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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第22回

第22回:成人の頸部リンパ節腫脹について監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの現場で、頸部リンパ節腫脹はそれ自体を主訴に受診する場合のほか、急性疾患に罹患して受診した際に気付かれる、時に見られる症候の一つです。 生理的な範疇なのか、反応性なのか、それとも悪性なのかの区別をつけることが、臨床的には重要になります。 以下、American Family Physician 2015年5月15日号1)より原則として、経過が急性・亜急性・慢性かで鑑別を考える。急性【外傷性】外傷性の場合、組織や血管系の損傷による。少量であれば自然軽快するが、大きく、急性に増大する場合はすぐに処置や外科的精査を要する。剪断力が追加されると偽性動脈瘤の形成・動静脈瘻の形成につながる。その場合はスリルや雑音を伴った柔らかい、拍動性腫瘤として触れる。【感染・炎症性】最も多い原因である。歯や唾液腺のウイルス・細菌によるものが代表的である。性状は腫脹、圧痛、発赤や熱感を伴う。可動性がある。ウイルス性の上気道症状は1~2週続くことが一般的だが、リンパ節腫脹は上気道症状改善後3~6週以内に治まってくることが多い。そのため、上気道症状改善後にも頸部腫脹が続くことで心配して受診する患者さんもいる。病原ウイルスはライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザが多い。生検が適応になるのは、4~6週経っても改善しなかったり、夜間の寝汗・発熱・体重減少・急速な腫瘤増大といった悪性を示唆する所見があったりする場合である。よって、この点について病状説明を行うべきと考える。細菌性感染では、頭部・頸部がフォーカスの場合に主に頸部リンパ節腫脹を来す。肺外結核も頸部リンパ節腫脹を起こす。びまん性、かつ両側性にリンパ節腫脹があり、多発し、可動性もなく、硬く圧痛もなく、胸鎖乳突筋より後ろの後頸三角地帯に存在していることが特徴である。疑えば、ツベルクリン反応を行うべきだが、結果が陰性だからといって否定はできない。亜急性週~月単位の経過で気付かれる。ある程度は急速に増大しうるが、無症候性に増大するため発症スタートの段階では気付かれない。成人で持続する無症候性の頸部腫瘤は、他の疾患が否定されるまでは悪性を考えるべきである。喉頭がんなどでは診断が遅れる事で生存率が下がるため、家庭医にとって頭頸部がんの一般的な症状については認識しておくことが最重要である。【悪性腫瘍】頭頸部の原発性悪性腫瘍で最も多いのは上気道消化管の扁平上皮がんである。よくある症状としては、改善しない潰瘍・構音障害・嚥下障害・嚥下時痛・緩いもしくは並びの悪い歯・咽頭喉頭違和感・嗄声・血痰・口腔咽頭の感覚異常がある。悪性疾患を示唆するリンパ節の性状は、硬い・可動性がない・表面不整であることが多い。上気道消化管がんのリスクファクターとしては、男性・アルコール・タバコ・ビンロウの実(betel nut:東南アジアではガムを噛むようによく使用されている)である。口腔咽頭がんのリスクファクターは頭頸部扁平上皮がんの家族歴・口腔衛生不良である。扁平上皮がんの一部はヒトパピローマウイルス感染との関連も指摘されている(とくにHPV-16がハイリスク)。病変は急速に腫大し、嚢胞性リンパ節(持続性頸部リンパ節過形成)、口蓋・舌扁桃の非対称性、嚥下障害、声の変化、咽頭からの出血といった症状を来す。集団としてリスクが高いのは、35歳~55歳の白人男性で喫煙歴・重度のアルコール常用者・多数の性交渉相手(とくにオーラルセックスを行っている場合)の存在である。唾液腺腫瘍の80%近くが良性であり、耳下腺由来である。これらの腫瘍は一側性で無症候性、緩徐に増大し可動性のある腫瘤である。一方、悪性腫瘍では、急速増大、可動性がなく、痛みを伴い、脳神経(とくにVII)も巻き込むという違いがある。黒色腫のような皮膚がんもまた局所のリンパ節に転移する。局所のリンパ節腫脹を説明しうる原発の頭頸部がんが存在しない場合、臨床医は粘膜に関わる部位(鼻・副鼻腔・口腔・鼻咽頭)の黒色腫を検索するべきである。まれに基底細胞がんや扁平上皮がんからの転移でリンパ節腫脹を来すこともある。発熱、悪寒、夜間寝汗、体重減少といった全身症状は遠隔転移を示唆しうる。頸部リンパ節腫脹を来す悪性腫瘍の原発部位は肺がん、乳がん、リンパ腫、子宮頸がん、胃食道がん、卵巣がん、膵がんが含まれる。頸部はリンパ腫の好発部位であり、無痛性のリンパ節腫脹で出現して急速に進行し、その後有痛性へと変わる。びまん性のリンパ節腫脹や脾腫よりも先に全身症状が出現することが多い。転移によるリンパ節腫脹と比べ、リンパ腫の性状は弾性軟で可動性がある。Hodgkinリンパ腫では二峰性の年齢分布(15~34歳、55歳以上)があり、節外に症状が出る事はまれである。Non-Hodgkinリンパ腫では高齢者で多く、咽頭部の扁桃輪のようにリンパ節外にも症状が出る。リウマチ性疾患では唾液腺腫大を来すのは3%、頸部リンパ節腫脹を来すのは4%存在する。唾液腺腫大や頸部リンパ節腫大を来すリウマチ性疾患にはシェーグレン症候群やサルコイドーシスがある。慢性小児期から存在する先天性腫瘤がほとんどで、緩徐に進行し成人になっても持続している。慢性の前頸部腫瘤の原因として最も多いのは甲状腺疾患であるが、進行が緩徐であることがほとんどである。びまん性に甲状腺腫大がみられた場合、バセドウ病・橋本病・ヨード欠乏による可能性があるが、甲状腺腫を誘発するリチウムのような物質曝露によるものも考える。傍神経節腫は神経内分泌腫瘍で、側頸部の頸動脈小体の化学受容体・頸静脈・迷走神経を巻き込む。通常無症候性だが、機能性になる時はカテコラミン放出の結果として顔面紅潮・動悸・高血圧を起こす。診断的検査は血漿もしくは24時間蓄尿でカテコラミン・メタネフリンを測定する事である。診断手段成人の持続する頸部腫瘤に対しては、まず造影CTを選択する。大きさ・広がり・位置・内容などに関して評価しうる初期情報が得られるためである。加えて、造影剤は腫大していない悪性リンパ節を同定する助けにもなり、血管とリンパ節の区別の一助になりうる。造影CTでの精査は頸部腫瘤の評価に対しては第1選択として推奨される。しかし、ヨードを用いた造影剤検査は甲状腺疾患の病歴のある、もしくは転移性甲状腺がんの心配のある患者へは避けるべきである。PET-CTは予備的診断として使用するには効果的でなく、悪性腫瘍の最終的な評価目的で使用すべきである。超音波検査はCTの代わり、もしくは追加で行われるとき、嚢胞性疾患と充実性疾患との区別に有用であり、結節の大きさや血流の評価にも有用である。CTと超音波の使い分けとして、より若年で放射線被曝を減らしたい場合に超音波を選択する。また、造影剤腎症を避けるために腎疾患が基礎疾患にある方へは造影剤使用を控える。FNAB(fine needle aspiration biopsy:穿刺吸引生検)については、施行に当たり重要な構造物を含んでいないことが確認できていれば進めていく。FNABでは、細胞診、グラム染色、細菌培養、抗酸菌培養を通じて得られる情報が多い。FNABでの悪性腫瘍診断については、感度77~97%、特異度93~100%である。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) James Haynes, et al. Am Fam Physician. 2015; 91: 698-706.

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非小細胞肺がんの早期診断には無細胞DNA解析が有用

 非小細胞肺がん患者の血漿における無細胞DNA値の上昇は、炎症反応が原因ではなく、腫瘍の発生が主な原因であることをポーランド・結核・肺疾患研究所のAdam Szpechcinski氏らが報告した。British Journal of Cancer誌オンライン版2015年6月30日号の掲載報告。 血漿中の無細胞DNA値の解析は、非小細胞肺がんの早期診断に役立つバイオマーカーと期待されている。しかしながら、非小細胞肺がん患者の血流に多くの無細胞DNAが放出される理由が悪性腫瘍によるものなのか、慢性炎症反応によるものなのかはいまだ明らかになっていない。 このため、慢性の呼吸器炎症を有する患者において血漿の無細胞DNAの定量化が診断を付けるうえで有用かは、明確になっていないのが現状である。そこで、慢性の呼吸器炎症を有する患者における血漿の無細胞DNA値の解析が有効なのかを検討し、早期の肺がんの診断ツールとしての潜在的な臨床的意義を評価した。 対象は切除可能な非小細胞肺がん患者50人と慢性の呼吸器炎症(COPD、サルコイドーシス、喘息)を有する患者101人、リアルタイムPCRを利用している健常人40人で、それぞれの血漿の無細胞DNA値を測定した。 主な結果は以下のとおり。・非小細胞肺がんの患者では、慢性の呼吸器炎症を有する患者と健常人に比べて、有意に血漿の無細胞DNA値が高いことがわかった(p<0.0001)・慢性の呼吸器炎症を有する患者と健常人との間で血漿の無細胞DNA値に有意な差は認められなかった。・2.8 ng ml-1以上をカットオフとしたとき、非小細胞肺がん患者と健常人とを鑑別する感度は90%、特異度は80.5%であった(Area Under the Curve[AUC]0.90)。・ROC曲線による非小細胞肺がん患者と慢性の呼吸器炎症を有する患者を鑑別するカットオフは5.25 ng ml-1以上で感度は56%、特異度は91%であった(AUC=0.76)。 本研究は、肺がんの早期スクリーニングや早期診断において、血漿無細胞DNA値の潜在的な臨床的意義を向上させたといえる。非小細胞肺がん患者で血漿の無細胞DNA値が上昇する要因や過程の特徴付けや同定をするためには、今後さらなる研究が必要である。

