において最も多量の抗酸化物質を供給する。しかし、どれほど摂取すれば皮膚の健康に影響があるかについてはほとんど検討されていなかった。 研究グループは、健康な日本人中年女性のコーヒーおよびポリフェノール摂取の皮膚への影響を調べるため、食事、環境要因、皮膚の状態について断面調査を行った。 各被験者の頬で、皮膚の含水量、経表皮水分蒸散量および弾力性を非侵襲的方法(それぞれCorneometer、Tewameter、Cutometer)で測定し、デジタル写真を用いてしわとシミの評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・試験には、健康な非喫煙で、日常生活における日光への曝露は中程度の30~60歳女性131名が参加した。アンケートにより食事、飲料摂取、生活状況を調べた。・コーヒーと総ポリフェノール(全ソースおよびコーヒーから)の摂取量は、シミの評価スコアの低下傾向と統計的に有意な相関を示した(p<0.05)。・コーヒーまたはクロロゲン酸からの総ポリフェノール摂取量が高値である被験者(三分位最高位群)は、紫外線によるシミの評価スコアが最も低かった(p<0.05)。・以上のように日本人中年女性において、コーヒーおよびポリフェノール摂取は顔のシミと関連していた。

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敗血症のアルブミン、死亡抑制に差なし/BMJ

 成人敗血症に対する体液補充や蘇生輸液におけるアルブミン製剤の使用は、クリスタロイド溶液やコロイド溶液に比べて全死因死亡を改善しないことが、英国インペリアル・カレッジ・ヘルスケアNHSトラスト、ハマースミス病院のAmit Patel氏らの検討で示された。イギリス国立医療技術評価機構(NICE)やSurviving Sepsis Campaignのガイドラインは、主に2011年のメタ解析や2004年のSAFE試験の結果に基づき、成人敗血症の体液補充や蘇生輸液へのアルブミン製剤の使用を推奨している。一方、これらの試験の質は十分に高いとは言えず、その後に行われた試験の結果も相反するものだという。BMJ誌オンライン版2014年7月22日号掲載の報告。アルブミン製剤の有用性をメタ解析と逐次解析で評価 研究グループは、敗血症患者に対する体液補充や蘇生輸液におけるアルブミン製剤の有効性と安全性を評価するために、関連する無作為化臨床試験の論文を系統的にレビューし、メタ解析と逐次解析(trial sequential analysis)を行った。 データの収集には、医学関連データベースや学会プロシーディングスのほか、参考文献リストを検索し、必要に応じて著者に連絡を取った。対象は、成人敗血症患者に対する救急治療や集中治療において体液補充や蘇生輸液にアルブミン製剤が使用され、対照(クリスタロイド溶液、コロイド溶液)との比較を行った前向き無作為化試験であり、敗血症の重症度は問わず(ベースライン時の低アルブミン血症の有無を確認)、全死因死亡のデータが提示されているものとした。 2名の研究者が別個に論文を精査し、バイアスのリスク、試験方法、患者、介入法、比較の方法、アウトカムのデータを抽出した。ランダム効果モデルを用いて全死因死亡の相対リスクを算出した。主要評価項目はフォローアップ終了時の全死因死亡であった。「中等度」のエビデンスレベルで「相対リスクに差なし」 16の臨床試験(18論文)に登録された敗血症、重症敗血症、敗血症性ショックで救急治療または集中治療を受けた4,190例が解析の対象となった。年齢中央値60.8歳の患者に対し、70.0g/日(中央値)のアルブミン製剤が3日間(中央値)投与されていた。アルブミン製剤の総投与量中央値は175gであった。クリスタロイド溶液は0.9%生理食塩水や乳酸リンゲルが、コロイド溶液は主にヒドロキシエチルスターチ(HES)が使用された。 アルブミン製剤群と対照群の間には、死亡の相対リスクの差を認めず(相対リスク[RR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.87~1.01、p=0.11、I2=0%)、「アルブミン製剤に相対的なベネフィットはない」との見解が支持された(エビデンスの質は、GRADE[Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation]基準で「中等度(moderate)」の判定)。 アルブミン製剤の死亡の相対リスクは、クリスタロイド溶液(RR:0.93、95%CI:0.86~1.01、p=0.07、I2=0%)およびコロイド溶液(同:1.04、0.79~1.38、p=0.76、I2=0%)と比べても有意な差はなかった。エビデンスの質は、クリスタロイド溶液との比較は「高い(high)」、コロイド溶液との比較は「たいへん低い(very low)」と判定された。 バイアスのリスクが高い試験を除外したうえで、事前に規定されたサブグループ解析を行ったが、「死亡に関するベネフィットはない」との知見に変化はなかった。 著者は、「成人敗血症に対するアルブミン製剤による体液補充や蘇生輸液は全死因死亡の抑制に有効ではない」とまとめ、「アルブミン製剤は安全に使用でき、有害性の徴候は検出されなかったが、本試験で得られた知見は現行のガイドラインの推奨を支持しない」としている。

