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第43回 最新ゲノム解析が解き明かす、人類と牛乳の意外な歴史

「牛乳を飲むと、なんだかおなかの調子が悪くなる。」 そんな経験を持つ人は、日本人だけでなく世界中に少なくありません。実は、大人になっても牛乳に含まれる糖(乳糖)を分解できる「ラクターゼ持続性」という体質を持っているのは、人類全体で見れば少数派なのです。 なぜ一部の人だけが牛乳を飲めるように進化したのか? これまでは「牧畜を始め、ミルクを飲むことが生存に有利だったから」というシンプルな説が信じられてきました。しかし、昨年末に発表された最新の研究は、そんな定説を覆す驚きの事実を明らかにしました。南アジアの大規模なゲノム解析から見えてきたのは、遺伝子と文化、そして「ヨーグルト」が織りなす、人類の巧みな生存戦略だったのです1)。「飲める遺伝子」は、生存競争の結果ではなかった? 長年、生物学の教科書では、大人になっても牛乳を分解できる能力(ラクターゼ持続性)は、「自然選択」の代表例として語られてきました。つまり、牧畜が盛んな地域では、ミルクを栄養源として摂取できる人が生き残りやすく、その結果、「牛乳を飲める遺伝子」が爆発的に広まったというストーリーです。 実際、ヨーロッパの人々においては、この説明は正しいと考えられています。しかし、世界最大級の乳製品の生産・消費地である「南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ)」に目を向けると、この定説に綻びが見え始めました。 米国・カリフォルニア大学バークレー校などの研究チームは、インド、パキスタン、バングラデシュの現代人および古代人、計8,000人以上というかつてない規模のゲノム解析を行いました2)。南アジアの人々は日常的にミルクや乳製品を摂取しています。ならば、ヨーロッパと同じように、ミルクを消化する遺伝子が「生存に有利だから」という理由で強く選択され、広まっているはずです。 しかし、結果は予想外のものでした。 解析の結果、南アジアの人々が持っている「ミルクを飲める遺伝子変異」は、ヨーロッパの人々が持っているものと同じタイプであることがわかりました。ところが、南アジアのほとんどの集団において、この遺伝子の頻度は「生存競争(自然選択)」によって増えた痕跡を示していなかったのです。 では、なぜ彼らはこの遺伝子を持っていたのでしょうか? 答えは「移民」でした。 研究チームは、この遺伝子の分布が、約3,500年以上前に北方からやってきた遊牧民の遺伝子の濃さと、ほぼ完全に比例していることを突き止めました。つまり、多くの南アジアの人にとって、ミルクを飲める遺伝子は、厳しい生存競争を勝ち抜くために獲得した「武器」ではなく、単に先祖が移動してきた際に一緒に持ち込まれたにすぎなかったのです。「例外」が証明する、過酷な環境とミルクの力 「ミルクを飲めること」が生存に必須ではなかった。そう結論付けられそうになった研究ですが、データの中には「例外」も存在しました。 それは、南インドの「トダ族」と、パキスタンの「グジャール族」という2つの集団です。 この2つのグループでのみ、ミルクを消化する遺伝子の頻度が異常に高かったのです。その割合は、偶然や単なる先祖の影響では説明がつかないレベルでした。統計的な分析の結果、彼らの遺伝子には、過去数千年の間に「この遺伝子を持っていなければ生き残れなかった」と言えるほど、強力な自然選択が働いた痕跡が見つかりました。 それでは、なぜ彼らだけが? その鍵は、彼らのライフスタイルにあります。トダ族もグジャール族も、伝統的にバッファローや牛を飼育し、その生活のすべてを乳製品に依存する牧畜民だそうです。 ヨーロッパの古代牧畜民と同様、厳しい環境下で、ミルク以外の食料が手に入りにくい状況にあった彼らにとって、ミルクを「生のまま」栄養にできるかどうかは、まさに生死を分ける問題だったのでしょう。この発見は、「環境が極端に厳しく、ミルクに依存せざるを得ない状況」にあって初めて、遺伝子が強力に進化することを示唆しています。「おなかがゴロゴロしない」ための人類の知恵 しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。トダ族やグジャール族以外の南アジアの人々も、日常的に乳製品をたくさん食べています。遺伝的な進化(自然選択)が起きていないのなら、彼らはおなかを壊しながら無理して食べていたのでしょうか? 研究者たちが注目しているのは、「文化的な適応」です。 南アジアの食文化の中心は、ダヒ(ヨーグルト)、パニール(チーズ)、ギー(澄ましバター)。これらはすべて、発酵や加工の過程を経た食品です。実は、ミルクを発酵させてヨーグルトやチーズにすると、おなかの不調の原因となる「乳糖(ラクトース)」が大幅に減少します。 つまり、多くの人が、自分の遺伝子(体質)を進化させるのを待つのではなく、食べ方(文化)を工夫することで、ミルクの栄養を享受してきたのです。これを「遺伝子と文化の共進化」と呼びます。つまり、乳糖を分解できない問題を遺伝子で解決した人と文化で解決した人がそれぞれいたわけです。 遺伝子で解決した人 トダ族、グジャール族、北欧の人など(生のミルクに依存せざるを得なかった) 文化(加工)で解決した人 その他の多くの南アジアの人、そしておそらく日本人の祖先も?(発酵技術で乳糖を減らした) 「牛乳が体に合う・合わない」は、単なる好き嫌いではなく、数千年にわたる先祖の移動と、厳しい環境を生き抜いた歴史の結果です。そして同時に、もし自分の体質に合わなくても、人類は「料理」や「加工」という知恵を使って、その壁を乗り越えてきました。 「スーパーでヨーグルトを買う」という何気ない行為も、実は、遺伝子の進化を「知恵」で補ってきた人類の壮大な歴史の一部なのかもしれません。そんなことを考えると、次に口にする乳製品はまたちょっと違った味わいになるかもしれません。 1) Price M. Roots of milk drinking revealed by South Asian genomes. Science. 2026 Jan;391:12-13. 2) Kerdoncuff E, et al. Revisiting the evolution of lactase persistence: insights from South Asian genomes. bioRxiv. 2025 Nov 6. [Preprint]

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腹囲の大きさでフレイルを予測できるか/大阪公立大

 腹囲の大きさは、フレイルの進行に何らかの影響を与えるのであろうか。この課題について大阪公立大学研究推進機構都市健康・スポーツ研究センター教授の横山 久代氏は、スマートフォン(スマホ)の健康アプリを用いたウェブ調査を行った。その結果、腹部肥満は将来のフレイルに関係する可能性があることが示唆された。この結果はGeriatrics誌2025年11月8日号に掲載された。自覚、運動習慣、前フレイルがフレイルの予測因子になる可能性 フレイルリスクの高い人を特定し、適切な介入を実施することは、健康寿命の延伸に極めて重要である。本研究は、後ろ向きコホート研究として、大阪府在住の30~79歳の成人2,962人を対象に、腹部肥満が1年間のフレイル進行を予測するかどうかを検討した。横山氏は、2023~24年にわたりスマホの健康アプリを通じ年次調査を行い、ウエスト周囲径データが利用可能な2,962人(平均年齢62.7±8.8歳)からデータを収集した。フレイルは基本チェックリストを用いて評価した。フレイル進行の予測因子を特定するためロジスティック回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時(2023年)において、参加者の23%が腹部肥満を有し、18%がフレイルと分類された。・ベースライン時に非フレイルだった2,431人において、1年後のフレイル発生率は、腹部肥満群で非肥満群より有意に高かった(10.5%vs.7.2%、p=0.011)。・多変量ロジスティック回帰分析では、フレイルの自覚(「よく知っている」対「知らない」、調整オッズ比[aOR]=0.341、95%信頼区間[CI]:0.212~0.548)、定期的な運動習慣(aOR=0.596、95%CI:0.382~0.930)、および前フレイル状態(aOR=1.767、95%CI:1.602~1.950)がフレイル発症の有意な予測因子であった。・腹部肥満は調整後、フレイル進行と独立した関連性を示さなかった。 これらの結果から横山氏は「粗解析では腹部肥満がフレイル発症と関連していたが、調整後は有意でなくなった。フレイルへの認識向上と定期的な運動はフレイル発症リスクを低減させる可能性があり、生活習慣指導や啓発活動が腹部肥満によるフレイル進行への影響を緩和する可能性を示唆している」と述べている。

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退職後でも認知機能が維持される人の特徴は?

