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Dr.林の笑劇的救急問答16 皮膚科救急編

第5回 壊死性筋膜炎1 見た目はいいのに痛がりなのだ第6回 壊死性筋膜炎2 刺身を食べすぎて…?第7回 ダニ1 取れるものなら取ってみて!第8回 ダニ2 不明熱と発疹でつつがある? Dr.林の笑劇的救急問答も16年目に突入!下巻は「皮膚科救急編」。壊死性筋膜炎、ダニについて取り上げます。見逃し厳禁の「壊死性筋膜炎」。手遅れにならないための診断のポイントと詳しい病態をお教えします。また、「ダニ」のセッションでは、皮膚に張り付いたマダニの簡単な取り方やダニが介する感染症の診断・治療について解説します。思わず笑ってしまう症例ドラマと楽しくわかりやすいDr.林の講義でしっかりと学んでください。第5回 壊死性筋膜炎1 見た目はいいのに痛がりなのだDr.林の笑劇的救急問答16の後半は皮膚科救急です。そのなかでも見逃し厳禁の壊死性筋膜炎について取り上げます。壊死性筋膜炎の典型といえば、血性水泡やまっ黒い皮膚。教科書でよく見る所見です。でも、そこまでいってしまうともう手遅れ。早期では、そんな典型所見をみることはありません。また、血液検査の数値で予測できるとされるLRINECスコア。感度は90%以上といわれていますが、実は、臨床では役に立ちません。ではどうすれば早期に発見できるのでしょうか。第6回 壊死性筋膜炎2 刺身を食べすぎて…?前回に引き続き壊死性筋膜炎についてです。原因菌とその病態、タイプ分類などをDr.林が整理してわかりやすくお教えします。それらをきちんと理解し、病歴を詳しく聴取することが早期発見につながります。とくにリスクの高い患者さんには注意が必要です。どのような疾患がリスクとなるのか、しっかりと確認しましょう!第7回 ダニ1 取れるものなら取ってみて!皮膚科救急のもう1つのテーマはダニ。一晩でホクロができたと言って患者さんが受診することはありませんか?実はマダニがついているのです。あなたなら、どうやってそのダニを取り除きますか?無理に引っこ抜くと口器が残り、肉芽になったり、感染したりすることも。それならばワセリンやアルコールを使って滑りを良くして引っこ抜く?根性焼で焼き切る?それとも、皮膚ごと切り取ってしまう?いえいえ、実は簡単な方法があるんです!必見です!第8回 ダニ2 不明熱と発疹でつつがある?Dr.林の笑劇的救急問答16もいよいよ最終回!今回のテーマもダニ。不明熱+発疹で受診したときは、リケッチア病、ライム病など、ダニが介する感染症を疑う必要があります。その場合、探さなくてはならないものは「刺し口」。疑わないと見つけることができないので、疑うことから始めましょう。そして、治療については、選択する抗菌薬についてもしっかりとお教えします。

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生データに基づくメタ解析の信ぴょう性が怪しい(解説:折笠秀樹氏)-1385

 メタ解析は統合研究ともいわれ、同じ課題に対して複数の研究データを統合する研究法です。一般的なのは文献から得られた集計データ(aggregate data)に基づくメタ解析ですが、生データ(individual participant data:IPD)に基づくメタ解析もあります。メタ解析のメッカであるコクラングループでは、ずいぶん前からこのIPDメタ解析を推奨してきました。その手法や点検法については、コクランIPD Methods Groupが主になって活動しています。私もこのグループへ所属しておりました。 生データに基づくメタ解析をするには、研究グループから生データが提供されなければ実現しません。臨床研究の事前登録制度は2005年に始まりましたが、近年、その中にデータシェア宣言の項目が加わりました。研究データを共有するつもりがあるかの事前宣言です。こうした風向きもあってか、近年、生データに基づくメタ解析論文は増えてきました。 この論文は、生データに基づくメタ解析論文323件のシステマティックレビュー(SR)です。方法論上の信ぴょう性を調査しました。323件の論文のうち、コクランレビュー(CDSR)が53件(17%)を占めていました。チェックリストとして有名なAMSTAR-2では不十分のため、2015年に出版されたIPDメタ解析のためのチェックリストも使われました。それを作ったのは、コクランIPD Methods GroupのJayne Tierneyらです。 生データに基づくメタ解析論文の品質は、全般的に低かったという結論でした。信ぴょう性が疑われたということです。とくに、バイアスリスク(Risk of Bias)の考察が足りないこと、事前にプロトコールを作っていないこと、出版バイアスを考慮していないことなどが指摘されました。そのとおりだと思います。生データに基づくメタ解析のほうが、通常のメタ解析よりもバイアスが入りやすいのです。まず、生データが入手できないことによるバイアスがあります。すなわち選択バイアスですね。また、生データを解析する際の統計モデル選択に伴うバイアスも考えられます。いわゆる、解析の多重性によるバイアスです。 メタ解析はエビデンスの最高峰と目されているため、商業的目的で実施されるケースが増えています。生データに基づくメタ解析は、通常のメタ解析よりも厳しく点検する必要があります。そのためのチェックリストも必要でしょう。通常のメタ解析に対しては、PRISMA声明というチェックリストがあります。それは2020年に更新されました。その生データ(IPD)版、PRISMA-IPD声明も2015年に出版されました。これらはメタ解析論文を書くためのガイダンスですが、その中にみられるチェックリストを査読においても活用し、信ぴょう性が薄い論文は出版を却下するべきでしょう。

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鼻咽頭スワブが鼻から抜けなくなった1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第186回

鼻咽頭スワブが鼻から抜けなくなった1例いらすとやより使用いやがる人に無理やり鼻咽頭スワブを突っ込んで新型コロナウイルスの検査をしたり、あろうことか空港では肛門から長いスワブを突っ込んだり、一体どうなってんだ的な検査を行っている国もあるようですが……。Gaffuri M, et al.An Unusual Retained Choanal Foreign Body: A Possible Complication of COVID-19 Testing With Nasopharyngeal SwabEar Nose Throat J . 2021 Feb 26;145561321993933.この症例報告はイタリアのものです。本文には何度か「非協力的な患者」という用語が出てきますが、認知力に問題があるとはいえ、鼻咽頭を無理やり突っ込むのはさすがに日本では問題になりそうです。鼻咽頭スワブによる新型コロナウイルスの検査が行われたのは、ダウン症の濃厚接触者の37歳男性です。施設でクラスターが発生したため、濃厚接触者として検査を受けに来たのです。処置中、頭を急に動かしたため、スワブが左鼻腔内にズボっと入ってしまい、しかもボキッと折れてしまいました。プラスチック製だと、折れる可能性は確かにありますね。かなり奥に入って折れたためか、肉眼的に見えない状況でした。医師は焦ります。どうにかして抜かないといけませんが、もしも鼻腔後壁を突き破っていたら…と思うとまずは画像検査を行わないといけません。しかし、この医師の肝っ玉の強いところは、画像検査前に逆の右鼻からササっと2回目の鼻咽頭スワブを行ったところです。外科的処置が必要になるにしても、とりあえず彼がコロナかどうかみておこう、というわけです。メンタル強いな……。単純X線写真では、折れたスワブの先は見つかりませんでした。そこで、鼻咽頭スコープを使って、スワブの先端がないか探すことにしました。……あった!!鼻中隔と上鼻甲介の尾の間に挟まれる形で、スワブの先がありました。ディスポの鼻咽頭スコープを使って観察したのですが、どうも容易には摘出できそうにないことがわかりました。その後、男性は新型コロナウイルス陽性であると判明し、手術室に移動して処置が行われました。把持する鉗子が必要だったので、鉗子チャネルがある内視鏡が必要でした。というわけで、気管支鏡を使って摘出処置が行われました。そして、スワブの先が摘出されました。ヤッター!鼻出血やその他合併症はなく、しばらく様子を見てからCOVID-19病棟に入院になったそうです。――こういう症例報告をみると、唾液PCRが広く普及してよかったなぁと思います。イタリアにおける4,876人の鼻咽頭スワブ検査のうち、鼻腔に合併症を起こした症例は8人(0.16%)です1)。きわめてまれな合併症ですが、8人のうち3人が鼻咽頭スワブの断裂です。無理矢理突っ込まないことは当然として、愛護的に検査しないとコワイということがわかります。1)Fabbris C, et al. Am J Otolaryngol. 2021 January-February; 42(1): 102758.

