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肺炎へのセフトリアキソン、1g/日vs.2g/日~日本の約47万例の解析

 肺炎患者へのセフトリアキソン(CTRX)の投与量は1~2g/日とされているが、最適な用量は明らかになっていない。市中肺炎患者では1g/日と2g/日の有効性は同等とする報告もあるが、ICU入室を要する重症例では2g/日が有効であることを示唆する報告もある。そこで、谷口 順平氏(東京大学大学院医学系研究科)らの研究グループは、DPCデータを用いた解析により、肺炎で入院した患者におけるCTRX 1g/日と2g/日の有効性および安全性を比較した。その結果、30日院内死亡率について、全体集団ではCTRX 1g/日群と2g/日群の間に有意差はみられなかったが、機械的換気を要する重症例では2g/日群のほうが有意に低かった。本研究結果は、Journal of Antimicrobial Chemotherapy誌オンライン版2025年6月10日号に掲載された。 研究グループは2010〜22年のDPCデータを用いて、入院後2日以内にCTRXによる治療を開始した肺炎患者47万1,694例を抽出した(1g/日群17万3,079例、2g/日群29万8,615例)。主要評価項目は30日院内死亡率、副次評価項目は有害事象(胆道合併症、Clostridioides difficile感染[CDI]、アレルギー反応およびこれらの複合)とした。有効性および安全性の解析について、両群間の背景因子を調整するため、傾向スコアオーバーラップ重み付け法を用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後の30日院内死亡率は1g/日群4.6%、2g/日群4.5%であり、両群間に有意差はみられなかった(リスク差[RD]:−0.1%、95%信頼区間[CI]:-0.3~0.1)。・副次評価項目の有害事象(胆道合併症、CDI、アレルギー反応の複合)の発現割合は1g/日群1.8%、2g/日群1.9%であり、わずかながら2g/日群が有意に高かった(RD:0.1%、95%CI:0.0~0.2、p=0.007)。CDIの発現割合もわずかながら2g/日群が有意に高かった(1.1%vs.1.2%、RD:0.1%、95%CI:0.0~0.2、p=0.014)。・機械的換気を要する重症例を対象としたサブグループ解析において、30日院内死亡率は1g/日群20.4%、2g/日群17.2%であり、2g/日群が有意に低かった(RD:-3.2%、95%CI:-5.6~-0.9、p=0.006)。・寝たきりの患者を対象としたサブグループ解析において、CDIの発現割合は1g/日群2.2%、2g/日群2.7%であり、2g/日群が有意に高かった(RD:0.4%、95%CI:0.2~0.7、p=0.006)。 本研究結果について、著者らは「通常の肺炎治療では1g/日を超えるCTRXは不要な可能性があるが、機械的換気を要する重症例では2g/日を選択肢として検討すべきである」とまとめた。

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アリピプラゾールLAIへの切り替え、前治療薬による有用性の違いは?

 アリピプラゾールの持続性注射剤(LAI)は、統合失調症の治療において安全性および有効性が実証されている。しかし、アリピプラゾールに対する臨床反応には個人差があり、切り替え前に服用していた抗精神病薬によるD2パーシャルアゴニストおよびD2アップレギュレーションが関連している可能性が示唆されている。韓国・ソウル大学のEuitae Kim氏らは、臨床的に安定した統合失調症患者における経口抗精神病薬からアリピプラゾールLAI月1回(AOM)投与への切り替えについて、前治療の抗精神病薬を考慮し、症状悪化または有害事象の有無を評価した。Schizophrenia Research誌2025年7月号の報告。 本試験は、20週間のプロスペクティブ非盲検多施設共同研究として実施した。臨床的に安定した統合失調症患者を、前治療の経口抗精神病薬に基づいて経口アリピプラゾール群(I群)または他のD2アンタゴニスト群(II群)に分類し、4週間ごとのAOM投与への切り替えを行った。主要エンドポイントは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアのベースラインからの変化とした。治療中に発生した有害事象(TEAE)のモニタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・I群100例、II群101例が試験を完了した。・AOMへの切り替え後のPANSS合計スコアのベースラインからの変化は、I群で-9.43±9.79(p<0.0001)、II群で-4.04±8.72(p=0.0102)であった。・II群はI群と比較し、AOM開始後に睡眠障害(p=0.0243)および精神症状(p=0.0042)のTEAEがより多く発生したが、いずれも試験期間中に消失した。・精神症状のTEAEは、前治療における経口抗精神病薬の漸減の速さと関連が認められた(p=0.0269)。・AOM投与開始による症状の悪化は認められなかった。・前治療における経口抗精神病薬の種類にかかわらず、AOMは有意な副作用なく精神症状を軽減した。・D2アンタゴニストによる治療歴を有する患者では、一過性の精神症状のTEAEがみられる可能性があるが、長期のクロスタイトレーションで最小限に抑制できることが示唆された。

