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1.

高血圧患者、CVD死亡リスクがとくに高い年齢層は?/東北医科薬科大

 高血圧は、心血管疾患(CVD)のリスクとなることは知られている。では、そのリスクは、日本人ではどの程度の血圧(BP)分類や年齢から発生するのであろうか。東北医科薬科大学医学部公衆衛生学・衛生学教室の佐藤 倫広氏らの研究グループは、このテーマについてEPOCH-JAPAN研究における7万人の10年追跡データを用いて、現在用いられているBP分類とCVD死亡リスクの関連を検討した。その結果、高血圧とCVD死亡リスクは関連があり、その傾向はとくに非高齢者で顕著だった。この研究はHypertension Research誌オンライン版に2025年2月20日に公開された。40~64歳の高血圧患者でCVD死亡リスク上昇が顕著 研究グループは、わが国で実施された10のコホート研究データを統合し、7万570例(平均年齢59.1歳、女性57.1%)を対象としたデータを解析した。追跡期間は平均9.9年で、降圧治療の有無で層別化し、最新のBP分類とCVD死亡リスクとの関連を検討した。BP分類は、日本高血圧学会ガイドライン(2019年)に従った。 主な結果は以下のとおり。・約10年間の追跡期間中に2,304例のCVD死亡が発生した。・Coxモデルにより、CVD死亡リスクはBP分類が高くなるとともに段階的に増大することが示され、この関連は40~64歳の高血圧未治療者でとくに顕著であった。・高血圧未治療のI度高血圧群(診察室:140~159かつ/または90~99mmHg、家庭:135~144かつ/または85~89mmHg)がCVD死亡に対する最も高い集団寄与危険割合(PAF)を示した。・治療を受けた患者を高血圧群に含めると、高血圧群のCVD死亡に対するPAFは41.1%だった。・同様のパターンがCVDサブタイプの死亡リスクでも観察され、高血圧症では脳内出血のPAFがとくに高かった。 研究グループでは、「これらの結果は、高血圧の早期予防と管理の重要性を示唆する」と述べている。

2.

ランダム化試験より個別最適化医療の論理が必要?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動の脳梗塞予防には抗凝固薬が広く使用されるようになった。しかし、脳内出血の既往のある症例に抗凝固薬を使用するのは躊躇する。本研究は過去に頭蓋内出血の既往のある症例を対象として、心房細動症例における抗凝固薬介入の有効性と安全性の検証を目指した。319例をDOAC群と抗凝固薬なし群に割り付けて中央値1.4年観察したところ、DOAC群の虚血性脳卒中は0.83(95%信頼区間[CI]:0.14~2.57)/100人年、抗凝固薬なし群では8.60(同:5.43~12.80)/100人年と差がついた。 しかし、頭蓋内出血イベントはDOAC群が5.00(95%CI:2.68~8.39)/人年、抗凝固薬なし群では0.82(同:0.14~2.53)/人年であった。 ランダム化比較試験としては事前に設定した有効性、安全性エンドポイントに対する仮説検証が目標となるが、臨床家は結果に基づいて実臨床における治療選択を考える。「頭蓋内出血の既往のある心房細動」でもDOACで虚血性脳卒中リスクを低減できるが、頭蓋内出血リスクは増える。未来に虚血性脳卒中リスクの高い個別症例を選別してDOACをのませる、などの個別最適化医療への方向転換が必要である。

3.

脳出血既往AFに対する脳梗塞予防、DOACは有用か?/Lancet

 直接経口抗凝固薬(DOAC)は、心房細動を伴う脳内出血生存者の虚血性脳卒中予防に有効ではあるが、その有益性の一部は脳内出血再発の大幅なリスク増加により相殺されることが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRoland Veltkamp氏らPRESTIGE-AF Consortiumが、欧州6ヵ国75施設で実施された第III相無作為化非盲検評価者盲検比較試験「PRESTIGE-AF試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「これら脆弱な患者集団における脳卒中予防を最適化するには、さらなるエビデンスと無作為化データのメタ解析が必要である。特定の患者に対しては、より安全な薬物療法または機械的代替療法の評価も求められる」と述べている。DOACは、心房細動患者において血栓塞栓症の発症頻度を低下させるが、脳内出血生存者に対するベネフィットとリスクは不明であった。Lancet誌オンライン版2025年2月26日号掲載の報告。脳内出血発症後14日~1年のAF患者をDOAC群と抗凝固薬非投与群に無作為化 研究グループは、脳内出血発症後14日~12ヵ月(当初は6ヵ月)以内で、心房細動を有し、抗凝固療法の適応があり、修正Rankinスケール(mRS)スコアが4以下の18歳以上の患者を、脳内出血の部位と性別によって層別化し、DOAC群または抗凝固薬非投与群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 血管奇形または外傷に起因する脳内出血、左心耳閉鎖デバイスによる治療予定または既治療患者などは除外した。 DOAC群では、各地の試験担当医師の判断によりアピキサバン、ダビガトラン、エドキサバンまたはリバーロキサバンが投与された。抗凝固薬非投与群では、試験担当医師の判断で抗血小板薬(例:アスピリン100mg 1日1回)を投与または非投与した。 主要エンドポイントは2つで、初回虚血性脳卒中と脳内出血の初回再発とし、ITT集団で優越性と非劣性に関する階層的検定を実施した。脳内出血に関する非劣性マージンは、ハザード比(HR)の90%信頼区間上限が1.735未満とした。安全性についても、ITT集団を対象に解析した。DOAC群で虚血性脳卒中リスクは減少、脳内出血再発リスクは増大 2019年5月31日~2023年11月30日に319例が登録され、DOAC群(158例)および抗凝固薬非投与群(161例)に無作為に割り付けられた。患者背景は、年齢中央値が79歳(四分位範囲[IQR]:73~83)で、女性113例(35%)、男性206例(65%)であった。 追跡期間中央値1.4年(IQR:0.7~2.3)において、初回虚血性脳卒中の発症頻度は、DOAC群が抗凝固薬非投与群より低かった(HR:0.05、95%CI:0.01~0.36、log-rank検定p<0.0001)。すべての虚血性脳卒中イベントの発症頻度(100患者年当たり)は、DOAC群で0.83(95%CI:0.14~2.57)に対し、抗凝固薬非投与群では8.60(5.43~12.80)であった。 脳内出血の初回再発については、DOAC群は事前に規定された非劣性マージン(<1.735)を満たさなかった(HR:10.89、90%CI:1.95~60.72、p=0.96)。すべての脳内出血の発症頻度(100患者年当たり)は、DOAC群5.00(95%CI:2.68~8.39)に対し、抗凝固薬非投与群は0.82(95%CI:0.14~2.53)であった。 重篤な有害事象は、DOAC群で158例中70例(44%)、抗凝固薬非投与群で161例中89例(55%)に発現した。DOAC群では16例(10%)、抗凝固薬非投与群では21例(13%)が死亡した。

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2024年を終えるに当たって【Dr. 中島の 新・徒然草】(561)