 多くの先進国において、公的年金の受給年齢の引き上げが行われている。これは、退職を遅らせることで認知機能の老化に影響を与える可能性がある。しかし、退職が認知機能に及ぼす影響は個人や状況によって異なる可能性が高いと考えられる。慶應義塾大学の佐藤 豪竜氏らは、退職と認知機能の異質性について、その関連性を調査した。International Journal of Epidemiology誌2025年10月14日号の報告。 米国、英国、欧州で行われた3つの縦断研究(Health and Retirement Study、English Longitudinal Study on Ageing、Survey of Health, Ageing and Retirement in Europe)より得られたデータを統合し、分析した。本データセットは、2014〜19年に19ヵ国で実施された3つのwave調査を網羅している。本研究では、wave1では、就労していた1万2,811人を対象とし、各調査で共変量情報を収集した。wave2では、50〜80歳の参加者の退職状況を評価した。wave3では、単語想起テストを用いて認知機能を測定した。本分析では、退職の判断基準として公的年金受給年齢を用いた操作変数因果フォレスト推定法を採用した。 主な結果は以下のとおり。・退職傾向スコアが0.1〜0.9であった7,432人のうち、2,165人(29.1%)がwave2で退職していた。・分析の結果、退職者は労働者よりも平均1.348語多く記憶していたことが明らかになった。・退職と認知機能の関連は異質性を示した。・より大きな認知的利益が観察された人の特徴は、女性、社会経済的地位の高い人、退職前の健康状態が良好な人、退職前に身体活動を行っていた人であった。 著者らは「観察された異質性の関連は、政策立案者が年金制度に早期退職の選択肢を組み込み、個人がそれぞれの状況に基づいて退職を決定できるようにすることを検討すべきであることを示唆している」とまとめている。

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妊娠前・中のコロナワクチン接種、母体の重症化および早産リスク低下/JAMA

 妊娠前および妊娠中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの接種(新型コロナウイルス感染症[COVID-19]の診断前)は、変異株の流行時期にかかわらず母体の重症化リスクおよび早産リスクの低下と関連することが、カナダで行われたサーベイランスプログラムで示された。同国ブリティッシュ・コロンビア大学のElisabeth McClymont氏らCANCOVID-Preg Teamが報告した。COVID-19およびワクチン接種が妊娠アウトカムに及ぼす影響については、知見が不足していた。JAMA誌オンライン版2025年12月15日号掲載の報告。COVID-19関連入院、CCU入室および早産のリスクを解析 研究グループは、カナダのサーベイランスプログラム「CANCOVID-Preg」を用い、9つの州・準州にて2021年4月5日(デルタ株流行期開始およびカナダにおける妊娠中ワクチン接種推奨開始日)~2022年12月31日に診断されたSARS-CoV-2感染妊婦およびその乳児を特定し、2023年まで母体・周産期アウトカムの追跡調査を実施した。 主要アウトカムは、COVID-19関連入院、クリティカルケアユニット(CCU)入室および早産で、ワクチン接種の有無で分類して解析した。ワクチン接種で、入院、CCU入室および早産のリスクが低下 特定されたSARS-CoV-2感染妊婦2万6,584例のうち、ワクチン接種状況が判明していた1万9,899例が解析対象となった。大半は30~35歳(46.3%)および白人(55.9%)で、1万4,367例(72%)はCOVID-19診断前に少なくとも1回ワクチンを接種しており、未接種は5,532例(28%)であった。 ワクチン接種例のうち、80%(1万1,425例)は妊娠前に、20%(2,942例)は妊娠中に接種を受けており、接種からCOVID-19診断までの期間の中央値は18週(四分位範囲:11~25)であった。また、全対象のうち6,120例はデルタ株流行期、1万3,799例はオミクロン株流行期の症例であった。 ワクチン接種はCOVID-19関連入院リスクの低下と関連していた。デルタ株流行期における入院率は、ワクチン接種者4.8%、未接種者13.5%で、相対リスク(RR)は0.38(95%信頼区間[CI]:0.30~0.48)、絶対リスク差(ARD)は8.7%(95%CI:7.3~10.2)であった。オミクロン流行期ではそれぞれ1.5%と5.3%、0.38(0.27~0.53)、3.8%(2.4~5.2)であった。 CCU入室も同様の傾向を示し、デルタ株流行期ではRRは0.10(95%CI:0.04~0.26)、ARDは2.4%(95%CI:1.8~2.9)であり、オミクロン株流行期ではそれぞれ0.10(0.03~0.29)、0.85%(0.27~1.44)であった。 早産率は、ワクチン接種者(7.2%)と比較し未接種者(9.6%)で有意に高かった。デルタ株流行期ではRRは0.80(95%CI:0.66~0.98)、ARDは1.8%(95%CI:0.3~3.4)であり、オミクロン株流行期でそれぞれ0.64(0.52~0.77)、4.1%(2.0~6.2)であった。 多変量解析の結果、併存疾患を補正後もワクチン接種は両変異株流行期においてCOVID-19関連入院リスクの低下と関連していた。ワクチン接種者と比較し未接種者の補正後入院RRは、オミクロン株流行期で2.43(95%CI:1.72~3.43)、デルタ株流行期で3.82(2.38~6.14)であった。

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高リスク早期TN乳がん、術後EC+PTXにCBDCA追加で3年DFS・OS改善/BMJ