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第56回 コロナ禍で個人情報を晒す困窮者も、今こそ地域密着医療の出番では?

コロナ禍で2度目、しかも一部地域では緊急事態宣言発出中となるゴールデンウイーク(GW)は、多くの国民にとって過ごしにくかったに違いない。コロナ禍でたまりにたまった1年分の鬱憤を晴らしたくとも晴らす機会すらないのだから。かく言う私は、そもそもGWがあってないような立場に従来からおかれている。仕事を引き受けても、その一部を誰かに割り振ることができないフリーの立場にとっては、世間一般の長期休暇で仕事関係先から連絡が激減するGW、お盆休み、年末年始は溜まった仕事を片付けるための好機となる。実際、4月29日のGW入り以降、出かけた範囲は最も遠くても電車で20分以内の場所に限られている。また、GWは前述のように仕事関係先から連絡がこないので仕事をしながらも比較的普段よりはのんびり時間が過ごせる。ということで仕事の合間に仕事場周辺をトボトボ散歩することが増える。そんな散歩の道すがら、電柱に張られたある張り紙が目に留まった。それを見て「ああ、またか」と思った。同じような張り紙はちょうど昨年の第1回目の緊急事態宣言発令中にも目にしている。1回目の張り紙にはこう書いてあった。「お仕事探してます。特別なことはできませんが買い物の同行、散歩の同行お手伝いします。車椅子の方でも同行のお手伝いします。その他の事はそちらの方で決めてくださいよろしければ電話ください。090-○○○○-○○○○ ×(個人名)」正直、メディアで仕事をしているとさまざまな人に会い、さまざまなシーンに出くわすので、一般の人と比べ、何かに驚くことは明らかに少ない。しかし、これを見た時は正直かなり驚いた。私の場合、個人情報は守っても限界があるという認識がある上に、職業柄どうしても個人情報を一定程度さらさなければならないことが多く、自分の個人情報の開示に一定の耐性がある。しかし、一般人にとっては明日の生活がかかっていても個人の携帯電話番号や名字だけとはいえ、名前を不特定多数の人に晒すことはかなり勇気がいることだと思う。ちなみに余談になるが自身の個人情報開示については30代前半の頃、やややり過ぎの行動をし、周囲からたしなめられたことがある。それは取材相手とトラブルになった時のことだ。トラブルとは相手の発言をほぼ忠実にテープ起こしをして掲載したにもかかわらず、相手から電話があり、「そんなことは一言も言っていない」といきなり激怒されたのである。明確な言いがかりで録音音声もあるので、「お会いしてお聞かせしますよ」と言ったのだが先方はそれを無視。そうこうするうちにいきなりブログを開設し、私の名指し批判(というか中傷)投稿をし始めた。投稿の中には「この男の住所などの個人情報を集めております。提供していただいた方には謝礼5万円を差し上げます」との記述が。ちなみに私がこの相手に渡した名刺には住所は記載済み。まあ、放っておけばよかったのだが、若気の至りで自分の免許証の写メを添付し、「この通り情報提供しましたので謝礼をお振込みください」とご丁寧に銀行口座まで記載したメールを相手に送信したのだが返信はなかった。ちなみにこのメール送信の2日後にはブログそのものが消え失せていた。今ならば当然こんなことは決してしない。誠に若気の至りである。余談が長くなってしまったが、今回新たに見かけた張り紙はこう書いてある。「高齢者一人暮らしの方のお手伝い致します。日常生活で困ったこと掃除・洗濯電気等の交換・自転車の修理買い物の代行・買い物のお供その他いろいろお手伝いいたします。お気軽にご連絡して下さい090-○○○○-○○○○ ×(個人名)」電話番号と氏名は前回と同じで完全な同一人物だ。この地域には10年以上暮らしているが、こうした張り紙を見たのはこの2回だけである。やや極端を思うかもしれないが、この2回の張り紙だけでも、コロナ禍が社会全体に深刻なダメージをもたらしている証左の一部になると考えている。その意味で今回のコロナ禍がもっとも直撃した業種は、飲食業、宿泊業、医療・福祉業に代表される。前者2つの業種は、感染拡大阻止に伴う人と人の接触減、移動減の影響をまともにかぶった業種であり、医療・福祉業はまさに感染者発生などの対応でマンパワーが要求され、オーバーキャパシティとなった業種である。そして前述の張り紙を見て改めて調べた中で出てきたのが、厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部企画課が過去に作成した資料である。約10年前のものでやや古いが、今でも一定の傾向は示せていると思う。私が注目したのは、この12ページ目にある業種別非正規雇用労働者の割合である。今回、負の影響が直撃した飲食、宿泊業での非正規雇用の割合が突出しているのである。つまり今回のコロナ禍で前年比5割以上の売上減などはもはや当たり前となっている飲食・宿泊業では、もともと経済・社会基盤がぜい弱な単身者・女性などを中心とする非正規雇用者が多く、これらの人が収入減や雇用調整などの影響を大きく受けていると想像できる。コロナ禍はもともと存在していた弱者を、さらに過酷な環境をもたらすことによって社会全体により強く印象付けているとも言える。こう書くと一見医療とは何も関係ないではないかと言われてしまうかもしれない。しかし、医療の世界でもこうした残酷な可視化はより進行しているはずである。たとえばちょっと考えただけでも次のような問題が浮かび上がってくる。ひとり親家庭での親側、老老介護夫婦家庭でのどちらか一人が新型コロナに感染したら、残された家族を誰がどうケアするのか?独居の認知症高齢者が感染したら、きちんと行動自粛をしてくれるだろうか?軽度認知障害の人が外出自粛を長期間続けたら症状の進行が加速しないだろうか?生活のリズムを整えることが重要な精神疾患患者が突然在宅ワークになったら悪影響はないだろうか?このようなことは挙げればキリがないはずだ。もちろんこれらの問題は現場の医療者だけで解決できることは少ない。ただ、行政や民間などとの連携で解決に導くとしても数多くの局面で医療者はゲートキーパーとならなければならない。まだ早いと言われるかもしれないが、ワクチン接種率が上昇し、今回のパンデミックが一定の収束を見せた時に、どのように行政や民間、あるいはつかみどころのない「地域」との連携を深めていくかは、今から各医療者に考えておいて欲しいことだと思い始めている。街角の張り紙一枚から「大仰な」と言われてしまうかもしれないが、敢えてこのようなことを言ったのはこの件をきっかけに過去数年間、医療の世界でよく耳にするある言葉に対する違和感を改めて思い出してしまったからだ。その言葉とは「地域密着」「地域包括ケア」の2つである。最近では新規のクリニックが開業するとほぼ即日インターネット上のホームページもオープンしていることが少なくない。そこでクリニックの院長の「ご挨拶」ページに行くと、多くは「地域に密着した」というキーワードが使われている。一方、「地域包括ケア」はご存じのように官製用語と言ってもよく、「医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される」仕組みを指す。どちらの言葉も聞こえは良く、そのことを誰も否定はできない。その分、気軽すぎるほど多用されている。意味のあいまいなままに、いかにも新しい内容を伝えているかのように思わせる言葉を指す「プラスチック・ワード」に該当するとさえ、個人的には思っている。ただ、ここまで使われてしまったものだからこそ、単なる「プラスチック・ワード」で終わらせず、より価値のある「プラチナ・ワード」とでも言うべきものに徐々に転換させていく必要があるのではないかと考えている。まさにそのため今回の方策の一つが、コロナ禍により医療者の目に映った弱者情報の発信と周囲との連携によるその対策の立案とだと考えている。そしてそれを支えるための情報発信がメディア側に求められているとも思うのだ。繰り返しになるが、このことは本来はポスト・コロナ・パンデミック期に考えるべきこと、さらに問題に対するより明確な対策やアイデアを伴ってすべきことと言われればそうである。ただ、このコロナ禍が近現代まれに見る事態であるがゆえに、ポストコロナ期になってからでは、反動でこれらの問題が一時的に忘れ去られ、そのまま一気に忘れ去られてしまうのではないかとの危惧も持ってしまう。そんなこんなを街角の張り紙から考えながらGWを過ごしている。結局のところ自分の蚊のような微々たる脳ミソもまったく休まらない日々となっている。

