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心血管イベント高リスク患者、術後制限輸血戦略は安全か/JAMA

 心血管イベントリスクの高い患者において、主要血管手術後または一般外科手術後の非制限輸血戦略は制限輸血戦略と比較して、90日死亡あるいは主要虚血性イベントの発生を減少させなかった。米国・State University of New York(SUNY)Downstate Health Sciences UniversityのPanos Kougias氏らTOP Trial Investigatorsが行った無作為化試験「Transfusion Trigger after Operations in High Cardiac Risk Patients:TOP試験」の結果で示された。術後赤血球輸血ガイドラインでは、ヘモグロビン値が7g/dL未満について輸血を行うこと(制限輸血戦略)が推奨されているが、大手術を受ける心血管イベントリスクの高い患者において、この輸血戦略の安全性は明らかになっていなかった。JAMA誌2025年12月23・30日号掲載の報告。90日以内の死亡または主要虚血性イベントのリスクを評価 TOP試験は、主要血管手術または一般外科手術を受け、術後に貧血を呈した心血管イベントリスクの高い患者における、非制限輸血戦略vs.制限輸血戦略の90日以内の死亡または主要虚血性イベントのリスクを評価した、並行群間比較単盲検無作為化優越性試験。 2018年2月~2023年3月に、米国の16の退役軍人省医療センターで、主要血管手術または一般外科手術を受けた心血管イベントリスクの高い18歳以上の退役軍人が登録された。登録者は、術後15日間に入院中のヘモグロビン値が10g/dL未満となった場合に、非制限輸血戦略群(ヘモグロビン値が10g/dL未満で輸血開始)または制限輸血戦略群(ヘモグロビン値が7g/dL未満で輸血開始)に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、無作為化後90日以内に発生した全死因死亡、心筋梗塞、冠動脈血行再建術、急性腎不全、または虚血性脳卒中の複合。副次エンドポイントは、90日以内の心筋梗塞以外の心合併症の複合(不整脈、心不全、非致死的心停止)など5項目について評価した。主要エンドポイント発生率、非制限輸血戦略群9.1%vs.制限輸血戦略群10.1% 1,428例が無作為化され、1,424例(各群712例)が解析コホートに含まれた。1,424例は平均年齢69.9(SD 7.9)歳、男性1,393例(97.8%)で、黒人268例(18.8%)、ヒスパニック58例(4.1%)、白人1,071例(75.2%)などで構成されていた。 1,297例(91.1%)が血管外科手術を受け、無作為化後5日目のヘモグロビン値の平均群間差は2.0g/dLであった。 主要エンドポイントの発生率は、非制限輸血戦略群9.1%(61/670例)、制限輸血戦略群10.1%(71/700例)であった(相対リスク:0.90、95%信頼区間[CI]:0.65~1.24)。90日時点の死亡は、両群で同等であった(非制限輸血戦略群4.6%[31/670例]vs.制限輸血戦略群4.7%[33/700例])。冠動脈血行再建術の発生率は、それぞれ1.2%(8/643例)と1.9%(13/688例)であった。急性腎不全の発生率は、非制限輸血戦略群より制限輸血戦略群のほうが高率だったが(1.7%[11/644例]vs.2.1%[14/671例])、統計学的有意差はなかった。 副次エンドポイント5項目のうちの1つである90日以内の心筋梗塞以外の心合併症の複合の発生率は、非制限輸血戦略群5.9%(38/647例)、制限輸血戦略群9.9%(67/678例)であった(相対リスク:0.59、99%CI:0.36~0.98)。

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第293回 クマ外傷、その種類や標準化された治療法とは

INDEXクマが狙うのは、ほぼ顔外傷の種類や特異性創傷部位の評価と必要な処置創部感染の原因菌と予防対策具体的な外科治療の実際薬物療法に漢方が標準化さて、前回は昨今話題のクマ外傷被害についてCiNii検索で抽出した2000年以降の16論文と秋田大学医学部救急・集中治療医学講座教授の中永 士師明(なかえ はじめ)氏の編著『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』(以下、クマージェンシー)をもとに疫学についてまとめた。今回もこれらの出典から、クマ外傷の病態と治療についてまとめてみた。クマが狙うのは、ほぼ顔岩手医科大学(50例)、秋田大学(13例)、新潟大学(10例)、山梨県立中央病院(9例)の主な臨床報告では、クマによる外傷の部位はいずれも顔面が90%以上(秋田大学の報告は「頭頸部を含む顔面」)で、次いで上肢が多い(38~77%)。この外傷部位の特徴は、ツキノワグマが攻撃時に後足で立ち上がり、発達した前足の鋭い爪でヒトを殴打する攻撃スタイルに起因すると考えられている。ツキノワグマの体長(頭胴長)は120~145cm、前足、後足とも約15cm。ほぼ完全に後足で立ち上がって前足を上げれば、全長150~175cmとなり、前足がちょうどヒトの顔面付近に位置する格好になるため、顔面の受傷の多さは理解しやすいだろう。一方、顔面に次いで上肢が多いのは、ヒトがとっさに顔や頭を守ろうとする防御行動によるものと報告されている。ちなみにクマージェンシーで紹介されている2023年に秋田大学医学部附属病院高度救命救急センターに搬送された20例では、受傷部位はやはり顔面が90%、上肢が70%、頭部が60%と前出の報告とほぼ同様だが、下肢が40%と記述されている。下肢の受傷理由についての記述はないが、おそらくは第1撃で顔面や上肢を受傷し、逃げようとしたところを追いすがられた結果と考えるのが自然だろう。外傷の種類や特異性クマ外傷は鋭い爪による軟部組織損傷(鋭的外傷)とパワーの強い打撃による骨折(鈍的外傷)に大別される。ツキノワグマの爪は、木登りに適した鋭く内側に曲がったかぎ状(フック状)となっており、長さは通常3〜5cmほど。クマージェンシーでは「一見、小さな外傷に見えても内部構造を破壊させることで大きな障害を残すことがある」と記述している。軟部組織のどこを受傷したかは、クマの爪が当たった場所に依存するが、各論文などでは眼球破裂・脱出、涙小管断裂、顔面神経損傷、耳下腺管断裂などが報告されている。また、鋭い爪の影響でごく一部では上口唇動脈、腋窩動脈、上腕動脈に達する損傷が認められることがあるという。さらに爪による攻撃は、皮膚に平行な強い力が加わることで、皮膚が広範囲に剥がされる「剥脱創」となることがあり、この場合は重度の出血を伴い、致命的となりうることを参照論文では指摘している。一方、ツキノワグマは体重60〜100kgで、動作が秒速10~15mとも言われるため、ここから算出される一打の打撃エネルギー量は、約400〜1,300ジュール(J) と言われている。これに対する比較対照を並べると、プロボクサーのパンチ一打が 約300〜500J、日本の警察の9mm口径の拳銃弾命中時が約500Jと推定されるため、その強大さは桁違いである。骨を破壊するエネルギー量がおおむね1,000Jと言われるので、当然ながら受傷者の一部では骨折が生じる。実際、参照論文を見ると、顔面への受傷例のおおむね半数以上で顔面での骨折が認められ、とくに眼窩、頬骨、鼻骨、鼻篩骨といった顔面中央部(中顔面)に多発。これ以外では頭蓋骨、下顎骨、歯槽骨などの骨折、さらに防御行動による四肢・体幹での尺骨や肋骨、肘関節などの骨折も報告されている。新潟大学の報告では、クマ外傷による骨折には特有のパターンがあることが指摘されている。これは通常の顔面骨の骨折では、顔表面から内側、すなわち頭蓋骨内部方向に陥没する骨折がほとんどなのに対し、クマ外傷では顔面骨が外側に引き出されるようなベクトルで骨折が生じることがあるとしている。これはおそらくクマによる打撃の際にめり込んだ前出のかぎ状の爪を引き抜く際に生じたものだろう。クマ外傷はこのように多発外傷であるため、全身に影響を及ぼし、動脈損傷では大量出血による出血性ショック、口腔内の持続的な出血や粉砕された顔面骨などによる気道閉塞、硬膜下血腫といった頭蓋内損傷など重篤な合併症を引き起こす危険性がある。参照論文中でも出血性ショックは10~23%で報告され、秋田大学の報告13例のうち7例で気道閉塞の危険性があるとして気道確保のため気管切開が行われている。創傷部位の評価と必要な処置前出のような受傷状況を踏まえ、参照論文のうち複数論文では、クマ外傷では交通事故や高所からの墜落のような高エネルギー外傷に準じた初期対応、具体的にはクマ外傷の患者の搬送がわかった段階で、気道確保、止血と大量輸血・輸液の準備が必要と強調している。そのうえで搬送後は、頭頸部や四肢・体幹の受傷や組織損傷の状況を注意深く評価することを求めている。とくに前出のようにクマ外傷では見た目の傷が小さくとも深部組織を破壊していることがあるため、参照論文の中ではこの点の評価を怠らないよう注意喚起しているものが少なくない。また、クマ外傷では創部感染のリスクが高いため、創部の十分な洗浄とデブリードマンが推奨されている。参照論文を見ると、洗浄で使う生理食塩水の量は症例によっては5,000~10,000mLとかなり大量である。また、クマージェンシーでは、表面上の傷が小さいものの深部まで達している四肢の外傷では、傷口からの注水だけでは洗浄が不十分として、目視で深部まで確認できる皮膚の追加切開を推奨している。創部感染の原因菌と予防対策実際の創部感染発生率は、今回の参照論文で確認した範囲では20~33.3%。クマージェンシーに記述されている13例では21.1%で、おおむねクマ外傷被害者の3~5人に1人の発生率である。ちなみにこの数字は搬送時に予防的抗菌薬投与などをほぼ全例で行ったうえの数字であり、個人的には驚きを禁じ得ない。創部感染の原因菌については、クマージェンシーでは4分の1の症例で同定され、主にセラチア菌(グラム陰性桿菌)と腸球菌(通性嫌気性グラム陽性菌)だったと報告している。参照論文で原因菌が特定されたケースでもこの2種類が散見されるが、そのほかにもグラム陽性菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やA群レンサ球菌が検出された報告もある。こうしたこともあり、予防的抗菌薬投与では、嫌気性菌種を広くカバーするβラクタマーゼ阻害薬配合抗菌薬(ピペラシリン・タゾバクタムやアンピシリン・スルバクタム)が使われていることが多いようだ。もっともクマージェンシーではβラクタマーゼ阻害薬を含む場合と含まない場合の抗菌薬投与を比較し、創部感染発生率に差はないと報告している。また、岩手県の50例でも同様の検討を行い、βラクタマーゼ阻害薬の有無で創部感染発生率に有意差(p=0.08)はなかったものの、βラクタマーゼ阻害薬を含む群での感染発生率が9.1%に対し、含まない群では28.5%で、βラクタマーゼ阻害薬を投与したほうが感染発生率は低い傾向があると記述している。また、クマの爪や創部が土壌などで汚染されることを考慮し、ほぼすべての症例で破傷風トキソイドと抗破傷風人免疫グロブリンの投与が行われており、少なくとも参照論文とクマージェンシーでは破傷風発症事例はない。破傷風トキソイドを含む三種混合(DTP)ワクチンの日本での定期接種化が1968年であり、前回紹介したように受傷者はそれより以前に生まれた高齢者が多いことなどを考えれば、必要な措置なのだろう。具体的な外科治療の実際実際の治療は外科的なものがほとんどだが、損傷が多岐にわたるため、複数の専門診療科による連携手術が必要となるのは必定である。ここでは主な外科的治療の概略を紹介する。顔面骨骨折では、前出のような特有の外側に転位した骨片の有無を考慮し、観血的整復固定術が行われる。次に、動脈損傷、顔面神経損傷、涙小管断裂は即時再建が原則である。クマージェンシーでは鼻周辺の組織が噛みちぎられた事例として、路上に残されていた被害者の組織が持ち込まれ、再接合が行われた様子が写真とともに紹介されている。このため、同書では救急隊員が取るべき対応として、汚染の有無にかかわらず回収できる軟部組織はできるだけ回収して病院に持参するよう勧めている。素人には背筋が凍り付くような話である。ただ、完全な組織の欠損で機能回復や審美性を考慮した再建術が行われたケースでは、参照論文を見る限り、複数回の手術が長いものでは受傷から1年半後くらいまで行われている。歯や広範な歯槽骨欠損では、骨移植を併用した歯科インプラント治療が行われた事例も報告されている。このケースでは受傷6ヵ月後に骨移植術が実施され、さらにその6ヵ月後にインプラント埋入術が施行されている。薬物療法に漢方が標準化一方、抗菌薬の予防投与を除くと、治療で薬物を処方したケースは少ない。新潟県でのドクターヘリ搬送例で出血を抑えることを目的としたトラネキサム酸、山形県の症例で喉頭浮腫予防を目的としたデキサメタゾン、岐阜県の症例で後頭部や上腕の縫合を行わなかった創部に感染予防目的で処方されたゲンタマイシン(外用薬)ぐらいしか見当たらない。ただ、クマージェンシーでは秋田大学による漢方薬処方という興味深い事例を紹介している。具体的には鎮痛目的で打撲の痛みなどに使われる「治打撲一方」や感染防止目的での抗菌薬と「排膿散及湯」の併用である。治打撲一方の使用では1日で痛みが取れた著効例もあったという。また、排膿散及湯の併用は2024年から標準化している模様だ。しかしながら、このような難治療を経ても、視力障害、顔面神経麻痺、唾液や涙が止まらない、口腔機能低下などの後遺症に悩まされるケースは少なくないという。結局のところ、何よりもクマに遭遇しない予防措置が重要ということだろう。

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大阪大学医学部 血液・腫瘍内科学【大学医局紹介~がん診療編】