五百六十一の段 2024年を終えるに当たっていよいよ激動の2024年も終わりを迎えようとしています。正月の能登半島地震、翌2日の羽田空港地上衝突事故で始まった2024年ですが、大谷翔平選手のMLBでの大活躍や、日経平均株価のバブル期超えという明るいニュースもありました。考えてみれば、そもそも平穏な1年などというものはなく、毎年のように何か予想外のことが起こっているわけですね。私自身を振り返ってみると、何といっても定年退職したことが一番の出来事です。前々回に述べたように、週2回の外来と医師会活動や看護学校での講義のほかは、自宅で過ごす毎日。やはり時間に余裕ができたのは大きく、外来の患者さんたちにも「先生、前より元気そうね」と言われたりします。外来の患者さんといえば、若い人の中には結婚や出産というめでたいこともあったりします。ある脳梗塞の女性患者さんは、生まれたばかりの赤ん坊を連れてきてくれました。患者「普段は目立たないけど、子供を抱っこしたりするとバランスが悪くて」中島「そういう時に片麻痺が露呈してしまうのか……」患者「もう母や旦那に頼りっぱなしで情けないです」中島「そんなもん、利用できるものはすべて利用したほうがいいですよ」彼女は実家が目の前にあるので、何かと母親に助けてもらいながらの子育てです。一緒に診察室に来ていた母親は孫を抱きながら「そうは言っても育児は終わりがありますからね」と仰っていました。頼もしい!一方、別の頭部外傷の女性患者さんは、つい子供にきつく当たってしまうというのが悩みのようでした。高次脳機能障害のために感情を抑えづらいのがその原因。3歳の女の子を連れての受診ですが、彼女の場合は周囲に助けてくれる人があまりいないようです。中島「ママ、怒ったりする?」女の子「うん」中島「ママは怖い?」女の子「うん」患者「何を言ってるの!」まずい……余計なことを聞いてしまった。中島「でも、優しいママは大好き?」女の子「うん」一体、この先はどうなるのでしょうか。中島「保育所の利用とかで必要な書類があったら、何でも書きますから、遠慮なく言ってください」患者「ありがとうございます」別の患者さんは、小学生から中学生までの3人の子供がいる状態で、脳内出血を発症してしまいました。やはり片麻痺があるので、家事には苦労しています。患者「上の子は本当だったら反抗期なんでしょうけど……」中島「親に反抗している余裕もないんですね」患者「そうなんですよ。もう全員で家事を手伝ってくれています」中島「それは立派。立派過ぎる!」子供たちが診察室に付いてくることがあったら、私なりに労ったり励ましたりしなくてはなりませんね。そういえば、父親としての悩みというのも聞かされました。この患者さんは、交通事故の後に仕事も私生活もうまくいかなくなってしまったのですが、子供の話をする時だけは嬉しそうな表情です。患者「上の子が中学生になりまして」中島「こないだ小学校に入ったと聞いたばっかりなのに!」患者「それで、小学校からの友達と一緒にハンドボール部に入ったんですけど」中島「頑張ってますね」患者「それが同じポジションで、友達のほうばかりが試合に出してもらっているそうなんですよ」中島「そりゃあ辛いなあ」患者「それでハンドボールをやめたいとか言い出して」中島「でも、レギュラーになれない自分とどうやって折り合いを付けて頑張れるか、というのが部活動の本当の意味だと思いますけどね」患者「そうなんですか!」中島「とはいえ、本人は本人でいろいろ考えているでしょうから、あまり親が『ああしろ、こうしろ』と言い過ぎるのも良くないと思いますけど」今にして思えば、部活動というのは社会の縮図でした。よくあれだけ泣いたり笑ったりしたもんだと思います。部活動では、本当にたくさんの失敗をしてしまいましたが、医療現場と違って人が死ぬということがなかったのが救いでした。今になってそんな風に思います。ともあれ。あと数日間の2024年、無事に終わってほしいですね。読者の皆さん。良い年をお迎えください。最後に1句外来で 患者と悩む 年の暮れ

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日本人の主な死因(2023年)

日本人の主な死因その他食道 2.8%21.0%前立腺 3.5%肺および気管・気管支19.8%大腸(結腸・直腸)13.9%悪性リンパ腫3.8%アルツハイマー病1.6%その他悪性新生物(腫瘍)25.0%24.3%乳房 4.1%膵胃胆のう・胆道 4.5%10.5%10.1%肝・肝内胆管 6.0%n=38万2,504人腎不全 1.9%心疾患新型コロナウイルス感染症 2.4%不慮の事故2.8%誤嚥性肺炎3.8%(高血圧性を除く)心疾患14.7%老衰脳血管疾患 12.1%6.6%肺炎慢性リウマチ性4.8%心筋症 1.5%0.8%慢性非リウマチ性心内膜疾患5.2%くも膜下出血n=157万6,016人10.7%31.3%n=10万4,533人20.6%心不全42.9%急性心筋梗塞13.4% 不整脈および伝導障害15.6%その他 2.9%脳内出血その他n=23万1,148人脳梗塞55.1%厚生労働省「人口動態統計」2023年(確定数)保管統計表 都道府県編 死亡・死因「第4表-00(全国)死亡数,都道府県・保健所・死因(死因簡単分類)・性別」より集計注:死因順位に用いる分類項目(死因簡単分類表から主要な死因を選択したもの)による順位Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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貧血を伴う急性脳損傷患者への輸血、非制限戦略vs.制限戦略/JAMA

 急性脳損傷患者に対する非制限輸血戦略または制限輸血戦略は、神経学的アウトカムにどのような影響をもたらすのか。ベルギー・ブリュッセル自由大学のFabio Silvio Taccone氏らTRAIN Study Groupが多施設共同無作為化試験にて検討し、貧血を伴う急性脳損傷患者では、非制限輸血戦略のほうが制限輸血戦略よりも神経学的アウトカムが不良となる可能性が低かったことを示した。JAMA誌オンライン版2024年10月9日号掲載の報告。ヘモグロビン値<9g/dL vs.<7g/dL輸血開始の神経学的アウトカム発生を評価 研究グループは、急性脳損傷患者における赤血球輸血の指針として、2つの異なるヘモグロビン閾値が神経学的アウトカムに与える影響を評価するため、22ヵ国72ヵ所のICUにて、研究者主導のプラグマティックな第III相多施設共同並行群間非盲検無作為化比較試験を行った。 外傷性脳損傷、動脈瘤性くも膜下出血または脳内出血を呈し、脳損傷後10日間のヘモグロビン値9g/dL未満、ICU入室期間が72時間以上と予想される患者を適格とした。2017年9月1日~2022年12月31日に被験者を登録し、最終フォローアップ日は2023年6月30日であった。 850例が、28日間にわたり非制限輸血戦略(ヘモグロビン値<9g/dLで輸血を開始、408例)または制限輸血戦略(ヘモグロビン値<7g/dLで輸血を開始、442例)を受けるよう無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは神経学的アウトカム不良とし、無作為化後180日時点で評価した拡張グラスゴー転帰尺度(Glasgow Outcome Scale-Extended[GOS-E]スコア)1~5で定義した。 無作為化後の脳虚血発生など、14の事前規定の重篤な有害事象を評価した。180日後の神経学的アウトカム不良、非制限戦略群62.6%、制限戦略群72.6% 820例(平均年齢51歳、女性376例[45.9%])が試験を完了し、主要アウトカムについて806例(非制限戦略群393例、制限戦略群413例)のデータが得られた。 輸血単位中央値は、非制限戦略群が2単位(四分位範囲[IQR]:1~3)、制限戦略群は0単位(IQR:0~1)であり、絶対平均群間差は1.0単位(95%信頼区間[CI]:0.87~1.12)であった。 無作為化後180日時点で、神経学的アウトカム不良であった患者は、非制限戦略群246例(62.6%)、制限戦略群300例(72.6%)であった(絶対群間差:-10.0%[95%CI:-16.5~-3.6]、補正後相対リスク:0.86[95%CI:0.79~0.94]、p=0.002)。 180日時点における輸血閾値の神経学的アウトカムへの影響は、事前に規定したサブグループ全体で一貫していた。 少なくとも1回の脳虚血を呈したのは、制限戦略群が57/423例(13.5%)であったのに対して非制限戦略群は35/397例(8.8%)だった(相対リスク:0.65、95%CI:0.44~0.97)。

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超急性期脳卒中、救急車内での降圧治療は有効か?/NEJM

 急性期脳卒中が疑われる血圧高値の患者において、病院到着前に救急車内で降圧治療を行っても機能的アウトカムは改善しない。中国・同済大学のGang Li氏らが、同国51施設で実施した無作為化非盲検試験「INTERACT4試験」の結果を報告した。本試験では、病院到着後に対象患者の46.5%が脳出血と診断された。虚血性か出血性か病型判別前の急性期脳卒中の治療は困難で、救急車内の超早期血圧コントロールが、未診断の急性期脳卒中患者のアウトカムを改善するかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2024年5月16日号掲載の報告。発症後2時間以内、収縮期血圧150mmHg以上の脳卒中疑い患者を対象に試験 研究グループは、FASTスコア(顔[顔面下垂]、腕[上がらない]、言語[言葉が不明瞭]、時間[救急車を呼ぶまでの時間])が2以上(範囲:0~4、スコアが高いほど症状が強いことを示す)、収縮期血圧150mmHg以上、症状発現後2時間以内の急性期脳卒中が疑われる成人患者を、救急車内でただちに降圧治療を行う群(介入群)と、病院到着後に血圧管理を開始する群(通常ケア群)に、地域(中国の東部vs.西部)、年齢(65歳以上vs.65歳未満)、FASTスコア(3点以上vs.2点)を層別因子として無作為に割り付けた。 介入群では、救急車内でウラピジル25mgを1分間でボーラス投与し、収縮期血圧が130~140mmHgに低下しない場合は、5分後に1回のみ同用量を再投与した。 有効性の主要アウトカムは、無作為化後90日時点の修正Rankinスケールスコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])の分布で評価した機能的アウトカムで、ITT集団を解析対象とした。安全性アウトカムは、重篤な有害事象であった。降圧治療の開始、救急車内と病院到着後で全体では機能的アウトカムに差はなし 2020年3月20日~2023年8月31日に計2,425例が無作為化され、同意撤回等を除く2,404例(介入群1,205例、通常ケア群1,199例)がITT集団となった。 患者背景は、平均年齢70歳、発症から無作為化までの時間の中央値は61分(四分位範囲[IQR]:41~93)、無作為化時の平均血圧は178/98mmHgであった。病院到着後に画像検査で脳卒中と確定診断されたのは2,240例で、そのうち1,041例(46.5%)が脳出血(脳内出血1,029例、くも膜下出血12例)、計1,199例(53.5%)が脳梗塞(頭蓋外または頭蓋内のアテローム性または心塞栓症による脳梗塞907例、一過性脳虚血発作53例)であった。また、病院到着時の平均収縮期血圧は、介入群158mmHg、通常ケア群170mmHgであった。 無作為化後90日時点の修正Rankinスケールスコアの分布について、両群間に有意差は認められなかった(機能的アウトカム不良の調整共通オッズ比[OR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.87~1.15)。 サブグループ解析の結果では、機能的アウトカム不良の調整共通ORは脳出血患者では低く(0.75、95%CI:0.60~0.92)、脳梗塞患者では高かった(1.30、1.06~1.60)。ただし同解析は階層的統計解析計画には含まれていなかったため、著者は「これらの関連について結論付けることはできない」としている。 重篤な有害事象の発現率は、介入群27.5%、通常ケア群28.7%であり、両群で同程度であった。

