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コロナのワクチンキャンペーンに効果はある?米国での反響は…

 国内でも若年層へ新型コロナワクチン接種を浸透させるため、いくつかの自治体が接種促進のためのキャンペーンを打ち出していた。その先駆けである米国ではインセンティブとして宝くじを配布し接種の向上を試みていたが、実際のところそれが有効かどうかは不明である。そこで、米・ドレクセル大学のBinod Acharya氏らは、宝くじなどのインセンティブがワクチン接種の増加に寄与するのかを調べるための横断的研究を行った。その結果、宝くじプログラムは新型コロナワクチン接種へのためらいを減らすことに関連していると示唆された。ただし、その成功は州によって異なる可能性があるという。JAMA Network Open誌2021年12月1日号掲載の報告。 本研究には、ワクチン宝くじプログラムを実施している11州(取り扱い群)とプログラム未実施28州(対照群)に対し、家庭パルス調査(HPS)と州ごとの1日あたりのワクチン接種率を基に『新型コロナワクチンを接種しましたか?』という質問を行い、それに回答した成人40万3,714人のデータを使用した。差分の差分法(DID)では、HPSの質問反応を使用し、取り扱い群と対照群の間でワクチン接種率の変化を比較した。一方、拡張された合成コントロール(ASC:augmented synthetic control)法では、取り扱い群の毎日の新たなワクチン接種率を、対照群のドナープールから構築され合成して重みづけされた対照群と比較した。データは2021年3月17日~7月5日までのものが分析された。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢±SDは52.7±15.7歳だった。・女性は23万9,563例 (加重パーセンテージ:51.6%)、黒人3万1,746例(同:11.9%)、ヒスパニック系3万9,709例(同:18.2%)、白人33万4,034例(同:76.4%)がHPSのワクチン接種状況に関する質問に回答した。・HPSに回答した8万949人(同:28.1%)はワクチン接種をしていなかった。・両方法でプールされた分析によると、宝くじプログラムがワクチン接種の増加と関連していることが示された。・ASCによる分析では、宝くじプログラムが0.208 log points(95%信頼区間[CI]:0.004~0.412)の増加に関連していることが明らかになった。これは1日あたり新しくワクチン接種率が平均23.12%増加することを意味する。・州独自の分析によると、どちらの方法でも宝くじプログラムが役立つことが示唆され、オハイオ州では0.09 log points(p

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抗ムスカリンOAB治療薬と認知症発症リスク

 過活動膀胱(OAB)治療薬の使用による認知症発症リスクへの影響については、明らかになっていない。カナダ・トロント大学のRano Matta氏らは、抗ムスカリンOAB治療薬の使用と認知症発症リスクとの関連について、β-3アゴニストであるミラベグロンと比較し、検討を行った。European Urology Focus誌オンライン版2021年11月3日号の報告。 カナダ・オンタリオ州でOAB治療薬を使用した患者を対象に、人口ベースのケースコントロール研究を実施した。対象は、過去6~12ヵ月間で抗ムスカリンOAB治療薬またはミラベグロンを使用し、2010~17年に認知症およびアルツハイマー病と診断された66歳以上の患者1万1,392例と年齢および性別がマッチした非認知症患者2万9,881例。人口統計学および健康関連の特性に応じて調整し、認知症のオッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・過去6ヵ月間でソリフェナシンおよびdarifenacinを使用した患者は、ミラベグロンを使用した患者と比較し、認知症発症リスクが高かった。 ●ソリフェナシンのOR:1.24(95%信頼区間[CI]:1.08~1.43) ●darifenacinのOR:1.30(95%CI:1.08~1.56)・診断前6ヵ月~1年間でソリフェナシン、darifenacin、トルテロジン、フェソテロジンを使用した患者は、ミラベグロンを投与した患者と比較し、認知症発症率の上昇との関連が認められた。 ●ソリフェナシンのOR:1.34(95%CI:1.11~1.60) ●darifenacinのOR:1.49(95%CI:1.19~1.86) ●トルテロジンのOR:1.21(95%CI:1.02~1.45) ●フェソテロジンのOR:1.39(95%CI:1.14~1.71)・オキシブチニンまたはtrospiumでは、影響が認められなかった。この原因として、プロトパシーバイアスが考えられる。・本研究の限界として、アウトカムの誤分類や健康関連データベース使用による交絡因子の影響が挙げられる。 著者らは「診断6ヵ月前にソリフェナシンおよびdarifenacinを使用した高齢者、診断前年にソリフェナシン、darifenacin、トルテロジン、フェソテロジンを使用した高齢者では、ミラベグロンを投与した患者と比較し、認知症発症リスクが高かった。OAB患者の治療に際して、慎重な薬剤選択が求められる」としている。

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良かれと思うことも確かめてみる価値あり(解説:折笠秀樹氏)

 表題の「Bah humbug!」は何だろうかと思った。チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』の中で、主人公が放った有名な言葉らしい。「当てにならない、ばかばかしい」といった意味のようだ。何が当てにならないかというと、「クリスマスカードを臨床試験の被験者へ送ると脱落が減る」だ。クリスマスカードが届くと意識が高まると思いがちだが、実はそんなことはなかったのだ。当然といえば当然。 うちにも保険会社から季節のあいさつ状が届くが、開封するも、中身はほとんど読まないままにごみ箱行き。ダイレクトメールもしかり。1%でも反応してくれたら御の字なのだろう。ということは、クリスマスカードを送付しても、せいぜい1%しか来院率が上がる効果はないのかもしれない。 この研究では、インフォームドコンセントを取っていたみたいだ。ということは、この研究について説明しているはず。半分の家にはクリスマスカードが届くと知っていたら、さらにそのありがたみを感じることはないだろう。 この試験デザインはちょっとユニークだ。8つの進行中の臨床試験の中で、RCTが組まれていた。全部で3,223例が割り付けられたが、1,754例もが解析除外されていた。大丈夫なのかと一瞬思ったが、よく読むと合点した。その原因はCOVIDに伴う来院停止にあった。来院拒否したのか、やむなく来院しなかったのか、判明しない分を除外したようだった。しかし、同数ずつ解析除外されていたので、とくに誤った結論になっていないだろう。 オンライン授業のほうが対面授業よりも成績が良くなるという方がいるが、これも単なる印象ではなく、RCTをして確かめてもらいたい。脱落率を減らすために、何らかのリマインドをするのが効果的だといわれている。忘れるのを防ぐ効果のあることは確かだろうが、勉強熱心になる効果についてはわからない。

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アサガオが体内で発芽した子ども【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第201回

アサガオが体内で発芽した子どもphoto-ACより使用最近、日本語の論文ばかり紹介していますが、結構面白くて、いろいろな他科雑誌を読んでいます。アサガオといえば、夏休みの観察日記が定番中の定番です。ウチの子どもも小学1年のとき、ゴツイ植木鉢を持って帰ってきて、毎日アサガオの観察をしていました。アサガオを、なんと体内で育ててしまったという驚愕の医学論文があるので紹介しましょう。小山新一郎ら.アサガオ種子気管支異物の1例喉頭. 2006;18:146-148.この論文の主人公は、生後5ヵ月の男の子でした。口にものを入れたい盛りですよね。ウチの子どもも、よくトミカのミニカーを口に入れていました。アサガオの種が入った容器を誤って倒してしまい、その際、いくつか種が口に入ってしまったそうです。その後、呼吸器症状が出現したため、近くの小児科を受診しました。大きな異常はないだろうと診断され、感冒薬を処方されて帰宅しました。しかし、2日後に40℃の発熱がみられ、別の小児科を受診しました。その際、胸部レントゲン写真で明確な所見が確認され、総合病院へ紹介されたそうです。その後、胸部CT検査を行うと、「左の気管支に何か詰まっていること」がわかりました。タイトルに書いてあるように、気管支にはアサガオの種が入り込んだわけですが、全身麻酔下で左気管支をのぞくと、黒褐色のアサガオの種とは異なるモノがありました。それを取り除いてみると、あれ、アサガオの種じゃなかったのだろうか。主治医は、その取り出した異物をつぶさに観察しました。すると、それは発芽して大きくなったアサガオの種でした。体内ですでにアサガオは発芽していたのです。さすが、成長が早い!おそらく、最初に小児科を受診した時点ではアサガオが発芽していなかったので、気管支の通気性がよく、画像で無気肺を指摘できなかったのでしょう。その後、気管支を閉塞することで含気不良の肺葉が出てきたということだと思います。もし風邪や喘息と診断されたままで、どんどんアサガオが成長していったらどうなっていたのかと考えると恐ろしいですね。

