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カバ咬傷は四肢切断リスクが高い【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第185回

カバ咬傷は四肢切断リスクが高いpixabayより使用皆さんがアフリカの川で遊んでいるとき、カバに遭遇したとしましょう。「うわーい、カバさんだー」とニコニコして近付くと、ぶちのめされるかもしれません。イラストにするとちょっと間抜けなかわいい動物みたいな感じになりますが、カバは非常に攻撃的です。突進してきたり、噛みつかれたりすることがあります。Haddara MM, et al.Hippopotamus bite morbidity: a report of 11 cases from BurundiOxf Med Case Reports . 2020 Aug 10;2020(8):omaa061.テレビで見たことがあるのですが、船に乗っているクルーをカバが追いかけてくるシーンがありました。カバは川を泳ぐのではなく、川底を歩いて突進してくるそうです。平均的なカバは、体長3.5 m、体高1.5 m、体重約3,200kgくらいだそうです。もう、車ですやん! 30〜50cmの非常に鋭い三角形の犬歯があって、その咬合力は12,600kPaだそうです。コレ、めちゃくちゃ強くて、ライオンの3倍くらいと言われています。今回の研究に登録されたのは、ブルンジにおいてカバ咬傷と診断された11人のケースシリーズです。カバ咬傷自体がまれなので、これが過去最大のまとまった報告だそうです。損傷パターンや外科的治療の必要性について調べました。11人のうち、9人が男性、2人が女性でした(年齢:18~57歳)。負傷者のほとんどは、ブルンジの河川またはタンガニーカ湖のいずれかの水域でカバに襲われました。水泳中3人、釣り中2人、洗濯中1人、農作業中2人、その他の状況が3人でした。損傷部位は、下肢が8人と多く、上肢に外傷を受けたのは5人でした。また、4人の患者が胸部および腹部に貫通性の損傷を受けています。11人中6人の患者が輸血を必要とし、3人は開腹手術を要しました。そして、深部創感染が5人に発生し、4人は虚血のために四肢切断に至りました。ひょえーー!!――というわけで、カバはただの哺乳類ではなく、危険生物として対応する必要があります。とくに、負傷後の創感染と四肢切断のリスクが高いので、カバに追いかけられたら覚悟を決めましょう。なお、アフリカの現地人はカバに追いかけられたら、地面に四つん這いになって脱糞をする真似をするとかしないとか。カバがその真似をし始めるらしいので、その間に逃げるとよいそうです。いやぁしかし、突進してくるカバを前に四つん這いになって本当に大丈夫なんでしょうか……。

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高血圧 変わる常識・変わらぬ非常識 臨床高血圧の125年

身近な症候「高血圧」の臨床の歴史を正しく学ぶ!2021年は、コロトコフの聴診による血圧測定法が発明された1896年から125年目にあたります。現在では、高血圧は心血管病の最大のリスクであることが判明していますが、実は近年まで、血圧は高い方がよいとされていた事実もあります。当時は常識と考えられていたことも今では非常識。降圧薬の開発にもさまざまな試行錯誤がありました。本書では、臨床高血圧の125年を振り返り、時に厳しく、時にユーモアを交え、研究の道のりと最新情報をわかりやすく解説しています。現在の「常識」があれば救えたかもしれない国内外の大物政治家の話や、日本人研究者の知られざる貢献についても数多く紹介しています。事実を正しくみるという信念を貫いてきた桑島 巖氏が、臨床高血圧研究の物語に満ちた125年をわかりやすく解説しています。各時代の研究者たちがそれぞれに真摯に治療に向き合う姿に敬意を払いつつ、どこに誤りがあったのかを考察。コラムも多く記載されており、楽しみながら高血圧について学べる1冊です。高血圧診療に携わる方から学生の方、また医学史に興味のある方にもおすすめです。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    高血圧 変わる常識・変わらぬ非常識臨床高血圧の125年定価2,420円(税込)判型A5判頁数168頁発行2021年3月著者桑島 巖(J-CLEAR 理事長/東京都健康長寿医療センター顧問)Amazonでご購入の場合はこちら

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新型コロナウイルスに対する学校の感染対策

学校関係者・保護者の皆さん、コロナ禍における学校感染対策の本がついにできました!パンデミックの最中、一斉休校や学校行事の縮小・中止等で一番影響を被っているのは、子どもたちかもしれません。「休み時間ごとの手洗い」「冬場でも換気・換気・換気」「会話の奪われた給食」「運動会、修学旅行、遠足の縮小や見送り」…。学校の先生方もやれることはすべてされていると思います。でも、子どもたちへの感染対策は「何をどうしたらいいのか?」「どこまですればいいのか?」。教育現場の指針だけでは迷われることも多いでしょう。そんな疑問に感染症専門医が1つひとつ丁寧にお答えします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    新型コロナウイルスに対する学校の感染対策定価2,640円(税込)判型A5判頁数144頁発行2021年4月著者武藤 義和

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第53回 批判を浴びるウレタンマスク、選ばざるを得ない人がいる事実

