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市中肺炎の入院例における年齢・病原体を調査/NEJM

 米国疾病管理予防センター(CDC)のSeema Jain氏らは、市中肺炎による入院について詳細な調査を行った。その結果、高齢者で入院率が高いこと、最新の検査法を駆使したが大半の患者で病原体を検出できなかったこと、一方で呼吸器系のウイルス感染が細菌感染よりも検出頻度が高かったことなどを報告した。米国では、市中肺炎が成人の感染症による入院および死亡の要因であることは知られていたが、詳細は不明であった。NEJM誌オンライン版2015年7月14日号掲載の報告。市中肺炎による入院患者の病原体を調査 研究グループは、シカゴ、ナッシュビルの5病院にて、18歳以上の市中肺炎による入院について調べるアクティブ住民ベースのサーベイランスを行った。直近の入院や重度免疫抑制状態にある患者は除外した。 血液、尿、呼吸器検体を系統的に集めて培養検査、血清学的検査、抗原検出、遺伝子検査を行い、また試験担当の放射線科医が個別に胸部X線写真をレビューした。 そのうえで、年齢と病原体別に市中肺炎入院の住民ベース発生率を算出した。病原体が検出されたのは38% 2010年1月~2012年6月の間に、サーベイ適格成人としてスクリーニングを行った3,634例のうち2,488例(68%)を登録した。 そのうちX線検査で肺炎の所見が認められた患者は2,320例(93%)で、患者の年齢中央値は57歳(四分位範囲:46~71)であった。 集中治療を要した患者は498例(21%)、死亡は52例(2%)であった。 病原体は、肺炎のX線所見と細菌およびウイルス両検査について検体が入手できた2,259例の患者において、853個(38%)が検出された。530例(23%)で1つ以上のウイルスが、247例(11%)で細菌が、また59例(3%)で細菌とウイルスの病原体が、そして17例(1%)で真菌類またはマイコバクテリウム属の細菌がそれぞれ検出された。 最も検出頻度が高かった病原体は、ヒトライノウイルス(患者の9%で検出)、インフルエンザウイルス(6%)、肺炎連鎖球菌(5%)であった。 肺炎の年間罹患率は、成人1万人当たり24.8例(95%信頼区間:23.5~26.1)であり、年齢別にみると65~79歳(成人1万人当たり63.0例)、80歳以上(同164.3例)で高率であった。病原体別にみた罹患率は、年齢とともに増大が認められた。

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【解説】Dr.平島のフィジカル教育回診 第1回「入院直後の肺炎球菌性肺炎。これからの病態評価」

症例解説、その前にフィジカルの基本について最初に、基本編としてフィジカルのレクチャーを中心にした平島 修 氏の解説をご覧ください。症例の詳しい解説は、その下の動画になりますが、合わせてご覧になると効果的です。本症例の解説 この患者さんに当てはめてみよう典型的な肺炎球菌性肺炎の患者さんのフォローに関して、いかがだったでしょうか。 選択肢いずれの所見も参考にできれば、参考にした方が良いものですが、フィジカル教育回診の視点で参考にすべき所見は、次の通りとなります。出題者、平島 修 氏の熱い、わかりやすい解説をご覧ください。愛され指導医・Dr.志水が語る「フィジカルの面白さ」設問1入院翌日に、参考にすべき所見は何でしょうか?(参考にすべきものを選択ください)解答C. 呼吸音の変化D. 喀痰グラム染色の変化※解答選択肢は、平島 修 氏の個人的見解にて選ばれたものです。

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侮れない侵襲性髄膜炎菌感染症にワクチン普及願う

 サノフィ株式会社は2015年7月3日、侵襲性髄膜炎菌感染症(Invasive Meningococcal Disease、以下IMD)を予防する4価髄膜炎菌ワクチン(ジフテリアトキソイド結合体)(商品名:メナクトラ筋注)のプレスセミナーを開催。川崎医科大学小児科学主任教授 尾内 一信氏と、同大学小児科学教授 中野 貴司氏がIMDの疾患概要や予防ワクチンの必要性について講演した。  細菌性髄膜炎の起因菌にはHib(インフルエンザ菌b型)、肺炎球菌などがあるが、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)もその1つである。髄膜炎菌は髄膜炎以外にも菌血症、敗血症などを引き起こし、それらをIMDと呼ぶ。IMDの初期症状は風邪症状に類似しており、早期診断が難しい。だが、急速に進行し発症から24~48時間以内に患者の5~10%が死に至り、生存しても11~19%に難聴、神経障害、四肢切断など重篤な後遺症が残ると報告されている。また、髄膜炎菌は感染力が強く、飛沫感染で伝播するため集団感染を起こしやすい。そのため、各国の大学・高校、さらにスポーツイベントなどでの集団感染が多数報告されている。このような状況から、IMDは本邦でも2013年4月より第5類感染症に指定されている。 IMDは全世界で年間50万件発生し、うち約5万人が死亡に至っている。IMDの発生は髄膜炎ベルトといわれるアフリカ中部で多くみられるが、米国、オーストラリア、英国などの先進国でも流行を繰り返しており注意が必要だ。米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、米国では2005年~2011年に年間800~1,200人のIMDが報告されている。発症年齢は5歳未満と10歳代が多くを占める。本邦でも、2005年1月~2013年10月に報告されたIMD 115例の好発年齢は0~4歳と15~19歳であった。 IMDの治療にはペニシリンGまたは第3世代セフェム系抗菌薬などが用いられるが、急速に進行するため予防対策が重要となる。IMDの予防にはワクチン接種が有効であることが明らかになっている。本邦の第III相試験の結果をみても、4価髄膜炎菌ワクチン接種後、80%以上の接種者の抗体価が上昇しており、その有効性が示されている。このような高い有効性から、発症数は多くないものの、米国、オーストラリア、英国においてはすでに定期接種ワクチンとなっている。 本邦でも4価髄膜炎菌ワクチン「メナクトラ筋注」が本年(2015年)5月に発売され、IMDの予防が可能となった。しかしながら、本邦におけるIMDの認知度は医師および保護者の双方で低い。また、IMDワクチンの医師の認知率は49%と約半分である。IMDの罹患率は低いが、そのリスクは無視できない。今後の啓発活動が重要となるだろう。サノフィプレスリリース「侵襲性髄膜炎菌感染症」に関する意識調査(PDFがダウンロードされます)「メナクトラ筋注」新発売のお知らせ(PDFがダウンロードされます)

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憎きCOPDの喉元に食らいつく治療法:気管支鏡で肺を“つぶす”?(解説:倉原 優 氏)-382

