サイト内検索|page:187

検索結果 合計:4273件 表示位置:3721 - 3740

3721.

グラゾプレビル+エルバスビル、8週vs. 12週/Lancet

 肝硬変なし未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型単独感染患者およびHIV/HCV重複感染患者に対し、グラゾプレビル(grazoprevir、MK-5172)+エルバスビル(elbasvir、MK-8742)併用療法はリバビリン併用の有無を問わず、8週投与よりも12週投与が有効であることが判明した。米国・ジョンズホプキンス大学のMark Sulkowski氏らが第II相無作為化試験C-WORTHYの結果から報告した。グラゾプレビル+エルバスビル併用療法に関する検討はすでに、より大規模な第III相試験が行われている。著者は、「われわれの検討結果は、第III相試験の継続を支持するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年11月11日号掲載の報告より。肝硬変なし未治療のHCV単独感染またはHIV/HCV重複感染患者について評価 C-WORTHYは、HCV患者に対するグラゾプレビル(1日100mg)+エルバスビル(1日20または50mg)併用療法について、リバビリン投与あり/なしで検討した第II相の国際多施設非盲検無作為化並行群間比較試験である。 研究グループは、肝硬変なし未治療のHCV遺伝子型1型単独感染またはHIV/HCV重複感染についての検討所見を報告した。被験者の適格条件は、18歳以上、末梢血HCV RNA値1万IU/mL以上の未治療HCV遺伝子型1型感染症患者であった。 検討では、パートAにおいて、HCV単独感染患者に対する併用療法+リバビリンあり/なしの12週投与を行った。被験者は遺伝子型1a、1b群で層別化され、次の各群に無作為化された。A1群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(20mg)+リバビリン、A2群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリン、A3群(1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)。 パートBでは、HCV単独感染患者に対する8週投与と12週投与の検討、およびHIV/HCV重複感染患者に対する併用療法+リバビリンあり/なし12週投与の検討を行った。被験者は遺伝子型1a、1b群で層別化され、次の各群に無作為化された。B1群(1a):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリンを8週投与、B2群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリンを12週投与、B3群(1a):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)、重複感染患者についてはB12群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)+リバビリン、B13群(1a+1b):グラゾプレビル+エルバスビル(50mg)でいずれも12週投与。 主要エンドポイントは、ウイルス学的著効(SVR)について、各治療終了後12週時点でのHCV RNA値25 IU/mL未満達成患者の割合で評価した(SVR12)。12週投与群のSVR12、HCV単独感染群93~98%、HIV/HCV重複感染群87~97% 試験に登録されたのは、HCV単独感染患者159例、HIV/HCV重複感染患者59例の計218例であった。 結果、12週投与リバビリンあり/なしのSVR12達成率は、HCV単独感染群が93~98%、HIV/HCV重複感染群は87~97%であった。このうちリバビリン投与なし群についてみると、HCV単独感染群は98%(95%信頼区間[CI]:88~100%、43/44例)、HIV/HCV重複感染群87%(同:69~96%、26/30例)であった。リバビリン投与群については、HCV単独感染群は93%(同:85~97%、79/85例)、HIV/HCV重複感染群97%(同:82~100%、28/29例)であった。 一方、HCV(遺伝子型1a)単独感染患者に対する8週投与のSVR12は、80%(95%CI:61~92%、24/30例)であった。 ウイルス学的失敗以外の理由で早期に治療中止となった被験者は6例いたが、そのうち5例は、試験最終測定時でHCV RNA値25 IU/mL未満を示していた。 12週治療群のウイルス学的失敗例は7例(7/188例、4%)で、薬剤関連耐性変異によるものであった。 安全性プロファイル(グラゾプレビル+エルバスビル併用療法+リバビリン投与あり/なし)は、HCV単独感染群、HIV/HCV重複感染群で類似していた。有害事象や検査値異常による治療中断例はなかった。最も頻度が高かった有害事象は、疲労(51例、23%)、頭痛(44例、20%)、悪心(32例、15%)、下痢(21例、10%)であった。

3722.

肝移植後HCVへのIFNフリーレジメンの検討/NEJM

 肝移植後の再発C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染症患者に対し、インターフェロンを用いない、NS5A阻害薬オムビタスビル+リトナビル・ブースト・プロテアーゼ阻害薬ABT-450(ABT-450/r)+非ヌクレオチド系NS5Bポリメラーゼ阻害薬ダサブビル+リバビリンの24週治療は、治療後のウイルス学的著効(SVR)が12週後、24週後ともに97%を示し、有効であることが示された。米国・インディアナ大学のPaul Y. Kwo氏らが、患者34例を対象とした試験で明らかにした。今回試験対象とした移植後再発患者は、従来の標準治療レジメンでは、治療反応率は13~43%に留まっていたという。NEJM誌オンライン版2014年11月11日号掲載の報告より。主要評価項目は治療終了12週後のSVR 被験者は、12ヵ月前までに肝移植を行い、HCV遺伝子型1型感染症の再発が認められ、線維症がないか軽度な患者34例で、オムビタスビル+ABT-450/rの合剤、ダサブビル、リバビリンを24週間投与した。 具体的なレジメンは、オムビタスビル-ABT-450/r(オムビタスビル25mg、ABT-450/r 150mg、リトナビル100mgをそれぞれ1日1回)、ダサブビル250mg1日2回と、リバビリン(初期投与量とその後の貧血症状に基づく用量調整は治験担当医の判断)を投与した。 主要評価項目は、SVR 12だった。12週後、24週後ともにSVRは97% その結果、治療終了12週後、24週後ともに、被験者34例中33例でSVR達成が認められ、その割合は97%(95%信頼区間:85~100)だった。 最も多くみられた有害事象は、疲労、頭痛、咳だった。また、エリスロポエチンの投与を要した人は5例(15%)で、輸血は0例。治療中の移植片拒絶は認められなかった。 治療中には、血中カルシニューリン濃度を測定し、用量を調節し治療レベルの維持が図られていた。

3723.

HCV経口レジメン、グラゾプレビル+エルバスビル第II相試験/Lancet

 C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染症へのグラゾプレビル(grazoprevir、MK-5172)+エルバスビル(elbasvir、MK-8742)併用療法は、リバビリンの追加併用を問わず、未治療の肝硬変併存患者、ペグインターフェロン+リバビリン(PR-null)既治療が有効であった肝硬変併存患者または非併存患者において、12週投与、18週投与ともに高い効果を示したことが、米国・テキサス大学健康科学センターのEric Lawitz氏らによる第II相非盲検無作為化試験の結果、報告された。Lawitz氏は、「結果は第III相の試験実施を裏付けるものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2014年11月11日号掲載の報告より。グラゾプレビル+エルバスビル、リバビリンありなしを検討 HCV治療については、インターフェロンを用いず、経口投与のみの短期間治療のニーズが高まっている。加えて、その治療対象患者は多岐にわたること(肝硬変が伴う患者、ペグインターフェロンやPR-nullが既治療の患者を含む)も求められている。 本検討では、ベースライン特性不良のHCV遺伝子型1型感染症の患者について、グラゾプレビル+エルバスビル併用療法、リバビリンあり・なしでの有効性、安全性を評価する「C-WORTHY」試験を行った。 本報告では、2つの試験集団について得られた所見を報告している。コホート1は、肝硬変を伴う未治療患者集団(123例)であり、コホート2は、PR-null既治療が有効だった患者(肝硬変のありなし問わず、130例)であった。 被験者の適格条件は、18歳以上の血中HCV RNA値は1万IU/mL以上のHCV遺伝子型1型感染症患者とした。 被験者は無作為に、グラゾプレビル(1日100mg)+エルバスビル(1日50mg)、リバビリン追加併用ありなしの12週投与または18週投与群に割り付けられ追跡を受けた。 具体的にコホート1では、60例が12週投与群に割り付けられ(リバビリンあり31例、なし29例)、63例が18週投与群に割り付けられた(同:32例、31例)。コホート2は、65例が12週投与群に(同:32例、33例)、65例が18週投与群(33例、32例)に割り付けられた。 主要エンドポイントは、12週治療後12週時点でのHCV RNA値が25 IU/mL未満を達成していた(SVR12)患者の割合とした。多様な患者集団でSVR12達成割合が90~100% SVR12の達成率は、リバビリン併用ありなし、治療期間の長さに関与しておらず、90%(コホート1の12週投与リバビリン併用、28/31例、95%信頼区間[CI]:74~98)から100%(コホート2の18週投与リバビリン併用あり、33/33例、同:89~100)と高率を示した。 12週投与のリバビリン併用なし群は、コホート1では97%(95%CI:82~100、28/29例)、コホート2では91%(同:76~98、30/33例)であった。 10%以上の報告があった有害事象は、疲労感(66例、26%)、頭痛(58例、23%)、無力症(35例、14%)であった。

3724.

