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急性期脳梗塞、EVT+高気圧酸素治療vs.EVT単独/Lancet

 血管内血栓除去術(EVT)が可能であった主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者において、高気圧酸素治療(normobaric hyperoxia treatment)の追加は、EVT単独の場合と比較して90日時点の機能的アウトカムが優れ、安全性に関する懸念はみられなかった。中国・首都医科大学のWeili Li氏らOPENS-2 Investigatorsが多施設共同無作為化単盲検シャム対照比較試験の結果を報告した。EVTは急性期虚血性脳卒中の再開通率を改善するが、EVTを受けた患者の約半数は良好な機能的アウトカムを得られない。研究グループは、EVT+高気圧酸素治療が、機能的アウトカムに及ぼす影響を評価した。Lancet誌2025年2月8日号掲載の報告。90日時点のmRS順序スコアを比較 研究グループは中国の総合脳卒中センター26施設において、発症後6時間以内のEVT治療が可能であった18~80歳の主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者を対象に試験を行った。 適格患者をEVT+高気圧酸素治療を受ける群またはEVT+シャム高気圧酸素治療を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは、双方向Web応答システムを用いた最小化プロセスに基づき、各試験センターでの割り付けのバランスを全体的にとるとともに、年齢・性別・閉塞部位・静脈内血栓溶解薬の使用のベースラインカテゴリに応じた層別化も行った。被験者および評価者は、治療割り付けをマスクされた。 高気圧酸素治療では、100%酸素を非再呼吸マスク(non-rebreather mask)装着下で流量10L/分にて4時間投与、または挿管を要した患者には吸入酸素濃度(FiO2)1.0で投与した。シャム治療では、100%酸素を流量1L/分にて、またはFiO2 0.3で投与した。 主要アウトカムは、ITT集団(治療割り付けを受けた全患者を含む)で評価した90日時点の修正Rankinスケール(mRS)の順序スコアの比較とした。安全性は、あらゆる酸素療法を受けた全患者で評価した。mRSスコアの補正後共通オッズ比は1.65で有意に改善 2021年4月22日~2023年2月5日に、473例がスクリーニングを受け、282例(ITT集団)がEVT+高気圧酸素治療群(140例)またはEVT+シャム高気圧酸素治療群(142例)に無作為に割り付けられた。年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:57~71)、75/282例(27%)が女性、207/282例(73%)が男性であり、282例(100%)全員が中国の漢民族であった。 90日時点で、mRSスコア中央値は、EVT+高気圧酸素治療群が2(IQR:1~4)、EVT+シャム高気圧酸素治療群は3(1~4)であった(補正後共通オッズ比:1.65[95%信頼区間[CI]:1.09~2.50]、p=0.018)。 90日時点で、死亡は、EVT+高気圧酸素治療群で14/140例(10%)、EVT+シャム高気圧酸素治療群では17/142例(12%)報告された(補正後リスク差:-0.02[95%CI:-0.09~0.06])。重篤な有害事象の発現は、それぞれ28/140例(20%)、33/142例(23%)であった(補正後リスク差:-0.03[95%CI:-0.12~0.07])。

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中/遠位血管閉塞による脳卒中、血管内治療は機能障害を改善せず/NEJM

 中大脳動脈(MCA)のdominant M2区域の急性閉塞に対する血管内治療(EVT)の有効性を示唆する無作為化試験のエビデンスがあるが、現在の米国および欧州のガイドラインでは、中血管または遠位血管の閉塞を有する虚血性脳卒中に対してEVTは推奨されず、禁忌ともされていないという。スイス・バーゼル大学病院のMarios Psychogios氏らDISTAL Investigatorsは、DISTAL試験において、中血管または遠位血管の閉塞による虚血性脳卒中患者の治療では、最良の内科治療単独と比較して、これにEVTを併用しても、機能障害レベルを改善せず、重篤な有害事象や死亡率の低下をもたらさないことを示した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年2月5日号に掲載された。11ヵ国の医師主導型無作為化試験 DISTAL試験は、医師主導型の実践的な評価者盲検無作為化試験であり、2021年12月~2024年7月に、11ヵ国55病院で患者を登録した(スイス国立科学財団[SNSF]などの助成を受けた)。 年齢18歳以上、CT血管造影またはMRI血管造影で確認された中血管または遠位血管の孤立性閉塞(MCAのnondominantまたはcodominant M2区域、MCAのM3またはM4区域、前大脳動脈のA1、A2、A3区域、後大脳動脈のP1、P2、P3区域の閉塞)に起因する急性期虚血性脳卒中と診断され、NIH脳卒中尺度(NIHSS)スコア(0~42点、高点数ほど症状が重度)が4点以上の患者を対象とした。 被験者を、最終健常確認から24時間以内に、ETV+最良の内科治療または最良の内科治療単独を受ける群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、90日の時点での修正Rankin尺度(mRS)スコア(0[まったく症候がない]~6[死亡])で評価した機能障害の程度とした。mRSスコア0、1の達成、NIHSSスコア正常化にも差はない 543例(年齢中央値77歳、女性44%)を登録し、ETV+最良内科治療群に271例、最良内科治療単独群に272例を割り付けた。全体の入院時のNIHSSスコア中央値は6(四分位範囲[IQR]:5~9)であり、脳卒中発症前のmRSスコアは、0または1が436例(80.3%)、2が60例(11.0%)、3または4が45例(8.3%)であった。 発症時に97.9%が自宅におり、最終健常確認から無作為化までの時間中央値は3.9時間だった。ベースライン時の主な閉塞部位はM2区域(44.0%)、M3区域(26.9%)、P2区域(13.4%)、P1区域(5.5%)であった。静脈内血栓溶解療法は65.4%に施行されていた。 EVT+最良内科治療群の271例中229例(84.5%)で実際にEVTが行われ、画像診断から動脈穿刺までの時間中央値は70分(目標の60分をオーバーした)、再開通成功率は71.7%だった。 主要アウトカムである90日時のmRSスコア中央値は、ETV+最良内科治療群が2.0(IQR:1.0~4.0)、最良内科治療単独群は2.0(1.0~3.0)であり、スコアの分布に両群間で有意な差を認めなかった(スコア改善の共通オッズ比[OR]:0.90[95%信頼区間[CI]:0.67~1.22]、p=0.50)。 副次アウトカムの、90日時の良好な機能アウトカム(mRSスコア0または1)の達成(補正前OR:0.88[95%CI:0.61~1.25])、24時間時の神経学的欠損の重症度の改善(NIHSSスコアの正常化)(補正前平均群間差:0.02[95%CI:-0.10~0.14])、EQ-5D-5Lおよび視覚アナログ尺度などで評価した生活の質(QOL)のスコアは、いずれも両群間で有意な差はみられなかった。90日死亡率は15.5% vs.14.0% 重篤な有害事象(ETV+最良内科治療群114例vs.最良内科治療単独群88例、補正後OR:1.27[95%CI:0.84~1.97])、24時間以内の症候性頭蓋内出血(16例[5.9%]vs.7例[2.6%]、2.38[0.44~6.14])、90日時の全死因死亡(42例[15.5%]vs.38例[14.0%]、1.17[0.71~1.90])の発生は、いずれも両群間で有意差はなかった。 著者は、「71.7%という再開通成功率は当初の予測より低く、最近の大血管閉塞による脳卒中の試験の知見をも下回っており、これが本試験のあいまいな結果の主な原因と考えられる」「試験の手順(中・遠位血管閉塞の検出の難しさやインフォームドコンセントに時間を要するなど)に起因する治療開始の遅れがEVTの有効性を低下させた可能性がある」「今後、画像診断と改善される可能性のある手技やデバイス材料に基づいて、EVTが有益と考えられる患者を特定するための無作為化試験を実施する必要がある」としている。

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コンサルトを気持ちよくするには【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第3回

