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禁煙開始4週前からのニコチンパッチ、長期的効果は?/BMJ

 英国では、喫煙を中止した日以降は禁煙を補助する薬物療法が推奨されるが、喫煙中止日前の薬物療法(preloading)の長期的なベネフィットのエビデンスは明確ではないという。英国・オックスフォード大学のPaul Aveyard氏らは、ルーチンの診療における禁煙開始前のニコチン投与について検討した。その結果、明らかな長期的有効性は認めなかったものの、ニコチン前投与により禁煙開始後のバレニクリンの使用が減少し、これによってニコチンの効果がマスクされた可能性があると報告した。研究の成果は、BMJ誌2018年6月13日号に掲載された。禁煙前4週投与の長期的有効性を評価 研究グループ(Preloading Investigators)は、長期的な禁煙の達成における禁煙開始前4週間のニコチンパッチ使用の有効性を評価する非盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。 対象は、ニコチン依存がみられる毎日喫煙者(daily smoker)であった。被験者は、前投与群または対照群にランダムに割り付けられた。前投与群は喫煙を中止する前に21mgニコチンパッチ(1日1回)を4週間使用し、対照群は通常治療と行動支援を受けた。 主要アウトカムは、6ヵ月時の生化学的に確定された禁煙とし、副次アウトカムは、4週および12ヵ月時の禁煙であった。 2012年8月~2015年3月の期間に、イングランドのプライマリケア施設および禁煙クリニックに1,792例が登録され、前投与群に899例、対照群には893例が割り付けられた。バレニクリン使用で補正すると有意な効果 ベースラインの全体の平均年齢は48.9(SD 13.4)歳、男性が52.6%であった。既製タバコの使用者が68.2%、手巻きタバコの使用者が31.0%であり、平均1日喫煙本数は18.9(SD 9.3)本、過去6ヵ月以内に禁煙支援を受けた者は32.5%であった。 6ヵ月時の生化学的に確定された禁煙の達成率は、前投与群が17.5%(157/899例)、対照群は14.4%(129/893例)であった(群間差:3.0%、95%信頼区間[CI]:-0.4~6.4%、オッズ比[OR]:1.25、95%CI:0.97~1.62、p=0.08)。 両群間で、禁煙開始後の治療における禁煙補助薬バレニクリンの使用のバランスがとれておらず、対照群で多く用いられていた(22.1 vs.29.5%)。事前に計画された補正を行うと、ニコチン前投与の効果のORは1.34(95%CI:1.03~1.73、p=0.03、群間差:3.8%、95%CI:0.4~7.2)となり、有意な差が認められた。 4週時におけるバレニクリン使用で未補正の禁煙効果のORは1.21(95%CI:1.00~1.48)、群間差は4.3%(0.0~8.7%、p=0.05)であり、補正後のORは1.32(1.08~1.62、p=0.007)であった。また、12ヵ月時の未補正のORは1.28(0.97~1.69)、群間差は2.7%(-0.4~5.8、p=0.09)であり、補正後のORは1.36(1.02~1.80、p=0.04)であった。 前投与群の5.9%が不耐のためニコチンパッチを中止した。消化器症状(主に悪心)は、前投与群のほうに高い頻度(4.0%)で認められた。重篤な有害事象は前投与群が8例、対照群も8例にみられた(OR:0.99、95%CI:0.36~2.75)。 著者は、「21mgニコチンパッチによるニコチンの禁煙開始前4週投与は、長期の禁煙において期待された効果を発揮し、安全で耐用可能と考えられるが、最も効果の高い禁煙補助薬であるバレニクリンの使用を抑制する可能性がある」とし、「この非意図的な結果を克服できれば、前投与は長期的な禁煙達成の増加に、価値のある効果をもたらす可能性がある」と指摘している。

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ORBITA試験:冷静な判断を求む(解説:野間重孝氏、下地顕一郎氏)-800

 COURAGE試験において安定狭心症に対するPCIは、薬物療法に比してMIや死亡を減らすことができないことが示され、現在では症状の改善を主目的として施行されている。そこで狭心症状という主観的なアウトカムが、PCIのプラセボ効果による修飾を受けているのではないかとの設問を立て、PCIのプラセボ手術(sham operationといった方が一般的か)を用いてこれを検証したところ、PCIは症状の改善すら薬物療法に対しての優位性を示せなかったというのが本論文の結論であった。倫理的な問題は後述するとして、手法としては完全であった点では評価されなければならないと思われる。 しかし、一方で懸念されるのは、この結果が拡大解釈されることである。Lancet同号のeditorialでは「安定狭心症に対するPCIの息の根をとめるか?」という激しいタイトルで、「薬物療法に対して不応な症例ですらPCIは無益」で「すべてのguidelineでPCIを格下げすべきである」と感情的とさえいえる論評が加えられているが、本試験の筆頭著者であるAl-Lameeさえもこれには異論を唱えている。注意しなければならないのは以下の2点であると考える。 まず挙げられなければならない点は、RCTの常としてリアルワールドを反映していないということである。本論文ではmedical therapyとして週1~3の電話相談、しかも家庭血圧と家庭心拍を密にモニターしているが、実臨床では実現不可能であろう。この点は筆者も十分理解しており、「労作性狭心症に対するPCIを絶対にするなという意味ではない。すべての患者が何剤もの抗狭心症薬を永遠に内服することをよしとするわけではない」、「リスクの低いPCI手技をして薬剤を減らすことを望む」患者にはPCIが治療選択となることを述べている点は看過されてはならないと思う。 もう1点は、重症虚血の症例にまでこの結果を適用してはならないということである。COURAGE試験のサブ解析でも、SPECT上のischemic burdenを5%以上減じればMIや死亡を減らすことができることと、PCI群でischemic burdenの有意な減少が得られたことを報告している。先行研究において、血行再建によってもたらされる利益が薬物療法を上回る閾値は10%以上の重症虚血であったこと、さらにLMT含む重症虚血が除外されているCOURAGE試験での治療前値が8%台であったことを考慮すると、COURAGE試験の結果を重症虚血に安易に拡大解釈することは危険なのは明らかであろう。同様に重症虚血を除外している本試験の結果は、もちろん重症虚血例に対して拡大解釈することはできない。現に本試験では、約1/3の症例でFFR/iFRで虚血が証明されていない。ちなみに本試験でも、FFR/iFRやドブタミン負荷心エコーではPCI群で虚血の改善をみている。すなわち現時点で“軽症の虚血においては”、血行再建は生命予後にも症状の緩和にも明らかな優位性を見いだせないということ以上の解釈はできず、すべての安定狭心症に対して血行再建を行うことが無益だという解釈は誤りである。 さらに、論文評として議論しておかなければならないのが、プラセボ手術の問題であろう。このような研究法(観血的な偽治療)が初めて試されたのは、腎動脈焼灼術による血圧変化を検討したrandomized studyにおいてだった。この時は、シースは挿入するがそれ以降の積極的な操作は何も行わないというものだったのだが、賛否両論が沸き起こったのを記憶している。今回はpressure wireを挿入するなど本格的手技に準ずる手技が行われており、しかも4例で合併症が、3例で大出血がみられたのである。安全性に問題のあるプラセボ治療は、プラセボ治療とはいえない。関係者の再考を促したいとともに、このような対照の取り方が、どのような目的であれ、無制限に拡大していくことを憂慮するものである。 ただし、本試験から虚心に学ぶべきことも多い。当然だが術前の虚血評価と薬物の最適化は重要であること、ましてangiographicにも中等度狭窄に対してのPCIは厳に非難されるべきものであること(実際、業績が欲しくて不必要なPCIが行われているケースが多々みられることは、残念ながら事実)、PCIのリスクがあまりに高い軽症の虚血の患者には厳重な薬物療法の選択肢も十分ありうることなどである。一方で、重症虚血の患者に対してひとたびPCIによる血行再建の選択をした際には、虚血を残すことなく解除することが絶対の前提であることは確認しておきたい。そのためにはCTOを含めた複雑病変に対する治療技術、angioguideのみでは見落としがちな病変をimaging device、FFR/iFRを駆使して完全血行再建を行うstrategyの構築が重要で、これが不可能なのであればCABGを選択して完全血行再建を目指すべきである。

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PCIで運動時間が改善するか?プラセボとのDBT/Lancet

 至適薬物治療を行った重度一枝狭窄の安定狭心症患者に対し、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施しても、運動時間の改善は認められないことが、無作為化プラセボ対照二重盲検試験で初めて明らかになった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRasha Al-Lamee氏らが、患者200例を対象に行った「ORBITA」試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年11月2日号で発表した。重度一枝狭窄の患者に6週間の至適薬物治療 研究グループは、70%以上の重度一枝狭窄が認められる安定狭心症で、虚血症状のある患者を対象に試験を行った。まず全登録被験者(230例)に対し、6週間の至適薬物治療を行った(2014年1月6日~2017年8月11日)。その後、心肺運動負荷試験、症状に関する質問票による評価、ドブタミン負荷心エコー法を実施し、無作為に被験者200例を2群に分け、一方にはPCIを(105例)、もう一方にはプラセボ手術を行った(95例)。 術後6週間後に、無作為化前に行った方法で再度評価を行った。主要エンドポイントは、運動時間増加量の群間差で、無作為化を受けた全被験者について解析を行った。PCI群で運動時間に改善みられず 被験者200例の、狭窄部位の平均狭窄率は84.4%(SD 10.2)、平均冠血流予備量比(FFR)は0.69(同0.16)、平均瞬時血流予備量比は0.76(同0.22)だった。 術後6週間の運動時間増加量について、両群で有意差は認められなかった(PCI群-プラセボ手術群:16.6秒、95%信頼区間:-8.9~42.0、p=0.200)。 試験期間中に死亡した被験者はいなかった。また、重篤な有害イベントとして、PCIを要したプレッシャワイヤ関連合併症(プラセボ手術群で4件)、大量出血5件(PCI群2件、プラセボ手術群3件)の発生が報告された。 なお今回の試験について著者は、「薬物療法でスタンダードになっているように、侵襲手技の有効性についてもプラセボ対照の評価は可能である」と述べている。

