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日本人高齢者における片頭痛有病率~糸魚川翡翠研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、日本人高齢者の頭痛、片頭痛、慢性連日性頭痛、痛み止めの使い過ぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)の有病率を調査するためアンケート調査を実施し、3ヵ月間の頭痛の有病率とその特徴を明らかにしようと試みた。結果を踏まえ著者らは、日本人高齢者の頭痛有病率は諸外国と比較し、決して高いものではないが、片頭痛による社会経済的損失は重大であり、疾患の理解、適切な治療や予防などが重要であると報告している。また、高齢者は、さまざまな併存疾患に関連する重度な頭痛といった特徴を持つ可能性が示唆された。Journal of Clinical Medicine誌2022年8月11日号掲載の報告。 2019年、3回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の待機時間を利用し、新潟県・糸魚川市の糸魚川総合病院と能生国民健康保険診療所で、65歳以上の高齢者を対象にアンケート調査を実施した。片頭痛および薬物乱用頭痛の定義には、国際頭痛分類第3版を用いた。慢性連日性頭痛は、1ヵ月に15日以上の頭痛発生と定義した。K-means++法を用いて、クラスタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・有効回答者2,858例における有病率は、頭痛11.97%、片頭痛0.91%、慢性連日性頭痛1.57%、薬物乱用頭痛0.70%であった。・鎮痛薬の併用や非オピオイド鎮痛薬の使用頻度が高かった。・予防薬を使用していた片頭痛患者は1例のみであった。・K-means++法を用いて薬物乱用頭痛患者332例を4つのクラスターに分類したところ、各クラスターの頭痛に下記の特徴が認められた。 ●クラスター1:緊張型頭痛様 ●クラスター2:薬物乱用頭痛様 ●クラスター3:脳卒中・脂質異常症・うつ病などを既往に持つ重症な頭痛 ●クラスター4:光恐怖症や音恐怖症を持つ片頭痛様

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エバシェルドの追加など、コロナ薬物治療の考え方14版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏)は、8月30日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第14版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)の追加、治療薬の削除など整理も行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。全体の考え方について【2 使用にあたっての手続き】・チキサゲビマブ/シルガビマブとバリシチニブを追加【3 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】・「図 COVID-19の重症度と治療の考え方」の注釈を改訂。・「2 主な重症化リスク因子」で65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、COPDなどの慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、脳血管疾患、肥満(BMI 30kg/m2以上)、喫煙、固形臓器移植後の免疫不全、妊娠後期など内容を改訂。・「3」で「一般に、重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は推奨しない」と改訂。・「表1 軽症~中等症I」で治療薬の使用を優先させるべきリスク集団を追加。・「4 抗ウイルス薬等の選択」で知見より「高齢者、複数の重症化リスク因子がある患者、ワクチンの未接種者などでは症状が進行しやすいことを踏まえ、患者ごとの評価において、中等症への急速な病状の進行など、非典型的な臨床経過の症例や免疫抑制状態などの重症化リスクが特に高い症例などでは、併用投与または逐次投与の適応を考慮する」と表現を改訂。個々の治療薬について【抗ウイルス薬】・レムデシビル(商品名:ベクルリー)の「投与時の注意点」で「7)2022年1月21日の中央社会保険医療協議会(中医協)において、保険医の指示の下で看護師による在宅・療養施設等の患者へのレムデシビル投与が可能となった」を追加。・モルヌピラビル(同:ラゲブリオ)の「入手方法」で「2022年8月18日に薬価収載されたことから、今後、一般流通の開始およびそれに伴う国購入品と一般流通品の切替えが行われる見込みである」を追加。・ニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッドパック )の「国内外での臨床報告」で「10万9,254例の後方視コホート研究(65歳以上の高齢者ではニルマトレルビルの治療介入により入院の有意なリスク減少を認めた(HR:0.27、95%CI:0.15~0.49)。一方で40~64歳では、有意なリスク減少を認めなかった (HR:0.74、95%CI:0.35~1.58)を追加。また、投与時の注意点に「5)新型コロナウイルスワクチンの被接種者は薬剤開発のための臨床試験で除外されているが、市販後の評価では、高齢者での重症化予防などの有効性が示唆されている」を追加。そのほか、投与時の腎機能の評価の詳細についても追加。・ファビピラビルの項目は削除。【中和抗体薬】・「チキサゲビマブ/シルガビマブ(同:エバシェルド)」を新しく追加。〔国内外での臨床報告〕重症化リスク因子の有無を問わない、軽症~中等症IのCOVID-19外来患者822人を対象としたランダム化比較試験では、発症から7日以内のチキサゲビマブ/シルガビマブの単回筋肉内投与により、プラセボと比較して、COVID-19の重症化または全死亡が50.5%(4.4%対8.9%、p=0.010)有意に減少したなどを記載。〔投与方法〕・発症後通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射。・曝露前の発症抑制通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ150mgを併用により筋肉内注射する。なお、SARS-CoV-2変異株の流行状況などに応じて、それぞれ300mgを併用により筋肉内注射することもできる。〔投与時の注意点〕オミクロン株(BA.4系統及びBA.5系統) については、本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に本剤の投与を検討することなど。〔発症後での投与時の注意点〕1)臨床試験における主な投与経験を踏まえ、COVID-19の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。2)他の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が投与された高流量酸素または人工呼吸管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。3)COVID-19の症状が発現してから速やかに投与すること。4)重症化リスク因子については、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」などにおいて例示されている重症化リスク因子が想定。〔発症抑制での投与時の注意点〕1)COVID-19の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者ではない者に投与すること。COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者における有効性は示されていない。3)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては、COVID-19に対するワクチン接種が推奨されない者または免疫機能低下などによりCOVID-19に対するワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある者とされているが、原発性免疫不全症、B細胞枯渇療法を受けてから1年以内の患者など免疫抑制状態にある者が中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。4)3)の投与対象者については、チキサゲビマブ/シルガビマブを用いた発症抑制を行うことが望ましいと考えらえる。〔入手方法〕本剤は、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、発症抑制としての投与について、対象となる免疫抑制状態にある者が希望した場合には、医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡される。・カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ)とソトロビマブ(同:ゼビュディ)の「投与時の注意点」として「1)オミクロン株(B1.1.529系統/BA.2系統、BA.4系統およびBA.5系統) では本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に投与を検討する」を追記。【免疫調整薬・免疫抑制薬】・シクレソニド(国内未承認薬)の項目を削除。【その他】・その他の抗体治療薬(回復者血漿、高度免疫グロブリン製剤)の項目を削除。・附表1と2の「重症化リスクを有する軽症~中等症IのCOVID-19患者への治療薬の特徴」の内容を更新。・参考文献を52本に整理。 なお、本手引きの詳細は、同学会のサイトなどで入手の上、確認いただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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がん負担の世界最大のリスク因子は喫煙/Lancet

 2019年の世界におけるがん負担に寄与した最大のリスク因子は喫煙であり、また、2010年から2019年にかけて最も増大したのは代謝関連のリスク因子(高BMI、空腹時高血糖)であることが、米国・ワシントン大学のChristopher J. L. Murray氏ら世界疾病負荷研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2019 Cancer Risk Factors Collaboratorsの解析で明らかとなった。Lancet誌2022年8月20日号掲載の報告。GBD 2019を用いリスク因子に起因するがん負担について解析 研究グループは、GBD 2019の比較リスク評価フレームワークを用い、行動、環境・職業および代謝に関連したリスク因子に起因するがん負担について、2019年のがん死亡および障害調整生存年(DALY)を推定するとともに、これらの2010年から2019年までの変化を検討した。 比較リスク評価フレームワークには、23のがん種と世界がん研究基金の基準を用いて特定した34のリスク因子から成る82のがんリスクと転帰の組み合わせが含まれている。リスク因子起因がん死亡数は10年で約20%増加、主なリスク因子は喫煙、飲酒、高BMI 2019年の推定されたすべてのリスク因子に起因する世界のがん死亡数は、男女合わせて445万人(95%不確定区間[UI]:401万~494万)で、全がん死亡の44.4%(95%UI:41.3~48.4)を占めた。男女別では、男性288万人(95%UI:260万~318万)、女性158万人(95%UI:136万~184万)であり、それぞれ男性の全がん死亡の50.6%(95%UI:47.8~54.1)、女性の全がん死亡の36.3%(95%UI:32.5~41.3)であった。 また、推定されたすべてのリスク因子に起因する世界のがんDALYは、男女合わせて1億500万(95%UI:9,500万~1億1,600万)で、全がんDALYの42.0%(95%UI:39.1~45.6)を占めた。 2019年のリスク因子に起因するがん死亡とがんDALYに関して、世界全体でこれらに寄与する主なリスク因子は、男女合わせると、喫煙、飲酒、高BMIの順であった。リスク因子によるがん負担は、地域および社会人口統計学的指標(SDI)によって異なり、低SDI地域では2019年のリスク因子によるがんDALYの3大リスクは喫煙、危険な性行為、飲酒の順であったが、高SDI地域では世界のリスク因子の上位3つと同じであった。 2010~19年に、リスク因子に起因する世界のがん死亡数は20.4%(95%UI:12.6~28.4)、DALYは16.8%(95%UI:8.8~25.0)増加した。これらの増加率が最も高かったリスク因子は、代謝関連リスク(高BMI、空腹時血糖高値)であり、これらに起因する死亡数は34.7%(95%UI:27.9~42.8)、DALYは33.3%(95%UI:25.8~42.0)増加した。 著者は、「世界的にがん負担が増加していることを踏まえると、今回の解析結果は、世界、地域および国レベルでがん負担を減らす努力目標となる重要で修正可能なリスク因子を、政策立案者や研究者が特定するのに役立つと考えられる」とまとめている。

