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2型糖尿病に降圧治療は有効か/JAMA

 2型糖尿病患者に対する降圧治療は、全死因死亡や心血管疾患のほか、脳卒中、網膜症、アルブミン尿などのリスクを改善することが、英国・オックスフォード大学のConnor A. Emdin氏らの検討で示された。糖尿病患者は平均血圧が高く、血圧の上昇は糖尿病患者における大血管障害および細小血管障害のリスク因子として確立されている。一方、糖尿病患者への降圧治療の是非や目標血圧値については、現在もさまざまな議論が続いている。JAMA誌2015年2月10日号掲載の報告。降圧治療と血管疾患の関連をメタ解析で評価 研究グループは、2型糖尿病患者における降圧治療と血管疾患の関連を評価するために系統的レビューを行い、メタ解析を実施した。対象は、1966~2014年に発表された糖尿病患者を含む降圧治療の大規模無作為化対照比較試験に関する論文とした。 本研究では、介入試験のメタ解析の指針であるPRISMAガイドラインで推奨されているアプローチが用いられた。2人のレビューワーが別個に患者背景や血管アウトカムのデータを抽出した。ベースラインおよび達成された血圧値別のアウトカムを評価し、固定効果モデルを用いてメタ解析を行った。 主要評価項目は、全死因死亡、心血管イベント、冠動脈心疾患イベント、脳卒中、心不全、網膜症、アルブミン尿の新規発症または増悪、腎不全の8項目とした。収縮期血圧の10mmHg低下における相対リスク(RR)、1,000人年当たりのイベントの絶対リスク減少率(ARR)および10年間の治療必要数(NNT)を算出した。6項目でリスク改善、薬剤クラス別の差はほとんどない バイアスのリスクが低いと判定された40試験に参加した10万354例が解析の対象となった。収縮期血圧の10mmHgの低下により、主要評価項目のうち以下の6項目のリスクが有意に改善した。 全死因死亡(RR:0.87、95%信頼区間[CI]:0.78~0.96/1,000人年当たりのイベントのARR:3.16、95%CI:0.90~5.22/10年NNT:32、95%CI:19~111)、心血管イベント(0.89、0.83~0.95/3.90、1.57~6.06/26、17~64)、冠動脈心疾患イベント(0.88、0.80~0.98/1.81、0.35~3.11/55、32~284)。 脳卒中(0.73、0.64~0.83/4.06、2.53~5.40/25、19~40)、網膜症(0.87、0.76~0.99/2.23、0.15~4.04/45、25~654)、アルブミン尿(0.83、0.79~0.87/9.33、7.13~11.37/11、9~14)。 ベースラインの平均収縮期血圧が≧140mmHgと<140mmHgの試験に分けて解析したところ、降圧治療により≧140mmHgの試験でRRが有意に減少し、<140mmHgの試験では有意な変化のない項目として、全死因死亡、心血管疾患イベント、冠動脈心疾患イベント、心不全が挙げられた(交互作用のp値がいずれもp<0.1)。 降圧薬のクラス別の解析では、全体としてアウトカムとの関連はほとんどなかった。例外として、利尿薬により心不全のRRが有意に減少した(RR:0.83、95%CI:0.72~0.95)が、これにはALLHAT試験の影響が大きかった。また、ARB薬も心不全のRRを有意に低減させた(0.61、0.48~0.78)が、データは2つの試験に限られ、信頼区間の間隔が広かった。これに対し、カルシウム拮抗薬(CCB)は他のクラスの薬剤に比べ心不全のRRが有意に高かった(1.32、1.18~1.47)。 一方、CCBは脳卒中のリスクを有意に低下させた(RR:0.86、95%CI:0.77~0.97)が、β遮断薬はこれを増大させた(1.25、1.05~1.50)。また、ARBは他の薬剤に比べ全死因死亡のリスクが相対的に低かった(0.81、0.66~0.99)が、これにはLIFE試験の影響が大きかった。なお、バイアスのリスクが高いと判定された1試験と不明と判定された3試験を加えると、薬剤のクラスによるアウトカムの差はほぼなくなった。 著者は、「2型糖尿病患者では、降圧治療により全死因死亡や心血管疾患のほか、脳卒中、網膜症、アルブミン尿のリスクも改善した。これらの知見は、2型糖尿病患者への降圧薬の使用を支持するものである」とまとめ、「脳卒中、網膜症、アルブミン尿のリスクが高い糖尿病患者では、収縮期血圧をさらに130mmHgへと低下させると、これらのリスクが減少することが示唆された」としている。

