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新たな薬剤、デバイスが続々登場する心不全治療(前編)【東大心不全】

急増する心不全。そのような中、新たな薬剤やデバイスが数多く開発されている。これら新しい手段が治療の局面をどう変えていくのか、東京大学循環器内科 金子 英弘氏に聞いた。後編はこちらから現在の心不全での標準的な治療を教えてください。心不全と一言で言っても治療はきわめて多様です。心不全に関しては今年(2018年)3月、「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」が第82回日本循環器学会学術集会で公表されました。これに沿ってお話ししますと、現在、心不全の進展ステージは、リスク因子をもつが器質的心疾患がなく、心不全症候のない患者さんを「ステージA」、器質的心疾患を有するが、心不全症候のない患者さんを「ステージB」、器質的心疾患を有し、心不全症候を有する患者さんを既往も含め「ステージC」、有効性が確立しているすべての薬物治療・非薬物治療について治療ないしは治療が考慮されたにもかかわらず、重度の心不全状態が遷延する治療抵抗性心不全患者さんを「ステージD」と定義しています。各ステージに応じてエビデンスのある治療がありますが、ステージA、Bはあくまで心不全ではなく、リスクがあるという状態ですので、一番重要なことは高血圧や糖尿病(耐糖能異常)、脂質異常症(高コレステロール血症)の適切な管理、適正体重の維持、運動習慣、禁煙などによるリスクコントロールです。これに加えアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、左室収縮機能低下が認められるならばβ遮断薬の服用となります。最も進行したステージDの心不全患者さんに対する究極的な治療は心臓移植となりますが、わが国においては、深刻なドナー不足もあり、移植までの長期(平均約3年)の待機期間が大きな問題になっています。また、重症心不全の患者さんにとって補助人工心臓(Ventricular Assist Device; VAD)は大変有用な治療です。しかしながら、退院も可能となる植込型のVADは、わが国においては心臓移植登録が行われた患者さんのみが適応となります。海外で行われているような植込み型のVADのみで心臓移植は行わないというDestination Therapyは本邦では承認がまだ得られていません。そのような状況ですので、ステージDで心臓移植の適応とならないような患者さんには緩和医療も重要になります。また、再生医療もこれからの段階ですが、実現すれば大きなブレーク・スルーになると思います。その意味では、心不全症状が出現したステージCの段階での積極的治療が重要になってきます。この場合、左室駆出率が低下してきた患者さんではACE阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)をベースにβ遮断薬の併用、肺うっ血、浮腫などの体液貯留などがあるケースでは利尿薬、左室駆出率が35%未満の患者さんではミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を加えることになります。一方、非薬物療法としてはQRS幅が広い場合は心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy:CRT)、左室駆出率の著しい低下、心室頻拍・細動(VT/VF)の既往がある患者さんでは植込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator:ICD)を使用します。そうした心不全の国内における現状を教えてください。現在の日本では高齢化の進展とともに心不全の患者さんが増え続け、年間26万人が入院を余儀なくされています。この背景には、心不全の患者さんは、冠動脈疾患(心筋梗塞)に伴う虚血性心筋症、拡張型心筋症だけでなく、弁膜症、不整脈など非常に多種多様な病因を有しているからだと言えます。また、先天性心疾患を有し成人した、いわゆる「成人先天性心疾患」の方は心不全のハイリスクですが、こうした患者さんもわが国に約40万人いらっしゃると言われています。高齢者や女性、高血圧の既往のある患者さんに多いと報告されているのが、左室収縮機能が保持されながら、拡張機能が低下している心不全、heart failure with preserved ejection fraction(HFpEF)と呼ばれる病態です。これに対しては有効性が証明された治療法はありません。また、病因や併存疾患が複数ある患者さんも多く、治療困難な場合が少なくありません。近年、注目される新たな治療について教えてください。1つはアンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(Angiotensin Receptor/Neprilysin Inhibitor:ARNI)であるLCZ696です。これは心臓に対する防御的な神経ホルモン機構(NP系、ナトリウム利尿ペプチド系)を促進させる一方で、過剰に活性化したレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)による有害作用を抑制する薬剤です。2014年に欧州心臓病学会(European Society of Cardiology:ESC)では、β遮断薬で治療中の心不全患者(NYHA[New York Heart Association]心機能分類II~IV、左室駆出率≦40%)8,442例を対象にLCZ696とACE阻害薬エナラプリルのいずれかを併用し、心血管死亡率と心不全入院発生率を比較する「PARADIGM HF」の結果が公表されました。これによると、LCZ696群では、ACE阻害薬群に比べ、心血管死や心不全による入院のリスクを2割低下させることが明らかになりました。この結果、欧米のガイドラインでは、LCZ696の推奨レベルが「有効・有用であるというエビデンスがあるか、あるいは見解が広く一致している」という最も高いクラスIとなっています。現在日本では臨床試験中で、上市まではあと数年はかかるとみられています。もう1つ注目されているのが心拍数のみを低下させる選択的洞結節抑制薬のivabradineです。心拍数高値は従来から心不全での心血管イベントのリスク因子であると考えられてきました。ivabradineに関しては左室駆出率≦35%、心拍数≧70bpmの洞調律が保持された慢性心不全患者6,505例で、心拍数ごとに5群に分け、プラセボを対照とした無作為化試験「SHIFT」が実施されました。試験では心血管死および心不全入院の複合エンドポイントを用いましたが、ivabradineによる治療28日で心拍数が60bpm未満に低下した患者さんでは、70bpm以上の患者さんに比べ、有意に心血管イベントを抑制できました。ivabradineも欧米のガイドラインでは推奨レベルがクラスIとなっています。これらはいずれも左室機能が低下した慢性心不全患者さんが対象となっています。その意味では現在確立された治療法がないHFpEFではいかがでしょう?近年登場した糖尿病に対する経口血糖降下薬であるSGLT2阻害薬が注目を集めています。SGLT2阻害薬は尿細管での糖の再吸収を抑制して糖を尿中に排泄させることで血糖値を低下させる薬剤です。SGLT2阻害薬に関しては市販後に心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者さんを対象に、心血管イベント発症とそれによる死亡を主要評価項目にしたプラセボ対照の大規模臨床試験の「EMPA-REG OUTCOME」「CANVAS」で相次いで心血管イベント発生、とくに心不全やそれによる死亡を有意に減少させたことが報告されました。これまで糖尿病治療薬では心不全リスク低下が報告された薬剤はほとんどありません。これからはSGLT2阻害薬が糖尿病治療薬としてだけではなく、心不全治療薬にもなりえる可能性があります。同時にHFpEFの患者さんでも有効かもしれないという期待もあり、そうした臨床試験も始まっています。後編はこちらから講師紹介

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降圧目標<130/80mmHgに厳格化の見通し-新高血圧ガイドライン草案

