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日本における第2世代抗精神病薬誘発性ジストニア〜JADER分析

 名古屋大学のTakumi Ebina氏らは、さまざまな第2世代抗精神病薬(SGA)のジストニアリスクを比較し、性別による影響および発生までの期間、その結果との関連を調査した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2025年1月21日号の報告。 2004年4月〜2023年11月の日本における医薬品副作用データベース(JADER)のデータを分析した。クロザピンを除く経口SGAに関連する症例を抽出した。オッズ比を用いてSGAと性別との関連を評価した。ジストニア発生までの期間中央値および四分位範囲(IQR)を分析した。ジストニア発生までの期間とアウトカム(回復、改善、未回復/残存)との関連性の評価には、ROC曲線分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・経口SGAに関連するジストニアの報告は9,837件抽出された。・ルラシドンは、他のSGA(リスペリドン、アリピプラゾール、クエチアピン、オランザピン)よりもジストニアの報告割合が有意に高かった。・アリピプラゾールに関連するジストニアの報告割合は、パリペリドンおよびリスペリドンよりも低かったが、クエチアピンおよびオランザピンよりも高かった。・女性は、男性よりもジストニアの報告割合が有意に高かった。・経口SGA誘発性ジストニア症例148例における、発生までの期間中央値は125日(IQR:19.75〜453.25)。・アウトカム別の分析では、アウトカムが良好であった患者は、不良であった患者と比較し、ジストニア発生までの期間がより短かった。・ROC曲線分析では、アウトカムを鑑別するための閾値は91.5日、感度は71.7%、特異度は69.9%であることが示唆された。 著者らは「SGAによるジストニアのリスクは、SGA間および性別で異なる可能性があり、SGA誘発性ジストニアは、遅発的に発生するケースが多い」と結論付けている。

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1日1杯の緑茶が花粉症を抑制か~日本人大規模コホート

 緑茶は、カテキンなどの抗酸化作用による抗炎症効果によって、アレルギー症状に効果があると考えられているが、アレルギー症状との関係を検討した大規模な疫学研究は限られている。今回、順天堂大学の青木 のぞみ氏らは、日本人の大規模疫学コホートにおいて、緑茶、番茶、ウーロン茶、紅茶の摂取頻度とスギ花粉症との関係を検討した。その結果、お茶、とくに緑茶を1日1回以上習慣的に摂取すると、スギ花粉特異的IgE陽性の可能性が低下することがわかった。Journal of Nutritional Science誌に2025年1月10日掲載された。 本研究は、2013~15年に募集した宮城県および岩手県に住む40歳以上の約6万人の大規模コホートにおいて、血液検査によるスギ花粉抗体値を測定され、自記式質問票によるお茶の摂取頻度(週1回未満、週1~2回、週3~4回、週5~6回、1日1杯、1日2~3杯、1日4~6杯、1日7~9杯、1日10杯以上から選択)に回答した1万6,623人のデータを用いた。ロジスティック回帰モデルにより、摂取頻度(週1回未満、週1~6回、1日1杯以上の3群に分類)と血清中のスギ花粉特異的IgE値(ルミカウント0~1.39:陰性、1.40以上:陽性)との関連を解析した。  主な結果は以下のとおり。・緑茶について、1日1杯以上は週1回未満を基準としてスギ花粉特異的IgE陽性の調整オッズ比が0.81(95%信頼区間:0.70~0.94、p<0.01)であった。・緑茶以外では摂取頻度とスギ花粉特異的IgEとの間に統計学的に有意な関連は認められなかった。

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第22回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2025

 日本臨床腫瘍学会は2025年2月13日にプレスセミナーを開催し、3月6~8日に神戸で開催される第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)の注目演題などを紹介した。今回の会長は徳島大学の高山 哲治氏が務め、「Precision Oncology Toward Practical Value for Patients」というテーマが設定された。 2019年にがん遺伝子パネル検査が保険収載となり今年で5年を迎える。検査数は毎年順調に増加しているものの、「検査を受けられるのは標準治療終了後、または終了見込み時に限られる」「保険適用となる薬剤が限られ、かつ承認外薬を使うのは煩雑」などの要因から、検査後に推奨された治療に到達する患者は10%程度に限られる現状がある。日本臨床腫瘍学会をはじめとしたがん関連学会は長くこの状況を問題とし、改善を図る活動を行ってきた。今回のテーマにもそうしたメッセージが込められている。 今年の演題数は計1,267題、うち509題は海外からのものだ。また12月中旬まで臨床試験の結果を待って最新の内容を盛り込む「Late Breaking Abstract」をはじめて採用し、約20題が採択された。以下、主な演題を紹介する。プレジデンシャルセッション・全16演題Presidential Session 1 呼吸器 血液3月6日(木)8:30~11:101)PS1-1 TTF-1陰性の進行非扁平上皮非小細胞肺に対するカルボプラチン+nab-パクリタキセル+アテゾリズマブ併用療法の第II相試験:F1NE TUNE(LOGIK2102)2)PS1-2 完全切除後のALK遺伝子転座陽性非小細胞肺に対する術後Alectinibの第III相試験(ALINA試験):日本人薬物動態、安全性解析3)PS1-3 Phase I/II study of tifcemalimab combined with toripalimab in patients with previously treated advanced lung cancer4)PS1-4 In-depth Responder Analysis of PhALLCON, a Phase 3 Trial of Ponatinib Versus Imatinib in Newly Diagnosed Ph+ ALLPresidential Session 2 泌尿器 頭頸部 TR・臨床薬理3月7日(金)15:00~17:405)PS2-1 未治療切除不能尿路上皮に対してエンホルツマブベドチン+ペムブロリズマブ併用療法と化学療法を比較したEV-302試験:アジア人サブグループ解析6)PS2-2 Safety profile of belzutifan monotherapy in patients with renal cell carcinoma: A pooled analysis of 4 clinical trials7)PS2-3 LIBRETTO-531:RET遺伝子変異陽性甲状腺髄様に対する一次治療としてのSelpercatinibの有効性・安全性・生存のアップデート8)PS2-4 血中遊離DNAによりHER2遺伝子増幅が認められた固形がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの多施設共同臨床第II相試験(HERALD/EPOC1806試験) データ アップデートPresidential Session 3 消化管3月7日(金)8:20~11:009)PS3-1 RAS野生型大腸におけるmodified-FOLFOXIRI+セツキシマブ療法の効果予測臨床因子:DEEPER試験(JACCRO CC-13)10)PS3-2 血中循環腫瘍DNA陽性の治癒切除後結腸・直腸がん患者を対象としたFTD/TPI療法とプラセボとを比較する無作為化二重盲検第III相試験(CIRCULATE-Japan ALTAIR/EPOC1905)11)PS3-3 再発高リスクStage II結腸に対するオキサリプラチン併用術後補助化学療法の至適投与期間に関する第III相試験:ACHIEVE-2試験12)PS3-4 進行食道がんに対するNivolumab+Ipilimumab or 化学療法:CheckMate648における日本人サブグループの45ヶ月フォローアップPresidential Session 4 肝胆膵 希少がん 乳腺3月8日(土)8:30~11:1013)PS4-1 CRAFITYスコア2点の肝細胞に対する一次薬物療法:レンバチニブと免疫療法の治療効果の比較14)PS4-2 Final Results of TCOG T5217 Trial:SLOG vs Modified FOLFIRINOX as First-Line Treatment in Advanced Pancreatic Cancer15)PS4-3 消化管・膵原発の切除不能進行・再発神経内分泌腫瘍に対するエベロリムス単剤療法とエベロリムス+ランレオチド併用療法のランダム化第III相試験:JCOG190116)PS4-4 脳転移を伴う又は伴わない治療歴のあるHER2陽性の進行/転移性乳患者を対象とするトラスツズマブ デルクステカンの試験結果(DESTINY-Breast12)会長企画・特別セッション特別講演がんの近赤外光線免疫療法(光免疫療法)The Era of Liquid Biopsy Biomarkers and Precision Medicine in Gastrointestinal Cancers特別企画腫瘍循環器学の重要性と実態:小室班研究を踏まえて会長企画シンポジウム全ゲノムシークエンスの臨床実装ゲノム医療で推奨された保険適応外薬をどのように使うか?激論!『条件付き承認制度』の活用はドラッグ・ロス対策に有用か!?ctDNAに基づくがん治療希少がんの遺伝性腫瘍がん遺伝子パネル検査は1次治療開始前に実施するべきか?大腸がんに対する新たな分子標的治療薬注目のシンポジウム 今回の学会テーマと深く関連するがん遺伝子パネル検査の課題と今後の方向性については上記シンポジウムで2つのテーマが設定されている。京都大学の武藤 学氏が関連する2つのセッションの概要を説明した。会長企画シンポジウム2:ゲノム医療で推奨された保険適用外薬をどのように使うか?3月6日(木)14:00~15:30 遺伝子変異に基づいて推奨された治療薬は日本の医療制度では保険適用外で使用困難な現状があり、治験や先進医療の活用が求められるものの、制度上の制約が多い。欧米では患者支援プログラム(PAP)やコンパッショネート・ユースの仕組みがある。東京科学大学の池田 貞勝氏が基調講演を行い、医師、患者代表、経済学者がそれぞれの立場から発表を行う。会長企画シンポジウム6:がん遺伝子パネル検査は1次治療開始前に実施するべきか?3月8日(土)14:00~15:30 日本において保険収載の遺伝子パネル検査は標準治療終了後に行うこととされているが、患者の状態が悪化し、推奨された治療を受けられないケースも多い。海外では1次治療前の検査が推奨されており、日本でも早期検査の意義が議論されている。早期のパネル検査の有効性を検討する臨床試験の結果を共有し、がん種別の検討や厚労省の見解を発表する。 さらに、昨年の学会で初めて行われたSNSを使った学会広報に関する活動に関する報告も引き続き行われる。これまでJSMOのSNSワーキンググループ(SNS-WG)は、昨年の学会において対象プログラムのスライド撮影およびSNS投稿解禁を実現し、今年の学会ではSNS投稿時の公式ハッシュタグを「#JSMO25」に統一することとした。これまで国内では「#JSMO2024」、海外では「#JSMO24」が多く使われ、SNS上で分断が起こっていたことに対処したものだ。委員会企画 禁煙推進セッション/SNSワーキンググループシンポジウム オンコロジー領域におけるSNS利用3月6日(木)8:30~10:00 インターネット上の医療情報のファクトチェックをテーマとした論文を執筆した豊川市民病院の呉山 菜梨氏、SNSを使った医療コミュニケーション経験が豊富な帝京大学ちば総合医療センターの萩野 昇氏が講演を行い、SNS-WGメンバーの東海大学・扇屋 大輔氏が昨夏の「医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー」においてWGが行った情報発信と成果について報告する。―――――――――――――――――――第22回日本臨床腫瘍学会 開催概要会期:2025年3月6日(木)〜8日(土)会場:神戸コンベンションセンター開催形式:現地(現地主体、一部ライブ配信+オンデマンド配信)SNSハッシュタグ:#JSMO25学会サイト:https://site2.convention.co.jp/jsmo2025/―――――――――――――――――――