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降圧強化治療はタイムリーな管理が重要/BMJ

 高血圧治療において、収縮期血圧強化閾値が150mmHg超であること、血圧上昇後の降圧強化治療開始が1.4ヵ月超遅れること、強化治療後の次回受診までの期間が2.7ヵ月超空くことは、急性心血管イベントや死亡の増大と関連することが明らかにされた。米国ベスイスラエル・ディーコネス・メディカルセンターのWenxin Xu氏らが住民ベースの後ろ向きコホート研究の結果、報告した。著者は、「高血圧患者の治療ではタイムリーな管理とフォローアップが重要であることを支持する所見が示された」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年2月5日号掲載の報告より。8万8,756例のプライマリケアデータベースを基に分析 検討は、1986~2010年の英国プライマリケア研究データベースHealth Improvement Networkを基に行われた。同データベースの高血圧患者8万8,756例について、降圧治療戦略別に急性心血管イベント、全死因死亡の発生率を調べた。治療戦略の評価は各患者10年間にわたって行われ、期間中の収縮期血圧強化閾値、強化治療開始までの期間、そしてフォローアップ(強化治療開始後の次回外来受診血圧測定)までの期間を特定して検討した。年齢、性別、喫煙、社会経済的状態、糖尿病歴、心血管疾患または慢性腎臓病歴、チャールソン併存疾患指数、BMI、総投薬量に対する実服薬量の割合(medication possession ratio:MPR)でみた服薬コンプライアンス、ベースライン時の血圧で補正を行った。「150mmHg超」「1.4ヵ月超」「2.7ヵ月超」、転帰リスク増大 対象者はベースライン時、平均年齢58.5歳、男性41.5%、平均BMIは27.6、過去/現在喫煙者56.5%、心血管疾患歴のある人は11.2%などであった。 10年間の治療戦略評価期間後の追跡期間中央値37.4ヵ月の間に、9,985例(11.3%)が急性心血管イベントまたは死亡に至っていた。 転帰リスクの差は、収縮期血圧強化閾値130~150mmHgではみられなかったが、150mmHg超では、リスクは次第に増大する関連が認められた(強化閾値160mmHgのハザード比[HR]:1.21、同170mmHgのHR:1.42、同180mmHg以上のHR:1.69、いずれもp<0.001)。 血圧上昇後の強化治療開始までの期間については五分位範囲で評価した。その結果、転帰リスクは最低位(0~1.4ヵ月に開始)から最高位(15.3ヵ月以上で開始)まで次第に増大する関連が認められた(第2分位[1.4~4.7ヵ月に開始]のHR:1.12、95%信頼区間[CI]:1.05~1.20、p=0.009)。 フォローアップまでの期間についても五分位範囲で評価した結果、最高位(2.7ヵ月超)で、転帰リスク増大との有意な関連が認められた(HR:1.18、95%CI:1.11~1.25、p<0.001)。

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治療抵抗性高血圧の切り札は、これか?~ROX Couplerの挑戦!(解説:石上 友章 氏)-313

 治療抵抗性高血圧に対する切り札的治療は、ひと昔前は「腎動脈交感神経アブレーション」だった。循環器、高血圧関連の学会のセミナーには必ずと言っていいほど、「腎動脈交感神経アブレーション」のセッションがあり、関係者の期待の高さをうかがわせていた。しかし、治療群に加え、腎動脈内にカテーテルを挿入するものの高周波治療を行わないシャムオペレーション群をおいた、初めての無作為化比較試験であるSymplicity HTN-3の結果が発表された(87施設、患者数535例)1)。その結果は、手技の安全性には問題はなかったが、試験実施前に設定された降圧効果を得ることができず、Medtronic社は、本邦で予定されていたHTN-Japanを含むすべての治験を中止し、現時点では治験再開の情報は得られていない。 このたび、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のMelvin D Lobo氏らは、人為的に大腿動静脈吻合をつくるROX Couplerを用いた本研究(ROX CONTROL HTN)で、「腎動脈交感神経アブレーション」に代わって、治療抵抗性高血圧症に対する良好な降圧効果を報告している2)。実際に、本研究に登録された患者の一部は、「腎動脈交感神経アブレーション」治療を以前に受けた患者が含まれているという。 本試験は、非盲検多施設前向きの無作為化比較のデザインで、ROX Couplerを挿入した群と、薬物治療群の6ヵ月の降圧を比較している。本デバイスはこれまでに、COPD患者を対象にした臨床試験の結果が報告されている3)。ROX Couplerによる降圧機序は、人為的な動静脈吻合による全血管抵抗の減少が、第一に考えられているが、右心カテーテル検査の結果からは、心拍出量をはじめ、さまざまなパラメーターの変化が報告されている4) 5)。 予想通りに全血管抵抗は有意に低下しており、降圧をもたらす機序を説明しうる変化が認められる一方で、心拍出量、平均肺動脈圧、肺動脈楔入圧も上昇している。人為的にシャントを作ったので、混合静脈血酸素飽和度は上昇している。COPDによる低酸素血症が改善し、自覚症状や運動耐用能は一時的に回復するが、潜在的な心不全が悪化している。 この結果からは、本デバイスによる治療効果が、新たに非生理的な状態を生体に作り出すことで、見かけ上の降圧を実現している可能性が示唆される。治療抵抗性高血圧症に対する、標準的とは言わないまでも、新たな侵襲的デバイス治療の選択肢としての地位を確立するには、まだまだ十分ではない。高血圧を伴ったCOPD患者を対象にした、ROX Coupler挿入前後の心血行動態の変化4)平均(標準偏差)

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DENERHTN研究は腎交感神経焼灼術の降圧効果の有効性をどこまで明らかにしたか(解説:冨山 博史 氏)-309

