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普段から活発な高齢者、新型コロナ発症や入院リスク低い

 健康のための身体活動(PA)は、心血管疾患(CVD)、がん、2型糖尿病やその他の慢性疾患の予防や軽減に有効とされているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症や入院のリスク低下と関連することが、米国・ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のDennis Munoz-Vergara氏らの研究により明らかになった。JAMA Network Open誌2024年2月13日に掲載の報告。 本研究では、COVID-19パンデミック以前から実施されている米国成人を対象とした次の3件のRCTのコホートが利用された。(1)CVDとがんの予防におけるココアサプリメントとマルチビタミンに関するRCT、65歳以上の女性と60歳以上の男性2万1,442人、(2)CVDとがんの予防におけるビタミンDとオメガ3脂肪酸に関するRCT、55歳以上の女性と50歳以上の男性2万5,871人、(3)女性への低用量アスピリンとビタミンEに関するRCT、45歳以上の女性3万9,876人。 本研究の主要アウトカムは、COVID-19の発症および入院とした。2020年5月~2022年5月の期間において、参加者はCOVID-19検査結果が1回以上陽性か、COVID-19と診断されたか、COVID-19で入院したかを回答した。PAは、パンデミック以前の週当たり代謝当量時間(MET)で、非活動的な群(0~3.5)、不十分に活動的な群(3.5超~7.5未満)、十分に活動的な群(7.5以上)の3群に分類した。人口統計学的要因、BMI、生活様式、合併症、使用した薬剤で調整後、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19による入院について、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて非活動的な群とほかの2群とのオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・6万1,557人(平均年齢75.7歳[SD 6.4]、女性70.7%)が回答した。そのうち20.2%は非活動的、11.4%は不十分に活動的、68.5%は十分に活動的だった。・2022年5月までに、COVID-19の確定症例は5,890例、うち入院が626例だった。・非活動的な群と比較して、不十分に活動的な群は感染リスク(OR:0.96、95%CI:0.86~1.06)または入院リスク(OR:0.98、95%CI:0.76~1.28)に有意な減少はみられなかった。・一方、非活動的な群と比較して、十分に活動的な群は感染リスク(OR:0.90、95%CI:0.84~0.97)および入院リスク(OR:0.73、95%CI:0.60~0.90)に有意な減少がみられた。・サブグループ解析では、PAとSARS-CoV-2感染との関連は性別によって異なり、十分に活動的な女性のみが感染リスクが低下している傾向があった(OR:0.87、95%CI:0.79~0.95、相互作用p=0.04)。男性では関連がなかった。・新型コロナワクチン接種状況で調整後に解析した場合も、非活動的な群と比較して不十分に活動的な群は、感染と入院のORはほとんど変化しなかった。・新型コロナワクチンは、PAレベルに関係なく感染と入院のリスクを大幅に減少させた。感染リスクはOR:0.55、95%CI:0.50〜0.61、p<0.001、入院リスクはOR:0.37、95%CI:0.30~0.47、p<0.001。

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PCSK9阻害薬の処方継続率は?~国内レセプトデータ

 日本を含む諸外国で行われたさまざまな研究結果から、高コレステロール血症治療薬PCSK9阻害薬の使用は費用対効果が見合わないと結論付けられているが、果たしてそうなのだろうか―。今回、得津 慶氏(産業医科大学公衆衛生学 助教)らはPCSK9阻害薬の処方患者の背景や特徴を把握することを目的に、国内のレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を行った。その結果、PCSK9阻害薬はエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された群と比較し、高リスク患者に使用されている一方で、PCSK9阻害薬を中断した患者割合は約45%と高いことが明らかになった。本研究結果は国立保健医療科学院が発行する保健医療科学誌2023年12月号に掲載された。 本研究は、国内3自治体の国民健康保険および後期高齢者医療制度の2015年4月~2021年3月のレセプトデータを用いて調査を行った。2016年4月~2017年3月の期間にPCSK9阻害薬が未処方で、2017年4月~2020年3月に初めてPCSK9阻害薬が処方された患者群を「PCSK9群」、同様の手法で抽出したエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された患者を「エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群」とした。PCSK9阻害薬もしくはエゼチミブと最大耐用量スタチンが初めて処方された日を起算日とし、起算日より前12ヵ月間(pre-index期間)、起算日より後ろ12ヵ月間(post-index期間)に観察された生活習慣病(脂質異常症、糖尿病、高血圧症)治療薬の処方、心血管イベント(虚血性心疾患、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血)や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)および冠動脈バイパス術(CABG)などの実施状況について調査し、両群で比較した。また、post-index期間における3ヵ月以上の処方中断についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象者はPCSK9群184例(平均年齢:74.0歳、男性:57.1%)、エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群1,307例(平均年齢:71.0歳、男性:60.5%)だった。・起算日前後(pre-/post-index期間)の虚血性心疾患の診療・治療状況の変化を両群で比較すると、pre-index期間では有意な差はなかったが、post-index期間では、PCSK9群のほうが割合が高かった(85.3% vs.76.1%、p=0.005)。・PCIの実施割合は、起算日前後の両期間においてPCSK9群のほうがエゼチミブ最大耐用量スタチン併用群より有意に高かった(pre-index期間:40.8% vs.24.0%、p<0.001、post-index期間:13.6% vs.8.1%、p=0.014)。・処方中断率はPCSK9群では44.6%であったが、エゼチミブ最大耐用量スタチン併用群ではみられなかった。 研究者らは「因果関係までは言及できないものの、PCSK9阻害薬による治療が患者側の経済的負担になっていること、医療者側が高価な薬剤を予防目的に使用することを躊躇した可能性が示唆された」としている。