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米国成人の脂質値は改善傾向だがアジア人は変化なし/JAMA

 米国成人において、2007~08年から2017~18年の10年間で脂質値は改善しており、この傾向は非ヒスパニック系アジア人を除くすべての人種・民族のサブグループで一貫していたことが、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul Aggarwal氏らの解析で明らかとなった。脂質高値は、心血管疾患の修正可能なリスク因子であるが、米国成人における過去10年の脂質値および脂質コントロールの傾向や、性別や人種・民族別の差異はほとんど知られていなかった。JAMA誌2022年8月23・30日号掲載の報告。2007~08年から2017~18年のNHANESから約3万3千人について分析 研究グループは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)の2007~08年から2017~18年のデータを用い、米国成人を代表するよう重み付けされた20歳以上の米国成人3万3,040例を対象に、連続横断分析を行った。 主要評価項目は脂質値(総コレステロール、HDL-C、LDL-C、および中性脂肪[TG])、副次評価項目はスタチン治療を受けている成人における脂質コントロール率(総コレステロール200mg/dL以下を達成と定義)であった。 解析対象集団は、平均年齢47.4歳、女性51.4%、非ヒスパニック系黒人12.0%、メキシコ系アメリカ人10.3%、他のヒスパニック系アメリカ人6.4%、非ヒスパニック系白人62.7%、他の人種・民族(非ヒスパニック系アジア人など)8.5%であった。脂質値は10年で改善も、スタチン服用者の脂質コントロール率には変化なし 米国成人の年齢調整総コレステロール値は、2007~08年の197mg/dLから、2017~18年には189mg/dLに有意に改善した(群間差:-8.6mg/dL、95%信頼区間[CI]:-12.2~-4.9mg/dL、傾向のp<0.001)。男女別でも同様の傾向であった。黒人、メキシコ系アメリカ人、他のヒスパニック系アメリカ人および白人では、総コレステロール値の有意な改善を認めたが、アジア人では有意な変化はみられなかった。 スタチン服用者における年齢調整脂質コントロール率は、2007~08年で78.5%、2017~18年で79.5%であり、有意な変化は認められなかった(群間差:1.1%、95%CI:-3.7~5.8、傾向のp=0.27)。この傾向は男女別でも類似していた。人種・民族別では、メキシコ系アメリカ人のみ有意な改善が確認された(2007~08年73.0%、2017~18年86.5%、群間差;13.5%、95%CI:-2.6%~29.6%、傾向のp=0.008)。 2015~18年の年齢調整脂質コントロール率は、男性より女性のほうが有意に低く(オッズ比[OR]:0.54、95%CI:0.40~0.72)、また、白人と比較して黒人(OR:0.66、95%CI:0.47~0.94)ならびに他のヒスパニック系(OR:0.59、95%CI:0.37~0.95)で有意に低かった。

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1日1回投与に改良した高純度EPA製剤「エパデールEMカプセル2g」【下平博士のDIノート】第104回

1日1回投与に改良した高純度EPA製剤「エパデールEMカプセル2g」今回は、高純度EPA製剤「イコサペント酸エチルカプセル2g(商品名:エパデールEMカプセル2g、製造販売元:持田製薬)」を紹介します。本剤は、既存のエパデールカプセルおよびエパデールS(以下、既存薬)の消化管吸収を高めて1日1回投与にした薬剤であり、トリグリセリド(TG)高値を示す脂質異常症患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、高脂血症の適応で、2022年6月20日に承認されました。なお、既存薬は「高脂血症」と「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛および冷感の改善」の適応を有していますが、本剤の適応は「高脂血症」のみです。<用法・用量>イコサペント酸エチルとして、通常、成人には1回2gを1日1回、食直後に経口投与します。TG高値の程度により、1回4gを1日1回まで増量することができます。本剤は抗血小板作用を有するため、抗凝固薬や血小板凝集を抑制する薬剤との併用により、相加的に出血傾向が増大するため注意が必要です。<安全性>国内第III相試験において、副作用の発現頻度は本剤2g/日群で9.8%(6/61例)、本剤4g/日群で8.2%(5/61例)でした。2%以上に認められた副作用は、本剤2g/日群で下痢3.3%(2/61例)、本剤4g/日群で軟便3.3%(2/61例)でした。重大な副作用として、肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、肝臓における過剰な中性脂肪の合成を抑制するとともに、余分な中性脂肪の代謝を促進することで、脂質異常症を改善します。脂質異常を改善することで、動脈硬化性疾患の進行を抑えることが期待できます。2.血が止まりにくくなることがあるので、手術や抜歯の予定がある場合は事前に相談してください。3.空腹時の服用では薬剤の吸収が低下するため、食後すぐに服用してください。4.軟カプセルの中には魚の臭いがする油状の成分が入っているため、噛まずに服用してください。5.脂質異常症の治療の基本は、食事・運動・禁煙などの生活習慣の改善です。本剤の服用中も継続して行うことが大切です。<Shimo's eyes>エパデールEMカプセルは、既存のEPA製剤であるエパデールカプセル、小型軟カプセルのエパデールSを消化管で吸収されやすくした高純度改良版です。既存薬は1日2回または3回の服用が必要ですが、本剤は1日1回の単回投与です。エパデールSと同様にアルミスティック包装となっています。既存薬からの切り替えの場合、既存薬1.8g(エパデールS900を1日2回)が、本剤2g 1日1回に相当するように開発されています。エパデールEMカプセル2gの薬価は113.00円、エパデールS900の薬価は62.7円/包(2包で125.4円)、エパデールS600の薬価は46.5円/包(3包で139.5円)ですので、1日薬価の負担は本剤のほうが少なくなっています。なお、本剤の粒子径(約6mm)は、既存薬のエパデールS(約4mm)と比較してやや大きくなっています。EPAの成分は脂肪酸であり、胆汁の主成分である胆汁酸がないと吸収が低下しますが、本剤は体内で脂質成分が界面活性剤と自己乳化することで吸収性が向上し、1日1回投与が可能になりました。本剤は既存薬に比べて食事の影響を受けにくい製剤ですが、食直後の服用でより吸収が高まるため、本剤も食直後の服用となっています。生活習慣病患者はしばしばアドヒアランスの不良が問題となりますが、本剤は1日1回の単回投与であるため、アドヒアランスの向上が期待できます。とくに併用される機会の多いHMG-CoA還元酵素阻害薬の主な用法が1日1回であることからも、本剤のニーズは高いと考えられ、TG高値を示す脂質異常症患者の選択肢を増やす薬剤として意義があるでしょう。

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スタチン服用の日本人患者で発がんリスクが有意に低下

 スタチン製剤の服用によって、日本人の脂質異常症患者の発がんリスクが低下したことが報告された。東京理科大学の前田絢子氏らが、保険請求データを用いた大規模な人口ベースの後ろ向きコホート研究を行い、スタチン製剤と日本人患者における発がんリスクの関係を調査した。近年の調査において、スタチン製剤が特定のがんの発生率を低下させる可能性が示唆されている。しかし、臨床試験では明らかにされておらず、日本人患者での調査も限定的であった。Cancer prevention research誌オンライン版2022年8月2日掲載。スタチンの発がんリスク低下はとくに消化器がんで顕著 本調査の対象は、2006~2015年に脂質異常症と新たに診断された患者。日本の保険請求データを用い、期間中にスタチン製剤を服用開始した群(服用群)と、年齢・性別・診断年に応じて無作為に抽出した非服用群を比較した。解析対象は各群23,746例で平均追跡期間は約2年、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて評価した。 スタチン製剤と日本人脂質異常患者における発がんリスクの関係を調査した主な結果は以下のとおり。・スタチン服用群では、非服用群と比較して、有意に発がんリスクが低下した(調整ハザード比[aHR]:0.85、95%CI:0.72~0.97)。・サブグループ解析において、スタチン服用群の発がんリスクの低下は、とくに消化器がんで顕著であった(aHR:0.79、95%CI:0.63~0.99)

