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CEA中の超音波血栓溶解法、第III相試験の結果/BMJ

 頸動脈内膜剥離術(CEA)中の経頭蓋ドプラプローブを用いた超音波血栓溶解法(sonolysis)は、30日以内の虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作および死亡の複合エンドポイントの発生を有意に減少させたことが、欧州の16施設で実施された第III相無作為化二重盲検比較試験「SONOBIRDIE試験」の結果で示された。チェコ・ University of OstravaのDavid Skoloudik氏らSONOBIRDIE Trial Investigatorsが報告した。パイロット研究では、CEAを含むさまざまな治療中の脳卒中や脳梗塞のリスク軽減に、sonolysisは有用である可能性が示されていた。BMJ誌2025年3月19日号掲載の報告。内頸動脈狭窄70%以上の患者を対象に偽処置対照試験 研究グループは、NASCET法に基づきデュプレックス超音波検査で検出され、CT、MRIまたはデジタルサブトラクション血管造影により確認された、内頸動脈狭窄70%以上の患者を、sonolysis群または偽処置群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 sonolysisは、標準的な超音波装置と2MHz経頭蓋ドプラプローブを用いて行われ、超音波技師のみ非盲検下であった。 主要アウトカムは、無作為化後30日以内の虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作および死亡の複合とした。また、MRIサブスタディのエンドポイントは、CEA後24(±4)時間時点での脳スキャンにおける1つ以上の新たな虚血性病変の出現、新規虚血性病変の数などであった。安全性アウトカムには、有害事象、重篤な有害事象、およびCEA後30日以内の出血性脳卒中(くも膜下出血を含む)の発生率が含まれた。複合エンドポイントの発生は2.2%vs.7.6%、安全性も良好 2015年8月20日~2020年10月14日に1,004例(sonolysis群507例、対照群497例)が登録され、最初の登録患者1,000例の中間解析において有効性が認められたため、早期中止となった。1,004例の患者背景は、平均年齢67.9(SD 7.8)歳、女性312例(31%)で、450例(45%)が症候性頸動脈狭窄、平均頸動脈狭窄度は79.9(SD 8.9)%であった。 主要アウトカムのイベントは、sonolysis群で11例(2.2%)、対照群で38例(7.6%)に発生し、sonolysis群で有意に少なかった(リスク群間差:-5.5%、95%信頼区間[CI]:-8.3~-2.8、p<0.001)。 MRIサブスタディにおける新たな虚血性病変の検出率も、sonolysis群8.5%(20/236例)、対照群17.4%(39/224例)であり、sonolysis群で有意に低かった(リスク群間差:-8.9%、95%CI:-15~-2.8、p=0.004)。 感度分析の結果、30日以内の虚血性脳卒中に対するsonolysisのリスク比は0.25(95%CI:0.11~0.56)、一過性脳虚血発作に対するリスク比は0.23(0.07~0.73)であった。 sonolysisは安全性も良好であり、sonolysis群の94.4%の患者で術後30日以内に重篤な有害事象は認められなかった。

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高血圧患者、CVD死亡リスクがとくに高い年齢層は?/東北医科薬科大

 高血圧は、心血管疾患(CVD)のリスクとなることは知られている。では、そのリスクは、日本人ではどの程度の血圧(BP)分類や年齢から発生するのであろうか。東北医科薬科大学医学部公衆衛生学・衛生学教室の佐藤 倫広氏らの研究グループは、このテーマについてEPOCH-JAPAN研究における7万人の10年追跡データを用いて、現在用いられているBP分類とCVD死亡リスクの関連を検討した。その結果、高血圧とCVD死亡リスクは関連があり、その傾向はとくに非高齢者で顕著だった。この研究はHypertension Research誌オンライン版に2025年2月20日に公開された。40~64歳の高血圧患者でCVD死亡リスク上昇が顕著 研究グループは、わが国で実施された10のコホート研究データを統合し、7万570例(平均年齢59.1歳、女性57.1%)を対象としたデータを解析した。追跡期間は平均9.9年で、降圧治療の有無で層別化し、最新のBP分類とCVD死亡リスクとの関連を検討した。BP分類は、日本高血圧学会ガイドライン(2019年)に従った。 主な結果は以下のとおり。・約10年間の追跡期間中に2,304例のCVD死亡が発生した。・Coxモデルにより、CVD死亡リスクはBP分類が高くなるとともに段階的に増大することが示され、この関連は40~64歳の高血圧未治療者でとくに顕著であった。・高血圧未治療のI度高血圧群(診察室:140~159かつ/または90~99mmHg、家庭:135~144かつ/または85~89mmHg)がCVD死亡に対する最も高い集団寄与危険割合(PAF)を示した。・治療を受けた患者を高血圧群に含めると、高血圧群のCVD死亡に対するPAFは41.1%だった。・同様のパターンがCVDサブタイプの死亡リスクでも観察され、高血圧症では脳内出血のPAFがとくに高かった。 研究グループでは、「これらの結果は、高血圧の早期予防と管理の重要性を示唆する」と述べている。

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在宅患者がやってきた【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第4回