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RAAS系阻害薬と認知症リスク~メタ解析

 イタリア・東ピエモンテ大学のLorenza Scotti氏らは、すべてのRAAS系阻害薬(ARB、ACE阻害薬)と認知症発症(任意の認知症、アルツハイマー病、血管性認知症)との関連を調査するため、メタ解析を実施した。Pharmacological Research誌2021年4月号の報告。 MEDLINEをシステマティックに検索し、2020年9月30日までに公表された観察研究の特定を行い、RAAS系阻害薬と認知症リスクとの関連を評価した。ARB、ACE阻害薬と他の降圧薬(対照群)による認知症発症リスクを調査または関連性の推定値と相対的な変動性を測定した研究を抽出した。研究数および研究間の不均一性に応じて、DerSimonian and Laird法またはHartung Knapp Sidik Jonkman法に従い、ランダム効果プール相対リスク(pRR)および95%信頼区間(CI)を算出した。同一研究からの関連推定値の相関を考慮し、線形混合メタ回帰モデルを用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・15研究をメタ解析に含めた。・ACE阻害薬ではなくARBの使用により、認知症(pRR:0.78、95%CIMM:0.70~0.87)およびアルツハイマー病(pRR:0.73、95%CIMM:0.60~0.90)リスクの有意な低下が認められた。・ARBは、ACE阻害薬と比較し、認知症リスクの14%低減が認められた(pRR:0.86、95%CIDL:0.79~0.94)。 著者らは「ACE阻害薬ではなくARB使用による認知症リスク低下が示唆された。認知症予防効果に対するARBとACE阻害薬の違いは、独立した受容体経路に対する拮抗作用のプロファイルまたはアミロイド代謝に対する異なる影響による可能性がある」としている。

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COVID-19のmRNAワクチン、妊婦の安全性に問題認めず/NEJM

 米国疾病予防管理センター(CDC)のTom T. Shimabukuro氏らは、米国の3つのワクチン安全性モニタリングシステムのデータを用いて初期調査を行い、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの接種を受けた妊婦において、明らかな安全性の問題は認められなかったことを報告した。ただし、著者は「母体、妊娠および新生児の転帰について情報提供するためには、妊娠初期にワクチン接種を受けた妊婦を含むより多くの妊婦の長期的な追跡調査が必要である」とまとめている。米国ではすでに多くの妊婦がCOVID-19に対するmRNAワクチンの接種を受けているが、妊娠中のワクチン接種の安全性に関するデータは限定的であった。NEJM誌オンライン版2021年4月21日号掲載の報告。3つのワクチン安全性モニタリングシステムのデータを解析 研究グループは、“v-safe after vaccination health checker”サーベイランスシステム(v-safe)、v-safe pregnancy registry、およびワクチン有害事象報告システム(Vaccine Adverse Event Reporting System:VAERS)の3つのワクチン安全性モニタリングシステムを用い、2020年12月14日~2021年2月28日の期間にワクチンを接種し、かつ妊娠していることが確認された妊婦を対象に解析した。 v-safeは、COVID-19ワクチン接種プログラムのために開発された新しいCDCのスマートフォンによる積極的サーベイランスシステムで、登録は任意となっている。v-safe登録者のうち、妊娠中または受胎前後にワクチン接種を受けた18歳以上の女性を対象に、希望者をv-safe pregnancy registryに登録し、妊娠、出産、乳児について追跡調査を行った。VAERSは、自発的な報告システムで、CDCと米国食品医薬品局(FDA)が運用している。妊婦と非妊婦で有害事象は同程度 v-safeにおいて、16~54歳の3万5,691例が妊婦と確認された。非妊婦と比較して妊婦では、注射部位疼痛の頻度は高かったが、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱の頻度は低かった。 v-safe pregnancy registryに登録された妊婦は3,958例で、このうち妊娠を完了したのは827例であった。827例中、712例(86.1%)が生児出産(このうち98.3%は妊娠第3期にワクチン接種)、104例(12.6%)が自然流産、1例(0.1%)が死産、10例(1.2%)が人工妊娠中絶および子宮外妊娠であった。 新生児の有害アウトカムとしては、早産が9.4%(60/636例)、在胎不当過小児が3.2%(23/724例)、先天異常が2.2%(16/724例)報告されたが、新生児死亡は認められなかった。 また、VAERSに報告された妊娠関連有害事象は221件で、このうち最も多く報告された事象は自然流産(46例)であった。 著者は先行研究の結果等を踏まえて、「直接比較ではないが、COVID-19 mRNAワクチン接種を受け妊娠を完了した妊婦における妊婦/新生児有害事象の発現率は、COVID-19パンデミック前に実施された妊婦を対象とする研究で報告された発現率と同程度であった」と考察している。

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新規抗体薬物複合体SG、転移TN乳がんに有効/NEJM

 転移を有するトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において、新規の抗体薬物複合体(ADC)sacituzumab govitecan(SG)は化学療法単剤と比較して、無増悪生存(PFS)期間および全生存(OS)期間を有意に延長した。ただし、骨髄抑制と下痢の発現頻度は、SGのほうが高かった。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのAditya Bardia氏らが、7ヵ国88施設で実施した無作為化評価者盲検第III相試験「ASCENT試験」の結果を報告した。SGは、乳がんの多くに発現しているヒト栄養膜細胞表面抗原2(Trop-2)を標的とするsacituzumabを、イリノテカンの活性代謝物SN-38(トポイソメラーゼI阻害薬)と独自の加水分解性リンカーを介して結合させた抗Trop-2 ADCで、これまで第I/II相試験で転移のある上皮がんにおける有効性、安全性が評価され、第III相試験実施を後押しする結果が得られていた。NEJM誌2021年4月22日号掲載の報告。転移を有するTN乳がん患者で脳転移はない468例、SGと化学療法単剤を比較 研究グループは、2ライン以上の化学療法歴がある再発/難治性の転移を有するTN乳がん患者を、SG群(10mg/kgを21日サイクルのday1、8に点滴投与)、または化学療法群(主治医選択によりエリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビンのいずれか単剤を投与)に、1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要評価項目は、脳転移のない患者におけるPFS(盲検化中央判定)で、副次評価項目は、OS、PFS(治験責任医師判定)、客観的奏効率(ORR)、安全性であった。 2017年11月~2019年9月に529例を登録。このうち、脳転移のない患者は468例(SG群235例、化学療法単剤群233例)で、年齢中央値は54歳、全例にタキサン使用歴があった。PFSはSG群5.6ヵ月、化学療法単剤群1.7ヵ月、OSはそれぞれ12.1ヵ月、6.7ヵ月 PFS期間中央値は、SG群5.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.3~6.3、イベント166件)、化学療法単剤群1.7ヵ月(1.5~2.6、150件)であった(病勢増悪または死亡のハザード比[HR]:0.41、95%CI:0.32~0.52、p<0.001)。 OS期間中央値は、SG群12.1ヵ月(95%CI:10.7~14.0)、化学療法単剤群6.7ヵ月(5.8~7.7)であった(死亡のHR:0.48、95%CI:0.38~0.59、p<0.001)。ORRは、SG群35%、化学療法単剤群5%であった。 Grade3以上の主な治療関連有害事象は、好中球減少症(SG群51%、化学療法単剤群33%)、白血球減少症(10%、5%)、下痢(10%、1%未満)、貧血(8%、5%)、発熱性好中球減少症(6%、2%)であった。有害事象による死亡は各群3例報告されたが、SG投与に関連した死亡は認められなかった。

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NSCLC1次治療、ペムブロリズマブ単剤の5年追跡結果(KEYNOTE-024)/JCO

 未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)の転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象にペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)単剤と化学療法を比較した第III相KEYNOTE-024試験の5年追跡結果が発表された。・対象:転移を有する未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)NSCLC患者(305例)・試験群:ペムブロリズマブ200mg 3週ごと(154例)・対照群:治験担当医が選択したプラチナベース化学療法 4~6サイクル(151例)・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OSなど 主な結果は以下のとおり。・無作為化からデータカットオフ(2020年6月1日)までの期間中央値は59.9ヵ月であった。・化学療法群からペムブロリズマブ群へのクロスオーバーは66.0%であった。・OS中央値はペムブロリズマブ群26.3ヵ月、化学療法群は13.4ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.48~0.81)。・5年OS率は、ペンブロリズマブ群で31.9%、化学療法群で16.3%であった。・長期治療曝露による毒性の増加は示されなかった。

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ゴーグルを買った【Dr. 中島の 新・徒然草】(373)