肺炎球菌ワクチン導入で直接および間接的な効果/NEJM

 南アフリカ共和国では、2009年に小児への7価肺炎球菌ワクチン(PCV7)定期接種が導入され、2011年からはPCV7に代わりPCV13の定期接種が行われている。同国National Health Laboratory Service(NHLS)のAnne von Gottberg氏らは、ワクチン定期接種導入前後の侵襲性肺炎球菌感染症発症の変化を調べた。その結果、2歳未満児と22~45歳の年齢群での効果が最も大きく、それぞれPCV7タイプの肺炎球菌髄膜炎の減少は89%、57%であったことなどを報告した。NEJM誌2014年11月13日号(オンライン版2014年11月11日号)掲載の報告より。ワクチン導入前と導入後の侵襲性肺炎球菌感染症の発生の変化を調査 2009年に導入された同国PCV7、PCV13の接種スケジュールは3回タイプのもの(生後6週、14週、36週時)で、2012年において1歳児の接種率(3回接種を完了)は推定81%であったという。 研究グループは、全国規模の検査施設ベースのサーベイランスを行い、ワクチン定期接種導入前(2005~2008年、ベースライン)から導入後2011年および2012年への疾患発生の変化を、同国ハイリスク年齢群(2歳未満、25~44歳)に焦点を当てて調べた。全年齢の侵襲性肺炎球菌感染症の発生は40%減少 8年間(2005~2012年)のサーベイランスで、3万5,192例の侵襲性肺炎球菌感染症症例を特定した。このうち70%で分離株を入手できた。年齢が不明な症例は5%であった。 全年齢における侵襲性肺炎球菌感染症の発生は10万人年当たり、ベースライン9.4例から2012年は5.7例へと相対比で40%減少していた。 減少率が最も大きかったのは2歳未満児群と25~44歳群であった。 2歳未満児群の発生は、54.8例から17.0例へと69%減少していた。このうちPCV7に含まれる血清型の発生例だけをみると32.1例から3.4例へと89%(95%信頼区間[CI]:-92~-86%)減少していた。 HIV非感染小児におけるPCV7血清型疾患の発生は、85%(95%CI:-89~-79%)の減少であった。一方で、同群ではワクチンに含まれていない血清型の発症例が33%(同:15~48%)増大していた。 25~44歳の成人では、疾患発生は3.7例から1.6例へと57%(同:-63~-50%)減少していた。 結果を踏まえて著者は、「小児と成人においてみられたPCV7血清型の侵襲性肺炎球菌感染症発生の減少は、ワクチン接種の直接的効果と間接的効果が反映された結果だと思われる」とまとめている。

3725.

携帯電話で服薬リマインド、効果は?/BMJ

 HIV感染患者を対象に、抗レトロウイルス療法(ART)の開始にあたって携帯電話を使った治療薬服用に関するリマインドの介入を行ったが、治療効果を示すウイルス学的失敗までの時間や同発生率について、非介入との差は示されなかった。また、治療薬のアドヒアランスへの効果も認められなかった。インド・St John’s Medical College HospitalのAnita Shet氏らが、631例のHIV感染患者について行った無作為化比較試験の結果、報告した。BMJ誌オンライン版2014年11月6日号掲載の報告より。毎週、自動音声による双方向通話と、その4日後にリマインド画像メッセージを送付 研究グループは、インド南部の3ヵ所の保健医療施設(国立の外来診療所2施設、民間HIVヘルスケアクリニック1施設)で2010年7月~2011年8月にかけて、ART未治療の成人HIV感染患者631例を対象に検討を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方には毎週、患者の携帯電話に、双方向となるようYes/Noの質問方式(1または2を押して回答)を取り入れた自動音声通話をかけて、薬の処方どおりの服用を促した。患者が応答しない場合は通話が成立するまで最大3回のコールが24時間にわたって行われた。また同通話から4日後に、リマインドを目的とした画像メッセージの送付を非双方向で行った。 もう一方の対照群には、携帯電話による介入のない通常どおりの治療を行った。 主要評価項目は、2回連続測定でのウイルス量400コピー/mL超で定義した、ウイルス学的失敗までの時間だった。副次評価項目は、治療薬の数により判断したART治療のアドヒアランス(遵守率)、および死亡率、治療離脱率だった。最適アドヒアランスは平均95%未満と定義した。ウイルス学的失敗率、非最適アドヒアランスは両群で同等 結果、ウイルス学的失敗率は、介入群が10.52(95%信頼区間[CI]:8.11~14.19)/100人年に対し、対照群は10.73(同:7.95~13.92)/100人年と、両群で有意差は認められなかった。ウイルス学的失敗の患者数は、それぞれ49/315例(15.6%)、49/316例(15.5%)だった。 また、ウイルス学的失敗までの時間についても、両群で有意差は認められなかった(補正前ハザード[HR]比:0.98、同:0.67~1.47、p=0.95)。 最適アドヒアランスも、両群で同等だった(補正前罹患率比:1.24、同:0.93~1.65、p=0.14)。最適アドヒアランスの定義を満たした人は、それぞれ81/300例(27.0%)、65/299例(21.7%)だった。 これらの解析結果は、交絡因子で補正後も変わらず両群間の有意差は示されなかった(HR:0.96、p=0.85)。また、副次評価項目(死亡率の補正後HR:0.91、p=0.74、離脱率の同0.59、p=0.10)、施設や年齢などによるサブグループ解析の結果も似通ったものだった。

3726.

