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ASCO2018レポート 消化器がん(肝胆膵)

レポーター紹介2018年度のASCOも例年と同様に、コーミックプレイス@シカゴにて開催された。消化器がんの中でも肝胆膵領域における注目演題についていくつか報告する。肝細胞がん肝細胞がんにおいて、最も注目された演題は、肝細胞がんにおける2次治療としてラムシルマブとプラセボを比較した第III相試験のREACH-2試験である。ラムシルマブは、以前にも肝細胞がんのソラフェニブ不応・不耐の症例を対象としてプラセボと比較した第III相試験を行い、主要評価項目である生存期間は達成しなかったが、AFPが400ng/mL以上の症例で良好な生存期間の延長が示され、今回、AFPが400ng/mL以上の症例を対象としたやり直しの第III相試験を行った。あまり例のない第III相試験であるが、今回は生存期間の有意な延長(生存期間の中央値:ラムシルマブ群8.5ヵ月 vs.プラセボ群7.3ヵ月、ハザード比0.710(95%CI:0.531~0.959)を認め、主要評価項目を達成した。しかも、全体で292例、ラムシルマブ群197例、プラセボ群97例と、比較的少ない患者数で、ポジティブな結果が得られている。また、生存期間のサブグループ解析を見ても、女性以外ではほぼラムシルマブで良好であり、ソラフェニブの2次治療として有用性が示された。無増悪生存期間もラムシルマブで有意に良好(中央値:2.8ヵ月 vs.1.6ヵ月、ハザード比0.452、95%CI:0.339~0.603、p<0.0001)であり、奏効割合もラムシルマブ群4.6%、プラセボ群1.1%と良好で、病勢制御割合もそれぞれ59.9%と38.9%であり、有意に良好であった。Grade3以上の有害事象はラムシルマブ群で高血圧を高率に認めたが(ラムシルマブ群10.7% vs.プラセボ群3.2%)、忍容性は良好であった。ラムシルマブは、肝細胞がんにおいてバイオマーカーでセレクトした患者を対象として、初めて延命効果を示した薬剤であり、また、マルチキナーゼ阻害薬以外の抗体薬である。そのほか、注目された演題としては、Poster Presentationではあるが、切除不能な肝細胞がんに対するVEGFR阻害薬と抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体の併用療法で、ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法とレンバチニブとペムブロリズマブの併用療法である。ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法は、まだ23例と限られた対象での解析であるが、奏効割合(RECIST1.1)が65%と驚異的な成績が示されている。これまでの標準治療であるソラフェニブの奏効割合5~10%と比べると、約10倍の奏効割合である。また、全Gradeの有害事象も食欲減退33%、疲労33%、蛋白尿26%、高血圧21%と、他剤と比べて忍容性も良好であった。これらの有望な結果から、現在、肝細胞がんの初回化学療法例を対象として、ベバシズマブとアテゾリズマブの併用療法とソラフェニブを比較した第III相試験(NCT03434379)が進行中である。レンバチニブとペムブロリズマブの併用療法は、さまざまながん腫において有効性が期待され開発が進行中である。腎細胞がんではBreakthrough TherapyとしてFDAでも取り上げられており、肝細胞がんに対しても期待されて、第Ib試験が行われた。第I相パートにおいて、6例の患者で投与量規制毒性がないことを確認し、拡大コホートで、初回化学療法の患者24例に投与された。主な有害事象は食欲減退、高血圧であった。最良効果判定にて、増悪と判定された例はなく、ほとんどすべての症例で縮小傾向であった。また、多くの症例で、奏効が長期間続いており、いわゆる“durable response”も認められた。このように、これまでの標準治療であるソラフェニブでは、延命効果は得られるが、なかなか腫瘍縮小効果が得られないと言っていた時代から、約半数の症例で縮小が期待できる時代に突入した。今後の肝細胞がんの化学療法は、これらのVEGF阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が中心に開発が進んでいくことが予測されている。胆道がん進行胆道がんに対する1次化学療法のゲムシタビン+シスプラチン併用療法(GC)とゲムシタビン+S-1併用療法(GS)を比較した第III相試験(JCOG1113)がPoster Discussionで日本から報告された。生存期間(中央値)は、GC療法13.4ヵ月、GS療法15.1ヵ月(ハザード比0.945、95%CI:0.777~1.149、p=0.0459 非劣性)と非劣性が示され、胆道がんの初回化学療法の1つのoptionとして位置付けられた。そのほか、胆道がんの初回化学療法例を対象として、GC+ナブパクリタキセルとGC療法を比較する第III相試験がSWOGで進行中であり、今後の有望な併用療法として注目されていた。膵がん膵がん術後の補助療法として、modified FOLFIRINOXとGEMを比較した第III相試験、切除可能膵がんとBorderline resectable(切除可能境界)膵がん患者における術前化学療法と術前化学放射線療法の有用性を検討した第III相試験、転移性膵がんの1次治療としてFOLFIRINOXを増悪まで継続するか、FOLFIRINOX後5-FU+ロイコボリンの維持療法に移行するか、ゲムシタビンとFOLFIRIの逐次治療のどれが良いかを検討するランダム化第II相試験の3演題がOral Presentationとして報告された。術後補助療法としては、海外では、ゲムシタビンが標準治療として行われている。今回は、R0切除が行われた膵がん切除後の患者を対象として、modified FOLFIRINOX(イリノテカンの投与量を150mg/m2に減量したレジメン)とゲムシタビンを比較した第III相試験の結果が報告された。主要評価項目である無病生存期間(中央値)は、modified FOLFIRINOX群で21.6ヵ月、ゲムシタビン群で12.8ヵ月(ハザード比0.58、95%CI:0.46~0.73、p<0.0001)であり、有意に良好な結果が示された。また、生存期間(中央値)もmodified FOLFIRINOX群で54.4ヵ月とゲムシタビン群で35.0ヵ月(ハザード比0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.003)であり、有意に良好な結果であった。有害事象に関して、下痢、末梢神経障害、疲労、嘔吐、口内炎、手足症候群やG-CSFの使用率はmodified FOLFIRINOX群で高率に認められていたが、忍容性はあり、十分に管理可能であった。したがって、全身状態の良好な膵がん切除後の患者に対する補助療法として、modified FOLFIRINOXは標準治療として位置付けられるであろうと報告された。では、日本でも術後補助療法はmodified FOLFIRINOXが標準治療になるだろうか? 日本では、術後補助療法として、S-1とゲムシタビンを比較した第III相試験が行われており、S-1群で、有意に良好な無再発生存期間(中央値:S-1 22.9ヵ月、ゲムシタビン11.3ヵ月、ハザード比0.60、95%CI:0.47~0.76、p<0.0001)と生存期間(中央値:S-1 46.5ヵ月、ゲムシタビン25.5ヵ月、ハザード比0.57、95%CI:0.44~0.72、p<0.0001)が報告されている。S-1単剤でもmodified FOLFIRINOXと同様の成績が得られていること、有害事象はS-1が良好であることを考慮すると、日本において標準的な補助療法がmodified FOLFIRINOXにすぐに置き換わることはないと思われる。しかし、今後、切除不能膵がんにしか適応がないFOLFIRINOXを切除後の補助療法として使用できるように試みることは必要かもしれない。切除可能膵がんとBorderline resectable膵がん患者における術前化学療法と術前化学放射線療法の有用性を検討した第III相試験(PREOPANC)が報告された。切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんが約半数ずつ含まれるような対象に対して、まず切除を行い、術後補助化学療法としてゲムシタビン6サイクルを行う群(immediate surgery群)127例と、術前にゲムシタビンを2回投与後、ゲムシタビン併用放射線療法(ゲムシタビン1,000mg/m2にて3投1休、放射線36Gy/15 fraction)を行い、再度ゲムシタビンを2回投与して切除し、術後に補助化学療法としてゲムシタビンを4サイクル行う群(術前療法群)119例を比較した第III相試験である。切除割合は、それぞれ72%と60%であり、immediate surgery群でやや高率であったが、R0切除割合は、それぞれ31%と63%であり、術前療法群で有意に高率であった(p<0.001)。無病生存期間、遠隔転移再発までの期間、局所再発までの期間も、術前療法群で良好であった。生存期間はまだpreliminaryな結果ではあるが、それぞれ13.7ヵ月と17.1ヵ月であり、ハザード比0.74、p=0.074と術前療法群で良好な傾向が示されており、最終解析が期待される結果であった。ただし、本試験では、切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんが混在した試験であり、評価が難しい。Borderline resectable膵がんに対しては、すでに第II/III相試験の結果、術前治療の有用性も報告されているが(Jang JY, et al. Ann Surg. 2018;215-222.)、切除可能膵がんにおける術前治療の有用性は明らかにされていない。今後、切除可能膵がんとBorderline resectable膵がんのそれぞれのコホートでの解析も行われると思われるが、切除可能膵がんにおける術前治療の有用性に関して十分な回答が得られない可能性もある。転移性膵がんの1次治療としてFOLFIRINOX 12サイクル後、経過観察する群(FOLFIRINOX群)、FOLFIRINOX 8サイクル後5-FU+ロイコボリンの維持療法に移行し、増悪時にFOLFIRINOXを再開する群(FOLFIRINOX/5-FU群)、ゲムシタビンとFOLFIRI3を2ヵ月ごとに交互に投与する群(FOLFIRI3/Gem群)のいずれが良いかを検討するランダム化第II相試験(PANOPTIMOX)がOral Presentationとして報告された。この試験のコンセプトは、大腸がんでのオキサリプラチンの“stop and go”の投与方法が膵がんでも示すことができるかどうかを検討したものである。主要評価項目である6ヵ月の無増悪生存割合は、FOLFIRINOX群47.1%、FOLFIRINOX/5-FU群44.0%、FOLFIRI3/Gem群34.1%で、FOLFIRINOX群とFOLFIRINOX/5-FU群は同等であり、FOLFIRI3/Gem群は有効性が低いことが示された。また、Grade3~4の末梢神経障害は、FOLFIRINOX群で10.2%に対して、FOLFIRINOX/5-FU群で18.7%と高率であったが、結果的にFOLFIRINOX/5-FU群でオキサリプラチンの投与量が増え、治療強度が強くなったためと考察されている。進行膵がんの1次治療として、FOLFIRINOXによる導入化学療法を4ヵ月行い、5-FU+ロイコボリンの維持療法を行うことは、実施可能で有効な可能性が示され、今後、FOLFIRINOXとFOLFIRINOX+5-FU+ロイコボリンの維持療法を比較する第III相比較試験が必要であると結論付けられた。この試験の結果、FOLFIRINOXにおけるオキサリプラチンの“stop and go”の投与方法は、今後、検討されるべき課題の1つだと思われた。膵神経内分泌腫瘍テモゾロマイドとカペシタビンの併用療法(CAPTEM)とテモゾロマイド単独(TEM)を比較したランダム化比較第II相試験が報告された。これまでに、CAPTEMは30~70%と非常に高い奏効割合が報告され、注目されてきたレジメンである。標準治療であるエベロリムスやスニチニブ以外の化学療法歴がなく、12ヵ月以内に進行が確認された切除不能膵神経内分泌腫瘍の患者142例が対象として行われた。主要評価項目である無増悪生存期間(中央値)は、CAPTEM群22.7ヵ月、TEM群で14.4ヵ月、ハザード比0.58(95%CI:0.36~0.93)、p値も0.023と有意に良好であった。生存期間もCAPTEM群で有意に良好であった(中央値:CAPTEM群 未到達、TEM群38.0ヵ月、ハザード比0.41(95%CI:0.21~0.82、p=0.012)。この試験は、有望視されていたCAPTEM療法が、ランダム化比較試験において、無増悪生存期間の延長のみならず、生存期間の延長まで示されたものであり、今後、膵神経内分泌腫瘍の治療の重要な選択肢の1つとなるものと思われる。まとめASCO2018では、肝細胞がんの2次化学療法におけるラムシルマブ、膵がん切除後の補助療法としてのmodified FOLFIRINOXが、今後、標準治療として位置付けられてくることが予測される。また、そのほかにも有望な治療法の開発も進行中であり、肝胆膵領域の化学療法の開発も活気づいている。