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FFRジャーナルClub 第5回

FFRジャーナルClubでは、FFRをより深く理解するために、最新の論文を読み、その解釈を議論していきます。第5回目の今回は、2017年にupdateされた安定型虚血性心疾患(SIHD:stable ischemic heart disease)の冠血行再建に関するAppropriate Use Criteria(AUC)のポイントを読んでいきたいと思います。第5回 AUC改訂のポイントAUCはさまざまな臨床シナリオを設定し、複数名の専門家がそれぞれの治療適応を判定したものであり、2009年に初めて報告された。2012年に初回のupdateが行われ、今回は2回目のupdateとなる。虚血の評価法としてFFRの重要性が大きく取り上げられた点で、興味深いものである。Patel MR, et al. ACC/AATS/AHA/ASE/ASNC/SCAI/SCCT/STS 2017 Appropriate Use Criteria for Coronary Revascularization in Patients With Stable Ischemic Heart Disease: A Report of the American College of Cardiology Appropriate Use Criteria Task Force, American Association for Thoracic Surgery, American Heart Association, American Society of Echocardiography, American Society of Nuclear Cardiology, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, Society of Cardiovascular Computed Tomography, and Society of Thoracic Surgeons. J Am Coll Cardiol. 2017;69:2212-2241.Fihn SD, et al. 2014 ACC/AHA/AATS/PCNA/SCAI/STS focused update of the guideline for the diagnosis and management of patients with stable ischemic heart disease: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines, and the American Association for Thoracic Surgery, Preventive Cardiovascular Nurses Association, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, and Society of Thoracic Surgeons. J Am Coll Cardiol. 2014;64:1929-1949.以前のAUCからの改訂点をまとめると。1.急性冠症候群(ACS)に対するものと、安定虚血性心疾患(SIHD)に対するものを別々にまとめることとなった。これはすでにACC/AHAの冠血行再建に対するガイドラインが、同様に分けて作成されているのでそれに従ったものである。2.臨床シナリオには、自覚症状、非侵襲検査によるリスクレベル、病変の広がり(病変枝数)に、冠血流予備量比(FFR)、糖尿病の有無、SYNTAXスコアが加えられた。3.AUCカテゴリー名称を変更した。Score 7 to 9:Appropriate careScore 4 to 6:May be appropriate careScore 1 to 3:Rarely appropriate care4.腎移植、TAVI前の冠血行再建に関するシナリオが追加・評価された。5.FFRの使用がより多くのシナリオに組み込まれた。AUCのスコアを決定するための因子は1.臨床徴候(虚血症状が惹起される運動レベルなど)2.抗狭心症薬の使用3.非侵襲的虚血検査の結果(虚血の存在および重症度)4.併存症・危険因子の存在(糖尿病など)5.解剖学的な病変の広がり(病変枝数、左主幹部病変の存在、LAD近位部病変の存在の有無)6.CABG既往の有無7.IVUSやFFRの所見(FFR≦0.80を心筋虚血の所見と定義されている)非侵襲的検査におけるリスク評価高リスク(死亡・心筋梗塞のリスク3%以上)1.安静時心エコー:低心機能(LVEF<35%)2.安静時SPECT:心筋灌流異常≧10%(心筋梗塞の既往を除く)3.負荷心電図所見:低負荷にて2mm以上のST低下、または負荷時のST上昇、または負荷時のVT/VF4.負荷誘発性の心機能低下:最大負荷時のLVEF<45%、あるいは負荷時のLVEF低下が10%以上5.負荷SPECT:負荷誘発性の灌流異常が10%以上、あるいは負荷時のスコアが多枝病変を示唆するもの6.負荷SPECT:負荷時左室拡大7.負荷誘発性の壁運動異常が冠動脈走行の2枝以上の領域にわたるもの8.ドブタミン負荷心エコー図:ドブタミン低用量(≦10mg/kg/min)あるいは低心拍数(<120 beats/min)にて壁運動異常が出現するもの9.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)>40010.冠動脈CT:多枝病変(≧70%狭窄が複数枝にわたる)あるいは左主幹部病変(≧50%狭窄)中等度リスク(死亡・心筋梗塞のリスク1~3%)1.安静時心エコー:軽度/中等度心機能低下(LVEF 35~49%)2.安静時SPECT:心筋灌流異常5~9.9%(心筋梗塞の既往を除く)3.労作性の症状出現時ECGにて1mm以上のST低下4.負荷SPECT:負荷誘発性の灌流異常が5~9.9%、あるいは負荷時のスコアが1枝病変を示唆し、負荷時左室拡大を伴わないもの5.負荷誘発性の壁運動異常が狭い範囲(冠動脈走行の1枝領域)に限定6.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)100~3997.冠動脈CT:高度狭窄(≧70%狭窄)を1枝に認める、あるいは中等度狭窄(50~69%狭窄)を2枝以上に認める低リスク(死亡・心筋梗塞のリスク<1%)1.Treadmill心電図:低リスクTreadmill score(≧5)、あるいは最大負荷量に達した時点でST変化・胸部症状の出現なし2.負荷・安静SPECT:安静時灌流異常がなく、負荷時灌流異常が<5%3.負荷心エコー図:負荷時壁運動異常の出現なし、あるいは増悪なし4.冠動脈CT:カルシウムスコア(Agatstonスコア)<1005.冠動脈CT:有意狭窄(>50%)を認めない冠動脈バイパス術(CABG)既往のないSIHD病変枝数(1~3枝)、左主幹部病変によって分けられる。それぞれの病変部位、リスク評価、虚血評価の状況によりシナリオが分けられている。さらに、無症候、有症候、抗狭心症薬投薬の有無、薬剤数(1種類あるいは2種類以上、薬剤としてはβ遮断薬が推奨されている)、治療戦略(PCIあるいはCABG)ごとにAppropriate Use Scoreが記載されている。1枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するAA:抗狭心症薬、BB:β遮断薬Left dominant LCX:RCAがhypoplastyであり、LCXの灌流範囲が2枝相当のもの。非侵襲的検査によりリスク評価を行う。非侵襲的検査が行われていないか、あるいはその結果が診断的でない場合はFFRを計測し、FFR≦0.80を虚血所見とする。LAD proximal、dominant LCXのproximal病変以外の場合は、低リスクであればRarely appropriate careにランクされる。2枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するDMの有無が、とくに血行再建選択(PCI or CABG)において大きな要素となる。負荷試験が行われていない(あるいは結果が診断的でない)場合は、2枝病変の両病変においてFFRが陽性であることが記載されており、機能的2枝病変のみが含まれる。1枝においてFFR陰性であれば、1枝病変におけるシナリオにて判定される。3枝病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大するDMの有無とともに、病変の複雑性が血行再建選択(PCI or CABG)の大きな要素となる。その1つの指標としてSYNTAXスコアが用いられている。左主幹部病変におけるAppropriate Use Score画像を拡大する孤立性で入口部あるいはLMT中間部のLMT病変において、有症候性の場合は、PCIがAppropriate careにランクされていることは特筆すべきである。解剖学的に複雑となる場合は、CABGがより推奨されるが、多枝病変であってもSYNTAX≦22で、内服下に有症候性であればPCIはMay be appropriate careにランクされる。LMT bifurcation lesionに、その他の部位のbifurcation lesion、diffuse lesionを合併し、SYNTAXスコア>22となるような複雑病変では、PCIはRarely appropriate careにランクされる。解説:今回は、血行再建に対するAUC update版の中で、SIHDに対するもの、その中でもCABG既往のない症例の臨床シナリオを紹介した。すべてのシナリオにおいて、非侵襲的検査によるリスク評価の結果、および抗狭心症薬内服下での虚血症状の有無がその判断に大きな位置を占めていることがわかる。あくまでも安定した狭心症、という前提であるが、術前にしっかりと患者全体像を把握したうえで血行再建の適応を考慮すべき、ということを示している。内服開始後に症状の消失を確認せずにPCIを考慮することも多々あると思われるが、1枝・2枝病変で、かつ低リスクの場合はRarely appropriate careにランクされる。このAUCをそのまま日本の臨床に当てはめることはできないが、非侵襲的なリスク評価が重要である、という点は再認識すべきである。日本の日常臨床を2012年版AUCに当てはめると、ACSでは約80%がappropriate、3%がinappropriateであったのに対し、SIHDではinappropriateが約30%に及んでいた(Inohara T, Kohsaka S, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2014;7:1000-1009.)。その1つの原因として、日本では冠動脈CTは広く普及している一方、負荷心筋シンチグラムや負荷心エコー図は行える施設が限定されている点が挙げられる。しかし最近のFFR guide PCIのエビデンスの蓄積により、本AUCではFFRによる虚血評価を基に、適切な治療方針を立てる戦略が組み込まれた。さらには、冠動脈CT後に引き続きFFR-CTを計測することの有用性についても言及されている。FFRの臨床的有用性が確立されたものと言え、FFR使用を強く後押しするものである。日本版のAUCは、現在CVITが“standardized PCI”として思案されているが、第三者から見て「とても外れたことでない」という標準がどこにあるのかを示し、各々が認識しておくことは重要と思われる。術者側の独り善がりの判断にならないよう、ある一定の基準作りが望まれている。本AUC策定により、米国ではPCI件数が大幅に減少したことが知られている。その背景には、AUCから大きく外れた医師・施設には保険会社から支払いがなされない、という事象が起きたことにもよる。そのような状況を受けてか、本文中にAUCの役割として、「日常臨床のパターンを評価するための基礎を提供するものであり、診療careの質の向上を目指すためのものである。個々の症例の支払いの判断に使われるべきではない」、ということが強調されている。“Appropriate care”にランクされたものは血行再建が必須というものではなく、また“Rarely appropriate care”にランクされたものも血行再建を行うことを完全に否定するものではない、という点が重要である。最終的には個々の症例の全体像を鑑みて、最終的な治療方針が決定されるべきである。