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コロナ禍で医療資源確保のために国民へのお願い/4学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波の流行拡大が深刻な様相を呈している。発熱外来には連日長蛇の受診者がならび診療予約の電話が鳴りやまない。また、救急搬送は大都市圏で稼働率9割を超え、受け入れ先医療機関の不足や長い待機時間などが大きな問題となっている。 こうした事態を鑑み、日本感染症学会(理事長:四柳 宏)、日本救急医学会(代表理事:坂本 哲也)、日本プライマリ・ケア連合学会(理事長:草場 鉄周)、日本臨床救急医学会(代表理事:溝端 康光)の4学会は連名で「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」を8月2日に急遽発表した。 声明では、COVID-19に罹患したと思われる際の個々人の行動について、軽症で重篤化リスクのない人については、自宅療養を勧めるとともに、救急車を利用する際の指針について示している。COVID-19かなと思ったら?【声明の4つのポイント】1)症状が軽い*場合は、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ、あわてて検査や受診をする必要はありません。自宅療養を続けられます。この場合、新型コロナウイルス専用の特別な治療は行いません。医療機関での治療は、つらい発熱や痛みを和らげる薬が中心になり、こうした薬は薬局などで購入できます。限りある医療資源を有効活用するためにも、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診することは避けてください。 *症状が軽いとは「飲んだり食べたりできる、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い」2)症状が重い**場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続く場合、65歳以上の方や65歳未満でも基礎疾患がある方、妊娠中、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があります。早めにかかりつけ医に相談してください。高熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようでしたら、かかりつけ医や近隣の医療機関へ必ず相談、受診(オンライン診療を含む)してください。 **症状が重いとは「水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしてもおさまらない」3)救急車を呼ぶ必要がある症状は、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがあります。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわないでください。4)救急車の利用の目安については「救急車利用リーフレット(高齢者版、成人版、子供版)」をご活用ください。 判断に迷う場合には、普段からの体調を把握しているかかりつけ医への相談、各種相談窓口(行政などが設置している発熱相談窓口や♯7119などの救急安心センター・救急相談センター、♯8000)などの活用をしてください。7項目で診療集中の弊害を説明 上記の診療を受ける、救急車を利用する前のポイントを踏まえ、解説として7項目のCOVID-19のとくにオミクロン株に関する疾患情報やリスクの高い場合の対応を記している。以下に抜粋して示す。【オミクロン株にかかったときの自然経過】・オミクロン株への曝露があってから平均3日で急性期症状(発熱・喉の痛み・鼻水・咳・全身のだるさ)が出現するが、そのほとんどが2~4日で軽くなること。・COVID-19の検査を受けることは大切だが、検査を受けることができなくてもあわてないで療養(自宅での静養)することが大切。・重症化する人の割合は数千人に1人程度と推定(厚生労働省資料より)。【COVID-19を疑う症状が出た場合】・COVID-19の症状(発熱・のどの痛み・鼻水・咳・全身のだるさなど)が出た場合は、まず仕事や学校を休んで外出を避け、自宅療養を始める。【症状が軽く65歳未満で基礎疾患がない場合、妊娠中でない場合】・症状が軽く(飲んだり食べたりできて、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い)、基礎疾患がない場合や妊娠がない場合は、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診をする必要はない。・COVID-19専用の特別な治療は行わない。つらい発熱や痛みを和らげる薬(アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬)が治療の中心で、このような薬は薬局など(ドラッグストアやインターネット販売も含む)で購入できる。・限りある医療資源を有効活用するためにも、検査を目的とした医療機関の受診は避ける。・市販の医療用抗原検査キットを使い、症状が出た翌日以降に自分で検査することもできるが、症状が出た当日に検査をすると新型コロナウイルスに感染しているのに陰性になる可能性が高いため、翌日以降の検査をお勧めする。【症状が重い、発熱が4日以上、65歳以上、基礎疾患がある場合、妊娠中の場合】・症状が重い(水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしても治まらない)場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続いている場合は、医療機関への受診(オンライン診療を含む)が必要。・たとえ症状が軽くても、65歳以上の方、基礎疾患がある方や妊娠中の方、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があるので、早めにかかりつけ医に相談。・熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようだったら、かかりつけ医や近隣の医療機関に必ず相談、受診(オンライン診療を含む)。・次の主な重症化のリスク因子がある方は受診が必要。〔主な重症化のリスク因子〕65歳以上の高齢者/悪性腫瘍(がん)/慢性呼吸器疾患(COPDなど)/慢性腎臓病/糖尿病/高血圧/脂質異常症/心臓や血管の病気/脳梗塞や脳出血など脳血管の病気/高度肥満(BMIが30以上)/喫煙(ヘビースモーカーの場合)/固形臓器移植後の免疫不全/妊娠後期/免疫抑制・調整薬の使用/HIV感染症(参考:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第8.0版を改変)【医療機関への受診について】・医療機関に受診が必要な場合は、通常診療中の時間帯(平日の日中など)に、かかりつけ医や近所の医療機関に電話相談してから受診。【救急車の利用の目安について】・COVID-19により救急車を呼ぶ必要がある症状としては、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがある。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわない。 以上、国民向けの内容であるが、外来診療などの際に患者さんにお伝えすることで、現在の診療への集中化の緩和につながればと期待する。

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動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版、主な改訂点5つ/日本動脈硬化学会

 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版が5年ぶりに改訂、7月4日に発刊された。本ガイドライン委員長の岡村 智教氏(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学 教授)が5日に開催されたプレスセミナーにおいて動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の変更点を紹介した(主催:日本動脈硬化学会)。 今回の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の改訂でキーワードとなるのが、「トリグリセライド」「アテローム血栓性脳梗塞」「糖尿病」である。これを踏まえて2017年版からの変更点がまとめられている動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の序章(p.11)に目を通すと、改訂点が一目瞭然である。なお、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版のPDFは動脈硬化学会のホームページより誰でもダウンロードできる。<動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の主な改訂点>1)随時(非空腹時)のトリグリセライド(TG)の基準値を設定した。2)脂質管理目標値設定のための動脈硬化性疾患の絶対リスク評価手法として、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患をエンドポイントとした久山町研究のスコアが採用された。3)糖尿病がある場合のLDLコレステロール(LDL-C)の管理目標値について、末梢動脈疾患、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)合併時、または喫煙ありの場合は100mg/dL未満とし、これらを伴わない場合は従前どおり120mg/dL未満とした。4)二次予防の対象として冠動脈疾患に加えてアテローム血栓症脳梗塞も追加し、LDL-Cの目標値は100mg/dL未満とした。さらに二次予防の中で、「急性冠症候群」「家族性高コレステロール血症」「糖尿病」「冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併」の場合は、LDL-Cの管理目標値は70mg/dL未満とした。5)近年の研究成果や臨床現場からの要望を踏まえて、新たに下記の項目を掲載した。 (1)脂質異常症の検査 (2)潜在性動脈硬化(頸動脈超音波検査の内膜中膜複合体や脈波伝播速度、CAVI:Cardio Ankle Vascular Indexなどの現状での意義付) (3)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH) (4)生活習慣の改善に飲酒の項を追加 (5)健康行動倫理に基づく保健指導 (6)慢性腎臓病(CKD)のリスク管理 (7)続発性脂質異常症動脈硬化性疾患予防ガイドライン改訂に至った主な理由 1)について、「TGは食事の摂取後は値が上昇するなど変動が大きい。また空腹時でも非空腹時でも値が高いと将来の冠動脈疾患や脳梗塞の発症や死亡を予測することが国内の疫学調査で示されている。国内の疫学研究の結果およびESC/EASガイドラインとの整合性も考慮して、空腹時採血:150mg/dL以上または随時採血:175mg/dL以上を高TG血症と診断する」とコメントした(参照:BQ5)。 2)については、吹田スコアに代わり今回の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では久山町研究のスコアを採用している。その理由として、同氏は「吹田スコアの場合、研究アウトカムが心筋梗塞を含む冠動脈疾患発症で脳卒中が含まれていなかった。久山町研究のスコアは、虚血性心疾患と、脳梗塞の中でとくにLDL-Cとの関連が強いアテローム血栓性脳梗塞の発症にフォーカスされていた点が大きい」と説明(参照:BQ16)。 3)については、ESC/EASガイドラインでの目標値、国内のEMPATHY試験やJ-DOIT3試験の報告を踏まえ、心血管イベントリスクを有する糖尿病患者の一次予防において、十分な根拠が整っている(参照:FQ24)。 4)については、国内でのアテローム血栓性脳梗塞が増加傾向であり、再発予防が重要になるためである。また二次予防の場合、糖尿病の合併がプラーク退縮の阻害要因となることなどから「これまで厳格なコントロールは合併症などがあるハイリスクの糖尿病のみが対象だったが、今回の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版より糖尿病全般においてLDL-C 70mg/dL未満となった」と解説した。 5)の(7)続発性脂質異常症は新たに追加され(第6章)、他疾患などが原因で起こる続発性なものへの注意喚起として「続発性(二次性)脂質異常症に対しては、原疾患の治療を十分に行う」とし、甲状腺機能低下症など、続発性脂質異常症の鑑別を行わずに、安易にスタチンなどによる脂質異常症の治療を開始すると横紋筋融解症などの重大な有害事象につながることもあるので注意が必要、と記載されている。<続発性脂質異常症の原因>1.甲状腺機能低下症 2.ネフローゼ症候群 3慢性腎臓病(CKD)4.原発性胆汁性胆嚢炎(PBC) 5.閉塞性黄疸 6.糖尿病 7.肥満8.クッシング症候群 9.褐色細胞腫 10.薬剤 11.アルコール多飲 12.喫煙――― このほか同氏は、「LDL-Cのコントロールにおいて飽和脂肪酸の割合を減らすことが重要(参照:FQ3)」「薬物開始後のフォローアップのエビデンスレベルはコンセンサスレベルだが、患者さんの状態を丁寧に見ていくことは重要(参照:BQ21)」などの点を補足した。 2007年版よりタイトルを“診療”から“予防”に変更したように、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版は動脈硬化性疾患の予防に焦点を当てて作成されている。同氏は「すぐに薬物治療を実行するのではなく、高リスク病態や他疾患の有無を見極めることが重要。治療開始基準と診断基準は異なるので、あくまでスクリーニング基準であることは忘れないでほしい」と締めくくった。