保仙 直毅 氏(教授)福島 健太郎 氏(准教授)菅 真紀子 氏(医員)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴大阪大学血液・腫瘍内科学の最大の特徴は“多様性”にあると思います。現在、大学には30人程度、関連施設を含めると100人を超える医局員が在籍しておりますが、それぞれ皆異なった志向、価値観、ライフスタイルを有しており、お互いに異なるそれらを尊重しながら協力して臨床・研究・教育に臨んでいます。これは人数が多いからこそできることで、より人の和を広げるよう、いろいろな人を柔軟に受け入れています。現在では新入医局員の半数以上が他学の出身者で、皆のびのびとやっていると思います。今後医局をどのように発展させていきたいか今のまま、どんどん人が加わって、皆が自由に活躍していただけば何よりです。ただ、全体としては臨床でも研究でも大きな仕事を成し遂げられるようにまとめていきたいと思います。医師の育成方針受験秀才から脱却して、「なぜかと問いかける血液内科医」になっていただくようにと思っています。治せる病気はきちんと治せるようになるのはもちろんのことですが、治らない病気は「なぜ治らないのだろう」と考えられるようになってほしいと思います。力を入れている治療/研究テーマ白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫をはじめとする血液悪性疾患は「不治の病」として長く知られてきましたが、治療の進歩や支持療法の強化により長期の生存、治癒が見込める病気になりつつあります。私たちの医局では、血液悪性疾患の標準治療はもちろん、新規薬剤の臨床試験(治験)に積極的に参加し国内外の診療をリードしております。またここ数年来で実臨床で使用できるようになった細胞療法、CAR-T療法により再発・難治の悪性リンパ腫・急性リンパ芽球性白血病の患者さんが長期生存できる可能性が高まってきました。さらには、当科で開発された新規細胞療法がいちはやく臨床使用できるよう、早期臨床試験(First in Human、Phase1)を行っています。このように新規の治療を臨床の場で体験し、その開発に携わり安全性や効果、注意すべき有害事象を深く学ぶことは、次世代の患者さんの治療に役立つことになり、さらには現状の治療の問題点を認識することができます。医局の雰囲気、魅力当医局では子育て世代の先生方も多く、業務のオン・オフは明確に分けられるようにしており、ワークライフバランスを保ちつつ、キャリアパスを積んでいくことができます。また各種専門医・指導医を各自の希望に合わせて取得できるよう、幅広く症例を経験することが可能です。私たちと一緒に、未来のがん治療を創っていきませんか?同医局を選んだ理由長崎大学での学生時代に血液内科の魅力を知り、卒業後は大阪大学の初期研修プログラムで血液・腫瘍内科の研修を受けました。造血幹細胞移植を含む高度な診療や最新の臨床研究への参加、研究室と病棟が連携し患者検体を迅速に解析できる環境は魅力的で、また厳しい状況にある患者さんに真摯に向き合いながらも、前向きにかつ楽しそうに診療に取り組む先生方の姿に触れ、自分もここで学びたいと入局を決めました。出身大学や経歴の異なる多くの先生方が所属して活躍しており、多様なキャリアを尊重する柔軟な医局の風土にも惹かれました。現在学んでいること市中病院で研鑽を積んだ後に大学院へ進学し、現在は白血病に対する新規細胞療法の研究に携わっています。自ら計画を立案し実験を重ね、新たな知見を築いていく過程は非常に刺激的で、臨床を離れて研究に没頭できた時間は医師として大きな財産となりました。研究を通じて細胞療法の可能性と限界を学び、今後の治療開発に必要な視点を養えたことは臨床医としても得難い経験だったと感じています。今後のキャリアプラン研究を継続するため海外留学に向けた準備を進めています。将来的にはトランスレーショナル・リサーチを軸に、造血器腫瘍に対する新たな治療開発を前進させる一助となれるよう臨床・研究の双方から研鑽を積んでいきたいと考えています。大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学住所〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2問い合わせ先ikyoku@bldon.med.osaka-u.ac.jp医局ホームページ大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学専門医取得実績のある学会日本内科学会日本血液学会日本臨床腫瘍学会日本血栓止血学会日本輸血・細胞治療学会日本造血・免疫細胞療法学会日本がん治療認定医機構研修プログラムの特徴(1)臨床・研究ともに自身の希望に合わせたキャリアプランをサポートしております。(2)子育てに配慮した働き方支援をしております。(3)内科専門医、血液専門医、造血・免疫細胞療法学会認定医など資格取得を研修当初から視野においたプログラムを支援しております。詳細はこちら

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非小細胞肺がん、アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用における予防的抗凝固療法に関する合同ステートメント/日本臨床腫瘍学会ほか

 日本臨床腫瘍学会、日本腫瘍循環器学会、日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌治療学会、日本血栓止血学会、日本静脈学会は2025年12月8日、非小細胞肺がん(NSCLC)のアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法における予防的抗凝固療法の適正使用に関する合同ステートメントを発表した。 EGFR遺伝子変異陽性の切除不能進行・再発NSCLCに対する新たな治療戦略として二重特異性モノクローナル抗体であるアミバンタマブと第3世代EGFR-TKIラゼルチニブの併用療法が臨床導入された。アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法では、静脈血栓塞栓症(VTE)の発症が高頻度であることが国内外の臨床試験により報告されている。このためVTE発症予防を目的として、併用療法開始後4ヵ月間にわたる直接経口抗凝固薬アピキサバンの投与が2025年3月27日付で厚生労働省保険局医療課により承認された。 しかし、本邦における診療ガイドラインでは外来化学療法時の抗がん薬によるVTE発症の予防目的で施行される抗凝固療法において推奨する抗凝固薬に関する記載がなく、同時にアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法治療中のNSCLC患者に対するアピキサバンの臨床的経験は限られているのが現状である。そこで、今回承認された新たながん治療法を安全かつ適正に導入するために、患者の安全性を最優先に考慮する必要があることから本ステートメントが発出された。ステートメント 「EGFR変異陽性の進行・再発NSCLCに対してアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法を施行する患者において、静脈血栓塞栓症予防を目的としてアピキサバン2.5mgを1日2回、4ヵ月間投与する。活動性悪性腫瘍症例に対しアピキサバンによる予防的抗凝固療法を施行するにあたり日本人では血中濃度が高くなることが知られているが、アピキサバン2.5mg1日2回投与の出血リスクについては安全性が確認されていない。そこで出血(ISTH基準の大出血*)などの重篤な合併症を生じるリスクを理解した上で、使用薬の特性、投与方法、薬剤相互作用を考慮した慎重な対応が必要である。そして、これらの治療は抗凝固療法に精通した腫瘍循環器医(循環器医)等と連携の取れる体制の下で実施されることが望ましい。」*:ISTH基準の大出血:実質的な障害をもたらす出血(脳出血、消化管出血、関節内出血など)、失明に至る眼内出血、2単位以上の輸血を要する出血

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ホルモン療法とニラパリブの併用が進行前立腺がんに有効

 がんの標的治療薬であるニラパリブ(商品名ゼジューラ)をホルモン療法に追加することで、前立腺がんの増殖リスクが低下し、症状の進行を遅らせることができる可能性が、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)がん研究所腫瘍内科部門長のGerhardt Attard氏らが実施した臨床試験で示された。詳細は、「Nature Medicine」に10月7日掲載された。 Attard氏は、「現行の標準治療は、進行前立腺がん患者の大多数にとって極めて有効性が高い。しかし、少数ではあるが臨床的には重要な割合の患者では限定的な効果しか得られていない」と指摘し、「ニラパリブを併用することでがんの再発を遅らせ、余命の延長も期待できる」とUCLのニュースリリースの中で述べている。 Drugs.comによると、ニラパリブはがん細胞の自己修復機能を阻害する作用を持つPARP(ポリADP-リボースポリメラーゼ)阻害薬で、卵巣がんなど特定のがんの再発を防ぐための維持療法に使用する薬剤として承認されている。 今回の臨床試験では、標準治療薬であるアビラテロン酢酸エステル(商品名ザイティガ)とプレドニゾンにニラパリブを追加する併用療法が検討された。アビラテロンは前立腺がんの増殖を促すテストステロンの産生を抑える一方、プレドニゾンは治療に伴う副作用の一部を軽減する。対象は、32カ国から参加した相同組換え修復(HRR)関連遺伝子変異陽性の進行前立腺がん患者696人(年齢中央値68歳)だった。HRR関連遺伝子はDNA損傷の修復に関与しており、変異があるとがんがより速く増殖して転移しやすくなるとされている。進行前立腺がん患者の約4人に1人にBRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2などのHRR関連遺伝子に変異が見られ、今回の対象者も半数以上(56%)がBRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子の変異を保有していた。患者の半数がアビラテロンとプレドニゾンによる標準治療にニラパリブを追加する併用療法を受け、残る半数には標準治療薬に加えてニラパリブの代わりにプラセボが投与された。 約2年半の追跡期間でのITT解析から、ニラパリブ併用群では標準治療群と比べて画像診断による増悪または死亡のリスクが37%低下したことが示された。特に、BRCA1またはBRCA2遺伝子の変異を保有する患者では、画像診断による増悪リスクが48%低下するなどより顕著な効果が見られた。ニラパリブ併用群では標準治療群と比べて症状が悪化するリスクも半減し(ハザード比0.50)、顕著な症状の悪化が認められた患者の割合は、標準治療群で30%、ニラパリブ併用群で16%であった。全生存期間についても改善傾向が認められたが、生存率の向上を確認するにはさらに長期の追跡が必要であるとAttard氏らは述べている。一方で、ニラパリブ併用群では、貧血(29.1%対4.6%)や高血圧(26.5%対18.4%)などの副作用の発生率が有意に高いことが示された。また、患者の25.1%が輸血を必要としたと報告されている(標準治療群では3.7%)。治療関連の死亡者数はニラパリブ併用群14人、標準治療群7人であった。試験期間中、多くの患者が治療を中断しており(ニラパリブ併用群158人、標準治療群196人)、追加治療に移行した患者も少なくなかった。 Attard氏は、「この臨床試験の結果は極めて重要だ。診断時に広範な遺伝子検査を行い、最大のベネフィットが得られる患者に標的治療を適用するべきことを支持するものだからだ」と述べた上で、「医師は、ニラパリブが承認されているHRR関連遺伝子変異を保有するがん患者に対しては、副作用のリスクとがんの進行および症状悪化を遅らせるというベネフィットのバランスを考慮し、治療方針を話し合う必要がある」と付け加えている。

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免疫性血小板減少症への新治療薬による診療戦略/Sobi Japan

 希少・難治性疾患治療に特化し、ストックホルムに本社を置くバイオ医薬品企業のSwedish Orphan Biovitrum Japan(Sobi Japan)は、アバトロンボパグ(商品名:ドプテレット)が新たな適応として「持続性および慢性免疫性血小板減少症」の追加承認を取得したことに合わせ、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、免疫性血小板減少症(ITP)の診療に関する講演や同社の今後の展望などが説明された。約2万例の患者が推定されるITP はじめに「免疫性血小板減少症について」をテーマに、加藤 亘氏(大阪大学医学部附属病院輸血・細胞療法部 部長)が、本症の概要を説明した。 出血時の止血に重要な役割を担う血小板は、巨核球が血管内に行くことで血小板となり、体内で約7~10日間活動する。正常15~35万/μLの血小板数があり、10万/μL以下で血小板減少症、1万/μL以下では重篤な出血症状を呈する。そして、ITPは血液中の血小板が免疫により減少する疾患である。症状としては、皮膚の紫斑、粘膜出血などの出血症状の繰り返しがあり、健康な人よりもわずかに高い死亡率となる。 また、近年の研究からITPは血小板に対する自己抗体によって起こる自己免疫疾患とされ、「特発性」という言葉から「免疫性」に変更された。 わが国には約2万例の患者が推定され、毎年約3,000例が新規発症しており、その半数は高齢者である。本症は、指定難病であり、小児慢性特定疾患であるが、医療費助成の対象はステージ2以上の比較的重症の患者となっており、特定医療費受給者証所持者数は2023年時点で約1万7,000人となっている。 難病申請データに基づくITPの出血症状としては、紫斑が88.2%、歯肉出血が26.8%、鼻出血が18.1%の順で多く、その症状は血小板減少の程度、年齢と相関する。とくに血小板数1~1.5万/μL、60歳以上では重篤な出血リスクが増大するといわれている1)。 ITPの治療戦略としては、(1)リンパ球による抗血小板自己抗体の産生抑制、(2)破壊される以上に血小板を多く産生する、の2つがあり、治療の流れとしては『成人特発性血小板減少性紫斑病 治療の参照ガイド 2019改訂版』により治療が行われる(わが国独自の治療にピロリ菌除去療法がある)。 治療目標は、血小板を正常に戻すことではなく、重篤な出血を予防することであり、治療薬の副作用による患者QOLの低下を考慮し、過剰な長期投与は避けることとされている。 本症の1次療法としては、副腎皮質ステロイド療法が行われる。次に1次療法で効果がみられない場合、2次療法としてトロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)、リツキシマブ、脾臓摘出術などが考慮される。2次療法については大きな優劣はなく、ただ、近年では脾臓摘出術はほぼ行われていない。 わが国でのITP治療薬の使用状況について、2015~21年で比較すると、TPO-RAが35.71%から61.37%へと増加し、リツキシマブも0%から3.3%へと増加したという報告がある2)。 多く使用されているTPO-RAは奏効率は高いものの、長期使用の場合は肝機能障害などの副作用の課題もある。治療の選択では、各治療の特徴を踏まえ、患者の希望・背景に合わせた治療選択が望まれる。 また、現在、解決が必要とされる課題として5つが指摘されている。(1)治療薬の使い分け、併用法(2)完治を目指す治療の開発(3)妊娠中、出産時の血小板数コントロール(4)出血症状、血小板数の改善のみではなく、症例ごとのQOLに配慮した治療・薬剤選択(5)ITP診断の改善(特異的な診断法開発の必要性)約6割のITP患者に投与8日以内で反応あり 今回、アバトロンボパグは新たな適応である「持続性および慢性免疫性血小板減少症」の承認を2025年8月25日に取得した。適応追加に係るわが国での第III相試験は、慢性ITPの患者19例を対象に、26週間の投与期間中に救援療法なしに血小板反応(血小板≧50×109/L)が得られた累積週数を主要評価として行われた。試験対象者の平均年齢は56.0歳で、女性が78.9%だった。 試験の結果、血小板反応(≧50×109/L)について、26週間の投与期間中、臨床的に意義のある累積週数の基準(閾値:8.02週)を達成し、患者の63.2%が8日以内に反応を示した。安全性では、治療に関係する重篤な有害事象はなく、一般的な有害事象として、新型コロナウイルス感染症、上気道感染症、鼻咽頭炎などが報告された。 最後に加藤氏は、「アバトロンボパグは慢性ITPを有する日本人成人患者に対し有効であった。安全性・忍容性も良好で、海外の主要な第III相試験3)および中国の患者の第III相試験4)と同様の血小板反応を日本人でも示した。長期的な有効性と安全性は、現在進行中の延長期で評価をする予定」と展望を述べ、講演を終えた。 同社では、今後新たに5つの希少疾患に対する製品の上市を目指しており、「これらの薬剤を早く日本の患者さんに届けられることを使命とし、希少疾患薬におけるドラッグラグやドラッグロスという問題の解決の一助となるようにしていきたい」と抱負を語っている。

