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早期乳がんの術後パルボシクリブ、PPI併用の影響は?(PALLAS)/ESMO Open

 抗がん剤とプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用は薬物相互作用を引き起こし、抗がん剤の効果に影響を及ぼす可能性がある。今回、ベルギー・Hopital Universitaire de BruxellesのElisa Agostinetto氏らは、HR+/HER2-早期乳がんの術後補助内分泌療法へのパルボシクリブ追加を検討した第III相PALLAS試験の探索的解析として、パルボシクリブ投与患者においてPPI併用が生存転帰に影響するかどうかを検討し、ESMO Open誌2025年1月号に報告した。 PALLAS試験では主要評価項目である無浸潤疾患生存期間(iDFS)は改善しなかったことが報告されている。今回の探索的解析は、パルボシクリブを1回以上投与された患者を対象に、PPI併用とiDFS、無遠隔再発生存期間(DRFS)、全生存期間(OS)との関連を明らかにすることを目的とした。さらにPPI使用と好中球減少症との関連も調査した。 主な結果は以下のとおり。・パルボシクリブ+内分泌療法を受けた2,840例中525例(18.5%)にPPIが併用されていた。・PPI投与は、高齢、閉経後、アロマターゼ阻害薬の使用、肥満度の高さ、PSの悪化と有意に関連していた(すべてp<0.001)。・PPI併用は、iDFS、DRFS、OSとの有意な関連は示されなかった。・好中球減少症発現割合(全Grade)は、試験開始前にPPIを開始した患者ではPPIを開始しなかった患者と比べて数値的に低かった(調整オッズ比:0.81、95%信頼区間:0.60~1.09)。 著者らは「今回の探索的解析において、パルボシクリブとPPIを併用した患者における生存転帰の悪化は示されなかった。とはいえ、とくに早期乳がんにおける新規薬剤の研究においては、可能性のある薬物相互作用を注意深く考慮することが重要」と提言している。

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RSV感染症vs.インフル、重症度と転帰を比較~日本の成人5万7千例

 RSウイルス(RSV)は小児だけでなく成人にも重大な影響を及ぼすが、成人のRSV感染症の入院患者の重症度や転帰に関する報告は少ない。今回、東京科学大学の井上 紀彦氏らがRSV感染症とインフルエンザの成人入院患者を比較した後ろ向き観察研究の結果、RSV感染症は入院中だけではなく長期アウトカムにおいてもインフルエンザと同等以上の健康上の脅威が示された。Infectious Diseases誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。 本研究では、日本のDPCシステムに基づく358病院の請求データを基に、2010年4月~2022年3月にRSV感染症またはインフルエンザで入院した18歳以上の5万6,980例を対象とした。短期アウトカムは入院中の重症度指標として医療資源(ICU入室、酸素補充、機械的人口換気、体外膜酸素療法)利用率および院内死亡率とし、長期アウトカムは生存者の退院後1年以内の再入院および入院後1年以内の全死亡とした。逆確率重み付けによる調整後、ポアソン回帰を用いてリスクを推定した。 主な結果は以下のとおり。・RSV群はインフルエンザ群と比較して、入院中に機械的人工換気を必要とするリスクが高かった(9.7% vs.7.0%、リスク比[RR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.08~1.67)。・院内死亡率はRSV群とインフルエンザ群で同等であった(7.5% vs.6.6%、RR:1.05、95%CI:0.82~1.34)。・RSV群はインフルエンザ群と比較して、生存者の退院後1年以内の再入院リスク(34.0% vs.28.9%、RR:1.19、95%CI:1.07~1.32)および入院後1年以内の全死亡リスク(12.9% vs.10.3%、RR:1.17、95%CI:1.02~1.36)が高かった。・年齢層別解析では、60歳以上で、RSV群がインフルエンザ群よりも1年以内の院内死亡、再入院、全死亡のリスクが高かった。

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多枝病変STEMI、完全血行再建術の最適なタイミングは?~ネットワークメタ解析/JACC

 多枝病変を有するST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、完全血行再建術(CR)は責任血管のみの治療より有益であることが、これまでの研究で報告されている。米国・エモリー大学の上山 紘生氏らの研究チームは、ランダム化比較試験のネットワークメタ解析にて、多枝病変を有するSTEMI患者における最適な血行再建術のタイミングを検証した。その結果、CRは責任血管のみの治療より良好な転帰を示し、即時CRが段階的CRより有利な可能性が示された。Journal of the American College of Cardiology誌2025年1月7日号に掲載。 本研究では、PubMedとEmbaseにて2024年7月までに登録されたSTEMIと多枝病変を有する患者における血行再建戦略を評価したランダム化試験を検索した。CRと責任血管のみの血行再建の比較試験、およびCRのタイミング(即時CRと段階的CR)の比較試験を、ネットワークメタ解析で分析した。また、血行再建術が即時的か段階的か、血管造影ガイド下か機能的ガイド下かに基づいて、4つのCR戦略で転帰が評価された。主要アウトカムは主要有害心血管イベント(MACE)であった。 主な結果は以下のとおり。・1万5,902例の患者が登録された合計26件のランダム化試験が対象となった。平均追跡期間は25.2±15.7ヵ月であった。・血管造影ガイド下または機能的ガイド下のいずれの場合も、CRは即時CRと段階的CRの両方で、責任血管のみの治療と比較してMACEが減少した(即時CRのリスク比[RR]:0.48[95%信頼区間[CI]:0.36~0.64]、段階的CRのRR:0.65[95%CI:0.52~0.82])。・即時CRは、段階的CRと比較してMACEの減少と関連していた(RR:0.74[95%CI:0.56~0.97])。これはCRが血管造影ガイド下か機能的ガイド下でも認められた(血管造影ガイド下のRR:0.77[95%CI:0.61~0.99]、機能的ガイド下のRR:0.49[95%CI:0.27~0.89])。MACEの減少は、とくに心筋梗塞(MI)の減少によるものだった。・ただし、すべてのMIと非手技的MI(non-procedural MI)の両方を報告した研究に解析を限定した場合、段階的CRと比較した即時CRのMI減少の有益性は、手技的MI(procedural MI)を除外すると減少した(手技的MIありのRR:0.44[95%CI:0.27~0.71]に対し、手技的MIなしのRR:0.65[95%CI:0.36~1.16])。 本結果について著者らは、多枝病変を有するSTEMI患者では、血管造影ガイド、機能的ガイドにかかわらず、責任血管のみの治療と比較して、即時または段階的CRのほうが転帰が良好だったとまとめている。

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重度精神疾患患者における第2世代抗精神病薬の心代謝プロファイルの安全性比較

 重度の精神疾患のマネジメントにおけるアリピプラゾールの心代謝への安全性および有効性の比較に関するエビデンスは限られており、その結果は一貫していない。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAlvin Richards-Belle氏らは、他の第2世代抗精神病薬と比較したアリピプラゾールの心代謝プロファイルおよび有効性を調査した。PLoS Medicine誌2025年1月23日号の報告。 英国・プライマリケアにおけるアリピプラゾールとオランザピン、クエチアピン、リスペリドンを直接比較した観察エミュレーションを実施した。データは、Clinical Practice Research Datalinkより抽出した。対象は、2005〜17年に新たに抗精神病薬を使用した重度の精神疾患(双極症、統合失調症、その他の非器質性精神病)成人患者。2019年までの2年間、フォローアップを行った。主要アウトカムは、1年後の総コレステロール値(心代謝安全性)とした。主な副次的アウトカムは、精神科入院(有効性)とした。その他のアウトカムには、体重、血圧、すべての原因による治療中止、死亡率などを含めた。分析では、人口統計、診断、併用薬、心血管代謝パラメータなどのベースライン交絡因子で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は2万6,537例。その内訳は、アリピプラゾール群3,573例、オランザピン群8,554例、クエチアピン群8,289例、リスペリドン群6,121例。・年齢中央値は53歳(四分位範囲:42〜67)、女性の割合は55.4%、白人の割合は82.3%、統合失調症の割合は18.0%。・アリピプラゾール群における1年後の総コレステロール値は、オランザピン群(調整平均[aMD]:−0.03、95%信頼区間[CI]:−0.09〜0.02、p=0.261)、クエチアピン群(aMD:−0.03、95%CI:−0.09〜0.03、p=0.324)、リスペリドン群(aMD:−0.01、95%CI:−0.08〜0.05、p=0.707)と同等であった。・体重や血圧などの他の心代謝パラメータは、とくにオランザピン群と比較し、アリピプラゾール群のアウトカムが良好であることが示唆された。・入院歴で調整した後、アリピプラゾール群の精神科入院率は、オランザピン群(調整ハザード比[aHR]:0.91、95%CI:0.82〜1.01、p=0.078)、クエチアピン群(aHR:0.94、95%CI:0.85〜1.04、p=0.230)、リスペリドン群(aHR:1.01、95%CI:0.91〜1.12、p=0.854)と同等であった。 著者らは「重度の精神疾患患者に対するアリピプラゾール治療は、他の第2世代抗精神病薬と比較し、1年後の総コレステロール値は同等であったが、体重や血圧などの他の心代謝パラメータは良好であり、有効性の違いも認められなかった」とし「本結果は、新規の重度精神疾患患者に対する抗精神病薬の選択時において、臨床意思決定の根拠となるであろう」と結論付けている。

