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若年肥満症に対するGLP-1受容体作動薬セマグルチドの効果(解説:小川大輔氏)

 わが国では肥満症の治療としてGLP-1受容体作動薬の使用はまだ認められていないが、欧米では一般によく用いられている。これまでにリラグルチドやセマグルチドなどのGLP-1受容体作動薬の有用性が多数報告されているが、主に成人を対象とした試験であった。今回、若年者(12~18歳)の肥満症を対象とした試験の結果が報告された1)。 この試験は201例の12歳から18歳未満の肥満症を対象に、セマグルチド2.4mgまたはプラセボを投与する群に2対1の割合で無作為に割り付け、週1回皮下投与を行い68週間後のBMIの変化率を評価した。また全例が食事や運動など生活様式への介入を受けた。その結果、試験開始から68週目までのBMIの平均変化量は、プラセボ群(67例)では+0.6%であったのに対し、セマグルチド群(134例)では-16.1%と有意差を認めた(p<0.001)。また5%以上の体重減少の達成割合も、プラセボ群は18%であったが、セマグルチド群は73%と有意に達成割合が高かった(p<0.001)。 肥満症は成人だけでなく小児や青少年でも増加している。高血糖や脂質異常症などの代謝疾患や肝機能障害、さらに睡眠時無呼吸症候群などを併発することが多いため早期からの対策が必要である。生活様式への介入をまず行うが、一般的に効果は弱い。欧州では薬物療法としてリラグルチドが、米国ではリラグルチドに加えて、orlistat、トピラマートが12歳以上の肥満症の治療薬として承認されている。 今回の試験で、肥満のある若年者に対し、週1回セマグルチド2.4mgの皮下投与がBMIや体重を有意に減少し、さらに糖化ヘモグロビン、脂質、肝機能などの代謝パラメーターも改善することが明らかになった。一方、有害事象として消化器症状(悪心、嘔吐、下痢など)はセマグルチド群のほうが多く認められたが、試験の完遂率は90%と高く、おおむね許容できる範囲と推測される。成人だけでなく若年者の肥満症の薬物治療として、セマグルチドの有用性が示されたことは意義深いと思われる。

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脂質管理目標値設定(1)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q44

脂質管理目標値設定(1)Q44脂質異常症の管理目標値を設定するうえで、リスクの層別化をすることは従来どおりであるが、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版以降、『二次予防』として厳密に管理すべき基礎疾患として示されたのは?

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「肥満」との違いは?肥満症診療ガイドライン改訂

 11月24日に日本肥満学会(理事長:横手 幸太郎氏[千葉大学医学部附属病院長])は、『肥満症診療ガイドライン2022』についてプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、肥満症の現況や治療に関する解説と今回刊行されたガイドラインの概要が説明された。また、本ガイドラインは12月2・3日に那覇市で開催される第43回日本肥満学会(会長:益崎 裕章氏[琉球大学大学院 医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 教授])で発刊される。肥満症とはBMI25以上で何らかの健康障害がある人 はじめに理事長の横手 幸太郎氏が「わが国における肥満症の現況と肥満症診療ガイドライン2022の位置づけ」をテーマに講演を行った。 肥満とは、「脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態」をいい、わが国ではBMI25以上が肥満とされている。その数は、年を経て全世界で増えており、とくにアメリカやアフリカで増加している。 肥満になると糖尿病、高血圧、脂質異常症などの健康障害のほか、膝・腰・足首などへの運動器障害、睡眠時無呼吸症候群などが生じるリスクが高くなる。 そこで、BMIが25以上あり、一定の健康障害(糖尿病、高血圧、脂質異常症、痛風など11項目)がある人を「肥満症」として、医学的に治療が必要な対象者としている(BMI35以上は高度肥満症)。 肥満症の治療は、食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法、外科療法と5つの考え方があり、他職種連携によるチーム医療がなされる必要がある。実際、一番身近な保健指導の介入により6ヵ月後のHbA1cは-0.2%減少、中性脂肪は-81.5%減少など改善効果が報告されている1)。 肥満に関して最近のトピックスとしては、若い女性にはBMI18.5未満の「やせ過ぎ」の女性がむしろ増えていることやそのやせ過ぎが将来的に骨粗鬆症や不妊のリスクとなること、高齢者の肥満ではフレイルなどとの関連も考慮し、無理な減量よりも筋肉量維持や増強に心がけることなども指摘されている。 横手氏は終わりに本ガイドラインの目的について「体重を減らすことにメリットがある。『やせるべき人』を選び出す、そして、適切に治療と予防を行うことである」と述べ講演を終えた。小児や高齢者の肥満にも言及 続いて、同学会のガイドライン作成委員会委員長の小川 渉氏(神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科 教授)が「肥満症診療ガイドライン2022の改訂のポイント」をテーマに、今回の改訂内容や今後の展望などを解説した。 本ガイドラインは、2006年、2016年と発刊され、今回の2022年版では、主に「肥満症治療の目標と学会が目指すもの」「高度肥満症」「小児の肥満」「高齢者の肥満」「肥満症の治療薬」「コラム」について改訂が行われた。 「肥満症治療の目標と学会が目指すもの」と「高度肥満症」では、肥満症治療指針について「肥満症」と「高度肥満症」とで目標、治療などの治療方針が異なることが記載された。とくに肥満の外科治療の減量・代謝改善手術では保険適用の内容などが改訂された。薬物治療についてはGLP-1受容体作動薬の治験に関して言及され、セマグルチドの68週後の体重変化率についてプラセボ-2.1%に対し、セマグルチド-13.2%と有意な体重減少があったこと、また、本試験が学会の定める肥満症の診断基準に基づいて作成されたプロトコ-ルで実施された試験であることなどが記載されている2)。 「高齢者の肥満」では、日本老年医学会のガイドラインの内容 と統一性を考慮して改訂され、 高齢者肥満症の減量目標をフレイル予防と健康障害発症予防の両者も考慮し「BMI22~25」の範囲とすることが記載され、過剰な減量には留意が必要とされている。 「小児の肥満」では、将来の成長を考慮しBMIではなく、肥満度で判定し、身体面だけでなく、肥満に伴う「いじめ」など生活面への配慮も記載されている。 「肥満症の治療薬」では、「肥満の治療」ではなく、「肥満症の治療」という基本概念のもと、記載の整備と概念を明確化したほか、改訂では製薬企業の開発担当者とも意見交換を行い、評価基準と適応基準は必ず同一ではないことが記載されている。 その他、今回の改訂では「肥満へのスティグマ」についても触れられ、肥満の原因が個人への帰責事由という偏見からくる社会的スティグマと肥満を自分自身の責任とする個人的スティグマへの配慮が述べられている。 最後に小川氏は「肥満症の課題は、認知度がまだ低く、社会的な浸透もメタボリックシンドローム(72.5%)や肥満(81.8%)と比較しても、肥満症(58.3%)は低い。このガイドラインが、診療に役立つだけでなく社会の啓発に寄与することを期待する」と抱負を述べ、レクチャーを終えた。