はじめに 今回、Lancetに難治性高血圧に対する腎交感神経焼灼術の効果を評価した、多施設前向き研究(DENERHTN試験)の結果が報告された。腎交感神経焼灼術は高血圧、心不全、腎機能障害、不整脈などに対する有用な治療法である可能性が注目されている。とくに高血圧に関しては、メタ解析にてその有効性が報告されている1)。 一方、その有効性に否定的な報告もある2)3)。治療手技、疾患の病態などの見地から、腎交感神経焼灼術の効果を検証するにはいくつかの問題点が存在し、腎交感神経焼灼術の効果に対する意見が分かれる一因となっている4)5)。 今回の報告に関して、下記に示す腎交感神経焼灼術の効果を検証する試験における、問題事項と対比してコメントを記載する。試験の概要 DENERHTN試験は、難治性高血圧降圧治療における腎交感神経焼灼術の有用性を検証する前向きランダム化比較試験で、フランスの高血圧管理に特化した15の医療センターで実施された。 腎交感神経焼灼術の有無についてはオープンラベルであるが、エンドポイント評価は中央解析にて盲検化され実施された。1,416例の難治性高血圧要精査症例から101例の試験適合症例が選別された。難治性高血圧診断、腎交感神経焼灼術の降圧効果評価には24時間血圧測定が使用された。対象は、腎交感神経焼灼術+SSAHT (Standard stepped-care antihypertensive treatment)実施群(後述)と、SSAHTのみ実施群(対照群)に振り分けられた。 治療開始6ヵ月後に、腎交感神経焼灼術+SSAHT実施群(n=48)では-15.4mmHgの24時間収縮期血圧の低下を認め、SSAHTのみ実施の対照群(n=51)では-9.5mmHgであり、前者で有意に大きい降圧を認めた。両群間の降圧薬服用数、服薬アドヒアランスに有意な差を認めなかった。腎交感神経焼灼術の有用性を検証するこれまでの試験の研究限界とDENERHTN試験1.腎交感神経焼灼術実施の無作為化 有名な腎交感神経焼灼術の有効性を検証した多施設研究であるSYMPLICITY HTN-3では、対照としてシャム手術を実施した2)。しかし、こうしたシャム手術の実施は倫理的にも限界があり、盲検法を実施するには限界がある。 DENERHTN試験では、腎交感神経焼灼術実施についてはオープンラベル無作為化とし、代わりに治療効果評価(24時間血圧測定)は、盲検化(腎交感神経焼灼術実施群か対照群か情報を知らない条件で中央解析センターにて血圧記録を解析)を実施した。2.難治性高血圧の診断 血圧はさまざまな要因で変動するため、難治性高血圧の診断が十分でない研究も存在する。24時間血圧測定による血圧重症度評価、利尿薬を含む3剤以上の降圧薬併用、服薬アドヒアランスの確認、生活習慣の改善実施の有無、腎機能を含め2次性高血圧除外の評価方法などが問題となる。 DENERHTN試験では、試験登録後4週間は indapamide 1.5mg、ramipril 10mg、 amlodipine 10mgが処方され、血圧レベル評価は24時間血圧測定で評価された。腎機能を含む2次性高血圧のスクリーニングが実施され、さらにCT・MRにて腎動脈狭窄の有無が事前評価された。このように適切な難治性高血圧の評価が実施された研究である。3.対照群の治療 経過観察において血圧の変動が生じるため、対照群・腎交感神経焼灼術実施群とも経過観察中の降圧薬治療の取り扱い方が問題となる。 DENERHTN試験ではSSAHT が実施されている。本方法は、追加降圧薬としてspironolactone 25mg、bisoprolol 10mg、prazosin 5mg、rilmenidine 1mgの使用がプログラムされ、降圧薬追加の適応は月ごと測定の家庭血圧にて決定されるプロトコルであった。しかし、本研究では腎交感神経焼灼術実施の有無の無作為化は24時間測定血圧を基に実施された。また、両群間で血圧低下に有意な差を確認できたのは24時間測定収縮期血圧であり、家庭血圧には有意な差(収縮期血圧降下度:-15.4 mmHg vs. -11.5 mmHg、p=0.300)を認めなかった。4.除神経の評価 除神経術成功の有無を評価する方法は腎臓におけるnoradrenalineのspilloverの測定であるが、腎動静脈noradrenaline濃度を測定する必要があり実用的でない。その他有効な評価方法は確立されていない。 DENERHTN試験でも除神経成功の有無は確認されていない。上述のSYMPLICITY HTN-3(本試験では腎交感神経焼灼術の降圧効果は否定的であった)では、熟練者でない術者が腎交感神経焼灼術を実施したため、除神経が確実でなかったことが懸念されている。 DENERHTN試験では、熟練者の管理の下で腎交感神経焼灼術が実施されている。また、最近の検討で、腎遠心神経は腎動脈遠位側でその分布が腎動脈内腔側を走行することが示された。ゆえに、今後、腎動脈遠位側で焼灼術が施行可能なデバイスを使用したか、腎動脈遠位側の焼灼を実施したかを確認することも必要であろう。DENERHTN試験ではSimplicityカテーテルが使用されており、手技的に腎動脈遠位側の焼灼が可能であるが、手技的詳細は記載されていない。5.治療効果評価方法 項目2でも記載したが治療効果評価には24時間血圧測定が必要である。その他、臓器障害として、左室肥大、脈波速度、腎機能などが効果判定の指標として使用されているが、確立された効果判定の指標はない。また、イベント抑制を検討した長期前向き研究はない。 DENERHTN試験では降圧効果の評価は24時間血圧測定にて実施され、同時に服薬アドヒアランスも確認されている。腎機能の変化は両群同等であった。まとめ DENERHTN試験は、腎交感神経焼灼術実施の盲検化は施行されていないが、治療効果評価は盲検化された試験であり、バイアスは小さい試験と考えられる。また、難治性高血圧の診断、血圧変化評価も24時間測定血圧が用いられ妥当と考えられる。ゆえに、本試験の難治性高血圧降圧治療としての腎交感神経焼灼術の有効性を支持する結果の意義は大きい。 しかし、従来の降圧効果の評価指標である診療室血圧、家庭血圧には対照群と有意な差を認めていない。ゆえに、現時点での腎交感神経焼灼術の降圧効果は有意であっても降圧薬の効果と対比すると小さい可能性が否定できない。 本試験でも従来の試験と同様に除神経成功の可否が評価されていない。今後、確実な除神経が実施された場合の降圧効果の評価が必要である。 その他の問題点は、治療後の降圧薬数は両群で同等であったが、降圧薬追加の適応は24時間血圧でなく家庭血圧で決定されたこと、対照群がシャム手術群でないことである。

