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ALK陽性肺がん第3相試験、日本人の結果は

 クリゾチニブ(商品名:ザーコリ)のPhase III試験PROFILE 1007 では、進行ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)2次治療において、クリゾチニブは標準的化学療法であるペメトレキセド(同:アリムタ)またはドセタキセル(同:タキソテール)に比べ、有意に無増悪生存期間(PFS)および奏効率(ORR)を改善した。この試験の日本人のサブ解析が、第11回日本臨床腫瘍学会にて近畿大学腫瘍内科の中川和彦氏から発表された。 PROFILE1007試験は日本を含む21ヵ国105施設で登録されたALK陽性NSCLC患者347例を対象に行われている。日本人は69例 と、そのうち約20%を占めている。日本人における割り付けはクリゾチニブ群40例、化学療法群29例(ペメトレキセド16例、ドセタキセル13例)であった。 日本人のPFS中央値はクリゾチニブ群で7.7ヵ月(over all 7.7ヵ月)に対し、化学療法群4.2ヵ月(over all 3.0 ヵ月)、HR=0.47(over all 0.49)、p=0.0062(over all p<0.001)で有意に改善していた。 また、ORRはクリゾチニブ群73.0%(over all 65.3%)に対し、化学療法群28.0%(over all 19.5%)、HR=2.7(over all 3.4)、p=0.0001(over all p<0.0001)と、こちらも有意に改善していた。このようにクリゾチニブは、日本人のALK陽性非小細胞肺がんにおいてもPFS、ORRともに著明に改善する事が明らかになった。 一方、日本人の有害事象発現は、クリゾチニブ群はover allと比較して全般的に高かった。主な有害事象項目はover allと同様、眼症状、悪心・嘔吐、下痢などで、その多くはGrade1~2であった。しかし、間質性肺障害で2例の治療関連死があり、その2例はいずれも日本人患者であった。 有害事象の頻度は日本人で高いものの、効果面も安全性もover allと同様の傾向であり、このサブ解析の結果は日本人における進行ALK陽性非小細胞肺がんでの効果と安全性を支持する一つのデータだといえよう。*クリゾチニブ:500mg/日、ペメトレキセド:500mg/m2 3週毎、ドセタキセル:75mg/m2 3週毎)

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“喫煙者の採用拒否”もアリな時代、タバコの適正価格はいくら?

大手リゾート、製薬、IT、広告代理店など“喫煙者は採用いたしません”と明言する企業が増えていること、ご存知ですか?映画やドラマの喫煙シーンも減らすべきだという声すら上がり、嫌煙モードは高まる一方の今のご時世。2010年10月以降大きく下がった喫煙率、喫煙への抑止力として働いたタバコ価格を医師はどう見ているのか?そもそも医師の喫煙率はどうなのか?「医師なのにタバコを吸うなんてもってのほか」「脳梗塞でも喫煙する患者に辟易」「もっと値上げしたら自分もやめられるかも」などなど、“タバコと喫煙者の負担”について言いたいことを吐き出していただきました!コメントはこちら結果概要60代以上の医師の約半数が禁煙に成功、30代以下の約8割は喫煙経験なし現在喫煙している人の割合は回答者全体で8.7%(国民全体では21.1%:JT実施「2012年全国たばこ喫煙者率調査」より)。世代別に見ると最も高い40代で10.2%、最も低い30代以下では6.6%であり、大幅な差は見られなかった。しかし喫煙経験の有無では大きく異なり、30代以下の約8割は喫煙経験自体がないのに対し、60代以上の約半数が『禁煙成功を経ての非喫煙者』という結果となった。「自分が吸っていては患者に対して説得力がないから」といった声が多く見られた。“喫煙者の負担増”6割が賛成、「明らかに悪影響を及ぼす疾患は医療費の負担率上げるべき」“喫煙は医療費増につながるため、喫煙者の保険料や医療費などの負担額を上げるべき”との考え方に対する賛否を尋ねたところ、全体の61.1%が賛成と回答。「理屈はわかるが実際の運用は困難では」との声がある一方で、「脳梗塞、COPD、心疾患ほか喫煙が悪影響を及ぼすとのエビデンスがある疾患は自己負担率増に」といった意見も複数寄せられた。医師の8割以上がいっそうの値上げ支持、過半数は“1,000円以上が適正”適正だと感じる一箱あたりの価格について尋ねたところ、最も多かった回答は『1,000~1,400円程度』で33.6%。次いで『1,500円以上』『800円程度(100%値上げ)』がそれぞれ19.5%となり「若年層が手を出しにくい価格にすることが大切」との意見が見られた。喫煙者でも3人に1人は値上げすべきと考えており、「いっそ1,000円以上になれば自分もやめられるのでは」といった声も挙がった。喫煙をめぐる環境、“全館禁煙”で院外にあふれる患者や職員に苦言、表現活動をめぐっては賛否が病院機能評価の項目に“全館禁煙の徹底”が含まれることもあって「敷地の一歩外の歩道上で入院患者が集団で喫煙し、かえって見苦しい」「職員が隠れて吸っている」など、病院周辺の喫煙状況を問題視する医師が多く、「病院こそ最も喫煙者の採用を拒否すべき職場だ」との声も挙がった。表現活動については「喫煙シーンは極力減らすべき」「映画などの規制はやり過ぎでは」と賛否が見られた。設問詳細タバコについてお尋ねします。JTが2013年5月に実施した「全国たばこ喫煙者率調査」によると、全国の喫煙者率は20.9%(前年比-0.2ポイント)、男女別では男性が32.2%(前年比-0.5ポイント)、女性は10.5%(前年比+0.1ポイント)という結果となりました。2010年10月の増税・定価改定による値上げ直後に比較すると減少傾向は緩やかになりつつあるものの、喫煙者の採用拒否を明言する企業も出てくるなど社会全体での嫌煙モードは高まっています。また政府は2012年6月に新たな「がん対策推進基本計画」を閣議決定し、2010年時点で19.5%の喫煙率を、2022年度までに12%に引き下げるとの考えを示しています。一方、禁煙運動を推進するNPO法人がアニメ映画内での喫煙シーンについて問題視した要望書を提出したことで議論が起こるなど、物理的環境の制限のみならず表現活動にも踏み込む向きについては、行き過ぎであるとして疑問視する声も挙がっています。そこで先生にお尋ねします。Q1.先生は喫煙されていますか。喫煙している以前喫煙していた喫煙したことがないQ2.「喫煙は医療費増につながっているため、喫煙者は保険料や医療費などの負担額を上げるべき」という考え方がありますが、いかがお考えですか。賛成反対どちらともいえないQ3.タバコの価格はどの程度が適正だとお考えになりますか。400円程度(現状維持)600円程度(50%値上げ)800円程度(100%値上げ)1,000~1,400円程度1,500円以上Q4.コメントをお願いします。2013年8月16日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員の医師コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「禁煙の最も有効な手段の一つは、徐々にではなく急激なたばこ価格の上昇と思う。またJTによる健康被害に対する訴訟も必要だろう」(呼吸器内科,70代以上,男性)「ヨーロッパやオーストラリアと同程度にするべきです。特に医療関係者は無条件で禁煙にするべきです」(神経内科,40代,男性)「喫煙は百害あって一利なしであり、医療者が就職する際、喫煙習慣の有無をチェックし、喫煙習慣があるヒトに対して、一定期間での禁煙を課すべきと考えます」(小児科,50代,男性)「喫煙で得られるものは何もない。迷惑千万であり税金、医療費等、もっともっと高くするべき。タバコ吸って肺がんになって助けてと言われても助ける気にならないので、成人の診察は絶対したくない」(小児科,40代,男性)「生活保護を受けている心筋梗塞の患者さんに煙草をやめるように促したところ逆切れされました。その後まもなくその患者さんは脳梗塞を併発し、寝たきりとなりました。医療に対して真摯でない人に医療費が無料というのはいまだに納得できない状況です」(救急科,40代,男性)「喫煙者と非喫煙者の保険料負担は差があってしかるべきだと思います」(循環器内科,40代,男性)「血管障害の治療を受けている生活保護受給者が医師の禁煙指導に従わない場合、何らかの対策が必要と思われます」(脳神経外科,50代,男性)「大学入学後18歳から喫煙していたが、運動部で走りへの影響があり、20歳で禁煙。病院は敷地内禁煙だが、院長、副院長が喫煙者なため、職員の敷地内喫煙がしばしば見られ、禁煙対策が徹底していない。院長の喫煙の有無で敷地内禁煙の徹底が分かれてしまうように思う」(小児科,50代,男性)「循環器を専門としていますが、家族を持ってからは怖くて吸えなくなったというのが正直なところです。これが合法的なものであることすら疑問です。危険性を啓蒙することも必要ですが、ほとんどの喫煙者には現実的に受け止められないため、積極的に吸いたくても吸えない環境を整備してあげるべきです」(循環器内科,40代,男性)「根本的には、喫煙者の自覚と意志によるところが大きいとつくづく思います」(内科,50代,男性)「喫煙者の医療負担額を上げるのは,現実的には困難。たばこ税として徴収した中から医療費に回すべき」(血液内科,40代,男性)「自分自身は喫煙経験が全くないし、経営しているクリニックは全館禁煙で、職員も喫煙者は採用しない方針を採っているが、他人の喫煙にはとやかく言うつもりは無い」(精神科,40代,男性)「病院評価機構の認定基準?で、院内が全面禁煙となり(喫煙室も作れない)、入院患者がすぐ隣の公園や道ばたで座り込んで喫煙している状態が日常化しておりみっともない状態です」(小児科,30代,男性)「日本はまだ喫煙者に甘い。非喫煙者が過半数を超えた今、飲食店での全面禁煙等を早く導入すべき」(外科,40代,男性)「きちんと分煙されれば、吸おうが吸うまいが構いません」(小児科,40代,男性)「タバコは1本100円以上が適正価格。さらに自動販売機での販売を禁止すべき」(小児科,40代,男性)「たばこだけを悪者にするのは不公平。車の排気ガス、食品添加物、ファーストフード、甘い炭酸飲料など他にも色々あるでしょう」(麻酔科,50代,男性)「たばこが健康状況に悪影響があるとわかっていても禁煙できない医療関係者をみると、禁煙治療の難しさを感じる」(産婦人科,40代,女性)「少なくとも自身や家族の喫煙には絶対反対ですが、喫煙者の存在を否定するつもりはありません。飲食店などではもう少し厳密に禁煙スペースと喫煙スペースを区切ってもらえればと」(総合診療科,20代,男性)「喫煙は体に有害だとは思うが、喫煙者に肩身の狭い状況を次々と作っていくようなやり方は、ちょっとどうかと思う」(小児科,50代,男性)「若いうちは格好つけてタバコを吸っていました。40過ぎて、格好悪い、体に気をつけなければと思い止めました。患者さんにも『タバコは高校生が格好つけて吸うもの、この年になっても吸っているのは格好悪いでしょ』と指導しています」(脳神経外科,40代,男性)「医療関係者の喫煙はなくなるべきだと思いますが、職員の禁煙もなかなか進みません。生命保険料などに差をつけるのは賛成です」(内科,50代,男性)「私は職業柄、禁煙に成功したが、なかなかそうはいかない方も多いでしょう。人に迷惑をかける観点からすれば、酒のほうがよっぽど社会悪だと思います。あまり極端な締め付けは新たな問題を引き起こします。」(形成外科,40代,男性)「疾患の誘因になる上、においがつくので嫌いです。次回の値上げは、一本1円でもいいので、医療費に回してもらいたいです」(内科,50代,男性)「受動喫煙の問題もあるが、麻薬として禁止されていないのだから吸いたい人は吸えばよい」(内科,60代,男性)「子供の出生と同時に喫煙はやめました.さまざまな病気の発症(特に悪性疾患)との関連が指摘されており,抗癌剤治療等の高額医療を削減するためにはたばこの価格をもっと上げれば良いと思います」(消化器外科,50代,男性)「私も15年前に禁煙しましたが、禁煙までに苦労しました。たばこの値段を上げるのには賛成ですが、保険料や医療費まで上げることにはちょっと抵抗があります」(外科,60代,男性)「周りで吸われると臭くて汚いうえに受動喫煙による被害を被る。本人は癌やCOPDなどで医療費を食い、やめようとしても禁煙薬は保険適応となっており医療費を使う。タバコの価格は1箱5000円以上が適正」(内科,50代,男性)「喫煙者はたばこを吸う事が自他に亘って健康及び環境に対して害を与えることを十分理解しているのか調査して、理解していなければ十分啓蒙し、なおも喫煙を続けようというのなら、それ相応の対価を支払わせるのは至極当然のことと考える」(その他,50代,男性)「大人っぽく見せるために喫煙していたが、健康のため禁煙をした。それから葉タバコの臭いが大嫌いになりました。非喫煙者には大迷惑ということがよくわかった。また、排水溝のゴミにも吸い殻は大量に含まれその除去費用も、街の清掃業務にもたくさんの税金がかかっています。税金を高くするのは当然です」(整形外科,50代,男性)「健康被害や依存性が明らかな喫煙…、煙草の販売そのものをやめてほしいと思います(まあ、もろもろの事情で難しいのはわかりますが・・)」(内科,40代,女性)「症状は無かったが冠動脈に動脈硬化がわかり禁煙しました。肺がんは関係ないとの意見もありますが、口腔、食道がんやCOPDを考えると患者さんもしかり、周りの方もつらい思いをする。そのような不幸な方が少しでも減ればと思う」(整形外科,40代,男性)「禁煙外来を担当しておりますが、禁煙治療の保険適応に対する過剰な規制が気になります。ニコチン依存症の診断基準としてブリンクマン指数(1日喫煙本数×年数)があるため、若年者では診断基準を満たさず、最も対策が必要であろう中高生や20代の禁煙治療が保険で行えないことや、禁煙治療の期間が12週間と規定されており、それを過ぎると保険を使えないこと、入院患者に対しては禁煙治療を開始できないことなどです。こうした規制をはやく取り払って欲しいものです」(その他,30代,男性)「JTは『マナー問題』にすることでプロパガンダに成功している」(内科,40代,男性)「子供たちに健康上悪影響を与えるとの思いから禁煙したが、子供たちは喫煙しており、割り切れない思い」(その他,60代,男性)「20年前に禁煙した。診療所内は禁煙、患者さんにはやめるよう毎回指示している。1箱の値段が1000円を超えれば、喫煙者は相当減るのではないか」(内科,70代以上,男性)「健康政策で最も効果的なのは,喫煙者を減らすこと。しかも,徐々に(たばこ農家や零細なたばこ屋さんへの対策を行いながら)値段を上げるだけで良いのだから,極めて簡単。税収減を心配する意見もあるが,長期的には医療費削減効果が大きいので,むしろ国の収支は改善されるともされており,早急にたばこを値上げすべし」(内科,60代,男性)「喫煙に関連が深い疾病では、喫煙者の保険医療支払いを高くできないのか?」(皮膚科,50代,男性)「当院は禁煙外来をしており、病院評価も受けているため敷地内禁煙となっている。しかし、一歩敷地外では入院患者の喫煙光景がみられ敷地外に吸殻が捨てられていたり、中にはまだくすぶっている吸殻もみられ非常に危険。といって敷地外に吸い殻入れを置くのもおかしい。喫煙自体は勧められたことではないが、病院内すべてを禁煙にするのではなく空港ロビーのように換気扇のついた喫煙室の設置を義務付けてはいかがか?入院患者に禁煙していただきたいのは山々であるが100%禁煙なんて無理。厚労省の役人だってどこかで吸っているのでしょう!こんな馬鹿馬鹿しい規制はやめてほしい」(消化器内科,60代,男性)「喫煙が自分の体に良くないことは自覚した上での喫煙はやむをえないと思います。自分も以前していたので、気持ちはわかります。ただ周囲の人への受動喫煙は避けるべきと考え、喫煙場所を今後も限定していくべきと思います。禁煙できず状態が悪化した場合は、家族ともどもいっさい医療側に苦情を言わないことも条件と考えます」(脳神経外科,50代,男性)「喫煙は百害あって一利なし。わかった上でなお喫煙をやめない方は、喫煙が悪影響を及ぼすとエビデンスのある疾患に関しては医療費の全額自己負担が妥当と考えます。そもそも確実に体に悪いのだから法律で全面禁止にしたら良い。税収の減少は医療費の削減で相殺可能でしょう。また現時点で喫煙している方から特別税を徴取し、一時的な財源に充てればいいと思います」(臨床研修医,20代,男性)「可処分所得が少ない若年層が、タバコに手を出せない環境を作るのが大事」(泌尿器科,50代,男性)「喫煙はがんを増加させるだけでなく、動脈硬化を著しく促進してしまいます。高血圧症や腎疾患を診療している医師としては、病気を進行させないためなんとしても説得して禁煙して頂いております」(腎臓内科,50代,男性)「喫煙が医療費を上げるという説に根拠はあるのか。喫煙で寿命が短くなればその分医療費も減るのでは」(内科,50代,男性)「喘息の子たちが苦しそうにしてるのが見ていられないのに、平気で近くで吸う人たちが許せない」(小児科,40代,女性)「タバコの依存性を考えると麻薬よりもたちが悪い面もあると聞く。2,000円くらいでも吸うヒトはいると思うのでどんどん釣り上げればよいという立場です。自分はneversmokerです」(泌尿器科,30代,男性)「施設内全面禁煙ですが、屋外の建物の陰で医療従事者が喫煙しているところが病棟から丸見え。患者さんも雨のなかでも傘さして外で喫煙してます。どうしようもないかも…」(整形外科,50代,男性)「煙草ばかりやり玉にあげられていることに違和感をおぼえます。お酒についてももっと厳密な論議をすべき」(精神科,40代,男性)「嗜好品なので、社会保険料や医療費の負担額を上げるべきではないが、税金を増やすことはいいと思います」(内科,50代,女性)「当地の某県立病院内は全面禁煙。境界の歩道上で患者さんがたむろして喫煙しているのが早朝の風景。当然職員はそれを毎日見ているが改善されたとは思えない。嗜好であるから難しいし、モラルの問題になるのだと思う。価格を吊り上げれば多少の抑制はかかるかもしれないが、無くなることもないと考える」(産婦人科,50代,男性)「病院も全館禁煙にしたいところですが、職員の喫煙者も多くなかなか賛同が得られません」(精神科,40代,女性)「当院も敷地内禁煙のはずなんですが、タバコ臭い職員がいるんですよね。病院なんて喫煙者の採用拒否を一番にしていい職場だと思うんですが」(小児科,40代,男性)「喫煙者は保険料や医療費などの負担増であるなら、飲酒者、肥満者、高血圧者、糖尿病者、その他リスクを持つ全ての者に対して負担増を強いるべきである」(リハビリテーション科,40代,男性)「嗜好品が将来的な病気のリスクを高め、その病気を社会全体で支えることが非喫煙者の理解を得ているとは思えません。値上げのみで解決できる問題ではないが、抑止力の一つとして考慮されるべき。現時点での税収減少を心配するのではなく、若年人口が減少し社会的に高齢者を支えることが不十分になっている今だからこそ将来のことをきちんと考えるべき」(消化器外科,50代,男性)「缶コーヒー1本とタバコ1本と同等くらいがいいんじゃないかと思います。が、他国とつり合いがとれないくらいの価格だと、差益を狙った組織が暗躍するのではと危惧されます」(泌尿器科,40代,男性)「生活保護の母子家庭の母親に喫煙者が多い。値段を上げても、子供の特別手当や手帳からくる公費を使って買っているのが実情なので、喫煙が減るとは思えない。子供が犠牲になるだけ。また禁煙外来も、自己負担なしなのであまり成功していない。困っています」(小児科,60代,女性)「1000円以上でも止められない方は多いと思います。呼吸器内科部長がヘビースモーカーで、禁煙外来を行っていながら休憩時間には吸っていましたね。依存の問題は難しいです」(消化器内科,50代,女性)「喉頭がんになってもまだやめない人がいる。こんな人に医療費を使うのはどうかと思う」(消化器内科,50代,女性)「全てを吸い込むのなら(副流煙もなく、吐き出しもない)許さなくもない」(小児科,40代,男性)「全面的に煙草を違法なものとして禁止してもいいのでは?吸わない人間からするとただただ迷惑なだけ。タバコ以外の嗜好品もあるのだから、タバコがなくても生きていけないわけではない」(内科,40代,女性)「禁煙外来へ紹介しているが、成功率は半分くらいで、最終的には本人の意志による」(内科,40代,男性)「被ばくより発がんリスクが高いことをなぜ伝えないのでしょう?値段は段階的に1500円以上にすべき」(消化器外科,40代,男性)「ヒステリックに騒ぎ過ぎかと思います」(泌尿器科,40代,男性)「学位論文のストレスで一時喫煙したが、運動が身体的に明らかに辛かった為禁煙した。また喫煙依存者に肺気腫等が多く、高齢になって症状に苦しむ姿を多くみて禁煙を広めるべきと感じ、抑止力として高額化することはかなり有効と感じる」(外科,50代,女性)「禁煙外来はやってませんが、よく勧めます。やってみて成功する人は少ないし、それよりも他人事と思って問題視しない人の方が多いですね。タバコの値段を引き上げれば絶対喫煙者は減ります。あとは健康というよりは政治の問題と言うしかないでしょう。前回の値上げの時に、3倍の1000円にするべきでした。400円で喫煙者数の現状維持を成功させましたね!総務省・財務省の勝ちで厚労省はいつも負けますね。もし1000円になれば1/3が禁煙、1/3が減煙、値上げ分で税金、生産者・JTの減収分は確保されて、結果的には喫煙者が減り、タバコの弊害が減って医療費分は浮くのではと予測してましたが」(精神科,50代,男性)「購入することにちょっと躊躇するような値段にすべきです」(腎臓内科,40代,男性)「たばこは嫌いですが、法律で禁止されているわけでもないのに、ここまで喫煙者が差別されるのもおかしな話だと思います。完全分煙、医療費負担増で自己責任でよいと思います」(心臓血管外科,40代,男性)「禁煙して『吸えないストレス』から解放されて、とても楽になりました」(消化器内科,40代,男性)「喫煙による被害の啓蒙VTRを小学生の頃から奨励したり、基本的にたばこ会社を撤退させたらどうか」(循環器内科,40代,女性)「喫煙者があまりにも迫害されているような気がします」(整形外科,50代,男性)「今年の世界禁煙デーの標語で厚生労働省の弱腰が明らか。WHOは『Bantobaccoadvertising,promotionandsponsorship』(タバコの宣伝、販売促進活動、スポンサー活動を禁止しよう)、対して厚生労働省の標語は『たばこによる健康影響を正しく理解しよう』。日本政府は本当に禁煙を推進する覚悟があるのか!」(循環器内科,50代,男性)「わかっちゃいるけど・・・と思っている方も多いと思うので、もっと容易に禁煙外来にかかれる(例えば小児の様に公費負担にするとか)体制を作るべきと思う」(内科,70代以上,男性)「敷地内禁煙にしていても抜け道はいくらでもあり、当院でも受動喫煙対策にかなり悩まされています。生活保護費を受給している膀胱がん患者が、ぬけぬけとタバコがやめられないとおっしゃるのが許せません」(泌尿器科,40代,男性)「過度の禁煙押し付けでうつ状態になった患者を診察したことがある。喫煙をやめさせようとする余り他の病気を発症させては本末転倒では。また、低所得層・過酷勤務層ほど喫煙率が高いことがわかっている。単にたばこの価格を上げるだけでは低所得者層への逆進課税になってしまう。販売禁止のほうが理に適っているのではないか」(内科,40代,男性)「禁煙したいと以前から思っておりますが、無理でした。値段を上げることが喫煙者を減らす第一歩ではないかと思います」(腎臓内科,40代,男性)「自分は吸わないが、安定税収入のために国民をニコチン中毒にしておいて今更医療費抑制のためにタバコの価格を上げるのはおかしいと思う」(循環器内科,60代,男性)「禁煙をした医師として『禁煙支援外来』に携わっている。吸ったことのない先生よりは適切な指導が出来ると自負している」(循環器内科,60代,男性)「病院のみならず、人格形成に大きく関わる小中学校教員自身の禁煙を徹底させる。校内禁煙は当然であるが校門近くでたばこを吸っている、あるいは駐車場の車内で吸っている教師を児童が見かけたという話をよく聞く」(消化器外科,50代,男性)「25年前結婚を機に、一つぐらい体に良いことをと思いたばこをやめました。やめてから良いことばかりです。患者への教育のためにも、少なくとも医師が率先して禁煙すべき」(外科,50代,男性)「禁煙歴27年。患者さんに禁煙を勧める時に自分が吸っていたのでは迫力ないし、自分の体験を話しながら説明しやすい」(精神科,60代,男性)「19歳頃から60歳まで吸いました。診察中にCOPDの患者さんが多くおられ、それが怖くて禁煙し13年。医療費が掛かるからと値段を上げるのは賛成できませんが、COPD等で苦しまれていることを知らせることが必要と考えます」(外科,70代以上,男性)「実の父が脳梗塞を患い、それでもタバコを吸って、再アタックが起きて寝たきりになり、ぼろぼろになって行くのを目の当たりにして禁煙した」(内科,50代,男性)「『風立ちぬ』で喫煙シーンが多かったが、監督自身がヘビースモーカーなので作品の製作にあたり何も考慮しないと思われる。映画やドラマでも喫煙の場面を極力減らしてほしい」(消化器内科,50代,男性)「早く禁煙しなければと思いながらきっかけが持てずにいます。いっそ1000円以上になればやめると思う」(内科,40代,女性)「価格を上げることが一番禁煙に繋がる早道と思う」(内科,70代以上,男性)「(呼吸器学会など)専門医取得に禁煙証明が必要となるといった動きは非常に良いと思う。医師が率先して禁煙し、患者への啓蒙活動に取り組むべき」(糖尿病・代謝・内分泌内科,30代,女性)「精神科ではたばこを必要とする患者さんがいるのは事実ですが,そういう方は一部に減りました。禁煙ってできるんだなあという印象をもちました」(精神科,40代,女性)「高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病、心筋梗塞・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症、悪性腫瘍、肺疾患などの病名での治療では、喫煙患者の医療費自己負担率を8割位に上げるのが、禁煙促進に有効と考えます」(心臓血管外科,60代,女性)「10年以上前から間接喫煙の弊害を病院管理者に訴えましたが何も聞いてもらえませんでした。病院機能評価などで世間体が気になって初めて対策が取られました。情けないの一言です」(小児科,50代,男性)「アニメや映画での自粛や規制はやりすぎ」(小児科,40代,男性)「患者さんから『たばこ臭い人(助手)がいてリハビリを受けたくない』と苦情あり」(整形外科,50代,男性)「400円への値上げを契機に喫煙を止めた。値上げが無ければ喫煙を続けていた。経済的な理由ではなかったけれど…」(内科,60代,男性)「自分自身もなかなかやめられず、患者さんにダメですという時に心が痛い」(循環器内科,20代,男性)「広く禁煙運動が叫ばれ始めた頃に職業柄模範を示す必要があると考え半年間くらいかけて禁煙に成功。1日6-7本程度で50年くらい続けたが、結構苦労した思いがある」(その他,70代以上,男性)「喫煙者の『他人には迷惑かけてない』という妄言にはウンザリ。健康保険から金を取り、火事の原因や受動喫煙、路上喫煙で小児に火傷など、他人に直接的にも迷惑をかけているのに。大幅値上げ、健康保険からの排除などすべき」(耳鼻咽喉科,40代,男性)「喫煙本数と疾患には明確な関係があります。価格を上げ若年者には手に入りにくいところ(例えば1箱10000円)まで値上げすべきでしょう」(呼吸器内科,50代,男性)「1本100円程度にして、喫煙でリスクの上がるがん治療にJTから寄付してもらう」(皮膚科,40代,男性)「禁煙の推進や分煙には賛成するが、喫煙者の人格や喫煙行為そのものを害とみなすようなスタンス(今回の『風立ちぬ』に対する日本禁煙学会の意見など)は、原理主義的で違和感を感じる」(小児科,30代,男性)「喫煙者の患者の声として、今度値上げするなら禁煙するという声が多い。小刻みな値上げより、思い切った値上げが効果的なのではと考える」(皮膚科,30代,女性)「生活環境の変化に伴い自然にやめました。表現については、じゃあ過去の映画やドラマ等放送しないのか?レンタル等しないのか?どこまでが許容されて、どこからが問題かは、製作者が判断することと思います」(呼吸器内科,20代,女性)「煙草による経済振興と経済的損失を適正に数値表示してもらえれば功罪がわかり易くなるでしょう」(内科,60代,男性)「15年くらい吸っていたが、家族のために健康でいなければという意識からニコチンガム発売をきっかけに19年前に禁煙しました。大掃除の時、壁をふくと雑巾が真っ黒になりこれだけのタールが体内に入っていたのかと驚いた記憶がある」(内科,50代,男性)「タバコについては税金が課されているが、喫煙による疾病の医療費をまかなうほどではない事も事実。その辺の矛盾も検討すべき」(外科,30代,男性)「若いときから自動的に喫煙を始めてしまった。これからの若い人には喫煙を始めないように勧めるべきだ。医師の喫煙者は多いと思う」(産婦人科,70代以上,男性)「敷地内での禁煙で喫煙出来なくなった職員や入院患者が病院の正門で喫煙している。敷地外なので積極的に注意出来ない状況。病院のイメージが悪化しないか心配。」(臨床研修医,20代,男性)「喫煙者は、自分が中毒患者であるということを自覚すべき。患者は健康な人と同じに生命保険に入ることが難しいのは、ほかの慢性的で治療困難な疾患と同じですので、容易に理解できるはず。たばこが原因ということが明らかな癌は、保険診療を受ける権利はないと思います」(腫瘍科,40代,女性)「喫煙が健康被害があることがはっきりしているのだから、たばこの価格を上げその分を医療費に回せばよいと思う。不満なら吸わなければいい」(呼吸器内科,30代,男性)「禁煙出来ない患者は大勢いるため、タバコの値段を上げる以外にも保険料や医療負担額を上げる等の措置が必要であると思われる」(腎臓内科,30代,男性)「日本の法律上「20歳以上が許可」されているが、20歳にもなって「さあ吸おうか」などという馬鹿なことを考える人はいないでしょう。未成年で吸い始める人がほとんどでは。そういう観点で言えば「喫煙者はすべからく違法」と言っても過言ではないのでは」(循環器内科,40代,男性)「小児アレルギーを専門としています。子供が喘息で加療しているにもかかわらず、禁煙しない父親、祖父がいて困っています。日本では受動喫煙の害に対する意識が乏しいと思います」(小児科,50代,女性)「医師である限り、解剖のときに見たあの喫煙者の肺所見を知っていながら、よく自分が喫煙する気になると思う」(皮膚科,60代,男性)「喫煙者の話を聴くと、値段が1,000円以上になればやめる、という人が多いので、それくらいには値上げしても良いと思う」(膠原病・リウマチ科,50代,女性)「たばこを吸う人が減って、医療費が抑制できたらいいと思っています。私の家族もスモーカーでしたが、全然やめてくれず、最終的に脳梗塞になりました」(小児科,40代,女性)「生活保護の患者さんにヘビースモーカーが多い。禁煙指導しても聞く耳を持たない」(精神科,50代,女性)「喫煙者の保険料や医療費を上げるという意見は、理解出来るが非現実的。喫煙者の定義が困難であるし、抵抗も大きいと予想される。それよりも喫煙者の医療費に見合うだけタバコを値上げすべきであり、そうすれば喫煙の抑制にもなる」(麻酔科,50代,男性)「耳鼻咽喉科医ですが、タバコ関連癌が多いことがこの科の癌の特徴の一つです。タバコは心疾患や肺疾患の原因でもあり、「タバコは百害あって一利なし」だと思います。タバコ農家にはお気の毒ですが、JTもずいぶんタバコ以外の製品に移行できたでしょうから、容易に購買できない価格にして、喫煙をやめる人を増やすようにしていただきたい」(耳鼻咽喉科,50代,男性)「禁煙外来をしています。禁煙中にあっても再喫煙をなってしまうきっかけのほとんどは、飲み会です。会場内禁煙でありさえすれば、再喫煙の誘惑に負けてしまう確率はきわめて低くなります。喫煙シーンなど刺激を避けることが不可欠となります。また、禁煙中のがんばっている患者さんの中には、街で見える所で売って欲しくないと言っています。また、今回の一連の騒動ですが、作者自身がヘビースモーカーであり、自身の喫煙環境を満たすため(日本の社会の禁煙推進に反対するため)、作品を通して、訴えている側面がとても感じられ、危険であると感じます。反対意見を言われる方は、タバコがいかに依存性があって、反社会的な薬物であるという事が認識されていないかと思われます。」(内科,50代,男性)「日本のタバコは安すぎます。海外ではタバコに『killyou』とまで書いてあり、その上、1000円くらいです」(泌尿器科,40代,男性)「自身が喫煙しており、依存症であると認識している。麻薬や覚醒剤のように、非合法なものとして取り扱ってくれればさすがに禁煙すると思う」(内科,30代,男性)「主人は結婚を機に禁煙しました。そのときにはかなり喫煙と健康被害についてレクチャーをしましたが…」(産婦人科,40代,女性)

