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切除不能局所進行NSCLC、CRT後デュルバルマブのリアルワールドデータ(PACIFIC-R)/JTO

 切除不能なStage III 非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線療法(CRT)後のデュルバルマブ地固め療法は、1,000例を超える症例のリアルワールドデータでも有効性が示された。 同治療は第III相PACIFIC試験で有用性が証明され、標準療法として確立されている。一方、実臨床での有用性についての検討が望まれていた。そのような中、リアルワールドの無増悪生存期間(rwPFS)を評価したPACIFIC-R観察研究の結果がJournal of Thoracic Oncology誌で発表された。 PACIFIC-R研究は、2017年9月〜2018年12月に、デュルバルマブの地固め療法(10mg/kg 2週ごと)を開始した患者を対象とした、進行中の国際後ろ向き研究。主要評価項目は治験責任医師評価のrwPFSと全生存期間(OS)である。 主な結果は以下のとおり。・2020年11月30日の時点で、11ヵ国1,399例が分析対象となった。・追跡期間中央値は23.5ヵ月であった。・デュルバルマブの投与期間11.0ヵ月における、rwPFS中央値は21.7ヵ月であった。・同時CRTと逐次CRT別のrwPFSを見ると、同時CRTでは23.7ヵ月、逐次CRTでは19.3ヵ月、と同時CRT群で長かった。・PD-L1発現別のrwPFSを見ると、1%以上では22.4ヵ月、1%未満では15.6ヵ月、とPD-L1≧1%群で高かった。・治療中止に至る有害事象は16.5%、そのうち肺炎/間質性肺疾患による治療中止は9.5%であった。 切除不能Stage III NSCLCに対するデュルバルマブのCRT後地固め療法は、リアルワールドコホート研究においても有効性を示した。

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ガーダントヘルスジャパン、Guardant360 CDxでエスアールエルと業務提携

 ガーダントヘルスジャパンとエスアールエルは、固形がん患者を対象とした包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)用リキッドバイオプシー検査Guardant360 CDx がん遺伝子パネル(Guardant360CDx)のサービス提供のために業務提携契約を締結した。 ガーダントヘルスジャパンは、今回の業務提携によりSRLの遺伝子検査領域におけるロジスティックスならびにネットワーク、サービスを活用することが可能となる。SRLが医療機関から検体を受理してから14日を目途に、国立がん研究センター、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)およびGuardant360 CDxがん遺伝子パネル検査ポータルに解析結果を提供する。 Guardant360 CDxは、米国食品医薬品局(FDA)から2020年8月、日本では2022年3月10日に、すべての固形がんに対する包括的リキッドバイオプシーとして承認を取得している。また、わが国のコンパニオン診断としては、2021年12月にKRAS G12C阻害薬ソトラシブの切除不能非小細胞肺がん、2022年3月にペムブロリズマブのMSI-High固形がんおよびニボルマブのMSI-High結腸・直腸がんに承認されている。

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ニボルマブ+イピリムマブによるNSCLC1次治療、CheckMate227試験5年追跡結果/JCO

 CheckMate 227 Part1の5年間の結果がJournal of Clinical Oncology誌2022年10月12日号で発表された。ニボルマブとイピリムマブの併用は、PD-L1の状態にかかわらず、転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)の5年生存(OS)率を改善していた。(試験デザインは下記関連記事を参照)ニボルマブ+イピリムマブの5年生存率は24% 最低追跡期間61.3ヵ月の解析で、PD-L1≧1%集団の5年OS率はニボルマブ+イピリムマブ群の24%に対し、化学療法群では14%であった。PD-L1<1%集団では、ニボルマブ+イピリムマブ群の19%に対し、化学療法群では7%であった。  PD-L1≧1%の奏効期間(DoR)はニボルマブ+イピリムマブ群の24.5ヵ月に対し、化学療法群では6.7ヵ月、PD-L1≧1%のDoRは19.4ヵ月対4.8ヵ月であった。投与中止後も生存ベネフィットは持続 ニボルマブ+イピリムマブの5年生存患者で、解析時点に投与を中止していた患者は、60%を超えていた(PD-L1≧1%集団66%、PD-L1<1%集団64%)。 治療関連有害事象でニボルマブ+イピリムマブを中止した場合も生存ベネフィットは持続しており、5年OS率は39%にのぼった。

