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男性機能の維持にも、テストステロン増加に最適な運動/日本抗加齢医学会

 いくつになっても男性機能を維持させたい、死亡リスクを減らしたい、というのは多くの男性の願いではないだろうか―。「老若男女の抗加齢 from womb to tomb」をテーマに掲げ、第23回日本抗加齢医学会総会が6月9~11日に開催された。そのシンポジウムにて前田 清司氏(早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授)が『有酸素運動とテストステロン』と題し、肥満者のテストステロン増加につながる方法、男性機能を維持するのに適した運動について紹介した。肥満者のテストステロン増加に運動が影響、男性機能には… 近年、国内の死因別死亡数では心血管疾患や脳血管疾患が上位を占めているが、肥満者(BMI≧25)が増加することでこの死因が押し上げられることが示唆されている1)。そのため、肥満者を減らせば心・脳血管疾患も減少傾向に転じる可能性がある。 そこで、前田氏はこの課題解決としてテストステロン濃度に着目。ある研究2)によると肥満者ではテストステロン濃度が低下し、またある研究3)ではテストステロンは血管機能(動脈スティフネスや中心血圧)に保護的に作用することが報告されている。加えて、テストステロン増加がさまざまな疾患リスク減少に寄与する4)ことも報告されている。以上の報告から同氏らは、肥満者ではテストステロン値が低下し、その結果、心血管リスクが上昇していると仮説を立て、肥満者において、食事・運動介入による心血管やテストステロン濃度への影響を調査した。 本研究ではまず、肥満者を対象に生活習慣の改善介入(食事と運動の併用介入)を3ヵ月間実施した。有酸素性運動は3回/週(1回あたり90分、内訳:ストレッチ10~15分、有酸素性運動40~60分、整理運動20~30分)行った。食事法には四群点数法を導入し、1食あたり560kcal程度、1日1,680kcal程度の摂取とし、1回/週の週間食事指導、食事記録に基づいた個別指導が行われた。続いて、肥満者を運動群(n=49)、食事群(n=28)、併用群(n=56)の3群に割付け、食習慣と運動習慣のどちらがよりテストステロン値に影響を与えるかを調査した。なお、併用群ではいずれもの介入がなされた。さらに、運動能力の男性機能やテストステロンへの影響を調べるために筋力(握力)と持久力(最大酸素摂取量)の関係性についても解析した。 主な結果は以下のとおり。・食事と運動の併用介入による減量後に、動脈スティフネスと中心血圧はともに低下した。また、介入後のテストステロン濃度の増加が大きいほど脈波伝播速度で評価した動脈スティフネスの低下は大きく、中心血圧の低下も大きかった。・運動群、食事群、併用群のそれぞれの効果を検討した際の体重変化は、運動群で2kg、食事群で8kg、併用群で12kgの減量がみられ、併用群が最も効果的であった。ただし、単独介入を比較すると、食事群のほうが運動群より効果が高かった(-9.8% vs.-2.5%、p<0.01)。・食事群と運動群でテストステロン濃度の増加率をみると、それぞれ3.8%、17.8%の増加(p<0.05)で、テストステロンの増加には運動療法が重要であった。・運動強度は、高強度の身体活動量(早歩きや軽いジョギング)の増加とテストステロンの増加に有意な関係性がみられた。・持久力および筋力が高いと勃起機能が高く、有酸素性運動はAMSスコア(男性更年期症状の自己評価による点数)を改善することから、有酸素性運動かつ筋力トレーニングが男性機能に有用であった。 以上の結果より、同氏は「体重減少だけをみると食事介入が影響するが、テストステロン濃度の増加には有酸素性運動が、とくに少し強度が高めの早歩きや軽いジョギングなどの運動が有用であることが示唆された。また、男性機能の維持には筋力、持久力を高く保つことが重要で、とくに軽いジョギングや自体重での筋力トレーニングなどの運動療法の実施が重要」と発表した。

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肝線維化やNASH消失にpegozaferminが有効か/NEJM

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療において、線維芽細胞増殖因子(FGF21)アナログpegozaferminはプラセボと比較して、NASHの悪化を伴わない肝線維化の改善効果が優れ、肝線維化の悪化を伴わないNASH消失の達成割合も良好であることが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRohit Loomba氏らが実施した「ENLIVEN試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年6月24日号に掲載された。米国の無作為化プラセボ対照第IIb相試験 ENLIVEN試験は、米国の61施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第IIb相試験であり、2021年9月~2022年8月の期間に患者の登録が行われた(米国・89bioの助成を受けた)。 年齢が21~75歳、肝生検でNASHと確定され、肝線維化ステージF2またはF3(中等度または重度)の患者が、pegozafermin 15mg(毎週1回)、同30mg(毎週1回)、同44mg(2週ごとに1回)、2種のプラセボ(毎週1回または2週ごとに1回)を皮下投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは2つで、24週時点のNASHの悪化を伴わない肝線維化の改善(ステージ0~4のスケール[ステージが高いほど重症度が高い]で、1ステージ以上の低下)と、24週時点の肝線維化の悪化を伴わないNASHの消失であった。第III相試験での開発の続行を支持する結果 222例が無作為化され(pegozafermin15mg群21例、同30mg群73例、同44mg群57例、プラセボ群71例)、うち219例が投与を受けた。全体の平均(±SD)年齢は55.6±10.4歳、87例(39%)が男性、208例(94%)が白人で、平均体重は102.2±20.9kg、平均BMI値は36.6±5.9で、147例(66%)が2型糖尿病だった。 24週時にNASHの悪化を伴わずに肝線維化が少なくとも1ステージ改善した患者の割合は、プラセボ群が7%であったのに対し、15mg群は22%(プラセボ群との差:14ポイント、95%信頼区間[CI]:-9~38)と有意な差は認められなかったが、30mg群は26%(19ポイント、5~32、p=0.009)、44mg群は27%(20ポイント、5~35、p=0.008)で、プラセボ群に比べ2つの用量とも有意に優れた。 また、24週時に肝線維化の悪化を伴わないNASH消失を達成した患者の割合は、プラセボ群が2%であったのに対し、15mg群は37%(プラセボ群との差:35ポイント、95%CI:10~59)、30mg群は23%(21ポイント、9~33)、44mg群は26%(24ポイント、10~37)で、プラセボ群に比して3つの用量とも良好だった。 pegozafermin群で最も頻度の高い有害事象は、吐き気(15mg群19%、30mg群32%、44mg群19%)と下痢(24%、19%、14%)であった。重篤な有害事象は、プラセボ群4%、15mg群5%、30mg群4%、44mg群11%で発現し、44mg群の1例(急性膵炎)が担当医によって治療関連と判定された。 著者は、「2週間に1回の投与が可能であれば、患者の利便性と治療へのアドヒアランスが向上する可能性がある。本試験の結果は、より大規模で長期の第III相試験におけるpegozaferminの開発の続行を支持するものであり、用量選択の指針として有益な情報となるであろう」としている。

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GIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutideの有効性・安全性/Lancet