 COPDの外科治療といえば、肺容量減量手術(Lung volume reduction surgery:LVRS)である。まるで早口言葉のような言い回しだが、これはその名のとおり、肺の容量を減量する手術のことである。病的肺を切除して、健常肺の機能を活かそうというのがその治療原理である。LVRSはリスクの高い手術ではあるが、上葉優位な重度の気腫肺がある患者では、生存期間を延長する効果があるとされている1)。メタアナリシスでLVRSを積極的に推奨しているわけではないが、症例を選べば妥当な選択肢であるとしている2)。 LVRSと同じような効果を気管支鏡的に実施できないかと考案されたのが、気管支鏡的肺容量減量術である。これには、固形の気管支バルブを留置する古典的方法と、液体の充填剤を流し込む新しい方法(Emphysematous lung sealant:ELS)がある3)。今回検討するのは、固形の気管支バルブである。気管支バルブといえば、日本ではEWS(Endobronchial Watanabe Spigot)が有名だが、この研究ではワンウェイバルブのZephyrバルブを使用している。 単施設研究ではあるものの、この研究はブロックランダム化による二重盲検試験である。被験者も研究者も、どちらのバルブを使用しているかわからないようになっている(真のバルブ群とシャム[偽]のバルブ群)。 対象となったのは、すでに内科的治療を受けている50例のCOPD患者で、%1秒量が50%未満で過膨張や運動耐容能低下などがある症例である。基本的にブラは局所にかたよった症例を選んでいる(heterogeneous emphysema)。また、分葉不全といったアノマリーがあるような患者は除外されている。患者は1:1に気管支バルブ留置群とシャムバルブ留置群(コントロール群)に割り付けられた。50例の患者は、平均%1秒量が31.7±10.2%、平均MRCスコアが4±1点と、私たちが外来で診るCOPD患者の中では比較的重症例が対象となっている。 25例ずつ各処置にランダム化された。解析の結果、気管支バルブ群のほうが有意に1秒量の増加がみられた(中央値8.77%増加 vs.2.88%増加、Mann-Whitney p=0.0326)。全肺気量もいくばくか改善したものの、残気量には影響は与えなかった。また、もともとシビアなCOPD患者を選択していることもあってか、MRCスコアを改善することはできなかった。ただし、6分間歩行距離に関しては有意な改善がみられている(+25m vs.+3m、p=0.0119)。 私たち呼吸器内科医の間では、この気管支鏡的肺容量減量術は喀血や肺炎などの合併症が多いのではないかという懸念がある。今回の研究では、肺炎は気管支バルブ群で2例、コントロール群で0例(統計学的に有意差はなし)みられた。喀血については記載されていない。気管支バルブ群で2例の死亡が報告されているが、1例はバルブ挿入から1ヵ月以上経過してバルブを抜去した症例、もう1例はバルブ挿入から3日後に肺性心で死亡した症例である。後者については、気管支バルブ挿入との因果関係は否定できないだろう。 重症COPDの患者に対する内科的治療には限界がある。吸入薬も酸素療法も、根本的に気腫肺を改善させるものではない。この肺容量減量術は、憎きCOPDの喉元に食らいつく治療法であり、安全に実施できるようなプロトコルの確立が今後望まれる。

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Dr.平島のフィジカル教育回診

身体診察は、検査前確率を上げ、日々変化する病態の評価にも有用です。誰でもすぐにできるテクニックですが、今の臨床現場では意外に重視されていないようです。このコーナーでは、全国に学習の輪が広がる「フィジカルクラブ」の創設者、平島 修 氏(徳洲会奄美ブロック 総合診療研修センター)を講師に迎え、身体診察からみた症候診断を学習していきます。独学で学ぶには、ハードルの高い「身体診察」。毎回、解説編に大切な示唆を盛り込んでお送りします。■今なぜフィジカルが重要か?平島 修氏、フィジカル教育回診にかける熱い想いを語る!

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【症例情報】Dr.平島のフィジカル教育回診 第1回「入院直後の肺炎球菌性肺炎。これからの病態評価」

患者60代・男性現病歴インフルエンザ疑いで治療するも、改善せず入院。入院時バイタル:BP 106/77mmHg、脈拍 整、呼吸数 22/分、体温 37.7℃、SpO2 95%左下肺野に浸潤影WBC 4,800μL、CRP 40.3mg/dL、尿中肺炎球菌抗原(+)左下肺にcrackle音聴取肺炎球菌性肺炎と診断、ペニシリンG300万単位×4/日で治療中。さて、この患者さんの病態変化をどう評価していきますか?症例情報設問1入院翌日に、参考にすべき所見は何でしょうか?(参考にすべきものを選択ください)

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特別編 MERSに気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