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ESMO2022 レポート 肺がん

レポーター紹介ESMO2022は2022年9月9日~13日まで現地(フランス、パリ)とオンラインのハイブリッドで開催されました。胸部疾患に関して注目をされていた重要な演題について取り上げてみたいと思います。Osimertinib as adjuvant therapy in patients (pts) with resected EGFR-mutated (EGFRm) stage IB-IIIA non-small cell lung cancer (NSCLC): Updated results from ADAURA(LBA47)国立がんセンター東病院坪井先生のご発表でした。日本でも、2022年8月に本試験の結果に基づいてオシメルチニブ(タグリッソ)はII~III期のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)術後補助化学療法の適応を受けました。しかし、DFSに関して公表されたデータは2020年の論文(N Engl J Med 2020;383:1711-1723.)公表後初とのことで注目を集めました。イベントにおいて50%の成熟度に到達したことに伴う結果公表です。フォローアップ期間の中央値はオシメルチニブ群で44.2ヵ月(range 0~67、n=233)、プラセボ群で19.6ヵ月 (range 0~70、n=237)でした。主要評価項目であった、II期/IIIA期を対象としたDFS(Disease free survival, 無病生存期間)中央値はオシメルチニブ群65.8ヵ月(95%CI:54.4~算出不能) vs.プラセボ群21.9ヵ月(95%CI:16.6~27.5),(hazard ratio[HR]:0.23、95% CI:0.18~0.30)でした。DFS、OSのデータを見ると、フォローアップ期間が延びても術後補助化学療法としてのオシメルチニブの有用性はより手堅いデータになっていると感じます。「再発してからオシメルチニブ」では何故追いつかないのか?一つの仮説として、再発時にオシメルチニブ群では「遠隔」転移が少なく、その後の治療も組み立てやすかったのではないかと予想します。さらにイベントが集積されてからOSベネフィットについても議論されるでしょうが、再発予防としては十分に魅力的なデータと感じました。今後、より早期の症例におけるデータ創出などが予定されています。PD-L1 expression and outcomes of pembrolizumab and placebo in completely resected stage IB-IIIA NSCLC: Subgroup analysis of PEARLS/KEYNOTE-091(930MO)周術期のデータをもう一つ。WCLC2022でも取り上げられていましたが、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)を用いた術後補助化学療法の有用性を検討する試験です。PD-L1の発現ごとに詳細なデータが公表されました。既に承認を得ているアテゾリズマブ(テセントリク)ではIMpower010の中でPDL1発現によって治療効果が異なる傾向が示されていましたが、ペムブロリズマブは少し様子が異なるようです。以下の表を見てみましょう。すでに報告されている通り、KEYNOTE-091試験の全体の結果として、ペムブロリズマブはプラセボに比較して無病生存期間を有意に延長しています。主要評価項目の一つである(co-primary end point)TPS>0におけるDFSにおいてはプラセボと比較し統計学的には有用性が証明されませんでした。殺細胞性抗がん剤使用の有無など背景の違いに応じて、化学療法の今後、術後補助化学療法においてもPD-L1の発現をどの抗体で調べるのか、そしてその結果に応じてどう使い分けるのか議論がしばらく続きそうです。今のデータでは、PDL1高発現であれば○○、という使い分けではなく、ドライバーなしの症例では“化学療法使用にフィットするかどうか”が鍵になるような気がします。Sotorasib versus docetaxel for previously treated non-small cell lung cancer with KRAS G12C mutation: CodeBreaK 200 phase III study(LBA10)KRAS G12C阻害剤のソトラシブ(ルマケラス)は、治療歴のあるNSCLC患者に対するドセタキセル治療と比較して、12ヵ月時点での無増悪生存率を2倍にし、進行または死亡のリスクを34%低減しました。追跡期間の中央値は17.7ヵ月で、12ヵ月のPFS率は、ドセタキセル10.1%に対して、ソトラシブは24.8%でした。無増悪生存期間(PFS)の中央値は、ソトラシブで 5.6ヵ月(95%CI:4.3~7.8)、ドセタキセルで4.5ヵ月(95%CI:3.0~5.7) でした (HR:0.66、95%CI:0.51~0.86、p=0.002)。化学療法と比較して、KRAS G12C 阻害薬によるグレード3以上の治療関連有害作用(TRAE)はソトラシブ群で少ない傾向にありました(33.1% vs.40.4%)。クロスオーバーもあり、OSデータは参考ながらソトラシブ群10.6ヵ月(95%CI,:8.9~14.0)ドセタセル群11.3ヵ月(95% CI:9.0~14.9)(HR:1.01、95%CI:0.77~1.33、p=0.53)でした。日本でもKRAS G12C変異をもつ既治療NSCLに対して承認を得ています。今後ソトラシブの高い忍容性から単剤での使用だけでなく、さまざまな薬剤との併用試験が行われており、結果が待たれます。Mechanism of Action and an Actionable Inflammatory Axis for Air Pollution Induced Non-Small Cell Lung Cancer: Towards Molecular Cancer Prevention.(LBA1)薬剤開発ではなく、予防の話題がLBAで取り上げられておりました。本発表は、TRACERx(NCT01888601)、The PEACE(NCT03004755)、Biomarkers and Dysplastic Respiratory Epithelium (NCT00900419)の3つの研究を統合したもので、40万人以上の症例が解析の対象となりました。大気汚染と肺がんの発症にはいくつかのエビデンスがあると報告されていますが、非喫煙者における肺がんの発症と大気汚染の関連について分子生物学的な解析は十分ではありませんでした。まず研究者らは2.5μmの粒子状物質 (PM2.5 )への暴露が増加すると、肺がんの発症が増加することを突き止めました。次に、247例の肺組織のディープシークエンスを行うことにより、正常肺にもそれぞれ15%と53%の頻度でEGFRとKRASドライバーの突然変異を発見しました。しかし、これらの変異は加齢などに伴って存在するものであり、がん化への影響は少ないようでした。しかし、PM2.5への暴露を受けた細胞はその後がん化が促進され、その機序としてインターロイキン(IL)-1βの関与が予想されました。今回得られた知見は、非喫煙者において正常細胞のEGFR変異などを検知し、IL-1βなどを標的とする治療で予防が可能になるかもしれない、という期待を持たせてくれる内容ですが、まだまだ未知のことも多く、検討の余地があります。低線量CTを用いた早期発見の取り組みと並行し、大気汚染による非喫煙者のがんを予防、治療が出来る時代が来るのかもしれません。Durvalumab (D) ± tremelimumab (T) + chemotherapy (CT) in 1L metastatic (m) NSCLC: Overall survival (OS) update from POSEIDON after median follow-up (mFU) of approximately 4 years (y).(LBA59)POSEIDON試験からのOSの最新の探索的解析によると、1次治療におけるtremelimumabとデュルバルマブおよび化学療法の併用療法は、転移を伴うNSCLC患者にOS延長のベネフィットがあったことが報告されました。長期フォローアップ(中央値46.5ヵ月[範囲0.0~56.5])の結果に基づく報告です。3剤併用療法では、OS中央値が14.0ヵ月(95%CI:11.7~16.1)、化学療法単独では11.7カ月(95%CI:10.5~13.1)となり、死亡リスクを25%低減しました(HR:0.75、95%CI:0.63~0.88)。36ヵ月OS率は、それぞれ25%対13.6%でした。併存する変異状態別のOS は、トレメリムマブとデュルバルマブおよび化学療法による治療が継続的に有利でした。STK11変異を有する患者では、3剤併用により死亡リスクが 38% (HR:0.62、95% CI:0.34~1.12) 減少し、OSの中央値は15.0ヵ月(95%CI:8.2~23.8)でした。化学療法単独で10.7ヵ月(95%CI:6.0~14.9)。3年後のOS率は、それぞれ25.8%対4.5%でした。同様に、KEAP1変異を有する患者では、トリプレット療法により死亡リスクが57%減少し (HR:0.43、95%CI:0.16~1.25)、OS中央値が 13.7ヵ月(95% CI:7.2~26.5)、化学療法単独では8.7ヵ月(95%CI:5.1~評価不能)でした。最後に、KRAS変異を有する患者は、トレメリムマブ+デュルバルマブおよび化学療法により、死亡リスクが45% 減少し(HR:0.55、95%CI:0.36~0.85)、OS中央値は25.7ヵ月(95%CI:9.9~36.7)に対し、化学療法単独では10.4ヵ月(95%CI:7.5~13.6)でした。WCLCでも、3剤併用療法は特に遺伝子変異を有す症例においてベネフィットが大きい可能性を指摘されていました。checkmate9LAやCheckmate227など、抗PDL1抗体+化学療法に抗CTLA4抗体を上乗せすべき対象をどのように目の前で選択するのか?遺伝子検査の結果がその一つの答えになるように思います。問題は、現在の日本では1次治療の前に保険診療でこれらの遺伝子を測定出来ないことでしょう。エビデンスの積み重ねで、免疫チェックポイント阻害薬の使い分けにも遺伝子検査が有用、となる時期が遠くないと感じています。

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オピオイドの嘔気、制吐薬は必須?【非専門医のための緩和ケアTips】第38回