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米国で承認された薬の約半数が日本で未承認

 米国と日本における医薬品の承認格差を調査した結果、2005~22年に米国で承認された医薬品のうち44%が日本では未承認であり、近年に承認された医薬品ほど未承認に留まる傾向が強かったことを、慶應義塾大学の笠原 真吾氏らがJAMA Network Open誌2025年6月10日号のリサーチレターで報告した。 近年、米国で承認された医薬品が他国では未承認のままとなる傾向が強まっており、患者の医薬品アクセスに制限が生じる可能性がある。そこで研究グループは、米国で承認された医薬品のうち、日本では承認されていない医薬品の特徴を明らかにすることを目的として横断的解析を実施した。 対象となった医薬品は、2005~22年に米国または日本で初めて承認された新規分子化合物および生物学的製剤であった。2年の猶予期間を設定して、2024年12月31日時点の日本における承認状況を評価した。米国で承認されたものの、日本では未承認であった医薬品の傾向をロジスティック回帰分析で検討した。 主な結果は以下のとおり。・2005~22年に米国または日本で711品目の医薬品が承認された。・711品目のうち633品目は米国で承認されており、そのうち280品目(44.2%)は日本では承認されていなかった。・日本で承認された431品目のうち78品目(18.1%)は米国で承認されていなかった。78品目のうち63品目(80.8%)は欧州医薬品庁(EMA)でも承認されていなかったため、これらの医薬品はローカル薬とみなして回帰分析から除外した。・近年(2014年以降)に米国で承認された医薬品ほど日本では未承認である傾向が強かった。・抗腫瘍薬・免疫調節薬(β係数:−0.93)および血液・造血器系薬(−0.90)は日本でも承認される傾向が強かった一方で、消化器・代謝系薬(−0.43)、神経系薬(−0.51)、全身用感染症薬(−0.52)はやや承認されにくい傾向がみられた。・生物学的製剤、日本の製薬会社またはグローバルな大手製薬会社が開発した医薬品は日本でも承認される傾向が強かった。・FDAによる迅速審査指定の有無は日本での承認に影響しなかった。 研究グループは「本研究の結果は、小規模企業や外国企業への承認経路を最適化することで承認格差を是正し、日本における医薬品アクセスが向上する可能性があることを示唆している」とまとめた。

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軽度・短期間のAKIでも腎機能が長期的に悪化

 急性腎障害(AKI)後の長期的な腎機能悪化リスクを調査したシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、AKIが軽度で持続期間が短い患者であっても慢性腎臓病(CKD)の発症および進行リスクは有意に高く、糖尿病や高血圧の既往、急性透析の必要があった場合などではさらにリスクが増大していたことを、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのDenise M. J. Veltkamp氏らが明らかにした。Nephrology Dialysis Transplantation誌オンライン版2025年5月27日号掲載の報告。 AKIは、CKDや腎不全、主要腎有害事象(死亡、透析依存など)と関連するが、どのような患者においてリスクが増大するかは依然として不明である。そこで研究グループは、AKIのステージや持続期間、患者特性などが腎予後に与える影響を明らかにするためにシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。 PubMedおよびEmbaseを用いて、AKI患者と非AKI患者を少なくとも1つの重要なアウトカムで比較検討し、最低1年間の追跡調査を行った研究を系統的に検索した。ハザード比(HR)とオッズ比(OR)はランダム効果モデルを用いて統合し、患者背景の異質性はサブグループ分析およびメタ回帰分析を用いて検証した。 主な結果は以下のとおり。・70件の研究の183万8,668例(うちAKI患者は16万5,715例)を解析対象とした。すべての研究の質は中~高であった。・AKI患者では、非AKI患者よりも、CKD発症および進行リスク、腎不全リスク、主要腎有害事象リスクが高かった。 -CKD発症 AKI群25.8%vs.非AKI群8.7%、HR:2.36(95%信頼区間[CI]:1.77~2.94) -CKD進行 AKI群43.1%vs.非AKI群35.6%、HR:1.83(95%CI:1.26~2.40) -腎不全 AKI群2.9%vs.非AKI群0.5%、HR:2.64(95%CI:2.03~3.25) -主要腎有害事象 AKI群59.0%vs.非AKI群32.7%、OR:2.77(95%CI:2.01~3.53)・3日未満の短期間のAKIでもCKD発症リスクが高かった(OR:2.37[95%CI:1.68~3.07])。・ステージ1の軽度のAKIでもCKD発症リスクが高かった(HR:1.49[95%CI:1.44~1.55])。・糖尿病や高血圧、冠動脈疾患の既往、心血管手術を受けた患者、急性透析を必要とした患者では、CKD発症または進行リスクが高かった。 研究グループは「これらの結果は、AKI後の腎機能低下を速やかに認識し、腎保護のための介入を開始するための個別化されたフォローアップ戦略を開発する必要性を強調している」とまとめた。

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高リスク皮膚扁平上皮がんの術後補助療法、セミプリマブがDFS延長/NEJM