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心臓外科手術の急性左室機能不全に対する強心薬レボシメンダンの予防投与は、やはり死亡率を低下しなかった(CHEETAH試験)(解説:原田 和昌 氏)-674

強心薬について知られていること これまで強心薬による生命予後の改善効果は示されていない。ジギタリスとピモベンダンを除き、むしろ心不全の予後を悪化させる。強心薬は短期的には血行動態や臨床所見の改善に有効であるが、心筋酸素需要を増加させ、重篤な不整脈や心筋虚血を生じやすいことから、急性期の低心拍出量、末梢循環不全、ショックにおいて、一時的かつ低用量で使用することが推奨されている。さらに、ドブタミンはβ遮断薬を内服している患者において効果が十分に発揮されない可能性がある。 levosimendan(レボシメンダン)はCa増感作用とATP感受性Kチャネル開口作用を持つことから、拡張障害を起こしにくい血管拡張性強心薬として(最後の?)期待が持たれていた。他のカテコラミンやPDE3阻害薬と比較して心筋酸素需要を増加させずに心拍出量を増加し、抗酸化作用や抗炎症作用、心筋保護作用を持つためである。強心薬levosimendanの心不全に対する効果 LIDO試験やRUSSLAN試験でlevosimendanの有効性が示されたが、REVIVE-II試験では治療早期のBNP値は低下するが90日予後は不良であった。SURVIVE試験は、強心薬の静注投与が必要な急性非代償性心不全患者の長期予後に対する効果を検証した。levosimendan群は、ドブタミン群と比較して治療早期にはBNPの減少も大きく死亡率の抑制傾向がみられたが、30~180日の死亡率は両群間で差がなかった。しかし、levosimendanは、現在60以上の国で使用されている。levosimendanの心臓外科手術後の急性左室機能不全に対する効果 最近のネットワークメタ解析により、levosimendanは心臓外科手術に際して、他の強心薬と比べて最も生存率を改善すると報告された。CHEETAH試験は、術前の左室駆出率が25%未満または機械的な循環動態の補助を必要とする心臓外科周術期の心血管機能不全患者を対象に、低用量levosimendan追加により死亡率が低下するかどうかを検証した試験であるが、30日死亡率に差はみられなかった。60%以上の患者でβ遮断薬が使用されていた。 強心薬は心臓外科手術後の急性左室機能不全の予後を改善しないと考えるべきである。興味深いことに、本試験の平均年齢は66歳であったが、高齢者心不全と同様に、年齢、ヘマトクリット、血圧、脳卒中の既往が予後を規定した(補遺)。しかし、盲検下で急性期に用量調節を行うプロトコールで、低血圧や不整脈の割合、心拍出量にすら両群で差が出なかったことから判断すると、試験デザインにおいて設定用量が低すぎたという可能性は否定できない。

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低心機能合併の開心術に予防的強心薬投与がイベントを減らすか?(解説:絹川 弘一郎 氏)-670

 冠動脈バイパス術や弁膜症の開心術は術前の心機能が低下している例があり、人工心肺による侵襲ともあわせて、周術期に低心拍出量症候群で難渋することがある。ドブタミンをはじめとしたカテコラミンはほぼルーチンでそのような場合に使用されているが、必ずしも心筋保護という観点で良いものとは考えられていない。カテコラミンの心筋に対する好ましくない作用というのは、その強心作用が心筋酸素消費量の増大を常に伴うという点にあると考えられている。また、静注強心薬では不足で、機械的補助循環を余儀なくされるものもあり、低心拍出量症候群を効果的に回避しうる手段が待たれて久しい。そこで、心筋の酸素消費量を増大させずに強心作用を有する薬剤というのが、以前から開発のターゲットとなってきた。その1つがこの試験で使用されたlevosimendanである。 levosimendan自体は1990年代に開発された静注薬で、そんなに新しいものではない。心筋トロポニンCと結合して収縮蛋白のCa2+感受性を高める作用により、細胞内のCa2+の増加もなく、またATP消費も増加させずに(したがって、酸素消費量を増やさずに)より大きな張力を発生できるとされている。Ca2+センシタイザーという呼び方もある。一方で、血管平滑筋細胞のKチャンネルオープナーでもあり、血管を弛緩させるため、後負荷軽減をもたらし、心不全の血行動態改善に貢献するとされる。あわせて、inodilator(強心血管拡張薬)とも呼ばれる。 従来、levosimendanは急性心不全の治療においてドブタミンの代わりになるか、さらにドブタミンより優れた効果があるかが主として検証されてきた。いくつかの小規模な臨床試験では血行動態の改善や短期予後の改善なども示唆されてきたが、 REVIVE II(プラセボと比較)とSURVIVE(ドブタミンと比較)という2つのRCTでそれぞれ90日、180日の予後が改善せず、FDAが認可するに至っていない。わが国でも導入されていないことは周知の通りである。メタ解析では死亡率改善の結果が出ているが、エビデンスの読み方の難しさというか、メタ解析のレベルを問う必要性があると痛感する。 それはさておき、急性心不全の領域ではドブタミンに代わりうるものとの可能性が薄れた後、最初に述べた低心機能症例の開心術における予防投与という観点が注目され始めた。その検証を行ったのがこのLEVO-CTS試験である。対象はプラセボであり、カテコラミンなどを術前に併用することは基本的に主治医判断となっている。術前に割り付けを行い、プラセボまたは実薬の投与は24時間継続する。levosimendanに割り付けられた群では術後の低心拍出量症候群の発症が少なく、強心薬を追加投与する必要のある症例も当然少なかったものの、30日以内の死亡に有意差がなく、術後5日目までの機械的補助を必要とした群を減らすこともできなかったため、levosimendanの予防投与が有効であるとは位置付けられなかった。どうやら、この薬剤は内科治療的にも外科周術期的にも明確な有効性を証明することが難しいようである。 カテコラミンの悪が強調されており、酸素消費量を増やさないこの手の薬剤がいつも話題となる。そして、omecamtiv mecarbilというミオシンアクチベーターが今臨床試験の最中であるが、どうすれば強心作用と予後改善の2つを共に手に入れられるのか、まだ手探り状態である。

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バレニクリン、精神神経系リスク増大せず/Lancet

 禁煙補助薬バレニクリン(商品名:チャンピックス)およびbupropionは、プラセボやニコチンパッチと比べ、精神神経系有害事象リスクの有意な増大は認められないことが示された。被験者に精神疾患の既往があっても同リスクは増大せず、また、バレニクリンはプラセボ、ニコチンパッチ、bupropionのいずれと比べても、禁煙達成率が高かった。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRobert M. Anthenelli氏らが、禁煙希望の喫煙者8,144例を対象に行った大規模臨床試験「EAGLES」(Evaluating Adverse Events in a Global Smoking Cessation Study)の結果、明らかにした。バレニクリンやbupropionの禁煙補助薬の精神神経系への安全性に関する懸念は払拭されていない。これまでに行われたニコチンパッチとの比較検討は間接的な試験であり、安全性、有効性に関する情報は精神疾患を有する患者に限られていた。Lancet誌オンライン版2016年4月22日号掲載の報告。不安症、うつ病、異常感など精神神経系リスクの発生率を比較 研究グループは、2011年11月~15年1月にかけて、16ヵ国、140ヵ所の医療機関を通じて、禁煙を希望する喫煙成人8,144例を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った。被験者を精神疾患歴のある群(4,116例)と非既往群(4,028例)に分け、そのうえで、それぞれを無作為に4群に分け、バレニクリン(1日2回、1回1mg)、bupropion(1日2回、1回150mg)と、そのコントロール群としてニコチンパッチ(1日21mgで開始し漸減)、プラセボを投与した。 主要エンドポイントは、不安症、うつ病、異常感など精神神経系有害事象の複合とした。また、主要有効性エンドポイントは、9~12週の生化学的に確認された禁煙とした。9~12週の禁煙、対プラセボのバレニクリンのオッズ比は3.61 結果、精神疾患の非既往患者では、主要複合エンドポイントの発生率は、バレニクリン群が1.3%、bupropion群が2.2%、ニコチンパッチ群が2.5%、プラセボ群が2.4%だった。バレニクリン群対プラセボ群、bupropion群対プラセボ群のリスク差は、それぞれ-1.28(95%信頼区間[CI]:-2.40~-0.15)、-0.08(同:-1.37~1.21)で、いずれも有意差はなかった。 精神疾患既往患者では、主要複合エンドポイントの発生率は、バレニクリン群が6.5%、bupropion群が6.7%、ニコチンパッチ群が5.2%、プラセボ群が4.9%だった。バレニクリン群対プラセボ群、bupropion群対プラセボ群のリスク差は、それぞれ1.59(95%CI:-0.42~3.59)、1.78(同:-0.24~3.81)であり、いずれも有意差はなかった。 9~12週の禁煙率については、バレニクリン群が、対プラセボ群、対ニコチンパッチ群、対bupropion群でみた場合、いずれも有意に高率で、オッズ比(OR)はそれぞれ、3.61(95%CI:3.07~4.24)、1.68(同:1.46~1.93)、1.75(同:1.52~2.01)だった(いずれもp<0.0001)。 また、対プラセボ群でみた場合、bupropion群(OR:2.07、95%CI:1.75~2.45)、ニコチンパッチ群(同:2.15、1.82~2.54)も禁煙率はそれぞれ有意に高率だった(いずれもp<0.0001)。 コホート全体で治療群単位でみた最も頻度の高い有害事象は、悪心(バレニクリン群25%)、不眠(bupropion群12%)、異常な夢(ニコチンパッチ群12%)、頭痛(プラセボ群10%)だった。治療群間の有効性は、コホート全体の解析でも違いはみられなかった。