今回のコロナ禍で多分起きている問題だろう、と個人的に思っていたことが先日ニュースで伝えられていた。それは以下のニュースだ。「『マスク拒否で雇い止め』アトピー性皮膚炎の男性提訴―大阪地裁」(時事通信)かく言う私もアトピー持ちである。ご存じのようにアトピー性皮膚炎は思春期・成人期になると症状がより上半身に移行し、顔などにも症状が出やすくなる。そこにとりわけ不織布マスクとなるとかなり大変だったのではないだろうか? 実際、私も不織布マスクの着用はかなりきつく、着用から20分ほどで猛烈な痒みを感じ、翌日、顎付近の皮膚が炎症を起こして真っ赤ということもしばしば。いろいろ試した結果、いまは布製マスクに落ち着いている。もっともこの布製マスクもあまりに長時間の着用が続くとやはり炎症を起こしてしまう。今回、提訴が報じられた男性の場合、最終的にマウスシールドを着用していたらしいが、それを上司は認めなかったという。この例に限らず、マスクを着用できない、あるいは材質を選ばないと着用が困難という人は他にもいるだろう。米国疾病予防管理センター(CDC)では▽2歳以下の小児▽呼吸に問題がある人▽(手が不自由、認知症など)で自らマスク着脱ができない人、などにはマスク着用を推奨していない。また最近では日本国内でも厚生労働省や地方自治体がマスクを着用できない人への理解を求める呼びかけを行っている。一体こうした人たちの総数がどれだけになるのかは分からない。少なくとも2019年生まれ以降の2歳以下の小児は、厚生労働省の人口動態統計から算出すれば約177万人。また、呼吸に問題がある人というのは喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性心不全、肺高血圧症などが挙げられる。厚生労働省の「平成15年保健福祉動向調査」によると、気管支喘息などの呼吸器のアレルギー症状の推計有病率は7.5%、国内人口に当てはめると推計患者数は950万人弱。COPDに関しては2001年に順天堂大学を中心に行った疫学調査から40歳以上の推定有病率は8.6%、推計患者数は約530万人。また、日本循環器学会と日本心不全学会が合同で作成した「急性・慢性心不全診療ガイドライン」では、2020年の日本の心不全(急性・慢性)患者数について約120万人との推計値を示している。そして、認知症患者に関しては厚生労働科学研究費補助金特別研究事業「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によれば、2020年現在600万人超。アトピー性皮膚炎に関しては日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」では、未成年での有病率は少なくとも5%、成人以降は20歳代が10.2%、30歳代が8.3%、40歳代が4.1%、50~60歳代が2.5%となっている。これから計算すると推計患者数は少なくとも約500万人となる。実際にこれらの人すべてがマスク着用を困難とは思わないが、これらの合算の半分だけでも1,200万人程度。つまり少なくとも日本人の10人に1人がマスクの着用が困難あるいはその予備群という概算が成り立つ。だが、実際に街を歩いていて10人に1人もマスクを着用していない人を見かけるだろうか? 自分自身がマスク着用に難を感じる者ゆえに、実際には本来マスク着用が困難な人たちが、材質を選定するなり、あるいは我慢に我慢を重ねてマスクをしているのが実態だろうと容易に想像がつく。その意味では科学的には正しい内容にもかかわらず、そうそう喜べないのが以下のような記事だ。「実験で新事実『ウレタンマスク』の本当のヤバさ」(東洋経済オンライン)よく見かけるウレタンマスクは不織布マスクと比べれば効果が劣るという内容だ。これについては昨年、理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」によるシミュレーション結果として公表されていた。記事内では、別の研究者が行った実測でも富岳のシミュレーションで分かっていた結果以上にウレタンマスクに効果(他人からの飛沫のカット)がないことを指摘している。確かにそうなのだろう。だが、前述のようなマスク着用が困難な人の中で、ウレタンマスクならば着用可能だとわかって選択している人もいるはず。実際私の周囲にもそうした人はいる。そうした中で、この記事は科学的に正しくともそうしたやむを得ない理由でウレタンマスクを選択している人たちへの蔑視・非難、結果としての社会分断にもつながる可能性を有している。「社会分断とはなんと大げさな」と思われる人もいるかもしれない。だが、とりわけこのマスク問題はその危険性をはらんでいる。というのも前提として、多くの人が本心では日常的なマスク着用を止められるなら止めたいと思っているはずだからだ。それゆえに「仕方なく着用しているのに、着用していない人は何なんだ」という空気があることは、すでに「マスク警察」という言葉の存在が証明している。結果として前述のようにマスク着用が困難な人たちがそこそこに存在するはずなのに、実際はほとんど見かけることはない。その意味ではこのウレタンマスク記事は「マスク警察」をさらに「ウレタンマスク警察」へと悪い意味でも進化させかねない火種をはらんでいる。一方で医学的にマスク着用が困難な人にとっては、それは相当の理由があることになる。そうなれば、マスク着用が可能な人と困難な人がそれぞれの正義を掲げて溝は深まる。社会分断とはこうしたちょっとしたきっかけで始まるものなのである。今回の提訴の一件について、あくまでマスク着用を求めた上司はおそらくそれほど悪気はなく、職場での感染を防止するうえではマスク着用がベストという基本的には正しい知識を実践しようとしたのだろうと勝手に推察している。また、私たちメディア関係者が医療について報じる時、何よりも科学的な正しさが優先される。とはいえ、正しさのみでは時に埋もれがちな少数派に対して配慮のない結果になる。今回の提訴の件そしてウレタンマスク記事はその典型例とも言える。かく言う私も、そうした「正しさを追求する結果としての少数派への配慮のなさ」という現実の存在は頭では理解していたつもりだった。しかし、それはまだまだ生兵法だったのではないかと感じ始めている。そう思うのはまさに今回、私自身が「正しさ」が持つ「諸刃の剣」をようやく身をもって実感したからに他ならない。

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乳児への栄養方法とその期間が母親の産後うつ病に及ぼす影響~JECS研究

 母乳による育児は、世界中で推奨されている。母乳育児と産後うつ病との関係を調査した研究はいくつか行われているが、矛盾した結果が得られている。富山大学の島尾 萌子氏らは、生後1~6ヵ月の乳児への栄養方法が母親の産後うつ病に及ぼす影響、産後うつ病に対する授乳中の母親が行ったことの影響について調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2021年4月15日号の報告。 JECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)に参加した親子のデータを分析した。対象は、産後1ヵ月で抑うつ症状を呈さなかった母親7万1,448人。調査には、自己記入式質問票を用いた。 主な結果は以下のとおり。・産後6ヵ月間母乳だけで育児を続けた母親は、そうでなかった母親と比較し、産後うつ病リスクが低かった。・摂食中に乳児とのアイコンタクトを維持したり、話し掛けたりした母親は、そうでなかった母親と比較し、栄養方法やその期間と関係なく産後うつ病リスクが低かった。・産後6ヵ月間母乳だけで育児を続け、摂食中に乳児とのアイコンタクトを維持したり、話し掛けたりした母親の産後うつ病のオッズ比は0.69(95%CI:0.61~0.79)であり、最も低かった。 著者らは「母乳育児の推奨や乳児との関わりに関する適切な情報提供を行うことで、産後うつ病の発症を抑制できる可能性がある」としている。