三百七十三の段 ゴーグルを買った大阪の某医療機関では、コロナ陽性の9割が変異型だと耳にしました。従来型に比べて感染しやすく、若者でも重症化しやすいそうです。おまけに感染性も長続きするのだとか。そのせいか、ノーマークの入院患者さんのコロナが後で発覚したとか、3回目のPCRでようやく陽性に出たとか、いろいろと危ない話を見聞きします。もう周囲の人たち全員がコロナを持っていると考えて対処すべきかもしれません。そう思った私は、マスクだけでなく目も保護することにしました。でも、フェイス・シールドの類は手に当たって邪魔。ホームセンターで買ってきた防塵めがねも鬱陶しいし、締め付けられた頭が痛い。なかなかピッタリ合うのにめぐり逢いません。そんな時にふと思いついたわけです。車の運転中に日光対策でしているサングラス。眼鏡の上からかけられて超便利。上も横も防護されているし。こいつの透明レンズ版を使ったらいいんじゃないか。そう思って眼鏡屋さんに買いに行きました。2軒目にしてイメージにピッタリのものを発見!中島「職場で必要なんですよ、医者やってるんで」そう言うと店員さんに妙に納得されました。店員1「先日、向かいの歯科の〇〇先生が買っていきました」店員2「介護施設の職員にもたくさん売れましたよ」店員1「曇り止めがあるからお風呂介助にいいらしいです」皆さん、考えることは一緒なんですね。もともとは、花粉症の人の目の保護用みたいです。眼鏡の上からかけることのできるオーバーグラスだし。これならストレスなくかけられそう。店員1「医療従事者にエールを送ろうってSNSでやってますけど」中島「ええ」店員2「私、自分がコロナにかからないのが一番だと思うんです」中島「その通り。御理解いただけて嬉しいです」店員1「やっぱり!」中島「歓送迎会とか、やめて欲しいです」店員2「偉い人たちも宴会やっていますよね」中島「社会的地位が高いからといって、コロナは見逃してくれませんからね」これ、つい勘違いしてしまうんですよ。人間社会で優遇されていても、自然は特別扱いをしてくれません。なので、偉い人も偉くない人も皆が注意深い行動をとる必要があります。中島「お蔭様でイメージ通りの物を買えました」店員1「お仕事頑張ってくださーい」中島「ありがとうございます」その後、あれこれ調べてみると、ほかにも役に立ちそうなものがありました。まずは度付き花粉対策眼鏡。花粉対策眼鏡の素通しレンズを、度の付いたものに入れ換えるだけです。眼鏡屋さんで作ってもらいました。いつもの眼鏡と同じ感覚なので、手術用顕微鏡を覗くこともできます。次に眼鏡カバー。これは普段かけている眼鏡につけるカバーで、即席の花粉対策眼鏡になるものです。カバーは内側からレンズに装着します。アマゾンで購入しましたが、これも悪くなさそう。使ってみた感想は、あらためて報告させていただきます。最後に1句コロナくん もらわぬためには 目も守れ※最近になって季語の入らない川柳に戻ってしまいました。

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骨形成不全症〔Osteogenesis imperfecta〕

1 疾患概要■ 概念・定義骨形成不全症は先天的に骨が脆弱な疾患である。易骨折性や骨の変形といった症状が特徴的であり、そのほか青色強膜や歯牙形成不全、伝音性難聴、低身長などを認めることがある。遺伝性疾患であり、いずれも1型コラーゲンの異常による結合組織の症状である。骨形成不全症は、胎児期から骨の変形が著明で出生後に死亡する重症型と、出生後に易骨折性や低身長などで診断される軽症型の大きく2つに分かれるが、実際には症状は非常に多彩であり両者には連続性がある。■ 疫学有病率は最近の集団研究から約1万人に1人と言われている。ただし、最重症例の新生児早期死亡例から、歯牙の異常のみの軽症例、あるいは無症状の人まで多様に存在するので、真の発生頻度はわからないところがある。■ 病因結合組織の主要な成分である1型コラーゲン分子の異常によって発症する。90%以上が1型コラーゲンの遺伝子変異(COL1A1、 COL1A2)が原因であるが、近年それ以外の複数の遺伝異常が原因となっている骨形成不全症がみつかっている。■ 症状骨形成不全症は、症状やX線所見、自然歴などから4つの型に分類される(Sillence分類)。出生直後に死亡したり、重度の骨格変形を来す2型は、出生時にはすべての症状が明らかである。胎齢に比べて体重も身長も小さく、頭蓋骨は軟らかい。眼瞼強膜は濃い青色で、結合組織は非常に脆弱である。四肢は短く彎曲している。肋骨も多発骨折によりベル状に変形していて、呼吸不全を呈することが多い。これまでは罹患児の半数以上が出生当日に、80%が1週間以内に死亡し、1年を超えて生存する例は少ないと言われてきたが、近年の人工呼吸管理の進歩のより予後はすこしずつ改善している。2型の中で太い長管骨と細い肋骨を示す2B型は、症状のやや軽い3型と連続的なスペクトラムをもつ疾患である。2B~3型では、肋骨骨折の重症度によって生後数週間または数ヵ月で呼吸不全によって死亡となるが、この期間を生き残った児も骨の脆弱性と顕著な骨変形のため将来的にも車いすなどに頼らなければならない。徐々に骨変形が進むために成長は遅れ、成人身長が1m未満ということもめずらしくない。脳内出血といった合併症がない限り知的には正常である。1型および4型のほとんどは出生時に所見を認めず、成長にともなってさまざまな症状を呈するものである。青色強膜を認めるものを1型、認めないものを4型とするが、判定困難な例も多い。また、乳幼児期には明らかであっても、成長にともない軽減する例もあって、その有無の判定には慎重にならなければならない。1型および4型は正常な身長と易骨折性によって特徴付けられる。最初の骨折は出生後のおむつの交換で起ったり、あるいは乳児期に歩行転倒したときに起こるときもある。骨折は一般的に年に1〜数回の割合で起こり、思春期以降になると頻度が減少する。骨折は一般に変形なしで正常に治癒する。関節の過可動性を認め、変形性関節疾患を早期に発症することがある。難聴は小児期から発症し、成人の半数近くに認められる。中耳骨の骨折による拘縮および瘢痕化によって起こるとされ、基本的には伝音性難聴であるが、年齢とともに混合性難聴となっていく。■ 予後2型では一般に生命予後は良好ではなく、1歳までの間に多くがさまざまな原因で亡くなる。3型では重症度によるが、一部の患者(児)は成長して成人までいたるが、骨の短縮変形のために運動機能は不良である。また、重度の側弯症となると拘束性肺疾患による心不全が余命を短縮させる可能性がある。1型あるいは4型では平均寿命は正常と変わらない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)骨形成不全症の診断は骨X線所見が基本である。出生時から症状を呈する2型、3型では、長管骨、肋骨とも多数の骨折のため著しい変形を来しており、胸骨もベル型になっている。頭蓋冠の骨化はほとんど認めない。1型、4型では長管骨はovermodelingのために細く軽く彎曲している。頭蓋骨に特徴的なWormian boneを認めることがある。ただし、1型、4型の表現型は非常に幅広く、ほとんど症状がないこともめずらしくない。小児慢性特定疾患や指定難病の申請のための診断基準が定められている。表の項目の中で、除外項目を除いた上で、Aの症状が認められれば診断される。Bのうちのいくつかの症状を伴っていることが多く、Cのいずれかを認めることが診断の参考になる。診断に苦慮する症例では遺伝子診断を行う。表1 骨形成不全症の診断基準(指定難病)画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)内科的治療と外科的治療に大きく分けられる。■ 内科的治療骨強度を増加させる治療としては骨吸収の抑制と骨形成の促進がある。骨吸収抑制作用をもつ代表的な薬剤としては、ビスホスホネート製剤であるパミドロン酸がある。骨折回数の減少、骨密度の増加、骨痛の改善などが認められている。また、椎体の圧迫骨折を減らし、側弯症の進行を遅くさせるが、発熱や低カルシウム血症などの副作用がある。現在、わが国で小児の骨形成不全症に対して保険適応があるのはパミドロン酸のみである。そのほかの治療薬としては、骨吸収抑制の作用がある抗RANKL抗体(denosumab)、骨形成促進作用があるテリパラチド(TPTD)、抗sclerostin抗体(romosozumab、 sestrusumab)などがあるが、ランダム化比較試験(RCT)によって効果が示されておらず、いまだ研究段階といえる。■ 外科的治療骨折したときの一般的な観血的骨整復術のほか、四肢変形に対する骨切り術、長管骨の骨折変形予防を目的とした髄内釘挿入などが行われる。長管骨の易骨折性・変形に対する手術治療は、繰り返す骨折、歩行や装具装着の妨げになる変形がある場合に適応となり、矯正骨切り・髄内釘治療が主に行われている。骨成熟までの期間が長い小児の場合には、伸張性の髄内釘を用いることで髄内釘を入れ替える間隔を長くすることができる4 今後の展望先に述べたように骨形成不全症の原因の90%は1型コラーゲン遺伝子(COL1A1、 COL1A2)の異常であるが、残り10%の原因として20種類を超える遺伝子が報告されているのが最近のトピックスである。1型コラーゲン遺伝子異常による骨形成不全症は常染色体優性であるが、10%のさまざまな遺伝子異常による場合は常染色体劣性の遺伝形式をとる。これらの遺伝子異常による骨形成不全症は、ほとんどが2B型の表現型をとることが知られている。産科的には同胞再発に注意する必要がある。骨形成不全症の病態解析や新薬の開発などは現在活発に行われており、今後の発展が期待される。5 主たる診療科産科、小児科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター 骨形成不全症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 骨形成不全症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報NPO法人骨形成不全症協会ホームページ(患者とその家族および支援者の会)骨形成不全友の会(患者とその家族および支援者の会)1)市橋洋輔ほか.小児科臨床. 2020;73:660-663.2)大園恵一. 新薬と臨床. 2018;67:75-80.3)田中弘之ほか. 日本小児科学会雑誌. 2006;110:1468-1471.公開履歴初回2021年5月6日

