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教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

1951年東京都生まれ。76年北里大学医学部卒業。81年同大皮膚科助手、84年同大皮膚科講師兼医局長。91年横浜労災病院皮膚科部長。2007年より現職。日本皮膚科学会専門医・代議員、日本アレルギー学会専門医・指導医・代議員、日本皮膚悪性腫瘍学会評議員他。皮膚科医に求められるもの人と話すことが好きな私は、本当は神経内科医になりたかったのですが、師匠である教授との出会いがきっかけで皮膚科医を選択しました。教授が「向井君、この患者さんはγ-GTP100だよ」と、手や皮膚の状態を見ただけで内臓のことまで言い当てたのです。皮膚科医としての知識を元に視診で内臓までを診てしまう。私はそこに魅力を感じたのです。皮膚疾患は目に見える症状がほとんどのため、そこから発生する患者さんの精神的ストレスは深刻な問題となっています。したがって、皮膚科医には患者さんのメンタルをケアすることも重要な治療の一つなのです。その点からみても、話好きな私にはとてもよい選択だったと考えています。「皮膚科は死なないからいいよね」と言われることがありますが、決してそうではありません。病としての生き死にではなく、病状による精神的苦痛で自殺してしまうケースもあります。だからこそ、精神面でのサポートも考慮しつつケアしてあげるという心構えで、皮膚疾患を治していくことが常に求められているのです。たかが皮膚病ではなく、それに伴う精神的苦痛は個々によりレベルが違うもので測り知れません。今後も私はそこを踏まえた上での最善の治療を、皮膚科医として追求していきたいと考えています。患者さんと医師の信頼関係を構築する間違った情報を鵜呑みにしてステロイドへの偏見を持ち、薬を処方通りに使わなかったり、誤った民間療法に頼ったり、医師との信頼関係を築けないまま治療にも専念できない患者さんもいます。その結果、かえって症状を悪化させているケースも少なくありません。東邦大学ではアトピー性皮膚炎の思い切った治療として、入院をすすめています。これは、仕事などで忙しくて毎日のスキンケアがままならず、症状が悪化して不眠状態になっている状態をクールダウンさせる意味もあります。皮膚炎が起こる原因の中には生活習慣や住環境も関わりますから、その点でも改善指導できますし、日常のストレスからの解放も期待できます。その上で、すべての治療をこちらに任せてもらい、ディスカッションしながら薬の塗り方、包帯の巻き方等まで、こまごまと指導できる利点があります。そうすれば患者さんは退院した後も、症状が悪化した場合には自分で処置することができるようになる。つまり、治療をしながら生活全般の教育指導もできるのが入院の利点です。将来的には、栄養士による食事指導も加えたいと考えています。ステロイドへの偏見をなくしたいステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。では、実際にアトピー性皮膚炎の入院患者さんに多量のステロイドを使用した場合、安全塗布量を超えると副腎機能に影響を与えるのかどうか、私は入院時と退院時の血液や尿を採取して調べました。驚いたことに、入院時のコルチゾール値は平均3.7μg/dLと正常値より明らかに低く、0.1μg/dL以下と極めて強く副腎機能が抑制されている患者さんは半数以上でした。つまり、入院を要するほどの患者さんは、ステロイド治療をする前に皮膚状態の悪化で、すでに副腎機能が強く抑制されていたのです。入院を要しない軽症例では抑制がかかっていないことから、副腎機能の抑制は重症度に起因するという新事実をみつけました。さらに、入院中大量のステロイドを使用したにもかかわらず、退院時のコルチゾール値は11.5μg/dLと正常化していました。入院中に皮膚状態を改善するために使用したステロイドの量は、臨床効果とともに漸減し薬効ランクも落としています。この治療法によって副腎機能に及ぼす副作用は認められず、安全性の高いものといえる結果となりました。同時に測定したACTH値も同様で、退院時には正常値に回復していました。入院での治療は皮膚症状を劇的に改善させるだけでなく、抑制されていた副腎・下垂体機能を大幅に正常化するという画期的なデータでした。しかし、なぜ副腎機能が抑制されてしまうのかはまだ不明で、これからの研究課題です。ホルモンが分泌されない原因のファクターとしては、ストレスや睡眠障害などが挙げられています。確かに来院した患者さんから「眠れなくて、体がだるくて、成績が落ちたり、仕事上でのミスが多くなったりして上司から怒られる。でも、睡眠薬を使うと寝坊してしまう」との意見が大半でした。ところが、入院することによってまず不眠が解消され、リラックスした精神状態になり、熟睡できた喜びを口にした患者さんが7割から8割を占めたのです。これによってインペアード・パフォーマンスも大きく改善されました。尋常性乾癬における最新治療乾癬に関しては劇的な治療薬ができました。これまで患者さんは、お風呂から出て、時間をかけて全身に薬を塗って、包帯を巻いて……という作業を毎日繰り返していました。患者さんの負担はかなり重いものでした。それが、TNF-α阻害薬が出てきたお陰で、今では注射1本で済んでしまう。患者さんのQOLは飛躍的に向上しました。これは大変画期的なことだと思います。私が東邦大学に来る前の病院で、5、6回入退院を繰り返している、30代の関節症性乾癬の男性がいました。それまで、できうる限りの治療を行ったのにもかかわらず、結局車椅子の生活を余儀なくされた患者さんです。TNF-α阻害薬が治験できるとなった時に、真っ先にその彼に声をかけました。しかし、彼には「これまで先生の言うことはすべて聞いてきたが、結局治らなかった。訳のわからない治療法で、もっと悪くなるかもしれない」と断られてしまいました。それでも私は1時間以上かけて説得しました。やっと彼を治せるかもしれない治療薬が出てきたからです。今、彼は杖で歩けるまで回復しています。少し前までは治せなかった難病も、今では治せてしまう。医学の進歩にはいつも驚かされます。ただし、このTNF-α阻害薬ですが、高い臨床効果の一方、免疫を抑えることにより副作用として細菌性肺炎や肺結核など重篤な感染症の発現が危惧されています。日本皮膚科学会では"TNF-α阻害薬の使用指針および安全対策マニュアル"を作成し、本薬の使用に際して、(1)乾癬の診断・治療や合併症対策に精通した皮膚科専門医が行うこと (2)副作用発現に留意して、定期的な検査および重篤な合併症に対して迅速な対応すなわち呼吸器内科や放射線医と密接な連携で対処すること、の2点を挙げていますので注意が必要です。私ども東邦大学大橋病院皮膚科はTNF-α阻害薬使用施設として正式に認定され、すでに2例の患者さんに治療を開始しております。病気の原因究明こそ臨床の醍醐味外来で若手医師に指導する時は「なぜこういう現象が起きたのか?」を自分の頭でよく考えさせるようにしています。単に病状や治療についての説明をするのではなく、なぜこの患者さんはこうなったのか、その"なぜ"を考えさせるようにしています。ありふれた皮膚病は、生活習慣に起因していることが多いのです。だからこそ患者さんのライフスタイルを知り、なぜそうなったのか? 原因となっているものは何か? を見極めないことには治療もできません。たとえば、道を歩いているだけなのに、急にアナフィラキシーショックを起こして倒れた人がいました。朝食にパンを食べて、その後に運動をする。満員電車の中でどっと汗をかいたらアナフィラキシーショックを起こして倒れた。ご飯ならば発作は起こらないのに、パンだとなぜだかショックを起こす。また、就寝時にアナフィラキシーショックを起こす例がありました。なぜか納豆を食べた日に限り、発作を起こしていました。いずれの方も発作を2、3回繰り返し、そのつど救急搬送されるのですが、病名どころか何が原因かさえわからない。前者は小麦アレルギーでした。小麦を食べて運動をする、抗炎症薬のアスピリンを服用する、飲酒、疲労、ストレスといったファクターが加わるとアナフィラキシーショックを起こす。また後者は、まだ10例ほどしか発見されていませんが、納豆アレルギーでした。納豆を食べて30分や1時間で症状が出れば誰でも納豆アレルギーとわかりますが、食べてから10何時間か経って就寝時に出てくるので、何が原因なのかわからなかった。実は納豆のネバネバ成分がアレルゲンをコーティングしているため、腸管からの吸収が遅れ、すぐには症状が出なかったのです。このような患者さんが今まで原因がわからず病院を転々としてきて、それを自分が究明できた時の喜びは大きいですね。臨床の面白さや醍醐味はそこにあると思います。また、最近の技術的進歩も著しいものがあります。これまで皮膚科領域で治療に難渋していた疾患が、上述した生物学的製剤のような画期的な薬剤の登場で治療できてしまう。虚血性壊死を起こした状態でも、皮膚や筋肉に注射して血管を新生する遺伝子治療もそろそろ世に出てくる。たとえば、糖尿病で足先がすでに壊死を起こしている場合、まず内科で糖尿病のコントロールを行い、皮膚科で外用療法をし、最終的には整形外科や形成外科で切断するのが主流となっていたのが、この遺伝子治療により血管を再生することによって指先を切断しなくても済むようなるというものです。これまで、難病といわれてきたものが、最新の治療によって難病ではなくなる時代に変わってきています。これからの皮膚科学は、ますます面白くなってくると思います。質問と回答を公開中!