CareNet座談会 「高齢者の肺炎診療 ~新しい肺炎球菌ワクチンで変わる高齢者肺炎予防~」

<座長><出席者>高齢者肺炎の現状と肺炎球菌ワクチンの重要性賀来(座長) 本日は、感染症の専門の先生方にお集まりいただき、高齢者の肺炎の現状と新しい肺炎球菌ワクチンについて伺います。私どもは東日本大震災後の感染症について解析しており、災害後の集団感染リスクから被災者を守る必要性を感じています。震災後に東北大学病院に入院した感染症患者は、高齢者の誤嚥性肺炎を含めた市中肺炎などの呼吸器感染症が67%を占め、肺炎の原因菌の25.8%が肺炎球菌であり(図1)1)、肺炎球菌ワクチン接種による肺炎発症予防の重要性を感じました。図1 東北大学病院における震災関連感染症の解析画像を拡大するはじめに、高齢者における肺炎球菌感染症対策の重要性について伺います。門田 肺炎はわが国の死因の第3位の疾患であり、死亡者の大半を高齢者が占める現状がありますが、なかでも肺炎球菌による肺炎が多く、65歳以上の市中肺炎入院患者を対象とした検討では肺炎球菌が約30%を占めることが報告されています2)。また、生命を脅かす重篤な疾患である髄膜炎や敗血症などの侵襲性肺炎球菌感染症も高齢者に多く起こりますので、肺炎球菌感染症の予防はきわめて重要です。三鴨 高齢者ではさまざまな基礎疾患を有することが多く、それらが肺炎リスクを高めていると考えられます。例えば、糖尿病患者では白血球の貪食能、殺菌能の低下により、感染症リスクが高まると考えられます。また、脳梗塞や一過性脳虚血発作の後遺症がある場合は、誤嚥が関連する肺炎のリスクが高いと考えられます。さらに、高齢者に対する治療を考えると、腎機能低下例が多いために抗菌薬療法を十分に行えない可能性があります。腎機能や肝機能に留意した治療が求められるのが高齢者の特徴です。賀来(座長) 誤嚥は肺炎の要因になりますが、そこでも原因菌として肺炎球菌は重要でしょうか。門田 誤嚥の疑いのある高齢者の肺炎において肺炎球菌が26%を占めていたという報告もあり3)、意外に多いことが明らかになりつつあります。三鴨 とくに不顕性誤嚥(睡眠中に無意識のうちに唾液などが気道に入る)があると誤嚥性肺炎のリスクが高まり、免疫機能の低下が加わることでさらにリスクが増加します。肺炎球菌が意外に多いことを考えると、やはり肺炎球菌ワクチンによる予防が重要となります。また、高齢者の基礎疾患と肺炎リスクは関連があると考えられますので、高齢者全員にワクチンを接種するユニバーサルワクチネーションの考え方が重要です。高齢者肺炎の診断と病態の特徴賀来(座長) 次に、高齢者肺炎の診断と病態の特徴について伺います。門田 高齢者肺炎において注意していただきたいのは、細菌性肺炎であっても白血球数が上昇しない場合があること、また、症状が潜在性の場合があることです。典型的な症状がなくとも、食欲減退・不活発・会話の欠如などがあり、肺炎が疑われる場合には早めに胸部画像検査をしていただきたいです。三鴨 高齢者の肺炎で、もう1つ臨床上重要な点は、不顕性誤嚥があると肺炎を繰り返す例が多いことです。門田 肺炎を繰り返すと、抗菌薬治療を繰り返すことで耐性菌が出現するリスクも高まります。三鴨 おっしゃるとおりです。そのため、私たちは高齢者の肺炎患者に対しては退院時に積極的に肺炎球菌ワクチンを接種するようにしています。新しい肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)のエビデンス賀来(座長) これまで高齢者に対しては肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV)が用いられてきましたが、先頃、小児において使用実績の高い肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が成人(65歳以上)に対しても適応が認められ、選択肢が広がりました。この新しいワクチンの特徴と期待されるメリットについて伺います。門田 PPVは肺炎球菌の莢膜多糖体を抗原とするワクチンですが、PCV13は莢膜多糖体にキャリアタンパクを結合させたワクチンであり、免疫原性が高いことが特徴です(図2)。図2 多糖体ワクチンと結合型ワクチンにより誘導される免疫応答の概略画像を拡大するキャリアタンパクを結合することでB細胞のみならずT細胞を活性化することが可能であり、免疫応答の惹起に加え、メモリーB細胞を介した免疫記憶の確立が期待できます。賀来(座長) これらの特徴は臨床試験からも確認されているのでしょうか。三鴨 国内における第III相試験4)では、肺炎球菌ワクチン未接種の65歳以上の日本人高齢者764例を対象として、従来のPPVを対照群とする非劣性試験が実施されました。接種1ヵ月後のオプソニン化貪食活性(OPA)を比較した結果、両ワクチンに共通する12種類の血清型のいずれについてもPCV13はPPVに対して非劣性を示しました。このうち9血清型についてはPCV13におけるOPAの有意な上昇が認められ、PCV13の免疫原性が示されました(図3)。図3 ワクチン血清型別OPA*幾何平均力価比画像を拡大する一方、海外における第III相試験5)では、1回目にPCV13またはPPVを接種し、その3~4年後にPPVを再接種した場合のOPAの上がり方を検討しており、PCV13を接種した群における再接種時の免疫応答からPCV13による免疫記憶の確立が示されています(図4)。この結果から、1回目にPCV13を接種すると、PCV13に続いて2回目に接種されるワクチンの免疫応答も増大すると考えられ、今後、両ワクチンの特性を活かして接種スケジュールを検討する際の参考にできると思います。図4 肺炎球菌ワクチンの2回目接種前後のワクチン血清型別OPA画像を拡大する高齢者に対する肺炎球菌ワクチン接種の今後の展望賀来(座長) PCV13が高齢者にも使用可能になったことにより肺炎球菌感染症の予防にさらなる期待がもたれます。今後、高齢者へのワクチン接種をさらに普及させるうえでどのような方策が必要でしょうか。門田 日本呼吸器学会では「ストップ肺炎キャンペーン」を展開しており、一般向け・医療従事者向けの冊子をWebでも公開しています6)。今後、呼吸器科のみならず他科の先生方にも肺炎予防の重要性を周知し、他疾患領域の学会とも連携して取り組む必要があると思います。三鴨 糖尿病やリウマチでは、新薬の登場により治療成績が向上していますが、その一方で感染症リスクが高まる場合もあるため、高齢者の感染症予防に対する関心が高まっています。こうした面からも肺炎球菌ワクチン接種の意義を訴求していけると思います。また、ワクチンの普及には行政の役割も重要です。2014年10月から、65歳以上を対象に成人用肺炎球菌ワクチンが定期接種化されました(表1)。国の制度では5年間で順次接種することになっていますが、私はすべての高齢者に接種することが望ましいと考えています。そのため、居住地である岐阜市の市長がワクチン接種の公費助成に力を入れる方針を示していることを知り、この地域に居を構えるアカデミアの一人として肺炎球菌ワクチンについて提言を行いました(表2)。その結果、岐阜市では本年度に65歳以上全員を接種対象として予算を組んでくれました。高齢者医療はこうした比較的小規模な枠組みからも改善でき、非常に重要な動向であると思っています。賀来(座長) 本日は、高齢者に対する肺炎球菌ワクチンの現状と今後の展望について詳細にお話を伺うことができました。皆さま、ありがとうございました。表1 65歳以上の成人用肺炎球菌ワクチン定期接種(B型)の経過措置を含めた接種対象年齢画像を拡大する表2 肺炎球菌ワクチンについての提言画像を拡大する参考文献1)賀来 満夫. 日本内科学会雑誌. 2014; 103: 572-580.2)石田 直. Infection Control. 2005; 14: 645-649.3)Ishida T, et al. Intern Med. 2012; 51: 2537-2544. 4)ファイザー(株) 社内資料 国内第Ⅲ相試験(非劣性試験、未接種者、B1851088試験).5)Jackson LA, et al. Vaccine. 31; 2013: 3594-3602.6)日本呼吸器学会ホームページ PCV13についての詳細は製品添付文書をご覧ください。

3727.