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事例003 B001-3 生活習慣病管理の算定【斬らレセプト シーズン3】

解説2022年度の改定では、「B001-3 生活習慣病管理料」(以下「同管理料」)の算定を普及させようと算定要件に大きく4つの変更が加えられました。同管理料の根幹に係わる対象病名「脂質異常症、高血圧症並びに糖尿病」にかかる治療計画の作成とその説明、ならびに患者の同意が必要なことに変更はありません。1)多職種の実施について、医師が作成した治療計画に基づいて提供される患者への指導などは「看護師、薬剤師、管理栄養士等」がそれぞれの専門分野において実施することが可能とされました。例えば、服薬や栄養管理に係る指導や実施状況の把握は、医師自らが行わずに薬剤師や管理栄養士が行っても良いとなりました。「等」には、理学療法士や保健所の職員または他の保険医療機関の職員も含まれますが、算定されていない事例を見受けます。ご留意ください。2)糖尿病または高血圧症の患者について、管理方針を変更した場合にその理由と内容などを診療録に記載しなければならないことに変更はありませんが、その患者数を数えて行っていた定期的な記録と報告は必要なくなりました。3)薬剤料について、患者ごとに大きく異なっている実態が明らかとなったことを理由に、投薬に係る費用が同管理料の包括評価の対象から除かれました。同管理料に見合わず持ち出していた薬剤料が解消されます。旧点数からその分を除く改定となっています。4)情報通信機器を使用した再診時に実施した同管理料は算定できなくなりました。検査料が包括されており、定められた検査値を治療計画に記載することが求められているために「検査等を実施しなければ医学管理として成立しない管理料」と認定されたからです。医療職が患者の居宅に訪問して対面で総合的な治療管理などを行った場合は算定できます。薬剤料の出来高算定と多職種との連携が可能となったことは、医師の負担軽減に寄与しながら、きめの細かい疾患管理が可能となるものと考えられます。

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HER2陰性乳がん術後再発の2例、心機能回復困難なのはどっち?【見落とさない!がんの心毒性】第12回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》類似した患者特性と同種のがん薬物治療を受けたにも関わらず、極めて異なる心不全治療経過をたどったHER2陰性乳がん術後再発の2症例症例1年齢・性別50代・女性既往歴心疾患、糖尿病、脂質異常症なし生活歴喫煙歴なし治療歴/経過HER2陰性乳がん術後で初発手術時の補助化学療法実施はなし。5年間のホルモン療法完遂後。術後9年目に多発他臓器転移、リンパ節に再発。再発乳がんに対してCEF (シクロフォスファミド[Cyclophosphamide]+エピルビシン[Epirubicin]+フルオロウラシル[Fluorouracil])を約半年間かけて計8クール実施(エピルビシン総積算量 800mg/m2)。積算アントラサイクリン量から心毒性を懸念しCEFを終了した。CEF終了時の左室駆出率 (LVEF)70%台と左室機能低下は認めず。パクリタキセル(PAC)+ベバシズマブ治療に移行した約1年半後にLVEFが低下した心不全 (HFrEF) を発症。急性期は肺うっ血を呈し、LVEF 20%台まで左室機能は低下しており各種検査からがん治療関連性心機能障害 (CTRCD)と診断した。HFrEF発症後は急性心不全治療および心保護治療を開始。その後の経過は良好で比較的速やかな経過をたどり、心不全治療開始後約1年の時点でLVEF 60%台とほぼ正常に回復を示した (症例1経過図)。心不全発症後最高BNP値:485 pg/mL、心不全発症後最高トロポニンI(TnI)値:20 ng/mL。※経過中に虚血性心疾患の関与は除外した。症例1経過図画像を拡大する症例2年齢・性別50代・女性既往歴糖尿病、脂質異常症なし生活歴喫煙歴なし治療歴/経過HER2陰性乳がん術後で初発手術時の補助化学療法実施はなし。術後ホルモン療法治療中にリンパ節および他臓器転移での再発を確認。PAC+ベバシズマブ治療を導入。治療後1年4ヵ月でPD判定、CEF治療へ移行した。CEF移行時のLVEFは 70%台と左室機能は維持されていた。CEF治療移行後の約半年後にHFrEF発症 (エピルビシン[EPI]600 mg/m2).HFrEF診断時、LVEF 20%台と左室機能は高度に低下し、BNP 664と上昇。速やかに利尿剤、心保護治療の導入と拡充を開始したがBNPは更に増悪傾向を示し、経過中は一時的にピモベンダン併用も余儀なくされた。その後、BNPおよびトロポニンは徐々に回復傾向を示したが、長期間に渡りLVEFの回復は極めて緩慢で、LVEF 20%前後が長期に渡り遷延し心不全治療導入後の約2年経過後もLVEF 42%程度の回復にとどまった(症例2経過図)。心不全発症後最高BNP値:1014 pg/mL、心不全発症後最高TnI値:96 ng/mL。※経過中に虚血性心疾患の関与は除外した。症例2経過図画像を拡大する2症例の対比表画像を拡大する【問題】類似した患者特性を有し類似した薬物治療を受けた2症例にも関わらず、心不全治療後の心機能回復が極めて異なる転帰をたどった。その理由について、筆者が最も疑っている2つの理由はなにか?講師紹介

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コロナ治療薬の早見表2種(年代別およびリスク因子有無別)