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治療抵抗性高血圧に動静脈吻合術が有効/Lancet

 降圧薬治療ではコントロール不良な高血圧患者に対し、動静脈吻合術を行うことで、血圧および高血圧性合併症が有意に減少したことが報告された。診察室測定の収縮期血圧値は6ヵ月後に約27mmHg低下したという。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のMelvin D Lobo氏らによる、非盲検多施設前向きの無作為化比較試験ROX CONTROL HTNの結果、示された。結果を踏まえて著者は、「このアプローチは、コントロール不良の高血圧患者に有益な補助的療法となるかもしれない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2015年1月22日号掲載の報告より。動脈・静脈間にカプラー挿入 Lobo氏らは、本検討で血圧コントロール不良の患者における動静脈吻合術の降圧の有効性と安全性を評価した。2012年10月~2014年4月に、降圧薬治療を受けながらも、外来収縮期血圧が140mmHg以上で、日中の平均収縮期/拡張期血圧が135/85mmHg以上の患者を適格とし試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方には通常の薬物治療に加え、動脈と静脈の間に「カプラー」を埋め込み血流量を調節して血圧を下げる処置を行った。もう一方には薬物治療のみを行った。 主要評価項目は、6ヵ月後の外来受診時(診察室)および24時間自由行動下測定(ABPM)の収縮期血圧値のベースラインからの変化だった。ABPM収縮期血圧値も平均13.5 mmHg低下 被験者総数は83例で、そのうちカプラー群は44例、対照群は39例だった。 6ヵ月後の診察室収縮期血圧値は、ベースライン時に比べ、カプラー群で平均26.9 mmHg(SD:23.9)有意に減少した(p<0.0001)。対照群では減少幅は平均3.7mmHg(同:21.2)で、有意な減少は認められなかった(p=0.31)。 また、ABPM収縮期血圧値もベースライン時に比べ6ヵ月後は、カプラー群で平均13.5mmHg(SD:18.8)の有意な減少が認められた(p<0.0001)。対照群は平均0.5mmHg(同:15.8)とベースライン時から有意な減少はみられなかった(p=0.86)。 一方、動静脈カプラー挿入を行った患者のうち12例で、遅発性同側性静脈狭窄の発症が認められた。しかし、静脈血管形成術またはステント挿入術により治療可能だった。

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腎除神経術は有効か?/Lancet

 これまでの検討で、治療抵抗性高血圧患者に対する腎除神経術の降圧効果は相反する結果が報告されている。フランス・パリ第5大学のMichel Azizi氏らは多施設共同前向き非盲検無作為化対照試験DENERHTNを行い、同患者へは段階的降圧薬治療(SSAHT)単独よりも、腎除神経術を併用したほうが、降圧効果が有意に大きいとの結果が得られたこと(6ヵ月時点の評価)を報告した。しかし著者は、いまだ腎除神経術の有効性、安全性評価の確立や、同手術による降圧の予測因子を明確にする必要があることを指摘し、「腎除神経術による降圧効果が長期に持続することが判明すれば、今回示された降圧効果が心血管罹患率の低減に寄与する可能性はある」と考察している。Lancet誌オンライン版2015年1月25日号掲載の報告より。腎除神経術+SSAHT vs. SSAHT単独で比較 DENERHTNは、フランス国内15ヵ所の3次医療センターで行われた。対象は、18~75歳の治療抵抗性高血圧患者で、無作為化前の4週間、標準的な3剤併用降圧治療(インダパミド1.5mg/日、ラミプリル10mg[またはイルベサルタン300mg]/日、アムロジピン10mg/日)の下でABPM測定を行い(たとえば4剤併用治療中だった患者は同3剤に切り替え)、治療抵抗性が確認された患者を適格とした。 適格患者は1対1の割合で、腎除神経術+SSAHTを受ける群(腎除神経術群)またはSSAHT単独群(対照群)に無作為に割り付けられた。腎除神経術は無作為化後2~4週に米国メドトロニック社製のSymplicityを用いて行われた。各センターでの施術は1~2人の専門医により行われた。 無作為化後のSSAHTは、両群とも血圧値が135/85mmHg以上となった場合、2~5ヵ月の間に順次、スピロノラクトン25mg/日、ビソプロロール10mg/日、プラゾシン5mg/日、リルメニジン1mg/日が追加された。 主要エンドポイントは、ABPM評価による日中の収縮期血圧のベースラインから6ヵ月時の変化の平均値とした。分析は盲検的に行われた。また安全性のアウトカムは、腎除神経術に関する急性有害事象の発生率、およびベースラインから6ヵ月時の推定糸球体濾過量(eGFR)の変化であった。降圧効果は腎除神経術+SSAHT群が有意に大きい 2012年5月22日~2013年10月14日に、1,416例の患者が適格性の有無に関してスクリーニングを受け、そのうち106例が無作為に割り付けられた(各群53例:intention-to-treat集団)。分析は、エンドポイントが得られなかった患者を除く101例で行われた(腎除神経術群48例、対照群53例:修正intention-to-treat集団)。 結果、主要エンドポイントは、腎除神経術群-15.8mmHg(95%信頼区間[CI]:-19.7~-11.9)、対照群-9.9mmHg(同:-13.6~-6.2)、両群差はベースライン補正後-5.9mmHg(同:-11.3~-0.5)で、腎除神経術群のほうが対照群よりも有意に降圧が大きかった(p=0.0329)。 また、6ヵ月時点の両群の降圧薬の剤数(中央値:5、IQR:4~7、p=0.7005)およびアドヒアランス(腎除神経術群74.5%、対照群72.5%、p=0.7704)は、いずれも同等であった。 腎除神経術関連の有害事象は3例示されたが、いずれも軽度であった(腰痛2例、軽度の鼠径部血腫1例)。 ベースラインから6ヵ月時のeGFR値は、両群で同様に軽度な低下が観察された(腎除神経術群-4.0%、対照群-6.2%、p=0.7260)。

