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デュピルマブ治療後に結膜炎を発症、その特徴は?

 アトピー性皮膚炎(AD)に対するデュピルマブの臨床試験において、プラセボ群と比較しデュピルマブ群で結膜炎の発現率が高いことが報告されている。米国・ノースウェスタン大学のAlison D. Treister氏らは、デュピルマブによるAD治療後に結膜炎を発症した患者について調査した。その結果、デュピルマブ投与後の結膜炎は、治療の中止を余儀なくされるほど重症の可能性があった。また、重症結膜炎はベースライン時のADが重症の患者に多く、それらの患者ではデュピルマブの良好な効果が得られており、アトピー性の表現型は増えていた。著者は、「結膜炎の発症に関与するリスク因子を明らかにし、効果的な治療を行うためにも、さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年8月29日号掲載の報告。 研究グループは、2017年3月14日~2018年3月29日の間に、2次医療センターでADに対しデュピルマブの治療を受けた142例中、結膜炎の発症が報告された12例を対象に症例集積研究を行った。患者はデュピルマブを初回にローディングドーズとして600mg、その後は2週間に1回300mgを皮下投与された。 主要評価項目は、デュピルマブ投与開始時および結膜炎発症時のADの重症度で、医師による全般評価(IGA)スコア(0:消失、1:ほぼ消失、2:軽症、3:中等症、4:重症)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・12例中7例(58%)が男性で、結膜炎発症時の平均年齢(±SD)は30±8.1歳だった。・結膜炎と診断された時に、全例でADは改善しており、IGAスコアは平均スコア(±SD)1.9±0.8ポイント減少、体表面積に占めるAD病変の割合は47.8±11.2%減少していた。・12例中9例(75%)は、ベースライン時のIGAスコア4の重症ADであった。・治療を中止した患者は、初回デュピルマブ投与時に重症ADで、さらにADに加えて1つ以上のアトピー性疾患を有していた。

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ファブリー病〔Fabry disease〕

ファブリー病のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 定義α-ガラクトシダーゼAの酵素欠損により心臓、腎臓などの組織を中心にグロボトリオシルセラミド(GL-3)が蓄積することにより、心不全、腎不全を来す疾患である。遺伝形式はX-連鎖の遺伝形式をとる。■ 疫学約4万人に1人と推定される。腎不全患者の0.2~0.5%、左室肥大の患者の4%、女性左室肥大の12%、男性脳卒中患者の4.9%、女性患者の2.4%。イタリアでは新生児男児3,100人に1人の頻度、台湾では1,250人に1人と患者頻度は高い。■ 病因ライソゾーム酵素であるα-ガラクトシダーゼの酵素欠損により全身組織にグロボトリオシルセラミド(GL-3)などの糖脂質が蓄積する(図1)。とくに血管内皮細胞に蓄積、心筋、腎臓、リンパ節、神経節など、全身組織に蓄積する。画像を拡大する■ 臨床症状(表1)ファブリー病の臨床症状は多彩である。小児期からの四肢の激痛、無痛、無汗などの自律神経症状、蛋白尿、腎不全などの臨床症状、不整脈、弁膜症、心不全などの心症状、頭痛、脳梗塞、知能障害などの神経症状、精神症状、皮膚症状として被角血管腫、難聴、めまい、耳鳴り、角膜混濁などの眼科症状、咳などの呼吸器症状などを認める。ファブリー病の臨床症状の進展は図1を参照。画像を拡大する■ 分類臨床的には「古典型」、心型、腎型といわれる「亜型」、「ヘテロ接合体女性患者」に分類される古典型(表2)では皮膚症状(被角血管腫)、自律神経症状(低汗、無痛、四肢痛など)を有する。心型、腎型ではこれらの症状は少ない。ヘテロ接合体女性患者では心症状が主体であるが、痛みなどは男性患者と同様に認められる。画像を拡大する■ 予後古典型の患者は早期の酵素補充療法をしないと、腎不全、心不全、脳梗塞で40~50代で死亡する患者が多い。心型、腎型では60~70代で死亡、ヘテロ女性患者は60~70代で心不全にて死亡する患者が多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)次の流れに従い、診断を行う。(1)臨床症状:小児期からの四肢の激痛、無汗、皮膚の被角血管腫、心不全、蛋白尿、腎不全、脳梗塞などの症状(2)血清、白血球、尿などでα-ガラクトシダーゼの酵素欠損を証明する(3)尿中GL-3の蓄積(4)皮膚での病理所見:電子顕微鏡でミエリン様蓄積物質を認める(5)遺伝子診断 3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ファブリー病の治療として対症療法と根治療法がある。表3に概略をまとめた。画像を拡大する1)対症療法(1)疼痛ファブリー病での痛みは、患者に大きな負担である。幼少時から四肢の灼熱感のある痛みが生じ、思春期はとくに強い。女性患者でも4~5歳から四肢の痛みを感じる患者がいる。痛みは四肢以外にも下顎、頸部などさまざまである。とくに梅雨の時期、夏などは疼痛が強い。カルバマゼピン(商品名:テグレトールほか)、ガバぺンチン(同:ガバペン)などが有効である。(2)消化器症状腹痛、胃痛、下痢などがみられ、整腸剤などの投与が有効である。(3)心肥大、心不全、不整脈徐脈性不整脈には、ペースメーカーが有効である。心筋保護作用としてのACE阻害薬、 ARBの投与が推奨される。高血圧、高脂血症の予防は重要である。(4)腎障害腎保護策のためにARB、ACE阻害薬は有効との報告がある。蛋白食制限、減塩は必要である。腎不全に対しての腹膜あるいは血液透析療法、さらには腎移植が試みられている。(5)脳梗塞脳梗塞の予防のためのアスピリン、抗血小板凝集薬の投与などの抗凝固療法が必要。(6)その他めまい、難聴などに対する対症療法として、めまいにはベタヒスチンメシル(同:メリスロンほか)、突発性難聴にはステロイドが使用される。2)酵素補充療法酵素補充療法は、現在遺伝子工学的手法の進歩に伴いαガラクトシダーゼAの酵素製剤が2製剤開発されている。アガルシダーゼ アルファ(商品名:リプレガル)とアガルシダーゼ ベータ(同:ファブラザイムほか)が開発されている。アガルシダーゼ ベータはCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞から遺伝子工学手法で作成された。投与量としては体重1kgあたりアガルシダーゼ アルファは0.2mg、アガルシダーゼ ベータは1mgを2週間に1回投与する。副作用としては蕁麻疹、悪寒、吐き気、鼻汁、軽度血圧低下、気道に違和感などの症状が見られるが、抗ヒスタミン薬、ステロイドの投与で軽快する場合が多い。副作用は投与後3~5ヵ月後に多く見られ、その後は軽快する場合が多い。そして、効果のポイントは次のとおりである。(1)痛みへの効果痛みは軽減傾向にある。発汗障害は改善傾向にある。(2)腎臓への効果腎臓、とくに腎血管内皮細胞でのGL-3の蓄積は除去される。糸球体のたこ足細胞でのGL-3の蓄積の除去には時間がかかる。GFRが60mL/min/1.73m2以上であれば治療後も維持できる。また、60mL/min/1.73m2 以下であれば、治療にかかわらず機能は低下することが明らかにされている。尿蛋白質では、蛋白の排泄が+1以上であれば酵素治療しても腎機能は低下するが、尿蛋白がマイナスであれば腎機能は悪化しない。(3)心機能への効果心筋の肥厚、左室心筋重量は酵素補充療法により減少する。左室機能改善の改善を認める。(4)脳神経系への効果酵素補充療法により血管の内皮細胞への蓄積は軽快するが、脳梗塞の所見は治療により変化はないと考えられる。また、白質変性への効果も少ない。(5)耳鼻科的効果酵素補充による聴力への効果はあまり期待できない。聴力検査で効果が認められていない。(6)眼症状への効果角膜に対する効果は軽快する傾向にある。網膜動脈閉塞で失明する。(7)皮膚症状への効果被角血管腫への効果は少ない。低(無)汗症への効果はみられ、酵素治療により汗をかくようになりQOLは上がる。(8)消化器症状への効果酵素補充療法により下痢などに対する効果が報告され、酵素治療とともに下痢、腹痛は改善傾向にある。体重は増加する患者が多い。4 今後の展望1)シャペロン治療低分子薬(デオキシノジリマイシンなど)は、ライソゾーム酵素のゴルジーライソゾーム系での酵素の合成、分解過程で作用する。すなわち変異酵素が分解促進、あるいは活性基が障害されている場合、シャペロンは有効であり、全体の約50~60%の患者の遺伝子異常に効果があるといわれている。ミガーラスタット(商品名:ガラフォルド)は、2018年5月に発売され、わが国でも保険適用となった。今後、効果や安全性について、さらに知見の積み重ねがなされる。2)遺伝子治療・細胞治療ファブリー病の最終治療としては、遺伝子治療法の開発が重要である。ファブリー病マウスを用いて「アデノ随伴ウイルス」(AAV)あるいは「レンチウイルスベクター」を用いての治療研究が進められており、モデルマウスではGL-3の臓器からの除去に成功している。また、骨髄幹細胞、あるいは間質幹細胞を用いて、遺伝子治療と組み合わせての治療効果も研究されている。3)ファブリー病のスクリーニングファブリー病の治療のためには、早期診断が重要である。早期診断のための新生児マス・スクリーニングも報告され、ガスリー濾紙血を用いて酵素診断することにより可能である。濾紙血による新生児スクリーニングでは、台湾でのファブリー病患者頻度は1/1,250(男児)、イタリアでは1/3,500(男児)、日本では1/6,500の頻度であり、決して珍しい疾患でないことが証明されている。また、ハイリスク患者スクリーニングとして、心筋症患者、左室肥大患者、腎不全患者、若年性脳梗塞患者にはファブリー病の患者の頻度が高いことが報告されている。早期診断により治療効果をあげることが重要である。5 主たる診療科腎臓内科、循環器内科、小児科、皮膚科、眼科、耳鼻科 など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療情報難病情報センター ライソゾーム病(ファブリー病を含む)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報ふくろうの会(ファブリー病患者と家族の会)1)Desnick RJ, et al. α-Galactosidase A deficiency: Fabry disease. In: Scriver CR et al, editors. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 8th ed. New York: McGraw Hill; 2001. p. 3733–3774. 2)Eng CM, et al. N Engl J Med. 2001; 345: 9–16.3)Rolfs A, et al. Lancet. 2005; 366: 1794–1796.4)Sims K, et al. Stroke. 2009; 40: 788-794.5)衛藤義勝. 日本内科学雑誌.2009; 98: 163-170.公開履歴初回2013年2月28日更新2018年9月11日