2015年5月末からの韓国でのMERS流行を受けて、日本国内でも危機感が高まっています。今回、緊急特集として拙著『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』(中外医学社)でおなじみの忽那・上村コンビが「MERSの気を付け方」について語ります。韓国へ焼肉に行く前に 上村「くつな先生、ちょっとお願いがあるんですけどいいですか?」 忽那「なんだ?」 上村「明日から韓国に焼肉を食べに行ってきますので、その間の当直をお願いしてもいいですか? 当直代は僕がもらいますんで」 忽那「ちょっと待て。いい訳ないだろう」 上村「大丈夫ですよ、先生にもキムチを買ってきますから」 忽那「そうじゃない。おまえ、今の状況がわかってないのか」 上村「わかってますよ。今は日韓関係が冷えきっているから渡航は控えたほうがいいんじゃないかってことでしょ? でもね、先生…逆にそんな今だからこそ思うんですよ、僕が焼肉を食べることで日本と韓国の距離が縮まれば最高じゃないかってね…」 忽那「何が『逆に』なのかわからんが、オレが言ってるのは、日韓関係のことじゃない。MERSだよ、MERS」 上村「またまた~。マーズレンS®のことをそんなオシャレな言い方しちゃって~、胃でも荒れてるんですか~?」 忽那「マーズレンS®は今関係ない! おまえ、ホントにテレビとか見てないんだな。MERSと言ったら『中東呼吸器症候群』のことだろ。韓国は今MERSで大変なことになってるんだよ!」 上村「いつから韓国は中東になったんですか!」 忽那「ああ、もう!おまえと話してると話が一向に進まないな! 中東ではやってた感染症が、韓国でも流行してるんだよ!」 上村「ふーん…中東呼吸器症候群って名前なのに中東だけじゃないんですか」 忽那「そうだ。サウジアラビアを中心に中東で流行しているMERSだが、これまでに25ヵ国で症例が報告されている(図1)1)。MERSは中東以外でも発生しているのだッ!」画像を拡大する 上村「でも発端となったのは中東からの輸入例ってことですよね?」 忽那「そのとおり! そして、その中でもイギリス、フランス、チュニジアでは輸入例を発端とした国内でのヒト-ヒト感染事例が報告されているのだッ!1)」 上村「オソロシス!!」 忽那「そう、恐ろしいね……そして2015年5月現在、韓国でも輸入例を発端としたMERSのヒト-ヒト感染がこれまでにない規模で起こっているんだ」 上村「なるほど…韓国でMERSってのはそういう意味だったんですね。じゃあ今は韓国でも10人くらいの患者が出てるんですか?」 忽那「10人なんてもんじゃない。とっくに100人を超えているレベルだ」 上村「ワンハンドレッド・パーソンズ! チャバイじゃないですか!それ、チャバイじゃないですか!」 忽那「2015年5月24日に、中東地域に渡航歴のある60代男性の確定例が報告されてからというもの、日に日に症例は増え、7月22日現在感染者は186人、死者は36人に達している。今や4次感染例まで報告されているんだ(図2)2)」画像を拡大する 上村「そうか…さっきの言葉は『韓国に旅行するのは危ない』って意味だったんですね」 忽那「まあ『韓国に旅行するとMERSに感染するぞ』って意味ではないけどね」 上村「えっ? 言ってることがわからないんですけど! 韓国ではMERS患者があふれてるんじゃないんですか?」 忽那「いや、今のところ韓国で報告されているMERS患者はすべて疫学的なリンクが追えている症例ばかりだし、しかもそのほとんどが病院内での曝露によって感染していると考えられている」 上村「じゃあ韓国に焼肉を食べにいっても、感染しないってことですか?」 忽那「まあ現時点では可能性はきわめて低いだろうね…でも、わざわざ今韓国にいくのはお勧めしないけど。帰ってきてから熱が出ようものなら面倒なことになるよ?」 上村「確かに…焼肉はMERSが落ち着いてからにしようかな…」 忽那「その前に、われわれはいつMERSが来てもいいように、十分な準備をしておくべきではないだろうか」 上村「ほほん。つまり『MERSの気を付け方』を知っておくということですね」 忽那「そういうことだ」MERSの実体は何だ? 上村「でも、そもそもMERSってそんなに怖い病気なんですか? マーズレンS®は効かないんですか?」 忽那「現時点でMERSに有効な抗ウイルス薬はない。それは胃薬であるマーズレンS®も例外ではないッ!」 上村「頼みの綱のマーズレンS®が…」 忽那「2012年4月から2015年6月10日までに全世界で1,288例のMERS症例が報告されているが、そのうち498例が亡くなっている。つまり致死率は38.7%ということになる」 上村「38.7%って…エボラ並みじゃないですか! MERS激ヤバでしょ! 終わりだ…もう世界は終わりだ~!」 忽那「落ち着けッ! MERSが恐ろしい感染症であることは間違いない…だが、実際のMERSの致死率はここまでは高くないだろう」 上村「実際のって…実際のMERSの致死率が38.7%って話でしょ~がよ!なに訳わかんないこと言ってるんですか!?」 忽那「感染症はしばしば軽症では、検査が行われずに見逃されやすい。逆に重症例はしっかりと診断されることが多い。つまり、見かけの致死率は高くなりやすい傾向にあるんだ。現に、積極的な検査が行われている韓国では、致死率は10%前後と低い状態にある」 上村「10%でも十分高いでしょ!」 忽那「そのとおり。いずれにしても怖い感染症には間違いないね」 上村「MERSの怖さはわかったんですが…どういう症例でMERSを疑ったらいいんでしょうか?」MERSへの対応 忽那「厚生労働省は、1.中東地域・韓国などの感染地域から帰国後14日以内に、38℃以上の発熱及び咳を伴う急性呼吸器症状を呈し、臨床的又は放射線学的に肺炎、ARDSなどの実質性肺病変が疑われる場合 2.発症前14日以内にそれらの国において、医療機関を受診もしくは訪問した者、MERSであることが確定した者との接触歴がある者、ヒトコブラクダとの濃厚接触歴がある者で発熱を伴う急性呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する場合 3.発症前14日以内にそれらの国によらず、MERSが疑われる患者を診察・看護もしくは介護していた者、MERSが疑われる患者と同居(当該患者が入院する病室又は病棟に滞在した場合を含む。)していた者、MERSが疑われる患者の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた者で発熱または急性呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する場合の3つのいずれかに該当し他の原因が明らかでない場合、MERS疑似症として対応するように、という通知を2015年6月4日に出している。これを念頭に置いておくことが重要だね」 上村「なんか言い回しが難しくてよくわからないんですけど!」 忽那「上村…『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』でさんざん教えただろう。輸入感染症で重要なのは『渡航地・潜伏期・曝露歴』の3つだと!」 上村「…ハッ! そうでした…友情ッ!努力ッ!勝利ッ!」 忽那「MERSの感染が持続的に見られているのは中東と韓国であること、MERSの潜伏期は2~14日であること3)、MERSの感染はラクダとの濃厚接触や病院内感染が多く、ヒト-ヒト感染では原則として飛沫感染であることを考えると、渡航地中東または韓国に渡航していたか潜伏期渡航から発症までが14日以内か曝露歴ラクダとの接触歴があるか、現地で病院を受診または入院しているか、MERS患者と接触があったかが重要ということになる。このポイントを覚えておくことが重要なんだ」 上村「なるほど…勉強になるっす!」 忽那「これらの疑似症に当てはまる症例は、ただちに保健所に連絡し、感染症指定医療機関(特定、第1種または第2種)に搬送され、地方衛生研究所で気道検体のPCR検査が行われることになる。ちなみに日本国内におけるMERS診断までの流れは厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/20150604_01.pdf)で確認することができるので、これも確認しておこう」MERSの診断と対策 上村「了解です!ちなみに中東呼吸器症候群っていうくらいだから、まず間違いなく呼吸器症状があるんですよね?」 忽那「呼吸器症状の頻度は高いと言われている…が、100%ではない。サウジアラビアで診断された47人のMERS症例の臨床症状がまとめられている4)が、それによると、発熱(>38℃) - 46人(98%)悪寒と戦慄を伴った発熱 - 41人(87%)咳 - 39人(83%)(乾性47%、湿性36%)息切れ - 34人(72%)血痰- 8人(17%)咽頭痛 - 10人(21%)筋肉痛 - 15人(32%)下痢 - 12人(26%)嘔吐 - 10人(21%) 腹痛 - 8人(17%)胸痛- 7人(15%)頭痛- 6人(13%) 鼻炎- 2人(4%)胸部X線所見の異常 - 患者47人(100%)となっており、咳や息切れも100%ではなく、また消化器症状や頭痛・筋肉痛といった全身症状もみられることがある。つまり、呼吸器症状がなければMERSの可能性は下がるが、完全に除外することはできないということになる」 上村「難しいなあ…なんか見逃しちゃうのが怖いんですけど」 忽那「少しでも疑わしい症例をみたら、ひとりで抱え込まずに保健所に相談するほうが安全だろうね」 上村「わかりました!悩んだらくつな先生を呼びます」 忽那「うん、悩んだら保健所に相談しようね」 上村「頼りないなあ…もし本当に疑わしい症例の対応をすることになったら感染対策はどうすればいいんですか?」 忽那「現時点ではまだ完全にはわかっていないこともあるけど、MERS-CoVは飛沫感染および接触感染で伝播すると考えられている。なので、WHOは飛沫感染予防策と接触感染予防策の徹底を推奨している5)」 上村「ふーん、N95マスクは要らないんですか?」 忽那「気管挿管や気管内吸引などのエアロゾルが発生するような場合には、N95マスクの着用を含む空気感染予防策を推奨している」 上村「ですよね~。なんとなくN95がないと不安なんですよ…」 忽那「確かにCDCはエアロゾル発生手技に限らず、空気感染予防策を推奨してるけどな6)。この違いは、まだMERSという感染症がよくわかっていないからということもあるだろうし、CDCは資源が豊富なアメリカのための機関であり、WHOは世界中の感染症対策のことを考えないといけない機関であり、途上国の状況も配慮した感染症対策を提示しなければならないという、それぞれの立場の違いも関係しているのかもしれないね」 上村「じゃあN95マスクを付けておいたほうが無難ってことですね!」 忽那「いや、現時点ではなんとも言えないなあ…でも大事なことは、中東からの輸入例が報告された国の大半ではMERSは広がっていないということだ。N95マスクにこだわらなくても、適切な接触感染予防策と飛沫感染予防策を行えばMERSの伝播は抑えられると思うよ」 上村「んな~る」Take Home MessageMERSを疑う手がかりは渡航地・潜伏期・曝露歴!MERS疑似症を満たす症例は、ただちに保健所に連絡を!MERSに対する感染対策は、接触感染予防策と飛沫感染予防策が重要!エアロゾル発生手技のときには空気感染予防策も!1)European Centre for Disease Prevention and Control. RAPID RISK ASSESSMENT. Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) 17th update, 11 June 2015.2)World Health Organization. Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) maps and epicurves. 3)Assiri A, et al. N Engl J Med. 2013;369:407-416.4)Assiri A, et al. Lancet Infect Dis. 2013;13:752-761.5)World Health Organization. Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS‐CoV) summary and literature update - as of 9 May 2014. 6)Centers for Disease Control and Prevention. Interim infection prevention and control recommendations for hospitalized patients with Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV). ※ イラスト協力:中外医学社『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』より転載