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TNF阻害薬治療中のIBD患者でCOVID-19感染後の抗体保有率低下

 生物学的製剤であるTNF阻害薬を巡っては、これまでの研究で肺炎球菌やインフルエンザおよびウイルス性肝炎ワクチン接種後の免疫反応を減弱させ、呼吸器感染症の重症化リスクを高めることが報告されていた。ただし、新型コロナ感染症(COVID-19)ワクチンに対しては不明である。英国・Royal Devon and Exeter NHS Foundation TrustのNicholas A Kennedy氏らは、炎症性腸疾患(IBD)を有するインフリキシマブ治療患者のCOVID-19感染後の抗体保有率について、大規模多施設前向きコホート研究を実施した。その結果、インフリキシマブ治療群では、コホート群と比べ抗体保有率が有意に低いことがわかった。著者らは、「本結果により、COVID-19に対するインフリキシマブの免疫血清学的障害の可能性が示唆された。これは、世界的な公衆衛生政策およびTNF阻害薬治療を受ける患者にとって重要な意味を持つ」とまとめている。Gut誌オンライン版2021年3月22日号の報告。 研究グループは、2020年9月22日~12月23日に、英国の92医療施設に来院したIBD患者7,226例を連続して登録。このうち血清サンプルと患者アンケートが得らえた6,935例について調べた。被験者のうち67.6%(4685/6935例)がインフリキシマブによる治療を受け、32.4%(2250/6935例)がベドリズマブによる治療を受けた。 主な結果は以下のとおり。・インフリキシマブ治療群とベドリズマブ治療群において、SARS-CoV-2感染に関する割合は両群間で類似していた:疑い例(36.5%[1712/4685例] vs.39.0[877/2250例]、p=0.050)、PCR陽性(5.2%[89/1712例] vs.4.3%[38/877例]、p=0.39)、入院(0.2%[8/4685例] vs.0.2%[5/2250例]、p=0.77)。・血清有病率は、インフリキシマブ治療群のほうがベドリズマブ治療群よりも有意に低かった(3.4%[161/4685例] vs.6.0%[134/2250例])、p<0.0001]。・多変数ロジスティック回帰分析では、インフリキシマブ群(vs.ベドリズマブ群のOR:0.66、95%信頼区間[CI]:0.51〜0.87)、p=0.0027)および免疫抑制薬(同:0.70、95%CI:0.53〜0.92、p=0.012)において、より低い血清陽性と独立して関連していた。・SARS-CoV-2感染後、セロコンバージョンが認められた被験者は、インフリキシマブ治療群のほうがベドリズマブ治療群よりも少なかった(48%[39/81例] vs.83%[30/36例])、p=0.00044)。

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高齢日本人EGFR陽性肺がんを対象としたアファチニブ1次治療(NEJ027)/BMC Cancer

 肺がんは高齢者の頻度が高い。しかし、高齢者肺がんに対する研究結果は十分ではない。未治療の高齢日本人EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、アファチニブの1次治療の抗腫瘍活性と安全性を調査した多施設単群第II相NEJ027試験の結果が発表された。・対象:75歳以上の未治療の進行EGFR変異陽性(Del19またはL858R)のNSCLC・介入:アファチニブ40mg/日 疾患進行または許容できない毒性が発現するまで投与・主要評価項目:中央委員会評価による客観的奏効率(ORR) 主な結果は以下のとおり。・38例の患者がアファチニブの投与を受け、37人が有効性評価可能であった。・年齢の中央値は77.5歳、ECOG PS0〜1、60.5%がDel19陽性であった。・追跡期間中央値は838日であった。 ・ORRは75.7%(CR2例、PR26例)であった。・無増悪生存期間中央値は14.2ヵ月。全生存期間(OS)中央値は35.2ヵ月で、 2年OS率は78.3%であった。・一般的なGrade3/4の治療関連有害事象(TRAE)は、下痢(28.9%)、爪囲炎(23.7%)、発疹/ざ瘡(15.8%)であった。 ・TRAEによる減量は78.9%、TRAEによる中止は21.1%(8例)で、治療関連死は認められなかった。 この研究ではアファチニブの用量調整が比較的一般的に認められた。しかし、75歳以上のいおいても中止頻度は少なく、ほとんどの患者は1年以上治療を続けることができた、としている。