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教授 向井秀樹先生の答え

アトピー性皮膚炎30年間悩まされています。昨年近医にてネオーラル処方され、症状改善し漸減中止しました。が、症状悪化しネオーラル再開(一回50mg一日2回)しました。この量でないと有効でないようで…飲み続けてもいいのでしょうか?皮膚の良い状態がこんなに楽なのもかと思い知り、ステロイドだろうが免疫抑制剤だろうが(副作用が多少あっても)なんでも使いたい!という思いです。 シクロスポリンは使用ガイドラインが出来ており、体重当たり3mg換算とされています。効果があれば12週間を1クールにして、最低2週間以上の休薬とあります。スタンダードな治療法として有用だと思います。但し、極めて重症度の高い方には中止が出来ない、再度内服するという方も少なくありません。さらに高価なお薬のため経済的にも再燃時のショックは大きいのは理解できます。文章からは十分に理解しているとは言えないかも知れませんが、ダラダラと服用しているより、2クール目&3クール目と繰り返すうちに症状が安定する場合も経験します。焦らず頑張って下さい。そして併用している外用剤ですが、内服していると痒くないからといって使用していない、使用量が大幅に減っていないことはありませんか? こんな高級品を使っているのです、今こそ徹底的に改善して寛解状態を得て元を取るぞ!という覚悟で頑張って下さい。そして、悪化時の原因を考え悪化要因の対処法などの工夫、アドバイスを貰うなどの積極性を出すこと!綺麗な肌を取り戻して下さい!発汗異常について手汗がひどく悩んでいる方がいます。来年4月から社会人になりますが事務関係で書類を触るのに用紙がくしゃくしゃになってしまい、仕事に支障がでてしまうのではないかと・・手術以外になにか方法がありませんか?漢方 刑芥蓮ぎょう湯を服用して様子を見ています。程度は個人差がありますが、お悩みのことと推察いたします。大学時代の友人がひどい汗かきで、いつもタオル持参で授業内容を記載していました。現在会って話をすると昔より良くなっているそうですが完治はしていないとのことです。一般的に自律神経を安定させる内服薬を飲み続け、汗を抑える塩化アルミニウム溶液を外用します。漢方薬を試されているようですが、防己黄耆湯や補中益気湯はお飲みになりましたでしょうか?漢方薬は一般的にすぐに効果がでる訳ではありません、最低1~2ヶ月間は内服してみて下さい。手術に関しては現在しない方向です。脇の下の交感神経を切断するは一時流行りました。確かに手の効果はありますが、背中や胸などが代償性に発汗するようになり患者さんの生活の質が低下するので行わない方が良いようと思います。専門に手術する施設が増えましたが、医療問題にまで発展し陰が薄くなりました。発汗を専門とする施設は少ないですが、東京医科歯科大学皮膚科には専門外来があります。塩化アルミニウム溶液を器械で皮膚に導入するイオントフォレーシス法を行っており、それなりの有用性を報告しています。機会があれば受診してみて下さい。まずは、一般初診を受診して専門外来にまわしてくれるそうです。研究分野について東邦大学大橋病院での研究分野について教えてください。どのような研究をされているのでしょうか?ホームページを拝見しましたが、「研究について」のページを見ても、「爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討」しかなかったので、もう少し情報を頂きたく思います。(後期研修先を探している研修医です)大橋皮膚科はアトピー性皮膚炎の治療を専門にしております。1~2週間の入院療法は、短期間で急速&確実に改善する方法を言えます。しかし、入院期間に多量に使用する極めて強いステロイド外用剤の副腎機能に関する影響に関して、明らかな文献は見当たりません。そこで、入院前後の血中コルチゾール値を測定してみました。その結果は予想に反して、重症例では入院前のステロイド外用量と関係がなく血中コルチゾール値は大幅に低下。この変化は不可逆性で退院時には上昇して正常値に戻るという結果が得られました。そこで次に、血中ACTHや1日尿中コルチゾール値を測定しました。両者とも同様の推移を呈することより、皮疹の重症度に相関して不可逆性の副腎機能抑制状態が生じていることを昨年11月の日本皮膚科学会誌に報告いたしました。これから入院する患者さんにもその結果をお話して、入院で使用するステロイドの安全性を強調する共に検査し確認を取る旨を了承して頂いております。なお、このデータは昨年の第26回日本臨床皮膚科学会で金賞そして学内の柴田奨学助成金をめでたく選考授賞&授与することが出来ました。次に、この入院期間の前後で治療効果を判定できる"短期的な治療マーカー検査"を検討し、昨年日本アレルギー学会で発表しました。皮膚の改善やかゆみの程度で患者さんは退院を希望されます。明らかな検査データを示し改善度を示すことは疾患の理解を更に深めると思います。大橋皮膚科で行っている入院療法の有用性を評価するために、患者さんを対象にしたアンケート調査を行いこの2月に行なわれる東京支部学術大会で発表します。今年度からは重症例に多くみられる睡眠障害に関して研究を始めます。激しい痒みに伴うものと基礎にある心因反応に伴うものに大別できます。そこで、入院前後の睡眠障害を詳細に分析しその違いを見つけ、後者の人に関しては早期に入眠剤や心療内科的アプローチを検討します。さらに、外来患者にも行い重症度の違い、罹患率など調査していく予定です。ホームページにある"爪白癬動物モデルを用いた病理組織学的検討"は、日本真菌学会および国際学会で報告したので掲載したものです。動物モデルを使って、爪に感染後の経過を臨床面と爪の病理組織像を同時に立体的に観察した興味あるデータです。近く真菌専門の英文誌に掲載されますので、機会があればご一読下さい。この他に、帯状疱疹後の神経痛に関する薬剤間の比較、各種皮膚良性腫瘍におけるダーモスコープ所見の検討、炭酸ガスレーザーを用いた難治性皮膚疾患の治療の試みなどいろいろと考えて行っています。化粧品会社や製薬会社の研究所とも連携して研究し、その成果を順次発表しております。大橋皮膚科では目の前にいる患者さんの疾患をみて、その病態を考えどのようなアプローチをすべきか、解明のための臨床研究を積極的に行っています。珍しい疾患の解明ばかりでなく、ありふれた疾患の新しい考え方や治療法なども発信できればと思っています。やる気のある方は大歓迎です、是非とも来て下さい。アトピー性皮膚炎、診断のコツ研修中なので基本的な質問ですみません。アトピー性皮膚炎の診断について、治療ガイドラインの診断基準を見ながら勉強しているのですが、確信を持って診断を下すことができません。診断間違ってステロイドを処方すると悪化する症例もあるので、少し怖くなっています。今は当然ながら自分一人で診察をして診断を下すわけではないのですが、皮膚科を目指しているので、どうにかしたいです。診断のコツや、先生がどのように勉強されてきたか?などアドバイスいただけると幸いです。難しい問題だと思います。でも専門とする私でも治療&診断ガイドラインは講演のときに使う程度で診療の際に見ることはありません。患者さんを見れば検査をしなくとも100%診断が付きます。皮膚科の醍醐味とはそういうもので、見たことがある、本で読んだ、学会で聞いたなどで診断が出来るのです。要するに、長年たくさんの患者さんを見ることで感じ覚えていくのだと思います。とくにアトピーの難しさは年齢によって皮膚症状の好発部位や臨床像も変化します。時期ごとに出やすい部位、臨床像を整理して覚え、鑑別疾患を挙げその違いを頭の中で除外していく必要性があります。アトピー素因の有無は必要です、そして皮膚所見が有用で湿疹病変と分かってもかぶれもありますし,自家感作性皮膚炎や皮脂減少性皮膚炎もあります。年齢や部位などが役立ちます。血清IgEや各種アレルゲン特異抗体価も診断に有用です。症例をたくさん見て、いろいろな鑑別疾患を整理して頭の中に入れることが重要です。疑問があれば上級医を呼んで,診断の決め手や考え方を教えてもらうのも良いと思います。重症のアトピーとして治療していたら皮膚リンフォーマという事例もあります、皮膚生検も時として有用です。よく見てよく考え疾患の特性を理解して下さい。患者さんを診て、患者さんから教えられる、学ぶものです。民間療法との戦いについて皮膚の疾患、特にアトピーなどは民間療法が多くて困っています。全てを否定するわけではないですが、処方した薬を使わなくなったり、通院しなくなったりするので(大体症状が悪化して戻ってきますが…)かなり厄介です。先生も当然同じような状況かと思います。先生のこれまでのご経験から「このように民間療法と戦っている!」「こんな説明をすると有効だ!」というものがあれば是非ご伝授いただきたく思っております。宜しくお願いします。日本皮膚科学会の努力もあり民間療法は20年前に比べるとかなり淘汰された感はあります。随分日常診療でその対策と説明に苦労させられて来ましたし、重症で入院を要する患者さんの半数以上が民間療法経験者でした。皮膚科医以外の医師や医療関係者が行っている場合が多いようです。患者自身が現在の治療法に不満を抱いているのは事実だと思います。頭ごなしに否定することなく、ゆっくり時間を掛けて話をする・聞くことを心掛けています。どうしてもしたいと言ってくるものに関しては、現在の治療を中止せず併用することや部分使用を認めています。専門家の私が冷静に判断してその効果を認めるなら、継続すべきだし、効果が見えない場合にこだわって皮膚が悪化することは避けたいと話します。ただ、使用しているステロイド剤の副作用を強調して中止を強要し高額な治療費を請求するものは絶対的に反対します。ステロイド治療に不満や不安が強い人が多いので、ステロイドの使用法や安全性を十分説明する必要はあると思います。いずれにせよ、本人は悩んでの事ですから、頭ごなしに叱らない、救済方法を残すやり方で指導しております。 電子付加治療は効きますか?患者より、アトピー性疾患治療として電子付加治療というものがあると聞きました。私も調べてみたのですが、日本アトピー治療学会という聞きなれない学会が推奨しているようです。一見理にかなっているようには見えるのですが、実際のところ如何なものでしょうか?もし電子付加治療について何かご存知でしたらご教示お願いします。残念ながら実態は良く分かりません。私の外来では慢性かつ難治性の重症例が多く受診されますが、受診前の治療法としても電子付加治療は初耳です。アトピー性皮膚炎の治療&診断ガイドラインにも電子付加治療などは記載されていません。日本アトピー治療学会と実にもっともそうなネーミングですが、所属会員がどれほどいるのか?我々のような皮膚科専門医、アレルギー専門医や指導医がいるのか疑問です。これでは質問のお返事とはなりません。丁度インフルエンザAに罹患して自宅待機の身ですので、ホームページをしっかりと拝見しました。基本的におかしいのがアトピーの原因を酸化アレルゲンとして一つに括っていることだと思います。この論理はアトピー性皮膚炎診療&治療ガイドラインをご一読されればすぐ分かります。どこにも記載されている言葉ではありません。アトピーの発生機序は、最近北大皮膚科が皮膚の角層に日本特有のフィラグリン遺伝子多型を30%の症例に発見以来、バリア機能の破綻が発症の第一要因とされました。これに伴い、環境にいるダニやハウスダストが経皮的に侵入してアレルギー炎症が生じるのです。但し乳児は卵など食事の関与が強い時期ですし、年齢的&季節的にアレルゲンや増悪因子は変化します。また最近ではフィラグリン遺伝子多型がなく血清IgE値が正常&主に金属アレルギー関与が示唆される内因性という概念も出ていますし、現代人が抱える心理的なストレスも大きな要因の一つです。またいくつかの要因が複雑に絡み合い病態を複雑にしています。酸化が皮膚の老化以外に種々の炎症を起こすことは知られています。同じ論理で四国の方では活性酸素の除去を目的とした外用剤や内服を行っています。理論は同じで酸素の毒を取り除くというもので、当初大した効果はありませんでした。そこでステロイドを外用剤に混ぜるようになりました。アトピーの機序はすでにお話したように実に複雑で、単に酸素の毒を抑えられても寛解できるか疑問です。理論とシェーマと治療前後の臨床写真だけで基礎的な実験データがありません。ところで、以前中国で何にもよく効く漢方薬がネット上で評判になり日本のアトピー患者も購入者が続発しました。とにかくステロイド張りのすごい臨床効果なのです。そこで成分を調査したところ、何と最強のステロイドが入っていたのです。われわれ専門家でも滅多に使用しない最強のステロイド入りとは驚きです。本当に良い薬は正式に承認され薬価が付きます、新薬の欲しい薬品会社がほっとくわけはありません。入院療法の期間アトピー性皮膚炎に対する治療として「入院療法」が紹介されていましたが、入院期間はどの程度必要なのでしょうか?全国で少数ですが入院療法を当科のように展開しているところはあります。ばらばらで決まり残念ながらありません。治療ガイドラインをみても、マニュアル通りの治療で効果のない場合は入院とありますが期間に関する記載はありません。以前私のいた横浜労災病院では徹底的に良くなるまで入院させました。全国から多数の患者さんが来られたので皮膚症状や検査所見の改善、試験外泊で悪化症状のなしを目安にしたところ平均26.5日という入院期間でした。入院後のアンケート結果をみると、退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は93.3%で極めて高く、不変や悪化例はいません。また、調査時の皮膚症状に関しても88.1%と高率に症状が改善維持できていることが判明しました。一方で10%の患者さんが入院期間の長さを指摘、33.3%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。確かに仕事を持つ社会人が1ヶ月近く休むということは問題ですし、家庭を任された主婦そして通学、受験や試験などの問題を抱えた学生にとって長すぎます。そこで、東邦大学に来てからは2週間を原則に致しました。1週間で徹底的に皮膚症状を抑え、残りの1週間で安定化を図る。退院後しばらく頑張ればコントロールできると考えたからです。その結果は2月の東京支部学術大会で発表します。退院時の皮膚症状は改善以上の有効率は92%で極めて高く、調査時の皮膚症状に関しても76%の方が改善維持できていました。一方で9%の患者さんが入院期間の長さを指摘、43%の方が悪化時の再入院を"出来れば外来で頑張りたい"と答えています。重症度や対象患者の遠距離度が異なるかも知れませんが、平均年齢は30歳代と同様でした。やはり2週間でも患者さんにとって長すぎるのかもしれません。そこで次の裏付けデータをもとに1週間に減らしています。そのデータとは、質問3でお答えした入院前後で血中のコルチゾール値を測定した結果を参考にしました。重症度と血中コルチゾール値が相関するなら、入院時に正常値以下まで低下したものが何日入院すると正常値に戻るのか?入院期間と血中のコルチゾール値の推移で計算すると4.8日という値が出ました。そこで、約1週間の入院期間で一過性の副腎機能低下状態は改善できると判断しました。現在、極めて治しにくい重症度の極めて高い皮膚症状を有する例を除き、1週間の入院を基本として初診患者に説明しております。TNF-α阻害薬について乾癬の患者さんがTNF-α阻害薬での治療に興味をもっております。乾癬であれば全て有効なのでしょうか?また、感染症の発現が危惧されると聞きましたが、大橋病院さんではどのような体制で望んでいるのでしょうか?差し支えなければ、これまでの成績も含めて教えていただけると大変参考になります。この治療はどこの施設でも自由に行える訳ではありません。副作用として重要な感染症に対して、診療体制のとれる呼吸器内科医や放射線医の常勤が必要で、皮膚科学会に正式に申請してTNF-α阻害薬使用施設として認定される必要があります。TNF-α阻害薬は2種類あり、多少適応疾患が異なります。詳細は大橋病院皮膚科のホームページを参考にして頂くと役立ちます。本剤の副作用の最も多いのが感染症です。潜在的に持っている、感染しやすいものを発症させます。日本は結核が多く、治験段階で最も危惧されたところです。ところが、しっかりとした体制が奏功したのか肺結核はおらず、細菌性肺炎が見られています。致死的な副作用は今のところありません。勿論、私どもの症例も毎回診察していますが副作用はありません。対象は、重症、難治性&治療抵抗性の乾癬および関節症性乾癬の患者さんです。罹患部位が全身で外用剤のみでコントロール不良な症例、ネオーラルやチガソンの内服でも不安定ないしその薬剤の副作用で中止した例、関節症状のコントロール不良例、さらにステロイド外用剤による局所の副作用が生じている例などです。今後あちこちの施設から有用性のデータが報告されると思いますが、有用率90%は全国の諸施設で行った治験結果の驚異的な数字です。私の経験でとくに驚いたのが、関節症性乾癬の患者さん達です。その効果は患者さんのQOL向上に素晴らしいものです。但し、最大の難点が支払い額の高さです。高額療養費制度を用いて医療費が還付されますが、それでも負担金は極めて高く、投与前に概算を示し了解を得ないと継続した治療が受けられなくなります。また、今後判明してくると思いますが予後が問題です。投与中は良いのですが、中止できるのか再燃しやすいのか、検討課題だと思います。また新薬も開発中で楽しみです。ステロイドの安全塗布量、参考文献先生の記事を拝見して「ステロイドのガイドラインとして現在も使用されている安全塗布量は、40年以上前に海外でステロイドを使う必要のない正常な人を対象にして行われたデータで、その後の追試はありません。」ということを初めて知りました。大変びっくりしています。ステロイドの安全塗布量について他に参考になる文献等がありましたらご教示お願いします。本においてステロイド(ス)外用剤は1953年から登場し、現在までに30種類以上の外用剤が開発。薬効の強さから上位からI~V群の5つに分類され使用されています。幅広い皮膚疾患に有効で、従来まで治療法のなかった疾病の治療薬として大いに役立ったことは事実です。全身皮膚が障害し多量の外用を必要とする症例の中で、Cushing様症状、骨粗しょう症や小児の発育遅延など極めて少ない確率ですが起こることが判明。多量にス外用剤を使用例が突然中止すると、皮疹悪化以外に発熱、悪寒、悪心、嘔吐などの全身症状を呈するものを離脱反応、これは一種の副腎クリーゼの状態です。質問5でお答えした民間療法が横行した時期に、ス外用剤を中止してこの反応を起こしQOLが大幅に悪化、私どもの病院に入院した症例を数多く経験しました。外用を再開し症状を改善させました。全身的な副作用を知るには、主に視床下部-下垂体-副腎皮質機能がどの程度抑制されるのかをチェックします。日常で処方される外用量、成人で10~30g/週程度では抑制は起こりません。この全身的な副作用に関しては1960~1970年代に精力的に研究されたのですが、それ以降はほとんど行われていません。薬効ランクⅢ群(リンデロン)を成人入院に1日30g、幼小児に1日13gと大量塗布した結果。1.副腎皮疹機能は一過性に生じるが、中止後1~2日で回復。2.症例によっては継続中でも抑制が回復。その理由は、皮膚が改善して経皮吸収率が低下する。3.密封療法を行うと経皮吸収率が高まり、臨床効果も上がるが抑制は顕著となる。4.小児では成人より抑制は起こりやすいので強い薬効ランクのものは控える。また、外用方法として1日5~10gで開始し、症状に合わせて漸減し3ヶ月間使用しても、一過性&可逆性の抑制は生じても不可逆性の抑制は生じないとされています。私どもの入院を要する重症例では1日12gも投与しましたが、抑制例は2例と少なくしかも正常範囲内で何ら身体的にも問題は起きませんでした。それどころが、正常値以下に抑制された症例の多くが逆に正常に復したという事実は大きな驚きでした。十分な診察もせず漫然と使い続けるのではなく、メリとハリの要領で使用量や部位別に上手に使うことが大切です。最近外来で勧めているのがプロアクティブ治療です。適切な薬剤で十分量の使用で寛解状態を作り、その後すぐに休薬するのではなく、週2回は外用することで再燃効果を大幅に減少することが出来ます。何も全身同時に開始することはありません。顔からでも、腕からでも良くなった場所はスタートO.K !眼に見えない副作用に怯えることなく、上手に使うことが重要なのです。尋常性ざ瘡(にきび)の食事療法について最近、20~30代の女性の患者様から肌に関するちょっとした質問を受けます。医者なので、ある程度はアドバイスしてあげたいのですが、尋常性ざ瘡の方の食事に気をつけることや最近の新しい治療の動向を、他科医師として知っておくべき事はありますでしょうか?御教示よろしくお願いします。一般的によく言われていることですが、甘いものや脂っこいものは避けるべきです。スナック菓子も同様です。ただ、肌に良くないからといって全部やめようと話しても難しいと思います。食べる回数や量を減らすことが大切です。また女性には生理があります。ホルモンバランスの変化する生理前に悪化する例が多く、イライラする精神的なストレス以外にヤケ食いや飲酒など食生活が悪化要因の場合があります。ディフェリンと言う新しいにきび用の外用薬が発売されています。効果は従来品のアクアチムクリームやダラシンゲルより期待出来ます。但し、皮膚のカサツキがでる場合がありますので注意して下さい。基本的なこととして、入浴時の洗顔が大切です。オイリー肌用の石鹸で十分に洗うこと、とくにベタツク&症状の強い部位は2度洗いを勧めます。入浴後、ご自身の肌にあった化粧水を塗るとかさつきは予防できますが、べたつくクリームやローションは毛穴をつぶしてしまうので禁止です。難治性の症例には、このほかピーリングが行なわれています。毛穴が詰まって角質の溜まった白ニキビや炎症の強い赤ニキビに有効です。自費診療になりますが、皮膚科専門医で行なっている施設は少なくありません。総括いろいろとご質問を頂き感謝しております。話すのは自信が多少あるのですが、文章では相手の理解度が伝わりません。また質問があれば聞いて下さい。実は私が大橋病院ホームページ委員会の責任者なのですが、機械音痴と雑用が多く皮膚科ホームページの更新が遅れ気味なのです。時間があるときに更新いたしますので、時々見て下さい。研修希望者に:どんどん大橋皮膚科を見学に来て下さい。大橋病院は歴史的な作りで驚くかもしれませんが、アットホームな環境で仲良く頑張っています。教える体制はしっかりしています。何をしたいのかをはっきり明示してそれが努力に値する仕事なら全面的にサポートします。ただ、まず皮膚科医としての基本を覚えなければいけません。皮膚科は奥が深く、自己完結型の科と言えます。ある程度オールラウンドの皮膚科医を目指し、その上で疑問、難問の解決を同時進行で行うと臨床が100倍楽しくなります。教授 向井秀樹先生「患者さんと真摯に向き合う中から病態は解明される」