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産後出血の転帰を予測する臨床マーカーは?/Lancet

 従来閾値よりも低値の失血量と血行動態異常の兆候の組み合わせで、産後出血による死亡または生命を脅かす合併症のリスクがある女性を正確に予測でき、産後出血の早期診断と治療のサポートが可能であることを、WHOのIoannis Gallos氏らWHO Consortium on Postpartum Haemorrhage Definitionが、被験者個人データを用いたメタ解析の結果で示した。産後出血(産後の過多出血)は、世界中で母体死亡・合併症の要因になっている。しかしながら、過度の出血の最適な定義や母体の有害アウトカムを確実に予測する臨床マーカーについて、世界的なコンセンサスはなかった。Lancet誌オンライン版2025年10月4日号掲載の報告。5つの臨床マーカーの予後予測精度を評価 研究グループは、母体の死亡や重篤な合併症に関する産後出血の臨床マーカーの予後予測精度を評価した。適格としたデータセットは、WHOの呼び掛けによる募集データと、PubMed、MEDLINE、Embase、Cochrane LibraryおよびWHO trial registriesのシステマティックな検索(データベース開始から2024年11月6日まで)を通じて特定した。 客観的測定に基づく失血量または血行動態不安定性に関するその他の臨床マーカーを有する被験者が200例以上含まれ、対象の臨床アウトカムが少なくとも1つ以上報告されている研究を適格とした。 すべての適格研究について被験者の個人データ(IPD)を求め、各データセットについて、母体死亡または重篤な合併症(輸血、外科的介入またはICU入室)の複合アウトカムに関する5つの臨床マーカー(失血量、脈拍数、収縮期血圧、拡張期血圧、ショック指数)の予後予測精度を算出した。 2レベル混合効果ロジスティック回帰モデルを用いてメタ解析を行い、2変量ノーマルモデルを用いて要約精度を推定した。 臨床マーカーと閾値の選択は、WHO専門家コンセンサスプロセスに基づき、予後の特異度(50%以上が望ましい)よりも予後の感度(80%超が望ましい)の最大化に重点を置いて評価が行われた。失血量と血行動態異常の兆候の組み合わせで予測能は改善 33データセットが適格の可能性があり、18データセットのIPDデータの入手に成功した。このうち12データセットの全データ(女性31万2,151例)を解析した。 従来閾値の500mLは失血量の要約予後予測感度が75.7%(95%信頼区間[CI]:60.3~86.4)であり、複合アウトカムの予後予測特異度は81.4%(95%CI:70.7~88.8)であった。 望ましい予後の感度(80%超)の閾値は300mLで達成されたが(83.9%、95%CI:72.8~91.1)、特異度は低かった(54.8%、38.0~70.5)。 予測能は、失血量の閾値500mL未満(≧300mL~≧450mL)と血行動態異常の兆候(脈拍数>100回/分、収縮期血圧<100mmHg、拡張期血圧<60mmHg、ショック指数>1.0のいずれか)の組み合わせ、または失血量500mL以上のいずれかを用いた決定ルール(複合ポイントスコアリングシステム)で、感度(範囲:86.9~87.9%)と特異度(66.6~76.1%)の精度およびバランスがより改善された。すなわち、失血量閾値450mLのルール3(複合ポイントスコアリングシステムで2点以上[失血量450~499mLは1点、その他血行動態異常の兆候は1点、失血量500mL以上は2点])において感度86.9%、特異度76.1%、失血量閾値300mLのルール3(同2点以上[失血量300~499mLは1点、その他血行動態異常の兆候は1点、失血量500mL以上は2点])において感度87.9%、特異度66.6%であった。

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献血前のカフェイン摂取が赤血球の質に影響か

 コーヒーの摂取は献血された血液の質に悪影響を与える可能性のあることが、新たな研究で示された。献血された血液に高濃度のカフェインが含まれていると、赤血球は保存中に損傷を受けやすくなることや、カフェインを多く含んだ血液を輸血すると、輸血後のヘモグロビン濃度の増加が抑制されることが明らかになったという。ヘモグロビンは赤血球内のタンパク質で、酸素を運び二酸化炭素を除去する役割を担っている。米コロラド大学医学部のAngelo D’Alessandro氏らによるこの研究結果は、「Haemotologica」に9月4日掲載された。 研究グループは、「米国人の75%が定期的にカフェインを摂取していることを考えると、本研究結果は、米国の血液供給の質に関して重要な疑問を投げかけるものだ」との見方を示している。D’Alessandro氏は、「カフェインが脳や中枢神経系に影響を及ぼすことは以前から知られていたが、赤血球の生物学に及ぼす影響を示した大規模研究は、今回の研究が初めてだ。これらの結果は、朝の1杯のコーヒーのようにありふれたものが、保存された血液の質と患者に輸血された際のその機能に重要な影響を及ぼす可能性があることを示唆している」とコロラド大学のニュースリリースで述べている。 今回の研究でD’Alessandro氏らは、REDS RBC-Omics研究に参加した1万3,091人の献血者データを解析し、カフェインが赤血球の保存品質に与える影響を調査した。 その結果、血液中のカフェイン濃度が高い献血者では、グルコースをエネルギー(アデノシン三リン酸〔ATP〕)に変換する主要な代謝経路である解糖系の活性低下、総アデニル酸プール(体内のATP、ADP〔アデノシン二リン酸〕、AMP〔アデノシン一リン酸〕の総和)や2,3-ビスホスホグリセリン酸(2,3-BPG)の減少、酸化ストレスや浸透圧脆弱性の増加などが確認され、赤血球の代謝が乱れることが明らかになった。また、血液中のカフェイン濃度が高い献血者由来の赤血球は、溶血の増加や輸血後のヘモグロビン増加量の低下と関連することが示された。これらの所見は、特に、低酸素状態で赤血球代謝を調節する遺伝子であるADORA2b遺伝子によく見られる多型を有する献血者で顕著に認められた。 現在、ヨーロッパのいくつかの国では、献血者に献血前のカフェイン摂取を制限するよう勧めているが、米国では積極的には推奨されていないという。カフェインは血圧を上昇させて血管を拡張させるため、献血者からの採血を容易にする可能性があると研究グループは述べている。D’Alessandro氏は、「しかしこの利点と、カフェインが持つ軽度の利尿作用による脱水リスクとのバランスを考える必要がある」と指摘している。 本研究ではまた、ヒトで認められた結果が、マウスモデルを用いて検証された。その結果、解糖系の活性低下などヒトで見られたカフェインの影響が再現された。また、カフェインは、赤血球の代謝に関与するG6PD(グルコース-6-リン酸脱水素酵素)の活性とADORA2B受容体の活性化を阻害することが示された。 研究グループは、これらの知見が、カフェイン摂取によって赤血球で酸化ストレスが増加することが逆説的に運動中の代謝的適応を促進し、その結果として運動やスポーツのパフォーマンスが向上する理由を説明する手がかりになるかもしれないと指摘している。

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第279回 「クマ外傷」の医学書が教えてくれるクマ被害の実態、「顔面、上肢の損傷が多く、挿管と出血性ショックに対する輸血が必要なケースも。全例で予防的抗菌薬を使用するも21.1%で創部感染症が発生」

マダニが媒介するウイルス感染症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の累計患者数が過去最高にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。9月に入っても猛暑の日が続きます。この歴史的な暑さのせいもあってか、自然界もいろいろ変調を来しているようです。「第272回 致死率30%!猛威を振るうマダニ感染症SFTS、患者発生は西日本から甲信越へと北上傾向」で取り上げたマダニが媒介するウイルス感染症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS:Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)も急増中です。国立健康危機管理研究機構は8月26日、8月17日までの1週間に全国から報告されたSFTSの患者は5人で、今年の累計の患者数は速報値で143人となり、過去最多だったと発表しました。これまでに感染者が報告されているのは31道府県で、高知県で14人、大分県で11人、熊本県、長崎県で9人、鹿児島県、島根県、兵庫県で8人など、西日本を中心に多くなっていますが、今年はこれまで感染が確認されていなかった関東地方や北海道でも報告されています。「第272回」でも書いたように温暖化などの影響でSFTSウイルスを持ったマダニの生息域が日本で北上しているのは確かなようです。例年、発症が増え始めるのは4月で、5月にピークを迎え、10月くらいまで続くとされていますが、猛暑の今年は11月くらいまで発症が続くかもしれません。1〜2週間前に山や畑などで作業などをしており、謎の発熱や嘔吐、下痢を起こしている患者の診療には、皆さん重々お気を付けください。クマ被害も過去最多の被害者数となった2023年度と同じ水準増えているということでは、クマの被害も急増中です。山での被害はもちろん、麓の町中での被害も増えています。8月7日付のNHKニュースは、「環境省のまとめでは、今年4月から7月末までにクマに襲われてけがをするなどの被害にあった人は、長野県が13人、岩手県が12人、秋田県、福島県、新潟県で、それぞれ4人などの、合わせて55人で、このうち北海道と岩手県、長野県で、それぞれ1人が死亡しました。過去の同じ時期と比べると、年間を通じて過去最多の被害者数となった2023年度は56人で、今年度はほぼ同じ水準」と報じています。この夏、私がとくにショックだったのは、8月14日に起こった北海道・羅臼岳で登山中の26歳男性がヒグマに襲われ死亡した事件です。襲ったと思われる母グマが、15日に子グマ2頭と共に駆除され、その後母グマはDNA鑑定で男性を襲った個体と特定されました。登山者が被害に遭った羅臼岳の登山道はかつて私も下ったことがあります。「アリの巣が多く、クマがよく出る」ことで昔から有名で、熊鈴だけではなく笛も頻繁に吹きながら歩いた覚えがあります。北海道警察の事故の調査結果を報じた8月21日付の共同通信によれば、「男性は襲撃直前、同行者から離れて単独で走り、岩尾別温泉に向かって下山していた。クマ避けの鈴は携帯していた。道幅が狭く見通しの悪いカーブで母グマに遭遇したとみられる」とのことです。突然の遭遇で驚いた母グマが防御反応として襲った可能性が高そうです。もう一つショックだったのは、北アルプスの薬師峠キャンプ場(通称:太郎平キャンプ場、富山市有峰)で、ツキノワグマにより登山者のテント及び食料が持ち去られる被害が発生し、このキャンプ場が閉鎖された事件です。ここは薬師岳だけではなく、雲の平や高天ヶ原、黒部五郎岳などにテント泊で行くためには、必ず泊まるキャンプ場です。薬師峠キャンプが使えなくなることによる登山者への影響は甚大です。ちなみに、私は高校時代から今までにこのキャンプ場に20泊近くしていますが、クマには一度も遭ったことがありません。北アルプスのツキノワグマは、登山者の食料を漁ることが常態化してきたのでしょうか。だとしたらとても恐ろしいことです。山麓の町でも、山の中においても、人とクマの生息域が近くなり過ぎたことが、クマ被害急増の大きな原因だと言われています。町中に不用意にゴミを放置しない、柿などの果実を木に成らしっぱなしにしない、キャンプ場では食料の管理を米国の国立公園並みに厳格にする、などの対策を取るとともに、クマに対して「人の活動領域に行ってもいいことはない」ということを多様な手段で教え込むことも必要だと感じる今日この頃です。2023年度に年間21例の重傷クマ外傷の治療に当たった秋田大医学部付属病院の医師たちが症例をまとめるそんなクマ被害急増の中、クマ外傷に特化した医学書が今年4月に出版され全国紙で取り上げられるなど話題になっています。『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』(新興医学出版社)で編著者は秋田大学医学部 救急・集中治療学講座教授の中永 士師明(なかえ・はじめ)氏です。『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』編著・中永 士師明(秋田大学医学部 救急・集中治療学講座教授)新興医学出版社、A5変型判、88頁、3,960円(税込み)『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』編著・中永 士師明(秋田大学医学部 救急・集中治療学講座教授)新興医学出版社、A5変型判、88頁、3,960円(税込み)同書の序文によれば、「2023年度のクマ類による人身被害は急増し、東北が141件と突出している。(中略)秋田県内の人身被害は70件となっており、秋田大学医学部付属病院では年間21例の重傷クマ外傷の治療に当たった」とのことで、同書では、2023年に搬送された21例のうち20例について症例写真を例示しながら詳細に分析しています。「クマ外傷の特徴」の章にまとめられたその分析では、患者の平均年齢は74.5歳で、男性が13人を占めていました。受傷場所は市街地が15人で、山林が5人。搬送のピークは10月の7人で、受傷の時間帯に傾向はありませんでした。患者は顔面の負傷が9割で、骨折(9人)や眼球破裂(3人)などのほか、頭蓋骨骨折(1人)もありました。ツキノワグマの攻撃力がいかに強大なものであるかがわかります。同書はこれらのデータから得られる医学的知見として、「クマ外傷は秋に人間の生活圏で多く発生していた。上半身(顔面、上肢)の損傷が多く、全身麻酔による緊急手術が必要であった。一部の患者は挿管と出血性ショックに対する輸血が必要であった。全例で予防的抗菌薬を使用したが、21.1%で創部感染症が発生した。死亡退院はなかったが、15.8%で失明などの重大な後遺症が残った」とまとめています。「クマによる最初の一撃はほとんどが爪によるものであり、クマが立ち上がった高さでちょうど手が届く顔面を襲われる」「クマ外傷による顔面外傷の実際」の章では、爪が下眼瞼にひっかかることで下涙小管の断裂が起こりやすいこと、顔面神経の損傷とその修復が大きな課題であることを指摘するとともに、「クマによる最初の一撃はほとんどが爪によるものであり、クマが立ち上がった高さでちょうど手が届く顔面を襲われる。(中略)2023年度の症例のうち眼球損傷と眼筋の障害により3名が片眼を失明した。クマ外傷の後遺症として最も生活に支障をきたす失明を避けるには、まず眼球を守ることを周知しておく必要がある」と書いています。また、多くの患者が、受傷後に不眠やせん妄、急性ストレス反応などを訴えたことから、「クマ外傷による精神的問題」という章も設け、急性ストレス症や心的外傷後ストレス症(PTSD)への対応についても詳細に解説しています。本書は医学書ですが、「クマ外傷の予防策」の章では、クマとの遭遇を避ける方法や、クマを寄せ付けないための方法の解説もあります。コラムも充実しており、「飼い犬は役立つか」、「子グマなら勝てるか?」、「クマのパンチにアッパーカットはない」など興味深いテーマで13本が掲載されています。これから秋を迎え、各地でクマ被害も増えると予想されます。クマに襲われた患者が運ばれてきたときの対処法を学びたい方は、一読をお勧めします。

