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第91回 米軍基地のコロナ感染拡大で露呈した水際対策の“合法的抜け道”

米軍基地内のクラスターとオミクロン株の感染急拡大により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は第6波の様相を呈してきた。沖縄、山口、広島の3県には、1月9日から「まん延防止等重点措置」が適用された。とくに沖縄県は、2020年7月にも米軍基地のクラスターと軌を一にする感染拡大が起きており、当時も米軍基地が感染源として疑われていた。2020年の感染拡大では感染研は米軍基地感染源説を否定しかし、政府の新型コロナ感染症対策分科会会長代理の脇田 隆字氏(国立感染症研究所所長)は2020年8月、分科会後の記者会見で、沖縄県の感染状況を分析したところ東京由来のものだったと説明し、米軍基地の感染源説を否定した。発言の根拠となったエビデンスは不明だが、感染源説が否定されたことで米軍基地はノーマークとなってしまった。沖縄県では新規感染者が急増する中、1月11日現在、医師や看護師ら500人超も感染や濃厚接触者の認定を受け欠勤、15医療機関で救急患者の受け入れを制限するなど、医療体制が崩壊し始めている。2020年の感染拡大時、すべての感染経路不明者に対しゲノム検査などを実施し、米軍基地由来の感染者の洗い出しをきちんとしていたら、その後の感染対策に何らかの手立てがあったのではないかと考えずにいられない。検査・隔離なしの米軍基地から感染者が続々昨年末に発生したキャンプ・ハンセン(沖縄県)でのクラスターでは、米軍兵士が検査・隔離なしで自由に出入国していたことが発覚。沖縄県以外でも、佐世保基地(長崎県)、岩国基地(山口県)、キャンプ富士(静岡県)、横須賀基地(神奈川県)などで感染が拡大したことで、米軍基地由来の新型コロナの存在がようやく明るみに出た。在日米軍の発表(1月7日時点)によれば、7都県の11基地で計約2,100人の感染者が確認されているという。日本政府がいくら水際対策の厳格化に胸を張っても、世界で報告される1日の新規感染者の約3人に1人の割合を占める米国から、基地が抜け道となって国内に新型コロナウイルスが運ばれていたわけだ。実際、キャンプ・ハンセンで感染が広がってから沖縄県内で感染が急拡大するまで、米軍は感染状況を積極的に発信せず、対策も怠った。日本政府もすぐには外出規制や情報提供を求めなかった。そこに科学的合理的な感染対策はない。同じく米軍基地のある韓国やオーストラリアでは、米軍兵士に対する検査や隔離は徹底されている一方で、日本政府の甘い対応が米国や米軍の日本軽視に繋がっているように思える。日米の合意で1月10日から24日まで、すべての米軍基地を対象にした外出制限が発令されたが、「必要不可欠な活動」は認められた。「必要不可欠な活動」とは、米軍側がいかようにも言い訳できるような表現だ。「コロナ対策での喫緊の課題は公務員改革」の真意昨年11月下旬、東京で開かれた第16回「現場からの医療改革推進協議会シンポジウム」に出席した元厚生労働大臣の塩崎 恭久氏は「コロナ対策での喫緊の課題は公務員改革だ」と述べた。塩崎氏が問題視したのは、日本のコロナ対策の非科学性だった。「官僚組織で最優先されるのはムラ社会の理屈で、科学的合理性は二の次。非科学的でも、ムラ社会の対面を保った官僚が出世する」と批判した。年明け早々に起きた米軍基地由来の感染拡大。世界がコロナとの共存に本腰を入れて取り組むフェーズにある中、日本の科学的かつ合理的な感染対策の不在は、もっと問題視されるべきだと思うのだが―。

