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伏在静脈グラフト病変、DES vs.BMS/Lancet

 新規伏在静脈グラフト(SVG)病変にステントを留置した患者を12ヵ月間追跡した結果、薬剤溶出ステント(DES)とベアメタルステント(BMS)で、アウトカムに有意差はないことが確認された。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのEmmanouil S. Brilakis氏らが、新規SVG病変に対するDESとBMSを比較検証した無作為化二重盲検試験「DIVA試験」の結果を報告した。これまで、新規SVG病変に対するステント留置術において、BMSとDESの有効性を比較した研究はほとんどなかった。著者は、「今回の結果は、価格が低いBMSが、安全性や有効性を損なうことなくSVG病変に使用可能であることを示唆しており、米国のようなDESの価格が高い国では経済的に重要な意味がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年5月11日号掲載の報告。ステント留置が必要な新規SVG病変を有する患者を退役軍人施設で登録 研究グループは、25ヵ所の米国退役軍人施設において、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を必要とする1ヵ所以上の新規SVG病変(50~99%狭窄、SVG直径2.25~4.5mm)を有する18歳以上の患者を登録し、DES群またはBMS群に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化は、糖尿病の有無およびPCIを必要とする標的SVG病変の数(1ヵ所または2ヵ所以上)により各参加施設内で層別化して行われた。患者、委託医師、コーディネーター、アウトカム評価者は、割り付けに関して盲検化された。 主要評価項目は、標的血管不全(TVF)(心臓死、標的血管の心筋梗塞、標的血管血行再建術[TVR]の複合エンドポイントと定義)の12ヵ月の発生率で、intention-to-treat解析で検討した。標的血管不全の発生率、DES群17% vs.BMS群19%で有意差なし 2012年1月1日~2015年12月31日に、599例が無作為化され、同意取得が不適切であった2例を除く597例が解析対象となった。患者の平均年齢は68.6歳(SD 7.6)、595例(>99%)が男性であった。ベースラインの患者背景は、両群でほぼ類似していた。 12ヵ月後のTVF発生率は、DES群17%(51/292例)、BMS群19%(58/305例)であった(補正ハザード比:0.92、95%信頼区間[CI]:0.63~1.34、p=0.70)。主要評価項目の構成要素、重篤な有害事象、ステント血栓症の発生についても、両群間で有意差は確認されなかった。目標症例数762例に達する前に、試験への患者登録は中止された。 著者は研究の限界として、退役軍人施設の患者を対象とした試験であるため、ほとんどが男性であること、目標症例数に達する前に試験中止となったことなどを挙げている。

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FFRジャーナルClub 第9回

FFRジャーナルClubでは、FFRをより深く理解するために、最新の論文を読み、その解釈を議論していきます。第9回目の今回は、PCI手技中のバルーン拡張による冠動脈閉塞解除後の反応性充血が、薬剤による最大充血とほぼ同等の効果が得られることを、岐阜ハートセンターの川瀬 世史明先生が報告されましたので、その論文を読んでみたいと思います。第9回 古くて新しいバルーン拡張によるFFR測定ステント後のFFRは、ステントの圧着・拡張状態のみならず、同一血管内の残存病変の重症度を反映しており、その後の予後予測において有用な情報を与えてくれる。しかしステント後にプレッシャーワイヤーを挿入し、さらに最大充血を惹起する薬剤(アデノシン/ATP)を投与することは時間的・経済的な障壁となり、ステント後FFRはあまり計測されていないのが現状といえる。そこで、バルーン拡張により虚血を惹起し、その解除後の反応性充血状態によりFFRを計測する手法を用いることにより、容易にFFR計測が可能となると考え、その妥当性につき検討された。Kawase Y, et al. Postocclusional hyperemia for fractional flow reserve after percutaneous coronary intervention. Circ Cardiovasc Interv. 2017 Dec;10:e005674.対象は2016年3〜8月にFFR計測を行った102例のうち、急性冠症候群、CTO、左主幹部病変、ATPが使用できなかった症例(気管支喘息、徐脈のため)を除外した98症例98病変。プレッシャーワイヤーはOpsens社製OptoWireを用いた。その後のPCI手技においてはプレッシャーワイヤーをそのままregular wireとして用いた。IVUSガイド下に第2世代薬剤溶出ステントを留置し、良好な拡張が得られたことが確認された時点で、Post-PCI FFRを計測した。balloon occlusionによるFFR(FFRoccl)計測法としては、バルーンをステント内で12気圧60秒拡張した。バルーン拡張中の圧(wedge pressure)を、拡張30秒の時点で計測した。60秒にてバルーン拡張終了後、素早くバルーンをガイディングカテーテル内まで引き込み、カテ内を生食にてフラッシュし、ガイディングカテーテルを冠動脈入口部より外した状態でFFRocclを計測した。計測手技に要する時間、最大充血状態の持続時間も計測された。その後、塩酸パパベリン冠注によりFFRを計測(FFRpap)、さらにATP 150μg/min/kgの静注によりFFRを計測した(FFR-ATP)。計測に伴う副作用としては、塩酸パパベリンによるVT 2例(2%)、VF 1例(1%)、ATPによる房室ブロック2例(2%)を認めた。低血圧(大動脈平均圧60mmHg以下)は、塩酸パパベリンで5%、ATPで6%、バルーン閉塞で1%に認めた。それぞれの手法により計測されたFFR値は、お互い非常に良好な相関関係を認めた。画像を拡大する最大充血の持続時間は、FFRocclのほうが、FFRpapよりも長かった(70±22 vs.51±25sec、p<0.01)。ただし、得られる最大充血持続時間には多少のばらつきを認めた。画像を拡大する計測時の血行動態変化としては、塩酸パパベリン、ATPで有意に大動脈圧が低下したのに対して、バルーン閉塞は血圧の変動を認めなかった。心拍数は3手法とも有意な変動を認めなかった。FFRを用いた研究に関するよもやま話冠動脈に冠血流を一定に保つ自己調節能auto-regulationが存在すること、その調節の主体が抵抗血管(微小血管)に存在すること、冠血流を完全に遮断し虚血を生じると、その後虚血を補うよう血流の増加がみられること、その血流の増加は虚血時間が20秒以上となると最大となり、それ以上の虚血時間では充血状態の持続時間が長くなること、これら冠循環を理解するための基礎的事項はすべて1960年代を中心に基礎・動物実験が数多く行われ証明されてきた。その後Gouldにより冠血流予備能(Coronary Flow Reserve:CFR)の概念が提唱され、臨床での最大充血惹起が必要となったため、血流遮断の代替手段として薬物投与による手法が導入されてきた。バルーンにより血流遮断を生じれば、その後最大充血を惹起しうることは、当然の現象といえるのだが、実際にそれを記録するためには圧センサーの性能(ドリフトの問題)、プレッシャーワイヤーのワイヤーとしての性能、PTCAバルーンの扱いにくさ、術者の手技自体の問題など、多くの障害が存在し、その単純であるが確実な最大充血惹起の手法は行われることはほとんどなかった。今回PCIデバイス・手技の進歩に加え、プレッシャーワイヤーの大きな革新が生まれたことにより、この古くて新しい“バルーン拡張によるFFR計測”という手法が報告された。すなわち、圧計測が今まで圧トランスデューサーを用いていたのに対し、このOptoWireは最新の光センサーを用いている。これにより測定圧のドリフトが減少し、手技の最中に何度も着脱を繰り返しても、正確な計測が可能となった。またワイヤー自身の操作性も向上し、その意味でもPCI用のworkhorse wireとして使うことが可能となった点も大きい。計測時にワイヤーを入れ直す煩雑さがなくなり、手技中・手技後の計測を容易にした。今回の報告では、塩酸パパベリンやATP静注と比べて、薬剤投与による副作用が少なく、安全であることが示された。60秒の拡張を行うことにより、塩酸パパベリンと同等以上の充血持続時間が得られるため、圧引き抜き記録も可能と考えられる。ただしその持続時間には大きなばらつきがあり、引き抜き記録を行う際には注意が必要である。著者も考察内で述べているが、側副血行血流の存在が、バルーン拡張中の虚血状態に影響を及ぼしうるため、本研究結果にも影響しうる。冠動脈wedge pressureが計測されているが、18±11mmHgとやや高めの症例が含まれていることがうかがわれる。すなわち、ある程度の側副血流を受けている症例が含まれていると考えられる。wedge pressureなどの指標から、惹起される充血持続時間を推測することが可能となれば、より使いやすい方法論になると思われる。20年前プレッシャーワイヤーが導入された初期の時代にも、wedge pressureや拡張手技前後の圧測定のさまざまな研究が行われていたが、圧センサーの正確性の問題から実臨床での応用にはなかなかつながらなかった。しかし、ワイヤーの技術的革新がなされた今となっては、また多くの研究をリバイバルさせる意味があると思われる。文献検索を90年代までさかのぼるとヒントが見つかるかもしれない。

