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死亡リスクが低い飲酒量、ロング缶で週5本まで?/Lancet

 アルコール摂取の低リスク推奨量は、各国のガイドラインで大きな差があるという。英国・ケンブリッジ大学のAngela M. Wood氏らは、約60万人のアルコール摂取状況を解析し、死亡リスクが最も低い閾値は約100g*/週であることを示した。研究の成果は、Lancet誌2018年4月14日号に掲載された。国ごとで低リスク推奨量にばらつきがあるのは、最も死亡リスクが低い飲酒量の閾値の曖昧さや、心血管疾患のサブタイプに関連する、アルコール摂取に特異的な帰結の不確実性を反映している可能性があるためとされる。*アルコール量の目安:ビール(5%)500mLで20g19の高所得国の前向き研究83件のデータを解析 研究グループは、全死因死亡および心血管疾患のリスクが最も低いアルコール摂取量の閾値を明らかにするために、心血管疾患の既往歴のないアルコール摂取者59万9,912例のデータを解析した(英国医学研究審議会などの助成による)。 19の高所得国の3つの大規模なデータソース(Emerging Risk Factors Collaboration、EPIC-CVD、UK Biobank)から、個々の参加者のデータを収集し、統合解析を行った。83件の前向き研究を施設、年齢、性別、喫煙、糖尿病などで補正して、用量反応関係の特性を明らかにし、アルコール摂取量の100g/週ごとのハザード比(HR)を算出した。 ベースラインのアルコール摂取量を、週当たりの摂取量(g)で8つの群に分類し、アルコール摂取量と、全死因死亡、心血管疾患全体、心血管疾患のサブタイプとの関連を評価した。HRは、アルコール摂取量の長期的なばらつきの推定値で修正した。適量は、グラスワイン、1パイントのビールで、週に5~6杯 登録のベースライン年は1964~2010年で、平均年齢は57±9歳、44%が女性だった。喫煙者は21%で、アルコール摂取量100g/週以上が約50%を占め、350g/週以上は8.4%であった。 540万人年のフォローアップ期間に、4万310例(血管系:1万1,762例、新生物:1万5,150例を含む)が死亡し、3万9,018例(脳卒中:1万2,090例、心筋梗塞:1万4,539例、心筋梗塞を除く冠動脈疾患:7,990例、心不全:2,711例、他の心血管疾患による死亡:1,121例を含む)が心血管疾患イベントを発症した。 全死因死亡のHRは、アルコール摂取量が増加するに従って曲線を描いて上昇し、最も死亡リスクの低い摂取量は約100g/週未満であった。これは週に、英国の標準的なグラスワインまたは1パイントのビールで、およそ5~6杯に相当する。 アルコール摂取量の増加とリスクの上昇に、ほぼ直線的な関連が認められた心血管疾患のサブタイプとして、脳卒中(摂取量の100g/週増加のHR:1.14、95%信頼区間[CI]:1.10~1.17)、心筋梗塞を除く冠動脈疾患(1.06、1.00~1.11)、心不全(1.09、1.03~1.15)、致死的高血圧性疾患(1.24、1.15~1.33)、致死的大動脈瘤(1.15、1.03~1.28)が挙げられた。 これに対し、アルコール摂取量の増加とともに、心筋梗塞のリスクは低下し、対数線形的な関連がみられた(HR:0.94、95%CI:0.91~0.97)。 40歳時の平均余命は男女とも、アルコール摂取量が>0~≦100g/週の集団と比較して、>100~≦200g/週の集団は約6ヵ月短く、>200~≦350g/週の集団は約1~2年、>350g/週の集団は約4~5年短縮した。 著者は、「これらのデータは、現行の多くのガイドラインで推奨されているアルコール摂取量制限値を、さらに低くすることを支持するものである」としている。

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術後せん妄を経験した大腿骨頚部骨折患者の認知症発症リスク

 術後せん妄が、股関節部の骨折患者の認知症発症率にどの程度影響を及ぼすかは不明であり、せん妄や認知症の検出方法については検証が必要とされている。スウェーデン・ウメオ大学のB. Olofsson氏らは、大腿骨頚部骨折手術後3年以内の認知症発症について、潜在的な予測因子として術後せん妄に焦点を当て、調査を行った。International journal of geriatric psychiatry誌2018年4月号の報告。 認知症、うつ病、心理的ウェルビーイング、栄養状態について、入院中および手術後4、12、36ヵ月後に評価を行った。術後せん妄および認知症発症に関連する因子は、ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・研究対象は、認知症の既往歴のない患者135例。そのうち、せん妄を発症したのは術前で20例(14.8%)、術後で75例(55.5%)であった。・術後3年時で、43例(31.8%)が認知症と診断された。・術後せん妄が認められた75例には、認知症を発症しなかった患者(92例中36例、39.1%)よりも発症した患者(43例中39例、90.6%)の方が、多く含まれていた。・ロジスティック回帰モデルでは、共変量(年齢、性別、糖尿病、術前および術後せん妄、過活動性せん妄、せん妄の日数、尿路感染症、簡易栄養状態評価表スコア)で調整した後、術後せん妄は、術後3年以内の新規認知症発症の独立したリスク因子であることが示唆された(オッズ比:15.6、95%CI:2.6~91.6)。 著者らは「本結果より、術後せん妄が認められる老年性股関節部の骨折患者では、認知症の発症を注意深く観察する必要がある」としている。■関連記事せん妄はアルツハイマー病悪化の危険因子高齢者へのZ薬と転倒・骨折リスクに関するメタ解析せん妄に対する薬物治療、日本の専門家はどう考えているか

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第2回 見た目が食欲を左右する【実践型!食事指導スライド】

第2回 見た目が食欲を左右する医療者向けワンポイント解説「ちょっと少なめ」「小盛り」の実践方法食事量が多い糖尿病患者さんに量を減らしてもらうために、「量を減らしましょう」「ごはんは残しましょう」「腹8分目にしてください」とお伝えする場合があります。しかし、患者さんからすると、頭でわかっていても、いざ実行となるとハードルが高くなってしまうのが現実です。その理由として、「お腹いっぱい食べたい」「食べないとお腹が減るのでは」「もったいない」「残して、周りに何か言われるのが面倒くさい」などの色々な葛藤が邪魔をするからです。この葛藤をクリアして、実際に”成功体験”をしてもらうことがハードルを下げるポイントです。成功体験をしてもらうために、最初に食事の量を減らすメリットを患者さんに伝えてあげることが大切です。メリットの例:「ご飯を少なめにすると、午後眠くなりにくいですよ」「毎食2口ずつ残すことを実践された患者さんは、体重が1ヵ月で1kg落ちたそうですよ(聞いた話など)」次に成功体験を感じてもらうための実際の方法です。自宅で満足度を上げるには、茶碗や食器を小さくする方法があります。たとえば、「同じメニューやスナック菓子を同条件で出す際に、大きなパッケージを渡すほうが平均20〜25%食べる量が増える」という報告があります(参考:Brian Wansink, Mindless Eating: Why We Eat More Than We Think, Bantam,2010)。つまり、人は、”量やカロリーで満腹を感じる”のではなく、”視覚に左右され、摂取量が変化する”ことがわかります。今よりも小さな食器やポーションに変えることによって視覚を通して満足する摂取量が変わり、それを継続する結果、お腹の満足度も定着していきます。中食や外食など、自分で量が調整できない場合は、最初に“食べる量”を自身で決めてもらいます。患者さんの中には「少なめにしてください」とお店で頼むことはハードルが高く、周りの人間に何か言われるのではないか? と気になって言えないという方も多いです。そんなときはロールプレイングで練習をすることで、言いやすくなります。周りの人間の「あれ? ダイエット? 」「少なくするなんて珍しい」など冷やかし半分の発言があった場合には、さらりと「***に言われて意識しているのですよ」(***は、医師、家族、友人、TVで観て、など)と宣言できると応援してもらえることが多くなります。その際に、情報やメリットとして「外食って案外量(または、カロリーや脂質など)が多いみたいですね」や「量を減らすと午後眠たくならなくていいですよ」などの会話を入れるのも良い方法です。1人前をそのまま頼んだ場合、食べないと決めたものは、“最初に”食べない分をふたや皿の隅などにまとめます。視界から外すことで、食べ物の誘惑を抑えることができるわけです。こうした食べ方の取り組みは、「減らすことができた」「この量で足りた」「満足できた」と、実行して実際に成功すると、ハードルが下がり次回以降につながりやすくなります。最初は満足度が低くても、だんだんと”それが当たり前”となることで量は調整することができます。そのためには、まずは実行してみようと思ってもらうことです。その次に、実行した時の成功体験とその感想を聞いて、一緒に患者さんの中の少なめハードルを下げてあげましょう。

