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第13回 添付文書 その2:どこまで必要?添付文書の厳格さのさじ加減!

■今回のテーマのポイント1.医薬品の添付文書の記載に不備があった場合には、指示・警告上の欠陥として、製造物責任法が適用される2.添付文書の記載に不備があるか否かは、当該医薬品を処方する専門家である医師が理解するに足りるかという視点から判断される3.医薬品については、無過失補償制度である医薬品副作用被害救済制度があることから、同制度による救済範囲を狭めるべきではない。また、同時に制度の穴を埋めるべく前向きな議論がなされるべきである事件の概要平成14年7月5日にゲフィチニブ(商品名:イレッサ)は、肺がんの治療薬(内服薬)として、世界に先駆け、申請から承認まで半年と異例の短さで日本で承認されました。承認時点において、イレッサ®による間質性肺炎の報告は、国内外合わせて日本の3例(133人中)であり、死亡例はありませんでした。承認に際して、添付文書の「重大な副作用」欄の4番目に「間質性肺炎(頻度不明):間質性肺炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常がみとめられた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと」と記載し、かつ、承認条件として市販後の臨床試験を指示しました。しかし、承認から約3ヵ月で間質性肺炎および急性肺障害の副作用発症が22例(死亡11例)報告されました。平成14年10月15日、厚生労働省の指示により、添付文書が改訂され、間質性肺炎について「警告」欄を設けて記載すると同時に緊急安全性情報を作成し、医療機関等へ配布しました。このような流れの中、イレッサ®による間質性肺炎で死亡した患者3名の遺族が、製薬会社に対しては、製造物責任法または不法行為上の損害賠償責任として、国に対しては、国家賠償法上の損害賠償請求として、計7,700万円を請求しました。第1審では、製薬会社に対しては、「当該添付文書の記載(「警告」欄ではなく、「重大な副作用」欄の4番目に記載したこと)が指示・警告上の欠陥である」として製造物責任法上の責任を認め、国に対しては、イレッサ®を薬事承認したことについて違法性はないものの、「承認後、間質性肺炎による死亡事例が出たにもかかわらず、10月15日まで添付文書を改訂するよう指導しなかったことは国家賠償法上違法である」とし、計1,760万円の損害賠償責任を認めました。これに対し、控訴審は、下記の通り判示し、原判決を破棄し、原告の請求を棄却しました。*なお本件は、現在、最高裁判所(以下、最高裁)に係属中であり、判断が待たれています。事件の経過●患者A(31歳)の経過平成13年2月頃から咳嗽が続き、6月頃からは咳嗽に加え、左胸痛が認められるようになったことから、同年9月13日D病院に検査入院となりました。検査の結果、肺腺がんでⅣ期と診断されました。その後、化学療法は行わず、丸山ワクチンを受けていましたが改善を認めず、胸水も貯留してきたため、同年11月29日D病院に入院しました。その時点で多発性骨転移が認められ、がん性疼痛も生じたため、化学療法が開始されました。腫瘍の縮小は認められなかったものの、自覚症状の改善が一定程度みられたことから、平成14年2月11日に退院となり、外来化学療法を行っていました。しかし、化学療法の副作用による、吐気、食思不振、脱毛が強かったため、同年7月1日を最後に外来化学療法は中止されました。同年7月19日の時点で、小脳、脳幹、大脳に多発転移が認められました。そのような折、Aの父がインターネットでイレッサ®の存在を知り、主治医と相談の上、8月15日より入院の上、イレッサ®の服用が開始されると同時に、多発性脳転移に対して放射線全脳照射を行いました。イレッサ®開始1ヵ月後に肺の腫瘍は約1/3にまで縮小を認め、自覚症状の改善もみられたことから、9月21日に退院となり、外来にてイレッサ®の服用を継続することとなりました。ところが、退院後最初の外来である10月3日に撮影した胸部X線写真上、気になる影があるといわれ、イレッサ®内服を中止の上、同日入院となりました。しかし、入院3日目から呼吸状態が悪化し、治療を行うも増悪。10月17日に呼吸不全にて死亡しました。●患者B(55歳)嗄声および呼吸困難のため平成14年6月に近医受診。肺がん疑いにてE病院を紹介受診したところ、肺腺がん(Ⅳ期)で左副腎に転移ありと診断されました。7月15日より入院にて化学療法が行われたものの、副作用が強く10月には中止されました。また、12月24日には多発性脳転移が認められたため、放射線全脳照射が行われました。平成15年1月28日、主治医Fは、BおよびBの妻よりイレッサ®による治療を求められました。しかし、平成14年10月15日にイレッサ®に関する緊急安全性情報がでていたことから、主治医Fは、「イレッサ®はがん細胞を狙い撃ちする抗がん剤で、20~30%の人に有効ですが、最近、重大な副作用として間質性肺炎が問題になっており、0.2~0.4%の方が肺炎で命を落としました」との緊急安全性情報等を踏まえた説明をしたところ、それでも治療を受けたいとの希望があり、入院にてイレッサ®の服用が開始されました。ところが、2月3日の胸部X線写真上、間質性陰影の増悪が認められ、その2日後には呼吸困難等が出現したことから、イレッサ®による間質性肺炎を疑い、服用を中止し、ステロイドパルス療法を行いました。しかし、翌日より真菌感染を引き起こしてしまい、2月11日に死亡しました。●患者C(67歳)平成11年12月、近医で胸部X線写真上、間質性陰影が認められ、G病院紹介受診。肺線維症の診断にて外来治療を受けていました。しかし、平成14年1月頃から血痰、咳嗽、胸痛等が認められるようになったため、同年4月15日にH病院を紹介され、精査目的で入院となりました。H病院での検査の結果、肺腺がん(III期)と診断され、化学療法が行われました。しかし、化学療法の効果はなく、副作用も強かったことから、7月には化学療法は中止されました。その後も呼吸状態、全身状態が悪化したため、同年9月2日から入院にてイレッサ®の服用が開始されました。しかし、服用開始2日目から間質性変化を認めるようになり、10月9日には、間質性肺炎が急性増悪し、ステロイドパルス療法を行ったものの、翌10月10日に死亡しました。事件の判決「本件添付文書第1版の記載はこれとは異なり、文書冒頭に警告欄が設けられていない。しかし、間質性肺炎は従来の抗癌剤等による一般的な副作用であり、イレッサを処方するのは癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であり、当該医師は、薬剤性間質性肺炎により致死的事態が生じ得ることを認識していたものといえる。仮にその医師に、「分子標的薬には従来の抗癌剤に生じる副作用が生じない」という医学雑誌記事等に基づく予備知識があったとしても、本件添付文書第1版は、イレッサの適応を「手術不能・再発非小細胞肺癌」に限定し、「重大な副作用」欄に間質性肺炎を含む4つの疾病又は症状を掲げていたのであり、添付文書を一読すれば、イレッサには4つの重大な副作用があり、適応も非小細胞肺癌一般ではなく、手術不能・再発非小細胞肺癌に限定されていることを読み取ることができ、それを読む者が癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医であるならば、それが副作用を全く生じない医薬品とはいえないものであることを容易に理解し得たと考えられる。これらの医師が、仮に本件添付文書第1版の記載からその趣旨を読み取ることができなかったとすれば、その者は添付文書の記載を重視していなかったものというほかない。イレッサについての臨床試験等の結果が前記記載のとおりであったにもかかわらず、肺癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医を対象とした本件添付文書第1版の記載の違法性の判断において、「間質性肺炎の副作用について文書冒頭に警告欄を設けないのは違法である」、「警告欄について赤枠囲いをしないのは違法である」等として、添付文書の内容如何ではなく、目に訴える表示方法を違法性の判断基準として取上げるとすれば、それは司法が癌専門医及び肺癌に係る抗癌剤治療医の読解力、理解力、判断力を著しく低く見ていることを意味するのであり、真摯に医療に取り組むこれら医師の尊厳を害し、相当とはいえない。警告欄のない本件添付文書第1版に指示・警告上の欠陥があったということはできない。・・・以上のとおり、「重大な副作用」欄中の1番目から3番目までに掲げられた副作用も、4番目の間質性肺炎と同様に、いずれも重篤な副作用に区分され、当該患者の全身状態等によっては、そのいずれもが死亡又は重篤な機能不全に陥るおそれのあるものであり、また、評価対象臨床試験において間質性肺炎が高い割合で発現していたとはいえない状況にあったものである。しかも、本件添付文書の説明の対象者が癌専門医及び肺癌に係る抗癌剤治療医であり、また、イレッサについての評価対象外臨床試験等の結果における死亡症例についてイレッサ投与との因果関係の認定を揺るがす症状又は現象が存在していたことに照らせば、間質性肺炎を本件添付文書第1版の「重大な副作用」欄の4番目に掲げ、1番目に掲げなかったことをもって、指示・警告上の欠陥があったものということはできないものというべきである」(東京高判平成23年11月15日判時2131号35頁)ポイント解説今回は、前回に引き続き添付文書について解説させていただきます。前回の判例は、添付文書に反した場合の法的取扱いについてでした。今回解説する判例は、添付文書の記載に不備があった場合の取扱いについてです。本判決の最大の特徴の1つは、抗がん剤であるイレッサ®による副作用被害に対し、製造物責任法(PL法)を適用したことです。製造物責任は、1960年代にアメリカの判例理論として形成され、「不法行為の要件である過失がなくても、その物に欠陥があった場合には、損害賠償責任を認める」という無過失責任の1つです。平成6年にわが国で製造物責任法が成立するにあたって、副作用が出ることが必然である医薬品に対して、製造物責任法を適用すべきか否かが議論されました。すなわち、副作用を欠陥とした場合には、一定の確率で必然的に生ずる副作用被害をすべて製薬企業が賠償しなければならなくなるおそれがあるからです。さまざまな議論の末、最終的には、同法4条1号において、「当時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかった場合には、免責する」という開発危険の抗弁を認め、医薬品に対しても製造物責任法を適用することとなりました。ただ、開発危険の抗弁における「「科学又は技術に関する知見」とは、科学技術に関する諸学問の成果を踏まえて、当該製造物の欠陥の有無を判断するに当たり影響を受ける程度に確立された知識のすべてをいい、それは、特定の者が有するものではなく客観的に社会に存在する知識の総体を指すものであって、当該製造物をその製造業者等が引き渡した当時において入手可能な世界最高の科学技術の水準がその判断基準とされるものと解するのが相当である。そして、製造業者等は、このような最高水準の知識をもってしても、なお当該製造物の欠陥を認識することができなかったことを証明して、初めて免責されるものと解するのが相当である」(東京地判平成14年12月13日判タ1109号285頁)とされており、開発危険の抗弁は、非常に限定的な場合にしか認められないこととなっています。その一方で、製造物責任法における欠陥とは、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」(同法2条2項)と定義されたことから、医薬品における設計上の欠陥とは、「医薬品は、適正な使用目的に従い適正に使用された場合にも、人体に有害な副作用をもたらす場合があることを避けられない。それにもかかわらず医薬品が使用されるのは、副作用による有害性の程度が、その医薬品の有効性を考慮するとなお許容され得るからであると解される。このような医薬品の特性にかんがみれば、当該医薬品に副作用があることをもって直ちに設計上の欠陥があるとはいえず、副作用による有害性が著しく、その医薬品の有効性を考慮してもなお使用価値を有しないと認められる場合に、当該医薬品について設計上の欠陥が認められるものというべきである」(本判例第1審)と医薬品の特徴に応じた判断がされています。また、製造物責任法上の欠陥には、設計上の欠陥だけでなく、取扱説明書の記載不備のような指示・警告上の欠陥もあります。本判例第1審において、「医薬品は、副作用による有害性の程度が、その有効性を考慮した場合に許容される限度を超えないものとして、設計上の欠陥を有するとは認められない場合にも、個別の患者がその副作用による被害を受けることを防止するため、なお適切な指示・警告を必要とし、これを欠く場合には、指示・警告上の欠陥を有するものと認められる。そして、医薬品が指示・警告上の欠陥を有するかどうかは、当該医薬品の効能、効果、通常予見される処方によって使用した場合に生じ得る副作用の内容及び程度、副作用の表示及び警告の有無、他の安全な医薬品による代替性の有無並びに当該医薬品を引渡した時期における医学的、薬学的知見等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきものと解される。そして、添付文書は、上記のとおり、法の規定に基づいて、医薬品の製造業者又は輸入販売業者が作成するものであり、その投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載されるものであって、医薬品を治療に使用する医師等が必ず確認し、そこに記載された使用上の注意事項に従わなければならないものであるから、医薬品の副作用等その安全性を確保するために必要な使用上の注意事項は基本的に添付文書に記載されていなければならないものというべきであり、これを欠く場合には他の方法により安全管理が十分に図られたなどの特段の事情のない限り、指示・警告上の欠陥があると認めるのが相当である。なお、医療用医薬品のように医師等が使用することが予定されているものについては、これを使用することが予定された医師等の知識、経験等を前提として、当該医師等が添付文書に記載された使用上の注意事項の内容を理解できる程度に記載されていれば足りるものと解される」と判示されているように、医薬品における指示・警告上の欠陥は、原則的に添付文書の記載によって判断されることとなります。また、処方箋薬の添付文書の記載に不備があったか否かは、上記判示の通り、専門家である医師が理解するに足りるかという視点から判断されることとなります。本件第1審においては、「重大な副作用」欄の4番目に書かれたことをもって、指示・警告上の欠陥であるとして、製造物責任法上の損害賠償責任を認めました(「4番目判決」)が、高裁においては、「4番目に書かれていたとしても、本件添付文書の説明の対象者が癌専門医及び肺癌に係る抗癌剤治療医であること等から、指示・警告上の欠陥とはいえない」として、損害賠償責任を認めませんでした。本判決のもう1つの大きな特徴は、第1審において、添付文書に警告欄を設けるよう指導しなかったとして、国の責任を認めたことです。薬事法上、医薬品を製造販売するためには、厚生労働大臣による承認が必要となります(薬事法14条1項)。この承認を受けるために製薬企業は治験を行うわけですが、被験者の数は限られますので、稀な副作用は、上市後に、多くの患者に使用されなければわからないことがある等限界があります。だからといって治験において安全性を過度に追及すると、今度は承認が大きく遅れ、薬がないために治療できない患者が出てきてしまいます(ドラッグ・ラグ)。薬事承認においてはこのように、安全性と迅速性のバランスが常に求められることとなり、わが国では、諸外国と比べて大きく迅速性に欠ける、換言すればドラッグ・ラグが長く、適時に必要な薬が患者に届かず場合によっては生命を落とすという状況となっています。そのようなわが国の現状において、製造物責任をテコに国に損害賠償責任を認めるとなると、結局のところ国は、薬事承認において安全性に大きく判断ウエイトを置くこととなり、ますますドラッグ・ラグが加速するのではないかという懸念がでてきます。本件の東京高裁判決は第1審を覆し、国の責任を否定しましたが、現在最高裁で係争中であり、その判断が待たれています(*2013年4月2日の報道では、「国に対する請求については上告が受理されず遺族敗訴が確定し、製薬企業に対する請求は受理されたものの弁論を開くことなく2013年4月12日に判決が出される」とのことです)。●添付文書再考本連載で、2回にわたって、添付文書について解説してきました。製薬企業自らが作成する添付文書に対し、内容が不足していると製薬企業に対し厳格に製造物責任を問われることとなれば、製薬企業としては、できうる限りのことを添付文書に記載する方向にインセンティブが働きます。その結果、本来の薬の適用対象にまで慎重投与として警告が付されたり、場合によっては禁忌とするなど、実医療とはかけ離れた添付文書が作成されることとなります。しかし、医師がそのような添付文書の記載に形式的に反した場合には、前回の判例により過失が推定されてしまうことから、結果的に、医師が萎縮してしまい、患者が適切な治療を受けられなくなるという悪循環が生ずるおそれがあります(図1)。図1 添付文書の厳格性のジレンマ画像を拡大するこのように添付文書に過度の法的意義を持たせることは、患者にとってマイナスの効果を生じかねませんし、そもそも、過剰な警告文書はアラートとしての機能を喪失してしまうことから、その意味においても患者にとって危険となります。●医薬品副作用被害救済制度2つの判決を異なる視点でみてみましょう。医薬品によって生じた副作用被害に対しては、公的に医薬品被害救済制度が整備されています(独立行政法人医薬品医療機器総合機構法15条1項)。製薬企業が拠出金を出し合い基金をつくり、副作用被害が生じた場合には、そこから医療費や障害年金、遺族年金が支払われます(同法16条1項)。医薬品の副作用被害については、すでに公的な無過失補償制度ができているのです。しかし、本制度の給付対象外として、表が定められています。みていただければわかるように、前回の判例は2-(1)に該当し、今回の判例は、2-(1)および4に該当します。つまり、添付文書に関する訴訟は、この医薬品副作用被害救済制度から漏れてしまっているために止むを得ず生じているのです。実際、本件第1審で国が敗訴した後に「制度の穴」を埋めるべく厚生労働省内で、「抗がん剤等による健康被害の救済に関する検討会」が立ち上げられました(残念ながら、高裁にて国が勝訴したため、平成24年8月10日の同検討会によるとりまとめにおいて見送りとされました)。表 医薬品副作用被害救済制度除外事由画像を拡大する●まとめ2回にわたり解説したように、添付文書に製造物責任を厳格に問うことは、製薬企業自らの責任回避のために添付文書の過度な長文化・不適切化を生じさせます。そのような状況下で添付文書を不磨の大典のごとく扱うと萎縮医療を生み出し、結果として患者が適切な医療を受けることができなくなります。さらに、添付文書の指示・警告上の欠陥をテコに国に責任を認めるとドラッグ・ラグが加速し、適切な医薬品が患者のもとに届かなくなってしまいます(図2)。図2 添付文書厳格化による問題点画像を拡大するもちろん、副作用被害の救済はできうる限り行われるべきです。しかし、その方向は、無過失補償制度による救済範囲を広げる方向で行われるべきであり、個別事案における救済に固執するあまり、制度全体に問題を生じさせてしまっている現状を認識すべきものと思われます。すなわち、添付文書に対し指示・警告上の欠陥を広く認めることは、一般的には、医薬品副作用被害救済制度の除外事由を広げること(=救済範囲を狭めること)となりますし、添付文書違反に対し過失の推定をかけることも同様に、医薬品副作用被害救済制度の除外事由を広げること(=救済範囲を狭めること)になるのです。添付文書に関する紛争は、医薬品副作用被害救済制度に穴があるために生じています。いがみ合い、争う方向に進めるのではなく、手に手を取って「制度の穴」を埋める方向に進んでいくことを切に願います(図3)。図3 副作用被害の早急な救済のモデル画像を拡大する裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)東京高判平成23年11月15日判時2131号35頁東京地判平成14年12月13日判タ1109号285頁