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する術後補助療法として、エピルビシン+シクロホスファミド(EC療法)後の週1回パクリタキセル(PTX)投与にカルボプラチン(CBDCA)を追加することで、新たな安全性の懸念なく早期再発リスクが低下し、生存アウトカムが有意に改善したことが示された。中国・復旦大学上海がんセンターのYin Liu氏らが、第III相の無作為化非盲検試験「CITRINE試験」の結果を報告した。高リスクの早期TNBCの予後は不良であり、術後補助療法の強化戦略の最適化が依然として必要とされていたが、TNBCに対する術後補助療法としてのアントラサイクリン/タキサン系化学療法へのカルボプラチン追加の有益性については、意見が分かれていた。BMJ誌2025年12月23日号掲載の報告。中国の復旦大学上海がんセンターで実施 研究グループは、新たに診断された切除可能な片側浸潤性TNBCで、手術後の切除断端陰性、病理学的に局所リンパ節転移陽性またはリンパ節転移陰性でありKi-67が50%以上の18~70歳の女性患者を、カルボプラチン群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 カルボプラチン群は、エピルビシン+シクロホスファミドを2週間隔で4サイクル投与後、パクリタキセルとカルボプラチンを1サイクル28日(1日目、8日目、15日目に投与)で4サイクル投与した。対照群は、エピルビシン+シクロホスファミドを3週または2週間隔で4サイクル投与後、パクリタキセルを1サイクル21日(1日目、8日目、15日目に投与)で4サイクル投与した。 主要評価項目はITT集団における無病生存期間(DFS)、副次評価項目は無再発生存期間(RFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)および安全性であった。3年DFS、RFS、DDFSおよびOSが改善 2020年3月~2022年3月に808例が登録され無作為化された(カルボプラチン群404例、対照群404例)。このうち、カルボプラチン群の1例が治療開始前に同意を撤回した。 データカットオフ日(2025年3月10日)時点で、追跡期間中央値44.7ヵ月において推定3年DFS率は、カルボプラチン群92.3%、対照群85.8%であった(補正前ハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.43~0.95、p=0.03)。しかし、比例ハザード仮説の検証では仮説が成立しないことが判明し(p=0.02)、区分ハザードモデルによる解析の結果、HRが時間経過とともに変化することが示された(0~12ヵ月のHR:0.31[95%CI:0.13~0.73]、12~36ヵ月のHR:0.65[95%CI:0.39~1.09]、36ヵ月以降のHR:1.98[95%CI:0.69~5.69])。 副次エンドポイントについては、カルボプラチン群は対照群と比較し、3年RFS率(93.8%vs.88.3%、HR:0.59[95%CI:0.37~0.93]、p=0.02)、3年DDFS率(94.8%vs.89.8%、0.61[0.37~0.98]、p=0.04)、および3年OS率(98.0%vs.94.0%、0.41[0.20~0.83]、p=0.01)の改善が認められた。 Grade3/4の治療関連有害事象の発現割合は、カルボプラチン群で66.7%(269/403例)、対照群で55.0%(222/404例)であった。治療に関連した死亡は認められなかった。

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大気汚染は運動の健康効果を損なう

 大気汚染は、定期的な運動によって得られると期待している健康効果の一部を損なう可能性のあることが、新たな研究で示唆された。運動がもたらすはずの死亡リスクの低減効果は、大気汚染のひどい地域に住む人では半減することが示されたという。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)心理学・疫学教授のAndrew Steptoe氏らによるこの研究結果は、「BMC Medicine」に11月28日掲載された。 Steptoe氏は、「われわれの研究は、大気汚染が運動の効果をある程度弱めることを示しているが、完全に打ち消すわけではない」とニュースリリースの中で述べている。同氏は、「今回の結果は、微小粒子状物質(PM2.5)による健康被害を改めて示すものだ。健康的な老化にはきれいな空気と身体活動の両方が重要と考えられ、健康を害する汚染レベルを下げる努力を強化する必要がある」と話している。 この研究でSteptoe氏らは、まず、米国、英国、台湾、中国、デンマークなどに住む151万5,094人を対象とした7つの研究データを統合し、解析した。これらの研究の追跡期間中央値は12.3年で、この間に11万5,196人が死亡していた。 その結果、1週間当たりの運動量が7.5〜15MET/時間(150〜300分/週の中強度の運動に相当)と推奨レベルを満たしていた人では、死亡リスクが約30%低いことが示された。しかし、同じ運動量でも、空気が汚れている地域(PM2.5濃度≧25μg/m3)で運動を行っている場合には、死亡リスクの低下は12〜15%とほぼ半減することが明らかになった。 次に、3つの大型コホート(86万9,038人、死亡者数4万5,080人)を対象に、個人レベルでPM2.5の濃度別に運動の効果を比較し、この結果が再現されるのかを検討した。その結果、ほとんど運動をしない群(1週間当たり1MET/時間未満)+高汚染(PM2.5濃度が35〜50μg/m3)を基準とした場合、運動量の推奨レベルを満たしていた人の死亡リスクは、PM2.5 濃度が35〜50μg/m3で25%(ハザード比0.75)、25〜35μg/m3で33%(同0.67)、15〜25μg/m3と10〜15μg/m3でそれぞれ66%(同0.34)、10μg/m3未満で70%(同0.30)低下し、大気汚染レベルが高いほど、死亡リスクの減少幅は小さくなることが示された。 研究グループは、世界人口のほぼ半数(46%)が、PM2.5濃度に関する安全基準を超える地域に住んでいると指摘している。論文の筆頭著者である国立中興大学(台湾)のPo-Wen Ku氏は、「この研究は、汚染された環境においても運動が有益であることを強調している。しかし、大気の質を改善すれば、健康上の利益を大幅に高めることができる」と述べている。 研究グループは、このような結果ではあったものの、運動習慣のある人は落胆しないでほしいと話している。共著者の1人であるUCLの医療・社会統計学教授のPaola Zaninotto氏は、「われわれは、人々に屋外での運動をやめてほしいとは考えていない。大気の質を確認したり、より空気のきれいなルートを選んだり、汚染がひどい日は運動の強度を少し落とすことで、運動の健康効果を最大限に引き出すことができる」と述べている。

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MASLD患者における死亡リスクを最も高める3つの心血管代謝リスク因子を特定

 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の患者では、高血圧、耐糖能異常、低HDLコレステロール(HDL-C)といった心血管代謝のリスク因子(CMRF)が最も死亡リスクを高めるという研究結果が、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に9月17日掲載された。 米南カリフォルニア大学ケック医学部のMatthew Dukewich氏らは、MASLDを有する米国成人における個々のCMRFと全死亡率との関連を調査した。本研究では、脂肪肝指数(Fatty Liver Index;FLI)が60を超え、かつ少なくとも1つのCMRFを有する20歳以上の成人2万1,872人が対象となった。 その結果、参加者の平均BMIは33.6kg/m2で、CMRFの中央値は3であった。個々のCMRFについて調整後解析を行ったところ、高血圧(調整ハザード比1.39)、耐糖能異常(同1.26)、低HDL-C(同1.15)が死亡リスクの有意なリスク因子であった。過体重・肥満のCMRFについてBMIカテゴリー別に層別解析を行ったところ、BMI 35~40 kg/m2、40~45kg/m2、45kg/m2超の群では、BMI 25~30kg/m2の群と比較して死亡リスクが有意に高かった。年齢で調整した解析では、CMRFの数の増加が死亡リスク上昇と関連した。 責任著者である同大学のNorah A. Terrault氏は、「MASLDは複雑な疾患であり、この研究は臨床管理において注力すべきポイントに新たな示唆を与える」と述べている。

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ナーシングホームでの感染症対策に関する新ガイダンスが公表される