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第90回 第6波のまん防・緊急事態宣言を否定する人に、聞いてみたいよ、その根拠

もはや第6波到来なのか。1月5日、全国では2,638人もの新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)検査陽性者が報告された。2021年の年末最終週あたりから徐々に増え始めていた陽性者はわずか1週間で6倍以上に膨れ上がった。この増加は正月休み明けの検査件数の急増などによる形式的増加も影響していると思われる。しかし、昨年12月中はPCR検査数に大きな変動があるわけではないのに下旬以降徐々に陽性者が増加していることを考えると、デルタ株より感染力が3~4倍といわれるオミクロン株の登場で局面は変わりつつあることがうかがえる。しかし、テレビやネットを見ていると、オミクロン株での重症化率が低いことをフックとした、とんちんかんな解説や意見があまりにも多いことに呆れてしまう。あるテレビ番組では厚生労働省の元医系技官が「増えたから感染を抑えるなんて2年前と同じ馬鹿げた事は、絶対にやってはいけない」と声高に言っていた姿にはもはや失笑を禁じ得なかった。確かに南アフリカ国立感染症研究所からの査読前論文を見ると、対デルタ株比でのオミクロン株の重症化リスクは0.3倍。同様の報告はほかにもある。だが、単純な算数の問題として、感染者がデルタ株による第5波の3倍に増えてしまったならば、この医療側にとって好都合なオミクロン株の特性はチャラになってしまう。また、裾野として広がった軽症、無症状感染者をほぼ全員自宅療養とするにしても社会全体が抱える負荷は莫大なものだ。一部には、ならば新型コロナの感染症法上の取り扱いを指定感染症としての2類相当を5類にすれば良いではないかという意見もあるが、そもそも致死率がいまだインフルエンザなどと比べれば高く、対抗手段も揃いつつあるとはいえまだまだ「帯に短し襷に長し」という現状を考えれば、こうした意見の具体化はまだ時期早尚だろう。ワクチンは有力な手段ではあるものの、それのみで感染・発症を完全には防げず、かつ現時点で国内のワクチン接種率が約8割に達しようとする中、結局、感染者増加という蛇口の元栓を締めるには個人レベルでは手洗い、マスク、三密回避という基本的感染対策の徹底化、公的施策としてはブースター接種の迅速化と感染拡大阻止に向けた行動抑制対策という限られた選択肢しかない。その意味で沖縄県、広島県、山口県の3県で新型インフルエンザ等特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」の適用がほぼ確実になったことはやむを得ない措置と言えるだろう。しかし、ネット上では首都・東京都などで同様の対策、あるいは一歩進んで緊急事態宣言まで進むことへの警戒感や倦えん感からなのか、先ほどの厚労省の元医系技官以外でも、いわゆる識者と呼ばれる人から「オミクロン株は重症化率が低いのだから」とか「今現在の重症者は少ないのだから」などの論理で強い措置をすべきではないという意見が散見される。重症者数は感染者発生から1週間後に見えてくる後発指標。少なくともオミクロン株での重症化率の低さや国内のワクチン接種率の高さゆえに理論上はかなり低値に抑えられるのではと思われるものの、あと1週間後の「答え合わせ」で万が一予想を超えてしまった場合は取り返しのつかないことになるのは、医療従事者の中では百も承知のことだろう。また、重症者数が後発指標であることは報道でも繰り返し伝えられてきた。こうした現実を目の当たりにすると、パンデミックから丸2年が経過した今、改めて当たり前になっていると思い込んでいた情報を再整理して繰り返し伝える必要性を認識している。とはいえ正直個人的にもそうした作業に倦えん感がないとは言えない。何とも気が重い年明けになってしまったようだ。

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COVID everywhere【臨床留学通信 from NY】番外編7

COVID everywhere昨年の大晦日、残念ながら運悪く(くじを引いたわけでもありませんが)24時間当直となり、空いた時間ができたため、本稿を備忘録的に書いています。ニューヨークでは、クリスマスを終えた週から、COVIDによる入院がぐんと増え、院内は再びコロナ患者だらけ。現場には緊張感が走っています。米国の陽性患者は、1日当たり58万人(本稿を執筆した2021年末時点)、人口2,000万人のニューヨーク州は、1日で7万人が陽性になっており、まだまだ増えそうです。日本の人口で換算すると40万人ほどに相当する数です。実際に日本で40万人が陽性になったらパニックになりそうですね。現在ICUで働いていないので、正確なワクチンとの兼ね合いと重症度は不明ですが、今回のオミクロン株は拡大が早く、印象としては単独の呼吸不全よりも心筋梗塞、心不全、COPD等の合併症を伴って来院する人が多い気がします(ワクチン未接種の人が呼吸不全になる可能性が高いのは、ほぼ間違いありません)。日本で流行り始めたら、1週間程度でパンデミックになるのではと懸念します。Booster接種はリスクの高い人優先でしょうが、この状況を鑑みるとリスクに関係なくすぐに必要だと考えます。というのも、3回目接種済みの同僚たちもやはりコロナにかかってしまっているのです。CDCは、無症候のコロナ陽性の隔離期間を従来の10日から5日に短縮し、これはmedical workerが互いの穴を埋める期間が少なく済むのでありがたいのですが、本当に良いのかどうかはよくわかりません。文末のグラフは、私が勤務する病院系列MHS(Montefiore Health System)の入院患者ですが、急峻に増加しているのがわかると思います。デルタ株は、ほとんど流行りませんでしたが、オミクロン株は昨年1月の第2波(グラフ中央)をも超える勢いなのではないかとも思います。なお、グラフの最初の第1波はひどいもので、病棟の8割がコロナ患者に占拠されている状態でした。日本の大学病院で1,000床、800人以上が酸素を必要とするコロナ患者、というのはちょっと想像し難いと思いますが、まさに阿鼻叫喚の様相でした。私もいつ罹患するかわからない状況ですが、コロナを併発した心筋梗塞、心肺停止など待ったなしの人もおり、我が身に迫る危機を実感する日々です。

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事例041 オフロキサシン点眼液の査定【斬らレセプト シーズン2】

解説事例は、糖尿病患者の「角膜びらん」に対して、オフロキサシン点眼液を投与したところ、病名不備や療養担当規則違反などの事由に当てはまらないその他の場合に分類されるC事由(医学的理由による不適当)にて査定となりました。査定原因を調べるために添付文書を参照しました。オフロキサシン点眼液は、「広範囲抗菌点眼剤に分類され、長期間使用しないこと」が明記されています。改めて診療開始日を確認すると6か月を越えた病名に対して投与されていました。次に診療録を確認したところ、左眼の炎症を伴う「角膜びらん」を繰り返していることが記載されていました。病名の更新を行わずに、その度、オフロキサシン点眼液が処方されていました。レセプトからは、再発時の投与であることが読み取れないため、急性期用剤の新鮮例への投与ではなく、古い疾病に対する漫然投与と捉えられて査定となったものと推測できます。再発防止に、医師には抗菌剤を処方する場合には、その判断をした日付と病名を診療録へ記載をいただくようにお願いしました。併せて、会計担当者には、抗菌剤が処方されていた場合の病名日付を確認することを伝え、レセプトチェックシステムに限度日数の登録をしました。