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ネッティー先生のわかる!見逃さない!CT読影術

第1回「頭部編1 怖い怖いくも膜下出血 - この患者は帰しちゃダメ!(初級)」第2回「頭部編2 見落としやすい脳出血 - 理論立てて考える(中級)」第3回「頭部編3 脳卒中を深く知る - 画像と病態をリンクさせる(上級)」第4回「胸部・腹部編1 イレウスと腸管虚血 – 解剖構造ごとに読影すれば読める!(初級)」第5回「胸部・腹部編2 胆管炎と胆嚢炎 – 画像の役割をきちんと理解する(中級)」第6回「胸部・腹部編3 難しい胸部も怖くない - 基礎解剖を理解して攻略(上級)」 日々の診断と治療方針の決定、当直時の救急搬送など、臨床医であればCT画像を読まなければならない機会は多いはず。しかし、どこまで正しく読影できているかと言われると、いま一つ自信がないという先生も多いのではないでしょうか。本DVDでは、「頭部編」と「胸部・腹部編」に分け、一般的によく出合う症例、見落としてはいけない症例を中心に、実際のCT画像を見ながら読み方を解説していきます。最大の特徴は「連続画像」。動画という特性を生かし、たくさんの症例で膨大な量の連続画像を提示。実際の臨床現場で行うように、画像からの病変検索を“体験”できます。画像診断に苦手意識がある、もう少し読影技術を伸ばしたい、とにかく画像診断に興味がある、そんな先生方、必見です。第1回 頭部編1 怖い怖いくも膜下出血 - この患者は帰しちゃダメ!(初級)初回は、くも膜下出血の症例を提示しながら、症例の解説とともに読影のコツや見逃さないためのノウハウを解説します。くも膜下出血は生涯に一例しか出合わなかったとしても、確実に診断しなければならない疾患です。読めるようになるためのポイントはもちろんですが、見逃してしまうのはなぜかという理論も徹底的に解説しているので、この番組を見終えるころには、頭部CTが自然と読めるようになっていることでしょう。第2回 頭部編2 見落としやすい脳出血 - 理論立てて考える(中級)第2回は頭部編の中級として、見落としやすい脳出血の症例に的を絞って解説していきます。典型的な慢性硬膜下血腫の画像を見た場合、「これは慢性硬膜下血腫である」と診断するだけでは、そのほかの病変を見逃して正しい診断ができないかもしれません。常に病変と周囲の正常構造との関係を考え、病変が正常構造を圧迫していないかなどのベクトルをイメージしたり、境界の構造をなぞったりなど、さまざまな工夫が必要です。またthin sliceや冠状断像などの多断面再構成を用いていろいろな角度から病気を見ることも、見落としを防ぐ工夫として大切になります。ネッティー先生が普段の読影時に気をつけている点や行っている工夫がたっぷりと詰まっています。第3回 頭部編3 脳卒中を深く知る - 画像と病態をリンクさせる(上級)画像診断を確実に正確に行うためには、解剖構造とCTの画像の成り立ち、そして機能を合わせて見ていくことが非常に大切です。今回は頭部編の上級として、脳卒中すなわち脳梗塞や脳出血の症例と解剖構造を見比べ、梗塞や出血の位置と解剖学的な関係を詳細に解説していきます。脳出血が起こりやすい場所と穿通枝の分布、出血の広がり方と解剖構造など、それぞれの関連性を理解すると、これまでバラバラに覚えなくてはならなかった病態がすっと楽に理解できるようになります。ネッティー先生の理にかなった解説を聞いて、画像診断に自信を持ってください。第4回 胸部・腹部編1 イレウスと腸管虚血 – 解剖構造ごとに読影すれば読める!(初級)小腸の疾患を疑うCT画像と出合った場合、どこから見ていきますか?つい拡張した腸管から見始めてしまいがちですが、実はその方法は時間がかかってしまううえ、病変を見落としてしまう恐れがあります。ネッティー先生が推奨するのは、「まずはわかる臓器構造から見ていく」こと。中でも大腸は連続性を追跡しやすいので、まずは大腸の連続性を追っていき、次に脈管構造を追います。それでも病態がわからなければ、初めて拡張した腸管の追跡を開始していくような読影をすると、見落としが減り、かつ時間が節約できるのです。これらのこと意識して日常の腹部CTの読影でトレーニングを積めば、より読影力が伸びるでしょう。第5回 胸部・腹部編2 胆管炎と胆嚢炎 – 画像の役割をきちんと理解する(中級)腹部CTを見ていくうえで重要なポイントなる胆管炎と胆嚢炎。ともに胆石のうっ滞に伴う感染が主体ですが、「なんとなく胆嚢が拡張していて、周囲に脂肪識濃度上昇がある感じがするから胆嚢炎?」などの“雰囲気読影”を、ついついしてはいませんか?典型的な胆管炎や胆嚢炎の症例であっても、臨床徴候や臨床経過と対比して画像を見るようにすると、画像所見と重症度がつながっていき、読影力がグンとアップします。CT画像では胆汁中の感染の有無がわかりませんので、間接的なことを見ているにすぎないのですが、どの程度の炎症が起きて、治療方針をどうするかと考えていくうえで、画像所見はとても重要です。それを念頭において、“雰囲気読影”からの脱却を目指しましょう。第6回 胸部・腹部編3 難しい胸部も怖くない - 基礎解剖を理解して攻略(上級)胸部の画像診断は難しい。その理由に、胸部疾患には似たような画像をとることが多く、画像診断だけでは鑑別困難な症例が多いということがあります。また1つの疾患でも像のバリエーションが多いのも特徴です。それらに振り回されない読影をするために大事なのは、とにかく肺の解剖学的構造を理解すること。ネッティー先生が教える肺の微細解剖ルールは5つ。そのルールをふまえ、実際の結核のHRCT(High-Resolution CT)を用いて、肺の微細解剖を確認していきます。背景にある解剖学的構造を推測しながら画像を見ていくことが、読影力向上の秘訣です。

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握力検査で心血管疾患リスクを予測/Lancet

 握力検査は、全死因死亡や心血管死、心血管疾患の簡便で安価なリスク層別化法であることが、カナダ・マクマスター大学のDarryl P Leong氏らPURE試験の研究グループの検討で示された。握力検査による筋力低下と死亡リスク増大の関連が多くの研究で示唆され、そのメカニズムは不明であるものの、死亡リスクの層別化の迅速で安価な方法として注目を集めている。一方、筋力測定の予後因子としての意義に関する既存のエビデンスは高所得国に限られ、全死因や原因別の死亡に焦点が絞られているという。Lancet誌オンライン版2015年5月12日号掲載の報告より。中~低所得国を含め、死亡以外のアウトカムも評価 PURE試験は、さまざまな社会文化的、経済的環境において、独立の予後因子としての握力の意義を評価する前向きコホート研究。対象は、17の高~低所得国の地域住民で、構成員の1人以上が35~70歳、今後4年間は現住所に居住する意思のある世帯とした。  被験者には、ジャマー握力計(Jamar dynamometer)による握力の測定が行われた。フォローアップでは、全死因死亡、心血管死、非心血管死、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、がん、肺炎、肺炎または慢性閉塞性肺疾患(COPD)による入院、すべての呼吸器疾患(COPD、喘息、結核、肺炎など)による入院、転倒による負傷、骨折の評価が行われた。  これらのアウトカムの評価は、個々の担当医が標準化された判定基準に則って行い、事前に規定された定義や判定基準により中央判定で確証された。収縮期血圧よりも強力に死亡を予測 2003年1月~2009年12月に14万2,861人が登録され、13万9,691例(女性:8万1,039例、男性:5万8,652例)が解析の対象となった。全体の年齢中央値は50歳(四分位範囲:42~58歳)、平均握力は30.6kgであった。  年齢と身長で補正した握力は、国や民族によってばらつきが認められた。男性の平均握力は、低所得国が30.2kg、中所得国が37.3kg、高所得国は38.1kgであり、女性はそれぞれ24.3kg、27.9kg、26.6kgだった。フォローアップ期間中央値は4.0年(四分位範囲:2.9~5.1年)であり、この間に2.4%(3,379人)が死亡した。  握力が5kg低下するごとに、全死因死亡(ハザード比[HR]:1.16、95%信頼区間[CI]:1.13~1.20、p<0.0001)、心血管死(1.17、1.11~1.24、p<0.0001)、非心血管死(1.17、1.12~1.21、p<0.0001)、心筋梗塞(1.07、1.02~1.11、p=0.0024)、脳卒中(1.09、1.05~1.15、p<0.0001)の発症率が有意に上昇した。 一方、握力と糖尿病、肺炎、肺炎またはCOPDによる入院、転倒による負傷、骨折との間には有意な関連はみられなかった。また、がんおよび呼吸器疾患による入院を除き、補正後の握力と各アウトカムの間に、高~低所得国を通じて類似の関連が認められた。  高所得国では、がんのリスクと握力に正の相関が認められた(HR:0.916、95%CI:0.880~0.953、p<0.0001)が、中および低所得国ではこのような関連はみられなかった。  全死因死亡に関して、補正後の握力(HR:1.37、95%CI:1.28~1.47、p<0·0001)は収縮期血圧(1.15、1.10~1.21、p<0.0001)よりも強力な予測因子であり、心血管死についても、握力(1.45、1.30~1.63、p<0.0001)は収縮期血圧(1.43、1.32~1.57、p<0.0001)に匹敵する予測因子であった。一方、心血管疾患の予測では、握力(1.21、1.13~1.29、p<0.0001)よりも収縮期血圧(1.39、1.32~1.47、p<0.0001)のほうが強力であった。  さらに、握力が強いほど、心筋梗塞、脳卒中、がん、肺炎、肺炎またはCOPDによる入院、転倒による負傷、骨折による死亡のリスクが低かった。  著者は、「握力には個々の国やその所得の違いで異質性があり、握力は死亡リスクだけでなく心血管疾患のリスクとも逆相関することが示された」とし、「低筋力は疾患発症の感受性のバイオマーカーであり、心血管疾患と非心血管疾患のいずれのリスクが高いかを同定する指標となる可能性がある」と指摘している。

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~プライマリ・ケアの疑問~  Dr.前野のスペシャリストにQ!【呼吸器編】