第38回 オピオイドの嘔気、制吐薬は必須?オピオイドの副作用といえば「便秘」と「嘔気」ですね。内服を開始した当初は眠気が強い方もいます。今回は副作用のうち、嘔気について考えていきましょう。今日の質問高齢の肺がん患者さんが通院していて、骨転移の痛みに対して医療用麻薬を使用しています。医療用麻薬は1ヵ月前から内服を始め、痛みは和らいでいるようです。制吐薬を飲み続けているのですが、いつまで続ければいいのでしょうか?「オピオイドを内服開始する時には、必ず制吐薬を処方しましょう!」これは私が緩和ケアの仕事を始めた10年以上前によく言われていたことです。医療用麻薬という名前だけで不安を感じる方がいるのに、飲んでみたら痛みは和らいだけど吐き気がする…。こんなことがあると、「もうこんな怖い薬は飲みたくないです」と言われてしまいます。また吐き気ってつらいのですよね。そういった意味でも、制吐薬は重要な併用薬として見なされていました。しかし近年、この「オピオイド開始の際に予防的に制吐薬を内服する」というプラクティスは見直されつつあります。その背景には、高齢患者が増え、制吐薬による副作用への懸念が高まったことがあります。制吐薬の多くが抗ドパミン作用を持ち、代表的な副作用は錐体外路症状です。錐体外路症状としてはアカシジア(静座不能症)などが有名です。一方、オピオイド服用に伴う嘔気は、便秘と異なり、すべての患者さんに生じるわけではありません。またオピオイドの投与開始後1~2週間で軽減することも知られています。このような嘔気に対し、錐体外路症状の懸念のある制吐薬を全員に投与するのか? という議論が生じてきたのです。今回の質問のように、医師が気付いて「もうこの制吐薬はやめてもいいのでは?」と考えられればよいのですが、気付くと何ヵ月も不要と思われる制吐薬を内服し続けていたといったケースも見聞きします。今回の質問のケースでも、嘔気がないのであれば制吐薬は中止して問題ありません。医療用麻薬を処方する際、すべての患者さんにルーチンで制吐薬を処方するのではなく、「個別に必要性を判断すること」「長期投与にならないように注意すること」が重要になっているのです。では、どんな患者さんには制吐薬を処方すべきなのでしょうか。私のやり方としては、医療用麻薬に対する心配が強いこうした方には「吐き気が出てもクスリが手元にあると安心ですよね」と言葉を添えて処方するケースが多いです。嘔気が生じやすい病態腸閉塞を繰り返している患者さんなどは、「最初の1週間だけ内服しましょう」といって制吐薬を処方することがあります。一方、入院患者さんの場合は、嘔気が出ても迅速に対応できるので、制吐薬の処方は控えるケースが多くなります。「個別性に配慮した緩和ケア」としては、各医師の腕の見せどころかもしれません。皆さんはどうされているでしょうか?今回のTips今回のTipsオピオイドと併用する制吐薬の処方は、適応を考えて個別に判断しましょう。

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ペムブロリズマブのNSCLC術後補助療法、3年後もDFSの改善を持続(PEARLS/KEYNOTE-091)/Lancet Oncol

 ペムブロリズマブによる非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法を評価する第III相PEARLS/KEYNOTE-091試験の2回目の中間解析で、ペムブロリズマブの術後補助療法は3年後も良好な無病生存期間(DFS)の改善を維持していることが明らかとなった。英国・ロイヤル・マーズデン病院のMary O’Brien氏がLancet Oncology誌で発表している。・対象:StageIB(≧4cm)〜IIIA(AJCC7版)の完全切除NSCLC(1,117例)・試験群:外科的切除後にペムブロリズマブ200mg 3週ごと18回まで投与(590例)・対照群:試験群と同様のスケジュールでプラセボを投与(587例)・評価項目[主要評価項目]全集団のDFS、PD-L1(TPS)≧50%のDFS[副次評価項目]PD-L1(TPS)≧1%のDFS、全集団、PD-L1(TPS)≧50%および≧1%の全生存期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値(データカットオフ:2021年9月20日)は35.6ヵ月であった。・全集団のDFS中央値はペムブロリズマブ群53.6ヵ月、プラセボ群42.0ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.63〜0.91、p=0.0014)。・PD-L1(TPS)≧50%のDFS中央値はペムブロリズマブ群、プラセボ群ともに未到達で、HRは0.82(95%CI:0.57〜1.18)、p値は0.14であった。・Grade3以上の有害事象(AE)はペムブロリズマブ群の34%、プラセボ群の26%で発現した。死亡に至った治療関連AEはペムブロリズマブ群で4例(1%)発現した。 ペムブロリズマブは完全切除後のStageIB(≧4cm)/II/IIIA治療の新たな選択肢となり得る、と筆者は結んでいる。

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がん治療による放射線関連心疾患、弁膜症を来しやすい患者の特徴/日本腫瘍循環器学会