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うつ病患者にみられる併存疾患~ネットワークメタ解析

 うつ病患者は、他の併存疾患を有する可能性が高いといわれているが、これまでの併存疾患に関する研究は、主に特定の一般的な疾患に焦点が当てられており、また自己申告のデータに依存していた。中国・電子科技大学のHang Qiu氏らは、全範囲の慢性疾患を対象とし、うつ病患者における併存疾患の調査を行うため、ネットワークメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2022年1月1日号の報告。 本レトロスペクティブ研究では、うつ病入院患者2万2,872例とこれに1:1でマッチした対照群の登録を行った。併存疾患を測定するために、退院記録を集計し、有病率1%以上の患者について、さらなる分析を行った。共起頻度に基づいて、うつ病患者の性別および年齢別の併存疾患ネットワークを構築し、その結果を対照群と比較した。高度に相互リンクされたコミュニティを検出するため、Louvainアルゴリズムを用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病患者は、平均4つの併存疾患を有しており、84.4%で1つ以上の併存疾患が認められた。・うつ病を対象とした併存疾患ネットワークは、対照群よりも複雑であった(839 vs. 369)。・うつ病患者の併存疾患ネットワーク内には、複雑ではあるが明確なコミュニティが発見された。その最大のコミュニティは、脳血管疾患、慢性虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症が含まれた。・性別特有の疾患は、中枢神経性疾患であった。また、男女ともに心血管疾患が主要な中枢性疾患であった。・併存疾患ネットワークの主要な疾患は、うつ病患者が高齢になるほど、疾患重症度が高まった。・なお、観察された相互関連の因果関係は特定できなかった。 著者らは「併存疾患のパターンを評価するための縦断的な医療データセットへのネットワーク解析の適用は、従来の臨床研究のアプローチを補完するうえで役立つであろう。本調査結果により、うつ病関連の併存疾患についての理解が向上し、うつ病の統合管理が強化されることが望まれる」としている。

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モルヌピラビル使用の注意点は?コロナ薬物治療の考え方第11版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医学部教授])は、12月24日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第11版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、先般特例承認されたモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)に関する記載が追加された。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。【4. 抗ウイルス薬等の選択】(1)抗ウイルス薬としてレムデシビル、モルヌピラビルなど、中和抗体薬としてカシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブなど、(2)免疫調整薬・免疫抑制薬としてデキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブについて記載を追加。【モルヌピラビル】の項目を追加・機序 モルヌピラビルは、リボヌクレオシドアナログ。SARS-CoV-2におけるRNA依存性RNAポリメラーゼに作用し、ウイルスRNAの配列に変異を導入、ウイルスの増殖を阻害する。・海外での臨床報告 日本国内の3施設を含む20ヵ国、107施設で実施した多施設共同、プラセボ対照、ランダム化二重盲検試験。重症化リスクのある非重症COVID-19患者(目標症例数1,550例)の外来治療を対象。発症5日以内の治療開始で偽薬群(699名)の重症化が68名(9.7%)に対し、治療群(709名)では48名(6.8%)と、相対的リスクが30%減少。また、死亡例は治療群で1名(0.1%)に対して、プラセボ群では9名(1.3%)と治療群で少なかった。・投与方法(用法・用量) 通常、18歳以上の患者には、モルヌピラビルとして1回800mgを1日2回、5日間経口投与する。[投与時の注意点]1)臨床試験における主な投与知見を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有するなど、本剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。2)本剤の有効性・安全性に係る情報は限られていることなどを踏まえ、重症化リスク因子を有する者(例:61歳以上、活動性のがん、慢性腎臓病、糖尿病など)が、本剤を投与する意義が大きいと考えられる。3)重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者(中等症II以上)に対する有効性は確立していない。4)SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。5)新型コロナウイルスワクチンの被接種者は臨床試験で除外されているため、ブレイクスルー感染での重症化予防等の有効性を裏付けるデータは得られていない。6)妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、授乳婦については、治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること。・入手方法 本剤は、現状、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関および薬局からの依頼により、無償譲渡。 本手引きの詳細は、同学会のサイトで確認していただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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高リスク外来コロナ患者、レムデシビル早期3日間投与で入院リスク低減/NEJM

 疾患進行リスクが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の非入院患者において、レムデシビルによる3日間の外来治療は、安全性プロファイルは許容可能であり、プラセボに比べ入院/死亡リスクは87%低かった。米国・ベイラー大学メディカルセンターのRobert L. Gottlieb氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「GS-US-540-9012(PINETREE)試験」の結果を報告した。レムデシビルは、中等症~重症のCOVID-19入院患者の臨床転帰を改善することが示唆されていたが、疾患進行リスクが高い症候性COVID-19の非入院患者における入院予防効果は不明であった。NEJM誌オンライン版2021年12月22日号掲載の報告。発症7日以内、疾患進行リスクを有する外来患者を対象にプラセボ対照試験 研究グループは、COVID-19発症後7日以内で、疾患進行リスク因子(60歳以上、肥満、併存症がある)を1つ以上有する非入院患者を、レムデシビル群(1日目200mg、2日目および3日目100mg、静脈内投与)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 有効性の主要評価項目は、28日目までのCOVID-19に起因する入院または全死因死亡の複合、副次評価項目は28日目までのCOVID-19に関連した医療機関の受診または全死因死亡の複合、安全性の主要評価項目はあらゆる有害事象とした。レムデシビル早期導入により入院/死亡のリスクが87%低下 2020年9月18日~2021年4月8日に、米国、スペイン、デンマーク、英国の64地点で患者の登録が行われた。解析対象は、無作為化され少なくとも1回のレムデシビルまたはプラセボの投与を受けた562例(レムデシビル群279例、プラセボ群283例)。平均年齢は50歳、女性47.9%、ヒスパニック系またはラテン系41.8%であった。高頻度にみられた併存疾患は糖尿病(61.6%)、肥満(55.2%)、高血圧(47.7%)であった。 主要評価項目のイベントは、レムデシビル群で2例(0.7%)、プラセボ群で15例(5.3%)確認された(ハザード比[HR]:0.13、95%信頼区間[CI]:0.03~0.59、p=0.008)。副次評価項目である28日目までのCOVID-19に関連した医療機関の受診は、レムデシビル群で1.6%(4/246例)、プラセボ群で8.3%(21/252例)発生した(HR:0.19、95%CI:0.07~0.56)。28日目までに死亡した患者はいなかった。 有害事象は、レムデシビル群で42.3%、プラセボ群で46.3%に認められた。

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早期乳がん術前化学療法、pCRは代替エンドポイントには役不足/BMJ

