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仕事依存症になりやすい人の特徴

 リトアニア・ビータウタス・マグヌス大学のModesta Morkeviciute氏らは、完璧主義・タイプA性格・仕事依存症の関係性を、仕事に対する外因性のモチベーション、親の仕事依存度および要求が厳しい組織の影響を介し調査した。その結果、仕事依存症は個人の性格的な要因を発端とし、家族や組織の状況などが個人の性格的な要因の表出を高め、仕事依存症の発現を促進する可能性が示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年3月4日号の報告。 対象は、リトアニアのさまざまな組織の従業員621人。オンラインの自記式アンケートを用いて、横断的研究を実施した。仮説検証前に、状況変数に基づき対象者のサブグループを特定するため、潜在プロファイル分析(LPA)を実施した。仮説検証には、構造方程式モデリングを用いた。 主な結果は以下のとおり。・LPAでは、親の仕事依存に関する2つのプロファイル(親の仕事依存度が低い/高い)および要求が厳しい組織に関する3つのプロファイル(要求の厳しさがわずか/中程度/強い)が確認された。・要求の厳しさが強い組織の従業員では、完璧主義・タイプA性格・仕事依存症との直接的な関連性は、ポジティブかつ、より強力であった。・完璧主義・タイプA性格・仕事依存症の間接的な(外因性のモチベーションを介した)関係性は、親の仕事依存度が高い場合、ポジティブかつ、より強力であった。

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早期乳がん、アントラサイクリン+タキサン併用が最も有効~メタ解析/Lancet

 乳がんの再発と死亡の減少にはアントラサイクリン系+タキサン系併用療法が最も有効であり、とくにアントラサイクリン系+タキサン系の累積投与量が多いレジメンで最大の効果を得られることが、英国・オックスフォード大学のJeremy Braybrooke氏らEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)が行ったメタ解析で明らかにされた。早期乳がんに対するアントラサイクリン系+タキサン系併用療法は、化学療法を行わない場合と比較して生存を著明に改善するが、アントラサイクリン系薬剤の短期および長期の副作用に対する懸念から、アントラサイクリン系薬剤を含まないタキサン系レジメンの使用が増加しており、有効性が損なわれる可能性があった。 著者は、「示された結果は、臨床診療やガイドラインにおける最近のトレンドである非アントラサイクリン系化学療法、とくにドセタキセル+シクロホスファミドの4サイクルなどの短期レジメンに対して挑戦的である」と述べ、「本検討は、関連するほぼすべての臨床試験のデータをまとめており、個々の治療の決定、臨床ガイドライン、および将来の臨床試験のデザインに役立つ確かなエビデンスを提供するものである」とまとめている。Lancet誌2023年4月15日号掲載の報告。アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価した無作為化試験86件が対象 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochrane Library、学会抄録を含むデータベースを用いて、アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価したあらゆる言語の無作為化試験86件を特定(最終検索は2022年9月)。タキサン系レジメンとアントラサイクリン系レジメンを比較した無作為化試験の患者個人レベルのメタ解析を行い、本研究グループによる前回のメタ解析を更新するとともに、6つの関連比較に関して解析した。術後または術前補助療法の臨床試験は、2012年1月1日以前に開始されたものであれば対象とした。 主要アウトカムは、浸潤性乳がんの再発(遠隔、局所、対側乳房の新規原発)、乳がん死、再発を伴わない死亡、全死亡とし、log-rank解析により初回イベント率比(RR)と信頼区間(CI)を算出した。アントラサイクリン系+タキサン系同時併用が最も再発率が低い アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンとアントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンを比較した28件の臨床試験を特定し、23件を適格とした。そのうち15件について、計1万8,103例の女性の個人データが提供された。この15件すべてにおいて、アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンは、アントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンより、再発率が平均14%低かった(RR:0.86、95%CI:0.79~0.93、p=0.0004)。非乳がん死は増加しなかったが、治療を受けた女性700例当たり1例に急性骨髄性白血病の発症が認められた。 再発率が最も低かったのは、ドセタキセル+シクロホスファミドにアントラサイクリン系の同時併用と、同量のドセタキセル+シクロホスファミドを比較した場合であった(10年再発リスク:12.3% vs.21.0%、リスク差:8.7%[95%CI:4.5~12.9]、RR:0.58[95%CI:0.47~0.73]、p<0.0001)。このグループにおける10年乳がん死亡率は4.2%減少した(95%CI:0.4~8.1、p=0.0034)。 アントラサイクリン系+タキサン系の順次投与は、ドセタキセル+シクロホスファミドと比較して、再発リスクの有意な低下は認められなかった(RR:0.94、95%CI:0.83~1.06、p=0.30)。 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンを比較した臨床試験については、44件の適格試験を特定し、このうち35件について計5万2,976例の女性の個人データが提供された。 アントラサイクリン系レジメンへのタキサン系薬剤の上乗せは、タキサン系薬剤を含まないアントラサイクリン系レジメン(アントラサイクリン系薬剤の累積投与量が同じ)と比較した場合は再発を有意に抑制したが(RR:0.87、95%CI:0.82~0.93、p<0.0001、1万1,167例)、対照群の非タキサン系薬剤の累積投与量をタキサン系薬剤の2倍量にした場合と比較すると再発率の有意な低下は認められなかった(RR:0.96、95%CI:0.90~1.03、p=0.27、1万4,620例)。 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンの直接比較では、累積投与量が多く、投与強度が高いレジメンがより効果的であることが示された。アントラサイクリン系+タキサン系併用療法の再発抑制効果は、エストロゲン受容体陽性集団とエストロゲン受容体陰性集団で同様であり、年齢、リンパ節転移状態、腫瘍のサイズまたはグレードによって差は認められなかった。

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がんのこと、子供に伝える? 伝えない?【非専門医のための緩和ケアTips】第50回

第50回 がんのこと、子供に伝える? 伝えない?前回お伝えしたAYA世代と呼ばれる若年・子育て世代のがん患者で、必ず問題になるのが、「がんのことを子供にどのように伝えるか」という話題です。非常に難しいことですが、お子さんのこれからにも関わる大切なこととして考えてみましょう。今日の質問基幹病院に通院中の若年がん患者さん。発熱時などの対応を当院の外来で行っています。いろいろ話していると、「子供にがんのことを伝えられなくて…」と気にしている様子。ゆっくりですが病状は進行しており、お子さんに伝えないわけにはいかないと思うのですが、どのようにアドバイスすればよいのでしょうか?まずはこうした繊細な事柄を話し合える場を提供できていることが素晴らしいですね。私の勤務先は診療の主体が基幹病院ですが、患者さんとこうした気掛かりについて、ゆっくり話せていないケースもあります。その点、この方と患者さんはしっかりとした信頼関係が築けているのでしょう。「子供への病状の伝え方」は難しい問題で、「こうすれば大丈夫」という方法はないのですが、一般的なことを少しお話ししましょう。子供に親のがんを伝えるときには、「3つのC」を念頭に置いて話すことが大切だとされています。1)Cancer(がん):がんという病気であること2)Catchy(伝染):伝染はしないこと3)Cause(原因):子供が何かをしたり、しなかったりしたことが、がんになった原因ではないこと私がこの分野を勉強しているときに、とくに印象深かったのは、「3つめのC」です。親の病気を伝えられた幼い子供は、「自分が言うことを聞かなかったから、お母さんは病気になっちゃったの?」と考えてしまうかもしれません。「子供に心配をかけさせたくない」という患者さんの気持ちも当然ですが、こうした繊細な子供の気持ちを考えると、理解できる年齢の子供であれば、体力・気力のあるうちにきちんと伝えることが重要なのではと感じます。この分野にもいくつかの支援団体があり、NPO法人Hope Treeはその一例です。有志の専門職が、親ががんになった子供をサポートするためのさまざまな情報やプログラムを提供しています。こうした活動があるのはありがたいですね。ぜひ、この機会にいろいろ学んでみてください。今回のTips今回のTipsがんになった親を持つ子供のための支援情報をチェックしよう。