 9月17、18日に開催された第5回日本腫瘍循環器学会にて、塩山 渉氏(滋賀医科大学循環器内科)が「放射線治療による冠動脈疾患、弁膜症」と題し、放射線治療後に生じる特異的な弁膜症とその治療での推奨事項について講演した(本シンポジウムは日本放射線腫瘍学会との共催企画)。 がんの放射線治療による放射線関連心疾患(RIHD:radiation-induced heart disease)の頻度は医学の進歩により減少傾向にあるが、それでもなお、食道がんや肺がん、縦隔腫瘍でのRIHD発症には注意を要する。2013年にNEJM誌に掲載された論文1)によると、照射から20年以上経過してもなお、主要心血管イベントリスクが8.2%(95%信頼区間:0.4~26.6)も残っていたという衝撃的な報告がなされた。それ以来、RIHDは注目されるようになり、その1つに弁膜症が存在する。放射線治療時の心臓への影響予測にAMC これら放射線治療時の心臓の予後予測のために見るべき点として、「上記のような弁膜症を発症する症例にはAorto-mitral curtain(AMC、大動脈と僧帽弁前尖の接合部)に進行性の弁の肥厚や石灰化が進行しやすいという特徴がある」と同氏は述べ、「肥厚をきたしている場合は予後が悪いとの報告2)もあることから、放射線治療時の診断マーカーになるのではないかとも言われている」とコメントした。また、心臓手術による死亡率を予測する方法として用いられるEuroSCORE(European System for Cardiac Operative Risk Evaluation)は本来であればスコアが高ければ予後が悪いと判定されるが、「AMCが肥厚している症例ではスコアにかかわらず予後不良である」と汎用される指標から逸脱してしまう点についても触れた。放射線治療における心毒性に対するESCガイドラインでの推奨 先日行われた欧州心臓病学会(ESC)2022学術集会において、初となる腫瘍循環器ガイドラインが発刊された。そこでは放射線治療における心毒性に関してもいくつか推奨事項が触れられており、がん治療患者の急性冠症候群(ASC)に対するPCI施行の可否についてはその1つである。ガイドラインによれば、「STEMIまたは高リスクのNSTE-ACSを呈し、予後6ヵ月以上のがん患者には侵襲的な治療戦略が推奨される(クラスI、レベルB)」とされ、予後6ヵ月未満の方については薬物療法を検討することが記載されているが、「がん治療による血小板減少を伴う患者に対しては、抗血小板薬の使用を慎重にならざるを得ないため、“アスピリンやP2Y12阻害薬の使用は推奨されない”(クラスIII、レベルC)」と薬物療法介入時の注意点を説明した。心臓に直接影響のある放射線量やドキソルビシン投与有無で分類 次に、がんサバイバーの外科治療による予後はどうか。外科的弁置換術(SAVR)において、放射線治療を受けた重度の大動脈弁狭窄症患者では放射線治療歴のない患者と比較して長期死亡率が有意に高いことが明らかになっているため、2020年改訂版『弁膜症治療のガイドライン』(p.69)でも、TAVIを考慮する因子として“胸部への放射線治療の既往 (縦隔内組織の癒着)”と明記されている。さらに、胸部放射線照射後の予後を調査した論文3)によると、胸部放射線照射群におけるTAVIは、対照群と比較して30日死亡率、安全性、有効性が同等であるものの、1年死亡率や慢性心不全の増悪が高いことが示された。ただし、両治療法の転帰について比較した報告4)を踏まえ、TAVI群では完全房室ブロックの発症やペースメーカーの挿入率が多かったことを念頭に置いておく必要がある。 そのほか、放射線治療の平均心臓線量と関連する心毒性を確認する推奨項目としてESCガイドラインに掲載されている「ベースラインCVリスク評価とSCORE2またはSCORE-OPによる10年間の致死的および非致死的CVDリスクの推定が推奨される(クラスI、レベルB)」「心臓を含む領域への放射線治療前に、CVDの既往のある患者にはベースライン心エコー検査を考慮するべきである(クラスIIa、レベルC)」「重症弁膜症を有するがんサバイバーの手術リスクを協議し、その判定を行うために、多職種チームによるアプローチが推奨される(クラスI、レベルC)」「放射線による症候性重度大動脈弁狭窄症で、手術リスクが中程度の患者にTAVI手術を行う(クラスIIa、レベルB)」を紹介。最後に同氏は「MHD(Mean heart dose)による評価が大切であり、心臓に直接影響のある放射線量やドキソルビシン投与有無などで低リスク~超ハイリスクの4つに分類する点などもESCガイドラインに記載されているので参考にして欲しい」と締めくくった。

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せん妄は緩和ケアでよく遭遇する徴候なのです【非専門医のための緩和ケアTips】第37回

第37回 せん妄は緩和ケアでよく遭遇する徴候なのです「せん妄」って緩和ケアに限らず、どの分野でも遭遇しますよね。でも、緩和ケアではとくにせん妄の対応って大切なのです。今回は緩和ケアで必ず対応が必要になる、せん妄のお話です。今日の質問看取りにも対応する在宅医療を行っています。先日、終末期の患者さんが興奮した様子となり、家族が驚いてしまいました。「在宅療養の継続は難しい」と判断して緊急入院となりました。もともと家族は「自宅で最後まで過ごさせてあげたい」と言っており、「本当に入院してよかったのか」と感じます。こういった場合、どのように対応しますか?在宅緩和ケアでは、しばしばこういった難しい状況に直面します。ご質問からの推測になりますが、終末期せん妄の状態だったのでは、と感じます。入院や在宅で緩和ケアを実践していると、よく遭遇する徴候です。皆さんは終末期患者さんがどの程度、せん妄を発症するかご存じでしょうか? データにもよるのですが、「がん患者が亡くなる数日前には88%に発症する」と言われています。これ、すごく高頻度ですよね。なので、日単位の予後のがん患者さんに意識の変容が生じた場合は、せん妄である可能性が非常に高いのです。せん妄に対しては重要な点がたくさんあるのですが、その一つが「気付く」ことです。今回のように興奮が強いタイプのせん妄は気付きやすいのですが、活気がないように見えるタイプのせん妄については、気付きにくいことが知られています。せん妄に対しての介入は、まずは「原因となっている身体疾患の中で改善できるものがないか」を考えます。たとえば、高カルシウム血症のような電解質異常がせん妄を助長しているのであれば、補正を検討します。ただ、予後日単位の状況だと、現実的になかなか改善が難しいことが多いですね。薬物療法としては、ハロペリドール(商品名:セレネース)などの抗精神病薬を用います。それでも興奮が強い時には、より鎮静作用の強い薬剤を用いることもあります。さらに、せん妄は家族のつらさも助長します。「大切な家族が、人が変わったようになってしまった…」というのは、せん妄患者の家族からよく聞かれる嘆きです。死別が近いことによる悲嘆の中にある家族にとって、さらにつらさを増す状況であることは想像するに難くありません。そうした意味では、せん妄は在宅療養の継続が難しくなる徴候の一つです。興奮の強いせん妄の場合、私自身も薬物療法をしながら、入院の相談をすることがよくあります。近年、せん妄に対しては書籍やガイドラインが増えました。それだけ医療現場では切実な問題なのでしょう。どれもお薦めなのですが、日本サイコオンコロジー学会の「がん患者におけるせん妄ガイドライン2022年版」(金原出版)が2022年6月に改訂されていますので、まずはこれから読んでみてはいかがでしょうか?今回のTips今回のTipsせん妄への対応は、緩和ケアの分野でも重要なスキルです。

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MET増幅のあるオシメルチニブ耐性肺がんに対するテポチニブ+オシメルチニブ(INSIGHT 2)/ESMO2022