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第23回 高齢糖尿病患者の骨折リスク、骨粗鬆症にどう対応する?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第23回 高齢糖尿病患者の骨折リスク、骨粗鬆症にどう対応する?Q1 糖尿病患者で骨折リスクが高くなる要因は?糖尿病患者では、糖尿病のない人と比べて骨折のリスクが高くなります。インスリン作用不足や糖化最終産物の蓄積による骨質の低下や、バランス感覚の悪化や視力低下による易転倒性などが要因として考えられています。血糖コントロール不良で推移している人は骨粗鬆症を併発しやすくなります。HbA1c値が7.5~8.0%以上のコントロール不良の糖尿病患者では、HbA1c値が7.5%未満のコントロール良好群と比較して骨折のリスクが1.6倍上昇していました。インスリン使用者では1.8倍上昇していたと報告されています1)。HbA1c 値が7.5%以上のコントロール不良の状態で、腎症や網膜症などの合併症を有し、さらにインスリン治療を必要とする糖尿病患者では骨折リスクが上昇すると考えられ、骨粗鬆症の検査を行うことが推奨されます。Q2 どのように骨折リスクを判定しますか?自分でできる骨折リスクの判定方法として、FRAX®(fracture risk assessment tool)があります(表)。この評価法は、2008年2月にWHO(世界保健機関)が発表しました。インターネットでアクセスし、指定された質問項目に答えると自動的に算出されます。今後10年以内に骨粗鬆症による主要骨折を起こす可能性が15%以上の場合には、リスク大と判断し薬物治療の開始が推奨されます。この評価法は40~90歳の方を対象としていますが、75歳以上の方は、年齢のみで高リスクと判断されてしまうため、参考程度とします。なお、罹病期間が5~10年の2型糖尿病患者では、実際の骨粗鬆症性骨折の発生はFRAX®値の1.2倍、10年以上の罹病期間を有する場合には1.5倍を呈していました。大腿骨近位部骨折の発症は5年未満でも1.4倍、10年以上では2.1倍と報告されています2)。罹病期間の長い2型糖尿病患者は、FRAX®で算出された骨折リスクよりもさらに骨折しやすいと考えられます。画像を拡大するQ3 どのように骨粗鬆症を診断しますか?骨粗鬆症の診断には骨密度検査が必須であり、さらに測定部位と方法が重要です。通常は大腿骨近位部(頚部または全体)と腰椎(L2-L4)の骨密度をDXA法(dual-energy X-ray absorptiometry)で測定して判断します。しかし、DXA装置を有する医療機関は限られており、手軽に計測できない場合も多いです。そのため、手を用いたMD(microdensitometry)法や、踵で測定する定量的超音波測定法、小型のDXA装置で橈骨のみ測定する検査などが利用されています。ただしこれらはあくまでもスクリーニング検査であり、実際の体幹部DXAでの診断と乖離を認める場合も少なくありません。リスクを要する患者さんに対しまずは簡易的な検査を行い、異常を指摘された場合にさらなる精査としてDXAを施行することが望ましいでしょう。治療効果の判定は、6ヵ月~1年に一度、体幹部DXAによる骨密度測定を施行します。機種により若干の誤差が生じるため、同一の装置・機種で追跡し、同一部位による判定が望ましいです。高齢糖尿病患者では動脈硬化による腹部大動脈の石灰化や椎体の変形等が椎体骨密度に反映されてしまい、実際より高い骨密度の計測値を示すことがあるため、DXAを施行すると同時に椎体のX線撮像を行うことも重要です。無症状の新規椎体骨折、いわゆる「いつのまにか骨折」の出現がないか確認することも必要です。Q4 どのように骨粗鬆症の薬物療法の開始を判断し、治療薬を選択しますか? 糖尿病患者において骨折予防のための薬物治療を開始する場合は、原発性骨粗鬆症に対する薬物治療開始基準(図)を参考にします。骨折の既往が無くても、1)大腿骨近位部骨折の家族歴を有すること、2)FRAX®での10年以内の骨折(主要骨折)確率が15%以上であることの2項目を満たす時には薬物治療開始が推奨されます。これに加え、「糖尿病の罹病期間が長く、HbA1c 値が7.5%以上のコントロール不良の状態を呈し、インスリン治療を必要とする場合」は薬物治療の開始を考慮して良いと考えます。画像を拡大するポリファーマシーの患者さんに骨粗鬆症治療薬を追加する場合には、慎重に検討する必要があります。ADLが低下し寝たきり状態の方や、認知症の合併により服薬管理が困難な方は、原則として新規導入を見合わせています。ただし、ADLが良好ならば、年齢に関係なく、転倒や骨折のリスクが高い場合は積極的に骨粗鬆症治療を行うべきと考えます。1年に一度のビスホスホネート注射製剤や、6ヵ月に一度の抗RANKL(receptor activator of nuclear factor κB ligand)抗体製剤などの導入は、ポリファーマシー対策にもなります。なお、ビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体製剤等は、腎機能低下例や透析施行例では使用できない場合があるため、薬剤開始前に腎機能評価を行います。高齢者糖尿病の腎機能評価は、筋肉量の影響を受けにくい血清シスタチンC値を参考にします。シスタチンC値>1.5 mg/Lを呈する場合は、ビスホスホネート製剤の新規導入は原則禁忌と考えています。その場合には選択的エストロゲン受容体調節薬(SERMs:Selective Estrogen Receptor Modulators)等の使用を検討します。活性型ビタミンD3製剤は、転倒予防効果が期待できる上、比較的管理しやすいため広く使用されています。既存骨折を認めずADLの良好な方であれば良い適応と考えられますが、腎機能の低下した患者さんでは用量の調整が必要です。尿中Ca/Cr比>0.3の場合には減量を考慮します。スポット尿で簡単に計測できるため、6ヵ月に一度程度確認することを推奨しています。ビスホスホネート製剤の長期臨床投与成績を示した報告では、6~9年程度継続しても安全性には問題がないとされています3, 4)。しかし、ビスホスホネート製剤による骨密度増加効果は、腰椎では長期に持続するものの、大腿骨近位部では3~5年でプラトーに達すると言われています。そのため、まずは5年くらい経過観察し、加療中に大腿骨近位部骨折や椎体骨折などを来たした時や、骨量の増加が期待できない時は抗RANKL抗体製剤などへの変更を考えるのが良いでしょう。一方、アメリカのガイドラインでは、既存の骨折がなく大腿骨近位部の骨密度が骨粗鬆症領域を脱した場合には、ビスホスホネート製剤を休薬して経過観察し、2~3年毎に再評価するよう提示しています5)。骨吸収抑制薬のビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体製剤などは、長期使用によって顎骨壊死や非定型骨折のリスクが増加することが指摘されています。ただし骨粗鬆症に対する経口ビスホスホネート治療に関連する顎骨壊死の発生率は1年間で人口10万人当たり0.2人程度とも言われます。しかも口腔衛生管理を適切に行うことで発症を予防できます。抜歯やインプラントなど顎骨に直接影響を及ぼす処置をする場合には、処置前後2~3ヵ月休薬して様子を見ます。非定型骨折は、ビスホスホネート製剤の使用にてその発症の相対リスクが上昇するといわれています。しかし、非定型骨折の頻度は、大腿骨近位部骨折の1%程度にとどまり、その絶対リスクはビスホスホネート製剤投与に伴う大腿骨近位部骨折およびその他の骨折リスクの減少と比較して、非常に小さいとも報告されています6)。薬物使用による骨折発症予防のベネフィットと、有害事象発症のリスクのバランスを考えながら、個々の患者さんにとって適正な治療方針を選択すべきと考えます。1)Schneider AL, et al. Diabetes Care 2013; 36: 1153-1158.2)Leslie WD, et al. J Bone Miner Res 2018; 33: 1923-1930.3)Eriksen EF, et al. Bone 2014; 58: 126-135.4)Black DM, et al. J Bone Miner Res 2015; 30: 934-944.5)Alder RA, et al. J Bone Miner Res 2016; 31: 16-35.6)Black DM, et al. N Eng J Med 2020; 383: 743-753.

