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市販類似薬の保険外しは中間報告で見送りへ【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第38回

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の改正法の公布や、2020年度の診療報酬改定に向けた議論によって薬局や薬剤師の業務や役割が注目されている中、また1つ薬局に大きな変化が起きようとしていました。政府の全世代型社会保障検討会議(議長=安倍晋三首相)は19日にまとめた中間報告で、論点の1つだったOTC類似薬の保険上の取り扱いについて、具体的な記載を見送った。これまでの会議で活発に議論されていないことも影響したようだが、政府関係者によると検討課題として消えたわけではないという。来年夏の最終報告に向けた議論でテーマとして浮上するのか、もしくは主要な議論の場が別になるのか、本格的な対応は来年以降に持ち越しとなった。(2019年12月20日付 日刊薬業)この市販類似薬を保険適用から除外する議論を、以前も耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。2年に1度行われる診療報酬改定の議論の際に、主に保険者側からの要望によっていつも議題に挙げられていたものの、さまざまな理由により保険除外が実現することはありませんでした。そして、また報酬改定の足音が聞こえてきた2019年8月に、健康保険組合連合会(健保連)が花粉症の市販薬を保険適用から除外することと自己負担率を引き上げることを厚生労働省に提言し、再び議論が巻き起こりました。健保連は全国の健康保険組合の連合組織で保険者の筆頭といえる立場ですから、医療費増大に最も厳しい立場として提言したと考えられます。政府としても、医療費が2018年度の39兆円から2025年度には47兆円超になると推計していたり、最近では非常に高薬価な薬剤も登場していたりしますので、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」という考え方の「大きなリスク」を支えるためには、もう「小さなリスク」は切り捨てなければならない切羽詰まった状態であるのでしょう。処方箋が減り売り上げは下がるが、新たな客層が薬局へでは、市販類似薬が本当に保険除外となった場合、どのようなことが起こるのでしょうか。たとえば、患者さんが「ちょっと風邪ひいたかな?」と思って気軽に病院を受診した場合、医師が市販の風邪薬で対処できると診断すると、医療用の総合感冒薬を全額自己負担で処方してもらうか、もしくは薬をもらわずに自ら市販の風邪薬を買うか選択することになると考えられます。保険適用除外の市販類似薬は一般メディアでも広く報道されると思うので、患者さんは自分や家族が軽症と判断すれば受診を控えるかもしれません。そして、この状態がしばらく続くと、市販の風邪薬で治療できた経験がある人が増え、「風邪をひいたら市販の風邪薬」と認識し、さらに風邪での受診が減る…ということは想像に難くないでしょう。もしそうなると、処方箋枚数が減るため、薬局の売り上げは下がると予想されます。また、市販薬独特の成分などもあるため、販売対応の面でも新たな取り組みが必要になるかもしれません。いずれにしても、処方箋調剤をメインに行ってきた薬局や薬剤師は危機感を募らせているのではないでしょうか。しかし、見方を変えれば、これまで慢性疾患などで定期的に診察を受けていた患者さん以外でも薬局に来る機会が増えるかもしれませんので、薬局や薬剤師が信頼を得る大きなチャンスだと捉えることもできそうです。12月19日の中間報告では、OTC類似薬の保険適用について具体的な記載は見送られましたが、来年夏の最終報告まで結論はわかりません。議論が継続される場合、医師側は必ず反対の考えを示すでしょう。「医師以外の誰が判断し、適切に対応できるのか」という主張に、患者さんと接して市販薬を販売する薬剤師側は何か異論、反論、提案するのでしょうか。もし保険除外の実現が政府や保険者の本懐で避けられないのであれば、いざというときに問題が生じないように、普段から薬剤師が市販薬の販売に関与している必要があるでしょう。今後の議論から目が離せません。

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インフルエンザ予防の新知見、養命酒の含有成分が有効か

 クロモジエキスを配合した、あめの摂取によるインフルエンザ予防効果が示唆された―。養命酒製造株式会社(以下、養命酒)と愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センターの共同研究グループは、2017/2018シーズンに実施した「クロモジエキス配合あめ」のインフルエンザ予防効果に関する二重盲検試験を実施。風邪症状(発熱、喉・鼻症状)の有無や有症日数についても同時に解析を行った結果、クロモジエキス配合あめ摂取群がプラセボあめ摂取群と比較して、インフルエンザ感染患者の抑制ならびに風邪症状の有症期間を有意に短縮した。対象者は同大学で勤務し、インフルエンザワクチン接種済みの看護師の男女134名で、1日3回、12週間にわたりクロモジエキス67mgを配合したあめ摂取群とプラセボあめ群に割り付けられていた。この報告はGlycative Stress Research誌オンライン版2019年9月30日号1)に掲載された。 また、今年9月20日には、養命酒と信州大学農学部の共同研究グループがクロモジエキスのインフルエンザウイルス増殖抑制効果の長時間持続に関する可能性を示唆し、「クロモジ熱水抽出物の持続的なインフルエンザウイルス増殖抑制効果」に関する論文を、薬理と治療(JPT)誌2019年8月号で発表した。2) このような論文報告を受け、2019年11月11日、養命酒がメディアセミナー「国産ハーブ『クロモジ』の機能性研究におけるインフルエンザ予防の新たな可能性」を開催。伊賀瀬 道也氏(愛媛大学医学部附属病院 抗加齢・予防医療センター長)が「クロモジエキスのインフルエンザ・風邪予防に関するヒト試験について」、河原 岳志氏(信州大学学術研究院農学系 准教授)が「クロモジエキスの持続的な抗ウイルス活性~3回チャージで19時間キープ~」について講演し、報告研究の詳細を語った。クロモジとは… クロモジ(黒文字、漢方名:烏樟[うしょう])は、日本の産地に自生するクスノキ科の落葉低木である。クロモジから得られる精油はリラックス作用が期待されるリナロールを主成分とし、非常に良い香りがあることから、古くから楊枝や香木などに使用されてきた。また、耐久性もあるため、桂離宮の垣根や天皇の即位式後の大嘗祭でも使用された。 これまではクロモジをそのままで利用することが多かったが、近年では加工抽出される精油やアロマウォーターの活用が広がっている。今回の研究では、クロモジを煮出して濃縮、乾燥させて作られるエキス剤が用いられた。このように用途の広がるクロモジだが、近年ではさまざまな機能性研究がなされており、今回は抗ウイルス作用に着目した研究が行われた。食後のクロモジ摂取でインフルエンザの予防、症状緩和 現時点でクロモジの作用機序は解明されていないが、ノロウイルスやロタウイルスの代替ウイルス(ネコカリシウイルス)、日本脳炎ウイルスなどの細胞増殖抑制について報告されている。これを踏まえて、伊賀瀬氏は「in vitroの実験ではインフルエンザウイルスの増殖抑制が達成されており、今回の臨床試験でも同様の結果が得られた。風邪症状の有症期間の短縮については、風邪に感染した後でもクロモジエキス配合あめを摂取することで予後が良好になったのではないか」と推測している。 クロモジは全国各地でお茶として販売されているが、本研究ではあめを利用している。その理由として、同氏は「インフルエンザウイルスは主に上気道で感染して増殖する。抗インフルエンザ効果が長期間発揮するには成分が長く滞留することが必要であり、あめならば咽頭から喉頭部分に滞留するため予防が可能と考えた」と述べた。加えて、「ただし、一般的な予防法(流行前のワクチン摂取、外出後の手洗いなど)を行いながらの摂取が前提」と、注意事項も伝えた。クロモジエキス、1日3回摂取でインフルエンザウイルスの抑制効果アップ 河原氏らは前述の伊賀瀬氏の研究報告を受け、培養細胞を利用したクロモジエキスによるインフルエンザウイルスの増殖抑制タイミングと、その効果の持続性について検証した。その結果、クロモジエキスを細胞培養液から取り除いた24時間後にウイルス感染させても、ウイルス増殖指標の抑制が確認できた。また、本研究では細胞にクロモジエキスを8分間処理して5時間後にウイルス感染させても効果が持続し、さらに、繰り返しクロモジエキス処理を行うことで抑制効果が高まることを実証した2)。これらの結果を踏まえ、同氏は「クロモジエキスはウイルス感染に対して予防的な働きをする」と述べ、今後の作用メカニズムなどの詳細解明について意気込んだ。

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第7回 今またOTC薬なわけ【噂の狭研ラヂオ】

動画解説医師の働き方改革に伴うタスクシフトで、風邪ぐらいは薬剤師が診るようになる?そんな噂があります。その時カギになるのはOTC薬です。選んで販売するだけでなく、患者の服用後のフォローや受診勧奨が重要になります。「だめなら病院へ行ってください」は本当の受診勧奨ではありません!

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患者が抗菌薬を飲み切らない3つの理由【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第35回

2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が発表されてから、抗菌薬の処方や服薬についてさまざまな取り組みが行われてきました。医師と話をしたり、処方箋を受け取ったりするなかで、確かに抗菌薬の処方数が減ったという実感があります。医師や薬剤師の間では「抗菌薬は大部分の風邪に効かない」「処方された抗菌薬はすべて飲み切らなくてはいけない」は常識ですが、一般の方の意識はどうなのでしょうか。内閣府が行った世論調査でその実態が明らかになりました。内閣府は10月11日、薬が効かない薬剤耐性の感染症に関する世論調査を発表した。抗生物質を処方された際に医師や薬剤師の指示通り飲まないことがあると回答した人は13%だった。「途中で治ったらそれ以上必要と思わない」が理由として最多(52.3%)だった。指示を常に意識して服用している人は82%だった。薬剤耐性について知っているかを尋ねたところ「知っている」と答えた人は49.9%だった。「知らない」との回答は48.7%で拮抗した。(2019年10月11日付 日本経済新聞)この内閣府の調査は、2019年8月~9月に18歳以上の3,000人を個別面接して行われました。有効回答は1,667人でした。薬が効かない薬剤耐性の感染症に対する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とすることが目的です。この調査の結果、抗菌薬が処方された場合に医師や薬剤師の指示を常に守って服用している人は82%でした。「意外と多いな」と思ったのは私だけではないでしょう。一方で、指示どおりに抗菌薬を飲まないことがある人は13%でした。この13%の人たちはどのような認識なのでしょうか。医師や薬剤師の指示どおりに飲めないことがあるのはなぜか、という問いでは以下のような結果となりました。途中で治ったらそれ以上必要と思わないから  52.3%薬を飲むのは最低限にしたいから  35.6%指示どおり飲むのを忘れてしまうから  34.7%この結果から、「薬は嫌い、最低限にしたい」「回復したら薬を中止したくなる」という心理が読み取れますので、服薬指導ではこの点を理解したうえで働きかけをするとよいと思います。たとえば、一辺倒に「最後まで飲んで」と正論を伝えるのではなく、「治ったらお薬を中止したくなるし、お薬は最低限にしたいと思われる方も多いんですよね」などと、よくある不安について話をして共感を得てから、必要なことに絞ってお伝えしてはいかがでしょうか。薬剤耐性の意味まで知っている人は少数派「薬剤耐性」という言葉については、知っている人は49.9%、知らない人は48.7%と真っ二つに分かれる結果でした。ただし、知っている人の中には「言葉だけ知っている人」も30%ほど含まれているので、言葉を知っていてかつ内容まできちんと理解している人はかなり少数派です。「薬剤耐性」という言葉は、私がITや金融など他業界の専門用語を難しいと思うように、一般の人には難しいのだと思います。「菌に抗菌薬が効かなくなる」「抗菌薬が効かない菌が体の中で増える」「それが日本だけでなく世界で起こっている」など、身近なことに感じてもらえるよう、少しでもわかりやすい言葉でお伝えできるとよいでしょう。2018年度の報酬改定では、抗菌薬処方を減らして適正使用を推進するために「抗菌薬適正使用支援加算」と「小児抗菌薬適正使用支援加算」が新設されました。2020年度の報酬改定でも新たな取り組みが評価されるかもしれません。一般の方の薬剤耐性の認識レベルも踏まえて、もうひと踏ん張りして対応を考えることが必要だと思います。