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膵がんアジュバントにおけるmFOLFIRINOXの可能性(PRODIGE 24/CCTG PA.6)/ASCO2018

 切除後の膵臓がんでは、術後補助化学療法を行ったにもかかわらず、7割の患者が2年以内に再発するとされる。そのため、より良好な成績の術後補助化学療法が求められている。この術後化学療法として、フルオロウラシルのボーラス投与を省いたmodified FOLFIRINOX(mFOLFIRINOX)療法とゲムシタビン単剤療法を比較した第III相試験PRODIGE 24/CCTG PA.6が行われ、その結果をフランス・Institut de Cancérologie de LorraineのThierry Conroy氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で発表した。 試験の登録患者はR0、R1切除施行、術後12週間以内の腫瘍マーカーが180U/mL未満で化学療法、放射線療法の治療歴のないPS 0~1の膵がん患者。患者は、mFOLFIRINOX(オキサリプラチン85mg/m2、レボホリナート200mg/m2、イリノテカン180mg/m2、フルオロウラシル2,400mg/m246時間持続投与)を2週間ごと最大12サイクル施行したmFOLFIRINOX群と、ゲムシタビン1,000mg/m2を3または4週間ごとを最大6サイクル施行するゲムシタビン群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は無病生存期間(DFS)、副次評価項目は毒性、全生存期間(OS)、3年時点のがん特異的生存率(SS)、無転移生存期間(MFS)とした。 2012年4月~2016年10月に493例が登録され、mFOLFIRINOX群は247例、ゲムシタビン群は246例であった。追跡期間中央値は33.6ヵ月。 DFS中央値は、mFOLFIRINOX群が21.6ヵ月(17.7~27.6)、ゲムシタビン群が12.8ヵ月(11.7~15.2ヵ月)と、mFOLFIRINOX群で有意に延長した(HR:0.58、95%CI:0.46~0.73、p

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ASCO2018レポート 消化器がん

レポーター紹介本年度の米国臨床腫瘍学会年次総会が、2018年6月1日~5日まで例年どおり米国シカゴで開催された。消化器がん領域における注目演題についてレポートする。とくに胃がん領域においては、本邦より2人もの演者がoralで発表されており、日本人として大変誇らしく感じた。JACCRO GC-07 trial本邦の実臨床に最もインパクトがあった演題として、pStageIII胃がんにおけるドセタキセル+S-1(DS)併用療法のS-1療法に対する優越性が証明されたJACCRO GC-07 trialをまずは報告する。本邦では、pStageIII胃がんに対する術後補助化学療法として、S-1療法1年またはCapeOX療法6ヵ月を行うことが標準治療として位置付けられている。しかしながら、ACTS-GC試験のサブグループ解析では、手術単独群に対するS-1療法群の全生存期間におけるHR(ハザード比)がpStageIIIAで0.67、StageIIIBで0.86と報告されており、いずれも効果が不十分と考えられてきた。そこで、根治切除(胃切除+D2郭清)を行ったpStageIII胃腺がんを対象として、S-1療法に対するDS療法の優越性を検証したJACCRO GC-07 trialが行われた。主要評価項目は3年無再発生存(RFS)であり、S-1療法群の3年RFSを62%、HRを0.78とし、両側検定α=5%、検出力80%を確保するために、必要な症例数は1,100例と算出された。2回目の中間解析において(登録患者915例、イベント数216)、3年RFSがS-1療法群49.5%vs.DS療法群65.9%(HR=0.632、p=0.007)と、DS療法群で有意に良好であったことから、2017年9月に効果安全評価委員会において有効中止の勧告がなされた。登録された両群の患者背景には明らかな差が認められず、また明らかな交互作用は観察されなかった。再発部位は、リンパ節、腹膜、血行性転移いずれもDS療法群で少ない傾向であった。有害事象に関しては、白血球減少、好中球減少、発熱性好中球減少症がDS療法で多かったもののマネージメントは十分可能な範囲であった。演者らは、本試験の結果をもって、根治切除後のpStageIII胃がんに対して、DS療法は新たな術後補助療法の標準治療として推奨されると結論付けた。会場では、S-1療法群の成績が従来の本邦からの報告よりやや悪いことが指摘されていた。個人的には、本邦で行われた良質な第III相試験であること、昨年公表された欧州での第III相試験でFLOT療法(DTX+5FU+L-OHP)の有効性が示されていること、エビデンスレベルという点からも、術後DS療法は標準治療として位置付けられると考えられ、今後は実地臨床にも広く用いられることになるだろう。また、用量強度やOSのupdate解析などの報告にも注目したい。KEYNOTE-061試験現在、本邦では胃がん領域においても2017年9月から免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブが実地臨床で用いられている。また、米国においては、ペムブロリズマブが既治療の胃がんに対してFDAで承認を受けている。本試験は、切除不能進行再発胃がん/食道胃接合部がんにおける2次化学療法として、ペムブロリズマブ療法とパクリタキセル療法をHead-to-Headで比較した第III相試験として実施された。当初は、PD-L1発現の有無にかかわらず患者が登録されたが、登録途中でPD-L1陽性(CPS≧1)のみを登録することに変更となった(CPS:combined positive score、PD-L1陽性の細胞数[腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージ]/全生存細胞数×100)。主要評価項目は、PD-L1陽性例におけるOSとPFSとし、試験全体の片側α=0.025、OSにおける優越性を示すにはp<0.0135を達成する必要がある統計設計で実施された。登録された患者背景に両群で差は認めなかった。PD-L1陽性例における生存期間中央値(MST)は、ペムブロリズマブ療法9.1ヵ月vs.パクリタキセル療法8.3ヵ月、HR 0.82、片側p=0.042であり、両群で有意差はなかった。ただし、解析時点でペムブロリズマブ群では15例が投与継続(パクリタキセル群は0例)されており、実際に12ヵ月生存割合は39.8%vs.27.1%、18ヵ月生存割合は25.7%vs.14.8%とペムブロリズマブ群で長期生存例が多かった。PD-L1発現別の解析では、CPSが高いほどペムブロリズマブの効果が高まることが示された。また、MSI-High例(全体の5%)では、ペムブロリズマブ療法群でOS、奏効割合がともに良好であった(OSは未達、奏効割合46.7%)。主要評価項目であるPD-L1陽性例におけるOSにおいて、統計学的有意差は示せない結果となった。ただし、今後の進行胃がんの化学療法を考えるうえでは、非常に重要かつ示唆に富む結果が得られたと個人的に感じている。具体的には、先のATTRACTION-2試験(ニボルマブとプラセボを比較した、胃がんにおけるSalvage lineの第III相試験)では、PD-L1発現の有無ではニボルマブの効果予測は困難であったが、CPSというPD-L1陽性の定義を用いると免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ができるかもしれない点や、既報と同様にやはりMSI-Hでは胃がんであっても高い奏効割合、治療効果が示される点などである。ディスカッサントからも指摘があったように、今後は、免疫チェックポイント阻害薬同士の併用療法や化学療法との併用療法などの結果が注目され、胃がん化学療法の進歩に期待したいところである。なお、本結果は発表同日にLancet誌に掲載され、インパクトあふれる発表であった。PRODIGE 24/CCTG PA.6試験膵がんの術後補助化学療法は、従来はゲムシタビン療法が標準治療として位置付けられていたが、近年、本邦で実施されたJASPAC-01試験の結果から本邦ではS-1療法が、欧米ではゲムシタビン+カペシタビン療法が確立された。また、遠隔転移を有する膵がんにおいては、FOLFIRINOX療法(5-FU+LV+イリノテカン+L-OHP)が標準治療として用いられている。そこで、切除後膵がんに対する術後補助療法としてのゲムシタビン療法に対するFOLFIRINOX療法の優越性を検証する第III相試験が計画された。本試験で用いられているFOLFIRINOX療法は、毒性の点からmodified FOLFIRINOX療法(mFFX、5-FU 2,400mg/m2+ロイコボリン400mg/m2+イリノテカン180mg/m2+オキサリプラチン85mg/m2、2週ごと、12サイクル)が採用された。主要評価項目は無病生存(DFS)期間として、3年DFS率のHRを0.74、両側α=0.05、検出力80%として必要な症例数は490例と算出された。なお、開始後30例でGrade3以上の下痢を20%に認めたため、以降はイリノテカンの用量が150mg/m2に変更されている。2012年4月~2016年10月までに493例が登録され、2018年2月に効果安全評価委員会において早期結果公表が勧告されたため、今回、データが発表された。登録された患者背景では、リンパ管腫瘍塞栓のみ群間差を認めたがその他は両群に有意な差は認めなかった。DFS期間の中央値は、mFFX療法群21.6ヵ月、ゲムシタビン療法群12.8ヵ月、HR 0.58(p<0.0001)であり、mFFXで有意に良好であった。OSの中央値は、mFFX療法群54.4ヵ月、ゲムシタビン療法群35.0ヵ月、HR 0.64(p=0.003)であった。有害事象として、好中球減少、発熱性好中球減少に差はなかったが、mFFX療法群でG-SCF使用の割合が有意に高かった。また、非血液毒性として、下痢、末梢性感覚ニューロパチー、疲労、嘔吐、口内炎がmFFX群で有意に高かった。以上から、演者らは、mFFX療法は、毒性が増すものの、全身状態が良好な患者における欧米における標準治療と結論付けている。本邦で行われたという点においては、JASPAC-01試験の結果から、毒性の点から、S-1療法は本邦における標準治療としての位置付けは揺るがないだろう。しかしながら、JASPAC-01試験、本試験ともに大規模第III相試験から得られた結果という点では、同等のエビデンスとも考えられ、すでに転移性の膵がんにおいては、FOLFIRINOX療法は実地診療で行われている。とくに、本試験のサブグループ解析では、mFFX療法でR1切除、N1切除の成績が良好であったことから、予後不良な症例にはmFFXは期待できるのかもしれない。