 術後放射線療法後の高リスク皮膚扁平上皮がん(cSCC)患者において、セミプリマブによる術後補助療法はプラセボと比較して無病生存期間(DFS)を有意に延長した。オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのDanny Rischin氏らC-POST Trial Investigatorsが、16ヵ国107施設で実施した第III相無作為化プラセボ対照試験「C-POST試験」の、二重盲検期の解析結果を報告した。高リスクのcSCC患者は、根治的局所療法後に再発するリスクが高いが、全身療法による術後補助療法の有用性は臨床試験で十分に確立されていなかった。NEJM誌オンライン版2025年5月31日号掲載の報告。対プラセボでDFSを比較 研究グループは、18歳以上の外科的切除および術後放射線療法を完了した限局性または局所性のcSCC患者のうち、高リスクの結節性または非結節性病変を有する患者を、セミプリマブ群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 高リスクの結節性病変は最大径20mm以上で節外浸潤を伴うまたは節外浸潤の有無にかかわらず3つ以上、高リスクの非結節性病変はin-transit転移、指定された神経の神経周囲浸潤、骨浸潤を伴うT4原発腫瘍、または局所再発で少なくとも1つの予後不良因子を有する(N2b以上、腫瘍径4.0cm超のT3以上病変、腫瘍径2cm以上で低分化がんの組織学的特徴を有する)、と定義された。 セミプリマブまたはプラセボは、当初350mgを3週ごとに12週間静脈内投与した後、700mgを6週ごとに変更され、36週間(計48週間)投与された。いずれも、最長48週間、または再発、許容できない毒性の発現、同意撤回まで投与した。 主要評価項目はDFS、副次評価項目は無局所再発生存期間、無遠隔再発期間、全生存期間、および安全性などであった。セミプリマブ群で再発または死亡リスクが68%低下、24ヵ月DFS率は87% 2019年6月~2024年8月に526例がスクリーニングされ、415例がセミプリマブ群(209例)とプラセボ群(206例)に無作為化された。 追跡期間中央値24ヵ月において、セミプリマブ群はプラセボ群と比較しDFSが有意に改善した。主要評価項目のイベントはそれぞれ24例、65例に発現し、再発または死亡のハザード比(HR)は0.32(95%信頼区間[CI]:0.20~0.51、p<0.001)、24ヵ月DFS率はそれぞれ87.1%(95%CI:80.3~91.6)、64.1%(95%CI:55.9~71.1)であった。 セミプリマブ群ではプラセボ群と比較して、局所再発(イベント数はそれぞれ9例vs.40例、HR:0.20[95%CI:0.09~0.40])および遠隔再発(10例vs.26例、0.35[0.17~0.72])のリスクも低下した。 Grade3以上の有害事象は、セミプリマブ群で23.9%、プラセボ群で14.2%に発現し、投与中止に至った有害事象はそれぞれ9.8%および1.5%であった。

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重症患者の経腸栄養、タンパク質を増量しても予後は改善せず/JAMA

 集中治療室(ICU)入室中の重症患者にタンパク質含有量の高い経腸栄養剤(100g/L)を用いても、通常(63g/L)と比較して90日時点の生存期間などは改善されなかった。オーストラリア・アデレード大学のMatthew J. Summers氏らが、同国およびニュージーランドの8施設のICUにて実施したクラスター無作為化非盲検クロスオーバー試験の結果を報告した。ガイドラインでは、重症患者におけるタンパク質含有量の高い経腸栄養が推奨されているが、患者のアウトカムに及ぼす影響は不明であった。JAMA誌オンライン版2025年6月11日号掲載の報告。タンパク質含有量100g/L vs.63g/Lを比較 研究グループは、経腸栄養におけるタンパク質強化が、生存日数と入院回避期間の延長に結び付くかを検証する目的で、4施設が2022年5月23日より、4施設が2023年8月23日よりそれぞれ12ヵ月間患者を募集し、2023年11月21日に最終追跡調査を行った。 対象患者は16歳以上で、ICUに入室し経腸栄養剤を処方された患者、または入院中にICUに入室し初めて経腸栄養剤を処方された患者とした。 各ICUは、12ヵ月間にわたり3ヵ月ごとに、タンパク質含有量の高い経腸栄養剤(タンパク質100g/L)(タンパク質強化群)→通常の経腸栄養剤(タンパク質63g/L)(通常群)を交互に、またはその逆の順で交互に治療を提供するよう、無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、90日時点の対象病院への非入院生存期間、副次アウトカムは90日時点の生存者における対象病院への非入院日数、90日時点での生存率、侵襲的人工呼吸を受けた患者における侵襲的人工呼吸期間、ICU入室期間および入院期間(生存退院までの期間)、気管切開・挿管および新規腎代替療法の実施率、ならびに退院先であった。主要評価項目に差はなし 計3,397例が登録された。年齢中央値は61歳(四分位範囲[IQR]:48~71)、男性が2,157例(64%)であった。 90日時点の対象病院への非入院生存期間中央値(IQR)は、タンパク質強化群で62日(0~77)、通常群で64日(0~77)であり、補正後の群間差の中央値は-1.97日(95%信頼区間[CI]:-7.24~3.30)であった(p=0.46)。 90日時点で、タンパク質強化群では1,681例中1,221例(72.6%)が生存し、通常群では1,716例中1,269例(74.0%)が生存していた(リスク比:0.99、95%CI:0.95~1.03)。 副次アウトカムに関する群間差は、生存者における非入院日数中央値の差が0.01日(95%CI:-1.94~1.96)、平均侵襲的人工呼吸期間の差が6.8時間(95%CI:-3.0~16.5)であった。また、ICU生存退室までの期間のハザード比は0.93(95%CI:0.88~1.00)、生存退院までの期間については0.96(0.90~1.02)、気管切開術のリスク比は1.15(0.66~2.01)、新規腎代替療法のリスク比は0.97(95%CI:0.81~1.16)であり、退院先は両群で類似していた。