コンサルトを気持ちよくするにはPointプレゼンテーションはSNAPPSで。 コンサルト医に何をしてほしいかを明確にする。緊急性がある場合はためらわず即コンサルト。いつもコンサルト医に感謝の気持ちを忘れずに。症例70歳男性。既往に狭心症と糖尿病あり。1時間前にジムで運動中に胸部絞扼感あり。今もなんとなく胸がつらく救急外来を受診した。体温36.5℃ 血圧130/60 mmHg 心拍数58回/分 呼吸数20回/分 SpO2 99% room air じとっと冷や汗あり。当直の研修医Aは心電図をとったけど自分ではよくわからず(ホントはSTEMI!)。今日の当直の上級医は循環器内科の怖い○○先生であったので、とりあえず血液検査をしてから相談することとした。血液検査とルートを確保して15分ほど経ったところ患者さんは呼吸苦を訴え苦しみ始めた。血圧も80mmHg台へ低下、モニターも心室頻拍が数発認められるようになってきた。どうしてよいかわからずテンパりはじめ、看護師さんにも急かされて以下のようにコンサルトした。研修医 A「研修医Aです。70歳の男性が1時間ほど前にジムで運動中に胸部絞扼感があって」上級医 「心電図は?」研修医 A「STは上がってないような気がします」上級医 「ふん」研修医 A「体温36.5℃、血圧130/60mmHg、心拍数58回/分、呼吸数20回/分、SpO2 room airで99%でした。あと既往に狭心症と糖尿病があるようです。血液検査とルートは確保したのですが、先ほどから血圧も80mmHg台に下がりはじめ、モニターにも心室性頻拍のような変な脈が出てて…ちょっとって感じで…」上級医 「お前、最初っからヤバいって言って早く俺を呼べよ! グルァァァァ!」研修医 A(そういうところが怖くて呼べなかったんだよ…泣)おさえておきたい基本のアプローチプレゼンテーションはSNAPPSで!医師として生きる以上どんな診療科、どんな経験年数を積んでも他科、他病院へのコンサルトは必要である。現代医療はすべて自分1人の診察で完結できるわけではない。患者のためを思って、専門科へ適切にタイミングよく、簡潔に礼節をもってコンサルトができるようになろう。とは言ってもどうすればよいのか…わかってたら苦労しないよね。そんなときはSNAPPS(表)でコンサルト!表 SNAPPS画像を拡大するSNAPPSのうちで最も大事なのは、Aで根拠となる病歴と身体所見を述べ、自分の評価・思考過程を提示すること。ここが間違っていれば、コンサルト医が教えてくれ、次の成長につながる。自分の診断や鑑別診断を根拠ももたずに羅列するだけでは成長が望めないのだ。思考過程をきちんと開示することは、コンサルト医も指導しやすくなるんだ。落ちてはいけない・落ちたくないPitfallsコンサルト医に何をしてほしいかを明確に伝えよう医者は皆忙しい(はず)。コンサルトされる側の先生も今自分が行っている仕事の手を止めてまでコンサルトに出向くかどうかは常に気になる。長ったらしい現病歴だけのプレゼンほど、聞いていてげんなりするものはないんだ。「結局何が言いたいんだってばよ!」ってな感じで、「うーん、よくわからないけどとりあえず行くわ!」と言っていただける先生のほうが少数派であろう。明確に何をしてほしいのかを必ず伝えよう(電話で聞きたいだけなのか、診察に来てほしいのかをまず明確に伝えるべし。次に詳細な内容に入る。入院が必要だと思うので診察に来てほしい、次回の外来に回すのでよいか電話相談したい、画像の確認をしてほしい、まったくわからないので助けてほしい、などなど)。「わからないので助けてほしい」と正直に言うことは全然悪くない。「行けばいいのか、行く必要がないのか」がコンサルトされる側が一番気になるところなんだ。話を引っ張って大どんでん返し! なんて展開は推理小説ならいいが、コンサルトではいただけないんだ。Point例:虫垂炎を疑う患者さんを診ているのですが、正直自信がないので、一緒に診察していただけませんか?緊急性がある場合はためらわず即コンサルトST上昇型急性心筋梗塞、t-PA適応である発症4、5時間以内の脳梗塞、絞扼性腸閉塞、開放骨折など今後の緊急処置が必要な疾患と診断したら、即コンサルトしよう。もう少し血液検査を揃えてから、家族に話を聞いてから、もう少しカルテ書いてからなどと引っ張ってしまうと、患者の大切な時間、専門医の先生が患者に介入するまでの時間を奪ってしまう。結局専門医の先生に連絡してからも手術室やカテ室、追加のスタッフ手配など結構時間がかかってしまうんだから。このときのコンサルトのポイントは診断名からさっさと言うこと。あいまいな表現は避けること。現病歴は最低限でOK。専門医の先生に電話して緊急治療のスイッチを入れるのが先だ!専門医の先生が来られたら積極的にお手伝いをすること。電話のときに何かしておくことはありますか? と一言聞いておくのもbetter。その患者のためにできることをみんなでやろう。Point例:発症2時間ほどの脳梗塞の患者さんが来られたので、至急一緒に診察をお願いできますか?いつもコンサルト医に感謝の気持ちを忘れずに夜間のコンサルト、ましてや院外からのoncallとなると専門医の先生もつらい。だって人間だもの。理不尽にコンサルトした側が怒られることもままあるが、あなたは患者のためを思ってコンサルトしたんだ。今後その患者の診療で主役となるのは患者とともに主治医になる専門科の先生だ。患者のために専門科の先生に頭を下げることは恥ずかしいことではない。患者のためを思って堪えるところはグッと堪えよう。ただし、コンサルトしっぱなしということもよくない。コンサルト先の先生が来られたら必ず自分で直接お礼、手短なプレゼン、検査結果などの準備、患者や家族の案内などをしよう。専門科の先生、患者双方が気持ちよく診療できる、診察を受けられる環境を作ることが非常に大切だ。各科特有のキーワードをしっかり押さえておくことも大事だ。共通言語を使わずしてコンサルトはうまくいくはずもない。脳外科ならCTでの出血部位と型、出血量、midline shift、GCS(Glasgow Coma Scale)など。産科なら妊娠歴、出産歴、流産歴など。最初からできるはずもないので、コンサルトのたびにどんな情報を伝えると、専門科が判断しやすいのかその都度教えてもらって成長しよう。Point実るほど頭を垂れる稲穂かな「あーでもなくて、こーでもなくて…はい、全然わかってなくて、すみません」全然わからない症例ってあるよね。とくに社会的な背景が濃い症例は研修医には太刀打ちできない。配偶者虐待、小児虐待、高齢者虐待、高度希死念慮症例、権利意識の強いVIP患者などは、研修医や専門外の医師にとっては、その対応は至難の業だ。わからないのに無駄に時間を引っ張ってはいけないし、そうかといってうまく専門医にプレゼンできるほど評価もできない。大丈夫、上級医はそんなややこしい症例のためにいるのだから。トラブルになりやすい症例は、団体戦で臨むに限るのも本当のことなのだから。心の中で(だるまさんでぇ~す)と叫んで、手も足も出ないことを前面に出し恥も外聞もプライドも捨ててコンサルトすればいい。そのときは、正直に自分は全然わからないことを謝罪し、全力で尻尾を振るかわいい子犬のように愛くるしいまなざしでコンサルトしよう。ここまで降参や服従の意思を見せても、来てくれなければそれは男気のない〇〇医者ということ(失礼!)。ほとんどの医者は優しく、きちんと助けてくれる、または一緒に悩んでくれるから大丈夫。電話を掛けただけでコンサルト終了ではない専門医に電話をした段階で患者に対する責任は移ったと思ってはいけない。あくまでもコンサルト医が病院に到着して、患者を診て初めて責任の所在が移るんだ。電話で呼び出して、その後患者を放置して、他の患者に手をとられて、患者のことを忘れてしまうと、とんでもないことになってしまうことがある。病態は刻々変化しうるのだ。コンサルト医だってさまざまな理由で遅れてしまうこともある。コンサルト医が病院へ向かう途中で事故にでもあえば、遅くなるのは必定ではないか。風呂に入っていたら、案外急いでも時間がかかる。嫁さんに「また夜中に出ていくの。私と仕事とどっちが大事なの」なんて夫婦の修羅場にあっているかもしれない。コンサルト医が病院に到着するまでは、何が何でも初療医が患者の責任を負う必要があるんだよ。勉強するための推奨文献Wolpaw T, et al. Acad Med. 2009;84:517-524.Bothwell J, et al. Ann Emerg Med. 2020;76:e29-e35.(コンサルトする側、コンサルトされる側双方のTipsがちりばめられたgood review)林寛之 著. Dr.林の当直裏御法度-ER問題解決の極上Tips90 第2版. 三輪書店;2018.寺澤秀一 著. 話すことあり、聞くことあり-研修医当直御法度外伝. CBR;2018.増井伸高 編・著. 救急現場から専門医へ あの先生にコンサルトしよう!. 金芳堂;2021.執筆