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非喫煙者で肺がんリスクが低いのはBMIが高い人?低い人?

 肺がんの約10~15%は非喫煙者に発症し、世界ではがんによる死亡のなかで非喫煙者の肺がんが7番目に多いが、その病因は不明である。BMIが高いほど肺がんのリスクが低いことを示唆したいくつかの研究があるが、非喫煙者の肺がんにおいては明らかではない。米国国立がん研究所のTram Kim Lam氏らは、大規模前向きコホート研究の結果、非喫煙者において、ベースライン時やミドルエイジでのBMIが肺がんリスクの低さと関連しておらず、むしろBMIや腹囲が大きいほど肺がんリスクが高かったことを報告した。PLoS One誌 2013年8月5日号に掲載。 著者らは、NIH-AARP Diet and Health Studyにおける非喫煙者15万8,415人で、ベースライン・18歳・35歳・50歳でのBMI、腹囲、腰囲、身体活動について、肺がん発症との関連を検討した。多変量ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、Cox比例ハザードモデルより推定した。 主な結果は以下のとおり。・11年間のフォローアップ期間中、532人が肺がんを発症した。・ベースライン時に肥満(BMI 30kg/m2以上)であった参加者の肺がんの推定リスクは、BMIが正常(18.5以上25.0未満)の参加者に対して、1.21(95%CI:0.95~1.53)であった。・18歳時の過体重(BMI 25.0以上30.0未満)および座っている時間は、それぞれベースライン時のBMIを調整後、肺がんの発症と関連していた(正常に対して過体重のHR:1.51、95%CI:1.01~2.26。座っている時間が3時間未満に対して3時間以上のHR:1.32、95%CI: 1.00~1.73)。腹囲と腰囲についても、これらとベースライン時BMIの相互調整後、肺がんの発症に関連していた。・活発な身体活動やテレビ鑑賞については、肺がん発症との関連性は見られなかった。

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第17回 健康診断の落とし穴 紛争化する原因を考える

■今回のテーマのポイント1.集団健康診断における胸部X線写真の読影に求められる医療水準は、通常診療における医療水準より低い2.しかし、ひとたび異常を発見し、前年度の写真と比較読影するに到った場合は、通常診療と同等の医療水準が求められる3.国民の健康診断に対する「期待感」を過剰に保護することは、実医療現場に有害な作用を及ぼすおそれがある事件の概要患者X(死亡時57歳)は、毎年、Y病院にて会社の定期健康診断として胸部X線撮影を行っていました。昭和62年4月21日に行われた会社の定期健康診断において、胸部X線上、右肺上部に空洞を伴う陰影が認められたことから、読影を行ったA医師は、一旦、Xの健康診断票に要精密検査としました。その後、A医師は、前年度の定期健康診断時の胸部X線写真と比較したところ、変化がなく、形態も悪性を示しておらず逐年的な健康診断で足りると判断して、Xの健康診断票の要精密検査の記載を抹消し、精密検査は不要としました。Xは、特に病院を受診することもなかったところ、翌昭和63年6月に行われた定期健康診断において、右肺上部の陰影の増大を指摘されました。2日後に再度検査(直接撮影)を行ったところ、やはり右肺上部の陰影が増大していたことから、Xは、要受診と指示されました。しかし、Xは病院を受診することはありませんでした。平成元年3月にY病院で行われた胃の精密検診を受けた際に撮影した胸部X線上、右肺上部に異常があると診断されたことから、Z病院を紹介されました。Xは、同年4月にZ病院で精密検査を受け、肺がんと診断され、同年6月に、右肺切除術を受けましたが、翌平成2年10月、肺がんにて死亡しました。これに対し、Xの妻と子は、昭和62年の胸部X線撮影の際に要検査とすべきであったなどと争い、2050万円の損害賠償を請求しました。事件の経過患者X(死亡時57歳)は、毎年、Y病院にて会社の定期健康診断として胸部X線撮影を行っていました。昭和62年4月21日に行われた会社の定期健康診断において、胸部X線上、右肺上部に空洞を伴う陰影が認められたことから、読影を行ったA医師は、一旦、Xの健康診断票に要精密検査としました。その後、A医師は、前年度の定期健康診断時の胸部X線写真と比較したところ、変化がなく形態も悪性を示しておらず逐年的な健康診断で足りると判断して、Xの健康診断票の要精密検査の記載を抹消し、精密検査は不要としました。Xは、特に病院を受診することもなかったところ、翌昭和63年6月に行われた定期健康診断において、B医師から右肺上部に空洞を伴う陰影の増大を指摘されました。2日後に再度検査(直接撮影)を行ったところ、やはり右肺上部の陰影が増大していたことから、B医師は、Xの健康診断票に「昨年と変化あり」「要受診」と記載した上で、Xにもう一度検査を受けるよう伝えてほしいと看護師に伝え、看護師、会社の衛生管理代理を介して、口頭でXに対し、また検査を受けるよう指示がなされました。しかし、B医師は、胸部X線についてはすでに直接Xに伝えていたことから、定期健康診断の検査医意見欄や指導票の病名欄および指導事項欄には記載しませんでした。それをみたXは、直接撮影を行ったことでこれでよかったのかと思い、病院を受診することはありませんでした。平成元年3月にY病院で行われた胃の精密検診を受けた際に撮影した、胸部X線上、右肺上部に異常があると診断されたことから、Z病院を紹介されました。Xは、同年4月にZ病院で精密検査を受け、肺がんと診断され、同年6月に、右肺切除術を受けましたが、翌平成2年10月、肺がんにて死亡しました。事件の判決Xの胸部エックス線間接撮影フィルムの所見から肺癌を疑うことは困難であり、A医師が右所見から肺癌を疑い肺癌に対する精密検査を指示すべきであったとはいえない。しかしながら、昭和62年度の定期健康診断における胸部エックス線間接撮影フィルムにおける陰影は前年度のものと比較して変化していたものであるから、前年度のフィルムと比較して右陰影に変化がないとしたA医師の判断は、誤っていたものと認められる。これに対して、被告は、昭和62年度のエックス線撮影フィルムに発見された陰影を前年度のものと比較して変化がないとしたA医師の判断は、医師に求められる一定水準に満たす専門的知識に基づくものであり、医師に認められた裁量の範囲内の問題であるとし、また、肺癌である可能性の少ない陰影がある場合に安易に精密検査に付することを義務づけるのは妥当ではないと主張する。確かに、定期健康診断においては、短時間に大量の間接撮影フィルムを読影するものであるから、その中から異常の有無を識別するために医師に課せられる注意義務の程度にはおのずと限界があり、鑑定人が供述するように、昭和62年度定期健康診断時に撮影されたエックス線間接撮影フィルムにおける陰影は、短時間の読影では見逃されるおそれがあることも否定できないところ、右読影の過程において本件異常陰影を発見しフィルムの比較読影を試みたA医師の判断は、一面において要求される水準を十分に満たすものであったと認められる。しかしながら、A医師が本件異常陰影を発見し、一度は精密検査が必要と考え、Xのフィルムにつき前年度のものと比較読影して右陰影につき医学的判断を下す段階においては、前記のように大量のフィルムを読影するという状況ではなく、認識した個別の検査結果の異状の存在を前提に一般的に医師に要求される注意を払って判断しなければならないものと考えられる。そして、前述のとおり鑑定の結果によれば、本件異常陰影が前年度の陰影と対比して客観的に変化しているのであるから陰影の変化の有無という判断自体には裁量の余地はないものと認められ、A医師は右判断において要求される注意義務を怠ったものといわざるを得ない。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(富山地判平成6年6月1日 判時1539号118頁)ポイント解説今回からは、各論として、各診療領域における代表的な紛争を取り上げていきます。各論の最初は、健康診断です。「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない」(労働安全衛生法66条1項)と定められており、行われる健康診断の内容も、労働安全衛生規則44条において、表のように定められています。表 一般定期健康診断の内容●労働安全衛生規則(定期健康診断)第四十四条1項 事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。 一  既往歴及び業務歴の調査 二  自覚症状及び他覚症状の有無の検査 三  身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 四  胸部エックス線検査及び喀痰検査 五  血圧の測定 六  貧血検査 七  肝機能検査 八  血中脂質検査 九  血糖検査 十  尿検査十一  心電図検査2項  第一項第三号、第四号、第六号から第九号まで及び第十一号に掲げる項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。4項  第一項第三号に掲げる項目(聴力の検査に限る。)は、四十五歳未満の者(三十五歳及び四十歳の者を除く。)については、同項の規定にかかわらず、医師が適当と認める聴力(千ヘルツ又は四千ヘルツの音に係る聴力を除く。)の検査をもつて代えることができる。健康診断に関する紛争において、最も多いのが「胸部X線写真における肺がんの見落とし事例」です。ただ、医療者からしてみると、他の情報に乏しい受診者のX線フィルムのみを短時間の間に大量に読影しなければならないこと、健康診断の目的としても、明らかな異常影が発見されれば足りるものであること、通常の診療のように特定の疾患を疑って読影する場合とは異なる状況であることなどから、あまりに要求水準が高くなると現場に不可能を強いることとなりますし、本件において被告が主張しているように何でもかんでも要精密検査にせざるを得なくなります。この健康診断の特殊性については、裁判所も一定の理解を示しており、「集団健診におけるレントゲン写真を読影する医師に課せられる注意義務は、一定の疾患があると疑われる患者について、具体的な疾患を発見するために行われる精密検査の際に医師に要求される注意義務とは、自ずから異なるというべきであって、前者については、通常の集団健診における感度、特異度及び正確度を前提として読影判断した場合に、当該陰影を異常と認めないことに医学的な根拠がなく、これを異常と認めるべきことにつき読影する医師によって判断に差異が生ずる余地がないものは、異常陰影として比較読影に回し、再読影して再検査に付するかどうかを検討すべき注意義務があるけれども、これに該当しないものを異常陰影として比較読影に回すかどうかは、読影を担当した医師の判断に委ねられており、それをしなかったからといって直ちに読影判断につき過失があったとはいえないものと解するのが相当である」(仙台地判平成8年12月16日 判タ950号212頁)としたものや、傍論ではありますが、最高裁においても「多数者に対して集団的に行われるレントゲン健診における若干の過誤をもつて直ちに対象者に対する担当医師の不法行為の成立を認めるべきかどうかには問題がある」(最判昭和57年4月1日 民集36巻4号519頁)などと一般の診療とは異なる医療水準で判断すべきと判示しています。しかし、本判決は、同様に定期健康診断において読影に求められる医療水準は通常診療におけるそれとは異なるとしたものの、ひとたび医師が異常陰影を認め、前年度の写真と比較読影すると判断した段階においては、求められる医療水準は、もはや集団健診時のものではなく、通常の診療と同等のものが求められると判示しました。確かに、健康診断における胸部X線写真の読影に求められる医療水準を2段階でとらえる裁判所の考え方は一見妥当なようにみえます。しかし、このような厳しい判決の結果、実医療現場において、従来なら比較読影の結果、「著変なし。経過観察」としていた事例が「要精密検査」とされることが増加し、本来ならば不要な検査が行われるなど、萎縮医療・過剰診療が行われるようになりました。そもそも、胸部X線撮影による肺がん検診によって、肺がんによる死亡率は減少しないという報告がなされるなど、検診自体の有効性にも疑問が呈されています。そのような中、健康診断に対する国民の「期待感」を過剰に保護することは、バランスを失することとなるのではないでしょうか。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)富山地判平成6年6月1日 判時1539号118頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。仙台地判平成8年12月16日 判タ950号212頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。最判昭和57年4月1日 民集36巻4号519頁

