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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 1

今回のキーワード障害者権利条約医療保護入院制度法律の抜け穴判断基準入院費精神医療審査会家族調整市町村長同意前回(その1)は、強制入院の1つである医療保護入院について詳しく説明しました。実は、この医療保護入院は、もはや世界で日本だけにしかなく、障害者権利条約に従っていないと国連から改善勧告がなされています1)。また、精神科医が所属する基幹学会(日本精神神経学会)からは、すでに医療保護入院を廃止すべきであるとの見解が示されています2)。つまり、日本ならではの医療保護入院という制度が障害者への人権侵害を招いており、しかもそれに私たちがあまり気付いていないという衝撃の事実です。どういうことでしょうか?今回(その2)は、映画「クワイエットルームにようこそ」を通して、医療保護入院制度の問題点を明らかにして、強制入院ビジネスの不都合な真実に迫ります。医療保護入院制度の問題点とは?まず、医療保護入院制度の問題点を、病院、家族、地域の3つの立場からそれぞれ明らかにしてみましょう。(1)強制入院の裁量権が病院に独占明日香が強制入院させられた精神科病院は、民間病院でした。実際に、精神科病院の8割以上は民間病院です。よくよく考えると、本来、行動制限のような人権侵害ができるのは警察などの公権力に限られています。しかし、精神障害に限っては、私人(民間病院)がほぼ独断ですることが可能になっています。1つ目の問題点は、強制入院の裁量権が精神科病院に独占されていることです。それを可能にする「法律の抜け穴」を、大きく3つ挙げてみましょう。a.医療保護入院の判断基準が曖昧明日香が入院していた女子病棟には、さまざまな人が入院していました。たとえば、おそらく統合失調症で、何らかの妄想によって自分の髪の毛を燃やしたり暴れる人です。この場合は、措置入院の要件にもなっている「自傷他害のおそれ」があるため、強制入院が必要であると多くの人が納得できます。一方、摂食障害で、食事を食べない、食べても吐くために、超低体重になっている人も何人かいました。確かに、摂食という点では自立不全ではありますが、程度の問題になるため、自傷他害ほど白黒つけられません。また、判断能力が保たれている場合は、本人の意思で体重を減らしていることになります。本人の意思でお酒を飲み続けるアルコール依存症と、「本人の意思」という生き方の問題(嗜癖)としては同じです。ちなみに、アルコール依存症だけではさすがに強制入院の対象になりません。なお、摂食障害が嗜癖である理由については、関連記事1をご覧ください。1つ目の「法律の抜け穴」は、医療保護入院の判断基準が曖昧であることです。その1でも説明しましたが、強制入院の要件は、自傷、他害、自立不全によって「自他への不利益が差し迫っている」ことです。自傷と他害は明確ですが、自立不全は程度の問題になるため、明確ではありません。そもそも、根拠となる精神保健福祉法では「医療及び保護のため」としか記載されていません。つまり、入院が必要と精神科医(精神保健指定医)が独断し、家族が同意すれば、誰でも強制入院させることができます。これは、実はとんでもない権力です。しかも、現在では入院したあとに家族が同意を撤回しても、医療保護入院は継続できるという行政解釈がなされてしまいました3)。ますますとんでもない状況になっています。次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 2

b.医療保護入院の入院費が収入源担当看護師は、明日香に「料金は一括で払っていただいていますから」と伝えていました。ここからわかることは、当たり前と言えば当たり前ですが、民間の精神科病院は、営利組織でもあります。2つ目の「法律の抜け穴」は、医療保護入院の入院費が精神科病院の収入源になってしまっていることです。収入を確保するためには、なるべく多くの患者を強制入院させて、改善してもすぐに退院させないようにする必要があります。経営方針の最適解は、医療保護入院の判断基準が曖昧であることを利用して、常に満床、なるべく空きベッドを出さないことです。一方で、任意入院や外来通院では、この経営戦略は使えません。わかりやすく言うなら、犯人が捕まらなくても警察署はつぶれないですが、患者が捕まらないと精神科病院はつぶれてしまうということです。このような精神科病院で働く精神科医や看護師にも職業倫理や人権意識があることにはあります。しかし、当然のことながら、雇われている立場であり、経営方針に従わないと嫌がらせをされたり、別の理由をつけられて職を追われます。それを見越しているため、忖度したり渋々従っていることも想像できるでしょう。また、精神保健指定医は国家資格で、更新のために定期的に研修会に参加する必要があります。しかし、これを開催する団体に限っては、主に民間の精神科病院が所属する学会や協会です。国家資格でありながら、国が直接開催するという形をとっていません。申し込みの時に、あえてこれらの団体の名前を表示させて、選ばせる仕組みになっています。いくら便宜的とは言え、このように国家資格の更新に民間の精神科病院の団体の息がかかっているように見えるため、精神科医は資格を無事に更新するため、やはり精神科病院の経営方針に忖度せざるを得ないでしょう。また、この研修会では、国連の勧告によって「精神障害者の権利の擁護」という言葉が精神保健福祉法に新たに盛り込まれたという事実は説明されるのですが、精神科医(精神保健指定医)はどう具体的に「権利擁護」をするべきかについては、いっさい触れられません。これは、利害関係を考えれば当然と言えば当然です。精神科医たちに本気で人権擁護に取り組まれてしまっては、より多くの患者をより長く入院させられなくなり、精神科病院が赤字経営に陥ってしまうからです。そしてそれは結局、精神科医たちの職場を失ってしまうことになるからです。このような構造的な問題は、精神科病院にとって世の中にあまり知られたくない不都合な真実です。さらにおかしな点は、入院費の支払いを患者本人に請求している点です。入院費は保険診療ではありますが、自己負担があります。映画では、差額ベッド代が1泊2万円の「ブルジョア部屋」に5年間入院している患者がいました。本人が支払うことは、入院中で物理的にも経済的にも不可能です。心理的にも絶対に払いたくないでしょう。そうなると、扶養義務があって、入院に同意した家族が代わりに支払うことになるわけです。しかも、先ほどにも触れましたが、家族が同意を撤回しても医療保護入院は継続可能であるため、支払い義務は続きます。これは、治療契約として明らかに破綻しており、やはりおかしな状況になっています。ちなみに、もう1つの強制入院である措置入院は、行政命令であるため、警察に留置されているのと同じ扱いで、入院費は完全に公費で、支払い義務はないです。実際の統計(2023年)では、日本の精神科病院における医療保護入院患者は約13万人で、措置入院患者数は約1,600人です。この2つを合わせた強制入院率は、欧州諸国の約15倍と、断トツに多いです1)。欧州諸国には医療保護入院がないことから、単純に考えて、もしも日本も医療保護入院がなくなれば、欧州諸国と同じ低い水準の強制入院率になることが推測できます。しかも、2002年から、もともと増え続けていた任意入院が減り、逆に医療保護入院が増え始め、2023年には倍になっています。このわけは、2002年から診療報酬の高い精神科救急病棟(スーパー救急)が国家的に推進され、その認定要件に強制入院の患者がより多く(その病院の入院患者の6割以上)いることとされてしまったからであることが考えられています。つまり、任意入院になるはずの患者をあえて医療保護入院にしていることが推測できます。このことからも、医療保護入院がいかに都合よく利用されているかがわかります。そして、この状況は、さすがに国としても想定外だったようです。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 3

c.医療保護入院への審査が形骸化明日香は、強制入院中のため、締め切りのある原稿を書くことも送ることもできないなか、面会に来たコモノ(放送作家である鉄雄の弟子)から「代わりに書きました」と聞かされます。しかし、その内容があまりにも突飛であったため、そのショックから持病の蕁麻疹が全身に出てしまい、コモノが叫び声を上げてしまいます。それを聞きつけた担当看護師は、他の看護師たちに「(明日香用の)クワイエット(ルーム)の手配を」と速やかに指示を出すのです。しかし、明日香もひるみません。すぐに上半身裸になり、蕁麻疹の様子をコモノに携帯で撮らせて、「この病院は、患者がこんな体(蕁麻疹)になっているのに、治療もせずに監禁しようとしているってインターネットに写真をアップしますよ」と反論するのです。明日香はこうするしか、「クワイエット行き」(隔離拘束)を免れる方法がなかったのでした。なお、厳密には、隔離拘束の最終的な判断は精神保健指定医が行います。3つ目の「法律の抜け穴」は、医療保護入院への審査が形骸化されていることです。審査とは、都道府県が設置した精神医療審査会のことです。ここに、患者は強制入院中の不当な扱いに対して処遇改善請求や退院請求をする権利があります。しかし、実際にそれが認められるのは数%にすぎません1)。ちなみに、先ほど医療保護入院への同意を家族が撤回できないと説明しましたが、その代わりに家族が退院請求をすることができるとの行政からの説明があります。しかし、結局これも認定される可能性は、かなり低いわけです。なお、退院支援相談員は、2014年の精神保健福祉法の改正で導入されましたが、結局この役職も「当該医療機関内に配置」と明記され、その精神科病院に勤務する精神保健福祉士になってしまうため、支援ではあっても、審査の役割はありません。わざわざ明記されているのは、外部の目を入れさせないようにするためではないかと邪推してしまいます。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 4