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寒冷凝集素症にsutimlimabは有効か?/NEJM

 寒冷凝集素症患者において、sutimlimabの投与によって古典的補体経路の活性化が選択的に上流で阻害され、速やかに溶血が停止し、ヘモグロビン値が上昇し、疲労が改善したことが示された。ドイツ・デュイスブルク・エッセン大学のAlexander Roth氏らが、sutimlimab静脈内投与の有効性および安全性を評価した26週間の多施設共同非盲検単群試験「CARDINAL試験」の結果を報告した。寒冷凝集素症は、古典的補体経路の活性化により引き起こされる溶血を特徴とする、まれな自己免疫性溶血性貧血で、現在、承認されている治療薬はない。sutimlimabは、活性化経路の第1段階にあるC1複合体に含まれるセリンプロテアーゼを標的としたヒト化モノクローナル抗体である。NEJM誌2021年4月8日号掲載の報告。sutimlimabの有効性/安全性を26週間で評価 研究グループは、最近の輸血歴を有する特発性寒冷凝集素症患者を対象に、ベースラインの体重が75kg未満の患者にはsutimlimab 6.5gを、75kg以上の患者には7.5gを、0日目(治療初日)および7日目、以降は2週ごとに26週間静脈内投与した。 主要評価項目は、第5週から第26週まで輸血が不要、またはプロトコールで禁止されている他の寒冷凝集素症関連治療を受けることなく、ヘモグロビン値がベースラインから2g/dL以上増加(23週、25週および26週時の平均)または12g/dL以上まで増加した患者の割合とした。sutimlimabは寒冷凝集素症に有効、軽度~中等度の有害事象あり 24例が登録され、全例少なくとも1回のsutimlimab投与を受けた。 24例中13例(54%)が主要評価項目を達成した。治療評価時(23週、25週および26週時)におけるヘモグロビン値のベースラインからの増加の最小二乗平均値は2.6g/dLであった。平均ヘモグロビン値は、3週目から試験終了時点まで11g/dL超が維持された。平均ビリルビン値は3週目までに正常化した。 また、17例(71%)が、5週から26週目まで輸血を受けなかった。1週目には疲労の改善(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy[FACIT]-Fatigue Scale 25による評価で、臨床的に意味のある改善:ベースラインからスコアが3~7ポイント増加)が認められ、試験期間中維持された。 機能アッセイの結果、古典的補体経路の活性は速やかに阻害されたことが示され、ヘモグロビン値上昇、ビリルビン値低下、疲労の改善は、古典的補体経路の阻害と一致した。 なお、投与期間中に有害事象は22例(92%)に発現した。7例(29%)で重篤な有害事象が確認されたが、治験責任医師によりsutimlimabとの関連は否定された。髄膜炎菌感染症の報告はなかった。

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妊娠中のHIV-1患者に対する、ドルテグラビル含有レジメンの有効性/Lancet

 HIV-1に感染した妊婦に対し、妊娠中に開始したドルテグラビル(DTG)含有レジメンは、エファビレンツ+エムトリシタビン+テノホビル ジソプロキシフマル酸塩レジメン(EFV/FTC/TDF)に対して、分娩時のウイルス学的有効性について優越性を示した。またDTG/FTC/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩(TAF)レジメンは、有害妊娠アウトカムおよび新生児死亡が最も低頻度であった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のShahin Lockman氏らが、ボツワナ、ブラジル、インド、南アフリカ共和国、タンザニア、タイ、ウガンダ、米国およびジンバブエの9ヵ国22施設で実施した多施設共同無作為化非盲検第III相試験「IMPAACT 2010/VESTED試験」の結果を報告した。妊娠中の抗レトロウイルス療法(ART)は、母体の健康と周産期のHIV-1感染予防に重要であるが、妊婦に使用されるさまざまなレジメンの安全性と有効性に関するデータは不足していた。Lancet誌2021年4月3日号掲載の報告。妊婦での3つのARTの有効性を評価 研究グループは、HIV-1感染が確認された18歳以上の妊婦(14~28週)を、DTG/FTC/TAF群(1日1回DTG 50mg+FTC 200mg/TAF 25mg合剤経口投与)、DTG/FTC/TDF群(1日1回DTG 50mg+FTC 200mg/TDF 300mg合剤経口投与)、またはEFV/FTC/TDF群(1日1回EFV 600mg/FTC 200mg/TDF 300mg合剤経口投与)のいずれかに、妊娠週数(14~18週、19~23週、24~28週)と国で層別化し、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、分娩時または分娩後14日以内のHIV-1 RNA 200コピー/mL未満の患者の割合で、事前に設定したDTG含有群vs.EFV含有群の非劣性マージンは-10%とした(優越性の検証は、事前に計画された副次解析で実施)。 主要安全性評価項目は、有害妊娠アウトカム(早産、低出生体重児、死産、自然流産)、母親または新生児におけるGrade3以上の有害事象の発生とした。DTG含有レジメンはEFV含有レジメンよりウイルス学的に有効 2018年1月19日~2019年2月8日の期間で、妊婦643例が無作為化された(DTG/FTC/TAF群217例、DTG/FTC/TDF群215例、EFV/FTC/TDF群211例)。登録時点での妊娠週数中央値は21.9週(IQR:18.3~25.3)、HIV-1 RNA中央値は902.5コピー/mL(IQR:152.0~5,182.5、HIV-1 RNA 200コピー/mL未満の割合28%)であった。 分娩時にHIV-1 RNAが測定可能であった605例(94%)において、主要評価項目を達成したのはDTG含有群が405例中395例(98%)であったのに対し、EFV/FTC/TDF群は200例中182例(91%)であった(推定群間差:6.5%、95%信頼区間[CI]:2.0~10.7、p=0.0052)。 有害妊娠アウトカムは、DTG/FTC/TAF群(216例中52例、24%)のほうが、DTG/FTC/TDF群(213例中70例33%)(推定群間差:-8.8%、95%CI:-17.3~-0.3、p=0.043)、およびEFV/FTC/TDF群(211例中69例33%)(推定群間差:-8.6%、95%CI:-17.1~-0.1、p=0.047)より有意に少なかった。 Grade3以上の有害事象が確認された母親または新生児の割合は、3群で違いはなかった。早産は、DTG/FTC/TAF群(208例中12例、6%)が、EFV/FTC/TDF群(207例中25例、12%)より有意に低率だった(推定群間差:-6.3%、95%CI:-11.8~-0.9、p=0.023)。新生児死亡率は、EFV/FTC/TDF群(207例中10例、5%)が、DTG/FTC/TAF群(208例中2例、1%、p=0.019)やDTG/FTC/TDF群(202例中3例、2%、p=0.050)より、有意に高率であった。

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新型コロナ、第4波の大阪は「これまでとは別世界」~呼吸器科医・倉原優氏の緊急寄稿(2)

