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鎮静下の低酸素血症予防、側臥位vs.仰臥位/BMJ

 低酸素血症は、鎮静中の患者の重篤かつ生命を脅かす可能性のある合併症で、救急診療部や内視鏡検査、入院・外来処置中などさまざまな場面で発生し、緩和医療でも問題となるため、より負担の少ない呼吸法とともに、予防戦略の最適化が不可欠とされる。中国・浙江大学のHui Ye氏らの研究チームは、鎮静中の低酸素血症を回避するための体位として、側臥位と仰臥位の効果を比較する目的で、同国の14施設で多施設共同無作為化対照比較試験を行い、鎮静下の成人患者の体位を側臥位とすることで、安全性を損なわずに低酸素血症の発生率と重症度が有意に軽減し、気道確保介入の必要性も低下したことを明らかにした。BMJ誌2025年8月19日号掲載の報告。低酸素血症が約10%減少 本試験では、2024年7~11月に、鎮静下にある成人(年齢18歳以上)患者2,143例を登録。1,073例を側臥位(介入群)、1,070例を従来の仰臥位(対照群)に無作為に割り付けた。全体の平均年齢は53.1(SD 14.9)歳、女性が1,150例(53.7%)であった。 主要アウトカムである体位変換から10分以内の低酸素血症(酸素飽和度[SpO2]≦90%)の発生率は、対照群が15.0%(161/1,070例)であったのに対し、介入群は5.4%(58/1,073例)と有意に低かった(補正後リスク比:0.36[95%信頼区間[CI]:0.27~0.49]、p<0.001)。1件の低酸素血症を予防するための側臥位への体位変換の必要数(NNT)は11(95%CI:9~16)だった。副次アウトカムも良好 4つの副次評価項目は、いずれも介入群で有意に良好であった。(1)気道確保介入(酸素流量の増量、下顎挙上法、マスク換気など)を要する患者の割合:介入群6.3%(68/1,073例)vs.対照群13.8%(148/1,070例)、補正後リスク比:0.46(95%CI:0.34~0.61)、p<0.001。1件の気道確保介入を回避するための側臥位への体位変換のNNTは15(95%CI:11~22)だった。(2)重症低酸素血症(SpO2≦85%)の発生率:同0.7%(8/1,073例)vs.4.8%(51/1,070例)、0.16(0.07~0.33)、p<0.001。(3)標準的な退院基準を満たすまでの麻酔後ケアユニット(PACU)の平均在室時間:同38.2分vs.40.5分、補正後絶対平均差:-2.22分(-3.63~-0.80)、p=0.002。(4)最低SpO2(10分間の連続測定の最低値)の平均値:同96.9%vs.95.7%、1.20%(0.87~1.54)、p<0.001。頻脈が有意に減少 安全性の評価項目のうち、頻脈(心拍数>100回/分)が介入群で有意に少なかった(6.7%vs.10.4%、率比:0.65[95%CI:0.48~0.87]、p=0.004)。 一方、徐脈(心拍数<50回/分)(介入群4.8%vs.対照群4.9%、0.98[0.67~1.45]、p=0.93)、低血圧(収縮期血圧<80mmHg)(1.0%vs.0.8%、1.26[0.52~3.04]、p=0.61)、新規不整脈(0.8%vs.0.7%、1.12[0.43~2.91]、p=0.81)、咳嗽(9.5%vs.10.1%、0.94[0.71~1.23]、p=0.64)、悪心/嘔吐(1.7%vs.2.1%、0.78[0.42~1.44]、p=0.42)の頻度は、両群間で差を認めなかった。 著者は、「簡便で費用も安価であることから、側臥位は遠隔地や医療資源が限られた臨床の現場に利点をもたらす可能性がある」と述べるとともに、「これらの知見の一般化可能性を高めるには、高齢者やBMIの高い患者を対象に再現性を確かめるための研究を要する」としている。

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血液透析患者へのスピロノラクトン、心血管イベントを抑制するか/Lancet

 慢性血液透析を受けている腎不全患者は、一般集団と比較して心血管疾患による死亡リスクが10~20倍高いが、血液透析患者は通常、心血管アウトカムを評価する臨床試験から除外されるという。フランス・Association ALTIRのPatrick Rossignol氏らALCHEMIST study groupは、心血管イベントのリスクの高い血液透析患者において、ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬スピロノラクトンの有効性を評価する目的で、研究者主導の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照イベント主導型試験「ALCHEMIST試験」を実施。スピロノラクトンは主要心血管イベント(MACE)の発生を抑制しなかったことを示した。研究の詳細は、Lancet誌2025年8月16日号に掲載された。欧州3ヵ国の早期中止試験 本試験は、2013年6月~2020年11月に3ヵ国(フランス、ベルギー、モナコ)の64施設で参加者を登録し行われた(フランス保健省の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、腎不全で慢性血液透析(週3回以上)を受けており、少なくとも1つの心血管合併症またはリスク因子を有する患者644例であった。スピロノラクトン群(25mg/日まで漸増、経口投与)に320例、プラセボ群に324例を無作為に割り付け、主要エンドポイントであるMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、急性冠症候群、脳卒中、心不全による入院)の発生率を評価した。 試験は2022年11月(最後の参加者の追跡期間が2年の時点)に資金不足のため早期中止となった。MACE発生率は改善せず 全体の年齢中央値は70.8歳(四分位範囲[IQR]:63.5~78.1)、男性が444例(69%)で、血液透析期間中央値は1.7年(IQR:0.7~4.5)だった。追跡期間中央値は32.6ヵ月(17.3~48.4)であった。 MACEの発生率は、スピロノラクトン群で24%(78/320例、10.66/100人年[95%信頼区間[CI]:8.54~13.31])、プラセボ群で24%(79/324例、10.70/100人年[8.59~13.35])と、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.00[95%CI:0.73~1.36]、p=0.98)。 MACEの各項目では、心不全による入院(2%[7/320例]vs.5%[17/324例]、HR:0.41[95%CI:0.17~1.00])の発生率がスピロノラクトン群で低かったが、他の項目については両群間に差はなかった。忍容性は良好 副次エンドポイントについては、心停止からの蘇生を含む非致死的心血管イベント(12%[37/320例]vs.17%[56/324例]、HR:0.66[95%CI:0.43~0.99])の発生率はスピロノラクトン群で良好であった。一方、全死因死亡、心血管系以外の原因による死亡、高カリウム血症(血清カリウム値>6mmol/L)、低カリウム血症(同<4mmol/L)の発生率には両群間に差がなかった。 スピロノラクトン群の忍容性は良好であった。とくに注目すべき有害事象としての高カリウム血症の発生率の群間差は1.8%ポイント(イベント発生率はスピロノラクトン群11.7%vs.プラセボ群9.9%)、とくに注目すべき重篤な有害事象としての高カリウム血症の発生率の群間差は2.7%ポイント(28.3%vs.25.6%)と小さかった。5試験のメタ解析でもほぼ同様の結果 既報の4試験と本試験を対象にメタ解析を行った。その結果、プラセボと比較してミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、全死因死亡(オッズ比[OR]:0.71[95%CI:0.41~1.24]、p=0.23、I2=43%)、心血管死(0.72[0.33~1.58]、p=0.41、I2=57%)、非致死的心血管イベント(1.00[0.77~1.30]、p=0.99、I2=0%)の改善をもたらさなかった。 また、プラセボに比しミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、高カリウム血症イベント(OR:1.04[95%CI:0.90~1.20]、p=0.58、I2=0%)の発生率を上昇させなかった。 著者は、「本試験および本試験を含むメタ解析の結果は、スピロノラクトンが心血管リスクの高い血液透析を受けている腎不全患者に臨床的有益性をもたらさないことを示している」「これらの患者におけるミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の適応外使用が、心血管死や全死因死亡を有意に低下させたとする実臨床データがあるが、本試験の知見はこれを支持しない」としている。