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第31回 先入観に負けずに心電図を読め!~非典型的STEMIへの挑戦~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第31回:先入観に負けずに心電図を読め!~非典型的STEMIへの挑戦~連載をはじめた当初、“2週に1回”の連載タイミングで、心電図の話題をいつまで続けられるかなぁ?…正直そう思っていましたが、気づけば前回で30回の“壁”を越えました。心電図って、本当に話題が尽きないんです(笑)。今回は、一見“なんてことない”状況が心電図と真正面から向かい合うことで一変する…そんな共体験をDr.ヒロとしましょう!症例提示89歳、女性。高血圧などで通院中。20XX年6月末、食事や入浴も平素と変わりなく、22時頃に就寝した。深夜1:30に覚醒し、強い悪心を訴え数回嘔吐した。下痢なし。嘔吐後、再び床に着くも喉元のつかえ感と悪心がおさまらず、早朝5:00に救急要請した(病着5:20)。前日の晩は家族と自宅でお好み焼きやキムチ、チャンジャを食べたが、同居家族に同様の症状の者はいない。来院時バイタルサイン:意識清明、顔色不良、体温36.2℃、血圧107/38mmHg、脈拍50~80拍/分・不整、酸素飽和度98%。来院時心電図を示す(図1)。(図1)救急外来時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として正しくないものを2つ選べ。1)心室内伝導障害2)ST低下3)ST上昇4)低電位(肢誘導)5)第1度房室ブロック解答はこちら1)、5)解説はこちら今回の症例は、悪心と嘔吐を主訴にやって来た高齢女性です。救急外来では“よくある状況”で、「感染性胃腸炎」や「食中毒」と判断してもおかしくない病歴かもしれません。でも、問題は心電図の読みです(笑)。救急外来の“ルーチン”か、はたまた「吐いた後にも喉のつかえ感が残る」という訴えがあったためか、いずれにせよ記録した以上はきちんと読む-これを徹底してください。もちろん「系統的判読」(第1回)を用いてね。1)×:「心室内伝導障害」(IVCD*1)とは「脚ブロック」をはじめ、QRS幅が幅広(wide)となる波形異常の総称です。後述するST-T部分が紛らわしいですが、今回はQRS幅としては正常(narrow)です。2)○:ST部分のチェックは、基線(T-P/T-QRS/Q-Qライン)とJ点(QRS波の切れ目)の比較でしたね。肢誘導ではI、aVL、そして胸部誘導ではV1~V5で1mm以上の「ST低下」が見られます。目を“ジグザグ運動”させることができたら、異常を漏れなく抽出できるはずです(第14回)。ちなみに自動診断では誘導が正しく拾い上げられていないことにも注目してください。3)○:この心電図では、広汎な誘導で「ST低下」が目立ちますが、ニサンエフ(II、III、aVF)では「ST上昇」が見られます。これも見逃してはなりません。4)○:「低電位(差)」は肢誘導と胸部誘導とで診断基準が異なります*2。「すべての肢誘導で振幅≦0.5mV」これが肢誘導の基準です。QRS波が5mm四方の太枠マスにすっぽり入れば該当し、今回は満たしています。5)×:これは、ボクの語呂合わせでは“バランスよし!”の部分に該当します。「PR(Q)間隔」とはP波とQRS波の“つかず離れず”の適度な距離感、これが“バランス”と表記した意味になります。上限値は200ms(0.2秒)ですが、「第1度房室ブロック」と診断するのは240ms(0.24秒)以上、すなわち小目盛り6個以上で、とボクは推奨しています。ただし、「P:QRS=1:1」である必要があり、普通、R-R間隔は整ですので、今回は該当しません。詳細は次問で解説します。*1:Intraventricular Conduction Disturbance*2:胸部誘導では2倍の1.0mV(1cm)がカットオフ値だが、肢誘導よりも圧倒的に少ない。【問題2】自動診断では「心房細動」となっている。これは正しいか?解答はこちら正しくない解説はこちらまた出た! Dr.ヒロの“自動診断いじり(笑)最近の心電計の診断精度は上がっているんですよ。ただ、時に機械は間違います。そんな時に信じられるのはただ一つ。そう、自分、人間の目です。“目立つ所見だけ言えてもダメ”心電図(図1)を見て目に飛び込んでくる華々しい「ST変化」…これだけに気をとられて、「調律」が何かを意識できなかった人はいますか? それじゃ、帽子をかぶって上着を着て、ズボンもはかずに外出するようなもの(下品な例えでスイマセン)。目立つものだけ指摘して、ほかの心電図所見を見落とすということは、それくらい“不十分”なことなんです。“レーサー(R3)・チェック”を活用すれば不整脈のスクリーニングにもなるんです*3。*3:1)R-R間隔:整、2)心拍数:50~100/分、3)洞調律のいずれか1つでも満たさなければ、その心電図には「不整脈」があると認識するのだった。R-R間隔は不整、心拍数は新・検脈法で60/分(第29回)。そして残りは“イチニエフの法則”ですね(第2回)。P波に注目です。QRS波ちょっと手前の“定位置”にP波がいない…?P波が「ある」ように見える部分と「ない」部分が…?「PR(Q)間隔」も伸びたり縮んだりしている…?イチニエフ…と見ていく過程で、こう感じた人は少なくないのではと思います。こういう時、まず当たりをつけるのに適した誘導はV1誘導です。右房に正対する位置で、距離的にも前胸壁で一番近くP波が見やすいです。さらに、この特徴に加え、二相性(陽性-陰性)のことが多く波形的にも目を引きやすいのもオススメな理由です。“P波探し”は不整脈の解析の肝であり、ちょっと慣れたら、次のようにビシッと指摘できるでしょう(図2)。(図2)V1誘導のみ抽出画像を拡大する大事なことですので、ぜひ拙著などでご確認ください(笑)。P波がコンスタントにある時点で「心房細動」ではないですよね? 実は、P波の間隔はほぼ一定で、1個目や5個目で「P-QRS」の順番が途切れており、これだけで「第2度房室ブロック」の「ウェンケバッハ(Wenckebach)型」と呼ばれるタイプだと指摘できる人は素晴らしい。5秒だと短いので、こういう時には、「手動(マニュアル)記録モード」にして長く記録すると良いでしょう。R-R不整が強く、心電計は「心房細動」と考えましたが、われわれはそれに釣られてはいけませんね。【問題3】来院後、再び嘔吐した。混血はなく、食物残渣・胃液様であった。心筋トロポニンT(cTnT):陰性、ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP):陽性であった。対応について正しいものを選べ。1)消化器症状が強いため、「“おなかの風邪”か“食あたり”でしょう」と説明して帰宅させる。2)制吐剤を含む点滴と内服処方を行い、後日外来での上部消化管内視鏡を薦める。3)H-FABPは偽陽性と考え、cTnTが陰性なことから急性冠症候群(ACS)は否定的と考える。4)救急外来で数時間待ってから採血と心電図を再検し、日中の通常業務の時間帯に入ってから循環器科にコンサルトする。5)自院で緊急心臓カテーテル検査が可能なら循環器医をコール、不可能なら即座に専門施設へ転送する。解答はこちら5)解説はこちら今回の高齢女性の主訴は悪心・嘔吐です。来院直後にベッドの上で嘔吐しました。90歳近い高齢であることを除けば“あるある”的な救急患者ですし、症状だけならば胃腸疾患と思えなくもありません。ただし、心電図を見てしまったらそうはならないはずです。「ST上昇」と「ST低下」が特定のコンビネーションで認められたら、何を考えますか? また、心筋バイオマーカーはどうでしょう?「ラピチェック® H-FABPなどの検査では偽陽性も多いし、トロポニン陰性だから大丈夫でしょ」そう考えるのもまたアウト。「何のために心電図をとったの!」ということになってしまいますね。“心電図をどう解釈するか”われわれ人間の性か、現行の心電図教育の関係かはわかりませんが、症状ごとに胸痛ならST変化に一点集中とか、心疾患っぽくなかったら心電図は見なくていいとか…さまざまな“決め打ち”や先入観が“心電図の語る真実”を見逃す原因になります。“とるなら見よ”、しかもきちんと―これがボクからのメッセージです*4。心電図を眺める時、いったんすべて忘れ去り、真っ白な心で読むのでしたね(第10回)。心電図(図1)で最も目立つのはST変化で、肢誘導ではII、III、aVF誘導の「ST上昇」、そしてI、aVL誘導の「ST低下」が認められます。ここで久しぶりに“肢誘導界”の円座標を登場させましょう。まずスタートは、aVLとIIIとが正反対に近い位置関係にあるということ(図3)。(図3)位置的に対側関係にある誘導は?画像を拡大する“大きな心”でとらえてくださいね。ST上昇のあるニサンエフ(II、III、aVF)とイチエル(I、aVL)って、心臓をはさんで反対の位置関係にありますよね? こうした真逆の2方向の組み合わせでST上昇・低下が見られた場合*5、“発言力”があるのは「ST上昇」のほうで、ほぼ確実にSTEMI(ST上昇型急性心筋梗塞)の診断となります。もちろん、できたら以前の心電図と比較して、過去にない「変化」が起きているのを確認できれば、なお確実性が高まります。今回の例は「下壁梗塞」疑いです。エフ(aVF)は“foot”ですから、何も覚えることなく「下壁」ですよね。加えて右冠動脈の近位部閉塞に伴う下壁梗塞の場合、時に房室ブロック(今回は第2度)を伴うという事実とも合います。ですから、心電図をとってDr.ヒロ流でキチンと読みさえすれば選択肢の5)が正しいとわかるでしょう。「STEMI=即、心カテ」はガイドラインでも銘記されています。ちなみに、選択肢3)は心筋バイオマーカーに関するものですが、汎用されるcTnTが陰性だから、ACSの可能性を否定してしまう選択肢4)のような対応もよくある誤りです(心電図を苦手にする人ほどこうしたミスを犯しがち)。STEMIでも発症後数時間のごく初期の段階ではトロポニン陰性も珍しくないんです。*4:その逆で“見ないならとるな”は間違い。さらに“見られないからとらない”は厳禁!…ちまたでは見かけるのも事実だが。*5:V1~V5の「ST低下」についても、V5はイチエルと“ご近所”(側壁誘導)、V1~V4は心臓の“前”で、II・III・aVFは“下≒後”と考えると対側性変化の一環として説明・理解できる。“「読めるか」より「とれるか」”心電図(図1)は波形異常と不整脈が混在し、それなりに読み甲斐のある心電図だと思います。ただ、この症例で一番難しいのは、心電図を「読めるか」より「とれるか」という点です。「気持ち悪い、吐きそう、吐いた、ノドのあたりがむかむか…」そんな訴えから胃腸疾患と決めつけてしまったり、看護師さんに「先生、これで心電図とるの?」と言われて“場の雰囲気”を重視したりすると痛い目にあいます。心筋梗塞の患者は、皆が皆、「強い前胸部痛」という典型症状で来院される方ばかりではありません。非典型例をいかに漏らさず拾えるかが、“できる”臨床医の条件の一つだとボクは思います。代表的な非典型的症状は、肩や歯の痛みですよね。また、今回の症例のように悪心や嘔吐なんかの消化器症状が目立って、心筋梗塞でテッパンの胸部症状がかすんでしまうこともあります。下壁梗塞の多くは、灌流域に迷走神経終末の多い右冠動脈の閉塞が原因であることから、胃部不快や嘔吐が多いと説明されています。心筋梗塞と嘔吐の関係を調べた古い文献によると、貫壁性(transmural)心筋梗塞の43%に嘔吐を伴い、前壁:下壁=6:4*6だったとのこと。時代やお国の違いこそあれ、さすがに普段の印象には合わない感じもしていますが…どうでしょう、皆さま?*6:重症の前壁梗塞によるショック状態で嘔吐が見られることがある。■非典型症状をきたす3大要因■(1)高齢者(2)女性(3)糖尿病今回の症例が難しいのは“何でもあり”の「高齢者」であること以外に「女性」であるわけです。女性の心筋梗塞は男性よりもわかりにくい症状なのは有名で、この連載でも扱ったことがあります(第6回)。“救急では心電図のハードルを下げよ”以上、消化器症状が強く出た高齢者の非典型的STEMI症例でした。『患者さんの訴えが心窩部より上のどこかで、それに対して“深刻感”を感じたならば心電図をとる』これをルーチンにすれば“見落とし”が少しでも減ると思います。とは言え、多忙な救急外来ではとかく“ハイ、胃腸炎ね”と片付けてしまい、ボク自身も反省すべき過去がないとは言えません。12誘導心電図は保険点数130点ですから、『3割負担の方でも“ほか弁”ないし“スタバのコーヒー”くらいの値段で大事な検査が受けられますよ』、と患者さんにも普段から説明するようにしています。多少は手間ですが、患者さんには無害な検査です。“空飛ぶ心電図”で谷口先生にお話を伺った際、「顎と心窩部にはさまれた部分」で一定の症状があったら、心電図を“とりにいく”姿勢の大事さを学びましたよね(第27回)。とくに救急現場では心電図はバイタルサインの次くらいに軽い気持ちでとるほうが無難です。くれぐれも心電図の苦手意識から「心電図をとるの、やめとこかな…」は“なし”にしましょう!! Take-home Message1)対側性変化で説明できるST上昇・低下が共存したらSTEMIと診断せよ。2)非典型症状に潜む“隠れ心筋梗塞”に注意せよ!~時に悪心・嘔吐が前面に出ることも~3)下壁梗塞では房室ブロックを合併することあり。1)杉山裕章. 心電図のはじめかた. 中外医学社;2017.p.128~137.【古都のこと~勧修寺雪見灯篭~】山科区の勧修寺(山号:亀甲山)は、前回・前々回と紹介した随心院からも徒歩10分圏内です。お恥ずかしながら、最近訪れるまでは「かんしゅうじ」と呼んでいましたが、実は「かじゅうじ」です*1。真言宗山階派の大本山で、醍醐天皇の母、藤原胤子(ふじわらの たねこ/いんし)の菩提を弔うため、平安中期の昌泰3年(900年)に創建されました。母方の実家である宮道(みやじ)家邸宅を寺に改め、父・藤原高藤*2の諡(おくりな)から「勧修寺」と命名されました。白壁の築地塀を横目に歩き山門から入って程なく、書院の庭には水戸光圀*3の寄進とされる「雪見灯籠」*4があります。周囲が樹齢約700年とも言われるハイビャクシンの枝葉に覆われているので、ボクは二、三度通り過ぎてようやくどれかわかりました(笑)写真はちょうど真裏から眺めた様子で、本当に前からは見えない! この灯籠のフォルムは「勧修寺型」と呼ばれ、灯籠の代表的パターンの一つらしいです。「京都へ来られたら見て通(トオ)ろう」というジョークが書かれた看板に微笑したのでした。*1:この辺りの住所は「かんしゅうじ○○町(ちょう)」というからややこしい。*2:高藤が山科で鷹狩りをした際、偶然雨宿りに訪れた宮道弥益(いやます)宅で娘の宮道列子を見初め、一夜の契りを交わした。後に列子を正室(妻)として迎え、娘の胤子は宇多天皇の女御(后)となって後醍醐天皇を産んだ。当時、中下流一家から皇族に入ることはあり得ず、『今昔物語』に記されたこの列子(「たまこ」とも読む)の成功譚が“玉の輿”の語源の一つともされる。ちなみに藤原高藤は紫式部の祖先であり、『源氏物語』に登場する光源氏と“明石の君”との恋バナは列子と高藤の話がモチーフだという話も。どれだけ奥深いんだ!…歴史って。*3:TVなどでお馴染みの“水戸黄門”とはその人。*4:「笠に積もった雪を鑑賞して楽しむためのもの」「笠の形に雪が積もった傘ように見える」「灯りを点すと(近江八景の)浮見堂に似ており、それが訛った」など諸説あるよう。