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特発性重症深部脳内出血、減圧開頭術+内科的治療vs.内科的治療単独/Lancet

 特発性重症テント上深部脳内出血患者において、減圧開頭術+最善の内科的治療が最善の内科的治療単独と比べて優れる可能性のエビデンスは弱いことが、スイス・ベルン大学のJurgen Beck氏らSWITCH study investigatorsによる検討で示された。著者は、「今回の結果は、他の部位の脳内出血に当てはまるものではなく一般化はできない。また、生存は、併用群、内科的治療単独群の両者ともに重度の障害を伴った」と述べている。特発性重症深部脳内出血患者において、減圧開頭術がアウトカムを改善するかは不明であった。Lancet誌オンライン版2024年5月15日号掲載の報告。大脳基底核または視床部にわたる重症脳内出血を呈した成人を対象に評価 SWITCH試験は特発性重症深部脳内出血患者において、減圧開頭術+最善の内科的治療が最善の内科的治療単独と比較して、6ヵ月時点のアウトカムを改善するかどうかを検証した多施設共同無作為化非盲検評価者盲検試験。オーストリア、ベルギー、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイスの脳卒中センター42施設で行われた。 大脳基底核または視床部にわたる重症脳内出血を呈した成人(18~75歳)を、減圧開頭術+最善の内科的治療群、または最善の内科的治療単独群に無作為に割り付け追跡評価した。 主要アウトカムは、180日時点での修正Rankinスケール(mRS)スコア(7ポイント評価、範囲:0[障害なし]~6[死亡])が5~6とし、ITT解析にて評価した。併用群でリスク低下、aRRは0.77、aRDは-13% SWITCH試験は、資金不足のため早期に中止となっている。 2014年10月6日~2023年4月4日に、201例が無作為化され、197例から同意を取得した(併用群96例、単独群101例)。63例(32%)が女性、134例(68%)が男性で、年齢中央値は61歳(四分位範囲[IQR]:51~68)、血腫量中央値は57mL(44~74)であった。 180日時点でmRSスコア5~6であった患者は、併用群が42/95例(44%)、単独群が55/95例(58%)であった(補正後リスク比[aRR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.59~1.01、補正後リスク群間差[aRD]:-13%、95%CI:-26~0、p=0.057)。 per-protocol解析(適格基準に反していた患者、割り付けられた治療を受けなかった患者、事前規定の評価日以外に評価を受けた患者を除外)では、180日時点でmRSスコア5~6であった患者は、併用群36/77例(47%)、単独群44/73例(60%)であった(aRR:0.76、95%CI:0.58~1.00、aRD:-15%、95%CI:-28~0)。 重篤な有害事象は、併用群42/103例(41%)、単独群41/94例(44%)に発現した。

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脳内出血24時間以内の低侵襲血腫除去術、180日アウトカム良好/NEJM

 急性期脳内出血後24時間以内に手術が可能だった患者において、低侵襲血腫除去術はガイドラインに基づく内科的管理に比べ、180日時点の機能的アウトカムが良好であることが示された。米国・エモリー大学のGustavo Pradilla氏らによる300例を対象とした多施設共同無作為化試験の結果で、著者らは「脳葉出血への介入が手術の効果に寄与しているものと思われる」と述べている。先行研究では、テント上脳内出血の外科的除去の試験は、概して機能への効果がないことが示されている。早期の低侵襲外科的除去により、内科的管理よりも良好なアウトカムが得られるかは明らかになっていなかった。NEJM誌2024年4月11日号掲載の報告。ガイドラインに基づく内科的管理と比較 研究グループは、急性期脳内出血患者を対象に、血腫の外科的除去と内科的管理のアウトカムを比較した。被験者は、脳葉出血または大脳基底核前部出血があり、血腫体積が30~80mL、最終健常確認時刻から24時間以内の患者だった。 被験者を1対1の割合で2群に無作為化し、一方の群には血腫の低侵襲外科的除去+ガイドラインに基づく内科的管理を(手術群)、もう一方の群にはガイドラインに基づく内科的管理のみを(対照群)、それぞれ行った。 有効性の主要エンドポイントは、180日時点の効用値加重修正Rankinスケール(UW-mRS、範囲:0~1、スコアが高いほどアウトカム良好、患者による評価)の平均スコアで、事前に規定した優越性の事後確率閾値は0.975以上だった。安全性の主要エンドポイントは、登録後30日以内の死亡だった。なお、本試験は出血部位に基づく登録基準の変更規則を設定して行われた。手術の優越性の事後確率は0.981、事前規定の閾値を超える 2016年12月1日~2022年8月24日に、計1万1,603例が適格性のスクリーニングを受け、米国内37施設から計300例(両群150例)が登録された(脳葉出血69.3%、大脳基底核前部出血30.7%)。175例の登録後に規則を変更し、以後は脳葉出血患者のみを登録した。両群の特性は類似しており、年齢中央値は手術群64歳、対照群62歳、女性は48%と52%、NIH脳卒中スケールのスコア中央値は16点と18点、無作為化時点のGCSスコア9~14点は83%と81%、血腫量中央値は54mLと55mL、また最終健常確認時刻から無作為化までの時間中央値は12.8時間と12.9時間だった。 180日時点のUW-mRS平均値は、手術群0.458、対照群0.374(群間差:0.084、95%ベイズ信用区間[CrI]:0.005~0.163)で、手術の優越性の事後確率は0.981と事前に規定した閾値を超えていた。群間差の平均値は、脳葉出血患者では0.127(95%ベイズCrI:0.035~0.219)、大脳基底核前部出血患者では-0.013(-0.147~0.116)だった。 30日以内に死亡した患者の割合は、手術群9.3%、対照群18.0%だった。手術群の5例(3.3%)で、術後の再出血と神経症状の悪化が認められた。

10.

血圧が高い十代の男性は高齢になる前に健康危機に直面しやすい

 十代という人生の早い段階で血圧が正常域よりも高い男性は、高齢期に入ってリタイアするより前に、心血管疾患を発症するリスクやそのために亡くなるリスクが高いという実態が報告された。ウメオ大学(スウェーデン)のHelene Rietz氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に9月26日掲載された。同氏は、十代の若者の血圧高値の潜在的リスクに対する医療従事者の理解が不足していることに懸念を表している。 成人期以降の血圧高値が、心血管イベントリスクと密接に関連していることは、十分明らかになっている。しかし、十代の若者の血圧と将来の心血管イベントとの関連についてのデータは少ない。Rietz氏らはこの点について、スウェーデンの軍人のデータを用いて検討した。 解析対象は、1969~1997年に徴兵された、平均年齢18.3歳の男性136万6,519人。血圧レベルは、2017年の米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)のガイドラインに即して判定した。徴兵検査時に行われた血圧測定から、28.8%が血圧上昇〔収縮期血圧120~129/拡張期血圧80mmHg未満〕、53.7%が高血圧(130/80mmHg以上)と判定された。 中央値35.9年の追跡で、7万9,644人に主要複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞・心不全・虚血性脳卒中・脳内出血による初回入院)が発生。交絡因子を調整後のハザード比は、血圧上昇レベルでは1.10(95%信頼区間1.07~1.13)、ステージ1高血圧(130~139/80~89mmHg)では1.32(1.27~1.37)、ステージ2高血圧(140/90mmHg以上)では1.71(1.58~1.84)だった。 Rietz氏は、「若年者の血圧高値の予後に対する重要性を真剣に受け止めていない医師が、少なくないのではないか。また、若年者の血圧測定の頻度や治療に関する推奨や考え方も、国や個々の医療機関、医師によって異なり曖昧だ。われわれの研究結果が契機となり、若年者の血圧が頻繁にモニタリングされ、リスクの高い対象が早期に見いだされるようになればよい」と、状況の変化を期待している。なお、同氏によると若年者の高血圧の原因は、「肥満が一因ではないか。ただし、多くの生活習慣関連因子が相互に作用していると考えられ、明快な答えを出すのは難しい」とのことだ。 Rietz氏はまた、「血圧の高い十代の若者を助けるには、さまざまなアクションが必要だ」と話す。具体的には、「学校での身体活動の推奨、保護者に対する教育、若年者の健康推進のための政策立案といった、多方面からの介入を行わなければならない」とし、「誰にとっても簡単で、コストをあまりかけずに、健康的なライフスタイルを取り入れられるような環境の整備が求められる」と話している。 Rietz氏らの研究報告について、米アーマンソンUCLA心筋症センターのGregg Fonarow氏は、「若年者の血圧上昇に伴う健康リスクの上昇を強調する結果と言える。血圧が高い場合、より早い段階から生活習慣の改善を心がけて血圧を下げるように努めることが、後の心血管疾患発症やそれによる早期死亡を防ぐことにつながると考えられる」と論評。同時に、「この研究は男性のみを対象としているため、今後は十代の女性を対象とした研究も必要とされる」と付け加えている。