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ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

 日本感染症学会は11月22日、「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版」を発刊した。今回のCOVID-19に対する薬物治療の考え方の改訂ではエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ錠)の緊急承認を受け、薬物治療における注意点などが追加された。 日本感染症学会のCOVID-19に対する薬物治療の考え方におけるゾコーバ投与時の主な注意点は以下のとおり。・COVID-19の5つの症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、倦怠感[疲労感])への効果が検討された臨床試験における成績等を踏まえ、高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討する・重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は慎重に判断すべきということに留意して使用する・重症化リスク因子のある軽症例に対して、重症化抑制効果を裏付けるデータは得られていない・SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから遅くとも72時間以内に初回投与する・(相互作用の観点から)服用中のすべての薬剤を確認する(添付文書には併用できない薬剤として、降圧薬や脂質異常症治療薬、抗凝固薬など36種類の薬剤を記載)・妊婦又は妊娠する可能性のある女性には投与しない・注意を要する主な副作用は、HDL減少、TG増加、頭痛、下痢、悪心など このほか、抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミングの項には、「重症化リスク因子のない軽症例の多くは自然に改善することを念頭に、対症療法で経過を見ることができることから、エンシトレルビル等、重症化リスク因子のない軽症~中等症の患者に投与可能な症状を軽減する効果のある抗ウイルス薬については、症状を考慮した上で投与を判断すべきである」と、COVID-19に対する薬物治療の考え方には記載されている。

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第136回 ゾコーバがついに緊急承認、本承認までに残された命題とは