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統合失調症の遺伝的リスク~併発する他疾患との関連性

 統合失調症は、重度の身体的および精神医学的な症状を伴う深刻な精神疾患である。併発する健康被害が遺伝的リスクにより発生するのか、統合失調症の影響で発生しているかは、よくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のRuyue Zhang氏らは、この課題に対し統合失調症の遺伝的リスクからアプローチを試みるため、英国バイオバンクより統合失調症と診断されていない40万6,929例を対象に、健康関連問題に対する統合失調症ポリジーンリスクスコア(PRS)の影響について調査を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年11月19日号の報告。 各診断は、プライマリケアおよび入院患者の医療記録、がんや死亡に関連する情報を含む健康データを用いて判断した。統合失調症のPRSを生成し、線形回帰とロジスティック回帰を用いて、一般的な健康状態、ICD10における16の主要分類および603疾患との関連をテストした。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症PRSの高さは、全体的な健康評価の低下、入院診断の増加、特殊な疾患の増加との有意な関連が認められた。・ICD10の4つの主要分類との有意な関連が認められた。 ●正の関連:呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、妊娠・分娩・産褥 ●負の関連:筋骨格系の疾患・31の表現型は、統合失調症PRSとの有意な関連が認められ、19の新たな所見については、いくつかの筋骨格系の疾患、呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、静脈瘤、下垂体機能亢進、その他の末梢神経障害との関連が認められた。 著者らは「これらの発見は、統合失調症の遺伝的リスクの多面的な影響に関する情報を提供し、統合失調症と併発するいくつかの疾患がどのように発生するかを考える上で役立つであろう。統合失調症の病態生理学におけるホルモン調節の遺伝的基礎や免疫機構との関連を含めた今後の研究により、統合失調症とその併存疾患の根底にある生物学的機構を解明できる可能性がある」としている。

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ブースター接種、オミクロン株に対する発症・入院予防効果は?

 オミクロン株に対するワクチンの有効性について、発症予防効果はデルタ株と比較して低く、投与後の期間に応じてさらに低下する一方で、入院予防効果は2回目接種後6ヵ月以降も約50%となり、3回目接種により約90%まで高まるというデータが報告された。英国・UK Health Security Agency(UKHSA)が2021年12月31日にオミクロン株に関する大規模調査結果を公開した。オミクロン株感染者の発症に対するワクチン有効率は?(種類・回数・経過期間ごと) デルタ株と比較したオミクロン株の症候性COVID-19に対するワクチン有効率(VE)が、診断陰性例コントロールデザインを用いて推定された。2021年11月27日~12月24日までに検査を受けたオミクロン株感染20万4,036例とデルタ株感染16万9,888例のデータを使用している。 ファイザー製、モデルナ製、アストラゼネカ製の各社ワクチンごとの2回目および3回目接種後(交互接種含む)の発症予防効果は以下の通り:2回目接種後・すべてのワクチン、すべての期間において、発症予防効果はデルタ株と比較してオミクロン株で低かった。・アストラゼネカ製ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果は、2回目投与10~14週間後には約30%だったが、20週間後にはなくなっていた(VE=0%以下)。・ファイザー製またはモデルナ製ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果は2回目投与2~4週間後には約60~70%だったが徐々に低下し、20週間後には約10%だった。3回目接種後・1~2回目をアストラゼネカ製、3回目にファイザー製またはモデルナ製接種の場合、オミクロン株に対する発症予防効果は3回目投与2~4週後に約60~70%となり、5~9週間後には約50~60%だった。・1~2回目をファイザー製、3回目にファイザー製またはモデルナ製接種の場合、オミクロン株に対する発症予防効果は3回目投与2~4週後に約65~75%となり、5~9週間後には約55~70%だった。オミクロン株感染者の入院に対するワクチン有効率は?(回数・経過期間ごと) オミクロン株感染による症候性COVID-19入院に対するワクチン有効率(VE)が推定された。ワクチンの種類を問わず(全種類の統合データ)、接種回数と経過期間ごとのワクチンによる入院予防効果は以下の通り:・1回目接種後≧4週間:52%・2回目接種後2~24週間:72%・2回目接種後≧25週間:52%・3回目接種後≧2週間:88%オミクロン株による入院リスク、ワクチン接種状況による違いは? 入院リスクの評価には、2021年11月22日~12月26日までに英国で発生したオミクロン株感染52万8,176例とデルタ株感染57万3,012例のデータが使用された。うちオミクロン株感染3,019例とデルタ株感染1万3,579例が、検体採取から14日以内に救急受診または入院していた。 ワクチン接種状況ごとの、陽性後14日以内の救急受診・入院に対するハザード比(HR)は以下の通り(未接種/1回目のワクチン接種から<28日のHR1.00を対照として):1回目のワクチン接種から≧28日オミクロン株:HR1.02(95%CI:0.72~1.44)/デルタ株:HR 0.42(95%CI:0.36~0.48)2回目のワクチン接種から≧14日オミクロン株:HR0.35(95%CI:0.29~0.43)/デルタ株:HR 0.18(95%CI:0.17~0.19)3回目のワクチン接種から≧14日オミクロン株:HR0.19(95%CI:0.15~0.23)/デルタ株:HR 0.15(95%CI:0.13~0.16) 上記より、オミクロン株感染で入院するリスクは、ワクチン接種を受けていない人と比較して、ワクチンを2回接種した人の方が65%低く、3回のワクチン接種を受けた人の間ではさらに低かった(81%)。なお、これらの分析において併存疾患や重症度は反映されていないことに注意が必要。

