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SGLT2阻害薬が脂肪肝の改善に有効か

 SGLT2阻害薬(SGLT2-i)と呼ばれる経口血糖降下薬が、脂肪肝の治療にも有効な可能性を示唆する研究データが報告された。慢性的な炎症を伴う脂肪肝が生体検査(生検)で確認された患者を対象として行われた、南方医科大学南方医院(中国)のHuijie Zhang氏らの研究の結果であり、詳細は「The BMJ」に6月4日掲載された。 論文の研究背景の中で著者らは、世界中の成人の5%以上が脂肪肝に該当し、糖尿病や肥満者ではその割合が30%以上にも及ぶと述べている。脂肪肝を基に肝臓の慢性的な炎症が起こり線維化という変化が進むにつれて、肝硬変や肝臓がんのリスクが高くなってくる。 一方、これまでに行われた複数の研究から、尿中へのブドウ糖排泄を増やすことで血糖値を下げるSGLT2-iに、脂肪肝を改善する作用のあることが示されている。ただしそれらの研究では、画像検査や血液検査によって脂肪肝の存在が推定される患者を対象としていた。それに対して今回報告された研究は、脂肪肝の中でも慢性炎症が起きている、よりハイリスクな状態である代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を、生検によって診断した患者を対象に行われた。著者らによると、生検でMASHが確認された患者を対象としてSGLT2-iの効果を検討した研究は、これが初めてだという。 中国国内の三次医療機関6施設で、MASHと診断された成人154人をランダムに2群に分け、1群をSGLT2-iの一種であるダパグリフロジン(10mg)群、他の1群をプラセボ群として48週間介入した。参加者の平均年齢は35.1±10.2歳で、BMIは29.2±4.3であり、2型糖尿病が45%を占めていた。また、肝疾患の活動性を表すスコア(NAS)は6.0±1.1で、肝線維化ステージはF1が33%、F2が45%、F3が19%だった。 主要評価項目である、肝線維化の悪化(線維化ステージの進行)を伴わないMASHの改善(NASが2点以上低下、または3点以下になること)は、ダパグリフロジン群では53%、プラセボ群では30%に認められ、前者で有意に多かった(リスク比〔RR〕1.73〔95%信頼区間1.16~2.58〕)。また副次評価項目として設定されていた、肝線維化の悪化を伴わないMASHの寛解は、同順に23%、8%(RR2.91〔同1.22~6.97〕)、MASHの悪化を伴わない線維化の改善は、45%、20%であり(RR2.25〔1.35~3.75〕)、いずれもダパグリフロジン群に多く認められた。なお、有害事象によって治療を中止した患者の割合は、1%、3%だった。 著者らは、「われわれの研究結果は、ダパグリフロジンが肝臓の脂肪化と線維化の双方を改善し、MASHの経過に有意な影響を及ぼす可能性を示唆している。これらの効果を確認するために、より大規模かつ長期間の臨床研究が求められる」と述べている。

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夏の暑さから身を守る――救急医のアドバイス

 気温が高くなる夏季に、屋外に出なければならない――。そんな時に身の安全を守るための重要なヒントを、米ヒューストン・メソジスト病院の救急医であるNeil Gandhi氏が同院のサイト内に6月17日公開した。同氏は「この季節は、暑さに湿気、そして、しばしば異常気象が重なるため、事前の『備え』が特に重要な季節だ」としている。 Gandhi氏によると、「屋外で過ごすことには、心身の健康増進をはじめ、多くのメリットがある」という。しかし、夏季の屋外活動に関しては「リスクもあるため気をつけなければならない」と述べ、以下のような注意点を挙げている。 「猛暑の中に、いきなり飛び込まないことだ。屋外で活動を始めるには、慣れるまで少し時間を取ってほしい」。Gandhi氏はこのように語り、屋外活動を始めるに際しては、最初は短時間にとどめ、徐々に時間を長くしていき、体を暑熱環境に順応させるようにすることを勧めている。 また同氏は、「高温多湿な環境では発汗が増加するため、水分補給にも気を配る必要がある」と、脱水予防対策の必要性を指摘。その水分補給には、「水を飲むことが最も良い」とのことだが、「炭酸水、あるいはスイカなどの水分を多く含む果物も役立つ」と付け加えている。ただし、加糖飲料やアルコール類は脱水を助長する可能性があるため、避けることを推奨している。 Gandhi氏が次に着目するポイントは、衣類だ。暑い夏季に最適な衣類は、綿や麻などの通気性のある生地で作られた衣類だという。また、衣類は日焼け対策としても重要な意味を持つ。「日焼けはゆっくりと進行するため、重度になるまで気付かないこともある。肌に日焼け止めを塗った上に紫外線保護指数(UPF)の高い衣類を羽織れば、日光からの防御層をもう一層加えることになる」とアドバイスする。 さらに、体に熱が蓄積されて、熱中症のリスクが生じ始めている状態を認識することの大切さに言及。熱中症のハイリスク者として同氏は、屋外労働者や夏季のイベント・スポーツ大会に参加する人を挙げ、また小さい子どもや高齢者も該当するとしている。そして、めまい、筋肉のけいれん、意識の乱れ、発汗の異常といった、熱中症の警告サインに注意するよう呼び掛けている。 最後は、熱中症の警告サインを認めた場合の対応について。Gandhi氏は、「もし自分に警告サインが現れたり、そのような症状が現れている人を見かけたりしたら、すぐに涼しい場所に移動する/させること、水分を補給する/させること、症状が回復しない場合は医師の診察を受ける/させることだ」と話している。

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抗菌薬、点滴か内服かを選ぶ基準は?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第7回

Q7 抗菌薬、点滴か内服かを選ぶ基準は?抗菌薬を投与する際、内服・点滴のどちらにするか悩むことがたびたびあります。 炎症数値が非常に高い場合などは点滴投与とすぐに決められますが、 微妙な数値の時などは結構迷います。

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洞性頻脈、心房頻拍を理解しよう!【モダトレ~ドリルで心電図と不整脈の薬を理解~】第5回

洞性頻脈、心房頻拍を理解しよう!Questionジギタリス中毒を起こすと、時として以下のように心臓内の刺激伝導が異常を来し、心房頻拍※と房室結節での刺激伝導の抑制を強める作用が混在して生じることがあります。では、ジギタリス中毒を生じて心房側が心房頻拍(150回/分)となり、房室結節は心房からの刺激伝導を2回に1回心室へ通すとしたら、どのような心電図波形となるでしょうか?※:その機序は静止電位が低くなること、活動電位持続時間の短縮、自動能の亢進に由来するとされますが、解説すると長くなり混乱必至ですのでここでは割愛します。画像を拡大する

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第271回 遅れた厚生労働省幹部人事、「保険局長案、官邸『NG』」報道を深読みする