 2018年9月14~16日、北海道・旭川で開催された第41回日本高血圧学会総会で、2019年に発行が予定されている「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」の草案が示された。作成委員長を務める梅村 敏氏(横浜労災病院 院長)による「日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2019の作成経過」と題した発表で、JSH2019が「Minds診療ガイドライン作成の手引き(2014年版)」に準拠したClinical Question(CQ)方式で作成が進められたことなど、作成方法の概要が示され、高血圧診断時の血圧値の分類や降圧目標における具体的な改訂案が説明された。ACC/AHA、ESH/ESC高血圧ガイドラインが降圧目標値を相次いで引き下げ 2017年に発表された米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)高血圧ガイドラインでは、一般成人の高血圧の基準値が従来の140/90mmHg以上から130/80mmHg以上に引き下げられ、降圧目標は130/80mmHg未満とすることが推奨されている。 また、2018年8月発表の欧州高血圧学会(ESH)/欧州心臓病学会(ESC)高血圧ガイドラインでは、一般成人(65歳未満)の基準値は140/90mmHg以上とされたものの、降圧目標は120~130/70~<80mmHgとして、目標値を厳格化する形をとっていた。高血圧診断の基準値は≧140/90mmHgで従来通りとなる方針 「高血圧治療ガイドライン2019」では、まず血圧値の分類について、高血圧の基準値は従来通り140/90mmHg以上とする見通しが示された。そのうえで、正常域血圧の分類について名称と拡張期血圧の値を一部改訂予定であることが明らかになった。以下、JSH2014での分類とJSH2019での改訂案を示す。・至適血圧:120/80mmHg未満→正常血圧:120/80mmHg未満・正常血圧:120~129/80~84mmHg→正常高値血圧:120~129/80mmHg未満・正常高値血圧:130~139/85~89mmHg→高値血圧:130~139/80~89mmHg降圧目標は10mmHgずつ引き下げの見通し 「高血圧治療ガイドライン2019」では、降圧目標については、75歳未満の一般成人では、130/80mmHg未満(診察室血圧)、125/75mmHg未満(家庭血圧)とそれぞれ10mmHgずつ引き下げる方向で進められている。 糖尿病、蛋白尿陽性のCKD、安定型の冠動脈疾患といった合併症のある患者については同じく診察室血圧で130/80mmHg未満、蛋白尿陰性のCKD、脳卒中既往のほか、75歳以上の高齢患者については140/90mmHg未満とすることが草案では示された。 また講演では、久山町研究ならびに日本動脈硬化縦断研究(JALS)に基づきCVDリスク(低~中等度~高リスクの3群に分類)を層別化した表(改訂案)も示され、高値血圧を含むより早期から生活習慣介入を中心に管理していく必要性が指摘された。 最後に梅村氏は、「一般成人に対する日欧米3つのガイドラインの降圧目標値は130/80mmHg未満で共通となる見通しで、旧ガイドライン時と比較して適用対象となる患者数は増加するだろう」と述べた。 今後関連学会との調整やパブリックコメント等を経て、改訂内容について最終決定のうえ、2019年春ごろをめどに「高血圧治療ガイドライン2019」は発行される予定。〔9月21日 記事の一部を修正いたしました〕■「高血圧治療ガイドライン2019」関連記事高血圧治療ガイドライン2019で降圧目標の変更は?

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やはり優れたアスピリン!(解説:後藤信哉氏)-915

 心筋梗塞後などの2次予防におけるアスピリンの有効性、安全性は確立されている。血栓イベントリスクの低い1次予防の症例群一般では、アスピリンのメリットはデメリットに勝るとはいえない。しかし、1次予防の症例群でもアスピリンの服用による心血管イベントリスクの低減効果は確立されている。多忙な医師は心血管イベントリスクも高いので、アスピリン服薬による心血管死亡率の低減効果が注目された時代もあった。 過去に血管病の既往がなくても、糖尿病の症例では心血管イベントリスクは高い。しかし、過去に施行されたランダム化比較試験では、糖尿病症例一般における心血管イベントリスク低下効果を示すことができなかった。アスピリンには糖尿病症例における心血管イベント予防効果がない(骨髄の血小板産生速度が増すから)との解釈と、ランダム化比較試験のサンプル、観察期間が不十分との解釈があった。 オックスフォード大学の研究グループは、単純な仮説検証ランダム化比較試験を大規模、長期間にて徹底的に行う。今回のASCEND研究では1万5,480例もの症例をランダム化し、7.4年にわたって観察した。アスピリン服用例ではプラセボに比較して心血管イベントの低減効果が示された(HR:0.88、95%CI:0.79~0.97)。糖尿病症例でもアスピリンの有効性を期待できることを証明した本研究のインパクトは大きい。心血管イベント発症率が一般に低下した現代社会にて、仮説検証研究を行うためには徹底的な大規模、長期間の研究が必須なのだ。 大規模、長期間の仮説検証研究は科学的真実を示す。心血管イベントの発症率を低減化するアスピリンは、重篤な出血イベントも増加させる。重篤な出血イベントはHR:1.29(95%CI:1.09~1.52)にて増加する。ASCEND研究は、糖尿病でもアスピリンには心血管イベント予防効果があることを示した。抗血小板効果があるので重篤な出血イベントも効果に相応して増加する。ASCEND研究の結果に基づいて、糖尿病一般にアスピリンを推奨することはできない。「効果もあるけど副作用もあります。どうしましょう?」と、患者とコンセンサスを作る必要がある状況に変化はない。

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冬季の高齢者の感染症対策はワクチンで

 2018年9月6日、ファイザー株式会社は都内において、高齢者の冬場の感染症対策に関するプレスセミナーを開催した。セミナーでは、冬季の肺炎についてや同社が行った肺炎球菌ワクチンに関するアンケート結果が公表された。高齢者が陥る肺炎の「負のスパイラル」 セミナーでは、講師に長谷川 直樹氏(慶應義塾大学医学部 感染症制御センター 教授)を迎え、「今から取り組む冬場に向けての高齢者の感染症対策~65歳以上の肺炎球菌ワクチン接種についてのコミュニケーション実態調査を踏まえて~」をテーマにレクチャーが行われた。 高齢化の進行するわが国では、65歳以上の97.9%が肺炎で死亡するなど肺炎への対応は大きな課題となっている(厚生労働省 平成29年人口動態統計)。高齢者では、肺炎を発症し入院などするとADLが低下し、それにより退院後も心身機能が低下、寝たきりになったり、嚥下機能が弱ったりすることで、さらに肺炎を再発する「負のスパイラル」を引き起こすと危惧されている。 市中肺炎における原因微生物では、圧倒的に肺炎球菌が多く、医療・介護関連でも肺炎球菌が一番多い検出菌として報告されている。また、基礎疾患として、COPDなどの慢性肺疾患、喘息、慢性心疾患、糖尿病などがある65歳以上の高齢者では肺炎発症リスクが高く1)、さらには重症インフルエンザに罹患後、肺炎に感染するリスクも報告されている(日本呼吸器学会インフルエンザ・インターネットサーベイ)。肺炎、インフルエンザはワクチンの併用接種でリスクを縮小 こうした肺炎には予防ワクチンが有効であるが、現在わが国で成人に接種できる肺炎球菌ワクチンは2種類ある。 1つは23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(商品名:ニューモバックス)で、2歳以上から接種ができる多糖体ワクチンである。接種経路は筋肉内または皮下となっている。幅広い年代で使用できる反面、約5年で抗体価が低下するために再接種の必要があるとされている。もう1つは13価肺炎球菌結合型ワクチン(同:プレベナー)で、2ヵ月齢~6歳未満(接種経路は皮下)、65歳以上(接種経路は筋肉内)で接種できる。主に小児の肺炎予防ワクチンとして定期接種され、修正免疫を獲得するワクチンであるとされる。 両ワクチンの使い分けについては、長谷川氏は私見としながらも「高齢者や慢性疾患のある患者には両方接種が望ましい選択。外来などでは、日本呼吸器学会と日本感染症学会の合同委員会表明の『65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方』などに従って患者と相談し決めていくことになる」と考えを述べた。 また、インフルエンザワクチンとの併用接種については、「『成人肺炎診療ガイドライン』や日本内科医会の見解にもあるように併用接種が強く推奨されていることから、機会を捉えて高齢者や肺炎リスクの高い患者などには接種の必要性を説明・実施するなど、医療者側の対応が必要だ」と強調した。ワクチン接種について医師と患者で大きな溝 つぎに医師と患者のワクチンギャップに関するアンケート調査結果を報告した。この アンケートは、全国の呼吸器内科の医師150名および65歳以上の男女300名を対象に、「成人の肺炎球菌ワクチンについてのコミュニケーション実態調査」を行ったもの(2018年3月30日~31日・インターネット調査、ファイザー株式会社が実施)。 「肺炎球菌ワクチン接種の考え方」ついて、医師の80%が「定期接種に限らず任意接種制度も上手に利用すべき」と考えているのに対し、患者では17.7%しか同様の考えを持っておらず、53.7%の患者は「定期接種またはその予定で十分」と考えていること(医師の同じ考えは18.0%)が判明した。また、「ワクチン接種に関する患者との質問のやり取り」では、医師の72.7%(109/150)が「患者は疑問に思うことを医師に十分に伝えていない」と考えているのに対し、5分以上診療で話している患者の77.1%(54/70)が「気になることは医師に質問できている」と回答するなど、両者の意識の違いも明らかとなった。 こうしたアンケートを踏まえ同氏は、「ワクチンが肺炎罹患の減少と健康寿命延伸の1つとして活かされるには、患者が納得して接種できるように、両者でよりよいコミュニケーションがなされる必要があり、呼吸器内科だけでなく診療科を超えた取り組みがカギとなる」と期待を語り、講演を終えた。●文献1)Shea KM, et al. Open Forum Infect Dis. 2014;1:ofu024.■参考65歳以上の肺炎球菌ワクチン接種についてのコミュニケーション実態調査(ファイザー社調査結果)