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下腿潰瘍治癒を促す新たな抗菌薬療法として、PDTが有望

 慢性下腿潰瘍や糖尿病性足潰瘍の創傷部の細菌コロニーへの光線力学的療法(PDT)は、創傷部の治癒をもたらす有意な滅菌効果があり、新たな抗菌薬療法として有望視されることが、英国・ダンディー大学ナインウェルズ病院のS. Morley氏らによる第IIa相無作為化プラセボ対照試験の結果、報告された。耐性菌の問題が増す中で、新たな抗菌薬療法として開発されたPDTは、光線活性化による滅菌作用によって広範囲の抗菌スペクトラムを発揮し、さまざまな臨床的適用が可能とされている。British Journal of Dermatology誌2013年3月号(オンライン版2013年1月18日号)の掲載報告。 研究グループは、慢性下腿潰瘍または糖尿病性足潰瘍の細菌コロニーへのPDT適用(光増感剤PPA904使用)により細菌数が減少するかどうか、および創傷治癒をもたらすかどうかを検討した。 慢性下腿潰瘍患者16例と糖尿病性足潰瘍患者16例を、それぞれ8例ずつ盲検下にてPDT治療群とプラセボ群に割り付けた。細菌数の量的測定を行った後、15分間、創傷部に局所的にPDTまたはプラセボ治療が行われ、直後に赤い光線による50Jcmからの照射を行い、再び創傷部の微生物学的定量測定が行われた。 創傷部について、治療後最長3ヵ月間追跡した。 主な結果は以下のとおり。・全被験者(32例)は、3ヵ月超の潰瘍症状、10cm超の細菌コロニーを有していた。・PDT群の忍容性は良好で、疼痛、その他の安全性上の問題に関する報告はなかった。・またプラセボ群と比べてPDT群では、治療後の細菌数の有意な減少が認められた(p<0.001)。・3ヵ月後の時点で、慢性下腿潰瘍でPDT治療を受けた患者では50%(8例のうち4例)が完全な治癒を示した。一方でプラセボ群では12%(8例のうち1例)であった。・以上のように、創傷治癒に向かわせる明らかな傾向が観察され、より多数の患者による、さらなる検討が妥当であることが示された。

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新たな核酸医薬品miR-122阻害薬ミラヴィルセン、慢性C型肝炎の治療に有望/NEJM

 C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型の慢性感染患者に対し、microRNA-122(miR-122)阻害薬ミラヴィルセンは、用量依存的にHCV RNA濃度を低下することが示された。オランダ・エラスムス大学病院のHarry L.A. Janssen氏らが行った国際共同第2a相無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2013年3月28日号で発表した。ミラヴィルセンは、ロックド核酸-修飾DNAホスホロチオエート・アンチセンスオリゴヌクレオチドで、成熟したmiR-122を安定したヘテロ二本鎖に隔離することで、その機能を阻害する新たな核酸医薬品である。ミラヴィルセンを週1回、5回投与し18週間追跡 試験は7ヵ国共同で行われ、HCV遺伝子型1型の慢性感染患者36例について、ミラヴィルセンの有効性と安全性を評価することを目的とした。 被験者は無作為に、ミラヴィルセンを体重1kg当たり3mg、5mg、7mgおよびプラセボを受ける群に割り付けられ、週1回の間隔で計5回、皮下注射を受けた。研究グループは被験者について試験開始後18週間にわたり追跡した。14週後にHCV RNA無検出、5mg/kg群で1例、7mg/kg群で4例 その結果、ミラヴィルセン投与群では、用量依存的にHCV RNA濃度の低下がみられ、投与期間が過ぎても同効果が持続した。ベースラインからの平均HCV RNA濃度の低下は、プラセボ群0.4 log10 IU/mLに対し、3mg/kg群1.2 log10 IU/mL(p=0.01)、5mg/kg群2.9 log10 IU/mL(p=0.003)、7mg/kg群3.0 log10 IU/mL(p=0.002)だった。 追跡14週時点で、HCV RNAが検出されなかったのは、5mg/kg群で1例、7mg/kg群で4例だった。 また安全性については、ミラヴィルセン投与の用量制限毒性はみられず、HCVゲノムのmiR-122結合部位におけるエスケープ変異も認められなかった。

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アジスロマイシン、非嚢胞性線維症性気管支拡張症の感染増悪を抑制/JAMA