エボラ、初期データ解析からの知見/NEJM

 2014年5月にシエラレオネで起きたエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクの初期データから、潜伏期間や死亡率は同時期の他の地域や過去の事例と類似しており、出血はまれで発熱や下痢などの消化管症状が多いとの特徴があることが、同国ケネマ国立病院とWHOの研究チームの調査で明らかとなった。10月25日現在、EVD例はギニア、シエラレオネ、リベリア、セネガル、ナイジェリア、マリの6ヵ国で1万100例を超えたが、収集された患者データは限られたものだという。NEJM誌オンライン版2014年10月29日号掲載の報告。潜伏期間6~12日、死亡率74% シエラレオネのケネマ国立病院は、ウイルス性出血熱の研究拠点であり、2014年5月に起きたEVDのアウトブレイク以降、患者を受け入れ治療を行っている。 今回、研究チームは、2014年5月25日~6月18日までにEVDと診断され、同院で治療を受けた患者のデータを精査した。診断には定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法を用い、ザイール種エボラウイルス(EBOV)のウイルス量の測定も行った。 ラッサ出血熱またはEVDが疑われた213例のうち、106例(50%)がRT-PCR法でEVDと診断された。このうち転帰が確認できたのは87例で、詳細な臨床情報が得られたのは44例だった。 潜伏期間は6~12日と推定され、死亡率は74%であった。また、症状発現から入院までの期間は平均5.7±0.5日、死亡までの期間は9.8±0.7日であった。生存例の罹病期間は平均21.3±2.6日で、入院期間は15.3±3.1日だった。発熱、衰弱、めまい、下痢、肝・腎機能低下が死亡と関連 発症時の主要所見として、発熱(89%)、頭痛(80%)、衰弱(66%)、めまい(60%)、下痢(51%)、腹痛(40%)、咽頭炎(34%)、嘔吐(34%)、結膜炎(31%)などがみられた。 これら発症時の臨床症状や検査値異常のうち致死的転帰との関連が認められたのは、衰弱(p=0.003)、めまい(p=0.01)、下痢(p=0.04)のほか、血中尿素窒素(BUN、p=0.01)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST、p=0.009)、クレアチニン(Cr、p=0.04)の上昇であった。初診時の発熱は死亡とは関連しなかったが、38℃以上の場合は関連が認められた。 また、下痢を発症した患者の死亡率は94%に上ったが、下痢がみられない場合は65%であった。出血を認めたのは1例のみであったが、データが少ないため可能性は排除できない。 さらに、6つのバイタルサイン(発熱、収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数、呼吸速度、酸素飽和度)を6時間ごとに測定したところ、死亡との有意な関連を認めたのは発熱(38℃以上)のみであった(p=0.001)。入院時の平均体温は、死亡例のほうが生存例よりも有意に高かった(37.5 vs. 35.9℃、p=0.001)。45歳超、コピー数107/mL超で死亡率94% 死亡率に関する探索的解析では、21歳未満が57%と45歳超の94%に比べ有意に低く(p=0.03)、21~45歳の死亡率は中間的(74%)であった。EBOVのコピー数が105/mL未満の患者の死亡率は33%であり、107/mL以上の94%よりも有意に低かった(p=0.003)。 一方、ほとんどの患者が入院時または入院中にアシドーシスをきたしていた。死亡例は経時的にBUNおよびCrが上昇したことから、入院経過では脱水や腎機能低下が重要な役割を果たすことが示唆された。  著者は、医療従事者の感染予防策の重要性を強調したうえで、「EVD施設は検疫よりもむしろ患者の治療や延命に注力すべき」とし、「これらの臨床所見と検査所見は、今回だけでなく今後のEVDアウトブレイク時の対策の参考となるだろう」とまとめている。関連記事 発見者ピーター ピオットが語るエボラの今 エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

3729.

エボラ国際伝播、出国検疫強化がカギ/Lancet

 カナダ・トロント大学のIsaac I Bogoch氏らは、国際線航空機搭乗者を介したエボラウイルス伝播の可能性について、国際線フライトデータとエボラウイルス調査データを連動し評価を行った。その結果、現在アウトブレイクが伝えられる西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの3ヵ国からは、毎月平均2.8人のエボラウイルス感染旅行者が出国している可能性を報告。同時に、それら3ヵ国に関連した出国時の検疫を強化することで、感染リスクの高い全旅行者の健康状態の評価が可能になるとして、国際的な支援の必要性を提言した。Lancet誌オンライン版2014年10月21日号掲載の報告より。フライト制限、出入国時スクリーニングの有効性をモデル化 Bogoch氏らは、2014年9月1日~12月31日までの国際線フライトスケジュールや、2013年の旅行者データを分析し、ギニア、リベリア、シエラレオネからの航空機による出国旅行者数などを割り出した。 それらとエボラウイルス調査データを連動して、予想されるエボラウイルス感染者の出国者数を調べ、航空機出国旅行を制限することの有効性、空港での出入国時スクリーニングの有効性をモデル化し検討した。検討では、対象3ヵ国の国内線または国際線搭乗者は全員、エボラウイルス曝露の可能性があるとみなし、その他の旅行者には有意な曝露リスクはないものとみなした。ギニア、リベリア、シエラレオネから毎月2.8人の感染旅行者が出国 分析の結果、2013年における全世界の航空機搭乗者に占める出国搭乗者は、ギニア、シエラレオネからはいずれも0.02%、リベリアからは0.01%であった。各国からの出国者数は、2014年9月1日時点でフライトキャンセルや減便などにより、リベリアで51%、ギニアで66%、シエラレオネで85%まで減少していた。 モデル検討により、空港での旅行者の健康スクリーニングが、エボラウイルス伝播の阻止に最も有効であると推定された。スクリーニングが必要なのは、出国時については3ヵ国の3都市の空港、入国時については3ヵ国からの直行便がある15ヵ国の15都市、また直行便のない1,238都市での入国時スクリーニングが必要であることも判明したという。 また、3ヵ国からは毎月平均2.8人のエボラウイルス感染旅行者が出国していることが推定され、ギニア、リベリア、シエラレオネからの航空機搭乗出国者のうち64%(9万1,547例)は、低所得国、低中所得国に向かっていると予測され、3ヵ国3都市の出国時スクリーニングが、エボラウイルス感染曝露が高い全旅行者の健康評価を実現できる可能性が明らかになったという。関連記事 発見者ピーター ピオットが語るエボラの今 エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

3730.

