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小細胞肺がん、PARP阻害薬veliparibの追加でPFS改善/JCO

 小細胞肺がん(SCLC)に対して、化学療法へのPARP阻害薬veliparib追加の有効性が確認された。veliparibは、非臨床試験で標準化学療法の効果を増強することが示されており、米国・エモリー大学のTaofeek K. Owonikoko氏らは、未治療の進展型SCLC(ES-SCLC)患者を対象に第II相無作為化臨床試験を行った。その結果、シスプラチン+エトポシド(CE)へのveliparib追加併用療法により、無増悪生存(PFS)期間が有意に延長したことが示されたという。Journal of Clinical Oncology誌2019年1月20日号掲載の報告。 研究グループは、未治療ES-SCLC患者をveliparib(CE+V)群(1~7日目に100mgを1日2回経口投与)またはプラセボ(CE+P)群に、性別および血清乳酸脱水素酵素(LDH)値で層別化して無作為に割り付け、いずれもCE療法4サイクルと併用投与した。 主要評価項目はPFS。全体の片側(0.10値)log-rank検定を用い、試験の検出力は88%で、PFSのハザード比(HR)37.5%減少と設定した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしプロトコールの治療を受けた患者は、計128例であった。・患者背景は、年齢中央値66歳、52%が男性、ECOG PSは0が29%、1が71%であった。・PFS中央値は、CE+V群6.1ヵ月、CE+P群5.5ヵ月であり、CE+V群が優れていた(層別化前HR:0.75[片側p=0.06]、層別化後HR:0.63[片側p=0.01])。・全生存(OS)期間中央値は、CE+V群10.3ヵ月、CE+P群8.9ヵ月であった(層別化後HR:0.83、80%信頼区間[CI]:0.64~1.07、片側p=0.17)。・全奏効率(ORR)は、CE+V群71.9%、CE+P群65.6%であった(両側p=0.57)。・層別解析の結果、LDH高値の男性患者ではCE+V群でPFSの有意な延長(PFSのHR:0.34、80%CI:0.22~0.51)が認められたが、他の患者集団では治療群間で有意差はなかった(PFSのHR:0.81、80%CI:0.60~1.09)。・Grade3以上の血液学的毒性の発現頻度はCE+V群がCE+P群よりも高かった(CD4リンパ球減少症:8% vs.0%[p=0.06]、好中球減少症:49% vs.32%[p=0.08])。

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TNM分類と取扱い規約は統合可能か?/日本癌治療学会

 本邦では、臓器別に各学会が作成する取扱い規約が使われてきたが、世界中の日本以外の国で主に使用されるのは国際対がん連合(UICC)/米国がん合同委員会(AJCC)によるTNM分類である。国際的な臨床試験への参加時や、論文投稿時に生じる齟齬への対応策はあるのか。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で、がん研究会有明病院消化器外科の佐野 武氏が、「日本の取扱い規約とUICC/AJCC TNM分類は統合可能か? 」と題した講演を行った。TNM分類の用語や分類を混同するケースが問題 はじめに佐野氏は、取扱い規約とTNM分類の本質的な違いについて解説。取扱い規約が日本人患者のみを対象に、臓器ごとのルールに則り、病期・病理・治療・効果判定を扱っているのに対し、TNM分類はグローバルな使用を目的に、全臓器共通の原則に則り、臓器ごとの病期のみを扱うものである。両者の目的や枠組みの違いを混同すべきではなく、「TNM分類に従った治療などというものはない。日本の臨床医にとって、取扱い規約は目の前の患者に最も適した診断・治療法を探るための規約であり、独自の分類があることはメリットといえる」と話した。 問題は、TNM分類への正確な翻訳ができない、あるいは一部が似ているために用語や分類を混同するケースがある点だと同氏は指摘。胃がん領域では、2010年に国内で取扱い規約とガイドラインの改訂が行われ、同時期にTNM分類も改訂が予定されていた。両者を比較すると、例えば“M1”は胃癌取扱い規約では腹腔外転移を表すが、TNM分類では領域リンパ節転移以外の転移すべてを表していた。また領域リンパ節(N)の扱いや、深達度(T)で表す対象としてリンパ管侵襲(Ly)と静脈侵襲(V)を含むかどうか、なども異なっていた。TNM分類に翻訳可能な形に整理された胃癌取扱い規約 そこで、胃癌取扱い規約(第13版→第14版)および治療ガイドライン(第2版→第3版)の改訂にあたって、大規模な整理が行われた。最も大きな問題とされたのは、領域リンパ節の扱い。TNM分類では単純に転移リンパ節個数のみを評価するが、取扱い規約では各リンパ節に番号が振られ、どのリンパ節への転移かによってグルーピングし、病期を評価してきた歴史がある。表記としては同じN1~N3が、指し示す内容としては全く異なるものとなっていた。胃癌取扱い規約の第14版では、このグルーピングをなくし、ステージングについてはTNM分類と一致させる方向で改訂を行った。従来のリンパ節番号や肝転移(H)、腹膜転移(P)の考え方は残しつつも、TNM分類に翻訳可能な形に整理されている。 治療についてはガイドラインに移行させ、紙面上では規約独自のものは黒字、TNM分類と共通のものは青字と区別できるようにした。一方、同時期に行われていたTNM第6版から第7版への改訂過程において、AJCCは食道がんのみのデータに基づいて食道と胃でステージングを統一しようと動いていた。これに対し、日本側は日本と韓国のデータベースに基づく新たな胃がんのステージングを提案し、実際に採用された経緯がある。さらに、国際胃癌学会(IGCA)を通じて、世界中から2万例以上のデータを集めて解析した結果をもって提案した新たなステージングが、取扱い規約第15版およびTNM分類第8版に採用されている。 佐野氏は「日本が長年にわたり蓄積してきた詳細で正確なデータベースは国際的な分類の改訂にも貢献できるもの」と話し、UICC/AJCCに対する積極的な働きかけも必要であることを強調した。「両者を統合することはできないし、する必要はない」とし、「ただし、ステージングに関しては日本の規約がTNMを受け入れることで国際的な齟齬はなくなるであろう。わが国は、診断、病理、治療の分野で独自性を維持すればよいのではないか」として講演を締めくくった。TNM分類と読み替えできる「領域横断的がん取扱い規約」 国内に目を向けると、各取扱い規約の間で臓器別に異なる用語・記載法・記載順が採用され、改訂時期もバラバラな状態が続いてきた。国際的・臓器横断的なバスケット試験も増加する中、日本癌治療学会では日本病理学会と共同で、日本におけるがんの病期分類の標準化をめざして、「領域横断的がん取扱い規約 第1版」を刊行した。 本規約は、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんなど22領域を網羅。病理医や腫瘍科医にとって大きなフラストレーションとなっていた「臓器によって情報の掲載順・掲載方法が異なる」点を改善し、臨床情報→原発巣→組織型→病期分類と記載順と形式を統一している。記号や用語の違いについても、本書における「総則」を冒頭で定義し、それとは異なる点については側注で解説している。また、TNM分類と共通の記述については青字で区別し、適宜側注で解説が加えられて、読み替えができるよう構成されている。