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アトピー性皮膚炎が、うつ病、不安および自殺念慮と関連

 アトピー性皮膚炎(AD)は不安やうつ病と関連しているが、その重要性については知られていない。デンマーク・Herlev and Gentofte HospitalのAmalie Thorsti Moller Ronnstad氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析から、AD患者の治療の際は、医師がうつ病、不安および自殺念慮について考慮しなければならないことを示した。著者は、「ADの改善にはこれらのリスク軽減が明白であることから、これを優先すべきである」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌2018年9月号掲載の報告。 研究グループは、小児および成人におけるADと、うつ病、不安および自殺念慮との関連について、PubMed、EmbaseおよびPsycINFOのデータベースを用いて論文を検索し、システマティックレビューとメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・成人のADは、うつ病(統合オッズ比[OR]:2.19、95%信頼区間[CI]:1.87~2.57)、および不安(同:2.19、95%CI:1.75~2.73)と有意に関連していた。・小児においてもADはうつ病(同:1.27、95%CI:1.12~1.45)と関連していたが、不安に関しては解析に利用できるデータがほとんどなかった。・成人および青少年において、ADは自殺念慮と顕著な関連があることが認められた(同:4.32、95%CI:1.93~9.66)。・自殺既遂のリスクを調査した研究は少数であったが、多くは自殺既遂とADとの間に明らかな関連があることを示していた。・ただし、本研究にはうつ病と不安について異なる定義の研究が組み込まれており、また、ADの重症度を調べた研究はほとんどなかった。

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アトピー性皮膚炎治療薬デュピルマブ、ワクチン接種に影響なし

 IL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する、抗ヒトIL-4Rα抗体デュピルマブが、アトピー性皮膚炎(AD)患者のワクチン接種後の反応に、どう影響を及ぼすかは知られていない。米国・Oregon Medical Research CenterのAndrew Blauvelt氏らは、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において、デュピルマブが、破傷風・ジフテリア・百日咳混合ワクチン(Tdap)および4価髄膜炎菌ワクチンの接種に影響を及ぼさないことを明らかにした。またデュピルマブは、血清総IgE値の有意な減少、プラセボと比較したADの重症度改善、良好な忍容性を示した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年8月6日号掲載の報告。 研究グループは、破傷風および髄膜炎菌ワクチンによるT細胞の細胞性免疫反応および液性免疫反応、TdapによるIgE抗体の陽転化、およびデュピルマブの有効性と安全性について評価することを目的に、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を実施した。中等度~重度ADの成人患者178例を対象とし、デュピルマブ(300mg)群またはプラセボ群に割り付け、週1回16週間皮下投与した。また、12週時に、Tdapおよび4価髄膜炎菌ワクチンを1回接種した。 主要評価項目は、16週時に破傷風トキソイドに対して十分なIgG反応を達成している患者の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・デュピルマブ群とプラセボ群で類似の陽性反応が示された(破傷風菌:83.3%および83.7%、髄膜炎菌:86.7%および87.0%)・デュピルマブの皮下投与は、血清総IgE値を有意に減少させた。・デュピルマブ群の大部分は、32週時にTdap IgEが血清反応陰性となった(デュピルマブ群62.2%、プラセボ群34.8%)。・デュピルマブは、ADの鍵となる有効なエンドポイントを改善した(p<0.001)。・注射部位反応と結膜炎がデュピルマブ群で多くみられ、プラセボ群ではADの増悪が高頻度であった。