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標準対強化禁煙薬物治療の初ガチンコ。非盲検比較試験結果によると禁煙率は同等!(解説:島田 俊夫 氏)-482

禁煙薬物標準治療と強化治療の禁煙率は同等 深刻な喫煙による健康被害のために、薬物治療を徹底的に比較評価することは禁煙率改善上重要である。2016年1月26日発行のJAMA誌に掲載された米国・ウイスコンシン大学公衆衛生学部門のTimothy B. Baker氏らは、禁煙治療に関心を持つ成人に対して、ニコチンパッチ、バレニクリン、併用ニコチン代替治療(C-NRT:ニコチンパッチ+ニコチントローチ)を使って12週間薬物治療後、26週、52週後の禁煙率を生化学的検査により裏付けた結果から評価し、3群間に有意差は認めなかったと報告した。禁煙薬物治療初ガチンコの非盲検無作為化比較試験 ニコチンパッチ単独を除く、2種類の禁煙強化薬物治療、C-NRTとバレニクリンによる禁煙強化療法が、標準治療より優れているようにみられてきた。バレニクリン治療とC-NRTは費用面、処方の必要性、およびスクリーニングと継続モニタリングの強さの点で異なっている。そこで、米国ウイスコンシン州マジソンとミルウォーキーの喫煙者1,086例を対象に非盲検無作為化臨床試験を実施した。喫煙者は12週間禁煙薬物治療を受けるため、3群中のいずれかの群に非盲検でランダムに割り付けられた。(1)ニコチンパッチ単独群(n=241)、(2)バレニクリン単独群(n=424)、(3)C-NRT群(n=421)。 この期間に6回のカウンセリングが実施され、主要評価項目は呼気一酸化炭素濃度測定により裏付けられた自己申告7日間禁煙率、副次評価項目は自己申告による初回禁煙、26週後の禁煙維持率、4、12、52週時点での7日間禁煙率とした。 26週での禁煙率はニコチンパッチ群23%、バレニクリン群24%、C-NRT群27%、また52週での禁煙率はニコチンパッチ群21%、バレニクリン群19%、 C-NRT群20%で、いずれの群間においても有意差は認めなかった。研究対象となった薬物治療は、すべて忍容性の高い治療薬であったが、バレニクリン治療はニコチンパッチ治療に比べて、鮮明な夢、不眠、嘔気、便秘、眠気、および消化不良といった有害事象をより多く引き起こした。本研究からのメッセージ 本研究は、バレニクリン治療とC-NRT薬物治療法を最初に直接比較した研究であり、研究の持つ意義は大きい。著者らは薬物投与終了後26週、52週での禁煙評価項目のいずれにおいても、これら3群間薬物治療に有意差を認めず、これまでの禁煙強化療法の優位性に関して疑問を投じた。本研究は、禁煙強化療法の優位性をうのみにせず、また否定することなく真実を明らかにすることの必要性について言及している。

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禁煙のための薬物療法、長期効果は同等/JAMA

 禁煙を希望する喫煙成人において、ニコチンパッチ、バレニクリン、ニコチンパッチ+ニコチントローチのいずれの介入も長期の禁煙効果は同等であることが、米国・ウィスコンシン大学のTimothy B. Baker氏らが1,086例を対象に行った非盲検無作為化試験の結果、示された。12週間治療を行い、26週、52週間後の禁煙率を生化学的検査で調べたが、その値に有意差は認められなかったという。著者は、「今回の結果は、禁煙治療の薬物強化療法に関する相対的な効果について疑問を呈するものであった」と述べている。JAMA誌2016年1月26日号掲載の報告。26週後の7日間禁煙率を比較 研究グループは、2012年5月~15年11月にかけて、米国・ウィスコンシン州マジソンとミルウォーキーで、喫煙者1,086例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に3群に分け、ニコチンパッチのみ(241例)、バレニクリンのみ(424例)、ニコチンパッチ+ニコチントローチ(C-NRT群、421例)を、それぞれ12週間投与した。全被験者に対し、6回のカウンセリングを行った。 主要評価項目は、26週後の自己報告による7日間禁煙率で、呼気一酸化炭素濃度により確認した。副次評価項目は、自己報告による初回禁煙と26週後の禁煙持続率、4、12、52週時点における7日間禁煙率だった。26週、52週の7日間喫煙率、いずれの群も同等 被験者のうち女性は52%、平均年齢は48歳、平均喫煙量は17本/日だった。被験者のうち12ヵ月時点で追跡データが得られたのは917例(84%)だった。 結果、26週後の7日間禁煙率は、ニコチンパッチ群が22.8%、バレニクリン群が23.6%、C-NRT群が26.8%で、有意な差はみられなかった。また、52週時点の7日間禁煙率も、それぞれ20.8%、19.1%、20.2%と同等だった。 26週後の禁煙維持に関する群間リスク差も、ニコチンパッチ群 vs.バレニクリン群が-0.76%、ニコチンパッチ群 vs.C-NRT群が-4.0%、バレニクリン群 vs.C-NRT群が-3.3%で有意差は認められなかった。 なお、いずれの薬剤も忍容性は良好だったが、バレニクリン群で明晰夢や不眠、吐き気、便秘、眠気、消化不良といった副作用の発生頻度が高かった。

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循環器内科 米国臨床留学記 第5回

第5回:米国でよく使うけれど日本にない薬日本と米国の循環器領域の実臨床に、どのような違いがあるか見ていきたいと思います。米国で頻用されるわりに、日本で使われていない薬が幾つかあります。regadenoson 心筋シンチグラムアメリカで最も使用されている負荷薬剤はregadenoson(商品名:Lexiscan)で、80%以上のシェアを占めます。2008年にFDAに承認された比較的新しい薬剤です。負荷心筋シンチの薬剤として、日本ではアデノシンとジピリダモールが日本では使用されていると思います。これらの薬剤はアデノシンA2A受容体を介して、冠動脈の拡張を誘発します。しかしながら、同時にA1、A2Bなどの他のアデノシン受容体を刺激してしまうため、からだのほてり、息切れ、胸部不快感が起こり、房室ブロックや気管支れん縮を惹き起こすこともあります。regadenosonは、選択性adenosine A2A受容体刺激剤であり、副作用を起こす可能性が少なくて済みます。アデノシンと比べても急速に作用し、効果も長続きするため、持続静注が不要です。シリンジポンプも不要で、約10秒で静注すればよいので、きわめて使い勝手が良い薬です。 また、運動負荷試験で目標心拍数に到達しなかった場合は、アデノシンやジピリダモールでは、運動負荷を中止して、薬物負荷をやり直さなければなりません。運動負荷試験に費やした時間が無駄になります。regadenosonは運動負荷で目標心拍数に到達しないとわかった段階で、試験を薬物負荷に変更して、regadenosonを静注して使用することも可能です。regadenosonはアデノシンとの比較試験でも、有効性は同等でかつ副作用が少ないことが確認されています(Mahmarian JJ, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2009;2:959.)。実臨床でもregadenosonは痙攣の閾値を下げるため、てんかんの既往のある症例ではadenosineを使うことがありますが、基本的にはregadenosonを使うことがほとんどです。微小気泡コントラスト心エコーコントラスト心エコー法は、心腔内の異常構造物(腫瘍、血栓など)の同定や心室筋の壁運動、虚血性心疾患における心筋の灌流診断やviability評価にも非常に有用です。米国では、第2世代の微小気泡造影剤であるperflutoren脂肪マイクロスフェア(商品名:Definity)、perflutorenプロテイン型マイクロスフェア(同 Optison)が主に使用されています。 ご存じのように、米国の患者はBMIが高く、心エコーの解像度は日本人より悪いことが多いです。心エコーの20%以上で壁運動の描出が困難であるとの報告もあり、自然と微小気泡造影剤が必要な症例も多く、病院によっては技師の判断で使用が許されています。運動もしくはドブタミン負荷心エコーにも、微小気泡造影剤はよく使われます。われわれの施設では虚血性心疾患が疑われ、運動可能な症例に運動負荷心電図と心エコーを積極的に用いていますが、全例で微小気泡剤であるperflutorenを使用します。運動負荷心エコーは、時間や人手がかかりますし、運動直後は心臓が激しく左右に振れており、心筋の描出が難しいことが少なくありません。そういった事情のためか、日本では心筋シンチグラムに比べて、運動負荷心エコーを行っている施設は少ないと思われます。私自身も日本では負荷心エコーの経験は豊富ではありませんでしたが、負荷後の解像度が悪く、診断がつかないということが度々ありました。そのような症例でもperflutorenを使えば、収縮期の壁厚変化や心内膜の運動をより正確に評価できます。微小気泡造影剤は、血栓など異常構造物の描出にも有用です。図に示したのは、左室内に多数の小血栓を認めた症例です。perflutoren使用前は、解像度が悪く、心尖部は左室心内膜側の辺縁すらしっかり描出できません。perflutoren使用後は、左室心内膜側の辺縁が明確になり、血栓も容易に検出できています。 なお、perflutorenなどの第2世代微小気泡造影剤は、心内シャントが確認されている症例では、微小マイクロスフェアが細動脈にトラップされる可能性があるため、禁忌となっています。そのためperflutoren使用前に生理食塩水を使用したバブルテストを行い、心内シャントの存在を除外することが必要となります。私が日本にいた頃は、同じく第2世代であるレボビストが使用されていましたが、日本心エコー図学会によると供給が停止しており、日本で使用できる微小気泡造影剤の入手が難しいようです(参考:日本心エコー図学会 Q&A http://www.jse.gr.jp/QA/echo.html)。