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早期RAでシムジアが初期治療から使用可に

 6月3日都内にて、アステラス製薬株式会社・ユーシービージャパン株式会社共催のプレスセミナーで、北海道大学大学院 免疫・代謝内科学分野 教授の渥美 達也氏が講演を行った。 PEG化TNFα阻害薬「シムジア(一般名:セルトリズマブ ペゴル)」の適応は、これまで「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(RA)」に限られていたが、5月に取得した追加効能承認により、関節の構造的損傷の進展リスクが高いと推測される患者に対しては、抗リウマチ薬による治療歴がない場合でも使用できるようになった。 今回の追加効能承認の根拠である国内第III相試験「C-OPERA」は、メトトレキサート(MTX)投与歴がなく、「抗CCP抗体高値」や「リウマトイド因子陽性かつ/または早期びらんの存在あり」といった予後不良因子を持つ発症後1年以内のRA患者を対象として実施された。 試験結果より、MTXとシムジアを併用した群ではMTX単独投与群と比較して、52週後の骨関節破壊の進展割合が有意に減少することがわかった。 「医療経済的な観点からみるとすべての症例が対象とはいえないが、抗CCP抗体高値、リウマトイド因子陽性など関節破壊の進行が予測され、かつ歯科医師など関節破壊により社会生活に大きな影響を受ける患者は適応となるだろう」と渥美氏は説明した。 安全性に関しては、MTXを最大用量まで投与することもあり、両群ともに重篤な感染症である「ニューモシスティスジロヴェシ肺炎」が数例認められているため、早期RAといえども治療にあたっては注意が必要である。 最後に渥美氏は、「RAの関節破壊はとくに発症後2年間で急速に進行するため、この時期にしっかり治療を行うことが重要である」と強調し、講演を締めくくった。

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肺気腫の進行抑制にA1PI増強治療は有効か/Lancet

 重症α1アンチトリプシン欠損症を有し肺気腫を合併した患者について、α1プロテイナーゼ阻害薬(A1PI)増強治療は、肺気腫の進行抑制に有効であることが示された。カナダのユニバーシティ・ヘルス・ネットワークのKenneth R Chapman氏らが、多施設共同二重盲検無作為化並行群間プラセボ対照試験RAPIDの結果、明らかにした。α1アンチトリプシン欠損症に対するA1PI増強療法の有効性について、これまで無作為化プラセボ対照試験による検討は行われていなかった。研究グループは今回、スパイロメトリーよりもα1アンチトリプシン欠損症での肺気腫進行度の測定感度が高い、CT肺密度測定法を用いた評価で検討を行った。Lancet誌オンライン版2015年5月27日号掲載の報告より。TLCとFRCの単独および複合で有効性を評価 試験は13ヵ国、28ヵ所の国立研究センターで、18~65歳の非喫煙者で、重症α1アンチトリプシン欠損症(血清濃度<11μM)を有し、1秒量(1秒間の努力肺活量;FEV1)が予測値の35~70%の患者を試験適格とした。肺移植、肺葉切除術もしくは肺容量減少術を施行または施行予定であった患者、または選択的IgA欠損症患者は除外した。 被験者はコンピュータを用いて1対1の割合で、A1PI静注60mg/kg/週またはプラセボを受ける群に無作為に割り付けられ、24ヵ月治療を受けた。 全患者および試験担当者(アウトカム評価者含む)は試験期間中、治療割り付けを認識していなかった。 主要エンドポイントは、CT肺密度測定による全肺気量(TLC)および機能的残気量(FRC)の、複合および個々の測定値で、0、3、12、21、24ヵ月時に評価(1回以上評価)した。 なお、本試験は、2年間の非盲検延長試験も完了している。TLC単独評価で有意な進行抑制効果を確認 2006年3月1日~2010年11月3日に、A1PI増強治療群に93例(52%)、プラセボ群に87例(48%)が無作為に割り付けられた。解析はそれぞれ92例、85例が組み込まれた。 年率でみた肺密度低下は、TLCとFRCの複合評価では、両群間で差はみられなかった。A1PI群-1.50(SE 0.22)g/L/年、プラセボ群-2.12(同0.24)g/L/年で、差は0.62g/L/年(95%信頼区間[CI]:-0.02~1.26)だった(p=0.06)。 しかしながらTLC単独でみた場合は、A1PI群の肺密度低下が有意に少なかった(差:0.74g/L/年、95%CI:0.06~1.42、p=0.03)。一方でFRC単独でみた場合は、有意な差はみられなかった(同:0.48g/L/年、-0.22~1.18、p=0.18)。 治療により出現した有害事象の頻度は両群で同程度だった。A1PI群は92例(99%)で1,298件が、プラセボ群は86例(99%)で1,068件の発生であった。また重篤な治療関連有害事象は、A1PI群は25例(27%)で71件、プラセボ群は27例(31%)で58件の発生であった。 試験中止となった重篤な治療関連有害事象は、A1PI群は1例(1%)で1件、プラセボ群は4例(5%)で10件の発生であった。 死亡は、A1PI群は1例(呼吸不全)、プラセボ群は3例(敗血症、肺炎、転移性乳がん)が報告された。 結果を踏まえて著者は、「CT肺密度測定法によるTLC単独評価で、A1PI治療が肺気腫の進行を抑制するというエビデンスが示された。FRC単独または両指標を併せたた評価において同様の所見は示されなかったが、今回示された所見は、重症α1アンチトリプシン欠損症を有し肺気腫を合併した患者について、肺構造を温存するために増強療法を検討すべきであることを示すものである」とまとめている。

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週1回デュラグルチド、1日1回グラルギンに非劣性/Lancet

 コントロール不良の2型糖尿病患者に対し、食前インスリンリスプロ併用下でのGLP-1受容体作動薬dulaglutideの週1回投与は、同併用での就寝時1日1回インスリン グラルギン(以下、グラルギン)投与に対し、非劣性であることが示された。米国Ochsner Medical CenterのLawrence Blonde氏らが行った第III相の非盲検無作為化非劣性試験「AWARD-4」の結果、示された。Lancet誌2015年5月23日号掲載の報告より。26週時のHbA1c変化の平均値を比較 試験は2010年12月9日~2012年9月21日にかけて、15ヵ国、105ヵ所の医療機関を通じ、コントロール不良の18歳以上、2型糖尿病患者884例を対象に52週にわたって行われた。 同グループは被験者を無作為に3群に分け、(1)dulaglutide 1.5mg/週(295例)、(2)dulaglutide 0.75mg/週(293例)、(3)1日1回就寝時グラルギン(296例)を、それぞれ食前インスリンリスプロ併用で投与した。 主要アウトカムは、26週時のHbA1c変化の平均値だった。非劣性マージンは0.4%とし、ITT解析を行った。HbA1c変化平均値、dulaglutide群でグラルギン群より大幅増 26週時のHbA1c変化平均値は、dulaglutide 1.5mg群が-1.64%、-17.39mmol/mol、dulaglutide 0.75mg群が-1.59%、-17.38 mmol/molであり、グラルギン群は-1.41%、-15.41mmol/molであった。 グラルギン群に比べた変化幅は、dulaglutide 1.5mg群-0.22%(非劣性のp=0.005)、dulaglutide 0.75mg群が-0.17%(同p=0.015)であり、いずれのdulaglutide投与群ともに非劣性であることが示された。 無作為化後の死亡は5例(1%未満)であった。死因は、敗血症(dulaglutide 1.5mg群の1例)、肺炎(dulaglutide 0.75mg群の1例)、心原性ショック、心室細動、原因不明(グラルギン群の3例)だった。 重度有害事象の発生件数は、dulaglutide 1.5mg群が27例(9%)、dulaglutide 0.75mg群が44例(15%)、グラルギン群が54例(18%)だった。グラルギン群に比べdulaglutide群でより多く発生した有害事象は、吐き気、下痢、嘔吐などだった。

