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第235回 コロナワクチン否定のための引用論文、実は意外な結論だった

つくづく新型コロナウイルス感染症のワクチン問題は説明が難しいと感じている。つい先日、知人と久しぶりに会った時に「新型コロナウイルスのスパイクタンパク質って毒性あるの?」と尋ねられ、「なんかそう言っている話もあるけどね」と確たる答えを返せなかった。確かにSNS上では、mRNAワクチンで産生されるスパイクタンパク自体に毒性があり、ワクチン接種そのものに問題があるという指摘は、ワクチン批判派の人たちからはよく流されている。私がこうした指摘にこれまで気にも留めなかったのは、脂質ナノ粒子にくるまれて細胞内に入り込んだmRNAワクチン成分がそこでスパイクタンパク質を作り出しても、スパイクタンパク質自体やmRNAが入り込んでスパイクタンパク質を産生している細胞は、ワクチン接種で誘導された免疫反応で排除されるのが、このワクチンの理論的な作用機序だと考えているからだ。とはいえ、知人の指摘する話の原典には当たったことはなく、後日実際に検索しているうちに、ワクチン批判派があちこちで引用する2021年3月のCirculation Research誌に掲載されたLetter1)に行き着いた。ワクチン否定派の引用論文×自身が気になった論文これはスパイクタンパク質をつけた疑似ウイルスをハムスターに接種した実験で、スパイクタンパク単体でも細胞表面のACE2受容体のダウンレギュレーションを通じて血管内皮細胞に障害を与える可能性があるとの研究。これ自体は当然ながら一定の信憑性はあるのだろう。もっともこの論文の最後を読んで、申し訳ないが笑ってしまった。というのも、結論は「ワクチン接種により産生される抗体や外因性の抗Sタンパク質抗体は、新型コロナウイルスの感染だけでなく、内皮障害も保護する可能性が示唆される」というものだったからだ。ワクチン批判派の人たちは、論文を読まずに拡散していたということにほかならない。もっとも私自身の中でことはこれで終わりにはならなかった。前出の論文検索中にCirculation誌の2023年1月に掲載されていた論文2)を見つけたからだ。この論文が記述していたのはmRNAワクチン接種約100万回当たり1回程度生じるといわれる心筋炎の副反応に関する研究である。その中身は「新型コロナワクチン接種後に心筋炎の副反応を経験した若年者と年齢をマッチングさせたワクチン接種経験のある健常ボランティアの血液を分析した結果、心筋炎発症集団の血中でのみワクチン接種により産生された抗体が結合しきれていないスパイクタンパク質が高濃度で検出された」という内容である。ちなみにこの研究では「抗体産生や新型コロナウイルス特異的T細胞などの免疫応答についても解析し、両集団に差がなかった」ことも記述している。この論文では、「こうしたワクチンによる抗体が掴まえきれない、血中を遊離するワクチン由来のスパイクタンパク質が心筋炎発症に関与する可能性が示唆される」と結論付けている。もっとも前述のように両者の免疫応答に差がなく、心筋炎発症集団で高濃度に検出された遊離スパイクタンパク質も33.9±22.4pg/mLと量そのものの絶対値で見れば微量にすぎない。となると、新型コロナワクチン接種者で発症する心筋炎に関しては、遊離スパイクタンパク質はリスクファクターではあるものの、何らかの内因性のファクターが関与していると見るのが妥当だと個人的には考えている。友人の意外な反応さて、そんなこんなを前述の知人に伝えたところ、「だとするならやっぱり危ないんじゃないのかな?」との反応。「いやいや、そうではなくて…」と私は語り掛け、合計1時間半にもおよぶ長電話になってしまった。私が話した内容の大半は、リスクとベネフィットのバランスである。もっともここで“約100万回に1回”という心筋炎の発症頻度が非常にわかりにくいことも改めて思い知らされた。確率に直せば0.000001ということになるので、そう説明すると知人もようやく「まあ、そんなに低いのね。何度もコロナで苦しむリスクを減らすなら、ワクチンもコスパが良いのか?」と言い出した。ちなみに本人は今年61歳。過去に2度の感染で苦しんでもいる。しかし、本当にリスクの伝え方は難しいと改めて感じている。とくに今回、私が経験したケースは入口となるファクトそのものは間違いではない。ただ、ワクチンに批判的な人たちがそこをフックに針小棒大に語っていると、こちらも医療に詳しくない一般人に説明する際はのっけから苦労する。つまり、ワクチン批判派は入口のファクトは一定の信頼性があるものを使っているため、彼らが伝える“ある種の妄想”と言っても差し支えないその先の解釈までもが、何も知らない人は“信憑性を帯びている”と無意識に受け止めているということだ。ここへさらにヒトの中に無意志に備わっているゼロリスク願望が加わると、より確かな情報を理解してもらうハードルが一気に高まってしまう。そしてSNS上で次世代mRNAワクチン、通称・レプリコンワクチンに関する異常とも言えるデマのまん延を見るにつけ、医療従事者の皆さんは私以上に苦労しているのだろうと思わずにはいられない。参考1)Lei Y, et al. Circ Res. 2021;128:1323-1326.2)Yonker LM, et al. Circulation. 2023;147:867-876.

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お茶やベリー類など、フラボノイド摂取が認知症リスクを低下

 ベリー類、お茶(紅茶・緑茶)、赤ワイン、ダークチョコレートなどの食品や飲料に含まれるフラボノイドの摂取量と、認知症リスクの関連について、英国・クイーンズ大学ベルファスト校のAmy Jennings氏らが調査を実施した。本研究は英国の約12万人を対象に実施され、フラボノイドが豊富な食品を日常的に摂取することで、認知症リスクを大幅に低減することが示唆された。JAMA Network Open誌2024年9月18日号掲載の報告。 本研究は、2006~10年のUKバイオバンクのデータを使用し、40~70歳の12万1,986例が対象となった。追跡期間は平均9.2年(標準偏差[SD] 1.5)で、2023年9月にデータ解析が行われた。参加者の食事データについて、206種類の食品と32種類の飲料の消費頻度が、食事評価アンケートを用いて記録され、合計5回の評価が行われた。食事評価データを2回以上有し、食事評価期間に認知症と診断されていない参加者が選出された。 食事評価データから、フラボノイド摂取量が算出された。主なフラボノイド供給源は、お茶、赤ワイン、ベリー類、リンゴ、ブドウ、柑橘類、ピーマン、タマネギ、ダークチョコレートだった。フラボダイエットスコアは、フラボノイドを豊富に含む食品の1日当たりの摂取量(サービング数)とした。認知症リスクとフラボノイド摂取の関連を評価するため、Cox比例ハザード回帰モデルが使用された。 主な結果は以下のとおり。・参加者12万1,986例の平均年齢は56.1(SD 7.8)歳、女性55.6%。中央値9.4年(IQR 9.3~9.8)の追跡期間中に、882例の新たな認知症発症が確認された。・1日当たりのフラボダイエットスコアの中央値は4.3(IQR 2.8~5.9)で、そのうち中央値2.7(IQR 1.0~4.0)はお茶からだった。・参加者をフラボダイエットスコアで5段階に分け、最も高い群(中央値7.3[IQR 0.0~8.1])と、最も低い群(中央値1.4[IQR 0.8~1.9])を比較した。最も高い群のほうが認知症リスクの低下が認められた。調整ハザード比(aHR):0.72、95%信頼区間[CI]:0.57~0.89、傾向のp=0.03。・最も高い群において、お茶、赤ワイン、ベリー類の中央値摂取量は、それぞれ1日当たりお茶5(IQR 4.0~5.6)、赤ワイン0(0.0~1.0)、ベリー類0.5(0.0~1.0)で、これらの摂取量を満たしていない群と比較して、認知症リスクの低下が認められた。aHR:0.62、95%CI:0.46~0.84。・以下のサブグループ解析でも、フラボダイエットスコアが最も高い群は、最も低い群と比較して、いずれも認知症リスクの低下が認められた。 遺伝的に認知症リスクが高い参加者において、aHR:0.57、95%CI:0.42~0.78。 うつ症状がある参加者において、aHR:0.52、95%CI:0.33~0.81。 高血圧のある参加者において、aHR:0.70、95%CI:0.52~0.94。 本結果により、フラボノイドを豊富に含む食事スコアが高いほど認知症リスクが低くなり、とくに、遺伝的リスクが高い人、うつ症状、高血圧症のある人でリスクの低下が顕著に認められた。お茶やベリー類などを日常の食事に取り入れることで、高リスク者でも認知症リスクが低下する可能性が示唆された。