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禁煙意思のない喫煙者での減煙治療の効果~最新のメタ解析

 禁煙意思のない喫煙者において、減煙治療は長期禁煙率を増加させるだろうか。中国人民解放軍総合病院のLei Wu氏らは、無作為化試験の論文を系統的にレビューしメタ解析を行った。その結果、禁煙意思のない喫煙者における完全な禁煙達成に、ニコチン置換療法(NRT)やバレニクリンの補助による減煙治療が有効であることが示唆された。International journal of environmental research and public health誌2015年8月25日号に掲載。 著者らは、PubMed、EMBASE、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)で、禁煙意思のない喫煙者を対象とし、長期禁煙における減煙治療の効果を検討した無作為化比較試験を検索した。主要アウトカムは追跡期間最終時点の禁煙率である。ランダム効果モデルを用いて、プールした相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・14試験7,981人の喫煙者を解析した。・禁煙意思のない喫煙者の長期禁煙率について、減煙支援+薬物治療では、減煙支援+プラセボ(RR:1.97、95%CI:1.44~2.7、I2:52%)や介入なし(RR:1.93、95%CI:1.41~2.64、I2:46%)に比べ、有意に増加したことがプール解析で示唆された。・バレニクリンまたはNRTを受けた喫煙者のサブグループにおいても、統計的に有意な差がみられた。・非NRT群(バレニクリン群、ブプロピオン群)において、中止に至った重篤な有害事象を認めた喫煙者の割合は、わずかな有意差であるが対照群よりも多かった。

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ニコチンガムの使い方

ニコチンガムの使い方ニコチンガムなんて効果がないと思い込んでいませんか?正しく使えば、禁煙成功率はニコチンパッチと比べても遜色がありません。 ニコチンガムは、普通のガムのようにかんではいけません。口の中に貼る「ニコチンパッチ」と考えてください。 口の中で何回かつぶして、柔らかくなったら頬の内側に貼り付けるイメージで口の中に残し、口の粘膜からニコチンを吸収させます。 添付文書に詳しい説明が書かれています。よく読んでから使い始めましょう。社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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バレニクリンによる禁煙治療は“優柔不断な喫煙者”の禁煙治療に向いている!(解説:島田 俊夫 氏)-320

 最近JAMA誌 2015年2月17日号に報告された、Jon O. Ebbert氏らのバレニクリン(varenicline)禁煙治療に関する無作為臨床試験についてコメントする。 間接喫煙を含む紙巻きタバコの有害性が大きな健康被害を生じており、喫煙者は人前で喫煙することが疎まれる。タバコによる健康被害をなくすためにも、地球上から喫煙習慣を一掃することが望ましい。ニコチンの習慣性のために多くの人々が禁煙に苦慮している。現行の禁煙ガイドラインにより実施されてきた禁煙治療は、短期間で禁煙達成を目指すため不成功に終わることもしばしば経験する。ニコチン代替療法は、禁煙のためにニコチン中毒の禁断症状をニコチン代替治療で、だましだましニコチンを漸減することにより、中毒からの離脱を目指す治療法として定着している。 今回用いられたバレニクリンは、ニコチン・アセチルコリン受容体の部分アゴニスト作用によりニコチン作用を減弱させ禁煙を誘導するタイプの薬で、ニコチン代替治療とは一線を画している。1ヵ月以内に禁煙を実現することが困難で、もう少し時間をかければ禁煙を達成できると考えている喫煙者(約30%強はこのタイプ)にとって、バレニクリンは作用機序からも期待が持てるため本研究が実施された。 参加者は広告により募集され、厳格な組み込み基準、除外基準に基づき選択された。本研究は多国籍、無作為、二重盲検、比較対照研究デザインにより行われた(日本を含む10ヵ国、61ヵ所の医療センターが参加)。プラセボ投与群(n=750)に対して、バレニクリン投与群(n=760)では、15~24週、21~24週、21~52週のそれぞれの期間で有意に高い連続喫煙抑制率を達成した(バレニクリン投与群:32.1%、プラセボ投与群:6.9%、リスク差[RD]:25.2%[95%CI:21.4~29.0]、相対リスク[RR]:4.6[95%CI:3.5~6.1];バレニクリン投与群:37.8%、プラセボ投与群:12.5%、RD:25.2%[21.1~29.4]、RR:3.0[2.4~3.7];バレニクリン投与群:27.0%、プラセボ投与群:9.9%、RD:17.1%[13.3~20.9]、RR:2.7[2.1~3.5])。 重篤な有害作用はバレニクリン投与群3.7%、プラセボ投与群2.2%に生じたが有意差はない(p=0.07)。 短期間での禁煙達成を望まず、即時の禁煙達成を考えず減煙を望み、3ヵ月以内の禁煙達成を希望する喫煙者での24週にわたるバレニクリンの使用が、プラセボ投与群と比較して、バレニクリン投与群において治療終了時および1年後に高い禁煙率を達成した。バレニクリンは、ただちに禁煙することを推奨しているこれまでの臨床ガイドラインでは考慮されていないタイプの、禁煙治療オプションになる可能性がある。 バレニクリンは少し時間をかけて、急がずに禁煙したいと考えている“優柔不断な喫煙者”の禁煙にとって、従来とは違った手段を提供することにより禁煙達成率を高め、禁煙の幅を広げることに役立つ可能性がある。

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今すぐやめられない喫煙者にもバレニクリン有効/JAMA

 1ヵ月以内にすぐにとはいかないが、3ヵ月以内に減煙・禁煙をしたいという意思のある喫煙者に対し、バレニクリン(商品名:チャンピックス)を24週間投与することで、長期の禁煙効果があることが示された。禁煙率は治療終了時、および1年後も介入群で有意に高率であった。米国・メイヨークリニックのJon O. Ebbert氏らが、1,510例の喫煙者を対象に行った多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果、報告した。JAMA誌2015年2月17日号で発表した。8週までに75%以上の減煙、12週までに禁煙を目標 研究グループは2011年7月~2013年7月にかけて、10ヵ国、61ヵ所の医療センターを通じ、1ヵ月以内の禁煙の意思はないが、3ヵ月以内の減煙・禁煙の意思のある1,510例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはバレニクリン(1mg、1日2回投与)を24週間、もう一方の群にはプラセボを投与した。目標は、4週までに50%以上、8週までに75%以上の減煙、12週までに禁煙とした。21~52週の禁煙率、バレニクリン群で17.1%高率 結果、15~24週の禁煙率はプラセボ群が6.9%に対しバレニクリン群が32.1%(リスク差[RD]:25.2%[95%信頼区間:21.4~29.0]、相対リスク[RR]:4.6 [3.5~6.1])と、有意に高率だった。 また、21~24週にかけても、プラセボ群とバレニクリン群の禁煙率は、それぞれ12.5%と37.8%(RD:25.2%[21.1~29.4]、RR:3.0 [2.4~3.7])、21~52週ではそれぞれ9.9%と27.0%(同17.1%[13.3~20.9]、2.7 [2.1~3.5])だった。 なお、重篤な有害事象の発生率は、プラセボ群が2.2%、バレニクリン群3.7%であり、有意差はみられなかった(p=0.07)。 今回の結果を踏まえて著者は、「バレニクリンは、臨床ガイドライン非対象のすぐにやめる意思がない禁煙希望者にとって治療オプションとなる」とまとめている。

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新開発の血管デバイス、難治性狭心症に有効/NEJM

 開発中の冠静脈洞径縮小デバイス(coronary-sinus reducing device)は、血行再建が適応外の難治性狭心症患者の症状およびQOLを有意に改善することが、ベルギー・Ziekenhuis Netwerk AntwerpenのStefan Verheye氏らが行ったCOSIRA試験で示された。血行再建が適応とならない冠動脈疾患患者の多くは、標準的薬物療法を行っても難治性狭心症を来す。このような患者は世界的に増加しており、新たな治療選択肢が求められている。本デバイスは、15例の非無作為化試験ですべてのクラスの難治性狭心症に対する効果が確認され、全デバイスが3年後も開存し、移動もしておらず、また最近の21例の試験では症状および虚血の改善が報告されている。NEJM誌2015年2月5日号掲載の報告。径縮小デバイスの効果を無作為化第II相試験で評価 冠静脈洞径縮小デバイスは、バルーンカテーテルに装着されたステンレス製のメッシュ状デバイスで、拡張すると中央部が細い砂時計様の形状を呈する。冠静脈洞に留置すると、局所的な血管壁の肥厚性反応が誘導されてメッシュ孔が塞がれ、限局的に血管腔が狭くなり、内圧が上昇して虚血心筋に血液が再供給されるという。 COSIRA試験は、難治性狭心症に対する本デバイスの安全性と有効性を評価する多施設共同二重盲検無作為化擬似対照比較第II相試験(Neovasc社の助成による)。対象は、年齢18歳以上、カナダ心臓血管学会(CCS)分類のクラスIII/IV度の狭心症と心筋梗塞を有し、薬物療法を30日以上行っても症状がコントロールできない患者であった。CCSクラスはI~IV度に分けられ、クラスが高いほど狭心症による身体活動性の制限が大きい。 被験者は、本デバイスを留置する群または擬似的処置を行う群(対照群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、6ヵ月時にCCS狭心症分類で2度以上の改善を達成した患者の割合とした。分類クラス2度以上の改善率が約2.4倍に 2010年4月~2013年4月に104例が登録され、デバイス群に52例、対照群にも52例が割り付けられた。全体の平均年齢は67.8歳(35~87歳)、男性が81%で、リスク因子や併存疾患の有病率が高かった。デバイス群の2例で、デバイスが冠静脈弁を通過できず留置できなかった。 6ヵ月時のCCS狭心症クラス2度以上の改善率は、デバイス群が35%(18/52例)であり、対照群の15%(8/52例)に比べ有意に優れていた(p=0.02)。1度以上の改善も、デバイス群が71%(37/52例)と対照群の42%(22/52例)に比し有意に良好であった(p=0.003)。 狭心症関連QOL(シアトル狭心症質問票:0~100点、点数が高いほど症状が少なく健康状態が良好)は、デバイス群が17.6点改善し、対照群の7.6点よりも優れていた(p=0.048)。狭心症の安定性(p=0.16)や狭心症の頻度(p=0.44)は両群間に差はみられなかった。 運動負荷試験では、平均運動時間がデバイス群で59秒(13%)、対照群で4秒(1%)延長したが、この差は有意ではなかった(p=0.07)。ドブタミン負荷心エコー検査で評価した壁運動指数の改善率は、デバイス群が14%、対照群は8%であり、有意な差は認めなかった(p=0.20)。 周術期にデバイス群の1例に心筋梗塞が認められた。他の周術期の重篤な有害事象として、デバイス群で不安定狭心症とクローン病のフレアが、対照群では不安性狭心症と上腹部痛が1例ずつ認められた。1つ以上の有害事象を発症した患者は、デバイス群が64%、対照群は69%であり(p=0.68)、デバイス群で76件、対照群では93件の有害事象が報告された。 6ヵ月時には、デバイス群で1例が心筋梗塞を発症し、対照群では1例が死亡、3例が心筋梗塞を発症した。重篤な有害事象は試験期間中に34件(デバイス群:10件、対照群:24件)発現した。CT血管造影を受けた36例にデバイスの移動や閉塞は認めなかった。 著者は、「デバイスによる虚血の改善のベネフィットを運動負荷試験や壁運動指数で評価するには、より大規模な試験を行う必要がある。第III相試験を行う場合は、MRIやPETなど、より正確に虚血を評価できるツールを用いるのがよいだろう」と指摘している。