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胃がん術後化療、S-1+ドセタキセルがプラクティス変える?(JACCRO GC-07)/ASCO2018

 Stage II/IIIの治癒切除胃がんに対する標準治療として、本邦ではS-1による術後補助化学療法が用いられるが、Stage IIIにおけるアウトカムは十分とはいえない。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で、名古屋大学医学部附属病院の小寺 泰弘氏が、Stage III の上記患者に対するS-1/ドセタキセル併用療法とS-1単独療法を比較したJACCRO GC-07(START-2)試験の結果を発表した。S-1/ドセタキセル併用の術後補助化学療法は安全で管理可能な治療法 同試験は、本邦の138施設が参加した第III相ランダム化比較試験。対象はD2リンパ節切除症例のうちR0手術後のStage III治癒切除胃がん患者で、施設、Stage(IIIA、IIIB、またはIIIC)および組織型(分化または未分化)によって層別化され、S-1/ドセタキセル併用療法群(併用群)とS-1単独療法群(対照群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、併用群における3年無再発生存期間(RFS)の7%増加(ハザード比[HR]:0.78、2-sidedα=0.05、β=0.2)で、その検出に必要な症例数は1,100例とされた。副次評価項目は、全生存期間(OS)、治療成功期間(TTF)、および安全性であった。 両群のレジメンは以下のとおり。・S-1/ドセタキセル併用群 サイクル1(3週間):S-1(80mg/m2)を1日2回、14日間連続投与し、7日間休薬 サイクル2~7(3週間ずつ):ドセタキセル(40mg/m2)を各サイクル初日に投与 し、S-1(80mg/m2)を1日2回、14日間連続投与し、7日間休薬 サイクル8以降(6週間ずつ):S-1(80mg/m2)を1日2回、28日間連日投与し、 14日間休薬 → 手術1年後まで繰り返す・S-1 単独療法群 S-1(80mg/m2)を1日2回、28日間連続投与し、14日間休薬を1サイクル (6週間)として手術1年後まで繰り返す 2017年4月に実施された、あらかじめ計画されていた2回目の中間解析の時点で、S-1/ドセタキセル併用群456例、対照群459例が本試験に組み入れられた。中間解析の結果、S-1/ドセタキセル併用群の3年RFSは対照群と比較して有意に良好であった(HR:0.632、95%信頼区間[CI]:0.400~0.998、p=0.0007)。そのため、独立の効果安全性評価委員会により、試験の有効中止が勧告された。S-1/ドセタキセル併用群では対照群と比較して、血行性、リンパ性および播種性を含むすべてのタイプで再発を抑制した。 Grade3以上の有害事象は、白血球減少症と好中球減少症、発熱性好中球減少症について併用群で頻度が高かったが、全体として、S-1/ドセタキセル併用の術後補助化学療法は安全で管理可能な治療法といえる。※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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StageIII大腸がんの術後補助化学療法、短縮は可能か?/NEJM

 StageIII大腸がん患者において、FOLFOX療法またはCAPOX療法による術後補助化学療法の3ヵ月投与は、全体集団では6ヵ月投与に対する非劣性が確認されなかったものの、サブグループ解析の結果、CAPOX療法を受けた、とくに低リスク症例において、3ヵ月投与は6ヵ月投与と同程度に有効であることが示された。米国・メイヨー・クリニックのAxel Grothery氏らが、StageIII大腸がん患者を対象とした術後補助化学療法の無作為化第III相試験6件を前向きに統合解析する、International Duration Evaluation of Adjuvant Therapy(IDEA)collaborationの結果を報告した。2004年以降、StageIII大腸がんに対する術後補助化学療法は、オキサリプラチンとフルオロピリミジン系薬を6ヵ月間併用するレジメンが標準治療となっている。しかし、オキサリプラチンは神経毒性の蓄積と関連があるため、治療期間の短縮による毒性や医療費の軽減が期待されていた。NEJM誌2018年3月29日号掲載の報告。6試験を統合し術後補助化学療法の期間短縮について検討 研究グループは、FOLFOX療法(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン)、またはCAPOX療法(カペシタビン、オキサリプラチン)による術後補助化学療法の、6ヵ月投与に対する3ヵ月投与の非劣性を検証する目的で、同時に行った6件の無作為化第III相試験について、事前に計画された前向き統合解析を実施した。 6件の無作為化第III相試験の主要評価項目は無病生存期間(DFS)であり、本統合解析では3年DFSのハザード比(HR)の両側95%信頼区間(CI)の上限が1.12を超えない場合に、3ヵ月群の6ヵ月群に対する非劣性が示されたとした。CAPOX療法では、3ヵ月群が6ヵ月群に対し非劣性 解析対象は計1万2,834例で、疾患の再発/死亡が3,263件報告された。 観察期間中央値41.8ヵ月において、3ヵ月群の6ヵ月群に対する非劣性は、全集団では確認されなかったが(HR:1.07、95%CI:1.00~1.15)、レジメン別ではCAPOX療法(HR:0.95、95%CI:0.85~1.06)で非劣性が示され、FOLFOX療法(HR:1.16、95%CI:1.06~1.26)では示されなかった。 両レジメンを統合した探索的解析の結果、低リスク患者(TNM分類でT1、T2、T3かつN1)において、3ヵ月群の6ヵ月群に対する非劣性が示された(3年DFS:83.1% vs.83.3%、HR:1.01、95%CI:0.90~1.12)。一方、高リスク患者(T4、N2、T4N2)においては、6ヵ月群が3ヵ月群より優れていた(3年DFS:64.4% vs.62.7%、HR:1.12、95%CI:1.03~1.23、優越性のp=0.01)。 なお、著者は、6件の臨床試験が異なる国のさまざまな集団で実施されており、多様性についての補正なしにサブグループ解析が実施されていることなどを、研究の限界として挙げている。

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卵巣がんアジュバント、腹腔内温熱化療で生存延長/NEJM