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低線量CTによる検診は肺がん死を減少させうるか(コメンテーター:小林 英夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(121)より-

本論文は、2011年に発表されたAmerican National Lung cancer Screening Trial(NLST)、N Engl J Med. 2011; 365: 395-409の追加解析報告である。2011年報告は5万名以上という大規模集団での比較試験であり、低線量CT検診により20%の肺癌死亡減少効果が示されたエビデンスレベルの高い研究であった。続編としての本報告は、対象集団を保有リスク別に5群分別し、群毎の肺がん死抑制効果を解析している。結果はある意味予測通り、リスクの高い群ほど肺がん死減少効果が高く、低リスク群では減少効果も少ないというものとなった。結論として、肺がんの低線量CT検診は高リスク群(喫煙経験者)において、より高率に肺がん死を抑制できることが示された。 以下、肺がん検診に直接関わっていない医師に向けて解説したい。 検診によって疾患の早期発見を目指すことが望ましいという概念は当然のことと思われていたが、30年前と20年前に、胸部X線撮影による検診では、発見数は増えても肺がん死を減少させられないという衝撃的な論文が登場した(Mayo Lung Project, Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian(PLCO)Cancer Screening Trial)。本邦の検診とは精度やシステムが大きく異なるものの、その後も欧米ではほぼ既成事実ととらえられている(Oken MM et al. JAMA. 2011; 306: 1865-1873.)。一方本邦では現在も、精度管理が適切に遵守できれば胸部X線による肺がん検診は推奨できると考えられている(http://canscreen.ncc.go.jp/pdf/guideline/guide_lung070111.pdf)。ただし、適切に管理できていない検診が実施されていることも事実であり、現場運営での問題点として指摘されている。 それならば、X線撮影に比し、より病変検出力が高いCTならば肺がん死を減じられるかどうかが新たな検討事項となった。すでにいくつもの報告がなされており、2013年7月にU.S. Preventive Services Task Force(USPFTS)が発表した肺がん検診draftも、このNLST研究の結果を主に反映して、低線量CTの有効性はほぼ認められてきている。とはいえ、コストや放射線被曝量といった問題点も存在することから、対策型検診(住民検診など)への安易な導入が直ちに推奨できないこと、また本邦ではどのように運営すべきかなどは未解決である。 検診には疑陽性者への過剰介入といった不利益も伴うため、不適切な検診は有害であるとも極論される。本邦では肺がんCT検診認定機構がCT検診に備えた人材育成を、日本CT検診学会がガイドラインを公表し、将来に向けた研究と準備が開始されている。

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低線量CT検診、高リスク者の肺がん死予防に有効/NEJM

 肺がんの低線量CT検診は、リスクが最も高い集団における肺がん死の予防に有効だが、低リスク集団では予防効果が低いことが、全米肺検診試験(NLST)で示された。米国・国立がん研究所のStephanie A Kovalchik氏らが、NEJM誌オンライン版2013年7月18日号で報告した。NLSTではすでに、低線量CTは胸部X線による検診に比べ、喫煙経験のある中高年者における肺がん死を20%抑制することが示されているが、肺がん死のリスク別の検討は行われていなかった。リスク別の死亡率を五分位法で解析 NLSTの研究グループは、今回、肺がん死のリスク別の低線量CT検診の有用性を、従来の胸部X線検診と比較する無作為化試験を実施した。対象は、年齢55~74歳で、30 pack-years以上の喫煙者および禁煙後15年以内の元喫煙者であった。 5年肺がん死の推定リスクを五分位法で以下のように層別化し、各群における2002年8月~2009年1月15日の肺がんによる死亡率を解析した。第1五分位群(Q1、最低リスク群):0.15~0.55%、第2五分位群(Q2):0.56~0.84%、第3五分位群(Q3):0.85~1.23%、第4五分位群(Q4):1.24~2.00%、第5五分位群(Q5、最高リスク群):>2.00%。1万人年当たりの予防数、最低リスク群0.2 vs 最高リスク群12.0 5万3,158例が登録され、低線量CT検診群に2万6,604例、胸部X線検診群には2万6,554例が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は5.5年。 肺がん死数は低線量CT検診群が354例、胸部X線検診群は442例で、1万人年当たりの死亡数はそれぞれ24.6、30.9(率比:0.80、95%信頼区間[CI]:0.69~0.92、p=0.001)、低線量CT検診群における肺がん死の減少数は6.3/1万人年(95%CI:2.4~10.1、p=0.001)であった。 胸部X線検診群との比較における低線量CT検診群の1万人年当たりの肺がん死予防数は、肺がん死リスクが高くなるに従って上昇した(Q1:0.2、Q2:3.5、Q3:5.1、Q4:11.0、Q5:12.0、傾向p=0.01)。 検診で予防された肺がん死の偽陽性数(利益・不利益比)は、肺がん死リスクが高い群ほど低下した(Q1:1,648、Q2:181、Q3:147、Q4:64、Q5:65、傾向p<0.001)。 肺がん死リスクが高い上位60%(Q3~Q 5)が、検診で予防された肺がん死の88%を占め、偽陽性の64%を占めた。肺がん死リスクが最も低い20%(Q1)では、検診による肺がん死予防率は1%にすぎなかった。 著者は、「これらの知見は、リスク評価に基づいて喫煙者に的を絞った肺がん検診法の有用性を実証的に支持するもの」と指摘している。

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特発性間質性肺炎の経過中に肺がんを見落としたケース

呼吸器最終判決判例タイムズ 1739号124-129頁概要息切れ、呼吸困難を主訴に総合病院を受診し、特発性間質性肺炎、連発型心室性期外収縮などと診断された75歳男性。当初、右肺野に1.5cmの結節陰影がみられたが、炎症瘢痕と診断して外来観察を行っていた。ところが初診から6ヵ月後、特発性間質性肺炎の急性増悪を契機に施行した胸部CTで右肺野の結節陰影が4cmの腫瘤陰影に増大、骨転移を伴う肺小細胞がんでステージIVと診断された。特発性間質性肺炎の急性増悪に対してはステロイドパルス療法などを行ったが、消化管出血などを合併して全身状態は悪化、治療の効果はなく初診から7ヵ月後に死亡した。詳細な経過患者情報75歳男性、1日30本、50年の喫煙歴あり経過1994年3月29日息切れ、呼吸困難、疲れやすいという主訴で某総合病院循環器科を受診。医学部卒業後1年の研修医が担当となる。胸部X線写真:両肺野の微細な網状陰影呼吸機能検査:拘束性換気障害心電図検査:二段脈と不完全右脚ブロック血液検査:肝・胆道系の酵素上昇、腫瘍マーカー陰性4月5日胸部CTスキャン:肺野末梢および肺底部に強い線維性変化、蜂窩状陰影。続発性の肺気腫と嚢胞、右肺の胸膜肥厚。なお、右肺下葉背側(segment 6)に1.0×1.5cmの結節陰影が認められたが、炎症後の瘢痕と読影。慢性型の特発性間質性肺炎と診断した腹部CTスキャン:異常なし4月6日ホルター心電図:連発型の非持続性心室性期外収縮があり、抗不整脈薬を投与開始。以後胸部については追加検査されることはなく、外来通院が続いた11月頃背部痛、腰痛、全身倦怠感を自覚。12月8日息苦しさと著しい全身倦怠感が出現したため入院。胸部X線写真、胸部CTスキャンにより、右肺下葉背側に4.0×3.0cmの腫瘤陰影が確認された(半年前の胸部CTスキャンで炎症瘢痕と診断した部分)。諸検査の結果、特発性間質性肺炎に合併した肺小細胞がん、骨転移を伴うステージIVと診断した。12月20日特発性間質性肺炎が急性増悪し、ステロイドパルス療法施行。ところが消化管出血を合併し、全身状態が急速に悪化。1995年1月13日特発性間質性肺炎の悪化により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.特発性間質性肺炎に罹患したヘビースモーカーの患者に、胸部CTスキャンで結節性陰影がみつかったのであれば、肺がんを念頭においた精密検査を追加するべきであった2.肺がんのような重大な疾患を経験の浅い医師が受け持つのであれば、経験豊かな医師が指導するなど十分なバックアップ体制をとる注意義務があった病院側(被告)の主張1.精密検査ができなかったのは、原告が健康保険に加入していなかったので高い診療費を支払うことができなかったためである2.死因は特発性間質性肺炎の急性増悪であり、肺がんは関係ない。たとえ初診時に肺がんの診断ができていたとしても、延命の可能性は低かった裁判所の判断1.診察当初の胸部CTスキャンで結節性陰影がみつかり、喫煙歴が1日30本、約50年というヘビースモーカーであり、慢性型の特発性間質性肺炎と診断し、肺がんがその後半年間発見されなかったという診断ミスがあった2.直接死因は特発性間質性肺炎の急性増悪であり、肺小細胞がんが直接寄与したとはいえない。しかし、早期に肺小細胞がんの確定診断がつき、化学療法を迅速に行っていれば、たとえ特発性間質性肺炎が急性増悪を来してもステロイドの治療効果や胃潰瘍出血などの副作用も異なった経過をたどり、肺小細胞がんの治療も特発性間質性肺炎の治療も良好に推移したと考えられ、少なくとも約半年長く生存できたはずである。したがって、原告の精神的苦痛に対する慰謝料を支払うべきである原告側2,200万円の請求に対し、550万円の支払命令考察今回の事件は、ある地方の基幹病院で発生しました。ご遺族にとってみれば、信頼できるはずの大病院に半年間も通院していながら、いきなり「がんの末期で治療のしようがない」と宣告されたのですから、裁判を起こそうという気持ちも十分に理解できると思います。それに対し病院側は、たとえ最初からがんと診断しても死亡とは関係はなかった、それよりも、きちんと国民健康保険に加入せず治療費が高いなどと文句をいうので、胸部CTスキャンなどの高額な検査はためらわれた、と反論しましたが、裁判官には受け入れられず「病院側の注意義務違反」として判決は確定しました。あとから振り返ってみると、多くの先生方は「このような肺がんハイリスクの患者であれば、診断を誤ることはない」という印象を持たれたと思いますが、やはり原点に返って、どうすれば最初から適切な診断ができたのか、そして、その後の定期外来通院中になぜ肺がん発見には至らなかったのか、などについて考えてみたいと思います。1. 研修医もしくは若手医師の指導今回当事者となったドクターは、医学部を卒業後1年、そして、当該病院に勤務してから3ヵ月しか経過していない研修医でした。このような若いドクターが医師免許を取得して直ぐに医事紛争に巻き込まれ、裁判所に出廷させられるなどということは、できる限り避けなければなりませんが、今回の背景には、指導医の監督不十分、そして、当事者のドクターにも相当な思い込みがあったのではないかと推測されます。おそらく、当初の胸部CTスキャンで問題となった「右肺下葉背側(segment 6)に1.0×1.5cmの結節陰影」というのは、放射線科医が作成したレポートをこの研修医がそのまま信用し、結節=炎症瘢痕=がんではない、と半ば決めつけていたのだと思います。しかし、通常であれば「要経過観察」といった放射線科医のコメントがつくはずですから、最初につけた診断だけで安心せず、次項に述べるようなきちんとした外来観察計画を立てるべきであったと思います。そして、指導医も、卒後1年しか経過していないドクターを一人前扱いとせずに、新患のケースでその後も経過観察が必要な患者には、治療計画にも必ず関与するようにするべきだと思います。従来までの考え方では、このような苦い経験を踏まえて一人前の医師に育っていくので、最初から責任を負わせるようにしよう、とされていることが多いと思いますし、実際に多忙をきわめる外来診療で、そこまで指導医が配慮するというのも困難かもしれません。しかし、今回のような医師同士のコミュニケーション不足が原因で紛争に発展する事例があるのも厳然たる事実ですから、個人の力だけでは防ぎようのない事故については、組織のあり方を変更して取り組むべきだと思います。2. 定期的な外来観察計画上気道炎の患者さんなど短期間の治療で終了するようなケースを除いて、慢性・進行性疾患、場合によっては生命を脅かすような病態に発展することのある疾患については、初期の段階から外来観察計画を取り決めておく必要があると思います。たとえば、今回のような特発性間質性肺炎であれば(肺がんの合併が約20%と高率なので)胸部X線写真は6ヵ月おきに必ずとる、血液ガス検査は毎月、血算・生化学検査は2ヵ月おきに調べよう、などといった具合です。一度でも入院治療が行われていれば、退院後の外来通院にも配慮することができるのですが、ことに今回の症例のようにすべて外来で診ざるを得なかったり、複数の医師が関わるケースでは、なおさら「どのような治療方針でこの患者を診ていくのか」という意思決定を明確にしておかなければなりません。そして、カルテの見やすいところに外来観察計画をはさんでおくことによって、きちんと患者さんをフォローできるばかりか、たとえ医事紛争に巻き込まれても、「適切な外来管理を行っていた」と判断できる重要な証拠となります。今回の症例は、やりようによっては最初から肺がん合併を念頭においた外来観察をできたばかりか、けっして軽い病気とはいえない特発性間質性肺炎の経過観察を慎重に行うことで、結果が悪くても医事紛争にまでは至らなかった可能性も考えられます。裁判官の判断は、「がんが発見されていれば別の経過(=特発性間質性肺炎の急性増悪も軽くすんだ?)をたどったかもしれない」ことを理由に、たいした根拠もなく「半年間は延命できた」などという判決文を書きました。しかし、一般に特発性間質性肺炎の予後は悪いこと、たとえステロイドを使ったとしても劇的な効果は期待しにくいことなどの医学的事情を考えれば、「半年間は延命できた」とするのはかなり乱暴な考え方です。結局、約半年も通院していながら末期になるまでがんをみつけることができなかったという重大な結果に着目し、精神的慰謝料を支払え、という判断に至ったのだと思います。呼吸器

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分子標的薬による皮膚障害対策~皮膚科とがん治療専門科との連携