 オシメルチニブの1次治療耐性でMET増幅を呈する非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、オシメルチニブとMET-TKIであるテポチニブとの併用による有効性が示された。 MET増幅はオシメルチニブ耐性NSCLCの15〜30%を占める。この集団では治療選択肢が化学療法しかないため、臨床的なニーズは大きい。テポチニブはMET増幅によるオシメルチニブ耐性NSCLCにおいてTKIとの併用で効果を示すという報告がある。  欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)では、オシメルチニブ1次治療に耐性となったMET増幅NSCLCに対し、テポチニブ・オシメルチニブ併用を評価した、オープンラベル比較第II相試験INSIGHT 2の中間解析が、フランス・トゥールーズ大学のJulien Mazieres氏から報告された。今回は初回解析として、9ヵ月以上追跡した患者の結果が紹介されている。・対象:オシメルチニブの1次治療が耐性となり、組織または血液検体でMET増幅が検出されたNSCLC・試験群:オシメルチニブ80mg/日+テポチニブ500mg/日 連日(88例)・対照群:テポチニブ500mg/日 連日(12例)・評価項目:[主要評価項目]FISH(組織)でMET増幅を同定された患者に対する独立判定委員会評価(IRC)によるオシメルチニブ+テポチニブの奏効率(ORR)[副次評価項目]NGS(血液)でMET増幅を同定された患者に対するIRC評価のオシメルチニブ+テポチニブのORR、FISHでMET増幅を同定された患者に対するIRC評価のテポチニブのORR 主な結果は以下のとおり。・MET増幅はスクリーニング患者中36%(153/425例)で検出された。・9ヵ月以上追跡したFISH同定例のIRC評価によるオシメルチニブ+テポチニブのORRは54.5%であった。・一方、FISH同定例のIRC評価によるテポチニブ単独(6ヵ月以上追跡)のORRは8.3%であった。・FISH同定例におけるオシメルチニブ+テポチニブの奏効期間中央値は未到達であった。・オシメルチニブ+テポチニブの安全性は、それぞれの薬剤の単剤でのプロファイルと一貫していた。・同併用の治療関連有害事象(TRAE)発現は全Gradeで73.9%、Grade3以上では23.9%で、頻度の高いものは下痢(40.9%)、末梢浮腫(23.9%)であった。・減量に至ったTRAEは18.2%(16例)、投与中止に至ったTRAEは6.8%(6例)で発現した。 Mazieres氏は、オシメルチニブの1次治療耐性のMET増幅NSCLCに対し、オシメルチニブとテポチニブの併用は有望な効果を示すことから、化学療法を省略した選択肢となる可能性があると述べている。

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既治療のEGFR陽性扁平上皮NSCLCに対するsintilimab+ベバシズマブ+化学療法の有用性(ORIENT-31)/ESMO2022

 EGFR-TKI治療歴のあるEGFR陽性の扁平上皮非小細胞肺がん(Sq NSCLC)患者に対して、抗PD-1抗体sintilimab、ベバシズマブバイオシミラー、化学療法の併用療法は化学療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を延長した。第III相試験ORIENT-31の第2回中間解析結果として、中国・上海交通大学のShun Lu氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)で報告した。・対象: EGFR-TKI治療歴のあるEGFR陽性のSq NSCLC患者・試験群(1):sintilimab+IBI305(ベバシズマブバイオシミラー)+ペメトレキセド+シスプラチン(158例)・試験群(2):sintilimab+ペメトレキセド+シスプラチン(158例)・対照群:ペメトレキセド+シスプラチン(160例)・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DoR) 主な結果は以下のとおり。・中央値13.1ヵ月の追跡期間において、試験群(1)、試験群(2)、対照群のPFS中央値はそれぞれ7.2ヵ月、5.5ヵ月、4.3ヵ月であり、試験群(2)は対照群に対してPFSを有意に改善していた(ハザード比:0.72、95%信頼区間[CI]:0.55〜0.95、p=0.0181)。なお、試験群(1)の対照群に対するPFS改善効果については、1回目の中間解析で報告済み。・試験群(1)、試験群(2)、対照群のORRはそれぞれ48.1%、34.8%、29.4%であった。・試験群(1)、試験群(2)、対照群のDCRはそれぞれ86.1%、81.6%、75.6%であった。・試験群(1)、試験群(2)、対照群のDoR中央値はそれぞれ8.5ヵ月、7.4ヵ月、5.7ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は、試験群(1)、試験群(2)、対照群のそれぞれ59.5%、46.2%、56.9%に認められた。 Lu氏は今回の結果について、「EGFR-TKI治療歴のあるEGFR陽性のSq NSCLC患者に対して、抗VEGF抗体の有無にかかわらず、白金系抗がん剤に抗PD-1抗体を併用することでPFSが改善することが示唆された」とまとめた。

591.

NSCLC1次治療、sintilimab+anlotinibの有用性(SUNRISE)/ESMO2022

 転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次療法として、抗PD-1抗体薬sintilimabとマルチチロシンキナーゼ阻害薬anlotinibとの併用療法はプラチナ化学療法に比べて奏効率(ORR)や無増悪生存期間(PFS)を改善する可能性が示された。オープンラベル多施設共同無作為化第II相試験として実施されたSUNRISE試験の中間解析の結果として、中国上海交通大学のBaohui Han氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)で報告した。・対象: 未治療のドライバー変異陰性StageIV NSCLC患者・試験群:sintilimab 200mg(day1)+anlotinib 10mg(day1~14)3週ごと(43例)・対照群:プラチナダブレット化学療法3週ごと4~6サイクル(46例)・評価項目:[主要評価項目]ORR[副次評価項目]奏効期間(DoR)、PFS、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・カットオフ時(2022年7月15日)の追跡期間中央値は13.1ヵ月であった。・ORRは試験群50%、対照群32.6%であった。・DoR中央値は、試験群16.3ヵ月、対照群6.2ヵ月であった。・PFS中央値は、試験群10.8ヵ月、対照群で5.7ヵ月であり、試験群は対照群に対して有意な改善を示していた(ハザード比:0.42、95%信頼区間:0.25〜0.74、p=0.002)。・Grade3/4の治療関連有害事象は、試験群で11.6%、対照群で43.5%に発現した。・試験群で発現頻度が多かった有害事象は甲状腺機能低下症、低ナトリウム血症、AST上昇で、試験中止は2例、有害事象で死亡は1例であった。 以上の結果を受け、Han氏は「今回の事前に計画された中間解析から、未治療のNSCLCの1次治療として、sintilimabとanlotinibの併用療法は有用な選択肢となる可能性がある」とまとめた。

592.

デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法は長期フォローアップ後でも、NSCLC1次治療の予後改善を維持(POSEIDON)/ESMO2022