保険局長の人事を巡って官邸と厚労省の間でひと悶着こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。参議院選が公示されました。全国紙いくつかの序盤の情勢分析によれば、自民党は苦戦中で議席を減らすものの50議席はなんとか確保、非改選議席75席を合わせて参院過半数の125席は超えそうだとのことですが、一方で大苦戦との報道もあります。選挙戦後半に向けて自民党はまだまだ気が抜けないようです。ところで、争点の一つの物価対策ですが、与党は消費税を堅持、野党は消費税減税・撤廃と対照的な主張をしている点が気に掛かります。社会保障(とくに医療)の持続可能性を考えれば、消費税の撤廃は到底考えられない選択です。「国民一律2万円給付」もどうかと思いますが、今回限りの“ワンショット”で済みます。かたや消費税減税・撤廃は税収減が中長期に渡って続くことになります。そう考えると、本当に“目先”しか見ていないのは野党に思えるのですが、皆さんいかがでしょう。さて、今回は参院選公示直前の7月1日に厚生労働省が発表した幹部人事について書いてみたいと思います。恒例の夏の中央官庁の幹部人事、厚労省は今回、他省庁よりも発表が遅れました。これに関連して7月2日付の日本経済新聞朝刊は「厚労省、人事発表遅れ 年金法案で国会が混乱 保険局長案、官邸『NG』」と題する興味深い記事を掲載しています。どうやら保険局長の人事を巡って官邸と厚労省の間でひと悶着あったようなのです。何があったのでしょうか?「高額療養費制度の見直し」、「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」、「2025年度診療報酬改定」などの難題を解決するには厚労省が推した“別の幹部”では力不足と判断か?7月1日に発表された厚労省幹部人事(7月8日付発令)の主な内容は、伊原 和人事務次官、次官級の迫井 正深医務技監、大坪 寛子健康・生活衛生局長が留任、保険局長に間 隆一郎年金局長、医薬局長に宮本 直樹審議官(健康、生活衛生、総合政策担当)、城 克文医薬局長は辞職、鹿沼 均保険局長は社会・援護局長に──というものでした。日本経済新聞の記事は、「他省庁より公表は遅れ、その背景には年金制度改革と高額療養費の負担上限引き上げを巡る先の国会での混乱があった。医療保険制度を担う保険局長の人事案を首相官邸側が突き返したもようだ」と書いています。国会での混乱とは、本連載の「第254回 またまた厚労省の見通しの甘さ露呈?高額療養費制度、8月予定の患者負担上限額の引き上げも見送り、政省令改正で済むため患者団体の声も聞かず拙速に進めてジ・エンド」、「第265回 “米騒動”で農水相更迭、年金法案修正、医療法改正案成立困難を招いた厚労相の責任は?」などでも詳しく書いた、年金制度改革法と高額療養費制度の見直しを巡って起きたドタバタ、言い換えれば厚労省の失策の数々を指します。同記事は、「厚労省は新任の年金局長について、先の国会で(年金制度改革)法案が成立した場合としなかった場合の複数案を抱えて官邸と調整した。不成立だった場合は、継続性を重視して現職の間隆一郎氏を留任させる腹づもりだったとみられる。(中略)法案は5月末に衆院を通過し、成立のメドが立ったことで間氏の続投は消えた。人事公表が遅れたもう一つの要因は保険局長の人選だった。新局長は間氏が年金局長からスライドすることになった。だが、厚労省はもともとは別の幹部を充てる考えだった。複数の政府関係者によると、官邸中枢が差し替えを指示したという」と書いています。来年に向けて保険局は、懸案の「高額療養費制度の見直し」に加え、三党合意で決定した「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」や「2025年度診療報酬改定」など重要な政策案件が目白押しです。それらの難題を解決するには、厚労省が推す“別の幹部”では力不足と判断され、年金制度改革法案をなんとか成立にこぎ着けた間氏に保険局長を任せることにした、ということのようです。厚労省が推した“別の幹部”は鹿沼・前保険局長か?では、厚労省が推した“別の幹部”とは誰だったのでしょう。具体的な名前についてはどこも報道していません。しかし理詰めで考えれば、高額療養費制度の見直しが決着していないことから継続して取り組ませようとした鹿沼・前保険局長(今回人事で社会・援護局長に横滑り)ではなかったかと想像されます。高額療養費制度の負担限度額引き上げは法律の改正は必要なく、政令改正で行える(国会での審議マターになりにくい)という“手軽さ”から削減候補となり、国もなるべく目立たないよう、コソコソと事を進めようとしました。社会保障審議会・医療保険部会の議題には挙げたものの患者団体のヒアリングを実施せず、閣議決定に至りました。その後、患者団体を含め各方面から猛反対が沸き起こり、最終的に患者負担上限額の引き上げは見送りとなりました。見送り決定直後、石破 茂首相は「検討プロセスに丁寧さを欠いたとの指摘を重く受け止めねばならない」と語りました。重要政策ゆえ最終決着まで任せるのが筋と考えられますが、さすがに“検討プロセスの丁寧さを欠いた”張本人である前保険局長に、もう任せておけないというのが官邸「NG」の理由だったとみられます。この件については、自民党や厚労大臣にも大きな責任があるはずです。とは言え、役人がまず責任を取るのは、“宮仕え”ゆえ仕方がないことかもしれません。保険局長と言えば、事務次官への最有力ポストと言われますが、これで筆頭候補だった前保険局長の事務次官への道はなくなったと考えていいでしょう。老健局長時代に介護報酬改定で訪問介護のマイナス改定を断行した間保険局長一方、新任の間保険局長は、逆に大きな責任を負うことになります。年金制度改革法の修正で味噌をつけたものの、保険局長として「高額療養費制度の見直し」、「OTC類似薬の保険給付のあり方の見直し」、「2025年度診療報酬改定」をすべて成功裏に進めることができれば、事務次官の目も出てくるかもしれません。ちなみに間保険局長は、老健局長時代の2024年、介護報酬改定で訪問介護等にマイナス改定を断行した人物です。診療報酬よりも高い+1.59%という介護報酬の改定率を勝ち取った一方で訪問介護の基本報酬を下げ、さまざまな批判を浴びました。その是非論はさておいて、次期診療報酬改定においても大胆な改革を行うのではないか、という憶測も一部には出始めています。参院選後、秋から始まる診療報酬改定の議論の行方に注目したいと思います。

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看護師の貢献が病院経営を救う?【論文から学ぶ看護の新常識】第22回

