サイト内検索|page:75

検索結果 合計:33539件 表示位置:1481 - 1500

1481.

多発性骨髄腫の治療継続、医師と患者の認識にギャップ/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は、 2024年11月15日、2024年6月に実施した多発性骨髄腫患者と多発性骨髄腫を診療する医師を対象とする調査の結果を発表した。 調査の結果、半数の患者が、「通院などの身体的負担、治療費による負担、治療が続くことへの精神的な負担などから、治療を途中で休みたいと思ったことがある」と回答した。しかし実際には、患者全体の8割は治療を継続していた。医師の調査でも症状が軽快しても、約7割の患者は治療を継続している実態が示された。 前向きに治療を継続する上で必要なこととして、患者も医師も「主治医から、治療や副作用、治療期間に関する説明が十分にあること」、「主治医に治療や副作用、治療期間に関する不安や疑問などを相談できること」、「患者本人が、病気や治療、医療費制度に関する情報を得ること」を上位3つにあげ、主治医・患者間での対話や患者本人の情報入手が必要であると考えていることが示された。  どのような状況があれば治療を継続しやすくなると思うかとの問いに対し、約5割の医師が「身近で世話をする人(家族など)に、患者が治療や治療期間、副作用などに関する不安や疑問を相談できること」、「身近で世話をする人が病気や治療、医療費制度について情報を入手すること」が必要と回答した。

1482.

血流感染症の抗菌薬治療、7日間vs.14日間/NEJM

 血流感染症の入院患者への抗菌薬治療について、7日間投与は14日間投与に対して非劣性であることが示された。カナダ・トロント大学のNick Daneman氏らBALANCE Investigatorsが、7ヵ国の74施設で実施した医師主導の無作為化非盲検比較試験「BALANCE試験」の結果を報告した。血流感染症は、罹患率と死亡率が高く、早期の適切な抗菌薬治療が重要であるが、治療期間については明確になっていなかった。NEJM誌オンライン版2024年11月20日号掲載の報告。重度の免疫抑制患者等を除く患者を対象、主要アウトカムは90日全死因死亡 研究グループは、血流感染症を発症した入院患者(集中治療室[ICU]の患者を含む)を抗菌薬の短期(7日間)治療群または長期(14日間)治療群に1対1の割合で無作為に割り付け、治療チームの裁量(抗菌薬の選択、投与量、投与経路)により治療を行った。 重度の免疫抑制状態にある(好中球減少症、固形臓器または造血幹細胞移植後の免疫抑制治療を受けている)患者、人工心臓弁または血管内グラフトを有する患者、長期治療を要する感染症(心内膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎、未排膿の膿瘍、未除去の人工物関連感染)、血液培養で一般的な汚染菌(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌など)が陽性、黄色ブドウ球菌またはS. lugdunensis菌血症、真菌血症などの患者は除外した。 主要アウトカムは血流感染症診断から90日以内の全死因死亡で、非劣性マージンは4%ポイントとした。診断後90日以内の全死因死亡率は7日群14.5%、14日群16.1% 2014年10月17日~2023年5月5日に、適格基準を満たした1万3,597例のうち3,608例が無作為化された(7日群1,814例、14日群1,794例)。登録時、1,986例(55.0%)はICUの患者であった。 血流感染症の発症は、市中感染75.4%、病棟内感染13.4%、ICU内感染11.2%であり、感染源は尿路42.2%、腹腔内または肝胆道系18.8%、肺13.0%、血管カテーテル6.3%、皮膚または軟部組織5.2%であった。 血流感染症診断後90日以内の全死因死亡は、7日群で261例(14.5%)、14日群で286例(16.1%)が報告された。群間差は-1.6%ポイント(95.7%信頼区間[CI]:-4.0~0.8)であり、7日群の14日群に対する非劣性が検証された。 7日群の23.1%、14日群の10.7%でプロトコール不順守(割り付けられた日数より2日超短縮または延長して抗菌薬が投与された)が認められたが、プロトコール順守患者のみを対象とした解析(per-protocol解析)においても主要アウトカムの非劣性が示された(群間差:-2.0%ポイント、95%CI:-4.5~0.6)。 これらの結果は、副次アウトカムや事前に規定されたサブグループ解析においても一貫していた。

1483.

高リスク2型DM患者の降圧目標、120mmHg未満vs.140mmHg未満/NEJM

 心血管リスクを有する収縮期血圧(SBP)が高値の2型糖尿病患者において、目標SBPを120mmHg未満とする厳格治療は、140mmHg未満とする標準治療と比較して、主要心血管イベント(MACE)のリスクが低下したことが示された。中国・Shanghai Institute of Endocrine and Metabolic DiseasesのYufang Bi氏らBPROAD Research Groupが、中国の145施設で実施した無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Blood Pressure Control Target in Diabetes:BPROAD試験」の結果を報告した。2型糖尿病患者におけるSBP管理の有効な目標値ははっきりとしていない。NEJM誌オンライン版2024年11月16日号掲載の報告。主要アウトカムは、非致死的脳卒中・心筋梗塞、心不全入院/治療、心血管死の複合 研究グループは、50歳以上の2型糖尿病患者で、SBP高値(降圧薬服用患者130~180mmHg、非服用患者140mmHg以上)および心血管疾患リスクが高い患者を、目標SBPを120mmHg未満とする厳格治療群または140mmHg未満とする標準治療群に無作為に割り付け、最長5年間治療を行った。 主要アウトカムは、MACE(非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞、心不全による入院または治療、または心血管死の複合)とし、欠測の場合は多重代入法を用いて補完し解析した。 2019年2月~2021年12月に、1万2,821例が登録された(厳格治療群6,414例、標準治療群6,407例)。患者背景は、5,803例(45.3%)が女性で、平均(±SD)年齢は63.8±7.5歳であった。MACEの発生頻度は100人年当たり1.65 vs.2.09 平均SBPは、厳格治療群および標準治療群でそれぞれベースラインでの140.0mmHg、140.4mmHgから、1年後は121.6mmHgおよび133.2mmHgに低下した。 追跡期間中央値4.2年において、MACEは厳格治療群で393例(100人年当たり1.65件)、標準治療群で492例(同2.09件)に認められた(ハザード比:0.79、95%信頼区間:0.69~0.90、p<0.001)。 重篤な有害事象の発現率は、厳格治療群36.5%、標準治療群36.3%であり、両群で同等であった。しかし、症候性低血圧および高カリウム血症の発現率は、厳格治療群と標準治療群でそれぞれ0.1% vs.0.1%未満、2.8% vs.2.0%であり、厳格治療群で高頻度に認められた。

1484.

局所進行子宮頸がんに対するペムブロリズマブ+同時化学放射線療法が承認/MSD

 MSDは、2024年11月21日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)が、局所進行子宮頸に対する同時化学放射線療法(CCRT)との併用について、国内製造販売承認事項一部変更の承認取得を発表した。 今回の承認は、未治療の国際産婦人科連合(FIGO)2014進行期分類のIB2~IIB期またはIII~IVA期の局所進行子宮頸がん患者1,060例(日本人90例を含む)を対象とした国際共同第III相試験KEYNOTE-A18試験のデータに基づいたもの。 同試験において、ペムブロリズマブとCCRT(シスプラチン同時併用下での外部照射、およびその後の小線源治療)との併用療法は、プラセボとCCRTとの併用療法と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(OS HR:0.67、95%CI:0.50~0.90、p=0.0040、PFS HR:0.70、95%CI:0.55~0.89、p=0.0020)。 安全性については、安全性解析対象例528例中512例(97.0%)(日本人41例中41例を含む)に副作用が認められた。主な副作用(20%以上)は、貧血317例(60.0%)、悪心304例(57.6%)、下痢268例(50.8%)、白血球数減少173例(32.8%)、好中球数減少156例(29.5%)、嘔吐135例(25.6%)、白血球減少症125例(23.7%)、血小板数減少116例(22.0%)、好中球減少症114例(21.6%)および甲状腺機能低下症112例(21.2%)であった。

1485.