 2型糖尿病患者の治療において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、グルカゴンの3つの受容体の作動活性を有する新規単一ペプチドretatrutideは、プラセボと比較して、血糖コントロールについて有意かつ臨床的に意義のある改善を示すとともに、頑健な体重減少をもたらし、安全性プロファイルはGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬とほぼ同様であることが、米国・Velocity Clinical Research at Medical CityのJulio Rosenstock氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月26日号で報告された。米国の無作為化プラセボ/実薬対照第II相試験 本研究は、米国の42施設が参加した二重盲検無作為化ダブルダミー・プラセボ/実薬対照第II相試験であり、2021年5月~2022年6月の期間に患者のスクリーニングと無作為化が行われた(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢18~75歳、HbA1c値7.0~10.5%(53.0~91.3mmol/mol)、BMI値25~50の2型糖尿病患者が、スクリーニング前の少なくとも3ヵ月間、食事療法と運動療法のみの治療、または安定用量のメトホルミン(≧1,000mg、1日1回)による治療を受けた後、次の8つの群(いずれも週1回皮下投与)に、2対2対2対1対1対1対1対2の割合で無作為に割り付けられた。 (1)プラセボ、(2)デュラグルチド1.5mg、(3)retatrutide 0.5mg、(4)同4mg(開始用量2mg)、(5)同4mg(漸増せず)、(6)同8mg(開始用量2mg)、(7)同8mg(開始用量4mg)、(8)同12mg(開始用量2mg)。 主要エンドポイントは、ベースラインから24週時点までのHbA1cの変化であり、副次エンドポイントには、36週時点までのHbA1cおよび体重の変化が含まれた。 281例が登録され、プラセボ群に45例、デュラグルチド1.5mg群に46例、retatrutide 0.5mg群に47例、同4mg漸増群に23例、同4mg群に24例、同8mg緩徐漸増群に26例、同8mg急速漸増群に24例、同12mg漸増群に46例が割り付けられた。全体の平均年齢は56.2(SD 9.7)歳、女性が156例(56%)で、平均糖尿病罹患期間は8.1(SD 7.0)年、白人が235例(84%)であり、平均HbA1cは8.3%(SD 1.1)、平均BMI値は35.0(SD 6.3)、平均体重は98.2kg(SD 21.1)であった。脂質プロファイルを改善し、血圧を低下させる効果も 24週時におけるHbA1cのベースラインからの最小二乗平均変化は、プラセボ群が-0.01%(SE 0.21)、デュラグルチド1.5mg群が-1.41%(0.12)であったのに対し、retatrutide 0.5mg群は-0.43%(0.20)、4mg漸増群は-1.39%(0.14)、4mg群は-1.30%(0.22)、8mg緩徐漸増群は-1.99%(0.15)、8mg急速漸増群は-1.88%(0.21)、12mg漸増群は-2.02%(0.11)であった。 retatrutideによるHbA1cの低下は、プラセボ群と比較して0.5mg群を除く5つの群で有意に大きく(いずれもp<0.0001)、デュラグルチド1.5mg群との比較では8mg緩徐漸増群(p=0.0019)と12mg漸増群(p=0.0002)で有意に大きかった。36週時にも、これらと一致した知見が得られた。 また、体重は36週の時点でretatrutideの用量依存性に減少し、減少率は0.5mg群3.19%(SE 0.61)、4mg漸増群7.92%(1.28)、4mg群10.37%(1.56)、8mg緩徐漸増群16.81%(1.59)、8mg急速漸増群16.34%(1.65)、12mg漸増群16.94%(1.30)であった。プラセボ群の体重減少率は3.00%(0.86)、デュラグルチド1.5mg群は2.02%(0.72)だった。 体重減少は、プラセボ群と比較してretatrutideの用量が4mg以上の群ではいずれも有意に大きく(4mg漸増群:p=0.0017、これ以外のすべての群:p<0.0001)、デュラグルチド1.5mg群との比較でも4mg以上の群で有意に大きかった(いずれもp<0.0001)。 軽度~中等度の消化器系の有害事象(吐き気、下痢、嘔吐、便秘など)が、retatrutide群の35%(67/190例、0.5mg群の13%[6/47例]から8mg急速漸増群の50%[12/24例]までの範囲)、プラセボ群の13%(6/45例)、デュラグルチド1.5mg群の35%(16/46例)で発現した。試験期間中に重篤な低血糖の報告はなく、死亡例もなかった。 著者は、「同時に、retatrutideは脂質プロファイルを改善し、血圧を低下させ、心代謝系のアウトカムを全般的に改善した」とし、「これら第II相試験の知見は、2型糖尿病および他の肥満関連合併症を有する肥満患者を対象とする第III相試験において、retatrutideの有効性と安全性をさらに検討することを支持するものである」と指摘している。

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米国では過去20年間で代謝的に健康な肥満が増加

 米国では過去20年間で、代謝的に健康な肥満(metabolically healthy obesity;MHO)の有病率が有意に上昇していることが明らかになった。代謝関連指標別に見た場合には、肥満者の高TG血症や低HDL-C血症が有意に減少しているのに対して、空腹時血糖高値者の割合は有意な上昇傾向が認められるという。 MHOの有病率に関してはこれまでに複数の研究が報告されてきているが、結果に一貫性が見られない。一貫性の欠如は、MHOの定義が定まっていないことに起因すると考えられる。具体的には近年、MHOをより厳格に定義付けるようになってきた。これは、肥満者では心血管疾患リスク因子をわずかでも有する場合にはイベントリスクが上昇するという知見に基づく変化。 これを背景として、華中科技大学同済医学院(中国)のJiang-Shui Wang氏らは、過去20年間のMHOの有病率を同一の判定基準で算出し、その年次推移を検討した。なお、本研究におけるMHOの判定基準とは、肥満または腹部肥満(BMI30以上またはウエスト周囲長が男性は102cm以上、女性は88cm以上)でありながら、メタボリックシンドローム(MetS)の4種類の構成因子を一つも有していないこと。 解析には、1999/2000年~2017/2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いた。当該期間10サイクルのNHANESの成人参加者は、2万430人(年齢の加重平均が47.1±0.2歳、女性50.8%)だった。MHOの年齢調整有病率は、1999/2000年の3.2%から2015/2018年には6.6%へと増加していた(傾向性P<0.001)。全対象のうち肥満者は7,386人(48.0±0.3歳、女性53.5%)であり、その肥満群でのMHO有病率は同順に10.6%、15.0%だった(傾向性P=0.02)。MHOの有病率は、60歳以上、男性、非ヒスパニック系白人、高所得者、民間保険加入者、クラスIの肥満者(BMI30~35未満)で特に高かった。 次に、肥満群において、代謝指標別に異常値を示す者の割合の推移を検討。高TG血症(150mg/dL以上)は44.9%から29.0%(傾向性P<0.001)、低HDL-C血症(男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満)は51.1%から39.6%(傾向性P=0.006)と有意に減少していた。それに対して空腹時血糖高値(100mg/dL以上または血糖降下薬の使用)は49.7%から58.0%へと有意に増加していた(傾向性P<0.001)。高血圧(130/85mmHg以上または降圧薬の使用)は57.3%、54.0%であり、有意な変化がなかった(傾向性P=0.28)。 一方、肥満であり何らかのMetS構成因子を有する代謝的に不健康な肥満(metabolically unhealthy obesity;MUO)の年齢調整有病率も、1999~2002年が25.4%、2015~2018年は34.3%であり、有意に増加していた(傾向性P<0.001)。 著者らは、「これらの結果は、肥満者、特に肥満に伴う代謝異常の発症リスクの高い集団に対して、肥満関連合併症を抑制するための公衆衛生対策を強化する必要性があることを強調している」と述べている。