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多くの高齢者が白内障手術に恐怖心を抱いている

 白内障の手術は最も安全性の高い手術の一つであり、成功率は95%に達する。それにもかかわらず、多くの高齢者は失明を恐れて手術を受けていないことが、米シンシナティ大学医学部のLisa Kelly氏らによる研究で明らかにされた。この研究の詳細は、「The Journal of Clinical Ophthalmology」に3月28日掲載された。 白内障は、目のレンズの役割を担う水晶体が白く濁り、視界がぼやけたり暗くなったりする病態を指す。原因は、主に加齢に伴い水晶体を構成するタンパク質が酸化して白く濁ることにある。米クリーブランド・クリニックによると、90代の約半数では、どこかの時点で濁った水晶体を透明な人工水晶体に置換する手術を受ける必要があるという。手術に要する時間は非常に短い上に、痛みはほとんどない。米国では毎年300万件以上の白内障手術が行われている。 今回の研究でKelly氏らは、シンシナティ大学医療センターのHoxworth眼科クリニックで募集した50歳以上の白内障患者42人(平均年齢66.2歳、男性17人)を対象に、白内障手術および失明に対する恐怖心と健康リテラシーとの関係を評価した。全ての対象者が、白内障の病理や治療に関する理解や態度を評価する質問票に回答した。また、Rapid Estimate of Adult Literacy in Medicine-Short Form(REALM-SF〔成人の医療リテラシー簡易評価法〕)による健康リテラシーの評価も受けた。 その結果、REALM-SFのスコアと白内障手術に対する恐怖心は関連しておらず、健康リテラシーが白内障手術に対する恐怖心に影響しないことが示唆された。実際、約36%の患者が白内障手術に対する恐怖心を報告し、そのうちの53%は「失明に対する不安」を恐怖心の理由として挙げていた。解析からは、白内障手術に対する恐怖心と「手術により視力が改善する可能性がある」との考えの間に、統計学的に有意な関連が見られ、手術効果に対する患者の考えが手術に対する恐怖心に影響することが示唆された。一方、失明に対する恐怖心と「手術によって視力が改善する可能性がある」との考えとの間に有意な関連は見られなかった。研究グループは、「つまり、失明に対する恐怖心は知識不足に基づくものではなく、より本能的な何かに基づくということだ」との考えを示している。 論文の筆頭著者であるシンシナティ大学医学部のSamantha Hu氏は、「患者に大量の情報を提供しても、必ずしも不安が軽減されるわけではない」と同大学のニュースリリースの中で話す。Kelly氏は、「この研究結果はむしろ、オープンなコミュニケーションによる医師と患者の良好な関係の重要性を指摘している。患者教育は確かに重要だが、それだけでは不十分なこともある。患者が恐怖心を克服できるよう、人間関係と信頼関係を築くことも同様に重要だ。これは医師にとって重要な教訓だ」と述べている。 さらにKelly氏は、「この研究は、患者が恐怖心を抱えていることを改めて認識させてくれる。われわれの役割は、健康管理のパートナーとして患者と協力しながら医療に取り組むことだ」と述べている。

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MASH代償性肝硬変に対するefruxiferminの有用性(解説:相澤良夫氏)

 臨床肝臓病学の関心は、HCVを含む慢性ウイルス肝炎からMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)の治療に移りつつある。慢性C型肝炎/肝硬変は、抗ウイルス薬の進歩により激減しHCVの根絶も視野に入っているが、わが国に相当数存在するMASHに対し直接的に作用する治療薬は、今のところ保険収載されていない。しかし、中等度以上の線維化を伴うMASHは進行性の病態であり、MASH治療薬の登場が待ち望まれている。 このアンメットニーズに対して、米国FDAは肝硬変以外の中等度から高度の肝線維化を伴うMASH に対し、食事療法や運動療法と共に使用する肝臓指向性THR-βアゴニストのresmetirom(1日1回経口投与)を承認し、MASHの成因に根差した新たな治療戦略が確立されつつある。 efruxiferminを含むFGF(線維芽細胞増殖因子)21アナログはホルモン様の作用があり、さまざまな臓器に作用して糖・脂質代謝を改善する薬剤で、resmetiromと同様にMASHに対する治療効果が期待されている。今回のMASH代償性肝硬変を対象とした36週間の臨床試験(週1回の皮下注射)では線維化改善効果は認めなかったが、より長期(96週間)に治療された症例では有害事象の増加なしに疾患活動性が制御され、線維化が改善する可能性が強く示された。今後は、エンドポイントを96週あるいはさらに長期に設定した治療研究が期待される。 C型代償性肝硬変では、HCVが排除されてから長期間(5年程度)経過すれば肝硬変の線維化が改善することが示されている。今回の試験では、同様の事象がMASH肝硬変でも生じる可能性が示され、従来は非可逆的な病変とされていた肝硬変も可逆的な病変で、病因が長期にわたって制御されれば改善しうる可逆性の病変であるという、パラダイムシフトが起こりつつあることが実感された。 なお、この研究には燃え残り(肝臓の線維化が進んで脂肪沈着が減少、消失した状態)のMASH肝硬変も20%未満含まれ、治療効果は典型的なMASHと差がなかった。この結果は、多様な薬理作用を有するefruxiferminの汎用性を示唆するものと考えられ、efruxiferminを含むFGF21アナログ製剤やTHR-βアゴニストがわが国の臨床現場でも早急に使用できるようになることが期待される。

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猛暑と受験【Dr. 中島の 新・徒然草】(585)

