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降圧療法としての新たな腎除神経法(解説:冨山博史 氏)-867

研究背景 高血圧症例(とくに難治性高血圧)において、腎除神経は有効な降圧療法とする報告が増えている。これまでの報告は、腎動脈内腔側から高周波カテーテルを用いて腎除神経を行う方法であった。現在、経皮的除神経や超音波を用いた除神経など、高周波カテーテル以外の腎除神経法が開発中である。 本研究は、超音波カテーテルを用いた腎除神経法の降圧治療としての有効性を検証する目的で実施された。超音波除神経法 本方法は、腎動脈本幹遠位側をバルーンにて血行遮断し、中枢側に超音波バルーンを留置し超音波にて除神経を実施する方法である。腎動脈本幹では腎神経は腎動脈内腔側でなく外膜側を走行しており、本超音波除神経法は腎動脈内腔より1~6mmの部位の組織挫滅に有効な方法とされ、同部位を走行する腎神経を挫滅させる。研究対象 年齢18~75歳、降圧薬服用数2種類以下、同降圧薬を4週間中止した後の自由行動下血圧(ABPM)が135/85mmHg以上~170/105mmHg未満、かつ適切な腎動脈の解剖学的構造(上述のごとく、本超音波システムは腎動脈本幹中央に超音波カテーテルを留置する必要があり、腎動脈本幹に屈曲が少なく、分枝までに十分な距離が必要となる)を有する症例。研究実施方法 対象は無作為に除神経実施群と対照群(腎動脈造影のみ)に分けられた。Single blind法にて結果は評価された。評価方法 主評価項目は除神経実施2ヵ月後の日中のABPMの変化である。本研究の結果 欧州、米国の21施設で研究が実施され803例が登録された。このうち74例で腎除神経が実施され、72例が対照群となった。2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧の低下は除神経群で-8.5mmHg、対照群で-2.2mmHg、腎除神経群で有意に大きい降圧を認めた。2ヵ月内では両群とも有意な腎動脈狭窄を認めなかった。研究の限界 本研究で著者らは以下5項目の研究限界を述べている。(1)長期の腎除神経の有効性は評価されていない。(2)腎動脈除神経が十分に実施されたかを手技直後に評価していない(除神経の評価方法として、腎カテコールアミン濃度測定、筋交感神経電位測定、求心神経刺激による血圧変化の評価などが実施されているが、確立された方法はない)。(3)有害事象の発生(安全性)評価には十分な症例数でない。(4)腎除神経のみでは降圧が不十分な症例が55%であった。(5)研究期間中の降圧薬服用状況の確認は、問診で実施され、血中・尿中の降圧薬濃度は測定していない。コメント■症例選択の制約:上述のごとく、超音波除神経法施行には腎動脈本幹の解剖学的構造に制約がある。超音波バルーン留置に必要な解剖学的特性(距離や非湾曲)を有する症例は87%であり、803例中103例(13%)が、超音波除神経困難な腎動脈本幹を有していた。■除神経の有効性・確実性:本研究では超音波腎除神経法の降圧効果は、SPYRAL研究などで報告されている高周波カテーテルで得られる降圧効果と同等としている。すなわち、高周波、超音波、その他、いずれの方法でも腎除神経が有意な降圧効果を示すことを示唆した研究成果である。しかし、SPYRAL研究など高周波カテーテル除神経は腎動脈本幹に加え腎動脈分枝部(腎神経の走行が動脈内腔側に移動する)で実施することで確実な除神経を行っている。しかし、超音波カテーテルでは、その特性から腎動脈本幹のみで除神経が施行され(腎動脈分枝の除神経は困難)、腎除神経の確実性は確認されていない。 今後、高周波カテーテル法と超音波カテーテル法の腎除神経の有効性・安全性を評価する大規模長期経過観察研究が実施されると考えられる。研究実施に際しては、腎除神経の確実性、研究実施期間中の正確な降圧薬服用有無の評価(腎除神経の降圧治療を評価するいずれの研究においても重要な評価課題として指摘されている)が望まれる。

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24時間自由行動下血圧は外来血圧よりも優れた予後予測指標である(解説:石川讓治氏)-863

研究の概要 24時間自由行動下血圧が、外来血圧や家庭血圧よりも優れた心血管イベントの予測因子であることが多くのコホート研究で報告されてきたが、本研究は、スペインの実地診療の中で測定された6万3,910名にも及ぶ多数の患者登録データを用いて、24時間自由行動下血圧が外来血圧よりも優れた総死亡や心血管死亡の予測因子であったことを追試した1)。結果の概要 24時間平均収縮期血圧が、1標準偏差(14/10mmHg)増加するごとに、総死亡が56%増加したにもかかわらず、外来収縮期血圧が1標準偏差(19/12mmHg)増加するごとのリスクは2%の増加しか認められなかった。夜間血圧のリスクは1.55倍、昼間の血圧のリスクは1.54倍であり、昼夜のリスクには差が認められなかった。また、24時間平均血圧と外来血圧の予後予測能の関連は、肥満、糖尿病、心血管死亡、降圧治療の有無で層別化しても同様であった。正常血圧(外来血圧<140/90mmHgかつ24時間平均血圧<130/80mmHg)と比較して、仮面高血圧(外来血圧<140/90mmHgかつ24時間平均血圧≧130/80mmHg)は2.83倍リスクが高く、持続性高血圧(1.80倍)や白衣高血圧(外来血圧≧140/90mmHgかつ24時間平均血圧<130/80mmHg)(1.79倍)よりも強い総死亡の予測因子であった。心血管死亡のリスクも総死亡と同様であった。本研究の新規性について 本研究においては、降圧薬の内服のない患者においてのみ定義される白衣高血圧や仮面高血圧と、降圧薬の内服患者において定義される白衣高血圧様の降圧不十分、仮面高血圧様の降圧不十分といった血圧フェノタイプを同時に比較検討したことに新規性があるものと思われる。白衣高血圧や仮面高血圧はPickering TGら2)によって提唱された言葉であるが、本来は持続性高血圧に移行する前段階の血圧パターンであると考えられてきた。その一方で、降圧薬内服下での仮面高血圧様現象は治療によっても完全には降圧できない血圧が残存する難治性高血圧に近い高血圧フェノタイプであると考えられている。そのため医師が外来血圧を十分コントロールしているにもかかわらず仮面高血圧様に不十分な降圧が残存してしまっている患者の方が、医師が十分に外来血圧をコントロールしようとしていない持続性高血圧よりもリスクが高いと考えられていた。しかし、未治療と降圧薬治療中の患者の血圧フェノタイプの違いを混同した報告も多く、また直接これらの血圧フェノタイプの予後予測能の違いを直接比較検討可能なデータはなかった。驚くことに、本研究では、降圧薬を内服してない患者の仮面高血圧が総死亡のリスクが最も高く、持続性高血圧や仮面高血圧様の降圧不十分であった患者よりもリスクが高かった1)。さらには白衣高血圧様の降圧不十分は、正常血圧や良好な降圧コントロールと同程度のリスクであった。注意する点 本研究が従来の研究と異なる点は、持続性高血圧の前段階と考えられていた白衣高血圧や仮面高血圧が、持続性高血圧と同様もしくはそれ以上にリスクが高かったことである。白衣効果は年齢とともに増加し高齢者に多く認められ、仮面効果は肥満者に多く認められる3)。外来血圧と24時間自由行動下血圧の差は、これらの因子に影響を受ける。本研究の対象は日常診療において24時間自由行動下血圧モニタリングが必要と判断された患者であり、医師が白衣効果や仮面効果があることを疑った患者である。そのため、白衣高血圧や仮面高血圧の患者のリスクが地域一般住民よりも高かった可能性がある。治療に応用できるか? 24時間自由行動下血圧は、外来血圧より優れた予後予測因子であり、リスクの層別化には重要である。しかし、24時間自由行動下血圧を指標とした降圧治療が、外来血圧を指標とした降圧治療より優れていることを示した報告は今のところはない。降圧治療については外来血圧を指標に行うことになるが、24時間自由行動下血圧の低下度は、外来血圧の低下度や家庭血圧の低下度よりも小さいことを4)、念頭におく必要がある。

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腎デナベーション、降圧薬服用患者への効果を確認/Lancet