 非嚢胞性線維症性(non-CF)の気管支拡張症の維持療法として、マクロライド系抗菌薬であるアジスロマイシン(商品名:ジスロマック)の12ヵ月間毎日投与法が有用なことが、オランダ・アルクマール医療センターのJosje Altenburg氏らが実施したBAT試験で示された。気管支拡張症では、小~中径の気管支にX線画像上特徴的な病的拡張と粘膜肥厚を認め、気管支壁の構造的異常により下気道クリアランスが低下して慢性的な細菌感染や炎症を来すという悪循環を呈する。マクロライド系抗菌薬は嚢胞性線維症やびまん性汎細気管支炎に対する効果が示されているが、non-CF気管支拡張症にも有効な可能性が示唆されている。JAMA誌2013年3月27日号掲載の報告。マクロライド系抗菌薬維持療法の有効性を無作為化試験で評価 BAT(Bronchiectasis and Long-term Azithromycin Treatment)試験は、成人のnon-CF気管支拡張症に対するマクロライド系抗菌薬による維持療法の有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験。 対象は、前年に下気道感染症に3回以上罹患し抗菌薬治療を受けた18歳以上のnon-CF気管支拡張症の外来患者とした。これらの患者が、アジスロマイシン250mg/日を投与する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、12ヵ月の治療が行われた。 1次エンドポイントは12ヵ月の治療期間中に感染増悪を来した患者数とし、2次エンドポイントは肺機能、喀痰培養、炎症マーカー、有害事象、QOLなどであった。治療期間中の感染増悪率:46 vs 80% 2008年4月~2010年9月までにオランダの14施設から83例が登録され、アジスロマイシン群に43例(平均年齢59.9歳、女性63%)、プラセボ群には40例(64.6歳、65%)が割り付けられた。 治療終了時に感染増悪を認めた患者数中央値はアジスロマイシン群が0例、プラセボ群は2例であった(p<0.001)。治療期間中に1回以上の感染増悪を来した患者数中央値はアジスロマイシン群が20例(46%)、プラセボ群は32例(80%)であった[ハザード比(HR):0.29、95%信頼区間(CI):0.16~0.51]。 混合モデル解析では、予測値に対する1秒量の経時的な変化に両群間で差を認め、アジスロマイシン群では3ヵ月ごとに1.03%ずつ上昇したのに対し、プラセボ群は0.10%ずつ低下した(p=0.047)。 消化管の有害事象の発生率はアジスロマイシン群が40%と、プラセボ群の5%に比べ高頻度であり、腹痛の相対リスクが7.44(95%CI:0.97~56.88)、下痢の相対リスクは8.36(95%CI:1.10~63.15)であったが、治療の中止を要する患者はいなかった。 薬剤感受性試験では、アジスロマイシン群(20例)のマクロライド系抗菌薬耐性率は88%(53/60例)と、プラセボ群(22例)の26%(29/112例)に比べ有意に高かった(p<0.001)。 治療終了時のQOLはアジスロマイシン群がプラセボ群に比べ有意に良好であった(p=0.046)。 著者は、「non-CF気管支拡張症の成人患者に対するアジスロマイシン12ヵ月投与はプラセボに比べ感染増悪率が良好であった」とまとめ、「感染増悪の抑制がQOLの改善をもたらした可能性があり、生存への良好な影響も期待されるが、薬剤耐性の影響を考慮する必要がある」と指摘している。

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ソホスブビル+リバビリン併用12週治療で、慢性HCV患者のSVR24達成/Lancet

 肝硬変のない未治療の慢性C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1の患者に対する、NS5Bポリメラーゼ選択的阻害薬ソホスブビルのペグインターフェロンα-2a+抗ウイルス薬リバビリン(商品名:レベトールほか)との併用12週間治療の有効性と安全性を検討した第2相試験「ATOMIC」の結果が報告された。本試験は、同患者に対する標準療法の24週間治療法(ポリメラーゼ阻害薬+リバビリン)と同等の効果が、ソホスブビルレジメンの12週間治療法で認められるか、また同レジメン12週投与後にソホスブビル単独療法もしくはソホスブビル+リバビリン併用投与を12週間追加した場合のあらゆるベネフィットを調べることが目的であった。Lancet誌オンライン版2013年3月14日号掲載の報告より。12週治療、24週治療、12週+単独等の3つのコホートで検証 ATOMIC試験は、2011年3月23日~2011年9月21日に、米国、プエルトリコの医療施設42ヵ所で患者を登録して行われたオープンラベル無作為化第2相試験であった。慢性HCV感染症(遺伝子型1、4、5、6)で18歳以上、HCV感染症未治療の患者を適格とした。 研究グループは、遺伝子1型を有するHCV患者を無作為に1対2対3の割合で、ABCの3つのコホートに割り付けた。また、IL28B遺伝子型タイプ別(CC対非CC)、HCV RNA別(<800000 IU/mL対≧800000 IU/mL)での階層化も行った。 コホートAはソホスブビル400mgとペグインターフェロン+リバビリンの12週間投与、コホートBは同24週間投与を、コホートCは同12週間投与後ソホスブビル単独12週間投与もしくはソホスブビル+リバビリン12週間投与を受けた。 コホートBには遺伝子型1以外を有する患者も登録した。 主要有効性エンドポイントは、intention-to-treat解析にて評価した24週時点の持続的ウイルス学的著効(SVR24)の達成とした。3コホートのSVR24達成患者の割合に有意差なし HCV遺伝子1型の患者は316例が登録された(Aコホート52例、Bコホート109例、Cコホート155例)。またBコホートには、遺伝子型4の患者11例、同6の患者5例の患者が割り付けられた(遺伝子型5の患者は非検出)。 HCV遺伝子1型の患者において、SVR24の達成は、Aコホート46例(89%、95%信頼区間:77~96)、Bコホート97例(89%、同:82~94)、Cコホート135例(87%、同:81~92)であった。3群間のSVR24達成患者の割合に有意差は認められなかった(AコホートとBコホートの比較p=0.94、同Cコホートp=0.78)。 遺伝子型4の患者11例のうち9例(82%)および遺伝子型6の5例全員が、SVR24を達成した。 割り付けられた治療終了後の再発は7例(全例が遺伝子型1)だった。 試験中止となった最も頻度の高かった有害事象は、貧血と好中球減少症であり、ペグインターフェロン+リバビリン治療と関連していた。試験中止となったのは、Aコホート3例(6%)、Bコホート18例(14%)、Cコホート3例(2%)であった。 以上の結果を踏まえて著者は、「ソホスブビルの忍容性は良好であることが示された。また、12週以上治療を延長することのベネフィットは認められなかったが、これらの所見については第3相試験で実証する必要がある」と述べた上で、「本試験の結果は、ソホスブビルレジメン12週間治療について、肝硬変のある患者を含むなどより広範な遺伝子型1の慢性HCV患者においてさらなる評価を行うことを支持するものである」とまとめている。

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ポンペ病〔Pompe Disease〕

1 疾患概要■ 定義ポンペ病(OMIM232300)は糖原病II型(GSD-II)であり、1932年ポンペにより報告された。ポンペ病はライソゾームに局在する酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の酵素欠損によりライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積する。■ 疫学遺伝形式として、常染色体劣性遺伝形式をとり、頻度は約4万人に1人といわれている。■ 病因ポンペ病では酸性α-グルコシダーゼの酵素欠損により、ほぼすべての臓器にグリコーゲンが蓄積する。肝臓、筋肉、心臓、消化器系の平滑筋、膀胱、腎臓、脾臓、血管、シュワン細胞などの細胞、組織に蓄積する。内耳の絨毛にも蓄積するために難聴も呈する。肥大型心筋症は、乳児型のポンペ病では特徴的な症状である。骨格筋の組織変化は、筋の種類、部位によりさまざまで、グリコーゲンの蓄積の程度、障害度は異なる。病初期は小さい空胞が認められ、徐々にリポフスチン、ミトコンドリア膜などが大量に蓄積し、オートファゴゾームが形成される。とくにfast-twitch type 2線維に多くみられる。組織の線維化に伴い、年齢と共に二次的な組織変化を認め、酵素治療しても不可逆的変化を来す。オートファゴゾーム内にグリコーゲンが大量に蓄積している。■ 症状ポンペ病の発症は、患者により異なり、0~60代までいずれの年齢にも発症する。臨床的には(1)乳児型、(2)遅発型(小児型、成人型)に分類される(表1)。画像を拡大する1)乳児型通常、患児は生後1.6~2ヵ月で哺乳力の低下、発育障害、呼吸障害、筋力低下などの症状を呈し、発症する。平均診断年齢は生後4~5ヵ月である(図1)。心肥大が病初期より著明であり(図2)、心エコー上心筋の肥大、心電図ではhigh voltage、short P-R intervalなどを呈する。年齢とともに運動発達の遅れが著明となり、頸定も難しく、寝返り、座位もできない。腱反射の低下、舌が大きく、肝臓も中等度に腫大している。酵素補充療法を施行しないと、通常は平均6~8.7ヵ月で死亡する。1歳を超えて生存する患者は少ない。画像を拡大する画像を拡大する2)遅発型患者の発症年齢は残存酵素活性により異なる。生後1歳頃から62歳まで報告されている。筋力低下、歩行障害、朝の頭痛、特徴的な上ずった言葉、顔面筋の萎縮、呼吸障害、ガワーズ徴候などが比較的初期症状である(図3)。主に骨格筋、呼吸筋、舌筋、横隔膜筋、四肢の筋がさまざまな程度で障害を受ける。心筋を障害するタイプは、小児型といわれる非定形型のタイプで障害する。患者は徐々に呼吸障害、構音障害、歩行障害が強くなり、人工呼吸器の装着、車いす状態となり、最後は呼吸障害、気胸、肺炎などを合併して死亡する。通常、発症年齢は27~36歳、診断年齢は34~41歳、人工呼吸器使用年齢は37~47歳、車いす使用年齢は平均41歳である。画像を拡大する■ 分類臨床的には、前述のように乳児型と遅発型(小児型、成人型)に分類される(表1)。■ 予後とくに乳児型では心筋、ならびに骨格筋など全身の組織に蓄積することにより、心肥大、筋力低下を来し、通常心不全を呈し2歳までには死亡する。遅発型では筋力低下に伴う歩行障害から呼吸筋麻痺を来し、人工呼吸器をつける状態で肺炎、気胸などを合併し、死亡する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断としては、1)臨床的診断、2)病理学的診断、3)生化学的診断(酵素活性、バイオマーカーなど)、4)遺伝子診断などがある。1)臨床的診断(表2)特徴的な臨床症状のほか、乳児型では心電図、心エコー、血清CPKの高値を認める。遅発型でも筋力低下、血清CPK、アルドラーゼの高値を認める。心電図ではPR間隔の短縮、QRSの高電位などがみられる。筋CT、MRIは筋の萎縮、変性を評価するのに重要である。小児型、成人型では椎骨脳底動脈領域に動脈瘤を形成しやすい。画像を拡大する2)病理学的診断ポンペ病の病理学的診断は生検筋でのライソゾーム内でのグリコーゲンの蓄積に伴う空胞化で特徴づけられる。成人型ではあまり組織変化が顕著でない症例もある。乳児型では筋線維が大小不同、筋線維の崩壊、オートファジーの形成、ライソゾーム内に著明なグリコーゲンの蓄積、PAS陽性物質の蓄積が認められる。成人型でも軽度であるが、PAS陽性、酸性ホスファターゼ染色陽性である。電顕所見ではライソゾームが巨大化し、ミエリン様封入体の蓄積もみられる。筋原線維の断裂なども著明である。3)生化学的検査(1)酵素活性の測定酸性α-グルコシダーゼの活性は、人工基質である蛍光基質4- methylumbelliferone誘導体を用いて、患者乾燥濾紙血、あるいはリンパ球、皮膚線維芽細胞で測定して著明に低下する。確定診断として、リンパ球、皮膚線維芽細胞で測定する。患者の診断は比較的、酵素診断で可能であるが、正常者の中にはpseudodeficiencyもおり、正常値の20~40%の酵素活性を示す。日本人の頻度は多く、約50人に1人といわれ、遺伝子診断により患者と鑑別する。保因者は約50%の活性であり、pseudodeficiencyとの鑑別も重要である。出生前診断も可能である。(2)尿中のバイオマーカーの測定ポンペ病患者の尿では、オリゴサッカライドが排泄され、4糖を液体クロマトグラフィー、あるいはタンデムマスで測定する。4)遺伝子診断酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子は染色体の17q25.2-q25.3に局在する。GAA遺伝子は28kbでエクソンは20存在する。現在まで200以上の遺伝子変異が報告されている。最も多い変異は、乳児型あるいは成人型の一部でみられるc-32-13T>Gの遺伝子変異であり、欧米患者では約75%を占める。C1935C>Aは台湾に多く、cdel.525,delexon18変異はオランダなどのヨーローッパ諸国に多い。日本人ではc.1585_1589TC>GT、c1798C>Tが多くみられる変異として報告されている。pseudodeficiencyの遺伝子型としてはc1726G>A(p.G576S)、c2065 G>A (pE689K)が知られている。酵素活性は正常の20~40%程度を示す。頻度としては両者とも正常人の3~4%の頻度で見い出されている。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)最近、遺伝子工学により作成されたヒト型酵素アルグルコシダーゼα(商品名:マイオザイム)の酵素補充療法について、早期の治療による臨床症状の改善が報告されている。また、早期診断・治療のために新生児マス・スクリーニングの有用性が報告されている。ポンペ病の治療は、大きく分類して下記のような治療が挙げられる。1)対症療法●乳児型(1)心不全に対しての治療心筋の肥大、横隔膜の挙上などは呼吸障害の要因にもなる。心不全に対する強心薬、利尿薬などの投与、脱水に対する補液が必要。胸部X線、心エコーで病状をフォローする。(2)呼吸管理肺炎、細菌感染など起こしやすい。抗菌薬(マクロライド系)の投与、去痰薬の投与、排痰補助装置などのほか、必要に応じて酸素投与を行う。末期では人工呼吸器の装着をする。(3)嚥下障害に対する管理チューブ栄養などを行う。(4)リハビリテーション酵素補充療法とともに歩行訓練、四肢の運動などを補助する。(5)栄養管理嚥下できない患児に対しては、チューブ栄養、高蛋白食を基本として、高ビタミン、ミネラルを与える。●遅発型(1)呼吸管理初期のうちはタッピング、CPAP、人工呼吸管理など病状に応じて行う。呼吸状態を評価し、感染の予防、抗菌薬の投与、去痰薬の投与、CPAP、人工呼吸管理が必要。(2)嚥下障害の管理嚥下性肺炎の防止。(3)歩行障害に対しての管理歩行のためのリハビリ、装具の着装。(4)栄養管理高蛋白食、高ビタミン食、嚥下困難なときは刻み食、流動食。(5)感染症に対する管理感染症の管理、抗菌薬の投与。2)酵素補充療法酸性α-グルコシダーゼは、マンノース-6-リン酸あるいはIGF-IIレセプターを介して細胞内に効率良く取り込まれ、とくに肝臓、脾臓などの網内細胞に取り込まれる。しかし、心筋、あるいは骨格筋への取り込みは少ない。ポンペ病では、20mg/kgの高単位の酵素を投与することにより筋肉内に強制的に取り込みをさせている。早期治療した患者では著しい臨床症状の改善が認められている。Kishnaniは、乳児型ポンペ病(18例)において、52週の治療研究で95%の死亡率低下と侵襲的呼吸器装着を有意に低下させることができたと報告している。また、新生児マス・スクリーニングで発見され、生後1ヵ月以内に治療した患者では著明な成果が得られており、生存期間は、ほぼ正常な臨床経過を得ている。一方、遅発型の臨床試験では20mg/kg、2週間に1回の酵素補充療法により、6分間歩行ならびに呼吸機能の悪化を防ぐことができたと報告されている。ポンペ病の場合は、酵素に対する抗体産生により酵素治療に反応するgood responderあるいはpoor responderの症例が存在する。4 今後の展望1)シャペロン治療ファブリー病と同様にポンペ病患者の皮膚線維芽細胞レベルではN-butyldeoxynojirimycin(NB-DNJ)の添加により、一部の遺伝子変異のある患者で酸性α-グルコシダーゼ活性が50%以上、上昇する。しかし、いまだ臨床試験のレベルまでは達成していない。2)遺伝子治療レンチウイルスあるいはAAVベクターを用いてのin vivoポンペ病マウスでの遺伝子治療の成功例が報告されている。また、骨髄幹細胞へのex vivoでの遺伝子治療について、Lentiウイルスベクターを用いたポンペ病マウスへの治療に関しても報告されている。3)新生児スクリーニング乳児型のポンペ病では、とくに早期診断が治療と結びつき、重要と考えられる。台湾のChienらは20万6,088名の新生児を乾燥濾紙血を用いてマス・スクリーニングを行い、5名の患者を見出し、かつ生後1ヵ月以内に酵素補充療法を施行した結果、心拡大、筋に組織変化の改善を認め、いずれの症例も正常な発達ならびに呼吸障害を認めず、新生児スクリーニングの著明な成果を報告している。わが国でもパイロット的に新生児スクリーニングの開発が行われている。乳児型の早期診断、治療の重要性を示した貴重な成果と考えられる。5 主たる診療科小児科、神経内科、リハビリテーション科など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療・研究に関する情報日本ポンペ病研究会(医療従事者向け情報と一般利用者向けのまとまった情報)難病情報センター(医療従事者向け情報と一般利用者向けのまとまった情報)患者会情報全国ポンペ病患者と家族の会1)Hirschhorn R, et al. Glycogen Storage Disease Type II: Acid-Alpha Glucosidase (Acid Maltase) Deficiency. In: Scriver CR et al, editors. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed. NY: McGraw-Hill; 2001. p.3389-3420.2)Engel AG, et al. Neurology. 1973; 23: 95-106.3)Kishnani PS, et al. J Pediatr. 2006; 148: 671-676.4)衞藤義勝. ポンペ病(糖原病II型):診断と治療社.2009