オンラインで受けるバーチャルヨガは腰痛軽減に効果的

 腰痛に関する臨床ガイドラインでは、鎮痛薬を使用する前に理学療法やヨガを試すことが推奨されているが、痛みがひどくてヨガスタジオに通うのが困難な場合もある。こうした中、オンラインでバーチャルヨガを受けても痛みの緩和に有効な可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米クリーブランド・クリニック、ウェルネス・予防医学のRobert Saper氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に11月1日掲載された。 この研究では、中等度の慢性腰痛を抱える18〜64歳の成人140人(平均年齢47.8歳、女性80.7%)を対象に、ライブ配信で実施されるバーチャルヨガ(以下、バーチャルヨガ)クラスへの参加が、慢性腰痛の強度や腰に関連する機能、睡眠の質、鎮痛薬の使用にもたらす効果を検討した。対象者は、バーチャルヨガに参加する群(バーチャルヨガ群、71人)と、同クラスの受講待機群(対照群、69人)にランダムに割り付けられた。バーチャルヨガ群は、腰痛患者を治療するために特別に設計された1回60分のバーチャルヨガプログラムを、インストラクターの指導下で週に1回、12週間受けた。対象者の腰痛の強度は腰痛強度尺度(0〜11点で評価、高スコアほど痛みが強い)で、腰に関連する機能については修正版Roland Morris Disability Questionnaire(RMDQ、23点満点でスコアが高いほど機能が低下している)で評価した。 その結果、バーチャルヨガ群では対照群に比べて、12週間後には腰痛強度の平均スコアが大幅に低下し(−1.5点、95%信頼区間−2.2〜−0.7、P<0.001)、また、腰に関連する機能についても大きく改善したことが明らかになった(RMDQスコアの平均変化量−2.8点、同−4.3〜−1.3、P<0.001)。こうした改善効果は24週間後も維持されていた(腰痛強度の平均スコア−2.3点、同−3.1〜−1.6、P<0.001、RMDQスコア−4.6点、同−6.1〜−3.1、P<0.001)。さらに、バーチャルヨガ群では、12週間後の時点で過去1週間の鎮痛薬の使用量が対照群よりも21.4%少なく、睡眠の質も有意に改善していることが確認された。 論文の筆頭著者である、クリーブランド・クリニックのHallie Tankha氏は、「この研究は、バーチャルヨガが慢性腰痛の軽減に効果のある安全な治療法となり得ることを示している」と同クリニックのニュースリリースの中で述べている。同氏は、「腰痛に対する従来の治療法は、効果が不十分なことが多かった。ヨガは腰痛の管理における包括的なアプローチとなり得る。われわれは今後、この安全で効果的な治療法へのアクセスを増やすよう努めるべきだ」と付言している。

1486.

低温持続灌流はドナー心臓の虚血時間を安全に延長できる(解説:小野稔氏)

 低温浸漬保存(SCS)は脳死ドナーから提供された心臓を保存するゴールドスタンダードであるが、保存時間が4時間を超えると虚血、嫌気性代謝に続く臓器障害を来たし、移植後の合併症や死亡に至る場合がある。肝臓移植においてはXVIVO(XVIVO AB, Sweden)による低温灌流保存(HOPE: hypothermic oxygenated machine perfusion)についての12のメタアナリシスやシステマティックレビューがあり、その安全性と有効性が証明されている。 心臓移植におけるXVIVO装置を用いたHOPEの安全性と有効性を証明するために、欧州8ヵ国の15の心臓移植センターにおいて、多国多施設無作為化オープンラベル試験が実施された。対象は18歳以上の成人心臓移植患者で、いずれかの臓器移植の既往、先天性心疾患、腎不全、脱感作中、LVAD以外の循環補助中の場合には除外された。ドナーについては18~70歳が対象で、心停止後ドナーや再開胸が必要な場合には除外とした。心保存について従来のSCSとHOPEに1:1で割り付けられた。SCS群では各施設のプロトコルで心停止を誘導してアイススラッシュ保存を行った。HOPE群では、300~500mLの血液、抗生剤とインスリンが添加されたXVIVO Heart Solutionで満たされたXVIVO灌流装置を使用した。心臓摘出後に上行大動脈にカニューレを挿入して装置に接続し、大動脈圧20mmHgで8度を維持して灌流(毎分100~200mLに相当)した。 2020年11月から2023年5月までに1,050例がスクリーニングされ、HOPE群には101例、SCS群には103例が割り付けられた。レシピエント(56歳vs.58歳)、ドナー(48歳vs.50歳)共に両群間で背景因子、原疾患、循環補助の状態に差はなかった。ドナー心保存時間はHOPE群のほうが長かった(240分vs.215分)。主要評価項目(心臓関連死、中~高度の左室のグラフト不全、右室のグラフト不全、Grade 2R以上の細胞性拒絶反応を含む複合エンドポイント)はHOPE群19例(19%)、SCS群31例(30%)に見られ、HOPE群のリスク軽減率は44%となったがp値は0.059であった。副次評価項目である移植後グラフト不全単独では、SCS群28%に対してHOPE群11%と有意に少なかった。心臓関連主要有害事象についてはHOPE群18%で、SCS群32%に対して有意に少なかった。心臓関連死については両群間で差は見られなかった。 主要評価項目では有意差はなかったが、HOPE群に見られた44%のリスク軽減は臨床的には意義がある。とくに移植後グラフト不全がHOPE群に有意に少ないことは、遠方からのドナー心の搬送や複雑な手技が必要な心臓移植において、虚血時間等の問題解決につながる可能性がある。

1487.

“しなくてもいいこと”を言う【もったいない患者対応】第18回

“しなくてもいいこと”を言う患者さんに対して指示を出す際に、「〇〇してください」だけでなく、「〇〇しなくてもいいですよ」という指示が必要なケースがあります。軽度外傷の消毒、抗菌薬たとえば、縫合処置のいらないような切り傷や擦り傷など、軽度の外傷で来院した患者さんには、「以前はこういった傷にはイソジン(ヨード液)のような消毒液で消毒していたんですが、いまは消毒が傷の治りを悪くすることがわかっているのでやらないんですよ」といった説明をしておくのが望ましいと考えています。というのも、「傷は消毒しなければならないものだ」と考えている患者さんは多いので、消毒をせず水道水による洗浄だけで対処し、のちに創部感染を起こしたりすると、「消毒してもらえなかったからではないか」と医師に対して不信感を抱くおそれがあるからです。ほかにも、「こうした小さな傷であれば抗生物質(抗菌薬)は不要です。傷が膿んだりしたときには抗生物質を処方しますが、いまの時点では必要ないんですよ」といった説明が必要なのも、同じ理由です。患者さんによっては、過去の経験から「怪我には抗生物質が必要だ」と思い込んでいる方が多いからです。消毒と同様に、創部感染などの合併症を起こした際に問題になるため、あらかじめ説明すべきです。風邪に対する抗菌薬抗菌薬でいえば、風邪も同じです。もし風邪の患者さんから「抗生物質をもらえませんか?」と言われたら、前述のとおり「風邪はほとんどがウイルス感染なので、抗生物質は効かないんですよ。吐き気や下痢、アレルギーなどの副作用のデメリットのほうが大きいので、いまの時点では使用しないほうがいいでしょう」といった説明を返すことができますが、なかにはこうした質問をわざわざせず、心の中で、「抗生物質がもらえると思っていたのにもらえなかった」という不満を抱える患者さんもいるかもしれません。すると、のちに悪化して肺炎などを起こしてから、「あのとき、抗生物質を処方してもらえなかったからこんなことになったのだ」と誤解されるリスクがあるのです。医師が説明する必要がないと思ったことでも、一般的に知られておらず、かつ患者さんが誤解しがちなポイントは、先回りして伝えておくことが大切です。“すべきこと”に比べると“しなくてもいいこと”は、きちんと意識していないと抜け落ちてしまいがちです。十分に注意しましょう。