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リバーロキサバン、 非心房細動・冠動脈疾患併発の心不全増悪に有効か/NEJM

 心不全は、不良な予後が予測されるトロンビン関連経路の活性化と関連する。フランス・Universite de LorraineのFaiez Zannad氏らCOMMANDER HF試験の研究グループは、慢性心不全の増悪で入院し、左室駆出率(LVEF)の低下と冠動脈疾患がみられ、心房細動はない患者の治療において、ガイドラインに準拠した標準治療に低用量のリバーロキサバンを追加しても、死亡、心筋梗塞、脳卒中の発生を改善しないことを示した。リバーロキサバンは、トロンビンの産生を抑制する経口直接第Xa因子阻害薬であり、低用量を抗血小板薬と併用すると、急性冠症候群および安定冠動脈疾患の患者において、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の発生が低減することが知られている。NEJM誌オンライン版2018年8月27日号掲載の報告。32ヵ国628施設で、心不全増悪患者約5,000例を登録 本研究は、32ヵ国628施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Janssen Research and Development社の助成による)。対象は、3ヵ月以上持続する慢性心不全がみられ、LVEF≦40%、心不全増悪(インデックスイベント)による入院後21日以内で、冠動脈疾患を有し、ガイドラインに準拠した適切な薬物療法を受け、抗凝固療法は受けていない患者であった。心房細動がみられる患者は除外された。 2013年9月~2017年10月の期間に、5,022例(ITT集団)が登録され、リバーロキサバン(2.5mg、1日2回)+標準的抗血小板療法を施行する群に2,507例、プラセボ+標準的抗血小板療法を施行する群に2,515例が割り付けられた。追跡期間中央値は21.1ヵ月であった。 有効性の主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合であり、安全性の主要アウトカムは、致死的出血と、後遺障害が発生する可能性がある重要部位(頭蓋内、髄腔内、眼内など)の出血の複合であった。脳卒中は抑制、大出血リスクが高い 平均年齢はリバーロキサバン群が66.5±10.1歳、プラセボ群は66.3±10.3歳で、女性がそれぞれ22.0%、23.8%含まれた。心筋梗塞が76.2%、75.2%、脳卒中が8.3%、9.7%、糖尿病が40.8%、40.9%、高血圧が75.7%、75.0%に認められた。 有効性の主要複合アウトカムの発生率は、リバーロキサバン群が25.0%(626/2,507例)、プラセボ群は26.2%(658/2,515例)であり、両群間に有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.84~1.05、p=0.27)。項目別にみると、全死因死亡はリバーロキサバン群:21.8% vs.プラセボ群:22.1%(HR:0.98、95%CI:0.87~1.10)、心筋梗塞3.9 vs.4.7%(0.83、0.63~1.08)、脳卒中は2.0 vs.3.0%(0.66、0.47~0.95)であった。 安全性の主要複合アウトカムの発生率は、リバーロキサバン群が0.7%(18/2,499例)、プラセボ群は0.9%(23/2,509例)と、両群間に有意な差はみられなかった(HR:0.80、95%CI:0.43~1.49、p=0.48)。項目別にみると、致死的出血(リバーロキサバン群:0.4% vs.プラセボ群:0.4%、HR:1.03、95%CI:0.41~2.59、p=0.95)および後遺障害が発生する可能性のある重要部位の出血(0.5 vs.0.8%、0.67、0.33~1.34、p=0.25)について両群間の有意差はなかったが、大出血リスクはリバーロキサバン群のほうが有意に高かった(3.3 vs.2.0%、1.68、1.18~2.39、p=0.003)。 著者は、「リバーロキサバンが心血管アウトカムを改善しなかった最も可能性の高い理由は、トロンビン介在性イベントは、心不全で入院したばかりの患者における心不全関連イベントの大きな要因ではないことである」とし、「事実、本試験で最も頻度の高い単一のイベントは心不全による再入院であり、アテローム血栓性イベントよりもむしろ心不全が、実質的な死亡割合に寄与している可能性がある」と指摘している。

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ω-3脂肪酸、糖尿病患者の重篤な血管イベント抑制に効果?/NEJM

 糖尿病患者にω-3脂肪酸の栄養補助を行っても、重篤な血管イベントのリスクは、プラセボに比べ改善しないことが、英国・オックスフォード大学のLouise Bowman氏らが実施したASCEND試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年8月26日号に掲載された。観察研究では、ω-3脂肪酸の摂取量の増加にともない、心血管疾患のリスクが低減することが報告されているが、これまでに、この知見を確証した無作為化試験はなかった。また、ω-3脂肪酸の栄養補助が、糖尿病患者の心血管リスクに便益をもたらすかは不明とされる。40歳以上の心血管疾患のない糖尿病患者の検討 研究グループは、糖尿病患者へのω-3脂肪酸の栄養補助が、重篤な心血管イベントを抑制するかを検証する無作為化試験を実施した(英国心臓財団などの助成による)。本試験では、ファクトリアルデザインを用いて、アスピリンの有用性の評価も行われたが、この論文ではω-3脂肪酸の結果が報告された。 対象は、年齢40歳以上、型を問わず糖尿病と診断され、心血管疾患のエビデンスがない患者であった。被験者は、ω-3脂肪酸1gカプセルまたはプラセボ(オリーブ油)を1日1回服用する群にランダムに割り付けられた。 主要アウトカムは、初回の重篤な血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中[頭蓋内出血を除く]、一過性脳虚血発作、血管死[頭蓋内出血を除く])であった。副次アウトカムは、初回の重篤な血管イベントまたは動脈血行再建術の複合とした。血管死は有意に低減 2005年6月~2011年7月の期間に1万5,480例が登録され、ω-3脂肪酸群に7,740例、プラセボ群にも7,740例が割り付けられた。両群とも、ベースラインの平均年齢は63.3±9.2歳、男性が62.6%、白人が96.5%であった。2型糖尿病が、それぞれ94.1%、94.2%を占め、罹患期間中央値は7年(IQR:3~12)、7年(3~13)であった。全体の平均フォローアップ期間は7.4年、平均アドヒアランス率は76%だった。 重篤な血管イベントの発生率は、ω-3脂肪酸群が8.9%(689/7,740例)、プラセボ群が9.2%(712/7,740例)と、フォローアップ期間の長さにかかわらず有意差はなかった(率比[RR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.87~1.08、p=0.55)。 初回の重篤な血管イベントまたは血行再建術の複合の発生率は、ω-3脂肪酸群が11.4%(882/7,740例)、プラセボ群は11.5%(887/7,740例)であり、有意な差はみられなかった(RR:1.00、95%CI:0.91~1.09)。 全死因死亡率は、ω-3脂肪酸群が9.7%(752/7,740例)、プラセボ群は10.2%(788/7,740例)であり、有意な差はなかった(RR:0.95、95%CI:0.86~1.05)。全死因の28%を占めた血管死(頭蓋内出血を含む)は、ω-3脂肪酸群のほうが有意に少なかった(2.5 vs.3.1%、0.82、0.68~0.98)。非血管死(がん死、呼吸器疾患死などを含む)には有意差はなかった(7.1 vs.7.0%、1.01、0.90~1.14)。また、非致死性の重篤な有害事象の発生率にも、両群間に有意な差はなかった。 著者は、「これまでの糖尿病患者および非糖尿病患者の無作為化試験の結果を考慮すると、今回の知見は、ω-3脂肪酸の栄養補助食品のルーチン使用という、血管イベントの予防における現行の推奨を支持しない」としている。