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(61)〕 他人の糞便注入によるクロストリジウム・ディフィシル腸炎の治療に、明白な有効性を証明!

 近年、抗菌薬投与に伴うクロストリジウム・ディフィシル(C.ディフィシル)腸炎が欧米で流行し、binary toxin産生やニューキノロン耐性株による、重篤例・再燃例の増加が注目されている。本邦では、このような強毒株の流行はみられないものの、C.ディフィシル腸炎自体は広くみられており、院内感染対策上の重要な課題と捉えられている。 本症は、投与された抗菌薬により腸管内の正常細菌叢が抑制され、毒素産生性のC.ディフィシルが異常増殖して発症するものであり、重症例では偽膜性大腸炎の形をとる。C.ディフィシルは、遺伝子レベルで少数存在する例を含めれば、過半数の人の腸管に常在するが、病院や高齢者施設では、芽胞汚染による院内感染の事例も知られている。本症の治療には、C.ディフィシルに抗菌力を示すバンコマイシンやメトロニダゾールを投与すれば良いのだが、これらは栄養型には抗菌力を示すが、芽胞化して生き残るため、バンコマイシン治療を終えると芽胞から出芽し、再燃してくる。また、乾燥や消毒剤にも抵抗性の芽胞が病院を汚染し、二次感染を引き起こす事例も知られている。 C.ディフィシルは、正常な菌叢においては、乳酸菌やバクテロイデス、ユウバクテリウムなどの優勢菌に競りまけて、辛うじて細々と生きている。バンコマイシンを含め、抗菌薬を投与すると、これらの優勢菌種は大幅に減少し、C.ディフィシルなどの耐性化しやすい菌種が異常増殖するのである。すなわち、常在菌を復活させてC.ディフィシルを相対的に少数勢力に追い込むことが、永続的治癒には必要である。これまで、種々のプロバイオティクスが、常在菌の正常化、C.ディフィシル腸炎の再燃予防に試みられてきたが、必ずしもエビデンスのある結果は得られていない。 他人の常在菌を移植することが、最も手っ取り早く常在菌を復活させ、腸炎の治癒に導けるはずだと多くの専門家は予想してきた。しかし、他人の糞便を注腸することには患者さん自身に相当な心理的抵抗があり、また、移植による別の病原体による感染も危惧され、実際に行うことはかなり困難であった。1958年以来、85症例が散発的に報告され、75~85%の有効性が報告されてきているが、比較試験でのまとまった成績は報告されていなかった。 今回報告された論文は、2008~2010年にアムステルダムのAcademic Medical Centerが計画し、ドナーグループと移植細菌叢液を準備し、オランダ国内の病院に呼びかけて行った“open label randomized trial comparing donor feces infusion to 14days of vancomycin treatment for recurrent C.difficile infection”の報告である。 本試験では患者を以下の3 群に割り付けた。(1)バンコマイシン(500mg 1日4回、4日間)に続き、4Lのマクロゴールで腸洗浄後、糞便菌叢移植(2)14日間のバンコマイシン治療(3)14日間のバンコマイシン治療後、腸洗浄 除外規定(原疾患による予後3ヵ月以内、重症例など)に当てはまらない、承諾の得られた患者を、コンピューターで患者背景に偏りがないようにrandomに割り付けている。オランダの周到な実験計画による研究の報告である。すなわち、多くの感染因子の陰性を確認したドナーグループを編成し、ドナーの糞便採取直後に糞便溶液(多数の生きた嫌気性菌菌液)をセンターで調整し、6時間以内に該当病院に輸送して、十二指腸内に管で注入する方法である。C.ディフィシル腸炎の再燃であることが立証された例にバンコマイシンによる栄養型の除菌を行ったうえで、移植を行っている。比較対照群として、バンコマイシン投与のみの症例、バンコマイシン投与後腸洗浄例を用意しているが、効果に有意差が出るためには、各群最小40例必要と見なし、計140症例について試験が計画された。エンドポイントは再燃の有無であり、腸内フローラの経時的定量培養、血液検査も計画されている。 これだけの周到な準備のうえ、比較試験は開始されたが、各群十数例の検討を行い、糞便移植群で93.8%、対照群で23.1~30.8%という歴然とした有効率の差が観察された時点で、コントロール群に対する倫理性が問題とされ、比較試験は42/120例行ったところで中止された。また、コントロール群の希望者には糞便移植を行い、良好な成績を得ている。副反応としては、投与初日の下痢が目立つだけで、重篤なものはなかった。また、糞便菌叢の検討により、ドナーと同様な菌叢の定着が確認されている。 有効性が証明できず、非劣性を証明することにきゅうきゅうとしてきた中で、夢のような話である。プロトコール、付随資料も公表されており、試験の全容がよく理解できる重要な論文である。■「糞便移植」関連記事糞便移植は潰瘍性大腸炎の新たな治療となるか/Lancet

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C型慢性肝炎治療薬「シメプレビル」の製造販売承認を申請

 ヤンセンファーマは22日、C型慢性肝炎治療薬として開発したシメプレビル(TMC435)を、世界に先駆けて日本で製造販売承認申請を行ったと発表した。 シメプレビルは、新たな直接作用型抗ウイルス剤(DAAs:Direct-acting Antiviral Agents)の1つであり 、C型肝炎ウイルスの複製に関与するセリン・プロテアーゼを直接阻害することによって、ウイルスの増殖を抑える機序を有する経口薬である。同社は国内で4つの第III相臨床試験を実施し、ジェノタイプ1型のC型肝炎患者における、シメプレビルとペグインターフェロン(α-2aまたはα-2b)とリバビリンの3剤併用療法において得られた治療効果と安全性、治療への忍容性などを示す結果をもとに、国内での製造販売申請に至ったという。 現在、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染した患者は日本で約150~200万人存在していると推定され、約70%の割合で感染の持続による慢性肝炎へと移行する。さらに炎症の持続により肝線維化が進むと肝硬変や肝がんへと進展します 。現在、わが国では1年に約3万5000人が肝がんで死亡していおり、肝がんの原因の約80%がC型肝炎であるといわれている。同社は、「C型肝炎の治療は進化を続けており、治療薬の効果は著しく向上している一方で、副作用のマネジメントなど、治療に対する課題の解決が期待されている」と述べている。詳細はプレスリリースへhttp://www.janssen.co.jp/public/rls/news/4132