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シチシンの禁煙効果、ニコチン代替より良好/NEJM

 シチシン投与に簡便な行動支援を併用すると、ニコチン代替療法(NRT)に比べ禁煙効果が改善することが、ニュージーランド・オークランド大学のNatalie Walker氏らの検討で示された。シチシンは、マメ科植物由来のアルカロイドで、ニコチン性アセチルコリン受容体の部分作動薬であり、東欧では1960年代から広く禁煙対策に使用されている。4つの系統的レビューでは、禁煙効果がプラセボに比べ短期的および長期的に優れ、有害事象の頻度も同等で、主に消化器症状がみられることが報告されている。NEJM誌2014年12月18日号掲載の報告。禁煙継続効果を無作為化試験で評価 研究グループは、禁煙支援におけるシチシンのNRTに対する非劣性を検証する非盲検無作為化試験を実施した(Health Research Council of New Zealandの助成による)。対象は、「クイットライン(Quitline)」と呼ばれる同国の禁煙相談窓口に電話をかけてきた禁煙の意思のある年齢18歳以上の喫煙者であった。 被験者は、シチシンを25日間投与する群またはNRTを8週間行う群に無作為化に割り付けられた。シチシン群の参加者には25日分の錠剤が無料で郵送され、NRT群は薬局でニコチンパッチとガムまたはトローチ剤を廉価で入手できる引換券がクイットラインから提供された。すべての参加者に、クイットラインから電話による簡便な行動支援が行われた(8週間に平均3回、1回10~15分)。 主要評価項目は、自己申告による禁煙開始から1ヵ月時の禁煙の継続とし、7日間の喫煙本数が5本以下であれば禁煙期間に含めてよいこととした。1ヵ月禁煙継続率:40 vs. 31%、有害事象発現率:31 vs. 20% 1,310例が登録され、シチシン群に655例(平均年齢37.8歳、女性57%、平均1日喫煙本数19.3本)、NRT群にも655例(38.4歳、57%、19.0本)が割り付けられた。 1ヵ月時の禁煙継続の報告は、シチシン群が40%(264/655例)であり、NRT群の31%(203/655例)に比べ有意に良好であった(相対リスク[RR]:1.3、95%信頼区間:1.1~1.5、リスク差:9.3%、p<0.001)。また、1週(1.3、1.2~1.4、13.9%、p<0.001)、2ヵ月(1.4、1.2~1.7、9.0%、p<0.001)、6ヵ月(1.4、1.1~1.8、6.6%、p=0.002)の時点での禁煙継続効果も、シチシン群が有意に優れていた。 事前に規定されたサブグループ解析では、女性の1ヵ月時の禁煙継続については、シチシン群のNRT群に対する優越性が示され、男性では非劣性が確認された。他のサブグループでは有意な差は認めなかった。 6ヵ月間の自己申告による有害事象は、シチシン群が204例(31%)に288件、NRT群は134例(20%)に174件発生し、有意な差が認められた(率比:1.7、95%CI:1.4~2.0、p<0.001)。重篤な有害事象はそれぞれ45例(7%)に56件、39例(6%)に45件発生し、死亡が1例ずつ(飲酒による窒息、心臓発作)、入院が18例ずつみられ、NRT群の1例には脳腫瘍が認められた。主な有害事象は、悪心・嘔吐(30 vs. 2件)と睡眠障害(28 vs. 2件)であった。 著者は、「シチシンと簡便な行動支援の併用は、禁煙の意思のある喫煙者の禁煙補助としてニコチン代替療法よりも有効であるが、有害事象の頻度が高い」とまとめ、「シチシンとニコチン受容体部分作動薬バレニクリンの価格が大きく異なる場合、費用対効果分析を含め、これらを直接的に比較する非劣性試験の実施が正当化される」と指摘している。

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どの向精神病薬で有害事象報告が多いのか

 精神科治療における薬物有害反応(ADR)は患者にとって苦痛であり、公衆衛生に重大な影響を及ぼす。英国・ブリストル大学のThomas KH氏らは、1998~2011年に英国Yellow Card Schemeに自己報告された、抑うつ症状および致死的・非致死的自殺行動の頻度が多かった薬剤を特定した。その結果、バレニクリン、ブプロピオン、パロキセチン、イソトレチノイン、リモナバンにおいて抑うつ症状の報告が多いこと、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、バレニクリンおよびクロザピンでは、致死的および非致死的自殺行動の報告が多いことが判明した。BMC Pharmacology and Toxicology誌オンライン版2014年9月30日号の掲載報告。 本検討では、1964年以降に抑うつ症状および自殺行動の自発報告が最も多かった薬剤を明らかにするため英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)よりYellow Cardのデータ提供を受け、NHS情報センターおよび保健省より入手した処方データに基づき薬剤によるADRの報告頻度を調べた。処方データは1998年以前分を入手できなかったため、1998~2011年に処方されたデータを分母としてADRの頻度を推算した。 主な結果は以下のとおり。・検討期間中、20件以上の抑うつ症状が報告された薬剤は110種類、10件以上の非致死的自殺行動が報告された薬剤は58種類、5件以上の致死的自殺行動が報告された薬剤は33種類であった。・抑うつ症状の報告が多かった薬剤のトップ5は、禁煙治療薬のバレニクリンおよびブプロピオン、次いでパロキセチン(SSRI)、イソトレチノイン(にきび治療に使用)およびリモナバン(体重減少薬)であった。・致死的および非致死的自殺行動の報告が多かった薬剤のトップ5の中に、SSRI、バレニクリンおよび抗精神病薬のクロザピンが含まれていた。・地域で抗精神病薬100万件処方当たりのADR頻度が高かった薬剤はリモナバン、イソトレチノイン、メフロキン(抗マラリア薬)、バレニクリンおよびブプロピオンであった。・5件以上の自殺の報告があったエファビレンツ(抗レトロウイルス薬)とクロザピンの2剤については、地域における処方数は多くなかった。・以上のように、多くの神経系および非神経系薬について、抑うつ症状と自殺に関連するADRが報告されていた。 結果を踏まえて、著者らは「薬剤とADRの因果関係を明らかにする際に、自己報告データは使用できない。それゆえ、重大な警鐘が鳴らされる可能性がある精神的ADRについては、すべての無作為化対照試験において特別に評価、報告がなされるべきである」と述べている。関連医療ニュース 入院から地域へ、精神疾患患者の自殺は増加するのか SSRI依存による悪影響を検証 ビタミンB併用で抗うつ効果は増強するか  担当者へのご意見箱はこちら

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Vol. 2 No. 3 慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するカテーテルインターベンションの現状と展望 バルーン肺動脈形成術は肺動脈血栓内膜摘除術の代替療法となりうるか?