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アスピリンは、糖尿病患者にとって有益か有害か/NEJM

 アスピリンは、糖尿病患者において重篤な血管イベントを予防するが、大出血イベントの原因にもなることが、英国・オックスフォード大学のLouise Bowman氏らが行ったASCEND試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年8月26日号に掲載された。糖尿病により、心血管イベントのリスクが増加する。アスピリンは、閉塞性血管イベントのリスクを抑制するが、糖尿病患者の初回心血管イベントの予防におけるその有益性と有害性のバランスは不明とされる。心血管疾患がない糖尿病患者で有効性と安全性を評価 本研究は、糖尿病患者におけるアスピリンの有効性と安全性を評価する進行中の無作為化試験であり、ファクトリアルデザインを用いて、同時にω-3脂肪酸の検討も行われた(英国心臓財団などの助成による)。 対象は、年齢40歳以上、型を問わず糖尿病と診断され、心血管疾患がみられず、抗血小板療法の有益性が実質的に不確実な患者であった。被験者は、アスピリン100mgを1日1回服用する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 有効性の主要アウトカムは、初回の重篤な血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中[頭蓋内出血を除く]、一過性脳虚血発作、血管死[頭蓋内出血を除く])とした。安全性の主要アウトカムは、初回の大出血イベント(頭蓋内出血、失明のおそれのある眼内出血、消化管出血、その他の重篤な出血)であった。副次アウトカムには、消化器がんなどが含まれた。重篤な血管イベント12%低下、大出血イベント29%増加 2005年6月~2011年7月の期間に1万5,480例が登録され、アスピリン群に7,740例、プラセボ群にも7,740例が割り付けられた。ベースラインの平均年齢は、アスピリン群が63.2±9.2歳、プラセボ群は63.3±9.2歳、男性がそれぞれ62.6%、62.5%であった。両群とも、2型糖尿病が94.1%を占め、罹患期間中央値も同じ7年(IQR:3~13)だった。 全体の平均フォローアップ期間は7.4年、平均アドヒアランス率は70%であった。 重篤な血管イベントの発生率は、アスピリン群が8.5%(658/7,740例)と、プラセボ群の9.6%(743/7,740例)に比べ有意に低かった(率比[RR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.79~0.97、p=0.01)。探索的解析として、フォローアップ期間別の評価を行ったところ、このアスピリンの効果は5年までで、それ以降は、実質的にイベントは抑制されなかった。 これに対し、大出血イベントの発生率は、アスピリン群が4.1%(314/7,740例)と、プラセボ群の3.2%(245/7,740例)に比し有意に高く、アスピリンの有害な作用が示された(RR:1.29、95%CI:1.09~1.52、p=0.003)。出血への影響には、経時的な減衰は示唆されなかった。また、頭蓋内出血(1.22、0.82~1.81)と失明のおそれのある眼内出血(0.89、0.62~1.27)には両群間に有意な差はなく、消化管出血(1.36、1.05~1.75)とその他の重篤な出血(1.70、1.18~2.44)がアスピリン群で有意に高頻度であった。 ベースライン時の重篤な血管イベントの推定5年リスクが高い患者ほど、重篤な血管イベント/血行再建術、および大出血の頻度が高かった。 消化器がん(アスピリン群:2.0% vs.プラセボ群:2.0%)および全がん(11.6 vs.11.5%)の発生率には、両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「アスピリンの絶対的な有益性は、そのほとんどが出血の有害性によって相殺された」とまとめ、「がんについては、今後、長期のフォローアップを行う予定である」としている。

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第3回 カリメート処方が査定/ヘリコバクター・ピロリ感染症での査定/心筋梗塞でのH-FABP検査の査定/自己免疫疾患の臨床検査での査定【レセプト査定の回避術 】

事例9 カリメート処方が査定高カリウム血症で、ポリスチレンスルホン酸カルシウム(商品名:カリメート散)15gを処方した。●査定点カリメート散15gが査定された。解説を見る●解説添付文書の「効能・効果」で「急性および慢性腎不全に伴う高カリウム血症」と記載されているにもかかわらず、「急性および慢性腎不全」の病名が漏れていました。※とくに、高カリウム血症で他から紹介された患者の場合などで「急性および慢性腎不全」の病名が漏れやすいので注意が必要です。事例10 ヘリコバクター・ピロリ感染症での査定ヘリコバクター・ピロリ感染症で、ランソプラゾール、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン(商品名:ランサップ800)を7シート処方した。●査定点ランサップ800の7シートが査定された。解説を見る●解説ランサップ800は、ランソプラゾール、アモキシシリン水和物、クラリスロマイシンの3種類の経口剤が1つのシートにまとめられています。ランソプラゾールの「効能・効果」では、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍」の病名が求められていますので、ヘリコバクター・ピロリ感染症と胃潰瘍または十二指腸潰瘍の病名が必要になります。事例11 心筋梗塞でのH-FABP検査の査定急性心筋梗塞(3ヵ月前の診療開始日)で、心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査を請求した。●査定点心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査が査定された。解説を見る●解説心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定量検査は、「急性心筋梗塞の診断を目的に用いた場合」のみ算定できるとされています。検査結果についても、心筋細胞が障害を受けると、速やかに約1時間から上昇をしはじめ、5~10時間後でピークになります。そのため3ヵ月前の診療開始日では査定の対象になります。事例12 自己免疫疾患の臨床検査での査定全身性エリテマトーデス、急速進行性糸球体腎炎で、抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)、ループスアンチコアグラント定量検査を請求した。●査定点ループスアンチコアグラント定量検査が査定された。解説を見る●解説抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)は「急速進行性糸球体腎炎の診断又は経過観察のために測定した場合」のみ算定でき、ループスアンチコアグラント定量検査は「抗リン脂質抗体症候群の診断を目的として行った場合」に限り算定することになっています。両病名が記載されていないと査定の対象となります。

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認知症は1種類だけではないはず(解説:野間重孝氏)-912

 認知症とは「後天的要因(脳疾患、全身疾患、その他の外因)が原因で社会生活や職業の遂行が困難なレベルにまで多領域の認知機能が障害された状態」と定義され、わが国では65歳以上の15%、85歳以上では4割を超えると報告されている。 少し回りくどいようだが、この論文を検討するに当たって重要なことなので、認知症に関する基本的な知識を整理してみよう。まず認知症は変性性認知症と血管性認知症に2大別される。前者の代表がアルツハイマー病であり、その他レビー小体認知症、前頭側頭型認知症(ピック病を含む)が含まれる。前者が人格変化を伴うのに対して、血管性のものでは人格は保たれる例が多い。進行は前者が緩徐ながら常に進行していくのに対し、後者では段階的に進行することが特徴とされる。 ここで重要なことが2点ある。まず認知症のかなりの部分を占める変性性認知症(アルツハイマーだけで認知症の約半分を占める)では原因が特定できないことで、高血圧・糖尿病・心疾患などとの明らかな相関が認められているのは血管性のものだけだということ。第2点はマスコミがアルツハイマー病による若年性認知症などを取り上げて話題にすることが多いため、変性性認知症は年齢と関係がないと思っている向きも多いが、高齢者に多い、つまり年齢との相関があることははっきりしている。一方、逆に血管性というと高齢者の病気とばかり考えられがちだが、若年型も相当数いるという事実である。血管性認知症が全認知症に占める割合は20%~30%とされており、予防・治療には血圧の管理が最も重要であることはすでにわかっている事実である。 このような点を踏まえてこの論文を読み返してみると、奇妙な点に気付くはずである。認知症の型分類がなされていないのである。米国心臓協会の提示するライフ シンプル7が健康寿命を延長するということには誰も異論がないとして、ではどの型の認知症をどの程度予防するのか。こうした健康基準がアルツハイマー病やピック病の予防にも適応されるというのだろうか。 評者はフランスにおける認知症事情については決して詳しくはないが、同国では本年(2018年)8月にアルツハイマー病に対する薬物療法の有効性が問題となり、かなり広い範囲の認知症治療薬が保険適用外になることが議論を呼んでいることは承知している。つまり認知症の型分類は当然重要問題として認識されているものと考えられる。「認知機能低下や認知症と関連するリスク因子を予防するため、心血管の健康増進が望まれる」といった健康増進のための標語のような結論が、なぜこのような有力雑誌で受け入れられたのか、評者には謎に思われてならない。