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医療裁判にも影響か?肝機能の指標がALT>30に

 肝機能検査として血液検査で汎用されるALT値。今後、これが30を超えていたら、プライマリ・ケア医やかかりつけ医による肝疾患リスクの確認が必要となる―。6月に開催された第59回日本肝臓学会総会にて、ALT>30を指標とする『奈良宣言』が公表された。これは、かかりつけ医と消化器内科医が適切なタイミングで診療連携することで患者の肝疾患の早期発見・早期治療につなげることを目的に、さまざまなエビデンスに基づいて設定された。記者会見では吉治 仁志氏(奈良県立医科大学消化器内科学 教授/日本肝臓学会理事)らが本宣言の背景や目的を説明しており、今回ケアネットでは日本肝臓学会理事で本宣言での特別広報委員を務める江口 有一郎氏(江口病院 ロコメディカル総合研究所 所長)に独自取材を行った。「ALT>30」の根拠と利点 ALTの新たな指標設定の理由は、以下のとおりである。(1)シンプルで健診や一般診療で汎用されている項目(2)英文も含めて基準値に関する文献が多数存在する(3)わが国の特定保健診査(特定健診)および人間ドック学会の基準値はALT30以下(4)特定健診や人間ドック学会の基準値は日本消化器病学会肝機能研究班の意見書に基づいて決定 今回、なぜこのような基準値を設けたのか、プライマリ・ケア医としても第一線で活躍する江口氏によると「これまでは“肝炎ウイルス検査を受けましょう”とか“肝臓は沈黙の臓器”というように文脈で注意喚起を行っていた。しかし、それでは捉え方に個人差が生じてしまうため、行動経済学の観点を盛り込み、参照点※を明確にするために、一般の方でも聞き覚えのある検査指標であるALTに注目して基準を設けた」と説明した。一般市民の方は「ALT>30でかかりつけ医を受診しましょう」と言われても、基準値範囲内であり自覚症状もなければ、健康指導を受けるだけと思ってしまいがちである。しかし、「明確な基準がなかったことから亡くなった方が多くいるのは事実であり、B型・C型肝炎の患者会や原告団の方々もこの宣言に賛成の意を示され、これ以上肝臓で苦しむ人を増やしたくないとおっしゃっている」と話した。※参照点(Reference Point):プロスペクト理論における利得と損失の判断を分ける基準点学会が宣言した指標、裁判にも影響か また同氏によると、宣言後に本指標を無視してしまうと、注意義務違反が生じる場合もあるという。「肝硬変や肝臓がんは年数を経て病態が進行していく疾患なので、ある患者がこの宣言以降に人間ドックでALTが35だったとしましょう。しかし、医師は基準値内だからと次の行動を起こさず、翌年にその患者が肝硬変になって“医師に検査を進めてもらえなかった”と医療裁判を起こしたらどうだろうか」と例示し、「ある弁護士からは医師側が敗訴する可能性が十分ありうるといった見解を受けたため、医療安全の観点からも医療者に周知していく必要がある」と医師側のリスクを指摘した。同氏によるとこの宣言の指標が浸透するには1~2年はかかるそうだが、その間に医師一人ひとりが新たな指標を意識し、注意しておく必要がありそうだ。 なお、今回の宣言は『日本における主要な臨床検査項目の共用検査範囲』(日本臨床検査標準協議会)では基準値内の症例も対象となるが、健康成人の約15%でALT>30を満たすとの報告があることから、この宣言がプライマリ・ケア医やかかりつけ医の診療に影響を与えうるとも学会は見解を示している。さらに、厚生労働省が作成した令和6年度版の『標準的な健診・保健指導 プログラム』での健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値(別紙5)において、保健指導判定値(ALT≧31、AST≧31)として記されている点は、本指標の明確な根拠である。 現在、YouTubeにて「奈良宣言2023 over30 せんとくん」が公開されており、視聴回数は38万回を突破している(7/14時点)。このようなSNSを活用した市民啓発にも力を入れている同氏は「国内では日本糖尿病学会や日本動脈硬化学会などが疾患予防啓発の一環として、熊本宣言や大阪宣言を行っている。肝臓学会も50年もの歴史のなかでこのようなステートメントを提言したのは初の試みであり、大きなことと言える。ぜひ、慢性肝臓病(Chronic Liver Disease:CLD)予防のために患者さんの検査値をチェックし、ほかの検査値と複合的に診断・鑑別、そして専門医への紹介を行ってもらいたい」とし、「日本肝臓学会では奈良宣言特設サイトを設け、一般市民や患者向けの説明リーフレットなどの患者啓発ツールを自由にダウンロードして使えるよう用意しているので、ぜひ活用してほしい」と締めくくった。

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糖尿病発症年齢が若いほど認知症リスクが高い

 前糖尿病は認知症リスクが高いものの、糖尿病への移行を防ぐことができれば、認知症リスクの上昇を抑えることができる可能性を示すデータが報告された。また、より若い年齢で糖尿病に移行した場合は、認知症リスクがより高くなることも示された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学大学院のMichael Fang氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetologia」に5月24日掲載された。 前糖尿病は、血糖値が基準値よりは高いものの、糖尿病の診断基準は満たしていない状態のことで、月日の経過とともに糖尿病に移行しやすい。前糖尿病では肥満などの影響のために、血糖値を下げるホルモンであるインスリンに対する感受性が低下する「インスリン抵抗性」を生じていることが多い。インスリン抵抗性や高血糖は、認知症のタイプとして最も多いアルツハイマー型認知症の原因と考えられている、脳内のアミロイドβやタウ蛋白の蓄積に関与している。Fang氏は、「アミロイドβやタウ蛋白の蓄積は脳細胞の喪失を引き起こす可能性があり、それが認知症につながるのではないか」と解説。また、「前糖尿病が認知症の独立した危険因子なのか、そうではなく、前糖尿病の人は糖尿病になりやすいために認知症のリスクが高いように見えるのか。まだどちらが正しいのか不明だが、われわれの研究結果は後者の影響が強いことを示唆している」と話している。 Fang氏らはこの研究で、一般住民のアテローム性動脈硬化リスク因子に関する大規模疫学研究「ARICスタディ」のデータを解析に用いた。研究参加時点で糖尿病のなかった人は1万1,656人(平均年齢56.8歳)で、そのうち20.0%に当たる2,330人が前糖尿病(HbA1c5.7~6.4%)だった。24.7年の追跡で、前糖尿病群の認知症発症リスクは前糖尿病でない群より有意に高かった〔ハザード比(HR)1.12(95%信頼区間1.01~1.24)〕。ただし、糖尿病に移行したか否かの違いを統計学的に調整すると、この関連の有意性は消失した〔HR1.05(同0.94~1.16)〕。 また、より若い時期に糖尿病を発症した場合に、認知症のリスクがより高くなることも分かった。具体的には、追跡期間中に糖尿病を発症しなかった人に比べて、60歳未満で糖尿病を発症した人の認知症リスクは2.9倍〔HR2.92(2.06~4.14)〕、60歳代で糖尿病を発症した人は1.7倍〔HR1.73(1.47~2.04)〕、70歳代で発症した人は1.2倍〔HR1.23(1.08~1.40)〕だった。80歳を過ぎてから糖尿病を発症した人の認知症リスクは、糖尿病を発症しなかった人と有意差がなかった。 では、前糖尿病の人の糖尿病への移行を防ぐことによって、認知症のリスクは低下するのだろうか?Fang氏は、「その期待はある。前糖尿病の人たちの病態進行を抑制する社会的な取り組みが、認知症による疾病負担の軽減につながるのではないか」と述べている。同氏は、体重管理と糖尿病予防政策などを推進し、人々のより健康的なライフスタイルを奨励することを提案。それによって、糖尿病や認知症の患者数の増加を抑制できる可能性があるとしている。