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小児にも使えるスギ花粉症の減感作療法薬「シダキュア舌下錠」【下平博士のDIノート】第5回

小児にも使えるスギ花粉症の減感作療法薬「シダキュア舌下錠」今回は、「スギ花粉エキス舌下錠2,000JAU/5,000JAU(商品名:シダキュアスギ花粉舌下錠)」を紹介します。本剤は、国内で初めて成人のみならず小児においても使用可能となったスギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法(減感作療法)薬です。本剤を継続することで、スギ花粉症の諸症状軽減や抗アレルギー薬の減量によるQOL改善などが期待できます。<効能・効果>スギ花粉症(減感作療法)の適応で、2017年9月27日に承認され、2018年6月29日より販売されています。減感作療法とは、アレルギー疾患の原因となるアレルゲンを少量から投与開始し、徐々に増量することで、アレルゲンに対する過敏性を減少させる治療法です。重症の気管支喘息患者では、本剤の投与により、喘息発作を誘発する恐れがあるため、投与することができません。なお、国内臨床試験において、小児(5~17歳)と成人(18~64歳)の有効性および安全性は同等であることが確認されています。<用法・用量>通常、投与開始後1週間は、シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAUを1日1回1錠、投与2週目以降は、5,000JAUを1日1回1錠、舌下にて1分間保持した後、飲み込みます。その後5分間は、うがいや飲食を控えるようにします。投与期間は3年以上が推奨されています。初回投与時は医師の監督のもと、投与後少なくとも30分間は安静な状態を保ち、ショックやアナフィラキシーなどが発現した際に救急処置ができるようにします(一般にI型のアレルギー反応は30分以内に発現するため)。なお、スギ花粉飛散時期は、アレルゲンに対する患者の過敏性が高まっている可能性が高いため、新たに投与を開始することはできません。<副作用>国内第II/III相臨床試験において、783例中394例(50.3%)に、臨床検査値異常を含む副作用が認められています。主な副作用は、口腔浮腫113例(14.4%)、咽頭刺激感112例(14.3%)、耳そう痒症98例(12.5%)、口腔そう痒症67例(8.6%)、咽喉頭不快感57例(7.3%)、口腔内不快感47例(6.0%)でした。なお、ショック、アナフィラキシーなどの重篤な副作用は報告されていません。<患者さんへの指導例>1.スギ花粉症の原因であるアレルゲンを長期間投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげることができます。治療は、3年以上続ける必要があります。2.舌の下に置くと唾液で溶けてなくなりますが、薬の溶けた唾液はすぐに飲み込まず1分間舌の下に保持してください。飲み込んだ後、5分間はうがいや飲食を控えてください。3.錠剤は吸湿性があるため、服用直前までシートを開けないでください。4.シートから取り出す際は、裏のシートを剥がした後、爪を立てずに指の腹で押し出してください。取り出す際に割れてしまっても、全量を服用すれば問題ありません。5.口の中の違和感や口内炎、唇の腫れ、咽頭や耳にかゆみなどがあらわれた場合は、相談してください。6.お子さんが服用する場合は、飲み終わるまで目を離さないようにしてください。7.飲み忘れた場合、同日中に気付いたときは服用して構いませんが、1日空いてしまった場合、前日の用量から再開してください。<Shimo's eyes>減感作療法は、対症療法とは異なり、治癒あるいは長期寛解が期待できる治療方法です。原因アレルゲンを投与する治療法であるため、服用中はショックやアナフィラキシーの発現にとくに注意が必要です。従来、アレルゲンを皮下注射により取り込む皮下免疫療法が主流でしたが、2014年にはスギ花粉エキス舌下液(商品名:シダトレンスギ花粉舌下液)が発売され、舌下免疫療法が開始されました。皮下免疫療法と比べ、2日目からは自宅で服薬可能で、長期に渡る定期通院が不要になること、注射による痛みなく治療できることなどから、患者さんの負担軽減につながりました。本剤は、舌下液の問題点を改良したものと言えます。錠剤になったことで扱いやすくなり、かつ舌下の保持時間が2分間から1分間に短縮され、煩雑だった増量期間も開始1週間後の1段階のみになるなど、服用方法が簡便になりました。また、保管方法も、冷所から室温になったので、出張や旅行がある患者さんにとってはとくに喜ばしいことでしょう。本剤は、維持期の投与量が舌下液の2,000JAUよりも高力価の5,000JAUになったため、高い有効性が期待できます。よって、舌下液から本剤への切り替えが想定されますが、その場合も初回投与として扱われますので、注意が必要です。なお、本剤は新有効成分含有医薬品として承認を受けているので、2019年4月末までは、1回の処方につき14日分までの処方日数制限があります。本剤は、講習会やeラーニングなどの受講を修了し、鳥居薬品株式会社の製品適正使用eラーニング受講およびeテスト合格を経て登録された医療機関・医師のみが処方可能です。薬剤師は、本剤の処方せんを受け取ったとき、必ず処方医が「受講修了医師」であることを、登録医師確認窓口で確認しなくてはなりません。また、患者に交付されている「患者携帯カード」の記載内容について、確認を行う必要があります。

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細胞接着分子CADM1は菌状息肉症の診断に有効

 菌状息肉症(MF)は、最も頻度の高い皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)であるが、早期MFの紅斑(Patch)と局面(Plaque)は、乾癬やアトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患(ISD)によく似ている。ヒトの非小細胞肺がんのがん抑制遺伝子として同定された細胞接着分子のCADM1は、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)の診断マーカーとして報告されており、今回、新潟大学大学院医歯学総合研究科の結城 明彦氏らは、「CADM1陽性細胞は浸潤が少ない早期症例で確認され、早期MFの診断マーカーとして有用かもしれない」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年6月18日号掲載の報告。 研究グループは、早期MF腫瘍細胞におけるCADM1の発現と、それがMFの診断マーカーとして評価されるかを調査する目的で、多施設共同後ろ向き研究を行った。 免疫組織化学染色を用いて、MFのCADM1の発現を確認した。それに加え、マイクロダイセクションにより得られたMFとISDの各標本のCADM1 mRNAの発現を比較した。 主な結果は以下のとおり。・MFは58例中55例(94.8%)がCADM1陽性であった。・ISDは50例すべてがCADM1陽性を示さなかった(p<0.0001)。・MF症例の真皮内リンパ球においてCADM1 mRNAの発現を確認したが、ISD症例では見られなかった。