 病理学的完全奏効(pCR)は、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)のいずれについても、臨床試験の代替エンドポイントとして不十分であることが、イタリア・European Institute of Oncology(IEO)のFabio Conforti氏らが実施した、早期乳がんを対象とする術前化学療法の無作為化臨床試験に関するシステマティックレビューおよびメタ解析で確認された。米国食品医薬品局(FDA)は、早期乳がんの術前化学療法を検証する無作為化臨床試験において、pCRをDFSおよびOSの代替エンドポイントとすることを承認している。しかし、先行のメタ解析(試験数に限界があった)で認められたpCRとDFSおよびOSとの間の強い相関関係は、患者レベルであり試験レベルではなく、pCRを代替エンドポイントとすることについては議論の的となっていた。著者は、「今回示された結果は、pCRを早期乳がん術前化学療法の主要エンドポイントとして規定すべきではないことを示すものである」とまとめている。BMJ誌2021年12月21日号掲載の報告。54件のRCTをメタ解析、試験レベルで検証 研究グループは、Medline、EmbaseおよびScopusを用い、2020年12月1日までに発表された、術前化学療法の単独または他の治療(抗HER2薬、標的治療薬、抗血管薬、ビスホスホネート、免疫チェックポイント阻害薬など)との併用を検証した無作為化臨床試験を特定し、pCRとDFSまたはOSの試験レベルでの関連性を解析した。 治療効果推定値(DFSおよびOSのハザード比、pCRの相対リスク)を対数変換した後、加重回帰解析を実施し、決定係数(R2)を用いて関連性を定量化した。また、実験群における治療法の種類、pCRの定義(乳房およびリンパ節vs.乳房のみ)、疾患の生物学的特性(HER2陽性またはトリプルネガティブ乳がん)によって試験を層別化し、事前に計画されたサブグループ解析の結果の異質性を検証するとともに、DFS/OSのハザード比に関する代替閾値効果についても評価した。 無作為化臨床試験54件(計3万2,611例)が本解析に組み込まれた。DFSおよびOSとの関連は弱く、OSの代替エンドポイントとはならず pCRの対数(相対リスク)と、DFS(R2=0.14、95%信頼区間[CI]:0.00~0.29)およびOS(0.08、0.00~0.22)の対数(ハザード比)との間に観察された関連性は弱いものであった。全サブグループ解析において、pCRの定義、実験群における治療法の種類、疾患の生物学的特性にかかわらず、同様の結果が得られた。 代替閾値効果は、DFSに関しては5.19であったが、OSについては推定できなかった。 3つの感度解析(登録患者200例未満の小規模試験を除外、追跡期間中央値24ヵ月未満の試験を除外、pCRの相対リスクを治療群間のpCR率の絶対差に置き換え)の結果、一貫した結果が確認された。

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心肺停止時にカルシウム投与は無効(解説:香坂俊氏)

ACLSのプロトコールには「低カルシウム血症や高カリウム血症、さらにカルシウム拮抗薬のoverdose」といった、ごく限られた状況でカルシウム製剤の静注投与が推奨されている。今回デンマークで行われたRCTでは、このカルシウム製剤の有効性をより広範囲の一般的な院外心肺停止症例で検証したが、残念ながらその結果はカルシウム製剤側に害がある可能性が高いということで(ROSC[return of spontaneous circulation]がカルシウム製剤投与群で19%であったのに対し、プラセボ群で27%[リスク比:0.72、p=0.09])、途中で試験中止が勧告されるという結果となった。カルシウムは狭心作用があることが知られているが、その一方で細胞内のカルシウム濃度が上昇することで心筋細胞が過収縮してしまうことも知られており、今回の試験の結果はカルシウム製剤がこの悪い方に作用したものと考えられる(ほかに、カルシウムを投与することにより酸化ストレス反応が亢進することも知られている)。心肺停止症例の予後を改善することは容易ではなく、残念ながら今回のカルシウム投与に関しても否定的な結果となったが、それにしても北欧諸国のこの領域でのRCTの取り組みの多様さには恐れ入る。国や自治体レベルでの取り組みが功を奏しているものと思うが、こうした一つひとつの取り組みが心肺蘇生に対する「科学的」アプローチを徐々にひもといていくものと期待したい。

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2022年を迎えて【Dr. 中島の 新・徒然草】(407)

四百七の段 2022年を迎えて皆様、新年おめでとうございます。今年も多くの年賀状をいただきました。高校時代の同級生からは「会社を定年退職して悠々自適の生活を送っている」とあり、羨ましい限りです。一方、70代で新しい医学分野に挑戦している先生もおられ、まさに超人!案外多かったのが「いつもケアネット読んでます」という文面。皆さんどうもありがとうございます。さて、私自身は年末年始に何回か病院に行った以外はダラダラと過ごしました。字を読むのも面倒なので、もっぱらkindleで漫画を読んでいます。中でも特に面白かったのが、シグルイ神の雫ソムリエの3つです。「シグルイ」は「死狂ひ」から来ているのだそうですが、剣の道を極めようとする若者の話です。ただ、1600年代の話ゆえ、安全性など二の次、三の次。登場人物全員が無傷ではおられません。修業が進むにつれ、指やら耳やら顎やらに大怪我をしてしまい、凄惨な描写が続きます。なので、万人向きではないかも。「神の雫」はワイン版の「美味しんぼ」です。幼い頃から父親によってワインを仕込まれた若者、神咲 雫が主人公。もちろん子供がワインを飲むわけにいかないので、独特のやり方で味覚や嗅覚を鍛えられました。彼が、天才ワイン評論家・遠峰 一青とワイン対決をするというのがストーリーの主軸となっています。面白いのは、1つひとつのワインに関する蘊蓄や表現。たとえば、「ここは……さびれた古城……? かつては栄華を誇った城に違いない。だがここには、もう何もない。人も住まず、訪れる者もない」(1984年、ラフィット)というのは、漫画という媒体にぴったりの情景描写です。また、「美しい……わずかに紫がかったルビー色。小さいバラ……黒い果実、それに無花果。ボルドーのワインらしい香りだけど何か特徴のある芳香が感じられる。これは……そうだ、煙草だ! それも安っぽくない高級な洋モクの香り」(2002年、シャトー・オー・ブリオン)という言葉の選び方も、ワイン物語ならではですね。読み進めるにつれ、普段飲まない私までワインが欲しくなってきました。「ソムリエ」は文字通りパリで働く日本人ソムリエの物語。こちらも「神の雫」に似た設定とストーリーですが、少しあっさりした印象です。とはいえ、ちらほら出てくる歴史物語には驚かされます。例をあげると、5大シャトー(醸造所)の1つ、シャトー・ムートン・ロートシルトに関するお話。実はパリ万博の時、1855年に2級と格付けされてしまったのです。不当な評価を受けたオーナーのナタニエル・ド・ロートシルトの無念やいかに。以来、ブドウ畑や醸造技術の改良など、あらゆる努力がなされたのだそうです。そしてついに1973年、バロン・フィリップが念願の第1級を勝ち取りました。曽祖父の受けた屈辱を、118年ぶりに晴らしたのです。記念すべき昇格の年のエチケット(ラベル)の絵を描いたのは、あのパブロ・ピカソ!こうした人間ドラマに思いを馳せるのも、またいいですね。というわけで漫画の世界に浸りつつ、自らも創作意欲をかき立てられた正月でした。本年もよろしくお願いいたします。最後に1句漫画読み 算段めぐらす 新年や★kindleでは、それぞれに期間を区切って、私が電子出版した『スキンヘッド物語(ペンネーム:笹生 直孝)』と『トイレを求めて三千里(中島 伸)』を無料で閲覧できます。よかったら読んでみてください。

