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令和6年度 女性医師の勤務環境の現況に関する調査まとまる/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、12月24日に定例の記者会見を開催した。会見では、令和8(2026)年度の診療報酬改定がほぼ確定したことを受けて、医師会としての意見と先般完成した「令和6年度 女性医師の勤務環境の現況の関する調査報告」の概要が説明された。 はじめに松本氏が、令和8年度診療報酬改定について、「医療機関などにおける賃金上昇や物価高騰への対応、さらに日進月歩の医療の高度化への対応に理解が示されたことに心からお礼申し上げる。日本医師会は、さらなる地域医療の充実へ全力であたっていく」と今回のプラス改定への評価と展望を述べた。また、懸念事項として、「OTC類似薬の保険給付の見直し」については、子供や難病患者に対しては慎重な対応が必要だと語った。女性医師の病院管理者は現状ではわずか数% 続いて常任理事の松岡 かおり氏(いけだ病院 理事長・院長)が、「令和6年度 女性医師の勤務環境の現況に関する調査報告書」の完成に伴い、その概要について報告した。 この調査は、病院に勤務する女性医師を対象に8年ごとに実施され、病院に勤務している女性医師の働き方、子育て・介護との両立、女性医師としての悩み、医療現場の男女共同参画に関する現状を把握することを目的に行われている。 2024年度版では、2024年11月~2025年1月に調査が実施され、回収数8,998件(回収率32.5%)のうち有効回答数は8,928件(有効回答率32.3%)だった。回答者の属性について約半数は20・30代であり、既婚率(65.6%)は以前の調査と比較すると多く、配偶者・パートナーの職業は約6割が医師だったが、以前の調査よりも低下していた。 勤務実態については、常勤が約8割から9割まで上昇し、うち短時間正職員が10%だった。非常勤勤務の理由としては、「育児」が約6割に増加、「介護」もわずかながら増加していた。全体の休職離職割合は減少しているものの、休職・離職の理由では「出産」が最多で77.5%、次いで「子育て」が58.2%で多かった。また、勤務先での役職は、部長職の増加はあるものの、病院管理者(院長・副院長など)は2%と少ないままだった。 職場環境については、環境の整備は「整備されている」が55.2%まで増加し、「準備中」を含めると約7割弱と進んでいた。 出産・育児中の働き方では、育児休業をとらない場合は35%が休職・退職しており、配偶者の協力が前回の53.6%から64.2%まで増加していた。普段子供の面倒をみている人は、自分(86.9%)、配偶者・パートナー(57.7%)、保育所・託児所(55.3%)の順で多かった。 仕事を続ける上で必要な制度や仕組み・支援対策については、「人員の増員」(71.1%)、「主治医制の見直し」(55.5%)を求める声が増加していた。また、割合が高いが、保育関係・宿日直の免除は減少に転じていた。 介護中の勤務環境について、「介護」は12.4%が「経験」と回答、介護休暇の取得は29.1%と増加していた。 これらの調査結果踏まえ松岡氏は、「調査が始まったこの16年間で、社会は目まぐるしく変化している。女性医師の働き方が、どのように変化していったのか、子育て介護との両立や医療現場における意識改革が進んだのか、現状と課題、そして今後について、何らかの示唆になればと思う」と語り、説明を終えた。

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糖尿病患者は心臓突然死リスクが極めて高い

 1型か2型かにかかわらず糖尿病患者は、心臓突然死のリスクが極めて高いとする論文が、「European Heart Journal」に12月4日掲載された。コペンハーゲン大学病院(デンマーク)のTobias Skjelbred氏らの研究によるもので、心臓突然死が多いことが一因となり、糖尿病患者は寿命も短いという実態も示されたという。 この研究では、デンマーク全国民の医療記録データベースが解析に用いられた。2010年の1年間で6,862件の心臓突然死が記録されており、そのうち97件が1型糖尿病、1,149件が2型糖尿病の患者だった。心臓突然死の発生率は一般集団と比較して、1型糖尿病では3.7倍、2型糖尿病では6.5倍だった。年齢層別に解析すると若年層で発生率の差がより大きく、50歳未満の糖尿病患者は一般集団の7倍であり、特に30代の1型糖尿病患者では22.7倍と極めて高値だった。 糖尿病患者は寿命が短く、その影響の一部は心臓突然死に起因していることも分かった。例えば30歳の一般集団の寿命は80.7歳だが、1型糖尿病患者の寿命はそれより14.2年短い66.5歳、2型糖尿病患者では7.9年短い72.8歳だった。このような寿命短縮のうち、心臓突然死による影響が、1型糖尿病では3.4年、2型糖尿病では2.7年と計算された。同様に、60歳の一般集団の寿命は83.0歳だが、1型糖尿病患者の寿命はそれより8.0年、2型糖尿病患者では5.0年短く、心臓突然死による影響が同順に1.5年、1.6年と計算された。 論文の筆頭著者であるSkjelbred氏によると、糖尿病はいくつかのメカニズムで心臓突然死のリスクを高める可能性があり、高血糖や合併症の神経障害などが心臓病や不整脈を引き起こすことが関係しているという。ただし同氏は、「これは観察研究であり、糖尿病と心臓突然死の関連性が示されたものの因果関係の証明にはならない」とし、慎重な解釈を促している。また同氏は、「心臓突然死を予測して予防することは困難だが、今回得られた知見は、糖尿病患者が心血管疾患リスクを抑制するために医師と協力することの重要性を、改めて示すものだ」とも付け加えている。 Skjelbred氏はさらに、SGLT2阻害剤やGLP-1受容体作動薬などの新しい糖尿病治療薬の登場によって、糖尿病患者が良好な血糖コントロールを維持しやすくなってきたことで、近年は心臓突然死のリスクが低下している可能性を指摘。加えて、突然心停止のリスクが高い人には、心停止を検知して電気ショックを与え正常な心拍を再開させるインプラントを植え込むという治療法があることを紹介。あわせて、糖尿病患者の中でこのような治療が有益な集団を特定できるようにするため、今後の研究への期待を述べている。 本論文に対して、アムステルダム大学(オランダ)のYaxuan Gao氏とHanno Tan氏が付随論評を寄せている。その中でTan氏は、「突然心停止を検知して、倒れた本人に代わり救急要請を通報する機能付きスマートウォッチは、糖尿病患者にとって有益かもしれない。このような機能は特に1型糖尿病患者により有用と考えられる。なぜなら、1型糖尿病患者は、目撃者のいない状況での突然心停止の発生率が高いからだ」と記している。

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mRNAインフルエンザワクチンが「速い」「安い」「確実」を実現するかもしれない(解説:栗原宏氏)

革新性 不活化ワクチンの鶏卵由来のタイムラグと変異(卵馴化)を克服し、流行株に「ジャストフィット」させる可能性を示した。臨床的意義 A型流行下において既存ワクチンに勝る有効性を実証。1シーズン限定だが、mRNAのポテンシャルを証明した。普及の壁 不活化ワクチンより高い副反応(発熱など)の受容性。とくに「病気を防ぐためのワクチンで発熱する」ことへの心理的抵抗。今後の焦点 重症化リスクの高い高齢者・基礎疾患保有者でのデータ。およびB型株に対する改良。 不活化ワクチンの生産は、鶏卵への接種からワクチン原液の製造まで約6ヵ月を要し、従来のインフルエンザワクチンは次シーズンに流行する株を予測して生産するという、いわば「博打」のような状況である。それに加えて卵馴化による変異を起こすという不確定要素もある。実際に、過去10年をみると2014-15シーズンは予測したワクチン株と実際の流行株でミスマッチとなり、ワクチンの効果がかなり小さかったとされている。 一方、mRNAワクチンは遺伝子配列から化学合成が可能であり、約1ヵ月程度で製造が可能とされている。流行直前まで見極めることで、精度の高いワクチン生産が可能になると推測される。理論上のmRNAワクチンの有意点に対し、実際の調査においても1シーズンのみではあるが、既存の不活化ワクチンに対する非劣性、優位性を示した意義は大きいと思われる。 今後のmRNAワクチンの普及を考えるうえでは、軽症・中等症かつ一過性ながら既存のワクチンよりも副反応が多かった点が問題になるかもしれない。最も頻度の高い全身性イベントは倦怠感と頭痛とされ、発熱(≦40.0℃)に関してはmRNAワクチン群で5.6%、対照群で1.7%と4倍ほど多かった。とくに健康な若年世代にとっては、ワクチン自体でインフルエンザのような症状が出て、日常生活に支障が出るとすればワクチンのメリットが感じにくいかもしれない。 本調査の対象は、年齢18~64歳の健康な成人であるため、実際に最も問題となる高齢者、基礎疾患を有する患者での調査結果が待たれる。インフルエンザBでは非劣性を示せていないが、B型ウイルス特有のタンパク質構造が、mRNAワクチンによる免疫誘導と相性が悪かったためと分析されており、今後の改良が期待される。

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MASH(代謝異常関連脂肪性肝炎)に対するGLP-1/グルカゴン共受容体作動薬ペムビドチド24週間治療の成績;肝線維化ステージは改善せず(解説:相澤良夫氏)

