サイト内検索|page:164

検索結果 合計:4905件 表示位置:3261 - 3280

3261.

139)性格でわかる心筋梗塞になりやすい人【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 医師お待たせしました。早速、血圧を測りましょう。(血圧測定後)…血圧がちょっと高いですね。 患者いや、だいぶ待たされましたから(早口で)。 医師それは、申し訳ありませんでした。ここに興味深いデータがあります。 患者(大声で)それは何ですか? 医師せっかちな人は、そうでない人に比べ2倍以上、狭心症や心筋梗塞になりやすいんだそうです。 患者えっ、そうなんですか(過剰な反応)。 医師そうなんです。ちょっと、チェックしてみましょうか? (チェック表を確認、採点) 患者8点ですね。 医師完璧に心筋梗塞になりやすい性格ですね。 患者この性格、どうしようもないんですよね。 医師性格はなかなか変わりませんが、行動は変えることができますよ。●ポイント性格ではなく、行動パターンは変えることができることを説明します●参考資料1)Rosenman RH, et al. JAMA. 1975;233:872-877.2)Ikeda A, et al. Int J Epidemiol. 2008;37:1395-1405.

3262.

日本糖尿病学会:「キラリ☆女性医師!」に2016年9月の新記事を掲載

 日本糖尿病学会 「女性糖尿病医サポートの取り組み」ホームページ では、 「キラリ☆女性医師!」 コーナーに 金子 至寿佳 氏 (高槻赤十字病院)、 宇治原 典子 氏 (東京女子医科大学附属 成人医学センター)の記事を掲載した。 同コーナーは、さまざまな女性医師を紹介するコーナーとして2015年4月に開設され、これまでに計 16 名の女性医師が登場している。 各記事は以下関連リンクより閲覧可能。関連リンク「キラリ☆女性医師!」(日本糖尿病学会「女性糖尿病医サポートの取り組み」)

3263.

食事・身体活動を監視する装着型デバイス、減量効果は?/JAMA

 肥満者の減量法として、標準的な生活様式への行動療法的介入に、食事や身体活動を監視してフィードバックを提供する装着型デバイス(wearable device)を加えても、減量効果はむしろ低下することが、米国・ピッツバーグ大学のJohn M Jakicic氏らが行ったIDEA試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年9月20日号に掲載された。食事療法や身体活動を強化する介入の短期的な減量効果が確認され、この効果の長期的な維持が課題とされる。標準的な介入への装着型デバイスの追加により、長期的な減量効果が改善する可能性が示唆されている。若年成人肥満者で装着型デバイスの減量効果を検討 IDEAは、若年成人の肥満者において、標準的な行動療法的介入への装着型デバイスの併用による減量の改善効果を検討する無作為化試験(米国国立衛生研究所[NIH]および米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成による)。 参加者の登録は、2010年10月~2012年10月にピッツバーグ大学で行った。対象は、年齢18~35歳、BMI 25.0~<40.0であり、テキストメッセージの受信が可能な携帯電話と、インターネットに接続できるコンピュータにアクセス可能な者とした。 すべての参加者は、低カロリー食を摂り、身体活動を所定のとおりに増量し、グループカウンセリング研修を受けた。6ヵ月後に、電話カウンセリング研修、テキストメッセージによる指示、ウェブサイト上の教材へのアクセスが加えられた。 6ヵ月時に、ウェブサイトを使用して食事および身体活動を自己監視する標準的な行動療法的減量介入を行う群(標準介入群)、または食事および身体活動の監視にはウェブベースのインターフェイスを備えた装着型デバイス(FIT Core、Body Media社)を用いる強化減量介入を行う群(強化介入群)に無作為に割り付けられた。介入は、24ヵ月時まで、18ヵ月間行われた。体重減少が2.4kg少ない、食事、身体活動に差はない 470例が登録され、強化介入群に237例、標準介入群には233例が割り付けられた。全体の年齢中央値は30.9歳、女性が71.1%、非白人が22.8%であり、体重中央値は90.0kg、BMI中央値は31.2であった。 74.5%が試験を完遂した。試験期間中に、29例の女性が妊娠し、安全のために介入を中止した。 強化介入群の推定平均体重は、ベースライン時が96.3kg(95%信頼区間[CI]:94.2~98.5)、24ヵ月時は92.8kg(90.6~95.0)であり、体重は3.5kg(2.6~4.5)減少した。これに対し、標準介入群は、推定平均体重が95.2kg(93.0~97.3)から89.3kg(87.1~91.5)へ、5.9kg(5.0~6.8)減少した。 したがって、24ヵ月時の体重減少量は、強化介入群が標準介入群よりも2.4kg(95%CI:1.0~3.7)少なかった(p=0.002)。 事後解析として、体重減少率(推定平均値)の評価を行ったところ、6ヵ月時(強化介入群:8.4 vs.標準介入群:9.4%、p=0.15)には両群間に差はなかったが、12ヵ月時(7.0 vs.8.9%、p=0.008)、18ヵ月時(5.6 vs.7.9%、p=0.002)、24ヵ月時(3.6 vs.6.4%、p<0.001)は、いずれも強化介入群が標準介入群に比べ有意に低かった。 BMI、体組成(体脂肪量、除脂肪量、体脂肪率、組織体脂肪率[骨を除いた体脂肪率]、骨量)、心肺持久力(電動トレッドミル)、身体活動(坐位、軽度な活動[運動強度指数[MET]:1.5~<3.0]、10分以上の中等度~高強度の活動[MET≧3.0])、食事(総カロリー、炭水化物、タンパク質、脂肪)は、両群とも有意に改善し、いずれも両群間に差を認めなかった。 安静時血圧、うつ状態、急速な体重減少(4週間に6%以上の減量)、重篤でない有害事象、重篤な有害事象の発現数には、両群間に有意な差はなかった。 著者は、「強化介入群の減量効果が劣った原因は、装着型デバイスが食事および身体活動の行動を改善しなかったためと考えられるが、これらの測定値には有意差がないことから、その原因の解明のためにさらなる検討を要する」と指摘している。

3264.