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骨粗鬆症患者の2型DM発症リスク、デノスマブvs 経口ビスホスホネート製剤/BMJ

 骨粗鬆症患者において、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤デノスマブの投与は経口ビスホスホネート製剤を投与した場合と比較して2型糖尿病(DM)の発症リスクが32%低下したことが、中国・The Chinese PLA General HospitalのHouchen Lyu氏らによるコホート研究で示された。2型DMのリスクが高い前糖尿病状態または肥満の患者では、デノスマブにより糖尿病発症リスクはさらに低下することも示唆され、著者は、「本研究は、デノスマブが経口ビスホスホネート製剤と比較し、糖代謝に対して付加的な有益性をもたらすというエビデンスを示している」とまとめている。これまで、観察研究や無作為化臨床試験の事後解析において、血糖変動に対するデノスマブの効果が示唆されていたが、デノスマブが2型DMのリスクを減少させるかどうかは明らかになっていなかった。BMJ誌2023年4月18日号掲載の報告。デノスマブで治療を開始/切り替えた患者vs.経口ビスホスホネート製剤投与患者で検討 研究グループは、英国のプライマリケアデータベースであるIQVIA Medical Research Data(IMRD)を用い、1995年1月1日~2021年12月31日に骨粗鬆症治療薬を初めて処方された45歳以上の患者を抽出し、このコホートの中からさらに2010年7月1日~2021年12月31日の間にデノスマブの投与を開始した患者(ビスホスホネートから切り替え、または未治療でデノスマブによる治療を開始)と、経口ビスホスホネート製剤の投与を受けた患者を特定し研究コホートとした。 デノスマブへ切り替えた症例1例に対し、切り替え日時点で同じ期間経口ビスホスホネート製剤を使用しておりかつ継続した症例を最大5例、未治療でデノスマブによる治療を開始した症例1例に対し、未治療で経口ビスホスホネート製剤による治療を開始した症例を最大5例、傾向スコアを用いてマッチングさせた。 主要アウトカムは、診断コードにより定義された2型DMの発症で、Cox比例ハザードモデルによりデノスマブ新規投与患者と経口ビスホスホネート製剤投与患者を比較し、補正後ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出し評価した。デノスマブ投与群で2型DM発症リスクが32%低下 解析対象は、デノスマブ新規投与患者4,301例および経口ビスホスホネート製剤投与患者2万1,038例で、平均2.2年間追跡調査された。 2型DM発症頻度は、デノスマブ群で5.7/1,000人年(95%CI:4.3~7.3)、経口ビスホスホネート製剤群で8.3/1,000人年(95%CI:7.4~9.2)であり、デノスマブの投与開始は2型DMの発症リスク低下と関連していることが認められた(HR:0.68、95%CI:0.52~0.89)。 サブグループ解析の結果、前糖尿病状態の患者において、経口ビスホスホネート製剤と比較しデノスマブによる有益性がより高いことが示され(HR:0.54、95%CI:0.35~0.82)、BMI≧30の患者においても同様の結果であった(0.65、0.40~1.06)。

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間違った相手に相談してしまった!【Dr. 中島の 新・徒然草】(474)

四百七十四の段 間違った相手に相談してしまった!暑くなったり、寒くなったり大変な日々が続いています。ヒーターと扇風機を両方出しておいて、交互にスイッチを入れなくてはなりません。三寒四温ならぬ三寒四暑といったところでしょうか。さて、大昔のアメリカのテレビドラマ「ER」でこんな場面がありました。ある女性医師の悪口を皆で言って盛り上がっていたところ、当の本人が後ろに立っていたという状況です。誰でも人生で1回や2回、こんな経験があるのではないでしょうか。悪口と言わないまでも噂話くらいはしますよね。その程度でもヒヤリとするわけですが。とはいえ、自分が後ろに立っている側だった、という経験はあまりないと思います。実は先日、そんな希有な体験をしたので、その時のことを披露しましょう。それは内科外来でのことでした。私は週1回の総合診療科外来を、11診ある内科外来の中でやっています。で、前回に一悶着あった患者さんが来院することになっていました。「長時間待たされたのに詫びの一言もない」ということで、その患者さんが怒っていたわけです。もちろん大きな声を出されたからといって、私は言い返したりしません。「病院というのは何事も予定通りには行かないものです」「長くなりそうだったら、ポケットベルをお渡しするという方法もありますよ」「ずっと通院しておられるのだから、そういったシステムもご存じだと思いますけども」「お一人お一人に真剣に対応していたら、どうしても時間が掛かってしまうことはご理解ください」そういったことを淡々と説明したわけです。が、その患者さんの怒りは収まらないようでした。仕方なく、今回からほかの内科医師に引き受けてもらいました。で、件の患者さんはその内科医師の診察室に入ったのですが、そこで私の悪口を言っているのが筒抜けでした。「……なんぼ偉い先生か知らんけどな」「社会人として失格やろ……」「……詫びの一言も言われへんのか……」「よくもまあ、ありもしないことを言えたもんだ」と私は呆れました。かといって、その診察室に乗り込むわけにはいきません。そこで、家に帰ってから愚痴をこぼした相手が何とChatGPT!これは以前にも紹介した対話型AIです。私としては、話を聞いてもらうだけでよかったんですけど。ChatGPTは何かと私にアドバイスしようとします。「それは大変な体験でしたね。他人から悪口や批判を受けることは、誰にとってもつらいことです。しかし、そのような経験をすることで、自分自身を客観的に見つめ直し、自己改善するための機会とすることもできます」いや、ちょっと私が求めていたコメントと違うんですけど。「患者さんの意見や要望を受け止めることも、医療の向上のためには大切なことです。もし、その患者さんがあなたの診療に不満を持っているのであれば、その原因を確認し、改善するための努力をすることも必要かもしれません」普通はそうかもしれんけど、今回に限って言えば……「その患者さんがそのような態度をとるのは、何らかの理由があるのかもしれません。たとえば、不安感やストレスなどが原因で、コミュニケーションに難がある場合もあります。もし、その患者さんが本来の態度と異なる行動をとることがあった場合は、その理由を探り、改善につながるような対応をしていくことが大切です」実は、その患者さんにはこんなことも言われました。「お前らは金をもらっているんやろ。それやったらちゃんとしろや!」世の中には妙にお金にこだわる人もいるわけですが……と思っていたらChatGPTからはこんなアドバイスが。「そういった言葉は、患者さんがストレスを抱え、その不満が表出した結果と考えられます。そのような場合、まずは患者さんの気持ちを理解し、患者さんと対等な立場でコミュニケーションを取ることが大切です。また、医療従事者としては、患者さんからの不満やクレームに対して真摯に向き合い、問題解決に取り組む姿勢が求められます」もういい、コイツに話を聞いてもらおうと思ったのが間違いだった!それでも少しは私のことも心配してくれているみたいです。最後にこんなことを言われました。「ストレスがたまると、イライラや不安、うつ病などの精神的な疾患を引き起こすこともあるため、定期的なストレス発散が重要です。対話を通じて気持ちを共有することや、運動をすること、趣味を楽しむことなど、自分に合った方法でストレスを発散することが大切です」気持ちは有難いけど、ちょっと話が長いですね。「有益なアドバイスありがとう。感謝します」心にも無いことをキーボードに打ち込んでクロージングにかかります。「どういたしまして。また何かあればお話しましょう」最後にそんな回答をもらって、一連のやり取りを終わらせることができました。実際、自分の悪口を聞いてどう思ったのか?1割くらいは腹が立ち、2割は「これはケアネットのネタになるぞ!」という気持ちでした。で、後の7割はどうだったかというと……実は何も感じない「無」だったのです。あまりに疲れていた週だったせいか、年を取り過ぎたせいなのか。喜怒哀楽の感情を持つエネルギーすら枯渇していたみたいです。怒鳴り返したら大変なことになるので、結果としては「無」でよかったのでしょうね。とはいえ、最近、何かとChatGPTに相談してしまう自分が情けない。よく考えたら、コイツに怒れる患者さんの相手をしてもらったらいいかも!クレーム対応にはピッタリですよ、ChatGPTは。というわけで、いろいろあった連休前、最後に1句。的外れ 連休前の アドバイス