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CPと表記される医療用語が15種類…「誤解を招く医療略語」の解決に役立つポケットブレインとは?

 電子カルテの普及により多職種間で患者情報を共有しやすくなり、紙カルテ時代とは比にならないくらい業務効率は改善したー。はずだったのだが、今度は医療略語の利用頻度の増加による『カルテの読みにくさ』という新たな課題が浮上している。 医療略語は忙しい臨床現場で入力者の負担軽減に寄与する一方で、略語の多用や種類の増加が、職種間での情報共有における新たな弊害になっている可能性がある。また、診療科や職種により医療略語の意味が異なるため、“医療事故”のリスク因子にもなりかねない。増加の一途をたどる医療略語に、医療現場はどう対処していけばよいのだろうか。 そんな医療略語の課題解消に乗り出したのが、病院向け経営支援システムを扱うメディカル・データ・ビジョン株式会社だ。同社は医療IT企業の強みを生かし、医療略語辞書アプリ『ポケットブレイン』を昨年12月7日にリリースした。本アプリは電子カルテに書かれた英字略語を検索できる臨床現場支援ツールで、これを使えばカルテや各種検査レポートで分からない医療略語に遭遇した際、スマートフォンでサクサク検索できる。その開発者で医師の加藤 開一郎氏が昨年12月17日に記者会見を開き、医療略語の現状やアプリの開発経緯とその意義を語った。CPと略語表記されうる医療用語は15種類 医療略語は“さまざまな意味に解釈し得る”がゆえに誤解を招くものが存在する。加藤氏はその理由を「識別性の低さ」と話し、その一例として英字2文字で15種類もの意味を持つ『CP』を挙げた。≪CPと略語表記されうる医療用語≫・カプセル・ケアプラン・CP療法・大腸ポリープ・クロラムフェニコール・セルロプラスミン遺伝子・口蓋裂・脳性麻痺・毛細管圧・皮膚型ポルフィリン症・収縮性心外膜炎・半規管麻痺・臨床心理士・Child-Pugh分類・慢性動脈周囲炎 一方で、同氏は“略語の不統一”という問題も指摘している。これは、事実上は同じ物を指しているにもかかわらず、複数の医療略語が存在することだ。「上部消化管内視鏡検査」をその最たる例として挙げ、「学会でも略語表記の統一をアナウンスはされているが、現場ではさまざまな略語が使用されている」とコメントした。≪上部消化管内視鏡検査を意味して記載された略語≫*1)EGD:esophagogastroduodenoscopy2)GS:gastroscopy3)GIF:gastrointestinal fiber4)GF:gastric fiber5)GFS:gastlic fiber scopy6)ES:endscopy*:出典:ポケットブレイン説明資料医療略語の出現速度に書籍が追いついていない また、同氏は医師の働き方改革についても言及し、「医師の働き方改革と言われる一方で、内科、外科、救急医の減少傾向に歯止めがかからない。心ある医療者がかろうじて現場に踏みとどまっているのが現状だ。とにかく、医師・看護師の業務負担を減らすため、事務的な業務は積極的に事務職への代行を推進する必要がある。しかし、カルテを読む難しさがそれを阻んでおり、その大きな原因が英字略語や英語表記にあると考える。本アプリを開発した目的の1つは医師の業務代行にある」と強調した。 現在、医療略語に関する書籍は多数出版されているが、書籍でページをめくり医療略語を探すのは物理的に時間を要する。さらに、医療略語の出現速度に書籍の改訂ペースが追いついていない。片や、ネット検索は英字略語のみでは適切な情報に辿り着かず、適切な日本語との組み合わせ検索というもうひと手間が必要である。「それらの問題を解決したのが本アプリ『ポケットブレイン』」と同氏はコメント。 ポケットブレインは毎日情報が更新される成長型アプリで、未収載略語の追加・修正依頼、古い略語の削除等の依頼等、ユーザとの双方向性を重要視している。また、重要な機能の1つに“略語の属性情報”と“補足情報”がある。属性情報が分かることにより、目の前のカルテに書かれている英字略語に対し、その和訳を当てはめて良いかどうかの判断が可能となる。これにより医師以外の職種にも汎用性が高い仕様になっている。医療用語は医療を行うための共通言語 現在、日本医療機能評価機構の病院機能評価の機能種別版評価項目<3rdG:Ver2.0>において“略語の標準化”もポイントになっている。そのため、各病院独自のデータベースを構築する施設もあれば、略語の使用を登録制にしている病院もあるという。これを踏まえ、「同社は病院の業務スマホ向け版ポケットブレインの準備を進め、各病院の略語集にも対応していく予定」だという。 医療略語に限らず、医療用語は医療を行うための共通言語であり、インフラと言っても過言ではない。職種を超えた情報共有が求められる今日、カルテを早く正確に読める対策が求められる。 なお、本アプリに関連する連載をCareNet.comにて公開している。「知って得する!?医療略語」