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骨髄線維症に10年ぶりの新薬、貧血改善が特徴/GSK

 グラクソ・スミスクライン(GSK)は6月に日本における約10年ぶりとなる骨髄線維症の新薬モメロチニブ(商品名:オムジャラ)の承認を取得した。発売開始に合わせ、10月18日に行われたメディアセミナーでは、近畿大学 血液・膠原病内科 教授の松村 到氏が骨髄線維症の疾患特性や新薬の概要について講演を行った。 骨髄線維症は血液疾患で、骨髄増殖性腫瘍(MPN)のなかの古典的骨髄増殖性疾患に分類される。骨髄組織が線維化することが特徴で、これによって血球産生が障害され、貧血や髄外造血による脾腫、倦怠感などの全身症状を伴い、一部は急性骨髄性白血病(AML)に移行する。患者数は国内で年間約380人と希少疾患の部類に入り、高齢者に多く、生存期間中央値は3.9年(国内調査)と、MPNの中でも最も予後の悪い疾患だ。MPNに共通にみられるJAK2、CALR、MPL遺伝子変異が本疾患の発症と疾患進行にも関与する。 骨髄線維症の薬物療法におけるこれまでのキードラッグは、2014年に承認されたJAK阻害薬ルキソリチニブだ。JAK2経路を阻害することで脾腫を縮小し、全身症状を軽減する効果が見込める。一方で副作用として血小板減少症と貧血が問題となる。今回発売となったモメロチニブはJAK1・JAK2の阻害に加え、アクチビンA受容体1型(ACVR1)の阻害作用も持つ。これにより、鉄代謝を調整するホルモンであるヘプシジンの産生を抑制するため貧血の改善が期待できる。こうした特性により、ルキソリチニブの使用が難しい貧血を有する患者にも使用できる。 今回の承認は、第III相SIMPLIFY-1試験とMOMENTUM試験の結果に基づくもの。SIMPLIFY-1はJAK阻害薬治療歴のない患者を対象に、モメロチニブのルキソリチニブに対する非劣性を検証した試験。主要評価項目は24週時点での脾臓縮小(35%以上)した患者の割合で、モメロチニブ26.5%、ルキソリチニブ29.0%とほぼ同等の結果を示した。全体的な症状改善はルキソリチニブのほうが勝る一方、輸血非依存の割合はモメロチニブ群でより高かった。 MOMENTUMはJAK阻害薬治療歴のある患者を対象に、ダナゾール(貧血治療に用いられるステロイド薬)とモメロチニブを比較した試験。主要評価項目である全身症状の改善でモメロチニブは有意に優れた結果を示した(24週後、モメロチニブ群25% vs.ダナゾール群9%)。 両試験の結果を踏まえ、モメロチニブは未治療・既治療両方の骨髄線維症患者に対する適応を取得した。松村氏は「薬剤の使い分けは今後の議論となるが、貧血や血小板減少傾向のある患者に対してはモメロチニブを優先して使うことになるだろう。10年振りの新薬に期待している」とまとめた。

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薬物乱用頭痛に対する薬物療法の比較〜ネットワークメタ解析

 薬物乱用頭痛の治療に対する予防薬の必要性については、議論の余地が残っている。中国・雲南大学のFanyi Kong氏らは、薬物乱用の改善を含む、薬物乱用頭痛の治療に利用可能な薬剤の相対的なベネフィットおよび安全性を評価するため、本研究を実施した。The Journal of Headache and Pain誌2024年10月7日号の報告。 薬物乱用頭痛に対するさまざまな薬剤の効果を比較するため、文献検索を通じて、ランダム化比較試験のシステマティックレビューを実施した。介入効果の比較をランク付けするため、ランダム効果ネットワークメタ解析を行った。アウトカムのベースラインからの改善には、治療反応率(頭痛頻度50%以上の減少)、急性薬物乱用の改善率、1ヵ月当たりの頭痛および急性期治療薬の減少を含めた。エビデンスの信頼性の評価には、Grading of Recommendations, Assessment, Development & Evaluation(GRADE)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングした8,248件のうち、28件を分析対象に含めた。・トピラマートは、プラセボと比較し、治療反応率(オッズ比[OR]:4.93)、頭痛頻度(加重平均差[WMD]:−5.53)、急性期治療薬使用(WMD:−6.95)に有益であり、忍容性、有害事象の増加などの安全性(OR:0.20)も良好であった。・フレマネズマブ(OR:3.46〜3.07)、ガルカネズマブ(OR:2.95)、A型ボツリヌス毒素(OR:2.57)は、治療反応率が高かった。・急性薬物乱用の改善は、eptinezumab(OR:2.75 〜2.64)、フレマネズマブ(OR:1.87〜1.57)、A型ボツリヌス毒素(OR:1.55)がプラセボよりも優れていた。・eptinezumab(OR:3.84〜3.70)、フレマネズマブ(OR:2.60〜2.49)、エレヌマブ140mg(OR:2.44)、A型ボツリヌス毒素(OR:2.16)は、エレヌマブ70mgよりも有効性が高く、安全性および忍容性に差は認められなかった。 著者らは「薬物乱用頭痛の治療反応率向上には、フレマネズマブ、ガルカネズマブ、eptinezumabが有望であった。急性薬物乱用の改善には、eptinezumabが最も有効で、次いでフレマネズマブであった。A型ボツリヌス毒素は、治療反応率を中程度で改善し、急性薬物乱用の改善に小さな効果が認められた」と結論付けている。

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異常降雨が全死亡リスクと関連、心血管・呼吸器疾患死亡も/BMJ

 日降雨量の強度はさまざまな健康に影響を及ぼしており、異常降雨は全死因死亡、心血管系疾患および呼吸器系疾患による死亡の相対リスク上昇と関連していた。また、その関連は、地域の気候や都市インフラによって異なっていた。ドイツ・German Research Center for Environmental HealthのCheng He氏らが、日降雨量(強度、期間、頻度)の特性と死亡との関連について解析し、報告した。気候変動により、短期的な降雨現象の頻度と深刻さが増している。降雨に関連する健康リスクに関する研究は、主に感染症と暴風雨に焦点を当てており、心血管系や呼吸器系の健康への影響、降雨強度の変化がこれらの状態にどのような影響を与えるかなど、より広範な影響は知られていなかった。BMJ誌2024年10月9日号掲載の報告。降雨量と死亡率との関連性を、降雨事象別に解析 研究グループは、Multi-Country Multi-City(MCC)Collaborative Research Networkのデータベースから、1980~2020年の34ヵ国または地域の645ヵ所における、外因を除く死亡(ICD-10:A00-R99、ICD-9:001-799)または全死因死亡、ならびに心血管系の疾患(I00-I99、390-459)と呼吸器系の疾患(J00-J99、460-519)の特定データを入手するとともに、欧州中期予報センターによる第5世代再解析データセットの陸地成分(ERA5-Land)から同期間と地点における1時間単位の地表降水データを入手した。 主要アウトカムは、1日当たりの死亡率と、再現期間(ある規模の極端な事象が平均して何年に1回発生するかを表した値)が1年、2年、5年における降雨事象との関連(降雨後14日間の累積相対リスク)で、連続的な相対強度指数を使用して強度応答曲線を作成し、世界規模での死亡リスクを推定した。 解析対象は、全死因死亡1億995万4,744例、心血管系疾患3,116万4,161例、呼吸器系疾患1,181万7,278例であった。調査期間中、再現期間1年の降雨事象は計5万913件、再現期間2年の降雨事象は8,362件、再現期間5年の降雨事象は3,301件確認された。再現期間5年の異常降雨は、全死因死亡・心血管系疾患死・呼吸器系疾患死のリスク上昇と有意に関連 再現期間5年の異常降雨は、1日の全死因死亡率、心血管系疾患死亡率および呼吸器系疾患死亡率の上昇と有意に関連しており、降雨後14日間にわたる累積相対リスクは、それぞれ1.08(95%信頼区間[CI]:1.05~1.11)、1.05(1.02~1.08)、1.29(1.19~1.39)であった。 再現期間2年の降雨事象は、呼吸器系疾患死亡率のみと関連していたが、再現期間1年の降雨事象については有意な関連は確認されなかった。 非線形解析により、中~大雨の事象では保護効果(相対リスク<1)がみられ、きわめて強い降雨事象では悪影響(相対リスク>1)に変化することが示された。 さらに、異常降雨事象による死亡リスクは、気候のタイプ、ベースライン降雨量の変動性および植生被覆によって変化すると思われるが、人口密度と所得水準の緩和効果は有意ではなかった。ベースライン降雨量の変動が小さい地点や植生被覆の低い地点では、リスクが高いことが示された。 著者は研究の限界として、解析対象となった地点が主に東アジア、欧州、北米であり、中南米とアフリカが少なかったこと、評価結果の正確性がモデル化された出力降水データへの依存から生じる潜在的な曝露の誤分類によって影響を受ける可能性があること、数十年にわたる調査のため、健康データの診断またはコーディングのエラーが生じた可能性があることなどを挙げている。