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神経障害性疼痛の実態をさぐる

神経障害性疼痛が見逃されているたとえば熱いものを触ったり、刃物で切れば痛みを感じる。そういう通常の痛みを「侵害受容性疼痛」といいます。末梢神経の終末にある侵害受容器が刺激されたときに感じる痛みです。侵害受容性疼痛の中には炎症に伴って起こる炎症性疼痛も含まれますが、これらを合わせて生体を守るための生理的な疼痛と呼んでいます。一方、「神経障害性疼痛」は、末梢神経から脊髄、さらに大脳に至るまでの神経系に何かの障害が起こったときに、エラーとして生じる痛みです。生体を守る意義はなく、病的な疼痛と考えられています。このように、神経障害性疼痛と炎症性疼痛は区別して考える事になっています。ただし、臨床的には炎症が遷延し持続的に痛みのシグナルが入力されるような状態では、神経系はエラーとしての過敏性を獲得するため、炎症性疼痛が続いた結果起こる痛みと神経障害性疼痛は明確に区別できないと考えられています。多くの神経障害性疼痛は痛みの重症度が高く、患者さんのQOLは著しく低下します。神経障害性疼痛は、まだまだ医療者に浸透していない痛みの概念です。神経障害性疼痛であることが疑われないで治療されているケースも多くみられ、神経障害性疼痛には特別なスクリーニングが必要だと考えます。神経障害性疼痛のスクリーニング痛みと一口にいっても、ナイフで刺された時の痛みと、炎や熱に手をかざした時の痛みは、おのずと性質が違ってきます。神経障害性疼痛の患者さんの多くは、「ヒリヒリと焼けるような痛み」「電気ショックのような痛み」「痺れたような痛み」「ピリピリする痛み」「針でチクチク刺されるような痛み」といった特徴的な性質の痛みを訴えます。一方、炎症性疼痛の患者さんでは、ズキズキする、ズキンズキンするといった、明らかに痛みの性質が異なった訴えをします。痛みの性質の違いは、痛みの発生メカニズムの違いを表していると考えられています。患者さんの自覚的な訴えから痛みの種類を鑑別するために、痛みの問診票が各国で開発されています。私たちはドイツでつくられた「PainDETECT」の日本語版を許可を得て開発し、その妥当性の検証試験を行っています。痛みの性質、重症度、場所、範囲、時間的変化を1つの質問用紙に記入する形のもので、臨床で使いやすい問診票になっています。侵害受容性疼痛なのか神経障害性疼痛なのか、あるいは両方が混合している疼痛なのかを分類することができます。画像を拡大する痛みの具体性を評価する痛みのスクリーニングにおいて、痛みの性質と共に痛みの具体性を評価することが重要です。たとえば捻挫をした患者さんにどこが痛いか聞くと、「足首のここが痛い、足首を伸ばすと痛い」と明確な答えが得られます。これは痛みの具体性が高いといえます。一方、器質的な異常を伴わない非特異的腰痛や、外傷後の頸部症候群(むち打ち症)では、「腰のあたりが全体的に痛い」とか、「何となく首の周りが痛い」といった部位を特定しにくい漠然とした痛みを訴えることがあります。そのような場合は痛みの具体性が低いと評価します。痛みの具体性が高いときには身体的な問題、器質的な異常があり、痛みの具体性が低い場合は器質的な異常がない(少ない)と判断し、心因性疼痛の要素の有無を考えます。器質的異常の有無は薬物療法の適応を考える際に重要なポイントになりますので、痛みの性質と共に具体性を聞くことは非常に有用です。神経障害性疼痛が合併しやすい疾患神経障害性疼痛が多く見られる疾患は、糖尿病性ニューロパチー、帯状疱疹後神経痛、脊柱管狭窄症です。たとえば帯状疱疹では、神経にウイルスが棲んでいて神経の炎症や障害が起きます。日本での大規模な調査研究で、これまで神経障害性疼痛ではないと考えられていた腰痛や膝関節症を含む多くの慢性疼痛患者さんの中にも、神経障害性疼痛が含まれていることがわかってきました。首から背中、腰の痛みを訴える患者さんの実に約8割が、神経障害性疼痛だろうと推察される報告もあります。手術後の痛みは意外に調べられていない領域です。傷が治れば痛くないと医療者が思っているので、患者さんが痛みを訴えにくい環境があるようです。開胸手術後は6~8割、乳腺の術後には5~6割、鼠径ヘルニアの術後では3~4割の患者さんが傷が治った後にも痛みを持っていることがわかっています。もちろん手術後に遷延する痛みの病態のすべてが神経障害性疼痛ではありません。術後遷延痛には、神経障害性疼痛とも炎症性疼痛ともいえない独特のメカニズムがありそうだ、ということが分子生物学的な病態研究によってわかってきています。薬物療法による神経障害性疼痛の治療神経障害性疼痛の治療は、侵害受容性疼痛とは治療戦略がまったく異なります。基本的に消炎鎮痛薬は効果がありません。神経障害性疼痛の第一選択薬はCa2+チャネルα2δリガンドであるプレガバリン(商品名:リリカ)と三環系抗うつ薬です。第二選択薬としては、抗うつ薬セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のうちの一つであるデュロキセチン(商品名:サインバルタ)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)、抗不整脈薬メキシレチン(商品名:メキシチールほか)です。第三選択薬は、麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)です。まず初めにプレガバリンか三環系抗うつ薬を用います。効果が不十分であれば、いずれかに切り替えるか併用する。プレガバリンは添付文書では、朝と夕方に内服することになっていますが、私たちは就寝前の服用を勧めています。神経障害性疼痛の患者さんは痛みが強く不眠を訴える方が多いのですが、プレガバリンによる眠気の作用を逆に利用した服用方法です。プレガバリンの眠気は鎮静によって生じるものではなく、生理的な睡眠作用であることがわかっています。そのためか、患者さんもぐっすり眠れたという満足感を持つことが多いようです。そして第一選択薬で効果が不十分な場合は、第二選択薬への切り替え、あるいは第二選択薬との併用を行います。ただし三環系抗うつ薬とデュロキセチンの併用では、副作用として興奮・せん妄等のセロトニン症候群を起こす危険性があるので、三環系抗うつ薬とデュロキセチンは基本的に併用はしません。第二選択薬が無効な場合は、第三選択薬として麻薬性鎮痛薬(オピオイド鎮痛薬)を使います。非がん性の慢性疼痛に対して使えるオピオイド鎮痛薬は、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(商品名:トラムセット)とフェンタニル貼付剤(商品名:デュロテップMTパッチ)が主なものです。ブプレノルフィン貼付剤(商品名:ノルスパンテープ)は変形性関節症、腰痛症のみが保険適応となっています。オピオイドは最も高い鎮痛効果を期待できますが、長期間使った場合に便秘や吐き気、日中の眠気などの副作用が問題になります。オピオイド鎮痛薬に対して精神依存を起こす患者さんもまれにですがいます。そのため、第一選択薬、第二選択薬が無効な場合にのみ使うことが推奨されています。オピオイド鎮痛薬使用における注意点非がん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の使い方は、がん性疼痛とは異なります。がん性疼痛の場合は、上限を設けずに患者さんごとに投与量を設定し、痛みが続いている間は使い続けます。痛みが発作的に強まったときには頓用薬も用います。一方、非がん性の疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合は、経口のモルヒネ製剤換算で120mgを上限に設定することが推奨されています。オピオイド鎮痛薬の使用期間は極力最少期間にとどめ、痛みが強くなったときの頓用は推奨されていません。これらのオピオイド鎮痛薬の使用に制限を設けている理由は、すべて精神依存の発症リスクを抑えるためです。がん性疼痛と非がん性疼痛では、オピオイド鎮痛薬の使い方の原則が違うことをご理解いただきたいと思います。オピオイド鎮痛薬の精神依存は、器質的な痛みの患者さんでは基本的に発症しないことがわかっています。器質的ではない疼痛、すなわち痛みの具体性の低い患者さんでは精神依存を起こす可能性が高まるので、オピオイド鎮痛薬を積極的に使用すべきではないと考えています。うつ病や不安障害といった精神障害を合併している患者さんも、オピオイド鎮痛薬による精神依存を発症しやすいことがわかっています。最も強い鎮痛効果を求めるときは、われわれはオピオイド鎮痛薬とプレガバリンを併用しています。プレガバリンには抗不安作用があり、それがオピオイド鎮痛薬による吐き気の発生に対する予期不安を抑制し、制吐効果が期待できます。オピオイド鎮痛薬と三環系抗うつ薬の併用も強い鎮痛効果が期待できますが、吐き気、眠気、抗コリン作用による口渇などを相乗的に増強してしまうため推奨していません。

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クロストリジウム・ディフィシル感染症再発に健康なドナー便の注入が有効/NEJM

 クロストリジウム・ディフィシル(C.ディフィシル)感染症再発後の治療について、ドナー便の十二指腸注入が、バンコマイシン治療よりも有意に効果が高いことが示された。オランダ・アムステルダム大学のEls van Nood氏らが、C.ディフィシル感染症の再発患者について行った無作為化試験の結果で、初回便注入による下痢症状消失の割合は8割以上であったという。C.ディフィシル感染症再発の治療は困難で、抗菌薬治療の失敗率が高い。NEJM誌2013年1月31日号(オンライン版2013年1月16日号)掲載報告より。ドナー便注入群、抗菌薬単独治療群、抗菌薬治療+腸洗浄群の3群を比較 研究グループは、抗菌薬治療完了後にC.ディフィシル感染症の再発が認められた43人を無作為に、(1)バンコマイシンの短期投与(500mg経口投与、1日4回、4日間)に続き、腸洗浄の後、健康なドナー便を経鼻十二指腸管注入する群(17人)、(2)標準的バンコマイシン投与群(13人、500mg経口投与、1日4回、14日間)、(3)標準的バンコマイシン投与と腸洗浄を行う群(13人)に割り付け検討した。 主要エンドポイントは、10週間後の下痢症状の消失(C.ディフィシル感染症の再発が認められない)とした。16人中13人が、ドナー便初回注入後に下痢症状消失 試験を終了したのは、41人だった。 便注入群16人のうち13人(81%)で、初回注入後にC.ディフィシル感染症関連の下痢症状が消失した。同群残り3人のうち2人は、2回目の便注入(別のドナー便)後に同症状が消失した。 バンコマイシン投与群では単独投与群13人のうち4人(31%)と、バンコマイシン+腸洗浄群13人中3人(23%)だった(いずれも便注入群との比較でp<0.001)。 有害事象発生率については、ドナー便注入群で注入を行った当日に、軽度下痢症状と腹部痙攣が認められたが、その他についてはいずれの群とも同程度だった。 ドナー便注入群の注入後の便は、細菌が多様となり、健康なドナーと同程度となっていた。クテロイデス種とクロストリジウムクラスターIV、XIVaが増加し、プロテオバクテリア種が減少していた。

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エンテロウイルス71ワクチン、第2相試験で免疫原性、安全性を確認/Lancet