五百八十五の段 猛暑と受験梅雨が始まったと思ったら、なぜか真夏みたいな暑さ!ついに今年初めて自宅のクーラーをつけました。ちょっとした罪悪感はあるものの、やはり涼しいと原稿執筆も捗ります。さて、外来をやっていると患者さんからいろいろな相談を受けます。恋愛関係の悩みはまだいいほうです。この前は豊胸手術を受けたほうがいいのか、真剣に尋ねられました。そんなことを私に聞かれても困ります。とりあえずそのままでいいんじゃないか、と適当に答えたら「何てこと言うんですか!」と怒られてしまいました。かくいう私も、以前は患者さんの悩みに対して真面目にアドバイスしていたのです。が、徐々に答え方が変わってきました。というのも、何か相談する人は、すでに心の中に答えを持っているからです。だから会話の流れの中で相手の求めている答えを探り出し、それとなく賛成しておけば安心してもらえるわけですね。先日あった相談は子供の受験に関すること。相談してきたのは30代の女性患者さんです。患者「子供に国立の附属小学校を受けさせようと思うんですけど」中島「教育大附属ですか。確か3校舎あったと思うけど、どこが近いんですかね」患者「附属天王寺です」中島「ぜひとも受けましょう!」確か、大阪教育大学附属小・中・高にはそれぞれ池田、天王寺、平野の3校舎があったと思います。いずれ劣らぬ進学校で、読者の中にも卒業生が沢山いるはず。患者「幼稚園のママ友に言ったら『地元の小学校で十分よ』と、誰も賛成してくれないんですよ」中島「へえ、そうなんですか」患者「主人も私も学歴は無いんですけど、子供にしてやれることはやっぱり教育だと思うんです」中島「そりゃそうでしょう」患者「附属を受けるって……無謀なことないですよね」中島「ないない。挑戦あるのみ!」ここは、大阪在住のメリットを最大限に生かすべし。中島「国公私立すべてで進学校が沢山あるのは、大阪の強みですよ」患者「確かにそうかも」中島「しかも小中高のどの段階でも、進学校に潜り込むチャンスがあるわけですから」ママ友なんかに染まったら駄目でしょ。患者「中島先生に相談して良かったです」ようやく賛同者が現れたせいか、このお母さんは少し涙ぐんでいました。中島「結果がどうあれ、一生懸命に取り組んだという経験は必ず子供の財産になりますよ」患者「そうですね。頑張ります!」どうやら患者さんの心の中にあった答え以上に、熱く語ってしまったみたいです。確かに恋愛相談や豊胸手術に比べれば、今回ははるかに感情移入できました。同僚の医師の間でも、子供の受験は常に話題の中心です。それだけ親子含めて皆の共通体験だということですね。この患者さんに対しても、プレッシャーにならない程度に励まし続けたいと思います。最後に1句猛暑来て 受験勉強 本格化

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医師の世界でのディフェンスから、博士号の要否について考える【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第85回

サッカー日本代表とディフェンス悔しいです。サッカー日本代表は、2025年6月5日にオーストラリアのパースで行われた2026年ワールドカップ(W杯)アジア最終予選第9節でオーストラリア代表と対戦し、0-1で敗れました。予選通算成績は6勝1敗2分と、日本は今回の初黒星にもかかわらず予選突破を決めているのですが、無敗でのW杯を願っていた自分としては残念でなりません。試合は序盤から圧倒的に日本がボールを支配したものの、オーストラリアのベタ引きしたディフェンスを崩すことができませんでした。試合時間の終了間際の90分に、パスミスで与えたスローインから左サイドの突破を許し豪快なシュートを叩きこまれ決勝点を奪われたのです。ディフェンスを固め、一瞬の隙のオフェンスに賭けた戦略にやられました。この試合の地上波での中継はなく、インターネットでの後日情報から記したものです。「日本A代表サッカーの試合は全部地上波テレビでやれ!」と叫びたい気持ちを押さえて。今日は、「ディフェンス」「オフェンス」について医師の立場から考察します。論文審査会はディフェンス医師にとって博士号の取得は、医師免許試験に合格した後に続く重要なステップです。博士号取得のためには、自らの研究をまとめた論文について、論文審査委員の前でプレゼンし、審議を通過する必要があります。この学位論文のことを「Thesis」と呼称し、論文審査委員会は「Thesis Committee」となります。「Thesis」は「シーシス」と発音します。発音を間違える人が多いため、あえてカタカナ書きしました。この論文審査の場は、一般の人も含めて公開されることが多く、公聴会として開催日時を広くアナウンスする大学もあります。この博士号取得のための論文審査会のことを、特に「ディフェンス(defense)」と呼びます。公聴会の様子を紹介しましょう。博士候補学生の簡単な自己紹介から始まり、研究の背景や目的、研究方法、結果などを順番にプレゼンします。30分から1時間程の制限時間が設定されるのが普通です。候補者からのプレゼンが終わると質疑応答です。審査委員は研究に関して厳しい質問や意見を投げかけてきます。学生はそれに対して適切な回答を行わなければなりません。その内容は、プレゼンした研究についてだけでなく、背景となる領域全体について広範に問われます。オフェンス側である論文審査会のメンバーの攻撃から、候補者がディフェンス側として自らの研究を弁護・防護する戦いの場なのです。研究の完成度だけでなく、それに対する批判的思考、理解の深さ、学術的議論の力も評価対象です。単なる発表ではなく、批判的な問いに対する応答能力が求められる場であるため、「ディフェンス」という言葉が使用されるのです。公聴会を終えた後に、「果たして自分の博士論文は大丈夫なのだろうか…」と不安になる人もいるようです。しかし、現実ここまで進んで失敗する人は非常に少ないです。公聴会当日の厳しい質疑応答は、博士を称する研究者として、ディフェンスできるかどうか試されているという通過儀礼のような側面もあります。公聴会までに事前審査や予備審査等の厳しい指導を経てきたはずだからです。博士号のメリットとデメリット医師のキャリアとして博士号の取得に疑問を感じる若手医師も増えています。臨床医として専門医を取得することには熱心です。臨床キャリアに加えて、「研究活動を行い、論文執筆をして博士号をとる意味があるのかどうか」という問いは、多くの若手医師が抱える迷いです。博士号取得のメリットとして一番に考えられるのは、アカデミアでのキャリア構築に不可欠であることです。大学病院や医学部で将来的に教員・教授職を目指すのであれば、博士号は必須です。昇任要件になることが多く、ポスト確保や昇進に有利になります。次に考えられるのは、研究的視点が身につくことです。研究活動を通じて「問いを立てる力」「エビデンスを批判的に読む力」「論理的に考える力」が養われます。これは臨床にも直結する有用なスキルです。製薬企業との共同研究などで、博士号を有していると信頼性・交渉力が高まります。下世話な小さなメリットとして、「博士」と名乗り、名刺に「Ph.D」と書くことができます。逆説的ですが、博士号を持っていない人には、「Ph.D」が眩しく感じるそうです。次にデメリットを考えてみましょう。時間的・金銭的なコストを要します。2025年度のデータとして、国立大学医学部の大学院であっても、入学金と4年間の授業料を合算すると250万円強の金額になります。研究に集中する期間中は、手技・臨床現場から離れることになるため、臨床スキルが一時的に鈍る可能性があります。博士号があっても、すぐにキャリアアップが約束される訳ではなく、研究業績、時々のポジションの空き枠などがなければ思うようにアカデミアでの道が開けないこともあります。本音を述べます私の意見としては、医師としての価値を高め、アカデミアで教員や研究リーダーとして活躍していただくためにも是非とも博士号を目指してもらいたいです。一方で、教授に言われたから渋々というパターンが一番辛いと思います。学位はなくても医師として働くことはできます。自発的に取りたいと思う方以外は、学位をとる必要はないと考えます。返事にもならない返事で申し訳ないのですが、現役の医学部の臨床系教授としての本音を述べたつもりです。それでもなお、「それでも博士号って取った方がいいですか?」と聞いてくる方がいます。そんなとき私は、こう答えるようにしています。「博士号を取るってことは、あなたの人生における最大のディフェンスです。親戚の集まりで『最近どう?』と聞かれても、『博士になりました』で、全部守れますから」社会人になっても、オフェンスは容赦なく飛んできます。だからこそ、研究という名のディフェンスで守備ラインを整えることも一策です。