第5回 スルホニル尿素(SU)薬による治療のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第5回】スルホニル尿素(SU)薬による治療のキホン―SU薬が第1選択薬となる典型的な症例は、どのような患者でしょうか。 直接、膵β細胞上のSU受容体に結合してインスリン分泌を促進し、血糖を低下させるSU薬は、インスリン分泌障害のある、非肥満の患者さんに適しています。古くからある薬剤で、以前は臨床現場でも多く使われていましたが、DPP-4阻害薬が登場し、さらにSGLT2阻害薬が出るなど、糖尿病治療の選択肢が増えたことで、長期にわたる治療が必要な糖尿病においては、強力な血糖降下作用を示すSU薬は、「経口血糖降下薬の最後の手段として温存しておく」という考えが徐々に広がっています。 食事・運動療法を行っても血糖コントロールが改善しない場合は、患者さんの病態(インスリン分泌能低下、インスリン抵抗性、空腹時高血糖、食後高血糖など)に合わせ、“単独で低血糖を来しにくい”、“体重増加を来さない”といった安全性の面からも使いやすい薬剤から始め、それでも空腹時血糖値が下がらないようであれば、SU薬を検討してもよいと思います。また、そのときには、“膵β細胞に十分な残存機能がある(インスリン分泌能が比較的保たれている)こと※”、また、“食事・運動療法が守られていること”が重要です。 ※空腹時血中Cペプチド(CPR)値≧0.6ng/mL、24時間尿中CPR排泄量>20μg/日1) インスリン分泌能の評価には、血中インスリン、血中Cペプチド、尿Cペプチドがありますが、尿中Cペプチドは畜尿が必要なため、外来では用いにくい指標です。朝食前血中Cペプチドの正常値は1.0~3.5ng/mlで、0.5ng/ml以下ではインスリン依存状態と考えられます。低値であればあるほど、インスリン分泌障害が高度であり、インスリン療法が必要になります。また、この血中Cペプチドを用いたCペプチドインデックス(CPI)というものが、内因性インスリン分泌能の評価に有用な指標として使用されています。CPIの計算式は、CPI= [朝食前血中Cペプチド(ng/ml) / 朝食前血糖値(mg/dl)]×100 であり、CPI≦0.7ではインスリン療法が必要、CPI≧1.2では食事療法、運動療法を十分に行えば、経口薬で良好な血糖コントロールが得られるとされています2)。―長期使用による膵β細胞の疲弊、アポトーシス(二次無効)のリスクはあるのでしょうか。 SU薬を長期使用した患者さんで、膵β細胞が疲弊し、機能が低下することで、SU薬の効果が減弱し、血糖上昇を認める“二次無効”がみられることがあります。しかし、この効果減弱が、SU薬の長期使用による刺激が直接原因になっているのか、あるいは食事・運動療法の乱れによる血糖コントロール不良により、持続する高血糖が原因になっているのかを見極めることは容易ではありません。 このような状態になってしまうと、膵β細胞を休息させ、インスリン分泌能を回復させる必要があるため、インスリン治療が必要となります(糖毒性の解除)。インスリン分泌能が回復すれば、再び経口血糖降下薬による治療に戻すことができるようになる可能性もありますが、膵β細胞の機能低下程度や二次無効の期間によっては、回復が難しいこともあります。インスリン治療に対しては、患者さんにとって心理的障壁があるというだけでなく、実は医師にとっても大きな負担になることが報告されています3)。できるだけ医師、患者さんの双方で負担なく治療を続けるためにも、二次無効に至らないよう、SU薬は漫然と使用せず上手に使うことが重要です。今は、さまざまな治療薬がありますので、病態や安全性を考慮し、SU薬を使用するのであれば、他の薬剤も組み合わせ、それらの用量を調節しながら、SU薬はできるだけ低用量で維持するのがよいと思います。―低血糖を回避するためには、どのようなことに気を付ければよいでしょうか? SU薬では低血糖に注意する必要があります。強力なインスリン分泌促進作用が長時間続くため、血糖値にかかわらず“遷延性低血糖”が問題になります。とくに肝・腎機能低下例や生理機能の低下した高齢者では注意が必要で、高齢者の場合は認知症と間違われてしまうことがあります。 もう1つ、SU薬を投与する場合に注意したいのが“夜間の無自覚性低血糖”です。第2回 薬物療法のキホン(総論)-ファーストチョイスや併用に迷っています。機序の異なる薬の使い分け・効果的な組み合わせを教えてください。でもお話ししましたが、血糖値は1日の中で常に変動しており、その変動する血糖値をならした“平均血糖”を反映しているのがHbA1cです。持続的にインスリン分泌を促進するSU薬の場合、血糖変動幅はそのままの状態で、全体を下にスライドさせるように血糖値を低下させています。SU薬単独で比較的HbA1cが低い患者さんでは、食後の血糖値は高くても、夕食前や夜間の血糖値がかなり低いためにそれらが相殺されて、見かけ上はHbA1cが低くなっているということがあります。このような患者さんでは、食後高血糖が改善されていないうえに、夜間の血糖値は低血糖域付近であったり、低血糖を起こしている可能性があります(無自覚性低血糖)。夜間に低血糖を生じている場合、悪夢をみて気分が悪くなって目が覚めたり、起床時の頭痛や就寝時の発汗、倦怠感などを訴えることがあります。 夜間の低血糖を回避するためには、SU薬単独で血糖正常化を目指さずに(7.5%以下は目指さない)、食後高血糖を改善する薬剤などを併用して血糖変動幅を縮小する、血糖コントロールが悪化した場合にも、SU薬を増量するのではなく、単独で低血糖や体重増加を来しにくい薬剤の用量を調節するなどして、“上質な”HbA1cの低下を目指すとよいでしょう。―体重増加を回避するためには、どのようなことに気を付ければよいでしょうか? SU薬では、体重増加もしばしば問題になります。これはSU薬により空腹時血糖が下がり過ぎてしまい、空腹を感じて食べてしまうことが原因になります。前述したように、SU薬単独で治療しており、食後高血糖が改善されておらず、それを相殺するように、空腹時血糖値が低血糖傾向になっているような、見かけ上HbA1cが良好な患者さんでよくみられます。このような患者さんでは、血糖コントロールが悪化してくると、どうしても使用中のSU薬を増量したくなることもあるかと思いますが、SU薬を増量すると、ますます空腹感が強くなってしまうため、食後高血糖を改善する薬剤を追加するなどして、血糖変動幅を縮小する治療を行うとよいでしょう。1)日本糖尿病学会編・著.糖尿病治療ガイド2016-2017.文光堂;2016.2)鈴木ひかり、浦風雅春、戸邊一之. インスリン分泌能や膵島量の指標とは. 糖尿病レクチャー 1(1):69-74, 21003)Ishii H, et al. PLoS One. 2012;7:e36361.

3265.

2型糖尿病患者、若いほどGERDが多い

 日本人の2型糖尿病患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2RA)の使用に関係なく、若年が独立して胃食道逆流症(GERD)に関連する可能性が示唆された。愛媛県内の関連病院による多施設共同研究である道後Studyにおける解析を愛媛大学の池田 宜央氏らが報告した。Digestive diseases and sciences誌オンライン版2016年9月22日号に掲載。 日本人の2型糖尿病患者における年齢とGERDの関連についてのエビデンスは少ない。今回の多施設横断研究では、被験者を年齢に応じて、19歳以上56歳未満、56歳以上64歳未満、64歳以上71歳未満、71歳以上89歳未満の四分位に分割して比較した。GERDは、Carlsson-Dentの自己記入式質問票(QUEST)でスコア4以上と定義した。 主な結果は以下のとおり。・GERD有病率は31.5%であった。・若年であることは、独立してGERDの高い有病率と関連していた。GERDの調整オッズ比(95%信頼区間)は、56歳未満、56歳以上64歳未満、64歳以上71歳未満、71歳以上でそれぞれ、3.73(2.16~6.53)、1.98(1.21~3.27)、1.66(1.05~2.68)、1.00(基準)であった(傾向のp=0.001)。・PPIまたはH2RAを使用している201例において、56歳未満は独立してGERDと相関していた。調整ORは5.68(1.55~22.18)(傾向のp=0.02)であった。

3266.