 「新型コロナウイルスの感染状況は第4波に入った」。変異株を含め、全国的に感染者が再び急増している現状について、識者らは相次いで明言した。なかでも、1日の新規感染者数が1,000人超を記録している大阪府はとりわけ深刻だ。渦中の医療現場は今、どうなっているのか。CareNet.com連載執筆者の倉原 優氏(近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)が緊急寄稿でその詳細を明らかにした。大阪府コロナ第4波の現状 以前、大阪府コロナ第3波についての現状をお伝えしましたが1)、あれからいったん落ち着いたものの、現在第4波が到来しています。大阪府は1日の新規感染者数が過去最大規模になっており、医療現場は災害級に混乱しています。第3波と異なるのは、(1)年齢層(2)重症度(3)速度です。(1)年齢層 大阪府フォローアップセンターから入院要請のあるCOVID-19患者さんの年齢が、15歳ほど下押しされています。当院に入院した第1波~3波までの平均年齢(±標準偏差)は68(±17)歳、第4波の平均年齢は53(±19)歳です。直近のデータで、感染者が40代未満である割合が5割弱と引き続き高く、若い世代を中心に感染が広がっていることがわかります。(2)重症度 この第4波、来院して最初に撮影した胸部画像検査で背筋がゾっとすることが多くなりました。糖尿病コントロールが不良で高度肥満があり、SpO2が90%未満の場合、ある程度の覚悟を持って診療に当たることができますが、そこまでの基礎疾患がなく、SpO2が92~93%程度であるにもかかわらず、「エッ!」と声を上げてしまうほど両肺のすべての葉に肺炎が見られるケースが増えています。このパンデミックで、自分より年下のARDSを経験するなんて思いもしませんでした。基本的に中等症IIがメインで、中等症Iならホっとするくらいです。(3)速度 大阪府は、保健所および入院フォローアップセンターが連携して入院病床の管理を行っており、どの病院に入院してもらうかはフォローアップセンターの少数精鋭部隊が担っています(図1)。 第3波の時点で重症病床を約230床確保していましたが、第4波に入る前はかなり病床数を減らしていました。第3波の後半で、すでに重症病床が約60床埋まっている状態がスタートだったため、第4波で軽症中等症病床が埋まるより先に重症病床がパンクしてしまいました。 そのため、緊急増床に踏み切った大阪府の施策は間に合わず、あっという間に第4波の確保病床を超えてしまい、軽症中等症病床で挿管・人工呼吸管理のCOVID-19患者さんを診療する状態になってしまいました。当院でもすでにそういった患者さんが発生しており、重症病床が増えない限り、これが常態化するかもしれません。 「N501Y変異株」の症例が増えているのは確かですが、この病床逼迫の最たる原因なのかはわかりません。緊急事態宣言が緩和され、卒業・入学シーズンで人出が増えた影響もあり、相加相乗的に作用した可能性はあります。ただ、大阪府新型コロナウイルス対策本部会議の公開資料によると、この病床逼迫速度は第3波の約3倍とされており2)、きわめて想定外の事態であったことは間違いありません。また、「N501Y変異株」陽性者の発症から重症化までの日数は従来株よりも約1日早いとされており(表)、これが先述の状況に拍車をかけたのかもしれません。第4波を乗り越えたとしても… 第4波のCOVID-19、第3波までと実はまったく別の疾患なのではないかというくらい、ARDSの頻度が高いです。大阪に続いて東京にも第4波が到来する可能性は十分にあります。 とはいえ、ゴールデンウイークに向けて徐々に減ってくることに期待したいものです。4月5日からの「まん延防止等重点措置」が始まって2週間後にあたる4月19日以降、新規陽性者数が減ってくれば第4波は落ち着くかもしれません(図2)。 しかしながら、第4波を乗り越えたとしても遅滞なくワクチン施策が進まなければ、また7月頃に第5波がやってくる可能性はあります。そうなれば、オリンピック開催時期と完全に被ってしまうことになるでしょう。多方面へのシビアな調整が必要になるため、オリンピックを中止あるいは延期するという選択肢はないのだと思いますが、ハンマー・アンド・ダンスで時間稼ぎをするにも現場の疲弊は限界を迎えつつあり、もはやワクチンに希望を託すしかなさそうです。【倉原 優氏プロフィール】2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て、08年より現職。CareNet.comでは、「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」「Dr.倉原の“俺の本棚”」連載掲載中。

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非浸潤性乳管がん、浸潤性がんへの進展リスク因子は?日本人患者の分析から

 乳房の非浸潤性乳管がん(DCIS)は、浸潤性乳管がん(IDC)の前駆病変と臨床的には位置づけられ、DCISが見つかった場合、現在では一様に切除手術が行われている。しかしこのDCIS集団中には、真に浸潤性がんに進展するDCIS(真のDCIS 群)だけでなく、浸潤性がんには進展しない症例が含まれることが明らかになってきており、両群を区別する因子の同定が求められている。東京大学学大学院新領域創成科学研究科の永澤 慧氏らは、DCISの進展に関係する候補因子として、臨床病理学的因子に加え、遺伝子因子としてGATA3遺伝子の機能異常を同定した。Communications biology誌オンライン版2021年4月1日号の報告より。 主な結果は以下のとおり。・2007~2012年に聖マリアンナ医科大学で手術を受けたDCIS患者431例(年齢中央値:48歳、追跡期間中央値:6.1年、ER陽性:87.0%/HER2陽性:18.8%、4.6%が追跡期間中にIDCに進行)のデータが分析された。その結果、年齢(45歳未満)とHER2陽性が浸潤性がん再発と関連するリスク因子であると示された。・21症例のDCIS原発病変と再発前後のペア検体を用いた全エクソンシークエンスを実施した結果、GATA3遺伝子変異が浸潤性がんへの進展に関与する遺伝子候補とされた。・この結果を、全エクソンシークエンスの結果より作成した180遺伝子ターゲットパネルを用いて、72例のターゲットシークエンスを行い確認した(オッズ比[OR]:7.8、95%信頼区間[CI]:1.17~88.4)。・GATA3遺伝子変異をもつDCIS症例の空間トランスクリプトーム解析を行った結果、GATA3遺伝子変異をもつDCIS細胞では、異常を持たない細胞に比べて上皮間葉転換(EMT)や血管新生などのがん悪性化関連遺伝子の活性化を認め、浸潤能を獲得していることが明らかとなった。・GATA3遺伝子変異をもつDCIS細胞におけるPgR(プロゲステロンレセプター)の発現量を確認したところ、有意にその発現が低下していることがわかった。・ER陽性症例をPgRの発現レベルで2群にわけて再発予後を検討したところ、ER陽性かつPgR陰性のDCISでは有意に予後が悪いことが明らかになった(ハザード比[HR]:3.26、95%CI:1.25~8.56、p=0.01)。・これらの結果から、ER陽性DCISにおけるGATA3遺伝子変異は、PgR発現がそのサロゲートマーカーになる可能性が示唆された。

