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血管撮影後の脳梗塞で死亡したケース

脳・神経最終判決判例タイムズ 971号201-213頁概要右側頸部に5cm大の腫瘤がみつかった52歳女性。頸部CTや超音波検査では嚢胞性病変が疑われた。担当医は術前検査として腫瘍周囲の血管を調べる目的で頸部血管撮影を施行した。鎖骨下動脈、腕頭動脈につづいて右椎骨動脈撮影を行ったところ、直後に頭痛、吐き気が出現。ただちにカテーテルを抜去し検査を中断、頭部CTで脳内出血はないことを確認して脳梗塞に準じた治療を行った。ところが検査から約12時間後に心停止・呼吸停止となり、いったんは蘇生に成功したものの、重度の意識障害が発生、1ヵ月後に死亡となった。詳細な経過患者情報52歳女性経過1989年8月末右頸部の腫瘤に気付く。1989年9月7日某病院整形外科受診。右頸部の腫瘤に加えて、頸から肩にかけての緊張感、肩こり、手の爪の痛みあり。頸部X線写真は異常なし。9月18日頸部CTで右頸部に直径5cm前後の柔らかい腫瘤を確認。9月21日診察時に患者から「頸のできものが時々ひどく痛むので非常に不安だ。より詳しく調べてあれだったら手術してほしい」と申告を受ける。腫瘍マーカー(CEA、AFP)は陰性。10月5日頸部超音波検査にて5cm大の多房性、嚢腫性の腫瘤を確認。10月17日手術目的で入院。部長の整形外科医からは鑑別診断として、神経鞘腫、血管腫、類腱鞘腫、胎生期からの側頸嚢腫などを示唆され、脊髄造影、血管撮影などを計画。10月18日造影CTにて問題の腫瘤のCT値は10-20であり、内容物は水様で神経鞘腫である可能性は低く、無血管な嚢腫様のものであると考えた。10月19日脊髄造影にて、腫瘍の脊髄への影響はないことが確認された。10月23日血管撮影検査。15:00血管撮影室入室。15:15セルジンガー法による検査開始。造影剤としてイオパミドール(商品名:イオパミロン)370を使用。左鎖骨下動脈撮影(造影剤20mL)腕頭動脈撮影(造影剤10mL):問題の腫瘤が右総頸動脈および静脈を圧迫していたため、腫瘤が総頸動脈よりも深部にあることがわかり、椎骨動脈撮影を追加右椎骨動脈撮影(造影剤8mL:イオパミロン®370使用):カテーテル先端が椎骨動脈に入りにくく、2~3回造影剤をフラッシュしてカテーテルの位置を修正したうえで、先端を椎骨動脈分岐部から1~3cm挿入して造影16:00右椎骨動脈撮影直後、頭痛と吐き気が出現したため、ただちにカテーテルを抜去。16:10嘔吐あり。造影剤の副作用、もしくは脳浮腫を考えてメチルプレドニゾロン(同:ソル・メドロール)1,000mg、造影剤の排出目的でフロセミド(同:ラシックス)使用。全身状態が落ち着いたうえで頭部CTを施行したが、脳出血なし。17:00症状の原因として脳梗塞または脳虚血と考え、血液代用剤サヴィオゾール500mL、血栓溶解薬ウロキナーゼ(同:ウロキナーゼ)6万単位投与。その後も頭痛、吐き気、めまいや苦痛の訴えがあり、不穏状態が続いたためジアゼパム(同:セルシン)投与。10月24日02:00血圧、呼吸ともに安定し入眠。03:00急激に血圧上昇(収縮期圧200mmHg)。04:20突然心停止・呼吸停止。いったんは蘇生したが重度の意識障害が発生。11月21日死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.血管撮影の適応頸部の腫瘤で血管撮影の適応となるのは、血管原性腫瘤、動脈瘤、蛇行性の右鎖骨下動脈、甲状腺がん、頸動脈球腫瘍、脊髄腫瘤などであるのに、良性の嚢胞性リンパ管腫が疑われた本件では血管撮影の適応自体がなかった。もし血管撮影を行う必要があったとしても、脳血管撮影に相当する椎骨動脈撮影までする必要はなかった2.説明義務違反検査前には良性の腫瘍であることが疑われていたにもかかわらず、がんの疑いがあると述べたり、「安全な検査である」といった大雑把かつ不正確な説明しか行わなかった3.カテーテル操作上の過失担当医師のカテーテル操作が未熟かつ粗雑であったために、選択的椎骨動脈撮影の際に血管への刺激が強くなり、脳梗塞が発生した4.