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中血管閉塞脳卒中への血管内治療、アウトカムを改善せず/NEJM

 中血管閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者に対する発症12時間以内の血管内血栓除去術(EVT)は、標準治療(現行ガイドラインに基づく静脈内血栓溶解療法)と比較して90日時点のアウトカム改善に結び付かなかったことが、カナダ・カルガリー大学のM. Goyal氏らESCAPE-MeVO Investigatorsが行った第III相多施設共同前向き無作為化非盲検評価者盲検試験の結果で示された。主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者にはEVTが有効であるが、中血管閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者にも当てはまるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2025年2月5日号掲載の報告。最終健常確認後12時間以内の中血管閉塞を伴う脳梗塞患者を対象、標準治療のみと比較 研究グループは、中血管閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中で、救急部門への受診が最終健常確認後12時間以内であり、ベースラインの非侵襲的脳画像検査で治療可能と確認された患者を、EVT+標準治療を受ける群(EVT併用群)または標準治療のみを受ける群(標準治療のみ群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。中血管閉塞は、中大脳動脈のM2またはM3の閉塞、前大脳動脈のA2またはA3の閉塞、または後大脳動脈のP2またはP3の閉塞と定義し、A1およびP1はとくに含まれなかった。標準治療は、急性期脳卒中管理についてカナダ、米国、欧州の現行ガイドラインで推奨されている静脈内血栓溶解療法(tenecteplaseまたはアルテプラーゼによる)であった。 主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])が0または1であった患者の割合であった。90日時点のmRSスコア0/1達成患者割合、EVT併用群41.6% vs.標準治療のみ群43.1% 2022年4月~2024年6月に5ヵ国から計530例が登録され、255例がEVT+標準治療(EVT併用)を、275例が標準治療のみを受けた。84.7%の患者は、中大脳動脈の梗塞であった。 90日時点のmRSスコアが0または1であった患者の割合は、EVT併用群41.6%(106/255例)、標準治療のみ群43.1%(118/274例)であった(補正後率比:0.95、95%信頼区間[CI]:0.79~1.15、p=0.61)。 90日時点の死亡率は、EVT併用群13.3%(34/255例)、標準治療のみ群8.4%(23/274例)であった(補正後ハザード比:1.82、95%CI:1.06~3.12)。 As-Treated集団で評価した重篤な有害事象のうち、症候性頭蓋内出血の発現は、EVT併用群5.4%(14/257例)、標準治療のみ群2.2%(6/272例)であった。

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心房細動、abelacimab月1回投与で出血イベント改善/NEJM

 脳卒中リスクが中~高の心房細動患者の抗凝固療法において、リバーロキサバンと比較してabelacimab(不活性型の第XI因子に結合してその活性化を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体)の月1回投与は、遊離型第XI因子濃度を著明に低下させ、出血イベントを大幅に少なくすることが、米国・ハーバード大学医学大学院のChristian T. Ruff氏らAZALEA-TIMI 71 Investigatorsが実施した「AZALEA-TIMI 71試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年1月22日号で報告された。7ヵ国の無作為化実薬対照比較第IIb相試験 AZALEA-TIMI 71試験は、心房細動患者の抗凝固療法におけるabelacimabの安全性と忍容性の評価を目的とする無作為化実薬対照比較第IIb相試験であり、2021年3~12月に7ヵ国の95施設で患者を登録した(Anthos Therapeuticsの助成を受けた)。 年齢55歳以上、心房細動または心房粗動の既往歴があり、抗凝固療法が計画され、CHA2DS2-VAScスコアが4点以上、またはCHA2DS2-VAScスコアが3点以上で抗血小板薬の併用が計画されているか推定クレアチニンクリアランスが50mL/分以下の患者を対象とした。 これらの患者を、盲検下にabelacimab 150mgまたは90mgを月1回皮下投与する群、または非盲検下にリバーロキサバン20mgを1日1回経口投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、大出血または臨床的に重要な非大出血とした。出血イベントが予想以上に減少、試験は早期中止に 1,287例(年齢中央値74歳、女性44%)を登録し、abelacimab 150mg群に430例、同90mg群に427例、リバーロキサバン群に430例を割り付けた。CHA2DS2-VAScスコア中央値は5点で、ベースラインで患者の92%が60日以上の抗凝固薬の投与を受けており、66%が直接経口抗凝固薬(DOAC)であった。 abelacimabの月1回の皮下投与により、遊離型第XI因子の値はベースラインと比較して持続的に低下し、3ヵ月後の遊離型第XI因子の減少の中央値は、150mg群で99%(四分位範囲:98~99)、90mg群で97%(51~99)であった。 abelacimabによる出血イベントの減少が予想を超えていたため、独立データモニタリング委員会の勧告に基づき試験は早期中止となった。 大出血または臨床的に重要な非大出血の発生率は、abelacimab 150mg群が3.22件/100人年、同90mg群が2.64件/100人年であったのに比べ、リバーロキサバン群は8.38件/100人年と高い値を示した。リバーロキサバン群に対するabelacimab 150mg群のハザード比(HR)は0.38(95%信頼区間[CI]:0.24~0.60、p<0.001)、リバーロキサバン群に対する同90mg群のHRは0.31(0.19~0.51、p<0.001)であった。有害事象の頻度は同程度 副次エンドポイントである大出血(リバーロキサバン群に対するabelacimab 150mg群のHR:0.33[95%CI:0.16~0.66]、リバーロキサバン群に対する同90mg群のHR:0.26[0.12~0.57])および大出血、臨床的に重要な非大出血、小出血の複合(0.68[0.51~0.91]、0.46[0.33~0.64])についても、リバーロキサバン群に比べ2つのabelacimab群で良好であった。また、大出血のうち消化管大出血(0.11[0.03~0.48]、0.11[0.03~0.49])はabelacimab群で顕著に少なかったが、頭蓋内大出血やその他の大出血にはこのような差はなかった。 全有害事象、重篤な有害事象、試験薬の投与中止に至った有害事象の発現率は、3群で同程度であった。abelacimab群における注射部位反応は、150mg群で2.8%、90mg群で1.6%に認めた。抗薬物抗体を発現した患者はいなかった。 著者は、「本試験は症例数が少ないため、abelacimabの臨床的有効性を評価することはできず、より大規模な試験が必要である。現在、利用可能な抗凝固療法を使用できない高リスク心房細動患者を対象に、脳梗塞および全身性塞栓症の予防におけるabelacimabの有効性をプラセボと比較する第III相試験(LILAC-TIMI 76試験)が進行中である」としている。

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脳梗塞治療は完全に心筋梗塞治療の後追い?(解説:後藤信哉氏)

 血栓溶解療法による心筋梗塞の予後改善効果を示す論文は、循環器領域にて大きなインパクトがあった。しかし、経皮的カテーテル治療(percutaneous coronary intervention:PCI)が標準治療となり、血栓溶解療法は標準治療とはならなかった。PCIをしても冠動脈内各所に血栓は残る。線溶療法にて血栓を取り切るほうが良いかも? との仮説は循環器領域でも生まれた。しかしPCIに線溶療法を追加すると、むしろ予後は悪化する場合が多かった。医師は線溶効果を期待して線溶薬を投与するが、ヒトの身体には恒常性維持機能がある。線溶が亢進して身体が出血方向に傾けば、血栓性が亢進して止血方向の作用も生まれる。現在は線溶薬による凝固系亢進メカニズムも詳しく理解されるようになった。 本研究では、カテーテル治療による残存血栓に対してウロキナーゼを投与する群と投与しない群を比較した。survival without disabilityを有効性の1次エンドポイントとしてランダム化比較試験を行った。結果として、ウロキナーゼの投与の有無による影響はないとされた。頭蓋内出血にも差がなかったので、懸念された出血合併症の増加は起きなかった。 脳梗塞治療は心筋梗塞治療を後追いして変化している。血栓溶解療法により予後が改善し、早期・確実な再灌流のためカテーテル治療が普及する。カテーテル治療に必須の抗血小板薬なども今後確立されるだろう。線溶療法は血行再建のツールであるがカテーテル治療の併用療法としての価値は少ない、など心筋梗塞治療と同様のコンセプトが近未来に確立されると思う。

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急性期脳梗塞、血管内再灌流後にウロキナーゼ動注は有効か?/JAMA