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eplontersen、遺伝性ATTRvアミロイドーシスに有効/JAMA

 ポリニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン型(ATTRv)アミロイドーシス患者の治療において、アンチセンスオリゴヌクレオチドであるeplontersenはプラセボと比較して、血清トランスサイレチン濃度を有意に低下させ、ニューロパチーによる機能障害を軽減し、良好なQOLをもたらすことが、ポルトガル・Centro Hospitalar Universitario de Santo AntonioのTeresa Coelho氏らが実施した「NEURO-TTRansform試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年9月28日号で報告された。historical placeboと比較する単群第III相試験 NEURO-TTRansform試験は、過去の臨床試験のプラセボ群(historical placebo)との比較を行う非盲検単群第III相試験であり、2019年12月~2021年6月に日本を含む15ヵ国40施設で患者のスクリーニングを実施した(米国・Ionis Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 対象は、18~82歳、Coutinhoの病期分類でステージ1または2のATTRvポリニューロパチーと診断され、Neuropathy Impairment Score(0~244点、点数が高いほど身体機能が不良)が10~130点で、TTR遺伝子配列のバリアントを有する患者であった。 本試験と類似の適格基準およびエンドポイントが設定されたNEURO-TTR試験(inotersenの二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験、2013年3月~2017年11月)でプラセボの投与を受けた患者をプラセボ群(週1回、皮下投与)とした。eplontersen群は本薬45mgを4週ごとに皮下投与した。 有効性の主要エンドポイントは次の3つで、ベースラインから65週目または66週目までの変化量を評価した。(1)血清トランスサイレチン濃度、(2)修正Neuropathy Impairment Score +7(mNIS+7)の複合スコア(-22.3~346.3点、点数が高いほど身体機能が不良)、(3)Norfolk Quality of Life Questionnaire-Diabetic Neuropathy(Norfolk QoL-DN)の総スコア(-4~136点、点数が高いほどQOLが不良)。 eplontersen群144例(平均年齢53.0歳、男性69%)のうち136例(94.4%)、NEURO-TTR試験のプラセボ群60例(59.5歳、68%)のうち52例(86.7%)が66週のフォローアップを完了した。有効性の副次エンドポイントも良好 65週の時点で、血清トランスサイレチン濃度のベースラインからの補正後平均変化量は、プラセボ群が-11.2%であったのに対し、eplontersen群は-81.7%と有意に優れた(群間差:-70.4%、95%信頼区間[CI]:-75.2~-65.7、p<0.001)。 また、mNIS+7の複合スコアのベースラインから66週までの補正後平均変化量は、プラセボ群の25.1点に比べ、eplontersen群は0.3点と有意に低かった(群間差:-24.8点、95%CI:-31.0~-18.6、p<0.001)。 さらに、Norfolk QoL-DNの総スコアのベースラインから66週までの補正後平均変化量は、プラセボ群の14.2点に比し、eplontersen群は-5.5点であり有意に良好だった(群間差:-19.7点、95%CI:-25.6~-13.8、p<0.001)。 有効性の副次エンドポイントのうち、35週目と66週目のneuropathy symptom and change(NSC)総スコア、65週目のSF-36 PCSスコア、65週目の栄養状態(修正BMI)は、いずれもeplontersen群で有意に優れた(すべてp<0.001)。65週目のpolyneuropathy disability(PND)スコアI(介助なしでの歩行)は、eplontersen群ではベースラインから変化がなかった。 試験薬投与中の有害事象(TEAE)のうち、重篤なTEAEはeplontersen群が21例(15%)、プラセボ群は12例(20%)で発生した。66週目までに試験薬の投与中止をもたらした有害事象は、eplontersen群が6例(4%)、プラセボ群は2例(3%)で発現した。 eplontersen群の2例がATTAvアミロイドーシスの既知の続発症(心不整脈、脳内出血)で死亡したが、試験薬関連死は認めなかった。とくに注意すべき有害事象の1つである血小板減少症は、eplontersen群の3例(2%)、プラセボ群の1例(2%)でみられた。 著者は、「eplontersen群と過去の臨床試験のプラセボ群のアウトカムの結果の差は、ベースラインの種々の患者背景因子とは関連がなかった」とし、「現在進行中の非盲検延長試験では、eplontersenの長期的な安全性と忍容性の評価が行われている」と付言している。

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血圧管理ケアバンドル、脳内出血の機能的アウトカムを改善/Lancet

 脳内出血の症状発現から数時間以内に、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムとの組み合わせで早期に集中的に降圧治療を行うケアバンドルは、通常ケアと比較して、機能的アウトカムを有意に改善し、重篤な有害事象が少ないことが、中国・四川大学のLu Ma氏らが実施した「INTERACT3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年5月25日号で報告された。10ヵ国121病院のstepped wedgeクラスター無作為化試験 INTERACT3試験は、早期に集中的に血圧を下げるプロトコールと、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムを組み込んだ目標指向型ケアバンドルの有効性の評価を目的に、10ヵ国(低・中所得国9、高所得国1)の121病院で実施された実践的なエンドポイント盲検stepped wedgeクラスター無作為化試験であり、2017年5月27日~2021年7月8日に参加施設の無作為化が、2017年12月12日~2021年12月31日に患者のスクリーニングが行われた(英国保健省などの助成を受けた)。 参加施設は、ケアバンドルと通常ケアを行う時期が異なる3つのシークエンスに無作為に割り付けられた。各シークエンスは、4つの治療期間から成り、3シークエンスとも1期目は通常ケアが行われ、ケアバンドルはシークエンス1が2~4期目、シークエンス2は3~4期目、シークエンス3は4期目に行われた。 ケアバンドルのプロトコールには、収縮期血圧の早期厳格な降圧(目標値:治療開始から1時間以内に140mmHg未満)、厳格な血糖コントロール(目標値:糖尿病がない場合6.1~7.8mmol/L、糖尿病がある場合7.8~10.0mmol/L)、解熱治療(目標体温:治療開始から1時間以内に37.5°C以下)、ワルファリンによる抗凝固療法(目標値:国際標準化比<1.5)の開始から1時間以内の迅速解除が含まれ、これらの値が異常な場合に実施された。 主要アウトカムは、マスクされた研究者による6ヵ月後の修正Rankin尺度(mRS、0[症状なし]~6[死亡]点)で評価した機能回復であった。6ヵ月以内の死亡、7日以内の退院も良好 7,036例(平均年齢62.0[SD 12.6]歳、女性36.0%、中国人90.3%)が登録され、ケアバンドル群に3,221例、通常ケア群に3,815例が割り付けられ、主要アウトカムのデータはそれぞれ2,892例と3,363例で得られた。 6ヵ月後のmRSスコアは、通常ケア群に比べケアバンドル群で良好で、不良な機能的アウトカムの可能性が有意に低かった(共通オッズ比[OR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.76~0.97、p=0.015)。 ケアバンドル群におけるmRSスコアの良好な変化は、国や患者(年齢、性別など)による追加補正を含む感度分析でも、全般に一致して認められた(共通OR:0.84、95%CI:0.73~0.97、p=0.017)。 6ヵ月の時点での死亡(p=0.015)および治療開始から7日以内の退院(p=0.034)も、ケアバンドル群で優れ、健康関連QOL(EQ-5D-3Lで評価)ドメインのうち痛み/不快感(p=0.0016)と不安/ふさぎ込み(p=0.046)が、ケアバンドル群で良好だった。 また、通常ケア群に比べケアバンドル群の患者は、重篤な有害事象の頻度が低かった(16.0% vs.20.1%、p=0.0098)。 著者は、「このアプローチは、収縮期血圧140mmHg未満を目標とする早期集中血圧管理を基本戦略とする簡便な目標指向型のケアバンドルプロトコールであり、急性期脳内出血患者の機能的アウトカムを安全かつ効果的に改善した」とまとめ、「この重篤な疾患に対する積極的な管理の一環として、医療施設は本プロトコールを取り入れるべきと考えられる」としている。