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減量で糖尿病が寛解すると心臓病と腎臓病のリスクが下がる

 減量によって2型糖尿病が寛解すると、心臓と腎臓の状態にもメリットがもたらされる可能性のあることが明らかになった。寛解期間が限られたものであっても心臓病のリスクは40%、腎臓病のリスクは33%低下し、寛解期間がより長ければ、より大きなリスク低下につながる可能性があるという。アイルランド王立外科医学院(RCSI)のEdward Gregg氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetologia」に1月18日掲載された。同氏は、「本研究は、糖尿病の寛解と糖尿病関連合併症のリスクとの関連を検討した初の介入研究の結果であり、糖尿病の寛解を達成可能な状態にある人たちにとって心強いニュースだ」と話している。 この研究には、5,145人の2型糖尿病患者を、生活習慣への強力な介入を行う群と、教育的サポートのみを行う群に二分して合併症リスクを検討した「Look AHEAD研究」のデータが用いられた。Look AHEAD研究の参加者から、データ欠落者や減量・代謝改善手術が施行された患者、ベースライン時点で既に寛解状態にあった参加者を除外し、4,488人(平均年齢59歳、女性58%、BMI35.8、糖尿病罹病期間6年)を解析対象とした。 血糖降下薬を用いずにHbA1c6.5%未満を達成した場合を「寛解」と定義すると、12年間にわたる追跡期間中に全体の12.7%、強力な介入が行われた群では18.1%が、いずれかの時点で寛解の基準を満たしていた。寛解の達成は、糖尿病罹病期間が短く、ベースラインのHbA1cが低く、減量幅が大きい患者で高い傾向が観察された。 解析結果に影響を及ぼし得る交絡因子〔糖尿病罹病期間、ベースラインのHbA1c、血圧、心血管疾患(CVD)の既往〕を調整後、一度でも寛解に到達した患者は、その記録のない患者に比べて、慢性腎臓病(CKD)発症リスクが33%低く〔ハザード比(HR)0.67(95%信頼区間0.52~0.87)〕、複合CVDイベント(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、狭心症による入院)リスクは40%低かった〔HR0.60(同0.47~0.79)〕。また、寛解期間が4年以上にわたっていた患者では、CKD発症リスクは55%低く〔HR0.45(0.25~0.82)〕、CVDイベントリスクは49%低かった〔HR0.51(0.30~0.89)〕。 一方、寛解の維持が困難であるという実情も示され、研究開始から8年目まで寛解が維持されていた患者は、全体のわずか約3%、強力な介入が行われた群でも約4%にすぎなかった。ただし、寛解の維持期間が短くても、CVDイベントリスクは有意に低下することも明らかになった。具体的には、寛解期間が1年未満であっても、一度も寛解に至らなかった患者に比べてリスクが34%低かった〔HR0.66(0.46~0.94)〕。なお、寛解期間が1年未満の場合のCKD発症リスクに関しては、交絡因子未調整モデルでは有意なリスク低下が観察されたが、交絡因子調整後は非有意だった。 Gregg氏は、「われわれの研究結果は、減量や糖尿病の寛解状態を維持することの困難さを再確認させるものだ。しかしその達成が、健康上のメリットにつながることを示すものでもある」とRCSI発のリリースで述べている。

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高齢になると糖尿病有病率が高くなる理由/順天堂大学

 加齢に伴うインスリン感受性と分泌の低下により、高齢者では糖尿病の有病率が高いことが知られている。一方で、インスリン感受性と分泌の両方が65歳以降も低下し続けるかどうかは、まだ解明されていなかった。この疑問について、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の内藤 仁嗣氏らの研究グループは、65歳以降の糖代謝に対する加齢の影響を調査し、その決定因子を明らかにする研究を行った。その結果、高齢者では加齢に伴い、インスリン抵抗性が増加、膵β細胞機能が低下していることが明らかになった。Journal of the Endocrine Society誌オンライン版2023年12月20日号に掲載。内臓脂肪の蓄積などが関連する高齢者の糖尿病発症 本研究では、文京区在住高齢者のコホート研究“Bunkyo Health Study”に参加した65~84歳の糖尿病既往がなく、糖尿病の診断に用いられる検査である75g経口糖負荷検査(OGTT)のデータが揃っている1,438例を対象とした。 対象者全員に二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)による体組成検査、MRIによる内臓・皮下脂肪面積の測定、採血・採尿検査、75gOGTT、生活習慣に関連する各種アンケートを行い、5歳ごとに4群(65~69歳、70~74歳、75~79歳、80~84歳)に分け、各種パラメータを比較した。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は73.0±5.4歳、BMIは22.7±3.0kg/m2だった。・新たに糖尿病と診断された人の有病率は年齢とともに増加した。・食後初期のインスリン分泌を示す指標であるInsulinogenic indexや、血糖値に対するインスリン分泌指標である75gOGTT中のインスリン曲線下面積/血糖曲線下面積(AUC)は、各年齢群間で同等だった。・インスリン感受性の指標(Matsuda index)、膵β細胞機能の指標(Disposition index)は加齢とともに有意に低くなった。・加齢に伴う脂肪蓄積、とくに内臓脂肪面積(VFA)の増加、遊離脂肪酸(FFA)濃度の上昇が観察された。・重回帰解析により、Matsuda indexおよびDisposition indexとVFAおよびFFAとの強い相関が明らかになった。 研究グループでは、この結果から「高齢者において耐糖能が加齢とともに低下するのは、加齢によるインスリン抵抗性の増加および膵β細胞の機能低下によるもので、それらは内臓脂肪蓄積やFFA値上昇と関連する」としている。

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週1回投与の肥満症治療薬「ウゴービ」を発売/ノボ ノルディスク

 ノボ ノルディスク ファーマは、肥満症を適応症としたヒトグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチド(商品名:ウゴービ皮下注)を2024年2月22日に発売した。 セマグルチドは、週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬で、空腹感を軽減し、満腹感を高めることで、食事量を減らし、カロリー摂取量を抑え、体重減少を促す。 本剤は約4,700例の過体重または肥満の成人が参加した「STEP臨床試験プログラム」の結果に基づき、2023年3月27日に製造販売承認を取得した。 STEP臨床試験プログラムは、肥満の成人を対象としたセマグルチド皮下注2.4mgSDの週1回皮下投与による第III相臨床開発プログラム。過体重または肥満の成人約4,700例を登録した4つの試験で構成される第IIIa相グローバル臨床プログラムに加え、肥満症の成人を登録した東アジア試験(STEP6試験)などが実施された。 とくに日本人585例が参加したSTEP6試験では、生活習慣の改善(食事療法および運動療法)だけでは十分な減量効果が得られない過体重または肥満の成人において、投与68週時に13%以上の体重減少を達成した。また、肥満に関連する合併症(2型糖尿病、高血圧、脂質異常症)についても、セマグルチド皮下注2.4mgSDの投与による血糖、血圧および脂質パラメータの改善が認められた。 現在、わが国には約1,600万例の肥満症患者が推定される一方、医師により肥満症と診断されている人は、そのうちの2.1%(33万例)に止まっており、今後の医療現場での活用が期待されている。 そのほか、同社は、糖尿病の治療で使用されているGLP-1製剤が、近年、美容目的で不適正使用されていることに関し、注意を喚起するとともに、本剤は厚生労働省の最適使用推進ガイドラインに従い、確実な適正使用の推進を目指し、活動するとしている。【製品概要】一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)販売名:ウゴービ効能または効果:肥満症ただし、高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する・BMIが35kg/m2以上用法および用量:通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射する。その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mgおよび2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜減量する。薬価:ウゴービ皮下注0.25mg:1,876円/キットウゴービ皮下注0.5mg:3,201円/キットウゴービ皮下注1.0mg:5,912円/キットウゴービ皮下注1.7mg:7,903円/キットウゴービ皮下注2.4mg:1万740円/キット薬価収載日:2023年11月22日発売日:2024年2月22日製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ株式会社

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1型糖尿病に対する週1回の基礎インスリン補充の効果と安全性は(解説:安孫子亜津子氏)