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福井大学医学部 病態制御医学内科学第一講座(附属病院血液・腫瘍内科)【大学医局紹介~がん診療編】

山内 高弘 氏(教授)今村 善宣 氏(助教)山内 英暉 氏(医員)講座の基本情報教室の取り組みと特徴当科は、昭和55年福井医科大学内科学第一講座として開講以来40年以上にわたり抗腫瘍薬の基礎研究・臨床研究を専門とする全国でもまれな内科です。基礎的には、抗腫瘍薬の臨床薬理と薬剤耐性を研究テーマとしています。臨床的には、たくさんの臨床試験や治験を行っていますが、患者さんの診療を第一として地域医療を守ります。学内・学外の先生方との連携を重視し、がん薬物療法のメッカとして「がんを薬でなおそう」を目標に、基礎理論とエビデンスに基づいた合理的で最先端の診療を実践しています。教室の目標は、「楽しく、仲良く、全力で!」 をモットーに、教室の発展と教室員一人ひとりの夢の実現を両立させることであります。自由な雰囲気の中で若い先生方が実力を伸ばしていくことができる教室です。力を入れている治療/研究テーマ当科では、早期治験からJCOG大規模第III相試験まで多段階の臨床試験を広く展開しています。また、抗がん薬耐性機序の解明やTLS発症リスク因子の同定を目指す基礎・トランスレーショナル研究も並行して推進中です。加えて、高齢がん患者を対象としたリアルワールドデータ解析や、造血器腫瘍パネル検査に向けた骨髄クロットのプレアナリティカル解析など、研究テーマは多岐にわたり、医局員一人ひとりの関心・適性に応じた自主的な研究活動を支援しています。医学生/初期研修医へのメッセージ福井という地方の特性を活かし、患者さんとの距離が近い環境で診療と研究に主体的に参加できます。多職種カンファレンスや研究企画会議では、若手のアイディアが尊重され、教授や先輩医師からの直接指導を受けながら実務経験を積める機会が豊富です。地域連携プロジェクトにも早期から関わることで、がん診療の専門性と総合的な医療力を同時に磨けます。地方だからこそ得られる深い学びと手応えを、ぜひ一緒に味わいましょう。Uターン・Iターンも大歓迎です!これまでの経歴2016年3月に福井大学を卒業後、4月から福井大学医学部附属病院で初期研修を行いました。血液・腫瘍内科をローテートした際に、化学療法や移植によって一貫して内科で悪性腫瘍を治療できる点に惹かれ、2018年4月に血液・腫瘍内科に入局しました。2019年4月からは関連病院で専門研修を行いました。いずれの施設でも血液疾患、一般内科の診療について指導医の先生方から手厚い御指導をいただき2021年に内科専門医、2023年に血液専門医を取得しました。2023年4月から福井大学医学部附属病院に戻り、大学院に入学し抗がん薬について基礎研究を行っています。同医局を選んだ理由当院は県内唯一の移植認定施設であり、化学療法から同種造血幹細胞移植まで一貫して経験できます。治験も多数行っており、最新の治療に触れることができます。また、時間外や休日はオンコール制であり、福井県でメリハリをつけて働きながら血液・腫瘍内科として経験を積むのによい環境と考えました。また、医局の雰囲気や診療スタイルも自分の性質に合っていると感じ入局を決めました。実際、内科医・血液内科医として非常に充実した専門研修をさせていただいたと感じています。まずは、ぜひお気軽に見学にお越しください!福井大学医学部 病態制御医学内科学第一講座(附属病院血液・腫瘍内科)住所〒910-1193 福井県吉田郡永平寺松岡下合月23-3問い合わせ先tyamauch@u-fukui.ac.jp医局ホームページ福井大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科福井大学医学部 病態制御医学内科学第一講座専門医取得実績のある学会日本内科学会、日本血液学会、日本臨床腫瘍学会、日本造血・免疫細胞療法学会、日本輸血・細胞治療学会、日本老年医学会、日本プライマリ・ケア学会、日本痛風・尿酸核酸学会研修プログラムの特徴(1)当科は基礎的には長年にわたり抗腫瘍薬の基礎的検討を行い、臨床的には多くの臨床試験・治験を行ってきました。当科での研修でがん薬物療法の基礎を固めることができます。さらに発展的に、薬剤耐性克服を基礎的に検討したり、最先端の新規治療薬による治療を経験することができます。(2)北陸三県の中でも当科の造血細胞移植件数は多く、移植治療をしっかりと身に付けることができます。(3)日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医が4名おります。福井県での専門医11名のうち9名が当科出身者で、うち5名が当教室内にいます。固形がんも含め高いレベルのがん薬物療法を学ぶことができます。(4)腫瘍崩壊症候群、制吐療法、がん関連静脈血栓塞栓症といったがん関連有害事象についても掘り下げた研究を行っています。がん患者さんの包括的診療を学ぶことができます。

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白血病治療薬が高リスク骨髄異形成症候群にも効果を発揮

 最近承認された白血病治療薬が、致命的な骨髄疾患と診断された一部の患者にも有効である可能性が、パイロット試験で示された。骨髄異形成症候群(MDS)患者の約5人に3人が、米食品医薬品局(FDA)が2022年に、急性骨髄性白血病(AML)患者向けに承認したオルタシデニブ(商品名レズリディア)による治療に反応を示したという。米マイアミ大学シルベスター総合がんセンター白血病部門主任のJustin Watts氏らによるこの研究結果は、「Blood Advances」に7月16日掲載された。 オルタシデニブは、腫瘍の発生に関与する変異型イソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)を選択的に阻害する薬である。FDAは、IDH1遺伝子変異陽性の再発または難治性AML成人患者に対してオルタシデニブを承認している。Watts氏らによると、AML患者の約10%にIDH1遺伝子変異が見られるという。しかし、この変異はMDS患者の約3〜5%にも見られるため、同氏らは、オルタシデニブがこの疾患の治療においても有効なのではないかと考えた。 米国がん協会(ACS)によると、前白血病またはくすぶり型白血病とも呼ばれるMDSは、骨髄内の造血細胞に異常が生じて血球が正常に成熟できなくなって発症し、貧血や感染症、出血傾向、免疫機能の低下などが生じる。MDSはAMLへ進行することが多いという。 Watts氏らは、IDH1遺伝子変異陽性で中等度から極めて高リスクのMDS患者22人(年齢中央値74歳、男性59%)を対象に、オルタシデニブの単剤療法と、AMLやMDSに対する標準的な抗がん薬であるアザシチジンとの併用療法の有効性を検討した。対象者のうち6人が単剤療法(再発/難治性4人、初回治療2人)、16人が併用療法(再発/難治性11人、初回治療5人)を受けた。 その結果、全奏効率(ORR)は全体で59%(完全寛解率27%〔6/22人〕、骨髄における完全寛解率32%〔7/22人〕)、治療に対する反応の評価が可能だった19人では68%(完全寛解率32%〔6/19人〕、骨髄における完全寛解率37%〔7/19人〕)であった。治療法別のORRは、単剤療法群で33%(2/6人)、併用療法群で69%(11/16人)であった。奏効に至るまでの期間(TTR)は中央値2カ月、奏効期間(DOR)は中央値14.6カ月、全生存期間(OS)は中央値27.2カ月であった。さらに、ベースライン時に輸血依存だった患者のうち、62%が赤血球輸血非依存(56日間)に、67%が血小板輸血非依存に到達したことも示された。 Watts氏は、「非常に高リスクのMDS患者集団において、奏効率だけでなく、血球数の改善、DORの延長、OSの改善など、実に注目すべき成果が得られた」とマイアミ大学のニュースリリースで述べている。また、研究グループは、「以前の研究では治療抵抗性MDS患者の生存期間は6カ月未満だったことを考えると、本研究結果は心強い」と述べている。 研究グループによると、この研究結果はすでに治療基準の変更につながっており、国立総合がんセンターネットワークのガイドラインにおいて、IDH1遺伝子変異陽性のMDS患者に対してオルタシデニブによる治療が推奨されている。研究グループは現在、どのAML患者とMDS患者がオルタシデニブに長期的に反応する可能性があるかを検討しているところだという。

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救急診療部のHCVスクリーニング、最適な方法とは/JAMA

 C型肝炎ウイルス(HCV)感染者の特定は公衆衛生上の優先課題であり、救急診療部(ED)は通常、他の医療施設を受診しないリスクの高い患者を多く受け入れるため、スクリーニングの重点領域となっている。しかし、EDにおけるHCVスクリーニングの最適な方法は明らかでないという。米国・Denver HealthのJason Haukoos氏らDETECT Hep C Screening Trial Investigatorsは「DETECT Hep C Screening試験」において、対象者選択的スクリーニング(targeted screening:TS)と比較して対象者非選択的スクリーニング(nontargeted screening:NTS)は、新規HCV患者の検出に優れるものの、診断から治療完了に至った患者は少数であることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年7月9日号に掲載された。米国の都市部ED施設の無作為化臨床試験 DETECT Hep C Screening試験は、EDにおけるHCVスクリーニングの有効性を評価し、TSよりもNTSが新規HCVを多く検出するという仮説の検証を目的とする実践的な無作為化臨床試験であり、2019年11月~2022年8月に、米国の都市部の3つの大規模ED施設(365日24時間体制)で参加者の無作為化を行った(米国国立薬物乱用研究所[NIDA]の助成を受けた)。 年齢18歳以上で、EDを受診し、臨床的に病態が安定しており、医療に関する同意能力がある患者を対象とした。過去にHCVの診断を受けている患者や、ED滞在時間が60分未満と予測される患者は除外した。 対象とした患者を、NTS(リスクを問わず全患者でHCV検査を行う)群またはTS(リスク評価に基づき高リスク例でHCV検査を行う)群に無作為に割り付けた。TSのリスク評価の基準は、1945~65年生まれ、注射薬物や経鼻薬物の使用、規制のない環境でのタトゥーやピアス、1992年以前の輸血または臓器移植であった。 主要アウトカムは新規のHCV診断であり、HCV抗体検査が陽性で、HCV RNAが検出され、過去にHCVの診断を受けていないことと定義した。副次アウトカムとして、HCV検査の提案・受諾・完了、12週の時点での持続的ウイルス陰性化(SVR12)、18ヵ月時における全死因死亡などを評価した。NTS群、検査の提案は3.1倍、完了は2.1倍 14万7,498例(年齢中央値41歳[四分位範囲:29~57]、男性51.5%、黒人42.3%、ヒスパニック系20.9%、白人32.2%)を登録し、NTS群に7万3,847例、TS群に7万3,651例を割り付けた。 NTS群では、6万5,693例(89.0%)がHCV検査を提案され、1万6,563例(22.4%)がこれを受諾し、9,867例(59.6%)が検査を完了した。このうち416例(4.2%)がHCV抗体検査陽性で、154例(1.6%[95%信頼区間[CI]:1.3~1.8])でHCV RNAが検出されてHCVの新規診断が確定した。 TS群では、高リスクと判定された2万3,400例(31.8%)のうち2万982例(89.7%)がHCV検査を提案され、7,116例(30.4%)が受諾し、4,640例(65.2%)が検査を完了した。このうち348例(7.5%)がHCV抗体検査陽性で、115例(2.5%[95%CI:2.1~3.0])でHCV RNAが検出されてHCVの新規診断が確定した。 したがって、HCV検査の提案の割合はNTS群がTS群の3.1倍(89.0%vs.28.5%、群間差:60.5%[95%CI:60.1~60.9]、p<0.001)で、受諾の割合はTS群で高く(25.2%vs.33.9%、8.7%[8.0~9.4]、p<0.001)、最終的に検査を完了した患者の割合はNTS群がTS群の2.1倍(13.4%vs.6.3%、7.1%[6.8~7.4]、p<0.001)だった。 主要アウトカムである新規HCV診断の割合は、TS群が0.16%(115/7万3,651例)であったのに対し、NTS群は0.21%(154/7万3,847例)と有意に優れた(群間差:0.05%[95%CI:0.01~0.1]、相対リスク:1.34[1.05~1.70]、p=0.02)。治療完了やSVR12達成は両群とも減少、1.5年死亡率に差はない 新規HCV診断例のうち、その後治療に結び付いた患者は両群とも少なく、NTS群で19.5%(30/154例)、TS群で24.3%(28/115例)であった。治療としては、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)を開始した患者がそれぞれ15.6%(24例)および17.4%(20例)で、DAAを完了した患者は12.3%(19例)および12.2%(14例)であった。 また、SVR12を達成した患者の割合は、NTS群9.1%(14例)、TS群9.6%(11例)で、18ヵ月時の全死因死亡率は、それぞれ5.2%(8例)および4.3%(5例)だった。 著者は、「SVR12に至った患者の数は、新規HCV診断数から大幅に減少しており、これはHCV治療の革新的モデルの開発が緊急に必要であることを強く示唆する」「米国における現在のHCVの流行は注射薬物の使用が主な要因で、この集団のHCV有病率は30%を超えると推定されるため、注射薬物使用者は対象者選択的な介入の重要な対象であり、治療障壁の理解や彼らのニーズに合ったアプローチの開発など新たな戦略が求められる」としている。