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 1

今回のキーワード「人育て」(人材育成)足場作り(スカフォルディング)仕掛け(ギミック)お手本(モデリング)ルール作り(オペラント条件づけ)理由づけ(合理性)お目付役(客観性)ほどほど度(介入レベル)前回(続編・その2)では、映画「そして父になる」を通して、子育ての正解とは、厳し過ぎず、自由過ぎず、ほどほどに子育てをする、つまり非認知能力をまず育んだ上で、認知能力を自ら高めることを促す、自律的な子育てであることが分かりました。そして、その根拠を、行動遺伝学による研究と進化心理学による解釈から導きました。それでは、実際に、どう「ほどほどに」子育てをすればいいのでしょうか?核家族化、少子化、一人親、ワンオペなど、現代の家庭環境が急激に変化し続ける最中、私たちは、本来の「ほどほどに」という子育てのあり方を見失ってしまいそうです。この答えを探るために、今回(続編・その3)は、引き続き、この映画を取り上げます。前回にご説明した、良い能力を促し悪い「能力」を抑えるという2つの家庭環境の機能を踏まえて、自律的に子どもを育てるスキルをご紹介します。さらに、そこから「人育て」(人材育成)のヒントを一緒に考えてみましょう。なお、この記事の中の家庭環境の機能とは、発達心理学の家族機能のいわゆる父性に当たります。母性と父性による家族機能の詳細については、関連記事1をご覧ください。どう認知能力を自ら高めることを促す?-良い能力を促す取り組み1つ目の家庭環境の機能とは、言語理解を主とする認知能力を促すことでした。その2では、この機能を、現代社会に望ましいながらも癖になりにくい(嗜癖性が弱い)能力を促進する文化的な「アゴニスト」(刺激薬)であるとご説明しました。それでは、この良い能力をどう促しましょうか? ここから、大きく3つの取り組みを挙げてみましょう。(1)足場作り映画のラストシーン。野々宮家の慶多が父親の良多に「スパイダーマンってクモだって知ってた?」と尋ねます。良多は「ううん、初めて知った」と優しく答えます。子どもの取り違え騒動を経て、彼が変わったのが見て取れるシーンです。一般的な知識なので、おそらく彼は知っていたでしょう。でも知らないと敢えて答えたのです。一方で、かつての良多だったら、「もちろん知ってるよ。クモってのはな・・・」と授業が始まったでしょう。1つ目の取り組みは、足場作りです(スカフォルディング)。足場とは、もともと建物を作る時の作業のために簡易的に組まれた足を置ける板などのスペースです。この足場と同じように、子どもが何か新しいことを知ろうとしたり、少し難しいことにチャレンジしようとするときに、その動機を高める親の関わりです。ここで、一方的にどんどん教え込んだり、先回りして教えてしまったら、その2でご説明した厳格な家庭環境になります。逆にまったく教えなかったら、その2でご説明した放任的な家庭環境になります。そうではなくて、「ほどほどに」教えるのです。たとえば、 幼児はよく「なんで?」と質問します。この時に、すぐに答えを言わないことです。そして、必ずしもきちんと答えないことです。分からないふりをして、「なんでだろう」「なんでだと思う?」と質問に質問で返します。ヒントをさりげなく言ったり、わざと間違えてツッコませることもします。また、子どもが学校から帰った時に、「今日は何を勉強した?」と聞かないことです。代わりに、「今日は何を質問した?」と聞くのです。「何が気になった?」「何をもっと知りたいと思った?」でもいいでしょう。これは、答えを見つけるのではなく、疑問を見つける働きかけです。結果よりもプロセスに重きを置く自発性(非認知能力)が育まれるでしょう。なお、良い結果を褒めたり、ご褒美をあげることは、さらに動機を高めると信じている親は多いです。しかし、ここには、ある落とし穴があります。実際の心理実験において、まず、絵を描くのが好きな子どもたちを、上手に描いたら賞状をあげるグループと何もしないグループに分けます、そして、絵を描かせます。すると、賞状をもらったグループの子どもは、何もしなかったグループの子どもよりも、その後にただ絵を描く時に、その時間が短くなったという結果が出ています。ご褒美がなければもうやらないと心変わりしていった訳です。つまり、何かをする楽しさやおもしろさ(内発的動機づけ)が、報酬(外発的動機づけ)によって削がれてしまう訳です(アンダーマイニング現象)。このことから、子どもが楽しんで何かをしている時は、出来栄え(結果)だけを極端に褒めたり、ご褒美を毎回あげたりするのは望ましくないことが分かります。そうされた子どもは、出来栄えを褒められることやご褒美をもらうことばかりにとらわれてしまうからです。出来栄えを褒めたりご褒美をあげるのは時々(ほどほど)にして、まずは「頑張ってるね」とその頑張り(プロセス)を褒めたり、「楽しいね」と共感することが良いでしょう。褒めるスキルの詳細については、関連記事2をご覧ください。似たように、子どもが本好きだからと言って、本をどんどん買い与えたり、読み聞かせをしつこくやると、本のありがたみや読み聞かせを聞く喜びが削がれたり、言いなりになりたくないという反抗の心理を煽るリスクがあります(心理的リアクタンス)。やはり、もったいぶるくらい(ほどほど)が効果的でしょう。また、子どもへの声かけとして「宿題は?」「勉強しなさい」と頻繁にプレッシャーをかけることは、今からやろうとしたり、やりたいと思っていた子どもの気持ちを削いでしまうリスクがあります。反抗期だととくにです。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。好きで仕事に入れ込んでいるだけなのに、報酬が上乗せされたり、報酬ばかりをチラつかす職場環境は、逆に報酬がなければやらないという考え方に部下を仕向けてしまうリスクがあります。また、さらに教えてあげようと好意的に迫ってくる上司がいる職場は、部下から煙たく思われてしまいます。報酬や指導は適度に(ほどほどに)して、本人の成長やチームプレイ(人間関係)も評価することが効果的でしょう。ほどほどであることは、育つ側だけでなく、育てる側もストレスを減らし、自分の仕事に専念できるでしょう。次のページへ >>