 新たな週1回製剤であるインスリンicodecは、世界で第III相の臨床試験が行われており、1型糖尿病に対する52週間の無作為化非盲検第IIIa相試験である「ONWARDS 6」の結果が、2023年10月17日号のLancet誌で報告された。 この試験は日本を含む12ヵ国99施設で行われ、基礎インスリンとして週1回投与のicodecと、1日1回投与のデグルデクを比較したものであり、両群ともにボーラスインスリンとしてはアスパルトを併用している。主要評価項目はベースラインから26週時におけるHbA1cの変化量であり、その他の有効性評価項目としては52週時におけるHbA1cの変化量、26週時の空腹時血糖値の変化、22~26週における血糖日内変動におけるTime in range(TIR)など。安全性の評価項目としては体重変化、平均インスリン週投与量、54mg/dL未満の臨床的に重大な低血糖、夜間低血糖、重症低血糖などである。 2021年4月30日~10月15日に655例がスクリーニングされ、このうち582例がicodec群(290例)またはデグルデク群(292例)に割り付けられた。 icodec群およびデグルデク群のHbA1c値は、ベースラインでそれぞれ7.59%、7.63%から、26週時には0.47%、0.51%低下した。推定平均変化量の群間差は0.05%(95%CI:-0.13~0.23)であり、icodec群のデグルデク群に対する非劣性が確認された(p=0.0065)。52週時点のHbA1cではicodec群0.37%、デグルデク群0.54%の低下でデグルデク群のほうが有意に低下しており(p=0.021)、空腹時血糖値は26週および52週においてデグルデク群で有意な低下が認められたが、TIRには両群で有意差はなかった。 安全性の評価項目では、26週時までの54mg/dL未満の低血糖または重症低血糖の発生頻度は、icodec群19.9件/人年、デグルデク群10.4件/人年で、icodec群が有意に高かった(p<0.0001)。57週時においても、icodec群ではデグルデク群と比較し低血糖の発生頻度が有意に高かった(17.0件/人年vs.9.2件/人年、p<0.0001)。体重変化は両群で差はなく、総使用インスリン量は両群で差がなかったが、基礎インスリン量はicodec群で多く、ボーラスインスリン量はデグルデク群で多かった。 2型糖尿病を対象としたONWARDS 1~5ではicodecでHbA1c値の低下が認められている結果が多いが、今回の1型糖尿病では差が認められなかった。ONWARDS 6の対象はベースラインのHbA1c値が7.6%前後に管理された1型糖尿病患者であるといった特徴もある。空腹時血糖値70~130mg/dLを目標として基礎インスリン量の調整をする中で、icodec群で有意に低血糖の発生が多く、さらにicodec群で総基礎インスリン使用量が多かったにもかかわらず、空腹時血糖値はデグルデク群ほど低下していなかった。この結果から1型糖尿病でicodecを使った強化インスリン療法において、低血糖を避けて適切な用量調整をするには今後の課題があると感じた。

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第201回 2024年診療報酬改定の内容決まる(前編) 武見厚労大臣の言う「メリハリ」ある改定とは?

本体0.88%引き上げ分の大半が賃上げに割り当てられるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連休は山仲間数人で、毎年恒例の八ヶ岳の冬山登山に行ってきました。小海線側、海ノ口から杣添尾根をひたすら登り、横岳まで日帰りピストンというコースです。連休の中日、24日だけ快晴だったので、横岳頂上では、富士山から南アルプス、中央アルプス、北アルプス、浅間山まですべてを見渡せる360度の眺望を楽しんで来ました。ただ、日頃不摂生の中高年パーティーのスピードは遅く(ほとんどのパーティーに抜かれました)、麓の駐車場に着いたのは17時過ぎで薄暮になってしまいました。連休中、横岳の北にある硫黄岳では遭難騒ぎも起こっていたようです。冬山は夏山に比べ危険が多く、相応の体力と技術、緊張感が要求されます。我々も厳冬期の登山はそろそろ潮時かなと皆で反省した次第です。さて、2月14日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、2024年度診療報酬改定の答申が行われ、項目の詳細と点数が明らかになりました。今回の改定では、医師の技術料や医療従事者の人件費となる「本体」は0.88%の引き上げ、「薬価」は1%の引き下げ、全体の改定率は0.12%のマイナスとなっています。本体0.88%引き上げ分の大半が賃上げに割り当てられました。物価高騰などを踏まえ、医療従事者の賃上げに向けて初診料が3点、再診料と外来診療料が2点引き上げられ、さらに新たな評価料となる外来・在宅ベースアップ評価料や入院ベースアップ評価料が新設されました。これらによって、初診時、再診時の診療報酬や、入院基本料といった医療機関の基本報酬が引き上げられることになりました。厚生労働省は2024年度で2.5%、2025年度で2%の医療従事者のベースアップを目指す考えで、医療機関に賃上げに関する計画や実績の報告を求めるなどして、引き上げた報酬が確実に賃上げに回るようチェックする、としています。管理料等の効率化・適正化等を行ったことで「メリハリある内容になっている」と武見厚労大臣今回の診療報酬改定について、武見 敬三厚生労働大臣は2月16日の閣議後の記者会見で、「医療従事者の賃上げ」「医療DX等による質の高い医療の実現」「医療・介護・障害福祉サービスの連携強化」の3つの課題の評価の充実と併せ、「生活習慣病等を中心とした管理料等の効率化・適正化を行」ったことで、「メリハリある内容になっている」と語ったとのことです。“メリハリ”は、漢字で「減り張り」と書き、緩めることと張ることを意味します。この言葉、かつて診療報酬改定のたびに、厚労省の担当官や中医協委員が「評価した分と、厳格化した分がはっきり分かれている」という時によく使っていました。個人的には診療報酬改定の時にしか聞かない言葉です。以前の本コラム「第179回 驚きの新閣僚人事、武見厚労相は日医には大きな誤算?“ケンカ太郎”の息子が日医とケンカをする日」でも書いたように、当初、その実行力に疑問符が付いていただけに、ある意味、“自画自賛”の意味を込めての“メリハリ”発言だったのかもしれません。なお、日本医師会の松本 吉郎会長は、2月14日に開かれた日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会合同記者会見で、本体プラス0.88%は、「医療界が一体・一丸となって対応した結果と考えている。物価・賃金の動向を踏まえれば、十分に満足できるものとは言えない部分もあるが、さまざまな主張や議論も踏まえた結果であり、多くの方々にご尽力頂いたものでもあり、まずは素直に評価をさせて頂く」と述べたとのことです。こちらも、ほぼほぼ賃上げ原資となってしまうとは言え、本体プラス改定を勝ち取ったことに対する“自画自賛”と言えなくもありません。「これでは『病院の経営安定』『病院の赤字解消』にはつながらない」と日病・相澤会長一方で、賃上げに重点が置かれた分、とくに病院経営には厳しい改定になったとの見方もあります。日本病院会の相澤 孝夫会長は2月20日に開いた定例記者会見で、「今改定は病院経営の安定化につながる内容にはなってない」との見解を示しています。2月20日付のGemMedの報道によれば、定例記者会見で相澤会長は、「確かに点数引き上げはなされているが、そのほとんどは『人件費・賃上げに充当せよ』との縛りが設けられている。これでは『病院の経営安定』『病院の赤字解消』にはつながらない」と語り、さらに診療報酬による賃上げについても、「現在の医療人材不足・他業界への人材流出を食い止める水準にはなっておらず、部分的な効果にとどまるのではないか」とコメントしています。昨年秋からの今改定の議論の過程では、財務省が「診療所の初・再診料を中心に報酬単価を引き下げることなどにより、診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当だ」と主張し、大きな話題となりました。このとき、財務省は病院経営の厳しさについては理解を示しつつ、診療所の経営状況の好調さに言及していました。結局、財務省の言い分は通らず、今改定では診療所、病院の区別なく初・再診料が上がりました。仮に診療所の初・再診料を本当に下げて、その分を病院の診療報酬に回していたら、松本会長、相澤会長、それぞれのコメントも変わっていたかもしれません。「特定疾患療養管理料」の対象疾患から糖尿病、脂質異常症、高血圧を除外の衝撃では、2024年度診療報酬改定の内容のうち、本連載でも過去に取り上げた項目などを中心に、いくつかその内容を見てみたいと思います。武見厚労相もメリハリの例として挙げた「生活習慣病の管理」に関する診療報酬、「特定疾患療養管理料」ですが、対象疾患から糖尿病と脂質異常症、高血圧が除外されます。また、脂質異常症や高血圧症、糖尿病を主病とする患者への総合的な治療管理を評価する「生活習慣病管理料」と「外来管理加算」の併算定を認めない、などの厳格化が図られます。診療所、中小病院にはそれなりの打撃となりそうです。厚労省は、3疾患については新設する生活習慣病管理料(II)に移行を促す、としていますが、同報酬は「患者に対し、患者の同意を得て治療計画を策定し、その計画に基づいて生活習慣に関する総合的な治療管理を行う」ことを求めており、特定疾患療養管理料よりも算定要件のハードルが高くなっています。これまで糖尿病患者などに大した“管理”も行わず、処方箋を書くだけで漫然と算定できていた報酬がなくなったわけで、そうした意味でもまさに“メリ”と言えるでしょう。また、かかりつけ医機能の評価である「地域包括診療料」等の見直しも注目されます。かかりつけ医と介護支援専門員との連携の強化、かかりつけ医の認知症対応力の向上、リフィル処方及び長期処方の活用、人生の最終段階における適切な意思決定支援、医療DXの推進などが要件となります。かかりつけ医機能は2023年5月に改正医療法が成立し、現在は制度整備を議論中ですが、新たな制度を後押しする報酬体系に変更されるわけです。10年ぶりの新入院料、「地域包括医療病棟入院料」病院関係の最大のトピックは、高齢者救急への対応を目的に「地域包括医療病棟入院料」が新設されることでしょう。新たな入院料が設定されるのは、2014年度改定の「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料」以来10年ぶりとなります。今改定に至る議論では、当初、「生活機能が低下した高齢者(高齢者施設の入所者を含む)に一般的である誤嚥性肺炎をはじめとした疾患について、地域包括ケア病棟や介護保険施設等での受け入れを推進する」ことが論点になっていました。しかし、その後の中医協の議論において、診療側委員から「救急搬送時点で患者の重症度は判断できない」「看護配置13対1の病棟で救急医療に対応することは困難」などの意見が出され、結果、地域包括ケア病棟などでの受け入れ推進は慎重論が大勢を占め、地域包括医療病棟入院料の新設に至ったわけです。救急医療提供体制を整える負担を考慮し、地域包括ケア病棟入院料1(40日以内)の2,838点よりも高い3,050点となります(各種加算をすべて取得すると4,000点弱の点数設定)。施設基準は看護配置10対1の他、常勤の理学療法士、作業療法士または言語聴覚士が2人以上、専任で常勤の管理栄養士が1人以上配置されていることや、入院早期からのリハビリを行うのに必要な構造設備を有していることなどで、平均在院日数は21日以内です。7対1の維持が厳しくなった場合の移行先としても期待地域包括医療病棟入院料新設のもう1つのポイントは、2006年の診療報酬改定による看護配置基準の引き上げで登場し、その後激増した7対1看護病棟の削減に一役買うのではないかということです。実際、2月14日に開かれた日本医師会・四病院団体連絡協議会の合同記者会見では、病院団体幹部から、急性期病床の重症度、医療・看護必要度の見直しによって、7対1看護配置の急性期一般入院料1を維持できない病院が相当数に上る可能性がある、との懸念が示されています。2月15日付のメディファクスによれば、全日本病院協会の猪口 雄二会長は、7対1の維持が厳しくなった場合の移行先について、新設の地域包括医療病棟が選択肢になることが「あり得る」と語ったとのことです。また、中医協委員も務める医療法人協会の太田 圭洋副会長は、同病棟について、「必要度が厳しめに設定されている」との認識を示しつつ、7対1からの受け皿になれるかどうかは「これから地域の各病院の先生がさまざま考えながら、(算定要件に)対応しきれるかというところにかかってくる」と話したとのことです。地域包括医療病棟は、これからの高齢社会において地域の高齢者救急に対応する、という本来の役割に加え、今後の地域の医療機関の役割分担や再編・統合、そして2025年以降の次の“地域医療構想”のあり方にも大きな影響を及ぼしそうです。(この項続く)