1488.

lymphoma(リンパ腫)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第16回

言葉の由来“lymphoma”(リンパ腫)という病名は、“lymph”と状態を表す接尾辞の“-oma”が組み合わさってできたものです。“lymph”はラテン語の“lympha”に由来し、これは「澄んだ水」を意味します。一方、“-oma”は「腫瘍」や「増殖」を示す接尾辞です。リンパ系組織に発生する腫瘍であることから、この名前が付けられました。悪性リンパ腫は1832年に英国の医師トーマス・ホジキンがリンパ節腫脹を特徴とした7例の症例を報告したのが最初とされています。当時は“Hodgkin’s disease”(ホジキン病)と呼ばれましたが、科学の進歩と共にリンパ腫の診断と分類が詳細化され、“Hodgkin’s lymphoma”や“non-Hodgkin’s lymphoma”と分類されるようになりました。併せて覚えよう! 周辺単語非ホジキンリンパ腫non-Hodgkin’s lymphoma悪性リンパ腫malignant lymphomaリンパ節腫脹lymphadenopathy脾腫splenomegaly盗汗night sweatsこの病気、英語で説明できますか?Lymphoma is a type of cancer that originates in the lymphatic system, which is part of the body's immune system. Symptoms may include swollen lymph nodes, fever, fatigue, and weight loss. Treatment often involves chemotherapy and radiation therapy.講師紹介

1489.

第240回 3年間で612施設、43.6%も増えた美容外科、背景にはコロナ禍での過酷な長時間労働と「医師であっても人間らしい生活がしたい」という根源的な欲求も

“直美”の時代、もう「白い巨塔」は映像化できないこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先々週からウィークデイのお昼に、フジテレビの地上波でテレビドラマの「白い巨塔」を再放送していたので、何回か観てみました(全21回で11月26日まで放送)。1978年の田宮 二郎版ではなく、2003年に放映された唐沢 寿明版です。唐沢が演じる財前 五郎は、田宮に比べて小柄で、白衣がダブダブなのと演技の迫力が違うのはまあ玉に瑕として、今でも十分に鑑賞に耐え得るドラマだと思いました。田宮 二郎は1978年のフジテレビのドラマ以前に、1966年に映画「白い巨塔」(山本 薩夫監督)でも財前を演じていますが、それについては本連載の「181回 大学病院への“甘さ”感じる文科省『今後の医学教育の在り方に関する検討会』中間取りまとめ、“暴走”する大学病院への歯止めは?」でも書きましたので、興味のある方はそちらをお読みください。さて、唐沢版の「白い巨塔」ですが、2003年放映で医学技術や医療事情も2000年代前半に合わせているはずですが、わずか20年前なのに相当な時代のズレを感じるシーンが散見され、興味深かったです。まず驚くのは財前が助教授室でタバコを吸ってる場面です。義父で産婦人科の財前 又一(西田 敏行が怪演)が財前に高級ライターをプレゼントする場面も違和感があります。また、財前の上司の東 貞蔵教授(石坂 浩二)が「開業医は医学の世界では負け犬だ」と、開業医を強烈にディスる場面も今ではコンプライアンス的にNGかもしれません。さらに言えば、教授回診のシーンに代表される、医学部教授を頂点とする大学医局の厳然たるヒエラルキーの存在自体も、新医師臨床研修制度(2004年スタート)の定着や、今進められている医師の働き方改革などによって、相当希薄になってきてるのではないかと感じます。おそらく、今の医療界を舞台に「白い巨塔」を映像化することは、非現実的ゆえに不可能なのではないかと思います。医局入局などそっちのけで、“直美”(初期研修を終えた後、すぐに美容医療界に進むこと)を選択する医師が急増している今となっては、なおさらです。美容外科、3年間で612施設・43.6%も増え、増加率は全43科目で最も高い数字その美容外科ですが、11月22日に厚生労働省が発表した「医療施設静態調査」の2023年版1)を見ると、数字の上でも最近の急増が明らかとなっています。医療施設静態調査は3年に1度、各年10月1日時点での医療施設を対象に調査するものです。それによれば、美容外科を標榜する診療所は2023年に2,016施設と2020年調査と比較して612施設、43.6%も増えました。増加率は全43科目で最も高く、増加数も2位でした。なお、増加数1位は皮膚科で775施設、3位は内科で604施設、4位は精神科で538施設、5位は糖尿病内科(代謝内科)で451施設、6位は形成外科で324施設でした。形成外科は増加率も高く15.0%でした。ちなみに、減少数の1位は小児科で1,020施設減、2位が消化器内科(胃腸内科)で703施設減、3位が外科で632施設減でした。この調査は複数科を標榜する場合は重複計上となっています。美容外科と併せて標榜する皮膚科や、関連して標榜する形成外科が多くなるのは当然の結果と言えそうです。それにしても、2020年から3年間で美容外科が4割増とは驚くべき数字です。コロナ後の日本における美容外科需要の高まりと、並行しての“直美”トレンドの定着にはいろいろな意味で恐ろしさを感じます。実際、美容医療で起きる医療事故は急増しています。国民生活センターなどに寄せられた美容医療による合併症や施術のトラブルなどの相談件数は、2023年度に約800件と2018年度から約2倍に増えており、大きな社会問題ともなっています。「美容医療の適切な実施に関する検討会」の報告書も公表、年1回定期的な報告を求める仕組みの導入や診療録等への記載を徹底へ医療施設静態調査の結果が公表された11月22日には、厚生労働省の「美容医療の適切な実施に関する検討会」の報告書も公表されています。2024年6月から開催されてきた同検討会では、美容医療の患者や医療機関を対象とした実態調査や関係学会等からヒアリングなどを踏まえて、美容医療が抱えるさまざまな課題と対応策が議論されてきました。同報告書では、具体的な対応策として、「安全管理措置の実施状況等について年1回の頻度で都道府県知事等に対して定期的な報告を求める仕組みの導入」「医師法や保助看法等への違反疑いのある事例に対する保健所等による立入検査や指導のプロセス・法的根拠の明確化」「美容医療に関して必要な内容の診療録等への記載の徹底」「関係学会によるガイドラインの策定」などが提言されました。今後、こうした対応策が講じられることで、美容医療の質や安全対策は向上していくでしょうが、いわゆる“直美”や、ある程度技術が備わってからの美容医療への転身(「逃散」と言えるかもしれません)の傾向自体を止めることはできないでしょう。そこにはもっと深い構造的な問題があるからです。医局から派遣された病院での長時間労働で疲弊し美容医療の世界に11月22付日付でYahoo!ニュースに掲載された、共同通信とYahoo!ニュースによる共同連携企画の記事「『保険診療はもう限界』追い詰められた若手医師、次々に美容整形医へ…残った医師がさらに長時間労働の『悪循環』」は、まさにそうした「逃散」の現状をレポートしており読み応えがありました。同記事には、2010年代はじめに国立大学の医学部に入学、卒業後に外科医局に入った男性医師が、医局から派遣された病院での長時間労働で疲弊し、さらには奨学金返済に追われたことも手伝って適応障害を発症、美容医療の世界に転身した経緯が書かれています。「年収は約2,000万円。以前に比べて大幅に増えた上、十分に休みも取れるようになった」というこの医師の「医師の中には毎日、残業を何時間しても大丈夫という人がいる。敬意は持っています。でも反対に、そんな人でないと医局には残れないです」という言葉からは、お金のためでもあるけれど、「医師であっても人間らしい生活がしたい」という根源的な欲求が、美容医療選択の背景にあることがうかがい知れます。コロナ禍は美容医療のブームのきっかけともなったが、同時に若手医師たちを疲弊させる原因ともなった同様のケースは多そうです。医療関係で働く私の友人の知り合いのある若手医師も、呼吸器内科で後期研修を終えたばかりなのに、美容外科への転身を考えているそうです。友人によれば、その医師は、コロナ禍での過酷な長時間労働に心身共に疲れ切ってしまったのだそうです。結婚して子どもも生まれたのに、一家団欒とは程遠い生活が続くことに疑問を覚え、妻の勧めもあって美容外科への転職の検討に入っているとのことでした。コロナ禍は、国内の美容医療のブームのきっかけになりましたが、同時に若手医師たちを疲弊させる原因にもなっていたわけです。その友人が教えてくれたもう一つの興味深いケースは、自らの開業資金を貯めるための美容医療への一時的就職です。普通の勤務医を続けるよりはラクで、かつ貯金できる金額も多いため、一定期間、美容医療に身を置いてまとまったお金を稼ごうというわけです。一時期、体力のある若者が短期集中で大金を稼ぐため、過酷ではあるけれど高給が保証される配送ドライバーになっていたことがありましたが、若手医師にとって美容医療がそうした位置付けにもなっているわけです。永遠に美容医療の世界で働くわけではないという点では少々“救い”はあるかもしれません。ただ、後期研修も受けていない“直美”の医師がお金を貯め、内科などで開業するのであれば心配です。中学生、高校生には「医者は理数系の就職先の中では負け犬だ」くらいのアピールをして、本当に医学の道に進みたい人材を医学部に厚生労働省は今、年末公表予定の「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」立案の最後の調整に入っています。その対策パッケージには、医師が多い地域での新規開業の抑制や、公立病院長になるのに地方勤務の経験を求める要件の拡大など、規制的な手法も盛り込まれる見込みです(「第233回 40年前の“駆け込み増床”を彷彿とさせる“駆け込み開業”が起こる?診療所が多い地域で新規開業を許可制にする案を厚労省が提起」参照)。しかし、こうしたさまざまな対策をもってしても、「医師であっても人間らしい生活がしたい」という根源的な欲求に応えることは不可能でしょう。そもそも、医療の世界に限らずあらゆる業界において、20~30代の若者の「働くこと」に対する意識は、昭和の時代にモーレツに働いてきた今の管理職の50~60代とは大きく異なっています。昼夜働くことを厭わず、自らの医療技術向上を最優先するような若者はもはや一握りですし、仕事優先で子育て含めて家庭のことは配偶者任せ、というような夫婦も絶滅しつつあります。医師偏在是正や“直美”問題解決などのためには、そうした若者の意識変化に対応した施策も必要だと言えるでしょう。また、先に紹介したYahoo!ニュースの記事も指摘していますが、高校で成績の良い生徒にとりあえず医学部受験を勧める傾向の是正も必要だと考えます。「医師は高給で、生活は安定、皆から尊敬されるし、モテる」といった旧来のイメージを取っ払い、中学生、高校生には「医者は理数系の就職先の中では負け犬だ」くらいの強烈なアピールをして、本当に医学の道に進みたい人材を医学部に送り込むことが、長い目でみたら一番重要ではないかと思います。参考1)令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況/厚生労働省