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PCI後のDAPT、6ヵ月 vs.12ヵ月以上/Lancet

 急性冠症候群に対する薬剤溶出ステント(DES)での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)において、6ヵ月投与群が12ヵ月以上投与群に対して、18ヵ月時点で評価した全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントの発生について非劣性であることが示された。一方で、心筋梗塞発症リスクは、6ヵ月投与群が約2.4倍高かった。韓国・成均館大学校のJoo-Yong Hahn氏らが、2,712例を対象に行った無作為化非劣性試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年3月9日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「DAPT投与は短期間が安全であるとの結論に達するには、厳しい結果が示された。過度の出血リスクがない急性冠症候群患者のPCI後のDAPT期間は、現行ガイドラインにのっとった12ヵ月以上が望ましいだろう」と述べている。18ヵ月時点の心血管イベントリスクを比較 研究グループは2012年9月5日~2015年12月31日に、韓国国内31ヵ所の医療機関を通じて、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞、ST上昇型心筋梗塞のいずれかが認められ、DESによるPCIを受けた患者2,712例について、非盲検無作為化非劣性試験を行った。急性冠症候群でPCI実施後のDAPT期間6ヵ月の群が、同じく12ヵ月以上の群に比べて非劣性かを評価した。 主要評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中のいずれかの複合エンドポイントとし、ITT解析で評価した。per protocol解析も行った。 副次評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の、主要評価項目に含まれた各イベントの発生、Academic Research Consortium(ARC)の定義に基づくdefinite/probableステント血栓症、BARC出血基準に基づくタイプ2~5の出血の発生だった。6ヵ月群の心筋梗塞リスクが2.41倍 被検者のうち、DAPTの6ヵ月投与群は1,357例、12ヵ月以上投与群は1,355例だった。P2Y12阻害薬としてクロピドグレルを用いたのは、6ヵ月群の1,082例(79.7%)、12ヵ月以上群の1,109例(81.8%)だった。 主要評価項目の発生は、6ヵ月群63例(累積イベント発生率:4.7%)、12ヵ月以上群56例(同:4.2%)で認められ、6ヵ月群の非劣性が示された(群間絶対リスク差:0.5%、片側上限値95%信頼区間[CI]:1.8%、事前規定の非劣性マージンは2.0%で非劣性のp=0.03)。 全死因死亡率は6ヵ月群が2.6%、12ヵ月以上群が2.9%と両群で同等だった(ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.57~1.42、p=0.90)。脳卒中発症率についても、それぞれ0.8%と0.9%であり、両群で同等だった(同:0.92、0.41~2.08、p=0.84)。 一方で心筋梗塞発症率については、6ヵ月群が1.8%に対し12ヵ月以上群が0.8%だった(HR:2.41、95%CI:1.15~5.05、p=0.02)。 ステント血栓症については、それぞれ1.1%と0.7%で、両群に有意差はなかった(p=0.32)。BARC出血基準2~5の出血発生頻度も、それぞれ2.7%、3.9%と有意差はなかった(p=0.09)。 per protocol解析の結果は、ITT解析の結果と類似していた。 著者は、「6ヵ月投与群の心筋梗塞リスクの増大と幅広い非劣性マージンによって、DAPTの短期間投与が安全であると結論付けることはできない」と述べている。

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新しいDESはXienceを超えられるか?(解説:上田恭敬氏)-787

 完全吸収型のポリマーで被覆されたシロリムス溶出性DES(MiStent; Micell Technologies, Durham, NC, USA)と非吸収性ポリマーで被覆されたエベロリムス溶出性DES(Xience; Abbott Vascular, Santa Clara, CA, USA)を直接比較した、non-inferiorityを示すためのall-comer無作為化比較試験であるDESSOLVE III試験の結果が報告された。 MiStentの特徴は、ポリマーが3ヵ月で完全消失するのに対して、結晶化された薬剤は9ヵ月間血管壁に残留して作用し続けることである。1,398症例が登録され、その59%が急性冠症候群症例であった。 エンドポイントは、12ヵ月時点でのDOCE(device-oriented composite endpoint)であり、心臓死、対象病変の心筋梗塞、標的病変血行再建術の複合エンドポイントで、MiStentで5.8%、Xienceで6.5%とnon-inferiorityが示された。複合エンドポイントに含まれる各イベント及びステント塞栓症についても、群間差を認めなかった。 6ヵ月後にOCTを施行した53症例のサブグループにおいて、新生内膜容積がXienceよりもMiStentで小さいことが示された。 以上より、12ヵ月時点での臨床成績において、Xienceに対するMiStentの非劣性が示された。また、OCTのサブグループ解析の結果から、より長期においてはMiStentの優位性が示されるかもと記載している。 Xience以後も多くの新しいDESが開発されてきたが、いずれもXienceに対して優位性を示すことはできず、今回のMiStentも同様の結果であった。しかし、ポリマーを早く消失させながらも、長期間に渡って薬剤を作用させる今回の新しい技術の実用性を示したことは、今後の発展のために進歩と言えるかもしれない。しかし、OCTによって示された結果である、Xience以上に新生内膜の増成を抑制することにどのような意味があるかは明らかでなく、留置1年以後の再狭窄の機序としてNeoatherosclerosisの重要性が指摘される中、MiStentの長期成績に優位性を期待するとすればポリマーが残存しないことの効果であり、ポリマーが残存しない他のDESとの違いは無いように思われる。何らかのブレークスルーが必要なのかもしれないが、科学技術の進歩に限界は無いと思うので、Xienceに対して明らかな優位性を示す新しいDESの登場を期待したい。

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薬剤溶出ステント 生分解性vs.耐久性/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けるあらゆる成人集団を対象とした大規模無作為化試験において、シロリムス溶出生分解性ポリマーステント(MiStent)は、エベロリムス溶出耐久性ポリマーステント(Xience)に対し、12ヵ月時点のデバイス指向の複合臨床エンドポイントに関して非劣性であることが示された。オランダ・アムステルダム・大学医療センターのRobbert J de Winter氏らが行った第III相多施設無作為化単盲検試験「DESSOLVE III」の結果で、Lancet誌オンライン版2017年12月1日号で発表された。MiStentは、現行使用されている非晶質シロリムス溶出耐久性ポリマーステントの限界を克服するために開発されたが、その臨床的効果を耐久性ポリマーステントと比較した、あらゆる成人集団を対象とした大規模な無作為化試験は行われていなかった。デバイス指向複合エンドポイントを比較 研究グループは、ドイツ、フランス、オランダ、ポーランドの20病院で、病変部へのPCIを受ける、参照血管径2.50~3.75mmの18歳以上のあらゆる患者を適格とし、被験者をMiStent留置群またはXience留置群に、1対1の割合で無作為に割り付けて追跡評価した。無作為化は、ウェブベースの中央ランダムブロック法ソフトウェアを介して、試験地の研究者によって実行された。 主要エンドポイントは、心臓死・標的血管の心筋梗塞・臨床的に確認された標的病変の血行再建術から成るデバイス指向複合エンドポイント(DOCE)の、術後12ヵ月時点の群間比較における非劣性とした。評価はintention to treat法にて行い、MiStent群のXience群に対する非劣性マージンを4.0%と定義した。安全性解析は全被験者を対象に行った。ステント塞栓症の発生率は両群で等しく低率 2015年3月20日~12月3日に1,398例(2,030病変)が無作為化を受けた。MiStent群には703例(1,037病変)が割り付けられ、そのうち697例が留置を受けた。Xience群には695例(993病変)が割り付けられ、そのうち690例が留置を受けた。 12ヵ月時点で、主要エンドポイントは、MiStent群40例(5.8%)、Xience群45例(6.5%)で発生した(絶対差:-0.8%[95%信頼区間[CI]:-3.3~1.8]、非劣性のp=0.0001)。 ステント留置に関連した合併症の報告は、MiStent群12例(1.7%)、Xience群10例(1.4%)であった。最短12ヵ月のフォローアップ中に、試験中断となった臨床的な有害事象はみられなかった。安全性の指標であるステント塞栓症の発生率は、群間で差は認められず両群とも低率であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「臨床において、MiStentを他のステントの代わりに用いるのは理にかなったことのようだ」とまとめている。

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まだBMSを使う理由があるか?(解説:上田恭敬氏)-769