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10代の薬物依存患者の4割が市販薬を乱用【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第34回

市販薬の中でも、風邪薬はよく売れる商品カテゴリーの1つではないでしょうか。それらの市販薬に関して、憂慮すべき事態が起こっています。2018年に薬物依存などで全国の精神科で治療を受けた10代患者の4割以上が、せき止め薬や風邪薬などの市販薬を乱用していたことが厚生労働省研究班の実態調査で分かった。(中略)「消えたい」「死にたい」などと考え、生きづらさを抱えた若者が、一時的に意欲を高めるために市販薬を乱用するケースが多いという。せき止め薬は安価で簡単に入手できる上、中枢神経興奮薬と抑制薬の両方の成分が含まれている。(2019年9月16日付 日本経済新聞)この報道は、厚生労働省の研究事業の一環である「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」という、精神科医を中心として行われた研究結果を基にしています。本研究は、全国の入院設備のある精神科1,566施設を対象に、2018年9月~10月に薬物関連の治療を受けた患者のうち、同意が得られた2,609例を分析対象として実施されました。「10代の薬物依存患者の4割が市販薬を乱用」というかなりショッキングな内容のため、テレビや一般紙などでもこの結果が取り上げられました。情報番組『めざましテレビ』の取材では、実際に市販薬を風邪や咳止めなどの本来の目的以外で使用した経験がある10代の若者たちに直接その現状や理由を聞いており、以下のような回答が紹介されました(一部改変)。「学校の周りとかで結構います。1回でやめるつもりだったみたいだけど、どんどんハマっちゃって、どんどん飲んじゃうみたい」(友人が市販薬を過剰摂取していた10代)「追い詰められたときに薬に頼った。クラクラが気持ちいい。現実から逃げられる」(以前、市販薬を過剰摂取していた10代)このテレビ番組の街頭アンケートによると、街にいた10代~20代の107人のうち14%で本人あるいは身近な人物が市販薬を過剰摂取していたそうです。市販薬は身近な場所でいつでも購入できるというメリットがありますが、一方で購入のハードルが低く、乱用によって健康被害や依存が容易に生じうる危険もあると改めて感じます。乱用されている薬剤の第1位はブロン錠・液実際にどのような市販薬が乱用されているのでしょうか。これらも冒頭の研究結果で明らかになっています。第1位がブロン錠/ブロン液で158件と圧倒的な多さでした。第2位はパブロン/パブロンゴールド(34件)、第3位以下はウット(32件)、ナロン/ナロンエース(16件)、と続きます。これは2年前の調査から変わっていません。ブロン錠、パブロンゴールドA錠の成分を見てみると、以下のようになっています。ブロン錠:ジヒドロコデインリン酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、無水カフェインパブロンゴールドA 錠:グアイフェネシン、ジヒドロコデインリン酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、アセトアミノフェン、クロルフェニラミンマレイン酸塩、無水カフェイン、リボフラビン咳止めを目的として配合されている「ジヒドロコデインリン酸塩」は、医療用医薬品としても使用される中枢性麻薬性鎮咳薬で、モルヒネと同様の基本構造を有します。用法用量を守って服用してもせん妄や呼吸抑制などが起こることがあり、依存性があることでも知られています。なお、コデイン類含有製剤は呼吸抑制の恐れがあることから、2019年以降は12歳未満の小児への使用が禁忌となりました。販売に関しても、「原則1回1包装単位」と決められています。セルフメディケーションが推進されている中、どうやって市販薬の乱用を止められるのか、と考えましたが、現実的にはなかなか難しいと言わざるを得ません。購入時に薬剤師から質問などがあるとは思いますが、風邪のときに使用すると言って複数の薬局やドラッグストアを回れば、誰だって大量購入ができてしまいます。また、これらの医薬品はインターネット購入も可能な商品であり、薬剤師と顔を合わせることなく購入することもできます。個々の薬剤師にできることは多くはないかもしれませんが、このような市販薬の乱用が社会問題になっていることを肝に銘じて、販売品目や方法を考える必要がありそうです。

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12週間ごとに投与する新規乾癬治療薬「スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL」【下平博士のDIノート】第34回

12週間ごとに投与する新規乾癬治療薬「スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL」 今回は、ヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤「リサンキズマブ(商品名:スキリージ皮下注75mgシリンジ0.83mL)」を紹介します。本剤は、初回および4週時の後は12週ごとに皮下投与する薬剤です。少ない投与頻度で治療効果を発揮し、長期間持続するため、中等症から重症の乾癬患者のアンメットニーズを満たす薬剤として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年5月24日に発売されています。<用法・用量>通常、成人にはリサンキズマブとして、1回150mgを初回、4週後、以降12週間隔で皮下投与します。なお、患者の状態に応じて1回75mgを投与することができます。<副作用>尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の患者を対象とした国内外の臨床試験(国際共同試験3件、国内試験2件:n=1,228)で報告された全副作用は219例(17.8%)でした。主な副作用は、ウイルス性上気道感染27例(2.2%)、注射部位紅斑15例(1.2%)、上気道感染14例(1.1%)、頭痛12例(1.0%)、上咽頭炎10例(0.8%)、そう痒症9例(0.7%)、口腔ヘルペス8例(0.7%)などでした。150mg投与群と75mg投与群の間に安全性プロファイルの違いは認められていません。なお、重大な副作用として、敗血症、骨髄炎、腎盂腎炎、細菌性髄膜炎などの重篤な感染症(0.7%)、アナフィラキシーなどの重篤な過敏症(0.1%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、乾癬の原因となるIL-23の働きを抑えることで、皮膚の炎症などの症状を改善します。2.体内の免疫機能の一部を弱めるため、ウイルスや細菌などによる感染症にかかりやすくなります。感染症が疑われる症状(発熱、寒気、体がだるい、など)が現れた場合には、速やかに医師に連絡してください。3.この薬を使用している間は、生ワクチン(BCG、麻疹、風疹、麻疹・風疹混合、水痘、おたふく風邪など)の接種はできないので、接種の必要がある場合には医師に相談してください。4.入浴時に体をゴシゴシ洗ったり、熱い湯船につかったりすると、皮膚に過度の刺激が加わって症状が悪化することがありますので避けてください。5.風邪などの感染症にかからないように、日頃からうがいと手洗いを心掛け、体調管理に気を付けましょう。インフルエンザ予防のため、流行前にインフルエンザワクチンを打つのも有用です。<Shimo's eyes>乾癬の治療として、以前より副腎皮質ステロイドあるいはビタミンD3誘導体の外用療法、光線療法、または内服のシクロスポリン、エトレチナートなどによる全身療法が行われています。近年では、多くの生物学的製剤が開発され、既存治療で効果不十分な場合や難治性の場合、痛みが激しくQOLが低下している場合などで広く使用されるようになりました。現在発売されている生物学的製剤は、本剤と標的が同じグセルクマブ(商品名:トレムフィア)のほか、抗TNFα抗体のアダリムマブ(同:ヒュミラ)およびインフリキシマブ(同:レミケード)、抗IL-12/23p40抗体のウステキヌマブ(同:ステラーラ)、抗IL-17A抗体のセクキヌマブ(同:コセンティクス)およびイキセキズマブ(同:トルツ)、抗IL-17受容体A抗体のブロダルマブ(同:ルミセフ)などがあります。また、2017年には経口薬のPDE4阻害薬アプレミラスト(同:オテズラ)も新薬として加わりました。治療の選択肢は大幅に広がり、乾癬はいまやコントロール可能な疾患になりつつあります。本剤の安全性に関しては、ほかの生物学的製剤と同様に、結核の既往歴や感染症に注意する必要があります。本剤の投与は基本的に医療機関で行われると想定できますので、薬局では併用薬などの聞き取りや、生活指導で患者さんをフォローしましょう。本剤は、初回および4週後に投与し、その後は12週ごとに投与します。国内で承認されている乾癬治療薬では最も投与間隔が長い薬剤の1つとなります。通院までの間の体調を記録する「体調管理ノート」や、次回の通院予定日をLINEの通知で受け取れる「通院アラーム」などのサービスの活用を薦めるとよいでしょう。参考日本皮膚科学会 乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2019年版)アッヴィ スキリージ Weekly 体調管理ノート