1490.

免疫療法を受けるがん患者は乾癬に注意

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療を受けるがん患者は、ICI以外(化学療法または分子標的薬)による治療を受けているがん患者と比較して、乾癬のリスクが高いことが、台湾・国防医学院のSheng-Yin To氏らによる全国規模のコホート研究で示された。ICIによる免疫療法は画期的ながん治療として認知されているが、自己免疫疾患の発症などの免疫関連有害事象に関する懸念も存在する。著者は、「今回の結果は、最適ながん治療を確実に行えるように、臨床医と患者は免疫療法に伴う乾癬のリスク上昇を認識しておくべきことの重要性を強調するものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年11月6日号掲載の報告。 研究グループは、Taiwan National Health InsuranceのデータベースとTaiwan Cancer Registryのデータを用いた。ICIの有無による乾癬リスクはtarget trial emulationのデザインを用いて評価した。 対象は、2019年1月1日~2021年6月30日にStageIII/IVのがんで抗がん治療を受けた患者とし、ICIによる治療を受けた患者(ICI群)と化学療法または分子標的薬による治療を受けた患者(非ICI群)に分類した。2023年5月~2024年7月にデータ解析を行った。 主要アウトカムは、追跡期間中の乾癬の発症とした。逆確率重み付け法(IPTW)を用いて潜在的な交絡因子の影響を軽減し、Cox比例ハザードモデルおよびFine-Grayモデルにより乾癬リスクのハザード比(HR)を算出して評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、抗がん治療を受けた13万5,230例(平均年齢62.94歳[標準偏差:13.01]、女性45.1%)。・ICI群は3,188例、非ICI群は13万2,042例であった。・ICI群では、乾癬の発症率が1,000人年当たり5.76件であり、非ICI群の同1.44件と比べて高かった。・交絡因子の補正後においても、ICI群は乾癬の発症リスクが高かった(IPTW補正後HR:3.31、IPTW補正後部分分布HR:2.43)。・試験開始からの解析と治療中の解析のいずれにおいても、以上の結果は一貫していた。また、すべての追跡期間とすべての感度解析においても結果は一貫して強固なものであった。

1491.