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肝線維化の食い止めに、NASH治療アプリの国内第III相試験開始/CureApp

 いまだに治療法のない生活習慣病であるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)の光明の一筋となるか―。CureAppは研究開発中の未承認医療機器であるNASH治療アプリ(以下、本アプリ)の国内第III相臨床試験を2024年1月より開始したことを2月20日の記者会見にて公表した。 本治験は、NASHと診断された患者のうち、生活習慣指導により治療効果が期待できると医師が判断した患者を対象に、治験実施医療機関にて本アプリを併用する診療群(介入群)と医師による生活習慣指導シートと体重記録シートを併用して診療する群(対照群)にわけて、登録後48週時点での有効性と安全性を検証する。主要評価項目は、登録後48週時点における肝線維化の増悪を伴わないNASHが改善した患者の割合(NASHからnon-NASHになった割合)。肝硬変・肝がんリスクに影響する肝線維化、その進展を体重コントロールで抑制 NASHは潜在患者数が糖尿病より多いといわれ、肝がんや心血管疾患などの重篤な疾病に繋がる「生活習慣病」の1つである。世界各国の製薬企業もNASH治療薬の開発に注力しているが、現時点で有効な治療法は見つかっていない。これまでは脂肪肝の改善が強調されてきたが、肝線維化を食い止めることが肝硬変・肝がんリスクの抑制につながることが今では明らかになっている。早期に肝線維化を発見し、患者の生活習慣の改善を図れるかどうかが鍵となることから、行動変容に有効とされるアプリはNASH治療との親和性が高いと考えられる。 また、NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)にも、「食事・運動療法による体重減少はNASHの病態を改善させる」と明記されており、7%以上の体重減少によりNASHの肝脂肪化や炎症細胞浸潤、風船様肥大といった病態を軽減できるという具体的な減量目標も明らかとなっている。さらに、本アプリによる治療空白期間の体重管理は、患者のみならず医療者の負担軽減にもつながる可能性がある。 本アプリに期待することについて、岡上 武氏(済生会吹田病院名誉院長/本治験統括アドバイザー)は「体重を7%減らすことで肝線維化もワンランク下がることが明らかになっている。このアプリを使うことで体重を減らすことが非常に重要になる」とコメント。また、建石 良介氏(東京大学大学院医学系研究科消化器内科学 准教授/本治験調整医師)は「肝線維化の進展には時間がかかるため、患者が病院受診する50~70代にはすでに線維化が進行している。早期発見して進行を食い止めるためにはセルフコントロールが重要で、アプリによる治療はそこにアプローチして全身状態とともに肝線維化を改善することが目標となる。また、NASHの治療を行う上で、患者の生活習慣の修正や体重減少を促すことが重要だと理解されつつも、診療時間以外の治療空白期間において患者自身が生活習慣を是正し、長期間継続・維持することは極めて困難である。医療者にとっても治療空白期間の患者状態をアプリから確認できることは意義がある」とコメントした。 なお、本アプリを将来的に多くの患者に届けるために、CureAppは今回の治験開始に向けて2022年にサワイグループホールディングスと共同開発契約を締結している。