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未治療CLLへの固定期間のアカラブルチニブ併用療法、PFSを改善/NEJM

 未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、BTK阻害薬アカラブルチニブとBCL-2阻害薬ベネトクラクスの併用療法は、抗CD20抗体オビヌツズマブの追加有無にかかわらず、化学免疫療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJennifer R. Brown氏らAMPLIFY investigatorsが27ヵ国133施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「AMPLIFY試験」で示された。未治療CLL患者において、アカラブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用投与が、化学免疫療法と比べてPFSが優れるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2025年2月5日号掲載の報告。アカラブルチニブ+ベネトクラクス併用療法と医師選択化学免疫療法を比較 研究グループは、18歳以上、ECOG PS 0~2で、17p欠失またはTP53変異のない未治療CLL患者(>65歳はCumulative Illness Rating Scale for Geriatrics[CIRS-G]スコアが>6の場合は除外)を、アカラブルチニブ+ベネトクラクス(AV)群、アカラブルチニブ+ベネトクラクス+オビヌツズマブ(AVO)群、または化学免疫療法群に1対1対1の割合で、無作為に割り付けた。 AV群では、1サイクル28日として、アカラブルチニブ(100mgを1日2回)をサイクル1~14に、ベネトクラクス(20mgを1日1回から開始し5週間をかけて400mgを1日1回に増量)をサイクル3~14に投与した。 AVO群では、上記のAVに加えてオビヌツズマブ(1,000mg)をサイクル2~7の1日目に静脈内投与した。 化学免疫療法群では、医師選択によるフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブまたはベンダムスチン+リツキシマブを標準投与プロトコールに従い、サイクル1~6に投与した。 主要評価項目は、盲検下独立中央判定によるPFSで、AV群と化学免疫療法群を比較した(ITT解析)。アカラブルチニブ+ベネトクラクスのPFSが有意に延長 2019年2月25日~2021年4月5日に、1,141例がスクリーニングを受け、867例が無作為化された(AV群291例、AVO群286例、化学免疫療法群290例[フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ群143例、ベンダムスチン+リツキシマブ群147例])。患者背景は、年齢中央値61歳(範囲:26~86)、男性64.5%、IGHV(免疫グロブリン重鎖可変領域遺伝子)変異なし58.6%であった。 追跡期間中央値40.8ヵ月において、36ヵ月PFS率推定値はAV群76.5%(95%信頼区間[CI]:71.0~81.1)、AVO群83.1%(78.1~87.1)、化学免疫療法群66.5%(59.8~72.3)であり、化学免疫療法群に対するAV群の疾患進行または死亡のハザード比は0.65(95%CI:0.49~0.87、p=0.004)であった(AVO群と化学免疫療法群の比較のp<0.001)。 重要な副次評価項目である全生存期間(OS)については、36ヵ月OS率推定値がAV群94.1%、AVO群87.7%、化学免疫療法群85.9%であった。 主な臨床的に関心のある有害事象のうち、Grade3以上の好中球減少症はAV群、AVO群および化学免疫療法群でそれぞれ32.3%、46.1%、43.2%に報告された。また、新型コロナウイルス感染症による死亡はそれぞれ10例、25例、21例報告された。

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SGLT2阻害薬やGLP-1薬のベネフィット、年齢・性別で違いは?/JAMA

 SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者の主要心血管イベント(MACE)のリスク低下と関連することが、英国・グラスゴー大学のPeter Hanlon氏らによる601試験のネットワークメタ解析の結果で示された。年齢×治療の交互作用の解析では、SGLT2阻害薬はヘモグロビンA1c(HbA1c)値の低下は小さいものの、若年者より高齢者で心臓保護効果が高く、一方、GLP-1受容体作動薬は若年者のほうで心臓保護効果が高いことが示された。先行研究で、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP4阻害薬は高血糖を改善し、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は2型糖尿病患者のMACEリスクを軽減することが示されているが、これらの有効性が年齢や性別によって異なるかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2025年2月3日号掲載の報告。MEDLINEやEmbaseなどを2024年8月までレビュー 研究グループは、MEDLINE、Embase、および米国と中国の臨床試験登録について、2022年11月までに発表された論文を検索し、さらに試験結果を更新するため2024年8月に再検索した。 対象研究は、18歳以上の2型糖尿病成人患者を対象に、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬またはDPP4阻害薬と、プラセボや他の血糖降下薬を比較した無作為化臨床試験とし、2人の評価者が独立して適格性をスクリーニングした。 主要アウトカムはHbA1cとMACEで、個々の患者データおよび集計データを用い、マルチレベルネットワークメタ回帰モデルで年齢×治療の交互作用および性別×治療の交互作用を推定した。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬はMACEリスク低下と関連 適格基準を満たした601試験が同定された。592試験はHbA1cを報告した試験(合計30万9,503例、平均年齢58.9±10.8歳、女性42.3%)、23試験がMACEを報告した試験(16万8,489例、64.0±8.6歳、35.3%)であった。なお、103試験で個々の患者データが得られた(HbA1c:103試験、MACE:6試験)。 SGLT2阻害薬の使用(プラセボとの比較)は、加齢に伴ってHbA1cの低下が少ないことと関連しており、30歳増加ごとの絶対低下率(AR)は、単剤療法で0.24%(95%信用区間[CrI]:0.10~0.38)、2剤併用療法で0.17%(0.10~0.24)、3剤併用療法で0.25%(0.20~0.30)であった。 GLP-1受容体作動薬の使用は、単剤療法(AR:-0.18%、95%CrI:-0.31~-0.05)および2剤併用療法(-0.24%、-0.40~-0.07)は加齢に伴ってHbA1cの低下が大きかったが、3剤併用療法(0.04%、-0.02~0.11)はHbA1cの低下と関連していなかった。 DPP4阻害薬の使用は、2剤併用療法では高齢者におけるHbA1cの低下がわずかに改善したが(AR:-0.09%、95%CrI:-0.15~-0.03)、単剤療法(-0.08%、-0.18%~0.01%)や3剤併用療法(-0.01%、-0.06%~0.05%)では改善がみられなかった。 MACEの相対的な減少は、SGLT2阻害薬の使用では、高齢者のほうが若年者より、30歳増加するごとの減少率が大きく(ハザード比:0.76、95%CrI:0.62~0.93)、GLP-1受容体作動薬の使用では、高齢者のほうが若年者よりも減少率が小さかった(1.47、1.07~2.02)。 SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の使用に関して、性別×治療の交互作用に関する一貫したエビデンスはなかった。

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スポーツで子どもの学力がアップ?

 10代前半でスポーツを行っている子どもは、10代後半になった時点での学力が良好という有意な関連のあることが報告された。モントリオール大学(カナダ)のLinda Pagani氏らの研究によるもので、論文が「Children」に9月20日掲載され、同大学からニュースリリースが1月16日に発行された。構造化された競技に参加している子どもは性別を問わず、高校卒業資格を取得する割合が高く、また女子については審美系競技に参加している場合に学力も高くなるという関連も示されたという。 スポーツと学力との関連については既に複数の研究報告が存在するが、成績に良い影響を与えるとする結果もあれば、反対に成績の低下と関係しているという結果が混在している。また、これまでの研究の大半は横断研究であり、因果関係が不明。さらに、性別の違いが十分考慮されていないといった、解釈上の限界点があった。これを背景にPagani氏らは、カナダで行われている児童・青少年対象の縦断研究のデータを用いた解析を行った。 12歳の時点で何らかのスポーツを行っているか否かと、18歳時点での学業成績(自己申告に基づき満点を100%とした百分率で評価)、および、20歳までに高校を卒業またはそれと同等の資格を取得した割合との関連を検討した。解析対象者は2,775人で、男子が50.4%だった。なお、スポーツの種類は、構造化された競技(監督やコーチなどの指導の下で行われる競技)、審美系競技(ダンス、チアリーディング、および体操など)、構造化されていない身体活動(個人でスキルを磨くことの多い、スケートボード、サイクリングなど)という三つに分類した。 スポーツへの参加とその後の学力との関連の解析に際しては、家族構成、世帯収入、母親の教育歴・抑うつレベル、家族機能(家庭内の適切な役割分担や協力関係)、および、12歳時点での教師の判断による学力レベルなどの影響を統計学的に調整した。その結果、女子については複数の項目で有意な関連が認められ、男子は1項目のみが有意に関連していた。詳細は以下のとおり。 まず、12歳の時点で構造化された競技に参加していた女子は、スポーツを行っていなかった女子に比べて、18歳時点での学業成績が8.2%高く(P<0.01)、20歳時点で高校卒業資格を有している割合が7.1%高かった(P<0.05)。また、審美系競技に参加していた女子は、学業成績が22.8%高かった(P<0.001)。ただし、構造化されていない身体活動を行っていた女子は、学業成績が7.7%低かった(P<0.01)。一方、男子については、構造化された競技に参加していた場合において、20歳時点で高校卒業資格を有している割合が14.6%高かった(P<0.001)。 この結果について著者らは、「大人の監督下で行うことの多い団体競技に参加する子どもは、集団での行動、集中力の持続、リーダーシップなど、さまざまな重要なスキルを身に付けていき、それが学力にも生きてくるのではないか」と述べている。ただ、全ての子どもがスポーツ参加の恩恵を受けられるわけではない。本研究では、世帯収入の低さなどの環境要因が、子どものスポーツ参加の妨げとなっているという課題も示されている。