(2)強制入院の裁量権が家族にも明日香の主治医は、担当看護師に「(強制入院)と言っても、旦那が出せって言ったら、こっちはそんな強制力ないですから」「旦那のオッケーさえあれば、出るの早いんじゃない」と言っていました。先ほどにも触れましたが、現在では「旦那が出せ」と行っても、病院はそれ突っぱねることができるようになりました。ただ、このセリフは、とても開けっ広げですが、医療保護入院制度の問題の本質を突いています。2つ目の問題点は、強制入院の裁量権が家族にもあることです。「出せ」って言われて出すわけではなくなりましたが、反対に「出さないで」と言われたら、なかなか退院させられないことになります。病院としては、空きベッドができてしまうのは避けたいのですが、入院の長期化(3ヵ月以上)で診療報酬が減算されていくのも避けたいです。理想的にはぴったり3ヵ月で退院させて、次の患者を入れ替わりで入院させたいという思惑があります。ホテル経営と発想は同じです。しかし、家族が「今は家で受け入れる余裕がない」などと言えば、主治医も配慮はします。家族が本人の入院を厄介払いに思っていれば、なおさら手こずります。これは、退院するかどうかは、主治医と家族が相談して決める、そして家族の意向にある程度合わせる、いわゆる「家族調整」です。家族が退院後の受け入れを渋れば、病状とは無関係に入院が継続されます。つまり、入院する段階だけでなく、退院する段階にも家族には裁量権があることになります。病状が安定すれば強制入院を速やかに解除するという人権擁護の取り組みは、明らかに後回しであることがわかります。2014年の精神保健福祉法の改定前は、まだ同意する家族の優先順位があり、それが同等の場合は裁判所で同意者の選任の審判を受けるという手続きがありました。これは、司法の目が強制入院に少しでも向けられていることを意味しました。しかし、現在は、家族なら誰でも同意できることになり、司法の目はなくなりました。また、2023年の改正では、同意する家族等から除外される者が「身体に対する暴力を行った配偶者(DV加害者)等」とされましたが、これから行うリスクのある者や精神的な暴力(モラルハラスメント)は含まれていません。よくよく考えると、本来夫婦は対等であるはずなのに、一方が精神障害であるためにもう一方に強制入院に同意する権限(裁量権)を与えることで、力関係を生み出します。たとえば、「言うこと聞かないとまた入院させるよ」と言うなど、医療保護入院による家族同意自体がモラルハラスメントのリスクをはらんでいることになります。ちなみに、もしも明日香の「旦那」(家族)が、逆に入院に同意しなかったり、そもそも家族がいなかったらどうなっていたでしょうか? いくら救急病院に空きベッドがないからと言って、いきなり精神科病院に転院させられることはなくなります。別の救急病院に転院して、意識が戻ったところでその救急病院の医師(多くは併診する精神科医)が判断能力を評価するわけです。または、その医師が専門外で評価できない場合、警察通報にて警察保護の上、措置診察(措置入院の判断のための診察)が行われます。ただし、どちらにせよ、以下の点で、かかりつけの心療内科への通院は勧められますが、まず強制入院(措置入院)にはならないでしょう。酒に酔った勢いで間違えて薬を多く飲んだと主張している点希死念慮は酩酊中の発言であり、現在は見られない点謝罪や反省の弁を述べて、判断能力が保たれている点その直前まで職業適応しており、もともと問題行動を認めていない点雑誌の原稿の締め切りをとても気にしており、今後も社会適応が見込める点<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 5

(3)強制入院の裁量権が地域社会にも広がるおそれ映画では、明日香の内縁の夫が、医療保護入院の同意者になっていましたが、実際には法的な夫か血縁関係のある家族である必要があるため、無効であるとその1で説明しました。明日香の父はすでに他界しており、兄弟はなく、唯一の家族である母とは、絶縁状態でした。家族がいないだけでなく、明日香のように家族がいても疎遠で「かかわりたくない」との理由で同意も反対もせずに意思表示を示さない場合も、2024年の精神保健福祉法の改正によって、市町村長が同意の可否を判断できるようになりました。これは一見すると、公的な立場が関わるので、入院の要件が措置入院と同じように、より厳正になるのではないかと思われるかもしれません。しかし、「市町村長同意事務処理要領」4)を確認する限り、「人権擁護」には触れていませんでした。つまり、市町村長同意は、家族同意の形式的な代行にすぎず、むしろ病院の言いなりになってしまうおそれがあります。市町村は、患者の権利擁護をする立場(アドボケーター)にはなっていないということです1)。しかも、それだけではありません。3つ目の問題点は、強制入院の裁量権が地域社会にも広がるおそれがあることです。核家族化した現代社会では、明日香のように家族と疎遠な人たちがますます増えており、今後に医療保護入院について意思表示を示さない家族がますます増えるでしょう。この状況は、実質的には市町村同意の権限拡大です。そうなると、まず懸念されるのは、ホームレスです。ホームレスは、生活保護をあえて選ばない、または選ぶことができないくらい判断能力が低いながら、生活能力がぎりぎり保たれているグレーゾーンの人たちです。ホームレスは、家族がいたとしても、すでにホームレスであることから、基本的に家族とは疎遠です。つまり、逆説的にも、今までのホームレスは、生活に自由はあまりなさそうですが、家族がいても同意も反対もしないために強制入院はさせられないという「自由」がありました。しかし、その同意か反対かを問う必要がなくなったため、地域住人の要望を受けた市町村がホームレスを地域で取り締まり、精神科病院に連れていくことができます。これは、強制入院についての、地域社会の参入です。精神科病院としては、衛生的には抵抗があるかもしれません。ただ、実際に認知機能が低下しているという病状があり、入院費は生活保護により公費扱いになるため、断らないでしょう。ただし、それはホームレスにとってはたして幸せでしょうか? 私たちの価値観からしてみれば、保護されて衣食住が満たされているから、幸せだろうと思うかもしれません。しかし、保護の名のもと「収容」されて、彼らにとっての「自由」がなくなるわけです。本人が望んでいないことを良かれと思って強いるのは、ただの偽善になってしまいます。地域社会の保安という思想が優先されており、そこに人権意識はありません。なお、ホームレスの自由権の詳細については、関連記事2をご覧ください。もっと言えば、地域社会に都合が悪い人は、ホームレスだけではありません。ゴミ屋敷の住人、新興宗教を普及しようとする人、さらには行政や政府を批判して抗議活動をする人です。彼らは社会で望ましいとされる生き方(主流秩序)から逸脱しているため、「ゴミ収集がやめられない強迫症」、「特定の宗教の教義へのこだわりがある発達障害」、そして「行政や政府への被害妄想がある妄想症」という診断のもと、強制入院の対象にされるおそれがあります。つまり、彼らにまで、強制入院の対象が拡大するおそれがあります。明日香が入院していた精神科病院の「クワイエット行き」(隔離拘束をする保護室)が、地域社会で繰り広げられるわけです。本来、人権侵害のリスクのある権力は厳しく監視するべきなのに、「抜け穴」をさらにつくってしまっては、公安警察がいた戦前に逆戻りです。強制入院ビジネスの不都合な真実とは?医療保護入院制度の問題点は、強制入院の裁量権が、病院に独占されていること、家族にもあること、今後に地域社会にも広がるおそれがあるということでした。そして、これを可能にしているのが、医療保護入院の判断基準が曖昧で、入院費が収入源になってしまい、審査が形骸化しているという「法律の抜け穴」や、不合理な行政解釈、さらには市町村同意の権限拡大でした。人権擁護が尊ばれる時代の流れに明らかに逆行しています。このような医療保護入院制度のおかげで、精神科病院は、一大巨大産業であり続けています。これは、関係者たちが世の中に知られたくない、不都合な真実です。名付けるなら「強制入院ビジネス」です。そして、強制入院させられる障害者が、人権侵害という、そのビジネスのツケを払わされ続けているということです。1)「医療保護入院」p.4-P5、p.41、p.57、p.80:精神医療、批評社、20202)「精神保健福祉法改正に関する学会見解」P2:日本精神神経学会、20223)「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律等の施行 に伴うQ&A」P9:厚生労働省社会・援護局 障害保健福祉部精神・障害保健課、20164)「市町村長同意事務処理要領」:厚生労働省、2023「不都合な真実」ビジネスの関連記事障害年金ビジネス万引き家族(後編)【年金の財源を食いつぶす!?「障害年金ビジネス」とは?どうすればいいの?】Part 1カウンセリングビジネスM-1グランプリ(続編・その2)【ツッコミから学ぶこれからのセラピーとは?】Part 2教育ビジネスドラマ「ドラゴン桜」(前編)【なんでそんなに東大に入りたいの? 学歴ブランド化の不都合な真実とは?(教育ビジネス)】Part 1幼児教育ビジネス伝記「ヘレン・ケラー」(後編)【ということは特別なことをしたからといって変わらない!?(幼児教育ビジネス)】Part 1生殖ビジネスキッズ・オールライト(その2)【そのツケは誰が払うの? その「不都合な真実」とは?(生殖ビジネス)】Part 1<< 前のページへ■関連記事映画「心のカルテ」(後編)【なんでやせ過ぎてるってわからないの?(エピジェネティックス)】Part 1映画「路上のソリスト」(その2)【「不幸」になる権利はあるの?私たちはどうすればいいの?(ホームレスの自由権)】Part 1

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乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応

限られた時間で判断・助言をするために「小児科」65巻12号(2024年11月臨時増刊号)乳幼児健診の場で保護者から向けられる素朴な、しかし切実な質問に、つい曖昧に答えてしまうことはないでしょうか。限られた時間の中で、見逃してはいけない徴候であれば確実にすくい上げることはもちろん、そうでなくとも医学的な根拠があり、かつ保護者が安心できる答えをその場で伝える――そのために知っておくべき44テーマについて、各領域の専門家にその考え方・答え方を解説いただきました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応定価8,800円(税込)判型B5判頁数240頁発行2024年12月編集「小児科」編集委員会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第131回 医師の子ども、中学受験させる?