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 2

(2)仕掛け野々宮家には、ピアノ・ギターなどの楽器や最新の英語の音声教材が置かれ、壁に地図が貼られています。もちろん、本もたくさんあります。そんな野々宮家で暮らすようになった琉晴は、ピアノに興味を持ち、メチャクチャながらも、鍵盤を弾き続けるシーンがありました。2つ目の取り組みは、仕掛けです(ギミック)。仕掛けとは、もともと釣りや手品のように、ある目的のために巧みに工夫されて仕組まれたものです。この仕掛けと同じように、子どもが興味を抱きやってみたくなったり、逆に葛藤を抱き考えさせる親の関わりです。ここで、無理やり押し付けたり、やらせようと叱ってしまったら、やはり厳格な家庭環境になります。逆に、何もしなかったら(何もなかったら)、やはり放任的な家庭環境になります。そうではなくて、「ほどほどに」仕向けるのです。たとえば、幼児はよく「やりたいやりたい」と言います。この時、危ないことでなければなるべくやらせてみることです。料理や家事をしている時に、敢えて鼻歌を歌いながら楽しくやれば、お手伝いを仕向けることもできます。もちろん、そのために手間と時間がかかっても、ちゃんとできていなくて後で親がやり直すことになっても、自発性(非認知能力)を高めるために、敢えてやらせるのです。お手伝いは、社会経験の第一歩です。敢えてできそうな頼み事をしても良いでしょう。ここで注意点は、「ちゃんとできていない」とダメ出ししないことです。そうではなくて、「助かる」「うれしい」「ありがとう」に加えて、「〇〇ちゃんが手伝ってくれた料理はおいしいなあ」「〇〇くんがしてくれたお掃除で気持ちが良いなあ」とぼそっと(ほどほどに)言い、お手伝いを通して役に立っている感覚としての自発性を育むのです。一方で、幼児はよくけんかをします。兄弟や友達とけんかが始まると、または始まりそうになると、親としてはトラブルを起こしたくないので、つい先回りして引き離したくなります。しかし、ここも我慢です。ある程度、小競り合いになるまで泳がせて見届けます。そして、手が出たり、ケガになりそうになった時に、介入します。まったくほったらかしにする訳ではありません。この点で、野々宮家のように子どものけがに神経質にならないほうが良いでしょう。子どもは、実際の集団遊びの中、とくに葛藤場面でセルフコントロール(非認知能力)を高めています。そもそも、けんかをしなければ、仲直りの仕方が学べないです。つまり、何かトラブルが起きそうなピンチにこそ、そこに学びのチャンスがあるのです。習いごとも仕掛けの1つとしては使えます。ただし、習いごとの目的は、学習成果ではなく、学習態度であると割り切ることです。まずは、楽しんでやり続けることができるかを一番とすることです。逆に言えば、ガチガチに管理して、できるだけ多くやらせたり、無理やりにやらせないことです。無理やりやらされている限り、自分で考えて行動するという自発性は育まれません。習いごとはあくまで子どもが望んだ場合のオプションであり、豊かな発達のための刺激の1つに過ぎません。経済的な事情があれば無理してやらせることではないでしょう。お金をかけなくても、親ができることはほかにもたくさんあります。逆に言えば、「習いごとを続けろ」「勉強をしろ」と叱り飛ばすことに、ほとんど意味はなくなります。それどころか、これは、教育虐待のリスクがあることをその1ですでにご説明しました。実際の動物実験において、犬に電気ショック(罰)を与え続けると、最初は逃げるのに、やがて逃げられないことが分かると、逃げるのをあきらめてしまい、その後に逃げられる状況になっても、逃げなくなることが分かっています。同じように、人間の心理実験において、もともと解決できない問題を解かされた学生は、その後に簡単な問題を与えられても取り組もうとしなくなることが分かっています。つまり、無理難題を強いられること(外発的動機づけ)によって、自分は問題を解決することにおいて無力であると学習してしまい、やる気(内発的動機づけ)が削がれてしまう訳です(学習性無力感)。たとえば、ピアノ演奏会のシーン。慶多は練習の通りに本番でうまく弾けず、うまく弾いているほかの子に「上手だね」と感心して言います。そんな慶多に父親の良多は「悔しくないのか? もっと上手に弾きたいと思わなければ続けてても意味ないぞ」と叱ります。すると、慶多は顔をこわばらせて萎縮するばかりなのでした。この状況への効果的な仕掛けは、叱るのは必要最低限(ほどほど)にして、「うまい子もいるねえ」「でも慶多も練習頑張ったよね」「今日の演奏会は楽しかったね」と言うことです。すると、次の演奏会に向けて自らもっと練習に励むでしょう。もしも慶多が悔しがっているのなら、「悔しいね」「でもパパとママは慶多が練習してきたのをずっと見てきたよ」と言えば、自分で自分を慰めるセルフコンパッション(セルフコントロール)を高めることができるしょう。叱るスキルの詳細については、関連記事3をご覧ください。なお、日本ならではの裏メッセージ(ダブルバインド)の文化には注意が必要です。たとえば、「心配ねえ」「駄目ねえ」「無理よ」という声かけです。これは、奮起させる効果がある一方、自尊心や自信をなくさせて、やる気を削ぐリスクがあります。やはり奮起させる声かけはほどほどにして、「うまく行くよ」「大丈夫だよ」「あと少し」という受容的な声かけを織り交ぜるのが良いでしょう。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。部下にダメ出ししたり叱咤激励をするのはほどほどにして、まずは部下がやる気を高める職場環境を整えることに重きを置くことが効果的でしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 3

(3)お手本自宅で電気屋を営む斎木家の父親・雄大は、慶多の目の前で、やって来る客から週末に草野球を一緒にやろうと誘われます。雄大は、冗談交じりに断っていましたが、まるで友達のように楽しそうにしゃべっています。3つ目の取り組みは、お手本です(モデリング)。お手本とは、何かを習う時に模範となるものです。このお手本と同じように、子どもにやって欲しいことをまず自分たちが目の前で実践するという親の関わりです。ここで、実践していないのにやって欲しいことを強いてしまったら、厳格な家庭環境になります。逆に、お手本になることを意識しなかったら、放任的な家庭環境になります。そうではなくて、さりげなく(ほどほどに)その背中を見せるのです。お手本(モデリング)は、発達心理学的には、模倣学習と言い換えられます。これは、琉晴が雄大と同じようにストローを噛んだり、慶多が良多と同じように首を傾けるポーズをするように、親などの身近な人のしぐさや行動の真似をついしてしまうことです。人類ならではの学習能力であり、社会脳が進化した約300万年前以降に生まれた古い能力です。つまり、約10万年前に生まれた言語的コミュニケーションによる学習よりも、この模倣という非言語的コミュニケーションによる学習のほうがより古く、より嗜癖性が強い点で、より効果的であることが分かります。一言で言えば、子どもは親の言うことを聞くとは限りませんが真似はするということです。たとえば、友達と仲良くすることについてです。口で言うよりも効果的なのは、まず親が夫婦で仲良くしている姿を子どもに見せることです。夫婦げんかをしても、その後の仲直りを目の前で見せることです。謝ることについても、まず親が子どもについ悪いことをしてしまったら、ラストシーンの良多のように素直に謝る姿勢を見せることです。逆に、かつての野々宮家のように、夫婦でギスギスしていたり、一方がもう一方の言いなりになっていたり、陰でお互いがお互いの悪口を子どもに吹き込んでいるとどうでしょうか? 友達を大切にしなさいと口先だけで言っても、何の説得力もありません。また、習いごとや勉強することについてです。口で言うよりも効果的なのは、まず親がピアノを楽しく弾いていたり、本をよく読んだり熱心に調べ物をしていることです。実際に職場に子どもを連れて行って、働いている姿を少しでも見せることです。夫婦でニュースの話題で盛り上がって意見を言い合ったり、仕事がうまく行った喜びや夢を語り合っている姿を子どもに見せることです。逆に、親がその習いごとをやった経験がなかったり、一緒にやっていなかったらどうでしょうか? 斎木家のように父親が家で昼間からごろごろしていたり、野々宮家のように仕事があまりにも忙しくてほとんど家にいなかったらどうでしょうか? 習いごとで悔しがれ、勉強しろ、夢を持てと口先だけで言っても、何の説得力もありません。なお、日本ならではの謙遜の文化には注意が必要です。たとえば、ご近所さんや知り合いから「お宅のお子さんはしっかりしてますねえ」と言われた時です。その言葉がお世辞であっても本音であっても、謙遜の文化の文脈では、渋い表情で「いえいえ、そんなことないです」と返答するのが礼儀になります。しかし、この返答を目の前で聞いた子どもはどう思うでしょうか? 子どもは謙遜の文化をよく分からず、混乱して「実は自分が駄目なんだ」と自信を失ってしまうリスクがあります。お手本(モデリング)を意識した正解の返答は、笑顔で「そう思っていただき嬉しいです」「励みにします」「ありがとうございます」です。そして、子どもには、「〇〇さんにそう言われて嬉しいね」「もっと頑張りたくなってきたね」です。もしもつい謙遜してしまったら、またはどうしても謙遜しなければならなかったら、その後は素直に子どもに謝り、事情を説明すればいいだけです。これは、謙遜の文化についての心理教育をするチャンスになります。身内の中での冗談交じりのダメ出しも注意が必要です。たとえば「パパみたいになっちゃ駄目だよ」「ママはバカだな」などです。これらは、大人同士では「実はそうじゃない」という文脈を共有していますが、子どもはこの裏メッセージ(ダブルバインド)をよく分かっていません。鵜呑みにしたり、そのまま友達に使ってしまうリスクがあります。お手本(モデリング)を意識した代わりのセリフは、「パパはそんなことするの駄目だよ」「ママはそんなバカなことしないで」と、主体を人ではなく、行動に置き換えるのが良いでしょう。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。上司がしんどそうにしていたり、職場の愚痴を言ってばかりだと、どうでしょうか? いくら部下に頑張れ、自分の将来を考えろと口先だけで言っても、何の説得力もありません。上司はまず、余計なことは言わず、生き生きと仕事している背中を見せて、仕事の夢を語ることが効果的でしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 4