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60歳以上へのRSVワクチン、承認後初のシーズンの有効性/Lancet

 RSウイルス(RSV)ワクチン承認後最初のシーズンである2023~24年の米国において、同ワクチンの接種は、60歳以上のRSV関連入院および救急外来受診の予防に有効であったことが示された。米国疾病予防管理センターのAmanda B. Payne氏らが報告した。2023年に初めて使用が推奨されたRSVワクチンは、臨床試験で下気道疾患に有効であることが確認されているが、実臨床での有効性に関するデータは限られていた。Lancet誌2024年10月19日号掲載の報告。RSV関連入院および救急外来受診に対するRSVワクチンの有効性を解析 研究グループは、米国8州の電子カルテに基づくネットワーク(Virtual SARS-CoV-2, Influenza, and Other respiratory viruses Network:VISION)において、2023年10月1日~2024年3月31日にRSV検査を受けた60歳以上の成人におけるRSV様疾患による入院および救急外来受診に関して、検査陰性デザインを用いた解析を実施した。 受診時のRSVワクチン接種状況は、電子カルテ、州および市の予防接種登録、一部の施設では医療請求記録から取得した。 ワクチンの有効性は、RSV陽性症例群と陰性対照群でワクチン接種のオッズを比較し、年齢、人種/民族、性別、暦日、社会的脆弱性指数、呼吸器系以外の基礎疾患数、呼吸器系の基礎疾患の有無および地理的地域で調整し、免疫不全状態別に推定した。免疫正常者における有効性、RSV関連入院に対し80%、救急外来受診に対し77% 60歳以上、免疫正常者のRSV様疾患による入院は2万8,271例で、RSV関連入院に対するワクチンの有効性は80%(95%信頼区間[CI]:71~85)、RSV関連重篤疾患(ICU入院/死亡、または両方)に対するワクチンの有効性は81%(95%CI:52~92)であった。 60歳以上、免疫不全状態の患者のRSV様疾患による入院は8,435例で、RSV関連入院に対するワクチンの有効性は73%(95%CI:48~85)であった。 60歳以上、免疫正常者のRSV様疾患による救急外来受診3万6,521例において、RSV関連救急外来受診に対するワクチンの有効性は77%(95%CI:70~83)であった。 ワクチンの有効性の推定値は、年齢層や製剤の種類によらず同様であった。 著者は研究の限界として、RSV陽性患者の受診がRSV感染症以外の理由で受診していた可能性を否定できないこと、予防接種登録、電子カルテ、医療請求記録では、投与されたRSVワクチンの投与量をすべて特定できない可能性があること、残余交絡の可能性などを挙げている。

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幸福感が脳卒中や心筋梗塞からあなたを守る

 幸福感が高い人ほど、脳卒中や心筋梗塞のリスクが低いことを示唆するデータが報告された。中国科学技術大学脳卒中センターのWen Sun氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association」に9月18日掲載された。 論文の上席著者であるSun氏は、「われわれの研究結果は、人々の精神的な健康を高めることが心臓や脳の病気の予防に不可欠な要素であることを意味しており、健康管理への総合的なアプローチの重要性を支持するものと言える」と述べている。さらに同氏は、「医療専門家は、患者の幸福を高める効果的な方法として、習慣的な身体活動、社会活動、ストレス管理テクニックを推奨するなど、生活満足度と幸福感を向上させる戦略を、日常のケアの一部として含めることを検討する必要があるのではないか」とも付け加えている。 この研究は、英国の一般住民を対象に行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」の参加者、12万1,317人(平均年齢56.56±8.15歳、男性45.03%)のデータを用いて行われた。参加者の幸福感は、UKバイオバンク研究登録時に行われていた調査票の回答を基に把握した。具体的には、家族、友人関係、健康、仕事、暮らし向きに関する幸福感や満足感などを、6段階のリッカートスコアで判定して定量的に評価した。 中央値11.77年の追跡期間中に、脳卒中5,990件、慢性虚血性心疾患9,177件、心筋梗塞6,462件、心不全3,323件が発生。結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、民族、腎機能、基礎疾患、血圧・脂質・血糖管理のための薬剤処方など)を調整後、幸福感のスコアが1標準偏差高いごとに、脳卒中(ハザード比〔HR〕0.89〔95%信頼区間0.87~0.91〕)、慢性虚血性心疾患(HR0.90〔同0.88~0.92〕)、心筋梗塞(HR0.83〔0.81~0.85〕)、心不全(HR0.90〔0.87~0.93〕)のリスクが有意に低下することが示された。 また、幸福感のスコアに基づき4群に分け、スコアが最も低い群を基準として比較すると、最もスコアの高い群は、脳卒中は45%、慢性虚血性心疾患は44%、心筋梗塞は56%、心不全は51%、それぞれ低リスクであることが分かった。さらなる分析の結果、幸福感の高い人は、より健康的なライフスタイルを維持していて、慢性炎症のレベルが低いことが明らかになった。Sun氏は、「これらの結果は、感情や心理的な健康が身体的な健康に及ぼす影響力の強さを強調しており、これまで十分に理解されていなかった複雑な生物学的メカニズムに光を当てるものだ」と総括している。 本研究には関与していない米国心臓協会(AHA)のGlenn Levine氏は、「報告された研究結果は、精神的健康と心血管のリスクとの関連性を具体的に示している。精神的健康に関してはこれまで当然のことながら、うつ病やストレスなどのネガティブな事象が研究テーマとなっていた。しかしこの研究は、人々の幸福感というポジティブな面の重要性を明示した」と述べている。

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救急外来でのChatGPTの活用は時期尚早

 人工知能(AI)のChatGPTを病院の救急外来(ED)で活用するのは時期尚早のようだ。EDでの診断にAIを活用すると、一部の患者に不必要な放射線検査や抗菌薬の処方を求め、実際には入院治療を必要としない患者にも入院を求めるような判断を下す可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のChristopher Williams氏らによるこの研究は、「Nature Communications」に10月8日掲載された。Williams氏は、「本研究結果は、AIモデルの言うことを盲目的に信頼するべきではないという、臨床医に対する重要なメッセージだ」と話している。 この研究でWilliams氏らは、EDの臨床ノートを用いて、AIモデル(GPT-3.5 turboとGPT-4 turbo)が、入院、放射線検査、抗菌薬処方の必要性の3点についての推奨を的確に提供できるかどうかを評価した。25万1,000件以上のED受診から、それぞれのタスクにつき1万件の受診サンプルをランダムに抽出し、患者の症状や診察所見などの書かれた臨床ノートの内容をAIモデルに分析させた。モデルには、患者に入院が必要か、放射線検査が必要か、抗菌薬の処方が必要かについて、全て「はい」か「いいえ」で答えさせた。 その結果、AIモデルは全体的に、実際に必要とする以上の過剰なケアを推奨する傾向があることが明らかになった。レジデントの医師の診断精度に比べて、GPT-4 turboモデルの精度は8%、GPT-3.5 turboモデルの精度は24%低かった。 こうした結果を受けてWilliams氏は、「AIモデルは医学試験の質問に答えたり臨床記録の作成を手助けしたりすることはできるが、現時点では、EDのような複数の要素を考慮する必要がある状況に対処できるようには設計されていない」とUCSFのニュースリリースで述べている。 Williams氏は、「AIモデルのこのような過剰処方の傾向は、モデルがインターネット上でトレーニングされているという事実によって説明できるかもしれない」と話す。正規の医療アドバイスサイトは、緊急性の高い医学的質問に回答するためではなく、それに答えることのできる医師に患者を紹介するために設計されている。 またWilliams氏は、「これらのAIモデルは、たいていの場合、『医師の診察を受けてください』と答えるようになっている。これは、安全性の観点からはもっともなことだが、EDの現場では、用心し過ぎることが必ずしも適切であるわけではない。不必要な介入が患者にはかえって害となり、リソースの浪費と患者の医療費増加につながる可能性があるからだ」と述べている。 Williams氏は、AIモデルをEDで活用するには、患者の診察により得られる情報を評価するためのより優れたフレームワークが必要だとの見方を示す。そして、そのようなフレームワークの設計者は、AIモデルが重大な問題を見逃さないようにしつつ、不要な検査や費用が発生しないようにバランスを取る必要があると述べる。同氏は、「完璧な解決策はない。それでも、ChatGPTのようなモデルにはこのような傾向があることが明らかになったのだから、われわれには、AIモデルを臨床現場でどのように機能させたいかを熟考する責任がある」と話している。

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重症の新型コロナ感染者の心臓リスクは心疾患既往者のリスクと同程度