年齢別で使用できるコロナ治療薬ー新型コロナ重症化リスク因子がある人ー・重症化リスク因子とは、65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙、固形臓器移植後の免疫不全、妊娠後期などのこと軽症~中等症薬剤対象者内服点滴ラゲブリオパキロビッドパックロナプリーブゼビュディ(モルヌピラビル)(ニルマトレルビル・リトナビル)(カシリビマブ/イムデビマブ)(ソトロビマブ)発症から5日以内に5日間服用発症から5日以内に服用(1回に2種3錠を5日間服用)薬剤の大きさは約2cm薬の飲み合わせに注意が必要のため「お薬手帳」を持参して服用中のすべての薬を医療者に伝えましょう(とくに高血圧や不整脈治療薬、睡眠薬など)オミクロン株には無効アナフィラキシーや重篤な過敏症を起こす恐れがあるので投与~24時間は観察が必要発症から5~7日を目安に投与オミクロン株のBA.2系統には有効性減弱12歳以上かつ40㎏以上小児妊婦・授乳婦子どもを望む男女発症から7日以内に投与子供を望む男女が服用する場合、服用中と服用後4日間の避妊を推奨※※※65歳未満65歳以上※妊婦:治療上の有益性が危険性を上回る時に服用可、授乳婦:授乳の継続又は中止を検討出典:各添付文書、新型コロナウイルス感染症診療の手引き第7.2版、COVID-19 に対する薬物治療の考え方第13.1版Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.年齢別で使用できるコロナ治療薬ー新型コロナ重症化リスク因子がない人ー・薬剤が使用できる方は、重症度分類が中等症II以上(酸素投与が必要)の場合に限ります軽症※~重症薬剤対象者中等~重症点滴内服/点滴点滴内服ベクルリーステロイド薬アクテムラオルミエント(レムデシビル)(デキサメタゾン)(トシリズマブ)(バリシチニブ)投与目安は軽症者が3日間中等症以上が5日間(最大10日間)重症感染症の適応で使用発症から7日以内に使用。ステロイド薬と併用、人工呼吸器管理・ECMO導入を要する方に入院下で投与入院から3日以内に投与。総投与期間は14日間、レムデシビルと併用肝/腎機能障害、アナフィラキシーなどに注意投与目安は10日間血糖値が高い方、消化性潰瘍リスクがある方は注意が必要結核、B型肝炎の既往、糞線虫症リスクを確認。また、心疾患や消化管穿孔リスクがある方は注意が必要抗凝固薬の投与等による血栓塞栓予防を行う結核・非結核性抗酸菌症やB型肝炎リスクを確認※軽症は適応外使用小児妊婦・授乳婦子どもを望む男女3.5㎏以上※プレドニゾロン40㎎/日に変更※65歳未満65歳以上※妊婦:治療上の有益性が危険性を上回る時に服用可、授乳婦:授乳の継続又は中止を検討出典:各添付文書、新型コロナウイルス感染症診療の手引き第7.2版、COVID-19 に対する薬物治療の考え方第13.1版Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第28回 原因は1つとは限らない【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)検査で異常値をみつけたからといって今回の原因とは限らない。2)検査で異常が認められないからといって異常なしとは限らない。3)症状を説明し得るか、結論付ける前に再考を!【症例】81歳男性。意識障害自宅で反応が乏しいところを仕事から帰宅した息子が発見し救急要請。●受診時のバイタルサイン意識20/JCS血圧148/81mmHg脈拍92回/分(整)呼吸18回/分SpO295%(RA)体温36.1℃瞳孔4/3.5 +/+既往歴認知症、高血圧、脂質異常症、便秘、不眠内服薬ドネペジル塩酸塩、トリクロルメチアジド、アトルバスタチンカルシウム水和物、酸化マグネシウム、ゾルピデム酒石酸塩所見顔面の麻痺ははっきりしないが、左上肢の運動障害あり検査の異常が今回の原因とは限らない採血、心電図、X線、CTなどの検査を行い異常がみつかることは、よくあります。特に高齢者の場合にはその頻度は高く、むしろまったく検査に異常が認められないことの方が多いでしょう。しかし、異常を認めるからといって今回の主訴の要因かというとそんなことはありません。腎機能障害、肝機能障害、貧血、電解質異常、中には急を要する場合もありますが、症状とは関係なく検査の異常が認められることはよくあるものです。そのため、検査結果は常に病歴や身体所見、バイタルサインを考慮した結果の解釈が重要です。以前から数値や所見が変わっていなければ、基本的には今回の症状とは関係ないことが多いですよね。慢性腎臓病患者のCr、Hb、心筋梗塞の既往のある患者の心電図など、けっして正常値でありません。急性の変化か否かが、1つのポイントとなりますので、以前の検査結果と比較することを徹底しましょう。検査で異常が認められないから原因ではないとは限らないコロナ禍となり早2年が経過しました。抗原検査、PCRなど何回施行したか覚えていないほど、皆さんも検査の機会があったと思います。抗原陰性だからコロナではない、PCR陰性だからコロナではない、そんなことないことは皆さんもよく理解していると思います。頭痛患者で頭部CTが陰性だからクモ膜下出血ではない、肺炎疑い患者でX線所見陰性だから肺炎ではない、CRPが陰性だから重篤な病気は否定的、CO中毒疑い患者の一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)が正常値だからCO中毒ではないなど、例を挙げたらきりがありません。皆さんも自身で施行した検査結果で異常の1つや2つ、経験ありますよね?!原因が1つとは限らない今回の症例の原因、皆さんは何だと思いますか? もちろんこれだけでは原因の特定は難しいかもしれませんが、高齢男性の急性経過の意識障害で麻痺もあるとなると脳梗塞や脳出血などの脳卒中が考えやすいと思います。低血糖や大動脈解離、痙攣なども“stroke mimics”の代表であるため考えますが、例えばMRI検査を実施し、画像所見が光っていたらどうでしょうか? MRIで高信号な部分があるのであれば、「原因は脳梗塞で決まり」。それでよいのでしょうか?脳梗塞の病巣から症状が完全に説明できる場合にはOKですが、「この病巣で意識障害来すかな…」「こんな症状でるのかなぁ…」こんなことってありますよね。このような場合には必ず「こんなこともあるのだろう」と思考停止するのではなく、他に症状を説明し得る原因があるのではないかと再考する必要があります。この患者さんの場合には、脳梗塞に加え低栄養状態に伴うビタミン欠乏、ゾルピデム酒石酸塩による薬剤性などの影響も考えられました。ビタミンB1欠乏に伴うウェルニッケ脳症は他疾患に合併することはけっして珍しくありません1)。また、高齢者の場合には「くすりもりすく」と考え、常に薬剤の影響を考える必要があります。きちんと薬は飲んでいるのに…患者さんが訴える症状が、内服している薬剤によるものであると疑うのは、どんなときでしょうか?新規の薬剤が導入され、その後からの症状であれば疑うことは簡単です。また、用法、用量を誤って内服してしまった場合なども、その情報が得られれば薬剤性を疑うのは容易ですよね。意外と見落とされがちなのが、腎機能や肝機能の悪化に伴う薬効の増強や電解質異常などです。フレイルの高齢者は大抵の場合、食事摂取量が減少しています。数日の単位では大きな変化はなくても、数ヵ月の単位でみると体重も減少し、食事だけでなく水分の摂取も減少していることがほとんどです。そのような場合に、「ご飯は食べてますか?」と聞くだけでは不十分で、具体的に「何をどれだけ食べているのか」「数ヵ月、半年前と比較してどの程度食事摂取量や体重が変化したか」を確認するとよいでしょう。「ご飯は食べてます」という本人や家族の返答をそのまま鵜呑みにするのではなく、具体的に確認することをお勧めします。骨粗鬆症に対するビタミンD製剤による高Ca血症、利尿薬内服に伴う脚気心、眠剤など、ありとあらゆる薬の血中濃度が増加することに伴う、さまざまな症状が引き起こされかねません。薬の変更、追加がなくても「くすりもりすく」を常に意識しておきましょう。最後に高齢者は複数の基礎疾患を併せ持ち、多数の薬剤を内服しています。そのような患者が急性疾患に罹患すると検査の異常は複数存在するでしょう。時には検査が優先される場面もあるとは思いますが、常にその変化がいつからのものなのか、症状を説明しうるものなのか、いちいち考え検査結果を解釈するようにしましょう。1)Leon G. Clinicians Who Miss Wernicke Encephalopathy Are Frequently Called Defendants. Toxicology Rounds. Emergency Medicine News. 2019;41:p.14.

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抗精神病薬の治療歴とその後の代謝関連副作用との関係

 抗精神病薬治療によるさまざまな有害事象が報告されているが、重篤な副作用が頻繁に認められるわけではない。中国・Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのYe Yang氏らは、抗精神病薬の治療歴が現在の抗精神病薬誘発性代謝関連副作用と関連しているかを確認するため、検討を行った。BMC Psychiatry誌2022年3月21日号の報告。 抗精神病薬未治療患者115例、代謝関連副作用リスクの低い抗精神病薬による治療歴を有する患者65例、同リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者88例を対象に、ケースコントロール研究を実施した。すべての患者に対し、オランザピン治療を実施した。体重、BMI、血糖値、脂質パラメータ、ベースラインより7%以上の体重増加が認められた患者の割合、脂質異常症の割合を評価した。すべての評価は、ベースライン時、治療開始4週目および6週目に実施した。 主な結果は以下のとおり。・オランザピン治療により、抗精神病薬未治療患者は他の2群と比較し、体重とBMIの有意な増加が観察された(それぞれp<0.05)。・代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、他の2群と比較し、脂質レベルが有意に高かった(それぞれp<0.05)。・抗精神病薬の治療歴と体重増加との間に有意な関連は認められなかった(すべてのp>0.05)。・抗精神病薬による治療歴を有さない患者と比較し、同治療歴を有する患者では、3.37mmol/L-1以上の高LDLコレステロール値が観察された(aOR:1.75、95%CI:1.07~3.52)。・とくに、代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、他の2群と比較し、3.37mmol/L-1以上の高LDLコレステロール値リスクが高かった(aOR:2.18、95%CI:1.03~3.32)。 著者らは「抗精神病薬治療歴、とくに代謝関連副作用リスクの高い抗精神病薬による治療歴を有する患者では、現在使用している抗精神病薬により誘発される代謝関連副作用との関連が示唆された」としている。

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腎交感神経除神経術の長期降圧効果と安全性(解説:冨山博史氏)

