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脳梗塞急性期の積極的な降圧治療は2週間後の転帰を改善するか?/JAMA

 虚血性脳卒中患者の急性期における降圧治療は、死亡や身体機能障害の抑制に寄与しないことが、米国・チューレーン大学のJiang He氏らが行ったCATIS試験で示された。高血圧患者や脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴を有する正常血圧者では、降圧治療により脳卒中のリスクが低減することが報告されている。脳卒中の1次および2次予防における降圧のベネフィットは確立されているが、血圧の上昇がみられる急性虚血性脳卒中患者に対する降圧治療の効果は知られていないという。JAMA誌オンライン版2013年11月17日号掲載の報告。急性期の降圧治療の予後改善効果を無作為化試験で評価 CATIS(China Antihypertensive Trial in Acute Ischemic Stroke)試験は、急性虚血性脳卒中患者に対する降圧治療の有用性を評価する多施設共同単盲検無作為化試験。発症後48時間以内、血圧の上昇が認められる虚血性脳卒中患者を対象とした。 被験者は、入院期間中に降圧治療を施行する群または施行しない群に無作為に割り付けられた。降圧治療群は、割り付け後24時間以内に収縮期血圧を10~25%低下させ、7日以内に140/90mmHgを達成し、これを入院期間中維持することを目標とした。 割り付け情報は、治療医や看護師にはマスクされなかったが、患者やデータの収集を行った研究者にはマスクされた。主要評価項目は、割り付け後14日以内の死亡、14日時の重篤な身体機能障害(修正Rankinスケール:3~5)、14日以前に退院した場合は退院時の重篤な身体機能障害とした。収縮期血圧は有意に低下したが 2009年8月~2013年5月までに、中国の26施設から4,071例が登録され、降圧治療群に2,038例が、対照群には2,033例が割り付けられた。全体の平均年齢は62.0歳、男性が64.0%で、入院時に49.1%が降圧薬を投与されており、77.9%が血栓性脳卒中であった。 割り付けから24時間以内に、平均収縮期血圧は降圧治療群が166.7mmHgから144.7mmHgまで12.7%低下したのに対し、対照群は165.6mmHgから152.9mmHgまで7.2%の低下であり、有意な差が認められた(群間差:-5.5%、95%信頼区間[CI]:-4.9~-6.1、絶対差:-9.1mmHg、95%CI:-10.2~-8.1、p<0.001)。また、割り付けから7日の時点で、平均収縮期血圧は降圧治療群が137.3mmHg、対照群は146.5mmHgと、有意差がみられた(群間差:-9.3mmHg、95%CI:-10.1~-8.4、p<0.001)。 このように急性期の降圧効果に差を認めたにもかかわらず、14日または退院時の主要評価項目の発生には両群間に差はなかった(イベント発生数:降圧治療群683件、対照群681件、オッズ比:1.00、95%CI:0.88~1.14、p=0.98)。さらに、副次評価項目である3ヵ月後の死亡または重篤な身体機能障害の発生も、両群で同等であった(イベント発生数:降圧治療群500件、対照群502件、オッズ比:0.99、95%CI:0.86~1.15、p=0.93)。 著者は、「急性虚血性脳卒中患者では、降圧治療により血圧の低下を達成しても、入院中は降圧治療を中止した患者と比較して、急性期の死亡や重篤な身体機能障害の抑制にはつながらないことが示された」と結論し、「本試験は中国人患者のみを対象としており、全体の約3分の1にヘパリンが投与されるなど欧米の急性脳卒中の管理とは異なる部分もあるが、以前の検討では中国人と欧米人で急性脳卒中と血圧低下の関連に差はないことが報告されている」と考察している。

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腎動脈ステントは薬物療法を超えるか?/NEJM

 アテローム硬化性腎動脈狭窄で、高血圧あるいは慢性腎臓病を有する患者への腎動脈ステントは、薬物療法単独と比べて臨床イベントの予防に関して有意なベネフィットをもたらさないことが明らかになった。米国・トレド大学のChristopher J. Cooper氏らによる多施設共同オープンラベル無作為化対照試験「CORAL」の結果、報告された。高齢者に一般的にみられるアテローム硬化性腎動脈狭窄について、先行研究2件において、腎動脈ステントは腎機能改善にベネフィットがないことが示されていた。しかし、重大有害腎・心血管イベント予防に関しては不明であったことから本検討が行われた。NEJM誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。947例を薬物療法+ステント群と薬物療法単独群に無作為化して追跡 CORAL試験は、2005年5月16日~2010年1月30日の間に、5,322例がスクリーニングを受け、適格であった947例を無作為化して行われた。対象は、重症腎動脈狭窄で(血管造影で80%以上狭窄あるいは60~80%未満狭窄で圧格差20mmHg以上と定義)、高血圧(2剤以上の降圧薬服用だが収縮期血圧[SBP]155mmHg以上と定義)あるいは慢性腎臓病(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)を有する患者であった。 被験者は、薬物療法+腎動脈ステントを受ける群(467例)と薬物療法のみを受ける群(480例)に割り付けられ、重大心血管・腎イベント(心血管あるいは腎イベントが原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院、進行性腎障害、腎代替療法の必要性の複合エンドポイント発生)について2012年9月28日まで追跡を受けた。 評価は、試験開始後に同意を得ていた1施設16例を除外した931例(ステント群459例、薬物療法単独群472例)をintention-to-treat解析して行われた主要複合エンドポイント、全死因死亡の発生に有意差みられない 追跡期間中央値は、43ヵ月(範囲:31~55ヵ月)だった。 ステント群は、狭窄が68±11%から16±8%に有意に改善した(p<0.001)。透析導入は、両群共に無作為化後30日以内ではいなかったが、ステント群で30~90日に1例で開始となった。また薬物療法単独群で、無作為化当日に致死的脳卒中が1例発生した。 主要複合エンドポイントの発生は、両群間で有意差はみられなかった(ステント群35.1%vs. 薬物療法単独群35.8%、ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.76~1.17、p=0.58)。 また、主要エンドポイントの各項目についても有意差はなかった。全死因死亡についても有意差はなかった(同:13.7%vs. 16.1%、0.80、0.58~1.12、p=0.20)。 ベースライン時の被験者の降圧薬服用数は、2.1±1.6剤だった。試験終了時の同服用数は、ステント群3.3±1.5剤、薬物療法単独群3.5±1.4剤で両群間に有意差はなかった(p=0.24)。 SBPの降圧は、ステント群16.6±21.2mmHg、薬物療法単独群15.6±25.8mmHgで、縦断的解析の結果、わずかだがステント群のほうが降圧効果は大きかった(-2.3mmHg、95%CI:-4.4~-0.2mmHg、p=0.03)。両群の差は追跡期間中、一貫してみられた。

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糖尿病患者の腎保護作用を期待できる降圧薬は?(コメンテーター:浦 信行 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(157)より-

まず、在来の臨床研究では尿蛋白低減効果をエンドポイントとしたものが多いが、このメタ解析のエンドポイントをハードエンドポイントである血清クレアチニン濃度の倍化、末期腎不全、死亡としたことに意義がある。われわれの最終目標は腎障害進展抑制、生命予後改善だからである。 結果は、クレアチニンの倍化に関しては、ACE阻害薬でのみ有意な抑制効果が認められた。また、有意とはならなかったものの、ACE阻害薬が他剤、とりわけARBよりも数字的には良好であったとのことである。ACE阻害薬の糖尿病性腎症に対する効果を改めて示したことには、大きな価値がある。 しかし、本来であればACE阻害薬とARB間でのhead to headの臨床研究で、血圧値をマッチさせた成績が最も価値がある。そのような研究で大規模なものが極めて少ないため、メタ解析で評価するのはやむを得ないが、限界があることを留意した解釈が必要である。著者も述べているように、メタ解析では同じクラスの薬剤でも種類が違い、使用量の違いがある。従来の報告では、同じARBの中での薬剤間の差を報告したものが複数で認められる。また、降圧度や血圧値の差も検討されていない。どのような薬剤で降圧しようが、腎保護作用はまず血圧値に依存する。少なくともRA阻害薬による降圧度は、RA系阻害の程度を表すものであるから、それに差があるとすれば正当な評価はできにくくなる。 したがって、著者らも結論で述べているように、今回のメタ解析では糖尿病における腎障害進展抑制効果はACE阻害薬で明らかであった。また、ARBに関してはACE阻害薬に対する優位性は認められなかった、ということで理解できると考えられる。