アベマシクリブによるILD、実臨床でのリスク因子は?/昭和大

 日本の進行乳がん患者を対象とした、アベマシクリブ関連間質性肺疾患(ILD)の実臨床におけるリスク因子などを調査した研究により、アベマシクリブ関連ILDの発現率は5.0%、死亡率は0.7%であり、リスク因子としてECOG PS≧2と間質性肺炎の既往歴が特定されたことを、昭和大学の中山 紗由香氏らが明らかにした。Breast Cancer誌オンライン版2024年11月18日掲載の報告。 2018年11月30日~2019年12月31日に国内77施設でアベマシクリブによる治療を開始した進行乳がん患者1,189例のカルテのデータを用いて、ネステッドケースコントロール研究を実施した。多変量Cox回帰分析でアベマシクリブ関連ILDの独立したリスク因子を特定した。なお、本研究の中間報告として、アベマシクリブ関連ILDの発現率と好発時期が2021年の第29回日本乳学会学術総会で報告されている。 主な結果は以下のとおり。●中央評価委員会の判定によるアベマシクリブ関連ILDの発現率は5.0%(59例)、死亡率は0.7%(8例)であった。●アベマシクリブ関連ILDの発現時期はさまざまであったが、アベマシクリブ治療開始後180日以内が最も多かった(64.4%)。●アベマシクリブ関連ILDは、ECOG PS≧2の患者、間質性肺炎の既往がある患者で有意に多かった。 ・ECOG PS≧2のハザード比(HR):5.03、95%信頼区間(CI):2.26~11.11 ・間質性肺炎既往のHR:6.49、95%CI:3.09~13.70 これらの結果より、研究グループは「本研究は、日本で初めて実臨床におけるアベマシクリブ関連ILDの発現率とリスク因子を明らかにした。アベマシクリブ関連ILDは重篤であるが、ECOG PS不良および/または間質性肺炎の既往歴のある患者を慎重に選択して綿密にモニタリングすることで、ILDリスクを最小限に抑えることができる可能性がある」とまとめた。

1492.

高K血症または高リスクのHFrEF、SZC併用でMRAの長期継続が可能か/AHA2024

 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者の予後を改善することが報告されている。しかし、MRAは高カリウム血症のリスクを上げることも報告されており、MRAの減量や中断につながっていると考えられている。そこで、高カリウム血症治療薬ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(SZC)をMRAのスピロノラクトンと併用することが、高カリウム血症または高カリウム血症高リスクのHFrEF患者において、スピロノラクトンの至適な使用に有効であるかを検討する無作為化比較試験「REALIZE-K試験」が実施された。本試験の結果、SZCは高カリウム血症の発症を減少させ、スピロノラクトンの至適な使用に有効であったが、心不全イベントは増加傾向にあった。本研究結果は、11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のLate-Breaking Scienceで米国・Saint Luke’s Mid America Heart Institute/University of Missouri-Kansas CityのMikhail N. Kosiborod氏によって発表され、Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2024年11月18日号に同時掲載された。 本試験の対象は、高カリウム血症(血清カリウム値5.1~5.9mEq/LかつeGFR≧30mL/min/1.73m2)または高カリウム血症高リスクのHFrEF(左室駆出率40%以下、NYHA分類II~IV度)患者203例であった。本試験は導入期と無作為化期で構成された。導入期では、スピロノラクトンを50mg/日まで漸増し、必要に応じてSZCを用いて血清カリウム値を正常範囲(3.5~5.0mEq/L)に維持した。導入期の終了時において、スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続、かつ血清カリウム値が正常範囲であった患者をSZC群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化期では、スピロノラクトンとSZCまたはプラセボを6ヵ月投与した。主要評価項目と主要な副次評価項目は以下のとおりで、上から順に階層的に検定した。【主要評価項目】・スピロノラクトンの至適な使用(スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続し、血清カリウム値が正常範囲を維持し、高カリウム血症に対するレスキュー治療なし)【主要な副次評価項目】・無作為化時のスピロノラクトン用量での血清カリウム値正常範囲の維持・スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続・高カリウム血症発症までの期間・高カリウム血症によるスピロノラクトンの減量または中止までの期間・カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)の変化量 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目のスピロノラクトンの至適な使用は、SZC群71%、プラセボ群36%に認められ、SZC群が有意に優れた(オッズ比[OR]:4.45、95%信頼区間[CI]:2.89~6.86、p<0.001)。・主要な副次評価項目の上位4項目はSZC群が有意に優れた。詳細は以下のとおり。<無作為化時のスピロノラクトン用量での血清カリウム値正常範囲の維持>SZC群58% vs.プラセボ群23%(OR:4.58、95%CI:2.78~7.55、p<0.001)<スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続>SZC群81% vs.プラセボ群50%(OR:4.33、95%CI:2.50~7.52、p<0.001)<高カリウム血症発症までの期間>ハザード比[HR]:0.51、95%CI:0.37~0.71、p<0.001<高カリウム血症によるスピロノラクトンの減量または中止までの期間>HR:0.37、95%CI:0.17~0.73、p=0.006・KCCQ-CSSの変化量は、両群に有意差はみられなかった(群間差:-1.01点、95%CI:-6.64~4.63、p=0.72)。・心血管死・心不全増悪の複合は、SZC群11例(心血管死1例、心不全増悪10例)、プラセボ群3例(それぞれ1例、2例)に認められ、SZC群が多い傾向にあった(log-rank検定による名目上のp=0.034)。

1493.