 降圧薬を服用中の高血圧患者において、主要腎動脈および分岐部の腎除神経(腎デナベーション)は、偽処置(シャム)と比較し、重大な安全性イベントを伴うことなく血圧を有意に低下させることが示された。米国・Piedmont Heart InstituteのDavid E. Kandzari氏らが「SPYRAL HTN-ON MED試験」の結果を報告した。カテーテルを用いた腎デナベーションの試験では、これまで一貫した有効性は報告されておらず、降圧薬服用中の患者における有効性は不明であった。Lancet誌オンライン版2018年5月23日号掲載の報告。降圧薬で血圧コントロール不良の患者、腎デナベーションとシャムで比較 研究グループは、米国、ドイツ、日本、英国、オーストラリア、オーストリア、ギリシャの25施設において、20~80歳の血圧コントロール不良の高血圧患者を対象に、無作為化単盲検概念実証試験を行った。適格基準を、診察室収縮期血圧(SBP)150~180mmHg、拡張期血圧(DBP)90mmHg以上、2回目のスクリーニング時に24時間自由行動下SBPが140~170mmHg、1~3種の降圧薬を6週間以上継続して服用している患者とし、腎血管造影後、腎デナベーション群またはシャム群に無作為に割り付けた。患者、介護者、血圧評価者は、割り付けについて盲検化された。 主要有効性評価項目は、自由行動下血圧測定に基づくベースラインから6ヵ月後の血圧変化で、服薬アドヒアランスについても評価した(intention-to-treat解析)。安全性については、6ヵ月間における主な有害事象を評価した。なお、本試験では現在も追跡調査が進行中である。6ヵ月後に腎デナベーション群で有意に低下、群間差7.0mmHg 2015年7月22日~2017年6月14日に467例が登録され、最初の80例が腎デナベーション群(38例)とシャム群(42例)に無作為に割り付けられた。 6ヵ月後におけるベースライン時からの診察室および24時間自由行動下の血圧値の低下は、ベースラインの血圧で調整した場合、シャム群に比べ腎デナベーション群で有意に大きかった。ベースライン補正後の平均群間差は、24時間SBPが-7.0mmHg(95%信頼区間[CI]:-12.0~-2.1、p=0.0059)、24時間DBPは-4.3mmHg(-7.8~-0.8、p=0.0174)、診察室SBPは-6.6mmHg(-12.4~-0.9、p=0.0250)、診察室DBPは-4.2mmHg(-7.7~-0.7、p=0.0190)であった。 ベースライン血圧非補正の場合も同様に、診察室SBP(群間差:-6.8mmHg、95%CI:-12.5~-1.1、p=0.0205)、24時間SBP(-7.4mmHg、-12.5~-2.3、p=0.0051)、診察室DBP(-3.5mmHg、-7.0~-0.0、p=0.0478)、24時間DBP(-4.1mmHg、-7.8~-0.4、p=0.0292)いずれにおいても、腎デナベーション群がシャム群より血圧値の低下が有意に大きいことが確認された。 24時間SBPおよびDBPの1時間ごとの変化を評価したところ、腎デナベーション群では24時間にわたって血圧値の低下が確認された。 なお、3ヵ月時点の評価では、両群間に有意差は認められなかった。また、服薬アドヒアランスは約60%であったが、試験期間中の個々の患者のアドヒアランスには、ばらつきがみられた。重大な有害事象は、両群とも報告されなかった。

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腎デナベーションは、降圧薬に代わりうるか/Lancet

 降圧薬服用を中止した軽度~中等度の収縮期/拡張期高血圧が認められる患者に対し、腎デナベーションを行うことで、2ヵ月後の収縮期血圧がシャム群に比べて有意に低下したことが示された。フランス・パリ第5大学のMichel Azizi氏らが行った「RADIANCE-HTN SOLO試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年5月23日号で発表された。初期の試験では、高周波腎デナベーションが、中等度の高血圧患者の血圧を低下することが示されている。研究グループは、腎デナベーションが、降圧薬服用を中止した外来高血圧患者の血圧を下げる代替治療技術となるのかを検討した。米国・欧州の39ヵ所でシャム対照試験 RADIANCE-HTN SOLO試験では、2016年3月28日~2017年12月28日にかけて、収縮期/拡張期高血圧の患者を対象に、米国21ヵ所、欧州18ヵ所の医療機関を通じて、無作為化シャム(擬似手術)対照単盲検比較試験が行われた。 被験者は、2種以下の降圧薬を中止してから4週間時点の収縮期/拡張期血圧値が135/85~170/105mmHgで、正常な腎動脈構造が認められた18~75歳の患者だった。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはParadiseカテーテル(ReCor Medical)を使用した腎デナベーションを、もう一方には腎血管造影のみ(シャム)を施行した。 有効性の主要エンドポイントは、ITT解析による2ヵ月時点における日中自由行動下収縮期血圧(SBP)の変化だった。被験者は、事前規定した血圧基準を超えない限りは、追跡2ヵ月間は降圧薬の服用をしなかった。 主要有害イベントは、全死因死亡、腎不全、末端器官障害を伴う塞栓症、30日以内の高血圧クリーゼによる入院などだった。施術2ヵ月後の日中自由行動下SBPは8.5mmHg低下 803例がスクリーニングを受け、試験適格だった146例(腎デナベーション群74例、シャム群72例)が対象となり試験を受けた。 日中自由行動下SBPの変化値は、シャム群-2.2mmHgに対し、腎デナベーション群は-8.5mmHgと有意に低下幅が大きかった(ベースライン補正後の群間差:-6.3 mmHg、95%信頼区間:-9.4~-3.1、p=0.0001)。 主要有害イベントは、両群ともに報告がなかった。

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降圧薬が皮膚がんのリスク増加に関連

 米国・マサチューセッツ総合病院のK.A. Su氏らによる調査の結果、光感作性のある降圧薬(AD)による治療を受けた患者では、皮膚の扁平上皮がん(cSCC)のリスクが軽度に増加することが明らかになった。多くのADは光感作性があり、皮膚の日光に対する反応性を高くする。先行の研究では、光感作性ADは口唇がんとの関連性が示唆されているが、cSCCの発症リスクに影響するかどうかは不明であった。British Journal of Dermatology誌オンライン版2018年5月3日号掲載の報告。 研究グループは、北カリフォルニア州の包括的で統合的なhealthcare delivery systemに登録され、高血圧症に罹患した非ヒスパニック系白人のコホート研究において、ADの使用とcSCCリスクとの関連を調べた。ADの使用については電子データを用いて分析。ADは、公表論文に基づいて、光感作性(α2刺激薬、利尿薬[ループ系、カリウム保持性、サイアザイド系および配合剤])、非光感作性(α遮断薬、β遮断薬、中枢性交感神経抑制薬およびARB)または光感作性不明(ACE阻害薬、Ca拮抗薬、血管拡張薬およびその他の配合剤)に分類された。 Coxモデルを用いて補正ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。共変量は、年齢、性別、喫煙、合併症、cSCCおよび日光角化症の既往歴、調査年、医療制度の利用、医療保険会員の期間、光感作性ADの使用歴とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に、cSCCを3,010例が発症した。・AD不使用群と比較し、cSCCのリスクは、光感作性AD使用歴ありの群(aHR:1.17、95%CI:1.07~1.28)、光感作性不明AD使用歴ありの群(aHR:1.11、95%CI:1.02~1.20)で増加したが、非光感作性AD使用歴ありの群では関連は認められなかった(aHR:0.99、95%CI:0.91~1.07)。・光感作性ADの処方数の増加に伴い、cSCCのリスクが軽度に増加した。1~7剤(aHR:1.12[95%CI:1.02~1.24])、8~15剤(同:1.19[1.06~1.34])、16剤以上(同:1.41[1.20~1.67])。

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きっちり飲める降圧薬は2剤まで?

