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ダイナペニック肥満は心血管疾患のリスク因子―久山町24年間の縦断解析

 肥満でありながら筋力が低下した状態を指す「ダイナペニック肥満」が、心血管疾患(CVD)発症の独立したリスク因子であることが、久山町研究から明らかになった。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の瀬戸山優氏、本田貴紀氏、二宮利治氏らの研究によるもので、「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に論文が10月8日掲載された。 筋肉量の多寡にかかわらず筋力が低下した状態を「ダイナペニア」といい、筋肉量と筋力がともに低下した状態である「サルコペニア」と並び、死亡リスク上昇を含む予後不良のハイリスク状態とされている。さらに、その状態に肥満が加わったサルコペニア肥満やダイナペニック肥満では、CVDのリスクも高まる可能性が示されている。しかしダイナペニック肥満に関してはCVDとの関連の知見がまだ少なく、海外からの報告がわずかにあるのみであり、かつ結果に一貫性がない。これを背景として本研究グループは、1961年に国内疫学研究の嚆矢として福岡県糟屋郡久山町でスタートし、現在も住民の約7割が参加している「久山町研究」のデータを用いた検討を行った。 解析対象は、1988~2012年に毎年健康診断を受けていて、ベースライン時にCVD既往のなかった40~79歳の日本人2,490人(平均年齢57.7±10.6歳、男性42.5%)。握力が年齢・性別の第1三分位群(握力が弱い方から3分の1)に該当し、かつ肥満(BMI25以上)に該当する場合を「ダイナペニック肥満」と定義すると、全体の5.4%がこれに該当した。 中央値24年(四分位範囲15~24)の追跡で482人にCVDイベント(脳卒中324件、冠動脈性心疾患〔CHD〕209件)が発生した。交絡因子(年齢、性別、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心電図異常など)を調整後に、握力の最高三分位群かつ普通体重(BMI18.5~24.9)の群(全体の23.9%)を基準として、ほかの群のCVDリスクを比較した。 その結果、ダイナペニック肥満群でのみ、CVD(ハザード比〔HR〕1.49〔95%信頼区間1.03~2.17〕)および脳卒中(HR1.65〔同1.06~2.57〕)の有意なリスク上昇が認められた。肥満でも握力低下のない群(第2~3三分位群)のCVDリスクは基準群と有意差がなく、また、やせ(BMI18.5未満)や普通体重の場合は握力にかかわらずCVDリスクに有意差がなかった。なお、CHDについてはダイナペニック肥満群のリスクも、基準群と有意差がなかった(HR1.19〔0.65~2.20〕)。 65歳未満/以上で層別化した解析では、65歳未満でダイナペニック肥満によるCVDリスクがより高いことが示された(HR1.66〔1.04~2.65〕)。一方、65歳以上では有意な関連を認めなかった(HR1.18〔0.61~2.27〕)。 続いて行った媒介分析からは、ダイナペニック肥満とCVDリスク上昇との関連の14.6%を炎症(高感度C反応性蛋白〔hs-CRP〕)、9.7%をインスリン抵抗性(HOMA-IR)で説明可能であり、特に65歳未満ではhs-CRPが13.8%、HOMA-IRが12.2%を説明していて、インスリン抵抗性の関与が強いことが示唆された。 著者らは、「握力とBMIで定義したダイナペニック肥満は、日本の地域住民におけるCVD発症のリスク因子であることが明らかになった。この関連性は、65歳未満でより顕著であり、炎症とインスリン抵抗性の上昇がこの関連性を部分的に媒介している」と総括。また、「われわれの研究結果は、CVD予防における中年期の筋力の低下抑止と、適切な体重管理の重要性を示唆するものと言える」と付け加えている。

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ダークチョコレートで2型糖尿病リスク低減か/BMJ

 ダークチョコレートの摂取量増加は2型糖尿病リスク低下と関連したが、ミルクチョコレートではそのような関連はみられなかった。ミルクチョコレートの摂取量増加は長期的な体重増加と関連したが、ダークチョコレートではそのような関連はみられなかった。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のBinkai Liu氏らが、米国の看護師および医療従事者を対象とした大規模前向きコホート研究のデータを用いて行った解析の結果を報告した。チョコレートにはフラバノールが多く含まれ、無作為化試験で心代謝へのベネフィットや2型糖尿病のリスクを軽減することが示されている。ただしチョコレートの摂取と2型糖尿病のリスクとの関連性は観察試験では一貫した結果が示されておらず、なお議論の的となっていた。研究グループは、ダークチョコレートとミルクチョコレートでは、カカオ含有量や砂糖、ミルクといった成分割合が異なり、2型糖尿病リスクとの関連性が異なる可能性があるとして、これまで行われていなかったチョコレートの種類(ダークチョコレート、ミルクチョコレート)との関連を調べた。BMJ誌2024年12月4日号掲載の報告。米国NHS、NHSII、HPFS被験者のデータを解析 研究グループは、米国で行われた3つの前向きコホート研究(Nurses' Health Study[NHS、1986~2018年]、Nurses' Health Study II[NHSII、1991~2021年]、Health Professionals Follow-Up Study[HPFS、1986~2020年])のデータを用いて、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、およびチョコレート全体の摂取量と2型糖尿病リスクとの関連を調べた。 チョコレート全体の解析のベースライン(NHSおよびHPFSは1986年、NHSIIは1991年の時点)には、2型糖尿病、心血管疾患、がんに罹患していない19万2,208例が対象に含まれた。内訳は、NHSの女性6万3,798例(平均年齢52.3歳)、NHSIIの女性8万8,383例(36.1歳)、HPFSの男性4万27例(53.1歳)。 チョコレートの種類別の解析のベースライン(NHSおよびHPFSは2006年、NHSIIは2007年の時点)には、11万1,654例が対象に含まれた。内訳は、NHSの女性3万9,400例(平均年齢70.4歳)、NHSIIの女性5万8,187例(52.3歳)、HPFSの男性1万4,067例(68.3歳)。 主要アウトカムは2型糖尿病の発症で、2年ごとのフォローアップ時の質問票における自己報告で特定し、研究担当医が検証済みの補足質問票で診断を確定した。 主要解析ではCox比例ハザードモデルを用いて、チョコレートの摂取量(区分)ごとに2型糖尿病のリスクを評価した。ダークチョコ摂取群は1サービング/週摂取につきリスクが3%低下 チョコレート全体の主要解析では、追跡期間482万9,175人年の間に1万8,862例の2型糖尿病発症が確認された。被験者個々の生活習慣、食事リスク因子で補正後、あらゆるチョコレートを5サービング/週以上摂取する被験者の2型糖尿病リスクは、まったくまたはまれにしか摂取しない被験者と比較して10%(95%信頼区間[CI]:2~17)低かった(傾向のp=0.07)。 チョコレートの種類別の解析では、追跡期間127万348人年の間に4,771例の2型糖尿病発症が確認された。被験者個々の生活習慣、食事リスク因子で補正後、ダークチョコレートを5サービング/週以上摂取する被験者の2型糖尿病リスクは、まったくまたはまれにしか摂取しない被験者と比較して21%(95%CI:5~34)低かった(傾向のp=0.006)。 スプライン回帰分析により、ダークチョコレート摂取と2型糖尿病のリスクとの間には線形の用量反応関係があり(線形性のp=0.003)、1サービング/週のダークチョコレート摂取増加につきリスクが3%(95%CI:1~5)低下することが観察された。ミルクチョコ摂取群は有意なリスク低下みられず、体重増加と正の相関 一方、ミルクチョコレートの摂取と2型糖尿病リスクとの間には有意な関連性はなかった。最低摂取群を対照とした場合の最高摂取群の多変量補正後ハザード比は0.94(95%CI:0.79~1.12、傾向のp=0.75)であった。 また、ミルクチョコレートの摂取は、体重増加と正の相関関係があった。4年間の体重増加が、摂取量に変化がなかった人と比較して摂取量が増えた人のほうが0.35kg(95%CI:0.27~0.43)多かった。ダークチョコレートの摂取では、そのような体重変化との関連性はなかった(-0.06kg、-0.13~0.02)。 これらの結果を踏まえて著者は、「さらなる無作為化試験を行い、今回の結果の再現性と、ダークチョコレートとミルクチョコレートに生じた結果の違いのメカニズムについて調べる必要がある。検証では中年者を対象とした、より長期の研究が望まれる」とまとめている。

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GLP-1RAが飲酒量を減らす?