 転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としての、デュルバルマブとtremelimumabと化学療法の併用効果に関する長期フォローアップの結果が、米国・Sarah Cannon Research InstituteのMelissa Johnson氏から欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 これは、2021年に発表のあった第III相の国際共同オープンラベルのPOSEIDON試験の観察期間中央値4年を超えるフォローアップの結果である。・対象:未治療のEGFR/ALK野生型の転移のあるNSCLC症例・試験群: -DurTre群:デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法→デュルバルマブ+tremelimumab(338例) -Dur群:デュルバルマブ+化学療法→デュルバルマブ(338例)・対照群:化学療法(CT群:337例) 化学療法は、ゲムシタビン+シスプラチン、カルボプラチン+ペメトレキセド、nabパクリタキセル+カルボプラチンなど・評価項目[主要評価項目]Dur群対CT群における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]DurTre群対CT群におけるPFS、OSなど 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2022年3月)時点の観察期間中央値は46.5ヵ月であった。・OS中央値はDurTre群で14.0ヵ月、CT群で11.7ヵ月、ハザード比(HR)は0.75(95%信頼区間[CI]:0.63~0.88)、Dur群ではOS中央値13.3ヵ月、HRは0.84(95%CI:0.71~0.99)であった。3年OS率はDurTre群25.0%、Dur群20.7%、CT群13.6%であった。・病理組織型別では、非扁平上皮がんのOS中央値はDurTre群17.2ヵ月、CT群13.1ヵ月でHRは0.68(95%CI:0.55~0.85)であった。Dur群ではOS中央値14.8ヵ月、HRは0.80(95%CI:0.64~0.98)だった。・STK11変異は87例に認められ、DurTre群対CT群のOS HRは0.62(95%CI:0.34~1.12)で、Dur群のOS HRは1.06(95%CI:0.61~1.89)であった。3年時OS率はDurTre群25.8%、Tre群14.7%、CT群4.5%であった。・KRAS変異は182例で、DurTre群のOSのHRは0.55(95%CI:0.36~0.85)で、Dur群のOS HR:0.78(95%CI:0.52~1.16)であった。3年OS率は、DurTre群40.0%、Dur群26.1%、CT群15.8%であった。・KEAP1変異は29例で、DurTre群のOSのHRは0.43(95%CI:0.16~1.25)、Dur群ではHR:0.77(95%CI:0.31~2.15)だった。・長期のフォローアップにおいても新たなる安全性の懸念は報告されなかった。 最後に演者は「今回の追跡結果においてもOSの優位性は変わらず認められ、種々の遺伝子変異や病理組織型においても、デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法の有用性が確認され、今後このレジメンが、NSCLCの1次治療の選択肢となり得る」と述べた。

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プラチナダブレット不適NSCLCに対するアテゾリズマブ1次療法の有用性(IPSOS試験)/ESMO2022

 プラチナ化学療法の1次治療が不適格な進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、アテゾリズマブは単剤化学療法(ビノレルビンまたはゲムシタビン)よりも全生存期間(OS)を有意に延長した。 NSCLCの実臨床では、複数の合併症を持つなど治療忍容性の低い高齢者が多い。また40%以上がPS≧2と全身状態不良の患者である。実臨床で多いこれらの患者はほとんどの臨床試験から除外されており、新たな治療選択肢を検討する研究への医学的なニーズは高い。 そのような中、これらの患者を対象とした、多施設オープンラベル無作為化第III相試験IPSOSが行われている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)では、英国・ロンドン大学のSiow Ming Lee氏がその試験結果を報告した。・対象:ECOG PS 2〜3(70歳以上で併存疾患がある、またはプラチナダブレット不適の場合はPS0〜1も許容)の未治療StageIIIB/IV NSCLC(EGFRおよびALK陽性は除外、無症状の安定した脳転移は許容)・試験群:アテゾリズマブ 1,200mg 3週ごと(302例)・対照群:単剤化学療法(ビノレルビンまたはゲムシタビン) 3週~4週ごと(151例)・評価項目:[主要評価項目]OS[副次評価項目]6、12、18、24ヵ月OS率、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、PD-L1陽性患者におけるOSとPFS 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値41.0ヵ月のOS中央値は試験群10.3ヵ月、対照群9.2ヵ月、2年OS率はそれぞれ24.4%と12.4%、と試験群で有意な改善を認めた(ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.63〜0.97、p=0.028)。・年齢、全身状態(PS)、組織型、PD-L1発現レベルなどのすべてのサブグループにおいて、試験群のOS改善効果は一貫して示されていた。・ORRは試験群16.9%、対照群7.9%であった。・DoR中央値は試験群14.0ヵ月、対照群7.8ヵ月であった。・PFS中央値は試験群4.2ヵ月、対照群4.0ヵ月(95%CI:2.9~5.4)で、試験群の対照群に対するHRは0.87(95%CI:0.70~1.07)であった。・試験群の20.2%、対照群の29.8%が後治療を受けており、試験群では化学療法(15.9%)、対照群では免疫療法(18.5%)や化学療法(10.6%)などの後治療が多かった。・Grade3/4の治療関連有害事象の発現率は、試験群が16.3%、対照群が33.3%であり、有害事象により投薬中止に至ったのは、試験群で13.0%、対照群で13.6%であった。・試験群では健康関連QoLの安定化が見られ、胸痛の増悪が確認されるまでの期間の改善に関するHRは0.51(95%CI:0.27〜0.97)であった。 発表者のLee氏は、IIPSOS試験により、生命予後の悪いこれらの患者に対し、アテゾリズマブの1次治療によるOS改善が初めて無作為化試験で示された、とまとめた。

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PD-L1高発現の進行NSCLCに対する1次治療として、3年間にわたり抗PD-1抗体cemiplimabが有効(EMPOWER-Lung1試験)/ESMO2022

 PD-L1発現50%以上の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する抗PD-1抗体cemiplimabの1次治療は、3年間の追跡期間においてもプラチナダブレットと比べ、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意な改善を示した。トルコ・Istanbul University-CerrahpasaのMustafa Ozguroglu氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)で報告した。・対象:PD-L1(TPS)≧50%の未治療のStageIIIB/CおよびStageIV扁平上皮/非扁平上皮NSCLC・試験群:cemiplimab 350mgを3週ごとに最大108週間または増悪まで投与。増悪した場合は、cemiplimib継続かつ化学療法4サイクル追加のオプション・対照群:プラチナダブレット化学療法4〜6サイクル投与。増悪した場合は、cemiplimab単剤投与へのクロスオーバーのオプション・評価項目:[主要評価項目]OS、PFS[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、健康関連QOL、安全性 主な結果は以下のとおり。・ITT解析対象は試験群357例、対照群355例であり、対照群のcemiplimabへのクロスオーバー率は75%であった。・3年間フォローにおいて、試験群の対照群に対するOSおよびPFSのハザード比[HR](95%信頼区間[CI])はそれぞれ0.63(0.52~0.77、p=0.0001)、0.56(0.47~0.67、p=0.0001)であり、対照群での高いクロスオーバー率にもかかわらず、OS、PFSともに試験群での有意な改善効果が認められた。・PD-L1 50%以上のITT解析対象は、試験群284例、対照群281例であり、3年間フォローにおいて、試験群の対照群に対するOS、PFSのHR(95%CI)はそれぞれ0.57(0.46~0.71、p=0.0001)、0.51(0.42~0.62、p=0.0001)であった。・Grade3以上の有害事象の発現率は、試験群が45.8%、対照群が51.6%であった。 以上の結果を受け、Ozguroglu氏は「PD-L1が50%以上の進行期および転移のあるNSCLCに対して、cemiplimab単剤療法は1次治療の新たな選択肢になる」とまとめた。