看護師の貢献が病院経営を救う?看護師の経済的価値を検証した最新研究で、看護業務において最も大きな経済的インパクトを与える領域は、「健康教育」と「医療安全」であることが示された。Daniel Barcenas-Villegas氏らの研究結果であり、Journal of Nursing Management誌2025年3月19日号に掲載された。臨床看護師による病院の効率性と経済的持続可能性への貢献:システマティックレビュー研究チームは、看護専門職による病院の効率性と医療の持続可能性への貢献に関するエビデンスを分析することを目的に、システマティックレビューを行った。4つのデータベース(CINAHL、PubMed、Scopus、WOS)で2013年から現在までの英語およびスペイン語の研究を検索し、経済評価に関する一次研究およびシステマティックレビューを対象とした。質の評価にはCASPツール、CHEERSチェックリスト、STROBE声明を用いた。主な結果は以下の通り。3,058件の記録のうち、9件の研究(333,597例)が適格と判断された。病院が提供する健康教育は費用対効果が高く、1 QALY(質調整生存年)あたり10万ドル未満の費用に収まる可能性がある。看護の専門性、高度実践看護師、および医療安全への投資は、入院や病状悪化の数を減少させる。看護業務の中で最も大きな経済的インパクトを与える領域は、健康教育と医療安全であることが示された。看護の専門性と高度実践看護師の導入は、より経済的に持続可能なモデルを推進するために、医療システムが注力すべき分野であることも示された。近年の研究では、医療現場での看護師の貢献が、病院の効率性や経済的持続可能性の鍵を握ると示唆しています。これは、従来の「Evidence Based Medicine(EBM;根拠に基づく医療)」が重視する臨床的効果に加え、医療が患者にもたらす「価値」を費用対効果で測る「Value Based Medicine(VBM;価値に基づく医療)」の考え方に合致します。(EBM、VBMという用語自体は本論文中に直接記されていませんが、その概念は本研究の議論の基盤です。)その「価値」を定量化する主要指標が、QALY(質調整生存年)です。前回の記事でも解説がありましたが、今回はその具体的な考え方と、海外での評価基準について触れておきます。QALYは、生存期間だけでなく生活の質も加味して費用対効果を評価する指標であり、1QALYあたりにかかるコストが低いほど「費用対効果が高い」とされます。例えばオーストラリアでは、1QALYあたり3万~6万豪ドルが許容目安とされています。本研究では、「健康教育」や「医療安全」、「専門看護師および高度実践看護師(Advanced Practice Nurse:APN)」への投資が、入院や病状悪化の減少、ひいては医療経済への肯定的な影響、費用削減につながる可能性を強く示唆しました。APNは、特定領域でリーダーシップを発揮し、再発・再入院を減らすことでコスト改善に貢献しています。ただし、各国の医療制度や経済状況は大きく異なります。そのため、評価基準も多様であり、引用論文の一部には「結果を私たちの環境に適用できない」との指摘もあります。このため、結果をそのまま日本に適応することはできません。日本においても、看護師の専門性が医療経済に与える影響を、国内のシステムに即した形で具体的に評価し、その真の価値を引き出す戦略が必要不可欠だと考えます。論文はこちらBarcenas-Villegas D, et al. J Nurs Manag. 2025:3332688.

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日本の実臨床におけるフレマネズマブの2年間にわたる有効性と忍容性

 獨協医科大学の鈴木 紫布氏らは、日本の実臨床におけるフレマネズマブの2年間にわたる長期的な有効性と忍容性を明らかにするため、レトロスペクティブ観察単施設コホート研究を実施した。Neurological Research and Practice誌2025年6月3日号の報告。 対象は、フレマネズマブ治療を行った反復性片頭痛(EM)または慢性片頭痛(CM)患者165例。主要エンドポイントは、ベースラインから1〜24ヵ月までの1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)の変化量とした。副次的エンドポイントは、片頭痛評価尺度(MIDAS)スコアの変化量、有害事象、治療反応率、治療反応予測因子、治療継続率。 主な結果は以下のとおり。・コホート全体におけるベースラインからのMMDスコアの変化量は、3ヵ月で−7.2±4.7日、6ヵ月で−8.1±6.3日、12ヵ月で−8.4±5.1日、24ヵ月で−9.6±6.0日であった(p<0.001)。・50%以上の治療反応率は、3ヵ月で57.0%、6ヵ月で63.6%、12ヵ月で63.5%、24ヵ月で69.0%。・全体、EM群、CM群のいずれにおいても、MIDASスコアの有意な低下が認められた。・月1回投与群と四半期ごとの投与群との間に、有効性の有意な差は認められなかった。・有害事象は13.3%の患者で発現(主に注射部位反応)、副作用のために治療を中止した患者は2.4%であった。・治療反応不十分患者、早期治療反応患者、超遅発的治療反応患者との間で、精神疾患合併、薬物乱用性頭痛、脈動性頭痛などの臨床背景の違いが認められた。・治療継続率は12ヵ月で73.5%、18ヵ月で65.4%、24ヵ月で58.0%であり、四半期ごとの投与群のほうが月1回投与群よりも治療継続率が高かった(p<0.001)。 著者らは「日本の実臨床において、フレマネズマブは、長期的な片頭痛予防に有効であり、忍容性も良好である」と結論付けている。

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PPI・NSAIDs・スタチン、顕微鏡的大腸炎を誘発するか?

 顕微鏡的大腸炎は、高齢者における慢性下痢の主な原因の1つであり、これまでプロトンポンプ阻害薬(PPI)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、スタチンなどの一般的に用いられる薬剤との関連が指摘されてきた。しかし、スウェーデンで実施された全国調査の結果、これらの薬剤のほとんどは顕微鏡的大腸炎のリスクを増加させない可能性が示唆された。本研究は、Hamed Khalili氏(米国・マサチューセッツ総合病院)らの研究グループによって実施され、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2025年7月1日号で報告された。 研究グループは、スウェーデンの65歳以上の住民280万例超の処方、診断、生検データなどを用いて本研究を実施した。本研究ではtarget trial emulationのデザインを用いて、顕微鏡的大腸炎との関連が指摘されているPPI、NSAIDs、SSRI、スタチン、ACE阻害薬、ARBの各使用群と非使用または代替薬使用群を比較した。主要評価項目は12ヵ月、24ヵ月時点における顕微鏡的大腸炎の累積発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・すべての群において、12ヵ月、24ヵ月時点の顕微鏡的大腸炎の累積発症率は0.5%未満であった。・PPI(vs.非使用)、NSAIDs(vs.非使用)、スタチン(vs.非使用)、ACE阻害薬(vs.カルシウム拮抗薬)、ARB(vs.カルシウム拮抗薬)の使用は、顕微鏡的大腸炎の発症リスクを上昇させなかった。・12ヵ月時点における顕微鏡的大腸炎の発症リスクは、SSRI群がミルタザピン群と比較してわずかに高かった(リスク差:0.04%、95%信頼区間:0.03~0.05)。ただし、SSRI群は大腸内視鏡検査の施行率が高く、サーベイランスバイアスの可能性が示唆された。 本研究結果について、著者らは「顕微鏡的大腸炎の引き金となることが疑われてきた薬剤の大半について、因果関係を示すエビデンスは得られなかった」と述べている。

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呼吸機能のピークは何歳?

 呼吸機能は健康の重要な指標であるが、生涯を通じた呼吸機能の経過に関する知見は、年齢範囲が断片的なデータに基づいている。そこで、スペイン・バルセロナ国際保健研究所のJudith Garcia-Aymerich氏らの研究グループは、複数の大規模コホート研究のデータを統合し、4~80歳の呼吸機能の経過を解析した。その結果、1秒量(FEV1)および努力肺活量(FVC)は2段階の増加を示し、20代前半でピークに達した後、プラトーになることなく、ただちに低下し始めることが示された。また、1秒率(FEV1/FVC)は4歳から生涯を通じて低下し続けた。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌2025年7月号に掲載された。 本研究は、欧州とオーストラリアの一般住民を対象としたコホート研究8件のデータを統合した加速コホート研究である。呼吸機能、喫煙状況、BMI、喘息診断に関する2回以上の記録がある3万438例(女性1万5,703例、男性1万4,735例)を対象として、4~80歳のFEV1、FVC、FEV1/FVCの経過を調べた。 主な結果は以下のとおり。・FEV1とFVCはいずれも2段階の増加を示し、女性は20歳、男性は23歳でピークに達した。男女別のまとめは以下のとおり。【FEV1】女性:13歳まで234mL/年、その後20歳でピークに達するまで99mL/年の速さで増加し、以降は26mL/年の速さで低下した。男性:16歳まで271mL/年、その後23歳でピークに達するまで108mL/年の速さで増加し、以降は38mL/年の速さで低下した。【FVC】女性:14歳まで232mL/年、その後20歳でピークに達するまで77mL/年の速さで増加し、以降は26mL/年の速さで低下した。男性:16歳まで326mL/年、その後23歳でピークに達するまで156mL/年の速さで増加し、以降は42歳まで22mL/年、その後は36mL/年の速さで低下した。【FEV1/FVC】FEV1/FVC比は、男女共に4歳から生涯を通じて低下した。 ・喘息が持続している集団は、喘息歴のない集団と比較して、男女共にFEV1のピークが早期化した(女性:17歳vs.20歳、男性:19歳vs.23歳)。また、喘息が持続している集団は成人期を通じてFEV1が低く、生涯にわたりFEV1/FVCが低かった。喘息が持続している集団におけるFVCのピークの早期化は、女性のみで観察された(18歳vs.25歳)。・喫煙を継続する集団は、喫煙歴のない集団と比較して、男女共に30代半ば~後半からFEV1およびFEV1/FVCの低下が加速した。