がん治療における分子標的薬は、高い治療効果が得られる一方、皮膚障害への対応が必要となる薬剤が少なくない。分子標的薬による皮膚障害は治療効果に相関することから、皮膚障害をコントロールしながら治療を継続することが重要である。そのため、皮膚科とがん治療専門科との連携が求められるが、その取り組みはまだ手探り状態といえる。第112回日本皮膚科学会総会(2013年6月14~16日、横浜)では、「皮膚科と腫瘍内科、最良の連携体制を模索する」と題した皮膚科と腫瘍内科のジョイントセミナーが開催された(共催:第112回日本皮膚科学会総会/特定非営利活動法人JASMIN、後援:日本臨床腫瘍学会)。座長は東京女子医科大学皮膚科学教授 川島 眞氏と和歌山県立医科大学第三内科学教授 山本信之氏で、皮膚科医、腫瘍内科医、看護師によるパネルディスカッション形式で行われた。その内容をレポートする。分子標的薬の登場により皮膚障害のマネージメントとチーム医療が重要に座長の川島氏は、ケアネット会員の皮膚科医を対象に行ったインターネットによるアンケート調査の結果から、「第一線の皮膚科医は限られた情報のなかで分子標的薬による皮膚障害の診療に日常的に取り組んでおり、分子標的薬の皮膚障害に対し主体的に取り組もうとする意識の高さもうかがえる」と考察した。さらに、「今後、診療科間あるいは病診連携などの課題を解決しながら、分子標的薬を用いたがん治療を支えるために皮膚科医の果たすべき役割は大きい」と述べ、その役割の提示やこれらの治療に携わる皮膚科医が必要と指摘した。同じく座長の山本氏は、腫瘍内科医として、まず、皮膚科医に向けてがんのチーム医療へのより積極的な参画を呼びかけた。山本氏が専門とする肺がん治療においては、EGFR(上皮成長因子受容体)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)はいまや欠かせないキードラッグとなっているが、その一般的な有害事象に皮疹がある。従来は薬剤による皮疹は中毒疹であり、その時点で治療を中断することになるが、EGFR-TKIは皮疹が強いほどがんに対する治療効果が高いため、皮疹を上手にマネージメントしながら治療を継続することが、治療効果を高める一番の方策である。さらに、わが国でも承認申請が予定されている第2世代EGFR-TKIのアファチニブでは、グレード3以上の皮疹の発現率が第1世代EGFR-TKIより高く、さらに、日中韓で実施した臨床試験において日本における重症の皮疹の発現率がとりわけ高かったことから、今まで以上に皮疹のマネージメントが重要になってくる。そのためにも、がんのチーム医療、とくに分子標的薬による治療に関しては皮膚科医の積極的な参画が必要であると、山本氏は強調した。がん治療専門施設での皮膚障害に対する取り組みパネリストからは、まず、国立病院機構四国がんセンター消化器内科医長 仁科智裕氏から、大腸がん治療においても分子標的薬をうまく使いこなすことが予後の改善につながること、抗EGFR抗体による皮膚障害は治療効果と相関するため、治療継続には皮膚障害のコントロールが重要であることが提示された。仁科氏らが実施している小規模なチームカンファレンスは、消化器内科医、形成外科医、皮膚科医、薬剤師、看護師、病理科、医療ソーシャルワーカーで構成している。しかしながら、四国がんセンターには皮膚科がないため、愛媛大学の皮膚科医師に週1回(現在は2週に1回)参加してもらい、皮膚障害の悪化時に対処を依頼しているという。愛媛県は、通院のための交通の利便性が悪く、患者さんが皮膚障害でつらい場合でも受診が難しい。仁科氏は、患者さんのために皮膚科とがん治療専門施設が連携し、よりよいがん治療を患者さんに提供できる環境が必要と指摘した。副作用メモを作成し、症状をマネージメント副作用のマネージメントには、両科の医師間のみならず看護師など医療スタッフとの連携も重要となる。静岡県立静岡がんセンター通院治療センターの看護師である小又美重子氏は、自施設で行っている副作用に対する取り組みについて紹介した。小又氏らは、消化器内科医、皮膚科医、薬剤師、看護師でチームを組み、大腸がんにおける抗EGFR抗体による副作用に対して、それぞれの重症度を具体的な症状で表現した副作用メモを作成している。患者さんの症状に合わせた薬剤を選択して症状をコントロールしているが、症状が治まったあとも再燃の可能性があるため、毎回、症状を丁寧に見ることを意識しているという。また、皮膚障害が悪化し、腫瘍内科医だけでは対応できない場合には皮膚科医に協力を依頼しているが、看護師に症状がつらいとの訴えがあったときには、直接、看護師から皮膚科医に連絡をとり症状マネージメントができる体制をとっていることも紹介した。皮膚科医間、腫瘍内科医、看護師らとの情報交換・役割分担が重要当初は皮疹の原因となっている薬剤名すらわからず、治療に苦慮した経験を持つ岡山大学大学院医歯薬学研究科皮膚科学助教 白藤宜紀氏は、自身の皮膚障害に対する取り組みや自院における経験から、役割分担の重要性を指摘した。分子標的薬が上市された当初、抗がん剤メーカーから皮膚科医に対して十分な説明がなく治療開始時に知識が不足していたため、白藤氏は積極的に文献を収集し、できるだけ多くの患者さんを診察して経験を積んだという。その結果、白藤氏自身は治療選択に迷うことが少なくなったが、他の皮膚科医の診療経験の機会を減少させることになり、皮膚科医の間で治療にバラツキが出てしまった。そのため、皮膚科医間で積極的に情報を共有するようにしたとのこと。また、腫瘍内科(外科)医、看護師、皮膚科医における情報交換や、院内の治療マニュアルやスキンケアマニュアルの作成により、軽症の皮膚障害の対処は看護師や腫瘍内科医で行えるようになり、現在は、比較的重症な場合のみ皮膚科で対処するようになったとのことである。これらの経験から、白藤氏は、皮膚科医が分子標的薬治療に積極的に関わるためには、多数の患者さんの治療に積極的に関わることも重要だが、皮膚科医間、腫瘍内科医、看護師らと情報交換を行い役割分担することが重要と述べた。さらに、「抗がん剤メーカーに対して、がん治療専門医だけでなく皮膚科医にも院内導入前に情報を十分提供するように訴えていくことが必要」とコメントした。皮膚科は腫瘍内科から何を期待されているか?旭川医科大学皮膚科学教授 飯塚 一氏は、同大で分子標的薬による治療が開始された当初、腫瘍内科と連携し皮膚障害のほとんどの症例においてコンサルテーションを行っていた。飯塚氏は、皮膚科が腫瘍内科から期待されていることとして、治療中に出現した皮疹の評価と対処、さらに、特異疹の診断、抗腫瘍薬の血管外漏出への対処があるという。皮膚科では、分子標的薬による皮膚障害以外に、スティーブンス・ジョンソン症候群などの重症薬疹、特徴的薬疹、特徴的皮疹、悪性黒色腫などの皮膚の悪性腫瘍、膠原病、乾癬治療(生物学的製剤投与)による副作用など、診るべき皮膚疾患や症状は数多いという現状を説明しつつ、分子標的薬による皮膚障害への対応も当然のこととした。腫瘍内科医と皮膚科医から同じ説明を受けることで患者は納得ディスカッションにおいて、飯塚氏は、患者さんへの説明に関して、「皮膚障害について腫瘍内科医と皮膚科医から同じ説明をされると患者さんの納得度が違う。同じ内容を両者から説明することは大事ではないか」と指摘した。川島氏も「皮膚科医が腫瘍内科医と異なる説明を行うことは不信感につながる」と述べ、さらに「分子標的薬による皮膚障害の診療経験がない皮膚科医は、分子標的薬を中止させていることもあるのではないか。実地医家の皮膚科医に広く対処方法などの情報が届けられていないことが問題だが、どうすれば情報伝達できるか」と課題を提起し、「皮膚科学会としても対策を検討する必要がある。今後、日本臨床腫瘍学会と連携してこの課題に対応していきたい」と結んだ。

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クリゾチニブ、ALK融合遺伝子陽性進行NSCLCの2次治療として有効/NEJM

 既治療の未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、ALKのチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるクリゾチニブ(商品名:ザーコリ)は、標準的な化学療法よりも優れた有用性を持つことが、米国・マサチューセッツ総合病院のAlice T Shaw氏らの検討で示された。日本も参加した本試験の報告は、米国臨床腫瘍学会(ASCO、シカゴ市)期間中の2013年6月1日にNEJM誌オンライン版に掲載された。ALKは、NSCLC、未分化大細胞リンパ腫、小児神経芽細胞腫などのがん種で確認されているチロシンキナーゼであり、NSCLCの約5%にみられるALKの染色体再配列は肺がんの分子サブタイプに規定されている。クリゾチニブは、ALK、ROS1、METを標的とする低分子の経口TKIで、すでに2つの単群試験で優れた臨床効果が確認されている。標準的な単剤化学療法と非盲検無作為化試験で比較 研究グループは、進行NSCLCの治療におけるクリゾチニブと標準的化学療法の有用性を比較する非盲検無作為化第III相試験を行った。 対象は、プラチナ製剤ベースの化学療法による1レジメンの前治療歴があるALK融合遺伝子陽性の局所進行・転移性NSCLC患者であった。これらの患者が、クリゾチニブ(250mg)を1日2回経口投与する群または標準的な化学療法[3週を1コースとしてペメトレキセド(PEM、500mg/m2)もしくはドセタキセル(DOC、75mg/m2)を静注投与]を施行する群に無作為に割り付けられた。 化学療法群のうち病勢進行(PD)となった患者は、クリゾチニブへのクロスオーバーが許容された。主要評価項目はPFS(無増悪生存期間)であった。PFS中央値が2倍以上に延長、肺がん症状、QOLも有意に改善 2010年2月~2012年2月までに347例が登録され、クリゾチニブ群に173例(年齢中央値51歳、男性43%、PS0 42%、腺がん95%、転移性95%)、化学療法群には174例(49歳、45%、37%、94%、91%)が割り付けられた。化学療法群のうち99例(57%)にPEMが、72例(41%)にはDOCが投与された。 PFS中央値はクリゾチニブ群が7.7ヵ月と、化学療法群の3.0ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.37~0.64、p<0.001)。クリゾチニブ群のPEM群に対するPFS中央値のHRは0.59(95%CI:0.43~0.80、p<0.001)、DOC群に対するHRは0.30(95%CI:0.21~0.43、p<0.001)だった。 奏効率はクリゾチニブ群が65%であり、化学療法群の20%(PEM群29%、DOC群7%)よりも有意に良好であった(p<0.001)。全生存期間(OS)の中間解析では、両群間に有意な差は認めなかった(HR:1.02、95%CI:0.68~1.54、p=0.54)。 有害事象は、クリゾチニブ群で視覚障害(60%)、下痢(60%)、悪心(55%)、嘔吐(47%)、便秘(42%)、肝アミノトランスフェラーゼ値上昇(38%)の頻度が高く、化学療法群では悪心(37%)、疲労感(33%)、便秘(23%)、脱毛(20%)、呼吸困難(19%)が高頻度にみられた。 患者の自己申告による肺がん症状(咳嗽、呼吸困難、胸痛)の増悪までの期間中央値は、クリゾチニブ群が5.6ヵ月であり、化学療法群の1.4ヵ月に比べ有意に延長した(HR:0.54、95%CI:0.40~0.71、p<0.001)。ベースラインからのQOLの改善効果もクリゾチニブ群が化学療法群よりも良好だった(p<0.001)。 著者は、「クリゾチニブは、既治療のALK融合遺伝子陽性の進行NSCLCの治療において、標準的化学療法よりも優れた有用性を持つことが示された」と結論し、「クリゾチニブによる明確なOSの改善効果が得られなかったのは、クロスオーバーが交絡因子となっているためと考えられる」と指摘している。

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加齢黄斑変性に対するルテイン+ゼアキサンチン、オメガ3脂肪酸の効果は?/JAMA

 米国NIHのEmily Y. ChewらAge-Related Eye Disease Study(AREDS)2の研究グループは、経口サプリメント(抗酸化ビタミンCとE、βカロチンと亜鉛を含む:AREDS製剤)に加えて、ルテイン+ゼアキサンチン(カロチノイド)、ω-3長鎖不飽和脂肪酸(ドコサヘキサエン酸[DHA]+エイコサペンタエン酸[EPA])、あるいは両方を加えることで、加齢黄斑変性(AMD)の発症リスクがさらに低下するのか無作為化試験を行った。先行研究において、AREDS製剤の連日服用により、5年で25%、AMD発症リスクを抑制したことが示されていた。一方、観察研究のデータで、ルテイン+ゼアキサンチン、DHA+EPA、またはその両方を増強した食事の摂取と、AMD発症リスク低下との関連が示されており、これらをAREDS製剤に加えることの効果が検討された。JAMA誌2013年5月15日号(オンライン版2013年5月5日号)掲載の報告より。50~85歳の4,203例を対象に無作為化試験 研究グループは、(1)AREDS製剤単独と比べて、ルテイン+ゼアキサンチン、DHA+EPAをそれぞれ、または両方を加えることで、AMDの発症リスクがさらに低下するのか、さらに(2)AREDS製剤からβカロチンを除いた場合あるいは亜鉛量を低下した場合、またはその両方を行った場合の効果を調べること、を目的とし、第3相の2×2多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。 2006~2012年にかけて、50~85歳の、両眼に大型のドルーゼンがみられる、あるいは単眼に大型のドルーゼンがみられ他眼に進行期のAMDがみられる、進行期のAMDとなるリスクを有した4,203例を登録した。 被験者は、ルテイン(10mg)+ゼアキサンチン(2mg)、DHA(350mg)+EPA(650mg)、ルテイン+ゼアキサンチンとDHA+EPA、またはプラセボを投与されるよう無作為化された。さらに全員にAREDS製剤を受けたかについて質問し、βカロチン除去と低亜鉛のいずれかまたは両方を含めたAREDS製剤の4つの選択肢を含めた2回目の無作為化を行った。 主要評価項目は、単眼ごとのAMDの進行とした。各成分とも進行期のAMDへの進展を抑制せず 追跡期間中央値5年の間に、進行期AMDへの進展(AMD発症)は1,940眼(1,608例)で認められた。5年間でAMD発症が認められた割合(Kaplan-Meier分析による)は、プラセボ群31%(493眼・406例)、ルテイン+ゼアキサンチン群29%(468眼・399例)、DHA+EPA群31%(507眼・416例)、ルテイン+ゼアキサンチン+DHA+EPA群30%(472眼・387例)だった。 主要解析でのプラセボとの比較において、AMD発症が統計学的に有意に減少したことは実証されなかった(ルテイン+ゼアキサンチンのハザード比[HR]:0.90、p=0.12/DHA+EPAのHR:0.97、p=0.70、ルテイン+ゼアキサンチン+DHA+EPAのHR:0.89、p=0.10)。 AMD発症について、βカロチン除去または低亜鉛の効果も明らかにならなかった。 しかし、主に元喫煙者における肺がんの頻度が、βカロチン摂取群がβカロチン非摂取と比べて多かった[23(2.0%)対11(0.9%)、名目上のp=0.04]ことが示されたことが注目された。 これらの結果から研究グループは、「主要な解析において、AREDS製剤に対して、ルテイン+ゼアキサンチン、DHA+EPAまたはその両方の追加摂取が、進行期のAMD発症リスクをさらに抑制することはなかった」と結論。そのうえで、「元喫煙者は肺がんの潜在的発病率が高いことから、カロチンのリスクを考慮すると、代替としてルテイン+ゼアキサンチンをAREDS製剤に含めるべきか、さらに研究する必要がある」とまとめている。

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基準通り抗がん剤を投与したにもかかわらず副作用で急死した肺がんのケース

癌・腫瘍最終判決判例時報 1734号71-82頁概要息切れを主訴としてがん専門病院を受診し、肺がんと診断された66歳男性。精査の結果、右上葉原発の腺がんで、右胸水貯留、肺内多発転移があり、胸腔ドレナージ、胸膜癒着術を行ったのち、シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用化学療法が予定された。もともと軽度腎機能障害がみられていたが、初回シスプラチン、塩酸イリノテカン2剤投与後徐々に腎機能障害が悪化した。予定通り初回投与から1週間後に塩酸イリノテカンの単独投与が行われたが、その直後から腎機能の悪化が加速し、重度の骨髄抑制作用、敗血症へといたり、化学療法開始後2週間で死亡した。詳細な経過患者情報12年前から肥大型心筋症、痛風と診断され通院治療を行っていた66歳男性経過1994年3月中旬息切れが出現。3月28日胸部X線写真で胸水を確認。細胞診でclass V。4月11日精査治療目的で県立ガンセンターへ紹介。外来で諸検査を施行し、右上葉原発の肺がんで、右下肺野に肺内多発転移があり、がん性胸膜炎を合併していると診断。5月11日入院し胸腔ドレナージ施行、胸水1,500mL排出。胸膜癒着の目的で、溶連菌抽出物(商品名:ピシバニール)およびシスプラチン(同:アイエーコール)50mgを胸腔内に注入。5月17日胸腔ドレナージ抜去。胸部CTで胸膜の癒着を確認したうえで、化学療法を施行することについて説明。シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用療法を予定した(シスプラチン80mg/m2、塩酸イリノテカン60mg/m2を第1日、その後塩酸イリノテカン60mg/m2を第8日、第15日単独投与を1クールとして、2クール以上くり返す「パイロット併用臨床試験」に準じたレジメン)。医師:抗がん剤は2種類で行い、その内の一つは新薬として承認されたばかりでようやく使えるようになったものです。副作用として、吐き気、嘔吐、食欲低下、便秘、下痢などが生じる可能性があります。そのため制吐薬を投与して嘔吐を予防し、腎機能障害を予防するため点滴量を多くして尿量を多くする必要があります。白血球減少などの骨髄障害を生じる可能性があり、その場合には白血球増殖因子を投与します患者:新薬を使うといわれたが、具体的な薬品名、吐き気以外の副作用の内容、副作用により死亡する可能性などは一切聞いていない5月23日BUN 26.9、Cre 1.31、Ccr 40.63mL/min。5月25日シスプラチン80mg/m2、塩酸イリノテカン60mg/m2投与。5月27日BUN 42.2、Cre 1.98、WBC 9,100、シスプラチンによる腎機能障害と判断し、輸液と利尿薬を継続。6月1日BUN 74.1、Cre 2.68、WBC 7,900。主治医は不在であったが予定通り塩酸イリノテカン60mg/m2投与。医師:パイロット併用臨床試験に準じたレジメンでは、スキップ基準(塩酸イリノテカンを投与しない基準)として、「WBC 3,000未満、血小板10万未満、下痢」とあり、腎機能障害は含まれていなかったので、予定通り塩酸イリノテカンを投与した。/li>患者:上腹部不快感、嘔吐、吃逆、朝食も昼食もとれず、笑顔はみせるも活気のない状態なのに抗がん剤をうたれた。しかもこの日、主治医は学会に出席するため出張中であり、部下の医師に申し送りもなかった。6月3日BUN 67.5、Cre 2.55、WBC 7,500、吐き気、泥状便、食欲不振、血尿、胃痛が持続。6月6日BUN 96.3、Cre 4.04、WBC 6,000、意識レベルの低下および血圧低下がみられ、昇圧剤、白血球増殖因子、抗菌薬などを投与したが、敗血症となり病態は進行性に悪化。6月8日懸命の蘇生措置にもかかわらず死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用投与当時は副作用について十分な知識がなく、しかも抗がん剤使用前から腎機能障害がみられていたので、腎毒性をもつシスプラチンとの併用療法はするべきではなかった2.塩酸イリノテカンの再投与塩酸イリノテカン再投与前は、食欲がなく吐き気が続き、しかも腎機能が著しく低下していたので、漫然と再投与を行ったのは過失である。しかも、学会に出席していて患者の顔もみずに再投与したのは、危険な薬剤の無診察投与である2.インフォームドコンセント塩酸イリノテカン投与に際し、単に「新しい薬がでたから」と述べただけで、具体的な薬の名前、併用する薬剤、副作用、死亡する可能性などについては一切説明なく不十分であった。仮にカルテに記載されたような説明がなされたとしても、カルテには承諾を得た旨の記載はない病院側(被告)の主張1.シスプラチンと塩酸イリノテカンの併用投与シスプラチン、塩酸イリノテカンはともに厚生大臣(当時)から認可された薬剤であり、両者の併用療法は各臨床試験を経て有用性が確認されたものである。抗がん剤開始時点において、腎機能は1/3程度に低下していたが、これは予備能力の低下に過ぎず、併用投与の禁忌患者とされる「重篤な腎障害」とはいえない2.塩酸イリノテカンの再投与塩酸イリノテカン研究会の臨床試験実施計画書によれば、2回目投与予定日に「投与しない基準」として白血球数の低下、血小板数の低下、下痢などが記載されているが、本件はいずれにも該当しないので、腎機能との関係で再投与を中止すべき根拠はない。なお当日は学会に出席していたが、同僚の呼吸器内科医師に十分な引き継ぎをしている2.インフォームドコンセント医師は患者や家族に対して、詳しい説明を行っても、特段の事情がない限りその要旨だけをカルテに記載し、また、患者から承諾を得てもその旨を記載しないのが普通である裁判所の判断1. 腎機能悪化の予見可能性抗がん剤投与前から腎機能障害が、シスプラチンの腎毒性によって悪化し、その状態で塩酸イリノテカンの腎毒性によりさらに腎機能が悪化し、骨髄抑制作用が強く出現して死亡した。もし塩酸イリノテカンを再投与していなければ、3ヵ月程度の余命が期待できた。2. 塩酸イリノテカンの再投与塩酸イリノテカン再投与時、腎機能は併用療法によって確実に悪化していたため、慎重に投与するかあるいは腎機能が回復するまで投与を控えるべきであったのに、引き継ぎの医師に対して細かな指示を出すことなく、主治医は学会に出席した。これに対し被告はスキップ基準に該当しないことを理由に再投与は過失ではないと主張するが、そもそもスキップ基準は腎機能が正常な患者に対して行われる併用療法に適用されるため、投与直前の患者の各種検査結果、全身状態、さらには患者の希望などにより、柔軟にあるいは厳格に解釈する必要があり、スキップ基準を絶対視するのは誤りである。3. インフォームドコンセント被告は抗がん剤の副作用について説明したというが、診療録には副作用について説明した旨の記載はないこと、副作用の説明は聞いていないという遺族の供述は一致していることから、診療録には説明した内容のすべてを記載する訳ではないことを考慮しても、被告の供述は信用できない。原告側合計2,845万円の請求に対し、536万円の判決考察本件のような医事紛争をみるにつけ、医師と患者側の認識には往々にしてきわめて大きなギャップがあるという問題点を、あらためて考えざるを得ません。まず医師の立場から。今回の担当医師は、とてもまじめな印象を受ける呼吸器内科専門医です。本件のような手術適応のない肺がん、それも余命数ヵ月の患者に対し、少しでも生存期間を延ばすことを目的として、平成6年当時認可が下りてまもない塩酸イリノテカンとシスプラチンの併用療法を考えました。この塩酸イリノテカンは、非小細胞肺がんに効果があり、本件のような腺がん非切除例に対する単独投与(第II相臨床試験;初回治療例)の奏効率は29.8%、パイロット併用試験における奏効率は52.9%と報告されています。そこで医師としての良心から、腫瘍縮小効果をねらって標準的なプロトコールに準拠した化学療法を開始しました。そして、化学療法施行前から、BUN 26.9、Cre 1.31、クレアチニンクリアランスが40.63mL/minと低下していたため、シスプラチンの腎毒性を考えた慎重な対応を行っています。1回目シスプラチンおよび塩酸イリノテカン静注後、徐々に腎機能が悪化したため、投与後しばらくは多めの輸液と利尿薬を継続しました。その後腎機能はBUN 74.1、Cre 2.68となりましたが、初回投与から1週間後の2回目投与ではシスプラチンは予定に入らず塩酸イリノテカンの単独投与でしたので、その当時シスプラチン程には腎毒性が問題視されていなかった塩酸イリノテカンを投与することに踏み切りました。もちろん、それまでに行われていたパイロット併用試験におけるスキップ基準には、白血球減少や血小板減少がみられた時は化学療法を中止しても、腎障害があることによって化学療法を中止するような取り決めはありませんでした。したがって、BUN 74.1、Cre 2.68という腎機能障害をどの程度深刻に受け止めるかは意見が分かれると思いますが、臨床医学的にみた場合には明らかな不注意、怠慢などの問題を指摘することはできないと思います。一方患者側の立場では、「余命幾ばくもない肺がんと診断されてしまった。担当医師からは新しい抗がん剤を注射するとはいわれたが、まさか2週間で死亡するなんて夢にも思わなかったし、副作用の話なんてこれっぽっちも聞いていない」ということでしょう。なぜこれほどまでに医師と患者側の考え方にギャップができてしまったのでしょうか。さらに、死亡後の対応に不信感を抱いた遺族は裁判にまで踏み切ったのですから、とても残念でなりません。ただ今回の背景には、紛争原因の一つとして、医師から患者側への「一方通行のインフォームドコンセント」が潜在していたように思います。担当医師はことあるごとに患者側に説明を行って、予後の大変厳しい肺がんではあるけれども、できる限りのことはしましょう、という良心に基づいた医療を行ったのは間違いないと思います。そのうえで、きちんと患者に説明したことの「要旨」をカルテに記載しましたので、「どうして間違いを起こしていないのに訴えられるのか」とお考えのことと思います。ところが、説明したはずの肝心な部分が患者側には適切に伝わらなかった、ということが大きな問題であると思います(なお通常の薬剤を基準通り使用したにもかかわらず死亡もしくは後遺障害が残存した時は、医薬品副作用被害救済制度を利用できますが、今回のような抗がん剤には適用されない取り決めになっています)。もう一つ重要なのは、判決文に「患者の希望を取り入れたか」ということが記載されている点です。本件では抗がん剤の選択にあたって、「新しい薬がでたから」ということで化学療法が始まりました。おそらく、主治医はシスプラチンと塩酸イリノテカンの併用療法がこの時点で考え得る最良の選択と信じたために、あえて別の方法を提示したり、個々の医療行為について患者側の希望を聞くといった姿勢をみせなかったと思います。このような考え方は、パターナリズム(父権主義:お任せ医療)にも通じると思いますが、近年の医事紛争の場ではなかなか受け入れがたい考え方になりつつあります。がんの告知、あるいは治療についてのインフォームドコンセントでは、限られた時間内に多くのことを説明しなければならないため、どうしても患者にとって難解な用語、統計的な数字などを用いがちだと思います。そして、患者の方からは、多忙そうな医師に質問すると迷惑になるのではないか、威圧的な雰囲気では言葉を差し挟むことすらできない、などといった理由で、ミスコミュニケーションに発展するという声をよく聞きます。中には、「あの先生はとても真剣な眼をして一生懸命話してくれた。そこまでしてくれたのだからあの先生にすべてを託そう」ですとか、「いろいろ難しい話があったけれども、最後に「私に任せてください」と自信を持っていってくれたので安心した」というやりとりもありますが、これほど医療事故が問題視されている状況では、一歩間違えると不毛な医事紛争へと発展します。こうした行き違いは、われわれすべての医師にとって遭遇する可能性のあるリスクといえます。結局は「言った言わないの争い」になってしまいますが、やはり患者側が理解できる説明を行うとともに、実際に患者側が理解しているのか確かめるのが重要ではないでしょうか。そして、カルテを記載する時には、いつも最悪のことを想定した症状説明を行っていること(本件では抗がん剤の副作用によって死亡する可能性もあること)がわかるようにしておかないと、本件のような医事紛争を回避するのはとても難しくなると思います。癌・腫瘍