 GLP-1/グルカゴン共受容体作動薬pemvidutideのMASH(線維化ステージF2およびF3)に対する週1回皮下注射24週間治療の効果について、疾患活動性の抑制および肝線維化ステージの改善を指標として検討した。その結果、pemvidutideは安全性・忍容性に優れ、肝線維化を悪化させることなしにMASHの活動性を強力に抑制した。しかし肝組織内の線維量は減少したものの線維化ステージの改善には至らなかった。なお、治療期間中は体重減少が継続して認められた。 pemvidutideを含むインクレチン関連薬で体重減少効果を認めMASH治療効果が期待される薬物として、本邦ではGLP-1受容体作動薬セマグルチドが皮下注射薬だけでなく経口薬(商品名:リベルサス)も保険収載されているが、適用疾患は2型糖尿病であることから、肥満やMASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)を合併した2型糖尿病に用いられている。セマグルチド製剤(商品名:ウゴービ)は2024年2月から肥満症を適用疾患として販売されているが、適用条件や施設基準が厳しく一般診療での使用は困難である。なお、セマグルチドは本邦施設も参加したMASHに対する72週間治療の国際共同第III相試験で肝線維化改善を含む治療効果が認められている。 より強力な作用が期待されるGIP/GLP-1共受容体作動薬チルゼパチドも2型糖尿病治療薬として2023年4月から発売開始となり、2024年末には肥満症治療薬(商品名:ゼップバウンド)として製造販売承認されたが、ウゴービと同様に適用条件は厳格である。チルゼパチドも本邦施設を含む国際共同第II相試験(52週間治療)で肝線維化の改善を含むMASH治療効果と体重減少効果が認められた。 海外では、さらにGIP/GLP-1/グルカゴントリプル受容体作動薬retatrutideが開発され、強力な体重減少作用が報告されている。 pemvidutideに関しては、他のインクレチン関連薬をしのぐMASH治療効果が示されること、とくに36週治療以降での肝線維化ステージ改善効果が他のインクレチン関連薬を凌駕することが焦点となるものと思われ、pemvidutideの優位性が確認されればMASHを適用疾患としてわが国にも導入される可能性がある。 なお、MASH治療薬としては唯一2024年3月に肝指向性のresmetirom(選択的甲状腺ホルモン受容体β作動薬)が米国FDAから承認されたが、その治療効果は必ずしも強力ではない。 今後、全世界で若年層を中心に肥満者が増加し、肥満と密接な関係にあるMASHも増加すると考えられ、健康に悪影響を及ぼす重大疾患として広く認識されることが予想される。このような事情を背景に、今後もより効果的なMASH治療薬の開発が進むものと予想される。

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NHKドラマ「心の傷を癒すということ」【その3】なんで虐待されると多重人格になるの?-「ニューラルネットワーク分離発達説」

