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トラスツズマブ、唾液腺がんに適応拡大/中外

 中外製薬は、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体トラスツズマブ[一般名:ハーセプチン)について、「HER2陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺」の効能・効果、および用法・用量の追加について、2021年11月25日、厚生労働省より承認を取得したと発表。同適応症に対しては、2021年3月11日に厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けている。 唾液腺がんは、頭頸部がんの一部に含まれ、国内の罹患数は年間1,000例未満の希少がんである。従来、唾液腺がんに対する標準治療は手術を中心としており、薬物治療の治療方法は確立されていない。また、他の頭頸部がんと異なり病理組織型が多く、組織型により遺伝子変異や予後の状況が大きく異なることが知られている。唾液腺導管がんにHER2陽性が比較的多いことが知られており、国内における唾液腺がん全体でのHER2陽性率は、15%弱であると考えられている。 今回の承認は、HER2陽性の進行・再発唾液腺がん16例を対象に実施された、医師主導の国内第II相臨床試験(HUON-003-01試験)の成績に基づいたもの。同試験は、ハーセプチンとドセタキセルの併用による有効性および安全性を検討した。主要評価項目である奏効率は60%であった。主な有害事象は、好中球数減少、白血球数減少、脱毛症、貧血、口内炎及び低アルブミン血症等であった。 HER2タンパクの検出ならびにHER2遺伝子増幅度の測定は、ロシュ・ダイアグノスティックスの組織検査用キット「ベンタナ ultraView パスウェーHER2 (4B5)」および「ベンタナ DISH HER2 キット」によって行う。

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新規経口抗凝固薬milvexianが術後VTE予防に有効/NEJM

 新規経口第XIa因子阻害薬milvexianは、人工膝関節置換術後の静脈血栓塞栓症予防に有効であり、出血のリスクは低いことが示された。カナダ・マックマスター大学のJeffrey I. Weitz氏らが、エノキサパリンと比較するアダプティブデザインの第II相無作為化並行群間比較試験「AXIOMATIC-TKR試験」の結果を報告した。静脈および動脈血栓塞栓症の予防と治療において、第XIa因子阻害薬は従来の抗凝固薬より効果的で出血も少ない可能性が示されていた。著者は、「milvexianの有効性と安全性については、さらなる研究が必要である」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年11月15日号掲載の報告。milvexian 1日2回投与4用量、1日1回投与3用量vs.エノキサパリン 研究グループは、待機的人工膝関節置換術を受ける50歳以上の患者1,242例を、術後にmilvexian 25mg/50mg/100mg/200mgを1日2回投与、または25mg/50mg/200mgを1日1回投与、またはエノキサパリン40mgを1日1回投与する7群のいずれかに無作為に割り付けた(非盲検)。 有効性の主要評価項目は静脈血栓塞栓症(無症候性深部静脈血栓症、確定診断された症候性静脈血栓塞栓症、全死因死亡の複合)で、安全性の主要評価項目は出血とした。25~200mg 1日2回投与は、エノキサパリンよりVTEの発生が有意に低い 静脈血栓塞栓症は、エノキサパリン群54/252例(21%)に対して、milvexianの1日2回投与集団では25mg群27/129例(21%)、50mg群14/124例(11%)、100mg群12/134例(9%)、200mg群10/131例(8%)で発生した。milvexianの1日1回投与集団では25mg群7/28例(25%)、50mg群30/127例(24%)、200mg群8/123例(7%)であった。 milvexian 1日2回投与集団では有意な用量反応性が認められ、同集団の静脈血栓塞栓症の発生率は12%(63/518例)で、事前に設定した基準値である30%より有意に低かった(片側p<0.001)。 すべての出血(重症度を問わない)の発生は、milvexian群38/923例(4%)、エノキサパリン群12/296例(4%)であった。大出血または臨床的に重要な非大出血はそれぞれ1%および2%に認められ、重篤な有害事象はそれぞれ2%および4%報告された。

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2型DMの新規発症リスクを低下・増加させる降圧薬は?/Lancet

 降圧治療は2型糖尿病の新規発症予防に効果的な戦略であるが、その効果は降圧薬のクラスにより異なっており、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)で良好な結果が得られることが、英国・オックスフォード大学のMilad Nazarzadeh氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration(BPLTTC)のメタ解析で示された。降圧治療は、糖尿病の細小血管および大血管合併症を予防する戦略として確立されているが、糖尿病そのものの予防に寄与するかは不明であった。著者は、「降圧薬のクラスによる差はおそらくオフターゲット作用の違いによるものと考えられる。今回のエビデンスは、糖尿病発症予防のために降圧薬のクラスを選択する必要があることを支持するものであり、個々の臨床的な糖尿病リスクに応じた薬剤選択の改善に結び付くだろう」と述べている。Lancet誌2021年11月13日号掲載の報告。RCT 19件・約14万6千例をメタ解析 BPLTTC研究グループは、降圧治療が新規2型糖尿病の発症リスクに及ぼす影響を評価するとともに、5つの主要なクラスの降圧薬の新規2型糖尿病発症リスクに対する効果の違いを検討する目的で、無作為化試験の参加者個々のデータを用い、1段階法によるメタ解析ならびにネットワークメタ解析を行った。 対象は、1次予防および2次予防の効果について特定クラスの降圧薬とプラセボまたは他のクラスの降圧薬との比較を行い、各群1,000人年以上追跡した無作為化比較試験とした。ベースラインにおいて糖尿病と診断されている患者、および糖尿病既往の患者を対象とした試験はすべて除外した。 1段階法による個人データのメタ解析は層別Cox比例ハザードモデルを、個人データのネットワークメタ解析はロジスティック回帰モデルを用い、薬剤クラスの比較に関して相対リスク(RR)を算出した。 全体では、1973~2008年に実施された22件の臨床試験のデータが解析対象となった。1段階法による個人データのメタ解析には、このうち19件の無作為化比較試験から得られた14万5,939例(男性8万8,500例[60.6%]、女性5万7,429例[39.4%])が組み込まれ、個人データのネットワークメタ解析には全22試験が組み込まれた。全体では収縮期血圧5mmHg低下で2型DMの発症リスクが11%低下 追跡期間中央値4.5年(IQR:2.0)において、9,883例が新たに2型糖尿病と診断された。収縮期血圧が5mmHg低下した場合、追跡期間中の2型糖尿病の発症リスクは、全体で11%低下した(ハザード比:0.89、95%信頼区間[CI]:0.84~0.95)。 5つの主要なクラスの降圧薬の効果に関する検討では、プラセボと比較してACEI(RR:0.84、95%CI:0.76~0.93)、ARB(0.84、0.76~0.92)は、2型糖尿病の新規発症リスクを減少することが示された。一方、β遮断薬(1.48、1.27~1.72)、およびサイアザイド系利尿薬(1.20、1.07~1.35)は2型糖尿病の新規発症リスクを増加することが示され、カルシウム拮抗薬(1.02、0.92~1.13)についてはマテリアルな影響が見つからなかった。

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急性躁症状に対する薬物療法~ネットワークメタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、成人双極性障害患者の急性躁症状に対する薬理学的介入の有効性、受容性、忍容性、安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年10月12日号の報告。 2021年3月14日までに公表された適格研究をPubMed、Cochrane Library、Embaseの各データベースより検索した。躁症状を有する成人を対象に10日以上の経口薬単剤治療を実施したランダム化比較試験(RCT)を適格研究とし、試験期間中に抗精神病薬によるレスキュー投与を行った研究は除外した。主要アウトカムは、治療反応(有効性)およびすべての原因による中止(受容性)とした。副次的アウトカムは、躁症状の改善と効果不十分による中止とした。 主な結果は以下のとおり。・適格研究79件のうち、23薬剤とプラセボによる72件の二重盲検RCTをメタ解析に含めた(平均研究期間:3.96±2.39週間、1万6,442例、平均年齢:39.55歳、男性の割合:50.93%)。・プラセボと比較し、治療反応が高かった薬剤は、アリピプラゾール、アセナピン、カルバマゼピン、cariprazine、ハロペリドール、リチウム、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、タモキシフェン、バルプロ酸、ziprasidoneであった(56研究、1万4,503例)。・プラセボと比較し、すべての原因による中止が少なかった薬剤は、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、すべての原因による中止が多かった薬剤は、トピラマートであった(70研究、1万6,324例)。・プラセボと比較し、躁症状の改善が認められた薬剤は、アリピプラゾール、アセナピン、カルバマゼピン、cariprazine、ハロペリドール、リチウム、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、タモキシフェン、バルプロ酸、ziprasidoneであった(61研究、1万5,466例)。・プラセボと比較し、効果不十分による中止が少なかった薬剤は、アリピプラゾール、アセナピン、カルバマゼピン、cariprazine、ハロペリドール、リチウム、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、バルプロ酸、ziprasidoneであった(50研究、1万4,284例)。 著者らは「各抗精神病薬、カルバマゼピン、リチウム、タモキシフェン、バルプロ酸は、急性躁症状の治療に有効であることが示唆された。ただし、プラセボよりも良好な受容性が認められた薬剤は、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンのみであった」としている。