素行の悪さと嗜好品へのハマりやすさをどう抑える?-悪い「能力」を抑える取り組み2つ目の家庭環境の機能とは、素行の悪さ(反社会的行動)と嗜好品へのハマりやすさ(物質依存)を抑えることでした。その2では、この機能を、現代社会に望ましくないながらも癖になりやすい(嗜癖性が強い)「能力」を抑制する文化的な「アンタゴニスト」(遮断薬)であるとご説明しました。それでは、この悪い「能力」をどう抑えましょうか? ここから、大きく3つの取り組みを挙げてみましょう。(1)ルール作り良多は、琉晴が野々宮家で暮らし始める初日に、流晴に野々宮家のルールのリストを紙にして渡します。そして、琉晴に「ストローは噛まない。英語の練習を毎日する。トイレは座ってする。お風呂は一人で静かに入る。テレビゲームは1日30分。パパとママと呼ぶこと」と読ませるのです。1つ目の取り組みは、ルール作りです(オペラント条件づけ)。これは、家庭内での決まりごとをはっきりさせて、やって良いことと悪いことを意識させる親の取り組みです。ここで大事なのはルールのペナルティです。ペナルティが厳し過ぎると、厳格な家庭環境になります。逆に、ルールもペナルティもはっきりしていなくて、斉木家のゆかりのようにそのつど気分に任せて怒鳴ったり叩いてしまったら、放任的な家庭環境になります。そうではなくて、適度に(ほどほどに)ペナルティを設けるのです。たとえば、素行についてです。叩く、押す・蹴る・物を投げるなどの危険行為や、大声を上げる・地団太を踏むなどの迷惑行為が見られたときは、どうしましょうか? ここで注意点は、体罰はどんな状況でも不適切です。その訳は、いくら子どもが悪いからと言って、親が体罰をしてしまったら、相手が悪い時は暴力(体罰)をして良いという悪いお手本を子どもが模倣学習してしまうからです。だからこそ、体罰禁止法ができたのです。しかし、親も人間です。つい叱った勢いで手が出てしまったら、後で謝れば良いのです。これが、良いお手本になります。素行の悪さに対して効果的なのは、まずタイムアウト(行動制限)です。自宅にいる時は、自分の部屋など決まった場所に入ることです。時間は5分程度、または落ち着いたら出てきて良いとすることです。程度が重くない場合は、イエローカード(2回目の警告でタイムアウト)、スリーノックアウト(3回目の警告でタイムアウト)の方式を取り入れ、警告することで落ち着くことを促すこともできるでしょう。なお、外にいる時は、タイムアウトが使えません。代わりに、3つの対処法があります。1つ目は、なるべく周りに人が少ない場所に移動して、一緒に遠くを見ることです。2つ目は、ゆっくり一緒に10まで数えます。3つ目は、飲み物を一杯ゆっくり飲ませることです。これは、アンガーマネジメントの取り組みです。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。職場のストレスの多くは、上司のパワ-ハラスメント、部下の怠慢、同僚のいじめなどの人間関係です。これらの問題点を具体的に示し、そのペナルティを設けることが効果的でしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 5

(2)理由づけ野々宮家のルールのリストを一方的に読まされた琉晴は、納得が行きません。良多から「なんででも」「そのうち分かるようになる」といくら言われても、「なんで?」と良多に繰り返し聞き続けます。2つ目の取り組みは、理由づけです(合理性)。これは、ルールとそのペナルティがなぜ必要かを子どもにある程度納得させる親の取り組みです。ここで、野々宮家のようにこのルールが一方的過ぎると、厳格な家庭環境になります。逆に、ルールもペナルティもなく、斉木家のようにやってはいけないことを黙認していると、放任的な家庭環境になります。そうではなくて、ある程度(ほどほどに)ルールの理由を納得させるのです。たとえば、先ほどの危険行為についてです。そうすると相手はどんな気持ちになるかを考えてもらうために、逆にそうされると自分はどういう気持ちになるか考えるよう促すことです。また、迷惑行為について、幼児がよく理解できない場合は、「みんなが守っているルールだから」と伝えることができます。嗜好品やテレビゲームについてはどうでしょうか? これらに対して効果的なのは、理由づけをして制限することです。たとえば、嗜好品の栄養バランスの問題、テレビゲームによる悪影響です。そのため、親もある程度勉強してその有害性を具体的な根拠として調べておく必要があります。さらに、制限する時に、代わりのものを用意することが効果的です。そうすることで、子どもの不満を減らすことができます。たとえば、嗜好品の代わりに、果物です。テレビゲームの代わりに、親子でトランプ・将棋などの卓上ゲームやスポーツをすることです。つまり、親も制限に対して、ある程度コミットする必要があるということです。お店で「欲しい欲しい」「買って買って」と急におねだりされた時はどうでしょうか? ただ一方的に駄目と言うのではなく、「今日はこのお菓子(またはおもちゃ)を買いに来た訳ではないから」「そのお金はないから」と理由を伝え、その必要性や予算を考えさせることです。親がその時の気分で買ってあげたり買わなかったりするのでなく、「もともと決めていないものは買わない」という家族のルールを親も子どもも守る必要があることを伝えることです。それでも、子どもが駄々をこねるのであれば、先ほどのアンガーマネジメントの取り組みを行います。一方で、親が買っても良いと判断したとしても、すぐにそのまま買い与えないことです。「そこまで言うなら、じゃあ来週に来た時に買おう」と約束するのです。これを繰り返せば、子どもは駄々をこねてもすぐに買ってもらえないことを学習し、駄々をこねなくなります。これは、セルフコントロールを高め、衝動買いの癖を減らすでしょう。また、ルールが守れていたら、毎日カレンダーに一緒にシールを貼り、シールが〇個たまったら、ご褒美をあげるのも効果的です(トークンエコノミー)。そのご褒美は、親が選んだプレゼントでも良いですし、家族で外食をすることでも良いでしょう。さらに、これを発展させた、お小遣いルールも、文字と数字を理解するようになる5歳から効果的です。図1は、完全にルールが守れると、1日15円(月450円になります。もちろん、それぞれの項目やその金額を変更したり、トークン方式(換金方式)から現金方式に変更したり、お小遣いからルールのペナルティとして差し引く罰金制にするなど、年齢やその子の性格に合わせたオリジナルのお小遣いルールを作ることができます。なお、この注意点は、その項目を、習いごとや勉強などの良い能力を促すことにはあまりしないことです。その訳は、そうしてしまうと、先ほどご説明したように、やりたい気持ちが削がれる心理(アンダーマイニング現象)が出てくる可能性があるからです。するとしても、あいさつのし忘れや宿題のやり残しなど習慣化できていないものに限定して、やはり内容はなるべく悪い「能力」を抑えることに特化することです。また、年齢が低い場合、その項目数は2、3つに限定することです。その訳は、項目が多過ぎると、1つ1つの項目への意識が薄まるからです。まずは、その時の最優先の問題を項目とすることです。そして、そのルールが習慣化したら、いったんそれを項目から外して、次の問題を新たに項目に入れれば良いです。さらに、ルールが自発的に守れているなら、ルール化しないことです。その訳は、その1でもご説明しましたが、親が子どもの行動をコントロールし過ぎると、逆に子どもは自分で自分の行動をコントロールしなくなることが実際の研究で分かっているからです。よって、年齢が上がっていけば、項目を、禁止行為から家の仕事(お手伝い給料制)にシフトしていくことができるでしょう。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。先ほどの人間関係の問題の実際のケースを紹介して、そのルールを課す根拠をはっきりさせることが効果的です。そして、問題が起きないのが当たり前とせず、問題が起きなかったことを敢えて全員に毎回、見える形にして知らせることです。これは、その後に問題が起きることを事前に抑止する効果があるでしょう。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 6