今回のキーワード解離性同一症人格部分乳幼児期のトラウマ体験解離性フラッシュバックローカルスリープストレス脆弱性理論トラウマ・スペクトラム愛着タイプD[目次]1.多重人格の特徴とは?2.なんで虐待されると多重人格になるの?-「ニューラルネットワーク分離発達説」3.なんで虐待されても多重人格にならないの?―ストレス脆弱性モデル4.脳科学からみる多重人格とは?-生まれるのではなく1つにならなかっただけ心のなかに何人かの別の自分がいる…いわゆる多重人格は何とも不思議で魅惑的です。急に豹変するその様子には、人と接するのに馴れているはずのメンタルヘルスの関係者でも度肝を抜かれることがあります。そして、実は演技じゃないかと疑ってしまうこともあります。はたして、どうなんでしょうか? なぜ多重人格になるのでしょうか? どのようにしてなるのでしょうか?この謎を解き明かすために、今回、再びNHKドラマ「心の傷を癒すということ」を取り上げ、多重人格の特徴を説明します。そして脳科学の視点から、乳幼児の脳の特徴を踏まえて、ある仮説を提唱して、多重人格のメカニズムを解き明かします。なお、多重人格の現在の正式名称は解離性同一症です。ただ、この記事では、わかりやすさを優先して、このドラマで使われた従来の名称である「多重人格」で表記します。また、このドラマについての以前の記事は、関連記事1をご覧ください。多重人格の特徴とは?時は、阪神淡路大震災の直後。精神科医の安(あん)先生は、避難所になっている小学校で診療を続けます。そんななか、安先生はある若い女性を診察するよう頼まれます。彼女の名前は片岡さん。片岡さんの言動から、多重人格の特徴を大きく3つ挙げてみましょう。(1)心の中に何人かの別の自分がいる―人格部分片岡さんは「これ(予診票の作成)で頭痛薬、いただけるんですか?」と弱々しく話します。しかし、その直後に気を失い倒れてしまい、安先生にベッドで寝かされます。そして、しばらく経って起き上がったら、今度は「にいちゃん、ここ酒あんのか?」「酒もないところで休めるかいな」と荒々しく言い放ちます。あまりの豹変ぶりに、安先生は唖然とします。さらに数日後の診察のあと、安先生は、彼女が小学校の玄関先でうずくまっているのを発見します。安先生が声をかけると、彼女は「私のおうち、どこ?」「ママに会いたい。ママ…」と幼児言葉で泣くのでした。しゃべり方から何から全然違い、まるで別人です。1つ目の特徴は、心の中に何人かの別の自分がいることです。精神医学的には、人格部分と呼ばれます。これは、覚えていること(記憶)をはじめ、気の持ち方(感情)、考え方(思考)、振る舞い方(意欲)、場合によっては感じ方(知覚)などの精神機能が特徴づける自分らしさ(人格)です。それが意図せずに切り替わってしまうのです。なお、意図して何人かの別の「自分」(役)を使い分けている場合は、もちろん演技と呼ばれます。(2)記憶の空白がある-健忘翌日に安先生が、小学校の玄関での出来事を片岡さんに伝えると、彼女は「覚えてません」とまた弱々しく言うだけなのでした。2つ目の特徴は、記憶の空白があることです。精神医学的には、健忘と呼ばれます。これは、それぞれの人格部分との記憶がつながっていないからです。なお、健忘がなく、心のなかに別の自分がいると認識している場合は、二重自我と呼ばれます。また、その別の自分から声が聞こえてくると訴える場合は、幻聴と呼ばれます。これらは、統合失調症の診断が当てはまります。(3)小さい時に虐待されている―乳幼児期のトラウマ体験片岡さんは、安先生に「 父はアパートの管理人をしてて、母は早くに死にました。あたしが小学校に上がる前。父はお酒を飲むと、なんか食えるもんないんかと怒鳴るんです」「いつも取りに(万引きしに)行っていましたと語ります。その後に幼児の人格部分が出てきた時は「ああ、痛い痛い痛い。もうしません、ごめんなさい。許して、パパ」と泣きじゃくります。3つ目は、小さい時に虐待されていることです。精神医学的には、乳幼児期のトラウマ体験と呼ばれます。実際に、多重人格の患者の約90%に、乳幼児期からの繰り返す虐待が報告されています1)。なんで虐待されると多重人格になるの?-「ニューラルネットワーク分離発達説」安先生は、片岡さんに「こんなふうに記憶がなくなって、よう困っとるんとちゃう?」「あなたの中にはいくつかの部分があるんやと思う。多重人格。たとえば、あまりにもつらい目に遭うた時、子供はこれは自分の身に起きたことやないと感じる。今苦しんでるのは別の子やと。その子の中に痛い思いを引き受けてくれる人格が生まれるんやね。そうやって苦痛をやり過ごした子は、そのあとも複数の人格を生み出しながら、生きていくことになってしまうんや」と説明します。多重人格の原因は、明らかに乳幼児期のトラウマ体験なのですが、それでは実際にはどのようにして人格部分は「生まれる」のでしょうか?脳科学の視点から、多重人格のメカニズムは、同じく解離症に分類される憑依(憑依トランス症)のメカニズムを発展させて解き明かすことができます。そこで、まず憑依のメカニズムを理解する必要があります。この詳細については、関連記事2をご覧ください。憑依のメカニズムは、「ニューラルネットワーク分離作動説」という仮説を提唱して、解き明かしました。ただし、この仮説は、意識から精神機能や身体機能が分離して独自に作動してしまう病態のメカニズムを説明することができますが、作動するだけでなくさらに成長発達までもするメカニズムを説明することはできません。それではさらに、このメカニズムをどう説明すればいいでしょうか?ここで、多重人格の原因となるトラウマ体験の時期は成人期ではなく乳幼児期であることから、子供の脳の特徴に着目します。そして、3つの段階に分けて、多重人格が生まれるメカニズムを解き明かしてみましょう。(1)そもそも小さい子供の記憶はばらばらである幼児は1歳以降でどんどん言葉を覚えていきますが、言葉をつなぎ合わせて出来事(エピソード)を話すようになるのは4歳以降です。また、同じ本の読み聞かせを何度もねだり、同じごっこ遊び(エピソードの演技)を繰り返すのですが、これが少なくとも就学前の6歳まで続きます。つまり、幼児は、エピソード記憶をはじめ脳の機能が未発達であることで、これまでの出来事にしても本の内容にしてもごっこ遊びにしても、大人のようにつながりのある全体的なエピソードとして結び付けたり関連付けることはできず、ばらばらな断片のシーンとしてしか覚えられないのです。だから、読み聞かせもごっこ遊びも何度やっても飽きないのです。1つ目は、そもそも小さい子供の記憶はばらばらである、つまり大人と比べて乳幼児の精神機能はまだ完成(統合)していないことです。ちょうど、前回(2025年11月号)でご紹介した分離脳で脳梁でのネットワークがつながっていないのと同じように、幼児の脳は、エピソード記憶とこれに派生する感情、思考、意欲、場合によっては知覚のニューラルネットワークの複合体の一つひとつがまだ十分につながっておらず、その瞬間を反射的に生きており、意識はその瞬間でころころ変わっていると言えます。また、記憶だけでなく、感情、思考、自己意識などの精神機能もまだ統合されておらず、恐怖を恐怖として感じることができなかったり、体験を過去のこととして俯瞰して自己認識することができないのです。(2)小さい子供はフラッシュバックを現実として認識するその1で地震の揺れ(身体感覚のフラッシュバック)を感じ続ける男の子について説明しましたが、彼は小学生ながらこのフラッシュバックの世界をあたかも現実として認識してしまいそうな危うさがありました。裏を返せば、だからこそ、彼は地震ごっこ(再演遊び)をついやってしまっていたのでした。もしも彼がもっと小さい幼児だったら、そのフラッシュバックを完全に現実として認識していたでしょう。2つ目は、小さい子供はフラッシュバックを現実として認識してしまう、つまり精神機能が未発達であることから自己認識ができず、そのトラウマ体験の記憶(フラッシュバック)の世界が前面に出てしまうことです。これは、解離性フラッシュバックと呼ばれます。大人でも見られることはありますが、圧倒的に子供に多いことが考えられます。このような解離性フラッシュバックは、乳幼児がトラウマ体験を受けた時にPTSDの症状として出てくる場合以外に、もう1つ考えられます。それは、解離性健忘になる場合です。この場合、その体験を含んだエピソード記憶のニューラルネットワークがしばらくローカルスリープになります。この点は、大人と同じです。しかし、その後にそのローカルスリープが再活性化したら、大人のようにその記憶を思い出して心理的なショックを受けたり、ただフラッシュバックが出てくるわけではなく、この解離性フラッシュバックが出てくることが考えられます。そして、多重人格の多くは、主パーソナリティが子供の頃の記憶をあまり思い出せないことから、解離性同一症では、まず解離性健忘になってそのあとに解離性フラッシュバックが出ている後者のパターンであることが考えられます。(3)小さい子供はその解離性フラッシュバックの世界を生きる解離性フラッシュバックは意識の前面に出て占有していることから、この解離性フラッシュバックを引き起こすニューラルネットワークは、憑依を引き起こすニューラルネットワークと同じように分離していると考えることができます。この2つの違いは、憑依は宗教儀式(暗示)などによって一時的にしか出現しないのに対して、解離性フラッシュバックは持続して出現することができる点です。よって、解離性フラッシュバックを引き起こすニューラルネットワークは、その解離性フラッシュバックが出ている(ローカルスリープになっていない)時の新たな日常生活の体験の記憶のニューラルネットワークとはつながっていき、逆にその解離性フラッシュバックが出ていない(ローカルスリープになっている)時の体験の記憶のニューラルネットワークとはつながらずに、人格部分として独立して成長していくと仮定することができます。3つ目は、小さい子供はその解離性フラッシュバックの世界をそのまま生きてしまう、つまり解離性フラッシュバックの記憶のニューラルネットワークが人格部分の土台となり、統合されずに独立してしまい、勝手に成長発達してしまうことです。この記事では、これを「ニューラルネットワーク分離発達説」と名付けます。そして、それぞれの解離性フラッシュバックの出現の時間や頻度によって新たな体験の記憶に差が出てきます。それを考慮すると、かなり成長すれば酒飲みの片岡さんのように成人した人格部分になり、ほとんど成長しなければ幼児言葉を話していた片岡さんのように幼児のままの人格部分になるわけです。よくよく考えると、片岡さんの幼児の人格部分は、成長していないので、当時のトラウマ体験そのままの解離性フラッシュバックであるとも言い換えられます。一方で、成人期に受けたトラウマ体験のフラッシュバックは、大人の脳がすでに完成されていることから、解離性フラッシュバックになったとしてもそもそも短時間(数秒~数分)であり、さらに恐怖で圧倒されて動けないことがほとんどであるため、その時の新たな体験をする間もなく、人格部分として独立して成長していくことはないわけです。だからこそ、成人期に受けたトラウマ体験によってPTSDや記憶喪失にはなっても多重人格にはならないのです。実際の画像研究では、大人の多重人格において、トラウマ体験の記憶のない主人格とトラウマ体験の記憶のある人格部分のそれぞれの出現時に、中立的な脚本とトラウマ的な脚本をそれぞれ聞かせたところ、主人格の出現時には脚本の違いによって脳の血流パターンに違いは認められませんでした。また、中立的な脚本を聞かせた人格部分との違いも認められませんでした。ところが、トラウマ的な脚本を聞かせた人格部分の脳の血流パターンに限り、違いが認められました2)。このことからも、もちろん多重人格は本人が意図した演技なのではなく、主人格と人格部分のそれぞれ違う脳のニューラルネットワークが交代でローカルスリープになっており、ローカルスリープになっていない(起きている)方が反応していることがわかります。また、ローカルスリープの極端な例として、イルカや渡り鳥は、大脳半球を交互に眠らせることで、泳いだり飛びながら睡眠をとること(半球睡眠)ができます3)。これは、まさに分離脳と同じように、右脳と左脳のそれぞれの「人格部分」(ニューラルネットワーク)として分離しており、それらが交代制で独立して意思決定をして行動をしていることになります。つまり、イルカや渡り鳥は、多重人格の動物モデルと言えます。人間は、イルカや渡り鳥ほどローカルスリープを進化させてはいませんが、幼児期の重度ストレスは人間のローカルスリープを過剰発達させることができてしまうと言えます。なんで虐待されても多重人格にならないの?―ストレス脆弱性モデル先ほど、虐待されると多重人格になるメカニズムを解き明かしました。一方で、虐待されても多重人格にならない人もいます。その違いは何でしょうか?これは、ストレス脆弱性モデルを使って説明することができます。この理論を簡単に言うと、ストレスが大きければ大きいほど、そしてそのストレスに脳が弱ければ弱いほど発症するということです。実際に、このモデルは多くの精神障害に当てはまります。(1)ストレスが大きければ大きいとまず、ストレスの大きさとしては、明らかに虐待なのですが、さらにそれが繰り返されることも挙げられます。すると、先ほど説明した解離性フラッシュバックがいくつも生まれてしまうわけですが、同時にその回数分だけ脳にダメージを与えるため、それらの解離性フラッシュバックが成長発達とともに統合されにくくなり、結果的に人格部分として残ってしまうと説明することができます。逆に言えば、虐待が繰り返されていない場合はダメージが減るので、解離性フラッシュバックは成長発達とともにやがて統合されて人格部分が残らないことも想定できます。たとえば、虐待が1回だけの場合、解離性フラッシュバックが1回だけ出てきて、人格部分が1つだけ独自に成長して「二重人格」になることはあまりないということです。これは、人格部分が少ない比較的に軽症の症例のほうが統計学的に考えれば多いはずなのに、実際には人格部分の平均人数は8、9人と多く、2、3人の少数の症例はあまり見かけない現象を説明することができます。(2)脳が弱ければ弱いと次に、脳の脆弱性としては、明らかに乳幼児の脳なのですが、とくに脆弱な乳児が挙げられます。実際に、乳児(1歳から1歳半)の愛着タイプを評価するストレンジ・シチュエーション法において、虐待歴のある乳児は、親がいない状況でしばらくして親が戻ってきたら、顔を背けながら近づこうとする特徴(愛着タイプD)が観察されています4)。これは、虐待する親への接近行動と回避行動が同時に現れる奇妙な病態です。このメカニズムは、親に接近しようとするニューラルネットワークと親を回避しようとするニューラルネットワークがまだ交代できず、同時に働いていることが考えられます。ちょうど、「エクソシスト」で紹介した分離脳によるエイリアンハンド症候群に重なります。ただし、このような現象は、年齢が上がると目立たなくなる点で、やはりとくに未発達な脳を持つ乳児特有の一時的な現象と考えられます。そして、この現象からも、幼児よりも乳児の脳はさらに統合されていないことを説明することができます。なお、交代するメカニズムも、それぞれのニューラルネットワーク同士のせめぎ合いの発達から説明することができます。同じように交代する例としては、目の前に伸ばした人差し指2本をつなげると、ソーセージのように見えるのですが、この時にどちらかの指に交互にくっ付くようにも見える視覚現象(両眼視野闘争)が有名です。ちなみに、ストレンジ・シチュエーション法の残りの愛着タイプA、B、Cの3つの詳細については、関連記事3をご覧ください。逆に、成長発達した大人の脳は、乳幼児と比べて脆弱ではないことから、先ほどにも触れたように、成人期に受けたトラウマ体験では、PTSDや記憶喪失にはなっても多重人格にはならないことを説明することができます。また、前回までに紹介した憑依と同じように、脆弱性(ニューラルネットワークの分離のしやすさ)には個人差があることが考えられます。多くは、人格部分ができたとしても大人になって治っていき(統合されていき)、明らかな人格部分は出てこなくなることが考えられます。ただ、その代わりに、フラッシュバックが残って感情のコントロールが難しくなる病態(複雑性PTSD)や、些細なことで人が変わったように急に怒ったり泣いたりする病態(ボーダーラインパーソナリティ症)になることがあります。これらは、まるで「人が変わった」(人格部分が出てきている)ように見える点では、やはり多重人格との連続性があると言えます。単に、本人が「人が変わった」程度をどれくらい自覚できるかどうかの違いです。なお、多重人格、記憶喪失、憑依現象だけでなく、PTSD(単純性PTSD)、複雑性PTSD、ボーダーラインパーソナリティ症の診断基準にも解離症状が含まれており、これらはトラウマ体験(重度ストレス)を原因としている点では連続した病態(トラウマ・スペクトラム)であると言えそうです。脳科学からみる多重人格とは?-生まれるのではなく1つにならなかっただけ安先生が言ったように、従来の精神医学では、「その子の中に痛い思いを引き受けてくれる人格が生まれる」という多重人格のメカニズムの解釈がありました。これは、私たちの心に訴える文学的なセンスはあったのですが、残念ながら科学的な根拠はありませんでした。脳科学の視点から多重人格のメカニズムに迫ると、人格部分とは、もともと1つだった人格が部分に分かれたのではなく、もともとエピソード記憶のニューラルネットワークの1つ1つの部分が最終的に1つの大きなエピソード記憶のニューラルネットワーク(人格)につながらなかった(統合されなかった)、つまりこの記事で提唱する「ニューラルネットワーク分離発達説」として理解することができます。つまり、人格部分とは、急にぽんと生まれたのではなく、最終的に1つにならなかっただけだったのでした。そう考えると、多重人格はそれほど不思議な現象でもないように思えてきます。今回、多重人格はどうやってなるかを解き明かしました。それでは、人類の心の進化の歴史のなかで、多重人格はいつ生まれたでしょうか? 言い換えれば、多重人格はなぜ「ある」のでしょうか? 1) DSM-5-TR、p323、日本精神神経学会、医学書院、2023 2) 心の解離構造、p196:エリザベス・F・ハウエル、金剛出版、2020 3) <眠り>をめぐるミステリー、p188:櫻井武、NHK出版新書、2012 4) 乳幼児のこころp104、遠藤利彦ほか、有斐閣アルマ、2011 ■関連記事NHKドラマ「心の傷を癒すということ」【その2】地震ごっこは人類進化の産物だったの!? だから楽しむのがいいんだ!-プレイセラピー映画「エクソシスト」【その1】どうやって憑依するの?-「ニューラルネットワーク分離作動説」あなたには帰る家がある(後編)【なんで倦怠期は「ある」の?どうすればいいの?】スプリット【なぜ記憶がないの?なぜ別人格がいるの?どうすれば良いの?(解離性障害)】