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7月14日 内臓脂肪の日【今日は何の日?】

【7月14日 内臓脂肪の日】〔由来〕「内臓脂肪」の頭文字「な(7)い(1)し(4)」と読む語呂合わせから、内臓脂肪の蓄積が将来の健康リスクに繋がることへの啓発と健やかに過ごし、自分の健康を見つめ直す機会とすることを目的に株式会社ファンケルが制定。関連コンテンツ抗肥満薬「アライ」がダイレクトOTCとして薬局で購入可能に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】「つい食べてしまう」という患者さん【糖尿病外来NGワード】内臓脂肪指数は大腸がん発症の予測因子~日本人コホート全粒粉穀物がもたらす身体への効果/日本糖尿病学会2型DM発症リスク、肥満でなくても腹囲が影響/BMJ

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高齢者の片頭痛患者に対する抗CGRP抗体の安全性・有効性

 抗CGRPモノクローナル抗体は、片頭痛治療において顕著な有効性および忍容性が認められているが、高齢者に対する使用データについては、臨床試験では暗黙の年齢制限があり、リアルワールドのエビデンスも限られていることから、十分であるとは言えない。スペイン・バルセロナ大学のAlbert Munoz-Vendrell氏らは、65歳以上の片頭痛患者を対象に抗CGRPモノクローナル抗体であるエレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブの安全性および有効を評価するため、検討を行った。その結果、リアルワールドにおける65歳以上の片頭痛患者に対する抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、安全かつ効果的な治療法であることを報告した。The Journal of Headache and Pain誌2023年6月2日号の報告。 本研究は、スペインの頭痛治療施設18施設からプロスペクティブにデータを収集し、レトロスペクティブに分析を実施した観察研究である。対象は、抗CGRPモノクローナル抗体による治療を開始した65歳以上の片頭痛患者。主要エンドポイントは、治療6ヵ月後の1ヵ月当たりの片頭痛に数の減少および副作用の発生とした。副次的エンドポイントは、頭痛の軽減、治療3ヵ月および6ヵ月後の薬剤投与頻度、治療反応率、患者報告による転帰の変化、治療中止理由とした。サブ分析として、1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少と副作用発現率を薬剤間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は162例(年齢中央値:68歳、範囲:65~87歳、女性の割合:74.1%)であり、脂質異常症(42%)、高血圧症(40.3%)、糖尿病(8%)、心血管虚血性疾患(6.2%)などの既往歴が認められた。・治療6ヵ月後の1ヵ月当たりの片頭痛の数の減少は、10.1±7.3日であった。・副作用が認められた患者の割合は25.3%、いずれも軽症で、血圧上昇は2例のみであった。・患者報告では、頭痛および薬剤の投与頻度の有意な減少が報告され、転帰の改善が認められた。・1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少率別の患者割合は、以下のとおりであった。 ●1ヵ月当たりの片頭痛日数30%以上減少:68% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数50%以上減少:57% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数75%以上減少:33% ●1ヵ月当たりの片頭痛日数100%減少:9%・治療6ヵ月後の治療継続率は、72.8%であった。・片頭痛日数の減少は、各薬剤同様であったが、フレマネズマブの副作用発現率は低かった(7.7%)。

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肥満2型DMでのチルゼパチド、体重減少にも有効/Lancet

 過体重または肥満の2型糖尿病患者において、チルゼパチド10mgおよび15mgの週1回72週間皮下投与は、体重管理を目的とした他のインクレチン関連薬と同様の安全性プロファイルを示し、臨床的に意義のある大幅な体重減少をもたらしたことが示された。米国・アラバマ大学バーミンガム校のW Timothy Garvey氏らが、7ヵ国の77施設で実施された第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SURMOUNT-2試験」の結果を報告した。肥満2型糖尿病患者の健康状態を改善するためには、体重減少が不可欠である。チルゼパチドは持続性のGIP/GLP-1受容体作動薬で、非2型糖尿病の肥満患者を対象としたSURMOUNT-1試験では、72週間のチルゼパチドによる治療で体重が最大20.9%減少することが認められていた。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。BMI 27以上の2型DM患者で、チルゼパチド10mgまたは15mgをプラセボと比較 研究グループは、BMI値27以上、HbA1c 7~10%の2型糖尿病成人患者(18歳以上)を、チルゼパチド10mg群、15mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、週1回72週間皮下投与した(週1回2.5mgから投与を開始し、4週ごとに2.5mgずつ増量)。スクリーニング前3ヵ月以内に体重が5kg以上変化した患者、肥満に対する外科的治療を受けたことがあるまたは予定されている患者、抗肥満薬、DPP-4阻害薬、経口GLP-1受容体作動薬または2型糖尿病の注射薬を投与されていた患者は除外した。すべての試験参加患者、研究者およびスポンサーは治療割り付けをマスクされた。 主要エンドポイントは2つで、ベースラインから72週までの体重変化率および72週時点のベースラインからの体重減少が5%以上を達成した患者の割合とした。治療レジメンの推定は、治療の中止または抗高血糖レスキュー治療開始を問わず有効性を評価した。 有効性と安全性のエンドポイントの解析評価は、無作為化されたすべての患者のデータを用いて行われた。72週間で体重減少最大14.7%、5%以上体重減少の達成率は79~83% 2021年3月29日~2023年4月10日に1,514例が適格性の評価を受け、938例が無作為化された(チルゼパチド10mg群312例、15mg群311例、プラセボ群315例)。患者背景は、平均年齢54.2±10.6歳、女性476例(51%)、白人710例(76%)、ヒスパニック系/ラテン系561例(60%)であった。また、ベースラインの平均体重は100.7±21.1kg、BMIは36.1±6.6、HbA1cは8.02±0.89%であった。 72週時の体重のベースラインからの最小二乗平均変化率はチルゼパチド10mg群-12.8%(標準誤差[SE]0.6)、15mg群-14.7%(0.5)、プラセボ群-3.2%(0.5)であり、プラセボとの群間差はチルゼパチド10mg群-9.6ポイント(95%信頼区間[CI]:-11.1~-8.1)、15mg群-11.6ポイント(95%CI:-13.0~-10.1)であった(いずれもp<0.0001)。また、72週時の5%以上体重減少達成率は、プラセボ群32%に対し、チルゼパチド10mg群79%、15mg群83%であり、チルゼパチド群で高かった(いずれもp<0.0001)。 チルゼパチドの主な有害事象は、悪心、嘔吐、下痢などの胃腸障害で、多くが軽度~中等度であり、治療中止に至った有害事象はほとんどなかった(<5%)。重篤な有害事象は、全体で68例(7%)が報告された。チルゼパチド10mg群で死亡が2例確認されたが、治験責任医師によりチルゼパチドとの関連はないと判断された。