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呼吸数は何秒測るべき?-身体診察の重要性

 2015年4月30日、都内にて金原出版創業140周年記念の特別講演が行われた。本講演では、実臨床ですぐに実践できる内科診療のコツが紹介された。身体診察には技術が必要 第1部では、「身体診察のアプローチ」をテーマに徳田 安春氏(地域医療機能推進機構本部 総合診療顧問)が血圧、心拍、呼吸数をはじめとする身体診察の重要性をレクチャーした。 日常診療において、患者の様態が思わしくない際に、われわれは採血結果やCT・MRIといった検査に目がいきがちであるが、まず身体診察を行うことで多くの重要な情報が得られる。たとえば、「ショック状態」の患者にはまず静脈圧を測り、静脈圧が下がっている低静脈圧型ショック、上がっている高静脈圧型ショックに分類する。それぞれのカテゴリーで治療方針が異なるため、初期診断において確実に静脈圧を測定することが求められる。 また、身体診察にはその1つひとつの診察に技術を要する。たとえば「呼吸障害」ではとくに呼吸数が重要であり、これを省くと重要なバイタルサインを見逃してしまう可能性がある。具体的な呼吸数の測定では、少なくとも20秒は測定する。15秒未満では誤差が大きくなるためで、切迫した状況下であっても十分な時間で測定する必要があるという。 徳田氏は、日々の診療の中で、身体視察の技術を磨く重要性を強調し、第1部を締めくくった。感染症治療を志す研修医へのメッセージ 第2部では、岩田 健太郎氏(神戸大学医学部附属病院 感染症内科 教授)が、自身の感染症専門医としての経験、そして、自院の研修医への教育について、熱く語った。 岩田氏は、2014年12月~2015年1月に西アフリカに渡航し、エボラ出血熱の感染症対策を行った経験を語り、十分な検査機器もない環境で、身体診察の重要性を痛感したという。 研修医の育て方の話題では、研修医が胃腸炎や肺炎患者のグラム染色を省略した結果、診断に必要な細菌を見逃しそうになった例を挙げ、日常のルーチン検査の重要性を述べた。そして、グラム染色で何か検出されそうにない場合でも、まずは行ってみること、グラム染色の限界──「何がみえるか」「何がみえないか」を認識し、診療に当たるべきであることを示した。 最後に、岩田氏は研修医に向け、「自分がどこまでできて、どれができていないかという現状認識をしっかりとし、そのうえで現状に満足せず上のレベルを目指してほしい」とエールを送り、第2部を締めくくった。原因不明の発熱診療はこう診る 第3部では、「不明熱」の症例についてパネルディスカッションとなり、パネリストによる活発な意見交換が行われた。 「下がらない原因不明の発熱」で救急外来を訪れた患者の症例では、発熱の原因を鑑別診断するに当たり、以下の2点が大切であると示唆された。1) さまざまな検査結果のみならず、来院するまでの様子、患者の置かれている社会状況や背景などを丁寧に問診すること。2) この症例ではリンパ腫が疑われるが、生検を行うのが容易ではない場合、適切な生検部位を 同定し、外科に迅速な生検依頼を行うためにも陽電子放出断層撮影(以下「PET」)を活用すること。 PETを用いることでCTなどでは特定しづらい病巣の広がりを把握することができる。また、患者の腎機能が不良でも検査可能である。さらに、造影剤アレルギーのリスクが少ないという利点もある。 最後に 「不明熱であっても漫然と診療を行わず、PETなどの検査機器を用いて迅速に診断し、治療に繋げよう」と結ばれて、パネルディスカッションは終了した。

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上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬に耐性の非小細胞肺がんに対するAZD9291の効果について(解説:小林 英夫 氏)-361

 すでにご承知の読者も多いであろうが、非小細胞肺がんの臨床において2002年から登場した上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)は現在不可欠な薬剤となっている。2014年版日本肺癌学会編『EBMの手法による肺癌診療ガイドライン』1)においても、手術不能非扁平上皮がんでEGFR遺伝子変異陽性例に治療推奨グレードAと位置付けられた。 第1世代EGFR-TKI(ゲフィチニブ、エルロチニブ)導入後には、高度な薬剤性肺障害の合併、無効症例の存在、人種差、薬剤耐性獲得などの問題点が指摘された。これらの課題は、合併肺疾患の有無や、組織型選択、性別、組織検体でのEGFR遺伝子変異といった評価プロセスを経ることにより、ある程度の改善が得られている。そして最大の未解決点は1~2年程度で生じてしまう薬剤耐性問題である。治療当初は良好な腫瘍縮小効果が得られた症例も恒久的効果は困難であり、この解決を目指して新規EGFR-TKI薬の開発が進められている。 今回、新規2薬剤の臨床試験が同時にNEJM誌に掲載されたが、本稿ではアジア人主体で日本人を含む検討がなされた第3世代EGFR-TKI(AZD9291)についての、Janne氏らの論文を概説する。 薬剤耐性獲得の約60%はEGFR T790M変異と考えられているが、AZD9291は非小細胞肺がんのEGFR-TKI活性化変異とEGFR T790M耐性変異を選択的かつ不可逆的に阻害する第3世代経口EGFR-TKIであり、前臨床モデルではこれら変異に有効である一方、野生型EGFRに対する効果は少ない。 AZD9291の安全性と有効性評価のための第I相試験は2013年3月から2014年8月まで行われた。対象は、既治療で、EGFR-TKI活性化変異が確認された、または他のEGFR-TKI治療によっても病勢が進行している、進行非小細胞肺がんである。 253例が登録され、用量漸増コホートに31例、拡大コホートには222例が割り付けられた。内訳は女性が62%、アジア人が62%、腺がんが96%で、80%に細胞傷害性化学療法歴があった。拡大コホート登録症例の62%で EGFR T790Mが検出された。用量漸増コホート31例で、28日間の1日1回20~240mg経口まででは用量制限毒性が発現しなかったため、最大耐用量は確定されなかった。 有害事象として、下痢(47%)、皮疹(40%)、悪心(22%)などが認められ、グレード3以上の有害事象は32%に、重篤な有害事象は22%にみられた。アジア人と非アジア人で重症度や頻度に差はなかった。肺臓炎様イベントは6例(2例はアジア人、4例は非アジア人)にみられ治療中止となったが、データ解析時には回復したか、回復しつつあった。7例が有害事象で死亡したが、薬剤関連の可能性は1例(肺炎)であった。 登録症例中239例で治療効果が判定でき、123例が部分奏効、1例が完全奏効、奏効率51%(95%信頼区間[CI]:45~58%)、病勢安定33%(78例)であった。また、EGFR T790M陽性例のうち評価可能であった127例は奏効率61%(95%CI:52~70%)、陰性例61例では奏効率21%(95%CI:12~34%)だった。奏効例のうち奏効期間が6ヵ月以上の患者の割合は85%で、 EGFR T790M陽性例では88%、陰性例では69%であった。全体の無増悪生存期間中央値は8.2ヵ月、T790M変異陽性例で9.6ヵ月(95%CI:8.3~未到達)、陰性例では2.8ヵ月(95%CI:2.1~4.3)であった。 本邦では第2世代薬のアファチニブが2014年に導入されたが、薬剤耐性について十分な問題解決には到達していない。Janne氏らは、第3世代のAZD9291はEGFR-TKIによる前治療下で病勢が進行してしまった EGFR T790M変異陽性の進行非小細胞肺がん患者に腫瘍縮小効果を示し、EGFR T790Mが本薬有効性の予測マーカーでもあることが示唆された、と結論している。 彼らの成績はencouragingではあるものの、観察期間が短いことや比較試験ではないことなど、さらなる検討を待たなければならない。ただ、非小細胞肺がん治療では治療前だけでなく増悪期においても、組織検体からEGFR遺伝子変異を評価することがますます重要となることは間違いない。なお、肺がんとEGFR-TKIについての手引きが日本肺癌学会より発行されている2)。