こちらでも何度も取り上げていた塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)治療薬のエンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)がついに11月22日、緊急承認された。今回審議が行われた第5回薬事分科会・第13回医薬品第二部会合同会議も公開で行われたが、緊急承認に対して否定的意見が多数派だった前回に比べれば、かなり大人しいものになった。今回の再審議に当たって新たに塩野義製薬から提出されたデータは同薬の第II/III相試験の第III相パートの速報値だが、その内容については過去の本連載で触れたので割愛したい。審議内で一つ明らかになったのは第III相パートの主要評価項目、有効性の検証対象の用量、有効性の主要な解析対象集団が試験中に変更されていたことだ。もともと、エンシトレルビルでの主要評価項目は新型コロナ関連12症状の改善だったが、前回の合同会議で示された第IIb相パートの結果やオミクロン株の特性に合わせて、最終的な主要評価項目はオミクロン株に特徴的な5症状に変更されたという。これについて医薬品医療機器総合機構(PMDA)側は、新型コロナは流行株の変化で患者の臨床像なども変化することから、主要評価項目の適切さを試験開始前に設定するのは相当の困難これら変更が試験の盲検キーオープン前だったとの見解で許容している。少なくとも第IIb相のサブ解析結果の教訓を生かした形だ。そして、今回の審議でまず“噛みついた”のは前回審議で参考人の利益相反(COI)状況などを激しく責め立てた山梨大学学長の島田 眞路氏だった(参考:第118回)。その要点は以下の2点だ。緊急承認の条件には「代替手段がない」とあるが、すでに経口薬は2種類ある日本人集団だけ(治験は日本、韓国、ベトナムで実施)での解析では症状改善までの期間短縮はわずか6時間程度でとても有効とは言い切れないこれに対して事務方からの回答は以下のようなものだ。国産で安定供給ができ、適応が重症化リスクを問わないので代替手段がないに該当する日本人部分集団で群間差が小さい傾向が認められたことについて、評価・考察を行うための情報には限りがあり、今後改めて評価する必要がある島田氏の日本人集団に関する指摘に関しては、そもそも臨床試験自体が3ヵ国全体の参加者で無作為化されていることを考えれば、日本人集団のみのサブ解析結果は参考値程度に過ぎず、申し訳ないが揚げ足取りの感は否めない。もっとも島田氏がこの事務局説明に対して「(重症化)リスクのない人に使えるから良いんじゃないかって、リスクのない人はちょっと風邪症状があるなら、風邪薬でも飲んどきゃ良いんですよ」と反論したことは大筋で間違いではない。ただし、過去の新型コロナ患者の中には、表向きは基礎疾患がないにもかかわらず死亡した例があることも考えると、さすがに私個人はここまでは断言しにくい。一方、参加した委員から比較的質問・指摘が集中したのがウイルス量低下の意義に関するものだ。議決権はない国立病院機構名古屋医療センターの横幕 能行氏は「(今回の資料では)感染あるいは発症から72時間以内に投与しないと、機序も含めた解釈ではウイルス活性を絶ち切る、もしくはそれに近い効果を得ることはできない。そして72時間以降の投与ではウイルス量の低下もしくは感染性の低下については基本的にはまったく効果がないと読める。感染伝播の阻止、早期の職場復帰などを考えると、ウイルス量もしくは感染性の低下に関する効果のこの点を十分に認識していただいた上で市中に出す必要があるかと思う」と指摘した。これに関して事務方からは「ウイルス量低下の部分は、確かに数値の低下が認められているものの、これがどの程度の臨床的意義を持つかについてはなかなか評価が難しい」というすっきりしない反応だった。現段階でのデータではPMDAも何とも言えないのも実情だろう。最終的には島田氏以外の賛成多数により緊急承認が認められたが、臨床現場での意義はやはり依然として微妙だ。過去にも繰り返し書いているが、エンシトレルビルは、ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッド)と同じCYP3A阻害作用を有する3CLプロテアーゼ阻害薬であるため、併用禁忌薬は36種類とかなり多い。