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2型DMでのorforglipron、HbA1c低下に最適な用量-第II相/Lancet

 新規の経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬orforglipronは、12mg以上の用量でプラセボまたはデュラグルチドと比較しHbA1cおよび体重の有意な減少を示し、有害事象のプロファイルは同様の開発段階にある他のGLP-1受容体作動薬と類似していた。米国・Velocity Clinical ResearchのJuan P. Frias氏らが、米国、ハンガリー、ポーランド、スロバキアの45施設で実施された26週間の第II相多施設共同無作為化二重盲検用量反応試験の結果を報告した。orforglipronは2型糖尿病および肥満症の治療薬として開発中で、今回の結果を踏まえて著者は、「orforglipronは、2型糖尿病患者にとって少ない負担で治療目標を達成することが期待でき、GLP-1受容体作動薬の注射剤や経口セマグルチドに代わる治療薬となる可能性がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。BMI値23以上の2型DM、orforglipron各用量vs.プラセボvs.デュラグルチド 研究グループは、18歳以上の2型糖尿病患者で、HbA1c 7.0~10.5%、BMI値23以上、無作為化前3ヵ月間体重が安定している(増減が5%以下)患者を、プラセボ群、デュラグルチド(1.5mg週1回皮下投与)群、orforglipron 3mg、12mg、24mg、36mg(グループ1)、36mg(グループ2)、45mg(グループ1)、45mg(グループ2)(1日1回投与)各群に、5対5対5対5対5対3対3対3対3の割合で無作為に割り付けた。36mgと45mgのコホートは、それぞれグループ1と2で異なる用量漸増レジメンが検討された。試験参加者は、試験薬、デュラグルチド、プラセボについてマスクされた。 主要有効性アウトカムは、orforglipron各用量群vs.プラセボ群の26週時におけるベースラインからのHbA1cの平均変化とした。副次アウトカムは、orforglipron各用量群vs.デュラグルチド群の26週時におけるベースラインからのHbA1cの平均変化とした。また、ベースラインからの体重の変化なども評価した。 有効性の解析対象集団は、無作為化され少なくとも1回治験薬の投与を受けた全患者で、投与中止またはレスキュー治療開始後のデータは除外した。安全性は、少なくとも1回の治験薬投与を受けた全患者を対象に評価した。orforglipron群のHbA1c、全用量でプラセボより、12mg以上でデュラグルチドより低下 2021年9月15日~2022年9月30日に569例がスクリーニングを受け、383例が無作為化された。352例(92%)が試験を完遂し、303例(79%)が26週間の治療を完遂した。ベースラインの患者背景は、平均値がそれぞれ年齢58.9歳、HbA1c 8.1%、BMI値35.2で、男性226例(59%)、女性157例(41%)であった。 26週時のHbA1cの平均変化は、orforglipron群-1.2%(3mg群)~-2.1%(45mg群)、プラセボ群-0.4%、デュラグルチド群-1.1%であった。orforglipronの全用量群で、HbA1c低下に関してプラセボ群に対する優越性が認められた(群間差:-0.8~-1.7%、全用量群のp<0.0001)。また、orforglipronの12mg以上の用量群ではHbA1c低下に関して、デュラグルチド群に対する優越性が認められた。 26週時の体重の平均変化は、orforglipronで-3.7kg(3mg群)~-10.1kg(45mg群)、プラセボ群-2.2kg、デュラグルチド群-3.9kgであった。 治療下の有害事象の発現率は、orforglipron群61.8%~88.9%、プラセボ群61.8%、デュラグルチド群56.0%で、多くは軽度から中等度の胃腸障害であった(orforglipron群44.1%~70.4%、プラセボ群18.2%、デュラグルチド群34.0%)。orforglipron群で3例、デュラグルチド群で1例に臨床的に明らかな低血糖(<54mg/dL)が発現したが、重症低血糖は報告されなかった。死亡は、プラセボ群で1例報告されたが、試験とは関連がなかった。

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セマグルチド+cagrilintide配合皮下注、HbA1c低下に有効/Lancet

 2型糖尿病患者に対するセマグルチドとcagrilintideの皮下投与配合剤CagriSemaは、臨床的に意義のある血糖コントロール(持続血糖モニタリング[CGM]パラメータなど)の改善に結び付いたことが、米国・Velocity Clinical ResearchのJuan P. Frias氏らが行った、第II相多施設共同二重盲検無作為化試験で示された。CagriSemaによるHbA1c値の平均変化値は、cagrilintide単独よりも大きかったが、セマグルチド単独とは同等だった。体重は、CagriSema治療がcagrilintideやセマグルチドと比較して有意に大きく減少した。結果を踏まえて著者は、「今回のデータは、同様の集団を対象とした、より長期かつ大規模な第III相試験で、CagriSemaに関するさらなる試験を行うことを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年6月23日号掲載の報告。メトホルミン治療中患者を対象に、CagriSema vs.セマグルチドvs. cagrilintide 試験は2021年8月~2022年7月に、米国の17医療機関で32週にわたって行われた。 BMI値27以上でメトホルミン治療中(SGLT2阻害薬服用の有無は問わず)の2型糖尿病成人患者を、無作為に1対1対1の3群に割り付け、CagriSema、セマグルチド、cagrilintide(いずれも2.4mgまで漸増)をそれぞれ週1回皮下投与した。無作為化は、中央で双方向ウェブ応答システムを用いて行い、SGLT2阻害薬服用の有無で層別化もした。被験者、試験担当医、試験出資者側スタッフは、試験期間中、治療割り付けをマスクされた。 主要エンドポイントは、HbA1c値のベースラインからの変化で、副次エンドポイントは体重、空腹時血糖値、CGMパラメータおよび安全性などだった。 有効性に関する解析は、無作為化された全被験者を対象に行った。安全性に関する解析は、無作為化後に試験薬を1回以上投与された被験者を対象に行った。32週のHbA1c値、CagriSemaはcagrilintideより有意に低下、セマグルチドとは同等 2021年8月2日~10月18日に、被験者92例が、CagriSema群(31例)、セマグルチド群(31例)、cagrilintide群(30例)に無作為化された。59例(64%)が男性、平均年齢は58歳(SD 9)だった。 HbA1c値のベースラインから32週までの平均変化は、CagriSema群-2.2ポイント(平均変化値[SE]:0.15)、セマグルチド群-1.8ポイント(0.16)、cagrilintide群-0.9ポイント(0.15)だった。CagriSema群は、cagrilintide群よりも有意に変化幅が大きかった(推定治療群間差:-1.3ポイント、95%信頼区間[CI]:-1.7~-0.8、p<0.0001)が、セマグルチド群とは有意差は認められなかった(-0.4ポイント、-0.8~0.0、p=0.075)。 ベースラインから32週までの体重の平均変化は、CagriSema群-15.6%(SE:1.26)、セマグルチド群-5.1%(1.26)、cagrilintide群-8.1%(1.23)と、CagriSema群はセマグルチド群、cagrilintide群のいずれよりも減少幅が有意に大きかった(両比較のp<0.0001)。 ベースラインから32週までの空腹時血糖値の平均変化は、CagriSema群が-3.3mmol/L(SE 0.3)、セマグルチド群-2.5mmol/L(0.4)、cagrilintide群-1.7mmol/L(0.3)で、CagriSema群はcagrilintide群と比べて有意に変化幅が大きかったが(p=0.0010)、セマグルチド群とは同等だった(p=0.10)。 time in range(TIR、3.9~10.0mmol/L)は、ベースラインではCagriSema群45.9%、セマグルチド群32.6%、cagrilintide群56.9%だったが、32週後にはそれぞれ、88.9%、76.2%、71.7%に上昇した。 有害事象は、CagriSema群21例(68%)、セマグルチド群22例(71%)、cagrilintide群24例(80%)で報告された。また、軽度~中等度の消化器系有害事象が多くみられたが、レベル2~3の低血糖や致死的有害事象は報告されなかった。