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第3回 高齢者の高血糖で気を付けたいこと【高齢者糖尿病診療のコツ】

第3回 高齢者の高血糖で気を付けたいことQ1 高齢者では基準が緩和されていますが、血糖値高めでも様子をみる方針でいいのでしょうか? 注意すべき病態はありますか?最近のガイドラインでは、高齢者、とくに認知機能やADLが低下している場合血糖コントロールが甘めに設定されていますが、どんなに高くてもよいというものではありません。高血糖で緊急性を要する病態として、高浸透圧高血糖状態(HHS)と糖尿病ケトアシドーシス(DKA)があり、注意が必要です(表)。画像を拡大するHHSはインスリン分泌が保たれている患者に、何らかの血糖上昇をきたす因子(感染症やステロイド投与、経管栄養など)が加わり、著明な高血糖と高度脱水をきたす病態です。血糖値は通常600mg/dLを超え、重症では意識障害をきたし、死亡率は10~20%とされています。HHSはとくに高齢者で起こりやすく、糖尿病治療中でこれらの因子を伴った場合は、十分な水分摂取を促すこと、こまめに血糖値をチェックすることが大切です。水分摂取困難や意識障害の症例はもちろん、血糖300mg/dL以上が持続する場合も専門医を受診させ、入院を考慮するべきでしょう。以前行った調査1)では、HHS患者では認知症有の患者が86%を占め、要介護3以上、独居または高齢夫婦世帯がそれぞれ半数以上を占めていました。これらの患者ではとくに注意が必要です(図1)。画像を拡大するDKAは、インスリンの絶対的欠乏によって脂肪が分解され、血中のケトン体が上昇し、アシドーシスを呈する病態です。高齢者のDKAの多くは1型糖尿病で治療中の患者さんでの、感染症合併やインスリンの不適切な減量・中断による発症です。体調不良時のインスリンの使用法(シックデイルール)を指導しておく必要があります。食事がとれないような場合でも、安易にインスリン(とくに持効型)を中止しないよう指導することが重要になります。HbA1c9%以上では、HbA1c7~7.9%に比べHHSやDKAなどの急性代謝障害をきたすリスクが2倍以上となります。高齢者ではHbA1c8.5%以上だと肺炎、尿路感染症などの感染症のリスクも高くなります。そのため私たちは、認知機能やADLが低下している患者さんでも、HbA1c8.5%未満を目標としています。HbA1c8.5%以上が持続する症例では、入院での血糖コントロールを行い、その後の環境調整を行っています。Q2 HbA1cが正常なのに、 食後血糖が高い患者へはどのように対応すべきでしょうか?HbA1cは平均血糖の指標であり、HbA1cが正常でも、血糖変動が大きい可能性があります。食後高血糖は血糖変動の大きな要因であるため、外来受診の患者さんでも、空腹時のみでなく、定期的に食後血糖(1、2時間値)を測定するようにしています。食後高血糖は、糖尿病予備軍の患者さんの糖尿病への進展リスクを高めるといわれています。また高齢者のみでの研究ではありませんが、心血管疾患の発症率や死亡率も高いことが知られています(図2) 2)。一方で、SU薬やインスリン使用中で食後高血糖、かつHbA1cが低い場合は、低血糖が隠れていることがあるため、注意が必要です。また早朝の血糖が高値を示す場合、実は夜間に低血糖があり、それに引き続いてインスリン拮抗ホルモンが分泌されて血糖が上昇している場合があります(ソモジー効果)。ソモジー効果が疑われる場合は深夜の血糖を測ることが望ましく、低血糖が疑われる場合は、インスリンやSU薬の減量を行います。画像を拡大する食後高血糖に対しては、まず生活指導を行います。ゆっくり時間をかけて食べる、糖質を食物線維が多いものと一緒にとる、清涼飲料水など糖質が速やかに吸収される食品を避ける、食後1時間後を目安にウォーキングや軽い体操を行うこと、などを勧めます。これらの指導を行ったにもかかわらず、食後血糖が常に200mg/dLを超えている場合は、α-グルコシダーゼ阻害薬(非糖尿病でも使用可能)や、グリニド製剤(糖尿病のみ使用可能)などの食後高血糖改善薬の投与も考慮します。前者は糖質の吸収を緩やかにする薬剤ですが、腹部手術後は慎重投与となっています。後者はインスリン分泌を刺激する薬剤ですので、低血糖への配慮が必要になります。いずれも1日3回食直前の内服が必要なので、服薬アドヒアランスの不良な患者さんには適していません。そのような患者さんには、効果は劣るものの服薬回数の少ないDPP-4阻害薬を考慮しますが、認知機能やADLが低下している患者さんでは食後のみの高血糖であれば、無投薬で様子をみることも多いです。Q3 高血糖に対する認識の低さを感じます。患者指導のポイントがあれば教えてください。まず、年齢、認知機能やADL低下の程度、合併症や併発疾患、生命予後によって、コントロールの目標も変わってきます。認知機能やADLが低下している場合は、厳格なコントロールは必ずしも必要ありません(第6回で詳述予定です)。一方、比較的若く、認知機能やADLが保たれている患者さんには、しっかり指導をしなければなりません。ここではこういった患者さんで病識が低い人への対応を考えます。これらの患者さんでは何よりも、通院を中断してしまうことが問題です。通院しているだけである程度の意欲はあるわけですから、その部分は褒めるようにしています。また、看護師や栄養士にも協力してもらい、治療に対するご本人の考えや感情を十分に傾聴することが大切でしょう。チームとしてのサポートが重要となります。「もう歳だからいい」と言う場合や、配偶者の介護の負担などで治療に向き合えないこともあります。医療スタッフが来院時に悩みを聞きながら、少しずつ治療に向き合えるように粘り強く待つことが大切です。長期間来院しない時はスタッフから連絡してもらい、心配していることやあなたの健康を一緒に支えているということをわかっていただきます。教育面では、休日の糖尿病教室への参加をお勧めしたりしますが、強制はしません。また、診療時間は限られているので、教育資材やビデオを貸し出したりして、合併症予防の重要性を学んでいただくようにしています。そして1つでも合併症を理解していただいたら、褒めるようにします。治療に関しては、同時にいくつものことを要求しないことも重要です。禁煙と運動、食事内容を一度に全て改善しろといってもできません。患者さんの取り組みやすいところから1つずつ、しかも達成しやすいところに目標をおきます。例えばまったく運動していない人では、「まず1日3,000歩歩いてみましょう」とします。この際、目標は具体的に、数値化したものが望ましいでしょう。そして患者さんにはかならず記録をつけてもらうようにしています。たとえ目標が達成できなくても、記録をつけはじめたということについてまず褒めます。とにかく、できないことを責めるのではなく、できたことを褒める、という姿勢です。投薬の面でも、できるだけ負担のないようにし、例えば軽症で連日の投薬に抵抗がある患者さんには、週1回の製剤からはじめたりしています。なお、認知機能やADLが低下している場合でも、著明な高血糖は避ける必要があります。Q1で述べた内容を、家族・介護者に指導します。 1)Yamaoka T, et al. Nihon Ronen Igakkai Zasshi. 2017;54:349-355.2)Tominaga M, et al. Diabetes Care. 1999;22:920-924.