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アリスミアのツボ Q20

Q20高血圧を有する心房細動患者での抗凝固療法はどう開始したらよいですか?まずは血圧管理から……。血圧管理が終わってから抗凝固療法を開始する心房細動と高血圧は蜜月いまや心房細動患者数はうなぎのぼりだと思いますが、そのほとんどに高血圧が合併しています。多くの疫学研究をみると、心房細動患者の80~90%に高血圧を合併しているというところでしょうか。つまり、ほとんどの場合、高血圧治療と心房細動治療を両者同時に行うということになりそうです。2つのことを同時に行えればよいが……では、この2つの治療をどの順序で行うべきでしょうか。両者同時に、あるいは個別に? 心不全に対するβ遮断薬とRAS抑制薬、どちらから始めるべきかという議論は決着をみることなく、できれば両者同時に、不可能なら個別に考えてという落ち着きどころがみえてきました。しかし今回の抗凝固療法と降圧、心房細動治療と高血圧治療には実はれっきとした順番があるのです。まずは高血圧治療から高血圧が残存している状態で、抗凝固療法が行われると、致命的な大出血を生じやすいことが知られているからです。心房細動で血圧が高い……これは脳梗塞のリスクが高いことを意味しているので、即座に抗凝固療法を開始したくなります。でもそこは思い留まって、まずできるだけ早急に血圧の是正を開始し、血圧が正常化するまでは抗凝固療法を開始しないという心構えを持つ必要があります。血圧が是正される前に脳梗塞になったらどうする? の逆質問もあります。医療自身によるharmはできるだけ少なくというのが私の方針です。

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【医療ニュース トップ100】2014年、最も読まれた「押さえておくべき」医学論文は?

今年も、4大医学誌の論文を日本語で紹介する『ジャーナル四天王』をはじめ、1,000本以上の論文をニュース形式で紹介してきました。その中で、会員の先生方の関心の高かった論文は何だったのでしょう? ここでは、アクセス数の多いものから100本を紹介します。 1位 日本男性の勃起硬度はアレと関連していた (2014/11/13) 2位 日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学 (2014/1/7) 3位 子供はよく遊ばせておいたほうがよい (2014/3/28) 4位 思春期の精神障害、多くは20代前半で消失/Lancet (2014/1/27) 5位 なぜコーヒーでがんリスクが低下? (2014/7/31) 6位 メロンでかゆくなる主要アレルゲンを確認 (2014/4/15) 7位 新たな輸液プロトコル、造影剤誘発急性腎障害の予防に有効/Lancet (2014/6/9) 8位 体幹を鍛える腹部ブレーシング、腰痛に効果 (2014/5/7) 9位 コーヒーを多く飲む人は顔のシミが少ない (2014/8/7) 10位 スタチンと糖尿病リスク増大の関連判明/Lancet (2014/10/9) 11位 スルピリドをいま一度評価する (2014/5/16) 12位 米国の高血圧ガイドライン(JNC8)のインパクト/JAMA (2014/4/16) 13位 インフルエンザワクチン接種、無針注射器の時代に?/Lancet (2014/6/16) 14位 新規経口抗凝固薬4種vs.ワルファリン-心房細動患者のメタ解析-/Lancet (2013/12/25) 15位 アルコール依存症、薬物治療の減酒効果は?/JAMA (2014/5/29) 16位 SGLT2阻害薬「トホグリフロジン」の日本人への効果 (2014/2/28) 17位 大人のリンゴ病 4つの主要パターン (2014/7/29) 18位 脳動脈瘤、コイルvs. クリッピング、10年転帰/Lancet (2014/11/12) 19位 ACE阻害薬を超える心不全治療薬/NEJM (2014/9/8) 20位 アルツハイマーに有用な生薬はコレ (2014/11/14) 21位 塩分摂取と死亡リスクの関係はJカーブ/NEJM (2014/8/25) 22位 スタチン投与対象者はガイドラインごとに大きく異なる/JAMA (2014/4/14) 23位 食後血糖によい食事パターンは?(低脂肪vs低炭水化物vs地中海式) (2014/3/27) 24位 成人ADHDをどう見極める (2014/5/21) 25位 各種ダイエット法の減量効果/JAMA (2014/9/16) 26位 牛乳1日3杯以上で全死亡リスクが2倍/BMJ (2014/11/13) 27位 腰痛持ち女性、望ましい性交体位は? (2014/11/21) 28位 ロマンチックな恋愛は幸せか (2014/3/26) 29位 無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与 (2014/5/8) 30位 下肢静脈瘤、ベストな治療法は?/NEJM (2014/10/10) 31位 せん妄管理における各抗精神病薬の違いは (2014/9/18) 32位 降圧薬投与量の自己調整の有用性/JAMA (2014/9/11) 33位 深部静脈血栓症の除外診断で注意すべきこと/BMJ (2014/3/20) 34位 StageII/III大腸がんでのD3郭清切除術「腹腔鏡下」vs「開腹」:ランダム化比較試験での短期成績(JCOG 0404) (2014/2/26) 35位 たった1つの質問で慢性腰痛患者のうつを評価できる (2014/2/21) 36位 スタチン時代にHDL上昇薬は必要か/BMJ (2014/8/7) 37位 就寝時、部屋は暗くしたほうがよいのか:奈良医大 (2014/8/29) 38位 認知症のBPSD改善に耳ツボ指圧が効果的 (2014/10/28) 39位 統合失調症患者の突然死、その主な原因は (2014/4/18) 40位 うつ病と殺虫剤、その関連が明らかに (2014/7/9) 41位 帯状疱疹のリスク増大要因が判明、若年ほど要注意/BMJ (2014/5/26) 42位 慢性のかゆみ、治療改善に有用な因子とは? (2014/7/1) 43位 女性の顔の肝斑、なぜ起きる? (2014/5/8) 44位 DES1年後のDAPT:継続か?