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肥満者の鎮静下内視鏡検査、高流量鼻カニューレ酸素投与で低酸素症が減少/BMJ

 肥満患者への鎮静下消化管内視鏡検査中に、高流量鼻カニューレ(HFNC)を介し酸素投与を行うことで、他の有害事象が増加することなく、低酸素症、無症候性呼吸抑制、および重度低酸素症の発生率が有意に減少した。中国・上海交通大学のLeilei Wang氏らが、上海の大学病院3施設で実施した無作為化並行群間比較試験の結果を報告した。HFNCによる酸素投与は、正常体重患者における鎮静下消化管内視鏡検査中の低酸素症の発生率を減少させるが、肥満患者におけるHFNCを介した酸素投与に関する見解には議論の余地があった。BMJ誌2025年2月11日号掲載の報告。通常の鼻カニューレ群とHFNC群に無作為化 研究グループは、肥満(BMI≧28)および米国麻酔学会(ASA)クラスI~IIで、鎮静下消化管内視鏡検査を受ける予定の18~70歳の患者を、通常の鼻カニューレ群とHFNC群に1対1の割合で無作為に割り付け、プロポフォールと低用量sufentanilによる鎮静処置中にそれぞれ酸素投与を行った。 主要アウトカムは、処置中の低酸素症(75%≦SpO2<90%・<60秒)の発生率とした。副次評価項目は、処置中の無症候性呼吸抑制(90%≦SpO2<95%・すべての時間)、重度低酸素症(SpO2<75%・すべての時間、または75%≦SPO2<90%・>60秒)、およびその他の有害事象とした。鎮静下内視鏡検査中の低酸素症の発生率は、21.2%vs.2.0% 2021年5月6日~2023年5月26日に1,000例が登録され、無作為化された。このうち、同意撤回などを除く984例(平均年齢49.2歳、女性36.9%[363例])が試験を終了し、最大解析対象集団(FAS)として包含された。 鼻カニューレ群と比較してHFNC群で、低酸素症の発生が有意に減少した。低酸素症の発生率はHFNC群2.0%(10/497例)、鼻カニューレ群21.2%(103/487例)であった(群間差:-19.14、95%信頼区間[CI]:-23.09~-15.36、p<0.001)。 無症候性呼吸抑制はHFNC群5.6%(28/497例)、鼻カニューレ群36.3%(177/487例)であり(群間差:-30.71、95%CI:-35.40~-25.92、p<0.001)、重度低酸素症はそれぞれ0%(0/497例)、4.1%(20/487例)であった(-4.11、-6.26~-2.48、p<0.001)。 その他の鎮静関連の有害事象は、両群間で差は認められなかった。

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アルドステロン産生腺腫に対する超音波内視鏡下経胃高周波アブレーション/Lancet