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インスリンが血糖に関係なくがんリスクに関連か~JPHC研究

 わが国の大規模前向きコホート研究(JPHC研究)より、数種類のがんにおいて、インスリン高値が高血糖とは関係なく、糖尿病関連のがん発症に関連する可能性が示唆された。著者らは「血漿インスリン値の検査は、糖尿病を発症していない人においても、がんリスクを評価するうえで妥当なオプションである」としている。International Journal of Cancer誌オンライン版2018年9月5日号に掲載。 本研究では、がんリスクにおけるインスリンと血糖のそれぞれの影響を明らかにするために、インスリンの代用マーカーである血漿Cペプチド、および安定した血糖マーカーである糖化アルブミン(GA)と、がん全体および部位別のがんリスクとの関連が検討された。ベースラインでアンケートに回答し血液サンプルを提供した3万3,736人のうち、約4,000人にがんが発症した。明らかに糖尿病である被験者を除外し、3,036人のがん症例と3,667人のサブコホートで分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・男女全体として、GAで調整後、Cペプチド値の最も高い群は、最も低い群と比べてがん全体(ハザード比[HR]:1.21、95%信頼区間[CI]:1.02~1.42)、結腸がん(1.73、1.20~2.47)、肝臓がん(3.23、1.76~5.91)、腎・腎盂・尿管がん(2.47、1.07~5.69)のリスク増加と有意に関連していた。・Cペプチドに関連した上記のがんのうち結腸がんと肝臓がんでは、Cペプチド値とは関係なく、GAの増加に関連したがんリスク増加も示した。GAの最も低い群に対する、最も高い群での結腸がんと肝臓がんのHRは、それぞれ1.43(95%CI:1.02~2.00)および2.02(95%CI:1.15~3.55)であった。・性別による差異は、Cペプチドと結腸がんの関連(相互作用のp=0.04)のみ明らかであった。

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先発配合剤の承認は医療費削減に逆行しているのではないか(解説:折笠秀樹氏)-909

 本邦の医療用医薬品の中で、後発医薬品の数量ベースのシェアは70%と言われている。ちなみに、米国での同シェアは90%を超えている。売上ベースのシェアで見ると、30%より少し高い程度のようである。数量的には70%を占めていても、単価が先発医薬品に比べて安いのでこのようになるのだろう。 さて、厚労省は2005年3月、患者の利便性の向上に資するとして、配合剤を承認する旨の通知を出した。配合剤は錠剤数が減って手間が省けるとか、単剤の価格の和よりも安くなるというのは表向きの理由であり、裏には別の理由があると思われる。特許切れを控えた先発品は、どんどん後発医薬品に取って代わられてしまう。そうすると、先発医薬品メーカーは失速してしまう。打開策として、配合剤を開発するようになったというのが本音のような気がする。先発品は10年程度で特許切れになるが、配合剤として新しく世に出せば生き延びることができる。配合剤の後発品はまたしばらく出てこないからだ。 今回の研究はまさに、先発品としての配合剤が米国のメディケア(主に高齢者医療保険)の財政を圧迫しているという調査結果である。配合剤の価格はこの5年間で3倍にも増加していた。そして、29種の先発配合剤だけで、メディケアから年間1,000億円が使われていた。これを後発医薬品へスイッチすることにより、なんと年間900億円も節約できるという試算を示した。薬剤費を1/10に減らせるというのだ。 単剤での医薬品については後発医薬品へのスイッチが浸透してきたが、それに足かせとなっているのが配合剤の登場とも言える。まさに、医療費削減に逆行する動きのようにも見える。先発の配合剤を後発品単剤の組み合わせに切り替えるだけで、薬剤費が1/10になることを本研究は示した。日本の医療費は目下42兆円、その中の薬剤費は約8兆円と言われる。この結果を信じれば、日本の薬剤費は1兆円以下に抑えられることになる。

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ケアネット白書~糖尿病編2018

ケアネットでは今年2月から3月にかけて、2型糖尿病患者を1ヵ月10例以上診察している医師を対象にアンケート調査を実施し、経口血糖降下薬の処方割合やその理由などを聞いた。その回答は、「ケアネット白書~糖尿病編2018」としてまとめているが、本稿では、主な質問項目とその回答について抜粋して紹介する。CONTENTS1.調査概要2.結果(1)回答医師の背景(2)薬剤の処方状況(1stライン)(3)薬剤の処方状況(2ndライン)(4)薬剤選択の際に重要視する項目(5)配合剤に対する認知状況と処方意向

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ケアネット白書~糖尿病編2018

インデックスページへ戻る1.調査概要本調査の目的は、糖尿病診療に対する臨床医の意識を調べ、その実態を把握するとともに、主に使用されている糖尿病治療薬を評価することである。本調査は、2018年2月23日~3月2日に、ケアネットの医師会員約14万人のうち、2型糖尿病患者を1ヵ月に10人以上診察している医師500人を対象にCareNet.com上で実施した。2.結果(1)回答医師の背景回答医師500人の主診療科は、糖尿病・代謝・内分泌科が240人(48.0%)で最も多く、一般内科162人(32.4%)、循環器科41人(8.2%)などが続いた。医師の所属施設は、一般病院が194人(38.8%)で最も多く、以下、医院・診療所・クリニック125人(25.0%)、大学病院93人(18.6%)、国立病院機構・公立病院88人(17.6%)など。医師の年齢層は50代が160人(32.0%)で最も多く、次いで40代(129人、25.8%)、30代(125人、25.0%)が続いた。(2)薬剤の処方状況(1stライン)糖尿病治療薬をSU薬、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)、ビグアナイド(BG)薬、チアゾリジン薬、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド)、DPP-4阻害薬、インスリン、GLP-1、SGLT2阻害薬、その他に分類し、食事・運動療法に加えて薬物療法を実施する際の1stラインの処方状況を聞いた(図1)。図1を拡大する処方が最も多かったのはDPP-4阻害薬で、回答した医師全体の38.3%が1stラインで使っている。昨年と比べると0.1ポイント減少で、ほぼ横ばいといえる。次いで多かったのはBG薬(27.6%)で、昨年と比べて1.3ポイント増加した。そのほか、SGLT2阻害薬(6.4%)は昨年と比べて2.7ポイント増加し、過去5年間において最も多かった。<糖尿病・代謝・内分泌科での1stライン>回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科の場合、1stラインでの処方割合が最も多かったのはDPP-4阻害薬(35.4%)だが、これに続くBG薬が34.8%であり、割合は拮抗している。一方、SU薬は過去5年の推移をみても一貫して減少傾向にあるようだ(図2)。図2を拡大する<その他の診療科(糖尿病・代謝・内分泌科以外)での1stライン>回答医師の属性がその他の診療科の場合、1stラインの処方割合はDPP-4阻害薬が最も多く(41.0%)、昨年と比べて0.3ポイント増とほぼ横ばいであった(図3)。図3を拡大する(3)薬剤の処方状況(2ndライン)●DPP-4阻害薬単剤処方例からの治療変更1stラインでDPP-4阻害薬を単剤投与しても血糖コントロールが不十分だった場合、2ndラインではどのような治療変更を行うかについて、1.SU薬を追加、2.速効型インスリン分泌促進薬を追加、3.α-GIを追加、4.BG薬を追加、5.チアゾリジン薬を追加、6. SGLT2阻害薬を追加、7. BG薬とDPP-4阻害薬の配合剤への切り替え、8. その他配合剤への切り替え、9.他剤への切り替え、10.その他―の分類から処方状況を聞いた(図4)。なお、2018年度は選択肢から「GLP-1を追加」、「インスリンを追加」を削除し、「BG/DPP-4阻害薬配合剤へ切り替え」「その他配合剤へ切り替え」を追加している。図4を拡大する最も多かったのはBG薬の追加で、回答した医師の40.8%に上った。SGLT2阻害薬の追加は過去5年間で年々増加傾向にあり、14.1%と昨年と比べて4.2ポイント増加した。一方、SU薬やα-GIの追加は減少傾向にある。BG/DPP-4阻害薬配合剤への切り替えは10.1%であった。回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科とその他の診療科を比較すると、専門医ではBG薬の追加が全体平均よりも高い傾向にあり、逆にα-GIの追加を選ぶ医師は少ない傾向があった。専門医以外では、α-GIの追加のほか、BG/DPP-4阻害薬配合剤を選択する割合が多い傾向がみられた(図5)。図5を拡大する●BG薬単剤処方例からの治療変更また、1stラインでBG薬を単剤投与しても血糖コントロールが不十分だった場合2ndラインではどのような治療変更を行うかについて、1.SU薬を追加、2.速効型インスリン分泌促進薬を追加、3.α-GIを追加、4.チアゾリジン薬を追加、5. DPP-4阻害薬を追加、6. SGLT2阻害薬を追加、7. BG薬とDPP-4阻害薬の配合剤への切り替え、8. その他配合剤への切り替え、9. DPP-4阻害薬(配合剤以外)への切り替え、10. DPP-4阻害薬以外の薬剤(配合剤以外)への切り替え、11.その他―の分類から処方状況を聞いた(図6)。図6を拡大する最も多かったのは前年に引き続きDPP-4阻害薬の追加(55.1%)であった。SGLT2阻害薬の追加(13.2%)を選択する医師の割合は、前年比で5.2ポイント増となり、2番目に多い選択肢となっている。回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科とその他の診療科を比較すると、専門医で最も多かったのはDPP-4阻害薬の追加(52.2%)で、次いでSGLT2阻害薬の追加(16.3%)となっていた。その他の診療科と比べると、DPP-4阻害薬の追加が少なく、SGLT2阻害薬の追加が多い傾向がみられた(図7)。図7を拡大する(4)薬剤選択の際に重要視する項目本調査では、薬剤を選択する際に重要視する項目についても聞いている(複数回答)。最も多いのは昨年に続き「低血糖をきたしにくい」で、77.8%の医師が挙げている。以下、「重篤な副作用がない」(65.0%)、「血糖降下作用が強い」(64.0%)などが続き(図8)、例年と大きな変化はみられなかった。図8を拡大する(5)配合剤に対する認知状況と処方意向今年度から新たに、配合剤の認知度や処方意向についても聞いている。配合剤がラインナップにあることが薬剤の選択理由のひとつになるかという問いに対しては、「とてもそう思う」、「そう思う」、「まあそう思う」と答えた医師が全体の7割強となった。また、処方したいと思う配合剤の組み合わせについて、1. DPP-4阻害薬とビグアナイド薬の配合剤、2. DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤、3.上記以外の配合剤、4. 配合剤を処方するつもりはない―の4項目について聞いたところ(複数回答)、DPP-4阻害薬とビグアナイド薬の配合剤について63.4%の医師が処方意向を示した(図9)。図9を拡大する開発中、または開発検討中の配合剤の認知度について、1. シタグリプチン/イプラグリフロジンの配合剤、2. リナグリプチン/エンパグリフロジンの配合剤、3. アナグリプチン/メトホルミンの配合剤、4.なし―の4項目を聞いたところ(複数回答)、「なし」と答えたのは47.0%で、5割強の医師が開発中の何らかの配合剤を認知しているという結果となった。さらに、認知している配合剤が今後発売された場合、どのように処方したいかという問いに対しては、リナグリプチン/エンパグリフロジンの配合剤について52.0%の医師が「発売時より処方を検討していきたい」と回答し、処方意向が比較的高い傾向がみられた(図10)。図10を拡大するインデックスページへ戻るなお、本データはアンケートを用いた集計結果であり、処方実態を反映しているものではございません。