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高齢統合失調症、遅発性ジスキネジアのリスク低

 高齢患者に対するオランザピンvs. 旧来の抗精神病薬治療による遅発性ジスキネジアの発生率は、それぞれ2.5%、5.5%と低率で有意差もみられなかったことが、米国のBruce J. Kinon氏らが行った検討の結果、報告された。これまで55歳以上を対象とした比較試験は行われていたが、今回の検討は、平均年齢78歳、約8割が認知症を有する高齢患者を対象に行われたものである。Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology誌オンライン版2014年7月9日号の掲載報告。 遅発性ジスキネジア(TD)を有さない患者を、オランザピン投与群(2.5~20mg/日、150例)と旧来の抗精神病薬投与(CNV)群(各ラベル用量、143例)に無作為に割り付け、6週間の漸減/導入期間後、最長1年間治療を行った。 主要アウトカムのエンドポイントは、アプリオリに定義した持続性TDで、異常不随意運動評価尺度(Abnormal Involuntary Movement Scale:AIMS)でスコア2(1~7項目のうち2項目以上で)または3以上(同1項目以上で)が1ヵ月以上続く場合とした(基準A)。また事後解析では、中等度(1項目以上でスコア3以上が1ヵ月間持続;基準B)と定義した持続性TDの評価、およびAIMSスコアの上昇(基準A、B)が1ヵ月間持続しなかったprobable TDの評価を行った。治療群間の比較にはKaplan-Meier法が用いられ、log-rank検定も行われた。 主な結果は以下のとおり。・被験者の平均年齢は78歳であり、多くが認知症と診断されていた(オランザピン群76.7%、CNV群82.5%)。・CNV群の患者のうち40.6%が、ハロペリドールを投与されていた。・持続性TD発症については、治療群間で有意差はみられなかった。累積発生率はオランザピン群2.5%(95%信頼区間[CI]:0.5~7.0)、CNV群5.5%(同:2.1~11.6)であった(p=0.193)。・曝露量で補正後のイベント発生率も、治療群間で有意差は示されなかった。オランザピン群は100人年当たり2.7、CNV群は同6.3で、率比は0.420(95%CI:0.068~1.969)であった。・事後解析の結果、オランザピン治療群における、1ヵ月間持続している中等度の持続性TD(p=0.012)、および1ヵ月間持続しなかったprobable TD(基準Aのp=0.030、基準Bのp=0.048)のリスクは、有意に低いことが示された。・ベースライン時に顕著な錐体外路症状がない患者については、CNV治療群のほうが、オランザピン治療群よりも、治療によりパーキンソニズムが発現した患者が有意に多かった(CNV群70%[35/50例]、オランザピン群44%[25/57例]、p=0.011)。・治療により出現したアカシジアについては、治療群間の有意差はみられなかった(CNV群6%[7/117例]、オランザピン群10%[13/130例]、p=0.351)。関連医療ニュース 遅発性ジスキネジアが発現するD2受容体占有率は:慶應義塾大学 遅発性ジスキネジアへの対処に新たな知見 高齢発症の統合失調症様症状、死亡リスク高  担当者へのご意見箱はこちら

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49)肥満に関する健康情報を正しく説明【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 患者先生、少しくらい太っていた方が長生きするんじゃないですか? 医師確かにそうですね。やせすぎの人が最も短命で、次が太りすぎの人、その次が小太りの人ということになりますね。普通の体重の人と小太りの人では、平均余命はそれほど変わりません。 患者そうなんですか。 医師問題は医療費ですね。 患者それは気になりますね。(興味津々) 医師肥満男性では、40歳以降にかかる医療費は平均1,521万円、肥満女性は平均1,860万円で、どちらもやせた人の1.3倍くらいになります。 患者なるほど。 医師肥満の人がやせると、医療費は少なくてすみます。 患者やっぱり、体重管理は必要ですね。(動機づけの言葉)●ポイント寿命だけでなく、医療費について説明することで患者の納得度が向上します 1) Nagai M, et al. J Epidemiol. 2010; 20: 398-407. 2) Sasazuki S, et al. J Epidemiol. 2011; 21: 417-430. 3) Zheng W, et al. N Engl J Med. 2011; 364: 719-729. 4) Kuriyama S, et al. Int J Obes Relat Metab Disord. 2002; 26: 1069-1074.

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Vol. 2 No. 3 慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するカテーテルインターベンションの現状と展望 バルーン肺動脈形成術は肺動脈血栓内膜摘除術の代替療法となりうるか?