 本試験では、安定狭心症も急性冠症候群も含めた75歳以上のPCI施行患者を対象として、まずDAPTの期間を1〜6ヵ月の間(short DAPT)で臨床的必要性に応じて決めた後に、PCIに使用するステントをDES(Synergy、Boston Scientific)またはBMS(Omega or Rebel、Boston Scientific)に無作為に割り付けた。患者に対しては、「SENIOR stent」の表記で統一することによって、いずれに割り付けられたかわからないようにした(single-blind)。 その結果、複合主要評価項目である1年間のMACCE(全死亡、心筋梗塞、血行再建術、脳卒中)は、12%対16%(p=0.02)とDES群で有意に低値であった。血行再建術(Ischaemia-driven target lesion revascularisation)の差(2%対6%、p=0.0002)が、複合主要評価項目の差につながったと考えられ、出血性イベントも含めて、他のイベント項目に明らかな群間差を認めなかった。 DAPT期間を短縮するためにBMSを使用するという言い訳がよく聞かれるが、今回の試験の結果では、臨床的必要性に応じて短期間のDAPTを施行する高齢者においても、1年の短期成績で判断する限り、BMSを選択する必要はなく、むしろDESのほうが優れていることが示された。「DESでは新生内膜による被覆が不良なためDAPT期間を短くするとステント血栓症のリスクが高くなる」という固定観念は、そろそろ払拭されてもよいのかもしれない。ただし、10年以上の長期成績においてBMSとDESのいずれが優れているかはまた別の問題であり、別に議論されるべきだろう。

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FFRジャーナルClub 第7回

FFRジャーナルClubでは、FFRをより深く理解するために、最新の論文を読み、その解釈を議論していきます。第7回目の今回は、多枝疾患(multi vessel disease:MVD)におけるPCIとCABGを比較したSYNTAX studyの流れを継承し、FFR/iFR guide PCIが採用されたSYNTAX II studyにおける1年予後の結果報告を読みたいと思います。第7回 多枝疾患、左主幹部病変へのPCIはCABGに追いついたのか?SYNTAX II studySYNTAX studyは、多枝疾患、左主幹部病変を対象とし、PCIとCABGをランダム化し比較した試験である。薬剤溶出ステントを用いても、解剖学的に複雑な要素を持つ3枝疾患に関しては、依然CABGの優越性が示されていた。SYNTAX II studyでは、ハートチームによりPCI/CABGの治療選択の際の判断基準として、解剖学的複雑性とともに手術のリスクとなる臨床的患者背景を評価するSYNTAX score IIが採用された。さらにPCIの技術的進歩、これには、(1)薄いstrut/bio-resorbable polymerを有する新世代DES(SYNERGY stent)を用い、(2)ステントの植え込み時(留置前および留置後のoptimize)にIVUS guideを用い、(3)慢性完全閉塞(CTO)に対しては最新の手技を取り入れ、(4)抗血小板薬DAPTも最新のものを使う、これらに加え、(5)PCIの適応決定をphysiology guideにて行う、という最新のPCIテクノロジーを集結させることにより、MVDに対するPCI後の予後を改善させるかを検討することが、目的である。Escaned J, et al. Clinical outcomes of state-of-the-art percutaneous coronary revascularization in patients with de novo three vessel disease: 1-year results of the SYNTAX II study. Eur Heart J. 2017 Aug 26. [Epub ahead of print]Mohr FW, et al. Coronary artery bypass graft surgery versus percutaneous coronary intervention in patients with three-vessel disease and left main coronary disease: 5-year follow-up of the randomised, clinical SYNTAX trial. Lancet 2013;381:629-638.SYTAX II studyは、多施設共同、all comers、非盲検、単群試験である。前述したSYNTAX II strategyを行い、1年間のMACCE(全死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠血行再建)を観察し、SYNTAX I trialから抽出したPCI cohort、CABG cohortと予後を比較した。708例がハートチームで討議され、PCIが適切と判定された454例が登録された。このSYNTAX II strategyによる1年時の予後は、SYNTAX I PCI cohortよりも良好であった(MACCE 10.6% vs.17.4%、HR:0.58、95%CI:0.39~0.85、p=0.006)。その2群間の差は、心筋梗塞発症の低下(HR:0.27、95%CI:0.11~0.70、p=0.007)と、血行再建の低下(HR:0.57、95%CI:0.37~0.9、p=0.015)であった。全死亡、脳卒中発生に差はなかった。ステント血栓症(definite)は有意に少なかった(HR:0.26、95%CI:0.07~0.97、p=0.045)。本研究の主たる結果をまとめると、1)SYNTAX II strategyによって治療されたPCI後の予後は、SYNTAX I trialのPCI群よりも良好な予後を得ることができた。そのMACCE低下に寄与したのは、MI、血行再建、ステント血栓症の減少であった。画像を拡大する2)SYNTAX II scoreアルゴリズムによる中等度リスク(SYNTAX score 23~32)に対するPCIの短期予後は、低リスク群(SYNTAX score 22以下)と差がなかった。画像を拡大する3)機能的評価(iFR/FFR)は75.5%の病変で施行可能であった。またその結果、25.0%の病変でPCIがdeferされた。4)ステント後の評価にIVUSをsystematicに使用することにより、30.2%の病変で後拡張などの手技が追加された。5)Contemporary CTO techniqueにより、手技の予後が格段に改善した。CTOの108病変中初期成功率は87.0%であった。6)SYNTAX II strategyによるPCI後の臨床的予後は、SYNTAX I CABG cohortの予後と同等であった。画像を拡大する機能的評価は75.5%の病変で行われたが、その平均iFRは0.77±0.21であった。造影上は1,559病変の治療が予定されたが(3.49病変/患者)、機能的に有意であったものは74.6%(2.64病変/患者)であった。機能的評価により396病変(25.0%)がPCIをdeferされたことになる。本研究ではiFR-FFR hybrid approachが使用されているが、最近報告されたDEFINE FLAIR試験に採用されたiFRのPCI施行閾値である0.89を用いると、FFRによる虚血判定と異なり非虚血と判定された病変が35%に及んでいることが、supplementにて報告されている。画像を拡大する私見昨今のPCI技術・デバイスの進歩は著しく、その成績は安定し、治療手技としてはかなり成熟していると感じることが多い。しかしSYNTAX studyに代表される大規模な研究結果が報告されるたびに、まだCABGに届かないのか、と落胆する術者も多いことと思う。本研究SYNTAX IIの研究者は、まさにその考えに基づき、最新のPCI技術をもってすれば、CABGの成績を凌駕しているのではないか、という点を証明すべく行われた研究である。SYNTAX II strategyにはいくつかのポイントが挙げられるが、PCIの適応決定にphysiological guidanceを用いた点、およびPCI手技のoptimizationにIVUS guidanceを用いた点で、日本の日常臨床でわれわれが目指しているインターベンションにより近いものであることを感じる。その結果、多くの研究でみられるPCI手技関連のMIなど初期イベントは減少し、1年後までの予後もSYNTAX I PCI cohortよりも良好であり、CABGと同等の成績であることが証明された。ただしCABGとの比較では、死亡、MIが経過中徐々に増加し、初期のPCIの優越性は徐々に減少している点が気になる。われわれの日常臨床ではPCI後のMIや死亡というMajor eventは非常に少ないことから、まだ乖離があるのかもしれない。PCI後の評価としてIVUSの読影が十分に行えていたのか、PCI後のmedication、とくに抗血小板薬DAPTに対する反応性の相違などが気になる点である。また個人的には、ステント後のFFRを評価することにより、ステント後のoptimizationの精度を上げることができたのではないかと思う。最近、海外でもようやくステント後のFFRに注目が集まりはじめたが、ステント後のFFRは、ステントの拡張状態、ステントedgeのトラブル(解離、血腫、大量の残されたプラークなど)、ステント外の残存病変の重症度など、さまざまな情報を与えてくれる。IVUSを使用していれば、その多くはすでに認識することが可能であるが、IVUSの読影自体に経験が必要なこと(とくに外国の術者にとって)、IVUSにて注目していなかった部分に偶発的に存在する病変・解離などの発見、その重症度の定量的評価を可能とするので、せっかくFFRワイヤーがカテ台上に出ているのであれば、post stent FFRを計測しない理由はない。今回、FFR/iFR guideが使用された意義は大きい。しかし多施設で行う場合、どの程度その計測が正確に行われているか、得られた値の判断に従っているか、施設ごとの温度差が重要である。本研究でも、iFR-FFR hybrid approachのアデノシンゾーン外であってもFFRを計測されている症例、それらの虚血判断とは異なる治療適応決定がなされている症例などが散見された。画像を拡大するiFR positive(iFR<0.86)であってもFFRにて確認した症例は少数(16例、2.7%)であったが、iFR negative(iFR>0.93)でありFFRを確認した症例は42例(14.8%)であり、結局PCIが行われた症例は25例(8.8%)存在した。FFR、さらにはiFRに従うstrategyが十分には確立されていない状況が存在するものと予想される。CVITで行ったCVIT-DEFER trialにても、FFRの結果と異なる最終判断が行われた症例が19%存在した。FFR陽性であってもPCI手技のリスクを勘案しdeferされる症例、FFR陰性であっても自覚症状・他のモダリティー結果との総合判断からPCIが選択される症例、FFR自体があまり理解されていない場合など、さまざまな状況が考えられる。もちろんFFRがすべて正しいわけではないと思うが、FFRを十分に理解したうえでの慎重な判断が望まれる。FFRの臨床的、また経済的効果を最大限に引き出すためには、その使用適応、使用後の判断までしっかりと考えて行わなければならない。CABGとの比較においては、直接の比較試験の結果が必要であるが、現在FAME 3 studyが進行中であり、その結果が待たれるところである。