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心筋梗塞や脳卒中、全死亡などの主要心血管イベント(MACE)リスクを高め、その程度はCOVID-19に罹患していないが心疾患の既往歴がある人のリスクとほぼ同程度であることが、米クリーブランドクリニック・ラーナー研究所心血管代謝学部長のStanley Hazen氏らによる新たな研究から明らかになった。この研究ではまた、重症度にかかわらず、COVID-19罹患は、その後3年間のMACEリスクを2倍に高めることも示されたという。この研究結果は、「Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology」に10月9日掲載された。 Hazen氏は、「この研究結果から、COVID-19は上気道感染症である一方で、さまざまな健康リスクを伴う疾患であり、心血管疾患の予防に関する計画や目標を策定する際には、COVID-19の既往歴を考慮すべきことを強く示したものだ」と述べている。 COVID-19パンデミックの初期には、新型コロナウイルスへの感染が血栓や心臓の問題のリスクを高めることが示されていた。しかし、このような高リスク状態がいつまで続くのか、どのような要因が影響するのかについては十分に解明されていないとHazen氏らは言う。 そこでHazen氏らは、2020年の2月1日から12月31日までの間に英国でCOVID-19の診断を受けた患者1万5人のデータを分析し、心血管の健康状態をCOVID-19に罹患していない21万7,730人と比較した。 その結果、COVID-19への罹患者では、重症度とは無関係に、1,003日の追跡期間にわたってMACEリスクが2倍以上に上昇することが明らかになった(ハザード比2.09、95%信頼区間1.94〜2.25、P<0.0005)。このようなリスク上昇は、COVID-19罹患により入院を要した人で顕著だった(同3.85、3.51〜4.24、P<0.0005)。また、心血管疾患の既往歴がないCOVID-19罹患者でのMACEリスクは、心血管疾患の既往はあるがCOVID-19罹患歴がない人よりも20%以上高かったことから(同1.21、1.08〜1.37、P<0.005)、COVID-19による入院が冠動脈疾患(CAD)と同等のリスク(CAD risk equivalent)をもたらすことが確認された。 さらにHazen氏らは、そのリスクの程度が血液型によって異なることも突き止めた。血液型がA型、B型、AB型の人では、O型の人と比べてCOVID-19による入院を経験した後の血栓イベント(心筋梗塞と脳卒中)のリスクが有意に高いことが示されたのだ。このことは、新型コロナウイルスへの感染後の心疾患リスクには、その人の遺伝的特徴が影響している可能性を示唆していると、Hazen氏らは指摘している。 論文の上席著者で、米南カリフォルニア大学ケック医学校ポピュレーションヘルス・公衆衛生科学および生化学・分子医学教授のHooman Allayee氏は、「われわれは、この結果を説明できる要因が他にあるかどうかを確認しようとしているところだが、実際に、特定の血液型では、生物学的な何らかのメカニズムが作用しているようだ」と話している。また同氏は、「われわれの観察の結果と、世界の人口の60%はO型以外の血液型である事実を踏まえると、われわれの研究は、個々の患者の遺伝的特徴を考慮した、より積極的な心血管リスク低減策を検討すべきかどうかという重要な問題を提起するものだ」と同大学のニュースリリースの中で付け加えている。 Allayee氏は、医師は新型コロナウイルスへの感染を全般的な心臓のリスクの一部としてとらえる必要があると主張する。同氏は、「現時点で疑問として残るのは、本研究結果と今後の研究結果により、心疾患の既往がない人に対する心臓の予防医療に関するガイドラインが、COVID-19の心臓への影響を考慮したものに変更されるのかということだ」と話している。

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第二の、はたまた初めての血友病B遺伝子治療fidanacogene elaparvovec(解説:長尾梓氏)

 このたび、NEJM誌にファイザーの血友病B遺伝子治療であるfidanacogene elaparvovecの第III相試験のデータが公表された。投与から最長15ヵ月まで安定した第IX因子活性の発現がみられた。同量を投与した第I/II相試験では、6年程度まで安定した第IX因子発現のデータが報告されている(学会発表のみ)。 fidanacogene elaparvovecは2023年12月にカナダ、2024年4月にFDA、同年7月にはEMAですでに承認を得ている。商品名はBeqvezだそう。元はSpark Therapeuticsによって開発が始まり、2014年にファイザーが権利を取得し開発を引き継いでいる。 血友病B遺伝子治療には、2022年11月にFDAで承認を得たのを皮切りにカナダ、EUでも承認されているetranacogene dezaparvovec(商品名:Hemgenix、製造販売:CSL Behring)があり、fidanacogene elaparvovecは世界的には第二の血友病B遺伝子治療といえる。日本では治験開始時期が異なるため、最初の遺伝子治療になる可能性が高い(「はたまた初めての」)。ちなみに、2つの遺伝子治療の値段は米国では同じだそうだ。 2つの遺伝子治療のFDAの適応症(indication)を調べてみた。fidanacogene elaparvovec:中等度~重度の血友病Bの成人において・現在、第IX因子の予防療法を使用している、または・現在、または過去に生命を脅かす出血を経験している、または・繰り返し、深刻な自然出血エピソードを経験している、かつアデノ随伴ウイルスAAVRh74varカプシドに対する中和抗体をFDA承認の検査で持っていない場合etranacogene dezaparvovec:血友病Bの成人において・現在、第IX因子の予防療法を使用している、または・現在、または過去に生命を脅かす出血を経験している、または・繰り返し深刻な自然出血エピソードを経験している場合 あくまでもFDAのindicationではあるが、AAV抗体の有無で適応が異なってくることに注意が必要である。日本人のAAV抗体陽性率は20~30%程度とされており、年齢が上がるにつれて陽性率も上がる(Kashiwakura Y, et al. Mol Ther Methods Clin Dev. 2022;27:404-414.)。これらを踏まえて、適応を検討することになるだろう。 血友病の遺伝子治療といえば、気になることとして「どれくらい持続するのか」「グルココルチコイドの使用(安全性も含む)」が挙がる。[どれくらい持続するのか] 投与後の第IX因子活性は期間などが違うので比較はできないが、参考までに提示しておくと以下のとおりとなる。「結構いい感じ」と言っても差し支えないだろう。fidanacogene elaparvovec:承認用量5×1011vg/kg投与15ヵ月時の平均FIX活性:26.9%(中央値:22.9%、範囲:1.9~119.0)etranacogene dezaparvovec:承認用量2×1013gc/kg投与3年後のFIX活性(平均±SD[中央値:範囲、症例数]):38.6 IU/dL±17.8(36.0:4.8~80.3、48)[グルココルチコイドの使用]fidanacogene elaparvovec:使用人数:45例中28例投与開始までの期間:中央値37.5日(範囲:11~123)投与期間:中央値95.0日(範囲:41~276)etranacogene dezaparvovec:使用人数:54例中9例投与開始までの期間:中央値6.1週(範囲:3.14~8.71週)投与期間:中央値74.0日(範囲:51〜130日) グルココルチコイドの使用については、実臨床において投与を受けた方の肝機能に最も注意すべき期間を示しているため、関係者は絶対に押さえておく必要がある。これを知らずに肝機能の悪化を見逃してしまうと、せっかく投与した遺伝子治療が水の泡となるかもしれず、患者負担、医療費など、さまざまな面でもったいないことになってしまう。 血友病の遺伝子治療は近々日本でも発売される見込みであるが、投与の体制がしっかり整っているとは言い難い状況である。学会を含め、全医療者で取り組む課題である。

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投票マッチングサイトを使ってみた!【Dr. 中島の 新・徒然草】(553)