加齢性難聴予防に「聴こえ8030運動」を推進/耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 加齢性難聴は、日常のQOLを低下させるだけでなく、近年の研究から認知症のリスクとなることも知られている。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、都内で日本医学会連合TEAM事業の一環として「多領域の専門家が挑む加齢性難聴とその社会的課題」をテーマに、セミナーを開催した。本事業では「加齢性難聴の啓発に基づく健康寿命延伸事業」に取り組んでおり、主催した日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では「聴こえ8030運動」を推進している。当日は、加齢性難聴対策の概要や認知症との関係、学会の取り組みなどが講演された。聴こえが悪いと感じたら耳鼻科で聴力検査を 「加齢性難聴対策を介した共生社会の実現への取り組み」をテーマに和佐野 浩一郎氏(東海大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 准教授)が、現在の難聴対策の現状と問題点などについて講演を行った。 わが国は世界一の高齢化社会であり、加齢性難聴の放置は認知症の最大のリスクとなることが知られている1)。2024年の研究報告でも「難聴治療は老年期の認知症の予防に寄与する」という報告も出されている2)。こうした研究結果を踏まえ、日本医学会連合では2023年度よりさまざまな学会と連携し、難聴・聴覚補償機器に関する啓発活動を実施し、難聴への取り組みを行っている。 年代別の聴力レベルの変化について、高齢になればなるほど言葉の聞き取り力は有意に低下し、80代では半数が中等度の難聴となる3)。こうした加齢性難聴対策として「予防、受診、介入」を柱とした「聴こえ8030運動」が始められた。 難聴の原因には、加齢を筆頭に感染症、環境、薬剤など多彩な要因があり、最近では若年者の聴力は悪化傾向にあるという。こうした原因を啓発し、防止することが難聴予防につながると語る。また、わが国の耳鼻科への受診について、「聞こえに不自由を感じている人の受診率」が4割程度と先進国の中でもかなり低い割合であり、若年・中年期の難聴は健康診断などで発見されにくく、後期高齢者保健事業でも聴力検査が採り入れられていない課題があると指摘する。 おわりに和佐野氏は、「今後は適切な聴覚管理での早期介入のためにも、聞こえにくさを感じたら気軽に耳鼻科で聴力検査を受診できるよう、検査のハードルを下げる啓発活動を行っていきたい」と抱負を述べた。宮城県における加齢性難聴対策の取り組み 「言語聴覚士による加齢性難聴対策」をテーマに佐藤 剛史氏(東北大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学/日本言語聴覚士協会)が、言語聴覚士(ST)の立場から高齢者や行政の支援者などへの難聴啓発事業について説明した。 佐藤氏の所属する東北大学と宮城県、仙台市では三者が連携し「高齢者の難聴および誤嚥性肺炎の理解と対応に関する普及啓発モデル事業」を行っている。 本事業は、高齢者の通いの場を中心とした啓発事業であること、行政・大学・地域が役割分担をして運営すること、啓発事業の対象は高齢者だけでなく地域の支援センターの福祉担当者や保健師、職員なども参加すること、自身の「聞こえ」状態が体感できる参加型講習であることを特徴としている。 市町村の職員など支援者向けの研修会は2022年から開催され、過去3回で248人が参加し、研修では耳の解剖や聴力の仕組みなどの講演会が行われている。また、高齢者向けの啓発活動では、加齢性難聴の病態と治療、体験プログラムが行われている。2022~23年の実施状況として、全41会場で合計1,395人が受講した。受講した高齢者へのアンケートでは、965人(平均年齢76歳)から回答を得た。対象者の聞こえの状態では、約7割弱の人が聞こえの不自由さを感じており、補聴器の装着は約2割に止まっていた。受講後に耳鼻科受診について聞いたところ約5割の受講者が「受診をしたい」と回答した。 佐藤氏は、今後の課題としては、「受診につながる長期のフォローアップや『通いの場』に参加できない人への啓発、『聞こえチェック方法』の検討などが必要であり、STの役割としては住民・行政などへの啓発活動や地域作り、高齢者への地域での難聴への支援、健診活動や補聴器装用の専門支援などが考えられる」と提言を行った。加齢性難聴への補聴器装用は認知症予防に寄与 「加齢性難聴と認知症」をテーマに下畑 享良氏(岐阜大学脳神経内科学 教授/日本神経学会 理事)が、難聴と認知症の関連について講演した。 わが国の認知症高齢者は2040年に約580万人(約15%)と推定されている。認知症では、アルツハイマー型認知症が1番多く、同症はアミロイドβが脳に沈着することで発症する。近年の研究では、この沈着に影響する因子に関し「高血圧」「喫煙」「睡眠」など多数の因子が関連していることが指摘されている。そして、先述の研究でも2)難聴が最大の修正可能因子であり、認知症の発症ないし遅延ができる可能性がある。 南デンマーク・57万例を対象とした約9年間の研究では、難聴があって補聴器をしていない人の認知症発症のハザード比は1.20であった一方で、補聴器を装用している人のハザード比は1.06だった結果から補聴器は認知症発症リスクを減少させる可能性があると指摘する4)。 アメリカからも同様の研究報告があり、認知症予防に難聴の人では、補聴器の装用が有効である可能性が示唆されることから、「認知症予防のために今後啓発していく必要がある」とその重要性を下畑氏は語った。加齢性難聴の社会的認知に「聴こえ8030運動」の取り組み 「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が取り組む『聴こえ8030運動』」をテーマに羽藤 直人氏(愛媛大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 理事)が「聴こえの8030運動」について説明した。 この運動は、80歳で30dB(聞こえの閾値)の聴力を保つ国民啓発運動であり、全年代に加齢性難聴の周知、聴力検査などの耳鼻科への受診啓発、補聴器装用率の向上を目指すものである。加齢性難聴者数は1,437万人と推定され、60歳以上の3人に1人、70歳以上の約半数が該当するとされている。その一方で耳鼻科受診率は低く、加齢性難聴が疾病であるという認識が不足しているとされる。また、先進国と比較して補聴器装用率もわが国は約1/3、人工内耳普及率も約1/2と低い数字に止まっている。 そこで、日本歯科医師会推進の「8020運動(80歳で20本以上の歯の維持を目標)」にならい、良い聞こえで高齢者の健康寿命をサポートする目的で「聴こえ8030運動」を実施した経緯を説明した。運動の目標数字として、80歳で30dBの聞こえを維持している割合が現状30%から20年後には50%への伸長を謳っている。 加齢性難聴対策としては、「大音量で音楽などを聴かない」、「騒音の場所を避ける」、「騒音下の仕事では耳栓」、「静かな場所で耳を休ませる」などがあり、聞こえが悪くなったら補聴器の装用などが勧められる。 おわりに羽藤氏は、「こうした情報を手軽に入手できるように専用のウェブサイトを開設した。加齢性難聴という疾患の周知から聴力検査での耳鼻科受診、そして難聴カウンセリング、補聴器の適合診断を経て、適切な補聴器、人工内耳の普及へとつなげていくことで、認知症の抑制につなげていきたい」と展望を述べた。 講演後に「聴こえ8030運動が拓く加齢性難聴の未来」をテーマに、内田 育恵氏(愛知医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 特任教授)の進行で総合討論が行われた。総合討論では、残置聴力と補聴器の相性や聴こえ8030運動での医師以外の医療従事者の役割と連携、補聴器装用とSTの役割、非専門医への啓発、耳鼻科への診断はいつ行うかなどを話題に活発な議論が行われた。

1494.

四肢軟部肉腫、周術期ペムブロリズマブ上乗せでDFS改善/Lancet

 四肢の高リスク限局性軟部肉腫患者の治療において、術前放射線療法+手術と比較して、これに術前および術後のペムブロリズマブ(抗PD-1モノクローナル抗体)を追加する方法は、無病生存期間(DFS)を有意に改善することから、これらの患者の新たな治療選択肢となる可能性があることが、米国・ピッツバーグ大学のYvonne M. Mowery氏らが実施したSU2C-SARC032試験で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年11月23日号で報告された。4ヵ国の無作為化試験 SU2C-SARC032は、4ヵ国(オーストラリア、カナダ、イタリア、米国)の20施設で実施した非盲検無作為化試験であり、2017年11月~2023年11月に参加者の無作為化を行った(Stand Up to Cancerなどの助成を受けた)。 年齢12歳以上、四肢・肢帯のGrade2または3のStageIII未分化多形肉腫、または脱分化型もしくは多形型の脂肪肉腫の患者を対象とした。 被験者を、術前放射線療法後に手術を受ける群(対照群)、または術前ペムブロリズマブ+放射線療法(ペムブロリズマブ200mgを3週ごとに静脈内投与、放射線療法前・中・後の3サイクル)後に手術を受け、さらに術後にペムブロリズマブ療法(14サイクル以内)を受ける群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、担当医判定によるDFS(無作為化から再発または再発なしの死亡までの期間)とした。Grade3の患者でDFSが良好な傾向 127例を登録し、対照群に63例(平均年齢61[SD 12]歳、女性38%)、ペムブロリズマブ群に64例(60[12]歳、36%)を割り付けた。Grade2が対照群32%、ペムブロリズマブ群34%、Grade3がそれぞれ68%および66%で、未分化多形肉腫がそれぞれ76%および83%であり、腫瘍部位は下肢が60%および64%だった。 追跡期間中央値43ヵ月の時点で、修正ITT(mITT)集団における無病生存のイベントは56件(対照群32件、ペムブロリズマブ群24件)認めた。DFSは、対照群に比べペムブロリズマブ群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.61、90%信頼区間[CI]:0.39~0.96、p=0.035)。 また、2年無病生存率は、対照群の52%(90%CI:42~64)に対しペムブロリズマブ群は67%(58~78)と良好であった。 Grade2のmITT集団では、DFSに両群間で意義のある差はなかった(HR:0.84、95%CI:0.26~2.76、p=0.78)が、Grade3ではペムブロリズマブ群で良好な傾向がみられた(0.57、0.31~1.03、p=0.064)。Grade3以上の有害事象が多かった mITT集団における全生存期間は、対照群に比べペムブロリズマブ群で良好であったが統計学的に有意な差はなく(HR:0.67、95%CI:0.33~1.39、p=0.28)、2年全生存率は対照群85%、ペムブロリズマブ群88%であった。 Grade3以上の有害事象は、対照群(31%)に比べペムブロリズマブ群(56%)で多かった。Grade5の有害事象は発現しなかった。22例(各群11例)に28件(対照群13件、ペムブロリズマブ群15件)のGrade3以上の手術関連合併症を認めた。 著者は、「ペムブロリズマブの追加投与が全生存期間に影響を及ぼすかを判断するには、より長期間の追跡調査が必要だが、毒性プロファイルはドキソルビシンベースの化学療法と比較してペムブロリズマブがより良好であることから、術前放射線療法と手術による治療を受ける高リスクで切除可能な四肢の未分化多形肉腫または脂肪肉腫の患者において、ペムブロリズマブは魅力的な選択肢となるだろう」としている。

1495.