 主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中で、最終健常確認後24時間以内に血管内血栓除去術を受け、ほぼ完全または完全な再灌流が達成され静脈内血栓溶解療法歴のない患者に対し、ウロキナーゼ動脈内投与(動注)を追加しても90日後の機能障害のない生存は改善しなかった。中国・重慶医科大学附属第二医院のChang Liu氏らPOST-UK investigatorsが、中国の35施設で実施した医師主導の無作為化非盲検評価者盲検試験「Adjunctive Intra-Arterial Urokinase After Near- Complete to Complete Reperfusion for Acute Ischemic Stroke(POST-UK)試験」の結果を報告した。末梢動脈および微小循環における持続性または新たな血栓は、介入後の梗塞を促進し神経学的回復の可能性を低下させる恐れがあるが、血管内血栓除去術後の動脈内血栓溶解療法が、機能障害のない生存を高める有望な戦略となることが第IIb相臨床試験「CHOICE試験」で示されていた。JAMA誌オンライン版2025年1月13日号掲載の報告。ウロキナーゼ動注群vs.対照群、無作為化90日後の機能障害のない生存を比較 研究グループは、頭蓋内内頸動脈、中大脳動脈第1セグメントまたは第2セグメントの閉塞を認め、NIHSSスコアが25以下、修正Rankinスケール(mRS)スコアが<2、静脈内血栓溶解療法歴はなく、小~中程度の虚血コア(6時間以内の非造影CTでASPECTSスコア6以上、ASPECTSスコア7以上、または発症後6~24時間にDAWN試験あるいはDEFUSE-3試験の選択基準を満たす)を有し、発症(最終健常確認)から24時間以内に血管内血栓除去術を受けeTICIグレード2c(ほぼ完全な再灌流)以上を達成した18歳以上の患者を、ウロキナーゼ動注群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 ウロキナーゼ動注群では、標的領域にウロキナーゼ10万IUを単回注入し、対照群では動脈内血栓溶解療法を行わなかった。 有効性の主要アウトカムは、無作為化90日後の機能障害のない生存(mRSスコア0または1)を達成した患者の割合、安全性の主要アウトカムは90日以内の全死因死亡および48時間以内の症候性頭蓋内出血とした。90日後の機能障害のない生存の患者割合、両群で有意差なし 2022年11月15日~2024年3月29日に535例が無作為化された。ウロキナーゼ動注群の1例が直ちに同意を撤回したためウロキナーゼ動注群267例、対照群267例となった。患者背景は、年齢中央値69歳、女性が223例(41.8%)で、532例(99.6%)が試験を完遂した。最終追跡調査は2024年7月4日に行われた。 90日後の機能障害のない生存患者の割合は、ウロキナーゼ動注群45.1%(120/266例)、対照群40.2%(107/266例)であった(補正後リスク比:1.13、95%信頼区間[CI]:0.94~1.36、p=0.19)。 90日死亡率はそれぞれ18.4%、17.3%(補正後ハザード比:1.06、95%CI:0.71~1.59、p=0.77)、症候性頭蓋内出血の発現率はそれぞれ4.1%、4.1%(補正後リスク比:1.05、95%CI:0.45~2.44、p=0.91)であり、いずれも両群間で有意差は認められなかった。

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急性期脳梗塞、再灌流後のtenecteplase動注は有益か/JAMA

 主幹動脈閉塞を伴う急性期脳梗塞を発症し、最終健常確認時刻から24時間以内に血管内血栓除去術(EVT)を受け、ほぼ完全または完全な再灌流を達成した患者において、補助的なtenecteplase動脈内投与(動注)は、90日時点の障害なしの患者の割合を有意に増加させなかった。中国・重慶医科大学附属第二医院のJiacheng Huang氏らPOST-TNK Investigatorsが無作為化試験「POST-TNK試験」の結果を報告した。JAMA誌オンライン版2025年1月13日号掲載の報告。90日時点の障害なしを評価 POST-TNK試験は、医師主導の無作為化非盲検アウトカム評価盲検化試験で、中国の34病院で行われた。被験者は、近位頭蓋内主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞を発症し、最終健常確認時刻から24時間以内にEVTを受け、EVT後のexpanded Thrombolysis in Cerebral Infarction(eTICI)スコアが2c~3、静脈内血栓溶解療法を受けていない患者とし、補助的なtenecteplase動注の有効性と安全性を評価した。 被験者の募集は2022年10月26日~2024年3月1日に行われ、最終フォローアップは2024年6月3日であった。 適格患者540例を、tenecteplase 0.0625mg/kgの動注を受ける群(tenecteplase動注群、269例)、または動脈内血栓溶解療法による治療を受けない群(対照群、271例)に無作為に割り付けた。 有効性の主要アウトカムは、90日時点の障害なしとし、修正Rankinスケールスコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])0/1と定義した。安全性の主要アウトカムは、90日時点の死亡、48時間以内の症候性頭蓋内出血とした。対照群と比較し主要アウトカムに有意差なし、症候性頭蓋内出血の発現率が高率 試験を完了したのは539例(99.8%)であった(年齢中央値69歳、女性221例[40.9%])。 90日時点の修正Rankinスケールスコア0/1の患者の割合は、tenecteplase動注群49.1%(132/269例)、対照群44.1%(119/270例)であった(補正後リスク比:1.15、95%信頼区間[CI]:0.97~1.36、p=0.11)。 90日死亡率は、tenecteplase動注群16.0%(43/269例)、対照群19.3%(52/270例)であった(補正後ハザード比:0.75、95%CI:0.50~1.13、p=0.16)。48時間以内の症候性頭蓋内出血の発現率は、それぞれ6.3%(17/268例)と4.4%(12/271例)であった(補正後リスク比:1.43、0.68~2.99、p=0.35)。

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身近な血圧計から心房細動の早期発見に寄与する新システム発表/オムロン

 オムロンヘルスケアは、血圧測定時に同時に得られるバイタルデータを解析することで「脈の乱れ」を検知するシステムの完成に合わせ、プレスセミナーを開催した。 セミナーでは、心房細動(AF)におけるバイタルデータの重要性や開発された血圧測定でAFのリスクを検出する次世代アルゴリズム“Intellisense AFib”の説明が行われた。大きな循環器、脳血管障害の予防に日常生活でみつけたいAF 「脳・心血管イベントの抑制における心房細動管理の重要性」をテーマに清水 渉氏(日本医科大学大学院医学研究科循環器内科学分野 教授)がAFの発症リスクと家庭におけるバイタルデータ計測の重要性について、説明を行った。 2017(平成29)年の人口動態統計によれば死因の第1位は「悪性新生物」、第2位は「心疾患」、第3位は「脳血管疾患」となっている。循環器系疾患で全体の約1/4を占め、医療費と介護費では1番費用がかかり全体の約1/5を占め、介護が必要となる原因でも約1/5を循環器系疾患が占めている。 AFは加齢とともに増加する最も頻度が高い不整脈であり、患者の健康寿命や生命予後に大きく影響する。そのためAFに伴う心原性脳梗塞、心不全、認知症の予防が健康寿命延伸の鍵となる。 わが国のAFの有病率は、年齢に比例し、男性ほど多く、80代では男性の約4.5%で、女性の約2%でAFという研究報告もあり1)、有病率は年々増加している。とくに問題となるのは、脳卒中の前症状でAFが診断されないケースであり、“Fukuoka Stroke Registry”によれば、脳卒中の発症前にAFの診断なしが45.9%だったという報告もある2)。 そのため、早期にAFを発見することが、その後の大きな循環器、脳血管障害の予防に寄与するが、発見のアプローチとしてはさまざまなものがある。日常、簡単にできるものでは、自分で脈をチェックする「検脈」のほか、血圧計、ウェアラブルデバイスがあり、AFスクリーニング能は高くないが簡単にできる。また、家庭では携帯型心電計、24時間ホルター心電計などAFの可能性を検出できるデバイスもあり、これらの機器を駆使して早期に発見されることが期待される。 AFのリスクファクターでは、年齢、糖尿病、喫煙のほかに高血圧も指摘されている。とくに高血圧患者では非高血圧患者と比べて、未治療のAFが約3倍検出されたことが報告されており、早期発見の重要なターゲットといわれている3)。 次にAFの治療の最新動向について触れ、『2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』(日本循環器学会/日本不整脈心臓学)から内容を引用しつつ、説明を行った。 同ガイドラインでは、リズムコントロールの有効性を高めるために生活習慣(肥満、喫煙、アルコール多飲など)の改善、併存疾患(高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群など)の治療も重要と示すとともに、早期発見のAF患者ではリズムコントロール療法を考慮することが記載されている。 また、わが国では年間10万例を超えるカテーテルアブレーションの治療が行われており、その適応も拡大されるとともに、従来の焼灼ではなく高周波の電気で患部に作用するパルスフィールドアブレーションも使用できるなど治療機器の進化の一端も説明した。そのほか、抗凝固療法について、すべての直接経口抗凝固薬(DOAC)がCHAD2スコア1点以上で推奨されていること、高リスク高齢者では、腎機能障害や認知症などがあっても積極的にDOACを使用するべきと述べ、レクチャーを終えた。高血圧患者の圧脈波をAIが解析し、AFを発見 血圧を測るだけでAFの早期発見をサポートする「次世代アルゴリズム“Intellisense AFib”とは」をテーマに、同社の技術開発統轄部の濱口 剛宏氏がシステムの説明を行った。 同社は累計3.5億台の血圧計を製造・販売しており、高血圧患者が、毎日の血圧測定で意識せず、AFを早期にみつける「新しい機会」の創出を模索していた。そして、今回開発された“Intellisense AFib”は、心臓が拍動するときに生じる動脈内の圧力変化である圧脈波のデータを取得することで、これをAIが解析し、AFの検出を可能にするという。 Intellisense AFibは、同社が蓄積してきた50年に及ぶ膨大な圧脈波のデータと最新のAIによるアルゴリズム、そして、心電図・脈波解析の専門チームの融合により、高精度なAF検出アルゴリズムを実現したものである。このシステムは2024年8月から中国をはじめ、欧州で発売を開始し、25年に米国で発売を、本年度中にはわが国でも薬事取得を目指すという。 同社では「Intellisense AFibが搭載された血圧計が普及し、1人でも多くの高血圧のAF患者の早期発見を実現したい」と今後に期待を寄せている。