造影剤の誤り脳血管撮影ではイオパミロン®300を使用するよう推奨されているにもかかわらず、椎骨動脈撮影の際には使用してはならないイオパミロン®370を用いたため事故が発生した病院側(被告)の主張1.血管撮影の適応血管撮影前に問題の腫瘤が多房性リンパ管腫であると診断するのは困難であった。また、頸部の解剖学的特性から、腫瘍と神経、とくに腕神経叢、動静脈との関係を熟知するための血管撮影は、手術を安全かつ確実に行うために必要であった2.説明義務違反血管撮影の方法、危険性については十分に説明し、患者は「よろしくお願いします」と答えていたので、説明義務違反には該当しない3.カテーテル操作上の過失担当医師のカテーテル操作に不適切な点はない4.造影剤の誤り明確な造影効果を得るには濃度の高い造影剤を使用する必要があった。当時カテーテル先端は椎骨動脈に1cm程度しか入っていなかったので動脈内に注入した時点で造影剤は希釈されるので、たとえ高い浸透圧のイオパミロン®370を使用したとしても不適切ではない。しかも過去には、より濃度の高い造影剤アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン(同:ウログラフィン)を脳血管撮影に使用したとの報告もあるので、単にイオパミロン®370のヨード含有濃度や粘稠度の高さをもって副作用の危険性を判断することは妥当ではない裁判所の判断1. 血管撮影の適応今回の椎骨動脈撮影を含む血管撮影は、腫瘍の良悪性を鑑別するという点では意義はないが、腫瘍の三次元的な進展範囲を把握するためには有用であるため、血管撮影を施行すること自体はただちに不適切とはいえない。しかし、それまでに実施した鎖骨下動脈、腕頭動脈の撮影結果のみでも摘出手術をすることは可能であったので、椎骨動脈撮影の必要性は低く、手術や検査の必要性が再検討されないまま漫然と実施されたのは問題である。2. 説明義務違反「腫瘍が悪性であれば手術をしてほしい」という患者の希望に反し、腫瘍の性質についての判断を棚上げした状態で手術を決定し、患者は正しい事実認識に基づかないまま血管撮影の承諾をしているので、患者の自己決定権を侵害した説明義務違反である。3. カテーテル操作上の過失、造影剤の選択椎骨動脈へ何度もカテーテル挿入を試みると、その刺激により血管の攣縮、アテロームの飛散による血管の塞栓などを引き起こす可能性があるので、無理に椎骨動脈へカテーテルを進めるのは避けるべきであったのに、担当医師はカテーテル挿入に手間取り、2~3回フラッシュしたあとでカテーテル先端を挿入したのは過失である。4. 造影剤の誤りイオパミロン®300は、イオパミロン®370に比べて造影効果はやや低いものの、人体に対する刺激および中枢神経に対する影響(攣縮そのほかの副作用)が少ない薬剤であり、添付文書の「効能・効果欄」には「脳血管撮影についてはイオパミロン®300のみを使用するべきである」と記載されている。しかも、椎骨動脈撮影の際には、造影剤をイオパミロン®370から300へ交換することは技術的に可能であったので、イオパミロン®370を脳血管撮影である椎骨動脈撮影に使用したのは過失である。結局死亡原因は、椎骨動脈撮影時カテーテルの刺激、または造影剤による刺激が原因となって脳血管が血管攣縮(スパズム)を起こし、あるいは脳血管中に血栓が形成されたために、椎骨動脈から脳底動脈にいたる部分で脳梗塞を起こし、さらに脳出血、脳浮腫を経て、脳ヘルニア、血行障害のために2次的な血栓が形成され、脳軟化、髄膜炎、を合併してレスピレーター脳症を経て死亡した。原告側合計4,600万円の請求に対し、3,837万円の判決考察本件は、良性頸部腫瘤を摘出する際の術前検査として、血管撮影(椎骨動脈撮影)を行いましたが、不幸なことに合併症(脳梗塞)を併発して死亡されました。裁判では、(1)そもそも脳血管撮影まで行う必要があったのか(2)選択的椎骨動脈撮影を行う際の手技に問題はなかったのか(3)脳血管撮影に用いたイオパミロン®370は適切であったのかという3点が問題提起され、結果的にはいずれも「過失あり」と認定されました。