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爆笑必至。ニセ中国語と漢字の威力!【Dr. 中島の 新・徒然草】(567)

五百六十七の段 爆笑必至。ニセ中国語と漢字の威力!立春が過ぎても寒さの厳しい日が続いていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。私はしばらく日課の散歩を休んでいます。こんな寒さの中で無理はできません。外を歩くのはもう少し暖かくなってからですね。さて、今回は面白いYouTube動画について紹介したいと思います。その動画のタイトルは「中華圏の人が大感服…日本人が作った中国語が天才過ぎるww【偽中国語】」というもの。動画に登場するのは、中国や台湾出身の3人組。いずれも日本在住で日本語がペラペラの人たちですが、母語は皆さん中国語です。動画の内容は、日本人の作成したニセ中国語のSNS投稿を見て大笑いするというもの。ニセ中国語とは、漢字だけを使った不思議な言語です。一見すると本物の中国語のように見えますが、よく見ると日本語の文章からひらがなを抜いただけのナンチャッテ中国語。これが予想外に意味が通じてしまいます。まず紹介したいのが、以下の文章。「我、酒弱体質故飲酒不可能。然、酒之肴風飯好物也。同士有? 何好? 我鶏皮揚」ぱっと見は中国語に見えますが、日本語のひらがなを抜いただけのニセ中国語です。それでも、なんとなく意味がわかってしまいます。動画内の翻訳はこうでした。「私はお酒に弱い体質なので飲めません。でも、酒のつまみ的な食べ物は好き。同じ人いる? 何が好き? 私は鳥皮の唐揚げが好き」確かにそのとおりですね。次はいささか難解な例。「皆、々"ー厶 何好? 我、袋怪物! 沢山返信欲」3人組は「々"ー厶」の部分で大いに悩んでいました。この「厶」はカタカナの「ム」ではなく、実際に存在する漢字だそうです。見た目から推測すると、書いた人は「ゲーム」と伝えたかったみたい。これは難しいですね。また、「袋怪物」は「ポケットモンスター」のことで、かつて中国では「口袋妖怪」、現在は「精霊宝可夢」と表記されるとのこと。「宝可夢」の発音が「ポケモン」に似ているのだとか。そして、3人が大爆笑していたのが以下の文章です。「何故、人間糞漏構造。何故悲劇再演。何故。」ここまでくると、説明も不要です。さらにこんなやりとりも。肛門「誰?」糞「屁也」肛門「良!通!」糞でありながら屁を装い肛門を突破しようとする。想像しただけでこの後に続く大惨事が目に浮かびます。そういえばこの動画のコメント欄も大混乱。ニセ中国語があふれていますが「日本語に翻訳」ボタンを押すと、さらにカオスな状況が生まれます。ところで、ここに紹介したニセ中国語は数年前に日本のネット上で流行したのだとか。ひらがなを抜き、カタカナ部分に音の合う漢字を当てるだけで完成。東アジアの漢字文化圏では、相互の認識の微妙なズレが爆笑を誘います。もう国際政治の緊張なんか、どこかに吹っ飛んでしまいそう。それにしても漢字というのは、まったく異なる言語を繋ぐことのできる画期的な発明ですね。読者の皆さま、気分が落ち込んだ時にはぜひともこの動画を見て笑ってください。最後に一句立春や ニセ中国語で 大笑い

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その5)【ということはこれをすれば医療保護入院は廃止する前に廃れる!(扶養義務の縮小)】Part 1

今回のキーワード生活保護世帯分離法の下の平等直系家族病精神障害者の自立医療費の削減措置入院精神医療審査会前々回(その3)では、医療保護入院が廃止できない諸悪の根源が扶養義務であることを突き止めました。そして、前回(その4)では、扶養義務をはじめ、私たちが家族のつながりにとらわれ人権意識が乏しい根っこの原因を、地政学の視点から解き明かしました。そして、それを「直系家族病」(文化結合症候群)と名付けました。ということは、医療保護入院を廃止するためには、その前に「直系家族病」の主病巣である扶養義務にメスを入れる必要があります。はたしてそれは可能でしょうか?今回(その5)は、映画「クワイエットルームにようこそ」を踏まえて、扶養義務の縮小が現実的になってきているわけをご説明します。そして、扶養義務を法的に縮小することは、医療保護入院の廃止だけでなく、「直系家族病」そのものの根治治療にもなりうる可能性をご説明します。さらに、医療保護入院が廃止されることによるベネフィットとリスク対策をまとめてみましょう。扶養義務の縮小が現実的になってきているわけは?主人公の明日香は、母親と絶縁しており、3年間ほぼ連絡を取っていませんでした。ラストシーンで彼女は同棲していた鉄雄と別れますが、その後に仕事が見つからないために、生活保護を申請したらどうなるでしょうか? その3で国による扶養圧力が強化されたとご説明しましたが、母親に扶養が可能かの通知が行くのでしょうか?答えは、家族関係がうまくいっていない場合は、原則的に通知は行きません。この根拠は、参議院厚生労働委員会附帯決議(2013年)において「家族関係の悪化を来したりすることがないよう、十分配慮すること」とされているからです1)。それでは、明日香が父親の急死をきっかけに、母親と電話やメールで連絡し合う仲にまで戻り復縁したとしたら、どうでしょうか? すると、母親に通知が行くことになるわけですが、母親がその通知に返信しなかったら、母親に罰則はあるのでしょうか?答えは、返信しなくても罰則はありません。この根拠は、厚生労働省社会・援護局長の国会答弁(2013年)において、「回答義務や回答がされない場合の罰則を科すことはいたしておりません」と答弁してるからです1)。さらに、返信しないということは、扶養を拒否しているわけであり、それでも罰則がないので、実は家族が扶養を拒否できることを意味します1)。それでは、明日香が実家に帰り、母親と同居するようになったら、どうでしょうか?答えは、同居している場合に限り、母親に扶養義務(生活保持義務)が生じるため、生活保護は申請できなくなります。逆に言えば、別居(世帯分離)さえしていれば、家族は扶養義務を課されることはありません。ちなみに、立場が逆転して、明日香の母親が生活保護を申請する場合もまったく同じです。もちろん、2人が同居(世帯同一)していても、2人揃ってなら申請できます。これが、現在の生活保護法の運用の原則になっています。つまり、現在、国による扶養圧力の話はあくまで見せかけで、扶養義務が実質的にあるのは、配偶者、父母(未成年の子に対する)に縮小されています。まさに核家族の家族構成で、家族システムがもともと核家族である欧米諸国と同じような扶養義務になってきています1)。唯一違う点は、成人した子供や親などに対して、欧米では同居していても扶養義務はないのに対して、日本では同居していたら扶養義務はあることです。しかし、実際の日本の民法上の扶養義務者(絶対的扶養義務者)の範囲は、明治民法から変わらず、配偶者、父母、祖父母、兄弟姉妹、子、孫、ひ孫と幅広く明記され、まさに直系家族の家族構成のままになっています。しかも驚いたことに、「特別な事情があるときは」という条件付きで、おじ、おば、甥、姪など3親等内の親族(相対的扶養義務者)まで含まれており、形式的にはとんでもなく広いです。確かに、戦後しばらくまでは、すぐ近くに住む親族が一緒に農作業をするなど、日常的にも経済的にも助け合うこと(扶養)は、ごく自然でした。生活保護法はまだできたばかりで、社会保障は行き届いていませんでした。しかし、核家族と一人暮らしが圧倒的な多数派となり、社会保障が充実している現在の社会構造では、血縁関係だけを理由に扶養義務を課し続けるのは不自然になっています。これは、血縁関係があるだけで殺人の刑罰が重くなる尊属殺人にも重なります。これは、かつて違憲判決が出ました。また、加害者と血縁関係があるだけで犯罪被害者給付金が減額されることにも重なります。これは、現在裁判中ですが、同じように違憲判決が出るでしょう。扶養義務にしても尊属殺人にしても犯罪被害者給付金にしても、血縁関係を特別視するのは、現在の社会構造では法の下の平等にはならなくなっています。もちろん、家族の絆や血縁関係を重んじること自体は、倫理的に推奨すべきことではあります。しかし、法的に強制すべきことではないというのが現代の価値観です。あとは、法改正を待つだけですが、国民の6割が賛成している選択的夫婦別姓(これもまた核家族による価値観)が法改正されず、なかなか違憲判決も出ないのと同じように、扶養義務の縮小もまだ時間がかかりそうです。次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その5)【ということはこれをすれば医療保護入院は廃止する前に廃れる!(扶養義務の縮小)】Part 2