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新型コロナウイルスワクチン接種者のブレークスルー感染(既感染者と未感染者の比較)(解説:小金丸博氏)

 新型コロナウイルスワクチン接種後にブレークスルー感染が起こることはすでに知られた事実である。今回、mRNAワクチンである「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)または「mRNA-1273」(Moderna製)の接種者を対象に、ブレークスルー感染発生率を既感染者と未感染者で比較した観察研究がJAMA誌に報告された。 BNT162b2接種群の累積感染発生率(追跡期間120日)は既感染者で0.15%(95%信頼区間[CI]:0.12~0.18)、未感染者で0.83%(同:0.79~0.87)、mRNA-1273接種群では既感染者で0.11%(同:0.08~0.15)、未感染者で0.35%(同:0.25~0.48)だった。既感染者は感染により自然免疫を獲得できているため、感染発生率が低いのは予想できる結果である。今回の研究では、既感染者の中でワクチン接種群と非接種群を比較したデータはなく、既感染者にワクチンを接種することによるワクチン免疫の上乗せ効果がどれだけあったかは不明である。 また、既感染者のうち、初回ワクチン接種が感染後6ヵ月以上経過していた人の方が6ヵ月未満だった人よりも、ブレークスルー感染率が低いという結果が得られた。興味深い結果ではあるが、このような結果が得られた理由は説明できていない。既感染者に対するワクチンの適切な接種時期、スケジュールは確立されておらず、今後の課題の1つである。 本研究はカタールで実施された全国レベルの大規模なコホート研究である。注意すべきLimitationとしては、未感染者の中に見逃された感染者が含まれている可能性があること、対象に小児や高齢者の割合が少なく一般化できないこと、基礎疾患に関してマッチングをできていないこと、2種類のワクチンの直接比較はできなかったこと、などが挙げられる。 ワクチンの効果は患者側の要因(年齢、基礎疾患など)に加えて、ウイルスの要因(変異株の種類など)の影響を受けると考える。ブレークスルー感染が起こる原因を特定し、有効性の高いワクチンの開発やブースター接種スケジュールの確立が望まれる。

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若年性認知症患者さんを支える諸制度・保険の知識【コロナ時代の認知症診療】第9回

EODで鑑別すべきはうつ病関連だけではない若年性認知症(EOD)にかかっていることに、当事者や家族、同僚などの周りが早期から気づくことは稀である。経験的に、本人は何となくこれまでとは違うなと違和感を抱いていることもあるがまったく無頓着であることも多い。勤務している人の場合、変調に一番気づいているのは、本人の失敗を直接に被りやすい同僚や部下だろう。最近では一定規模以上の会社において、ストレスチェックが義務化され、「うつ病」の概念が浸透しているので、こうした当事者に対してうつ病やその周辺疾患などを想起する人が多いかもしれない。前回述べたように、認知症に派生する問題が事例化してくると、会社も捨て置けなくなって受診を促すことになる。ストレスチェックの結果を心配する人に、産業医が最初の相談先とされるせいか、まずこうした医師への相談が勧められることが多い。しかし産業医で認知症を専門とする人は例外的だろう。そこでかかりつけ医を夫婦で受診することも多いようだ。EODで鑑別すべきはうつ病関連だけではない。てんかんや睡眠時無呼吸症あるいは遅発性の妄想性疾患などと幅広い。仮にEODと診断が固まっても当事者が現役で家族の大黒柱の場合には、その人のこれからを思うと容易に診断名は告げられない。それだけに認知症専門医への相談が必要になる。知り合いに専門医がいない場合には、ネット検索がいいだろう。日本老年精神医学会か日本認知症学会のホームページをみれば、地域別に専門医の氏名や所属機関、また外来日などがわかるはずである。なおここまで男性の勤務者を想定して既述したが、EODの約半数は女性である。その場合も基本は同じだろう。知っておきたい「傷病手当金」や「精神障害者保健福祉手帳」さて次は治療となるが、既存4薬以外にこれというものがない。確かにアルツハイマー病に対してのAducanumabが2021年6月にアメリカで承認されたところだが、その使用に要する精査や経費などを考えると、当面はわが国での投与はそう容易ではない。それだけに福祉的な対応の基本は知っておきたい。EODの人に対する組織の姿勢はさまざまである。ピンは、その職場の中で定年の時まで働いてもらおうというものである。職位や給料は下がっても、その時々の能力に応じてできることを組織内のどこかでやってもらうというところもある。そうした組織の姿勢はさておき、医療者が関わる面について以下に述べる。福利厚生では、休職になるケースが多いだけに、まず基本は傷病手当金である。これは、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給される。連続して休んだ日があった場合、4日目以降、休んだ日に対して支給され、その期間は、支給を開始した日から最高1年6ヵ月である。なお退職後でも、ある条件を満たしていれば、引き続いて残りの期間も傷病手当金を受けることができる1)。次は「精神障害者保健福祉手帳」である。これは認知症などの精神疾患があり、日常生活に支障をきたす場合に申請できる。さらに血管性認知症やレビー小体型認知症などにより身体症状がある場合には、「身体障害者手帳」に該当する例もある。これに関連して、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務がある。(障害者雇用促進法43条第1項)。具体的に、民間企業の法定雇用率は2.3%。従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければならない、とされる。この「障害者」の範囲については、障害者雇用率制度の上では、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所有者を実雇用率の算定対象としている(短時間労働者は原則0.5人カウント)。患者さんの生活を支えるために、医師にできること以上の公的な制度に加えて、民間でも使えるものがある。その代表が生命保険の高度障害である。これは被保険者が、責任開始期(日)以後の病気やケガを原因として、両眼の視力や言語機能を永久に失ったときなど、定められたいずれかの障害状態に該当した場合に、死亡保険金と同額の高度障害保険金が受け取られるものである。具体的な障害内容として、1)両眼の視力を全く永久に失ったもの、2)言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの、3)中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの、など7つの例が示されていることが多い。特記すべきは、認知症は入っていないことである。したがっていわば寝たきりになった認知症ではなく、「動ける状態の認知症」では2)もしくは3)の障害として、医師は診断書を書くのが現実である。なお一回では申請が受理されなくても、状態の進行に応じて繰り返し申請すれば必ず受理されることを経験してきた。参考1)全国健康保険協会「傷病手当金について」

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第85回 今度は野党の代表選、各氏の新型コロナ対策はやはり痛し痒しだった!?