 高齢者や病気からの回復期にある人、あるいは長期的な健康問題を抱えて暮らす人が多いナーシングホームでは、感染症が大きな懸念事項となっている。薬剤耐性菌、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどは、このような環境では急速に広がり、入居者の命を脅かす可能性がある。 こうした中、2008年に発行された、ナーシングホームにおける感染予防・管理(IPC)に関する国の推奨事項に代わるものとして、米国医療疫学学会(SHEA)や米国感染症学会(IDSA)など5つの主要学会や専門団体が共同で作成・承認した新しいガイダンスが、「Infection Control & Hospital Epidemiology」に10月28日公表された。 ガイダンスの筆頭著者である米ミシガン・メディシンの老年医学専門医であるLona Mody氏は、「ナーシングホームでの感染予防に特効薬はない。われわれが推奨する介入は全て複数の要素から成っている。全体的な効果は部分の総和よりも大きいからだ」とニュースリリースで述べている。 このガイダンスでは、重要な変更点の一つとして、全てのナーシングホームに感染予防を専門で担う職員を少なくとも1人配置することを求めている。規模が大きな施設の場合、この役割を担う職員が複数必要になる可能性がある。 また、以下のような取り組みも推奨されている。・臨床スタッフの教育を継続的に行うこと。・職員・患者・訪問者に対してワクチンの重要性を教育し、接種を受けやすい環境を整えること。また、清掃員やIT担当者などの医療従事者以外のスタッフを、手指衛生などの感染予防活動に参加させること。・感染症例が出た場合には、地域の病院や公衆衛生機関との連携を強化すること。・感染拡大時でも、訪問や社会的な活動、ケアやリハビリを含む日常的な活動を許可し、その間に患者、スタッフ、訪問者を保護するための予防措置を講じるなど、ナーシングホームの「家庭」としての側面を維持し、感染を予防しながら入居者の社会的孤立を防ぐこと。 さらにガイダンスでは、「スーパーバグ」と呼ばれる多剤耐性菌(MDRO)が増大し、問題となっていることを強調している。研究によれば、これらの細菌は病院からナーシングホームまで患者とともに移動するケースが多く、個室を越えて共有のジムや食堂にまで広がる可能性があるという。 Mody氏は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、ナーシングホームが医療制度にとっていかに重要か、また、適切な保護措置が取られなければ入居者がいかに脆弱になり得るかが明らかになった。入院患者をナーシングホームに入居させれば全てがうまくいくと考えるわけにはいかない。ナーシングホームの中でも、入居者を保護することが必要だ」と強調している。 現在、多くの患者は、入院後すぐにナーシングホームに入居するようになり、これまで以上に複雑なケアが必要とされている。それに伴い、感染症のリスクも高まっている。Mody氏は、「感染症を防ぐことは患者とスタッフ双方にとって正しいことであり、長期的にはコスト削減にもつながる」と述べている。

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セマグルチドは抗肥満薬から第2のスタチンになりうるか?(解説:住谷哲氏)

 セマグルチド注2.4mgは、抗肥満薬(商品名:ウゴービ)としてわが国でも薬価収載されている。本論文はASCVDの既往を有する肥満患者(2型糖尿病患者は含まれていない)に対するセマグルチドの有用性を、MACE(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中および心血管死の複合)を主要評価項目として評価したSELECT試験1)の事前指定された解析に関する報告である。本解析は、試験開始時の肥満指標adiposity measures(体重および腹囲)、試験開始後20週までの肥満指標の変化および試験終了時(104週)までの肥満指標の変化とMACEリスクとの関連を明らかにすることを目的とした。 結果は予想どおり試験開始時の体重および腹囲ともにMACEリスクと正に相関していた。つまり、より太った患者がよりMACEリスクが大きかった。また、セマグルチドのMACE抑制作用は試験開始時の体重および腹囲とは関連がなかった。しかし試験開始後20週までの体重減少量は20週以降のMACEリスクの減少と関連せず、一方で20週までの腹囲の減少は20週以降のMACEリスクの減少と関連していた。試験終了時までの体重および腹囲の減少とMACEリスクとの関連も同様であった。さらに媒介解析mediation analysisによると、MACEリスク減少の33%は腹囲の減少で説明可能であった。 腹囲の減少を単純に内臓脂肪量の減少と考えれば、セマグルチドは内臓脂肪量を減少させることでMACEリスクを減少させると解釈することもできる。しかし媒介解析の結果からは、それは主要なメカニズムではないだろう。本解析の結果からは、セマグルチドのMACE抑制作用は体重減少および腹囲減少によるものではない可能性が高い。多様なメカニズムが考えられるが、筆者はセマグルチドの抗炎症作用が鍵ではないかと考えている2)。 SELECT試験の選択基準はBMIが27kg/m2以上なので、それよりBMIの小さい患者に今回の結果が外挿できるかは不明である。しかし著者らがDiscussionの最後に“the reconceptualization of GLP-1RAs as potential cardiovascular disease-modifying agents”と記載しているように、セマグルチドが心血管イベント2次予防における第2のスタチンになるのも夢物語ではないかもしれない。

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第297回 「子どもを医師にしますか?」2026(後編) 「人の命を救いたい」という単純な夢だけで医師を目指すのは、今やリスクが高過ぎる人生の選択