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単回投与の中国製コロナワクチン、予防効果は57.5%~第III相試験/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルス5型ベクターワクチン「Ad5-nCoV」(中国・カンシノ・バイオロジクス[康希諾生物]製)の単回投与について、健康な18歳以上成人における有効性および安全性が示された。接種後28日以降のPCR検査確定・症候性COVID-19の予防効果は57.5%であり、また、重篤有害事象の発生率は0.1%でプラセボと同等であったという。カナダ・ダルハウジー大学のScott A. Halperin氏らが、第III相の国際二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2021年12月23日号掲載の報告。ワクチン接種後28日以降の症候性COVID-19予防効果を検証 試験は、アルゼンチン、チリ、メキシコ、パキスタン、ロシアの試験センターで18歳以上を登録して行われた。被験者は、不安定または重度の内科的・精神的基礎疾患がなく、検査確定の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染歴が認められず、妊娠または授乳中でない、アデノウイルス・ベクター、コロナウイルス、またはSARS-CoV-2ワクチンの未接種者だった。 研究グループは、インフォームドコンセントによる了承を得たのち、全参加者から全血を採取(25mL)、参加者を無作為に1対1の割合で2群に分け、一方にはAd5-nCoVワクチンを(5×1010vp/mLを0.5mL)、もう一方にはプラセボを、それぞれ投与した。試験担当者および参加者は割り付けを知らされなかった。 被験者とは毎週連絡を取り(eメール、電話またはテキストメッセージ)、あらゆるCOVID-19の症状を申告してもらい、申告があった場合は症状の種類を問わず、SARS-CoV-2検査を行った。 主要な有効性評価目的は、2021年1月15日時点でワクチン接種後28日以上であった全参加者について、ワクチン接種後28日以降の、PCR検査で確定された症候性COVID-19に対する予防効果。主要な安全性評価目的は、試験ワクチンを接種された全参加者における、ワクチン接種後の重篤有害事象または診療を要した非特定有害事象(MAAE)の発生とした。症候性COVID-19予防のワクチン有効性は57.5% 試験登録は、パキスタンで2020年9月22日に、メキシコは11月6日、ロシアとチリは12月2日、アルゼンチンは12月17日に、それぞれ開始された。2021年1月15日にエンドポイント例が150例に達した時点で、最終的な主要有効性解析が行われた。 Ad5-nCoVワクチンの1回投与の、接種後28日以降のPCR検査確定・症候性COVID-19に対する有効性は57.5%(95%信頼区間[CI]:39.7~70.0、p=0.0026)だった(参加者2万1,250例、追跡期間中央値45日[IQR:36~58])。 有効性解析時点で行われた安全性の主要解析(参加者3万6,717例)では、重篤有害事象の発生率は、プラセボ群0.1%(1万8,354例中10例)、Ad5-nCoV群0.1%(1万8 ,363例中14例)で有意差はなく、MAAEの発生率もそれぞれ2.2%(同411例)、2.4%(同442例)で有意差は認められなかった。なお、重篤有害事象で試験ワクチンに関連すると考えられるものは両群ともに報告されなかった。 安全性に関し、より詳しく追跡した拡張コホートでは、非自発的な全身性有害事象の報告について有意差が認められた(Ad5-nCoV群1,004/1,582例[63.5%]、プラセボ群729/1,572例[46.4%]、p<0.0001)。うち頭痛の頻度が最も高かった(Ad5-nCoV群699例[44%]、プラセボ群481例[30.6%]、p<0.0001)。 また、注射部位の有害事象に有意差がみられ(Ad5-nCoV群971/1,584例[61.3%]、プラセボ群314/1,573例[20.0%]、p<0.0001)、そのうち頻度が最も高かったのは注射部位疼痛だった(Ad5-nCoV群939例[59%]、プラセボ群303例[19%])。