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妊娠糖尿病スクリーニングの実用的無作為化試験(解説:小川大輔氏)-1376

 妊娠糖尿病は妊娠中に初めて発見された糖代謝異常であり、妊娠中に高血糖があると流産、形態異常、巨大児などの合併症が起こる危険性があるため、妊娠中は厳密に血糖の管理を行う。なお、妊娠前からすでに糖尿病と診断されている場合や、妊娠中に「明らかな糖尿病」と診断された場合は妊娠糖尿病とは別に区別されるが、厳格な血糖コントロールは妊娠糖尿病と同様に必要である。 妊娠糖尿病のスクリーニングとして、妊娠24~28週時に妊娠糖尿病スクリーニング検査が推奨されている。1段階法と2段階法の2つのスクリーニング法があるが、どちらを使用すべきかに関して専門家の合意は得られていない。従来からある2段階法(Carpenter-Coustan基準)に対し、1段階法(IADPSG基準)は一度のブドウ糖負荷試験で診断ができるというメリットがある。しかし、母児の周産期合併症に関するアウトカムについては不明であった。 今回ScreenR2GDM試験では、2万3,792人の妊婦を対象に妊娠糖尿病スクリーニング検査を無作為に1段階法と2段階法の2群に1対1で割り付け、周産期合併症や母体合併症について検討された1)。5つの主要アウトカムのうち、妊娠糖尿病の診断は1段階法のほうが多かったが(1段階法 16.5%、2段階法 8.5%)、その他の巨大児、死産などの周産期合併症や妊娠高血圧症、帝王切開などの母体合併症に関連する主要アウトカムには有意差を認めなかった。また副次アウトカムや安全性アウトカムにも有意な差がないことが示された。 これまでに妊娠糖尿病のスクリーニングで2段階法から1段階法にかえて初回帝王切開や新生児低血糖が増加したとの報告があったが2,3)、今回の大規模な実用的無作為化試験により周産期合併症と母体合併症に関連する主要アウトカムのリスクには、両スクリーニング法に有意な差はないことが明らかになった。いずれのスクリーニング検査法を用いるにせよ妊娠糖尿病と診断した後は、母児の周産期合併症を予防するために妊娠中の血糖管理を適切に行うことが重要である。そして妊娠糖尿病の既往があると、将来糖尿病やメタボリック症候群を発症するリスクが高いため、定期的なフォローアップが必要である。

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まず懐中電灯を掴め!【Dr. 中島の 新・徒然草】(370)

三百七十の段 まず懐中電灯を掴め!ついに大阪府での新型コロナの新規感染者数が1,000人を超えてしまいました。3波までとの違いは、PCRが陽性に出る確率が上がった若い人の感染が多くなった新規感染者数だけでなく重症者数も増える一方といったところで、残念ながら当院でも劣勢は否めません。この先、一体どうなってしまうのでしょうか?話は変わって、年をとると何もかも「面倒くせえ!」となります。書類作成とか診療行為とか家事だとか。昔は何とも思わなかったことが一々面倒。だからといって、仕事がなくなるわけではありません。むしろ、若いときよりもやるべき事が増える一方です。本日のお話は、どうやってこの面倒さを克服するのか、です。私のしている工夫を診療と家事に分けて述べましょう。まずは外来での患者さんの診察です。脳外科外来でも、腹に違和感があるとか足が痛いとかいう人はたくさんいます。もちろん、「ここは脳外科なんでほかに行ってください」で済ませることも可能です。でも、いったん手抜きすると歯止めが掛からない性格は自分が一番よく知っています。なので、私はできるだけ自分の目で確認するようにしています。この時に役立つのが懐中電灯です。髪の毛の中が痛いときも、腹がおかしいときも、まずは懐中電灯を掴む。そうすると、手に持った懐中電灯に引っ張られて当該部位を診ることになります。「牛にひかれて善光寺」とはまさにこのこと。異常ナシが大半ですが、時には帯状疱疹や鼠経ヘルニアが見つかることもあります。見なければわからないけど、見ればわかる典型です。次に足がどうとか言う人。この場合は、懐中電灯もさることながら足台も使います。手術室で使う足台を脳外科外来に準備しているので、まずはそれを患者さんの前に置き、それから懐中電灯を掴む。すると患者さんもゆっくりと靴を脱ぎ、ソックスを脱ぎしてくれます。動作が鈍いからと焦ってはいけません。その間に、電子カルテを使ってほかの雑用をササッと済ませておきましょう。足さえ出てきたら「痛風かな、足底筋膜炎かな」と前に進むことができますね。さらに家事の工夫を述べましょう。料理を作ったり食べたりするのはいいけど、後の皿洗いが面倒なのは誰でも同じです。そんなときにはYouTube!本欄でも紹介した中田 敦彦氏や懲役 太郎氏のチャンネルを聴きながら皿洗い。手際良くはありませんが、気がついたらいつの間にか終わっています。そういや、床掃除でも工夫がありました。ロボット掃除機のルンバです。ルンバくんが機嫌よく掃除をするためには、準備をしなくてはなりません。椅子を逆さにして机に上げたり、床に散らかったものを片付けたり。先に片付けるのがいいのはわかっているけど、なかなか取り掛かれない。でも、先にルンバのスイッチを入れておくと片付けざるを得ません。自らに強制的に仕事をさせる方法、いろいろありそうですね。読者の皆様の工夫があったら教えてください。最後に1句怠惰なる 我を動かす 一工夫