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β遮断薬はメラノーマの再発・死亡リスク低下に関連

 イタリア・フローレンス大学のVincenzo De Giorgi氏らは、1993~2009年にわたる741例の連続患者を対象に、メラノーマ(悪性黒色腫)の再発および死亡に対するβ遮断薬とそのほかの降圧薬の影響について検討した結果、β遮断薬は同リスク低下と関連しているという以前と同様の所見が得られたことを報告した。著者は、今回の結果は、その関連をより確定的なものとするために、無作為化試験による検討が必要であることをも強く示す結果であると述べている。Mayo Clinic Proceedings誌2013年11月号の掲載報告。 検討は、1993年1月1日~2009年12月31日の間、フローレンス大学の皮膚科部門でメラノーマと診断された全連続患者のデータを入手して行われた。 被験者は、ベースライン時にメラノーマの既往とその他難病を有する場合は除外された。また診断時に、臓器、リンパ、転移巣が認められた患者も除外された。 主な結果は以下のとおり。・メラノーマを有していた741例の連続患者のうち、β遮断薬を1年以上服用していた患者(大半が高血圧の治療目的のため)は、79例(11%)であった。非服用患者は662例(89%)であった。・多変量Coxモデル解析の結果、服用群はフォローアップ中央値4年後の全生存率が有意に改善された(p=0.005)。・β遮断薬服用者は、年間38%ずつリスクが減少していた。・高血圧の罹患、降圧薬服用が1年以上、あるいはそのほかの頻度の高い薬物服用は、メラノーマの患者の良好なアウトカムと関連がみられなかった。

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腎除神経術の降圧効果は3年間持続、しかし降圧薬使用量の減少はみられず(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(148)より-

利尿薬を含む3剤以上の降圧薬を使用しているにも関わらず収縮期血圧が160mmHg以上の、いわゆる“治療抵抗性高血圧”に対する、腎除神経術(RND)3年間の追跡結果である。 RNDの効果は一過性であるとの見方もあったが、結果的には降圧効果は3年後にも持続することが確認されたという点で意義のある論文といえる。また、経年的に降圧効果が増強していく傾向も認められている点や、腎機能、年齢に関わりなく降圧効果が持続することも確認されている。さらに手技にともなう有害事象も少ないことも証明されたと報告している。 本報告は、試験可能であった150例のうち、途中で試験完遂した35例、データ欠落や脱落の27例などは当然除かれており、3年間追跡しえた88例のみでの分析であることは、留意しておく必要がある。 また、降圧薬の使用量がRND後経年的に増えているのも気になる。術前に適切な治療が行われていたのか否かも問題となる。とくに本研究は、スポンサーであるMedtronic社がデータ収集と解析を行っている点も気になる点である。 しかし、これらのlimitationを考慮しても、RNDが治療抵抗性高血圧患者に対して福音であることはまちがいないであろうが、わが国ではなかなか治験が進行していないようである。その理由として、わが国のような家庭血圧や24時間血圧の臨床応用が進んでいる国では、本当の意味での治療抵抗性患者がそれほど多くないか、あるいはいたとしてもすでに腎機能が悪化しており、RND適応基準を満たさなくなっている症例が多いのではないかと推測される。※コメントの一部に誤りがありましたので訂正します。関係者にお詫び申し上げます。

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治療抵抗性高血圧患者への腎アブレーション:施行3年後の成績/Lancet

 治療抵抗性高血圧患者に対するラジオ波アブレーション腎除神経術(RDN)は、3年時点でも十分な降圧効果が認められたことが報告された。オーストラリア・モナシュ大学のHenry Krum氏らが同施術患者を長期に追跡したSymplicity HTN-1試験の最終報告として発表した。すでに同試験における術後1ヵ月、12ヵ月時点の評価において、同施術は治療抵抗性高血圧患者の血圧を大幅に下げることが示されていた。Lancet誌オンライン版2013年11月6日号掲載の報告より。有効性と安全性を6ヵ月ごとに評価し1年ごとに報告 Symplicity HTN-1試験は、長期3年にわたる有効性と安全性について評価することを目的としたオープンラベル試験で、オーストラリア、ヨーロッパ、米国の19施設で登録され153例のうち、同意を得た111例がフォローアップを受けた。 被験者は、適量投与の利尿薬を含む、少なくとも3剤併用降圧治療を受けている収縮期血圧160mmHg以上の患者を適格とした。 フォローアップでは、6ヵ月ごとに診察室血圧と安全性の評価が行われ、12ヵ月ごとに評価の報告が行われた。36ヵ月時点の血圧の低下-32.0/-14.4mmHg、10mmHg超降圧達成93% 36ヵ月時点で、患者88例から完全なデータを入手できた。それら患者のベースライン時の平均年齢は57歳(SD 11)、女性患者が37例(42%)、2型糖尿病を有する患者は25例(28%)、平均eGFR値85(SD 19)mL/分/1.73m2、平均血圧値175/98(SD 16/14)mmHgであった。 結果、36ヵ月時点でも有意な変化が、収縮期血圧(-32.0mmHg、95%信頼区間[CI]:-35.7~-28.2)、拡張期血圧(-14.4 mmHg、同:-16.9~-11.9)にみられた。 収縮期血圧の10mmHg超降圧を達成した患者は、1ヵ月時点で69%、6ヵ月時点81%、12ヵ月時点85%、24ヵ月時点83%、36ヵ月時点では93%だった。また36ヵ月時点の20mmHg超降圧達成患者は77%だった。 降圧効果は、年齢、腎機能、2型糖尿病有無の別でみた場合も有意な格差はみられなかった。 服用降圧薬の平均剤数は、ベースライン時5.0剤(SD 1.7)(全被験者)、36ヵ月時点5.2剤(SD 1.7)(同時点評価者)だった。 安全性については、追跡期間中、腎動脈狭窄1例、死亡3例が発生したがRDNとは無関係だった。

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CKDでも、RA系阻害薬にBeyond Blood Pressure Lowering効果は認められない。(コメンテーター:石上 友章 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(146)より-

これまでの多くの基礎研究の成果から、RA系阻害薬には、他のクラスの降圧薬にはないextraordinaryな効果があるとされてきた。 ARBを対象にしたKyoto Heart Studyや、Jikei Heart Studyなどの日本発臨床研究は、このような基礎研究の成果によって導かれたConceptを証明する、いわばProof Of Conceptとなる研究であり、その意味で画期的であったが、データ改ざんによる不正によって論文撤回という事態を招いてしまった。 臨床研究であっても、基礎研究であっても、『RA系阻害薬に降圧を超えた効果があるか?』というClinical Questionに対する答えが複数存在するわけではない。基礎研究であるならば、対象となる実験動物特有のヒトと異なる生物学的背景(マウスには、レニンが複数存在するものもあり、I型アンジオテンシン受容体は2種類あるなど、必ずしもヒトと同一のRA系ではない)であったり、人為的な実験条件による結果のバイアスがもたらした誤った結論である可能性も無視はできない。 EBMでは、エビデンスのピラミッドとして一次文献、二次文献に階層的な地位を与えている。ランダム化比較試験の結果はEBMの最も重要な一次文献であるが、一次文献を集めたメタ解析、システマチック・レビューの結果が、より上位のエビデンスと考えられている。 BPLTTC(Blood Pressure Lowering Treatment Trialist Collaboration)は、WHOとISHという公的な団体が、降圧薬の薬効に関して、中立な立場から研究・解析を行ったメタ解析である1)。これまでに、ACE阻害薬とARBについて、虚血性心疾患をエンドポイントにして、降圧効果と心血管イベント抑制効果の違いを明らかにする成果を上げている2)。BPLTTCによる解析の精度を示すエピソードとして、ONTARGET研究の結果が両薬剤の回帰直線上にプロットされることがあげられ、BPLTTCによる解析がランダム化比較試験の結果を予測しうる精度をもっていると考えられる。 今回の研究は、BPLTTCグループのオーストラリア・シドニー大学のV Perkovic氏らによる、CKDに対する降圧薬の効果についてのメタ解析である。結果は、降圧による心血管イベント抑制効果を支持したが、降圧薬のクラスエフェクトは認められなかった。 CKD診療のミッションは、『心血管イベント抑制』と『腎保護』の両立にある。『腎保護』について、直近のVA NEPHRON-D研究の結果だけでなく、多くの研究がRA系阻害薬の限界を明らかにしている3)。降圧だけが治療の選択肢ではないが、『腎保護』に対する降圧の有効性について、BPLTTCによる質の高いメタ解析が待たれる。