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1月20日 血栓予防の日【今日は何の日?】

【1月20日 血栓予防の日】〔由来〕「大寒」に前後する、この時季は血栓ができやすいという背景と「20」を「ツマル」と語呂合わせして日本ナットウキナーゼ協会が制定。「ナットウキナーゼ」が血栓を溶解し、脳梗塞や心筋梗塞を予防する効果があることを啓発している。関連コンテンツ抗凝固薬を飲むにあたって【患者説明用スライド】心筋梗塞へのコルヒチンは予後を改善するか/NEJM産後VTE予防のエノキサパリン、より高リスク例へ限定可能?/JAMA心房細動を伴う脳梗塞後のDOAC開始、早期vs.晩期/Lancetコーヒー5杯/日以上で脳梗塞リスクが高まる!?

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こんな入浴を高齢者はやってはいけない

冬季に高齢者がやってはいけない入浴法■入浴事故を起こす3つの事項1)湯温42℃以上のお湯に浸かる2)10分以上の長湯をする3)かけ湯などをせず、勢いよくお湯に浸かる政府広報オンラインより引用(2024年12月16日閲覧)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202111/1.htmlCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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12万例超の手術で使われた心房細動の新アブレーション/ボストン・サイエンティフィック

 ボストン・サイエンティフィック ジャパンは、心房細動(AF)の新たな治療法として期待されるFARAPULSE パルスフィールドアブレーション(PFA)システムを11月1日より全国で発売したのに合わせ、メディアセミナーを開催した。 AFの有病率は2030年には100万例を超えると予想され、わが国の医療現場でも迅速な治療が急務となっている。今回発売されたFARAPULSE PFAシステムは、肺静脈の出口にカテーテルで電場(パルスフィールド)を形成して電気的に隔離することで、心房への異常な電気信号を遮断し、AFを治療するもの。PFA治療は、心筋が他の臓器よりも障害閾値が低いことを応用し、心筋だけを選択的に焼灼する電場を起こすことが期待されている。これにより、現在、標準的治療となっている熱アブレーション治療で課題となっていた食道損傷や肺静脈狭窄、さらには横隔神経の持続的な障害などの合併症リスクを低減することが期待されている。 本システムは、2021年の欧州での発売以来、これまで世界65ヵ国で承認・使用されており、12万5,000例を超える臨床使用実績を持ち、120以上の査読付き論文で有効性、安全性が示されている。また、手技時間の短縮にも貢献し、医療機関での効率改善と患者の負担軽減が期待されている。同システムは2024年9月26日に薬事承認を取得している。手技時間の短縮で医師も患者も負担が軽減できる 「心房細動アブレーションのGame Changer PFAへの期待」をテーマに、里見 和浩氏(東京医科大学病院 主任教授 病院長特別補佐 不整脈センター/心臓リハビリテーションセンターセンター長)が、実臨床での本システムの有用性などについて説明を行った。 はじめにAFの病態や症状について説明。AFは頻度の高い不整脈であり、1分間に300回以上(通常は60~100回)心房が異常に早く、震えるように動く。患者は、男性のほうが少し多く、高齢者に多い。 症状としては、頻脈にともなう症状で「心臓のどきどき」、「息苦しさ」、「階段がきつい」などがあるが、無症候のケースもある。AFの合併症としては、心不全や血栓ができやすく、脳梗塞になりやすいこと(とくに脳梗塞の3割が心房細動の血栓)である。 AFの検査としては、12誘導などの心電図、心臓エコー、心臓へのCT/MRIなどの検査があり、現在は薬物、カテーテルアブレーション、外科手術の3つの治療法がある。 AFの原因となる部位の9割が肺静脈であり、この治療がスタートとなる。とくにカテーテルアブレーションが9万例施行されているが、そのうちの約7万例がAFであり、今後も増加が予想されている。 今、カテーテルアブレーションでは、熱を使わない新しいエネルギーで心筋組織を選択的に焼灼できるFARAPULSE PFAシステムが登場し、使用できるようになった。実臨床では、手技時間が短く、だいたい30~60分で手技が終わり、長期間その治療効果は維持される。循環器内科や心臓血管外科を志望する医師が減少し、人員が満たない中で手技や手術の時間の短縮は、患者にも医師にもメリットがあると期待を寄せた。全世界で約12万例超の有効性、安全性を実現したFARAPULSE PFAシステム 「FARAPULSE パルスフィールドアブレーションシステムの概要」をテーマに同社のEP PFAマーケティングの伊藤 彰彦氏が、システムの内容について説明した。 FARAPULSE PFAシステム(以下「同システム」と略す)は、短時間に電圧をかけパルス電界を形成することで標的部位の細胞に細孔を形成し、細胞に内容物がこの細孔から排出されることで、非熱的に細胞死を引き起こして治療する。従来の熱アブレーションと比較し、心筋組織に選択的に影響を与え、近接組織への影響を避けることができるメリットがある。 パルスフィールド アブレーションは、熱アブレーションと同等の有効性、安全性を保ちながら、従来のアブレーションで懸念される食道関連合併症や肺静脈狭窄、持続的横隔神経障害のリスクを低減し、より効率的な治療を提供することが期待されている。また、同システムは、すでに12万5,000例の実臨床経験において、有効性、安全性、効果の持続性を確認しており、独特な形状(最大花が咲いたような姿)をしたカテーテルはさまざまな患者の解剖に対応する。シンプルかつスムーズな手技ワークフローは、迅速かつ再現性の高い手技を提供する。 同システムの製品構成は3つから成り、カテーテルは手元で先端部が可変でき、360度アブレーションができる。スティーラブルシースは目的部位へ簡単に誘導することができ、ジェネレータはシンプルな構造で操作も単純化されている。 最期に臨床試験で実施された“ADVENT Study”について説明した。本試験は、発作性AFにおける同システムの有効性と安全性を高周波アブレーション(RFA)/クライオバルーンアブレーション(CBA)と直接比較した無作為化臨床試験で、同システム群305例とRFA/CBA群302例(RFA群167例/CBA群135例)を検討した。その結果、安全性、有効性ともにRFA/CBA群と比較し、非劣性だったことが検証され、手技時間、左房滞在時間、アブレーション時間ともに同システム群のほうが短時間だったが、透視時はRFA/CBA群のほうが短かったことを説明し、終了した。

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重症大動脈弁狭窄症に冠動脈疾患を合併した症例の治療方針を決めるのに、たった1年の予後調査でよいのか(解説:山地杏平氏)