在宅患者がやってきたPoint在宅患者は、外来に通院できない事情がある。外来患者よりもより医療を必要としている人達だ!在宅患者・家族は、最期まで在宅生活を送れないさまざまな事情も抱えている。患者・家族をはじめ在宅チームは、急変時に病院バックベッドの存在があるから、在宅で頑張れる!在宅医療の普及で、患者・家族、医療者もWin-Winに!症例88歳女性。肝内胆管がん、多発肝転移、リンパ節転移、骨転移あり。消化器科主治医からは「いつでも調子が悪くなったら病院に戻ってきていいよ」と言われたうえで、A病院からB診療所に紹介され、訪問診療が開始された。高齢の夫と長男の妻の3人暮らし。キーパーソンの長男は海外に単身赴任中。嫁に行った長女はよく顔を見にきてくれる。疼痛コントロールも良好であった。訪問診療開始1ヵ月後、長男の妻より「今朝から左手の力が入らない、移動も困難になっている」とB診療所に電話あり。トルーソー症候群(悪性腫瘍の凝固能亢進による脳梗塞)の可能性ありと判断された。在宅医は「今回脳梗塞が疑われるが、原病に伴うものであるため、在宅での継続加療も可能」と長男の妻に話したが、長男の妻の強い希望で、A病院に救急紹介された。A病院では頭部CT、頭部MRIが施行され、左右多発脳梗塞(トルーソー症候群)と診断された。長男の妻は仕事と介護で疲れもピークに達しており、「入院させてほしい」と強い希望があった。救急では入院主治医決定に難航した。原疾患の消化器内科か、脳梗塞の神経内科か。“大人の事情”の協議の末、今回は神経内科で入院加療となった。「最期まで在宅でと決まってなかったの? どうして救急に送ってくるんでしょうね」と救急当番の研修医はボソッと心なくつぶやいてしまった。「『これって在宅医が悪いの?』、『患者・家族が悪いの?』って、そんな視点をもつ医者はロクな医者にならないぞ」と指導医に叱られた。「『病気をみずして人をみろ』が実践できたら、入院主治医決定に迷うことはないんだけどね」と、悲しそうに指導医はつぶやいた。おさえておきたい基本のアプローチどんな患者さん達が在宅医療を受けているのだろうか?在宅患者の85%以上は要介護状態にあり、要介護1~5の患者がそれぞれ10~20%ずつ存在する。在宅患者の基礎疾患は多様であり、とくに循環器疾患・認知症・脳血管疾患を抱える患者の割合が大きい(図1)1)。治癒が期待できない患者(末期悪性腫瘍や人工呼吸器を使用している患者、遺伝性疾患や神経筋難病など)は約15%を占める。図1 疾患別の患者割合在宅医療を受けている患者達は、表1のような状況で、ぎりぎりで在宅生活を送っている実情を理解しておこう。病院に紹介されて疾患だけ治して、家にポイッと帰すだけでは、よい医療の質は保たれないのだ。「病気をみずして、人をみよ」とまさしく体現しているのだ。表1 在宅医療利用患者の生活背景事情独居老々介護在宅介護困難で、施設(グループホーム、老人ホームなど)に入所中家族は働いており、昼間の介護者不在で、ほぼ毎日デイサービス利用している上記などの理由で特養などの施設へ入所したいが、空き待ちの間、在宅医療を受けている一方、患者は在宅療養を受けたくてもなかなかそれができないのが現状なんだ。図2のように、在宅療養移行や継続の阻害要因と、在宅医療推進にあたっての課題が、厚生労働省からもあげられている2)。24時間の在宅医療提供体制や、在宅医療・介護サービス供給量の拡充だけでなく、在宅療養者のバックベッドの確保・整備や、介護する家族支援は欠かせないことが、理解できるだろう。疾病をもつ患者の生活も支えていくことは、医療全体の医療費負担の軽減にもつながるんだ。図2 在宅療養移行・継続阻害要因と在宅医療推進の課題画像を拡大するそんな状況でようやく在宅療養が受けられたが、在宅療養が継続できなくなって病院に紹介されてくるときに、「あ~、ダメだ。病院にお世話にならないといけなくなってしまったぁぁぁ」という患者・家族の思いや在宅医の忸怩たる思いを慮って、病院の受け入れ側医師は優しく温かく良医としての矜持をもって受け入れてほしい。在宅医療を選択することは、在宅で必ずしも死を選択しているわけではなく、まだ準備ができていない患者・家族もいる、在宅で死を迎えたいと思っていても気が変わる場合もある、そんな多様性を病院の受け入れ医師は知っておかないといけない。落ちてはいけない・落ちたくないPitfallsまず、在宅患者は、外来に通えないという前提があることを理解しよう!訪問診療の対象にある患者は、外来通院できない患者に絞られることをまず前提として理解いただきたい。外来診療に通えない人とは、疾患の重症度が高く、多疾患併存状態も多く、通えない事情として身体的要因だけでなく社会的要因も考慮しなければならないだろう。実際に、高齢者を対象として在宅医療の有無の観点から入院患者の特徴と救急車搬送により入院となる割合の違いを明らかにすることを目的とした研究がある3)。在宅医療がある症例はない症例と比較して認知症やがんなど併存症を伴う割合や低栄養および低ADL患者である割合が高く、在院日数の長期化がみられ、介護施設へ転院となる割合が高かった。また、がんをはじめ多くの主傷病において救急車搬入により入院となる割合が高かった。この研究結果を踏まえて、外来患者よりも在宅患者のほうが救急車搬入による入院が多い実態を肝に銘じていただき、患者にも家族にも優しい対応をお願いしたい。米国では、高齢者を対象に在宅医療サービスを開始したところ、登録前の1年間と登録後で同じ患者で比較して、ERの訪問が約30%、入院が10%減少したという報告もある4)。やはり在宅医療は患者・家族、医療者にとって、Win-Winな制度と考えられるだろう。Pointなぜ在宅医療を受けているのか? という理由をまず考えてみよう!急激なADLの低下出現…在宅生活本当に続けられる!?冒頭の症例の患者は末期がんの状態であり、ADLの低下は予想されていた。しかし脳梗塞による急激なADL低下に、主介護者である長男の妻より、在宅加療継続は難しいとのお話があり、入院加療となった。長男の妻は仕事で日中介護できず、在宅生活も1ヵ月近くなっており介護疲れもあった。入院後にもカンファレンスを行い、元々入っていた訪問看護以外に訪問介護導入も可能とお話したが、実母を看取った経験も踏まえて、在宅加療を継続する自信がないとのことだった。本人の気持ちも確認したが、このまま入院でよいとのお話であった(長男の妻によると、ご本人は周囲の状況を察してあまりわがままは言えない性格とのことだった)。キーパーソンの息子も帰国したが、入院加療を続けてほしいとのお話であり、転院調整中にA病院でお亡くなりになった。在宅医療は病気だけをみていたのでは始まらない。生活背景や心理的背景も考慮して、家族も支えていかないといけない。無理矢理在宅を継続することで、長男の妻が精神的にも肉体的にも追い詰められて、本当に体を壊してもいけないのだ。また海外駐在の息子さんがいるというのも、権利意識やインフォームド・コンセントにも気を遣い、診療方針決定に大きく影響を受け、そういうことまで配慮してこそ在宅医療はうまくいくのだ。高齢者は、疾病でも外傷でも容易にADLが低下する。疾病の重症度だけで帰宅可能と判断しても、実際は帰宅後の介護負担が増加して、より危険にさらされる状況になってしまうことは珍しくない。尿路感染だけ診断して安易に帰宅させた老々介護の高齢女性が、自宅で転倒し大腿骨近位部骨折を併発して、救急車で舞い戻ってきたという事例もある。ときには患者家族と救急担当医の間で患者の押し付け合いのような現象が生じる。しかし、無理に帰宅させて病状が悪化するのでは、判断が甘いといわざるを得ない。帰宅後に病態の見落としが判明する場合もある。在宅医療を受けている患者の入院・帰宅の判断の際には、帰宅後の介護負担を十分に考慮し、メディカルソーシャルワーカーなどを通じて、ケアマネジャーや在宅主治医などと連携して、帰宅後の介護や医療提供を考慮するように心がけたい5)。Point継続しておうちで過ごせそうでしょうか? ケアマネ・在宅主治医にも相談してみましょう在宅患者・家族みんなが、最期まで在宅と考えているわけではない前述の患者も、最期まで在宅と決めて、訪問診療を開始したわけではない。退院の際に病院主治医から「困ったときは入院も考慮します」と話があり、その言葉が、患者・家族・在宅チームの安心につながっていた。在宅医療を含む自宅療養を受ける際にその患者や家族が抱える問題意識として、症状急変時の対応に不安があること、症状急変時すぐに入院できるか不安があることが、図2に示されている。他のケースでも、最期は病院でと病院主治医と約束し、在宅医療開始になった患者がいる。1人は肺がん末期で、呼吸苦や疼痛はオピオイド増量でコントロールしていたが、急激に呼吸状態が悪化し、訪問看護が呼ばれ、訪問看護からの連絡で往診のうえ、家族の希望も踏まえて紹介元の病院に紹介したが、24時間以内に亡くなった。もう1人は、肝細胞がん末期、胸水腹水貯留で、腹水除去などを在宅で行っていたが、深夜呼吸苦が増悪し、在宅酸素導入したが、家族が病院紹介を希望され、この方も24時間以内に亡くなった。結構ぎりぎり最期(死ぬ直前)まで患者も家族も在宅で頑張っているんだ。「だったら最期くらい家で看取ればいいのに」なんて冷たい言い方をしてはいけない。最後の最後につらそうにしている患者を家族が在宅で看ていられなくなってしまう気持ちもわかってあげよう。家族は医療者ではなく素人であり、死に対する免疫はないのだから。オンタリオの研究では、家で看取ると思っていても、最後は不安になって16%の人は救急車を呼ぶという6)。ぎりぎりまで在宅で患者に寄り添った家族にやさしい言葉をかけられる医療者こそ、心の通った医療者なんだ。Point病院主治医に、困ったらおいでと言われていたのですね。よくここまでおうちで頑張りましたね在宅看取りのはずなのに、どうして救急搬送してしまうのか?在宅看取りを希望していても、心配で在宅主治医や訪問看護師を呼ぶ前に119番通報してしまう家族もいるものと理解しよう。気が変わるのは仕方のないこと。むしろ絶対に気が変わったらダメなんて言ったら、在宅医療は推進できない。蘇生処置を行わない意思表示(DNAR:Do Not Attempt Resuscitation)のある終末期がん患者の臨死時に救急車要請となる理由を救急救命士への半構造的面接により検討した研究論文7)では、(1)DNARに関する社会的整備が未確立(臨死時救急車以外病院搬送手段がないなど)(2)救急車の役割に対する認識不足(蘇生処置をせずに救急搬送が可能という認識の住民や医師がいるなど)(3)看取りのための医療支援が不十分(4)介護施設での看取り体制が不十分(5)救急隊に頼れば何とかなるという認識(何かあったときは119番という住民感情があるなど)(6)在宅死を避けたい家族の思い(家族が在宅死に対する地域社会の反応を気にするなど)(7)家族の動揺(DNARの意思が揺らぐ家族など)といった7つの理由が明らかになったとしている。Pointとっさに、救急車を呼んでしまったのですね。最期にこんなにバタバタするとは想像しなかったですよね。状態が悪いのを見ているのはつらいので、無理もないですよワンポイントレッスン在宅側からの取り組み─在宅看取りの文化の醸成に向けて─在宅医療を受けていても、救急車を呼び、今まで関係のなかった病院に搬送されると、死亡判定後、警察が来て検死が始まる。警察が事情を聴きに家まで来てしまうのだ。「まさか警察が来て事情聴取を受けるなんてぇ…」と、思いがけない最期に憤りや後悔をあらわにする家族もいる。家族に後悔が残らないようにするための在宅側からの取り組みを紹介する。在宅医療を地域住民に啓発しよう2014年厚生労働省より全国1,741市町村別に在宅死の割合が発表されたが、全国平均12.8%に対し、筆者のクリニックがある永平寺町は6.7%であり、福井県下でも最下位だった。永平寺町内には福井大学医学部附属病院がそびえたち、町民の生活風景のなかに大学病院があることで、何かあれば大学病院に行けばよいとの住民感情もあっただろう。大学病院なのに町立病院のような親近感をもたれているといえばそのとおりなんだけど…。そんな状況を受け、2019年8月1日に永平寺町立在宅訪問診療所(24時間体制の在宅支援診療所)が設立された。開設の約1年前から町の福祉保健課、地域包括支援センターとともに永平寺町民に向けて、在宅医療についての説明会を約2年間にわたって計70回行い、在宅医療が何なのかの啓発活動に専念した。最期がイメージしやすいパンフレットを作成がんの末期で病院から紹介いただく患者でも、最期に向けてどのような経過を辿っていくのかイメージできず、強い不安を感じている患者・家族がほとんどだ。そこで当院ではパンフレットを作成し、タイミングをみて、パンフレットを用いながら、今後の変化について、説明している(図3)。図3 最期をイメージするためのパンフレット緩和ケア普及のための地域プロジェクトがフリーで提供している「これからの過ごし方」というパンフレットも大変参考になる8)。ほかにも、疼痛などの評価ツールなども掲載されているので、ぜひ参考にされたい(緩和ケア普及のための地域プロジェクト)。救急車を呼んでしまうと、その先には!?最期のときに焦って救急車を呼んでしまうと、救命のために心臓マッサージや気管挿管が行われ、病院で最期を迎えた場合は、警察による検死も行われることもあるとパンフレットや口頭でお伝えしている。119番をコールする前に、訪問看護か在宅医にコールを! ということで、24時間連絡可能な連絡先が記載された用紙をお渡しし、家の目立つところに掲示してもらっている。最期に呼ぶのはあわてない、あわてない…最期が近いと予測されている場合、また真夜中などにおうちで息を引き取った場合、あわてずに翌朝、当方に連絡してもらえればよいこともお伝えしている。息を引き取る瞬間にご家族や医療者がもし立ち会えなかったとしても、在宅主治医が死後24時間以内に往診し診察すれば、死亡診断書が書けるのだ。家族も夜はなるべく休んでいただくよう説明している。参考1)厚生労働省. 在宅患者の状況等に関するデータ.2)厚生労働省. 在宅医療の動向.3)たら澤邦男 ほか. 日本医療マネジメント学会雑誌. 2020;21:70-78.4)De Jonge E, Taler G. Caring. 2002;21:26-29.5)太田凡. 日本老年医学会雑誌. 2011;48:317-321.6)Kearney A, et al. Healthc Q. 2010;13:93-100.7)鈴木幸恵. 日本プライマリ・ケア連合学会誌. 2015;38:121-126.8)緩和ケア普及のための地域プロジェクト(厚生労働科学研究 がん対策のための戦略研究). これからの過ごし方について.執筆