エボラ熱“最後の1人まで終わらない”と発見者ピオット氏

 2014年10月30日、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)メディアセミナーが開催され、エボラウイルス発見者の1人であるロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長 ピーター・ピオット氏が「エボラ出血熱やその他の感染症への対応と課題」について講演した。今回は、記者との質疑応答をレポートする。前回記事(「発見者ピーターピオットが語るエボラの今」はこちら)今までのアウトブレイクとの違いは? 今回の死者は約5,000人となり(会見時:2014年10月30日)、1976年の発見以降の38年間におけるエボラによる死者数の3倍に達する。これまでのアウトブレイクは非常に限定的なものであった。ところが、今回は、医療システムの崩壊、政府への信用欠如、対応の遅れなど、さまざまな要素が合わさり、流行を制御不能にした。また、医療従事者に悪影響を及ぼし、医療システムの崩壊を招いている。このように社会全体に与えている影響を鑑みると、大規模な国際的取り組みは喫緊の課題といえよう。事態は好転しているのか? 国際的協力が進み、社会の認知が改善したことで良い刺激が出てきているが、国によって状況は異なる。シエラレオネでは流行はまだ悪化している。リベリアでは一部の地域で沈静化のサインが出てきている。実際の社会での拡大阻止を実現できるのは、国際的援助ではなく、地域の人間の活動である。リベリアでは、伝統的指導者が、(死者の身体を拭くという)埋葬の方法を変えるべき、と発言するなど新たな動きが出てきた。これは非常に重要なことだ。 個人的な楽観的シナリオではあるが、クリスマスまでには緩やかな減少が各地にみられるかもしれない。防御服を着ても医療従事者の感染が起こっているが? 防御服を脱ぐ時が問題である。エボラウイルスは死亡患者の身体にも非常に多く生存する。嘔吐、下痢、出血などがその原因だ。死亡者の身体でも2~3日は感染性が高い状態が続き、患者の寝ていたシーツやテーブルの上などでも数時間生存する。ウイルスは口、鼻、結膜などから侵入する。防護服を脱ぐ際、過って患者や死亡者の体液がついた防御服に触れ、その手で瞼や鼻をさわるなどして感染を起こす。そのため、国境なき医師団など熟練した組織では現在、防御服の脱衣を監督下で行っている。中国、日本への拡大リスク 伝播は世界中どの国でも起こりうるが、中国での危険性は高いといえる。現在、何千人という中国人労働者がアフリカ大陸にいる。人の渡航は止めることはできない。中国人労働者がエボラを本国に持ち帰ることも、逆にアフリカ人が中国にウイルスを持ち込む可能性もある。だが、ここで最も大きな問題は医療機関の感染制御の質なのである。SARSの経験で徐々に改善されているものの、中国の公の病院の感染制御レベルはまだ低い。そういう意味で、中国は脆弱性が高いと考えられる。 一方、日本は衛生面、感染制御とも基準を満たしている。だが、同じレベルにある米国テキサスでも死者が発生していることからも安全とはいえない。この時期に、国全体でより良い感染制御の訓練を加速すべきである。これは一部の指定された病院だけでなく、すべての病院が対象となるべきだ。エボラウイルス治療薬、ワクチンの開発 現在は患者の隔離、生命維持、水分補給、接触者の検疫措置、環境改善などの原始的な形でしか封じ込めはできない。そのようななか、富士フイルムグループの富山化学工業のインフルエンザ治療薬アビガン錠がエボラ治療薬として認められた。エボラに対する効果はヒトでは確認されていないが(マウスでは確認済み)、WHOは本疾患の死亡率を鑑みこの判断を下した。現在、用量設定試験が進行中である。そのほかにも幾つかの治療薬が開発されつつある。また、ワクチンも開発されつつある。現在の混乱した状況では効果確認は容易ではないが、いつくかの候補があり、うち1つのワクチンで第I相試験が行われている。 エボラの大きな問題は、他者に感染させる危険がある最後の1人がいなくなるまで終わらないことである。実際、ギニアでは一旦沈静化したにもかかわらず1人の有名人に集まった葬儀参加者から感染が再拡大している。つまり、患者が1人いれば流行が再燃するには十分なのである。この点が他の感染症とは大きく違うところである。そして、これは同時に今後も全面的な取り組みが必要であることを意味する、とピオット氏は強調した。グローバルヘルス技術振興基金 GHIT Fund(Global Health Innovative Technology Fund):開発途上国に蔓延する感染症制圧に必要不可欠な医薬品、ワクチン、診断薬の研究開発および製品化の支援を目的とし、官・企業・市民がパートナーシップを組み資金を拠出して設立したグローバルヘルスR&Dに特化した基金。途上国の最貧困層が必要とする医薬品・ワクチン・診断薬の研究開発・製品化に向け活動している。

3731.

肺結核の1次治療、より簡略なレジメンが非劣性/NEJM

 肺結核の1次治療では、高用量リファペンチン(国内未承認)+モキシフロキサシン(商品名:アベロックス)の週1回投与を含む6ヵ月レジメンの有効性が、イソニアジド(同:イスコチンほか)+リファンピシン(同:リファジンほか)の6ヵ月連日投与を要する標準治療に劣らないことが、英国・ロンドン大学セント・ジョージ校のAmina Jindani氏らが行ったRIFAQUIN試験で示された。現在の肺結核に対する6ヵ月レジメンは、薬剤感受性菌の場合、適切に投与すれば95%以上の無再発治癒達成が可能だが、より短期間で簡略化されたレジメンの確立が求められている。リファペンチンの間欠投与では再発率が高く、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の重複感染例ではリファマイシン系薬への抵抗性がみられるが、マウス実験では高用量リファペンチンとモキシフロキサシンの併用が治癒率を改善する可能性が示唆されている。NEJM誌2014年10月23日号掲載の報告。簡略、短期レジメンの非劣性を無作為化試験で評価 RIFAQUIN試験は、肺結核患者の1次治療において、高用量リファペンチン+モキシフロキサシンの間欠投与を含む6ヵ月および4ヵ月レジメンの、標準治療であるイソニアジド+リファンピシンの6ヵ月連日投与レジメンに対する非劣性を検証する国際的な無作為化対照比較試験。対象は、年齢18歳以上、体重35kg以上で、2つの喀痰塗抹の顕微鏡検査で結核菌陽性の未治療の患者であった。 被験者は、以下の3つのレジメンのいずれかに無作為に割り付けられた。(1)エタンブトール、ピラジナミド、イソニアジド、リファンピシンを2ヵ月連日投与後、イソニアジドとリファンピシンを4ヵ月連日投与する群(対照群)、(2)対照群のイソニアジドをモキシフロキサシンに変更して2ヵ月連日投与後、モキシフロキサシンとリファペンチン900mgを週2回、2ヵ月投与する群(4ヵ月レジメン群)、(3)対照群のイソニアジドをモキシフロキサシンに変更して2ヵ月連日投与後、モキシフロキサシンとリファペンチン1,200mgを週1回、4ヵ月間投与する群(6ヵ月レジメン群)。 喀痰検体の顕微鏡検査と培養検査を定期的に行った。主要評価項目は、治療不成功と再発の複合エンドポイント(治療効果不良)であった。非劣性マージンは6%とし、per-protocol(PP)解析とmodified intention-to-treat(mITT)解析の双方で90%信頼区間(CI)の上限値が6%を超えない場合に非劣性と判定することとした。4ヵ月レジメンでは効果はむしろ不良 2008年8月15日~2011年8月1日までに、南アフリカ、ジンバブエ、ボツワナ、ザンビアから827例が登録され、593例(6ヵ月レジメン群:277例、4ヵ月レジメン群:275例、対照群:275例)がmITT解析、514例(186例、165例、163例)がPP解析の対象となった。mITT集団の64%が男性、27%はHIVとの重複感染例だった。 PP解析では、治療効果不良率は対照群の4.9%に対し、6ヵ月レジメン群は3.2%(補正後対照群との差:-1.8%,90%CI:-6.1~2.4%)、4ヵ月レジメン群は18.2%(同:13.6%、8.1~19.1%)であった。 mITT解析では、治療効果不良率は対照群の14.4%に対し、6ヵ月レジメン群は13.7%(補正後対照群との差:0.4%、90%CI:-4.7~5.6%)、4ヵ月レジメン群は26.9%(同:13.1%、6.8~19.4%)であった。 すなわち、6ヵ月レジメン群はPP解析、mITT解析の双方で90%CIの上限値が6%を超えなかったことから、対照群に対する非劣性が確認された。一方、4ヵ月レジメン群はいずれの解析でも上限値が6%を超えており、非劣性であることは認められなかった。なお、より厳格な95%CIでは、6ヵ月レジメン群のPP解析は非劣性マージンを満たしたが、mITT解析は満たさなかった。 38例に45件の重篤または生命を脅かす有害事象がみられたが、治療に関連するものはなかった。割り付けの対象となった827例中25例が死亡し、このうち4例は結核による可能性があると判定された。 著者は、「高用量リファペンチンとモキシフロキサシンの週1回投与を含む6ヵ月レジメンは、HIV重複感染のない患者やイソニアジド抵抗性の患者などの1次治療として使用可能と考えられる」としている。

3732.