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科学分野において組織的な不正行為が急速に増加

 科学における不正行為が広がり、学術研究の健全性に深刻な脅威をもたらしていると、米ノースウェスタン大学工学・応用数学教授のLuis A.N. Amaral氏らのグループが警鐘を鳴らしている。Amaral氏らの報告によると、秘密裏に不正を働く人のネットワークが広がり、かつてないほど速いペースで科学分野において虚偽の成果が生み出されているという。詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に8月4日掲載された。 科学における不正行為に関するニュースは通常、論文の撤回、データの改ざんまたは盗用など、成功のために近道をしようとする個人による単発の事例について報じたものが多いとAmaral氏らは言う。しかし、同氏らが今回行った調査によって、世間の目に触れないところで虚偽の科学を量産している闇のネットワークの存在が明らかになった。 Amaral氏らは撤回された論文を分析し、質や倫理基準を満たさないとして主要なオンライン科学データベースから除外された学術誌に掲載された研究を調べた。その結果、質の低い原稿を量産し、新しい論文をすぐに発表したい学者に販売する「ペーパーミル(論文工場)」の組織的なネットワークの存在が明らかになった。これらのレディメイドの論文には、捏造されたデータや、加工または盗用された画像、盗作された内容が含まれている。また、意味不明な内容や物理的にあり得ない内容が含まれていることもある。 Amaral氏は、「論文工場に捕らわれる科学者は増え続けている。彼らは論文だけでなく、引用数まで買うことができる。こうした行為によって、ほとんど自分では研究していないにもかかわらず、あたかも評価の高い科学者であるかのように自分を見せかけることができるのだ」と言う。また、論文の筆頭著者であるノースウェスタン大学のReese Richardson氏は、「論文工場は、正当な評価を得た科学者であるかのように見せるための手段となり得るものなら、基本的には何でも売る。彼らはしばしば著者枠を数百ドルから数千ドルで販売している。筆頭著者のポジションにはより高価、第四著者など後ろのポジションにはより安価な金額が設定されていることもある。また、自分が書いた論文を、形だけの査読プロセスを通じて受理させるためにお金を払う人もいる」と話している。 さらに本研究では、不正行為を働くネットワークには論文を発表するための複数の戦略があることも明らかになった。具体的には、1)複数の研究グループが共謀して複数の学術誌に論文を発表し、その活動が発覚した場合にのみ論文を撤回する、2)ブローカーが虚偽の論文の大量出版を調整する仲介役として機能する、3)虚偽の報告であることが見抜かれたり阻止されたりする可能性が低い、特定の限られた研究分野に照準を絞る、といったものである。 Amaral氏は、「ブローカーは、舞台裏にいるあらゆる人々をつないでいる。論文の執筆者、著者として名前を載せるためにお金を払う人、そして、それらを掲載してくれる学術誌を見つける必要がある。さらに、論文を受理してくれる編集者も必要だ」と話す。研究グループによると、これらのグループは、評価の高い学術誌を回避する方法として廃刊になった学術誌を「乗っ取る」こともある。廃刊となった学術誌の名前やウェブサイトを引き継ぎ、その身元を密かに偽装して、あたかも正規の発行元から出ているように見せかけて不正論文を量産していくのだという。 さらに、人工知能(AI)の登場によって科学における不正行為がさらに広がる恐れがあるという。Richardson氏は、「既存の不正にも対処できていないのであれば、生成AIが科学文献に与える影響に対処できるはずがない。将来、どんな内容のものが論文として公表されるのか、何が科学的事実と見なされて将来のAIモデルの学習に使われるのか、われわれは全く分からない。そして、そのAIモデルがさらに論文を書くことになるのだ」と懸念を示している。 Amaral氏らは、編集プロセスの精査を強化し、捏造された研究の検出能を高め、不正を働くネットワークの調査を進め、科学におけるインセンティブのシステムを再構築することで、アカデミアがこの脅威に対抗する必要があると述べている。

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第277回 コロナの今、感染・入院・死亡者数まとめ

INDEX定点報告数推移入院・重症化例死亡者数新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が感染症法の5類に移行したのが2023年5月8日。それから丸2年以上が経過した。現在、全国的に感染者が増加していると報道されているが、先日の本連載でも報告したように地域の基幹病院では、流行期に苦境を迫られているのが現実だ。もっとも世の中全体が新型コロナについて「喉元過ぎた熱さ」化した今、5類移行以後の新型コロナがどのような経過をたどってきたかについての認識は、医療者の中でも差があるだろう。私自身は医療者ではないが、隠さず言ってしまえば、まさに喉元過ぎた熱さ化しつつあるのが実際である。ということで、自省も込めてこの段階で、5類移行から現在に至るまでの新型コロナの状況について経過をたどってみることにした。今回は感染者数、入院者数、死亡者数についてまとめてみた。定点報告数推移まず、5類移行後の一番大きな変化としては感染者報告が定点報告1)となった点である。その最初となった2023年第19週(5月8~14日)は全国で2.63人。この後は第35週(8月28日~9月3日)の20.50人まで、途中で第31週(7月31日~8月6日)と第32週(8月7~13日)に前週比で若干減少したことを除けば、ひたすら感染者は増加し続けた。ただ、ここからは急速に減少し、わずか4週後の第39週(9月25日~10月1日)には8.83人まで減少。第44週(10月30日~11月5日)には第19週の水準を下回る2.44人となった。16週間かけてピークまで増加した感染者数が9週間で減少したことになる。最終的には第46週(11月13~16日)の1.95人で底を打った。もっともここからは再び増加に転じ、この年の最終週の第52週(12月25~31日)には5.79人と6週間で約3倍まで増加した。2024年第1週(1月1~7日)は6.96人で始まり、第5週(1月29日~2月4日)に16.15人。以後は第18週(4月29日~5月5日)の2.27人まで一貫して減少したが、第19週(5月6~12日)からは2.63人と反転し、第30週(7月22~28日)の14.58人まで増加を続けた。そしてこれ以降は再び減少し始め、第45週(11月4~10日)の1.47人がボトムとなり、最終週の第52週(12月23~29日)は7.01人。7週間で5倍弱に増加した。2025年は第1週(2024年12月30日~2025年1月5日)が5.32人と2024年最終週からは減少したものの、翌第2週(1月6~12日)は7.08人と跳ね上がり、これが冬のピーク。この後は緩やかに減少していき、第21週(5月19~25日)、第22週(5月26日~6月1日)ともに0.84人まで低下。そこから再び一貫した上昇に転じ、最新の第33週(8月11~17日)が6.30人である。このデータを概観すると、1月中が冬のピークで、その後は感染者が減少。5月中下旬から感染者が増加し、7~8月にピークを迎え、そこから11月中旬にかけてボトムとなり、再び増加に転じるという流れが見えてくる。現時点において、この夏まで4つの波が到来している形で、年々ピークの感染者数は低下している。もっとも、これは以前書いたようにウイルスの感染力が低下しているわけではなく、次第に多くの人がコロナ禍を忘れ、喉の痛みや鼻水が大量に出るなどの呼吸器感染症の症状が出ても受診・検査をしていないケースが増えているからだろう。また、注意が必要なのが定点報告医療機関数の変化である。2025年第14週(3月31日~4月6日)までは約5,000医療機関だったが、これが再編されて第15週以後は約3,000医療機関に変更されていることだ。その意味ではもはや定点報告数は大まかに流行を捉えるという位置付けにすぎないといえるだろう。そうした中でこの流行の波形を見ると実は特徴的な地域がある。沖縄県だ。同県の場合、ほかの都道府県に見られる冬期の波がほとんどない。これは同県が日本では唯一の亜熱帯に属する県であることが理由だろう。すなわち冬に暖房を使って屋内に籠ることがほとんどないということだ。つまるところ「暑さや寒さでエアコンを使い換気が悪くなる時期に各地で感染者が増加する」という従来からの定説を如実に裏付けているともいえる。実際、夏前の流行の立ち上がり時期を見ると、九州・沖縄地方は全国傾向と同じ毎年第19週前後だが、北海道や東北地方は第25週前後である。逆に冬期は北海道、東北地方は第42週前後に感染者が増加し始めるが、九州地方では第49週前後である。入院・重症化例最も医療機関にとって負荷がかかるのは新型コロナによる入院患者の増加であることはいうまでもない。厚生労働省では医療機関等情報支援システム(G-MIS)2)のデータから週報とともに重症化事例も公表している。当然ながら、定点報告の感染者数のピーク前後で入院事例が増えると考えられるため、各ピーク期に絞ってその状況を取り上げる。まず、2023年については、夏のピークだった第35週の直前である第34週(8月21~27日)の全国の新規入院患者数1万3,972人がピークである。この時の7日間平均でのICU入院中患者数が228人、ECMOまたは人工呼吸器管理中が140人である。ICU入院中の患者数は第33~36週までは200人超である。2024年の冬季の感染者数ピークは第5週だが、入院患者のピークはその前の第3週(1月15~21日)の3,494人である。夏に比べて一気に入院患者数が減少したようにもみえるが、これは2023年9月25日より、入院患者数をG-MISデータ(約3万8,000医療機関)から全国約500ヵ所の基幹定点医療機関からの届出数に変更したためである。その代わり、この時点から入院患者の年齢別などの詳細が報告されるようになっている。この2024年第3週の入院患者の年齢別内訳を見ると、60歳以上の高齢者(同データは65歳以上の区分なし)が83.1%を占めている。これ自体は驚くことではない。ただ、10歳刻みの年齢区分で見ると、60歳以降の3区分と50~59歳の区分に次いで多いのが1歳未満である。また、この時の入院時のICU入室者は117人、人工呼吸器利用者は57人である。さらに同年夏の入院患者数ピークは、感染者数ピークの第30週の翌週である第31週(7月29日~8月4日)の4,590人。この時も60歳以上の高齢者が84.4%を占め、第3週前後の時と同様に60歳以降の3区分と50~59歳の区分に次いで1歳未満の入院患者が多い。この週のICU入室者は187人、人工呼吸器の利用者は80人。2025年冬の入院患者数ピークは、感染者数ピークと同様の第2週で2,906人。60歳以上の高齢者割合は86.0%。年齢階層別の入院患者数で1歳未満が高齢者層に次ぐのは、この時も同じだ。この週のICU入室者は120人、人工呼吸器の利用者は54人だった。死亡者数人口動態統計3)の年次確定数で見ると、2023年の新型コロナによる死亡者数は3万8,086人。前年の2022年が4万7,638人である。ちなみに2023年のインフルエンザの死亡者数が1,383人である。2024年(概数)は3万5,865人、2025年については現在公表されている3月までの概数が1万1,207人である。ちなみに前年の1~3月は1万2,103人であり、やや減少している。ここでまたインフルエンザの死亡者数を挙げると、2024年が2,855人、2025年1~3月が5,216人である。今年に入りインフルエンザの死亡者は増加しているものの、新型コロナの死者は2023年でその27.5倍、2024年で12.6倍にも上る。この感染症の恐ろしさを改めて実感させられる。次回は流行株の変遷とワクチン、治療薬を巡る状況を取り上げようと思う。 参考 1) 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等) 2) 厚生労働省:医療機関等情報支援システム(G-MIS):Gathering Medical Information System 3) 厚生労働省:人口動態調査