 重症の大動脈弁狭窄症に冠動脈疾患を合併する場合、患者が80歳以上や高リスク症例であれば、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)と経皮的冠動脈形成術(PCI)による経皮的治療が選択されることが多く、一方で、若年者やリスクが低い症例では、長期成績を踏まえ、大動脈弁置換術(SAVR)と冠動脈バイパス術(CABG)による外科手術が推奨されます。 TCW研究では、70歳以上の無症候性重症大動脈弁狭窄症かつ、50%以上の狭窄を有する2枝以上の冠動脈病変、もしくは20mm以上の病変、あるいは分岐部を含む左前下行枝病変を有する症例について、経皮的治療と外科手術を無作為比較しています。 実際に登録された症例の平均年齢は76歳で、STS-PROMスコアやEuroSCORE IIは2~3%と低く、低リスク症例が中心でした。当初の計画では328例の登録を予定していましたが、外科手術群で心臓死や重大な出血イベントが多くみられたため、172例の登録時点で試験が中止されました。カプランマイヤー曲線では両群間で明確な差が示されましたが、登録症例数が少ないため、絶対的なイベント数は多くなく、経皮的治療群では91例中4例(4%)にイベントが発生し、外科手術群では77例中17例(23%)に発生しました。 本試験では低左心機能(左室駆出率30%未満)や腎不全(eGFR 29mL/分/1.73m2未満)の症例が除外されています。それにもかかわらず、とくに、外科手術群での7例の死亡と9例の重大な出血イベントについては、発生率は高く感じられます。一方で、経皮的治療群のイベント数(死亡1例、脳梗塞1例、心筋梗塞2例、重大な出血イベント2例)は、逆に少なすぎるようにも思われます。重大な出血イベントについては、外科手術に関連するものとして理解できますが、外科手術群での死亡の多くは30日以降にみられており、偶然多かった可能性は否定できません。試験が予定登録数の約半分で中止されたため、統計的なパワー不足であることは注意が必要です。 CABGの良さは、左内胸動脈(LITA)を使って左前下行枝(LAD)に吻合することで、長期的なイベントリスクを低減することです。一方で、1年の予後はPCIとCABGであまり差はないように思います。70歳できちんとLITAをLADにつないで、将来のイベントを予防するメリットについては、今回の試験では評価されておらず、TCW研究結果をそのまま実臨床に反映させるには慎重な対応が必要です。

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甘いものの摂取、心臓の健康にとっての「スイートスポット」は?

 甘いものが心臓の健康にもたらす影響は、その種類により大きく異なる可能性のあることが新たな研究で明らかになった。論文の筆頭著者であるルンド大学(スウェーデン)のSuzanne Janzi氏は、「この研究結果で最も印象的だったのは、異なる摂取源の添加糖が心血管疾患(CVD)リスクに、それぞれ異なる影響を与えることを示した点だ」と述べている。例えば、加糖飲料の大量摂取は脳卒中や、心不全、不整脈の発症リスクを大幅に高めることが示された一方で、オートミールに蜂蜜を加えたり、甘いペストリーを時々食べたりしても心臓の健康に大きな害はなく、むしろ改善する可能性もあるという。この研究の詳細は、「Frontiers in Public Health」に12月9日掲載された。 この研究では、2件の長期健康研究に参加した45〜83歳のスウェーデン人6万9,705人(女性47.2%)から収集したデータを用いて、加糖食品・飲料の摂取と7種類のCVD(脳梗塞、出血性脳卒中、心筋梗塞、心不全、大動脈弁狭窄症、心房細動、腹部大動脈瘤)との関連が検討された。試験参加者は、研究の一環として1997年と2009年に食事とライフスタイルに関する質問票に回答し、2019年12月31日まで追跡されていた。追跡期間中に2万5,739人が1種類以上のCVDの診断を受けていた。主な診断は、脳梗塞6,912件、出血性脳卒中1,664件、心筋梗塞6,635件、心不全1万90件、大動脈弁狭窄症1,872件、心房細動1万3,167件、腹部大動脈瘤1,575件であった。 分析の結果、添加糖の摂取量と脳梗塞および腹部大動脈瘤のリスクとの間に正の関連が認められ、特に、摂取量が最も多い群では最も少ない群に比べて両疾患のリスクがそれぞれ11%と31%上昇することが明らかになった。しかし、ほとんどのCVDで、添加糖の摂取量が最も低いカテゴリーの群でのリスクが最も高い傾向が認められ、リスクが最も低かったのは低~中程度の摂取カテゴリーの群であった。 さらに、加糖食品(おやつ)、トッピング、加糖飲料といった添加糖の摂取源別に分析を行った。その結果、心臓の健康に特に大きな悪影響を与えるのは加糖飲料の摂取であり、1週間に8サービング超の加糖飲料の摂取は、脳梗塞リスクで19%、心不全リスクで18%、心房細動リスクで11%、腹部大動脈瘤リスクで31%の増加と関連することが示された。一方、ペストリー、アイスクリームなどの加糖食品では、摂取量が少ない群(週に2回以下)でCVDリスクが最も高くなるという負の関連が認められた。さらに、蜂蜜や砂糖などのトッピングについては、摂取量が少ないと心不全および大動脈弁狭窄症のリスクが増加し、摂取量が多いと腹部大動脈瘤リスクが増加する傾向が認められた。 Janzi氏は、「この驚くべき対比は、添加糖の摂取量だけでなく、その摂取源や摂取状況を考慮することの重要性を浮き彫りにしている」と話している。同氏は、「甘い飲み物に含まれる液糖は、一般的に固形のものよりも満腹感が少ないため、過剰摂取につながる可能性がある。また、甘いものを摂取する状況も重要だ。お菓子は社交の場や特別な機会で楽しまれることが多いが、甘い飲み物はそれ以上の頻度で消費されている可能性がある」と付言する。 一方で、甘いお菓子を時々摂取することは、全く摂取しない場合よりも健康に有益であったという結果について、Janzi氏は、「これは、根本的な食習慣を表している可能性がある。添加糖をほとんど摂取しない人は、非常に制限的な食事をしているか、または、もともと何らかの健康状態を理由にそれを制限している可能性が考えられる」との見方を示している。その上で同氏は、「われわれの観察研究では因果関係を立証することはできないが、得られた結果は、添加糖の摂取量を極端に減らすことが、心血管の健康に必ずしも有益であるとは限らないことを示唆している」と述べている。

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冬季入浴中の事故を防ぐ6つの対策

冬季入浴中の事故を防ぐための6つの対策■入浴事故防止のために1)入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく2)湯温は41℃以下、お湯に浸かる時間は10分までを目安にする3)浴槽から急に立ち上がらない4)食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避ける5)お風呂に入る前に、同居する家族にひと声かける6)高齢者の家族は入浴中の高齢者の動向に注意する政府広報オンラインより引用(2024年12月16日閲覧)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202111/1.htmlCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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心房細動の早期発見、早期介入で重症化を防ぐ/日本心臓財団