第1回 気管支喘息治療のスタンダードは? 第2回 吸入ステロイドを使い分けるポイントは? 第3回 気管支喘息で経口ステロイドはどう使う? 第4回 風邪症状から肺炎を疑うポイントは?第5回 呼吸器感染症の迅速診断は臨床で使える?第6回 肺炎のempiric therapyの考え方とは?第7回 COPDの薬物療法は何から始める?第8回 呼吸リハビリテーション、プライマリ・ケアでできることは?第9回 在宅酸素療法の基本的な考え方は?第10回 慢性咳嗽の原因疾患を鑑別する方法は?第11回 アトピー咳嗽と咳喘息、どう見分ける?第12回 成人の百日咳、鑑別と検査のポイントは?第13回 結核の発見と対応のポイントは?第14回 肺塞栓を疑うポイントは?第15回 肺の聴診のコツは? 日常診療におけるジェネラリストの素朴な疑問に一問一答で回答するQ&A番組!気管支喘息や肺炎、COPDなどの実臨床でよく見る呼吸器疾患の診察、検査、治療に関する15の質問を、番組MCの前野哲博先生が経験豊富なスペシャリスト・長尾大志先生にぶつけます!第1回 気管支喘息治療のスタンダードは? プライマリ・ケアで扱うことも多い気管支喘息。寛解への近道は継続した投薬です。そのため、患者のアドヒアランスを高めることも治療のキーポイント。治療の原則と併せて、最も効果がある処方例をズバリお教えいたします!第2回 吸入ステロイドを使い分けるポイントは? 吸入ステロイドは気管支喘息治療薬のスタンダードですが、その剤形やデバイスは年を追うごとに進歩しています。かつて主流だったMDIと、近年数多く発売されているDPI。それぞれの特徴と使い分けをズバリお教えいたします。また、気管支喘息治療でよく使用されるDPI合剤の使い分けについても伝授。吸入ステロイドの選択はこの番組でばっちりです!第3回 気管支喘息で経口ステロイドはどう使う?気管支喘息治療では発作時の対処も重要なポイント。発作止めとしてよく使用する経口ステロイドですが、怖いものと思って、おそるおそる使っては効果も半減してしまいます。今回は、効果的に使用するために重要な投与量と中止のタイミングをズバリ解説。救急での受診後に処方する場合など発作時以外の使い方も併せてレクチャーします。第4回 風邪症状から肺炎を疑うポイントは?風邪はプライマリ・ケアで最もよく見る症状のひとつ。風邪症状から肺炎を見逃さないために、風邪の定義、そして風邪をこじらせた場合、初めから肺炎だった場合など、様々なシュチエーションに応じた見分け方のコツをズバリお教えします。第5回 呼吸器感染症の迅速診断は臨床で使える?インフルエンザに迅速診断は必要?肺炎を疑う場合に使うのはどの検査?信頼性は?迅速診断に関する疑問にズバリお答えします。マイコプラズマ、尿中肺炎球菌、レジオネラ菌。それぞれの原因微生物ごとの迅速診断の特徴やキットの使い勝手など実臨床に役立つ情報をお届けします。第6回 肺炎のempiric therapyの考え方とは?肺炎だけど起炎菌が同定できない!そんなときに行うのがempiric therapyです。今回はプライマリ・ケアで多い市中肺炎に焦点をあてて、empiric thearpyの進め方を解説します。その際、最も重要なのは肺炎球菌なのかマイコプラズマなのか予想すること。この2つを見分けるポイントと、またそれぞれに適した薬剤をズバリお教えします。第7回 COPDの薬物療法は何から始める?急激に患者数が増加するCOPD。2013年にガイドラインが改訂され、第1選択薬に抗コリン薬とβ2刺激薬が併記されました。でも実際に専門医はファーストチョイスにどちらを使っているのか?抗コリン薬が使えない場合はどうする?喀痰調整薬ってどんな患者に有用?COPDの薬物療法についてズバリお答えします。第8回 呼吸リハビリテーション、プライマリ・ケアでできることは?COPD治療に必要な呼吸リハビリテーション。専門の機械や人員のいないプライマリ・ケアでもできることはあるの?答えはYES!と長尾先生は断言します。専門病院のような細かいプログラムは不要。しかもプライマリ・ケア医の強みを活かせる指導なのです。第9回 在宅酸素療法の基本的な考え方は?専門病院で導入された在宅酸素療法。どういうときならプライマリ・ケア医の判断で酸素量を増やしてもいいの?SpO2の管理目標値はどのくらい?嫌がる患者さんに在宅酸素を継続してもらうコツはある?などの疑問にズバリ答えます!第10回 慢性咳嗽の原因疾患を鑑別する方法は?長引く咳を主訴に来院する患者さん、最も多い感染後咳嗽を除外したあとに残るのは慢性咳嗽です。慢性咳嗽の原因疾患は、副鼻腔炎、後鼻漏、胃食道逆流、咳喘息と多彩。これらをどのように鑑別するのか?ズバリそのキーポイントは喀痰のありなしなのです!今回の講義ではすぐに使える鑑別のノウハウをレクチャーします。第11回 アトピー咳嗽と咳喘息、どう見分ける?慢性咳嗽の代表的な鑑別疾患である、咳喘息とアトピー咳嗽。この2つはどう違うの?アトピー咳嗽という言葉はよく耳にするけれど、実は慢性咳嗽の半数は咳喘息なのだそう。今回は両者の違いを端的に解説。咳喘息の特徴的な症状や診断と治療を兼ねた処方例まで網羅します。第12回 成人の百日咳、鑑別と検査のポイントは?百日咳は近年、成人の罹患率が高まり、受診する患者も増えてきました。成人では特徴的な症状が見られにくく、診断ができるころには治療のタイミングを逸しているのも診療の難しいところ。今回はそんな百日咳の鑑別のコツや検査をすべき対象について、ズバリお教えいたします!第13回 結核の発見と対応のポイントは?再興感染症とも言われる結核。早期の発見治療にはプライマリケアでの対応が重要です。今回は特徴的な感染徴候やリスク因子をレクチャー。検査はクオンティフェロンと喀痰検査どちらがいい?周囲に感染者が出たと心配する患者さんにどう対応したらいい?などの質問にもズバリお答えいたします!第14回 肺塞栓を疑うポイントは?いち早く発見したい肺塞栓症。確定診断までの流れなどのベーシックな知識はもちろん、造影CTやDダイマーなどの検査ができないときでも肺塞栓を除外できる条件をズバリお教えします!第15回 肺の聴診のコツは?肺の聴診は基本的な手技。どうやってカルテに書いたら伝わりやすい?今回は代表的な4つの肺雑音の特徴とカルテの記載方法をレクチャーします。連続性か断続性か、高音か低音かなど、聞き分けるコツと、その機序も併せて解説。仕組みの講義で病態生理の理解も深まること間違いありません!