乳児期の卵・ピーナッツ摂取でアレルギーのリスク低下/JAMA

 乳児食として、早期に卵およびピーナッツを導入すると、これらのアレルゲン食品によるアレルギー性疾患のリスクが低減することが、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのDespo Ierodiakonou氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年9月20日号に掲載された。アレルゲン食品の導入時期が、アレルギー性疾患や自己免疫疾患のリスクに及ぼす影響への関心が高まっている。乳児食のガイドラインは、両親にアレルゲン食品の導入を遅らせることを推奨しなくなっているが、多くの場合、早期の導入を勧めてもおらず、最近の6つのアレルゲン食品の早期導入の無作為化試験(EAT試験)では、いずれの食品でも予防効果は認められていない。導入時期の影響をメタ解析で評価 研究グループは、アレルギー性疾患および自己免疫疾患のリスクに及ぼすアレルゲン食品の導入時期の影響を評価するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(英国食品基準庁の助成による)。 医学データベース(MEDLINE、EMBASE、Web of Science、CENTRAL、LILACS)を用いて、1946年1月~2016年3月までに報告された文献を検索した。 生後1年以内の乳児において、アレルゲン食品(牛乳、卵、魚類、甲殻類、ナッツ類[tree nuts]、小麦、ピーナッツ、大豆)の導入時期を検討し、アレルギー性疾患や自己免疫疾患、アレルギー感作との関連について報告した介入試験および観察試験を対象とした。 主要評価項目は、喘鳴、湿疹、アレルギー性鼻炎、食品アレルギー、アレルギー感作、1型糖尿病、セリアック病、炎症性腸疾患、自己免疫性甲状腺疾患、若年性関節リウマチであった。エビデンスレベルは低いが、魚類の早期導入が鼻炎を抑制 146試験の204編の論文が解析に含まれた。介入試験のうち、24件(39論文、1万3,298例)がアレルギー性疾患、5件(6論文、5,623例)は自己免疫疾患に関するものであった。また、観察試験のうち、69件(90論文、14万2,103例)がアレルギー性疾患、48件(69論文、6万3,576例)は自己免疫疾患に関するものだった。 日本の研究を含む5試験(1,915例)のメタ解析では、乳児食に早期(生後4~6ヵ月時)に卵を導入した乳児は、これより遅い時期に導入した乳児に比べ卵アレルギーのリスクが低いことを示す、確実性が中等度のエビデンス(moderate-certainty evidence)が得られた(率比[RR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.36~0.87、I2=36%、p=0.009)。 卵アレルギーの発生率が5.4%の集団における絶対リスク減少率は、1,000人当たり24例(95%CI:7~35)であった。 また、2試験(1,550例)のメタ解析では、早期(生後4~11ヵ月時)にピーナッツを導入した乳児は、これより遅い時期に導入した場合に比べピーナッツアレルギーのリスクが低いことを示す、確実性が中等度のエビデンスが得られた(RR:0.29、95%CI:0.11~0.74、I2=66%、p=0.009)。 ピーナッツアレルギーの発生率が2.5%の集団における絶対リスク減少率は、1,000人当たり18例(95%CI:6~22)だった。 エビデンスの確実性は、効果の推定値の不正確性および試験の集団や介入の間接性によって、低下した。卵およびピーナッツの導入時期は、他の食品に対するアレルギーのリスクとは関連しなかった。 一方、早期の魚類導入のアレルギー感作および鼻炎の低減との関連を示す、確実性が非常に低い~低いエビデンスが確認された。グルテンの導入時期とセリアック病のリスク、アレルゲン食品の導入時期と他のアウトカムは、いずれも関連がないことを示す、確実性の高いエビデンスが得られた。 著者は、「これらの知見は、各試験の限界との関連を考慮して解釈すべきである」と指摘している。

3267.

週1回の新規GLP-1受容体作動薬、心血管リスクを低下/NEJM

 心血管リスクが高い2型糖尿病患者において、プラセボと比較しsemaglutideの投与により心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中の発生リスクが26%有意に低下し、プラセボに対するsemaglutideの非劣性が確認された。米国・Research Medical CenterのSteven P. Marso氏らが「SUSTAIN-6試験」の結果、報告した。規制ガイダンスの規定によりすべての新規糖尿病治療薬は心血管系への安全性を立証する必要があるが、約1週間という長い半減期を持つGLP-1受容体作動薬semaglutideの心血管への影響はこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2016年9月15日号掲載の報告。心血管リスクの高い2型糖尿病患者3,297例を対象、プラセボと比較 SUSTAIN-6試験は、semaglutideの心血管安全性を評価する二重盲検無作為化比較対照並行群間試験で、20ヵ国230施設にて実施された。 対象は、50歳以上で心血管疾患(CVD)の既往のある慢性心不全または慢性腎疾患(CKD)ステージ3以上、または60歳以上で1つ以上の心血管リスク因子を有する、HbA1c 7.0%以上の2型糖尿病患者3,297例で、2013年2月~12月に、semaglutide(0.5mgまたは1.0mg)週1回皮下投与を標準治療(運動・食事療法、経口血糖降下薬、心血管系治療薬)に追加する群(semaglutide 0.5mg/週群および1.0mg/週群)と、プラセボ群(プラセボ0.5mg/週群および1.0mg/週群)に1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。治療期間は104週間、追跡期間は5週間であった。 主要評価項目は、心血管複合イベント(心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中)の初回発生で、プラセボに対するsemaglutideの非劣性マージンは、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限1.8とした。心血管複合イベントのリスクは26%、非致死的脳卒中リスクは39%、有意に低下 観察期間中央値は2.1年で、ベースライン時の、2型糖尿病平均罹患期間は13.9年、HbA1c平均値は8.7%、2,735例(83.0%)がCVDまたはCKDの既往があった。 心血管複合イベントは、semaglutide群で1,648例中108例(6.6%)、プラセボ群1,649例中146例(8.9%)に発生した(HR:0.74、95%CI:0.58~0.95、非劣性p<0.001)。非致死的心筋梗塞の発症率はそれぞれ2.9%および3.9%(HR:0.74、95%CI:0.51~1.08、p=0.12)、非致死的脳卒中は1.6%および2.7%(HR:0.61、95%CI:0.38~0.99、p=0.04)であった。また、心血管死亡率はsemaglutide群2.7%、プラセボ群2.8%であり、両群で類似していた。 新規腎症発症または悪化率はsemaglutide群で低下したが、網膜症関連合併症(硝子体出血、失明、硝子体内注射または光凝固術などの治療を要する状態)は有意に高値であった(HR:1.76、95%CI:1.11~2.78、p=0.02)。semaglutide群では有害事象による投与中止(多くは胃腸障害)が多かったが、重篤な有害事象はみられなかった。 なお著者は、研究の限界として「他の患者集団や治療期間がより長期的になった場合にも今回の結果が当てはまるかどうかは不明で、semaglutide群で確認された血糖値の低下がどの程度心血管イベントの抑制に寄与しているかも不明である」と述べている。

3269.