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2型糖尿病のNAFLD、CVDや全死因死亡リスク増/BMJ

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を併発した2型糖尿病(T2DM)患者では、NAFLDが軽症であっても、心血管疾患および全死因死亡のリスクが上昇する可能性があり、非NAFLDとグレード1 NAFLD、非NAFLDとグレード2 NAFLDの間の心血管疾患および全死因死亡のリスク差は、非T2DMよりもT2DMで大きいことが、韓国・CHA Bundang Medical CenterのKyung-Soo Kim氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年2月13日号に掲載された。韓国の縦断的コホート研究 研究グループは、韓国のT2DM患者において、NAFLDが心血管疾患および全死因死亡のリスクに及ぼす影響を評価する目的で、全国規模の人口ベースの縦断的コホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 2009年のNational Health Screening Programmeの参加者779万6,763例を、NAFLDの状態に基づき、次の3つの群に分けた。(1)非NAFLD(脂肪肝指数[fatty liver index]<30)、(2)グレード1 NAFLD(30≦脂肪肝指数<60)、(3)グレード2 NAFLD(脂肪肝指数≧60)。 主要アウトカムは、心血管疾患(心筋梗塞、脳梗塞)または全死因死亡の発生とした。グレード1でも5年絶対リスクが上昇 779万6,763例の参加者のうち、6.49%(50万5,763例)がT2DMであった。非T2DM群のうちグレード1 NAFLDは21.20%、グレード2 NAFLDは10.02%であったのに対し、T2DM群ではそれぞれ34.06%および26.73%といずれも高率であった。また、1,000人年当たりの心血管疾患および全死因死亡の発生率は、非NAFLD、グレード1 NAFLD、グレード2 NAFLDの順に増加し、非T2DM群よりT2DM群で高かった。 心血管疾患および全死因死亡の5年絶対リスクは、非T2DM群、T2DM群とも、非NAFLD、グレード1 NAFLD、グレード2 NAFLDの順に増加した。すなわち、非T2DM群では、非NAFLD患者における心血管疾患の5年絶対リスクは1.03(95%信頼区間[CI]:1.02~1.04)、全死因死亡の5年絶対リスクは1.25(1.24~1.26)であり、グレード1 NAFLD患者はそれぞれ1.23(1.22~1.25)および1.50(1.48~1.51)、グレード2 NAFLD患者は1.42(1.40~1.45)および2.09(2.06~2.12)であった。 同様に、T2DM群では、非NAFLD患者における心血管疾患の5年絶対リスクは3.34(3.27~3.41)、全死因死亡の5年絶対リスクは3.68(3.61~3.74)であり、グレード1 NAFLD患者はそれぞれ3.94(3.87~4.02)および4.25(4.18~4.33)、グレード2 NAFLD患者は4.66(4.54~4.78)および5.91(5.78~6.05)だった。T2DMでのNAFLDのスクリーニングと予防により、リスク低減の可能性 このように、非T2DM群のグレード2 NAFLDと比較して、T2DM群の非NAFLDは、心血管疾患および全死因死亡の5年絶対リスクが高かった。また、非T2DM群に比べT2DM群では、非NAFLDとグレード1 NAFLD、非NAFLDとグレード2 NAFLDで、心血管疾患および全死因死亡のリスク差が大きかった。 著者は、「非アルコール性脂肪性肝疾患のスクリーニングと予防により、2型糖尿病患者における心血管疾患および全死因死亡のリスクが低減する可能性がある」としている。

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「座りっぱなし」でCVD死亡リスク34%増 

 2020年に発表された世界保健機関(WHO)ガイドラインでは、初めて「座り過ぎ」が健康を害し、心臓病、がん、2型糖尿病のリスクを高めることが明記された。長時間座ることの多い仕事は健康リスクにどのように影響し、それは身体的活動で軽減することができるのか。台湾・台北医科大学のWayne Gao氏らによる研究の結果が、JAMA Network Open誌2024年1月19日号に掲載された。 本試験は、1996~2017年の台湾の健康監視プログラムの参加者を対象とした前向きコホート研究だった。職業的座位時間、余暇時間における身体活動(LTPA)習慣、ライフスタイル、代謝パラメータに関するデータを収集した。データ解析は2020年12月に行われた。 主なアウトカムは、3段階の職業的座位量(ほとんど座っている、座っている・いないを交互に繰り返す、ほとんど座っていない)に関連する、全死因死亡率および心血管疾患(CVD)死亡率だった。全参加者、および5つのLTPAレベルと個人活動知能(PAI:身体活動に対する心拍数応答に基づく新たな身体活動計量)の指標を含む、サブグループ別のハザード比(HR)を算出した。逆因果を防ぐため、追跡開始後2年以内の死亡は除外した。 主な結果は以下のとおり。・48万1,688例が対象となった。平均年齢は39.3歳、女性53.2%だった。平均追跡期間は12.85年、追跡期間中に2万6,257例が死亡した。・性別、年齢、教育水準、喫煙歴、飲酒歴、肥満度の調整後も、仕事中にほとんど座っている人はほとんど座っていない人に比べ、全死因死亡率が16%高く(HR:1.16、95%信頼区間[CI]:1.11~1.20)、CVD死亡率が34%高かった(HR:1.34、95%CI:1.22~1.46)。座っている・いないを交互に繰り返す人は、ほとんど座っていない人と比べ、全死因死亡率の増加はみられなかった。・ほとんど座っている人で、LTPAが少ない(1日15~29分)、またはまったくない(1日15分未満)人は、LTPAを各1日15分、30分増やすことで、ほとんど座っていないLTPAが少ない人と同程度まで死亡率が減少した。さらに、PAIスコアが100を超える人は、座りっぱなしと関連する死亡リスクが顕著に減少した。 著者らは「仕事中に座っていることが多い人が死亡リスク上昇を軽減し、仕事中に座っていないことが多い人と同レベルに達するには、1日当たり15~30分の身体活動を追加する必要がある。これらの知見は、職場での長時間の座位を減らすこと、および/または1日の身体活動の量や強度を増やすことが、座りっぱなしに関連する全死亡およびCVDリスク上昇を緩和する可能性がある」としている。

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キムチでスリムに?