扶養義務が法的に縮小されると何が良いの?扶養義務は実質的には縮小されていることがわかりました。それでは、その実情に合わせて、法的にも扶養義務が縮小されると、どんなベネフィットがあるでしょうか?まず、やっと家族は扶養義務の呪縛から解放されます。これまで法的には扶養義務があることで、結果的に「親に扶養義務があると思い込む→それなら同居する→扶養義務が生じる」という誘導が起きていました。国による扶養圧力もまさにこの流れの強化を狙っていたでしょう。このトラップに気付き、「別居すれば扶養義務がないことを知る→別居する→扶養義務が生じない」という逆の流れをそれぞれの家族がつくり、扶養しない新しい文化をつくる必要があります。こうすることで、もはや義務感から親は子供と同居しなくなります。成人したら家を出ていけと堂々と言えます。すると、子供は親の扶養を当てにできなくなるため、モラルハザードとして生まれていたひきこもりは当然減るでしょう。さらに、自立するために学校に行く必要があると考えるようになり、不登校も減るでしょう。また、義務感から病気の家族や老親の介護をしなくなります。障害年金や介護サービスなどの社会保障に任せ、家族が抱え込む介護問題も減るでしょう。同じように、成人した子供にたとえ精神障害があっても、実家暮らしの選択肢を与えず、一人暮らしやグループホームを選ばせることができます。これは、本人の心理的自立を促すだけでなく、親は心理的に支援するだけの存在という線引きができます。すると、入院するかどうかについては、提案することはしても、最終的には本人の意思を尊重するでしょう。そもそも同居していないので親は直接的に困ることはなく、わざわざ入院費(3ヵ月で少なくとも10数万円程度)を払いたくないでしょう。しかも、その2でも触れたように、強制入院ビジネスとあいまって、1回同意したら撤回できないとされため、延々と入院費を払わされるおそれもあります。こうして、医療保護入院に同意も反対もしない家族が増えるでしょう。これは、意思表示をしない権利を選んだだけであり、何の後ろめたさも引け目も感じる必要はないです。こうして、医療保護入院は廃止するかどうかの前に、利用されなくなり廃れていくことが見込めます。これは、扶養義務が形式的には広範なのに実質的には縮小されているのと同じ構図です。実は、すでにそのほころびが見え始めています。なぜなら、その1でご説明した市町村長同意がそもそも拡大されたのも、核家族化によって明日香のように家族がいても疎遠なために家族同意の意思表示が示されないケースが増えているからでした。以上より、扶養義務の法的な縮小は、日本のさまざまな社会問題を引き起こす「直系家族病」への根治治療になるでしょう。逆に、もともとのリスクを踏まえて、それでも成人した子供、病気の家族、老親と同居して扶養したい人だけがそれを選択すればいいだけの話になります。選択的夫婦別姓と同じように、「選択的扶養」です。医療保護入院が廃止されると何が良いの?扶養義務が法的に縮小されることによって、医療保護入院は廃れていく運命にあることがわかりました。それでは、最終的に医療保護入院が廃止されると、どんなベネフィットがあるのでしょうか?大きく3つ挙げてみましょう。(1)人権侵害が改善される1つ目は、当然ながら人権侵害が改善されることです。これは、国連の改善勧告を受け入れた形になります。(2)精神障害者の自立が促進される2つ目は、やっと精神障害者の自立が促進されることです。先ほど触れた不登校やひきこもりが減っていくことが見込まれるのと同じように、精神障害者はもはや家族から扶養され保護される対象ではなく、お互いに精神的に自立した大人の関係、対等の関係を築くことができます。これは、親子関係においても、夫婦関係においても言えることです。(3)医療費が大幅に削減できる3つ目は、ついに医療費の大幅な削減ができることです。1回の入院(3ヵ月)で、患者(家族)の自己負担は約10数万円とご説明しましたが、これは高額医療費負担制度を利用しているからです。公的負担は1人あたり約300万円(1日あたり3.3万円)です。ここから入院患者13万人の医療費を単純計算すると、3.3万円×365日×13万人=1.5兆円というとんでもない額になります。この多くが、もともと不要な強制入院ビジネスに流れていたわけです。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その5)【ということはこれをすれば医療保護入院は廃止する前に廃れる!(扶養義務の縮小)】Part 3

医療保護入院が廃止されると何が困るの? その対策は?医療保護入院が廃止されることによって、人権侵害が改善され、精神障害者の自立が促進され、医療費が大幅に削減できることがわかりました。一方で、そうすることで、どんなリスクがあるのでしょうか? そして、どんな対策を講じることができるでしょうか?大きく3つ挙げてみましょう。(1)急性期の患者に治療介入ができなくなる1つ目は、これまで医療保護入院をしていた急性期の患者への治療介入ができなくなると懸念されることです。確かにそのとおりです。そうならないようにするための対策として、措置入院に新たに「急性期症状による自立不全」という要件を追加することができます。措置入院なので、家族同意はなくなり、利害関係のない精神科医(精神保健指定医)2名による判断になり公正になります。ちなみに、これはヨーロッパをはじめとする諸外国に近いやり方です2)。ただし、医療保護入院の患者がいなくなった分、その穴埋めとして、今度は措置入院の患者が長く入院させられる可能性が懸念されます。この対策として、人権擁護の具体的な判断基準や入院期間の期限を明文化する必要があります。そのためにまずは、精神保健福祉法第1条の文言は以下のように、さらに変える必要があります。現在:「…精神障害者の権利の擁護を図りつつ、その医療及び保護を行い、…」↓廃止後:「…精神障害者の権利を擁護して、その医療を行い、…」この変更で最も重要なポイントは、「保護」という言葉を削除することです。保護という言葉は、この言葉の名のもとに、子供扱いして自由を制限するパターナリズム(父権主義)の象徴であり、医療保護入院を担保するためのキーワードであったからです。また、「権利を擁護して」とシンプルに表記せずに「権利の擁護を図りつつ」などと回りくどく表記していたのは、医療保護入院と人権擁護がそもそも矛盾するために、それを避けて、表向きに両立させるためであったこともうかがえます。そして、この変更を踏まえて、精神医療審査会は基本的に精神保健指定医1名と司法関係者(弁護士など)1名による聞き取り調査にすることです。これが、可能な理由として、医療保護入院が廃止されたことで強制入院の患者数は激減しているからです。そして、精神科医も余っているからです。また、異職種の専門家の2人体制にして、同業者の馴れ合いを防ぐ必要もあります。(2)身辺自立が難しい慢性期の患者の行き場がなくなる2つ目は、もともと医療保護入院をしていた患者の中で、摂食や排泄などの身辺自立が難しい慢性期の患者の行き場がなくなると懸念されることです。確かに、そう思う保守的な人はいるでしょう。そうならないようにするための対策として、まずは本人の同意による任意入院に切り替えることです。また、精神科病院をグループホーム(共同生活援助)に機能変更することです。なお、それでも最終的に精神科病院の大半はダウンサイジングや閉院することを迫られるでしょう。その流れをつくるためにも、医療保護入院はいきなり廃止させるのではなく、徐々に廃れさせる必要があります。精神科病院はすでに一定の役割を終えており、社会構造の変化として、仕方のないことです。そして、人権侵害を招く強制入院ビジネスはこれ以上あってはならないことです。(3)地域社会の治安が不安定になる3つ目は、もともと医療保護入院をしていた患者の多くが地域に戻ってくることで、地域社会の治安が不安定になると懸念されることです。確かに、そう思う保守的な人はいるでしょう。そうならないようにするための対策として、浮いた医療費によって、訪問医療、訪問看護、訪問介護(ヘルパー)などにより人数や時間をかけて、地域社会でのサポート体制を欧州諸国のレベルまでに拡充させることができます。「クワイエットルームにようこそ」から「クワイエットルールにさようなら」へラストシーンで、明日香は退院して病院の外を出て、初めて病院の外観を知ります。そして、救急車のサイレンが近づき、先に退院した同室の患者がまた戻ってきたのを見てしまいます。明日香が自由を手に入れたことを俯瞰して噛みしめている様子をうまく描いています。彼女は「クワイエットルーム」(精神科病院への入院)という体験を経て自己成長しました。同時に、日本の社会も、権威主義から自由と平等の価値観(民主主義)へと自己成長しつつあります。その過渡期であるからこそ、さまざまな社会問題が浮き彫りになっているとも言えます。この映画は、それを象徴しているように見えてきます。まさに、「クワイエットルームにようこそ」(権威主義)から、「クワイエットルームにさようなら」(民主主義)です。私たちの多くが、権威に抵抗して自由になる明日香に感動するのも、鎌倉時代から続いた直系家族(権威主義)よりも、原始の時代に続いていた核家族(民主主義)の方が圧倒的に長く、その文化進化に適応した遺伝子進化がまだ残っているからでしょう。遺伝子進化が何万世代も繰り返してちょっとずつ変化するのに対して、文化進化は情報化などの技術革新などによって数世代の間でも大きく変化します。これを踏まえると、精神科病院の関係者は利害関係があるため限界はありますが、精神科病院に直接関わらない医療関係者をはじめ一般の人たちが、この情報化社会で、扶養義務、医療保護入院についてどんどん発信していくことで、より良い社会を目指すことができるのではないでしょうか?一昔前は、がん告知を本人ではなく家族だけにしていました。今ではまったく考えられません。それと同じことが今起きています。「家族の同意で強制入院できるなんて…そんなこと今ではまったく考えられません」と言える未来がすぐ近くに来ているように思われます。1)「生活保護と扶養義務」p.30、p.41、p.99、p.108:近畿弁護士会連合会編、民事法研究会、20142)「医療保護入院」p.40、p76:精神医療、批評社、2020<< 前のページへ