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COPDの重症度と冠状動脈疾患との関係は?

 長期間の喫煙歴があるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者ではCACS(冠動脈カルシウムスコア)が高くなることが認められたが、COPDの重症度と冠動脈カルシウムスコアとの間に相関関係は認められないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のThomas Rasmussen氏らによって報告された。European heart journal cardiovascular Imaging誌オンライン版2013年5月2日号の掲載報告。 冠動脈疾患(CAD)はCOPD患者において、最も頻度の高い死因であることが報告されているが、COPDの重症度とCADとの関係については明確ではなかった。 本研究は長期間の喫煙歴があった患者を対象に、COPDの有無や重症度と冠動脈カルシウム沈着の量(冠動脈疾患や心臓リスクの指標となる)がどのように関係しているのかを調べることを目的とした横断研究である。 デンマークの肺がんスクリーニング試験から、無症候性のCADで長期間の喫煙歴を有する患者を抽出し、GOLD(the Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)の基準により、肺機能のステージ分類を行った。無症候性のCADと心臓リスクの指標となる冠動脈カルシウム沈着はマルチスライスCTとCACSによって評価された。 対象患者はCACSにより5つの群に分類された。対象患者1,535例のうち、41%が非COPD、28%が軽度、31%が中等度から重度のCOPDであった。年齢、性別、高血圧、脂質異常症、喫煙の継続による多変量解析で、COPDの重症度とCACSとの関連を検討した。 この結果、非COPD患者に対する軽度のCOPD患者、中等度から重度のCOPD患者のオッズ比はそれぞれ1.28(1.01~1.63) 、1.32(1.05~1.67)であった。

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第14回 添付文書 その3:抗がん剤副作用訴訟の最高裁判所判決を読み解く!

■今回のテーマのポイント1.添付文書の記載が適切かを判断する際には、(1)副作用の程度及び頻度、(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力、(3)添付文書の記載内容について検討する。また、この3つの要因間には相関関係があると考えられる2.医薬品に対する医療界と司法との認識には、なお相当のギャップがある。今後も積極的かつ持続的な情報公開、相互理解が必要である3.本件最高裁判決は、企業側が勝訴したものの、5名中3名の裁判官が抗がん剤の副作用被害についても副作用被害救済を行うべきと意見している。ドラッグ・ラグの加速や萎縮医療が生じないよう速やかに抗がん剤を対象除外医薬品から外すべきと考えるindex最高裁判決をレビューする各裁判官の補足意見を検討する裁判例のリンク最高裁判決をレビューする第13回で取り扱ったイレッサ(一般名:ゲフィチニブ)訴訟の最高裁判所(以下、最高裁)判決が4月12日に出されました。結果は、裁判官全員一致で製薬企業側の勝訴となりました。ただ、全裁判官から補足意見が出されており、本件問題に対する司法の逡巡が見て取れます。今回は、すこし趣を変えて最高裁判決および補足意見を丁寧にみていきたいと思います。また、同時に法律家がどのように判断していくのかもご理解いただけたらと考えています。まずは、最高裁判決をみてみましょう。「医薬品は、人体にとって本来異物であるという性質上、何らかの有害な副作用が生ずることを避け難い特性があるとされているところであり、副作用の存在をもって直ちに製造物として欠陥があるということはできない。むしろ、その通常想定される使用形態からすれば、引渡し時点で予見し得る副作用について、製造物としての使用のために必要な情報が適切に与えられることにより、通常有すべき安全性が確保される関係にあるのであるから、このような副作用に係る情報が適切に与えられていないことを一つの要素として、当該医薬品に欠陥があると解すべき場合が生ずる。そして、前記事実関係によれば、医療用医薬品については、上記副作用に係る情報は添付文書に適切に記載されているべきものといえるところ、上記添付文書の記載が適切かどうかは、(1)上記副作用の内容ないし程度(その発現頻度を含む)、(2)当該医療用医薬品の効能又は効果から通常想定される処方者ないし使用者の知識及び能力、(3)当該添付文書における副作用に係る記載の形式ないし体裁等の諸般の事情を総合考慮して、上記予見し得る副作用の危険性が上記処方者等に十分明らかにされているといえるか否かという観点から判断すべきものと解するのが相当である」(( )番号は原文なし、筆者による加筆。以下同様)判決はいわゆる法的三段論法によって書かれます。すなわち、まず、抽象的に記載されている法律を具体的事例に対する法規範となるよう解釈します(大前提)(図1)。図1 法的三段論法画像を拡大する本判決では、まず、「製造物責任法2条2項:この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう」における「欠陥」(当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること)とは、医療用医薬品については、どのように解釈すべきかが示されています。本判決では、医療用医薬品においても製造物責任法(PL法)が適用されることを前提として、医療用医薬品における「欠陥」の一つの類型として、引渡し時点で予見しうる副作用について、(1)副作用の程度及び頻度(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力(3)添付文書の記載内容等を総合的に考慮して、医薬品を安全に使用するための情報が処方者に十分明らかにされていないことがあると判示しています。製造物責任法2条2項と見比べていただければ、最高裁が条文に忠実に法解釈をしていることがわかると思います。そして、次にこの大前提に本件事実が該当するか否かを判断します(小前提(あてはめ))。本判決では、下記のように判示し、本事案は欠陥の要件に該当しないことから欠陥があるとはいえない(結論)としました。「前記事実関係によれば、(1)本件輸入承認時点においては、国内の臨床試験において副作用である間質性肺炎による死亡症例はなく、国外の臨床試験及びEAP副作用情報における間質性肺炎発症例のうち死亡症例にイレッサ投与と死亡との因果関係を積極的に肯定することができるものはなかったことから、イレッサには発現頻度及び重篤度において他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用が存在するにとどまるものと認識され、(3)被上告人は、この認識に基づき、本件添付文書第1版において、「警告」欄を設けず、医師等への情報提供目的で設けられている「使用上の注意」欄の「重大な副作用」欄の4番目に間質性肺炎についての記載をしたものということができる。(2)そして、イレッサは、上記時点において、手術不能又は再発非小細胞肺がんを効能・効果として要指示医薬品に指定されるなどしていたのであるから、その通常想定される処方者ないし使用者は上記のような肺がんの治療を行う医師であるところ、前記事実関係によれば、そのような医師は、一般に抗がん剤には間質性肺炎の副作用が存在し、これを発症した場合には致死的となり得ることを認識していたというのである。そうであれば、上記医師が本件添付文書第1版の上記記載を閲読した場合には、イレッサには上記のとおり他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎の副作用が存在し、イレッサの適応を有する患者がイレッサ投与により間質性肺炎を発症した場合には致死的となり得ることを認識するのに困難はなかったことは明らかであって、このことは、「重大な副作用」欄における記載の順番や他に記載された副作用の内容、本件輸入承認時点で発表されていた医学雑誌の記述等により影響を受けるものではない。・・・以上によれば、本件添付文書第1版の記載が本件輸入承認時点において予見し得る副作用についてのものとして適切でないということはできない」このように、本件の最高裁判決では、製造物責任法の条文を忠実に解釈した上で、本事案における添付文書の記載に不適切な点はなかったと判示しています。一方、本件地裁判決において原告側が勝訴したのは、法解釈(大前提)においては最高裁判決と相違なかったものの、小前提(あてはめ)において、(2)当該医薬品を処方する者の知識、能力を低く見積もったことから、(3)添付文書の記載内容が詳細に求められることとなり、結果として適切な情報として不足したという判断がなされたからと考えられます。そして、前回紹介した高裁判決及び最高裁判決においては、(2)を高く評価(肺がん専門医または肺がんに係る抗がん剤治療医)したことから、(3)に求められる水準が下がり、結果として、求められる適切な情報が提供されていたと判断されています。このことからわかるように、医療用医薬品の欠陥判断における、(1)~(3)の要件はそれぞれ独立した要件ではなく、(2)が高くなれば(3)は低くてよく、逆に(2)が低ければ、(3)は高く求められるという負の相関関係があると考えられます。また、同様に、(1)と(3)の間には正の相関関係があると考えられます(図2)。図2 医療用医薬品において添付文書に求められる適切な副作用情報に関する各要因間の関係画像を拡大する各裁判官の補足意見を検討する:司法の常識とは!?次に各裁判官の補足意見をみていきましょう。補足意見とは、多数意見に賛成であるが意見を補足したい場合に、判決となった多数意見と別に各裁判官の個別意見を表示するもので、最高裁判決においてのみ認められています(裁判所法11条)。本判決では、裁判長以外全員が補足意見を出しており、結論は同じでも各裁判官の考えに少しずつ相違があることが読み取れます。〔1〕欠陥認定の基準時と事後の知見について「製造物責任法2条に定める「欠陥」は、当該製造物が「通常有すべき安全性を欠いていることをいう」と定義されているところ、その安全性具備の基準時は、あく迄、当該製造物が流通におかれた時点と解すべきものである。製造物が流通におかれた時点においては、社会的にみて、「通常有すべき安全性」を具備していたにも拘ず、事後の知見によってその安全性を欠いていたことが明らかになったからといって、遡及的に流通におかれた時点から「欠陥」を認定すべきことにはならない(事後の知見によって安全性を欠いていることが明らかになった後に流通におくことについては、製造物責任が問われ得るが、それ以前に流通しているものは製造物責任の問題ではなく、回収義務、警告義務等の一般不法行為責任の有無の問題である)」(田原睦夫補足意見)「後に判明した結果を前提に具体的な記載を求めるとすれば被上告人に不可能を強いることになり法の趣旨に反することになろう」(大谷剛彦、大橋正春補足意見)製造物責任法4条1号は、「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと」の場合には免責すると定め、開発危険の抗弁を認めています。ただし、前回解説したように、「科学又は技術に関する知見」は、入手可能な世界最高の科学技術の水準とされており、非常に限定されています。しかし、開発危険の抗弁が非常に限定的に用いられるべきといっても、後で判明した当時は知る由もなかった知見によって欠陥認定することはさすがに認められないと補足意見は述べています。これは、一見すると当たり前のことのように思われますが、製造物責任法が、無過失責任を求めている以上、製品によって利益を得ている企業がいかなる場合においても責任をとるべきであるという学説は根強く存在しており、この点につき補足意見を述べたこととなります。この欠陥認定の基準時の問題は、順次症例数を増やしながら開発、使用される医薬品にとっては非常に重要な問題であり、この点について意見としてではありますが明確に述べられたことは意義があるといえます。また、裁判は事件が発生した後に行われることから、常に「後知恵バイアス」がかかります。医療訴訟でも2000年代前半には、結果からみて「あの時こうすべきだった」として病院側を敗訴させた判決がいくつか出され、医療界が混乱する原因となりました。医療と司法の相互理解が進む中、「後知恵バイアス」の危険性について、司法は常に意識する必要があるものと考えます。〔2〕医薬品に対する理解「医薬品、殊に医療用医薬品は、身体が日常生活において通常摂取しないものを、その薬効を求めて摂取するものであるから、アレルギー体質による反応等を含めて、一般に何らかの副作用を生じ得るものである。医療用医薬品のうち汎用的に用いられるものについては、その求められる安全性の水準は高く、副作用の発生頻度は非常に低く、又その副作用の症状も極めて軽微なものに止まるべきものであり、かかる要件を満たしている医薬品は、「通常有すべき安全性」が確保されていると言えよう。次に、一般に医療用医薬品は、薬効が強くなれば、それと共に一定程度の割合で副作用が生じ得るものである。当該医薬品の副作用につき、医師等は一定の用法に従うことによりその発生を抑止することができ、あるいは発生した副作用に対し、適切に対応し、またその治療をすることが出来るのであれば、かかる副作用が生じ得ること及びそれに対する適切な対応方法等を添付文書に記載することによって、「通常有すべき安全性」を確保することが出来ると言って差支えないと考える」(田原睦夫補足意見)これは、医療用医薬品の副作用について述べている部分を抜粋したものです。医療界の人ならばギョッとする文章ですが、現時点における最高裁判事の医療への理解はこの水準であることが理解できます。当たり前のことですが、医薬品である以上、風邪薬でも致死的な副作用は生じます。市販薬ですら、年数件の死亡事例があります。(一般用医薬品による重篤な副作用について)行き過ぎた安全神話が2000年代前半の医療バッシングを後押ししたことは記憶に新しいところです。「安全であればいいなあ」が「安全に決まっている」になり、その結果、「悪しき結果が生じた場合には犯人がいるに違いない」とされ、医療崩壊が生じました。しかし、このような認識のギャップは専門領域においては必然的に生じるものであり、その解決策は決して相手を非難することではなく、積極的な情報開示を行い、相互理解を進めることです。医療界には、積極的かつ継続的な情報開示と対話が求められているものと考えます。〔3〕製造物責任法の適用について「しかし、薬効の非常に強い医薬品の場合、如何に慎重かつ適切に使用しても、一定の割合で不可避的に重篤な副作用が生じ得る可能性があることは、一般に認識されているところである。そうであっても、副作用の発生確率と当該医薬品の効果(代替薬等の可能性を含む。)との対比からして、その承認が必要とされることがある。その場合、「慎重投与や不可避的な副作用発生の危険性」については添付文書に詳細に記載すべきものではあるが、その記載がなされていることによって当該医薬品につき「通常有すべき安全性」が確保されていると解することには違和感がある(その記載の不備については、不法行為責任が問われるべきものと考える)。他方、かかる危険性を有する医薬品であっても、その薬効が必要とされる場合があり、その際に、かかる重大な副作用の発生可能性が顕在化したことをもって、当該医薬品の「欠陥」と認めることは相当ではない。上記のように副作用が一定の確率で不可避的に発生し得る場合には、「通常有すべき安全性」の有無の問題ではなく、「許された危険」の問題として捉えるべきものであり、適正に投与したにも拘ず生じた副作用の被害に対しては、薬害被害者救済の問題として考えるべきものではなかろうか」(田原睦夫補足意見)「イレッサが、手術不能又は再発非小細胞肺がんという極めて予後不良の難治がんを効能・効果として、第Ⅱ相の試験結果により厚生労働大臣の承認がなされ、要指示医薬品、医療用医薬品とされた上で輸入販売が開始されたのは、有効な新薬の早期使用についての患者の要求と安全性の確保を考慮した厚生労働大臣の行政判断によるものであり、その判断に合理性がある以上は、その結果について医薬品の輸入・製造者に厳格な責任を負わせることは適当ではない。その一方で、副作用が重篤であり、本件のように承認・輸入販売開始時に潜在的に存在していた危険がその直後に顕在化した場合について、使用した患者にのみ受忍を求めることが相当であるか疑問が残るところである。法の目的が、製造者の責任を規定し、被害者の保護を図り、もって国民生活の向上と国民経済の健全な発展に寄与することにあるならば、有用性がある新規開発の医薬品に伴う副作用のリスクを、製薬業界、医療界、ないし社会的により広く分担し、その中で被害者保護、被害者救済を図ることも考えられてよいと思われる」(大谷剛彦、大橋正春補足意見)前回解説したように、医薬品の副作用被害には、すでに無過失補償制度である医薬品副作用被害救済制度が存在します(表)。しかし、「制度の穴」として抗がん剤や免疫抑制剤等の対象除外医薬品による副作用被害や添付文書違反等があることから、除外対象事由に該当する患者・家族は、泣き寝入りするか訴訟をするしかない状況にあります。表 医薬品副作用被害救済制度除外事由画像を拡大する今回の最高裁判決は、製造物責任法を適用した上で、製薬企業側の勝訴としました。しかし、補足意見の形で、5名中3名の最高裁判事が抗がん剤による副作用被害についても、副作用被害救済制度に組み入れるべきと述べました。第1審敗訴によって「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」が立ち上がり、第2審勝訴によって同検討会は、抗がん剤による副作用被害を除外事由から外すことを見送りました。しかし、この最高裁判決により、ボールは今、再び医療界、製薬業界および厚労行政に返ってきました。このまま除外事由として放置した場合には、次に同種の訴訟が起きた際にどう転ぶかはわかりません。一時の勝訴にあぐらをかき、最高裁からのメッセージを見て見ぬふりをすることは、本訴訟の一連の流れの中で懸念してきたドラッグ・ラグの加速や萎縮医療を自らの手で致命的なところまで押しやることになりかねないということを真摯に自覚すべきと考えます。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)最判平成25年4月12日(未収載)

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聖路加GENERAL【Dr.衛藤の皮膚科疾患アーカイブ】<下巻>