 左側アルドステロン産生副腎腺腫(APA)の治療において、超音波内視鏡下経胃高周波アブレーション(EUS-RFA)は副腎摘出術に代わる安全な方法であることが示された。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のGiulia Argentesi氏らFABULAS study groupが、多施設共同前向き概念実証研究「FABULAS試験」の結果を報告した。片側性APAは高血圧症の原因の5%で治癒の可能性があるが、その局在診断には侵襲的手技が必要である。分子イメージングを用いたEUS-RFAは、胃に非常に近い左側APAの治療において新たな低侵襲治療となる可能性があった。著者は、「APAの大部分を切除すれば、原発性アルドステロン症と高血圧症を完全に治癒できる可能性がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年2月7日号掲載の報告。EUS-RFAの安全性を検証する第I相試験を実施 FABULAS試験は、原発性アルドステロン症、分子イメージングおよびインターベンショナル消化器病学を専門とする英国の大学病院3施設で実施された。 対象は、内分泌学会の基準により原発性アルドステロン症と診断され、副腎静脈サンプリングまたはPET-CTで左側APAが確認された18歳以上の男女であった。3グループに分けて登録し、グループ2と3は、それぞれ前のグループの最初の4例のデータを独立安全性委員会で評価した後、次のグループの登録を開始することとした。 いずれのグループも、2回の分子イメージング(1回目でAPAの診断と位置の特定、2回目でアブレーションの程度の定量化)を実施後に、APA診断の確認のための穿刺生検に続き、19Gアブレーションカテーテルを用いてアブレーションを実施した。持続超音波ガイド下での操作により、試験の進行に伴って10~20秒の治療(焼灼)回数は漸増された。 主要エンドポイントは安全性で、アブレーション後24時間または48時間における事前に規定された主要ハザード(胃および副腎穿刺:穿孔、出血、または主要臓器の梗塞)の発生とした。副次エンドポイントは、3ヵ月後の分子イメージングにおける対側副腎と比較した切除APAの放射性トレーサー取り込みの減少、ならびに生化学的および臨床的成功の国際的コンセンサス基準(RFA後6ヵ月時の血漿アルドステロン濃度/血漿レニン比および血圧の低下)とした。主要ハザードの発生は確認されず 2018年2月21日~2023年2月10日に、44例がスクリーニングされ、28例が登録された(男性21例[75%]、女性7例[25%]、平均年齢57.7歳[SD 10.3]、白人16例[57%]、黒人11例[39%]、アジア人1例[4%])。28例のうち21例(75%)で1回、7例(25%)で2回、計35回のアブレーションを行った。すべてのPET-CT陽性結節は、超音波内視鏡プローブで特定され、生検カテーテルとアブレーションカテーテルによる穿通に成功した。 事前に規定された主要ハザードの発生は認められなかった。 3ヵ月後のPET-CT陽性APAによる放射性トレーサー取り込みの局所的減少は、21例(75%[95%信頼区間:55~91])で生化学的完全治癒または部分的治癒と関連しており、12例(43%[24~61])で高血圧の完全治癒または部分的治癒(臨床的治癒)と関連していた。4例では、分子イメージングでのAPA消失が、すべての降圧治療中止時の収縮期血圧135mmHg未満および拡張期血圧85mmHg未満と関連していた。

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飲食店メニューのカロリー表示は摂食障害の患者にとって有害

 飲食店のメニューに、来客の健康に配慮してカロリーが表示されていることがあるが、そのような情報は摂食障害の患者にとってはかえって有害ではないかとする論文が、「BMJ Public Health」に1月29日掲載された。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のTom Jewell氏らが行ったシステマティックレビューに基づく検討の結果であり、摂食障害患者の場合、カロリー表示を見ることが非健康的な信念の強化や飲食店の利用を避けるという行動につながり得るという。 世界的な肥満人口増大への対策の一つとして、飲食店メニューへの含有カロリー併記を義務化する国が増えている。これは当然ながら、食べ過ぎを防ぐための情報として提供されるものだが、一方で摂食障害の患者に対してこうした施策が悪影響を及ぼす懸念も指摘されている。Jewell氏らはこの点について、システマティックレビューを行った。 この研究では、システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に準拠して、MEDLINE、Embase、APA PsycINFO、Web of Science、CINAHLほか計8件の文献データベースを用いた査読済み論文、および、Google ScholarとPsyArXivを用いた査読前論文を検索した。2人の研究者が独立してスクリーニング等を行い、最終的に16件(研究対象者数は合計8,074人)の研究報告を抽出した。 論文の上席著者であるJewell氏は、それらの報告に基づくメタ統合(質的検討)の結果として、「摂食障害のある人々が、カロリー表示を推進するという施策の蚊帳の外に置かれていることに、不満を抱いていることが浮き彫りにされた」と総括している。そして、肥満の蔓延によって、政策立案者が摂食障害患者への影響という点に、全く配慮せずに物事を推し進めている現状の問題を指摘。「公衆衛生政策としては本来、カロリー表示のプラスの側面とマイナスの側面のバランスを取ることが極めて重要だ」と述べている。 この研究で明らかになったカロリー表示のマイナスの側面として、例えば、摂食障害患者はメニューに併記されているカロリー表示を特に重視する傾向が認められ、その情報を無視することは困難であることが示された。ある研究の参加者は、「表示を見ることで、カロリーを過剰に意識するようになる。自分の体が膨らんでいく様子が頭に浮かび、不快に感じる」と語っていた。 別の研究では、カロリー表示のために、仲間同士の会話がダイエットの話題になってしまうことへの不快感を訴える患者が報告されていた。「同席している人たちに、カロリーの話はやめてほしいと頼まなければならず、気まずい雰囲気になってしまう。そして、私は食事に誘われなくなっていく」と回答した患者もいた。また、「カロリー表示のために疾患の回復が確実に遅くなった。今では家庭内での食事しか安心できない」と話す患者の報告もあった。 論文の筆頭著者であるKCLのNora Trompeter氏は、「政策立案の際、通常は肥満人口の削減に有効かどうかという点に焦点が当てられるが、採択しようとしている政策が摂食障害を持つ人々に、意図しない害を及ぼしている可能性を念頭に置くことも重要である。カロリー表示が摂食障害患者に与える影響をより深く理解するために、さらなる研究が求められる」と述べている。

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HER2陽性早期乳がん術前化学療法後non-pCRに対するT-DM1のアップデート(解説:下村昭彦氏)

 術前化学療法(分子標的薬併用を含む)は早期乳がんに対する標準治療として確立している。HER2陽性乳がんやトリプルネガティブ乳がんでは、術前化学療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られた場合は再発のリスクが下がることが知られているが、得られなかった場合(non-pCR)の再発リスクが高いことがunmet medical needsとして認識されてきた。そのため、non-pCRに対する術後治療に対するエビデンスがここ10年で蓄積し、また現在も開発されている。 トラスツズマブ併用術前化学療法を受けたHER2陽性早期乳がんで、手術病理でnon-pCRであった症例を対象としてT-DM1の有効性を示した試験がKATHERINE試験である。2019年にNEJM誌に報告され(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2019;380:617-628.)、日本国内でも2020年に適応拡大されている。KATHERINE試験は、タキサンならびにトラスツズマブを含む術前化学療法を受け、乳房または腋窩リンパ節に浸潤がんが遺残していたHER2陽性乳がんに対し、術後治療として当時の標準療法であるトラスツズマブ単剤とT-DM1を比較した試験である。ホルモン受容体陽性の場合はホルモン療法が併用された。 今回、KATHERINE試験の長期フォローアップの結果がNEJM誌に発表された(Geyer CE Jr, et al. N Engl J Med. 2025;392:249-257.)。追跡期間中央値8.4年で、主要評価項目である無浸潤疾患生存(iDFS)はハザード比(HR)0.54(95%CI:0.44~0.66)とT-DM1群で有意に良好であった。イベントはT-DM1群で19.7%、トラスツズマブ群で32.2%に発生し、7年iDFS率はT-DM1群80.8%、トラスツズマブ群67.1%であった。副次評価項目の全生存(OS)のHRは0.66(95%CI:0.51~0.87、p=0.003)とT-DM1群で統計学的有意に良好であった。 Non-pCRに対する術後T-DM1はすでに実臨床で用いられている確立した標準治療である。実臨床の根拠を強くする結果であるといえよう。KATHERINE試験の解釈で注意が必要なのは、本試験ではペルツズマブが使用されていないことである。HER2陽性早期乳がんにおけるペルツズマブは、pCRの改善を目的とした術前化学療法では標準的に併用され、また術後治療における標準治療ともなっている(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2017;377:122-131.)。術後抗HER2療法を実施する場合は、トラスツズマブ単剤が選択されるケースは多くはない。転移乳がんにおけるT-DM1療法の効果は、ペルツズマブ治療歴があると弱まることが知られている(Dzimitrowicz H, et al. J Clin Oncol. 2016;34:3511-3517.、Noda-Narita S, et al. Breast Cancer. 2019;26:492-498.)。このことが術後治療におけるT-DM1の価値に直接影響するわけではないが、エビデンスの解釈の際には意識する必要がある。