今回の事案で血管撮影を担当されたのは整形外科医であり、どちらかというと脳血管撮影には慣れていなかった可能性がありますので、造影剤を脳血管撮影の時に推奨されている「より浸透圧や粘調度の低いタイプ」に変更しなかったのは仕方がなかったという気もします。そのため、病院側は「浸透圧の高い造影剤を用いても特段まずいということはない」ということを強調し、「椎骨動脈撮影時には分岐部から約1cmカテーテルを進めた状態であったので、造影剤が中枢方向へ逆流する可能性がある。また、造影されない血液が多少は流れ込んで造影剤が希釈される。文献的にも、高濃度のウログラフィン®を脳血管撮影に用いた報告がある」いう鑑定書を添えて懸命に抗弁しましたが、裁判官はすべて否認しました。その大きな根拠は、やはり何といっても「添付文書の効能・効果欄には脳血管撮影についてはイオパミロン®300のみを使用するべきであると記載されている」という事実に尽きると思います。ほかの多くの医療過誤事例でもみられるように、薬剤に起因する事故が医療過誤かどうかを判断する(唯一ともいってよい)物差しは、添付文書(効能書)に記載された薬剤の使用方法です。さらに付け加えると、もし適正な使用方法を行ったにもかかわらず事故が発生した場合には、わが国では「医薬品副作用被害救済基金法」という措置があります。しかし、この制度によって救済されるためには、「薬の使用法が適性であったこと」が条件とされますので、本件のように「医師の裁量」下で添付文書とは異なる投与方法を選択した場合には、「医薬品副作用被害救済基金法」は適用されず、医療過誤として提訴される可能性があります。本事案から学び取れるもう1つの重要なポイントは、(2)で指摘した「そもそも脳血管撮影まで行う必要があったのか」という点です。これについてはさまざまなご意見があろうかと思いますが、今回の頸部腫瘤はそれまでのCT、超音波検査、脊髄造影などで「良性嚢胞性腫瘤であるらしい」ことがわかっていましたので、(椎骨動脈撮影を含む)血管撮影は「絶対に必要な検査」とまではいかず、どちらかというと「摘出手術に際して参考になるだろう」という程度であったと思います。少なくとも造影CTで血管性病変は否定されましたので、手術に際し大出血を来すという心配はなかったはずです。となると、あえて血管撮影まで行わずに頸部腫瘤の摘出手術を行う先生もいらっしゃるのではないでしょうか。われわれ医師は研修医時代から、ある疾患の患者さんを担当すると、その疾患の「定義、病因、頻度、症状、検査、治療、予後」などについての情報収集を行います。その際の「検査」に関しては、医学書には代表的な検査方法とその特徴的所見が列挙されているに過ぎず、個々の検査がどのくらい必要であるのか、あえて施行しなくてもよい検査ではないのかというような点については、あまり議論されないような気がします。とくに研修医にとっては、「この患者さんにどのような検査が必要か」という判断の前に、「この患者さんにはどのような検査ができるか」という基準になりがちではないかと思います。もし米国であれば、医療費を支払う保険会社が疾患に応じて必要な検査だけを担保していたり、また、DRG-PPS(Diagnostic Related Groups-Prospective Payment System:診療行為別予見定額支払方式)の制度下では、検査をしない方が医療費の抑制につながるという面もあるため、「どちらかというと摘出手術に際して参考になるだろうという程度」の検査をあえて行うことは少ないのではないかと思います。ところがわが国の制度は医療費出来高払いであるため、本件のような「腫瘍性病変」に対して血管撮影を行っても、保険者から医療費の査定を受けることはまずないと思います。しかも、ややうがった見方になるかもしれませんが、一部の病院では入院患者に対しある程度の売上を上げるように指導され、その結果必ずしも必要とはいえない検査まで組み込まれる可能性があるような話を耳にします。このように考えると本件からはさまざまな問題点がみえてきますが、やはり原則としては、侵襲を伴う可能性のある検査は必要最小限にとどめるのが重要ではないかと思います。その際の判断基準としては、「自分もしくはその家族が患者の立場であったら、このような検査(または治療)を進んで受けるか」という点も参考になるのではないかと思います。脳・神経