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糖尿病患者へのベスト降圧薬は?/BMJ

 糖尿病患者における腎保護効果はACE阻害薬のみで認められ、ARBがACE阻害薬と比べて良好な効果を示すというエビデンスはみつからなかったことが、台湾・亜東記念医院のHon-Yen Wu氏らによるシステマティックレビューとベイズネットワークメタ解析の結果、報告された。結果を踏まえて著者は「薬剤コストを考慮した場合、今回の知見において、糖尿病患者の降圧薬の第一選択はACE阻害薬とすることを支持するものであった。そして十分な降圧が得られない場合は、ACE阻害薬+Ca拮抗薬の併用療法とするのが好ましいだろう」と結論している。BMJ誌オンライン版2013年10月24日号掲載の報告より。単独・併用を含む降圧治療についてベイズネットワークメタ解析 コストを考慮しない場合、主要なガイドラインでは、糖尿病を有する高血圧患者の降圧薬の第一選択は、ACE阻害薬またはARBを提唱している。しかしこれまでACE阻害薬とARBを比較した臨床試験は稀有であり、糖尿病患者に関する両薬剤間の腎保護効果の差は不確定で、RA系阻害薬との併用療法の選択についてコンセンサスは得られていなかった。 研究グループは本検討で、糖尿病患者における異なるクラスの降圧薬治療(単独・併用含む)の、生存への影響および主要腎転帰への効果について評価することを目的とした。 PubMed、Medline、Scopus、Cochrane Libraryの電子データベースで2011年12月までに公表された文献を検索した。適格とした試験は、糖尿病高血圧患者を対象とし、追跡期間が12ヵ月以上の降圧治療(ACE阻害薬、ARB、α遮断薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、利尿薬、およびこれらの併用)の無作為化試験で、全死因死亡、透析導入または血清クレアチニン濃度倍増を報告していたものとした。 ベイズネットワークメタ解析では、直接的および間接的エビデンスを組み合わせ、治療間の効果の相対的評価、および保護効果に基づく治療ランキングの見込みを算出した。死亡抑制の最善治療はACE阻害薬+Ca拮抗薬 解析には、63試験・3万6,917例が組み込まれた。死亡例は2,400例、透析導入は766例、血清クレアチニン濃度倍増報告例は1,099例だった。 血清クレアチニン濃度倍増について、プラセボとの比較で有意に減少したのは、ACE阻害薬のみであった(オッズ比[OR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.32~0.90)。治療戦略間の比較(ACE阻害薬vs. ARB)では有意差は示されなかったが、最善の治療である確率はACE阻害薬が最も高かった。 末期腎不全(ESRD)への降圧治療の効果については、その転帰に関して治療間の有意差はみられなかったが、ESRD発生を最も抑制したのはACE阻害薬であった(OR:0.71)。次いでわずかな差でARBが続いていた(OR:0.73)。 死亡率で有意差が示されたのは、β遮断薬のみであった(同:7.13、1.37~41.39)。 ACE阻害薬の薬効は必ずしも有意ではなかったが、3つのアウトカムについて一貫してARBよりも効果が優れることを示す高位の位置を占めていた。 プラセボと比較した死亡を抑制する最善の治療は、ACE阻害薬+Ca拮抗薬が、統計的有意差は示されなかったが最も高率(73.9%)であることが示された。次いで、ACE阻害薬+利尿薬(12.5%)、ACE阻害薬(2.0%)、Ca拮抗薬(1.2%)、そしてARB(0.4%)であった。

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直接的レニン阻害薬に、降圧を超えたプラーク進展予防効果認めず(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(142)より-

 高血圧前症(prehypertension、血圧125~139/90mmHg未満)で、かつ心血管リスクを1つ以上有している冠動脈疾患症例において、直接的レニン阻害薬アリスキレンのプラーク進展予防効果をIVUSを用いて検討した試験である。 レニン-アンジオテンシン系を上流で直接的に阻害するアリスキレンは、RA系の究極の阻害薬として期待をもって登場したが、残念ながら臨床試験ではことごとくその有用性は否定されている。 本報告もその1つであり、血圧はプラセボ群に比べて若干下げているものの、プラークの退縮はまったく認めれなかった。ただし糖尿病患者以外では、RAS阻害薬(ACE阻害薬/ARB)を服用中であることも考慮すると、RAS阻害薬に直接的レニン阻害薬の併用は動脈硬化の進展予防をもたらさないと解釈すべきかもしれない。RAS阻害薬治療を受けている2型糖尿病患者において、直接的レニン阻害薬追加は心血管イベントや腎イベントの抑制に繋がらず、むしろ高カリウム血症などの有害事象を生じるとの結果が最近ALTITUDE試験の結果で示されているが、本試験では、RAS阻害薬治療中の糖尿病症例は除外されている。 本試験では、IVUSを用いてプラークの退縮効果を観察することで、降圧以外の抗炎症効果によるプラーク退縮の可能性を検討したが、血圧が若干下がったにも関わらず進展予防効果が認められなかったことは、降圧以外の心血管系へのベネフィットは否定されたと考えるべきであろう。

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CKD患者、血圧5mmHg下げれば、心血管イベント17%減る/BMJ

 降圧治療の心血管系への効果について、慢性腎臓病(CKD)の有無別で検証したメタ解析の結果が報告された。オーストラリア・シドニー大学のV Perkovic氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaborationによる解析報告で、腎機能レベルを問わず、収縮期血圧(SBP)5mmHg低下につき主要心血管イベントが6分の1抑制されることが示された。これまでガイドラインでは、CKD患者への降圧も推奨はされていたが、エビデンスは限定的であった。今回の解析の結果を踏まえて著者は「わずかでも推定糸球体濾過量(eGFR)が低下した人への降圧治療は心血管イベントを予防する有効な戦略である」と結論している。また、降圧薬のクラスエフェクトの解析も行われたが、エビデンスが示されず、「CKD患者の心血管イベント予防について、特定クラスの薬を優先的に選択することを支持するエビデンスは少しもない」とも結論している。BMJ誌オンライン版2013年10月3日号掲載の報告より。CKD 3万295例のデータを含む26試験のデータをメタ解析 研究グループは、CKD有無別でみた降圧と主要心血管イベントとの関連について無作為化試験を対象としたメタ解析を行った。解析は、プラセボまたはその他の降圧薬とで降圧について比較した試験、あるいは異なる降圧目標を比較した試験で、割り付け群それぞれが1,000人年以上であった試験を適格とした。 主要評価項目は、複合および個別の主要心血管イベント(脳卒中・心筋梗塞・心不全または心血管死)と全死因死亡とした。 解析には26本の試験が組み込まれた。被験者総数は15万2,290例であり、そのうち3万295例が腎機能低下例(eGFR値<60mL/分/1.73m2で定義)であった。 メタ解析は、ベースライン時の腎機能に即して行われ、ランダム効果モデルを用いて、5mmHg降圧当たりのハザード比を算出して検討した。腎機能を問わず5mmHg降圧につき約6分の1イベントを抑制 その結果、プラセボと比較して、降圧治療は、CKDの有無に関係なく主要心血管イベントを抑制した。すなわち、非CKD群(eGFR値≧60mL/分/1.73m2)のハザード比(HR)は0.83(95%信頼区間[CI]:0.76~0.90)であり、SBPの5mmHg降圧につきイベントを約6分の1抑制する効果が認められ、CKD群でも同程度であった(HR:0.83、95%CI:0.79~0.88)。効果の差についてのエビデンスは得られなかった(均一性のp=1.00)。 またこの結果は、降圧が、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、もしくは利尿薬、βブロッカーのいずれのレジメンによって図られたかを問わず同程度であった。eGFR値が異なる患者の主要心血管イベントは、クラスエフェクトが異なる降圧薬によって変化するというエビデンスは得られなかった(均一性についてすべてのp>0.60)。