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東海大学医学部 乳腺・腫瘍科学【大学医局紹介~がん診療編】

新倉 直樹 氏(教授)寺尾 まやこ 氏(講師)清原 光 氏(助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴当科は乳腺の悪性疾患から良性疾患まで対応し、東海大学医学部付属病院(伊勢原・神奈川)では乳腺専門医5名を中心に乳がんの診療をし、2023年の当科の年間手術症例数は355件(全身麻酔での乳がん手術322例)でした。がん薬物療法専門医3名が所属しており、その他の悪性腫瘍の患者さんも積極的に受け入れ、薬物療法も行っています。遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)に対しては遺伝子診療科と連携し、BRCA検査、その他の家族性腫瘍に対する検査にも対応しています。乳房再建においては形成外科と連携し腹直筋、広背筋皮弁再建やインプラント再建も行っております。独自の取り組みとしては、乳腺・腫瘍科の中に外科専門医と内科専門医が混在しているチームとなり、外科医が薬物治療を行うのと同時に、内科出身であっても、診断・手術を行っています。医師の育成方針当科では外科系以外に、2008年より内科系の乳腺専門医を目指す医師を育成しており、今後も外科・内科問わずさまざまなバックグラウンドを持つ乳腺専門医を目指す医師を募集しています。乳腺・腫瘍科として診断から外科的手術、薬物療法まで行える医師の育成を行っております。さらには研究については、基礎研究、データベース研究、新規薬剤の開発治験、留学制度など本人のやりたいことをサポートできる環境を整えてあります。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力東海大学乳腺・腫瘍科学は、外科系・内科系を問わず乳がん診療全般に関わることができること、「がん薬物療法専門医」が複数名おりオンコロジストとして乳がん以外の悪性疾患の臨床や研究に携わることができるのが大きな魅力です。複雑な症例の相談や、原発不明がんの治療など自施設に限らず地域の医療機関の患者さんたちに適切な治療を提供することは、医師としてやりがいを感じられます。次世代オンコロジストの育成にも力を入れ、幅広く腫瘍学を学ぶことができる環境が整っており、基礎研究に関心のある方にも、多様なテーマに取り組める機会があります。復職・キャリア再開を考えている医師へのメッセージ当教室では、3年目専攻医でなくても、結婚・出産・家庭の事情などで一度離職された先生方や、過去に他の医療機関に在籍していた方の復職も可能です。東海大学医学部には「復職支援室」を設けており、復職支援、長期離職予防、キャリア支援などを積極的に行っています。復職にあたって不安をお持ちの方には、診療科を問わず個別相談や研修の提案なども可能です。まずは相談だけでも、ぜひお気軽にご連絡ください。これまでの経歴宮崎大学を卒業後、神奈川県内の市中病院で初期臨床研修を行いました。現在の医局に入局し、医師7年目になります。初期研修中に乳腺診療の魅力を知り、この分野を選びました。同医局を選んだ理由乳腺外科を選んだ理由は、1)診断から手術、周術期治療、再発転移の治療まで一貫して携わることができること、2)患者さんの多くが女性であり女性医師の需要が高いこと、3)ワークライフバランスも大切にできることの3点です。東海大学では、乳腺専門医取得に向けて外科系だけでなく内科系ローテーションを選択することができました。とくに薬物療法に興味があった私は、この点を魅力に感じ、東海大学に入局を決めました。現在学んでいること医師3~5年目は当院の内科系と乳腺外科で専攻医として勤務し、うち1年間は国立がん研究センター東病院で腫瘍内科を中心に研修させていただきました。その後内科専門医を取得し、現在は外来や手術を中心に乳腺診療全般を学んでいます。また、研究にも取り組み、学会発表や論文執筆を進めています。さらに、がん薬物療法の理解を深めるため、遺伝子パネル検査のエキスパートパネルにも参加し、他がん種についても学んでいます。東海大学医学部 乳腺・腫瘍科学住所〒259-1193 神奈川県伊勢原市下糟屋143問い合わせ先mamma@tokai.ac.jp医局ホームページ東海大学医学部 乳腺・腫瘍科学専門医取得実績のある学会日本外科学会日本内科学会日本乳学会日本臨床腫瘍学会日本治療学会日本遺伝性腫瘍学会研修プログラムの特徴(1)東海大学では、大学院に進学する場合、臨床助手・ハイブリッドコースを選択し、学位を取得することができます。また、臨床助手の7割の給与が支給されます。(2)男女を問わず、結婚・出産後の待遇について相談に応じます。産休・育休制度を活用し、最大産後1年間の休職が可能です。短時間勤務制度(20~28時間勤務/週、子供が9歳になるまで、最大3年間)を利用することもできます。この制度を利用し、復帰後も他医師と同様に臨床・研究・教育を継続することができる体制を整えております。本院(伊勢原)、八王子病院ともに院内保育所を併設しており、利用時間は7:00~22:00です。詳細はこちら

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「苦しいのは仕方がない」という患者さん【非専門医のための緩和ケアTips】第106回