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急性期脳内出血に対する迅速降圧治療(

INTERACT2(Intensive Blood Pressure Reduction in Acute Cerebral Hemorrhage Trial 2)は、脳内出血患者に対する迅速な積極的降圧治療の有効性と安全性を評価することを目的に、多施設共同前向き無作為化非盲検試験として行われた。被験者は、発症6時間以内の脳内出血患者2,839例(平均年齢63.5歳、男性62.9%)で、積極的降圧群(1時間以内の収縮期血圧目標値<140mmHg、1,403例)またはガイドライン推奨群(1時間以内の収縮期血圧目標値<180mmHg、1,436例)に割り付けられた。主要転帰は90日後の死亡と重度身体障害[modified Rankin scale (mRS)で定義されるスコア3~6(死亡)]とされた。 また、両群のmRSの順序尺度解析が行われた。主要転帰が2,794例で判定され、積極的降圧群で719/1,382例(52.0%)、ガイドライン推奨群で785/1,412例(55.6%)となり、積極的降圧群のオッズ比は0.87(95%信頼区間[CI]:0.75~1.01、p=0.06)で有意差はみられなかった。しかし、順序尺度解析では、mRSの低下(機能改善)は積極的降圧群で有意であった(オッズ比:0.87、95%CI:0.77~1.00、p=0.04)。 死亡率は、積極的降圧群11.9%、ガイドライン推奨群12.0%、非致死的重大有害事象の発生は、それぞれ23.3%、23.6%だった。これらの結果から、発症早期の迅速な積極的降圧は、主要転帰を有意に減少させなかったが、機能的転帰の改善をもたらすことが示された。 脳卒中に占める脳内出血の割合が25%を占めるわが国では、INTERACT2の結果は今後の脳卒中治療ガイドラインの改訂に大きな影響を及ぼすと考えられる。現在、急性期の脳内出血に対する迅速降圧治療の有効性に関しては、日本人患者の登録を含むATACH II (Antihypertensive Treatment of Acute Cerebral Hemorrhage) 試験が進行中であり、INTERACT2とともに、その結果が注目される。

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急性脳内出血後の降圧治療、積極的降圧vs.ガイドライン推奨/NEJM

 発症6時間以内の急性脳内出血患者に対して、1時間以内の収縮期血圧目標値<140mmHgとした積極的降圧治療と、ガイドラインで推奨されている同<180mmHgの場合を比較した、オーストラリア・シドニー大学のCraig S. Anderson氏らによるINTERACT2試験の結果が報告された。死亡および重度身体障害発生の主要転帰について、積極的降圧治療の有意な低下は示されなかったが、試験課程で脳卒中試験に認められたRankinスコアの順序尺度解析(ordinal analysis)では、機能的転帰の改善が示されたという。NEJM誌オンライン版2013年5月29日号掲載の報告より。目標<140mmHgとガイドライン推奨<180mmHgを比較 INTERACT2(Intensive Blood Pressure Reduction in Acute Cerebral Hemorrhage Trial 2)は、脳内出血患者への早期の積極的降圧治療の有効性と安全性を評価することを目的に、2008年10月~2012年8月に21ヵ国144病院から被験者を募り行われた国際多施設共同前向き無作為化非盲検試験だった。 被験者は、発症6時間以内の脳内出血患者は2,839例(平均年齢63.5歳、男性62.9%)で、無作為に、積極的降圧治療を受ける群(1時間以内の収縮期血圧目標値<140mmHg、1,403例)またはガイドライン推奨治療(1時間以内の収縮期血圧目標値<180mmHg、1,436例)に割り付けられた。使用する降圧治療は医師の選択にて行われた。 主要転帰は90日時点での、修正Rankinスケールのスコア3~6で定義される死亡(スコア6)または重大な身体障害(スコア5)とした。また、修正Rankinスコアの事前規定順序尺度解析も行い副次アウトカムとして評価した(スコア0~6の全7段階の身体的機能評価)。その他に重度有害事象イベントの発生率について両群間で比較した。順序解析で積極的降圧治療による機能的転帰の改善が示される 主要転帰の判定を受けたのは2,794例だった。<140mmHg群での主要転帰発生は、719/1,382例(52.0%)、ガイドライン推奨治療群は785/1,412例(55.6%)で、<140mmHg群のオッズ比は0.87(95%信頼区間[CI]:0.75~1.01、p=0.06)で有意差はみられなかった。 一方で、順序解析の結果、修正Rankinスコアの低下は、<140mmHg群が有意であった(より重大な障害に関するオッズ比:0.87、95%CI:0.77~1.00、p=0.04)。 死亡率は、<140mmHg群11.9%、ガイドライン推奨治療群12.0%だった(p=0.96)。 また、非致死的重大有害事象の発生は、それぞれ23.3%、23.6%だった(p=0.92)。 これらの結果から著者は、「積極的降圧治療は、主要転帰を有意に減少しなかった。修正Rankinスコアによる順序解析では、積極的降圧治療による機能的転帰の改善が示された」と結論している。