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心血管疾患治療のための用量固定配合剤(FDC)投与は治療改善につながるや否や?(コメンテーター:島田 俊夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(139)より-

 本臨床試験で使用された用量固定配合剤(FDC):(アスピリン+スタチン+2種類の降圧剤2剤の組み合わせ)を用いることにより、いかなる利益と問題点が生じたかを読み取ってみたい。 UMPIRE試験はヨーロッパの3国(イギリス、アイルランド、オランダ)と、インドを対象地域とした無作為化オープンラベル盲検エンドポイント試験である。心血管疾患の既往、または5年以内に15%以上の心血管リスクを持つ受診者を対象とした。参加者を無作為に2群に割り付け、FDC群と通常治療群に群別した。FDC群は通常治療群と比較してアドヒアランス(治療遵守)の有意な改善と収縮期血圧・LDLコレステロールのわずかな低下を認めた(統計上有意)。さらに、ベースラインでのアドヒアランスが低いほどメリットが大きいことも判明した。死亡や入院頻度に差を認めなかったのは、追跡期間が短いことが影響していると推測する。 今回の検討から確実に言えることは、既存もしくは疑わしい心血管疾患患者にFDCを投与することは、アドヒアランスを改善するのに有効である。しかし、リスク因子(血圧・LDLコレステロール)に関してはその効果の差は認めるがわずかであり、死亡・入院頻度に関して差を認めなかった点は本試験の弱点となっている。通常治療群で効果が低かった理由は、おそらくアドヒアランスの不良に起因するところが大きい。FDC治療は用量固定配合剤を用いて治療を行うため、薬物選択上妥協を強いられるので、必ずしも参加者個人にとってベストの治療ではない。このようなことが相殺し合い、治療効果の差を僅かなものにした可能性を考える。 しかしながら、本試験からアドヒアランスの悪い患者への投与は治療効果を改善するので、アドヒアランス不良例ではFDCの使用が推奨される。アドヒアランスの改善が死亡・入院頻度の減少に繋がることを実証することが何よりも重要であるが、本研究からのみでは結論を得るに至らない。確実な結論を導くためには今後、もう少し長期のフォローアップが必要ではないだろうか。

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急性心筋炎を上気道炎・胃潰瘍と誤診して手遅れとなったケース