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握力検査で心血管疾患リスクを予測/Lancet

 握力検査は、全死因死亡や心血管死、心血管疾患の簡便で安価なリスク層別化法であることが、カナダ・マクマスター大学のDarryl P Leong氏らPURE試験の研究グループの検討で示された。握力検査による筋力低下と死亡リスク増大の関連が多くの研究で示唆され、そのメカニズムは不明であるものの、死亡リスクの層別化の迅速で安価な方法として注目を集めている。一方、筋力測定の予後因子としての意義に関する既存のエビデンスは高所得国に限られ、全死因や原因別の死亡に焦点が絞られているという。Lancet誌オンライン版2015年5月12日号掲載の報告より。中~低所得国を含め、死亡以外のアウトカムも評価 PURE試験は、さまざまな社会文化的、経済的環境において、独立の予後因子としての握力の意義を評価する前向きコホート研究。対象は、17の高~低所得国の地域住民で、構成員の1人以上が35~70歳、今後4年間は現住所に居住する意思のある世帯とした。  被験者には、ジャマー握力計(Jamar dynamometer)による握力の測定が行われた。フォローアップでは、全死因死亡、心血管死、非心血管死、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、がん、肺炎肺炎または慢性閉塞性肺疾患(COPD)による入院、すべての呼吸器疾患(COPD、喘息、結核、肺炎など)による入院、転倒による負傷、骨折の評価が行われた。  これらのアウトカムの評価は、個々の担当医が標準化された判定基準に則って行い、事前に規定された定義や判定基準により中央判定で確証された。収縮期血圧よりも強力に死亡を予測 2003年1月~2009年12月に14万2,861人が登録され、13万9,691例(女性:8万1,039例、男性:5万8,652例)が解析の対象となった。全体の年齢中央値は50歳(四分位範囲:42~58歳)、平均握力は30.6kgであった。  年齢と身長で補正した握力は、国や民族によってばらつきが認められた。男性の平均握力は、低所得国が30.2kg、中所得国が37.3kg、高所得国は38.1kgであり、女性はそれぞれ24.3kg、27.9kg、26.6kgだった。フォローアップ期間中央値は4.0年(四分位範囲:2.9~5.1年)であり、この間に2.4%(3,379人)が死亡した。  握力が5kg低下するごとに、全死因死亡(ハザード比[HR]:1.16、95%信頼区間[CI]:1.13~1.20、p<0.0001)、心血管死(1.17、1.11~1.24、p<0.0001)、非心血管死(1.17、1.12~1.21、p<0.0001)、心筋梗塞(1.07、1.02~1.11、p=0.0024)、脳卒中(1.09、1.05~1.15、p<0.0001)の発症率が有意に上昇した。 一方、握力と糖尿病、肺炎肺炎またはCOPDによる入院、転倒による負傷、骨折との間には有意な関連はみられなかった。また、がんおよび呼吸器疾患による入院を除き、補正後の握力と各アウトカムの間に、高~低所得国を通じて類似の関連が認められた。  高所得国では、がんのリスクと握力に正の相関が認められた(HR:0.916、95%CI:0.880~0.953、p<0.0001)が、中および低所得国ではこのような関連はみられなかった。  全死因死亡に関して、補正後の握力(HR:1.37、95%CI:1.28~1.47、p<0·0001)は収縮期血圧(1.15、1.10~1.21、p<0.0001)よりも強力な予測因子であり、心血管死についても、握力(1.45、1.30~1.63、p<0.0001)は収縮期血圧(1.43、1.32~1.57、p<0.0001)に匹敵する予測因子であった。一方、心血管疾患の予測では、握力(1.21、1.13~1.29、p<0.0001)よりも収縮期血圧(1.39、1.32~1.47、p<0.0001)のほうが強力であった。  さらに、握力が強いほど、心筋梗塞、脳卒中、がん、肺炎肺炎またはCOPDによる入院、転倒による負傷、骨折による死亡のリスクが低かった。  著者は、「握力には個々の国やその所得の違いで異質性があり、握力は死亡リスクだけでなく心血管疾患のリスクとも逆相関することが示された」とし、「低筋力は疾患発症の感受性のバイオマーカーであり、心血管疾患と非心血管疾患のいずれのリスクが高いかを同定する指標となる可能性がある」と指摘している。

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乾癬の生物学的製剤、各製剤の重篤な感染症発生率は?

 乾癬患者において、高齢、糖尿病、喫煙、感染症既往歴、インフリキシマブ投与、アダリムマブ投与が重篤な感染症の増加に関係していたことが、Robert E. Kalb氏らによって明らかにされた。JAMA Dermatology誌オンライン版2015年5月13日号の掲載報告。 Kalb氏らは乾癬患者において、重篤な感染症リスクが治療に及ぼす影響について調査を行った。 調査には皮膚科における多施設、縦断的、疾患レジストリのPSOLAR(Psoriasis Longitudinal Assessment and Registry)が使用された。被験者は成人乾癬患者で、従来の全身的療法または生物学的製剤を投与中/投与可能な患者であった。レジストリは2007年7月20日に運用が開始され、すべてのデータは2013年8月23日まで収集された。 被験者らは標準療法として規定の乾癬治療薬を投与され、最大8年間追跡を受けた。データ収集と重篤な有害事象(重篤な感染症を含む)は定期的に評価された。 コホートの分析はレジストリ開始時の評価に基づいて実施された。重篤な感染症の累積発生率の調査は、ウステキヌマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、非生物学的製剤の治療コホートごとに行われた。なお、メソトレキサートの併用有無は問わなかった。 非メソトレキサート/非生物学的製剤群を対照として、最初の重篤な感染症が発現する時期の予測因子を特定するため、コックス比例ハザード回帰モデルを用いた多変量回帰分析が用いられた。 主な結果は以下のとおり。・乾癬患者1万1,466例から分析された(2万2,311患者年)。・生物学的製剤使用群と非メソトレキサート/非生物学的製剤群では、年齢、性別、BMI、疾患特性など、患者特性に違いがみられた。・インフリキシマブ群では乾癬性関節炎の有病率が高いなど、各生物学的製剤群の間でも患者特性に違いがみられた。・重篤な感染症の累積発生率は100患者年当たり1.45であった(計323例)。・生物学的製剤ごとの重篤な感染症の累積発生率は、ウステキヌマブ0.83、エタネルセプト1.47、アダリムマブ1.97、インフリキシマブ2.49であった。・対照群の重篤な感染症の累積発生率は、非メソトレキサート/非生物学的製剤群1.05、メソトレキサート使用/非生物学的製剤群1.28であった。・最も多く報告された重篤な感染症は、肺炎と蜂窩織炎であった。・高齢、糖尿病、喫煙、重大な感染症既往歴、インフリキシマブ投与、アダリムマブ投与が重篤な感染症の増加に関係していた。