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第296回 「子どもを医師にしますか?」2026(前編)“医師氷河期”到来の予感、「皆が医学部行こうとするのは不思議」と玉川徹氏

病院経営をテーマに取り上げた「羽鳥慎一モーニングショー」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。2025年の最終回ということで、日々の事件から離れて、最近改めて気になっていることを書いてみたいと思います。それは、「今、医師は、自分の子どもを医師にしたいと考えているのか」ということです。きっかけは12月3日に放送されたテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」です。この日はテーマの1つに病院経営の悪化が取り上げられていました。11月26日に厚労省が公表した医療経済実態調査の結果を紹介しながら、病院経営が危機的な状況に陥っていることを報じたのですが、コメンテーターの玉川 徹氏が、経営がとても厳しい状況にもかかわらず「医師の数は増えているんだけど、いまだに東大とか京大行くよりも医師になる方を選ぶんですよ、各進学校は。あれは、何なんですかね?」と疑問を投げ掛け、解説者として出演していた千葉大学病院次世代医療構想センター特任教授の吉村 健佑氏に対し、「僕はこれから人口も減っていくし、AIもどんどん導入されるなかで、今のように医師の地位が社会的な地位とか収入とかも含めて、ずっと高いまま続いていくのかなと(疑問に)思っているのに、何でみんな医学部行こうとするのか不思議。なんでしょうね?」と問い掛けたのです。「儲かると思っているのかなぁ?と思って」と玉川氏が畳み掛けると、吉村氏は「保険診療に対する信頼があるのかなと思っています。その中で専門的な技術を身に付けたい。とくに最近女子の学生さんの進学が多くて、資格を得て技術を得てご自身でやっていく力をつける1つの職業としての魅力はまだあるのかなと思います」と回答。続けて吉村氏が「私も実は東京大学理科二類を最初に入って辞めて医学部入り直したんです」と明かすと玉川氏がその理由を尋ね、吉村氏が「理系の学部で進学していた時の先のイメージが、貢献に対するやり方が見えなかった。医師の方がわかりやすくて、社会に対する貢献ができるんじゃないかと私は25年前に考えた」と答え、玉川氏は「皆がそうだったら素晴らしいね。皆がそうだったら直美なんかないよ」と発言、議論は大した深まりをみせず、中途半端な形で収束しました。テレビ番組なので議論の尻切れ感は仕方ないかもしれません。しかし、玉川氏の「いまだに東大とか京大行くよりも医師になる方を選ぶんですよ、各進学校は。あれは、何なんですかね?」という問い掛けは、なかなかに芯を突いたコメントだと感じました。来年医学部に入る若者が一人前になる2040年は“医師氷河期”医療機関、とくに病院の経営の苦境が伝えられ、かつ医療現場の過酷さや報酬の低さなどもあって、消化器外科医や心臓外科医の不足や、医師が初期研修後に一般的な専門科を経ずに直接美容医療の道へ進む“直美”問題などが報道されています。また、「第294回  改正医療法やっと成立、医療機関の集約化、統合・再編、病床削減さらに加速へ 『地域医療構想の見直し』8つのポイント」でも書いたように、人口減少を背景に、病院はこれから集約化、統合・再編が進み、各病院の診療科が減るとともに、ポスト(部長ポストなど)自体も減るでしょう。病院のポストが減るなら開業すればいいのかと言えば、それも得策とは言えません。人口減少はそのまま診療所の患者数減少につながるからです。高齢者の人口増も早晩頭打ちとなりますので、あと15~20年もしたらあらゆる診療科の患者(訪問診療ですら)は減っていくに違いありません。仮に都心部で開業でき(改正医療法では外来医師が多い地域で無床診療所の新規開設が規制されることになります)、熾烈な患者獲得競争を勝ち抜いたとしても、早晩、患者数減少という局面が待ち受けます。来年医学部に入ったとして、卒業するのは2030年前半、一人前の医師になる2040年頃(「新たな地域医療構想」の目標年でもあります)はそれこそ“医師氷河期”に突入すると予想されます。そうした状況を考えると、玉川氏の「みんな医学部行こうとするのは不思議」発言はまさに正論と言えます。今の高校教育にも残る医学部偏重、東大至上主義とはいえ、大学医学部の人気は依然高いままです。2025年度の国公立医学部一般選抜(前期)の志願倍率はおおよそ4倍強で、全学部平均(約3倍)よりかなり高い水準が続いています。 一方、私立医学部では「第292回 藤田医科大の学費800万円値下げから見えてくる、熾烈を極める大学医学部サバイバル戦」でも書いた学費の値下げや、奨学金拡充により「手の届く選択肢」として検討する受験生が増えています。なお、学費下げによってサラリーマンの子弟も比較的“手軽に”医学部受験ができるようになって、開業医など医師の子どもがなかなか入学できなくなっている、というまた別の問題もあるようです。こうした医学部人気の背景には、医学部受験の強さを相変わらず看板にしている進学校の存在があります。3年前の本連載「第93回 医学部進学実績トップ校の生徒が起こした事件で考えた教育現場の時代錯誤」でも取り上げた、愛知県の私立、東海高校がその代表ですが、その他、全国各地の名だたる中高一貫校が「医学部受験」を売りにしているのは、皆さんもご存じのとおりです。この「第93回」では、「今の高校生が医学部に行って、一人前の医師になる四半世紀後は、医師の仕事内容は大きく変わっている可能性があります。脳神経外科や心臓外科といった専門医の数は極力絞られ、総合診療医や家庭医といったジェネラリストが医師の主な職務となっているかもしれません。今回の事件で気になったのは、進学高校の教育現場における時代錯誤です。何十年も前の私の高校時代にあった医学部偏重、東大至上主義の構図が、今の高校教育にも厳然として残っていることはある意味驚きです」と書きましたが、3年経ってもその状況はまったく変わっていないわけです。進学校や予備校は、本当に受験生の将来を考えて教育をしているのでしょうか?2009年に医学雑誌に掲載された特集記事「子どもを医者にしますか?」そんなことを考えていたら、昔読んだある記事を思い出しました。今から17年前、まだ紙の雑誌だった日経メディカルが2009年1月号に掲載した「子どもを医者にしますか?」というタイトルの特集記事です。 「過重労働、訴訟の増加、医療費抑制など医師を取り巻く環境が悪化する中、『子どもは医師にしたくない』という医師が目立つようになった」として、当時の医師の本音をアンケートで調査するとともに、将来を予測しています。アンケートでは、今よりも医療機関の経営環境は良好だった当時でも、「子どもは医師にはなってほしくない」という医師は一定数いたようです。年明けの次回は今読んでもなかなかに興味深い、同記事の内容を紹介するとともに、今、「子どもを医者にすべきなのかどうか」について、改めて考えます。(この項続く)

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お尻の形で糖尿病リスクを予測できる?