中断か?/Lancet (2014/7/30) 45位 駆出率が保持された心不全での抗アルドステロン薬の効果は?/NEJM (2014/4/23) 46位 レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は (2014/10/30) 47位 アトピー性皮膚炎患者が避けるべきスキンケア用品 (2014/2/6) 48位 タバコの煙を吸い込む喫煙者の肺がんリスクは3.3倍:わが国の大規模症例対照研究 (2014/6/18) 49位 世界中で急拡大 「デング熱」の最新知見 (2014/10/17) 50位 円形脱毛症とビタミンDに深い関連あり (2014/4/10) 51位 不眠の薬物療法を減らすには (2014/7/23) 52位 オメプラゾールのメラニン阻害効果を確認 (2014/11/6) 53位 タバコ規制から50年で平均寿命が20年延長/JAMA (2014/1/16) 54位 ICUでの栄養療法、静脈と経腸は同等/NEJM (2014/10/15) 55位 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット (2014/3/17) 56位 COPDにマクロライド系抗菌薬の長期療法は有効か (2014/1/13) 57位 座りきりの生活は心にどのような影響を及ぼすか (2014/5/12) 58位 PSA検診は有用か:13年後の比較/Lancet (2014/8/22) 59位 気道感染症への抗菌薬治療 待機的処方 vs 即時処方/BMJ (2014/3/17) 60位 血圧と12の心血管疾患の関連が明らかに~最新の研究より/Lancet (2014/6/19) 61位 マンモグラフィ検診は乳がん死を抑制しない/BMJ (2014/2/21) 62位 機能性便秘へのプロバイオティクスの効果 (2014/8/14) 63位 超高齢の大腸がん患者に手術は有用か:国内での検討 (2014/2/14) 64位 糖尿病予防には歩くよりヨガ (2014/8/4) 65位 乳がん術後リンパ節転移への放射線療法、効果が明確に/Lancet (2014/3/31) 66位 75歳以上でのマンモグラフィ検診は有効か (2014/8/11) 67位 大腸がん術後の定期検査、全死亡率を減少させず/JAMA (2014/1/23) 68位 「歩行とバランスの乱れ」はアルツハイマーのサインかも (2014/5/13) 69位 食事由来の脂肪酸の摂取状況、国によって大きなばらつき/BMJ (2014/4/28) 70位 心房細動合併の心不全、β遮断薬で予後改善せず/Lancet (2014/9/19) 71位 薬剤溶出ステントの直接比較、1年と5年では異なる結果に/Lancet (2014/3/24) 72位 ピロリ除菌、糖尿病だと失敗リスク2倍超 (2014/8/21) 73位 認知症にスタチンは有用か (2014/7/25) 74位 RA系阻害薬服用高齢者、ST合剤併用で突然死リスク1.38倍/BMJ (2014/11/20) 75位 腰痛へのアセトアミノフェンの効果に疑問/Lancet (2014/8/6) 76位 食べる速さはメタボと関連~日本の横断的研究 (2014/9/12) 77位 うつになったら、休むべきか働き続けるべきか (2014/9/16) 78位 英プライマリケアの抗菌治療失敗が増加/BMJ (2014/10/1) 79位 総胆管結石疑い 術前精査は必要?/JAMA (2014/7/21) 80位 歩くスピードが遅くなると認知症のサイン (2014/10/8) 81位 前立腺がん、全摘vs.放射線療法/BMJ (2014/3/10) 82位 緑茶が認知機能低下リスクを減少~日本の前向き研究 (2014/6/3) 83位 高力価スタチンが糖尿病発症リスクを増大させる/BMJ (2014/6/16) 84位 乳がんの病理学的完全奏効は代替エンドポイントとして不適/Lancet (2014/2/27) 85位 Na摂取増による血圧上昇、高血圧・高齢者で大/NEJM (2014/8/28) 86位 抗グルタミン酸受容体抗体が神経疾患に重大関与か (2014/8/15) 87位 歩数を2,000歩/日増加させれば心血管リスク8%低下/Lancet (2014/1/8) 88位 肩こりは頚椎X線で“みえる”のか (2014/3/19) 89位 地中海式ダイエットと糖尿病予防 (2014/4/7) 90位 閉塞性睡眠時無呼吸、CPAP vs. 夜間酸素補給/NEJM (2014/6/26) 91位 揚げ物は肥満遺伝子を活性化する?/BMJ (2014/4/3) 92位 6.5時間未満の睡眠で糖尿病リスク上昇 (2014/9/4) 93位 セロトニン症候群の発現メカニズムが判明 (2014/3/14) 94位 日本発!牛乳・乳製品を多く摂るほど認知症リスクが低下:久山町研究 (2014/6/20) 95位 肥満→腰痛のメカニズムの一部が明らかに (2014/8/8) 96位 低炭水化物食 vs 低脂肪食 (2014/8/7) 97位 認知症患者の調子のよい日/ 悪い日、決め手となるのは (2014/3/21) 98位 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか (2014/7/2) 99位 血糖降下強化療法の評価―ACCORD試験続報/Lancet (2014/8/20) 100位 小児BCG接種、結核感染を2割予防/BMJ (2014/8/21) #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