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2型DMの死亡率、SGLT2 vs.GLP-1 vs.DPP-4/JAMA

 2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬使用、プラセボ、未治療と比べて、死亡率が有意に低いことが示された。また、DPP-4阻害薬の使用は、プラセボ、未治療よりも、死亡率は低下しないことも示された。英国・Imperial College Healthcare NHS Foundation TrustのSean L. Zheng氏らによるネットワークメタ解析の結果で、JAMA誌2018年4月17日号で発表された。2型糖尿病治療について、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬を比較した臨床的な有効性は明らかになっていなかった。ネットワークメタ解析で、全死因死亡を評価 研究グループは、発刊から2017年10月11日までのMEDLINE、Embase、Cochrane Library Central Register of Controlled Trials、および公表されているメタ解析を検索し、2型糖尿病患者が登録され、追跡期間が12週間以上、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬を相互に比較またはプラセボ、未治療と比較した無作為化試験を選定した。 1人の研究者がデータのスクリーニングを行い、2人の研究者が重複抽出して、ベイジアン階層ネットワークメタ解析を行った。 主要アウトカムは全死因死亡で、副次アウトカムは心血管(CV)死、心不全(HF)死、心筋梗塞(MI)、不安定狭心症、脳卒中であった。安全性のエンドポイントは、有害事象および低血糖症の発現であった。対照群と比較して、SGLT2阻害薬群、GLP-1受容体作動薬群は有意に低下 236試験、無作為化を受けた被験者17万6,310例のデータが解析に組み込まれた。 対照(プラセボまたは未治療)群と比較して、SGLT2阻害薬群(絶対リスク差[ARD]:-1.0%、ハザード比[HR]:0.80[95%確信区間[CrI]:0.71~0.89])、GLP-1受容体作動薬群(ARD:-0.6%、HR:0.88[95%CrI:0.81~0.94])は、全死因死亡率が有意に低かった。DPP-4阻害薬群との比較においても、SGLT2阻害薬群(-0.9%、0.78[0.68~0.90])、GLP-1受容体作動薬群(-0.5%、0.86[0.77~0.96])は死亡率が低かった。 DPP-4阻害薬群は、対照群との比較で全死因死亡率の有意な低下が認められなかった(0.1%、1.02[0.94~1.11])。 SGLT2阻害薬群(−0.8%、0.79[0.69~0.91])、GLP-1受容体作動薬群(−0.5%、0.85[0.77~0.94])は、対照群との比較において、CV死についても有意に減少した。 SGLT2阻害薬群は、HFイベント(−1.1%、0.62[0.54~0.72])、MI(−0.6%、0.86[0.77~0.97])についても、対照群と比べて有意に少なかった。 GLP-1受容体作動薬群は、SGLT2阻害薬群(5.8%、1.80[1.44~2.25])、DPP-4阻害薬群(3.1%、1.93[1.59~2.35])と比べて、試験中止となった有害事象の発現リスクが高かった。

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糖尿病網膜症の日本人患者への強化スタチン療法:EMPATHY試験

 冠動脈疾患の既往歴のない、糖尿病網膜症合併高コレステロール血症患者に対するスタチン単独によるLDL-C低下療法は、通常治療と強化治療とで心血管イベントまたは心血管関連死に有意差は認められなかった。慶應義塾大学の伊藤 裕氏らが、EMPATHY試験の結果を報告した。著者は、「今回の結果は当初の予想より両群におけるLDL-Cの差が少なかった(36ヵ月時で27.7mg/dL)ため」との見解を示したうえで、「高リスク患者に対するtreat-to-target治療におけるLDL-C<70mg/dL達成のベネフィットについては、さらなる研究が必要である」とまとめている。Diabetes Care誌オンライン版2018年4月6日号掲載の報告。 EMPATHY試験は多施設共同試験で、PROBE(Prospective Randomized Open Blinded-Endpoint)法が用いられた。糖尿病網膜症および高コレステロール血症を合併し、かつ冠動脈疾患の既往歴のない30歳以上の2型糖尿病患者を、強化脂質管理群(LDLコレステロール<70mg/dLを目標、2,518例)と通常脂質管理群(LDL-C:100~120mg/dLを目標、2,524例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、心血管疾患発症または心血管疾患死であった。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間は37±13ヵ月であった。・36ヵ月時のLDL-Cは、強化脂質管理群76.5±21.6 mg/dL、通常脂質管理群104.1±22.1mg/dLであった(p<0.001)。・主要評価項目のイベントは、強化脂質管理群で129例、通常脂質管理群153例に発生した(ハザード比[HR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.67~1.07、p=0.15)。・両群のLDL-Cの差とイベント減少率との関係は、糖尿病患者の一次予防研究と一致していた。・探索的解析の結果、強化脂質管理群で脳イベントが有意に少ないことが示された(HR:0.52、95%CI:0.31~0.88、p=0.01)。・安全性は両群で差はなかった。

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強化脂質低下療法はベース値が高いほど有益/JAMA

 米国・Inova Heart and Vascular InstituteのEliano P. Navarese氏らは、被験者約27万例を含む34件の無作為化試験のメタ解析において、LDLコレステロール(LDL-C)低下療法の強化は非強化と比べて、ベースラインのLDL-C値がより高い患者で、総死亡(total mortality)および心血管死のリスクを低下させることを明らかにした。また、ベースラインのLDL-C値が100mg/dL未満では、この関連性は確認されず、著者は「LDL-C低下療法で最も大きなベネフィットが得られるのは、ベースラインのLDL-C値が高い患者である可能性が示唆された」とまとめている。JAMA誌2018年4月17日号掲載の報告より。無作為化試験34件、約27万例のデータをメタ解析 研究グループは、電子データベース(Cochrane、MEDLINE、EMBASE、TCTMD、ClinicalTrials.gov、major congress proceedings)を用い、2018年2月2日までに発表された、スタチン、エゼチミブおよびPCSK9阻害薬の無作為化試験を検索し、研究者2人がデータを抽出するとともにバイアスリスクを評価した。試験介入群は、「強化療法」(強力な薬理学的介入)、または「非強化療法」(弱作用、プラセボまたは対照)に分類された。 主要評価項目は総死亡率および心血管死亡率とし、ランダム効果メタ回帰モデルおよびメタ解析を用い、ベースラインのLDL-C値と死亡、主要心血管イベント(MACE)などの低下との関連性を評価した。 検索により計34試験が特定され、強化療法13万6,299例、非強化療法13万3,989例、計27万288例がメタ解析に組み込まれた。関連が確認されたのは、ベースラインLDL-C値100mg/dL以上の場合のみ 全死因死亡率は、強化療法群が非強化療法群よりも低かったが(7.08% vs.7.70%、率比[RR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.88~0.96)、ベースラインLDL-C値によってばらつきがみられた。 メタ回帰分析において、強化療法はベースラインLDL-C値が高いほど全死因死亡率もより低くなる関連が認められた(ベースラインLDL-C値の40mg/dL上昇当たりのRRの変化:0.91、95%CI:0.86~0.96、p=0.001/絶対リスク差[ARD]:-1.05症例/1,000人年、95%CI:-1.59~-0.51)。同様の関連は、メタ解析では、ベースラインLDL-C値が100mg/dL以上の場合にのみ確認された(相互作用のp<0.001)。 心血管死亡率も同様に、強化療法群が非強化療法群よりも低く(3.48% vs.4.07%、RR:0.84、95%CI:0.79~0.89)、ベースラインLDL-C値によってばらつきがみられた。メタ回帰分析において、強化療法はベースラインLDL-C高値ほど心血管死亡率減少との関連が示され(ベースラインLDL-C値の40mg/dL上昇当たりのRRの変化:0.86、95%CI:0.80~0.94、p<0.001/ARD:-1.0症例/1,000人年、95%CI:-1.51~-0.45)、同様の関連はメタ解析では、ベースラインLDL-C値100mg/dL以上の場合にのみ確認された(相互作用のp<0.001)。 メタ解析において、全死因死亡率が最も減少したのは、ベースラインLDL-C値が160mg/dL以上の患者を対象とした試験であった(RR:0.72、95%CI:0.62~0.84、p<0.001、1,000人年当たり死亡は4.3減少)。強化療法は、ベースラインLDL-C値が高いほど、心筋梗塞、血管再建術およびMACEのリスクもより減少する関連が認められた。