 高血圧症治療に対する医師の満足度は、2014年度時点で98.9%1)と高いにもかかわらず、降圧目標達成率は、2013年の研究によると男性30%、女性40%と低いことが報告されている2)。日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は「医師および高血圧患者の高血圧治療に対する意識の実態調査」を実施し、その結果は医学雑誌「血圧」に調査研究として掲載された3)。 調査の結果、医師と患者の間で、治療説明の認識にずれが存在する可能性が示唆された。また、約半数の患者は薬剤を減らしたいと考えており、およそ70%の患者は、正しく服用できる降圧薬は多くても2剤までと答えている。患者は、よりシンプルでわかりやすい治療を求めている。 本研究は、1~3すべての条件を満たす医師321名(1.掲げる診療科名が循環器内科、代謝・内分泌科あるいは一般内科、2.1ヵ月間の高血圧症診察患者数が100例以上、3.30歳以上)と、1~3すべての条件を満たす高血圧症患者1,000例(1.高血圧症のため医療機関に2回以上通院したことがあり、現在も定期的に通院している、2.高血圧症治療の目的で薬物治療中、3.40歳以上)を対象とした、インターネットによる全国調査。なお、患者の抽出に際しては、事前の高血圧患者の調査分布に基づき、降圧薬配合剤服用中の患者200例、降圧薬単剤服用中の患者300例および降圧薬2剤以上を併用している患者500例となるように調整した。 主な結果は以下のとおり。≪診断や治療に関して≫・初診時に「治療の目的」を説明したと86%の医師が回答したのに対し、説明されたと答えた患者は39%だった。説明を受けていない、あるいは覚えていないと答えた患者は23%存在した。・処方決定前に治療選択肢を説明したと49%の医師が回答したが、患者での認識は18%だった。全体で54%の患者が、処方決定前に治療選択肢の説明を望んでいた。・「降圧目標値について説明した」と95%の医師が回答したのに対し、44%の患者は説明を受けていない、あるいは覚えていないと回答した。≪残薬と服薬アドヒアランスに関して≫・服薬アドヒアランスを重視する割合は、医師が78%であったのに対し、患者は48%と両者の間に乖離がみられた。・薬剤数を減らしたいと考えている患者は48%存在し、とくに3種類以上服用している患者でその傾向が強いという結果だった。・良好な服薬アドヒアランスで服用できる薬剤数について、医師は43%が「2種類まで」、36%が「3種類まで」と回答したのに対し、患者は33%が「1種類まで」、34%が「2種類まで」と、患者が考える薬剤数は、医師が考えているより少ないという結果だった。 本調査研究の筆者である檜垣 實男氏(愛媛大学名誉教授/医療法人 仁友会 南松山病院 病院長)は、「高血圧患者さんと医師のコミュニケーションギャップを改善し、患者さんが高血圧治療の目的や治療選択肢について理解し、医師と共に治療に向き合える体制を作ることが大切です。患者さんの服薬アドヒアランス向上のためには、配合剤という選択肢も有効であると考えられ、今後高齢化が進む中で、残薬を減らし血圧をしっかりと管理していくことが、心血管イベント抑制や、医療経済的な貢献にもつながると期待しています」とコメントしている。■参考文献1)平成27年度(2015年度)国内基盤技術調査報告書「60疾患の医療ニーズ調査と新たな医療ニーズII」【分析編】. 公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団. 2016.2)Miura K, et al. Circ J. 2013;77:2226-2231.3)西村誠一郎ほか. 血圧. 2018;25:364-376.■参考日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 プレスリリース

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かかりつけに必要な「薬剤師としての実績」にこんな資格は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第1回

皆さんは、学会発表や論文執筆に取り組んでいますか? 薬剤師個人が何に取り組んできたのかという実績が重要視されるようになり、本年度からかかりつけ薬剤師に同意していただくには、自身の薬剤師としての経歴、論文発表の実績などを提示することが必要になりました。急に言われてできるものではないため、どうしたらいいのか…と戸惑われている薬剤師さんも多いのではないかと思います。そんな薬剤師さんのお役に立ちそうな情報がありますのでご紹介します。日本高血圧学会は、患者の降圧目標達成率を向上させる戦略として、「高血圧・循環器病予防療養指導士」を柱とした対策を19年版の高血圧治療ガイドラインに盛り込む方針だ。看護師や薬剤師、管理栄養士を中心に4,000人以上を育成し、高血圧や循環器病の指導を薬局や健診機関で行ってもらう。多くの薬剤を服用しなくても患者が降圧目標を達成できるようにするのが狙い。(RISFAX 2018年5月7日付)現在、2019年度の高血圧治療ガイドラインで、降圧目標が140/90mmHgから130/80mmHgへの引き下げが検討されており、もしそうなれば、高血圧患者は4,300万人から6,300万人になると言われています。2,000万人増ですから、医療機関での治療を受ける患者数も明らかに増えるのではないでしょうか。しかも境界域の患者さんには薬物療法だけでなく、とくに生活指導が必要と考えられます。医薬品に関する指導だけでなく、生活指導に関するアドバイスも薬剤師が参加するようになるため、地域における他職種との連携がより重要になることが予想されます。資格取得には学会参加や症例レポートが必要この認定制度の目的について、「第1条:この制度は、循環器病の主たる原因である高血圧等の生活習慣病の改善・予防、および、その他の危険因子の管理に関する療養指導を行うために有能な専門的知識および技術を有する職種の資質向上を図り、よって循環器病の予防や病態改善により国民の健康増進に貢献することを目的とする」(高血圧・循環器病予防療養指導士ホームページより)とあります。また、日本高血圧学会の会見では、「降圧剤を増やさなくても血圧が下がるという指導をしていきたい。多剤の問題も出てきており、薬剤師とも連携したい」という薬剤師に対する期待のコメントも出ています。すでに3回の試験が実施されており、各職種別の合格者数が開示されています。合格した薬剤師は、第1回は12名、第2回は41名でした。第2回は、保健師や看護師、臨床検査技師など、すべての医療系資格保有者の中で薬剤師がもっとも多く合格しています。現在の全認定者数は324人ですが、それをまず1,000人に増やし、将来的に4,000人以上を目指すとのこと。積極的に合格者を増やしたい今は、もしかしたら認定されやすいタイミングなのではないかとこっそり思っています。この試験の受験資格ですが、薬剤師の資格があるだけでは足りません。日本高血圧学会または日本循環器病予防学会への在籍が試験実施日までに1 年以上であることや、一定の学術大会やセミナーや試験当日の講習への参加などが必要になります。申し込み時には、「指導例記録5症例、またはそれに代わるもの」という薬歴に近い症例レポートの提出が必要です。学会への入会や症例レポート作成、もしかしたら学会発表など、かかりつけ薬剤師に求められることが一度に準備できる可能性があります。この高血圧・循環器病予防療養指導士はあくまで一例ですが、薬剤師のサポートが求められている領域に貢献でき、また、かかりつけ薬剤師に必要な実績に何から手を付ければいいかわからない薬剤師さんにとって、日々行っていることが成果として資格取得につなげられるいい機会だと思いますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。日本高血圧学会・日本循環器病予防学会・日本動脈硬化学会 認定 高血圧・循環器病予防療養指導士

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高齢者の処方見直しで諸リスク低減へ

 2018年5月11日、日本老年医学会は、「高齢者とポリファーマシー」に関するメディアセミナーを都内で開催した。本学会が策定した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を踏まえ、医療現場でポリファーマシー対策に取り組む3人の演者が講演を行った。ポリファーマシーが老年症候群に拍車をかける? はじめに、秋下 雅弘氏(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学 教授)が、ポリファーマシー対策の動向について語った。わが国では6剤以上がポリファーマシーと定義され、薬剤性老年症候群などの原因として懸念されている。老年症候群は、転倒、記憶障害、意欲低下や排泄機能障害など、加齢・疾患によるものも含まれるが、その症状がポリファーマシーにより助長されている可能性を秋下氏は指摘した。 同氏は、「ポリファーマシーは、例えればさまざまなお酒を一度に飲むと悪酔いするようなもので、多剤服用のみを指すのではない。薬を減らす際には生活習慣の是正など、非薬物療法がより重要になる。医師・薬剤師を中心に、医療スタッフが連携する必要がある」と語った。3剤以上の見直しでリスク低減の可能性 次に、溝神 文博氏(国立長寿医療研究センター 薬剤部)が、院内でポリファーマシーを提案する「高齢者薬物療法適正化チーム」の活動について紹介した。チームは、内科・循環器内科の医師、薬剤師を中心に構成され、週1回カンファレンスを実施している。 チーム介入症例の解析では、薬物有害事象などが疑われる58症例に対し、平均4剤の見直し提案を行った。対象薬は降圧薬が最も多く、次いで消化器薬、糖尿病薬、スタチン系が多かった。結果、3剤以上削減した群で薬物有害事象の発生頻度が53%から9%と7日間で有意に減少し、60日後まで維持されていた。一方で、3剤未満の削減だと有意差がなく、60日後には再燃する傾向がみられた。 溝神氏は、「チーム結成によって意識変化が起こり、慎重に処方を行う医師が増加した。しかし、服薬環境も適正化されないと十分ではない。患者・家族への説明でポリファーマシーへの正しい理解を促し、地域レベルで対策する必要がある」と語った。短時間の睡眠が不眠症とは限らない? 最後に、水上 勝義氏(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授)が、向精神薬の適正使用について説明した。回復可能な認知症の原因として、1位がうつ病、2位が薬剤性という報告1)を挙げ、原則として非薬物療法を優先し、向精神薬は慎重に使用するよう呼びかけた。 高齢者が訴える不眠症に対し、水上氏は、「高齢になると深睡眠が減る傾向にある。しかし、日中の生活に支障がなければ、睡眠時間が短くても不眠症にならない」と指摘した。また、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)などに使用される抗精神病薬には、新規投与後6ヵ月まで死亡リスクが上昇するという報告2)があるという。同氏は、漢方薬の過剰投与にも言及し、「十分な治療効果が認められた患者では減量・中止を検討すべきだ」と語った。 さらに、スルピリドによる錐体外路症状、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によるアパシーの発現などの副作用を例に挙げ、「頻用される薬でも、高齢者には注意が必要。薬剤によって諸症状が出ている可能性も考慮すべき」と締めた。 本学会は、エビデンスが少ない高齢者医療における課題などに対し、具体的にどのような対応をするのか明確にするため、「健康長寿達成を支える老年医学推進5か年計画」を策定した。2018年6月、学術集会で発表予定。■参考文献1)Weytingh MD, et al. J Neurol. 1995;242:466-471.2)Arai H, et al. Alzheimers Dement. 2016;12:823-830.■参考一般社団法人 日本老年医学会第60回日本老年医学会学術集会■関連記事身体能力低下の悪循環を断つ診療