 老化やフレイル、そして糖尿病のリスクが、お尻(臀部)の形に現れているとする研究結果が、北米放射線学会年次総会(RSNA 2025、11月30日~12月4日、シカゴ)で発表された。研究者によると、臀部にある大臀筋に起きる萎縮や炎症は、座っている時間の長さ、脂肪の蓄積の程度などの影響で変化し、糖尿病やフレイルのリスクを反映している可能性があるという。また、この変化のパターンは、男性と女性で異なるとのことだ。 発表者の1人である英ウェストミンスター大学のLouise Thomas氏は、「大臀筋は人体で最も大きな筋肉の一つであり、代謝の健康に重要な役割を果たしている可能性がある」と研究背景を解説。実際、これまでにも臀部の形と疾患との関連が研究されてきた。ただし、共同発表者である同大学のMarjola Thanaj氏は、「筋肉の大きさや脂肪の量を測定していた過去の研究とは異なり、われわれは形状を3Dで評価する技術を使用して、筋肉の付き方の変化を精密に把握した」と、従来の研究にはなかった本研究の特色を語っている。 この研究では、英国の一般住民対象に行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータベースが解析に用いられた。6万1,290件のMRIスキャン画像と、研究参加者の身体測定値、疾患罹患状況、ライフスタイルに関する詳細な情報を収集。全体として86項目の変数を評価し、臀部の筋肉の形状の変化とそれらの関連性が、時間の経過によりどのように推移するのかを追跡した。 Thanaj氏によると、解析の結果、「激しい身体活動の実施状況や握力を基に『フィットネスレベルが高い』と評価された人は、大臀筋が大きいことが分かった。一方で、加齢、フレイル、座位時間の長さは、筋肉の厚さ(筋厚)が薄く変化することと関連していた」という。また、フレイルと判定された男性は、同じくフレイルと判定された女性に比べて、大臀筋の筋厚がより薄くなっていることが示されたとしている。 さらに、2型糖尿病の男性は臀部の筋厚が顕著に薄くなっているのに対し、同じく2型糖尿病であっても女性の場合は筋肉量が多いという差が認められた。この差はおそらく、組織内への脂肪の浸潤の有無による違いと考えられるとのことだ。なお、研究者によると、本研究で示された結果は全て、臀部の「大きさ」よりも「形状」の方が、体の代謝の変化とより密接に関係していることを示唆しているという。Thanaj氏は、「臀部の形状の変化に男女差が見られるということは、同じ疾患でも性別によって、生物学的反応に異なる影響が生じることを意味している。このような差異は特に、2型糖尿病患者で顕著に現れるようだ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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疼痛治療薬の副作用が心不全の誤診を招く?

 オピオイドに代わる鎮痛薬として使用されている薬剤のせいで、医師が心不全と誤診してしまう例が少なくないことが、新たな研究で示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部教授のMichael Steinman氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に12月2日掲載された。 ガバペンチンやプレガバリンなどのガバペンチノイドと呼ばれる種類の薬剤は、神経痛の治療目的で処方されることが多い。しかし、これらの薬剤の副作用の一つに、下肢のむくみ(浮腫)の原因となる体液貯留がある。体液貯留は、心不全の症状としても広く知られている。そのため、この副作用が生じた患者の多くに、利尿薬のような本来は不要であるはずの薬剤が追加で処方され、その結果、腎障害やふらつき、転倒によるけがなどのリスク上昇につながっていることが、今回の研究から明らかになった。このように、ある薬の副作用が別の疾患に関わる症状と認識され、それに対してさらに薬が処方される現象は、処方カスケードと呼ばれる。 研究グループによると、オピオイド危機を背景に、ガバペンチノイドの処方はこの10年でほぼ倍増した。Steinman氏は、「ガバペンチノイドは非オピオイド系薬剤であり、比較的安全性が高いと考えられがちだ。しかし、ガバペンチノイドを使用している患者は、それがベストの治療法なのかどうかを評価するために、定期的に医師に相談し、非薬物療法を含めた、より適切な別の治療選択肢について検討すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。 Steinman氏らは今回の研究で、ガバペンチノイドとループ利尿薬の処方カスケードを経験している可能性の高い66歳以上の退役軍人120人(平均年齢73.9歳)の医療記録を調べた。120人のうち、106人(88.3%)は、5種類以上の薬を長期にわたって使用していた。73人(60.8%)では、浮腫の原因が記録されていたが、心不全(39.2%)や静脈うっ血(13.3%)を原因とする例が多く、ガバペンチノイドを考慮した医師はわずか4人(3.3%)にとどまっていた。また、116人(96.7%)にループ利尿薬が処方されていたが、そのほとんどは、下肢浮腫(86.7%)、心不全(13.3%)、呼吸困難(12.5%)の治療を目的としていた。 ループ利尿薬による治療開始から60日以内に、28人(23.3%)の患者で、腎機能の低下や起立時のめまい、低ナトリウムや低カリウムなどの電解質異常、転倒などのループ利尿薬に関連した健康問題が37件発生した。入院あるいは救急外来での治療が必要となった患者も6人(5.0%)いた。 Steinman氏らによると、下肢に浮腫が現れてからガバペンチノイドの服用を中止するよう指示した医師は1人だけだったという。一方で、浮腫の原因となり得る命に関わる疾患を除外するため、患者の約5人に1人が画像検査を受けていたことも明らかになった。 論文の筆頭著者であるUCSF医学部のMatthew Growdon氏は、「ガバペンチノイドは必要以上に高用量が処方されたり、効果が期待できない状態に対して処方されたりしている可能性がある。そのようなケースでは、医師はこれらの薬を処方しないこと、あるいは用量を減らして処方カスケードやその他の副作用のリスクを軽減することを検討すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。

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認知機能低下のサインは運転行動に現れる?

 運転行動の変化は認知機能低下の早期サインになる可能性があるようだ。車両に設置したGPS付きデータロガーで収集した、走行頻度、走行時間、急ブレーキなどの運転データは、早期認知機能低下のデジタルバイオマーカーになり得ることが、新たな研究で示された。米ワシントン大学医学部のGanesh Babulal氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に11月26日掲載された。Babulal氏は、「われわれは、GPSデータ追跡デバイスを使うことで、年齢や認知テストの結果、アルツハイマー病に関連する遺伝的リスクの有無といった要因だけを見るよりも、認知機能に問題が生じた人をより正確に特定することができた」と話している。 Babulal氏は、「交通事故のリスクが高い高齢ドライバーを早期に特定することは、公衆衛生上の重要課題だが、リスクのあるドライバーを見極めることは、既存の方法では時間がかかり困難だ」と指摘する。研究グループによると、軽度認知障害(MCI)の高齢者では、運転行動に微妙な変化が生じることが知られているが、その経時的な変化を実測して評価した研究は多くないという。 今回、研究グループは、実際の縦断的な運転データによりMCIの高齢者と認知機能が正常(normal cognition;NC)な高齢者を識別できるかを検討し、さらにその識別精度を、年齢や性別、APOE ε4遺伝子保有などの従来のリスク因子による予測精度と比較した。対象は298人(平均年齢75.1歳、女性45.6%)の高齢者で、このうち56人はMCI、242人はNCだった。試験参加者には毎年、臨床認知症評価尺度による認知機能の評価と神経心理検査が実施され、また、APOE ε4遺伝子の保有状況についても調査された。運転データは、参加者の車両に設置されたGPS付きデータロガーにより、最長40カ月間にわたって取得された。具体的な測定内容は、運転の頻度、時間、距離、時間帯、スピード、急ブレーキ、空間移動性(エントロピー〔訪れる場所の予測の難しさ〕、最大移動距離、行動範囲)などであった。 研究開始時点では、MCI群とNC群の運転行動にほとんど差は見られなかった。しかし、時間が経つにつれ違いが現れ、MCI群では、月間運転回数と夜間運転の頻度が減少し、また訪れる場所の多様性が低下する傾向が認められた。また、このような運転行動データのみを使った場合、MCI群とNC群を82%の精度で識別できることが示された。運転データに人口統計学的特徴やAPOE ε4遺伝子情報、認知機能評価の結果を加えると、精度は87%に向上した。一方、運転行動データを使用せず、従来のリスク因子のみを使用した場合の精度は76%だった。 Babulal氏は、「日常的な運転行動を観察することは、認知機能や日常生活能力を評価する上で、負担が少なく、邪魔にもならない方法だ。これにより、事故やヒヤリハットが起きる前の段階でリスクのあるドライバーを早期に発見し、介入につなげられる可能性がある。もちろん、個人の自律性やプライバシー、インフォームド・コンセントを尊重し、倫理基準を満たすことも不可欠だ」と述べている。

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がん免疫療法、投与時刻が効果に影響

 がん免疫療法の効果は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与する時刻によって異なる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。進展型小細胞肺がん(extensive-stage small-cell lung cancer;ES-SCLC)患者を対象にしたこの研究では、15時より前にICIの点滴を受けた患者では、15時以降に点滴を受けた患者に比べて無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が有意に長かったことが示されたという。中南大学(中国)湘雅医学院付属腫瘍病院のYongchang Zhang氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に12月8日掲載された。 Zhang氏は、「点滴を行う時刻の調整は、生存期間を延ばすための安価な方法となる可能性がある。追加費用も不要で、さまざまな医療現場で容易に実施できる簡単な介入だ」と述べている。 この研究では、2019年5月から2023年10月までの間にES-SCLCと診断され、化学療法に抗PD-L1抗体(アテゾリズマブまたはデュルバルマブ)を併用する一次治療を受けた397人を対象に、ICIの投与時刻が効果に影響するのかどうかが検討された。ICIの投与時刻は、各患者の最初の4サイクルのICI投与時刻の中央値とした。 解析の結果、ICIの効果を最大限に高める最適な投与時刻のカットオフは15時であることが示された。15時より前にICI投与を受けた患者では、15時以降に投与を受けた患者と比べて、PFSとOSが有意に長かった。多変量解析では、15時より前の早い投与時刻はPFSとOSのいずれにおいても独立した予後因子であることが確認され、病勢が進行するリスクは約52%(調整ハザード比0.483)、死亡リスクは約63%(同0.373)低下すると推定された。 Zhang氏は、「この研究結果は即時的な臨床的意義があり、現在のES-SCLC治療のプロトコルに変革をもたらす可能性を秘めている」と述べている。 研究グループは、ICIの投与時刻による効果の差は、体内時計(概日リズム)が免疫反応を含むさまざまな生体機能に影響するためだと考えている。それでも、概日リズムががん治療に及ぼす影響を理解し、患者の概日リズムを治療に最大限に活かす方法を確立するには、さらなる研究が必要だと指摘している。 研究グループは、「今回の知見は、生体リズムとICIによる治療の重要な相互作用を示しており、治療戦略の最適化に向けた新しい可能性を開くものだ」と結論付けている。(HealthDay News 2025年12月9日)