先の衆議院選中に各政党の政策比較をしたが、選挙の結果は周知のように与党である自民党と公明党がやや議席を減らしながらも安定多数を確保し、野党は日本維新の会が躍進するものの、野党第1党である立憲民主党が議席減となり、枝野 幸男代表が辞任を表明。現在同党は代表選挙の真っ最中だ。代表選に出馬したのは4人。以前、自民党総裁選に出馬した4人の政策を俯瞰したが、ここでも一応、「平等性」を鑑み、例のごとく、各人の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に関する政策(経済支援は除く)を「独断と偏見」で俯瞰してみようと思う。ちなみに私個人はそもそもこの間に立憲民主党が提案していた新型コロナに関する政策にはやや否定的。最大の理由は、同党が6月に提出した「新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案」(通称:日本版EUA整備法案)」に対しての評価が低いからだ。この法案は今回の新型コロナ対応として、一部で有効性があると指摘される適応外医薬品を厚生労働大臣が指定し、その生産・安定供給確保と医師が処方した際に万が一起きた副作用被害について公的救済制度を適用するという内容だ。一見すると非常時に機動的な法案のようにも思えるが、そもそも根幹にある日本国内での医療用医薬品の承認審査制度を揺るがしかねない問題であり、そう単純な話ではない。また、コロナ禍に入ってから、駆虫薬のイベルメクチン(商品名:ストロメクトール)やインフルエンザ治療薬のファビピラビル(商品名:アビガン)のように新型コロナに対するエビデンスが薄弱なものを臨床で使用すべきという声が市中の一部で加熱し、臨床現場にも混乱を与えている状況がある。そうした中で、同法案提出の中心的な存在でもある外科医で同党衆議院議員である中島 克仁氏が、強力なイベルメクチン信奉者であることにもかなり疑問を感じている。さて前置きが長くなったが、そうしたことから代表選に出馬している各氏が今後新型コロナに関してどのような政策を訴えているかは、今後の同党の行方を占う上で一定の評価軸になると考えている。もっとも今回の代表選が自民党総裁選と違う点は、各人の代表選用ページがあまりにも貧弱なこと。これは与党議員と野党議員の資金力とマンパワーの違いも影響しているのだろうか? また、立憲民主党自体は各地で積極的に4候補の演説会や会見、討論会を割とシステマティックに実施しているのだが、逆にシステマティック過ぎて各候補者の持ち時間が少なく、十分な話が聞けないという点もある。それを前提に各候補者のホームページと新型コロナ対策がメインテーマの1つだった札幌市での公開討論会から各氏の意気込みを拾い上げてみたい。なお取り上げる順番は五十音順に従う。政策はスローガン止まりか? 泉氏まず、衆議院議員の泉 健太氏(47)。北海道生まれで同党の福山 哲郎幹事長の秘書を経て、2003年衆議院選に旧民主党から出馬し初当選(京都3区)。民主党政権時代は内閣府大臣政務官を務め、希望の党、国民民主党を経て立憲民主党に合流し、現在8期目である。泉氏は自身のホームページでは以下のような新型コロナ対策を掲げている。国の責任で、宿泊療養も含めた医療体制を強化。いつでもどこでも誰でも安く検査を受けられる体制の確立を前提に、ワクチン接種済者・検査陰性者の行動の自由を拡大。3回目ワクチン接種の確実な実施、国産ワクチン・治療薬開発へ強力な支援。ちなみに札幌市での討論会では次のように語っている。「とにかく自宅療養は事実上の医療放棄だと言われてしまった。本当に不安の中でパルスオキシメーターはあるかもしれないけれど、電話をすればいいかもしれないけど、やはり自宅療養というのはあってはならないことだと思っております。その意味でしっかりとサポート体制を作っていく、これをまず訴えています。ワクチン接種済み者、検査陰性者の行動の自由を確保することに当たっては、いつでもどこでも誰でも安く検査を受けられる体制が重要。四国に選挙の応援で行った時、ある女性の方からやはりどうしてもアレルギーで(ワクチンを)打てないと、そういう中で女性から『あなた打ちましたか?』という(周囲からの)問いかけこそが心理的負担になるんだというお話を伺った。そんなことが変に問われる社会をつくるのではなく、皆さんが過ごしやすい社会を作っていくということだと思います」この医療体制の確保は今般与野党問わず政治家がほぼ口にすることだが、残念ながら泉議員の政策や肉声からは、そのためにどのようなことに取り組もうとしているのかはまったく聞こえてこない。もはやこの点はスローガンのみで良いステージは過ぎており、その点では具体策に欠くと言わざるを得ない。一方、ワクチン接種と行動制限緩和に関する件では、確かに医学的に受けられない人はいるため、その点に対する何らかの救済が必要な点と、個人の選択が尊重されるべきことは同意する。念のため言っておくと、私はなるべくワクチンは接種すべきと考えているし、自己選択で接種しない人に対して一定の懸念も有している。しかし、現行の法制度で強制ではない以上、その点は尊重されなければならないというものだ。もっとも現時点の医学的エビデンスを考えれば、個人にとっても社会全体にとってもワクチンの有用性は明らかであり、自己選択によるワクチン非接種者の陰性確認のための検査に公費を投入することには、やや疑問も感じている。ただ、泉議員が「無償」と主張していない点は一定程度評価してもいる。国産ワクチン・治療薬について、私は以前から与野党の議員とも軽々しく口にし過ぎであると感じる。やや乱暴な言い方をすれば、「国内でワクチン開発が可能な3~4社の製薬企業に1社当たりワクチン関連研究開発支援金を年2,000億円、20年間提供し、20年後のパンデミック時にいずれかの企業によって世界3番手のワクチン製造ができたら大成功」と言っていいくらい困難なものと考えている。唯一の医療系出身者、逢坂氏次が衆議院議員の逢坂 誠二氏(62)。今回の候補者では最年長である。北海道大学薬学部を卒業し、地元のニセコ町役場に就職。後に同町の町長選に出馬し、史上最年少の35歳で町長に就任した。2005年に旧民主党から衆議院選に出馬し初当選(比例北海道ブロック)。旧民主党政権では内閣総理大臣補佐官、総務大臣政務官を歴任。希望の党騒動時は無所属となり、その後立憲民主党に合流。現在5期目だ。経歴を見ればわかる通り、逢坂氏は医療畑出身で、これは今回の4候補者でただ1人であるが、自身のホームページには残念ながら今回の代表選用の特設ページや政策集はない。一応、新型コロナ対策について、それ以前に掲げた政策があるので以下に箇条書きするとワクチンの円滑な接種に全力を尽くす。コロナ禍によって明らかになった日本の医療や福祉の弱点を強化するため、医療福祉従事者の処遇の改善、地域ごとに偏った医療や福祉資源の改善に取り組む。ともにスローガンのみで具体策はない。そして札幌での討論会では次のように語っている。「政府の対策の一番の問題は、感染症は科学的な根拠をもって対策をしなければならないのに、科学的な根拠を優先せずに専門家の意見を聞く前に政府のほうで方針を決めたり、政府がいろんなことを押し付けたりしていた。だから科学的な根拠を持ってコロナ対策をしっかりやれるようにしていく。われわれが政権をとっていたら、私は総理ならばその方向でやっていたと思います」さてここで逢坂氏がこれまでの政府の新型コロナ対策が科学的ではないという総論は同意する。私は以前に何度も指摘しているが、とくに第4波の際の政府の緊急事態宣言解除時期の判断は明らかに科学的な根拠を欠き、それが多数の自宅療養者が発生した第5波につながっていると考えている。もっとも逢坂氏がどの点を科学的根拠に欠くと考えているのかは分からない。そこでネットを検索すると、次のような記事がヒットした。「科学的裏付けも国民の信頼もなかった安倍・菅政権のコロナ対策<立憲民主党衆議院議員 逢坂誠二>」(日刊SPA!/月刊日本)ここで言われているのはPCR検査体制の不十分さ、感染経路追跡のためのゲノム解析の拡大、「市中感染を徹底的に封じ込める」「感染経路が追跡可能な範囲まで感染を抑制する」という意味での『ゼロコロナ政策』である。少なくとも昨春のパンデミック発生当初、国内のPCR検査体制が不十分だったことは事実だが、この記事が公開された10月の段階でもなおその体制が不十分だという認識はいささか疑問を感じる。となると、逢坂氏は保険適応のPCR検査の対象をどこまで拡大すべきと考えているのだろうか? この点が不明で何とも判断がつきかねる。一方、逢坂氏は前述の日本版EUA整備法案の提案者の一人になっていることはやや懸念を感じる。念のため検索すると、逢坂氏自身はイベルメクチンやファビピラビルについて賛同の言及をしている痕跡はネットサーフィンをしている範囲では見つからない。特定の薬剤を極度に信奉しているわけではなく、同法案に総論的な賛成の立場なのかもしれない。しかし、概して言っても逢坂氏が主張する「科学的根拠に基づくコロナ対策」に私個人は納得感が得られていない。内容薄め?小川氏3番手は衆議院議員の小川 淳也氏(50)。旧自治省の出身で2005年の衆議院選で初当選(香川1区、比例復活)。旧民主党政権時代は総務大臣政務官を務め、希望の党、無所属を経て立憲民主党に合流している。現在は6期目。小川氏のホームページには代表選の政策としてコロナ対策に言及がある。それは以下のようなものだ。ワクチン接種の推進医療提供体制の充実治療薬や国産ワクチンの開発普及推進経済活動との両立についてはワクチン接種証明等を活用して経済刺激策を検討する一方で、体質や心情等に十分配慮し、無償の検査並びに無償の陰性証明をセットで提供そして札幌での討論会では次のように語っている。「幸かな、今比較的落ち着いた状況にありますが、しかし、第6波がないとはいえません。この完全収束に向けて政治は全力を挙げるべきです。その際ワクチンのさらなる接種と治療薬の承認普及、それともちろん医療提供体制と同時に経済も少しずつ動かしていかねばなりません。政府はGo Toキャンペーンなどと言っていますが、ワクチンの接種完了証明と併せての経済活動、さらにその時にやっぱりワクチン受けたくない、体質の問題と心情的に非常に抵抗感あるという方、結構いらっしゃる。やっぱり無償の検査と無償の陰性証明、これはぜひセットにすべきではないか」上記政策のうち上から3つは、言っては悪いが美辞麗句を並べただけにしか映らない。そしていわゆる「ワクチン・検査パッケージ」では検査無料を訴えている。この点について私の見方は泉氏のところで触れたとおりだ。独断と偏見で恐縮だが、全候補者の中で最も中身が薄い。厚労副大臣の経験がものを言う?西村氏そして最後が女性唯一の候補者である衆議院議員の西村 智奈美氏(54)。大学院で法学修士号を取得し、複数の大学で講師を務める傍ら、国際協力のNPO法人を創設し事務局長を務め、1999年に旧民主党から新潟県議会議員選挙に立候補し当選。2003年に衆議院選初当選(新潟1区)。旧民主党政権では外務大臣政務官、厚生労働副大臣を歴任。希望の党騒動時から立憲民主党に参加した。現在6期目。自身の代表選特設ホームページでは、新型コロナ対策として「新型ウイルス対策の司令塔の強化」を掲げているものの、現在の司令塔のどこに問題があり、本人はどのように強化しようとしているかはまったく言及がない。そのほかには以下のようなことも訴えている。新型ウイルス禍などで医療崩壊の事態を二度と繰り返さない病床数削減などの公立公的病院の縮小・再編を見直す保健所やケアワーカー、介護保育福祉の現場などで働くエッセンシャルワーカーの待遇改善札幌での討論会の発言は以下のようなものだ。「この間自民党政権は小さな政府を追い求め続けてしまったと思います。保健所の体制が大きく弱ってしまいました。感染症は終わったということで、およそ30年前から生活習慣病へと保健所の仕事がシフトしてきてしまった。感染症のお医者さんも足りません、感染症のベッドは今回のウイルスの感染が起きるまでは1,800床ぐらいしか全国にありませんでした。このことを契機にしっかりと見直していく。一には検査そして隔離・治療、こんなウイルスで治療を受けることができずに亡くなる方を今後は一人たりとも生まないように医療の体制もしっかり立て直していきたい」少なくとも厚労副大臣を務めたこともあってか、この発言の前段のように一定の見識は持っているようだ。もっとも保健所機能も含め日本全体の医療体制が生活習慣病へとシフトしたのは、もはや避けられない少子高齢化が進行しているためであり、日本全体の針路を考えると、この方向性そのものは大きく変えられない。そうした中で、感染症専門医も感染症対応病床も掛け声だけで増えるわけもない以上、災害のような感染症対策のために日本の医療にどの程度エクストラな余裕を持たせるかについては、もう少し具体策への言及が必要だろう。政治に期待しても無駄と言われてしまうかもしれないが、今回のコロナ禍ではやはり政治の重要性と日本国内でのその迷走ぶりが際立っただけに、やはり無視はできない。とはいえ、ここまでざっと触れてきた野党第1党の各候補とも「帯に短し襷に長し」というか…。