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身体能力低下の悪循環を断つ診療

 2018年4月19~21日の3日間、第104回 日本消化器病学会総会(会長 小池 和彦氏[東京大学医学部消化器内科 教授])が、「深化する多様性~消化器病学の未来を描く~」をテーマに、都内の京王プラザホテルにおいて開催された。期間中、消化器領域の最新の知見が、シンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップなどで講演された。 本稿では、その中で総会2日目に行われた招請講演の概要をお届けする。フレイル、サルコペニアに共通するのは「筋力と身体機能の低下」 招請講演は、肝疾患におけるサルコペニアとの関連から「フレイル・サルコペニアと慢性疾患管理」をテーマに、秋下 雅弘氏(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学 教授)を講師に迎えて行われた。 はじめに高齢者の亡くなる状態を概括、いわゆるピンピンコロリは1割程度であり、残りの高齢者は運動機能の低下により、寝たきりなどの介護状態で亡くなっていると述べ、その運動機能の低下にフレイルと(主に一次性)サルコペニアが関係していると指摘した。 フレイルは、「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を表し、要介護状態に至る前段階として位置付けられている(ただし、可逆性はあるとされる)。また、サルコペニアは「高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下」と定義される。両病態はお互いに包含するものであり、とくに筋力と身体機能の低下は重複する。フレイル、サルコペニアは世界初のガイドラインなどで診療 診療については、『フレイル診療ガイド 2018年版』と『サルコペニア診療ガイドライン 2017年版』が世界で初めて刊行され、詳しく解説されている(消化器領域では『肝疾患におけるサルコペニアの判定基準』により二次性サルコペニアの診療が行われている)。 フレイルの診断は、現在統一された基準はなく、一例として身体的フレイルの代表的な診断法と位置付けられている“Cardiovascular Health Study基準”(CHS基準)を修正した日本版CHS(J-CHS)基準が提唱され、体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度、身体活動の5項目のうち3つ以上の該当でフレイルと判定される。スクリーニングでは、質問形式で要介護認定ともシンクロする「簡易フレイルインデックス」など使いやすいものが開発されている。 一方、サルコペニアも同様に統一基準はないが、Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によってアジア人向けの診断基準が作られ、年齢、握力、歩行速度、筋肉量により診断されるが、歩行速度など、わが国の実情に合わない点もあり注意が必要という(先の二次性サルコペニアの診断ではCT画像所見による筋肉量の測定がある)。 また、両病態とも筋肉量の測定など容易ではないが、外来で簡単にできる「指輪っかテスト」なども開発され、利用されている。 治療に関しては両病態ともに、レジスタンス運動を追加した運動療法や、十分な栄養を摂る栄養療法が行われる。詳細は先述のガイドラインなどに譲るが、「タンパク質」の摂取を例に一部を概略的に示すと、慢性腎不全の患者では腎臓機能維持の都合上、タンパク質の摂取が制限されるが、その制限が過ぎるとサルコペニアに進んでしまう。そのため、透析に進展させない程度のタンパク質の摂取を許すなど、患者のリスクとベネフィットを比較、検討して決めることが重要という。薬剤が6種類を超えるとハイリスク 続いて「ポリファーマシー」に触れ、ポリファーマシーはフレイルの危険因子であり、薬剤数が6種類を超えるとハイリスクになると指摘する(5種類以上で転倒のリスクが増す)。また、6種類以上の服用はサルコペニアの発症を1.6倍高めるというKashiwa studyの報告を示すとともに、広島県呉市のレセプト報告を例に85~89歳が一番多くの薬を服用している実態を紹介した。 消化器領域につき、「食欲低下」では非ステロイド性抗炎症薬、アスピリン、緩下薬などが、「便秘」では睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン)、三環系抗うつ薬などが、「ふらつき・転倒」では降圧薬、睡眠薬・抗不安薬、三環系抗うつ薬などが関係すると考えられ、「高齢者への処方時は、優先順位を決めて処方し、非専門領域についても注意してほしい」と語った。とくに「便秘」は抗コリン薬が原因になることが多いという。また、「GERD」についてはH2ブロッカーが認知機能を低下させる恐れがあるため注意が必要であり、第1選択薬のPPIでも漫然とした長期使用は避けるなど、必要に応じた使い方が望ましいという。 まとめとして、高齢者の生活改善では「規則正しい食事」「排泄機能の維持」「適切な睡眠習慣」が大切で、とくに「食事は服薬のアドヒアランス維持のためにも気を付けてもらいたい」とその重要性を指摘した。最後に秋下氏は「フレイル、サルコペニアは、身体的な負の悪循環を形成することを理解してもらいたい」と述べ、レクチャーを終えた。■参考第104回 日本消化器病学会総会■関連記事ニュース 初の「サルコペニア診療ガイドライン」発刊

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死亡リスク予測、24時間血圧 vs.診察室血圧/NEJM

 24時間自由行動下収縮期血圧(ABP)は診察室血圧よりも、全死因死亡および心血管死について、より強い予測因子であることが示された。血圧値の1標準偏差(SD)上昇当たりの全死因死亡に関するハザード比は、24時間ABPが1.58だったのに対し、診察室血圧では1.02だったという。また、「仮面高血圧」(診察室血圧は正常値だが24時間ABPは高値)の全死因死亡に関するハザード比は2.83で、持続性高血圧の1.80よりも高かった。また、「白衣高血圧」(診察室血圧が高値で24時間ABPは正常)の同HRも1.79で良性とはいえないことが示されたという。スペイン・マドリード自治大学のJose R. Banegas氏らが、約6万4,000例を対象に行った大規模な前向きコホート試験の結果で、NEJM誌2018年4月19日号で発表した。24時間ABPが予後に与える影響について、これまでに発表されているエビデンスは、主に住民ベース試験や比較的規模の小さい臨床試験に基づくものだったという。診療室・24時間自由行動下血圧について、4分類し評価 研究グループは、プライマリケア患者を対象とした大規模コホートで、診察室血圧・24時間ABPと、全死因死亡・心血管死との関連を調べるため、スペインで2004~14年に登録を行った18歳以上、6万3,910例の多施設共同全国コホートのデータを基に分析を行った。 被験者の診療室血圧と24時間ABPについて、(1)持続性高血圧(診察室血圧、24時間ABPともに高値)、(2)白衣高血圧(診察室血圧は高値だが、24時間ABPは正常)、(3)仮面高血圧(診察室血圧は正常だが、24時間ABPは高値)、(4)正常血圧(診察室血圧、24時間ABPともに正常)の4つに分類。血圧と死亡との関連について、診察室血圧・24時間ABPと交絡因子で補正したCox回帰モデルを用いて解析した。白衣高血圧も持続性高血圧並みの関連性 中央値4.7年の追跡期間中の死亡は3,808例、うち心血管系が原因の死亡は1,295例だった。 診察室血圧と24時間ABPの両者を包含したモデルでは、24時間収縮期血圧と全死因死亡との関連(診察室血圧で補正後の血圧1SD上昇当たりのハザード比[HR]:1.58[95%信頼区間[CI]:1.56~1.60])は、診察室収縮期血圧と全死因死亡の関連(24時間血圧で補正後のHR:1.02[95%CI:1.00~1.04])よりも強かった。 夜間自由行動下収縮期血圧1SD上昇当たりの全死因死亡HR(診察室血圧と日中血圧で補正後)は1.55(95%CI:1.53~1.57)、日中自由行動下収縮期血圧の同HR(診察室血圧と夜間血圧で補正後)は1.54(同:1.52~1.56)だった。 こうした関連は、年齢、性別、肥満、糖尿病や心血管疾患、降圧薬使用についてみたサブグループでも一貫して認められた。 また全死因死亡との関連は、仮面高血圧(HR:2.83、95%CI:2.12~3.79)が、持続性高血圧(同:1.80、1.41~2.31)、白衣高血圧(同:1.79、1.38~2.32)よりも強かった。なお、心血管死に関する分析結果は、全死因死亡の結果と同様だった。