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新しい抗うつ薬の出現(解説:岡村毅氏)-1117

 まったく新しい機序の抗うつ薬に関する臨床からの報告である。まずは抗うつ薬についておさらいしてみよう。1999年にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使えるようになり、うつ病の薬物療法に革命的な変化が起きた。それまでの古典的抗うつ薬には抗コリン作用(便秘など)や抗ヒスタミン作用(眠気など)などが伴ったが、SSRIには消化器症状(吐き気など)以外は比較的少なかったからである。 また、このころ(製薬業界にとっては黒歴史かもしれないが)うつはこころの風邪というキャンペーンがなされたりして、精神科・心療内科の敷居がずいぶん低くなった。うつはこころの風邪という言説は、今ではすっかり疾病喧伝(薬を売るために変な宣伝をしたという批判)の文脈で引用されるが、個人的には物事には両面があると思う。今では信じられないかもしれないが、「うつは弱い人がなるものだ」「精神科に行くなんて人生の破滅だ」と信じて、誰にも助けを求められずに重篤化する人もいたので、このキャンペーンによって救われた人もいただろう。 もちろん操作診断が使われるようになり、専門家が経験と知識に基づいて診断する「うつ病」から、いくつかの基準を満たしたときに診断される「うつ病エピソード」として捉えられるようになったことも大きいだろう。 ともあれ、20世紀から21世紀になるころ、うつ病は特殊で恐ろしい精神疾患ではなくなり、僕らの生活世界に現れた。人々は、かつてはそう簡単には「わたし、うつっぽいかも」とは言わなかったが、いまやずいぶん簡単に言うようになった。あれから20年間、いち臨床医としての意見であるが、SSRIが出たときのような革命的変化をもたらした薬剤は出ていない。 これは実は、統合失調症についてもいえる。1996年に同じく副作用が少ない非定型抗精神病薬が使えるようになって(もちろん、ないわけではない)、革命的な変化が起きた。具体的には新たな長期入院者はほとんど見なくなった。その後いくつかいい薬は出たが、破壊的イノベーションは起きていない。そして人々は「トウシツ」などと気軽に言うようになった。 おそらく50年前には、うつ病や統合失調症を経験した友達がいる人は少なかったであろう。今では、たぶん普通のことだ。 いずれにせよ、うつ病の薬物治療は20年程度、革命的な進歩はない。よく言えば漸進している状態である。むしろ、うつ病として治療すべき状態と、そうではない状態(たとえば生活習慣の乱れをまずは治すべき状態)などの、薬物治療以前の仕分けがしっかりなされるようになってきている。また人的資源の少ないわが国でも認知行動療法もようやく行われつつある。修正型電気けいれん療法(m-ECT)もいまや広く行われている。薬物療法以外が拡充しているのだから、健全なことだと思う。 さて、うつ病の薬物治療で現在のところ期待されている薬剤は「ケタミン」と「GABA受容体作用薬」であろう。本論文は、後者についての明らかな臨床効果を報告するものである。 これが、革命を起こしたSSRI以来の20年間に出現した「その他大勢」の新薬の末席に連なることになるのか、ブレークスルーになるのかは、もうしばらく見てみないとわからないだろう。 なお、筆者は抗うつ薬が常に必要だとは思わない。うつ病の治療には薬物治療、精神療法、環境調整の3つの柱があり、とくに軽症の場合は薬物を使わなくてもよい場合も多い。一方で、医学はしょせん人間の営みであり、苦しむ人を支援するためには、3つの柱を総動員しなければならない。また、こころを込めて治療をしても治らないときもある。とはいえ、この3つの柱はがんの「標準治療」みたいなものであり、奇妙な代替療法に患者さんが迷い込まないことを祈りたい。

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関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」【下平博士のDIノート】第30回

関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ペフィシチニブ臭化水素酸塩(商品名:スマイラフ錠50mg/100mg)」を紹介します。本剤は、1日1回の服用でJAKファミリーの各酵素(JAK1/2/3、チロシンキナーゼ2[TYK2])を阻害し、関節リウマチによる関節の炎症や破壊を抑制します。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年7月10日より発売されています。なお、過去の治療において、メトトレキサート(MTX)をはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬などによる適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人はペフィシチニブとして150mg(状態に応じて100mg)を1日1回食後に投与します。なお、中等度の肝機能障害がある場合は、50mg/日を投与します。<副作用>後期第II相試験、第III相臨床試験2件および継続投与試験の4試験における安全性併合解析において、本剤が投与された患者1,052例中810例(77.0%)に副作用が認められました。主な副作用は、上咽頭炎296例(28.1%)、帯状疱疹136例(12.9%)、血中CK増加98例(9.3%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、帯状疱疹(12.9%)、肺炎(ニューモシスチス肺炎などを含む)(4.7%)、敗血症(0.2%)などの重篤な感染症、好中球減少症(0.5%)、リンパ球減少症(5.9%)、ヘモグロビン減少(2.7%)、消化管穿孔(0.3%)、AST(0.6%)・ALT(0.8%)の上昇などを伴う肝機能障害、黄疸(5.0%)、間質性肺炎(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ヤヌスキナーゼという酵素を阻害することにより、関節の炎症や腫れ、痛みなどの関節リウマチによる症状を軽減します。2.持続する発熱やのどの痛み、息切れ、咳、倦怠感などの症状が現れた場合はすぐにご連絡ください。3.痛みを伴う発疹や皮膚の違和感、局所の激しい痛み、神経痛などが現れた場合は速やかに受診してください。4.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合には主治医に相談してください。5.(妊娠可能年齢の女性の場合)この薬を服用中および服用終了後少なくとも1月経周期は、適切な避妊を行ってください。6.本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>関節リウマチの薬物療法は近年大きく進展しています。関節破壊の進行抑制を含めた病態コントロールのため、発症初期にはMTXをはじめとする従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(cDMARDs)が使用されます。MTXなどを十分量で用いても効果不十分な場合には、生物学的製剤であるTNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど)やIL-6阻害薬(トシリズマブなど)、T細胞活性抑制薬(アバタセプト)、もしくは低分子標的薬であるJAK阻害薬(トファシチニブ、バリシチニブ)が使用されます。本剤は、関節リウマチに用いる3剤目のJAK阻害薬で、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2を阻害し、関節の炎症や破壊を抑制します。生物学的製剤は点滴または皮下注射での投与となりますが、しばしば発疹などの投与時反応や注射部位疼痛が問題となることがあります。JAK阻害薬は経口投与のため、非侵襲性の治療を望む患者さんや自己注射が困難な患者さんであっても、好みや生活環境に合わせた治療を選択することができると期待されています。また、本剤は相互作用も少なく、1日1回投与であるため、高齢者でも使用しやすいと考えられます。留意点としては、中等度の肝機能障害を有する患者については投与量の制限があることが挙げられます。また、本剤は免疫反応に関与するJAK経路の阻害により、結核、肺炎、敗血症などの感染症リスクが増大する懸念があることから、既存のJAK阻害薬2剤と同様に、生物学的製剤や他のJAK阻害薬などの免疫を抑制する薬剤との併用はできません。承認時の臨床試験では、副作用として12.9%で帯状疱疹が報告されているので、とくに高齢の患者さんでは、使用前に帯状疱疹ワクチン接種の有無などについて確認し、服用後に帯状疱疹が現れる可能性について注意喚起をしておく必要があるでしょう。

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5剤目のEGFR変異陽性非小細胞肺がん治療薬「ビジンプロ錠15mg/45mg」【下平博士のDIノート】第26回

5剤目のEGFR変異陽性非小細胞肺がん治療薬「ビジンプロ錠15mg/45mg」今回は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)「ダコミチニブ水和物(商品名:ビジンプロ錠15mg/45mg)」を紹介します。本剤は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体(HER)2および4のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。<効能・効果>本剤は、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん(NSCLC)の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年3月1日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはダコミチニブとして1日1回45mgを経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量し、副作用が現れた場合には、添付文書に記載されている基準を考慮して休薬、減量または中止します。本剤とCYP2D6基質の薬剤(デキストロメトルファンなど)を併用すると併用薬の血中濃度が上昇する恐れがあり、また、PPIなどの胃内pHを上昇させる薬剤を併用すると本剤の血中濃度が低下して有効性が減弱する可能性があるため、それぞれ併用注意となっています。<副作用>化学療法歴のないEGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発NSCLC患者を対象とした非盲検無作為化国際共同第III相試験において、本剤が投与された227例(日本人患者40例を含む)中220例(96.9%)に副作用が認められました。主な副作用は、下痢193例(85.0%)、爪囲炎140例(61.7%)、口内炎(口腔内潰瘍形成、アフタ性潰瘍など)135例(59.5%)、ざ瘡様皮膚炎111例(48.9%)、発疹・斑状丘疹状皮疹・紅斑性皮疹など82例(36.1%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として間質性肺疾患(2.2%)、重度の下痢(8.4%)、重度の皮膚障害(31.7%)、肝機能障害(28.6%)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、EGFRというタンパク質などの働きを抑えることで、がん細胞の増殖を抑えます。2.空咳、発熱など風邪のような症状が現れ、息切れや息苦しさを感じた場合には使用を中止し、すぐに受診してください。3.飲み始めに下痢が生じることが多いので、下痢止め薬が処方されている場合は持ち歩くようにしてください。脱水予防のため、水、白湯、お茶、スポーツドリンクなどでこまめに水分を補給しましょう。4.バランスのよい食事を心掛け、調理をする際は消化をよくするように工夫してください。乳製品、繊維質や脂質が多い食品、香辛料やコーヒー、アルコールなどの刺激物はなるべく控えましょう。5.薬を飲み続けていると、爪周囲や口腔内の赤み、腫れ、痛みなどが生じることがあります。患部は清潔に保ち、日常生活に支障がある場合はご相談ください。6.吹き出物や発疹などの皮膚症状が生じることがあります。症状の予防や軽減のため、低刺激の保湿剤によるスキンケアをこまめに行い、外出時は紫外線対策をしましょう。<Shimo's eyes>NSCLCは肺がん症例の約85%とされており、日本人のNSCLC患者の30~40%にEGFR遺伝子変異があるといわれています。本剤は、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)、エルロチニブ(同:タルセバ)、アファチニブ(同:ジオトリフ)、オシメルチニブ(同:タグリッソ)に続く、国内で5剤目のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)です。優先審査品目に指定され、申請から7ヵ月での承認となりました。本剤は、EGFRやHER2、HER4のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害することにより、EGFR遺伝子変異陽性のがん細胞の増殖を抑制すると考えられています。本剤で治療を行うためには、既存のEGFR-TKIと同様にEGFR遺伝子変異検査を実施する必要があります。臨床試験では副作用が高頻度で認められたため、患者さんには事前に発現率が高い副作用の好発時期を知らせておくことが重要です。個人差はありますが、投与を開始してから副作用が発現するまでの時期として、下痢は2ヵ月程度(中央値6日)、ざ瘡などの皮膚障害は4ヵ月程度(中央値9日)、口内炎や爪囲炎は6ヵ月間程度(それぞれの中央値9日、29日)が目安となります。投与初期から発現する可能性が高いので、それぞれの副作用への対策法も伝えるように心掛けましょう。NSCLCは分子標的薬の登場により着実に予後が改善しています。治療選択肢となる分子標的薬も増えたため、それぞれの薬剤の副作用プロファイルや用法を確認し、患者さんが安心して治療に専念できるように積極的にフォローしましょう。