妊娠糖尿病の診断、至適な血糖値とは?/BMJ

 妊婦では、血糖値の上昇に応じて臨床的に重要な周産期の有害なアウトカムのリスクが全般的に増加するが、このリスク増大の明確な閾値はみられないことが、英国・ブラッドフォード健康研究所のDiane Farrar氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2016年9月13日号に掲載された。妊娠糖尿病では、有害な周産期アウトカムが拡大するリスクが増大し、母子の長期的な健康に影響を及ぼす可能性がある。治療により、これらのアウトカムのリスクは軽減するが、妊娠糖尿病を定義する至適な血糖値の閾値は明らかにされていないという。高リスク女性を同定する閾値の確立を目指して 研究グループは、妊婦における血糖値と有害な周産期アウトカムの関連を評価し、有害な周産期アウトカムのリスクが高い女性を同定する明確な閾値の確立を目的に、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 MedlineやEmbaseなどの医学データベースに、2014年10月までに登録された文献を検索した。選出された論文と、2つの出生コホート研究のデータを統合した。 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)または経口ブドウ糖チャレンジ試験(OGCT)を受け、1つ以上の有害な周産期アウトカムのデータを有する妊婦を含む試験を対象とした。妊娠糖尿病と診断された女性や、既存の糖尿病を有する女性は、治療を受けている可能性があり、血糖値とアウトカムの自然な関連に影響を及ぼす可能性があるため除外した。 各文献から、空腹時および糖負荷後1時間と2時間時のOGTT(75g、100g)、OGCT(50g)のデータを抽出した。また、陣痛の誘発、帝王切開、器械分娩、妊娠高血圧症候群(PIH)、妊娠高血圧腎症、巨大児、不当重量体重、早産、出生時損傷、新生児低血糖に関するデータを収集した。有害なアウトカムとの関連は空腹時血糖値のほうが強力 23件の試験の25報の論文と、2つのコホート研究の参加者のデータが解析に含まれ、最大20万7,172人の妊婦が解析の対象となった(検査やアウトカムによって、妊婦の人数にばらつきがみられた)。ほとんどの試験が、バイアスのリスクは低いと判定された。 帝王切開、陣痛の誘発、不当重量体重、巨大児、肩甲難産は、すべての検査で血糖値の全範囲を通じて正の線形関係が認められ、閾値効果の明確なエビデンスは得られなかった。 全般的に、血糖値と有害なアウトカムの関連は、糖負荷後よりも空腹時のほうが強力であった。たとえば、不当重量体重のリスクについては、空腹時血糖値の1mmol/L上昇ごとのオッズ比(OR)が2.15(95%信頼区間[CI]:1.60~2.91)であったのに対し、75gOGTT 2時間値の1mmol/L上昇ごとのORは1.20(95%CI:1.13~1.28)であった。 これらのパターンは、アジア、南太平洋地域、欧州、北米および国際的な試験を通じて認められたが、サハラ以南のアフリカではこのようなエビデンスはなく、低/中所得国のエビデンスもほとんど認めなかった。 著者は、「リスク増大の明確な血糖値閾値の欠如は、妊娠糖尿病の診断の閾値に関する決定には、ある程度恣意的な要素が含まれることを意味する。今後、妊娠糖尿病診断の血糖値の閾値を周産期および長期的なアウトカムに適用する際の、臨床効果および費用対効果の検討を行う必要がある」としている。

3270.

TAVR後の感染性心内膜炎、リスク因子と転帰は?/JAMA

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)において、若年、男性、糖尿病、中等度~重度大動脈弁逆流残存は、感染性心内膜炎(IE)のリスク増加と有意に関連しており、心内膜炎を発症した患者は院内死亡率および2年時死亡率が高いことが明らかとなった。カナダ・ラヴァル大学のAnder Reguerio氏らが、TAVR後にIEと確定診断された患者を対象とした後ろ向き観察研究の結果、報告した。外科的弁置換術はIE発症や死亡率の高さと関連が示唆されているが、TAVRについては症例数の少なさや追跡期間の短さなどにより、術後IE患者の臨床的特徴や転帰に関するデータは限られていた。JAMA誌2016年9月13日号掲載の報告。TAVR施行患者約2万人を後ろ向きに調査、IE発症率は1.1%/人年 研究グループは、TAVR後IEに関連する因子、臨床的特徴および転帰を検討する目的で、2005年6月~2015年10月に欧州・北米・南米47施設においてTAVRが実施された2万6例について調査し、TAVR後IE発症率およびIEによる院内死亡率を評価した。 TAVR後にIEを発症し確定診断がなされた患者は2万6例中250例で、発症率は1.1%/人年(95%信頼区間[CI]:1.1~1.4%)、年齢中央値は80歳、男性が64%であった。また、TAVR施行からIE発症までの期間は、中央値で5.3ヵ月(四分位範囲:1.5~13.4)であった。TAVR後IE患者の院内死亡率は36%、院内死亡の予測因子は心不全 TAVR後IE発症の高リスク患者特性は、年齢が若い(IE有:78.9歳 vs.IE無:81.8歳、ハザード比[HR]:年当たり0.97、95%CI:0.94~0.99)、男性(62.0% vs.49.7%、HR:1.69、95%CI:1.13~2.52)、糖尿病(41.7% vs.30.0%、HR:1.52、95%CI:1.02~2.29)、中等度~重度大動脈弁逆流(22.4% vs.14.7%、HR:2.05、95%CI:1.28~3.28)であった。医療関連IE(入院後48時間以内、または入院前に何らかのケアを受けており入院時の血液培養で陽性反応)は、52.8%(95%CI:46.6~59.0%)で確認された。主な起炎菌は腸球菌(24.6%、95%CI:19.1~30.1%)および黄色ブドウ球菌(23.3%、95%CI:17.9~28.7%)であった。 IE患者250例中、入院中に90例が死亡し、院内死亡率は36%(95%CI:30.0~41.9%)であった。14.8%の患者にはIEに対し外科手術が行われた(95%CI:10.4~19.2%)。院内死亡は、logistic EuroSCORE高値(23.1% vs.18.6%、オッズ比[OR]:1%増加当たり1.03、95%CI:1.00~1.05)、心不全(59.3% vs.23.7%、OR:3.36、95%CI:1.74~6.45)、急性腎不全(67.4% vs.31.6%、OR:2.70、95%CI:1.42~5.11)と関連していた。2年時死亡率は66.7%(95%CI:59.0~74.2%、死亡132例、生存115例)であった。

3271.

