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1日2回以上の歯磨きで児童のレジリエンス向上か―貧困下で特に顕著

 歯磨きの頻度が高い子どもはレジリエンスが高く、特に貧困に該当する子どもでこの関係が強固であるとする研究結果が報告された。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科公衆衛生学分野※の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Oral Health」に8月10日掲載された。 貧困は健康リスク因子の一つとして位置付けられていて、成長過程にある子どもでは、その影響が成人後にも及ぶ可能性も指摘されている。また幼少期の貧困は、レジリエンスの低下につながることが報告されている。レジリエンスとは、ストレスやトラブルに対応して逆境から立ち直る精神的な回復力であり、レジリエンスの高さは、うつ病や不安症などのメンタルヘルス疾患のリスクの低さと関連がある。 幼少期の貧困そのものは修正困難であるため、レジリエンスの発達にはコストのかからない修正可能な因子を見いだす必要がある。一方、これまでの研究から、歯磨きの頻度が幼少期の自己管理能力と関連することや、歯磨き頻度が低い小学生に不登校が多いことなどが報告されている。これらを背景として藤原氏らは、子どもの歯磨きの頻度とレジリエンスとの関連を検討し、その関連が貧困の有無によって異なるのかを検討した。 この研究は、東京都足立区内の全ての公立小学校の生徒を対象に行われた、「足立区子どもの健康生活実態調査」のデータを利用する縦断的研究として実施された。2015年に小学1年生5,355人の貧困、レジリエンス、および歯磨きの頻度などが調査され、4,291人の保護者が回答(回答率80.1%)。2018年に子どもたちが小学4年生になった段階で追跡調査を行い、3,519人(追跡率82.0%)が回答し、データ欠落のない3,458人(平均年齢9.59±0.49歳、男児50.6%)を解析対象とした。 貧困は、1年生時点で(1)世帯収入300万円未満、(2)物理的剥奪(経済的理由のため、本やスポーツ用品、必要度の高い家電製品を購入できないなど)が一つ以上、(3)支払い困難(給食費、住宅ローン、電気代、電話代、健康保険料などを払えない)が一つ以上――のいずれかに該当する場合と定義した。レジリエンスは、「子どものレジリエンス評価スケール(CRCS)」という指標で評価した。CRCSは「最善を尽くそうとする」、「からかいや意地悪な発言にうまく対処する」、「必要な時に適切な助けを求める」などの8項目の質問から成り、合計100点満点に換算するもので、スコアが高いほどレジリエンスが高いと評価される。 1年生時点での貧困児童の割合は23.0%だった。歯磨きの頻度については、1日2回以上が77.5%であり、貧困に該当する場合はその割合が有意に低かった(79.4対71.4%、P<0.001)。レジリエンスを表すCRCSのスコアは、1年生時点で46.87±12.11点、4年生時点では69.27±16.3点だった。4年生時点のCRCSスコアを、1年生時点の貧困の有無と歯磨きの頻度別に見ると、貧困なしの場合、歯磨き頻度が1日2回未満では67.6点、1日2回以上では70.8点、貧困ありでは同順に62.0点、68.0点だった。 レジリエンスに影響を及ぼし得る因子(性別、同居中の親・祖父母の人数、母親の年齢・教育歴・就労状況・メンタルヘルス状態〔K6スコア〕)を調整後、1年生時点で貧困に該当していた子どもはそうでない子どもに比べて、4年生時点のCRCSスコアが有意に低かった(-1.53点〔95%信頼区間-2.91~-0.15〕)。また、1年生時点の歯磨き頻度が1日2回以上の子どもは2回未満の子どもに比べて、4年生時点のCRCSスコアが有意に高かった(3.50点〔同2.23~4.77〕)。 次に、前記の調整因子のほかに1年生時点のCRCSスコアも調整したうえで、1年生時点の歯磨き頻度と4年生時点のCRCSスコアとの関係を、貧困の有無別に検討した。すると、貧困なしの場合、歯磨き頻度が1日2回未満と以上とで、CRCSスコアに有意差がなかったが(0.65点〔-0.57~1.88〕)、貧困に該当する場合は、1年生時点の歯磨き頻度が1日2回以上の群のCRCSスコアの方が有意に高かった(2.66点〔0.53~4.76〕)。 これらの結果に基づき著者らは、「日本の小学生を対象とした縦断的研究により、1日2回以上の歯磨きが子どものレジリエンスの発達に及ぼし得る影響は、貧困に該当する子どもでより顕著であることが明らかになった。歯磨きという実践しやすい行動に焦点を当てた保健政策が、貧困児童の精神的健康にとって役立つのではないか」と述べている。 なお、歯磨きが貧困児童のレジリエンスにプラスの影響を与えることの理由として、以下のような考察が加えられている。まず、貧困という環境では種々の要因から炎症が発生しやすく、慢性炎症がレジリエンスを低下させると報告されているが、歯磨きによって炎症が抑制されることでレジリエンスへの負の影響も抑えられるのではないかという。また、歯磨きという“少し面倒な”ライフスタイルを保つことが、子どもの自己管理能力とレジリエンスを醸成する可能性があるとのことだ。(HealthDay News 2024年9月24日)※東京医科歯科大学は東京工業大学と統合し2024年10月1日より、国立大学法人「東京科学大学」に改称予定。

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リンパ節腫脹の有無を確認する方法

患者さん、それは…リンパ節腫脹 かもしれません!リンパ節は、正常でも顎下部や頸部に直径1 cm以下で軟らかく、鼠径部では直径2 cm以下のものに触れることがあり、「リンパ節腫脹」の場合はそれ以上の大きさになります。以下のような症状はありませんか?□発熱している□しこりが 1個以上触れる□しこりが動かない□表面に凹凸がある□圧痛/自発痛がある□しこりが硬い□喉や歯の痛みがある □身体がだるい□関節も腫れている□腫れているのは1ヵ所だけだ◆そのリンパ節腫脹は…全身疾患のせいかも!?• 38℃以上の発熱はありますか• 体重が5%以上減っていませんか(例:急に55㎏→52㎏くらいにやせた)• 寝ていて下着を取り換えなければならないほど、汗をかきますか?出典:内科学第10版_リンパ節腫脹、MSDマニュアルプロフェッショナル版_リンパ節腫脹監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第232回 医学研究における国内受賞者の“ある共通点”、ノーベル賞から考えたこと