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GLP-1/アミリン受容体作動薬amycretin、良好な安全性と忍容性、減量効果も/Lancet

 過体重または肥満の治療において、新規単分子GLP-1受容体/アミリン受容体作動薬amycretinは、安全な投与が可能で高い忍容性を有し、プラセボと比較して用量依存性に良好な体重減少効果をもたらす可能性があることが、デンマーク・Novo Nordisk A/SのAgnes Gasiorek氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年6月21日号で報告された。米国の単施設の無作為化プラセボ対照第I相試験 研究グループは、成人の過体重または肥満の治療におけるamycretinの安全性、忍容性、薬物動態特性、薬力学的効果の評価を目的に、米国の単施設においてヒトで初めての二重盲検無作為化プラセボ対照第I相試験を行った(Novo Nordisk A/Sの助成を受けた)。 本試験は4つのパート(パートA~D)で構成され、対象は年齢18~55歳の男女(妊娠可能女性を含む)で、パートAとBはBMI値25.0~34.9、パートCとDはBMI値27.0~39.9とした。 パートAは単回投与であり、6つの段階に用量を漸増した経口amycretin(1、3、6、12、18[12+6]、25mg)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた(各用量群6例ずつ、プラセボ群12例、合計48例)。パートBは複数回投与であり、3つの段階に用量を漸増した経口amycretin(3、6、12mg)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた(各用量群9例ずつ、プラセボ群9例、合計36例)。パートC/Dでは、3つの用量漸増投与法(パートC1:3mgから50mgまで、パートC2:6mgから2×50mgまで、パートD:3mgから2×25mgまで)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた(C1、C2、D群は16例ずつ、プラセボ群12例、合計60例)。 主要エンドポイントは、1日目(ベースライン)の投与開始前から試験終了時の受診日(パートA:22日目、パートB:31日目、パートC/D:105日目)までの試験治療下で発現した有害事象(TEAE)の件数とした。TEAEは62%に、消化器症状が多い 2022年5月~2024年1月に144例(内訳は上記)を登録した。パートA~Dの全体で、TEAEは89例(62%)に364件発現した。内訳は、パートAが22例(46%)に53件、パートBが20例(56%)に69件、パートC/Dが47例(78%)に242件であった。TEAEの重症度はすべて軽度~中等度で、用量依存性に頻度が高くなった。 最も頻度の高いTEAEは消化器関連(364件のうち180件[49%])で、89例中72例(81%)に発現した。主な症状は悪心と嘔吐で、食欲減退もみられた。死亡の報告はなかった。また、amycretinの血漿濃度は、すべての治療群で用量比例性(dose proportionality)を示した。パートC/Dの全用量で、良好な体重減少 パートBでは、1日目から11日目に、プラセボ群と比較してすべてのamycretin群で大きな体重減少を認めた。パートC/Dでは、85日目の時点で、プラセボ群に比べすべてのamycretin群で優れた体重減少を確認した(体重の変化量のプラセボ群との差:amycretin 50mg群-9.2%[95%信頼区間[CI]:-12.0~-6.5]、同2×50mg群-11.8%[-14.6~-9.0]、同2×25mg群-11.1%[-13.8~-8.3])。 また、パートC/Dでは、85日目の時点でBMI値、ウエスト周囲長、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値、空腹時血漿グルコース値のいずれもが、プラセボ群に比べてすべてのamycretin群で改善した。 著者は、「このヒトで初めての第I相試験の結果は、amycretinの体重減少効果の特性に関して、さらに調査を進めることを支持するものである」としている。

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自転車に乗ることは認知症リスク低下と関連

 移動手段として定期的に自転車に乗ることは、あらゆる原因による認知症(以下、認知症)リスクの低下と関連することが新たな研究で明らかになった。自転車の利用は、記憶に関わる脳領域である海馬の体積が有意に大きいこととも関連していたという。華中科技大学(中国)同済医学院のLiangkai Chen氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月9日掲載された。 Chen氏らは、2006年3月13日から2010年10月1日までの間に収集されたUKバイオバンクのデータを用いて、移動手段と認知症リスクや脳構造との関連を検討した。対象者の総計は47万9,723人で、平均年齢は56.5歳、女性が54.4%を占めていた。参加者の移動手段は、「通勤・通学を除き、過去4週間において最もよく利用した移動手段は何ですか」という質問により調査されていた。その回答に基づき、1)車や公共交通機関などの非活動的移動手段を利用、2)徒歩、3)徒歩と非活動的な移動手段を併用、4)自転車単独および自転車と他の移動手段を併用、の4群に分類された。主要評価項目は、認知症の発症(若年性認知症と遅発性認知症を含む)、副次評価項目は、アルツハイマー病などの認知症のサブタイプや、MRIで評価された脳構造などであった。 中央値13.1年の追跡期間中に8,845人(1.8%)が認知症を発症しており、このうち3,956人(0.8%)がアルツハイマー病だった。解析の結果、自転車単独および自転車と他の移動手段を併用していた群では非活動的移動手段を利用していた群と比べて認知症リスクが19%(調整ハザード比0.81、95%信頼区間0.73〜0.91)、アルツハイマー病リスクが22%(同0.78、0.66〜0.92)、有意に低下していた。一方、徒歩で移動していた群ではアルツハイマー病リスクがわずかに上昇していた(同1.14、1.01〜1.29)。 研究グループは、「この結果は、活動的な移動手段、特に自転車の利用の促進が中高年の認知症リスクの低下につながる可能性があることを示唆している。認知機能の維持のために利用しやすく持続も容易な習慣を奨励することで、公衆衛生に大きなベネフィットがもたらされる可能性がある」と述べている。 ただし、自転車利用と認知症リスクの関連には、遺伝的素因(APOE ε4)保有の有無が影響することも示された。具体的には、自転車単独および自転車と他の移動手段を併用していた群の中でAPOE ε4を持たない人では認知症リスクが26%、遅発性認知症リスクが25%有意に低下していたが、APOE ε4を持つ人では、リスク低下は統計的に有意ではなかった。 さらに、脳のMRIスキャンデータが利用可能だった4万4,801人を対象に、移動手段と脳構造との関連を調べた結果、自転車の利用は海馬の体積が大きいことと関連していることが明らかになった。このほか、興味深いことに、車の運転は公共交通機関の利用と比べて、認知症に対してある程度の予防効果があることも示唆された。 本研究をレビューした米ノースウェル・ヘルス老年医療サービス部長のLiron Sinvani氏は、「自転車に乗ることは中等度から高強度の運動であり、バランス感覚も必要だ。ウォーキングよりも複雑な脳機能を必要とするため、認知症リスクの低減効果が高いと考えられる」と述べている。同氏はさらに、「単に、運動を習慣化すればいいわけではなく、どう生活するかを考えることが大切だ。つまり、どこかへ出かける際には車ではなく自転車を使うというように、活動的な移動手段をライフスタイルの一部として取り入れることが非常に重要になる」と述べている。 ただしこの研究は観察研究であり、自転車の利用と健康的な脳の老化の因果関係が明らかにされたわけではない。それでもSinvani氏は、「認知症のリスクを減らすための方法について患者や家族、友人から尋ねられるたびに、私は、『外に出て何かをするべきだ』と伝えている。身体活動だけでなく、バランス感覚を維持し、脳のさまざまな部分を活性化させることが大切だ」と話している。