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q10

Q10 重症肺炎で抗菌薬を何種類も変更しても改善しない場合には、ステロイドパルス等を施行する場合がありますか? ステロイドバルスを施行するかどうかを考える前に「なぜよくならないのか?」を考えたほうがよいと思います。 もし、器質化肺炎(OP)や非特異性間質性肺炎(NSIP)、急性好酸球性肺炎のように、ステロイド反応性のある病態を考えた場合は、もちろんステロイド治療を行うべきです。しかし、改善しない理由がステロイドとは無関係の場合には、ステロイドは意味がないばかりか有害ですらあります。実際、敗血症性ショックにおいては、ステロイドの投与量が増えれば増えるほど死亡率が上昇すると報告されています1)。 また、急性呼吸促迫症候群(ARDS)と診断してステロイドを投与する人がいまだに散見されますが、やはりこれも死亡率を上げる可能性があり、現在では遷延するARDSに対するルーチンのステロイド投与は推奨されていません2)。さらに、ARDS以外にも肺が白くなる病気はたくさんあるため(表1)3)、やはり「なぜ改善しないのか?」を突き詰めるのが大切だと思います。具体的には表2のように整理するとよいと思いますので、詳しくは参考文献4)をご参照ください。 表1:ARDSと紛らわしい10の疾患群3)うっ血性心不全、肺水腫特発性肺線維症(UIP: usual interstitial pneumonia)特発性器質化肺炎(COP)非特異性間質性肺炎(NSIP)多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)びまん性肺胞出血グッドパスチャー症候群急性過敏性肺臓炎急性好酸球性肺炎薬剤性肺疾患表2:治らない肺炎の分類4)(1)治っているようだけど今ひとつ改善に乏しい→自然経過(2)胸水が増える一方/陰影が消えない→肺炎随伴性胸水/膿胸/肺化膿症(3)肺炎の影自体がどんどん増悪する→結核/真菌/耐性菌など一般的ではない起因菌(4)自然経過や肺炎単独だけでは説明できない→非感染性肺病変: 特発性器質化肺炎/特発性間質性肺炎/血管炎/心不全/心筋梗塞/腎不全/肺塞栓症/ARDSなど)(5)呼吸状態はよくなったが発熱だけが続く→肺外の問題: 薬剤熱/Clostridium difficile感染症/偽痛風など)(6)また肺炎になりました→再発性肺炎また、最近、市中肺炎でステロイドを使用すると入院期間が短縮するという、一見魅力的なランダム化比較試験(RCT)が発表されています5)6)。ですが、死亡率改善のようなハードアウトカムの改善は示されておらず、ステロイド投与群はプラセボ群と比べて有意に高血糖の発生が高いと報告されています5)6)。感染症の治療において、適切な治療薬を投与したうえで低用量のステロイドを併用すること自体は、それほど感染症の予後を悪化させないことは以前から言われていますので(明らかな害が示されているのはウイルス性肝炎と脳マラリア)、この結果自体はそれほど驚きません7)。しかし、免疫不全のある患者や重症患者は試験の対象からあらかじめ除外されていること、副作用についても、臨床試験では日常診療よりきちんと管理されているであろうことについて留意しておく必要があります。これらのRCTでは高血糖自体による有害事象はそれほど大きくなかったようですが、これが広く普及して日常診療に入り込んできた場合にはどうなるでしょうか? 高血糖による非ケトン性高浸透圧性昏睡や糖尿病性ケトアシドーシスが増えたり、逆に高血糖に対して使用したインスリンによる低血糖の事故が増えたりしてしまうのではないかと筆者は予想します。死亡率を改善するのならまだしも、入院期間短縮がアウトカムならば、少なくとも日本の医療事情ではもっと改善すべき点があるでしょう。心不全にスピロノラクトンがよいということを示したRALES試験後に、高カリウム血症に伴う入院やそれに伴う不整脈死が増えてしまった8)のと、同じ轍を踏まないようにしないといけないと思います。肺炎が改善しない理由を整理しないまま、とりあえずステロイドというのは、パルスというより“バルス”(アニメ『天空の城ラピュタ』に出てくる滅びの呪文)といったほうが適切だと筆者は思います。本稿執筆中に、成人重症肺炎(ATSの修正基準9)またはPneumonia Severity Index 10)でクラスV)で入院時血清CRPが15mg/dL以上の患者を対象にしたRCTが発表されました11)。初期(0~72時間)治療失敗(ショック発症、ベースラインで不要だった侵襲性人工換気、死亡)と後期(72~120時間)治療失敗(画像悪化、重度呼吸不全の持続、ショック発症、ベースラインで不要だった侵襲性人工換気、死亡)を組み合わせた複合エンドポイントをプライマリーアウトカムとして、ステロイド投与群(メチルプレドニゾロン0.5mg/kgを12時間ごと、5日間)のほうが治療失敗は少なかったという結果でした。ただし、複合エンドポイントで有意差がついた、とされる場合には解釈が必要です。アウトカムの発生が少ない場合は、統計学的な差を検出しにくいので、より大きなサンプルサイズが必要になります。しかし、実行可能性の問題でそこまでたくさんの対象患者をリクルートできないことが予想される場合は、エンドポイントになる状態を組み合わせて、複合エンドポイントで評価することがあります。本試験をよくみると、2群間で最も差がついているのは、後期(72~120時間)の「画像所見の悪化」でした。ステロイドを投与して炎症を抑えれば、一時的に画像はよくなることが多いかもしれませんが、もう少し長いスパンで考えるとどうでしょうか。セカンダリーエンドポイントである入院期間や入院中の死亡割合ではほとんど差がありません。一時的に「画像だけ」がよくなってもなぁ、というのが筆者の正直な感想です。 参考文献 1) Minneci PC, et al. Ann Intern Med. 2004; 141: 47-56. 2) 田中竜馬. ARDSにステロイドは有効か?. In: 田中竜馬編. 集中治療999の謎. メディカル・サイエンス・インターナショナル; 2015. p. 151-152. 3) Guerin C, et al. Intensive Care Med. 2014 Dec 20. [Epub ahead of print] 4) 八板謙一郎、山口征啓. 「よくならない場合」に何を考えるか?. In: 山本舜悟編. jmed28あなたも名医!侮れない肺炎に立ち向かう31の方法. 日本医事新報社; 2013. p. 105-113. 5) Meijvis SC, et al. Lancet. 2011; 377: 2023-2030. 6) Blum CA, et al. Lancet. 2015 Jan 16 [Epub ahead of print] 7) McGee S, et al. Arch Intern Med. 2008; 168: 1034-1046. 8) Juurlink DN, et al. N Engl J Med. 2004; 351: 543-551. 9) Ewig S, et al. Am J Respir Crit Care Med. 1998; 158:1102-1108. 10) Fine MJ, et al. N Engl J Med. 1997; 336: 243-250. 11) Torres A, et al. JAMA. 2015; 313: 677-686.

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【医療ニュース トップ100】2014年、最も読まれた「押さえておくべき」医学論文は?

今年も、4大医学誌の論文を日本語で紹介する『ジャーナル四天王』をはじめ、1,000本以上の論文をニュース形式で紹介してきました。その中で、会員の先生方の関心の高かった論文は何だったのでしょう? ここでは、アクセス数の多いものから100本を紹介します。 1位 日本男性の勃起硬度はアレと関連していた (2014/11/13) 2位 日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学 (2014/1/7) 3位 子供はよく遊ばせておいたほうがよい (2014/3/28) 4位 思春期の精神障害、多くは20代前半で消失/Lancet (2014/1/27) 5位 なぜコーヒーでがんリスクが低下? (2014/7/31) 6位 メロンでかゆくなる主要アレルゲンを確認 (2014/4/15) 7位 新たな輸液プロトコル、造影剤誘発急性腎障害の予防に有効/Lancet (2014/6/9) 8位 体幹を鍛える腹部ブレーシング、腰痛に効果 (2014/5/7) 9位 コーヒーを多く飲む人は顔のシミが少ない (2014/8/7) 10位 スタチンと糖尿病リスク増大の関連判明/Lancet (2014/10/9) 11位 スルピリドをいま一度評価する (2014/5/16) 12位 米国の高血圧ガイドライン(JNC8)のインパクト/JAMA (2014/4/16) 13位 インフルエンザワクチン接種、無針注射器の時代に?/Lancet (2014/6/16) 14位 新規経口抗凝固薬4種vs.ワルファリン-心房細動患者のメタ解析-/Lancet (2013/12/25) 15位 アルコール依存症、薬物治療の減酒効果は?/JAMA (2014/5/29) 16位 SGLT2阻害薬「トホグリフロジン」の日本人への効果 (2014/2/28) 17位 大人のリンゴ病 4つの主要パターン (2014/7/29) 18位 脳動脈瘤、コイルvs. クリッピング、10年転帰/Lancet (2014/11/12) 19位 ACE阻害薬を超える心不全治療薬/NEJM (2014/9/8) 20位 アルツハイマーに有用な生薬はコレ (2014/11/14) 21位 塩分摂取と死亡リスクの関係はJカーブ/NEJM (2014/8/25) 22位 スタチン投与対象者はガイドラインごとに大きく異なる/JAMA (2014/4/14) 23位 食後血糖によい食事パターンは?(低脂肪vs低炭水化物vs地中海式) (2014/3/27) 24位 成人ADHDをどう見極める (2014/5/21) 25位 各種ダイエット法の減量効果/JAMA (2014/9/16) 26位 牛乳1日3杯以上で全死亡リスクが2倍/BMJ (2014/11/13) 27位 腰痛持ち女性、望ましい性交体位は? (2014/11/21) 28位 ロマンチックな恋愛は幸せか (2014/3/26) 29位 無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与 (2014/5/8) 30位 下肢静脈瘤、ベストな治療法は?/NEJM (2014/10/10) 31位 せん妄管理における各抗精神病薬の違いは (2014/9/18) 32位 降圧薬投与量の自己調整の有用性/JAMA (2014/9/11) 33位 深部静脈血栓症の除外診断で注意すべきこと/BMJ (2014/3/20) 34位 StageII/III大腸がんでのD3郭清切除術「腹腔鏡下」vs「開腹」:ランダム化比較試験での短期成績(JCOG 0404) (2014/2/26) 35位 たった1つの質問で慢性腰痛患者のうつを評価できる (2014/2/21) 36位 スタチン時代にHDL上昇薬は必要か/BMJ (2014/8/7) 37位 就寝時、部屋は暗くしたほうがよいのか:奈良医大 (2014/8/29) 38位 認知症のBPSD改善に耳ツボ指圧が効果的 (2014/10/28) 39位 統合失調症患者の突然死、その主な原因は (2014/4/18) 40位 うつ病と殺虫剤、その関連が明らかに (2014/7/9) 41位 帯状疱疹のリスク増大要因が判明、若年ほど要注意/BMJ (2014/5/26) 42位 慢性のかゆみ、治療改善に有用な因子とは? (2014/7/1) 43位 女性の顔の肝斑、なぜ起きる? (2014/5/8) 44位 DES1年後のDAPT:継続か?中断か?/Lancet (2014/7/30) 45位 駆出率が保持された心不全での抗アルドステロン薬の効果は?/NEJM (2014/4/23) 46位 レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は (2014/10/30) 47位 アトピー性皮膚炎患者が避けるべきスキンケア用品 (2014/2/6) 48位 タバコの煙を吸い込む喫煙者の肺がんリスクは3.3倍:わが国の大規模症例対照研究 (2014/6/18) 49位 世界中で急拡大 「デング熱」の最新知見 (2014/10/17) 50位 円形脱毛症とビタミンDに深い関連あり (2014/4/10) 51位 不眠の薬物療法を減らすには (2014/7/23) 52位 オメプラゾールのメラニン阻害効果を確認 (2014/11/6) 53位 タバコ規制から50年で平均寿命が20年延長/JAMA (2014/1/16) 54位 ICUでの栄養療法、静脈と経腸は同等/NEJM (2014/10/15) 55位 認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット (2014/3/17) 56位 COPDにマクロライド系抗菌薬の長期療法は有効か (2014/1/13) 57位 座りきりの生活は心にどのような影響を及ぼすか (2014/5/12) 58位 PSA検診は有用か:13年後の比較/Lancet (2014/8/22) 59位 気道感染症への抗菌薬治療 待機的処方 vs 即時処方/BMJ (2014/3/17) 60位 血圧と12の心血管疾患の関連が明らかに~最新の研究より/Lancet (2014/6/19) 61位 マンモグラフィ検診は乳がん死を抑制しない/BMJ (2014/2/21) 62位 機能性便秘へのプロバイオティクスの効果 (2014/8/14) 63位 超高齢の大腸がん患者に手術は有用か:国内での検討 (2014/2/14) 64位 糖尿病予防には歩くよりヨガ (2014/8/4) 65位 乳がん術後リンパ節転移への放射線療法、効果が明確に/Lancet (2014/3/31) 66位 75歳以上でのマンモグラフィ検診は有効か (2014/8/11) 67位 大腸がん術後の定期検査、全死亡率を減少させず/JAMA (2014/1/23) 68位 「歩行とバランスの乱れ」はアルツハイマーのサインかも (2014/5/13) 69位 食事由来の脂肪酸の摂取状況、国によって大きなばらつき/BMJ (2014/4/28) 70位 心房細動合併の心不全、β遮断薬で予後改善せず/Lancet (2014/9/19) 71位 薬剤溶出ステントの直接比較、1年と5年では異なる結果に/Lancet (2014/3/24) 72位 ピロリ除菌、糖尿病だと失敗リスク2倍超 (2014/8/21) 73位 認知症にスタチンは有用か (2014/7/25) 74位 RA系阻害薬服用高齢者、ST合剤併用で突然死リスク1.38倍/BMJ (2014/11/20) 75位 腰痛へのアセトアミノフェンの効果に疑問/Lancet (2014/8/6) 76位 食べる速さはメタボと関連~日本の横断的研究 (2014/9/12) 77位 うつになったら、休むべきか働き続けるべきか (2014/9/16) 78位 英プライマリケアの抗菌治療失敗が増加/BMJ (2014/10/1) 79位 総胆管結石疑い 術前精査は必要?/JAMA (2014/7/21) 80位 歩くスピードが遅くなると認知症のサイン (2014/10/8) 81位 前立腺がん、全摘vs.放射線療法/BMJ (2014/3/10) 82位 緑茶が認知機能低下リスクを減少~日本の前向き研究 (2014/6/3) 83位 高力価スタチンが糖尿病発症リスクを増大させる/BMJ (2014/6/16) 84位 乳がんの病理学的完全奏効は代替エンドポイントとして不適/Lancet (2014/2/27) 85位 Na摂取増による血圧上昇、高血圧・高齢者で大/NEJM (2014/8/28) 86位 抗グルタミン酸受容体抗体が神経疾患に重大関与か (2014/8/15) 87位 歩数を2,000歩/日増加させれば心血管リスク8%低下/Lancet (2014/1/8) 88位 肩こりは頚椎X線で“みえる”のか (2014/3/19) 89位 地中海式ダイエットと糖尿病予防 (2014/4/7) 90位 閉塞性睡眠時無呼吸、CPAP vs. 夜間酸素補給/NEJM (2014/6/26) 91位 揚げ物は肥満遺伝子を活性化する?/BMJ (2014/4/3) 92位 6.5時間未満の睡眠で糖尿病リスク上昇 (2014/9/4) 93位 セロトニン症候群の発現メカニズムが判明 (2014/3/14) 94位 日本発!牛乳・乳製品を多く摂るほど認知症リスクが低下:久山町研究 (2014/6/20) 95位 肥満→腰痛のメカニズムの一部が明らかに (2014/8/8) 96位 低炭水化物食 vs 低脂肪食 (2014/8/7) 97位 認知症患者の調子のよい日/ 悪い日、決め手となるのは (2014/3/21) 98位 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか (2014/7/2) 99位 血糖降下強化療法の評価―ACCORD試験続報/Lancet (2014/8/20) 100位 小児BCG接種、結核感染を2割予防/BMJ (2014/8/21) #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