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双極性障害における神経認知と心理社会的機能に対する性差の影響

 双極性障害の臨床的特徴や疾患経過に性差が影響するといわれている。スペイン・バルセロナ大学のBrisa Sole氏らは、寛解期双極性障害患者の大規模サンプルにおける神経認知機能と心理社会的機能に対する性差の影響について検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年9月25日号の報告。 対象は、双極性障害患者347例(男性:148例、女性199例)および健康対照者115例(男性45例、女性70例)。6つの認知領域および心理社会的機能を評価する包括的な神経心理学的バッテリーのパフォーマンスは、線形混合モデルを用いて評価した。主要効果として、性別および群間で比較し、ランダム効果として、性差による群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・男性は女性と比較し、作業記憶(p<0.001)のパフォーマンスが優れていた。・女性は男性と比較し、言語学習(p=0.03)および記憶認知(p=0.03)のパフォーマンスが優れていた。・性差による群間における認知機能の有意な差は認められなかった。・心理社会的機能では、全体的な性差および性差による群間における違いは認められなかった。・本検討では、視空間作業記憶に関する評価は行わなかった。 著者らは「双極性障害における神経認知および心理社会的機能に関して、全体的な性差は認められなかった。しかし、作業記憶や言語記憶などの一部に違いが認められた。特定のニーズに合わせ個別化された治療計画を実行するためには、性別を含む各患者の個人差を考慮する必要がある」としている。

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HPVワクチン接種行動は変わったか?

 HPVワクチンは2010年の接種開始以降、副反応忌避が続き接種率1%未満が続いていたが、昨年自治体から接種対象者への個別通知が再開し、今年は積極的受診勧奨再開に向けた検討会が開かれるなど動きが出てきた。 現在どのように接種行動や意識は変化しているのだろうか。HPVワクチンの普及啓発活動を行う一般社団法人みんなで知ろうHPVプロジェクト(通称みんパピ!)が、現在のHPVワクチンに対する意識・実態調査を行った。接種率は約14% 調査はインターネット上で行われた。9,219名の回答者から無料接種対象年齢の本人として高校1年生の女子473名を抽出しHPVワクチン接種の有無を尋ねたところ、接種した、もしくは接種中が14.4%だった。接種へのハードルは情報提供 未接種者の接種意向とどのような情報提供が必要か知るために、高校1年生の女子245名(以下本人)と高校1年生の女子を子供に持つ女性245名(以下親)を対象にアンケートを行った。そのうち未接種者の接種意向は、本人(32.4%)、親(12.6%)で、本人の接種意向がより高い傾向にあった。接種意向のある本人におけるハードルは、安全性への懸念(約16%)や副反応への懸念(約13%)が多く、次いでHPVワクチンの情報不足(約11%)や申し込み方法がわからない(約11%)といった手続き上の不安が挙がった。手続きについての不安は自治体からの個別通知が有効である可能性が高い。接種意欲を向上させる情報は? 上記の不安を踏まえ、どのような情報が接種を促すだろうか。アンケート内でHPVワクチンに関して無料接種対象年齢やHPV感染率、ワクチンの有効性、安全性といった情報提供を行い、再度接種意向を聞いたところ示唆に富む結果が出ている。 本人では「HPV感染率-生涯で約8割がHPVに感染する」ことの認知度は接種者・未接種者ともに低かった。そしてこの情報提供後に未接種者の約56%が接種意向を示した。 親ではHPV感染率の情報提供で約32%が接種意向を示した。本人に比べて情報提示後の変化は少ないが、本人・親ともにHPV感染率についての情報提供が接種への寄与度が高いといえる。 さらに有効性に関する詳細な情報提供も行った中でも本人と親に違いがみられた。本人では子宮頸がんを発症した場合9割は子宮摘出などの侵襲治療が必要という情報の認知度が低く、情報提供後の接種意向の上昇に寄与している。 親ではHPVワクチンが中咽頭がんや肛門がんなどほかのがん予防になるという情報が意向に寄与した。情報の入手経路 子供は学校とSNS、親はテレビや病院から知りたい ワクチンに関する情報入手経路は、本人は親からが最多。親はテレビ新聞などのオールドメディアや自治体広報が上位を占めた。今後どのような媒体からの情報を希望するかという問いに対して多い回答は、本人は約40%が学校から、約25%がSNSからの情報提供を望んでいた。SNSの中ではYouTubeの希望度が高かった。親は約40%がテレビ番組やCM、約38%が病院や医療機関からの情報入手を望んでいることがわかった。 同団体は昨年クラウドファンディングで資金調達し、説明に時間のかかる安全性情報の提供をサポートするパンフレットの無償配布や学校での情報提供などで啓発を行っている。クラウドファンディングは継続しており、アンケートで希望があったYouTubeをはじめとしたSNSでの展開拡大などを予定している。 結果の詳細はみんパピ!ホームページで確認できる。

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ナッツ類の摂取と乳がんサバイバーの転帰の関係

 ナッツ類の積極的な摂取が、全死亡や心血管疾患などの死因別死亡リスク低下と関連するという報告があるが、乳がんサバイバーにおけるがんの転帰との関連はみられるのだろうか。米国・ヴァンダービルト大学メディカルセンターのCong Wang氏らは、乳がんサバイバーを対象に、ナッツ類の消費量と全生存率(OS)および無病生存率(DFS)との関連を分析した。International Journal of Cancer誌オンライン版2021年10月19日号に掲載の報告より。 本研究では、中国の大規模コホート研究・上海乳がん生存者調査のデータが用いられた。同調査では、乳がん診断後5年時点で、食事摂取頻度調査票を用いた過去1年間の包括的な食事評価が実施されている。ピーナッツ、クルミ、その他のナッツを含むナッツ類の消費量は、1週間当たりの摂取量をグラム数に換算して評価。ナッツ類の総消費量が0g/週を超える患者はナッツ類消費者、それ以外はナッツ類非消費者と定義され、さらにナッツ類消費者は≦中央値(17.32g/週)、>中央値に分類された。ナッツ類の消費量とOSおよびDFSの関連はCox回帰分析を用いて評価された。 主な結果は以下のとおり。・診断後5年時点で食事評価が実施された乳がんサバイバー3,449例が対象。食事評価実施後の追跡期間中央値は8.27年で、252例の乳がんによる死亡を含む374例の死亡があった。・診断後5年の食事評価時点で再発のなかった3,274例のうち、209例で乳がんの再発、転移、または乳がんによる死亡が報告された。・初回の食事評価からさらに5年後(診断10年後)の評価では、ナッツ類消費者は、非消費者と比較してOS(93.7% vs.89.0%)およびDFS(94.1% vs.86.2%)が有意に高かった(p<0.001)。・多変量調整後、ナッツ類消費量は用量反応パターンにしたがってOS(傾向のp=0.022)およびDFS(傾向のp=0.003)と正の相関がみられた。ナッツ類消費量>中央値と非消費者の比較では、OSのハザード比(HR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.52~1.05)、DFSのHRは0.48(95%CI:0.31~0.73)だった。・これらの関連は、ナッツの種類による違いはみられなかった。・また層別化分析では、総エネルギー摂取量が多い患者とOS(交互作用のp=0.02)および、早期(StageI~II)乳がん患者とDFS(交互作用のp=0.04)において関連性がより明白であることが示された。・ナッツ類消費とDFSの関連について、ホルモン受容体の状態およびその他既知の予後因子による変化はみられなかった。 著者らは、長期の乳がんサバイバーにおけるナッツ類の摂取は、より良い生存、とくにDFSと関連していたと結論付けている。