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高齢者のPCI、短期DAPTでのDES vs.BMS/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける高齢患者において、薬剤溶出ステント(DES)を用い抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を短期間とする戦略は、ベアメタルステント(BMS)を用いDAPTを短期間とする戦略よりも予後は良好であり、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中および虚血による標的病変血行再建の発生に関しては同程度であることが示された。フランス・パリ第5大学のOlivier Varenne氏らによる無作為化単盲検試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年10月31日号で発表された。高齢患者は通常、DAPTの継続を短縮するために、DESの代わりにBMSの留置を受ける。研究グループは、高齢患者においてDAPTを短期間とした場合の両ステント間のアウトカムを比較する検討を行った。DAPT投与期間を事前に計画し、DES群またはBMS群に無作為化 試験は9ヵ国、44ヵ所の医療施設から患者を集めて行われた。被験者は、75歳以上で安定狭心症、無症候性心筋虚血、急性冠症候群を有し、70%以上狭窄の冠動脈が1枝以上(左主幹部50%以上)でPCI適応とみなされる患者を適格とした。除外基準は、冠動脈バイパス術による心筋血管再生手術の適応、DAPTに対する忍容性・獲得性・順守性がない、追加手術の必要性、1年以内に生命を脅かす非心臓疾患の併存、出血性脳卒中の既往、アスピリンまたはP2Y12阻害薬に対するアレルギー、P2Y12阻害薬禁忌、左心筋10%未満の無症候性虚血で冠血流予備量比0.80以上であった。 DAPTの計画投与期間が記録された後(安定症状患者は1ヵ月間、不安定症状患者は6ヵ月間)、被験者は中央コンピュータシステムによって、DESまたはBMSを受ける群のいずれかに無作為に割り付けられた(試験施設および抗血小板薬で層別化も実施)。割り付けは単盲検(患者はマスキングなど)で行われたが、アウトカムの評価者はマスキングされた。 主要アウトカムは、intention-to-treat集団における1年時点の重大有害心・脳血管イベント(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、虚血による標的病変血行再建)の両群間の比較であった。イベント評価は、30日、180日、1年時点のそれぞれで行った。1年時点の主要複合エンドポイントの発生、DES群が有意に低下 2014年5月21日~2016年4月16日に、患者1,200例が無作為化を受けた(DES群596例[50%]、BMS群604例[50%])。被験者の平均年齢は81.4歳(SD 4.3)、男性が747例(62%)であった。全体的にプロファイルは典型的な高齢者ハイリスク患者であることを示し、高血圧(各群72%、81%)、高コレステロール血症(52%、53%)、心房細動(17%、18%)などを有していた。既往歴は、一部を除外すればほぼバランスが取れていた。DAPT投与計画は、1ヵ月投与が全体で57%(各群55%、59%)を占め、同計画群の90%が安定狭心症または無症候性虚血の患者で、DES群とBMS群で差はなかった。6ヵ月投与は、ベースラインで急性冠症候群が認められた患者が大半を占めた(83%)。試験期間中のアスピリン用量中央値は100mg(IQR:75~100)、プラスグレル投与患者の半数は5mg/日量であった。また、88%(1,057例)の患者のP2Y12阻害薬がクロピドグレルであった。 主要複合エンドポイントの発生は、DES群68例(12%)、BMS群98例(16%)で報告された(相対リスク[RR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.52~0.94、p=0.02)。 1年時点の出血合併症の発現頻度は両群ともにまれで、DES群26例(5%)vs.BMS群29例(5%)であった(RR:0.90、95%CI:0.51~1.54、p=0.68)。ステント血栓症の発現頻度も同様であった(3例[1%]vs.8例[1%]、RR:0.38、95%CI:0.00~1.48、p=0.13)。 結果を踏まえて著者は、「出血イベントのリスクを減らすための短期BMS様DAPTレジメンとともに、血行再建術の再発リスクを減らすためのDESとの組み合わせ戦略は、PCIを受ける高齢患者の魅力的な選択肢である」と述べている。

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広範なPCI施行例で、生体吸収性と非生体吸収性ステントを比較/Lancet

 待機的か緊急を問わずPCI施行患者を対象とした試験で、新たな技術が用いられている超薄型ストラット生体吸収性ポリマー・シロリムス溶出ステント(Orsiro)は、非生体吸収性ポリマー・エベロリムス溶出ステント(Xience)と比較して、臨床的アウトカムに関する非劣性が100%見込まれることが発表された。米国・Piedmont Heart InstituteのDavid E. Kandzari氏らによる13ヵ国90の病院で行われた無作為化試験「BIOFLOW V試験」の結果で、著者は「今回の試験結果は、次世代薬剤溶出ステント技術の改善に新たな方向性を示すものであった」と述べている。 これまでに冠動脈薬剤溶出ステントは、新たなメタル合金を含むもの、ステント構造を変化したもの、そして生体吸収性ポリマーを含むものが開発されてきた。研究グループは、これらの臨床的安全性および有効性改善の向上について先行の無作為化試験では示されていないとして、広範なPCI施行患者集団で、生体吸収性ポリマー・シロリムス溶出ステントと非生体吸収性ポリマー・エベロリムス溶出ステントの臨床的アウトカムを比較する検討を行った。Lancet誌オンライン版2017年8月26日号掲載の報告。13ヵ国90の病院で待機的または緊急PCI施行患者を対象に無作為化試験 BIOFLOW V試験は、13ヵ国(オーストラリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、ドイツ、ハンガリー、イスラエル、オランダ、ニュージーランド、韓国、スペイン、スイス、米国)にある90の病院で、待機的または緊急にPCIを受ける患者を登録して行われた。適格とされたのは、18歳以上の新規未治療の冠動脈病変にステント留置予定である虚血性心疾患の患者で、超薄型(60μm)生体吸収性ポリマー・シロリムス溶出ステントまたは非生体吸収性ポリマー・エベロリムス溶出ステントを用いる群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、12ヵ月時点の標的病変不全の発生であった。また、ベイズ法を用いて、両ステントの2つの無作為化試験のデータと複合し非劣性に関する比較を行った。解析は、intention to treatにて行った。12ヵ月時点の標的病変不全の発生率は6% vs.10% 2015年5月8日~2016年3月31日に、4,772例の患者が本研究に登録された。1,334例が包含基準を満たし、無作為に割り付けられた(生体吸収性ステント群884例、非生体吸収性ステント群450例)。 生体吸収性ステント群は52/883例(6%)、非生体吸収性ステント群では41/427例(10%)で、12ヵ月時点の評価による標的病変不全の発生が認められた(95%信頼区間[CI]:-6.84~-0.29、p=0.0399)。標的血管心筋梗塞の発生に関しても、有意な差が認められた(39/831例[5%] vs.35/424例[8%]、p=0.0155)。 生体吸収性ステントの非生体吸収性ステントに対する非劣性は、100%と見込まれた。ベイズ分析(2,208例)で、標的病変不全の発生頻度の差は-2.6%(95%確信区間[credible interval]:-5.5~0.1)であった(非劣性マージンは3.85%)。