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医師のがん検診受診状況は?/1,000人アンケート

 定番ものから自費で受ける最先端のものまで、検査の選択肢が多様化しているがん検診。CareNet.comが行った『がん検診、医師はどの検査を受けている?/医師1,000人アンケート』では、40~60代の会員医師1,000人を対象に、男女別、年代別にがん検診の受診状況や、検査に関する意見を聞いた。その結果、主ながん種別に受ける割合の多い検査が明らかとなったほか、今後受けたい検査、がん検診に感じる負担など、さまざまな角度から意見が寄せられた(2022年8月26~31日実施)。40代男性医師の約半数、がん検診を受けていない Q1「直近の健康診断や人間ドックで、どのがん検査を受けましたか?(複数選択)」では、男性ではどの年代でも、胃がん(40代41%、50代52%、60代59%)、大腸がん(同28%、同41%、同50%)の順に検査を受けた割合が多かった。「がん検診を受けていない」と回答した人は年代で大きく差があり、40代が47%、50代が31%、60代が23%となっており、40代男性の約半数が、がん検診を受けていないことが明らかになった。 女性では、40代と50代では、ともに乳がん(40代53%、50代47%)の検査を受けた割合が最も多く、次いで40代では子宮頸がん(52%)、胃がん(45%)、50 代では胃がん(45%)、子宮頸がん(44%)の順に多かった。60代は、胃がんが最多(64%)で、次いで乳がん(52%)、子宮頸がん(42%)の順となっている。「がん検診を受けていない」と回答した人は、どの年代も20%台で大きな差はなかった。女性の場合、乳がんや子宮頸がんといった若年層でも比較的リスクが高いとされるがんが多いことが、この結果に影響しているかもしれない。胃がん検診で最も多いのは経口内視鏡検査 Q2「胃がん検診の際に受けた検査はどれですか?(複数選択)」では、男女どの年代も経口内視鏡検査を受けた割合が最も多かった(男性29%、女性31%)。自由回答で、胃がん検診に対して寄せられたコメントとして、バリウムX線検査や内視鏡検査について、以下のようなものがあった。・バリウムではなくて内視鏡をファーストチョイスにしてほしい。(心臓血管外科、40代、女性)・胃のバリウム造影はあまり意味がないのではないでしょうか。(泌尿器科、40代、男性)・経口内視鏡の苦痛の軽減方法は鎮静以外にないものか、今後の技術の進歩に期待。(内科、60代、女性)・胃カメラは経鼻が入らないので、さらに細径の内視鏡開発を望みます。(泌尿器科、50代、男性)コメントが多く寄せられた「乳がん検診の痛み」 Q3では、男女で別の質問項目を設けた。男性に対しては前立腺がんについて聞いたところ、年代が上がるにつれて検査を受けた割合が増加し、40代ではわずか9%だが、50代では33%、60代では48%がPSA検査を受けていた。 女性に対しては乳がんについて聞いた。マンモグラフィ検査を受けた割合は各年代とも50%を超えており、超音波検査は30%前後であった。乳がん検診の痛みに対する以下のようなコメントが10件ほど寄せられた。・マンモグラフィはもっと痛みの少ない撮影法が開発されてほしい。毎回憂うつです。(眼科、40代、女性)・乳がん検診はMRIが最適だろうに、なぜ広がらないのかわかりません。そもそもマンモグラフィは非常に痛みが強く、その割に感度特異度とも不十分で改善点ありまくりなのに、まったく改善する見込みなし。(内科、50代、女性)・マンモグラフィが痛すぎるので、それに代わる痛くない検査がいい。(精神科、50代、女性)自費で受けた検査、今後受けたい検査 Q5では、自費で受けたことがある検査について聞いた。最も多かったのは腫瘍マーカー検査で、男女ともにどの年代も10%以上あり、最多の60代男性では24%だった。続いて脳ドックが男女ともに各年代10%前後であった。 Q6の自由回答のコメントでは、今まで受けたことはないが今後積極的に受けたい検査として、下部消化管内視鏡検査を挙げた人が14人、がん遺伝子検査が11人、がん線虫検査が10人、PET検査が9人、腫瘍マーカー検査が3人だった。ただし、線虫検査や腫瘍マーカー検査については、検査の精度に対して以下のような懐疑的な意見もいくつか寄せられた。・線虫検査などは偽陰性が問題だと思う。(泌尿器科、40代、女性)・腫瘍マーカーで早期発見は無理で、普段偽陽性ばかり見ているので、しっかりと有用性の評価をしないといけないと思う。(呼吸器内科、50代、男性)コロナ禍で検診を受けにくい状況も がん検診を受けにくい理由として、忙しくて受ける余裕がないという意見が多数寄せられた。具体的には、内視鏡検査や婦人科がんの検診は予約が取りづらいといったことや、週末に受診できる施設が少ないといった理由のほか、コロナ禍で検診を受けにくくなったという声も複数上がった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。がん検診、医師はどの検査を受けている?/医師1,000人アンケート

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知っておきたい新しいオピオイド(2)メサドン【非専門医のための緩和ケアTips】第36回

第36回 知っておきたい新しいオピオイド(2)メサドンがん疼痛に対するオピオイドもさまざまな種類があるのですが、今回はその中でも薬物療法の「最終手段」的な存在であるメサドンについてお話しします。「最終手段」だけあって、まだ使ったことがある方は多くはないと思います。今日の質問オピオイドを増量しても、なかなか緩和できない痛みの患者さんがいます。効き目が強いと聞くメサドンを使ってみたいと思うのですが、使用経験がないので不安があります。メサドン(商品名:メサペイン)、初めて聞いた方もいるのではないでしょうか? 私も、そこまで使用経験が豊富なわけではありませんが、今後、メサドンを使用している患者さんの紹介も増えるかもしれないと思い、勉強しているところです。前提として、メサドンは誰にでも処方される薬剤ではありません。その理由は大きく分けて2つあります。1)処方・流通制限があるメサドンを処方するには、事前に医師が専用のeラーニングを受講する必要があります。途中でテストがあるのですが、このテストがなかなか難しく、私は○回目で合格しました。○に何の数字が入るかはご想像にお任せします…。こういう間違い探し的な問題は苦手で、というのは言い訳ですが…。医師だけでなく、管理する調剤薬局もeラーニングを受講した「管理薬剤師」を置く必要があります。調剤前には、処方した医師がeラーニング受講済み、登録済みであることを確認することも必要です。このようにメサドンには厳格な処方・流通制限があり、簡単な処方ができないようになっています。もちろん、これには理由があり、それが「誰にでも処方できない理由」の2つ目でもあります。2)使用上の注意点が多いメサドンの使用上の注意点として、パッと思い浮かぶものを列挙するだけでも以下のようなものがあります。個人差が大きく、投与量の設定が難しいQT延長による致死性不整脈の副作用がある半減期が長く、定常状態までに1週間程度を要するが、こちらも個人差があるどうですか? なかなか使用を躊躇する言葉が並んでいますよね?こうした事情から、メサドンは、「がん疼痛に対する薬物療法に精通した医師がeラーニングを受講して」初めて処方が可能となっているのです。メサドンは使いこなせれば、非常に強力な薬剤です。NMDA受容体の拮抗作用があり、私自身も既存の強オピオイドでは鎮痛効果が不十分であった痛みに対し、有効だった例をしばしば経験しています。複数の作用機序を持つことが、ほかのオピオイドとは異なる鎮痛作用を生じさせているのです。強力な鎮痛効果から、薬物療法の「最終手段」的な位置付けのメサドン。気軽に使用できる薬剤ではないですが、専門医と連携していくきっかけにしてください。今回のTips今回のTipsメサドンは難治性がん疼痛に対する薬物療法の「最終手段」的な薬剤。