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第1回 炎症疾患疑いの検査/頓服薬の期間算定/腫瘍マーカーの検査/皮膚科特定疾患指導管理料【レセプト査定の回避術 】

事例1 炎症疾患疑いの検査慢性疾患で通院している患者に対し、炎症疾患を疑いCRPを実施した。●査定点レセプト請求では、炎症疾患疑いを病名に追記しなかったため査定された。解説を見る●解説病名漏れに対するCRP査定(16点)ですが、同時に免疫学的検査判断料(144点)も査定されるので、CRPを実施したときは、必ず、炎症疾患疑いを病名追記するようにしてください。事例2 頓服薬の期間算定頓服薬として、30日分を請求した。●査定点20日間が査定された。解説を見る●解説10日以上の頓服薬は査定の対象になります。電子カルテの普及に伴い、内服薬の用法を間違えて、頓服薬として30日分、60日分などで請求してしまうことがあります。これは、「医療機関側のミス」となるので、医師の入力ミス防止策の検討、医事課の点検を強化する必要があります。事例3 腫瘍マーカーの検査慢性疾患で通院している患者が、4月にα-フェトプロテイン(107点)を施行した。6月に肝がんが確定し癌胎児性抗原(CEA)(105点)とCA19-9(130点)を施行し、悪性腫瘍特異物質治療管理(360点)+初回月加算(150点)を算定した。●査定点初回月加算(150点)が査定された。解説を見る●解説初回月加算の条件に、「悪性腫瘍特異物質治療管理料を算定する当該初回月の前月において、区分番号「D009」腫瘍マーカーを算定している場合は、当該初回月加算は算定できない」と通知されています。この前月とは、「事例3 腫瘍マーカーの検査」でいうと5月にあたるので、6月の初回月加算(150点)は算定できます。事例4 皮膚科特定疾患指導管理料アトピー性皮膚炎で、先月処方した外用薬を使用するよう患者に指導し、皮膚科特定疾患指導管理料(II)を算定した。●査定点皮膚科特定疾患指導管理料(II)が査定された。解説を見る●解説アトピー性皮膚炎で、皮膚科特定疾患指導管理料(II)を算定するには、「外用療法を必要とする場合に限り算定できる」となっています。先月、処方した外用薬の使用範囲が少なくなり、今月も先月処方した外用薬を継続使用することになりましたが、レセプトに外用薬または院外処方箋が算定されていないため、外用療法をしていないと審査され、査定されました。レセプトに、簡単なコメント、たとえば「薬剤は先月分の薬剤を継続使用しています」と記載することが望まれます。

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小児のアトピー性皮膚炎、重症例で白内障のリスク増加

 小児のアトピー性皮膚炎(AD)患者における白内障の発症リスクに関するデータは不足している。韓国・ソウル大学のHyun Sun Jeon氏らは10年間にわたり集団ベースの後ろ向きコホート研究(縦断研究)を行った。その結果、白内障の絶対リスクはADの有無にかかわらず非常に低かったが、ADを有する小児は手術を要する白内障のリスクが高く、とくに重症の場合は白内障の発症と白内障手術の両方のリスクが高まる可能性が示唆された。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年6月7日号掲載の報告。 研究グループは、韓国の小児集団において、ADと続発性白内障の発症および白内障手術との関連を調査する目的で、2002~13年のKorean National Health Insurance Service databaseからnationally representative dataを用いて解析した。対象は20歳未満のAD患者または重症AD患者で、年齢、性別、居住地域および世帯収入から傾向スコアを算出して、調整した。 主要評価項目は、白内障発症率と白内障手術の発生率で、カプランマイヤー法とログランク検定を用いAD群と対照群を比較した。また、対照群における白内障および白内障手術のリスク因子について、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、AD群3万4,375例(女児1万6,159例[47%]、平均年齢[±SD]3.47±4.96歳、重症AD群3,734例[10.9%])、対照群13万7,500例であった。・白内障の発症は、AD群と対照群で差はなかった(0.216% vs.0.227%、95%信頼区間[CI]:-0.041~0.063%、p=0.32)。重症AD群とその対照群も同様に差はなかった(0.520% vs.0.276%、95%CI:-0.073~0.561%、p=0.06)。・白内障手術の施行は、AD群で対照群より高頻度であった(0.075% vs.0.041%、95%CI:0.017~0.050%、p=0.02)。重症AD群とその対照群でも同様であった(0.221% vs.0.070%、95%CI:0.021~0.279%、p=0.03)。・重症AD群は、白内障の発症(補正後ハザード比:1.94、95%CI:1.06~3.58、p=0.03)および白内障手術の実施条件(補正後ハザード比:5.48、95%CI:1.90~15.79、p=0.002)の両方に関連していた。

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世界初のアレルギー性鼻炎治療貼付薬「アレサガテープ4mg/8mg」【下平博士のDIノート】第2回