川上 崇史 氏慶應義塾大学病院循環器内科はじめに慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)とは、器質化血栓により広範囲の肺動脈が狭窄または閉塞した結果、肺高血圧症を合併した状態である。早期に適切な治療がなされない場合、予後不良であり、心不全から死に至るといわれている1)。当初Riedelらは、CTEPHの予後は、平均肺動脈圧が30mmHg、40mmHg、50mmHg以上と段階的に上昇するにつれて、5年生存率は50%、30%、10%へ低下すると報告した2)。現在、各種肺血管拡張剤が発達しており、上記より良好な成績であるとは思われるが、効果は限定的である。また、中枢型CTEPHに対しては、肺動脈血栓内膜摘除術(pulmonary endarterectomy:PEA)が根治術として確立されている3)。しかし、末梢型CTEPHに対する成績は中枢型CTEPHと比較して劣っており、末梢型のためにPEA適応外となる症例も少なからず存在する。2000年代半ばより、本邦において、薬物療法で十分な治療効果が得られず、PEA適応外である症例に対して、バルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)が試みられ、有効性が報告された。以下、本邦から治療効果と安全性が確立したBPAについて概説する。BPAについて最初に複数例のCTEPHに対するBPAの有効性を報告したのは、2001年のFeinsteinらである4)。Feinsteinらは、末梢型や並存疾患によりPEA適応外である18例のCTEPHに対して、平均2.6セッションのBPAを施行し、平均36か月間、経過観察した。BPA後、平均肺動脈圧の有意な低下(43→33.7mmHg)とNYHA分類の改善(3.3→1.8)、6分間歩行距離の改善(191→454m)を認めたが、PEAと同様の合併症である再灌流性肺水腫が18例中11例(61.1%)に発症し、人工呼吸器管理が3例(16.6%)、BPA関連死が1例(5.6%)という成績であった。当時の旧式のバルーンカテーテルや0.035インチガイドワイヤーを用いて行われたBPAの初期報告は、上記のように有効性を認めたわけであるが、外科的根治術であるPEAの有効性には及ばなかった。当時、UCSDのJamiesonらのPEA周術期死亡率は4.4%であり、術後の平均肺動脈圧は、中枢型CTEPHで46から28mmHg、末梢型CTEPHで47から32mmHgまで改善することができた3)。このため、米国ではBPAはPEAに劣ると結論づけられた。当時、CTEPHの治療選択肢には、PEAと薬物療法があり、PEAの適応症例であれば、十分な改善を得ることができたが、PEA適応外の症例を薬物療法で治療してもあまり改善は得られなかった。結果として、年齢、並存疾患(全身麻酔ができない)、末梢型CTEPHなどでPEAが実施できない症例が割と多いこと、末梢病変の存在によりPEA後の残存肺高血圧症が10%程度あることが問題として残った。このような背景において、2000年代半ばより、本邦の施設でPEA適応外である重症CTEPHに対して、BPAが施行されるようになり、いくつかの報告がされた5-7)。なかでも、岡山医療センターのMizoguchi、Matsubaraらの報告は、68名のCTEPH患者に対して255セッションのBPAを施行し、最大7年間、経過観察している。結果、BPA後に平均肺動脈圧、肺血管抵抗の低下(各々45.4→24mmHg、942→327dyne sec/cm5)、心係数の増加(CI 2.2→3.2L/min/m2)、6分間歩行距離の延長(296→368m)、BNPの有意な改善(330→35pg/mL)を認めた。酸素投与量も減量(oxygen inhalation 3.0→1.3)することができ、68名中、26名の患者(38%)で在宅酸素療法を離脱することができた。また、96%の患者がWHO分類ⅠまたはⅡまで改善することができた。周術期死亡率は1.5%であり、再灌流性肺障害(再灌流性肺水腫と同義)を含めた呼吸器関連合併症を認めたが、症例経験の増加に伴い、合併症は有意に低下すると報告している。以上、2010年以降の本邦からの報告において、改良されたBPAは、Feinsteinらの初期のBPAと比べて、安全性・有効性ともに著しく改善したといえる。改善した理由としては、バルーンカテーテルの発達、0.014インチガイドワイヤーの使用、画像診断デバイス(IVUSなど)の積極的な使用などがあると思われる。手技の流れについては次項で述べる。BPAの実際術前、右心カテーテル検査・肺動脈造影を必ず行い、個々の患者における肺高血圧症の重症度と肺動脈病変の形態評価を行う。検査結果より、右房圧が高ければ、利尿剤を調節し、心拍出量が低値(CI 2.0L/min以下)であれば、術前からドブタミンの投与を行う。抗凝固療法については前日からワルファリンカリウムを中止している。重症例で軽度の肺出血が致死的となる可能性がある場合、コントロールしやすいヘパリンへ置換する方法もあると考える。ワルファリンは他剤との併用により容易に効果が増強するので、PT-INRの頻回の測定を要する。また、われわれはエポプロステノールを使用していない。理由はCTEPHにおいて肺動脈圧の低下作用が軽微であること、中心静脈カテーテル留置など手技が煩雑であること、抗凝集作用により出血を助長する可能性があると考えているからである。次に実際のBPA手技について述べる。手技は施設間でやや異なっていると思われる。しかし、0.014インチガイドワイヤーの使用、肺動脈主幹部へのロングシース挿入、積極的な画像診断デバイスの使用などは各施設である程度、共通していると思われる。以下、われわれの施設の手法を述べる。アプローチ部位の第1選択は、右内頸静脈である(図1)。理由はガイディングカテーテルのバックアップや操作性がよいことである。また、術後のスワンガンツカテーテル留置が迅速にできることも利点である。内頸静脈が使用できない場合は、大腿静脈アプローチを考慮する。まず、エコーガイド下に9Fr 8.5cmシース(スワンガンツカテーテル留置用シース)を右内頸静脈に挿入する。内頸静脈アプローチとはいえ、稀に気胸を合併することがある。気胸はBPA後の必要時にNPPVが使用できなくなるなど、術後管理を困難にするため、必ず避けねばならない。このため、われわれは100%、エコーガイド下穿刺を実践している。図1 右内頸静脈アプローチ画像を拡大する次に6Fr 55cmまたは70cmロングシースを9Frシース内へ挿入する。6Frロングシースの先端をJ型またはPigtail型にシェイピングし、0.035インチラジフォーカスガイドワイヤーに乗せて、治療対象となる左右肺動脈の近位部へ進める。その後、6Frロングシース内へ6Frガイディングカテーテルを入れ、治療標的となる肺動脈病変へエンゲージする。ガイディングカテーテルの選択には術者の好みもあると思うが、われわれは岡山医療センターと同様、柔らかい材質のMulti-purposeカテーテルを第1選択とすることが多い。その他、治療標的血管により、AL1カテーテルやJR4カテーテルを適宜、選択する。稀であるが、完全閉塞病変に対して、材質の固いガイディングカテーテルを使用することがある。ガイディングカテーテルのエンゲージ後、正面、左前斜位60度の2方向で選択造影を行い、0.014インチガイドワイヤーをバルーンかマイクロカテーテルサポート下に肺動脈病変を通過させる。肺動脈病変に対するワイヤリングは、PCIやEVTと違うと感じる術者が多い。これは、肺動脈の解剖が3次元的に多彩であること(細かい分岐が多い)、肺動脈は脆弱で破綻しやすいこと、肺動脈病変が他の動脈硬化病変と大きく異なること、呼吸変動の存在などに起因すると思われる。特にBPAにおいて、呼吸変動をコントロールすることはとても重要である。呼吸変動を上手に利用すれば、ガイドワイヤー通過の助けになるが、上手にコントロールできなければ、ガイドワイヤーによる肺血管障害(肺出血)が容易に起こると思われる。当院では、肺血管障害を最小限にするため、ガイドワイヤーの通過後、可能な限り、先端荷重の軽いコイルタイプのガイドワイヤーへ交換している。ガイドワイヤー通過後は、血管内超音波(IVUS)または光干渉断層法(OCT)で病変性状・範囲・血管径などを評価し、病変型に準じて、血管径の50~80%程度のサイズのバルーンカテーテルで拡張していく。なお、平均肺動脈圧40mmHg以上または心拍出量2.0L/min以下の症例の場合は、岡山医療センターの手法に倣って、上記より20%程度減じたバルーンサイズを選択している。なお、CTEPHの肺動脈病変は再狭窄することはほぼなく、バルーンサイズを減じても大きな問題になることはない。しかし、複数回治療後に平均肺動脈圧が低下した症例の場合は、適切なサイズのバルーンカテーテルで拡張することがさらなる改善のために必要である。