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肥満2型糖尿病に対するメタボリックサージェリーの展望

 わが国では、2014年4月に腹腔鏡下スリーブ状胃切除術手術が保険適応になってから、すでに4年が経っている。このほかに実施されている3つの術式(腹腔鏡下スリーブバイパス術、腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術、腹腔鏡下調節性胃バンディング術)はそれぞれ自費診療であったが、2型糖尿病を合併する重症肥満患者に対する腹腔鏡下スリーブバイパス術が、先進医療として2018年1月に認可された。この治療法の開発者であり普及を目指す、笠間 和典氏(四谷メディカルキューブ減量・糖尿病外科センター センター長)が2018年4月11日、メドトロニック株式会社本社にてメタボリックサージェリーについて講演した。日本の治療件数は認知度に相関 同氏によると2018年3月に開催されたアジア太平洋肥満代謝外科学会(APMBSS)でのNational reportの結果では、全手術件数トップはサウジアラビアの1万7,000件、それに対して日本は471件。隣国の台湾でも2,834件と日本と比較すると大きな乖離があり、「この原因は言うまでもなく認知度が低いためである」という。手術適応患者の要件 日本肥満学会によると、日本人の肥満症の定義であるBMI≧25は、WHOが定義するBMI≧30とは異なる。肥満患者はさまざまな合併症を伴っており、その中の1つが2型糖尿病である。患者は一生、糖尿病と共存するだけではなくさまざまな合併症も併発し、治療上多くの薬剤が必要となることから医療経済にも負担を強いることとなる。また、美容目的で施術される脂肪吸引と混同されがちなため、日本肥満症治療学会が手術適応患者を以下のように定義している。<肥満手術の要件>・年齢18歳以上、65歳以下・ 6ヵ月以上の内科的治療が行われているにもかかわらず、有意な体重減少および肥満に伴う合併症の改善が認められず、次のいずれかの条件を満たすもの 1)減量が目的の場合はBMI 35以上であること 2)合併疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肝機能障害、睡眠時無呼吸症候群など)治療が主目的の場合、糖尿病または糖尿病以外の2つ以上の合併疾患を有する場合は BMI 32以上であること腹腔鏡下スリーブバイパス術が体内にもたらす影響とは 海外で多く実施されている胃バイパス術は、術後体内に空置きされた胃が残ってしまう。日本人は胃がんのリスクが高いため、術後胃がん検査を行えないこの術式は不適である。また、現在日本で多くの実績を上げている腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は術後の合併症が少ないものの、重症2型糖尿病の改善率が低い。そこで、これらの長所を生かしたのが腹腔鏡下スリーブバイパス術である。この術式は胃の幽門と十二指腸とを吻合するため、ダンピングが少ない、潰瘍が少ない、胃の観察が通常の胃内視鏡でできるなどのメリットがある。それに加えて、糖尿病などの内分泌疾患の改善が報告されているという。そこで、同氏は減量外科治療のうち、スリーブバイパス術を受け、1年間経過観察された2型糖尿病の日本人75例のHbA1c、BMI、そして薬物離脱率を検証。対象患者のうち48%が術前にインスリンを使用し、糖尿病罹患期間は7.2±6.2年であった。結果は以下のとおり。・HbA1c<7.0%を達成したのは、術後1年後で93%だった。また、術後インスリンを離脱できたのは97%だった。・BMIは術前38.5から術後1年後27.2、5年後は28.4(p<0.001)と減少を維持できた。糖尿病外科誕生に期待 同氏は、「2型糖尿病患者が糖尿病のない人生を送るために、外科と内科が手を組んでメタボリックサージェリーを普及させる時が来た」と意気込みを語った。また、米国糖尿病学会(ADA)ガイドライン2017年版では“肥満を伴う糖尿病の治療”としてBMIに応じて外科治療を推奨する治療アルゴリズムが採用され、「糖尿病治療としての位置付けが確立した」と述べた。同ガイドラインでは、“糖尿病外科治療はBMI 27.5から32.4の内服や注射薬でも良好な血糖コントロールの得られないアジア人に対して、オプションとして考慮されるべきである”とされている。 最後に同氏は「安全が第一であり、これらが急速に普及した場合の問題に備え、日本内視鏡外科学会ならびに日本肥満症治療学会では、合同で腹腔鏡下肥満・糖尿病外科手術導入要件を発表して注意喚起を行っていく」と締めくくった。■参考日本肥満症治療学会編.日本における高度肥満症に対する安全で卓越した外科治療のためのガイドライン(2013 年版)日本内視鏡外科学会および日本肥満症治療学会における腹腔鏡下肥満・糖尿病外科手術の導入要件

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死亡リスク予測、24時間血圧 vs.診察室血圧/NEJM

 24時間自由行動下収縮期血圧(ABP)は診察室血圧よりも、全死因死亡および心血管死について、より強い予測因子であることが示された。血圧値の1標準偏差(SD)上昇当たりの全死因死亡に関するハザード比は、24時間ABPが1.58だったのに対し、診察室血圧では1.02だったという。また、「仮面高血圧」(診察室血圧は正常値だが24時間ABPは高値)の全死因死亡に関するハザード比は2.83で、持続性高血圧の1.80よりも高かった。また、「白衣高血圧」(診察室血圧が高値で24時間ABPは正常)の同HRも1.79で良性とはいえないことが示されたという。スペイン・マドリード自治大学のJose R. Banegas氏らが、約6万4,000例を対象に行った大規模な前向きコホート試験の結果で、NEJM誌2018年4月19日号で発表した。24時間ABPが予後に与える影響について、これまでに発表されているエビデンスは、主に住民ベース試験や比較的規模の小さい臨床試験に基づくものだったという。診療室・24時間自由行動下血圧について、4分類し評価 研究グループは、プライマリケア患者を対象とした大規模コホートで、診察室血圧・24時間ABPと、全死因死亡・心血管死との関連を調べるため、スペインで2004~14年に登録を行った18歳以上、6万3,910例の多施設共同全国コホートのデータを基に分析を行った。 被験者の診療室血圧と24時間ABPについて、(1)持続性高血圧(診察室血圧、24時間ABPともに高値)、(2)白衣高血圧(診察室血圧は高値だが、24時間ABPは正常)、(3)仮面高血圧(診察室血圧は正常だが、24時間ABPは高値)、(4)正常血圧(診察室血圧、24時間ABPともに正常)の4つに分類。血圧と死亡との関連について、診察室血圧・24時間ABPと交絡因子で補正したCox回帰モデルを用いて解析した。白衣高血圧も持続性高血圧並みの関連性 中央値4.7年の追跡期間中の死亡は3,808例、うち心血管系が原因の死亡は1,295例だった。 診察室血圧と24時間ABPの両者を包含したモデルでは、24時間収縮期血圧と全死因死亡との関連(診察室血圧で補正後の血圧1SD上昇当たりのハザード比[HR]:1.58[95%信頼区間[CI]:1.56~1.60])は、診察室収縮期血圧と全死因死亡の関連(24時間血圧で補正後のHR:1.02[95%CI:1.00~1.04])よりも強かった。 夜間自由行動下収縮期血圧1SD上昇当たりの全死因死亡HR(診察室血圧と日中血圧で補正後)は1.55(95%CI:1.53~1.57)、日中自由行動下収縮期血圧の同HR(診察室血圧と夜間血圧で補正後)は1.54(同:1.52~1.56)だった。 こうした関連は、年齢、性別、肥満、糖尿病や心血管疾患、降圧薬使用についてみたサブグループでも一貫して認められた。 また全死因死亡との関連は、仮面高血圧(HR:2.83、95%CI:2.12~3.79)が、持続性高血圧(同:1.80、1.41~2.31)、白衣高血圧(同:1.79、1.38~2.32)よりも強かった。なお、心血管死に関する分析結果は、全死因死亡の結果と同様だった。