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脳卒中に対するt-PA+血管内治療、t-PA単独療法を凌駕しない/NEJM

 脳卒中治療について、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)静注の単独療法と血管内治療を併用した場合とを比較した結果、有効性に有意な差はなく、安全性アウトカムも同程度であったことが、米国・シンシナティ大学のJoseph P. Broderick氏らによる無作為化試験の結果、報告された。中等度から重症の急性脳梗塞患者の治療では、t-PA静注療法後に血管内治療を併用するケースが増えているが、同アプローチが単独療法よりも有効であるのかどうかは明らかではなかった。NEJM誌オンライン版2013年2月7日号より。t-PA単独療法群または血管内治療併用群に2対1に無作為化し追跡 研究グループが行ったのは、国際第3相無作為化オープンラベル臨床試験Interventional Management of Stroke (IMS)IIIであり、発症後3時間以内にt-PA静注を受けた患者を適格とした。同患者を、さらに血管内治療を行う群またはt-PA静注単独療法とする群に、無作為に2対1の割合で割り付け追跡した。 主要評価項目は、90日時点の修正Rankinスケール(身体機能の自立度を示す、スコア0~6の範囲で、スコアが高いほど機能障害の程度が高い)のスコアが2以下であるとした。 IMS IIIは2006年に登録が開始され、2012年4月に656例(計画では900例であった)が無作為化された時点で、試験の無益性を理由に早期打ち切りとなった。本論文では、事前規定のプロトコルに基づく追跡90日間の主要有効性の結果とサブグループ解析、安全性が報告された。両治療アプローチ間に有意差はみられず 無作為化された656例の内訳は、血管内治療併用群434例、t-PA静注単独群222例であった。 90日時点の修正Rankinスコア2以下の患者の割合は、両治療群間で有意差はみられなかった。血管内治療併用群40.8%、t-PA静注単独群38.7%であった。補正後絶対差は1.5ポイント[95%信頼区間(CI):-6.1~9.1]であり、修正NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)スコアによる階層化別(スコア8~19の中等度群、≧20の重症群)で両治療群を比較しても修正Rankinスコアに有意な差はみられなかった。 事前定義のサブグループでもNIHSSスコア≧20の重症群(両群格差:6.8ポイント、95%CI:-4.4~18.1)でも、同スコア8~19の中等度群(同:-1.0ポイント、-10.8~8.8)でも有意な差はみられなかった。 また、両治療間の90日時点の死亡率(血管内治療併用群19.1%、t-PA静注単独群21.6%、p=0.52)、t-PA静注後30時間以内に症候性脳内出血を呈した患者の割合(それぞれ6.2%、5.9%、p=0.83)についても同程度だった。

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国を挙げての急性期脳卒中ケアサービス提供の改善施策は功を奏したか?:英国