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ICIによる早期肺がんアジュバントへの期待(IMpower010)【侍オンコロジスト奮闘記】第111回

第111回:ICIによる早期肺がんアジュバントへの期待(IMpower010)参考Pivotal Phase III study shows Roche’s Tecentriq helped people with early lung cancer live longer without their disease returning早期肺がん、アテゾリズマブの補助療法が主要評価項目を達成(IMpower010)/Genentech

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「緩和ケア」について、全医療者が知っておいたほうがいい理由【非専門医のための緩和ケアTips】第1回

第1回 「緩和ケア」について、全医療者が知っておいたほうがいい理由はじめまして。飯塚病院 連携医療・緩和ケア科の柏木 秀行と申します。初回なのでちょっとだけ自己紹介をしておくと、初期研修を終えた後、総合診療科で後期研修を行い、その後ずっと緩和ケアの仕事を中心に活動してきました。現在は、緩和ケア領域の診療と併せて、部門の運営や教育、学会関連の活動もしています。この原稿を書いている時点で39歳、もうすぐ医師になって15年目になろうというところです。最近でこそ、緩和ケア領域に若手の医師が増えてきましたが、私が緩和ケアの道に進んだころは、まだまだマイナーなキャリアでした。なぜこんなキャリアになったのか、というのは、いろいろなきっかけがあったのですが、それはまた機会があればお話ししましょう。さて、今回から始まったこの連載ですが、「非専門医のための緩和ケアTips」というタイトル。「緩和ケア!? うちは普通のクリニックだぞ!」と思った方も多いと思います。「高齢多死社会」なんて言葉は、きのこ農家であるうちの親でも知っている時代になりました。そうなると、当面は治癒が困難な病気と共にある方や、亡くなる方が増えていきます。つまり、社会全体の緩和ケアニーズが増えていくのですね。そんな今の時代を共に生きる皆さまからいただいた、緩和ケアに関連する質問に対し、明日の臨床に役立つ「緩和ケアTips」を提供していけたらと思います。今日の質問緩和ケアって終末期のがん患者へのケアですよね? そういう患者は緩和ケア病棟に紹介すればよいのではないでしょうか? 当院は入院病床を持っていないので、緩和ケアの実践は難しいと思います…。確かに、日本の緩和ケアの制度は、診療報酬上の対象を「悪性疾患」として整備されてきた経緯があります。そのため、がん拠点病院を中心として緩和ケアの提供体制が整備された背景があるのです。しかし、時代は変わり、これからは医療者であれば誰もが基本的な緩和ケアを提供する必要があります。なぜならば、がん以外の疾患も含め、緩和ケアをしっかり提供していきましょう、という世の中になるからです。そうなると、かかりつけ医機能や訪問診療に取り組んだり、診療所でも緩和ケアに取り組んだりしなければなりません。緩和ケアは、緩和ケア病棟でのみ提供されるものではないのです!それでは、どうすればいいのでしょう?「現状でさえ忙しいのに、何か新しいことを取り組むなんて、とても無理!」なんて声も聞こえてきそうです。もしかしたら、「緩和ケアって患者の話を1時間とか聞くやつでしょ? 外来の合間にやるなんてとても無理ですよ」なんて感じている方もいるかもしれません。そうなんです、緩和ケアの大切さを100回唱えるだけでは何も解決はせず、医療現場でどうやって緩和ケアを実践するか、というところに目を向け、試行錯誤することが重要なのです。だって、われわれが診療する現場は、必ずしも緩和ケアを実践しやすい環境ばかりではないはずです。それでも、「必要な方に緩和ケアを提供していく、気軽に活用できるコツを共有したい!」、そんなテーマで書きつづっていくつもりです。残念ながら、「日本中どこでも通用する、共通した緩和ケアの提供モデル」なんて、すてきなものがあるわけではありません。それぞれの状況に最適化された提供モデルを、考え続けることが大切なのだと思います。私自身がもがいてきたこと、そして現在も取り組んでいる中で見えてきたことを順次お伝えしていけたらと思っています。それでは、今後ともよろしくお願いします。今回のTips

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第53回 臨床実習制限や生活困窮…コロナ禍がもたらす医学生への試練