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bempedoic acid、高リスクのスタチン不耐患者の1次予防に有効/JAMA

 心血管イベントのリスクが高いスタチン不耐の患者の1次予防において、bempedoic acidはプラセボと比較して、4項目の主要有害心血管イベント(MACE:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、冠動脈血行再建)の発生率が有意に低く、有害事象の頻度は全般に同程度であることが、米国・クリーブランドクリニックのSteven E. Nissen氏らが実施した「CLEAR Outcomes試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年6月24日号に掲載された。32ヵ国1,250施設の無作為化臨床試験 CLEAR Outcomes試験は、32ヵ国1,250施設が参加した無作為化臨床試験であり、2016年12月~2019年8月の期間に、患者の登録が行われた(Esperion Therapeuticsの助成を受けた)。 対象は、年齢18~85歳、LDLコレステロール(LDL-C)値が100mg/dL(2.59mmol/L)以上で、初発の心血管イベントのリスクが高い臨床的特徴を有し、スタチン不耐で臨床的イベントの既往歴のない1次予防の患者であった。 被験者は、bempedoic acid(180mg、1日1回)またはプラセボを経口投与する群に無作為に割り付けられた。 有効性の主要アウトカムは、無作為化から、4項目MACEのいずれかが最初に発生するまでの期間であった。 スタチン不耐の1万3,970例(最大の解析対象集団)のうち、4,206例(30%)が1次予防の基準を満たした。2,100例がbempedoic acid群に、2,106例はプラセボ群に割り付けられた。1次予防患者全体の平均年齢は67.9(SD 6.8)歳、59.0%が女性で、66.1%は糖尿病であり、19.3%はスタチン、8.0%はエゼチミブの投与を受けていた。平均LDL-C値は142.5mg/dL、平均HDL-C値は51.0mg/dL、トリグリセライドの中央値は161.8mg/dLだった。6ヵ月でLDL-C値が21.3%、hsCPRが21.5%減少 治療開始から6ヵ月後に、LDL-C値は、bempedoic acid群ではベースラインの142.2mg/dLから108.2mg/dLへと34.0mg/dL(最小二乗平均[LSM])低下し、プラセボ群では142.7mg/dLから138.6mg/dLへと3.8mg/dL(LSM)低下しており、プラセボ群と比較してbempedoic acid群は30.2mg/dL(LSM)(21.3%)低かった。 また、高感度C反応性蛋白(hsCRP)は、bempedoic acid群ではベースラインの2.39mg/Lから6ヵ月後には1.75mg/Lへと0.34mg/L(LSM)低下し、プラセボ群では2.44mg/Lから2.52mg/Lへと0.01mg/L(LSM)増加しており、プラセボ群と比較してbempedoic acid群は0.56mg/L(LSM)(21.5%)低かった。 フォローアップ期間中央値39.9ヵ月の時点で、主要エンドポイント(4項目MACE)の発生率は、プラセボ群が7.6%(161イベント)であったのに対し、bempedoic acid群は5.3%(111イベント)と有意に低かった(補正後ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.55~0.89、p=0.002)。 副次エンドポイントである3項目MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の発生率は、bempedoic acid群が良好であった(bempedoic acid群4.0% vs.プラセボ群6.4%、HR:0.64[95%CI:0.48~0.84]、p<0.001)。また、致死的または非致死的心筋梗塞(1.4% vs.2.2%、HR:0.61[95%CI:0.39~0.98])、心血管死(1.8% vs.3.1%、0.61[0.41~0.92])、全死因死亡(3.6% vs.5.2%、0.73[0.54~0.98])の発生率も、bempedoic acid群で優れた。 一方、致死的または非致死的脳卒中(bempedoic acid群1.3% vs.プラセボ群1.8%、HR:0.76[95%CI:0.46~1.26])と、冠動脈血行再建(2.4% vs.3.2%、0.71[0.49~1.03])の頻度には両群間に差を認めなかった。 重篤な有害事象(bempedoic acid群19.9% vs.プラセボ群20.8%)や投与中止をもたらした有害事象(9.9% vs.9.9%)の頻度は両群間で同程度であった。肝酵素上昇(4.5% vs.2.6%)や腎臓の有害事象(10.3% vs.8.1%)はbempedoic acid群で多かった。また、高尿酸血症(12.1% vs.6.3%)、痛風(2.6% vs.2.0%)、胆石症(2.5% vs.1.1%)もbempedoic acid群で高頻度だった。 著者は、「この研究は大規模臨床試験のサブグループのアウトカムを報告したものであり、今回の結果は有益性の決定的なエビデンスというより、仮説を生成するものとして解釈すべきである」としている。

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英語で「めまいがします」は?【1分★医療英語】第88回

第88回 英語で「めまいがします」は?Could you describe what you mean by feeling dizzy?(めまいがするというのはどのような感じか説明してもらえますか?)It’s like the room is spinning. (部屋が回っているような感じがします)《例文1》I feel dizzy when I move my head. (頭を動かすとめまいがします)《例文2》I have had a spinning sensation since this morning.(今朝からぐるぐる回るような感覚があります)《解説》「めまい」に関する訴えは英語でもさまざまな表現があります。代表的なものは「めまいがする」という意味の“to feel dizzy”ですが、「部屋が回っているような感じがする」という意味になる“I have a spinning sensation”、“ I feel like the room is spinning”などという訴えもよく聞かれます。また、単に「ぐるぐるする感覚がある」という意味で、“to feel giddy”などの表現も使われます。たとえば、“I felt a bit giddy when I got out of bed this morning.”(今朝ベッドから出た時に、少しぐるぐるする感覚がありました)となります。そのほか、同じような状況で使われる表現として、「気が遠くなる感じがする」や「気を失いそうになる感じがする」というのは、“I feel faint”、“ I have a lightheadedness”などと表現します。また、バランスを失いそうになる感覚がある時には“I feel woozy”という言い方があり、めまい感を表現する時にもよく使われます。講師紹介

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第171回 米国でフル承認のアルツハイマー病薬lecanemabの患者負担のほどは?