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ESMO2019レポート 肺がん

レポーター紹介ESMO(European Society for Medical Oncology)2019はスペインのバルセロナで、2019年9月27日~10月1日の期間に行われた。今年は9月初めに世界肺がん学会がESMOとまったく同じ会場であるスペインのバルセロナで行われていたが、昨年のESMOと比べると、肺がんの分野においても注目演題が複数個存在した。とくに、Presidential Symposiumにおいて、肺がんからFLAURAとCheckMate-227の2演題が報告されており、各試験への関心の高さがうかがわれた。また、約30,000人が参加し、多くの演題が報告された。肺がん領域ではこの2つの演題を中心に、いくつか紹介する。分子標的治療のトピックFLAURA試験学会開催前から、全生存期間(OS)において統計学的有意差が出ていることが報告されており、どのような生存曲線が描かれ、その差がどれくらいなのか、全生存中央期間がどれくらいなのかと、注目されていたFLAURA試験のOSが報告された。FLAURA試験は、30ヵ国556例を対象に行われた。EGFRのcommon変異(Del19/L858R)を有する進行NSCLCを、オシメルチニブ群(279例)と標準療法群:ゲフィチニブもしくはエルロチニブ(277例)に1対1の割合で割り付けて行われた。脳転移がある患者も神経学的に安定している患者は参加可能とされ、標準療法群で増悪となり中央判定でT790Mが同定された場合にはオシメルチニブへのクロスオーバーが可能であった。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、有意差をもって、オシメルチニブ群が標準治療群より延長することが示されていた。今回のOSの結果は、OS中央値はオシメルチニブ群が38.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:34.5~41.8)、標準療法群が31.8ヵ月(95%CI:26.6~36.0)で、ハザード比(HR)は0.799(95%CI:0.641~0.997)、p=0.0462であり、有意にオシメルチニブ群でOSが延長していた。また、OSのサブグループ解析では、アジア人のHRと遺伝子変異がL858RのグループのHRがそれぞれ0.995および0.996と、ほぼ1に近い数字であった。とくに、アジア人におけるOSのカプランマイヤー曲線は38ヵ月頃で交差しており議論の余地を残す結果になっている。一方、非アジア人は9ヵ月頃から曲線の差が開き始め、その後、差は広くなっており、アジアと非アジアではやや異なる結果となった。PD後の後治療をみると、各群ともに約30%が次治療を受けておらず、日本の実臨床に合わない印象があった。さらに、標準療法群の85例(次治療に移行した群の47%)がオシメルチニブにクロスオーバーされていた。今後は、日本人のOSサブグループ解析がどのような結果になっているのかが注目されるところである。S.S. Ramalingam, et al. LBA5免疫療法のトピックCheckMate-227試験CheckMate-227 Part 1試験は、非扁平上皮がん、扁平上皮がんの組織型を含む未治療の進行NSCLC患者を対象にした非盲検フェーズ3試験。Part 1a、Part 1bから構成されている。Part 1aは、PD-L1陽性患者(1%以上)1,189例を、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群、ニボルマブ単剤療法群、化学療法群に1対1対1の割合で割り付け、Part 1bは、PD-L1陰性患者550例を、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群、ニボルマブと化学療法併用群、化学療法群に1対1対1の割合で割り付けて評価した。この試験も、学会前より、OSにおいてPart 1aで有意差を認め、Part 1bでは有意差を認めないことが報告されており、その詳細な結果が注目されていた。Part 1には2つの主要評価項目が設定されていた。1つはPart 1aに組み入れられた患者で評価するPD-L1発現陽性患者におけるOSの評価。もう1つは、Part 1aと1bに組み入れられた患者で評価した腫瘍遺伝子変異量(TMB)10mut/Mb以上の患者における盲検下独立中央判定によるPFSの評価。TMB10mut/Mb以上の患者において、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群が化学療法群よりも有意にPFSを延長することはすでに報告されている。今回のOSの評価では、PD-L1陽性患者(Part 1a)におけるニボルマブとイピリムマブ併用療法群(396例)のOS中央値は17.1ヵ月、化学療法群(397例)は14.9ヵ月、HR:0.79(97.72%CI:0.65~0.96)、p=0.007で有意にニボルマブとイピリムマブ併用療法群で延長していた。なお、ニボルマブ単剤療法群(396例)のOS中央値は15.7ヵ月であった。1年OS率はニボルマブとイピリムマブ併用療法群が63%、化学療法群が56%、ニボルマブ単剤療法群が57%、2年OS率はニボルマブとイピリムマブ併用療法群が40%、化学療法群が33%、ニボルマブ単剤療法群が36%となっており、併用群は化学療法やニボルマブ単剤療法群よりtail効果が高い所に出ている可能性があり、今後の長期予後調査が楽しみな結果であった。また、PD-L1発現が50%以上の患者に限定すると、ニボルマブとイピリムマブの併用療法群(205例)のOS中央値は21.2ヵ月、化学療法群(192例)は14.0ヵ月で、HRは0.70(95%CI:0.55~0.90)となった。ニボルマブ単剤療法群(214例)のOS中央値は18.1ヵ月、化学療法群に対するHRは0.79(95%CI:0.63~1.01)で、免疫チェックポイント阻害薬が含まれる群の効果が高まった。奏効率、PFS、DORも同様だった。一方、PD-L1陰性患者(Part 1b)におけるニボルマブとイピリムマブ併用療法群(187例)のOS中央値は17.2ヵ月、化学療法群(186例)は12.2ヵ月で、HRは0.62(95%CI:0.48~0.78)と探索的研究ではあるが、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群で有意に延長していた。PD-L1の発現にかかわらず、全患者におけるOS中央値は、ニボルマブとイピリムマブの併用療法群(583例)は17.1ヵ月、化学療法群(583例)は13.9ヵ月、HRは0.73(95%CI:0.64~0.84)であり、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群で有意にOSが延長していた。また、OSのサブグループ解析において、TMBの高低にかかわらず、ニボルマブとイピリムマブ併用療法群は化学療法群と比べOSの延長が示唆されており、以前に発表されたPFSとは異なる結果となり、今後の展開が期待される。S. Peters, eta la. LBA4IMpower110試験IMpower110試験は、PD-L1発現がTCまたはICで1%以上の未治療非小細胞肺がん(NSCLC)患者で、アテゾリズマブ単剤療法とプラチナ製剤を含む2剤併用化学療法を比較する、フェーズ3、非盲検ランダム化比較試験である。主要評価項目は、EGFRおよび/またはALKの遺伝子変異陽性を有する患者を除外した患者群におけるOSである。OSの検証は、PD-L1のサブグループにより、TC3またはIC3、TC2/3またはIC2/3、TC1/2/3またはIC1/2/3の順に段階的に行われ、これら3つの患者群すべてでOSがポジティブな結果となった場合、PFSの正式な検証を行うこととされた。本研究では、TC3またはIC3群では、アテゾリズマブ群20.2ヵ月(95%CI:16.5~NE)、化学療法群13.1ヵ月(95%CI:7.4~16.5)、HR:0.59(95%CI:0.40~0.89、p=0.0106)となり、PD-L1高発現(TC3またはIC3-野生型)の患者に対する1次治療として、アテゾリズマブ単剤療法は、プラチナ製剤を含む2剤併用化学療法と比べてOSを有意に延長することが示された。TC2/3またはIC2/3の患者では、アテゾリズマブ群18.2ヵ月(95%CI:13.3~NE)、化学療法群14.9ヵ月(95%CI:10.8~16.6)、HR:0.72(95%CI:0.52~0.99、p=0.0416)となった。ただし、この解析では事前に定めた境界を超えなかったため、TC1/2/3またはIC1/2/3-野生型の患者におけるOSの解析は正式な検証とならなかった。結果的には、まだ検証は続くものの、ペムブロリズマブのPD-L1高発現(50%以上)に追随するような結果であった。D.Spigel, et al. LBA78その他のトピック個人的には、宮本先生がLC-SCRUMの変遷を発表され、その発表の中でラグビー日本代表がアイルランド代表に勝ったことを話されたときに聴衆から大きな拍手が起こったことが一番印象に残っている。REMORA試験REMORA試験は、プラチナ製剤を含む化学療法を受けている既治療胸腺がんに対して、マルチチロシンキナーゼ阻害薬であるレンバチニブの有効性をみる単群フェーズ2試験である。胸腺がんは、化学療法のレジメンが限られており、治療法の開発が切望される分野である。今回、レンバチニブは胸腺がんに対して、PFS中央値9.3ヵ月、OS中央値未到達、奏効率38.1%、病勢制御率95.2%と単群試験ではあるが非常に有用な試験結果が報告された。今後の開発が楽しみである。S. Itoh, et al. 1844O

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長期再発リスクが高い早期肺がんの病理学的所見は?

 早期肺がんで再発リスクが高い病理学的所見が明らかにされた。広島大学の津谷 康大氏らが、「胸部薄切CT所見に基づく肺野型早期肺癌の診断とその妥当性に関する研究」(JCOG0201)の10年追跡結果を報告。浸潤成分径>2cm、臓側胸膜浸潤陽性または血管侵襲陽性の再発リスクが高いことが示されたという。Annals of Thoracic Surgery誌2019年11月号掲載の報告。 JCOG0201は前向き多施設共同研究で、再発リスクが高い病理学的Stage I肺腺がん患者を特定する目的で行われた。被験者は、肺葉切除を受け登録された病理学的Stage I肺腺がん患者536例。lepidic成分を除く浸潤成分の大きさを腫瘍径としデータを解析した。 Kaplan-Meier法で無再発生存(RFS)率を推定し、多変量Cox比例ハザードモデルを用いてRFS不良に関連する独立した予後因子を特定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は10.2年で、10年RFSは83.9%であった。・多変量Cox解析の結果、年齢65歳超(ハザード比[HR]:2.60、95%信頼区間[CI]:1.66~4.07)、浸潤成分径2cm超(HR:2.70、95%CI:1.40~5.23)、臓側胸膜浸潤(HR:2.17、95%CI:1.23~3.81)、および血管侵襲(HR:2.59、95%CI:1.47~4.55)がRFSの独立した予後因子であった。・再発の高リスク群(浸潤成分径>2cm、あるいは、臓側胸膜浸潤陽性または血管侵襲陽性:124例)と低リスク群(浸潤成分径≦2cm、かつ、臓側胸膜浸潤陰性または血管侵襲陰性:408例)に分けた場合、両群間でRFSに有意差が認められた(高リスク群のHR:3.61、95%CI:2.35~5.55)。

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新抗体薬物複合体DS-7300、固形がんを対象とした臨床試験開始/第一三共

 第一三共株式会社(本社:東京都中央区)は、再発・進行性の固形がん患者を対象としたDS-7300(B7-H3を標的とした抗体薬物複合体[ADC])の第I/II臨床試験において、最初の患者への投与を開始した。抗体薬物複合体DS-7300は用量漸増パートと用量展開パートで試験 B7-H3は、肺がん、頭頸部がん、食道がん、前立腺がん、子宮内膜がん、乳がんなど様々のがん種において過剰発現しているたんぱく質の一種で、がんの進行や予後の悪化に関係していると言われているが、現在、がん治療を対象に承認されているB7-H3を標的とした治療薬はない。抗体薬物複合体であるDS-7300は、独自のリンカーを介して新規のトポイソメラーゼI阻害剤(DXd)を抗B7-H3抗体に結合させ、1つの抗体につき約4個のDXdが結合。薬物をがん細胞内に直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えるよう設計されている。 今回、抗体薬物複合体DS-7300の投与を開始した同試験は、日本と米国における再発・進行性の固形がん患者(頭頸部がん、食道がん、非小細胞肺がん等)を対象とした第I/II相臨床試験で、2つのパートからなる。パート1(用量漸増パート)では、約40例の患者を対象に、DS-7300の投与量を段階的に増やしながら安全性と忍容性を評価し、最大耐用量と推奨用量を決定する。パート2(用量展開パート)では、約120例の患者を対象に、DS-7300の推奨用量での安全性と忍容性を評価すると共に、客観的奏効率、奏効期間、無増悪生存期間及び全生存期間を含む有効性を評価する。