新規センサー式血糖測定器、1型糖尿病の低血糖時間を短縮/Lancet

 コントロール良好な1型糖尿病患者について、新たなセンサー式の速報型血糖モニタリング(flash glucose-monitoring)システム「Freestyle Libre」を用いることによって、使用開始前と比べて1日の低血糖時間が約1.4時間短縮できることが示された。既存のセルフモニタリングシステムと比べて、同時間短縮の差は1.24時間あったという。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のJan Bolinder氏らが、多施設共同無作為化対照非盲検試験の結果、明らかにし、Lancet誌オンライン版2016年9月12日号で発表した。6ヵ月後の低血糖時間を比較 研究グループは、2014年9月4日~2015年2月12日にかけて、欧州の23ヵ所の糖尿病センターを通じて、コントロール良好(HbA1c値7.5%[58mmol/mol]以下)の1型糖尿病成人患者328例を対象に試験を行った。 被験者全員に2週間にわたって盲検化センサーを装着してもらい、50%以上読み取りができた被験者(241例)を無作為に2群に分けた。一方の群には、センサー式速報型血糖モニタリングを(介入群、120例)、もう一方の群では、毛細血管ストリップを用いたセルフモニタリングを行った(対照群、121例)。 主要評価項目は、ベースラインから6ヵ月後までの、1日の低血糖症(70mg/dL[3.9mmol/L]未満)を呈した時間の変化だった。低血糖時間、1日3.38時間から2.03時間へ短縮 その結果、1日の低血糖症時間は、対照群ではベースライン3.44時間/日から6ヵ月後は3.27時間/日へと変化し、補正後平均変化時間は-0.14時間/日だった。一方、介入群では、3.38時間/日から2.03時間/日へと変化し、補正後平均変化時間は-1.39時間/日、率にして低血糖症時間は38%減少したことが示された。介入群と対照群の変化時間の差は、-1.24時間/日で有意差が認められた(p<0.0001)。 なお、センサー式血糖測定器に関連する低血糖症や安全面に関連したイベント発生は報告されなかったが、患者10例で13件の有害事象が報告された。センサーに関連したアレルギー4件(重症1例、中等症3例)、かゆみ1件(軽症)、発疹1件(軽症)、装置装着部の症状4件(重症)、紅斑2件(重症1件、軽症1件)、浮腫1件(中等度)。 また重篤有害事象の報告は9例10件(各群5件)が報告されたが、いずれも機器に関連したものではなかった。 結果を踏まえて研究グループは、さらに、コントロール不良な1型糖尿病患者や、若年患者を対象にした試験の実施が必要だとまとめている。

3272.

「つい食べてしまう」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第2回

■外来NGワード「その『つい』を止めなさい!」「食べなきゃ痩せる。もっと意志を強く持たないと…」「その一口が豚になる。残す勇気を持ちなさい!」■解説 「つい食べてしまう」という患者さんの心理として「健康のために、食べ過ぎることはよくない」という認識はあるのですが、目の前に自分の好きな物や残り物があると「味見をしておかないと」「捨てるのがもったいないから」などの意識が働いて、「つい食べてしまう」という行動に移ってしまうようです。太っていない人が空腹になると食べる物を探して食べはじめ、満腹になると食べ終わります。ところが、太っている人は、空腹ではないのに眼の前においしそうな外的刺激があると食べはじめることが知られています。これを「外発的摂食」といいます。そして、ある程度、お腹がいっぱいになっても食べ終わりません。お皿の中の食べる物がなくなるまで、食べる傾向があります。機能的MRIなどを用いた脳科学で、肥満者は目の前に自分の好物があると、視覚野で食品を認識した後、前頭前野に信号を伝えているそうです。もしかすると、「早く食べなさい」というシグナルを伝え、その結果、反射的に「つい手が出てしまう」という行動になっているのかもしれません。そういった患者さんには「意志を強く持て!」ではなく、その外的刺激を減らす作戦を立てていくほうがよいのかもしれません。これを「刺激統制法」と呼びます。これらの肥満者の心理を知ったところで、「つい食べてしまう」という患者さんには次のように話してみてはいかがでしょうか? ■患者さんとの会話でロールプレイ医師食事のほうはいかがですか?患者目の前においしそうなものがあると、つい食べちゃうんです。医師ハハハ。確かに、つい食べちゃいますよね。どんなものが多いですか?患者もらい物のお菓子が多いです。健康のためには、食べないほうがいいのはよくわかっているんですけど…。医師なるほど。もし、目の前に食べ物がなければ食べませんか?患者はい。わざわざ、自分では買いにいきません。医師それなら、いい方法がありますよ。患者それは何ですか?(興味津々)医師食べたくなる刺激を減らすことです。目の前にあると気になって食べたくなりますからね。そのお菓子、どうしましょうか?患者いつもテーブルの上に置いてありますので、戸棚に隠しておこうかなぁ。医師それはいいですね。けど、隠した場所は自分が知っているので、すぐに探せるかもわかりませんよ。患者確かに。隠し方も考えないといけませんね(うれしそうな顔)。■医師へのお勧めの言葉「もし、目の前になければ食べませんか?」1)Schlögl H, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016;4:695-705.2)Kanoski SE. Physiol Behav. 2012;106:337-344.3)Hare ME, et al. Contemp Clin Trials. 2012;33:534-549.

3273.

