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重症薬疹

薬剤性とウイルス性の発疹症の鑑別法について教えてください。これは難しい質問です。薬剤によって出来る発疹とウイルスによって出来る発疹はメカニズムが似ています。薬剤もウイルスもMHC(主要組織適合遺伝子複合体)を介してT細胞に抗原認識されるという点では同じであり、実際の鑑別も簡単ではありません。ただ、ウイルスには流行がありますし、麻疹や風疹などウイルスでは抗体価が上がります。鑑別では、これらの情報を有効活用すべきだと思います。重症薬疹の、ごく初期の場合の見分け方を教えてください。初期段階での重症化予測については盛んに研究を行っているものの、まだ結論にはたどり着かない状態です。“軽く見える薬疹が2日後に非常に重症になる”といった症例を臨床の場でも経験することがあります。実際、初期であればあるほど見分けは難しく、大きな問題です。しいてコツをあげれば、思い込みを捨てて経過を良く観察する事でしょう。経過を良く見ていると、問題の発疹の原因や悪化要因となっている病気の本態やその赴く方向・勢いが顕になり、おかしいと点に気づくようになります。そこが非常に大事な点だと思います。重症化する薬疹の診断基準や早期診断の項目で、とくに重要な項目はありますか?粘膜疹と高熱の発現は重要です。とくに熱については、高熱がなければウイルス関与の薬疹ではない事が多いといえます。いずれにせよ、この2項目が出た場合は、注意しなければいけないと思います。また一般検査では、白血球増多と白血球減少のどちらも要注意で、血液像で核左方移動を伴う好中球増多がるのなのか、異形リンパ球の出現とその増加があるのか、また特殊検査になりますがTh2の活性化を示唆する血清TARC値の上昇が見られるのかも、薬疹の病型・重症度・病勢を推定・判定する上で重要です。マイコプラズマ感染症に続発する皮疹と薬疹を鑑別する方法はありますか?この2つはきわめて似ています。しかしながら、マイコプラズマに続発する場合は、気道が障害される傾向がありますし、胸部所見からの情報も得られます。また子供よりも大人の方が鑑別難しい症例が多いといえます。これも一番のコツは経過をじっと観察し、通常の定型的薬疹と違うことに気づくことだと思います。同じ薬剤でも薬疹の臨床型には個人差があるが、その要因を知りたい。難しい質問ですが、その患者さんの持っている免疫応答性とそれに影響を及ぼす遺伝的・非遺伝的な各種要因に関係した患者さんの持っている特性などが影響するのでしょう。SJSからTENへの移行とありますが、病理組織学的に両者は別疾患と聞いたことがあります。疾患連続性について御教授ください。これにはいろいろな意見があります。SJSは、通常SJSの発疹の拡大と病勢の伸展・進行によりTENに移行します。しかし、TENの場合、SJSを経ないで現れるものもあります。そのため、現時点ではSJSからTENに移行するものは一群として考えているといってよいと思います。免疫グロブリンは、軽症でも粘膜疹があれば早期投与した方が良いのでしょうか?免疫グロブリンを用いるのは、通常の治療で治らない場合と明らかにウイルス感染があるなど免疫グロブリンの明らかな適応がある場合などに限ります。このような症例を除いては、早期に使わないのが原則だと考えます。また、高価であり保険の問題もありますので、当然ながら安易な処方は避けるべきでしょう。AGEPにおける、ステロイド投与適応の指標は?AGEPには原因薬を中止して治る例とそうでない例があります。ステロイド適応は原因薬をやめて治らない場合ですね。なお、AGEPの場合は、TENやSJSとは異なり比較的低用量のステロイドでも治る症例があることに留意すべきものと思われます。初期に判断が難しい際には、全身ステロイドは控えるべきですか?判断が困難な場合は、第一の選択肢は、まず専門医に紹介するべきでしょう。中途半端な治療の後、悪化してわれわれの施設に来られる患者さんも少なくありません。こういった医療が最も良くないといえるでしょう。そういう意味で、病気に寄り添い、責任を持ってとことん病気を見切ることが重要です。その経過中に無理だと判断したら専門の医師に紹介した方が良いといえます。重症薬疹の原因薬剤として意外なもの(あまり認識されていないもの)はありますか?抗痙攣薬、消炎鎮痛解熱薬(NSAIDs)、抗菌薬、痛風治療薬などが原因薬としてよく取り上げられますが、どんな薬剤でも起こり得ると思った方が良いと思います。被疑薬の特定が困難である場合、治療のために全て薬剤を中止することが多いですが、どのように因果関係を証明したらよいでしょうか?とくに多剤内服中の方について病気の程度によりますが、軽くて余裕があれば、怪しい薬剤から抜いていって、良くなったらその薬剤が原因である可能性が高いわけです。一方、薬疹の進行が激しく一刻の猶予もない場合は、すべて中止したほうが良いと考えます。そして、その症状が治るか収まるかして、ステロイドなどの治療薬を中止できるか、ある程度まで減量できた時に、推定される原因薬剤を用いて、患者さんの末梢血に由来するリンパ球の刺激培養(in vitroリンパ球刺激試験)を実施し、出来れば、in vivoのパッチテストも行い、原因薬を診断・推定することは今後の予防という視点からも重要です。

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Dr.岩田の感染症アップグレードBEYOND

第5回「尿路感染を舐めていないか?」第6回「解剖学(アナトミー)で考えるSSTI、骨・関節の感染症」第7回「スピードで勝負する髄膜炎」第8回「実は難しくない院内感染症」第9回「僕たちはそこで何ができるのか?被災地での感染症対策」 第5回「尿路感染を舐めていないか?」尿路感染は「難しくない」と思っている先生方はとても多いのですが、実はそこに落とし穴があります。尿路感染だと思って治療していたら実は○○だった…、という例には枚挙にいとまがありません。特にベテランの先生ほど、このピットフォールには陥りがちなのです。また、尿路感染=ニューキノロンという考え方も誤りです。実際、岩田先生のプラクティスで尿路感染にニューキノロンが使われることはほとんどありません。では、どうしたらいいのでしょうか?この回を見てしっかり学んでください。第6回「解剖学(アナトミー)で考えるSSTI、骨・関節の感染症」日常診療でもしばしば遭遇する、皮膚や軟部組織の感染症SSTI(Skin and Soft Tissue Infection)、骨、関節の感染症。実は、内科系のドクターはこれらが苦手な方が多いといいます。それは、感染した部位を外科的な視点で解剖学的に見ることが必要だから。単に、「腕」「足」の関節ではなく、その詳しい場所と、組織を特定しなければいけません。また、SSTIによく使われる第三世代セファロスポリンは明らかな誤用です。診断と治療の正しいアプローチを詳しく解説します。第7回「スピードで勝負する髄膜炎」頻度は高くないが、細菌性であれば命に関わる髄膜炎。全ての医師が少なくとも診断のプロセスを理解しておきたい疾患です。スクリーニング、腰椎穿刺、CT、抗菌薬の選択・投与、ステロイド使用の流れを覚えましょう。原因微生物も典型的なものだけでなく例外的な微生物に注意を払う必要があります。スピードを要求される対応のノウハウを身に付けましょう。第8回「実は難しくない院内感染症」入院中の患者さんが熱発した!担当医にとってこれほど気分の悪いことはありません。分からない原因、悩む抗菌薬の選択、耐性菌の不安。しかし岩田先生は、「外来の発熱患者さんに比べれば何百倍も簡単」と一刀両断。なぜなら、実は、感染症以外の鑑別を含めても、考えられる原因は数えるほどしかなく、それらを「ひとつずつ丁寧に精査していけば良い」だけのことだからです。院内感染症に使われる、カルバペネム、バンコマイシン、ピペラシリンといった広域抗菌薬についての誤用、誤解も明快に解説します。耐性菌に対する考え方もしっかり身に付けましょう。第9回「僕たちはそこで何ができるのか?被災地での感染症対策」2011年3月11日以来、岩田先生の医療に対する考え方は大きく変わったといいます。未曾有の大災害に対し、医師一人がいかに無力であるかを思い知り、しかし、それでもなお、何か出来ることがあるはずと、模索する日々。今回は、被災地での岩田先生自らの経験を踏まえて、避難所での感染症対策を解説します。非常時に感染症医として、医師として何が出来るか。それは、決して災害が起ってからだけの問題ではなく、常日頃のあなたの診療においても、考え、実践すべきことなのです。