川上 崇史 氏慶應義塾大学病院循環器内科はじめに慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)とは、器質化血栓により広範囲の肺動脈が狭窄または閉塞した結果、肺高血圧症を合併した状態である。早期に適切な治療がなされない場合、予後不良であり、心不全から死に至るといわれている1)。当初Riedelらは、CTEPHの予後は、平均肺動脈圧が30mmHg、40mmHg、50mmHg以上と段階的に上昇するにつれて、5年生存率は50%、30%、10%へ低下すると報告した2)。現在、各種肺血管拡張剤が発達しており、上記より良好な成績であるとは思われるが、効果は限定的である。また、中枢型CTEPHに対しては、肺動脈血栓内膜摘除術(pulmonary endarterectomy:PEA)が根治術として確立されている3)。しかし、末梢型CTEPHに対する成績は中枢型CTEPHと比較して劣っており、末梢型のためにPEA適応外となる症例も少なからず存在する。2000年代半ばより、本邦において、薬物療法で十分な治療効果が得られず、PEA適応外である症例に対して、バルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)が試みられ、有効性が報告された。以下、本邦から治療効果と安全性が確立したBPAについて概説する。BPAについて最初に複数例のCTEPHに対するBPAの有効性を報告したのは、2001年のFeinsteinらである4)。Feinsteinらは、末梢型や並存疾患によりPEA適応外である18例のCTEPHに対して、平均2.6セッションのBPAを施行し、平均36か月間、経過観察した。BPA後、平均肺動脈圧の有意な低下(43→33.7mmHg)とNYHA分類の改善(3.3→1.8)、6分間歩行距離の改善(191→454m)を認めたが、PEAと同様の合併症である再灌流性肺水腫が18例中11例(61.1%)に発症し、人工呼吸器管理が3例(16.6%)、BPA関連死が1例(5.6%)という成績であった。当時の旧式のバルーンカテーテルや0.035インチガイドワイヤーを用いて行われたBPAの初期報告は、上記のように有効性を認めたわけであるが、外科的根治術であるPEAの有効性には及ばなかった。当時、UCSDのJamiesonらのPEA周術期死亡率は4.4%であり、術後の平均肺動脈圧は、中枢型CTEPHで46から28mmHg、末梢型CTEPHで47から32mmHgまで改善することができた3)。このため、米国ではBPAはPEAに劣ると結論づけられた。当時、CTEPHの治療選択肢には、PEAと薬物療法があり、PEAの適応症例であれば、十分な改善を得ることができたが、PEA適応外の症例を薬物療法で治療してもあまり改善は得られなかった。結果として、年齢、並存疾患(全身麻酔ができない)、末梢型CTEPHなどでPEAが実施できない症例が割と多いこと、末梢病変の存在によりPEA後の残存肺高血圧症が10%程度あることが問題として残った。このような背景において、2000年代半ばより、本邦の施設でPEA適応外である重症CTEPHに対して、BPAが施行されるようになり、いくつかの報告がされた5-7)。なかでも、岡山医療センターのMizoguchi、Matsubaraらの報告は、68名のCTEPH患者に対して255セッションのBPAを施行し、最大7年間、経過観察している。結果、BPA後に平均肺動脈圧、肺血管抵抗の低下(各々45.4→24mmHg、942→327dyne sec/cm5)、心係数の増加(CI 2.2→3.2L/min/m2)、6分間歩行距離の延長(296→368m)、BNPの有意な改善(330→35pg/mL)を認めた。酸素投与量も減量(oxygen inhalation 3.0→1.3)することができ、68名中、26名の患者(38%)で在宅酸素療法を離脱することができた。また、96%の患者がWHO分類ⅠまたはⅡまで改善することができた。周術期死亡率は1.5%であり、再灌流性肺障害(再灌流性肺水腫と同義)を含めた呼吸器関連合併症を認めたが、症例経験の増加に伴い、合併症は有意に低下すると報告している。以上、2010年以降の本邦からの報告において、改良されたBPAは、Feinsteinらの初期のBPAと比べて、安全性・有効性ともに著しく改善したといえる。改善した理由としては、バルーンカテーテルの発達、0.014インチガイドワイヤーの使用、画像診断デバイス(IVUSなど)の積極的な使用などがあると思われる。手技の流れについては次項で述べる。BPAの実際術前、右心カテーテル検査・肺動脈造影を必ず行い、個々の患者における肺高血圧症の重症度と肺動脈病変の形態評価を行う。検査結果より、右房圧が高ければ、利尿剤を調節し、心拍出量が低値(CI 2.0L/min以下)であれば、術前からドブタミンの投与を行う。抗凝固療法については前日からワルファリンカリウムを中止している。重症例で軽度の肺出血が致死的となる可能性がある場合、コントロールしやすいヘパリンへ置換する方法もあると考える。ワルファリンは他剤との併用により容易に効果が増強するので、PT-INRの頻回の測定を要する。また、われわれはエポプロステノールを使用していない。理由はCTEPHにおいて肺動脈圧の低下作用が軽微であること、中心静脈カテーテル留置など手技が煩雑であること、抗凝集作用により出血を助長する可能性があると考えているからである。次に実際のBPA手技について述べる。手技は施設間でやや異なっていると思われる。しかし、0.014インチガイドワイヤーの使用、肺動脈主幹部へのロングシース挿入、積極的な画像診断デバイスの使用などは各施設である程度、共通していると思われる。以下、われわれの施設の手法を述べる。アプローチ部位の第1選択は、右内頸静脈である(図1)。理由はガイディングカテーテルのバックアップや操作性がよいことである。また、術後のスワンガンツカテーテル留置が迅速にできることも利点である。内頸静脈が使用できない場合は、大腿静脈アプローチを考慮する。まず、エコーガイド下に9Fr 8.5cmシース(スワンガンツカテーテル留置用シース)を右内頸静脈に挿入する。内頸静脈アプローチとはいえ、稀に気胸を合併することがある。気胸はBPA後の必要時にNPPVが使用できなくなるなど、術後管理を困難にするため、必ず避けねばならない。このため、われわれは100%、エコーガイド下穿刺を実践している。図1 右内頸静脈アプローチ画像を拡大する次に6Fr 55cmまたは70cmロングシースを9Frシース内へ挿入する。6Frロングシースの先端をJ型またはPigtail型にシェイピングし、0.035インチラジフォーカスガイドワイヤーに乗せて、治療対象となる左右肺動脈の近位部へ進める。その後、6Frロングシース内へ6Frガイディングカテーテルを入れ、治療標的となる肺動脈病変へエンゲージする。ガイディングカテーテルの選択には術者の好みもあると思うが、われわれは岡山医療センターと同様、柔らかい材質のMulti-purposeカテーテルを第1選択とすることが多い。その他、治療標的血管により、AL1カテーテルやJR4カテーテルを適宜、選択する。稀であるが、完全閉塞病変に対して、材質の固いガイディングカテーテルを使用することがある。ガイディングカテーテルのエンゲージ後、正面、左前斜位60度の2方向で選択造影を行い、0.014インチガイドワイヤーをバルーンかマイクロカテーテルサポート下に肺動脈病変を通過させる。肺動脈病変に対するワイヤリングは、PCIやEVTと違うと感じる術者が多い。これは、肺動脈の解剖が3次元的に多彩であること(細かい分岐が多い)、肺動脈は脆弱で破綻しやすいこと、肺動脈病変が他の動脈硬化病変と大きく異なること、呼吸変動の存在などに起因すると思われる。特にBPAにおいて、呼吸変動をコントロールすることはとても重要である。呼吸変動を上手に利用すれば、ガイドワイヤー通過の助けになるが、上手にコントロールできなければ、ガイドワイヤーによる肺血管障害(肺出血)が容易に起こると思われる。当院では、肺血管障害を最小限にするため、ガイドワイヤーの通過後、可能な限り、先端荷重の軽いコイルタイプのガイドワイヤーへ交換している。ガイドワイヤー通過後は、血管内超音波(IVUS)または光干渉断層法(OCT)で病変性状・範囲・血管径などを評価し、病変型に準じて、血管径の50~80%程度のサイズのバルーンカテーテルで拡張していく。なお、平均肺動脈圧40mmHg以上または心拍出量2.0L/min以下の症例の場合は、岡山医療センターの手法に倣って、上記より20%程度減じたバルーンサイズを選択している。なお、CTEPHの肺動脈病変は再狭窄することはほぼなく、バルーンサイズを減じても大きな問題になることはない。しかし、複数回治療後に平均肺動脈圧が低下した症例の場合は、適切なサイズのバルーンカテーテルで拡張することがさらなる改善のために必要である。次に術後管理について述べる。BPA後は原則として、スワンガンツカテーテルを留置し、集中治療室管理としている。また、術後、再灌流性肺障害の有無や程度を確認するために必ず胸部単純CTを施行する。これらは、術後の再灌流性肺障害の有無、重症度の評価をするために行っている。経過がよければ、翌日午前中に集中治療室から一般病室へ戻ることができ、午後には歩行可能となる。当院での104セッションのBPAにおいては、1セッションのみで3日間の集中治療室管理を要したが、残り103セッションの集中治療室の滞在期間は1日であった。なお、最近、NPPV装着は必須としていないが、常にスタンバイしておく必要がある。NPPV適応となるのは、コントロール困難な喀血・血痰、重度の酸素化不良例などである。以下に当院の症例を示す。症 例54歳、女性主 訴労作時呼吸困難既往歴特になし家族歴特になし現病歴2011年11月、労作時呼吸困難(WHO分類Ⅱ)を認めた。2012年1月、労作時呼吸困難が悪化したため(WHO分類Ⅲ)、近医を受診し、急性肺塞栓症の診断で緊急入院となった。抗凝固療法を行い、外来で経過観察していたが、2012年9月、労作時呼吸困難が再増悪したため(WHO分類Ⅲ)、同医を受診。心エコー図で肺高血圧症を指摘され、CTEPHと診断された。2012年11月、精査加療目的で当院を紹介受診した。右心カテーテル:右房圧9、肺動脈圧73/23/m41、心拍出量1.8、肺血管抵抗1156肺動脈造影:図2入院後経過タダラフィル20mg/日を内服開始したが、肺動脈圧66/24/m39、心拍出量1.8、肺血管抵抗967と有意な改善は認めなかった。本人・家族と相談し、BPAの方針となった。1回目BPA:左A9、A102回目BPA:右A6、A8、A103回目BPA:右A1、A2、A3、A4、A54回目BPA:左A1+2、A85回目BPA:左A4、A56回目BPA:右A1、A3、A6、A7、A8、A9治療後計6回のBPAで計20病変を治療後、症状は消失した(WHO分類Ⅰ)。また、右心カテーテルでは肺動脈圧34/11/m19、心拍出量3.1、肺血管抵抗316と著明な改善を認めた。図2 肺動脈造影画像を拡大するBPAの現状と今後の適応過去の報告において、FeinsteinらはBPA適応を末梢型CTEPHや併存疾患により全身麻酔が困難なPEA適応外のCTEPHとしてきた。これらは、本邦からの報告でも同様である。しかし、近年、BPAは有効性に加えて、安全性も大きく向上しており、当院では適応範囲を拡大して、以下をBPAの適応としている。中枢型CTEPH(原則としてinoperable)末梢型CTEPH高齢重篤な併存疾患を有するCTEPHPEA後の残存PH軽度から中等度のCTEPH上記の重篤な併存疾患とは、全身麻酔ができない症例のことであると考える。また、BPAの普及により、最も恩恵を受けたのは、PEA後の残存PHと軽度から中等度のCTEPH症例であろう。PEA後の残存PHに対して再度、PEAを行うのは実際、高リスクであり、BPAはよい選択肢である。また、軽度から中等度のCTEPHは、従来、薬物療法で経過観察されていた患者群であるが、これらの症例に対して、BPAを行うことによりさらにQOLが向上し、薬物療法の減量、在宅酸素療法の減量・中止が可能となることをしばしば経験する。以上より、カテーテル治療であるBPAは低侵襲であり、PEAより適応範囲が広いと思われる。しかし、BPAに適した症例、PEAに適した症例があり、個々の患者でよく検討することが重要である。CTEPHには、血管造影上、いくつかの特徴的な病変があることが報告されている8)。当院で治療した計476病変を検討した結果、病変により、BPAの手技成功率が異なることが確認された(図3)。当然であるが、カテーテル手術のため、閉塞病変の方が狭窄病変より治療が難しく、再灌流性肺障害を含めた合併症発生率も高率である。しかし、BPAで閉塞病変を開存させることにより、著しく血行動態や酸素化の改善を経験することが多々あり、個人的には、閉塞病変は可能な限り開存させるべきであると考える。図3 各種病変と手技成功率画像を拡大する一方、用手的に器質化血栓を摘除するPEAは、BPAと比べて、閉塞病変の治療が容易にできるかもしれない。また、器質化血栓が多量である場合、器質化血栓をバルーンで壁に圧着させるBPAより、完全に摘除するPEAの方が理にかなっているかもしれない。しかし、PEAでは到達が困難である肺動脈枝が存在することも事実である。いずれにしても、BPA、PEAの双方とも一長一短があり、適応決定に際しては、外科医・カテーテル治療医の両者で話し合うことが望ましいと考えられる。まとめ以上、近年、本邦で発展を遂げたインターベンションであるBPAについて概説した。従来、CTEPHに対する根治術はPEAだけであったため、BPAの発展は、CTEPH患者にとって大きな福音であると思われる。現在、経験のある施設で再灌流性肺障害を低減させる試みがなされ、合併症発症率は確実に減少している。しかし、安全性を重視するあまり、治療効果を減じるようでは、本末転倒といわざるをえない。低い合併症発生率と高い治療効果の双方を合わせもったBPAでなければならない。CTEPHの第一の治療ゴールは、平均肺動脈圧30mmHg以下を達成することである。これにより、CTEPH患者の予後を改善することができる。そして、第二の治療ゴールは、さらなる平均肺動脈圧の低下を目指して(20mmHg以下)、QOLの向上や酸素投与量の減量・中止、薬物療法の減量などを達成することである(図4)。われわれは可能な限り、平均肺動脈圧の低下を目指す「lower is better」を目標として、日々、CTEPHを治療している。また、BPAは本邦が世界をリードしている分野であり、今後、本邦から多くの知見が報告されなければならないと考える。図4 治療のゴール画像を拡大する最後にわれわれも発展途上であり、今後、多くの施設とBPAの発展について協力していければと思っている。文献1)Piazza G et al. Chronic thromboembolic pulmonary hypertension. New Engl J Med 2011;364: 351-360.2)Riedel M et al. Long term follow-up of patients with pulmonary thromboembolism: late prognosis and evolution of hemodynamic and respiratory data. Chest 1982; 81: 151-158.3)Thistlethwaite PA et al. Operative classification of thromboembolic disease determines outcome after pulmonary endarterectomy. J Thorac Cardiovasc Surg 2002; 124: 1203-1211.4)Feinstein JA et al. Balloon pulmonary angioplasty for treatment of chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circulation 2001; 103:10-13.5)Sugimura K et al. Percutaneous transluminal pulmonary angioplasty markedly improves pulmonary hemodynamics and long-term prognosis in patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circ J 2012; 76: 485-488.6)Kataoka M et al. Percutaneous transluminal pulmonary angioplasty for the treatment of chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 756-762.7)Mizoguchi H et al. Refined balloon pulmonary angioplasty for inoperable patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 748-755.8)Auger WR et al. Chronic major-vessel thromboembolic pulmonary artery obstruction:appearance at angiography. Radiology 1992;182: 393-398.