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コンサルトを気持ちよくするには【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第3回

コンサルトを気持ちよくするにはPointプレゼンテーションはSNAPPSで。 コンサルト医に何をしてほしいかを明確にする。緊急性がある場合はためらわず即コンサルト。いつもコンサルト医に感謝の気持ちを忘れずに。症例70歳男性。既往に狭心症と糖尿病あり。1時間前にジムで運動中に胸部絞扼感あり。今もなんとなく胸がつらく救急外来を受診した。体温36.5℃ 血圧130/60 mmHg 心拍数58回/分 呼吸数20回/分 SpO2 99% room air じとっと冷や汗あり。当直の研修医Aは心電図をとったけど自分ではよくわからず(ホントはSTEMI!)。今日の当直の上級医は循環器内科の怖い○○先生であったので、とりあえず血液検査をしてから相談することとした。血液検査とルートを確保して15分ほど経ったところ患者さんは呼吸苦を訴え苦しみ始めた。血圧も80mmHg台へ低下、モニターも心室頻拍が数発認められるようになってきた。どうしてよいかわからずテンパりはじめ、看護師さんにも急かされて以下のようにコンサルトした。研修医 A「研修医Aです。70歳の男性が1時間ほど前にジムで運動中に胸部絞扼感があって」上級医 「心電図は?」研修医 A「STは上がってないような気がします」上級医 「ふん」研修医 A「体温36.5℃、血圧130/60mmHg、心拍数58回/分、呼吸数20回/分、SpO2 room airで99%でした。あと既往に狭心症と糖尿病があるようです。血液検査とルートは確保したのですが、先ほどから血圧も80mmHg台に下がりはじめ、モニターにも心室性頻拍のような変な脈が出てて…ちょっとって感じで…」上級医 「お前、最初っからヤバいって言って早く俺を呼べよ! グルァァァァ!」研修医 A(そういうところが怖くて呼べなかったんだよ…泣)おさえておきたい基本のアプローチプレゼンテーションはSNAPPSで!医師として生きる以上どんな診療科、どんな経験年数を積んでも他科、他病院へのコンサルトは必要である。現代医療はすべて自分1人の診察で完結できるわけではない。患者のためを思って、専門科へ適切にタイミングよく、簡潔に礼節をもってコンサルトができるようになろう。とは言ってもどうすればよいのか…わかってたら苦労しないよね。そんなときはSNAPPS(表)でコンサルト!表 SNAPPS画像を拡大するSNAPPSのうちで最も大事なのは、Aで根拠となる病歴と身体所見を述べ、自分の評価・思考過程を提示すること。ここが間違っていれば、コンサルト医が教えてくれ、次の成長につながる。自分の診断や鑑別診断を根拠ももたずに羅列するだけでは成長が望めないのだ。思考過程をきちんと開示することは、コンサルト医も指導しやすくなるんだ。落ちてはいけない・落ちたくないPitfallsコンサルト医に何をしてほしいかを明確に伝えよう医者は皆忙しい(はず)。コンサルトされる側の先生も今自分が行っている仕事の手を止めてまでコンサルトに出向くかどうかは常に気になる。長ったらしい現病歴だけのプレゼンほど、聞いていてげんなりするものはないんだ。「結局何が言いたいんだってばよ!」ってな感じで、「うーん、よくわからないけどとりあえず行くわ!」と言っていただける先生のほうが少数派であろう。明確に何をしてほしいのかを必ず伝えよう(電話で聞きたいだけなのか、診察に来てほしいのかをまず明確に伝えるべし。次に詳細な内容に入る。入院が必要だと思うので診察に来てほしい、次回の外来に回すのでよいか電話相談したい、画像の確認をしてほしい、まったくわからないので助けてほしい、などなど)。「わからないので助けてほしい」と正直に言うことは全然悪くない。「行けばいいのか、行く必要がないのか」がコンサルトされる側が一番気になるところなんだ。話を引っ張って大どんでん返し! なんて展開は推理小説ならいいが、コンサルトではいただけないんだ。Point例:虫垂炎を疑う患者さんを診ているのですが、正直自信がないので、一緒に診察していただけませんか?緊急性がある場合はためらわず即コンサルトST上昇型急性心筋梗塞、t-PA適応である発症4、5時間以内の脳梗塞、絞扼性腸閉塞、開放骨折など今後の緊急処置が必要な疾患と診断したら、即コンサルトしよう。もう少し血液検査を揃えてから、家族に話を聞いてから、もう少しカルテ書いてからなどと引っ張ってしまうと、患者の大切な時間、専門医の先生が患者に介入するまでの時間を奪ってしまう。結局専門医の先生に連絡してからも手術室やカテ室、追加のスタッフ手配など結構時間がかかってしまうんだから。このときのコンサルトのポイントは診断名からさっさと言うこと。あいまいな表現は避けること。現病歴は最低限でOK。専門医の先生に電話して緊急治療のスイッチを入れるのが先だ!専門医の先生が来られたら積極的にお手伝いをすること。電話のときに何かしておくことはありますか? と一言聞いておくのもbetter。その患者のためにできることをみんなでやろう。Point例:発症2時間ほどの脳梗塞の患者さんが来られたので、至急一緒に診察をお願いできますか?いつもコンサルト医に感謝の気持ちを忘れずに夜間のコンサルト、ましてや院外からのoncallとなると専門医の先生もつらい。だって人間だもの。理不尽にコンサルトした側が怒られることもままあるが、あなたは患者のためを思ってコンサルトしたんだ。今後その患者の診療で主役となるのは患者とともに主治医になる専門科の先生だ。患者のために専門科の先生に頭を下げることは恥ずかしいことではない。患者のためを思って堪えるところはグッと堪えよう。ただし、コンサルトしっぱなしということもよくない。コンサルト先の先生が来られたら必ず自分で直接お礼、手短なプレゼン、検査結果などの準備、患者や家族の案内などをしよう。専門科の先生、患者双方が気持ちよく診療できる、診察を受けられる環境を作ることが非常に大切だ。各科特有のキーワードをしっかり押さえておくことも大事だ。共通言語を使わずしてコンサルトはうまくいくはずもない。脳外科ならCTでの出血部位と型、出血量、midline shift、GCS(Glasgow Coma Scale)など。産科なら妊娠歴、出産歴、流産歴など。最初からできるはずもないので、コンサルトのたびにどんな情報を伝えると、専門科が判断しやすいのかその都度教えてもらって成長しよう。Point実るほど頭を垂れる稲穂かな「あーでもなくて、こーでもなくて…はい、全然わかってなくて、すみません」全然わからない症例ってあるよね。とくに社会的な背景が濃い症例は研修医には太刀打ちできない。配偶者虐待、小児虐待、高齢者虐待、高度希死念慮症例、権利意識の強いVIP患者などは、研修医や専門外の医師にとっては、その対応は至難の業だ。わからないのに無駄に時間を引っ張ってはいけないし、そうかといってうまく専門医にプレゼンできるほど評価もできない。大丈夫、上級医はそんなややこしい症例のためにいるのだから。トラブルになりやすい症例は、団体戦で臨むに限るのも本当のことなのだから。心の中で(だるまさんでぇ~す)と叫んで、手も足も出ないことを前面に出し恥も外聞もプライドも捨ててコンサルトすればいい。そのときは、正直に自分は全然わからないことを謝罪し、全力で尻尾を振るかわいい子犬のように愛くるしいまなざしでコンサルトしよう。ここまで降参や服従の意思を見せても、来てくれなければそれは男気のない〇〇医者ということ(失礼!)。ほとんどの医者は優しく、きちんと助けてくれる、または一緒に悩んでくれるから大丈夫。電話を掛けただけでコンサルト終了ではない専門医に電話をした段階で患者に対する責任は移ったと思ってはいけない。あくまでもコンサルト医が病院に到着して、患者を診て初めて責任の所在が移るんだ。電話で呼び出して、その後患者を放置して、他の患者に手をとられて、患者のことを忘れてしまうと、とんでもないことになってしまうことがある。病態は刻々変化しうるのだ。コンサルト医だってさまざまな理由で遅れてしまうこともある。コンサルト医が病院へ向かう途中で事故にでもあえば、遅くなるのは必定ではないか。風呂に入っていたら、案外急いでも時間がかかる。嫁さんに「また夜中に出ていくの。私と仕事とどっちが大事なの」なんて夫婦の修羅場にあっているかもしれない。コンサルト医が病院に到着するまでは、何が何でも初療医が患者の責任を負う必要があるんだよ。勉強するための推奨文献Wolpaw T, et al. Acad Med. 2009;84:517-524.Bothwell J, et al. Ann Emerg Med. 2020;76:e29-e35.(コンサルトする側、コンサルトされる側双方のTipsがちりばめられたgood review)林寛之 著. Dr.林の当直裏御法度-ER問題解決の極上Tips90 第2版. 三輪書店;2018.寺澤秀一 著. 話すことあり、聞くことあり-研修医当直御法度外伝. CBR;2018.増井伸高 編・著. 救急現場から専門医へ あの先生にコンサルトしよう!. 金芳堂;2021.執筆