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細菌性のCOPD急性増悪では好中球中の活性酸素が増加

 細菌性のCOPDの急性増悪では、非細菌性の急性増悪に比べ、好中球中の活性酸素が著しく増加することが、リトアニア大学病院呼吸器・免疫学科のMindaugas Vaitkus氏らにより報告された。さらに、これらは局所炎症が強く引き起こされたことによる炎症反応とみられ、細菌性のコロナイゼーションが原因である可能性にも言及している。Inflammation誌オンライン版2013年7月20日号の掲載報告。 慢性的な気道炎症は、好中球中の活性酸素が増えることで引き起こされる可能性がある。しかしながら、COPDの増悪発症に細菌がどう関わっているのかについては、これまでしばしば議論の的となってきた。  本研究の目的はCOPDの急性増悪について細菌性および非細菌性、それぞれの増悪における、末梢血と喀痰中の好中球の活性酸素を調べることにある。対象は急性増悪を起こしたCOPD患者40例、健康な非喫煙者10例、非COPDの喫煙者10例であった。 末梢血と喀痰のサンプルは増悪中と回復後に採取した。好中球の分離は高密度勾配遠心分離と磁気分離により行った。好中球中の活性酸素はフローサイトメトリーを用いて平均蛍光強度を測定し、血清中と誘発喀痰中のインターロイキン-8(IL-8)の値はELISA法により測定した。 主な結果は以下のとおり。・細菌性の急性増悪を起こしたCOPD患者の好中球中の自発的活性酸素は、非細菌性の急性増悪を起こしたCOPD患者や安定期COPD患者と比べて、有意に高かった(p<0.05)。・ホルボールミリステートアセテート(PMA)や黄色ブドウ球菌により刺激を加えた際の、好中球中の活性酸素についても同様の傾向が認められた(p<0.05)。・細菌性の急性増悪を起こしたCOPD患者の血清中、誘発喀痰中のインターロイキン-8(IL-8)は、非細菌性の急性増悪を起こしたCOPD患者、安定期COPD患者、健康な喫煙者・非喫煙者のいずれと比べても高いことが示された(p<0.05)。とくに、誘発喀痰中のインターロイキン-8(IL-8)は、すべての群と比較して細菌性の急性増悪を起こしたCOPD患者で高かった(p<0.05)。・また、急性増悪を起こしたCOPD患者群では、ほかのすべての群と比較して、CRPも高かった(p<0.05)。

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MERSはSARSに比べ伝播力は弱く、パンデミックの可能性は低い/Lancet

新しいコロナウイルスである中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)と比べると、ヒトからヒトへの伝播力は弱く、パンデミックとなる可能性は低いことが報告された。フランス・パスツール研究所のRomulus Breban氏らが、世界保健機関(WHO)の報告書などを基に調べ明らかにしたもので、Lancet誌2013年7月5日号で発表した。MERS-CoV感染症は、臨床的にも疫学的にも、またウイルス学的にも、SARS-CoV感染症との類似点が多い。研究グループは、既報のSARS-CoVパンデミック報告を入手し、両者を比較し、MERS-CoV感染症の伝播力と流行の可能性を調べた。ベイジアン解析で基本再生産数を割り出す 研究グループは、2013年6月21日までに報告されたMERS-CoV感染症確定者のうち、55例について、WHOの報告書などを基に、ヒト-ヒト間の伝播力を調べた。 ベイジアン解析により、基本再生産数(R0)を求め、SARS-CoV感染症の場合と比較した。MERS-CoVクラスターサイズについて解釈を変えることで、悲観的・楽観的の2通りのシナリオ予測値を算出した。悲観的シナリオでもMERS-CoVのR0値は0.69 その結果、最も悲観的なシナリオの場合、MERS-CoVのR0予測値は0.69(95%信頼区間:0.50~0.92)だった。最も楽観的なシナリオでは、MERS-CoVのR0予測値は0.60(同:0.42~0.80)だった。 一方、SARS-CoVのR0値は0.80(同:0.54~1.13)で、それに比べ、MERS-CoVは悲観的シナリオの場合でも、パンデミックとなる可能性は低いことが示された。 解析の結果を受けて著者は、「今回の解析結果は、MERS-CoVはまだパンデミックとなる可能性は低いことを示すものでる。同時に、サーベイランスの強化、および感染源である動物宿主およびヒトへの感染ルートの探索を活発化することを推奨すべきことを確認するものとなった」と結論している。

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ICUでのMRSA感染症を防ぐために有効な方法とは?(コメンテーター:吉田 敦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(117)より-

MRSAは、医療関連感染(Healthcare Associated Infections)の中で最も重要な微生物といっても過言ではなく、とくにICUでは問題になることが非常に多い。米国ではスクリーニングとして、ICU入室時に鼻腔のMRSAを調べ、接触感染予防策を徹底するよう義務づけている州がある。鼻腔にMRSAを保菌しているキャリアーからの伝播を防ぐ方法として、(1)抗菌薬であるムピロシンの鼻腔内塗布や、(2)消毒薬のクロルヘキシジンをしみ込ませた布での患者清拭を行って、除菌decolonizationできるかどうか検討され、それぞれ有効性が示されてきたが、誰にいつの時点で行えばよいかは不明であった。 そこで米国43病院、74箇所のICUを対象として、以下の3群に割りつけた。●グループ1:入室時に鼻腔のMRSAスクリーニングを行い、陽性者や過去にMRSA感染症の既往があった者は接触感染予防策を行う。●グループ2:グループ1と同様のスクリーニングを行うが、保菌・感染が判明した患者はムピロシンと2%クロルヘキシジンによる除菌と接触感染予防策を行う。●グループ3:スクリーニングは行わないで、入室者全例に除菌と接触感染予防策を行う。 この3群において、MRSA検出率と血流感染発生率を比較した。 全く対策を行わなかった時期と比べると、MRSA検出率はグループ1で8%、グループ2で25%、グループ3で36%減少し、血流感染率はグループ1で1%、グループ2で22%、グループ3で44%減少し、全例除菌の効果が最も著しかった。なお、血流感染では、MRSAによるものとその他の微生物によるものの両方が減少し、減少幅はグループ3で最も大きかった。 ムピロシンにより鼻腔の保菌が少なくなったこと、クロルヘキシジン清拭により皮膚の細菌数が少なくなったこと、さらに入室時から対策を開始できたことがグループ3での効果に結びついたと考えられる。対象を絞った対策よりも、ユニバーサルな除菌が効果的であったというのは、培養でとらえきれない(培養感度以下である)MRSAの存在や、多くの人が接し、患者・スタッフ間で伝播が生じやすいICUの環境を考えると理にかなっているといえよう。 日本ではかつてクロルヘキシジンによるアレルギー例が報告され、それ以来その使用に対して慎重であり、用いられている濃度も低い。今回の検討では、クロルヘキシジンの使用後に7例で局所の掻痒や発疹が出現したが、いずれも中止により改善したという。 本邦で通常行われている、対象を絞った方法では限りがあることも示されたわけであるが、今回の検討では、その後にMRSAの検出率が増加しなかったかも気になるところである。これまで、ユニバーサルなムピロシン使用は1年以内の短期的な抑制効果にとどまっていた例が報告されている。感染予防に対する職員個人の意識が持続できなければ、除菌を行っても早期に破綻してしまう。その意識をどのように維持させていくかが、最も重要かつ工夫しなければならない課題である。

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SGLT2阻害薬追加、血糖管理不良な2型糖尿病に有用/Lancet

 ナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬カナグリフロジン(canagliflozin)は、メトホルミン単独では血糖管理が十分でない2型糖尿病患者に対する追加治療として良好な血糖改善効果を発揮し、忍容性も良好なことが、米国・ペニントン生物医学研究所のWilliam T Cefalu氏らが行ったCANTATA-SU試験で示された。メトホルミンへの上乗せが可能な既存薬の多くは体重増加や低血糖の懸念があるが、SGLT2の阻害という作用機序はこれらの問題を回避し、また尿糖排泄の促進作用により総カロリーの消費が進むため体重が減少する可能性もあるという。一方、本薬剤には軽度の浸透圧利尿がみられるため、頻尿や多尿の懸念があるという。Lancet誌オンライン版2013年7月12日号掲載の報告。標準治療に対する非劣性を無作為化試験で検証 CANTATA-SU試験は、メトホルミン単独では血糖値の管理が十分でない2型糖尿病患者において、カナグリフロジンの上乗せ効果の、グリメピリド(商品名:アマリールほか)に対する非劣性を検証する二重盲検無作為化第III相試験。対象は、年齢18~80歳、HbA1c 7.0~9.5%、10週以上のメトホルミン投与を受けている2型糖尿病患者であった。 これらの患者が、カナグリフロジン 100mgまたは300mg、あるいはグリメピリド(6から8mgへ漸増)を1日1回経口投与する群に無作為化に割り付けられた。主要評価項目はベースラインから治療52週までのHbA1cの変化で、非劣性マージンは0.3%とした。100mg群の非劣性、300mg群の優位性を確認 2009年8月28日~2011年12月21日までに19ヵ国157施設から1,450例が登録され、グリメピリド群に482例、カナグリフロジン 100mg群に483例、300mg群には485例が割り付けられた。 全体の平均年齢は56.2歳(9.2 SD)、男性52%、白人67%、アジア人20%、平均HbA1c 7.8%、平均空腹時血糖9.2mmol/L(≒165.6mg/dL)、平均体重86.6kg、平均BMI 31.0、平均罹病期間6.6年(中央値5.0年)であった。 治療52週時のHbA1cは3群ともにベースラインよりも低下し、最小二乗平均値の変化率はグリメピリド群が-0.81、カナグリフロジン 100mg群は-0.82%、300mg群は-0.93%であった。 カナグリフロジン 100mg群とグリメピリド群の最小二乗平均値の差は-0.01%(95%信頼区間[CI]:-0.11~0.09)であり、カナグリフロジン 100 mg群はグリメピリド群に対し非劣性であった。また、300mg群とグリメピリド群の最小二乗平均値の差は-0.12%(-0.22~-0.02)であり、300mg群のグリメピリド群に対する優位性が示された。 体重は、グリメピリド群がわずかに増加したのに対し、2つのカナグリフロジン群は有意に低下した[最小二乗平均値の変化率:0.7%、-3.7%、-4.0%、100mg群、300mg群とグリメピリド群の差:-4.4(-4.8~-3.9)、-4.7(-5.2~-4.3)]。良好な安全性プロフィール、浸透圧利尿関連イベントは多い傾向 重篤な有害事象は、カナグリフロジン 100 mg群が24例(5%)、300mg群が26例(5%)、グリメピリド群は39例(8%)に認められた。 カナグリフロジン群で多い有害事象として性器真菌感染症が挙げられ、女性では100mg群が26例(11%)、300mg群が34例(14%)で、グリメピリド群は5例(2%)であり、男性では100mg群が17例(7%)、300mg群が20例(8%)で、グリメピリド群は3例(1%)だった。 尿路感染症も100mg群が31例(6%)、300mg群が31例(6%)で、グリメピリド群の22例(5%)より多い傾向がみられた。浸透圧利尿関連イベントもカナグリフロジン群で多い傾向にあり、頻尿が100mg群、300mg群ともに12例(3%)ずつ、グリメピリド群は1例(<1%)にみられ、多尿はカナグリフロジン群が4例(<1%)ずつ、グリメピリド群は2例(<1%)に認められた。 著者は、「これらの結果は、メトホルミンで血糖管理が不十分な2型糖尿病患者において、カナグリフロジンは実行可能な治療選択肢であることを示すもの」と指摘している。■「SGLT2阻害薬」関連記事SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

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医療従事者の針刺し損傷年間5万件を防ぐ!

 7月16日(火)、大手町サンケイプラザにおいて「医療現場における血液・体液曝露の危機的現状と課題 -医療従事者や患者の感染予防に向けて-」と題して、職業感染制御研究会主催によるメディアセミナーが開催された。 セミナーでは、研究会より木村 哲氏 (東京医療保健大学 学長)と3名の演者が、わが国の医療現場における医療従事者の患者からの血液・体液曝露、ウイルス感染の現状について講演を行った。「針刺し予防の日(8月30日)」を制定 はじめに木村 哲氏が、同会の軌跡を説明し、「現在も医療従事者の血液・体液の曝露や針刺し損傷が年間5万件以上報告され、推計でも20万件近くあるとされる。最近では、在宅医療の普及で患者家族の損傷も報告されている。こうした状況の中で、今後も事故防止、感染リスクの低減に努めるべく、活動の一環として8月30日を『針刺し予防の日』に制定し、今後も事故予防の活動を広く推進していきたい」と今回のセミナーの意義を説明した。適切な器具、教育、システムで防ぐ事故と感染 吉川 徹氏(公益財団法人労働科学研究所 副所長)は、「針刺しによる医療従事者の職業感染と患者への院内感染防止の課題と対策」と題して、針刺し予防と対策の概要について講演を行った。 わが国では年間推計5万件以上の針刺し損傷が発生しており、血液媒介病原体への新規感染の約3分の1が医療関連感染であるという。事例として、ある医療機関の看護師が、採血時の針刺し損傷により患者血液からC型肝炎に感染した例が紹介され、「これは医療現場で生じる労働災害であり、医療機関の安全配慮義務も問題となる」と解説が行われた。 肝炎感染対策では、アメリカの取り組みを例に、予防として手袋・ゴーグル着用での曝露予防の徹底、機器使い捨てのシステム化、安全装置付きの機器の開発・使用、ワクチンの開発など数々の取り組みが行われた結果、医療従事者の感染率が低下したことが報告された。また、アメリカ、EUなどの先進国では、感染予防を法制化し、効果を上げていることが紹介された。 今後の課題としては、厚生労働省の院内感染防止の通達(リキャップ禁止、廃棄容器の適切配置、安全機材の活用)の実効性を上げるためにも、「臨床現場への安全機材の普及を推進し、機材の認知、導入、トレーニングを通じて、針刺し損傷やウイルス感染の撲滅を目指していきたい」と抱負を述べた。インスリン注射はリスクの高い処置 満田年宏氏(公立大学法人横浜市立大学附属病院 感染制御部 部長・准教授)は、「国内外の医療環境における針刺し切創の現状と課題」と題し、臨床現場での具体的な課題について講演を行った。 はじめにB/C型肝炎、HIVの患者動向と国内外での感染状況を説明、医療従事者から患者に感染させる場合もあり、医療従事者の接し方についても今後は配慮が必要と問題を提起した。 次に臨床現場では、安全機材の価格が高価なことや安全機材への認識不足などの理由により安全機能付きの鋭利機材(例.予防接種の針、通常の注射器と針、インスリン注入器の針)がまだ普及しない現状が説明された。また、糖尿病患者は、インスリンや透析など頻回に注射器にさらされることで、肝炎への感染リスクが高いことを指摘。これらを踏まえたうえで、全国集計のデータから看護師が患者にインスリン注射をした時の針刺し損傷報告が1年間に6,675件あったとレポートした。インスリンの注射処置は、リスクの高い処置であり、「医療従事者は、より高いレベルで安全配慮に気を配らなければ、肝炎などに感染するリスクが高くなる」と警鐘を鳴らした。(参考動画: 針刺し防止ビデオ) 最後に、わが国おいても早急にワン・アンド・オンリー(1本の針、注射器、1回の使用)の実現、安全機能付き機材使用時の保険点数化による普及促進を目指し、感染制御ができる体制になることを望みたい、と訴えた。入職(実習)前に接種しておきたいHBワクチン 李 宗子氏(神戸大学医学部附属病院 看護部・感染制御部 感染管理認定看護師)は、「針刺し防止のために求められるもの」と題し、医療現場での事故防止、感染防止の具体的な方策について説明した。 わが国の「エイズ拠点病院」の安全機材導入状況について説明し、安全意識が高いとされるこうした施設においても、安全機材の導入は100%ではなく、全国的にみればまだ安全機材への意識付け、導入が低いことを示唆した。 そして、独自の統計で2004年度と2010年度の100床あたりの針刺し損傷件数の平均値比較では、229件 → 69件と全体的に下がっており、医療機関での啓発活動などが功を奏していることが報告された。また、職種別針刺し発生頻度では(2010年度、n=62)、看護師が実数では一番多いものの職種の構成割合で分析した結果、研修医、医師、看護師、臨床検査技師の順で発生頻度が多いことが説明された。なかでも針刺しが多い原因機材は、使い捨て注射器(針)、縫合針、ペン型インスリン注射針などであることがレポートされた。 次に、針刺し損傷後に問題となる肝炎感染について、「入職時に肝炎ワクチンの接種を行うが、効果の発現までインターバルがあり、そのインターバルの間に不慣れゆえに事故が起こっていて、ワクチンの効果が期待できないでいる。入職前にワクチンを接種するなど、医療機関だけでなく社会全体の取り組みが必要」と問題を提起した。 最後に事故防止への取り組みとして、「入職(実習)前のワクチン接種と安全機材を含む医療機材の普及とトレーニングが必要であるが、実効性を持たせるためにも、1日も早く法令などで整備を行ってもらいたい」と述べ、講演を終えた。職業感染制御研究会について 1994 年に設立。医学・医療関係者の職業感染制御に関心を持つ個人と組織で構成され、針刺し損傷に代表される医療従事者の血液感染をより減少させることを目的に幅広く活動中。詳しくはこちら