「苦しいのは仕方がない」という患者さん私たち医療者は、臨床を通じ、さまざまな患者さんと関わります。今回は私がかつて経験し、対応に悩んだ状況を振り返ってみようと思います。今回の質問訪問診療で関わる多発性骨髄腫の患者さん。骨病変による痛みが強いのですが鎮痛薬の使用を拒否します。理由を尋ねると「苦しいのは自分に与えられた試練だから、薬でごまかすことはしたくない」と言います。そうした考えも認めつつ、やはり痛みは緩和したく、苦しく感じます。「苦痛を緩和する」ことの大切さを重視して緩和ケアを実践しているわれわれにとって、考えさせられる状況です。私がかつて担当した、このケースに似た患者さんの場合、診療拒否などはなく、感謝の言葉も口にするのですが、身体症状を和らげる提案に対しては「それは遠慮します」と反応をします。理由を尋ねると、「神に与えられたものだから」と宗教観に基づく返答がありました。私たちはこのような患者さんに対し、どのように対応すれば良いのでしょうか。私自身、今でも明確な答えは持ち合わせていませんが、基本的なスタンスをまとめてみたいと思います。まずは、「私たちも、基本的には患者さんの意向を尊重したい」との考えを明確に伝えます。医療者の推奨に同意しない患者さんに対応する際、大切なのは「対立構造にしない」ことです。推奨に従わない患者に対し、ネガティブな感情を抱く医療者もいるでしょう。患者は医療者のそうした感情を敏感に感じ取り、「自分の気持ちをわかってもらえない」と考えます。そのため、まずは「推奨に応じても応じなくても、あなたは大切な患者であり、あなたの意思を尊重する」と伝えるのです。一方で苦痛が強いというのは、見守る家族にはもちろん、医療者にもつらいことです。そのことも率直に伝え、「なんとか苦痛が和らぐ方法がないか、諦めずに考えていく」とお伝えします。具体的な言葉として、「苦痛との向き合い方は人それぞれだと思います。だから無理に鎮痛薬を飲まなくても大丈夫ですよ。ただ、すごくつらそうに見える時には、やはり薬の調整について、お声掛けさせてもらえませんか? 苦しそうな様子を見ているのは私自身もつらいので…」といったお声掛けをしました。ただ、私が経験した患者さんは、それでも「先生にそうして心配をかけるのも申し訳ないので、私のことでつらく感じないでください」と言い、最期まで鎮痛薬は使用しませんでした。今でも、「あの時どう対応すべきだったか」「この患者さんが本質的に大切にしていたことは何か」など、十分に理解できていないところがあります。緩和ケアの実践では、さまざまな価値観や想いに触れることがあります。自分なりに振り返り、時にはほかのスタッフとディスカッションして、できることに取り組みながら、関わることを諦めない態度を持ち続けることが大切なのだと思います。今回のTips今回のTips患者の意向を尊重しながら、関わることを諦めない態度が重要。

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日本人の日常会話頻度と認知症リスク

 中高年を対象とした大規模集団コホートで、日常会話の頻度と認知症リスクとの関連を検討した結果、会話頻度が低いと認知症リスクが高く、会話が月1回未満の場合は認知症リスクが2倍を超えることが示唆された。国立がん研究センターの清水 容子氏らがArchives of Gerontology and Geriatrics誌オンライン版2025年8月5日号に報告。 本研究は、多目的コホート研究であるJPHC研究において2000~03年に日常会話頻度を報告した50~79歳の参加者について、認知症の発症を2006~16年の介護保険認定記録を用いて追跡した。生活習慣や既往歴などの因子を調整したCox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。また、居住形態(独居もしくは同居)と性別によるサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・3万5,488人中3,334人が認知症と診断された。・会話が「ほぼ毎日」の場合と比較した完全調整HRは、「多くの人と毎日」で0.80(95%CI:0.69~0.93)、「数人と毎日」で0.88(同:0.80~0.97)、「週1~4回」で1.18(同:1.06~1.31)、「月1~3回」で1.17(同:0.97~1.42)、「月1回未満」で2.06(同:1.49~2.85)であった(傾向のp<0.001)。この関連は居住形態で変わらなかった。・独居男性では、会話頻度が高い(「ほぼ毎日」以上)場合のHRが1.71(同:1.26~2.32)、会話頻度が低い(「週1~4回」以下)場合が2.60(同:1.71~3.95)とどちらもリスクが増加したが、独居女性ではリスク増加はみられなかった。

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高齢入院患者におけるベンゾジアゼピン中止パターンとそれを阻害する因子

 退院後のベンゾジアゼピン(BZD)長期使用は、高齢患者におけるBZD依存や重篤な薬物有害事象リスクを高める可能性がある。しかし、高齢者におけるBZD中止パターンとそれに関連する因子についての研究は限られている。米国・ハーバード大学のChun-Ting Yang氏らは、高齢者における入院後のBZD中止のパターンと関連因子を特定するため、後ろ向きコホート研究を実施した。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2025年7月27日号の報告。 本コホート研究は、2004年1月〜2025年2月までのOptum CDMデータを用いて実施した。対象は、入院後30日以内に新たにBZD使用を開始した65歳以上の患者。不安症、精神疾患、アルコール乱用、てんかん発作、ホスピスケアを受けている患者は除外した。BZD中止は、BZD使用終了から15日を超える期間と定義した。主要解析では、カプランマイヤー法を用いて中止率を推定し、患者特性とBZD中止との関連はCox比例ハザードモデルを用いて解析した。死亡の競合リスクを補正するため、打ち切り確率の逆重み付け(IPW)を適用した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は3万3,449例(平均年齢:73.1±5.8歳、男性の割合:51.7%)。・IPW加重BZD中止率は、30日時点で53.3%(95%信頼区間[CI]:52.7〜53.8)、60日時点で86.7%(86.3〜87.1)、90日時点で92.6%(92.3〜93.0)であった。・30日時点でのBZD中止率は、2004年の31.7%(95%CI:29.5〜33.9)から2024年の71.1%(68.7〜73.5)へと増加が認められた。・研究期間中のBZD中止率は、年間4%の増加を示した。・BZD中止を阻害するリスク因子は、次のとおりであった。【不眠症】ハザード比(HR):0.66、95%CI:0.63〜0.69【中等〜重度のフレイル】HR:0.82、95%CI:0.75〜0.85【入院後/初回BZD使用前の抗うつ薬新規使用】HR:0.80、95%CI:0.76〜0.85【入院後/初回BZD使用前の非定型抗精神病薬新規使用】HR:0.90、95%CI:0.82〜0.99 著者らは「精神疾患の病歴のない高齢者における入院後のBZD中止率は、時間経過とともに上昇していた。しかし、とくに不眠症や中等〜重度のフレイルを有する高齢者においては、BZD中止に依然として課題が残存しており、今後の効果的な減量戦略策定のターゲットとなるであろう」とまとめている。

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LP.8.1対応組換えタンパクコロナワクチン、一変承認を取得/武田

 武田薬品工業は8月27日のプレスリリースで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株LP.8.1を抗原株とした組換えタンパクワクチンの「ヌバキソビッド筋注1mL」について、厚生労働省より一部変更承認を取得したと発表した。ヌバキソビッド筋注は、同社がノババックスから日本での製造技術のライセンス供与を受けたもので、LP.8.1対応ワクチンは9月中旬以降に供給が開始される予定。 2025年5月28日に開催された「厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会 季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」において、2025/26シーズンの定期接種で使用する新型コロナワクチンの抗原組成は、WHOの推奨と同様に、「1価のJN.1、KP.2もしくはLP.8.1に対する抗原又は令和7年5月現在流行しているJN.1系統変異株に対して、広汎かつ頑健な中和抗体応答又は有効性が示された抗原を含む」とされている1)。 今回の承認は、抗原株の変更に係るデータに加え、LP.8.1を抗原株としたヌバキソビッド筋注が、直近の新型コロナ変異株(LP.8.1、LP.8.1.1、JN.1、KP.3.1.1、XEC、XEC.4、NP.1、LF.7およびLF.7.2.1)に対しても中和抗体を産生することが認められた非臨床データに基づく。 本剤は、6歳以上を対象とした初回免疫(1、2回目接種)および12歳以上に対する追加免疫(3回目接種以降)の適応を取得している。用法・用量は、12歳以上には1回0.5mLを筋肉内に接種する。また、6歳以上12歳未満には、初回免疫として、1回0.5mLを2回、通常、3週間の間隔をおいて、筋肉内に接種する。