 StageIII上皮性卵巣がんの患者において、術前補助化学療法後の中間期腫瘍減量手術に、シスプラチンによる腹腔内温熱化学療法(HIPEC)を追加することで、無再発生存期間、全生存期間ともに延長することが示された。副作用の発現率も有意に高率とはならなかった。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのWillemien J.van Driel氏らが、245例を対象に行った第III相多施設共同非盲検無作為化試験の結果で、NEJM誌2018年1月18日号で発表した。新規診断の進行卵巣がんでは、通常、腫瘍減量手術と全身化学療法が行われる。中間期腫瘍減量手術+シスプラチンによるHIPEC 研究グループは、2007年4月~2016年4月に、オランダとベルギーの8施設で、StageIII上皮性卵巣がんで術前補助化学療法としてカルボプラチン(曲線下面積5~6mg/mL/分)とパクリタキセル(175mg/m2)の投与を3サイクル実施後、病勢が安定以上だった245例を登録して試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、中間期腫瘍減量手術に追加して、一方にはシスプラチン(100mg/m2)によるHIPECを行い、もう一方には行わなかった。 無作為化は、手術で肉眼的病変が消失すると判断された症例(完全腫瘍減量手術)や、術後に径10mm以下の腫瘍が1つ以上残存すると判断された症例(最善の腫瘍減量手術)を対象に、手術が実施可能とみなされた時点で行った。術後に、カルボプラチンとパクリタキセルの投与をさらに3サイクル行った。 主要評価項目は無再発生存期間。キー副次評価項目として、全生存期間と副作用プロファイルを評価した。再発・死亡リスクはHIPEC追加群で約0.66倍に intention-to-treat解析の結果、再発または死亡の発生は、非HIPEC(手術単独)群89%(123例中110例)に対し、HIPEC(手術+HIPEC)群は81%(122例中99例)だった(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.50~0.87、p=0.003)。 無再発生存期間の中央値は、手術単独群10.7ヵ月、手術+HIPEC群は14.2ヵ月だった。 中央値4.7年の追跡期間中、死亡の発生は手術単独群76例(62%)、手術+HIPEC群は61例(50%)だった(HR:0.67、95%CI:0.48~0.94、p=0.02)。全生存期間中央値は、手術単独群33.9ヵ月、手術+HIPEC群は45.7ヵ月だった。 なお、Grade3または4の有害事象の発現頻度は、手術単独群25%、手術+HIPEC群27%で同程度だった(p=0.76)。

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VATS後の肺合併症の長期的影響

 肺がんは、中国におけるがん死亡の主要な原因であるが、同国における肺葉切除術後の肺合併症(pulmonary complicaions、以下PC)の発生率は15~37%にのぼる。さらに、PCが肺がん患者の長期生存に及ぼす影響の研究は少ない。中国Peking University Hospitalでは、術後NSCLC患者のPC発症、重症肺合併症(major pulmonary complicaions、以下MPC)の長期的影響などの特定を試みた。Journal of Thoracic Disease誌2017年12月号の掲載。 Peking University People’s Hospitalで2007年1月~2015年12月に胸腔鏡補助下手術(video-assisted thoracic surgery、VATS)を受けたNSCLC患者コホートのPCを後ろ向きに分析した。・対象患者:術前StageI~IIのNSCLC 828例(年齢18歳以上、ECOG PS0~1、術前補助化学療法施行患者・放射線療法患者などは除外)・評価項目: Kaplan-Meier法を用いたPCの長期予後への影響の解析。多変量ロジスティック回帰分析を用いたMPCの危険因子の解析。 主な結果は以下のとおり。・828例中139例(16.8%)でPCを発症、そのうち66例(8%)がMPC(air leakの遷延、胸腔穿刺を要する胸水貯留、重症肺炎など)であった。・PC発症患者は非発症者に比べ、ドレナージ期間および入院期間が長く(ドレナージ期間:9日対5日、p<0.001、入院期間:12日対6日、p<0.001)、周術期死亡率高かった(4.3%対0.4%、p=0.001)。・MPC発症患者の無病生存期間(DFS)は非発症者に比べて短く、3年DFS率は68.2%対 78.7%、5年DFS率は44.7%対 70.3%であった(p=0.001)。・MPC発症患者の全生存期間(OS)は非発症者に比べて短く、3年OS率は81.8%対88.6%、5年OS率は66.6%対80.9%であった(p=0.023)。・MPCは肺がん患者の独立した予後因子であった。・MPCの独立危険因子は年齢(HR:1.05、p=0.007)、男性(HR:3.33、p=0.001)、およびASA(アメリカ麻酔学会)グレード(ASA2[HR:4.29、p=0.001]、ASA3[HR:6.84、p=0.002])であった。■参考Shaodong Wang, et a;. J Thorac Dis. 2017 Dec.

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サン・アントニオ2017レポート-1

レポーター紹介2017年SABCSは、12月5〜9日の5日間で開催された。新しい会場になってから2年目であり、以前の会場の一部は既に取り壊されていた。テキサスは初日から雨で寒い日が続いた。中日の夜には雪も降ったが、逆に翌日には晴天となった。天候の変化が著しく、それだけでも体調をくずす方がいそうである。今回は臨床的な話題としてはいろいろあったが、直ちに臨床を変えるような話題はほとんどなかったように思う。しかし愛知県がんセンターの岩田広治先生がPIとなって進行中の臨床試験NEOSの第1報があり、重要な知見を提供してくれた。術前内分泌療法に反応したHR+閉経後乳がんにおける術後化学療法の意義 −NEOS日本からの大規模な臨床試験(NEOS)の結果が岩田広治先生より報告された(第一報)。HR+閉経後乳がんに対して術前にANAを6ヵ月行い、PD(43例)には術後化学療法を、CR(16例)/PR(421例)/SD(400例)には術後化学療法施行群と非施行群を無作為化割付した。今回は両群を合わせた術前治療効果別の5年DFSが示され、CRで100%、PRで95%、SDで92%と予後良好であったのに対して、PDでは化学療法施行にも関わらず89%と低かった。PR/SDでは化学療法施行の有無別のDFSを知りたいところだが、その結果が出るのはまだ先になりそうである。しかし化学療法を施行しなくても、CR/PR/SDではかなり予後のよいことが予想される。さらに別報もあり、NEOSにおいて、針生検標本におけるオンコタイプDX(ODX)のリスクスコア(RS)と術前ANAの効果との関係が明らかとなった(n=294)。RS<18(低リスク)ではCR/PR54%、SD45%、PD1%であったのに対して、RS18~30(中間リスク)では42%、55%、4%であり、RS>31(高リスク)になると22%、61%、17%となりCR/PR率が著明に低下した。逆に高リスクとなるのはCR/PRの2%、SDの22%、PDの46%であり、AIの術前効果がODX検査適応選択や化学療法そのものの適応選択に大きな指標になることが示された。閉経後乳がんにおける術前内分泌療法は術後の化学療法を考えるうえで今後より重要なオプションとなろう。EBCTCGメタアナリシス−dose-dense化学療法の意義最初の話題は、EBCTCGのメタアナリシスで、術後補助化学療法において投与間隔の短縮が再発と乳がん死亡率を減少させる、というものである。Dose intensityの試験としては、2週対3週が12試験、逐次(3週)対同時(3週)が6試験、逐次(2週)対同時(3週)が6試験、が選択されていた。2週対3週では、2週の方がより再発と乳がん死亡率を減らしていた。逐次(3週)対同時(3週)、逐次(2週)対同時(3週)ともに逐次の方が再発と乳がん死亡率を減らしていた。これらはERの有無に関わらなかった。これらのことから、dose denseがよいと結論している。まだ論文化されていないため、どの臨床試験が選択されたのか不明である。この結果をもとに2週のdose denseを標準と考えるのは早計である。SABCS2014のレポートでまとめたが、FEC(600/60/600) 6サイクルを2週毎と3週毎で比較しても生存率にまったく差がない(Venturini M,et al. J Natl Cancer Inst. 2005; 97: 1724-1733.)ことが示されており、Paclitaxelも今では標準でない3週投与が、2週投与に対して比較されている。そもそも毎週投与が現在の標準であり、よりdose denseでG-CSFも使う必要がないことから、標準はあくまでAC(3週)-PTX(毎週)であろう。2週投与のdose-denseのメリットは投与期間の短縮のみであり、高額なG-CSFの使用が必須であったり、遅発性のニューモシスチス肺炎も含めた有害事象も増えることから、2週投与のdose-denseはあくまでオプションの1つに過ぎない。HER2-lowにおいてtrastuzumabは予後を改善しない−NSABP B-47NSABP B-47は、AC→wPTX 対 TCx6 +/-trastuzumabの比較試験であるが、HER2-lowにおけるtrastuzumabの意義について検討された。結果はtrastuzumabの有無で生存率にまったく差がなかったのであるが、面白かったのは本題でない背景で紹介された部分であった。NSABP B-31試験では、各施設でHER2陽性だが中央判定で陰性とされたサブセットにおいて、trastuzumab使用群の方がDFSが良好であったことである。N9831試験でも同様の傾向であった。HER2判定に関しては各施設の評価も大切にした方がよいということであり、HER2の状況がIHCで3+またはFISH陽性のいずれかなら、積極的にHER2標的剤は使用すべきということを示している。IHCとFISHの両者を測定していると時々いずれか陽性ということがあり、どちらか一方だけの検索では、HER標的剤の恩恵にあずかる方が一定数見逃されてしまうリスクがあろう。CDK4/6阻害剤ribociclibはPFSを改善する−MONALEESA-7MONALEESA-7はHR+HER2-閉経前乳がんにおけるribociclibの有用性を検証した第III相試験である。治療効果は本邦でようやく承認されたpalbociclibとほぼ同等であろうと思われる。TAMまたはAI+LHRHaにribociclibをon/offしたものであり、PFSでは有意にribociclib群で良好であった。TAM、AIとも効果は同等であった。血液毒性は好中球減少、貧血、血小板減少ともにribociclib群で多かった。非血液毒性はQT延長が6.9%(vs.1.2%)と多く、G3の倦怠感と下痢もribociclib群でわずかに多かった以外はほぼ同等であった。QOLは(EORTC QLQ-30)ribociclib群の方が有意に良好であった。3つのAI剤がそうであったように、今後複数のCDK4/6阻害剤の使い分けが問題になりそうである。化学療法中のLHRHaは卵巣機能保護に有効である−メタ解析化学療法における卵巣機能障害の問題は、近年妊孕性の面からとくに注目されている話題の1つである。化学療法中のLHRHaの卵巣保護効果について、今回は5つの臨床試験のプール解析(メタ解析)が報告された。主要評価項目は卵巣機能不全、副評価項目は無月経である。卵巣機能不全はLHRHa使用群と未使用群で14.1%対30.9%であり、明らかにLHRHa使用群で良好であった。2年での無月経率もそれぞれ18.2%対30.0%と同様であった。さらに妊娠率も10.3%対5.5%であったことより、LHRHaによる妊孕性温存の効果は明らかであると考えられる。LHRHa使用の有無での予後もみているが、ER+/-に関わらず、DFS、OSともにまったく差がなかった。したがって、化学療法を受ける予定で妊孕性温存を希望する方に対しては、LHRHaによる卵巣保護を十分に考慮するという立場は変わらない。TAM+OFSとEXE+OFSで予後は同等である−TEXT+SOFT結合試験TEXT+SOFT結合試験のデータがアップデートされた。閉経前HR+乳がんにおいて、TAM+OFSとEXE+OFSを比較したものである。初回はASCO2014で報告されたが、結果はその時と大きく変わっていない。8年のDFSはEXE+OFSで有意に良好であった(86.8% vs.82.8%、p=0.0006)。しかしOSではまったく差がなく、EXEの方が有害事象のために治療を中止する患者が多かった。このことからEXE+OFSはかなりのハイリスクに限られるべきであろう。絶対死亡数が少ないため、さらに経過観察される予定である。TAM+OFSはTAMと比較しわずかに予後を改善する−SOFT試験SOFT試験におけるTAM+OFSとTAMを比較したデータもアップデートされた。初回中間解析の結果はSABCS2014で報告した。やはり8年のDFSはTAM+OFSで有意に良好であった。8年のOSもHR0.67(0.48~0.92)とわずかにTAM+OFSが上回っていた。化学療法の有無でみてみると無し群ではまったく差がないが、有り群ではHR0.59(0.42~0.84)でTAM+OFSが良好であった。絶対差は4.3%と小さく、TAM+OFSの適応はやはり以前と変わらない。すなわち40歳未満あるいは40代前半で化学療法を行うようなハイリスクに対して、OFSの上乗せを提案するというスタンスでよいであろう。40代後半では、化学療法によりほぼ閉経状態となり、TAM単独でも問題ないだろう。鍼はAI関連関節症状に有効であるAI剤による関節痛は厄介な副作用であり、多くの閉経後乳がん患者が生活上の影響を受けている。鍼はAIによる関節痛を軽減する方法としての1つとして期待されており、本試験は真の鍼、偽の鍼(効果をおよぼさない部位)、何もしないグループの3群を比較したRCTである。6週間後の最も強い痛みの改善度は明らかに真の鍼群で高かった。6週間から24週での効果は一定していて、やはり真の鍼>偽の鍼>無しであった。他のQOL評価でも真の鍼で良好であった。有害事象としては真の鍼であざの割合が多かった(47%、いずれもGrade1)。非薬剤性のオプションとしてAI関連関節症状に鍼を積極的に活用する価値がありそうであるが、十分なトレーニングを受けた医療者が鍼を行う必要はあろう。