トルリシティ週1回注射で糖尿病患者の負担軽減

 8月31日、日本イーライリリー株式会社は、同社の持続性GLP-1受容体作動薬デュラグルチド(商品名:トルリシティ皮下注0.75mgアテオス)の投薬制限期間が、9月1日に解除されることから、「新しい治療オプションの登場による2型糖尿病治療強化への影響」をテーマにプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、糖尿病治療への新しい選択肢を示すとともに、患者の注射に対する意識アンケート調査結果も公表された。トルリシティは簡単な操作で週1回の注射 じめに岩本 紀之氏(同社研究開発本部 糖尿病領域)が、トルリシティの製品概要について説明した。 GLP-1受容体作動薬は、膵β細胞膜上のGLP-1受容体に結合し、血糖依存的にインスリン分泌を促進する作用があり、グルカゴン分泌抑制作用も併せ持つ。胃内容物排出抑制作用があり、空腹時と食後血糖値の両方を低下させ、食欲抑制作用は体重を低下させる作用がある。また、単独使用では、低血糖を来す可能性は低いとされる。 トルリシティは、ヒトGLP-1由来の製剤で、血中濃度半減期は4.5日。1週間にわたり、安定した血中濃度を示すという。 26週の単独使用の国内第III相試験では、HbA1c推移はプラセボ(n=68)がベースラインから+0.14に対し、デュラグルチド(n=280)は-1.43であった。また、HbA1c 7.0未満の達成率(26週後)は、プラセボが5.9%だったのに対し、デュラグルチドは71.4%であった。また、副作用の発現率は29.7%(272/917例)で便秘、悪心、下痢の順で多く、重篤な副作用は報告されていない。低血糖症(夜間・重症含む)の発現は、プラセボ(n=70)で1例、デュラグルチド(n=280)で6例、リラグルチド(n=137)で2例だった。 なお、トルリシティのデバイスであるアテオスは、1回使い切りのデバイスで、わずか3つのステップで使用することができる。インスリンと異なり、針の付け替え、薬剤の混和、空打ちは不要で、訓練を要せずに簡単に使用できるという。 対象は2型糖尿病患者で、週1回、朝昼晩いつでも0.75mgを注射するだけで、優れた血糖低下を発揮する。DPP-4阻害薬はいい治療薬だけれど… セミナーでは、「新しい治療オプションの登場による2型糖尿病治療強化への影響~最新の研究結果から、注射に対する抵抗感の現状と未来を考える~」と題して、麻生 好正氏(獨協医科大学 内分泌代謝内科 教授)が、望まれる糖尿病治療薬の在り方と患者アンケートの概要について解説を行った。 糖尿病の概要と現状について、生活環境の変化(身体活動の低下)と食生活の変化(動物性脂肪の摂取の増加)などにより、患者数が50年前と比較し約38倍になっていること、そして、わが国では新しい血糖コントロール目標が2013年より導入され、個別化による目標血糖値に向けて治療が行われていることが説明された。 次に糖尿病の治療薬に望まれることとして、「低血糖を起さない」「治療に伴う体重増加がない」「血糖低下作用が十分ある」の3点を示すとともに、長期血糖コントロール維持と効果の持続性、膵β細胞機能低下抑制、障害のある腎・肝臓でも使用可能、心血管系に悪影響を及ぼさない、長期の安全性なども望まれると説明した。 現在、使用できる糖尿病治療薬の中でも、体重増加を避け、低血糖リスクの低い薬としては、「DPP-4阻害薬」「GLP-1受容体作動薬」「SGLT2阻害薬」の3種が挙げられる。とくにインクレチン関連薬の「DPP-4阻害薬」はアジア人に効果が高く、わが国でも広く使用されているが、最近増えている欧米型肥満の患者には効果に限界があり、また、経口血糖降下薬だけでは約6割の患者しかHbA1cを7.0%以下に下げることができず、次の治療オプションの模索がされているという。週1回注射のトルリシティは患者のアドヒアランスを向上 もう1つのインクレチン関連薬の「GLP-1受容体作動薬」は、注射薬のために臨床現場では使用へのハードルが高いものであった。しかし、GLP-1受容体作動薬は、DPP-4阻害薬の効果に加え、食欲低下、胃排出能の低下、体重減少効果もあり、抗動脈硬化作用1)も報告されている。他剤との併用では、基礎インスリンが一番効果を発揮し、基礎インスリンの良好な空腹時血糖コントロール、低血糖リスクが少ない、体重増加が少ない、肝糖新生抑制などの特性とGLP-1受容体作動薬の特性とが相まって効果を発揮することで、優れたHbA1cのコントロールをもたらすと期待されている。 先述のように注射というハードル故に、使用に二の足を踏まれていたGLP-1受容体作動薬について、患者へのアンケート調査(糖尿病治療薬[注射製剤]に関する患者調査2))で、次のようなことが明らかになった。 「患者が重視した薬剤属性」では、投与頻度(44.1%)、投与方法(26.3%)、吐き気の頻度(15.1%)、低血糖の頻度(7.4%)と回答が寄せられた。 「投与の度に注射が必要な糖尿病の治療薬を使用したいと思うか?」については、89.5%の患者が使用したくない/あまり使用したくないと回答し、とても使用してみたい/いくらか使用してみたいと回答した患者はわずか1.7%だった。 「トルリシティをどの程度使用してみたいか?」については、37.9%の患者が依然として使用したくない・あまり使用したくないと回答し、とても使用してみたい・いくらか使用してみたいと回答した患者は42.9%となり、上記の1.7%と比較して急伸した。 週1回の注射という患者のアドヒアランスを考慮したGLP-1受容体作動薬の出現は、アンケートにみられた注射への心理的ハードルを越え、たとえば忙しい社会人や在宅治療中の高齢者には、利便性が高く、経口薬だけではない治療の選択肢の幅が拡がるという。 最後に麻生氏は、「これから注射薬の早期導入がしやすくなることで、糖尿病患者の個別化治療の促進や予後の改善が期待される」とレクチャーを終えた。【訂正のお知らせ】本文内の表記を一部訂正いたしました(2016年9月21日)。■参考日本イーライリリー(糖尿病・内分泌系の病気)■関連記事ケアネットの特集「インクレチン関連薬 徹底比較!」

3274.

言えない! 女性の過活動膀胱をめぐる悩み、その現状と対策

 生命に直結する疾患とまではいかないものの、日常生活の中で著しくQOLを低下させる症状、それが過活動膀胱(Overactive Bladder:OAB)である。男女ともに中高年層から年齢に正比例して増えているが、解剖学的性差により、女性のほうが悩ましさを抱えているという。 先月、このOABをテーマにしたプレスセミナーをファイザー株式会社が開催し、専門医2氏が講演した。このうち、日本排尿機能学会理事長の横山 修氏(福井大学医学部 泌尿器科学 教授)は、「患者さんに恥ずかしがらずに相談してもらえるよう、医療者側からの働きかけが必要」と述べた。過活動膀胱の尿意切迫感、イメージは「いきなり赤信号」 OABは尿意切迫感を必須とした症状症候群であり、診断のポイントとしては、頻尿(睡眠時の夜間頻尿も含む)を伴う一方、切迫性尿失禁は多くのケースで併発しているものの、必須ではない。横山氏によると、主症状である尿意切迫感は、抑えられない尿意が急に起こることを意味し(病的膀胱知覚)、一般的に明確な尿意を感じる膀胱の蓄尿量が300mL程度に満たなくても、トイレまで我慢できないほどの差し迫った尿意を感じるという。 OABをめぐっては、2002年に全国の40歳以上の男女約1万人を対象に行った大規模疫学調査をベースに2012年時点の人口構成から推計すると、患者数は約1,040万人に上り、有症状率は全体の14.1%、つまり7人に1人の割合でOABの自覚症状があるとみられている。ところが、潜在的にこれほど多数の患者が見込まれるにもかかわらず、積極的な治療を行っていない人が多いのがこの疾患の特徴である。 OAB自体が生命に直結する疾患ではないものの、外出時や長時間かかる会議や移動などの際、常にトイレの心配が付きまとうため、日常生活への影響は大きい。ファイザーが今年3月、OABで医療機関を受診経験のある50歳以上の女性265人を対象に行ったインターネット調査によると、回答者の実に92.5%が切迫性尿失禁を経験していることがわかった。 また、「外出時で、常にトイレの場所を気にしないといけない」(78.1%)、「症状に対して、気分的に落ち込む・滅入ってしまう」(50.9%)といった日常生活への精神的な負担感の訴えや、「旅行や外出を控えてしまう」(60.0%)、「友人・知人との付き合いを控える」(40.0%)など、日常生活や社会活動を制限されている実情も浮き彫りになった。 横山氏によると、OABによるQOL低下の度合いは、糖尿病患者のそれに匹敵するとしたうえで、「症状の特異性により、うまく相談できない患者さんが多い可能性がある。視診や台上診なども不要なので、恥ずかしがらずに相談してもらえるよう医療者側からの働きかけが必要」と述べた。「トイレが近い」という何気ない訴えにもヒントが 続いて、「女性における過活動膀胱相談の実際」と題して、巴 ひかる氏(東京女子医科大学 東医療センター 骨盤底機能再建診療部泌尿器科 教授)が講演した。 それによると、OABをめぐる治療事情には性差があり、男性の受診率が30%超であるのに対し、女性はわずか7.7%に留まっているという。この理由として巴氏は、男性は高年齢層になるに従い前立腺肥大を理由に受診する人が多く、その際にOABの症状についても診断されるケースが多い一方、女性の場合は、症状への恥ずかしさや年齢的に仕方がないという思い込みから、かかりつけ医にも打ち明けるのをためらう人が多いためではないか、という見解を示した。  しかしOABは治療が見込める疾患であり、診断がつけば、抗コリン薬やβ3アドレナリン受容体作動薬などによる薬物療法をはじめ、膀胱訓練や骨盤底筋訓練などの行動療法、電気刺激療法などの神経変調療法により症状の改善が期待できる。巴氏は、「OABは自覚症状症候群なので、問診や調査票でも診断が可能である。患者さんの『最近トイレが近い』という何気ない訴えの中にもOAB診断のヒントがあるので、注意深く問診をして、患者さんのQOL向上につなげてほしい」と述べた。

3275.