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今こそ風邪診療を見直す時【Dr.倉原の“俺の本棚”】第14回

【第14回】今こそ風邪診療を見直す時最近、TwitterなどのSNSで「風邪診療に抗菌薬を処方する医師はいかがなものか」みたいな論調が高まっていて、風邪診療を見直すブームがまたやってきそうな気がします。こういうのって1年おきくらいに流行がありますね。風邪に抗菌薬をやみくもに処方する医師は、ヤブといわれても仕方がない時代になりました。『かぜ診療マニュアル 第2版』山本 舜悟/編著. 日本医事新報社. 2017私が風邪診療において最も推薦している本が、この『かぜ診療マニュアル』です。群を抜いてコレ。何がなんでもコレ。絶対コレ。私の研修医時代の指導医だった山本 舜悟先生が編著をされていますが、別に山本先生をヨイショしようとかそんな意図はありません。落ち着いた立ち居振る舞いの中に熱い闘志がみなぎっている先生で、右も左もわからぬヒヨコ研修医にとってアレが一般的な医療だと思っていました。しかし、音羽病院でかなりレベルの高い診療を目の当たりにしていたことを後から知り、タイムマシンに乗って過去に戻れないものかと悔やんだものです。風邪ってエビデンスがないようで、ある程度わかっているところもあるモヤっとした疾患で、我流で診療している医師も多いと思います。しかしこの本は、どの診断・治療にエビデンスがあるのか・ないのか、という観点を示してくれており、実臨床に即座に応用できるのです。漢方薬の代表的な使い方も明記されており、私みたいな漢方素人には助かる一冊に仕上がっています。小児の風邪が別項目で記載されているため、子供も大人も診るクリニックドクターにとってはバイブルみたいな本になるんじゃないですかね、コレ。市中肺炎のことをレクチャーしてくれる指導医はいても、風邪のことをレクチャーできる指導医はなかなかいません。この本は、風邪診療のノウハウを惜しみなく出しているレクチャーが200回分くらい詰まった一冊です。なんとなく総合感冒薬やレスピラトリーキノロンを処方している医師は、これを読まなければこの先も間違った医師人生を送りかねません。この本を読んで、己の診療を見直しましょう。2013年に第1版、2017年に第2版が出ているので、2021年に第3版をぜひとも期待したいところです。『かぜ診療マニュアル 第2版』山本 舜悟/編著出版社名日本医事新報社定価本体4,000円+税サイズA5判刊行年2017年■関連記事Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー

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第11回 風邪を予防する5ヵ条【実践型!食事指導スライド】

第11回 風邪を予防する5ヵ条医療者向けワンポイント解説風邪やインフルエンザについての流行時期や感染経路などがニュースになる時期です。食生活への意識は、これらに対する予防効果として期待できますし、体調管理にもつながります。そこで、風邪を予防するための5つのポイントをまとめました。1)喉などの粘膜を保護するためにビタミンAを摂取するビタミンAは、体内で免疫機能、視覚、生殖、細胞情報伝達に関与している栄養素です。皮膚や粘膜の保護、健康を維持する働きがあるため、ウイルスや菌の予防に対しても効果があると考えられています。ビタミンAは2種類あり、肉や魚、乳製品、卵などに含まれるレチノールなどの既成ビタミンAと、野菜や果物などに含まれるβ−カロテンなどのプロビタミンAカロテノイドがあります。多く含まれる食品として、牛乳やチーズなどの乳製品、緑黄色野菜(色の濃い野菜:ニンジン、パセリ、ほうれん草、春菊、ブロッコリー、水菜など)があります。脂溶性ビタミンなので、「油で炒める」、「ドレッシングをかける」、「肉や魚と一緒に食べる」ことで効率的な吸収が期待できます。2)免疫を高めるためにビタミンDを摂取するビタミンDは、骨を丈夫にする働き、免疫機能を調整する働きがあり、ウイルスや菌などに対して予防効果が期待されています。ビタミンDは、サケ、イワシ、サバなどの魚類、キクラゲ、干し椎茸などのキノコ類に多く含まれます。なかでも、イワシ缶やサバ缶は手軽にとれる食品です。また、キクラゲや干し椎茸を意識して料理に加えるのも良いでしょう。ビタミンDは、太陽光に含まれる紫外線を浴びることで、皮膚で生合成されるビタミンです。しかし、最近では、日焼け止めクリーム、UVカットガラスの普及に伴い、30歳以上の約半数がビタミンD不足の状態であるという報告もあります。また、冬場は日照時間も少なくなるため、食べ物からのビタミンD摂取を意識することが大切です。3)果物や葉物野菜からビタミンCを摂取するビタミンCは、コラーゲンの生成、抗酸化作用、栄養素の吸収など様々な働きがあるため、免疫力を高め、風邪予防に対しても効果が期待されます。ただし、一度に大量摂取しても、尿へ排泄されてしまいます。こまめに摂取しましょう。ビタミンCは、レモンやオレンジ、みかんなどの果物からの摂取が一般的ですが、実は野菜に多く含まれ、赤ピーマン、かいわれ大根、カリフラワー、ミニトマト、キャベツなどに豊富に含まれます。熱に弱く、水溶性ビタミンのため、生での摂取が効率的です。ただし、オレンジジュースなどの大量摂取は、ビタミンCよりも糖の摂取過多が懸念されるので、野菜からのビタミンC摂取をすすめすると良いでしょう。4)のど飴や温かい飲み物で口の乾燥を予防する冬は、室内、野外ともに乾燥していることがほとんどです。乾燥により粘膜が乾燥すると、ウイルスや菌が侵入しやすくなるため、口腔内の保湿が重要です。口の中にのど飴などを入れておくと、唾液が出て乾燥予防になります。温かい飲み物は、水分補給によりカラダ全体の乾燥を予防するだけではなく、カラダを直接温め、胃腸の動きを活性化し、代謝を高める働きが期待できます。5)肉や魚などのタンパク質を摂取して体力を増強する免疫力を高めるためには、体力の増強が大切です。肉や魚をはじめとする動物性タンパク質は、筋肉になりやすく、日常的に意識して摂取することが大切です。大豆製品などの植物性タンパク質は、脂質が少なく、食欲がないときにも摂取しやすい良質なタンパク源です。しっかりと噛んで食べることは、胃腸への負担を減らし、消化の助けになります。また、噛むことは副交感神経を刺激します。副交感神経が優位になると、リンパ球が増え、免疫力の強化も期待できます。

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第20回 小児科クリニックからの セフカペンピボキシル の処方(後編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