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膝関節全置換術の術後鎮痛にデキサメタゾンは有効か?/BMJ

 人工膝関節全置換術後48時間以内に行う、多角的疼痛治療へのデキサメタゾン2回追加投与は、モルヒネ使用量をプラセボ群に比べ約11mg減少することが示された。デンマーク・Naestved, Slagelse and Ringsted HospitalsのKasper Smidt Gasbjerg氏らが、485例を対象に行った無作為化試験の結果を、BMJ誌2022年1月4日号で発表した。人工膝関節全置換術後は概して、手術に関連した中等度から重度の術後疼痛が報告される。デキサメタゾンは、術後の多角的疼痛治療の一剤としてしばしば用いられるが、アジュバントとしての鎮痛効果、とくに高用量の反復投与に効果があるのかエビデンスは乏しい状況であった。DX 1回vs.2回vs.プラセボでモルヒネ投与量の違いを比較 研究グループは2018年9月~2020年3月にかけて、デンマークの5病院を通じて、人工膝関節全置換術を受ける成人485例を対象にプラセボ対照の無作為化盲検試験を行った。90日間追跡し、デキサメタゾンの術後1回および2回投与の効果を検証した。 被験者は、試験病院で層別化され、コンピュータ生成法を用いて無作為に3群に割り付けられ、デキサメタゾン(24mg)+プラセボ(DX1群、161例)、デキサメタゾン(24mg)+デキサメタゾン(24mg)(DX2群、162例)、プラセボ+プラセボ(プラセボ群、162例)のいずれかの投与(周術期に1回、その後24時間後に1回)を受けた(被験者、研究者およびアウトカム評価者とも盲検化)。また全被験者に、アセトアミノフェン、イブプロフェン、局所浸潤鎮痛法(LIA)を行った。 主要アウトカムは、術後0~48時間の総モルヒネ静脈投与量だった。多重度補正後の有意性に関する閾値はp<0.017とし、モルヒネ量10mgを重要な差の最低値とした。副次アウトカムは、術後疼痛などだった。DX 2回群のモルヒネ投与量、対プラセボで10.7mg減少 被験者の97.3%(472例)を対象に、主要解析を行った。術後0~48時間のモルヒネ使用量中央値は、DX1群が37.9mg(四分位範囲:20.7~56.7)、DX2群が35.0mg(20.6~52.0)、プラセボ群が43.0mg(28.7~64.0)だった。 ホッジス・レーマン推定法による群間差中央値は、DX1群とDX2群(-2.7mg、98.3%信頼区間[CI]:-9.3~3.7、p=0.30)では有意差はみられなかった。DX1群とプラセボ群間(7.8mg、0.7~14.7、p=0.008)、DX2群とプラセボ群間(10.7mg、4.0~17.3、p<0.001)では有意差がみられ、うちDX2群とプラセボ群間で重要な差の最低値を上回っていた。 術後疼痛レベルの低下は、DX1群で24時間時点にDX2群と有意差なく認められたが(疼痛レベルスケール:DX1群20mm[四分位範囲:8~31]、DX2群20mm[10~35])、48時間時点ではDX2群がDX1群よりも有意に低く、重要な差の最低値を示した(DX1群30mm[四分位範囲:10~40]、DX2群15mm[9~30]、群間差中央値:-10mm[95%CI:-12~-5]、p<0.001)。