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フレイルのチェックリスト

心身の状態をチェックするさまざまな方法基本チェックリスト(厚生労働省) 8項目以上該当でフレイル 4~7該当でプレフレイルツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会 秋下 雅弘先生講演資料より心身の状態をチェックするさまざまな方法フレイルの評価方法(J-CHS基準*一部改訂)3項目以上に該当: フレイル、 1~2項目に該当: プレフレイル、 該当なし: ロバスト(健常)(Satake S, et al. Geriatr Gerontol Int. 2020; 20(10): 992-993. )ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会 秋下 雅弘先生講演資料よりより簡単にセルフチェックできる方法1つでも該当するとフレイルの可能性あり世界的にCHS基準(The Cardiovascular Health Study)が使われています。日本の医療機関ではこの基準を改変した「日本版CHS基準(J-CHS基準)」を用いてチェックが行われます。本サイトでは、J-CHS基準をもとに、より身近な事例へ一部表現を変更しております。(監修医師:秋下雅弘先生)ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会 秋下 雅弘先生講演資料よりペットボトルチェックフレイルの兆候が無いか、簡単にチェックできる方法の1つフレイルの1症状である筋力低下の目安として握力を ペットボトルのふたを開けるという動作 で確認できるチェック方法筋力低下をはかる一つの目安が握力といわれており、男性は28kg以下、女性は18kg以下(J-CHS基準よりだとフレイルの可能性があるといわれています。https://www.jstage.jst.go.jp/article/pttochigicon/26/0/26_051/_pdf/-char/ja)ツムラ作成 「50歳からのフレイルアクション」発表会秋下 雅弘先生講演資料より

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コロナは続く【Dr. 中島の 新・徒然草】(568)

五百六十八の段 コロナは続く寒い、寒すぎる!一時は暖かい日が続いていたのに、再び冬の寒さが戻ってきました。外を歩くと風が顔に当たるし、吸う空気まで冷たいです。今朝も出勤時に車に乗ろうとしたところ、フロントガラスがバリバリに凍りついていました。お湯をかけて溶かそうとしたのですが、一度では足りず。結局、家とパーキングを2往復する羽目になりました。いつになったらこの寒さが終わるのでしょうか。さて、先日の脳外科外来。定期的に通院しているご夫婦がお見えになりました。ご主人はいろいろな病気を持っているのですが、私が担当しているのは外傷性てんかん。3ヵ月ごとの抗痙攣薬処方ですね。ところでこのご主人、昨年に新型コロナウイルスに感染してしまったのです。別の病院のICUに入院しているということで、奥さんから私に電話がありました。奥さん「主人がコロナにかかり、気管切開をして人工呼吸器につながれているんです。主治医の先生から『もし心臓が止まったら心臓マッサージをしますか』って尋ねられたんですが、どう返事したらいいのでしょうか?」突然の相談に私も驚きましたが、ご主人の50歳という年齢を考えると、まだまだ諦めるわけにはいきません。中島「まだ若いのですから、諦めないで! 必要な時には心臓マッサージもしてもらいましょう」そうお伝えしました。幸いにもご主人は回復し、リハビリ病院経由で自宅に戻ることができました。退院当初は多少の麻痺が残っていましたが、自転車に乗るようになったらなぜか少しずつ回復してきたとのこと。仕事への復帰にはまだもう少しかかりそうではありますが、何と言ってもご本人の努力、奥さんの協力があったからこそでしょう。感動した私は「それもこれも奥さんの支えがあったからですよね!」とご主人に言ったのですが、その反応はあっさりしたものでした。「そうなんですかね」とだけ。中島「いやいやいや、そこは『家内がいたからここまで回復できたんです!』と言ってくださいよ。声に出して練習しましょう」そう励ましてみましたが、ご主人の反応は今ひとつ。照れくさいのかもしれませんが、やはり感謝の気持ちは言葉で伝えてこそ。ご主人を励ました後で、私は奥さんのほうにも声をかけました。中島「奥さんもですね、次に『心臓マッサージしますか?』と尋ねられたら即座に『お願いします。どんな後遺症が残っても私が全部背負って生きていきます!』と言ってみたらどうですか」するとニコニコしながらも奥さんからはあっさりした反応が返ってきました。奥さん「あまり大きな後遺症が残ってもちょっと困りますから」何だか私1人が感動物語を作ろうと空回りしているみたいでした。とはいえ、これまで何度もご主人の大病を経験している奥さんのこと。「後遺症」という言葉ひとつにも重みが違います。口調は淡々としていますが、いつも献身的に外来受診に付き添う姿には感心せざるを得ません。忘れてはならないのがコロナ治療をした病院です。「心臓マッサージしますか」と尋ねられたりしたということで冷たい印象を持つ人もいるかもしれませんが、気管切開してまで救命したのですから大したものです。感謝しかないですね。それとは別に驚いたことがありました。私の処方していた抗痙攣薬が、コロナ治療中から中止されっぱなしだったのです。いろいろ考えた末の決断なのか、単に再開するのを忘れていただけなのか。それは謎です。とはいえ、数ヵ月間の服薬中断にもかかわらず、一度も痙攣は起きていないとのこと。経緯はどうあれ、投薬が減るのならありがたいことです。いずれにせよ、新型コロナウイルスとの戦いはまだ終わったわけではありません。今後も引き続き、気を引き締めつつ診療を続けていく必要がありますね。最後に1句ご夫婦と コロナを語る 冬の朝 

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成人CAR-T療法の実際【Oncologyインタビュー】第46回

出演:京都大学医学部付属病院 血液内科 北脇 年雄氏CAR-T療法は今や造血器腫瘍治療に欠かせないものとなった。その一方、複雑な治療工程や有害事象の管理など照会元施設にとって押さえておくべき情報は多い。成人のCAR-T療法の基本について、京都大学附属病院の北脇年雄氏に解説いただいた。参考CAR-T細胞療法のトリセツ(中外医学社)血液内科治療のトリセツ(中外医学社)

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テレビドラマ「説得」【親が輸血だめなら子供もだめ!?(医療ネグレクト)】Part 1