エボラ、赤道アフリカと西アフリカは別種/NEJM

 西アフリカで大規模に広がり続けるエボラウイルス病(EVD)の流行の一方で、赤道アフリカのコンゴ民主共和国で7回目のEVDアウトブレイクが報告されたのは、2014年7月26日のことだった。ガボン共和国・世界保健機関(WHO)研究協力センターのGael D Maganga氏らは、これら近接する2つの地域における同時期のアウトブレイクの関連を調査した。その結果、赤道アフリカのエボラウイルスは西アフリカとは異なることが判明したという。NEJM誌オンライン版2014年10月15日号掲載の報告より。サルから感染した妊婦と接触した医療者が感染源に 研究グループは、標準的なWHOのウイルス性出血熱臨床調査票を用いて、コンゴ民主共和国における疫学および臨床データを収集した。患者は、EVDに関して、「感染が疑われる(suspected)」「感染の疑いが濃厚(probable)」「感染確定(confirmed)」「非感染(non-EVD)」のいずれかに分類された。 個々の患者の接触者を追跡することで感染源の同定を試みた。また、採取された血液サンプルを用いて、特異的なRT-PCR法による診断を行い、ウイルス単離、ゲノム・シーケンシング、系統樹解析を実施した。 今回のEVDアウトブレイクは、同国Equateur州Boende市(人口約4万5,000人)近郊のInkanamongo村(首都キンシャサから直線距離で北西に約700km)で始まり、この地域に限定されていた。最初の感染例(index case)は同村に住む妊婦で、夫が見つけたサル(種は不明)の死体を解体したところ、2014年7月26日に発症し、8月11日に死亡した。 その後、1名の医師を含む4名の医療従事者が、妊婦と胎児を別個に埋葬するという現地の慣習に基づき、死亡した妊婦の帝王切開を行ったところ全員が感染し、死亡した。これらの医療従事者が、その後の感染源となっていた。死亡率74%、潜伏期間16日、迅速な対応で早期終息か 2014年7月26日~10月7日までに、感染疑い3例、感染濃厚28例、確定38例の69例(医療従事者8例を含む)が報告された。男性が33例、女性は36例で、21~60歳が80%を占めた。感染疑いの3例は、のちに非感染であることが判明している。感染濃厚例と確定例のうち49例(男性21例、女性28例、5歳未満の3例を含む)が死亡し、死亡率は74%(49/66例)だった。 EVD患者との接触から発症までの期間中央値は16日(3~27日)で、西アフリカの状況と類似していた。死亡例のうち32例の解析では、発症から死亡までの期間中央値は11日(1~30日)であった。8例の医療従事者(感染濃厚4例、確定4例)はすべて死亡している。 非感染例に比べ感染濃厚例および確定例で頻度の高い症状として、発熱、頭痛、下痢、悪心・嘔吐、疲労感、食欲不振、筋肉痛、嚥下困難、結膜炎、血便および血液の混じる吐瀉物が認められた。 index case以外は、すべてヒト-ヒト感染であった。アウトブレイクの最初の24日間にEVDと診断された29例のうち21例は、index caseと身体的またはその体液に接触していた。6回の発生のピークがみられ、8月17~24日の週の報告例数が最も多く、その後は急速に減少。10月7日の時点で、10月4日を最後に感染の報告はない。 また、index caseと接触した21例を除いた場合の平均再生産症例数(reproduction number、1人の感染者が再生産する2次感染者数)は0.84であり、感染持続の閾値である1を下回ったことから、今後、感染は終息に向かうと予測された。 一方、ゲノム・シーケンシングでは、今回のアウトブレイクの原因ウイルスは1995年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)のKikwit地区で発生したアウトブレイクの原因ウイルスとの遺伝学的同一性が99.2%で、現在西アフリカで進行中のアウトブレイクで同定されたウイルスとの遺伝学的同一性は96.8%であったことから、これらは別種のウイルスであると考えられた。 著者は、赤道アフリカのアウトブレイクが西アフリカよりも小規模であった理由のうち最も説得力のある要因として、(1)西アフリカとは対照的に、遠隔の森林地帯であり、人口密度が低く、交通機関が未発達でヒト間の接触が少なく時間もかかる地域であること、(2)過去6回のEVD流行の経験があり準備が整っていたため、対応が迅速で効果的であった点を挙げている。関連記事 発見者ピーター ピオットが語るエボラの今 エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

3733.

エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も

 現在、エボラ出血熱が西アフリカを中心に蔓延している。厚生労働省検疫所は、WHOの情報として10月27日の段階で世界のエボラウイルス病について、疑い例を含む感染者が1万3000人を超え、そのうち死者が5,000人近くにのぼっていることを報告している。 最近では、西アフリカのマリで初めてとなるエボラウイルス病の確定症例が報告された。この患者は2歳の女児でギニアからの移動中に発症し、マリにあるFousseyni Daou病院を受診したが助からなかった。WHOのチームはすでにマリに配置されており、感染予防と制御、接触者の追跡、医療従事者の訓練に関して人的支援を続けている。 9月30日に初めての感染が報告されたアメリカでは、現在4例の感染が発生し、うち1例が死亡している。2例は、すでに退院しているが、残る1例は、ニューヨークで隔離され治療を受けている。接触可能性のある人については現在も監視が続けられている。 WHOが感染リスクの高い集団として挙げている医療従事者でも感染および死亡数が増加している。10月27日現在で、医療従事者におけるエボラウイルス病の感染は500名を超え、270名以上が死亡している。WHOは感染原因の調査を実施するとともに、全ての医療従事者が暴露リスクを最小限にとどめるための訓練準備、および個人用防護具を十分に確保すべく徹底した努力を続けている。 感染が広がる一方で、セネガルとナイジェリアでは、感染発生後の対策に成功し、それぞれ10月17日、19日に終息が宣言された。スペインでもただ一人の患者が検査の結果、1回目、2回目とも陰性であったため、このまま42日間新たな感染が発生しなければ終息が宣言される、とWHOは伝えている。詳しくは厚生労働省検疫所HPをご参照ください。関連記事 発見者ピーター ピオットが語るエボラの今 エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

3734.

発見者ピーター ピオットが語るエボラの今

 2014年10月30日、都内にて公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)メディアセミナーが開催され、エボラウイルス発見者の1人であるロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長 ピーター・ピオット氏が「エボラ出血熱やその他の感染症への対応と課題」について講演した。記事の続編はこちら(エボラ熱“最後の1人まで終わらない”と発見者ピオット氏)。予測できなかった今回のアウトブレイク エボラ出血熱は、1976年に発見されて以来25の集団発生を起こしているが、すべて数ヵ月で完全に封じ込められている。その多くはコンゴ、ウガンダなどの中央アフリカでの発生であった。今回の西アフリカで起こった最大の集団発生はすべてが異なっており、誰も予測できなかったという。 今回のアウトブレイクの始まりは、昨年(2013年)12月 。その3ヵ月となる3月25日、WHOがギニアでエボラ集団発生が報告されたとの声明を発表。国際NGO、国境なき医師団などが急遽、発生地ギニアに入り、隔離ユニットによる診療を開始した。しかし、ギニアにおける状況はさらに悪化し6月には首都でも発生。この時点で流行は加速し、隣国リベリア、シエラレオネでも発生している。その後、さまざまな拡大防止策を実行しているが、今日に至っても集団発生は継続しており、シエラレオネ、リベリアそしてギニアの一部で発生が多い。西アフリカの制圧が唯一の予防策 発生地から遠く離れたスペイン、米国でもエボラによる死者が出ている。グローバルな時代の今日、流行を防止する策として国境閉鎖、渡航者のスクリーニングがあるが、科学的には有効とはいえない。唯一の予防策は、西アフリカで封じ込めることであると、ピオット氏はいう。 しかし、ここにきて国際的な動きが始まった。今回の初めての集団発生の報告から5ヵ月を要しているものの、8月にはWHOがPublic Health Emergency of International Concern(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)を宣言した。それに伴い、各国政府も活動を開始。米・英国も軍、関係者を派遣し、発生地における病院の建設、物流サポートを開始した。アウトブレイク制圧は初動がカギ この予想外の流行の背景には、初動の対応の不備があるという。ナイジェリアの数十年にわたる内戦、ギニアの政治腐敗、リベリアの医療サービスの崩壊(多くの医師が国外に去り、2010年には10万人に1人以下の医師しかいない)。これらのことが対応を遅らせ、流行がコントロールできない状態に陥らせてしまった。 このようななか、明るい兆しもある。セネガル、ナイジェリア、コンゴでは自国でエピデミックを制圧している。これは隔離、ケア提供、接触者の検疫という非常に単純な方法によるものである。つまり、初期対応が良ければ制圧は難しくないのである。 今日のようなグローバル世界では、いや応なく感染症の流行は台頭する。日本のような感染症の少ない国でも、流行の危険にさらされている。そのため、感染症には今後も注目し続けて欲しいと、ピオット氏は述べた。関連記事 エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

3735.