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ランダム化試験より個別最適化医療の論理が必要?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動の脳梗塞予防には抗凝固薬が広く使用されるようになった。しかし、脳内出血の既往のある症例に抗凝固薬を使用するのは躊躇する。本研究は過去に頭蓋内出血の既往のある症例を対象として、心房細動症例における抗凝固薬介入の有効性と安全性の検証を目指した。319例をDOAC群と抗凝固薬なし群に割り付けて中央値1.4年観察したところ、DOAC群の虚血性脳卒中は0.83(95%信頼区間[CI]:0.14~2.57)/100人年、抗凝固薬なし群では8.60(同:5.43~12.80)/100人年と差がついた。 しかし、頭蓋内出血イベントはDOAC群が5.00(95%CI:2.68~8.39)/人年、抗凝固薬なし群では0.82(同:0.14~2.53)/人年であった。 ランダム化比較試験としては事前に設定した有効性、安全性エンドポイントに対する仮説検証が目標となるが、臨床家は結果に基づいて実臨床における治療選択を考える。「頭蓋内出血の既往のある心房細動」でもDOACで虚血性脳卒中リスクを低減できるが、頭蓋内出血リスクは増える。未来に虚血性脳卒中リスクの高い個別症例を選別してDOACをのませる、などの個別最適化医療への方向転換が必要である。

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強度を徐々に上げる歩行運動は脳卒中後の患者の転帰を向上させる

 脳卒中後の標準的なリハビリテーションに1日30分の強度を徐々に上げる歩行運動(以下、漸増負荷歩行運動)を加えることで、退院時の患者の生活の質(QOL)と運動能力が著しく改善したとする研究結果が報告された。ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)理学療法学教授のJanice Eng氏らによるこの研究は、米国脳卒中学会(ASA)の国際脳卒中会議(ISC 2025、2月5〜7日、米ロサンゼルス)で発表された。Eng氏は、「ガイドラインでは、脳卒中後には体系的なリハビリテーション(以下、リハビリ)や運動療法を段階的に進めることを推奨しているものの、十分な強度を持つこうしたアプローチがリハビリプログラムに広く採用されているとは言えない」と米国心臓協会(AHA)のニュースリリースで述べている。 この研究は、カナダの12カ所の病院でリハビリ中の脳卒中患者306人を対象に実施された。試験参加者は、平均で1カ月前に脳梗塞または出血性脳卒中を発症し、リハビリのために入院しており、その時点で標準的な6分間歩行テストで歩くことができた距離は平均152mであった。 参加者は、標準的な理学療法を受ける群(162人)と新しいプロトコルに基づく理学療法を受ける群(144人)にランダムに割り付けられた。新しいプロトコルは、週5日、最低30分の理学療法セッションにおいて、中強度の運動強度を維持しながら2,000歩を歩くことを目標とするもので、強度は、参加者の最初の状態に基づき段階的に上げられた。参加者には心拍数と歩数を測定できる腕時計型の活動量計(ウェアラブルデバイス)を装着させ、それにより運動強度を評価した。運動能力、認知機能、QOLは、研究開始時と退院時(約4週間後)に評価された。 その結果、新しいプロトコルに基づく理学療法を受けた参加者では、標準的な理学療法を受けた参加者に比べて、退院時の6分間歩行テストで歩くことのできた距離が平均43.6m長いことが明らかになった。また、新しいプロトコルに基づく理学療法を受けた参加者では、QOL、バランス能力、可動性、歩行速度についても有意な向上を示した。 Eng氏は、「体系的な漸増負荷歩行運動は、ウェアラブルデバイスの助けを借りることで安全な強度を維持しやすくなる。安全な強度の維持は脳の治癒力と適応力である神経可塑性にとって極めて重要な要素だ」と話す。同氏は、「脳卒中後の数カ月は、脳の変化を最も期待できる時期だ。本研究結果は、この初期のリハビリ段階において、好ましい結果を示すことができた」と話している。 Eng氏はまた、この研究は、脳卒中患者のリハビリにおける歩行運動の利点を示しただけでなく、脳卒中治療ユニットが、新しい運動を既存のプログラムに簡単に組み込めることも示していると指摘する。同氏は、「われわれの研究は、実臨床の非常に成功した実験と言える」と語っている。 一方、この研究をレビューした米ジョンズ・ホプキンス大学理学療法・リハビリテーション科准教授のPreeti Raghavan氏は、「この研究は、脳卒中後の脳の可塑性が最も高い重要な時期に、入院リハビリ病棟で、新たなプロトコルを既存のプログラムに組み込むことが可能なことを示している」と述べ、「このプロトコルにより、患者の持久力が高まり、脳卒中後の障害が軽減された。これは脳卒中後の回復にとって非常に前向きなデータだ」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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救急隊員によるnerinetideの入院前静注は脳虚血患者に有効か?(解説:内山真一郎氏)

 ESCAPE-NA1試験では、nerinetideが血栓溶解療法後の患者には効果がなかったのは、血栓溶解薬により産生されたプラスミンがnerinetideを分解して不活化してしまうためと考えられたことから、ESCAPE-NEXT試験では血栓溶解療法との併用は検討されなかった。 一方、FRONTIER試験では、病院に到着して血栓溶解療法が行われる前にnerinetideが投与されたので、神経保護と血栓溶解による再灌流の相乗効果が期待された。このアプローチは、発症から治療開始までの時間が短い利点があるが、脳梗塞以外に脳出血、TIA、脳卒中と紛らわしい疾患が混入する欠点もある。 nerinetideは、脳卒中が疑われるすべての患者に有効であるとはいえなかったが、最も効果があったのは血栓溶解療法を受けた症例であり、ターゲットとなる急性期脳梗塞患者には再灌流治療との併用療法として有益であると思われる。今後の臨床試験では、神経保護薬は動脈再開通前の虚血進行中の早期投与がとくに効果があるという仮説を検証すべきである。FRONTIER試験の結果は、血管内治療が可能な脳卒中センターの近くにいない患者に有用な戦略であることを支持している。

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脳保護薬nerinetideは血栓溶解療法を行わない血栓除去術施行患者に有効か?(解説:内山真一郎氏)

 nerinetideは、急性期虚血性脳卒中の前臨床モデルで多くの研究が行われてきたイコサペプチドであり、再灌流療法前の脳損傷の進行を阻止することによる転帰改善効果が期待されている。nerinetide投与前にアルテプラーゼ治療を受けなかった患者では効果があり、受けた患者では効果がなかったが、アルテプラーゼの先行投与により産生されるプラスミンがnerinetideを分解して不活化してしまうためであると考えられている。 ESCAPE-NEXT試験は、nerinetideが有効だったESCAPE-NA1試験のアルテプラーゼ無投与群の結果を再現するためにデザインされた。結果は、事前に血栓溶解療法を行わなかった、発症後12時間を過ぎた血管内血栓除去術を施行した患者においてnerinetideの効果は観察されなかった。中立的な結果に終わった理由としては、脳卒中ケアの経時的変貌、治療時間枠の遅さ、COVID-19流行の影響、年齢の高さ、薬剤投与と再灌流の間のインターバルの短さが挙げられている。 血管内治療は、脳保護療法の理想的な唯一の患者選択肢とはいえないのかもしれない。同時に行われたFRONTIER試験の統合解析が待たれるが、脳保護療法の未来には今後も多くの紆余曲折がありそうである。

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脳出血既往AFに対する脳梗塞予防、DOACは有用か?/Lancet