概要 既報のSPYRAL HTN-ON MED試験は、試験開始前の少なくとも6週間、安定した用量で1~3種類の降圧薬を服用しても診察室収縮期血圧が150~180mmHgであり、かつ24時間平均収縮期血圧が140~170mmHgの範疇の症例を対象に、無作為、単盲検、Shamコントロール試験として実施された1)。同試験では、術後6ヵ月の腎交感神経除神経術の有意な降圧効果を報告している1)。今回の試験(ON-MED長期試験)は、その後の追跡研究であり、SPYRAL HTN-ON MED試験対象例の試験開始時、術後24ヵ月、36ヵ月の診察室血圧、24時間平均血圧を評価し、腎交感神経除神経術の長期降圧効果と安全性を検証した。 今回のON-MED長期試験では、腎交感神経除神経術実施群では、36ヵ月後に実施された24時間血圧評価では、Shamコントロール群と比較して、午前平均収縮期血圧は11.0mmHg、夜間平均収縮期血圧は11.8mmHgと有意に低値を示した。両群間の降圧薬処方数は平均3であり、有意差は認めなかった。臨床的意義 1.基礎研究では、腎交感神経除神経術後の腎交感神経再生が示されている。この再生は腎交感神経除神経術後長期の降圧作用を減弱させることが懸念されていた。しかし、本ON-MED長期試験では36ヵ月後も腎交感神経除神経術が有意な降圧効果を示すことが示された。また、腎交感神経除神経術後の腎動脈狭窄も確認されなかった。 2.これまでの腎交感神経除神経術の降圧効果を検証した試験の多くは、Shamコントロール群と比較して、術後6ヵ月に収縮期血圧4~8mmHg前後の降圧効果を示した。一方、降圧薬による降圧効果は一般に収縮期血圧10~15mmHgであり、腎交感神経除神経術の降圧効果の有効性の限界が指摘されていた。しかし、本ON-MED長期試験の降圧度は収縮期血圧11mmHgであり、腎交感神経除神経術の長期降圧効果は降圧薬治療に近い有効性を有する可能性が示唆された。試験の限界 1.症例数が80例と比較的少ない。 2.本試験のプロトコールでは、試験期間中の降圧治療の目標は、診察室収縮期血圧で140mmHg未満であった。しかし、ON-MED長期試験における36ヵ月後の診察室収縮期血圧は除神経群で143mmHg、Shamコントロール群で151mmHgであった(論文、表1、図2より推察)。また、両群間の降圧薬処方数は平均3であった。ゆえに、両群とも十分な降圧薬処方が実施されなかった可能性がある。 3.SPYRAL試験では、対照群が降圧薬を服用するON-MED試験1)と、服用しないOFF-MED試験2)が実施されている。今回のON-MED長期試験は、このON-MED試験において腎交感神経除神経術後の長期(36ヵ月)降圧効果が、Shamコントロール群に比して24時間平均収縮期血圧で10mmHg大きいことを示した。しかし、ON-MED試験の術後6ヵ月の降圧はShamコントロール群に比し7.4mmHg低値を示し1)、OFF-MED試験の術後6ヵ月の降圧度の両群の差5mmHgより大きかった2)。上述のごとく、これまでの腎交感神経除神経術の降圧効果を検証した試験の多くは、術後6ヵ月にShamコントロール群と比較して、24時間平均収縮期血圧で5mmHg前後の降圧効果を示し、本ON-MED長期試験の術後6ヵ月の降圧効果より小さい。ゆえに、ON-MED長期試験の結果のみでは、腎交感神経除神経術の長期降圧効果が降圧薬に近い有効性を有するかは結論できない。

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腎デナベーションは有効・安全か:SPYRAL HTN-ON MED試験の3年成績/Lancet

 高周波腎除神経(腎デナベーション)は、偽処置(シャム)と比較し降圧薬の併用を問わず、3年間、臨床的に意味のある持続的な降圧をもたらし、安全性の懸念もなかった。ドイツ・ザールラント大学のFelix Mahfoud氏らが、無作為化シャム対照単盲検概念実証試験「SPYRAL HTN-ON MED試験」の長期追跡結果を報告した。腎デナベーションは、降圧薬服用中の患者において血圧を低下することが示されているが、無作為化試験での長期安全性および有効性に関するデータは不足していた。著者は、「高周波腎デナベーションは、高血圧患者の管理において補助的な治療手段となり得るものである」とまとめている。Lancet誌2022年4月9日号掲載の報告。降圧薬でコントロール不良の高血圧患者、腎デナベーションvs.シャム 研究グループは、米国、ドイツ、日本、英国、オーストラリア、オーストリア、ギリシャの25施設において、20~80歳の血圧コントロール不良の高血圧患者を登録した。適格基準を、1~3種の降圧薬を6週間以上服用している状況下で、診察室収縮期血圧(SBP)150mmHg以上180mmHg未満、診察室拡張期血圧(DBP)90mmHg以上、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)によるSBP平均値が140mmHg以上170mmHg未満の患者とし、腎血管造影後、高周波腎デナベーション群またはシャム群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 患者および血圧評価者は、無作為化12ヵ月後まで盲検下に置かれ、シャム群は12ヵ月後の追跡調査来院後にクロスオーバー可とした。 主要評価項目は、術後6ヵ月時におけるABPMによる24時間平均SBPのベースライン(第2スクリーニング来院)からの変化量の治療群間差で、intention-to-treat解析を行った。長期有効性は、36ヵ月のABPMおよび診察室での血圧測定を使用して評価し、降圧薬の使用についても調査した。また、安全性は36ヵ月後まで評価した。3年後に腎デナベーションで有意に降圧、ベースラインからの変化量の群間差10mmHg 2015年6月22日~2017年6月14日の期間に、登録患者467例のうち適格基準を満たした最初の80例が、腎デナベーション群(38例)またはシャム群(42例)に無作為に割り付けられた。 ABPMによる平均SBPおよびDBPは、腎デナベーション群でベースライン時から有意に低下し、降圧薬の治療強度が同等であるにもかかわらず、24ヵ月および36ヵ月時の血圧の低下はシャム群と比較して有意に大きかった。降圧薬のクラスと用量を考慮した薬剤負荷は、36ヵ月時で腎デナベーション群2.13剤(SD 1.15)、シャム群2.55剤(SD 2.19)であり(p=0.26)、腎デナベーション群で77%(24/31例)、シャム群で93%(25/27例)が36ヵ月時に服薬を継続していた。 36ヵ月時のABPMによる24時間平均SBPのベースラインからの変化量(±SD)は、腎デナベーション群(30例)で-18.7±12.4mmHg、シャム群(32例)で-8.6±14.6mmHgであった(補正後群間差:-10.0mmHg、95%信頼区間[CI]:-16.6~-3.3、p=0.0039)。 また、36ヵ月時の腎デナベーション群とシャム群の群間差は、ABPMによるDBPSで-5.9mmHg(95%CI:-10.1~-1.8、p=0.0055)、朝のSBPで-11.0mmHg(-19.8~-2.1、p=0.016)、夜間のSBPで-11.8mmHg(-19.0~-4.7、p=0.0017)であった。 腎デナベーションに関連した短期または長期的な安全性の問題は確認されなかった。

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糖尿病患者の非HDL-C値低下に有効なスタチンは?/BMJ

 英国・マンチェスター大学のAlexander Hodkinson氏らはネットワークメタ解析の結果、中用量および高用量のロスバスタチン、ならびに高用量のシンバスタチンとアトルバスタチンが、糖尿病患者の非HDLコレステロール(非HDL-C)値を中等度低下させるのに最も有効であることを示した。糖尿病患者における心血管疾患の1次予防および2次予防の基本はLDL-C値の低下であるが、非HDL-C値に対するスタチンの有効性を比較したエビデンスは不足していた。著者は、「主要ターゲットとして非HDL-C値の低下を用いると心血管疾患の予測精度が向上する可能性があることから、今回の結果は、糖尿病患者において非HDL-C値の低下に最も有効なスタチンの種類と強度に関する指針に役立つと考えられる」とまとめている。BMJ誌2022年3月24日号掲載の報告。無作為化比較試験42件のベイジアンネットワークメタ解析 研究グループは、Medline、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびEmbaseを用いて2021年12月1日までに公表された研究を検索し、1型または2型糖尿病の成人患者を対象に、プラセボを含むさまざまな種類と用量のスタチンを比較した無作為化試験を適格研究としてシステマティックレビューとネットワークメタ解析を行った。 主要評価項目は、非HDL-C値の変化とし、総コレステロール値とHDL-C値から算出した。副次評価項目は、LDL-C値および総コレステロール値の変化、主要心血管イベント(非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞、心血管疾患死)、有害事象による中止などである。 ランダム効果モデルを用いたベイジアンネットワークメタ解析により、非HDL-Cに対するスタチン(低用量、中用量、高用量)の治療効果を平均差および95%信用区間(CrI)で評価した。また、サブグループ解析では、主要心血管イベントリスクが高い患者を低リスクまたは中等度リスクの患者と比較した。エビデンスの確実性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-analysis)を用いて評価した。 成人患者計2万193例が参加した無作為化比較試験42件から、1万1,698例がメタ解析に組み込まれた。中・高用量ロスバスタチン、高用量のシンバスタチンとアトルバスタチンが有効 プラセボと比較して非HDL-C値の低下が大きかったのは、ロスバスタチンの高用量(平均差:-2.31mmol/L、95%CrI:-3.39~-1.21)と中用量(-2.27、-3.00~-1.49)、高用量シンバスタチン(-2.26、-2.99~-1.51)、高用量アトルバスタチン(-2.20、-2.69~-1.70)であった。アトルバスタチンとシンバスタチンはいずれの用量においても、また、低用量のプラバスタチンも、同様に非HDL-C値の低下に有効であった。 主要心血管イベントの高リスク患者4,670例においては、高用量アトルバスタチンにより非HDL-C値が最も低下した(-1.98、95%CrI:-4.16~0.26、累積順位曲線下面積64%)。高用量シンバスタチン(-1.93、-2.63~-1.21)ならびに高用量ロスバスタチン(-1.76、-2.37~-1.15)は、LDL-C値の低下に最も有効な治療選択肢であった。 プラセボと比較して、中用量アトルバスタチンで非致死的心筋梗塞の有意な減少が確認された(相対リスク:0.57、95%信頼区間:0.43~0.76、試験数4件)。中止、非致死的脳卒中および心血管死については、有意差は認められなかった。