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小児期・思春期の過体重は成人までに解消すると2型糖尿病の発症を抑止できる(解説:吉岡成人 氏)-844

小児期の過体重は2型糖尿病のリスク ヒトの脂肪細胞数は小児期に増加し、20歳以降は肥満者でも非肥満者でも脂肪細胞の数はほとんど変化しない(Spalding KL, et al. Nature. 2008;453:783-787. )。そのため、小児期の過体重は、成人期以降に過食や運動不足により脂肪細胞のサイズが増大した場合に、アディポネクチンなどの「善玉」アディポサイトカイン(アディポカイン)の低下をきたし、糖尿病を発症しやすくなる。日本における小児肥満の割合は2006年頃から減少傾向にあり、2015年度の学校保健統計調査によれば11歳時において肥満傾向にあるものは男児で9.87%、女児で7.92%である。一方、欧米諸国では小児の23%が過体重ないしは肥満と報告されており(Ng M, et al. Lancet. 2014;384:766-781. )、小児期の過体重が成人後の糖尿病リスクとして重要視されている。小児期・思春期の過体重は成人期までに解消することで2型糖尿病の発症リスクが低下 今回の報告は、デンマーク人男性6万人余りを対象とするコホート研究で、小児期から成人期にかけての体重の変化が2型糖尿病の発症リスクとどのように関連しているのかについて検討されている。 解析の対象となったのは、コペンハーゲンにおける学校健診および徴兵検査のデータベースから抽出された1939~59年までに出生した男性で、7歳児、13歳児および成人早期(17~26歳)に身長と体重を測定した6万2,526例である。196万9,165人年の追跡期間中に6,710例(10.7%)が2型糖尿病と診断され、過体重の頻度は7歳時には5.4%、13歳時に5.5%、成人早期に8.2%と経年的に増加した。いずれの年齢でも過体重は2型糖尿病の発症リスクと正の相関を示し、成人早期に過体重であった場合に2型糖尿病の発症率が最も高かった。年齢を時間尺度とする比例ハザードモデルによる解析では、7歳時に過体重であっても13歳までに過体重が解消され、その後も標準体重を維持した場合には30~60歳において2型糖尿病と診断されるリスクは過体重の既往がないものと同程度(ハザード比:0.96、95%信頼区間:0.75~1.21)であった。また、7歳時、13歳時にともに過体重であっても成人早期までに過体重が解消できた場合には過体重の既往がない場合よりも糖尿病の発症リスクは高かったが(ハザード比:1.47、95%信頼区間:1.10~1.98)、すべての調査期間にわたって過体重だった場合よりもリスクは低かった(ハザード比:4.14、95%信頼区間:3.57~4.79)。思春期以前の過体重の解消が重要 7歳時に過体重であったものの64.4%は過体重を解消しており、過体重が解消された場合には2型糖尿病の発症リスクが過体重の既往がない場合と同程度となり、小児期の過体重の影響が可逆的であることが示唆されている。一方、7歳時に標準体重であっても、7歳以降、成人早期にかけてBMIが増加した場合には2型糖尿病の発症リスクが増加することも示されている。 7歳時における過体重が2型糖尿病の発症リスクに及ぼす影響は、思春期までに過体重を解消し、成人早期まで標準体重を維持することで軽減されるが、13歳時における過体重の影響は部分的にしか解消されない。思春期における過体重は中高年期以降に2型糖尿病を発症するリスクを増大させることを勘案すると、思春期以前に過体重を解消することがきわめて重要であることを示唆する臨床データといえる。