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床屋が医者の仕事、再び:ロス・バーバーショップ試験(解説:桑島巖氏)-841

 理髪店の店頭で、ぐるぐる回る、赤・青・白のらせん状マークは、元来理髪師が瀉血治療という医者の仕事も兼ねていたことからきているという説がある。再び床屋さんが医者の仕事にタッチするという興味ある論文が発表された。 米国の黒人男性は血圧コントロール不十分で、脳卒中や心筋梗塞などによる死亡が白人や黒人女性に比べて多い。その一因として高血圧に対する意識が低く、治療を受ける環境も十分でないことから、黒人の血圧管理の啓蒙と治療意識の促進が国策として求められている。このLos Angeles Barbershop試験はNIHの国立心肺血液研究所の支援によって行われたランダム化比較試験である。理髪店ごとにランダム化するクラスターランダム化が採用されている。 理髪店の常連客に自動血圧計によって血圧を測定してもらい、2回のスクリーニングで140mmHg以上の黒人男性を対象としている。介入群(介入理髪店群28店舗、139例)では、高血圧知識のある薬剤師による生活改善指導と降圧薬の処方を受けた。コントロール群(24店舗180例)では、理髪師が高血圧についての説明を行い、生活習慣の改善を促すとともに医療機関の受診を促した。 結果として6ヵ月後の平均血圧は、介入群では152.8mmHgから125.8mmHgに、コントロール群では154.6mmHgから145.4mmHに下降。その降圧度は各々27.0mmHg、9.3mmHgで、介入群の方が有意に大きかった。 理髪師は古来、外科治療も行っていたことは知られているが、一般人が定期的に接する理髪店が、生活習慣病の改善に寄与できる可能性を示している。 しかし、わが国とは事情が異なることも留意する必要がある。第一にわが国では職場や地域での定期健診が行き渡っており、高血圧をスクリーニングする環境が整備されているため、米国のような経済や人種による医療の恩恵に対する格差が格段はない。しかし、健康に無関心な中高年や中小企業で働く人々にとっては、高血圧を意識付ける1つの手段にはなりうる可能性がある。 本研究ではいくつかのLimitationがある。介入群では25ドル支給、薬剤費用と交通費を支給したとの記載があるが、それであれば被検者の治療に対するモチベーションも違ってくる可能性がある。また薬剤師は、米国のガイドラインに従い130mmHgを目標にしているのに対して、医師は140mmHgを降圧目標にしている可能性があり、このことが結果に影響しているかもしれない。

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降圧治療における家庭血圧測定の有効性(解説:石川讓治氏)-833

 家庭血圧が外来血圧よりも優れた高血圧性臓器障害や心血管イベントの予測因子であることが多くの疫学研究において報告されているが、家庭血圧を指標とした降圧治療が、外来血圧を指標とした血圧治療よりも優れていることを示した報告はない。Staessenらは同じ血圧レベルと目標値として降圧治療を行った場合、外来血圧を指標とした降圧治療の方が家庭血圧を指標とした降圧治療よりも、24時間自由行動下血圧レベルが低値であったことを報告しており、必ずしも家庭血圧を指標とした降圧治療が厳格な血圧コントロールとはならないと考えられてきた。しかし、過去の疫学研究において、外来血圧は家庭血圧よりやや高めになる傾向があることが報告されており、多くの高血圧治療ガイドラインにおいては外来血圧140/90mmHgに相当するのが家庭血圧135/85mmHgであると考えられている。そのため、Staessenら1)の研究結果を実際の臨床に当てはめるには困難があった。 TASMINH4研究では2)、現在の高血圧治療ガイドラインに沿った降圧レベルを目標として、遠隔モニタリングを用いた家庭血圧測定、自己による家庭血圧測定、通常の外来血圧測定の3群に無作為割り付けして、外来血圧値を比較している。12ヵ月後の外来収縮期血圧は、通常外来血圧測定群と比較して、遠隔モニタリングを用いた家庭血圧測定群で4.7mmHg、自己家庭血圧測定群で3.5mmHg低値であった。この差に起因する因子として、追加された降圧薬の数が有意に遠隔モニタリングによる家庭血圧測定群および自己家庭血圧測定群に多かったことが起因しており、家庭血圧を指標とした方が医師患者ともに、躊躇なく降圧薬を増量できていた。遠隔モニタリングによる家庭血圧測定群では、定期的に家庭血圧値がウェブサイトでグラフ表示され、目標血圧よりも高ければ、テキストメールで患者に受診が促されている。また自己家庭血圧測定群においても、1ヵ月に1回封筒で血圧値を記入して医師に郵送し、目標血圧よりも高ければ患者に受診が勧められている。本研究におけるアウトカムが、24時間自由行動下血圧ではなく、介入対象である外来血圧値であることが本研究における結果の解釈を難しくさせているが、受診回数は各群で有意差なく、家庭血圧測定は複数日、複数回の“平均血圧値”であり、偶然の外来血圧上昇ではないとの判断が速やかに降圧薬を増量することの動機付けになっているものと思われる3)。遠隔モニタリングを用いた家庭血圧測定群と自己家庭血圧測定群では有意差は認められなかった。 TASMINH4研究対象者2)は平均66.9歳で、起立性低血圧、認知症、心房細動、慢性腎臓病の患者が除外されており、本研究の結果を家庭血圧測定が困難となる高齢者に当てはめることは困難である。正確な外来血圧測定を行えば、外来血圧が家庭血圧よりも低い値になることが報告されている4)。家庭血圧測定同様に、正確な外来血圧の測定も重要であることは、本研究の外来血圧がアウトカムであることよりも明らかである。