 エンテロウイルス71(EV71)ワクチンについて、第2相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、乳幼児に対する免疫原性と安全性を確認したことを中国・江蘇省疾病管理予防センターのFeng-Cai Zhu氏らが報告した。EV71は1969年に米国カリフォルニアで初めて報告された腸管ウイルスで、その後14ヵ国以上(日本も含む)から報告が寄せられている。とくに中国では過去に3度重大流行が発生し2009年には255人超が死亡したという。今回検討されたワクチンは、中国Beijing Vigoo Biologicalが開発したアラムアジュバンドワクチン製剤で、第1相試験で臨床的に認容性のある安全性プロファイルと免疫原性が示唆されたことを受けて本試験が行われた。Lancet誌オンライン版2013年1月24日号掲載報告より。生後6~36ヵ月の乳幼児を対象に無作為化二重盲検プラセボ対照試験 EV71ワクチンの第2相試験は、江蘇省東海県の1施設で、生後6~36ヵ月の健康な男女児を適格被験者として行われた。 被験児を無作為に5群[アラムアジュバントEV71ワクチン160U、320U、640U群と、非アジュバントワクチン群、プラセボ(アラムアジュバントのみ含有)群]に、SAS9.1ブロックランダムリストを用いて割り付けた。無作為化情報は、被験児および試験担当者には知らされなかった。 主要エンドポイントは、56日時点での幾何平均抗体価(GMTs)で、プロトコルに基づき解析が行われた。320Uアラムアジュバント製剤が最適 無作為化された被験児は1,200例で、各接種群には240例ずつ(乳児:6~11ヵ月齢児120例、幼児:12~36ヵ月齢児120例)が割り付けられた。そのうち試験を完了したのは1,106例であった。被験児のドロップアウトは、同意が得られなかったことと血液サンプル提供の拒否が主な理由であった。 解析の結果、乳児640U接種群が56日時点のGMTsが最も高値であった(742.2、95%CI:577.3~954.3)。次いで乳児320U接種群が続いた(497.9、383.1~647.0)。 幼児では320U接種群が最も高値であった(1,383.2、1,037.3~1,844.5)。 全体では、ワクチン接種群が非接種群よりもGMTs値が有意に高値であった(p<0.0001)。 ベースラインで血清陰性であった被験児のサブグループについて、640U接種を受けた乳児および幼児の両群が56日時点のGMTsが最も高値であった(乳児:522.8、403.9~676.6、幼児:708.4、524.1~957.6)。次いで320U接種群であった(乳児:358.2、280.5~457.5、幼児:498.0、383.4~646.9)。 安全性について、1,200例のうち549例(45.8%)が1つ以上の注射部位あるいは全身性の副反応を報告したが、副反応発生率は接種群間で有意な差はみられなかった(p=0.36)。ただし硬結発生率について、640Uアジュバントワクチン接種群が非アジュバントと比較して有意に高率であった(p=0.001)。 以上を踏まえて著者は、「EV71ワクチンの免疫原性、安全性、製剤の生産性が確認された。おそらく第3相試験には320Uアラムアジュバント製剤が最も適しているであろう」と結論している。

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妊娠中のH1N1インフルエンザワクチン接種、発症リスクを7割減/NEJM

 妊娠中の2009インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染症パンデミックの罹患は、胎児死亡リスクを約2倍増大する一方、妊娠中に同ワクチンを投与した人では、インフルエンザを発症した人の割合は約7割少なかったことが報告された。ノルウェーのNorwegian Institute of Public HealthのSiri E. Haberg氏らが、H1N1ウイルスが流行した2009~2010年に妊娠中だった女性12万人弱について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2013年1月24日号(オンライン版2013年1月16日号)で発表した。2009パンデミックでは、ワクチン接種後に胎児死亡が散発的に報告されたことで、妊婦へのワクチン接種の安全性について懸念が持ち上がっていた。胎児死亡率は1,000児中4.9児 研究グループは、ノルウェーの全国登録名簿などを用いて、2009~2010年に妊娠中だった11万7,347例について調査を行った。被験者のインフルエンザワクチン接種の有無、出産アウトカム、パンデミック前後や期間中の状況などについて調べ、Cox回帰モデルを用いて、H1N1ウイルス感染やワクチン接種と胎児死亡率についての関連を分析した。 その結果、胎児の死亡は570例で、胎児死亡率は1,000例中4.9だった。被験者のうち単胎妊娠は11万3,331人で、そのうち胎児の死亡は492例(1,000例中4.3)だった。妊婦のワクチン投与で発症リスクは7割減、胎児死亡リスク減少では有意差みられず パンデミック期間中に妊娠第2・第3期だった妊婦は4万6,491例で、そのうちインフルエンザワクチン接種を受けた人の割合は54%だった。 妊娠中のインフルエンザワクチン投与は、インフルエンザ発症率を約7割減少した(補正後ハザード比:0.30、95%信頼区間:0.25~0.34)。 妊婦のうちインフルエンザの臨床的診断を受けた人では、胎児死亡率は約2倍に増大した(補正後ハザード比:1.91、同:1.07~3.41)。 妊娠中のワクチン投与によって、胎児死亡リスクは減少する傾向が認められたものの、有意差は認めらなかった(補正後ハザード比:0.88、同:0.66~1.17)。 これらの結果を踏まえて著者は、「ワクチン接種自体は胎児死亡とは関係がない。むしろパンデミック期間中のインフルエンザ関連の胎児死亡リスクを低減する可能性がある」と結論した。

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HIV初感染への48週間抗レトロウイルス療法の効果は?/NEJM

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)初感染(primary HIV infection)に対し、48週間の抗レトロウイルス療法(ART)は、従前より示唆されていたように疾患進行を遅らせることが明らかにされた。英国・Imperial College LondonのSarah Fidler氏らが、約370人の患者について行った無作為化試験「Short Pulse Anti-Retroviral Therapy at Seroconversion」(SPARTAC)の結果、報告した。これまで、HIV初感染に対する短期ART療法について疾患進行を遅延しうる可能性が言われていたが、十分な評価は行われていなかった。NEJM誌2013年1月17日号掲載より。HIV初感染初期の366人を平均4.2年追跡 SPARTAC研究グループは、HIV初感染の患者366人を無作為に3群に分け比較検討した。一群にはARTを48週間、別の群にはARTを12週間、もう一つの群には通常の治療を、いずれもセロコンバージョン後6ヵ月以内に開始した。 主要エンドポイントは、CD4+細胞数の350/mm3未満への低下、または長期ART療法の開始とした。 被験者の年齢中央値は31~33歳、男性は60%だった。48週間ART群は123人、12週間ART群は120人、通常治療群は123人だった。平均追跡期間は4.2年だった。48週間ART群、主要エンドポイント発生リスクは通常治療群の4割減 その結果、主要エンドポイントのイベント発生率は、12週間ART群と通常治療群ではそれぞれ61%だったのに対し、48週間ART群では50%と低率だった。48週間ART群の通常治療群に対する主要エンドポイントのイベント発生に関する平均ハザード比は、0.63(95%信頼区間:0.45~0.90、p=0.01)だった。一方、12週間ART群の同値は、0.93(同:0.67~1.29、p=0.67)と、有意差は認められなかった。 また、CD4+細胞数350/mm3未満に低下した人の割合は、12週間ART群と通常治療群は40%だったのに対し、48週間ART群では28%と低率だった。 主要エンドポイント発生までの期間中央値は、48週間ART群は通常治療群と比べ65週間(同:17~114)長かった。 事後解析により、ART開始と主要エンドポイントとの期間は、ART開始がセロコンバージョン時期に近いほど長期となる傾向があることが確認された。また、48週間ARTは、短期療法完了後36週時点のHIV RNA量を、0.44 log10コピー/mL(同:0.25~0.64)減少した。 なお、エイズ、死亡、重度有害イベントの発生率については、すべての群で同等だった。 結果を踏まえて著者は、「HIV初感染の患者に対する48週間ARTは、疾患の進行を遅らせることを発見した。しかしその期間は、治療期間の48週よりも有意に長くはなかった。またART中断が臨床転帰に有害な影響を及ぼす証拠は認められなかった」と結論している。

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インターフェロン治療SVR達成の慢性C型肝炎患者は全死因死亡が有意に低下/JAMA

 慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染症・進行性肝線維症患者の全死因死亡率について、インターフェロン治療により持続的ウイルス学的著効(SVR)がみられる人では有意な低下がみられたことが、オランダ・エラスムス大学のAdriaan J. van der Meer氏らによる評価の結果、明らかにされた。JAMA誌2012年12月26日号掲載より。530例を中央値8.4年追跡、全死因死亡率などを評価 研究グループは、慢性HCV・進行性肝線維症患者におけるSVRと全死因死亡率との関連を評価することを目的に、国際多施設長期フォローアップ研究を行った。 被験者は、ヨーロッパおよびカナダの5つの病院から登録された慢性HCV患者530例で、1990~2003年の間にインターフェロンをベースとした治療を開始し、肝線維症または肝硬変症の進行(Ishakスコア4~6)について組織学的検査に基づき追跡された。 フォローアップは、2010年1月~2011年10月にわたって行われ、全死因死亡率を主要評価項目に、また肝不全、肝細胞がん(HCC)、肝臓関連の死亡または肝移植を副次評価項目として評価が行われた。 530例の被験者の追跡期間中央値は8.4年(IQR:6.4~11.4)だった。ベースラインでの年齢中央値は48歳(同:42~56)で、369例(70%)が男性だった。 肝線維症のIshakスコアは、143例(27%)が4、101例(19%)が5、6は286例(54%)だった。SVR達成・非達成で、10年累積全死因死亡、肝細胞がん、移植などに有意な差 SVRを達成したのは192例(36%)だった。 死亡したのは、SVR患者13例、非SVR患者100例で、10年累積全死因死亡率はSVR患者8.9%[95%信頼区間(CI):3.3~14.5]、非SVR患者26.0%(同:20.2~28.4)で有意な差がみられた(p<0.001)。 時間依存的多変量Cox回帰分析の結果、SVRと全死因死亡低下との有意な関連が認められた[ハザード比(HR):0.26、95%CI:0.14~0.49、p<0.001]。また、肝関連死亡または肝移植の有意な低下(SVR患者3例、非SVR患者103例)も認められた(HR:0.06、95%CI:0.02~0.19、p<0.001)。10年累積肝関連死亡-肝移植発生率は、SVR患者1.9%(95%CI:0.0~4.1)、非SVR患者27.4%(同:22.0~32.8)だった(p<0.001)。 HCCを発症したのはSVR患者7例、非SVR患者76例だった。10年累積発生率はSVR患者5.1%(95%CI:1.3~8.9)、非SVR患者21.8%(同:16.6~27.0)で有意な差が認められた(p<0.001)。 肝不全の発症は、SVR患者4例、非SVR患者111例だった。10年累積発生率はSVR患者2.1%(95%CI:0.0~4.5)、非SVR患者29.9%(同:24.3~35.5)で有意な差が認められた(p<0.001)。