 日本心臓財団メディアワークショップは、都内で「心房細動の診療」をテーマにメディアワークショップを開催した。 心房細動(AF)は心臓内の心房が異常な動きをし、不整脈を引き起こす疾患である。AFでは、自覚症状を伴わないことが多く、気付かずに長期間放置すると心房内に生じた血栓が血流にのり、脳血管障害や心不全などを発症させる恐れがある。早期発見が重要であり、治療ではカテーテルアブレーションや薬物による治療が行われる。そして、早期発見では、日常の検脈や健康診断が重要となるが、近年では、テクノロジーの発達とデジタルデバイスの普及により、これまで見つかりにくかった無症候性や発作性タイプのAFの早期発見が可能になってきている。 セミナーでは、AFの病態やリスク、早期発見のための静岡市清水区でのAI診断の取り組みなどが解説された。AFの患者は100人に1人の時代 最初に「心房細動管理の最新トレンド」をテーマに清水 渉氏(日本医科大学大学院 医学研究科 循環器内科学分野 教授)が、最近のガイドラインからみたAFの病態や治療、カテーテルアブレーションについて解説した。 AFは、高齢の男性に多く、その有病率は増え続けている。患者数は100万人と推定され、100人に1人がAFと考えられる。2018年からは法律に基づき、「国民の健康寿命の延伸等を図るため」に脳卒中とならび国を挙げて対策を要する疾患となっている。 そして、AFを発症すると脳梗塞発症リスクが5倍、心不全で5倍、認知症で2倍という報告もあり、健康寿命、生命予後に大きく影響する。 現在、わが国にはAFに関係するガイドラインが4つある。『2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン』(編集:日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン/後述の3ガイドラインも同様)では、病態生理として「肥満」「高血圧」「糖尿病」「睡眠呼吸障害」などが伝導障害となり、電気的リモデリングを促進させ、AFのトリガーになることが示されている。 『2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』では、4つの段階に分けてAFと生活習慣管理・包括管理を示している。第1段階では「急性期の管理」、第2段階では「増悪因子の管理」、第3段階では「脳梗塞の予防」、第4段階では「症状の改善」が記載されている。とくに第4段階の症状の改善について、リズムコントロール(洞調律維持)およびレートコントロール(適切な心拍数調節)が症状改善に行われるが、「動悸などの症状が強い」「AFの持続で心不全の発症・増悪が危惧される」「AF発症関連の併存疾患が比較的少ない」などの患者ではリズムコントロールが望ましいとガイドラインでは記されている。 次に症状の発見について触れ“Fukuoka Stroke Registry”から「急性虚血性脳卒中を発症した心房細動患者における、脳卒中発症前の心房細動の診断状況、抗凝固療法の実施状況」について、脳卒中発症前にAFの診断がなかった人が45.9%に上ることを紹介するとともに1)、AF患者において無症候性の割合について37.7%の報告もある2)と紹介し、AFの発見が難しいことを説明した。では、発見が難しいAFをどのように見つけるか? 日常生活で簡単にできる方法として身体診察の「検脈」の方法を紹介するとともに、『2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン』に触れ、ガイドラインの中に記載されているAFのスクリーニングと治療に用いられる各デバイスの特徴について説明を行った。最近では、ウェアラブルの測定機器が進歩しているが、その精度はまだ未知数であり、エビデンスも確立されていないために長時間心電図モニターや携帯心電図などの心電図記録によるデバイスで診断することになっている。進歩するAFの治療 『2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療』からAFの治療では、カテーテルアブレーションと抗凝固治療が行われる。 カテーテルアブレーションは、20221年のデータでわが国では約11万件施行されている。とくに心不全を合併したAFでは、カテーテルアブレーションは、全死亡・心不全入院を有意に減少させる報告があるので、予後を改善できる可能性が高い3)。 また、近年ではLVEF(左室駆出率)の低下した心不全(HFrEF)にも治療の適応が拡大されているほか、新しいカテーテル治療法として熱を伴わず特殊な電気ショックを利用して細胞のアポトーシスを誘導するパルスフィールドアブレーション(PFA)も登場し、安全に外科的治療が施行できるようになってきているという。 抗凝固療法に関しては、『2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン』で直接経口抗凝固薬(DOAC)4薬剤の用法・用量設定基準が明記され、すべてのDOACがCHADS2スコア1点以上で使用が推奨されている。また、腎機能障害、認知症、フレイルなどの高リスク高齢者についても積極的なDOACの使用を記していると説明し、レクチャーを終えた。AI診断で未診断のAFを発見 「『隠れ心房細動』を早期発見するための、AIとリモートテクノロジーを用いた取り組み-静岡市清水区における地域医療プロジェクトについて-」をテーマに笹野 哲郎氏(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 循環制御内科学分野 教授)が、静岡市清水区で行われている心電図のAI診断とデバイスによるリモートモニタリングによるAFの早期発見の取り組みについて説明した。  静岡市清水地区の高齢化率は約32%とわが国の平均よりやや進んだ高齢化率を示し、すでにAFと診断された人が2,036人、隠れAFの人が2,000人とほぼ同数であることから、この地区が選定されたという。この取り組みでは、地元の市立清水病院と清水医師会が共同事業者となり現地で健診などを実施、連携する東京科学大学がデータのAI解析を行い、解析結果をフィードバックするものである。 同地区で行われているAFの早期発見メソッドとしては、「12誘導心電図のAI診断」、「デバイスによるリモートモニタリング」が行われている。AFは、肺静脈からのトリガー興奮の後、左心房内で異常興奮が持続することで起るが、発作時でなくとも心房リモデリングの評価はできるとして、AIの深層学習により発作性AFの推定をさせている。 そして、AIによるAF発見は実現可能な段階にあり、2022年1月から開始されたプロジェクトでは、2023年7月までに検診を受けた362例のうち11例(3.04%)に未診断のAFを発見したという。 また、デバイスによるリモートモニタリングについて、スマートウォチやスマートリングなどの精度は向上途上であり、やはり現在医療機器で使用されているモニタリング機器での検査が行われる。 今後、早期発見のために装着されるウェアラブル機器による生体モニタリングなどについては、利用者が中途で止めてしまわないようにモニタリングの重要性を教育すること、一切操作不要でモニタリングできるシステムの開発と導入が望まれると展望を語り、講演を終えた4)。

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2024年を終えるに当たって【Dr. 中島の 新・徒然草】(561)

五百六十一の段 2024年を終えるに当たっていよいよ激動の2024年も終わりを迎えようとしています。正月の能登半島地震、翌2日の羽田空港地上衝突事故で始まった2024年ですが、大谷翔平選手のMLBでの大活躍や、日経平均株価のバブル期超えという明るいニュースもありました。考えてみれば、そもそも平穏な1年などというものはなく、毎年のように何か予想外のことが起こっているわけですね。私自身を振り返ってみると、何といっても定年退職したことが一番の出来事です。前々回に述べたように、週2回の外来と医師会活動や看護学校での講義のほかは、自宅で過ごす毎日。やはり時間に余裕ができたのは大きく、外来の患者さんたちにも「先生、前より元気そうね」と言われたりします。外来の患者さんといえば、若い人の中には結婚や出産というめでたいこともあったりします。ある脳梗塞の女性患者さんは、生まれたばかりの赤ん坊を連れてきてくれました。患者「普段は目立たないけど、子供を抱っこしたりするとバランスが悪くて」中島「そういう時に片麻痺が露呈してしまうのか……」患者「もう母や旦那に頼りっぱなしで情けないです」中島「そんなもん、利用できるものはすべて利用したほうがいいですよ」彼女は実家が目の前にあるので、何かと母親に助けてもらいながらの子育てです。一緒に診察室に来ていた母親は孫を抱きながら「そうは言っても育児は終わりがありますからね」と仰っていました。頼もしい!一方、別の頭部外傷の女性患者さんは、つい子供にきつく当たってしまうというのが悩みのようでした。高次脳機能障害のために感情を抑えづらいのがその原因。3歳の女の子を連れての受診ですが、彼女の場合は周囲に助けてくれる人があまりいないようです。中島「ママ、怒ったりする?」女の子「うん」中島「ママは怖い?」女の子「うん」患者「何を言ってるの!」まずい……余計なことを聞いてしまった。中島「でも、優しいママは大好き?」女の子「うん」一体、この先はどうなるのでしょうか。中島「保育所の利用とかで必要な書類があったら、何でも書きますから、遠慮なく言ってください」患者「ありがとうございます」別の患者さんは、小学生から中学生までの3人の子供がいる状態で、脳内出血を発症してしまいました。やはり片麻痺があるので、家事には苦労しています。患者「上の子は本当だったら反抗期なんでしょうけど……」中島「親に反抗している余裕もないんですね」患者「そうなんですよ。もう全員で家事を手伝ってくれています」中島「それは立派。立派過ぎる!」子供たちが診察室に付いてくることがあったら、私なりに労ったり励ましたりしなくてはなりませんね。そういえば、父親としての悩みというのも聞かされました。この患者さんは、交通事故の後に仕事も私生活もうまくいかなくなってしまったのですが、子供の話をする時だけは嬉しそうな表情です。患者「上の子が中学生になりまして」中島「こないだ小学校に入ったと聞いたばっかりなのに!」患者「それで、小学校からの友達と一緒にハンドボール部に入ったんですけど」中島「頑張ってますね」患者「それが同じポジションで、友達のほうばかりが試合に出してもらっているそうなんですよ」中島「そりゃあ辛いなあ」患者「それでハンドボールをやめたいとか言い出して」中島「でも、レギュラーになれない自分とどうやって折り合いを付けて頑張れるか、というのが部活動の本当の意味だと思いますけどね」患者「そうなんですか!」中島「とはいえ、本人は本人でいろいろ考えているでしょうから、あまり親が『ああしろ、こうしろ』と言い過ぎるのも良くないと思いますけど」今にして思えば、部活動というのは社会の縮図でした。よくあれだけ泣いたり笑ったりしたもんだと思います。部活動では、本当にたくさんの失敗をしてしまいましたが、医療現場と違って人が死ぬということがなかったのが救いでした。今になってそんな風に思います。ともあれ。あと数日間の2024年、無事に終わってほしいですね。読者の皆さん。良い年をお迎えください。最後に1句外来で 患者と悩む 年の暮れ