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透析期の腎性貧血、ダプロデュスタットはESA薬に非劣性/NEJM

 透析治療を受けている貧血を有する慢性腎臓病(CKD)患者において、ダプロデュスタットは赤血球造血刺激因子薬(ESA)と比較し、ベースラインからのヘモグロビン値の変化および心血管アウトカムに関して、非劣性であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAjay K. Singh氏らが実施した、無作為化非盲検第III相試験「ASCEND-D試験」で示された。CKD患者において貧血治療として用いられる遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤およびその誘導体は、脳卒中、心筋梗塞などの有害事象のリスクを高める可能性があるが、低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬(HIF-PH阻害薬)はヘモグロビン値の増加においてESAと同等の効果があることが示唆されていた。NEJM誌オンライン版2021年11月5日号掲載の報告。ヘモグロビン変化と初回MACE発生を評価 研究グループは、90日以上透析を受けているCKD患者で、ESAを6週間以上投与され、ヘモグロビン値が8.0~11.5g/dLの患者を、ダプロデュスタット群またはESA群(血液透析患者はエポエチン アルファ、腹膜透析患者はダルベポエチン アルファ)に、1対1の割合に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ベースラインから主要評価期間(28週~52週)までの、ヘモグロビン値の平均変化量(非劣性マージン:-0.75g/dL)、および主要心血管イベント(MACE:全死因死亡、非致死的心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)の初回発生(非劣性マージン:1.25)であった。主要評価項目についてESAに対する非劣性を確認 2016年11月23日~2018年8月10日に、35ヵ国431施設で計2,964例が無作為化された(ダプロデュスタット群1,487例、ESA群1,477例)。ベースラインのヘモグロビン値(平均±SD)は、全体で10.4±1.0g/dLであった。 ベースラインから28週~52週までのヘモグロビン値の平均変化量(平均±SE)は、ダプロデュスタット群0.28±0.02g/dL、ESA群0.10±0.02g/dLであり、群間差0.18g/dL(95%信頼区間[CI]:0.12~0.24)で、事前に規定したダプロデュスタットの非劣性マージン(-0.75g/dL)を満たした。 追跡期間中央値2.5年において、初回MACEはダプロデュスタット群で374/1,487例(25.2%)、ESA群で394/1,477例(26.7%)に発生し、ハザード比は0.93(95%CI:0.81~1.07)で、事前に規定したダプロデュスタットの非劣性マージンを満たした。 他の有害事象の発現頻度は、両群で類似していた。

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コロナ入院患者にアスピリン併用は有効か/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、アスピリンによる治療は28日死亡率、侵襲的人工呼吸管理への移行または死亡のリスクを低下させなかったが、28日以内の生存退院率はわずかに改善した。無作為化非盲検対照プラットフォーム試験「RECOVERY試験」の結果で、英国・オックスフォード大学のPeter W. Horby氏らRECOVERY試験共同研究グループが報告した。これまで、その抗血栓性に基づきCOVID-19に対する治療薬としてアスピリンが提案されていたが、著者らは、「今回の結果は、COVID-19入院患者において、標準的な血栓予防や治療的抗凝固療法としてアスピリンを追加することを支持するものではない」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年11月17日号掲載の報告。通常治療単独とアスピリン併用の有効性を28日死亡率などで比較 RECOVERY試験は、COVID-19入院患者においてさまざまな治療法の有効性を評価する医師主導の試験で、英国177施設、インドネシア2施設、ネパール2施設で実施された。 研究グループは、適格基準を満たし同意が得られたCOVID-19入院患者を、通常の標準治療+アスピリン(150mg、1日1回)群または通常治療群に、Webシステムを用いて1対1の割合(非層別)で無作為に割り付けた。 主要評価項目は28日死亡率で、intention-to-treat解析で評価した。28日死亡率に有意差なし、入院期間と28日以内の生存退院率はわずかに改善 2020年11月1日~2021年3月21日にRECOVERY試験に登録された2万2,560例中、1万4,892例(66%)が適格基準を満たし、7,351例がアスピリン群に、7,541例が通常治療群に割り付けられた。 全体で無作為化から28日以内に、アスピリン群で1,222例(17%)、通常治療群で1,299例(17%)が死亡した(率比:0.96[95%信頼区間[CI]:0.89~1.04]、p=0.35)。事前に規定したすべてのサブグループで、一貫した結果が得られた。 アスピリン群では通常治療群より入院期間がわずかに短く(中央値8日[IQR:5~>28]vs.9日[5~>28])、28日以内の生存退院率が高かった(75% vs.74%、率比:1.06[95%CI:1.02~1.10]、p=0.0062)。 ベースラインで侵襲的人工呼吸管理を受けていなかった患者において、侵襲的人工呼吸管理または死亡に至った割合に有意差はなかった(21% vs.22%、リスク比:0.96[95%CI:0.90~1.03]、p=0.23)。 アスピリンは、血栓イベントの減少(4.6% vs.5.3%、絶対群間差:-0.6%、SE:0.4%)、および大出血イベントの増加(1.6% vs.1.0%、絶対群間差:0.6%、SE:0.2%)と関連していた。 結果について著者は、本無作為化試験は非盲検試験で、入院患者のみを対象としており、放射線学的または生理学的アウトカムに関する情報が不明であることなどを研究の限界として挙げている。なお、現在、入院していないCOVID-19患者におけるアスピリンの安全性と有効性に関する臨床試験が進行中である。

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AZの新規抗体カクテル療法、発症および重症化抑制で良好な結果

 英・アストラゼネカは11月24日付けのプレスリリースで、進行中の2つの第III相試験(PROVENT試験・TACKLE試験)の新たな解析により、長時間作用型抗体AZD7442(tixagevimab・cilgavimab併用療法)の単回筋肉内投与が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する高い有効性と長期予防効果を示したことを発表した。同社は10月5日、米国食品医薬局(FDA)に対し、AZD7442のCOVID-19予防に対する緊急使用許可を申請したことも同時に公表した。AZD7442群はプラセボ群に比べて症候性COVID-19の発症リスクを83%低減 PROVENT試験では、SARS-CoV-2に感染していない高リスクおよび免疫不全の被験者を対象に、COVID-19発症予防に対するAZD7442 300mg単回筋肉内投与の安全性と有効性を評価した。米国、英国をはじめとする5ヵ国87施設で実施され、5,197例の被験者をAZD7442投与群とプラセボ投与群に2:1の割合で無作為に割り付けた。中央値6ヵ月の追跡期間で評価した結果、AZD7442群はプラセボ群に比べ、症候性COVID-19の発症リスクを83%低減した。  一方で、軽症~中等症のCOVID-19外来患者を対象としたTACKLE試験では、AZD7442 600mg単回筋肉内投与による安全性と有効性を評価。日本を含む13ヵ国96施設で実施され、903例の被験者をAZD7442群とプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付けた。探索的解析では、症状発現から3日以内にAZD7442が投与された場合、COVID-19の重症化あるいは全死因死亡リスクが、プラセボと比較して88%減少したことが示された。登録された被験者の90%は、基礎疾患を含めCOVID-19重症化のリスクが高い集団であり、合併症を有する集団も含まれた。  両試験において、AZD7442の忍容性は全般的に良好であり、今回新たに発表された解析においても同様だった。同社は世界中で予防および治療両方の適応でAZD7442の緊急使用許可または条件付き承認の申請を進めている。