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内科的救急の診療実態をお聞きしました

CareNet.comでは、会員医師の方々に内科的な救急診療に関するアンケートへのご協力をお願いしました。今回、その結果がまとまりましたので、詳報いたします。調査は、2018年1月22日にCareNet.comの会員医師を対象にインターネット上で実施され、回答者総数は329名でした。その内訳は、20代:2%、30代:16%、40代:29%、50代:34%、60代:16%、70代:2%でした。また、所属別では勤務医師が79%、開業医師が21%でした。結果概要8割近くが救急場面に遭遇設問1「直近3年以内に場所を問わず、救急診療を行った経験の有無」を尋ねたところ、「ある」との回答が75%、「ない」が25%と、回答した会員医師の4分の3が過去3年以内に救急対応を経験しているという結果でした。■設問1 直近3年以内に場所を問わず、救急診療を行った経験はありますか。1) ある2) ない救急対応の9割は病院またはクリニック内設問2「過去に、救急診療をした場所(複数回答)」について尋ねたところ、圧倒的に病院内での対応が多く、院内急変事例に遭遇するケースが多いことがうかがわれました。また、少数ながら航空機や電車内での対応という回答もみられました。なお、海外の外出先や選択肢以外の場所の回答はありませんでした。■設問2 直近3年以内にかかわらず、過去に救急診療をされたことがある場合、診療の場所はどこでしたか。(複数回答)1) 病院2) 診療所・クリニック3) 航空機、船舶など4) 新幹線、電車、バスなどの公共交通機関5) 自宅6) 国内の外出先7) 海外の外出先8) その他(具体的に)9) 救急診療の経験はない画像を拡大する「意識障害」など予後を左右する症候が上位設問3「救急診療の具体的な症候(複数回答)」について尋ねたところ、上位3位は「意識障害」(191回答)、「呼吸困難」(153回答)、「腹痛」(143回答)の順で多く、生命予後に直結する症候で占められました(参考までに「胸痛」[131回答]は6位、「頭痛」[121回答]は9位でした)。また、よくある不定愁訴の「腹痛」(143回答)、「発熱」(142回答)、「めまい」(136回答)も多くありました。■設問3 救急診療をされたときの具体的な症候は、次のどれでしたか。(複数回答)1) 意識障害2) 失神3) 頭痛4) めまい5) 痙攣6) 呼吸困難7) 窒息(感)8) 胸痛9) 血痰、喀血10) 背部痛11) 動悸12) 悪心、嘔吐13) 腹痛14) 吐血、下血15) 黄疸16) 発熱17) 異常体温18) 異常血圧19) 薬物中毒20) 尿閉21) 浮腫22) ショック23) その他(具体的に)24) 救急診療の経験はない画像を拡大するやっぱり知りたい「意識障害」への対応設問4で「内科的な救急診療で詳しく知りたいと思う症候(複数回答)」について尋ねたところ、「意識障害」(176回答)、「失神」(139回答)、「痙攣」(130回答)の順で多く、いずれも診断時に患者からの応答が妨げられる症候が上位3位を占めました。とくに意識障害は、設問3のよく診る症候でも1位であり、遭遇する機会が多いけれど、実は対応に苦慮していることがうかがわれました。■設問4 先生が、内科的な救急診療で詳しく知りたいと思う症候について、教えてください。(複数回答)1) 意識障害2) 失神3) 頭痛4) めまい5) 痙攣6) 呼吸困難7) 窒息(感)8) 胸痛9) 血痰、喀血10) 背部痛11) 動悸12) 悪心、嘔吐13) 腹痛14) 吐血、下血15) 黄疸16) 発熱17) 異常体温18) 異常血圧19) 薬物中毒20) 尿閉21) 浮腫22) ショック23) その他(具体的に)画像を拡大する転送の見極め、どこまで対応するかが難題最後に設問5として「内科的な救急診療で知りたい、日頃疑問に思っていること」を自由記入で質問したところ、「めまい」に関しての疑問が一番多く、そのほかにも「意識障害」「胸痛」「腹痛」「薬物・劇物中毒」「転送・搬送」などへの疑問が寄せられました。コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)症候・症状「めまい」についてCT検査が必要な緊急性の判断突然のめまいに対する処置非専門医が診療する場合の対応「意識障害」について失神などとの鑑別診断転倒などでの意識障害の評価「胸痛」について背部痛との鑑別診断帰宅判断の根拠検査機器が一切ない環境下での診断「腹痛」について(効率的な)鑑別診断腹部症状、画像検査でわからない危険な腹痛外科的処置を要する腹痛の判断「薬物・劇物中毒」について初期対応と治療様子をみてよいものとその根拠診療後の警察・関係諸機関への連絡・連携の方法「循環器疾患」について発作性心房細動への対応治療を要する不整脈の鑑別心蘇生術開始の見極め「内分泌代謝疾患」についてショックの際のサイン浮腫や脱水の治療急性・慢性の電解質異常「精神科疾患」について緊急の転送が必要なケース向精神薬を内服中の救急患者への対応精神科単科病院での転送の実際そのほかの症候手軽な神経所見の取り方小児領域の救急疾患全般吐血と喀血の鑑別点難聴と耳鳴りへの対処問診、理学所見のみでの転送判定の可能性異常体温の救急処置下肢浮腫がリンパ浮腫か深部静脈血栓によるかの鑑別低体温の治療呼吸困難の鑑別高齢者の過降圧や注意すべき事項高齢者独特の愁訴痙攣の鑑別と治療感染症の救急対処、感染のフォーカスを早く見極める診察法喘息・アレルギーの治療アナフィラキシーショックの処置がん患者の救急対応原因不明の不規則な発熱の検査と治療診断全般、転送・搬送など「転送・搬送」について紹介のタイミング効果的な紹介方法転送の必要性の判断搬送すべき疾患のリスト鑑別診断、応急処置の最近の知見危険な症状(胸部不快感、動悸、倦怠感、頭痛、背部痛)の判断帰していい患者、帰してはいけない患者見逃してはいけない症候自院で受け入れ可能かどうかの判断2次救急の外来でどこまで処置するかクリニック、診療所の守備範囲非専門医が最低限するべき対応重症感のない患者の病態の見極め次々と検査を要求してくる患者や家族への対処法蘇生機械などがない、飛行機や電車内での救急対応 アンケート概要内容『内科的な救急診療について、先生のご経験をお聞かせください』実施日2018年1月22日調査方法インターネット対象ケアネット会員医師329名属性アンケート調査へのご協力、ありがとうございました。

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理髪店で薬剤師が降圧介入、血圧値大幅に低下/NEJM

 黒人が経営する理髪店で、顧客のコントロール不良高血圧の黒人男性に対し、専門的訓練を受けた薬剤師が、顧客の医師と協力して降圧治療を行った結果、半年後の収縮期血圧値が大幅に低下したことが示された。米国・シダーズ・サイナイ医療センターのRonald G. Victor氏らが、黒人経営の理髪店52ヵ所を通じて高血圧症の黒人319例を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2018年3月12日号で発表された。非ヒスパニック系黒人のコントロール不良高血圧は重大な問題とされているが、従来のヘルスケア設定での薬剤師介入試験では、そうした人々が対象集団に含まれる割合が実際よりも少ないという課題があった。6週間に1回以上理髪店に来る上顧客を対象に試験 研究グループは、黒人が経営する理髪店52ヵ所の顧客で、収縮期血圧値が140mmHg以上の35~79歳の黒人男性319例を対象に試験を行った(女性と透析および化学療法を受けている顧客は除外)。被験者は、半年以上にわたり6週間に1回以上の頻度で散髪に来ている上顧客だった。 検討では理髪店を無作為に2群に分け、一方では理容師が被験者に対し、店内での薬剤師による定期的な面談を推奨。薬剤師は高血圧症の治療に関する特別な訓練を受け、被験者の医師と協力して処方薬治療を行った(介入群)。また、薬剤師は理髪店で定期的に患者と面談をし、血圧測定やライフスタイルの改善についても指導を行った。 もう一方の群では、訓練を受けた理容師が、被験者に対しライフスタイルの改善や医師の診察を勧めた(対照群)。 主要評価項目は、6ヵ月後の収縮期血圧値の低下だった。半年後の収縮期血圧値低下幅の差は21.6mmHg 被験者のベースラインの収縮期血圧値は、介入群が平均152.8mmHg、対照群が平均154.6mmHgだった。 6ヵ月時点で、対照群の平均収縮期血圧値は145.4mmHgと、平均9.3mmHg低下したのに対し、介入群の平均収縮期血圧値は125.8mmHgと平均27.0mmHg低下した。平均低下幅の群間差は、21.6mmHg(95%信頼区間[CI]:14.7~28.4、p<0.001)だった。 収縮期/拡張期血圧値が130/80mmHg未満を達成した人の割合も、対照群が11.7%だったのに対し、介入群は63.6%と有意に高率だった(p<0.001)。 なお、介入群の継続率は95%で、有害事象は急性腎不全が3例で認められた。

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降圧治療、自己モニタリングに効果はあるか?/Lancet