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【CLEAR!ジャーナル四天王 トップ20発表】鋭い論文解説がラインナップ!

臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、日本の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しているNPO法人です。 本企画『CLEAR!ジャーナル四天王』では、CareNet.comで報道された海外医学ニュース『ジャーナル四天王』に対し、鋭い視点で解説します。 コメント総数は280本(2014年11月現在)。今年掲載されたなかからアクセス数の多かった解説記事のトップ20をお届けします。 1位 「降圧薬服用患者が大幅に減る見通し、というより減らした」というほうが正確かもしれない:EBMは三位一体から四位一体へ(解説:桑島 巌 氏) (2014/5/20) 2位 これがなぜLancetに!?(解説:桑島 巌 氏) (2014/9/19) 3位 慢性心不全治療のパラダイムシフト:ACE阻害薬はもはや標準薬ではない!(解説:平山 篤志 氏) (2014/9/8) 4位 脳動静脈奇形(未破裂)の予防的切除や塞栓術などの介入療法では予後を改善できない(解説:中川原 譲二 氏) (2014/1/13) 5位 過度な減塩は死亡率を増やすか? ガイドライン推奨1日6g未満に一石を投じる研究(解説:桑島 巌 氏) (2014/8/21) 6位 患者に「歩け、歩け運動」を勧める具体的なエビデンス(解説:桑島 巌 氏) (2014/1/17) 7位 心臓マッサージは深度5cmで毎分100回:その自動化への課題(解説:香坂 俊 氏) (2014/1/8) 8位 心房細動アブレーションにおける新しいMRI指標:そのメリットとデメリット(解説:山下 武志 氏) (2014/2/18) 9位 DESは生命予後改善効果を持つ!?従来の説に一石(解説:野間 重孝 氏) (2014/7/28) 10位 よいメタ解析、悪いメタ解析?(解説:後藤 信哉 氏) (2014/1/21) 11位 急性心不全治療には新たな展開が必要では?(解説:平山 篤志 氏) (2014/1/10) 12位 大腸腺腫切除後の長期的な大腸がん死亡率(解説:上村 直実 氏) (2014/9/30) 13位 急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略―4万5,000症例メタ解析(解説:中澤 達 氏) (2014/10/29) 14位 期待が大きいと失望も大きい:プラセボをおくことの重要性を教えてくれた試験。(解説:桑島 巌 氏) (2014/4/15) 15位 これでC型肝炎を安全に完全に治せる?(解説:溝上 雅史 氏) (2014/5/29) 16位 スタチン治療はやはり糖尿病を増やすのか?そのメカニズムは?(解説:興梠 貴英 氏) (2014/11/6) 17位 破裂性腹部大動脈瘤に対する開腹手術 vs. 血管内修復術(解説:中澤 達 氏) (2014/2/12) 18位 診察室での血圧測定はもういらない?-高血圧診療は、自己測定と薬の自己調整の時代へ(解説:桑島 巌 氏) (2014/9/17) 19位 小児BCG接種、結核菌への感染を2割予防-(解説:吉田 敦 氏) (2014/9/26) 20位 このテーマまだ興味がわきますか?アブレーション vs. 抗不整脈薬(解説:山下 武志 氏) (2014/3/6) #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

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結核への4ヵ月レジメンの効果/NEJM

 喀痰塗抹陽性・リファンピン(本邦ではリファンピシン)感受性の肺結核に対し、ガチフロキサシン(国内販売中止)を含む4ヵ月レジメンは、エタンブトール(商品名:エブトールほか)投与を含む6ヵ月標準レジメンとの比較において、非劣性は示されなかったことが報告された。英国のロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のCorinne S. Merle氏らが、アフリカ5ヵ国で1,836例について行った非劣性無作為化非盲検比較試験で明らかにした。本検討は、結核の治療期間が短縮できれば、疾病コントロールの大きな改善につながることから行われたものであった。NEJM誌2014年10月23日号掲載の報告より。主要評価項目は治療失敗や再発などの不良アウトカム 試験対象は、アフリカ・サハラ砂漠以南の5ヵ国で、喀痰塗抹陽性でリファンピン感受性の肺結核の診断を新たに受けた18~65歳の患者1,836例であった。 研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方には2ヵ月の強化治療期間中にエタンブトール投与を行う6ヵ月標準レジメンを、もう一方の群には強化治療期間中にエタンブトールの代わりにガチフロキサシン(400mg/日)を投与し、その後もリファンピンとイソニアジドとともに継続投与する4ヵ月レジメンを行った。 主要有効性評価項目は、治療終了後24ヵ月時点における、治療失敗、再発、治療期間中の死亡や試験からの脱落といった不良アウトカムだった。非劣性マージンは国について補正後6%であった。国によりばらつき、4ヵ月レジメンは脱落・失敗率は低いが再発率は高い 結果、治療終了後24ヵ月時点における不良アウトカム発生率は、被験者全体(修正intention-to-treat集団、1,356例)では、4ヵ月レジメン群21.0%、6ヵ月標準レジメン群は17.2%で、補正後群間差は3.5%(95%信頼区間[CI]:-0.7~7.7%)だった。 しかし、国別にみるとばらつきが大きく(相互作用p=0.02)、4ヵ月レジメン群の6ヵ月標準レジメン群との差は、ギニアでは-5.4%だった一方で、セネガルでは12.3%だった。 また、試験からの脱落率は、6ヵ月標準レジメン群5.0%に対し4ヵ月レジメン群は2.7%、治療失敗率はそれぞれ2.4%、1.7%と、いずれも4ヵ月レジメンで低率だったが、再発率については7.1%、14.6%と6ヵ月標準レジメンのほうが低かった。なお、4ヵ月レジメンとQT延長および糖代謝異常リスク上昇との関連を示すエビデンスは認められなかった。