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AD治療薬lecanemab、ARIAやQOL解析結果をAD/PD学会で発表/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは3月31日付のプレスリリースにて、同社の早期アルツハイマー病(AD)治療薬の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabについて、第III相試験「Clarity AD試験」における最新の解析結果を、スウェーデンのイェーテボリで3月28日~4月1日に開催の第17回アルツハイマー・パーキンソン病学会(AD/PD2023)にて発表したことを報告した。lecanemab投与群では、プラセボ群よりアミロイド関連画像異常(ARIA)の発現率が増加したが、抗血小板薬や抗凝固薬の使用によるARIAの発現頻度は上昇せず、ARIA-H単独の発現パターンはプラセボ群と同様だったことが明らかとなり、QOLの結果からは、lecanemab治療が被験者と介護者に有意義なベネフィットをもたらすことが示された。 早期AD患者1,795例(lecanemab群:898例[10mg/kg体重、2週ごとに静脈内投与]、プラセボ群:897例)を対象とした第III相無作為化比較試験「Clarity AD試験」において、主要評価項目ならびにすべての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成しており、その結果はNEJM誌2023年1月5日号に掲載されている1)。 AD/PD2023では、本試験における抗血小板薬/抗凝固薬使用とARIA(ARIA-E:浮腫/浸出、およびARIA-H:脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着、直径1cmを超える脳出血)の発現、ARIA-H単独の発現、介護者負担、健康関連QOLに関する最新の結果が発表された。 主な結果は以下のとおり。ARIAが発現した被験者における抗血小板薬/抗凝固薬使用の評価・lecanemab群は、プラセボ群よりARIAの発現率が増加した。・プラセボ群におけるARIA発現率は、抗血小板薬使用の場合9.7%、抗凝固薬(抗凝固薬のみまたは抗血栓薬との併用)使用の場合10.8%、未使用8.9%だった。抗血小板薬や抗凝固薬を使用した場合は、未使用と比較してわずかに高くなった。・lecanemab群におけるARIA発現率は、抗血小板薬使用の場合17.9%、抗凝固薬使用の場合13.3%、未使用21.8%だった。抗血小板薬や抗凝固薬を使用した場合は、未使用と比較して若干低くなった。・ARIA-Eの発現率は以下のとおり。 -抗血小板薬を使用した場合は、lecanemab群10.4%、プラセボ群0.84%。 -抗凝固薬を使用した場合は、lecanemab群4.8%、プラセボ群2.7%。 -未使用の場合は、lecanemab群13.1%、プラセボ群1.5%。・lecanemab群で直径1cmを超える脳内出血が観察された症例が報告された。ARIA-H単独(ARIA-Eを伴わないARIA-H)発現事象・ARIA-H(ARIA-Eを伴うARIA-H、およびARIA-H単独)の発現率は、lecanemab群17.3%、プラセボ群9.0%だった。・ARIA-H単独の発現率は、lecanemab群8.9%、プラセボ投与群7.8%で同程度だった。・ARIA-Eを伴うARIA-Hの多くは、ARIA-E発現と同時期である治療初期に発現するが、ARIA-H単独は、lecanemab群、プラセボ群ともに、18ヵ月の治療期間中に分散して発現した。・アポリポタンパク質Eε4(ApoEε4)とARIA-H単独の発現の関係性については、プラセボ群では非保有者3.8%、ヘテロ接合体保有者7.3%、ホモ接合体保有者18.0%、lecanemab群では非保有者8.3%、ヘテロ接合体保有者8.4%、ホモ接合体保有者12.1%だったが、ApoEε4ステータスはARIA-Hの発現時期には影響しなかった。・lecanemab群のARIA-H単独の発現パターンは、プラセボ投与群と同様だった。健康関連QOLに関する解析結果・被験者の健康関連QOL(HRQoL)として、ベースライン時と投与開始後6ヵ月ごとに、European Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D-5L)とQuality of Life in AD(QOL-AD)の指標により測定した。QOL-ADは介護者による評価も行った。6ヵ月ごとに介護者に対してZarit Burden Interviewを実施した。・lecanemab投与18ヵ月時点での被験者のEQ-5D-5LとQOL-ADのベースラインからの調整後平均変化量は、プラセボ群と比較して、それぞれ49%、56%の悪化抑制を示した。・介護者のZarit Burden InterviewとQOL-ADは、lecanemab投与18ヵ月時点でそれぞれ38%、23%の悪化抑制を示した。・これらの評価結果はApoEε4遺伝子型によらず一貫していた。