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慢性C型肝炎、新規経口抗HCV薬2剤併用による非インターフェロン治療が有望

慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者に対する2つの新規経口抗HCV薬であるRG7128とdanoprevirの併用療法が、非インターフェロン治療として有望なことが、ニュージーランド・オークランド市民病院のEdward J Gane氏らが行った無作為試験(INFORM-1試験)で示された。HCV感染に対する現在の標準的なインターフェロンベースの治療法は、効果および耐用性の両面で限界があるという。RG7128はHCVのNS5B RNAポリメラーゼを阻害し、danoprevirはウイルスの複製に必須な酵素HCV NS3/4Aプロテアーゼの大環状阻害薬だ。Lancet誌2010年10月30日号(オンライン版2010年10月15日号)掲載の報告。7つの治療群とプラセボ群を比較INFORM-1試験の研究グループは、慢性HCV感染患者を対象に、いずれも経口投与が可能な2つの実験的な抗HCV薬(ヌクレオシドポリメラーゼ阻害薬RG7128とNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬danoprevir)の併用療法の安全性、耐用性、抗ウイルス効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化用量漸増試験を実施した。ニュージーランドおよびオーストラリアの6施設から登録されたHCV遺伝子型1型に慢性的に感染した患者が、RG7128(500mgあるいは1,000mg×2回/日)とdanoprevir(100mgあるいは200mgを8時間ごとに3回/日、または600mgあるいは900mg×2回/日)の併用療法、あるいはプラセボを投与され、最長で13日間の治療を受けた。適格例が7つの治療群の1つに登録され、実薬群あるいはプラセボ群のいずれかに無作為に割り付けられた。用量漸増試験は未治療例を対象とし、前治療無反応例を含む標準治療による既治療例は高用量danoprevir群に登録された。担当医、試験センター員、患者には治療割り付け情報は知らされなかったが、薬剤の調整を行う薬剤師、薬物動態サンプルの解析に携わる者、データの要約を作成する統計学者、次の治療群の初回用量決定前のデータをレビューする薬理学者にはマスクされなかった。主要評価項目は、13日間の治療を受けた患者のベースラインから14日目までのHCV RNA濃度の変化とし、治療を完遂した全症例について解析を行った。未治療例、既治療例ともにウイルスRNA濃度が低下、耐用性も良好登録された88例のうち、74例が7つの実薬群に割り付けられ73例が少なくとも1回の投与を受け、プラセボ群の14例もいずれも1回以上の投与を受けた。13日間の併用治療を受けた各群の、ベースラインから14日目までのHCV RNA濃度変化の中央値は、-3.7~-5.2(log10)IU/mLであった。最も高用量を投与された群(RG7128 1,000mg+danoprevir 900mg×2回/日)の、ベースラインから14日目までのHCV RNA濃度変化中央値は、プラセボ群が0.1(log10)IU/mL上昇したのに比べ、実薬群の未治療例では-5.1(log10)IU/mL(四分位数範囲:-5.6~-4.7)、標準治療で無反応であった既治療例では-4.9(log10)IU/mL(同:-5.2~-4.5)まで低下した。RG7128+danoprevir併用療法は良好な耐用性を示し、治療関連の重篤な有害事象は認めず、grade 3/4の検査値異常や有害事象による治療中止もみられなかった。著者は、「このヌクレオシドポリメラーゼ阻害薬とプロテアーゼ阻害薬の併用療法は、慢性HCV感染患者に対する非インターフェロン治療として有望と考えられる」と結論し、「最近、直接作用型抗ウイルス薬の単剤療法の有望な結果が報告されているが、今回の非インターフェロン直接作用型経口抗ウイルス薬の2剤併用療法は、今後のHCV感染の管理における重大な転換点であり、過去20年間で最も大きな治療上の進展を示すものである」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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ネビラピン服用者にはネビラピンを含まないレジメンが優れる