オメガ3・6脂肪酸の摂取はがん予防に有効か

 多価不飽和脂肪酸(PUFA)のオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の血中濃度は、がんの発症リスクと関連していることが、新たな研究で示唆された。オメガ3脂肪酸の血中濃度が高いことは、結腸がん、胃がん、肺がん、肝胆道がんの4種類のがんリスクの低下と関連し、オメガ6脂肪酸の血中濃度が高いことは、結腸がん、脳、メラノーマ、膀胱がんなど13種類のがんリスクの低下と関連することが明らかになったという。米ジョージア大学公衆衛生学部のYuchen Zhang氏らによるこの研究の詳細は、「International Journal of Cancer」に10月17日掲載された。Zhang氏は、「これらの結果は、平均的な人が食事からこれらのPUFAの摂取量を増やすことに重点を置くべきことを示唆している」と述べている。 この研究でZhang氏らは、UKバイオバンク研究の参加者25万3,138人のデータを用いて、オメガ3脂肪酸およびオメガ6脂肪酸の血漿濃度とあらゆるがん(以下、全がん)、および部位特異的がんとの関連を検討した。ベースライン調査時(2007〜2010年)に得られた血漿サンプルを用いて、核磁気共鳴法(NMR)によりこれらのPUFAの絶対濃度と総脂肪酸に占める割合(以下、オメガ3脂肪酸の割合をオメガ3%、オメガ6脂肪酸の割合をオメガ6%とする)を評価した。対象としたがんは、頭頸部がん、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、肝胆道がん、膵臓がん、肺がん、メラノーマ、軟部組織がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、脳腫瘍、甲状腺がん、リンパ系および造血組織がんの19種類だった。 平均12.9年の追跡期間中に、2万9,838人ががんの診断を受けていた。喫煙状況、BMI、飲酒状況、身体活動量などのがんのリスク因子も考慮して解析した結果、オメガ3脂肪酸およびオメガ6脂肪酸の血漿濃度が上昇すると全がんリスクが低下するという逆相関の関係が認められた。全がんリスクは、オメガ3%が1標準偏差(SD)上昇するごとに1%、オメガ6%が1SD上昇するごとに2%低下していた。がん種別に検討すると、オメガ6%は13種類のがん(食道がん、結腸がん、直腸がん、肝胆道がん、膵臓がん、肺がん、メラノーマ、軟部組織がん、卵巣がん、腎臓がん、膀胱がん、脳腫瘍、甲状腺がん)と負の相関を示した。一方、オメガ3%は4種類のがん(胃がん、結腸がん、肝胆道がん、肺がん)と負の相関を示す一方で、前立腺がんとは正の相関を示すことが明らかになった。 オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸は、脂肪分の多い魚やナッツ類、植物由来の食用油に含まれているが、十分な量を摂取するために魚油サプリメントに頼る人も多い。しかし研究グループは、これらのPUFAの効用が全ての人にとって同じように有益になるとは限らないとしている。実際に、本研究では、オメガ3脂肪酸の摂取量が多いと前立腺がんのリスクがわずかに高まる可能性のあることが示された。論文の上席著者であるジョージア大学Franklin College of Arts and SciencesのKaixiong Ye氏は、このことを踏まえ、「女性なら、オメガ3脂肪酸の摂取量を増やすという決断も容易だろう」と同大学のニュースリリースの中で話している。

1496.

更年期にホットフラッシュの多い女性は糖尿病リスクが高い

 更年期にホットフラッシュや寝汗などの症状を頻繁に経験した女性は、その後、2型糖尿病を発症する可能性が高いことが報告された。米カイザー・パーマネンテのMonique Hedderson氏らの研究によるもので、「JAMA Network Open」に10月31日、レターとして掲載された。 更年期には、ホットフラッシュ(突然の体のほてり)や寝汗(睡眠中の発汗)など、血管運動神経症状(vasomotor symptoms;VMS)と呼ばれる症状が現れやすい。このVMSは肥満女性に多いことが知られており、また心血管代謝疾患のリスクと関連のあることが示唆されている。ただし、糖尿病との関連はまだよく分かっていない。Hedderson氏らは、米国の閉経前期または閉経後早期の女性を対象とする前向きコホート研究(Study of Women’s Health Across the Nation;SWAN)のデータを用いて、VMSと糖尿病リスクとの関連を検討した。 SWANの参加者は2,761人で、平均年齢は46±3歳。人種/民族は、白人が49%、黒人が27%を占め、日本人も9.6%含まれている。そのほかは中国人が8.5%、ヒスパニックが6.5%。全体の28%は2週間に1~5日のVMSを報告し、10%は同6日以上のVMSを報告していた。追跡期間中に2型糖尿病を発症したのは338人(12.2%)だった。 VMSの出現パターンに基づき全体を4群に分け、交絡因子(年齢、人種/民族、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、教育歴、閉経ステージ〔閉経前期/閉経後早期〕、研究参加地点など)を調整後に、一貫してVMSが現れなかった群を基準に2型糖尿病発症リスクを解析。すると、一貫してVMSが頻繁に(2週間に6日以上)現れていた群は、50%ハイリスクであることが分かった(ハザード比〔HR〕1.50〔95%信頼区間1.12~2.02〕)。VMSの出現頻度が閉経ステージの前半のみ高かった群や、後半のみ高かった群は、一貫してVMSが現れなかった群とのリスク差が非有意だった。 論文の筆頭著者であるHedderson氏は、「更年期にVMSが頻繁に現れる女性は、ほかの健康リスクも抱えているというエビデンスが増えている」と話す。ただし、その関連のメカニズムはよく分かっていないとのことだ。論文の上席著者である米ピッツバーグ大学のRebecca Thurston氏も、「われわれの研究結果は、女性の心血管代謝の健康に対するVMSの重要性、特にその症状が長期間続く女性での重要性を示しており、さらなる研究が求められる。ホットフラッシュは、単なる不快な症状にとどまるものではないのかもしれない」と述べている。 研究グループによると、VMSが糖尿病のリスクを高める理由はまだ明確に説明できないが、VMSが心臓病のリスク増加につながるというエビデンスはあるという。そして、心臓病と糖尿病は、慢性炎症や睡眠の質の低下、体重増加が併存することが多いなどの共通点があると指摘している。 なお、Hedderson氏は、「女性の70%は更年期のどこかの時点で何らかのVMSを経験するが、われわれの研究で明らかになった糖尿病リスクの上昇が認められるのは、そのような女性のごく一部だ」と付け加えている。

1497.