皆さんは、宗教上の理由で、輸血を拒む人をどう思いますか? 輸血自体にウイルス感染症などのリスクもあるため、たとえ輸血しなければ死んでしまうとしても、最終的には患者の自己決定権が優先されます。しかし、親が自分の子供への輸血を拒んでいる場合はどうでしょうか? そして、輸血しなければ死んでしまう場合はどうでしょうか?今回は、医療ネグレクトをテーマに、かつてのテレビドラマ「説得」を取り上げます。このドラマは、実際の事件をドラマ化しており、そのやり取りにはリアリティがあります。そして、この輸血拒否に対しての学会の対応ガイドラインと2023年までに出された厚労省の指針もご紹介します。さらに、輸血をどうするかという医療倫理としてだけでなく、子供にはどうするかという「子育て倫理」としても一緒に考えてみましょう。なんで輸血がだめなの?主人公は荒木。脱サラして小さな書店を妻と一緒に営んでいます。3人の子供にも恵まれ、ごく普通の家庭生活を送っていました。そんななか、ある日、2番目の子供の健が交通事故に遭います。荒木夫妻は医師から複雑骨折をして出血多量であるため、輸血して手術をすれば助かると言われます。ところが、荒木夫妻は輸血を頑なに拒みます。荒木は「宗教上の問題です」「私たちの宗教は輸血を禁じているんです」と説明します。代わる代わるに医師たちが説得を試みるのですが、荒木夫妻は一貫して「輸血しないで手術してください」と懇願するのです。別室での待機中、荒木夫妻は聖書の教えを唱え始めます。「あらゆる肉なるものの魂は、その血であり、魂がその内にあるから、いかなる肉なるものの血も食べてはならない。すべて、それを食べるものは断たれる」と。そして、妻が「私たちは委ねたんじゃない。あなたも私も健も、神の教えに従うって。それでいいって」と言います。荒木が「だけど、健にもしものことがあったら?」と戸惑っていると、妻は「わかってくれると思う、あの子は」と言い切ります。そしてとうとう救急車で運ばれてから数時間後、健は、目の前に輸血の点滴が準備されている手術台の上で、輸血されることのないまま、手術されることのないまま、息を引き取ります。荒木夫妻が悲しみに暮れていると、中学生の長女が駆けつけてきて、「健ちゃんかわいそうよ。大丈夫よ。健ちゃんは天国に行って必ず復活するんだもの。永遠の命を授かるんだもの」とたしなめるのでした。輸血拒否の論理は、血=命である。肉を食べることはできるが、その血は地に注いで神に返さなければならない。血を食べてしまうと、神から見放されてしまい、死んで天国に行けなくなるということです。そして、輸血も血を食べることになり禁じられます。ただし、自己血輸血や、主要成分ではないアルブミンや免疫グロブリンは受け入れる信者もいて、解釈が分かれています1)。それにしても、苦悩しながらも自分の子供の命よりも信仰を優先する言動には、あまりにも不合理に思われます。一方で、説得する医師の1人は「人間は信仰のためには死にもするし、殺しもするんです。今世界中で宗教上の違いから、どれだけの紛争や戦争が起こっているか」と述べ、理解を示そうとします。このセリフから、信仰とはそもそも不合理なものであり、それを文化的に受け入れられているかどうかの問題であることがわかります。そして、文化的に受け入れられない場合、精神医学的には妄想と呼ばれます。つまり、信仰と妄想は紙一重であり、表裏一体であることもわかります。実際の画像研究においても、信仰(宗教体験)と妄想状態(統合失調症)は、同じ脳領域が過活動になっていることがわかっています2)。なお、信仰と妄想の類似性の詳細については、関連記事1をご覧ください。次のページへ >>

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テレビドラマ「説得」【親が輸血だめなら子供もだめ!?(医療ネグレクト)】Part 2

輸血禁止の教えに子供はどうすればいいの?荒木夫妻は、以前に健が宿題の読書感想文を家で音読していた時のことを回想します。健は「…王子はお父さんをとても尊敬していたのです。僕も王子のようにお父さんの言うことをよく聞いて、信仰の道にがんばりたいと思います」と誇らしげに締めくくっていました。また、事故が起きる3週間前にも、母親が「交通事故起こしても、輸血してあげられないんだから」「本当に気を付けてね」と念押ししていました。健は「うん、いいよ」と軽く言っていました。これらのやり取りをもとに、荒木夫妻は、自分たちだけでなく、健も輸血を拒否する意思を持っていると考えていました。最後の最後で医師たちが健に直接確認しようと、「生きたいだろ?」と大声で呼びかけます。しかし、時すでに遅く、彼は返事をしません。そこに立ち会っていた荒木は、あとで「健は生きたいって。生きたいって言ったんだ。おれにはわかった」と打ち明けます。実際の事件では、その男の子は、医師から「輸血してもらうようにお父さんに言いなさい」と呼びかけられると、「死にたくない。生きたい」と訴えていました。当然ながら、小学5年生の子供が、いくら信仰心があるからといって、そのために死を選ぶことは考えにくいです。彼が信仰の道に頑張ると宣言し、輸血禁止に同意していたのは、そうでもしなければその家で生きていけないと思っていたからでした。つまり、子供には、最初から選択肢などないのでした。彼の言動は単純で、教えに沿った発言をしたら親が喜ぶから、ただそうしているだけでしょう。逆に、教えに少しでも疑問を抱いたことを口走ればどうなるでしょうか?ドラマでは描かれていませんでしたが、実際には、親から「お前はサタンだ」と激怒され、むち打ち(これも教えの1つ)が行われます1)。明らかに、親が宗教を子供に強要しています。これは、宗教的虐待と呼ばれています。また、このような親に育てられた子供は、「宗教2世」「カルト2世」と呼ばれています。なお、一般的な子供虐待の詳細については、関連記事2をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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テレビドラマ「説得」【親が輸血だめなら子供もだめ!?(医療ネグレクト)】Part 3

輸血拒否に医療はどうすればいいの?健が死んで1ヵ月後、担当していた医師が、荒木に再会し、言います。「心臓外科が専門なんですが、手術しても社会に復帰できない子がたくさんいるんです。宗教的に言えば、神がそういうふうにつくったとしか…それを手術して、神の意思に反してるんじゃないかって気がする時も。そう言いながらも、やはり今手術しないと死んでしまうと言えば、やはり…あの直後、うちの病院では、今後(子供には)承諾が取れなくても、医師の判断で輸血をするという決定をしました」と。実際に、2008年に日本輸血・細胞治療学会と日本小児科学会は合同でガイドラインを出しました。そして、2022年と2023年に厚労省は、このガイドラインを踏まえて、宗教的虐待と医療ネグレクトに関する指針を出しました3,4)。なお、医療ネグレクトとは、医師が必要と判断した医療を親が子供に受けさせないことです。このガイドラインでは、年齢を3つの時期に区切り、場合分けをしています。まず、18歳以上は当然ながら、本人の意思が尊重されます。逆に、14歳以下は、拒否が親や本人にあったとしても、なるべく輸血しないとしつつも、最終的には輸血は可能になります。注目すべきは、15歳から17歳の年齢です。本人と親がどちらも拒否した場合のみ、輸血は不可になります。たとえば、長女は「教えを守れば天国に行ける」と確信していたので、中3で15歳になっているとすると、彼女に輸血することはできません。逆に、どちらかしか拒否しなかった場合は、なるべく輸血しないとしつつも、最終的には輸血は可能になります。なお、15歳で分けている理由は、15歳が民法で遺言の効力が生まれる年齢と定められているからです。また、知的障害などによって医療に関する判断能力がない場合は、14歳以下と同じく、輸血は可能になります。さらに、輸血を含めて治療が親によって阻害される場合は、児童相談所に虐待通告し、児童相談所で一時保護のうえ、家庭裁判所による親権停止の審判を受けて、治療を行うことができます。緊急性がある場合は、審判確定までの間に権利を保護する暫定的な処分(保全処分)を申し立てることで、すぐに効力が発生する措置がとられます。実際に、2021年に親権停止が認められたのは107件で、医療ネグレクトが原因とされるものは21件でした1)。また、輸血拒否をする教団(「エホバの証人」)の広報によると、2017年から2022年の5年間で、親権停止などの法的措置がとられたのは13件でした1)。「説得」とは?このドラマは、親の信仰によって子供の命が救えなくなるという、宗教と医療の衝突を生々しく描いていました。そして、信仰とは、妄想と同じく不合理で訂正不能であるため、いくら理屈をこねたり情に訴えたりして説得しようとしても、納得が得られないものであることもわかりました。学会のガイドラインや厚労省の指針のおかげで、親の信仰によって子供の命が救えなくなることはなくなりました。しかし、まだ問題が残っています。それは、命にかかわる急性疾患とは違い、すぐに命にかかわらない慢性疾患や、担当した医師が言っていたように手術しても必ずしも治るとは限らない疾患についてです。たとえば、実際に、子供が精神的に不調でも親が偏見やいわゆる根性論から児童精神科を受診させないケースは、時々見受けられます。このような場合は、司法が親権停止の判断を出すのが難しくなります。つまり、どこまでが医療ネグレクトでどこまでが親の裁量とするかという線引きの問題がまだ残っています。これは、医療を含む子育て全般にも言えることです。この線引きのために、信仰を押し付けるのはもっての外ですが、経験則や自分の思い入れ、思い込みではなく、アカデミックな視点が必要です。それは何より、子供の不利益にならないようにするためだからです。これからは、医療だけでなく、子育てにも倫理観が必要な時代になってきます。これは、医療倫理を超えて、子育てのあり方にも広がる「子育て倫理」と呼べるでしょう。なお、今回は治療をさせない親がテーマでしたが、逆に治療をさせすぎる親については、関連記事3をご覧ください。1)宗教と子供p.106、p.118、p.122、pp.124-125、pp.149-153:毎日新聞取材班編、明石書店、20242)宗教の起源p.246:ロビン・ダンバー、白揚社、20233)宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A:厚生労働省子供家庭局長通知、20224)宗教の信仰等を背景とする医療ネグレクトが疑われる事案への対応について:厚生労働省子供家庭局長、2023虐待についての関連記事教育虐待そして父になる(続編・その1)【英才教育で親がハマる「罠」とは?(教育虐待)】教育ネグレクト映画「かがみの孤城」(その2)【実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?(不登校へのペアレントトレーニング)】Part 1<< 前のページへ■関連記事映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その1)【宗教体験と幻覚妄想は表裏一体!?(統合失調症の二面性)】Part 1Mother(続編)【虐待】映画「ラン」(前編)【なんで子供を病気にさせたがるの?(代理ミュンヒハウゼン症候群)】Part 1