歴史的改定率の診療報酬、本体部分3.09%引き上げこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年末年始もいろいろなことがありました。医療界の最大の関心事、2026年度の診療報酬改定率は、医師の技術料など医療行為の対価に当たる本体部分が3.09%引き上げられることが決定しました。賃上げ対応分1.70%と物価対応分0.76%で全体の半分以上を占めます。診療報酬本体の改定率が3%を超えるのは、1996年度の3.4%以来30年振りのことです。なお、今回決定した改定率の3.09%は、2026年度と2027年度の平均値であり、実際は2026年度で2.41%、2027年度で3.77%と変動させるとのことです。この歴史的とも言える改定率について医療界は沸き上がっています。日本医師会の松本 吉郎会長は12月24日、財務省と厚生労働省を訪れ、片山 さつき財務大臣、上野 賢一郎厚労大臣と相次いで会談。両大臣による折衝により、令和8年度の診療報酬の改定率が本体プラス3.09%に決定したことについて、深い謝意を伝えたとのことです。そして、同日開かれた定例会見では、「政府・与党をはじめ、多くの関係者に医療機関の厳しい経営実態をご理解いただけたものと実感し、深く感謝している」と語りました。改定率を上げることが高市首相の長期政権につながると片山財務相も判断か最終的に財務省が高市総理大臣、片山財務相、厚労省に押し切られる結果となったわけです。その経緯について、12月25日付の日本経済新聞は、「『3%ありき』政治の圧力 診療報酬、厚労省案丸のみ 財務相自ら接近」と題した記事で詳しく解説しています。同記事は、「日本医師会や自民党厚労族の意向を受けた厚労省が3%以上の引き上げを求める中、財務省は1%台で調整していた。通常は両者の綱引きの末に中間地点をにらんで落とし所を探るが、首相が決めたのは厚労省が提示した通りの3.09%だった」、片山財務相は当初「厚労省側に『野放図な財政運営はしない』との姿勢を示し」ていたものの、次第に「周囲に3%に近づけるべきだとの考えを隠さなく」なっていった、と書いています。そして同記事は、「医師会は自民党の有力な支持団体だ。発足間もない高市政権が距離を取るのは難しい。財務省幹部は『片山氏は高市政権の重要閣僚として、改定率を上げることが長期政権につながり最善と考えたのだろう』と漏らす」と、財務相自身が高市政権のために日本医師会に配慮した可能性を示唆しています。診療報酬については今後、「議論の整理」を経て「短冊」(個別改定項目)作成、「答申」(2月上旬)という流れで進みます。単なるバラマキで終わるのか、あるいは「第293回 佳境迎える診療報酬改定議論、「本体」引き上げはほぼ既定路線も、最大の焦点は病院と診療所間の『メリハリ』」でも書いた、相応のメリハリ(病院と診療所の差別化等)が付けられることになるのか、注目です。今、子どもを医師にする、医学部受験をさせるのは得策なのか?さて、前回の本連載では、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」でのコメンテーターの玉川 徹氏の「僕はこれから人口も減っていくし、AIもどんどん導入されるなかで、今のように医師の地位が社会的な地位とか収入とかも含めて、ずっと高いまま続いていくのかなと(疑問に)思っているのに、何でみんな医学部行こうとするのか不思議。なんでしょうね?」という問い掛けを紹介しつつ、今、子どもを医師にする、言い換えれば医学部受験をさせるのは得策なのかどうかについて考えました。同様の議論は昔もあり、私は今から17年前、まだ紙の雑誌だった日経メディカルの2009年1月号に掲載された「子どもを医者にしますか?」というタイトルの特集記事を思い出しました。同記事は、「過重労働、訴訟の増加、医療費抑制など医師を取り巻く環境が悪化する中、『子どもは医師にしたくない』という医師が目立つようになった」として、当時の子どもを持つ医師の本音をアンケートで調査するとともに、将来を予測しています。少々古い記事ですが、なかなか先見の明がある内容でしたので、簡単に紹介しておきましょう。17年前、「子どもに医師になってほしい」と考えていた医師は4割超いたが…同記事は、高校生以下の子どもを持つ医師1,000人にアンケート、773人の回答を得ています。「子どもに医師になってほしいか」との問いに対し、「なってほしい」「どちらかといえばなってほしい」と回答した医師は42.9%でした。それに対し、「なってほしくない」「どちらかといえばなってほしくない」と答えた医師は19.7%でした。「なってほしくない」理由としては、「患者とのトラブルに関する悩み」(57.9%)、「医療費抑制策による医療環境の悪化」(57.9%)、「過酷な長時間労働」(51.3%)、「訴訟リスクがますます高くなる」(50.7%)が上位を占めていました。現在ほど医療機関経営が悪化しておらず、医師の働く環境が改善されていなかった時代の回答としては、まあこんなものかなという数字と言えます。現在、医療機関を取り巻く経営環境は、人口減少、医療人材不足、新型コロナウイルス感染症禍後の患者数減少、物価高、円安、人件費高騰など、17年前に比べ桁違いに厳しさを増しています。さらに「働き方改革」スタート後も、外科系を中心に長時間労働は一向に改善されていません。おそらく、このアンケートを今改めて行ったら、「医師になってほしい」と「なってほしくない」の結果は逆転していると思われます。なお同記事は、「30年後、勤務医・開業医の世界はこう変わる」として、「外来需要は減少」し、「急性期病院の再編が始まり」、「科目別養成数に上限が設定」され、「総合医養成が強化」、医師にも「実力本位の格差社会がやってくる」と予想しています。2009年の30年後ですから2039年、「新たな地域医療構想」のほぼ目標年の状況というわけですが、なかなか鋭いところを突いた未来予想だったと言えるでしょう(美容外科等への逃散、直美はさすがに予想できていませんが)。「希少な人材の最適配分を実現する観点からも、医学部定員数の適正化は『待ったなし』」と財務省ということで、今、高校生以下の子どもを持つ医師の皆さんは子どもを医師にしようと考えるのでしょうか。そして、進学校の先生たちは、今後も「医学部偏重、東大至上主義」を貫いていくのでしょうか(東大は国際卓越研究大学になれないかもしれませんよ)。昨年、本連載の「第292回 藤田医科大の学費800万円値下げから見えてくる、熾烈を極める大学医学部サバイバル戦」では、「財務省は11月11日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の分科会を開き、教育の質を持続的に確保するために大学の統合や縮小、撤退を促進することが必要だと提言しました。また、厚生労働省は11月20日、医学部の入学定員を全体として『削減』する案を省内の検討会に提示しています。これまで『適正化』を進めるとしていましたが、減らす方針を初めて明確にしました」と、医師養成に関する国の方針も転換期に入ったと書きました。将来、医療機関を取り巻く環境が悪化するだけでなく、医師の数自体も過剰になっていくのです。財務省は12月2日に公表した「2026年度予算の編成等に関する建議」(通称、秋の建議)の中でも、図1、2に示すような資料を提示、「日本の社会経済全体における希少な人材の最適配分を実現する観点からも、医学部定員数の適正化は『待ったなし』と認識すべきであり、仮に、定員数の抑制が進まない場合には、国家試験の合格率により医師の供給数をコントロールすることも含めあらゆる選択肢を検討すべきではないか」と提言しています。図1画像を拡大する図2画像を拡大する財政制度等審議会・令和8年度予算の編成等に関する建議 資料IIより中学生、高校生の子どもをお持ちの医師の皆さんは、ぜひこうした資料も参考にしながら、お子さんの進路について家族会議を持たれることをお勧めします。「実家の医療法人を継がなければならない」という経済的な理由があるならば仕方ありませんが(ただ、その医療法人も2040年に生き残っているかどうかは微妙です)、「人の命を救いたい」という単純な夢だけで医師を目指すのは、今やリスクが高過ぎる人生の選択なのです。

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CKD高齢者への高用量インフルワクチン、肺炎などの入院を減少

 高齢者に対する高用量インフルエンザワクチンの入院予防効果を検証したDANFLU-2試験の結果、高用量インフルエンザワクチンは標準用量と比較してインフルエンザまたは肺炎による入院を有意に低下させなかったことが報告されている。今回、事前に規定された慢性腎臓病(CKD)の有無別のサブグループ解析において、CKD患者では高用量インフルエンザワクチンがインフルエンザまたは肺炎による入院リスクを有意に低下させたことを、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のKatja Vu Bartholdy氏らが明らかにした。Journal of the American College of Cardiology誌2025年12月23日号掲載の報告。 DANFLU-2試験は、デンマークの直近3回のインフルエンザ流行期(2022~23年、2023~24年、2024~25年)に、65歳以上の高齢者を高用量または標準用量の4価インフルエンザ不活化ワクチンの接種を受ける群に無作為に割り付けた非盲検ランダム化比較試験。主要エンドポイントはワクチン接種後14日目から翌年5月31日までに発生したインフルエンザまたは肺炎による入院の割合で、副次エンドポイントはインフルエンザによる入院・肺炎による入院・心肺系疾患による入院・あらゆる入院・全死因死亡であった。事前に規定されていたサブグループ解析として、CKDの有無による相対ワクチン有効率を評価した。 主な結果は以下のとおり。・DANFLU-2試験に参加した33万2,438例(平均年齢73.7±5.8歳、女性48.6%)のうち、4万6,788例(14.1%)がベースライン時にCKDを有していた。そのうち2万3,486例が高用量群、2万3,302例が標準用量群に無作為に割り付けられた。・主要エンドポイントである肺炎またはインフルエンザによる入院は、CKD集団では4万6,788例中708例(1.5%)、非CKD集団では28万5,641例中1,640例(0.6%)に発生した(リスク比:2.6、95%信頼区間[CI]:2.4~2.9)。CKD集団ではすべての副次エンドポイントのリスクも高かった。・CKD集団における肺炎またはインフルエンザによる入院に対する相対ワクチン有効率は16.9%(95%CI:3.4~28.5)だったのに対し、非CKD集団では0.6%(95%CI:-9.6~28.5)であった(相互作用のp=0.046)。・CKD集団におけるインフルエンザまたは肺炎による入院の絶対リスクは、高用量群で1.3%、標準用量群で1.7%であり、絶対リスク減少率は-0.29%(95%CI:-0.50~0.058、治療必要数[NNT]=359)であった。・インフルエンザによる入院に限ると、CKD集団における高用量インフルエンザワクチンの相対ワクチン有効率は68.6%(95%CI:46.7~82.3、NNT=561)で大きな効果が認められたのに対し、非CKD集団では30.6%(95%CI:7.2~48.3、NNT=3,953)であった(相互作用のp=0.0079)。・心肺系疾患、心血管疾患、心不全、検査で確認されたインフルエンザによる入院については、CKDの有無による効果の差は認められず、同様の効果が示された(すべての相互作用のp>0.05)。 これらの結果より、研究グループは「DANFLU-2試験のCKD患者を対象とした事前規定のサブグループ解析において、高用量インフルエンザワクチンは標準用量と比較してインフルエンザまたは肺炎による入院、およびインフルエンザによる入院を減少させた。これらの結果は、リスクの高い集団において、高用量インフルエンザワクチンが標準用量よりも臨床的に意義のあるベネフィットを有することを示唆している」とまとめた。