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PCI施行心房細動患者の抗血栓療法、2剤 vs.3剤/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心房細動(AF)患者において、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)+P2Y12阻害薬による2剤併用抗血栓療法は、ワルファリン+P2Y12阻害薬+アスピリンの3剤併用抗血栓療法と比較して、出血リスクは低く、血栓塞栓イベントリスクは有意差がないことが確認された。米国・ベイム臨床研究所のChristopher P. Cannon氏らが、日本を含む41ヵ国414施設で実施された国際共同無作為化非盲検比較試験「RE-DUAL PCI試験」の結果を報告した。ワルファリン+2剤併用抗血小板薬を用いた3剤併用抗血栓療法は、PCI後のAF患者に対する標準治療であるが、出血リスクが高く新たな治療戦略が求められていた。NEJM誌オンライン版2017年8月27日号掲載の報告。ダビガトラン2用量の2剤併用と、ワルファリンを含む3剤併用の3群で比較 RE-DUAL PCI試験の対象は、ステント留置を伴うPCIを施行した非弁膜症性AF患者2,725例で、ダビガトラン110mg×1日2回+P2Y12阻害薬群(110mg併用群)、ダビガトラン150mg×1日2回+P2Y12阻害薬群(150mg併用群)、ワルファリン+P2Y12阻害薬+アスピリン群(3剤併用群)のいずれかに無作為に割り付け(米国以外の高齢者は110mg併用群と3剤併用群の2群に無作為化)、6ヵ月以上追跡した。P2Y12阻害薬はクロピドグレルまたはチカグレロルとし、アスピリン(1日100mg以下)はベアメタルステントの場合は1ヵ月後、薬剤溶出ステントの場合は3ヵ月後に中止した。 主要エンドポイントは、大出血または臨床的に問題となる出血イベント(ISTH出血基準)。主な副次エンドポイントは、有効性の複合エンドポイント(血栓塞栓イベント[心筋梗塞、脳卒中、全身性塞栓症]、死亡および予定外の再血行再建術)であった。副次エンドポイントについては、ダビガトラン両群を合わせた2剤併用群の、3剤併用群に対する非劣性について検証した。2剤併用のほうが出血リスクは低く、血栓塞栓イベントリスクに差はなし 平均追跡期間14ヵ月における、大出血または臨床的に問題となる出血イベントの発生率は、3剤併用群26.9%に対し、110mg併用群は15.4%であった(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.42~0.63、非劣性のp<0.001、優越性のp<0.001)。150mg併用群(高齢者は米国からの参加被験者のみ)は20.2%で、同群に対応する3剤併用群は25.7%であった(HR:0.72、95%CI:0.58~0.88、非劣性のp<0.001)。 有効性の複合エンドポイントの発生率は、2剤併用群13.7%、3剤併用群13.4%であった(HR:1.04、95%CI:0.84~1.29、非劣性のp=0.005)。重篤な有害事象の発現頻度について有意な群間差は確認されなかった。〔9月12日 記事の一部を修正いたしました〕

71.

溶けて消えるステントを消しても良いのか?消さないためになすべきこと(中川義久 氏)-707

 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)の現状を、5年前に予見できた者はいたであろうか? 希望に満ちあふれた新規デバイスとして、みんなの注目を集めて輝いていたね、スキャフォールドくん。学会会場でBVS関連の発表は聴衆であふれていたね、けれども今は……。 BVSの安全性と有効性をエベロリムス溶出金属ステント(EES)と比較した臨床研究が世界各地で遂行された。ABSORB Japanは日本で承認を得るべく企画されたランダム化比較非劣性試験である。1次エンドポイントは留置1年時の標的病変不全(TLF)で、その発生率はBVS群4.2%とEES群3.8%と非劣性が示された。このように個々の試験ではBVSのEESに対する非劣性が証明された。スキャフォールドまたはステント血栓症、つまりデバイス血栓症にも有意差はなかった。しかし、これらの個々の試験は規模が十分ではなく、とくにデバイス血栓症といった頻度の低い事象の評価においてはパワー不足であることが問題であった。また長期的なデータも不足していた。 Lancet誌オンライン版2017年7月18日号に、追跡期間が2年以上の7つの無作為化試験を対象に行ったメタ解析の結果が報告された。この中には、ABSORB Japanも含まれている。その結果、BVSはEESに比して、2年時のデバイスに起因する有害事象の発現頻度は1.29倍で、デバイス血栓症は3.35倍であった。さらに留置後1~2年の期間の両発症リスクもBVSで高率であった。この報告にあるように、BVSの留置後1年を超えた成績がEESに比して劣ることが2年ほど前から話題になるにつれて、BVSに対する逆風が吹いてきた。留置直後にBVSの血栓症の発生がわずかに多くとも、時間を経ればBVSの良さが際立ってくると期待していたからである。期待の山が高ければ失望の谷も深いのが世の常である。世界的にもBVSの使用は減少しているという。本邦においても承認はなされたが、きわめて限定的な使用にとどまっている。このままではBVSは消えてなくなってしまうかもしれない。消えるのは構造物としてのストラットであって、BVSそのものではなかったはずである。 ここで今なさなければならないことは何であろうか。それは、溶けて消えるBVSの真の長期的メリットを明らかにすることである。BVSの開発当初には、金属製ステントのように血管内に永久的な留置物が残らないために、生理的な血管の運動性を回復することが期待されるとされた。長期的には、プラークの退縮や、ゴールデンチューブと呼ばれるプラークのシーリング効果が期待される。吸収されてしまえば植込み部位にCABGのグラフトが吻合可能であること、金属の構造物がないために冠動脈CTで病変が正確に評価できることも利点である。このように長期的な転帰に優れることが理論的には期待されるBVSであるが、現状では、この長期的メリットを実感することがいまだできない。メリットを実感できれば、留置後に短期的トレードオフできるデメリットの限界点も明らかとなる。これまでにBVSを植え込んだ患者は、このメタ解析論文だけでも3,000例を超えている。これらの患者を今後5年、10年と緻密にフォローアップしていくことが肝要である。その中で必ずや溶けて消える長期的メリットが明らかとなる。これは開発を担当する企業には荷の重い仕事に感じるかもしれない。しかし、遂行しなければならない課題であり、インターベンション治療に携わる医師も応援しなければならない。 現在の金属性ステントのDESは完成形に近づいている。しかし、その進歩には長い時間を要した。1991年にSerruys先生が冠動脈用の金属製ステントの初期臨床成績をNEJM誌に最初に報告した際には、24%という高い再閉塞率であった(N Engl J Med. 1991;324: 13-17.)。この報告により冠動脈ステントに対する熱狂は一気に冷め絶望感をもって評価されたという。1991年に現在の金属性DESの隆盛を予言できた者はいなかったであろう。しかし、一歩一歩を積み重ねて前進してきたのである。確かに現在使用可能なBVSは、成熟したDESに比して完成度は低いかもしれない。ストラットが厚いという問題点がある。これは、今後の材質や構造の改良によって解決されていくことが期待される。留置手技の改善や工夫の余地も大きい。BVSは産声をあげたばかりのデバイスなのだ。 スキャフォールドくん! がんばれ! 君は消えない、応援するよ!

72.

生体吸収性スキャフォールドの2年転帰:7試験メタ解析/Lancet

 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)は、エベロリムス溶出金属ステント(EES)に比べ、2年時のステントに起因する有害事象の発現頻度は約1.3倍で、ステント血栓症は約3.4倍であることが示された。また、ステント留置後1~2年の間の両発症リスクも、BVS群がEES群に比べて高率だった。米国・コロンビア大学のZiad A. Ali氏らが、追跡2年以上の無作為化試験7件を対象に行ったメタ解析で明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2017年7月18日号で発表した。BVSは生体に完全に吸収されることでPCI後の長期アウトカムを改善する。これまでの無作為化試験で、1年時点の安全性・有効性の複合アウトカムについて、BVSの薬剤溶出金属ステントに対する非劣性は示されていたが、標的病変の心筋梗塞やデバイス血栓症の発現頻度の増大が確認されていた。また、BVS留置後1年を超えたアウトカムは明らかではなかった。心血管死、標的病変関連心筋梗塞などステント起因複合エンドポイントを比較 研究グループは、エベロリムス溶出Absorb BVSと金属製EESを比較し、2年以上追跡した無作為化比較試験について、MEDLINE、Cochrane database、TCTMD、ClinicalTrials.gov、Clinical Trial Results、CardioSourceや、主要な心血管系学会での抄録や発表などを2017年4月1日時点で検索し、システマティックレビューとメタ解析を行い、留置後2年間および1~2年の間のBVSの安全性と有効性を確認した。 有効性に関する主要アウトカムは、デバイス起因複合エンドポイント(心臓死、標的病変関連心筋梗塞、または虚血による標的病変血行再建術)だった。安全性に関する主要アウトカムは、definite/probableデバイス血栓症だった。2年時の標的病変関連心筋梗塞リスク、BVS群はEES群の約1.7倍 メタ解析には、無作為化試験7件、被験者総数5,583例(BVS群:3,261例、EES群:2,322例)が含まれた。 2年デバイス起因複合エンドポイント発生率は、EES群7.4%(169/2,299例)に対し、BVS群は9.4%(304/3,217例)と有意に高率だった(相対リスク[RR]:1.29、95%信頼区間[CI]:1.08~1.56、p=0.0059)。これら両群差は、2年標的病変関連心筋梗塞発症率が、EES群で3.2%に対しBVS群で5.8%であったことや(RR:1.68、95%CI:1.29~2.19、p=0.0003)、また、虚血による標的病変血行再建術の発生率もそれぞれ3.9%、5.3%と(RR:1.40、95%CI:1.09~1.80、p=0.0090)、いずれもEES群よりBVS群で有意に高率であったことが関係していた。 累積2年ステント血栓症発症率も、EES群0.7%に対しBVS群は2.3%と3倍強に上った(RR:3.35、95%CI:1.96~5.72、p<0.0001)。 ランドマーク解析の結果、1~2年のデバイス起因複合エンドポイント発生率についても、EES群1.9%に対しBVS群は3.3%と、有意に高率だった(RR:1.64、95%CI:1.03~2.61、p=0.0376)。ステント血栓症発症率も、それぞれ0%、0.5%とBVS群で有意に高率だった(p<0.0001)。