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聖路加GENERAL 【Dr.小林の消化器内科】

第1回「海外で ""生肉""は要注意?」第2回「黄疸は 急いで診断 よい治療」第3回「つっかえ感? まず内視鏡」第4回「先生、胸のあたりが痛むのですが・・・」 第1回「海外で ""生肉""は要注意 ? 」絶対に聞いておきたい4つのポイントや腹部診察のコツを紹介します。【CASE1:72歳女性 急性下痢】倦怠感や嘔気を感じ、徐々に腹痛と下痢も出始めた症状が持続したため外来を受診。急性下痢症の鑑別では、まず小腸型か大腸型かを見分けることが必要です。正しい鑑別のために、絶対に聞いておきたい4つのポイントを紹介します。また、病歴聴取の際は、最近の渡航歴や服薬歴、生肉などの十分加熱されていない食物を口にしていないかといった点についても注意します。これらのポイントに沿って診察を進めた結果、腸管出血性大腸炎と判明しました。さて、ここからどのように原因を探っていけばよいでしょうか。また、どのような場合に直腸診や便培養を行うのか、適切なフォローアップについても見ていきます。【CASE2:21歳女性 慢性下痢】1ヵ月前から下腹部痛、1日3〜4回の下痢が生じ、熱も出始めて外来を受診。発熱と体重減少があったことから、機能性ではなく器質的なものを疑いました。体重の変化など、鑑別で注意すべき病歴から診断の検索をしていきます。このケースでは、腹部診察で索状の腫瘤を触知したので、悪性腫瘍や炎症性腸疾患で壁肥大になっている可能性を疑い、血液検査をした結果、慢性下痢症ということになりました。ではそこからどのように診断を進めていけばよいでしょうか。慢性下痢症の特徴、どのような場合に内視鏡検査を行えばよいか、内視鏡検査で異常が見られなかった場合についても、次に行うべき検査を項目別に分かりやすくお伝えします。また、知っておきたい腹部診察のコツを紹介します。第2回「黄疸は 急いで診断 よい治療」外来でも出くわすことの多い黄疸について紹介します。【CASE1:40歳男性 倦怠感発熱と黄疸症状】1週間ほど前から熱や倦怠感を自覚していたが、市販薬を飲んで仕事をしていた。しかし、数日前から食欲が低下し、尿の濃染や眼球の黄染に気づいて外来を受診。黄疸は外見に出やすく患者自身も気づきやすい症状ですが、鑑別していく上で注意すべき病歴を細かく見ていきます。特に、問診では魚介類の生食の既往を聞くことが多いですが、生肉生食の既往についても、期間は1ヵ月以上と長期的に見ることが重要です。また、黄疸は特にウィルス感染も疑われる疾患ですので、ウィルス性肝炎や評価に役立つ検査方法について分かりやすく解説します。【CASE2:63歳男性 上腹部痛と黄疸症状】1ヵ月ほど前から上腹部の軽い痛みを感じながらも、市販の胃薬で様子をみていたが、最近眼球の黄染が出始め、便が灰白色になったため外来を受診。常用薬はありましたが、黄疸を誘発するようなものではなく、海外渡航歴もないため、ウィルス性肝炎の可能性はあまり考えられません。診察を進め、腹部でやや腫大した胆嚢が触知されましたが、痛みはないということで、急性ではなく別の症状を疑いました。そこで検査所見や腹部超音波検査を行うと、膵がんによる閉塞性黄疸だということがわかりました。発見が遅れると予後の悪い本疾患について、アメリカの例と比較したスクリーニング法や効果的な検査方法など、早期発見のポイントを紹介します。また、最新の治療方法とその成績についてお伝えします。第3回「つっかえ感? まず内視鏡」嚥下障害について、ポイントを押さえ、わかりやすく解説します。【CASE1:64歳男性 嚥下困難(固形物で)】食べ物のつかえ感と胸やけの症状が続いたため、外来を受診。持続する嚥下困難の症状があり、食道の炎症なども考えられるため、詳しく病歴を聞くことにしました。嚥下困難の問診のポイントとなる嚥下痛や体重減少があり、喫煙が1日に20本、飲酒も仕事上機会が多いということから、悪性疾患が疑われます。さらなる精査のため、内視鏡検査を行った結果、食道がんという診断に至りました。早期発見が治療の鍵となる食道がんを鑑別するための効果的な内視鏡検査・治療について最新の情報を紹介します。また、嚥下困難をきたす原因は多岐にわたるため、その鑑別方法について、ポイントを解説します。【CASE2:52歳女性 嚥下困難(液体でも)】数年前から食べ物のつっかえ感を自覚、固形物だけでなく液体でも症状が見られます。症状が持続し体重減少があるものの、既往歴はなく身体所見でも異常はありません。このようなケースで医療面接で聞いておくべきポイント、嚥下障害の非消化管疾患について詳しく紹介します。本症例では液体でも嚥下障害が見られるということで、機能的疾患を疑い内視鏡検査を行いましたが、腫瘤性病変は認められず、更なる精査として食道内圧測定を行った結果、アカラシアと診断しました。アカラシアは比較的まれな症例ですが、早期発見が重要な疾患です。アカラシアに関する効果的な検査、最新の治療方法を紹介します。第4回「先生、胸のあたりが痛むのですが・・・」患者が痛みを訴える部位とは異なる場所が原因ということもあります。腹痛の部位によってカテゴライズした鑑別診断について詳しく説明します。【CASE1:45歳男性 高血圧の既往のある心窩部痛】来院当日に心窩部痛を発症し来院。ACSが疑われたため、心電図をとったところ不整が見られましたが、フォローの心電図、トロポニンともに異常なかったことから別の原因が考えられます。血液検査でも白血球がわずかに増多していた他は異常なし。来院前に嘔吐や下痢があり、改善していないこと、急性発症という点、そして他の疾患の特徴にあてはまらないことから腹部CTを行った結果、腫脹した虫垂を認め、急性虫垂炎の診断に至りました。腹痛は日常診療で頻繁に遭遇する疾患ですが、原因が患者が痛みを訴える部位とは異なる関連痛もあり、その鑑別は多岐に渡ります。腹痛について分かりやすく、診察でつかえるポイントを詳しく紹介します。【CASE2:47歳女性 腹部膨満感を伴う心窩部痛】半年前から心窩部痛を自覚していた。最近になって腹部膨満感を感じるようになったため外来を受診 。しかし、食事との関連や体重減少もなく、検査でも異常ありません。そこで、鑑別診断として機能性ディスペプシアを疑いました。機能性疾患の診断に必要な器質的疾患の除外のために行う検査について、ポイントを押さえてわかりやすく紹介します。また、腹痛の部位によってカテゴライズした鑑別診断について詳しく説明します。最近のホットトピックでもあるヘリコバクター・ピロリについても、検査に役立つ注意事項など、最新の情報をお伝えします。

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"かぜ"と"かぜ"のように見える重症疾患 ~かぜ診療の極め方~

vol.1 “かぜ”のような顔をしてやってくる重症患者vol.2 “かぜ”をグルーピングしよう !vol.3 気道症状がない“かぜ”に要注意 ! (E)高熱のみ型vol.4 気道症状がない“かぜ”に要注意 !    (F)微熱・倦怠感型 (G)下痢型 (H)頭痛型(髄膜炎型)vol.5 積極的に“かぜ”を診断する   (A)非特異的上気道炎型(せき、はな、のど型)vol.6 どうする ? 抗菌薬 (B)急性鼻・副鼻腔炎型(はな型)vol.7 どうする ? 抗菌薬 (C)急性咽頭・扁桃炎型(のど型)vol.8 怖い咽頭痛vol.9 レントゲン撮る? 撮らない? (D)気管支炎型(せき型)vol.10 フォローアップを忘れずに !column1 悪寒戦慄とCRP column2 プロカルシトニンの使い方 column3 “かぜ”に抗菌薬は効くのか ? かぜ診療のプロになろう !「かぜ」。クリニックや一般外来でこれほど多く診る疾患があるでしょうか。ところが、この“かぜ”についての実践的な指導を受けた医師はほとんどいないのです。たかが“かぜ”と侮る事なかれ。命に関わる病気が隠れていることもあれば、安易に抗菌薬を処方すべきではない場合も多々あります。これを見れば、あなたも「かぜ診療」のプロに !薬剤師、看護師の皆さんにもオススメ !ドクターだけでなく、コメディカルの皆さんにも知って欲しい知識です。「かぜをひいた」と言う患者さん、薬が欲しいと言う患者さんに適切なアドバイスができるようになります !理解を深める確認テスト付 !各セッションごとの確認テストで知識が身についたかチェックできます。【収録タイトル】vol.1 “かぜ”のような顔をしてやってくる重症患者“かぜ”だと思って来院する患者さんは、やはりほとんどがウイルス性上気道炎。しかしその中に、まれに肺炎や髄膜炎、ときには心内膜炎、急性喉頭蓋炎、あるいは肝炎やHIVであることも。それはまるで広大な地雷原を歩いていくようなもの。その地雷を避けるにはどうしたらいいのでしょう?気鋭の山本舜悟先生が明解に解説します。vol.2 “かぜ”をグルーピングしよう !重篤な疾患を見逃さないために“かぜ”をタイプ別に分け、リスクの高い患者さんをグルーピングしましょう。8つのタイプに分類すれば、それぞれにどんな危険な疾患が隠れているのか、抗菌薬はどうしたらいいのか、すっきり理解でき、“かぜ”と戦いやすくなります。vol.3 気道症状がない“かぜ”に要注意 ! (E)高熱のみ型“かぜ”の中で一番気をつけておきたいのはこの“高熱のみ型”です。もちろんインフルエンザやウイルス感染であることが多いのですが、実は危険な菌血症・敗血症が隠れていることも。気道症状がないのに軽々しく“かぜ”と言わない。これが鉄則です。vol.4 気道症状がない“かぜ”に要注意 ! (F)微熱・倦怠感型 (G)下痢型 (H)頭痛型(髄膜炎型)気道症状がない“かぜ”は、実は“かぜ”でない疾患が隠れていることがあります。微熱と倦怠感が続く“かぜ”、いわゆるお腹の“かぜ”、頭痛と発熱だけの“かぜ”。これらには要注意。それぞれどんな疾患を考えどう対応したらいいか解説します。vol.5 積極的に“かぜ”を診断する (A)非特異的上気道炎型(せき、はな、のど型)“かぜ”は除外診断。重篤な疾患を除外して初めて診断できるもの。確かにそうなのですが、自信を持ってこれは“かぜ”だといえる病態もあります。「せき、はな、のど」に同時に症状があれば、これは、いわゆる“かぜ”、つまりウイルス性上気道炎。抗菌薬は不要です !vol.6 どうする ? 抗菌薬 (B)急性鼻・副鼻腔炎型(はな型)副鼻腔炎自体の診断はそれほどむずかしくないでしょう。しかし、それが「細菌性なのか、ウイルス性なのか」、「抗菌薬は必要なのか不要なのか」については迷うところ。これらを臨床的にどう判断するかを解説します。vol.7 どうする ? 抗菌薬 (C)急性咽頭・扁桃炎型(のど型)咽頭炎で頭を悩ませるのは抗菌薬を使うかどうかです。従来は、「A群溶連菌による咽頭炎だけを抗菌薬治療すればいい」と言われてきましたが、今日的にはそれでいいのしょうか ?  Centorの基準を参考に、誰にどんな抗菌薬を使うか詳しく解説します。vol.8 怖い咽頭痛咽頭痛を訴える患者さんには、ときとして非常に危険な疾患が隠れていることがあります。扁桃周囲膿瘍、そして急性喉頭蓋炎です。これらを見逃さないためのレッドフラッグを覚えましょう。喉頭ファイバーが使えないときのvallecula signも紹介します。vol.9 レントゲン撮る ? 撮らない ? (D)気管支炎型(せき型)咳を主体とする気管支炎型の“かぜ”は、肺炎を疑って胸部X線を撮るか撮らないかが悩ましいところです。Diehrのルールなど参考にすべきガイドラインもありますが、医師自身による判断が重要です。どのように考えたらいいのか解説します。vol.10 フォローアップを忘れずに !ここまでの話でかなり“かぜ”を見極められようになったと思いますが、それでも除外診断である“かぜ”を100%診断するのは不可能です。よって必要になるのはフォローアップ。「また来てください」だけでなく、具体的な指示をどうしたらいいか、実例を元に解説します。column1 悪寒戦慄とCRPたいていの血液検査で測られているCRP。感度や特異度はそれほど高いわけでなく、場合によっては計測自体に意味がないこともあります。しかし、使いようによっては思わぬピットフォールを避ける武器にもなります。悪寒戦慄と合わせて、CRPの使い方を覚えましょう。column2 プロカルシトニンの使い方最近話題のプロカルシトニン。新しい指標としてさまざまな議論がなされていますが、今現在の臨床ではどのように使えるのでしょうか ? 診療の現場での実際の使い道を解説します。column3 “かぜ”に抗菌薬は効くのか ?“かぜ”に抗菌薬、実は効果があります。え ? と思うかも知れませんが、だからといって“かぜ”に一律の抗菌薬を処方することは考えものです。どんな人に、どれくらいの効果があるのかに注目しましょう。NNTの概念で抗菌薬の有用性を検証します。

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2010年の世界的な平均余命、男性67.5年、女性73.3年:GBD2010/Lancet