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“酒は百薬の長されど万病の元”という故事は飲酒の健康への利害を端的に語っており、認知症も例外にあらず!(解説:島田俊夫氏)-908

 高齢者の認知症が大きな社会問題としてクローズアップされている。2018年8月1日にBMJ誌に掲載されたフランス・パリ・サクレー大学のSeverine Sabia氏らの「Whitehall IIコホート研究」の結果は、飲酒と認知症の関連を取り上げた時宜にかなう論文で興味深く、この小稿で取り上げた。これまで過度な飲酒が身体に悪影響を及ぼすことは広く周知されている。一般的に適量の飲酒は認知症に関して低リスク1)と考えられてきたが、詳細については不明な点も多い。研究要約 本研究は英国ロンドン市の公務員を対象とした前向きコホート研究で、1985~88年の期間に35~55歳の1万308人(男/女:6,895/3,413人)を登録し、4~5年ごとに追跡調査が行われた。飲酒と認知症の関連性を評価し、心血管代謝疾患(脳卒中、冠動脈疾患、心房細動、心不全、糖尿病)を考慮の下で検討が行われた。 飲酒量は、1985~88年、1989~90年、1991~93年(中年期)の3回の調査平均値を用い、非飲酒、1~14単位/週(適度飲酒)、14単位超/週(過度飲酒)に分類した。中年期の飲酒量を調査した時点でのコホートの平均年齢は50.3歳であった。 さらに、1985~88年から2002~04年にわたる17年の期間中の調査結果を5パターン([1]長期非飲酒、[2]飲酒量減少、[3]長期飲酒量が1~14単位/週、[4]飲酒量増加、[5]長期飲酒量14単位超/週)に分けて検討した。 1991~93年の調査では、CAGE質問表(4項目2点以上でアルコール依存性あり)を用いてアルコール依存症の有無を評価、1991~2017年の期間におけるアルコール関連疾患による入院状況も併せ調査した。結果 中年期の非飲酒群は基準群(適度飲酒群)と比べ認知症のリスクが高かった(ハザード比[HR]:1.47、95%信頼区間[CI]:1.15~1.89、p<0.05)。14単位超/週群の認知症リスクは、基準群と比べ有意差を認めなかった(1.08、0.82~1.43)が、そのうち飲酒量が7単位増加/週群では認知症リスクが17%有意に増加した(1.17、1.04~1.32、p<0.05)。 非飲酒群でフォローアップ期間に認知症の高リスクを認めたことは心血管代謝疾患の関与で部分的に説明可能であり、非飲酒群全体の認知症のハザード比が1.47(1.15~1.89)であったのに対して疾患のない非飲酒群ではハザード比1.33(0.88~2.02)と基準群と比べ有意差を認めなかった。 中年期~初老期の飲酒量推移による検討では、長期飲酒では基準群と比べ長期非飲酒群の認知症リスクは74%と高く(HR:1.74、95%CI:1.31~2.30、p<0.05)、飲酒量減少群で55%増加(1.55、1.08~2.22、p<0.05)、長期14単位超/週群では40%増加(1.40、1.02~1.93、p<0.05)した。コメント 飲酒と総死亡率の関係はUまたはJ-カーブを示すと考えられている2)。昔から“酒は百薬の長されど万病の元”という故事は飲酒の影響を端的に表現している。わかりやすく言い換えると適度な飲酒は健康にとりプラスになり、過度な飲酒は命を縮め、適量飲酒に比べて非飲酒は思いのほか利益なく、かえってマイナスに作用すると言い換えできる。本論文の著者は、これまでの飲酒による知見が認知症に対して当てはまるか否かを、経時的要素を加味し、交絡因子、データエラーを最小にする工夫の下で統計解析を行い、U-カーブの存在を確認し認知症への飲酒によるこれまでの知見の適用の妥当性を確認した。しかしながら、適量飲酒の効用を過大に期待することは飲み過ぎにつながる恐れがあり慎むべきと考える。“酒は百薬の長されど万病(認知症)の元”を肝に銘じ忘れないことが大事です。

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中等度CVDリスクへのアスピリン1次予防効果は?/Lancet