循環器最終判決平成15年4月28日 徳島地方裁判所 判決概要高血圧症で通院治療中の66歳女性。感冒症状を主訴として当該病院を受診し、急性上気道炎の診断で投薬治療を行ったが、咳・痰などの症状が持続した。初診から約2週間後に撮影した胸部X線写真には異常はみられなかったが、咳・痰の増悪に加えて悪心、食欲不振など消化器症状が出現したため、肺炎を疑って入院とした。ところが、次第に発汗が多く血圧低下傾向となり、脱水を念頭においた治療を行ったが、入院4日後に容態が急変して死亡した。詳細な経過患者情報本態性高血圧症の診断で降圧薬マニジピンなどを内服していた66歳女性経過平成9年2月19日感冒症状を主訴として来院し、急性上気道炎と診断して感冒薬を処方。その後も数回通院して投薬治療を続けたが、咳・痰などの感冒症状は持続した。3月4日胸部X線撮影では浸潤陰影など肺炎を疑う所見なし。3月6日血圧158/86mmHg、脈拍109/min。発熱はないが咳・痰が増悪し、悪心(嘔気)、食欲不振、呼吸困難などがみられ、肺全体に湿性ラ音を聴取。上腹部に筋性防御を伴わない圧痛がみられた。急性上気道炎が増悪して急性肺炎を発症した疑いがあると診断。さらに食欲不振、上腹部圧痛、嘔気などの消化器症状はストレス性胃潰瘍を疑い、脱水症状もあると判断して入院とした。気管支拡張薬のアミノフィリン(商品名:ネオフィリン)、抗菌薬ミノサイクリン(同:ミノペン)、抗菌薬フロモキセフナトリウム(同:フルマリン)、胃酸分泌抑制剤ファモチジン(同:ガスター)などの点滴静注を3日間継続した。この時点でも高熱はないが、悪心(嘔気)、食欲不振、腹部圧痛などの症状が持続し、点滴を受けるたびに強い不快感を訴えていた。3月7日血圧120/55mmHg。3月8日血圧89/58mmHg、胸部の聴診では湿性ラ音は減弱し、心音の異常は聴取されなかった。3月9日血圧86/62mmHgと低下傾向、脈拍(100前後)、悪心(嘔気)が激しく発汗も多くなった。血圧低下は脱水症状によるものと考え、輸液をさらに追加。胸部の聴診では肺の湿性ラ音は消失していた。3月10日06:00血圧80/56mmHg、顔色が悪く全身倦怠感、脱力感を訴えていた。09:30点滴投与を受けた際に激しい悪心が出現し、血圧測定不能、容態が急速に悪化したため、緊急処置を行う。13:30集中治療の効果なく死亡確認。担当医師は死因を心不全によるものと診断、その原因について確定診断はできなかったものの、死亡診断書には急性心筋梗塞と記載した。なお死亡前の血液検査では、aST、aLT、LDHの軽度上昇が認められたが、CRPはいずれも陰性で、腎不全を示す所見も認められなかった。当事者の主張患者側(原告)の主張通院時の過失マニジピン(降圧薬)の副作用として、呼吸器系に対して咳・喘息・息切れを招来し、心不全をもたらすおそれがあるため、長期投与の場合には心電図検査などの心機能検査を定期的に行い、慎重な経過観察を実施する必要があるとされているのに、マニジピンの投与を漫然と継続し、高血圧症の患者には慎重投与を要するプレドニゾロンを上気道炎に対する消炎鎮痛目的で漫然と併用投与した結果、心疾患を悪化させた入院時の過失3月6日入院時に、通院中にはなかった呼吸困難、悪心(嘔気)、食欲不振、頻脈、肺全体の湿性ラ音が聴取されたので、心筋炎などの心疾患を念頭におき、ただちに心電図検査、胸部X線撮影、心臓超音波検査を実施すべき義務があった。さらに入院2日前、3月4日の胸部X線撮影で肺炎の所見がないにもかかわらず、入院時の症状を肺炎と誤診した入院中の過失入院後も悪心(嘔気)、頻脈が持続し、もともと高血圧症なのに3月8日には89/58mmHgと異常に低下していたので、ただちに心疾患を疑い、心電図検査などの心機能検査を行うなどして原因を究明すべき義務があったが、漫然と肺炎の治療をくり返したばかりか、心臓に負担をかけるネオフィリン®を投与して病状を悪化させた死亡原因についてウイルス性上気道炎から急性心筋炎に罹患し、これが原因となって心原性ショックに陥り死亡した。入院時および入院中血圧の低下がみられた時点で心電図検査など心機能検査を実施していれば、心筋炎ないし心不全の状態にあったことが判明し、救命できた可能性が高い病院側(被告)の主張通院期間中の過失の不存在通院期間中に投与した薬剤は禁忌ではなく、慎重投与を要するものでもなかったので、投薬について不適切な点はない入院時の過失の不存在3月6日入院時にみられた症状は、咳・痰、発熱、呼吸困難などの感冒症状および腹部圧痛などの消化器症状のみであり、また、肺の湿性ラ音は肺疾患の特徴である。したがって、急性上気道炎が増悪して急性肺炎に罹患した疑いがあると診断したことに不適切な点はない。また、心筋炎など心疾患を疑わせる明確な症状はなかったので、心電図検査などの心機能検査を実施しなかったのは不適切ではない入院中の過失の不存在入院後も心筋炎など心疾患を疑わせる明確な所見はなく、総合的に判断してもっとも蓋然性の高い急性肺炎および消化器疾患を疑い、治療の効果が現れるまで継続したので不適切な点があったとはいえない死因について胃酸や胆汁の誤嚥により急速な血圧低下が生じた可能性がある。入院中、胸痛、心筋逸脱酵素の上昇、腎機能障害など心疾患を疑わせる明確な所見もみられなかったので、急性心筋炎などの心疾患であるとの確定的な診断は不可能である。死因が心筋炎によるものであると確定的に診断できないのであるから、心筋炎に対する診療を実施したとしても救命できたかどうかはわからない裁判所の判断本件では入院後に胸部X線撮影や心電図検査などが行われていないため、死因を確定することはできないが、その臨床経過からみてウイルス性の急性上気道炎から急性心筋炎に罹患し、心タンポナーデを併発して、心原性ショック状態に陥り死亡した蓋然性が高い。診療経過を振り返ると、2月中旬より咳・痰などの急性上気道炎の症状が出現し、投薬などの治療を受けていたものの次第に悪化、3月6日には肺に湿性ラ音が聴取され呼吸困難もみられたので、急性肺炎の発症を疑って入院治療を勧めたこと自体は不適切ではない。しかし入院後は、肺炎のみでは合理的な説明のできない症状や肺炎にほかの疾病が合併していた可能性を疑わせる症状が多数出現していたため、肺炎の治療を開始するに当たって、再度胸部X線撮影などを実施して肺炎の有無を確認するとともに、ほかの合併症の有無を検索する義務があった。しかし担当医師は急性肺炎などによるものと軽信し、胸部X線撮影を実施するなどして肺炎の確定診断を下すことなく、漫然と肺炎に対する投薬(点滴)治療を開始したのは明らかな過失である。さらに入院後、3月8日に著明な低血圧が進行した時点で心筋炎による心不全の発症を疑い、ただちに胸部X線撮影、心電図検査、心臓超音波検査などを実施するとともに、カテコラミンを投与するなどして血圧低下の進行を防ぐ義務があったにもかかわらず、漫然と肺炎に対する点滴治療を継続したのは明らかな過失である。そして、血圧低下の原因は、心筋炎から心タンポナーデを併発しショック状態が進行した可能性が高い。心タンポナーデは心嚢貯留液を除去することにより解消できるから、心電図検査などの諸検査を実施したうえで心タンポナーデに対し適切な治療行為を実施していれば救命できただろう。たとえ心タンポナーデによるものでなかったとしても、血圧低下やショックの進行は比較的緩徐であったことから、ただちに血圧低下の進行を防ぐ治療を実施したうえでICUなどの設備のある中核病院に転送させ、適切な治療を受ける機会を与えていれば、救命できた可能性が高い。原告側合計5,555万円の請求に対し、4,374万円の支払い命令考察今回のケースは、診断が非常に難しかったとは思いますが、最初から最後まで急性心筋炎のことを念頭に置かずに、「風邪をこじらせただけだろう」という思いこみが背景にあったため、救命することができませんでした。急性心筋炎の症例は、はじめは風邪と類似した病態、あるいは消化器症状を主訴として来院することがあるため、普段の診療でも遭遇するチャンスが多いと思います。しかも急性心筋炎のなかには、ごく短時間に劇症化しCCU管理が必要なこともありますので、細心の注意が必要です。本件でもすべての情報が出揃ったあとで死亡原因を考察すれば、たしかに急性心筋炎やそれに引き続いて発症した心タンポナーデであろうと推測することができると思います。しかし、今までに急性心筋炎を経験したことがなければ、そして、循環器専門医に気軽に相談できる診療環境でなければ、当時の少ない情報から的確に急性心筋炎を診断し(あるいは急性心筋炎かも知れないと心配し)、設備の整った施設へ転院させようという意思決定には至らなかった可能性が高いと思います。もう一度経過を整理すると、ICUをもたない小規模の病院に、高血圧で通院していた66歳女性が咳、痰を主訴として再診し、上気道炎の診断で投薬治療が行われました。ところが、約2週間通院しても咳、痰は改善しないばかりか、食欲不振、悪心などの消化器症状も加わったため、「肺炎、胃潰瘍」などの診断で入院措置がとられました。入院2日前の胸部X線撮影では明らかな肺炎像はなかったものの、咳、痰に加えて湿性ラ音が聴取されたとすれば、呼吸器疾患を疑って診断・治療を進めるのが一般的でしょう。ところが、入院後に抗菌薬などの点滴をすると「強い不快感」が出現するというエピソードをくり返し、もともと高血圧症の患者でありながら入院2日後には血圧が80台へと低下しました。このとき、入院時に認められていた湿性ラ音が消失していたため、担当医師は抗菌薬の効果が出てきたと判断、血圧低下は脱水によるものだろうと考えて、輸液を増やす指示を出しました。しかしこの時点ですでに心タンポナーデが進行していて、脱水という不適切な判断により投与された点滴が、病態をさらに悪化させたことになります。心タンポナーデでは、心膜内に浸出液が貯留して静脈血の心臓への環流が妨げられるため、心拍量が低下して低血圧が生じるほか、消化管のうっ血が強く生じるため嘔気などの消化器症状がみられます。さらに肺への血流が減少して肺うっ血が減少し、湿性ラ音が聴取されなくなることも少なくありません。このような逆説的ともいえる病態をまったく考えなかったことが、血圧低下=脱水=補液の追加という判断につながり、病態の悪化に拍車をかけたと思われます。なお本件では、肺炎と診断しておきながら胸部X線写真を経時的に施行しなかったり、血圧低下がみられても心電図すら取らなかったりなど、入院患者に対する対応としては不十分でした。やはりその背景には、「風邪をこじらせた患者」だから、「抗菌薬さえ投与しておけば安心だろう」という油断があったことは否めないと思います。普段の臨床でも、たとえば入院中の患者に一時的な血圧低下がみられた場合、「脱水」を念頭において補液の追加を指示したり、あるいはプラスマネートカッターのようなアルブミン製剤を投与して経過をみるということはしばしばあると思います。実際に、手術後の患者や外傷後のhypovolemic shockが心配されるケースでは、このような点滴で血圧は回復することがありますが、脱水であろうと推測する前に、本件のようなケースがあることを念頭において、けっして輸液過剰とならないような配慮が望まれます。循環器

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2型糖尿病のCVD予測に、6つのマーカーが有用

2型糖尿病における心血管疾患(CVD)予測因子として、NT-ProBNPを含む6つのバイオマーカーが有用であることが示唆された。関連のあったバイオマーカーは、NT-ProBNP、アポCIII(ApoCIII)、可溶性-RAGE(sRAGE)、高感度トロポニンT、IL-6およびIL-15の6つであった。演者のHelen C. Looker氏は、今回の結果についてIL-15が予測因子となることは新たな発見であり、ApoCIIIとsRAGEにおけるCVD発症との逆相関の関連についても、さらなる研究が必要であると語った。これまでに、2型糖尿病におけるCVD予測因子に有用とされるバイオマーカーは複数報告されている。そこで、CVD予測因子として有用なバイオマーカーを検索するため、5つのコホート研究の調査が実施された。本調査は、SUMMIT(SUrrogate markers for Micro- and Macrovascular hard endpoints for Innovative diabetes Tools)研究の一環である。対象となったコホート研究は、Go-DARTS(n=1,204)、スカニア糖尿病レジストリ(n=666)、MONICA/KORA(n=308)、IMPROVE(n=94)およびストックホルム研究(n=46)である。候補バイオマーカーとしては、糖尿病患者、非糖尿病患者を問わず、これまでの研究でCVDとの関連が報告された42のマーカーが選択された。年齢、性別、糖尿病罹患期間、BMI、血圧、HbA1c、トリグリセリド、LDL-C、HDL-C、eGFR、喫煙、薬物治療(降圧剤、アスピリン、脂質異常症治療薬およびインスリン使用を含む)を共変量として解析が行われた。主な結果は以下のとおり。2型糖尿病におけるCVD予測因子として、6つのバイオマーカー(NT-ProBNP、ApoCIII、sRAGE、高感度トロポニンT、IL-6、IL-15)が強い関連を認めた。●NT-ProBNP(OR = 1.74、95%CI:1.51~2.02)●ApoCIII(OR = 0.81、95%CI:0.73~0.91)●sRAGE(OR = 0.86、95%CI:0.78~0.96)●高感度トロポニンT(OR = 1.28、95%CI:1.12~1.47)●IL-6(OR = 1.19、95%CI:1.07~1.33)●IL-15(OR = 1.16、95%CI:1.05~1.28)NT-proBNPおよび高感度トロポニンTが2型糖尿病におけるCVD発症に関連していることが明らかになった。IL-6は一般的なCVD予測因子としても知られているが、2型糖尿病患者においても同じくCVD予測因子となることが本調査で確認された。IL-15と2型糖尿病におけるCVD発症の関連性が、今回新たに報告された。ApoCIIIとsRAGEにおいてCVD発症と逆相関の関連が示唆された。Looker氏は「2型糖尿病患者におけるCVD予測因子となるマーカーが、今後の研究によって、さらに明確化されることを願っている」と講演を終えた。