 血糖降下薬であり近年では減量目的でも使用されているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が、飲酒量を減らすことを示唆する新たな論文が報告された。特に肥満者において、この作用が高い可能性があるという。英ノッティンガム大学のMohsan Subhani氏らによるシステマティックレビューの結果であり、詳細は「eClinicalMedicine」に11月14日掲載された。なお、本研究で言及されているエキセナチド等、GLP-1RAの禁酒・節酒目的での使用は日本を含めて承認されていない。一方で同薬が作用するGLP-1受容体は脳内にも分布しており、同薬が飲酒量を抑制するという前臨床試験のデータがある。 この研究では、Ovid Medline、EMBASE、PsycINFOなどのデータベースを用いて、2024年3月末までに報告された研究結果を検索、同年8月7日に新たに追加された報告の有無を確認した。主要評価項目は、GLP-1RAの使用と飲酒量の関連の評価であり、副次的に、GLP-1RAと飲酒関連イベントや機能的磁気共鳴画像法(fMRI)のデータなどとの関連を評価した。 解析対象研究として、6件の報告が特定された。このうち2件はランダム化比較試験(RCT)、3件は後ろ向き観察研究、1件はケースシリーズ(複数の症例報告)であり、3件は欧州、2件は米国、1件はインドで行われていた。研究参加者数は合計8万8,190人で、このうち3万8,740人(43.9%)にGLP-1RAが投与されていた。ただし、エビデンスレベルが高いと評価されるRCTとして実施されていた研究の参加者は286人だった。平均年齢は49.6±10.5歳で、男性が56.9%だった。 RCTとして実施されていた研究では、GLP-1RAのエキセナチドによる24週間の治療後30日間での飲酒量は、プラセボと差がなかった(大量飲酒の日数の群間差がP=0.37)。ただし、サブグループ解析では、肥満者(BMI30超)では肯定的な影響が認められ、fMRIで脳内の報酬中枢の反応に差が認められた。また、RCTの二次解析では、GLP-1RAのデュラグルチド群はプラセボ群と比較して、飲酒量が減少する可能性が有意に高かった(相対効果量0.71〔95%信頼区間0.52~0.97〕、P=0.04)。 観察研究では、DPP-4阻害薬が処方されていた患者や無治療の患者に比べて、GLP-1RAによる治療が行われていた患者では飲酒量が有意に少なく、飲酒関連イベントの発生も少なかった。 Subhani氏は、「GLP-1RAが将来的には過度の飲酒を抑制するための潜在的な治療選択肢となり、結果的に飲酒関連の死亡者数の減少につながる可能性があるのではないか」と述べている。なお、論文には、「GLP-1RAは一部の人の飲酒量を減らす可能性があることが示唆された。ただし、研究の結果に一貫性がなく、飲酒量を抑える目的でのGLP-1RAの有効性と安全性を確立するため、さらなる研究が求められる」と付記されている。

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心房細動発症、尿酸上昇と体重増加が相互に作用~日本人での研究

 尿酸と肥満が関与する心房細動の新規発症機序から、心房細動発症に尿酸増加と体重増加が相互に作用している可能性がある。今回、京都府立医科大学の宗像 潤氏らが、「20歳以降に体重10kg以上増加」という体重変化の尺度を用いて調査したところ、ベースラインで尿酸値が正常範囲内であっても、その後の尿酸値の増加と体重増加が心房細動の新規発症に相互作用を及ぼすことがわかった。BMJ Open誌2024年11月27日号に掲載。 本研究は後ろ向きコホート研究で、2013年4月2日~2022年4月30日に毎年健康診断を受けた従業員コホートのうち、心房細動を発症していない30歳以上の日本人1,644人を後ろ向きに解析した。血清尿酸と体重の経時的変化が心房細動新規発症に及ぼす影響について、ランドマーク生存解析を用いて評価した。体重増加は標準化自記式質問票における「20歳以降に体重10kg以上増加」と定義し、心房細動は心電図で心房細動が認められた場合または問診で心房細動が認められた場合とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値3.91年の間に69例が心房細動を新規発症した(発症割合:1.12/1,000人年)。・ベースラインの血清尿酸値は体重増加あり群で5.76(±1.37)mg/dL、体重増加なし群で4.87(±1.31)mg/dLであり、いずれも正常範囲内であった。・交互作用項を含む多変量ランドマーク生存分析では、心房細動の新規発症は、年齢、性別、ベースラインの収縮期血圧、ベースラインの尿酸値、尿酸値変化と体重増加の交互作用項と有意に関連していた。・体重増加と尿酸値変化との交互作用項によると、尿酸値1mg/dL増ごとのハザード比は、体重増加あり群で1.96(95%信頼区間[CI]:1.38〜2.77)、体重増加なし群で0.95(95%CI:0.61〜1.48)であった。

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第244回 果糖は肝臓で作られる脂質を増やしてがんの増殖を促す

肝臓で果糖から作られる脂質ががんの増殖をどうやら促すことが、ワシントン大学のGary Patti氏らがNature誌に発表した新たな研究で示されました1)。飲料や加工食品に果糖ブドウ糖液糖が広く使われるようになったことを主な原因として、果糖の摂取が過去50年で大幅に増えており、それが肥満や代謝症候群の蔓延に寄与していると見る向きがあります。肥満や代謝症候群はがんと強く関連することが知られ、その関連への果糖の寄与も想定されています。Otto Warburg(オットー・ワールブルグ)氏がさかのぼること100年ほど前に報告した研究で、がん細胞は増殖する正常細胞に比べてグルコースをより多く消費することが示されました2)。たとえ酸素が十分にあってもグルコースを乳酸へと変えるがん細胞に特有のその解糖系は、今では同氏の名を冠してワールブルグ効果(Warburg effect)として知られ3)、がん細胞の主要な動力源の1つと目されています4)。グルコースと同様に果糖も腫瘍の増殖を促すようです。疫学試験では果糖摂取と膵がんや大腸がんの関連が示唆され、マウスの実験で果糖が腫瘍増殖を促すことが示されています4)。Patti氏らの研究でも果糖は黒色腫、乳がん、子宮頸がんを模す動物の腫瘍増殖を確かに促しました。しかし同氏らの当初の予想に反し5)、その作用は果糖が腫瘍の直接の栄養として利用されることによるものではありませんでした。それもそのはずで、がん細胞は果糖代謝の開始酵素であるケトヘキソキナーゼC(KHK-C)を発現していませんでした。それゆえ果糖を栄養として容易に利用することができません。がん細胞とは対照的に肝細胞はKHK-Cを発現しており、果糖を代謝してリゾホスファチジルコリン(LPC)を含む種々の脂質を排出しました。共培養で検討したところ、肝細胞からのLPCはがん細胞の手に渡り、細胞膜の主たるリン脂質であるホスファチジルコリンを生み出すのに使われました。動物実験で果糖ブドウ糖液糖を与えたところ、血清のLPCの類いのいくつかが7倍超増えました。また、LPCはマウスの腫瘍をより増殖させました。一方、ケトヘキソキナーゼの阻害はがん細胞に直接手出しすることなく血中のLPCを減らし、果糖を介した腫瘍増殖を抑制しました。それらの結果によると、果糖はLPCなどの栄養分の循環を増やして腫瘍増殖を促すようです。果糖が腫瘍増殖を促すのを防ぐ薬の開発に今回の結果が役立つかもしれないとPatti氏は言っています5)。果糖と比較的若年でのがんの増加の関連が検討される果糖摂取の増加と時を同じくして、大腸がんなどのがんの多くが50歳に満たない人に多く認められるようになっています。はたしてその2つの傾向に関連があるのかどうかを調べる試験のチームをPatti氏らは最近結成しており、がん研究を支援する国際的な取り組みCancer Grand Challengesが同試験に最大2,500万ドルを出すことを約束しています5,6)。参考1)Fowle-Grider R, et al. Nature. 2024 Dec 4. [Epub ahead of print]2)Warburg O. J Cancer Res Clin Oncol. 1925;9:148–163.3)The liver converts fructose into lipids to fuel tumours / Nature4)Nakagawa T, et al. Cancer Metab. 2020;8:16.5)Research reveals how fructose in diet enhances tumor growth / Eurekalert 6)Preventing early-onset colorectal cancers aim of $25 million award / Washington University