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耐性菌が増加する尿路感染症に有望な抗菌薬/Lancet

 複雑性下部尿路感染症や腎盂腎炎に対し、新規抗菌薬セフトロザン/タゾバクタム配合薬は、高用量レボフロキサシンに比べ高い細菌学的効果をもたらすことが、ドイツ・ユストゥス・リービッヒ大学のFlorian M Wagenlehner氏らが実施したASPECT-cUTI試験で示された。尿路感染症は生命を脅かす感染症の発生源となり、入院患者における敗血症の重要な原因であるが、抗菌薬耐性の増加が治療上の大きな課題となっている。本薬は、新規セファロスポリン系抗菌薬セフトロザンと、βラクタマーゼ阻害薬タゾバクタムの配合薬で、多剤耐性緑膿菌のほか、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌などのグラム陰性菌に対する効果がin vitroで確認されている。Lancet誌オンライン版2015年4月27日号掲載の報告。セフトロザン/タゾバクタム配合薬の有効性を非劣性試験で評価 ASPECT-cUTI試験は、セフトロザン/タゾバクタム配合薬の高用量レボフロキサシンに対する非劣性を検証する二重盲検ダブルダミー無作為化試験。対象は、年齢18歳以上、膿尿を認め、複雑性下部尿路感染症または腎盂腎炎と診断され、治療開始前に尿培養検体が採取された入院患者であった。 被験者は、セフトロザン/タゾバクタム配合薬(1.5g、8時間ごと、静脈内投与)または高用量レボフロキサシン(750mg、1日1回、静脈内投与)を7日間投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、治療終了後5~9日における細菌学的菌消失と臨床的治癒の複合エンドポイントであった。細菌学的菌消失は、治癒判定時の尿培養検査におけるベースラインの尿路病原菌の104コロニー形成単位(CFU)/mL以上の減少と定義した。また、臨床的治癒は、複雑性下部尿路感染症または腎盂腎炎の完全消失、著明改善、感染前の徴候、症状への回復であり、それ以上の抗菌薬治療を必要としない場合とした。 非劣性マージンは10%とし、両側検定による群間差の95%信頼区間(CI)の下限値が-10%より大きい場合に非劣性と判定した。また、95%CIの下限値が0を超える場合は優位性があるとした。セフトロザン/タゾバクタム配合薬群の優位性を確認 2011年7月~2013年9月に、25ヵ国209施設に1,083例が登録され、800例(73.9%)が解析の対象となった(セフトロザン/タゾバクタム配合薬群:398例、レボフロキサシン群:402例)。 656例(82.0%)が腎盂腎炎で、274例(34.3%)が軽度~中等度の腎機能障害を有し、199例(24.9%)が65歳以上であった。菌血症の62例(7.8%)の原因菌のほとんどは大腸菌で、多くが腎盂腎炎患者であった。また、776例(97.0%)が単一菌感染で、629例(78.6%)が大腸菌、58例(7.3%)が肺炎桿菌、24例(3.0%)がプロテウス・ミラビリス、23例(2.9%)が緑膿菌だった。 複合エンドポイントの達成率は、セフトロザン/タゾバクタム配合薬群が76.9%(306/398例)、レボフロキサシン群は68.4%(275/402例)であった(群間差:8.5%、95%CI:2.3~14.6)。95%CIの下限値が>0であったことから、セフトロザン/タゾバクタム配合薬群の優位性が確証された。 副次的評価項目であるper-protocol集団における複合エンドポイントの達成率にも、セフトロザン/タゾバクタム配合薬群の優位性が認められた(83.3% vs. 75.4%、群間差:8.0%、95%CI:2.0~14.0)。セフトロザン/タゾバクタム配合薬の優位性は複雑性尿路感染症でも セフトロザン/タゾバクタム配合薬群で治癒判定時の複合エンドポイントの優位性がみられたサブグループとして、65歳以上、複雑性尿路感染症、レボフロキサシン耐性菌、ESBL産生菌、非菌血症が挙げられ、他のサブグループもレボフロキサシン群に比べ良好な傾向にあり、いずれも非劣性であった。 有害事象の発現率は、セフトロザン/タゾバクタム配合薬群が34.7%、レボフロキサシン群は34.4%であった。最も頻度の高い有害事象は、両群とも頭痛(5.8%、4.9%)および便秘(3.9%、3.2%)、悪心(2.8%、1.7%)、下痢(1.9%、4.3%)などの消化管症状であった。 重篤な有害事象はそれぞれ15例(2.8%)、18例(3.4%)に認められた。セフトロザン/タゾバクタム配合薬群の2例(クロストリジウム・ディフィシル感染)は治療関連と判定されたが、いずれも回復した。同群の1例が膀胱がんで死亡したが治療とは関連がなかった。 著者は、「この新規配合薬は、複雑性尿路感染症や腎盂腎炎の薬物療法の有用な手段に加えられるだろう。とくに、治療が困難なレボフロキサシン耐性菌やESBL産生菌の治療に有望と考えられる」としている。

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ゴミを扱う仕事で起こった珍しい病気【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第43回

ゴミを扱う仕事で起こった珍しい病気 >足成より使用 ゴミを扱う仕事に従事する人がどういった呼吸器疾患にかかるのかを検証した大規模な研究はありませんが、呼吸器症状や呼吸機能検査には影響を与えないと結論付けた報告があります(Tschopp A. et al. Occup Environ Med. 2011;68:856-859.)。 しかしその一方で、ゴミと関連した感染症やアレルギーを呈する報告もあります。 Allmers H, et al. Two year follow-up of a garbage collector with allergic bronchopulmonary aspergillosis (ABPA). Am J Ind Med. 2000;37:438-442. この論文は、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)に罹患した29歳のゴミ回収業社員の症例報告です。彼は、ゴミ回収業に従事した夏に、呼吸困難感、発熱、インフルエンザ様症状を呈するようになりました。病院を受診したところ、胸部レントゲン写真では粘液栓(mucoid impaction)を示唆する索状影が観察され、IgE高値、アスペルギルス沈降抗体が陽性であることからABPAを疑われました。Aspergillus fumigatus抽出物を吸入すると、即時型喘息反応がみられました。この症例報告は日本の夏型過敏性肺炎と同様の機序と考えてよいと思いますが、過去にゴミを扱うことで真菌のアレルギー症状を起こすことが報告されています(Hagemeyer O, et al. Adv Exp Med Biol. 2013;788:313-320.)。また、ゴミ捨て場で働く子供において酸化ストレスマーカーが高いことも報告されています(Lahiry G, et al. J Trop Pediatr. 2011;57:472-475.)。日本のように医療制度が充実している国はともかくとして、健康へのリスクを有する職業に就いている人に対する健康診断は、世界的にもまだまだ課題が残されているようです。インデックスページへ戻る

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第3世代EGFR-TKI、既存TKI耐性のNSCLCに有効/NEJM

