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整形外科における術後せん妄、幅広い20のリスク因子が明らかに~メタ解析
2025/04/30 医療一般 日本発エビデンス
術後せん妄(POD)は、外科手術を受けた患者によくみられる術後合併症である。発症率は診療科によって異なるが、とくに整形外科患者のPOD発症率は一般病棟入院患者と比較し大幅に高い。せん妄は、患者の転帰と医療システムの両方に重大な影響を及ぼす可能性があるため、PODのリスク因子を特定し、予防することが重要である。三重大学医学部附属病院のRio Suzuki氏らは、下肢整形外科手術後におけるPODのリスク因子を特定したことを報告した。PLoS One誌2025年4月1日号掲載の報告。 本研究では、人工股関節全置換術や人工膝関節全置換術といった下肢整形外科手術後の患者におけるPODのリスク因子を調査した観察研究を、主要な医学データベース(CINAHL、MEDLINE)から網羅的に収集した。適格基準を満たす2つ以上の研究で解析されたせん妄に関する変数を抽出し、ランダム効果モデルを用いて、プールされたオッズ比(OR)、標準化平均差(SMD)を算出した。データはp<0.05の場合に統計学的に有意と見なされた。データベースの検索期間は1975~2024年7月までとした。 主な結果は以下のとおり。・データベース検索では、あらかじめ定義された検索キーワードを用いて2,599件の記録が同定され、最終的に27件の研究が適格基準を満たした(11件が前向きコホート研究、16件が後ろ向きコホート研究)。・この27件の研究の中で計9,044例の参加者データを統合し、システマティックレビューとメタ解析を行った結果、PODの発症に関連する以下の20の因子が特定された。【患者側の因子】 高齢(SMD:0.8、95%信頼区間[CI]:0.56~1.03)、ポリファーマシー(OR:1.47、95%CI:1.19~1.82)【合併症】 入院前の認知機能低下(OR:3.76、95%CI:1.57~9.02)、認知症(OR:4、95%CI:2.09~7.67)、一過性脳虚血発作(OR:1.69、95%CI:1.22~2.32)、パーキンソン病(OR:2.32、95%CI:1.56~3.44)、心血管疾患(OR:1.4、95%CI:1.16~1.68)、心筋梗塞(OR:1.4、95%CI:1.01~1.95)、せん妄歴(OR:12.64、95%CI:8.75~18.27)【術前因子】 認知機能検査(MMSE)のスコア(SMD:-0.59、95%CI:-1.05~-0.13)、血清Alb低値(SMD:-0.69、95%CI:-1.09~-0.29)、CRP高値(SMD:0.47、95%CI:0.05~0.88)、TSH異常値(SMD:-1.83、95%CI:-2.66~-1.01)、FT3異常値(SMD:-0.37、95%CI:-0.62~-0.12)【術中因子】 入院期間の延長(SMD:0.47、95%CI:0.18~0.76)、長時間の手術(SMD:0.53、95%CI:0.16~0.90)、長時間の麻酔(SMD:0.16、95%CI:0.05~0.28)、全身麻酔(OR:1.28、95%CI:1.04~1.58)、脊髄麻酔(OR:0.79、95%CI:0.65~0.97)、輸血(OR:2.03、95%CI:1.02~4.08) 著者らは「術前および術後のデータを収集することは、PODの高リスク患者を同定するために非常に重要である。本研究の結果が整形外科手術後のPODの予測および予防に役立つ可能性がある」と結論付けている。
https://www.carenet.com/news/general/carenet/60604