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中等~重度の椎骨脳底動脈閉塞、血管内治療vs.内科的治療/Lancet

 中等度~重度の症状を呈する椎骨脳底動脈閉塞患者において、標準的な内科的治療と比較して血管内治療は強固な有益性を示し、良好な機能的アウトカムの達成の可能性が高く、症候性頭蓋内出血のリスクは有意に増加するものの、全体的な機能障害および死亡率の有意な減少と関連することが、米国・ピッツバーグ大学のRaul G. Nogueira氏らが実施した「VERITAS研究」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年12月11日号で報告された。4つの試験のメタ解析 研究グループは、急性椎骨脳底動脈閉塞患者における血管内治療の安全性と有効性を評価するために、標準的な内科的治療(対照)と比較した無作為化試験の系統的レビューを行い、患者レベルのデータを統合したメタ解析により、事前に規定したサブグループにおける有益性を検討した(特定の研究助成は受けていない)。 2010年1月1日~2023年9月1日に実施された無作為化試験の中から4つの試験(ATTENTION、BAOCHE、BASICS、BEST)を選出した。 主要アウトカムは、90日後の良好な機能状態(修正Rankin尺度[mRS]スコア[0~6点、高点数ほど機能状態が不良、6点は死亡]が0~3点)とした。安全性のアウトカムとして、症候性頭蓋内出血と90日死亡率を評価した。90日mRSスコア0~3点達成率:45% vs.30% 4試験の参加者988例のデータを統合した。血管内治療群は556例(56%)、対照群は432例(44%)であった。全体の年齢中央値は67歳(四分位範囲:58~74)、686例(69%)が男性だった。904例(91%)が脳卒中の推定発症時から12時間以内に無作為化された。3試験は中国人が対象で、988例中690例(70%)を占めた。1試験は欧州人とブラジル人を対象としていた。 良好な機能状態を達成した患者の割合は対照群よりも血管内治療群で高く、90日時にmRSスコア0~3点を達成した患者は、対照群が30%(128例)であったのに対し、血管内治療群は45%(251例)であった(補正後共通オッズ比[OR]:2.41、95%信頼区間[CI]:1.78~3.26、p<0.0001)。 血管内治療群は機能的自立度(mRSスコア0~2点の達成率)が高かった(血管内治療群35%[194例]vs.対照群21%[89例]、補正後共通OR:2.52、95%CI:1.82~3.48、p<0.0001)。また、血管内治療群で症候性頭蓋内出血のリスクが有意に高かった(5%[30例]vs.<1%[2例]、11.98、2.82~50.81、p<0.0001)にもかかわらず、全体的な機能障害の程度(2.09、1.61~2.71、p<0.0001)および90日死亡率(36% vs.45%、0.60、0.45~0.80、p<0.0001)は有意に低かった。心房細動や頭蓋内動脈硬化の有無にかかわらず有益 血管内治療の効果の異質性は、ベースラインの脳卒中重症度(ベースラインのNIHSSスコアが10点未満では効果が不確実)および閉塞部位(閉塞部位が近位であるほど有益性が大きい)については認められたが、年齢、性別、ベースラインの後方循環ASPECTSスコア、心房細動または頭蓋内アテローム性動脈硬化性疾患の有無、発症から画像診断までの時間で定義されたサブグループではみられなかった。 著者は、「アジア人は頭蓋内動脈硬化性疾患の発生率が高いことが知られているため、今回の知見の欧米諸国に対する一般化可能性について考慮する必要がある」「脳卒中重症度が軽度で、神経画像上広範な梗塞を呈する椎骨脳底動脈閉塞症患者に対する血管内治療の有益性はまだ不明であるが、これらの結果により椎骨脳底動脈閉塞症のさまざまな患者において血管内治療の有意な臨床的有益性が示された」としている。

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冬季に高齢者の入浴は要注意

冬季の高齢者の入浴はなぜ危険?■冬季こそ高齢者は入浴時に気を付けよう65歳以上の高齢者で入浴中に意識を失い、そのまま浴槽内で溺れて亡くなるという不慮の事故が増えています。毎年11月~4月にかけて多く発生し、高齢者の浴槽内での不慮の溺死および溺水の死亡者数は4,750人(厚生労働省人口動態統計[令和3年])で、交通事故死の亡者数2,150人のおよそ2倍です。原因の1つは、急な温度差による血圧の急激な変化です。血圧の急激な変化により一時的に脳内に血液が回らない貧血状態になり、一過性の意識障害を起こし、浴槽内で溺れて死亡するものと考えられています。【とくに注意が必要な人】・65歳以上の高齢者・血圧が不安定な人・以前風呂場でめまいや立ちくらみを起こした人政府広報オンラインより引用(2024年12月16日閲覧)https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202111/1.htmlCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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更年期のホルモン補充療法、心血管疾患のリスクは?/BMJ

 経口エストロゲン・プロゲスチン療法は、虚血性心疾患および静脈血栓塞栓症のリスク増加と関連していた。一方、合成ホルモン剤tiboloneは、虚血性心疾患、脳梗塞、心筋梗塞のリスク増加と関連していたが、静脈血栓塞栓症とは関連していなかった。スウェーデン・ウプサラ大学のTherese Johansson氏らが、スウェーデン統計局、ならびに保健福祉庁の処方薬登録、全国患者登録、がん登録および死因登録のデータを用いて行った、無作為化比較試験(RCT)を模倣するtarget trialの結果を報告した。閉経後10年以上経過後または60歳を超えてからの経口エストロゲン・プロゲスチン療法開始は、心疾患、脳卒中、静脈血栓塞栓症のリスクが増加する可能性が示唆されているが、現行更年期ホルモン補充療法の心血管疾患リスクに関する研究は不足していた。BMJ誌2024年11月27日号掲載の報告。スウェーデンの50~58歳の女性約92万例を解析 研究グループは、2007年7月~2018年12月の間に毎月、対象を登録して追跡を開始し、138のネステッド試験がデザインされた。 対象は、追跡開始前に過去2年間ホルモン補充療法を行っておらず、心血管疾患やがんならびに子宮摘出術または両側卵巣摘出術の既往歴がない50~58歳の女性で、追跡開始時の処方薬の種類により8つの群(持続的経口併用療法、逐次的経口併用療法、経口エストロゲン単独療法、経口エストロゲン+レボノルゲストレル放出子宮内システム併用、tibolone、経皮併用療法、経皮エストロゲン単独療法、ホルモン補充療法を開始せず)のいずれかに分類し、主要エンドポイントの発生、死亡、転居または2年間のいずれか早い時点まで追跡した。 主要エンドポイントは、静脈血栓塞栓症、虚血性心疾患、脳梗塞、心筋梗塞であった。それぞれ個別または複合のアウトカムとして解析し、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推算した。 解析対象は、138試験において少なくとも1試験で適格基準を満たした91万9,614例で、このうちホルモン補充療法を開始した女性が7万7,512例、開始しなかった女性が84万2,102例であった。持続的経口併用療法は、虚血性心疾患および静脈血栓塞栓症のリスクが増加 追跡期間中(2年間)に、主要エンドポイントのイベントは2万4,089例に発生した。1万360例(43.0%)で虚血性心疾患、4,098例(17.0%)で脳梗塞、4,312例(17.9%)で心筋梗塞、9,196例(38.2%)で静脈血栓塞栓症が発生していた。 ITT解析の結果、tiboloneは、ホルモン補充療法を開始しなかった女性と比較して虚血性心疾患のリスク増加と関連していた(HR:1.52、95%CI:1.11~2.08)。また、tibolone(HR:1.46、95%CI:1.00~2.14)、ならびに持続的経口併用療法(1.21、1.00~1.46)は、虚血性心疾患のリスクが高かった。 持続的経口併用療法(HR:1.61、95%CI:1.35~1.92)、逐次的経口併用療法(2.00、1.61~2.49)、および経口エストロゲン単独療法(1.57、1.02~2.44)は、静脈血栓塞栓症のリスクが高かった。 追加のper protocol解析では、tiboloneは脳梗塞(HR:1.97、95%CI:1.02~3.78)および心筋梗塞(1.94、1.01~3.73)のリスク増加と関連していることが示された。

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