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新型タバコの発がんリスク【新型タバコの基礎知識】第11回

第11回 新型タバコの発がんリスクKey Points1件のモデル研究で、発がんリスクが大きい順に“紙巻タバコ>>加熱式タバコ>>電子タバコ”と推定されたが、解釈には注意が必要。日本で大流行している加熱式タバコのリスクは、欧米で流行している電子タバコよりもかなり大きいと考えられる。新型タバコの健康リスクのうち、データがないことを理由として評価が先送りにされそうなのが発がんリスクです。通常、がんの発症までには数10年の年月がかかる場合が多く、リスクの正確な評価には時間がかかるからです。しかし、タバコの健康リスクを考えるうえで重大なリスクである発がんリスクに関する考察を、先送りにするわけにはいかないのではないでしょうか。化学物質による発がんリスクを評価する標準的な手法として、個々の化学物質のユニットリスク(単位濃度μg/m3に生涯曝露された際の発がん確率)とその摂取量(濃度)の積からリスクを推定するという方法があります。タバコの煙に含まれる有害化学物質の情報(第5回参照)に基づき、紙巻タバコ、加熱式タバコ、電子タバコなど各種のタバコ製品による発がんリスクをモデル式により推定した研究があります1)。この研究では、発がんリスクが大きい順に、“紙巻タバコ>>加熱式タバコ>>電子タバコ”と推定されました。紙巻タバコを1日15本吸った場合の生涯の発がんリスクは10万人当たり2,400人であったのに対し、加熱式タバコを1日15スティック吸った場合には10万人当たり57人の発がんリスク、電子タバコを1日30L(平均的吸入量)吸った場合には10万人当たり9.5人の発がんリスクだと推定されました。つまり、新型タバコに替えると発がんリスクが大きく減るとの結果です。ただし、この結果を鵜呑みにはできません。そもそも、紙巻タバコと比較することは正しいことなのか? という点がありますが、これについては後述します。鵜呑みにできない理由としては、少なくとも3つあります:[理由その1]この研究では、タバコ会社が選択的に報告したデータが主に使用されています。過去の紙巻タバコに関する研究結果から、一部の有害物質だけの情報を用いて推定したタバコのリスクは、実際よりも非常に少なく見積もられてしまう可能性があると考えられます。タバコ会社は、加熱式タバコの方が少なかったという化学物質を選択的に報告している可能性も否定はできません(第6回参照)。加熱式タバコには、発がん性があると考えられる物質も含め、推定モデルに含まれていない未知の成分が多く存在しているのです。[理由その2]リスクを少なく見積もってしまう原因となる、有害物質の複合曝露の影響がこの推定モデルでは考慮されていません。複合曝露の影響を完全に解明することは不可能です(図)。そのため、タバコから出る特定の有害物質の量を測定するというリスクの推定方法には、どうしても解決できない限界として複合曝露の問題が残り続けます。画像を拡大する[理由その3]現実世界でのタバコの吸い方は単純ではありません。紙巻タバコを1日15本吸っていた人が、モデルの設定で想定しているように、加熱式タバコにスイッチしたら1日15スティック吸うようになるとは限りません。加熱式タバコにスイッチすると紙巻タバコの時よりも吸う回数が増えるとの報告もあります2)。また、そもそもスイッチできるとも限りません。2017年に日本で実施したインターネット調査では、加熱式タバコを吸っている人の約70%は紙巻タバコとの併用でした3)。こういった理由から、現実世界における加熱式タバコによる発がんリスクは、冒頭のモデル研究が推定するよりもかなり大きい可能性があると考えています。過去の紙巻タバコの研究から、1日の喫煙量が多いことよりも、喫煙期間が長いことの方が、より大きな肺がんリスクになると考えられます4,5)。加熱式タバコにスイッチして有害物質の量を仮に減らせたとしても、長期間吸っていたら発がんリスクは大きくなると推測されるのです。さらには、新型タバコの発がんリスクを考える上でキーになる物質は、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類の可能性があります。前述の推定モデルには、この観点も抜けています。動物実験および細胞実験の結果から、タバコ煙の発がん性物質のなかでも、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等を含むアルデヒド類が、他の発がん性物質よりも発がんに強く関与していると報告されています6)。もともとアルデヒド類はタバコ煙のタールに占める比重が高いため、煙に多く含まれるアルデヒド類の関与が大きいとする結果は妥当だろうと考えられます。紙巻タバコと比べ、新型タバコでどれだけリスクを低減できる可能性があるのか推定する場合には、もともと多く含まれていて有害性の高い物質であるアルデヒド類に注目していく必要があります。加熱式タバコや電子タバコでは他の有害物質と比べて、アルデヒド類が比較的多く検出されていることから、加熱式タバコや電子タバコではアルデヒド類を介した有害性が大きいだろうと考えられるのです。また、有害化学物質の絶対量が重要だとも考えられます。紙巻タバコと比べた相対的なデータ、すなわち%だけをみていては、絶対量の問題に気付かないかもしれません。もともと非常に少なく、リスクの程度の小さい化学物質であれば、量が2倍になっても半分になってもたいした影響はないでしょう。気を付けないと、そういう数字のマジックにも騙されてしまう可能性があります。ただし、今回取り上げたモデル研究から分かることで、とくに日本で重要な観点があります。日本で大流行している加熱式タバコの発がんリスクは、欧米で流行している電子タバコよりもかなり大きいと推計された、という点です。そもそもの問題:新型タバコのリスクを何と比較するか本連載では、新型タバコのリスクについてみてきましたが、そもそもの問題として、加熱式タバコがタバコ製品でなければ、市場に出てくることすらなかったはずです。タバコ製品だけはたばこ事業法のもと“タバコ”として扱われ、発がん性物質などの有害物質が検出されても、問題になるわけでもなく、それはタバコだから、となるわけです。新型タバコで検出される有害物質の量は紙巻タバコと比べて低いかもしれませんが、それは有害物質の塊である紙巻タバコと比較するからです(第10回参照)。新型タバコを、化粧品や食品などタバコ以外の商品と比較すれば、明らかに新型タバコの方が有害だと考えられます。タバコ会社は紙巻タバコから加熱式タバコへスイッチすることを積極的に勧めていますが、せっかく紙巻タバコをやめるなら、新型タバコもやめて、もっと安全な選択をしてもらいたいと願っています。第12回は、「新型タバコを吸っている患者に伝えたいこと」です。1)Stephens WE. Tob Control. 2018; 27: 10-17.2)Simonavicius E, et al. Tob Control.2019;28:582-94.3)Tabuchi T, et al. Tob Control.2018;2:e25-e33.4)Leffondre K, et al. Am J Epidemiol. 2002; 156: 813-823.5)Flanders WD, et al. Cancer Res. 2003; 63: 6556-6562.6)Weng MW, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018; 115: E6152-E6161.

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EGFR変異陽性NSCLC、ラムシルマブ+エルロチニブでPFS延長(RELAY試験)/Lancet Oncol

 EGFR遺伝子変異陽性の転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)において、EGFRおよびVEGF両経路を二重ブロックする新たなレジメンが有望であることが示された。これまでに前臨床および臨床データで支持されているが、そのアプローチはまだ広くは用いられていない。近畿大学の中川 和彦氏らは、未治療のEGFR遺伝子変異陽性の転移を有するNSCLC患者を対象に、標準治療であるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)エルロチニブへのラムシルマブの併用を、エルロチニブ単剤と比較する「RELAY試験」を行い、ラムシルマブ+エルロチニブ(RELAYレジメン)はプラセボ+エルロチニブと比較して無増悪生存(PFS)期間を有意に延長することを報告した。安全性は、進行肺がんにおける個々の安全性プロファイルと一致していた。著者は「RELAYレジメンは、EGFR遺伝子変異陽性の転移を有するNSCLCに対して、1次治療となりうる新たな治療選択肢である」とまとめている。なお、同試験は現在、長期生存の追跡調査が進行中である。Lancet Oncology誌オンライン版2019年10月4日号掲載の報告。RELAY試験でラムシルマブ+エルロチニブ併用群でPFSが有意に延長 RELAY試験は、13ヵ国100施設で実施された第III相の国際共同無作為化二重盲検試験。EGFRエクソン19欠失(ex19del)またはエクソン21(Leu858Arg)置換変異が認められるStageIVのNSCLCで、18歳以上(日本および台湾では20歳以上)、ECOG PSが0または1、中枢神経系への転移がない患者を対象とした。 ラムシルマブ(10mg/kg)+エルロチニブ(150mg/日)併用群またはプラセボ+エルロチニブ群に1対1の割合で無作為に割り付け、2週間隔で投与した。無作為化は、性別、地域、EGFR変異の型、およびEGFR変異検査法によって層別化した。 主要評価項目は、ITT集団における治験担当医師評価によるPFSとした。安全性は、少なくとも1回の試験薬の投与を受けたすべての患者で評価した。 RELAY試験の主な結果は以下のとおり。・2016年1月28日~2018年2月1日に449例が登録され、ラムシルマブ+エルロチニブ併用群(224例)、プラセボ+エルロチニブ群(225例)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値は、20.7ヵ月であった。・主要解析において、PFSはラムシルマブ+エルロチニブ併用群が19.4ヵ月であり、プラセボ+エルロチニブ群の12.4ヵ月と比較して有意に延長した(層別化後ハザード比[HR]:0.59、95%CI:0.46~0.76、p<0.0001)。・Grade3/4の治療関連有害事象は、ラムシルマブ+エルロチニブ併用群で72%(159/221例)、プラセボ+エルロチニブ群で54%(121/225例)に発現した。・主なGrare3/4の治療関連有害事象は、ラムシルマブ+エルロチニブ併用群では高血圧症(52例[24%]、Grade3のみ)、ざ瘡様皮膚炎(33例[15%])、プラセボ+エルロチニブ群では、ざ瘡様皮膚炎(20例[9%])およびALT上昇(17例[8%])であった。・重篤な治療関連有害事象の発現率は、ラムシルマブ+エルロチニブ併用群29%(65/221例)、プラセボ+エルロチニブ群21%(47/225例)であった。