病状進行を抑制し、認知機能や日常生活機能の低下を遅らせることが第III相試験(Clarity AD)で裏付けられたことを受けて、エーザイとバイオジェンのアルツハイマー病薬lecanemab(商品名:LEQEMBI)が米国で晴れて承認されました1,2,3)。これまでは取り急ぎの承認でしたが、今回フル承認(traditional approval)に至ったことで同国政府の公的保険メディケアの支払対象になる道が開けます4)。メディケアの受給者は65歳以上の高齢者です。ゆえに、高齢者に多いアルツハイマー病の治療のほとんどはメディケアの支払い対象となります。lecanemabの取り急ぎの承認が不動になったら、医師が治療の経過を記録して提出することを条件に同剤の費用を負担するとメディケアは先月発表しています。ただし全額負担ではありません。同剤の薬価は1年当たり2万6,500ドル(約378万円)です。メディケアは同剤の費用の約80%を支払います。残りの20%ほどを患者は自腹か何らかの手段で捻出する必要があります。米国のもう1つの公的保険メディケイドの受給対象でもある一部の低所得の患者は自己負担が一切なく同剤を使えますが、保険がメディケアだけという患者の同剤使用の1年あたりの自腹出費は6,600ドル(約94万円)にも達します5,6,7)。その額はメディケア受給者の所得中央値の5分の1ほどに相当します。日本でlecanemabは今年1月16日に承認申請されて承認審査段階にあります。今回の米国フル承認までのFDAの扱いと同様に国内でも優先審査されており、間もなく9月までには承認される見込みです。いわゆる“太り過ぎ”レベルのBMIのほうがむしろ死亡率が低い話は変わって肥満未満の太り過ぎの人の死亡率は高くなく、どちらかというとむしろ低いことを示した試験結果を紹介します。試験では米国の成人約50万人を体重指標BMIで9つに区切って中央値9年(0~20年)の経過を比較しました。その結果、BMIが30以上で肥満の域の人では適正とされるBMI範囲(22.5~24.9)の人に比べてさすがに死亡率が高かったものの、肥満域未満の太り過ぎの範囲のBMIの人の死亡率は高くありませんでした8)。BMIが肥満の域に達していない範囲で高い人の死亡率はむしろ低く、BMIが25~27.4の人の死亡率はBMIが22.5~24.9の人より5%低いことが示されました9)。BMIが肥満域により近い27.5~29.9の人はなんともっと死亡率が低く、22.5~24.9の人の死亡率を7%下回りました。病気が原因の体重減少の影響を排除することを目的として追跡開始2年以内の死亡例を除外して解析しても同様の結果となりました。目下の分類で太り過ぎの域にあるBMIの人がそれ以下のBMIの人に比べてより健やかと今回の結果をもって結論するのは時期尚早であり、さらなる検討が必要です。今回の結果から言えることは、BMIは死亡率のうってつけの指標というわけではなさそうということであり、脂肪の体内分布などの他の指標の考慮も必要なようです9,10,11)。カロリー制限時の代謝低下を防ぐホルモンを同定太っていることを一概に不健康と決めつけることはできませんが、体重を減らすことは病気治療の有効な手段の1つでもあります。たとえば、食事のカロリーを抑えて体重を減らすことは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療の有効な手立ての1つですし、2型糖尿病患者のインスリンの効きを良くする効果もあります。しかし多くの人の体重減少はたいてい長続きしません。エネルギー消費を抑えるように体が順応してしまうことがその一因ですが、その順応の仕組みはこれまでよくわかっていませんでした。GDF15というホルモンを高脂肪食のネズミに与えると肥満が減り、GDF15の受容体であるGFRALを介した摂食(あるいは食欲)抑制のおかげで血糖値推移が改善することが先立つ研究で知られています。エネルギー消費を抑えてしまう順応をそのGDF15が食い止め、カロリー制限中でもエネルギー消費が維持されるようにする働きを担うことがカナダ・マクマスター大学のチームによる研究で示されました12)。GDF15を与えたマウスの体重は摂取カロリーが同じのGDF15非投与マウスに比べて減り続け、その作用は脂肪ではなく筋肉でのエネルギー消費亢進によることが判明しました。人ではどうかを今後の研究で検証する必要があります。人でのGDF15の働きを調べることで食事に気を付けても体重がなかなか減らない人に有益な手立てをやがて生み出せるかもしれません13)。また、肥満治療として注目を集めるGLP-1標的薬との相乗効果も期待できそうです。今回の研究には肥満治療のGLP-1標的薬を他に先駆けて世に送り出したNovo Nordiskが協力しています。参考1)「LEQEMBI®」(レカネマブ)、アルツハイマー病治療薬として、米国FDAよりフル承認を取得 / エーザイ2)FDA Converts Novel Alzheimer's Disease Treatment to Traditional Approval / PRNewswire3)FDA Grants Traditional Approval for LEQEMBI? (lecanemab-irmb) for the Treatment of Alzheimer's Disease / PRNewswire4)US FDA grants standard approval of Eisai/Biogen Alzheimer's drug / Reuters5)Annual Medicare spending could increase by $2 to $5 billion if Medicare expands coverage for dementia drug lecanemab / UCLA Health6)Explainer: Who is eligible for the new FDA-approved Alzheimer's drug? / Reuters7)Arbanas JC, et al. JAMA Intern Med. 2023 2023 May 11. [Epub ahead of print]8)Visaria A, et al. PLoS One. 2023;18:e0287218. 9)Having an 'overweight' BMI may not lead to an earlier death / New Scientist10)‘Overweight’ BMI might be set too low / Nature11)No increase in mortality for most overweight people, study finds / Eurekalert12)Dongdong Wang D, et al. Nature. 2023;619:143-150.13)Having an 'overweight' BMI may not lead to an earlier death / New Scientist

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減量効果が大きいのは?時間制限食vs.カロリー制限食

 摂取カロリーを制限しない時間制限食は、人気のある減量法となっているが、その有効性のエビデンスは限られている。とくに、長期の影響については明らかになっていない。そこで、米国・イリノイ大学シカゴ校のShuhao Lin氏らは無作為化比較試験を実施し、時間制限食の効果について、カロリー制限食や食事制限なしと比較した。その結果、時間制限食とカロリー制限食はいずれも体重を減少させたが、両者に有意差は認められなかった。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2023年6月27日号で報告された。 本研究の対象は肥満(BMI 30~50)の成人90例であった。対象を時間制限食群(摂取カロリー制限なし、食事は12~20時に制限[16時間絶食])、カロリー制限食群(1日の摂取カロリーを25%削減)、制限なし群(絶食時間は14時間未満)の3群に割り付けた。試験は非盲検で実施され、6ヵ月の減量期間と6ヵ月の維持期間で構成された。評価項目は、試験開始から12ヵ月後までの体重変化、摂取カロリーの変化などであった。 主な結果は以下のとおり。・77例が試験を完遂した。・平均年齢は40歳、黒人が33%、ヒスパニック系が46%であった。・カロリー摂取量の平均変化量は、時間制限食群-425kcal/日、カロリー制限食群-405kcal/日であった。・12ヵ月後の制限なし群と比較した体重変化量は、時間制限食群-4.61kg(95%信頼区間[CI]:-7.37~-1.85、p≦0.01)カロリー制限食群-5.42kg(同:-9.13~-1.71、p≦0.01)であり、両群ともに制限なし群と比較して有意に体重が減少したが、両群間には有意差は認められなかった。