世界初のアレルギー性鼻炎治療貼付薬「アレサガテープ4mg/8mg」今回は、「エメダスチンフマル酸塩 経皮吸収型製剤4mg/8mg(商品名:アレサガテープ)」を紹介します。世界初の経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療薬で、嚥下困難な患者さんへの安全な使用が可能であり、また、安定した血中薬物濃度の維持により、日中だけでなく、睡眠中や起床時にも効果の持続が期待されます。<効能・効果>アレルギー性鼻炎の適応で、2018年1月19日に承認され、2018年4月24日より販売されています。本剤は、アレルギー反応による肥満細胞からのケミカルメディエーター遊離抑制作用を持つ第2世代抗ヒスタミン薬です。1993年に同成分であるエメダスチンフマル酸塩の経口薬が、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹などを適応として発売されましたが、本剤の適応は、2018年5月末時点でアレルギー性鼻炎のみです。<用法・用量>通常、成人には1回4mgを胸部、上腕部、背部または腹部のいずれかに貼付し、24時間ごとに貼り替えます。なお、症状に応じて、1回8mgまで増量可能です。肝障害歴を有する患者さんは、本剤の使用により肝機能異常が発現する恐れがあるので、慎重投与が指示されています。<臨床効果>季節性アレルギー性鼻炎患者1,273例を対象とした、国内第III相二重盲検比較試験において、本剤貼付群(エメダスチンフマル酸塩として4mgまたは8mg)、プラセボ対照群、実薬対照群(レボセチリジン塩酸塩錠5mg)に1日1回2週間投与した結果、主要評価項目である鼻症状(くしゃみ発作、鼻汁、鼻閉)の合計スコア変化量において、本剤貼付群はプラセボ対照群に対し有意な低下が認められ、実薬対照群と同程度でした。<副作用>国内の臨床試験では、臨床検査値異常を含む副作用が1,060例中201例(19.0%)に認められています。主な副作用は、貼付部位紅斑116例(10.9%)、眠気52例(4.9%)、貼付部位掻痒感48例(4.5%)などでした。<患者さんへの指導例>1.くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状を改善するテープ製剤です。2.1日1回新しい薬に貼り替えますが、毎回貼る場所を変えてください。なるべく毎日同じ時間帯に貼り替えることが望ましいです。3.胸部、上腕部、背部または腹部で傷や赤みがない部位を選び、乾いたタオルなどでよく拭って清潔にしてから貼りましょう。4.テープが途中で剥がれた場合、すぐに新しいテープを貼り、指示されている貼り替え時間になったら、再度貼り替えてください。5.眠気が生じることがあるので、本剤を使用している間は、車の運転など危険を伴う作業はしないでください。また、眠気が強くなる恐れがあるので、飲酒も避けてください。6.本剤を使用中の授乳は避けてください(ラットで乳汁移行の報告あり)。7.現在服用中のアレルギー薬、ステロイド薬がある場合、自己判断で中止せず、必ず主治医・薬剤師に相談してください。<Shimo's eyes>世界初の経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療薬で、1日1回の貼付で安定した血中薬物濃度を維持し、効果を持続させることができます。また、嚥下能力の低下や誤嚥リスクがある患者さんでは経口薬の服用が困難な場合もありますが、本剤であれば安全に使用することができます。家族や介護者が貼付したり、日々の服薬状況を目視で確認したりできるため、アドヒアランスの向上も期待できます。本剤を季節性鼻炎の患者さんに使用する場合は、好発季節を考えて、その直前から使用を開始し、好発季節終了時まで続けることが望ましいです。4mgよりも8mgを使用しているほうが眠気などの副作用が出やすくなるので、増量した直後は生活習慣や副作用の確認をより念入りに行いましょう。アレルギー性鼻炎の適応で承認された本剤のように、従来なかった分野や疾患で貼付薬が発売されています。患者さん個々のライフスタイルに合わせた治療で、生活の質を向上させるための選択肢が増えたのは喜ばしいことです。各剤形の特徴を理解し、必要に応じて処方提案できるとよいでしょう。

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鼻炎患者の半数以上が未治療のまま?

 アレルギー性鼻炎の患者数は近年増加しており、本疾患による労働者1人当たりの経済的損失額は19万1,783円/年になるという報告もある。鳥居薬品株式会社は、「通年性アレルギー性鼻炎・花粉症 全国意識・実態調査」を実施し、結果を公表した。 調査の結果、長年アレルギー性鼻炎の症状に悩まされている患者の割合が回答者全体の半分以上であるにもかかわらず、医療機関への定期受診率は20%未満であり、疾患の原因と治療法の認識不足が浮き彫りになった。他科受診などを機会に、鼻炎症状が見られた場合、症状の程度や治療の理解についての確認が必要かもしれない。 本研究は、全国の通年性アレルギー性鼻炎、花粉症いずれかの症状を申告した15~64歳の患者4,692例(各都道府県100例、山梨県のみ92例[調査結果の分析ではウェイトバック集計で補正])と、子供(5~15歳の小児)が両疾患のいずれかを持っていると申告した保護者1,600名(全国を8地域に分け、各地方200名)を対象に、2018年3月、インターネット調査として実施された。 主な結果は以下のとおり。・症状を自覚し、10年以上悩まされている患者は、通年性アレルギー性鼻炎で64.6%、花粉症で51.9%だった。また、症状が出てから3年以上症状に悩まされている小児は、通年性アレルギー性鼻炎で53.8%、花粉症で48.0%だった。・症状や対策で、最も不満に思っていることは「完治しない」が最多だった。 患 者/通年性アレルギー性鼻炎:47.3%、花粉症:41.0% 保護者/通年性アレルギー性鼻炎:49.4%、花粉症:43.0%・患者における医療機関への定期受診率は、通年性アレルギー性鼻炎で8.1%、花粉症で16.0%だった。未受診の理由は、通年性アレルギー性鼻炎では「体質だから仕方ない」が、花粉症では「市販薬で対応しているから」が上位を占めた。また、小児における定期受診率は、通年性アレルギー性鼻炎で19.8%、花粉症で36.1%だった。・「舌下免疫療法」による治療の意向がある保護者は、通年性アレルギー性鼻炎で45.0%、花粉症で48.4%だった。 調査の監修を担当した大久保 公裕氏(日本医科大学大学院医学研究科 頭頸部・感覚器科学分野 教授)は、「アレルギー治療において重要なことは、まず症状の原因を特定し、できる限りその原因を避けることにあります。とくに小児においては、幼少期のアレルギー疾患が起点となり他のアレルギー疾患に進展する傾向がみられること(アレルギーマーチ)が知られており、その重要性はなおさらです。今後はより多くの患者さんがアレルギー疾患、検査、治療に対して正しい情報を得ることができ、より適切な対処ができるよう、そしてわれわれ医療者はそれらに対応できるようになることが求められています」とコメントしている。■参考鳥居薬品株式会社 プレスリリース■関連記事診療よろず相談TV シーズンII 第17回「花粉症」