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薬剤溶出ステント留置後のDAPT、6ヵ月 vs. 24ヵ月

 2015年に発表されたITALIC(Is There a Life for DES After Discontinuation of Clopidogrel)試験では、第2世代薬剤溶出ステントを用いた冠動脈形成術後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)で、6ヵ月のDAPTを24ヵ月のDAPTと比較し、1年目の時点で出血と血栓症の発生率が同等であることが示された。ITALIC試験の最終結果となる今回は、6ヵ月DAPTの24ヵ月に対する非劣性を検証することを目的に、24ヵ月DAPTのフォローアップ結果がフランス・ブレスト大学のGilard氏らより報告された。Journal of the American College of Cardiology誌2017年6月26日号に掲載。主要評価項目は、死亡、心筋梗塞、標的病変の緊急再灌流療法、脳梗塞、重篤な出血の複合 本研究は多施設無作為化比較試験で、第2世代薬剤溶出ステントの植込みを受けたアスピリン抵抗性を示さない患者を、70施設から2,031例をスクリーニングし、6ヵ月(926例)もしくは24ヵ月(924例)のDAPTに割り付けた。主要評価項目は、12ヵ月の時点における死亡、心筋梗塞、標的病変の緊急再灌流療法、脳梗塞、重篤な出血の複合であった。副次評価項目は、24ヵ月の時点における同一の複合評価項目と各項目の結果であった。24ヵ月のフォローアップでも6ヵ月DAPTは24ヵ月DAPTに対し非劣性 6ヵ月と12ヵ月のDAPTを比べたところ、6ヵ月DAPTは24ヵ月DAPTに対し非劣性で、絶対リスク差は0.11%(95%信頼区間[CI]:−1.04%~1.26%、p=0.0002)であった。 24ヵ月の時点で、複合評価項目に変化はなく、6ヵ月群で3.5%、24ヵ月群で3.7%(p=0.79)、心筋梗塞(1.3% vs.1.0%、p=0.51)、脳卒中(0.6% vs.0.8%、p=0.77)、標的血管の緊急再灌流 (1.0% vs.0.3%、p=0.09)は、いずれも同等の結果であった。死亡率については、24ヵ月群で高い傾向にあった(2.2% vs.1.2%、p=0.11)。重篤な出血の発生は、24ヵ月群の4例に対して、6ヵ月群では1例も発生しなかった。ITALIC試験の24ヵ月時点における結果は、12ヵ月時点の結果を確認し、第2世代の薬剤溶出ステント留置後6ヵ月のDAPTが24ヵ月のDAPTと同様の成績を示すことが示された。■関連記事循環器内科 米国臨床留学記

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生体吸収性スキャフォールド、血栓症リスクを増大/NEJM

 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)による経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、エベロリムス溶出金属ステントを使用した場合と比べ、デバイス血栓症の発生リスクが約3.9倍であることが示された。一方で主要エンドポイントの標的血管不全(心臓死、標的血管心筋梗塞または血行再建術のいずれか)の発生リスクは同等だった。オランダ・アムステルダム大学のJoanna J Wykrzykowska氏らが、1,845例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2017年3月29日号で発表した。BVSは従来ステントの弱点を克服するために開発された新たなデバイスで、これまでの検討で、コバルトクロムステントPCIに対する非劣性が示されている。しかしその後の試験で、金属ステントよりもデバイス血栓症のリスクが高いことが示唆されていた。安全性への懸念から、早期に結果を報告 研究グループは、オランダの5つの実施頻度の高いPCIセンターで2013年8月28日~2015年12月27日に、PCI実施予定の患者1,845例を無作為に2群に分け、一方にはエベロリムス溶出BVSを(924例)、もう一方にはエベロリムス溶出金属ステントを(921例)、それぞれ留置した。 主要エンドポイントは複合評価の標的血管不全(心臓死、標的血管心筋梗塞または標的血管血行再建術のいずれかと定義)だった。 本論は、2016年11月11日の安全性レビュー後に、データ・安全性モニタリング委員会が安全性への懸念から早期報告の勧告を行ったことを受けて、研究グループが主要エンドポイントに関する記述的情報を報告したものである。標的血管不全、発生率は11~12% 追跡期間中央値707日間の主要エンドポイントの発生は、BVS群105例、金属ステント群94例と、両群間に有意な差はなかった(2年累積イベント率はそれぞれ11.7%と10.7%、ハザード比[HR]:1.12、95%信頼区間[CI]:0.85~1.48、p=0.43、Kaplan–Meier推定time-to-event解析による)。 個別にみると、心臓死の発生はBVS群18例、金属ステント群23例、2年累積イベント率はそれぞれ2.0%、2.7%で有意差はなかった(HR:0.78、95%CI:0.42~1.44、p=0.43)。標的血管心筋梗塞の発生は、それぞれ48例と30例、2年累積イベント率は5.5%、3.2%で、BVS群で有意に高率だった(1.60、1.01~2.53、p=0.04)。標的血管血行再建術は76例、65例、同イベント率はそれぞれ8.7%、7.5%で、BVS群で高率だったが有意差はみられなかった(1.16、0.84~1.62、p=0.37)。 一方、definite/probableデバイス血栓症の発生はBVS群で31例、金属ステント群は8例で、2年累積イベント率はそれぞれ3.5%、0.9%とBVS群で有意に高かった(HR:3.87、95%CI:1.78~8.42、p<0.001)。

75.

登録に手間取ったEXCEL試験からLMT病変の治療戦略を深読みする(解説:中川 義久 氏)-612

 左冠動脈主幹部(LMT)疾患と3枝疾患の治療おいては、冠動脈バイパス術(CABG)が標準的治療として推奨されてきた。冠動脈インターベンション(PCI)とCABGの2つの血行再建法を適切に使い分けるために、欧米を中心に多くの臨床研究が実施されてきた。 この領域でエポックメーキングであったのは、SYNTAX試験である1)。LMT疾患および3枝疾患を、心臓外科医とPCI施行医がどちらの治療法でも施行可能と判断すれば、PCIかCABGにランダマイズし比較した歴史的な研究である。この試験でPCIは、第1世代のパクリタクセル溶出性ステントであるTAXUS を用いている。この主論文の結果は、「再血行再建も含めた主要エンドポイントについてTAXUSを用いたPCIは、CABGに対して非劣性を達成することができなかった」である。この公式見解とは別にサブ解析ではあるが、従来はCABGの牙城とされていたLMT疾患の中でも、PCIで治療可能な領域が存在することを示した点では画期的な研究であった。 ランダマイズ試験の弱点の1つは、研究の計画から結果を得るまでに時間を要することである。結果を得たときには陳腐なものとなってしまう。SYNTAX試験で用いられたTAXUSステントは、すでに日常臨床のアリーナから退場している。より成績の勝る新世代の薬物溶出性ステントが席巻している。優れた治療成績を示すエベロリムス溶出性ステント(EES)を用いるPCIとCABGを比較するEXCEL試験の結果が待たれていた。SYNTAXスコアが≦32、つまり冠動脈病変複雑性が中程度までのLMT疾患において、最先端の血行再建手技で比較を試みたのがEXCEL試験である。EES使用だけでなく、PCI群の77.2%はIVUSガイドであり、CABG群では29.4%はオフポンプ手術であった。EXCEL試験の主要エンドポイントは、全死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合エンドポイントである。3年時点で主要エンドポイント発生率は、PCI群15.4%、CABG群14.7%で両群差は0.7%(非劣性p=0.02)で、PCI群の非劣性が示されたという結論である。 このEXCEL試験の結果は、ワシントンで開催されたTCT2016で報告され同日にNEJM誌に結果が掲載された。その論文内にも記載されているが、この臨床試験では進行に遅れが生じた。当初の計画では、PCI群とCABG群各1,300例ずつ計2,600例のランダマイズ登録を予定していたが、登録が進捗しないことから研究のパワーを90%から80%に低下させることを受容して、計1,900例のランダマイズ研究にサイズダウンしたのである。経過をもう少し詳しく紹介する。ランダマイズ患者の登録は、最初が2010年9月で、最終は2014年3月となっている。2013年時点のEXCEL試験の進捗状況の報告では2,600例の登録を目指すとしている。このころから登録のスピードに陰りが生じ、2014年に1,905例で閉じることになったのである。自分は、試験の終盤になり登録が進捗しなくなった点に強いメッセージを察知する。PCIとCABGの両治療法共に施行可能と判断される患者を、ランダマイズ研究に登録することに困難が増した理由は何であろうか?…患者本人が試験参加ではなくPCIによる治療を希望する場合か、研究者本人も両治療が可能な患者をランダマイズに委ねることを躊躇したのか、と深読みしてしまうのである。 データ解析の結果を公式に解釈するならばPCIの非劣性だが、この登録の遅れという情報を勘案すれば、SYNTAXスコア≦32までのLMT疾患治療においてPCIは選択肢として現場で容認されている可能性がある。 FFRなどの機能的指標を用いてPCIの適応を判断することによって予後を改善させる可能性が報告されている。このEXCEL試験のPCI群のFFR評価実施は9.0%にとどまっている。その面では、EXCEL試験の結果も陳腐なものであろうか。