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結核の1次治療、より簡略なレジメンが非劣性/NEJM

 肺結核の1次治療では、高用量リファペンチン(国内未承認)+モキシフロキサシン(商品名:アベロックス)の週1回投与を含む6ヵ月レジメンの有効性が、イソニアジド(同:イスコチンほか)+リファンピシン(同:リファジンほか)の6ヵ月連日投与を要する標準治療に劣らないことが、英国・ロンドン大学セント・ジョージ校のAmina Jindani氏らが行ったRIFAQUIN試験で示された。現在の肺結核に対する6ヵ月レジメンは、薬剤感受性菌の場合、適切に投与すれば95%以上の無再発治癒達成が可能だが、より短期間で簡略化されたレジメンの確立が求められている。リファペンチンの間欠投与では再発率が高く、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の重複感染例ではリファマイシン系薬への抵抗性がみられるが、マウス実験では高用量リファペンチンとモキシフロキサシンの併用が治癒率を改善する可能性が示唆されている。NEJM誌2014年10月23日号掲載の報告。簡略、短期レジメンの非劣性を無作為化試験で評価 RIFAQUIN試験は、肺結核患者の1次治療において、高用量リファペンチン+モキシフロキサシンの間欠投与を含む6ヵ月および4ヵ月レジメンの、標準治療であるイソニアジド+リファンピシンの6ヵ月連日投与レジメンに対する非劣性を検証する国際的な無作為化対照比較試験。対象は、年齢18歳以上、体重35kg以上で、2つの喀痰塗抹の顕微鏡検査で結核菌陽性の未治療の患者であった。 被験者は、以下の3つのレジメンのいずれかに無作為に割り付けられた。(1)エタンブトール、ピラジナミド、イソニアジド、リファンピシンを2ヵ月連日投与後、イソニアジドとリファンピシンを4ヵ月連日投与する群(対照群)、(2)対照群のイソニアジドをモキシフロキサシンに変更して2ヵ月連日投与後、モキシフロキサシンとリファペンチン900mgを週2回、2ヵ月投与する群(4ヵ月レジメン群)、(3)対照群のイソニアジドをモキシフロキサシンに変更して2ヵ月連日投与後、モキシフロキサシンとリファペンチン1,200mgを週1回、4ヵ月間投与する群(6ヵ月レジメン群)。 喀痰検体の顕微鏡検査と培養検査を定期的に行った。主要評価項目は、治療不成功と再発の複合エンドポイント(治療効果不良)であった。非劣性マージンは6%とし、per-protocol(PP)解析とmodified intention-to-treat(mITT)解析の双方で90%信頼区間(CI)の上限値が6%を超えない場合に非劣性と判定することとした。4ヵ月レジメンでは効果はむしろ不良 2008年8月15日~2011年8月1日までに、南アフリカ、ジンバブエ、ボツワナ、ザンビアから827例が登録され、593例(6ヵ月レジメン群:277例、4ヵ月レジメン群:275例、対照群:275例)がmITT解析、514例(186例、165例、163例)がPP解析の対象となった。mITT集団の64%が男性、27%はHIVとの重複感染例だった。 PP解析では、治療効果不良率は対照群の4.9%に対し、6ヵ月レジメン群は3.2%(補正後対照群との差:-1.8%,90%CI:-6.1~2.4%)、4ヵ月レジメン群は18.2%(同:13.6%、8.1~19.1%)であった。 mITT解析では、治療効果不良率は対照群の14.4%に対し、6ヵ月レジメン群は13.7%(補正後対照群との差:0.4%、90%CI:-4.7~5.6%)、4ヵ月レジメン群は26.9%(同:13.1%、6.8~19.4%)であった。 すなわち、6ヵ月レジメン群はPP解析、mITT解析の双方で90%CIの上限値が6%を超えなかったことから、対照群に対する非劣性が確認された。一方、4ヵ月レジメン群はいずれの解析でも上限値が6%を超えており、非劣性であることは認められなかった。なお、より厳格な95%CIでは、6ヵ月レジメン群のPP解析は非劣性マージンを満たしたが、mITT解析は満たさなかった。 38例に45件の重篤または生命を脅かす有害事象がみられたが、治療に関連するものはなかった。割り付けの対象となった827例中25例が死亡し、このうち4例は結核による可能性があると判定された。 著者は、「高用量リファペンチンとモキシフロキサシンの週1回投与を含む6ヵ月レジメンは、HIV重複感染のない患者やイソニアジド抵抗性の患者などの1次治療として使用可能と考えられる」としている。

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健康長寿実現には早期死亡回避努力(早期死亡率改善)の忍耐強い継続的実践が優れた手段となる可能性に期待(解説:島田 俊夫 氏)-270

世界の先進国においては平均寿命が長くなり、平均寿命は70歳を超える時代に突入し、わが国を含む先進国の一部では女性は言うまでもなく90歳を超える勢いで、男性においても80歳を超える状況となっている。 本論文では、これ以上寿命を延ばすことにのみ目を向けるのではなく、健康寿命重視の立場から70歳未満のいわゆる早期死亡に視点を向け、早期死亡をいかにして減少させるかを国連(1970年~2010年)およびWHOのデータソース(2000年~2010年)を用いて検証し、具体的なデータに基づいて著者の考えをアピールしている。 Norheim氏らは、実施可能な目標こそが各国の政府に影響を与えるとして「2030年までに早期死亡の40%削減」を提案している。全死亡とヘルスケア改善には、修正可能な死亡原因や死亡の脅威となっている障害をすべて考慮することが必要であり、早期死亡の40%削減は、すべての国にとって不可避な課題であり、次の4つの目標達成を「2030年に向け継続可能な改善目標」として強化することを推奨している。(1)小児および妊産婦死亡の2/3削減、(2)結核、HIV、マラリアによる死亡の2/3削減、(3)非感染性疾患(NCDs)による早期死亡の1/3削減、(4)その他の要因(感染性疾患、低栄養、外傷)による死亡の1/3削減、である。 これらの目標達成が50歳未満死を半減し、50~69歳の死亡を1/3削減して、結果的には70歳未満死の40%削減が達成できるとしている。 この可能性を評価するために、人口上位25ヵ国、4つの所得国群および全世界の死亡動向をレビューしている。全死亡については1970~2010年の国連データを使用し、2000~2010年のWHOデータに基づき特異的原因死の動向調査を実施のうえ、2030年の各国人口を標準化した。 これらの情報を踏まえて著者は、「2000~2010年」にみられた死亡率減少の継続・維持・推進で、2030年の目標である疾患特異的死亡の2/3または1/3削減の目標達成は可能」としている。 この数値目標が達成されれば2030年の0~49歳の死亡は2,000万例のうち約1,000万例を、0~69歳の死亡は4,100万例のうち約1,700万例を減らすことが可能だと試算している。 この結果は、早期死亡を減らすことが発展途上国に限定されたものでなく先進国においてさえ、多少の差はあるとしてもあまねく健康改善の実現(健康長寿)に寄与することを強調している。また、NCDsのリスク因子であるタバコ、アルコールなどの使用を減らすことは早期死亡を減らすことに有効な手段となることは自明の理である。 単に長寿を追求する時代ではなくQuality of Lifeを考慮した健康長寿を目指す時代に私たちは生きている。

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結核性心膜炎に対するプレドニゾロンおよび免疫補助療法(解説:小金丸 博 氏)-268

結核性心膜炎は、医療資源の限られたアフリカやアジアの国々において重大な問題となっている。とくにHIV感染者では合併頻度が高く、死亡率も高い。グルココルチコイドを併用することで炎症反応が弱まり、心タンポナーデや収縮性心膜炎による死亡のリスクが低下するとの報告もあるが、その有効性は確立しておらず、米国と欧州のガイドラインでは相反する勧告が示されている。 本研究は、結核性心膜炎を疑う患者に対するプレドニゾロン、またはMycobacterium indicus praniiによる免疫療法の有効性と安全性を調べるためにアフリカで行った、2×2 要因デザインのプラセボ対照ランダム化比較試験である。 1,400例の成人患者をプレドニゾロン投与群とプラセボ投与群に割り付けし、さらにそれぞれM. indicus pranii注射群とプラセボ注射群に割り付けした。死亡、心膜穿刺を要する心タンポナーデ、収縮性心膜炎の3項目のいずれか1つ以上の発生率を主要評価項目とした。M. indicus praniiは非病原性の迅速発育抗酸菌であるが、免疫付与による抗炎症効果を期待して投与された。本試験に参加した患者の3分の2がHIV感染者であった。 主要評価項目に関して、プレドニゾロン投与群とプラセボ投与群、M. indicus pranii注射群とプラセボ注射群は、ともに有意差を認めなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.77~1.18、およびハザード比:1.03、95%信頼区間:0.82~1.29)。 ただし、プレドニゾロン投与群ではプラセボ投与群と比較して、二次評価項目である収縮性心膜炎の発生率と、入院率を有意に低下させた(ハザード比:0.56、95%信頼区間:0.36~0.87、およびハザード比:0.79、95%信頼区間:0.63~0.99)。安全性に関しては、プレドニゾロン投与群とM. indicus pranii注射群では、両群ともプラセボ群と比較してがんの発生率が有意に増加した。これらは主にカポジ肉腫などHIV感染症に関連したがんだった。 本研究では、心嚢液の抗酸菌塗抹検査、培養検査、あるいは核酸検査が陽性、心膜組織で乾酪性肉芽腫の存在あるいは核酸検査が陽性、のいずれかを満たした症例を“確定例”と定義しているが、確定例は17.1%に過ぎず、多くは“疑い例”だった。 そのため、“疑い例”の中に結核性心膜炎以外の疾患が紛れ込んでいる可能性は否定できない。しかしながら、“疑い例”の診断基準が妥当と思われること、結核性心膜炎の確定診断は難しく、臨床の現場でも“疑い例”に対して治療していることのほうが多いと思われることから、本試験の結果は実臨床の参考にすることができると考える。 主要評価項目では有意差を認めなかったものの、プレドニゾロン投与群で収縮性心膜炎の発生率や入院率が有意に減少した点は、臨床的に意義あることだと考える。しかし、HIV感染者ではプレドニゾロン投与によりがんの発生率が増加するため、結核性心膜炎患者に一律に投与するのではなく、収縮性心膜炎を起こすリスクが高い患者に選択的に投与できれば理想的である。大量の心嚢液貯留や、心嚢液中の炎症マーカー高値などが参考になるかもしれない。 M. indicus praniiによる免疫療法は、結核性心膜炎に対する抗炎症効果の機序もわかっておらず、本試験の結果からも、現時点では有効な治療法ということはできない。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第13回