ここ2週間ほどのニュースの中心は、衆院解散と来たる総選挙が多くを占めている。渦中の新首相・石破 茂氏は、首相就任後、その言動の変節が話題となっている。その1つが選択的夫婦別姓を巡る問題である。総裁選中は「選択的なのだから否定する理由はない」としていたが、10月8日の参院代表質問では「夫婦の氏に関する具体的な制度のあり方については、国民の間にさまざまな意見があるものと承知している。 家族の在り方の根幹に関わる問題でもある。政府といたしましては国民の意見や国会における議論の動向を踏まえ、必要な検討を行いたい」と賛否すら明示しない官僚答弁に終始した。さてこのジェンダー問題は医学界でも長年指摘されてきた。昨今のわかりやすい事例を挙げるならば、東京医大をはじめとする複数の医学部で発覚した入試の女性差別問題である。もちろんこうしたことは氷山の一角に過ぎないだろう。そもそもパワハラ、アカハラ、セクハラなどの各種ハラスメントに対する認識が社会に定着し始めたのは、まだ最近のことだからだ。そしてちょうどこの時期、ノーベル賞各賞の受賞者が発表されたが、生理学・医学賞に着目してみると、創設以来の受賞者229人のうち女性受賞者は今年までで13人、全体の5.7%とかなり少ない。実はこれでもノーベル賞の自然科学系各賞の中では最も多い。ちなみに医学界では名高いアルバート・ラスカー医学研究賞(全4部門)の今年までの女性受賞比率は8.3%である。もちろん工学、農学、医学などを含む広義の自然科学系の研究に女性が進出した歴史はまだ浅いと言わざるを得ないことを鑑みれば、少なくとも現時点での世界標準の医学関連賞の女性受賞比率は一桁後半が妥当なのだろう。そうした中で南ドイツのエバーハルト・カール大学テュービンゲンの生化学研究所で創薬を研究する秤谷 隼世(はかりや はやせ)氏らが今年9月に「Health Science Report」に発表した「Gender disparities among prestigious biomedical award recipients in Japan: A cross sectional study(日本の権威ある生物医学賞受賞者での男女格差:横断的研究)」1)の内容が興味深い。秤谷氏が調べた医学賞とその結果研究は医学・生物医学系の研究に与えられる武田医学賞(創設1954年)2)、上原賞(同1985年)3)、慶應医学賞(同1996年)4)の受賞者を対象に行っている。「なぜこの3賞?」と思う人も少なくないだろう。これは論文に理由が記載されている。まず、これらがいずれも創設以来の受賞者全員の身元が公開されていること。武田医学賞は歴史が長く、慶應医学賞は国内と海外各1名が毎年選出されるため、国内受賞者と海外受賞者の男女比を比較できること、上原賞は前記2つの賞の中間的年代に設立されたためとしている。また、賞としては有名でも人文科学、社会科学、自然科学のさまざまな分野から候補者が入る賞に関しては、医学・生物医学領域での潜在的なバイアスと区別するため除外された。結論から言うと、この3賞内の重複受賞者、慶應医学賞の海外研究者部門を除く2023年までの国内総受賞者182人のうち女性は2人のみ。全受賞者に占める女性受賞比率はたった1.1%。なんという低さだろう。しかも、慶應医学賞の海外研究者部門の女性受賞比率は11.1%なのにだ。しかし、論文内の記述で私がもっとも驚いたのは初の女性受賞者が2015年の武田医学賞とごく最近だったこと。残る1人も武田医学賞の受賞者だ。論文内では、各賞の全受賞者の最終学位(博士号)取得から受賞までの平均年数を26~30年と算出している。ちなみにこの数字は慶應医学賞の海外研究者部門は32年、2023年までのラスカー受賞者は30年である。つまるところ日本人研究者も外国人研究者も博士号取得から受賞できるような実績を示すまでに要する時間はほぼ同じであり、女性受賞率が慶應医学賞海外研究者部門やラスカー賞に比べ、これら3賞では極端に低いことには日本特有の原因があると推察される。論文ではその一因として女性研究者の博士号取得者の少なさがあるのではないかと推定している。カギとなるのは前述のように博士号取得から受賞まで30年前後という期間を考慮した約30年前の女性研究者の博士号取得実態。論文内では1995年の自然科学分野の博士号取得者に占める女性割合は、日本が15.6%に対してアメリカが41.1%と報告しているもっとも論文では、より直近の2014〜23年に限定して国内3賞の女性受賞比率を算出しても3.8%に過ぎず、1995年時点の博士号取得者の女性比率から見てもかなり低いことに疑問を呈している。そこでもう1つの要因として推定しているのが3賞の選考過程である。選考委員名が完全に公開されている慶應医学賞の選考委員男女比は、最新の2023年が男性12人、女性4人だったが、2021年時点では男性12人、女性1人。いずれにせよ男女比が極めて不均衡である。また、武田医学賞と上原賞は、候補者選定時に、ほぼ男性のみである過去の受賞者からの推薦が可能となっている。無意識に意識した受賞者像このようなことから、論文では今回わかった国内3賞の女性受賞比率が著しく低い点について、アンコンシャス・バイアス(無意識な偏見)が働いていたのではないかとの考察を示している。ちなみにアンコンシャス・バイアスの傍証として、武田医学賞では受賞資格に国籍は問わないとしているにもかかわらず、過去の受賞者に外国人がいないことも挙げている。ざっくりまとめるならば、日本人男性社会の典型とも言えた医学界では、医学関連賞の候補者、受賞者の決定時に無意識に「日本人男性」を選出していたのではないかというわけだ。この指摘に対しては「いや、ちょっとジェンダー問題に偏り過ぎな見方では?」との声もあるかもしれない。しかし、私はこの論文の指摘には一理ありと思っている。まず、今回の論文を読んでふと私の頭に浮かんで参照したのがドイツのベーリンガーインゲルハイムの日本法人・日本ベーリンガーインゲルハイムが主催している卓越した医学研究論文に贈られるベルツ賞である。というのも前述の論文で分析対象となった武田医学賞、上原賞は、それぞれ日本を起源とする武田薬品、大正製薬の関連財団が主催している。内外差が見えてくるのではないかと考えたのだ。ベルツ賞創設は1964年と歴史は古い。前述の3賞と決定的に違うのは、毎年あらかじめ決めたテーマで公募する点だ。また、受賞者は論文共著者も含まれる。ざっと過去からの受賞者を眺めまわすと、極めて懐かしいご重鎮の名前があちこちに登場する。さてこの受賞者一覧5)を眺めまわし、明らかに女性とわかる名前を拾い上げて算出した女性受賞比率は3.8%。前述の3賞よりも明らかに高い。しかも、最も早い時期では1970年代に女性受賞者がいる。この違いはやはりドイツと日本の国情や文化ではないだろうか? 「それこそアンコンシャス・バイアスでは?」と言われそうだが、ドイツのほうが社会としてジェンダー問題の解消面で日本の一歩先を行っていることに異論がある人はいないだろう。この点の“傍証”とも言える事実もある。ベルツ賞の選考委員は賞創設時から公開されているのだが、その多くは古き良き(悪しき?)日本を代表する男性のご重鎮ばかり。だが、1つ異なるのは創設時から日本法人トップの外国人が加わっていた点である。ちなみに近年のベーリンガー日本法人はトップが日本人だった時期もあり、その時期は彼ら(2人)が選考に参加している。しかし、ともに外資系を渡り歩いてきたことで有名な人である。こうした点からもドイツ・日本、あるいは内外のジェンダーに関する認識の違いが影響している可能性は否定できない。グローバル化で医学賞にも変化そして今回の論文で唯一の女性受賞者がいた武田医学賞だが、最初の受賞者が2015年と知って前述のように驚いた反面、この時期にハッとした。ご存じのように同賞の大元の母体と言ってよい武田薬品は、浪花商人のコテコテ内資製薬企業から海外進出を果たし、2008年には米・ミレニアム社、2011年にはスイス・ナイコメッド社を買収して、本格的なグローバル化へと突き進んだ。2014年には創業以来初の外国人社長であるクリストフ・ウェバー氏が就任し、2019年には約7兆円もの巨額の資金を投じてアイルランドのシャイアー社を買収して、メガファーマ入りした。実は2008年のミレニアム社買収後、武田は元ミレニアム社長のデボラ・ダンサイア氏を初の女性取締役に迎え、2015年にはウェバー氏の下で組織された経営陣グループ「武田エグゼクティブチーム」に初めて女性のラモナ・セケイラ氏(現同社グローバル ポートフォリオ ディビジョン プレジデント)を迎えている。ちなみにセケイラ氏は、大学で分子遺伝子学と分子生物学を学んでいる。要は国を超えた感覚が移入されたことは、武田医学賞にも間接的に変化をもたらしたのではないかと私は勝手ながら推察している。となるとこの医学界でのジェンダー問題解決には“黒船到来”が必要ということなのか? いや、もうそんな悠長なことを言っていたら、それこそ日本沈没だと思うのだが。参考1)Hakariya H, et al. Health Sci Rep. 2024;7:e70074.2)武田医学賞:歴代受賞者一覧3)上原記念生命科学財団:これまでの上原受賞者4)慶應義塾医学進行基金:慶應医学賞受賞者一覧5)ベルツ賞:過去の受賞者

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海外旅行が資産形成になる意外な理由とは【医師のためのお金の話】第85回

海外旅行は贅沢品の王様ではないでしょうか。海外に行くためには、お金だけではなく、たくさんの時間も必要です。ただでさえ医師は忙しい。そんな私たちが海外旅行するのは、とてもハードルが高いですね。時間のなさだけではなく、周囲からの目も気になるところ。「旅行に行く」印象をカモフラージュするため、旅行がてらに学会参加する医師は珍しくありません。あなたも一度ぐらい、学会ついでに旅行したことがあるのではないでしょうか。また、昨今の超円安のために、海外旅行に行くハードルはさらに高まりました。主要国では、日本より物価の安い国を見つけることすら難しい状況です。しかし、娯楽と思われている海外旅行が、実は資産形成にとても役立つと聞くと驚くのではないでしょうか。「またまた、そんな大げさな」という声が聞こえてきそうですね。しかし、私は本気で海外旅行は資産形成に役立つと考えています。今回は、私が海外旅行を資産形成の一環と捉えている理由をお話ししてみましょう。院長就任後1ヵ月で2週間も海外旅行へ!?私事ですが、2024年8月にジョージアとトルコを2週間旅行しました。今回は、コロナ禍明け6回目の海外旅行です。医師なのに2週間も海外旅行に行くとは、かなりぶっ飛んだ奴だと思う方が多いかもしれません。たしかに、私の行動はフツーではないです。2000年代前半のサラリーマン大家など皆無の時代に、不動産投資に徒手空拳で飛び込みました。株式投資では、リーマンショックやコロナショックで大底まで買い下がります。きっとアタマのネジの緩んだ人に違いない…。もちろん、そのような意見を全否定はしませんが、私は協調性のある常識人を自任しています。その証拠に(?)海外旅行の1ヵ月前に、従業員数約1,200人の医療法人グループの院長に就任しました。院長に推された理由は、院内の調整役として適任だからだそうです。また母校の大学からは、臨床教授を拝命しています。職場や医局と波風立てず、良好な関係を築いている証左だと考えています。このように一見すると常識人である私が、なぜ2週間も海外旅行に行くという普通の人がしない行動をするのでしょうか。その理由は、非日常の体験が資産形成に非常に役立つと考えているからです。海外旅行には資産形成に必要なものが全てある!?社会人になってからの海外旅行では、計画性、体調管理、そしてトラブルに対する機転が重要です。限られた予算と時間の中で、いかにして自分の行きたい所を組み込むかは難しい。あらゆる情報を集めて、自分の頭で考えなければいけません。滞りなく旅行を続けるには体調管理が必須です。また、インターネットが発達した世の中ではありますが実際に海外に行くと予定どおりに事は進まないのです。今回、私はジョージアとトルコを2週間かけて旅行しましたが、案の定トラブルの連続でした。ネットや書籍で得られる情報には限界があるため、どうしても現地での判断が必要となります。限られた時間と情報の中から、如何にして最善の選択をするのかが海外旅行では重要です。いわゆる判断力が問われる局面ですね。たとえばジョージアではコーカサス山脈のロシア国境10kmの小さな村に滞在しました。行きは日帰りツアーに便乗したのですが、途中で脱落して私だけ宿泊しました。しかし、首都のトビリシまで戻る手段の情報をネットではどうしても得られません。現地で色々な人を捕まえて拙い英語でやり取りして、ようやく帰る手段を確保しました。このような経験は、私にとって決して特別なものではありません。いわゆる道なき道を行くような感覚は、起業や資産形成にも通じます。強制的に常識を塗り替える海外旅行に行く最大のメリットは、日本での常識をリセットすることだと思います。海外という住み慣れた日本とはまったく異なる環境に身を置くことで、日常に染まった脳内の風景を強制的に塗り替えるのです。常識を塗り替えることで、新たな気付きや閃きを得られる機会が増します。同じ環境に居続けるとなかなか面白いアイデアは浮かんできません。しかし、周りの環境を強制的に変化させると、新たなアイデアが降ってくる可能性が高まります。このことは、資産形成においてとても重要です。たとえば、2ヵ国目に行ったトルコでは、凄まじい通貨安が進行しています。通貨安の国の実際がどのようなものかを知りたくてトルコに行きましたが、現地の人には思ったほど緊迫感がありませんでした。一方、値札がどんどん差し替えられる日常は、日本人的な感覚では驚きでした。一般的に通貨安の国は、海外から見ると物価が安いと思われています。しかし実際にトルコに行ってみると、日本より少し安いかなぐらいで、極端に物価が安いという印象はありませんでした。ユーロや米国ドル建ての物価は決して安くなく、単にトルコリラの額面上の金額がどんどん上がっているだけです。ある程度はネット情報で知っていましたが、実際に現地で経験すると、身をもって通貨安の国が置かれている状況を理解できました。通貨安は日本でも大問題です。日本の常識に縛られていては、投資や事業で思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。どうやって安全に資産形成を進めていくのか。海外の先行事例を肌感覚として理解することは、資産形成においてとても重要ではないかと思います。