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心アミロイドーシスの生存率向上に新たな治療選択肢/アルナイラム

 トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)治療薬として、2025年6月25日に国内で適応追加承認を取得した核酸医薬のブトリシラン(商品名:アムヴトラ)。この治療薬が果たす役割について、7月に開催されたアルナイラムのメディアセミナーで北岡 裕章氏(高知大学医学部 老年病・循環器内科学 教授)が解説した。高齢者心不全では心アミロイドーシスの想起を 心アミロイドーシスは心不全の原因疾患の1つで、2025年3月に発刊された『2025年改訂版 心不全診療ガイドライン』においてもその項目が設けられ、心不全として鑑別診断が重要な疾患として位置付けられた(推奨表57参照)。しかし現状は、「循環器医でもアミロイドーシスの概念をあまり持っていない医師も少なくない」と北岡氏は問題提起する。その理由について、「たった10年前には患者が300例ほどしかいないとされ、原因として疑うのは非常に難しい時代だった」とコメント。しかし、時代は変わり、核医学検査による診断法が確立したことで、120万人いると推定される心不全患者の10%程度をATTR-CMが占めることも明らかになってきている。とくにATTR-CMwt*は加齢に起因することから、高齢者で診断されることが“まれではない”状況になっているが、2019年に治療薬として四量体安定化薬が処方できるようになったことで、「指数関数的に治療を受けられる患者数が増加している」と説明した。*wild type(野生型)の略治療薬の使い分けにも期待 心アミロイドーシスの原因となるトランスサイレチン(TTR)は、肝臓から産生され、四量体の状態であれば甲状腺ホルモンやビタミンAを運搬する役割を果たすが、単量体に解離することでアミロイド線維を形成し、臓器に沈着する。さらに近年では、肝臓から直接ミスフォールディングされたTTRが産生されることも示唆されている。その結果、アミロイド沈着が心不全症状の発現前より始まり、時間経過とともにBNPやトロポニンなどのバイオマーカーの上昇、心機能やQOL低下などに影響を与え、生命予後を脅かすようになる。これについて同氏は「以前と比較して早期診断により生存率は高くなっているが、年齢から想定される生存率と比較すると、ATTR-CM患者の生存率はいまだに低い状況にある」と述べ、潜在患者の発掘と治療法普及の加速化が課題であることについて言及した。 しかし、今回のブトリシランの適応追加はATTR-CMに対する治療選択を広げ、心アミロイドーシス診療の追い風となるだろう。既存治療薬はTTR四量体の安定化を図るものであったが、ブトリシランはさらに上流部分に作用し、効果を発揮する。その作用機序は、ブトリシランが肝臓特異的に取り込まれRNA誘導サイレンシング複合体(RNA-induced silencing complex:RISC)と結合することで肝臓内においてTTR mRNAを分解し、TTR産生を抑制(ノックダウン)させる。本薬剤が適応追加承認に至ったHELIOS-B試験の対象者のうち約40%は、既存薬(タファミジスまたはタファミジスメグルミン)が投与されていた患者であったが、投与有無によらず主要評価項目**を達成している。この結果を踏まえ、「本薬剤により全死亡リスクが低下し、一般集団の生存率に近づいた」と同氏は説明。新たな治療薬が加わったことで、実臨床では治療薬の使い分けがトピックになっており、本薬剤がATTR-CM治療の第1選択薬となりうるとして期待されているとも話した。**全体集団/ブトリシラン単剤投与部分集団における二重盲検期間の全死因死亡および再発性心血管関連イベントの複合エンドポイントRNA干渉(RNAi)とその治療薬 RNAiは植物のペチュニアと線虫から発見された遺伝子サイレンシングで、DNA配列を変化させることなく遺伝子発現・タンパク質を抑制することができる。この原理を応用した低分子干渉RNA(small interfering RNA:siRNA)製剤は、生体内に備わる自然なプロセス(RISCを介して繰り返しmRNAを切断)において効果を発揮する。これまで、細胞内に送達されたsiRNAが体内で作用する際の課題として、(1)体内で分解されやすい、(2)細胞膜の通過が困難、(3)オフターゲット作用の懸念があったが、同社は独自のドラッグデリバリーシステム(DDS)を開発し、解決に導いたという。現在国内では同社の開発により4つのsiRNA製剤(パチシラン[商品名:オンパロット]、ギボシラン[同:ギブラーリ]、ブロリシラン[同:アムヴトラ]、インクリシラン[同:レクビオ])が発売されている。

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2型糖尿病治療薬、国際的持続評価システムの最新結果/BMJ

 中国・四川大学のKailei Nong氏らは、2型糖尿病治療薬の無作為化比較試験についてリビングシステマティックレビュー(living systematic review:LSR)とネットワークメタ解析(NMA)を用いて評価するシステムを開発。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)、フィネレノンおよびチルゼパチドは、死亡、心血管疾患、慢性腎臓病および体重減少に関してリスク依存的に異なる有益性をもたらすが、薬剤特有の有害事象があることを明らかにした。著者は、「本評価システムは、最新のエビデンスを随時統合できるよう設計されている。エビデンスを持続的に更新する国際的なシステムとして、政策立案者、臨床医および患者の情報に基づく意思決定を支援し、研究の無駄を減らす可能性がある」と述べている。BMJ誌2025年8月14日号掲載の報告。869試験、49万3,168例のデータを解析 研究グループは、MedlineおよびEmbaseを用い、2型糖尿病治療薬を相互に、またはプラセボあるいは標準治療と比較した24週以上の無作為化並行群間比較試験について、毎月検索を実施し(本報告では2024年7月31日までの検索を対象)、頻度(frequentist)ランダム効果モデルとGRADEアプローチを用いたLSRおよびNMAを行った。 LSRとNMAは、少なくとも年2回更新。本報告のLSRとNMAには、869試験(2022年10月以降に53試験を追加)の計49万3,168例の患者が含まれ、13の薬剤クラス(63種類の薬剤)と26の重要なアウトカムに関するデータが報告された。薬剤ごとに有益性が異なり、薬剤特有の有害事象も確認 有益性は、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、およびフィネレノン(慢性腎臓病を有する患者に限る)について、心血管および腎臓へのベネフィットが確認された(エビデンスの確実性:中~高)。 体重減少に最も有効な薬剤は、チルゼパチド(平均差[MD]:-8.63kg[95%信頼区間[CI]:-9.34~-7.93]、エビデンスの確実性:中)、およびorforglipron(-7.87kg[-10.24~-5.50]、エビデンスの確実性:低)の順で、次いで他の8種類のGLP-1受容体作動薬(エビデンスの確実性:高~中)であった。 薬剤の絶対的有益性は、心血管および腎アウトカムに対するベースラインのリスクによって大きく異なっていた。リスク層別化された薬剤の絶対効果は、インタラクティブツールにまとめている。 薬剤特有の有害事象については、SGLT2阻害薬は性器感染症(オッズ比[OR]:3.29[95%CI:2.88~3.77]、エビデンスの確実性:高)、糖尿病性ケトアシドーシス(2.08[1.45~2.99]、エビデンスの確実性:高)、切断(1.27[1.01~1.61]、エビデンスの確実性:中)を、チルゼパチドとGLP-1受容体作動薬は重度胃腸障害(チルゼパチドで最もリスクが増加、OR:4.21[95%CI:1.87~9.49]、エビデンスの確実性:中)、フィネレノンは重度高カリウム血症(OR:5.92[95%CI:3.02~11.62]、エビデンスの確実性:高)を、チアゾリジン系薬剤は主要な骨粗鬆症性骨折および心不全による入院、スルホニル尿素薬とインスリンおよびDPP-4阻害薬は重度低血糖のリスクをそれぞれ増加させる可能性が示された。 神経障害や視覚障害などその他の糖尿病関連合併症に対する効果については、エビデンスの確実性が低または非常に低の結果しか得られなかった。また、関心が高い認知症に関しても、GLP-1受容体作動薬が認知症を軽減するかどうかは不確実であった(OR:0.92[95%CI:0.83~1.02]、エビデンスの確実性:低)。

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線維化を伴うMASH、efruxiferminが線維化を改善/Lancet