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鳥インフルエンザA(H7N9)感染、それほど重大ではなかった?/Lancet

 2013年3月に第1例が特定されヒトへの感染が明らかとなった、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症について、中国疾病管理予防センター(CDC)のHongjie Yu氏らが5月28日時点で行った臨床的重症度の評価結果を発表した。入院となった感染患者は123例で、そのうち37例(30%)が死亡、17例はなお入院中であり、回復したのは69例(56%)であったことなどを報告している。Lancet誌オンライン版2013年6月21日号掲載の報告より。2013年5月28日時点の入院患者は123例 鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症の臨床的重症度の評価は、2013年5月28日時点で報告された、検査によって確定した症例の情報を、中国CDC統合データベースから入手して行われた。 医学上の理由で入院が必要となった患者について、死亡、人工呼吸器装着、ICU入室のリスクを調べた。また、インフルエンザ様疾患サーベイランスによって検出した感染確定症例の情報を用いて、症候性感染死亡リスクを推定した。 その結果2013年5月28日時点において、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症による入院患者は123例だった(60歳以上58%、男性71%)。症候性感染死亡リスクは10万症例当たり160~2,800例 123例のうち37例(30%)が死亡、69例(56%)が回復していた。回復までの期間中央値は18日(95%信頼区間[CI]:14~29)だった。また17例がいまだ入院中だった。それらを加味した全年齢入院患者の死亡リスクは36%(95%CI:26~45)と推定された。年齢別では、60歳未満患者では18%(同:6~29)、60歳以上患者は49%(同:36~63)だった。 人工呼吸器装着あるいは死亡のリスクは69%(95%CI:60~77)、ICU入室・人工呼吸器装着・死亡のリスクは83%(同:76~90)と高率であった。それぞれの60歳未満と60歳以上のリスクは、前者が53%、80%、後者が75%、89%だった。 症候性感染の死亡リスクは、10万症例当たり160例(95%CI:63~460)~2,800例(同:1,000~9,400)と推定された。 上記の結果を踏まえて著者は「鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒトへの感染は、以前に報告したほど重大ではないようである。すでに軽症例が発生している可能性がある」と結論。そのうえで「ヒトへの感染リスクを最小とするために、引き続き警戒と継続的な介入コントールは必要である」とまとめている。

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汚染メチルプレドニゾロン注射による脊椎真菌感染症、MRIで高精度に識別/JAMA

 汚染されたメチルプレドニゾロン注射を受けた人に対し、MRI検査を行うことで、脊椎または傍脊椎真菌感染症の有無を、高い精度で識別できることが明らかになった。米国・St Joseph Mercy HospitalのAnurag N. Malani氏らが行った試験の結果、報告したもので、MRI所見で異常が認められた36例中35例で、同真菌感染症である可能性が高いと診断されたという。米国では2012年に、汚染されたメチルプレドニゾロン注射(薬局で調製)が原因で、多州にわたる髄膜炎のアウトブレイクが発生している。JAMA誌2013年6月19日号掲載の報告より。汚染薬剤の注射を受け、副作用について未治療の172例にMRI検査 研究グループは、汚染されたメチルプレドニゾロン注射を受けていながら、その副作用について治療を受けていない患者、172例を試験の対象とした。被験者に対し、2012年11月~2013年4月にかけてMRI検査を行い、その所見による脊椎・傍脊椎真菌感染症の識別能について調べた21%にMRI所見異常、その大部分がCDC基準で脊椎・傍脊椎感染が高い可能性 その結果、被験者のうちMRI所見で異常が認められたのは36例(21%)で、硬膜外または傍脊椎に膿瘍や蜂巣織炎、くも膜炎、脊椎骨髄炎、椎間板炎、また中程度から重度の硬膜外・傍脊椎・硬膜内の増強が認められた。 そのうち35例が、米国疾病予防管理センター(CDC)の診断基準で、脊椎・傍脊椎真菌感染症の可能性が高い(17例)、または確定的(18例)であると診断された。 35例の患者全員に、抗真菌剤(ボリコナゾール、アムホテリシンBリポソーム製剤の併用・非併用)を投与した。そのうち24例は、外科的創面切除術を要したが、手術時点で17例(71%)が、臨床検査によって真菌感染症が確認された。なお、同17例中5例は、自覚症状がなかった。

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新種のMERSコロナウイルスの院内ヒト間感染を確認/NEJM

 重篤な肺炎を引き起こす新種の中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome; MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)の、医療施設内でのヒト間感染の可能性を示唆する調査結果が、サウジアラビア保健省のAbdullah Assiri氏らKSA MERS-CoV調査団により、NEJM誌オンライン版2013年6月19日号で報告された。 2003~2004年のSARSパンデミック以降、呼吸器感染症の原因となる2種類の新規ヒトコロナウイルス(HKU-1、NL-63)が確認されているが、いずれも症状は軽度だった。一方、2012年9月、世界保健機構(WHO)に重篤な市中肺炎を引き起こす新種のヒトコロナウイルス(β型)が報告され、最近、MERS-CoVと命名された。現在、サウジアラビアのほか、カタール、ヨルダン、英国、ドイツ、フランス、チュニジア、イタリアでヒトへの感染が確認されているが、感染源などの詳細は不明とされる。院内アウトブレイクの実態を調査 調査団は、サウジアラビアの医療施設で発生したMERS-CoV感染症の院内アウトブレイクの実態を調査した。 医療記録を精査して臨床的、人口学的情報を収集し、感染者および感染者と接触した可能性のある者を同定して面接調査を行った。潜伏期間および発症間隔(感染者とこの感染者と接触した者の症状発現の時間差)について検討した。 2013年4月1日~5月23日までに、サウジアラビア東部で23例のMERS-CoV感染者が報告された。年齢中央値は56歳(24~94歳)、男性が17例(74%)、50歳以上が17例(74%)、65歳以上が6例(26%)であり、基礎疾患は末期腎疾患が12例(52%)、糖尿病が17例(74%)、心疾患が9例(39%)、喘息を含む肺疾患が10例(43%)に認められた。15例(65%)が死亡、21例(91%)はヒト間感染 症状としては、発熱が20例(87%)、咳嗽が20例(87%)、息切れが11例(48%)、消化管症状が8例(35%)にみられ、腹部または胸部X線画像上の異常所見が20例(87%)に認められた。 6月12日の時点で15例(65%)が死亡し、6例(26%)が回復、2例(9%)は入院中であった。潜伏期間中央値は5.2日、発症間隔は7.6日であった。 23例中21例(91%)が、透析室、集中治療室、病室などの入院施設内でのヒト間感染であった。感染者と接触のあった家族217人(成人120人、小児97人)のうち成人5人(3人は検査で確定)、および感染者と接触のあった200人以上の医療従事者のうち2人(2人とも検査で確定)が感染した。 著者は、「医療施設内におけるMERS-CoVのヒト間感染が示唆され、重大な感染拡大に結びついた可能性がある」と結論している。

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乳児の急性細気管支炎治療、アドレナリン吸入は食塩水吸入と同程度/NEJM

 乳児の急性細気管支炎の治療について、ラセミ体アドレナリン(商品名:ボスミン)吸入は、食塩水吸入よりも有効でなかったことが示された。一方で、吸入治療戦略に関して、固定スケジュールよりも必要に応じて行うオンデマンド吸入が優れていると考えられることも明らかになった。ノルウェー・オスロ大学病院のHavard Ove Skjerven氏らが、多施設共同無作為化試験の結果、報告した。乳児の急性細気管支炎は大半はRSウイルスが原因で、入院率が高く換気補助を必要とし、致死的なこともある。治療では気管支拡張薬の使用は推奨されておらず、食塩水吸入の治療が行われることが多いが、吸入治療の効果の可能性については、薬剤の種類、投与の頻度に関するコンセンサスは得られていないのが現状であった。NEJM誌2013年6月13日号掲載の報告より。アドレナリン吸入vs.食塩水吸入、オンデマンドvs. 固定スケジュールを検討 研究グループは本検討において、急性細気管支炎で入院した乳児を対象に、ラセミ体アドレナリン吸入療法が食塩水吸入療法よりも優れているとの仮定を検証すること、また吸入治療の頻度に関する戦略[オンデマンドvs. 固定スケジュール(最高2時間ごと)]の評価を行うことを目的とした。 2010年1月~2011年5月にノルウェー南東部にある8施設で2×2因子無作為化二重盲検試験を行った。対象は、中等度~重度(0~10評価の臨床スコアが4以上)の急性細気管支炎を有した12ヵ月齢未満児。被験児については、酸素療法、経鼻胃管栄養、換気補助の利用についても記録を行った。 主要アウトカムは、入院期間で、intention-to-treat(ITT)解析にて評価した。投与戦略は、オンデマンドが固定スケジュールよりも優れる 試験対象児は404例だった。平均年齢は4.2ヵ月、59.4%が男児であった。 入院期間、酸素療法・経鼻胃管栄養・換気補助の使用、臨床スコアのベースライン(吸入療法前)からの相対的改善は、ラセミ体アドレナリン吸入群と食塩水吸入群で同程度だった(すべての比較のp>0.1)。 一方、頻度の比較においては、オンデマンド群のほうが固定スケジュール群よりも、入院期間が有意に短縮した(p=0.01)。入院期間は、オンデマンド群47.6時間(95%信頼区間[CI]:30.6~64.6)、固定スケジュール群61.3時間(同:45.4~77.2)だった。 また、オンデマンド群のほうが有意に、酸素療法の使用が少なく(38.3%vs. 48.7%、p=0.04)、換気補助の使用も少なく(4.0%vs. 10.8%、p=0.01)、入院期間中の吸入療法投与の頻度が少なかった(12.0回vs. 17.0回、p<0.001)。 これらの結果を踏まえて著者は、「乳児の急性細気管支炎の治療において、ラセミ体アドレナリン吸入は、食塩水吸入よりも優れていなかった。一方、吸入治療はオンデマンド戦略が固定スケジュール戦略よりも優れていると思われる」と結論している。