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ポイント交換FAQ

ポイント交換FAQ1.ポイント交換はどのように行いますか?2.ポイント交換の内容を確認するにはどうすればよいですか?3.電子マネーギフトコードとは何ですか?4.電子マネーギフトコードの詳細を教えてください。5.電子マネーギフトコードの利用方法を教えてください。6.電子マネーギフトコード以外にポイントの交換先はありますか?7.交換した電子マネーギフトコードはどのように受け取りますか?8.交換した電子マネーギフトコードはいつ届きますか?9.交換した電子マネーギフトコードが記載されたメールが届きません。10.電子マネーギフトコードを誤って交換してしまいました。交換先や交換額の変更、交換のキャンセルは可能でしょうか?11.電子マネーギフトコードが記載されたメールを削除・紛失してしまいました。メールの再送手続きは可能でしょうか?12.電子マネーギフトコードに有効期限はありますか?13.電子マネーギフトコードの登録方法を教えてください。14.交換した電子マネーギフトコードの使用状況を教えてください。(ギフトコードが利用済み・登録済み等と表示される)15.交換した電子マネーギフトコードを利用・登録しましたが、残高が増えませんでした。16.交換した電子マネーギフトコードが利用できませんでした。17.管理番号とは何ですか?1.ポイント交換はどのように行いますか?ポイント・プログラムページ内でご利用先を選択いただき、ご本人確認のうえで交換をお申し込みいただきます。交換ページから交換したいギフト券やサービスを選択後、画面の指示に従いお進めください。2.ポイント交換の内容を確認するにはどうすればよいですか?「ポイント」ページメニューの「ポイント交換履歴」をクリック(タップ)していただきますと、これまでお申し込みいただいたポイント交換の履歴がご確認いただけます。3.電子マネーギフトコードとは何ですか?提携企業が発行する電子マネー等を、ギフトとして送るためにコード化したものです。4.電子マネーギフトコードの詳細を教えてください。各電子マネーギフトコードの詳細につきましては、以下の案内ページをご確認ください。1.Amazonギフトカード2.nanacoギフト3.EdyギフトID4.Pontaポイント コード5.Apple Gift Card6.Google Play ギフトコード7.ポイント@ギフト(PayPayマネーライト)8.ポイント@ギフト(dポイント)9.WAONポイントID10. Uber ギフトカード5.電子マネーギフトコードの利用方法を教えてください。上記A4に記載の各マネーギフトのご案内ページに記載がございますので、ご確認ください。Apple Gift Cardギフトカードにつきましては、Appleサイトを、Google Play ギフトコードにつきましては、Google Play サイトを、 Uber ギフトカードにつきましては、 Uber サイトをご確認ください。6.電子マネーギフトコード以外にポイントの交換先はありますか?「日本赤十字社」「ユニセフ」「ワールドビジョン」等の寄付先へのご寄付や、提携サービスである「医書.jp」での電子書籍ご購入時のご利用、または医師・医療者向けの医学チャンネル「CareNeTV」での番組視聴権購入の際にご利用いただけます。7.交換した電子マネーギフトコードはどのように受け取りますか?交換申し込みが完了しますと、交換受付完了メールが、会員情報のご登録メールアドレス宛に送信されます。その後、約1週間後にご登録メールアドレス宛に、電子マネーギフトコードを記載したメールが送信されます。8.交換した電子マネーギフトコードはいつ届きますか?セキュリティ対策の都合上、交換のお手続きをいただいてから、約1週間後にご登録メールアドレス宛に電子マネーギフトコードを記載したメールが送信されます。9.交換した電子マネーギフトコードが記載されたメールが届きません。交換の手続きをしていただいてから、約1週間お待ちいただき、受信の確認ができない場合は、「ポイント」ページ内メニューの「ポイント交換履歴」をクリック(タップ)、ポイント交換履歴ページより該当メールの再送手続きが可能です。※再送の操作をしていただいても受信の確認ができない場合、迷惑メールの振り分けや、受信設定をご確認ください。10.電子マネーギフトコードを誤って交換してしまいました。交換先や交換額の変更、交換のキャンセルは可能でしょうか?申請済みのポイント交換の取り消しや変更は、お受けできませんので、ご了承くださいますようお願いいたします。11.電子マネーギフトコードが記載されたメールを削除・紛失してしまいました。メールの再送手続きは可能でしょうか?「ポイント」ページ内メニューの「ポイント交換履歴」をクリック(タップ)、ポイント交換履歴ページより該当メールの再送手続きが可能です。※再送のご操作をしていただきましても受信の確認ができない場合、迷惑メールの振り分けや、受信設定をご確認ください。12.電子マネーギフトコードに有効期限はありますか?各電子マネーギフトコードにより、発行からの有効期限は異なります。各サービスのご案内ページにて、有効期限をご確認ください。有効期限切れでの再発行等は致しかねますので、あらかじめご承知おきください。13.電子マネーギフトコードの登録方法を教えてください。各交換先のご案内ページをご確認ください。【nanacoギフト】ご案内ページ内の[nanacoギフトのご利用方法]をご参照ください。【EdyギフトID】ご案内ページ内の[EdyギフトIDのご利用方法]をご参照ください。【Pontaポイント コード】ご案内ページ内の[Pontaポイント コードのご利用方法]をご参照ください。【Apple Gift Card】ご案内ページをご参照ください。【Google Play ギフトコード】ご案内ページをご参照ください。【ポイント@ギフト(PayPayマネーライト)】ご案内ページ内の[ポイント@ギフト(PayPayマネーライト)のご利用方法]をご参照ください。【ポイント@ギフト(dポイント)】ご案内ページ内の[ポイント@ギフト(dポイント)のご利用方法]をご参照ください。【WAONポイントID】ご案内ページ内の[WAONポイントIDのご利用方法]をご参照ください。【 Uber ギフトカード】ご案内ページをご参照ください。14.交換した電子マネーギフトコードの使用状況を教えてください。ケアネットにてお調べすることができませんので、ギフト発行元サイトにお問い合わせください。※Amazonギフトコードにつきましては、Amazonサポートへお問い合わせください。15.交換した電子マネーギフトコードを利用・登録しましたが、残高が増えませんでした。ケアネットでは発行後の電子マネーギフトコードについては、詳細をお調べすることができかねますため、ご交換先に応じたお問い合わせ先にご連絡くださいますようお願い申し上げます。【Amazonギフトコード】Amazonサポートへお問い合わせください。【nanacoギフト・EdyギフトID・Pontaポイントコード・ポイント@ギフト(PayPayマネーライト)・ポイント@ギフト(dポイント)・WAONポイントID】電子マネーギフトコード発行元サイトへお問い合わせください。【Apple Gift Card】Apple サポートへお問い合わせください。【Google Play ギフトカードコード】Googleヘルプセンターへお問い合わせください。【 Uber ギフトカード】 Uber のヘルプページへお問い合わせください。Uber Eats ご利用時はこちら。Uber ご利用時はこちら。16.交換した電子マネーギフトコードが利用できませんでした。ケアネットでは発行後の電子マネーギフトコードについては、詳細をお調べすることができかねますため、交換先に応じたお問い合わせ先に連絡くださいますようお願い申し上げます。【Amazonギフトコード】Amazonサポートへお問い合わせください。【nanacoギフト・EdyギフトID・Pontaポイントコード・ポイント@ギフト(PayPayマネーライト)・ポイント@ギフト(dポイント)・WAONポイントID】電子マネーギフトコード発行元サイトへお問い合わせください。【Apple Gift Card】Apple サポートへお問い合わせください。【Google Play ギフトカードコード】Googleヘルプセンターへお問い合わせください。【 Uber ギフトカード】 Uber のヘルプページへお問い合わせください。Uber Eats ご利用時はこちら。Uber ご利用時はこちら。17.管理番号とは何ですか?電子マネーギフトコード(ID)を識別するために割り当てられた番号です。ギフト発行元サイトへお問い合わせいただく際に必要となる場合がございます。

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クソッ、年をとっちまったぜ!【Dr. 中島の 新・徒然草】(402)