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クロストリジウム属による壊死性筋膜炎【1分間で学べる感染症】第28回

画像を拡大するTake home messageクロストリジウム属(とくにClostridium perfringens)による壊死性筋膜炎は、数時間で進行する非常に重篤な感染症である。迅速な外科的デブリードマンの介入が重要。壊死性筋膜炎は、感染症疾患の中でもとくに致死率の高い疾患として有名です。迅速な診断と適切な治療介入が必要であることは言うまでもありません。多くの起因菌が壊死性筋膜炎を来しますが、その中でもクロストリジウム属は重要な起因菌の1つです。今回は、このクロストリジウム属による壊死性筋膜炎について解説します。微生物クロストリジウム属は、嫌気性で芽胞を形成するグラム陽性の桿菌です。毒素を産生することにより、急速に壊死性病変を引き起こします。主要な菌種Clostridium perfringensはクロストリジウム属の中で最も頻繁に壊死性筋膜炎の原因となり、壊死性筋膜炎全体の約80%を占めます。Clostridium septicumは外傷の既往がないケースでも発症し、消化管悪性腫瘍との関連が強く指摘されています。Clostridium sordelliiやClostridium tertium(被外傷性壊死性筋膜炎の報告)も起因菌となることが報告されており、とくにC. sordelliiは産後や手術後に発症する劇症型の感染症として知られています。診断の進め方診断の手掛かりとしては、まず画像検査で皮下ガスの存在を確認することが重要です。単純X線やCTでガスの存在を把握できることが多く、感染の深達度を評価するうえでも有用です。また、グラム染色では太く短いグラム陽性桿菌が確認できる場合があり、外科的所見としては悪臭を伴う壊死組織やガスの存在が認められることが特徴です。さらに、術中に採取した病理組織で筋膜における炎症所見の有無を確認し、確定診断に至ります。治療の基本方針抗菌薬としてはペニシリンGに加えて、毒素産生を抑制する目的でクリンダマイシンを併用します。また、重要な点として、抗菌薬治療に加えて早期の外科的デブリードマンが予後を大きく左右します。壊死性筋膜炎を疑った際には速やかに外科や救急外科に連絡を取り、外科的介入を検討しましょう。1)Stevens DL, et al. N Engl J Med. 2017;377:2253-2265.2)Aldape MJ, et al. Clin Infect Dis. 2006;43:1436-1446.3)Sanford Guide: Necrotizing Fasciitis, Clostridia sp.