次に術後管理について述べる。BPA後は原則として、スワンガンツカテーテルを留置し、集中治療室管理としている。また、術後、再灌流性肺障害の有無や程度を確認するために必ず胸部単純CTを施行する。これらは、術後の再灌流性肺障害の有無、重症度の評価をするために行っている。経過がよければ、翌日午前中に集中治療室から一般病室へ戻ることができ、午後には歩行可能となる。当院での104セッションのBPAにおいては、1セッションのみで3日間の集中治療室管理を要したが、残り103セッションの集中治療室の滞在期間は1日であった。なお、最近、NPPV装着は必須としていないが、常にスタンバイしておく必要がある。NPPV適応となるのは、コントロール困難な喀血・血痰、重度の酸素化不良例などである。以下に当院の症例を示す。症 例54歳、女性主 訴労作時呼吸困難既往歴特になし家族歴特になし現病歴2011年11月、労作時呼吸困難(WHO分類Ⅱ)を認めた。2012年1月、労作時呼吸困難が悪化したため(WHO分類Ⅲ)、近医を受診し、急性肺塞栓症の診断で緊急入院となった。抗凝固療法を行い、外来で経過観察していたが、2012年9月、労作時呼吸困難が再増悪したため(WHO分類Ⅲ)、同医を受診。心エコー図で肺高血圧症を指摘され、CTEPHと診断された。2012年11月、精査加療目的で当院を紹介受診した。右心カテーテル:右房圧9、肺動脈圧73/23/m41、心拍出量1.8、肺血管抵抗1156肺動脈造影:図2入院後経過タダラフィル20mg/日を内服開始したが、肺動脈圧66/24/m39、心拍出量1.8、肺血管抵抗967と有意な改善は認めなかった。本人・家族と相談し、BPAの方針となった。1回目BPA:左A9、A102回目BPA:右A6、A8、A103回目BPA:右A1、A2、A3、A4、A54回目BPA:左A1+2、A85回目BPA:左A4、A56回目BPA:右A1、A3、A6、A7、A8、A9治療後計6回のBPAで計20病変を治療後、症状は消失した(WHO分類Ⅰ)。また、右心カテーテルでは肺動脈圧34/11/m19、心拍出量3.1、肺血管抵抗316と著明な改善を認めた。図2 肺動脈造影画像を拡大するBPAの現状と今後の適応過去の報告において、FeinsteinらはBPA適応を末梢型CTEPHや併存疾患により全身麻酔が困難なPEA適応外のCTEPHとしてきた。これらは、本邦からの報告でも同様である。しかし、近年、BPAは有効性に加えて、安全性も大きく向上しており、当院では適応範囲を拡大して、以下をBPAの適応としている。中枢型CTEPH(原則としてinoperable)末梢型CTEPH高齢重篤な併存疾患を有するCTEPHPEA後の残存PH軽度から中等度のCTEPH上記の重篤な併存疾患とは、全身麻酔ができない症例のことであると考える。また、BPAの普及により、最も恩恵を受けたのは、PEA後の残存PHと軽度から中等度のCTEPH症例であろう。PEA後の残存PHに対して再度、PEAを行うのは実際、高リスクであり、BPAはよい選択肢である。また、軽度から中等度のCTEPHは、従来、薬物療法で経過観察されていた患者群であるが、これらの症例に対して、BPAを行うことによりさらにQOLが向上し、薬物療法の減量、在宅酸素療法の減量・中止が可能となることをしばしば経験する。以上より、カテーテル治療であるBPAは低侵襲であり、PEAより適応範囲が広いと思われる。しかし、BPAに適した症例、PEAに適した症例があり、個々の患者でよく検討することが重要である。CTEPHには、血管造影上、いくつかの特徴的な病変があることが報告されている8)。当院で治療した計476病変を検討した結果、病変により、BPAの手技成功率が異なることが確認された(図3)。当然であるが、カテーテル手術のため、閉塞病変の方が狭窄病変より治療が難しく、再灌流性肺障害を含めた合併症発生率も高率である。しかし、BPAで閉塞病変を開存させることにより、著しく血行動態や酸素化の改善を経験することが多々あり、個人的には、閉塞病変は可能な限り開存させるべきであると考える。図3 各種病変と手技成功率画像を拡大する一方、用手的に器質化血栓を摘除するPEAは、BPAと比べて、閉塞病変の治療が容易にできるかもしれない。また、器質化血栓が多量である場合、器質化血栓をバルーンで壁に圧着させるBPAより、完全に摘除するPEAの方が理にかなっているかもしれない。しかし、PEAでは到達が困難である肺動脈枝が存在することも事実である。いずれにしても、BPA、PEAの双方とも一長一短があり、適応決定に際しては、外科医・カテーテル治療医の両者で話し合うことが望ましいと考えられる。まとめ以上、近年、本邦で発展を遂げたインターベンションであるBPAについて概説した。従来、CTEPHに対する根治術はPEAだけであったため、BPAの発展は、CTEPH患者にとって大きな福音であると思われる。現在、経験のある施設で再灌流性肺障害を低減させる試みがなされ、合併症発症率は確実に減少している。しかし、安全性を重視するあまり、治療効果を減じるようでは、本末転倒といわざるをえない。低い合併症発生率と高い治療効果の双方を合わせもったBPAでなければならない。CTEPHの第一の治療ゴールは、平均肺動脈圧30mmHg以下を達成することである。これにより、CTEPH患者の予後を改善することができる。そして、第二の治療ゴールは、さらなる平均肺動脈圧の低下を目指して(20mmHg以下)、QOLの向上や酸素投与量の減量・中止、薬物療法の減量などを達成することである(図4)。われわれは可能な限り、平均肺動脈圧の低下を目指す「lower is better」を目標として、日々、CTEPHを治療している。また、BPAは本邦が世界をリードしている分野であり、今後、本邦から多くの知見が報告されなければならないと考える。図4 治療のゴール画像を拡大する最後にわれわれも発展途上であり、今後、多くの施設とBPAの発展について協力していければと思っている。文献1)Piazza G et al. Chronic thromboembolic pulmonary hypertension. New Engl J Med 2011;364: 351-360.2)Riedel M et al. Long term follow-up of patients with pulmonary thromboembolism: late prognosis and evolution of hemodynamic and respiratory data. Chest 1982; 81: 151-158.3)Thistlethwaite PA et al. Operative classification of thromboembolic disease determines outcome after pulmonary endarterectomy. J Thorac Cardiovasc Surg 2002; 124: 1203-1211.4)Feinstein JA et al. Balloon pulmonary angioplasty for treatment of chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circulation 2001; 103:10-13.5)Sugimura K et al. Percutaneous transluminal pulmonary angioplasty markedly improves pulmonary hemodynamics and long-term prognosis in patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circ J 2012; 76: 485-488.6)Kataoka M et al. Percutaneous transluminal pulmonary angioplasty for the treatment of chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 756-762.7)Mizoguchi H et al. Refined balloon pulmonary angioplasty for inoperable patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 748-755.8)Auger WR et al. Chronic major-vessel thromboembolic pulmonary artery obstruction:appearance at angiography. Radiology 1992;182: 393-398.