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水分摂取を増やすと肥満や腎結石以外にも有効な可能性

 1日の水分摂取量に関しては、公的な推奨がいくつかされているもののそれを裏付けるエビデンスは明確ではなく、水分摂取量を変更することによる利点は十分に確立されていない。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNizar Hakam氏らが実施したシステマティックレビューの結果、エビデンスの質と量は限定的であるものの、少数の研究で1日の水分摂取量の増加が体重減少や腎結石予防に有益であることが示され、また、単一の研究では片頭痛予防、尿路感染症、糖尿病管理、低血圧に対する有益性が示唆された。JAMA Network Open誌2024年11月25日号掲載の報告。 2023年4月6日まで、PubMed、Web of Science、Embaseについて系統的文献検索を実施した。対象は、定義された量の水分を毎日摂取することが健康関連のアウトカムに与える影響を評価した研究とされた。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた1,464件のうち、1999~2023年に発表された18件(1%)が適格とされレビューに含まれた。うち15件(83%)は並行群間無作為化比較試験(RCT)、3件(16%)はクロスオーバー研究であった。・これらの研究における介入としては、4日間~5年間の決められた期間、毎日の水分摂取量を特定の量だけ変更することが推奨され(18件中17件が水分摂取量の増加、1件が水分摂取量の削減)、対照群には主に通常の水分摂取習慣を維持することが求められた。・主要評価項目には、体重減少、空腹時血糖値、頭痛、尿路感染症、腎結石などが含まれた。・10件の研究(55%)で1つ以上の肯定的な結果が報告され、8件の研究(44%)で否定的な結果が報告されていた。・水分摂取量の増加は、体重減少(対照群と比較し44~100%大きな体重減少)および腎結石イベントの減少(5年間にわたり参加者100人当たり15イベント減少)と関連していた。・体重減少に関しては、3件の過体重および肥満の成人対象のRCTにおいて、12週間~12ヵ月間食前に1,500mL/日の水を摂取したところ、対照群と比較して大きな体重減少がみられた。・腎結石に関しては、1件の健康成人対象のRCTおよび1件の特発性カルシウム結石の初回エピソードを有する患者対象のRCTにおいて、2,000mL/日の水分摂取量増加および尿量2,000mL/日を達成するための水分摂取量増加により、対照群と比較して結石および再発リスクが低下した。・個々の研究では、片頭痛予防、尿路感染症、糖尿病管理、低血圧に対する有益性が示唆された。 著者らは、水分摂取量が健康上のアウトカムに及ぼす影響を評価した臨床試験の数は限られていると指摘し、低コストで有害作用が少ないことを考慮すると、特定の条件下での有益性を評価するより十分にデザインされた研究が必要としている。

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心筋梗塞へのコルヒチンは予後を改善するか/NEJM

 急性心筋梗塞患者の治療において、発症後すぐに抗炎症薬コルヒチンの投与を開始し、3年間継続しても、プラセボと比較して心血管アウトカム(心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、虚血による冠動脈の予期せぬ血行再建術の複合)の発生率は減少せず、その一方で3ヵ月後には炎症マーカーが有意に低下することが、カナダ・マクマスター大学のSanjit S. Jolly氏らCLEAR Investigatorsが実施した「CLEAR試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2024年11月17日号で報告された。14ヵ国の医師主導型無作為化プラセボ対照比較試験 CLEAR試験は、心筋梗塞発症後におけるコルヒチンとスピロノラクトンの心血管アウトカムの改善効果の評価を目的とする2×2ファクトリアルデザインの医師主導型無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年2月~2022年11月に14ヵ国104施設で患者を登録した(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。 心筋梗塞患者をコルヒチンまたはプラセボ、スピロノラクトンまたはプラセボの投与を受ける群に無作為に割り付けた。本論では、コルヒチンに関する結果が報告された。 有効性の主要アウトカムは、心血管系の原因による死亡、心筋梗塞の再発、脳卒中、虚血による冠動脈の予期せぬ血行再建術の複合とし、time-to-event解析を行った。主要アウトカムの個々の項目にも差はない 7,062例を登録し、コルヒチン群に3,528例、プラセボ群に3,534例を割り付けた。全体の平均年齢は61歳、女性が20.4%であった。9.0%が心筋梗塞の既往歴を有し、10.0%が経皮的冠動脈インターベンションを受けており、18.5%が糖尿病で、95.1%がST上昇型心筋梗塞(STEMI)、4.9%が非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)だった。 追跡期間中央値3年の時点で、主要アウトカムのイベントは、コルヒチン群が322例(9.1%)、プラセボ群は327例(9.3%)で発生し、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.85~1.16、p=0.93)。 主要アウトカムを構成する4つの項目にも差はなかった。心血管系の原因による死亡はコルヒチン群3.3% vs.プラセボ群3.2%(HR:1.03、95%CI 0.80~1.34)、心筋梗塞の再発は2.9% vs.3.1%(0.88、0.66~1.17)、脳卒中は1.4% vs.1.2%(1.15、0.72~1.84)、虚血による冠動脈の予期せぬ血行再建術は4.6% vs.4.7%(1.01、0.81~1.26)であった。重篤な有害事象に差はない、下痢が多かった 3ヵ月の時点におけるC反応性蛋白の最小二乗平均(ベースラインの値で補正)はコルヒチン群で低かった(2.98±0.19mg/L vs.4.27±0.19mg/L、群間差:-1.28mg/L、95%CI:-1.81~-0.75)。 有害事象(コルヒチン群31.9% vs.プラセボ群31.7%)および重篤な有害事象(6.7% vs.7.4%)の発生率は両群で同程度だった。また、下痢の頻度がコルヒチン群で高かった(10.2% vs.6.6%、p<0.001)が、重篤な感染症には差がなかった(2.5% vs.2.9%)。 著者は、「下痢の発生率の増加とC反応性蛋白の低下は予想どおりであり、本試験におけるコルヒチンの生物学的効果を支持するものであった」「最近のメタ解析では、コルヒチンによる心血管系以外の原因による死亡の名目上の増加が示されているが、本試験では逆にプラセボ群に比べて発生率が低かった(1.3% vs.1.9%、HR:0.68、95%CI:0.46~0.99)」としている。また、「本試験のデータが提示される前に、欧州心臓病学会は冠動脈アテローム硬化性疾患患者に対するコルヒチンの推奨をクラスIIbからクラスIIaに変更し、米国食品医薬品局は冠動脈疾患の治療薬として本薬を承認している」という。

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IL-6が新規診断2型糖尿病患者の肥満関連がんリスク予測に有用