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第16回 認知症介護者は将来の認知症リスクが高い? 米国の研究が示す、介護者の見過ごされがちな健康問題

急速な高齢化が進む日本で、認知症は多くの人にとって身近な課題でしょう。家族が認知症と診断され、介護に奮闘している方も少なくないと思います。そんな中、その献身的な介護が、実は介護者自身の将来の健康、とくに「脳の老化」のリスクを高めている可能性があるとしたら…。米国から出された報告は、まさにこの事実を指摘し、警鐘を鳴らしています1)。介護者が抱える、見過ごされがちな認知症リスク要因米国・アルツハイマー協会のPublic Health Center of Excellence on Dementia Risk Reductionおよびミネソタ大学のPublic Health Center of Excellence on Dementia Caregivingという機関が、2025年6月12日に発表した報告書によれば、認知症患者を介護する人の5人中3人近く(59%)が、自分自身の認知症発症の可能性を高めるリスク要因を少なくとも1つ抱えていることが明らかになりました。さらに、4人に1人(24%)は2つ以上のリスク要因を抱えている、ともされています。この報告書は、2021~22年に米国の47州で収集されたデータを分析したものです。その結果、認知症患者の介護者は一般の人と比べて、脳の老化に関連する5つのリスク要因を持つ割合が高いことがわかりました 。具体的な数値は以下の通り。喫煙(30%高い)高血圧(27%高い)睡眠不足(21%高い)糖尿病(12%高い)肥満(8%高い)一方、唯一「身体活動を欠く」という点については、介護者の方が一般の人より9%低いという結果でした。これは、介護そのものに伴う身体的な負担や活動が影響している可能性が高いと見られています。こうした結果は、認知症患者の介護者が家族や友人のケアに追われるあまり、自分自身の健康を見過ごしがちになってしまう傾向を表しているのかもしれません。とくに深刻な「若い世代の介護者」の健康リスクこの報告書がとくに強い懸念を示しているのが、若い世代の介護者です。若い介護者は、同世代の他の人と比べて、複数の認知症リスク要因を持つ可能性が40%も高いことがわかりました。さらに詳細に各要因を見ると、その差は驚くべきものでした。若い介護者は同世代の非介護者と比較して、喫煙する可能性が86%高い高血圧である可能性が46%高い一晩の睡眠時間が6時間未満であると報告する可能性が29%高いという結果でした。これは、仕事や子育てといったやるべきことに加えての介護負担が、心身にきわめて深刻な影響を及ぼしていることを示唆しています。介護者を社会全体で支えるために今回ご紹介した報告書は、単にリスクを指摘するだけでなく、今後の対策の方向性も示唆しています。介護者の中でどの認知症のリスク要因が多いかを知ることで、資源や介入策の優先順位付けをし、調整することができるからです。また、今回の報告書は、介護者の負担が精神的なストレスにとどまらず、身体的リスク、ひいては介護者自身の将来の認知症リスクにまでつながることを示唆した点で重要です。これはもはや、個人や家庭内の問題ではなく、社会全体で取り組むべき公衆衛生上の課題といえるでしょう。介護は誰にとっても他人事ではありません。介護者が孤立せず、自分自身の健康にも目を向けることができるよう、周囲の理解とサポート、そして行政による的を絞った支援策の充実が急がれます。今回のニュースは、介護者への負担がさまざまな形で自身の健康リスクにまでつながっていることを改めて私たちに教えてくれています。参考文献・参考サイト1)Public Health Center of Excellence on Dementia Risk Reduction. Risk Factors for Cognitive Decline Among Dementia Caregivers 2021-2022 Data from 47 U.S. States. 2025 Jun 12.

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中年期の体重減少の維持は将来の慢性疾患の予防となる

 中年期の体重増減とその後の糖尿病をはじめとする慢性疾患の発症、死亡について、どの程度の関連があるのだろうか。この課題について長期的な観点からの研究報告は少なかった。このテーマについて、フィンランド・ヘルシンキ大学のTimo E Strandberg氏らの研究グループは、約2万3,000人を対象に中年期の体重減少の維持が、その後の健康障害に与える影響について複数のコホート研究から解析した。その結果、中年期の持続的な体重減少は、薬剤などの介入がなくとも長期的に2型糖尿病以外の慢性疾患のリスクの低下や心疾患などの死亡率の低下に寄与することがわかった。この報告は、JAMA Network Open誌2025年5月1日号に掲載された。体重減少を維持できれば心血管疾患やがん、喘息の予防につながる可能性 研究グループは、中年期(40~50歳)の健康な時期におけるBMIの変化と、後年の疾患発症率および死亡率との長期的な関連性を検討することを目的に、英国のホワイトホールII研究(WHII:1985~1988年)、フィンランドのヘルシンキ・ビジネスマン研究(HBS:1964~1973年)、フィンランド公共部門研究(FPS:2000年)の3つのコホート研究のデータ解析を行った。 この3つの研究で参加者の最初の2回の体重測定結果に基づき、中年期のBMIの変化について「BMIが25未満を持続」「BMIが25以上から25未満へ変化」「BMIが25未満から25以上へ変化」「BMIが25以上の持続」の4つのグループに分類した。疾患発症率と死亡率のアウトカムを追跡調査し、データ解析は2024年2月11日~2025年2月20日に行われた。 WHIIとFPSでは、2型糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、がん、喘息、または慢性閉塞性肺疾患を含む新規発症の慢性疾患が評価され、HBSでは全原因の死亡率が評価された。 主な結果は以下のとおり。・3つのコホートの総参加者は2万3,149人。・WHIIからは4,118人(男性72.1%)が参加し、初回受診時の年齢中央値(四分位範囲:IQR)は39(37~42)歳だった。・HBSからは男性2,335人が参加し、初回受診時の年齢中央値(IQR)は42(38~45)歳だった。・FPSからは1万6,696人(女性82.6%)が参加し、初回受診時の年齢中央値(IQR)は39(34~43)歳だった。・追跡期間の中央値(IQR)は22.8(16.9~23.3)年で、初回評価時の喫煙、収縮期血圧、血清コレステロールを調整した後、WHIIの参加者で体重減少を経験した群は、持続的に肥満していた群と比較し、慢性疾患の発症リスクが低下していた(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.35~0.78)。この結果は、アウトカムから糖尿病を除外した後も再現された(HR:0.58、95%CI:0.37~0.90)。・FPSでは追跡期間中央値(IQR)は12.2(8.2~12.2)年で、HRは0.43(95%CI:0.29~0.66)だった。・HBSで体重減少に関連した延長した追跡期間中央値(IQR)は35(24~43)年で、HRは0.81(95%CI:0.68~0.96)であり、死亡率の低下と関連していた。 これらの結果から研究グループは、「手術や薬物療法による体重減少介入がほとんど存在しなかった時代に実施された調査である。中年期の体重減少の維持は、持続的な肥満と比較し、2型糖尿病以外の慢性疾患のリスク低下および全死亡率の低下と関連していた」と結論付けている。