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ソトラシブ、KRAS G12C変異陽性NSCLCのPFSを有意に延長(CodeBreaK-200)/ESMO2022

 KRAS G12C変異陽性の既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、ソトラシブがドセタキセルよりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長することが、米国・Sarah Cannon Research InstituteのMelissa L. Johnson氏から、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 ソトラシブの有効性は単群試験のCodeBreaK100で示されていたが、今回発表されたのは、日本も参加した国際共同無作為化比較第III相試験CodeBreaK 200試験の主解析の結果である。・対象:免疫チェックポイント阻害薬と化学療法薬の治療歴を有するKRAS G12C変異陽性のNSCLC(過去の脳転移治療例は許容)・試験群:ソトラシブ960mgx1/日(Soto群:171例)・対照群:ドセタキセル75mg/m2を3週ごと(DTX群:174例)DTX群からSoto群へのクロスオーバー投与は許容・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員会評価によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性、患者報告アウトカムなど 主な結果は以下のとおり。・試験は2020年6月から開始されたが、2021年2月にプロトコール修正が行われ、登録症例数が650例から330例へと変更になり、DTX群のSoto群へのクロスオーバー投与も認められた。・DTX群からSoto群へのクロスオーバー率は26.4%で、DTX治療の後治療として別のKRAS阻害薬の投与を受けた割合は7.5%であった。・両群の年齢中央値は64.0歳、脳転移の既往有りが約34%、前治療歴は2ライン以上が55%であった。・データカットオフ時(2022年8月)のPFS中央値はSoto群が5.6ヵ月、DTX群が4.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.66(95%信頼区間[CI]:0.51~0.86)、p=0.002と有意にSoto群が良好であった。1年PFS率は、Soto群24.8%、DTX群10.1%だった。・ORRはSoto群が28.1%、DTX群が13.2%、p<0.001とSoto群が有意に高かった。腫瘍縮小効果があった割合は、それぞれ80.4%と62.8%であった。・DoR中央値はSoto群8.6ヵ月、DTX群は6.8ヵ月で、奏効までの期間中央値は、それぞれ1.4ヵ月と2.8ヵ月であった。・症例数が大幅に減ったこととクロスオーバー投与が許容されたことで、OSにおける両群間の差は検出されなかった。OS中央値は10.6ヵ月と11.3ヵ月、HRは1.01(95%CI:0.77~1.33)であった。・Grade3以上の有害事象は、Soto群で33.1%、DTX群で40.4%に発現した。重篤な有害事象はそれぞれ10.7%と22.5%であった。・Soto群で多く認められたGrade3以上の有害事象は、下痢、肝機能障害で、DTX群で多く認められたものは、倦怠感、貧血、脱毛、好中球減少(発熱性好中球減少症含む)などであった。・患者報告アウトカムは、Soto群で良好であり、がん関連の身体症状悪化までの期間もSoto群の方がDTX群よりも長かった。

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NSCLC術後補助療法 ペメトレキセド+シスプラチンはビノレルビン+シスプラチンと同様のOS(JIPANG)/ESMO2022

 完全切除を受けた非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後化学療法として、ペメトレキセド+シスプラチン療法とビノレルビン+シスプラチン療法の無再発生存期間(RFS)と全生存期間(OS)に関する最終結果を、国立がん研究センター東病院の葉清隆氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。 これは日本で実施された第III相試験であるJIPANG試験の最終解析報告であり、すでにRFSと忍容性については報告がなされている。・対象:Stage II~IIIAで完全切除を受けた非扁平上皮NSCLC症例・試験群:ペメトレキセド+シスプラチン(PC群) ・対照群:ビノレルビン+シスプラチン(VC群)両群ともに3週ごとに4サイクルまで投与・評価項目:[主要評価項目]RFS[副次評価項目]OS、治療完遂率、毒性 主な結果は以下のとおり。・2012年3月〜2016年8月に登録された783例が解析対象となった(PC群389例、VC群394例)。・病期はStage IIIAがPC群53.0%、VC群52.5%、EGFR変異陽性(EGFR+)はそれぞれ24.9%と24.1%であった。・観察期間中央値72.7ヵ月時点でのRFS中央値はPC群が43.4ヵ月、VC群が37.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.95(95%信頼区間[CI]:0.79~1.14)であった。5年時RFS率は、PC群44.9%、VC群42.6%であった。・観察期間中央値77.3ヵ月時点でのOS中央値は両群ともに未到達で、HRは1.03(95%CI:0.80~1.32)であった。5年時OS率はPC群が75.0%、VC群が75.6%であった。・OSのサブグループ解析において、EGFR+グループではVC群が良好で(HR:1.93、95%CI:1.13~3.28)、Stage IIIAグループにおいてもVC群が良好(HR:1.43、95%CI:1.03~1.98)であった。また、Stage IIグループではPC群が良好(HR:0.63、95%CI:0.41~0.95)であった。・Grade3以上の有害事象は、PC群47%、VC群89%であった。・主な再発部位はリンパ節(35~39%)と肺(29~41%)であり、脳転移はEGFR+グループでPC群30.3%、VC群18.6%、EGFR野生型グループではPC群18.6%、VC群27.5%であった。

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緊急インタビュー:非小細胞肺がんの術後補助療法のパラダイムはシフトするか(2)【肺がんインタビュー】 第85回

第85回 緊急インタビュー:非小細胞肺がんの術後補助療法のパラダイムはシフトするか(2)早期非小細胞肺がんの術後補助療法の選択肢にPD-L1阻害薬であるアテゾリズマブとEGFR-TKIであるオシメルチニブが加わった。この2つのバイオマーカーに対する治療薬は非小細胞肺がんの術後補助療法にパラダイムシフトを起こすか。

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