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抗菌薬による虫垂炎治療、虫垂切除の回避率は?~メタ解析

 個々の患者データを用いたメタ解析の結果、急性虫垂炎に対する抗菌薬治療によって、最初の1年間で約3分の2の患者が虫垂切除を回避できたものの、虫垂結石を伴う場合は合併症のリスクが高まったことを、オランダ・アムステルダム大学のJochem C. G. Scheijmans氏らが明らかにした。Lancet Gastroenterology & Hepatology誌2025年3月号掲載の報告。 これまでのランダム化比較試験によって、合併症のない急性虫垂炎に対する抗菌薬は、虫垂切除術に代わる効果的で安全な治療とされている。しかし、これらの試験はそれぞれの包含基準が異なり、アウトカムや合併症の定義も異なっている。そこで研究グループは、個々の患者データのメタ解析を実施し、虫垂切除術と比較した抗菌薬治療の安全性と有効性を評価した。 PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsをデータベースの開設から2023年6月6日まで検索し、画像診断で急性虫垂炎が確認された成人(18歳以上)の治療として、虫垂切除術と抗菌薬治療を比較したランダム化比較試験を抽出した。合併症に関する1年間の追跡データがない試験は除外した。主要アウトカムは1年間の合併症発生率とし、重要な副次アウトカムは1年間の虫垂切除率であった。 主な結果は以下のとおり。・887件の論文がスクリーニングされ、8件が組み入れ対象となり、そのうち6件のランダム化比較試験の2,101例が解析対象となった。抗菌薬群は1,050例、虫垂切除術群は1,051例であった。・1年間の追跡期間で合併症が認められたのは、抗菌薬群57例(5.4%)、虫垂切除術群87例(8.3%)であった(オッズ比[OR]:0.49[95%信頼区間[CI]:0.20~1.20]、リスク差:-4.5%ポイント[95%CI:-11.6~2.6])。・介入前の画像診断で虫垂結石を認めた集団では、抗菌薬群のほうが虫垂切除術群よりも合併症リスクが高かった(193例中29例[15.0%]vs.190例中12例[6.3%]、OR:2.82[95%CI:1.11~7.18]、リスク差:13.2%ポイント[95%CI:2.3~24.2])。・抗菌薬群で虫垂切除術を受けたのは356例(33.9%)であった。・抗菌薬群の虫垂結石を認めた集団で虫垂切除術を受けたのは193例中94例(48.7%)と多かった一方、抗菌薬群の虫垂結石を認めなかった集団では857例中262例(30.6%)であった。 研究グループは、「これらのデータは、共同意思決定(Shared Decision Making)における重要な要素となるだろう」とまとめた。

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精神科再入院に対する各抗うつ薬の影響比較

 うつ病患者は、健康状態が悪化することが少なくない。さらに、複数の入院を経験した患者は、予後不良である傾向が高まる。うつ病に対する第1選択治療は、依然として抗うつ薬治療であるが、各抗うつ薬が精神科再入院リスクに及ぼす影響を評価したデータは、限られている。米国・ラトガース大学のHannah Mei氏らは、精神科入院うつ病患者における退院時の抗うつ薬選択と再入院率との関連を評価した。Cureus誌2024年12月22日号の報告。 対象は、抗うつ薬治療により退院した成人うつ病患者。対象患者の精神科再入院率を評価するため、単一施設レトロスペクティブカルテベースレビューを実施した。主要アウトカムは、抗うつ薬治療による30日間の精神科再入院率の比較とした。副次的アウトカムには、抗うつ薬治療による6ヵ月および1年間の精神科再入院率を含めた。オッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)、p値を算出し、各抗うつ薬治療により退院した患者とそれ以外の抗うつ薬で治療した患者における再入院のORを比較した。 主な結果は以下のとおり。・この研究で用いられていた抗うつ薬は、bupropion、デュロキセチン、エスシタロプラム、fluoxetine、ミルタザピン、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドン、ベンラファキシン。・退院時にセルトラリンで治療されていた患者は、他の抗うつ薬または複数の抗うつ薬を併用していた患者と比較し、30日以内の精神科再入院リスクが約4分の1であった(OR:0.228、95%CI:0.053〜0.978、p<0.05)。・退院時に抗うつ薬を併用していた患者は、単剤治療していた患者と比較し、再入院リスクが高かった(OR:4.517、95%CI:1.581〜12.908、p<0.05)。 著者らは「精神科入院うつ病患者に対する抗うつ薬の選択は、症状の再発や再入院リスクに影響を及ぼす可能性があり、慎重に検討する必要があることが示唆された。うつ病患者の精神科再入院リスクに及ぼす可能性のある他の因子を評価するためにも、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

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急性期脳梗塞、EVT+高気圧酸素治療vs.EVT単独/Lancet