五百五十三の段 投票マッチングサイトを使ってみた!雨が降ったり止んだり、暑くなったり寒くなったり。日本の秋は何かと忙しいですね。皆さん、先日の衆院選、投票には行きましたか?私は薄曇りの秋空のもと、女房とともに投票所に行ってきました。小選挙区と比例代表の投票と最高裁の国民審査です。投票所の前で、高齢女性が候補者ポスター掲示板を見ながら娘さんに尋ねていました。母「この中から選んだらええのん?」娘「そうよ」見れば、掲示板の候補者は4人だけです。思わず私は言いそうになりました。中島「ちゃうちゃう、あと1人おるで」もちろん、口に出しては言いませんでしたけどね。というのはもう1人、ポスターのない候補者がいたからです。この候補者の選挙公報は手書きだったので、インパクトは抜群!でも、掲示板にポスターを貼る余裕がなかったのでしょうか。女房「あのポスターって自分で貼っているわけ?」中島「まさか。全部のポスターを自分で貼る人なんかいないやろ」女房「せめて投票所の前だけでも貼っておいたらよかったのに」確かに全部でなくても、投票所の前の掲示板だけでも貼っておいたら効果的だったのかもしれません。後で調べてみると、私の住んでいる選挙区の投票所は118ヵ所もありました。投票所の前の掲示板だけといっても大変ですね。さて、問題は誰に、そしてどの政党に投票するかです。世の中、便利になったもので、その疑問に答える「投票ナビ」というサイトを見つけました。いくつかの質問に答えるだけで、自分の考えとの政党別合致度がわかります。質問というのは、選択的夫婦別姓、消費税、物価対策、政治とカネ・議員歳費、マイナンバーカードと健康保険証の一体化など。それぞれの質問にいくつかの選択肢があり、順に選んでいくと、自分の考えと近い政策の政党が順位を付けて表示されます。マッチング結果を見ると、確かに自分が比例代表で投票した政党が1位になっていました。ただ、このサイトの場合はテーマ間に軽重が付いていません。やはり、自分にとって重要な問題とそうでないものがあります。ほかに探してみると、自分が大切と思う問題を複数選んだうえで回答するサイトもありました。NHKの「衆議院選挙2024 ボートマッチ」というサイトです。まず自分の選挙区を選び、次にテーマを選択します。テーマは経済・財政、安全保障、社会保障、エネルギー、少子化対策・教育など10個ほどありました。その中から、自分が重要と思うテーマをいくつでも選ぶシステムです。そして、たとえば少子化対策・教育をテーマとして選んだとしましょう。すると「少子化対策として、いま政府が最優先で取り組むべきことは、次のうちどれだと考えますか」という質問が出てきて、選択肢が6つ示されます。若者の所得向上や雇用環境の向上子育て世代に対する経済支援の強化仕事と育児の両立に向けた働き方改革保育サービスの充実教育の実質無償化回答しないこれらの選択肢の中から、自分の考えに最も近いものを1つ選ぶわけです。1つのテーマにつき2~3個の質問があるので、順に答えてみました。答え終わると、どの候補者の主張が自分に最も近いかがわかります。自分でやってみると、私が投票したのは5人の候補者うちの2番目の一致率の人でした。確かに一致率が1番目と2番目の候補者の間で迷ったので、このサイトもよくできています。とくに、テーマは選んだけれども中身がよくわからない、という場合に実用的。「イチから分かる!テーマ解説」というボタンを押すと「少子化の現状、現在の政策、必要な財源」など、それぞれについてのコンパクトな説明が出てきます。これを読んで、考える材料にすればいいわけですね。残念ながら、これらのサイトを知ったのは投票後。とはいえ、具体的な政治問題を考える良い機会にもなりました。読者の皆さま、次の選挙で活用してみてはいかがでしょうか。最後に1句秋曇り 投票がてら 散歩する

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大阪大学医学部 外科学講座消化器外科学【大学医局紹介~がん診療編】

土岐 祐一郎 氏(教授)江口 英利 氏(教授)富丸 慶人 氏(助教)三吉 範克 氏(助教)中本 蓮之助 氏(専攻医)古賀 千絢 氏(専攻医)講座の基本情報医局の特徴・基本理念大阪大学消化器外科講座は、2008年より主任教授2人で1つの教室を運営するという特殊な形態をとっています。その結果、全体で120人を超える大きな教室となりましたので、基本理念を作りみんなの心を1つにしています。ミッションは「病める人に寄り添い、託された命を守り切ることがメスを持つ我々の使命です」、そして行動指針が「技術と知識を磨き、現代医療の最後の砦になります」「新しい科学、新しい医療、新しい手術を創出します」「外科医の絆を大切にし、社会に貢献します」の3つです。この基本理念を忘れないように多様な人が集まる教室を目指してゆきます。学生と医局員の食事会を開催医局独自の取り組み・若手医師の育成方針消化器外科は、上部消化管、下部消化管、肝胆膵など広い領域の診療を担当する診療科で、これらの臓器はお互いに近接し連携して機能していますので、これらを総合的に理解し対応できることが求められます。大阪大学消化器外科講座では、多彩な消化器疾患の外科治療を総合的に理解できるよう、臓器の垣根なくカンファンレンスや合同手術を行う体制ができており、一方、日々進化する高度な専門的医療も実践できるよう、グループ編成を行って最先端医療を提供しています。がん診療では国指定の地域がん診療連携拠点病院として、また臓器移植では脳死肝移植、脳死膵移植の認定施設として本邦をリードしています。上述のような高度医療技術を身につけることも大切ですが、一方で外科基本手技とも言える虫垂炎や胆石症、ヘルニアや腸閉塞などに対する手術も消化器外科医師としてきわめて重要です。大阪大学消化器外科講座は、近畿圏の基幹病院(約50施設)との密な連携体制が誇りで、外科専門医の取得をめざす若手外科医の育成のための教育システムにとくに力を入れています。連携する病院の若手医師を対象としたハンズオンセミナーや症例検討会、手術手技のコンテストやビデオクリニックなどを頻繁に開催しています。そのような活動を通じて若手医師が集まってくれる医局となってきており、日本専門医機構の外科専攻医プログラムでは、7年連続で日本一の入局者数となっています。医局のレクリエーションとして行ったゴーカートレース医局の雰囲気・魅力大阪大学消化器外科講座は、あらゆる消化器外科疾患に対して専門性の高い医療を提供しておりますが、一方では皆でレクリエーション活動なども行い、和気あいあいとした雰囲気の教室です。医師間のコミュニケーションが活発で、知識や経験を共有し合える環境が整っている点も特徴です。また、それぞれの医師のライフ・ワーク・バランスも尊重し、医師の働き方改革への取り組みも積極的に行っています。医学生/初期研修医へのメッセージ多くの手術を含めた臨床のみならず、研究、留学などさまざまな経験ができますので、自分の可能性を確実に広げることができる医局です。どのようなキャリアプランであっても、一緒に考えてくれる先輩方や仲間がたくさんいます。皆さんと一緒に仕事ができることを楽しみにしていますので、ぜひ仲間に加わってください!医局説明会でのハンズオンの様子医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力私たちは、消化器がんに対する腹腔鏡手術やロボット手術などの低侵襲手術から拡大手術にも力を入れ、患者さんに優しい治療を目指しています。また、新規がん診断や薬物治療に関する基礎研究、再生医療、そしてAIを用いた解析やプログラミングにも注力し、次世代の医療技術の発展に貢献したいと考えています。医学生/初期研修医へのメッセージ医療は今、テクノロジーの進化により驚くべき変革が起きています。AIやロボット技術を駆使し、より精密で効果的な治療が可能になる時代です。皆さんが挑戦する新しいアイデアや発見が、未来の医療を形作る重要な一歩となります。未知の分野に果敢に挑み、自分だけのキャリアを切り拓いてください。一緒に、新しい時代の医療を創造していきましょう。学生向けロボット手術の操作シミュレーション実習入局した理由近畿大学医学部を卒業後、市中病院で2年間の初期研修を行いました。学生実習や研修医としての外科ローテーションを通じて、多くの手術症例に携わる機会があり、手術への興味がいっそう深まりました。また、周術期管理や手術技術の向上を通じて、患者の全身状態の改善に寄与できることに大きなやりがいを感じ、消化器外科への入局を決意しました。その後、市中病院で2年3ヵ月の消化器外科後期研修を経て大阪大学病院に戻り、病棟業務と大学院生としての日々の活動に従事しています。現在学んでいること大学病院では、高度進行がんに対する術前化学療法や放射線療法を含む集学的治療、ロボット支援手術、さらには肝・膵移植など、大学病院ならではの多様な症例を経験することができました。経験豊富な指導医のもとで、多くの症例を通じ、周術期管理や手術技術、知識の習得に励んでいます。食事会の様子消化器外科を選択した理由医学科5年の研究室配属プログラムで、消化器外科教室で2ヵ月間勉強させていただきました。実臨床では手術をして周術期管理をする傍らで、さまざまな学術的観点からがんについて研究をされている先生方の姿を目の当たりにし、「がん」と真っ向から向き合う姿勢に感銘を受けました。がんを診療する外科、という観点から産婦人科や泌尿器科などほかの外科も検討しましたが、他臓器とも密接に関連する消化器疾患自体の病態生理に興味があったため、消化器外科を選択しました。現在学んでいること現在は阪大病院で専攻医として学んでおります。大学病院では最新技術の導入はもちろん、臨床研究や治験も豊富で、市中病院では経験できないような症例が多く、がん診療への理解が深まるのを実感しています。また大阪大学は学術面でのサポートも手厚いので、学会などへも積極的に参加しています。日々の臨床だけでは得ることができない着眼点を吸収する良い機会になっていると思います。専攻医を対象とした真皮縫合コンテスト大阪大学大学院医学系研究科 外科系臨床医学専攻外科学講座消化器外科学住所〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2問い合わせ先ytomimaru@gesurg.med.osaka-u.ac.jptmakino@gesurg.med.osaka-u.ac.jp医局ホームページ大阪大学大学院医学系研究科 外科系臨床医学専攻外科学講座消化器外科学専門医取得実績のある学会日本外科学会日本消化器外科学会日本食道学会日本肝胆膵外科学会日本移植学会日本大腸肛門病学会日本消化器病学会日本内視鏡外科学会日本ロボット外科学会日本消化器内視鏡学会 など研修プログラムの特徴(1)高難度ながん手術をはじめ、臓器移植や再生医療などの最先端医療を実践でき、さらにはそれらの開発研究にも参加する機会があり、高度な医療技術や研究能力を得ることができます。(2)手術だけでなく内視鏡検査、化学療法など幅広い一般診療にも従事することができ、各種専門医の先生と一緒に高い技術と知識を習得できる実践的な研修を提供しています。(3)研修先や勤務先が大阪を中心とした関西エリアの主要な医療機関であり、通勤や生活面での負担が少ない環境で、充実した研修が受けられる点も大きな魅力です。