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日本におけるうつ病に対するベンゾジアゼピン長期使用の分析

 うつ病および不眠症を合併している患者では、持続的な不眠症のマネジメントのために抗うつ薬と併用してベンゾジアゼピン薬(BZD)やZ薬などの睡眠薬がよく使用される。しかし、うつ病患者に対する睡眠薬の長期使用に関連する要因は、あまりよくわかっていない。久留米大学の土生川 光成氏らは、不眠症を合併したうつ病患者に対する睡眠薬併用の長期的な状況を分析した。Journal of Psychiatric Research誌2024年10月号の報告。 抗うつ薬と睡眠薬(BZD /Z薬)を開始したうつ病患者351例のデータをレトロスペクティブに分析し、12ヵ月時点での睡眠薬の長期使用率と関連する要因を調査した。長期使用についてロジスティック回帰分析を用いて、不眠症重症度を縦断的に評価した32例の患者において、睡眠薬継続群と中止群の間で不眠症重症度を比較した。 主な結果は以下のとおり。・12ヵ月間睡眠薬を使用した患者の割合は、66.1%であった。・多重ロジスティック回帰分析では、睡眠薬の長期使用と関連していた因子は、併用治療開始時の睡眠薬のジアゼパム換算量5mg超、うつ病診断前の慢性不眠症、入院であった(各々、p<0.01)。・不眠症重症度の不十分な改善と睡眠薬長期使用との関連も示唆された。・これらの結果の信頼性は、睡眠薬への依存、睡眠薬使用に対する患者の態度、鎮静性抗うつ薬や抗精神病薬など他剤で治療されている患者の除外など、さまざまな因子により弱められた。 著者らは「本結果は、不眠症を合併したうつ病患者の治療戦略に役立つ可能性がある。睡眠薬の長期使用を避けるには、併用治療開始時の投与量(5mg以下)を適切に維持する必要があり、難治性不眠症にはBZD/Z薬の代替治療を行う必要がある」と結論付けている。

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男性乳がんの病理学的特徴と生存期間

 男性の乳がんは女性の乳がんと同様の治療戦略で管理されている。今回、中国・空軍軍医大学西京病院のMeiling Huang氏らは、自施設における男性乳がんの臨床病理学的特徴、治療、生存期間について後ろ向きに分析・報告した。American Journal of Men's Health誌2024年9・10月号に掲載。 本研究は2006年8月~2024年3月に西京病院に入院した男性乳がん患者66例を対象とした。データは病院記録と西京病院の乳がんデータベースから収集した。 主な結果は以下のとおり。・男性乳がんの罹患率は2018年から増加傾向にあり、女性乳がん患者よりも高齢であった。・最も多い組織型は浸潤がんで、ホルモン受容体陽性であった。・計62例(93.9%)に修正根治的乳房切除術が施行されていた。・化学療法は39例(59.1%)、内分泌療法は14例(21.2%)、放射線療法は9例(13.6%)に施行されていた。・全生存期間中央値は46.7ヵ月(0.9~184.8ヵ月)で、最新データでは58例(87.9%)が生存している。・生存期間と有意に関連する因子は、年齢(χ2=3.856、p=0.050)、エストロゲン受容体(χ2=10.427、p=0.005)、分子タイプ(χ2=10.641、p=0.031)、p63(χ2=2.631、p<0.001)、内分泌療法(χ2=31.167、p<0.001)であった。 著者らは「これらの結果は男性乳がんに関する貴重な知見を提供し、標準治療の参考となる」としている。

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日本人の“尿ナトカリ比”目標値が決定~ステートメント公表/日本高血圧学会

 日本高血圧学会は10月8日、日本人のための尿ナトカリ比の目標値と適切な評価方法を提唱するため、尿ナトリウム/カリウム(尿ナトカリ比)ワーキンググループによる『コンセンサスステートメント』をHypertension Research誌で公表した。尿ナトカリ比の目標値として、まずは実現可能な“4”を目指し、将来的に至適な“2”へ段階的に設定していくという。ポイントは以下のとおり。―――――――――――――――――――・尿ナトカリ比と血圧値との間に連続した正の関連・尿ナトカリ比は、ナトリウム、カリウム単独よりも、より強く血圧高値と関連・健常日本人における目標値として、「日本人の食事摂取基準」の食塩とカリウムの摂取目標量に相当する2未満を至適目標に、日本人の平均値未満に相当する4未満を実現可能目標に設定・随時尿を用いて尿ナトカリ比を測定する場合、週に4日以上、異なる時間帯に採取した尿の測定値から平均を算出することを強く推奨・尿ナトカリ比は、日本全国の健診・医療機関で安価かつ簡便に測定可能であり、減塩とカリウム摂取増加の指標として、高血圧の予防と管理、脳卒中、心臓病、腎臓病の予防に活用されることを期待――――――――――――――――――― 同日に開催された日本高血圧学会のプレスセミナーで本ステートメントについて解説した三浦 克之氏(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門 教授/日本高血圧学会 理事)は、「摂取目標量に加え、国内の4つの研究結果(INTERMAP研究、ながはまスタディ、東北メディカル・メガバンク機構コホート、NIPPON DATA2010)などを参考に健康な人における平均ナトリウム/カリウム比の目標値を決定した。来年に改訂される高血圧診療ガイドラインにも本ステートメント内容が反映される予定」とコメントした。尿ナトカリ比とは、測定する意義とは 食事から摂取したナトリウム・カリウムの直接的な評価は難しいが、ナトリウムは摂取した量の90%以上が、カリウムは摂取した70~80%が尿中に排泄される。尿ナトカリ比はこれを活かし、尿中に排泄されたナトリウムとカリウムそれぞれの濃度(mmol/L)を比で示したもので、日本人でも高血圧や循環器病リスクとの関連が明らかにされている。たとえば、宮城県登米市において高血圧有病リスクとの関連を調査1)した結果、尿ナトカリ比値が3.0未満の群と比べ、尿ナトカリ比が高いほど高血圧になる危険度が高かった。10日間の尿ナトカリ比平均値と家庭血圧値の関連をみた研究2)でも尿ナトカリ比が高いグループほど家庭血圧(収縮期血圧)の平均値が高かった。また、三浦氏らが行ったNIPPON DATE803)によると、食事のナトカリ比が高くなるにつれて脳卒中死亡リスクも高まることが示唆されている。これらの研究を踏まえ、「血圧はもちろんのこと、将来の循環器病予防のためにも測定しておくことが重要」と同氏は説明した。尿ナトカリ比の測定、患者個人でも可能だが… 測定方法には随時尿を用い、(1)医療機関や健診で採尿し検査機関で測定、(2)医療機関や自治体の特定健診、職域健康管理などで活用されるナトカリ計で測定、(3)郵送により個人が自宅で測定などの方法がある。しかし、「食後や朝晩は高く、日中は低い傾向にあるため、さまざまな状況の尿を採取することが必要。医療機関で週に4日以上、無作為に異なる時間帯に採取した随時尿での測定値から平均値を算出する方法を推奨する」と同氏はコメントした。 最後に同氏は「尿ナトカリ比は、日本全国の健診機関やかかりつけ医を含む医療機関において、安価かつ簡便に測定が可能である。高血圧の予防と管理、脳卒中、心疾患や腎機能障害の予防のためにも減塩とカリウム摂取増加の指標として、尿ナトカリ比がさらに活用されることを期待する。ただし、現時点で健診事業でも医療施設でも測定件数は少ないため、これらが普及するには少し時間がかかるだろうと」と締めくくった。

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非造影CT評価の広範囲脳梗塞、血栓除去術併用は優越性示せず/JAMA

 発症後24時間以内で非造影CTにより広範囲脳梗塞が認められた患者では、内科的治療のみと比較し血栓除去術の併用は90日時の機能的アウトカム改善に関して優越性は示されなかった。米国・Texas Stroke InstituteのAlbert J. Yoo氏らTESLA Investigatorsが、米国47施設で実施された非盲検評価者盲検、ベイジアン・アダプティブ・デザインの第III相無作為化試験「Thrombectomy for Emergent Salvage of Large Anterior Circulation Ischemic Stroke:TESLA試験」の結果を報告した。最近の広範囲脳梗塞の血栓除去術に関する臨床試験は、患者の選択に関して画像診断法や時間枠が不均一であった。非造影CTは最も一般的な脳卒中画像診断法であるが、発症後24時間以内に非造影CTのみで確認された広範囲脳梗塞に対する血栓除去術の有効性は不明であった。JAMA誌オンライン版2024年9月23日号掲載の報告。90日時の機能的アウトカムを内科的治療のみと比較 研究グループは、症状発現から24時間以内で、NIHSSスコアが6以上、内頸動脈または中大脳動脈M1セグメントの閉塞を認め、修正Rankinスケール(mRS)スコアが0~1、非造影CTでASPECTSスコア2~5の大きな梗塞を呈する18~85歳の患者を、血栓除去術+内科的治療群(介入群)または内科的治療単独群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、効用加重修正Rankinスケール(UW-mRS、範囲:0[死亡または重度障害]~10[症状なし]、臨床的に意義のある最小変化量0.3)の平均スコアを用いて測定した90日時の機能的アウトカムの改善で、事前に規定した優越性の事後確率閾値は片側0.975以上とした。 安全性の主要エンドポイントは90日死亡率、副次エンドポイントは症候性頭蓋内出血および画像による頭蓋内出血であった。 2019年7月16日~2022年10月17日に302例が無作為化された(最終追跡調査は2023年1月25日)。UW-mRSスコア平均値は2.93 vs.2.27で有意差なし 無作為化された302例のうち、同意撤回などにより治療前に2例が除外され、解析対象は300例(介入群152例、対照群148例)で、女性が138例(46%)、年齢中央値は67歳であった。297例が90日間の追跡調査を完了した。 90日時のUW-mRSスコア平均値(±SD)は、介入群2.93±3.39、対照群2.27±2.98で、補正後群間差は0.63(95%信用区間[CrI]:-0.09~1.34、優越性の事後確率0.96)であった。 90日死亡率は、介入群35.3%(53/150例)、対照群33.3%(49/147例)であり、両群で同程度であった。24時間以内の症候性頭蓋内出血は、介入群で4.0%(6/151例)、対照群で1.3%(2/149例)に発現した。また、脳実質内出血タイプ1が介入群で9.5%(14/148例)、対照群で2.7%(4/146例)、脳実質内出血タイプ2がそれぞれ9.5%(14例)、3.4%(5例)、くも膜下出血が16.2%(24例)、6.2%(9例)に認められた。