HIV感染妊婦に対し、母子感染を防止する目的での抗レトロウイルス薬投与は、3剤併用療法を受けていない場合は、ネビラピン(商品名:ビラミューン)単独投与がWHOによって推奨されている。しかしネビラピンは母子感染を減らすものの、服用した妊婦の大半にネビラピン耐性ウイルスが出現。耐性ウイルスは時間とともに減少するが低レベルの持続が、ネビラピン単独療法後6~18ヵ月で開始される3剤併用療法の効力を弱めることが懸念されている。今後、数十万規模での服用者が予想される中、米国ブリガム&ウィメンズ病院のS. Lockman氏ら研究グループは、ネビラピン服用者に対する3剤併用療法には、ネビラピンを含まないレジメンの方がよいかどうかをオープンラベル無作為化試験で検討した。NEJM誌2010年10月14日号掲載より。ネビラピン服用・非服用者を、2つの3剤併用療法に無作為化し追跡試験はアフリカ7ヵ国で、CD4+T細胞数200個/mm3以下のHIV-1に感染した、試験登録前に6ヵ月以上ネビラピン単独服用歴のある妊婦241例と、同服用歴のなかった500例を対象に行われた。被験者は無作為に、tenofovir-emtricitabine+ネビラピンの併用療法群(ネビラピン併用群)か、tenofovir-emtricitabine+低用量リトナビルでブーストしたロピナビル(商品名:カレトラ)の併用療法群(ロピナビル併用群)に割り付けられた。主要エンドポイントは、ウイルス学的失敗が確認された時点または死亡とした。tenofovir-emtricitabine+低用量リトナビルでブーストしたロピナビルの方が優れるネビラピン単独服用歴のある被験者241例は、ネビラピン併用群に121例、ロピナビル併用群に120例それぞれ無作為化された。結果、主要エンドポイントに達した割合がネビラピン併用群26%で、ロピナビル併用群8%よりも有意に高かった(補正後P=0.001)。ウイルス学的失敗は37例で、ネビラピン併用群28例、ロピナビル併用群9例だった。ウイルス学的失敗なしでの死亡は5例(それぞれ4例と1例)だった。また両群の差は、ネビラピン単独服用から3剤併用療法開始までの期間が長いほど小さくなる傾向が認められた。ネビラピン耐性ウイルスは、基線での血漿サンプルを用いた後ろ向きバルク塩基配列決定法の結果、239例中33例(14%)で検出された。一方、ネビラピン単独服用歴のなかった被験者500例については、主要エンドポイントは、ネビラピン併用群249例中34例(14%)、ロピナビル併用群251例中36例(14%)だった。Lockman氏は、「ネビラピン単独服用歴のある女性には、tenofovir-emtricitabine+低用量リトナビルでブーストしたロピナビルの方が優位だった」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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乳幼児の喘鳴は、細菌感染、ウイルス感染とそれぞれ独立して関連

乳幼児における急性の喘鳴と細菌感染には、有意な関連があることが明らかにされた。デンマーク・コペンハーゲン大学のHans Bisgaard氏らが、前向き出生コホート研究を行い報告したもので、関連はウイルス感染と同様だが独自のものだという。ガイドラインでは、乳幼児の喘鳴には抗菌薬投与をルーチンに行わないよう勧告している。無作為化試験による喘鳴への抗菌薬投与の有効性も報告されていないが、欧米での最近の就学前児童を対象とした調査で、ウイルス感染による急性喘鳴例では抗菌薬が最も多く処方されていることが明らかになっている。こうした背景を受けBisgaard氏らは、これまで研究報告がされていない喘鳴と気道への細菌感染との関連、およびその関連がウイルス感染のものとは別のものなのか調査を行った。BMJ誌2010年10月9日号(オンライン版2010年10月4日号)掲載より。生後4週~3歳児を対象に、喘鳴と細菌感染との関連を調査本研究は、コペンハーゲンで喘息の母親から生まれた411例を追跡調査している「コペンハーゲン前向き小児喘息研究」の被験児を対象に行われた。母子は生後4週から3歳になるまで、研究拠点のクリニックに定期通院または緊急入院した記録があった。主要評価項目は、喘鳴発作時の気道に認められた細菌あるいはウイルスの頻度と、定期通院時に呼吸器症状が伴わなかった頻度とした。喘鳴との関連オッズ比、細菌感染2.9、ウイルス感染2.8細菌感染に関する解析対象は984検体(幼児361人)だった。ウイルスに関する解析対象は844検体(幼児299人)、両方一緒に解析されたのは696検体(幼児277人)だった。喘鳴発作は、細菌感染、ウイルス感染いずれとも関連が認められた。細菌感染のオッズ比は2.9(95%信頼区間:1.9~4.3、P

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鳥谷部俊一先生の答え

ラップ療法の患者家族への説明方法患者さんを自宅で介護している家族の方へ、ラップがガーゼよりも有効である旨を説明するときに上手く伝える方法はあるのでしょうか?また先生のご経験で、このように伝えると上手くいく。というノウハウがございましたら是非教えて頂きたいと考えております。宜しくお願いします。このような場合は、モイスキンパッドをお勧めします。「ガーゼの替わりにバンドエイド、キズパワーパッドを貼るのが時代の先端。治りも早く、痛くない。モイスキンパッドをよく見てください、巨大なバンドエイドですよ」。こんなふうに説明してください。モイスキンパッドで良くなってきたら、床ずれパッドを見せて、「そっくりでしょ。しかも安いんです」とお話しましょう。アトピー性皮膚炎のラップ療法アトピー性皮膚炎でもラップ療法が有効であるとか有効でないとか、賛否両論のようですが、先生はどのようにお考えでしょうか?また、有効である場合に、どのような点に気をつければ宜しいでしょうか?ご教示宜しくお願いします。ラップ療法は、床ずれの治療法です。「アトピー性皮膚炎にドレッシング療法が有効か」という質問にお答えできる立場ではありません。アトピー性皮膚炎に対するドレッシング療法の可能性の問題は興味深く、論議が深まることを期待します。モイスキンパッドはじめまして。日々、「皮膚・排泄ケア認定看護師」とともに床ずれの診療をさせていただいている一皮膚科医です。以前、形成外科の先生が手作りで、「モイスキンパッド」と同様なものを使用されていました。「皮膚・排泄ケア認定看護師」は、あまりいい顔をしていませんでした。実際、ある程度褥瘡は改善するものの、その周囲にかぶれを起こしたり、体部白癬に罹患する患者さんが後を立ちませんでした。結局、ラップ療法を中止することとなりました。これについて、先生はどのようにお考えになりますか?どのようにすれば、こうした皮膚トラブルを避けられますか?改善点はありますでしょうか?ご教示いただけるとありがたいと思います。ご質問ありがとうございます。いろいろ工夫してラップ療法を試みたことに敬服します。ラップ療法や、モイスキンパッド処置では、抗真菌剤を塗布して真菌症を簡単に治療することができます。2000年の医師会雑誌に書いたラップ療法の論文では、合併した「カンジダ症2例を抗真菌剤で治療した」と明記しております。夏など暑い季節には、予防的に抗真菌剤を塗ります。クリーム類がお勧めです。ラップ療法や、モイスキンパッド処置ではドレッシングを絆創膏で固定しないで毎日交換するので、外用薬を毎日塗るのが容易です。真菌は湿潤環境で増殖しますので、吸水力の高いモイスキンパッドを使って皮膚を乾燥させることをお勧めします。手作り「モイスキンパッド」の吸水力についてはデータがありませんのでコメントできません。既成のドレッシングや軟膏ガーゼの治療の場合も真菌感染を生ずるのですが、なぜか話題になることが少ないようです。高齢者の足をみると、ほとんどの方の爪が白く濁って変形しております。白癬症です。爪白癬がある人をよく観察すると、全身に角化した皮疹が見られます。掻痒感があれば、爪で引っかいた痕跡や、体を捩って背中を擦り付ける動作があるでしょう。足ユビ、足底、足背、下腿、膝、臀部、背部、後頭部、手、上肢などをよく調べれば、白癬菌が検出されます。皮膚を湿潤環境にすると、真菌類(カンジダ、白癬)が増殖しやすくなります。抗真菌外用薬(クリーム)を積極的に使用して治療します。基礎疾患が重篤な場合は?現場の知恵を洗練していく先生に敬意を持っております。通常の免疫能がある患者さんにおいては、水道水による洗浄と湿潤環境で軽快するというのはわかりますが、がん治療に伴い免疫不全状態にある患者さん、糖尿病のコントロールがうまくなくこれも免疫不全のある患者さん等、表在の細菌真菌に弱いと考えられる患者さんにも同様に適応し、効果を期待できるのでしょうか。こうした患者さんにはある程度の消毒なり軟膏治療が必要になるのではないでしょうか。困難な症例に取り組むご様子に敬服します。基礎疾患が重篤な症例に対するラップ療法の有効性は確立しておりません。よって、このような症例には、「ガイドライン」に従った治療をするのが安全であると考えます。ただし、「こうした患者さんに消毒・軟膏治療が有効である」というエビデンスが無いのが現状です。また、「基礎疾患が重篤な患者にこそ、消毒や軟膏による有害事象が生じ易いのではないか」という観点からの検討も必要です。床ずれに対するラップ療法の治癒の機序床ずれはもともと血流障害ですが、これがラップ療法で治癒する機序は何でしょうか。創傷治療の本質に迫るご質問、ありがとうございます。既存の軟膏ガーゼ処置は、「厚い小さなドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を床ずれに加えるため、血流障害をおこして治癒を遷延させます。ラップ療法は、「薄い大きななドレッシング」が外力(圧力/ずれ力)を打ち消すことにより、血流を改善して治癒を促進する湿潤療法です。床ずれの原因は、「外力による血流障害」です。一方、下腿潰瘍などの末梢動脈疾患(PAD)は、「外力によらない血流障害」です。床ずれは、外力(圧力/ずれ力)を取り去ることにより血流が改善して治癒に向かいます。例えば、仙骨部の床ずれは、「腹臥位」で圧迫を防ぐことにより治癒した、という報告があります。要するに、「圧迫さえ無ければ床ずれは普通の切り傷と同じような治り方をする」ということです。圧迫を減らすための工夫が、体圧分散マットレス、体位変換、ポジショニングなどです。ラップ療法は、外力を分散するドレッシング療法・湿潤療法です。感染がある 虚血がある感染症があれば、抗菌作用のパスタ剤や、感受性のある抗菌軟膏やソフラチュールなどは一定期間必要じゃないでしょうか。血流を高めるPG剤も必要では。また、化学的デブリードメントにあたるプロメラインなども必要ではないでしょうか。ラップ療法を実践している医療者の多くは、感染症は抗生剤全身投与で、血流改善は(必要に応じて)PG剤全身投与で治療しております。デブリードメントは、外科的デブリードメントと湿潤療法による自己融解を行なっており、化学的デブリードメント剤は使っておりません。「学会ガイドライン」を参照したところ、ご指摘の外用剤はガーゼとの組み合わせでエビデンスが証明されているようですが、ラップ療法やモイスキンパッドとの組み合わせによるエビデンスはございません。今後、エビデンスが集積されてから併用されることをお勧めします。ラップで治療困難な症例の判別皮膚所見をみた当初から、外科治療、皮弁手術が必要かどうかは、判別可能でしょうか。ある程度ラップしたあとで、考慮するのでしょうか。もちろん他の疾患の管理をし栄養、感染など評価をした場合として。ラップ療法は床ずれの保存療法です。外科治療、皮弁手術を考慮される場合は、「学会ガイドライン」に従った治療をお勧めします。2010年の日本褥瘡学会での議論を拝見した限りでは、外科治療、皮弁手術の適応症例は減っているようでした。感染症に対して抗生剤と抗真菌薬の外用と全身投与について感染症には抗生剤の全身投与は理解できるのですが、表在真菌感染症に抗真菌薬の外用が効くのはどうしてでしょうか?抗生剤の外用はなぜ不適切なのでしょうか?ご教授よろしくお願いします。一部の領域(皮膚科、耳鼻科、歯科など)を除き、細菌感染症の治療は抗生剤全身投与が標準治療です。創感染に対する抗生剤外用は、耐性菌誘発リスクなどの理由から、CDCガイドラインなどは推奨しておりません、「学会ガイドライン」にも推奨の記載が見当たりません。表在真菌感染症は、表皮が感染の舞台なので、抗真菌外用剤がよく効きます。抗生剤の外用は無効です。細菌感染の舞台は真皮や皮下組織、あるいはさらに深部の組織です。閉鎖療法の場合は、創を閉鎖して組織間液が深部組織に逆流する結果抗菌薬が感染部位に到達すると想像されますが、ラップ療法・開放性湿潤療法では、創を開放するので組織間液の逆流は起きず、抗菌剤は感染部位に到達しないと考えます。全身投与された抗生物質は、血流を通じて感染部位に到達します。糖尿病性神経症、ASO合併の下肢壊疽80歳、女性、糖尿病で血液透析の患者です。3年前 右足趾を壊疽で切断。今回は左下足に足趾を中心に踵まで、壊疽、深い、汚染の褥瘡様潰瘍があります、悪臭がします。切断は拒否しています。ラップ療法は有効でしょうか?ラップ療法は、床ずれの治療法です。よって、この症例はラップ療法の適応外です。PADのガイドラインに従った治療をお勧めします。血管治療、デブリドマン後のドレッシング材としてモイスキンパッドが有効であったとの報告があります。このような処置は、ラップ療法とではなく、ドレッシング療法、湿潤療法と呼称すべきです。病院皮膚科形成外科との調整病院内科勤務医です。当院では褥瘡ケアは皮膚科の褥瘡ケアチームが回診しています。形成外科は陰圧吸引療法の高価な機械を使いますが患者の一部費用負担はあるものの病院としては赤字になるようです。どのようにして病院全体の褥瘡ケアを統一改善していったらよいでしょうか。アドバイスをお願い申し上げます。かつて同様の立場にあった内科医として、同情申し上げます。1999年に日本褥瘡学会でラップ療法の発表をして12年になりますが、2009年の学会シンポジウムで「ラップ療法と学会ガイドラインは並立する」と(私が)宣言したことが、「在宅のラップ療法を条件付で容認する」という2010年の学会理事会見解につながったようです。「褥瘡ケアの統一」は、学会ガイドラインで統一するか、ラップ療法で統一するかの選択問題ですが、未だ結論が出ておりません。より多くの方がラップ療法を支持するようになれば、学会がラップ療法を受容する日がいずれ来るでしょう。皆様のお働きを期待申し上げます。総括医学の歴史を紐解くと、新しい考え方が「専門領域の侵害」と受け止められ、いろいろな形で抵抗を受けてきたことが分かります。ゼンメルヴァイスの「消毒法」が医学界で受け入れられたのは、ゼンメルワイスの死後のことです。ラップ療法はインターネットの時代に遭遇して、学会よりも一般社会で先に普及しました。情報化社会では、権威者よりも一般社会が先に一次情報を入手することができます。そうした中にあって、情報の真贋を見抜く力(情報リテラシー)が必要であり、そうした能力が専門家と呼ばれる人々に求められております。MediTalkingという場でラップ療法の議論が深められたのはこうした時代の反映であり、有意義なものと考えます。顧問 鳥谷部俊一先生「床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!」