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第120回 赤字でも耐えて事業継続を求められる国立大学病院

国立大学病院が赤字国立大学病院長会議が今年7月に発表した2023年度の決算概要(速報値)によると、全国42の国立大学病院の総収益は1兆5,657億円で、費用が1兆5,716億円と上回っています。経常損益は、2022年度の386億円の黒字から、初めて60億円の赤字に転落しました。今年度はさらに赤字が膨らむ見通しで、同会議が10月4日に緊急記者会見で発表した2024年度の収支見込みによると、235億円の赤字となっています。大学病院だけではなく、どこの病院も割とキツくなっています。赤字が大幅に拡大する原因はいくつかあります。たとえば、医薬品・材料費の増加は前年比121億円増、エネルギー価格高騰の影響により光熱水費が前年比33億円増、物価も高騰しており業務委託費や設備投資も64億円増、という状況です。そして、最も大きな負担となっているのが働き方改革による人件費の増加で、前年比343億円という大幅な増加となっています1)。2024年度診療報酬改定によるベア評価料などで108億円の増収が見込まれているものの、人件費のトータル増加額がその3倍以上となる見通しで、収益バランスが破綻しつつあります。「地域医療介護総合確保基金」の財政支援を拡大すべきではないかという意見がありますが、賛成です。経営圧縮連休中の診療を検討する大学病院も増えているようですが、人件費を削って経営圧縮を試みている中、今よりも「総労働時間」を増やす方向へのかじ取りは厳しいかもしれません。物価高騰によって医療機器の更新や維持が難しくなっています。「胃瘻ボタンを交換するほど医療機関が赤字になる」というのは有名な話ですが、診療報酬そのものが収益を上げるスキームになっていないことが一番の問題です。「国立たるもの清貧であれ」というマインドが根付いてしまうと、診療できる病院が減って、回りまわって困るのは国民ではないかと思います。医療分野は労働集約型が基本であり、人的リソースの依存度が高い一方、AIや自動化技術による労働時間の短縮や業務効率化が期待されています。医療のDX化が叫ばれていますが、医療現場ではいまだにFAXが大活躍している状況であり、人件費が削減できるほどのドラスティックなDX化が実現できるのは、ずいぶんと先になる気しかしません。行政的な縦割り構造が、重い足かせとなっています。経費を削減することで、短期的な費用圧縮にはつながるものの、長期的には組織の競争力低下や医療の質の低下を引き起こし、かえって負の影響が大きくなるかもしれません。どこの病院でも「このままだと日本の医療はどうなってしまうのだろう?」という不安が広がっています。診療・教育・研究を続けなければならない国立大学病院は一般の医療機関とは異なる特殊な費用構造を持っています。高度医療の提供、医学教育、研究開発という3つの機能を同時に担っており、これらは本質的にコストセンターとしての性質を持ちます。赤字セグメントをたくさん抱えているとしても、痛みに耐えて事業を継続しなければならないというツライ側面があります。最先端医療の研究開発や医師の育成には、短期的な収益では測れない社会的投資としての側面があります。また、医療の高度化に伴う費用増加は構造的な問題です。新しい医療技術や医薬品の開発により、治療の選択肢は広がっていますが、それらは往々にして高額なのです。2024年度の予測では、医薬品・材料費だけで121億円の増加が見込まれています。これは技術進歩に伴う不可避的なコスト上昇であり、もはや人件費削減では補いきれない規模かもしれません。コスト削減が叫ばれるさなか、「医師の働き方改革」という劇的な改革に乗り出しているため、中長期的には相当厳しい冬の時代が到来するかもしれません。参考文献・参考サイト1)国立大学附属病院長会議:2024年10月4日 令和6年度第3回記者会見を開催

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“風邪”への抗菌薬処方、医師の年齢で明確な差/東大

 日本における非細菌性の急性呼吸器感染症に対する抗菌薬の処方実態を調査した結果、高齢院長の診療所、患者数が多い診療所、単独診療の診療所では抗菌薬を処方する割合が高く、とくに広域スペクトラム抗菌薬を処方する可能性が高かったことを、東京大学大学院医学系研究科の青山 龍平氏らがJAMA Network Open誌2024年10月21日号のリサーチレターで報告した。 日本では2016年より薬剤耐性(AMR)対策アクションプランなど、適切な抗菌薬処方を推し進める取り組みが行われているが、十分な成果は出ていない。そこで研究グループは、急性呼吸器感染症が不適切な抗菌薬処方を受けることが多い疾患の1つであることに注目し、非細菌性の急性呼吸器感染症に対する抗菌薬処方とそれに関連する診療所の特性を調査した。 研究グループは、電子カルテデータベースを用いて、2022年10月1日~2023年9月30日に非細菌性の急性呼吸器感染症(ICD-10のJ00~J06またはJ20~J22)と診断された外来の成人患者を抽出し、診療所の特性(院長の年齢や性別、患者数、グループ診療か単独診療か)と抗菌薬処方との関連を分析した。なお、成人のプライマリケアに従事する診療所に焦点を当てるため、耳鼻咽喉科および小児科の診療所と、研究期間中の非細菌性の急性呼吸器感染症の診療が100例未満の診療所は除外した。 主な結果は以下のとおり。・1,183軒の診療所を受診した97万7,590例(平均年齢:49.7[SD 20.1]歳、女性:56.9%)の非細菌性の急性呼吸器感染症患者を解析した。・抗菌薬は17万1,483例(17.5%)に処方され、広域スペクトラム抗菌薬は抗菌薬処方全体の88.3%を占めた。・最も多く処方されたのはクラリスロマイシン(30.7%)で、レボフロキサシン(12.2%)、セフジトレン(11.2%)、アジスロマイシン(11.1%)、セフカペン(9.2%)、アモキシシリン(7.9%)と続いた。・高齢の院長の診療所、患者数が多い診療所、単独診療の診療所では、抗菌薬の処方が有意に多かった。 【院長の年齢が60歳以上vs.45歳未満】調整オッズ比(aOR):2.14、95%信頼区間(CI):1.56~2.92、p<0.001 【患者数が年間中央値58例/日以上vs.35例/日以下】aOR:1.47、95%CI:1.11~1.96、p=0.02 【グループ診療vs.単独診療】aOR:0.71、95%CI:0.56~0.89、p=0.01・院長の性別では統計学的に有意な差は認められなかった。・広域スペクトラム抗菌薬の処方に限定した解析でも、上記すべての特性で同様の傾向が認められた。 研究グループは「患者数の多い診療所は、時間的なプレッシャーや決断疲れのために抗菌薬を過剰に処方している可能性がある」と示唆したうえで、「今回の結果は抗菌薬の適正使用に向けて、より的を絞った介入の実施に役立つだろう」とまとめた。

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高リスクmHSPCに対するアビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドの比較~日本のリアルワールドデータ

 転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対する、アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドという3剤のアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)の有効性と安全性を比較した多施設共同研究の結果、全生存期間(OS)、がん特異的生存期間(CSS)、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)までの期間について、3剤の差はみられなかった。東京慈恵会医科大学の柳澤 孝文氏らによるProstate誌オンライン版2024年10月17日号掲載の報告。 本研究では、2015年9月~2023年12月にARPI+アンドロゲン除去療法を受けたmHSPC患者668例の記録を後ろ向きに解析した。LATITUDE基準に基づいた高リスク患者を対象に、前立腺特異抗原(PSA)低下率95%および99%の達成率などのPSA反応、OS、CSS、CRPCまでの期間、有害事象(AE)の発生率が比較された。すべての群間比較において、交絡因子の影響を最小化するために傾向スコアマッチングが用いられた。 主な結果は以下のとおり。・アビラテロンで治療された297例、エンザルタミドで治療された127例、アパルタミドで治療された142例が比較された。・CRPCまでの期間(p=0.13)、OS(p=0.7)、CSS(p=0.5)について3つのARPI間で差はみられなかった。・3ヵ月後のPSA低下率95%の達成率について3つのARPI間で差はみられなかったが、PSA低下率99%の達成率はアビラテロンがアパルタミドと比較して有意に優れていた(72% vs. 57%、p=0.003)。・最も発生率の高かったAEはアパルタミド治療後の皮疹(34%)だったが、3つのARPI 間で重度のAEの発生率に差はなかった。・エンザルタミドは、ほかのARPIと比較して、病勢進行以外による治療中止率が最も低かった(10%)。