四百二の段 クソッ、年をとっちまったぜ!寝るときには、よくスマホで英語の巨大掲示板、redditを読んでいます。最近読んで面白かったのが、表題の「クソッ、年をとっちまったぜ!」というもの。主に英語圏の人たちがそれぞれに自分の経験を嘆いています。もう寝る時間だ、と思ったら午後7時半だった。心配するな。俺の叔父さんは午後8時に寝て午前4時に起きてるよ。などなど。年をとったと言っても、僕よりも少し年下くらいの人たちでしょうか。自分自身の経験を申し上げると、ボタン付けのために針に糸を通そうとして、糸でなく針を舐めてしまったことがあります。気づいた時は愕然としました。似たような経験ですが、間違えて薬袋をゴミ箱に捨ててしまったこともあります。捨てるつもりだったゴミの方は反対の手でしっかり持っていました。トホホ。オンライン英会話レッスンでは、例によってフィリピン人先生との話がズレてしまいました。映画を観るのが趣味だという彼女に対し、自分の生涯最高の映画は何か、というのを熱く語ったのです。中島「やっぱり『アンタッチャブル』かな」先生「聞いたことがあるような気がするけど」中島「禁酒法時代の話で、アル・カポネとエリオット・ネスの戦いを描いたものなんや!」先生「へえ」中島「聞いて驚くな。主役はケビン・コスナー!」先生「?」中島「そしてロバート・デ・ニーロ!」先生「??」中島「さらにショーン・コネリーや!」先生「知らないわ。その人、生きてるの?」中島「初代ジェームズ・ボンドやないか。勝手に殺すなよ!」先生は、画面の向こうで何やらカタカタ打っています。先生「ふーん。2020年10月」中島「えっ?」先生「『ショーン・コネリー死す』って書いてあるわ」中島「死んだんか、あのオッサン。カツラ仲間やったのに」先生「はあ?」彼はジェームズ・ボンドを演じていたときからカツラをかぶっていたそうです。中島「しかし、ケビン・コスナーもロバート・デ・ニーロもショーン・コネリーも知らんのか」先生「ダッドなら知ってるかもしれないわ」中島「ダッドって。一体いくつやねん」先生「58歳よ」なんちゅうこっちゃ、僕より年下です。中島「ひょっとしてマムのほうが知ってるんじゃないかな。イケメン俳優らやし」先生「マムはね、ニコラス・ケイジのファンなの」マムの好みが渋い、渋すぎる!調べてみたところ、ニコラス・ケイジは57歳、ケビン・コスナーは66歳、そしてロバート・デ・ニーロは78歳です。そりゃあ僕も年をとるはずだ。ちなみにショーン・コネリーは享年90歳のようです。話をredditに戻しましょう。くしゃみをしたら、少し小便が漏れてしまった。俺なんかくしゃみをしたら背中が痛くなっちまったよ。さすがにまだこれはないな。ということで、年をとってやらかした数々の大失敗。すべて笑いに変えて生きていく決意を改めて固めた次第です。あと、redditでは外国の人たちのアホらしくも白熱した議論を読むことができます。暇つぶしを兼ねた英語の勉強にぴったりなので、ぜひ御活用ください。最後に1句レディットを 読んでは笑う 寒夜(かんや)かな

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甲状腺ホルモン不応症〔RTH:Syndrome of Resistance to Thyroid Hormone〕

1 疾患概要■ 定義甲状腺ホルモン不応症は、甲状腺ホルモンに対する標的臓器の反応性が減弱している家族性症候群として、1967年にRefetoffらによって初めて報告された。そのため、かつては「レフェトフ症候群」という名称が一般的であった。本疾患における甲状腺ホルモンに対する反応性の低下は、甲状腺ホルモン受容体を介した作用の低下が主な原因である。甲状腺ホルモン受容体はα型とβ型の二つがあるが、本疾患は先天性・家族性のβ型甲状腺ホルモン受容体異常症である。■ 疫学わが国と米国で別個に行われたスクリーニング調査の結果、いずれの調査でも、甲状腺ホルモン不応症の発症頻度は約40,000人に1人と推定された。もし、この数字をそのまま日本の総人口に当てはめると、わが国には約3,000人の症例が存在することになる。しかし、わが国でこれまでに報告されているのは100例程度で、現状では大部分の症例がきちんと診断されていないという可能性もある。■ 病因本疾患は常染色体顕性(優性)遺伝形式の先天性・家族性疾患であり、50%の確率で遺伝する。甲状腺ホルモン不応症家系の約85%にβ型受容体遺伝子変異が認められる。残りの約15%の家系も同様の遺伝形式となり、その病因は明らかではないが、遺伝子変異を伴う家系と変異が認められない家系との臨床症状は区別がつかないことから、何らかの原因でβ型受容体の機能が障害され発症するものと考えられている。β型甲状腺ホルモン受容体は視床下部・下垂体におけるネガティブフィードバック機構を制御しており、甲状腺ホルモンが多くなると、甲状腺刺激ホルモン(TSH)およびTSH放出ホルモン(TRH)の産生を抑制して、甲状腺ホルモンが過剰になるのを防いでいる。そのため、本疾患では、フィードバック機構が障害され、甲状腺ホルモン高値にもかかわらずTSH値が抑制されない「不適切TSH分泌症候群」(syndrome of inappropriate secretion of TSH:SITSH)となる。■ 症状前述のSITSHにより高値となった甲状腺ホルモンに対する反応性の程度によって、甲状腺機能亢進症症状から低下症の症状まで症例によって多様である。各臓器では変異のないα型およびβ型甲状腺ホルモン受容体がさまざまな程度で発現しており、その作用を変異β型受容体がさまざまな程度で阻害するため、ホルモンに対する反応性は各臓器および個体で異なる。このことが症状の多様性の大きな理由の一つと考えられる。甲状腺ホルモンに対する反応性の減弱が過剰な甲状腺ホルモンにより代償された状態となるため、結果としてほとんど自覚症状がない症例や軽度の頻脈のみを呈する症例が多い。ただし、甲状腺機能亢進症症状が強く注意欠如・多動症や著しい頻脈を示す症例や、先天性甲状腺機能低下症の症状である知能発達遅延や低身長、難聴などを伴う症例も存在する。一方、甲状腺腫大は、TSHによる刺激が原因で生じる所見であり、比較的頻度が高い。■ 分類かつては、甲状腺機能亢進症症状が強い症例を下垂体型、その他の症例を全身型と分類していたが、現在ではあまり用いられていない。■ 予後一般的に生命予後は健常人と変わらないとされているが、そのエビデンスは確立されていない。女性症例が変異を持たない児を妊娠した場合、母体から移行してくる過剰な甲状腺ホルモンによって児が甲状腺中毒症になり、流産や低出生体重児となることがある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)血清遊離サイロキシン(T4)が高値でTSHが基準値下限以上であればSITSHと判断され、甲状腺ホルモン不応症診断の出発点となる。これまでに、研究班によって診断のためのアルゴリズムが策定されており、後述する日本甲状腺学会臨床重要課題ウェブサイト上で、診断基準ならびに重症度分類第2次案の一部として公開されている。1回の血液検査でSITSHの所見が得られた場合も、単に「見かけ上のSITSH」を呈していることが多い。たとえば、TSHの変動はT4の変動に遅れるため、破壊性甲状腺炎やバセドウ病など甲状腺中毒症の初期に、TSHの抑制がT4の上昇に一時的に追いついていない場合がある。また、患者(被検者)が抗T4抗体や抗マウス抗体を持っていた場合にT4測定系やTSH測定系に干渉するアーチファクト、T4製剤(商品名:チラーヂンS)補充療法に伴うT4高値、アミオダロンなどヨウ素を含有する薬剤の影響などでも見かけ上のSITSHを呈することがある。「真の」あるいは「確からしい」SITSHであることを示すために、再検査を1ヵ月後以降に、さらに3ヵ月後に行い、これら再検査の際、可能なら検査方法を変えて測定することが推奨される。真のSITSHを来す疾患は、甲状腺ホルモン不応症とTSH産生下垂体腺腫であり、これらの鑑別が重要である。TSH産生下垂体腺腫症例では、画像検査で明らかな下垂体腫瘍(マクロアデノーマ)を認めることが多い。画像検査でマクロアデノーマを認めない症例では鑑別が困難である。確定診断にはβ型甲状腺ホルモン受容体遺伝子検査が有用である。ただし、甲状腺ホルモン不応症家系の15%は遺伝子変異を持たず、病因も不明である。現在、β型甲状腺ホルモン受容体遺伝子検査は保険収載となっており、倫理面に配慮して施行する。指定難病および小児慢性特定疾病となっており、診断された場合は医療費助成の申請を検討する。指定難病制度では重症度分類中等度以上が助成の対象となる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)SITSHに対して、抗甲状腺薬や放射性ヨウ素内用療法、甲状腺摘出術などのバセドウ病に対する治療を行うと、TSH分泌が促進されて甲状腺腫増大(摘出術の場合を除く)や下垂体のTSH産生細胞の過形成をまねく可能性があり、推奨できない。多くの症例では、甲状腺ホルモンに対する標的臓器の反応性の低下がホルモン高値になることで代償されており、治療を必要としない。頻脈を呈する症例では、β遮断薬による対症療法が有効であることが多い。先天性甲状腺機能低下症の症状を示す症例では、血清甲状腺ホルモンは高値だが、甲状腺ホルモン製剤の投与により症状が緩和される。4 今後の展望診断基準ならびに重症度分類について、日本甲状腺学会臨床重要課題のウェブサイト上では第2次案が公開されているが、厚生労働省および難病情報センターでは改訂前の第1次案が使用されており、現在第2次案に変更する手続きを行なっている。また、現在診療ガイドラインを策定中である。エビデンスに乏しい中での策定であるが、公開されれば今後の診療に寄与することが期待される。これらはいずれも2021年10月時点の情報であり、遠くないうちに実現することが予想される。一方、α型甲状腺ホルモン受容体遺伝子異常症も存在し、β型受容体異常症とは表現型が異なることが知られている。2012年に初めて報告された疾患であり、関連疾患として今後の研究の発展が期待される。5 主たる診療科内分泌内科、小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本甲状腺学会臨床重要課題 甲状腺ホルモン不応症診断基準(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 甲状腺ホルモン不応症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター 甲状腺ホルモン不応症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Thyroid Disease Manager(医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2021年11月25日