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血友病B、AAVベクターfidanacogene elaparvovecが有効/NEJM

 血友病B患者において、fidanacogene elaparvovecによる治療は定期補充療法より優れており、出血の減少と安定した血液凝固第IX因子(FIX)発現が認められた。米国・ペンシルベニア大学のAdam Cuker氏らが、13ヵ国27施設で実施した非盲検単群第III相臨床試験「BENEGENE-2試験」の結果を報告した。fidanacogene elaparvovecは、高活性のFIX-R338L変異体(FIX-Padua)を発現する遺伝子組み換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターで、第I/IIa相試験においてFIX活性の維持が示されていた。NEJM誌2024年9月26日号掲載の報告。血友病B患者45例にfidanacogene elaparvovecを単回投与 研究グループは、FIX製剤による定期補充療法を6ヵ月以上行うBENEGENE-1導入試験を完了した患者で、FIX活性が2%以下、FIXインヒビター陽性歴がない18~65歳の血友病B患者に、fidanacogene elaparvovecを体重1kg当たり5×1011ベクターゲノムの用量で単回静脈内投与した。 主要エンドポイントは、投与後12週から15ヵ月までの年間出血率(治療した出血エピソードおよび未治療の出血エピソード)で、定期補充療法を受けていた導入期間と比較し、非劣性が達成された場合は優越性を評価することが事前に規定された。安全性についても評価した。 BENEGENE-1導入試験でスクリーニングを受けた316例のうち、抗AAV中和抗体が陽性であった188例(59.5%)を含む不適格患者計204例(64.6%)を除外し102例を登録した。このうち51例がBENEGENE-1導入試験を完了し、BENEGENE-2試験のスクリーニングを受け、適格患者45例がfidanacogene elaparvovecを投与された。年間出血率は定期補充療法に対し71%減少、非劣性および優越性を検証 45例の患者背景は平均年齢33.2歳、73%が白人で、29%が標的関節を有していた。45例中、44例が15ヵ月以上の追跡調査を完了した。 すべての出血エピソードの年間出血率は、導入期間が4.42(95%信頼区間[CI]:1.80~7.05)、投与後12週から15ヵ月までの期間が1.28(95%CI:0.57~1.98)、治療差は-3.15(95%CI:-5.46~-0.83、p=0.008)で、fidanacogene elaparvovec投与により71%減少し、fidanacogene elaparvovecの定期補充療法に対する非劣性および優越性が示された。 15ヵ月時の凝固一段法SynthASilで測定した平均FIX活性は26.9%(中央値:22.9%、範囲:1.9~119.0)であった。 安全性については、38例(84%)に有害事象が認められ、主な事象はアミノトランスフェラーゼ増加であった。アミノトランスフェラーゼ増加またはFIX活性低下に対し、28例(62%)がグルココルチコイドの投与を受けた。 グルココルチコイドの投与開始までの期間は中央値37.5日(範囲:11~123)であり、投与期間中央値は95.0日(範囲:41~276)であった。投与に関連する重篤な有害事象、血栓性イベント、FIXインヒビターの発現、悪性疾患は確認されなかった。

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「声の変化」からCOPD増悪を予測

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪を、患者の声の変化から予測できることを示した新たな研究結果が報告された。患者の声は、増悪が始まる直前には高くなり、増悪が始まるとかすれることが判明したという。この研究を実施したマーストリヒト大学医療センター呼吸器内科学(オランダ)のLoes van Bemmel氏らは、これらのサインを使ってCOPDの増悪に備えられるようにするためのスマートフォン(以下、スマホ)のアプリの開発に取り組んでいる。この研究結果は、欧州呼吸器学会(ERS Congress 2024、9月7~11日、オーストリア・ウィーン)で発表された。 Van Bemmel氏は、「アプリの開発に成功すれば、家庭でCOPDの増悪を早期に検知し、診断につなげられる可能性がある。そうすれば、患者自身が自宅で増悪を管理できるようになるだろう」と言う。 COPDは肺気腫や慢性気管支炎を含む呼吸器疾患の総称で、肺への気流が妨げられるため呼吸しにくくなる。COPDの増悪が始まった場合には、早期段階で治療しない限り、入院や死亡リスクの上昇につながり得るという。 今回の研究でvan Bemmel氏らは、28人のCOPD患者に12週間にわたって毎日、スマホのアプリで自分の音声を録音してもらった。患者は、まず、息が続く限り「あー」と声を出し続けたときの音声を録音し、その後、物語の中の短い文章を読むか、質問に回答したときの音声の録音も行った。また、研究参加者は、COPDの症状に関する質問票に毎日回答した。 最終的に11人が毎日の音声の録音を完了し、総計1,691件の音声データが収集された。このデータを分析して音声の変化とCOPDの増悪との関係を調べた。その結果、増悪が始まる直前には患者の声が高くなることが明らかになった。また、増悪が始まった際には、声帯の振動の乱れの指標である「ジッター(jitter)」が高くなり、声の安定性が低下してかすれ声になることも明らかになった。 Van Bemmel氏は、「録音された患者の音声は、平常時と増悪の初日の間で明らかな違いがあった。これによって、増悪のごく初期でも音声が大きく変化するというわれわれの仮説が裏付けられた」と話す。 この結果は、より多くのCOPD患者を対象とした研究で確認する必要があるが、van Bemmel氏らはすでに患者の呼吸器疾患の管理の向上に役立つアプリに今回得られた知見を取り入れる計画を立てている。同氏は、「病気によって違いはあるが、音声の分析は、他の呼吸器疾患にも有用な可能性はある。われわれは、多くの呼吸器疾患に音声バイオマーカーが存在するのではないかと見ている」と言う。 研究グループの一員である、マーストリヒト大学医療センター呼吸器内科学部長でERS年次学術集会事務局のFrits Franssen氏は、COPDの増悪に早期の段階で気付くことの重要性を指摘し、「症状が増悪すると、長期にわたる健康状態の悪化につながり、命に関わることさえある。症状の増悪に早期の段階で気付いて治療すれば、重篤な合併症を回避できる場合が多い」とERSのニュースリリースで説明している。 さらにFranssen氏は、「今後、この結果が検証されれば、治療の必要性を患者とその担当医に警告する、迅速かつ効率的なシステムが構築される可能性がある。このようなスマホを介した音声分析は、時や場所を問わず誰でも利用でき、最終的には費用や時間の節約と患者の救命につながる可能性がある」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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金融詐欺に遭うのはアルツハイマー病の初期兆候?

 金融詐欺に引っかかりやすくなっている高齢者では、アルツハイマー病発症の高リスクと関連付けられている脳領域に変化が生じている可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。論文の上席著者である、米南カリフォルニア大学心理学および家庭医学教授のDuke Han氏は、「高齢者の金銭的搾取に対する脆弱性を評価することは、軽度認知障害やアルツハイマー病などの認知症の初期段階にある人の特定に役立つ可能性がある」と述べている。この研究の詳細は、「Cerebral Cortex」9月号に掲載された。 米国のアルツハイマー病の患者数は700万人近くに上り、アルツハイマー病は65歳以上の成人における死因としては5番目に多い。米アルツハイマー病協会によると、2024年だけでアルツハイマー病にかかる医療費は3600億ドル(1ドル140円換算で50兆4000億円)に達すると推定されている。 Han氏らは今回、高性能MRIを用いて、認知障害の明らかな兆候は認められない52〜83歳の試験参加者97人の脳を調査し、初期のアルツハイマー病と金銭的搾取に対する脆弱性の関連を検討した。MRIでは、脳の「嗅内皮質」に焦点が当てられた。嗅内皮質は、学習や記憶を司る海馬と、感情や動機付けなどの認知機能を調整する内側前頭前皮質の間の中継点として機能する脳領域であるが、アルツハイマー病において最初に変化が現れる部分でもあり、通常、病気の進行とともに菲薄化していくことが知られている。さらに、「Perceived Financial Exploitation Vulnerability Scale(PFVS)」と呼ばれる標準化されたツールを用いて、参加者の金銭的な認識力や金銭に関わる不適切な判断に対する脆弱性(財務的搾取脆弱性〔financial exploitation vulnerability;FEV〕)を評価した。 Han氏らが、FEVと嗅内皮質の厚さを比較した結果、金融詐欺に遭いやすい人ほど、嗅内皮質の薄いことが明らかになった。この結果は、特に70歳以上の人で顕著だった。 過去の研究では、FEVは軽度認知障害、認知症およびアルツハイマー病と関連する脳内の分子レベルの変化と関連付けられている。Han氏は、「過去の研究結果を踏まえて実施された本研究結果は、FEVが、高齢者の認知機能の変化を見つけ出すための新たな臨床ツールになり得るという考えを支持する重要なエビデンスとなるものだ」との見方を示している。さらに同氏は、「金銭的搾取に対する脆弱性だけが、アルツハイマー病やその他の認知機能低下の決定的な指標となるわけではない。しかし、FEVの評価は、さまざまなリスクプロファイルの一部となり得る」と付け加えている。 その一方でHan氏は、本研究は嗅内皮質の厚さとFEVとの関連を示したが、因果関係を証明するものではない点も強調している。同氏は、より多様な人を対象に、より長期的に追跡する研究を実施して、FEVが認知機能の評価において信用できるツールとなり得るかを検討する必要があるとしている。