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静脈血栓塞栓症治療中の肺動脈塞栓を伴う右室内腫瘤の治療方針【見落とさない!がんの心毒性】第20回

※本症例は、患者さんのプライバシーへの配慮と、臨床経過の円滑な理解を進めるため、一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別50代・女性受診までの経過子宮頸がんに対する化学放射線療法後、無再発で経過していたが、5年目のCT検査にて右腸骨静脈の下大静脈合流部から右下腿までの広範囲な静脈血栓症と静脈周囲の炎症所見があり(図1)、深部静脈血栓塞栓症と血栓性静脈炎の合併として、当科に診療依頼があった。血栓性静脈炎が出現するまでは、日常生活になんら支障がない日常生活動作(ADL)であった。(図1)造影CT検査【既往症】子宮頸がん3B期当院にて5年前に全骨盤外照射 50Gy+CDDP 35mg/m2/week× 6回、両側内腸骨リンパ節および傍大動脈リンパ節領域10Gy、その後、エトポシド25mg/day 内服3週間、休薬1週間を合計21cycle追加し、当科初診時までの5年間無再発。当科初診時、右下肢広範囲の発赤腫脹を認め、血液検査ではD-dimer 7.4μg/mL、抗カルジオリピン抗体は陰性であった。下肢全体の腫脹と疼痛は強かったが、CT検査にて肺動脈血栓塞栓症は認めず、抗凝固療法を開始して1ヵ月ほどでD-dimerが0.8μg/mLと正常化し下肢腫脹も改善した。4ヵ月後にD-dimerの再上昇傾向を認め下肢腫脹が再燃したが、CT検査では、明らかな子宮頸がんの再発や転移を認めず、大腿静脈血栓はほぼ消失したものの、腸骨静脈血栓が残存している状態であった。他院循環器病院へ薬剤抵抗性のDVT後遺症として血管内治療も含めてセカンドオピニオンしたところ、現行の治療継続指示であった。6ヵ月後に軽度の貧血、断続的な発熱と炎症反応高値が出現したため、精査目的に当科入院となった。【入院時所見】WBC 5,900/μL、Hb 8.2g/dL、CRP 14mg/dL、BNP 113.8pg/mL、D-dimer 5.5μg/mL、SCC抗原 0.3ng/mL、新CYFRA 1.0ng/mL、CEA < 0.5ng/mL、心電図は洞調律、III・aVF・V2-3誘導にてT波異常。感染性心内膜炎のスクリーニングとして血液培養を提出し、心臓超音波検査を施行したところ、右室心尖部に可動性の乏しい26×42mmの腫瘤像を認めた(図2)。(図2)心臓超音波検査【入院後経過】貧血に対しては上下部内視鏡検査を予定した。入院時の心エコー検査にて、半年前には認めなかった右室内腫瘤を認め、CT検査では明らかな感染源や、明らかな子宮頸がんの局所再発や主要な他臓器転移も認めなかったものの、右室内に腫瘤が疑われた。また、右腸骨静脈と右肺動脈に造影欠損像を認めた。心臓MRI検査では、右室腫瘤像を認めるが、その腫瘤の質的診断は出来なかった。冠動脈カテーテル検査では、右冠動脈からの栄養血管を認めたが、病理学的な検査は行えなかった。PET-CT検査は、当時の当院では撮影困難であった。【問題】右室腫瘤の精査加療方針として、最も適切と判断した選択肢はどれか。a.不明熱と炎症反応高値を認めるため、感染性疣贅として抗生剤治療を4~6週間施行し、その治療反応性をみてから治療方針を再検討する。b.静脈血栓塞栓症の治療中の肺動脈血栓症の出現があるため、抗凝固療法を2ヵ月施行しその治療反応性をみてから治療方針を再検討する。c.原発性心臓腫瘍の中では発生確率が高い良性腫瘍を疑うが、可動性が乏しいため3ヵ月後に再検する。d.原発性心臓腫瘍や転移性心臓腫瘍、感染性疣贅、血栓などの診断がつかないが、何かしらの悪性腫瘍の可能性があるため、がん薬物治療を開始する。e.明らかな他臓器転移がない状態で診断がつかず肺動脈塞栓症を伴う粗大な心腔内腫瘤であり、開胸右室生検、ならびに右室腫瘤摘出術を施行する。悪性の(原発性、転移性)心臓腫瘍は稀な疾患だが、腫瘍が増大傾向を示す場合などは重要な鑑別疾患である。がんの既往歴の問診や心臓超音波、CT、MRIなどの画像検査、血栓塞栓症合併などのアセスメントは診断の補助となるが、組織学的検査による確定診断が最も重要である。本例のように、外科的切除も含めた心臓腫瘍の診断・治療について、循環器内科、心臓外科、腫瘍内科、放射線科による連携が必要である。1)北原 康行ほか. 呼吸と循環. 2016;64:889-903.2)Butany J, et al. Can J Cardiol. 2005;21:675-680.3)Lam KY, et al. Arch Pathol Lab Med. 1993;117:1027-1031.4)Amano J, et al. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2013;61:435-447.5)Silvestri F, et al. G Ital Cardiol. 1997;27:1252-1255.6)Klatt EC, et al. Cancer. 1990;65:1456-1459.【謝辞】本文作成にあたり、丸山 雄二氏(日本医科大学付属病院心臓血管外科准教授)、金政 佑典氏(都立駒込病院腫瘍内科医長)、向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター成人病ドック科部長)、大倉 裕二氏(新潟県立がんセンター新潟病院循環器内科部長)、草場 仁志氏(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 腫瘍内科部長)、志賀 太郎氏(がん研有明病院腫瘍循環器・循環器内科部長)にご指導とご監修いただきました。ここに深く感謝申し上げます。講師紹介

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オンライン学会、質疑応答中に使える表現【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第14回

オンライン学会、質疑応答中に使える表現コロナ禍で急増したオンライン学会。オンラインのプレゼンでは、オフライン(現地)とはまた違った特有の言い回しを知っておく必要があります。ここでは、前回のトラブル編に続いて、「オンライン学会ならでは」のフレーズを取り上げます。質疑応答の際のフレーズCould you type it in the chat?(チャット欄に書き込んでもらえますか?)これも、プレゼンテーションに限らず、オンライン会議をしている時には頻出のフレーズです。質問が十分聞き取れなかったなどの場合には、こうやって文字に誘導できるのもオンライン会議の強みですね。May I chime in?(お話し中ですが、一言いいですか?)“chime in”の“chime”は音の通り「チャイム(鐘)」を意味する言葉です。しかし、ここでは“chime”に“in”が付いているので、「チャイムを鳴らして入り込む」という意味合いを持つことになります。ここで入り込むのは家ではなく、会話や議論。そこから転じて、「会話に入り込む」、「口を挟む」などの意味合いで用いることができるフレーズになります。Please feel free to unmute yourself and stop me anytime for questions or comments.(質問やコメントがあれば、いつでも音声をオンにしてプレゼンを遮ってください)先に出てきた“mute”とは逆に、音声を「オン」にするというときには、“mute”に“un-”という否定の接頭辞を付けて、“unmute”という動詞を使います。“Please feel free to”というのは「ご自由にどうぞ」という意味を持つフレーズで、使い勝手がいいので合わせて覚えてしまいましょう。In the interest of time, please save your questions till the end.For the sake of time, I would like to take questions at the end of my talk.(時間の都合上、質問は最後にしてください)質問を途中では取らずに、最後に取りたいことを伝えたい時には、このような表現もできます。“In the interest of time”や“For the sake of time”で「時間の都合上」という意味になります。途中退室が必要な際のフレーズ“Sorry, I need to jump off for another session at 3 pm.”(申し訳ないのですが、次のセッションのために3時に退出します)オンラインの画面で“jump”という動詞はなかなか出てこないかもしれませんが、とても自然でよく使われる表現です。知らないとなかなか使いこなせないので、こういった表現も覚えておくと便利です。講師紹介