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第56回 コロナ変異株巡る国の対応に喝、塩崎元厚労相の忖度なき発言

新型コロナウイルスの感染拡大の要因の1つである変異ウイルス。英国型や南ア型、ブラジル型に共通の変異株N501Yや、南ア型やブラジル型にもある変異株E484Kに加え、最近では東京などで確認されている日本型変異株も現れた。さらにインドでは、感染力や免疫効果に影響を与える恐れのある遺伝子変異を2つ以上併せ持つ変異株も登場し、日本でも確認されている状況だ。およそ2週間ごとに変異するコロナウイルスだけに、変異株に関する状況把握や分析が喫緊の課題になってきた。日本でもようやくワクチン接種がスタートしたものの、こうした変異ウイルスが再感染の可能性を高めたり、ワクチンの効果を低下させたりすることが懸念されている。変異株への警戒が高まる中、N501Yは変異株PCR検査で探し出すことができるが、E484Kを探し出す変異株PCR検査は地方衛生研究所(地衛研)などでは運用されていないという。しかも、ゲノム解析の対象はN501Yで変異株陽性になった場合だけだ。E484KのPCR検査法を導入しない不思議これに対し、新型コロナに関する情報をSNSやブログで積極的に発信している塩崎 恭久・元厚生労働大臣は、歯に衣着せぬ物言いをしている。まず、国立感染症研究所(感染研)と一部の地衛研に集中されているゲノム解析のプロトコルと体制の抜本的見直しが必要だと指摘。第2次緊急事態宣言の解除の際、変異株PCR検査の実施率をPCR陽性者対比で40%とするという目標が決められただけで、ゲノム解析の数値目標が設けられていないことを問題視している。実際、E484Kをスクリーニングする変異株PCR検査は存在する。塩崎氏は、海外のみならず国内でも実用化され、流通していると指摘した上で、なぜスピーディに導入しないのか理解に苦しむと述べている。データベースの構築・公開・活用をまた、変異株の地域性は臨床上、極めて有益な情報だが、感染研が積極的に示していないと批判。大学などの病院ネットワークを通じたゲノム解析を格段に増やし、解析結果を臨床医療に還元すべきだと提言している。さらに、ゲノム解析結果は国際的なウイルスゲノム解析結果公開サイト「GISAID」では、厚労省・感染研の方針で、採取地を「JAPAN」としか登録していないため、国内の分布がわからないと指摘。どの地域に変異株が流行しているのか拡散状況が正確に把握できるようにすれば、国内外の研究者が分析できるようになり、実態解明が加速すると提案している。ウイルスゲノム・サーベイランス体制の強化塩崎氏は具体的な施策として、官民合同のゲノム解析チームによるゲノム解析体制の構築、公衆衛生によるサーベイランス、そして地域臨床医療との有機的一体化を早急に実現することで世界に遅れをとることのない科学を実践すると共に、コロナウイルスの変化のスピードに負けない迅速性をもって対応し、変異株問題でも先端を行く覚悟が必要だ、と提言する。政権が変異株に対する具体的な施策を示せない中、塩崎氏の提言は具体的であり、納得できるものがある。政府には専門家による分科会などが複数あるが、政治に忖度した発言が目に付く一方、政権与党の一議員である塩崎氏が忖度なき発言をしているのがなんとも皮肉だ。

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うつ病の薬理学的介入に対する肥満の影響~メタ解析

 うつ病と肥満との関連は、ベースライン時のBMIがうつ病に対する薬理学的治療の寛解率に影響を及ぼす可能性を示唆している。ブラジル・サンパウロ連邦大学のRuth Bartelli Grigolon氏らは、抗うつ薬を投与したうつ病患者の寛解に対し、ベースラインのBMIが影響するかについて、検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年3月15日号の報告。 PRISMAガイドラインに基づいて、PubMed、Cochrane、Embaseよりシステマティックレビューを実施し、メタ解析およびメタ回帰を行った。抗うつ薬単剤療法または併用療法の有効性を評価したランダム化比較試験のうち、ベースライン時のBMIを収集した研究をメタ解析に含めた。ベースライン時のBMIと寛解率との線形関係を説明するモデルを作成した。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューにより、アクティブ群9,779例、プラセボ群7,136例を含む70研究が抽出された。・プラセボ対照試験では、BMIはアクティブ群の寛解率に影響を及ぼすことが示唆された。・抗うつ薬単剤療法における寛解率は、肥満患者(12%)よりも、正常体重から過体重の患者(33%)で高かった。・単剤療法では、ベースライン時のBMIが低いと、寛解率が高かった(p=0.029)。・併用療法では、プールされた寛解率は、正常体重から過体重の患者(17%)よりも、肥満患者(75%)のほうが高かった。・本研究の限界として、BMIが体組織の関連する情報を提供していない点、肥満が寛解率に影響を及ぼす可能性のある他の潜在的な交絡因子と関連している可能性がある点が挙げられる。 著者らは「これまで十分に検討されていなかったが、うつ病患者に対する抗うつ薬治療の寛解率は、ベースライン時のBMIと関連している可能性がある」としている。

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片頭痛予防のための抗CGRPモノクローナル抗体による治療のベネフィット

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体モノクローナル抗体(抗CGRP抗体)は、反復性および慢性の片頭痛の予防に対するランダム化比較試験において有効性が示されているが、現在確立されている治療方法と直接比較した研究は行われていない。ギリシャ・General Hospital of AigioのKonstantina Drellia氏らは、反復性片頭痛の予防に対する抗CGRP抗体、トピラマート、プロプラノロールおよび慢性片頭痛の予防に対する抗CGRP抗体、トピラマート、onabotulinumtoxinAのベネフィット・リスク比の違いについて検討を行った。Cephalalgia誌オンライン版2021年2月10日号の報告。 有効性の効果指標として、片頭痛日数を50%以上減少させるために必要な患者数(NNTB50%)を用いた。リスクの指標として、治療中止につながる有害事象を経験するために必要な患者数(NNTHD-AE)を用いた。likelihood to help versus harm values(LHH:NNTH/NNTB)は、第III相ランダム化比較試験のデータを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・検討したすべての薬剤のうち、トピラマート200mg/日を除いて、反復性片頭痛予防に対するベネフィットがリスクを上回っていた(LHH>1)。・検討したすべての用量の抗CGRP抗体は、反復性片頭痛予防に対しプロプラノロール、トピラマートよりも、慢性片頭痛予防に対しonabotulinumtoxinA、トピラマートよりも、高いLHH値を示した。・最も高いLHH比が認められた抗CGRP抗体は、反復性片頭痛予防ではfremanezumab、慢性片頭痛予防ではガルカネズマブであった。 著者らは「抗CGRP抗体は、反復性および慢性の片頭痛に対し、これまで確立されていた治療法よりもより有用なベネフィット・リスク比を示すことが明らかとなった。さらにこれらの結果を確認するためにも、直接比較研究が求められる」としている。

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アトピー性皮膚炎に正しい理解を―患者1,000人への意識調査