 血管内血栓除去術(EVT)が可能であった主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者において、高気圧酸素治療(normobaric hyperoxia treatment)の追加は、EVT単独の場合と比較して90日時点の機能的アウトカムが優れ、安全性に関する懸念はみられなかった。中国・首都医科大学のWeili Li氏らOPENS-2 Investigatorsが多施設共同無作為化単盲検シャム対照比較試験の結果を報告した。EVTは急性期虚血性脳卒中の再開通率を改善するが、EVTを受けた患者の約半数は良好な機能的アウトカムを得られない。研究グループは、EVT+高気圧酸素治療が、機能的アウトカムに及ぼす影響を評価した。Lancet誌2025年2月8日号掲載の報告。90日時点のmRS順序スコアを比較 研究グループは中国の総合脳卒中センター26施設において、発症後6時間以内のEVT治療が可能であった18~80歳の主幹動脈閉塞を伴う急性期虚血性脳卒中患者を対象に試験を行った。 適格患者をEVT+高気圧酸素治療を受ける群またはEVT+シャム高気圧酸素治療を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは、双方向Web応答システムを用いた最小化プロセスに基づき、各試験センターでの割り付けのバランスを全体的にとるとともに、年齢・性別・閉塞部位・静脈内血栓溶解薬の使用のベースラインカテゴリに応じた層別化も行った。被験者および評価者は、治療割り付けをマスクされた。 高気圧酸素治療では、100%酸素を非再呼吸マスク(non-rebreather mask)装着下で流量10L/分にて4時間投与、または挿管を要した患者には吸入酸素濃度(FiO2)1.0で投与した。シャム治療では、100%酸素を流量1L/分にて、またはFiO2 0.3で投与した。 主要アウトカムは、ITT集団(治療割り付けを受けた全患者を含む)で評価した90日時点の修正Rankinスケール(mRS)の順序スコアの比較とした。安全性は、あらゆる酸素療法を受けた全患者で評価した。mRSスコアの補正後共通オッズ比は1.65で有意に改善 2021年4月22日~2023年2月5日に、473例がスクリーニングを受け、282例(ITT集団)がEVT+高気圧酸素治療群(140例)またはEVT+シャム高気圧酸素治療群(142例)に無作為に割り付けられた。年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:57~71)、75/282例(27%)が女性、207/282例(73%)が男性であり、282例(100%)全員が中国の漢民族であった。 90日時点で、mRSスコア中央値は、EVT+高気圧酸素治療群が2(IQR:1~4)、EVT+シャム高気圧酸素治療群は3(1~4)であった(補正後共通オッズ比:1.65[95%信頼区間[CI]:1.09~2.50]、p=0.018)。 90日時点で、死亡は、EVT+高気圧酸素治療群で14/140例(10%)、EVT+シャム高気圧酸素治療群では17/142例(12%)報告された(補正後リスク差:-0.02[95%CI:-0.09~0.06])。重篤な有害事象の発現は、それぞれ28/140例(20%)、33/142例(23%)であった(補正後リスク差:-0.03[95%CI:-0.12~0.07])。

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活動性ループス腎炎、オビヌツズマブ+標準治療の有効性を確認/NEJM

 活動性ループス腎炎の成人患者において、タイプIIのヒト化抗CD20モノクローナル抗体オビヌツズマブ+標準治療は標準治療単独と比較して、完全腎反応をもたらすのに有効であることが、米国・Northwell HealthのRichard A. Furie氏らREGENCY Trial Investigatorsが行った第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果で示された。オビヌツズマブは、標準治療を受けているループス腎炎患者を対象とした第II相試験において、プラセボと比較して有意に良好な腎反応をもたらすことが示されていた。NEJM誌オンライン版2025年2月7日号掲載の報告。76週時点の完全腎反応を評価 試験は15ヵ国で行われ、生検で活動性ループス腎炎と診断された18~75歳の成人患者を、オビヌツズマブを2種類の投与スケジュール(1,000mgを1日目、2週目、24週目、26週目、50週目、52週目に投与もしくは50週目は投与しない)のいずれかで投与する群、もしくはプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。全患者は無作為化時にミコフェノール酸モフェチルと経口prednisoneによる標準治療を開始し、経口prednisoneは12週目までに7.5mg/日、24週目までに5mg/日を目標用量として投与した。 主要エンドポイントは76週時点の完全腎反応とし、尿蛋白/クレアチニン比<0.5(尿蛋白、クレアチニンともmg単位で測定)、推算糸球体濾過量(eGFR)値がベースライン値の85%以上、および中間事象(レスキュー治療、治療失敗、死亡または早期の試験中止など)がないことと定義した。 76週時の重要な副次エンドポイントには、64~76週目のprednisone投与量が7.5mg/日以下で完全腎反応を得られていたこと、尿蛋白/クレアチニン比<0.8で中間事象がないことなどが含まれた。完全腎反応はオビヌツズマブ群46.4%、プラセボ群33.1%で有意差 計271例が無作為化され、135例がオビヌツズマブ群(全投与スケジュール群)に、136例がプラセボ群に割り付けられた。ベースライン特性は両群でバランスが取れており、平均年齢(±標準偏差)はオビヌツズマブ群33.0±10.5歳、プラセボ群32.7±10.0歳、女性がそれぞれ114例(84.4%)および115例(84.6%)であった。また、ループス腎炎の初回診断時からの期間中央値は36.6ヵ月と34.3ヵ月、尿蛋白/クレアチニン比は3.14±2.99および3.53±2.76、eGFR値は102.8±29.3および101.9±32.2mL/分/1.73m2などであった。 76週時点で完全腎反応が認められた患者の割合は、オビヌツズマブ群46.4%、プラセボ群33.1%であった(補正後群間差:13.4%ポイント[95%信頼区間[CI]:2.0~24.8]、p=0.02)。 64~76週目のprednisone投与量が7.5mg/日以下で76週時点に完全腎反応が認められた被験者は、オビヌツズマブ群がプラセボ群と比較して有意に多かった(42.7%vs.30.9%、補正後群間差:11.9%ポイント[95%CI:0.6~23.2]、p=0.04)。また、尿蛋白/クレアチニン比<0.8で中間事象がなく76週時点に完全腎反応が認められた被験者は、オビヌツズマブ群がプラセボ群と比較して有意に多かった(55.5%vs.41.9%、補正後群間差:13.7%ポイント[2.0~25.4]、p=0.02)。 新たな安全性シグナルは確認されなかった。重篤な有害事象は、主として感染症およびCOVID-19関連イベントで、COVID-19関連肺炎はオビヌツズマブ群(7例)がプラセボ群(0例)と比較してより多く報告された。

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多発性骨髄腫の新規治療開発を加速するMRDに基づくエンドポイント/JCO

 多発性骨髄腫(MM)の新たな治療の早期承認を実現するためには、臨床試験を迅速化するための早期エンドポイントが必要である。今回、米国・メイヨークリニックのQian Shiらは、新規診断の移植適格患者・移植不適格患者、再発/難治性(RR)の多発性骨髄腫患者において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の中間エンドポイントとして微小残存病変(MRD)陰性完全奏効(CR)の可能性を検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年2月12日号に掲載。 本解析では、20の多施設無作為化試験から個々の患者データを収集した。十分なデータを有する11試験(4,773 例)を解析し、9 ヵ月または 12 ヵ月における10-5を閾値としたMRD陰性CRがPFSとOSに関する臨床的有用性を予測できるかどうかを評価した。全体的なオッズ比(OR)は二変量Plackett Copulaモデルを用いて推定した。さらに、MRD陰性CRとPFS/OSにおける治療効果の相関を、線形回帰(R2加重最小二乗)モデルおよびCopula(R2Copula)モデルで評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析の結果、新規診断の移植適格患者、新規診断の移植不適格患者、再発/難治性MM患者において、9 ヵ月および 12 ヵ月におけるMRD陰性CRが、患者レベルでPFSと強い相関を示した。 ・全体的なORは3.06~16.24の範囲であり、95%CIはすべて1.0を含まなかった。・3つの集団の統合により、有望な試験レベルの相関(R2:0.61~0.70)がみられ、新規診断集団ではより強い相関(R2:0.67~0.78)がみられた。・OSについても同様の結果がみられた。 著者らは、「今回の結果は、新規診断の移植適格患者および移植不適格患者、再発/難治性MM患者を対象とした今後の臨床試験において、早期承認のための中間エンドポイントとして、治療開始後9ヵ月または12ヵ月に10-5を閾値としたMRD陰性CRを使用することを支持するもの」とした。