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DPP-4iとBG薬で糖尿病性合併症発生率に差はない――4年間の後方視的解析

 血糖管理のための第一選択薬としてDPP-4阻害薬(DPP-4i)を処方した場合とビグアナイド(BG)薬を処方した場合とで、合併症発生率に差はないとする研究結果が報告された。静岡社会健康医学大学院大学(現在の所属は名古屋市立大学大学院医学研究科)の中谷英仁氏、アライドメディカル株式会社の大野浩充氏らが行った研究の結果であり、詳細は「PLOS ONE」に8月9日掲載された。 欧米では糖尿病の第一選択薬としてBG薬(メトホルミン)が広く使われているのに対して、国内ではまずDPP-4iが処方されることが多い。しかし、その両者で合併症の発生率に差があるかは明らかでなく、費用対効果の比較もほとんど行われていない。これを背景として中谷氏らは、静岡県の国民健康保険および後期高齢者医療制度のデータを用いた後方視的解析を行った。 2012年4月~2021年9月に2型糖尿病と診断され、BG薬またはDPP-4iによる治療が開始された患者を抽出した上で、心血管イベント・がん・透析の既往、糖尿病関連の入院歴、インスリン治療歴、遺伝性疾患などに該当する患者を除外。性別、年齢、BMI、HbA1c、併存疾患、腎機能、肝機能、降圧薬・脂質低下薬の処方、喫煙・飲酒・運動習慣など、多くの背景因子をマッチさせた1対5のデータセットを作成した。 主要評価項目は脳・心血管イベントと死亡で構成される複合エンドポイントとして、イベント発生まで追跡した。副次的に、糖尿病に特異的な合併症の発症、および1日当たりの糖尿病治療薬剤コストを比較した。追跡開始半年以内に評価対象イベントが発生した場合はイベントとして取り扱わなかった。 マッチング後のBG薬群(514人)とDPP-4i群(2,570人)の特徴を比較すると、平均年齢(68.39対68.67歳)、男性の割合(46.5対46.9%)、BMI(24.72対24.67)、HbA1c(7.24対7.22%)、収縮期血圧(133.01対133.68mmHg)、LDL-C(127.08対128.26mg/dL)、eGFR(72.40対72.32mL/分/1.73m2)などはよく一致しており、その他の臨床検査値や併存疾患有病率も有意差がなかった。また、BG薬、DPP-4i以外に追加された血糖降下薬の処方率、通院頻度も同等だった。 中央値4.0年、最大8.5年の追跡で、主要複合エンドポイントはBG薬群の9.5%、DPP-4i群の10.4%に発生し、発生率に有意差はなかった(ハザード比1.06〔95%信頼区間0.79~1.44〕、P=0.544)。また、心血管イベント、脳血管イベント、死亡の発生率を個別に比較しても、いずれも有意差はなかった。副次評価項目である糖尿病に特異的な合併症の発生率も有意差はなく(P=0.290)、糖尿病性の網膜症、腎症、神経障害を個別に比較しても、いずれも有意差はなかった。さらに、年齢、性別、BMI、HbA1c、高血圧・脂質異常症・肝疾患の有無で層別化した解析でも、イベント発生率が有意に異なるサブグループは特定されなかった。 1日当たり糖尿病治療薬剤コストに関しては、BG薬は60.5±70.9円、DPP-4iは123.6±64.3円であり、平均差63.1円(95%信頼区間56.9~69.3)で前者の方が安価だった(P<0.001)。 著者らは、本研究が静岡県内のデータを用いているために、地域特性の異なる他県に外挿できない可能性があることなどを限界点として挙げた上で、「2型糖尿病患者に対して新たに薬物療法を開始する場合、BG薬による脳・心血管イベントや死亡および糖尿病に特異的な合併症の長期的な抑制効果はDPP-4iと同程度であり、糖尿病治療薬剤コストは有意に低いと考えられる」と総括している。

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自分の機嫌を取る方法【Dr. 中島の 新・徒然草】(550)

五百五十の段 自分の機嫌を取る方法10月になると急に肌寒くなってきました。皆さまいかがお過ごしでしょうか?さて、読者の皆さまも、時には腹が立って仕方がないとか、イライラが止まらない、ということがあるのではないでしょうか。今回は脳外科外来の通院患者さんから聞いた、イライラ対処法を紹介したいと思います。この方は、交通事故による頭部外傷で、高次脳機能障害になってしまいました。とはいえ、物忘れがひどいとか計算が遅くなったとか、そういうことは目立ちません。それよりも、喜怒哀楽が激しくなってしまったのです。とくに「怒」の部分が問題。職場でも家でも怒ってばかり。それで何かと差し支えが目立つようになってきました。このままではイカン!ということで、この患者さんはいろいろと怒らない工夫をしました。その1つが音楽です。患者「イヤホンで音楽を聴きながら、秋の大阪城公園を1周すると、いつの間にかイライラが消えているんです」この患者さんは「自分で自分の機嫌を取る方法」と名付けていました。言われてみれば、この方法は有効かもしれません。というのも、私も職場でいろいろあった時には、無意識のうちに帰りの車の中で音楽を聴いているからです。多くの場合、家に到着する頃にはすっかり気分も良くなっていることが多い気がします。この患者さんも、試行錯誤の結果、同じような結論に行きついたのでしょう。ほかにいろいろ調べてみると「自分の機嫌を取る方法」には以下のものがありました。感情的になりそうな時は5秒数える自分を俯瞰する、客観的に見るなるべく非利き手を使う腹の立ったことを片っ端から紙に書く怒りの原因をとことん分析する人と話す、愚痴をこぼす怒りをギャグに変えるこの中で「怒りをギャグに変える」というのは大変効果的ですが、大阪の人間にとっても非常に高度な技と言えましょう。1例を挙げましょう。女房「先に帰ったら米を炊いといてって言ったじゃない!」(怒)中島「コメなさい」瞬間的に場を和ませることができるので、きわめて効果的です。機会があったら皆さまどうぞお使いください。ところで、怒りへの対処法で最も驚かされたのは「ブラジリアン柔術の稽古をする」というものです。ブラジリアン柔術は1993年にUFC(Ultimate Fighting Championship)という格闘技大会で優勝したブラジル出身のホイス・グレイシーによって一躍有名になりました。イメージとしては寝技だけの柔道みたいな感じですね。で、先日、YouTubeを見ていたら、東京にあるブラジリアン柔術の道場の1つが紹介されていました。何がいいのかと尋ねられて、ある中年道場生は「夫婦喧嘩が増えた時に、柔術にはまったんですよ。目の前の相手のことしか考えないんで、終わったら疲れてしまって、ほかのことをまったく考えなくなるんです」と。別の中年道場生も「スパーリングやっている時は、完全にほかのことを忘れて目の前に集中できるんで、めちゃめちゃいいリフレッシュなんですよね」と言っていました。何事によらず身体を動かして極端に疲れると、腹が立つとか何とかという邪念が、頭の中から全部吹っ飛んでしまうのかもしれません。今度、あの患者さんが来たら「ブラジリアン柔術もいいらしいですよ」と勧めてみましょうかね?最後に1句腹立てど 自分の機嫌 とる秋ぞ