専門家のプライドか、普遍的なお金か?(解説:後藤 信哉 氏)-592

 BMJ誌は面白い論文を掲載する。英国の医療システムは、国民皆保険の日本と類似している。車産業、ファッション産業と異なり、医薬品産業は公共的費用の配分である。 税金の配分において、役人が「私は、この工事を請け負う特定の業者から教育講演を依頼されて謝金を受け取ったり、その業者が業界内の教育に用いるパンフレットの作成を依頼されて謝金を受け取っても税金の使途をその特定業者に振り向けることはありません」と言っても、多くの人は癒着と受け止めるであろう。 医師はきわめて専門的な職種であり、個々の医師のプライドはきわめて高いので、「特定の業者から教育講演を依頼されて謝金を受け取ったり、その業者が業界内の教育に用いるパンフレットの作成を依頼されて謝金を受け取ってもその特定業者の薬を処方することはありません」との信頼感が日本の社会には残っている(いた?)。しかし、プライドの高い医師といっても普遍的価値である「お金」の前では弱い。「お金」の普遍性から考えれば、医師のみに高いプライドに基づいた独立性を期待すること自体に無理があるともいえる。 役人の汚職は犯罪であり、社会から嫌悪される。公的性格の高い医療コストを特定業者に振り向けるリスクのある「お金」については、真剣に考える時期が来た。医師と企業の関係は、専門家としての医師のアドバイスによる薬剤の開発など産学連携としての価値もある。普遍性のある「お金」故に、相手企業のために働いたら、その対価を受け取ることは正当な場合も多い。しかし、本論文は、講演料、教育コストとされても「汚職」に近い結果をもたらす場合を示した。 医師が企業から受け取る謝金を公開する透明性ガイドラインは制定された。企業から個別の医師への講演料、大学の教室への奨学寄付金なども公開されている。しかし、製薬企業などが営業活動に費やす費用公開の議論は進んでいない。NEJM誌の編集者であったマーシャ エンジェル博士は、製薬企業の開発コストは総支出の20%程度で、営業、マーケット、管理費用をかけすぎていると「ビックファーマ」に記載している。医療費は巨額である。製薬企業といえど、自動車、ファッション業界同様マーケット活動をする自由があっても、公共性の高い医療費を使う製薬、医療デバイス産業には、一般の企業以上の支出の透明化が必須であると筆者は考える。

3277.

ピオグリタゾンと膀胱がんの関連はいかに…(解説:吉岡 成人 氏)-589

BMJ誌に2つの相反する解析データが掲載 2016年3月末、英国のプライマリケアのデータベースを利用して、14万5,806例の新たに治療を開始した2型糖尿病患者を解析したデータにおいて、ピオグリタゾン投与群ではそれ以外の薬剤治療群と比較してハザード比で1.63(95%信頼区間:1.22~2.19)倍、膀胱がんの発症が多いことがBritish Medical Journal誌に報告された1)。ピオグリタゾンの使用期間が2年以上、累積使用量が2万8,000mgを超えるとリスクが高まるとされている。そして、5ヵ月後の同誌には、ピオグリタゾンと膀胱がんのリスクは関連がないという報告が掲載されている2)。欧州4ヵ国の37万人の解析 フィンランド、オランダ、スウェーデン、英国の欧州4ヵ国の医療データベースを用いた後ろ向きコホート研究で、ピオグリタゾンが投与された5万6,337例とピオグリタゾン以外の薬剤を投与された同一国の2型糖尿病患者31万7,109例を対象として、1対1(nearest match cohort)および1対10(multiple match cohort)でマッチングした2つのコホートを設定し、Cox比例ハザードモデルを用いて解析を行っている。 平均追跡期間2.9年において、ピオグリタゾン群では130例の膀胱がんが認められ、対照群では1対1コホートで153例、1対10コホートで970例であった。膀胱がん発症のリスクについて、ピオグリタゾンの対照群に対するハザード比は1対1コホートで0.99(95%信頼区間:0.75~1.30)、1対10コホートで1.00(95%信頼区間:0.83~1.21)であった。また、ピオグリタゾンの投与期間や累積使用量と膀胱がんのリスクは関連せず、1対1コホートでピオグリタゾンの使用期間が48ヵ月を超えている群の補正後ハザード比は0.86(95%信頼区間:0.44~1.66)、累積使用量が4万mgを超えている群では0.65(95%信頼区間:0.33~1.26)であったと報告されている。いくつもの報告があるが… ピオグリタゾンは承認前の動物実験において、雄ラットにおける膀胱腫瘍の増加が確認されており、米国の医療保険組織であるKNPC(Kaiser Permanente North California)の医療保険加入者データベースを用いた前向きの観察研究が2004年から行われ、2011年に公表された5年時の中間報告で、ピオグリタゾンを2年間以上使用した患者において膀胱がんのリスクが1.40倍(95%信頼区間:1.03~2.00)と有意に上昇することが報告された。さらに、フランスでの保険データベースによる糖尿病患者約150万例を対象とした後ろ向きコホート研究でも膀胱がんのリスクが1.22倍(95%信頼区間:1.05~1.43)であることが報告され、フランスとドイツではピオグリタゾンが販売停止となっている。 その後、欧州と北米の6つのコホート研究を対象に、100万例以上の糖尿病患者を対象として、割り付けバイアス(allocation bias)を最小化したモデルを用いた検討が2015年3月に報告され、年齢、糖尿病の罹患期間、喫煙、ピオグリタゾンの使用歴で調整した後の100日間の累積使用当たりの発症率比は、男性で1.01(95%信頼区間:0.97~1.06)、女性で1.04(95%信頼区間:0.97~1.11)であり、ピオグリタゾンと膀胱がんのリスクは関連が認められないと結論付けられた3)。 KNPCの10年時における最終解析でも、ピオグリタゾンは、膀胱がんのリスクの増加とは関連しない(調整後ハザード比1.06:95%信頼区間:0.89~1.26)と報告されている4)。薬の安全性が確立されるには… 日本においては、ピオグリタゾンは1999年9月に製造が承認され、同年の12月に発売された。心血管イベントの発生抑制、冠動脈疾患におけるインターベンション後の再狭窄抑制などに対する有効性が喧伝され、一時期、多くの患者に使用された。しかし、副作用としての膀胱がん発症リスク、骨折のリスクなどに対する懸念が広まり、DPP-4阻害薬の発売とあいまってその使用量は減少している。ピオグリタゾンと膀胱がんの関連が示唆されてから5年以上経ってもこの問題には決着がついていない。 優れた臨床研究には長い期間と研究に対する情熱、膨大な基金が必要になるが、薬剤の安全性を担保するのに20年という期間が十分ではないということを私たちに教えてくれるのが、ピオグリタゾンという薬剤である。

3278.