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ステント留置後のDAPT期間、糖尿病の有無で検討/BMJ

 薬剤溶出ステント留置後の2剤併用抗血小板療法(DAPT)の投与期間は、短期か長期か。スイス・ベルン大学のGiuseppe Gargiulo氏らが、メタ解析により糖尿病患者と非糖尿病患者を層別化して検討した。その結果、糖尿病はステント留置後の重大有害心血管イベント(MACE)の独立予測因子であることが明らかになったが、MACE発生のリスクは、糖尿病患者また非糖尿病患者についてもDAPT投与期間の短期(6ヵ月以下)と長期(12ヵ月)で有意な差はなく、一方で長期DAPTは出血リスクを増大することが示された。BMJ誌2016年11月3日号掲載の報告より。MACE発生との関連について1万1,473例のデータをメタ解析 メタ解析は、Medline、Embase、Cochrane databases、国際学会の抄録から、薬剤溶出ステント留置後のDAPTの投与期間について調べた無作為化対照試験を検索。被験者個別データをプールして、試験によって層別化したCox比例回帰モデルを作成し糖尿病のアウトカムへの影響を調べた。 主要試験アウトカムは、心臓死、心筋梗塞、definite/probableのステント塞栓症で定義したMACE。すべての解析はintention-to-treatにて行った。 検索により6つの無作為化試験の被験者1万1,473例のデータをプールした。そのうち、糖尿病患者は3,681例(32.1%)、非糖尿病患者は7,708例(67.2%)で、平均年齢はそれぞれ63.7(SD 9.9)歳、62.8(10.1)歳であった。残る84例については情報が紛失し不明であった。また、糖尿病患者のうち、短期DAPT群は1,828例、長期DAPT群は1,853例、非糖尿病患者はそれぞれ3,860例、3,848例であった。追跡1年時点のMACEリスク減少効果は、短期と長期で有意差なし 解析の結果、糖尿病はMACEの独立予測因子であった(ハザード比[HR]:2.30、95%信頼区間[CI]:1.01~5.27、p=0.048)。 しかしながら追跡1年時点で、長期DAPT群は短期DAPT群と比べて、MACEのリスク減少との関連が、糖尿病患者群(1.05、0.62~1.76、p=0.86)および非糖尿病患者群(0.97、0.67~1.39、p=0.85)のいずれにおいても認められなかった(交互作用のp=0.33)。 心筋梗塞のリスクについて、糖尿病・非糖尿病患者別で検討した場合は、糖尿病患者群での有意な増大が認められたが、DAPT投与期間の長短で比較すると、糖尿病患者群(0.95、0.58~1.54、p=0.82)、非糖尿病患者群(1.15、0.68~1.94、p=0.60)共に差はみられなかった(交互作用のp=0.84)。 definite/probableのステント塞栓症のリスクは、糖尿病・非糖尿病患者別で検討した場合は、糖尿病患者群で有意差はないが数的には増大が認められた(HR:1.89、95%CI:0.31~11.38、p=0.49)。DAPT投与期間の長短で比較すると、ランドマーク解析法では、両群共にベネフィットがある傾向が示されたが、陽性交互検定では、糖尿病患者群で長期DAPT群のほうが短期DAPT群よりも有意な低下が認められ(0.26、0.09~0.80、p=0.02)、非糖尿病患者群では観察されなかった(1.42、0.68~2.98、p=0.35)(交互作用のp=0.04)。 大小の出血リスクについては、糖尿病の有無にかかわりなく、長期DAPT群で高かった。

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左冠動脈主幹部病変、PCIよりCABGが予後良好/Lancet

 左冠動脈主幹部病変の治療では、冠動脈バイパス術(CABG)が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも良好な予後をもたらす可能性があることが、フィンランド・オウル大学病院のTimo Makikallio氏らが行ったNOBLE試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年10月31日号に掲載された。欧州では、従来、非保護左主幹部病変の標準的な血行再建術はCABGであるが、最近はPCIの使用が急増している。欧州心臓病学会(ESC)の現行ガイドラインでは、左主幹部病変や非複雑病変、非びまん性病変にはPCIが推奨されているが、その論拠とされる試験は症例数が少なく、最良の治療を決めるには検出力が十分でないという。約1,200例が参加したPCIの非劣性試験 NOBLEは、非保護左主幹部病変を有する患者において、薬剤溶出ステントを用いたPCIのCABGに対する非劣性を検証する非盲検無作為化試験(デンマーク・オーフス大学病院などの助成による)。 対象は、冠動脈造影で視覚的な狭窄度≧50%または冠動脈の入口部、midshaft、分岐部の冠血流予備量比≦0.80の病変を有する安定狭心症、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞の患者であった。 主要評価項目は、主要な心脳血管有害事象(MACCE)の複合エンドポイント(全死因死亡、手技に伴わない心筋梗塞、再血行再建術、脳卒中)であった。非劣性マージンは1.35とした。 2008年12月9日~2015年1月21日までに、欧州9ヵ国36施設に1,201例が登録され、PCI群に598例、CABG群には603例が割り付けられた。両群とも592例ずつがITT解析の対象となった。全死因死亡に差はないが、5年MACCE発生率が高い ベースラインの平均年齢は、PCI群が66.2歳(SD 9.9)、CABG群は66.2歳(9.4)で、女性がそれぞれ20%、24%(p=0.0902)を占め、糖尿病を有する患者が両群とも15%含まれた。logistic EUROSCOREは両群とも2(IQR:2~4)、SYNTAXスコアはそれぞれ22.4(SD 7.8)、22.3(7.4)であった。 Kaplan-Meier法による5年MACCE発生率は、PCI群が29%(121イベント)、CABG群は19%(81イベント)で、HRは1.48(95%CI:1.11~1.96)であり、CABG群のPCI群に対する優越性が確認された(p=0.0066)。 全死因死亡の5年発生率には有意な差はなかった(PCI群:12% vs.CABG群:9%、HR:1.07、0.67~1.72、p=0.77)が、手技に伴わない心筋梗塞(7 vs.2%、2.88、1.40~5.90、p=0.0040)および血行再建術(16 vs.10%、1.50、1.04~2.17、p=0.032)はPCI群で有意に多く、脳卒中(5 vs.2%、2.25、0.93~5.48、p=0.073)はPCI群で多い傾向がみられた。 1年MACCE発生率は、2つの群で同じであり(7 vs.7%、リスク差:0.0、95%CI:-2.9~2.9、p=1.00)、両群間の差は1年以降に生じていた。1年時の全死因死亡(p=0.11)、手技に伴わない心筋梗塞(p=0.49)、血行再建術(p=0.27)、脳卒中(p=0.16)にも差は認めなかった。 著者は、「これらの知見は、SYNTAX試験の左主幹部病変例とPRECOMBAT試験のメタ解析の結果(5年MACCE発生率、PCI群:28.3% vs. CABG群:23.0%、p=0.045)を追認するものである」としている。

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生体吸収性スキャフォールド、3年で血管運動は回復したのか/Lancet