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タンパク質などの“酸性食品”が要介護リスクに影響か

 2050年までに介護を必要とする高齢者は現在の4倍にまで増加すると言われており、高齢者に対する介護の必要性を低減させる取り組みが喫緊の課題とされている。そのような状況を踏まえ、今回、国立長寿医療研究センターの木下 かほり氏らが酸性食品(タンパク質やリンを多く含むもの)がもたらすdisability(要介護状態)の発生率を調査した結果、食事性酸負荷が高い(=酸性食品の摂取量が高い)ほど、高齢女性では要介護状態の発生率が増加したことを明らかにした。代謝性アシドーシスが筋肉の異化を亢進させることは既知であり、酸性食品が高齢者の筋肉減少を助長させる可能性があったものの、要介護状態発生との関連性はこれまで不明であった。The Journal of Frailty & Aging誌2025年2月号掲載の報告。 研究者らは、ベースラインで要介護状態ではない愛知県東浦町に居住している75歳以上の1,704例を対象に縦断的研究を実施した。ベースライン時点での食事性酸負荷は、食事中の栄養素*の組み合わせによって定義される値の1つとされ、尿の酸性度を反映する潜在的腎臓酸負荷(Potential Renal Acid Load:PRAL)を使用して評価した**。また、参加者はPRALに基づき3グループに分類された(T1を基準としてT1~T3)。主要評価項目は、追跡期間1年間での新たな要介護状態の発生率で、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)は、年齢、BMI、生活歴、喫煙、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、エネルギー摂取量、アルコール摂取量を調整した後、多重ロジスティック回帰分析で算出された。なお、PRAL の影響は性別に特異的であると報告されているため、男女それぞれの分析が行われた。*酸性栄養素としてタンパク質・リンを、アルカリ性栄養素としてカリウム・カルシウム・マグネシウムをPRAL算出に用いる**この値が高いほど、より酸性に傾きやすい食事であることを示す 主な結果は以下のとおり。・対象者1,704例の年齢範囲は75~98歳で、女性は890例(52.2%)だった。・T1、T2、T3グループのPRAL(mEq/日)範囲は、男性では-64.51~0.21、0.27~11.34、11.41~61.00、女性ではそれぞれ-61.22~-3.84、-3.75~5.89、5.90~38.68であった。・体重1kg当たりのタンパク質摂取量は、男女共にT1からT3グループにかけて有意に増加し、動物性タンパク質比率もこれらのグループ間で有意に増加した。・対照的に、野菜と果物の摂取量は、T1からT3グループにかけて有意に減少した。・要介護状態は男性44例(5.7%)、女性71例(8.7%)に発生した。・T2およびT3の要介護状態のOR(95%CI)は、男性で0.79(0.35~1.76)および0.81(0.37~1.79)、女性で1.10(0.57~2.13)および1.96(1.06~3.61)であった。 木下氏らは「今後の研究でPRALの効果に関する性差を調査する必要があるが、要介護状態を予防するために高タンパク質の摂取を必要とする高齢者にとっては、タンパク質を豊富に含む食品に加えて、野菜や果物を多く含む食事が重要な食事戦略となる可能性がある」としている。

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統合失調症の新治療戦略、マイクロバイオーム治療に関するメタ解析

 統合失調症は、慢性的な精神疾患であり、さまざまな症状が認められる疾患である。その症状は、大きく陽性症状、陰性症状、認知機能に分類される。統合失調症の病因は多因子性であり、遺伝的、神経生物学的、環境的因子が複雑かつ相互に関与しており、神経生物学的因子は、さまざまな神経伝達物質システムの異常と関連していると考えられる。この多因子性の病因および神経生物学的因子により、症状や臨床所見が多種多様となる。現在の抗精神病薬による治療は、依然として課題に直面しており、新たな治療法が求められている。最近の研究では、統合失調症患者と健康対照者における腸内マイクロバイオームの違いが明らかになっており、統合失調症と胃腸の健康に複雑な関連があると報告され、マイクロバイオームを標的とした介入が、臨床症状の改善に寄与する可能性が示唆されている。ブラジル・サンパウロ大学のLucas Hassib氏らは、薬物療法中の統合失調症患者の臨床アウトカムに対するマイクロバイオーム治療の有効性を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Brain,Behavior, & Immunity-Health誌2024年12月11日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・81件の研究より、バイアスリスクの低い7件のランダム化比較試験、2件の非盲検試験を含む9件の研究(417例)をメタ解析に含めた。・全体的な複合エフェクトサイズでは、マイクロバイオーム治療後の臨床症状の有意な改善が示されたが(Hedges'g=0.48、95%信頼区間:0.09〜0.88、p=0.004、I2=62.35%)、エフェクトサイズは小さく、研究の異質性は中程度であった。・臨床研究および前臨床研究において、とくにラクトバチルス属とビフィズス菌属によるマイクロバイオーム治療は、神経、免疫、代謝経路に作用し、脳腸軸を介して統合失調症の症状に効果的な影響をもたらす可能性が示唆されている。 著者らは「統合失調症の主要または補助的な治療におけるマイクロバイオーム治療の可能性を明らかにするためには、大規模かつ高品質な試験が求められる」としている。

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患者さんの血糖管理を楽にする週1回注射のインスリン イコデク/ノボ