観察研究の限界超えられず:CLARIFY登録観察研究(解説:桑島 巖 氏)-588

 冠動脈疾患合併の高血圧症例では、過度な降圧によってかえって心血管予後が悪くなるという、いわゆるJカーブ論争というのが古くからあるが、本研究はそれをぶり返す論文である。すなわち、登録時および観察中の血圧が120mmHg以上では心血管死、心血管合併症は増えるものの、120mmHg未満であっても予後は悪化するという結論である。 “ぶり返す”というのは、昨年発表された米国からのランダム化試験SPRINTで、中等度以上のリスクを有する高血圧症例では、収縮期血圧120mmHg未満への降圧が140mmHg未満よりも心疾患予後の点で優れているという、J-曲線仮説を否定する結論が出ているからである。 CLARIFY登録研究は観察研究であり、エビデンスの信頼性ではランダム化試験SPRINTには及ばないことを認識しておくべきである。 本試験は、登録観察研究の大きな欠点である交絡因子を除外しきれていない点は難点である。具体的には、収縮期血圧120mmHg未満の群では、登録時すでに心筋梗塞症例が66%であり、他の血圧群(120~129:60%、130~139:57%、140~149:56%、>150mmHg:53%)よりも明らかに多い。また、登録時の左室駆出率も<120mmHgの群では52.7%と他の群の56~57%よりも明らかに低い。 これらのことは何を意味するか?登録時および観察時収縮期血圧が低い群は、すでに冠動脈疾患が重症でありかつ心機能が低下していることを意味し、登録時点で予後不良であったことを意味する。このことは、登録時の心不全合併率が高いことからも明らかである。つまり、血圧が下がったから心血管予後を悪くしたのではなく、最初から冠動脈疾患が重症だったから血圧が低かったのである。心血管死が多いのは血圧が下がった結果ではなく、心血管が重症だったから血圧が低かったという因果の逆転である。 しかも、血圧測定はたった5分間安静にしただけの診察室血圧であり、さらに年に1回の測定である。医師のいないところで自動血圧計での3回測定で、3ヵ月に1回測定したSPRINT試験とは大きな違いがある。 ちなみに、Jカーブ論争はそろそろ打ち止めとすべきであると私は考える。元々、この仮説はCruickshank氏という人物が、冠動脈疾患合併症を有する高血圧では拡張期血圧を85mmHg以下に下げると冠動脈死が増えるといって一時話題になった仮説であるが、拡張期85mmHgなどというレベル以下での予後悪化は、今では完全に否定されている。高齢化社会となった現在では、むしろ収縮期血圧が重視されており、拡張期血圧はかなり低いレベルでも問題にならない。血圧と死亡の関係では必ずJ曲線は存在するのである。致死的疾患では死に近づくほど、血圧は0になることは明白で、死と血圧の関係はJカーブとなるからである。Jカーブ論争には終止符を打つべきである。

3279.

レビー小体型とアルツハイマー型認知症、脳血管病変の違いは

 MRI上の脳血管病変は、アルツハイマー型認知症(AD)では一般的であるが、レビー小体型認知症(DLB)における頻度や影響はあまり知られていない。米国・メイヨークリニックのLidia Sarro氏らは、DLB患者の脳血管病変に関して検討を行った。Alzheimer's & dementia誌オンライン版2016年8月10日号の報告。 連続したDLB患者81例、AD患者240例のMRIによる白質病変(WMHs)と梗塞を評価し、年齢、性別をマッチさせた認知機能正常者(CN)との比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・DLBは、CNと比較し、高いWMH容積を有していた。DLBのWMH容積は、ADと比較し、後頭部および後脳室周辺で高かった。・高いWMH容積は、心血管疾患や糖尿病の既往歴と関連していたが、DLBの臨床的重症度との関連はみられなかった。・DLBにおける梗塞の頻度に、マッチさせたCNやADとの違いはみられなかった。関連医療ニュース レビー小体型とアルツハイマー型を見分ける、PETイメージング レビー小体型認知症、認知機能と脳萎縮の関連:大阪市立大学 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学

3280.

顔面移植術後の長期アウトカムは?/Lancet

 顔面移植では術前の十分な手術可否の検討と、術後の長期的なサポートプログラムが必要であることを、フランス・パリ第5大学のLaurent Lantieri氏らが単施設において前向きに追跡した結果、報告した。顔面移植は2005年以降に30件以上が実施されているが、これまでに長期追跡の報告論文はなかった。Lancet誌オンライン版2016年8月24日号掲載の報告。顔面外傷20例のうち移植手術を行った7例を追跡 研究グループは、顔面移植の長期的なリスク(合併症、免疫抑制薬治療の副作用、急性/慢性拒絶反応)とベネフィット(QOLの改善)を明らかにするため、2000年1月~2009年12月に受診した顔面外傷(腫瘍、熱傷、銃創)の患者20例を前向きに追跡評価した。顔面移植は、第1除外基準(直近のがん既往、精神状態が不安定など)の判定により10例が選択され、その後、第2除外基準によって3例が除外され(強度の抗HLA感作を呈した熱傷2例、予後不良の黒色腫を併発した色素性乾皮症1例)、7例に実施された(神経線維腫症I型2例、熱傷1例、自傷銃創4例)。実施時期は2007年1月21日~2011年4月16日。 予定されたリビジョン手術、免疫抑制薬のフォローアップ治療を除くすべての入院を有害事象とみなし(安全性エンドポイント)、事前規定の免疫学的・代謝的・手術関連・社会的統合に関するエンドポイントを前向きに収集して評価した。また、SF-36健康調査票を用いて健康関連QOLの定量的評価を行った。早期死亡1例を除く6例について、平均6年追跡 7例のうち、2例が術後に死亡した。1例は、顔面移植に伴う緑膿菌感染症により術後65日で死亡、もう1例は術後3.4年時点で自殺によるものであった。 長期アウトカムの評価には、6例(顔面同種移植後平均6年[範囲:3.4~9年])のデータを包含した。 6例全員が、機能的移植を受けた。またリビジョン手術は平均3回(範囲:1~6)受けていた。 安全性エンドポイントとして、術後1ヵ月以内では感染症が、1日目~7年時点までは急性拒絶反応が、または免疫抑制薬治療の副作用が報告された。拒絶反応の再発事例には維持療法として高用量のステロイドの投与が、追跡期間最後までハイレベルに行われた。しかし、ステロイド使用の副作用としての糖尿病を発症した患者はいなかった。 3例の患者において、高血圧症が認められ治療を必要とした。また全患者において糸球体濾過量の顕著な低下がみられた。 レシピエントおよび家族とも全員が、移植を受け入れていた。一方で、社会的統合およびQOLの改善は、患者間でばらつきが大きく、またベースライン値および精神科合併障害によっても異なっていた。 これらを踏まえて著者は、「所見は、顔面移植のリスクベネフィットにおいて、社会的支援と患者の既存の精神状態が重大な影響を及ぼすことを示すものであった」と指摘し、「検討したようなタイプの顔面移植では、厳格な施設内倫理委員会の下、術前の患者選択を慎重に行い、また術後の長期にわたるフォローアップが求められる」とまとめている。

検索結果 合計:4905件 表示位置:3261 - 3280