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医師個人への特別報酬が降圧治療の質を改善させた/JAMA

 高血圧治療について、特別報酬を医師個人、診療所あるいは両者の、いずれにつけると質的改善の効果があるのかを検討した結果、医師個人へつけることのみ、良好な血圧コントロール達成もしくは努力への有意な増大がみられたことが示された。また特別報酬をいずれにつけても、つけなかった対照群と比較して、ガイドラインで推奨されている薬物療法の使用が有意に増大することはなく、低血圧症の発症も増大しなかったという。米国・マイケル E. デバキー退役軍人(VA)医療センターのLaura A. Petersen氏らが無作為化試験を行った結果、報告した。JAMA誌2013年9月11日号掲載の報告より。特別報酬の効果を、医師個人vs.診療所vs.両者の支払先別で検証 研究グループは、ガイドライン推奨の高血圧治療実施に対して特別報酬を支払うことの効果について検討する、VA外来専門クリニック12施設を対象としたクラスター無作為化試験を行った。試験は、5つの特別報酬対象期間とその後12ヵ月の非介入期間からなり、83人のプライマリ・ケア医と42人の非医師(看護師、薬剤師など)が参加した。 試験では、特別報酬の支払いについて、医師個人レベル(19例)、診療所レベル(20例)、または両者に支払う(19例)という支払い群と、対照群として支払いなし群(19例)を設定した。特別報酬は4ヵ月ごとに支払われた。 試験は2007年2月に、まず参加者に対して特別報酬支払いおよび割り付け情報を含めた本試験概略の説明・講習が行われ、同年8~11月をベースライン期間とし、その後2008年4月から介入(4ヵ月を1期間とする)が開始された。2010年4月に最後のフィードバックが行われ、その後12ヵ月間を非介入期間として治療の継続性について評価した。 主要評価項目は、ガイドライン推奨の血圧閾値を達成した患者数、あるいは血圧コントロール不良に対して適切な治療を受けている患者数、またはガイドライン推奨薬物療法の処方を受けている患者数、および低血圧症を発症した患者数とした。血圧コントロール達成・努力への変化、医師個人群でのみ有意に変化 本試験期間中に支払われた特別報酬の平均総額(SD)は、医師個人群2,672(153)ドル、診療所群1,648(248)ドル、複合群に対しては4,270(459)ドルであった。 血圧コントロールおよび適切治療に関するベースラインからの変化値(達成患者・適切治療中患者数の変化を%で評価)は、対照群(86%→86%、0.47%増大)と比較して、医師個人群でのみ、有意な増大がみられた(75%→84%、8.84%増大、対照群との変化の格差は8.36%、同格差のp=0.005)。診療所群の変化値は3.70%(80%→85%、同格差のp=0.26)、複合群は同5.54%(79%→88%、同格差のp=0.09)で有意差はみられなかった。 一方で、ガイドライン推奨薬物療法の利用については、対照群(63%→72%、4.35%増大)と比較していずれの群も増大はしていたが、有意差はみられなかった。医師個人群は9.07%増大(61%→73%、格差のp=0.09)、診療所群4.98%増大(56%→65%、格差のp=0.81)、複合群7.26%増大(65%→80%、格差のp=0.30)だった。 また、低血圧症の発生についても有意な増大はみられなかった(介入群対対照群の発生比1.2%vs. 1.4%、p=0.18)。 なお特別報酬の効果は、非介入期間後は継続性がみられなかった。 著者は、今回得られた所見に関与する因子について、さらなる検討にて調べることが必要だとまとめている。

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高血圧・糖尿病患者のアドヒアランスは退職後に低下する

 日常生活の変化が、服薬アドヒアランスにどの程度影響するのかは不明である。ロンドン大学のMika Kivimaki氏らは、高血圧や2型糖尿病患者における服薬アドヒアランスの変化に退職が関連しているかどうかを調査した。その結果、高血圧では男女とも、2型糖尿病では男性において退職後の服薬アドヒアランスの低下が認められた。Canadian Medical Association Journal誌オンライン版2013年9月30日版に掲載。 著者らは、フィンランドにおけるFinnish Public Sector studyの参加者のデータを1994年~2011年の国内処方箋データと結び付け、高血圧患者3,468人と2型糖尿病患者412人について、退職前3年間と退職後4年間追跡した(平均追跡期間6.8年)。主要アウトカムは、服薬アドヒアランスの低い(治療日数の40%未満)患者の割合で、処方箋データを用いて調査した。 主な結果は以下のとおり。・退職前の低アドヒアランスの患者の割合は、高血圧の男性および女性で6%、2型糖尿病の男性で2%、2型糖尿病の女性で4%であった。・男性において、退職は、降圧薬(オッズ比[OR]:1.32、95%信頼区間[CI]:1.03~1.68)と糖尿病治療薬(OR:2.40、95%CI:1.37~4.20)の低アドヒアランスのリスク増加に関連していた。・女性では、低アドヒアランスのリスク増加は、降圧薬(OR:1.25、95%CI:1.07~1.46)のみでみられた。・この結果は、年齢層、社会経済的地位または合併症を問わず、差は認められなかった。・今回の知見が確証された場合、退職後のアドヒアランス低下を減じるための介入により、高血圧や糖尿病治療の臨床的アウトカムを改善するかどうかを検証する無作為化比較試験が必要である。

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高血圧患者では慢性腰痛が少ない

 疫学先行研究において、血圧と、片頭痛や頭痛の有病率は逆相関であることが報告されているが、腰痛に関しても同様の関係が示された。ノルウェー・オスロ大学病院のIngrid Heuch氏らによる検討の結果で、「血圧の上昇に伴って疼痛の知覚が低減するという高血圧による痛覚鈍麻の理論は、一貫していることが確認された」と結論し、「こうした反応は、長期にわたって疼痛に苦しむ患者の一種の防御反応かもしれない」と述べている。European Journal of Pain誌オンライン版2013年9月9日の掲載報告。 研究グループは、まず横断研究として、ノルウェーのHUNT2研究(1995~1997年)における降圧薬未使用の3万9,872例について、血圧と慢性腰痛との関連を調べた。また、HUNT3研究(2006~2008年)において、ベースライン時に腰痛がない1万7,209例と腰痛を有する5,740例について、同様の関連を前向きに調査した。 主な結果は以下のとおり。・横断研究では、男女いずれにおいても、収縮期血圧、拡張期血圧および脈圧の3つの血圧指標すべてについて、腰痛有病率との逆相関が認められた。・前向き研究では、無症状の女性において、ベースライン時の脈圧および収縮期血圧と腰痛リスクとの逆相関が認められた(脈圧10mmHg上昇のオッズ比[OR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.89~0.98、p=0.007/収縮期血圧10mmHg上昇のOR:0.95、95%CI:0.92~0.99、p=0.005)。・一方、ベースライン時に腰痛を有する患者においては、疼痛の発生との関連は示されなかった。・以上を踏まえて著者は、「高血圧による痛覚鈍麻の理論は一貫していることが確認された。すなわち、血圧の上昇は疼痛知覚の低減を予測するものであり、おそらくそれは長期にわたって疼痛に苦しむ患者の一種の防御反応である可能性がある」とまとめている。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?