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末梢動脈疾患ガイドライン、7年ぶりの改訂/日本循環器学会

 日本循環器学会と日本血管外科学会の合同ガイドライン『末梢動脈疾患ガイドライン(2022年改訂版)』が、7年ぶりの改訂となった。2度目の改訂となる今回は、末梢動脈疾患の疾病構造の変化と、それに伴う疾患概念の変遷、新たな診断アルゴリズムや分類法の登場、治療デバイスの進歩、患者背景にある生活習慣病管理やその治療薬の進歩などを踏まえた大幅な改訂となっている。第86回日本循環器学会学術集会(3月11~13日)で、末梢動脈疾患ガイドライン作成の合同研究班班長である東 信良氏(旭川医科大学外科学講座血管外科学分野)が、ガイドライン改訂のポイント、とくに第4章「慢性下肢動脈閉塞(下肢閉塞性動脈硬化症)」について重点的に解説した。末梢動脈疾患ガイドラインでは下肢閉塞性動脈疾患をLEADと区別 末梢動脈疾患ガイドラインで扱う末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease:PAD)は、冠動脈以外の末梢動脈である四肢動脈、頸動脈、腹部内臓動脈、腎動脈、および大動脈の閉塞性疾患を指す。同じくPADと称されている上下肢閉塞性動脈疾患(Peripheral Artery Disease:PAD)との混同を避けるため、末梢動脈疾患ガイドラインでは、下肢閉塞性動脈疾患についてはLEAD、上肢閉塞性動脈疾患についてはUEADと称し、区別している。 末梢動脈疾患ガイドラインは全20章で構成されており、各章・各節の冒頭で、診療の基本となるエッセンスや最も伝えたい概念を「ステートメント」として紹介している。また、Practical Question:PQとして、12個の臨床的話題を取り上げ、実臨床でいまだ明確な方針が示されていない臨床的課題について解説している。 PADの中で最も多くかつ重要な疾患がLEADである。LEADのリスクファクターや背景疾患の管理については、心血管イベントのリスクが高く、動脈硬化の4大因子である高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙の管理が基本となる。末梢動脈疾患ガイドラインでは、とくに脂質異常症について厳しい管理を推奨している。本邦では、腎不全・透析もLEAD発症の独立した危険因子として非常に頻度が高いため、今回の末梢動脈疾患ガイドラインより新たに追加された。LEADの抗血栓療法については、前回のガイドラインに記載されていた抗血小板療法に加え、DOACの登場によって抗凝固療法の項目が新たに追加された。末梢動脈疾患ガイドラインではLEADの症候別アプローチを記載 LEADは、症状や虚血の程度により治療方針が大きく変化する。そのため、末梢動脈疾患ガイドラインでは、無症候性LEAD、間歇性跛行、包括的高度慢性下肢虚血(Chronic Limb-Threatening Ischemia:CLTI)の3つに分類し、診断・治療の症候別アプローチを記載している。【無症候性LEAD】・無症候性LEADは、総じて下肢の予後が良好であるが、潜在的重症下肢虚血が一部含まれるため注意が必要である。下肢動脈病変の予防的血行再建術を行うべきではない(推奨クラスIII Harm)としている。【間歇性跛行】・間歇性跛行を訴える患者には、鑑別診断も兼ねた詳細な問診と身体診察を行う。下肢虚血の程度や間歇性跛行の機序を総合的に判断することが重要になる。病変評価には足関節上腕血圧比(ABI)の測定を行い、安静時のABIに異常を認めない場合は運動後のABI測定も推奨されている。・間歇性跛行の治療について、血行再建の要否は、日常生活で歩行機能の改善を見込めるか、運動を制限する合併疾患(狭心症、心不全、慢性呼吸器障害、筋骨格系の制限や神経障害など)の有無を評価したうえで決定する。保存的治療が優先され、末梢動脈疾患ガイドラインではとくに、運動療法の推奨が詳細に記載されている。・動脈硬化リスクファクターの是正、薬物療法、運動療法の検討を実施していない間歇性跛行患者には血行再建術は推奨されない。しかし、必要であれば次のとおり血行再建術を施行する。大動脈腸骨動脈領域はEVTを第1選択とする。総大腿動脈病変は血栓内膜摘除を第1選択とする。大腿膝窩動脈病変領域は、25cm未満の短~中区域病変はEVT、長区域病変は外科的血行再建を第1選択とする。膝下動脈病変領域では、EVTは推奨されない(推奨クラスIII No benefit)、同様に、人工血管による大腿-下腿動脈バイパスも行うべきではない(推奨クラスIII Harm)としている。【CLTI】・包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)は、下肢虚血、組織欠損、神経障害、感染などの肢切断リスクがあり、治療介入が必要な下肢を総称する概念だ。これまでは、「重症下肢虚血(Critical Limb Ischemia:CLI)」という用語が使われていたが、背景にある生活習慣病、とくに糖尿病や腎不全の増加といった疾病構造の変化から、高度虚血だけでなく、感染等が原因で肢切断になることもありうるため、近年の実臨床を反映したCLTIという用語が使われている。・CLTIの治療方針を決定する際は、全身のリスク評価、WIfI分類での局所評価、解剖学的評価の3点について、PLANコンセプトに基づくアルゴリズムで総合的に検討する。CLTIへの血行再建を施行する際は、全身リスクと創傷範囲の評価が重要だ。血行再建の推奨は次のとおり。総大腿動脈病変は血栓内膜摘除術を第1選択とする。下腿足部動脈病変は、2年以上の生命予後が期待され、使用可能な自家静脈がある場合は、自家静脈バイパスを行うとしている。・末梢動脈疾患ガイドラインの今回の改訂で、創傷治癒、リハビリテーション、大切断、血行再建術後の薬物療法、血行再建術後の予後と二次予防といった項目が新たに追加された。末梢動脈疾患ガイドラインに動脈硬化症以外のさまざまな疾患 末梢動脈疾患ガイドラインの第6~19章には、動脈硬化症以外の原因によるPADについて、診断や治療に関する解説がなされている。東氏は「欧米のガイドラインではあまり記載されていないものも多く含んでおり、PADには動脈硬化症以外のさまざまな病因・疾患が潜んでいることを今一度振り返っていただき、治療法を誤らないためにも、ぜひ参考にしていただきたい」と、末梢動脈疾患ガイドラインの第4章以外の章の重要性についても強調。 PADは、冠動脈疾患や脳血管疾患に比べてはるかに国民の認知度が低く、予防や早期発見が遅れている。そのため、一般市民への啓発を目的として、末梢動脈疾患ガイドラインには第20章「市民・患者への情報提供」が、今回の改訂で新たに設けられた。本章では、とくに生活習慣病に伴うLEADを中心に概説している。 東氏は、今回の末梢動脈疾患ガイドライン改訂の要点として「主軸は欧米のガイドラインと呼応するように改訂したが、本邦のエビデンスをより多く取り入れ、実情に合う治療方針を目指した。本ガイドラインの英語版も作成中で、とくに民族性や文化が似ているアジア諸国の診断に役立つことを期待している」と発表を締めくくった。

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過去のものとは言わせない~SU薬の底力~【令和時代の糖尿病診療】第6回