中学受験が大活況まだ赤ちゃんだと思っていたわが子も、気付けば小学6年生。やべえ、光陰矢の如しすぎる。私の子どもの中学受験が終わりました。受験のリアルを横で見てきた親としては、「昔より問題がムズくなってね?」というのが一番の感想でした。日本全体では少子化が進む一方で、中学受験者数は右肩上がり。首都圏では、受験率が40%を超えるというデータもあります。同世代の医師の知り合いのお子さんも、この2~3年中学受験に挑んでいる人が多いです。中学受験に必要な算数は、中学生で習う範囲の専門知識を使わず、小学算数のやり方で解くという暗黙のルールがあったような気がします。しかし、塾ではそんなものはすでに崩壊していて、円周率は「π」で話が進んでいきますし、xやyなどの代数もガンガン使っています。私が中学受験したのは30年以上前ですが、当時の特殊算だった「つるかめ算」や「通過算」といった問題は、今では基礎の基礎。今では、立体を何度も切断して解答を導くような問題も出題されています。「しょせん中学受験の算数だから僕もまだイケる」とナメていましたが、どこの学校の模試も難しすぎてほとんど解けませんでした。さらに、コラムを書いているくせに、私は国語が大の苦手でして。最近では、「先生は、もったいぶった し○○○しい 様子で話を始めた」という穴埋め問題を解答できませんでした。この問題、「しかつめらしい」が正解ですが、私、人生で一度もこの単語使ったことないですね(笑)。「しかめ面」じゃなくて、「鹿爪」なんですね。コロナ禍前の壮行会が再びコロナ禍は、受験校の周辺で塾が集まって「絶対合格するぞー!」といった壮行会が減っていました。しかし、現在は再び、のぼりを持った先生と生徒が集まって、校門前やグラウンドで「エイエイオー!」と大きな声を上げていました。近所迷惑になるエリアの学校では、別会場の貸しビルなどでやっていたそうです。『二月の勝者』という中学受験の漫画があります。塾講師の分析力もすごいですが、出てくる生徒の学力をどのように調整するかというディテールにこだわっている名作です。ちょっと盛って描いているのかな、と当時思っていました。しかし実際に受験生の親をやってみると、まさにこの作品のような感じだったかもしれません。私は「学歴社会」という言葉は好きではなくて、子どもが中学受験しようとしまいとどちらでもよかったのですが、子どもが受験したいと言ってきたので、サポートしました。理系や医学部はかなり人気化しつつあります。知り合いの医師と話していると、医学部進学歴の高い中高を受験させる医師がやはり多いようです。

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SNSの投稿は患者さんも見ている【もったいない患者対応】第22回

SNSの投稿は患者さんも見ているSNSを日常的に利用する医療者は多いでしょう。とくに、FacebookやX(旧Twitter)で個人アカウントをもち、他の医療者らと交流したり、一般向けに情報発信したりしている人は多いと思います。しかし、不特定多数の人が読むことのできるSNSで医療者として投稿するときは、かなりの慎重さが求められます。私はXで10万人を超える方にフォローしていただき、アクティブに情報発信を行っていますが、他の医療者の投稿を見ていて一種の危うさを感じることが少なくありません。個人情報への配慮はできている?まず気になるのは、個人情報への配慮が十分でない投稿です。たとえば、「今日の手術は〇〇だった」「今日の外来で診た患者さんは〇〇だった」というような、話題になっている患者さんが特定される恐れのある投稿は非常に危険です。匿名アカウントであっても、内容によっては「自分のことかもしれない」と思う患者さんがいるかもしれません。もし、その人のことでなかったとしても、「本人が見たら『自分のことかもしれない』と感じるような投稿を医療者がしている」という事実自体、医療不信につながる恐れがあります。「今日」といった限定的な日時を書かないのはもちろんのこと、具体的な事実の記載も避けなければなりません。一般の方が見て不信に思わない?SNSに投稿する際は「医療者が見ればなんの悪意も感じないが、一般の方が見れば不信感を抱く可能性がある」類の投稿になっていないかどうか、注意が必要です。たとえばよく見るのが、「点滴がなかなか入らず、何度も失敗してしまった」「手術が大変で、いつもより2時間も余分にかかってしまった」といった投稿です。医療者にとってみれば、患者さんの血管が細いことなどが原因で、輸液ラインの挿入に難渋することは日常茶飯事でしょう。手術も、何度も行っていれば「もっとうまくやれたかもしれない」と自省的に振り返る機会はあります。しかし、一般の方にこうした理解を求めることはできません。「うまくいかなかった」という投稿を見れば、そういう“不幸な目”にあった患者さんのことを考え、医療者に対して「けしからん」という怒りを募らせるかもしれません。これは、医療への不信感を助長する可能性があり、きわめて危険なことです。医療者にとっての日常は、非医療者にとっては非日常です。SNSに仕事のことを投稿する際は、常にこの点への注意が必要なのです。上手に活用して快適なSNSライフをむろん、SNSは情報発信において非常に有用なツールです。医療者から発信された情報のおかげで救われる患者さんはたくさんいます。私のほか、数万人のフォロワーを抱える医療者たちは多くいますし、熱心に運用すれば多くの人の役に立つことができるのも事実です。気持ちよくSNSを利用するためにも、ここに書いたような細かな配慮を忘れないことが大切です。

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若い女性への再発予防の指導方法について 実際どう指導していますか?【とことん極める!腎盂腎炎】第11回

若い女性への再発予防の指導方法について 実際どう指導していますか?Teaching pointリスク因子を評価し適切な再発予防指導(飲水励行や排泄後の清拭など)までできるようになるはじめに女性は解剖学的に尿路感染症を起こしやすく、約3人に1人は24歳までに尿路感染症を少なくとも1回は経験する1)。尿路感染の既往をもつ女性のうち30〜44%が再発し、0.3〜7.6回/年生じるという報告もあり、生活の質(QOL)にかかわる重要な問題である2)。再発防止は本人のQOL維持、繰り返す抗菌薬曝露による耐性菌発生の予防の観点からも重要である。若い女性への尿路感染症の再発予防の生活指導方法について紹介する。1.若い女性の再発性尿路感染症のリスク因子閉経前の女性のリスク因子として、(1)性的活動の活発であること、(2)殺精子剤の使用、(3)新たな(1年以内の)性的パートナー、(4)尿路感染症の既往のある母親、(5)小児尿路感染症の既往がある。しかし、遺伝的な素因よりも性交や殺精子剤のリスクのほうが大きいとされ、行動への介入は予防可能なリスクとなる3)。2.再発予防への日常生活への指導防御機構とリスク因子を踏まえ予防的な介入を考えていく。本項では介入として日常生活への指導をまとめる(薬剤、サプリメントによる予防は第13回で紹介する)。日常生活への指導の有効性を裏づけるエビデンスは限られるが、介入によるリスクの低さから薬物などによる介入前に実践することが推奨されている。飲水量の増加は単施設であるがRCTで有効性が示されている4)。水分摂取量が少ない(1.5L/日未満)、再発性膀胱炎(3回以上繰り返す)を来たした成人女性において通常量の飲水に加えて、1.5L/日の追加飲水の介入を行ったところ非介入群と比較して、膀胱炎の発症が1年あたり1.5回減少した(1.7回[95%信頼区間[CI]:1.5~1.8]vs. 3.2回[95%CI:3.0~3.4])。筆者はさらに飲水行動について詳しく問診するようにしている。飲水量が少なかった場合、「なぜ飲水量が少ないか」を聞くとさらに背景に迫れることがある。気軽に排泄に行きづらい職場環境(例:コンビニ店員でトイレに行くタイミングがないなど)が背景にあり飲水を控えているというケースも経験する。その場合は、職場環境改善への働きかけなどに協力してあげることも大切となる。また、性交や殺精子剤は尿路感染症のリスク因子であり、性交を減らすことや殺精子剤を含む避妊具を避けることを、本人やパートナーとカウンセリングを行うこともリスクを減らすと期待される。その他、明確な関連は示されていない個別での相談や効果を評価する指導内容も含め表にまとめた4,5)。小児期から繰り返している場合や腎結石、尿路閉塞、間質性膀胱炎、尿路上皮がんが疑われるような場合は泌尿器科受診を勧めることも忘れてはならない。表 若年女性の単純性尿路感染症の再発を予防するための日常生活への指導画像を拡大する再発性の膀胱炎の最終手段として抗菌薬投与が選択されることもあるが、耐性菌のリスクの観点からも導入しやすい日常生活への指導からしっかりと介入していくことは大切である。生活へのアプローチは一人ひとりの事情もあるので、本人の生活について丁寧に聴取し生活に合わせた指導内容を一緒に考えていくことはプライマリ・ケア医の重要な役割である。1)Foxman B. Dis Mon. 2003;49:53-70.2)Gupta K, Trautner BW. BMJ 2013;346:f3140.3)Hooton TM, et al. N Engl J Med 1996;335:468-474.4)Hooton TM, et al. JAMA Intern Med 2018;178:1509-1515.5)Hooton TM. N Engl J Med 2012;366:1028-1037.

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眼科外来診療―クリニックでの対応と紹介のタイミング―

診断のピットフォールや紹介のタイミングをわかりやすく「眼科」66巻11号(2024年11月臨時増刊号)どこから読んでもすぐに役立つ、気軽な眼科の専門誌です。本年の臨時増刊号は「眼科外来診療―クリニックでの対応と紹介のタイミング―」と題し、日常臨床の場で診断や治療を進めていく際のポイントと、ある一線を越えた場合や初診時すでに一線を越えている病態に対し、より高度で適切な医療を提供するために紹介するタイミングに焦点を当て、専門家の先生方にご執筆をいただきました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する眼科外来診療―クリニックでの対応と紹介のタイミング―定価9,350円(税込)判型B5判頁数368頁発行2024年11月編集後藤 浩/飯田 知弘/雑賀司 珠也/門之園 一明/石川 均/根岸 一乃/福地 健郎ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第247回 どこか似ているフジテレビと女子医大、大学に約1億1,700万円の損害を与えた背任の疑いで女子医大元理事長逮捕、特定機能病院の再承認も遠のいた病床利用50%の医科大学に未来はあるか?