 直接経口抗凝固薬(DOAC)は、心房細動を伴う脳内出血生存者の虚血性脳卒中予防に有効ではあるが、その有益性の一部は脳内出血再発の大幅なリスク増加により相殺されることが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRoland Veltkamp氏らPRESTIGE-AF Consortiumが、欧州6ヵ国75施設で実施された第III相無作為化非盲検評価者盲検比較試験「PRESTIGE-AF試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「これら脆弱な患者集団における脳卒中予防を最適化するには、さらなるエビデンスと無作為化データのメタ解析が必要である。特定の患者に対しては、より安全な薬物療法または機械的代替療法の評価も求められる」と述べている。DOACは、心房細動患者において血栓塞栓症の発症頻度を低下させるが、脳内出血生存者に対するベネフィットとリスクは不明であった。Lancet誌オンライン版2025年2月26日号掲載の報告。脳内出血発症後14日~1年のAF患者をDOAC群と抗凝固薬非投与群に無作為化 研究グループは、脳内出血発症後14日~12ヵ月(当初は6ヵ月)以内で、心房細動を有し、抗凝固療法の適応があり、修正Rankinスケール(mRS)スコアが4以下の18歳以上の患者を、脳内出血の部位と性別によって層別化し、DOAC群または抗凝固薬非投与群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 血管奇形または外傷に起因する脳内出血、左心耳閉鎖デバイスによる治療予定または既治療患者などは除外した。 DOAC群では、各地の試験担当医師の判断によりアピキサバン、ダビガトラン、エドキサバンまたはリバーロキサバンが投与された。抗凝固薬非投与群では、試験担当医師の判断で抗血小板薬(例:アスピリン100mg 1日1回)を投与または非投与した。 主要エンドポイントは2つで、初回虚血性脳卒中と脳内出血の初回再発とし、ITT集団で優越性と非劣性に関する階層的検定を実施した。脳内出血に関する非劣性マージンは、ハザード比(HR)の90%信頼区間上限が1.735未満とした。安全性についても、ITT集団を対象に解析した。DOAC群で虚血性脳卒中リスクは減少、脳内出血再発リスクは増大 2019年5月31日~2023年11月30日に319例が登録され、DOAC群(158例)および抗凝固薬非投与群(161例)に無作為に割り付けられた。患者背景は、年齢中央値が79歳(四分位範囲[IQR]:73~83)で、女性113例(35%)、男性206例(65%)であった。 追跡期間中央値1.4年(IQR:0.7~2.3)において、初回虚血性脳卒中の発症頻度は、DOAC群が抗凝固薬非投与群より低かった(HR:0.05、95%CI:0.01~0.36、log-rank検定p<0.0001)。すべての虚血性脳卒中イベントの発症頻度(100患者年当たり)は、DOAC群で0.83(95%CI:0.14~2.57)に対し、抗凝固薬非投与群では8.60(5.43~12.80)であった。 脳内出血の初回再発については、DOAC群は事前に規定された非劣性マージン(<1.735)を満たさなかった(HR:10.89、90%CI:1.95~60.72、p=0.96)。すべての脳内出血の発症頻度(100患者年当たり)は、DOAC群5.00(95%CI:2.68~8.39)に対し、抗凝固薬非投与群は0.82(95%CI:0.14~2.53)であった。 重篤な有害事象は、DOAC群で158例中70例(44%)、抗凝固薬非投与群で161例中89例(55%)に発現した。DOAC群では16例(10%)、抗凝固薬非投与群では21例(13%)が死亡した。

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虚血性脳卒中、救急車内でのnerinetide投与は有効?/Lancet

 虚血性脳卒中が疑われるすべての患者では、入院前の救急車内でのプラセボ投与と比較して神経保護薬nerinetideは、神経学的機能アウトカムを改善しないものの、症状発現から3時間以内に再灌流療法が選択された急性期虚血性脳卒中確定例では有効である可能性があることが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のJim Christenson氏らが実施した「FRONTIER試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2025年2月15日号で報告された。カナダ2州の無作為化プラセボ対照第II相試験 FRONTIER試験は、急性期脳卒中が疑われる徴候や症状を呈するすべての患者、および虚血性脳卒中が確認された患者のアウトカムを改善するために、血栓溶解療法や血管内血栓除去術による通常の治療に加えて、入院前の環境でnerinetideを投与する早期治療が有効か否かの検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2015年3月~2023年3月に、カナダのオンタリオ州とブリティッシュコロンビア州の7施設で患者を登録した(Brain CanadaとNoNOの助成を受けた)。 年齢40~95歳、重症の脳卒中が疑われ、発症から3時間以内に試験薬の投与が可能で、Los Angeles Motor Scale(LAMS、0[症状なし]~5[最も重度の症状]点)の重症度スコアが2~5点の患者を対象とした。被験者を、nerinetide(2.6mg/kg)を静脈内投与する群、またはプラセボ群に無作為に割り付けた。救急隊員、病院の医療提供者、アウトカムの評価者には割り付け情報は知らされなかった。 主要アウトカムは、90日時点における修正Rankinスケール(mRS)スコア(0[症状なし]~6[死亡]点)に基づくレスポンダー(mRSが0~2点と定義。LAMSが2~3点でmRSが0~1点の80歳未満の患者を除く)とした。虚血性脳卒中患者では良好な傾向 532例を登録し、nerinetide群に265例、プラセボ群に267例を割り付けた。脳卒中が疑われた修正ITT(mITT)集団(nerinetide群254例、プラセボ群253例)には、急性期虚血性脳卒中321例(63%)、頭蓋内出血93例(18%)、一過性脳虚血発作44例(9%)、脳卒中類似疾患49例(10%)が含まれた。 症状発現から治療開始までの時間中央値は64分(四分位範囲[IQR]:47~100)であった。また、プラセボ群に比べnerinetide群は脳卒中の重症度が高かった(mITT集団におけるNIHSSスコア中央値:nerinetide群12点[IQR:5~19]vs.プラセボ群10点[4~18]、急性期虚血性脳卒中のサブグループのNIHSSスコア中央値:14点[7~19]vs.10点[4~18])。 主要アウトカムである90日後の事前に規定された二分法(sliding dichotomy)による良好な機能アウトカムは、nerinetide群254例中145例(57%)、プラセボ群253例中147例(58%)で達成し、両群間に有意な差を認めなかった(補正後オッズ比[OR]:1.05[95%信頼区間[CI]:0.73~1.51]、補正後リスク比:1.04[95%CI:0.85~1.25])。 虚血性脳卒中の確定例302例の解析では、病院到着時NHISSスコアと年齢で補正した機能アウトカムは、nerinetide群で良好な傾向がみられた(OR:1.53[95%CI:0.93~2.52]、リスク比:1.21[95%CI:0.97~1.52])。また、再灌流療法(血栓溶解療法または血管内血栓除去療法、あるいはこれら両方)を受けた患者では、機能アウトカムに関して改善が得られた(補正後OR:1.84[95%CI:1.03~3.28]、補正後リスク比:1.29[95%CI:1.01~1.65])ため、今後、検討を進める必要がある。安全性に関する懸念はなかった 出血性脳卒中および再灌流が得られなかった急性期虚血性脳卒中患者では、nerinetideによる明確な有益性は確認されなかった。 少なくとも1つの重篤な治療関連有害事象を発現した患者は、nerinetide群が93例(35%)、プラセボ群は97例(36%)であった。重篤な神経系の疾患はそれぞれ30例(11%)および40例(15%)に、重篤なせん妄は93例(35%)および97例(36%)に認めた。nerinetide群で死亡率の上昇や脳卒中の悪化は確認されなかった。 著者は、「本試験は、院外の救急車の中で救急隊員が患者を登録し、試験薬を投与することの実行可能性を示した」「この方法は、症状発現から登録までの間隔が短いという利点があったが、不均一な患者集団を登録するという欠点があり、多くの患者が急性期虚血性脳卒中以外の診断を受けたため、試験全体の統計学的検出力が低下した」「nerinetideは、急性期虚血性脳卒中患者において再灌流療法の補助として臨床的有益性をもたらす可能性がある」「神経保護薬は、動脈再疎通に先立ち、虚血の続く早い時期に投与するととくに有効であるという仮説は、今後の試験で検証する必要がある」としている。

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3月は心筋梗塞・脳梗塞に要注意!?医療ビッグデータで患者推移が明らかに/MDV

 メディカル・データ・ビジョンは、自社の保有する国内最大規模の診療データベースを用いて急性心筋梗塞と脳梗塞に関するデータを抽出し、それぞれの患者数の月別推移、10歳刻みの男女別患者数、65歳以上/未満の男女別併発疾患患者比率を公表した。調査期間は2019年4月~2024年3月で、その期間のデータがそろっていた377施設を対象とした。2~3月に急増、慢性疾患を併存する患者は要注意 本データを用いて急性心筋梗塞と脳梗塞の患者数と季節性について検証したところ、2019年度が最も高い水準で推移しており、以降の年度はやや低下傾向にあるものの、季節的な変動は共通し、冬季では2~3月に急増する傾向がみられた。「急性心筋梗塞」「脳梗塞」それぞれの患者数月別推移を見る※2020年5月の患者数の落ち込みは、コロナ禍による救急医療の逼迫や、医療機関の受け入れ制限による診断・治療の機会の減少が影響している可能性があるという。 また、65歳以上の心筋梗塞ならびに脳梗塞患者の併存疾患として、男女ともに高血圧症、食道炎を伴う胃食道逆流症、便秘、高脂血症があり、高血圧症については男女ともに6割を超えていた。 この結果を踏まえ、加藤 祐子氏(心臓血管研究所付属病院循環器内科 心不全担当部長/心臓リハビリテーション科担当部長)は、「寒暖差による血圧変動に加え、年度末のストレスや生活リズムの乱れが影響を与えている可能性がある」と指摘。「寒暖差は自律神経のバランスを乱しやすく、血管を収縮させ、血液粘稠度が高くなるなどの変化を起こしやすいと考えられる。冬場は身体活動が低下している人も多い」と説明した。また、自律神経のバランスを保ち、急な気温変化にも堪えない体をつくり、心筋梗塞や脳梗塞の最大のリスクである高血圧のコントロールのためにも、「毎日合計30分はすたすた歩き、収縮期血圧120mmHg未満(リラックスした状態で測定)を目指しましょう」とコメントを寄せている。