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健康的な食事は体重が減らなくても心臓を守る

 健康的な食生活に改めたのに体重が減らないからといって、イライラする必要はないかもしれない。体重は変わらなくても、健康的な食生活により心臓の健康には良い影響を期待できることを示唆する研究結果が、「European Journal of Preventive Cardiology」に6月5日掲載された。 この研究は、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のAnat Yaskolka Meir氏らの研究によるもの。論文の筆頭著者である同氏は、「健康のために減量が欠かせないとわれわれは刷り込まれてきており、体重を減らせない人に負の烙印を貼ってしまいがちだ。しかし今回の研究は、食生活を改めることで、たとえ体重が減らなくても代謝が改善し将来の健康リスクを下げられることを示しており、これまでの捉え方を根本から変えるものだ」と述べている。 Meir氏らは、研究期間が18~24カ月に及ぶ3件の大規模な生活習慣介入研究のデータを統合して、食生活改善が体重や心臓の健康に影響を及ぼす検査値の変化を検討した。解析対象者は合計761人で、平均年齢は50.4歳、男性89%、介入前のBMIは30.1だった。研究参加者は、低脂肪食、低炭水化物食、地中海食などの食事スタイルにランダムに割り付けされていた。 介入前後での体重の変化は全体で-3.3kg(-3.5%)であり、-5%以上の体重減を達成した「減量成功群」が36%、体重が減らなかった(または増加した)「減量抵抗群」が28%、そして変化率-5~0%の群が36%だった。減量成功群は、心臓の健康に関する検査値も3群の中で最も大きく改善していた。しかし減量抵抗群であっても、内臓脂肪面積は有意に低下し(-7.15cm2、P<0.001)、HDL-C(善玉コレステロール)は有意に上昇(+1.16mg/dL、P=0.008)。また、脂肪細胞から分泌される食欲に関連するホルモンであるレプチンにも、有意な影響が認められた。 Meir氏は、「解析結果は介入による代謝の大きな変化を表しており、このような変化は心臓の健康に影響を及ぼし得る。つまり、体重が減らなくても、健康的な食生活には効果があることが示された」と述べている。 一方、この研究では、5%以上の減量達成に関連のあるDNAメチル化部位(遺伝子発現に関わる可能性のある部位)が12カ所特定された。この点について、論文の上席著者である同大学院のIris Shai氏は、「この発見は、同じ食生活を送っていても異なる反応を示す生物学的素因を持つ人がいる可能性を示している」と解説。そして、「減量に成功するか否かは、単に意志の力や自制心の問題ではなく生物学の問題と言え、われわれは今、その理解に近づきつつある」と付け加えている。

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HPVの自己採取検査の郵送は検診受診率を高める

 女性にヒトパピローマウイルス(HPV)感染の有無を調べるために、検体を自分で採取する自宅用検査を郵送で提供したところ、電話のみで検診を促す場合と比べて、子宮頸がん検診の受診率が2倍以上に増加したことが新たな研究で示された。論文の筆頭著者である米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJane Montealegre氏は、「本研究結果は、自宅用検査が子宮頸がん検診へのアクセスを向上させ、ひいては米国における子宮頸がんの負担を軽減する解決策となる可能性を示している」と述べている。この研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に6月6日掲載された。 子宮頸がんは、ほぼ全てがHPVによって引き起こされる。本論文の付随論評によると、米国では毎年約1万1,500人の女性が子宮頸がんと診断されている。その半数以上は、HPV検査を受けたことがないか、まれにしか受けていないという。クリニックでの子宮頸がん検診はほとんどの場合、骨盤の内診により行われるが、一部の女性はこの手法に不快感やストレスを感じる可能性があると論評は指摘している。また、検査を受けるための時間を確保し、クリニックまで行く方法を見つける必要もある。 HPVワクチン接種と医療機関での検診の普及によって子宮頸がんの罹患率は大幅に低下したものの、人種や地域、所得による格差は根強く残っている。2025年5月、米食品医薬品局(FDA)は、子宮頸がんの初の自宅用検査を承認した。今回の研究は、この検査がリアルワールドでどのように機能するかを調べる目的で実施された。対象は、米ヒューストン地域在住の30〜65歳の女性2,474人(平均年齢49歳)で、そのほとんど(94%)は人種・民族的マイノリティに属していた。研究グループはこれらの女性を、1)医療機関での子宮頸がん検診受診を促す電話をかける、2)電話に加え自宅用検査キットを郵送する、3)電話と検査キットの郵送に加え、キットが返送されない場合にフォローアップの電話をかける、のいずれかの群にランダムに割り付けた。 ランダム化から6カ月後での子宮頸がん検診の受診率は、電話のみの群では17.4%(144/828人)であったのに対し、電話+キット郵送の群では41.1%(340/828人)、電話+キット郵送+フォローアップ電話の群では46.6%(381/818人)であったことが明らかになった。受診率は、電話のみを受けた群に比べて、電話+キット郵送の群では2.36倍、電話+キット郵送+フォローアップ電話の群では2.68倍高かった。 検査キットを郵送され検診を受けた女性のうち、84.6%(609/721人)が自己採取した検体を返送していた。それらの女性の13.8%(84/609人)は高リスク型HPV検査で陽性反応を示し、追加検査が必要になった。 Montealegre氏は、「米国で自宅用HPV検査が利用可能になるにつれ、それをどのように展開していくかの指針となるデータを集めることが極めて重要になる」と述べ、医療を受ける障壁が最も高い人々をケアする診療所や医療センターでこの検査を利用できるようにすることの重要性を強調している。 研究グループは今後、さまざまなプライマリケアの現場にこの検査をどのように統合するかを検討する予定だ。付随論評を執筆した米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のEve Rittenberg氏は、「自宅用HPV検査の目下の課題は、臨床の現場で安全かつ効果的に導入するための方法だ。特に、異常な結果が出た場合に、臨床医と医療制度がどうすれば適切なタイミングでフォローアップ検査と治療を提供できるかについては明確になっていない」と述べている。

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がんサバイバーの脳卒中・心血管死リスク、大規模コホート研究で明らかに