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最近の話題:肺がんIO-IO CheckMate-227【侍オンコロジスト奮闘記】第82回

第82回:最近の話題:肺がんIO-IO CheckMate-227ニボルマブ+低用量イピリムマブ、NSCLCのOS有意に改善(Checkmate-227)/ESMO2019Hellmann MD, et al. Nivolumab plus Ipilimumab in Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2019 Sep 28.[Epub ahead of print]

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メラノーマ・腎がん・肺がんに対するニボルマブの5年生存率/JAMA Oncol

 進行メラノーマ、腎細胞がん(RCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)に対する抗PD-1抗体ニボルマブ治療の5年生存率が報告された。米国・Johns Hopkins Bloomberg-Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのSuzanne L. Topalian氏らが米国内13施設270例の患者を包含して行った第I相の「CA209-003試験」の2次解析の結果で、著者は「長期生存と関連する因子を明らかにすることが、治療アプローチおよびさらなる臨床試験開発の戦略に役立つだろう」と述べている。ニボルマブは進行メラノーマ、RCC、NSCLCおよびその他の悪性腫瘍に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)によって承認されているが、これまで長期生存に関するデータは限定的であった。JAMA Oncology誌2019年10月号(オンライン版2019年7月25日号)掲載の報告。 研究グループは、ニボルマブ投与を受ける患者の長期の全生存(OS)を分析し、臨床的および検査所評価で腫瘍部位とOSの関連を明らかにするため、第I相の「CA209-003試験」の2次解析を行った。同試験は米国内13の医療センターで行われ、2008年10月30日~2011年12月28日に登録された、ニボルマブ投与を受ける進行メラノーマ、RCC、NSCLCの患者270例が包含された。 被験者は、ニボルマブ(0.1~10.0mg/kg)を2週間ごとに8週間のサイクルで投与され、完全奏効した場合、容認できない毒性作用が認められた場合、患者が中止を申し出た場合を除き、病勢進行まで最長96週間投与された。 解析は、オリジナルのプロトコールの規定、およびその後の2008~12年にプロトコール改正で組み込まれた方法に基づき、統計的解析は、2008年10月30日~2016年11月11日に行われた。安全性とニボルマブの活性を評価。OSは、最短フォローアップ期間58.3ヵ月の事後解析のエンドポイントであった。 主な結果は以下のとおり。・解析に含まれた270例のうち、107例(39.6%)がメラノーマ(男性72例[67.3%]、年齢中央値61歳)、34例(12.6%)がRCC(26例[76.5%]、58歳[35~74])、129例(47.8%)がNSCLC(79例[61.2%]、65歳[38~85])の患者であった。・推定5年OS率は、メラノーマ患者34.2%、RCC患者27.7%、NSCLC患者15.6%であった。・多変量解析の結果、肝臓転移(オッズ比[OR]:0.31、[95%信頼区間[CI]:0.12~0.83]、p=0.02)、骨転移(0.31[0.10~0.93]、p=0.04)が5年生存率の低下と独立して相関する可能性が示された。一方で、ECOG PSの0が、独立的に5年生存率の上昇と関連していた(2.74[1.43~5.27]、p=0.003)。・OSは、治療関連有害事象のない患者(OS中央値5.8ヵ月[95%CI:4.6~7.8])と比較して、あらゆるGradeの治療関連有害事象を有する患者(19.8ヵ月[13.8~26.9])およびGrade3以上の患者(20.3ヵ月[12.5~44.9])において、有意な延長が認められた(ハザード比に基づく両群間比較のp<0.001)。

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EGFR-TKI併用療法、これまでのまとめ【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第10回

第10回 EGFR-TKI併用療法、これまでのまとめ1)Stinchombe TE, Janne PA, Wang X, et al. Effect of Erlotinib Plus Bevacizumab vs Erlotinib Alone on Progression-Free Survival in Patients With Advanced EGFR-Mutant Non-Small Cell Lung Cancer A Phase 2 Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2019 Aug 8. [Epub ahead of print]2)Noronha V, Patil VM, Joshi M, et al. Gefitinib Versus Gefitinib Plus Pemetrexed and Carboplatin Chemotherapy in EGFR-Mutated Lung Cancer. J Clin Oncol. 2019 Aug 14. [Epub ahead of print]3)Nakagawa K, et al. Ramucirumab plus erlotinib in patients with untreated, EGFR-mutated, advanced non-small-cell lung cancer (RELAY): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial.Lancet Oncol. 2019 Oct 4.[Epub ahead of print]EGFR変異陽性例に対する初回治療は、オシメルチニブがOSでも有効性を示した(Ramalingam S, ESMO2019)ことでおおむね片が付いたとみる向きが多いが、次なる方向性として併用療法やcell-free DNAを組み合わせたアプローチなどが模索されている。今回は最近の報告を基に併用療法についてまとめてみた。1)について米国から報告された第II相試験。88例をエルロチニブ+/-ベバシズマブに1:1で無作為化。プライマリーエンドポイントであるPFSは17.9ヵ月 vs.13.5ヵ月と併用群で延長していたが、統計学的な有意差なし(HR:0.81、p=0.39)。ORRは同等(81% vs.83%)、驚くべきことにOSは併用群で劣る傾向(32.4ヵ月 vs.50.6ヵ月、HR:1.41、p=0.33)であった。後治療としてオシメルチニブが併用療法群で10例・単剤群で13例投与されている(これらを省いたOSデータは示されていない)。2)について細胞傷害性抗がん剤との併用インドから報告された単施設の(!)第III相試験。350例をゲフィチニブ+/-化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)に1:1で無作為化。PS 2が21%と多く含まれている。プライマリーエンドポイントであるPFSは16ヵ月 vs.8ヵ月と併用群で有意に延長していた(HR:0.51、p<0.001)。ORR(75% vs.63%)、OS(中央値未到達vs.17ヵ月、HR:0.45、p<0.001)も併用群で有意に上回っていた。後治療として単剤群のうち、カルボプラチン+ペメトレキセドを受けたものは32.4%とやや低めである。解説血管新生阻害薬との併用については、本邦から報告されたゲフィチニブ+/-ベバシズマブの第II相試験(JO25567)での良好なPFSを基に複数の第III相臨床試験が計画された。昨年・本年のASCOで本邦からの第III相試験が報告され、PFS延長が確認されたことは周知のとおり(Saito, Lancet Oncol. 2019、Nakagawa, Lancet Oncol. 2019)。今後、中国やEUからも第III相試験の報告が予想されている。今回の第II相試験は残念ながらnegativeな結果に終わったが、著者らも触れているように単剤群の治療成績が予想よりよかったことも影響しており、血管新生阻害薬併用によるPFS延長は十分確認されたと考えられる。ただし、より重要なのは、JO試験に引き続いてOSの延長が認められなかったことであろう。それほど毒性の強い治療でもないので後治療に差があるわけではないと思うのだが、この理由は明らかになっておらず、今後の開発にやや不安を残したといえる。オシメルチニブとの併用を含めた主だった試験のまとめは以下のとおり。細胞傷害性抗がん薬との併用は、古くTRIBUTE試験などで検討されてきたが、EGFR変異陽性例に絞った検討はNEJグループが牽引してきた経緯がある(Sugawara S, Ann Oncol2015, Oizumi S, ESMO Open2018)。第III相試験については昨年のASCOで報告され(Furuya N, ASCO2018)、本年インドからも同様の結果が示された。PFSは延長して当然な一方で、2つの第III相試験ともにOS延長が示されたことは重要である(ただしインドの試験では低い後治療の割合がOSの大きな差に影響している可能性はあり)。主だった試験のまとめは以下のとおり。以上が現状のまとめとなる。元々のコンセプトとして、前者はEGFR-TKIの効果増強を意図している一方で、後者は腫瘍のheterogeneityに対して異なる機序の薬剤の相乗効果を狙っている。また、血管新生阻害剤併用の場合には後治療として化学療法(+免疫チェックポイント阻害剤)が使用可能であるのに対して、細胞傷害性抗がん剤併用後の増悪に対しては単剤化学療法が標準と考えられることから、これら併用療法のPFSを単純に比べることはあまり意味がなさそうである。一方でこれら試験結果を待っている間に、オシメルチニブというgame changerが登場したため、結果の解釈はより難しくなった。現在、オシメルチニブを用いても同様の治療戦略が成り立つのかを検討すべく、さまざまな計画がなされている(Yu H, ASCO2019)。以上、簡単にEGFR-TKI併用療法の現状をまとめた。今後オシメルチニブを軸に治療開発がなされると考えられるが、エンドポイントをどう設定するかは非常に重要な問題である。クロスオーバーの影響を考慮すべき治療の場合、PFSでは不十分な可能性があるが、そうなると相当大規模な症例数が必要となる。長期奏効の指標としてX年無再発率のような新しい指標を検討すべきなのか、乳がんのホルモン治療やICIで近年検討されているように「試験治療開始から化学療法開始までの期間(=どの程度の期間化学療法を回避できたか)」や「治療休止期間」のような患者のQOLをより反映したソフトエンドポイントも興味深く、ドライバー変異陽性肺がんもこうした新規エンドポイントを検討すべき時代になっているのかもしれない。また、オシメルチニブ単剤でも良好なPFSが得られる状況において、果たして併用療法が本当に意義のあるPFS延長を示せるのかも気になる点である(実際、オシメルチニブ+ベバシズマブの試験ではPFSはそれほど延びていない)。図表(ppt)はこちら。右クリックでダウンロードできます。