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難治アトピー、10年ぶりの新薬に期待

 2018年5月8日、サノフィ株式会社は、アトピー性皮膚炎(AD)に関するメディアセミナーを都内で開催した。本セミナーでは、「アトピー性皮膚炎初の生物学的製剤『デュピクセント(一般名:デュピルマブ)』治験のご報告~深刻な“Disease Burden”(疾病負荷)からの解放をめざして~」をテーマに、AD患者の経験談、新薬が拓くAD改善の可能性、治療の展望などが語られた。重症AD患者の日常生活を取り戻す可能性 田中 暁生氏(広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 皮膚科学 准教授)が、AD標準治療とその課題、デュピルマブの投与症例などについて説明した。 ADは、皮膚バリア破壊、免疫・アレルギー異常、かゆみの3病態が互いに連動しているが、保湿剤、ステロイド外用薬、免疫抑制薬、内服抗ヒスタミン薬を適切に使用することで、重症を含めたほとんどの患者は、寛解状態(湿疹のない状態)を得ることが可能であるという。しかし、これらの治療は、毎日広範囲に外用薬を塗布するなど負担が大きいため、間違った使い方や誤解により効果が得られない例が存在する点を田中氏は指摘した。 デュピルマブは、ADの代表的な3つの病態すべてに作用し、症状を改善する可能性がある。治験を担当した同氏は、「デュピルマブにより疾患がコントロールされ、患者さんが今まで制限されていた日常生活を取り戻す症例を経験した。新たな治療選択肢の登場が、AD治療の歴史を変える転換点になることを期待する」と語った。ガイドラインを順守し、デュピルマブの適切な使用を 次に、佐伯 秀久氏(日本医科大学大学院 皮膚粘膜病態学 教授)が、デュピルマブの治験成績を説明し、AD治療における今後の期待などを述べた。 ADの評価尺度として、臨床徴候をスコア化したEASIが国際的に用いられている。国際共同第III相試験は、中等~重症の成人AD患者を対象に行われ、ステロイド外用薬(ストロング)との併用で、治療期間52週における、デュピルマブの有効性と安全性が検討された。その結果、16週時点でEASIスコアは平均80.1%低下し、その後52週まで維持された。副作用は注射部位反応、頭痛、アレルギー性結膜炎などが発現したが、重篤な有害事象は対照群と比較して、発生件数に大きな差は認められなかった(デュビルマブ群14例、対照群16例)。 デュピルマブは、2018年4月、最適使用推進ガイドラインが厚生労働省より策定され、投与対象の条件について具体的に定められている。佐伯氏は、「ADはまず標準治療をしっかり行うことが重要。デュピルマブは、重症難治例や、副作用などにより既存の薬剤を使用できない例などの、アンメットニーズを満たす薬剤として期待できる」と語った。 最後に両医師が、ADの病態は、良好な状態が長期間続くほど、その後の経過も良い傾向にあると示した。「適切な治療により症状が大きく改善され、維持できたら、徐々に薬を減らしたり、間隔を広げたりできる可能性は十分に見込めるので、AD患者は積極的に目的意識を持つことが重要」だと締めた。疾病負荷は良質なコミュニケーションで改善の可能性 ADは、増悪・寛解を繰り返す慢性疾患である。患者数の増加が続いており、2014年の総患者数は推計45万6,000人、その2~3割が中等症以上といわれている。2017年にサノフィ株式会社が行った意識調査によると、ADによる生活の質への影響は85.7%、精神面への影響は79.3%の患者が感じており、患者の疾病負荷への理解や認識は、症状改善のための大事なファクターと考えられる。 現在、治療はガイドラインに基づいて行われているが、医師とのコミュニケーションが不足しているほど、症状の改善・寛解の割合は低いままだったという。医師はこの現状を把握し、身体症状以外の負荷についてヒアリングを行うなど、患者の気持ちに寄り添ったコミュニケーションを心掛けていくことが求められる。 ADの新薬は、ここ10年間登場していなかった。デュピルマブは、従来とはまったく異なる作用機序を持つため、既存治療で効果不十分な中等~重症患者に、待ち望まれた新薬と言える。なお、同薬は現在、コントロール不良の気管支喘息に対する適応の追加を申請中。■参考サノフィ株式会社 プレスリリース認定NPO法人 日本アレルギー友の会■関連記事アトピー性皮膚炎に初の抗体医薬品発売

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アトピー性皮膚炎の重症化にTLR2が影響か?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者の皮膚には、疾患を重症化させる黄色ブドウ球菌が存在し、それは高度なコロニー形成によりヒト微生物叢のバランスを崩壊させる。ドイツ・ボン大学の岩本 和真氏らによる検討で、アトピー性皮膚炎患者ではTLR2を介した黄色ブドウ球菌由来シグナルの感知が、ランゲルハンス細胞(LC)で強く障害されていることが示唆された。著者は、「この現象は、アトピー性皮膚炎では免疫デビエイションと黄色ブドウ球菌の除去不足が影響している」とまとめている。Allergy誌オンライン版2018年4月19日号掲載の報告。 研究グループは、ADにおける自然免疫と獲得免疫のつなぎ役としての表皮樹状細胞の役割を明らかにするために、健康な人とAD患者の皮膚から新たに分離した器官モデルでLCと樹状細胞(IDEC)のTLR2の機能解析と表現型の比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・in situ分析において、AD皮膚の新鮮分離LCおよびIDECは、健康な皮膚のLCと比較して、TLR2の発現が減少していた。・AD皮膚のLCは、IDECとは対照的に、in situで活性化の証拠が示されなかった。・健康な皮膚のLCは、TLR2リガンドへの曝露により成熟し、遊走活性が増加した。・AD皮膚のLCおよびIDECは、TLR2リガンドに反応せず、成熟しなかったが、高い自然遊走活性を示した。・健康な皮膚およびAD皮膚のケラチノサイトは共に、TLR2発現が同程度であった。・AD皮膚培養上清中のIL-6とIL-10の産生は、Pam3Cysによって低下した。・IL-18の値は、健康な皮膚と比較しAD培養上清中で有意に高く、TLR2ライゲーションの影響はなかった。

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アレルギー性鼻炎に、初の経皮製剤発売

 久光製薬株式会社は、2018年4月24日、アレルギー性鼻炎を効能・効果とする、エメダスチンフマル酸塩(商品名:アレサガテープ4mg/8mg)を発売した。 本剤は、第2世代抗ヒスタミン薬で、TDDS(Transdermal Drug Delivery System:経皮薬物送達システム)技術を用いて開発された、全身性のテープ剤である。 アレルギー性鼻炎は、鼻粘膜のI型アレルギー性疾患で、原則として、発作性・反復性のくしゃみ、水様性の鼻漏、鼻閉を3主徴とする。季節性の場合は花粉症と呼ばれ、若年から老年まで、患者数の多い疾患である。本剤は、経皮吸収型製剤であり、1日1回で24時間効果が持続し、また、嚥下困難な患者にも安全に投与できることなどから、服薬アドヒアランスの向上が期待される。 本剤は、通常、成人には4mgを胸部、上腕部、背部または腹部のいずれかに貼付し、24時間おきに貼り替える。症状に応じて、1回8mgに増量可能。薬価は、4mgが67.5円/枚、8mgが93.1円/枚。副作用として眠気があるので、使用中には自動車の運転など、危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分な注意が指示されている。■参考久光製薬株式会社 プレスリリース

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シラカバ花粉関連食品がアトピー性皮膚炎の湿疹増悪に影響か