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米国ではCOVID-19が依然として健康上の大きな脅威

 新型コロナウイルスは依然として米国人の健康に対する脅威であり、インフルエンザウイルスやRSウイルスよりも多くの感染と死亡を引き起こしていることが、新たな研究で示唆された。米国退役軍人省(VA)ポートランド医療システムのKristina Bajema氏らが「JAMA Internal Medicine」に1月27日報告したこの研究によると、2023/2024年の風邪・インフルエンザシーズン中に米国退役軍人保健局(VHA)で治療を受けた呼吸器感染症患者の5人中3人(60.3%)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していたという。 この研究でBajema氏らは、呼吸器感染症の2022/2023年シーズンと2023/2024年シーズンのVHAの医療記録を後ろ向きに解析し、COVID-19、インフルエンザ、RSウイルス感染症の重症度を比較した。対象は、2022年8月1日から2023年3月31日、または2023年8月1日から2024年3月31日の間に、COVID-19、インフルエンザ、RSウイルス感染症の検査を同日に受け、いずれかの診断を受けたが入院はしなかった退役軍人とした。 その結果、2022/2023年コホート(6万8,581人)の66.2%、2023/2024年コホート(7万2,939人)の60.3%がCOVID-19の診断を受けていたことが明らかになった。一方、インフルエンザとRSウイルス感染症の診断を受けた割合は、2022/2023年コホートでそれぞれ24.7%と9.1%、2023/2024年コホートで26.4%と13.4%であった。2023/2024年シーズンにおける診断から30日間での入院リスクは、COVID-19で16.2%、インフルエンザで16.3%と同程度であった(RSウイルス感染症では14.3%)。 2022/2023年シーズンにおける診断から30日間の死亡率は、COVID-19で1.0%、インフルエンザで0.7%、RSウイルス感染症で0.7%であり、COVID-19の死亡率はインフルエンザやRSウイルス感染症をわずかに上回った。しかし、2023/2024年シーズンでの同死亡率は、それぞれ0.9%、0.7%、0.7%であり、COVID-19の死亡率はインフルエンザやRSウイルス感染症と類似していた。 一方、180日間の累積死亡率は、両シーズンともCOVID-19で最も高く、2022/2023年シーズンでは3.1%、2023/2024年シーズンでは2.9%に達した。2022/2023年シーズンでは、COVID-19とインフルエンザの180日間の死亡リスク差(RD)は1.1%(95%信頼区間0.6〜1.5)、COVID-19とRSウイルス感染症のRDも1.1%(同0.6〜1.4)、2023/2024年シーズンでは、それぞれ0.8%(同0.3〜1.2)、0.6%(同0.1〜1.1)と推定された。これに対し、インフルエンザとRSウイルス感染症の180日間の死亡リスクに有意な差は見られなかった。 このほか、両シーズンとも、COVID-19ワクチンの未接種者は、インフルエンザワクチンの未接種者よりも死亡リスクが高い傾向にあったことも示された。一方、ワクチン接種者の間では、COVID-19とインフルエンザの死亡リスクに有意な差は認められなかった。 Bajema氏は、「新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスやRSウイルスよりもはるかに多くの感染者を出し、短期入院リスクや死亡リスクの上昇など、より重篤な転帰をもたらした」と話す。研究グループは、「ワクチン接種は今も、ウイルス性の呼吸器疾患、特に新型コロナウイルスのオミクロン株の影響を最小限に抑えるための重要な戦略である」と結論付けている。

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脳の健康維持のために患者と医師が問うべき12の質問とは?

 米国神経学会(AAN)の「脳の健康イニシアチブ(Brain Health Initiative)は、人生のあらゆる段階において脳の健康に影響を与える12の要因についてまとめた論文を、「Neurology」に2024年12月16日発表した。論文には、神経科医が患者の脳の健康を向上させるために活用できる、スクリーニング評価や予防的介入の実践的アプローチに関する内容も含まれている。 脳の健康に関わる12の要因、およびそれを評価するための質問は、以下の通りである。これらについて自分自身に問うとともに、医師とも話し合うとよいだろう。1. 睡眠:「睡眠により十分に体を休めることができていますか?」 日中の眠気、シフトワークの影響、夜間の痛み、不眠症、昼寝の習慣などについて医師と話し合おう。2. 感情、気分、メンタルヘルス:「自分の感情、気分、ストレスについて心配がありますか?」 医師は患者の抑うつや不安を評価するべきだが、患者が自分から相談できるよう準備しておくことも大切だ。3. 食品、食事、サプリメント:「十分な量の食品や健康的な食事の確保に心配がありますか?サプリメントやビタミンの摂取について聞きたいことはありますか?」4. 運動:「生活の中に運動を取り入れられていますか?」 身体活動に加え、動き、バランス、自立性を維持する方法について医師と相談しよう。5. 支えとなる社会的つながり:「親しい友人や家族と定期的に連絡を取り合っていますか?周りの人から十分なサポートを受けていますか?」6. 事故や外傷の回避:「運転時にシートベルトやヘルメットを着用していますか?子どもがいる人はチャイルドシートを使用していますか?」 職業上のリスクがある人は、それについて話し合うことも重要だ。7. 血圧:「自宅で高血圧に気付いたり、病院で高血圧を指摘されたりしたことはありますか?血圧の治療や家庭用血圧計について疑問がありますか?」 高血圧の二次的原因や薬と血圧の関係について医師に相談しよう。8. 遺伝的リスクと代謝的リスク:「血糖値やコレステロール値のコントロールに問題がありますか?神経疾患の家族歴がありますか?」 遺伝的リスクを調べて認識し、必要に応じて脂質や糖尿病の管理、健康的な体重の維持について質問すること。9. 医療のアフォーダビリティ(支払いのしやすさ)とアドヒアランス:「薬代が大きな負担になっていませんか?」 保険の支払いに関わり得る年齢の変化については医師が確認を取るはずだが、保険内容に変更がある場合は必ず医師に伝えること。10. 感染症:「ワクチンは最新のものを接種していますか?また、それらのワクチンについて十分な情報を持っていますか?」11. 悪影響のある曝露:「喫煙、1日に1~2杯以上の飲酒、市販薬の使用、井戸水の摂取、空気や水の汚染が知られている地域に居住、これらの中に該当するものはありますか?」 毎回の診察は、喫煙、飲酒、市販薬の使用に関する問題を評価する機会となる。12. 健康の社会的決定要因:「住居、交通手段、医療や医療保険へのアクセス、身体的または精神的な安全性について心配がありますか?」 この論文の筆頭著者である米ミシガン大学アナーバー校のLinda Selwa氏は、「科学的研究への資金提供や医療へのアクセス改善などに向けた神経科医の継続的な取り組みは、国家レベルで脳の健康を改善する。われわれの論文は、脳の健康を個人レベルで改善する方法が数多くあることを示している。新年に脳の健康改善を決意することは、素晴らしい第一歩だ」とAANのニュースリリースで述べている。

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