 中等度~重度の線維化を伴う代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)患者において、efruxifermin 50mg週1回投与はプラセボと比較し、96週時に線維化が改善した患者の割合が有意に高かった。米国・Houston Methodist HospitalのMazen Noureddin氏らが、米国の41施設で実施した第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「HARMONY試験」の96週時の評価結果を報告した。efruxiferminは、MASH治療薬として開発中の線維芽細胞増殖因子21(FGF21)アナログである。結果を踏まえて著者は、「第III相試験で、efruxiferminの有効性および安全性を評価することが望まれる」とまとめている。Lancet誌2025年8月16日号掲載の報告。MASH悪化を伴わない線維化ステージ1段階以上の改善、96週時の結果を報告 研究グループは、生検でMASH(「非アルコール性脂肪性肝疾患活動性スコア」が4以上、かつ脂肪化、風船様変性および小葉炎症のスコアが1以上と定義)が確認され、線維化ステージF2またはF3の成人(18~75歳)患者を、efruxifermin 28mg群、同50mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、週1回皮下投与した。 患者、治験担当医師、病理医、施設スタッフおよび治験依頼者は、投与群の割り付けについて盲検化された。 主要エンドポイントは、24週時のMASH悪化を伴わない線維化ステージの1段階以上の改善で、この結果はすでに報告されている。本報告では、96週時の治療終了時評価として、主要エンドポイントの最終評価と、線維化悪化を伴わないMASHの消失等について解析した。 2021年3月22日~2022年2月7日に、128例が無作為化された。このうち126例がefruxiferminまたはプラセボを少なくとも1回投与され、修正ITT解析に組み入れられた。128例中79例(62%)が女性、49例(38%)が男性であった。96週時の改善、プラセボ群24%、efruxifermin 28mg群46%、同50mg群75% 修正ITT解析対象集団において、96週時のMASH悪化を伴わない線維化ステージが1段階以上改善した患者の割合は、プラセボ群19%(8/43例)に対し、efruxifermin 28mg群が30%(12/40例)(プラセボ群との差:12%ポイント[95%信頼区間[CI]:-6~31]、p=0.19)、同50mg群が49%(21/43例)(同31%ポイント[12~49]、p=0.0030)であった。 96週時に生検を受けた88例においては、線維化ステージが1段階以上改善した患者が、プラセボ群で34例中8例(24%)であったのに対し、efruxifermin 28mg群では26例中12例(46%)(プラセボ群との差:22%ポイント[95%CI:-1~45]、p=0.070)、同50mg群では28例中21例(75%)(同52%ポイント[31~73]、p<0.0001)に認められた。 有害事象は、efruxifermin 28mg群で40例中38例(95%)、同50mg群で43例中43例(100%)、プラセボ群で43例中42例(98%)に報告された。efruxifermin群ではプラセボ群より軽度~中等度の胃腸障害が多くみられた。いずれの群でも、薬剤誘発性肝障害や死亡の報告はなかった。

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人工甘味料はがん免疫療法の治療効果を妨げる?

 マウスを用いた新たな研究で、一般的な人工甘味料であるスクラロースの使用は、がん患者の特定の免疫療法による治療を妨げる可能性のあることが示唆された。この研究ではまた、マウスに天然アミノ酸であるアルギニンのレベルを高めるサプリメントを与えると、スクラロースの悪影響を打ち消せる可能性があることも示された。米ピッツバーグ大学免疫学分野のAbby Overacre氏らによるこの研究結果は、「Cancer Discovery」に7月30日掲載された。 Overacre氏は、「『ダイエットソーダを飲むのをやめなさい』と言うのは簡単だが、がん治療を受けている患者はすでに多くの困難に直面しているため、食生活を大幅に変えるよう求めるのは現実的ではないだろう」と話す。同氏はさらに、「われわれは、患者の現状に寄り添う必要がある。だからこそ、アルギニンの補給が免疫療法におけるスクラロースの悪影響を打ち消すシンプルなアプローチとなり得るのは非常に喜ばしいことだ」と述べている。 研究グループによると、がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の効果は患者の腸内細菌の組成と関連付けられている。しかし、食事がどのように腸内細菌や免疫反応に影響を及ぼすのかについては明確になっていないという。今回の研究では、一般的な人工甘味料であるスクラロースの摂取が腸内細菌叢やT細胞の機能、免疫療法に対する反応に与える影響を、マウスおよび進行がん患者を対象に検討した。 まず、抗PD-1抗体による治療を受けた進行性メラノーマ患者91人と、進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者41人、および術前に抗PD-1抗体とTLR9アゴニスト(vidutolimod)による治療を受けた高リスク切除可能メラノーマ患者25人を対象に、スクラロースの摂取が抗PD-1抗体による治療効果に与える影響を検討した。自記式食事歴法質問票(DHQ III)を用いて評価したスクラロース摂取量に基づき、対象者を高摂取群と低摂取群に分類し、客観的奏効率(ORR)と無増悪生存期間(PFS)を評価した。 解析の結果、高摂取群ではメラノーマ患者でORRの低下傾向が認められ、NSCLC患者ではORRが有意に低下していた。PFSについては、メラノーマ患者(低摂取群:中央値13.0カ月、高摂取群:同8.0カ月、P=0.037)とNSCLC患者(低摂取群:同18.0カ月、高摂取群:同7.0カ月、P=0.034)の双方で有意な短縮が認められた。一方、高リスク切除可能メラノーマ患者では、病理学的奏効率(MPR)の低下、およびPFSの有意な短縮(低摂取群:中央値25.0カ月、高摂取群:同19.0カ月、P=0.012)が確認された。 次に、マウスを用いた実験で、腺がんやメラノーマなどのがんを意図的に発症させたマウスの食事にスクラロースを加え、その影響を観察した。その結果、マウスの腸内細菌叢の組成に変化が生じ、免疫機能の向上に重要なアミノ酸であるアルギニンが腸内細菌により代謝されて減少し、その結果、抗PD-1抗体による治療が阻害されて腫瘍の増大と生存率の低下につながることが示された。一方、スクラロースを摂取したマウスに、アルギニンや、より効率的に血中アルギニン濃度を上げると考えられているシトルリンを投与したところ、免疫療法の効果が回復した。 Overacre氏は、「スクラロースが引き起こした腸内細菌叢の組成の変化によってアルギニンレベルが低下すると、T細胞は正常に機能しなくなる。その結果、スクラロースを摂取したマウスでは免疫療法の効果が低下した」と説明する。 もちろんマウスでの実験と同じ結果が人間でも得られるとは限らない。それでも、論文の共著者であるピッツバーグ大学医学部のDiwakar Davar氏は、「これらの結果は、高レベルのスクラロースを摂取する患者に的を絞った栄養補給など、プレバイオティクスによる介入の設計を検討すべきことを示唆している」との見方を示している。同氏によると、シトルリンの補給が、がん免疫療法におけるスクラロースの有害な影響を逆転させ得るかを検討する試験を計画中であるという。

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「Pontaポイント コード」交換レート変更および交換受付停止期間のお知らせ

このたび、ケアネットポイントの交換先である「Pontaポイント コード」につきまして、2025年10月1日(水)12:00より、交換レートを以下のとおり変更いたします。【変更前】9月17日(水)13:59まで100pt=100ポイント分【交換受付停止期間】9月17日(水)14:00~10月1日(水)11:59※Pontaポイント コードの交換受付を一時停止いたします。【変更後】10月1日(水)12:00より100pt=95ポイント分※2025年9月17日(水)13:59までにお申し込みいただいた分は、現行のレート(100pt=100ポイント分)で交換いたします。※2025年9月17日(水)14:00~10月1日(水)11:59 は、Pontaポイント コードの交換受付を一時停止いたします。状況により、交換受付停止期間は前後する場合がございます。 ご利用中の皆さまにはご不便をおかけしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。ケアネットポイントの交換はこちらよりお手続きください。https://point.carenet.com/exchange※ログインが必要です

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米国の小児におけるインフルエンザ関連急性壊死性脳症(IA-ANE)(解説:寺田教彦氏)