 ドイツ・ハノーバー医科大学のAnja Wassmann-Otto氏らによる、二重盲検食物負荷試験(DBPCFC)の後ろ向き研究によって、アトピー性皮膚炎(AD)でカバノキ科(シラカバ)の花粉感作に関連する患者では、シラカバ花粉関連食品の摂取が湿疹増悪の誘因と考えるべきであることが示された。これまでの研究で、同様の所見は示されていたが、議論の余地が残されていた。なお今回の結果について著者は、「遅発性湿疹反応を予測する十分なマーカーがまだ不足しているので、ADを有する患者のシラカバ花粉関連食品に対する診断において、DBPCFCに代わる手法はない」と述べている。Allergy誌オンライン版2018年4月13日号掲載の報告。 研究グループは、シラカバ花粉関連食品がどのくらい湿疹の悪化を誘発するかを調べる目的で後ろ向き研究を行った。また、総IgEならびに特異的IgE抗体価を評価した。 ADを発症し、シラカバ花粉関連食品にアレルギーの疑いがある、小児および成人182例を対象としてDBPCFCを行った。DBPCFCの前に総IgEならびに特異的IgE抗体価を測定した。 主な結果は以下のとおり。・65例が、DBPCFCでシラカバ花粉関連食品にアレルギー反応を認めた。・このうち32例は、ADの有意な悪化を認めた。・さらにこの32例は、AD重症度分類(SCORAD)において、ベースラインから中央値で15.4点(95%信頼区間[CI]:12.4~16.3)上昇し、これは全反応の37%を占めた。・65例の反応者は非反応者と比較して、シラカバ花粉とリンゴに対する特異的IgE抗体価が有意に高く、アレルギー性鼻炎・結膜炎の有病率が高かった(p<0.05)。・しかしながら、遅発性湿疹を起こした患者は、特異的IgE抗体による即時型反応を有する患者と区別することができなかった。

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アトピー性皮膚炎に初の抗体医薬品発売

 サノフィ株式会社は、2018年4月23日、「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」を効能・効果とした、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体製剤デュピルマブ(商品名:デュピクセント皮下注300mgシリンジ)を発売した。アトピー性皮膚炎治療薬として、初めての抗体医薬品である。 デュピルマブは、IL-4受容体αサブユニット(IL-4Rα)に特異的に結合し、Th2サイトカインであるIL-4およびIL-13の両シグナル伝達を阻害する、遺伝子組換えヒト型モノクローナル抗体である。臨床試験では、ステロイド外用薬の効果が不十分な中等~重症の成人アトピー性皮膚炎患者を対象に、ステロイド外用薬との併用療法または単独療法で、有効性と安全性が確認された。 アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする慢性炎症性疾患である。中等~重症例では、広範な発疹を特徴とし、持続する激しい難治性のかゆみ、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑、痂皮、毛細血管出血を伴うことがある。かゆみは、患者にとって最も大きな負担であり、体力消耗、睡眠障害、不安や抑うつ症状の原因ともなり、生活の質に影響を及ぼす。デュピルマブは、既存の抗炎症外用薬で効果不十分なアトピー性皮膚炎患者への、新たな選択肢として期待されている。 デュピルマブは、安全装置付きプレフィルド・シリンジで、自己注射可能な1回使いきりの製剤。初回は600mg(2キット)、2回目以降は300mgを2週間隔で皮下注射する。薬価は8万1,640円。 原則として、抗炎症・保湿外用薬と併用で使用する。他のアレルギー性疾患を併発している場合、症状が急変する恐れがあるので、注意が必要となる。 現在、コントロール不良の気管支喘息に対する適応の追加申請中。■参考サノフィ株式会社 プレスリリース(PDFがダウンロードされます)

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第14回 オンライン診療、対象となるケースとならないケース【患者コミュニケーション塾】

オンライン診療、対象となるケースとならないケース情報通信機器の登場によって、離島やへき地などで遠隔診療を行えば医師不足を補えるのではないか、という考えのもと、1997年に遠隔診療と「医師は、自ら診察しないで治療を(中略)してはならない」という医師法第20条との関係が整理されました。その際、対象となるのは「離島、へき地、別表の患者」として、(別表)「在宅酸素療法を行っている患者、在宅難病患者、在宅糖尿病患者、在宅喘息患者、在宅高血圧患者、在宅アトピー性皮膚炎患者、褥瘡のある在宅療養患者、在宅脳血管障害療養患者、在宅がん患者」が示されたのです。ところが、2015年に「“遠隔診療の対象は1997年に示した患者に限定されず”、別表の患者は単なる“例示”であって、それ以外の患者でも認められる」としたことから、急速に対象が広がっていきました。さらに、2016年に「対面診療を行わず遠隔診療だけで診療を完結することは医師法違反になりうる」とされた通知が、翌2017年には「患者側の理由で診療が中断した場合は、ただちに医師法違反にならない」として、禁煙外来での柔軟な対応が認められ、テレビ電話や電子メール、SNSなどを組み合わせた診療が可能との通知が発出され、さらに一部で広がりをみせました。そこで、今後適切な普及を図るためにも、一定のルールが必要ということで、今年3月にオンライン診療のガイドライン(「オンライン診療の適切な実施に関する指針」)がまとめられました。その検討会に構成員として参加した立場から、このガイドラインについてご紹介したいと思います。このガイドラインでは、そもそも「遠隔医療」とは、情報通信機器を活用した健康増進や医療に関する行為と広く定義しています。そして、その遠隔医療の一部として、医師と患者が情報通信機器を通して診察をリアルタイムで行う行為を「オンライン診療」と定義しました。また、情報通信機器を用いて患者の状態を確認し、症状や訴えから疑わしい病気を判断して、受診すべき適切な科を選択するなど、最低限の医学的判断を行う行為を「オンライン受診勧奨」と位置付けて、これもガイドラインの対象にしています。一方、常識的にどう考えても受診するほどではない症状の人に「しばらく様子をみてはどうか」「受診の必要はない」といった指示を行うことや、医学的な判断を行わず「気になるようだったら内科を受診してみては?」といった一般的な受診の勧めをした場合は「遠隔医療相談」とし、ガイドラインの対象にはなりません。ただ、これらはいずれの境目にもグレーゾーンが存在するだけに、なかなか微妙なニュアンスによって判断が難しくなる部分もあるように思います。「医師と患者の直接的な関係がすでに存在していること」が基本ガイドラインでは、オンライン診療の基本理念として、①患者から日常生活の情報も得て、医療の質のさらなる向上に結び付けていくこと②情報通信機器へのアクセスしやすさを確保して、患者がより良い医療を得る機会を増やすこと③患者が治療に能動的に参画することで、治療の効果を最大化することとしています。これは何もオンライン診療に特別のことではなく、通常の医療でも基本となる事柄です。そして、医師と患者の直接的な関係がすでに存在している場合にオンライン診療が利用されることを基本として、最初から一度も直接会うことなくオンライン診療を行わないよう、「原則として初診は対面診療」を求めています。また、オンライン診療を行っている途中で、十分な情報が得られず適切な診断ができないと判断すれば、オンライン診療を中断して対面による診療に切り替えること、としています。また、オンライン診療では触診や聴診などができず、視覚的にも画像によっては直接見る場合と色合いなどが異なる場合があります。そのため、オンライン診療では対面診療に比べて、医師が直接取得できる情報が限定されます。そのようなオンライン診療上の不利益についても、事前に患者に説明しなければならない、としています。当然ながら、治験や臨床試験などを経ていないような、安全性が未確立な医療はオンライン診療で行うべきでないと明記されました。そして、オンライン診療における利点、生じる恐れのある不利益などについて患者がしっかり理解したうえで、患者が望んだ場合に実施されるべきであり、医師側の都合のみでオンライン診療を行ってはいけないとされています。次回はより具体的な場面を想定して、ガイドラインに示されているオンライン診療の適用について、例を挙げてご紹介します。