 アトピー性皮膚炎は、罹患率だけでなく認知度も高い疾患でありながら、その疾患特性、患者に及ぼす影響、治療法などについての理解は十分ではない。 4月16日、アッヴィ合同会社は、『アトピー性皮膚炎による患者さんの生活や対人関係への影響~患者さん1,000人を対象にした疾病負荷 調査結果を発表~』と題したセミナーを開催した。 本セミナーでは、片岡 葉子氏(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 副院長兼主任部長 アトピー・アレルギーセンター長)と江藤 隆史氏(東京逓信病院皮膚科客員部長、あたご皮フ科副院長)が、アトピー性皮膚炎の正しい理解をテーマに講演を行った。単純なアレルギー反応? 薬は塗り続ける? 疾患への誤解 片岡氏は「成人アトピー性皮膚炎 疾患の理解・社会の理解」と題して講演を行った。同氏は、疾患に関するさまざまな誤解が、アトピー性皮膚炎を治りにくくする可能性があることを語り、病態、病気、患者の全体像についてポイントを解説した。1)病態:アトピー性皮膚炎は、単純なアレルゲン除去で治る疾患ではなく、患者の遺伝的因子に環境因子が刺激を与えて引き起こされる疾患である。遺伝的因子としては、皮膚のバリア機能障害や免疫学的素因などがあり、とくにTh2型リンパ球の増殖とそれに伴うIgE抗体産生の促進が、炎症の悪循環を引き起こすポイントとなる。2)病気:抗炎症外用薬の使用で、見た目には炎症が抑えられても、Th2型リンパ球は増殖した状態であることが多い。そのため、薬を早期に中止することで再び炎症が現れ、症状を繰り返す患者が多い。3)患者の全体像:成長とともに寛解する小児患者もいるが、全例が寛解するわけではない。また、セルフケアが適切に出来ていないために、寛解に至らない患者も多い。 アトピー性皮膚炎は増悪・軽快を繰り返す慢性の疾患だが、疾患の特性を正しく理解し、適切に治療することで症状のない状態を長く保つことが期待できる。片岡氏は「(適切な治療で症状を抑えることで)患者の疾病負荷を減らし、今まで理解されていなかった患者を救い出すことが可能になる」と語った。アトピー性皮膚炎の「疾病負荷」 日常生活へのさまざまな影響 アッヴィ合同会社が実施した『アトピー性皮膚炎が生活に与えている影響に関する意識調査』の結果について、片岡氏が紹介した。この結果から、疾病が患者の生活に大きな負荷をかけており、社会の正しい理解が求められることが明らかになった。・7割以上の患者が「症状が繰り返されること」に対して不安や悩みを抱えており、「治らないと諦めている」患者が約5割であった。・3割以上の患者が「アトピー性皮膚炎に由来する、日常生活での負担やストレス」について周囲の理解が十分ではないと感じると回答した。・患者の約10人に1人が「アトピー性皮膚炎が原因で学業や仕事を中断、断念せざるを得なかった経験」があると回答した。・5割以上の患者が「周囲から掛けられた言葉に傷ついた、または嫌な思いをした経験」があると回答した。その時期については「社会人時代」(53.5%)が最も多かった。・6割以上の患者が「アトピー性皮膚炎が原因で、恋愛・結婚・子供を持つことに対し不安・悩みを感じる、または感じたこと」があると回答した。ステロイドは怖い薬? 治療への誤解 江藤氏は「患者さんの苦しみや患者さんとの関わり方を体験談から学ぶ」と題して講演を行った。同氏は、自身が顧問を務めるNPO法人 日本アレルギー友の会に寄せられた患者の体験談を通して、眼合併症やカポジ水痘様発疹症などを解説した。 これらの合併症の背景には、誤った治療の選択、とくにステロイドに対する誤解があるという。「ステロイドはなるべく使わないほうがいい」「ステロイドは効かない」と考える患者は少なくない。治療を続けてもらうためには、患者会など、正しい知識を持ち、相談できる人が周囲にいることも重要となる。江藤氏は「患者さんにとっては適切な治療にたどり着くこと、周囲の人にとっては正しい疾患の知識を持つことが、引き続き課題である」と締めくくった。

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PCI患者の抗血小板療法、ガイド下 vs.標準治療/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者の抗血小板療法は、血小板機能検査等に基づいた選択により、標準治療と比較して複合および個々のイベントに対する有効性が改善され、安全性についても良好な結果を得られることが、米国・フロリダ大学のMattia Galli氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析で明らかにされた。PCIを受ける患者の抗血小板療法については、検査等に基づいた抗血小板療法の選択が標準治療と比較して転帰の改善に有用かどうか、依然として議論の余地があった。Lancet誌2021年4月17日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析で有効性および安全性を評価 研究グループは、2020年8月20日~10月25日の期間に、MEDLINE(PubMed経由)、Cochrane、EmbaseおよびWeb of Scienceを用い、PCIを受ける患者において血小板機能検査または遺伝子検査に基づいた(ガイド下)抗血小板療法と標準抗血小板療法を比較した無作為化比較試験および観察研究を、言語は問わず検索した。2人の研究者が独立して研究の適格性を評価し、データを抽出するとともにバイアスリスクを評価した。リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)は、研究間の不均一性(I2)に従い、ランダム効果モデルまたは固定効果モデルを用いて算出した。 主要評価項目は、試験で定義された主要有害心血管イベント(MACE)および、あらゆる出血であった。主な副次評価項目は、全死因死亡、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、probable/definiteステント血栓症、および大出血/小出血とした。約2万例のデータの解析で、ガイド下抗血小板療法は予後改善に関与 3,656報がスクリーニングされ、無作為化比較試験11件および観察研究3件、計2万743例が解析対象となった。 標準抗血小板療法と比較してガイド下抗血小板療法は、統計学的に有意ではないものの、MACE(RR:0.78、95%CI:0.63~0.95、p=0.015)および出血(0.88、0.77~1.01、p=0.069)の減少と関連していた。 また、心血管死(RR:0.77、95%CI:0.59~1.00、p=0.049)、心筋梗塞(0.76、0.60~0.96、p=0.021)、ステント血栓症(0.64、0.46~0.89、p=0.011)、脳卒中(0.66、0.48~0.91、p=0.010)、および小出血(0.78、0.67~0.92、p=0.0030)は、標準抗血小板療法と比較し、ガイド下抗血小板療法で減少した。 全死因死亡および大出血のリスクは、ガイド下抗血小板療法と標準抗血小板療法の間に差はなかった。治療成績は治療法によって異なり、escalation治療では安全性が低下することなく虚血性イベントが有意に減少し、de-escalation治療では有効性が低下することなく出血が有意に減少した。

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転移乳がんのOS、サブタイプ別の経年変化/ESMO Open

 転移を有する乳がん(MBC)の治療はこの10年で大きく進歩している。フランス・Gustave RoussyのThomas Grinda氏らが、全国的コホートであるESME(Epidemio-Strategy-Medico-Economical)-MBCのデータを用いて、2008~17年におけるMBCの全生存期間(OS)の変化をサブタイプ別に評価した結果、HER2陽性患者では改善し続けていることが示された。ESMO Open誌2021年4月22日号に掲載。 ESME-MBCでは、フランスのがんセンター18施設で2008年以降に治療を開始したすべてのMBC患者のデータを収集している。この研究では、全体(2万446例)およびサブタイプごとのOSを調査した。サブタイプ別の患者数は、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)患者が1万3,590例、HER2陽性(HER2+)患者が3,919例、トリプルネガティブ(TNBC)患者が2,937例。MBC診断年などの共変量で多変量解析を実施し、経年的なOS改善の可能性、MBC診断後に新規上市薬剤が投与された割合を評価した。 主な結果は以下のとおり。・コホート全体の追跡期間中央値は65.5ヵ月(95%CI:64.6~66.7)だった。・MBC診断年は、OSにおける強力な独立予後因子であった(2008年に対する2016年のハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.82~0.97、p=0.009)。この効果はHER2+患者(同HR:0.52、95%CI:0.42~0.66、p<0.001)の改善の影響が大きく、TNBC患者(同HR:0.93、95%CI:0.77~1.11、p=0.41)やHR+/HER2-患者(同HR:1.02、95%CI:0.91~1.13、p=0.41)においては持続的な効果はなかった。・MBC診断年にかかわらず、HER2+患者における新規抗HER2薬が投与された割合は非常に大きかったが(2016年以降、患者の70%超がペルツズマブを投与されていた)、HR+/HER2-患者におけるエベロリムスとエリブリン、TNBC患者におけるエリブリンが投与された割合はどれも3分の1未満だった。 著者らは「おそらく、実臨床への浸透度が高い主要な抗HER2薬の上市に関連してHER2+MBC患者のOSが劇的に改善したが、他のサブタイプでは改善はみられなかった」と述べている。なお、CDK4/6阻害薬が投与された割合は急速に増加しているが、このコホートではまだその影響を評価できないという。