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鳥谷部俊一先生 [追加記事] 床ずれの「ラップ療法」は高齢者医療の救世主!

1979年東北大学医学部卒業。東北大学医学部第二内科、鹿島台町国民健康保険病院内科、慈泉会相澤病院 統括医長、至高会たかせクリニック 顧問を経て、現職に至る。床ずれ治療「ラップ療法」の創案者。追加記事掲載について形成外科専門医の方から「ラップ療法」の危険性について指摘いただきました。<指摘内容>閉鎖療法は簡便なので、医療従事者が取り掛かりやすい。しかし創傷に精通したものでないと症状を悪化させる場合がある。傷の中には感染を伴っている状態のものがあり、これにラップ療法を行ったため、細菌が中で繁殖し、敗血症に陥った例がある。この点に関して、鳥谷部先生からのコメントを追加記事として掲載いたします。鳥谷部先生からのコメント「2010年に、『いわゆる「ラップ療法」に関する日本褥瘡学会理事会見解』が発表されました。http://www.jspu.org/jpn/info/pdf/20100303.pdf『褥瘡の治療にあたっては医療用として認可された創傷被覆材の使用が望ましい。非医療用材料を用いた、いわゆる「ラップ療法」は、医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な在宅などの療養環境において使用することを考慮してもよい。ただし、褥瘡の治療について十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである。』2011年、ラップ療法(食品用ラップまたは穴あきプラスチックフィルムを貼付する処置と標準治療(学会ガイドラインに準拠した処置)を比較したランダム化比較研究が行われ、両群の治療成績が同等であるとの結果が学会誌に発表されました*1。この結果をうけ、近く改訂される日本褥瘡学会ガイドラインでは、「"いわゆる"ラップ療法(食品用ラップや穴あきプラスチックフィルムを貼付する処置)」が推奨度C1の処置法として掲載される見通しです。学会ガイドライン検討委員会は、ラップ療法のリスクが高いことを考慮して「十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである」との文言を付け加えたようですが、それならばむしろ「医師の目の届きにくい在宅などではなく、病院に入院している患者に限定して行い、入院患者の治療に習熟した医師が在宅患者を治療すべきである」とするべきでしょう。そもそもラップ療法のランダム化試験は大部分が入院患者を対象にした臨床研究です。そのエビデンスを入院患者ではなくあえて在宅患者に限定適用しガイドラインに書き込んだのは、諸般の事情があったのでしょうか。筆者が日本医師会雑誌(2000年)に発表したラップ療法を追試した方々の多くは、それまでの外用剤とガーゼによる処置法で苦労を重ね、創感染治療に習熟した医師たちでした。最初の何例かは慎重を期して入院管理下で行い、医師自ら毎日処置を行いました。創感染など合併症の管理は当然のことでしたが、それでも従来の治療法よりは比較的容易に対処できたと伝え聞いています。ラップ療法が普及するに従い、従来の治療経験なくして最初からラップ療法を行う医師あるいは非医師があらわれたのでしょうか。ラップ療法(ラップや穴あきポリエチレンを貼付)は、素人目には「簡単な治療」に見えるため、ややもすると安易に行われ、医師の目の届かないところで行われているうちに重症感染を併発し、対応が遅れて敗血症のため亡くなった事例があったのではないかと危惧しております。ラップ療法の臨床研究によると、ラップ療法が他の治療法に比べて特別に創感染を起こしやすいという傾向は認められなかったそうです*1。創感染については筆者は以下のように対応していますので参考にしてください。『褥瘡周囲の熱感,浮腫,滲出液増加,疼痛,発熱,白血球増多,CRP上昇を認めた場合は,感染あるいは持続感染と考え,第一,第二世代のセフェム系あるいは合成ペニシリン系抗生剤,マクロライド,アミノグリコシドなどを全身投与する.創面を細菌培養すると,創感染の有無にかかわらず,大腸菌,黄色ブドウ球菌,緑膿菌が検出される.創面より培養された菌の多くは耐性菌で前述の抗生剤は無効と思われるのだが,実際のところ感染兆候は消失し創所見は改善する.感染終息後に細菌培養をすると,これらの耐性菌が検出される.すなわち,創の表面にいる菌は創感染とは無関係であり,起炎菌は創の深部に存在し,その多くは耐性菌ではないのだろう.褥瘡を有する患者が肺炎や尿路感染を起こすと,創感染がなくても創の状態が悪化(浮腫,滲出液の増加,肉芽壊死)することが多い.発熱時は全身状態を評価し,感染を疑った場合は積極的に抗生剤を全身投与して治療してほしい.』褥瘡の治療は、ラップ療法であれ、学会標準治療であれ、いずれの場合でも創傷治療に経験のある医師が十分な注意を払って行うべきものです。褥瘡治療の経験に乏しい医師は、入院患者を対象に、感染のない浅い褥瘡を医療用ドレッシング(モイスキンパッド・白十字)で治療し、経験を積んでください。3度の褥瘡に対しては早期のデブリードマンを行って創感染を未然に防いでください。感染の兆候(発熱、熱感、腫脹、疼痛、膿性浸出液)を認めたら、早期に抗生物質を全身投与して感染の進展を防ぎましょう。感染が深部に及ぶ症例、骨壊死を伴う症例、閉塞性動脈症を伴う足病変は、しかるべき専門医のいる病院に入院させて治療してください。以上の事例に習熟してから、ラップや穴あきポリエチレンを貼付する「"いわゆる"ラップ療法」に挑戦したり、在宅患者の治療をしていただきたい。褥瘡を発症するような患者はもともと重篤な基礎疾患を合併しており、一旦感染が重症化すると敗血症のため亡くなる可能性が高いのはご承知のことと存じます。患者・家族には、褥瘡がしばしば致死的な疾患であることを十分に説明し、同意を得たうえで治療してください。筆者は2002年以来同意書書式例を公開しておりますので、ぜひ活用してください。*1 文献:水原章浩,尾藤誠司,大西山大 ほか:ラップ療法の治療効果~ガイドラインによる標準法との比較検討.褥瘡会誌, 13:134-141,2011. 褥瘡の予防・治療に関する説明書(例)褥瘡(じょくそう)・床ずれとは、ふとんに接触している皮膚が、すれや圧迫によって血のめぐりが悪くなってできる傷です。自力で寝返りを打てない状態になると、一定の部位に力が加わり続け、皮膚には血液が流れなくなり壊死が生じます。これが褥瘡です。○○○病院では褥瘡対策委員会をつくり、病院内のみならず地域での褥瘡の予防と治療および研究に取り組んでいます。最近褥瘡の研究が進み、次のようなことがわかってきました。圧力を分散させるエアマットレスや体位変換などによって褥瘡の発生を減らすことができるが、最大限の努力をしても患者の全身状態が悪ければ発生を免れない。病院を受診する前にできかかっていた褥瘡が受診または入院後に完成して、あたかも受診後(入院後)にできたように見える経過をたどる例がある。褥瘡の治療法はこの数年間で大きく進歩したが、患者の全身状態が悪ければ必ずしも治らない。褥瘡の治療法はいまだ発展途上である。○○○病院では褥瘡の患者さまにラップ療法を実施しております。(鳥谷部俊一,末丸修三:食品包装用フィルムを用いるⅢ-Ⅳ度褥瘡治療の試み,日本医師会雑誌2000;123(10):1605-1611.水原章浩,尾藤誠司,大西山大 ほか:ラップ療法の治療効果~ガイドラインによる標準法との比較検討.褥瘡会誌, 13:134-141,2011.)ラップ療法は、日本褥瘡学会ガイドライン(次回改訂)に掲載が予定されており、すでに多くの施設で実施されておりますが、非医療材料(食品用ラップや穴あきプラスチックフィルム)を用いますので患者さま(ご家族)の同意が必要です。同意をいただけない場合は厚生労働省の承認をうけた医療材料を用いた方法で治療します。また安全性と有効性を確認するための検査、記録をしております。許可いただければ結果を外部に発表させていただきます。発表に際して、個人のプライバシーは十分に保護されるよう配慮されます。どのようなかたちで発表されるかについては、担当医または院長にお尋ねください。発表にご協力いただけるかどうかは全く自由です。同意いただいた後の撤回もいつでも可能です。また、ご協力いただけなくてもあなたの診療に不利益を生ずることはありません。日付   年   月   日○○○病院 院長私は、褥瘡の予防治療に関し口頭及び文書を用いて説明を受け、その内容を十分理解いたしました。本人  氏  名生年月日代理人 氏名 続柄説明者 職名 氏名ラップ療法を実施することについての同意書検査結果、記録などの学術発表についての同意書私は、褥瘡の治療にラップ療法を実施することについて、および○○○病院における診療で得られた検査結果、記録(写真を含む)の学術発表への利用について、口頭及び文書を用いて説明を受け、その内容を十分理解いたしました。私は、次のように判断いたします。私の褥瘡の治療においてラップ療法をおこなうことに、1 同意します。2 同意しません。診療後、検査結果、記録(写真を含む)の学術発表への利用について、1 同意します。2 同意しません。日付   年   月   日○○○病院 院長-------------------------------------※本記事は、追加記事です。ページ下部にある[質問と回答を見る]をクリックすると、前回と同じ「質問と回答ページ」が表示されます。予めご了承ください。質問と回答を公開中!