第5回「症状のない皮膚疾患(1)-黒い疾患-」第6回「症状のない皮膚疾患(2)-赤い疾患-」第7回「内臓系の皮膚疾患(1)-爪の皮膚疾患-」第8回「内臓系の皮膚疾患(2)-舌の皮膚疾患-」第9回「内臓系の皮膚疾患(3) -黒色表皮腫と皮膚筋炎- 」 第5回「症状のない皮膚疾患①-黒い疾患-」症状のない皮膚疾患、なかでもPaget病(ページェット病)と黒い疾患を中心にみていきます。最初の症例は75歳男性。3年ほど前から陰嚢に発赤を認めたが、毎日80キロを自転車走行するための摩擦だと思い放置。ところが3ヵ月前から特に赤みが増したため来院。ステロイド軟膏を処方するが回復せず検査をしてみると乳房外Paget病でした。乳房Paget病は、症状が湿疹と似ていること、乳房以外の部位にも発症するのが特徴です。乳房Paget病の鑑別ポイントを解説します。他にも間違えてはならない湿疹の鑑別疾患を詳しくみていきます。黒い皮膚疾患には、脂漏性角化症のような良性のものの他に悪性黒色腫のように早期に発見しなければならない危険なものもあります。症例を通して鑑別法を学びましょう。第6回「症状のない皮膚疾患②-赤い疾患-」 乾癬は日本でも多くみられるようになってきましたが、湿疹と似ているのでしっかり鑑別する必要があります。爪に見られる乾癬から、膿疱性乾癬のように、場合によっては命に関わる重篤な疾患まで、さまざまなものがあります。また、最近増えてきた乾癬性関節炎についてもわかりやすく紹介します。二つめは皮膚がんです。半年前に猫に噛まれた傷が治らず、化膿して悪化したため受診した68歳の女性。猫に噛まれたことが直接の原因とは考えにくく、このような経過を辿り徐々に増大しているというのは腫瘍性の増殖を起こしている可能性があります。生検の結果、この方は扁平上皮がんでした。痛みや痒みもないのに赤い腫瘤は重篤な皮膚疾患の場合もあるので、早期に発見することが鍵となります。その他の皮膚がんについてもわかりやすい症例写真をまじえて詳しく紹介していきます。第7回「内臓系の皮膚疾患①-爪の皮膚疾患-」 第7回は実態がわかりにくい内臓系の皮膚疾患です。中でも様々な病変が現れる爪にフォーカスします。症例は約半年前から手指の爪甲に変形が現れた63歳男性。進行が気になり皮膚科を受診することにしました。爪にはclubbingが見られ、全身倦怠感や息切れも進んでおり、喫煙歴も20本×40年と高いリスク因子がありました。この患者さんは呼吸器疾患のデルマドロームで、検査の結果肺がんとわかりました。他にもばち状指に出現する先天性疾患などの原因疾患を詳しくみていきます。また、爪の病変は様々で、砒素中毒や化学療法、ステロイド治療や重症疾患等が原因となるケースがあり多岐に渡りますが、その見極め方を豊富な症例写真をとおして解説します。第8回「内臓系の皮膚疾患②-舌の皮膚疾患-」 第8回は内蔵にまつわる皮膚疾患から“舌”の皮膚疾患をとりあげます。症例は36歳男性。半年前から舌が荒れて白い斑点のようなものが出現。最近では発熱と下痢を繰り返し、約10㎏の体重減少もみられました。この患者はHIV感染に起因する舌カンジダ症でした。一口にカンジダ症と言っても、その分類、病因は様々です。カンジダ感染症を中心に地図状舌、黒毛舌、全身性強皮症など特徴のある舌の皮膚疾患や総合内科領域で見られる皮膚病変を解説します。その昔ヒポクラテスの時代から「診療のときはまず舌と爪を診ろ」と言われたほど、爪や舌の疾患は内蔵の状態を表します。先生方も普段の診察から爪と舌に注意してみてはどうでしょうか。第9回「内臓系の皮膚疾患③ ―黒色表皮腫と皮膚筋炎― 」 最終回は内臓系皮膚疾患の中から黒色表皮腫と皮膚筋炎をとりあげます。半年前から脇の下が粗造になってきて、褐色の色素沈着が現れたため受診した62歳の女性。診断は黒色表皮腫でした。さらに内臓の検査を行うと大腸がんが見つかりました。“皮膚は内臓の鏡”というようにさまざまな内臓病変が現れ、重篤な病気が隠れていることがあります。日々の診察では多岐に渡る内臓悪性腫瘍のデルマドロームを見落とさないことが重要です。今回も様々な皮膚症例から診察のポイントと間違えやすい注意すべき病変を解説していきます。

1916.

“医者の不養生”は本当?「もっと早く受診すればよかった…」そんな経験、ありますか?

今回の「医師1,000人に聞きました」は“医師自身の健康管理”。“医者の不養生”なんてことわざがありますが、その“口先ばかりで実行が伴わないこと”という解釈を読むとなんだか解せない…なんて方も多いのでは。先生方は、健康診断・人間ドック、毎回欠かさず受けますか?受けない先生、それはなぜですか?自分自身が患者になってみて、感じたことは?患者さんにかかりっきりになっているうちに医師のほうが手遅れになってしまった…なんて笑えない話も飛び出す今回の調査、寄せられたコメントも必見です!コメントはこちら結果概要約7割が健康診断・人間ドックを『必ず受ける』、一方で『毎回受けない』医師が1割以上存在全体の68.7%が『毎回必ず受けている』と回答。『受けないことがある』医師は19.3%、『毎回受けない』 医師は12.0%存在。世代間で大きな差は見られなかったものの、『毎回受けない』とした人の比率は年代が上がると共に漸増し、30代以下で10.6%のところ、60代以上では13.8%となった。働き盛りの40代「忙しくて」、60代以上「開業して交代要員がいない」健康診断・人間ドックを受けない(ことがある)医師に理由を尋ねたところ、最も多かったのは『忙しいから』で64.9%、働き盛りの40代では72.7%に上った。一方、若年層に比べ開業医の比率が高まる60代以上では、『院内に自身しか医師がいない/シフトを替わってもらえないから』が28.6%に上ったのと同時に『自分の健康状態は自分でわかっていると思うから』が21.4%。“受けたいのに都合がつけられない”医師と、“受けないと決めている”医師が他の世代に比して明確に表れるという結果となった。2割近くの医師に 『もっと早く受診すれば…』と後悔した経験あり自身が具合を悪くした際、『もっと早く受診すれば良かった』と感じた経験がある医師は全体の17.6%。40代では20.3%となった。遅れた理由としては、健康診断と同様『忙しかったから』が69.9%と最も多かったが、次いで多い回答が『受診するほどの症状ではないと思ったから』で27.8%。「知り合いの先生が“まだ大丈夫”“と過信し、忙しさも重なり受診をのばした結果、手遅れになった」など、ある程度自分で判断がつくことから招いてしまった事態、また「健康診断は受けるが、そこで引っかかっても、多忙のため受診できない」など、結果として”医者の不養生”になってしまうことを嘆く声も寄せられた。立場特有の“受診への不安”、受診して患者の気持ちを実感受診を躊躇する理由としてコメント中に複数挙がったのが、「身内の医者には診てもらいにくい」「オーダリングシステムを使える立場の人なら病名・処方が簡単にわかってしまう」など、プライバシーの漏えいを懸念する声が挙がった。また「自分の専門領域の検査を受ける場合は、結果がわかれば先が見えるから怖い」と医師ならではの不安感のほか、自身の検査や入院により「人間ドックの再検査を受けた際、病名告知前に患者さんがどれほど心配しているか実感した」「同室患者のいびきがこんなに心身に影響するのか、と」など、患者の立場・気持ちを実感したというコメントも見られた。設問詳細各種がん検診の推進、ワクチンの早期接種の推奨など、早期発見および予防が謳われるようになった昨今、先生方も普段患者さんに「早めの受診を」と呼びかけていらっしゃるかと思います。そこで先生にお尋ねします。Q1.健康診断(人間ドック含む)について当てはまるものをお選び下さい。毎回必ず受けている受けないことがある毎回受けない(Q1で「受けないことがある」「毎回受けない」を選んだ方のみ)Q2.健康診断(人間ドック含む)を受けない理由について、当てはまるものを全てお選び下さい。(複数回答可)面倒だから忙しいから院内に自身しか医師がいない/シフトを替わってもらえないからその気になればいつでも検査できると思うから自分の健康状態は自分でわかっていると思うから健康診断・人間ドックには意味が無いと思うから知りたくない、怖いからその他(                 )Q3.ご自身が心身の具合を悪くした際、結果として「もっと早く受診すればよかった」と感じた経験はありますか。あるない(Q3で「ある」とした方のみ)Q4.その時に受診しなかった、受診が遅れた理由で当てはまるものをお選び下さい。(複数回答可)面倒だったから忙しかったから院内に自身しか医師がいない/シフトを替わってもらえなかったから受診するほどの症状ではないと思ったから自覚症状がなかったから知りたくなかった、怖かったからその他(                  )Q5.コメントをお願いします。(ご自身の体調管理、受診・治療へのハードル、健康診断・人間ドックに対して思うこと、ご自身が患者の立場となった際に感じたこと、ご自身や周囲の先生方が体調を崩した際のエピソードなど、どういったことでも結構です)2013年3月15日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「医療を提供しているとその限界も見え、自分が病気になったときは“寿命がきた”と判断して医療を受けたくない、という気持ちが強くなった。」(40代,内科,一般病院)「思ってもみない結果が出ると人間は動揺するものであることがよくわかった」(50代,放射線科,一般病院)「健康管理は重要だと思うが、他の医療機関を受診するのはハードルが高い」(50代,外科,診療所・クリニック)「検診などを受ける時間もなく、症状にあわせて友人医師に内服処方を出してもらい済ませる事が多い。」(40代,救急医療科,一般)「人間ドックの再検査を受けて、病名告知前に患者さんがどのくらい病気について心配しているか実感した」(40代,内科,一般病院)「健診に対する価値観、病気に対する価値観はそれぞれであり、強要されるものでは決してない。また、結果の還元が十分にできているのかという疑問がある。どこまで踏み込んで検査すべきなのか、逆に不足していないのかなど、検討すべき余地はたくさんある。」(40代,内科,診療所・クリニック)「39歳の時に体調を崩して1-2か月仕事ができなかった。病院勤務だったのである程度は収入があったが、それでも生活費を切りつめる必要があった。現在開業しており、同様な事態が起こると不安に思うことがある。」(40代,皮膚科,診療所・クリニック)「身近な先生で、症状が出ているのに“まだ大丈夫”と過信してしまい、忙しいこととも重なり受診をのばした結果手遅れになったケースがあり、自分も注意が必要と思います」(60代以上,内科,一般病院)「他に医師がおらず、薬を飲みながらの診療は正直つらかった。」(40代,消化器科,一般病院)「頸椎椎間板ヘルニアで手術をすることになったが、上肢の症状の時に受診をしていれば 経過がもっと良かったと思われる。」(40代,整形外科,診療所・クリニック)「症状があっても進行性でない場合は職務を優先することが多い。自己判断は必ずしも正しくないことを認識しなくてはいけないと反省している。」(60代以上,循環器科,一般)「健康診断をしなかったツケで、今年網膜剥離になることがわかっている。”医者の命”の目であるため、後悔している。」(60代以上,内科,診療所・クリニック)「年齢の近い先輩医師が大腸がんとなり、大腸内視鏡を含めた侵襲的な検査も定期的に施行しなければと思ってはいるが、時間的な余裕のなさから受けられないことが日々ストレスとなっている。」(50代,内科,一般病院)「身体が資本と改めて感じた。検査、治療にかかる時間を捻出するのが大変困難であった」(50代,循環器科,診療所・クリニック)「自分で受けて初めて、検査の苦しさがわかる」(40代,小児科,一般病院)「検診の際は強制で休みにするくらいでないと受診率は上がらないと思う。」(40代,内科,一般病院)「曜日や時間帯から、実際に医療機関を受診できるタイミングが限られている」(50代,内科,一般病院)「問題意識から具体的な受診行動にうつす際のギャップは、意外と大きいなと思った。」(50代,内科,診療所・クリニック)「(院内の)知り合いに診てもらうことになるので受診を躊躇することがあります。」(40代,血液内科,大学病院)「バリウム検査がこんなにきついとは思っていなかった。」(30代以下,外科,大学病院)「肺がんが末期の状態で見つかった現役の医者がいた。」(50代,内科,診療所・クリニック)「疾病を発見するというよりも、安心のために受けるべきだと思う。患者の立場を経験できるのは貴重なこと」(40代,内科,一般病院)「やっぱり医師の言うことにはなかなか逆らいにくいというか、聞きたいことが聞きにくかったりする」(30代以下,整形外科,一般病院)「胃カメラはつらい」(50代,整形外科,一般病院)「糖尿病の母が血糖コントロールを悪くし、半年後の定期健診で膵癌が見つかり、それが死因となりました。受診をしなければいけませんが、こんな経験をしていても、自分は別と思ってしまうのですよね・・・。」(40代,内科,診療所・クリニック)「自分の専門科(の疾患)の時どうしたらいいかわからない。」(50代,外科,一般病院)「職場の義務で健康診断は毎回受けていますが、日常業務が多忙なため、精密検査が必要となってもなかなか平日昼間に受診するのは大変と思います。」(30代以下,呼吸器科,一般病院)「健康診断と保険診療を同時にできれば、健診受診率もあがるのではないかと思います。」(30代以下,産業医,診療所・クリニック)「入院患者になってみてわかったのは、何もなければそっとしておいて欲しいということだ。 遠くから暖かく見守ってもらえれば十分。元気な人(医療者含む)を相手にするのは結構疲れる。 医療とは単なるサービス業ではないと実感した。」(40代,内科,診療所・クリニック)「健康診断が学術的に有効と認められるものなのか、疑問に思うことがある。」(30代以下,循環器科,一般病院)「検診の有用性はほんとうにあるのだろうか? やるなら胃カメラやバリウム検査は必須にする必要があると思う」(30代以下,救急医療科,大学病院)「実際に患者になって、大学病院では患者を待たせるのが当たり前としているところに気づいた。」(30代以下,皮膚科,大学病院)「自分で確認できる部分は年一回はチェックしてますが、内視鏡など他院でしてもらわないとダメな検査はどうしても先送りにしてしまいます。自営業のつらいところです・・・」(40代,内科,診療所・クリニック)「常に早期発見を心がけて検診を受けていても、やはり漏れ落ちはある。症状が出てからでも早期受診することで軽症で済むことも自身で経験すると、患者に対する説明も説得力が増した。」(50代,放射線科,一般病院)「自分で検査してます。 内視鏡も自分自身で挿入して検査します。得意技です。」(50代,内科,診療所・クリニック)「気合で仕事する文化が根付いており、気軽に休めるほどの人員が確保されていないため、病気になってからでないと体のメンテナンスができない。」(30代以下,小児科,大学病院)「人間ドックを受診して、クレアチニンが高値であることが判明し、CKDであることがわかりました。クレアチニンが検査に導入されたから分かったことで、検査項目の見直しが必要であると思いました。」(60代以上,内科,一般病院)「胃カメラを初めて受けたが緊張した。」(30代以下,内科,診療所・クリニック)「常勤の頃は必ず受診していましたが、結婚して非常勤になるとなかなかチャンスがありません。 常勤ではない女性医師がもっと受診しやすくするシステムがあるといいと思います。」(30代以下,皮膚科,診療所・クリニック)「人間ドックを 日曜日や休日、または平日午後からも受けられる施設を増やしてほしい。」(40代,内科,診療所・クリニック)「1日人間ドックに入る時間的余裕がない」(30代以下,救急医療科,一般病院)「仕事が忙しくて体調を崩すが仕事のため受診できないという悪循環にはまります。」(30代以下,循環器科,一般病院)「人間ドックの項目に簡易スパイログラフィー(肺年齢)やBNP値を入れて、もっとハイリスク集団を効率よく抽出する努力をした方が良い。」(30代以下,外科,大学病院)「健康診断や人間ドックを受けていると全ての疾患が早期発見できると思っている人も多いようだが、それらで引っかかるのは一部の疾患だと考えてもらいたい。また、1年の間でも一気に進行する癌もあり、健康診断や人間ドックは有用ではあるが万能ではないことを周知してほしい。」(30代以下,その他,一般病院)「自分ばかりでなく家族が病気になり医療機関の世話になったときには、患者の気持ち、心配、不安を実感することができる」(60代以上,循環器科,大学病院)「職場で健診を受けられることはありがたいが、何か異常があった場合はすぐに院内に知れ渡ってしまいそうという不安もある」(30代以下,外科,一般病院)「入院中はいろんなスタッフが頻繁に入室してくるのでリラックスできなかった。」(40代,小児科,一般病院)「検診では心配している疾患(例えば前立腺など)を網羅していないため、受ける意欲を欠いた。」(60代以上,外科,一般)「病気になっても休暇が取りにくく、周囲に迷惑をかけるので、健康診断は必ず受けるようにしている。 勤務医の時は自分がいなくても代わりはいるが、開業すると休診にせざるを得ず、大変な思いをした。」(50代,形成外科,診療所・クリニック)「自分の専門領域の検査を受ける場合は緊張します。結果がわかると先が見えるから、こわい気がします。」(60代以上,脳神経外科,一般病院)「歯科への受診はついつい遅れがちになります。総合病院系で歯科のある所だとちょっと相談、とかもできますが、個人病院では歯科がないのがほとんどですし、仕事を休んでまで受診する程ではないとか、週末に改めて歯科医院に行くのも面倒だったりして受診が遅くなる事が多いです。」(50代,内科,介護老人保健施設)「医師が少ない科であるため、一人が倒れると膨大な業務が残りの医師にきて処置しきれないことがあった。」(60代以上,呼吸器科,一般病院)「十二指腸潰瘍で入院した時は、患者はなんと弱いものかと実感した」(50代,精神・神経科,診療所・クリニック)「知人が急な入院になったときに、診療所を仲間でバックアップしました。忙しくて、また代わりを頼んで診察を受ける時間がなかったとのことでした。」(50代,内科,診療所・クリニック)「客観的な判断が鈍るのか専門医への受診が遅れがち、特に65歳以上はその傾向が強い。 開業医は時に自費で薬剤を購入し、それでだましだましの治療をしているケースがある。」(50代,内科,診療所・クリニック)「血液検査などはしやすいが、昨年初めて大腸ファイバーをしてポリープが見つかった。出来れば人間ドックを毎年受け、胃カメラなども継続したいが、忙しく難しいのが現状です。」(30代以下,整形外科,一般病院)「自分の勤務する病院に受診希望の科があれば ふつうはそこを受診します。しかし大学の医局人事であちこちに勤務した経験上、自分の家族の受診も含めて、プライバシー・個人情報はほぼ守られないと感じています。現在の勤務先も、オーダリングシステムを使える立場の人ならだれでも、個人情報を入手でき、病名や処方など簡単にわかります。もっとアナログな点をいえば、“看護師の口に戸は立てられない”です。」(40代,小児科,一般病院)「全身倦怠感が強く、微熱が出た時に原因がわからず、呼吸器症状がほとんど無かったが胸部X線検査を行なって、肺炎になっていた時は驚いた。マイコプラズマ肺炎だったが、熱が低いわりに症状が強く出るのだなと解った。」(40代,内科,診療所・クリニック)「指を骨折したが、職員がどのように受診すればよいかわからず、ためらってしまったため受診が遅れてしまった」(30代以下,精神・神経科,大学病院)「先ごろ、入院しました。主治医をはじめスタッフの方々に大変よくしていただき、感謝の限りです。 自分も患者さんにとって、頼りがいがあり、感謝される医師でいなければいけないという気持ちを新たにしました。」(60代以上,整形外科,一般病院)「なかなか休暇をとって、人間ドックにかかれないのが悩み。 人間ドック休暇みたいな制度が有るといいんだけど。」(50代,内科,診療所・クリニック)「便潜血陽性のため、昨年初めて大腸ファイバー検査を受けた。結果は良性のポリープだったが、勇気がいることであった。」(50代,内科,診療所・クリニック)「健康は自己責任である。もっと早く受診すればよかったではなくて、そこまで健康に注意しなかった運命。といって検診をこまめに受ける人はただ単に責任転嫁したいだけ。病気というのはある程度遺伝子上で決められた運命です。治療を受けて長生きできるのも運命。受けられずに命が閉じるのも運命でしょう。」(30代以下,外科,大学病院)「単純レントゲン(肺)で異常を指摘され、CTを行うまで心配した。」(50代,整形外科,診療所・クリニック)「健康診断で引っかかっても、勤め先だと精密検査を受けにくい。」(40代,消化器科,一般病院)「患者には早期発見が大事という割に、自分は病気を見つけたくない矛盾があります。」(40代,泌尿器科,一般病院)「血圧が高め、少しぐらいなら、と放っておいたらかなりの高血圧に。自覚症状がないと甘く見がち」(50代,内科,一般病院)「医科のものは意識しているのですが、歯科が盲点でした。つい面倒で行かずにいたら、ある日突然歯がポロッと欠け、慌てて受診。既にかなり進行した齲歯でした。他にも齲歯多数とのことで、今も通院が続いています。」(40代,外科,一般病院)「胃カメラは想像以上に苦痛であった。」(50代,整形外科,一般病院)「入院して患者さんの気持ちが判ったので、応対に気をつけるようになった。」(60代以上,産婦人科,診療所・クリニック)「重度感染症で入院した際、食事の重要性と同室のいびきがこんなにも心身に影響するのかと実感しました。特に六人部屋、八人部屋というのは、本当に忍耐の日々でありました。入院設備は昭和の時代から全く変化がないように思えます。そろそろ、入院設備へも目を向けるべきかなと思います。」(40代,小児科,診療所・クリニック)「実際に健康診断がきっかけで癌が見つかったDrもいるので他人ごとではないと思ってます。」(40代,産婦人科,大学病院)「患者さんには偉そうに言うのに自分の健康管理は不十分。昨年目の手術をして、自己管理の大切さと医療者のありがたさを痛感した」(50代,小児科,大学病院)「症状から自己診断してしまい、結果的に回復が遅れた。受診に時間を要することが一番の理由」(60代以上,その他,一般)「評判のいい開業医のところへ特定健診に行って、細やかな診察や説明など、患者さんに人気のある理由を目の当たりにしたのは、医療人としても良い経験となった。 気軽にできる“患者体験“になるような気がする。」(40代,麻酔科,診療所・クリニック)「前立腺がん、右腎盂癌が検診で見つかった」(60代以上,内科,診療所・クリニック)「なかなか健康診断を受ける時間がない。知り合いの外科医はPSA測定をご自分で測定し、次第に上昇し、あり得ない数値になっても放置し、病状が進行して血尿が出て、初めて相談を受けました。」(60代以上,泌尿器科,診療所・クリニック)「健康なので患者さんの気持ちがわからないのではないかと心配です。」(30代以下,血液内科,大学病院)「過去に、業務に支障がない外傷で勤務していた所、気付かれてストップがかかったことがありました。医師不足のため代わりがいない状況では患者の診療が優先され、受診にはハードルが高く感じます。その分、職場健診は義務であり、権利と考え毎年受けています。」(50代,内科,一般病院)「開業していると急には休診にはできないので、なかなか他の医療機関を受診できない。自分の専門分野であれば自分自身で投薬(治療)せざるを得ない。」(40代,内科,診療所・クリニック)「外来や当直の時に、嘔吐下痢症だったり発熱してしんどかったときは、因果な商売だなぁと思いました。」(30代以下,神経内科,一般病院)「自分はまだ30代だが、同年代で生命に関わる患者を診察する機会も多いため、健康に気をつけるよう心掛けています。」(30代以下,産婦人科,一般病院)「患者になって以後、(身体より)仕事を優先することの愚かさを、実臨床の場で啓蒙するようになった」(50代,外科,一般病院)「まず自分で診断治療しようとしてしまう。こんな症状なんかで受診するのかとの思いから専門医に相談するのが遅れたり、あるいは他院で検査を受けるのが気恥ずかしかったりして受診が遅れる。」(40代,内科,診療所・クリニック)「健康診断は職場で強制的に受けさせられるから問題ないのですが、体調を崩したときも仕事を抜けて受診することが、病院で働いていても困難だと思うことが多いです。」(30代以下,麻酔科,一般病院)