東京女子医大よりお粗末だと感じたフジテレビの中居氏問題への対応こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。タレント、中居 正広氏の女性とのトラブルにフジテレビ編成局の幹部社員が関与していたと報道を受けて、同社の港浩一社長が1月17日に記者会見を行いました。しかし、その会見内容や会見方法を巡ってさまざまな批判が巻き起こっています。まずその会見方法ですが、参加者はフジテレビ記者クラブの加盟社に限り、それ以外は参加できませんでした(この問題を報道してきた週刊誌記者などは入れず)。さらにNHKや在京キー局は質問できないオブザーバー参加で、動画撮影も禁じられました。報道に携わるテレビ局であることを考えると、まさに信じられない対応と言えます。今後、フジテレビ報道局の記者たちはさまざまな取材先で「おたくには取材させない」「カメラはダメね」と言われ続けることでしょう。さらに驚いたのは、港社長の、「第三者の視点を入れて改めて調査を行う必要性を認識しましたので、今後、第三者の弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げることとしました」の発言です。各紙報道によれば、「第三者」という言葉を使ってはいるものの、この調査委員会が日本弁護士連合会のガイドラインに沿った第三者委員会になるかどうかは未定とのことです。元理事長が先週逮捕された東京女子医大ですら、第三者委員会を立ち上げています。同窓会組織から勤務実態のない元職員に給与が不正に支払われていたとされる問題などを調べるために設置されたこの第三者委員会は、当時の岩本 絹子理事長の問題行動を徹底的に調べ上げ、約250ページにも及ぶ調査報告書をまとめて昨年8月に公表、調査した委員(弁護士)による記者会見も開かれました。この調査報告書は至誠会の不適切な資金支出を指摘するだけでなく、学校法人の不適切な資金支出もつまびらかにし、さらに寄付金を重視する推薦入試や大学の人事のあり方の問題点も指摘しました。そして、それらの根本原因として、同大が岩本元理事長に権限が集中する「一強体制」で「ガバナンス機能が封鎖された」と厳しく糾弾しました。この第三者委員会の報告書公表後、岩本元理事長は同大理事会において自身を除く全会一致で理事長職を解任されています。フジテレビが日弁連のガイドラインに沿った第三者委員会を設置しないとなれば、問題解決への意欲がないと世間から見られ、ますます窮地に陥るでしょう。実際、トヨタ自動車や日本生命などのスポンサーもCMを差し止め始め、1月21日の段階でその数は50社を超えました。今年春の番組改編に向け、テレビ局はスポンサー獲得のための営業活動のピークにありますが、こちらも相当苦戦することでしょう。まさに「危急存亡の秋」と言えます。計約1億1,700万円相当の損害を与えた背任容疑で東京女子医大元理事長逮捕ということで、同じく危急存亡の秋を迎えている東京女子医大です。この連載で何度も取り上げてきた東京女子医大ですが、警視庁は1月13日、同大の岩本元理事長(78)を背任容疑で逮捕しました。1月14日付の朝日新聞などの報道によれば、逮捕容疑は2018年7月~2020年2月、同大の新校舎棟の2件の建設工事を巡り、建築会社社長で1級建築士の60代男性と同大経営統括部元幹部の50代女性と共謀の上、男性に対し、給与とは別に実態がない「建築アドバイザー」としての業務報酬名目で計21回にわたって大学に不当に支払わせるなどして、計約1億1,700万円相当の損害を与えた、というものです。こうした金銭の流れは岩本元理事長が指示し、男性名義の口座に報酬が支払われていたとのことです。警視庁は岩本元理事長以外の2人についても立件する方針とのことです。東京女子医大の岩本元理事長長が関わる不正に捜査のメスが入ったのは去年3月でした(「第207回 残された道はいよいよ身売りか廃校・学生募集停止か? ガバナンス崩壊、経営難の東京女子医大に警視庁が家宅捜索」参照)。2019年以降、理事長を務めてきた岩本元理事長による不正な支出が疑われるとして、大学関係者が刑事告発を行い、告発状を受理した警視庁が3月、大学本部や岩本元理事長の自宅などを一斉に捜索したのです。それから約10ヵ月、やっと逮捕に至ったわけです。1月13日付のNHKは、「警視庁の幹部は『元理事長への現金の還流は、口座を通しておらず、証拠の欠片を拾い集めるパズルのような難しい捜査だった』と話しています」と報じています。岩本元理事長に還流された現金は総額約8,700万円に上る逮捕容疑の金銭の還流やその他の岩本元理事長の経営手法については、本連載の「第226回 東京女子医大 第三者委員会報告書を読む(前編)『金銭に対する強い執着心』のワンマン理事長、『いずれ辞任するが、今ではない』と最後に抗うも解任」、「第227回 同(後編)『“マイクロマネジメント”』と評された岩本氏が招いた『どん底のどん底』より深い“底”」でも詳しく書きました。この報告書には、今回の容疑となった岩本元理事長が金銭面で同大に与えた損害のほかに、卒業生の教員への採用・昇格に寄付金を要請したり推薦入試での寄付金受け取りを指示したりしていたことや、PICU運用停止に代表される「教育・研究と病院・臨床に対する理解・関心の薄さ」、「異論を敵視し排除する姿勢と行動」、「人的資本を破壊し組織の持続可能性を危機に晒す財務施策」など、医科大学トップとしてあるまじき、さまざまな所業が赤裸々に書かれています。そんな中、捜査当局は刑事責任が問える新校舎棟の建設工事を巡る金銭の動きに焦点を絞って捜査を進めてきたわけです。1月16日付の日本経済新聞などの報道によれば、岩本元理事長は建築士の男性に報酬を受け取るため専用の口座をつくらせ、男性が入金された報酬から自身が支払う税金を差し引いた上で、3分の1を男性が受け取り、残りの3分の2を元理事長に還流させていた疑いがあり、その金額は計約3,700万円に上るとしています。さらに別の工事に関しても、大学支出分から現金約5,000万円を受領した疑いがあり、これらを合計すると岩本元理事長に還流された現金は総額約8,700万円に上るとのことです。なお、1月21日付の日本経済新聞は、警視庁が昨年岩本容疑者の自宅など関係先を背任容疑で捜索した際、岩本元理事長の関係者が住む東京都港区のマンションの一室から、「金塊2キロ(約3,000万円相当)とスーツケースに入った現金約1億5,000万円」が発見され、さらに「元理事長宅の納戸からも現金と金塊が出てきた。(中略)これらの関係先から総額で現金約2億円と金塊計10キロ超(2億円相当)を押収した」と書いています。岩本元理事長体制下で噴出した事件の数々それにしても、東京女子医大も地に落ちたものです。岩本元理事長体制下の東京女子医大については、本連載でも何度も取り上げて来ました。2020年7月には「第15回 凋落の東京女子医大、吸収合併も現実味?」で同大が「コロナ禍による経営悪化を理由に夏季一時金を支給しない」と労組に回答し、看護師の退職希望が法人全体の2割にあたる400人を超えたニュースを、同年10月には「第28回 コロナで変わる私大医学部の学費事情、2022年以降に激変の予感」で、同大が2021度から学費を6年間で計1,200万円値上げして私立医大で2番目に高くなったニュースを取り上げました。さらに、同じく2020年10月には「第30回 東京女子医大麻酔科医6人書類送検、特定機能病院の再承認にも影響か」で、東京女子医大病院で2014年2月、鎮静剤プロポフォールの投与を受けた男児(当時2歳)が死亡した事故について、警視庁が当時の集中治療室(ICU)の実質的な責任者だった同大元准教授ら男性麻酔科医6人を業務上過失致死容疑で東京地検に書類送検したニュースを取り上げました。同病院はこの事故で2015年に特定機能病院の承認を取り消されています。外来患者数激減、病床稼働率もわずか50%岩本元理事長体制下で、経営状況も悪化の一途です。東京女子医大の令和5年度事業報告書(速報版)によれば、稼ぎ頭であるはずの本院、東京女子医科大学病院(1,190床)の1日外来患者数は、令和3年度が2,862人、令和4年度が2,705人、令和5年度が2,538人と減少傾向でした。そして何よりも衝撃的なのが病床稼働率です。令和3年度が61.7%(1,193床)、令和4年度が53.2% (1,193床)、令和5年度が50.7%(1,190床)と、もはや半分しか病床が稼働していないのです。紹介も含めて患者が来ないことに加え、看護師をはじめとする職員不足で病棟を開けたくても開けられない、という事情もあると考えられます。今回の元理事長逮捕や大学人事や推薦入試での不正によって、特定機能病院の再承認はさらに遠のき、加えて私学助成金(私立大学等経常費補助金)も大幅に減額される可能性もあります(令和5年度で総額20億円)。仮にそうなれば大学経営に対するダメージは計り知れません。日本大学や東京女子医大などで起こった相次ぐ不祥事を受け、改正私立学校法が今年4月に施行されます。理事会とそのトップの理事長へのチェック強化が図られ、理事と評議員の兼務も認められなくなります。不正のあった理事の解任請求権や、監事の選任・解任権限が、理事会の諮問機関にあたる評議員会に与えられることにもなります。しかし、東京女子医大にとっては後の祭りと言えそうです。ワンマン理事長の暴走を許し、ガバナンスをまったく効かせてこなかった理事会の責任は極めて重いと言えるでしょう。河田町同郷のフジテレビと女子医大、経営権が移る可能性も東京女子医大は1970〜90年代には、日本の大学病院としては最先端の経営を行っていました。心研をはじめ、消化器病・脳神経・腎臓病の各センターなど、臓器別のセンター方式をどこよりも早く導入、それぞれにスター教授を配して、臨床だけではなく、研究でも最先端を走っていました。以前にも書いたことですが、1980~90年代にかけ、私はよく新宿区河田町にある東京女子医大病院に取材に通っていました。「東京女子医大、強さの研究」という特集記事を担当したこともあります。当時、東京女子医大の隣にはお台場に移転する前のフジテレビ本社がありました。フジテレビも「オレたちひょうきん族」のヒットなどで、視聴率で在京キー局のトップを走っていたと記憶しています。あれから40年近くが経ち、どちらも昔日の面影はなく、東京女子医大は元理事長逮捕、フジテレビは冒頭に書いたような報道機関の役割を自ら放棄する体たらくです。おそらくこちらも社長交代(あるいはもっと上も)まで行くでしょう。時代の変化に対応できず、旧態依然の経営を続け、ガバナンス不全のままの組織はあっという間に淘汰されてしまいます。5年先、いや3年先には、東京女子医大もフジテレビも経営権は今とはまったく違うところに移っているかもしれません。

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抗インフルエンザ薬は今いずこ?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第143回