(3)お目付け役良多が、新しい父親として琉晴に家族のルールを座って説明している間、新しい母親になるみどりは、離れたところで立って荷物の片付けをしながら聞いているだけで、琉晴に背を向け、何も言いません。あたかも良多が独りよがりに話を進めているように見えます。3つ目の取り組みは、お目付け役です(客観性)。これは、普段の行動に目を付ける(監視する)役職のように、いろいろな関係者の目を家庭に入れる親の取り組みです。ここで、野々宮家のように独断で細かいルールを押し付けると、厳格な家庭環境になります。逆に、斎木家のようにルールがはっきりせず、気まぐれで体罰があるだけだと、放任的な家庭環境になります。そうではなくて、民主的に(ほどほどに)ルールを作るのです。たとえば、家族会議です。少なくとも、両親がいるなら、両親が揃ってそのルールを伝えることです。さらに、祖父母・叔父叔母などの親族やママ友などを立会人として同席させることです。もしも、一人親で立ち会える親族やママ友もいない場合は、地域の保健師に立ち会いをお願いすることもできます。心療内科・精神科で心理カウンセラーが対応することもできます。このように、なるべく多くの目(お目付役)を、子どもに向けるようにすることで、子どもにルールを守らせる良い意味でのプレッシャーをかけることができます。また、お小遣いルールだけでなく、家族のルールも書面化することです。そして、そもそものルールを作る理由として、家族の目標(ビジョン)を掲げることです。たとえば、ルールの理由として「自分で生きていける大人になるため」「家族で仲良くするため」「家族で助け合うため」などです。そうすることで、ルールを守る直接の理由だけでなく、そもそもルールが存在する意味を理解させることができます。とくに、「家族で助け合う」というビジョンを掲げておくと、先ほどご紹介したお手伝い給料制において、「お金がもらえないならお手伝いはしない」という発想になるのを未然に防ぐこともできるでしょう。さらに、年齢が上がれば、家族会議で、子どもにお小遣いアップやペナルティ変更を提案させることもできます。そして、その理由や根拠を示してもらうこともできます。これは、自分自身へのお目付役(客観性)になることであり、自分の行動に自覚(責任)を持たせ、子どもを大人扱いしていく取り組みでもあります。こうして、単に親(社会)が作ったルールに従うだけの認知能力ではなく、自分で考えて自分で自分(そして社会)のルールを作っていきたいと思う非認知能力が高まるでしょう。子どもが納得した形でルールが決まると、家族会議の参加者全員が署名(承認)を入れる儀式も効果的です。この取り組みは、ものごとは話し合いによって決めるというお手本を見せることにもなります。まさに民主主義の基本であり、民主主義型という自律的な子育てを下支えするものでしょう。なお、子どもを客観視させるスキルの詳細については、関連記事4をご覧ください。もっと言えば、このお目付役の取り組みは、ルールを課される側の子どもだけでなく、ルールを課す側の親にも効果があります。複数の目が家族のルールに向けられることによって、とくに良多のように、一人の親が暴走して、独りよがりなルールを一方的につくり、教育虐待を招くリスクを避けることができます。たとえば、それは、受験勉強のために「反抗禁止」「恋愛禁止」などの過剰なルールを設けることです。「ブラック校則」ならぬ、「ブラック家庭ルール」です。これは、明らかにやり過ぎであり、子どもの権利への侵害の恐れがあります。なぜなら、思春期の子どもが、反抗するかしないか、恋愛するかしないかは本人が決めることであり、本人の権利だからです。この点で、妻(または夫)が夫(または妻)に「私の子育てに口出ししないで」と当たり前のように言うのは、かなり危うさがあります。これは、夫婦の一方だけに決定権がある状況を子どもに見せることであり、夫婦関係(人間関係)のあり方の悪いお手本となります。子どもが、友達関係においていじめ加害者になったり、いじめ黙認者になる危うさもあるでしょう。ちなみに、受験勉強のために子どもの人権をないがしろにする親の関わりは、もはや過激思想と同じくらい合理主義的でも個人主義的でもないです。これは、教育虐待のリスクがあるばかりか、統合失調症を発症させる心理社会的ストレスのリスクがあることをその2ですでにご説明しました。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。先ほどの人間関係の問題の実際のケースを紹介して、そのルールを職場の全員に考えてもらい、ペナルティを決めてもらうことです。これは、同調の心理を促し、ルール遵守の心理を高める効果があるでしょう。なお、同調させるスキルの詳細については、関連記事5をご覧ください。表4に示しているように、良い能力を促す取り組みも悪い「能力」を抑える取り組みについても、年齢が上がっていくにつれて、ほどほど度(介入レベル)を弱いものにシフトさせていくことが効果的です。なぜなら、それが大人扱いをしていくことであるからです。そして、それが、親に言われて生きて行くのではなく、親に言われなくても自分で生きていける大人にさせることであるからです。なお、最初にご説明した「足場作り」で、子育てを建築工事に例えました。さらに、愛着(親に愛着を持つ「能力」)は土台、非認知能力は柱、そして認知能力は外壁に例えることができます。早期英才教育をするということは、支える柱がしっかりしていないのに、親が外壁だけ無理やり作らせているようなものです。そんな家は、環境変化(心理社会的ストレス)という地震などの災害にとても脆弱でしょう。非認知能力という柱は、太ければ太いほど、子どものメンタルという家をより丈夫でしなやかにするでしょう。そんな家が、また次の世代で、同じように丈夫でしなやかな家を造ることができるでしょう。サブタイトル“Like father, like son”とは?ラストシーンで、慶多と琉晴を中心に、野々宮家と斎木家のみんなが、笑い合って、1つの家の中に入っていく様子は、感動的です。慶多と琉晴のために、2つの真逆の家庭環境が融合し中和して、「ほどほど」の家庭環境が生まれた象徴的なシーンです。サブタイトルであり、海外向けのタイトルでもある”Like father, like son”とは、「この親にしてこの子あり」「親が親なら子も子」という意味です。それは、子育てを通して、親の認知能力も非認知能力も試されているニュアンスがあるように思えてきます。結局、子育ての正解とは、認知能力を高めることそのものではなく、子どもが人生を楽しみ幸せを感じるトータルな「能力」を育むことではないでしょうか? そして、その「幸せ」はその子どもそれぞれであり、本人が決めることであることを私たちがよく理解した時、子育ての正解は「正解がない」または「正解がたくさんある」という逆説的な正解に納得できるのではないでしょうか? そして、子育てをもっと賢く楽しめるのではないでしょうか?1)非認知能力を伸ばすコツ:中山芳一、東京書籍、20202)自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学:森口佑介、講談社現代新書、20193)子どもにおこづかいをあげよう:西村隆男、主婦の友社、2020<< 前のページへ■関連記事Mother(後編)【家族機能】ダンボ【なぜ飛ぶの? 私たちが「飛ぶ」には?(褒めるスキル)】3年B組金八先生(前編)【令和の金八先生になるには? 子どもにも大人にも使える!(叱るスキル)】Part 1ドラえもん【子どものメンタルヘルスに使えるひみつ道具は?】3年B組金八先生(続編)【令和の金八先生になるには?わがままにさせない!(同調させるスキル)】Part 1

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