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【CLEAR!ジャーナル四天王 トップ20発表】鋭い論文解説がラインナップ!

臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、日本の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しているNPO法人です。 本企画『CLEAR!ジャーナル四天王』では、CareNet.comで報道された海外医学ニュース『ジャーナル四天王』に対し、鋭い視点で解説します。 コメント総数は280本(2014年11月現在)。今年掲載されたなかからアクセス数の多かった解説記事のトップ20をお届けします。 1位 「降圧薬服用患者が大幅に減る見通し、というより減らした」というほうが正確かもしれない:EBMは三位一体から四位一体へ(解説:桑島 巌 氏) (2014/5/20) 2位 これがなぜLancetに!?(解説:桑島 巌 氏) (2014/9/19) 3位 慢性心不全治療のパラダイムシフト:ACE阻害薬はもはや標準薬ではない!(解説:平山 篤志 氏) (2014/9/8) 4位 脳動静脈奇形(未破裂)の予防的切除や塞栓術などの介入療法では予後を改善できない(解説:中川原 譲二 氏) (2014/1/13) 5位 過度な減塩は死亡率を増やすか? ガイドライン推奨1日6g未満に一石を投じる研究(解説:桑島 巌 氏) (2014/8/21) 6位 患者に「歩け、歩け運動」を勧める具体的なエビデンス(解説:桑島 巌 氏) (2014/1/17) 7位 心臓マッサージは深度5cmで毎分100回:その自動化への課題(解説:香坂 俊 氏) (2014/1/8) 8位 心房細動アブレーションにおける新しいMRI指標:そのメリットとデメリット(解説:山下 武志 氏) (2014/2/18) 9位 DESは生命予後改善効果を持つ!?従来の説に一石(解説:野間 重孝 氏) (2014/7/28) 10位 よいメタ解析、悪いメタ解析?(解説:後藤 信哉 氏) (2014/1/21) 11位 急性心不全治療には新たな展開が必要では?(解説:平山 篤志 氏) (2014/1/10) 12位 大腸腺腫切除後の長期的な大腸がん死亡率(解説:上村 直実 氏) (2014/9/30) 13位 急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略―4万5,000症例メタ解析(解説:中澤 達 氏) (2014/10/29) 14位 期待が大きいと失望も大きい:プラセボをおくことの重要性を教えてくれた試験。(解説:桑島 巌 氏) (2014/4/15) 15位 これでC型肝炎を安全に完全に治せる?(解説:溝上 雅史 氏) (2014/5/29) 16位 スタチン治療はやはり糖尿病を増やすのか?そのメカニズムは?(解説:興梠 貴英 氏) (2014/11/6) 17位 破裂性腹部大動脈瘤に対する開腹手術 vs. 血管内修復術(解説:中澤 達 氏) (2014/2/12) 18位 診察室での血圧測定はもういらない?-高血圧診療は、自己測定と薬の自己調整の時代へ(解説:桑島 巌 氏) (2014/9/17) 19位 小児BCG接種、結核菌への感染を2割予防-(解説:吉田 敦 氏) (2014/9/26) 20位 このテーマまだ興味がわきますか?アブレーション vs. 抗不整脈薬(解説:山下 武志 氏) (2014/3/6) #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

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脳卒中急性期の高血圧管理は、効果がない? ~無数のCQに、臨床試験は応えられるのか -ENOS試験の教訓~(解説:石上 友章 氏)-279

 臨床試験は、臨床現場の葛藤に回答を与えてくれることが期待されている。結果の不確実な選択肢に対して、丁半博打のような行為を繰り返す愚を回避するための、有力で科学的な解決策である。しかし、臨床現場のクリニカル・クエスチョン(CQ)は、有限個であるとはいっても、無数に存在する。1つのCQに、1つの臨床試験が確度の高い回答を与えてくれるとは限らない。CQを解決するつもりで行った臨床試験が、未知のCQを発掘することもある。また、臨床試験にかかるコストは、費用だけではない。人的なコスト、時間的なコストも莫大にかかるので、こうしたコストに見合った結果が得られるのかは、重大な関心事であろう。 ENOS試験の結果、脳卒中急性期の高血圧を有する患者の90日後のmodified Rankin Scoreで評価する脳卒中後のperformanceについて、ニトログリセリン貼付剤の有効性は証明されなかった。一方、ニトログリセリン貼付剤による降圧効果は、有意に認められた。同時に、降圧薬を内服中だった対象について、降圧薬のon/offを比較したデザインの試験も実施したが、こちらも有意差がなかった。しかしながら、後者については、Barthel Index、 t-MMSE score、 TICS-M scoreには有意差がついており、発症前の降圧療法の継続は正当化される可能性がある。 脳卒中急性期の血圧上昇は、病態を修正する生理学的な適応なのか、あるいは出血を拡大する病態なのか、脳血流の維持をもたらす前者のような現象であれば、降圧療法は正当化されない可能性があるし、後者のような病態であれば、降圧療法は正当化されるであろう。ENOS試験では、急性期のニトログリセリン貼付剤による降圧は正当化されなかった。しかし、他の降圧薬の使用による降圧の有効性について、疑問を解決してはいない、新たな臨床試験が必要であろう。一方、ベースラインの降圧療法の継続は、正当化されそうである。 ENOS試験の結果は、脳卒中診療における重要なCQに回答を与える。しかし、本研究が、約12年にわたる(2001年7月20日~2013年10月14日)エントリー期間をかけていることは、少なからず驚愕に値する。本研究では、脳卒中急性期の誤嚥を意識して、経口薬ではなく貼付剤を選択している。研究に関わる資金源は、各国の公的な資金を元にしており、COIについても、中立性が高い。これほどの長期間にわたるサポートがなされたことは、敬意に値する。しかし12年の間に、脳卒中診療も激変しているだろう。どこまで時宜に即している研究か、一定の基準に基づいたEBMの定性的な評価も必要であろう。

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肥満者の降圧治療、心血管効果に差はない/Lancet

 降圧治療の心血管イベントへの影響は、痩せている患者と肥満患者で、降圧薬の選択によって大きく変わることはほとんどないことが示された。オーストラリア・シドニー大学のAndrew Ying氏らが、無作為化試験22試験・13万5,715例の被験者データをメタ解析した結果、報告した。本検討は、標準体重の人と比べて肥満者の降圧による心血管ベネフィットが、選択した薬によって異なるのではないかとの仮説に基づき行われたものであった。Lancet誌オンライン版2014年11月4日号掲載の報告より。22試験13万5,715例のデータを分析 研究グループは、降圧治療の心血管リスクに対する影響について、ベースライン時のBMI値で分類した患者間で比較を行った。 Ovid Medline、Embaseなどを介して1966年1月1日~2014年5月1日に発表された降圧治療に関する無作為化試験で、BMI値の主要心血管イベントまたは死亡への交互作用を報告していたものを特定し、試験の被験者個人データを用いて、種々のクラスの降圧レジメン間の比較を行った。比較検討は主要6つ(ACE阻害薬vs.プラセボ、Ca拮抗薬vs.プラセボ、強化療法vs.標準療法、ACE阻害薬vs.利尿薬またはβブロッカー、Ca拮抗薬vs.利尿薬またはβブロッカー、ACE阻害薬vs.Ca拮抗薬)について行った。また、BMI値の分類は、3分類(25未満、25~30未満、30以上)または連続変数分類で行った。 検索の結果、分析は31の異なる治療比較が行われていた22試験・13万5,715例の個人データに基づき行われた。主要心血管イベントの発生例は、1万4,353件であった。高度肥満者ではACE阻害薬が若干の保護効果を期待できる? 主要6比較において、BMI値3分類間の保護効果が降圧薬のクラスによって異なるというエビデンスは示されなかった(すべての傾向p>0.20)。 BMI値を連続変数として分析した場合、ACE阻害薬が、Ca拮抗薬(BMI値が5増すごとのハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.89~0.98、p=0.004)、利尿薬(同:0.93、0.89~0.98、p=0.002)よりも、わずかだが保護効果が認められた。 一方でメタ回帰分析の結果、BMI値と収縮期血圧の低下におけるリスク低下との関連性は示されなかった。また、これまでの報告とは対照的に、BMI値と、Ca拮抗薬の有効性(vs.利尿薬)との相関も認めることができなかった。 著者は、「結論として、今回の分析は、降圧治療効果の修正因子としてBMI値は影響はあるだろうとの洞察を十分に与えるものである。ACE阻害薬は最もBMI値によって異なる効果があると思われ、おそらくBMIがより高値な人では心血管保護効果がわずかだがあると思われる。しかし、十分な説得力のあるエビデンスはない。また、データ的に、臨床に変化を提供するような強力なケースはなく、とくに肥満患者向けにというクラスの降圧薬はない」とまとめている。