 キムチは古くから韓国の食卓の定番メニューであり、近年では米国でも人気が高まってきている。そのキムチを日常的に摂取することが、体重増加の抑制につながるのではないかとする研究結果が、「BMJ Open」に1月30日掲載された。論文の上席著者である中央大学校(韓国)のSangah Shin氏によると、「男性では、1日当たり1~3人前分のキムチを摂取していることが、肥満リスクの低下と関連がある」という。ただし同氏は、「キムチには塩分が多く含まれていることに注意が必要であり、またキムチ摂取量がより多い場合には、肥満リスクが上昇する可能性も示唆された」と付け加え、「キムチを多く食べるほど良い」と単純化した解釈をしないよう注意を呼び掛けている。 これまでの動物実験から、キムチ由来のプロバイオティクスには抗肥満作用があることが示されている。ただし、ヒトを対象とする疫学研究でのエビデンスはわずかしかない。Shin氏らは、2004~2013年の韓国国民健康栄養調査(KNHANES)のデータを用いた横断的解析により、この点を検討した。解析対象は、40~69歳の成人11万5,726人(平均年齢51歳、男性31.8%)。肥満(BMI25以上)の有病率は、男性36.1%、女性24.7%。 キムチの総摂取量が1日当たり1食分未満の群を基準として、年齢や飲酒・喫煙・運動習慣、摂取エネルギー量、食物繊維・ナトリウム・カリウム摂取量、婚姻状況、教育歴、所得などを調整後、男性ではキムチ総摂取量が1日当たり1~2食分の群の肥満オッズ比(OR)は、0.875(95%信頼区間0.808~0.947)、1日当たり2~3食分の群ではOR0.893(同0.817~0.978)であり、オッズ比の有意な低下が示された。一方、女性ではキムチ総摂取量と肥満との関連が非有意だった。 キムチの素材によって、体重との関連が異なることも考えられる。例えば、1食分の重量も水分含有量によって50~95gの範囲で異なる。そこで、素材別の解析を施行した。すると女性でも、白菜を用いるキムチ(ペチュキムチ)の摂取量が1日当たり2~3食分の群でOR0.921(95%信頼区間0.865~0.981)、大根を用いるキムチ(カクトゥギ)の摂取量が1日当たり1~2食分の群でOR0.895(同0.855~0.938)という有意な関連が示された。なお、ペチュキムチ、カクトゥギの1食分の重量はともに50g。 男性では、ペチュキムチ、カクトゥギのいずれについても、キムチ総摂取量での解析結果とほぼ同様の結果が示されたが、カクトゥギについては1日当たり2~3食分の場合に肥満リスクとの関連が非有意だった。また、男性・女性ともに、その他の素材のキムチの摂取量は、肥満リスクとの関連が乏しかった。 研究者らによると、キムチに含まれているLactobacillus brevisやL. plantarumという植物性乳酸菌には、抗肥満作用があることが知られているという。ただし、「本研究からは因果関係は証明されず、ほかの因子によってこの関連が生じているのかもしれない」と、研究の限界点を述べている。また、示された関連はJカーブのようであり、1日当たりのキムチ総摂取量が5食分以上の場合、肥満のオッズ比が性別を問わず、非有意ながら1を上回っていることも、留意すべき点として挙げている。 そのほかの留意点として、キムチには塩分が多く含まれているため、心臓には良くない可能性があることを指摘。一方で、野菜を発酵させて作るキムチにはカリウムが多く含まれているため、塩分による健康リスクが軽減される可能性もあるとのことだ。研究グループでは結論として、「キムチに含まれる塩分やそのほかの成分の健康への影響を考慮した上で、適量を摂取することが推奨されるのではないか」と述べている。

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低炭水化物ダイエット、肉食だと効果が続かない?

 低炭水化物ダイエットの体重に対する影響は一律ではないことが報告された。炭水化物を減らした分のエネルギーを植物性食品主体に置き換えて摂取した場合は減量効果が長期間続く一方、動物性食品に置き換えて摂取した場合は時間の経過とともに体重が増加に転じやすいという。米ハーバード大学T. H.チャン公衆衛生大学院のBinkai Liu氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に12月27日掲載された。論文の筆頭著者であるLiu氏は、「われわれの研究では、炭水化物を摂取すべきか摂取すべきでないかという単純な疑問の範囲を超え、食事の内容の違いが数週間や数カ月ではなく数年間にわたって、健康にどのような影響を与える可能性があるかを検討した」と述べている。 この研究は、米国で医療従事者を対象に現在も行われている、3件の大規模前向きコホート研究のデータを用いて行われた。一つは30~55歳の看護師を対象とする「Nurses' Health Study;NHS」で、別の一つは25~42歳の看護師対象の「NHS II」であり、残りの一つは男性医療従事者対象の「Health Professionals Follow-up Study;HPFS」。65歳以上や糖尿病などの慢性疾患罹患者を除外し、計12万3,332人(平均年齢45.0±9.7歳、女性83.8%)を解析対象とした。 食習慣は後述の5種類の指標で評価した。研究参加者は4年ごとにこれらのスコアが評価され、そのスコアと4年間での体重変化との関連が検討された。解析に際しては、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、人種/民族、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・高コレステロール血症の既往、摂取エネルギー量、糖尿病の家族歴、経口避妊薬の使用、閉経後のホルモン療法の施行など)を調整した。 全体的な炭水化物摂取量が少ないことを表すスコア(total low-carbohydrate diet)のプラスの変化(炭水化物摂取量がより少なくなること)は、体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。動物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(animal-based LCD)のプラスの変化も体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。植物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(vegetable-based LCD)の変化と体重変化との関連は非有意だった(傾向性P=0.16)。炭水化物は精製度の低いものとして、植物性食品からのタンパク質や健康的な脂質が多いことを表すスコア(healthy LCD)のプラスの変化は、体重の減少と関連していた(傾向性P<0.0001)。全粒穀物などの健康的な炭水化物の摂取が少なく、動物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(unhealthy LCD)のプラスの変化は、体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。 サブグループ解析からは、これらの関連性は、過体重や肥満者、55歳未満、身体活動量が少ない群で、より強く認められた。論文の上席著者である同大学院のQi Sun氏は、「われわれの研究結果は、低炭水化物ダイエットをひと括りにしていたこれまでの捉え方の変更につながる知見と言えるのではないか。また、全粒穀物、果物、野菜、低脂肪乳製品などの摂取を推奨する公衆衛生対策を、より強く推進していく必要があると考えられる」と述べている。

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ダパグリフロジンは低アルブミン尿のCKD進行にも有効か

 わが国では、2021年に慢性腎臓病(CKD)にSGLT2阻害薬ダパグリフロジンが保険適用となり、糖尿病治療と同様に広く使用されている。ダパグリフロジンなどのSGLT2阻害薬は、主に高アルブミン尿患者を対象とした大規模臨床試験で、CKDの進行を遅らせる効果が確認されている。しかし、低アルブミン尿のCKD患者へのダパグリフロジンの実際の使用状況や有効性についてはデータが不足していた。この課題に対し、カナダ・マニトバ大学内科のNavdeep Tangri氏らの研究グループは、ダパグリフロジンがCKDに対して承認された後に投与対象となった患者について検討した結果、アルブミン/クレアチニン比(UACR)<200mg/gのCKD患者にダパグリフロジンが有効であることが示唆された。Advances in Therapy誌オンライン版2024年1月19日号の報告。ダパグリフロジンの使用でeGFR勾配は減弱 本研究では、日本と米国のレセプトデータを用い、CKDに対する承認後にダパグリフロジン10mgの投与対象となった、UACR<200mg/gのCKD患者(投与開始患者と非投与患者)について検討した。推定糸球体濾過量(eGFR)勾配へのダパグリフロジン10mg投与開始と非投与の影響を評価するため、傾向スコアをマッチさせたコホートでprevalent new user designを用いて分位点回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ダパグリフロジンの投与開始者2万407例のほとんどがステージ3~4のCKDだった(データベース全体の69~81%)。・最も一般的な併存疾患は2型糖尿病、高血圧、心血管疾患だった。・ベースライン時には53〜81%の患者でレニン・アンジオテンシン系阻害薬が処方されていた。・適格であったが非投与だった患者は、投与開始患者より年齢が高く、eGFRが高値、併存疾患の負担が低かった。・ダパグリフロジンの投与開始後、投与開始患者と非投与患者のeGFR勾配の中央値の差は、UACR<200mg/gのすべての患者で1.07mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:0.40~1.74)、2型糖尿病のないUACR<200mg/gの患者で1.28mL/分/1.73m2/年(95%CI:-1.56~4.12)だった。 以上から研究グループは「UACR<200mg/gの患者では、ダパグリフロジンの投与開始は非投与と比較し、臨床的に意義のあるeGFR勾配の減弱と関連していた。これらの所見は、ダパグリフロジンの利用可能な臨床的有効性エビデンスを補足するものであり、その有効性がUACR<200mg/gのCKD患者にも及ぶ可能性を示唆する」と結論付けている。