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さすがに4剤を1つの配合剤にすると服薬継続率も良くなるだろう/JAMA

 心血管疾患(CVD)またはその高リスクを有する患者への降圧・脂質低下・抗血小板薬の固定用量配合剤投与(fixed-dose combinations:FDC)治療戦略は通常ケアと比較して、アドヒアランスを有意に改善すること、血圧と脂質の臨床値の改善は有意だがわずかであったことが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのSimon Thom氏らによる無作為化試験「UMPIRE」の結果、示された。CVD患者の大半は、推奨薬物療法が長続きしない。FDCによるアドヒアランス改善効果はその他領域で報告されており、心血管系FDCについてはこれまで、プラセボあるいは未治療と比較した短期効果の検討は行われていた。JAMA誌2013年9月4日号掲載の報告より。FDC治療と通常ケアを比較、アドヒアランスと重大リスク因子の改善を評価 UMPIRE試験は、インドおよび欧州で2010年7月~2011年7月にCVD既往またはそのリスクを有する患者2,004例を登録して行われた非盲検無作為化エンドポイント盲検化試験であった。 試験は、長期アドヒアランスの改善についてFDC(アスピリン、スタチン、降圧薬2剤)と通常ケアを比較することを目的とし、治療の改善および2つの重大なCVDリスク因子(収縮期血圧[SBP]、LDLコレステロール[LDL-C])について評価した。 被験者は、無作為に1,002例が(1)アスピリン75mg+シンバスタチン40mg+リシノプリル10mg+アテノロール50mg、または(2)アスピリン75mg+シンバスタチン40mg+リシノプリル10mg+ヒドロクロロチアジド12.5mgのいずれかのFDC群に割り付けられ、残る1,002例は通常ケア群に割り付けられた。 主要評価項目は、自己申告に基づく治療アドヒアランスと、SBPとLDL-Cのベースラインからの変化とした。アドヒアランスは有意に改善、SBPとLDL-Cは有意だがわずかな改善 被験者2,004例のベースライン時の平均血圧値は137/78mmHg、LDL-C値91.5mg/dLで、抗血小板薬、スタチン薬、2剤以上の降圧薬を服用していたのは1,233例(61.5%)だった。 追跡調査は、2012年7月に終了し、平均追跡期間は15ヵ月(範囲:12~18ヵ月)であった。 結果、FDC群は通常ケア群と比較して有意にアドヒアランスが改善した(86%対65%、相対リスク[RR]:1.33、95%信頼区間[CI]:1.26~1.41、p<0.001)。また、試験終了時のSBPの低下(-2.6mmHg、95%CI:-4.0~-1.1mmHg、p<0.001)、LDL-Cの低下(-4.2mg/dL、95%CI:-6.6~-1.9mg/dL、p<0.001)も、わずかだが有意にFDC群のほうが低下していた。 事前に定義したサブグループ(アドヒアランス、性、糖尿病、喫煙の有無別など)でも効果は一致しており、ベースラインでのアドヒアランスが低い患者ほどベネフィットが大きいというエビデンスが得られた。このベースラインでアドヒアランスが低かった患者727例(36%)の試験終了時のアドヒアランスの改善は、FDC群77%対通常ケア群23%で(RR:3.35、95%CI:2.74~4.09、相互作用のp<0.001)、SBPの低下は-4.9mmHg(95%CI:-7.3~-2.6mmHg、相互作用のp=0.01)、LDL-Cの低下は-6.7mg/dL(95%CI:-10.5~-2.8mg/dL、相互作用のp=0.11)だった。 重大有害イベントまたは心血管イベントの発生に有意差はみられなかった。FDC群50例(5%)、通常ケア群35例(3.5%)、RR:1.45(95%CI:0.94~2.24、p=0.09)。 以上を踏まえて著者は、「CVDまたはその高リスクを有する患者において、血圧、コレステロール、血小板コントロールのためのFDC治療戦略は通常ケアと比較して、15ヵ月時点のアドヒアランスを有意に改善した。SBPとLDL-Cは有意だがわずかな改善であった」と結論している。

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~プライマリ・ケアの疑問~  Dr.前野のスペシャリストにQ!【循環器編】

第1回「Q.救急外来でACSを見逃さないためには?」第2回「Q.拡張期血圧が高い…早朝血圧が高い…等々、どういう病態なのか?」第3回「Q.血圧の評価はどうすればいいのか?外来血圧?自宅で測ってもらう?」第4回「Q.降圧薬の選択がわからない。薬がありすぎる!」第5回「Q.胸痛でどこまで虚血性心疾患を疑うか?」第6回「Q.主訴が胸痛の患者さんにホルター心電図をつけたが症状が出ない。どうアプローチすべき?」第7回「Q.急性心筋梗塞のST上昇と早期再分極のST上昇の見分け方?」第8回「Q.これは絶対ACSという心電図所見はあるか?」第9回「Q.Poor r progression はどこまで精査しますか?」第10回「Q.小さいq波と異常Q波の鑑別は?」第11回「Q.虚血性心疾患例の安静時の心電図異常とは?」第12回「Q.ST-Tの異常は様々あるが、よく理解できない」第13回「Q.精査すべき脚ブロックとは?」第14回「Q.どこで判断する?精査に迷う心電図異常」第15回「Q.精査・治療の必要な心室期外収縮とは?」第16回「Q.抗不整脈薬使用の最近のトレンドは?」 あなたの悩みを5分で解決!一問一答Q&A番組!研修医、家庭医、総合医の疑問に、一問一答で回答する、1回5分のQ&A番組!「この診断で良かったのか?」「もっと検査をすべきだった?」「専門医に送るタイミングは?」プライマリ・ケア医から集めた循環器疾患の診察、検査、治療に関する16の質問を、番組MCの前野哲博先生が経験豊富なスペシャリスト・渡辺重行先生にぶつけます!第1回「Q.救急外来でACSを見逃さないためには?」1)胸部症状が定型的なのに心電図、CPK、トロポニンに異常が出ていないACS2)胸部症状以外の症状で来るACSでは見逃さないポイントとは何なのでしょうか?第2回「Q.拡張期血圧が高い…早朝血圧が高い…等々、どういう病態なのか?」血圧は何がどのように規定しているのか?DBP上昇のメカニズムなど病態ごとの血圧変動の特徴を復習しましょう。第3回「Q.血圧の評価はどうすればいいのか?外来血圧?自宅で測ってもらう?」測る度に、タイミングによって変動することも多い血圧。では一体いつ測ることが良い血圧評価につながるのでしょうか?心血管イベントと発症率や発症時間などのエビデンスを交え紐解いていきます。第4回「Q.降圧薬の選択がわからない。薬がありすぎる!」例えば、糖尿病患者に糖尿病の悪化や腎症の予防効果のあるRA系抑制薬を選択したが、降圧は今ひとつ…このような患者にはどうアプローチすべきか?2009年高血圧治療ガイドラインを復習しながら、推奨される選択薬や合剤、考え方を学びます。第5回「Q.胸痛でどこまで虚血性心疾患を疑うか?」患者さんに「胸が痛い」と言われるとドキッとする循環器非専門医の先生も多いと思います。そもそも主訴が胸痛の患者に見つかる器質的疾患はどれくらいなのでしょうか?また虚血性心疾患の兆候はどんなところにあるのでしょうか?第6回「Q.主訴が胸痛の患者さんにホルター心電図をつけたが症状が出ない。どうアプローチすべき?」主訴が胸痛の患者にホルター心電図で検査するも特異的な所見は見つからないケース。今後どうマネジメントすべきか?今回は病態からアプローチして、何が起こり、何の可能性があるのか、着目すべき点を学びます。第7回「Q.急性心筋梗塞のST上昇と早期再分極のST上昇の見分け方?」急性心筋梗塞の早期発見に欠かせない心電図。STの上昇に注目します。しかし、早期再分極を示す心電図でもSTの上昇、そしてJ波が表れます。症例心電図をとおして、急性心筋梗塞と早期再分極の見分け方を学びます。第8回「Q.これは絶対ACSという心電図所見はあるか?」渡辺先生曰く、「ACSで注意すべきはSTのわずかな上昇とT terminal inversion」。そのロジックを心筋梗塞の患者さんの心電図をみながら考えていきます。第9回「Q.Poor r progression はどこまで精査しますか?」 Poor r progression とはR波の伸びが足りないこと。R波が伸びない裏には重要な疾患が隠れているのでしょうか?またどの様な所見に注意すべきなのでしょうか?第10回「Q.小さいq波と異常Q波の鑑別は?」 異常Q波とは、幅が1mm(0.04秒)以上で深さがR波の1/4以上のQ波。特に注意すべきは1mmの幅があるかどうか、逆にいうと1mmに満たない心電図所見は正常とみてよいであろう。しかし、一見正常な所見に見えて、前下行枝狭窄である手がかりが隠れている。それは一体どんな所見なのでしょうか?第11回「Q.虚血性心疾患例の安静時の心電図異常とは?」循環器内科医は負荷心電図のⅡ、Ⅲ、aVFなどから虚血性心疾患を診断します。渡辺先生曰く「安静時の心電図所見から8割は陽性の兆候がみえる」とは渡辺先生。それはどんな所見なのでしょうか?注目はS−T波。第12回「Q.ST-Tの異常は様々あるが、よく理解できない」 STーTの異常は様々ですが、形をパターン認識することで診断がみえてくるようになります。今回はSTーT所見を大きく4つにわけ、パターンの特徴と症例をとおして見極めのコツを解説します。第13回「Q.精査すべき脚ブロックとは?」とくに自覚症状もないが健康診断や検診の心電図所見でみられる脚ブロック。ではこの脚ブロックを確認した場合どのようなコンサルティングが必要なのでしょうか?今回は心室の再分極、脱分極をおさらいしながら右脚ブロックと左脚ブロックの原理と対処を学んでいきます。第14回「Q.どこで判断する?精査に迷う心電図異常」前回の心電図所見が脚ブロックの場合の対応につづき、今回はどんな心電図所見を確認したらより精査が必要なのか考えていきます。健康診断で非特異的ST-T異常はよく見受けられますが、「他に疾患のない30歳女性」と「高血圧を有する45歳男性」ではその対応どうなるのでしょうか?第15回「Q.精査・治療の必要な心室期外収縮とは?」健康診断などでも見かけることも多い心室期外収縮。基本的には様子をみることで良いのですが、中には治療を要する重篤な疾患が隠れているケースもあります。渡辺先生が推奨する要コンサルティングのケースは3つです。1つは、心疾患ゆえに心室期外収縮を生じているとき。この判定は、心電図が正常なら心疾患なしと考えて良いということになります。残り2つはどんなケースでしょうか?一つずつ、確認していきましょう。第16回「Q.抗不整脈薬使用の最近のトレンドは?」様々にある抗不整脈薬ですが、プライマリ・ケア医が治療で使うにはどの薬がよいのでしょうか?衝撃的な試験結果となったCAST試験からPVC、SVPCに対して抗不整脈を投与する時代ではなくなりましたが、他の不整脈に対してはどうでしょうか。不整脈の種類ごとに現在本流になりつつある治療法(アブレーション、除細動器など)をふまえながら、抗不整脈薬の適応は、どのような不整脈の時なのか考えていきます。