 本報告は、米国2023~24年および2024~25年シーズンにおける小児インフルエンザ関連急性壊死性脳症(IA-ANE)の症例シリーズである。 IA-ANEは、インフルエンザ脳症(IAE)の重症型で、米国2024~25年シーズンのサーベイランスにおいて小児症例の増加が指摘されていた(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2025 Feb 27)。同レポートでは、小児インフルエンザ関連死亡例の9%がIAEによる死亡と報告され、早期の抗ウイルス薬使用と、必要に応じた集中治療管理、インフルエンザワクチン接種が推奨されていた。 本研究では、2024~25年シーズンで大規模小児医療センターの医師からIA-ANEが増加していると指摘があり、主症状、ワクチン接種歴、検査結果および遺伝学的解析結果、治療介入、臨床アウトカム(修正Rankinスケールスコア)、入院期間、機能的アウトカムを主要アウトカムとして調査結果が報告された。詳細は「インフルエンザ脳症、米国の若年健康児で増加/JAMA」に記載のとおりである。 本研究のdiscussionでは、サーベイランス結果と同様に、速やかな診断と集中治療管理、ならびにインフルエンザワクチン接種の有用性が強調されている。前者については、死亡例の多くが入院後1週間以内(中央値3日)に発生し、主因が脳浮腫に伴う脳ヘルニアであった点から指摘されている。後者については、米国における2023~24年および2024~25年シーズンの小児インフルエンザワクチン接種率がそれぞれ55.4%、47.8%であったのに対し、本研究に登録されたIA-ANE患者で接種歴を有したのは16%にとどまっていた点から指摘されている。 また、本研究では、アジア系の子供で急性壊死性脳症(ANE)が多かった。日本を中心としたアジアではANEが多い可能性が指摘されており、日本では2015~16年シーズン以降、IAEは新型コロナウイルス感染症の世界的な流行期間を除き毎年約100~200例が報告されており、2023~24年シーズンは189例が報告されていた(「インフルエンザ流行に対する日本小児科学会からの注意喚起」日本小児科学会)。本研究でもアジア人が登録された割合は高かったが、ANEに関連する可能性があるRANBP2やその他の遺伝的変異はアジア系の子供で多いわけではなく、非遺伝的要因が関与している可能性がある。 ANEは健康な小児でも発症することがあり、頻度は低いが壊滅的な神経学的合併症を来し、死亡することもある疾患である。日本での急性脳症の予後の報告でも、平成22年度の報告書では、急性脳症全体/急性壊死性脳症(ANE)で治癒56%/13%、後遺症(軽・中)22%/2%、後遺症(重)14%/33%、死亡6%/28%、その他・不明1%/3%だった。 本報告は米国におけるANEの臨床像と深刻さを明確に示すとともに、日本においても適切なワクチン接種の実施、IA-ANEの早期診断と集中管理、治療プロトコルの標準化が急務であることを再確認させられた。

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安物椅子の効能【Dr. 中島の 新・徒然草】(595)

五百九十五の段 安物椅子の効能暦の上ではもう秋、朝夕は少しばかり過ごしやすくなりました。それでも日中に水道の蛇口を捻るとお湯が出てきます。「あれっ? 給湯になっているのかな」と思うのは、こんな時ですね。もちろんそんなはずもなく、暑さのせいで水がお湯になっているわけですが。さて、言うまでもなく、われわれが追求しているのは西洋医学。東洋医学や民間医療に比べると、生死を左右する病気の診断や手術を含む治療では絶大な威力を発揮します。しかし、日常生活の中で生じるちょっとした不調、たとえば頭痛や腰痛、不眠、倦怠感といった愁訴に対しては、私自身もなかなか本気になれません。先日、私の外来を訪れた70代の女性。背筋の伸びたダンスインストラクターでした。主訴は歩行障害です。3ヵ月ほど前から右足が動きにくくなったのだとか。実際に歩いてもらうと、確かに右足を軽く引きずっています。それだけでなく、右の腰と臀部の軽い痛み、右膝窩部から下腿前面にかけての違和感も訴えていました。すでに他の医療機関で撮影した頭、頚椎、腰椎のMRIでは、これといった異常が見当たらなかったとのこと。私はいろいろな問診と身体所見を取った結果、最終的に坐骨神経痛、それも梨状筋症候群が歩行障害の主たる原因ではないかと思うに至りました。これは坐骨神経が梨状筋によって圧迫され、下肢の運動障害や感覚障害を呈する疾患です。当然のことながら、患者さんの次の疑問は治療です。正直なところ、私自身は坐骨神経痛とか梨状筋症候群についてはまったくの素人。そこで汗だくになってネット検索をしたのです。患者さんの前でスマホをあれこれ触るのもカッコ悪いのですが、他に方法はありません。苦し紛れの説明をせざるを得ませんでした。 中島 「治療は大きく分けて3つ。外科的治療、内科的治療、その他といったところです」 患者 「外科的治療というのは手術のことですか?」 中島 「そういうことになりますね」 患者 「とんでもない、手術なんかしません!」 そりゃそうでしょうね。どう考えても「圧迫している梨状筋を切ろう」などというのは単純すぎる発想です。 患者 「内科的治療というのは薬ですか?」 中島 「薬とか湿布とかブロック注射あたりだと思います」 患者 「どんな薬を使うのでしょうか」 中島 「鎮痛剤とかかな」 患者 「そんなに痛いわけじゃないのに?」 痛くない人に痛み止めを使っても意味ないですよね。同じ理屈で、湿布もブロック注射も却下。「痛みさえ取れればスムーズに歩ける」という状況でもないわけだし。となると、次は「その他」の治療か?実は診察中、自発痛や圧痛を調べるために、この患者さんの臀部を押したり引いたりしたのです。そのことが結果的に梨状筋をマッサージすることになったのでしょうか。直後に、患者さんが軽快に歩けるようになりました。スムーズに歩けたのは、わずか2〜3メートルだけで、すぐに元に戻ってしまったわけですが。でも、このことは大切なヒントになっているかもしれません。つまり、アプローチとしてはマッサージやストレッチ、エクササイズの方向性も考えられるということです。それ以上のことは私にはわからなかったので、梨状筋症候群をホームページで熱く語っている整形外科クリニックを探し出し、そちらを受診するようお勧めしました。帰宅後に「梨状筋症候群 ストレッチ」で検索すると、YouTubeに大量の動画が存在することに気付きました。もちろん玉石混交だろうとは思いますが、その中には彼女に適したものもあるはず。幸い、1ヵ月後にフォローの再診予約を入れているので、その後の状況をお伺いしようと思います。後で聞いたところ、同僚の中には梨状筋症候群になったという医師もいました。彼女の場合、転勤して椅子が立派になってから、次第にこの患者さんと同じような症状に苦しめられたそうです。それまで愛用していた安物の椅子に変えると、徐々に元に戻ったのだとか。そう考えると、ひょっとして今回の患者さんも、椅子が変わった類のエピソードがあるのかもしれません。再診の時に確認してみましょう。さらに、この患者さんがダンスインストラクターであることを考えても、身体を動かす系の治療法を提案したほうが、納得感が得られるのではないかという気がします。これまで私は、マッサージ、ストレッチ、エクササイズといった方法をあまり重視してきませんでしたが、そういったものも有力な治療オプションの1つではないかと思うようになりました。日々、西洋医学を実践する一方で、少しばかり視野の広がる思いをした次第です。引き続き、この患者さんの経過を見守ることといたしましょう。最後に1句 秋の日々 あれこれ考え また試す

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抗不整脈薬のリズムコントロール作用を少し考えてみよう!【モダトレ~ドリルで心電図と不整脈の薬を理解~】第9回

抗不整脈薬のリズムコントロール作用を少し考えてみよう!Question年齢相応の心機能で、とくに大きな異常のない発症後4時間経過した発作性心房細動の50歳台女性に、胸部違和感改善のためリズムコントロールを目指しピルシカイニド注を投与しましたが、リズムコントロールできず別の薬剤で再度リズムコントロールを目指すこととなりました。画像を拡大する

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第25回 医師の服装、白衣はもう古い?最新研究が明かす意外な“正解”