 がんと診断された人(がんサバイバー)は、そうでない人と比較して心血管系疾患(CVD)を発症するリスクが高いことが報告されている。今回、がんサバイバーの虚血性心疾患・脳卒中による死亡リスクは、一般集団と比較して高いとする研究結果が報告された。大阪大学大学院医学系研究科神経内科学講座の権泰史氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association;JAHA」に5月15日掲載された。 近年、医療の進歩により、がん患者の生存率は大幅に向上している。しかし、その一方で、CVDが新たながんサバイバーの懸念事項として浮上している。CVDはがんサバイバーでがんに次ぐ死因であることが明らかになっており、疫学研究では、CVDによる死亡リスクが一般集団の約2倍であることも報告されている。従来の研究では、CVD全体による死亡リスクが調査されてきたが、特定のCVDに焦点を当てた研究は限られていた。そのような背景を踏まえ、筆者らは「全国がん登録(NCR)」データベースを用いて、国内のがん患者におけるCVDによる死亡リスクを調査するコホート研究を実施した。CVD全体のリスク評価に加え、虚血性心疾患、心不全、大動脈解離・大動脈瘤、虚血性脳卒中、出血性脳卒中といった特定のCVDについても解析を行った。 解析対象は、NCRデータベースに含まれる、2016年1月~2019年12月の間にがんと診断された患者とした。対象者の死因は、国際疾病分類第10版(ICD-10)に基づき、死亡診断書に記載された情報からNCRに登録されたコードを用いて特定された。がん患者と一般集団のCVD死亡リスクを比較するため、標準化死亡比(SMR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。また、特定のCVDにおいてもがん種ごとのSMRを算出した。 本研究には397万2,603人(うち女性は45.8%)の患者が含まれ、621万2,672人年の追跡調査が行われた。CVDのSMRは2.39(95%CI 2.37~2.41)で、がん患者は一般人口集団と比較してCVD死亡リスクが2.39倍高かった。SMRは男性より女性で高くなっていた。CVD死亡リスクをがん種別にみると、全てのがん種でSMRが1.0を超えて上昇していた。SMRは非リンパ系造血器悪性腫瘍が最も高く(4.32〔95%CI 4.15~4.50〕)、前立腺がんが最も低かった(1.52〔95%CI 1.48~1.57〕)。 次にがん種ごとに特定のCVDのSMRを調べた。その結果、特定のCVDのSMRはがん種によって異なることが明らかになった。虚血性心疾患と心不全では非リンパ系造血器悪性腫瘍のSMRが最も高かった(それぞれ3.15〔95%CI 2.87~3.45〕、7.65〔95%CI 7.07~8.27〕)。虚血性脳卒中、大動脈解離・大動脈瘤、出血性脳卒中ではそれぞれ膵臓がん(5.39〔95%CI 4.79~6.05〕)、喉頭がん(3.31〔95%CI 2.29~4.79〕)、肝がん(3.75〔95%CI 3.36~4.18〕)のSMRが最も高くなっていた。 本研究の結果について著者らは、「がん患者はCVDによる死亡リスクが高く、非リンパ系造血器悪性腫瘍ではその傾向が顕著だった。また、死亡リスクは、がんの種類やCVDの種類によって大きく異なることが明らかになった。特定のがん種と心血管疾患関連の死亡率との関連性を理解することは、高リスク集団を特定し、がんサバイバーに対する長期的な管理戦略の策定に役立つだろう」と述べている。 本研究の限界点については、NCRに記載のICD-10コードはまれに不正確であること、本研究が観察研究であり、がんとCVDの因果関係を確立するできないこと、などを挙げている。

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高齢者の皮膚外用薬、「機械的な後発品への変更」はどう避ける?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第155回

日本老年薬学会より、高齢者における皮膚外用薬の調剤に対して、薬剤師の貢献すべき役割について声明が出されました。<高齢者における皮膚外用剤の調剤に対する日本老年薬学会からの声明>長期収載品の選定療養制度下、とりわけ高齢者に対する調剤時には、これまで以上に患者や介助者・介護者から患者背景や薬剤の効果、安全性および品質に関する情報を聴取した上で、適宜、調剤時に「医療上の必要性」を薬剤師自ら判断する必要がある。先発医薬品と後発医薬品間の治療学的差異が否定できない場合があることを踏まえると、効果と安全性を確保するためには機械的な後発品への変更は避けるべきであると考えられる。(2025年6月24日 日本老年薬学会)いわゆる「長期収載品の選定療養」が2024年10月から始まり、10ヵ月が経ちました。特段必要性が認められない場合に後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)を選ぶと、後発医薬品との差額の4分の1相当を徴収するという仕組みは、多くの人が後発医薬品を選択する事態につながり、ここにきて各所に波紋を広げています。とくに高齢者において、この制度自体や先発医薬品から後発医薬品への変更、また後発医薬品間での変更などについて、説明内容を理解・認識しにくいことが課題となっているとのことです。この声明では、具体的に、以下についても述べられています。1.効果、安全性および品質に関わる患者からの情報が「医療上の必要性2(副作用、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、治療効果に差があったと医師が判断する場合)」や「医療上の必要性4(剤形上の違いにより必要と判断する場合)」に該当する可能性があり、先発医薬品から後発医薬品への初回切り替え時だけではなく、切り替え後の調剤時においても患者から十分な情報を聴取する必要がある。2.適宜、医療機関への疑義照会を行い、医師や他の医療従事者と連携して患者にとって最適な治療を提供する必要がある。また、配合変化結果などを基に薬剤師自らが「医療上の必要性4(剤形上の違いにより必要と判断する場合)」を判断する必要がある。3.介助者や介護者など患者のキーパーソンを通じた服薬指導や患者フォローアップが必要な高齢者への調剤では、キーパーソンからの幅広い情報聴取を踏まえた「医療上の必要性2副作用、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、治療効果に差があったと医師が判断する場合)」の判断が必要である。4.皮膚外用剤において、臨床試験などで効果や安全性が評価されていない後発医薬品への切り替えは慎重にならざるを得ないと考える。4つ目にようやく皮膚外用薬についての文言が出てきましたが、これは2025年3月に「局所皮膚適用製剤の後発医薬品のための生物学的同等性試験ガイドライン」が一部改正され、異なる剤形区分または同じ剤形区分で基剤の性状が異なる製剤間の生物学的同等性評価において、皮膚薬物動態学的試験ではなく患者を対象に、薬理効果または臨床効果を指標とした臨床試験の実施を検討する必要があることが示されました。しかしながら、後発医薬品において、開発段階でそのような試験を行う品目は少なく、実際この声明を受けたところでそのような後発医薬品を採用する難しさも感じます。この声明の中で言われていることは重要なことである気はするものの、残念ながらこの声明には具体的な事例がなく、「高齢者の製剤変更にもうちょっと配慮して」というふわっとした感じしか伝わってこないのは私だけでしょうか。ただ、「機械的な後発品への変更」と言われてしまうとよい気持ちはしないですし、目の前の患者さんが製剤の変更に耐えうる能力および生活を確保しているかどうか、少し変更の手順を見直してみたり、立ち止まって考えてみたりしてもよいかもしれません。この声明について、今後、何らかの形で具体的な事例が発表されていくことを望みます。