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元プロサッカー選手、神経変性疾患死3.45倍/NEJM

 元プロサッカー選手は、神経変性疾患による死亡率が高く、一般的な疾患での死亡率は低いことが示された。英国・グラスゴー大学のDaniel F. Mackay氏らによる、スコットランドの元プロサッカー選手7,676例を対象とした後ろ向き適合コホート研究の結果で、元選手は認知症関連治療薬の処方率も高かったという。神経変性疾患は、コンタクトスポーツのエリート選手で報告されている。元プロサッカー選手の神経変性疾患の発症率については明らかにされていなかった。著者は、「今回観察された結果について、前向き適合コホート研究を行い確認する必要がある」と述べている。NEJM誌オンライン版2019年10月21日号掲載の報告。スコットランドの元プロサッカー選手と適合コホートを比較分析 研究グループは、スコットランドの選手データベースから、元プロサッカー選手7,676例と、性別、年齢、社会的剥奪(social deprivation)の程度で適合した一般住民の対照コホート2万3,028例について、後ろ向きコホート研究を行い、神経変性疾患死亡率を比較した。 死因については、死亡診断書で特定した。また、認知症治療薬の処方データについても比較した。処方情報は、全国処方情報システムから入手した。アルツハイマー病死のリスクが最も高く5.07倍 中央値18年以上の追跡において、元サッカー選手群では1,180例(15.4%)が、対照群では3,807例(16.5%)が死亡した。全死因死亡率は、70歳までは元サッカー選手群が対照群よりも低かったが、その後は逆に高かった。 虚血性心疾患による死亡リスクは、元サッカー選手群が対照群に比べ有意に低かった(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.66~0.97、p=0.02)。また、肺がんによる死亡リスクも、元サッカー選手群で有意に低かった(同:0.53、0.40~0.70、p<0.001)。 一方で神経変性疾患による死亡率は、元サッカー選手群1.7%、対照群0.5%で有意に高率だった(虚血性心疾患死・全がん死の競合リスク補正後HR:3.45、95%CI:2.11~5.62、p<0.001)。元サッカー選手において、死亡診断書で神経変性疾患が死因・要因と記述されていた死亡は、疾患のサブタイプによってばらつきがあった。最も頻度が高かったのはアルツハイマー病で(元サッカー選手群vs.対照群のHR:5.07、95%CI:2.92~8.82、p<0.001)、最も低かったのはパーキンソン病だった(2.15、1.17~3.96、p=0.01)。 認知症関連治療薬の処方率も、元サッカー選手群が対照群に比べ有意に高率だった(オッズ比[OR]:4.90、95%CI:3.81~6.31、p<0.001)。 元サッカー選手の中で、神経変性疾患が死因・要因の割合は、元ゴールキーパーと元フィールド・プレーヤーで有意差はなかった(HR:0.73、95%CI:0.43~1.24、p=0.24)。しかし、認知症関連治療薬の処方率は、元ゴールキーパーが元フィールド・プレーヤーより有意に低率だった(OR:0.41、95%CI:0.19~0.89、p=0.02)。