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lecanemab、FDAがアルツハイマー病治療薬として迅速承認/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは2023年1月7日付のプレスリリースで、可溶性(プロトフィブリル)および不溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体lecanemabについて、米国食品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病の治療薬として、迅速承認したことを発表した。 本承認は、lecanemabがADの特徴である脳内に蓄積したAβプラークの減少効果を示した臨床第II相試験(201試験)の結果に基づくもので、エーザイでは最近発表した大規模なグローバル臨床第III相検証試験であるClarity AD試験のデータを用い、フル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請(sBLA)をFDAに対して速やかに行うとしている。lecanemabの米国における適応症<適応症> lecanemabの適応症はアルツハイマー病(AD)の治療であり、lecanemabによる治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の患者において開始すること。これらの病期よりも早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性に関するデータはない。本適応症は、lecanemabの治療により観察されたAβプラークの減少に基づき、迅速承認の下で承認されており、臨床的有用性を確認するための検証試験データが本迅速承認の要件となっている。<用法・用量(対象者・投与方法・ARIAのモニタリング)> 治療開始前にAβ病理が確認された患者に対して、10mg/kgを推奨用量として2週間に1回点滴静注。lecanemabによる治療の最初の14週間は、アミロイド関連画像異常(ARIA)についてとくに注意深く患者の様子を観察することが推奨される。投与開始前に、ベースライン時(直近1年以内)の脳MRI、および投与後のMRIによる定期的なモニタリング(5回目、7回目、14回目の投与前)が行われる。<副作用> lecanemabの安全性は、201試験においてlecanemabを少なくとも1回投与された763例で評価されている。lecanemab(10mg/kg)を隔週投与された被験者(161例)の少なくとも5%に報告され、プラセボ投与被験者(245例)より少なくとも2%高い発生率であった。主な副作用は、infusion reaction(lecanemab群:20%、プラセボ群:3%)、頭痛(14%、10%)、ARIA浮腫/滲出液貯留(ARIA-E;10%、1%)、咳(9%、5%)および下痢(8%、5%)だった。lecanemabの投与中止に至った最も多い副作用はinfusion reactionであり、lecanemab群は2%(161例中4例)に対して、プラセボ群は1%(245例中2例)だった。lecanemabの重要な安全情報<重要な安全情報(警告・注意事項)>アミロイド関連画像異常(ARIA) lecanemabはARIAとして、MRIで観察されるARIA-E、あるいはARIA脳表ヘモジデリン沈着(ARIA-H)として微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症を引き起こす可能性がある。ARIAは通常無症候であるが、まれに痙攣、てんかん重積状態など、生命を脅かす重篤な事象が発生することがある。ARIAに関連する症状として、頭痛、錯乱、視覚障害、めまい、吐き気、歩行障害などが報告されている。また、局所的な神経障害が起こることもある。ARIAに関連する症状は、通常、時間の経過とともに消失する。[ARIAのモニタリングと投与管理のガイドライン]・lecanemabによる治療を開始する前に、直近1年以内のMRIを入手すること。5回目、7回目、14回目の投与前にMRIを撮影すること。・ARIA-EおよびARIA-Hを発現した患者における投与の推奨は、臨床症状および画像判定による重症度によって異なる。ARIAの重症度に応じて、lecanemabの投与を継続するか、一時的に中断するか、あるいは中止するかは、臨床的に判断すること。・ARIAの大半はlecanemabによる治療開始後14週間以内にみられることから、この期間はとくに注意深く患者の状態を観察することが推奨される。ARIAを示唆する症状がみられた場合は臨床評価を行い、必要に応じてMRIを実施すること。MRIでARIAが観察された場合、投与を継続する前に慎重な臨床評価を行うこと。・症候性ARIA-E、もしくは無症候でも画像判定によって重度のARIA-Eとされた場合に投与を継続した経験はない。無症候でも画像判定によって軽度から中等度のARIA-Eとされた場合に投与を継続した症例に関する経験は限られている。ARIA-Eの再発症例への投与データは限られている。[ARIAの発現率]・201試験において、lecanemab群の3%(5/161例)に症候性ARIAが発現した。ARIAに伴う臨床症状は、観察期間中に80%の患者で消失した。・無症候性ARIAを含めると、ARIAの発現率はlecanemab群の12%(20/161例)、プラセボ群の5%(13/245例)であった。ARIA-Eは、lecanemab群の10%(16/161例)、プラセボ群の1%(2/245)で観察された。ARIA-Hは、lecanemab群の6%(10/161例)、プラセボ群の5%(12/245例)で観察された。プラセボと比較して、lecanemab投与によるARIA-Hのみの発現率の増加は認められなかった。・直径1cmを超える脳内出血は、lecanemab群の1例で報告されたが、プラセボ群では報告されなかった。他の試験では、lecanemabの投与を受けた患者において、致死的事象を含む脳内出血の発生が報告された。[アポリポタンパク質Eε4(ApoEε4)保有ステータスとARIAのリスク]・201試験において、lecanemab群の6%(10/161例)がApoEε4ホモ接合体保有者、24%(39/161例)がヘテロ接合体保有者、70%(112/161例)が非保有者であった。・lecanemab群において、ApoEε4ホモ接合体保有者はヘテロ接合体保有者および非保有者よりも高いARIAの発現率を示した。lecanemabを投与された患者で症候性ARIAを発症した5例のうち4例はApoEε4ホモ接合体保有者であり、うち2例は重度の症状が認められた。lecanemab投与を受けた被験者で、ApoEε4ホモ接合体保有者ではApoEε4ヘテロ接合体保有者や非保有者と比較して症候性ARIAおよびARIAの発現率が高いことが、他の試験でも報告されている。・ARIAの管理に関する推奨事項は、ApoEε4保有者と非保有者で異ならない。・lecanemabによる治療開始を決定する際に、ARIA発症リスクを知らせるためにApoEε4ステータスの検査が考慮される。[画像による所見]・画像による判定では、ARIA-Eの多くは治療初期(最初の7回投与以内)に発現したが、ARIAはいつでも発現し、複数回発現する可能性がある。lecanemab投与によるARIA-Eの画像判定による重症度は、軽度4%(7/161例)、中等度4%(7/161例)、重度1%(2/161例)であった。ARIA-Eは画像による検出後、12週までに62%、21週までに81%、全体で94%の患者で消失した。lecanemab投与によるARIA-H微小出血の画像判定の重症度は、軽度4%(7/161例)、重度1%(2/161例)であった。ARIA-Hの患者10例のうち1例は軽度の脳表ヘモジデリン沈着症を有していた。[抗血栓薬との併用と脳内出血の他の危険因子について]・201試験では、ベースラインで抗凝固薬を使用していた被験者を除外した。アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬の使用は許可された。また、臨床試験中に併発事象の処置のため4週間以内の抗凝固薬を使用する場合は、lecanemabの投与を一時的に中断した。・抗血栓薬を使用した被験者はほとんどがアスピリンであり、他の抗血小板薬や抗凝固薬の使用経験は限られており、これらの薬剤の併用時におけるARIAや脳内出血のリスクに関しては結論づけられていない。lecanemab投与中に直径1cmを超える脳内出血が観察された症例が報告されており、lecanemab投与中の抗血栓薬または血栓溶解薬(組織プラスミノーゲンアクチベーターなど)の投与には注意が必要である。・さらに、脳内出血の危険因子として、201試験においては以下の基準により被験者登録を除外している。直径1cmを超える脳出血の既往、4個を超える微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症、血管性浮腫、脳挫傷、動脈瘤、血管奇形、感染病変、多発性ラクナ梗塞または大血管支配領域の脳卒中、重度の小血管疾患または白質疾患。これらの危険因子を持つ患者へのlecanemabの使用を検討する際には注意が必要である。infusion reaction・lecanemabのinfusion reactionは、lecanemab群で20%(32/161例)、プラセボ群で3%(8/245例)に認められ、lecanemab群の多く(88%、28/32例)は最初の投与で発生した。重症度は軽度(56%)または中等度(44%)だった。lecanemab投与患者の2%(4/161例)において、infusion reactionにより投与が中止された。infusion reactionの症状には、発熱、インフルエンザ様症状(悪寒、全身の痛み、ふるえ、関節痛)、吐き気、嘔吐、低血圧、高血圧、酸素欠乏症がある。・初回投与後、一過性のリンパ球数の減少(0.9×109/L未満)がプラセボ群の2%に対して、lecanemab群の38%に認められ、一過性の好中球数の増加(7.9×109/Lを超える)はプラセボ群の1%に対して、lecanemab群の22%で認められた。・infusion reactionが発現した場合には、注入速度を下げ、あるいは注入を中止し、適切な処置を開始する。また次回以降の投与前に、抗ヒスタミン薬、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬、副腎皮質ステロイドによる予防的投与が検討される場合がある。

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脳底動脈閉塞の予後改善、発症12時間以内の血栓除去術vs.薬物療法/NEJM

 中国人の脳底動脈閉塞患者において、脳梗塞発症後12時間以内の静脈内血栓溶解療法を含む血管内血栓除去術は、静脈内血栓溶解療法を含む最善の内科的治療と比較して90日時点の機能予後を改善したが、手技に関連する合併症および脳内出血と関連することが、中国科学技術大学のChunrong Tao氏らが中国の36施設で実施した医師主導の評価者盲検無作為化比較試験の結果、示された。脳底動脈閉塞による脳梗塞に対する血管内血栓除去術の有効性とリスクを検討した臨床試験のデータは限られていた。NEJM誌2022年10月13日号掲載の報告。発症後12時間以内の症例で、90日後のmRSスコア0~3達成を比較 研究グループは、18歳以上で発症後推定12時間以内の脳底動脈閉塞による中等症~重症急性期虚血性脳卒中患者(NIHSSスコアが10以上[スコア範囲:0~42、スコアが高いほど神経学的重症度が高い])を、内科的治療+血管内血栓除去術を行う血管内治療群と内科的治療のみを行う対照群に2対1の割合で無作為に割り付けた。 内科的治療は、ガイドラインに従って静脈内血栓溶解療法、抗血小板薬、抗凝固療法、またはこれらの併用療法とした。血管内治療は、ステント型血栓回収デバイス、血栓吸引、バルーン血管形成術、ステント留置、静脈内血栓溶解療法(アルテプラーゼまたはウロキナーゼ)、またはこれらの組み合わせが用いられ、治療チームの裁量に任された。 主要評価項目は、90日時点の修正Rankinスケールスコア(mRS)(範囲:0~6、0は障害なし、6は死亡)が0~3の良好な機能的アウトカム。副次評価項目は、90日時点のmRSが0~2の優れた機能的アウトカム、mRSスコアの分布、QOLなどとした。また、安全性の評価項目は、24~72時間後の症候性頭蓋内出血、90日死亡率、手技に関連する合併症などであった。良好な機能的アウトカム達成、血管内治療群46%、対照群23% 2021年2月21日~2022年1月3日の期間に507例がスクリーニングを受け、このうち適格基準を満たし同意が得られた340例(intention-to-treat集団)が、血管内治療群(226例)と対照群(114例)に割り付けられた。静脈内血栓溶解療法は血管内治療群で31%、対照群で34%に実施された。 90日後の良好な機能的アウトカムは、血管内治療群104例(46%)、対照群26例(23%)で認められた(補正後率比:2.06、95%信頼区間[CI]:1.46~2.91、p<0.001)。症候性頭蓋内出血は、血管内治療群では12例(5%)に発生したが、対照群では発生しなかった。 副次評価項目については、概して主要評価項目と同様の結果であった。 安全性に関して、90日死亡率は、血管内治療群で37%、対照群で55%であった(補正後リスク比:0.66、95%CI:0.52~0.82)。手技に関連する合併症は、血管内治療群の14%に発生し、動脈穿孔による死亡1例が報告された。

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高齢AF患者、リバーロキサバンvs.アピキサバン/JAMA