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BRCA1レベルに基づくNSCLCアジュバントは生存率を上昇させたか(SCAT)/WCLC2017

 Stage II~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)切除患者では、プラチナベースの術後補助化学療法が標準治療である。しかし、他レジメンとの直接比較研究はない。一方、BRCA1は、二本鎖DNA切断を修復する作用を有し、またその発現レベルにより予後および効果予測因子ともなる。SCAT研究は、BRCA1発現レベルに基づき個別化した術後補助化学療法が上記患者の生存率を改善するかを評価したSpanish Lung Cancer Cooperative Groupの試験。横浜市で開催された第18回世界肺癌会議(WCLC)において、スペイン・Alicante University HospitalのBartomeu Massuti氏が結果を発表した。 BRCA1低発現ではシスプラチン感受性を示し、BRCA1高発現ではシスプラチン耐性、タキサン感受性を示すといわれる。この研究では、完全切除したStage II~IIIAのNSCLC患者500例を、コントロール群(108例)と試験群(392例)に、無作為に割り付けた。コントロール群には標準治療のシスプラチン+ドセタキセル治療を、試験群はBRCA1発現レベルにより異なる化学療法治療を行った。BRCA1低発現患者にはシスプラチン+ゲムシタビン、BRCA1中程度発現患者にはシスプラチン+ドセタキセル、高BRCA1高発現患者にはドセタキセル単独治療を行った。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無病生存期間、毒性などであった。 追跡期間中央値53ヵ月後のコントロール群のOSは69.3ヵ月、試験群では82.4ヵ月(HR:0.946)、5年OSは54%と56%と両群で同等であった。両群のBRCA1発現によるサブ解析の結果、BRCA1低発現群において、シスプラチン+ゲムシタビンのOSは74ヵ月、シスプラチン+ドセタキセルは40.1ヵ月と、シスプラチン+ゲムシタビンで有意に良好(HR:0.622、p=0.005)であった。一方、BRCA1高発現において、ドセタキセル単独のOSは80.2ヵ月、シスプラチン+ドセタキセルは未到達(HR:1.289、p=0.436)と、レジメンによる差は示されなかった。 結果として、BRAC1発現レベルに基づいた化学療法による生存率の上昇は示されなかったものの、BRCA1はコントロール群における唯一の予後因子であった。また、ドセタキセル単独療法は他の療法と比べ、コンプライアンスが良好で(p<0.001)、減量も少なく(p<0.01)、がんによる死亡発生率も同等であった。Massuti氏は最後に、高BRCA1患者において、プラチナを用いないタキサン単独による術後補助療法は、プラチナの短期・長期毒性を回避できる可能性があると述べた。■参考SCAT試験(Clinical Trials.gov)WCLC2017プレスリリース

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HER2陰性乳がん術前化学療法後のカペシタビン術後補助療法は生存率を改善する-CREATE-X(JBCRG-04)(解説:矢形 寛 氏)-698

 これは、サン・アントニオ乳がんシンポジウム2015で報告された日韓合同第III相臨床試験の結果が論文化されたものである(サン・アントニオ2015 レポート)。本学会時には、あまり大きな話題として取り上げられなかったように思われる。それは過去のカペシタビン追加の臨床試験でその有効性が示されてこなかったことと、アジア人のみの報告だったからであろうか。今回正式に論文化されたことで、より注目を浴びてくる可能性はある。 そもそも過去の報告とは根本的に異なる試験であり、適格基準が異なる、トリプルネガティブ乳がんの割合が30%と高い、タキサンなどとの同時併用ではなく逐次投与である、カペシタビンの標準投与量が使われ、6から8サイクルと十分量の投与が行われている、といったことが挙げられる。この結果は今までの標準治療を変えるものである。  問題点は2つ挙げられる。1つは、中間解析の結果から早期に試験が終了となったことである。そのため短期に再発し生存率に関わりやすいサブタイプにおける生存率への影響をみている可能性が高く、やや遅れて再発してくるものは十分に評価しきれていないだろう。 もう1つは、今後術前化学療法の適応を再考しなければならないということである。術前から化学療法の適応と考えられる場合には、できるだけ術前化学療法を行って効果を判定しないことには、その後のカペシタビン使用の是非を決定できないことになる。各施設で十分な議論が必要である。 有害事象も多く、かなりの率で減量や中止となっている例がみられる点からも、やみくもに使うというよりは、ある程度適応を考えたほうがよいだろう。サブ解析をみても明らかなように、全般的に治療効果は一定していることから、より予後不良な群に対して使う価値がある。1つの提案として、術前化学療法の効果が低い(かなりの腫瘍が残存している)、リンパ節転移が残存している、もともと増殖の速い高悪性度乳がん (再発も早いだろう)の非pCR(ごく少量のみの残存は除く)では積極的に行ったほうがよいのではないか。■「カペシタビン」関連記事カペシタビンによる術後補助化学療法でHER2陰性乳がんの予後を改善/NEJM

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早期HER2+乳がん、術後補助療法にペルツズマブ追加が奏効/NEJM