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重症インフルエンザ患者に対するオセルタミビル2倍量投与の有用性(コメンテーター:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(108)より-

インフルエンザは急性熱性ウイルス性疾患であり、自然に軽快することが多いが、一部の患者では肺炎などを合併し、重症化することが知られている。重症インフルエンザ患者に対してエビデンスの存在する治療方法はないが、WHOのガイドラインでは、パンデミック2009インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染症の重症例や鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症に対して、オセルタミビル(商品名:タミフル)の高用量投与や治療期間の延長を考慮すべきと述べられている。 本研究は、重症インフルエンザ患者に対するオセルタミビル2倍量投与の有用性を評価するために行った、二重盲検ランダム化比較試験である。迅速検査あるいはRT-PCR検査でインフルエンザと診断された1歳以上の重症入院患者326例を対象とし、オセルタミビルの通常量投与群と2倍量投与群の2群に分けて、治療5日目のRT-PCR陰性率や、死亡率などを比較検討した。重症の定義は、インフルエンザで入院した患者の中で、新たな肺浸潤影、頻呼吸、呼吸困難、低酸素血症のうち1つ以上を有する者とした。また鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症例は、全例本研究に含めた。 エントリー時のインフルエンザウイルスの内訳は、A型が260例(79.8%)、B型が53例(16.2%)、迅速検査の偽陽性が13例(3.9%)だった。A型のうち、鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスは17例だった。なお、今回の研究には、2013年に中国で人ヘの感染例が確認された鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスは含まれていない。 治療5日目のRT-PCR陰性率は、2倍量投与群で72.3%(95%信頼区間:64.9~78.7%)、通常量投与群で68.2%(同:60.5~75.0%)であり、有意差を認めなかった(P=0.42)。死亡率は、2倍量投与群で7.3%(同:4.2~12.3%)、通常量投与群で5.6%(同:3.0~10.3%)であり、有意差を認めなかった(P=0.54)。死亡例の71%は、鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染症例であった。 本研究では、重症インフルエンザ患者に対するオセルタミビルの2倍量投与は通常量投与と比べて、ウイルス学的にも臨床的にも有効性に差を認めなった。インフルエンザを治療するうえで大切なのは「症状発現からいかに早く治療を開始できるか」であることがほかの研究で示唆されている。本研究では、症状発現から治療開始まで中央値で5日(鳥インフルエンザA(H5N1)感染症では7日)経過しており、両治療群ともに治療効果が乏しかった可能性がある。 一般的にインフルエンザの重症化因子として、高齢者、慢性肺疾患や心疾患などの基礎疾患を有する者、免疫抑制患者、妊婦などがあげられるが、本研究の対象にはこれらの患者があまり含まれていない。今回の研究対象の75.5%が小児例であることからも、本研究の結果を重症化因子を有する成人にそのまま当てはめることはできないと考える。

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予防的なマクロライド系抗菌薬の投与はCOPD増悪を抑制するのか?

 マクロライド系抗菌薬の予防的投与はCOPD増悪を抑制する有効なアプローチであることがマイアミ大学のElie Donath氏らにより報告された。Respiratory Medicine誌オンライン版2013年6月11日号の掲載報告。 マクロライド系抗菌薬は抗菌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用など、さまざまな特性を有しており、COPDの増悪抑制に対して独特な利点を有している。近年、マクロライド系抗菌薬の予防的投与がCOPD増悪のリスクを低減させるかに関する研究が注目を集めているが、これら最近の知見が先行研究の知見にどの程度当てはまるかについてはほとんどわかっていない。 本研究の目的は、呼吸器関連のメタアナリシスから、COPD増悪の抑制に対するマクロライド系抗菌薬の予防的投与がコンセンサスのとれるものかを評価することである。 EMBASE、コクラン、Medlineのデータベースから関連のあるランダム化比較試験を検索し、6件のランダム化試験を同定した。プライマリエンドポイントはCOPDの増悪発生率であり、セカンダリーエンドポイントは全死亡、入院率、有害事象、少なくとも1回以上のCOPD増悪を経験する可能性であった。 主な結果は以下のとおり。・プラセボと比較してマクロライド系抗生物質を投与した群では、COPD増悪の相対リスクが37%減少していた(RR:0.63、95%信頼区間[CI]: 0.45~0.87、p=0.005)。・入院の相対リスクは21%減少していた(RR: 0.79、95%信頼区間[CI]: 0.69~0.90、p=0.01)。・少なくとも1回以上の増悪を起こす相対リスクは68%減少していた(RR :0.34、95%信頼区間[CI]: 0.21~0.54、p=0.001)。・マクロライド系抗生物質を投与した群では、全死亡の減少傾向や有害事象の増加傾向が認められたが、統計学的な有意差はみられなかった。 なお、今回の研究において、有害事象報告に一貫性が欠けていた点やメタアナリシス間で臨床的、統計学的に不均一性があった点についても著者は言及している。■「COPD増悪」関連記事COPD増悪抑制、3剤併用と2剤併用を比較/Lancet

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陽性検出率は69%、爪真菌症のための迅速・正確な診断法MS-ELISAを開発

 ドイツ・シャリテ・ベルリン医科大学のF. Pankewitz氏らは、目標遺伝子とDNA抽出法を至適化し、迅速にT.rubrum(紅色白癬菌)爪真菌症を特定できる新たな診断法を開発した。爪真菌症の有病率は過去10年間で、着実に増加したという。爪真菌症では最初の正確な診断が治療の成功および費用対効果に重要だが、現状の診断法は、迅速なものではなく、感度、特異度も低いとして、著者らは新たなPCR酵素結合免疫吸着検査法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)を開発した。The British Journal of Dermatology誌2013年6月号の掲載報告。 Pankewitz氏らが開発したのは、マイクロサテライトベースのPCR-ELISA(MS-ELISA)で、爪真菌症で最も多いT.rubrumを検出するためのものであった。 本研究では検出について、MS-ELISAと顕微鏡、先行発表されているトポイソメラーゼPCR-ELISA(TI-ELISA)法(MS-ELISAとは異なる方法で抽出した鋳型DNAが用いられている)、および培養法と比較した。 主な結果は以下のとおり。・本試験で用いられたサンプルは、患者217人から集められた爪および皮膚標本434件であった。・陽性サンプルの検出件数はMS-ELISAが最も高く69%であった。次いで直接顕微鏡56%、TI-ELISA法は44%であり、培養法は30%であった。・同一のDNA抽出法を120件の標本に適用した場合、MS-ELISAの感度はTI-ELISAと比べて2倍高いことが証明された。

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抗菌薬適正使用推進プログラム、広域抗菌薬の適応外使用を改善/JAMA