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乳がんへのドセタキセルとパクリタキセル、眼科有害事象リスクに差/日本治療学会

 乳がん周術期療法におけるドセタキセルとパクリタキセルの眼科有害事象のリスクを比較した結果、ドセタキセルはパクリタキセルと比較して流涙症のリスクが有意に高かった一方で、黄斑浮腫や視神経障害などのリスクは有意差を認めなかったことを、東京大学の祝 千佳子氏が第62回日本治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。 タキサン系薬剤は好中球減少症や末梢神経障害などさまざまな有害事象を来すことが広く知られているが、眼科有害事象についても報告がある。しかし、ドセタキセルとパクリタキセルの間で眼科有害事象を比較した研究は乏しい。そこで研究グループは、早期乳がんの周術期療法としてドセタキセルまたはパクリタキセルを使用した群で、眼科有害事象の発現リスクに差があるかどうかを比較するために研究を実施した。 研究グループはDeSCのレセプトデータベースを用いて、2014年4月~2022年11月に周術期補助療法としてドセタキセルまたはパクリタキセルを使用した18歳以上の乳がん患者6,118例(ドセタキセル群3,950例、パクリタキセル群2,168例)を同定した。主要評価項目は流涙症、黄斑浮腫、視神経障害の発現、副次評価項目は眼科受診であった。主解析では、傾向スコアを用いたoverlap weighting法による生存時間分析を実施した。アウトカムの発生率は1万人年当たりで算出し、bootstrap法で信頼区間(CI)とp値を設定した。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。●対象者の年齢中央値は65(四分位範囲:54~70)歳で、観察期間中央値は790(365~1,308)日であった。●Overlap weighting後のドセタキセル群およびパクリタキセル群の流涙症の発現率はそれぞれ127および79/1万人年、黄斑浮腫は92および114/1万人年、視神経障害は53および78/1万人年、眼科受診は428および404/1万人年であった。●ドセタキセル群はパクリタキセル群と比較して流涙症のリスクが有意に高かったが、黄斑浮腫、視神経障害、眼科受診のリスクは有意差を認めなかった。ドセタキセル群vs.パクリタキセル群のHRと95%CIは下記のとおり。 【流涙症】 ・主解析 HR:1.63、95%CI:1.13~2.37、p=0.010 ・65歳未満 HR:1.82、95%CI:0.82~4.02、p=0.14 ・65歳以上 HR:1.58、95%CI:1.04~2.42、p=0.033 【黄斑浮腫】 ・主解析 HR:0.81、95%CI:0.57~1.13、p=0.21 ・65歳未満 HR:0.65、95%CI:0.32~1.33、p=0.24 ・65歳以上 HR:0.86、95%CI:0.59~1.26、p=0.44 【視神経障害】 ・主解析 HR:0.67、95%CI:0.44~1.01、p=0.057 ・65歳未満 HR:0.51、95%CI:0.24~1.09、p=0.082 ・65歳以上 HR:0.73、95%CI:0.43~1.26、p=0.26 【眼科受診】 ・主解析 HR:1.09、95%CI:0.91~1.31、p=0.35 ・65歳未満 HR:1.08、95%CI:0.81~1.45、p=0.60 ・65歳以上 HR:1.09、95%CI:0.84~1.35、p=0.47 これらの結果より、祝氏は「2群間で流涙症リスクに差が生じた理由として、薬剤特性の違いが涙液中の濃度や曝露時間に影響したり、添加物の違いが関係したりしている可能性がある」と示唆したうえで、「実臨床を反映した大規模診療データベースの解析の結果、乳がん患者において周術期療法としてのドセタキセル使用はパクリタキセル使用と比較して流涙症のリスクが有意に高く、とくに65歳以上で顕著であった。ドセタキセルまたはパクリタキセルの治療選択の際は、起こりうる眼科有害事象に留意する必要がある」とまとめた。

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双極症に対する抗精神病薬と気分安定薬の投与量が再発リスクに及ぼす影響

 双極症患者は、症状や治療に苦しんでいるにもかかわらず、効果的な治療レジメンを見出すことは困難である。東フィンランド大学のJonne Lintunen氏らは、双極性障害患者における、さまざまな用量の抗精神病薬および気分安定薬に関連する再発リスク、治療の安全性を調査した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2024年10月2日号の報告。 1996〜2018年のフィンランド全国レジストリより、15〜65歳の双極症患者を特定した。対象となる抗精神病薬には、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、気分安定薬には、リチウム、バルプロ酸、ラモトリギン、カルバマゼピンを含めた。各薬剤の時間変動用量カテゴリーは、使用量に応じて低用量、標準用量、高用量に分類した。アウトカムは、再発リスク(精神科入院)、治療の安全性(非精神科入院)のリスクとした。分析には、個人内の層別Cox回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は6万45例(平均年齢:41.7±15.8歳、女性の割合:56.4%)。・平均フォローアップ期間は8.3±5.8年。・再発リスク低下と関連していた抗精神病薬は、オランザピンの低用量および標準用量、アリピプラゾールの低用量および標準用量、リスペリドンの低用量であった。・調整ハザード比(aHR)が最も低かった薬剤は、アリピプラゾールの標準用量であった(aHR:0.68、95%信頼区間[CI]:0.57〜0.82)。・クエチアピンは、いずれの用量においても再発リスク低下との関連が認められなかった。・低用量および標準用量の気分安定薬は、再発リスク低下と関連が認められ、最も低いaHRは、リチウムの標準用量で観察された(aHR:0.61、95%CI:0.56〜0.65)。・高用量の抗精神病薬および気分安定薬は、リチウムを除き、非精神科入院リスクの増加との関連が認められた。・リチウムは、低用量(aHR:0.88、95%CI:0.84〜0.93)および標準用量(aHR:0.81、95%CI:0.74〜0.88)において、非精神科入院リスク低下と関連していた。 著者らは「双極症患者に対するリチウムおよびアリピプラゾールの標準用量は、再発リスクが最も低く、リチウムの標準用量は、非精神科入院リスクが最も低かった」と結論付けている。

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2型DM男性へのメトホルミン、子の先天奇形と関連なし/BMJ

 父親の精子形成期におけるメトホルミンの使用は、子の臓器特異的奇形を含む先天奇形とは関連しないことが、ノルウェーおよび台湾の一般住民を対象とした全国規模のコホート研究において示された。国立台湾大学のLin-Chieh Meng氏らが報告した。先行研究では、父親のメトホルミン使用と子の先天奇形のリスクとの関連が示されていた。著者は、「今回の研究の結果、メトホルミンは子供をもうける予定のある2型糖尿病男性において、血糖管理のための最初の経口薬として適切であると考えられる」とまとめている。BMJ誌2024年10月16日号掲載の報告。ノルウェー62万例、台湾256万例の子供と父親のデータを解析 研究グループは、ノルウェーの出生登録、処方箋データベース、患者登録および医療費償還払いデータベース、ならびに台湾の出生証明書申請データベース、国民健康保険データベースおよび母子保健データベースを用いた。ノルウェーのコホートでは2010~21年まで、台湾のコホートでは2004~18年までに単胎妊娠で出生した子供のうち、精子形成期(妊娠の3ヵ月前)の父親のデータがある子供それぞれ61万9,389例および256万3,812例を特定した。 主要アウトカムは、先天奇形、副次アウトカムは臓器特異的奇形で、欧州先天奇形サーベイランス(EUROCAT)のガイドラインに従って分類し、父親のメトホルミン使用と子の先天奇形リスクとの関連について解析した。 相対リスクは、補正前解析、父親が2型糖尿病と診断されている集団に限定した解析、ならびに糖尿病の重症度やその他の交絡因子を補正するため父親が2型糖尿病の集団に限定し、傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いた解析により推定した。また、遺伝的因子とライフスタイル因子を考慮するために、兄弟姉妹のマッチング比較を行った。さらに、ノルウェーと台湾のデータの相対リスク推定値を、ランダム効果メタ解析を用いて統合した。父親が2型糖尿病の交絡因子補正後解析では、メトホルミン服用と先天奇形に関連なし ノルウェーのコホートでは、61万9,389例のうち2,075例(0.3%)、台湾のコホートでは256万3,812例のうち1万5,276例(0.6%)の子供の父親が、精子形成期にメトホルミンを使用していた。 先天奇形は、ノルウェーのコホートでは、父親が精子形成期にメトホルミンを使用していなかった子供で2万4,041例(3.9%)、使用していた子供で104例(5.0%)に認められ、台湾のコホートではそれぞれ7万9,278例(3.1%)および512例(3.4%)であった。 補正前解析では、父親のメトホルミン使用は先天奇形のリスク増加と関連していた(補正前相対リスクはノルウェーで1.29[95%信頼区間[CI]:1.07~1.55]、台湾で1.08[0.99~1.17])。 しかし、この関連は交絡因子の補正に従い減弱した。2型糖尿病の父親に限定した解析での相対リスクは、ノルウェーで1.20(95%CI:0.94~1.53)、台湾で0.93(0.80~1.07)、2型糖尿病の父親限定の傾向スコアオーバーラップ重み付け法による解析ではそれぞれ0.98(0.72~1.33)、0.87(0.74~1.02)で、プール推定値は0.89(0.77~1.03)であった。 臓器特異的奇形は、父親のメトホルミン使用と関連していなかった。これらの所見は、兄弟姉妹をマッチさせた比較や感度分析においても一貫していた。