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POEMS(クロウ-深瀬)症候群

1 疾患概要■ 概念・定義POEMS症候群の名称は、polyneuropathy、organomegaly、endocrinopathy、M-protein、skin changeの頭文字に由来する。「クロウ-深瀬症候群」、「高月病」とも呼ばれる。名称のとおり、多発ニューロパチーを中核症状とし、肝脾腫などの臓器腫大、内分泌異常、皮膚変化(色素沈着、剛毛、血管腫など)という多彩な症状を呈し、M蛋白を伴う全身性の疾患である。症状は多彩であるが、その病態基盤は形質細胞異常(plasma cell dyscrasia)とサイトカインである血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の上昇であると考えられている。多発ニューロパチーが中核症状となることが多い一方で、plasma cell dyscrasia由来の疾患でもあり、神経内科または血液内科で診療することが多い。2015年1月に、新規に指定難病の1つとなった。■ 疫学わが国で行われた2003年の全国調査に基づく推定有病率は、10万人当たり0.3人であり、いわゆる希少疾病である。しかし、その多彩な症状ゆえに、診断が困難な例も少なくなく、実際の有病率はもう少し高い可能性がある。平均発症年齢は50代であるが、30代の発症もまれではない。男性に多い。■ 病因上述のごとく、POEMS症候群の病態の中心はplasma cell dyscrasiaとVEGFの上昇であると推定されている。VEGFは血管新生作用以外に強い血管透過性亢進作用を持ち、本症候群で特徴的に認められる浮腫、胸腹水などの所見とよく合致する。しかし、plasma cell dyscrasiaとVEGF上昇がどのように関連するかについては、現時点では不明である。また、多発ニューロパチー、内分泌異常、皮膚異常などの症状が生じるメカニズムについても明確になっていない。VEGF上昇とともに、TNFα、IL6、IL-12を含む複数の炎症性サイトカインの上昇も確認されており、複雑な病態に関与している可能性が高い。■ 症状POEMS症候群で認められる臨床症状として頻度が高いのは、多発ニューロパチー、浮腫、皮膚変化、リンパ節腫脹、女性化乳房である。典型的な多発ニューロパチーは、下肢優位の四肢遠位のしびれと筋力低下を呈する。重症度は症例により異なり、アキレス腱反射の低下のみの症例から重度の四肢麻痺の症例まで存在する。また、数ヵ月の経過で、歩行に介助が必要になるまで進行する例が多い。通常、浮腫は下腿以遠に目立つ。進行例では、明確な圧痕を残すほど顕著となり、腹部、上肢、顔面にも浮腫が出現する。皮膚変化は、色素沈着、剛毛の頻度が高い。色素沈着は独特のやや赤味を帯びた褐色を呈する(図)。剛毛は前腕や下腿に目立つ。画像を拡大する■ 予後POEMS症候群の機能・生命予後は、適切な治療が行われない場合、不良である。機能予後は、多発ニューロパチーの重症度に依存する。無治療では過半数の症例が、発症1年以内に杖歩行となる。また、1980年代は適切な治療が行われなかったため、平均生存期間は33ヵ月と報告されている。近年、疾患の認知度向上による診断技術の向上、ならびに骨髄腫治療の本症候群への応用による治療の進歩で、予後は大幅に改善しつつある。しかし、急速な悪化を認めうる疾患であり、また多臓器障害が生じることも少なくないので、治療方針検討や経過観察には、慎重を期す必要がある。低アルブミン血症、初回治療への反応性不良、高齢(50歳以上)、肺高血圧、胸水、腎機能障害などが、予後不良因子として挙げられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)POEMS症候群の診断は診断基準に基づいて行われる。しかし、類似の診断基準が複数あり、いずれも感度・特異度について検討されていないのが、現在の問題点である。国際的に最も代表的な基準は、2012年のCochrane database systematic reviewで採用されているものである。しかし、わが国では、下表の診断基準が指定難病の認定に使用されている。本診断基準の特徴は、単クローン性形質細胞増殖が検出できない例であっても、積極的に診断できる点において優れている。そのため、日常診療で運用する上では、下表の診断基準を用いる方が、診断感度も高く、利便性にも優れる。表 POEMS症候群の診断基準●大基準多発ニューロパチー血清VEGF上昇(1,000 pg/mL以上)M蛋白(血清または尿中M蛋白陽性 [免疫固定法により確認] )●小基準骨硬化性病変、キャッスルマン病、臓器腫大、浮腫、胸水、腹水、心嚢水、内分泌異常*(副腎、甲状腺、下垂体、性腺、副甲状腺、膵臓機能)、皮膚異常(色素沈着、剛毛、血管腫、チアノーゼ、爪床蒼白)、乳頭浮腫、血小板増多(1)Definite:大基準3つ+小基準 少なくとも1つ(2)Probable:大基準2つ+小基準 少なくとも1つ*糖尿病と甲状腺機能異常は有病率が高いため、これのみでは本基準を満たさない。引用: Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.以下に、検査、診断に際しての注意点を列記する。1)多発ニューロパチー明確な自覚症状を認めない場合もあり、神経伝導検査によるニューロパチーの有無の検索と性状の確認は必須である。原則は、本症候群のニューロパチーの性状は脱髄と二次的軸索変性である。非常に軽症例では、ごくわずかの異常しか認められない場合もある。2)単クローン性の形質細胞増殖血液・尿のM蛋白のスクリーニングにより、大部分の症例では検出可能である。しかし、POEMS症候群ではM蛋白の量は非常に微量のため、免疫固定法による確認が必須である。M蛋白のサブクラスの多くはIgGまたはIgAのλ型である。3)VEGF外注検査会社で測定可能である。VEGF値の測定は、診断確定、治療効果判定に非常に有用であるが、現時点では保険適用にないことが大きな問題点である。血清・血漿のいずれで測定すべきかの結論は出ていない。しかし、指定難病の認定は血清で行われている。外注検査会社に「血清で測定」の指示にて依頼する。4)骨病変硬化性変化が一般的である。しかし、溶骨性変化や混合性変化を認めることもある。胸腹水の検索目的で施行した胸腹骨盤部のCT検査の骨条件で胸骨、椎体、骨盤などの硬化性病変をスクリーニングすることが可能である。さらに精査を進める際には、PET検査が有用である。5)内分泌障害性腺機能異常、甲状腺機能異常、耐糖能異常、副腎機能異常などの頻度が高い。スクリーニング検査として、LH・FSH・E2(エストラジオール)・テストステロン・TSH・FT3・FT4・血糖・インスリン・ACTH・コルチゾールなどの検査を行う。鑑別診断として問題となりやすいのは、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)、ALアミロイドーシスである。POEMS症候群の進行例では、浮腫・皮膚障害をはじめ、多彩な典型的症状を伴うため、鑑別が問題となることは少ない。しかし、発症初期で臨床症状や検査所見が揃わない場合には、ニューロパチーの臨床および神経伝導検査所見を詳細に比較することにより、鑑別が可能となる。CIDPの典型例の臨床症状は、左右対称性のしびれと近位筋を含む筋力低下であり、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈するPOEMS症候群とは臨床症状が異なる。しかし、CIDP、POEMS症候群とも、神経伝導検査は脱髄所見を示すこと、CIDPのほうが有病率・認知度ともに高いことが影響し、POEMS症候群がCIDPと初期診断される確率は高い。典型的CIDPの多くの症例では、ステロイド、免疫グロブリン、血漿交換などの治療に反応する。したがって、治療抵抗例では診断の再考が必要な場合がある。ALアミロイドーシスは、POEMS症候群と同様、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈する。しかし、神経伝導検査では軸索変性所見を呈するため、POEMS症候群とは異なる。その他、大量の胸水や腹水単独で発症する例もあり、原因が特定できない場合には、本症候群を鑑別疾患の1つとして挙げることも考慮する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)POEMS症候群の症状は多彩であるが、治療のターゲットはplasma cell dyscrasiaである。そのため、近年は骨髄腫の治療法が本症候群に応用されている。治療方針の原則は、若年者では自家移植、高齢者では免疫調整薬が第1選択とされてきた。移植適応年齢の上限は、65歳から70歳へと、近年引き上げられつつある。自家移植に伴う関連死や再発のリスクが明確になりつつあることを考慮すると、若年軽症例、とくに30代の患者では、リスクとベネフィットおよび長期にわたる疾患コントロールの観点から、移植が第1選択とは必ずしもいい切れなくなってきている。そのような症例では、免疫調整薬が第1選択となる可能性がある。以下に、現在有効であると考えられている治療法について概説する。しかし、いずれも保険適用がないのが、問題点となっている。■ 自己末梢血幹細胞を伴う高用量化学療法通常、骨髄腫とほぼ同様の方法で行われている。自己末梢血幹細胞採取は、顆粒球コロニー刺激因子単独またはシクロホスファミド(商品名:エンドキサン)併用で行われる。続いて、高用量のメルファラン(同:アルケラン)による前処置後に幹細胞移植が行われる。最近では、移植前にサリドマイド(同:サレド)、レナリドミド(同:レブラミド)やボルテゾミブ(同:ベルケイド)などの前治療を行い、病勢をコントロールしてから、自家移植へ進むこともある。移植後、VEGF値は約1~3ヵ月で速やかに低下し、引き続き臨床症状全般の改善が生じる。移植後の再発に関する報告も増えつつあり、無増悪生存率は1年で98%、5年で75%とされる。再発後の治療の選択肢としては再移植、サリドマイドなどの免疫調整薬などが選択されることが多い。■ 免疫調整薬現時点における免疫調整薬の選択肢は、サリドマイド、レナリドミドである。サリドマイド、レナリドミドとも、やはり骨髄腫と同様の用法・用量で使用されており、デキサメタゾン(同:レナデックス、デカドロンなど)が通常併用される。ポマリドミド(同:ポマリスト)は、レナリドミドの次に開発された免疫調整薬であるが、本症候群への使用の報告はまだない。サリドマイドは、本症候群における有効性が、プラセボ対照二重盲検ランダム化群間比較試験で、唯一示されている薬剤である。前記試験は、わが国において医師主導治験として実施されており、適用取得に向けて準備中である。レナリドミドについても、単群オープン試験が報告されており、やはり有効性が示されている。副作用として、サリドマイドでは徐脈、末梢神経障害などに、レナリドミドでは骨髄抑制に、とくに注意が必要である。若年軽症例では、現時点では自家移植ではなく免疫調整薬を選択しても、将来的には自家移植の適応となる可能性がある。その際には、レナリドミドの長期使用により、幹細胞採取が困難となる可能性があるため、長期的な展望の下に、薬剤の選択と治療期間の検討を行う必要がある。■ プロテアソーム阻害薬骨髄腫治療薬として主要な位置付けとなっているプロテアソーム阻害薬も、POEMS症候群に有効な可能性がある。本症候群においては、ボルテゾミブの有効性についての症例報告が集積されつつある。臨床試験の報告はない。カルフィルゾミブ(同:カイプロリス)については、1例の報告のみで、神経症状の安定化が認められたとされる。イキサゾミブ(同:ニンラーロ)については、現在、米国で臨床試験が進行中である。用法・用量は、骨髄腫と同様に使用されることが多い。しかし、プロテアソーム阻害薬の注意すべき副作用として、末梢神経障害がある。そのため、投与中は末梢神経障害の発現に注意しつつ、投与間隔の延長や治療の中断を考慮する。ボルテゾミブに関しての報告が最も多く、効果の発現が免疫調整薬と比較し、速やかな可能性がある。亜急性進行を示す例において、選択肢の1つとなる可能性がある。4 今後の展望現在、骨髄腫治療薬は、早いスピードで開発が進んでいる。これまでの免疫調整薬・プロテアソーム阻害薬の本症候群における有効性を鑑みると、新規薬もおそらく有効である可能性が高い。そのため、本症候群に応用できる選択肢が、今後も引き続き増加することが予測される。現時点では、本症候群における新規治療の試みは、希少かつ重篤な疾患であるがゆえに、1~数例の報告が主体である。しかし、サリドマイドの本症候群への適応拡大のために行われたランダム化群間比較試験のように、今後は適切な臨床試験を可能な限り行い、エビデンスを積み重ね、治療戦略を構築する試みを継続すべきである。治療の進歩に伴い、本症候群の認知度は確実に向上しており、早期診断・治療の加速により、予後は明らかに改善しつつある。また、稀少疾病の新規治療開発を加速させる手段の1つとして、本症候群の症例登録システムも構築されている。全国に散在している症例の情報を集積し、新規治療の有効性や予後について明らかにすることが目的である。さらに、未来の新規治療薬の臨床試験においては、適応となりうる患者に迅速に情報を届けることも、もう1つの主要な目的である。一方で、診断・病勢のマーカーとなるVEGF測定や有効とされる新規治療が、いまだ1つも保険適用とされていないことが、すべての患者さんが、いずれの医療機関でも標準的な診療を受けることへの大きな障壁となっている。このような問題点に関しても、今後の解決が期待される。5 主たる診療科神経内科または血液内科 ※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター クロウ・深瀬症候群(一般利用者と医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 J-POST trial(医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 患者登録システム(一般利用者と医療者向けの症例登録の窓口)患者会情報POEMS症候群 サポートグループ(本症の患者および家族の会)1)Kuwabara S, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;6:CD006828.2)Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.3)Dispenzieri A. Am J Hematol. 2014;89:214-223.4)Misawa S, et al. Lancet Neurol. 2016;15:1129-1137.5)Jaccard A. Hematol Oncol Clin North Am. 2018;32:141-151.6)Nozza A, et al. Br J Haematol. 2017;179:748-755.7)Mitsutake A, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2018.[Epub ahead of print]公開履歴初回2015年07月28日更新2018年04月24日