 小児プライマリ・ケア外来への抗菌薬適正使用推進プログラム(antimicrobial stewardship program)の導入により、細菌性急性気道感染症(ARTI)の診療ガイドライン遵守状況が改善されることが、米国・フィラデルフィア小児病院のJeffrey S. Gerber氏らの検討で示された。米国では小児に処方される薬剤の多くが抗菌薬で、そのほとんどが外来患者であり、約75%がARTIに対するものだという。ウイルス性ARTIへの抗菌薬の不必要な処方は減少しつつあるが、細菌性ARTIでは、とくに狭域抗菌薬が適応の感染症に対する広域抗菌薬の不適切な使用が多いとされる。JAMA誌2013年6月12日号掲載の報告。プライマリ・ケアでのプログラムによる介入の効果を評価 研究グループは、小児プライマリ・ケア医による外来患者への抗菌薬処方における、抗菌薬適正使用推進プログラムに基づく介入の効果を評価するクラスター無作為化試験を行った。 ペンシルベニア州とニュージャージー州の25の小児プライマリ・ケア施設のネットワークから18施設(医師162人)が参加し、介入群に9施設(医師81人)、対照群に9施設(医師81人)が割り付けられた。 介入群の医師は、プログラムに基づき2010年6月に1時間の研修を1回受講し、その後1年間にわたり3ヵ月に1回、細菌性およびウイルス性ARTIに対する処方への監査とフィードバックが行われた。対照群の医師は通常診療を実施した。 主要評価項目は、介入の20ヵ月前から介入後12ヵ月(2008年10月~2011年6月)までの、細菌性ARTIに対する広域抗菌薬の処方(ガイドライン規定外)およびウイルス性ARTIに対する抗菌薬の処方の変化とした。広域抗菌薬処方率が6.7%低下 広域抗菌薬の処方率は、介入群では介入前の26.8%から介入後に14.3%まで低下し(絶対差:12.5%)、対照群は28.4%から22.6%へ低下した(同:5.8%)。両群の絶対差の差(difference of differences:DOD)は6.7%で、介入による処方率の有意な抑制効果が認められた(p=0.01)。 肺炎の小児への広域抗菌薬処方率は、介入群が15.7%から4.2%へ、対照群は17.1%から16.3%へ低下し、介入による有意な抑制効果がみられた(DOD:10.7%、p<0.001)。一方、急性副鼻腔炎への処方率はそれぞれ38.9%から18.8%へ、40.0%から33.9%へと低下した(DOD:14.0%、p=0.12)。 A群レンサ球菌咽頭炎では、ベースラインの広域抗菌薬処方率が低く、介入による変化はほとんどみられなかった(介入群:4.4%から3.4%へ低下、対照群:5.6%から3.5%へ低下、DOD:−1.1%、p=0.82)。ウイルス感染症への抗菌薬処方にも同様の傾向が認められた(介入群:7.9%から7.7%へ低下、対照群:6.4%から4.5%へ低下、DOD:-1.7%、p=0.93)。 著者は、「プライマリ・ケア医の研修と、処方の監査、フィードバックを組み合わせた抗菌薬適正使用推進プログラムにより、小児に一般的な細菌性ARTIの診療ガイドラインの遵守状況が、通常診療に比べて改善された。一方、ウイルス感染症への抗菌薬処方については、介入の影響は認めなかった」とまとめ、「今後、外来における抗菌薬適正使用推進プログラムの有効性の促進要因や、一般化可能性、持続可能性、臨床アウトカムの検証を行う必要がある」と指摘している。

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「内科で遭遇する皮膚疾患」に関するアンケート結果 part 2

Q1皮膚疾患を診療する上で困っていることがありましたら教えてください<診断・治療について>「このほくろは大丈夫ですか」と聞かれることが多いが、皮膚科医へわざわざ紹介すべきか、経過観察でよいかの判断がつかない。 患者さんとしては、受診したついでに質問されていることなので、それを全例「皮膚科へ行ってください」では患者さんのニーズにこたえていないと思う。しかし実際のところ判断がつかないので「大丈夫です」とも言えない。(勤務医・内科)ステロイドを使用するかどうか迷う時がある。(勤務医・内科)どういう湿疹や病状なら皮膚科に紹介すべきか悩む。(開業医・内科)患者さんから皮膚科医の処方の継続を依頼されるが、薬剤の中止や変更の判断が困る。(開業医・内科)感染性の皮膚疾患が診断できなくて、困っている。(勤務医・内科)緊急性の有無がよく分からない。(開業医・内科)黒色の色素斑が、悪性なのかどうか聞かれることがあるが、難しい。かといって、すべてを紹介するわけにもいかず、悩むことが多い。(開業医・内科)初期の病状は何とかなるが、しばらくたってからの皮膚病変をどのようしたらよいかわからない。(開業医・内科)他の医師で比較的安易にステロイド含有剤を内服処方しているので、離脱が大変である。(開業医・内科)皮膚科と違い、内科では、外来でKOHなど迅速に検査することができず、白癬として抗真菌薬を処方すべきか、ステロイド外用薬を処方すべきなのか、悩むことがある。(勤務医・内科)風疹などの感染症との鑑別。とくにウィルス性のカゼや溶連菌などで出てくる皮疹との鑑別。また、薬疹が疑われる場合の原因物質の究明。(開業医・内科)薬疹の原因薬剤が最終的に絞りきれない症例がある。(勤務医・内科)蕁麻疹と思われるが長期化している症例や受診時には皮疹が消失している症例がある。(勤務医・内科)<患者さんについて>あきらかに皮膚科的専門性のある疾患で、皮膚科受診を勧めるも、行きたがらないこと。(開業医・内科)皮膚に関して相談されたときは基本的に皮膚科に紹介している。ところがなぜか患者は”皮膚が悪いのは内臓から来ているのではないか”と内科を先に受診されることがままあり、困っている。(勤務医・内科)皮膚科受診を勧めても、当方での治療を希望される方が少なからずいる。今のところ大きなミスはないが、やはり専門医に行ってほしい。(開業医・内科)<その他>気軽に相談できる皮膚科医がそばにいない。(開業医・内科)当院は、総合病院でないため皮膚科医が在籍しない。外来患者で診断に困る場合や難治性の場合には他院の皮膚科専門医に紹介できるが、入院の場合には紹介しにくい。出来るだけ自分自身の診断能力の向上に努めているが限界がある。(勤務医・内科)疥癬など、急いで診断治療しないといけない疾患や薬疹を疑った時など、皮膚科にすぐコンサルトできる時は良いが、できないときに困る。(勤務医・内科)

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重症インフルエンザへのオセルタミビル2倍量投与の効果を検討/BMJ

 重症インフルエンザに対し、オセルタミビルを通常の2倍量投与しても、治療効果は通常量投与の場合と同等であったことが示された。東南アジア感染症臨床研究ネットワーク(South East Asia Infectious Disease Clinical Research Network)が、インドネシアなど東南アジア4ヵ国13病院で重症インフルエンザ患者について行った、無作為化二重盲検試験の結果、報告した。BMJ誌5月30日号で発表した。4ヵ国13ヵ所の病院で326人の患者を無作為化 ガイドラインでは、重症インフルエンザに対し通常量よりも高用量を用いることが推奨されている。同ネットワークはその推奨の妥当性を調べることを目的に、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナムの13ヵ所の医療機関で無作為化二重盲検試験を行った。 重症インフルエンザの確定診断を受けた1歳以上の入院患者326例を無作為に2群に分け、一方にはオセルタミビルを通常の2倍量(165例)、もう一方には通常量(161例)を投与した。被験者のうち、15歳未満は246例(75.5%)だった。 主要アウトカムは、投与5日目の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法によるウイルスの有無とした。投与5日目のインフルエンザ陰性率は両群とも約7割 被験者のうち、インフルエンザA型ウイルス感染者は260例(79.8%)、インフルエンザB型ウイルス感染者は53例(16.2%)だった。 5日目にRT-PCR陰性だった割合は、2倍量群が159例中115例(72.3%、95%信頼区間:64.9~78.7)、通常量群が154例中105例(68.2%、同:60.5~75.0)と、両群に有意差はなかった(群間格差:4.2%、同:-5.9~14.2、p=0.42)。 死亡率についても、2倍量群が165例中12例(7.3%)、通常量群が161例中9例(5.6%)と、有意差はなかった(p=0.54)。 酸素補充療法や集中治療室(ICU)での治療、人工呼吸器を利用した日数の中央値も、いずれも両群で有意差はなかった。 著者は「重症インフルエンザで入院した患者において、オセルタミビルの2倍量投与は通常投与と比べて、ウイルス学的にも臨床的にも利点は認められなかった」と結論している。

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エキスパートに聞く!「内科医がおさえるべき皮膚診療ポイント」Q&A part1