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輸血依存性サラセミア、mitapivatは新たな経口治療薬として有望/Lancet

 非輸血依存性(NTD)αサラセミアまたはNTD βサラセミアの成人患者において、開発中の経口ピルビン酸キナーゼ活性化薬mitapivatはヘモグロビン値を上昇させ疲労感を改善し、新たな経口治療薬となる可能性があることが示された。レバノン・American University of Beirut Medical CenterのAli T. Taher氏らENERGIZE investigatorsが第III相の国際無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ENERGIZE試験」の結果を報告した。NTDサラセミアは無効造血と溶血性貧血によって特徴付けられる遺伝性疾患で、長期の合併症、QOL低下、早期死亡をもたらす。βサラセミアに対する承認された経口疾患修飾治療薬はなく、αサラセミアに対しては承認薬がなかった。Lancet誌2025年6月19日号掲載の報告。1日2回100mgを24週経口投与し、ヘモグロビン値上昇を評価 ENERGIZE試験は、NTD αサラセミアまたはNTD βサラセミアの成人患者におけるmitapivatの有効性と安全性を評価した世界18ヵ国70病院で行われた試験。非盲検の延長試験も行われている。対象は18歳以上、NTD αサラセミアまたはNTD βサラセミアでヘモグロビン値10g/dL以下の患者を適格とした。 被験者は、ブロック無作為化法を用いた中央双方向応答テクノロジーシステムを介して、mitapivat群(1日2回100mgを24週経口投与)またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。ベースラインのヘモグロビン値とサラセミアの遺伝子型による層別化も行われた。 試験に関わる全員が、主要エンドポイントの解析のために試験の盲検化が解除されるまで、被験者の治療割り付けを知らされなかった。 主要エンドポイントは、ヘモグロビン反応(12~24週目の平均ヘモグロビン値がベースラインから1.0g/dL以上上昇)で、無作為化された全被験者を対象に解析した。安全性は、試験薬の投与を少なくとも1回受けた全患者を対象に解析した。平均ヘモグロビン値1.0g/dL以上上昇、mitapivat群42%、プラセボ群2% 2021年11月8日~2023年3月31日に、235例がスクリーニングされ、そのうち194例(女性123例[63%]、男性71例[37%])が試験に登録された。130例がmitapivat群に、64例がプラセボ群に無作為化され、この194例を有効性解析集団(FAS)とした。 各群1例について、無作為化されたが治療薬の投与を受けず、これら被験者は安全性解析集団から除外された(mitapivat群129例、プラセボ群63例)。mitapivat群の7例、プラセボ群の1例が24週間の二重盲検試験期間が終わる前に治療を中断している。 ヘモグロビン反応を呈したのはmitapivat群55/130例(42%)、プラセボ群1/64例(2%)であった(最小二乗平均差:41%[95%信頼区間:32~50]、両側のp<0.0001)。 有害事象は、mitapivat群107/129例(83%)、プラセボ群50/63例(79%)で報告された。mitapivat群で多く報告された有害事象は頭痛(29/129例[22%]vs.プラセボ群6/63例[10%])、初期不眠症(18例[14%]vs.3例[5%])、悪心(15例[12%]vs.5例[8%])、上気道感染(14例[11%]vs.4例[6%])であった。死亡は報告されなかった。

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続・ガイドラインはどう考慮される?【医療訴訟の争点】第13回

症例本稿では、前回に続き、臨床現場で用いられている診療ガイドラインの遵守・逸脱が争点となった例を取り上げることとし、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の医学的適応の有無が問われ、術中・術後管理も含めて医師の注意義務違反が争点となった東京地裁令和3年8月27日判決を紹介する。<登場人物>患者84歳・男性原告患者の子(2名)被告一般病院(病床数100床以上、消化器系に強みを有する)事案の概要は以下の通りである。平成30年(2018年)3月28日被告病院消化器内科を受診。小球性貧血の精査および消化管出血疑い。4月4日造影CT(腹部・骨盤)4月13日上部内視鏡・下部内視鏡検査4月25日被告病院の消化器内科を受診。胃がん疑い(病理検査:Group4)、ピロリ菌感染胃炎、膀胱結石との診断6月11日被告病院を受診。医師より、病変が9~10cm台の隆起した腫瘍であることからESDが適応外であることの説明がなされたが、本件患者がESDの実施を強く希望したため、確実に腫瘍が取れる保証はなく、取れたとしても追加切除が必要になる可能性があること、術中に穿孔が生じた場合や出血コントロールがつかない場合にはESDを中止する可能性があり、緊急開腹手術になる可能性もあることを説明した上、ESDを実施することとなった。6月16日医師が、本件患者および家族に対し、本件患者の胃に悪性と思われる腫瘍があること、通常であれば開腹手術の適応であるが、本件患者が強く希望したため例外的に内視鏡治療であるESDを行うこととしたこと、ESDで腫瘍を切除できるかは不明であり、確実に取れる保証はないこと、術中に大量出血や穿孔が生じ、緊急開腹手術になる可能性があること、ESDによる治療が難しい場合には、後日開腹手術を実施することを説明した。7月18日ESD実施。午後3時頃から、大きなしこり部分の切除を開始した。午後4時20分頃、本件患者の血圧が86/53mmHgと低下。医師は、出血のためと判断し、代用血漿剤のボルベン輸液を急速投与。まもなくして血圧が103/40mmHgと回復したことから、ESDを継続。午後5時頃から、腫瘍により視野が妨げられることが多くなり、止血に難渋するようになったことから、医師は、本件病変を一括切除することを諦め、剥離していた腫瘍を分割切除することとした。午後6時頃から血圧が急速に低下し、胃の穿孔が確認された。午後7時15分、本件患者の血圧が68/20mmHgと急激に低下。医師は、鼠径部の脈拍が触知できることを確認した上で、補液をしながら本件ESDを継続し、スネアによる本件病変の分割切除を開始した。午後7時30分頃から午後8時頃、低血圧状態に対して、輸液500mLを3本投与したほか、昇圧剤を投与し、クリップによる止血を実施。午後8時頃の採血の結果、Hb値が4.5g/dLと急速に貧血が進行していたため、輸血が必要と判断。午後8時38分、輸血が到着するまでの間に更に出血しないように一旦ESDを中止することとし、脱気をしながら全身状態を落ち着かせることとした。午後9時30分に輸血が被告病院に到着し、午後9時34分から輸血を開始。輸血により血圧が徐々に回復していることを確認した上で、午後10時08分と午後10時09分にはクリップによる止血を実施。午後10時25分、止血を確認し、午後10時31分の採血の結果、Hb値が8.4g/dL、pH 7.182と改善したことを確認し、午後10時54分、本件患者を内視鏡室から病棟へと移送。7月19日午前1時06分、帰室後の輸血によっても本件患者のバイタルサインが安定しないため、出血の可能性が高いと考えて胃カメラを実施。複数箇所から細やかな出血があることを確認し、内視鏡で止血。午前1時29分、心停止。午前2時心臓マッサージを継続したものの心停止の波形は変わらず。午前2時44分、死亡確認。実際の裁判結果本件の裁判では、ESDの適応が問題となった。裁判所は、以下の点を指摘して、「本件患者が開腹手術よりも内視鏡治療の実施を希望していたことを踏まえても、本件ESDは適応を欠くものであったと言わざるを得ない」として、適応を欠く本件ESDを実施したことにつき、注意義務違反が認められると判断した。ESDに係る各ガイドラインにおいて、病変が一括切除できる大きさと部位にあることがESDの適応の基本的な考え方とされており、潰瘍所見の有無に応じて2~3cmが一つの指標として掲げられているところ、本件病変はこれを大幅に上回る約9~10cm大の腫瘍であったこと術前の造影CTにおいて、異常に太い腫瘍内血管が認められていたことに照らすと、本件ESDにおいては、処置に長時間を要し、多量の出血が見込まれることが事前に予想されたこと本件患者が84歳と高齢であったことに照らすと、そのような長時間の施術や出血に耐えうる状況であったとは認め難く、術後の穿孔や出血のリスクもあったことなお、裁判所は、損害の評価に関する部分で、「早期に緊急開腹手術への移行や輸血を実施してしかるべきところ、…午後8時過ぎまでESDを漫然と継続し、結果として更なる出血を招くに至った」経過に照らすと、「本件ESDにおける出血のリスクに対する評価が不十分であったといわざるを得ず、その注意義務違反の程度は重い」として、慰謝料額につき若干の増額認定をしている。注意ポイント解説本件は、患者の希望を踏まえてESDを行ったものであるが、ESDの実施につきガイドラインにおける適応基準から逸脱しており、ESDによる出血性ショックでの死亡につき医師の注意義務違反と認定された事案である。本件では、被告病院に設置された事故調査委員会が、医療法第6条の11に基づく医療事故調査を実施して報告書を作成している。そして、同報告書では、以下の点を指摘した上で「本症例は、胃がんの切除・治癒の可能性の観点から考えるとESDの拡大適応はあったかもしれない。しかし、本件病変の大きさや血管の豊富さ等に加え、患者の耐術面、易出血性および術後の経過(潰瘍治癒瘢痕、蠕動障害)を考えると総合的にESDの適応はなかった」との見解が示されており、本判決は、かかる見解を採用した判断と言える。1.本件病変が約9~10cmと非常に大きな腫瘍であること2.術前の造影CTにおいて異常に太い腫瘍内血管が認められたため、内視鏡治療で摘除することは極めて困難であると考えられたこと3.仮に10cm径の腫瘍と考えると、本件ESDの剥離面積は2cm径の腫瘍の25倍となること4.処置に長時間かかり、剥離に伴う出血量も多くなることが予想されること5.静脈麻酔下の長時間の治療に患者が身体的に耐えられるかは厳しい状況であったと考えられる6.たとえESDで腫瘍を切除することができたとしても、(ⅰ)切除後に広範囲の潰瘍が生じること、(ⅱ)術後に遅発性の穿孔や出血が生じる危険性が高く、潰瘍が瘢痕化し、狭窄する可能性もあること、(ⅲ)蠕動運動の回復にもかなり時間がかかること等から考えると必ずしも開腹手術と比べて低侵襲とは限らないこと患者の同意は、「侵襲的な医療行為の許可」と「治療方法の選択の自己決定権の尊重」にある。このため、治療法の選択については、説明内容を理解した上での患者の同意があれば、他の治療法を選択しなかったことについての責任を負うことにはならない。しかし、患者が選択した診療を行った場合でも、その後の診療行為にミスがあった場合(たとえば、患者が手術を受けると選択した場合に、その手術で手技ミスがあった場合など)、そのミスに起因する損害を賠償する責任が生じる。本件では、ESDを実施したことが患者の希望であるとしても、調査委員会の報告書が指摘しているようなリスクについてまで説明がなされていなかった模様であり、ESDを希望した患者の同意が、上記リスクを踏まえたものと言えないため、ESDを希望したのが患者の選択であっても免責がされなかったと考えられる。加えて、本件ESDの経過の中で、緊急開腹手術への移行や輸血の実施が速やかになされていないことが、被告病院の責任を認める実質的な理由となっていると思われる。医療者の視点本症例では、9~10cm大の胃腫瘍に対してESDが実施されましたが、裁判所は適応基準からの大幅な逸脱を理由に注意義務違反を認定しました。ESDの適応基準では潰瘍所見の有無に応じて2~3cmが1つの指標とされており、本症例の病変はこれを大幅に上回っています。また、術前CTで異常に太い腫瘍内血管が確認されていた点も、出血リスクの高さを示唆する重要な所見でした。この症例が示す重要な教訓は、患者の強い希望があっても、ガイドラインから大きく逸脱した治療は慎重に判断すべきということです。適応外治療を検討する際は、予想されるリスクを十分に評価し、患者・家族に対して具体的で詳細な説明を行う必要があります。とくに高齢患者では耐術能力の限界を考慮した判断が求められます。また、適応外治療を実施する場合は、より厳格な術中管理と迅速な方針変更の準備が不可欠です。本症例のように出血性ショックが発生した際の対応の遅れは、患者の予後に直結する重大な問題となり得ます。医師は患者の希望に応えたいという気持ちと医学的適応の冷静な判断のバランスを常に意識し、説明責任を果たした上で最善の医療を提供することが求められます。Take home message診療ガイドラインを大きく逸脱した治療行為については、患者の同意があっても注意義務違反とされる可能性がある。患者が選択した診療を行った場合でも、その後の診療行為にミスがあった場合、そのミスに起因する損害を賠償する責任が生じる。キーワードESD、適応外治療、ガイドライン、出血性ショック、高齢患者