 新たに2型糖尿病と診断された患者における肥満関連がんリスクの評価に、インターロイキン-6(IL-6)が有用だとする、ステノ糖尿病センター(デンマーク)のMathilde Dahlin Bennetsen氏らの研究結果が、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表された。 2型糖尿病は、肥満関連がんのリスク増大と関連のあることが知られている。この関連には、2型糖尿病と肥満の双方に共通するリスク因子である、軽度の慢性炎症が関与している可能性が想定されている。脂肪組織はIL-6や腫瘍壊死因子-α(TNF-α)などの炎症性サイトカインを放出しており、そのため肥満に伴い軽度の慢性炎症が生じ、これが発がんリスク上昇に寄与すると考えられている。IL-6とTNF-αはともに炎症の初期に産生が高まるサイトカインだが、これらとは別の炎症マーカーとして臨床では高感度C反応性タンパク質(hsCRP)が広く用いられている。hsCRPは直接的には発がんメカニズムに関与せずに、全身の炎症レベルを反映する。Bennetsen氏らは、これらの三つの異なる炎症マーカーが、新規診断2型糖尿病患者の肥満関連がんの予測バイオマーカーになり得るかを検討した。 デンマークで行われている2型糖尿病コホート研究の参加者のうち、診断から間もない患者9,010人を抽出し、がんの既往歴のある患者732人、および、共変量のデータが不足している1,809人などを除外し、6,466人(年齢中央値60.9歳〔四分位範囲52.0~68.0〕、女性40.5%)を解析対象とした。中央値8.8年の追跡期間中に327人が肥満関連がんを発症した。 年齢と性別を調整したモデル1では、IL-6のみが発がんと有意な関連が認められ(ハザード比〔HR〕1.19〔95%信頼区間1.07~1.31〕)、TNF-α(HR1.08〔同0.98~1.19〕)やhsCRP(HR1.08〔0.97~1.21〕)は有意な予測因子でなかった。IL-6は、モデル1の調整因子に糖尿病罹病期間、飲酒・運動習慣、ウエスト周囲長を追加したモデル2(HR1.18〔1.07~1.31〕)や、さらにモデル2にHbA1c、トリグリセライド、血糖降下薬・脂質低下薬の処方を追加して調整したモデル3でも(HR1.19〔1.07~1.32〕)、引き続き有意な予測因子として特定された。喫煙習慣が把握されていた4,335人での解析でも、IL-6が有意な予測因子であることが確認された。 モデル3の変数に基づく発がん予測において、IL-6を追加することによりC統計量は0.685から0.693へとわずかながら有意に上昇した。一方、TNF-αやhsCRPの追加では、予測能の有意な上昇が見られなかった。 以上の結果を基にBennetsen氏は、「新規診断2型糖尿病患者の中から、IL-6によって発がんリスクの高い個人を把握することで、より的を絞った効果的なモニタリングと早期発見が可能になり、早期介入と個別化治療を通してアウトカム改善につながるのではないか」と述べている。

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脾膿瘍の鑑別診断【1分間で学べる感染症】第16回

画像を拡大するTake home message脾膿瘍には、血行性感染と腹腔内からの直接波及の機序の2つがあることを理解しよう。脾膿瘍に加えて黄色ブドウ球菌や連鎖球菌の菌血症を見たら、感染性心内膜炎の可能性を念頭に置こう。リスクに応じて、ほかの起因菌も幅広く考慮しよう。皆さんは脾膿瘍(ひのうよう)を経験したことがありますか。頻度は高くないものの、非常に重要な疾患の1つです。以下、一緒に見ていきましょう。1)血行性感染感染性心内膜炎などの感染症から、脾臓に播種して膿瘍を形成するケースです。黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などが頻度として高いですが、血液培養からこれらの菌が検出され、かつ画像検査で脾膿瘍が確認された場合には、積極的に感染性心内膜炎の精査を行うことが推奨されます。脾臓は腎臓と同様に遠隔転移巣として膿瘍を形成しやすい臓器であることが知られています。経胸壁心エコー、場合によっては経食道心エコーでの精査を検討します。2)腹腔内からの直接波及腹腔内からの感染では、腹膜炎などから直接波及するケースがあり、病原微生物として腸内細菌科細菌、腸球菌、腹腔内嫌気性菌などを考慮します。機序を考えれば複数菌による感染の可能性があることも容易に想像できるでしょう。とくにクレブシエラは高い病原性を持つ菌株が東アジアを中心に報告されており、侵襲性感染を引き起こすことがあるので注意が必要です。教科書的には糖尿病患者の肝膿瘍が有名ですが、脾膿瘍の報告もあり、念頭に置いておく必要があります。まれな病原微生物としては、猫の引っかきによるバルトネラ感染、白血病患者などに多い好中球減少症における肝脾カンジダ症(慢性播種性カンジダ症)などが知られています。この肝脾カンジダ症はフルコナゾールを含めたアゾール系抗真菌薬の予防内服の普及により現在は報告がきわめて少なくなりましたが、予防的抗真菌薬に耐性のカンジダも近年増加傾向であり、視野に入れておく必要があります。日本ではまれであるものの、東南アジアや北オーストラリアではBurkholderia pseudomalleiというブドウ糖非発酵菌が問題になることがあります。この菌による感染症を類鼻疽(るいびそ、英名:メリオイドーシス)と呼びます。これらの流行地域では、「原因不明の脾膿瘍を見たらメリオイドーシスを疑え」と医学生や研修医でも教えられるほど重要な疾患です。頻度は高くないものの、脾膿瘍は診断と治療が遅れると致死率が高い疾患です。皆さんもぜひ、脾膿瘍の成因と病原微生物を頭に入れておきましょう。1)Radcliffe C, et al. Open Forum Infect Dis. 2022;9:ofac085.2)Lee MC, et al. Can J Infect Dis Med Microbiol. 2018:8610657.3)Lee WS, et al. Yonsei Med J. 2011;52:288-92. 4)Guo RF, et al. Infect Dis Rep. 2015;7:5791.

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新薬muvalaplin、心血管リスク患者のリポ蛋白(a)を大幅減少/JAMA

 心血管イベントのリスクが高く、リポ蛋白(a)濃度が上昇した患者において、プラセボと比較して経口低分子リポ蛋白(a)阻害薬muvalaplinは、12週間の投与でリポ蛋白(a)を大幅に減少させ、忍容性も良好であることが、オーストラリア・モナシュ大学のStephen J. Nicholls氏らが実施した「KRAKEN試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年11月18日号で報告された。国際的な無作為化プラセボ対照第II相試験 KRAKEN試験は、リポ蛋白(a)濃度が上昇した患者におけるmuvalaplinのリポ蛋白(a)抑制効果の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2022年12月~2023年11月に日本を含む8ヵ国43施設で患者の無作為化を行った(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢40歳以上で心血管イベントのリスクが高く、リポ蛋白(a)濃度が175nmol/L以上の患者233例(年齢中央値66歳、女性33%)を対象とした。心血管リスクが高い状態は、冠動脈疾患、虚血性脳卒中または末梢動脈疾患の既往歴があるか、2型糖尿病、家族性高コレステロール血症を有する場合と定義した。 これらの患者を、muvalaplin 10mg/日(34例)、同60mg/日(64例)、同240mg/日(68例)、またはプラセボ(67例)を12週間経口投与する4つの群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、12週の時点におけるリポ蛋白(a)のモル濃度のベースラインからのプラセボで補正した変化率とし、インタクトなリポ蛋白(a)の測定法と従来のアポリポ蛋白(a)ベースの測定法を用いて評価した。アポリポ蛋白Bも用量依存性に低下 インタクトなリポ蛋白(a)測定法では、プラセボ群と比較したmuvalaplin群のリポ蛋白(a)濃度のプラセボ群で補正した低下率は、10mg/日群で47.6%(95%信頼区間[CI]:35.1~57.7)、60mg/日群で81.7%(78.1~84.6)、240mg/日群で85.8%(83.1~88.0)であった。また、アポリポ蛋白(a)測定法による低下率は、それぞれ40.4%(28.3~50.5)、70.0%(65.0~74.2)、68.9%(63.8~73.3)だった。 副次エンドポイントであるアポリポ蛋白Bのベースラインから12週までの変化率は、プラセボ群に比べ用量依存性に低下し、muvalaplin 10mg群で8.9%(95%CI:-2.2~18.8)、60mg群で13.1%(4.4~20.9)、240mg群で16.1%(7.8~23.7)の低下率であった。 高感度C反応性蛋白については、muvalaplinの3つ用量群のいずれにおいてもプラセボ群と比較して有意な変化はみられなかった。安全性、忍容性に関する懸念は認めなかった 安全性および忍容性に関する懸念は、muvalaplinのいずれの用量にも認めなかった。試験期間中の治療関連有害事象の発現は3つの用量で同程度(49.2~52.9%)、重篤な有害事象は3用量とも6%未満(2.9~5.9%)であり、試験薬の投与中止に至った有害事象は240mg/日群で6例(8.8%)にみられた。 いずれかの用量群で少なくとも5%の患者に発現した治療関連有害事象は、下痢、悪心、インフルエンザ、背部痛、筋肉痛、貧血などであった。 著者は、「市販のリポ蛋白(a)測定法では、muvalaplinと結合したアポリポ蛋白(a)や遊離アポリポ蛋白(a)に加えて、インタクトなリポ蛋白(a)粒子中のアポリポ蛋白Bと結合したアポリポ蛋白(a)を測定するため、muvalaplinのような薬剤によるリポ蛋白(a)の低下の程度を過小評価する可能性があるが、インタクトなリポ蛋白(a)測定法は臨床では使用できず、まだ広く評価されていない」「muvalaplinが臨床イベントを減少させ、心血管疾患の予防において役割を果たすかについては、今後の研究が必要である」としている。