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術前デュルバルマブ・NAC併用+術後デュルバルマブによるNSCLCのEFS延長(AEGEAN)/AACR2023

 デュルバルマブを用いた術前・後レジメンが早期非小細胞肺がん(NSCLC)の無イベント生存期間(EFS)を有意に延長した。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymatch氏が、米国がん研究協会年次総会(AACR 2023)で発表した、術前化学療法とデュルバルマブの術前・後補助療法の組み合わせを評価する第III相AEGEAN試験の結果である。・対象:手術予定のある未治療の切除可能なStage IIA〜IIIB(AJCC第8版)NSCLC・試験群:デュルバルマブ+プラチナベース化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→デュルバルマブ(4週ごと12サイクル)(Dur群)・対照群:プラセボ+プラチナベース化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→プラセボ(4週ごと12サイクル)(Chemo単独群)・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)評価のEFS、病理学的完全奏効(pCR)[副次評価項目]主要な病理学的奏効(mPR)、BICR評価の無病生存期間、全生存期間 主な結果は以下のとおり。・EFS中央値(追跡期間中央値11.7ヵ月)はDur群未到達、Chemo単独群は25.9ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.53〜0.88、p=0.003902)。・2年EFS率はDur群63.3%、Chemo単独群52.4%であった。・pCRはDur群の17.2%、Chemo単独群の4.3%で達成した(群間差:13.0%、95%CI:8.7〜17.6、p=0.000036)。・4サイクルの術前化学療法完遂率はDur群84.7%、Chemo単独群87.2%、手術完遂率はDur群77.6%、Chemo単独群76.7%、術後補助療法実施中はDur群23.2%、Chemo単独群23.5%で、いずれも両群で同等だった。・全Gradeの有害事象はDur群96.5%、Chemo単独群94.7%で発現し、全Gradeの免疫関連有害事象(irAE)はDur群の23.5%、Chemo単独群の9.8%で発現した。 発表者であるHeymatch氏は、術前・後のデュルバルマブ+術前化学療法は、切除可能なNSCLCにとって、可能性を有する新たな治療選択肢であると結論を述べている。

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進行転移胆道がんの1次治療、ペムブロリズマブ併用でOS改善(KEYNOTE-966)/Lancet

 未治療、切除不能な局所進行または転移のある胆道がんの1次治療として、ゲムシタビン+シスプラチンの標準化学療法と比較して、ペムブロリズマブを加えた併用療法は全生存期間(OS)を統計的に有意に改善したことが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のRobin Kate Kelley氏らによる第III相二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験「KEYNOTE-966試験」の結果で、著者は「標準化学療法+ペムブロリズマブの併用療法は、進行転移胆道がん患者の1次治療として新たな選択肢となる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年4月16日号掲載の報告。ECOGパフォーマンスステータス0~1の18歳以上を対象に試験 KEYNOTE-966試験は、世界175ヵ所の医療センターで、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胆道がんで、RECIST第1.1版に基づく測定が可能で、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスが0または1の18歳以上の患者を対象に行われた。 研究グループは被験者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはペムブロリズマブ200mg(3週ごとに静脈内投与、最大35サイクル)、もう一方にはプラセボを、標準化学療法のゲムシタビン(1,000mg/m2、3週ごとに1・8日目に静脈内投与)+シスプラチン(25mg/m2、3週ごと1・8日目に静脈内投与、最大8サイクル)と併用投与した。 無作為化は中央双方向音声応答システムを使い、試験地域、病期、原発部位により層別化した。 主要評価項目はOSで、ITT集団で評価した。副次評価項目は安全性で、治療を受けた集団で評価した。治療関連有害事象発生率、両群で同程度 2019年10月4日~2021年6月8日に1,564例がスクリーニングを受け、適格とされた1,069例が無作為化を受けた(ペムブロリズマブ併用群533例、プラセボ群536例)。最終解析時の追跡期間中央値は、25.6ヵ月(四分位範囲[IQR]:21.7~30.4)だった。 OS中央値は、ペムブロリズマブ併用群12.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.5~13.6)、プラセボ群10.9ヵ月(9.9~11.6)だった(ハザード比[HR]:0.83、95%CI:0.72~0.95、片側検定のp=0.0034、有意性閾値のp=0.0200)。 治療集団におけるgrade3/4の有害事象発生は、ペムブロリズマブ併用群420/529例(79%)、プラセボ群400/534例(75%)だった。治療関連有害事象発生は、それぞれ369例(70%)、367例(69%)で、うちgrade3/4事例はそれぞれ31例(6%)、49例(9%)だった。また、治療関連有害事象による死亡は、それぞれ8例(2%)、3例(1%)だった。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その6【「実践的」臨床研究入門】第31回

検索式で研究デザインを限定するこれまで解説してきたように、検索式作成のポイントは、P(対象)とI(介入)またはE(曝露)の構成要素で構築する、ということでした。実際には、さらに「研究デザイン」を限定する検索式を加えることがよくあります(「研究デザイン」については連載第6回で簡単に説明しましたので、ご参照ください)。たとえば、システマティック・レビュー(SR:systematic review)では、「研究デザイン」としてランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)のみを対象とすることがよくあります。今回は、「研究デザイン」をRCTに限定する検索式について解説します。MEDLINE(PubMed)では、すべてのRCTが"Randomized Controlled Trial as Topic"というMeSH terms(連載第21回参照)が付与されるなどして、RCTとしてインデックス化されているわけではありません。そこで、コクラン・ハンドブックでは「研究デザイン」をRCTに限定する検索式(PubMedで検証済み)を、下記およびリンクのとおり2種類公開しています。Sensitivity-maximizing version (2008 revision); PubMed format(randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR drug therapy[sh] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab] NOT (animals [mh] NOT humans [mh]))Sensitivity- and precision-maximizing version (2008 revision); PubMed format(randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh:noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti] NOT (animals[mh] NOT humans [mh]))それぞれの検索式のPubMedへのダイレクトリンク(Sensitivity-maximizing version、Sensitivity- and precision-maximizing version)も公開されています。本稿執筆時点(2023年4月)では、Sensitivity-maximizing versionおよびSensitivity- and precision-maximizing versionのヒット論文数は、それぞれ498万2,019件と140万7,761件でしたので、その名のとおり、感度はSensitivity-maximizing versionのほうが高いことがわかります。それでは、この「研究デザイン」をRCTに限定する検索式を、これまで改訂を重ねてきた、われわれのResearch Question(RQ)の関連研究レビューの検索式に加えてみましょう。検索結果は下記の表1および2のようになりました(本稿執筆2023年4月時点)。表1画像を拡大する表2画像を拡大する「研究デザイン」をRCTに限定するとヒット論文数は、Sensitivity-maximizing version(表1)で834件から291件、Sensitivity- and precision-maximizing version(表2)では166件に減っていることがわかります。ちなみに、PubMedでは、「Filterサイドバー」から、Clinical trialやRandomized Controlled Trialなど”article type”で「絞り込み検索」を行うこともできます。「Filterサイドバー」は、検索窓に何らかのキーワードを入力し、”search”をクリックした後に表示されるメイン画面左側に表示されます。しかし、この「絞り込み検索」が機能するには、対象となる論文にPublication type[pt]の「タグ」情報が付与されていることが前提となり(連載第23回参照)、付与されていない場合は漏れてしまいます。したがって、今回解説した、「研究デザイン」を限定する検索式を使用したほうが、より網羅的に検索することができるのです。