大学医学部の学生自治組織でつくる全日本医学生自治会連合(医学連)は、新型コロナウイルス感染症の流行が医学生の生活や教育に及ぼす影響についてのアンケート調査をまとめた。それによると、国や大学による学生への経済的支援については、8割超の学生が受給できなかったり、実習では患者と直接触れ合う経験ができなかったりするなど、さまざまな影響が出ていることがわかった。アンケートは2020年8〜9月と同年12月の2回、インターネットで実施。1回目の調査結果は同年10月に速報で公開。2回目の調査結果は1回目の結果を踏まえつつ、この4月1日に最終報告書として公開した。2回目の回答総数は1,437件で、国公立大生が88.1%、私立大生が11.9%。また、アパートなどでの一人暮らしは77.4%だった。経済状況に関しては、「かなり良い」「まあまあ良い」という回答が36.3%だった一方、「少し悪い」「かなり悪い」は21.0%あり、医学生の5人に1人が経済的に苦しい現状であることが明らかになった。アルバイトの有無はほぼ半数に分かれたが、アルバイトをしていない学生のうち、大学やアルバイト先の制限で経済的不安を抱える学生が3人に1人以上いることがわかった。国や学生による学生への経済的な支援については、81.1%の学生が「受給しなかった・できなかった」と答えた。そのうち26.5%が「受給したかったが、要件に当てはまらず、申請できなかった」と回答。「受給したかったが、手順が複雑で申請しなかった」「支援も存在を知らなかった」も合わせると、4割以上の学生に必要な支援が届いていなかった。一方、受給した学生でも31.8%が「不十分だった」と答えた。臨床実習に関しては、「履修した」と答えた学生296人を調査対象とし、「病棟で、全面的あるいは制限付きで実習が再開している」と答えたのは225人(76%)であった。これら225人の学生に病棟実習で経験できなくなっていることを聞いたところ(複数回答)、「患者さんへの診察」(137人)を挙げる人が最も多く、次いで「回診」「外来見学」といった患者と直接触れ合う可能性あるものや、「大学病院外での実習」といった大学外の人と接触する可能性のあるものが挙げられた。一方、先述した296人の中には、病棟での実習が「再開しておらず、オンライン等で代替されている」と答えた学生も15.5%いた。就職活動の有無について、「活動中あるいは1年以内に予定している」という回答が23.9%、「就職活動は終了した」が14.0%いた。このうち「活動中あるいは1年以内に予定している」と回答した学生に対しては、さらに具体的な分析が行われた。それによると、県外移動に「制限がある」という回答者は89.9%おり、そのうち7割以上が「就職活動に支障がある(と予想される)」と回答。県外移動制限を受けている学生の多くが就職活動に支障が出ることを懸念していた。また、医師臨床研修マッチングに関する情報提供や病院見学などの機会について、十分かどうか5段階評価(1:不十分〜5:十分だ)で質問したところ、70.1%の学生が「1」「2」と回答した一方、「4」「5」と回答した学生はわずか5.2%。就職情報と病院見学機会の不足が浮上した。医学連は調査結果を踏まえ、以下の提言を発表している。(1)お金の心配なく学べる大学へ(2)感染対策の中でも最大限、学修機会の保障を(3)就職先の選択肢を狭めない、柔軟な対応を(4)学生の活動・交流の場を確保しよう(5)孤立を防ぎ、こころの健康を守ろう医学連は「困難ゆえに対話を諦めるのではなく、学生と大学が双方の意見を理解しようと努力し、解決に向かって話し合いを重ねることこそが重要」と述べる。コロナ禍は、現役医師たちにとって未曾有の試練となっているが、医学生たちにとっても大きな障壁になっている。これからの医療を担う人たちの希望や意志を挫くことなく、診療現場に仲間として迎え入れられる日が来るよう、サポートが望まれる。

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発症後2日でウイルス排出量ピーク、新型コロナ治療が困難な理由を解明

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を巡っては、病態の多様性もさることながら、いまだウイルス自体の全容が明らかになっていない。そんな中、九州大学大学院理学研究員の岩見 真吾氏らの研究グループは、米国インディアナ大学公衆衛生大学院の江島 啓介氏らとの共同研究により、SARS-CoV-2を特徴付ける感染動態の1つとして、生体内におけるウイルス排出量のピーク到達日数が既知のコロナウイルス感染症よりも早く、この特徴がゆえに、発症後の抗ウイルス薬による治療効果が限定的になっていることがわかった。研究結果は、PLOS Biology誌2021年3月22日号に掲載された。新型コロナのウイルス排出量のピークは発症から平均2.0日程度 研究グループは、新型コロナウイルス感染症に加えて、過去に流行した中東呼吸器症候群(MERS)および重症急性呼吸器症候群(SARS)の臨床試験データを分析。症例間の不均一性を考慮した上で、生体内でのウイルス感染動態を記述する数理モデルを用いて解析した。その結果、新型コロナウイルス感染症におけるウイルス排出量のピーク到達日数が発症から平均2.0日程度であり、MERS(12.2日)やSARS(7.2日)と比べ、かなり早期にピークに達することがわかった。 さらに、本研究で開発したコンピューターシミュレーションによる分析から、投与するウイルス複製阻害薬やウイルス侵入阻害薬が強力であったとしても、ピーク後に治療を開始した場合では、ウイルス排出量を減少させる効果はきわめて限定的であることも示唆された。 本結果は、新型コロナウイルス感染症に対する抗ウイルス薬治療が、ほかのコロナウイルス感染症と比べて困難である理由の1つを明らかにするものである。著者らは、「今回の研究は、新型コロナウイルス感染症を含む症例データを数理科学の力で分析することで、コロナウイルスのさまざまな感染動態を特徴付け、治療戦略を開発するうえで重要な定量的知見である」と述べている。なお、本研究で得られた知見に基づいた医師主導治験が、現在国内で進行中である。

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不妊症女性のうつ病有病率~メタ解析

 不妊症に悩む女性におけるうつ病などのメンタルヘルスの問題は、男性よりも深刻な健康上の問題である。うつ病は、個人の健康に悪影響を及ぼし、生活の質を低下させる可能性がある疾患である。イラン・Shahid Beheshti University of Medical SciencesのZahra Kiani氏らは、不妊症の治療反応に対するうつ病の影響を考慮したうえでシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、不妊症女性におけるうつ病有病率を調査した。Fertility Research and Practice誌2021年3月4日号の報告。 各種データベースより、2000年から2020年4月5日までに公表された文献を、独立した2人のレビュアーが検索した。検索キーワードには、うつ病、障害、不妊症、有病率、疫学などを用い、ペルシャ語および英語で検索した。文献のタイトル、アブストラクト、フルテキストを評価した。レビュアーは、Newcastle-Ottawa Scaleを用いてエビデンスの質を評価した後、STATA version 14を用いて調査結果を分析した。不均一性および出版バイアスの評価には、I2およびEgger's検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・32件をメタ解析に含め、文献の不均一性を考慮し、変量効果モデルを用いて検討した。・抽出された研究には、不妊症女性9,679例が含まれた。・プールされた有病率の最低値は21.01%(95%CI:15.61~34.42、Hospital Anxiety and Depression Scaleで評価)、最高値は52.21%(95%CI:43.51~60.91、ベックうつ病評価尺度で評価)であった。・不妊症女性におけるプールされたうつ病の有病率は、低中所得国で44.32%(95%CI:35.65~52.99)、高所得国で28.03%(95%CI:19.61~36.44)であった。 著者らは「不妊症女性のうつ病有病率は、一般人口よりも高かった。とくに低中所得国では、不妊症女性のうつ病に対する適切な対策、計画、政策を確立し、この問題を減少させるための取り組みを行う必要がある」としている。

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