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boceprevir追加により、C型慢性肝炎の持続的ウイルス陰性化率が約2倍に

未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)ジェノタイプI型感染患者では、標準治療であるペグインターフェロンα-2b(商品名:ペグイントロン)+リバビリン(同:レベトール、コペガス)による導入療法後にboceprevirを追加する治療法が、標準治療単独に比べ持続的ウイルス陰性化率(SVR)を約2倍にまで改善することが、アメリカ・インディアナ大学医学校のPaul Y Kwo氏らが実施した無作為化第II相試験(SPRINT-1試験)で示された。標準治療は免疫系を刺激することで非特異的にウイルスの複製を抑制するもので、SVRは50%以下にすぎない。NS3プロテアーゼ阻害薬であるboceprevirはウイルス複製に重要な蛋白を阻害する「直接作用的抗ウイルス薬」と呼ばれる薬剤の一つであり、標準治療による導入療法の薬剤血中濃度が最適化された時点でこれを追加併用投与するアプローチの有用性に期待が集まっているという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月9日号)掲載の報告。boceprevirの4種類の投与法を標準治療と比較、低用量リバビリンも評価SPRINT-1試験の研究グループは、C型慢性肝炎に対する標準治療であるペグインターフェロンα-2b+リバビリン併用療法と、これにboceprevirを追加する治療法の有効性を比較する無作為化第II相試験を行った。試験にはアメリカ、カナダ、ヨーロッパの67施設から未治療のHCVジェノタイプ1感染患者595例が登録され、二つのパートに分けて実施された。パート1(520例)では、ペグインターフェロンα-2b 1.5μg/kg+リバビリン800~1,400mg/日を48週投与する群(PR48群:104例)を対照とし、同様の治療を4週施行後にboceprevir 800mg×3回/日を追加して24週投与する群(PR4/PRB24群:103例)あるいは44週投与する群(PR4/PRB44群:103例)、ペグインターフェロンα-2b 1.5μg/kg+リバビリン800~1,400mg/日+boceprevir 800mg×3回/日を28週投与する群(PRB28群:107例)あるいは48週投与する群(PRB48群:103例)の全5群に無作為に割り付けられた。パート2(75例)では、PRB48群(16例)あるいはリバビリンを400~1,000mgに減量した低用量PRB48群(59例)に無作為に割り付けられた。いずれのパートも、治療割り付け情報は試験関係者と患者に知らされた。主要評価項目は、治療終了後24週における持続的ウイルス陰性化率(sustained virological response:SVR、HCV RNA非検出例の割合)とした。対照群38%、PRB28群54%、PR4/PRB24群56%、PRB48群67%、PR4/PRB44群75%4つのboceprevir追加群は、いずれも対照群に比べSVRが有意に優れていた。すなわち、対照群(PR48群)のSVRが38%(39/104例、95%信頼区間:28~48%)であったのに対し、PRB28群は54%(58/107例、同:44~64%、p=0.013)、PR4/PRB24群は56%(58/103例、同:46~66%、p=0.005)、PRB48群は67%(69/103例、同:57~76%、p<0.0001)、PR4/PRB44群は75%(77/103例、同:65~83%、p<0.0001)であった。リバビリンを減量した低用量PRB48群では、ウイルス再燃(viral breakthrough、HCV RNAが最低値から≧2 log10上昇あるいは≧50,000IU/mL上昇)の割合が27%(16/59例)と高率であった。低用量PRB48群の再発(治療終了時にHCV RNA非検出で、24週のフォローアップ後に検出された例)の割合は22%(6/27例)であり、対照群の24%(12/51例)と同等であった。boceprevir追加群は、対照群に比べ貧血[55%(227/416例) vs. 34%(35/104例)]、味覚障害[27%(111/416例) vs. 9%(9/104例)]が多くみられた。著者は、「未治療のHCVジェノタイプ1感染患者においては、標準治療であるペグインターフェロンα-2b+リバビリンによる4週の導入療法後にboceprevirを追加する治療法が、標準治療単独に比べSVRを約2倍にまで改善する可能性が示唆される」と結論している。(菅野守:医学ライター)

4069.

妊娠初期の単純ヘルペスや帯状疱疹の治療薬服用、先天性欠損症リスクを増大せず

母親が妊娠初期に、単純ヘルペスや帯状疱疹の治療薬である、アシクロビル(商品名:ゾビラックスなど)、バラシクロビル(同:バルトレックス)、ファムシクロビル(同:ファムビル)の抗ウイルス薬のいずれかを服用しても、出産児の先天性欠損症リスクは増大しないことが報告された。デンマークStatens Serum Institut疫学研究部門のBjorn Pasternak氏らが、約84万児を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月25日号で発表した。生後1年間の先天性欠損症発症を追跡同氏らは、1996年1月1日~2008年9月30日にデンマークで生まれた83万7,795児について、既往歴コホート研究を行った。染色体異常や遺伝的症候群、原因の明らかな先天異常症候群、先天的ウイルス感染症のいずれかが認められる乳児は、被験者から除外した。生後1年間で見つかった主な先天性欠損症と、母親の妊娠初期のアシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルの服用について、その関連を分析した。抗ウイルス薬服用群と非服用群、先天性欠損症発症率はともに2.2~2.4%と同等母親が妊娠初期に、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルのいずれかを服用していた1,804件の妊娠のうち、主な先天性欠損症が認められたのは、40児(2.2%)だった。一方、母親が妊娠初期にいずれかの抗ウイルス薬も服用していなかった妊娠のうち、主な先天性欠損症が認められたのは1万9,920児(2.4%)で、服薬の有無間での発症リスクに、有意差はみられなかった[補正後罹患率オッズ比(POR):0.89、95%信頼区間:0.65~1.22]。3種の抗ウイルス薬別にみても、同発症リスクの増加は認められず、アシクロビル群(1,561児)のうち先天性欠損症は32児(2.0%)で補正後PORは0.82、バラシクロビル群(229児)は7児(3.1%)で補正後PORは1.21、服薬が稀だったファムシクロビル群(26児)は1児(3.8%)で補正後PORは1.63で、いずれも有意差は認められなかった。予備解析の結果でも、妊娠初期の抗ウイルス薬服用と13種の主な先天性欠損症の間には、有意な関連は認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4070.

5価経口生ロタウイルスワクチン、アジアの開発途上国の乳幼児にも有効

5価経口生ロタウイルスワクチン(商品名:RotaTeq ※国内未承認)は、アジアの開発途上国の乳幼児に対し安全に接種可能で、重症ロタウイルス胃腸炎に対し有効なことが、バングラデシュ・国際下痢性疾患研究センターのK Zaman氏らが行った無作為化試験で示された。WHOの試算では、2004年の世界のロタウイルスによる死亡例数は52万7,000例で、そのうちアジアの開発途上国6ヵ国で21万5,896例を占める。先進国では、乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防にロタウイルスワクチンが有効なことが証明されているが、アジアの開発途上国では同ワクチンの有効性に関する試験は行われていないという。Lancet誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月6日号)掲載の報告。バングラデシュ、ベトナムの生後4~12週の乳幼児に3回接種研究グループは、バングラデシュおよびベトナムにおいて、乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防における5価経口生ワクチンの臨床効果を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。対象は、バングラデシュの農村地域であるMatlabおよびベトナムのNha Trangの都市部と近郊農村部で生まれ、消化管疾患の症状のみられない生後4~12週の乳幼児であった。これらの乳幼児が、生後6週、10週、14週の3回、ポリオウイルスワクチンなどのルーチンの乳幼児ワクチンとともに、5価ロタウイルスワクチンを経口接種する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。医療施設を受診した乳幼児に胃腸炎の症状がみられた場合には、医療スタッフあるいは親の記憶に基づいて報告することとした。主要評価項目は、3回目の接種後14日が経過して以降、試験終了時(2009年3月31日、生後約21ヵ月)までに発現した重症ロタウイルス胃腸炎(Vesikariスコア≧11)とし、per-protocol解析を行った。ワクチン有効率は、[(1-ワクチン群の人・時当たりの重症ロタウイルス胃腸炎発生率)÷プラセボ群の発生率]×100と定義した。ワクチン有効率48.3%、有害事象は同等2,036人が登録され、5価ロタウイルスワクチン群に1,018人が、プラセボ群にも1,018人が割り付けられた。このうち解析の対象となったのは、ワクチン群が991人、プラセボ群は978人であった。3回目の接種後14日から最終的な処置までのフォローアップ期間中央値は498日(IQR:480~575日)であった。ワクチン群では1,197人・年以上のフォローアップ期間中に38例の重症ロタウイルス胃腸炎が報告されたのに対し、プラセボ群では1,156人・年以上で71例に発現し、約2年間におけるワクチン有効率は48.3%(95%信頼区間:22.3~66.1%)と有意な効果が認められた(0%以上の有効性との比較におけるp=0.0005)。各回の接種後14日以内にみられた重篤な有害事象は、ワクチン群が2.5%(25/1,017人)、プラセボ群は2.0%(20/1,018人)であった(intention-to-treat解析)。最も高頻度にみられた重篤な有害事象は肺炎であった[ワクチン群:1.2%(12/1,017人)、プラセボ群:1.5%(15/1,018人)]。著者は、「アジアの開発途上国の乳幼児において、5価経口生ワクチンは安全で、かつ重症ロタウイルス胃腸炎に対し有効であった」と結論し、「これらの知見はWHO勧告の拡張を支持するものであり、本ワクチンの世界的な使用を推し進めるべきである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

4071.