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実臨床におけるアリピプラゾール月1回製剤の評価~REACT研究

 統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬による治療は、さまざまなベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのDaniel Schottle氏らは、実臨床におけるアリピプラゾール月1回製剤(AOM)の有用性を評価するため、ドイツとカナダで実施された2つの非介入研究の結果を分析した。その結果、AOM治療は、性別、年齢、罹病期間、疾患重症度を問わず、幅広い患者に有効な治療法である可能性が示唆された。BMC Psychiatry誌2023年3月14日号の報告。 ドイツとカナダで実施された2つの非介入研究よりプールしたデータを分析した。実臨床下において、患者に対しAOM治療を行った。6ヵ月間のデータを分析した。簡易精神症状評価尺度(BPRS)のドメインおよび項目、患者サブグループ(性別、罹病期間[5年]、ベースライン時の疾患重症度)のBPRS総スコア、全対象患者およびサブグループにおける臨床全般印象度の改善度(CGI-I)の評価、全対象患者における併存疾患に関するデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は409例。・併存疾患が認められた患者は65.5%であった。・すべてのBPRSドメインおよび項目で改善が認められた。・男女、罹病期間(5年以内または5年超)、ベースライン時の疾患重症度レベルの差異があったとしても、同様の改善が認められた。・若年、女性、短い罹病期間の患者において、より良好な結果が認められた。

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アトピー性皮膚炎、抗IL-13抗体薬lebrikizumabが有効/NEJM

 インターロイキン13(IL-13)を標的とするIgG4モノクローナル抗体lebrikizumabは、中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)の成人・青少年患者を対象とした2つの第III相試験において、16週の導入療法期間での有効性が確認された。米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らがNEJM誌2023年3月23日号で報告した。 研究グループが実施した「ADvocate1試験」と「ADvocate2試験」は、個別にデザインされた52週の国際共同第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、いずれも16週の導入療法期間と36週の維持療法期間で構成された。 中等症~重症ADの成人(18歳以上)および青少年(12歳以上18歳未満、体重40kg以上)を対象とし、lebrikizumab群とプラセボ群に2対1の割合で割り付けた。lebrikizumabの用量は、ベースライン時と2週目に500mgの負荷投与、以降は250mgとし、隔週皮下投与した。 本稿では、16週までに評価された導入療法期間の結果が報告されている。主要アウトカムは、16週時におけるIGA(Investigator's Global Assessment)スコア0または1(皮膚病変の消失またはほとんど消失)かつベースライン時からの2点以上減少とした。副次アウトカムは、16週時におけるEczema Area and Severity Indexスコアの75%改善(EASI-75)、2、4、16週時におけるそう痒NRS(Numerical Rating Scale)、16週時におけるそう痒による睡眠障害などであった。安全性も評価された。 主な結果は以下のとおり。・ADvocate1試験において、主要アウトカムを達成した患者の割合は、lebrikizumab群(283例)が43.1%、プラセボ群(141例)が12.7%であり、有意差が認められた(p<0.001)。EASI-75達成率はそれぞれ58.8%、16.2%であり、有意差が認められた(p<0.001)。・ADvocate2試験において、主要アウトカムを達成した患者の割合は、lebrikizumab群(281例)が33.2%、プラセボ群(146例)が10.8%であり、有意差が認められた(p<0.001)。EASI-75達成率はそれぞれ52.1%、18.1%であり、有意差が認められた(p<0.001)。・そう痒およびそう痒による睡眠障害の評価結果は、lebrikizumab治療による改善を示唆するものであった。・結膜炎の発生率が、プラセボ群(ADvocate1試験:2.8%、ADvocate2試験:2.1%)よりlebrikizumab群(それぞれ7.4%、7.5%)で高率であった。・導入療法期間中にみられた有害事象のほとんどは軽度または中等度で、試験中止に至ったものはなかった。