 血圧コントロールが不十分な高血圧患者における降圧薬の用量調整法として、血圧の自己モニタリングは、遠隔モニタリング併用の有無にかかわらず、診察室での用量調整に比べ、1年後の収縮期血圧を有意に低下させることが、英国・オックスフォード大学のRichard J. McManus氏らが行ったTASMINH4試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2018年2月27日号に掲載された。自己モニタリングによる降圧薬の用量調整に関しては、相反する試験結果が報告されており、遠隔モニタリングの正確な位置付けは、明らかにされていないという。1年後の収縮期血圧を3群で比較 TASMINH4は、降圧薬の用量調整における、血圧の自己モニタリングおよび自己モニタリング+遠隔モニタリングの効果を、通常治療と比較する非盲検無作為化対照比較試験(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成による)。 年齢35歳以上、3剤以内の降圧薬治療を行っても診察室血圧が140/90mmHg以上の高血圧患者が、血圧の自己モニタリング、自己モニタリング+遠隔モニタリング(遠隔モニタリング群)、通常治療(診察室での医師による用量調整)の3つの群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。参加者と担当医には、割り付け情報が知らされた。 主要アウトカムは、12ヵ月後の受診時の収縮期血圧であった。 英国の142の一般医(GP)施設に1,182例が登録され、1,173例が割り付けの対象となった。ベースラインの平均年齢は66.9歳(SD 9.4)、半数強が男性で、平均収縮期血圧は153.1/85.5(SD 14.0/10.3)mmHg、高血圧診断からの平均経過期間は10.2年(SD 8.4)であった。プライマリケアへの導入が推奨される可能性 解析には、1,003例(85%、自己モニタリング群328例、遠隔モニタリング群327例、通常治療群348例)が含まれた。 12ヵ月時の平均収縮期血圧は、自己モニタリング群が137.0(SD 16.7)mmHg、遠隔モニタリング群は136.0(16.1)mmHgと、通常治療群の140.4(16.5)mmHgに比べいずれも有意に改善し、通常治療との補正平均差(AMD)は、自己モニタリング群が-3.5mmHg(95%信頼区間[CI]:-5.8~-1.2、p=0.0029)、遠隔モニタリング群は-4.7mmHg(-7.0~-2.4、p<0.0001)であった。 自己モニタリング群と遠隔モニタリング群との間には、有意な差を認めなかった(AMD:-1.2mmHg、95%CI:-3.5~1.2、p=0.3219)。多重代入を含む感度分析でも、同様の結果が得られた。 6ヵ月時の平均収縮期血圧は、自己モニタリング群が140.4(SD 15.7)mmHgと、通常治療群の142.5(15.4)mmHgとの間に差はなかった(AMD:-2.1、95%CI:-4.3~0.1、p=0.0584)が、遠隔モニタリング群は139.0(16.8)mmHgであり、通常治療群に比べ有意な改善が認められた(-3.7、-5.9~-1.5、p=0.0012)。 有害事象の発生状況は3群で類似しており、不安感にも差を認めなかった。心血管イベント(初発心房細動、狭心症、心筋梗塞、冠動脈バイパス術/血管形成術、脳卒中、末梢血管疾患、心不全)は、自己モニタリング群が12例、遠隔モニタリング群が11例、通常治療群は9例にみられた。 著者は、「自己モニタリングは、それを望むすべての高血圧患者の血圧管理法として、プライマリケアにおいて推奨可能であり、理想的には、遠隔モニタリングシステムを組み込んだ有用性の高い家庭血圧計の供給が求められる」としている。

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「血圧の薬を止めたい」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第16回

■外来NGワード「飲まないと、大変なことになりますよ!」(医学的な怖がらせ)「どうして、私の言うことが聞けないんですか!」(憤りをそのまま伝達)「それなら、好きなようにしなさい!」(患者を見放す)■解説 雑誌やインターネットなどの情報を信じて、今まで飲んでいた「血圧の薬」を止めたいという患者さんがいます。なかには、医師に相談もせず、勝手に降圧薬を止めてしまう患者さんもいます。そういった患者さんに、上から目線で一方的に降圧薬を飲むように指示しても、納得されないことがよくあります。降圧薬の休薬に関する調査によると、休薬後に正常血圧が維持できている率は報告により幅があり異なりますが3~74%だそうです。その特徴として、治療前がI度高血圧(140~159/90~99)、若年者、正常体重、塩分摂取量が少ない、非飲酒者、降圧剤1剤のみの服用、臓器障害がなかったことでありました1)。また、血圧は、冬場には高く、夏場には低くなるという季節変動があることが知られています。降圧薬を減量もしくは中止すると、冬場に血圧が上昇して、脳卒中などのリスクが上昇する危険性があります。中止や減量ができる患者さんは、自分で血圧管理ができていることが条件となります。患者さんの「降圧薬を飲みたくないという気持ち」を理解した後に、降圧薬を飲む意義を患者さんに説明して、心血管疾患や認知症リスクを下げるために何ができるかを一緒に考えられるといいですね2)。 ■患者さんとの会話でロールプレイ患者先生、家で測ってみても血圧が今下がっていて、いい数値だと思うんですけど、この血圧の薬、いつまで飲まなければいけないですか?医師そういう質問、よく受けますよ。患者血圧の薬を止めることはできませんか?医師もちろん、止めることができる人も中にはいますよ!(前置きする)患者えっ、そうなんですか! どんな人なんですか?医師元々、血圧がそれほど高くなくて、動脈硬化がなくて、塩分や運動に気を付けていて、肥満が解消できた人です。患者なるほど。やっぱり、生活習慣に気を付けておかないとだめなんですね(気付きの言葉)。医師それに、もし止めるとするとしても、冬場は止めておいた方がいいですね。寒さで急に血圧が上がる場合もありますし…(身ぶり手ぶりを交えながら)。患者なるほど。今は寒くて、運動できていないし、なかなか痩せられなくて…。医師冬場は鍋物が多くなりますので、塩分の摂取量も夏場に比べると、多くなりがちですからね。患者確かに。医師血圧の薬を飲む目的は、血圧を下げることではなく、脳卒中や認知症などを防ぐことですからね(降圧薬服用の目的を再確認)。患者なるほど。運動して、体重を減らすよう頑張ってみます(嬉しそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「血圧の薬を止めることができる人も中にはいますよ!」「血圧の薬を飲む目的は、血圧を下げることだけではなく、寝たきりや認知症の予防のためですよ」■資料 休薬の目安とは?1)元々、I度の高血圧2)臓器障害がない3)減量、減塩、節酒など生活習慣を改善4)1つの降圧薬で良好の血圧コントロール5)自分で血圧管理ができている1)Sugiyama T, et al. Hypertens Res. 1998;21:103-108.2)坂根直樹. クイズでわかる保健指導のエビデンス50. 中央法規出版;2013.p52-53.

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第43回

第43回:二次性高血圧症の考え方と検索法監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 高血圧患者の多くに明確な病因はなく、本態性高血圧に分類されます。しかし、このうち5~10%の患者については二次性高血圧症の可能性があり、潜在的かつ治療可能な原因を含みます。この二次性高血圧症の有病率および潜在的な原因は、年齢によって異なりますので今回の記事で確認してみましょう。 また、国内では「高血圧治療ガイドライン2014」2)が出ているので、この機会に併せてご覧ください。 以下、American family physician 2017年10月1日号1)より【疫学】二次性高血圧症は潜在的に治療可能な原因を伴う高血圧症で、高血圧の症例の5~10%とわずかな割合しか占めていない。二次性高血圧の罹患率は年齢によって異なり、18~40歳の高血圧患者では30%に近い有病率で、若年者ではより一般的である。すべての高血圧症患者において、二次性高血圧の網羅的な検査が勧められるわけではないか、30歳未満の患者では、詳細な検査が推奨される。【二次性高血圧を疑い評価を考慮する場合】*これまで安定していた血圧が急に高値になった場合思春期前に高血圧を発症した場合高血圧の家族歴がなく、非肥満性で非黒人の30歳未満の場合(末梢臓器障害の徴候を伴う)悪性高血圧もしくは急速進行の高血圧の場合重症高血圧(収縮期血圧>180mmHgおよび/または拡張期血圧>120mmHg)または、ガイドラインに準じて1つの利尿薬を含む3つの適切な降圧薬使用にもかかわらず持続する治療抵抗性の高血圧【アプローチ】(1)まずは正確な血圧測定の方法を確認し、食生活や肥満による高血圧を除外する(2)既往歴、身体診察、検査(心電図、尿検査、空腹時血糖、ヘマトクリット、電解質、クレアチニン/推定糸球体濾過率、カルシウム、脂質)を確認する(3)二次性高血圧を疑う症状/徴候があれば、以下の表のように検索をすすめる画像を拡大する(4)二次性高血圧を疑う症状/徴候がなくても、上記の二次性高血圧を疑い評価を考慮する場合(*の項目を参照)は下記を考え、検索をすすめる【二次性高血圧の年齢別の一般的な原因】11歳までの子ども(70~85%):腎実質疾患、大動脈縮窄症12~18歳の青年(10~15%):腎実質疾患、大動脈縮窄症19~39歳の若年成人(5%):甲状腺機能不全、線維筋性異形成、腎実質疾患40~64歳の中高年(8~12%):高アルドステロン症、甲状腺機能不全、閉塞性睡眠時無呼吸、クッシング症候群、褐色細胞腫65歳以上の高齢者(17%):アテローム硬化性腎動脈狭窄、腎不全、甲状腺機能低下症【二次性高血圧の稀な原因】強皮症、クッシング症候群、大動脈縮窄症、甲状腺・副甲状腺疾患、化学療法薬、経口避妊薬※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Am Fam Physician. 2017 Oct 1; 96:453-461. 2) 高血圧治療ガイドライン2014

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非糖尿病のハイリスク高血圧患者、他の降圧薬追加の効果は/BMJ