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生存時間分析 その2【「実践的」臨床研究入門】第56回

Cox比例ハザード回帰モデルの基本的な考え方 その2前回は、生存時間分析における基本的な概念である「ハザード」と「ハザード比」、また「比例ハザード性」の前提について説明しました。今回からは、筆者らが出版した実際の臨床研究論文1)のリサーチ・クエスチョン(RQ)に沿って、Cox比例ハザード回帰モデルの考え方を解説します。われわれは、以下のクリニカル・クエスチョン(CQ)とRQ(PECO)を立案しました。CQ:透析導入前腎専門医診療は透析導入後早期の予後を改善するか?P(対象):新規透析導入患者E(要因):透析導入前腎専門医診療ありC(対照):透析導入前腎専門医診療なしO(アウトカム):透析導入後早期(1年以内)の死亡このRQの背景を簡単に説明します。筆者は、初期研修以降「都市型」地域中核病院の腎臓内科に長らく勤務しておりました。そこでは腎臓/透析専門医が多く在籍し他科連携も良く、早期からの腎専門医診療は当たり前の環境で育ちました。米国留学直後、医局人事により地方型地域中核病院にいわゆる「ひとり医長」として赴任し、腎臓/透析専門医診療へのアクセス格差を実感しました。このような実体験に基づき、「透析導入前腎専門医診療は透析導入後早期の予後に影響するのでは?」というCQを着想したという訳です。それでは、透析導入前腎専門医診療を受けた群と受けなかった群の比較を考えたときに、透析導入後1年以内の早期死亡のハザード(瞬間的なイベント発生率)はどのような変数に影響されるかを考えてみます。まず、透析導入前腎専門医診療を受けたか否か、という変数です。次に考慮すべき変数は時間です。前回説明したとおり、ハザードは時々刻々と変化することが予想されるからです。実際、このRQで設定した透析導入後1年以内の早期死亡のハザードは、透析導入後半年以内という前半で高く、半年以降の後半は低くなることが先行研究で知られています。そして、透析導入後1年以内の早期死亡のハザードは、透析導入前腎専門医診療の有無という変数と時間という変数の積(かけ算)モデルで規定できる、とします。この関連性を、以下の数式で表します。h(t|X)=h0(t)×exp(b×X)もし、透析導入前の腎専門医診療が「あり」ならX=1、「なし」ならX=0となります。それぞれの群の変化するハザードは、時間の効果である基準ハザード関数h0(t)と、透析導入前腎専門医診療の効果であるexp(b×X)の積で決まるということです。データからbという回帰係数を推定することになりますが、これは統計解析ソフトが計算してくれます。この数式から、透析導入前腎専門医診療あり群のハザード、腎専門医診療なし群のハザードはそれぞれ以下に示したようになります。透析導入前腎専門医診療あり群のハザードh(t|1)=h0(t)×exp(b×1)=h0(t)×exp(b)透析導入前腎専門医診療なし群のハザードh(t|0)=h0(t)×exp(b×0)=h0(t)よって透析導入前腎専門医診療あり群となし群のハザード比はh(t|1)/h(t,0)=h0(t)×exp(b)/h0(t)=exp(b)つまり、ハザード比はexp(b)となります。ところで、透析導入前腎専門医診療あり群となし群のハザードを示した数式をあらためて眺めてみると、どちらの式にもh0(t)という時間の関数が含まれています。すなわち、いずれも時間の効果の影響を受けていることがわかります。しかし、ハザード比の数式では時間の関数h0(t)が分子と分母で相殺されて消えているので、ハザード比は時間の効果の影響を受けていません。したがって、このハザード比の数式からも、ハザード比が時間によらず一定という比例ハザード性の前提が用いられていることがわかります。このように比例ハザード性の前提が用いられた回帰モデルのことを比例ハザードモデルと呼びますが、開発したCox博士の名前を冠して、Cox比例ハザードモデルやCox回帰モデルとも言います。 1) Hasegawa T et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2009;4:595-602.

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副作用編:下痢(抗がん剤治療中の下痢対応)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第2回

今回は化学療法中によく遭遇する「下痢」についてです。私自身が消化器内科医でもあるので下痢はお手のもの! と言いたい所ですが、下痢は非常に奥が深く、難渋することもあります。このコラム1回分ではとても語り尽くせませんので、抗がん剤治療中に下痢を生じた患者さんが、紹介元であるかかりつけ医を受診した際に有用な下痢の鑑別ポイントや、患者さんへの対応にフォーカスしてお話しします。【症例1】64歳、女性主訴下痢病歴進行胃がん(StageIV)に対して緩和的化学療法を実施中。昨日から水様性下痢が発現し、回数が増えてきた(2→4回)ため、かかりつけ医(クリニック)を受診。診察所見発熱なし、腹部圧痛なし。食事摂取割合は6割程度。内服抗がん剤S-1 120mg/日(Day12)【症例2】80歳、男性主訴尿量減少病歴進行直腸がん術後再発に対して緩和的化学療法を実施中。昨日からストーマ排泄量が増加した。口渇感と尿量減少を自覚し、かかりつけ医(クリニック)を受診。診察所見発熱なし、腹部圧痛なし。食事摂取問題なし。抗がん剤10日前にイリノテカンを含む治療を実施。ステップ1 鑑別と重症度評価は?抗がん剤による下痢は、早発性の下痢と遅発性の下痢に大きく分類できます。早発性の下痢は抗がん剤投与中または投与直後~24時間程度にみられることが多い一方で、遅発性の下痢は投与後数日〜数週間程度でみられることが多いため、鑑別が難しいこともあります。抗がん剤以外の他の要因も含めて押さえておきたいポイントを挙げます。(1)下痢の原因が本当に抗がん剤かどうか確認服用中または直近に投与された抗がん剤の種類と投与日を確認。他の原因(感染性腸炎、食事内容、他の薬剤など)との鑑別。抗がん剤による免疫抑制中は、感染性腸炎の可能性(発熱、血便、白血球減少時の腸炎など)を常に考慮。また、抗がん剤治療中は治療機関(大学病院や高次医療機関)から発熱時に抗菌薬を処方されていることがあり、抗菌薬内服後の場合は、クロストリジオイデス・ディフィシル関連腸炎も鑑別に挙げる。下痢を生じやすい抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など画像を拡大する(2)重症度の評価回数(例:1日5~6回以上)、持続時間、血便、発熱、脱水症状の有無を確認。食事摂取状況や全身状態もチェック。脱水所見(口渇、皮膚乾燥)があれば、経口補水や点滴を検討。高齢者や併存疾患がある患者はより注意が必要。CTCAE ver5.0画像を拡大するステップ2 対応は?では、冒頭の患者さんの対応を考えてみましょう。【症例1】の場合、下痢回数はCTACEという化学療法中の重症度分類でGrade1相当の下痢となります。発熱はなく、食事摂取も減少しているものの経口補液も可能でした。症状としては軽度であり、感染性腸炎を疑う現病歴がなければ、治療機関から下痢時の対応薬(ロペラミド)などが処方されている場合は内服を勧めてもよいと思います。このケースでは、受診時に輸液を実施し、抗がん剤の内服中止と治療機関への連絡(抗がん剤再開時期や副作用報告)、経口補水液の摂取を説明して帰宅としました。【症例2】の場合、患者申告ではCTACEでGrade1相当の下痢で食事摂取も問題ありませんが、口渇や尿量減少から高度の脱水が示唆される所見です。直ちに治療機関への連絡を行い、入院加療となりました。ストーマ排泄量は患者さん自身では把握が難しい場合もあるため、脱水所見の有無やストーマ排泄量*の確認が重要です。*ストーマから1日2,000mL以上排泄される場合、排液過多とみなす。抗がん剤治療中の下痢対応フロー画像を拡大する内服抗がん剤を中止してよいか?診察時に患者さんより「抗がん剤を継続したほうがよいか?」と相談を受けた場合、基本的に内服を中止しても問題ありません。当院でも、「食事が半分以上食べられない場合や下痢が5回以上続く場合は、その日はお休みして大丈夫です」と説明しています。抗がん剤の再開については受診翌日に治療機関へ問い合わせるよう、患者さんへ説明いただけますと助かります。下痢に対して輸液や整腸剤を投与してもよいか?軽度の下痢であれば、輸液や整腸剤の支持的な治療を行っていただいて問題ありません。軽度の下痢のみでも長期に続く場合や、十分な食事を数日間摂取できていない場合は電解質異常を来している可能性もあるため、治療機関へご紹介ください。また、クリニックで輸液を実施しても翌日も症状が改善しない場合は治療機関への受診を勧めてください。なお、イリノテカンによる遅発性下痢の場合は整腸剤による増悪やロペラミド高用量療法が必要なこともあるため、主治医への確認が望ましいです。下痢だと思ったら腸閉塞寸前!?婦人科がんや胃がんの腹膜播種症例、直腸がん症例の中には骨盤底部の播種病変の増悪や原発狭窄により直腸狭窄を来し、少量の下痢が持続することがあります。患者さんからの「下痢が多い」という訴えをよく確認すると、「少量の下痢」が「1日に十数回あり、制御できない」という症状で、腸閉塞の一歩手前であったという症例を時折経験します。狭窄した腸管の脇から漏れ出るようにしか水様便が排出されないために起こる症状です。もし、そのような患者さんがいればすぐに治療機関へ相談してください。画像を拡大する<奥深い下痢>先日、下痢で難渋した患者さんの話です。免疫チェックポイント阻害薬を使用していた患者さんで、免疫関連有害事象で1型糖尿病と甲状腺機能低下症になってしまい、緊急入院となりました。さまざまな内分泌補充療法を実施して何とか退院したものの、今度は下痢で再入院…。短絡的に「まさか大腸炎も併発したのか!?」と思い、下部内視鏡検査や各種検査を実施してもまったく問題ありません。入院後は速やかに改善したので退院しましたが、数日経つと「下痢が治らない。食べたらすぐに下痢をする」と言って来院しました。結局、同期の大腸エキスパート医師に泣きついて診察してもらうと、CT検査で経時的に萎縮していた膵臓に目をつけ、「免疫関連有害事象からの膵萎縮に伴う膵酵素分泌低下に伴う下痢」と診断してくれました。早い話が慢性膵炎の下痢のようなものです。慢性膵炎に準ずる治療で下痢はすぐに改善し、今も元気に通院治療されています。免疫関連有害事象に伴う新たな下痢のカタチかも知れず、下痢はやはり奥が深いと実感した最近の一例でした。1)日本治療学会編. 制吐薬適正使用ガイドライン 2023年10月改訂 第3版. 金原出版;2023.2)Lafferty FW. J Bone Miner Res. 1991;6:S51-59.3)Ratcliffe WA, et al. Lancet. 1992;339:164-167.4)Stewart AF. N Engl J Med. 2005;352:373-379.5)NCCN Guidelines:Palliative Care(Version 2. 2025)