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子宮頸がん検診の選択肢に自己採取HPV検査を支持/米国がん協会

 子宮頸がんの定期検診の新たな選択肢に自己採取によるヒトパピローマウイルス(HPV)検査が加わることが、「CA: A Cancer Journal For Clinicians」に12月4日に発表された米国がん協会(ACS)の改訂ガイドラインで示された。専門家らは、膣鏡診なしで女性が自分で検体を採取できる検査を選べるようになることで、一般女性の検診に伴うストレスの軽減につながる可能性があるとの見方を示している。 米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター行動科学准教授のJane Montealegre氏は、「HPVのスクリーニングは、子宮頸がんのスクリーニングを意味している。これは女性の選択肢を広げることにつながる」と米NBCニュースに対して語った。 子宮頸がんのほとんどは、HPVが原因とされている。HPVは子宮頸がんを強く予測する要因であるため、現在は従来のパップテスト(細胞診)よりもHPV検査の方がスクリーニング方法として優先されている。 米国では2024年以降、米食品医薬品局(FDA)により3種類の自己採取HPV検査が承認されている。このうち2つは医療機関で膣スワブを用いて行うもの、残る1つは自宅で採取した検体を検査機関に郵送する検査である。米国では、検診とHPVワクチンの普及により子宮頸がんの発症率は数十年にわたって低下している。それでも、2022年に「JAMA Network Open」に掲載された研究によると、20%以上の女性が最新の検診を受けていない。 ACSがん早期発見部門の疫学者でシニア・バイス・プレジデントであり、今回発表された改訂ガイドラインの上席著者でもあるRobert Smith氏は、NBCニュースに対し、「自己採取による検査では、女性は、渡されたキットを使って診察室やトイレなど好きな場所で自分の検体を採取できる」と説明している。 医療従事者の採取による検査の場合には、HPV検査を5年ごとに受け、陽性の場合は追加検査を受けることが、ACSと米予防医学専門委員会(USPSTF)により推奨されている。一方ACSは、平均的なリスクの女性であれば、FDAによる承認を得た方法による自己採取HPV検査を受け、結果が陰性であれば3年ごとに検査を受けることを支持している。また、HPV検査を従来のパップテストと組み合わせて3年ごと、または5年ごとに行う方法も提示されている。 ACSとUSPSTFの推奨内容の違いは、HPV検査の開始年齢である。ACSでは25歳から開始することを推奨しているが、USPSTFでは30歳からの開始とし、21~29歳ではパップテストのみによる検診を3年ごとに受けることを推奨している。保険適用は、医療保険制度改革法(ACA)のもとで継続される見込みで、専門家らは医療機関で行われる自己採取検体も対象に含めるべきだとの見方を示している。 今回改訂されたACSのガイドラインでは、検診をいつまで受けるべきかについても明確な時期が示されている。それによると、65歳以上の平均的なリスクの女性は、60歳と65歳に受けたHPV検査がともに陰性であるか、または同じ年齢で実施したHPV検査とパップテストの併用検査がともに陰性であれば、子宮頸がん検診を中止してもよいとされている。 Smith氏は、「65歳まで定期的に検診を受けることの重要性について明確な推奨があるにもかかわらず、実際に受けている女性は極めて少ない。子宮頸がん検診をやめても安全であることを示す65歳までの記録が必要であることを女性たちに認識してもらうことが重要だ」と話している。 一方、今後、さらに検査間隔が延長される可能性があるとの見方を示す研究者もいる。米ミシガン大学産婦人科学・家庭医学教授のDiane Harper氏は、NBCニュースの取材に対し、「ワクチン接種率が高い集団では10年ごとの検査でも十分であるというデータがあるが、米国はその点で後れをとっている」と話している。

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健康診断の新視点、筋肉量指標で高血圧リスクを見える化

 従来のBMIでは筋肉量と脂肪量の違いを反映できないという問題がある。今回、男性の除脂肪体重指数(LBMI)を用い、低LBMIが高血圧リスクの増加と関連するという研究結果が報告された。BMIだけでは捉えられないリスク評価の重要性を提示している。研究は、慶應義塾大学医学部内科学教室の畔上達彦氏、東京大学医学部附属病院循環器内科先進循環器病学講座の金子英弘氏らによるもので、詳細は11月10日付で「Hypertension Research」に掲載された。 高血圧は心血管疾患や慢性腎臓病の主要リスク因子であり、世界的に重要な公衆衛生課題となっている。肥満は高血圧リスクの主要因子とされるが、BMIでは脂肪量と除脂肪体重(筋肉量)を区別できず、正確なリスク評価には限界がある。除脂肪体重を正確に測定するには高コストの画像検査が必要だが、近年、身長・体重・ウエストなどから推定できる簡易LBMIが開発され、日常の健康診断データでも評価が可能になった。しかし、この簡易LBMIを用いた高血圧リスク評価はこれまで行われていない。本研究では、健康診断や医療請求データを用いて、男性のLBMIと高血圧発症リスクの関連を後ろ向きに解析した。 本研究では、国民の行政保険請求データおよび年次健康診断記録を含むDeSCヘルスケア株式会社のデータベース(2014年4月~2022年11月)を用い、健康診断データが利用可能な男性98万5,521人を対象とした。主要評価項目である高血圧の発症は、診療報酬請求データに基づきICD-10コード(I10-I15)で同定した。リスク評価にはCox回帰モデルおよびスプラインモデルを用い、年齢や既往歴などの交絡因子で調整した。さらに、結果の頑健性を確認するため、層別解析および感度解析も実施した。 最終的な解析対象は、38万4,551人(年齢中央値51歳)であり、中央値1,393日の追跡期間中に4万312人(10.5%)が高血圧イベントを経験した。 まず、参加者のLBMIを四分位(Q1~Q4)に分類し、各群間で比較を行った。年齢、収縮期血圧および拡張期血圧、BMI、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、身体活動を交絡因子として調整した多変量Cox回帰を用いて、LBMIと高血圧発症リスクの関連を評価した。その結果、LBMIが低い四分位に属するほど高血圧発症リスクが高く(ハザード比〔95%信頼区間〕:Q1, 1.20〔1.15~1.26〕;Q2, 1.06〔1.02~1.10〕;Q3, 1.03〔0.99~1.06〕;Q4, 1〔基準値〕)、制限付き三次スプライン回帰モデルでも、LBMIの低下に伴い高血圧リスクが上昇する傾向が確認された。 次に、年齢別(65歳未満または65歳以上)および非肥満者で層別化したサブグループ解析を行った。いずれの層別群においても、多変量Cox回帰の結果、LBMIが低いほど高血圧発症リスクが上昇する傾向が確認された。 さらに、主要解析結果の頑健性を確認する感度解析として、連鎖方程式による多重代入法で欠測値を補完し、50万5,696人を対象に解析を行った。この解析においても、LBMIが低い四分位(Q1)は高血圧発症の有意なリスク因子であった(同1.19〔1.14~1.24〕)。加えて、死亡を競合事象とした競合リスク解析においても、LBMIが低い四分位(Q1)で高血圧発症リスクの上昇が認められた(同1.23〔1.15~1.32〕)。 これらの層別解析および感度解析により、LBMIと高血圧発症リスクとの関連は解析手法や欠測値の扱いにかかわらず一貫して確認された。 本研究について著者らは、「男性においてLBMIが低いことは高血圧リスクの上昇と関連しており、除脂肪体重を指標とした管理の重要性が示唆された。今後は、その増加や維持がリスク低減につながるかどうかの検討が必要である」と述べている。

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飛行機や病院の空気中の微生物は皮膚由来の無害な細菌が優勢