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生活保護受給者、糖尿病の受診動向と転帰は?/筑波大学ら

 日本において生活保護受給者は医療費が免除されているが、医療費無償化の健康アウトカムに対する効果はどの程度なのか。糖尿病患者を対象に、生活保護受給者と国民健康保険加入者の治療と転帰の違いを調査した研究が行われた。筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野の山岡 巧弥氏らによる本研究は、Journal of Diabetes Investigation誌オンライン版2025年12月4日号に掲載された。 本研究は後ろ向き観察研究で、2017年4月〜2022年3月につくば市で収集された基本住民台帳・生活保護調査・医療保険請求データを用いた。対象は20〜68歳で2型糖尿病と診断され、糖尿病薬を使用している患者だった。主な評価項目は「年次の眼科検診受診」「SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の使用率」「医療費(総額・外来・入院)」「健康アウトカム(低血糖および入院発生率)」であり、多変量回帰モデルにより治療プロセスの差と転帰のリスク比や発生率比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象となったコホートは、2018〜20年の横断データで1万1,385〜1万1,566例、縦断データで計1万8,655例だった。・全期間を対象とした解析では、生活保護群は年1回の眼科検診を受ける割合が高かった(調整リスク比:1.15、95%信頼区間[CI]:1.08~1.22)。・生活保護群では、SGLT2阻害薬の使用割合が高く(1.22、1.13~1.31)、GLP-1受容体作動薬の使用割合はさらに高かった(1.63、1.41~1.90)。・生活保護群では総医療費(1.16、1.09~1.23)と外来医療費(1.31、1.24~1.38)が高かった反面、入院医療費(0.85、0.77~0.94)は低かった。・一方で、生活保護群のほうが低血糖の発生率が高かった(2.21、1.38~3.54)。 研究者らは「本研究では、医療費免除や所得補償がある生活保護受給者は適切な治療を受けやすいことが示された。しかし、低血糖リスクの上昇や健康アウトカムの改善が限定的であることは、単なる医療アクセス改善だけでは健康格差の解消に至らないことを示唆している。これは、病態の複雑さ、生活習慣、教育・自己管理支援の不足、社会的ストレスなど多因子の影響が考えられる。医療費免除のみでは健康アウトカムの改善が十分でないため、低血糖予防や継続的な患者教育・自己管理支援、社会的環境改善の施策など、包括的支援の必要性が高いと考えられる」としている。

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日本における統合失調症患者の退院後の治療失敗と関連する因子は?

 統合失調症スペクトラム症は、社会機能障害を引き起こす最も重篤な精神疾患の1つである。統合失調症スペクトラム症患者は再発しやすく、入院を必要とする患者では、より再発リスクが高いため、退院後の治療失敗を予防することが不可欠である。北里大学の斉藤 善貴氏らは、精神科入院による治療を行った統合失調症スペクトラム症患者における退院後の治療失敗に関連する因子を明らかにするため、レトロスペクティブ研究を実施した。PCN Reports誌2025年10月7日号の報告。 対象は、2014年1月〜2021年12月に北里大学病院および北里大学東病院の精神科に入院した統合失調症スペクトラム症およびその他の精神病性障害と診断された859例。治療失敗の定義は、退院後1年以内の外来治療中止、精神科入院、死亡とした。 主な結果は以下のとおり。・治療失敗患者は、859例中201例(23.4%)であった。・抗精神病薬多剤併用療法患者の治療失敗率は29.0%であり、多剤併用療法を行っていなかった患者と比較し、有意に高かった。・さらに、入院中に自宅での外泊を試行した患者における治療失敗率は20.8%であり、試行しなかった患者と比較し、有意に低かった。 著者らは「統合失調症スペクトラム症患者において、退院時の抗精神病薬多剤併用は治療失敗と関連していた。さらに、入院中に自宅での試験的な外泊を行うことは、治療失敗の予防に寄与する可能性が示唆された」とし「統合失調症スペクトラム症患者の治療失敗を予防するには、退院後に焦点を当て、薬物療法の最適化と社会的・環境的調整の実施が必要である」と結論付けている。

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医師数公表、人口当たり医師数が最も多い県・少ない県/厚労省

 厚生労働省は、2025年12月23日に令和6(2024)年12月31日現在における医師数を公表した。報告によると全国の届出「医師数」は34万7,772人で、「男性」は26万2,801人(75.6%)、「女性」は8万4,971人(24.4%)だった。令和4(2022)年と比べると4,497人(1.3%)増加していた。また、人口10万人当たりの医師数は280.9で、前回に比べ6.2増加していた。 年齢階級別では「30~39歳」が6万7,729人(20.5%)と最も多く、次いで「50~59歳」が6万5,939人(19.9%)、「40~49歳」が6万5,264人(19.7%)の順で多かった。 また、男女の構成割合を年齢階級別にみると、すべての年齢階級で「男性」の占める割合が多くなっていたが、「女性」の割合は、年齢階級が低くなるほど高く、「29歳以下」では36.8%だった。全体の95%の医師が医療施設で従事 施設・業務の種別では、「医療施設の従事者」は33万1,092人(総数95.2%)で、前回に比べ3,648人(1.1%)増加していた。「介護老人保健施設の従事者」は3,337人(同1.0%)で、前回に比べ39人(1.2%)増加し、「医療施設・介護老人保健施設・介護医療院以外の従事者」は9,403人(同2.7%)で222人(2.4%)増加していた。 施設の種別では、「病院(医育機関附属の病院を除く)」が16万1,113人と最も多く、「診療所」が11万1,699人、「医育機関附属の病院」が5万8,280人となっており、昭和61(1986)年以降「病院(医育機関附属の病院を除く)」が最も多い結果となった。また、施設の種別に年齢階級をみると、「病院(医育機関附属の病院を除く)」「医育機関附属の病院」では「30~39歳」、「診療所」では「60~69歳」が最も多かった。平均年齢は「病院(医育機関附属の病院を除く)」が47.9歳、「医育機関附属の病院」が39.7歳、「診療所」が60.1歳だった。診療科別平均年齢では「美容外科」が41.2歳と低い 従事する主たる診療科別では、「内科」が6万2,161人(18.8%)と最も多く、「整形外科」が2万2,630人(6.8%)、「小児科」が1万8,009人(5.4%)の順で多かった(臨床研修医1万8,257人を除く)。少数診療科では「気管食道外科」が94人(0.0%)、「アレルギー科」が170人(0.1%)、「肛門外科」が431人(0.1%)の順で少なかった。 主たる診療科別で平均年齢をみると、「肛門外科」が60.5歳と最も高く、「臨床研修医」を除くと「美容外科」が41.2歳と低くなっていた。 主たる診療科を施設種別にみると、病院では「内科」が2万1,865人(10.0%)と最も多く、「整形外科」が1万4,659人(6.7%)、「精神科」が1万2,364人(5.6%)の順で多かった。また、診療所では「内科」が4万296人(36.1%)と最も多く、「眼科」が8,597人(7.7%)、「整形外科」が7,971人(7.1%)の順で多かった。埼玉県の医師不足、専門医不足が顕著に 医療施設に従事する都道府県別にみた人口10万人当たりの医師数は、徳島県が345.4と最も多く、長崎県が333.8、京都府が333.2の順で多かった。その一方で、埼玉県が189.1と最も少なく、茨城県が198.1、千葉県が213.3の順で少なかった。 また、近年医師数の減少などで問題となっている「小児科」「産婦人科」「外科(心臓血管外科、呼吸器外科など)」について都道府県別にみた人口10万人当たりの医師数は次のとおりだった。・主たる診療科が「小児科」の医師数は、鳥取県が187.3と最も多く、千葉県が101.5と最も少なかった。また、専門性資格の「小児科専門医」は、鳥取県が146.0と最も多く、山口県が58.0と最も少なかった。・主たる診療科が「産婦人科・産科」の医師数は、福井県が66.4と最も多く、埼玉県が35.1と最も少なかった。また、専門性資格の「産婦人科専門医」は、島根県が60.0と最も多く、埼玉県が29.0と最も少なかった。・主たる診療科が「外科」の医師数は、長崎県32.3と最も多く、埼玉県が14.6と最も少なかった。また、専門性資格の「外科専門医」は、鳥取県が21.7と最も多く、埼玉県が12.3と最も少なかった。