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第14回 オンライン診療、対象となるケースとならないケース【患者コミュニケーション塾】

オンライン診療、対象となるケースとならないケース情報通信機器の登場によって、離島やへき地などで遠隔診療を行えば医師不足を補えるのではないか、という考えのもと、1997年に遠隔診療と「医師は、自ら診察しないで治療を(中略)してはならない」という医師法第20条との関係が整理されました。その際、対象となるのは「離島、へき地、別表の患者」として、(別表)「在宅酸素療法を行っている患者、在宅難病患者、在宅糖尿病患者、在宅喘息患者、在宅高血圧患者、在宅アトピー性皮膚炎患者、褥瘡のある在宅療養患者、在宅脳血管障害療養患者、在宅がん患者」が示されたのです。ところが、2015年に「“遠隔診療の対象は1997年に示した患者に限定されず”、別表の患者は単なる“例示”であって、それ以外の患者でも認められる」としたことから、急速に対象が広がっていきました。さらに、2016年に「対面診療を行わず遠隔診療だけで診療を完結することは医師法違反になりうる」とされた通知が、翌2017年には「患者側の理由で診療が中断した場合は、ただちに医師法違反にならない」として、禁煙外来での柔軟な対応が認められ、テレビ電話や電子メール、SNSなどを組み合わせた診療が可能との通知が発出され、さらに一部で広がりをみせました。そこで、今後適切な普及を図るためにも、一定のルールが必要ということで、今年3月にオンライン診療のガイドライン(「オンライン診療の適切な実施に関する指針」)がまとめられました。その検討会に構成員として参加した立場から、このガイドラインについてご紹介したいと思います。このガイドラインでは、そもそも「遠隔医療」とは、情報通信機器を活用した健康増進や医療に関する行為と広く定義しています。そして、その遠隔医療の一部として、医師と患者が情報通信機器を通して診察をリアルタイムで行う行為を「オンライン診療」と定義しました。また、情報通信機器を用いて患者の状態を確認し、症状や訴えから疑わしい病気を判断して、受診すべき適切な科を選択するなど、最低限の医学的判断を行う行為を「オンライン受診勧奨」と位置付けて、これもガイドラインの対象にしています。一方、常識的にどう考えても受診するほどではない症状の人に「しばらく様子をみてはどうか」「受診の必要はない」といった指示を行うことや、医学的な判断を行わず「気になるようだったら内科を受診してみては?」といった一般的な受診の勧めをした場合は「遠隔医療相談」とし、ガイドラインの対象にはなりません。ただ、これらはいずれの境目にもグレーゾーンが存在するだけに、なかなか微妙なニュアンスによって判断が難しくなる部分もあるように思います。「医師と患者の直接的な関係がすでに存在していること」が基本ガイドラインでは、オンライン診療の基本理念として、①患者から日常生活の情報も得て、医療の質のさらなる向上に結び付けていくこと②情報通信機器へのアクセスしやすさを確保して、患者がより良い医療を得る機会を増やすこと③患者が治療に能動的に参画することで、治療の効果を最大化することとしています。これは何もオンライン診療に特別のことではなく、通常の医療でも基本となる事柄です。そして、医師と患者の直接的な関係がすでに存在している場合にオンライン診療が利用されることを基本として、最初から一度も直接会うことなくオンライン診療を行わないよう、「原則として初診は対面診療」を求めています。また、オンライン診療を行っている途中で、十分な情報が得られず適切な診断ができないと判断すれば、オンライン診療を中断して対面による診療に切り替えること、としています。また、オンライン診療では触診や聴診などができず、視覚的にも画像によっては直接見る場合と色合いなどが異なる場合があります。そのため、オンライン診療では対面診療に比べて、医師が直接取得できる情報が限定されます。そのようなオンライン診療上の不利益についても、事前に患者に説明しなければならない、としています。当然ながら、治験や臨床試験などを経ていないような、安全性が未確立な医療はオンライン診療で行うべきでないと明記されました。そして、オンライン診療における利点、生じる恐れのある不利益などについて患者がしっかり理解したうえで、患者が望んだ場合に実施されるべきであり、医師側の都合のみでオンライン診療を行ってはいけないとされています。次回はより具体的な場面を想定して、ガイドラインに示されているオンライン診療の適用について、例を挙げてご紹介します。

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1型糖尿病患者、うつ病が認知症リスクに

 1型糖尿病(T1D)患者の14%がうつ病である。うつ病は認知症の強力な危険因子であるが、近年、認知症リスクのある年齢まで生きるようになったT1D患者に、それが当てはまるかどうかは不明である。今回、米国・Kaiser Permanente Division of ResearchのPaola Gilsanz氏らの調査により、高齢のT1D患者において、うつ病が認知症リスクを有意に増加させることが示された。Aging & mental health誌オンライン版2018年4月10日号に掲載。 本研究では、50 歳以上のT1D患者3,742例について、1996年1月1日から2015年9月30日の間、認知症について追跡した。うつ病、認知症、併存疾患は電子カルテから抽出した。人口統計、糖化ヘモグロビン、重度の高血糖エピソード、脳卒中、心疾患、腎症、末期腎疾患について調整した、うつ病と認知症の関連を、Cox比例ハザードモデルで推定した。うつ病による認知症の累積発症率については、55歳までは認知症を発症していないとの条件で推定された。 主な結果は以下のとおり。・5%(182例)が認知症と診断され、20%はベースライン時にうつ病であった。・うつ病患者において認知症発症が72%増加した(完全調整ハザード比:1.72、95%信頼区間:1.12~2.65)。・うつ病患者の25年間の認知症累積発症率は、うつ病でない患者の2倍以上(27% vs.12%)であった。

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小児期の過体重、何歳まで続くと2型糖尿病リスクが高まるか/NEJM