前編 Q1患児の保護者に確認することは?Q2疑義照会しますか?Q3 抗菌薬について説明することは?今は必要ないかもしれないが、必要になる可能性もあると説明 中堅薬剤師さん(薬局)提示された情報から、ウイルス性感冒(ヘルパンギーナ、咽頭結膜炎など)の可能性は高いと思われますが、溶連菌感染症の可能性もあり、フロモックス®の必要性は否定できません。医師との関係性を壊したくない思いを尊重し、フロモックス®を服用するかどうかの選択も残したいと思います。「今は必要ないかもしれないが、今後、必要になる可能性もある」と説明し、調剤は受けてもらい、フロモックス®以外の対症療法薬で経過観察をするよう助言します。対症療法薬で軽快しないようであれば、溶連菌感染症の可能性があるので、耳鼻咽喉科に相談することを勧めます(小児科には行きにくいでしょうから・・・)。そして、フロモックス®は使わずに残してあることを伝えた上で、今後の対処を相談してもらいます。鑑別が難しいこと、重症化のリスク 奥村雪男さん(薬局)処方医と患児家族の関係を損なわぬよう、「ウイルスが原因となる初期の風邪だと思うが、患児は2歳未満であり、今後咳がひどくなって細気管支炎になると重症化するリスクがある。その場合、ウイルス性か細菌性か明確に鑑別するのが難しいので、効率は良くないが、慣行として抗菌薬をあらかじめ処方することがある」と説明します。低血糖の危険性 中西剛明さん(薬局)未熟児で生まれた子は、筋肉量が少ないことが多く、健常児より低血糖を起こしやすいと言われています。フロモックス®はピボキシル基を有する抗菌薬なので、低血糖の危険があります。出生時体重を参考に、未熟児であれば低血糖の危険について説明します。散剤の与薬の仕方 わらび餅さん(病院)小児病棟で、赤ちゃんへうまく薬を飲ませられない母親を何人も見てきました。理論通りではうまくいかない、赤ちゃんの機嫌に合わせた工夫も必要です。赤ちゃんが9カ月なら、母親の与薬経験が未熟な可能性があるので、薬を飲ませられるか聞いて、それに応じて散剤の与薬の仕方を説明します。フロモックス®は、マクロライドなどに比べるとひどい味ではないですが、飲み残しがないように食前に飲ませていいこと、たくさんの水で溶かないことなどです。鼻水や痰を除去すること JITHURYOUさん(病院)本人が苦しいばかりでなく、細菌の二次感染の引き金になる可能性があるので、鼻水や痰などはできるだけ取るように説明します。Q4 その他、気付いたことは?医療関係者でも知識に乏しいことがある ふな3さん(薬局)発熱(のおそれ)+咽頭炎ということで、溶連菌の疑いがあっての抗菌薬投与なのか、額面通り「二次感染予防」なのか微妙です。それ故、飲ませないという保護者の希望を後押しするかどうか悩ましいところです。「医療関係者」という言葉の範囲には、医師、看護師、薬剤師などの専門職から、受付事務まで非常に幅広く含む場合があります。たとえ医師でも、専門分野以外については知識が浅い場合もあります。こちらが「これくらいは知っているだろう。説明しなくてもいいな」と考えていても、実は相手は、説明を聞きたい、相談したい、と思っている可能性もあります。会話をしながらその辺りの「雰囲気」をくみ取ることは、さじ加減が難しいですが大切だと思います。また「医療関係者」である場合に、「薬歴管理料を算定するか?」という問題も同時に発生します。その医師と完全にツーカーの間柄で、飲み方の指示などを受けているようなら薬歴料は算定しませんし、前述のような「相談したい」というような雰囲気であれば、算定すると思います(今回のケースは患者負担はゼロなので、お会計には影響ないのですが・・・)。フォローアップがあるとすれば、さり気なく保護者に「どちらの病院にお勤めですか?」とか、医師との面会時に「○○さんとは、親しいんですね!」などと、お互いの関係性に"探り"を入れておくと、今後の展開が違うかも・・・と思います。薬剤師も同じ「医療関係者」です。「医師との信頼関係」と同時に、「薬剤師との信頼関係」が築けたらいいな、と思います。Von Harnack表を活用 奥村雪男さん(薬局)フロモックス®の1日量は9mg/kg、ムコダイン®の1日量は30mg/kgで、いずれも体重に比してやや少ないように思います。その他の薬剤は、Von Harnack表※より、6カ月で成人量の1/5、1歳で成人量の1/4なので、概ね妥当な用量だと思います。※成人量を1としたとき、それぞれの年齢での用量の目安。になっている。未熟児新生児6カ月1歳3歳7歳半12歳1/101/81/51/41/31/22/3VON HARNACK GA. Monatsschr Kinderheilkd 1956; 104(2): 55-56.ペリアクチンの副作用 柏木紀久さん(薬局)9カ月というとハイハイやつかまり立ちをする頃なので、ペリアクチンの傾眠によるケガなども心配です。痙攣の閾値も下がるので、鼻水や発赤疹がなければペリアクチンが疑義の対象になると思います。薬剤師も一般への啓発を 荒川隆之さん(病院)私は学校薬剤師として、何度か保護者に「風邪に抗菌薬は不要」という話をしております。北欧やオランダなど薬剤耐性菌の少ない国では、耐性菌に関する国民の知識がしっかりしていると聞きます。日本においても薬剤耐性(AMR)対策アクションプランなど国がようやく動き出したところですから、我々薬剤師もそれぞれにできることを少しずつやっていくことが大切なのでは、と考えます。1回で飲ませきれない量では 中西剛明さん(薬局)ペリアクチンが処方されていることが気になります。抗ヒスタミン薬を使うと痙攣の閾値が下がるので、発熱している場合は熱性けいれんも含め、痙攣の危険が高まります。数ある抗ヒスタミン薬の中でペリアクチンを選んだ意図がわかりません。加えて、近隣の小児科医は「抗ヒスタミン薬で鼻水が固くなって、鼻づまりが解消しにくくなり困る」と言っていました。あと、7種類の薬剤は出しすぎでは?1回で飲ませ切れない「かさ」になってしまっています。症状に合わせて用量を調節 児玉暁人さん(病院)ムコダインDSの量が少ないですが、症状に合わせているのだろうと考え、これに関しては疑義照会しません。医師の処方意図を理解しておくべき JITHURYOUさん(病院)医師に処方意図の確認が必要だと感じます。抗菌薬が必要ならば薬剤の処方の必要性を患者家族にもきちんと説明しなければいけません。服用しないならば、症状が悪化するリスクもあります。さまざまな可能性のリスク回避をしておきたいという医師の考えがあるのかもしれません。なぜ抗菌薬処方をしたのか、その医師の処方傾向をできれば把握したいです。調剤するだけではなく患者さんと向き合うこと 中堅薬剤師さん(薬局)私は「医師の治療方針に同意していない患者さん」には調剤をしない方針です。ただ、簡単に「調剤をしない」としてしまうと、後で治療する機会を奪うことにもなるので、十分な説明の上、患者さんの意向を尊重して調剤するかどうか決定します。私の経験ですが、「喘息ではないのに吸入を強要された」と言う患者さんがいました。医師法第二十三条に基づいて考えると、処方医は患者が納得する十分な医学的指導をしていない可能性があり、その結果、治療に対して強い拒否を示していると推察しました。ただ、咳喘息の可能性は否定できないので、「使ってみて改善しなければ、呼吸器科以外の医師に相談することをお勧めしたい」と助言しました。治療前から否定するのではなく、治療をしてから継続の可否を判断する方がよいのではないか、と患者さんに話したのです。その後、患者さんから感謝の言葉をいただきました。「医師よりも私の治療に向き合ってくれた気がする」と。同時に、医師はどうして患者側に寄り添って治療を考えてくれないのか、という不満も打ち明けてくれました。ですから、今回の症例は薬剤師はただ調剤すればいいというものではないと、考えさせられる症例だと感じました。医師法第二十三条・・・医師は、診療をしたときは、本人又はその保護者に対し、療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない。担当した薬剤師の対応フロモックス®の量が少ないことを疑義照会し、添付文書上の用量まで増量した。また、患児の保護者から、処方箋提出時に「抗菌薬だけ別包にしてほしい」と言われたので、別包にて調剤した。[PharmaTribune 2017年9月号掲載]

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PPIがスイッチOTC化できない原因は薬剤師!?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第15回

継続審議中だったプロトンポンプ阻害薬(PPI)のスイッチOTC化がまたもや議論に上り、そして今回も見送られました。厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」は12月5日、第6回目の会合を開催。(中略)前回会合でスイッチ「否」と判断したPPI製剤については、パブリックコメントでは98件中84件で「賛成」となった点を踏まえ再度議論。しかし、現段階でのOTC薬化は見送られた。(2018年12月6日付 RISFAX)事前に募られていたパブリックコメントで85%の賛成を得たにもかかわらず、PPI 3成分(オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール)のスイッチOTC化が見送られました。再三にわたって認められない原因は何なのでしょうか。議論の中では、PPIのスイッチOTC化見送りの理由として、薬剤師らによる薬局やドラッグストアなどでのOTC薬の不適切な販売実態が指摘されています。「不適切な販売実態」については、本コラムでも以前「不適切な一般薬の販売が増加傾向 スイッチOTC化の障害となる?」として取り上げていますので、簡単に振り返りたいと思います。名札を着けない、濫用のある医薬品を何も質問せず販売2018年8月に2017年度の「医薬品販売制度実態把握調査」結果が公表されました。それによって、OTC薬を販売する際に「名札を着けておらず、専門家かどうかわからない」、「濫用の恐れがあるエフェドリンなどが含まれる風邪薬を複数個購入しようとした人に、何も質問せず販売する」など、薬剤師らの不適切な販売実態が明らかになりました。この調査は毎年1回行われていますが、昨年度と比べて結果が改善されているとは言えず、むしろ悪化している項目もありました。調査期間はおおむね11~12月ですので、忙しい時期に調査なんてしないで! と言いたくもなりますが、不適切な対応をしてしまった言い訳にはなりません。なお、今回の議論において、これらの販売体制の改善が示されれば再度議論を行うとされていますので、まだPPIのスイッチOTC化の可能性は消えたわけではありません。PPIを医師の処方なしに手軽に服用できると、重篤な疾患の初期症状がマスクされる可能性があるといった懸念も当然あるでしょう。しかし、これまで何度も議論に上りながら先送りされている現状を見ると、大きな利権が複雑に絡んでいてPPIがなかなかスイッチOTC化されないのかなぁ、とも個人的には勘ぐってしまいます。ただ、薬局やドラッグストアでのOTC薬の販売体制が不適切であったため、セルフメディケーションの推進に水を差す理由を作っていることもまた事実です。安全性の懸念も解消して、パブリックコメントの85%が賛成しているのにスイッチOTC化が再三見送られる、という流れに終止符を打つため、もう一度OTC薬の販売体制が適切かどうか見直してみませんか? 日々の薬剤師らのOTC薬販売体制が今後のスイッチOTC化を左右するといっても過言ではありません。

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第19回 小児科クリニックからのセフカペンピボキシルの処方(前編)【適正使用に貢献したい  抗菌薬の処方解析】