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血栓溶解療法なしの急性期脳梗塞、nerinetideの有用性は?/Lancet

 シナプス後肥厚部タンパク質95(PSD-95)を阻害するエイコサペプチドであるnerinetideは、発症後12時間以内の急性期虚血性脳卒中患者において良好な機能的アウトカムの達成割合を改善しなかった。重篤な有害事象との関連はみられなかった。カナダ・カルガリー大学のMichael D. Hill氏らが、カナダ、米国、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スイス、オーストラリア、シンガポールの77施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ESCAPE-NEXT試験」の結果を報告した。先行のESCAPE-NA1試験で、nerinetideは静脈内血栓溶解療法の非併用集団において機能的アウトカムの改善と関連していたが、血栓溶解療法との併用における有益性は確認されていなかった。著者は、「さらなる研究により、投与の最適なタイミングや、現在の再灌流療法との併用で有益性を得られる可能性のあるサブグループ集団を特定する必要があるだろう」とまとめている。Lancet誌2025年2月15日号掲載の報告。プラスミノーゲン活性化因子を投与していない急性期脳梗塞患者が対象 研究グループは、発症後12時間以内の前方循環系主幹動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中の患者を登録した。 適格基準は、18歳以上、無作為化時点で障害を伴う虚血性脳卒中を発症(ベースラインのNIHSSスコア>5)、脳卒中発症前は地域社会で自立して生活しており(Barthel Indexスコア>90)、ASPECTS>4、プラスミノーゲン活性化因子による治療を受けていない患者とした。 適格患者を、インターネットを用いたリアルタイムの動的・層別・最小化法を用い、nerinetide群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。nerinetide群では推定体重または実測体重(判明している場合)に基づきnerinetide 2.6mg/kgを最高用量270mgまで、プラセボ群では生理食塩水をそれぞれ単回静脈内投与した。全例に血管内血栓除去術を施行した。 主要アウトカムは、無作為化から90日後の良好な機能的アウトカムで、修正Rankinスケール(mRS)スコア0~2と定義した。ITT解析を実施し、脳卒中発症から無作為化までの時間(≦4.5時間/>4.5時間)、年齢、性別、ベースラインのNIHSSスコア、閉塞部位、適格な画像診断から無作為化までの時間、ベースラインのASPECTS、および地域で補正した。副次アウトカムは、死亡率、脳卒中の悪化、機能的自立の改善、および神経学的障害であった。良好な機能的アウトカムの達成割合は、nerinetide群45%、プラセボ群46% 2020年12月6日~2023年1月31日に、850例がnerinetide群(454例)またはプラセボ群(396例)に割り付けられた。 主要アウトカムである90日時点のmRSスコア0~2を達成した患者の割合は、nerinetide群45%(206/454例)、プラセボ群46%(181/396例)であった。オッズ比は0.97(95%信頼区間:0.72~1.30、p=0.82)で、両群間に有意差は認められなかった。 安全性については(解析対象集団は試験薬の投与を受けた844例)、重篤な有害事象の発現率はnerinetide群41%(183/451例)、プラセボ群34%(134/393例)であり同程度であった。

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ケアネットが役に立った!【Dr. 中島の 新・徒然草】(569)

五百六十九の段 ケアネットが役に立った!2月も終わりが近づいてきました。少しずつ日が長くなり、春の気配を感じます。来月には、もう少し暖かくなることを期待したいですね。さて、今回は「ケアネットが役に立った!」という話をしたいと思います。もちろん、普段からケアネットの記事は有用ですが、今回はとくに「これは!」と思う内容でした。それは、論文/ニュースの欄で紹介されていた、「急性期脳梗塞、EVT+高気圧酸素治療vs.EVT単独/Lancet」という記事です。実は私は以前から、急性期脳梗塞では高濃度酸素吸入が有効ではないかと考えていました。というのも、片麻痺のある陳旧性脳梗塞の患者さんに、マスクで10L/分程度の100%酸素を吸入してもらうと、一時的に麻痺が改善することがあるからです。これは外来でも簡単に試せるので、興味のある方は一度やってみてもよいかもしれません。酸素を吸入すると、一時的とはいえ麻痺のある手足の動きが改善し、びっくりさせられます。「陳旧性の脳梗塞ですら効果があるのだから、急性期ならなおさら効果が期待できるのではなかろうか。高濃度酸素吸入で閉塞血管再開通までの時間を稼ぐことができれば、最終的な転帰も改善するかも?」と私は思っていました。そこで、同僚のストロークチームの先生に「患者さんの搬入時に酸素吸入しているの?」と尋ねてみたところ、返ってきたのは「いやあ、あまりやっていませんねえ」という答え。しかし、今回の論文(Lancet. 2025;405:486–497)を読んで驚きました。まさに私が考えていたことが実際に行われていたのです。この研究では、血栓回収療法(EVT:endovascular thrombectomy)の適応となる急性期脳梗塞の症例が、以下の2群にランダムに振り分けられています。高濃度酸素吸入群- 非再呼吸マスクを用い、10L/分の100%酸素吸入- 気管挿管されている場合は100%酸素での換気シャム治療群(対照群)- 1L/分の100%酸素(低流量)- 気管挿管されている場合は30%酸素での換気いずれも、酸素吸入は4時間行われました。結果はどうだったか。高濃度酸素吸入群は、シャム治療群に比べ、90日後のmRSの中央値が1ポイント良好だったと報告されています。mRS(modified Rankin Scale)は、無症状(0)から死亡(6)までの7段階で機能予後を評価する指標であり、1ポイントの違いはADLに大きな影響を与えます。つまり、この研究によれば、血栓回収療法に伴う高濃度酸素吸入で転帰が改善する可能性が示唆されたのです。まさに、以前から私が考えていたことがこの論文で裏付けられた形になりました。マスクでの高濃度酸素吸入は、特別な手間もかからず、副作用のリスクもごく低いものです。この方法が今後、脳卒中治療の現場で広がっていく可能性は十分にあるのではないでしょうか。今回は、ケアネットで非常に有益な記事を見つけた、というお話でした。最後に一句春寒に わが意を得たり ケアネット

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ホルモン避妊法、脳梗塞・心筋梗塞のリスクは?/BMJ

 生殖年齢15~49歳の女性において、現在使用されているエストロゲン・プロゲスチンおよびプロゲスチン単剤による避妊法は、レボノルゲストレル放出子宮内避妊具を除き、虚血性脳卒中および一部の症例では心筋梗塞のリスク増加と関連していることが、デンマーク・Nordsjaellands HospitalのHarman Yonis氏らが同国居住の女性約203万例を対象に行った前向きコホート研究の結果で示された。著者は、「絶対リスクは低いが、臨床医はホルモン避妊法を処方する際、ベネフィットとリスクの評価に動脈血栓症の潜在的リスクを含めるべきである」と述べている。BMJ誌2025年2月12日号掲載の報告。デンマーク居住の約203万例を対象にコホート研究 研究グループは、1996~2021年にデンマークに居住しており、動脈・静脈血栓症、がん(非黒色腫皮膚がんを除く)、血栓症、肝疾患、腎疾患、抗精神病薬の使用、不妊治療、ホルモン療法の使用、卵巣摘出、子宮摘出、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症の既往歴のない15~49歳の女性202万5,691例を対象に、前向きコホート研究を行った。 主要アウトカムは、虚血性脳卒中または心筋梗塞の初回退院時診断とした。脳梗塞10万人年当たり、経口避妊薬群39件、黄体ホルモン単剤ピル群33件 2,220万9,697人年の追跡において、虚血性脳卒中イベントの発生は4,730件、心筋梗塞イベントの発生は2,072件であった。 試験集団は、ホルモン避妊法非使用群、複合ホルモン避妊法使用群(複合経口避妊薬[経口エチニルエストラジオール30~40μg、同20μg、経口エストラジオール]、膣リング、パッチ)、プロゲスチン単剤避妊法使用群(経口[ピル]、子宮内避妊具、インプラント、注射)に特徴付けられた。 標準化虚血性脳卒中発生頻度(10万人年当たり)は、ホルモン避妊法非使用群が18(95%信頼区間[CI]:18~19)、複合経口避妊薬使用群が39(36~42)、プロゲスチン単剤ピル使用群が33(25~44)、子宮内避妊具使用群が23(17~29)。標準化心筋梗塞発生頻度(10万人年当たり)は、それぞれ8(8~9)、18(16~20)、13(8~19)、11(7~16)であった。 非使用群に対する複合経口避妊薬使用群の補正後発生率比は、虚血性脳卒中2.0(95%CI:1.9~2.2)、心筋梗塞2.0(1.7~2.2)であった。これら標準化発生率比の差は、10万人年当たり虚血性脳卒中21例(18~24例)、心筋梗塞10例(7~12例)の増加に相当した。 非使用群に対するプロゲスチン単剤ピル使用群の補正後発生率比は、虚血性脳卒中1.6(95%CI:1.3~2.0)、心筋梗塞1.5(1.1~2.1)で、これは10万人年当たり虚血性脳卒中15例(6~24)、心筋梗塞4例(-1~9)の増加に相当した。 動脈血栓症リスクの増加は、膣リング使用群(補正後発生率比:虚血性脳卒中2.4[95%CI:1.5~3.7]、心筋梗塞3.8[2.0~7.3])、パッチ使用群(虚血性脳卒中3.4[1.3~9.1]、心筋梗塞なし)、およびプロゲスチン単剤インプラント使用群(虚血性脳卒中2.1[1.2~3.8]、心筋梗塞≦3)でも観察されたが、プロゲスチン単剤放出子宮内避妊具使用群では観察されなかった(虚血性脳卒中1.1[1.0~1.3]、心筋梗塞1.1[0.9~1.3])。

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フロスの使用に脳梗塞の予防効果?