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ASCO2025 レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年1回の総会は、今年も米国イリノイ州のシカゴで行われ、2025年は5月30日から6月3日まで行われた。昨今の円安(5月30日時点で1ドル=143円台)および物価高は現地参加に対するモチベーションを半減させるほどの勢いであり、今年もOn-lineでの参加を選択した。泌尿器腫瘍の演題は、Oral abstract session 18(前立腺9、腎4、膀胱5)、Rapid oral abstract session18(前立腺8、腎4、膀胱5、陰茎1)、Poster session 221で構成されており、昨年と比べて多くポスターに選抜されていた。毎年の目玉であるPlenary sessionは、Practice changingな演題が5演題選出されるが、昨年に引き続き今年も泌尿器カテゴリーからは選出がなかった。Practice changingな演題ではなかったが、他領域に先駆けてエビデンスを創出した免疫チェックポイント阻害薬関連の研究の最終成績が公表されたり、新規治療の可能性を感じさせる報告が多数ありディスカッションは盛り上がっていた。今回はその中から4演題を取り上げ報告する。Oral abstract session 前立腺#LBA5006 相同組み換え修復遺伝子(HRR)変異を有する去勢感受性前立腺がんに対するニラパリブ+アビラテロン、rPFSを延長(AMPLITUDE試験)Phase 3 AMPLITUDE trial: Niraparib and abiraterone acetate plus prednisone for metastatic castration-sensitive prostate cancer patients with alterations in homologous recombination repair genes.Gerhardt Attard, Cancer Institute, University College London, London, United Kingdomニラパリブは、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)-1/2の選択性が高く強力な阻害薬であり、日本では卵巣がんで使用されている。HRR遺伝子変異を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)ではMAGNITUDE試験で、ニラパリブ+アビラテロン+prednisone併用(Nira+AP)による画像上の無増悪生存期間(rPFS)の延長が示されている。ASCO2025において、HRR遺伝子変異を有する転移性去勢感受性前立腺がん(mHSPC)に対するNira+AP療法の有効性を検証したAMPLITUDE試験(NCT04497844)の結果が報告された。この試験のHRR遺伝子変異の定義は、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDK12、CHEK2、FANCA、PALB2、RAD51B、RAD54Lの生殖細胞系列または体細胞変異が含まれていた。患者はアビラテロン1,000mg+prednisone 5mgに加えて、ニラパリブ200mgあるいはプラセボを内服する2群にランダム化され、主要評価項目はrPFS、副次評価項目に症候性進行までの期間、全生存期間(OS)、安全性などが設定されていた。ランダム化された696例のうち、BRCA1/2変異は55.6%、High volume症例は78%であった。追跡期間中央値30.8ヵ月時点のrPFS中央値はNira+AP群で未到達、プラセボ+AP群で29.5ヵ月であり、ハザード比(HR)は0.63、95%信頼区間(CI):0.49~0.80、p=0.0001であった。BRCA1/2変異群でもHR=0.52(95%CI:0.37~0.72)、p<0.0001であった。OSは中間解析であるがHR=0.79(95%CI:0.59~1.04)、p=0.10と報告された。重篤な有害事象は、Nira+AP群で75.2%、プラセボ+AP群で58.9%であり、非血液毒性では貧血(29.1%vs.4.6%)、高血圧(26.5%vs.18.4%)が多く、治療中止割合はそれぞれ11.0%と6.9%であった。AMPLITUDE試験は、HRR遺伝子を有する症例に絞って実施した第III相ランダム化比較試験で、mHSPCにおいてもNira+AP併用療法はrPFSを有意に改善し、OSにおいても良好な傾向を示した。日本は本試験に参加しておらず、Nira+AP療法が保険適用を取得する可能性はないが、同じくmHSPCを対象に実施中のTALAPRO-3試験(タラゾパリブ+エンザルタミドvs.プラセボ+エンザルタミド)の結果に期待が広がる内容であった。#5003 転移性前立腺がんにおけるPTEN遺伝子不活化はADT+DTX治療の効果予測因子(STAMPEDE試験付随研究)Transcriptome classification of PTEN inactivation to predict survival benefit from docetaxel at start of androgen deprivation therapy (ADT) for metastatic prostate cancer: An ancillary study of the STAMPEDE trials.Emily Grist, University College London Cancer Institute, London, United Kingdomドセタキセル(DTX)は転移性の前立腺がんに対して有効な治療法であるが、その効果が得られる症例にはばらつきがある。STAMPEDE試験のプロトコルに参加し(2005年10月〜2014年1月)ADT単独vs.ADT+DTX±ゾレドロン酸またはADT単独vs.ADT+アビラテロン(Abi)に1:1でランダム化された転移性前立腺がん患者の腫瘍サンプルを用いて、全トランスクリプトームデータによりPTENの不活化が治療アウトカムに与える影響を検討した報告である。PTENの不活化は、既報のスコアリング手法(Liuら, JCI, 2021)に基づいて定義された(活性あり:スコア≦0.3、活性なし:スコア>0.3)。また、Decipherスコアは高リスク>0.8、低リスク≦0.8と定義した。Cox比例ハザードモデルを用い、治療割り付けとPTEN活性との交互作用を評価し、年齢、WHO PS、ADT前PSA、Gleasonスコア、Tステージ、Nステージ(N0/N1)、転移量(CHAARTED定義によるHigh volume/ Low volume)で調整した。主要評価項目はOSであり仮説の検定には部分尤度比検定を用いた。全トランスクリプトームプロファイルを832例の転移性前立腺がん患者から取得し、これは試験全体の転移性前立腺がんコホート(n=2,224)と代表性に差はなかった。PTEN不活性腫瘍は419例(50%)に認められ、PTEN mRNAスコアの分布はHigh volumeとLow volumeで差はなかった(p=0.310)。ADT+Abi群(n=182)では、PTEN不活性はOS短縮と有意に関連(HR=1.56、95%CI:1.06~2.31)し、ADT+DTX群(n=279)では、有意な差は認められなかった(HR=0.93、95%CI:0.70~1.24)。PTEN不活化とDTX感受性は有意な交互作用(p=0.002)があり、PTEN不活性腫瘍ではDTX追加により死亡リスクが43%低下(HR=0.57、95%CI:0.42~0.76)し、PTEN活性腫瘍では有意差なし(HR=1.05、95%CI:0.77~1.43)であった。この傾向は転移量にかかわらず一貫しており、Low volume患者(n=244)ではPTEN不活性:HR=0.53、PTEN活性:HR=0.82、High volume患者(n=295)ではPTEN不活性:HR=0.59、PTEN活性:HR=1.23であった。一方、アビラテロン群ではPTENの状態によらず治療効果は一定であり、PTEN不活性:HR=0.52、PTEN活性:HR=0.55(p=0.784)であった。また、PTEN不活性かつDecipher高リスク腫瘍にDTXを追加した場合、死亡リスクが45%低下(HR=0.55、99%CI:0.34~0.89)と推定された。このバイオマーカーの併用による層別化は、ADT+アビラテロン+ドセタキセルの3剤併用療法の適応を検討する際の指標として今後の臨床応用が期待されると演者は締めくくった。日本ではmHSPCへのupfront DTXはダロルタミドとの併用に限られるが、PTEN遺伝子に注目した戦略が重要と考えられ、ますます診断時からの遺伝子パネル検査の保険償還が待たれる状況となってきた。Oral abstract session 腎/膀胱#4507 VHL病関連悪性腫瘍におけるベルズチファンの長期効果 (LITESPARK-004試験)Hypoxia-inducible factor-2α(HIF-2α)inhibitor belzutifan in von Hippel-Lindau(VHL)disease-associated neoplasms: 5-year follow-up of the phase 2 LITESPARK-004 study.Vivek Narayan, Hospital of the University of Pennsylvania, Philadelphia, PAHIF-2α阻害薬のベルズチファンは、VHL病に関連する腎細胞がん(RCC)、中枢神経血管芽腫、膵神経内分泌腫瘍(pNET)を対象に、即時の手術が不要な症例に対して治療薬として日本でも2025年6月に承認された。これは、非盲検第II相試験のLITESPARK-004試験(NCT03401788)の結果に基づくものであるが、ASCO2025では5年以上の追跡期間を経た最新の結果が報告された。対象は以下を満たす症例であった:生殖細胞系列のVHL遺伝子異常を有する測定可能なRCCを1つ以上有する即時の手術が必要な3 cm超の腫瘍なし全身治療歴なし転移なしPS 0~1治療はベルズチファン120mgを1日1回経口投与で、病勢進行、不耐容、または患者自身の希望による中止まで継続された。主要評価項目は、VHL病関連RCCにおける奏効率(ORR)であった。追跡期間中央値は61.8ヵ月、ベルズチファンの投与を受けた61例中35例(57%)が治療継続中であった。ORRは、RCCで70%、中枢性神経血管芽腫で50%、pNETで90%、網膜血管芽腫(18眼/14例)では100%の眼において眼科的評価で改善を確認。奏効期間中央値は未到達(範囲:8.5~61.0ヵ月)であった。重篤な治療関連有害事象は11例(18%)に認められた。最も多かった貧血はAny gradeで93%、Grade 3以上で13%と報告された。そのマネジメントとしてエリスロポエチン製剤(ESA)のみを使用したのは11例(18%)、輸血のみは2例(3%)、ESAと輸血を用いたのは5例(8%)であり、その他の治療が39例(64%)で選択されていた。5年間の追跡後も、ベルズチファンは持続的な抗腫瘍効果と管理可能な安全性プロファイルが報告され、多数の患者が治療を継続していた。即時手術を要しないVHL病関連のRCC、中枢神経血管芽腫、pNET患者において有用な治療選択肢であり、今後われわれも使いこなさなければいけない薬剤である。Rapid Oral abstract session 腎/膀胱#4518 MIBCに対する術前サシツズマブ ゴビテカン+ペムブロリズマブ併用療法と効果に応じた膀胱温存療法(SURE-02試験)First results of SURE-02: A phase 2 study of neoadjuvant sacituzumab govitecan (SG) plus pembrolizumab (Pembro), followed by response-adapted bladder sparing and adjuvant pembro, in patients with muscle-invasive bladder cancer (MIBC).Andrea Necchi,Department of Medical Oncology, IRCCS San Raffaele Hospital,Vita-Salute San Raffaele University, Milan, Italy筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の標準治療は、術前化学療法を伴う膀胱全摘除術(RC)である。術前ペムブロリズマブ(Pem)やサシツズマブ ゴビテカン(SG)の単剤療法は、それぞれPURE-01試験およびSURE-01試験においてMIBCに対する有効性を示している。SURE-02試験(NCT05535218)は、術前SG+Pem併用療法および術後Pemを用いた第II相試験であり、臨床的奏効に応じた膀胱温存の可能性も含んでいる。ASCO2025ではその中間解析の結果が報告された。cT2~T4N0M0のMIBCと病理診断され、化学療法の適応がない、もしくは化学療法を拒否し、RC予定の患者を対象に、Pem 200mgをDay1に、SG 7.5mg/kgをDay1およびDay8に3週間間隔で4サイクル投与した。手術後はPemを3週間間隔で13サイクル投与した。臨床的完全奏効(cCR)を達成した患者(MRI陰性かつ再TUR-BTでviableな腫瘍が検出されない[ypT0]症例)については、RCの代わりに再TUR-BTが許容され、その後Pem 13サイクルを投与した。主要評価項目はcCR割合で、閾値30%、期待値45%としてα=0.10、β=0.20で検出するための症例数は48例と設定された。2段階デザインであり、1段階目を23例で評価し、cCR7例以上であれば2段階目に進む計画であった。ASCO2025では、SURE-02試験の中間報告がなされた。2023年10月~2025年1月までに40例が治療を受け、31例が有効性評価対象となった。cCR割合は12例(38.7%)、95%CI:21.8~57.8であり、全員が再TUR-BTを施行された。ypT≦1N0-x割合は16例(51.6%)であった。重篤な有害事象は4例(12.9%)で、SGの投与中止2例、1週間の投与延期1例があったが、SGの減量は不要であった。23例でトランスクリプトーム解析が行われ、病理学的完全奏効(ypT0)について、Luminal腫瘍では非Luminal腫瘍に比べてypT0率が高かった(73%vs.25%、p=0.04)。Lund分類においては、ゲノム不安定型では67%、尿路上皮型では57%、基底/扁平上皮型では20%、神経内分泌型では0%であった。間質シグネチャーが高い症例では非ypT0である割合が高く(p=0.004)、一方でTrop2(p=0.15)およびTOP1(p=0.79)の発現はypT0との関連を示さなかった。周術期におけるSG+Pembro療法は、良好なcCR率と許容可能な安全性プロファイルを示し、約40%の症例で膀胱温存が可能であった。本試験において、このまま主要評価項目を達成するかどうかは現時点で期待値以下であるため少し不安はあり、また得られる結果も決して確定的なものではない。しかしながら、中間報告の時点で膀胱温存の可能性を40%の症例で達成していることは非常に興味深い内容であった。今後、検証的な第III相試験においても膀胱温存が重要なアウトカムとして設定され、再発や死亡といった腫瘍学的に重要なアウトカムを損なわない結果が達成できる日が訪れることを期待したい。

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希釈式自己血輸血、心臓手術時の同種血輸血を減じるか/NEJM

 心臓手術を受ける患者は赤血球輸血を要することが多く、これには多額の費用や、供給量が不足した場合の手術の延期、輸血関連合併症のリスクが伴うため、輸血の必要性を減じるアプローチの確立が求められている。イタリア・IRCCS San Raffaele Scientific InstituteのFabrizio Monaco氏らANH Study Groupは「ANH試験」において、通常ケアと比較して希釈式自己血輸血(acute normovolemic hemodilution:ANH)は、人工心肺装置を使用した心臓手術時に同種赤血球輸血を受ける患者の数を減らさず、出血性合併症も抑制しないことを示した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年6月12日号に掲載された。11ヵ国の無作為化第III相試験 ANH試験は、ANHの使用が同種赤血球輸血の必要性を減少させるとの仮説の検証を目的とする実践的な単盲検無作為化第III相試験であり、2019年4月~2024年12月に北米、南米、欧州、アジアの11ヵ国32施設で参加者を登録した(イタリア保健省の助成を受けた)。 人工心肺装置を使用した待機的心臓手術が予定されている成人患者を対象とした。麻酔導入とヘマトクリット値の測定を行った後、被験者をANH(650mL以上の全血を採取、必要に応じて晶質液を投与)を受ける群、または通常ケア(各施設の標準的処置、ANHは行わない)を受ける群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、無作為化から退院までに行われた1単位以上の同種赤血球の輸血とした。合併症の発生は同程度 2,010例を登録し、ANH群に1,010例(年齢中央値59歳[四分位範囲[IQR]:52~66]、女性21.7%)、通常ケア群に1,000例(61歳[53~68]、18.6%)を割り付けた。67例で試験治療のクロスオーバーが発生した(ANH群から通常ケア群へ35例、通常ケア群からANH群へ32例)。ANH群の採血量中央値は650mL(IQR:650~700)で、データを入手できた1,006例のうち45例(4.5%)で採血量が650mL未満であった。ANHの処置に伴う有害事象は発現せず、2例(血液バッグの破損1例、バッグ内での血液凝固1例)を除き採取された全血が再輸血された。 データを入手できた集団における入院中に1単位以上の同種赤血球の輸血を受けた患者の割合は、ANH群が27.3%(274/1,005例)、通常ケア群は29.2%(291/997例)であり、両群間に有意な差を認めなかった(相対リスク:0.93[95%信頼区間[CI]:0.81~1.07]、p=0.34)。 副次アウトカムである術後30日以内または手術入院中の全死因死亡の割合は、ANH群で1.4%(14/1,008例)、通常ケア群で1.6%(16/997例)であった(相対リスク:0.87[95%CI:0.42~1.76])。術後の出血に対する外科的処置はそれぞれ3.8%(38/1,004例)および2.6%(26/995例)で行われ(1.45[0.89~2.37])、術後12時間の時点での胸腔ドレナージによる総出血量中央値は290mLおよび300mL(群間差:-11.66mL[95%CI:-35.54~12.22])と、出血性合併症に対するANHの効果は確認できなかった。 また、急性腎障害はANH群で8.5%(85/1,005例)、通常ケア群で8.9%(89/996例)に発生し(相対リスク:0.95[95%CI:0.71~1.26])、虚血性合併症(心筋梗塞、脳卒中/一過性脳虚血発作[またはこれら両方]、血栓塞栓イベント)の発生率も両群で同程度であった。安全性アウトカムにも差はない 安全性アウトカムについても両群間に差を認めず、主な評価項目の結果は以下のとおりであった。48時間を超える昇圧薬または強心薬の投与(ANH群15.1%vs.通常ケア群 14.6%、p=0.73)、心原性ショック(3.7%vs.3.2%、p=0.57)、機械的循環補助(2.7%vs.2.3%、p=0.59)、ICU入室中の最低ヘマトクリット値中央値(32%vs.32%、p=0.60)、腎代替療法を要する急性腎障害(1.5%vs.1.4%、p=0.87)、ICU入室時間中央値(38時間vs.40時間、p=0.82)、無作為化から30日以内の再入院(6.1%vs.5.9%、p=0.90)。 著者は、「ANHは有害事象のリスクを増加させなかったものの、同種赤血球輸血を受ける患者の数を減らす効果はなく、自己血輸血の方法としては推奨できない」「他の心臓手術の研究に比べ女性の割合が低かったのは、ベースラインのヘモグロビン値が低いことに関連した安全上の懸念が原因の可能性がある」としている。