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ESMO2019レポート 消化器がん

レポーター紹介胃がんに対する術前化学療法の意義―PRODIGY試験とRESOLVE試験切除可能な進行胃がんに対する治療は本邦では、S-1、CapeOx、SOX、S-1+ドセタキセル(DS)による術後補助化学療法が標準的治療の位置付けである。欧州では、FLOT4試験の結果、術前術後に3剤併用療法を行うことが標準となった。今回、アジアから2つの術前治療に関する第III相試験が発表された。PRODIGY試験は、韓国で実施されたcT2-3N+M0またはcT4NanyM0に対する術前DOS療法+手術+術後S-1療法(以下、CSC群)の、手術+術後S-1療法(以下、SC群)に対する優越性を検証する第III相無作為化比較試験である。計530例が登録され、最終的な解析対象(FAS)は484例であった。年齢中央値は両群とも58歳、食道胃接合部原発が5%程度含まれていた。CSC群におけるGrade3以上の治療関連有害事象として、好中球減少12.6%、発熱性好中球減少9.2%、下痢5.0%を認め、術前治療中の治療関連死は0.8%であった。手術におけるR0切除割合は、CSC群(238例)96.4% vs.SC群(246例)85.8%(p<0.0001)であった。CSC群では病理学的完全奏効(CR)が10.4%(p<0.0001)で認められた。主要評価項目の3年無増悪生存期間(PFS)は、CSC群66.3% vs.SC群60.2%(HR:0.70、95%CI: 0.52~0.95、p=0.0230)であった。ITT解析でもHR:0.69、6ヵ月のランドマーク解析でもHR:0.71と一貫した結果であった。RESOLVE試験は、中国で行われたcT4a/N+M0またはcT4bNanyM0に対する、術後XELOX、術後SOX、術前SOX+手術+術後SOXの3群比較試験である。計1,094例が登録され、年齢中央値は59~60歳、食道胃接合部原発が35~38%含まれていた。術後化学療法実施割合は、各群66~70%であった。3年無病生存(DFS)は、術後XELOX群と比較して、術前術後SOX群で優越性が示され(54.78% vs.62.02%、HR:0.79、95%CI:0.62~0.99、p=0.045)、術後SOX群の非劣性が示された(54.78% vs.60.29%、HR:0.85、95%CI:0.67~1.07、Non-Inferiority margin:1.33)。以上、中国および韓国から2つの第III相試験が報告され、術前化学療法の優越性が検証された。試験の質も大きな問題はないと考えられ、本邦の実地臨床にも外挿できる可能性が高いと考えられる。ただ、中国の試験はcT4と局所進行症例の中でもより進行した集団が対象であること、韓国の試験は優越性を示すも、PFS曲線はほぼR0切除率の差がPFSの差につながっていることが示唆されることを考慮すれば、すべての切除可能胃がんで術前化学療法が必要とは言い切れないだろう。ただ、発表からは術前化学療法の有害事象も許容範囲内で、術後合併症の発生割合も同程度であったことから、大きなデメリットが感じられない。本邦では、JCOG1509試験、JCOG1704試験の2つの胃がんにおける術前化学療法を検討する前向き試験が実施中である。前者はcT3-4N+M0(肉眼型大型3型および4型を除く)を対象に術前S-1+オキサリプラチン(OX)療法の優越性を無治療群と比較する第III相試験、後者はBulky Nがあるものを対象にしたDOS療法を評価する第II相試験である。これらの試験の結果を待つか、中国・韓国のエビデンスを外挿するか、もう少し国内での議論が必要かもしれない。BRAF V600E変異型大腸がんに対する新規分子標的治療―BEACON試験切除不能BRAF V600E変異陽性大腸がんは、大腸がんの約5%に認められ、きわめて予後不良である。大腸がん治療ガイドラインでは、1次治療においてFOLFOXIRI+ベバシズマブ療法が推奨レジメンの1つとなっているが、2次治療以降には有効な治療が乏しいのが現状である。BRAF変異陽性メラノーマや非小細胞肺がんではBRAF阻害薬+MEK阻害薬の有効性が示されており、同様の治療戦略が大腸がんでも期待されていた。BEACON試験は、BRAF V600E変異を有する切除不能・進行再発大腸がんにおいて、1次治療もしくは2次治療後に腫瘍進行を認めた患者を対象とした無作為化第III相試験である。対象患者665例は、エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブの3剤併用療法群、エンコラフェニブ+Cmabの2剤併用療法群、FOLFIRI+Cmab療法またはIRI+Cmab療法のコントロール群の3群に、1:1:1で無作為に割り付けられた。OS期間中央値は、3剤併用療法群vs.コントロール群で9.0ヵ月vs.5.4ヵ月(p<0.0001)、2剤併用療法群vs.コントロール群で8.4ヵ月vs.5.4ヵ月(p<0.0003)、最初の331例のORRは3剤併用療法群vs.コントロール群で26% vs.2%(p<0.0001)、2剤併用療法群vs.コントロール群で20% vs.2%(p<0.0001)であり、主要評価項目を達成した。相対用量強度(RDI)は3剤併用療法群では、エンコラフェニブ 91%、ビニメチニブ 87%、Cmab 91%、2剤併用療法群では、エンコラフェニブ 98%、Cmab 93%、コントロール群では74~85%であった。Grade3以上の有害事象割合は、3剤併用療法群58%、2剤併用療法群50%、コントロール群61%であり、3剤併用療法群で下痢10%、貧血11%が高く、全Gradeの有害事象において2剤併用療法群で筋肉痛(13%)、関節痛(19%)、頭痛(19%)などの頻度がやや高かった。QOLに関してはQLQ-C30、FACT-Cにおいては差を認めなかった。以上から、3剤併用療法群において良好な有効性を認め、高いRDIを維持しながらも、管理可能な有害事象のプロファイルとQOLの維持を認めた。以上から、今後切除不能BRAF V600E変異陽性大腸がんにおいて、本併用療法は2次治療以降の標準治療として臨床導入されることが期待される。3剤併用療法で有効性がやや高く、有害事象も2剤併用療法とプロファイルが異なるだけでQOLに差がないことからまずは3剤併用でトライしてみることが勧められる。Grade3以上の消化器毒性は3剤併用療法で高いことから、その場合には2剤併用療法もオプションとなりえるだろう。今後メラノーマ同様に1次治療や補助療法での有効性にも期待したいところである。現状、臨床現場でも困っている患者さんのために、早急な薬事承認に期待したいが、まだ1年程度先になるだろう。それまでは、拡大治験の実施や患者申出制度の利用に活路を見いだしたいところである。ハイリスクStageII結腸がんに対する補助療法―ACHIEVE-2試験リンパ節転移のないStageII結腸がんでは、臨床病理学的な再発ハイリスク因子を持つ場合にのみ術後補助化学療法が推奨され、レジメンはCAPOX/FOLFOX療法やフルオロピリミジン単独療法が6ヵ月間行われる。StageIIIにおいて、IDEA collaborationの結果から、CAPOX/FOLFOX療法の3ヵ月投与が治療選択肢として確立されたことからハイリスクStageII結腸がんでも同様の検討が行われた。2019年ASCOでIDEA collaborationに参加した6つの臨床試験のうち、4つの試験(SCOT、TOSCA、ACHIEVE-2、HORG)の統合解析が発表され、主要評価項目である5年無病生存率(DFS)は非劣性が証明されず、negative studyであった。しかし、CAPOX群では3ヵ月と6ヵ月で大きな差を認めず、ハイリスクStageII症例の術後補助化学療法を行う場合でも、CAPOXなら3ヵ月への短縮が可能と結論付けていた。今回のESMOでは、本邦での試験であるACHIEVE-2試験の結果が発表された。514例が登録され、ハイリスク因子はT4 36%、低分化腺がん10~13%、郭清リンパ節転移個数不十分13%、腸閉塞発症19~20%、脈管侵襲陽性87~88%であった。観察期間中央値約36ヵ月の時点で、3年DFSは3ヵ月群88.2% vs.6ヵ月群87.9%であった(HR:1.12、95%CI:0.80~1.57)。レジメン別解析では、FOLFOX群(n=82)3ヵ月群88.6% vs.6ヵ月群85.7%、CAPOX群(n=432)3ヵ月群88.2% vs.6ヵ月群88.4%であった。サブグループ解析では、T4群では3ヵ月群76.2% vs.6ヵ月群79.7%(HR:1.28、95%CI:0.84~1.95)であった。本試験結果の解釈は非常に悩ましい。もともとIDEA collaborationは、統合解析が主体となっていることから、個々の試験の解釈をするときは、統合解析の結果と合わせて評価することが必要である。3年DFSで大きな差はないが、HRが1.12と少し1を超えている点は気になるところである。とくに、T4集団での解析では少数例の検討とはいえ、HR:1.28と1を大きく超えている。全体の3年DFSがlow risk StageIIIよりも悪いことも鑑みると、T4集団ではCAPOX 6ヵ月を選択することが妥当という印象を持った。スペシャルセッションの最後には、登壇者からStageII CCの補助療法のアルゴリズムが提案されたが、私自身はあまり納得のいくものではなかった。国内でのコンセンサス形成には少し時間がかかると思われた。まとめ今回のESMOでも、多くの新しいエビデンスに巡り合うことができた。胃がん、大腸がんでは肺がんなどに比べ新薬の登場が遅れており、その間に周術期治療の開発がトピックスとなっている印象を受けた。日本人の発表やディスカッサント登壇も多く、世界と一緒に新しい治療方針を議論している実感が得られた。腫瘍医としての矜持を持ち、目の前の患者さんにこの新しいエビデンスをどう適用させるかが肝要である。その過程で、また新たなクリニカルクエスチョンが生じ、それに答えるべく臨床試験に取り組む…この繰り返しの結果が今日までのがん治療の進歩であり、令和の時代にも継続していかねばならないだろう。

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NSCLCのALK検査、リキッド・バイオプシーも有用(BFAST)/ESMO2019

 非小細胞肺がん(NSCLC)の遺伝子変異検査で、血液を検体とするリキッド・バイオプシーの有用性を評価した前向き臨床試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Rogel Cancer Center/University of MichiganのShirish M. Gadgeel氏より発表された。 BFAST試験は、血液検体のみを用いた6つのコホートからなる国際共同の前向き第II/III相試験である。今回はその中からALK陽性コホートのみ発表された。その他のコホートはRET陽性、ROS1陽性、TMB陽性、Real World Dataなどであり、血液検査(cfDNA)はFMI社によって実施された。・対象:Stage IIIB/IVの未治療のNSCLC。試験全体で2,219例をスクリーニング、ALK陽性は119例(5.4%)で、87例が本試験に登録された。・試験群:ALK陽性コホートにおいては、アレクチニブ600mg×2回/日投与・評価項目:[主要評価項目]治験担当医評価(INV)による奏効率(ORR)[副次評価項目]INVによる奏功期間(DOR)と無増悪生存期間(PFS)。独立評価委員(IRF)によるORR、DOR、PFS[探索的検討項目]脳転移を有する患者群の主治医判定によるORR 必要症例数算定などのために、同じくアレクチニブの国際共同試験であるALEX試験の結果をリファレンスとした(ALEX試験は腫瘍組織検査)。アレクチニブの用量が日本の承認用量とは異なるため、日本からはこのコホートへの登録はなかった。 主な結果は以下のとおり。・登録患者のベースライン特性は、年齢中央値55歳、脳転移有り40%などで、既報のALEX試験と大きな差はなかった。・追跡期間中央値12.6ヵ月。・INVによるORRは87.4%(95%信頼区間[CI]:78.5~93.5)、IRFによるORRは92.0%(95%CI:84.1~96.7)であった。・脳転移を有する患者群(35例)でのINVによるORRは91.4%、脳転移なしの患者群(52例)では84.6%であった。病勢進行(PD)の症例は各群1例と0例であった。・INVによるDORは中央値未到達で、6ヵ月時点でのイベントフリーは63例でありその割合は90.4%であった。・INVによるPFSも同様に中央値未到達であり、12ヵ月時点でのPFSは78.4%(95%CI:69.1~87.7)であった。・Grade3/4の有害事象(AE)は35%、AEによる治療中止は7%、用量減量は8%であった。主なAEは便秘などの消化器症状、浮腫、倦怠感、筋肉痛などであり、既報のアレクチニブの安全性プロファイルと差はなかった。 発表者のGadgeel氏は「血液サンプルでの遺伝子検査(NGS)は、ALK陽性NSCLC患者の治療方針決定に臨床的な意味がある事を示した」と述べた。

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家族歴が発症リスクに関連するがん種~日本人10万人の前向き研究

 がんの家族歴は、いくつかのがん種におけるリスク増加の重要な因子である。がんの家族歴と、遺伝的に一致するがんリスクとの関連は多くの疫学研究で報告されているが、生活習慣を調整した包括的な前向き研究はない。今回、わが国のJPHC研究において、国立がん研究センターの日高 章寿氏らによる研究から、膀胱がん、膵がん、食道がんなどのいくつかのがん種で、がんの家族歴ががんリスク増加と関連することが示唆された。International Journal of Cancer誌オンライン版2019年10月8日号に掲載。 本研究は、日本の集団ベースの前向き研究であるJPHC研究において、がんの家族歴と遺伝的に一致するがんリスクとの関連を調査した。対象は、がんの既往がなく、ベースライン時にがんの家族歴などの自記式調査票に回答した10万3,707人の適格な被験者で、2012年まで追跡し、多変量調整Cox比例ハザード回帰モデルを使用して分析した。 主な結果は以下のとおり。・追跡調査した180万2,581人年で、合計1万6,336人が新規にがんと診断された。・がんの家族歴がない人に対して、家族歴がある人におけるがん発症のハザード比は、すべてのがんで1.11(95%信頼区間:1.07~1.15)、食道がん2.11(同:1.00~4.45)、胃がん1.36(同:1.19~1.55)、肝がん1.69(同:1.10~2.61)、膵がん2.63(同:1.45~4.79)、肺がん1.51(同:1.14~2.00)、子宮がん1.93(同:1.06~3.51)、膀胱がん6.06(同:2.49~14.74)であった。

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LOXO-292、RET異常甲状腺がんに有望(LIBRETTO-001)/ESMO2019