第13回:潜在性結核感染症について監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの現場では、結核の診断は悩まされるテーマの1つです。私も、年に数回結核と遭遇しますが、結核を疑わないと診断できないため、リスクの高い患者さんでは意識して診療するようにしています。世界的には潜在性結核感染症に対する治療の必要性についての認識が高まっており、今回American Family Physicianに潜在性結核感染症についてのまとめが掲載されたため、紹介します1) 。 なお、アジアは結核感染率が高いと紹介されていますが、本文中の図によるとアジアの中では日本と中東では感染率が低いとのことで意外でした。ちなみに、日本の新規登録結核患者数は毎年約2万人で推移し、そのうち新規登録潜在性結核感染症は平成25年で7,147人でした2) 。 以下、American Family Physician 2014年6月1日号1) より要旨(抜粋、意訳)潜在性結核感染症は、結核菌に感染しているが症状がなく、他者への感染力も持たない状態である。活動性結核へ進展する生涯リスクは5~10%であり、このうちの半分は初感染から2年以内に発症する。米国では、活動性結核の80%以上が潜在性結核感染症からの発症であるため、潜在性結核感染症へのスクリーニングと早期治療が必要と考えられている。潜在性結核感染症のスクリーニングは、高リスクグループにのみ推奨される。米国における高リスクグループとは、感染率の高い国(アフリカのほとんどの国、アジア、東ヨーロッパ、中米、南米)からの過去5年以内の移民、医療従事者、収容施設の入居者や労働者、ホームレスなどである。とくに、アジアからの移民は、非ヒスパニック系白人の25倍とリスクが高い。低リスクグループでは、仕事や旅行等で高リスク集団に入る者にのみスクリーニングが必要となる。スクリーニングに際しては、まず高リスク者を問診票で識別する。スクリーニング検査としては、ツベルクリン皮膚試験(tuberculin skin test;以下TST)と、IFN-γ刺激試験(interferon-gamma release assay;以下IGRA)がある。TSTは、評価のために再診が必要となること、BCG接種者(とくに接種後10年未満)や環境中の抗酸菌曝露者では偽陽性となるおそれがあるなど、いくつか限界がある。IGRAはこれらの欠点をカバーするが、費用と血液採取を要する点で制約される。また、5歳未満の小児では結果が不安定となるためTSTが望ましい。潜在性結核感染症に対しては、TSTとIGRAの有用性を比較した研究が乏しい。潜在性結核感染症の治療は、活動性結核を除外(患者の病歴、身体診察、胸部レントゲン撮影し、レントゲン異常があった場合は3回の喀痰塗抹検査)してから行うべきである。標準治療のイソニアジド9ヵ月投与は、効果は高いが完遂率が低いため、期間や薬剤の異なる複数のレジメンがある。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Hartman-Adams H, et al. Am Fam Physician. 2014; 89: 889-896. 2) 厚生労働省. 平成25年結核登録者情報調査年報集計結果(概況).

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2030年までに70歳未満死40%削減を/Lancet

 国連が掲げる「2030年に向けた持続可能な健康開発目標」に対して、ノルウェー・ベルゲン大学のOle F Norheim氏らは「各国の70歳未満の早期死亡40%削減と、すべての年代のヘルスケア改善」を提案した。40%削減という数値の根拠として各国の死亡率の傾向を国連およびWHOのデータでレビューし、「2010年現在の死亡率を維持推進すれば、戦争や紛争、新たな疫病がない地域では達成可能である」としている。また、高所得で低死亡率の国でも重大かつ達成すべき目標であると述べている。Lancet誌オンライン版2014年9月19日号掲載の報告より。非感染性疾患(NCD)による死亡削減目標は3分の1 Norheim氏らは、明確で実現可能な目標こそが各国の政府に対して影響力があるとして、「2030年までに早期死亡40%削減」を提案したとしている。そのうえで、全死亡とヘルスケア改善には、修正可能な死亡原因や、多くの死亡の脅威ともなっているあらゆる障害を考慮することが必要であり、早期死亡40%削減は、すべての国にとって重要であり、次の4つの目標達成が、「2030年に向けた持続可能な開発目標」を強化すると指摘している。すなわち(1)小児および妊産婦死亡の3分の2削減、(2)結核、HIV、マラリア死の3分の2削減、(3)非感染性疾患(NCD)による早期死亡3分の1削減、(4)その他要因(感染性疾患、低栄養、外傷)の死亡3分の1削減である。これらの目標達成が、50歳未満死を半減し、50~69歳の死亡(主にNCD)を3分の1削減して、結果として70歳未満死の40%削減に結びつくとしている。 その可能性を評価するため、人口上位25ヵ国、4つの所得国群および全世界の死亡率と動向をレビューした。全死亡については1970~2010年の国連のデータを用い、またWHOのデータで、2000~2010年の原因特異的死亡の動向を調べ、2030年の各国人口を標準化(20年間の伸び率は過去10年の42%または18%に低下とみて算出)した。過去10年のNCD 14%低下などの維持推進で達成可能 結果、1970~2010年の死亡率は、HIVまたは紛争の影響が大きかった国を除き世界中で、とくに小児において低下していた。 2000~2010年については、70歳未満の標準化死亡比は、19%低下していた(低・低中所得国の絶対増が大きかった)。 直近10年(2000~2010年)の低下率について、年代ごとにみると0~4歳34%、5~49歳17%、50~69歳15%だった。また、感染性疾患、周産期、母体または栄養に関する死亡率は30%低下、NCDによる死亡は14%低下、外傷(事故、自殺、殺人)死亡は13%低下していた。 これらを踏まえて著者は、「2000~2010年にみられた死亡率減少の維持推進で、2030年の目標である疾患特異的減少3分の2または3分の1削減の達成は可能と思われる」とまとめている。もしその数値が達成されれば、2030年の0~49歳の死亡は、2000万例のうち約1000万例を、0~69歳の死亡は4100万例のうち約1700万例を減らすことが可能だとしている。

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Dr.ハギーの関節リウマチ手とり足とり~まずは触ってみる~ <早期介入編>

第1回 関節リウマチ診療の現在     ~T2Tとはなんだ~第2回 早期診断のコツ     ~ぐっと握ってRAを疑う~第3回 関節リウマチの良し悪し     ~疾患活動性を評価する~ 第4回 抗リウマチ薬の使い方     ~寛解目指して一直線(1)~ 第5回 関節注射の勘どころ     ~寛解目指して一直線(2)~ 第6回 生物学的製剤の使い方     ~寛解目指して一直線(3)~ 関節リウマチ診療は近年大きな変貌を遂げ、「治らない疾患」から「寛解が可能な疾患」となりました。重要なのは疾患の早期発見・早期介入。関節リウマチを早期に診断し寛解へ導くには、プライマリ・ケア医の役割がとても大きいのです。一方で、何十年と長期で関節リウマチを患っている患者は、近年の著しい関節リウマチ医療進展の恩恵を受けていません。しかしながら、長期罹患患者も現在の関節炎の程度と身体障害の程度を適切に評価し、可能な限り疾患活動性を低くする治療を行えば、患者のQOLを高めることができます。つまり長期罹患患者に対しても、プライマリ・ケア医ができることはたくさんあります。この番組は、関節リウマチの診療の最新知見を「早期介入編」と「長期罹患編」に分け、プライマリ・ケア医が臨床上必要なリウマチ診療に関する知識と手技を、楽しい小噺を交え、手とり足とり解説します。第1回 関節リウマチ診療の現在 ~T2Tとはなんだ~ プライマリ・ケア医にとってはとっつきにくいイメージのある関節リウマチ。しかし近年、治療法が格段に進歩し、今では早期発見・介入し寛解を目指すのが常識となっています。この世界的な新しい関節リウマチ治療方針がTreat to Target(T2T)。その鍵を握っているのは、プライマリ・ケア医です。早期介入編第1回は「関節リウマチ診療の現在」と題して、まずリウマチ診療の昨今の激変を概観し、一般医にもできるリウマチ診療の道筋を示します。講師は、リウマチ専門医の若きホープDr.ハギーこと萩野昇先生。落語家に扮したリウマチ小噺を交え、わかりやすく、楽しくリウマチ診療の今をレクチャーします。第2回 早期診断のコツ ~ぐっと握ってRAを疑う~ 関節リウマチ診療において、早期診断は極めて重要です。そのために知っておかなければならないのは確定診断のための診断基準ですが、それ以前にプライマリ・ケア医にとって大事なのは、まず症状が軽微なうちからリウマチを疑う姿勢。そこで役立つのが「スクイーズテスト」です。第2回「早期診断のコツ」では、関節リウマチと診断する際の基準についての説明と、「ぐっと握って関節リウマチを疑う」スクイーズテスト、そして関節診察の実演を、まさに手とり足とりお伝えします。第3回 関節リウマチの良し悪し ~疾患活動性を評価する~ 関節リウマチは、『これさえ診ておけばよい』というスタンダードの検査値が存在しないため、疾患活動性の評価が難しいとされています。現在では、その指標のひとつに、膝から上の28関節を評価する「DAS(Disease Activity Score)28」と呼ばれるスコアが主に使用されています。28ヵ所の関節を押して圧痛・腫脹の有無を確認し、炎症反応などを加えてスコアリングし算出するものです。実演では、関節のどの部分にどのくらいの力加減で圧痛の有無を確認するか、丁寧にご説明します。ただし、膝から下の関節についての評価がすっかり抜けているので、足の診察も行いましょう。疾患活動性評価の一番の基本は診断と同じく、「まずは触ってみる」こと。患者の関節に触って、腫れや痛みを診ることが大切です。第4回 抗リウマチ薬の使い方 ~寛解目指して一直線(1)~ 抗リウマチ薬の中で非常に大きな成果を得た薬剤に「メトトレキサート(MTX)」があります。日本ではなかなか十分な量を処方できなかったMTXですが、2011年より最大量1週間に16mgまで使用できるようになりました。ただし、効き目があるからといってMTXをやみくもに使っていては寛解に導くことはできません。用量や増量スケジュール、どんな副作用があって投与方法はどうするか?今回は、MTXを中心とした抗リウマチ薬を手とり足とり解説します。禁忌がなければMTX。MTXを制する者は関節リウマチを制すると言っても過言ではありません。第5回 関節注射の勘どころ ~寛解目指して一直線(2)~ 関節リウマチ患者の関節の痛みを改善させる治療法の中で、とくに即効性があり、安価で副作用の少ない方法は関節腔内への注射療法ではないでしょうか。関節腔内・筋骨格軟部組織へのステロイド注射の手法は決して難しくなく、非専門医でも施行できます。ぜひ日常診療に取り入れて患者の悩み・痛みをピンポイントで解決してください。第5回「関節注射の勘どころ」では実演を織り交ぜて、関節腔内注射の準備・手順、そして関節へのアプローチまでをまさに手とり足とりお伝えします。第6回 生物学的製剤の使い方 ~寛解目指して一直線(3)~ 生物学的製剤はリウマチ診療にとってなくてはならないものになりつつあります。日本では10年以上の使用経験があり、すでに一般的治療となっている生物学的製剤ですが、どの患者にどの生物学的製剤が効果があるかなどを予想する方法は、実はまだ確立されていません。しかし現時点では、生物学的製剤を使用する前に潜在性結核に罹患しているかを確かめることが一番大切です。そのためにはどんなスクリーニングが必要か?潜在性結核のほかに必要な検査とは?Dr.ハギーが手とり足とり解説する生物学的製剤の基本ついて、プライマリ・ケア医もここまでは押さえておきましょう。