インフルエンザが猛威を振るうなか、患者の増加に伴って各所で抗インフル薬不足の悲鳴があがっています。そろそろピークは越えたかなという気もしてきましたが、薬不足はいつまで続くのでしょうか?厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課は1月9日、抗インフルエンザウイルス薬の適正な使用と発注に関する協力依頼を都道府県宛に事務連絡した。インフルエンザ流行に伴い抗インフル薬の需要が急増していることから、過剰な発注を控えるよう求めた。(中略)とくに経口薬が供給不安に陥っており、吸入薬の利用が可能な5歳以上の患者に対しては吸入薬の処方も検討するように促した。(2025年1月10日付 RISFAX)インフルエンザは昨年11月ごろから全国的な流行シーズンに入りました。12月29日からの1週間に全国約5,000の定点医療機関で報告されたインフルエンザ患者数は1医療機関当たり64.39人となり、現行の統計開始の1999年以降で最多となりました。年明けには減りましたが、今後はB型の流行も懸念されています。このような中、厚生労働省は1月9日の事務連絡で、医療機関は必要量に見合う量のみを購入すること、吸入薬の利用が可能な5歳以上のインフルエンザ患者にはドライシロップではなく吸入薬の処方を検討することなどを求めています。しかし、タミフルやその後発医薬品が出荷停止や限定出荷となるだけでなく、イナビルやゾフルーザも限定出荷となるなど、薬不足は長引いています。以前、タミフルカプセルとタミフルドライシロップは長期保存試験の結果に基づいて使用期限が10年に延長され、在庫しやすくなり廃棄は減ったはずです。それでも供給が不足しているというのですから、本当に爆発的な感染拡大だったのでしょう。ここでも後発医薬品の供給不足が影響しており、やはり根本的な薬価などの対策が必要と思わざるを得ません。なお、厚生労働省によると、今年度の予定供給量は前年度を上回っていることや、メーカーや卸には在庫があることなどから、現時点では備蓄を開放する予定はないようです。患者さんのために抗インフルエンザ薬を入手してあげたいと思う気持ちは全国どこの薬局でも同じです。過剰な発注は控え、入手できたかどうかであまり一喜一憂せず、基本的な手洗い・うがいの励行、マスクの着用、周りに2次感染させない対策といった基本的なことを伝えていきたいと思います。

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口内炎がつらいです【非専門医のための緩和ケアTips】第92回

口内炎がつらいですがん診療の進展に伴い、診療所の先生が基幹病院に通院中の患者さんを診察する機会が増えてきたのでは、と思います。抗がん剤治療の副作用対策は大きく進歩しましたが、まだつらい症状を訴える患者さんが多い副作用の1つが「口内炎」です。今回の質問私の外来患者が抗がん剤治療のために基幹病院に通院しています。私の外来で診察する際に、口内炎に対する対応を相談されたのですが、あまり経験がなく良いアドバイスができませんでした…。口内炎に苦しむ患者さんの様子を見ると、こっちもつらくなりますよね。口内炎は抗がん剤治療や分子標的薬の副作用として頻繁に発症します。一般的な化学療法では発症率は10%程度ですが、頭頸部がんの化学放射線療法では、さらに高頻度で見られます。ご質問にある患者さんが「すでに口内炎を発症しているのか」は不明ですが、まずは「予防」について考えてみましょう。口内炎の予防には口腔ケアが非常に重要です。口腔内の衛生を保ち、湿潤環境を維持するため、定期的に水分を口に含むことを指導しましょう。また、義歯の調整が必要な場合やその他の専門的な歯科治療が必要な場合は、歯科受診を推奨します。これらの予防策は患者さんの協力が重要ですので、がん治療の開始前から取り組むようアドバイスすると良いでしょう。口内炎ができてしまった場合には、口内炎の発症のタイミングや治療内容から、「がん治療関連の口内炎」か「その他の原因によるものか」を判断します。口内炎で問題になる症状の多くは口腔内の痛みです。多くの方は物理的刺激による口内炎を経験しているでしょう。あの痛みがさらに広範にあることを想像すると、そのつらさが想像できるかと思います。口内炎に対する薬剤は、症状や患者さんの状態に応じて選択します。内服が困難な場合には、口腔用軟膏や口腔用液が有用です。痛みが強い場合には、がん疼痛治療に準じて薬剤を調整します。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が効果を示すケースもあるため、腎機能障害や他の副作用に注意しつつ投与を検討することも1つの選択肢です。また、がん疼痛治療に用いられるオピオイドについても触れておきます。オピオイドは、口内炎の痛み緩和に一定の効果がありますが、通常、モルヒネ換算で60mg/日を超える投与が必要となることは少ない印象です。もしオピオイドの効果が乏しい場合には、カンジダなど感染症の合併として発症しているケースや、心理的要因(例:不安)が関与している可能性を考慮する必要があります。今回のTips今回のTipsがん治療に関連した口内炎、「予防」と「治療」の両方が大切です。

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酔っ払い? ン? 元酔っ払い?【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第2回

酔っ払い? ン? 元酔っ払い?Point外傷の病歴や、疑う所見を入念に確認すべし。時間経過で症状の改善が確認できるか?普段の飲酒後とは異なる腹部症状や、意識変容がないか?症例45歳男性。夜中の1時に歓楽街の路地裏で嘔吐を繰り返し、体動困難となっていたところを通行人に発見され救急搬送された。来院時は吐物まみれで臭いも酷かったが、本人は本日の飲酒は大した量でないという。頭部CTで頭部内病変がないことのみ確認し、外来の診察室で寝かせておくことにした。数時間後に様子を伺いに行くと嘔気・嘔吐が改善していないどころか頻呼吸、頻脈も認め、強い腹痛を訴えていた。慌てて施行した血液検査でアニオンギャップ開大のアシドーシスを認め、速やかにビタミンB1と糖の補充、補液を開始した。半年前に妻に捨てられてから自暴自棄となりアルコール漬けの日々を送っていたが、来院3日前から食欲不振があり、景気付けにと繁華街に繰り出したとのことだった。入院時のスクリーニングでCAGE 3点とアルコール依存症が疑われため、ベンゾジアゼピンの予防内服も開始し、本人に治療希望あったため精神科受診の手配もすすめられた。おさえておきたい基本のアプローチ酔っ払い患者だから、と門前払いしたり先入観をもったりするのは避け、むしろ普段より検査も多めにして、慎重に診察にあたり表1に挙げた疾患の可能性を評価しよう。表1 急性アルコール中毒を疑った際の鑑別疾患実際の診療現場では、患者は指示に応じないどころか悪態をつくなど、とても診察どころではない状況も多々あるが、モニター装着のうえ人目につく場所でこまめに様子を観察しよう。意識レベルの経時的な改善がなければ、ほかの原因を考慮すべきだ1)。図1にERでの対応の流れの一例を提示する。図1 ERでの対応の流れの一例画像を拡大する救急の原則はABCの確保にあり、泥酔患者に対してもまずは気道、呼吸、循環が安定していることを確認するようにしたい。外傷診療で生理学的異常、その後解剖学的異常を評価する流れに似ている。アルコール自体で呼吸抑制を来すには血中アルコール濃度(blood alcohol level:BAL)が400mg/dL以上とされ、めったに出くわさないが、吐物などによる窒息の危険は高く、気道確保の必要性について常に考慮しておく。友達が酔っぱらっていたら仰臥位に寝かさずに、昏睡体位をとろう。意識障害の対応の基本である血糖checkも忘れないようにする。糖尿病や肝硬変が背景になければアルコール自体による低血糖の発症は多くないのだが、小児ではその危険性が増すため2)、誤って口にしてしまった場合などではとくに注意したい。血糖補正の際は、ウェルニッケ脳症予防のために、ビタミンB1の同時投与も忘れずに。酔っ払いにルーチンに頭部CTをとっても1.9%しかひっかからない3)。したがって表2のように、外傷の病歴や、頭部外傷、頭蓋底骨折を疑う所見を認める際に頭部CTを施行するようにする。中毒患者では頸椎骨折の際に頸部痛や神経所見があてにならないケースがあるので、頸部もあわせてCTで評価してしまおう。表2 頭部CTを早期に施行すべき場合頭蓋底骨折を示唆する所見がある(raccoon's eye、バトル徴候、髄液漏、鼓膜出血)頭蓋骨骨折が触知できる大きな外力(転倒などではない)による外傷歴があり、意識変容を認めるBALで予測されるよりも意識状態が悪い意識レベルが著明に低下(GCS※≦13)しており、頭部外傷の病歴や懸念があるGCSが低下していく神経局在症状がある※GCS(Glasgow Coma Scale)落ちてはいけない・落ちたくないPitfallsBALはルーチンで測定しないアルコール中毒自体の診断にBALを測定する意義は限定的で、そもそも筆者の施設では測定ができない。GCSの低下をきたすのはBAL≧200mg/dLであったという前向き研究の結果があり4)、前述のように意識障害の鑑別としてアルコール以外の要因を考慮するきっかけにはなる。PointBAL測定は意識障害にほかの鑑別を要するときに直接の測定が困難な場合、浸透圧ギャップ(血清浸透圧-計算上の浸透圧:通常では体内に存在していない物質分の浸透圧が上昇しているため、ギャップが開大する)から算出が可能であり、とくにエタノール以外のアルコール属中毒の際に参考となる。くれぐれも飲酒運転を警察に密告するために用いてはならない。直接治療に関連のない行為を行い、その結果を本人の同意なく第三者に伝えることは守秘義務違反に抵触する。酔い覚ましに…だけの補液は推奨されない二日酔いの朝イチは3号液+ビタミン剤の点滴に限る…なんて先輩からアドバイスを受けたことがある者は少なからずいるだろうが、アルコールの代謝を担うアルコール脱水素酵素は少量のアルコールで飽和状態になってしまうため、摂取した量にかかわらず、体内では20〜30mg/dL/時程度の一定の速度でしかアルコールを代謝できない。Point補液は泥酔患者のER滞在時間を短縮しないアシドーシスや膵炎合併、脱水症など、それ以外に補液を施行すべき病態があれば別だが、泥酔患者でアルコールの代謝を早める目的のみで補液を施行することに効果はなく、ER滞在時間を短縮する結果とはならないことが報告されている5)。アルコール常習犯への対応は慎重に急性アルコール中毒にルーチンで血液検査を行う必要はないが、とくにアルコール依存患者や肝不全合併患者では、血液検査で肝機能や電解質(低マグネシウム血症や低カリウム血症)を確認する。合併症の1つであるアルコール性ケトアシドーシス(alcoholic ketoacidosis:AKA)は、アニオンギャップ開大のアシドーシス所見が決め手ではあるが、嘔吐による代謝性アルカローシス、頻呼吸による呼吸性アルカローシスを合併し、解釈が単純ではない場合がある。ここ数日経口摂取できていない、嘔気・嘔吐、腹痛があるなどの臨床症状から積極的に疑うようにしたい。AKAの治療は脱水の補正と糖分の補充であり、それ自体では致死的な病態とならない。経過でアシドーシスが改善してこないようなら表3の鑑別疾患も念頭に置きたい。なお、ケトン体の存在の確認に試験紙法による尿検査を使用しても、血中で増加しているβヒドロキシ酪酸は反応を示さないので注意されたい。表3 アルコール性ケトアシドーシス(AKA)の鑑別疾患糖尿病性ケトアシドーシス重症膵炎メタノール、エチレングリコール中毒特発性細菌性腹膜炎ワンポイントレッスンアルコール離脱症候群アルコール常用者で、飲酒から6時間以上間隔が空いた際に出現する交感神経賦活症状(発汗、頻脈など)、不眠、幻視、嘔気・嘔吐、手指振戦、強直間代性発作で鑑別に挙げる。診断基準はDSM-5で定められているので参照いただきたい。慢性的なアルコール飲酒は脳内のGABAA受容体の感受性低下とNMDA受容体の増加を起こしており、アルコール摂取の急激な中止により興奮系であるNMDA受容体が活性化して症状が出現する。図26)のような時間経過で振戦せん妄へと移行していくが、早期に治療介入することで予防できる。図2 アルコール離脱症候群の重症度と時間経過画像を拡大する軽症症状は見逃がされやすく、またけいれんは飲酒中断後早期から生じ得るため注意が必要だ。治療の基本はベンゾジアゼピン系で、アルコールと同様にGABAA受容体に作用させ興奮を抑制させる。けいれん発作中ならジアゼパム(商品名:セルシン、ホリゾン)5〜10mgの静注を行うが、ルート確保困難な際はこだわらず、ミダゾラム(同:ドルミカム)10mgの筋注・口腔内・鼻腔内投与を行う。内服投与の際には、より作用時間の長いジアゼパム(代謝産物まで抑制効果を有する)やクロルジアゼポキシドを選択すればよい。アルコールの嗜好歴がある患者が入院する際には、アルコール依存のスクリーニングに有用7)なCAGE質問スクリーニング(表4)8)を用いて離脱予防の適応を判断しよう。表4 CAGE質問スクリーニング画像を拡大するウェルニッケ・コルサコフ症候群、脚気心慢性のアルコール摂取状態ではアルコール代謝においてビタミンB1が消費されるようになり、まともな食事を摂らなくなることも合わさりビタミンB1欠乏症を生じる。このうち神経系異常を引き起こしたものがウェルニッケ・コルサコフ症候群(dry beriberi)、心血管系異常を引き起こしたものを脚気心(wet beriberi)で、両者のオーバーラップも起こり得る。ウェルニッケ脳症は急性で可逆的とされる脳症のため積極的に疑い治療介入をしたいところだが、古典的3徴とされる眼球運動障害(眼球麻痺・眼振)、意識変容、失調のすべてを満たすものは16%だったとの報告もあり9)、これにこだわると見逃しやすい。Caineらが報告した診断基準(表5)は感度85%、特異度100%と報告されており10)、ぜひとも押さえておきたい。ビタミンB1は水溶性で必要以上の量は腎排泄されるので、疑えば治療doseである高用量チアミンで治療開始してしまおう。表5 ウェルニッケ脳症診断基準勉強するための推奨文献Sturmann K, et al. Alcohol-Related Emergencies: A New Look At An Old Problem. Emergency Medicine Practice. 2001;3:1-23.Muncie HL, et al. Am Fam Physician. 2013;88:589-595.参考1)Nore AK, et al. Tidsskr Nor Laegeforen. 2001;121:1055-1058.2)Lamminpaa A. Eur J Pediatr. 1994;153:868-872.3)Godbout BJ, et al. Emerg Radiol. 2011;18:381-384.4)Galbraith S, et al. Br J Surg. 1976;63:128-130.5)Homma Y, et al. Am J Emerg Med. 2018;36:673-676.6)Kattimani S, Bharadwaj B. Ind Psychiatry J. 2013;22:100-108.7)Fiellin DA, et al. Arch Intern Med. 2000;160:1977-1989.8)Ewing JA. JAMA. 1984;252:1905-1907.9)Harper CG, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1986;49:341-345.10)Caine D, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1997;62:51-60.執筆