HPV 4価ワクチンの上皮内腫瘍低グレード病変の予防効果が明らかに

ヒトパピローマウイルス(HPV)の4価ワクチンは、HPV-6、-11、-16、-18を抑制することで上皮内腫瘍の低グレード病変を持続的に予防し、疾病負担を実質的に軽減することが、スウェーデンLund大学のJoakim Dillner氏らが実施した無作為化試験(FUTURE試験)で判明した。HPVはグレードII/IIIの子宮頸部上皮内腫瘍よりもコンジローマやグレードIの上皮内腫瘍の発症に関与しており、これらの疾患に対するHPVワクチンの予防効果に大きな期待が寄せられている。その一方で、4価ワクチンで予防可能な低グレード病変の総疾病負担は明確にされていないという。BMJ誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月20日号)掲載の報告。1万7,622人を登録、フォローアップ期間は42ヵ月研究グループは、HPV 4価ワクチンの子宮頸部、外陰部、膣の上皮内腫瘍グレードI病変や肛門性器疣贅(尖圭コンジローマ)に対する予防効果を検討する二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行った。二つのプロトコール[protocol 013(FUTURE I試験)、protocol 015(FUTURE II試験)]を用いて4年間にわたる試験が行われ、フォローアップ期間は42ヵ月であった。2001年12月~2003年5月までに、24の国と地域の施設から16~26歳の女性1万7,622人が登録された。主な除外基準は、これまでの性交パートナー数>4人、頸部スミア検査異常の既往歴、妊婦などであった。これらの女性が、3回(初回、2ヵ月後、6ヵ月後)の4価ワクチン接種を行う群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。フォローアップ期間を通じて疾病負担を実質的に軽減3回のワクチン接種をすべて受け、初回接種時の血清学的検査およびPCR法でHPV-6、-11、-16、-18がいずれも陰性で、7ヵ月後のPCR検査も陰性であった女性に関するper-protocol解析では、4価ワクチンによるHPVタイプ別の上皮内腫瘍グレードI病変の抑制率は子宮頸部が96%(95%信頼区間:91~98%)、外陰部が100%(同:74~100%)、膣が100%(同:64~100%)であり、尖圭コンジローマの抑制率は99%(同:96~100%)であった。少なくとも1回のワクチン接種を受け、初回接種時の血清学的検査およびPCR法でHPV-6、-11、-16、-18がいずれも陰性で、さらにPCR法による他の高リスクHPVタイプ(31、33、35、39、45、51、52、56、58、59)および頸部スミア検査のいずれもが陰性であった女性におけるHPVタイプを問わない上皮内腫瘍グレードI病変の抑制率は、子宮頸部が30%(95%信頼区間:17~41%)、外陰部が75%(同:22~94%)、膣が48%(同:10~71%)であり、尖圭コンジローマの抑制率は83%(同:74~89%)であった。著者は、「HPVの4価ワクチンは、HPV-6、-11、-16、-18を抑制することで上皮内腫瘍の低グレード病変を持続的に予防し、42ヵ月のフォローアップ期間を通じて疾病負担を実質的に軽減することが示された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

4072.

HIVワクチン接種者の4割で血清反応陽性

HIVワクチン接種者の血清反応陽性(VISP)頻度について調査が行われた。HIVワクチンは過去20年間で様々なアプローチ、ターゲット、投与タイプの製品開発が進められ、3万人以上に臨床試験が行われている。そのためHIV検査の解釈に混乱が生じている可能性があるとして行われた。米国シアトルにあるFred Hutchinsonがん研究センターHIV/AIDS戦略部門のCristine J. Cooper氏らによるもので、JAMA誌2010年7月21日号にて掲載されている。過去10年間のワクチン接種非感染者2,176例を対象調査は、2000~2010年の間に、米国、南米、タイ、アフリカで実施・完了したHIVワクチン臨床試験(phase 1:25試験、phase 2a:2試験)に参加し、血清反応陰性だった2,176例を対象に行われた。VISP判定には、FDA認可の一般的な三つのEIAキットが使われ、HIVのルーチン診断アルゴリズムを用いてVISP頻度が評価された。主要評価項目は、EIAキットで反応があり(一つ以上)、ウエスタンブロット法陰性あるいは境界型/非定型陽性、核酸検査HIV-1陰性と定義されたVISPの頻度とした。ワクチンの種類で異なる対象2,176例のうち、908例(41.7%、95%信頼区間:39.6%~43.8%)でVISPが認められた。VISPの頻度はワクチンの種類によって異なることが認められた。アデノウイルス5型ワクチンでは86.7%(95%信頼区間:83.3%~89.7%、399/460例)、ポックスウイルスワクチン単独あるいはブースト接種では53.4%(同:49.2%~57.7%、295/552例)、DNA単独ワクチンでは6.3%(同:4.4%~8.7%、35/555例)だった。また全体で、VISPの占める割合が最も多かったのは、HIV 1/2(rDNA)EIAキットで40.9%(891/2,176検査)、rLAV EIAキットは21.4%(150/700検査)、HIV-1 Plus O Microelisa Systemキットは14.7%(193/1,309検査)、HIV 1/2 PeptideキットとHIV 1/2 Plus Oキット合わせて8.8%(189/2,150検査)だった。なお、VISPだった908例のうち、HIV 1/2(rDNA)EIAキットで反応なしだった被験者は17例(1.9%)だった。グリコプロテイン140ワクチン接種者(70例)は全例でVISPが認められた。そのうち94.3%が三つすべてのEIAキットで反応がみられた。VISPでウエスタンブロット法の結果を有していた901例について、92例(10.2%)がウエスタンブロット法陽性(ワクチン製品タイプによらず非定型陽性)、592(65.7%)が同境界型陽性だった。VISPだった被験者のうち、エンベロープ遺伝子を含まないワクチンを接種されたのは8例だけだった。これらからCooper氏は、「HIVワクチン接種者のVISPはよくみられることで、特にHIV-1エンベロープ遺伝子と集団特異的なコア抗原遺伝子タンパクを含むワクチンで多い。VISPの発現はワクチンによる免疫獲得によるもので、EIA法での検出が有用であることが明らかになった」と結論している。(医療ライター:朝田哲明)

4073.

医療・介護施設にも最適 業務用空気清浄機『光クリエール』を新発売

ダイキン工業株式会社は22日、ウイルスの活動を抑制する当社独自の「光速ストリーマ」技術を搭載した業務用空気清浄機『光クリエール』を10月25日より発売すると発表した。空気清浄機は一般家庭だけでなく、医療・介護施設や学校など、人が集まる空間でのニオイや菌・ウイルス除去へのニーズが急速に伸びている。2009年に発売した「光速ストリーマ」技術搭載の店舗・オフィスエアコンやバス車内用ウイルス除去システムにも活用されている。今回新たに発売される商品は、大風量かつ高速電子から生まれる活性種によってウイルス抑制、除菌、脱臭効果を発揮する同社の「光速ストリーマ」技術を搭載することで、100ミリ平方メートルの大空間を1台で除菌できるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.daikin.co.jp/press/2010/100722/index.html

4074.

PEG施行時の創傷感染に対する新たな予防戦略

経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)施行患者の創傷感染の予防では、PEGカテーテル挿入時のコ・トリモキサゾール液[トリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST)合剤、商品名:バクタ、バクトラミンなど]の投与は、従来のPEG施行前のセフロキシム(商品名:オラセフ)の予防投与と同等の予防効果を有することが、スウェーデン・カロリンスカ研究所分子外科学のJohn Blomberg氏らによる無作為化試験で示された。PEGの合併症である創傷感染の予防法として、通常、PEG開始直前に第2世代セファロスポリンの静脈内投与が行われるが、高価で時間がかかり、PEGが完遂できない患者に無駄に投与している場合もあるという。BMJ誌2010年7月10日号(オンライン版2010年7月2日号)掲載の報告。新たな予防戦略と従来の予防投与を比較する二重盲検無作為化対照比較試験研究グループは、PEG施行時の抗生物質予防投与の簡便な治療戦略について検討するために、単一施設における二重盲検無作為化対照比較試験を行った。2005年6月~2009年10月までに、カロリンスカ大学病院内視鏡部でPEGを施行された234例が対象となった。これらの患者が、PEGカテーテル挿入直後にコ・トリモキサゾール経口液20mLを投与する群あるいは従来法であるPEGカテーテル挿入前にセフロキシム1.5gを静脈内に予防投与する群(対照群)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、PEGカテーテル挿入後14日以内における臨床的に顕性化した創傷感染の発症とした。副次的評価項目は、細菌培養および血液検査(高感度C反応性蛋白、白血球数)における陽性率とした。intention-to-treat解析、per-protocol解析ともに非劣性の条件を満たす234例のうち、コ・トリモキサゾール群に116例が、対照群には118例が割り付けられた。intention-to-treat(ITT)解析では、PEGカテーテル挿入後のフォローアップ期間7~14日における創傷感染の発症率は、コ・トリモキサゾール群が8.6%(10/116例)、対照群は11.9%(14/118例)であり、むしろ新規予防戦略群が3.3%(95%信頼区間:-10.9~4.5%)低かった。per-protocol解析(対象は両群とも100例ずつ)による創傷感染の発症率は、コ・トリモキサゾール群10%、対照群13%であり(両群間の差:-3.0%、95%信頼区間:-11.8~5.8%)、ITT解析と同様の結果であった。事前に規定された非劣性限界値は95%信頼区間上限値15%であった。intention-to-treat解析、per-protocol解析ともにこれを満たしたことから、セフロキシムに対するコ・トリモキサゾールの非劣性が確認された。副次的評価項目も、これらの知見を裏付ける結果であった。著者は、「PEG施行患者の創傷感染の予防では、PEGカテーテル挿入時のコ・トリモキサゾール液20mLの投与は、少なくともPEG施行前のセフロキシム予防投与と同等の効果を有する」と結論し、「この新たな予防戦略は迅速に施行できるうえに安価で安全であり、不必要な投与も減少し、PEGが行われる地域ならば世界中どこでも使用可能である」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

4075.

HIV患者の併用抗レトロウイルス治療を看護師に任せてよいか?

併用抗レトロウイルス療法(ART)を受けているHIV患者の管理を、訓練を受けた看護師が行っても、医師よる治療と同等の効果が得られることが、南アフリカWitwatersrand大学のIan Sanne氏らが行った無作為化試験(CIPRA-SA試験)で示された。併用ARTはAIDS関連疾患や関連死を著明に低減することが示されている。先進国では、耐性検査を含む頻回の検査のサポートのもとで、専門医があらゆる薬剤を駆使してHIV治療を行っている。しかし、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国など医療資源が乏しい環境において併用ARTの使用を拡大するには、医師から他のケア提供者へ職務を移行する必要があるという。Lancet誌2010年7月3日号(オンライン版6月16日号)掲載の報告。看護師と医師によるART治療を比較する非劣性試験CIPRA-SA試験の研究グループは、HIV患者のART治療の管理を医師が行う場合と、これを看護師が行う場合のアウトカムを比較する無作為化非劣性試験を実施した。南アフリカの二つのプライマリ・ケア施設から、CD4細胞<350個/μL、WHO stage 3/4のHIV陽性患者が登録され、看護師によるART治療群と医師によるART治療群に無作為に割り付けられた。治療割り付け情報は患者にも、データ解析者にも知らされなかった。主要評価項目は、治療失敗に関する複合エンドポイント(治療を制限するイベント、全死亡、ウイルス学的失敗、治療を制限する毒性、受診予約に対するアドヒアランス)とした。治療失敗のハザード比の95%信頼区間上限値が<1.40の場合に、医師の治療に対して看護師による治療は非劣性であるとした。エンドポイントは看護師48%、医師44%、ハザード比1.09、95%信頼区間0.89~1.33医師によるART治療群に408例が、看護師によるART治療群には404例が割り付けられ、全例が解析の対象となった。治療失敗のエンドポイントは46%(371/812例)に認められ、そのうち看護師群は48%(192/404例)、医師群は44%(179/408例)であった。治療失敗の複合エンドポイントのハザード比は1.09、95%信頼区間は0.89~1.33であり、非劣性の上限以内であった。フォローアップ期間中央値120週における死亡は看護師群が10例、医師群が11例、ウイルス学的失敗はそれぞれ44例、39例、毒性が68例、66例、非受診が70例、63例であり、両群間で同等であった。著者は、「看護師によるART治療は、これを医師が施行した場合に比べ劣ることはなかった。この知見は、ART治療を適切な訓練を受けた看護師へ移行することを支持するものである」と結論している。(菅野守:医学ライター)

4076.