今シーズンのタミフル供給計画を発表

 中外製薬株式会社は29日、スイスのF. ホフマン・ラ・ロシュ社から輸入し、製造・販売している抗インフルエンザウイルス剤「タミフルカプセル75」「タミフルドライシロップ3%」(一般名:オセルタミビルリン酸塩)(以下、タミフル)について、2014-2015年シーズン(以下、今シーズン)に向けての供給計画を発表した。 今シーズンのタミフル供給計画(2014年10月29日時点)は以下のとおり。 タミフルカプセル75約400万人分 タミフルドライシロップ3%約300万人分 合計約700万人分 同社は、インフルエンザウイルスの流行拡大の状況に応じて追加供給も検討しているという。詳細は中外製薬のプレスリリースへ

3736.

髄膜炎ワクチン、費用対効果は?/BMJ

 英国・ブリストル大学のHannah Christensen氏らは、髄膜炎菌血清群Bワクチン「Bexsero」接種導入の費用対効果について、英国民0~99歳を接種対象としたモデル研究の再評価を行った。結果、乳児への定期接種が最も効果がある短期的戦略であり低費用で費用対効果があるとしたうえで、長期的戦略の可能性として、乳児と青年への接種プログラムが大幅な症例削減につながることを報告した。同ワクチンは欧州で2013年1月に承認され、英国では同年7月にJoint Committee on Vaccination and Immunisationが、先行研究から費用対効果があるとして導入を助言。それに対し、導入を呼びかけてきた慈善団体や臨床医、研究者や政治家から費用対効果について十分な再検証を求める声が上がり本検討が行われたという。BMJ誌オンライン版2014年10月9日号掲載の報告。モデル研究で、ワクチン導入の費用対効果を検証 研究グループは、Bexsero接種導入の疫学的および経済的影響の予測と、英国ワクチンポリシーに情報を提供するため、数学・経済モデルを用いた検討を行った。 0~99歳の英国民集団を対象に、伝播力モデルを使ったシミュレーションによりワクチン戦略の影響を調べた。モデルには最新エビデンスのワクチン特性、疾病負荷、治療コスト、訴訟コスト、疾患により損失したQOLをパラメータとして含み、また家族やネットワークメンバーへの影響なども含んだ。ワクチン接種の健康への影響は、回避症例および獲得QALYにより評価した。 主要評価項目は、ワクチン接種導入による、回避症例と獲得QALY当たりのコスト。QALY獲得に要する接種プログラムの費用が2万ポンド未満の場合に費用対効果があるとした。乳児定期接種は5年で26.3%減、乳児・青年接種は30年後に51.8%減の可能性も 結果、短期的には、乳児への定期接種が最も症例の減少が大きかった(最初の5年間で回避症例は26.3%)。この戦略は費用対効果も認められ、接種にかかる費用は1回3ポンドで、良好な仮定(接種率88%の場合、保菌に対する効果は30%、疾患に対する効果は95%など)およびQOL調整因子がもたらされる可能性があった。 長期的には、乳児および青年への組み合わせ接種プログラムが、接種により髄膜菌伝播を阻害できれば、より多くの症例を予防できることが示された(30年後に51.8%)。接種にかかる費用は1回4ポンドで費用対効果も認められた。 なお、保菌率を30%まで減らした場合、青年期の予防接種のみで良好な戦略的経済効果が得られるが、十分な症例減少には20年以上を要することも示されたという。 これらの結果を踏まえて著者は、「乳児の定期接種が最も有効な短期的戦略であり、費用も低く費用対効果がある」としたうえで、「もしワクチン接種が思春期の保菌を減少すれば、乳児と青年へのワクチン接種の組み合わせが長期的には大幅な症例の減少をもたらすものとなり、費用対効果も他と負けない可能性がある」と述べている。

3737.

事例26 細菌培養同定検査の査定【斬らレセプト】

解説事例では左下肢の蜂窩織炎の患者に、D018細菌培養同定検査を実施したところC事由(医学的理由による不適当)で査定となった。レセプトには静脈採血があり、D018「3」細菌培養同定(血液)にて請求されている。血液に対して細菌培養同定を行う必要性のある病名が病名欄に表示されていない。嫌気性培養加算も算定されているが、血液に対して行う場合は、2ヵ所からの血液採取が奨励されており2回算定できる。事例では1回の算定であることと、診療報酬では「血液又は穿刺液」と記載されていることから、同一区分の穿刺液の入力誤りも考えられる。しかし、この区分の穿刺液は「胸水、腹水、髄液及び関節液」と規定されているので、蜂窩織炎の穿刺液に対しては適用されない。D018 「5」その他の部位からの検体の区分が適用される。いずれの理由にしても、レセプト上からは、医学的に不適当であることに変わりがないためC事由で査定となったものであろう。この事例では、蜂窩織炎からの穿刺液に対して検査が行われていた。医師が選択を迷わないように電子カルテの表示を変更した。

3738.

新たな鳥インフルエンザワクチン Anhuiの免疫原性/JAMA

 米国・ワシントン大学医学部のRobert B. Belshe氏らは無作為化試験にて、最新の鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス株であるA/Anhui/01/2005(安徽株)を抗原株とした不活化インフルエンザワクチンの免疫原性と安全性を評価した。被験者は、米国FDAが新型インフルエンザのパンデミックワクチンとして承認している、A/Vietnam/1203/2004(ベトナム株)ワクチン(90μg、アジュバント非添加、2回接種)を1年前に接種した人であった。また同ワクチン未接種者に対する安徽株ワクチン(MF59アジュバント添加・非添加)の評価を行った。JAMA誌2014年10月8日号掲載の報告より。ベトナム株接種者に安徽株を接種、また未接種者へ安徽株を接種し評価 アジュバント非添加のインフルエンザA(H5N1)ワクチンであるベトナム株ワクチンは、免疫原性が低いことが示されていた。しかし、その接種により接種者に免疫プライミング(免疫記憶を誘導する効果)がもたらされ、新たなH5型鳥インフルエンザワクチンの単回接種により二次抗体反応(ブースター効果)を示す可能性が示唆されていた。そこで本検討では、安徽株ワクチンの追加接種による接種免疫プライミングを評価すること、そしてベトナム株ワクチン未接種者に対する安徽株ワクチンの用量反応効果を調べることを目的とした。 試験は米国内8クリニックにて、1年前にベトナム株ワクチンを接種した72例と、未接種の565例の健康成人(18~49歳)を対象に行われた。被験者登録は2010年6月に開始され、2011年10月まで追跡した。 ベトナム株ワクチン接種者72例は、ベトナム株接種回数1回または2回の2群を、安徽株ワクチン(3.75μg)のMF59アジュバント添加・非添加別に分けた計4群に無作為に割り付けられ評価された。 一方、ベトナム株ワクチン未接種群565例は、5種の安徽株ワクチンの抗原用量設定に加えMF59アジュバント添加の有無、およびプラセボの合計10接種群に無作為に割り付けられ評価された(安徽株3.75μg、7.5μg、15μg、45μgは各々アジュバント添加・非添加群、90μgはアジュバント非添加群のみ)。 主要免疫原性アウトカムは、最終接種後1ヵ月(28日)時点および6ヵ月(180日)時点の赤血球凝集抑制反応(HI)検査による抗体価であった。主要安全性アウトカムは、0日、7日時点で評価した局所および全身性の有害事象と、重大有害事象とした。ベトナム株の免疫プライミングを確認 ベトナム株ワクチン接種者は、安徽株ワクチンによる1回接種で二次抗体反応を示したことが確認された。28日時点で1:40以上のHI抗体価を示したのは21~50%であった。しかし、HI抗体価達成者(1:40以上)が、ベトナム株1回接種群ではアジュバント添加群で高率だったのに対し、2回接種群ではアジュバント非添加群で高率であるなど、アジュバント添加の効果については、関連性が確認されなかった。 ワクチン未接種者への検討からは、アジュバント添加安徽株ワクチンは7.5μg量が適量であることが示された(幾何平均抗体価[GMT]:63.3、95%信頼区間[CI]:43.0~93.1)。アジュバント非添加の同ワクチンでは用量依存的に抗原反応は高まり、最大用量90μg群で最も高かったものの、GMTは28.5(95%CI:19.7~41.2)であった。 局所または全身性反応は、安徽株ワクチン7.5μgアジュバント添加群でそれぞれ78%(40/51例)、49%(25/51例)であったのに対し、同90μg群アジュバント非添加はそれぞれ88%(50/57例)、51%(29/57例)であった。 なお、概して抗体半減期は短く、全接種群のHI抗体価は180日時点までに1:20未満に低下していた。