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第250回 エムポックス薬の日本承認に専門家が驚いている

エムポックス薬の日本承認に専門家が驚いているエムポックスに適応を有する抗ウイルス薬tecovirimatをこの年末に日本が承認したことに専門家が驚いています1)。というのも、昨年に結果が判明した無作為化試験2つ・PALM007試験とSTOMP試験のどちらでもエムポックス治療効果が認められなかったからです。東京の日本バイオテクノファーマが先月12月27日に日本でのtecovirimatの承認を手にしました2,3)。日本での商品名はテポックスで、適応にはエムポックスに加えて、痘そう、牛痘、痘そうワクチン合併症の治療を含みます。コンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo)での無作為化試験であるPALM007試験の結果は昨夏2024年8月に発表され、クレードIのエムポックスの小児や成人の病変消失の比較で残念ながらtecovirimatはプラセボに勝てませんでした4)。PALM007試験で対象としたクレードIはコンゴ民主共和国やコンゴ共和国(Republic of the Congo)などの中央アフリカのいくつかの国で多く5)、感染の病状はより重く、西アフリカで広まるクレードIIに比べて死亡率が高いことが知られます(クレードIIの死亡率は約4%、クレードIは約11%6))。先月12月に結果が速報されたもう1つの無作為化試験であるSTOMP試験はクレードIIのエムポックス患者を対象とし、病変消失までの期間がtecovirimat群とプラセボ群でやはり差がありませんでした7)。ヒトへ安全に投与しうるが効果のほどはわかっていなかった2022年に、欧州連合(EU)と英国は男性と性交する男性(MSM)におけるエムポックス蔓延を受けてtecovirimatを承認しています。その承認時にEUは新たな試験結果が判明したらその扱いを見直すとしており、実際PALM007試験とSTOMP試験の結果を俎上に載せると欧州医薬品庁(EMA)の部門長Marco Cavaleri氏は言っています1)。また、ブラジル、スイス、アルゼンチンで進行中の試験結果も検討されます。そういう状況で日本がtecovirimatを承認したことはなんとも不可解だとCavaleri氏は話しています。エムポックスの疫学、ワクチン、治療、政策に関する論文8)を昨年11月に発表したメリーランド大学の薬理学者John Rizk氏は、承認の経緯が不可解なことが多いのは承知しているが、それでも日本のtecovirimat承認には驚愕した(shocker to me)と言っています。EUと同様に2022年にtecovirimatを承認した英国はというと、異例な事態の下で承認された薬すべてを毎年見直すことにしているとScienceに伝えています1)。米国FDAはエムポックスへのtecovirimat使用を承認していません。しかし、生物兵器として悪用される恐れがある痘そう(smallpox)への使用を日本と同様に承認しています。tecovirimatのエムポックスと痘そうに対する効果の仕組みは同じであり、痘そうへの同剤の承認も再考が必要かもしれません。生物兵器の襲来に備えた治療は必要だと思うが、tecovirimatに頼るのは気乗りしないとSTOMP試験リーダーTimothy Wilkin氏は言っています1)。参考1)In a ‘shocker’ decision, Japan approves mpox drug that failed in two efficacy trials / Science 2)新医薬品として承認された医薬品について / 厚生労働省3)テポックスカプセル 200mg(Tecovirimat)製造販売承認を取得 / 日本バイオテクノファーマ株式会社4)NIH Study Finds Tecovirimat Was Safe but Did Not Improve Mpox Resolution or Pain / NIH 5)Epidemiology of Human Mpox ‐ Worldwide, 2018-2021 / CDC 6)Bunge EM, et al. PLoS Negl Trop Dis. 2022;16:e0010141.7)The antiviral tecovirimat is safe but did not improve clade I mpox resolution in Democratic Republic of the Congo / NIH8)Rizk Y, et al. Drugs. 2025;85:1-9.

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第226回 インフルエンザ流行深刻化、医療現場は逼迫 子供の脳症にも注意/厚労省