Q1 患児の保護者に確認することは?熱の有無や熱性けいれんの既往など ふな3さん(薬局)発熱の有無は、アセトアミノフェン坐剤の処方意図(すぐに使用するか予備か)やペリアクチン®による熱性けいれん誘発リスクの推測にも利用できるため、必ず確認します。他に、熱性けいれんやてんかんの既往、副作用歴、併用薬、発疹の有無も確認したいです。検査したかどうか 清水直明さん(病院)アレルギー歴は必ず確認します。もしA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌、S.pyogenes )だったら抗菌薬が必要だと思うので、「何か検査はされましたか」と確認します。セフェム系抗菌薬のアレルギーや過去1カ月以内に抗菌薬を使用したか 奥村雪男さん(薬局)患児の性別や、特にセフェム系抗菌薬に対してアレルギーはないかを確認します。他にも過去1カ月以内に抗菌薬を使用したか、いつから症状があったか、全身状態はどうか、咳や鼻水などの症状、アデノウイルスなどの迅速検査や血液検査を行っているかも確認します。可能なら検査結果や白血球数やCRPなどの検査値、肺炎球菌、ヒブなどのワクチンを接種しているかも聞きます。Q2 疑義照会しますかする・・・7人フロモックス®の用量 キャンプ人さん(病院)フロモックス®細粒は1日9mg/kgですので、少し量が少ないのでは? と照会します。そのときに、抗菌薬の処方を望まれていないことを「母親が伝え忘れた」として医師へ伝えます。もちろん母親にそのように照会してよいか確認しておきます。普段から風邪に抗菌薬は不要と医師に示し続ける 荒川隆之さん(病院)保護者がなぜ抗菌薬の処方を望んでいないのか、よく聴き取りを行います。風邪に抗菌薬は不要ということで望んでいないのならば、疑義照会を行ってよいか、保護者と話をします。そして、フロモックス®の投与量がやや少ないことで疑義照会するついでに、風邪に抗菌薬は不要ではないか確認します。最初は、保護者がそのように希望していると言わず、医師から保護者の意志を聞かれた場合に回答します。ただし、この疑義照会は、医師と薬剤師のそれまでの関係も大きく関係すると思います。普段から風邪に抗菌薬は不要というスタンスを医師に示し続ける必要があります。抗菌薬は必要? 柏木紀久さん(薬局)患児の主症状が発熱と咽喉頭炎なので、あまり抗菌薬の必要性を感じません。3日後の再診時に抗菌薬の投与を考慮してもいいのではないかと思います。体重9kgでアセトアミノフェン坐剤が処方されており、発熱の期間が長い、または日内変動が強い状態でぐずったり、食欲がなかったりして状態がよくないことも考えられます。この場合、説明通り二次感染が考えられ抗菌薬処方の妥当性を感じますが、食欲や水分摂取が少なくなっている場合は、低カルニチン血症も気になります。保護者が医師に言えなかったことを薬剤師に打ち明けているので、照会してみると思います。溶連菌の可能性も 児玉暁人さん(病院)フロモックス®の投与量が少ないので確認します。ウイルス性の単なる風邪では抗菌薬は不要です。ただトランサミン®散の処方、のどの発赤から溶連菌の可能性も捨てきれず、その場合は抗菌薬が必要です。溶連菌の合併症予防を風邪の二次予防と受け取ってしまったなど、知識があるだけにややこしくしている可能性もありえます。保護者には、投与量と処方意図の再確認をしたい旨を伝え、納得と了承を頂いてから疑義照会します。あとは、疑義照会への返答内容にもよりますが、抗菌薬を服用する/しない場合のメリット・デメリットを伝えて、服用するかどうかを保護者に判断してもらうかと思います。ですので、疑義照会時に「服用を保護者の判断に任せてよいか」と確認しておきます。容態が悪化したら飲ませるつもりなら、疑義照会する ふな3さん(薬局)処方を望んでいないという意味では、疑義照会しません。医師との関係を気にしているなら、あえて蒸し返す必要はないと考えます。また、調剤の際に下記のように3種に分包して、フロモックス®だけ(もしくはラックビー®Rも)は服用しなくて済むようにできます。(1)フロモックス®(2)ラックビー®R(3)トランサミン® /ペリアクチン® /アスベリン® /ムコダイン® 混合この患者さんに限らず、普段から対症療法用の薬剤(症状改善したら中止)と、抗菌薬・整腸剤(処方日数飲みきり)は別包にしています。これらの対応をした上で、「望んではいない」と言いながらも、「容態が悪化したら飲ませるかも」と考えている場合、フロモックス®の添付文書上用量(3mg/kg)に満たないため、0.81g(~0.9g程度)/日への増量を提案するため疑義照会をします。保護者自身の風邪であれば「抗菌薬は飲まずに治せる」と簡単に割り切れると思いますが、発話できない乳児で急な発熱であれば、「この子のためにできることは?」「やっぱり抗菌薬を飲ませるべきかも」と頭をよぎるのが親心だと思います(だからこそ、小児科医も抗菌薬処方を簡単には止められないのでしょうが...)。その意味合いも含めて、抗菌薬は適切な量に修正した上で、「飲み始めたら飲みきる」の条件の下、お渡ししておきたいと思います。抗菌薬は感染が起きたと推定されるときに服用する JITHURYOUさん(病院)当然、医師の指示通りに調剤しなければならないのですが、その話をしてもなお服薬拒否ということになるのならば、医師に確認したいですね。連鎖球菌による咽頭炎でも、フロモックス®ではなくペニシリンが第一選択なので、この場合処方変更の必要性があるのではと考えます。二次感染予防目的の抗菌薬処方だとしても、臨床経過を勘案して疑義照会したいところです(遷延していたら細菌による二次感染の可能性=抗菌薬適応)。となると、症状の変化などで感染が起きたと推定されるときに服用する方がベストのような感じがします。フロモックス®はそういう場合に服用していただく方が耐性菌を増やさないという観点でも必要ではないかと考えます。よって、調剤は別包装にすべきではないでしょうか。母親の気持ちを聞き取った上で わらび餅さん(病院)フロモックス®が1日量9mg/kgではないので、疑義照会はします。また、母親からどうして抗菌薬を希望しないのかを聞きます。二次感染予防の必要性を感じてない、風邪という診断に納得してない、赤ちゃんだからあまり薬を飲ませたくないなど、理由によって対応も変わってきます。しない・・・4人処方医は不要なリスクを避けたいと考える 奥村雪男さん(薬局)抗菌薬以外の処方内容からは、典型的なウイルス性の上気道炎に見えます。全身状態が悪くないのであれば、抗菌薬なしで数日の経過観察後、悪化した場合に細菌性肺炎などの診断がついた時点で、それに応じた抗菌薬を選択するのが理想的だと思います。ただ、実際には疑義照会しないと思います。ウイルス性上気道炎に第三世代セフェムを処方するのは現在の日本の慣行であり、慣行と異なる行為はリスクを伴います。仮に抗菌薬なしの経過観察中に細菌性肺炎を発症すれば、最悪の場合、訴訟問題に発展するかもしれません。処方医は不要なリスクを負うことは避けたいと考えるはずです。遠回りのようですが、ウイルス性上気道炎に抗菌薬を処方した場合の治療必要数※などのエビデンスを国民に提示し、抗菌薬の二次感染予防は効率の悪い治療行為であることを一般常識とすることが、疑義照会に優る方法だと思います。※治療必要数NNT(number needed to treat)のこと。死亡や病気の発症などのイベント発生を1人減らすために、何人の患者を治療する必要があるか、という疫学の指標。例えばNNTが100なら、1人の患者のイベント発生を減らすためには100人に治療を行う、ということになる。フロモックス®は別包に 清水直明さん(病院)抗菌薬をどうしても持ち帰りたくないと言うのであれば、そのことを説明して取り消してもらうことも可能でしょうが、医師が必要としたものを不要と説得するだけの材料が弱いかなと思います。風邪との診断であるならば、それほど重症感はなさそうです。抗菌薬を服用させたくないのであれば、親の責任の範囲でそれでもいいと思います。フロモックス®は別包とします。そもそも、このぐらいの年齢から保育園・幼稚園ぐらいまでのお子さんは、よく風邪をひきます。これからも外界と接する機会が増えるにつれて、いろいろな感染症を拾ってくることでしょう。もし、本当に抗菌薬が必要な感染症に罹ったとき、ちゃんと効いてくれないと大変です。風邪をひくたびに予防的に抗菌薬を飲んでいたら、耐性菌のリスクは上がってしまうと思います。フロモックス®など多くの抗菌薬には二次感染予防という適応はないし、そのことがよく分かっている親御さんであるならば、飲ませるか飲ませないかの判断は任せていいと思います。ただし、薬剤師の指導としては微妙ですが・・・後編では、抗菌薬について患者さんに説明することは?その他気付いたことを聞きます。

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胎児へのトキソプラズマ垂直感染を抑制する抗原虫薬「スピラマイシン錠150万単位」【下平博士のDIノート】第14回

胎児へのトキソプラズマ垂直感染を抑制する抗原虫薬「スピラマイシン錠150万単位」今回は、「抗トキソプラズマ原虫薬スピラマイシン(商品名:スピラマイシン錠150万単位)」を紹介します。本剤は、妊娠中にトキソプラズマに初感染した妊婦が服用することで、胎児の先天性トキソプラズマ症の発症を抑制します。<効能・効果>本剤は先天性トキソプラズマ症の発症抑制の適応で、2018年7月2日に承認され、2018年9月25日より販売されています。トキソプラズマのタンパク合成を阻害することで、増殖抑制効果を示します。<用法・用量>通常、妊婦に1回2錠(スピラマイシンとして300万国際単位)を1日3回経口投与します。抗体検査や問診などにより妊娠成立後のトキソプラズマ初感染が疑われる場合に使用します。<患者さんへの指導例>1.妊娠中に初めてトキソプラズマに感染した場合に、胎児が感染することで発症する恐れのある「先天性トキソプラズマ症」を防ぐための薬です。2.胎児への感染が確認されないうちは、分娩まで続けて服用します。3.薬によって腸内細菌のバランスが崩れると、便が緩くなったり、おなかが痛くなったりすることがあります。4.高熱、激しい腹痛を伴う血便、めまい、動悸、胸痛などの症状がありましたら、服用をやめてすぐに医師の診察を受けてください。5.母乳中に移行することが報告されているため、本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>トキソプラズマは人畜共通の寄生原虫であり、猫を終宿主としますが、豚、牛、鶏、羊、馬などのほか、食肉用の動物以外も含めて、ほぼすべての哺乳類や鳥類に感染します。ヒトへの主な感染経路としては、加熱不十分な食肉、猫の糞便や洗浄不十分な野菜などによって、トキソプラズマ原虫を経口的に摂取することが挙げられます。また、園芸などの土いじりや砂場遊びが原因になることも考えられます。通常、健康な成人がトキソプラズマに感染した場合、風邪様の症状が出現することもありますが、多くの場合は無症状のまま潜伏感染に移行します。しかし、妊婦がトキソプラズマに初感染すると、胎盤を介して胎児に感染し、先天性トキソプラズマ症を発症する可能性があります。先天性トキソプラズマ症は流産・死産の原因になったり、生まれた子供に水頭症、網脈絡膜炎による視力障害、脳内石灰化、精神・運動機能障害などといった重大な臨床症状が認められたりすることがあるため、胎児への感染を抑制する必要があります。本剤は、抗菌活性に加え、抗トキソプラズマ活性を有する16員環のマクロライド系抗菌薬で、海外の診療ガイドラインではトキソプラズマに初感染した妊婦に対し、本剤が標準的治療薬として推奨されています。しかし、わが国ではこれまでトキソプラズマを適応症として承認されている薬剤はなかったため、日本産科婦人科学会より開発の要望がなされていました。本剤の抗原虫作用はトキソプラズマに対する増殖抑制であり、感染後早期に服用を開始することで、垂直感染が約60%低下するという報告があります。ただし、殺原虫効果はないため、胎児への感染が疑われる場合には、本剤の投与・継続の適否について慎重に検討する必要があります。実際には先天性トキソプラズマ症で生まれてくる児はわずかですが、加熱不十分な食肉を食べること、素手での飼い猫の糞便の処理や土いじりは、トキソプラズマ感染を引き起こすリスクがあることを薬剤師も再認識し、妊娠中または妊娠を予定している患者さんに対して調理方法や手袋の着用、十分な手洗いなどの注意喚起を行えるとよいでしょう。

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上戸彩さんの風邪予防法は毎日のうがい

 うがいと手洗いは、医療者であれば普段から身に付いた習慣である。まして空気の乾燥する冬季には、なお重要となる。医療機関、家庭で愛用されてきたうがい薬ポビドンヨード(商品名:イソジン)を製造するムンディファーマ株式会社は、2018年10月11日、イソジンの新製品の記者発表会を都内で開催した。(写真は左からシン氏、上戸さん、木村氏) 発表会では同社の事業戦略の説明のほか、同社がパートナー契約を締結している横浜F・マリノスの現役の選手、および同社のCMに出演している女優の上戸 彩さんが応援に駆け付けた。新しいイソジンは無色でさわやかな風味 はじめに同社のラマン・シン氏(最高経営責任者)と木村 昭介氏(代表取締役社長)が、事業紹介と今後の展望を説明した。 同社は、イソジンをはじめとする「コンシューマヘルスケア」のほか、「疼痛」「がん」などの医療分野でわが国に製品提供を行っている。とくに総合感染対策としてうがい薬「イソジン」は長年愛され、医療現場だけでなく、家庭でも使用されている。 事業説明では、うがい薬市場がすこしずつ縮小していく中でイソジンは二桁の成長を遂げていること、そして、今後は「定期的なうがい習慣のない人々への浸透をいかに図っていくかが課題」と語った。 つぎに横浜F・マリノスとのブレーンストーミングで誕生した製品「イソジン のど飴」を紹介。本製品は、食品に位置付けられ、のどにやさしい亜鉛とヘスペリジンが配合されている。フレ-バーは、「フレッシュレモン」「はちみつ金柑」「ペパーミント」の3種類が用意されている。「うがいができないとき、のどを守るのに役立つアイテム」と同社は説明するとともに、今後日本発の製品として世界展開を行うとしている。 その他、新製品のイソジンとして無色透明で、風味をつけた「イソジン クリアうがい薬」(アップル風味/マイルドミント風味)を紹介。洗面台を汚さない、消毒薬の臭いのしない製品をユーザー目線で開発したと紹介した。 説明会では、シン氏は「日本からいくつか製品のイノベーションができた。今後もイソジンのブランド力を保持しつつ、より改良を行いたい」と抱負を語り、木村氏は「感染対策にさまざまな場面で提供できる製品を作っていきたい」と述べ、説明を終えた。水うがいで防ぎ切れないときはイソジンで トークセッションでは、横浜F・マリノスの選手たちがコンディション維持のためのうがいやのどの保湿の重要性を語るとともに、同社のCMに出演中の上戸さんが登場し、自己流の風邪予防法やCM撮影の裏話を披露した。扁桃腺が腫れやすいという上戸さんは、母親として子供からのもらい風邪対策や体調維持のために、うがいやイソジンの噴霧器、のど飴を携帯することで気を付けているという。最後にメッセージとして「自分が健康だと気分がいいし、周りにも風邪などうつさないことが大事。水うがいだけでは効果がないこともあるので、イソジンなどで感染予防をしてほしい」と語り、セッションを終えた。