 65歳以上の心房細動患者に対し、リバーロキサバンはアピキサバンに比べて、主要な虚血性または出血性イベントリスクを有意に増大することが、米国・ヴァンダービルト大学のWayne A. Ray氏らが米国のメディケア加入者約58万例について行った後ろ向きコホート試験の結果、示された。リバーロキサバンとアピキサバンは、心房細動患者の虚血性脳卒中予防のために最も頻繁に処方される経口抗凝固薬だが、有効性の比較については不明であった。JAMA誌2021年12月21日号掲載の報告。脳卒中、全身性塞栓症、脳内出血、その他頭蓋内出血などの発生を両群で比較 研究グループは、65歳以上のメディケア加入者のコンピュータ登録および医療費請求の情報を用いて、後ろ向きコホート試験を行った。2013年1月~2018年11月に、心房細動でリバーロキサバンまたはアピキサバンの治療を開始した総計58万1,451例を、2018年11月30日まで最長4年間追跡した。 主要アウトカムは、主要な虚血性イベント(脳卒中、全身性塞栓症)と出血性イベント(脳内出血、その他頭蓋内出血、致死的頭蓋外出血)の複合とした。副次アウトカムは、非致死的頭蓋外出血と総死亡(追跡期間中の致死的虚血性/出血性イベントまたはその他の原因による死亡)だった。 発生率、ハザード比(HR)および率差(RD)を、ベースラインの併存疾患について傾向スコアの逆数を重み付けした解析法(IPTW)で補正して算出し比較検討した。低用量服用者でも、リバーロキサバン群で主要アウトカム発生1.3倍 被験者の平均年齢は77.0歳、女性は50.2%、リバーロキサバンまたはアピキサバンの低用量服用者は23.1%で、延べ追跡期間は47万4,605人年だった(追跡期間中央値:174日[IQR:62~397])。 補正後主要アウトカム発生率は、リバーロキサバン群の16.1件/1,000人年に対し、アピキサバン群は13.4件/1,000人年と低率だった(RD:2.7[95%信頼区間[CI]:1.9~3.5]、HR:1.18[1.12~1.24])。 また、リバーロキサバン群はアピキサバン群よりも、主要虚血性イベント(8.6 vs.7.6件/1,000人年、RD:1.1[95%CI:0.5~1.7]、HR:1.12[95%CI:1.04~1.20])、主要出血性イベント(7.5 vs.5.9件/1,000人年、RD:1.6[1.1~2.1]、HR:1.26[1.16~1.36])の発生率がいずれも高率だった。致死的頭蓋外出血は1.4 vs.1.0件/1,000人年(RD:0.4[0.2~0.7]、HR:1.41[1.18~1.70])だった。 非致死的頭蓋外出血(39.7 vs.18.5/1,000人年、RD:21.1[95%CI:20.0~22.3]、HR:2.07[95%CI:1.99~2.15])、致死的虚血性/出血性イベント(4.5 vs.3.3/1,000人年、RD:1.2[0.8~1.6]、HR:1.34[1.21~1.48])、総死亡(44.2 vs.41.0/1,000人年、RD:3.1[1.8~4.5]、HR:1.06[1.02~1.09])のいずれの発生率も、リバーロキサバン群がアピキサバン群に比べ高率だった。 なお、低用量服用者(27.4 vs.21.0/1,000人年、RD:6.4[95%CI:4.1~8.7]、HR:1.28[1.16~1.40])と標準用量服用者(13.2 vs.11.4/1,000人年、RD:1.8[1.0~2.6]、HR:1.13[1.06~1.21])を別にみた場合も、主要アウトカム発生はリバーロキサバン群がアピキサバン群に比べ高率だった。

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J&J新型コロナワクチンによる脳静脈洞血栓症例、初期症状に頭痛/JAMA

 米国で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「Ad26.COV2.S COVID-19」(Janssen/Johnson & Johnson製)を接種後、血小板減少症を伴う脳静脈洞血栓症(CVST)という深刻なイベントを呈した当初の12例について、その臨床経過や検査結果、臨床アウトカムが報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のIsaac See氏らが、ワクチン有害事象報告制度(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)の報告書などを基にケースシリーズを行い明らかにしたもので、12例は年齢18~60歳未満で、全員が白人女性、接種から発症までの期間は6~15日で、11例の初期症状が頭痛だった。調査時点で、3例が死亡している。Ad26.COV2.Sワクチンは、2021年2月、米国食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を得て、4月12日までに約700万回が接種された。そのうち6例で、血小板減少症を伴うCVSTが確認されたことを受け、4月13日に接種が一時的に中止されている。JAMA誌オンライン版2021年4月30日号掲載の報告。VAERS報告書や診療録、医師への聞き取りを基に調査 血小板減少症を伴うCVSTの発生は、欧州において、チンパンジーのアデノウイルスベクターを用いたChAdOx1 nCoV-19ワクチン(Oxford/AstraZeneca製)接種後の、まれで重篤な症状として報告されており、そのメカニズムは自己免疫性ヘパリン起因性血小板減少症と類するものが提唱されている。 研究グループは、Ad26.COV2.Sワクチンを接種後、血小板減少症を伴うCVSTを呈し、2021年3月2日~4月21日にVAERSに報告のあった12例について、その臨床経過や画像・臨床検査結果、アウトカムについて、VAERS報告書や診療録を入手し、また医師への聞き取りを行い調査した。12例中7例に1つ以上のCVSTリスク因子あり 12例は米国内11州から報告され、年齢は18~60歳未満で、全員が白人女性だった。うち7例に、肥満(6例)、甲状腺機能低下症(1例)、経口避妊薬服用(1例)といった1つ以上のCVSTリスク因子があった。全例で、ヘパリン投与歴はなかった。 Ad26.COV2.Sワクチン接種から症状が現れるまでの期間は6~15日で、11例の初発症状が頭痛であった。残る1例は当初は腰痛を、その後に頭痛症状を認めた。 12例中7例に脳内出血が、また8例に非CVST血栓症が認められた。 CVSTの診断後、6例が初回ヘパリン治療を受けた。血小板最小値は9×103/μL~127×1033/μLだった。また、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)スクリーニングを受けた11例全例で、ヘパリン血小板第4因子HIT抗体が陽性だった。 12例全例が入院し、うち10例は集中治療室(ICU)で治療を受け、4月21日時点で3例が死亡、3例がICUで治療継続中、2例が非ICUで入院治療を継続、4例が退院した。 研究グループは、「このケースシリーズは、米国におけるAd26.COV2.Sワクチンの接種再開時の臨床ガイダンスに役立つと同時に、Ad26.COV2.Sワクチンと血小板減少症を伴うCVSTとの潜在的な関連性の調査に役立つだろう」と述べている。

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骨形成不全症〔Osteogenesis imperfecta〕