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肥満合併高血圧に対してどの降圧薬が優れているか?:BPLTTCによるメタ解析(解説:桑島 巌 氏)-276

BPLTTCは世界で最も信頼性の高いメタ解析グループであり、近年相次いで降圧薬に関するメタ解析結果を発表している。 本論文は、以前から問題にされていた肥満に合併した降圧薬に対する心血管合併症予防効果について、4種類の降圧薬(ACE阻害薬、Ca拮抗薬、降圧利尿薬、β遮断薬)のうちどの薬剤が最も優れているかについて、22トライアル約13万5,715人のデータから検討した結果である。 その結果、ACE阻害薬はプラセボと比較した場合、有意性が若干認められたが、連続変数としてみた場合にはその有意性は消失していた。 ACE阻害薬のCa拮抗薬に対する優位性はBMI 30以上の高度肥満に限定していたが、5kg体重上昇ごとの連続変数としてみた場合にはACE阻害薬の優位性が観察された。 このように肥満度ごとの比較と、連続変数として比較した場合に乖離がみられることから、結果は偶然性の可能性もあるとして、著者らは肥満に対する降圧薬の有効性には大きな差はみられなかったと結論している。むしろどのBMIレベルでも降圧に依存して心血管イベントリスクが減少することから、降圧薬の種類にかかわらず降圧そのものが重要ということになる。

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脳卒中患者への降圧治療、身体機能改善せず/Lancet

 高血圧を伴う脳卒中患者に対する降圧治療は、血圧の低下はもたらすものの、身体機能は改善しないことが、英国・ノッティンガム大学のPhilip M W Bath氏らが行ったENOS試験で示された。脳卒中発症後の高血圧は不良な予後と関連することが知られているが、発症後早期の降圧治療の必要性や、投与中の降圧薬継続の是非は明らかにされていないという。Lancet誌オンライン版2014年10月22日号掲載の報告。GTNパッチによる脳卒中の機能改善効果を評価 ENOS試験は、高血圧を伴う急性脳卒中に対するニトログリセリンの有用性を評価する国際無作為化試験。対象は、18歳以上、虚血性または出血性の脳卒中で入院し、四肢の運動障害がみられ、収縮期血圧が140~220mmHgの患者であった。 被験者は、発症後48時間以内にニトログリセリン経皮吸収型製剤(5mg/日)の投与を開始し、7日間継続する群(GTNパッチ群)または投与を行わない群(対照群)に無作為に割り付けられた。また、脳卒中発症前に降圧薬の投与を受けていた患者は、継続投与する群(継続群)または中止する群(中止群)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は90日後の身体機能(修正Rankinスケール)とし、治療割り付け情報を知らされていない研究者が判定を行った。今後は超早期の降圧治療の試験を 2001年7月20日~2013年10月14日までに、23ヵ国173施設から4,011例が登録され、GTNパッチ群に2,000例、対照群には2,011例が割り付けられた。2,097例(52%)が脳卒中発症前から降圧薬治療を受けており、継続群に1,053例、中止群には1,044例が割り付けられた。 4つの群の平均年齢は70~73歳、男性が50~57%で、虚血性脳卒中が83~88%であった。アジア人の割合は10~14%であった。 ベースライン(脳卒中発症から中央値で26時間後)の平均血圧は、GTNパッチ群が167(SD 19)/90(13)mmHg、非GTNパッチ群は167(19)/89(13)mmHgであり、継続群は166(19)/88(13)mmHg、中止群は168(19)/89(13)mmHgであった。 第1日目の血圧低下の程度は、GTNパッチ群が対照群に比べ有意に大きかった(群間差:-7.0/-3.5mmHg、収縮期、拡張期ともp<0.0001)。また、第7日目の継続群の血圧低下の程度は中止群よりも有意に大きかった(群間差:-9.5/-5.0mmHg、収縮期、拡張期ともp<0.0001)。 一方、90日目の身体機能は、GTNパッチ群および継続群のいずれにおいても改善しなかった。すなわち、不良な転帰に関する、対照群に対するGTNパッチ群の補正オッズ比(OR)は1.01(95%信頼区間[CI]:0.91~1.13、p=0.83)であり、中止群に対する継続群の補正ORは1.05(95%CI:0.90~1.22、p=0.55)であった。 著者は、「病態が安定して薬剤の再導入が安全に行えるようになるまで、降圧治療を控えるのが適切と考えられる。急性期以降の血管イベントのリスク低減には血圧のコントロールが重要であり、降圧治療の再開が必要となるだろう」とし、「今後は、発症後数時間以内の超早期の降圧治療に焦点を当てた試験を行うべき」と指摘している。

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