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術後の吐き気、AI解析による最大のリスク因子は「総出血量」【論文から学ぶ看護の新常識】第20回

術後の吐き気、AI解析による最大のリスク因子は「総出血量」人工知能(AI)を用いて術後悪心・嘔吐(Postoperative nausea and vomiting:PONV)のリスク因子を解析した研究で、最大のリスク因子は「総出血量」である可能性が示されました。星島 宏氏らの研究で、PLOS One誌2024年8月号に掲載された。人工知能を用いた成人の術後悪心・嘔吐のリスク因子の特定研究チームは、人工知能(AI)を用いて術後悪心・嘔吐(PONV)のリスク因子を特定することを目的に、2010年1月1日から2019年12月31日までに東北大学病院で全身麻酔下手術を受けた成人患者37,548例のデータを分析した。PONVの評価は術後24時間以内に悪心・嘔吐を経験、または制吐薬を使用した患者とし、術後の診療録および看護記録から抽出した。機械学習アルゴリズムの1つである勾配ブースティングツリーモデルを用いて、PONVの発生確率を予測するモデルを構築した。モデルの実装にはLightGBMフレームワークを使用した。主な結果は以下の通り。最終的に、データが利用可能であったのは33,676例であった。総出血量がPONVへの最も強力な寄与因子として特定され、次いで性別、総輸液量、患者の年齢が続いた。その他に特定されたリスク因子は、手術時間(60~400分)、輸血なし、デスフルランの使用、腹腔鏡手術、術中の側臥位、プロポフォールの不使用、腰椎レベルの硬膜外麻酔であった。麻酔時間、およびセボフルランまたはフェンタニルの使用は、PONVのリスク因子として特定されなかった。術中総出血量は、手術時間や循環血液量不足と相関する可能性はあるものの、PONVと最も強く関連する潜在的なリスク因子として特定された。今回ご紹介する研究は、AIを使ってPONVのリスク因子を分析し、予測モデルを構築した興味深い論文です。研究では、LightGBMという機械学習モデルを使用し、各因子が予測にどれだけ「貢献」したかを評価するためにSHAP値(SHapley Additive exPlanations)を用いています。SHAP値が0より大きい場合、その因子はPONVのリスクを高める方向に影響した、つまりリスク因子として働いたと解釈されます。PONVのような多様な要因が複雑に絡みあう事象では、このような機械学習での評価が、従来の統計的手法よりも各因子の影響を適切に示せる可能性があります。このSHAP値を用いた分析から、従来のリスク因子として報告されている「女性」、「若年(20~50歳)」、「デスフルランの使用」、「プロポフォールの不使用」なども本研究でリスク因子として確認されました。そして、今回の解析でPONVの予測に最も強く貢献した因子は「術中の総出血量」であることが特定されました。研究では、とくに総出血量が1~2,500mlの範囲でPONVのリスクが高まる関連が示されています。これは、出血による循環血液量不足や術中低血圧がPONVに関与している可能性を示唆しています。また、従来リスク因子とされている「麻酔時間」、「セボフルランの使用」や「フェンタニルの使用」は、今回のAI分析ではリスク因子として特定されませんでした。その一方で、「手術時間(60~400分)」はリスク因子であることが示されています。この結果は、麻酔そのものの時間よりも、手術侵襲などといった手術自体の身体的負担がPONVに関与している可能性を示唆しています。これらの知見を踏まえて、侵襲が多い手術では全身管理がもっとも大事ですが、同時にPONVの発生にも一層の注意が必要です。頭部付近への防水シーツの設置、ガーグルベースンなどの嘔吐物を受ける容器の準備、いつでも制吐剤が投与できるような事前準備をしておきましょう。最後に、本研究は単施設の研究であるため、一般化できるかは今後さらなる検証が必要です。しかし、今回のPONVのように、今後AI解析によって既存の報告以外のリスク因子が報告される可能性があります。常に最新の知識をアップデートしていきましょう!論文はこちらHoshijima H, et al. PLoS One. 2024;19(8):e0308755.

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第247回 骨太の方針2025が閣議決定、賃上げ促進と病床削減が焦点に/内閣

<先週の動き> 1.骨太の方針2025が閣議決定、賃上げ促進と病床削減が焦点に/内閣 2.マダニ媒介SFTSで獣医師が死亡、医療者の感染リスクも顕在化/三重県 3.「がん以外」にも広がる終末期医療、腎不全にも緩和ケアを検討/厚労省 4.医療機関倒産が急増、報酬改善なければ「来年さらに加速」の懸念/帝国データ 5.急性期から地域包括医療病棟へ移行加速、診療報酬改定の影響が顕在化/中医協 6.「デジタル行革2025」決定、電子処方箋導入に新目標/政府 1.骨太の方針2025が閣議決定、賃上げ促進と病床削減が焦点に/内閣政府は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太の方針2025)を閣議決定し、来年度以降の予算編成や制度改革の方向性を示した。今回の方針では、医療・介護・福祉分野における構造改革と現場の処遇改善が柱となり、「成長と分配の好循環」に向けた具体策が明示された。政府は初めて、2029年度までに実質賃金を年1%引き上げる数値目標を掲げ、医療・介護・保育・福祉分野の処遇改善を「成長戦略の要」と位置付けた。これに伴い、公的価格である診療報酬や介護報酬の引き上げを示唆し、2026年度の報酬改定に大きな影響を与える可能性がある。また、これまで「高齢化による自然増」に限定していた社会保障費の算定に、今後は物価・賃金動向を加味する方針を打ち出した。これにより、物価高や人材確保に悩む医療・介護機関にとっては、経営基盤の安定化につながるとみられる。その一方で、保険料負担とのバランスが課題となる。地域医療体制の再編も加速され、地域実情を踏まえつつ、2027年度施行の新地域医療構想に合わせて、一般・療養・精神病床の削減が明記された。とくに中小病院や療養型施設に対し、再編や役割分担が求められる。負担の公平性を重視し、医療・介護の応能負担の強化も盛り込まれた。金融所得を含めた新たな負担制度の検討が進められており、今後の制度設計に注目が集まっている。また、2026年度以降、市販薬と類似する医師処方薬(OTC類似薬)を保険給付から除外する見直しが進められ、診療所経営にも影響が及ぶ可能性がある。さらに、医療の効率化を図るため、医療DXやデータ活用が推進され、電子カルテの標準化やPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)との連携が進展される見込みとなった。地域単位で薬剤選定を標準化する「地域フォーミュラリ」の全国展開も盛り込まれた。今回の方針は、賃上げによる持続可能な成長と、医療・福祉分野の構造改革を同時に進めるものであり、制度改革の実行力が問われる局面となる。 参考 1)経済財政運営と改革の基本方針 2025~「今日より明日はよくなる」と実感できる社会へ~[全文](内閣府) 2)ことしの「骨太の方針」決定 経済リスク対応やコメ政策見直し(NHK) 3)不要な病床の削減を明記、骨太方針決定 社会保障費「経済・物価動向等」反映へ(CB news) 4)骨太の方針、社保に物価・賃上げ反映 家計負担増す可能性(日経新聞) 5)実質賃金年1%上昇、初の数値目標 骨太の方針を閣議決定(毎日新聞) 2.マダニ媒介SFTSで獣医師が死亡、人獣共通感染症への警戒強まる/三重県マダニ媒介感染症である重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の感染拡大が続いており、医療従事者にも重大な影響を及ぼしている。6月、三重県内でSFTS感染の猫を治療していた高齢の獣医師が感染・死亡する事例が確認された。ダニ刺咬痕は確認されておらず、唾液や血液を介したペット由来の感染が疑われている。これは、2024年の医師への感染に続く人獣間感染の深刻な事例であり、日本獣医師会は防護対策の徹底を求めている。SFTSは6~14日程度の潜伏期を経て発熱、嘔吐、下痢、意識障害、皮下出血など多彩な症状を呈し、致死率は最大30%に達する。とくに高齢者では重症化リスクが高い。現在、有効な抗ウイルス薬としてファビピラビル(商品名:アビガン)が使用できるが、ワクチンは存在しない。マダニ感染症はSFTSのほかにも日本紅斑熱やツツガ虫病があり、いずれも西日本を中心に発生が集中している。2025年も岡山・鳥取・香川・静岡・愛媛など複数県で感染例が報告されており、死亡例も出ている。春から秋にかけてマダニの活動が活発化し、農作業やアウトドア活動での感染リスクが高まる。また、SFTSは犬・猫などのペットがウイルス保有宿主になり得ることが明らかになっており、医療者・獣医師・飼い主ともに十分な感染予防対策が求められる。ペットの室内飼育、防虫剤使用、皮膚・粘膜の保護に加え、咬傷・体液接触時の手指衛生とPPE(個人防護具)の着用が推奨される。今後、診療現場でもマダニ媒介疾患への警戒を強化し、野外活動歴や動物との接触歴を含めた問診と初期対応の徹底が重要である。 参考 1)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について(厚労省) 2)ネコ治療した獣医師死亡 マダニが媒介する感染症の疑い 三重(NHK) 3)マダニ感染症で死亡の獣医師「胸が苦しい、息苦しい」訴え緊急搬送 発症前に感染ネコ治療(産経新聞) 4)マダニにかまれ「日本紅斑熱」60代男性感染 2025年8人目 屋外でのマダニ対策呼びかけ(静岡放送) 5)マダニにかまれ、感染症悪化で死亡事例も 今が活動期 アウトドアレジャーでの警戒を(産経新聞) 6)ダニ媒介による感染症「日本紅斑熱」「SFTS」の患者が多発 県が注意喚起(山陽放送) 7)西日本中心に“マダニ”に注意 住宅街の茂みでパンパンに膨らんだマダニも…マダニが媒介する致死率10%超えの感染症SFTSとは?50歳以上は特に重症化しやすいか(あいテレビ) 3.「がん以外」にも広がる終末期医療、腎不全にも緩和ケアを検討/厚労省厚生労働省は、緩和ケアの対象を腎不全患者にまで拡大する方針で検討を開始した。これまで緩和ケアは、がん・エイズ・末期心不全の患者を対象としてきたが、透析継続が困難になった腎不全患者においても激しい身体的・精神的苦痛が生じるケースが多く、医療現場から対応拡充を求める声が高まっていた。背景には、慢性透析患者が年々増加し、2023年には全国で約34.4万人に達し、年間3.8万人が死亡している現状がある。透析中止に際しては「人生で最も激しい痛み」と表現されるほどの苦痛を伴うこともありながら、現在の診療報酬制度では緩和ケアの加算対象から除外されており、患者は十分な医療的支援を受けられていない。こうした事態を受け、自民党の有志議員らは5月に提言を厚労省に提出。患者の尊厳を守る終末期医療の実現に向け、在宅医療体制の整備、医療用麻薬の使用拡大、関連学会によるガイドラインの整備、モデル地域の創設などを提案した。これを受け厚労省は、2025年の「骨太の方針」に腎臓病対策として盛り込み、次期診療報酬改定を視野に対応を進める見通しだ。日本透析医学会も2020年以降、緩和ケアの必要性を強調しており、透析の見合わせ段階だけでなく、意思決定前の段階でも継続的なケアの必要性を提唱。今後は腎不全患者への緩和ケア提供を制度的に後押しする議論が本格化する。 参考 1)腎不全患者に緩和ケア拡大 透析困難時の苦痛軽減(東京新聞) 2)腎不全患者に緩和ケア拡大 透析困難時の苦痛軽減 厚労省検討、骨太反映へ(産経新聞) 3)がん以外にも緩和ケアを 透析医療へ拡大訴え 学会や国で議論始まる(共同通信) 4)わが国の慢性透析療法の現況(日本透析医学会) 4.医療機関倒産が急増、報酬改善なければ「来年さらに加速」の懸念/帝国データ2025年に入って、わが国の医療機関が前例のないペースで倒産または廃業している。帝国データバンクの調査によれば、1~5月だけですでに倒産が30件、廃業・解散などが373件に達し、年間では合計1,000件に迫る勢いだ。これは2024年の過去最多記録(723件)を大幅に上回る見通しであり、医療提供体制の根幹が揺らぎ始めている。背景には、医療機器や光熱費などの物価上昇に対して、2024年度の診療報酬改定(+0.88%)が極めて抑制的だったことがある。また、医師の働き方改革により、大規模病院を中心に残業代負担が急増し、経営を圧迫している。さらに、病院の老朽化も深刻で、法定耐用年数(39年)を迎える施設が全国の約8割に及ぶ中、建設費の高騰により建て替えを断念せざるを得ない事例が増えている。中小診療所や歯科医院では、経営者の高齢化や後継者不在が廃業の主因となっている。とくに同族経営が多い歯科では、承継が進まず「法人の限界」が露呈している。M&Aのニーズは高まっているが、財務状態の良い法人に買い手が集中し、赤字法人は買い手がつかず「廃業すらできない」という二極化が進行中だ。このような事業者の「自然消滅」は、厚生労働省が推進する地域医療構想の想定を超える速さで進行しており、病床再編の制度設計と現場の実態が乖離している。現状では、老朽施設への再生支援策も不十分で、制度疲労が顕在化している。今後の政策には、(1)診療報酬や補助金の実態に即した見直し、(2)施設再建支援、(3)M&Aによる出口戦略の明確化、(4)中山間地や離島での公的医療体制の再構築が求められる。医療機関の消滅は、単なる経営問題に止まらず、地域住民の医療アクセス権や医療安全保障そのものに関わる緊急課題である。 参考 1)病院と診療所の倒産件数、5カ月で前年上半期に並ぶ 計18件 東京商工リサーチ(CB news) 2)入金基本料「大幅引き上げを」公私病連が決議 病院経営の厳しさ訴える(同) 3)医療機関で倒産急増の深刻事態!今年は約1,000事業者が“消滅”か(ダイヤモンドオンライン) 5.急性期から地域包括医療病棟へ移行加速、診療報酬改定の影響が顕在化/中医協厚生労働省は、6月13日に中央社会保険医療協議会(中医協)・調査評価分科会の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」を開き、地域包括医療病棟および回復期リハビリ病棟に関する実態調査結果の報告をもとに討議を行なった。2024年度診療報酬改定で新設された地域包括医療病棟入院料について、届け出病院の約4割が急性期一般入院料1からの転換で、制度設計通りの導入が進んだとされた。一方、届け出検討病院は全体の5%程度に止まり、とくに「毎日リハビリ提供体制の整備」が障壁との回答が多数を占めた。また、入院患者の診療実態にはばらつきがあり、輸血や手術を多数算定する病院と、誤嚥性肺炎など内科系疾患中心の病院とで医療内容に差がみられた。急性期病棟を手放した病院も多く、地域医療構造の再編に影響が及ぶ可能性もある。一方、回復期リハビリ病棟では、FIM(機能的自立度評価)利得がゼロまたはマイナスの患者が突出して多い施設が散見され、委員からは「異常」「詳細な分析を行うべき」との指摘が相次いだ。新設されたリハ・栄養・口腔連携体制加算の基準(ADL低下3%未満)に満たない施設が多いことも判明した。今後、診療報酬制度の実効性や適正な施設基準運用のあり方が問われる。 参考 1)令和7年度第3回入院・外来医療等の調査・評価分科会(厚労省) 2)地域包括医療病棟、急性期一般1から移行が最多 全体の4割占める(CB news) 3)回復期リハ、FIM利得マイナスの患者が多くの病院に 「詳細な分析を」中医協・分科会(同) 6.「デジタル行革2025」決定、電子処方箋導入に新目標/政府政府は6月13日、「デジタル行財政改革取りまとめ2025」を決定し、医療・介護分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を中核に据えた改革方針を示した。背景には、急速な少子高齢化による医療資源の逼迫と、地域医療の持続可能性確保という喫緊の課題がある。今回の取りまとめでは、電子処方箋の導入促進とあわせて、医療データの二次利用(研究、医療資源の最適化など)に向けた制度整備が明記された。電子処方箋は2025年夏に新たな導入目標を設定し、病院・診療所での導入拡大を急ぐ。8月にはダミーコード問題への対応としてシステム改修が完了する予定であり、今後は診療報酬・補助金による導入促進も強化される。また、救急搬送時の医療情報共有を可能とする広島県発の連携PF(プラットフォーム)を全国展開する構想も示された。これにより、搬送の調整が迅速となり、災害時のEMIS連携やマイナンバーカードの活用による「マイナ救急」との統合も視野に入る。さらに、医療データの二次利用の円滑化に向けた法整備を進めるほか、AI活用のための透明性ある学習データの収集・連携環境の整備も進行中である。電子処方箋やリフィル処方の活用拡大も引き続き重要課題とされ、KPIの早期設定と次期診療報酬改定での反映が示唆された。これら一連の取り組みは、医療現場の業務効率化と質の高い医療の提供、さらには地域医療構想との接続にも大きな影響を及ぼす。医師にとっては、現場実装の速度と制度設計の動向に注視することが求められる。 参考 1)デジタル行財政改革 取りまとめ2025(デジタル行財政改革会議) 2)AIの学習データ、収集や連携促進 デジタル改革取りまとめ(日経新聞) 3)社会課題解決に医療データ活用 方針決定 法整備検討へ 政府(NHK) 4)電子処方箋、今夏に新たな目標設定 デジタル行革 取りまとめ、8月にシステム改修終了へ(PNB) 5)デジタル行財政改革会議(首相官邸)