 早期HER2陽性乳がん患者に対し、術後補助化学療法+トラスツズマブに加え、ペルツズマブ(商品名:パージェタ)を投与することで、3年無浸潤疾患生存率は有意に改善したことが報告された。とくにリンパ節陽性患者で、同生存率の改善が示された。ドイツ・GBG ForschungsのGunter von Minckwitz氏らAPHINITY研究グループが、43ヵ国549ヵ所の医療機関を通じて行ったプラセボ対照無作為化比較試験で明らかにしたもので、NEJM誌オンライン版2017年6月5日号で発表した。HER2陽性乳がん患者4,805例を対象に試験 Minckwitz氏らは、リンパ節陽性、またはハイリスク・リンパ節陰性で手術可能なHER2陽性の乳がん患者4,805例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、標準補助化学療法+トラスツズマブの1年間投与に加え、一方の群にはペルツズマブを(2,400例)、もう一方の群にはプラセボを(2,405例)それぞれ投与し、臨床アウトカムを比較した。研究グループが仮定した3年無浸潤疾患生存率は、ペルツズマブ群91.8%、プラセボ群89.2%だった。リンパ節陽性では3年無浸潤疾患生存が改善 追跡期間の中央値は、45.4ヵ月だった。被験者のうち、リンパ節陽性は63%、ホルモン受容体陰性は36%だった。 追跡期間中に再発が認められたのは、プラセボ群8.7%(210例)に対し、ペルツズマブ群は7.1%(171例)だった(ハザード比:0.81、95%信頼区間[CI]:0.66~1.00、p=0.045)。推定3年無浸潤疾患生存率は、プラセボ群が93.2%に対し、ペルツズマブ群は94.1%だった。 被験者のうちリンパ節陽性グループでは、3年無浸潤疾患生存率はプラセボ群が90.2%、ペルツズマブ群が92.0%だった(浸潤疾患発症ハザード比:0.77、95%CI:0.62~0.96、p=0.02)。これに対してリンパ節陰性グループの3年無浸潤疾患生存率は、プラセボ群が98.4%、ペルツズマブ群が97.5%だった(同ハザード比:1.13、同:0.68〜1.86、p=0.64)。 なお安全性については、心不全、心臓死、心機能障害は両群ともにまれだった。一方でGrade 3以上の下痢は、化学療法実施中の発生が大半で、ペルツズマブ群9.8%と、プラセボ群の3.7%に比べ頻度が高かった。

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カペシタビンによる術後補助化学療法でHER2陰性乳がんの予後を改善/NEJM

 標準的な術前補助化学療法を受け、病理検査で浸潤がんの遺残が確認されたヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)陰性乳がん患者において、標準的な術後治療にカペシタビンによる術後補助化学療法を加えると、無病生存(DFS)と全生存(OS)が改善することが、国立病院機構 大阪医療センターの増田 慎三氏らが実施したCREATE-X試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年6月1日号に掲載された。HER2陰性原発乳がんの術前補助化学療法の病理学的完全奏効(pCR)率は13~22%で、non-pCR例の再発リスクは20~30%とされ、これら遺残病変がみられるHER2陰性例への術後補助化学療法は確立されていない。カペシタビンはフルオロウラシルの経口プロドラッグで、消化器がんの術後補助化学療法や転移性乳がん(主に2次治療)の治療薬として用いられている。カペシタビンの術後補助化学療法を評価 本研究は、日韓の84施設(日本62施設、韓国22施設)参加の下で行われた、術後補助化学療法としてのカペシタビンの有効性と安全性を評価する非盲検無作為化第III相試験である(先端医療研究支援機構[ACRO]、JBCRG[Japan Breast Cancer Research Group]の助成による)。 対象は、年齢20~74歳、HER2陰性、全身状態(ECOG PS)0/1で、アントラサイクリン系薬、タキサン系薬あるいはこれら双方による術前補助化学療法を受け、病理検査でnon-pCRまたはリンパ節転移陽性のpCRと判定されたStage I~IIIB乳がんの女性であった。 被験者は、標準的な術後治療に加え、カペシタビン(1,250mg/m2、1日2回、1~14日)を投与する群または投与しない群(対照群)に無作為に割り付けられた。主要エンドポイントはDFS期間(割り付け時から再発、2次がんの発現、全死因死亡までの期間)、副次エンドポイントはOS期間などであった。 2007年2月~2012年7月に、910例(日本:606例、韓国:304例)が登録され、最大の解析対象集団(FAS)887例(カペシタビン群:443例、対照群:444例)について解析を行った。カペシタビンの3年DFS率は有意に良好 ベースラインの全体の年齢中央値は48歳(範囲:25~74)、約40%がStage IIIA/B、32.2%がトリプルネガティブ乳がん(ER陰性、PgR陰性、HER2陰性)で、95.3%がアントラサイクリン系薬とタキサン系薬(82.2%が逐次投与、13.1%が同時投与)による術前補助化学療法を受けていた。 事前に規定された中間解析(2015年3月)で主要エンドポイントに到達したため、本研究は早期終了となった。追跡期間中央値は3.6年だった。 最終解析(2016年7月)では、3年DFS率はカペシタビン群が82.8%、対照群は73.9%、5年DFS率はそれぞれ74.1%、67.6%であり、カペシタビン群が有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.53~0.92、p=0.01)。 また、3年OS率は、カペシタビン群が94.0%、対照群は88.9%、5年OS率はそれぞれ89.2%、83.6%であり、カペシタビン群が有意に優れた(HR:0.59、95%CI:0.39~0.90、p=0.01)。解析時に、両群ともOS期間中央値には未到達であった。術後カペシタビン治療の安全性プロフィール 事前に規定されたサブグループの解析では、DFS率、OS率とも、すべてのサブグループに一致してカペシタビン群にベネフィットが認められた。トリプルネガティブ乳がんでは、DFS率(69.8 vs.56.1%、HR:0.58、95%CI:0.39~0.87)およびOS率(78.8 vs.70.3%、HR:0.52、95%CI:0.30~0.90)が、いずれもカペシタビン群で有意に良好だった。ホルモン受容体陽性例では、いずれも有意な差を認めなかった。 カペシタビン群で最も頻度の高い有害事象は手足症候群で、325例(73.4%)に認められた。このうち、49例(11.1%)がGrade 3であった。カペシタビン群で頻度の高い血液毒性として、白血球減少、血小板減少、好中球減少、貧血が、非血液毒性は疲労、悪心、下痢、口内炎などがみられたが、有害事象の多くがGrade 1/2であった。重篤な有害事象は4例に発現したが、いずれも回復した。 著者は、「標準的な術前補助化学療法後の術後カペシタビン治療の安全性プロフィールは、人種によって異なるため注意を要するが、用量と投与スケジュールを適切に調節すれば欧米の患者にも適用は可能と推察される」としている。

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EGFR変異陽性肺がんの再発リスクを40%減、ゲフィチニブ補助療法/ASCO2017

 非小細胞肺がん(NSCLC)と診断された患者の20~25%は手術適応である。プラチナベースの術後補助化学療法は、Stage II~IIIA非小細胞肺がん(NSCLC)の患者のスタンダードとなっている。一方、EGFR-TKIは進行EGFR変異陽性NSCLC1次治療の標準である。しかし、EGFR-TKIによる術後補助化学療法については、過去のBR19やRADIANT試験からも利点は証明されていない。 EGFR変異陽性のNSCLC患者の術後補助療法として、化学療法をEGFR-TKIで代替できないか。そこでEGFR変異陽性NSCLCの術後補助療法において、ゲフィチニブと化学療法(ビノレルビン+シスプラチン)を比較する初めての無作為化第III相試験となるADJUVANT試験が行われた。中国Guangdong General HospitalのYi-Long Wu氏が、その結果を米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)にて発表した。 同試験の対象は、完全切除後のStage II~IIIA(TNM分類第7版N1-N2)のEGFR変異陽性NSCLC患者。登録された患者は、無作為にゲフィチニブ(250mg×1/日)24ヵ月間投与群と化学療法群(ビノレルビン25mg/m2を1日目と8日目に投与+シスプラチン75mg/m2を1日目に投与)3週ごと4サイクル投与群に、1:1に割り付けられた。主要評価項目は無病生存期間(DFS)。DFSの改善は40%以上とした。 結果、2011年9月19日~2014年4月24日に222例の患者が登録された(ゲフィチニブ群、化学療法群ともに111例)。治療期間の中央値は36.5ヵ月で、ゲフィチニブ群の投与期間は18ヵ月以上が最も多く67.9%、化学療法群は4サイクルが最も多く83.0%を占めた。 主要評価項目であるDFSは、ゲフィチニブ群で28.7ヵ月(24.9~32.5ヵ月)、化学療法群で18.0ヵ月(13.6~22.3ヵ月)と、ゲフィチニブ群で有意に長く(HR:0.60、95%CI:0.42~0.87、p=0.005)、その差は10.7ヵ月であった。3年DFS(3yDFS)はゲフィチニブ群の34.0%に対し、化学療法群は27.0%で、ゲフィチニブ群で有意に高かった(p=0.013)。全生存期間(OS)は未達成。 Grade3以上の有害事象の発現率は、ゲフィチニブ群で12.3%、化学療法群は48.3%と、ゲフィチニブ群で有意に少なかった(p<0.001)。健康関連QOLについては、Total FACT-L、LCSS、TOIの3種の評価ともゲフィチニブ群で有意に優れていた。 EGFR変異陽性のStage II~IIIA(N1-N2)NSCLC切除可能患者に対する、ゲフィチニブの術後補助療法は、これらの患者集団における重要な選択肢であると考えられるべきである。 DiscussantであるVU University Medical CenterのSuresh Senan氏は、「DFSの10.7ヵ月の延長は注目すべきである。今後は、どのような患者にベネフィットがもたらされるのかなど、より詳細に研究していくべきである。また、3yDFSの34%という結果は満足できるものではなく、対象症例などに注目してさらなる改善を図るべきであろう」と述べた。■参考 ADJUVANT試験(NCT01405079) BR19試験 RADIANT試験