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結核へのモキシフロキサシンレジメン、非劣性示されず/NEJM

 薬剤感受性結核に対し、モキシフロキサシン(商品名:アベロックス)ベースレジメンの短期4ヵ月投与について検討した試験の結果、対照レジメンと比較し治療効果の非劣性は示されなかったことが報告された。英国セント・アンドルーズ大学医学部のStephen H. Gillespie氏らが行った、第III相無作為化試験の結果、明らかにされた。これまでに行われた初期フェーズおよび前臨床試験の結果、モキシフロキサシンベースのレジメンは4ヵ月治療について検討可能であることが示唆されていた。NEJM誌オンライン版2014年9月7日号掲載の報告より。モキシフロキサシンベースのレジメン2種を従来レジメンと比較 Gillespie氏らは、先行試験で検討可能な対象として示唆されていた、合併症のない薬剤感受性塗抹陽性肺結核で未治療の18歳以上患者1,931例を対象に、第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。モキシフロキサシンベースのレジメン2種について対照レジメンに対する非劣性を評価した。 第1グループ(対照群)には、イソニアジド、リファンピン、ピラジナミド、エタンブトールを8週間投与し、その後イソニアジドとリファンピンを18週間投与した。第2グループ(イソニアジド群)には、対照群レジメンのエタンブトールの代わりにモキシフロキサシンとしたレジメンを17週間投与し、その後9週間はプラセボを投与した。第3グループ(エタンブトール群)には、対照群レジメンのイソニアジドをモキシフロキサシンに代えて17週間投与し、その後9週間はプラセボを投与した。 主要エンドポイントは、無作為化後18ヵ月以内の治療不成功または再発とした。モキシフロキサシンレジメン、従来レジメンより良好なアウトカムは低率 per-protocol解析の結果、良好な治療結果が得られたのは、イソニアジド群では85%、エタンブトール群では80%と、対照群の92%より低率だった。対照群との差は、イソニアジド群が6.1ポイント(97.5%信頼区間:1.7~10.5ポイント)、エタンブトール群が11.4ポイント(同:6.7~16.1ポイント)だった。 結果は、修正intention-to-treat解析、全感度解析でも一貫してみられた。 一方、培養陰性までの所要日数は、対照群に比べイソニアジド群とエタンブトール群で有意に短縮していた。 またグレード3または4の有害事象の発生率は、イソニアジド群19%、エタンブトール群17%、対照群19%であり、有意差はみられなかった。

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小児BCG接種、結核菌への感染を2割予防-(解説:吉田 敦 氏)-249

これまで小児へのBCG接種が、重症結核なかでも髄膜炎に対して60~80%の予防効果を有することが判明していたが、肺結核に対する効果は不定で、さらに既感染患者での発症予防にも効果がないと考えられていた。 今回英国・イングランド公衆衛生局(PHE)のA. Roy氏らは、インターフェロン-γ遊離試験(IGRA)を用いた検討のメタアナリシスを行い、これらの課題について新たな結論を導いた。BMJ誌2014年8月5日号掲載の報告より。IGRAで結核菌感染の有無をスクリーニング 研究グループは、Medlineなどの文献データベースをもとに、1950~2013年11月に発表された、肺結核患者からの曝露を受けた16歳未満の小児に関する検討を抽出し、BCG接種と結核菌感染予防の効果について、システマティックレビューとメタアナリシスを試みた。なおIGRAはBCG接種の影響を受けないため、BCG接種とIGRAによって判断した結核菌感染の有無を解析した試験に絞った。接種群は、感染後の発症も58%予防 結果として3,855例を含む14試験が該当した。BCG接種群の結核菌感染に関する推定リスク比は、非接種群に対し0.81(95%信頼区間[CI]:0.71~0.92)であった。つまり小児へのBCG接種は、非接種の場合に比べ、肺結核患者からの曝露による感染を19%低下させることが判明した。こうした予防効果は、IGRAの2法(エリスポット法、クォンティフェロン法)において同程度であった。 また、1,745例の6試験を対象に、結核菌感染が確認された被験者が活動性結核を発症するかどうかについて、接種の効果を調べた。感染の予防効果は27%(リスク比は0.73)、活動性結核発症の予防効果は71%(リスク比0.29)であり、BCG接種が感染から発症に至るのを予防する効果は、58%(リスク比:0.42、95%CI:0.23~0.77)であった。より好ましい成績が得られたのか? IGRAはツベルクリン反応よりも結核の感染状態をよく反映するため、より精確な検討や比較が可能になった。このため今回のように、BCG接種による発症予防効果のみならず、感染予防効果の検討も容易になっている。一方、今回の検討は、地域、母集団、基礎疾患、流行状況に違いのある先行研究を、著者に元々のデータの提出を依頼しながら解析したものであり、含まれるデータの質には十分な配慮がされているといってよい。 これまで不確実な結論に終わっていた、BCGによる曝露後予防と発症予防に関し、より精確で定量的な解釈を与えた点で、本検討の価値は大きいと考える。

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結核性心膜炎でのステロイドや免疫療法を検証/NEJM

 結核性心膜炎患者に対し、補助的プレドニゾロン治療またはM. indicus pranii免疫療法のいずれも、有意な効果は認められなかったことが示された。南アフリカ共和国のケープタウン大学のBongani M Mayosi氏らが報告した。結核性心膜炎は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症を有している患者の頻度が高く、抗結核治療にもかかわらず有病率や死亡率が高いことが報告されている。また、補助的グルココルチコイド療法の効果については、死亡率の減少などが報告されていたが、HIV感染症患者についてはがんリスクを増大するといった報告が寄せられ、その使用について国際ガイドラインでは相反する勧告が示されている。研究グループは、補助的プレドニゾロンについてHIV感染症患者を含む結核性心膜炎に対し効果があるのではないかと仮定し検討を行った。NEJM誌オンライン版2014年9月1日号掲載の報告より。1,400例対象に、プレドニゾロンvs. M. indicus pranii免疫療法vs. プラセボ 検討は無作為化2×2要因試験にて、結核性心膜炎と診断または疑われた患者1,400例を対象に行われた。6週間のプレドニゾロンまたはプラセボを投与する群と、3ヵ月間で5回注射投与するM. indicus pranii免疫療法またはプラセボを投与する群に、無作為に割り付けた。 被験者のうち3分の2がHIV感染症を有していた。 主要有効性アウトカムは、死亡・心タンポナーデ・収縮性心膜炎の複合とした。主要複合アウトカムに有意差なし、がんリスク増大 結果、主要アウトカムの発生について、プレドニゾロン投与群(23.8%)とプラセボ投与群(24.5%)との間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.77~1.18、p=0.66)。また、M. indicus pranii免疫療法群(25.0%)とプラセボ投与群(24.3%)との間にも有意差はみられなかった(同:1.03、0.82~1.29、p=0.81)。 一方で、プレドニゾロン治療はプラセボと比較して、収縮性心膜炎の発生(4.4%対7.8%、HR:0.56、95%CI:0.36~0.87、p=0.009)、入院(20.7%vs. 25.2%、HR:0.79、95%CI:0.63~0.99、p=0.04)を有意に減少したことが示された。 しかし、プレドニゾロン治療およびM. indicus pranii免疫療法とも、それぞれプラセボと比較して、がん発生の有意な増大と関連しており(1.8%vs. 0.6%、HR:3.27、95%CI:1.07~10.03、p=0.03/1.8%vs. 0.5%、同:3.69、1.03~13.24、p=0.03)、主としてHIV関連のがん増大によるものであった。

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40年ぶりの新規抗結核薬の有効性/NEJM

 多剤耐性結核に対して、推奨基本レジメンに抗結核薬ベダキリン(国内未承認)を追加し24週間治療を行った結果、プラセボ追加と比較して120週時点の評価で、培養陰性化がより速やかかつ有意に高率に認められたことが報告された。死亡例はプラセボ群よりもベダキリン追加群が多かったが、因果パターンは示されなかったという。南アフリカ共和国・ステレンボス大学のAndreas H. Diacon氏らによる第2b相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験ステージ2の結果、報告された。ベダキリン(Sirturo、TMC207)は40年ぶりとなる新規の抗結核薬で、結核菌のATP合成酵素を阻害するジアリルキノリン系薬である。第2b相試験ステージ1の8週投与の検討において、ベダキリンの追加投与群では、喀痰培養陰性化までの期間が短縮したことが報告されていた。NEJM誌2014年8月21日号掲載の報告より。推奨基本レジメン+ベダキリンの24週投与について検討 試験は、新たに多剤耐性結核と診断された18~65歳の喀痰スミア陽性患者160例を対象に行われた。被験者は、推奨されている基本レジメンに追加してベダキリン(79例)またはプラセボ(81例)を受ける群に無作為化され24週間投与を受けた(ベダキリンの投与は1日1回400mgを2週間、週3回200mgを22週間)。その後96週間は両群とも基本レジメンのみを投与され、計120週間フォローアップを受けた。 主要有効性エンドポイントは、液体培地での喀痰培養陰性化までの期間であった。24週時点、120週時点ともに、培養陰性率は有意に上昇 喀痰培養陰性化までの期間中央値は、プラセボ群125日に対しベダキリン群83日で、有意に短縮したことが認められた(ベダキリン群のハザード比:2.44、95%信頼区間[CI]:1.57~3.80、Cox回帰分析によるp<0.001)。培養陰性率も24週時点(79% vs. 58%、p=0.008)、120週時点(62% vs. 44%、p=0.04)ともに、ベダキリン群が有意に高かった。 120週時点におけるWHOのアウトカム定義に基づいた多剤耐性結核の治癒率は、ベダキリン群58%、プラセボ群32%であった(p=0.003)。 全体の有害事象の発現率は両群で同程度だった。死亡はベダキリン群10例、プラセボ群2例が報告されたが、投与薬との明らかな因果関係は認められなかった。

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