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012)憎き花粉との戦い【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第12回 憎き花粉との戦いしがない皮膚科勤務医デルぽんです☆小4の頃から毎年のように悩まされている、この時期の花粉…!(スギ・ヒノキ)今年はいよいよ抗アレルギー薬の内服量を増やし、毎度ぬかりなく点眼・点鼻も併用し、たまの外出には必ずマスクとメガネとつるつるの服の完全防護。そして、帰宅の際には室内に花粉を持ち込まないよう、しっかりと払い落としてから中に入り、掃除も万全。とにかく目は掻かないように、冷やしたり、なんだりしているものの…。痒い!今年は「目が痒い」という患者さんがたくさん来ていますが、たしかに今年はとくに目が痒いです!!風の強い日には(極力外出しないようにしているものの、どうしても出るときは)、もはや目を閉じ気味にし、いざとなったら瞳を閉じてシャットアウト(※気持ちだけ)。皮膚に花粉が直接つかないよう、目の周りに軟膏(プロペト)を塗ってみたり、静電気防止の花粉ガードスプレーをしてみたり、とあの手この手で挑んでいますが、今年はなかなか苦戦中です…。全国の杉がニクイ!!では、また次回! バーイ☆

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成人アトピー、日米欧での有病率は約2~5%

 成人におけるアトピー性皮膚炎(AD)の有病率については認識に違いがあることから、フランス・ナント大学病院のSebastien Barbarot氏らは、米国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国および日本においてWEBベースの国際横断研究を行った。その結果、各国における成人のAD有病率は2.1~4.9%で、評価尺度または地域に関係なく重症ADの割合は低いことが示された。Allergy誌オンライン版2018年2月13日号掲載の報告。成人アトピーの有病率を米国・カナダ・EU・日本で推定 研究グループは、成人におけるAD有病率を全体および重症度別に推定する目的で、WEBベースの国際横断研究を行った。 オンライン回答者には、ADの確認と重症度評価のためのアンケートを送付した。各国の参加者数は人口統計学的に割り当てた。ADの確認は、modified UK Working Party/ISAAC基準で陽性および医師によるAD診断歴の自己報告に基づいた。ADの治療を受けていると報告したADを有する参加者の割合を算出し、有病率の推定に用いた。重症度の評価尺度は、患者によるアトピー性皮膚炎評価スコア(PO-SCORAD)、患者による湿疹評価スコア(PO-EM)、および患者による全般評価(PGA)を用いた。 成人アトピーの国際横断の有病率を推定した主な結果は以下のとおり。・成人アトピーの時点有病率(有病者全体/治療中の集団)は、米国(4.9%/3.9%)、カナダ(3.5%/2.6%)、EU(4.4%/3.5%)および日本(2.1%/1.5%)であった。・成人アトピーの有病率は、概して女性より男性で低く、加齢とともに低下した。・成人アトピーの有病率は、各国内で地域による変動性が観察された。・成人アトピーの重症度は評価尺度および地域によって変化したが、重症ADの割合は評価尺度または地域に関係なく軽症および中等症ADの割合より低かった。

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日本人掌蹠膿疱症患者でguselkumabが有効

 日本人掌蹠膿疱症(PPP)患者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において、抗IL-23モノクローナル抗体guselkumabは、PPPの治療選択肢として安全かつ有用であることが認められた。日本大学の照井 正氏らが報告した。PPPは、難治性の皮膚疾患で、現在、治療薬として承認されている生物学的製剤はない。最近、PPPにインターロイキン23(IL-23)およびTh17ヘルパーT細胞系のサイトカインが関与していることが明らかになってきた。JAMA Dermatology誌オンライン版2018年2月7日掲載の報告。 本試験は、2013年5月14日~2014年9月27日に日本の11施設で行われた。対象は、従来の治療で十分な効果が得られなかった中等度~重度のPPP患者49例(女性:35例[71%]、年齢中央値52歳[範囲:28~77])である。guselkumab 200mg皮下投与群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、0週および4週に投与し、24週間観察した。 主要評価項目は、16週時における掌蹠膿疱症重症度指数(palmoplantar pustulosis severity index:PPSI)合計スコアのベースラインからの変化量である。ベースライン、4週時および16週時に血清バイオマーカーを測定するとともに、24週間を通して安全性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・49例中41例が24週間の試験を完遂した。・主要評価項目である16週時におけるPPSI合計スコアのベースラインからの変化量(平均±SD)は、guselkumab群-3.3±2.43、プラセボ群-1.8±2.09であり、guselkumab群で有意な改善を認めた(最小二乗平均差:-1.5、95%信頼区間[CI]:-2.9~-0.2、p=0.03)。・guselkumab群では、16週時における掌蹠膿疱症の面積と重症度指数(PPPASI)合計スコアのベースラインからの変化量(最小二乗平均差:-5.65、95%CI:-9.80~-1.50、p=0.009)、およびPPPASI合計スコアが50%以上改善した患者の割合(群間差:39.2%、95%CI:14.0~64.3、p=0.009)も有意に改善した。・医師総合評価(PGA)スコアが0(消失)または1(ごく軽度)の患者の割合は、プラセボ群に比べguselkumab群で高かった。・guselkumab群でみられたこれら有効性評価項目の改善は、24週間を通して維持された。・guselkumab群では、4週時および16週時に血清IL-17AおよびIL-17F濃度のベースラインからの有意な減少が観察された。・治療下で発現した有害事象は、guselkumab群で25例中19例(76%)、プラセボ群で24例中18例(75%)と両群で類似していた。・両群を合わせて発現頻度が高かった有害事象は、鼻咽頭炎(14例、29%)、頭痛(3例、6%)、接触性皮膚炎(3例、6%)および注射部位紅斑(3例、6%)であった。・試験期間中に重大な安全性の懸念は認められなかった。

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