 7歳時に過体重の男児は、思春期以降まで過体重が持続した場合に限り、成人2型糖尿病のリスクが増大することが、デンマーク・Bispebjerg and Frederiksberg HospitalのLise G. Bjerregaard氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2018年4月5日号に掲載された。小児期の過体重により、成人期の2型糖尿病リスクが増加する。世界の小児の23%以上が過体重または肥満であることから、小児期の過体重が2型糖尿病のリスクに及ぼす有害な影響は、成人期に至る前に正常体重に回復した場合は減少に転じるか、またインスリン感受性が著明に低下する思春期の体重増加が、後年の2型糖尿病の発症に主要な役割を担うかを検証することが重要とされる。7、13、17~26歳の過体重と、30歳以降の罹患リスクの関連を評価 研究グループは、過体重の男児は、成人早期までに過体重を解消することで、2型糖尿病のリスクが低下するかを検討した(欧州連合[EU]の助成による)。 1930~89年の期間に出生し、コペンハーゲン市の公立または私立の学校に入学したほぼすべての小児の情報を蓄積したデータベース(Copenhagen School Health Record Register[CSHRR])を用いて、7歳、13歳、成人早期(17~26歳)に体重と身長が測定され、過体重または肥満と判定されたデンマーク人男性6万2,565例が解析の対象となった。 過体重と肥満の定義は、米国疾病管理予防センター(CDC)の年齢別、性別の基準に則った(過体重は、BMIが7歳時は≧17.38、13歳時は≧21.82、成人早期は≧25、肥満は、それぞれ≧19.12、≧25.14、≧28.31)。国の保健登録(National Patient Register)から、2型糖尿病の状態に関するデータを取得し、30歳以降に2型糖尿病の診断を受けた6,710例(10.7%、フォローアップ期間:196万9,165人年)を同定した。思春期を含む期間の過体重が、リスクを高める可能性 過体重児の割合は、7歳時の5.4%(3,373/6万2,565例)から、13歳時は5.5%(3,418/6万2,565例)へ、成人早期は8.2%(5,108/6万2,565例)へと増加し、どの年齢の過体重も2型糖尿病リスクと正の関連が認められた。過体重と2型糖尿病リスクの関連は、過体重の年齢が高いほど、また2型糖尿病の診断時年齢が低いほど強かった。 7歳時に過体重であったが13歳になる前に過体重が解消した男性が、30~60歳時に2型糖尿病と診断されるリスクは、過体重を経験していない男性とほぼ同様であった(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.75~1.21)。 7歳時、13歳時に過体重だったが成人早期には過体重でなかった男性は、過体重を経験していない男性に比べ、2型糖尿病リスクが高かった(HR:1.47、95%CI:1.10~1.98)が、過体重が持続した男性に比べると低かった(過体重を経験していない男性と比較した過体重が持続した男性のHR:4.14、95%CI:3.57~4.79)。 7歳から成人早期の期間におけるBMIの上昇は、7歳時に標準体重であった男性でも、2型糖尿病リスクの増加と関連した。成人早期の肥満は、7歳時のBMIにかかわらず、2型糖尿病のリスクが著明に高かった。 著者は、「7歳時に過体重の小児が、成人2型糖尿病に罹患するリスクは、思春期に至る前に過体重を解消して成人早期まで正常体重を維持することで低下した。思春期にわたる、13歳から成人早期までの過体重は、7歳時のみ、13歳時のみ、7歳時と13歳時のみ、成人早期のみ、および7歳時と成人早期にのみ過体重であった場合に比べ、2型糖尿病のリスクが高かった」とまとめている。

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コーヒーと大動脈弁狭窄症リスク~7万人の前向き研究

 コーヒーには、心血管系に有害もしくは有益な作用を及ぼしうる生物学的活性物質が多く含まれているが、コーヒー摂取と大動脈弁狭窄症リスクの関連は不明である。今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna Larsson氏らの7万人超による前向き研究により、コーヒー摂取量と大動脈弁狭窄症リスクが正相関することが示された。Nutrition, metabolism, and cardiovascular diseases誌オンライン版2018年2月7日号に掲載。 この前向き研究には、ベースライン時のアンケートでコーヒー摂取量を回答した7万1,178人の男女が参加した。大動脈弁狭窄症の発症については、Swedish National Patient and Cause of Death Registersで同定した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間(15.2年)の間に、1,295人の参加者(男性777人、女性518人)が大動脈弁狭窄症と診断された。・年齢、性別、喫煙、ほかの危険因子の調整後、コーヒー摂取は用量反応的に大動脈弁狭窄症リスクと正相関していた(傾向のp=0.005)。・多変量ハザード比は、コーヒー2杯/日の増加当たり1.11(95%信頼区間:1.04~1.19)、摂取量最多のカテゴリー(6杯/日以上)を最少のカテゴリー(0.5杯/日未満)と比較すると1.65(95%CI:1.10~2.48)であった。この関連性はほかの危険因子によって変わらなかった。

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迷ったら接種したい肺炎球菌ワクチン

 2018年4月3日、MSD株式会社は、肺炎予防に関するメディアセミナーを都内で開催した。セミナーでは、高齢者の肺炎の概要、ワクチン接種の動向などが語られた。肺炎死亡者の97.3%が65歳以上 セミナーでは、内藤 俊夫氏(順天堂大学医学部 総合診療科 教授)を講師に迎え、「超高齢社会における[まさか]に備えた肺炎予防~インフルエンザパンデミック、東日本大震災との関連から考察する~」をテーマに解説が行われた。 わが国の死因は、悪性新生物、心疾患に次いで、2010年頃より肺炎が第3位となり推移している。とくに肺炎による死亡者の97.3%が65歳以上ということから、今後もこの傾向は変わっていかないと予想されている(厚生労働省 人口動態統計[確定数]2016年より)。 肺炎は、主に細菌やウイルスが肺に侵入し起こる肺の炎症だが、高齢者や糖尿病などのリスクのある患者では、免疫力が弱いことから、重症化すれば死に至る疾患である。 肺炎を起こす主要な細菌は肺炎球菌で、「ウイルスか細菌感染かの鑑別は、臨床医の腕の見せどころであり、丁寧に診療してほしい」と内藤氏は語る。また、肺炎予防では、一般的に「マスク着用、手洗い、うがい」が行われているが、「歯磨きや誤嚥の防止など、口腔ケアも高齢者には大事だ」と指摘。さらに、規則正しい生活や禁煙、基礎疾患の治療のほか、「肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンのダブル接種が、肺炎予防には重要」と提案する。その理由として、インフルエンザに罹患し抵抗力が落ちた肺に、肺炎球菌が侵入することで肺炎を起こしやすくなり、予後を悪化させる、と説明する。接種率は20%から65%へ上昇 65歳以上の高齢者での肺炎球菌ワクチン接種率は、以前は20%程度だった(米国では63.6%[2015年NHIS調査])。理由としては、ワクチンへの無関心や接種へのアクセスの悪さが指摘されていた。そこで、2014年10月から国の施策により、65歳以上の高齢者への肺炎球菌ワクチンの定期予防接種が始まった。「これら公費の助成とワクチン接種率には密接な関係があり、ワクチン接種の普及に公費助成は重要な役割を果たした」と、同氏は語る。公費助成導入後の23価肺炎球菌ワクチンの推定全国接種率は、2018年3月末時点で約65%に上昇し、接種率の向上は実現した1,2)(総務省統計局政府統計[2012年10月1日現在]およびMSD社社内データより推定)。 そして、本年度が、定期接種の経過措置(65歳、70歳、75歳…と5歳刻みの年齢が接種対象者)の最終年度となり、2019年4月からは、65歳のみが定期接種の対象となる予定である。現行の制度は対象者にわかりにくく、接種を受けていない高齢者も多い。また、最初の時期に接種を受けた人は、あと1年で5年が経とうとしている。23価肺炎球菌ワクチンの免疫原性の効果は5年経つと弱まるとされ、来年以降、再接種を受ける必要性も専門家の間で示唆されているという。外来での働きかけが再接種成功の秘訣 「肺炎球菌ワクチンは、65歳を過ぎたら(糖尿病などのリスクの高い患者も含め)接種歴の有無にかかわらず、なるべく受けることをお勧めする」と同氏は語る。そのため医療者側でも接種の有無を外来で必ず聞いたり、電子カルテに記録の項目を設置したりすることが重要だという。また、「(患者へは)1年を通じていつでも接種できることを伝え、(1)定期接種の案内が来た時、(2)初診時、(3)健康診断時、(4)退院時、(5)インフルエンザワクチン接種時など、5つのタイミングで医師などに相談するように指導することが必要」と提案する。 最後に同氏は、「肺炎球菌ワクチンは特別なものではなく、普段からの接種が大事。医療者には対象者を、早く接種するように促し、接種する気になるようにして指導してもらいたい」と要望を語り、レクチャーを終えた。■参考文献1)Naito T, et al. J Infect Chemother. 2014;20:450-453.2)Naito T, et al. J Infect Chemother. 2018 Feb 1. [Epub ahead of print]■参考厚生労働省 肺炎球菌感染症(高齢者):定期接種のお知らせ肺炎予防.JP