統合失調症に対して最も良好なシータバースト刺激プロトコールは

 反復経頭蓋外磁気刺激(rTMS)の1つであるシータバースト刺激(theta burst stimulation:TBS)は、頭蓋上のコイルから特異的なパターン刺激を発生することで、短時間で標的脳部位の神経活動を変調させる。TBSには、間欠的な刺激パターンであるintermittent TBS(iTBS)による促通効果と持続的な刺激パターンであるcontinuous TBS(cTBS)による抑制効果がある。現在までに、統合失調症に対するTBSプロトコールがいくつか検討されているが、その有効性に関しては、一貫した結果が得られていない。藤田医科大学の岸 太郎氏らは、成人統合失調症患者に対し、どのTBSプロトコールが最も良好で、許容可能かを明らかにするため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。JAMA Network Open誌2024年10月1日号の報告。 2024年5月22日までに公表された研究を、Cochrane Library、PubMed、Embaseデータベースより検索した。包括基準は、TBS治療に関する公開済み、未公開のランダム化臨床試験(RCT)および統合失調症スペクトラム、その他の精神疾患またはその両方の患者を含むRCTとした。Cochraneの標準基準に従ってデータ抽出および品質評価を行い、報告には、システマティックレビューおよびメタ解析の推奨報告項目ガイドラインを用いた。研究間のバイアスリスクは、Cochrane Risk of Bias Tool ver.2.0で評価し、ネットワークメタ解析の信頼性アプリケーションを用いて、メタ解析結果のエビデンスの確実性を評価した。文献検索、データ転送精度、算出については、2人以上の著者によるダブルチェックを行った。主要アウトカムは、陰性症状に関連するスコアとした。頻度論的ネットワークメタ解析では、ランダム効果モデルを用いた。連続変数または二値変数の標準平均差(SMD)またはオッズ比は、95%信頼区間(CI)を用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・9つのTBSプロトコールを含む30件のRCT(1,424例)が抽出された。・左背外側前頭前野に対するiTBSのみが、シャム対照群と比較し、陰性症状を含む各症状の改善を認めた。【陰性症状スコア】SMD:−0.89、95%CI:−1.24〜−0.55【全体的な症状スコア】SMD:−0.81、95%CI:−1.15〜−0.48【PANSS総合精神病理スコア】SMD:−0.57、95%CI:−0.89〜−0.25【抑うつ症状スコア】SMD:−0.70、95%CI:−1.04〜−0.37【不安症状スコア】SMD:−0.58、95%CI:−0.92〜−0.24【全般的認知機能スコア】SMD:−0.52、95%CI:−0.89〜−0.15・陽性症状スコア、すべての原因による中止率、有害事象による中止率、頭痛の発生率、めまいの発生率は、いずれのTBSプロトコールおよびシャム対照群の間で有意な差は認められなかった。 著者らは「左背外側前頭前野に対するiTBSのみが、統合失調症患者の陰性症状、抑うつ症状、不安症状、認知機能改善と関連しており、忍容性も良好であった。統合失調症治療におけるTBSの潜在的な効果を評価するためには、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

1498.

市販薬のオーバードーズ防止、とうとう警察から協力依頼【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第141回

若年者が“多幸感”を得る目的などで市販薬をオーバードーズ(過量服薬)する問題はこのコラムでも何回も紹介していますが、状況は一向に改善していません。昨今では、未成年誘拐の被害者が市販薬の過量服薬によって死亡する例や、過量服薬願望のある中学生が睡眠導入薬提供の誘惑によりわいせつ目的で誘拐される例など、想像を超える大きな事件が発生しています。このような状況のなか、警察庁生活安全局人身安全・少年課長より、医薬品販売に係る関係団体に協力依頼がありました(警察庁丁人少発第1325号)。1.一般用医薬品を販売する薬局開設者等への要請(1)万引き防止対策の徹底医薬品のうち、過量服薬の懸念の強い商品によっては、以下の対応を執ること。購入者の手が直接届かない場所、従業員が常駐する場所から目に付きやすい場所に配置・陳列店頭に複数個陳列せず、商品カードや空箱で対応防犯タグ等の万引き防止機器の取り付け短期間での棚卸し等在庫管理の徹底(2)警察への通報万引きを認知した場合には、警察へ届け出ることはもとより、通常必要であると考えられる回数を超える頻度で過量服薬に用いられるおそれのある医薬品を購入するといった顧客の不審動向がある場合には、速やかに警察に通報すること。(3)「濫用のおそれのある医薬品」の適正販売厚生労働大臣が指定する「濫用等のおそれのある医薬品」の販売・授与に当たっては、厚生労働省令に定められた方法を遵守すること。2.都道府県等の関係部局及び関係業界団体等への要請少年による過量服用防止対策を推進するため、警察と情報共有体制を構築するなど連携強化に努めること。「警察への通報」というちょっとおっかない文言も飛び出してきました。過量服薬を繰り返す少年たちの一部は、万引きによって一般用医薬品を調達しているということが確認されているとのことです。医薬品を販売する立場として販売方法の工夫はもちろん行っていると思いますが、万引き対策を一層強化し、また万引きを認知した際や不審な動向があった際は警察に通報することが求められています。地域で連携をとることで抑止力を高めていこうということなのでしょう。全国の薬局やドラッグストアが警察と連携しているというイメージが広まることで、多少の抑止力になるかもしれません。しかしながら、現在、多くの咳止め薬などは第2類医薬品に分類されています。第2類医薬品がインターネットで購入できてしまう以上、なかなかこれらを撲滅することは難しい気もしてしまいます。なお、第1類から第3類に分かれている現状の販売区分が購入者にとってわかりにくい、現場任せの管理で法令順守が徹底されていないなどの問題があり、厚生労働省は2025年以降に一般用医薬品の区分を再編する方針を決定しています。要指導医薬品のインターネット販売については、薬剤師がビデオ通話で服薬指導を行うことを条件に認めるという規制緩和の動きがあります。規制を強化するのか、緩和するのか。「医薬品へのアクセス向上」は聞こえがよく感じますが、実際にメリットを享受するのは製薬企業なのではないでしょうか。過量服薬による非行や犯罪が社会問題化しているなかでの規制緩和は少し早い気がするのは私だけでしょうか。被害を受けるのが何も知らない子供、ということがないようにしたいものです。

1499.

英語で「詳しく説明する」は?【1分★医療英語】第158回

第158回 英語で「詳しく説明する」は?《例文1》Let me walk you through the procedure before we begin.(始める前に、手技の手順を説明させてください)《例文2》I'll walk you through the lab results and what they indicate.(検査結果とそれが何を示すかについて説明します)《解説》“walk through”は、「詳しく説明する」「順を追って説明する」という意味を持つ表現です。医療現場では、検査結果や治療方針などを患者に伝えたり、手技などの手順を他の医療者に詳しく説明したりする際に使用します。“walk”と“through”の間に“me”や“you”などの代名詞を入れて使うことが多く、“walk me through”は「私に説明してください」、“walk you through”は「あなたに説明します」という意味になります。「説明する」という意味の表現には“explain”や“go over”もありますが、“walk through”は直訳すれば「歩き通す」で、そのトーンのように「丁寧に、順を追って説明する」という意味になります。講師紹介

検索結果 合計:33539件 表示位置:1481 - 1500