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分子標的治療薬登場で甲状腺がん治療はどう変わる?

 今年6月、甲状腺がんで初めての分子標的治療薬として、ソラフェニブ(商品名:ネクサバール)が「根治切除不能な分化型甲状腺がん」に対して承認された。これまでは外科医でほぼ完結していた甲状腺がん治療が、分子標的治療薬の登場によってどのように変わっていくのだろうか。7月29日(火)、都内で開催されたプレスセミナー(主催:バイエル薬品株式会社)で、甲状腺がん治療の現状と今後のあり方、ソラフェニブの臨床成績と副作用のマネージメントについて、日本医科大学内分泌外科学分野 教授 杉谷 巌氏と国立がん研究センター東病院頭頸部内科 科長 田原 信氏がそれぞれ講演した。甲状腺がん治療の現状 甲状腺がんは、予後良好な乳頭がんが9割以上を占める。近年、2cm以下の乳頭がんが増加しているが、これは発見されるがんが増えたためと考えられている。一方、死亡率は変化していないことから、背景には少数ではあるが予後不良の高リスクがんがあると考えられることから、杉谷氏は「治療開始時点における適切な予後予測、および治療方針決定のための適切なリスク分類が必要」と言う。 治療については、欧米と日本では考え方が異なる。欧米では、ほぼすべての患者で甲状腺を全摘し放射性ヨウ素内用治療を行っているが、日本では、予後のよいがんであることからQOLを考慮し、部分切除により甲状腺機能を残すようにすることも多い。こうした現状を踏まえ「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版」(日本内分泌外科学会/日本甲状腺外科学会)でも、TNM分類にて、T>5cm、N1、Ex2、M1のいずれかを満たせば高リスク群とみなし、甲状腺全摘(+郭清)を推奨しているが、低リスク群との間に“グレーゾーン”を設け、患者さんの要望を踏まえて治療を決定する選択余地を残している。高リスク患者の治療に分子標的治療薬が登場 高リスクの場合、甲状腺全摘、隣接臓器合併切除、拡大リンパ節郭清といった局所治療を実施する。その後の全身治療として、放射性ヨウ素内用療法、甲状腺ホルモン療法(TSH抑制療法)があるが、杉谷氏はこれらの治療効果は見込めないと言う。というのは、これらの治療は、ヨウ素を取り込んだりTSHの影響を受けたりする甲状腺の性質を利用しているが、高リスクの甲状腺がんではこの甲状腺本来の性質が失われているためである。 このようななか、甲状腺がんの発生・進行の分子メカニズムが少しずつ判明してきており、分子標的治療薬として現在までにソラフェニブ、lenvatinib、vandetanibなどのチロシンキナーゼ阻害薬の国際的な臨床試験が実施され、今回ソラフェニブが承認された。杉谷氏は、今後の甲状腺治療において腫瘍内科とタッグを組んでいくことに期待している。 一方で、杉谷氏は分子標的治療薬の課題として、1)完全寛解例がほとんどない、2)個別の効果予測がまだできない、3)併用療法や2次治療についての検討はこれからである、4)治療が高額、5)特有の副作用の管理が難しい、といった点を挙げている。 さらに、今後の甲状腺がん治療については、外科医、腫瘍内科医、内分泌内科医、放射線科医、緩和ケア医による新たなチーム医療システムを築き上げることが必要な時期に来ているとし、そこで新たなエビデンスを構築することが必要と強調した。分子標的治療薬ソラフェニブの有効性 腫瘍内科の田原氏は、日本から国際共同第III相臨床試験(DECISION試験)に参加した経験をもとに、試験成績や副作用マネージメントについて紹介した。 DECISION試験は、予後不良で有効な標準治療がない、放射性ヨウ素治療抵抗性の局所進行または転移性分化型甲状腺がん患者を対象に実施したプラセボ対照比較試験である。 本試験で、分子標的治療薬であるソラフェニブは、主要評価項目である無増悪生存期間を有意に改善し、中央値を5ヵ月間延長した(ソラフェニブ群10.8ヵ月vsプラセボ群5.8ヵ月、ハザード比:0.59、95%CI:0.45~0.76)。 なお、副次的評価項目である全生存期間は、両群とも中央値に達しておらず、差は認められなかった(ハザード比:0.80、95%CI:0.54~1.19、p=0.14)。その考えられる理由として、田原氏は、本試験では病勢進行時の盲検解除およびソラフェニブへのクロスオーバーが可能であり、プラセボ群の71.4%がクロスオーバーされたことを挙げた。ソラフェニブの安全性と副作用マネージメント 安全性については、血清TSH増加、低カルシウム血症、二次性悪性腫瘍(皮膚扁平上皮がんなど)といった他のがんとは異なる副作用が認められたものの、主な副作用は手足の皮膚反応、下痢、脱毛、皮疹/落屑、疲労、高血圧などで、おおむね既知の安全性プロファイルとほぼ同様という。田原氏は「高血圧、手足症候群、下痢などの副作用に対する適切なマネージメントが治療継続に必要であり、腫瘍内科医が治療に携わることが重要である」と強調した。 また、日本人では5割の患者でグレード3以上の手足の皮膚反応が認められたという。これについて、田原氏は「甲状腺がんでは、腎細胞がんや肝細胞がんで同薬を投与されている患者さんよりも全身状態(PS)がよい人が多く、仕事やゴルフなどに出かけるなど、よく動くため皮膚障害が多かったのではないか」と考察し、使用開始1ヵ月間は活動を控えてもらうなど、患者指導の重要性について語った。