中には降圧薬、高脂血症治療薬、抗凝固薬といった中高年に処方割合の多い薬剤も多く、この年齢層で投与対象は少ないとみられる。そもそもこの層はモルヌピラビルやニルマトレルビル/リトナビルとも競合するため、これまでの使用実績が多いこれら薬剤のほうが選択肢として優先されるはずだ。となると若年者だが、催奇形性の問題から妊孕性のある女性では使いにくいことはこれまでも繰り返し述べてきたとおりだ。今回の緊急承認を受けて日本感染症学会が公表した「COVID-19に対する薬物治療の考え方第 15版」では、妊孕性のある女性へのエンシトレルビルの投与に当たっては▽問診で直前の月経終了日以降に性交渉を行っていないことを確認する▽投与開始前に妊娠検査を行い、陰性であることを確認することが望ましい、と注意喚起がされている。しかし、現実の臨床現場でこれが可能だろうか? 女性医師が女性患者に尋ねる場合でも、かなり高いハードルと言える。となると、ごく一部の若年男性が対象となるが、これまで国も都道府県も重症化リスクのない若年者へはむしろ受診を控えるよう呼びかけている。もしこうした若年男性がエンシトレルビルの処方を受けたいあまり発熱外来に殺到するならば、感染拡大期には逆に医療逼迫を加速させてしまい本末転倒である。では前述のような見かけ上では重症化リスクがないにもかかわらず突然死亡に至ってしまうような危険性がある症例を選び出して処方できるかと言えば、そうした危険性のある症例自体が現時点ではまだ十分に医学的プロファイリングができていない。そもそも、エンシトレルビルの第III相パートの結果で明らかになったのはオミクロン株特有の臨床症状の改善であって、重症化予防は今のところ未知数だ。となると、後は重症化リスクのない軽症・中等症の中で臨床症状が重めな「軽症の中の重症」のようなやや頭の中がこんがらがりそうな症例を選ばなければならない。強いて言うならば、たとえば酸素飽和度の基準で軽症と中等症を行ったり来たりするような不安定な症例だろうか? ただ、今までもこうした症例で抗ウイルス薬なしで対処できた例も少なくないだろう。そして国の一括買い上げのため価格は不明だが、抗ウイルス薬が安価なはずはなく、多くの臨床医が投与基準でかなり悩むことになるだろう。ならば専門医ほどいっそ端から使わないという選択肢、非専門医は悩んだ末にかなり幅広く処方するという二極分化が起こりうる可能性もある。この薬がこうも悩ましい状況を生み出してしまうのは、前回の合同会議の審議でも話題の中心だった「臨床症状改善効果の微妙さ」という点にかなり起因する。今回の第III相パートの結果では、オミクロン株に特徴的な5症状総合での改善ではプラセボ対照でようやく有意差は認められたものの、有意水準をどうにかクリアしたレベル(p=0.04)だ。ちなみに、もともとの主要評価項目だった12症状総合では今回も有意差は認められなかった。さらに言うと、緊急承認後に塩野義製薬が開催した記者会見後のぶら下がり質疑の中で同社の執行役員・医薬開発本部長の上原 健城氏は、今回の試験では解熱鎮痛薬の服用は除外基準に入っておらず、第III相パートでは両群とも被験者の2~3割はエンシトレルビルと解熱鎮痛薬の併用だったことを明らかにしている。もちろんリアルワールドを考えれば、解熱鎮痛薬を服用していない患者のみを集めるのは難しいだろう。「(解熱鎮痛薬服用が症状判定の)ノイズになってしまってはいけないので、服用直後数時間はデータを取らないようにした」(上原氏)とのこと。ただし、解熱鎮痛薬の抗炎症効果を考えれば、今回の主要評価項目に含まれていたオミクロン株に特徴的な症状のうち、「喉の痛み」の改善などには影響を及ぼす可能性はある。そうなるとエンシトレルビルの「真水」の薬効は、ますます微妙だと言わざるを得ない。もちろん今回の第III相パートはそもそも9割以上の被験者がワクチン接種済みで、さらに2~3割が解熱鎮痛薬の服用があった中でも有意差を認めたのだから、それらがない前提ならばもっと効果を発揮できた可能性もあるのでは? という推定も成り立つが、そう事は簡単な話ではない。緊急承認という枠組みで今後の追加データ次第では1年後に本承認となるか否かという大きな命題が残っていることもあるが、「統計学的有意差を認めたから、少なくとも現時点での緊急承認はこれで一件落着」と素直には言い難いと私個人は思っている。