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ヘルペス陽性早期アルツハイマー病、バラシクロビルは有効か?/JAMA

 神経科学的、疫学的、および電子的健康記録を用いた研究において、単純ヘルペスウイルス(HSV)がアルツハイマー病(AD)の病態形成に関与する可能性が示唆されている。米国・New York State Psychiatric InstituteのD. P. Devanand氏らは、早期AD症状を有するHSV(HSV-1またはHSV-2)陽性の患者を対象に、HSVに有効な抗ウイルス薬であるバラシクロビルの臨床的ベネフィットを検討するプラセボ対照無作為化試験「VALAD試験」を実施。主要アウトカムの認知機能の悪化に関して、バラシクロビルの有効性は示されなかったことを報告した。著者は、「早期AD症状を有するHSV陽性患者に対する治療に、バラシクロビルは推奨されないことが示唆された」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年12月17日号掲載の報告。対プラセボで78週の認知機能の変化を評価 VALAD試験は、臨床的にADが疑われると診断またはADバイオマーカーが陽性で軽度認知障害(MCI)と診断され、HSV-1またはHSV-2の血清抗体検査(IgGまたはIgM)が陽性、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが18~28の成人を対象とした。 試験は、米国の記憶障害に関する外来専門クリニック3施設で実施された。被験者募集は2018年1月~2022年5月に行われ、適格被験者はバラシクロビル4g/日投与群または適合プラセボ群に無作為に割り付けられ追跡評価を受けた。最終フォローアップは2024年9月であった。 主要アウトカムは、11項目のAlzheimer's Disease Assessment Scale Cognitive(ADAS-Cognitive)サブスケールスコア(範囲:0~70、高スコアほど障害が重いことを示す)について、78週時点における最小二乗平均(LSM)変化量であった。 副次アウトカムは、(1)Alzheimer's Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living(ADCS-ADL)スケールスコアのLSM変化量、(2)6つの脳領域(内側眼窩前頭皮質、前帯状皮質、頭頂葉、後帯状皮質、側頭葉、楔前部)に関する、18F-florbetapirを用いたアミロイドPETの標準化集積比(SUVR、高スコアほどアミロイドが高レベルであることを示す)のLSM変化量、(3)4つの脳領域(扁桃体、海馬、嗅内野、海馬傍回)に関する、18F-MK-6240を用いたタウPETの側頭葉内側部SUVR(高スコアほどタウが高レベルであることを示す)のLSM変化量であった。 有害事象の発現頻度を安全性アウトカムとした。バラシクロビル群のほうが認知機能の悪化が大きい 120例が無作為化され(バラシクロビル群60例、プラセボ群60例)、うち93例(77.5%、バラシクロビル群45例、プラセボ群48例)が試験を完遂した。被験者120例は、平均年齢71.4歳(SD 8.6)、女性が55%、ADと診断された者が75%、MCIと診断された者が25%であった。人種別では白人が両群とも76.7%を占めている。 78週時点で、11項目のADAS-CognitiveサブスケールスコアのLSM変化量(主要アウトカム)は、バラシクロビル群10.86(95%信頼区間[CI]:8.80~12.91)vs.プラセボ群6.92(4.88~8.97)であり、バラシクロビル群がプラセボ群よりも認知機能の悪化が大きいことが示唆された(群間差:3.93、95%CI:1.03~6.83、p=0.01)。 副次アウトカムは、いずれも78週時点で、(1)ADCS-ADLスケールスコアのLSM変化量はバラシクロビル群-13.78(95%CI:-17.00~-10.56)vs.プラセボ群-10.16(-13.37~-6.96)であり(群間差:-3.62、95%CI:-8.16~0.93)、(2)18F-florbetapirアミロイドPET SUVRのLSM変化量は0.03(-0.04~0.10)vs.0.01(-0.06~0.08)であり(群間差:0.02、-0.08~0.12)、(3)18F-MK-6240タウPET側頭葉内側部SUVRのLSM変化量は0.07(-0.06~0.19)vs.-0.04(-0.15~0.07)であった(群間差:0.11、-0.06~0.28)。 最もよくみられた有害事象は、クレアチニン値上昇(バラシクロビル群5例[8.3%]vs.プラセボ群2例[3.3%])、COVID-19感染(3例[5.0%]vs.2例[3.3%])であった。

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単純性淋菌感染症、単回投与の新規抗菌薬zoliflodacinが有効/Lancet

 単純性淋菌感染症の治療において、zoliflodacinはセフトリアキソン+アジスロマイシンの併用療法に対して非劣性であり、安全性プロファイルは同等であることが、スイス・Global Antibiotic Research & Development PartnershipのAlison Luckey氏らZoliflodacin Phase 3 Study Groupが行った海外第III相無作為化非盲検非劣性試験の結果で示された。淋菌(N. gonorrhoeae)は複数の第1選択薬および第2選択薬に対して耐性を獲得しており、新たな治療薬の開発が世界的な公衆衛生上の最優先事項となっている。zoliflodacinは、新規作用機序で細菌のDNA複製を阻害するファーストインクラスの経口スピロピリミジントリオン系抗菌薬で、新たな標的(GyrB)を有し、多剤耐性菌株を含む淋菌に対して強力なin vitro活性を有することが示されていた。著者は、「本検討で示されたデータは、zoliflodacinが単純性淋菌感染症に有効な経口治療選択肢の1つとなりうる可能性を示唆するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年12月11日号掲載の報告。zoliflodacin単回投与vs.セフトリアキソン+アジスロマイシン併用投与 本検討の被験者の適格要件は、臨床的に泌尿生殖器系の単純性淋菌感染症が疑われる12歳以上とされ、試験は、ベルギー、オランダ、南アフリカ共和国、タイ、米国の17の外来クリニックで実施された。試験参加国は、疾患有病率が高い国が選定され、参加施設は、HIVまたは性感染症とその治療に精通した研究経験のある主任研究者によって選定された。Feasibility調査票と試験前訪問調査で、性感染症症例管理ガイドライン、臨床サービス、リソース(施設、スタッフ、試験チームの構成案、試験参加施設で提供される標準的な性感染症サービス、検査能力の評価、試験経験、臨床試験の倫理レビューなど)の評価が行われた。 適格被験者は、zoliflodacin 3g(経口)単回投与群(zoliflodacin群)またはセフトリアキソン500mg(筋注)+アジスロマイシン1g(経口)の併用投与群(対照群)に2対1の割合で無作為に割り付けられた。治療の割り付けは被験者と試験担当医師には知らされたが、細菌検査室のスタッフおよび試験スポンサーの中央試験チームは、データベースがロックされるまで盲検化された。 主要エンドポイントは、細菌学的ITT集団における治癒判定(Test Of Culture[TOC]、6±2日目)時に細菌学的治癒(尿道または子宮頸管検体の培養検査で淋菌陰性または検出不能)を達成した患者の割合であった。有効性の主要解析で、治療群間差(対照群-zoliflodacin群)の両側95%信頼区間(CI)の上限が非劣性マージンの12%を下回った場合、非劣性と判定された。推定治療群間差は5.3%、zoliflodacin単回投与の非劣性を確認 2019年11月6日~2023年3月16日に1,011例がスクリーニングされ、スクリーニング基準を満たさなかった81例を除く930例が無作為化された(zoliflodacin群621例、対照群309例)。被験者の平均年齢は29.7歳(SD 9.4)、815/930例(88%)が出生時男性に、115/930例(12%)が出生時女性に分類された。514/930例(55%)が黒人またはアフリカ系米国人、285/930例(31%)がアジア人、113/930例(12%)が白人であった。 泌尿生殖器系の細菌学的ITT集団におけるTOCに基づく細菌学的治癒率(主要有効性エンドポイント)は、zoliflodacin群90.9%(460/506例、95%CI:88.1~93.3)、対照群96.2%(229/238例、92.9~98.3)であり、推定治療群間差は5.3%(95%CI:1.4~8.6)で、事前に規定した非劣性マージンの要件を満たした。 zoliflodacin群の忍容性は概して良好で、有害事象は治療群間で類似していた。治療中に発現した主な有害事象は、zoliflodacin群では頭痛(61/619例[10%])、好中球減少症(42/619例[7%])、白血球減少症(24/619例[4%])で、対照群では注射部位疼痛(38/308例[12%])、好中球減少症(24/308例[8%])、下痢(22/308例[7%])であった。有害事象の大半の重症度は軽度または中等度であった。重篤な有害事象は報告されなかった。