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新規3剤配合降圧薬GMRx2、2剤併用より有効/Lancet

 テルミサルタン、アムロジピン、インダパミドの新規3剤配合降圧薬GMRx2は、2剤併用薬と比較して臨床的に意義のある降圧をもたらし、忍容性も良好であった。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のAnthony Rodgers氏らが、オーストラリア、チェコ、ニュージーランド、ポーランド、スリランカ、英国および米国の83施設で実施した無作為化二重盲検実薬対照比較試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「GMRx2は血圧管理の新たな治療選択肢であり、臨床診療における血圧コントロールの大きな改善をもたらす可能性がある」とまとめている。Lancet誌2024年10月19日号掲載の報告。GMRx2と、各成分2剤併用の計4群を比較 研究グループは、未治療または降圧薬を1~3剤投与されている18歳以上の高血圧患者を登録した。適格基準は、スクリーニングの収縮期血圧が未治療で140~179mmHg、降圧薬1剤で130~170mmHg、2剤で120~160mmHg、3剤で110~150mmHgであった。 4週間の導入期に、治療薬をGMRx2の半量(テルミサルタン20mg、アムロジピン2.5mg、インダパミド1.25mg)に切り替えた。その後、GMRx2半量投与継続群、テルミサルタン20mg+アムロジピン2.5mg群、テルミサルタン20mg+インダパミド1.25mg群、またはアムロジピン2.5mg+インダパミド1.25mg群に2対1対1対1の割合で無作為に割り付け、6週間投与した。6週目の来院時に臨床的な禁忌がない限り、すべての群で用量を2倍に増量し、さらに6週間投与した。 有効性の主要アウトカムは、自宅にて座位で測定した収縮期血圧のベースラインから12週時までの平均変化量、副次アウトカムは6週時および12週時における診察室血圧と家庭血圧のベースラインからの変化量、血圧コントロール達成率などであった。安全性の主要アウトカムはベースラインから12週時までの有害事象による治療中止とした。12週時のSBP平均変化量、血圧コントロール達成率ともGMRx2群が優れる 2021年7月9日~2023年9月1日に、2,244例が導入期に登録され、このうち1,385例が4群に無作為に割り付けられた(GMRx2群551例、テルミサルタン+インダパミド群276例、テルミサルタン+アムロジピン群282例、アムロジピン+インダパミド群276例)。患者背景は、平均(±SD)年齢59±11歳、女性712例(51%)、男性673例(48.6%)、無作為化された患者のスクリーニング時の平均血圧は142/85mmHgであった。GMRx2半量の導入期後、無作為化時の平均血圧は医療機関で133/81mmHg、家庭で129/78mmHgであった。 12週時の家庭収縮期血圧平均値はGMRx2群が126mmHgであり、各2剤併用群より有意に低かった。主要アウトカムであるベースラインから12週時までの収縮期血圧の平均変化量の群間差は、対テルミサルタン+インダパミド群で-2.5mmHg(95%信頼区間[CI]:-3.7~-1.3、p<0.0001)、対テルミサルタン+アムロジピン群で-5.4mmHg(-6.8~-4.1、p<0.0001)、対アムロジピン+インダパミド群で-4.4mmHg(-5.8~-3.1、p<0.0001)であった。 同様に、医療機関で測定した収縮期血圧/拡張期血圧の変化量の差はそれぞれ-4.3/-3.5mmHg、-5.6/-3.7mmHg、-6.3/-4.5mmHgであった(いずれもp<0.001)。 12週時の140/90mmHg未満の血圧コントロール達成率はGMRx2群74%、テルミサルタン+インダパミド群61%、テルミサルタン+アムロジピン群61%、アムロジピン+インダパミド群53%であり、GMRx2群で有意に高値であった。 有害事象による治療中止はGMRx2群で11例(2%)、テルミサルタン+インダパミド群で4例(1%)、テルミサルタン+アムロジピン群で3例(1%)、アムロジピン+インダパミド群で4例(1%)にみられたが、いずれも統計学的有意差はなかった。

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「永遠の化学物質」PFASが睡眠障害を引き起こす可能性も

 血液中の「永遠の化学物質」とも呼ばれる有機フッ素化合物の「PFAS」が、若年成人の睡眠障害と関連していることが、米南カリフォルニア大学(USC)のグループによる研究で示された。PFASは有機フッ素化合物のペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物の総称で、この研究からはPFASのうち4種類の物質の血中濃度が睡眠障害と関連していることが明らかになった。詳細は、「Environmental Advances」10月号に掲載された。 PFASは、テフロン加工された調理器具やシャンプーなど、さまざまな製品に使用されているが、何十年もの間、環境中に残留する可能性がある。また、食品や水と一緒に体内に摂取される可能性も考えられる。研究グループによると、米国人の大多数において、血中のPFAS濃度は検出可能レベルであるという。 この研究は、USCの別の研究で数年前に血液採取を受けた19~24歳の男女136人(試験開始時の平均年齢19.45歳)を対象に実施された。研究参加者は睡眠時間と睡眠の質に関する情報も提供しており、136人中76人は追跡調査も受けていた。対象者の7種類のPFASの血中濃度を測定し、「低」から「高」までの3つのカテゴリーに分けた。 その結果、7種類のPFASのうち、4種類(PFDA、PFHxS、PFOA、PFOS)が睡眠障害に関連していることが明らかになった。具体的には、ベースラインからPFDA濃度のカテゴリーが1段階上がることは、毎晩の睡眠時間の平均0.39時間の短縮と関連していた。また、追跡調査の結果からは、PFHxSとPFOAの濃度のカテゴリーが1段階上がることは、平均で0.39時間と0.32時間の睡眠時間の短縮と関連していた。一方、PFOS濃度のカテゴリーが1段階上がることは、睡眠障害スコアの2.99点の増加、睡眠関連障害スコアの3.35点の増加と関連していた。 論文の筆頭著者で、USCケック医学校のShiwen Li氏は、「われわれが検出した血液中のPFASは、おそらく出生後の曝露によるものだが、出生前の胎児期の曝露に起因している可能性もある」と述べている。 研究グループは、これら4種類のPFASについて分析するため、化学物質と疾患、遺伝子発現の変化の関連についての研究をまとめたデータベースを使用し、PFASの影響を受ける遺伝子と睡眠障害に関与する遺伝子の重複を調べた。 その結果、600を超える遺伝子候補のうち、PFASによって活性化される7つの遺伝子候補が睡眠に影響を与えると推定された。その一つは、コルチゾールというホルモンの産生を助ける免疫系のタンパク質(HSD11B1)をコードする遺伝子だった。コルチゾールは睡眠覚醒リズムの調節で重要な役割を果たしている。また、カテプシンBをコードする遺伝子もPFASの睡眠への影響に関与していることが示された。カテプシンBは、記憶力や思考能力に関係し、アルツハイマー病患者の脳に存在するアミロイドβの生成に関与することが示唆されている。一方で、アルツハイマー病自体も睡眠障害に関連している。 Li氏は、「睡眠の質はほとんど全ての人に関わる問題だ。そのため、今回の研究で示された睡眠に対するPFASの影響には政策的な対応を考慮する必要がある」と話す。また、同氏は、「長期的に見ると、質の悪い睡眠は神経学的な問題や行動面の問題、2型糖尿病、アルツハイマー病などに関連していることが指摘されている」と同大学のニュースリリースで付け加えている。

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