3739.

HALLMARK-DUAL 試験:C型慢性肝炎に対する治療法の開発は最終段階へ!―IFN freeのアスナプレビル・ダクラタスビル併用療法の報告―(解説:中村 郁夫 氏)-266

C型慢性肝炎のうち、1型高ウイルス量の患者に対する現時点での標準治療はペグインターフェロン(PEG-IFN)とリバビリン・プロテアーゼ阻害薬(シメプレビル、バニプレビル、テラプレビル)の併用療法(24週)である。この治療法により、Sustained Virological Response(SVR:治療終了後6ヵ月の時点での血中HCV陰性化)を得られる頻度は、初回治療例で約85~90%とされている。 さらなる治療効果の向上・患者の負担軽減のために、さまざまな取り組みが進められている。その一つが、IFN freeの経口薬のみの併用療法の開発である。有用な薬剤として、(1)NS3プロテアーゼ阻害薬、(2)NS5Bポリメラーゼ阻害薬(核酸型・非核酸型)、(3)NS5A阻害薬が挙げられる。 本論文は、日本から発信された1b型のC型慢性肝炎に対するアスナプレビル(NS3プロテアーゼ阻害薬)・ダクラタスビル(NS5A阻害薬)併用療法を、18ヵ国116施設で行った第III相の国際マルチコホート試験(HALLMARK-DUAL)に関する報告である。 本試験は、未治療例、前治療無効例および不適格・不耐容症例(計747例)を対象として行われ、治療終了後12週時点のSVR(SVR12)は82~90%と高率であった。 一方、経口薬の併用療法の問題点の一つとして、薬剤に対する耐性変異の出現がある。本邦での検討により、治療前にダクラタスビルの耐性変異(L31,Y93)を有する症例ではSVR24が40%以下となることが知られている。さらに、同治療の無効例の中に、NS5Aに対する変異のみでなくNS3 プロテアーゼ阻害薬に対する耐性変異(D168)が生じる例があることが報告されている。 今後、SVR がさらに高率で、しかも、耐性ウイルスの出現率が低いとされるソホスブビル(NS5Bポリメラーゼ阻害薬)・ダクラタスビル(NS5A阻害薬)併用療法の承認が見込まれる現在、アスナプレビル・ダクラタスビル併用療法の適応は慎重に検討する必要があると考えられる。日本肝臓学会および厚生労働省研究班から出されている治療ガイドラインを熟知したうえでの治療方針の決定が必要であると思われる。

3740.

CTL019、再発・不応性ALLに有効/NEJM

 CD19を標的とするキメラ抗原受容体を導入したT細胞(CTL019、以前はCART19と呼ばれた)は、再発・不応性の急性リンパ性白血病(ALL)に対し完全寛解率90%、最長で2年の寛解維持をもたらしたとの研究結果が、米国・フィラデルフィア小児病院のShannon L Maude氏らにより、NEJM誌2014年10月16日号で報告された。再発ALLの治療は、積極的なアプローチが可能な場合であっても困難であり、遺伝子操作を加えたT細胞療法は新たな治療戦略とされる。CTL019は、従来治療の限界を克服し、不応例にも寛解導入をもたらす可能性があることが示されている。30例のパイロット試験で有用性を評価 研究グループは、再発・不応性ALLに対するCTL019によるT細胞療法の有効性を評価するパイロット試験を実施した。CTL019は、患者由来のT細胞にレンチウイルス・ベクターを介してCD19を標的とするキメラ抗原受容体を導入した自家T細胞であり、0.76~20.6×106cell/kgが患者に投与された。 2012年4月~2014年2月までに、5~22歳の25例(小児コホート)がフィラデルフィア小児病院で、26~60歳の5例(成人コホート)がペンシルバニア大学病院で治療を受けた。有効性と毒性の評価とともに、血中のCTL019の増殖および残存のモニタリングを行った。 30例のうち、26例が初回~4回目の再発性のB細胞性ALL、3例が原発性不応性のB細胞性ALL、1例はT細胞性ALLであった。年齢中央値は小児コホートが11歳、成人コホートは47歳、女性がそれぞれ11例、1例で、小児コホートのうち18例は同種幹細胞移植後の再発例であった。ブリナツモマブ(T細胞上のCD3に結合するドメインおよびCD19結合ドメインを有する二重特異性抗体)無効例が3例含まれた。サイトカイン放出症候群、脳症は管理可能 完全寛解は27例(90%)で得られた。そのうち2例はブリナツモマブ不応例、15例は幹細胞移植例であった。2~24ヵ月のフォローアップ期間中に19例が寛解を維持し、このうち15例は追加治療を要しなかった。CTL019細胞は生体内で増殖し、奏効例では血液、骨髄、脳脊髄液中に検出された。 6ヵ月無イベント生存率は67%、6ヵ月全生存率は78%であり、これらの患者は寛解が維持されていた。6ヵ月時のCTL019の検出率は68%、無イベントB細胞無形成率は73%であった。B細胞無形成は、機能性CD19標的T細胞の残存に関する薬力学的(PD)指標で、すべての寛解維持例に認められ、CTL019が検出不能となった後も、最長で1年間持続した。 全例にサイトカイン放出症候群が認められたが、ほとんどは自己制御が可能で、高熱や筋肉痛を伴う場合も数日で自然消退した。本症はCTL019関連の主要な毒性作用で、T細胞の活性化および増殖によるサイトカインの上昇に起因する全身性の炎症反応である。重症例は27%で、いずれもCTL019投与前の疾病負担が大きい症例であり、抗インターロイキン-6受容体抗体であるトシリズマブが有効であった。 神経毒性(失語、錯乱、せん妄、幻覚)が13例にみられた。また、高熱発症後の遅発性の脳症が6例に発現したが、自己制御が可能で介入なしで2~3日で回復した。 著者は、「CD19を標的とするキメラ抗原受容体導入T細胞療法は、自家幹細胞移植無効例を含む再発・不応性ALLの治療に有効である」とまとめ、「ある程度のサイトカイン放出症候群の発現は有効性の指標である可能性がある」「ブリナツモマブ不応例で完全寛解が得られたという事実は、CD19標的治療が奏効しない症例にも、CTL019は有効な可能性があることを示唆する」と指摘している。

検索結果 合計:4273件 表示位置:3721 - 3740