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高HDLコレステロール血症について【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q42

高HDLコレステロール血症についてQ42診断基準には含まれないが、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では高HDLコレステロール血症についてもひとこと言及された。リスクとなる可能性があるのは、HDLコレステロールがいくつ以上とされたか?

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第138回 コロナ薬発掘の明暗/コロナ再感染はより危険

COVID-19入院患者への抗IL-1薬anakinra使用を米国が認可既承認薬の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療効果発掘の取り組みが米国で結実し、スウェーデンを本拠とする製薬会社SobiのIL-1受容体遮断薬anakinra(アナキンラ、商品名:Kineret) によるCOVID-19入院患者治療が米国FDAに取り急ぎ認可されました1)。重度呼吸不全の恐れが大きいCOVID-19入院患者をsuPAR(可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体)血漿濃度上昇を頼りに選定したプラセボ対照第III相試験(SAVE-MORE)結果2,3)などに基づいてその試験とほぼ同様の用法が今回認可されました。COVID-19患者のsuPAR上昇は重度呼吸不全や死によりいっそう至りやすいことと関連し、C反応性タンパク質(CRP)・インターロイキン6(IL-6)・フェリチン・Dダイマーなどの他の生理指標に比べてCOVID-19進行のより早い段階で認められます。suPARが反映するのは危機を知らせる分子・カルプロテクチンやIL-1αの存在であり、カルプロテクチニンとIL-1αのどちらもCOVID-19の病的炎症の片棒をかつぐことで知られます。カルプロテクチニンは体内を巡る単球によるIL-1β異常生成を促し、IL-1αの阻害はCOVID-19マウスの強烈な炎症反応の発生を予防しました。anakinraはそれらIL-1αとIL-1βの両方の活性をIL-1受容体遮断により阻止します。そういった情報の集積に基づいてanakinraをsuPAR上昇患者に早めに投与し始めてCOVID-19を挫く治療が考案されました。その効果はまずは被験者130人の小規模な第II相試験で確認され4)、続く第III相試験SAVE-MORE2)で確立することになります。SAVE-MORE試験にはsuPAR血漿濃度6ng/mL以上のCOVID-19入院患者が参加し、anakinraは死亡や集中治療室(ICU)治療をプラセボ群に比べて少なくて済むようにしました。anakinra治療群の28日間の死亡率は約4%(3.9%)であり、プラセボ群の約9%(8.7%)の半分未満で済みました。またanakinra治療患者はより早く退院できました。FDAはSAVE-MORE試験の対象と同様の患者へのanakinra治療を取り急ぎ認めています。酸素投与を必要とする肺炎が認められ、重度呼吸不全に進展する恐れがあり、suPARが上昇しているらしい(likely to have an elevated)SARS-CoV-2検査陽性COVID-19入院患者に米国では同剤が使えます。Sobi社には宿題があります。suPAR検査販売の承認申請に必要なデータを準備し、2025年1月31日までにその申請を済ませる必要があります、また、suPAR検査に代わる患者同定手段を確立する必要があり、まずはその解析計画を来年2023年1月31日までにFDAに示し、その4ヵ月後の2023年5月31日までに解析結果を提出しなければなりません。COVID-19にコレステロール低下薬フェノフィブラート無効COVID-19へのanakinraの試験は先立つ研究の集大成として幸いにも成功を収めましたが、既存薬のCOVID-19治療効果発掘の取り組みは周知の通り必ずしも成功するとは限りません。脂質異常症の治療として世界で広く使われているコレステロール低下薬・フェノフィブラート(fenofibrate)はその1つで、国際的な無作為化試験で残念ながらCOVID-19に歯が立ちませんでした5,6)。先立つ細胞実験では試験結果とは対照的にフェノフィブラートの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染阻止効果が示唆されています。SARS-CoV-2感染した培養細胞やCOVID-19患者の肺組織では細胞内の過剰な脂肪生成が認められ、フェノフィブラートはSARS-CoV-2が引き起こす細胞代謝変化を解消し、細胞内でのSARS-CoV-2の複製を阻害することが細胞実験で確認されていました。また、フェノフィブラートの活性型であるフェノフィブリン酸はSARS-CoV-2スパイクタンパク質を不安定にしてその感染を減らすことも最近の細胞実験で示されています。COVID-19に有益そうな免疫調節効果も示唆されていました。期待した効果が惜しくも認められなかった無作為化試験はそれらの有望な前臨床実験結果に背中を押されて実施されました。試験に参加したCOVID-19患者の約半数の351人は発症から14日以内にフェノフィブラートを10日間服用しました。それらフェノフィブラート投与患者の重症度指標をプラセボ投与患者350人と比較したところ残念ながら有意差がありませんでした。死亡などの他の転帰も差がありませんでした。期待した効果が認められなかったとしてもなにがしかの有益な情報は得られるものです。今回の試験もそうで、安全性について重要な情報をもたらしました。フェノフィブラート群では胃腸有害事象が若干より多く認められたものの、大変な有害事象の過剰な発生は認められませんでした。よって脂質異常症などでフェノフィブラートを必要とするCOVID-19患者に同剤は安全に投与できるようです。すでに使っている患者は安心して使い続けられるでしょう。あいにくフェノフィブラートの効果は示せませんでしたが、細胞代謝経路を手入れする他の治療のCOVID-19への試験を引き続き実施する必要があると著者は言っています。コロナ再感染はより危険COVID-19治療薬発掘の取り組みが進むのは心強いですが、健康のために何よりも重要なのは感染しないようにすることかもしれません。COVID-19流行が始まってからおよそ3年が経ち、不運にも二度三度と感染する人もいます。米国の退役軍人医療データの解析によるとそのような再感染は脳や臓器の数々の不調をいっそう生じやすくし、はては死亡リスクも高めるようです7,8)。解析ではSARS-CoV-2感染経験がないおよそ533万人、SARS-CoV-2感染が1回の約43万人、SARS-CoV-2感染が2回以上の約4万人が比較されました。その結果、繰り返し感染した人は感染経験がない人に比べて約2倍多く死亡しており、3倍ほど多く入院していました。また、再感染した人は感染が1回の人に比べて肺、心臓、脳(神経)の不調をそれぞれ3.5倍、3倍、1.6倍生じやすいという結果が得られています。感染を繰り返すほどに健康不調の危険性は累積して上昇するようであり、すでに2回感染していたとしても3回目の回避に努めるに越したことはなく、3回感染している人も4回目をしないようにした方が無難なようです8)。参考1)FDAからSobi社への認可通知2)Kyriazopoulou E, et al. Nat Med. 2021;27:1752-1760. 3)Nature Medicine publishes phase 3 anakinra study results in patients with COVID-19 pneumonia / PRNewswire4)Kyriazopoulou E, et al.eLife.2021;10:e66125.5)Chirinos JA, et al. Nat Metab. 2022 Nov 7:1-11. [Epub ahead of print]6)After showing early potential, cholesterol medication fenofibrate fails to cut severe symptoms or death in COVID-19 patients / Eurekalert7)Bowe B, et al. Nat Med. 2022 Nov 10. [Epub ahead of print]8)Repeat COVID-19 infections increase risk of organ failure, death / Eurekalert