 開発中の上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるAZD9291は、既存のEGFR-TKIに耐性となった非小細胞肺がん(NSCLC)に対し高い抗腫瘍効果を発揮することが、米国・ダナファーバーがん研究所のPasi A Janne氏らの検討で示された。 EGFR T790M変異は、 EGFR 変異を認める肺がん( EGFR 変異陽性肺がん)患者のEGFR-TKIに対する薬剤耐性の獲得機構として最も頻度が高いとされる。AZD9291は、EGFR-TKI活性化変異およびT790M耐性変異を選択的かつ不可逆的に阻害する第3世代の経口EGFR-TKIで、前臨床モデルではこれらの変異の双方に有効であることが確認されている。NEJM誌2015年4月30日号掲載の報告より。約6割がアジア人の国際的第I相試験 本研究は、既治療の進行NSCLC患者におけるAZD9291の安全性と有効性を評価する国際的な第I相試験。対象は、EGFR-TKI活性化変異が確認されているか、または既存のEGFR-TKIによる前治療中あるいは治療後に画像検査で病勢の進行が確認された局所進行・転移性NSCLC患者であった。 被験者は、用量漸増コホートまたは用量拡大コホートに分けられ、両コホートとも5段階の用量(20、40、80、160、240mg、1日1回、経口投与)に無作為に割り付けられた。拡大コホートの患者は、 EGFR T790Mの有無を中央判定で確証するために、試験前に腫瘍生検が求められた。 日本、韓国、台湾を含む9ヵ国の33施設に253例が登録され、用量漸増コホートに31例、拡大コホートには222例が割り付けられた。女性が62%(156例)、アジア人が62%(156例)、腺がんが96%(242例)で、80%に細胞傷害性化学療法薬の投与歴があった。拡大コホートの62%(138例)で EGFR T790Mが検出された。T790M耐性変異例で奏効率61%、PFS中央値9.6ヵ月 本研究は進行中であり、2013年3月6日に患者登録が開始され、データのカットオフ日は2014年8月1日であった。用量漸増コホートの31例では、28日間の評価期間中に用量制限毒性(DLT)が発現しなかったため、最大耐用量(MTD)は確定されなかった。 全原因による有害事象で頻度の高いものとして、下痢(47%)、皮疹(40%)、悪心(22%)、食欲減退(21%)などが認められた。下痢と皮疹は用量依存性に増加する傾向がみられた。 Grade 3以上の有害事象は32%に発現した。有害事象による減量が7%、治療中止は6%に認められた。重篤な有害事象は22%にみられ、そのうち担当医が治療関連と判定したのは6%だった。アジア人と非アジア人で重症度や頻度の差はなかった。 肺臓炎様イベントは6例(2例は日本人以外のアジア人、4例は非アジア人)にみられ、いずれも治療中止となったが、データ・カットオフ時にすでに回復したか、回復しつつあった。また、高血糖が6例、補正QT間隔の延長が11例にみられた。7例が有害事象で死亡したが、薬剤関連の可能性が報告されたのは1例(肺炎)であった。 全体の客観的奏効率は51%(95%信頼区間[CI]:45~58%)であり(123/239例、完全奏効[CR]は1例)、病勢安定(SD)は33%(78例)であった。また、 EGFR T790M陽性例のうち評価が可能であった127例の奏効率は61%(95%CI:52~70%)、陰性例61例の奏効率は21%(95%CI:12~34%)だった。 奏効例のうち奏効期間が6ヵ月以上の患者の割合は85%であり、 EGFR T790M陽性例は88%、陰性例は69%であった。また、全体の無増悪生存期間(PFS)中央値は8.2ヵ月で、陽性例が9.6ヵ月(95%CI:8.3~未到達)、陰性例は2.8ヵ月(95%CI:2.1~4.3)であった。 著者は、「AZD9291は、EGFR-TKIによる前治療で病勢が進行した、 EGFR T790M変異陽性例を含む進行NSCLC患者において高い抗腫瘍活性を示した」とまとめ、「 EGFR T790Mは、NSCLCの予後バイオマーカーとされるが、今回の知見は本薬の有効性の予測バイオマーカーでもあることを示唆する」「EGFR-TKI耐性例ではMET阻害薬などと本薬の併用によりさらなる臨床転帰の改善が期待される」と指摘している。

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梅雨の季節。原因不明の咳は真菌のせい!?

 4月21日、東京都内において「梅雨から要注意!カビが引き起こす感染症・アレルギー  -最新の研究成果から導く“梅雨カビ”の対策ポイント-」(主催:株式会社衛生微生物研究センター、協力:ライオン株式会社)と題し、メディアセミナーが開催された。 これから梅雨の季節を迎え、家中のさまざまなところで発生するカビについて、その性質と健康に及ぼす影響を概説し、具体的にどのような疾患を生じさせるかをテーマに講演が行われた。カビを吸い込むことで喘息やアレルギー性疾患を誘発 はじめに「カビ」の研究者である李 憲俊氏(衛生微生物研究センター所長)が、「身の回りのカビと、人体への影響」と題して、家カビの発生とその影響について解説を行った。 カビは、水の溜まるシンク周りや浴室に多く繁殖し、また、湿気のこもる下駄箱、押し入れ、結露する北側の壁、窓枠、浴室天井などに多く発生する。とくに天井のカビは、思いのほか気が付きにくく、掃除も難しい。また、胞子が舞い落ちることで人が吸い込む可能性もある。そして、カビを吸い込むことで、喘息、アレルギー性疾患を誘発、悪化させるほか、肺炎などの感染症の原因ともなる。李氏は「現在のように密封性の高い家屋では、カビの増殖が容易なため、いかにカビを発生させないか対策が大事」とまとめた。原因不明の咳はカビによるアレルギー性疾患の疑い 続いて、「カビが引き起こす感染症・アレルギー」と題して、亀井 克彦氏(千葉大学真菌医学研究センター 臨床感染症分野 教授)が、カビ(真菌)が原因となる呼吸器疾患のレクチャーを行った。 真菌が原因となる病気は、水虫が広く知られているが、その他にも感染症、アレルギー、(食物摂取による)中毒症などがある。そして、私たちは1日に1万個以上の真菌を吸い込んでおり、真菌が原因の疾患で亡くなる方も現在増加中だという。 原因不明の咳などの診療でのポイントとしては、「古い木造一戸建てに引っ越した」「梅雨ごろから症状が始まった」「しつこい乾いた咳」「家の外だと軽快」「次第に息切れする」「中年女性」といったファクターがあった場合、「夏型過敏性肺臓炎」や「カビによるアレルギー性疾患」などが疑われ、早期の検査と治療が必要となる。とくに「夏型過敏性肺臓炎」は、わが国独特の疾患であり、風邪などと区別がつきにくいために見過ごされ、治療が遅れることも散見されるので、注意が肝要とのことである。 また、頻度は少ないが、喫煙者や糖尿病などの慢性疾患を持つ人が罹りやすい「慢性壊死性肺アスペスギルス症」などは治療薬も効果が弱く、進行すると予後不良となるため、定期健診での早期発見が大切だという。 真菌感染症は、容易に感染しないものが多いが、一度感染すると難治性となり、治療薬も効果が弱く副作用も強い。また、再発しやすく、アレルギーなどのさまざまな疾患の原因ともなるので、原因不明の咳などで「前述の疾患を疑ったら呼吸器科の中でもアレルギー疾患領域に明るい専門医の受診が必要」とのことだった。 最後に、患者に指導できる予防策として、肺の老化予防のために「禁煙の実施」、住宅内の「カビの排除」(とくにエアコン、水まわりなど)、原因不明のしつこい咳や息苦しさがあれば「専門医師への受診」を患者に伝えることが重要だと亀井氏は述べ、「カビについて過度に神経質になる必要はないが、適度な心配はしてほしいと患者に指導をお願いしたい」とレクチャーを終えた。

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