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がん治療に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント 第2版

がん治療の完遂と患者さんのQOL向上に役立つ皮膚障害アトラス近年のがん治療ではさまざまな作用機序の薬剤を使用するため、その副作用として生じる皮膚障害も多様化している。皮膚障害への対応の遅れは薬物療法の完遂率低下や患者さんのQOL低下につながる可能性もあり早期の対応が求められる。本書では各治療で生じる皮膚障害を初版と同様にアトラスを用いてわかりやすくまとめるとともに、新たに放射線皮膚炎、感染症、支持療法の副作用についても記載した。予定通りのがん治療の完遂と患者さんのQOL維持・向上のために、臨床現場で役立つ1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するがん治療に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント 第2版定価4,180円(税込)判型B5判頁数256頁(図数:10枚、カラー図数:325枚)発行2025年5月編集日本がんサポーティブケア学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第274回 有毒な難分解性物質PFASを吸収する腸内細菌を発見

有毒な難分解性物質PFASを吸収する腸内細菌を発見妊娠困難、小児の発達遅延、がんや心血管疾患を生じやすくするなどの数々の害と関連し、便利だけれども分解し難くて環境中や体内にずっと居座る厄介な難分解性化学物質・PFAS(ピーファス)を吸収して糞中に排泄しうる腸内細菌を、ケンブリッジ大学の科学者らが発見しました1,2)。ヒトの腸内のそれらの細菌を底上げすることで、PFASの害をやがては防げるようになるかもしれません。人工の化学物質の環境汚染はもはや安全な水準を超えているかもしれません。水や農業システムの広範囲に及ぶ汚染によって数多の環境汚染物質が食物に吸収され、それらを食する人間の体内に入り込んでいます。そういう環境汚染物質の中で永続化学物質(forever chemical)との異名でも知られるPFASはとくに心配です。消火剤の泡、防水服、食材が張り付かない調理器具、口紅、食品包装などの工業や店頭のありとあらゆる製品に使われている4,730種類の化合物がPFASに属し、近代社会に不可欠なものとなっています。PFASが引っ張りだこなのは、炭素-フッ素(C-F)結合の強度に由来する他に類を見ない安定性と強力な親水/疎水性基に由来する界面活性剤様の便利な特徴によります。しかしそれらの特徴は諸刃の剣でもあり、長く分解されずに環境や人体に蓄積して健康を害します。PFASは数日で尿中に放出されるものもありますが、長い分子構造のものは体内に何年も留まる恐れがあります。PFASの健康への負担は莫大なようです。たとえば欧州全域の年間のPFAS絡みの医療費は実に500~800億ユーロにも達すると試算されています。その欧州や米国での血中PFAS検出率は高く、飲水のPFASを抑えることやPFASの使用を制限することが計画されています。しかし世界的な取り組みにはなっていません。環境中に長くとどまるPFASの効率良い除去法はいまのところありませんが、しかしよい兆しもあり、PFAS汚染地で見つかったシュードモナス属の細菌にPFASを収集する能力があることが判明しています3)。また、乳酸菌がPFASと結合してPFASの毒性を緩和しうることも示唆されています4)。それらの先立つ成果を踏まえてケンブリッジ大学のKiran Patil氏らは人体の腸内細菌とPFASの関わりを検討し、PFASを盛んに吸収しうる38の細菌株の発見にこぎ着けました。それらのうちPFASを最も蓄積するいわばエリート細菌株5種類をマウスの腸に導入したところ、糞中のPFAS排泄が増加し、腸の細菌がPFASを蓄積して体外へと排出しうることが裏付けられました。しかしその結果はあくまでも一回きりのPFAS投与の結果であり、次の課題としてPFASの摂取とその血中濃度、尿や糞中への排泄、微生物組成の長期間の推移を検討する必要があります。Patil氏らは体内のPFASを取り除く微生物を開発する企業であるCambiotics社5)を早くも設立し、目当ての微生物の性能を格段に飛躍させる手段を検討しています2)。 参考 1) Lindell AE, et al. Nat Microbiol. 2025;10:1630-1647. 2) Gut microbes could protect us from toxic ‘forever chemicals’ / Eurekalert 3) Presentato A, et al. Microorganisms. 2020;8:92. 4) Chen Q, et al. Environ Int. 2022;166:107388. 5) Cambiotics社ホームページ

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