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真性多血症(真性赤血球増加症)〔PV:polycythemia vera〕

1 疾患概要■ 定義真性多血症(PV)は、造血幹細胞レベルで生じる遺伝子変異により汎血球増加、特に赤血球数の著増を来す骨髄増殖性腫瘍である。■ 疫学発症率は人口10万あたり年間約2人、発症年齢中央値は65歳、男女比は約1.5:1である。■ 病因エリスロポエチン(Epo)、トロンボポエチン、顆粒球コロニー刺激因子などのサイトカインのシグナル伝達に必須なJAK2の変異により、これらレセプターの下流のシグナル伝達経路が恒常的に活性化して生じる。JAK2変異は95%以上の例に検出されるが、それ以外に、TET2、DNMT3などのエピゲノム関連分子の変異がそれぞれ10~20%、5~10%にみられる。■ 症状頭痛、頭重感、赤ら顔(深紅色の口唇、鼻尖)、発熱、体重減少、倦怠感、掻痒、骨痛などがみられる。皮膚掻痒感は入浴後に悪化することが多い。血小板増加例では、四肢末端に非対称性の灼熱感を伴う発赤腫脹を来す肢端紅痛症がみられる。触知可能な脾腫が15~20%に認められる。■ 分類血栓症の発症リスクに応じて、低リスク群(年齢60未満、かつ血栓症の既往がない)と高リスク群(年齢60歳以上、血栓症の既往の、いずれか、あるいは両方を認める)に分類する。■ 予後生命予後は比較的良好であり、10年総生存率は約85%である。10年の血栓症を生じない生存率、出血を伴わない生存率は、それぞれ約90%である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多血、骨髄生検所見、JAK2変異の大基準のうち3項目以上、あるいは大基準の多血と骨髄生検所見に加え、小基準である血清Epo値が低値を示すときにPVと診断する。多血はPVを最初に疑う所見である。PVの診断基準では、Hb値が男性>16.5g/dL、女性>16.0g/dL、ヘマトクリット(Ht)値が男性>49%、女性>48%、もしくは循環赤血球量が予測値の25%を超えて増加している場合を多血とする。赤血球数のみならず、PVでは好中球、血小板数も増加することが多い。PVの骨髄生検所見は過形成であり、赤芽球系、顆粒球系、巨核球系細胞の3系統の細胞の増生がみられる。ただし、3系統の細胞数の比は正常と比べてほぼ同等である。巨核球の分化障害も認めない。線維化はあってもごく軽度である。JAK2変異はPVの95%以上の例に認められる。大部分はV617F変異であり、少数例はexon12の変異を示す。大多数のPVにJAK2変異を認めるため、その存在はPV診断に有用であるものの、JAK2変異はPVに特有ではなく、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症の約50%の例にも検出されることに留意が必要である。つまり、JAK2変異を認めない場合のPV診断は慎重に進めるべきであるが、逆にJAK2変異を認めた場合、PV、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症のいずれかであると言ってよい。ただし、JAK2変異の存在だけでPVとは診断できない。血清Epoは低値を示すことが多い。PV診断においてEpo値の低下の特異度は高いものの、感度は中等度である。つまり、血清Epo値が低い場合はPVである可能性が高いが、Epoが高いからといってPVを否定できるわけではない。鑑別すべき主な疾患は、相対性赤血球増加症と2次性赤血球増加症である。相対性赤血球増加症は、循環赤血球量の増大は認めないものの、脱水などによりHt値やHb値が上昇している場合をいう。嘔吐、下痢などの有無、利尿薬の服薬状況の確認が必要である。相対性赤血球増加症に分類されるストレス多血症は、中年の男性に好発し、喫煙者に多い。赤血球数やHb値、Ht値の上昇を認めるが、白血球数や血小板数は正常であり、脾腫も認めない。また、血清Epo値は上昇していることが多い。2次性赤血球増加症は、血清Epo濃度の上昇により生じる赤血球数の増加である。低酸素(高地や慢性閉塞性肺疾患、右左シャントを伴う心疾患など)が続くと、反応性に腎臓からのEpo産生が増加して、また腫瘍性にEpoが産生されると赤血球数増加を来す。