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早発卵巣不全は自己免疫疾患と関連

 早発卵巣不全(POI)と診断された女性で、重度の自己免疫疾患の有病率が上昇するという研究結果が、「Human Reproduction」に9月25日掲載された。 オウル大学病院(フィンランド)のSusanna M. Savukoski氏らは、1988~2017年に自然発症のPOIと診断された女性3,972人と一般女性対照群1万5,708人を対象として、集団ベースの登録研究を行い、POI診断前後の重症自己免疫疾患との関連を検討した。 解析の結果、POIの女性における1つ以上の重度の自己免疫疾患の有病率は5.6%であった。POI女性は対照群と比較して、基準日以前に、多腺性自己免疫症候群、アジソン病、血管炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、サルコイドーシス、炎症性腸疾患(IBD)、甲状腺機能亢進症を含む、複数の特異的な自己免疫疾患の有病率が高かった。1型糖尿病または強直性脊椎炎の有病率に、差は見られなかった。POI診断後の最初の3年間に重度の自己免疫疾患と初めて診断される標準化罹患比は2.8であったが、12年後には1.3に減少した。 著者らは、「この研究結果は、POIの発症機序に自己免疫機構が重要な役割を果たしているという仮説を補強するものである」と述べている。

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医師の「スーツ」事情、所持数や予算は?/医師1,000人アンケート

 ビジネスパーソンにとってユニフォーム的な存在である「スーツ」。一方、医師の仕事着といえば白衣のイメージがあるが、実際には勤務中に何を着ているのか?スーツを着る機会はいつなのか?ケアネット会員の男性医師を対象に、仕事中の服装やスーツの所有状況などについてアンケート形式で聞いた。対象:ケアネット会員の男性医師1,008人(30代以下、40代、50代、60代以上の年代別で各252人)実施日:2024年10月30日診療中の服装、若手ほどスクラブ派が多数、ベテランはワイシャツ&白衣派も 「Q1. 診察中の服装として、最も多い服装は?」(単一回答)との質問では、「スクラブのみ」「スクラブ&白衣」が同率の27%だった。とくに30代以下の若手医師では7割以上が「スクラブのみ」もしくは「スクラブ+白衣派」だった。一方、ベテランになると「ケーシー」や「スラックス+ワイシャツ(=スーツのジャケットなしの服装)&白衣」という回答が増えた。年配の医師は開業している割合が高く、検査や手技をする機会が限られる、手術を行う機会が減る、といった事情も影響していそうだ。実際、「スラックス+ワイシャツ&白衣」の回答は20床未満の診療所の勤務者で最も多かった(16%)。「その他」の回答としては外科系の医師を中心に「術衣」「術衣+白衣」との回答が目立った。スーツを着るのは「学会参加時」、所有数は3着以内が7割 「Q2. 勤務中にスーツを着るシチュエーションを挙げてください」(複数回答)との質問には「学会に参加するとき」が751人(75%)と最多となった。その後には「講演をするとき」が528人(52%)、「会食・パーティ」が289人(29%)などとなった。一方で、「着る機会はない」「ほぼない」との回答も複数あった。 「Q3. 現在、スーツを何着持っていますか?」(数値で回答)との質問には、平均3.4着、中央値2着という結果だった。0着12人(1%)、1着156人(16%)、2着337人(34%)、3着202人(20%)と3着以内で7割、以後4着95人(9%)、5着101人(10%)と5着以内で9割を占めた。一方で、「50着」「30着」という回答もあった。購入場所は量販店が半数、予算は年齢が上がるにつれ変化 「Q4. 通常、スーツをどこで買うことが最も多いですか?」との質問には洋服の青山、スーツセレクトなどのスーツ量販店が最多で半数近く(47%)を占め、続いてデパート・ブランド店(39%)だった。「Q5. スーツ1着(上下一式)のおおよその予算はいくらですか?」への回答では全体では「5~8万円台」が最多で32%、続いて「2~4万円台」が30%だった。年齢が上がるにつれ量販店での割合が減る一方で、デパート・ブランド店やオーダースーツ専門店の割合が上がり、同時に1着当たりの予算も上がる傾向があった。1着当たりの予算が2万円以下とした人は20代では13%だったが、60代では6%と半分以下に減り、一方で5~8万円台との回答は20代で28%だったが、60代以上では42%に増え、9万円以上との回答者も35%存在した。機能性重視が大半だが、オーダーメイドへの憧れの声も 最後に「Q6.スーツに対する思いや要望」を自由回答で聞いたところ、「動きやすいものがいちばん」(消化器内科・20代)、「洗濯がしやすいもの」(循環器内科・40代)、「伸縮性の良いもの」(循環器内科・40代)、「ポケットがめちゃくちゃ多いもの」(消化器外科・60代)など、機能面の要望に集中した。とくに「学会出張時、シワになりにくい」(糖尿病・代謝・内分泌内科・30代)との回答は多数あった。「内科とはいえ処置の機会が多いため、季節を問わず常に半袖のケーシー。スーツ着用の機会はほとんどないので、とにかく安いものが良い」(内科・60代)といった実用的な回答が目立った。 一方で、「イタリアンスタイルが体格に合う」(内科・60代)、「ずっとアルマーニに決めている」(循環器内科・60代)、「普段は着ないので、着る時は楽しみたい。オーダースーツは裏地もこだわることができるし、生地を決めている時も楽しい」(循環器内科・30代)という、“スーツこだわり派”からの回答もあった。「オーダーメイドスーツを作りたいが敷居が高い」(糖尿病・代謝・内分泌内科・30代)という回答も10人近くから寄せられており、「状況が許せばオーダースーツに挑戦したい」という層も一定数いるようだ。アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。スーツに関するアンケート/医師1,000人アンケート

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時間制限食でメタボ該当者のHbA1cが有意に低下

 メタボリックシンドローム(MetS)該当者の食事療法に時間制限食を用いることで、標準的な食事療法よりもHbA1cが有意に低下したとする研究結果が報告された。米ソーク生物学研究所のEmily N.C. Manoogian氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に10月1日掲載された。 時間制限食(time-restricted eating;TRE)は、1日の中でエネルギー量のある飲食物を摂取可能な時間帯を限定し、少なくとも14時間以上はエネルギーを摂取しないという食事療法。一方、摂取を禁止する時間帯以外はエネルギー量を考えず自由な飲食が可能で、総摂取量の増大が許容されることもある。この手軽さから人気が高まりつつあり、また減量や心代謝関連マーカーの改善につながるとする研究報告が増えているものの、まだ評価は確立されていない。 Manoogian氏らは、心代謝関連マーカーに対するTREの有用性を、標準的な食事療法と比較するランダム化比較試験を実施した。研究参加者は、空腹時血糖値高値またはHbA1c高値を含む代謝異常を呈している成人のMetS該当者。無作為にTRE群と標準的食事療法群(対照群)に割り付け、3カ月間の介入を行った。なお、食事療法の有用性を検討する場合、薬物療法施行中の患者は対象から除外することが多いが、本研究では対象に含めた。著者らは、これによって「薬物療法にTREを上乗せすることのメリットも検討し得た初の研究となった」としている。 介入に際して、TRE群では個人の起床/就床パターンを把握した上で、摂食可能時間が4時間以上短縮されるように個別に設定。その結果、起床1時間後から就床3時間前までの間の8~10時間が摂食可能時間として設定された。介入期間中の遵守状況は、スマートフォンのアプリを用いてリアルタイムで追跡された。研究参加者全員が標準的な治療を継続し、食事に関しては地中海式ダイエットに関する栄養カウンセリングが行われた。 研究参加者の89%に当たる108人が介入を終了した。ベースライン時点の主な特徴は、平均年齢59歳、女性56人、BMI31.22、摂食時間14.19時間だった。年齢の影響を調整後、介入後のTRE群のHbA1cは対照群に対して-0.10%(95%信頼区間-0.19~-0.003)であり、有意差が認められた。また、体重、BMI、腹部体幹脂肪(abdominal trunk fat)の低下幅も、対照群より3~4%多かった。減量時の一般的な懸念材料の一つである、除脂肪体重の有意な低下は認められなかった。全体として、重大な有害事象は報告されなかった。 著者らは、「個別化されたTREは成人MetS該当者の高血糖改善につながり、心代謝系の健康に広範なメリットをもたらす可能性のある、実践的なライフスタイル介入と言える」と述べている。