 非糖尿病の心血管ハイリスク患者において、服用中の降圧薬レジメンへの新規クラスの降圧薬の追加投与は、収縮期血圧と主要心血管イベントリスクを大きく低下することが示された。この結果は、適応による交絡を補正後に示されたもので、追加投与による収縮期血圧への効果は、服用中降圧薬の全レベルおよび全患者サブグループ間で保持されることも確認された。米国・ミシガン大学のAdam A.Markovitz氏らが行った「SPRINT試験」の2次データ解析の結果で、これまでの観察試験では、降圧薬を追加投与してもベネフィットが減少することが示されていた。ただし、そうした結果は適応による交絡の可能性があることも示唆されていた。BMJ誌2017年12月22日号掲載の報告。約9,000例の無作為化試験データを2次分析 研究グループは、2010~15年に102ヵ所の医療機関を通じて行われた無作為化臨床試験「SPRINT試験」の被験者のうち、9,092例のデータを基に、操作変数法を用いた2次データ解析を行った。SPRINT試験の被験者は、年齢50歳以上、収縮期血圧が130~180mmHg、糖尿病や脳卒中歴がなく、心血管疾患リスク因子(臨床的因子、または脳卒中や慢性腎疾患以外の潜在的因子)が1つ以上認められ、フラミンガムスコアの10年心血管疾患リスクが15%以上または年齢が75歳以上。収縮期血圧120mmHg未満目標の厳格降圧群か140mmHg未満目標の標準降圧群に無作為に割り付けられて追跡を受けた。 研究グループは、適応による交絡(より病的な患者に治療が行われていれば有効性が認められない)を明らかにするために、操作変数法を用いて、操作変数モデルの結果と標準多変量モデルの結果を比較し、服用中のレジメンへの新しいクラスの降圧薬追加の増分効果を評価した。主要評価項目は、収縮期血圧値、主要心血管イベント、重度有害事象の発生だった。追加投与で収縮期血圧は約14mmHg低下 操作変数法モデルによる分析の結果、新規クラスの降圧薬の追加投与は、臨床的に意義のある収縮期血圧値の低下を示し(-14.4mmHg、95%信頼区間[CI]:-15.6~-13.3mmHg)、主要心血管イベントリスクも低下した(絶対リスク:-6.2/1,000患者年、95%CI:-10.9~-1.3)。 一方で、適応による交絡因子補正前の標準多変量モデルで分析した結果では、新規クラスの降圧薬の追加投与は、収縮期血圧を中程度に低下した(-1.3mmHg、95%CI:-1.6~-1.0)。主要心血管イベントリスクの減少はみられなかった(絶対リスク:0.5/1,000患者年、同:-1.5~2.3)。 新規クラスの降圧薬の追加投与による収縮期血圧値の漸減効果は、服用中の降圧薬クラス数が0、1、2、3種またはそれ以上のいずれであっても、同程度に大きかった。同様の結果が、すべての患者サブグループで認められた。 なお、新規クラスの降圧薬の追加投与による有害事象の増大は、標準多変量モデル・操作変数法モデルのいずれでも認められなかった。

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ヒドロクロロチアジドの使用、非黒色腫皮膚がんと関連

 ヒドロクロロチアジドは、米国および西欧で最も使用頻度の高い利尿・降圧薬の1つであるが、光感作性があり、これまでに口唇がんとの関連が報告されている。デンマーク・南デンマーク大学のSidsel Arnspang氏らの症例対照研究の結果、ヒドロクロロチアジドの累積使用量は、非黒色腫皮膚がん(NMSC)、とくに扁平上皮がん(SCC)リスクの著しい増加と関連していることが明らかとなった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年11月30日掲載の報告。 研究グループは、ヒドロクロロチアジドの使用と、基底細胞がん(BCC)および扁平上皮がんのリスクとの関連を調べる目的で、デンマークがん登録データ(2004~2012年)から非黒色腫皮膚がん患者を特定し、これらの症例を対照と年齢および性別でマッチ(症例1に対し対照20の割合)させるとともに、デンマーク処方登録データ(Danish Prescription Registry)からヒドロクロロチアジドの累積使用量(1995~2012年)のデータを得た。 条件付きロジスティック回帰法で、ヒドロクロロチアジドの使用と関連するBCCおよびSCCのオッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ヒドロクロロチアジドの累積使用量が5万mg以上でのORは、BCCが 1.29(95%信頼区間[CI]:1.23~1.35)、SCCが3.98(95%CI:3.68~4.31)であった。・ヒドロクロロチアジドの使用は、BCCおよびSCCのいずれとも、明らかな用量反応関係が認められ、累積使用量が最も多いカテゴリー(20万mg以上)のORは、BCCが1.54(95%CI:1.38~1.71)、SCCが7.38(95%CI:6.32~8.60)であった。・他の利尿薬および降圧薬の使用と、NMSCとの関連は認められなかった。

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2型糖尿病、集中的食事療法による減量で46%が寛解/Lancet

 減量により12ヵ月で、試験に参加した2型糖尿病患者の約半数が糖尿病治療薬から離脱し、非糖尿病状態すなわち寛解(remission)に達したことが、英国・グラスゴー大学のMichael EJ Lean氏らが行ったプライマリケアでの集中的な体重管理の効果を検証した非盲検クラスター無作為化試験「DiRECT試験」の1年目の結果で示された。2型糖尿病は生涯にわたり治療を要する慢性疾患とされる。これまでの研究で、罹患期間が短い2型糖尿病患者は10~15kgの減量により血糖値が正常化することが示されていたが、食事療法による糖尿病の持続的な寛解を評価したものはなかった。結果を踏まえて著者は、「2型糖尿病の寛解は、プラリマリケアのプラクティカルな目標である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年12月5日号掲載の報告。1日約850kcalの調整食を3~5ヵ月摂取する体重管理プログラムと標準ケアを比較 DiRECT(Diabetes Remission Clinical Trial)試験は、スコットランドとタインサイド地域(北東イングランド)のプライマリケア49施設で実施された。対象は、過去6年以内に2型糖尿病と診断され、BMIが27~45で、インスリン治療歴のない20~65歳の患者であった。 施設を、地域と施設規模で層別化し、体重管理プログラム実施群(介入群)とガイドラインに沿った最善のケアを行う群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。体重管理プログラムは、糖尿病治療薬および降圧薬の中止、食事全置換(825~853kcal/日の調整食を3~5ヵ月)、段階的な食物再導入(2~8週)、長期減量維持の構造化された支援により構成された。 主要アウトカムは2つで、ベースラインから12ヵ月までにおける15kg以上の減量と、糖尿病の寛解(すべての糖尿病治療薬を中止して2ヵ月以降のHbA1cが6.5%未満と定義)であった。 2014年7月25日~2016年8月5日に、49施設(介入群23施設、対照群26施設)にて306例(それぞれ157例および149例)が登録され、このうち同意撤回や脱落を除く各群149例をintention-to-treat集団とした。介入群の15kg以上減量達成率は24%、そのうち86%が寛解 12ヵ月時点で、15kg以上の減量を達成したのは、介入群で36例(24%)、対照群はなし(p<0.0001)、糖尿病の寛解達成は介入群68例(46%)、対照群6例(4%)であった(オッズ比:19.7、95%信頼区間[CI]:7.8~49.8、p<0.0001)。寛解達成は減量の程度によって異なり、体重が増加した76例では寛解達成者はおらず、0~5kg減量を維持している89例では6例(7%)、5~10kg減量した56例中19例(34%)、10~15kg減量した28例中16例(57%)、15kg以上減量を達成した36例中31例(86%)が寛解を達成した。 平均(±SD)体重は、介入群で10±8.0kg、対照群で1.0±3.7kg減少した(補正後差:-8.8kg、95%CI:-10.3~-7.3、p<0.0001)。EQ-5Dで測定したQOLスコアは、介入群で7.2±21.3点改善したのに対し、対照群では2.9±15.5点悪化した(補正後差:6.4点、95%CI:2.5~10.3、p=0.0012)。 重篤な有害事象は、介入群で157例中7例(4%)に9件、対照群で149例中2例(1%)に2件が報告された。介入群のうち2件(胆石疝痛と腹痛)は同一患者で生じており、介入に関連したものと考えられた。試験の中止に至る重篤な有害事象は認められなかった。 なお、著者は研究の限界として、人種や民族の特徴として白人が多い地域であったこと、プライマリケアに限定しており、体組成の詳細は評価されていないことなどを挙げている。

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