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オニマツ現る! ぶった斬りダメ処方せん

あのDr.國松淳和がついに「コモン」を「治療」を語る!前代未聞!同一人物による共著!?頭痛やめまい、腹痛など7つの症状・テーマ別に國松とオニマツのコンビがガチレビュー。オニマツパートでは具体的なカルテ・処方せんを例に出して超毒舌の痛快ダメ出し!國松パートでは薬の選び方・使い方を丁寧に解説。症状ごとに処方の考えかたを楽しく習得できる。片頭痛にトリプタン? 咳に気管支拡張薬? そんな「常識」は打ち破れ! こんな医学書、ほかにない! 神出鬼没のオニマツが本当に"効く"一流臨床医の処方せん、教えます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    オニマツ現る! ぶった斬りダメ処方せん定価3,300円(税込)判型A5判頁数210頁発行2021年4月著者國松 淳和、オニマツ・ザ・ショーグン電子版でご購入の場合はこちら

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第56回 コロナで“焼け太り”病院続出? 厚労省通知、財務省資料から見えてくるもの(後編)

「まさにコロナ・バブルです」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。4都府県緊急事態宣言下のゴールデンウイーク、皆さんはどうお過ごしですか。私は仕方がないので、BS放送でのメジャーリーグ観戦とインターネットでの日本選手権競輪(通称:競輪ダービー)観戦で時間を潰しています。競輪ダービーは東京都調布市の京王閣競輪場で無観客で開かれています。オリンピックのケイリン代表候補の脇本 雄太、新田祐大両選手が出場しないのが少々残念ですが、2月の全日本選抜競輪を優勝し好調をキープしている郡司 浩平選手を今回はしっかり応援しようかと思っています。さて、前回記事の執筆後、知人の記者がこんな情報を寄せてくれました。「ある病院長が『首都圏の基幹病院なのに、コロナ患者を受け入れていないところがある』と話していた。補助金でウハウハな病院は結構あるようだ」。また、首都圏のある基幹病院の事務方の人は「積極的に受け入れてきた基幹病院は令和2年度の利益がすごいことになっています。民間なら税金で持っていかれますが、国公立・公的だと相当な内部留保ができるのでは。まさにコロナ・バブルです」と伝えてきました。「支援金が入金されればマイナスを補うことができる」と財務省「とにかくコロナ病床を増やせ!」という司令の下、展開されたさまざまな施策の結果、“焼け太り”とまで言われるまでになった医療機関の状況を、国の財政を司る財務省はどう見ているのでしょうか。“焼け太り”の病院があることや、補助金などで“ジャブジャブ”になっていることを認識しているのでしょうか。それを伺い知ることができる資料が4月、財務省から出ています。財務省主計局は4月15日、社会保障制度の見直しについて議論する財政制度等審議会・財政制度分科会(分科会長=榊原 定征・前経団連会長)において、2022年度診療報酬改定に向けての方針を説明、「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」との方向性を資料と共に示しました1)。この中で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大と医療機関経営についても、その見解と今後の対応策を示しています。それによれば、新型コロナの感染拡大の影響で、医療機関経営が厳しさを増すなか、病床確保料や緊急支援事業補助金など補助金を手当てしていることから、「マクロとしては、新型コロナ患者に対応する医療機関の減収を補い得る額が措置されている」との見方です。そして、「支援金が入金されれば医業利益の前年からのマイナスを補うことができる」としています。さらに、新型コロナウイルス感染患者を受け入れた医療機関へのさらなる支援として、「一定の条件を満たせば、前年や前々年の同じ月と同水準の診療報酬を支払う臨時的な措置を検討すべき」としています。一方で、「新型コロナに対応しない医療機関にも講じてきた多額の支援については、新型コロナへの対応に限られた財政資源を集中的に投入するという観点から、これまでの財政支援についてその目的及び効果にさかのぼった見直しが必要」と、コロナ未対応の病院には厳しい見方を示しました。端的に言えば、“ジャブジャブ”お金を投入した結果、マクロ的には医療機関の経営が苦境に陥らないようにしてはあるが、コロナ対応をしていない医療機関への多額の支援については今後見直す、ということです。1年前は「コロナで病院経営が大変」が大半一方、医療機関側はこれまでの巨額な財政支援をどう見ているのでしょうか。さすがに世間の手前、「コロナで儲かってます!」とは言えないので、そこはこそっとデータを示すに留めている印象です。日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会は共同で、定期的に「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査」の結果を公表しています。昨年の緊急事態宣言による医療機関への影響は、8月に公表された同調査の2020年度第1四半期分2)で明らかになっています。それによれば、全病院の外来患者・入院患者共に4月は大幅に減少、5月にはさらに悪化しました。6月には入院・外来患者数は、わずかに回復の兆しは見えたものの、医業損益は大幅な赤字が継続していました。コロナ未受け入れ病院と、コロナ受け入れ病院で比較した結果、2020年4月~6月はどちらの病院も業績は前年に比べ悪化していましたが、特にコロナ受け入れ病院では、医業利益率が-12.5%と悪い結果となっていました。このように、1年前は「コロナで経営が大変」という声が非常に大きかったのです。第3四半期は、支援金加味で業績改善「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査」の最新の調査結果は2021年2月に公表された2020年度第3四半期分3)です。その第3四半期においても前年同期と比較し、外来患者数、入院患者数の減少が継続していることが明らかとなっています。なお、この時は2020年の4月〜12月までの経営指標も公表されています。それによれば、医業収益の前年度との比較では、コロナ患者受け入れありが-5.1%、コロナ患者受け入れなしが-2.1%と、やはりコロナ受け入れ病院のほうが悪い業績でした。ただ、支援金(医療従事者への慰労金除く)を加味した場合の、医業収益の前年度との比較を見ると、コロナ患者受け入れありが-1.0%、コロナ患者受け入れなしが-1.4%と、受け入れた方が若干良好な業績でした。緊急包括支援交付金の入金時期については、都道府県によってばらつきがあり、この数値は改善する可能性があるとのことでした。つまり、病院のほとんどが、医業収益的には補助金等のおかげでほぼ前年並みを達成できているのです。財務省の見立てと同じです。コロナ禍の中、他の多くの産業の事業者が羨む数字と言えるでしょう。コロナ以前よりも厳しい医療機関のリストラへこの調査、まだ2020年度第4四半期分と、1年通した数字が公表されていないのでなんとも言えませんが、ひょっとしたら年間では相当なプラスになっている可能性もあります。医療関係団体は、経営が悪い時は「診療報酬を上げてくれ!」と叫びますが、儲かっている時は静かに目立たないようにしているものです。この1年間に投入されたコロナ関連の補助金が病院経営にどう影響したか、そこは正確なデータを公表してもらいたいものです。大学病院の数字も気になるところです。コロナ対応という大義名分のもと、補助金でほぼ平等に生きながらえることができた日本の病院ですが、この先はコロナ以前よりもはるかに厳しい、医療機関のリストラが待っていると覚悟しておいたほうがいでしょう。先の財政制度等審議会・財政制度分科会で財務省は、新型コロナウイルス感染症をきっかけに、「日本の医療提供体制の脆弱さが浮彫りになった」と指摘、医療機関相互の役割分担や連携体制の構築などにより、人的資源の効率的な配置・活用を行うことが必要だと説いています。そして、病院数の8割、病床数の7割を占める民間病院への対応が重要との観点から、診療報酬の役割が舵取り役として極めて重要になると強調、「2022年診療報酬改定においては『医療提供体制の改革なくしては診療報酬改定なし』と考えるべき」としています。財務省の考え方(いつも少し尖っています)がそのまま医療行政に反映されるとは限りませんが、医療提供体制を集約、効率化するという方向性は厚労省と同じで、その中心となる施策は地域医療構想を確実に進めていくことに他なりません。コロナ以前よりも厳しい医療機関のリストラが始まると覚悟しておいたほうがいいでしょう。病院経営者は、2020年度決算の数字を見て喜んでいる場合ではないと思われます。コロナ対応で明らかになった自院の実力、弱点を分析した上で、ポスト・コロナの時代を見据えた現実的な経営戦略の立案が求められます。参考1)財政制度分科会(令和3年4月15日開催)資料一覧/財務省2)新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第1四半期)3)新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第3四半期)

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