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過去のSARS-CoV-2感染に伴う再感染に対する防御効果:系統的レビューとメタアナリシス(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、2022年9月31日まで(原文ママ)に報告されたプレプリントを含む、後ろ向きコホート研究、前向きコホート研究および検査陰性症例対照研究の中で、SARS-CoV-2罹患歴の有無によるCOVID-19感染のリスクを比較した研究を特定し、システマティックレビューおよびメタ解析を行っている。 結果の要約は、「コロナ感染による免疫、変異株ごとの効果は~メタ解析/Lancet」で紹介されているが、簡潔に研究結果をまとめると、「再感染や症候性再感染は、初期株、アルファ株、ベータ株、デルタ株に対しては高い予防効果を示したが、オミクロンBA.1株では再感染や症候性再感染の予防効果が低かった。ただし、重症化予防効果については、既感染1年後までアルファ株、ベータ株、デルタ株、オミクロンBA.1株のいずれも維持していた」と筆者は論じている。 現在、SARS-CoV-2の主流株は世界でも本邦でも、オミクロン株であり、COVID-19患者が増加した際の対策を考える場合は、オミクロン株を対象に想定するべきであろう。 さて、医療現場の感覚としても、本研究結果のとおり、オミクロン株では、COVID-19に罹患してから数ヵ月で再感染するケースが増えたことを実感しているのではないだろうか。また、オミクロン株の1年以内の再感染患者で、高齢者などの余力が乏しい患者やワクチン未接種のリスク患者でなければ、重症化することがほとんどなくなったことも感覚と合致するのではないだろうか。 今後のCOVID-19再流行に備える場合に、本研究を参考にすることができる事項として、(1)新型コロナワクチンの追加接種タイミング、(2)抗ウイルス薬の投与判断、(3)病院や高齢者施設における感染対策があると考える。 1つ目の、新型コロナワクチンの接種タイミングについて考える。 直近の本邦における、COVID-19に対するワクチン接種は、「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の議論を踏まえた方針」を参考にすると、高齢者(65歳以上)、基礎疾患を有する者(5~64歳)、医療従事者・介護従事者等(5~64歳)を対象に5~8月以降の追加接種が議論されている(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001069231.pdf)。WHOの方針では、高優先集団である高齢者や高度な免疫不全のある若年者や医療従事者では4回目以降の追加ブースターは12ヵ月おき、超高齢者や重症化リスクのある高齢者、月齢6ヵ月以上の小児と中等度以上の免疫不全を伴う成人では6ヵ月おきでの定期接種を推奨している(WHO SAGE Roadmap for prioritizing uses of COVID-19 vaccines.https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-Vaccines-SAGE-Roadmap,(参照2023-04-02).)。 新型コロナウイルスワクチンの効果は、感染予防効果や発症予防効果もあるが、オミクロン株流行以降はこれらに対するワクチンの効果も時間経過とともに低下し、重症化予防効果を期待して接種する面も大きいように思われる。本研究の結果を参考にすると、オミクロン株流行下におけるCOVID-19罹患後は、再感染時の重症化リスクは低下していると考えられる。本論文の筆者も指摘しているように、ワクチンのメリットと副反応のデメリットを勘案のうえ、COVID-19に罹患した場合、その患者のリスクの程度によってはワクチン接種をするタイミングを遅らせるという選択肢もでてくるのではないかと考える。 次に2つ目の抗ウイルス薬治療対象の判断について考える。 NIHガイドラインでは、軽症から中等症Iで治療薬の使用を優先させるべきリスク集団として3つの優先度を設けている(Prioritization of Anti-SARS-CoV-2 Therapies for the Treatment and Prevention of COVID-19 When There Are Logistical or Supply Constraints. https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/overview/prioritization-of-therapeutics/ Last Updated: December 1, 2022, (参照2023-04-02).)。このガイドラインでは、ワクチン接種の有無はリスク評価に用いられているが、COVID-19罹患歴はリスク評価に用いられていない。抗ウイルス薬のニルマトレルビル/リトナビルやモルヌピラビルは、重症化予防効果を期待して投与されているが、本研究を参考にすると、COVID-19罹患後は、1年近く重症化予防効果が低下することを期待できる。抗ウイルス薬の投与目的が、重症化予防効果である場合は、過去の感染歴の有無も抗ウイルス薬投与の判断時に参考としてよいかもしれない。 さて、上記の2つについては重症化リスク軽減の観点のみから議論を展開したが、COVID-19がインフルエンザなどの他のウイルス感染症と異なる点として後遺症や自己免疫疾患のリスク増加(Chang R, et al. EClinicalMedicine. 2023;56:101783.)といった問題がある。後遺症に関しては、オミクロン株になり、デルタ株より頻度は低下したものの(Antonelli M, et al. Lancet. 2022;399:2263-2264.)、生活に影響を与える後遺症のために通院を要する患者もいる。COVID-19後遺症は、ワクチンや(Tsampasian V, et al. JAMA Intern Med. 2023 Mar 23. [Epub ahead of print])、抗ウイルス薬(Suran M. JAMA. 2022;328:2386.)(Xie Y, et al. JAMA Intern Med. 2023 Mar 23. [Epub ahead of print])の効果も報告されている。現時点では、COVID-19罹患後後遺症を主目的にワクチン接種や抗ウイルス薬の投与はされていないと思うが、今後、COVID-19罹患後後遺症や免疫異常のハイリスク患者グループが特定され、ワクチンや抗ウイルス薬に伴う明らかなメリットが判明したり、薬剤の費用が安価になったりする場合は、重症化予防効果以外の目的で投与されることがあるかもしれない。 最後に、病院や高齢者施設における感染対策について考える。 かつては、COVID-19感染後、3ヵ月間は再感染しないと考えられていた時期があった。しかし、プレプリントではあるが、デンマークのグループから、オミクロン株であるBA.1やBA.2では1ヵ月以内でも再感染を起こしうることが報告された(Stegger M, et al. medRxiv. 2022 Feb 22.)。同時期頃から本邦でも、短期間で再燃を来す患者の診療をする機会がみられるようになったように感じている。PCR検査は、COVID-19の診断に有用な検査ではあるが、一度罹患すると、高齢者や幼児、細胞性免疫が低下している患者で、陰性化にしばらく時間がかかることがある。かつてのように、原則90日間は再感染しないと考えることができた場合は、罹患後90日以内の発熱、感冒様症状はCOVID-19以外を考えることができたが、短期間で再感染すると考える場合は、PCR検査だけではなく、患者の症状や行動歴、COVID-19接触歴などを把握し、他の鑑別疾患も考慮しながら総合的に判断する必要がでてくる。 今後、オミクロン株の再流行がみられた際には、2~3ヵ月以内に感染を起こしたからといって、安易にCOVID-19の再感染ではないだろうと考えるのは、病院や高齢者施設の感染管理としては避けたほうがよいだろう。 さて、本邦の第8波も落ち着いてきたが、今後はXBB.1.5を含めたXBB系統などの株が流行する可能性もあるだろう(CLEAR!ジャーナル四天王-1648「2022年11月以降の中国・北京における新型コロナウイルス流行株の特徴」)。米国(Vogel L. CMAJ. 2023;195:E127-E128.)やシンガポール(Ministry of Health,Shingapore. UPDATE ON COVID-19 SITUATION AND MEASURES TO PROTECT HEALTHCARE CAPACITY. 15 OCTOBER 2022.)でXBB.1.5が流行したころのデータからは、重症化リスクに大きな変化はなさそうだが、再感染を起こしやすい株であることが想定される。新型コロナウイルス感染症は、オミクロン株となって、重症化リスクは低下したとはいえ、感染力はインフルエンザなどの呼吸器感染症よりも強く、また高齢者、免疫不全者を含めたハイリスク患者ではいまだに重症化しうる感染症であることも考えると、医療機関では、新型コロナウイルス感染症が院内で流行することがないよう、適切な感染対策を継続する必要がある。

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薄味なアメリカンコーヒーと、内容が濃いNEJMのCPCを楽しむ【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第59回

第59回 薄味なアメリカンコーヒーと、内容が濃いNEJMのCPCを楽しむ米国には魅力的な都市がたくさんあり、それぞれ個性を発揮しています。政治の中心がワシントンD.C.、ビジネスの中心がニューヨークです。その中でも、自分が一番好きな都市はボストンです。米国北東部に位置する6つの州をニューイングランド地方と呼び、その中のマサチューセッツ州の州都がボストンです。ボストンと京都市は、歴史的な古都としての位置付けが似ていることから姉妹都市です。両都市には大学の街・学問の街としての共通点があります。ボストン大学のほか、郊外にハーバード大学、マサチュ-セッツ工科大学などの名門大学を擁しています。ボストン大学は1839年に設立されたボストンでも最大規模の私立大学で、留学生が多い大学として知られます。マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology:MIT)は、1865年創立の世界トップクラスの工科大学です。MITの近代的な建築の校舎群の中を散策したことがありますが、有名な芸術家のオブジェも多く配置され、キャンパス歩きが美術館巡りのように楽しめます。何と言っても有名なのがハーバード大学です。1636年に設立されたアイビーリーグ大学です。多くのノーベル賞受賞者や著名人を輩出している、世界大学ランキングの上位が定席の名門校です。ここもキャンパスを散策するとアカデミックな雰囲気に浸ることができます。医学領域でも、ハーバード大学医学部は世界に君臨しています。ハーバード大学附属病院という名称の病院はありません。複数の病院が連携してハーバード大学附属病院群として役割を担っています。その中でも、もっとも有名なのがマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital: MGH)です。MGHは、世界中の医学生に最も有名な病院です。日本の医学生もMGHという名前を知っていると思います。医学誌の最高峰といわれるThe New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されているCase Records of the Massachusetts General Hospitalの抄読会が、医学生の共通の学習手段となっているからです。NEJM誌は、ハーバード大学医学部の医師たちが中心となり1812年に創刊された、世界で最も権威ある週刊の総合医学雑誌です。Journal Citation Reportsが公開するインパクトファクターにおいて、NEJM誌は176.079(2022年6月28日発表)ときわめて高い水準です。日本では江戸時代後期にあたる時代に米国で創刊された医学雑誌が、200年を超えて発行され、今も世界で最も権威ある医学雑誌であり続けていることに敬意を表します。病院において残念ながら患者さんが亡くなられた場合には病理解剖をお願いします。病理解剖とは、病気のために亡くなられた患者さんのご遺体を解剖し、臓器、組織、細胞を直接観察して詳しい医学的検討を行うことです。病理解剖をさせていただいた場合には、その後に病院の中でCPCと呼ばれる会が開かれます。CPCはclinico-pathological conferenceの略語で、臨床病理検討会とも訳されます。病理解剖で得られた所見から、精度の高い病理診断ができ、死因を正しく解明することができます。患者さんの経過を振り返り医者同士で批判的に検討し合うのです。その患者さんに関わった医者だけでなく、関与しなかった他科の医者も加わります。もっと良い治療法がなかったのか、この患者さんが死に至ることは本当に避けられなかったことなのかを検証するために白熱した議論がなされます。CPCが定期的に開催されていることは、その病院の医療レベルを推し量る一つの材料とされます。NEJM誌の中でも不動の人気コンテンツが、1924年から連載開始になったCase Records of the Massachusetts General Hospitalです。具体的には、MGHで開催されているCPCを提示したもので、一流医師が診断に難渋した症例でどのように診断を進めたのか、その思考過程を学ぶことができます。このコンテンツに触れることで、医学的知識が豊富になるだけでなく、日常臨床における論理的思考法を身に付ける上で役に立ちます。国内外の大学や病院において、医学生の勉強会・論文抄読会の教材として活用されており、多くの医師の支持を得ています。ぜひともNEJM誌を手に取り、このMGHのCPCに眼を通していただくようお願いします。このコンテンツのタイトル部分には、古い建築物のイラストが描かれています。これはMGHの創立時から現存する建物のブルフィンチ棟で、その最上階がエーテル・ドームと呼ばれ、1846年に世界最初のエーテル麻酔を行った場所です。今もこの講堂でCPCが開催されているそうです。NEJM誌の「Case Records of the Massachusetts General Hospital」のタイトル部分に描かれているMGHブルフィンチ棟のイラスト(左)と、現在のブルフィンチ棟(右)英文雑誌の抄読会は、継続して参加することが大切で、そこには大きなエネルギーが必要です。ここで紹介した、NEJM誌やMGHのウンチクを知っていると少しは楽しく感じるようになるかもしれません。さらに追加でウンチクを紹介します。ボストンで起きた大事件が1773年のボストン茶会事件です。東インド会社に紅茶の専売権を与える茶法に反対して、ボストン港で東インド会社の茶葉を海中投棄したことから起こった反英闘争で、アメリカ独立戦争のきっかけです。英国の植民地だったことから、アメリカ人にとって紅茶はとても馴染み深い嗜好品でした。ボストン茶会事件などを契機に不買運動が広がり、紅茶の代わりにコーヒーが普及するようになったのです。その一方で、紅茶への愛着も強いものがありました。コーヒーを薄味にして、ミルクや砂糖を加えるなど、紅茶の味に似せようとした工夫が現在につながるアメリカンコーヒーの誕生秘話だそうです。NEJM誌の内容は非常に濃いのですが、薄味なアメリカンコーヒーの原点がボストンにあるのは不思議です。