<先週の動き>1.インフルエンザ流行深刻化、医療現場は逼迫 子供の脳症にも注意/厚労省2.新型コロナ感染拡大に歯止めかからず、5年間で死者13万人、高齢者が96%/厚労省3.民間病院に300億円超の財政支援、物価高騰や人件費上昇に対応/東京都4.東京女子医大元理事長を逮捕 1億円超の背任容疑で/東京女子医大5.カテーテル治療後死亡の10件、病院側は医療事故を否定/神戸徳洲会病院6.2度の救急受診も適切な対応取らず後遺障害、病院に5,000万円賠償命令/彦根市立病院1.インフルエンザ流行深刻化、医療現場は逼迫 子供の脳症にも注意/厚労省現在、全国的にインフルエンザが流行し、医療現場は逼迫した状況にある。国立感染症研究所のデータによると、2024年12月29日までの1週間の感染者数は、1医療機関当たり64.39人と過去最多を記録した。年末年始を挟んで感染者数は減少したものの、依然として高い水準で推移しており、予断を許さない状況となっている。今冬の流行の要因として、コロナ禍でインフルエンザの流行が抑制されていたことにより、集団免疫が低下していることが考えられている。とくに、コロナ禍の間に生まれた0~4歳の抗体保有率が低いという調査結果も出ており、今後の感染拡大が懸念されている。現在流行しているウイルスは、2009年に「新型」として流行した「A型」(H1N1)だが、2月以降は「B型」が広がる可能性もあり、型が異なると再度感染する恐れもある。インフルエンザの感染拡大を受け、厚生労働省は治療薬の在庫状況を公表した。1月12日時点で、全国の医療機関における治療薬の在庫は約1,110万人分あり、当面の需要に対応できる見込み。ただし、インフルエンザ治療薬のオセルタミビル(商品名:タミフル ドライシロップ)は供給不足の状態が続いており、厚労省は、同カプセルを調整して使用する場合には「院内製剤加算を算定できる」という見解を示している。インフルエンザの流行により、救急搬送が困難な事例も増加している。群馬県では、1月第2週(6~12日)の救急搬送困難事案が過去最多の159件に上った。また、インフルエンザ患者の増加により、多くの医療機関で病床が逼迫しており、東京都や島根県では、一部の病院で入院制限を行うなど、医療体制に影響が出ている。小児では、インフルエンザ脳症の発症に注意が必要である。けいれんや意識障害、異常行動などがみられる場合は、速やかに医療機関を受診する必要がある。また、高齢者や基礎疾患を持つ患者においても、インフルエンザは重症化のリスクが高いため、注意が必要。インフルエンザの流行は、今後もしばらく続く可能性があり、専門家は、今からでもワクチン接種などを推奨している。参考1)インフルエンザ流行レベルマップ 第2週(国立感染症研究所)2)2025年1月17日 直近1ヶ月間の通常流通用抗インフルエンザウイルス薬の供給状況について[1月12日時点](厚労省)3)インフルエンザ感染者、2週ぶり増加…現在流行の「A型」に続き2月以降は「B型」広がる可能性(読売新聞)4)子どものインフルエンザ脳症に注意を 意識障害や異常行動、重症化も(朝日新聞)5)「一気に増えた」インフル入院 コロナも増加、病院「高齢者に脅威」(同)6)インフルで病床逼迫 救急搬送困難最多159件、状況深刻 群馬県内(上毛新聞)7)インフル流行でタミフルドライシロップ等不足、タミフルカプセル調整使用で【院内製剤加算】等認める(Gem Med)2.新型コロナ感染拡大に歯止めかからず、5年間で死者13万人、高齢者が96%/厚労省新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者が再び増加傾向にある。厚生労働省によると、1月12日までの1週間における定点1医療機関当たりの患者報告数は7.08人で、前の週から1.33倍に増加した。新規感染者数が増加するのは2週ぶりで、全国的な流行期に入ってから患者数が増加するのは4週連続。都道府県別では、岩手県が12.82人と最も多く、次いで宮城県(11.99人)、徳島県(11.51人)と続いている。1月12日までの1週間に、新たに入院した患者数は2,889人で、前の週と比べて295人増えた。厚労省は、冬休みが終わったことで、学校などで感染がさらに広がる恐れもあるとして、引き続き対策の徹底を呼びかけている。COVID-19の感染者が国内で初めて確認されてから、1月15日で5年になる。この5年間で、感染者数は7,000万人以上、死者は13万人に上ると推計され、このうち96%が高齢者となっている。専門家は、COVID-19は依然として脅威であり、高齢者や基礎疾患を持つ人にとってはとくに危険であると指摘している。また、若い人でも後遺症のリスクがあることから、引き続き感染対策を継続する必要があると呼びかけている。具体的には、手洗い、マスクの着用、咳エチケットなどの基本的な感染対策に加え、ワクチン接種も有効な予防策となる。参考1)新型コロナ患者数 前の週の1.33倍に 厚労省“対策徹底を”(NHK)2)新型コロナ患者が前週比1.6倍増 約3.5万人に-定点報告数は3割増の7.08人 厚労省(CB news)3)新型コロナ国内初確認から5年、死者13万人・高齢者が96%(読売新聞)3.民間病院に300億円超の財政支援、物価高騰や人件費上昇に対応/東京都東京都は、2025年度予算案に、都内の全民間病院を対象とした総額321億円の財政支援を盛り込む方針を固めた。コロナ禍後の病院経営は、物価高や人件費の上昇、患者数の減少により厳しさを増しており、医療提供体制の安定確保が課題となっている。都は、都内に約600あるすべての民間病院に対し、入院患者1人当たり1日580円を給付するほか、高齢患者の受け入れや小児科、産科、救急医療の体制確保に対する支援を行う。1病院当たりの給付額は最大で2億円に達する見込みで、いずれの支援も1~3年間の時限措置となる。小池 百合子知事は、「本来は国が診療報酬の改定などで対応すべきものだが、緊急的、臨時的な対応として都内の物価を考慮した支援を行う」と述べている。病院経営は、物価高騰による光熱費や食材費の増加、人手不足による人件費の上昇、コロナ禍の収束後も続く患者の受診控えなどにより、悪化の一途をたどっており、都病院協会のアンケート調査によると、2023年度上半期に赤字だった都内の病院は49.2%に上り、前年同期より17.2ポイント上昇していた。こうした環境を踏まえ都は、安定的な医療体制を支えるには、民間病院への早急な財政支援が不可欠と判断し、今回の財政支援を決定した。高齢化が進む中、医療需要は増加が見込まれる一方、医療従事者の不足や病院の経営難など、医療提供体制の維持には多くの課題がある。都では、今回の財政支援により、医療機関の経営安定化を支援し、都民への医療提供体制の確保を目指すとしている。参考1)東京都 物価高騰対策等で民間病院に321億円支援 来年度予算は約9兆1,500億円(テレビ朝日)2)東京都、都内の全民間病院に総額300億円超の財政支援へ…医療提供体制の安定確保へ(読売新聞)4.東京女子医大元理事長を逮捕 1億円超の背任容疑で/東京女子医大東京女子医科大学元理事長の岩本 絹子容疑者(78)が、大学の資金約1億1,700万円を不正に流用したとして、1月13日に背任容疑で警視庁に逮捕された。岩本容疑者は、2014年に副理事長に、2019年には理事長に就任し、大学病院で起きた医療事故の影響で赤字に転落した大学の経営再建を主導した。しかし、その過程で、人事や経理などの権限を集中させ、「女帝」と呼ばれるほどの強権的な体制を築き、不透明な資金運用を行っていた疑いが持たれている。具体的には、2018年7月~2020年2月にかけて、新校舎建設工事を巡り、1級建築士の男性に実態のないアドバイザー業務の報酬として、大学に約1億1,700万円を支払わせ、その一部が岩本容疑者に還流していたとみられている。警視庁は、2023年3月に大学関係者から告発を受け捜査を開始し、2024年3月には大学本部や岩本容疑者の自宅などを家宅捜索した。その後、押収した資料などを分析した結果、今回の逮捕に至った。大学側は、岩本容疑者の逮捕を受け、謝罪し、再発防止に努めるとしている。警視庁では、岩本容疑者が、大学に他にも損害を与えた疑いがあるとみて、捜査を進めている。参考1)元理事長の逮捕について(東京女子医大)2)東京女子医大の岩本絹子元理事長を逮捕、新校舎工事で不正支出疑い 費用の一部還流か(産経新聞)3)東京女子医科大 元理事長 足立区の病院建設でも5,000万円還流か(NHK)4)岩本絹子容疑者が「5,000万円狙い」で東京女子医大理事会で「工作」(東京新聞)5)東京女子医大元理事長、不正資金送金用の専用口座作らせる…3,700万円自身に還流(読売新聞)5.カテーテル治療後死亡の10件、病院側は医療事故を否定/神戸徳洲会病院神戸徳洲会病院は、カテーテル治療後に患者が死亡した事例など10件について、外部専門家を含む院内検証の結果、医療事故には該当しないと発表した。同病院では2023年1月以降、カテーテル治療後に患者が死亡するなどの事例が12件発生し、うち3件は医療過誤と認められていた。今回検証された10件のうち9件は死亡事例だったが、病院側は「カテーテル検査や治療が死亡の原因になったものはない」と結論付けた。また、治療中に冠動脈損傷の合併症を引き起こした1件についても、処置は適切だったとしている。その一方で、患者や家族への説明が不十分だったことや、医師1人で治療方針を決めていた体制などについては問題があったと認めた。また、残る2件については、第三者による調査などを行い、引き続き医療事故に当たるかどうか検証を進めるとしている。検証対象のうち、唯一の生存例である80代女性は、カテーテル手術後に血管損傷が起こり、術後は息苦しさに襲われたと証言している。病院側は報告書で、血管損傷について「合併症として想定されるもの」と結論付けたが、女性は病院の説明に納得していない様子。カテーテルの専門医は、女性の血管損傷について「合併症は非常にまれで、あっても血がにじむ程度。医師は明らかに訓練不足」と指摘し、報告書でその点への言及がないことを問題視している。神戸徳洲会病院では、2023年7月に循環器内科の男性医師が関わったカテーテル治療後、複数の患者が死亡していたことが発覚し、神戸市から改善命令を受けていた。その後、病院側は改善計画を提出しているが、今回の検証結果を受け、さらなる改善が必要となる可能性もある。参考1)調査報告 循環器内科カテーテル治療・検査に関する事例(神戸徳洲会病院)2)神戸徳洲会病院_カテーテル検査治療個別検証報告(同)3)神戸徳洲会病院 カテーテル治療10件“医療事故にあたらず”(NHK)4)死亡など10件「事故あたらず」…神戸徳洲会がカテーテル報告書公表(読売新聞)5)神戸徳洲会病院、10件「医療事故該当せず」患者死亡問題で見解公表(産経新聞)6.2度の救急受診も適切な対応取らず後遺障害、病院に5,000万円賠償命令/彦根市立病院彦根市立病院(滋賀県彦根市)で2019年、頭痛を訴えて2度にわたり救急受診した高齢女性に対し、医師が適切な検査を行わなかったため、慢性硬膜下血腫の診断が遅れ、女性に高度意識障害などの後遺症が残ったとして、大津地裁は1月17日、彦根市におよそ5,000万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。女性は2度の受診時に「今までに経験したことがない頭痛」などと訴えていたが、医師は鎮痛剤などを処方し、帰宅させていた。2度目の受診の翌日、女性は意識障害を起こして救急搬送され、慢性硬膜下血腫などと診断されて手術を受けたが、後遺症が残ったという。判決で、大津地裁の池田 聡介裁判長は、女性が訴えていた症状や服用していた薬などから、医師は脳の病気などを疑うべきだったと指摘。遅くとも2度目の受診時にCT検査などを行っていれば、後遺症を回避できた可能性が高いとして、病院側の過失を認めた。女性は提訴後の2022年に老衰で死亡しており、遺族が訴訟を引き継いでいた。彦根市立病院は、「判決文が届いていないため、現時点ではコメントを差し控えます」としている。参考1)頭痛で受診した高齢女性めぐり病院運営する市に賠償命令 大津地裁「後遺症、回避できた可能性高い」(京都新聞)2)市に5,000万円賠償命令 彦根市立病院、診断ミスで重い後遺症 地裁(毎日新聞)