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HIV感染者の肝・心血管疾患死が減少/Lancet

 最近10年ほどの間に、HIV感染患者のAIDS関連疾患死、肝疾患死、心血管疾患死が実質的に減少したが、AIDS非関連腫瘍による死亡が増えていることが、イギリス・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのColette J Smith氏らが行ったD:A:D試験で示された。有効性の高い抗レトロウイルス療法(ART)の出現に伴い、HIV感染患者の余命は一般人口に近づきつつある。その結果として、AIDSに関連のない従来の合併症の重要性が相対的に増大しているという。Lancet誌2014年7月19日号掲載の報告。全死因・死因別死亡の動向を経時的に検討 D:A:D試験の研究グループは、1999~2011年におけるHIV感染患者の全死因死亡および死因別死亡の動向を経時的に検討した。解析には、Data collection on Adverse events of anti-HIV Drugs(D:A:D)に登録された個々の患者の1999年3月から死亡、追跡不能または2011年2月1日までのデータを用いた。 D:A:D試験は11のコホート試験の共同解析であり、欧州、アメリカ、オーストラリアの212施設で治療を受けるHIV-1陽性患者が対象となった。すべての致命的事象は、HIV死因分類(coding causes of death in HIV:CoDe)の方法を用いて、D:A:D調整センターの中央判定による検証が行われた。 フォローアップ期間30万8,719人年の間に、試験参加者4万9,731例(ベースラインの平均年齢38歳、男性74%)のうち3,909例(8%)が死亡した(粗死亡率:12.7人/1,000人年)。非特異的予防介入の改善で肝・心血管疾患死が減少か 主な死因は、AIDS関連疾患が1,123例(29%)、AIDS非関連腫瘍が590例(15%)、肝疾患が515例(13%)、心血管疾患が436例(11%)であり、その他(侵襲性細菌感染症、自殺、薬物過剰摂取など)と不明が1,245例(32%)であった。 1,000人年当たりの全死因死亡率は、1999~2000年の17.5人から2009~2011年には9.1人に低下した。同期間の死因別死亡のうち、AIDS関連疾患死(1,000人年当たり5.9人から2.0人へ)、肝疾患死(2.7人から0.9人へ)、心血管疾患死(1.8人から0.9人へ)が全死因死亡と同様に低下を示したが、AIDS非関連腫瘍死は1999~2000年の1.6人から2009~2011年には2.1人とわずかに増加した(p=0.58)。 AIDS関連疾患死の1999~2000年から2009~2011年の間の低下には、経時的に変化するCD4陽性細胞数などの因子で補正すると、有意な差を認めなかった(率比:0.92、95%信頼区間[CI]:0.70~1.22)。一方、この間の全死因死亡(同:0.72、0.61~0.83)、肝疾患死(同:0.48、0.32~0.74)、心血管疾患死(同:0.33、0.20~0.53)の低下には有意差が認められた。 1999~2000年の全死亡に占めるAIDS関連疾患死の割合は34%(87/256例)であったが、2009~2011年には22%(141/627例)まで低下した。肝疾患死も16%(40/256例)から10%(64/627例)へと低下した。これに対し、AIDS非関連腫瘍死は9%(24/256例)から23%(142/627例)へと増加していた。 著者は、「最近のAIDS関連死の減少は、持続的なCD4陽性細胞数の減少と関連するが、肝疾患死や心血管疾患死の減少はこれでは説明できない。われわれは、肝疾患死や心血管疾患死の経時的な実質的減少は、HIV非特異的な予防介入(禁煙、食事療法による減量、運動、脂質改善薬など)の改善で説明できると考えている。AIDS非関連腫瘍は現在、AIDS非関連死の主要原因であるが、その理由は明らかではなく、今後の検討を要する。治療の長期化によるARTの毒性の蓄積や、ARTが臨床症状の発現を遅延させていることも考えられるため、注意深い監視の継続が重要である」と考察を加えている。

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糖尿病予防には歩くよりヨガ

ヨガは2型糖尿病の効果的な予防戦略となるかもしれない。糖尿病高リスク者に対するウォーキングとヨガの効果を比較したところ、ヨガ群で体重、腹囲の有意な低下がみられた。一方で、食後・空腹時血糖値などのリスク指標への影響に有意差は認められなかった。糖尿病リスク者のウエスト引き締め に「ヨガ」はウォーキングよりも有効 な可能性がある。方法:糖尿病高リスク者が対象● 被験者:インド在住、空腹時血糖高値(初診FBG≧5.6mmol/L)、41例● 期間:8週間● 試験:乱数を利用した無作為化試験 ・ヨガ群(21例):ヨガクラス(マインドレクチャー含め1クラス75分)週に3~6日 ・ウォーキング群(20例):ウォーキング(30分、休憩を含め1回75分)週に3~6日● 評価:intention-to-treat分析に基づいて評価。▼主要アウトカム▼BMI変化、腹囲、空腹時血糖値、食後血糖値、血清インスリン値、インスリン抵抗性、血圧、コレステロール値※その他、抑うつ、不安、自覚ストレスなどを含む心理的well-being尺度の変化結果:ヨガで腹囲が減少▼ヨガ群 vs. ウォーキング群▼● BMI: -0.2±0.8 vs. 0.6±1.6、p=0.05● 腹囲: -4.2±4.8 cm vs. 0.7±4.2 cm、p<0.01● 体重: -0.8±2.1 kg vs. 1.4±3.6 kg、p=0.02 2群間において、食後・空腹時血糖値、インスリン抵抗性などの糖尿病リスクに関する指標、および心理的well-beingの変化では有意な差は認められなかった。両群ともに、収縮期・拡張期血圧、総コレステロール値、不安や抑うつ、ネガティブな感情および自覚ストレスについて、有意な減少が認められた。考察:ヨガは有効な糖尿病の予防戦略となるかもしれない今回、空腹時血糖高値のインド人における8週間にわたる検討から、ヨガの介入が、体重や腹囲の減少をもたらすことが明らかになった。著者は今後、より長期かつサンプルサイズの大きい研究での検討の必要性を示している。未確定な部分は多いものの、ヨガは体重関連のリスク因子を減らし、心理的にも幸福感を高める、有効な糖尿病の予防戦略となるかもしれない。