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英語で「治療方針には影響しません」は?【1分★医療英語】第77回

第77回 英語で「治療方針には影響しません」は?What do you think about sending more tests to rule out Disease A, B, and C?(検査を追加して、疾患A、B、Cなどを除外してはいかがでしょうか?)We could do it, but its results will not change our management. So, I cannot agree with that idea.(そうすることはできるけど、その結果は治療方針には影響しないから、その考えに同意はできません)《例文1》Don't worry, your positive COVID test will not change our management of your cancer.(心配しないで、あなたが新型コロナ陽性であることは、あなたのがんの治療方針には影響しません)《例文2》Let's not consult ID team for now. Screening of that infection will not directly affect our current management.(感染症科へのコンサルトはまだ控えましょう。その感染症をスクリーニングすることは、現在の治療方針に直接的には影響しませんから)《解説》日本でも同様だと思いますが、医療費が高額な米国では、日本以上に患者の経済負担軽減に意識的になることが重要です。また、一つひとつの検査の意義を事前に十分に把握していることは、良医の条件でもあると思います。“it will not change our management”は医師同士、時には医師と患者さんとの会話でも頻用される表現です。医学生や研修医、もしくは患者さんから、必要のない検査を提案されたときに、この返答が有効になることが多くあります。この言葉の後に、検査結果が陽性の場合、陰性の場合で、具体的にどのような状況になるのか、補足説明するのもよいでしょう。逆に、一見関係がなさそうに見える検査でも、“this test result can change our management”(検査結果で、治療方針が変わります)と、自信を持って意見を述べることで、周囲に検査の重要性を認識してもらうことができるでしょう。講師紹介

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第160回 アミノ酸服用がコロナ疲労に有効

たかがアミノ酸、されどアミノ酸。6種類のアミノ酸とその誘導体を成分とする経口薬の新型コロナウイルス感染症罹患後症状(以下、コロナ後遺症)改善効果が被験者41例の無作為化試験で示唆されました1)。コロナ後遺症は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染からずいぶん経つにもかかわらず疲労などの不調が続くことを特徴とし、いくつか示唆されている原因にはミトコンドリア機能低下や細胞のエネルギー生成障害が含まれます。SARS-CoV-2は自身の複製のためにミトコンドリアを乗っ取り、そのせいで代謝がより不効率な解糖系に切り替わってしまって慢性の疲労が現れると考えられています。その仮説に一致し、アミノ酸などを原料とするエネルギー生成障害がコロナ後遺症によく似た病態である慢性疲労症候群(CFS)の患者に生じることが知られています。今回紹介する試験で検討されたのは米国のバイオテクノロジー企業であるAxcella Therapeutics社がAXA1125という名称で開発している経口薬で、アミノ酸5つ(ロイシン、イソロイシン、バリン、アルギニン、グルタミン)とアミノ酸誘導体1つ(N-アセチルシステイン)を成分とします。AXA1125はより燃費のよいエネルギー生成反応である酸化的リン酸化の原料を生み出すβ酸化を促し、ミトコンドリア機能を改善します。試験には疲労を主徴とするコロナ後遺症患者41例が参加し、AXA1125を1日2回4週間服用する群とプラセボ群におよそ均等に振り分けられました。試験の一番の目的であったミトコンドリア機能指標の変化はAXA1125とプラセボで差がありませんでしたが、CFQ-11検査に基づく疲労の程度がプラセボに比べてAXA1125投与群のほうがより改善しました。CFQ-11検査は11の質問によって疲労の程度を見積もります。11の質問のうち7つは肉体的疲労、残り4つは精神的疲労を調べるものです。それぞれの質問への回答は0~3の4択で、患者は無症状なら0、最も重症なら3を選びます。すなわちCFQ-11合計点数の幅は0~33点で、点数が大きいほど深刻であり、24点以上は中等症~重症と判定されます。AXA1125投与群のCFQ-11合計点数の平均は投与開始前は中等症~重症域の26.2点でしたが、4週間の投与後にはその水準を脱して21.0点に落ち着きました。一方、プラセボ投与群ではほとんど変化がなく中等症~重症の水準のままでした。AXA1125投与のかいあって肉体的疲労が改善した患者ではミトコンドリア機能や6分間歩行距離(6MWD)の改善も認められました。プラセボ群ではそのような関連はありませんでした。Axcella社はより大人数を募る第IIb/III相試験の準備を進めており、本年2月にはその試験の開始が米国FDAに許可されています2)。となればすぐに始めたいところですが、いかんせん懐具合が寂しく、さらなる開発には救いの手や提携が必要との苦しい胸の内を同社が最近明かしています3)。資金難を乗り越えてAXA1125の開発が前進することは今回の試験を担った英国・オックスフォード大学のチームも望んでおり、コロナ後遺症に広く有効なことがさらなる試験で判明することを期待しています4)。 参考1)Finnigan LEM, et al. eClinicalMedicine. April 14, 2023. [Epub ahead of print] 2)Axcella Announces FDA IND Clearance Supporting Regulatory Path to Registration of AXA1125 for Long COVID Fatigue / BusinessWire3)Axcella seeks 'light speed' swing at long Covid, but needs cash / Endpoints4)Trial investigating potential treatment for fatigue relief in people with long COVID reports results / University of Oxford