CareNet.comでは『内科で診る皮膚疾患特集』を配信するにあたり、事前に会員の先生より質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、三橋善比古先生にご回答いただきましたので、全2回でお届けします。皮膚科専門医に紹介すべき疾患の見分け方、緊急性のある皮膚疾患の見分け方のポイントがあれば教えてください。発熱がある場合は緊急性があることが多いと思います。皮膚所見では、全身が赤い紅皮症状態、水疱形成や粘膜症状がある例が重症疾患のことが多いと思います。数日間観察して悪化傾向があれば、その後も悪化することが考えられるので紹介すべきです。この悪化傾向は必ずしも面積の拡大を意味しません。中毒疹は体幹に始まり、軽快するときに四肢に拡大していくことが多いのです。面積が拡大しているので悪化していると解釈されることが多いですが、実際は軽快していることもあります。この場合、色調や浸潤に注意すると、面積は拡大しても赤みが薄くなって浸潤が改善していることがあります。これは軽快の徴候です。プライマリ・ケアで注意すべき皮膚疾患はどのようなものがあるでしょうか?湿疹・皮膚炎群、蕁麻疹、表在性白癬で、全皮膚疾患患者の半分程度を占めるとされています。これらの疾患に対応できればかなりの部分をカバーできると思われます。白癬を疑うケース:内科外来では顕微鏡やKOH検査ができません。そのような場合、どのように対処すべきでしょうか? まず抗真菌薬を処方すべきか、ステロイド外用薬を処方すべきかなど悩みます。皮膚科でKOH検査を行っても湿疹か白癬か判別できないことがあります。このような場合は、必ず後日再来する約束をしてステロイド薬の外用を行い、再度、真菌鏡検を行って診断を確定することがあります。この場合、ステロイド薬外用は、湿疹性病変を治療することで白癬病変を明瞭化すること、かゆみを取り除くという意味があります。真菌鏡検ができないときはこの手は使えませんので、まず抗真菌薬を外用する方がよいと思います。ステロイド外用で真菌病変が悪化してしまうことを避けるためです。蕁麻疹について:受診時には皮疹が消失している症例にはどのように対処したらよいでしょうか?蕁麻疹は膨疹を特徴とする疾患です。膨疹は短時間で出没することが特徴です。出たり消えたりしているわけです。全体としては続いていることもあるし、全体が消えてしまうこともあります。従って、診察の時に発疹がまったくないことは珍しくありません。むしろこれが、他の疾患ではみられない蕁麻疹の特徴です。蕁麻疹はアレルギー性のほか、運動誘発性、寒冷、温熱、コリン性など原因は多彩です。蕁麻疹の治療は、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の内服が第一選択です。ステロイド外用はあまり意味がありません。もし外用薬を処方する場合は、ジフェンヒドラミン(商品名:レスタミンコーワクリーム)などのステロイドを含まないものがよいでしょう。複数の皮膚病変が合併している場合の対処法について教えてください。複数の皮膚病変の合併と聞いて、真っ先に、水虫(足白癬)に細菌の二次感染が合併している状態を思い出しました。このような患者は、これから暑くなってくると毎日のように来院されます。また、足白癬の治療のための外用薬による接触皮膚炎を合併している患者もおられます。これら3疾患を併発していることもあります。このようなときの治療は、後で生じたものから治療するという原則があります。白癬に細菌感染では、細菌感染から治療します。接触皮膚炎を合併していたら、まず接触皮膚炎を治療します。原則にこだわるよりも、急を要するものから治療すると考えるのがいいかも知れません。いずれにしても、白癬の治療は最後でよいのです。

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第15回 診療ガイドライン その1:ガイドラインから外れた医療行為は違法か!?