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降圧目標到達率を44%から87%までに改善したプログラム/JAMA

 米国・北カリフォルニア・カイザーパーマネンテ(KPNC)が2001年に開発導入した、大規模集団高血圧プログラムの実施状況を分析した報告が、KPNC南サンフランシスコメディカルセンターのMarc G. Jaffe氏らにより発表された。2009年時点の分析で、州や国が行うプログラムに比べると、KPNC高血圧プログラム下で血圧コントロールを受ける高血圧患者の割合は有意に増大したことが示されたという。Jaffe氏は本報告で、同プログラム開発の経緯と変遷、プログラムのキー要素について報告している。JAMA誌2013年8月21日号掲載の報告より。高血圧コントロール率について、州および全米とで比較 KPNCは非営利の総合医療サービス提供機構で、21の病院と45の関連医療施設を有し7千人超の医師が230万人以上の加入者に医療サービスを提供している。同組織が2001年に高血圧プログラムを開発した背景には、当時、50歳以上の患者に有効な高血圧治療があるにもかかわらず、血圧コントロールを受けている人は半数以下という状況があり、質的改善を図った高血圧プログラムを開発した。新たなプログラムは、多面的アプローチで血圧コントロールを図ることを特徴とするものであった。 本検討では、同プログラムの実施状況を評価するため、高血圧コントロール率の変化を調べ、また、カリフォルニア州および全米の同値と比較した。評価は、全米品質保証委員会(NCQA)の認証評価ツール(HEDIS)によって同率を測定したNCQA HEDISコマーシャル率で行った。実施状況を有意に増大したプログラムのキー要素 KPNCの高血圧レジストリ患者数は、2001年の開設時は34万9,937例であったが、2009年には65万2,763例へと増加していた。登録者の平均年齢は63歳、45~85歳が大半を占め、半数以上が女性であり、糖尿病を有している人が多くみられ有病率は2001年25.6%から2009年28.5%に増えていた。 そうした中で、NCQA HEDISコマーシャル率でみた、KPNCの高血圧コントロール率は、2001年43.6%(95%信頼区間[CI]:39.4~48.6%)から2009年80.4%(同:75.6~84.4%)へと有意に増大していた(傾向のp<0.001)。なお、2010年83.7%、2011年87.1%と同率はさらに上昇しているという。 対照的に、同一期間中の全米の同値は、55.4%から64.1%への増加で有意性はみられなかった(傾向のp=0.24)。カリフォルニア州について入手できた同値は2006~2009年の変遷であったが、同様に増加は有意ではなかった(63.4%から69.4%へ増加、p=0.37)。 これらの結果を踏まえて著者は「大規模集団プログラムの実施状況は、州や国のコントロール率と比べると有意な増大が認められた」と報告。プログラムのキー要素として、総合的な高血圧レジストリの設定(2001年)、NCQA HEDISに即したパフォーマンス測定基準の開発・共有(2001年)、エビデンスベースのガイドライン(4ステップの血圧コントロールアルゴリズム、2001年に開発し2年ごとにアップデート)、医療補助者(medical assistant)によるフォローアップ訪問(2007年より、薬物療法後2~4週後に訪問して血圧を測定、医師に報告しその後の治療方針を作成するシステムで、患者への追加料金なし)、合剤治療の推進(2005年より、リシノプリル/ヒドロクロロチアジド合剤推奨を治療開始時のオプションまたはステップ2の治療戦略としてガイドラインに明記)などを挙げている。

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受診ごとに血圧が変動する症例では認知機能が低下している(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(125)より-

受診ごとの血圧変動が大きい高齢者は、認知機能が低下しており、MRIで海馬の萎縮や皮質梗塞が多いという臨床研究である。 本試験はPROSPER試験という、高齢者に対するプラバスタチンの心血管合併症予防効果を検討した試験の後付解析として行われたものである。 日常、高齢者の高血圧患者を診療する場合、受診ごとに血圧が変動したり、家庭血圧でも測定ごとの血圧変動が大きい症例はよく見かけるが、多くはすでに冠動脈疾患、脳血管障害などの動脈硬化性合併症を併発しているという印象をもっている臨床医は多いと思う。実際そのことはいくつかの観察研究でも確認されている1,2)。しかし、本試験では認知機能の障害を示唆し、かつ海馬というアルツハイマー型認知症と関連の深い部位の萎縮を認めたという点で興味深い。 本試験は、血圧変動が、血管障害や認知機能障害の、原因であるのかあるいは結果であるのかを示すものではない。本試験で示された認知機能マーカやMRIは、3.2年間の試験終了時のデータであり、追跡前後の比較は示していない。そのため血圧変動が認知機能障害を低下させたのか、あるいは血管障害や海馬病変の結果として血圧変動が大きいのかは確認できない。 高齢者では収縮期血圧の絶対値が大きいほど、また脈圧が大きいほど予後が不良であることはすでに知られているが、本試験はさらに受診ごとの血圧変動が大きいことも予後不良のサインであることを示唆している。 また本試験には明記されていないが、多くは降圧薬を服用していると思われる。降圧薬自体にも血圧変動、すなわち降圧効果の安定性が異なるという報告もみられる。Ca拮抗薬やクロルタリドンなどの非ループ利尿薬などは受診ごとの血圧変動が少なく、ARBやβ遮断薬などは血圧変動が多いという3)。 高齢者高血圧を診療する場合、安定した降圧が得られるような降圧薬を選択することが重要である。

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