英国では、ロンドン南部における1995~2000年の脳卒中患者に対する急性期ケア提供の社会人口統計学的格差の報告を受け、その後、急性期ケアサービス改善に特に重点を置いた施策が次々と打ち出された。それらが効果をもたらし、改善が認められているのか。キングズ・カレッジ・ロンドンの健康・社会的ケア調査部門のJuliet Addo氏らが、ロンドン南部におけるその後の変化動向について調査を行った。BMJ誌2011年3月5日号(オンライン版2011年2月24日号)掲載より。改善施策の影響を1995年から2009年の患者受療内容から評価調査は、ロンドン南部で1995年1月から2009年12月の間に、初発の虚血性脳卒中や脳内出血を有した患者3,800例を対象とし、急性期脳卒中ケア受診の経時的変化と、ケア提供と関連する因子について評価が行われた。主要評価項目は、急性期ケア介入、入院状況、脳卒中ユニットケア、急性期の投薬状況、ケアを受けるアクセスの不均衡について。1995~1997年(907例)、1998~2000年(810例)、2001~2003年(757例)、2004~2006年(706例)、2007~2009年(620例)の5期間にグループ分けされ評価された。3,800例のうち、脳卒中後に入院治療を受けたのは3,330例(87.6%)で、そのうち388例(11.7%)が入院中に脳卒中を発症していた。平均発症年齢は71.1(SD 14.1)歳だった。全体的に改善はされたが、年齢、社会階層で有意な格差がみられ、至適には至っていない脳卒中後に入院治療を受けられた人は1995~1997年に82.1%で、2007~2009年には94.7%に上昇したが、なお約5%(33/620例)の人、特に軽症の人が入院治療を受けることができていなかった。また入院できた人でも約21%(124/584例)が、集学的な脳卒中ユニットケアを受けることができていなかった。脳卒中ユニットケアおよび脳画像診断の割合(調査全期間における)は、有意に増大していた。血栓溶解療法の割合(2005~2009年)も有意に増大していた(いずれもp<0.001)。また、白人患者との比較で黒人患者の、脳卒中ユニットケアで治療を受けた割合(オッズ比:1.76、95%信頼区間:1.35~2.29、P

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中高年女性の前兆を伴う片頭痛は、出血性脳卒中のリスク因子?

米国ブリガム&ウィメンズ病院予防医学部門のTobias Kurth氏らのグループは、中高年女性の片頭痛と出血性脳卒中リスクとの関連を検討する前向きコホート研究を行った。米国女性の保健・医療従事者が参加する大規模研究「Women's Health Study」の中から、基線で脳卒中または他の重大疾患がない45歳以上の中高年女性2万7,860例の、自己報告による前兆を含む片頭痛の有無、脂質値などの情報を用いて行われた。BMJ誌2010年9月4日号(オンライン版2010年8月24日号)より。45歳以上女性の約18%が片頭痛を経験主要評価項目は、初発の出血性脳卒中までの期間と出血性脳卒中のタイプとされた。基線で何らかの片頭痛の既往を報告した女性は、5,130例(18%)だった。そのうち3,612例は過去1年以内に激しい片頭痛があったと報告し、さらにそのうち1,435例(40%)は前兆を伴ったと説明した。前兆を伴う「激しい」片頭痛は出血性脳卒中リスクを増大平均追跡期間13.6年の間に、カルテのレビューにより85例の出血性脳卒中が確認された。片頭痛の既往のない女性と比較して、片頭痛の既往があった女性の出血性脳卒中リスクは増大していなかった(補正後ハザード比:0.98、95%信頼区間:0.56~1.71、P=0.93)。対照的に、前兆を伴う激しい片頭痛を経験した女性のリスクは増大していた(同:2.25、1.11~4.54、P=0.024)。年齢調整後のリスクは、大脳内出血(同:2.78、1.09~7.07、P=0.032)と致死性イベント(同:3.56、1.23~10.31、P=0.02)について、より増していた。一方、出血性脳卒中イベント再発では、前兆を伴う片頭痛は年間10,000例につき4例だった。前兆のない激しい片頭痛を報告した女性では、出血性脳卒中のリスクの増大はみられなかった。これらから研究グループは、「前兆を伴う片頭痛は、虚血性イベントとともに、出血性脳卒中のリスク因子でもある可能性がある」と結論し「イベント数と寄与リスクは比較的小さいとはいえ、本報告を最終結論とすることなく、さらなる観察を通しての追認が必要である」と報告している。