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ジェネリック希少の医薬品、米国で価格高騰/BMJ

 米国において特許期限切れだがジェネリック承認薬がない処方薬のうち、半数超は米国外で少なくとも1社が承認を受けており、半数弱は4社以上が承認製造していた。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のRavi Gupta氏らが、1939~2017年に米国食品医薬品局(FDA)で承認を受け、その後特許期限が切れた薬剤などを対象に行った観察試験で明らかにしたもので、BMJ誌2018年3月19日号で発表した。米国では、特許期限の切れた処方薬の一部が、競合会社が少ないために急激に価格が高騰し、入手が困難になるといった問題が生じている。今回の結果を受けて著者は、「それらの処方薬について、米国外からの輸入販売規制などを緩和化することで、適正な市場競争が促され、価格低下や患者への安定的な供給につながるだろう」とまとめている。ジェネリックが3種以下の薬剤を対象に調査 研究グループは、1939年以降に米国FDAの承認を受けた新規処方薬(錠剤またはカプセル)で、特許期限が切れるなど市場独占権を失っており、そのジェネリック製品が3種以下と市場での競争力が低い薬剤を対象に、2017年4月まで観察試験を行った。 対象の処方薬について、米国と同等な承認基準を設けている欧州、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、南アフリカ、イスラエルの7つの規制機関から承認を受けた製造業者の数について調査を行った。また、それら処方薬の特性と、米国における希少疾病用医薬品の指定、世界保健機関(WHO)必須医薬品、治療分野、製造工程の複雑さ(生物学的同等性の保持や製造が困難)、2015年のメディケイド総支出などとの関連についても調べた。米国でジェネリックのない薬剤、半数超が米国外で承認 特許期限が切れるなど市場独占権がなく、米国内でジェネリックを販売する企業が3社以下だった処方薬は、170種だった。そのうち109種(64%)は、米国外で少なくとも1社の製造業者が承認を受けていた。また32種(19%)は、4社以上が承認を受けていた。 米国FDAがジェネリック製品を承認していなかった44種(26%)において、21種(48%)は米国外で少なくとも1社が製造承認を受けていた。2種(5%)は4社以上が製造承認を受けていた。 また、調査対象となった170種のうち66種(39%)が、米国も合わせ4社以上の製造業者が製造していた。 少なくとも米国外の1ヵ国以上で承認を受けた109種のうち、希少疾病用医薬品は12種(11%)、WHO必須医薬品は29種(27%)だった。製造工程が複雑で米国への輸入に困難を伴う可能性があった医薬品は12種(11%)のみであった。 処方薬の数が最も多かったのは心血管系疾患・糖尿病・脂質異常症(高脂血症)の治療薬(19種、17%)、精神病治療薬(16種、15%)、感染症治療薬(15種、14%)だった。米国で適正な競争が行われていないジェネリック薬に対するメディケイドからの支出は、2015年で約7億ドルに上っていた。

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民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.1

第1回 腎臓 第2回 代謝 第3回 内分泌 第4回 血液 内科系試験に対応した全3巻の基本講座の第1巻です。試験内容が異なる認定内科医と総合内科専門医試験ですが、学生の頃に学んだことを復習するというスタートラインは同じ。全13領域で出題頻度の高いテーマを、わかりやすいシェーマと明快な講義で総復習しましょう。題名の「CUE」は放送業界用語の「キュー」、『臨床的有用性』(Clinical Utility)、そしてパーキンソン病医療における「CUE」から来ています。つまり、「動こうとしてもはじめの一歩が踏み出せない状態」に対して、このレクチャーが試験勉強を始める一歩を踏み出すきっかけになってほしいという思いです。講師の民谷先生の実臨床経験を組み込んだクリアな解説は、とても役に立ちます。専門外や苦手科目からチェックして、次のステップへ進んでください。第1回 腎臓 疾患をしっかり区別するためには解剖生理が非常に重要です。とくに腎の場合は、どこの部位で起こる障害かということをしっかり整理する必要があります。民谷式オリジナルのアニメーションでは腎疾患を大きく3つに分類。疾患を振り分けるコツをしっかりとレクチャーします。第2回 代謝 代謝のセクションではまず、物質が体内に入って分解・合成される流れをしっかりとおさらいします。物質の流れをもう一度理解すると、機能低下している箇所に必要な治療や薬剤といった知識がすんなりと頭に入ります。民谷式オリジナルのシェーマを参考に、代謝領域攻略のポイントをしっかりとつかんでください。第3回 内分泌 内分泌領域ではまず、それぞれの臓器の解剖生理をしっかり覚えることが、試験攻略の近道です。民谷式オリジナルのシェーマはわかりやすく簡略化してあるので、物質の流れが阻害されるとどんな病態になりどんな症状になるのか、すんなりと頭に入ります。第4回 血液 血液分野では、どこでなにが起こっているのかを考えるのが、頭を整理するうえで非常に大切です。また、日常診療では、骨髄標本と血液標本を間違えることはありませんが、ペーパーテストでは起こり得ることです。必ず、何を見ているかを確認する癖をつけましょう。

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心不全を予防するために何をすべきか/日本循環器学会

 高齢者の増加と共に心不全患者数も増加し、わが国は、心不全パンデミック時代に直面しようとしている。そのような中、今後、心不全については治療だけでなく、予防という観点が重要となる。2018年3月23~25日に大阪で開催された、第82回日本循環器学会学術集会プレナリーセッションで、わが国の心不全予防について、佐賀大学 循環器内科 田中 敦史氏が講演した。バイオマーカーによるプレ・クリニカルからの先制医療 心不全の発症には、さまざまな要素が関連することから、患者それぞれのステージに合った、適切な介入が必要になってくる。田中氏はNT-proBNPの活用について紹介した。 久山町研究において、NT-proBNP値の上昇は、たとえ軽度でも、将来的な心血管疾患のリスク上昇に関連していることが報告されている。また、平成20~21年に佐賀県浦之崎病院(現:伊万里松浦病院)において実施した、就労世代におけるNT-proBNPと各検査項目との関連解析では、全体の20%がリスク群まで上昇していることが判明した。NT-proBNPはhs-トロポニンTなどの心筋障害マーカーとも相関する事から、一般就労世代のバイオマーカーとして、先制医療に活用可能であると考えられる。心不全予防に有望なSGLT2阻害薬 心不全予防では、基礎疾患管理も重要である。SGLT2阻害薬は今回改訂された心不全ガイドラインでもハイリスク糖尿病患者の心不全予防の第1選択の1つとして捉えられている。EMPA-REG試験、CANVAS試験、いずれにおいても心不全死または心不全入院を減少させている。さらに、現在、カナグリフロジンを用いて、慢性心不全を合併した2型糖尿病においてNT-proBNPの変化を評価するCANDLE研究が始まっている。再入院予防の戦略 心不全は、入院を繰り返すことで、悪化していく。心不全の再入院の頻度は退院後30日以内で25%に上る。カナダの研究では、心不全入院患者、心血管系のアウトカムに関しては、平均5~6日の入院期間が最も良好であった。限られた期間の中で、患者の医学的、社会的側面を含むさまざまな要素を評価すること。また、地域に戻った後のシームレスなケアが、心不全再入院予防の鍵となるであろうと田中氏は述べた。

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低血糖予測しインスリン中断、回復後に自動再開。次世代インスリンポンプ発売

 日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 トニー セメド)は2018年4月2日、インスリン治療を必要とする糖尿病患者の低血糖問題に新しい選択肢をもたらす次世代インスリンポンプ「ミニメド640Gシステム」を、2018年3月26日より販売開始したと発表。 ミニメド640Gシステムにはメドトロニックの独自技術であるスマートガードテクノロジーを搭載し、低血糖予防に向けた新しい技術を通じて、糖尿病患者の血糖コントロールを改善するよう設計されている。Enlite(エンライト)センサによって持続的にグルコース変動をモニタリングし、グルコース値が下限値に達する、または近づくと予測されると自動的にインスリン注入を中断し、グルコース値の回復が確認されるとインスリン注入を再開する日本初のシステム。低グルコースや高グルコースにいたる前に警告(音やバイブレーション)を発信する機能も備えている。 さらに、ミニメド640Gシステムは、PHC株式会社の自己検査用グルコース測定器「コントアネクストLink 2.4」とワイヤレス接続が可能。正確性の高い血糖測定結果をインスリンポンプに送信することができ、ボーラスウィザードやセンサの較正の際、患者の手入力によるミスを防ぎ、入力の手間を軽減する。

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