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サブ解析の9割がプロトコル記載なし/BMJ

 スイス・バーゼル大学病院のMatthias Briel氏らDISCO研究グループは、無作為化試験のサブグループ解析について、プロトコルとジャーナル発表論文における内容が一致するかを調べた。その結果、両者間には大きな矛盾があり、また「サブグループ解析は事前に規定されていた」という発表論文の記述のうち約3分の1は、実際には試験プロトコルに記録がなかったことなどを明らかにした。著者は、「サブグループ解析の有効性は、ほとんどが信憑性のないものだが、今回の検討で、サブグループの有効性の信憑性に関する最終的な判断は、プロトコルと分析プランへの評価なしでは行えないことが示された」と述べている。そのうえで無作為化試験のプロトコルをより完全かつ正確なものとすること、およびジャーナル編集者やレビュワー、読者のプロトコルへのアクセスのしやすさが重要であると指摘している。BMJ誌オンライン版2014年7月16日号掲載の報告より。サブグループ解析の予定が示されていたのは28.2% 調査は、スイス、ドイツ、カナダの6つの研究倫理委員会が、2000~2003年に試験プロトコルを承認した無作為化試験894件と、それ以後に発表されたフルジャーナル発表論文515本を対象に行われた。 結果、894件のプロトコルのうち、1つ以上のサブグループ解析の予定が示されていたのは252件(28.2%)だった。そのうち、明確な仮説を1つ以上示していたのは17件(6.7%)で、サブグループ解析の有効性の方向性を予想していたのは10件(4.0%)だった。相互作用の統計的検定を予定していたのは87件(34.5%)であった。 サブグループ解析の予定は、資金提供者が企業である試験のほうが、研究者である試験と比べて有意に高率だった(195/551件[35.4%]vs. 57/343件[16.6%]、p<0.001)。「サブグループ解析は事前規定」という発表論文のうち3分の1は裏付け取れず 発表論文515本のうち、1つ以上のサブグループ解析を報告していたのは246本(47.8%)だった。 サブグループ解析を報告していた246本のうち、著者が「サブグループ解析は事前に規定されていた」と述べていたのは81本(32.9%)だった。しかし、そのうち28本(34.6%)は、該当するプロトコルを見つけることができなかった。 また、86本で著者がサブグループ解析の有効性を主張していたが、該当するプロトコルが予定サブグループ解析で示されていたのは36本(41.9%)だけであった。

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アトピー患児の睡眠障害をSCORADで予測

 アトピー性皮膚炎(AD)を有する子供の睡眠障害について、睡眠効率の低下がみられる頻度が高いことや、SCORAD(Scoring Atopic Dermatitis)指数で予測可能であること、メラトニンおよびIgEの関与の可能性などが、台湾・台北市立聯合医院のYung-Sen Chang氏らによる検討の結果、報告された。著者は、「さらなる検討を行い、メカニズムや臨床的意義について探求することが必要である」と述べている。また、「睡眠障害の評価ツールとしてアクトグラフィ(actigraphy)は有用と思われた」と報告している。Pediatrics誌オンライン版2014年7月14日号の掲載報告。 AD患児において睡眠障害は一般的だが、著者は「これまでは主に質問票ベースの研究が多く、病態生理は不明なままであった」と指摘。本検討において、客観的特徴、寄与因子および臨床的予測因子を明らかにすることを目的とした。 1~18歳時のAD患児72例と、対照32例について、アクトグラフィとポリソムノグラフィを用いて睡眠パラメーターを測定し、また、尿中6スルファトキシメラトニン値、血中サイトカイン、総合およびアレルゲン特異的IgE値も測定した。 主な結果は以下のとおり。・AD患児では、睡眠効率の低下、睡眠導入時間の延長、睡眠の断片化、非レム睡眠の減少が有意であった。・アクトグラフィの結果とポリソムノグラフィの結果の相関性は良好であった。・ADの重症度と睡眠障害の関連性が認められた(r=0.55~0.7)。・睡眠効率の低下は、SCORADスコアが48.7以上で有意に予測された。感度は83.3%、特異度は75%であった(AUC=0.81、p=0.001)。・夜間メラトニン分泌の低下と、AD患児の睡眠障害の有意な関連が認められた。・その他睡眠障害に関連する因子として、かゆみ、ひっかき行動、総IgE値の上昇、家ダニ感作やブドウ球菌腸毒素などがあった。

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高齢発症の統合失調症様症状、死亡リスク高

 60歳超の高齢で発症する統合失調症様症状(VLOSLP)患者は、とくに男性において、早期発症(60歳未満)患者と比べて死亡リスクが高いことが示された。また、この結果は、身体合併症および事故で説明しうることも明らかにされた。フィンランド・ヘルシンキ大学中央病院のTiina Talaslahti氏らが、65歳以上患者を10年超追跡した試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「これら患者の死亡率を低減するためには、精神科ケア・プライマリケア・専門的身体ケアの効果的なコラボレーションによる目標を定めた臨床的介入が重要である」と提言している。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2014年7月2日号の掲載報告。 研究グループは、60歳超でVLOSLPを診断された患者の死亡率と死亡原因について、性別と年齢で適合したフィンランド一般住民と比較。また、VLOSLP患者の標準化死亡比(SMR)を早期発症(60歳未満)群と比較し、さらに両群患者間の死亡ハザード比も算出した。データは、フィンランド国家レジストリから入手し、1999年1月1日時点で65歳以上であったVLOSLP患者と早期発症患者について、1999~2008年の10年間の死亡を追跡した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、VLOSLP群918例、早期発症群6,142例であった。・全体のSMRは、VLOSLP群は5.02(4.61~5.46)、早期発症群は2.93(2.83~3.03)であった。・男性のSMRは、VLOSLP群は8.31(7.14~9.62、179例)、早期発症群は2.91(2.75~3.07、1,316例)であった。・女性のSMRは、VLOSLP群は4.21(3.78~4.66、364例)、早期発症群は2.94(2.82~3.07、2,055例)であった。・SMRはVLOSLP群において、大半の死因カテゴリー(事故、呼吸器疾患、認知症、腫瘍、循環器疾患など)で高値であった。・しかしながら、これらのVLOSLP群と早期発症群の差は、いくつかの変数を補正後の直接比較では、わずかなものであった(ハザード比:1.16、95%信頼区間[CI]:1.05~1.27、p=0.003)。関連医療ニュース 抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大 統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査 統合失調症患者の突然死、その主な原因は