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脳卒中後の血糖管理が認知機能低下抑止の鍵となる可能性

 脳卒中を発症後に血糖値が高い状態で推移していると、認知機能の低下が速くなる可能性が報告された。一方、血圧やLDL-コレステロール(LDL-C)が高いことに関しては、そのような関連は認められないという。米ミシガン大学のDeborah Levine氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に5月17日掲載された。 Levine氏によると、「脳卒中の発症後は認知症のリスクが最大50倍増加するが、これまで、脳卒中の再発を防ぐこと以外に、そのリスクを抑制する治療アプローチはなかった」という。そのような状況で明らかになった今回の研究結果は、「脳卒中後に血糖値の高い状態が続いていることが、認知機能の低下を速めることを示唆しており、糖尿病に該当するか否かにかかわりなく、脳卒中後の慢性高血糖が認知機能低下を抑制するための潜在的な治療標的である可能性を示唆している」と話している。 Levine氏らの研究は、米国で1971~2019年に行われた4件のコホート研究のデータを統合して解析するという手法で実施された。脳卒中発症前に認知症がなく、解析に必要なデータが記録されている982人〔年齢中央値74.6歳(四分位範囲69.1~79.8)、女性48.9%、糖尿病20.9%〕を中央値4.7年追跡。脳卒中後に行われた検査での空腹時血糖値、収縮期血圧、LDL-Cの累積平均値を算出。主要評価項目として総合的な認知機能の変化との関連、副次的評価項目として実行機能と記憶力の変化との関連を検討した。 結果に影響を及ぼし得る因子〔年齢、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、腎機能、心疾患の既往、遺伝的背景(ApoE4)、教育歴、収入など〕を調整後の解析で、収縮期血圧、LDL-Cの累積平均値については、認知機能との有意な関連が認められなかった。それに対して空腹時血糖値については、累積平均値が10mg/dL高いごとに、1年間での総合的な認知機能の評価が-0.04ポイント(95%信頼区間-0.08~-0.001)、より速く低下するという有意な関連が認められた。実行機能や記憶力との関連は非有意だった。この結果についてLevine氏は、「脳卒中を発症した後の厳格な血糖コントロールが、認知機能低下や認知症発症のリスクを抑制するかという疑問の答えを得るには、さらなる研究が必要とされる」としている。 糖尿病患者においては、血糖コントロールを厳格に行うことで、目や腎臓、神経という細小血管障害による合併症のリスクが抑制されるという強固なエビデンスが存在する。研究者によると、厳格な血糖コントロールによって、脳の細小血管障害による疾患のリスクも軽減される可能性があるものの、証明はされていないという。ただ、脳卒中や一過性脳虚血発作を経験した人は、医療チームと相談して、血糖値のモニタリングとコントロールに関して最適な方法を検討すべきであり、その対象者には糖尿病患者に限らず、前糖尿病の人も含まれるとのことだ。その一方でLevine氏は高血糖の反対に当たる、血糖値が低くなりすぎる「低血糖」も認知症のリスクとなるため、低血糖を避けることも重要と付け加えている。 なお、本研究は米国立老化研究所(NIA)などの資金提供により実施された。

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2型糖尿病の運動療法に最適な時間帯は?

 運動を午後の時間帯に行っている2型糖尿病患者は血糖コントロールがより良好になる可能性を示す、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJingyi Qian氏らの研究結果が、「Diabetes Care」に5月25日掲載された。ただし研究者らは、この結果のみでは午後の運動を推奨することはできないと述べている。 この研究は、運動を行う時間帯を変えるという介入によって、血糖管理状態が変化するか否かを検証可能なデザインでは行われていない。それでも、午後に運動することで血糖コントロールがより良好になる機序についてQian氏は、「運動による血糖管理状態への影響は、絶食状態で行うよりも食後に行った方が大きい可能性があり、午後に運動をしている人の多くが食後に運動をしているのではないか。それに対して朝に運動をしている人は、運動をしてから朝食を食べることが多いと考えられる」との推論を述べている。とはいえ、「午後に運動をする時間を取れないからといって運動をすべきでないという意味ではない」とし、「時間帯や場所にとらわれず、運動をできるタイミングですべきだ」と同氏は推奨する。 Qian氏らの研究の解析対象は、肥満のある成人2型糖尿病患者2,416人(平均年齢59歳、女性57%)。研究開始の1年目と4年目にそれぞれ7日間、加速度計を腰に身に着けて生活してもらい、中~高強度の身体活動(MVPA)が行われていた時間帯と、血糖コントロール状態の変化との関連性を検討した。 身体活動量の多寡の影響を調整後、午後(14~17時)にMVPAを行っていた群では研究開始1年目のHbA1cが、他の時間帯にMVPAを行っていた人に比べて30~50%ほど大きく低下していた。この群間差は1年目が最も顕著だったが、4年後にも差が認められた。また、血糖降下薬の使用を中止できた割合も、午後にMVPAを行っていた群が最も高かった。なお、この研究では、どのようなMVPAが行われていたかは調査されなかった。Qian氏は、「運動の時間帯の違いに焦点を当てる研究はまだ新しい領域であり、今後、多くの研究が必要とされる」としている。 本研究には関与していない米ユタ大学のTanya Halliday氏は、「運動を行うタイミングそのものが血糖コントロールに影響を与えたのか、それとも午後に運動を行えるという生活環境にある人にはそのほかの人とは異なる何らかの特徴があって、そのことがHbA1cの差を生んだのか、その点が不明である。2型糖尿病患者の運動療法について、最適な時間帯を推奨するのは時期尚早だ」としている。同氏はまた、「例えば、運動の時間帯が異なることで、血糖コントロールに影響を及ぼし得る食事や睡眠のパターンが変化する可能性がある。この観察研究の報告が、追試によって再現可能かを確認することが重要だろう」と付け加えている。

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事例027 アムロジピン錠の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例ではレザルタス配合錠HD(一般名:オルメサルタンメドキソミル/アゼルニジピン、以下「配合錠HD」)とアムロジピン錠(一般名同じ)を組み合わせて処方をしたところ、アムロジピン錠がB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。査定の理由を調べるために、まずはアムロジピンの添付文書を参照しました。持続性Ca拮抗薬に分類され、通常5mgを1日1回経口投与する。また、「効果不十分な場合は10mgまで増量できる」と記載されています。とくに、問題は見当たりません。次に、配合錠HDの添付文書を参照しました。高親和性ARB(アンジオテンシンII受容体阻害剤)オルメサルタンメドキソミル20mgと持続性Ca拮抗薬アゼルニジピン16mgの配合薬と記載があります。また、1日最大量はそれぞれ40mgと16mgまで増量可能と記載があります。ARBに対しては、1日最大量以内ですが、アゼルニジピンをみると、配合錠HD1錠に最大量が含まれていることがわかります。したがって、配合剤HDでは効果が不十分であったことを理由にアムロジピン5mgを追加したところ、持続性Ca拮抗薬の1日量上限を超えてしまったことが、査定の理由だと推測できます。薬剤処方システムに対して、同一分類の薬剤処方にはアラートを表示させるように改修し、レセプトチェックシステムにも事例のパターンを登録して査定対策としました。

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