中咽頭がん患者の死亡リスク、HPV腫瘍陽性群は陰性群より58%低い

ヒトパピローマウイルス(HPV)腫瘍陽性は、中咽頭がん患者生存の強い独立した予後因子であることが明らかにされた。HPVに起因する中咽頭扁平上皮がんの生存率は良好だが、HPV腫瘍が有意な独立予後因子であるかどうかはわかっていなかった。テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのK. Kian Ang氏らが、ステージIII、IVの中咽頭がん患者を対象にHPV腫瘍と生存率との関連を後ろ向きに分析した結果による。NEJM誌2010年7月1日号(オンライン版2010年6月7日号)掲載より。放射線療法の違いによる死亡リスクの有意差は認められなかった被験者は、放射線療法に関する加速分割照射法(360例)と通常分割照射法(361例)を比較する無作為化試験「RTOG 0129」の参加者[両群ともシスプラチン(商品名:ブリプラチンなど)併用]で、頭頸部に扁平上皮がんを有していた。そのうち、中咽頭がん患者でHPV腫瘍の状態が判明した323例を、HPV陽性がん(206例、63.8%)とHPV陰性がん(117例)に分類し、比例ハザードモデルを用いて両群間の死亡リスクを比較した。被験者登録は2002年7月から2005年5月に行われ、追跡期間の中央値は4.8年だった。試験全体の3年生存率は、加速分割照射法群(70.3%)と、通常分割照射法群(64.3%)で同等だった(P=0.18)。加速分割照射法群の死亡ハザード比は0.90(95%信頼区間:0.72~1.13)、有意差は認められなかった。グレードの高い急性(P=0.21)あるいは後発性(P=0.18)の毒性の発生率も両群で有意差はみられなかった。4つの因子で患者を、死亡リスク低~高の各群に分類中咽頭がんでHPV腫瘍陽性患者の3年生存率は、同陰性患者より良好だった(82.4%対57.1%、log-rank検定P<0.001)。年齢、人種、腫瘍・リンパ節転移ステージ、喫煙曝露、治療割り付けについて補正後、陽性群の死亡リスクは陰性群より58%低かった(ハザード比:0.42、P<0.001)。また死亡リスクは、喫煙曝露(箱-年)が増えるほど有意に増大した。さらに研究グループは、喫煙曝露の状況も判明していた被験者(266例)のデータを解析することで、「HPV腫瘍の状態(陽性か陰性か)」「喫煙曝露(10箱-年超か以下か)」「腫瘍ステージ(HPV陰性・10箱-年以下の患者でT2–T3かT4か)」「リンパ節転移ステージ(HPV陽性・10箱-年超の患者でN0–N2aかN2b–N3か)」の4つの因子で患者の死亡リスクを、低リスク群、中等度リスク群、ハイリスク群に分類できたことも報告している。(医療ライター:武藤まき)

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母乳を介した乳児へのHIV-1伝播を抑える

世界では毎年、約20万人の乳児が母乳を通してヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に感染し、その半数は治療を受けられずに2歳の誕生日を迎えることなく死亡している。米国ノースカロライナ大学のCharles S. Chasela氏らの研究グループはマラウイで、HIV-1の出産後伝播を抑えるため、授乳期間中の28週に行う母親への3剤抗レトロウイルス・レジメンと、乳児に行うネビラピン(商品名:ビラミューン)予防投与による伝播抑制の有効性について評価を行った。NEJM誌2010年6月17日号より。母親への介入群、子どもへの介入群と、対照群とを比較研究グループは、HIV-1陽性で、CD4+リンパ球数250個/mm3以上の授乳中の母親2,369例とその子どもを、抗レトロウイルス・レジメン群(母親)、ネビラピン群(乳児)、出産後抗レトロウイルス・レジメンを延長しない群(対照群)の3群にランダムに割り付けた。すべての母親と乳児には周産期予防処置として、ネビラピン投与1回と、ジドブジン+ラミブジンの併用投与を1週間行った。評価は、カプラン・マイヤー法を用いて、生後2週でHIV-1陰性だった乳児の28週におけるHIV-1伝播または死亡の累積リスクを推定し、log-rank検定を用いて比較した。HIV-1伝播、早期死亡の危険率が有意に低下試験対象となった2,369例の母子のうち、生後2週で乳児がHIV-1陽性だった割合は5.0%だった。生後2~28週におけるHIV-1伝播の推定リスクは、対照群が5.7%と他の2群より高く、母親投与群は2.9%(P=0.009)、乳児投与群は1.7%(P

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オセルタミビル予防的投与と集団隔離は、新型インフル感染封じ込めに有効だったか

2009年6月22日から6月25日にかけて、シンガポール軍キャンプ内で新型インフルエンザ(H1N1ウイルス)による4つの集団感染が発生した。防衛省バイオ防御センターのVernon J. Lee氏らは、このケースでオセルタミビル(商品名:タミフル)投与(1日1回75mg)による包囲予防薬物療法(ring chemoprophylaxis)を試み、その有効性を検証した。NEJM誌2010年6月10日号掲載より。感染者を隔離、感染者が出た部隊全員に予防投与試験では、感染が疑われた全隊員が検査を受け、感染が確認された隊員は入院隔離とした。そのうえで、ウイルスが拡散しないよう、オセルタミビルによる包囲予防薬物療法を施した。なお、部隊単位での隔離(感染者が出た部隊は他の部隊と接触しないよう隔離)も行われた。全隊員は毎週3回、ウイルス学的感染症有無のスクリーニング(鼻腔・咽頭スワブを採取し、定量的逆転写RT-PCR法と塩基配列決定法による)と、質問票による臨床症状評価のスクリーニングを受けた。4集団で、感染の危険に曝されていた隊員は計1,175人。1,100人がオセルタミビルによる予防投与を受けた。介入後は感染率が有意に低下介入前に感染していた隊員は75人(6.4%)だったが、介入後の感染は7人(0.6%)だった。全体の再生産数(1人の感染者が生産する2次感染者数)は、介入前の1.91(95%信頼区間:1.50~2.36)に対し、介入後は0.11(95%信頼区間0.05~0.20)と有意に減少した。4集団のうち3集団は、介入後の感染率が有意に減少した。分子疫学的解析の結果、この集団感染は4例ともニューヨーク由来のA/ニューヨーク/18/2009(H1N1)型ウイルスによるもので、感染各事例は集団内感染によるもので、無関係な事例からの感染ではないことが明らかにされた。オセルタミビルの投与を受けた隊員816例を調べたところ、63例(7.7%)で軽度の非呼吸器系の副作用が報告されたが、重度の有害事象はみられなかった。研究グループは、オセルタミビルの包囲予防薬物療法と、感染者(隊員)の迅速な同定と隔離は、セミ・クローズドな環境での新型インフル集団感染の封じ込めに有効だったと報告している。(医療ライター:朝田哲明)

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インフルエンザウイルスの家庭内感染率やウイルス排出パターン、新型も季節性も類似

家族がインフルエンザに感染し発症した場合、同居する家族への感染率やウイルス排出のパターンは、H1N1(新型)も季節性も類似していることが明らかにされた。香港大学Li Ka Shing医学公衆衛生校感染症疫学のBenjamin J. Cowling氏らが、約100人の患者とその同居する家族を対象に調べたもので、NEJM誌2010年6月10日号で発表した。患者と同居する家族300人弱のスワブについて、RT-PCR法とウイルス培養研究グループは、2009年7~8月にかけて、香港の14ヵ所の外来診療所を訪れた、急性気道疾患の患者348人のうち、インフルエンザ迅速診断キット「QuickVue」でA型ウイルスが確認された99人と、その同居する家族について調査を行った。発症後7日以内に3回訪問し、患者と同居する家族全員の鼻腔・咽頭スワブを採取し、定量的逆転写RT-PCR法とウイルス培養を行い、ウイルス排出や感染の有無を調べた。同居する家族の数は、新型インフルエンザが130人、季節性が154人だった。なお、QuickVue検査の感受性は、新型インフルエンザが80%、季節性インフルエンザが77%だった。新型と季節性、家族への二次感染までの日数も同等その結果、RT-PCR法でインフルエンザウイルスへの二次感染が認められた同居する家族の割合は、新型インフルエンザが8%(95%信頼区間:3~14)で、季節性インフルエンザが9%(同:5~15)と、同等だった。また、患者から家族への二次感染までの日数は、新型が3.2日(95%信頼区間:2.4~4.0)、季節性が3.4日(同:2.7~4.1)と同等だった。さらに、ウイルス排出は発症後5~7日後に終息するなど、パターンも類似していた。気道症状はまた、いずれも発症後10日まで持続した。なお、サブグループとして、試験開始時と回復時に血清検査を行い、RT-PCR法で感染が確認された家族19人のうち、新型に感染した11人の36%、季節性に感染した8人の50%で、ウイルス排出が認められなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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臨床検査結果をインターネット経由で入手可能に -BMLが臨床検査結果のWEB照会サービスを開始-

 臨床検査受託大手のビー・エム・エル(東京都渋谷区)は、医師が臨床検査結果をインターネット経由で閲覧できるサービス「WEB照会サービス」を開始した。インターネットを介することで半日から1日の時間短縮が見込める。 ビー・エム・エル(BML)社では従来、血液検査の場合、医療機関から検体を受け取った当日に検査を開始し、翌日までに検査結果が判明する。その検査結果が全国の営業所に伝送された後、現地にて出力し、検査結果が届くのが翌日午後であった。本サービスを利用すると、医師がインターネットを通じてアクセスすれば、検査結果が総合研究所内の専用サーバーに保存された時点で、検査結果を知ることができる。従来に比べて後工程が短縮されるため、医師は検査結果を得るまでの時間が半日から1日短縮できる。 特に細菌、病理検査は紙を使った結果報告であったため、総合研究所において得られた結果が全国の営業所に郵送された後、医療機関に届けられていた。本サービスでは、診断確定後、データサーバーに検査結果が格納されるため、画像やグラフ、数値などの検査結果を電子的に入手できるようになり、入手までの時間が1~2日ほど早くなる。診断結果によって治療内容が大きく異なる感染症、がんなどにおいてはより一層注目される。さらに、分離菌集計状況の集計、使用薬剤の耐性傾向の分析などの統計処理機能を備えており、院内感染対策にも活用できる。 この「WEB照会サービス」は、利用申込み後、電子証明書が発行され、利用するパソコンにインストールすることで本人確認が行われる。ID、パスワードは利用者ごとに発行され、データは暗号化されて取り扱われる。導入コスト、人的負荷、専門知識を必要としないため、導入や操作が簡単なことも医師にとってはありがたい。 5月にサービスを開始して依頼、診療所中心に毎日数十件を超える申し込みがあるという。BML社は幅広いユーザー層の利用を想定している。 電子カルテや他のWEBサービスとのデータ連関が実現すれば、サービスの充実化、拡大につながると考えられる。

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