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NSCLCへの周術期ニボルマブ追加、OS中間解析(CheckMate 77T)/ASCO2025

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)におけるニボルマブを用いる周術期サンドイッチ療法(術前:ニボルマブ+化学療法、術後:ニボルマブ)は、国際共同第III相無作為化比較試験「CheckMate 77T試験」において、術前補助療法として化学療法を用いる治療と比べて無イベント生存期間(EFS)を改善したことが報告されている1)。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Mariano Provencio氏(スペイン・Hospital Universitario Puerta de Hierro)が、本試験のEFSのアップデート解析および全生存期間(OS)の第1回中間解析の結果を報告した。試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験対象:切除可能なStageIIA(>4cm)~IIIB(N2)のNSCLC患者(AJCC第8版)試験群(ニボルマブ群):ニボルマブ(360mg、3週ごと)+プラチナ製剤を含む化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→ニボルマブ(480mg、4週ごと)を最長1年 229例対照群(プラセボ群):プラセボ+プラチナ製剤を含む化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→プラセボを最長1年 232例評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づくEFS[副次評価項目]BICRに基づく病理学的完全奏効(pCR)、OS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値41.0ヵ月時点(データベースロック日:2024年12月16日)におけるEFS中央値は、ニボルマブ群46.6ヵ月、プラセボ群16.9ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.46~0.80)。30ヵ月EFS率は、それぞれ61%、43%であった。・循環腫瘍DNA(ctDNA)クリアランスは、ニボルマブ群66%(50/76例)、プラセボ群38%(24/64例)に認められ、そのうちpCRが達成された患者の割合は、それぞれ50%(25/50例)、12%(3/24例)であった。・治療群にかかわらず、ctDNAクリアランスとpCRの両方を達成した患者集団は、EFSが良好であった。・KRAS、KEAP1、STK11遺伝子のいずれかに変異がみられた集団におけるEFSは、ニボルマブ群28.9ヵ月、プラセボ群10.5ヵ月であった(HR:0.63、95%CI:0.32~1.23)。KRAS、KEAP1、STK11遺伝子のいずれにも変異がみられない集団では、それぞれ未到達、17.0ヵ月であった(同:0.65、0.39~1.10)。以上から、いずれの集団でもニボルマブ群が良好な傾向にあった。・OS中央値は、ニボルマブ群とプラセボ群はいずれも未到達であったが、ニボルマブ群が良好な傾向にあった(HR:0.85、95%CI:0.58~1.25)。30ヵ月OS率は、それぞれ78%、72%であった。・肺がん特異的生存期間中央値もニボルマブ群とプラセボ群はいずれも未到達であったが、ニボルマブ群が良好な傾向にあった(HR:0.60、95%CI:0.40~0.89)。30ヵ月肺がん特異的生存率は、それぞれ87%、75%であった。 本結果について、Provencio氏は「切除可能NSCLCにおいて、ニボルマブを用いる周術期治療は有用な治療選択肢の1つであることが支持された」とまとめた。

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世代を超えた自閉スペクトラム症と認知症との関係

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、認知機能低下や認知症のリスクが高いことを示唆するエビデンスが報告されている。この関連性が、ASDと認知症の家族的因子によるものかは不明である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のZheng Chang氏らは、ASD患者の親族における認知症リスクを調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2025年5月14日号の報告。 スウェーデンのレジスターにリンクさせた家族研究を実施した。1980〜2013年にスウェーデンで生まれた個人を特定し、2020年までフォローアップを行い、ASDの臨床診断を受けた人を特定した。このASD患者と両親、祖父母、叔父/叔母をリンクさせた。ASD患者の親族における認知症リスクの推定には、Cox比例ハザードモデルを用いた。認知症には、すべての原因による認知症、アルツハイマー病、その他の認知症を含めた。親族の性別およびASD患者の知的障害の有無で層別化し、解析を行った。 主な内容は以下のとおり。・ASD患者の親族は、認知症リスクが高かった。・認知症リスクは、両親で最も高く、祖父母、叔父/叔母では低かった。【両親】ハザード比(HR):1.36、95%信頼区間(CI):1.25〜1.49【祖父母】HR:1.08、95%CI:1.06〜1.10【叔父・叔母】HR:1.15、95%CI:0.96〜1.38・ASD患者と母親の認知症リスクには、父親よりも強い相関が示唆された。【母親】HR:1.51、95%CI:1.29〜1.77【父親】HR:1.30、95%CI:1.16〜1.45・ASD患者の親族において、知的障害の有無による差はわずかであった。 著者らは「ADSとさまざまな認知症は、家族内で共存しており、遺伝的関連の可能性を示唆する結果となった。今後の研究において、ASD患者の認知症リスクを明らかにすることが求められる」としている。

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