 デンタルフロス(以下、フロス)の使用は、口腔衛生の維持だけでなく、脳の健康維持にも役立つようだ。米サウスカロライナ大学医学部神経学分野のSouvik Sen氏らによる新たな研究で、フロスを週に1回以上使う人では、使わない人に比べて脳梗塞(虚血性脳卒中)リスクが有意に低いことが示された。この研究結果は、米国脳卒中学会(ASA)の国際脳卒中学会議(ISC 2025、2月5〜7日、米ロサンゼルス)で発表され、要旨が「Stroke」に1月30日掲載された。 この研究では、アテローム性動脈硬化リスクに関する集団ベースの前向き研究であるARIC研究のデータを用いて、フロスの使用と脳梗塞(血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞)および心房細動(AF)との関連が検討された。対象者は、ARIC研究参加者から抽出した、脳梗塞の既往がない6,278人(うち6,108人にはAFの既往もなし)とした。対象者の65%(脳梗塞の既往がないコホート4,092人、AFの既往がないコホート4,050人)がフロスを使用していた。 25年の追跡期間中に、434人が脳梗塞を(血栓性脳梗塞147人、心原性脳塞栓症97人、ラクナ梗塞95人)、1,291人がAFを発症していた。解析からは、フロスを使用していた人では使用していなかった人に比べて、脳梗塞全体のリスクが22%低く(調整ハザード比0.78、95%信頼区間0.63〜0.96)、特に心原性脳塞栓症のリスクについては大幅な低下が認められた(同0.56、0.36〜0.87)。AFについてもリスク低下の傾向が認められた(同0.88、0.78〜1.00)。一方、フロスの使用と血栓性脳梗塞およびラクナ梗塞との間に有意な関連は認められなかった。 こうした結果を受けてSen氏は、「フロスの使用が脳梗塞の予防に必要な唯一の方法と言うわけではないが、本研究結果は、フロスの使用は、健康的なライフスタイルに加えるべきもう一つの要素であることを示唆している」と述べている。また同氏は、「フロスを使うと、炎症と関係のある口腔感染症や歯周病が軽減される」と指摘する。その上で、炎症は、脳卒中リスクを高める可能性があるため、「定期的にフロスを使うことで、脳梗塞やAFのリスクが軽減すると考えるのは理にかなっている」と話している。 Sen氏は、「世界の口腔の健康に関する最近の報告書によると、未治療の虫歯や歯周病などの口腔疾患を有する人は、2022年には35億人に達している。口腔の問題は、最も蔓延している健康問題の一つだ」と話す。同氏は、「歯科治療は費用がかかるが、フロスは、どこででも手頃な価格で入手できるし、健康的な習慣として取り入れるのも容易だ」と利点を挙げている。 本研究には関与していない、米サウスカロライナ医科大学疫学分野のDaniel Lackland氏は、「この研究は、歯の健康に関わる特定の習慣が、脳梗塞リスクとその低下に関与している可能性について、さらなる洞察をもたらした。今後の研究の結果次第では、『Life’s Essential 8』の8つの要素、すなわち、食事、身体活動、ニコチン曝露、睡眠、BMI、血圧、血糖値、血中脂質に歯の健康習慣が加えられる可能性がある」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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急性期脳梗塞、EVT+高気圧酸素治療vs.EVT単独/Lancet

 血管内血栓除去術(EVT)が可能であった主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者において、高気圧酸素治療(normobaric hyperoxia treatment)の追加は、EVT単独の場合と比較して90日時点の機能的アウトカムが優れ、安全性に関する懸念はみられなかった。中国・首都医科大学のWeili Li氏らOPENS-2 Investigatorsが多施設共同無作為化単盲検シャム対照比較試験の結果を報告した。EVTは急性期虚血性脳卒中の再開通率を改善するが、EVTを受けた患者の約半数は良好な機能的アウトカムを得られない。研究グループは、EVT+高気圧酸素治療が、機能的アウトカムに及ぼす影響を評価した。Lancet誌2025年2月8日号掲載の報告。90日時点のmRS順序スコアを比較 研究グループは中国の総合脳卒中センター26施設において、発症後6時間以内のEVT治療が可能であった18~80歳の主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者を対象に試験を行った。 適格患者をEVT+高気圧酸素治療を受ける群またはEVT+シャム高気圧酸素治療を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは、双方向Web応答システムを用いた最小化プロセスに基づき、各試験センターでの割り付けのバランスを全体的にとるとともに、年齢・性別・閉塞部位・静脈内血栓溶解薬の使用のベースラインカテゴリに応じた層別化も行った。被験者および評価者は、治療割り付けをマスクされた。 高気圧酸素治療では、100%酸素を非再呼吸マスク(non-rebreather mask)装着下で流量10L/分にて4時間投与、または挿管を要した患者には吸入酸素濃度(FiO2)1.0で投与した。シャム治療では、100%酸素を流量1L/分にて、またはFiO2 0.3で投与した。 主要アウトカムは、ITT集団(治療割り付けを受けた全患者を含む)で評価した90日時点の修正Rankinスケール(mRS)の順序スコアの比較とした。安全性は、あらゆる酸素療法を受けた全患者で評価した。mRSスコアの補正後共通オッズ比は1.65で有意に改善 2021年4月22日~2023年2月5日に、473例がスクリーニングを受け、282例(ITT集団)がEVT+高気圧酸素治療群(140例)またはEVT+シャム高気圧酸素治療群(142例)に無作為に割り付けられた。年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:57~71)、75/282例(27%)が女性、207/282例(73%)が男性であり、282例(100%)全員が中国の漢民族であった。 90日時点で、mRSスコア中央値は、EVT+高気圧酸素治療群が2(IQR:1~4)、EVT+シャム高気圧酸素治療群は3(1~4)であった(補正後共通オッズ比:1.65[95%信頼区間[CI]:1.09~2.50]、p=0.018)。 90日時点で、死亡は、EVT+高気圧酸素治療群で14/140例(10%)、EVT+シャム高気圧酸素治療群では17/142例(12%)報告された(補正後リスク差:-0.02[95%CI:-0.09~0.06])。重篤な有害事象の発現は、それぞれ28/140例(20%)、33/142例(23%)であった(補正後リスク差:-0.03[95%CI:-0.12~0.07])。

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中/遠位血管閉塞による脳卒中、血管内治療は機能障害を改善せず/NEJM

 中大脳動脈(MCA)のdominant M2区域の急性閉塞に対する血管内治療(EVT)の有効性を示唆する無作為化試験のエビデンスがあるが、現在の米国および欧州のガイドラインでは、中血管または遠位血管の閉塞を有する虚血性脳卒中に対してEVTは推奨されず、禁忌ともされていないという。スイス・バーゼル大学病院のMarios Psychogios氏らDISTAL Investigatorsは、DISTAL試験において、中血管または遠位血管の閉塞による虚血性脳卒中患者の治療では、最良の内科治療単独と比較して、これにEVTを併用しても、機能障害レベルを改善せず、重篤な有害事象や死亡率の低下をもたらさないことを示した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年2月5日号に掲載された。11ヵ国の医師主導型無作為化試験 DISTAL試験は、医師主導型の実践的な評価者盲検無作為化試験であり、2021年12月~2024年7月に、11ヵ国55病院で患者を登録した(スイス国立科学財団[SNSF]などの助成を受けた)。 年齢18歳以上、CT血管造影またはMRI血管造影で確認された中血管または遠位血管の孤立性閉塞(MCAのnondominantまたはcodominant M2区域、MCAのM3またはM4区域、前大脳動脈のA1、A2、A3区域、後大脳動脈のP1、P2、P3区域の閉塞)に起因する急性期虚血性脳卒中と診断され、NIH脳卒中尺度(NIHSS)スコア(0~42点、高点数ほど症状が重度)が4点以上の患者を対象とした。 被験者を、最終健常確認から24時間以内に、ETV+最良の内科治療または最良の内科治療単独を受ける群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、90日の時点での修正Rankin尺度(mRS)スコア(0[まったく症候がない]~6[死亡])で評価した機能障害の程度とした。mRSスコア0、1の達成、NIHSSスコア正常化にも差はない 543例(年齢中央値77歳、女性44%)を登録し、ETV+最良内科治療群に271例、最良内科治療単独群に272例を割り付けた。全体の入院時のNIHSSスコア中央値は6(四分位範囲[IQR]:5~9)であり、脳卒中発症前のmRSスコアは、0または1が436例(80.3%)、2が60例(11.0%)、3または4が45例(8.3%)であった。 発症時に97.9%が自宅におり、最終健常確認から無作為化までの時間中央値は3.9時間だった。ベースライン時の主な閉塞部位はM2区域(44.0%)、M3区域(26.9%)、P2区域(13.4%)、P1区域(5.5%)であった。静脈内血栓溶解療法は65.4%に施行されていた。 EVT+最良内科治療群の271例中229例(84.5%)で実際にEVTが行われ、画像診断から動脈穿刺までの時間中央値は70分(目標の60分をオーバーした)、再開通成功率は71.7%だった。 主要アウトカムである90日時のmRSスコア中央値は、ETV+最良内科治療群が2.0(IQR:1.0~4.0)、最良内科治療単独群は2.0(1.0~3.0)であり、スコアの分布に両群間で有意な差を認めなかった(スコア改善の共通オッズ比[OR]:0.90[95%信頼区間[CI]:0.67~1.22]、p=0.50)。 副次アウトカムの、90日時の良好な機能アウトカム(mRSスコア0または1)の達成(補正前OR:0.88[95%CI:0.61~1.25])、24時間時の神経学的欠損の重症度の改善(NIHSSスコアの正常化)(補正前平均群間差:0.02[95%CI:-0.10~0.14])、EQ-5D-5Lおよび視覚アナログ尺度などで評価した生活の質(QOL)のスコアは、いずれも両群間で有意な差はみられなかった。90日死亡率は15.5% vs.14.0% 重篤な有害事象(ETV+最良内科治療群114例vs.最良内科治療単独群88例、補正後OR:1.27[95%CI:0.84~1.97])、24時間以内の症候性頭蓋内出血(16例[5.9%]vs.7例[2.6%]、2.38[0.44~6.14])、90日時の全死因死亡(42例[15.5%]vs.38例[14.0%]、1.17[0.71~1.90])の発生は、いずれも両群間で有意差はなかった。 著者は、「71.7%という再開通成功率は当初の予測より低く、最近の大血管閉塞による脳卒中の試験の知見をも下回っており、これが本試験のあいまいな結果の主な原因と考えられる」「試験の手順(中・遠位血管閉塞の検出の難しさやインフォームドコンセントに時間を要するなど)に起因する治療開始の遅れがEVTの有効性を低下させた可能性がある」「今後、画像診断と改善される可能性のある手技やデバイス材料に基づいて、EVTが有益と考えられる患者を特定するための無作為化試験を実施する必要がある」としている。