 RET異常を有する甲状腺がんに対する新規治療薬のselpercatinib(LOXO-292)の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Massachusetts General Hospital, Harvard Medical SchoolのLori Wirth氏より発表された。 本試験は、RET異常を有する甲状腺がんと非小細胞肺がんを対象にした国際共同のオープンラベル・シングルアームの第I/II相試験である。selpercatinibはRETタンパクに高い選択的親和性を有するTKIであり、今回は全甲状腺がんの10~20%に存在するRET変異甲状腺がんに関する発表である。・対象:試験に登録されたRET点変異を有する甲状腺髄様がん(MTC)226例と、RET融合遺伝子を有する甲状腺がん27例のうち、cabozantinib(Cabo)とバンデタニブ(Vande)の治療歴のあるMTCの55例を初回解析対象とした・試験群:selpercatinib 20~480mg/日(第I相試験)、320mg/日(第II相試験)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・RET点変異のある症例143例のうち、57%はM918Tで、V804M/Lは8%、細胞外システイン変異は19%であった。・RET融合のパートナー遺伝子は、CCDC6が52%、NCOA4が33%であった。・今回解析対象55例は65%が男性、年齢中央値は57歳、前治療歴は中央値2ライン、脳転移あり7%、全例でCabo、Vande、それ以外のTKIの既治療歴があった。・主治医判定によるORRは56%(CRは6%)で、CaboやVandeの治療歴による差はみられなかった。・Cabo/Vandeの治療歴を持たないMTC76例では、ORR:59%(CRは1%)であった。・追跡期間中央値(mFU)10.6ヵ月時点でのDOR中央値は未到達(イベント数は6例/29例)であった。・mFU11.1ヵ月時点でのPFS中央値も未到達(イベント数は18例/55例)であった。・RET融合遺伝子を有する甲状腺がんのORRは62%であった。・Grade3/4治療関連有害事象は、高血圧9%、ALT上昇7%、AST上昇5%、下痢1%、有害事象による治療中止は1.7%と忍容性が認められ、多くの有害事象はGrade1/2であった。 Wirth氏は「RET異常を有する甲状腺がんに対する治療薬として現在承認されているTKI後の治療薬として、本剤は期待が持てる。2019年中には米国FDAに本剤の承認を申請する予定である」と述べている。

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脳転移のあるPD-L1陽性肺がんにもペムブロリズマブ単剤が有効/ESMO2019

 米メイヨークリニックのAaron S. Mansfield氏は、ペムブロリズマブに関する臨床試験であるKEYNOTE-001、010、 024、042の統合解析結果から、脳転移があるPD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブ単独療法は、脳転移なしと同等以上の予後改善効果があると欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。 統合解析に用いた4試験(KEYNOTE-001、010、024、042)のうちKEYNOTE-001のみが単群試験で、その他はいずれも化学療法との比較試験である。 主な結果は以下のとおり。・統合解析による全症例数は3,170例。うち脳転移ありは293例、脳転移なし2,877例であった。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例の全生存期間(OS)中央値はペムプロリズマブ群が19.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.1~31.4)、化学療法群が9.7ヵ月(95%CI:7.2~19.4)であった(ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.71~0.85)。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移なし症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が19.4ヵ月(95%CI:17.0~22.4)、化学療法群が11.7ヵ月(95%CI:10.1~13.1)であった(HR:0.66、95%CI:0.58~0.76)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が13.4ヵ月(95%CI:10.4~18.0)、化学療法群が10.3ヵ月(95%CI:8.1~13.3)であった(HR:0.83、95%CI:0.62~1.10)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移なし症例でのOS中央値はペムブロリズマブ群が14.8ヵ月(95%CI:13.4~16.1)、化学療法群が11.3ヵ月(95%CI:10.2~12.0)であった(HR:0.78、95%CI:0.71~0.85)であった。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例での無増悪生存期間(PFS)中央値はペムブロリズマブ群が4.1ヵ月(95%CI:2.3~10.6)、化学療法群が4.6ヵ月(95%CI:3.5~8.4)であった(HR:0.70、95%CI:0.47~1.03)。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移なし症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が6.5ヵ月(95%CI:6.1~8.1)、化学療法群が6.1ヵ月(95%CI:5.8~6.2)であった(HR:0.69、95%CI:0.62~0.78)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が2.3ヵ月(95%CI:2.1~3.9)、化学療法群が5.2ヵ月(95%CI:4.2~8.3)であった(HR:0.96、95%CI:0.73~1.25)であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移なし症例でのPFS中央値はペムブロリズマブ群が4.3ヵ月(95%CI:4.2~5.1)、化学療法群が6.1ヵ月(95%CI:6.0~6.3)であった(HR:0.91、95%CI:0.84~0.99)であった。・PD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例での奏効率(ORR)はペムブロリズマブ群が33.9%、化学療法群が14.6%、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が38.1%、化学療法群が26.1%であった。・PD-L1 TPS≧1%の脳転移あり症例でのORRはペムブロリズマブ群が26.1%、化学療法群が18.1%、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が25.8%、化学療法群が22.2%であった。・奏効期間(DOR)中央値はPD-L1 TPS≧50%の脳転移あり症例でペムブロリズマブ群が未到達、化学療法群が7.6ヵ月、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が33.9ヵ月、化学療法群が8.2ヵ月であった。・DOR中央値はPD-L1 TPS≧1%の脳転移ありの症例でペムブロリズマブ群が未到達、化学療法群が8.3ヵ月、脳転移なしの症例でペムブロリズマブ群が30.4ヵ月、化学療法群が8.1ヵ月であった。・Grade3以上のAE発現率は脳転移ありのペムブロリズマブ群が15%、脳転移なしのペムブロリズマブ群が18%、脳転移ありの化学療法群が46%、脳転移なしの化学療法群が43%であった。 この結果からペムブロリズマブ単独療法は脳転移の有無にかかわらず、なおかつPD-L1 TPS≧50%、PD-L1 TPS≧1%のいずれの場合でも脳転移ありの症例ではDOR中央値が未到達であることをMansfield氏は強調。「ペムブロリズマブ単独療法は脳転移を有する場合も含めPD-L1陽性の進行NSCLCの標準治療」との結論を述べた。

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ニボルマブ+低用量イピリムマブ、NSCLCのOS有意に改善(CheckMate-227)/ESMO2019

 イピリムマブとニボルマブの併用は、悪性黒色腫や腎細胞がんにおいて全生存期間(OS)の改善を示している。非小細胞肺がん(NSCLC)においても、イピリムマブの用法・用量の肺がんへの適正化(1mg/kg 6週ごと投与)により、有効性を示す試験結果が報告されている。CheckMate-227試験は、ニボルマブベースの治療と化学療法を比較したオープンラベル無作為化第III相試験。同試験は、Part1とPart2で構成されており、Part1の結果として、高腫瘍変異負荷(TMB≧10mut/Mb)患者におけるイピリムマブ・ニボルマブ併用の化学療法に対する無増悪生存期間(PFS)の延長が報告されている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)では、Part1の最終結果、とくにPD-L1≧1%の患者における主要評価項目であるイピリムマブ+ニボルマブ対化学療法の全生存期間(OS)のデータについて、スイス・ローザンヌ大学のSlonge Peters氏が発表した。・対象:未治療のPD-L1発現1%以上(Part1a)および1%未満(Part1b)のStageIVまたは再発NSCLCの初回治療患者(PS 0~1、組織系問わず)・試験群:ニボルマブ+イピリムマブ群(NIVO+IPI群)     ニボルマブ単独群(TPS1%以上)(NIVO群)     ニボルマブ+化学療法群(TPS1%未満)(NIVO+Chemo群)・対照群:化学療法(組織型により選択)単独(Chemo群)・評価項目[複合主要評価項目]高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群のPFS、PD-L1発現(≧1%)患者におけるNIVO+IPI群対Chemo群のOS[副次評価項目]高TMB(≧13/メガベース)かつPD-L1発現(TPS1%以上)患者におけるNIVO群対Chemo群のPFS、高TMB(≧10/メガベース)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のOS、PD-L1なしまたは低発現(TPS1%未満)患者におけるNIVO+Chemo群対Chemo群のPFS、そのほか奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・PD-L1≧1%のOSはNIVO+IPI群で17.1ヵ月、Chemo群14.9ヵ月と有意にNIVO+IPI群で改善した(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.65~0.96、p=0.007)。同条件におけるNIVO群のOSは15.7ヵ月でChemo群に対するHRは0.88(95%CI:0.75~1.04)であった。・盲検下独立中央評価委員会(BICR)評価によるORRはNIVO+IPI群35.9%、NIVO群27.5%、Chemo群30.0%であった。・BICR評価によるDORはNIVO+IPI群23.2ヵ月、NIVO群15.5ヵ月、Chemo群6.2ヵ月であった。・PD-L1<1%のOSはNIVO+IPI群17.2ヵ月、Chemo群12.2ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.48~0.78)。同条件におけるNIVO+Chemo群のOSは15.2ヵ月でChemo群に対するHRは0.78(95%CI:0.60~1.02)であった。・全対象患者(PD-L1レベルにかかわらず)のOSはNIVO+IPI群17.1ヵ月、Chemo群13.9ヵ月であった(HR:0.73、95%CI:0.64~0.84)。・NIVO+IPI群とChemo群のサブグループ解析のすべての項目、いずれのPD-L1発現レベルにおいてもNIVO+IPI群が優位であった。・有害事象については、従来の報告と同様であり、新たなものはみられなかった。 CheckMate-227試験は、NSCLCの1次治療におけるPD-L1阻害薬とCTLA-4阻害薬の併用で主要評価項目を達成した初の第III相試験となった。PD-L1発現レベルを問わず、化学療法に対し臨床的に意味のあるOSの改善を示した。加えて、PD-L1≧1%以上についてはNIVO群に対しPD-L1<1%についてはNIVO+Chemo群に対し、アウトカムを改善した。Peters氏は個人的見解として、免疫チェックポイント阻害薬の併用は、進行NSCLCの1次治療の選択肢となる可能性を示したと結んだ。 この発表は同時にNEJM誌オンライン版2019年9月28日号に掲載された。