1 疾患概要■ 概念・定義骨形成不全症は先天的に骨が脆弱な疾患である。易骨折性や骨の変形といった症状が特徴的であり、そのほか青色強膜や歯牙形成不全、伝音性難聴、低身長などを認めることがある。遺伝性疾患であり、いずれも1型コラーゲンの異常による結合組織の症状である。骨形成不全症は、胎児期から骨の変形が著明で出生後に死亡する重症型と、出生後に易骨折性や低身長などで診断される軽症型の大きく2つに分かれるが、実際には症状は非常に多彩であり両者には連続性がある。■ 疫学有病率は最近の集団研究から約1万人に1人と言われている。ただし、最重症例の新生児早期死亡例から、歯牙の異常のみの軽症例、あるいは無症状の人まで多様に存在するので、真の発生頻度はわからないところがある。■ 病因結合組織の主要な成分である1型コラーゲン分子の異常によって発症する。90%以上が1型コラーゲンの遺伝子変異(COL1A1、 COL1A2)が原因であるが、近年それ以外の複数の遺伝異常が原因となっている骨形成不全症がみつかっている。■ 症状骨形成不全症は、症状やX線所見、自然歴などから4つの型に分類される(Sillence分類)。出生直後に死亡したり、重度の骨格変形を来す2型は、出生時にはすべての症状が明らかである。胎齢に比べて体重も身長も小さく、頭蓋骨は軟らかい。眼瞼強膜は濃い青色で、結合組織は非常に脆弱である。四肢は短く彎曲している。肋骨も多発骨折によりベル状に変形していて、呼吸不全を呈することが多い。これまでは罹患児の半数以上が出生当日に、80%が1週間以内に死亡し、1年を超えて生存する例は少ないと言われてきたが、近年の人工呼吸管理の進歩のより予後はすこしずつ改善している。2型の中で太い長管骨と細い肋骨を示す2B型は、症状のやや軽い3型と連続的なスペクトラムをもつ疾患である。2B~3型では、肋骨骨折の重症度によって生後数週間または数ヵ月で呼吸不全によって死亡となるが、この期間を生き残った児も骨の脆弱性と顕著な骨変形のため将来的にも車いすなどに頼らなければならない。徐々に骨変形が進むために成長は遅れ、成人身長が1m未満ということもめずらしくない。脳内出血といった合併症がない限り知的には正常である。1型および4型のほとんどは出生時に所見を認めず、成長にともなってさまざまな症状を呈するものである。青色強膜を認めるものを1型、認めないものを4型とするが、判定困難な例も多い。また、乳幼児期には明らかであっても、成長にともない軽減する例もあって、その有無の判定には慎重にならなければならない。1型および4型は正常な身長と易骨折性によって特徴付けられる。最初の骨折は出生後のおむつの交換で起ったり、あるいは乳児期に歩行転倒したときに起こるときもある。骨折は一般的に年に1〜数回の割合で起こり、思春期以降になると頻度が減少する。骨折は一般に変形なしで正常に治癒する。関節の過可動性を認め、変形性関節疾患を早期に発症することがある。難聴は小児期から発症し、成人の半数近くに認められる。中耳骨の骨折による拘縮および瘢痕化によって起こるとされ、基本的には伝音性難聴であるが、年齢とともに混合性難聴となっていく。■ 予後2型では一般に生命予後は良好ではなく、1歳までの間に多くがさまざまな原因で亡くなる。3型では重症度によるが、一部の患者(児)は成長して成人までいたるが、骨の短縮変形のために運動機能は不良である。また、重度の側弯症となると拘束性肺疾患による心不全が余命を短縮させる可能性がある。1型あるいは4型では平均寿命は正常と変わらない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)骨形成不全症の診断は骨X線所見が基本である。出生時から症状を呈する2型、3型では、長管骨、肋骨とも多数の骨折のため著しい変形を来しており、胸骨もベル型になっている。頭蓋冠の骨化はほとんど認めない。1型、4型では長管骨はovermodelingのために細く軽く彎曲している。頭蓋骨に特徴的なWormian boneを認めることがある。ただし、1型、4型の表現型は非常に幅広く、ほとんど症状がないこともめずらしくない。小児慢性特定疾患や指定難病の申請のための診断基準が定められている。表の項目の中で、除外項目を除いた上で、Aの症状が認められれば診断される。Bのうちのいくつかの症状を伴っていることが多く、Cのいずれかを認めることが診断の参考になる。診断に苦慮する症例では遺伝子診断を行う。表1 骨形成不全症の診断基準(指定難病)画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)内科的治療と外科的治療に大きく分けられる。■ 内科的治療骨強度を増加させる治療としては骨吸収の抑制と骨形成の促進がある。骨吸収抑制作用をもつ代表的な薬剤としては、ビスホスホネート製剤であるパミドロン酸がある。骨折回数の減少、骨密度の増加、骨痛の改善などが認められている。また、椎体の圧迫骨折を減らし、側弯症の進行を遅くさせるが、発熱や低カルシウム血症などの副作用がある。現在、わが国で小児の骨形成不全症に対して保険適応があるのはパミドロン酸のみである。そのほかの治療薬としては、骨吸収抑制の作用がある抗RANKL抗体(denosumab)、骨形成促進作用があるテリパラチド(TPTD)、抗sclerostin抗体(romosozumab、 sestrusumab)などがあるが、ランダム化比較試験(RCT)によって効果が示されておらず、いまだ研究段階といえる。■ 外科的治療骨折したときの一般的な観血的骨整復術のほか、四肢変形に対する骨切り術、長管骨の骨折変形予防を目的とした髄内釘挿入などが行われる。長管骨の易骨折性・変形に対する手術治療は、繰り返す骨折、歩行や装具装着の妨げになる変形がある場合に適応となり、矯正骨切り・髄内釘治療が主に行われている。骨成熟までの期間が長い小児の場合には、伸張性の髄内釘を用いることで髄内釘を入れ替える間隔を長くすることができる4 今後の展望先に述べたように骨形成不全症の原因の90%は1型コラーゲン遺伝子(COL1A1、 COL1A2)の異常であるが、残り10%の原因として20種類を超える遺伝子が報告されているのが最近のトピックスである。1型コラーゲン遺伝子異常による骨形成不全症は常染色体優性であるが、10%のさまざまな遺伝子異常による場合は常染色体劣性の遺伝形式をとる。これらの遺伝子異常による骨形成不全症は、ほとんどが2B型の表現型をとることが知られている。産科的には同胞再発に注意する必要がある。骨形成不全症の病態解析や新薬の開発などは現在活発に行われており、今後の発展が期待される。5 主たる診療科産科、小児科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター 骨形成不全症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 骨形成不全症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報NPO法人骨形成不全症協会ホームページ(患者とその家族および支援者の会)骨形成不全友の会(患者とその家族および支援者の会)1)市橋洋輔ほか.小児科臨床. 2020;73:660-663.2)大園恵一. 新薬と臨床. 2018;67:75-80.3)田中弘之ほか. 日本小児科学会雑誌. 2006;110:1468-1471.公開履歴初回2021年5月6日

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急性脳梗塞、血管内治療単独vs.静脈内血栓溶解療法併用/JAMA

 発症から4.5時間以内の前方近位・頭蓋内循環閉塞性脳卒中患者において、血管内血栓除去術のみの単独療法は、静脈内血栓溶解療法+血管内血栓除去術の併用療法と比べて90日時点の機能的自立アウトカムについて、事前規定の統計学的閾値を満たし非劣性であることが、中国・人民解放軍第三軍大学のWenjie Zi氏らが行った多施設共同無作為化非劣性試験「DEVT試験」の結果、示された。ただし著者は、「今回示された所見は、選択的な非劣性閾値の臨床的受容性を鑑みて解釈する必要がある」としている。JAMA誌2021年1月19日号掲載の報告。機能的自立はmRSスコア0~2で定義 研究グループは2018年5月20日~2020年5月2日にかけて、中国33ヵ所の脳卒中センターで、18歳以上の発症後4.5時間以内の前方近位・頭蓋内循環閉塞性脳卒中で、静脈内血栓溶解療法が適応だった234例を対象に試験を開始した。追跡は90日間行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方には血管内血栓除去療法を(単独群、116例)、もう一方には静脈内血栓溶解療法と血管内血栓除去療法を行った(併用群、118例)。 主要エンドポイントは、90日時点における機能的自立(修正Rankinスケール[mRS]スコア0[症状なし]~6[死亡]のうち0~2と定義)を達成した患者の割合とした。非劣性マージンは-10%だった。 安全性に関するアウトカムは、48時間以内の症候性脳内出血と90日死亡率とした。90日機能的自立達成率、単独群54%、併用群47% 計画では被験者数970例を予定していたが、中間解析で単独群の有効性が確認されたため、234例が参加した時点で早期に終了した。被験者234例の平均年齢は68歳、女性は102例(43.6%)だった。 90日時点で、単独群54.3%(63例)、併用群46.6%(55例)が機能的自立を達成した(群間差:7.7%、片側97.5%信頼区間[CI]:-5.1%~∞、非劣性のp=0.003)。 48時間以内の症候性脳内出血の発生率は単独群6.1%と併用群6.8%(群間差:-0.8%、95%CI:-7.1~5.6)、90日死亡率はそれぞれ17.2%と17.8%(-0.5%、-10.3~9.2)で、いずれも有意差はみられなかった。

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週5日以上の入浴で脳心血管リスク減少~日本人3万人の前向き調査

 入浴は、血行動態機能を改善することから心血管疾患予防効果があると考えられているが、心血管疾患リスクへの長期的効果を調べた前向き研究はなかった。今回、大阪府立公衆衛生研究所の鵜飼 友彦氏らが中年期の日本人約3万人を追跡調査し、入浴頻度が心血管疾患リスクと逆相関することを報告した。Heart誌オンライン版2020年3月24日号に掲載。 本研究の対象は、心血管疾患またはがんの病歴のない40〜59歳の3万76人で、1990年から2009年まで追跡調査した。参加者を浴槽での入浴の頻度で、0〜2回/週、3〜4回/週、ほぼ毎日の3つに分類した。従来の心血管疾患リスク因子と食事因子を調整後、Cox比例ハザードモデルを用いて心血管疾患発症のハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間53万8,373人年の間に、冠動脈疾患328例(心筋梗塞275例、心臓突然死53例)と脳卒中1,769例(脳梗塞991例、脳内出血510例、くも膜下出血255例、未分類の脳卒中13例)の計2,097例の心血管疾患を記録した。・ほぼ毎日または毎日の0〜2回/週に対する多変量HR(95%CI)は、心血管疾患では0.72(0.62〜0.84、傾向のp<0.001)、冠動脈疾患では0.65(0.45~0.94、傾向のp=0.065)、脳卒中全体では0.74(0.62〜0.87、傾向のp=0.005)、脳梗塞では0.77(0.62~0.97、傾向のp=0.467)、脳内出血では0.54(0.40〜0.73、傾向のp<0.001)であった。・心臓突然死、くも膜下出血のリスクとの間に関連はみられなかった。

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