 世界的な出生時平均余命の延長は1990年代にいったん停滞したが、1970~2010年の40年間で持続的かつ実質的に延長し、2010年には男性が67.5年、女性は73.3年に達したことが、米国・ワシントン大学のHaidong Wang氏らの調査で明らかとなった。集団における原因別死亡率を抑制し、早期死亡率を適切に評価するには疾病負担の算定を要するが、その初期段階として年齢階層別、男女別の死亡数や死亡率の予測が重要とされる。ミレニアム開発目標4(乳幼児死亡率の削減)の期限(2015年末)が迫る中、乳幼児死亡率の正確な評価への関心が世界的に高まっているという。Lancet誌2012年12月15・22・29日合併号掲載の報告。世界的な死亡率の年齢階層別のパターンを検討 研究グループは、Global Burden of Disease Study 2010 (GBD2010)のデータを用いて、187ヵ国における1970~2010年の年齢階層別の年間死亡率を評価し、世界的な死亡率の年齢階層別のパターンを明らかにすることを目的に系統的な解析を行った。 各国の5歳未満(0~4歳)死亡率および成人(15~59歳)死亡率を推算した。100ヵ国以上の死亡登録データを用い、自然災害や戦争による死亡とは分けて解析した。 5歳未満死亡率と成人死亡率の最終的な推定値はガウス過程回帰で解析したデータから算定し、これをモデル生命表の入力パラメータとして用いた。全死亡率や死亡数の算定には95%不確定区間(95%UI)を用いた。ミレニアム開発目標4の達成予測は過小評価されている可能性も 世界的な男性の出生時平均余命は1970年の56.4年から2010年には67.5年に、女性では61.2年から73.3年にまで延長した。1990年代を除き、1970年から10年ごとに出生時平均余命が3~4年ずつ延長した(90年代の延長は男性1.4年、女性1.6年)。  2004年以降、東アフリカおよびサハラ砂漠以南のアフリカで死亡率が実質的に低下しており、これは抗レトロウイルス療法やマラリア予防対策の普及と時期が一致する。1970~2010年までに、男女の平均余命はそれぞれ23~29年の延長(モルディブ、ブータン)から、1~7年の短縮(ベラルーシ、レソト、ウクライナ、ジンバブエ)までの幅が認められた。 2010年に世界全体で5,280万人が死亡したが、これは1990年の4,650万人に比し13.5%、1970年の4,330万人に比べ21.9%の増加であった。2010年の死亡者に占める70歳以上の割合は42.8%(1990年は33.1%)、80歳以上の割合は22.9%だった。 5歳未満児の死亡数は1970年が1,640万人、2010年が680万人で、死亡率は約60%低下しており、特に生後1~59ヵ月児の死亡数は1,080万人から400万人へと著明に低下していた。HIV/AIDSの影響が最も大きい地域を含むすべての地域で、平均死亡時年齢の上昇が確認された。 著者は、「世界的、地域的な健康危機がみられるにもかかわらず、過去40年間で平均余命は持続的かつ実質的に延長していた。平均余命の延長は1990年代にいったん停滞したが、その後187国中179国で良好な伸展が認められた」とまとめ、「低~中所得国における死亡率の抑制に力を注ぐ必要がある。ミレニアム開発目標4の達成予測は過小評価されている可能性が示唆されるが、これは直近の小児死亡率に関するデータが不十分なためと考えられる」と指摘している。

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インフルエンザ 総説

突如として発生して瞬く間に広がりすぐに消え去っていく、咳と高熱のみられる流行病はギリシャ・ローマ時代から記録があり、このような流行病は周期的に現われてくるところから、16世紀のイタリアの星占いたちは星や寒気の影響によるものと考え、influence(影響)すなわちinfluenzaと呼ぶようになったといわれている。国内では、天保6(1835)年に出版された医書「医療生始」に、インフリュエンザ(印弗魯英撤)という病名が書かれているが、その字は、インド・フランス・ロシア・イギリスなどから撒き散らされる病気、という意味のように読み取れる。インフルエンザの病原体1891年 ドイツのコッホ研究所の Pfeifferと北里柴三郎が、インフルエンザ患者の鼻咽頭から小型の桿菌を発見し、1892年インフルエンザの病原体として発表しているが、1933年インフルエンザウイルスによってインフルエンザの病原体としては否定された。しかしその業績は高く評価され、その後も、本菌の学名として「Haemophilus influenzae: ヘモフィルス・インフルエンザ 」が使用されてきている。ヒトのインフルエンザウイルスは、1933年に初めて分離されたが、そのきっかけとなったのは、1931年ブタのインフルエンザからの分離である。これらから、インフルエンザという症状からつけられた疾病は、インフルエンザウイルスによって生じる感染症であることが明らかとなった。しかし、微生物学が進歩するにつれていろいろな微生物の存在が明らかとなり、さらにその病原診断が速やかになってくると、インフルエンザという症状の病気=インフルエンザウイルスの感染 となるわけではなく、インフルエンザという病名に一致した症状を呈しながら他の病原体による感染症であったり、またインフルエンザという病名とは異なる症状でありながらインフルエンザウイルスが検出されたりすることがある、ということも明らかになってきた。また、インフルエンザウイルス感染に伴い、急性脳症およびその他の中枢神経障害・精神異常・心循環器障害・肝障害・運動器障害など、さまざまな病態像を呈することも明らかになってきた。インフルエンザウイルスウイルス粒子内の核蛋白複合体の抗原性の違いから、A・B・Cの3型に分けられ、このうち流行的な広がりを見せるのはA型とB型である。A型ウイルス粒子表面には赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という糖蛋白があり、HAには16の亜型が、NAには9つの亜型がある。これらはさまざまな組み合わせをして、ヒト以外にもブタやトリなどその他の宿主に広く分布している。インフルエンザとは人の病気の病名であるが、インフルエンザウイルス感染症は、広く動物界に分布しているといえる。ウイルスの表面にあるHAとNAは、同一の亜型内で 抗原性を毎年のように変化させるため、A型インフルエンザは巧みにヒトの免疫機構から逃れ、流行し続ける。これを連続抗原変異(antigenic drift)または小変異という。いわばマイナーモデルチェンジで基本的に同じ形が少しずつ姿を変えることになる。連続抗原変異によりウイルスの抗原性の変化が大きくなれば、A型インフルエンザ感染を以前に受け、免疫がある人でも、再び別のA型インフルエンザの感染を受けることになる。その抗原性に差があるほど、感染を受けやすく、また発症したときの症状も強くなる。そしてウイルスは生き延びることになる。さらにA型は数年から数10年単位で、突然別の亜型に取って代わることがある。これを不連続抗原変異(antigenic shift)または大変異という。これはいわばインフルエンザウイルスのフルモデルチェンジで、つまり「新型インフルエンザウイルスの登場」ということになる。人々は新に出現したインフルエンザウイルスに対する抗体はないため、感染は拡大し地球規模での大流行(パンデミック)となり、インフルエンザウイルスは息をふきかえしたようにさらに生き延びる。2009年新型インフルエンザ(パンデミック):1918年に始まったスペイン型インフルエンザ(A/H1N1)は39年間続き、1957年からはアジア型インフルエンザ(A/H2N2)が発生し、その流行は11年続いた。その後1968年に香港型インフルエンザ(A/H3N2) が現われ、ついで1977年ソ連型インフルエンザ (A/H1N1)が加わり、小変異を続けてきた。2009年北アメリカ固有のブタのインフルエンザA/H1N1(スペイン型由来と考えられる)に、北アメリカの鳥インフルエンザウイルス、ヒトのインフルエンザウイルス、ユーラシアのブタインフルエンザの遺伝子が北アメリカのブタ体内で集合したと考えられるインフルエンザウイルス感染者が検知され、「ブタ由来(swine lineage)インフルエンザ:A/H1N1 swl」と命名された。ウイルスの亜型はH1N1タイプなのでA/H1N1(ソ連型)が変化したもので「新型」とはいえないのではないかという考えもあったが、その遺伝子構造はこれまでのH1N1(ソ連型)とはかなり異なるものであったため、「新型」インフルエンザウイルス(novel influenza virus)とされた。現在WHOではウイルスはPandemic influenza A (H1N1) 2009 virus。疾病名は「Pandemic influenza (H1N1) 2009」と呼んでいる。国内での2010/2011インフルエンザシーズンは、A/H3N2(香港型)、A/H1N1 pdm 2009およびB型が混在した流行で、A/H1N1(ソ連型)は消失した。2011/12シーズンは、A/H3N2(香港型)、およびB型が混在した流行で、A/H1N1 pdm 2009 はほとんど見られていなかった。インフルエンザの疫学状況わが国のインフルエンザは、毎年11月下旬から12月上旬頃に発生が始まり、翌年の1~3月頃にその数が増加、4~5月にかけて減少していくというパターンであるが、流行の程度とピークの時期はその年によって異なる(図1)。2009年は、新型インフルエンザ(パンデミック2009)の登場によって、著しくそのパターンは異なっている。わが国におけるインフルエンザの状況は、以下のようなサーベイランスシステムによって行われており、その結果は国立感染症研究所感染症情報センターのホームページで見ることができる(国立感染症研究所感染症情報センター:インフルエンザ http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/index.html)1)インフルエンザ患者発生状況:インフルエンザは感染症法の第五類定点把握疾患に定められており、全国約5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関(小児科約3,000、内科約2,000)より報告がなされている。報告のための基準は以下の通りであり、臨床診断に基づく「インフルエンザ様疾患(influenza like illness: ILI)の報告である。診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下の4つの基準を全て満たすもの1.突然の発症2.38℃を超える発熱3.上気道炎症状4.全身倦怠感等の全身症状定点は保健所に報告を行い、保健所は都道府県等の自治体に、自治体は国(厚生労働省)にその報告を伝達し、感染研情報センターがこれを集計・解析・還元している(図1)。図1インフルエンザ流行曲線全国5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関からの報告http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/weeklygraph/01flu.html2)病原体(インフルエンザウイルス)サーベイランスインフルエンザ定点の約10%は検査定点として設定され、検体を各地方の衛生研究所(地研)などに送付する。地研ではウイルス分離や抗原分析を行う。分離ウイルスに関する詳細な分析については、各地研および国立感染症研究所ウイルス3部インフルエンザウイルス室で行われ、感染研情報センターがこれを集計、解析、還元している(図2)。国内で分離されたウイルスの薬剤耐性に関する情報も公開されている。図2週別インフルエンザウイルス分離・検出報告数http://www.nih.go.jp/niid/images/iasr/rapid/infl/2012_49w/sinin1_121213.gif3)感染症流行予測事業によるインフルエンザ免疫保有状況一般健康者より血液の提供を受け、地研でインフルエンザ抗体保有状況を測定し、それを感染研において全国データとして集計する。調査結果については、インフルエンザシーズン前に感染症情報センターホームページ等を通じ公表される。4)その他のインフルエンザサーベイランスシステム感染症発生動向調査を補い、インフルエンザ流行初期にその拡大やピークを把握することを目的として、1999年度よりインフルエンザ定点(5,000定点)のうち約1割を対象に、インターネットを利用した「インフルエンザによる患者数の迅速把握事業(毎日患者報告)」を実施している。また、有志の医師による「MLインフルエンザ流行前線情報データベース(ML-flu)」が行われているが、両者による流行曲線は非常に良く相関している。(MLインフルエンザ流行前線情報データベース :http://ml-flu.children.jp)インフルエンザ流行の社会へのインパクトの評価には超過死亡(インフルエンザ流行に関連して生じたであろう死亡)数を用いる。「インフルエンザ疾患関連死亡者数迅速把握」事業により、16都市が参加し、インフルエンザ・肺炎死亡の迅速把握も行われている。シーズン終了後の事後的解析に加え、シーズン中の対策に生かせるように、週単位の「インフルエンザ・肺炎死亡」による超過死亡数の迅速な把握に並行し、解析および情報還元が行われるようになっている。(http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/inf-rpd/index-rpd.html)」

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お気に入りのインフルエンザ迅速診断キットベスト5ほか~医師アンケート(3)~

対象ケアネット会員の内科医師1,771名方法インターネット調査実施期間2012年12月18日~12月25日お気に入りのインフルエンザ迅速キットを1つ教えてください回答者(1,649名)の投票シェアベスト5今シーズンのインフルエンザウイルスの型別の傾向はいかがですか?すべてのインフルエンザ患者(非検出例を含め)のうちA型の占める割合でお教えください。今年のインフルエンザはA型が圧倒的か…抗インフルエンザ薬と解熱鎮痛薬の両方を処方する患者さんはどの程度いらっしゃいますか?外来のインフルエンザ患者における割合をお教えください。解熱鎮痛薬併用80%以上が半数弱。小児科では併用比率高い小児を除く患者さんについてお聞きします。インフルエンザで解熱鎮痛薬を処方するとき、次のどの薬剤を処方していますか?成人例での解熱鎮痛薬はアセトアミノフェンが圧倒的

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