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整形外科における術後せん妄、幅広い20のリスク因子が明らかに~メタ解析

 術後せん妄(POD)は、外科手術を受けた患者によくみられる術後合併症である。発症率は診療科によって異なるが、とくに整形外科患者のPOD発症率は一般病棟入院患者と比較し大幅に高い。せん妄は、患者の転帰と医療システムの両方に重大な影響を及ぼす可能性があるため、PODのリスク因子を特定し、予防することが重要である。三重大学医学部附属病院のRio Suzuki氏らは、下肢整形外科手術後におけるPODのリスク因子を特定したことを報告した。PLoS One誌2025年4月1日号掲載の報告。 本研究では、人工股関節全置換術や人工膝関節全置換術といった下肢整形外科手術後の患者におけるPODのリスク因子を調査した観察研究を、主要な医学データベース(CINAHL、MEDLINE)から網羅的に収集した。適格基準を満たす2つ以上の研究で解析されたせん妄に関する変数を抽出し、ランダム効果モデルを用いて、プールされたオッズ比(OR)、標準化平均差(SMD)を算出した。データはp<0.05の場合に統計学的に有意と見なされた。データベースの検索期間は1975~2024年7月までとした。 主な結果は以下のとおり。・データベース検索では、あらかじめ定義された検索キーワードを用いて2,599件の記録が同定され、最終的に27件の研究が適格基準を満たした(11件が前向きコホート研究、16件が後ろ向きコホート研究)。・この27件の研究の中で計9,044例の参加者データを統合し、システマティックレビューとメタ解析を行った結果、PODの発症に関連する以下の20の因子が特定された。【患者側の因子】 高齢(SMD:0.8、95%信頼区間[CI]:0.56~1.03)、ポリファーマシー(OR:1.47、95%CI:1.19~1.82)【合併症】 入院前の認知機能低下(OR:3.76、95%CI:1.57~9.02)、認知症(OR:4、95%CI:2.09~7.67)、一過性脳虚血発作(OR:1.69、95%CI:1.22~2.32)、パーキンソン病(OR:2.32、95%CI:1.56~3.44)、心血管疾患(OR:1.4、95%CI:1.16~1.68)、心筋梗塞(OR:1.4、95%CI:1.01~1.95)、せん妄歴(OR:12.64、95%CI:8.75~18.27)【術前因子】 認知機能検査(MMSE)のスコア(SMD:-0.59、95%CI:-1.05~-0.13)、血清Alb低値(SMD:-0.69、95%CI:-1.09~-0.29)、CRP高値(SMD:0.47、95%CI:0.05~0.88)、TSH異常値(SMD:-1.83、95%CI:-2.66~-1.01)、FT3異常値(SMD:-0.37、95%CI:-0.62~-0.12)【術中因子】 入院期間の延長(SMD:0.47、95%CI:0.18~0.76)、長時間の手術(SMD:0.53、95%CI:0.16~0.90)、長時間の麻酔(SMD:0.16、95%CI:0.05~0.28)、全身麻酔(OR:1.28、95%CI:1.04~1.58)、脊髄麻酔(OR:0.79、95%CI:0.65~0.97)、輸血OR:2.03、95%CI:1.02~4.08) 著者らは「術前および術後のデータを収集することは、PODの高リスク患者を同定するために非常に重要である。本研究の結果が整形外科手術後のPODの予測および予防に役立つ可能性がある」と結論付けている。

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兵庫医科大学 呼吸器・血液内科学(血液)【大学医局紹介~がん診療編】

吉原 哲 氏(教授)吉原 享子 氏(臨床講師)寺本 昌弘 氏(助教)熊本 友子 氏(レジデント)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴私たちの医局のモットーは、すべての血液疾患の患者さんに最良の治療を提供することです。血液疾患には、白血病、リンパ腫、骨髄腫といった造血器腫瘍のほか、血友病、凝固異常症といった出血性疾患があります。兵庫医大には、ハプロ移植やCAR-T療法のイメージが強いかもしれませんが、血友病やHIVの診療施設としても関西での重要な拠点となっています。地域のがん診療における医局の役割兵庫県の特徴は、大学の系列などに関係なく、各病院間の血液内科医の横のネットワークが非常に強いことです。その結果として、兵庫県内の多数の病院から移植やCAR-T症例のご紹介をいただいています。また、ハプロ移植やCAR-T療法については、県外からも多数の患者さんをご紹介いただいています。医師の育成方針まずは血液内科医として、どんな疾患でもひととおり診られるようになってもらいたいと考えています。実際、白血病から血友病まで非常に症例数が多いですので、化学療法だけでなく移植やCAR-T療法、そして血友病等の治療についても効率的に研修可能です。その後は専門性を高めていってもらうことになりますが、その際には医師それぞれのライフプランに合わせて無理のない働き方をして欲しいと考えています。子育てをしながら働く女性医師も多いため、女性医師にとって相談しやすい環境だと思います。同医局でのがん診療のやりがい、魅力私たちの医局でのがん診療チームは、白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫といった疾患に対し、化学療法のみならず、同種造血幹細胞移植やCAR‐T療法など、最先端の治療法を幅広く実施しています。日々進歩していく血液内科診療の劇的な変化を肌で感じることができ、また大学病院ならではの高度な医療現場で、他院では診断が困難な症例や治療が難しいケースも積極的に受け入れており、その度に多くの発見とやりがいを感じる毎日です。医局の雰囲気少人数制のチーム体制で、アットホームな雰囲気です。タスクシフトを積極的に取り入れ、一人ひとりが豊富な症例経験を積み自らの専門性を高めていけるよう支援しています。さらに、当医局には出産後も現場で活躍している女性医師たちが多数在籍しています。私自身は2人の子育て中でもありますが、自身の経験より家庭と仕事の両立の困難さを誰よりも理解しているつもりです。そのような若手医師たちを支援するため、各医師のライフプランに合わせた柔軟なサポート体制を整えるよう尽力しています。医学部生/初期研修医へのメッセージ医学部生/初期研修医の皆さまが、当医局で最先端の医療技術と充実した臨床経験を学びながら、自身の成長と挑戦を続けていただけることを心より願っております。ぜひ一緒に働きましょう!力を入れている治療/研究テーマ兵庫医科大学病院 血液内科(当科)では血液疾患に対するさまざまな研究に取り組んでいますが、これまでとくに力を入れてきた研究テーマの1つに、血液がんに対する同種造血幹細胞移植(同種移植)があります。私自身はこれまで、同種移植後の副作用を抑えるための、免疫抑制剤の投与方法に関する研究や、同種移植を受けた患者さんの生存率に影響を与えるリスク因子の解析を行ってきました。また、白血病の治療ターゲットとなるような分子標的を見つけるための基礎研究にも取り組み、新しい治療薬の開発を目指しています。さらに、当科ではキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)に関する基礎研究も開始しており、より効果的な細胞療法を実現するために頑張っています。医学生/初期研修医へのメッセージ当科では、同種移植やCAR-T療法を含めた細胞治療の分野はもちろん、血液学に関する臨床研究、基礎研究の両方に挑戦できる環境が整っています。研究に興味がある方は、ぜひ気軽にご相談ください。一緒に新しい治療法を探していきましょう。これまでの経歴もともと2008年に筑波大学を卒業しましたが、その後海外でスポーツ活動に取り組んでいました。海外にいる頃に医師になりたいと奮起、2013年に兵庫医科大学に入学し、2019年に卒業、同大学で初期研修を行い血液内科に入局しました。1年半、外病院で一般内科・一般血液を学び今は大学で血液内科医として日々勉強しています。同医局を選んだ理由学生の頃から血液内科に入局しようと思っていましたが、兵庫医科大学病院は西日本でも有数の移植施設で、今ではCAR-T療法なども含め、大学でしかできない治療がたくさんあることと、腫瘍とは別にHIVや血友病など専門の先生がいることも大きな理由です。また、どんなに忙しくても質問すると上級医の先生は優しく丁寧に教えて下さったことも理由の1つです。最初の頃は勿論、今でも分からないことは沢山ありますし、自分の行為が患者様の命にも関わる仕事ゆえ、どんな些細なことでも気がねなく何でも聞ける医局の雰囲気、指導体制は大事だと思います。現在学んでいることCAR-T療法、臍帯血移植、ハプロ移植など、市中病院ではなかなか経験できない症例をたくさん受け持っております。一方で、市中病院でも診ることの多いITPやリンパ腫の症例も多数あります。血液疾患は新規薬剤やガイドラインについても年々アップデートが必要ですが、症例が多数あるため知識だけではなく実症例として経験することができます。今後のキャリアプラン出産・育児を挟んだこともあり、目の前の目標は内科専門医の取得です。兵庫医科大学 呼吸器・血液内科学(血液)住所〒663-850 兵庫県西宮市武庫川町1-1問い合わせ先ketsueki@hyo-med.ac.jp医局ホームページ兵庫医科大学 血液内科教室専門医取得実績のある学会日本内科学会日本血液学会日本造血・免疫細胞療法学会(認定医)日本輸血・細胞治療学会(認定医)日本再生医療学会(認定医)研修プログラムの特徴(1)造血器腫瘍だけでなく血栓・止血やHIV診療も研修可能(2)子育てなどライフプランに合わせた柔軟なサポート体制を整えている(3)造血細胞移植やCAR-T療法など最新の治療を経験できる

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