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)生命予後は良好であり、治療の基本は血栓症の予防である(図)図 血栓症リスクに基づくPVの治療方針画像を拡大するはじめに心血管系合併症の危険因子(喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症など)の評価を行い、該当する場合は禁煙指導、生活習慣の改善、生活習慣病の治療を行う。増加している赤血球体積を減少させるため、原則として全例に瀉血療法を行う。ヘマトクリット値0.45未満を目標に、血圧、脈拍などの循環動態をみながら1回200~400mLの瀉血を月に1~2度のペースで行う。高齢者や心血管障害を有する例では、循環動態の急激な変化がないように、少量(100~200mL)、頻回の瀉血が望ましい。また、瀉血後に同量の補液を行うと、血行動態の変化を抑えられるだけでなく、ヘマトクリット値が希釈により低下することも期待される。これに加えて、出血や消化器潰瘍症状などの禁忌がなければ低用量アスピリン(商品名:バイアスピリン)投与により血栓症の予防をはかる。血小板数の増加がある場合、von Willebrand 因子(vWF)活性が低下していることがあり(後天性のvWF症候群)、アスピリン投与により出血を来す可能性がある。そのためvWFが30%以下の場合にはアスピリンの投与は行わない。上記に加えて、血栓症の高リスク群(年齢60歳以上、あるいは血栓症の既往がある場合)では、細胞減少療法を行う。細胞減少療法の第1選択薬はヒドロキシカルバミド(同:ハイドレア)、またはロペグインターフェロンα-2b(同:ベスレミ)である。ヒドロキシカルバミドの必要量は症例により大きく異なるため、少量から開始し、Ht<0.45となるように調節する。ロペグインターフェロンα-2bは100μgを開始用量とし、2週間に1回皮下注を行う。増量は50μgずつ行い、最大用量は500μgである。自己注射も可能である。個々の患者に応じた最大量のヒドロキシカルバミドを投与してもHt値0.45以下、白血球数10,000/μL以下、血小板数40万/μL以下にコントロールできない場合をヒドロキシカルバミド抵抗性と、ヒドロキシカルバミド投与によりHb<10g/dL、好中球数<1,000/μL、血小板数<10万/μLと血球減少が生じる場合、あるいはヒドロキシカルバミドによる下肢潰瘍などのためにヒドロキシカルバミド治療が継続できない場合を「ヒドロキシカルバミド不耐容」と呼ぶ。ヒドロキシカルバミド治療を開始された患者の20~40%はヒドロキシカルバミド抵抗性/不耐容となる。このような場合は、JAK1/2阻害剤であるルキソリチニブ(同:ジャカビ)投与により、血球数のコントロールのみならず、血栓症の減少も期待できる。1回10mgを開始用量とし、1日2回経口投与する。最大用量は1回25mg(1日50mg)である。真性多血症の3~6%は2次性の骨髄線維症へと、数%の例は急性骨髄性白血病へと病型進展する。治療が一定であるにもかかわらず経過中に血球数が減少する場合や、末梢血に芽球が出現する場合は、骨髄線維症、急性白血病への移行を疑い、骨髄生検を行う。4 今後の展望PVの生命予後は比較的良好なものの、約10~20%の例が血栓症、出血を合併する。現在用いられている血栓症のリスク分類は、細胞減少療法の適応を決めるためのものであり、標準的な治療法が選択された患者における血栓症、出血の発症リスクが明らかになることが望まれる。またロペグインターフェロンα-2bやルキソリチニブ治療により、一部の症例ではJAK2V617F allele burdenの減少が認められる。JAK2V617F allele burdenが治療前値と較べ50%以上減少した症例は、そうでない症例と較べ主要血栓症、出血、骨髄線維症や急性骨髄性白血病への進展、死亡を認めない生存率が良好であることが報告されており、血栓症の予防のみならず、腫瘍量の減少を目指す治療戦略が現実的になりつつある。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。1)日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン2024年版(第3.1版). 金原出版;2024.2)Harrison et al. WHO Classification of Tumours of Haematolopoetic and Lymphoid Tissues 5th edition. WHO;2022. p.p40-43.公開履歴初回2022年11月10日更新2025年6月30日