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コンサルトを気持ちよくするには【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第3回

コンサルトを気持ちよくするにはPointプレゼンテーションはSNAPPSで。 コンサルト医に何をしてほしいかを明確にする。緊急性がある場合はためらわず即コンサルト。いつもコンサルト医に感謝の気持ちを忘れずに。症例70歳男性。既往に狭心症と糖尿病あり。1時間前にジムで運動中に胸部絞扼感あり。今もなんとなく胸がつらく救急外来を受診した。体温36.5℃ 血圧130/60 mmHg 心拍数58回/分 呼吸数20回/分 SpO2 99% room air じとっと冷や汗あり。当直の研修医Aは心電図をとったけど自分ではよくわからず(ホントはSTEMI!)。今日の当直の上級医は循環器内科の怖い○○先生であったので、とりあえず血液検査をしてから相談することとした。血液検査とルートを確保して15分ほど経ったところ患者さんは呼吸苦を訴え苦しみ始めた。血圧も80mmHg台へ低下、モニターも心室頻拍が数発認められるようになってきた。どうしてよいかわからずテンパりはじめ、看護師さんにも急かされて以下のようにコンサルトした。研修医 A「研修医Aです。70歳の男性が1時間ほど前にジムで運動中に胸部絞扼感があって」上級医 「心電図は?」研修医 A「STは上がってないような気がします」上級医 「ふん」研修医 A「体温36.5℃、血圧130/60mmHg、心拍数58回/分、呼吸数20回/分、SpO2 room airで99%でした。あと既往に狭心症と糖尿病があるようです。血液検査とルートは確保したのですが、先ほどから血圧も80mmHg台に下がりはじめ、モニターにも心室性頻拍のような変な脈が出てて…ちょっとって感じで…」上級医 「お前、最初っからヤバいって言って早く俺を呼べよ! グルァァァァ!」研修医 A(そういうところが怖くて呼べなかったんだよ…泣)おさえておきたい基本のアプローチプレゼンテーションはSNAPPSで!医師として生きる以上どんな診療科、どんな経験年数を積んでも他科、他病院へのコンサルトは必要である。現代医療はすべて自分1人の診察で完結できるわけではない。患者のためを思って、専門科へ適切にタイミングよく、簡潔に礼節をもってコンサルトができるようになろう。とは言ってもどうすればよいのか…わかってたら苦労しないよね。そんなときはSNAPPS(表)でコンサルト!表 SNAPPS画像を拡大するSNAPPSのうちで最も大事なのは、Aで根拠となる病歴と身体所見を述べ、自分の評価・思考過程を提示すること。ここが間違っていれば、コンサルト医が教えてくれ、次の成長につながる。自分の診断や鑑別診断を根拠ももたずに羅列するだけでは成長が望めないのだ。思考過程をきちんと開示することは、コンサルト医も指導しやすくなるんだ。落ちてはいけない・落ちたくないPitfallsコンサルト医に何をしてほしいかを明確に伝えよう医者は皆忙しい(はず)。コンサルトされる側の先生も今自分が行っている仕事の手を止めてまでコンサルトに出向くかどうかは常に気になる。長ったらしい現病歴だけのプレゼンほど、聞いていてげんなりするものはないんだ。「結局何が言いたいんだってばよ!」ってな感じで、「うーん、よくわからないけどとりあえず行くわ!」と言っていただける先生のほうが少数派であろう。明確に何をしてほしいのかを必ず伝えよう(電話で聞きたいだけなのか、診察に来てほしいのかをまず明確に伝えるべし。次に詳細な内容に入る。入院が必要だと思うので診察に来てほしい、次回の外来に回すのでよいか電話相談したい、画像の確認をしてほしい、まったくわからないので助けてほしい、などなど)。「わからないので助けてほしい」と正直に言うことは全然悪くない。「行けばいいのか、行く必要がないのか」がコンサルトされる側が一番気になるところなんだ。話を引っ張って大どんでん返し! なんて展開は推理小説ならいいが、コンサルトではいただけないんだ。Point例:虫垂炎を疑う患者さんを診ているのですが、正直自信がないので、一緒に診察していただけませんか?緊急性がある場合はためらわず即コンサルトST上昇型急性心筋梗塞、t-PA適応である発症4、5時間以内の脳梗塞、絞扼性腸閉塞、開放骨折など今後の緊急処置が必要な疾患と診断したら、即コンサルトしよう。もう少し血液検査を揃えてから、家族に話を聞いてから、もう少しカルテ書いてからなどと引っ張ってしまうと、患者の大切な時間、専門医の先生が患者に介入するまでの時間を奪ってしまう。結局専門医の先生に連絡してからも手術室やカテ室、追加のスタッフ手配など結構時間がかかってしまうんだから。このときのコンサルトのポイントは診断名からさっさと言うこと。あいまいな表現は避けること。現病歴は最低限でOK。専門医の先生に電話して緊急治療のスイッチを入れるのが先だ!専門医の先生が来られたら積極的にお手伝いをすること。電話のときに何かしておくことはありますか? と一言聞いておくのもbetter。その患者のためにできることをみんなでやろう。Point例:発症2時間ほどの脳梗塞の患者さんが来られたので、至急一緒に診察をお願いできますか?いつもコンサルト医に感謝の気持ちを忘れずに夜間のコンサルト、ましてや院外からのoncallとなると専門医の先生もつらい。だって人間だもの。理不尽にコンサルトした側が怒られることもままあるが、あなたは患者のためを思ってコンサルトしたんだ。今後その患者の診療で主役となるのは患者とともに主治医になる専門科の先生だ。患者のために専門科の先生に頭を下げることは恥ずかしいことではない。患者のためを思って堪えるところはグッと堪えよう。ただし、コンサルトしっぱなしということもよくない。コンサルト先の先生が来られたら必ず自分で直接お礼、手短なプレゼン、検査結果などの準備、患者や家族の案内などをしよう。専門科の先生、患者双方が気持ちよく診療できる、診察を受けられる環境を作ることが非常に大切だ。各科特有のキーワードをしっかり押さえておくことも大事だ。共通言語を使わずしてコンサルトはうまくいくはずもない。脳外科ならCTでの出血部位と型、出血量、midline shift、GCS(Glasgow Coma Scale)など。産科なら妊娠歴、出産歴、流産歴など。最初からできるはずもないので、コンサルトのたびにどんな情報を伝えると、専門科が判断しやすいのかその都度教えてもらって成長しよう。Point実るほど頭を垂れる稲穂かな「あーでもなくて、こーでもなくて…はい、全然わかってなくて、すみません」全然わからない症例ってあるよね。とくに社会的な背景が濃い症例は研修医には太刀打ちできない。配偶者虐待、小児虐待、高齢者虐待、高度希死念慮症例、権利意識の強いVIP患者などは、研修医や専門外の医師にとっては、その対応は至難の業だ。わからないのに無駄に時間を引っ張ってはいけないし、そうかといってうまく専門医にプレゼンできるほど評価もできない。大丈夫、上級医はそんなややこしい症例のためにいるのだから。トラブルになりやすい症例は、団体戦で臨むに限るのも本当のことなのだから。心の中で(だるまさんでぇ~す)と叫んで、手も足も出ないことを前面に出し恥も外聞もプライドも捨ててコンサルトすればいい。そのときは、正直に自分は全然わからないことを謝罪し、全力で尻尾を振るかわいい子犬のように愛くるしいまなざしでコンサルトしよう。ここまで降参や服従の意思を見せても、来てくれなければそれは男気のない〇〇医者ということ(失礼!)。ほとんどの医者は優しく、きちんと助けてくれる、または一緒に悩んでくれるから大丈夫。電話を掛けただけでコンサルト終了ではない専門医に電話をした段階で患者に対する責任は移ったと思ってはいけない。あくまでもコンサルト医が病院に到着して、患者を診て初めて責任の所在が移るんだ。電話で呼び出して、その後患者を放置して、他の患者に手をとられて、患者のことを忘れてしまうと、とんでもないことになってしまうことがある。病態は刻々変化しうるのだ。コンサルト医だってさまざまな理由で遅れてしまうこともある。コンサルト医が病院へ向かう途中で事故にでもあえば、遅くなるのは必定ではないか。風呂に入っていたら、案外急いでも時間がかかる。嫁さんに「また夜中に出ていくの。私と仕事とどっちが大事なの」なんて夫婦の修羅場にあっているかもしれない。コンサルト医が病院に到着するまでは、何が何でも初療医が患者の責任を負う必要があるんだよ。勉強するための推奨文献Wolpaw T, et al. Acad Med. 2009;84:517-524.Bothwell J, et al. Ann Emerg Med. 2020;76:e29-e35.(コンサルトする側、コンサルトされる側双方のTipsがちりばめられたgood review)林寛之 著. Dr.林の当直裏御法度-ER問題解決の極上Tips90 第2版. 三輪書店;2018.寺澤秀一 著. 話すことあり、聞くことあり-研修医当直御法度外伝. CBR;2018.増井伸高 編・著. 救急現場から専門医へ あの先生にコンサルトしよう!. 金芳堂;2021.執筆