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GNEミオパチー〔GNE myopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義GNEミオパチーは、常染色体潜性遺伝形式をとる進行性の筋疾患である。主に遠位筋から障害されるため、遠位型ミオパチーに分類される。筋病理所見では、縁取り空胞(図1)が特徴的に認められる。図1 GNEミオパチー患者でみられる縁取り空胞を伴う筋線維(mGT染色)画像を拡大する1981年にわが国で「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(distal myopathy with rimmed vacuoles:DMRV)」として最初に報告された。同じ頃、欧米では「遺伝性封入体ミオパチー(hereditary inclusion body myopathy:hIBM)」として報告された。2001年にはGNE遺伝子の変異が原因であることを特定され、「GNEミオパチー」という名称に統一された。■ 疫学わが国には約400人の患者がいると推定されるまれな疾患である。本症は世界的にも珍しいが、日本人、中東のペルシャ系ユダヤ人、インド人、中国人、北アイルランド人、ブルガリアのロマ人など、特定の民族や地域で高頻度の遺伝子変異(創始者バリアント)がみつかっており、これらの集団で患者が多くみられる。■ 病因GNE遺伝子の変異(アロステリック部位以外)が原因であり、9割以上がミスセンス変異である。GNE遺伝子は、シアル酸生合成経路の律速酵素であるウリジン二リン酸-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼ(GNE/MNK)をコードしている。GNE遺伝子変異によりこれらの酵素活性が低下し、シアル酸の産生が減少する。これにより、組織中の糖タンパク質や糖脂質の低シアル化を引き起こされ、筋力が低下すると考えられる(図2)。図2 GNE遺伝子変異によるシアル酸生合成の低下画像を拡大する■ 症状平均発症年齢は28歳で、多くの患者は20~30歳代で発症する。ただし、一部若年発症例や高齢発症例も存在し、国内の患者登録データによれば、発症年齢は12~62歳にわたる。初期症状としては、歩き方の変化やつまずき易さ、スリッパが履けないなどの症状が多くみられる。中殿筋や内転筋の筋力低下による腰椎前彎や股関節外転、前脛骨筋の筋力低下による下垂足が特徴的な歩容として現れる。病気の進行に伴い、下腿全体、手指、頸部前屈の筋力が低下し、その後上肢全体や体幹の筋力も低下する。大腿四頭筋の筋力は長期間よく保たれ、歩行不能となってからも膝を伸なす力が保たれることが特徴的である。疾患の進行速度は患者によってさまざまであるが、全体としては、発症年齢が若いほど進行が速い傾向がある。たとえば、10歳代で発症した患者の歩行喪失までの平均期間は9年、20歳代では15年、30歳代では27年と報告されている。わが国の患者の9割は、p.D207Vとp.V603Lという2つの創始者変異のいずれかまたは両方を有している。p.D207V保有例は比較的軽症であり、p.V603L保有例はやや重症の臨床経過をたどる傾向がある。たとえば、p.V603Lのホモ接合体では平均10年で歩行能力を失うのに対し、p.D207V/p.V603L複合ヘテロ接合体では発症から20年経過しても90%以上が歩行可能であると推定されている。p.D207Vホモ接合例はこれまで数例しかみつかっておらず、大半が無症状のまま生涯を終えるのではないかと推定されている。また、歩行喪失してから呼吸機能が低下する例がみられるため、呼吸機能の定期的な評価が重要である。とくにp.V603Lホモ接合体の患者では呼吸機能障害のリスクが高く、一方でp.D207V/p.V603L複合ヘテロ接合体ではほとんどみられない。近年の研究では、GNEミオパチー患者において血小板減少症や睡眠時無呼吸症候群の合併が一般集団より高頻度で報告されている。血小板減少症の機序として、血小板膜はシアル酸に富んでいるが、患者の血小板は脱シアリル化した糖鎖を発現しており、肝臓で除去されるためと考えられている。睡眠時無呼吸症候群については、その病態メカニズムはまだ解明されていない。妊娠・出産に関しては、GNEミオパチー患者でもおおむね良好な経過をたどることが報告されている。しかし、切迫流産のリスクがやや高く、約2割の患者が出産後に筋力低下の進行を自覚している。また、出産後1年以内に発症した例も報告されており、出産が病気の進行に影響を与える可能性も示唆されている。ただし、育児による身体的負担の増加が症状の自覚を促した可能性もあり、さらなる研究が必要である。■ 予後呼吸機能障害も比較的軽症で、重症例でも夜間の非侵襲的人工呼吸のみで維持できる例がほとんどであり、その他、明らかな心機能障害や嚥下障害の合併はみられず、生命予後は良好と考えられる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)GNE遺伝子にホモ接合型または複合ヘテロ接合型変異があり、臨床的特徴が一致する場合、もしくは筋生検所見で縁取り空胞を伴う筋線維を認めた場合、診断が確定する。遺伝子診断がついていない例に関しては、通常の遺伝学的診断では検出できない変異を有する可能性があることから、臨床的特徴および筋生検所見の両方が本症と一致した場合はGNEミオパチー疑い例とする。■ 各種検査所見(1)血液検査クレアチンキナーゼ(CK)上昇が症状の自覚がない時点から観察され、2,500IU/L以下の軽度高値を示すことが多い。筋肉の萎縮に伴い低下し、歩行喪失後はむしろ低値となる。(2)針筋電図筋原性変化を示す。ただし、随意収縮では一見神経原性を思わせる高振幅の運動単位がみられることがある。(3)骨格筋画像中殿筋・大腿屈筋群の脂肪置換が著明な一方、大腿四頭筋が保たれる。体幹では肩甲下筋が早期から脂肪置換される。(4)筋生検縁取り空胞を伴う大小不同の萎縮筋線維が特徴的である(図1)。筋線維内のβアミロイド沈着、ユビキチン陽性封入体、p62陽性凝集体、リン酸化タウなどの所見も認めるが、通常強い炎症反応は伴わない。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ シアル酸補充療法(シアル酸徐放錠承認、ManNAc/シアリル乳糖海外治験実施中)モデルマウスへの実験で、シアル酸の経口投与が発症前から行われると発症が予防され、発症後からの投与でも筋症状が改善することが明らかになった。この結果を受け、シアル酸補充療法の臨床試験が各国で実施された。まず、シアル酸は速やかに尿中に排泄されるため、その効果を持続させるために徐放錠が開発された。シアル酸徐放錠の第III相国際共同治験では有意な差が得られず、海外では開発が中止されたが、同様の臨床試験デザインで実施された国内第II/III相試験では上肢筋力の維持が確認された。その結果、2024年3月、アセノイラミン酸(商品名:アセノベル徐放錠500mg)がわが国で承認され、GNEミオパチーに対する世界初の承認薬となった。また、海外ではシアル酸代謝産物のManNAcやシアリル乳糖の臨床試験が行われており、筋力低下や筋の脂肪置換に対する一定の効果が認められ、今後の臨床応用が期待されている。■ 抗酸化剤(モデルマウスで効果実証)モデルマウスへの実験で、低シアリル化により活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)の産生が増加すること、シアリル化が改善することでROSやプロテインS-ニトロシル化が減少すること、さらには抗酸化剤であるN-アセチルシステインをモデルマウスに経口投与することで筋萎縮が改善することが報告され、酸化ストレスの軽減が治療ターゲットとなりうることが明らかになった。■ 遺伝子治療(研究中)本症は、1種類の遺伝子の変異により発症する単一遺伝子疾患であり、遺伝子治療による治癒が期待されている。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター8型を用いたモデルマウスへの治療では、シアル酸の増加が確認されており、その有効性が期待されている。しかし、本症の患者の約半数がAAV中和抗体を持っているとの報告があり、その場合、AAVベクターの治療効果が得られない可能性が懸念されている。さらに、本症の標的臓器が全身の骨格筋という広範囲にわたるため、遺伝子治療においては染色体への遺伝子挿入のリスクや増殖性ウイルスの出現の可能性を最大限に減らす工夫が必要である。このため、低用量で骨格筋特異的なベクターの開発が試みられている。4 今後の展望GNEミオパチーの治療において、重要な進展があった。先述のシアル酸徐放錠であるアセノイラミン酸が世界初の治療薬として承認され、これにより早期診断・治療介入の重要性が高まっている。しかし、この治療薬の効果は十分とは言えず、より効果的な治療法の開発が進められている。具体的には、より効果的なシアル酸補充療法の研究に加え、抗酸化薬や遺伝子治療などのシアル酸補充療法以外のアプローチも試みられている。これらの新しい治療法の開発により、GNEミオパチー患者のためのさらなる治療法選択肢が増えることが期待されている。また、GNEミオパチーの患者レポジトリを用いた実態調査研究により、本症の理解が深まってきた。今後は、長期的な経過の解明や合併症の病態メカニズムの解明が期待されている。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 遠位型ミオパチー(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本神経学会 GNEミオパチー 診療の手引き(医療従事者向けのまとまった情報)国内レジストリ 神経筋疾患患者登録Remudy(GNEミオパチー)(医療従事者向けのまとまった情報。国内患者登録サイトおよび最新情報のニュースレター)患者会情報遠位型ミオパチー患者会(患者とその家族及び支援者の会)遠位型ミオパチーガイドブック(2018年8月刊行)(患者会が作成したガイドブック)1)難治性疾患等政策研究事業 希少難治性筋疾患に関する調査研究班編集. GNEミオパチー診療の手引き.2)Yoshioka W, et al. J Neurol. 2024;271:4453-4461.3)Yoshioka W, et al. Curr Opin Neurol. 2022;35:629-636.4)Suzuki N, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2024:jnnp-2024-333853.5)Yoshioka W, et al. Sci Rep. 2022;12:21806.公開履歴初回2024年10月10日

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10月10日 世界精神保健デー【今日は何の日?】

【10月10日 世界精神保健デー】〔由来〕世界精神保健連盟が、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として1992年に制定。世界保健機関(WHO)も協賛し、国際記念日とされて、「シルバーリボン運動」として全世界でイベントが開催されている。関連コンテンツ不安や恐怖心が強いときの症状チェック【患者説明用スライド】炭水化物カロリー比が高いとうつ病リスク上昇うつ病や双極症、季節性と日光曝露は初回使用の診断や薬剤使用量に影響するのか成人のうつ病や不安症と関連する幼少期の要因とは境界性パーソナリティ障害、思春期?成人期の経過