 心血管疾患リスクが中等度の55~60歳以上の患者に対し、アスピリン100mgを毎日投与しても、プラセボと比較して心血管イベントの発生率に有意差は認められなかったという。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJ. Michael Gaziano氏らが、7ヵ国の約1万3,000例を対象に5年間追跡したプラセボ対照無作為化比較試験「ARRIVE試験」の結果を、Lancet誌オンライン版2018年8月26日号で発表した。心血管イベント1次予防におけるアスピリン投与については、なお議論の的となっている。ARRIVE試験では、中等度リスクを有する患者におけるアスピリンの有効性と安全性の評価が行われた。55歳以上の男性、60歳以上の女性を対象に 試験は2007年7月5日~2016年11月15日にかけて、7ヵ国、501ヵ所の医療機関を通じ、心血管疾患リスクが中等度(特定リスクの因子数で規定)の55歳以上の男性、または60歳以上の女性、合わせて1万2,546例を対象に行われた。消化管出血やその他の出血リスクが高い患者、および糖尿病患者は除外された。 被験者をコンピュータ生成無作為化コードにより1対1の割合で2群に分け、一方にはアスピリン腸溶錠(100mg)を、もう一方にはプラセボをそれぞれ1日1回投与した。患者、研究者、その他の治療・データ解析者は、割付治療についてマスキングされた。 主要有効性エンドポイントは、心血管死、心筋梗塞、不安定狭心症、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)の複合アウトカム。安全性エンドポイントは、出血イベントおよびその他の有害イベント発生だった。解析はいずれもintention-to-treat集団にて行った。アスピリンよりもリスクマネジメント戦略の効果が勝る? 追跡期間中央値は、60ヵ月だった。有効性のエンドポイント発生率は、アスピリン群4.29%(269/6,270例)、プラセボ群4.48%(281/6,276例)で、有意な差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.81~1.13、p=0.6038)。 一方、消化管出血の発生は、プラセボ群0.46%(29例)に対し、アスピリン群は0.97%(61例)と2倍強認められた(HR:2.11、95%CI:1.36~3.28、p=0.0007)。 重篤な有害事象発生率については両群とも20%程度(アスピリン群20.19%、プラセボ群20.89%)、有害事象全般の発生率はともに80%強(82.01%、81.72%)と、いずれも同程度だった。治療関連の有害事象については、プラセボ群13.54%に対しアスピリン群16.75%と、より高率に認められた(p<0.0001)。 死亡の報告は、アスピリン群2.55%(160/6,270例)、プラセボ群2.57%(161/6,276例)で有意差はなかった(HR:0.99、95%CI:0.80~1.24、p=0.9459)。 これらの結果について著者は、「イベント発生率が予想よりも大幅に低かった。おそらく、近年のリスクマネジメント戦略が功を奏しており、試験対象が実質的に低リスク集団になっていたと思われる」と指摘し、中等度リスク患者におけるアスピリンの1次予防を検証する試験にはならなかったとしている。そのうえで、「先行研究で公表されている低リスク集団に観察されたアスピリン効果の所見が、今回の試験でもみられた」とまとめている。

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第6回 アルコールを上手に断る裏ワザ【実践型!食事指導スライド】

第6回 アルコールを上手に断る裏ワザ医療者向けワンポイント解説納涼会や夏のイベントをはじめ、患者さんがアルコールの席に参加する機会は、1年を通してあるかと思います。「飲みの席では強引に勧められてしまって断りづらい」「やっぱり誘惑に負けて飲んでしまう」そんな理由をお持ちの患者さんに向けた、場を壊さずにアルコールを断る上手な裏ワザをご紹介します。写真の3つのグラス。どれがアルコール入りで、どれがソフトドリンクかお分かりでしょうか?アルコールとして見た場合、左がウイスキー、真ん中がハイボール、右がジンバックやウーロン茶割りに見えませんか?実は、この3つ、どれもソフトドリンクです。左はウーロン茶、真ん中は炭酸水にカットレモンを入れたもの、右はジンジャーエールです。このような、アルコールの席で役立つ「アルコール風ドリンクを用意する方法」を紹介します。まず以下の物をあらかじめ店員に依頼します。ソフトドリンクをアルコールが入っているグラスと同じものに入れてもらうカットレモンや氷これらを「炭酸水にレモンを入れたものを私に持って来てもらえますか?」「カットレモンだけをお皿にください」などと、注文時やトイレに立つ際にお願いすることがポイントです。この一言で、アルコール風のドリンクを手元に置いておくことができます。このように、アルコール風のドリンクが手元にあれば、無理に進められることもありませんし、「飲んでいる?」と聞かれたら「飲んでいます!」と答えられます。みんなでワイワイと飲んでいるときに、「場を乱したら…」とか「断りづらい」と思っている方にはオススメの方法です。また、アルコール量を減らしたいと思っている方にも、この方法はオススメです。アルコールグラスの横に、必ずこのようなドリンクを用意し、アルコールと交互に飲むようにすると、これだけでペースを落とすことができます。とはいえ、飲酒が好きな方にとって、アルコールの席は誘惑が多いものです。アルコール摂取によるリスクとして1)アルコール自体のカロリーだけでなく、食欲増進効果がある、2)血糖値に影響を与える(インスリン注射を含む薬物治療中の方は、低血糖を起こしやすい)、3)中性脂肪増加作用、4)肝臓への負担、があります。患者さんにはこうした認識のもとで、禁酒の必要性を理解し、誘惑の多いイベントなどをコントロールしてもらうことも大切です。

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DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤「スージャヌ配合錠」【下平博士のDIノート】第8回

DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤「スージャヌ配合錠」今回は、「シタグリプチンリン酸塩水和物/イプラグリフロジンL-プロリン配合錠(商品名:スージャヌ配合錠)」を紹介します。本剤は、DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤であり、異なるアプローチにより血糖コントロールの継続・改善が期待されます。<効能・効果>2型糖尿病の適応で、2018年3月23日に承認され、2018年5月22日より販売されています。配合成分のシタグリプチンは、選択的にDPP-4を阻害し、活性型インクレチンを増加させることで、血糖依存的にインスリンの分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑制して血糖低下作用を示します。一方、イプラグリフロジンは選択的にSGLT2を阻害し、腎臓でのブドウ糖再取り込みを抑制することで、尿と共に糖を排出してインスリン非依存的な血糖低下作用を示します。なお、本剤を2型糖尿病治療の第1選択薬として用いることはできません。<用法・用量>通常、成人には1日1回1錠(シタグリプチン/イプラグリフロジンとして50mg/50mg)を朝食前または朝食後に経口投与します。<副作用>国内臨床試験(シタグリプチン50mgおよびイプラグリフロジン50mgを1日1回併用投与)において、220例中28例(12.7%)に副作用が認められています。主なものは頻尿13例(5.9%)、口渇6例(2.7%)、便秘6例(2.7%)でした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.このお薬は、2種類の成分の配合剤で、体内のインスリン分泌を促す作用と、尿中に糖分を排泄させる作用により血糖値を下げます。2.低血糖症状(ふらつき、冷や汗、めまい、動悸、空腹感、手足のふるえ、意識が薄れるなど)が現れた場合は、十分量の糖分(砂糖、ブドウ糖、清涼飲料水など)を取るようにしてください。α-グルコシダーゼ阻害薬を服用中の場合は、ブドウ糖を取るようにしてください。3.過剰な糖が尿で排出されるため、尿路感染症(尿が近い、残尿感、排尿時の痛みなど)が生じることがあります。このような症状が現れた場合は、医師に相談してください。4.尿の量や排尿回数が増えることにより、脱水が生じることがあるので、多めに水分を補給してください。<Shimo's eyes>本剤の名称は、配合成分であるイプラグリフロジンの商品名「スーグラ」とシタグリプチンの商品名「ジャヌビア」が由来となっています。SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬という作用機序の異なる2つの薬剤を配合したことで、相補的な血糖降下作用が期待されます。それぞれの薬剤を単剤で服用した場合の薬価が、スーグラ錠50mg(200.20円/錠)とジャヌビア錠50mg(129.50円/錠)で合計329.70円なのに対し、スージャヌ配合錠は263.80円/錠なので、1日薬価を80%程度に抑えることができます※。本剤は、シタグリプチン50mgまたはイプラグリフロジン50mgの単剤治療で効果不十分な場合、あるいはすでにシタグリプチン50mgとイプラグリフロジン50mgを併用し、状態が安定している場合に切り替えて使用します。各単剤で効果不十分の場合は錠数を増やさず併用療法に移行でき、すでにそれぞれの薬剤を併用している場合は、薬剤数を削減できることから服薬アドヒアランスが向上し、長期にわたる安定した血糖コントロールが期待できます。なお、本剤はシタグリプチンおよびイプラグリフロジンと同様の効能・効果、用法・用量の組み合わせであり、実質的に既収載品によって1年以上の臨床使用経験があると認められました。そのため、新医薬品に係る通常14日間の処方日数制限は設けられていません。※2018年8月時点

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