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中血管閉塞脳卒中への血管内治療、アウトカムを改善せず/NEJM

 中血管閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者に対する発症12時間以内の血管内血栓除去術(EVT)は、標準治療(現行ガイドラインに基づく静脈内血栓溶解療法)と比較して90日時点のアウトカム改善に結び付かなかったことが、カナダ・カルガリー大学のM. Goyal氏らESCAPE-MeVO Investigatorsが行った第III相多施設共同前向き無作為化非盲検評価者盲検試験の結果で示された。主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者にはEVTが有効であるが、中血管閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者にも当てはまるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2025年2月5日号掲載の報告。最終健常確認後12時間以内の中血管閉塞を伴う脳梗塞患者を対象、標準治療のみと比較 研究グループは、中血管閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中で、救急部門への受診が最終健常確認後12時間以内であり、ベースラインの非侵襲的脳画像検査で治療可能と確認された患者を、EVT+標準治療を受ける群(EVT併用群)または標準治療のみを受ける群(標準治療のみ群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。中血管閉塞は、中大脳動脈のM2またはM3の閉塞、前大脳動脈のA2またはA3の閉塞、または後大脳動脈のP2またはP3の閉塞と定義し、A1およびP1はとくに含まれなかった。標準治療は、急性期脳卒中管理についてカナダ、米国、欧州の現行ガイドラインで推奨されている静脈内血栓溶解療法(tenecteplaseまたはアルテプラーゼによる)であった。 主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])が0または1であった患者の割合であった。90日時点のmRSスコア0/1達成患者割合、EVT併用群41.6% vs.標準治療のみ群43.1% 2022年4月~2024年6月に5ヵ国から計530例が登録され、255例がEVT+標準治療(EVT併用)を、275例が標準治療のみを受けた。84.7%の患者は、中大脳動脈の梗塞であった。 90日時点のmRSスコアが0または1であった患者の割合は、EVT併用群41.6%(106/255例)、標準治療のみ群43.1%(118/274例)であった(補正後率比:0.95、95%信頼区間[CI]:0.79~1.15、p=0.61)。 90日時点の死亡率は、EVT併用群13.3%(34/255例)、標準治療のみ群8.4%(23/274例)であった(補正後ハザード比:1.82、95%CI:1.06~3.12)。 As-Treated集団で評価した重篤な有害事象のうち、症候性頭蓋内出血の発現は、EVT併用群5.4%(14/257例)、標準治療のみ群2.2%(6/272例)であった。

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心房細動、abelacimab月1回投与で出血イベント改善/NEJM

 脳卒中リスクが中~高の心房細動患者の抗凝固療法において、リバーロキサバンと比較してabelacimab(不活性型の第XI因子に結合してその活性化を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体)の月1回投与は、遊離型第XI因子濃度を著明に低下させ、出血イベントを大幅に少なくすることが、米国・ハーバード大学医学大学院のChristian T. Ruff氏らAZALEA-TIMI 71 Investigatorsが実施した「AZALEA-TIMI 71試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年1月22日号で報告された。7ヵ国の無作為化実薬対照比較第IIb相試験 AZALEA-TIMI 71試験は、心房細動患者の抗凝固療法におけるabelacimabの安全性と忍容性の評価を目的とする無作為化実薬対照比較第IIb相試験であり、2021年3~12月に7ヵ国の95施設で患者を登録した(Anthos Therapeuticsの助成を受けた)。 年齢55歳以上、心房細動または心房粗動の既往歴があり、抗凝固療法が計画され、CHA2DS2-VAScスコアが4点以上、またはCHA2DS2-VAScスコアが3点以上で抗血小板薬の併用が計画されているか推定クレアチニンクリアランスが50mL/分以下の患者を対象とした。 これらの患者を、盲検下にabelacimab 150mgまたは90mgを月1回皮下投与する群、または非盲検下にリバーロキサバン20mgを1日1回経口投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、大出血または臨床的に重要な非大出血とした。出血イベントが予想以上に減少、試験は早期中止に 1,287例(年齢中央値74歳、女性44%)を登録し、abelacimab 150mg群に430例、同90mg群に427例、リバーロキサバン群に430例を割り付けた。CHA2DS2-VAScスコア中央値は5点で、ベースラインで患者の92%が60日以上の抗凝固薬の投与を受けており、66%が直接経口抗凝固薬(DOAC)であった。 abelacimabの月1回の皮下投与により、遊離型第XI因子の値はベースラインと比較して持続的に低下し、3ヵ月後の遊離型第XI因子の減少の中央値は、150mg群で99%(四分位範囲:98~99)、90mg群で97%(51~99)であった。 abelacimabによる出血イベントの減少が予想を超えていたため、独立データモニタリング委員会の勧告に基づき試験は早期中止となった。 大出血または臨床的に重要な非大出血の発生率は、abelacimab 150mg群が3.22件/100人年、同90mg群が2.64件/100人年であったのに比べ、リバーロキサバン群は8.38件/100人年と高い値を示した。リバーロキサバン群に対するabelacimab 150mg群のハザード比(HR)は0.38(95%信頼区間[CI]:0.24~0.60、p<0.001)、リバーロキサバン群に対する同90mg群のHRは0.31(0.19~0.51、p<0.001)であった。有害事象の頻度は同程度 副次エンドポイントである大出血(リバーロキサバン群に対するabelacimab 150mg群のHR:0.33[95%CI:0.16~0.66]、リバーロキサバン群に対する同90mg群のHR:0.26[0.12~0.57])および大出血、臨床的に重要な非大出血、小出血の複合(0.68[0.51~0.91]、0.46[0.33~0.64])についても、リバーロキサバン群に比べ2つのabelacimab群で良好であった。また、大出血のうち消化管大出血(0.11[0.03~0.48]、0.11[0.03~0.49])はabelacimab群で顕著に少なかったが、頭蓋内大出血やその他の大出血にはこのような差はなかった。 全有害事象、重篤な有害事象、試験薬の投与中止に至った有害事象の発現率は、3群で同程度であった。abelacimab群における注射部位反応は、150mg群で2.8%、90mg群で1.6%に認めた。抗薬物抗体を発現した患者はいなかった。 著者は、「本試験は症例数が少ないため、abelacimabの臨床的有効性を評価することはできず、より大規模な試験が必要である。現在、利用可能な抗凝固療法を使用できない高リスク心房細動患者を対象に、脳梗塞および全身性塞栓症の予防におけるabelacimabの有効性をプラセボと比較する第III相試験(LILAC-TIMI 76試験)が進行中である」としている。

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脳梗塞治療は完全に心筋梗塞治療の後追い?(解説:後藤信哉氏)

 血栓溶解療法による心筋梗塞の予後改善効果を示す論文は、循環器領域にて大きなインパクトがあった。しかし、経皮的カテーテル治療(percutaneous coronary intervention:PCI)が標準治療となり、血栓溶解療法は標準治療とはならなかった。PCIをしても冠動脈内各所に血栓は残る。線溶療法にて血栓を取り切るほうが良いかも? との仮説は循環器領域でも生まれた。しかしPCIに線溶療法を追加すると、むしろ予後は悪化する場合が多かった。医師は線溶効果を期待して線溶薬を投与するが、ヒトの身体には恒常性維持機能がある。線溶が亢進して身体が出血方向に傾けば、血栓性が亢進して止血方向の作用も生まれる。現在は線溶薬による凝固系亢進メカニズムも詳しく理解されるようになった。 本研究では、カテーテル治療による残存血栓に対してウロキナーゼを投与する群と投与しない群を比較した。survival without disabilityを有効性の1次エンドポイントとしてランダム化比較試験を行った。結果として、ウロキナーゼの投与の有無による影響はないとされた。頭蓋内出血にも差がなかったので、懸念された出血合併症の増加は起きなかった。 脳梗塞治療は心筋梗塞治療を後追いして変化している。血栓溶解療法により予後が改善し、早期・確実な再灌流のためカテーテル治療が普及する。カテーテル治療に必須の抗血小板薬なども今後確立されるだろう。線溶療法は血行再建のツールであるがカテーテル治療の併用療法としての価値は少ない、など心筋梗塞治療と同様のコンセプトが近未来に確立されると思う。

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