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脳卒中の重症度を高める3つのリスク因子とは?

 喫煙、高血圧、心房細動の3つのリスク因子は、脳卒中リスクだけでなく、脳卒中の重症度を高める可能性のあることが、新たな研究により明らかになった。ゴールウェイ大学(アイルランド)老年医学分野のCatriona Reddin氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に11月13日掲載された。 Reddin氏は、「脳卒中は、障害や死にさえつながる可能性があるが、生活習慣の是正や薬物療法により改善できるリスク因子は数多くある。われわれの研究結果は、障害を伴う重度の脳卒中を予防するためには、さまざまな脳卒中のリスク因子の中でも特に、高血圧、心房細動、喫煙の管理が重要であることを強調するものだ」と述べている。 今回の研究でReddin氏らは、世界32カ国で募集された患者を対象に、初発の急性脳卒中のリスク因子について検討した国際的な症例対照研究(INTERSTROKE)のデータを用いて、脳卒中のリスク因子が重症度にどのように影響するのかを検討した。対象は、急性脳卒中を発症した1万3,460人と発症していない1万3,488人の計2万6,948人(平均年齢61.74歳、男性59.58%)、検討した脳卒中のリスク因子は、高血圧(140/90mmHg以上)、心房細動、糖尿病、高コレステロール、喫煙、飲酒、食事の質、運動不足、心理的・社会的ストレス、ウエストヒップ比であった。対象者の脳卒中の重症度をmRS(修正ランキンスケール)で評価したところ、4,848人(36.0%)が重度の脳卒中(4〜6点)に該当し、残りの8,612人(64.0%)は非重度(軽度〜中等度)の脳卒中(0〜3点)であった。重度の脳卒中の発症者は、介助なしでは歩くことや身の回りのことができなくなり、生涯にわたって継続的な介護が必要になる場合が多いと研究グループは説明する。 年齢、性別、国籍、脳卒中のタイプで調整して解析した結果、高血圧に罹患していた人では正常血圧の人に比べて、重度の脳卒中の発症リスクが3.2倍(オッズ比3.21、95%信頼区間2.97〜3.47)、軽度から中等度の脳卒中の発症リスクが2.9倍(同2.87、2.69〜3.05)高いことが明らかになった。また、心房細動のある人ではない人に比べて、同リスクがそれぞれ4.7倍(同4.70、4.05〜5.45)と3.6倍(同3.61、3.16〜4.13)、喫煙者は非喫煙者に比べて同リスクがそれぞれ1.9倍(同1.87、1.72〜2.03)と1.7倍(同1.65、1.54〜1.77)高いことも示された。 こうした結果を受けてReddin氏は、「われわれの研究結果は、高血圧を管理することの重要性を明示している。高血圧は、世界的に見ても脳卒中の修正可能なリスク因子の中で最も重要だ」と述べている。同氏はさらに、「高血圧の管理は、特に、若年層での高血圧と脳卒中の発症率が急増している低・中所得国において重要だ」と付言している。

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CKDの早期からうつ病リスクが上昇する

 腎機能低下とうつ病リスクとの関連を解析した結果が報告された。推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2を下回る比較的軽度な慢性腎臓病(CKD)患者でも、うつ病リスクの有意な上昇が認められるという。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏、候聡志氏らの研究によるもので、詳細は「European Journal of Clinical Investigation」に9月27日掲載された。 末期のCKD患者はうつ病を併発しやすいことが知られており、近年ではサイコネフロロジー(精神腎臓学)と呼ばれる専門領域が確立されつつある。しかし、腎機能がどの程度まで低下するとうつ病リスクが高くなるのかは分かっていない。金子氏らは、医療費請求データおよび健診データの商用データベース(DeSCヘルスケア株式会社)を用いた後ろ向き観察研究により、この点の検討を行った。 2014年4月~2022年11月にデータベースに登録された患者から、うつ病や腎代替療法の既往者、データ欠落者を除外した151万8,885人を解析対象とした。対象者の年齢は中央値65歳(四分位範囲53~70)、男性が46.3%で、eGFRは中央値72.2mL/分/1.73m2(同62.9~82.2)であり、5.4%が尿タンパク陽性だった。 1,218±693日の追跡で4万5,878人(全体の3.0%、男性の2.6%、女性の3.3%)にうつ病の診断が記録されていた。ベースライン時のeGFR別に1,000人年当たりのうつ病罹患率を見ると、90mL/分/1.73m2以上の群は95.6、60~89の群は87.4、45~59の群は102.1、30~44の群は146.5、15~29の群は178.6、15未満の群は170.8だった。 交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症)を調整後に、eGFR60~89の群を基準として比較すると、他の群は全てうつ病リスクが有意に高いことが示された。ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。eGFR90以上の群は1.14(1.11~1.17)、45~59の群は1.11(1.08~1.14)、30~44の群は1.51(1.43~1.59)、15~29の群は1.77(1.57~1.99)、15未満の群は1.77(1.26~2.50)。また、尿タンパクの有無での比較では、陰性群を基準として陽性群は1.19(1.15~1.24)だった。 3次スプライン曲線での解析により、eGFRが65mL/分/1.73m2を下回るあたりからうつ病リスクが有意に上昇し始め、eGFRが低いほどうつ病リスクがより高くなるという関連が認められた。 これらの結果に基づき著者らは、「大規模なリアルワールドデータを用いた解析の結果、CKDの病期の進行とうつ病リスク上昇という関連性が明らかになった。また、早期のCKDであってもうつ病リスクが高いことが示された。これらは、CKDの臨床において患者の腎機能レベルにかかわりなく、メンタルヘルスの評価を日常的なケアに組み込む必要のあることを意味している」と総括。また、「今回の研究結果は、サイコネフロロジー(精神腎臓学)という新たな医学領域の前進に寄与すると考えられる」と付け加えている。 なお、eGFRが90以上の群でもうつ病リスクが高いという結果については、「本研究のみではこの理由を特定することは困難だが、CKD早期に見られる過剰濾過との関連が検出された可能性がある」と考察されている。