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「あとどのくらい生きられるのか」と聞かれたら…【非専門医のための緩和ケアTips】第16回

第16回 「あとどのくらい生きられるのか」と聞かれたら…「先生、私はあとどのくらい生きられるのでしょうか」。ドラマなどでよくあるこの質問ですが、実際の診療でも遭遇し、回答に苦慮された経験のある方もいるのではないでしょうか。今日の質問訪問診療で看取りにも対応している診療所の医師です。先日、ある患者さんから「私はあとどのくらいですか?」と質問をされ、言葉に詰まりました。時間としては1~3ヵ月程度かと思われましたが、それって伝えるべきなのでしょうか。あまりに短く、本人も受け止めきれないのでは、と思い、話をそらしてしまいました…。伝えるべきか、伝えないでおくべきか…。どちらにも懸念があるので悩むのでしょう。ここでは、緩和ケアの基本に立ち返ってみましょう。この「あとどのくらいですか?」という質問、患者さんはどういう気持ちから聞いているのでしょうか。言葉の背景にあるものによって、医師が考えるべきことも変わります。本連載の第13回までに紹介した、深掘りするスキルを使いましょう。質問に直接回答するのではなく、患者さんが何を気にしているかを探るのです。コミュニケーションスキルとしては、「探索のスキル」なんて呼ばれます。具体的な対話としては、以下のような感じです。患者「私は、あとどのくらいですか?」医師「すぐにお答えするのは、なかなか難しい質問ですが…。何か気掛かりがあるのですか? よかったら、教えてもらえませんか?」患者「孫がまだ小さいんですよね。会えなくなると思ったらつらくて…」医師「お孫さんのことを大切に思われてるのですね。お孫さん、最近はいつお会いになったんですか?」患者「先週、会いにきてくれました。やっぱりかわいいですね。私も、もうそんなに長くはないのはわかっているけれど、できるだけ会いたいですから」医師「当然ですね。これからも病状に合わせてですが、お孫さんにできるだけ会えるようサポートさせていただきます」患者「はい、ありがとうございます」患者さんの「残された時間の長さ」の問いに、医師は答えていません。でも、深堀りすると、患者さんも正確な時間の長さを知りたいというよりは、お孫さんと一緒にいられる時間について考えていた、という樣子です。質問に額面通り答えるよりも、「探索のスキル」を使って見えてきた「気持ち」に対して答える姿勢が大切なのです。緩和ケアを専門としていると、「私はあとどのくらいですか?」という質問を多く受けます。そして、それに対する答えは医学的な予後だけでなく、数多くあるのです。今回のTips今回のTips「私はあとどのくらいですか?」という質問の背景を探索することで対話が広がります。

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第85回 インフルワクチン・後発薬の供給不足招いた薬剤費削減政策のツケ

新型コロナウイルスの新規感染者数は急減しているが、喜んでばかりもいられない状況になっている。インフルエンザワクチンでは製造で使う部品が新型コロナ用に回されて確保が難しくなっている上、ジェネリック医薬品も供給停止・出荷調整問題や新型コロナ感染症による需要の変化が影響し、供給不足に拍車が掛かっている。ジェネリック医薬品の使用率は2020年9月時点で78.3%と大きく、医療現場にも影響を及ぼしている。このような状況下、大阪府保険医協会は現状を把握するため、会員を対象にアンケートを実施し、11月18日に結果を公表した。厚生労働省にも実態を伝え、12月に要望書を提出する予定だ。アンケートは11月8日に会員4,407件にファクスを送信し、15日までに470件の回答を得た。主に院内処方は156件、院外処方は286件だった。インフルワクチン納入、8割超が「減った」まず、インフルエンザワクチンの当初入荷量について、397件(84.5%)が「昨年より少ない」と回答。そのうち、一番多かったのは「昨年比70%」だった。現在の入荷状況については「既に入荷」が171件、「12月までに入荷予定」が147件、「入荷数が減り目途が立たない」が144件だった(「12月まで」「目途が立たない」の重複回答が若干あり)。11月上旬時点では不安定な入荷状況が伺える。現在のインフルエンザワクチンの接種対応は「予約制」が270件、「ワクチンがあれば接種」が201件。一方で、「今季は終了した」も7件あった。また、ジェネリック医薬品については「納入がなくなった」「薬局に在庫がないと言われた」は374件(79.6%)に上った。具体的な医薬品名として175品目が挙げられ、なかでも骨粗鬆症に関わる医薬品が上位を占めた。次いで抗アレルギー薬、高血圧や消化器系の医薬品が多かった。後発薬不足による薬剤変更で副作用・症状悪化も医薬品の供給不足による影響は、「薬剤への切り替えに手間がかかる」(214件)、「他剤に切り替えたことへの弊害」(104件)、「休薬せざるを得なかった」(130件)などが挙がった。薬剤の形状や色が変わることや、医薬品不足でたびたび薬剤を変更することへの不安などから患者に対する説明が増え、薬局からの問い合わせ、代替薬の検討などの業務が診療にも影響を与えている状況が伺えた。また、頭痛・めまい・不眠などの副作用、中には圧迫骨折や発作の再発など深刻な症状悪化の報告もあった。このほか「患者負担が増えた」との報告も少なくなかった。安定供給への国の支援求める一方、政策に疑問の声一連の問題に対して国・厚生労働省が取るべき対応については、「単にメーカーの問題とせず安定供給への国の支援」(280件)がトップに挙げられた。次いで「医薬品供給状況の迅速な情報開示」(194件)、「ジェネリック医薬品の品質管理に対する規制強化」(191件)などが挙がった。会員からは、これまでの国のワクチン行政やジェネリック医薬品誘導政策への疑問の声も上がった。「毎年10月1日から全国の自治体でワクチン接種が始まることが決まっているのに、なぜ毎年、入荷が遅れたり、ワクチンが不足したりするのか」「ジェネリック医薬品の過度な誘導が今回の結果を招いている」などだ。菅 義偉政権が2年に一度だった薬価改定を毎年実施(事実上の引き下げ)に転換するなど、国の薬価切り下げ政策が医薬品メーカーの開発力や品質、安定供給体制などを低下させてはいないか。医療を巡る緊縮財政策が国民の安心安全を脅かしてはいけない。

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うつ病・不安症患者の病欠や職場復帰のパターン

 不安症やうつ病による病欠は、差し迫った公衆衛生上の問題である。ノルウェー科学技術大学のKenneth Sandin氏らは、うつ病および不安症の患者における仕事に焦点を当て、治療前、治療中、治療後の病欠パターンを特定するため、29.5ヵ月に及ぶ縦断的研究を行った。また、これらの軌跡の背景と臨床的特徴との関連も併せて調査を行った。BMJ Open誌2021年9月29日号の報告。 患者の背景や臨床データは、専門のメンタルヘルスケアクリニックにおける観察研究で実施した患者の自己報告(619例)に基づき収集した。病欠に関する情報は、national registry dataより収集した。軌跡の特定には、潜在成長混合モデルを用いた。背景特性の違いは多項ロジスティック回帰を、臨床的な違いは一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・次の3つの軌跡が特定された。●レジリエント群:47.7%●リカバリー群:31.8%●ハイリスク群:20.5%・レジリエント群は、期間を通じて病欠が少なかった。・他の2群は、治療前と同様の軌跡を示し、1年前に病欠が少なかった人では治療開始時に病欠リスクの増加が認められた。・治療後、リカバリー群は、ほぼ職場復帰が果たされたが、ハイリスク群は病欠リスクが高いままであった。・リカバリー群およびハイリスク群は、レジリエント群と比較し、女性の割合が高く、より高齢であった。・すべての群において、治療開始時には同様の臨床スコアが示されたが、ハイリスク群では、治療終了後も抑うつ症状の残存が認められた。・不安症およびうつ病のエフェクトサイズは、すべての群において中~大であり(Cohen's d=0.74~1.81)、87.2%は治療1年後には完全に職場復帰していた。 著者らは「軌跡の異なる3つの群が確認された。女性と高齢は、治療開始時の病欠リスクの高さと関連が認められ、治療終了時の抑うつ症状の残存は、継続的な病欠を予測していた。患者の特性に合わせて治療を調整し、層別化することで、将来の患者の治療アウトカムが改善する可能性がある」としている。

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