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1月20日 血栓予防の日【今日は何の日?】

【1月20日 血栓予防の日】〔由来〕「大寒」に前後する、この時季は血栓ができやすいという背景と「20」を「ツマル」と語呂合わせして日本ナットウキナーゼ協会が制定。「ナットウキナーゼ」が血栓を溶解し、脳梗塞や心筋梗塞を予防する効果があることを啓発している。関連コンテンツ抗凝固薬を飲むにあたって【患者説明用スライド】心筋梗塞へのコルヒチンは予後を改善するか/NEJM産後VTE予防のエノキサパリン、より高リスク例へ限定可能?/JAMA心房細動を伴う脳梗塞後のDOAC開始、早期vs.晩期/Lancetコーヒー5杯/日以上で脳梗塞リスクが高まる!?

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RA合併肺がんに対するICI治療を考える【肺がんインタビュー】第107回

第107回 RA合併肺がんに対するICI治療を考える自己免疫疾患を合併するがん患者の治療においては、がん治療と自己免疫疾患の管理が複雑に絡み合う。とくに、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)などのがん免疫療法では、不明点が多い。そのような中、大阪南医療センターの工藤 慶太氏らがリウマチ(RA)合併肺がんのICI治療に関するリアルワールド試験を行った。自己免疫疾患合併がん、治療のジレンマ自己免疫疾患合併がんはがん治療医を悩ませる。がん治療による自己免疫疾患悪化、自己免疫抑制治療によるICIの有効性低下、自己免疫疾患の免疫亢進による免疫関連有害事象(irAE)発現といったClinical Questionに答えはない。画像を拡大する自己免疫疾患のなかでも頻度の高いRA患者は、一般集団に比べて発がんリスクが高い。とくに悪性リンパ腫、肺がんで多いと報告されており1)、肺がん患者のRA合併率は5.9%との報告もある2)。「自己免疫疾患イコールICI適用外」ではないICIは固形がんの生存予後に大きく関わり、今や治療に欠かせない。そのため、がん治療医はICIを使いたいと考える。しかし、自己免疫疾患合併がんにおけるICI治療に関しては前向きなデータがない。米国リウマチ学会(ACR)、日本リウマチ学会いずれのガイドラインにもICIの記載はない。がん免疫療法の使用を妨げるべきではなく、ベースラインの免疫抑制レジメンは可能な限り低用量にして維持する必要があるとする欧州リウマチ学会(eular)ステートメント、Annals of Oncology誌で発表された自己免疫疾患合併がんにおけるICI使用指針(レビュー)が数少ない指標だ。そういう状態の中、工藤氏は、さまざまなレトロ研究を分析し、自己免疫疾患イコールICI適用外というわけではない、という判断に至る。画像を拡大する工藤氏が所属する国立病院機構 大阪南医療センターは、年間約2,500名のRA診療が行われており、腫瘍内科医として以前からRA合併がん患者を診療する機会が多かったという。そのような中、あるIV期のリウマチ合併肺がん患者に関し、リウマチ主治医から「RAはコントロールするから、がんを何とかして欲しい」と依頼される。南大阪の5病院で後ろ向き試験を行う工藤氏は、まったくデータがない中、自施設でデータをまとめ出した。それが、南大阪の5病院でRA合併進行肺がんに対するICIの安全性と有効性を検証する後ろ向き試験に繋がった。この試験はリアルワールド研究なので、リウマチの治療内容も、ICIの治療内容も多種多様である。この試験の最も大きな特徴は、RAの疾患活動性が把握できている点である。実際に解析対象に含まれた疾患活用性のあるRAは81%にのぼる。「既報では疾患活動性のあるRAの割合は20〜30%、活動性RA合併例をこれだけ反映しているデータは貴重」と工藤氏は言う。画像を拡大する研究の結果、リウマチが急性に増悪(フレア)しても、きちんとコントロールすれば、ICI治療が継続できるICI投与後にRAのフレアを認めた症例は22例中9例(41%)。フレアはICI投与後早期に起こっている。ただ、フレアした9例中7例はICIを継続できている(ICI中止1例、一時中止1例)。工藤氏は「フレアしても、RAをきちんとコントロールすれば、ICI治療は継続できた」と結論する。画像を拡大するICIの治療効果については、少数例のレトロスペクティブ研究であるが、一般的なICIの効果と比較して劣るというようなデータではないという。治療継続期間は1年を超えており、「多くの症例で治療継続できていると示されたことには大きな意味がある」と工藤氏は指摘する。irAEについては、22例中9例(41%)に発現した。irAE発現4割程度という数値は、海外データと同等であり、免疫活動性のある日本の患者であってもirAEは必ずしも高くならないという結果だ。つまり、ICI投与によってリウマチの増悪やirAEが増えても、管理できれば、ICIの治療効果は非自己疾患非合併例と変わらないことになる。画像を拡大するがん治療医は必ずしもリウマチ治療の経験が深いとは言えない。また、リウマチ専門医も多くの方はがん治療についての知識・理解が十分とは言えない。たとえば、リウマチの場合、安定していれば3ヵ月に1回程度の外来で済むが、ICIを使う場合は短期フォローが必要である。「免疫の専門医とがん治療の専門医で治療方針についてすり合わせていくことが重要」と工藤氏は言う。 RA合併がんにおけるRA治療の方針工藤氏らは自施設の治療の方針も提案している。この方針はがん治療開前と開始後について、IC I+化学療法とICI単独に分けて作成されている。(詳細は下図)原則として、がん治療開始前・開始後ともはリウマチのステロイドはできるだけ低用量にして継続し、DMARDsを中止する。がん治療開始後にRA症状が悪化したら、ICI治療に拮抗するとされるアバタセプトと、がん発生リスクのあるJAK阻害薬を除いたDMARDsを再開。さらにコントロール不良の場合は、がん免疫に悪影響をおよぼさないとされるIL-6阻害薬を第一選択として用いる。画像を拡大する画像を拡大する自己免疫疾患合併がん患者にもICIの恩恵を十分に与えるICIは固形がんの生存予後に大きく関わり、今や治療に欠かせない薬剤である。RA合併肺がんの治療に十分なエビデンスがあるとは言えないが、「エビデンスだけを考えてしまうと、本来治療できる患者も治療を受けられない危惧がある」と工藤氏は言う。自己免疫疾患治療医と連携して、自己免疫疾患合併がん患者にもICIの恩恵を十分受けられるよう努めるべきであろう。参考1)LK Mercer, et al.Rheumatology (Oxford).2012;52:91-98.2)Khan SA, et al. JAMA Oncol.2016;2:1507-1508.

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メリオイドーシス(類鼻疽)【1分間で学べる感染症】第19回

画像を拡大するTake home messageメリオイドーシス(類鼻疽)は主に東南アジアや北オーストラリアで多発する感染症。国内への持ち込み例もあるため注意が必要。臨床症状は多様で致死率が高いため、迅速な診断と治療が重要。皆さんは、メリオイドーシス(類鼻疽:るいびそ)という感染症を耳にしたことがありますか。日本で遭遇することはまれではあるものの、さまざまな症状を呈し、20~40%と致死率も高いため、臨床としては疾患の概念と治療のポイントを知っておくことが重要です。今回は、このメリオイドーシスに関して重要なポイントを学んでいきます。原因菌メリオイドーシスは、主に東南アジアや北オーストラリアで発生する感染症で、Burkholderia pseudomalleiという好気性グラム陰性桿菌が原因となります。渡航者を中心として日本でも散見されています。流行地、潜伏期間メリオイドーシスの潜伏期間は1~21日間で、中央値は9日とされています。流行地として東南アジア、北オーストラリアを中心に、中南米でも報告されています。最近では、2022年に米国において、輸入のアロマ用品を媒介としたアウトブレイクが発生しました。臨床症状メリオイドーシスの臨床症状は非常に多様で、肺炎、皮膚や内臓(とくに肝臓や脾臓)の膿瘍、菌血症、さらに骨関節感染症などが報告されています。不明熱として慢性の経過をたどる場合が多いですが、菌血症や肺炎などの基礎疾患を持つ患者では急速に致死的な転帰をたどることもあります。したがって、流行地域への渡航帰りの患者においては、常に鑑別診断の1つとして念頭に置くことが重要です。治療法、注意点治療法としては、初期治療と根治治療の両方が推奨されます。急性期には、セフタジジムまたはメロペネムの点滴が用いられます。状態が改善した後には、ST合剤やアモキシシリン・クラブラン酸による長期の内服治療が必要です。治療の遅れが不幸な転帰を起こす可能性が高いため、迅速な診断と治療介入が求められます。本疾患は、バイオテロリズムの潜在的リスクがあることでも注目されています。感染力の高さから、監視対策の強化や輸入例への迅速な対応、国内外の臨床医に対する啓蒙が求められています。以上、メリオイドーシスは東南アジアや北オーストラリアからの渡航帰りの患者を中心に、上記の臨床症状を見た際に迅速な診断と治療を遂行できるよう心掛けましょう。1)Limmathurotsakul D, et al. Nat Microbiol. 2016;1:15008.2)Wiersinga WJ, et al. N Engl J Med. 2012;367:1035-1044.3)Gee JE, et al. N Engl J Med. 2022;386:861-868.4)Gassiep I, et al. Clin Microbiol Rev. 2020;33:e00006-e00019.

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