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ターナー症候群〔TS:Turner syndrome〕

1 疾患概要ターナー症候群(Turner syndrome:TS)は染色体の核型45,Xを基本として多彩な核型を示す表現型は女性の性染色体異常症である。X染色体の一部または全体が欠失(機能的な欠失も含む)することによって発症する。45,XのX染色体モノソミー、i(Xq)、Xp-、Yp-などの構造異常や、性染色体の関連するさまざまなモザイクがある。■ 症状表現形は女性で、基本症状としては、(1)低身長と(2)性腺異形成に伴う卵巣機能不全で、これらに加えて個々に(3)心疾患、(4)翼状頸、(5)盾状胸、(6)腎疾患などを合併することがある。上記の臨床症状があって、通常の染色体検査(G分染法)でX染色体短腕遠位部を含む染色体異常があれば、ターナー症候群と診断される。臨床症状と染色体異常の両方あることが診断に必要である。一般的に知的障害は伴わないが、学習障害や社会的スキルの発達に困難な例がみられる。発症頻度は出生女児の1,000人に1人程度とされている。原則として遺伝することはない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ターナー症候群の診断は、上記の身体的特徴、とくに低身長と無月経などの症状に基づいて行われる。小児期には症状が揃っていないことから、低身長で疑われることがほとんどである。小児期に原因不明の低身長を示す女性は、染色体検査の対象となる。ターナー症候群は、出生した時点で疾患自体は確定しているが、症状は出生時からみられるものと、思春期以降の年齢になるまで明らかにならないケースもあるため、診断時期が小児期を逃すと、次の診断時期は思春期で、原発性無月経を主訴に受診した際となる。思春期に原発性無月経で受診した際の診断のアルゴリズムを図に示す。図 原発性無月経の診断アルゴリズム(日本産婦人科医会 研修ノート No.106 思春期のケア(3)原発性無月経の診断2021年.より引用)画像を拡大する確定診断には染色体検査が必要である。末梢血リンパ球染色体分析が基本的な染色体検査である。通常のG分染法でよいが、複雑な構造異常がみられる場合などでは、高精度分染法などを追加する必要がある。これは卵巣形成不全が出現する思春期まで待っていては診断が遅れるからである。なお、症状が典型的なターナー症候群で、末梢血のリンパ球染色体で46,XYが検出される場合には、口腔粘膜などを用いた染色体検査で45,Xがみつかるようなケースもある。通常の染色体検査で診断困難な複雑な染色体異常では、マイクロアレイ法やFISH法、whole chromosome painting(WCP)解析などで、詳しい情報が得られることもある。また、胎児のターナー症候群は、健常な妊婦が出生前遺伝学的検査を受けた場合に、偶発的にみつかることもある。ただ、胎児がターナー症候群の核型を示す場合は高率(99%)に流産する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ターナー症候群の治療は、症状や合併症に応じて個別に行われる。成長ホルモン療法は小児期の低身長の改善を目的に実施される。第二次性徴が現れないなどで思春期に入ってから診断された場合は、エストロゲン補充療法が行われる。原発性無月経の場合には妊娠は困難である。ただ、原発性無月経ではなくて、初経があれば妊娠することもあるが、流産率や胎児の染色体異常の可能性は健常女性に比較して高くなる。成人期には心臓や腎臓の合併症については、個別に早期発見と管理・治療が必要である。染色体異常にY染色体が含まれる場合は、精巣由来の性腺が含まれる可能性があり、その場合はがん化のリスクがあるため、性腺切除を考慮する。4 今後の展望近年の研究により、ターナー症候群の理解と治療が進展している。ターナー症候群の原因は完全に解明されてはいないが、X染色体の短腕の欠失部位に存在するSHOX遺伝子が関連することが報告されている。SHOX遺伝子の欠失により各細胞では同遺伝子を2コピーではなく、1コピーしか持っていない。これにより産生されるSHOXタンパク質の量が減少し、このタンパク質の不足が本症の女性によくみられる低身長と骨格の異常(手首と肘の関節の異常な回転など)の一因となる可能性がある。こうした知見に基づき、遺伝子治療や新しいホルモン療法の開発が期待されている。一方で生活の質を向上させるための支援や心理的サポートや教育支援など、患者の全体的なケアが重要視されている。本症の女性の妊娠については、わが国ではまだ一般的ではないが、海外では第三者からの卵子提供や胚提供により妊娠が可能である。また、初経があれば、早発卵巣不全となる前の段階で、卵子凍結を行って、体外受精により妊娠することも理論上は可能である。5 主たる診療科ターナー症候群の治療は、以下の診療科で行われる。小児科:子供の成長や発達を管理産婦人科:生殖機能の管理と治療内分泌科:とくに成人期以降のホルモン療法や成長管理遺伝科:遺伝カウンセリングと染色体検査循環器科:心臓の異常に対する治療腎臓内科:腎臓の異常に対する治療※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター ターナー(Turner)症候群(公的助成制度の情報:一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)遺伝性疾患プラス ターナー症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本内分泌学会 ターナー症候群(一般利用者向けのまとまった情報)日本小児内分泌学会 低身長(一般利用者向けのまとまった情報)患者会情報club-turner.jp 全国のターナー症候群の家族会の一覧(全国に多数あるターナー症候群患者会の情報)1)岡田義昭 監修. 新版ターナー症候群. メディカルレビュー社;2001.2)Gravholt CH, et al. Nat Rev Endocrinol. 2019;15:601-614.3)Aly J, et al. Curr Opin Pediatr. 2022;34:447-460.4)日本産婦人科医会 研修ノート No.106 思春期のケア(3)原発性無月経の診断2021年.公開履歴初回2024年12月5日

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便失禁を起こしやすい患者とは?便失禁診療ガイドライン改訂

 日本大腸肛門病学会が編集を手掛けた『便失禁診療ガイドライン2024年版改訂第2版』が2024年10月31日に発刊された。2017年に発刊された初版から7年ぶりの改訂となる。今回、便失禁の定義や病態、診断・評価法、初期治療から専門的治療に至るまでの基本的知識がアップデートされ、新たに失禁関連皮膚炎や出産後患者に関する記載が拡充された。また、治療法選択や専門施設との連携のタイミングなど、判断に迷うテーマについてはClinical Question(CQ)で推奨を示し、すべての医療職にとっての指針となるように作成されている。 便失禁の定義とは「無意識または自分の意思に反して肛門から便が漏れる症状」である。このほかに「無意識または自分の意思に反して肛門からガスが漏れる症状」をガス失禁、便失禁とガス失禁を合わせて肛門失禁と定義される。国内での有病率について、65歳以上での便失禁は男性8.7%、女性6.6%である。一方、ガス失禁を含む肛門失禁は34.4%であるが、男性15.5%に対して女性42.7%と性差が見られる。主な便失禁の発症リスク因子として、年齢・性別などの身体的条件や産科的条件に加え、BMIが30を超える肥満、全身状態不良、身体制約などが報告されている。また、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患、糖尿病、過活動膀胱、骨盤臓器脱、認知症や脊髄損傷といった疾患もリスク因子となる。直腸がんも便失禁の原因になりうるが、とくに直腸がんに対する肛門温存手術後の排便障害である低位前方切除後症候群の発生率は高率で、主訴の直腸がんが根治した後に排便障害を抱えて生活している患者は増加傾向であるという。 このような病態背景があるなか、本診療ガイドラインは「便失禁診療・ケアを普及することで、便失禁症状を改善し、便失禁を有する患者の生活の質の改善」を目的として、便失禁の診断・治療とともに便失禁の程度とその状態の評価、便失禁に伴う皮膚症状や生活の質への評価と対応、寝たきりとなっている患者への介護などの側面からも捉え、8つの重要臨床課題と5つのClinical Question(CQ)が設定されている。<重要臨床課題>(1)便失禁の臨床評価(2)特殊病態の臨床評価(3)治療方針決定に必要な検査(4)食事・生活・排便習慣指導の有用性(5)薬物療法の適応と有用性(6)骨盤底筋訓練・バイオフィードバック療法の適応と有用性(7)洗腸療法の適応と有用性(8)手術療法の適応と有用性<Clinical Question>CQ1:便失禁の薬物療法において、ポリカルボフィルカルシウムとロペラミド塩酸塩はどのように使い分けるか?CQ2:出産後に便失禁が発症した場合、専門施設への最適な紹介時期はいつか?CQ3:分娩時肛門括約筋損傷の既往を有する妊婦の出産方法として、経腟分娩と帝王切開のどちらが推奨されるか?CQ4:肛門括約筋断裂による便失禁に対して、肛門括約筋形成術と仙骨神経刺激療法のどちらを先行すべきか?CQ5:脊髄障害を原因とする便失禁の治療法として、仙骨神経刺激療法は有用か? なお、日本大腸肛門病学会は本ガイドラインの使用について、便失禁を診療する医師だけではなくケアを行う介護者や一般市民も想定しており、便失禁診療の一助となることを願っているという。