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動脈硬化症の身体所見【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q38

動脈硬化症の身体所見Q38動脈硬化症を評価する手段として、検査の他に身体所見もいくつか報告がみられている。発表されたのは1973年であるが、2000年頃から本邦でも全国的に認知され始めた、視診でとれる動脈硬化症を示唆する身体所見は?

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動脈硬化の評価(2)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q37

動脈硬化の評価(2)Q37初診外来(or救急外来)の対応中に、誤嚥性肺炎を疑う病歴の高齢男性が受診された。胸部レントゲンでははっきりと陰影を指摘できず、両肺の過膨張程度であったため胸部単純CTまで施行した。せっかくCTを撮ったのだから、主目的の肺野評価以外に、一緒に評価できる動脈硬化を疑える所見は?

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手引き改訂で診断基準に変化、テストステロン補充療法/日本メンズヘルス医学会

 『加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き2022』が15年ぶりに改訂されるにあたり、9月17、18日にオンライン開催された第22回日本メンズヘルス医学会において、シンポジウム「LOHセッション」が開催された。本稿では検査値の改訂ポイントについて、伊藤 直樹氏(NTT東日本札幌病院泌尿器科 部長/外科診療部長)の発表内容からお伝えする(共催:株式会社コスミックコーポレーション)。 LOH症候群とは、“加齢あるいはストレスに伴うテストステロン値の低下による症候群”である。加齢に起因すると考えられる症状として大きく3つの項目があり、1)性腺機能症状(早期勃起の低下、性欲[リビドー]の低下、勃起障害など)、2)精神症状(うつ傾向、記憶力、集中力の低下、倦怠感・疲労感など)、3)身体症状(筋力の低下、骨塩量の減少、体脂肪の増加など)が挙げられる。見直された診断基準値、海外と違う理由 本手引きの改訂においてもっとも注目すべきは、主診断に用いる検査値が変わることである。2007年版の診断基準値では遊離テストステロン値(8.5pg/mL未満)のみが採用されていたが、2022年改訂版では総テストステロン値(250ng/dL未満)を主診断に用いることになる。その理由として、伊藤氏は「海外でのgold standardであること、総テストステロン値と臨床症状との関連性も認められること、健康男性のmean-2SD・海外ガイドラインも参考にしたこと」を挙げた。また、遊離テストステロン値は補助診断に用いることとし、LOH症候群が対象となり始める30~40歳代のmean-2SD値である7.5pg/mL未満とするに至った。これについて「RIA法の信頼性が問題視されていること、海外の値(欧州泌尿器学会では63.4pg/mLなど)と測定方法が異なり比較できないため」とコメントした。<LOH症候群の新たな診断基準>―――・総テストステロン値250ng/dL未満または・250ng/dL以上で遊離テストステロン値が7.5pg/mL未満※各測定値にかかわらず総合的に判断することが重要で、テストステロン補充の妥当性を考慮し、「妥当性あり」と判断すれば、LOH症候群と診断する●注意点(1)血中テストステロン分泌は午前9時頃にピークを迎え夜にかけて低下するため、午前7~11時の間に空腹で採血すること。(2)2回採血について、日本では保険適用の問題もあるため、海外で推奨されているも本手引きではコメントなし。――― また、測定時に注意すべきは、総テストステロンの4割強は性ホルモン結合グロブリン(SHBG:sex hormone brinding globulin)と強く結合しているため、SHBGに影響を与える疾患・状態にある患者の場合は値が左右される点である。同氏は「SHBGが増加する疾患として、甲状腺機能亢進症、肝硬変、体重減少などがある。一方で低下する疾患には、肥満、甲状腺機能低下症、インスリン抵抗性・糖尿病などがあるため、症状の原因となるようなリスクファクターの探索も重要であるとし、「メタボリックシンドローム(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)から悪性腫瘍などの消耗性疾患、副腎皮質・甲状腺など内分泌疾患、そしてうつ病などの精神疾患などLOH症候群に疑わしい疾患は多岐にわたるため、すぐに断定することは危険」と強調。「自覚症状、他覚的所見を総合的に判断し、ほかの疾患の存在も常に疑うべき」と指摘した。 さらに、診断基準の“測定値にかかわらず総合的に判断する”という点について、「アンドロゲン受容体の活性効率に影響するN末端のCAGリピートがアジア人は長く、活性効率が低い可能性がある。そのため、テストステロン値が基準値以上でも補充療法が有効の可能性がある」と説明した。 測定値とは別に、症状からLOH症候群か否かを定量的に判定する方法の1つとしてAMS(Aging Males' Symptoms)スコア1)が広く用いられている。これについて、同氏は「感度は高いが特異度は低いため、スクリーニングには推奨されない」と話した。一方でホルモン補充療法による臨床効果の監視には有用という報告もあることから、「全体の合計点だけを見るのではなく、それぞれの症状をピックアップし、患者に合わせて対応することが大切」と説明した。 最後に、診断を確定する前にはLOH症候群が原発性か二次性かの確認も必要なことから、「最終的にはLHおよびFSHを測定し二次性性腺機能低下症の有無を確認するために、その原因疾患を把握し、確認して欲しい」と締めくくった。

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動脈硬化の評価(1)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q36

動脈硬化の評価(1)Q36動脈硬化の評価について、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」では以前から形態学的検査法と血管機能検査法が複数あげられている。検査のモダリティ、項目の追加はないが、「超音波検査」の中に評価するべき血管として追加されたのは?

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動脈硬化のリスク因子【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q35

動脈硬化のリスク因子Q35脂質異常症は動脈硬化のリスクの1つとして知られており、その管理について「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」で解説されている。2017年版から2022年版への改訂の際に追加となったリスクは?

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