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ビタミンD不足で認知症リスク上昇~コホート研究

 ビタミンD活性代謝物は、神経免疫調節や神経保護特性を有する。しかし、ヒドロキシビタミンDの血清レベルの低さと認知症リスク上昇の潜在的な関連については、いまだ議論の的である。イスラエル・ヘブライ大学のDavid Kiderman氏らは、25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の血清レベルの異なるカットオフ値において、ビタミンD欠乏症と認知症との関連を調査した。その結果、不十分なビタミンDレベルは認知症との関連が認められ、ビタミンDが不足または欠乏している患者においては、より若年で認知症と診断される可能性が示唆された。Journal of Geriatric Psychiatry and Neurology誌オンライン版2023年3月8日号の報告。 イスラエル最大の医療保険組織Clalit Health Services(CHS)のデータベースより、患者データを収集した。各被験者について、調査期間中(2002~19年)の利用可能なすべての25(OH)D値を取得した。認知症の発症率は、25(OH)Dレベルの異なるカットオフ値で比較した。 主な結果は以下のとおり。・本コホート研究の対象は、患者4,278例(女性:2,454例[57%])であった。・フォローアップ開始時の平均年齢は、53±17歳であった。・17年間のフォローアップ期間中に認知症と診断された患者は133例(3%)であった。・完全に調整された多変量解析では、血清25(OH)Dの平均値が75nmol/L未満(ビタミンD欠乏)の患者は、同75nmol/L以上(基準値)の患者と比較し、認知症リスクが約2倍高かった(オッズ比:1.8、95%信頼区間:1.0~3.2)。・ビタミンDの欠乏(77 vs.81、p=0.05)および不足(77 vs.81、p=0.05)が認められる患者は、基準値の患者と比較し、より若年で認知症と診断された。

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術前AC抵抗性TN乳がん、アテゾリズマブ+nab-PTXが有望/第II相試験

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)では、抗PD-(L)1抗体による術前療法で病理学的完全奏効(pCR)率が改善されるが、免疫関連有害事象(irAE)の長期持続リスクのためリスク・ベネフィット比の最適化が重要である。最初の術前療法で臨床効果が不十分な場合はpCR率が低い(2~5%)ことから、免疫チェックポイント阻害薬が選択可能かもしれない。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのClinton Yam氏らは、術前ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)抵抗性のTNBC患者に対して、第2の術前療法としてアテゾリズマブ+nab-パクリタキセルを投与する単群第II相試験を実施し、有望な結果が得られた。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年4月15日号に掲載。 本試験の対象は、StageI~IIIのAC抵抗性(AC 4サイクル後に病勢進行もしくは腫瘍体積の80%未満の減少)のTNBCで、第2の術前療法としてアテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)+nab-パクリタキセル(100mg/m2、1週ごと12回)を投与後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)を投与した。 主な結果は以下のとおり。・2016年2月15日~2021年1月29日にAC抵抗性TNBCを37例登録した。・pCR/residual cancer burden(RCB)-I率は46%だった(ヒストリカルコントロール群:5%)。・新たな安全性シグナルは観察されなかった。・7例(19%)がirAEによりアテゾリズマブを中止した。

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統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには

 地域在住の統合失調症患者における身体的、精神的、社会的な併存症は、日常生活を妨げ、再入院リスクを上昇させる可能性がある。しかし、日本において、統合失調症患者の併存症に関する調査は、包括的に行われていない。藤田医科大学の松永 眞章氏らは、日本人統合失調症患者のさまざまな併存症の有病率を調査するため、有病率ケースコントロール研究を実施した。その結果、統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、身体的、精神的、社会的な併存症を管理する効果的な介入が必要であることが示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年2月28日号の報告。 2022年2月に、有病率ケースコントロール研究として、統合失調症の有無にかかわらず20~75歳の日本人を対象とした自己申告によるインターネット調査を実施した。統合失調症患者と統合失調症でない対照群の身体的(過体重、高血圧、糖尿病など)、精神的(抑うつ症状、睡眠障害など)、社会的(雇用状態、世帯収入、社会的支援など)併存症の有病率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者223例および対照群1,776例が特定された。・統合失調症患者は対照群よりも、過体重である可能性が高く、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の有病率が高かった。・統合失調症患者は対照群と比較し、抑うつ症状、失業状態、非正規雇用の割合が高かった。・本結果は、地域在住の日本人統合失調症患者の身体的、精神的、社会的な併存症に対処する包括的な支援や介入の必要性を強調するものである。・統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、併存症を管理する効果的な介入が必要である。

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重症化リスクの高いコロナ患者、ニルマトレルビルで入院・死亡減/BMJ

 重症化リスクの高いSARS-CoV-2感染者へのニルマトレルビル投与は非投与と比較して、ワクチン非接種者・接種者、ブースター接種者、再感染者において、30日時点の入院または死亡のリスクが低下していたことが明らかにされた。米国・VA Saint Louis Health Care SystemのYan Xie氏らが、米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを活用し、電子カルテを用いた無作為化ターゲット模倣試験(emulation of a randomized target trial)で明らかにした。ニルマトレルビルの有効性の検証は、オミクロン変異株が優勢となる前、ワクチン非接種のSARS-CoV-2感染者とSARS-CoV-2感染歴のない人々を対象に行われたものであった。BMJ誌2023年4月11日号掲載の報告。非投与と比較、検査陽性から30日以内の入院/死亡の発生を評価 検討は、米国退役軍人省の全国ヘルスケアデータベースを用いて、2022年1月3日~11月30日に、COVID-19重症化リスク因子を1つ以上有するSARS-CoV-2感染陽性者25万6,288例を対象に行われた。このうち3万1,524例は、SARS-CoV-2検査陽性から5日以内にニルマトレルビル投与を受け、22万4,764例は同投与を受けなかった。 検討では、SARS-CoV-2検査陽性から30日以内の入院または死亡の複合アウトカムが評価された。 SARS-CoV-2検査陽性から5日以内にニルマトレルビルを開始した場合の有効性を非投与と比較して推定。有効性は、30日時点の入院または死亡リスクの低下とし、ワクチン接種を受けていない人、1回または2回接種を受けた人、ブースター接種を受けた人、およびSARS-CoV-2初回感染者または再感染者それぞれにおいて推定した。 評価では、逆確率加重法を用いてグループ間の個人・健康特性を平均化した。また、相対リスクと絶対リスクの低下を、30日時点の累積発生率から算出した。有効性は、加重Kaplan-Meier推定量で推算した。オミクロン変異株感染者でもリスク低下 ワクチン非接種者(7万6,763例:投与群5,338例、非投与群7万1,425例)において、非投与と比較したニルマトレルビル投与による30日時点の入院または死亡の相対リスクは、0.60(95%信頼区間[CI]:0.50~0.71)、絶対リスク低下は1.83%(95%CI:1.29~2.49)であった。 ワクチン1回または2回接種者(8万4,620例:投与群7,989例、非投与群7万6,631例)ではそれぞれ0.65(95%CI:0.57~0.74)、1.27%(95%CI:0.90~1.61)、ブースター接種者(9万4,905例:1万8,197例、7万6,708例)では0.64(0.58~0.71)、1.05%(0.85~1.27)、SARS-CoV-2初回感染(22万8,081例:2万6,350例、20万1,731例)では0.61(0.57~0.65)、1.36%(1.19~1.53)、再感染者(2万8,207例:5,174例、2万3,033例)では0.74(0.63~0.87)、0.79%(0.36~1.18)であった。 ニルマトレルビルと入院または死亡のリスク低下との関連は、65歳以下および65歳超の人々で、男性および女性、黒人および白人の参加者で、また、COVID-19重症化リスク因子が1~2、3~4、5以上の人々、そしてオミクロン変異株BA.1またはBA.2およびBA.5の優勢期の感染者で認められた。

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