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世界の糖尿病罹患率、日本の女性が低下し世界最低群に/Lancet

 英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのBin Zhou氏らNCD Risk Factor Collaboration(NCD-RisC)は、200の国と地域における1990~2022年の糖尿病の罹患率と治療動向を調べ、ほとんどの国、とくに低所得国と中所得国では、罹患率の上昇に比べて糖尿病治療率(糖尿病治療薬を使用している患者の割合)はまったく増えていないか、十分には増えていないことを示した。糖尿病はプライマリケアレベルでの検出が可能で、また効果的な治療により合併症リスクを低減できるが、糖尿病治療の実態と、それがどのように変化しているのかについて十分なデータはなかった。Lancet誌2024年11月23日号掲載の報告。18歳以上1億4,100万例が参加した試験1,108件のデータを解析 対象は、18歳以上の空腹時血糖値(FPG)、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、糖尿病治療に関する情報が収集された1億4,100万例であった。国・地域を代表する集団を対象に含む研究(population-representative study)1,108件のデータを用いて行われた。 「糖尿病」の定義は、FPGが7.0mmol/L以上、HbA1cが6.5%以上、または糖尿病治療薬を服用していることとし、「糖尿病治療」の定義は、糖尿病の治療薬を使用している糖尿病患者の割合とした。 ベイジアン階層メタ回帰モデルによりデータを解析し、糖尿病の罹患率と治療率を推算。結果報告では、それらの変化の事後確率が0.80超であった国の数を示した。罹患率は低所得国と中所得国で15~22%ポイント上昇 2022年において、推定8億2,800万例(95%信用区間[CrI]:7億5,700万~9億800万)の成人(18歳以上)が糖尿病を有しており、1990年から6億3,000万例(5億5,400万~7億1,300万)増加した。年齢標準化糖尿病罹患率は、女性13.9%(95%CrI:12.3~15.8)、男性14.3%(12.5~16.4)であった。 1990~2022年に年齢標準化糖尿病罹患率が上昇(事後確率0.80超)したのは、女性については131ヵ国、男性については155ヵ国であった。うち、最も上昇幅が大きかった(15~22%ポイント)のは東南アジア諸国(マレーシアなど)、南アジア諸国(パキスタンなど)、中東および北アフリカ諸国(エジプトなど)、中南米・カリブ海諸国(ジャマイカ、トリニダード・トバゴ、コスタリカなど)の低所得国および中所得国であった。 年齢標準化糖尿病罹患率が上昇または低下のいずれもみられなかったのは、女性では66ヵ国、男性では44ヵ国であった。そのほとんどは中央・西ヨーロッパ諸国(デンマーク、オランダなど)、サハラ以南のアフリカ諸国(エチオピア、マラウイなど)、東アジア・太平洋諸国(シンガポールなど)、カナダ、および1990年にすでに罹患率が高かったポリネシア諸国やミクロネシア諸国の多数の島しょ国であった。日本の罹患率は女性のみ低下がみられ、2022年は世界の最低群に位置 低下(事後確率0.80超)がみられたのは、日本(女性のみ)、スペイン、フランスで、1~2%ポイントの低下であった。また、ナウル(男性)は1990年に30.7%ポイントと高かったが、7%ポイント低下していた。 2022年の糖尿病罹患率が世界で最も低かったのは、西ヨーロッパ諸国と東アフリカ諸国の男女、日本およびカナダの女性であった。一方、最も高かった国は、ポリネシア諸国、ミクロネシア諸国、カリブ海諸国(トリニダード・トバゴ、ジャマイカなど)、中東および北アフリカ諸国(エジプトなど)、パキスタン、マレーシアであった。治療率は世界の30歳以上糖尿病患者の59%が未治療 2022年において、糖尿病成人患者(30歳以上)の59%に当たる4億4,500万例(95%CrI:4億100万~4億9,600万)が治療を受けていなかった。未治療者数は1990年の3.5倍に当たる。 1990~2022年に、糖尿病治療率が上昇(事後確率0.80超)したのは、女性については118ヵ国、男性については98ヵ国であった。うち、最も治療率が改善したのは、中央・西ヨーロッパ諸国、中南米諸国(メキシコ、コロンビア、チリ、コスタリカ)、カナダ、韓国、ロシア、セーシェル、ヨルダンであった。一方、サハラ以南のアフリカ諸国、カリブ海諸国、太平洋諸島国、南・南東・中央アジア諸国のほとんどの国では、治療率の上昇はみられなかった。 2022年において、年齢標準化治療率はサハラ以南のアフリカ諸国と南アジア諸国で最も低く、一部のアフリカ諸国の治療率は10%未満であった。一方、韓国、多くの高所得の西側諸国と中央・東ヨーロッパ諸国の一部(ポーランド、チェコ、ロシアなど)、中南米諸国(コスタリカ、チリ、メキシコなど)、中東・北アフリカ諸国(ヨルダン、カタール、クウェートなど)の治療率は55%以上であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「糖尿病および未治療の糖尿病による負荷は、低所得国と中所得国でますます重くなっている。糖尿病の早期発見と効果的な治療を強化するための医療サービスを再編・供給する糖尿病プログラムと共に、健康保険制度およびプライマリヘルスケアの拡充を図るべきである」と述べている。

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運動習慣のある人でも座りすぎは心臓に良くない

 座っている時間が長いと、たとえ推奨される最低限の運動を行っていたとしても、心臓に悪い影響が生じることを示唆するデータが報告された。ただし、より高強度の運動を加えることで、そのリスクをある程度抑制できる可能性があるという。米コロラド大学ボルダー校のChandra Reynolds氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に9月11日掲載された。同氏は、「仕事の後に少し歩く程度では、心臓の健康にとって十分ではないかもしれない」と述べている。 この研究は、米国コロラド州で行われている二つの疫学研究の参加者1,327人(平均年齢33.2±4.9歳〔範囲28~49〕、女性53%)を対象に行われた。研究参加者の年齢が比較的若いことに関連して、論文の筆頭著者である米カリフォルニア大学リバーサイド校のRyan Bruellman氏は、「若者は自分には加齢の影響が生じ始めていると全く考えていないことが多い。しかし後々の健康にとっては、人生のこの時期に何をするかが重要だ」と語っている。 研究参加者の1日の座位行動時間は平均8.58時間だったが、中には16時間に及ぶ人も含まれていた。運動時間については、平均的に1週間あたり80~160分の中強度運動、135分未満の高強度運動をしている人が多く、これらは米国の全国平均よりも運動習慣が良好な集団であることを示していた。 この研究では、BMI、および、総コレステロールを善玉コレステロール(高比重リポ蛋白コレステロール)で除した値(TC/HDL-C比)という二つの指標を、心臓の健康状態を推測するために利用した。解析対象全体の平均は、BMIが26.9±6.1で、TC/HDL-C比は3.3±0.9だった。 解析の結果、座位行動時間が長い人ほど、これらの評価指標が悪いことが明らかになった。一般的に推奨される最低限の運動量である、1日に約20分の中強度の運動を満たしていたとしても、座位行動時間が長いことによる心臓への悪影響は、十分に抑制されていないと考えられた。 しかし、1日30分以上の高強度の運動、例えばランニングやサイクリングを加えると、座位行動時間が長いことによる心臓への悪影響を、ある程度抑制できる可能性が示された。例えば35歳で1日の座位行動時間が4時間ながら、毎日30分以上の高強度運動をしている人のTC/HDL-C比は、性別にかかわらず、座位行動時間が同じで高強度運動をしていない30歳の人と同レベルだった。つまり、高強度運動を加えることには、5歳程度の若返り効果があると推測された。 研究者らは、座位行動時間が長くなりがちな人に向けたアドバイスとして、職場でスタンディングデスクを使用したり、毎日30分以上の高強度運動をしたり、土日に“週末戦士”として高強度のトレーニングを集中して行うことなどを提案している。

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