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第13回 添付文書 その2:どこまで必要?添付文書の厳格さのさじ加減!

■今回のテーマのポイント1.医薬品の添付文書の記載に不備があった場合には、指示・警告上の欠陥として、製造物責任法が適用される2.添付文書の記載に不備があるか否かは、当該医薬品を処方する専門家である医師が理解するに足りるかという視点から判断される3.医薬品については、無過失補償制度である医薬品副作用被害救済制度があることから、同制度による救済範囲を狭めるべきではない。また、同時に制度の穴を埋めるべく前向きな議論がなされるべきである事件の概要平成14年7月5日にゲフィチニブ(商品名:イレッサ)は、肺がんの治療薬(内服薬)として、世界に先駆け、申請から承認まで半年と異例の短さで日本で承認されました。承認時点において、イレッサ®による間質性肺炎の報告は、国内外合わせて日本の3例(133人中)であり、死亡例はありませんでした。承認に際して、添付文書の「重大な副作用」欄の4番目に「間質性肺炎(頻度不明):間質性肺炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常がみとめられた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと」と記載し、かつ、承認条件として市販後の臨床試験を指示しました。しかし、承認から約3ヵ月で間質性肺炎および急性肺障害の副作用発症が22例(死亡11例)報告されました。平成14年10月15日、厚生労働省の指示により、添付文書が改訂され、間質性肺炎について「警告」欄を設けて記載すると同時に緊急安全性情報を作成し、医療機関等へ配布しました。このような流れの中、イレッサ®による間質性肺炎で死亡した患者3名の遺族が、製薬会社に対しては、製造物責任法または不法行為上の損害賠償責任として、国に対しては、国家賠償法上の損害賠償請求として、計7,700万円を請求しました。第1審では、製薬会社に対しては、「当該添付文書の記載(「警告」欄ではなく、「重大な副作用」欄の4番目に記載したこと)が指示・警告上の欠陥である」として製造物責任法上の責任を認め、国に対しては、イレッサ®を薬事承認したことについて違法性はないものの、「承認後、間質性肺炎による死亡事例が出たにもかかわらず、10月15日まで添付文書を改訂するよう指導しなかったことは国家賠償法上違法である」とし、計1,760万円の損害賠償責任を認めました。これに対し、控訴審は、下記の通り判示し、原判決を破棄し、原告の請求を棄却しました。*なお本件は、現在、最高裁判所(以下、最高裁)に係属中であり、判断が待たれています。事件の経過●患者A(31歳)の経過平成13年2月頃から咳嗽が続き、6月頃からは咳嗽に加え、左胸痛が認められるようになったことから、同年9月13日D病院に検査入院となりました。検査の結果、肺腺がんでⅣ期と診断されました。その後、化学療法は行わず、丸山ワクチンを受けていましたが改善を認めず、胸水も貯留してきたため、同年11月29日D病院に入院しました。その時点で多発性骨転移が認められ、がん性疼痛も生じたため、化学療法が開始されました。腫瘍の縮小は認められなかったものの、自覚症状の改善が一定程度みられたことから、平成14年2月11日に退院となり、外来化学療法を行っていました。しかし、化学療法の副作用による、吐気、食思不振、脱毛が強かったため、同年7月1日を最後に外来化学療法は中止されました。同年7月19日の時点で、小脳、脳幹、大脳に多発転移が認められました。そのような折、Aの父がインターネットでイレッサ®の存在を知り、主治医と相談の上、8月15日より入院の上、イレッサ®の服用が開始されると同時に、多発性脳転移に対して放射線全脳照射を行いました。イレッサ®開始1ヵ月後に肺の腫瘍は約1/3にまで縮小を認め、自覚症状の改善もみられたことから、9月21日に退院となり、外来にてイレッサ®の服用を継続することとなりました。ところが、退院後最初の外来である10月3日に撮影した胸部X線写真上、気になる影があるといわれ、イレッサ®内服を中止の上、同日入院となりました。しかし、入院3日目から呼吸状態が悪化し、治療を行うも増悪。10月17日に呼吸不全にて死亡しました。●患者B(55歳)嗄声および呼吸困難のため平成14年6月に近医受診。肺がん疑いにてE病院を紹介受診したところ、肺腺がん(Ⅳ期)で左副腎に転移ありと診断されました。7月15日より入院にて化学療法が行われたものの、副作用が強く10月には中止されました。また、12月24日には多発性脳転移が認められたため、放射線全脳照射が行われました。平成15年1月28日、主治医Fは、BおよびBの妻よりイレッサ®による治療を求められました。しかし、平成14年10月15日にイレッサ®に関する緊急安全性情報がでていたことから、主治医Fは、「イレッサ®はがん細胞を狙い撃ちする抗がん剤で、20~30%の人に有効ですが、最近、重大な副作用として間質性肺炎が問題になっており、0.2~0.4%の方が肺炎で命を落としました」との緊急安全性情報等を踏まえた説明をしたところ、それでも治療を受けたいとの希望があり、入院にてイレッサ®の服用が開始されました。ところが、2月3日の胸部X線写真上、間質性陰影の増悪が認められ、その2日後には呼吸困難等が出現したことから、イレッサ®による間質性肺炎を疑い、服用を中止し、ステロイドパルス療法を行いました。しかし、翌日より真菌感染を引き起こしてしまい、2月11日に死亡しました。●患者C(67歳)平成11年12月、近医で胸部X線写真上、間質性陰影が認められ、G病院紹介受診。肺線維症の診断にて外来治療を受けていました。しかし、平成14年1月頃から血痰、咳嗽、胸痛等が認められるようになったため、同年4月15日にH病院を紹介され、精査目的で入院となりました。H病院での検査の結果、肺腺がん(III期)と診断され、化学療法が行われました。しかし、化学療法の効果はなく、副作用も強かったことから、7月には化学療法は中止されました。その後も呼吸状態、全身状態が悪化したため、同年9月2日から入院にてイレッサ®の服用が開始されました。しかし、服用開始2日目から間質性変化を認めるようになり、10月9日には、間質性肺炎が急性増悪し、ステロイドパルス療法を行ったものの、翌10月10日に死亡しました。事件の判決「本件添付文書第1版の記載はこれとは異なり、文書冒頭に警告欄が設けられていない。しかし、間質性肺炎は従来の抗癌剤等による一般的な副作用であり、イレッサを処方するのは癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であり、当該医師は、薬剤性間質性肺炎により致死的事態が生じ得ることを認識していたものといえる。仮にその医師に、「分子標的薬には従来の抗癌剤に生じる副作用が生じない」という医学雑誌記事等に基づく予備知識があったとしても、本件添付文書第1版は、イレッサの適応を「手術不能・再発非小細胞肺癌」に限定し、「重大な副作用」欄に間質性肺炎を含む4つの疾病又は症状を掲げていたのであり、添付文書を一読すれば、イレッサには4つの重大な副作用があり、適応も非小細胞肺癌一般ではなく、手術不能・再発非小細胞肺癌に限定されていることを読み取ることができ、それを読む者が癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であるならば、それが副作用を全く生じない医薬品とはいえないものであることを容易に理解し得たと考えられる。これらの医師が、仮に本件添付文書第1版の記載からその趣旨を読み取ることができなかったとすれば、その者は添付文書の記載を重視していなかったものというほかない。イレッサについての臨床試験等の結果が前記記載のとおりであったにもかかわらず、肺癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医を対象とした本件添付文書第1版の記載の違法性の判断において、「間質性肺炎の副作用について文書冒頭に警告欄を設けないのは違法である」、「警告欄について赤枠囲いをしないのは違法である」等として、添付文書の内容如何ではなく、目に訴える表示方法を違法性の判断基準として取上げるとすれば、それは司法が癌専門医及び肺癌に係る抗癌剤治療医の読解力、理解力、判断力を著しく低く見ていることを意味するのであり、真摯に医療に取り組むこれら医師の尊厳を害し、相当とはいえない。警告欄のない本件添付文書第1版に指示・警告上の欠陥があったということはできない。・・・以上のとおり、「重大な副作用」欄中の1番目から3番目までに掲げられた副作用も、4番目の間質性肺炎と同様に、いずれも重篤な副作用に区分され、当該患者の全身状態等によっては、そのいずれもが死亡又は重篤な機能不全に陥るおそれのあるものであり、また、評価対象臨床試験において間質性肺炎が高い割合で発現していたとはいえない状況にあったものである。しかも、本件添付文書の説明の対象者が癌専門医及び肺癌に係る抗癌剤治療医であり、また、イレッサについての評価対象外臨床試験等の結果における死亡症例についてイレッサ投与との因果関係の認定を揺るがす症状又は現象が存在していたことに照らせば、間質性肺炎を本件添付文書第1版の「重大な副作用」欄の4番目に掲げ、1番目に掲げなかったことをもって、指示・警告上の欠陥があったものということはできないものというべきである」(東京高判平成23年11月15日判時2131号35頁)ポイント解説今回は、前回に引き続き添付文書について解説させていただきます。前回の判例は、添付文書に反した場合の法的取扱いについてでした。今回解説する判例は、添付文書の記載に不備があった場合の取扱いについてです。本判決の最大の特徴の1つは、抗がん剤であるイレッサ®による副作用被害に対し、製造物責任法(PL法)を適用したことです。製造物責任は、1960年代にアメリカの判例理論として形成され、「不法行為の要件である過失がなくても、その物に欠陥があった場合には、損害賠償責任を認める」という無過失責任の1つです。平成6年にわが国で製造物責任法が成立するにあたって、副作用が出ることが必然である医薬品に対して、製造物責任法を適用すべきか否かが議論されました。すなわち、副作用を欠陥とした場合には、一定の確率で必然的に生ずる副作用被害をすべて製薬企業が賠償しなければならなくなるおそれがあるからです。さまざまな議論の末、最終的には、同法4条1号において、「当時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかった場合には、免責する」という開発危険の抗弁を認め、医薬品に対しても製造物責任法を適用することとなりました。ただ、開発危険の抗弁における「「科学又は技術に関する知見」とは、科学技術に関する諸学問の成果を踏まえて、当該製造物の欠陥の有無を判断するに当たり影響を受ける程度に確立された知識のすべてをいい、それは、特定の者が有するものではなく客観的に社会に存在する知識の総体を指すものであって、当該製造物をその製造業者等が引き渡した当時において入手可能な世界最高の科学技術の水準がその判断基準とされるものと解するのが相当である。そして、製造業者等は、このような最高水準の知識をもってしても、なお当該製造物の欠陥を認識することができなかったことを証明して、初めて免責されるものと解するのが相当である」(東京地判平成14年12月13日判タ1109号285頁)とされており、開発危険の抗弁は、非常に限定的な場合にしか認められないこととなっています。その一方で、製造物責任法における欠陥とは、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」(同法2条2項)と定義されたことから、医薬品における設計上の欠陥とは、「医薬品は、適正な使用目的に従い適正に使用された場合にも、人体に有害な副作用をもたらす場合があることを避けられない。それにもかかわらず医薬品が使用されるのは、副作用による有害性の程度が、その医薬品の有効性を考慮するとなお許容され得るからであると解される。このような医薬品の特性にかんがみれば、当該医薬品に副作用があることをもって直ちに設計上の欠陥があるとはいえず、副作用による有害性が著しく、その医薬品の有効性を考慮してもなお使用価値を有しないと認められる場合に、当該医薬品について設計上の欠陥が認められるものというべきである」(本判例第1審)と医薬品の特徴に応じた判断がされています。また、製造物責任法上の欠陥には、設計上の欠陥だけでなく、取扱説明書の記載不備のような指示・警告上の欠陥もあります。本判例第1審において、「医薬品は、副作用による有害性の程度が、その有効性を考慮した場合に許容される限度を超えないものとして、設計上の欠陥を有するとは認められない場合にも、個別の患者がその副作用による被害を受けることを防止するため、なお適切な指示・警告を必要とし、これを欠く場合には、指示・警告上の欠陥を有するものと認められる。そして、医薬品が指示・警告上の欠陥を有するかどうかは、当該医薬品の効能、効果、通常予見される処方によって使用した場合に生じ得る副作用の内容及び程度、副作用の表示及び警告の有無、他の安全な医薬品による代替性の有無並びに当該医薬品を引渡した時期における医学的、薬学的知見等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきものと解される。そして、添付文書は、上記のとおり、法の規定に基づいて、医薬品の製造業者又は輸入販売業者が作成するものであり、その投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載されるものであって、医薬品を治療に使用する医師等が必ず確認し、そこに記載された使用上の注意事項に従わなければならないものであるから、医薬品の副作用等その安全性を確保するために必要な使用上の注意事項は基本的に添付文書に記載されていなければならないものというべきであり、これを欠く場合には他の方法により安全管理が十分に図られたなどの特段の事情のない限り、指示・警告上の欠陥があると認めるのが相当である。なお、医療用医薬品のように医師等が使用することが予定されているものについては、これを使用することが予定された医師等の知識、経験等を前提として、当該医師等が添付文書に記載された使用上の注意事項の内容を理解できる程度に記載されていれば足りるものと解される」と判示されているように、医薬品における指示・警告上の欠陥は、原則的に添付文書の記載によって判断されることとなります。また、処方箋薬の添付文書の記載に不備があったか否かは、上記判示の通り、専門家である医師が理解するに足りるかという視点から判断されることとなります。本件第1審においては、「重大な副作用」欄の4番目に書かれたことをもって、指示・警告上の欠陥であるとして、製造物責任法上の損害賠償責任を認めました(「4番目判決」)が、高裁においては、「4番目に書かれていたとしても、本件添付文書の説明の対象者が癌専門医及び肺癌に係る抗癌剤治療医であること等から、指示・警告上の欠陥とはいえない」として、損害賠償責任を認めませんでした。本判決のもう1つの大きな特徴は、第1審において、添付文書に警告欄を設けるよう指導しなかったとして、国の責任を認めたことです。薬事法上、医薬品を製造販売するためには、厚生労働大臣による承認が必要となります(薬事法14条1項)。この承認を受けるために製薬企業は治験を行うわけですが、被験者の数は限られますので、稀な副作用は、上市後に、多くの患者に使用されなければわからないことがある等限界があります。だからといって治験において安全性を過度に追及すると、今度は承認が大きく遅れ、薬がないために治療できない患者が出てきてしまいます(ドラッグ・ラグ)。薬事承認においてはこのように、安全性と迅速性のバランスが常に求められることとなり、わが国では、諸外国と比べて大きく迅速性に欠ける、換言すればドラッグ・ラグが長く、適時に必要な薬が患者に届かず場合によっては生命を落とすという状況となっています。そのようなわが国の現状において、製造物責任をテコに国に損害賠償責任を認めるとなると、結局のところ国は、薬事承認において安全性に大きく判断ウエイトを置くこととなり、ますますドラッグ・ラグが加速するのではないかという懸念がでてきます。本件の東京高裁判決は第1審を覆し、国の責任を否定しましたが、現在最高裁で係争中であり、その判断が待たれています(*2013年4月2日の報道では、「国に対する請求については上告が受理されず遺族敗訴が確定し、製薬企業に対する請求は受理されたものの弁論を開くことなく2013年4月12日に判決が出される」とのことです)。●添付文書再考本連載で、2回にわたって、添付文書について解説してきました。製薬企業自らが作成する添付文書に対し、内容が不足していると製薬企業に対し厳格に製造物責任を問われることとなれば、製薬企業としては、できうる限りのことを添付文書に記載する方向にインセンティブが働きます。その結果、本来の薬の適用対象にまで慎重投与として警告が付されたり、場合によっては禁忌とするなど、実医療とはかけ離れた添付文書が作成されることとなります。しかし、医師がそのような添付文書の記載に形式的に反した場合には、前回の判例により過失が推定されてしまうことから、結果的に、医師が萎縮してしまい、患者が適切な治療を受けられなくなるという悪循環が生ずるおそれがあります(図1)。図1 添付文書の厳格性のジレンマ画像を拡大するこのように添付文書に過度の法的意義を持たせることは、患者にとってマイナスの効果を生じかねませんし、そもそも、過剰な警告文書はアラートとしての機能を喪失してしまうことから、その意味においても患者にとって危険となります。●医薬品副作用被害救済制度2つの判決を異なる視点でみてみましょう。医薬品によって生じた副作用被害に対しては、公的に医薬品被害救済制度が整備されています(独立行政法人医薬品医療機器総合機構法15条1項)。製薬企業が拠出金を出し合い基金をつくり、副作用被害が生じた場合には、そこから医療費や障害年金、遺族年金が支払われます(同法16条1項)。医薬品の副作用被害については、すでに公的な無過失補償制度ができているのです。しかし、本制度の給付対象外として、表が定められています。みていただければわかるように、前回の判例は2-(1)に該当し、今回の判例は、2-(1)および4に該当します。つまり、添付文書に関する訴訟は、この医薬品副作用被害救済制度から漏れてしまっているために止むを得ず生じているのです。実際、本件第1審で国が敗訴した後に「制度の穴」を埋めるべく厚生労働省内で、「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」が立ち上げられました(残念ながら、高裁にて国が勝訴したため、平成24年8月10日の同検討会によるとりまとめにおいて見送りとされました)。表 医薬品副作用被害救済制度除外事由画像を拡大する●まとめ2回にわたり解説したように、添付文書に製造物責任を厳格に問うことは、製薬企業自らの責任回避のために添付文書の過度な長文化・不適切化を生じさせます。そのような状況下で添付文書を不磨の大典のごとく扱うと萎縮医療を生み出し、結果として患者が適切な医療を受けることができなくなります。さらに、添付文書の指示・警告上の欠陥をテコに国に責任を認めるとドラッグ・ラグが加速し、適切な医薬品が患者のもとに届かなくなってしまいます(図2)。図2 添付文書厳格化による問題点画像を拡大するもちろん、副作用被害の救済はできうる限り行われるべきです。しかし、その方向は、無過失補償制度による救済範囲を広げる方向で行われるべきであり、個別事案における救済に固執するあまり、制度全体に問題を生じさせてしまっている現状を認識すべきものと思われます。すなわち、添付文書に対し指示・警告上の欠陥を広く認めることは、一般的には、医薬品副作用被害救済制度の除外事由を広げること(=救済範囲を狭めること)となりますし、添付文書違反に対し過失の推定をかけることも同様に、医薬品副作用被害救済制度の除外事由を広げること(=救済範囲を狭めること)になるのです。添付文書に関する紛争は、医薬品副作用被害救済制度に穴があるために生じています。いがみ合い、争う方向に進めるのではなく、手に手を取って「制度の穴」を埋める方向に進んでいくことを切に願います(図3)。図3 副作用被害の早急な救済のモデル画像を拡大する裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)東京高判平成23年11月15日判時2131号35頁東京地判平成14年12月13日判タ1109号285頁