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EGFR陽性肺がん1次治療でのエルロチニブ+ラムシルマブ、T790M発現との関係は?(RELAY)/ESMO2019

 EGFR変異陽性のNSCLCでは、第1、2世代EGFR-TKIの1次治療により30~60%の患者でT790M変異による耐性が発現する。近畿大学の西尾 和人氏らは、EGFR変異陽性のNSCLCでのラムシルマブ・エルロチニブ併用(以下、RAM+ERL)の効果を検証した第III相RELAY試験の結果から、この2剤併用がEGFRの2次変異であるT790M変異の発生を遅延させる可能性があると欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。 RELAY試験は未治療のEGFR変異陽性進行NSCLC患者(449例)を対象に、RAM+ERLとプラセボ+エルロチニブ(以下、PL+ERL)を比較した第III相国際共同二重盲検無作為化試験で、併用群における無増悪生存期間(PFS)の有意な延長が報告されている(HR:0.591、p<0.0001)。T790M発現については、PD後30日後のRAM+ERL群と対照群で差はみられていない(43%対47%)。 今回の発表は、EGFR-TKI耐性のメカニズムとRAM+ERLがT790Mおよび他の獲得耐性関連変異にどう影響するかを調査するために行われた日本人患者における探索的研究。リキッドバイオプシーで採取した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)からEGFR変異の状況をdroplet digital PCR(ddPCR)を用いて解析した。血漿サンプル採取は、治療開始前、4サイクル目、13サイクル目以後6サイクルごと53サイクルまで、そして治療中止から30日後に行われた。 日本人患者は、バイオマーカーPopulation1(以下、Population1)とバイオマーカーPopulation2(以下、Population2)に分けられた。Population1はベースライン(T790M変異なし)と進行後30日の結果がある42例(RAM+ERL群:19例、PL+ERL群:23例)で、Population2は進行後30日後にEGFR活性化変異を検出した23例(RAM+ERL群:8例、PL+ERL群15例)であった。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者全体(211例)のPFSのハザード比(HR)は0.61(95%CI:0.43~0.86)、Population1のPFSのHRは0.61(95%CI:0.33~1.15)、Population2のHRは0.87(95%CI:0.35~2.15)であった。・治療中止後30日でのT790M変異陽性率はPopulation1においてはRAM+ERL群26%、PL+ERL群30%(p=1.0)。Population2においてはそれぞれ62%対40%(p=0.4)で両群間に差はなかった・病勢進行患者に対するT790M変異陽性患者の割合推移は、12サイクル目RAM+ERL群17%(1/6例)、PL+ERL群33%(3/9例)、24サイクル目RAM+ERL群11%(1/9例)、PL+ERL群38%(6/16例)、53サイクル目RAM+ERL群26%(5/19例)、PL+ERL群30%(7/23例)と、RAM+ERL群ではサイクル数が多くなってから増加してくる傾向がみられた。 この結果から、筆者はエルロチニブへのラムシルマブ併用はT790M変異の発生を遅延させている可能性があると述べている。

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EGFR陽性NSCLC1次治療、ベバシズマブ+エルロチニブがPFS改善(CTONG 1509)/ESMO2019

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としてのベバシズマブ+エルロチニブ併用療法の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、中国・Guangdong Lung Cancer InstituteのQing Zhou氏より発表された。 CTONG 1509試験は、中国国内の14施設で実施されたオープンラベルの無作為化比較第III相試験である。症例登録期間は、2016年4月~2017年7月であり、主解析に用いたデータのカットオフは2019年1月であった。 ・対象:化学療法未治療EGFR変異陽性(exon 19 del/exon 21 L858R)進行・再発NSCLC 311例・試験群:ベバシズマブ(15mg/kg、3週ごと)+エルロチニブ(150mg/日)(Bev併用群)・対照群:エルロチニブ(150mg/日)(ERL群)・評価項目: [主要評価項目]独立評価委員会(IRC)による無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]主治医判定によるPFS、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏功期間(DOR)、安全性 [探索的検討項目]耐性獲得に関与するバイオマーカー検索  主な結果は以下のとおり。・Bev併用群には157例、ERL群には154例が登録された。Exon 19 delとExon 21 L858Rは両群ともほぼ50%ずつで、脳転移ありは両群とも約30%と均等に割り付けられていた。・追跡期間中央値はBev併用群22.0ヵ月、ERL群で21.5ヵ月であった。・IRC評価によるPFS中央値はBev併用群18.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.2~20.7)、ERL群11.3ヵ月(95%CI:9.8~13.8)であり、ハザード比(HR)は0.55(95%CI:0.41~0.75)でp値<0.001とBev併用群が良好であった。・IRC評価によるEGFR変異タイプごとのPFSは、Exon 19 delで中央値17.9ヵ月対12.5ヵ月、HRは0.62(95%CI:0.41~0.92)、Exon 21 L858Rでは19.5ヵ月対9.7ヵ月、HRは0.51(95%CI:0.33~0.79)と、同様にBev併用群が良好であった。・IRC評価による脳転移の有無別のPFSは、脳転移ありグループでHR 0.50(95%CI:0.28~0.88)、脳転移なしグループでHR 0.59(95%CI:0.42~0.85)であった。・IRC評価によるORRは、Bev併用群で86.3%、ERL群で84.7%であり、DOR中央値はそれぞれ16.6ヵ月と11.1ヵ月で、HRは0.59(95%CI:0.42~0.82)であった。・Grade3以上の有害事象はBev併用群53.5%、ERL群25.5%でありBev併用群では皮疹、蛋白尿、高血圧、下痢が多く認められたが、未知の有害事象はなかった。・耐性に関わると思われる治療後の新たな遺伝子変異はERL群で多く認められ、T790MはBev併用群で33%、ERL群で42%に認められた。 Zhou氏は「ベバシズマブ・エルロチニブ併用療法は、EGFR変異陽性NSCLCに対する新たなる標準治療となりえる」と結んだ。

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がん患者におけるVTEとAF、わが国の実際/腫瘍循環器学会

日本のがん患者の静脈血栓塞栓症合併率は欧米並み 固形がん患者の2~8%に悪性腫瘍関連静脈血栓塞栓症(cancer-associated venous thromboembolism:CA-VTE)が合併すると欧米より報告されている。アジア人は白人と比較してCA-VTEの合併率が低いとの報告もあるが、日本人の固形腫場患者を対象としたCA-VTEの合併率の報告は少ない。神戸大学の能勢 拓氏らは、自施設における新規固形がん患者を対象として後方視的に情報を収集し、第2回日本腫瘍循環器学会で発表した。 対象は2,735例で、観察期間中央値は103日であった。CA-VTEが認められ、合併率は3.3%(2,735例中92例)で、欧米の報告と同等であった。CA-VTE合併例の年齢中央値は70歳で、52%が女性であった。症候ありは47%で、Dダイマー正常値(<1.0μg/mL)は5.4%であった。 がん種別のCA-VTE合併率は、肺がん12.0%、甲状腺がん5.0%、原発不明がん4.4%、肉腫4.2%、膵臓がん3.8%、乳がん3.8%、大腸がん3.7%、胆道がん3.3%、胃がん3.3%、食道がん2.3%などであった。固形がん患者のAF並存は約10%、循環器医の介入で予後改善 がん患者の予後は改善し、高齢化や治療による心血管疾患の予後への影響が無視できなくなっている。心房細動(AF)は頻度が高く、また脳梗塞のリスクなどがん治療へ悪影響を与える。しかし、進行がん患者におけるAFの併存頻度や、予後に与える影響については明らかでない。聖路加国際病院の佐藤 岳史氏らは、自施設における進行固形がん患者を対象に後方視的コホート研究を行い、AF併存の有無、循環器医の介入の有無による予後の違いを比較し、予後不良因子を検討した。 対象は1,879例、年齢中央値は66歳であった。AF併存患者は、9.9%(186例)であった。がん種別の併存率は、肺・縦隔がん16%、消化器がん10.6%、泌尿器がん10.6%、肝胆膵がん8.1%、婦人科がん7.1%、乳がん3.9%であった。抗がん治療を受けた患者1,349例のうち、AF併存なし患者の生存期間中央値は1.8年、AF併存患者は1.5年で生存期間に統計学的な差はなかった。AF併存群を循環器医の介入の有無で分けたところ、循環器医介入群(75例)の生存期間は1.7年、循環器医非介入群(50例)は1.1年であった。AF併存なしとの3群の多変量解析において、循環器医非介入のAF併存は独立した予後不良因子であった(HR:1.40、95%CI:1.01~1.95、p=0.04)。

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