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病名変更、定着した疾患は?/医師1,000人アンケート

 疾患の機序や病態、患者さんからの要望などで成人病が「生活習慣病」へ、痴呆症が「認知症」へ病名変更された例がある。現在では、糖尿病の呼称を「ダイアベティス」に変更する提案がなされ、「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」から「MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)」、「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」から「MASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)」への病名変更も予定されている。 そこで、会員医師1,000人にこうした疾患の呼称や病名変更についての考えや病名変更の認知度を聞いた。呼称や病名を変更するなら病態をイメージできるものを 質問1で「『糖尿病がダイアベティス』へ呼称変更、『非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)からMASLD』、『非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からMASH』」への病名変更される動きについて」を聞いたところ、「両方とも知っている」が1番多く512人、「『糖尿病』のみ知っている」が302人、「両方とも知らない」が142人、「『NAFLD・NASH』のみ知っている」が82人の順で多く、半数以上の会員医師は最近の動きを知っていた。 質問2で「疾患の病名や呼称を変更する理由として、どれが重要か」を聞いたところ、「疾患の機序や病態」が453人、「社会的なイメージや要請」が324人、「疾患認知度の向上」が293人の順で多く、病名で病態が理解できるものが望まれていた。 質問3で「9つの疾患を挙げ、病名・呼称の変更で定着したもの」を聞いたところ、「成人病から生活習慣病」が1番多く886人、「痴呆症から認知症」が842人、「精神分裂病から統合失調症」が819人の順で多かった。一方で、「サル痘からエムポックス」が48人、「先端巨人症から成長ホルモン分泌亢進症」が72人と診療科により定着率の低い疾患もあった。 質問4で「9つの疾患を挙げ、病名・呼称変更でまだ定着したと思われないもの」を聞いたところ、「サル痘からエムポックス」が1番多く704人、「先端巨人症から成長ホルモン分泌亢進症」が621人、「妊娠中毒症から妊娠高血圧症候群(HDP)」が490人、「不安障害から不安症」が483人の順で多かった。あまりなじみのない疾患の病名変更は浸透しにくい様子がうかがえた。呼称・病名変更に受容的なのは20・30代の医師 以下は20・30代、40代、50代、60代以上の医師と4つの区分ごとにみたものである。 質問1では、20・30代~50代の会員医師の半数以上が、疾患の名称・病名変更の動きを「両方とも知っていた」と回答していた。60代以上の医師では「糖尿病のみ知っていた」の回答が40%を占めていた。 質問2では、すべての年代の医師で「疾患の機序や病態」を変更理由として1番多く挙げているのに対し、60代以上の医師では「社会的なイメージや要請」を挙げる方もほかの年代の医師よりも多かった。 質問3では、20・30代医師では「妊娠中毒症から妊娠高血圧症候群(HDP)」と「先端巨人症から成長ホルモン分泌亢進症」の認知度が他の年代よりも高かった。また、50代医師では「すべて定着したとは思わない」と回答した数が他の年代の医師よりも多かった。 質問4では、40代医師で「痴呆症から認知症」について「定着していない」の回答数が少なかったことから、この年代では「認知症」という病名が広く浸透していることがうかがえた。また、「すべて定着したと思う」と回答した医師は20・30代で1番多かったことから呼称・病名変更への受容性がうかがえた。誤解されるイメージの病名は変更したほうがよい 質問5で「疾患の呼称や病名について、個別の疾患への思いや考え、疾患名にまつわるエピソード」を募集したところ、以下のようなコメントが寄せられた。・~奇形、~異常などの名称が付く疾患は変更したほうがよい(整形外科・60代)・糖尿病の呼称を「ダイアベティス」に変えるなら、まず尿崩症の名称を変えたほうがよい(糖尿病・代謝・内分泌内科・30代)・フレイルは、わかりにくいので適当な和訳が望ましい(呼吸器内科・50代)・水ぼうそう(水痘)と水いぼ(伝染性軟属腫)は混同される方が多い(皮膚科・50代)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。疾患の呼称や病名変更に医師はこう考える/医師1,000人アンケート

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日本人統合失調症患者の死亡、入院、退職、病欠と関連する因子

 統合失調症の治療において、早期死亡リスク、入院リスクに影響を及ぼす再発、離職は、重要な課題である。北里大学の稲田 健氏らは、日本人統合失調症患者における重要なアウトカムである死亡、入院、退職、病欠のリスク因子を評価した。BMC Psychiatry誌2024年1月3日号の報告。 日本のレセプトデータベースより特定した統合失調症患者を対象に、ネステッドケースコントロール研究を実施した。各アウトカムは、年齢、性別、インデックス日、雇用状況(従業員または扶養家族)が一致した最大4つのコントロールと比較した。潜在的なリスク因子は、イベント発生前または発生月から3ヵ月以内の処方箋または診断により定義した。潜在的なリスク因子と各アウトカムとの関連性は、ステップワイズ変数選択を伴う多変数条件付きロジスティック回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・各アウトカムにおけるケースと対象患者は以下のとおりであった。【死亡】144例、3万8,451例【入院】1,520例、3万5,225例【退職】811例、1万8,770例【病欠】4,590例、1万8,770例・抑うつ症状は、死亡(オッズ比[OR]:1.92、95%信頼区間[CI]:1.12~3.29)、入院(OR:1.22、95%CI:1.05~1.42)、病欠(OR:1.46、95%CI:1.36~1.57)のリスク因子であることが示唆された。・死亡に対するその他のリスク因子は、入院歴、チャールソン併存疾患指数(CCI)スコア、下剤の処方であった。・睡眠薬、下剤の処方、抗コリン薬の処方は、入院のリスク因子であった。・催眠薬と抗コリン薬の処方は退職のリスク因子であった。・CCIスコア、睡眠薬の処方、下剤の処方、糖尿病治療薬の処方は、病欠のリスク因子であった。 著者らは「われわれの知見は、統合失調症患者の重要な臨床アウトカムのリスク因子として、抑うつ症状および便秘、錐体外路症状など、いくつかの身体症状が特定されていることを示唆している。統合失調症の治療では、抑うつ症状と身体症状の両方に注意を払う必要がある」としている。