第6回 過去のものとは言わせない~SU薬の底力~最近、新薬に押されてめっきりと処方数が減ったSU薬。低血糖を来しやすい、血糖変動が大きくなるなど罵詈雑言を並べ立てられ、以前はあれほど活躍していたのにもかかわらず、いまや悪者扱いされている。私が研修医のころは、経口薬といえばSU薬(BG薬はあったもののほとんど使われなかった)、注射剤といえばインスリン(それも速効型と中間型の2種類しかない)、加えて経口薬とインスリンの併用などはご法度だった時代である。同じような時代を生きてきた先生方にこのコラムを読んでいただけるか不安だが、今回はSU薬をテーマに熟年パワーを披露してみたい。最近の若手医師はこの薬剤をほとんど使用しなくなり、臨床的な手応えを知らないケースも多いだろう。ぜひ、つまらない記事と思わずに読んでいただきたい。もしかしたら考え方が変わるかもしれない。SU薬は、スルホンアミド系抗菌薬を研究していた際に、実験動物が低血糖を示したことで発見されたというユニークな経緯を持つ。1957年に誕生し、第一~三世代に分けられ、現在使用されているのは第二世代のグリベンクラミドとグリクラジド、第三世代のグリメピリドである。血糖非依存性のインスリン分泌促進薬で、作用機序は膵臓のβ細胞にあるSU受容体と結合してATP依存性K+チャネルを遮断し、細胞膜に脱分極を起こして電位依存性Ca2+チャネルを開口させ、細胞内Ca2+濃度を上昇させてインスリン分泌を促進する。血糖降下作用は強力だが、DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬と違い、血糖非依存性のため低血糖には注意が必要で、日本糖尿病学会の治療ガイドには、使用上の注意として(1)高齢者では低血糖のリスクが高いため少量から投与を開始する、(2)腎機能や肝機能障害の進行した患者では低血糖の危険性が増大する、と記載されている。この2点に気を付けていただければ、コストパフォーマンスが最も良好な薬剤かと思われる。まずはこの一例を見ていただきたい。75歳男性。罹病歴29年の2型糖尿病で、併存疾患は高血圧、脂質異常症、高尿酸血症および肺非結核性抗酸菌症。三大合併症は認めていない。α-GI薬から開始し、その後グリニド薬に変更したが、14年前からSU薬+α-GI(グリメピリド1mg+ボグリボース0.9mg/日)に変更。体重も大きな増減なく標準体重を維持し、HbA1cは6%台前半で低血糖症状もなく、経過は良好であった。そこで主治医は、朝食後2時間値70~80mg/dLが時折見られることから無自覚低血糖の可能性も加味し、後期高齢者になったのを機にグリメピリドを1mgから0.5mgに減量したところ、HbA1cがなんと1%も悪化してしまった。症例:血糖コントロール(HbA1c)および体重の推移この患者には肺病変があるのでもともと積極的な運動はできず、HbA1cの季節性変動もない。また、食事量も変わりなく体重変化もないため、SU薬の減量がもっともらしい原因として考えられた。よって、慌てて元の量に戻したケースである。このような症例に出くわすことは、同世代の先生方には十分理解してもらえるだろう。いわゆる「由緒正しき日本人糖尿病」で、非肥満のインスリン分泌が少し低い患者である。これを読んでも、あえてSU薬を使う必要があるのかという反論もあろう。新しい経口糖尿病治療薬は、血糖降下作用のみならず大血管障害などに対し少なくとも非劣性であることが必要だが、最近の薬剤はむしろ大血管障害や腎症に対しても優越性を持つ薬剤が出てきているではないか。さらには、血糖依存性で低血糖が起こりにくく、高齢者にも使用しやすい。確かにそのとおりなのだが、エビデンスでいうとSU薬も負けてはいないのだ。次に説明する。最近の報告も踏まえたSU薬のエビデンス手前みそにはなるが、まずはわれわれの報告1)から紹介させていただく。2型糖尿病患者における経口血糖降下薬の左室心筋重量への影響画像を拡大するネットワークメタ解析を用いて、2型糖尿病患者における左室拡張能を左室心筋重量(LVM)に対する血糖降下薬の効果で評価した結果、SU薬グリクラジドはプラセボと比較してLVMを有意に低下させた唯一の薬剤だった(なお、この時SGLT2阻害薬は文献不足により解析対象外)。左室拡張能の関連因子として、酸化ストレス、炎症性サイトカイン、脂肪毒性、インスリン抵抗性、凝固因子などが挙げられるが、なかでも線溶系活性を制御する凝固因子PAI-1(Plasminogen Activator Inhibitor-1)の血中濃度上昇は、血栓生成の促進、心筋線維化、心筋肥大、動脈硬化の促進および心血管疾患の発症と関連し、2型糖尿病患者では易血栓傾向に傾いていることが知られている。このPAI-1に着目し、2型糖尿病患者におけるSU薬の血中PAI-1濃度への影響をネットワークメタ解析で比較検討したところ、グリクラジドはほかのSU薬に比して血中PAI-1濃度を低下させた2)。これは、ADVANCE研究においてグリクラジドが投与された全治療強化群では心血管疾患の発症が少なかったことや、ACCORD研究においてグリクラジド以外の薬剤が投与された治療強化群での心血管疾患発症抑制効果は見られなかったことなど、大規模試験の結果でも裏付けられる。また、Talip E. Eroglu氏らのReal-Worldデータでは、SU薬単剤またはメトホルミンとの併用療法はメトホルミン単独療法に比べて突然死が少なく、さらにグリメピリドよりグリクラジドのほうが少ないという報告3)や、Tina K. Schramm氏らのnationwide studyでは、SU薬単剤はメトホルミンと比較して死亡リスクや心血管リスクを増加させるが、グリクラジドはほかのSU薬より少ないという報告4)もある。過去のものとは言わせない~SU薬の底力~以上より、SU薬のドラッグエフェクトによる違いについても注目すべきだろう。SU薬は血糖降下作用が強力で安価なため、世界各国では2番目の治療薬として少量から用いられており、わが国でも、やせ型の2型糖尿病患者の2~3剤目として専門医に限らず多く処方されている。結論として、SU薬の使用時は単剤で用いるよりは併用するほうが望ましく、少量で使用することにより安全で確実な効果が発揮できる薬剤だと理解できたかと思う。また、私見ではあるが、高齢者糖尿病が激増している中で、本来ならインスリンが望ましいが、手技的な問題や家庭状況により導入が難しい例、あるいは厳格なコントロールまでは必要ないインスリン分泌の少ない例などは良い適応かと考える。おまけに、とても安価である。決してお払い箱の薬剤ではないことも付け加えさせていただく!1)Ida S, et al. Cardiovasc Diabetol. 2018;17:129.2)Ida S, et al. Journal of Diabetes Research & Clinical Metabolism. 2018;7:1. doi:10.7243/2050-0866-7-1.3)Eroglu TE, et al. Br J Clin Pharmacol. 2021;87:3588-3598.4)Schramm TK, et al. Eur Heart J. 2011;32:1900-1908.

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心毒性リスク、どんな薬剤に注意している?―アンケート結果(中編)【見落とさない!がんの心毒性】第10回

今回は、腫瘍科医の皆さまへ心毒性に関し注意している(困っている)薬剤について、がん種別にご紹介いたします。しかし、腫瘍科医の皆さま以上にお困りなのは循環器科医の皆さまではないでしょうか。日々進歩し増加する抗がん剤において、それぞれ異なる機序により出現する心毒性へ対応するための情報を集めて整理することは、循環器科医にとって最も頭の痛い問題の一つとなっているからです。さらに、最近のトピックとして臓器横断的な治療薬の登場が挙げられます。これらの心毒性へ対応するためには、ゲノム関連も含め複数の関連する科の協力と参加が必要となっています(こちらは、次回[後編]でご紹介する予定です)。CareNet.comにて行ったアンケートの結果画像を拡大する(表1)上記を基に向井氏が作成画像を拡大する心毒性は、多くのがん治療、そしてほとんどの抗がん剤で出現すると言っても過言ではありません。(表2)に主ながん治療に伴う循環器合併症[心毒性]を示します。(表2)主ながん治療に伴う循環器合併症[心毒性]画像を拡大するこの結果では、読者の皆さまが注意している薬剤として、“細胞障害性抗がん剤”が第一に挙げられています。使用頻度から言ってもやはりという結果で、前編のアントラサイクリン系抗がん剤に加え、シクロフォスファミド、タキサン系、プラチナ製剤などは重要な薬剤ですが、これらの心毒性のエビデンスはすでに確立しており、多くのガイドラインにも記載されています。ところが、実臨床での対応は決して十分とは言えない状況のようです。次に、分子標的薬、多標的チロシンキナーゼ阻害薬による頻度が高くなっています。第4回VEGFR -TKIの心毒性(草場 仁志氏・森山 祥平氏)で解説した血管新生阻害薬が心毒性の中心的存在となっています。血管新生阻害薬の心毒性には、用量依存性と時間依存性が認められており、一旦出現すると急速に進展し重篤化することが多いため、その対応には、腫瘍科医のみならず循環器科医の早期からの参加が必要と考えられています。(表3)血管新生阻害薬の投与用量/時間による血管毒性の変化画像を拡大するこのように分子標的薬は、細胞障害性抗がん剤による従来の化学療法とは大きく異なる心毒性、とくに血管毒性、腎毒性などが出現しやすく、腫瘍科医の皆さまが手強い合併症を多く経験する傾向にあるのが特徴です。また、近年開発された分子標的薬において不整脈毒性を認める薬剤が増加しています。中でもQT延長に伴う致死的不整脈や心房細動などの重篤な不整脈の管理には循環器科医の協力が必須となっています。しかしながら、これらの新しい標的に対する薬剤での心毒性発症の機序には不明な点が多く、その対応に苦慮することが少なくありません。さらに、循環器疾患に大きく影響する糖尿病などを含む代謝毒性は、免疫チェックポイント阻害薬の内分泌系irAEに加えmTOR阻害薬やPI3K阻害薬など代謝系に作用する抗がん剤を投与する際に、脂質異常症などと合わせて注意が必要です。その他、第6回新治療が心臓にやさしいとは限らない(大倉 裕二氏)で解説したように、がん治療では多種多様の薬剤が併用投与されており、支持療法に用いられる薬剤も含めそれぞれ心毒性が存在しており、添付文書に記載してある「警告」に対しては十分な注意が必要です。QT時間は心電図により容易に反復した計測が可能であり、古くから心毒性の有無を判断する指標として、CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events、有害事象共通用語規準)にも用いられてまいりました。しかし、実臨床で実際のQT時間延長の意義、QTc時間(心拍数補正)などについて、不安を抱えていらっしゃる腫瘍科医はどのくらいおられるでしょうか。この点を正しく理解いただき不安を払拭してもらうためにも、ぜひとも第二部(症例編)で取り上げ解説したいと思います。講師紹介

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