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確定診断に至らないのは過失?【医療訴訟の争点】第5回

症例受診した患者の病態を確定診断するには、種々の検査を重ねて鑑別疾患を絞っていく必要がある。そして、前の検査結果を踏まえて次の検査を行うこともあり、同日にすべての検査を実施することができるわけではないため、確定診断までに時間を要することも多い。本件では、がんの疑いで診療中の患者につき、確定診断に至るまでに時間を要し、後にがんの診断に至るも、転院先でがんを原因として死亡した事案において、がんを見落とした(確定診断に至らなかった)過失があるか等が争われた東京地裁令和4年5月26日判決を紹介する。<登場人物>患者63歳・男性既往歴はとくになし。他院の尿細胞診検査でClass IIIaと診断され、血尿精査のCT検査のため受診。原告患者の妻子被告総合病院(二次救急病院、地域医療支援病院)事案の概要は以下の通りである。平成24年7月17日通院していたクリニックの尿細胞診検査でClass IIIa。8月16日上記クリニックの尿細胞診検査で再度Class IIIa。8月21日上記クリニックより、血尿精査目的で腹部CT撮影の依頼がなされ、被告病院の放射線科で腹部造影CT検査を実施(=本件CT)。被告病院の放射線科医は、明らかな異常は認められないと診断。なお、同医師は、画像所見について泌尿器科医に相談していなかった。9月13日上記クリニックの医師は、本件CT画像上、右の下腎杯の映りが悪く見え、尿細胞診検査の結果はClass IIIaが続いていたため、被告病院の医師に診察を依頼。9月19日被告病院の泌尿器科において腹部超音波検査を実施。被告病院の泌尿器科医は、腹部超音波検査で右腎に腫瘤の疑いが認められたため、腎盂がんの疑いがあることを説明。10月3日被告病院の泌尿器科において造影MRI検査を実施。被告病院の泌尿器科医は、右腎下極に23×23×40mmの腫瘤性病変が認められるため、腎盂がんが疑われると診断。10月15日被告病院の泌尿器科医は、MRI検査にて腎盂がんの疑いが強まったため、入院して腎盂内視鏡による検査(腎盂鏡検査)を受けるよう説明。11月14日被告病院の泌尿器科医は、本件患者と妻に対して、腎盂がんが疑われ、放置すれば進行すること、腎盂鏡検査の方法や合併症として出血、発熱、尿管穿孔等があること、腎盂鏡検査の代替手段として針生検があること等を、腎盂や尿管などを手書きで図示しながら説明。11月15日被告病院において、腎盂鏡検査を実施。腎盂鏡検査では右腎下極の不整が認められ、逆行性腎盂造影検査では本来描出されるべき右腎の下極が描出されなかった。被告病院の泌尿器科医は、画像上は腎盂がんが強く疑われること、検査の際に採取したカテーテル尿の細胞診結果が陽性であった場合には腎尿管全摘術を実施し、細胞診結果が陰性であった場合でも針生検を実施することを説明。11月26日被告病院の泌尿器科医は、11月15日の検査の際に採取したカテーテル尿の細胞診結果はいずれも陰性であったが、腎盂がんに罹患している場合でも細胞診で異常が認められないこと(偽陰性)があること、11月15日検査の結果、画像上は腎盂がんが強く疑われることを伝えた上、開腹手術での針生検およびそれに続く腎尿管全摘術(術中迅速病理診断で悪性と診断される場合)を受けるよう説明。患者は、重要な用事があり年末まで休むことができないと述べ、経過観察を希望。平成25年1月4日被告病院において造影MRI検査を実施。被告病院の泌尿器科医は、MRI画像上、右腎下極の腫瘤に明らかな増大は認められなかったものの、軽度の増大が認められたこと、11月15日検査の画像上も腎盂がんが強く疑われたことから、開腹手術での針生検およびそれに続く腎尿管全摘術を受けるように再度提案したが、患者は経過観察を希望。2月25日被告病院において腹部超音波検査を実施。被告病院泌尿器科医は、腎盂がんが疑われたことから、開腹手術での針生検及びそれに続く腎尿管全摘術を受けるように再度提案したところ、患者は同意した。そこで、リンパ節や多臓器への転移の有無等を確認するため、同年3月6日に造影CT検査を実施した上で、4月15日に腎尿管全摘術が予定された。3月6日被告病院において造影CT検査を受け、右腎盂がんおよびリンパ節転移と診断。3月15日他院(大学病院)受診を希望し、他院にて抗がん剤治療等が開始。平成28年2月6日右腎盂がんにより死亡。実際の裁判結果本件では、(1)平成24年11月26日頃に造影MRI検査を行わなかった注意義務違反があるか、(2)平成25年1月4日の造影MRI検査の後、直ちに針生検を行って右腎盂がんを確定診断すべき注意義務違反があるか等が争われた。裁判所は、(1)につき、被告病院の泌尿器科医が10月3日MRI画像から右腎盂がんを疑っていたこと、11月15日検査の画像でも右腎盂がんを強く疑っていたものの、同日の尿細胞診の結果が陰性であったため確定診断に至らず、針生検によらなくては確定診断ができなかったことを指摘し、11月26日頃に「再度の造影MRI検査を行うことにより右腎盂がんの確定診断ができたといえるかは疑問」として、注意義務違反を否定した。また、裁判所は、(2)につき、被告病院の泌尿器科医が、11月15日の検査後に画像上は右腎盂がんが疑われたため、開腹手術での針生検を実施すべき旨を説明していたこと、11月26日の検査後にも開腹手術での針生検およびそれに続く腎尿管全摘術を受けるよう提案していたこと、1月4日にも検査後に開腹手術での針生検及びそれに続く腎尿管全摘術を受けるよう提案していたこと、患者が経過観察を希望してこれらを受け入れなかったことを指摘し、「開腹手術での針生検およびそれに続く腎尿管全摘術を受けるよう提案したにもかかわらず、患者の承諾が得られなかったためにこれを実施することができなかったのであるから、泌尿器科医が、11月15日以降、遅くとも平成25年1月4日までに針生検を実施すべき注意義務を怠ったとはいえない」とした。なお、患者家族は、本件患者が針生検を受け入れなかったとしても、一刻を争う状態であった患者に対し、針生検を受けるよう説得すべきであったと主張したが、裁判所は「泌尿器科医師は、本件患者に対し、針生検を受けることの必要性を十分に説明しているというべきである」とした。なお、以上のほか、本件では、(3)平成24年8月21日に撮影された本件CT画像について、被告病院の放射線科医が泌尿器科医に相談していればその時点で右腎盂がんの所見に気付くことができたとの主張もされた。しかし、裁判所は、泌尿器科医が本件CT画像や腹部超音波検査の結果から腎盂がんを疑い、造影MRIを行っているも、確定診断に至らず、確定診断のためにさらに針生検を要したことを指摘し、「被告病院の放射線科の医師が、本件CT画像について泌尿器科医師に相談することなく、明らかな異常所見は認められないと判断したことによって、右腎盂がんの確定診断が遅れたとはいえない」と判断した。注意ポイント解説本件では、各種検査により患者ががんであることが疑われたものの、それを確定する検査結果が得られなかった。そして、医師は、検査の結果を踏まえて疑われる疾患や、原因疾患の確定および治療のために行うべき検査・処置につき説明をしていたが、患者側の事情でそれを進めることができず、確定診断に至らなかったことから、上記の判断となった。これはいわば治療法の選択(治療の前提となる原因疾患を確定するための検査のタイミング)に関する患者の自己決定権を尊重した結果であり、裁判所の判断自体は妥当と言える。しかし、裁判所がこのように判断したのは、医師らが、然るべき検査を行っていたうえで、患者に対し、がんが疑われることや確定診断のための検査の必要性についてしっかりと説明していたこと、および、その説明の記録が残っていたことが大きい。がんという重大疾患が疑われることの説明がなされていなかったり、確定診断のための検査の必要性についての説明がなされていなかったり、それらの説明をした記録が残っておらず説明したことの立証ができなかったりする場合には、患者が治療法選択に関する自己決定権の行使に必要な情報の提供が与えられていない(説明義務違反がある)ということとなり、本判決と異なる判断となる可能性があることに留意する必要がある。医療者の視点がんをはじめとする生死に関わる疾患では、その診断と治療のタイミングが非常に重要です。昨今では画像診断技術が飛躍的に発達したため、画像検査のみでもがんを疑うことが多いかと思います。しかしながら、確定診断はあくまでも病理学検査の結果でなされます。がん診断のための病理学検査において、感度が100%とならない生検検査も多いため、注意が必要です。がんを疑いながらも確定診断がされない場合に、その旨をどのように患者さんやその家族に説明するかが重要です。どのような追加検査がいつ必要なのか、どの程度の時間的余裕があるのか、あるいは未確診であっても治療に臨むべきかなど、事細かに説明する必要があります。このような説明は主に外来でなされるでしょうから、短い診察時間の中で詳細な説明を行い、さらにその内容をカルテにもしっかりと記載するのは大変な作業です。しかしながら、本件のような事案は多数報告されていますので、とくに生死に関わる疾患を診療する場合には細心の注意を払うべきといえます。また、本件のように患者理由で検査や治療が遅れるような場合も、その旨をしっかりとカルテに記載しておくことが肝要です。追加検査や治療がなされなかった場合には、単に「経過観察となった」ではなく、どうして経過観察となったのか(医師の判断なのか、患者の希望なのか)を明記しておくと良いでしょう。Take home message検査結果を踏まえて確定診断に至らなくとも、それまでの検査により疑われる疾患名、確定診断のために必要な追加検査(診断が確定しなくとも行うことができる治療があるのであればその治療法、診断が確定しないまま治療を行うことによるリスク)等、患者が治療法の選択(治療の前提となる原因疾患を確定するための検査のタイミングを含む)につき判断するのに足りる説明を行い、その記録を残しておくことが重要である。キーワード自己決定権憲法第13条の保障する「幸福追求権」に基づくものであり、自らの生き方に関する事柄は自らが決定するという権利である。この自己決定権の保障を、医療分野において現実化するためには、どのような医療が、いつ行われるかにつき、患者は十分理解した上で自らにとって最善の選択をなしうる権限と機会が与えられる必要がある。そして、この自己決定権の保障が、医療行為による身体への侵襲の同意とともに、医師の説明義務の根拠となっている。

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第117回 結核再増加、「3年間限定の低蔓延国」となるか?

結核の集団感染最近、「結核の集団感染」のニュースが多くなっています。保健所が察知したクラスターが増加したことが多かったためですが、日本で高齢者や施設入所者の割合が増えていることも影響しているかもしれません。このまま忘れられていくのかと思っていましたが、結核についてざわざわしてきました。国立感染症研究所の集計によると、9月22日までの患者数は1万1,015人とされています1)。驚くべきことに、この数字は昨年の累計新規報告数をすでに超えており、このまま推移すると、数年ぶりの罹患率に逆戻りする可能性も出てきました(図)。図. 結核新規登録者数と罹患率(筆者作成)コロナ禍に結核が減少した理由は、軽症で受診する人が減ったことによる「過少診断」が一因かもしれません。実際に『結核の統計2024』2)では、診断が遅れた(受診から結核診断までの期間が1ヵ月以上)人の割合は、22.5%と高い数値です。コロナ禍で受診控えが続いたので、2020年以降結核登録者が減った印象はあります。そのため、いつかはリバウンドに転じるのではないかと懸念していました。マイコプラズマやRSウイルスのように、アフターコロナですぐにリバウンドしてくる感染症もあれば、結核のように少し遅れてリバウンドする感染症もあるということでしょう。外国出生者の結核への対策が急務2024年に報告された2023年のデータでは、20~30代の若い結核患者さんのほとんどが外国出生者です。外国出生者の割合は、20~29歳で84.8%と大部分を占めています。外国出生者の結核登録者数は1,619人と前年から405人増加しています。入国して5年以内の外国出生者にしぼると、前年比+73.1%と急増しています。かつての「咳が長引く大学生が受診」といったケースは減少し、代わりに「日本語学校の学生クラスター」や「技能実習生が職場健診で異常を指摘」といったパターンが増加しています。日本における外国出生者の結核のうち、多くを占めるフィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマーの6ヵ国を対象として、現在入国前結核スクリーニングを開始する見込みです。いずれにせよ、2024年の結核罹患率は今年より上昇することは確実で、「低蔓延国」の地位を失い、再び「中蔓延国」に逆戻りする可能性も出てきました。参考文献・参考サイト1)国立感染症研究所. IDWR速報データ 2024年第38週(2024年10月1日)2)公益財団法人 結核予防会編. 結核の統計2024.