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新生児に対するビタミンK投与を拒否する親が増加傾向

 米国では、1961年に全ての新生児に対するビタミンKの筋肉内投与が開始されて以来、ビタミンK欠乏性出血症がほぼ解消された。ビタミンKは、血液凝固を助ける目的で投与される薬剤であり、ワクチンではない。しかし新たな研究で、近年、新生児へのビタミンK注射を拒否する親が増えていることが明らかにされた。研究グループは、注射の拒否により新生児が深刻な出血リスクにさらされる可能性があると警告している。米フィラデルフィア小児病院の新生児専門医であるKristan Scott氏らによるこの研究結果は、「The Journal of the American Medical Association(JAMA)」に12月8日掲載された。 この研究でScott氏らは、2017年から2024年の間に米国50州にある403カ所の病院で、妊娠35〜43週で生まれた509万6,633人の新生児の医療記録を調べた。その結果、全体の3.92%に当たる19万9,571人がビタミンKの注射を受けていないことが明らかになった。注射を受けていない新生児の割合は、2017年の2.92%から2024年の5.18%へと有意に増加しており、特に新型コロナウイルス感染症パンデミック以降に急増していた。この結果についてScott氏は、「増加自体は驚くことではないが、増加の大きさには驚いた」とNBCニュースに語っている。 新生児のビタミンK体内濃度は非常に低い。米疾病対策センター(CDC)によると、ビタミンKの投与を受けない場合、危険な出血を起こす可能性が80倍以上高くなるという。出血は、生後6カ月までの間にあざや内出血などの形で現れる可能性があり、最も重篤な場合には障害や死亡につながる脳出血が生じることもある。 このことを踏まえてScott氏は、「われわれは、出血リスクのある新生児の集団を作り出しているに等しい。本当に心配なのは脳出血、つまり脳卒中だ。脳出血が起こると、最終的には死に至る可能性がある」と話している。 専門家らは、オンライン上の誤情報やビタミンK注射とワクチンの混同が、こうした傾向の根底にあるのではないかと疑っている。この研究には関与していない米テキサス小児病院の新生児科医であるTiffany McKee-Garrett氏は、「親は、ビタミンK注射をワクチン接種と同等に捉えている」とNBCニュースに語っている。 一部の国では、新生児に経口ビタミンKを投与している。しかし医師らは、経口ビタミンKは信頼性が低く、場合によっては複数回投与する必要があるのに対し、ビタミンKの注射は1回の投与で効果があるとしている。 米NYC Health + Hospitalsの新生児科医であるIvan Hand氏は、「ビタミンK欠乏性出血症は予防可能であり、そもそも発生していること自体が問題だ」と話す。医師らは、現状のようなビタミンK投与が拒否される状態が続けば、出血イベントの発生数が増加する可能性が高いとの見方を示している。Hand氏は、「ビタミンK投与は極めて効果的であるが、人々はそのことを十分に理解していない。重度の出血を起こした乳児を見たことがないため、そのようなことは起こらないと思っているのだ。しかし、それが見られないのは、われわれがそうした乳児の治療をしているからだ」と話している。

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PD-L1陰性転移トリプルネガティブ乳がん1次治療におけるサシツズマブ ゴビテカン(解説:下村昭彦氏)

オリジナルニュース免疫療法の対象とならない進行TN乳がんの1次治療、SGがPFS延長(ASCENT-03)/ESMO2025 PD-L1陰性転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の初回治療としては、長らくタキサンを中心とした化学療法が実施されてきた。2次治療以降ではTROP2 ADCやHER2低発現に対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が用いられるようになり、TNBCの治療は大きく変化している。これらADCの1次治療における有効性が期待されてきた。 ASCENT-03試験はPD-1/PD-L1阻害薬の対象とならない転移TNBCを対象として、サシツズマブ ゴビテカン(SG)と化学療法を比較した第III相試験である(Cortes J, et al. N Engl J Med. 2025;393:1912-1925.)。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)中央値において9.7ヵ月vs.6.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間:0.50~0.77、p<0.0001)と統計学的有意にSG群で良好であった。一方、全生存期間(OS)中央値は21.5ヵ月vs.20.2ヵ月(HR:0.98)とSGの優越性は示されなかった。そもそもTNBCのOS中央値は15ヵ月程度であり(Deluche E, et al. Eur J Cancer. 2020;129:60-70.)対照群のOSそのものも、かつてよりかなり良くなっている。これは、2次治療以降でOSを延長することが示された複数の薬剤(SGやT-DXd)が使用可能になったためであると考えられる(Bardia A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1529-1541.、Modi S, et al. N Engl J Med. 2022;387:9-20.)。 一方で、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で同時に発表された同様にPD-L1陰性TNBC1次治療としてのダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)がPFSならびにOSの延長を有意に示したことから、その結果の不一致について検討が必要である。後治療としてADCが使えることは両試験とも同じであることを考えると、OSの結果の違いには何らかの薬剤としての違いがある可能性がある。ホルモン受容体陽性乳がんの2次治療では、TROPiCS-02試験でSGがOSの延長を示し、Dato-DXdはTROPION Breast-01試験でOSの延長を示せなかったことから、サブタイプによってその結果が逆転している(Bardia A, et al. J Clin Oncol. 2025;43:285-296.、Rugo HS, et al. Lancet. 2023;402:1423-1433.)。単純にOSの結果が安定するほどの薬効がない可能性もあるが、PFSは確実に延長していることから、今後は後治療の影響やバイオマーカーなどの探索が必要である。

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異物除去(13):眼洗浄【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q157

異物除去(13):眼洗浄Q157町の診療所で新患外来を担当中。とくに既往のない60歳女性が「市販の漂白剤を桶に入れようとした際に、両眼に跳ねてしまった。痛みがあるため診てほしい」と診療所を受診した。とくに流水での洗浄はしておらず、明らかな視野障害、視力障害はない。眼球結膜充血はあるが瞳孔の変形はない。表面麻酔の点眼薬を使用し、眼洗浄をしようと思うが、特別な器具がない。どうしようか。

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