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もっと気軽に使う漢方薬のススメ

 2018年9月20日、Kampo academiaは第5回となるプレスセミナーを都内で開催した。今回は、「『風邪には葛根湯!?』漢方医学の視点から診る風邪治療 漢方って何だろうー和漢と中医学、そして風邪」をテーマに、身近な漢方薬の使い方について講演が行われた。年齢別の風邪への漢方薬処方 セミナーでは新見 正則氏(愛誠病院 顧問/帝京大学医学部外科 准教授/帝京大学大学院医学研究科移植免疫学/同 東洋医学 指導教授)を講師に迎え、前述のテーマでレクチャーが行われた。 わが国での漢方の概念は、大きく分けて「フローチャート」「和漢」「中医学」と3つがあると同氏は私見としつつ示した。「フローチャート」では西洋医学的に症状から漢方薬を決める。「和漢」では症状、腹診、舌診などから漢方薬を決める。「中医学」では症状、望診、聞診などの四診の次に証候名を決め、さらに治法を決め、方剤の決定にいたるというおのおの異なるプロセスだと説明した。 そして、漢方薬を使うのであれば、簡単なやり方、つまり「フローチャート」から使用する漢方薬処方を同氏は薦めている。同氏は、この考え方を「モダン・カンポウ」と名付けて、現在広く啓発を行っているという。 モダン・カンポウの特徴として、漢方特有の診療ではなく、西洋医学的な診断をすること、漢方薬を気軽に使い、効果がない、有害な場合はすぐ止めることができること、患者の満足度が高いことなどを挙げる。たとえば、風邪症状を訴える患者に対して「葛根湯(カッコントウ)」は広く使われているが、本当に風邪かどうかの試薬にもなる。効果があれば風邪症状の改善に、なければ風邪以外の診断へと進むことができるとし、診断の助けになる漢方薬の使い方を説明した。また、患者年齢ごとの使用例として、若年女性には「麻黄湯(マオウトウ)」、中年男性には「葛根湯」から「柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)」そして「小柴胡湯(ショウサイコトウ)+麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)」へ、中年女性には「麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)」から「桂枝湯(ケイシトウ)+麻黄附子細辛湯」そして「補中益気湯(ホチュウエッキトウ)+麻黄附子細辛湯」、高齢女性には「香蘇散(コウソサン)」から「参蘇飲(ジンソイン)」などを紹介した。 そのほか、漢方薬の臨床研究についても言及し、「補中益気湯」のインフルエンザへの予防効果について、内服群(n=179)と非内服群(n=179)に分けて8週間観察したところ、内服群では1例が、非内服群では7例がインフルエンザに罹患し、「補中益気湯」で予防できる可能性があるという1)。漢方薬使用の5つの効用 伝統漢方とモダン・カンポウの違いについて、同氏は次のように説明する。 伝統漢方では、漢方医が処方し、おもに煎じ薬を用いている。すべての疾患を対象に、膨大な古典の知識に基づき漢方診療を行い、長年の経験が必要とされるが、有効性は比較的高いのが特徴である。 一方、モダン・カンポウでは、西洋医が処方し、エキス剤を使用する。西洋医学で治療効果のないものをターゲットに、古典を参考にしつつ、漢方診療を行う(しかし漢方診療は必須ではない)。明日からでも処方ができ、効果がみられなければ順次処方変更ができるのが特徴という。 実際、「伝統漢方を行うとなると、膨大な知識・学習量が必要であり、漢方薬を使うことに二の足を踏んでしまう」と同氏は私見としながらも指摘する一方で、「漢方薬を使うことで『患者が喜ぶ』『外来が楽しい』『患者が離れない』『医療費の削減になる』『リスク管理になる』などの理由で漢方薬を使われた先生で止めた人はいない。漢方薬に身構えず使ってほしい」と自身の経験も含めて、漢方薬処方への思いを語った。 おわりに同氏は、「漢方薬は、西洋医学以外で唯一保険適用されている薬。問題があればすぐ止めることができる。生薬の足し算の英知である漢方薬を気軽に処方してもらいたい」と期待をのべ、講演を終えた。■参考1) Niimi M. BMJ. 2009;339:b5213.

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不適切な一般薬の販売が増加傾向 スイッチOTC化の障害となる?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第8回

一般用医薬品の販売には一定のルールがあることはご存じだと思います。しかし、そのルールは順守されているのでしょうか? 一般用医薬品の販売実態に関して、厚生労働省が一般消費者の目線で調査した結果が公表されました。厚生労働省は8月27日、2017年度の「医薬品販売制度実態把握調査」結果を公表した。PPI製剤のスイッチOTC薬化の審議にあたり問題視された「乱用のおそれがあるOTC薬を複数購入しようとしたときの対応」が不適切な例が増加したことを示した。エフェドリンやコデイン(鎮咳去痰薬に限る)などを含むOTC薬を複数購入しようとしたところ、「質問などされずに購入できた」店舗が38.8%あり、前年度より2.2ポイント増加した。(2018年8月28日付 RISFAX)調査期間は2017年11~12月で、全国5,017軒の薬局・店舗販売業の許可を取得している店舗を一般消費者である調査員が訪問し、調査しました。いわゆる“覆面調査”というものです。一般用医薬品は、薬局だけでなく店舗販売業でも販売可能ですので、その両方が調査対象となっています。主な調査項目は、従業者の区別状況、陳列・販売方法、情報提供の有無やその方法などでした。ほとんどの項目で前年とほぼ同様の結果となっていますが、幾つか残念なポイントが見受けられます。乱用の恐れがある一般薬を「質問されずに複数購入できた」約40%たとえば、エフェドリン、コデインやジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)などを含むいわゆる風邪薬を複数購入しようとした患者さんに対し、どのような対応を取ることが適切でしょうか。乱用の恐れがある一般用医薬品を必要以上に購入しようとする場合は、理由確認が必要ですが、まず1つだけ購入してもらいその後にまた症状が続いていたら相談してもらう、ひどいようなら受診勧告…など、さまざまな対応があり、答えは1つではありませんよね。この調査で不適切とされたのは「質問などをされずに複数購入できた」という場合であり、複数必要な理由を伝えたところ合理性があると判断されて購入できた、という場合も適切と判断されています。乱用の恐れがある一般用医薬品を複数購入希望の患者さんへの対応が不適切であった店舗の割合は、全体の38.8%(薬局30.4%、店舗販売業39.0%)もありました。2017年の同様の調査では36.6%でしたので、2.2%悪化しています。この数字に有意差があるかは別にして、「不適切な店舗が増加」という印象は強く、今後のスイッチOTC化の議論でまた障害になることが懸念されます。このほかにこの調査結果で私が気になったのは、「名札等により専門家の区別ができたか」という項目です。区別できた割合は、全体として79.7%(薬局73.9%、店舗販売業82.2%)で、これも前年度の83.2%から下がっていました。名札を着けるのは、医薬品販売だけでなく、患者さんとの関わりの中で基本中の基本だと思います。名札なんて着けなくても…と思っている店舗が2割程度あるようですが、このくらいのルールも守れないのか! 要指導・一般用医薬品の販売はやっぱり不安だな…、と思われても仕方ないと思います。これまでのスイッチOTC化の議論を見ていると、大きな法人か個店かどうかにかかわらず、一店舗一店舗の対応が薬局全体への信頼や今後の方向性に影響していることがわかります。まずはこのアンケートで調査された項目の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。

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Dr.小松のとことん病歴ゼミ

第1回 肩こりで帰してはいけない頸部痛 第2回 パニック障害の再発?それとも… 第3回 その「だるい」本当はいつから?第4回 ちょっと尻もちをついただけで骨折? 第5回 えっ?25歳男性が母親と受診 第6回 「風邪ひいちゃったみたい」の訴えの危うさ “病歴聴取のみで約8割の診断がつく”と言われます。しかし実際は、検査値や画像所見を重視して病歴聴取を漠然と行っている人も多いのではないでしょうか。同じ患者、同じ時間内でも、医師の問診技術によって引き出せる情報の量は大いに変わってきます。そこで得られた病歴から適格に診断を絞り込むことは、その後の患者のスムーズな治療につながります。臨床医に欠かせない問診技術を鍛える病歴ゼミ。番組では、講師である小松孝行先生が自らさまざまな患者に扮し、研修医から問診を受け、その良し悪しをフィードバック。「自分ならばこう聞く!」とぜひツッコミながらご覧ください。第1回 肩こりで帰してはいけない頸部痛 診断に直結する病歴聴取のスキルを鍛える新番組スタート!診断に際して、検査値や画像所見を重視して病歴聴取を軽視してはいませんか。病歴こそがもっとも重要な診断材料であり、それだけで8割方の診断はつくといわれます。しかし、Onsetの時期や発症様式などの重要な情報を得られるかは、医師の問診技術にかかっています。この番組では講師である小松孝行先生が自らさまざまな患者に扮し、研修医から問診を受け、その良し悪しをフィードバックしながら問診の進め方、見逃してはいけないポイントを解説します。第2回 パニック障害の再発?それとも… 診断に直結する病歴の聴取スキルを鍛える病歴ゼミ。今回Dr.小松はパニック障害の既往のある女性に扮します。患者が解釈モデルを持っている場合、そのバイアスに引っ張られずに、冷静に情報を引き出していくことが重要です。以前の症状とどこが似ていて、どこが違うのか、会話の流れのなかで巧みに探っていきましょう。臨床で“差がつく”問診力をアップするヒントが満載です!第3回 その「だるい」本当はいつから?今回Dr.小松は2ヵ月前から倦怠感のある65歳男性に扮します。主訴は倦怠感。このようなぼんやりした訴えの裏にある疾患を、普段の問診でどこまで追求できていますか?病歴聴取の鍵は本当のOnsetがいつなのかを明白にすること。「夏に風邪をひいたような…」そんな季節ワードも患者がいつまで健康だったかを示す重要なヒントです!第4回 ちょっと尻もちをついただけで骨折? 今回Dr.小松が扮するのは圧迫骨折らしい症状の60歳男性。ちょっと尻もちをついたのがきっかけと言うが…。病歴聴取では患者の病態がエピソードと合わないとき、違和感を抱けるかというのも重要なポイントです。Onsetは本当に尻もちなのか、骨折の裏に隠された真の原因を問診で突き止められるか!?臨床で“差がつく”問診力をアップするヒントが満載です!第5回 えっ?25歳男性が母親と受診母親の前では言えないこと、誰にでもありますよね?今回Dr.小松は母親と一緒に受診する25歳男性を熱演。問診に積極的ではない彼にはどうやら秘密がありそうです。同伴者がいる場合にうまくセパレートする方法、そして性交歴などのデリケートな質問に患者が答えやすくなるコツを伝授します!第6回 「風邪ひいちゃったみたい」の訴えの危うさ 診断に直結する病歴の聴取スキルを鍛える病歴ゼミ。最終回ではDr.小松が風邪症状を訴える80歳女性に扮します。患者の「風邪ひいちゃったみたい」は決して鵜呑みにしてよいものではありません。とくに高齢者の場合は、自覚症状が少なかったり、自発的に話してくれなかったりするため注意が必要です。普段の元気な姿を想像しながら聴く!高齢者からの聴取のコツを伝授します!

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