 ノボノルディスクファーマは、世界初の週1回投与のインスリンアナログ製剤インスリン イコデク(商品名:アウィクリ)の1月30日の発売に合わせ、「これからの2型糖尿病におけるインスリン治療」をテーマに都内でプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、イコデクの製品説明のほか、専門医によるインスリン治療のアンメットニーズ、イコデクの第III相臨床試験である「ONWARDS試験」の詳しい内容、使用に適する患者像などが説明された。インスリン導入の障壁を超すことに期待 「企業紹介と製品説明」をテーマに杉井 寛氏(同社取締役副社長経営企画本部 本部長)が、企業概要とイコデクの製品概要を説明した。デンマークに本社を置く同社の社会的意義は「糖尿病で培った知識や経験を基に、変革を推進し深刻な慢性疾患を克服する」ことであり、現在、糖尿病、肥満症、希少疾患、心血管および新疾患領域で活躍をしている。 そして、主要製品を上梓している糖尿病について、「2型糖尿病におけるインスリン導入の遅延」について触れ、医師に聴取したアンケートを示し、概要を説明した。 アンケートで「医師自身が2型糖尿病だとしたらインスリン治療を開始するHbA1c値」についての回答は8.2%、「患者さんのインスリン治療を開始するべきと考えるHbA1c値」についての回答は8.7%、「インスリン治療を実際に患者さんに勧めたHbA1c値」についての回答は9.6%と医師の理想と実際の導入時期には大きな隔てがあることを示した1)。そして、注射回数の多さが導入遅延の原因の1つであり、こうした障壁の解決が模索されていた。 今回登場したイコデクは週1回持効型溶解インスリンアナログ注射液であり、糖尿病患者の負担を軽減すると期待されている。イコデクは、ヒトインスリン分子を修飾して半減期が延長されるように設計されている。注射をすると1週間分のイコデクが1度に投与されることになるが、そのほとんどがアルブミンと結合し、時間と共に蓄積し、循環血液中の不活性な貯蔵体(デポー)が形成される。そして、イコデクは標的組織にゆっくりと、少量ずつ移行し、血糖降下を促す機序となっているという。臨床試験では第III相試験としてONWARDS試験が行われ、いずれもほかのインスリンと比較しても非劣性であり、低血糖の発現など安全性の面でも良好な結果だった。杉井氏は、これらの結果を踏まえ、インスリン導入が今後進展することに期待を寄せた。医師と患者さんの望みに合うインスリン製剤 「これからの2型糖尿病におけるインスリン治療」をテーマに綿田 裕孝氏(順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学 教授)が、インスリン治療の概要やONWARDS試験について説明を行った。 インスリンは血糖を下げる唯一のホルモンであり、2型糖尿病ではインスリン分泌能が低下するか、インスリン抵抗性が増大することで、体内のインスリン作用が不足し、食後や空腹時高血糖となる。こうした糖尿病で懸念されるのが神経障害や腎障害、眼障害の合併症であり、最近では、心疾患や肝臓障害、認知症も併存しやすい疾患として知られている。 糖尿病の治療では、近年、多くの血糖降下薬などが使用できるようになり、血管合併症予防のための血糖管理を容易にする薬剤が登場している。そのためわが国の糖尿病治療の目標も「糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL」を掲げ、糖尿病合併症の発症、進展の阻止を目指して診療が行われている。 非インスリン依存状態の治療では、生活習慣改善のために食事療法と運動療法がまず第1選択として行われ、さらに効果不良の場合に血糖降下薬などが追加される。 インスリン依存状態の治療では、インスリン分泌が著しく低下している患者さんには、基礎インスリンと追加インスリンの治療が、インスリン分泌が比較的保たれている患者さんには、基礎インスリンと血糖降下薬での治療が通常行われている。 ただ、インスリン治療の障壁として、低血糖の発生、治療の複雑化、患者さんの注射の実施率などの課題が指摘されている。実際、医師への「インスリン治療に対する認識」のアンケートでは、「毎日注射しなくても良好にコントロールできるインスリンが欲しい」と91.2%の医師が回答し、「毎日の注射の回数が患者さんの障害になっている」と58.5%の医師が問題性を指摘している2)。また、患者さん側の週1回インスリン製剤の認識として「利便性が高い」「アドヒアランスの向上」「治療への抵抗感の改善」などの声もあり、医師と患者双方の側で週1回のインスリン製剤が望まれていることが報告された。他のインスリンと比較し効果は非劣性かつ安全 今回発売されたイコデクは、第III相臨床試験で“ONWARDS試験”が行われ、6つの試験が実施された。 ONWARDS1はインスリン治療歴のない2型糖尿病患者を対象とした試験で、イコデク群492例(週1回投与)とグラルギンU100群492例(1日1回投与)を78週にわたり有効性と安全性を比較したもの(日本人164例を含む国際共同治験)。52週までのHbA1c変化量と推移では、ベースラインからイコデク群が-1.6%だったのに対し、グラルギンU100群は-1.4%で非劣性が検証され、統計的な有意差が認められた。また、78週経過後も同様の変化量で推移していた。HbA1c7.0未満の達成率は、78週でイコデク群が54.5%だったのに対し、グラルギンU100群は46.4%だった。CGMパラメータについて、投与後48~52週のTIR(time in range:血糖値が70~180mg/dLの範囲にある時間の割合)について、イコデク群が71.9%だったのに対し、グラルギンU100群は66.9%と統計的に有意に高い値だった。安全性につき重大または臨床的に問題となる低血糖の発生は、83週でみた場合、イコデク群が61件(12.4%)だったのに対し、グラルギンU100群は70件(14.2%)だった3)。 ONWARDS2は、Basalインスリンで治療中の2型糖尿病患者を対象としたインスリン以外の糖尿病治療薬の併用/非併用下でのイコデク群263例(週1回投与)とグラルギンU100群263例(1日1回投与)を26週にわたり有効性と安全性を比較したもの(日本人100例を含む国際共同治験)。26週までのHbA1c変化量と推移では、ベースラインからイコデク群が-0.9%だったのに対し、グラルギンU100群は-0.7%で非劣性が検証され、統計的な有意差が認められた。HbA1c7.0未満の達成率は、26週でイコデク群が40.3%だったのに対し、グラルギンU100群は26.5%だった。安全性につき重大または臨床的に問題となる低血糖の発生は、26週でみた場合、イコデク群が37件(14.1%)だったのに対し、グラルギンU100群は19件(7.2%)だった。 また、副次的評価項目として糖尿病治療満足質問票(DTSQ)の総スコアでは、26週でイコデク群が4.2だったのに対し、グラルギンU100群は3.0で、イコデク群の方が高いスコアで、有意に改善していた。「満足度」、「利便性」、「融通性」などの各スコアでいずれもイコデク群の方が高かった4)。 最後に綿田氏は、イコデクの使用に適切な患者像として具体的に次の7つを示した。(1)2型糖尿病で基礎インスリンによる治療を開始する患者さん(2)これまでにインスリン導入がなかなかできなかった患者さん(3)若い方~壮年の患者さん(4)毎日のインスリン注射、もしくはそのサポートが負担になっている患者さん(5)高齢でインスリン分泌が少なくなっている患者さん(家族による投与も含む)(6)訪問診療/訪問看護、来院での週1回投与が可能な患者さん(医療従事者が投与)(7)1型糖尿病で毎日のインスリン注射ができない患者さん(高血糖や糖尿病性ケトアシドーシス回避のために) 綿田氏は、「今後、こうした患者さんを対象に使用されると考えられるが、実臨床での効果を検討しつつ、学会などで知見を集積していきたい」と展望を語り、講演を終えた。

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中血管閉塞脳卒中への血管内治療、アウトカムを改善せず/NEJM

 中血管閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者に対する発症12時間以内の血管内血栓除去術(EVT)は、標準治療(現行ガイドラインに基づく静脈内血栓溶解療法)と比較して90日時点のアウトカム改善に結び付かなかったことが、カナダ・カルガリー大学のM. Goyal氏らESCAPE-MeVO Investigatorsが行った第III相多施設共同前向き無作為化非盲検評価者盲検試験の結果で示された。主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者にはEVTが有効であるが、中血管閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者にも当てはまるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2025年2月5日号掲載の報告。最終健常確認後12時間以内の中血管閉塞を伴う脳梗塞患者を対象、標準治療のみと比較 研究グループは、中血管閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中で、救急部門への受診が最終健常確認後12時間以内であり、ベースラインの非侵襲的脳画像検査で治療可能と確認された患者を、EVT+標準治療を受ける群(EVT併用群)または標準治療のみを受ける群(標準治療のみ群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。中血管閉塞は、中大脳動脈のM2またはM3の閉塞、前大脳動脈のA2またはA3の閉塞、または後大脳動脈のP2またはP3の閉塞と定義し、A1およびP1はとくに含まれなかった。標準治療は、急性期脳卒中管理についてカナダ、米国、欧州の現行ガイドラインで推奨されている静脈内血栓溶解療法(tenecteplaseまたはアルテプラーゼによる)であった。 主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])が0または1であった患者の割合であった。90日時点のmRSスコア0/1達成患者割合、EVT併用群41.6% vs.標準治療のみ群43.1% 2022年4月~2024年6月に5ヵ国から計530例が登録され、255例がEVT+標準治療(EVT併用)を、275例が標準治療のみを受けた。84.7%の患者は、中大脳動脈の梗塞であった。 90日時点のmRSスコアが0または1であった患者の割合は、EVT併用群41.6%(106/255例)、標準治療のみ群43.1%(118/274例)であった(補正後率比:0.95、95%信頼区間[CI]:0.79~1.15、p=0.61)。 90日時点の死亡率は、EVT併用群13.3%(34/255例)、標準治療のみ群8.4%(23/274例)であった(補正後ハザード比:1.82、95%CI:1.06~3.12)。 As-Treated集団で評価した重篤な有害事象のうち、症候性頭蓋内出血の発現は、EVT併用群5.4%(14/257例)、標準治療のみ群2.2%(6/272例)であった。