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アポ蛋白C3は動脈硬化性疾患の新たな治療標的か?(解説:山下 静也 氏)-229

APOC3は血清アポリポ蛋白(アポ)C3をコードする遺伝子であり、アポC3はトリグリセライド(TG)リッチリポ蛋白、とくに動脈硬化惹起性の強いレムナントリポ蛋白の蛋白成分の1つである。カイロミクロン、VLDLなどのTGリッチリポ蛋白のTGが、リポ蛋白リパーゼ(LPL)の働きで分解され、遊離脂肪酸を放出してレムナントリポ蛋白となる過程で、アポC3はLPLによる加水分解を阻害することにより血清TGレベルを上昇させる1)。この作用はアポC2のLPL活性化作用とはまったく逆である。さらに、アポC3はTGリッチレムナントリポ蛋白の肝臓での取り込みを抑制する2)。したがって、アポC3の過剰は高TG血症、高レムナント血症、食後高脂血症を引き起こすことが知られている。 一方、アポC3の細胞内での作用として、アポC3がTG合成を促進し、肝臓でのVLDLのアセンブリーと分泌を増加させることも知られている3)。また、マウスでAPOC3遺伝子を欠損させると血清TGが低下し、食後高脂血症が防御されることも報告されている4)。ヒトではLancaster Amish の約5%がAPOC3遺伝子の欠失変異であるR19Xのヘテロ接合体であり、これらの症例ではアポC3濃度が半減し、空腹時および食後のTG値が有意に低く、冠動脈石灰化の頻度が60%も低いことが示されている5)。 このコペンハーゲン大学のJorgensen氏らの論文では、デンマークの2つの地域住民を対象とした前向き調査、すなわちCopenhagen City Heart Study(CCHS)とCopenhagen General Population Study(CGPS)とに参加した7万5,725人(CCHS:1万333人、CGPS:6万5,392人)のデータが前向きに解析され、APOC3遺伝子変異を保因するため生涯にわたりTGが低値の集団が、虚血性心血管疾患のリスクが低いか否かについて初めて検討された。 この中で虚血性血管疾患とは、虚血性心疾患または虚血性脳血管疾患と定義されている。その結果、虚血性血管疾患および虚血性心疾患のリスクは、ベースラインの非空腹時TG値の低下に伴って減少し、<1.00mmol/L(90mg/dL)の被験者は≧4.00mmol/L(350mg/dL)の場合に比べ発症率が有意に低かった(虚血性血管疾患のHR=0.43、虚血性心疾患のHR=0.40)。 遺伝子解析の結果、APOC3遺伝子の3つのヘテロ接合体の機能欠失変異(R19X、IVS2+1G→A、A43T)の保有者では、変異のない被験者に比べて非空腹時TGが平均44%低値であり、虚血性血管疾患および虚血性心疾患の発症は有意に少なく、リスク減少率はそれぞれ41%、36%であった。したがって、APOC3遺伝子の機能欠失型変異はTG値の低下および虚血性血管疾患のリスク減少と関連し、APOC3は心血管リスクの低減を目的とする薬剤の有望な新たな標的と考えられた。しかしながら、これらのAPOC3遺伝子の変異がなぜ同じようにTG値を低下させるのかは不明である。本報告はこれまでの疫学的な成績をさらに遺伝的なレベルまで詳細に確認した貴重なデータであり、類似論文が別の集団でN Engl J Medに発表されている6)。 本論文では各遺伝子変異に伴う、アポC3の血中レベルの変化と虚血性血管疾患との関係については示されていない。また、non-functionalな変異と考えられるAPOC3遺伝子のV50M変異では低TG血症は認められなかったにもかかわらず、虚血性血管疾患の減少傾向が認められたことから、APOC3遺伝子と虚血性血管疾患の関係は必ずしもアポC3の血中レベルとは関係せず、アポC3の血管壁細胞への直接作用が影響している可能性も考えられる。 また、本論文ではAPOC3遺伝子変異に伴う非空腹時TG値の低下と、虚血性血管疾患との関連性が示されたが、同様にAPOC3遺伝子変異に伴う空腹時TG値の変化と虚血性血管疾患との関連性についてはデータが示されていない。つまり、APOC3遺伝子変異による食後高脂血症の抑制が虚血性血管疾患を減少させたのか、空腹時TG値も減らして虚血性血管疾患を減少させたのかについては今後の検討が必要であろう。さらに、APOC3遺伝子変異が虚血性脳血管疾患単独の発症に及ぼす影響については記載がないが、興味ある点である。 一方、タイトルではアポC3の機能欠失型変異となっているが、R19X、IVS2+1G→A、A43Tの変異のすべてがアポC3の持つさまざまな機能を同様に欠失しているのか否かについても検討が必要であろう。最も重要な点は、Supplemental Figure S14に示されているように、APOC3遺伝子変異が虚血性血管疾患を抑制したにもかかわらず、総死亡率にはまったく影響がなかったという点であろう。今後、アポC3が動脈硬化性疾患の新たな薬物治療の標的となるためには、アポC3の他の多面的作用の解析とこの疑問点に対する真摯な検討がなされることが必要であろう。【参考文献はこちら】1)Ginsberg HN, et al. J Clin Invest. 1986; 78: 1287-1295. 2)Windler E and Havel RJ. J Lipid Res. 1985; 26: 556-565. 3)Qin W, et al. J Biol Chem. 2011; 286: 27769-27780.4)Maeda N, et al. J Biol Chem. 1994; 269: 23610-23616.5)Pollin TI, et al. Science. 2008; 322: 1702-1705.6)TG and HDL Working Group of the Exome Sequencing Project, National Heart, Lung, and Blood Institute, et al. N Engl J Med. 2014; 371: 22-31.

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