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朝食抜きや夕食後の間食、食行動の「数」が抑うつと関連

 抑うつにはさまざまな因子が関係するが、不健康な食行動が多いこともその一つと言えそうだ。朝食を抜く、夕食後に間食をするといった不健康な食行動について、その「数」に着目した研究が新たに行われた。その結果、これらの食行動の数が多い人ほど、抑うつのリスクが高かったという。福岡女子大学国際文理学部食・健康学科の南里明子氏らによる研究結果であり、詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」に12月22日掲載された。 朝食を抜くことと抑うつリスクとの関連については、著者らの先行研究を含め、これまでにもいくつか報告されている。しかし例えば、夕食後の間食が朝食抜きに影響を及ぼす可能性などもあることから、食行動のそれぞれではなく、その積み重ねと抑うつとの関連を検討する方が現実に即している。ただ、この観点での研究はほとんど行われていなかった。そこで、これらの点を踏まえて今回、食行動の数による影響が詳細に検討された。 著者らは、栄養疫学調査に参加した製造業の従業員を対象とし、ベースライン時(2012年4月と2013年5月)と3年間の追跡期間後(2015年4月と2016年5月)に調査を実施した。抑うつ症状は自己評価尺度(CES-D)を用いて評価した。不健康な食行動は、朝食抜き、夕食後の間食、就寝前の夕食の3つについて、週に3回以上行っている行動の数を調査。その他、生活習慣や労働環境、栄養摂取の状態なども調査した。 解析対象者は19~68歳の914人(男性816人、女性98人)だった。不健康な食行動の数で分類すると、1つもない人は429人(平均43.0歳、男性87.4%)、1つの人は364人(同41.4歳、89.8%)、2~3つの人は121人(同39.6歳、94.2%)だった。不健康な食行動の数が多い人ほど、若年齢、男性・交代勤務・喫煙者の割合が高い、残業時間が長い、仕事・家事・通勤中の身体活動が多いという傾向があった。また、仕事のストレスが大きく、一人暮らしの傾向があり、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、マグネシウム、亜鉛の摂取量が少なかった。 3年間の追跡期間中、抑うつ症状(CES-D≧16)を発症したのは155人(17.0%)だった。対象者の背景因子や職業・生活習慣因子の違いによる影響を調整して解析した結果、不健康な食行動が2~3つの人は、1つもない人と比べて、抑うつのリスクが有意に高かった(調整オッズ比1.87、95%信頼区間1.10~3.21)。しかし、栄養因子による影響を加えて調整すると、抑うつリスクの差は有意ではなくなった(同1.67、0.96~2.90)。一方、重度の抑うつ症状(CES-D≧23)については、全ての因子を調整しても、不健康な食行動が2~3つの人の方がリスクは有意に高かった。 著者らは、これまでの研究との違いに関して、「抑うつの予防効果が示唆されている、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、n-3系多価不飽和脂肪酸、マグネシウム、亜鉛の摂取量」による影響を含めて検討したと説明している。その上で、「朝食抜き、夕食後の間食、就寝前の夕食という不健康な食行動の数が抑うつのリスク上昇と関連していた」と結論付け、「この関連は、気分を改善する効果のある栄養素の摂取量が少ないことにより、部分的に説明できるかもしれない」と述べている。

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英語で「お決まりの治療」は?【1分★医療英語】第118回

第118回 英語で「お決まりの治療」は?《例文1》MRI is a go-to imaging for stroke.(MRIは脳卒中でお決まりの画像検査です)《例文2》He is my go-to person.(彼は私の頼れる存在です)《解説》“go to~”は動詞として使うと “go to school” (学校に行く)のように「~に行く」という意味になりますが、ハイフンを付けて“go-to”という形容詞として使うと、「行くべき」という意味から転じ、「頼れる」「お決まりの」「定番の」「お気に入りの」といった意味になります。臨床現場でもそれぞれの症状や病気に対してお決まりの検査や治療がある場合には、“go-to imaging”(お決まりの画像検査)、“go-to treatment”(お決まりの治療法)というような表現をします。また、形容詞以外に名詞としても使うことができ、“Pad Thai is my go-to when I order Thai food.”(タイ料理を注文するときは、パッタイが私の定番です)といった言い方もします。簡単な単語の組み合わせですが、日常会話でも臨床業務でも使えて、知っていると差がつく表現です。講師紹介

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十代の肥満は若年成人期の腎臓病のリスク

 十代に肥満であることが、若年成人期の腎臓病発症リスク因子である可能性を示すデータが発表された。ヘブライ大学(イスラエル)のAvishai Tsur氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Pediatrics」に12月11日掲載された。BMIが基準範囲内ながら高値の場合も、リスク上昇が認められるという。 成人後の肥満が中高年期の慢性腎臓病(CKD)のリスク因子であることは知られている。CKDは腎不全のリスクであるだけでなく、心血管疾患のリスクも高めることから、早期発見と早期治療が必要とされる。しかし近年、小児や未成年の肥満が世界的に増加しているにもかかわらず、未成年の肥満がCKDのリスク因子なのか否かは明らかにされていない。そこでTsur氏らは、十代でのBMIと若年成人期(45歳未満)における初期のCKDとの関連をイスラエルの医療データを用いて検討した。 解析対象は、1975年以降に生まれ、16~20歳時点でのBMIの記録と、徴兵検査時の腎機能関連データがそろっている59万3,660人(ベースラインの平均年齢17.2±0.5歳、男性54.5%)。ベースライン時に腎臓病、アルブミン尿、高血圧、血糖異常の記録がある人は除外されている。肥満の有無と肥満の程度の判定は、米疾病対策センター(CDC)の基準に従い、年齢と性別が一致する集団でのパーセンタイルによって判定した。早期CKDは、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2以上で、中程度から重度のアルブミン尿が見られるステージ1~2のCKDと定義した。 男性は13.4±5.5年、女性は13.4±5.6年の追跡で、1,963人(0.3%)が早期CKDを発症した。交絡因子を調整後、男性・女性ともに、BMIが正常高値のカテゴリーであっても、以下のように早期CKD発症ハザード比の有意な上昇が認められた。男性では正常高値BMIで1.8(95%信頼区間1.5~2.2)、過体重で4.0(同3.3~5.0)、軽度肥満で6.7(5.4~8.4)、重度肥満で9.4(6.6~13.5)。女性は正常高値BMIで1.4(1.2~1.6)、過体重で2.3(1.9~2.8)、軽度肥満で2.7(2.1~3.6)、重度肥満で4.3(2.8~6.5)。なお、追跡期間中に糖尿病や高血圧を発症した人を除外した解析でも、結果は同様だった。 論文の結論は、「十代後半のBMIが高いことと、若年成人期の早期CKDとの有意な関連が認められた。肥満による早期CKDのリスクは、BMI高値以外のリスク因子がない、一見すると健康そうな人でも上昇し、かつ肥満度がより高い場合によりハイリスクになるという関連があった。これらのデータは、BMIが高い未成年者の肥満を抑制し、腎臓病のリスク因子を管理することの重要性を強調するものと言える」と総括されている。 なお、研究グループによると、体重が過剰であることが、なぜ腎臓にダメージを与えるのかというメカニズムの詳細はまだ明らかにされておらず、現時点では高血圧やコレステロール値の上昇、肥満に関連するホルモン分泌の乱れなどの関与が原因として考えられているという。

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