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早期TN乳がんへの術後アテゾリズマブ、iDFSを改善せず(ALEXANDRA/IMpassion030)/JAMA

 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、術後化学療法へのアテゾリズマブ上乗せは、ベネフィットが示されなかった。ベルギー・Institut Jules BordetのMichail Ignatiadis氏らが無作為化試験「ALEXANDRA/IMpassion030試験」の結果を報告した。TNBC患者は、転移のリスクが高く、若年女性や非ヒスパニック系の黒人女性に多いことで知られている。さらにStageII/IIIのTNBC患者は、最適な化学療法を受けても約3分の1が早期診断後2~3年に転移再発を経験し、平均余命は12~18ヵ月である。そのため、化学療法の革新にもかかわらずアンメットニーズが存在する。直近では、TNBC患者の早期治療戦略の1つは術後化学療法であったが、免疫療法を上乗せすることのベネフィットについては明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年1月30日号掲載の報告。31ヵ国330施設超で行われた第III相国際非盲検無作為化試験、iDFSを評価 ALEXANDRA/IMpassion030試験は、31ヵ国330施設超で行われた第III相の国際非盲検無作為化試験であり、初回治療として手術を受けた18歳以上のStageII/IIIのTNBC患者を対象とした。被験者登録は2018年8月2日~2022年11月11日、最終フォローアップは2023年8月18日であった。 被験者は1対1の割合で、標準化学療法(20週間)に加えアテゾリズマブの投与(最長1年間)を受ける群(アテゾリズマブ群、1,101例)または標準化学療法のみを受ける群(化学療法群、1,098例)に無作為化された。標準化学療法は、パクリタキセル80mg/m2を週1回12サイクルに続き、アントラサイクリン(エピルビシン90mg/m2またはドキソルビシン60mg/m2)+シクロホスファミド600mg/m2を2週間ごと4サイクル投与した。アテゾリズマブは、840mgを2週ごと10サイクル、その後1,200mgを3週間ごととし、最長で計1年間投与した。 主要評価項目は、無浸潤疾患生存期間(iDFS)で、無作為化から同側または対側乳房の浸潤乳がん発生、遠隔転移、またはあらゆる原因による死亡までの期間と定義した。 予定被験者登録数は2,300例であったが、独立データモニタリング委員会の勧告に基づき2,199例で登録は中止となった。全患者が、計画された早期中間解析および無益性解析の後にアテゾリズマブの投与を中止された。試験は、前倒しされた最終解析まで継続した。iDFSイベント発生、アテゾリズマブ群12.8%、化学療法群11.4% 登録被験者の年齢中央値は53歳で、自己申告に基づく人種/民族は、ほとんどがアジア人または白人であり、ラテン系またはヒスパニックはわずかであった。 iDFSイベントが発生したのは、アテゾリズマブ群141例(12.8%)、化学療法群125例(11.4%)であり(追跡期間中央値32ヵ月)、最終的なiDFSの層別化ハザード比は1.11であった(95%信頼区間:0.87~1.42、p=0.38)。 化学療法群と比較して、アテゾリズマブ群ではGrade3または4の治療関連有害事象が多かったが(54% vs.44%)、死亡に至った有害事象(0.8% vs.0.6%)および試験中止に至った有害事象の発現は同程度であった。化学療法曝露は両群で同等であった。

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毎日のダークチョコレート摂取は心肺機能を向上させる

 ダークチョコレート摂取が、糖尿病や心血管疾患、高血圧に何らかの作用を与える報告が多数されている。では、毎日ダークチョコレート摂取した場合、身体機能に変化を与えることはあるのだろうか。この疑問にギリシャ・テッサロニキのアリストテレス大学体育学部スポーツ医学研究室のZacharias Vordos氏らの研究グループは、マラソンなどの持久力が必要な男性ランナーに、毎日ダークチョコレートを摂取させ、その効果を評価した。その結果、ダークチョコレートは、ランナーの動脈機能を改善し、血管の健康を高めることがわかった。この結果はSports誌2024年12月号に掲載された。2週間50gのダークチョコレート摂取で血圧など低下作用 研究グループは、ダークチョコレートが持久力を必要とするランナーの動脈機能に及ぼす影響を調べることを目的に、25~55歳の男性アマチュアランナー46例を対象に調査した。 最初の評価では、臨床検査、動脈硬化測定、心肺運動テストを実施。その後、参加者は通常のトレーニング習慣を維持したまま、毎日50gのダークチョコレート(カカオ70%)を2週間摂取し、この期間の後にベースラインの評価を繰り返した。 主な結果は以下のとおり。・脈波伝播速度は11.82%減少し(p<0.001)、増大指数は19.47%減少した(p<0.001)。・収縮期上腕血圧は2.12%(p<0.05)、拡張期血圧は2.79%(p<0.05)、平均血圧は2.41%(p<0.05)低下した。・中心動脈圧も低下し、収縮期圧は1.24%(p<0.05)、拡張期圧は2.80%(p<0.05)、平均圧は2.43%(p<0.05)だった。・安静時心拍数は4.57%増加し(p<0.05)、左室駆出時間は4.89%減少した(p<0.05)。・運動時間は2.16%(p<0.05)、(最大)心拍数は1.15%(p<0.05)、VO2maxは2.31%(p<0.05)増加し、無酸素性閾値は運動時間で6.91%(p<0.001)、VO2maxで6.93%(p<0.001)シフトした。 これらの結果を受け研究グループは「ダークチョコレートは、持久力を必要とする男性ランナーの動脈機能を改善し、血管の健康を高めることに有意な改善がみられた」としている。

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ADHDと診断された人の寿命は短い?

 注意欠如・多動症(ADHD)の成人は、同年代のADHDではない人と比べて平均寿命が男性で平均6.8年、女性で8.6年短いと推定されることが、新たな研究で示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)加齢・臨床心理学分野のJoshua Stott氏らによるこの研究結果は、「The British Journal of Psychiatry」に1月23日掲載された。Stott氏は、「これは大きな数字であり、憂慮すべき状況だ」とNew York Times紙に語っている。 世界でのADHDの有病率は2.8%と推定されている。Stott氏は、ADHDの人は、衝動的な行動を取りがちで、時間や健康をうまく管理できない傾向が強く、それがよりリスクの高い選択につながっている可能性があると説明する。New York Times紙は、このような困難が、ADHDの人での事故率や慢性疾患の罹患率の高さに関連していると報じている。 これらのことは、過去の研究でも裏付けられている。2022年のメタアナリシスでは、ADHDの人は、事故や自殺などの「不自然死」で死亡する可能性が一般人口よりも3倍近く高いことが示されている。また、2019年の研究では、ADHDの関連因子である喫煙、飲酒、睡眠不足、低収入が寿命の短縮と関連することが指摘されている。しかし、これまで、死亡データを基にADHDの人の寿命がADHDではない人と比べてどの程度短縮し得るのかを調査した研究は実施されていなかった。 Stott氏らは今回、2000年から2019年にかけて英国の792カ所の一般診療所から収集されたプライマリケアのデータを用いて、ADHDの人の寿命がどの程度短縮するのかを調べた。対象は、ADHDの診断を有する18歳以上の成人3万39人(ADHD群)と、年齢、性別、診療所を一致させた対照群30万390人であった。 その結果、ADHD群では、一般的な身体的および精神的な健康状態に関する診断が、対照群よりも多いことが明らかになった。また、ADHD群の寿命は、対照群と比べて男性で6.78年(95%信頼区間4.50~9.11)、女性で8.64年(同6.55~10.91)短いことも示された。ただし、本研究ではADHD群での具体的な死因は特定されていない。 研究グループは、ADHDの人が短命である原因には、喫煙や不十分な治療などの修正可能な要因が関係している可能性が高いと推測し、そのような治療や支援におけるアンメットニーズを法的措置によって改善する必要があるとしている。その具体例として、ADHDの人に多く見られる身体的および精神的健康問題への認識を高める取り組みの推進や、精神的な支援へのアクセスや禁煙支援サービスを適切なタイミングで利用できる環境整備の重要性を説いている。 Stott氏は、「ADHDの人には多くの強みがあり、適切な支援と治療を受けることで成長を期待できる。しかし、実情は支援を欠いていることが多く、生活の中でストレスになるようなことや社会的排除を経験することも多い。こうしたことが、彼らの健康や自尊心に悪影響を与えている可能性がある」と話している。

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2024年12月期 決算説明

2024年12月期業績について      :代表取締役社長 CEO 藤井勝博中期経営“ビジョン2026”の進捗について:代表取締役社長 CEO 藤井勝博※IRページは こちら からお戻りいただけます※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。※IRページは こちら からお戻りいただけます.banAdGroup{display:none;}

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