 飛行機の中や病院内の空気が気になる潔癖症の人を少し安心させる研究結果が報告された。米ノースウェスタン大学土木・環境工学准教授のErica Hartmann氏らによる研究で、機内や病院内の空気に含まれている微生物は、主に人の皮膚に常在する無害な細菌で構成されていることが明らかになった。この研究結果は、「Microbiome」に12月4日掲載された。 この研究では、使用済みマスクの外側表面と航空機のエアフィルターから微生物を回収し、そこに含まれるDNAを抽出してショットガンメタゲノム解析を行った。解析には、8,039時間使用された後に回収された航空機のエアフィルター1つと、飛行機利用者10人と、勤務後の医療従事者12人から入手した使用済みマスクが用いられた。 Hartmann氏らがこの研究のアイディアを思い付いたのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下の2022年1月だったという。同氏は、「当時、飛行機内での新型コロナウイルス感染リスクが深刻に懸念されていた。機内のHEPAフィルターは非常に高い効率で空気をろ過するので、空気中のあらゆるものを捕捉する優れた方法であると考えた」と話す。同氏はさらに、「ただし、これらのフィルターは、車や家庭に備え付けられているフィルターとは違う。何千ドルもする上、取り外すには航空機整備のために運休させなければならず、これには当然、莫大な費用がかかる。これは大きな驚きだった」と振り返る。 そこで、研究グループがはるかに安価な代替手段として目をつけたのがマスクであった。さらに、機内だけでなく病院も加えることにした。Hartmann氏は、「われわれは、マスクを、個人がどんな空気にさらされているのか、あるいは周囲の空気がどのような状態なのかを調べるための安価で簡便な空気サンプリング装置として使えることに気が付いた」とニュースリリースの中で述べている。 解析の結果、407種類の微生物種が確認された。飛行機のフィルターでも医療従事者や旅行者のマスクでも共通して高頻度で認められたのは、Cutibacterium acnes、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus hominisなどの皮膚常在菌であった。Hartmann氏は、「ある程度、予想されたことではあったが、検出された細菌の多くは屋内空間の空気に典型的に存在するタイプのものだった。つまり、屋内の空気は『屋内の空気らしい微生物構成』をしており、人の皮膚の常在細菌とよく似ていた」と話している。一方、Sphingomonas hankookensisやMethylobacterium radiotoleransなどの環境由来の細菌も、特にエアフィルターから高い頻度で検出された。さらに、大腸菌や緑膿菌、サルモネラ菌など、病原性を持つ可能性のある細菌もわずかに検出されたが、いずれも極めて低レベルであり、活性や感染の兆候は認められなかった。 このように、屋内の空気は比較的安全であることが示された一方で、感染性の微生物は他の経路、特に接触により広がることを研究グループは指摘している。Hartmann氏は、「今回の研究でわれわれは、空気中に何が含まれているのかだけを調べた。環境表面からの病原体の伝播を防ぐ上では、手指の衛生が依然として有効だ。われわれが関心を持ったのは、たとえ手を洗っていたとしても、人々が空気を通じて何に曝露されているのかという点だった」と話している。

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左室駆出率が正常な急性心筋梗塞患者にβ遮断薬は有益ではない(解説:佐田政隆氏)

 急性心筋梗塞後の患者で、左室駆出率が40%未満の場合にβ遮断薬が有効であることは議論の余地がない。一方、駆出率の低下を伴わない心筋梗塞後に対しても、現在の各国ガイドラインではβ遮断薬の使用を推奨している。しかし、その根拠となったエビデンスは、再灌流療法や、スタチンやレニン・アンジオテンシン系阻害薬などの心保護薬の使用も一般的ではない1990年代までの臨床試験に基づくものであった。最近は、急性期再灌流療法の普及で、左室駆出率が良好なまま回復する症例が増え、本当にそのような場合に漫然と長期間β遮断薬を投与したほうがよいかどうかは、エビデンスがないのが現状であった。 そこで、最近、左室駆出率が40%以上の急性心筋梗塞を対象にβ遮断薬の有効性を検討する臨床試験が各国で行われた。そのメタ解析が2025年11月、American Heart Association 2025で発表され、同日New England Journal of Medicine誌に掲載された。スペインで行われたREBOOT試験(7,459例)、スウェーデン、エストニア、ニュージーランドで行われたREDUCE-AMI試験(4,967例)、ノルウェーで行われたBETAMI試験(2,441例)、デンマークで行われたDANBLOCK試験(2,277例)、日本で行われたCAPITAL-RCT試験(657例)の統合解析で、急性心筋梗塞(ST上昇型・非ST上昇型)後14日以内で左室駆出率が50%以上、高血圧や不整脈などβ遮断薬の積極的な適応がない患者を対象にしている。主要評価項目(全死因死亡、心筋梗塞、心不全の複合エンドポイント)について、β遮断薬群と非投与群で有意差は認められなかった(β遮断薬群:8.1%、非投与群:8.3%、HR:0.97、95%CI:0.87~1.07)。本試験で、左室駆出率が正常な急性心筋梗塞患者では、β遮断薬の有益性が否定されたことになる。 一方、BETAMI試験、DANBLOCK試験、REBOOT試験、CAPITAL-RCT試験のメタ解析では、心不全の徴候がなく左室駆出率が軽度低下(40~49%)した急性心筋梗塞患者において、β遮断薬は総死亡、再梗塞、心不全を減少させることが2025年欧州心臓病学会で発表された(Rossello X, et al. Lancet. 2025;406:1128-1137.)。 このような最近のエビデンスに基づき、急性心筋梗塞患者に対するガイドラインは改訂されていくものと思われる。

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転倒予防は「ぬ・か・づけ」で覚える

転倒予防は「ぬ・か・づけ」で覚える冬季は厚着の服装で動きが緩慢になったり、寒さで筋肉も動かなくなるため、転倒事故が増えます。とくに高齢者では転倒による骨折が原因となる寝たきり状態などへのリスクとなります。こうした高齢者の転倒事例は、屋外だけでなく、屋内でも多く報告されています。転倒予防には「ぬ・か・づけ」*で危険な場所を覚えておきましょう。(*「ぬかづけ」は日本転倒予防学会が提唱)ぬ:濡れているところか:階段や段差(部屋とづけ:片づけていない(浴室や洗面所、台所など滑りやすい)部屋の間の段差などつまずきやすい)ところ(茶の間や廊下などつまずきやすい)(引用:消費者庁ホームページ「10月10日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_055/assets/consumer_safety_cms205_211005_01.pdf )Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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心窩部の不快感と胃酸の逆流感【日常診療アップグレード】第46回

心窩部の不快感と胃酸の逆流感問題35歳の男性。1ヵ月前から、心窩部の不快感と繰り返すゲップを主訴に来院した。食後、前かがみになると、酸っぱいものが込み上げてくる。仕事が忙しいため、21時に帰宅し晩酌をしながら、遅い夕食を食べ、すぐに就寝する。黒色便なし。体重減少なし。バイタルサインは正常。BMIは28である。腹部を含む診察所見に異常はない。上部内視鏡検査をオーダーした。

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第299回 Novo社の経口抗肥満薬ウゴービ錠を米国承認

Novo社の経口抗肥満薬ウゴービ錠を米国承認GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)ウゴービ(セマグルチド)を世に出して肥満治療の新たな時代を切り拓いたNovo Nordiskが、肥満に使う経口GLP-1薬の初の米国承認1)を手にして再び肥満治療を進歩させます。ウゴービ錠は先週の月曜日22日に米国で承認されました。注射のウゴービと同様に、心血管疾患を経ている過体重か肥満の成人患者の心血管疾患イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)リスクを減らす用途と、肥満か体重に関連する疾患を有する過体重の成人患者の過剰な体重を減らして体重減少を維持する用途が許可されました2)。胃腸の有害事象を被り難くするために、ウゴービ錠の服用量は徐々に増やしていきます。まずは1.5 mgを30日間1日1回服用し、大丈夫そうなら次の30日間(31~60日)は1日4mg、その次の30日間(61~90日)は1日9mgを服用し、91日目以降は維持用量の1日25mgを服用し続けることを目指します。患者が1日25mg服用に耐えられないなら、ウゴービ1.7mg注射に切り替えることを考慮します。ウゴービ錠の体重減少効果はOASIS 4と銘打つ第III相試験で裏付けられています。同試験には肥満か体重に関連する疾患を有する過体重の非糖尿病成人307例が参加し、ウゴービ群に割り振られた205例の64週時点での体重はベースラインに比べて14%減っていました2,3)。プラセボ群102例の64週時点の体重はほとんど変わらず2%ほど減ったのみでした。Novo Nordiskの経口GLP-1薬による肥満症治療が米国承認一番乗りしたわけですが、肥満治療分野でしのぎを削るEli Lillyの足音も近づいています。Eli Lillyの経口GLP-1薬orforglipronは今月中旬に発表された第III相ATTAIN-MAINTAIN試験の目標達成をもって準備が整い、米国にすでに承認申請しています4)。ウゴービ錠と同じくorforglipronも承認申請受理から1~2ヵ月以内に審査を済ませる優遇の対象となっており、順調にことが運べば早くも来年3月には米国承認に漕ぎ着ける段取りとなっています5)。第III相ATTAIN-1試験で、orforglipron高用量は過体重か肥満の患者の72週時点の体重をベースラインに比べて平均11.2%減らしています6)。よく効く注射のGLP-1薬の類いがここ数年で使えるようになったとはいえ、薬による治療を求める肥満患者は依然としてごく一握りのようです。Novo Nordiskの幹部の1人のMartin Holst Lange氏の説明によると、米国の肥満患者のうち薬を使っているのは2%足らずです7)。ウゴービ錠は注射を嫌う患者にも選ばれる可能性があり、冷やして保管する手間が要りません。これまで治療を求めなかったり受け入れなかったりした患者がウゴービ錠で助かると信じている、とNovo Nordiskの米国事業を率いるDave Moore氏は言っています1)。ウゴービ錠は米国で来年1月早々に発売されます。米国政府との取り決め8,9)に基づき、開始用量1.5mgの1ヵ月分が149ドルで提供されます。Eli Lillyのorforglipronも承認されたら最も低用量の開始分が同じく149ドルで提供されます10)。参考1)FDA approves Novo Nordisk's Wegovy pill, the first and only oral GLP-1 for weight loss in adults2)Wegovy PRESCRIBING INFORMATION3)Wharton S, et al. N Engl J Med. 2025;393:1077-1087.4)Lilly's orforglipron helped people maintain weight loss after switching from injectable incretins to oral GLP-1 therapy in first-of-its-kind Phase 3 trial5)Novo's Wegovy pill to test demand from consumers with cash6)Wharton S, et al. N Engl J Med. 2025;393:1796-1806.7)Novo Nordisk wins FDA approval for Wegovy in a pill, introducing first oral GLP-1 option for obesity8)Fact Sheet: President Donald J. Trump Announces Major Developments in Bringing Most-Favored-Nation Pricing to American Patients9)Novo Nordisk, Lilly strike deal with Trump to slash weight-loss drug prices10)What to know about orforglipron: An investigational oral GLP-1