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アテゾリズマブ 尿路上皮がんの1次治療に申請:シスプラチン不適患者に

 スイスRoche社は2017年1月9日、FDA(米国食品医薬品局)がアテゾリズマブの生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)と優先審査を受理したことを発表した。対象はシスプラチンによる化学療法の適用がない局所進行または転移性尿路上皮がんで、前治療歴なし(1次治療)、あるいは術前・術後補助化学療法12ヵ月以降で病勢進行した患者。 このアテゾリズマブに関するsBLAの提出はIMvigor210試験を基にしており、FDAは2017年4月30日までに結論を出す予定。 IMvigor210試験は単群の第II相試験で、局所進行または転移性尿路上皮がん患者に対するアテゾリズマブの安全性と効果をBD-L1発現にかかわらず評価している。対象患者はコホート1と2の2つのコホートに登録された。今回の申請の基となったのは、シスプラチン適用のない未治療(1次治療)または術前術後補助化学療法12ヵ月以降で病勢進行した患者を対象としたコホート1。 アテゾリズマブは2016年5月、FDAにより、既治療の進行膀胱がんに対して30年ぶりに認められた。尿路上皮がんは、腎盂、尿管、尿路にみられ、膀胱がんの90%を占めている。■参考Roche社:プレスリリースIMvigor210試験 コホート1(ClinicalTrials.gov)■「アテゾリズマブ」関連記事アテゾリズマブ、小細胞肺がんのOS、PFS改善(IMpower133)/NEJM

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第57回日本肺癌学会、福岡で開催

 第57回日本肺癌学会学術集会が、2016年12月19日~21日まで福岡市の福岡国際会議場、福岡サンパレス、福岡国際センターを会場として開催される。 学術集会の会長である九州大学大学院付属胸部疾患研究施設 教授 中西洋一氏は、第13回肺がん医療向上委員会にて当学術集会のハイライトを紹介。今回のテーマは「Innovation for the Next Stage- 肺癌にかかわるすべての人のために-」とし、学術の振興と国際化、チーム医療プログラムの充実、患者・家族向けプログラムの3点をポイントとした。演題数も1,500以上と過去最多で、シンポジウム18セッション、ワークショップ3セッション、教育演題18講演が予定され、Patient Advocate Programも用意されている。 12月20日のプレナリーセッションでは、プラチナ既治療非小細胞肺がんへのS-1とドセタキセルの比較第III相試験(EAST-LC)、T790M陽性の非小細胞肺がんでのオシメルチニブと化学療法の比較試験(AURA3)が発表され、同日のアンコールセッションでは、IB-IIIA期非小細胞肺がんの術後補助化学療法比較第III相試験(SLCG0401)、ALK陽性肺がんに対するアレクチニブとクリゾチニブの比較第III相試験(J-ALEX)、PD-L1高発現未治療非小細胞肺がんにおけるペムブロリズマブの第III相試験(KEYNOTE-024)の結果がレビューされる。 国際化の流れを受け、世界の肺癌診療をリードする海外演者26名を招聘。12月19日のシンポジウム2 「ALK戦線異常あり」ではAlice T. Shaw氏が、12月21日のシンポジウム17「トランスレーショナルリサーチ」では、Chung-Ming Tsai氏と現世界肺癌学会会長のDavid Carbone氏が、同日の招請講演では前世界肺癌学会会長のTony S. K. Mok氏が登壇する。 また、ニボルマブの薬価問題を受け、12月20日の特別企画「医療費とガイドライン」、同日の学術委員会シンポジウム「医療経済から観た適切な肺がん治療」が開催される。第57回日本肺癌学会学術集会のホームページはこちら

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早期乳がんの遺伝子診断で過剰な術後化療を回避/NEJM

 遺伝子診断の導入により、臨床リスクが高い乳がん患者の半数近くが、術後の化学療法は不要と判定され、毒性を伴う化学療法による過剰治療の回避につながる可能性があることが、ポルトガル・Champalimaud臨床センターのFatima Cardoso氏らが行ったMINDACT試験で示された。研究の成果はNEJM誌2016年8月25日号に掲載された。早期乳がん患者への術後補助療法の適用は、腫瘍および患者の特性に基づく臨床リスクで決定される。これらの特性を判定する診断ツールのアルゴリズムは、個々の患者の腫瘍の生物学的特性を考慮していないため、多くの患者が過剰治療となり、効果のない治療による毒性のリスクに曝されている可能性があるという。70遺伝子シグニチャー検査(MammaPrint)は、早期乳がん女性の臨床アウトカムの予測を改善することが示されている。遺伝子診断追加の臨床的有用性を無作為化試験で評価 MINDACT試験は、術後補助化学療法の対象の選択において、標準的な臨床病理学的判定基準に、70遺伝子シグニチャー検査を追加することの臨床的な有用性を前向きに評価する無作為化第III相試験(欧州委員会第6次フレームワークプログラムなどの助成による)。 2007~2011年に、欧州9ヵ国112施設で患者登録を行った。対象は、年齢18~70歳、組織学的に浸潤性の原発乳がん(Stage T1、T2、切除可能なT3)が確認され、リンパ節転移陰性の女性であった(2009年8月以降は、最大3個の腋窩リンパ節転移のある女性も可とした)。 ゲノムリスクは、70遺伝子シグニチャーで評価し、臨床リスクの評価には、改訂版Adjuvant! Onlineを用いた。 双方のリスクが低い患者は、術後補助化学療法が施行されなかったが、両リスクが高い患者には行われた。2つのリスクが一致しない患者は、いずれかのリスクに基づき、化学療法を施行する群と施行しない群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、無遠隔転移生存とし、初回遠隔転移の発現または死亡までの期間と定義した。臨床リスクは高いが、ゲノムリスクが低く、化学療法を行わなかった患者において、5年無遠隔転移生存率の95%信頼区間(CI)の下限値が92%(非劣性境界)を上回るかを検討した。術後補助化学療法なしでも、5年無遠隔転移リスク上昇せず 6,693例が登録された。年齢は、<35歳が1.8%、35~49歳が31.4%、50~70歳が65.9%、>70歳が0.8%であり、リンパ節転移陰性が79.0%、ホルモン受容体陽性が88.4%、HER2陰性は90.3%であった。 低臨床リスク/低ゲノムリスク群は2,745例(41.0%)、低臨床リスク/高ゲノムリスク群は592例(8.8%)、高臨床リスク/低ゲノムリスク群は1,550例(23.2%)、高臨床リスク/高ゲノムリスク群は1,806例(27.0%)であった。 高臨床リスク/低ゲノムリスク群の化学療法非施行例の5年無遠隔転移生存率は、94.7%(95%CI:92.5~96.2)であり、95%CI下限値≧92%を満たした。 同群の化学療法非施行例と施行例の5年無遠隔転移生存率の絶対差は1.5ポイントであり、非施行例のほうが低かったが、有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.50~1.21、p=0.27)。 エストロゲン受容体陽性、HER2陰性、リンパ節転移陰性、同陽性のサブグループの無遠隔転移生存率も、同様の結果であった。 著者は、「70遺伝子シグニチャーを加えることで、臨床リスクは高いがゲノムリスクは低い患者において、5年時の遠隔転移または死亡のリスクを高めることなく、毒性を伴う化学療法を回避できる可能性が示唆された」とまとめ、「これらの知見により、臨床リスクの高い乳がん女性の約46%は、化学療法を必要としない可能性がある」と指摘している。

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トリプルネガティブ乳がん、veliparib+CBDCA併用の術前化学療法でpCR向上/NEJM

 トリプルネガティブの乳がん患者では、術前補助化学療法として標準療法に加え、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬veliparib+カルボプラチンを併用することで、病理学的完全奏効率が向上することが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S. Rugo氏らが、多施設共同の適応的無作為化第II相試験「I-SPY2」で明らかにしたもので、NEJM誌2016年7月7日号で発表した。乳がんは、遺伝的・臨床的不均一性から有効な治療の特定が困難になっている。研究グループは、実験的試験で効果のあるがんサブタイプを見つけることを目的とした。被験者を10種のバイオマーカー標識に分類 試験は、腫瘍が直径2.5cm以上でステージIIまたはIIIの乳がんの女性を対象に、実験的レジメンにより治療アウトカムが向上する乳がんサブタイプについて調べるもので、現在も継続中である。 具体的には、乳がんをヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、ホルモン受容体、70の遺伝子アッセイにより8つのバイオマーカー・サブタイプに分類。そのうえで、あらかじめ定義したバイオマーカーの組み合わせで10種のバイオマーカー標識を作成し、標準治療と実験的レジメンを比較することとした。被験者は、標準療法よりも良好な成績のレジメンを受けられるよう、バイオマーカー・サブタイプ内で適応的無作為化を行った。 今回報告されている標準療法にveliparibとカルボプラチンを併用するレジメンは、HER2陰性腫瘍について検討され、3標識について評価が行われた。 主要評価項目は、病理学的な完全奏効で、治療中にMRIで腫瘍体積を測定して完全奏効を予測する形で評価。また、ベイズ確率で第III相試験での成功予測が高いと示されたレジメンについて、第II相から第III相へ進めると判定することとした。標準療法にveliparib+カルボプラチンで病理学的完全奏効が51% veliparib+カルボプラチンを投与した被験者は72例、対照群は44例だった。トリプルネガティブ(エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体・HER2が陰性など)の患者において、化学療法終了時点で病理学的完全奏効が予測された人の割合は、veliparib+カルボプラチン群が51%(95%ベイズ確率区間:36~66)だったのに対し、対照群では26%(同:9~43)だった。 また、トリプルネガティブ乳がんに関して、veliparib+カルボプラチンレジメン治療が第III相で成功する確率は88%だった。 なお、veliparib+カルボプラチン群の毒性は、対照群より高かった。