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重度強迫性障害への視床下核電気刺激療法は副作用に注意

重度難治性の強迫性障害(obsessive-compulsive disorder:OCD)は、強迫観念や強迫行為、儀式行為などによる時間の浪費、閉じこもりなどによって生活が困難になるといった特性が見られる疾患である。このOCDの治療の選択肢として近年、行動療法や薬物治療とならんで、パーキンソン病による運動障害の治療法として有用性が確認されている視床下核への電気刺激療法が提唱されている。その有効性と安全性に関する臨床試験を行った、フランス国立衛生研究所(INSERM)のLuc Mallet氏らSTOC研究グループによる結果が、NEJM誌2008年11月13日号に掲載された。実刺激と偽刺激を無作為に割り付け評価試験は多施設協同クロスオーバー二重盲検試験で10ヵ月間にわたって実施された。実刺激治療3ヵ月+偽刺激治療3ヵ月群に8例、偽刺激治療3ヵ月+実刺激治療3ヵ月群に8例、それぞれ無作為に割り付けられた。主要評価項目はOCDの重症度とし、Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale(Y-BOCS)を用いて、3ヵ月の各治療期間終了時に2回にわたって評価が行われた。その際、一般的な精神病理学的所見、心理的・社会的・職業的機能、治療に対する忍容性の評価には標準的な精神医学的尺度とされるGlobal Assessment of Functioning(GAF)スケールと神経心理学的検査法が用いられた。OCDの症状緩和とともに重大な有害事象確認Y-BOCSスコア(0~40のスケール、スコアが低いほど重症度が低い)は、偽刺激後より実刺激後のほうが有意に低かった(平均値±SD:19±8対28±7、P = 0.01)。一方、GAFスコア(1~90のスケール、スコアが高いほど機能性が高い)は、実刺激後が偽刺激後よりも有意に高かった(56±14対43±8、P = 0.005)。神経心理学的尺度に基づく抑うつと不安の評価は刺激によって変化はなかった。全体として15件の重篤な有害事象が見られ、そのうち1件が脳内出血、2件が感染症だった。重篤ではない有害事象も23件報告されている。研究グループは、視床下核への電気刺激療法が重度OCDの症状を緩和する可能性が示されたが、同時に、重篤な有害事象のリスクが伴うようだと報告している。(朝田哲明:医療ライター)

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脳梗塞発症3~4.5時間後のrt-PA静注療法は有効だが……

急性期脳梗塞に対し唯一承認された治療法は、rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法だが、発症から3時間以上経過した後の投与については、有効性と安全性が確立されていなかった。ドイツ・ハイデルベルク大学のWerner Hacke氏らECASS(European Cooperative Acute Stroke Study)研究グループは、発症後3~4.5時間に投与されたrt-PAの有効性と安全性を検証した結果、「臨床転帰は改善するが、症候性頭蓋内出血を伴う所見が高頻度にみられる」と報告した。NEJM誌2008年9月25日号より。プラセボ投与と等分し90日後の障害の有無を比較急性期脳梗塞患者のうち、CT検査で脳内出血または重い梗塞のある患者を除き、rt-PA静注群(0.9mg/kg)またはプラセボ投与を受けるよう、等分に無作為二重盲検試験に割り付けた。主要エンドポイントは90日時点の障害とし、転帰良好(無症状を0、死亡を6とする0~6の尺度で0または1)か、転帰不良(同2~6)に分けた。副次エンドポイントは、4つの神経学的スコアと障害スコアを統合した総合的な転帰解析の結果とした。安全性エンドポイントは、死亡、症候性頭蓋内出血および他の深刻な有害事象とした。転帰はやや改善されるが症候性頭蓋内出血も高頻度登録された患者計821例を、rt-PA静注群418例、プラセボ群403例に割り付けた。rt-PA投与時間の中央値は3時間59分。rt-PA群のほうがプラセボ群より転帰良好の患者がより多かった(52.4%対45.2%、オッズ比:1.34、95%信頼区間:1.02~1.76、P = 0.04)。総合解析の結果も、rt-PA群のほうがプラセボ群より転帰は改善された(1.28、1.00~1.65、P

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