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バレニクリンにNRT併用の禁煙効果/JAMA

 禁煙治療について、ニコチンパッチ+バレニクリン(商品名:チャンピックス)の併用療法(治療期間12週間)は、バレニクリン単独よりも12週時点(治療終了時)および6ヵ月時点で禁煙率が有意に高く有効であることが示された。南アフリカ共和国・ステレンボス大学のCoenraad F. N. Koegelenberg氏らが、無作為化盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。行動療法と薬物療法の組み合わせが禁煙支援に有益であることは示されている。しかし、ニコチン補充療法(NRT)とバレニクリンの組み合わせによる禁煙への寄与について、有効性および安全性は明らかではなかった。JAMA誌2014年7月9日号掲載の報告より。バレニクリン単独群と比較、主要エンドポイントは治療9~12週の連続禁煙率 試験は2011年4月~2012年10月に南アフリカ共和国の7施設で、治療期間12週間、フォローアップ12週間にて行われた。一般健常の喫煙者446例が1対1の割合で無作為化され、有効性と安全性の解析には435例が含まれた。 被験者には、目標禁煙日(TQD)の2週間前からニコチンパッチまたはプラセボの貼付を開始し、TQD後12週間継続した。バレニクリンは、TQDの1週間前より投与を開始し、TQD後12週間継続し、13週間目に漸減した。 禁煙の達成は、TQD時点とその後の24週時点までに一定間隔で測定した呼気CO濃度で評価し確認した。 主要エンドポイントは、第4週測定の呼気CO濃度(治療9~12週の禁煙率、すなわち治療介入最後の4週時点での完全な禁煙率を示す)。副次エンドポイントは、6ヵ月時点の禁煙率、9週から24週までの連続禁煙率、有害事象などであった。主要および副次エンドポイントとも、多重代入分析法(multiple imputation analysis)にて評価した。12週連続禁煙率は併用群55.4%対単独群40.9%、6ヵ月時点は65.1%対46.7% 結果、併用療法は、12週時点の連続禁煙率が有意に高率であった(55.4%対40.9%、オッズ比[OR]:1.85、95%信頼区間[CI]:1.19~2.89、p=0.007)。また、24週時点(49.0%対32.6%、OR:1.98、95%CI:1.25~3.14、p=0.004)、6ヵ月時点の完全禁煙率(65.1%対46.7%、同:2.13、1.32~3.43、p=0.002)も、有意に高率だった。 併用療法群では、悪心、睡眠障害、皮膚反応、便秘、うつ病の発生件数が多かった。ただし統計的に有意であったのは皮膚反応のみであった(14.4%対7.8%、p=0.03)。バレニクリン単独群の発生件数が多かったのは、夢見が悪い、頭痛であった。

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禁煙補助療法、バレニクリンとブプロピオンの併用は有用か/JAMA

 禁煙補助療法について、バレニクリン(商品名:チャンピックス)単独投与とバレニクリン+ブプロピオン(国内未承認)併用投与を検討した結果、治療開始12週と26週時点での長期禁煙率は併用投与のほうが有意に高かったが、治療開始52週後では、長期禁煙率および7日間禁煙率ともに両群間に有意差はなかったことが報告された。米国・メイヨークリニックのJon O. Ebbert氏らが、500例超の喫煙者を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、明らかにした。JAMA誌2014年1月8日号掲載の報告より。主要アウトカムは12週目の長期・7日間禁煙率 研究グループは、2009年10月~2013年4月にかけて、米国3ヵ所の医療機関で、18歳以上の喫煙者506例を対象に試験を行った。バレニクリン単独投与と、ブプロピオンとの併用投与の禁煙効果を比較した。被験者は、1日10本以上のタバコを6ヵ月以上喫煙していた。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはバレニクリンのみを、もう一方にはバレニクリンとブプロピオンを、それぞれ12週間投与した。追跡は、52週まで行った。 主要アウトカムは、12週時点での長期禁煙率(禁煙目標日2週間後から12週までの禁煙)と7日間禁煙率だった。副次アウトカムは、26週、52週時点での長期・時点禁煙率だった。12週・26週の長期禁煙率は併用投与群で高率 被験者のうち、試験を終了したのは315例(62%)だった。 12週時点の長期禁煙率は、併用投与群が53.0%、単独投与群が43.2%であり、併用投与群で有意に高かった(オッズ比[OR]:1.49、95%信頼区間[CI]:1.05~2.12、p=0.03)。ただし12週時点の7日間禁煙率は、それぞれ56.2%、48.6%で有意差はなかった(同:1.36、0.95~1.93、p=0.09)。 26週時点の長期禁煙率は、併用投与群36.6%、単独投与群27.6%と併用投与群で有意に高かった(同:1.52、1.04~2.22、p=0.03)。7日間禁煙率は、それぞれ38.2%、31.9%で、有意差はなかった(同:1.32、0.91~1.91、p=0.14)。 52週時点の長期禁煙率と7日間禁煙率はいずれも、両群で有意差はなかった。同時点各群の長期禁煙率は30.9%、24.5%(OR:1.39、95%CI:0.93~2.07、p=0.11)、7日間禁煙率は36.6%、29.2%(同:1.40、0.96~2.05、p=0.08)だった。 なお、併用投与群では不安の発生率が7.2%と、単独投与群の3.1%に対して有意に多く、うつ症状も3.6%、0.8%と併用投与群で有意に高率だった(それぞれp=0.04、p=0.03)。 著者は、「バレニクリン+ブプロピオン併用投与はバレニクリン単独投与、12週、26週時点の長期禁煙率を有意に増大したが7日間禁煙率の増大は有意ではなかった。また、52週時点ではいずれの禁煙率も有意差はみられなかった」とまとめ、「禁煙補助療法の併用投与の役割を明らかにするためにさらなる検討が必要である」と指摘している。

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