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「岐阜県COPDストップ作戦」一丸となってCOPDに取り組む

大林 浩幸 ( おおばやし ひろゆき )氏岐阜県COPD対策協議会 本部長(東濃中央クリニック 院長)※所属・役職は2013年2月現在のものです。岐阜県におけるCOPDの現状大規模なCOPD疫学調査NICE Study*の結果によれば、COPD患者は40歳以上の8.6%、約530万人と推定されています。COPDによる死亡者数は年々増加しており2011年の死亡者数は16,639人です。このNICEstudyの有病率に岐阜県の人口を当てはめると、岐阜県のCOPD患者数は12万3070人と推定されます。一方、岐阜県の治療中のCOPD患者数を主要なCOPD治療薬の販売量から推定すると5,000人未満となり、推測患者数の1割にも満たないことがわかりました。すべての治療患者さんが対象ではないとしても、これはあまりにも少なすぎます。残りの10万人以上の方は潜在患者として、気づかれないままでいるか、他疾患の治療のみ受けている可能性もあるわけです。また、岐阜県のCOPD死亡者数は1997年から2009年までの12年間、全国平均を常に上回っています。このように岐阜県のCOPD治療は重要な課題を抱えていました。*NICE(Nippon COPD Epidemiology)study:2004年に順天堂大学医学部の福地氏らが報告した40歳以上の男女2,343名のデータによるCOPDの大規模な疫学調査研究COPD死亡率(人口10万人対)2009年画像を拡大するCOPD死亡率(人口10万人対)岐阜VS全国画像を拡大する手をかけなければいけない疾患COPD喘息には吸入ステロイドなどの治療薬があり、適切な治療で症状改善が可能ですが、COPDには進行を遅らせる治療しかありません。具体的には、禁煙、増悪防止のための感染予防(ワクチン)、日常管理といった基本と、その上で行われる気管支拡張薬、呼吸リハビリテーションなどがそれにあたります。この中の一つでも欠けると奏功しません。このように、COPDはさまざまな医療が必要となる“手をかけなければいけない疾患”だといえます。COPDの認知度の低さCOPDの認知度はきわめて低いものです。一般の方の半数以上はCOPDをご存じありませんし、知っていたとしても名前だけで、COPDがどういう疾患かわかる方はとても少ないです。息切れは年齢のせい、喫煙者だから多少の息切れは当たり前と考えているのですから、医療機関を受診をすることはありません。このように、COPDの認知の低さにより、自分がCOPDである事を知らずに過ごしている方が数多くいることになります。また、受診してもCOPDを理解していないと治療はうまくいきません。COPDの薬剤を吸入しながら喫煙しているケースなどは、その典型例といえます。肺機能検査の普及COPDの早期発見と診断には肺機能検査が必要です。しかし、プライマリ・ケア領域では機器がない、あるいは機器があっても使っていない状況であり、肺機能検査を実施しているのはほとんどが大病院です。つまり、COPD潜在患者のほとんどが医療機関未受診かプライマリ・ケア領域に潜んでいる可能性があります。高血圧などの循環器疾患、脂質異常症や糖尿病、消化器疾患などの疾患治療患者の何割かに隠れCOPDがいると思われます。COPDストップ作戦立ち上げこのような背景の中、岐阜県としては早急にCOPDへの対策を図る必要がありました。COPDは片道切符で、一旦悪化するとなかなか元に戻りません。ブレーキの始動が遅れると終着駅は在宅酸素になります。だからこそ、重症化する前にいかに早期発見・早期診断し、いかに禁煙、薬物治療、リハビリテーションという一連の治療を導入していくのかを考えなければなりません。また、これらの治療はバラバラでは意味をなさず、全県が同じレベルでこれらの治療がカバーできるよう足並み揃えて取り組む必要がありました。そこで平成23年度に岐阜県医師会と岐阜県で協議し、委託事業として県医師会がCOPD対策事業を始めることになりました。まず岐阜県医師会COPD対策協議会を立ち上げ、その下にCOPD対策本部を設置しました。そして岐阜県を5地区に分け、各地区に対策委員会を設置しました。地域医師会との連携がスムーズに行われるように、専門医と共に、地域医師会役員も地区委員に就任していただきました。そして私、大林が岐阜県COPD対策本部長に指名され、平成23年10月に全県一斉に「COPDストップ作戦」を立ち上げ開始しました。岐阜県5ブロック画像を拡大するCOPD対策協議会画像を拡大するCOPDストップ作戦の目的は、COPD死の減少です。活動の軸は、COPDの頭文字をとって、Care COPD(COPDの早期治療)、Omit COPD(COPD発症の最大原因である喫煙習慣の排除) 、Prevent COPD(COPD発症の原因であるタバコの害を啓発し、喫煙開始させない)、Discover COPD(COPDを早期から発見し、早期治療に結びつける)の4本としました。県医師会“COPDストップ作戦”の4つのコンセプト画像を拡大するCOPDストップ作戦 第1弾COPD教育講演会ストップ作戦の第1弾はCare COPDとして、COPD教育講演会を実施しました。COPDの適切な治療法の普及を目的とし、H23年10月〜12月に第1回、翌年のH24年10月〜12月に第2回を県内5地区すべてで行っています。H25年には第3回を実施の予定です。この講演会の特徴は、外部講師を招かず、地元の専門医に座長と講師をお願いしていることです。地域の核となる先生と地域の先生が顔の見える連携を築き、今後の病診連携に役立てることを意図しています。COPDストップ作戦第2弾 スパイロキャラバン第2弾はDiscover COPDとして、スパイロキャラバンを実施しました。COPDの早期発見・早期治療の最大の障壁は肺機能検査(スパイロメトリ―)の普及不足です。肺機能検査を体験していただき、より日常診療的な検査にしていただくことを目的として行っています。まず、岐阜県下の診療所等を対象に、各地区での説明会を行い、ボランティア参加で協力診療所を募りました。肺機能検査装置のない診療所には貸し出し、患者さんに無料で肺機能検査を実施していただくというものです。検査対象者は、COPD以外の疾患で受診中の、喫煙中または禁煙歴があり、労作性呼吸困難の訴えがある40歳以上の患者さんです。この方たちに書面で同意を得て肺機能検査を実施しました。第1回はH23年10月〜12月、第二回はH24年9月〜12月の期間に実施しています。第1回のスパイロキャラバンの結果、COPD疑いありの患者さんは、検査を行った方の30.9%でした。とくに、70歳代では半数、80歳代では6割が疑いありと非常に高い頻度でした。人数でいうと、計530例の潜在患者さんを参加51施設が引き出したことになります。また、肺年齢はII期以上から実年齢に比べ有意に下がっていることもわかりました。このスパイロキャラバンの結果は、県下において積極的にCOPDストップ作戦を展開すべき根拠を明らかにしたといえます。スパイロキャラバン実施結果画像を拡大する年齢別COPD(疑)存在率(%)画像を拡大するCOPDストップ作戦第3弾 禁煙指導セミナー第3弾はOmit COPDとして、プライマリ・ケアの医師、薬剤師を対象に県5地区すべてで禁煙治療法セミナーを開講しました。目的は禁煙治療ができる施設を増やし、禁煙治療をもっと市民に身近なものにすることと、県内の禁煙治療レベルの底上げです。COPDの進行を止める最も有効かつ根本的な治療法は禁煙です。ただし、禁煙指導は標準治療に則り正しく行わないと成果が上がりません。ところが、実際は施設によって禁煙指導のやり方に差があるなど多くの課題がありました。平成24年10月~12月に第1回を行いましたが、反響が大きく、各地域とも非常に多くの先生方に参加いただきました。今年は第2回を開催する予定です。COPDストップ作戦第4弾 吸入指導セミナー第4弾はCare COPDとして、吸入指導セミナーを薬剤師会との連携により実施していきたいと考えています。このセミナーは薬局の吸入指導技術の向上と、すべての薬局で同じ指導ができるようにすることが目的です。COPD治療薬の主軸は吸入薬です。しかし、吸入指導が不十分で、患者さんが誤った吸入方法を行ったり、有効に吸入できていないケースが多くみられます。吸入デバイスもメーカーごとに異なり、すべての薬剤・デバイスを網羅したセミナーが必要とされています。東濃地区では2009年から行っていますが、薬剤師の方は非常に熱心で、成果も上がっています。これから全県下に展開していきたいと思います。COPDストップ作戦の成果と今後スパイロキャラバンで新たに多くの潜在患者から引き出し、プライマリ・ケア領域に多くのCOPD患者さんが埋もれている可能性を示したことは、大きな成果といえます。また、この作戦を通し、医療者の意識の変化も感じられます。COPD患者さんを積極的にみられる先生方も増えるなどCOPDの意識が定着し始めてきたと思います。また、肺機能検査実施の意識が高まってきたと思います。スパイロキャラバンに2回とも参加したり、数多く肺機能検査を実施される熱心な先生も増えてきました。肺機能検査の重要性や簡単さが浸透し、第1回目のスパイロキャラバン開始後、肺機能検査装置の新規購入が増えたようです。禁煙指導セミナーについては非常に反響が強く、禁煙治療の標準化が県下で底上げされたと思います。とはいえ、一般市民へのCOPDの認知率向上は今後も必要ですし、Prevent COPDとして学校での禁煙教室も非常に重要です。さらに、病診連携の実現もありますので、これら4つのコンセプトを軸にCOPD作戦を今後も進めて行きたいと考えています。COPD治療は前述のとおり、しなければならないことが多いのですが、それだけのことを行わないと、患者さんに良い医療を十分に提供できたことにはなりません。しかし、個々の施設ごとで、十分に対応できるとは限りません。そこで、これまでのような局地戦でなく、県全体が力を合わせた総力戦で行うことで、患者さんが救われるのだと思います。

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呼吸器外科医からみたCOPD ~肺がん治療の重大なリスクファクターCOPD~

COPD罹患頻度COPDと肺がんは、双方とも喫煙との関連が高く、併存例も多くみられます。呼吸器外科では手術前のスパイロメトリーは必須検査であるため、実際の両者の併存状況もわかります。当施設は他施設に比べCOPD患者さんの比率が若干多いかも知れませんが、肺がん手術対象の患者の30%がCOPDを合併していることがわかりました。合併するCOPDの重症度はGOLD分類1(軽症)が半数、GOLD分類2(中等症)以上が半数というものでした。COPD患者の肺の状態COPD患者さんの肺は、そうでない方とは圧倒的な違いがあります。正常な肺は上葉、中葉、下葉とも同じ柔らかさ(コンプライアンス)を持ち、肺は均等に広がります。しかし、COPDの肺は、気腫状になり破壊された部分が極端に膨らんで正常な肺が潰されてしまうのです。正常な肺の気腔が狭くなってしまうと、換気不足により静脈血が動脈にそのまま還ってしまう肺内シャントに近い状態となり、VQミスマッチ(換気血流不均等)から低酸素血症にいたることもあります。手術の際も違いがわかります。COPD肺は破壊されているため、ステープラーで切っているときに針穴から空気漏れが起こることがあります。肺は弾力性のある臓器ですが、COPDでは肺の弾力性がなくなっているためステープラー操作によって組織が裂けてしまうわけです。こういう現象は、COPDを併存したほとんどの例でみられます。また手術時、肺を虚脱させる際にも違いがでます。CODPでは、吸気時は気道が広がり空気が入っていくものの、気道が狭窄しているため呼気時に気道が細くなると空気が出ていかないチェックバルブ現象が起きます。そのため、COPD肺では虚脱しようとしても気道が塞がって肺胞に残った空気がでていかず、潰れにくいのです。気管支のチェックバルブ現象画像を拡大するCOPD併存による弊害COPDの肺は喫煙により、組織の破壊と再生が繰り返されています。つまり、細胞分裂が非常に活発に行われているわけです。がんはDNAのミスマッチコピーですので、細胞分裂が多いほどがんが発生する率が高くなるため、COPD患者では肺がんの発症が多くなるのです。しかも、COPDに発生する肺がんはきわめてアグレッシブな低分化がんです。COPDと肺がん発症率Mannino DM, et al. Arch Intern Med. 2003;163:1475-1480.画像を拡大するCOPD患者では経年的に肺がんの発症数が上昇。この傾向は中等症から重症で顕著である呼吸器外科にとって手術のリスクファクターとしてCOPDほど重要なものはありません。COPDでダメージを受けた肺を切り取るという操作を加えること自体きわめて大きなリスクファクターですが、COPDの患者さんは術後合併症の発生率も非常に高いのです。たとえば、術後の難治性肺瘻(肺からの空気漏れ)の発生率はCOPD併存例で12%に対し非併存例では4%と4倍、肺炎発生率はCOPD併存例で6%に対し非併存例では1%と6倍も高くなります。また、術後QOLが悪くなり、これも大きな問題だといえます。また、前述の通り低分化がんで進行が速いため、通常であれば肺葉切除で済むケースでも、COPD併存例ではリンパ節への転移が進んで手術範囲が大きくなることも少なくありません。COPDと肺がん死亡率画像を拡大するCOPDでは手術の可否の判断も複雑です。肺がんの手術適応基準は術後残存呼吸機能FEV1が800cc以上というものですが、COPDでは術後の呼吸機能が想定以上に悪くなることがあります。たとえば、肺がん切除後にCOPD病変部分が残る場合、正常の肺部分が少なくなるため、術後呼吸機能は想定以上に悪くなり、患者さんによっては手術ができないということが起こります。逆にCOPD病変と肺がんが同部位だと、肺の良い部分を残して悪い部分をとることになるため呼吸機能が劇的に良くなります。このように、COPDでは呼吸機能だけでなく手術部位を考慮してから、手術の可否を判断しないと危険です。呼吸機能の悪さ、耐術性の乏しさ、アグレッシブな低分化がん、と肺がん治療にとってCOPDは三重の障害をもたらすのです。COPDでは、がん以外の併存症にも重要なものがあります。COPDの死因の第1位は呼吸不全ですが、第2位は循環器疾患です。つまり、重症化して呼吸不全になる前に心臓の合併症が問題になるわけです。肺が悪ければ心臓とくに右心系に負荷がかかるため、心筋梗塞や心不全が起こりやすくなります。そのため、COPDの治療をすることで、心臓合併症死を減らさなければいけないわけです。最悪のオーバーラップ…CPFECOPDと間質性肺炎は双方とも喫煙が原因であるためオーバーラップすることがあります。この病態は気腫合併肺線維症CPFE(Combined Pulmonary Fibrosis and Emphysema)とよばれ、近年注目されています。COPDの一部に存在し、典型的には上葉に気腫、下葉に間質性肺炎がある新しい疾患概念です。このポピュレーションは、低酸素血症が著明に起こり、非常に予後も悪く術後の合併症も多いのが特徴です。さらに厄介な事に、呼吸機能が正常であることが多いのです。気腫と線維化が相殺して呼吸機能(1秒率)が見かけ上、正常なのです。呼吸機能だけを指標に手術に踏み切ると、落とし穴にはまる事もあります。今後、この病態の研究は盛んに行われるでしょう。COPD患者180例における各表現型の比率画像を拡大するCPEEの死亡率画像を拡大するCOPD併存肺がん症例での臨床試験COPDは未診断の患者が多い疾患ですが、呼吸器外科では必ずスパイロメトリーを行うため潜在的なCOPD患者を把握できる確率は高いのです。それも手術可能な症例なので、内科でのCOPDよりも軽症の患者さんが多くおられます。COPDには、チオトロピウム(商品名:スピリーバ)のUPLIFTなど大規模な研究が数多くあるものの、外科が主体となった研究はなく、呼吸器外科医が診る軽症例における、有用性や予後改善効果はわかっていません。さらに、手術適応ボーダーライン上の患者にチオトロピウムを投与することでFEV1が改善し手術可能となるか? また、それに長期的な意義があるのか? といったことも明らかにはなっていません。そのため、現在は当施設だけの小規模な試験ですが、多施設共同で300例を目標に術後合併症発生率をエンドポイントとした第3相試験を始めています。がんとCOPDのフォローアップを両輪で行う呼吸器外科の手術後、がん再発のフォローアップは通常10年程度ですが、COPD合併患者さんは術後もCOPDの状態であるため、生涯フォローアップが必要です。また、手術前はモチベーションがあるので治療薬を使ってくれるものの、症状がないため手術後薬物治療をやめてしまう患者さんも数多くいます。そのため、内科と連携を図り、がんとCOPDのフォローアップを両輪で行えるようなシステムが実現できると良いと思います。COPDもがんも世界的に増えていく疾患です。知識豊富な呼吸器内科の力をお借りし、今後は診療科を超えた連携対策を実施していく必要があると思います。

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葉酸の長期摂取、がん発症を増大も減少もせず/Lancet

 葉酸を長期にわたって摂取しても、がん発症リスクは増大も減少もしないことが、約5万人を対象にしたメタ解析の結果、示された。ノルウェー・Bergen大学のStein Emil Vollset氏らが、葉酸の心血管疾患予防効果などを調べた13の無作為化プラセボ対照試験のデータからメタ解析を行い報告したもので、Lancet誌オンライン版2013年1月25日号で発表した。葉酸の摂取は、妊婦においては生まれてくる子どもの神経管欠損症を予防することが、これまでの疫学試験で示されているが、一方でがん発症リスクとの関連が懸念されていた。葉酸摂取期間1年以上、心血管疾患予防に関する試験のデータで解析 研究グループは、2011年までに終了した葉酸に関する無作為化プラセボ対照試験で、がん罹患率に関する記録のある13試験(被験者総数4万9,621人)について、メタ解析を行った。対象となった試験は、葉酸摂取期間が1年以上、被験者数はそれぞれ500人以上だった。 対象試験のうち10件が、葉酸と心血管疾患予防に関して検討したもの(被験者合計4万6,969人)で、3件が大腸腺腫患者を対象にしたもの(同2,652人)だった。いずれの試験も、被験者は同等に割り付けされていた。 主要アウトカムは、予定治療期間中の非メラノーマ性皮膚がんを除くがん罹患率とした。血中葉酸値は葉酸摂取群で4倍でも、がん発症率は部位別にみてもプラセボ群と変わらず 解析に組み込んだ試験の治療期間の加重平均値は5.2年だった。被験者の血中葉酸濃度平均値は、葉酸群が57.3nmol/Lと、プラセボ群の13.5nmol/Lの4倍近くに上った。しかし、がんを発症したのは、葉酸群1,904人、プラセボ群1,809人であり、両群で有意差はみられなかった(相対リスク:1.06、95%信頼区間:0.99~1.13、p=0.10)。 治療の長期化とがん発症リスクとの間には関連はなかった。また、大腸がん、前立腺がん、肺がん、乳がん、その他部位別にみても、がん発症リスクと葉酸摂取には有意な関連は認められなかった。 葉酸とがん罹患率との関連について、13試験の個別差や、心血管疾患予防に関する試験と腺腫に関する試験での有意差は認められなかった(それぞれ、p=0.23、p=0.13)。

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