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膵がん切除後のS-1とゲムシタビンによる補助化学療法の有用性(解説:上村 直実 氏)-560

 膵がんは、最も予後の悪い悪性腫瘍の1つであり、手術可能な早期がんで発見され治癒切除術が施行された場合でも、その5年生存率は20%程度であるとされている。手術単独での再発率が高いため、治癒率を上げるために補助化学療法が必要となる。膵がん切除後の補助化学療法は、ゲムシタビンを使用したものが標準レジメンとされているが、今回、日本で胃がんや大腸がんに対する主要な経口抗がん剤であるS-1の有用性を検討するため、S-1とゲムシタビンとのRCT「JASPAC-01研究」の結果が報告された。 「JASPAC-01」は、日本人を対象に行われた無作為化非盲検多施設共同の第III相試験で、組織学的に確認された切除可能な浸潤性膵管がんで、かつ病理学的にStageI~III、肉眼的に完全切除され残存腫瘍が認められないと判定された385例を対象として、S-1群192例とゲムシタビン群193例に割り付けられた。主要評価項目である全生存期間では、5年生存率はゲムシタビン群24.4%(95%CI:18.6~30.8)に対し、S-1群は44.1%(95%CI:36.9~51.1)であり、ゲムシタビン群に対するS-1群の死亡ハザード比は0.57(同:0.44~0.72)であった。すなわち、S-1を用いた補助化学療法の死亡リスクがゲムシタビンに比べて40%以上も低下することが示されたのである。有害事象に関しては、Grade3または4の白血球減少症および好中球減少症、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加は、ゲムシタビン群でより高率に認められたが、S-1群で高率にみられたのは口内炎や下痢であった。 S-1は、日本で開発された経口抗がん剤であり、胃がんや大腸がんに対する化学療法の主要薬剤として頻用されているが、欧米とくに米国における臨床試験の際に有害事象発生率が高率であったことから、欧米では敬遠される傾向がある。今後、非アジア人の患者でも臨床的評価を行うべきであるという著者らの主張が通ることが期待される。

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日本人の膵がん術後補助化学療法、S-1 vs.GEM/Lancet

 日本人膵がん患者の切除後の補助化学療法は、S-1が標準治療となりうることが示された静岡県立静岡がんセンターの上坂克彦氏らによる「JASPAC-01」の結果が、Lancet誌オンライン版2016年6月2日号に掲載された。本検討においてゲムシタビンに比べS-1補助化学療法により死亡リスクが約4割低下することなどが示された。膵がん術後の補助化学療法はゲムシタビンが標準治療とされているが、今回の試験では、死亡リスクについてS-1のゲムシタビンに対する非劣性のみならず優越性も示された。385例の患者を対象に試験 「JASPAC-01」は、日本人を対象に行われた無作為化非盲検多施設共同のフェーズ3試験。2007年4月1日~2010年6月29日にかけて、日本国内33ヵ所の医療機関で、組織学的に確認された切除可能な浸潤性膵管がんで、病理学的にStageI~III、肉眼的に完全切除され顕微鏡による残存腫瘍が認められない20歳以上の患者385例を対象に行われた。 研究グループは切除後に被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはゲムシタビン(4週1サイクルとし1,000mg/m2を1、8、15日目に投与を6サイクル、193例)を、もう一方の群にはS-1(6週1サイクルとし体表面積に応じて40、50、60mg/回・1日2回を1~28日連続投与を4サイクル、192例)を、それぞれ投与した。 主要評価項目は、全生存期間。評価はper-protocol集団で、不適格患者および割り付け治療を受けなかった患者を除外して行った。また、S-1の非劣性が確認された場合、log-rank検定で全生存期間に関するS-1の優越性も検討することが事前規定のプロトコルとされていた。 全生存および無再発生存期間は、Kaplan-Meier法を用いて算出し、S-1のゲムシタビンに対する非劣性は、Cox比例ハザードモデルを用いて評価。死亡予想ハザード比(HR)は0.87で非劣性マージンは1.25(検出力80%:片側タイプ1エラー2.5%)とした。死亡に関するS-1群のゲムシタビン群に対するハザード比は0.57 無作為化を受けた被験者のうち、不適格3例、治療を受けなかった5例を除く、ゲムシタビン群190例、S-1群187例が解析対象となった。試験は2012年9月、独立データ・安全モニタリング委員会の勧告を受け、中間解析による有効性が事前に規定した早期終了基準に適合したため、すべての治療プロトコルが終わった時点で終了となった。 2016年1月15日までの追跡データを解析した結果、5年全生存率はゲムシタビン群24.4%(95%信頼区間[CI]:18.6~30.8)に対し、S-1群は44.1%(同:36.9~51.1)と高率で、死亡ハザード比は0.57(同:0.44~0.72)であった(非劣性に関するp<0.0001、優越性に関するp<0.0001)。 Grade3または4の白血球減少症、好中球減少症、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加は、ゲムシタビン群でより高率に認められた。一方でS-1群でより高率にみられたのは、口内炎、下痢であった。 今回の結果について著者は、「結果について、非アジア人の患者で評価を行うべきである」とまとめている。

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術後補助化学療法が有効なStageII大腸がんのバイオマーカー/NEJM

 StageII大腸がんのうち、腫瘍細胞にcaudal-type homeobox transcription factor 2(CDX2)の発現がみられない患者は再発リスクが高く、術後補助化学療法からベネフィットを得る可能性が高いことが、米国・コロンビア大学のPiero Dalerba氏らの検討で明らかとなった。高リスクStageII大腸がんの同定は、術後補助化学療法を要する患者の選択において重要とされる。マイクロアレイによる幹細胞や前駆細胞由来の多遺伝子発現解析が期待されているが、臨床での使用は困難だという。NEJM誌2016年1月21日号掲載の報告。臨床で使用可能なバイオマーカーを探索、検証 研究グループは、臨床で使用できるStageII/III大腸がんの予後を予測するバイオマーカーを確立するための検討を行った(National Comprehensive Cancer Networkなどの助成による)。 新たなバイオインフォマティクスのアプローチを用いて、遺伝子発現アレイで結腸上皮の分化のバイオマーカーを探索し、臨床での診断検査に使用可能かを基準に、候補遺伝子を順位付けした。 独立のレトロスペクティブなStageII/III大腸がん患者コホートのサブグループ解析を行い、最上位の候補遺伝子と無病生存(DFS、転移・再発のない生存)および術後補助療法のベネフィットとの関連を検証した。陰性例は再発リスクが高く、補助化学療法の効果が高い スクリーニング検査では、転写因子CDX2が最上位であった。2,115の腫瘍検体のうち87検体(4.1%)ではCDX2の発現を認めなかった。 探索データセットは466例で、そのうちCDX2陰性大腸がんが32例(6.9%)、陽性大腸がんは434例(93.1%)であった。5年DFS率は、陰性例が41%であり、陽性例の74%に比べ有意に不良であった(p<0.001)。このうち病理所見のある216例で多変量解析を行ったところ、CDX2陰性例は陽性よりも再発リスクが有意に高かった(再発のハザード比[HR]:3.44、95%信頼区間[CI]:1.60~7.38、p=0.002)。 検証データセットは314例で、CDX2蛋白陰性大腸がんが38例(12.1%)、陽性大腸がん患者は276例(87.9%)であった。5年DFS率は、陰性例が48%と、陽性例の71%に比し有意に不良であり(p<0.001)、全生存率にも有意差がみられた(33 vs. 59%、p<0.001)。多変量解析では、陰性例は陽性例よりも再発リスクが有意に高かった(HR:2.42、95%CI:1.36~4.29、p=0.003)。 この2つのサブグループのいずれにおいても、これらの知見は患者の年齢、性別、腫瘍のStageやGradeとは独立していた。 StageII大腸がん患者に限定した5年DFS率の解析を行ったところ、探索データセットではCDX2陰性例(15例)が49%と、陽性例(191例)の87%に比べ有意に低く(p=0.003)、検証データセットでは陰性例(15例)が51%であり、陽性例(106例)の80%に比し有意に低値であった(p=0.004)。 全患者コホートの統合データベースの解析では、5年DFS率はCDX2陰性StageII大腸がんで補助化学療法を受けた23例が91%と、補助化学療法を受けなかった25例の56%よりも高値を示した(p=0.006)。 著者は「CDX2発現の欠損により、術後補助化学療法からベネフィットが得られると考えられる高リスクのStageII大腸がん患者のサブグループが同定された」とまとめ、「通常は手術のみとされるStageII大腸がんのうち、CDX2陰性例には術後補助化学療法が治療選択肢となる可能性がある。本試験は探索的でレトロスペクティブな検討であるため、さらなる検証を要する」と指摘している。

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