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誤嚥性肺炎に関連する抗コリン薬~日本医薬品副作用データ

 日本の超高齢化社会は、とくに高齢者の誤嚥性肺炎のマネジメントに関して、大きな課題を呈している。大阪・藤立病院の上田 章人氏らは、主に日本医薬品副作用(JADER)データベースを用いて、抗コリン薬使用と誤嚥性肺炎の発生率との関連を調査した。Respiratory Investigation誌2024年11月号の報告。 2004年第1四半期〜2023年第3四半期のJADERデータベースより抽出した、60歳以上の誤嚥性肺炎2,367例のデータを分析に用いた。シグナル検出による報告オッズ比を用いて、誤嚥性肺炎と抗コリンリスクスケールに記載されている49の薬剤との関連を評価した。これらの関連性を検証するため、MEDLINEとコクランライブラリーの調査結果を組み込んだスコープレビューが実施された。 主な結果は以下のとおり。・一次解析では、クロザピン、ハロペリドール、リスペリドン、クエチアピン、オランザピンなど特定の薬剤に関連する誤嚥性肺炎リスクの増加が認められた。・20の薬剤が、誤嚥性肺炎リスク増加と有意に関連していた。・とくに高齢者などの高リスク集団や統合失調症、パーキンソン病などの患者において、これらの薬剤のドーパミンブロック作用を考慮することの重要性が示唆された。 著者らは「誤嚥性肺炎リスクを軽減するためには、クロザピン、ハロペリドール、リスペリドン、クエチアピン、オランザピンなどの強力なドーパミンブロック作用を有する抗コリン薬を注意深くモニタリングする必要がある。これらの関連をさらに調査するためにも、今後の観察研究や介入研究が求められる」と結論付けている。

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NSAIDs、心筋梗塞や胎児動脈管収縮に関して使用上の注意改訂/厚労省

 2024年10月8日、厚生労働省はNSAIDsの添付文書の改訂指示を発出した。全身作用が期待されるNSAIDs(医療用)の添付文書には重大な副作用の項に「心筋梗塞、脳血管障害」を、シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有するNSAIDs※の添付文書には特定の背景を有する患者に関する注意として、妊婦に対し「シクロオキシゲナーゼ阻害剤の使用により胎児動脈管収縮を疑う所見を適宜確認する」旨の追記がなされる。※すべての妊婦が禁忌とされている薬剤を除く重大な副作用の項に「心筋梗塞、脳血管障害」 匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)を用いたNSAIDsの心筋梗塞および脳血管障害リスクに関する調査(以下、本調査)結果から、全身作用が期待されるNSAIDs(アスピリンを除く)の心筋梗塞および脳血管障害リスクが示唆されたと判断。なお、アスピリンについては本調査において心血管系事象の発現リスクが高い患者に対して予防的に処方されていた可能性が否定できなかったことなどから、本調査結果からアスピリンの心筋梗塞および脳血管障害リスクについて結論付けることは困難と判断された。 対象医薬品は以下のとおり。◯ アセメタシン、インドメタシン(坐剤)、インドメタシン ファルネシル、オキサプロジン、チアラミド塩酸塩、プログルメタシンマレイン酸塩、メロキシカム◯ アンピロキシカム、イブプロフェン、エトドラク、ナプロキセン、ピロキシカム(経口剤)、フルルビプロフェン(経口剤)、フルルビプロフェン アキセチル、ロキソプロフェンナトリウム水和物(経口剤)、ロルノキシカム◯ ケトプロフェン(注射剤、坐剤)◯ ザルトプロフェン◯ ナブメトン、ブコローム、メフェナム酸◯ フルフェナム酸アルミニウム◯ エスフルルビプロフェン・ハッカ油「胎児動脈管収縮を疑う所見」の確認を 妊娠中期のシクロオキシゲナーゼ阻害作用を有するNSAIDsの曝露に関する観察研究、系統的レビューなどの公表論文、妊娠中期の当該薬剤の曝露による胎児動脈管収縮関連症例を評価し、使用上の注意の改訂要否および措置範囲の検討がなされた。NSAIDsによる妊娠後期の胎児動脈管収縮は知られており、今般、妊娠中期のNSAIDs(低用量アスピリン製剤を除く)の曝露による胎児動脈管収縮について、公表論文が複数報告されていること、因果関係が否定できない症例が認められたことから、低用量アスピリン製剤を除くNSAIDsについて、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。 なお、局所製剤については、全身作用を期待する製剤と比較し相対的に曝露量が低いことから、胎児動脈管収縮を疑う所見を適宜確認する旨の注意喚起は不要と判断された。 また、低用量アスピリン製剤については、妊娠中期の当該製剤の曝露は胎児動脈管の収縮および心拡張能に影響がないことを示唆する公表論文が複数報告されていること、当該製剤と胎児動脈管収縮の因果関係が否定できない症例が認められていないことから、現時点で安全対策措置は不要と判断された。 対象医薬品は以下のとおり。◯ アスピリン(解熱鎮痛消炎の効能を有する製剤)◯ アンピロキシカム、イブプロフェン、エトドラク、ナプロキセン、ピロキシカム(経口剤)、フルルビプロフェン(経口剤)、フルルビプロフェン アキセチル、ロキソプロフェンナトリウム水和物(経口剤)、ロルノキシカム◯ イソプロピルアンチピリン・アセトアミノフェン・アリルイソプロピルアセチル尿素・無水カフェイン[SG配合顆粒]、サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・クロルフェニラミンマレイン酸塩[ペレックス配合顆粒]、サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・プロメタジンメチレンジサリチル酸塩[PL配合顆粒ほか]◯ エテンザミド、スルピリン水和物◯ ケトプロフェン(注射剤、坐剤)◯ ザルトプロフェン◯ ジブカイン塩酸塩・サリチル酸ナトリウム・臭化カルシウム[ネオビタカイン注ほか]◯ セレコキシブ◯ ナブメトン、ブコローム、メフェナム酸◯ フルフェナム酸アルミニウム◯ イブプロフェンピコノール、インドメタシン(貼付剤)、ジクロフェナクナトリウム(外皮用剤)、ピロキシカム(外皮用剤)、フルルビプロフェン(外皮用剤)、ロキソプロフェンナトリウム水和物(外皮用剤)◯ インドメタシン(塗布剤)◯ エスフルルビプロフェン・ハッカ油◯ ケトプロフェン(外皮用剤)◯ サリチル酸グリコール・l-メントール、サリチル酸メチル、サリチル酸メチル・dl-カンフル・トウガラシエキス[MS温シップほか]、サリチル酸メチル・dl-カンフル・l-メントール[MS冷シップ「タイホウ」ほか]、サリチル酸メチル・l-メントール・dl-カンフル・グリチルレチン酸[スチックゼノールA]、フェルビナク、ヘパリン類似物質・副腎エキス・サリチル酸[ゼスタッククリーム]、サリチル酸◯ ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム

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乳がん術後放射線療法、最適な分割照射法は?/BMJ

 乳がん術後放射線療法において、中等度寡分割照射(MHF)は通常分割照射(CF)と比較して腫瘍学的な治療アウトカムが同等でありながら安全性、美容およびQOLを改善し、超寡分割照射(UHF)はMHFやCFと比較した無作為化比較試験は少ないものの、短期間の追跡ではその安全性と腫瘍学的有効性は同程度であった。シンガポール国立大学のShing Fung Lee氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「治療期間の短縮、患者の利便性の向上ならびに費用対効果などを考慮すると、MHFおよびUHFは適切な臨床状況ではCFよりも好ましい選択肢とみなされなければならない。これらの知見を確かなものにするためにはさらなる研究が必要である」とまとめている。BMJ誌2024年9月11日号掲載の報告。CF、MHF、UHFのRCTをメタ解析 研究グループは、Ovid MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、2023年10月23日までに発表された乳がん術後放射線療法の有効性および安全性に関する文献について、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。 対象試験の適格基準は、CF(総線量50~50.4Gy/25~28回[1日1.8~2Gy、5~6週間])、MHF(1回2.65~3.3Gyを13~16回[3~5週間])、またはUHF(5回のみ)について評価した無作為化比較試験であった。 2人の研究者が独立してデータ抽出とチェックを行い、コクランバイアスリスクツール(バージョン2)およびGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations)を用いて、バイアスリスクおよびエビデンスの質、確実性を評価した。 メタ解析では、ランダム効果モデルを用いてリスク比(RR)およびハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出し、コクランQ検定とI2統計量を用いて異質性を分析した。また、頻度論的(frequentist)ランダム効果モデルを用いてネットワークメタ解析も行った。 主要アウトカムは、Grade2以上の急性放射線皮膚炎および晩期放射線障害、副次アウトカムは美容、QOL、局所再発、無病生存期間、全生存期間などであった。MHFはCFより急性放射線皮膚炎のリスクが低い 検索の結果、1,754本の文献が特定され、適格基準を満たした59本の文献に含まれる臨床試験35件(被験者計2万237例)が解析対象となった。全体として、評価項目の21.6%はバイアスリスクが低かったが、78.4%はバイアスリスクが中または高と評価された。 MHFによるGrade2以上の急性放射線皮膚炎のCFに対するRRは、乳房温存術を受けた患者のみを対象とした8件の臨床試験で0.54(95%CI:0.49~0.61、p<0.001)、乳房切除術を受けた患者のみを対象とした10件の臨床試験で0.68(0.49~0.93、p=0.02)であった。 乳房温存術と乳房切除術を合わせた場合、色素沈着およびGrade2以上の乳房縮小はCF後よりMHF後のほうが低頻度で、RRはそれぞれ0.77(0.62~0.95、p=0.02)および0.92(0.85~0.99、p=0.03)であった。しかし、乳房温存術のみの試験では、色素沈着(RR:0.79、95%CI:0.60~1.03、p=0.08)および乳房縮小(0.94、0.83~1.07、p=0.35)に関する差は統計学的に有意ではなかった。 UHFのMHFに対するGrade2以上の急性放射線皮膚炎のRRは、乳房温存術と乳房切除術を合わせた場合0.85(0.47~1.55、p=0.60)であった。 MHFはCFと比較して、美容およびQOLの改善と関連していたが、UHFとの比較では関連はみられなかった。再発および生存に関しては、UHF、MHF、CFで同様であった。

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