病院を訪れたとき、診察室に入ってきた医師の服装を見て、無意識に「頼りになりそう」「話しやすそう」といった第一印象を抱いた経験はないでしょうか。長年、医師の象徴とされてきた「白衣」ですが、実は患者が本当に信頼を寄せる服装は、状況によってまったく異なることが最新の研究で明らかになっています。BMJ Open誌で発表された論文1)は、医師の服装に対する患者の認識に関する28件の研究を分析したものです。その結果、患者の好みは診察を受ける場所、医師の専門分野、さらには医師の性別によっても大きく変化することが示唆されています。単なる身だしなみの問題ではなく、服装が患者との信頼関係を左右する重要なコミュニケーションツールであることが、改めて浮き彫りになりました。かつて医師の服装は、19世紀後半に衛生観念と科学の象徴として「白衣」が標準となった歴史があります。しかし、多様化する現代の医療現場において、その常識は変わりつつあるのかもしれません。救急外来ではスクラブ、専門外来では白衣?場所で変わる「理想の医師像」今回の研究で最も明確になったのは、患者が医師に求める服装は「TPO」によって決まるという点です。たとえば、一刻を争う救急初療室や手術室といった緊張感の高い環境では、患者は圧倒的に「スクラブ(手術着)」を好む傾向にありました。これは、スクラブが清潔さや専門性、そして「いつでも動ける準備ができている」という頼もしさを感じさせるためだと考えられています。実際に、コロナウイルスのパンデミックを経て、衛生管理への意識が高まったことで、スクラブや個人防護具(PPE)に対する好意的な見方が強まったようです。実際、私の働くニューヨークでも、パンデミック前には「スーツ+ネクタイ」が男性医師のスタンダードのようになっていましたが、パンデミック後はスクラブが定着しました。一方、かかりつけ医のようなプライマリーケアの現場では、少し事情が異なります。長期的な関係構築やコミュニケーションが重視されるため、カジュアルな服装に白衣を羽織ったスタイルが「親しみやすい」として好まれると報告されています。さらに、専門分野による違いも興味深いところです。たとえば、皮膚科や脳神経外科、眼科の患者は伝統的な白衣を好む一方で、麻酔科や消化器内科ではスクラブ姿の医師が好まれる傾向がみられました。これは、患者がその専門分野の性質(処置が多いか、対話が中心かなど)を無意識に理解し、それに合った服装を医師に期待していることの表れかもしれません。男性医師はスーツで信頼度UP、女性医師は白衣で「看護師」に?服装に潜む無意識の偏見今回の研究で、もう一つ注目すべきは服装の印象が医師の性別によっても大きく異なるという点です。論文によると、男性医師がスーツに白衣といったフォーマルな服装をしていると、患者から「よりプロフェッショナルで信頼できる」と評価される傾向が強くみられました。ところが、女性医師が同様の服装をしていても、患者から看護師や他の医療スタッフと誤解されてしまうケースが頻繁に報告されたのです。これは、患者側に根強く存在する「医師は男性」「看護師は女性」といった無意識のジェンダーバイアスが、服装の認識にも影響を与えていることを示唆しているのかもしれません。女性医師は男性医師よりも外見で判断されやすいという指摘もあり、服装が意図せずして性別による壁を生み出している現実が浮き彫りとなりました。この研究は、「画一的なドレスコード」ではなく、状況や患者の期待に合わせた、より柔軟な服装規定の必要性を示唆しています。医師の服装は、単なる「ユニフォーム」ではありません。患者に安心感を与え、円滑なコミュニケーションを促し、治療効果を高める可能性を秘めた、重要な一要素なのです。参考文献・参考サイト1)Kim J, et al. Patient perception of physician attire: a systematic review update. BMJ Open. 2025;15:e100824.

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退職は健康改善と関連、とくに女性で顕著――35ヵ国・10万人規模の国際縦断研究/慶大など

 退職が高齢者の健康に与える影響は一様ではない。近年、多くの国で公的年金の受給開始年齢が引き上げられ、退職時期の後ろ倒しが進んでいる。こうした状況に対し、退職の健康影響を検討した研究は数多いが、「認知機能を低下させる」「影響はない」「むしろ有益である」と結果は分かれていた。 慶應義塾大学の佐藤 豪竜氏らの研究グループは、米国のHealth and Retirement Study(米国健康・退職調査:HRS)をはじめとする35ヵ国の縦断調査データを統合解析し、50〜70歳の10万6,927例(観察数39万6,904例)を対象に、退職と健康・生活習慣の関連を検証した。本研究の結果はAmerican Journal of Epidemiology誌オンライン版2025年6月13日号に掲載された。 本研究のアウトカムは、退職後の認知機能(単語記憶テスト)、身体的自立度(ADL/IADL)、自己評価による健康度(5段階)、生活習慣(身体的不活動[中等度~強度の運動が週1回未満]、喫煙、大量飲酒[男性1日5杯以上、女性4杯以上])の変化であった。参加者は2年ごとに調査され、平均6.7年間追跡された。各国の年金受給開始年齢を操作変数とした固定効果付きIV回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 参加者の男女比は半々で、就労者と比較して退職者は年齢が高く、男性・既婚者・高学歴の割合が低かった。また、肉体労働や職務裁量が低い職歴の経験割合も低かった。【女性】・認知機能:+0.100標準偏差(SD)改善・身体的自立度:+3.8%改善・自己評価健康度:+0.193 SD改善・身体的不活動:-4.3%減少・喫煙:-1.9%減少【男性】・自己評価健康度:+0.100 SD改善認知機能、身体的自立度、生活習慣には有意な改善なし。 退職はとくに女性において認知機能や身体的自立を高め、生活習慣の改善を伴うことが示された。 研究者らは「なぜ退職は女性だけに有益なのか」という問いに対し「背景に退職後の生活行動に性差がある可能性がある」と指摘している。「女性は退職後に社会参加や余暇活動に積極的に関わる傾向が強く、身体活動の機会が増える。また、職場ストレスからの解放が喫煙行動の減少につながる可能性がある。これらの行動変化が、認知機能や身体機能の維持・改善に寄与していると考えられる。一方、男性は退職後にそのような生活習慣の改善が目立たず、効果は自己評価の健康度の改善にとどまった。通勤・労働負担の減少や余暇の拡大が主観的な健康感を高めたものとみられる」とした。 さらに、研究者らは「退職は健康状態を改善するが、年金受給開始年齢の引き上げによってこの効果を享受できる時期が遅れる可能性がある」と警鐘を鳴らす。「とくに女性にとっては、退職が認知症や身体機能障害のリスク低減に結び付く可能性があり、退職時期の遅延が社会的コストを増大させかねない。政策的な年金受給開始年齢引き上げの影響は慎重に検討する必要がある。また、退職後の健康的なライフスタイルを推進することは、公衆衛生全体を改善するための不可欠な取り組みとなるだろう」としている。

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ブレクスピプラゾールによるアジテーション治療は認知症患者だけでなく介護者にとっても有効

 香川大学の中村 祐氏らは、アルツハイマー病に伴うアジテーションを有する日本人患者を対象に、ブレクスピプラゾール治療が患者の神経精神症状および介護者の苦痛に及ぼす影響を評価した。Alzheimer's & Dementia誌2025年7月号の報告。 第II/III相多施設共同二重盲検試験において、ブレクスピプラゾール1mgまたは2mg/日群およびプラセボ群に3:4:4でランダムに割り付け、10週間の治療を行った。評価には、NPI(Neuropsychiatric Inventory)を用いた。患者の症状および介護者の苦痛は、NPIおよびNPI-Distressで定義した。 主な結果は以下のとおり。・10週目におけるNPI総スコアのプラセボ群との差は、ブレクスピプラゾール1mg/日群で−1.2(p=0.5891)、ブレクスピプラゾール2mg/日群で−8.4(p<0.0001)であった。・10週目におけるNPI-Distress総スコアのプラセボ群との差は、ブレクスピプラゾール1mg/日群で−1.1(p=0.2292)、ブレクスピプラゾール2mg/日群で−3.9(p<0.0001)であった。・ブレクスピプラゾール2mg/日群とプラセボ群を比較したところ、NPIスコアは2ポイント以上、NPI-Distressの興奮/攻撃性スコアは1ポイント以上の改善を示した。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、日本人の急性期認知症における患者の症状改善および介護者の苦痛軽減に有効である可能性が示唆された」としている。

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