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マラソンの心臓への影響は?ランナーを10年追跡

 高強度かつ長時間の運動負荷が右室機能に及ぼす影響、運動誘発性の心筋トロポニンT(TnT)値の上昇と将来的な右室機能障害との関連は明らかになっていない。そこで、スイス・チューリッヒ大学のMichael Johannes Schindler氏らの研究グループは、市民マラソンランナーを対象とした10年間の縦断的コホート研究(Pro-MagIC研究)を実施した。その結果、フルマラソン直後には一過性の右室機能低下とTnT値の上昇が認められたものの、これらは数日で回復し、10年後の右室機能低下とは関連しないことが示された。本研究結果は、JAMA Cardiology誌オンライン版2025年12月10日号で報告された。 本研究は、2009年のミュンヘンマラソンに参加した男性市民ランナーを対象とした「Be-MaGIC研究」の参加者277人のうち、10年後に再評価が可能であった152人を対象とした。評価は、2009年のレース前(ベースライン)、レース直後、レース1日後、3日後、および10年後の計5時点で行った。主要評価項目は、2009年のマラソン直後のTnT値のベースラインからの変化と10年後の右室駆出率(RVEF)のベースラインからの変化との関連とした。左室駆出率(LVEF)、拡張能指標(E/e'など)、バイオマーカー(TnT、NT-proBNP)なども評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時における対象の平均年齢は43歳であった。2009年のミュンヘンマラソン参加前のフルマラソン完走数中央値は3回(四分位範囲:1~7)、参加後のフルマラソン完走数中央値は5回(同:2~9)であった。・RVEFは、レース前(中央値:52.4%)と比較して、レース直後(同:47.6%)およびレース1日後(同:50.7%)で有意に低かった(それぞれp<0.001、p=0.001)。しかし、レース3日後には有意差はみられなくなった(同:51.3%、p=0.18)。・10年後におけるRVEF中央値は51.9%であり、レース前と比較して有意な変化は認められなかった(p=0.15)。・LVEFは、レース前(中央値:59.6%)と比較して、10年後(同:57.6%)でわずかに低かった(p<0.001)。・左室充満圧の指標である側壁E/e'は、レース前(中央値:5.1)と比較して10年後(同:5.4)で高かった(p<0.001)。・TnT値は、レース前(中央値:3ng/L)と比較して、レース直後(同:33.7ng/L)およびレース1日後(同:9ng/L)で有意に高かった(それぞれp<0.001、p=0.001)。しかし、レース3日後(同:3.5ng/L)、10年後(同:7.0ng/L)には有意差はみられなかった。・2009年のマラソン直後に認められた運動誘発性のTnT値のベースラインからの変化と、10年後のRVEFおよびLVEFのベースラインからの変化との間に有意な関連は認められなかった(RVEF:r=-0.10、p=0.35、LVEF:r=-0.09、p=0.35)。 著者らは、「マラソンによるTnT値の上昇や右室機能低下は一過性の変化であり、大多数の市民ランナーにおいて、右室機能の長期的な悪化をもたらすことはないことが示唆された。LVEFや拡張能指標に統計学的に有意な変化がみられたが、正常範囲内にとどまるものであった」と結論付けている。

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ミトコンドリア活性化技術で希少疾患に挑む、その機序や効果とは

 “細胞のエネルギー生産工場”とも呼ばれ、ほぼすべての細胞に存在する細胞小器官ミトコンドリア。これを用いた希少疾患の根本治療や加齢対策が、今、現実味を帯びている。先日開催された第7回ヘルスケアベンチャー大賞では、マイトジェニックの「ミトコンドリア活性化による抗加齢ソリューション『マイトルビン』事業」が将来性や抗加齢への観点を評価され、大賞を受賞した。同社が期待を集める創薬技術や将来ビジョンとは―。なぜ今、ミトコンドリア活性化が注目される? 同社は“ミトコンドリア研究の成果を世の中に還元する”を理念に掲げる学習院大学発のベンチャー企業である。同社が開発・特許出願を行った植物由来の低分子化合物「マイトルビン(Mitorubin)」を用いた“ミトコンドリア活性化”という新たな健康軸から、老化予防や加齢性疾患治療薬の創出を目標に掲げて活動を行っている。 ミトコンドリアは身体のエネルギー源をATPとして供給し、その副産物として活性酸素を発生させるが、ミトコンドリアの機能が低下すると、エネルギー産生の過程で電子の渋滞が起こり、過剰な活性酸素が発生して細胞やDNAを傷付けてしまう。その結果、パーキンソン病などの神経変性疾患、心疾患、フレイル、シミ・シワといった皮膚の外見変化などに影響を及ぼすため、いかにして「ミトコンドリアを活性化させるか」が焦点となっている。これまでにコエンザイムQ10(CoQ10)やニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、5-アミノレブリン酸(5-ALA)などの成分によるミトコンドリアの活性化・増殖促進が産学で試みられているが、同社の開発するマイトルビンはそれらとは一線を画す。マイトルビンによるミトコンドリア活性化の機序 その理由は、ミトコンドリアを活性化させる作用機序が一つひとつ丁寧に解明されつつあるからである。遡ること2006年、ミトコンドリア機能を制御するミトコンドリア酵素Mitochondrial Ubiquitin Ligase(MITOL、マイトル)を柳 茂氏(学習院大学理学部生命科学科分子生化学 教授)らの研究グループが発見したことに端を発する1)。MITOLはミトコンドリアの分裂を進めるタンパク質「Drp1」を分解してその分裂を抑えるほか、小胞体との融合を助けるタンパク質「Mfn2」を活性化させる役割を担う1,2)。近年では、ミトコンドリアと小胞体が接触するミトコンドリア関連小胞体膜(Mitochondria-associated ER membrane、MAM)における酸化ストレスや細胞運命の制御機構にも注目が集まっており3,4)、その機能低下がアルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の病態、さらには心臓の老化に関与することなどから、ミトコンドリアにおける老化制御因子として多彩な研究が進められている5-7)。そして、マイトルビンは前述の柳氏らにより生薬成分ベルベリンから合成された一連の誘導体群の総称で、これがMITOLをはじめとしたミトコンドリアタンパク質を増強しつつ、ミトコンドリアの量そのものを増加させる。それにより、ミトコンドリアでのエネルギー産生が有意に高まることが培養細胞およびマウスモデルで確認された8)。 今回の受賞において、登壇した谷若氏はマイトルビンの有効性について、「筋肉由来の培養細胞に添加することで、エネルギー産生に適した細く長い高品質のミトコンドリアが増加し、ミトコンドリアの呼吸活性が上昇した。これらの実験を踏まえて高齢マウスに飲水投与を行ったところ、心筋ミトコンドリアの呼吸活性が強化され、心エコーなどで心機能の回復が認められた」とコメント。また、安全性については、「同条件下での長期投与による死亡リスクはなく、さらに高脂肪食負荷マウスにおいて、23%の寿命延長効果を確認した」と老齢マウスにおけるアンチエイジング効果が実証されたことを説明した8)。ミトコンドリア病や加齢性疾患の創薬実現に向けて これらの研究結果から、同社は指定難病であるミトコンドリア病患者のアンメットメディカルニーズに応えるべく治療薬開発でも前進している。「某大学医学部と共同研究を行い、MELASと呼ばれるミトコンドリア病の患者由来細胞にマイトルビンを添加した結果、ミトコンドリア機能の改善を認めた」とし、論文化についても言及した。さらに同社は、一般消費者向けにマイトルビン含有植物由来原料を使用したサプリメント「MitoRubin(R)」や入浴剤を販売するなどし、認知度の拡大や収益モデルを構築しながら、ミトコンドリア病治療薬の前臨床試験実施に向けた取り組みを行っている。 最後に同氏は「われわれの目標は希少疾患への創薬提供であり、それに続いて加齢性疾患への適応拡大を目指す。さまざまな領域の研究者・臨床医との連携を強化しつつ、マイトルビンを通じて、すべての世代にミトコンドリアの活性化と健康を届けたい」と締めくくった。ヘルスケアベンチャー大賞とは ヘルスケアベンチャー大賞とは、アンチエイジング領域においてさまざまなシーズをもとに新しい可能性を開き、社会課題の解決につなげていく試みとして、坪田 一男氏(日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長)らが2019年に立ち上げ、今年で7回目の開催を迎えた。■参考第7回ヘルスケアベンチャー大賞株式会社マイトジェニック1)Yonashiro R, et al. EMBO J. 2006;25:3618-3626.2)Sugiura A, et al. Mol Cell. 2013;51:20-34.3)Nakashima A, et al. Life Sci Alliance. 2019;2:e201800045-e201800045.4)Takeda K, et al. EMBO J. 2019;38:e100999.5)Shiiba I, et al. EMBO Rep, 2021;22:e49097.6)Takeda K, et al. Commun Biol. 2021;4:192.7)Tokuyama T, et al. iScience. 2022;25:104582.8)Sato M, et al. bioRxiv 2025. May 3. [Epub ahead of print]

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