 冠動脈狭窄患者の治療において、エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(Absorb)はエベロリムス溶出金属ステント(Xience)と比較して、力学特性の指標である、血管運動の回復の結果としての内腔径の増加に寄与しないことが、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのPatrick W Serruys氏らが進めるABSORB II試験の中期的な検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年10月30日号に掲載された。循環器インターベンション医にとって、務めを終えたら消え去る一過性のスキャフォールドは、長い間の夢だという。生理学的には、固い金属製のケージがなければ、血管運動の堅調さや適応性のあるずり応力、遠隔期の内腔拡張などの回復が促進される可能性がある。約500例の3年時の解析結果 ABSORB IIは、生体吸収性スキャフォールドの導入を支持するエビデンスに基づくデータを生成することで、この技術の付加的な価値を評価する単盲検実対照比較試験(Abbott Vascular社の助成による)。今回は、3年時の中期的な解析の結果が発表された。 対象は、年齢18~85歳、心筋虚血および異なる心外膜血管に1または2個の新たな自然病変が確認された患者であった。被験者は、AbsorbまたはXienceを留置する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。 複合主要エンドポイントは、3年時の硝酸塩の冠動脈内投与後の冠動脈造影による血管運動反応性(投与前後の平均内腔径の変化)の優越性と、冠動脈造影による遠隔期損失径の非劣性(非劣性マージン:0.14mm)であった。 2011年11月28日~2013年6月4日までに、欧州とニュージーランドの46施設に501例が登録され、Absorb群に335例(364病変)、Xience群には166例(182病変)が割り付けられた。抗血小板薬2剤併用の長期投与が今後の研究トピックに ベースラインの平均年齢は、Absorb群が61.5歳(SD 10.0)、Xience群は60.9歳(10.0)、女性がそれぞれ24%、20%含まれた。糖尿病は両群とも24%にみられ、安定狭心症は両群とも64%、不安定狭心症はそれぞれ20%、22%であり、一枝病変が83%、85%を占めた。 3年時の血管運動反応性は両群間に有意な差を認めず(Absorb群:0.047mm[SD 0.109] vs.Xience群:0.056mm[0.117]、優越性検定p=0.49)、遠隔期損失径はAbsorb群のほうが大きい(0.37mm[0.45] vs.0.25mm[0.25]、非劣性検定p=0.78)という結果であり、複合主要エンドポイントは達成されなかった。この内腔径の差は、最小血管面積の血管内エコー検査で確定された(4.32mm2[SD 1.48] vs.5.38 mm2[1.51]、p<0.0001)。 患者志向の副次エンドポイントであるシアトル狭心症質問票(狭心症の頻度・安定性、身体機能制限、QOL、治療満足度)に「狭心症なしの患者数」を加えた指標、および運動負荷試験は、両群間に有意な差を認めなかった。 一方、デバイス志向の複合エンドポイント(心臓死、標的血管心筋梗塞、臨床的に標的領域の血行再建を要する場合)はAbsorb群で有意に高頻度であり(10% vs.5%、ハザード比[HR]:2.17、95%信頼区間[CI]:1.01~4.69、log-rank検定p=0.0425)、この差には主に周術期心筋梗塞(4 vs.1%、p=0.16)を含む標的血管心筋梗塞(6 vs.1%、p=0.0108)が寄与していた。 著者は、「今後の研究では、デバイスのサイズの決定やスキャフォールド留置術の最適化における血管内画像法の臨床的インパクトを検討すべきであり、留置後の長期の抗血小板薬2剤併用療法のベネフィットと必要性の検討もトピックとなるだろう」と指摘している。

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左冠動脈主幹部病変、エベロリムス溶出ステント vs.CABG/NEJM

 左冠動脈主幹部病変の治療について、SYNTAXスコアが低~中スコアの患者ではエベロリムス溶出ステント留置を伴う冠動脈インターベンション(PCI)が、冠動脈バイパス術(CABG)に対し非劣性であることが、米国・コロンビア大学のGregg W Stone氏らが行った大規模無作為化試験「EXCEL」の3年追跡評価の結果、示された。閉塞性の左冠動脈主幹部病変に対しては通常、CABGが行われるが、先行の無作為化試験で、選択的な患者でPCI/薬剤溶出ステント留置が、CABGに代わりうる可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2016年10月31日号掲載の報告より。SYNTAX低中スコア1,905例を対象に検討 EXCEL試験は国際非盲検多施設共同無作為化試験で、2010年9月29日~2014年3月6日に17ヵ国126施設で、左冠動脈主幹部病変を有し、解剖学的に病変の複雑性は低~中程度(各試験施設の評価でSYNTAXスコア[最低スコアが0で高値になるほど〈上限値なし〉複雑病変であることを示す]が32未満である者)の試験適格患者1,905例を集めて行われた。 被験者は、PCI/フルオロポリマーベースのエベロリムス溶出性コバルトクロムステント留置群(PCI群、948例)またはCABG群(957例)に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、3年時点の全死因死亡・脳卒中または心筋梗塞の発生率の複合であった。試験は、主要エンドポイントの非劣性マージン4.2ポイントを検証できるように進められた。 主な副次エンドポイントは、30日時点の全死因死亡・脳卒中または心筋梗塞の複合発生率、3年時点の死亡・脳卒中・心筋梗塞または虚血による血行再建術の複合発生率などであった。イベント発生率は、時間-初回イベント解析におけるKaplan-Meier推定法に基づくものであった。PCI群の非劣性が認められる 結果、3年時点で主要エンドポイントのイベント発生率は、PCI群15.4%、CABG群14.7%。両群差は0.7ポイント(97.5%信頼区間[CI]上限値:4.0ポイント、非劣性のp=0.02)で、PCI群の非劣性が示された。ハザード比は1.00(95%CI:0.79~1.26、優越性のp=0.98)であった。 副次エンドポイントのうち、30日時点の全死因死亡・脳卒中・心筋梗塞の複合発生率については、PCI群4.9%、CABG群7.9%であった(非劣性のp<0.001、優越性のp=0.008)。3年時点の死亡・脳卒中・心筋梗塞・血行再建術の複合発生率は、PCI群23.1%、CABG群19.1%であった(非劣性のp=0.01、優越性のp=0.10)。

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生分解性ポリマーDES vs.耐久性ポリマーDES、1年後の結果/Lancet

 薬剤溶出ステント留置術を要す冠動脈疾患に対する、極薄型ストラット生分解性ポリマー・エベロリムス溶出ステントまたはシロリムス溶出ステントは、耐久性ポリマー・ゾタロリムス溶出ステントと比較し、術後1年後のアウトカムについて、非劣性であることが示された。オランダ・Thoraxcentrum TwenteのClemens von Birgelen氏らが行った、大規模無作為化比較試験「BIO-RESORT」の結果、明らかにした。Lancet誌オンライン版2016年10月30日号掲載の報告。1年後の心臓死・標的血管関連心筋梗塞の発生率などを比較 BIO-RESORT試験は、2012年12月21日~2015年8月24日にかけて、オランダ国内4つのクリニックにて、冠動脈疾患で薬剤溶出ステント留置術を要する18歳以上の患者3,514例を対象に行われた。除外基準は、主要エンドポイント達成前に、他の割付治療(薬物またはデバイス)を受けた場合、施術後6ヵ月以内に抗血小板薬2剤併用療法の中断が予定されている場合、割付治療薬剤や関連薬剤(抗凝固療法や抗血小板療法など)に対する既知の不耐性が認められる場合、フォローアップ治療へのアドヒアランスまたは1年未満の推定予後が不確定な場合、妊娠が明らかな場合だった。 被験者はコンピュータ無作為化にて3つの群に割り付けられ、1群には極薄型ストラット・エベロリムス溶出ステントを、2群には極薄型ストラット・シロリムス溶出ステントを3群には薄型ストラット・耐久性ポリマー・ゾタロリムス溶出ステントを、それぞれ留置した。 主要評価項目は、12ヵ月後の安全性(心臓死または標的血管関連の心筋梗塞の発症)および有効性(標的血管再建術の実施)の複合エンドポイントで、生分解性ポリマーを用いた2つの群と、耐久性ポリマー・ゾタロリムス群を比較した。非劣性マージンは3.5%だった。主要評価項目発生率、いずれの群も5% 被験者のうち、70%(2,449例)が急性冠症候群で、31%(1,073例)がST上昇型心筋梗塞の患者だった。 検討の結果、主要評価項目の発生率は、エベロリムス群が5%(55/1,172例)、シロリムス群が5%(55/1,169例)に対し、ゾタロリムス群は5%(63/1,173例)だった。ゾタロリムス溶出ステント群に対して、極薄型ストラット・生分解性ポリマーを用いたエベロリムスおよびシロリムスの両ステントの非劣性が示された(絶対リスク差:両群とも-0.7%、95%信頼区間:-2.4~1.1、非劣性のp<0.0001)。 学術研究コンソーシアム(Academic Research Consortium)の定義による確定的ステント血栓症は、エベロリムス群は4例(0.3%)、シロリムス群は4例(0.3%)、ゾタロリムス群は3例(0.3%)の発生だった(log-rank検定によるゾタロリムス群と他2つの群との比較のp=0.70)。

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