■今回のテーマのポイント1.ガイドラインに反する診療は、紛争化のリスクを上げることから注意する必要がある2.裁判所はおおむねガイドラインに沿った判断をする3.ガイドラインに反する診療であっても、直ちに違法とはならないが、少なくとも「相応の医学的根拠」は必要である事件の概要患者X(死亡時79歳)は、昭和43年より糖尿病にてY病院糖尿病代謝科(主治医A医師)に外来通院していました。平成12年に上部内視鏡検査を行ったところ、食道静脈瘤が認められたことから精査した結果、HBV、HCV感染は認められないものの、初期の肝硬変と診断されました。その後、A医師は、外来で定期的に採血にて肝機能及び血小板数を測定していましたが、いずれも正常範囲内で推移しており、上部内視鏡検査上も食道静脈瘤に著変なく、経過観察をしていました。しかし、A医師は、その間、腫瘍マーカーの測定及び腹部超音波検査、CTなどの画像検査は行っていませんでした。Xは、平成18年8月7日21時頃、自宅トイレで倒れ、意識レベルが低下していたことからY病院に入院しました。その際、撮影した胸部CTにて肝臓に腫瘍性病変が認められたことから精査したところ、多発性肝細胞がんと診断され、同年10月23日に死亡しました。これに対し、Xの遺族は、肝硬変があったXに対し、肝細胞がん発見を目的とした検査を長期にわたり行わなかったとして、Y病院に対し、2,350万円の損害賠償を請求しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者X(死亡時79歳)は、糖尿病にてY病院糖尿病代謝科(主治医A医師)に外来通院していました。昭和61年12月に採血検査にて肝機能障害が認められたことから腹部超音波検査を行ったところ、慢性肝疾患及び脂肪肝の疑いと診断されました。平成12年7月に、糖尿病代謝科入院中に上部内視鏡検査を行ったところ、食道静脈瘤が認められたことから精査した結果、HBV、HCV感染は認められないものの、初期の肝硬変と診断されました。その後、A医師は、外来で定期的に採血にて肝機能及び血小板数を測定していましたが、いずれも正常範囲内で推移しており、上部内視鏡検査上も食道静脈瘤に著変なく経過観察をしていました。しかし、A医師は、その間、腫瘍マーカーの測定及び腹部超音波検査、CTなどの画像検査は行っていませんでした。Xは、平成18年8月7日21時頃、心不全のため自宅トイレで倒れ、意識レベルが低下していたことからY病院に入院しました。その際、撮影した胸部CTにて肝臓に腫瘍性病変が認められたことから精査したところ、AFP 30ng/mL、PIVKA-Ⅱ 7,000mAU/mL以上であり、多発性肝細胞がんと診断されました。Xは高齢であり、全身状態も悪かったため、積極的な治療は行われず、同年10月23日に死亡しました。事件の判決診療ガイドラインは、その時点における標準的な知見を集約したものであるから、それに沿うことによって当該治療方法が合理的であると評価される場合が多くなるのはもとより当然である。もっとも、診療ガイドラインはあらゆる症例に適応する絶対的なものとまではいえないから、個々の患者の具体的症状が診療ガイドラインにおいて前提とされる症状と必ずしも一致しないような場合や、患者固有の特殊事情がある場合において、相応の医学的根拠に基づいて個々の患者の状態に応じた治療方法を選択した場合には、それが診療ガイドラインと異なる治療方法であったとしても、直ちに医療機関に期待される合理的行動を逸脱したとは評価できない。そして、上記認定のとおり肝癌診療ガイドラインにおいてサーベイランス(*肝細胞癌早期発見のための定期的な検査(筆者注))の至適間隔に関する明確なエビデンスはないとされており、推奨の強さはグレードC1(行うことを考慮してもよいが十分な科学的根拠がない)と位置づけられていることからすれば、サーベイランスの間隔については一義的に標準化されているとまでは認めがたいのであるから、上記間隔については医師の裁量が認められる余地は相対的に大きくなるものと解される。・・・・・・・(中略)・・・・・・・そこで、被告医師がどの程度の間隔でサーベイランスを行うべきであったかを検討するに、上記認定のとおり肝癌診療ガイドラインにおいて非ウイルス性の肝硬変は肝細胞癌の高危険群とされ、6か月に一回の超音波検査及び腫瘍マーカーの測定が推奨されている。そして、上記認定説示したとおりXの肝硬変は発癌リスクが否定されるものではなかったことに加え、上記で認定のとおり肝硬変の前段階とされる慢性肝炎であっても発癌リスクが相当程度認められることからすれば、Xの肝硬変が初期のものであったとしても、被告A医師がXに対して肝硬変と診断してから一度も超音波検査等を実施しなかったことが相応の医学的根拠に基づくものとは評価しがたい。なお、後記で認定説示した本件での検査結果から、被告A医師においてXの肝硬変がさほど進行していなかったと判断すること自体は不合理であるとはいえない。したがって、これらの検査結果を根拠として、肝癌診療ガイドラインとは異なるサーベイランスを実施していたとしても、上記で説示したとおりサーベイランスの間隔について医師の裁量を認める余地があることを併せ考慮すれば、直ちに不合理であると断定することができないとの見方もあり得ないではない。しかしながら、本件においては、そもそもサーベイランスそれ自体が全く実施されていないことに加え、被告医師において肝癌診療ガイドラインとは異なるサーベイランスを実施することが相当であるとした場合には具体的なサーベイランスの間隔及び方法をどのようなものにするのが妥当であったかという点や、それを裏付ける医学的根拠はどのようなものかという点について何ら被告における主張立証がない。以上の検討によれば、上記で説示したように医療行為において医師の裁量を尊重する必要があること及び肝癌診療ガイドラインが絶対的な基準ではないことを考慮してもなお、被告は、Xに対し、肝癌発見を目的として6か月間隔で腫瘍マーカー及び超音波検査を実施し、腫瘍マーカーの上昇や結節性病変が疑われた場合には造影CT検査等を実施すべきであったというべきである。(* 判決文中、下線は筆者による加筆)(仙台地判平成22年6月30日)ポイント解説今回は、ガイドラインについて解説いたします。ガイドラインは、添付文書同様、裁判所が個別具体的な事例における「医療水準」を判断するにあたり用いられる文書であり、特に、作成当時の多数の専門家間における合意事項が文書化されていることから、訴訟においては重視される傾向があり、民事医療訴訟において重要な文書であるといえます。ただ、ガイドラインは法的に作成が義務付けられた文書ではないこともあり、第12回で紹介した添付文書のように、「医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである」(最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁)といった過失の推定効は認められていません。しかし、患者・家族が弁護士に相談した際に、弁護士が当該診療が適切か否か、すなわち事件を受任して裁判をするか否かを判断するにあたり、必ず参照する文書でもあることから、ガイドラインは紛争化するか否かを決定する上でも非常に重要な文書であるといえます。■ガイドラインに対する裁判所の傾向それでは、裁判所のガイドラインに対する姿勢はどのようなものかみてみましょう。本事例のような肝硬変の患者に対しては、肝細胞がんの早期発見のため定期的に腫瘍マーカーや腹部超音波検査等によるサーベイランスを行う必要があると考えられています。したがって、肝硬変の患者に対して、適切な検査を行わなかった結果、肝細胞がんの発見が遅れ、死亡してしまった場合には、医療過誤として訴えられることとなります。そして、このサーベイランスの方法や間隔については、平成11年に作成された「日本医師会生涯教育シリーズ 肝疾患診療マニュアル」と平成17年に第1版が作成された「肝癌診療ガイドライン」(平成21年改訂)の2つのガイドラインがあります。これらのガイドライン作成後に患者が死亡し、肝細胞がんに対するサーベイランスを争点として争われた判決は、民間判例データベースから検索すると6つあります(表1)。画像を拡大する表1をご覧いただけれるとわかるように、サーベイランスに関する判決では、ほとんどが原告勝訴となっています。一般に民事医療訴訟の原告勝訴率が20~40%であることを考えると、その差は明らかといえます。なお、唯一、原告が敗訴している(4)の事例は、患者の受診コンプライアンスが悪く、適切なフォローが困難であった事例であり、それでも、おおむね年2回程度は検査が行われていたことから、このような判断となっています。それではこれらの訴訟において、ガイドラインはどのように使われていたのでしょうか。表2にそれぞれの判決において、裁判所が示した適切なサーベイランス頻度を示します。画像を拡大するそして、平成11年に作成された「日本医師会生涯教育シリーズ 肝疾患診療マニュアル」においては、「肝硬変を超高危険群、ウイルス性の慢性肝炎及び非肝硬変のアルコール性肝障害を高危険群、その他の肝障害を危険群と設定し、これらの患者に対して、それぞれ定期的に諸検査を行うよう指針を定めています。同指針は、超高危険群患者に対しては、AFP検査を月に1回、腹部超音波検査を2、3か月に1回、腹部CT検査を6か月に1回、高危険群患者に対しては、AFP検査を2、3か月に1回、腹部超音波検査を4ないし6か月に1回、腹部CT検査を6か月ないし1年に1回並びに危険群に対しては、AFP検査を6か月に1回、腹部超音波検査及び腹部CT検査を1年に1回行う」と記載されています。また、平成17年に作成された「肝癌診療ガイドライン」においては、「一つの案として、超高危険群に対しては、3~4カ月に 1 回の超音波検査、高危険群に対しては、6カ月に 1回の超音波検査を行うことを提案する。腫瘍マーカー検査については、AFP およびPIVKA-Ⅱを超高危険群では 3~4カ月に 1回、高危険群では 6カ月に 1回の測定を推奨する」と記載されています。表2と比較していただければわかるように、(2)と原告敗訴となった(4)を除いた判決においては、裁判所は、判決文中にガイドラインを引用した上で、ガイドラインに沿った判断をしています。このようにしてみると、ガイドラインに違反した結果、患者に損害が生じた場合には、紛争化しやすいと同時に、裁判においても、ガイドラインに沿った判断がなされやすいということがいえます。■ガイドラインは「不磨の大典」ではないこのようなガイドラインに対する裁判所の傾向をみると、皆さんは違和感を覚えるでしょうし、批判もあるかと思います。ただ、添付文書の時にも説明しましたが、現在の裁判所は、添付文書やガイドラインを不磨の大典としてとらえているわけではありません。本判決においても、「もっとも、診療ガイドラインはあらゆる症例に適応する絶対的なものとまではいえないから、個々の患者の具体的症状が診療ガイドラインにおいて前提とされる症状と必ずしも一致しないような場合や、患者固有の特殊事情がある場合において、相応の医学的根拠に基づいて個々の患者の状態に応じた治療方法を選択した場合には、それが診療ガイドラインと異なる治療方法であったとしても、直ちに医療機関に期待される合理的行動を逸脱したとは評価できない。そして、上記認定のとおり肝癌診療ガイドラインにおいてサーベイランスの至適間隔に関する明確なエビデンスはないとされており、推奨の強さはグレードC1(行うことを考慮してもよいが十分な科学的根拠がない)と位置づけられていることからすれば、サーベイランスの間隔については一義的に標準化されているとまでは認めがたいのであるから、上記間隔については医師の裁量が認められる余地は相対的に大きくなるものと解される」と判示されているように、杓子定規に判断するのではなく一定程度の裁量の幅(グレーゾーン)が認められていると考えられます。ただ、その場合においても、「相応の医学的根拠」は必要であり、肝細胞がんのサーベイランスにおいては、単に「気が付いたらずいぶん期間が開いてしまった」ということでは許されませんので、注意する必要があります。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)仙台地判平成22年6月30日最判平成8年1月23日民集50号1巻1頁

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EV71ワクチン、乳幼児対象の第3相試験で高い有効性と良好な安全性を報告/Lancet

 エンテロウイルス71(EV71)ワクチンの有効性と安全性、免疫原性について検討した第3相無作為化試験の結果、有効性は高く、安全性は良好で、免疫原性の維持が確認されたことを、中国・江蘇省疾病管理予防センター(CDC)のFeng-Cai Zhu氏らが報告した。EV71感染症は1974年に疾患報告されて以降、世界的に手足口病(HFMD)と関連した発生が、とくに乳幼児で多く報告され、過去10年では600万例以上の感染、2,000例以上の死亡が報告されているという。不活化アラムアジュバントEV71ワクチンは中国で開発され、成人および小児を対象とした第1相、第2相試験で安全性と免疫原性が確認されていた。今回の第3相試験は乳幼児を対象に、EV71と関連した疾患予防を目的とした評価が行われた。Lancet誌オンライン版2013年5月29日号掲載の報告より。6~35月齢児1万245例をワクチン接種群とプラセボ群に無作為化 第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験は、中国国内4施設において健常6~35月齢児を対象とし、無作為に1対1の割合で、ワクチン接種群とプラセボ(ミョウバンアジュバント)群に割り付け行われた。ワクチンは、0、28日に接種され、試験担当者および被験児と保護者には、割り付け情報は知らされなかった。 主要エンドポイントは、サーベイランス期間中(56日~14ヵ月)のEV71関連のHFMD発生およびEV71関連の疾患とした。解析は事前に規定した集団について行われた。 1万245例が登録され、5,120例がワクチン接種群に、5,125例がプラセボ群に割り付けられた。ワクチン有効性、EV71関連手足口病には90.0%、EV71関連疾患には80.4% 主要有効性解析の結果、ワクチン接種群(4,907例)のEV71関連HFMD発生は3例、EV71関連疾患の発生は8例であった。プラセボ群(4,939例)の発生はそれぞれ30例、41例であった。 ワクチンの有効性は、EV71関連HFMDに対しては90.0%(95%信頼区間[CI]:67.1~96.9、p=0.0001)、EV71関連疾患に対しては80.4%(同:58.2~90.8、p<0.0001)であった。 重大有害事象の報告は、ワクチン接種群1.2%(62/5,117例)、プラセボ群1.5%(75/5,123例)で有意差はみられなかった(p=0.27)。有害事象の発生も両群で有意差はなかった(71.2%vs. 70.3%、p=0.33)。

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