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057)仕事場の“推し”グッズ、使い道は?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第57回 仕事場の“推し”グッズ、使い道は?ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆先日、私がこよなく愛する“推し”キャラクターがプリントされた医療用ハサミを入手しました。ポケット用のクリップが2ヵ所あり、落下防止用のコードも付いている優れもの。患者さんの皮膚を傷つけないよう、刃先のガードも付いています。「これは素晴らしいものをGETした!さっそく次の外来で使おう!!」と意気込んで診察時に持参したものの、いざ処置に使おうという場面で、軟膏や浸出液の付着した包帯を目の前にして、どうしても推しキャラグッズのハサミをポケットから取り出すことができませんでした…。ハサミは使ってなんぼ! 処置に役立てば、医療用ハサミとしても本望なはず。しかし、頭では理解していても、いざ処置となるとどうしても手が伸びず。すっかり処置では出番のなくなってしまったこのハサミ。今では、紹介状の返書やDMの封筒を開封するための事務用ハサミとしてのみ使用しています(笑)。(眺めるだけでもテンションが上がるので、これはこれでよかったのかも…!?)ナース用品の通販雑誌にも、かわいらしいキャラクターグッズがたくさん掲載されていて、眺めるだけでも楽しいものです。ですが、あまりにも思い入れのあり過ぎるキャラクター商品は、実働部隊としては不向きなのだな~と改めて思ったのでした。同じような経験をしたことがある方はいらっしゃいますか?(私だけでしょうか…)それでは、また〜!

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原因はSAD?毎年秋から体調を崩す患者さん【知って得する!?医療略語】第3回

第3回 原因はSAD?毎年秋から体調を崩す患者さん季節の変化で気持ちが落ち込むことがあるって本当ですか?コム太君、そうなんです。近年、知られるようになってきましたが、「季節性感情障害(SAD)」という疾患概念があります。とくに日照時間が減り、寒くなる秋~冬に多い印象です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】SAD【日本語】季節性感情障害・季節性気分障害【英字】seasonal affective disorder【分野】精神神経【診療科】精神科・内科・心療内科【関連】冬季うつ病・夏季うつ病実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。本シリーズでは皆様のお役に立つかもしれない医療略語をご紹介します。今回は『SAD』です。「だるい」「眠れない」「気力が出ない」「気が滅入る」「不安で仕方ない」ことを主訴に内科を受診される患者さんは少なくありません。各種検査をしても異常がなく、症状を一元的に説明できない不定愁訴の患者さんの中には、詳しくお話を伺うと、実は毎年、秋頃から体調が悪くなり始めることが分かります。症状出現が早い人は、夏の終わり頃から症状を自覚し始めます。そして、年末年始をピークに、春に近づくにつれて、知らず知らずのうちに症状が軽快していることが少なくありません。そんな患者さんにはSADの可能性があります。ご本人も季節的な気分障害を認識していないことが多く、冬季を過ぎると症状が改善する可能性をお伝えすると、それだけで安心される方も少なくありません。このSADですが、Rosenthal氏らが、以下の4項目を満たす疾患と定義しています1)。(1)RDC診断基準による大感情障害を有する(2)少なくとも2年以上連続して秋冬に発症し、春夏に寛解するうつ状態(3)他の精神障害を有さない(4)明確な心理・社会的要因を有しない外来レベルだけではなく、救急受診患者数を季節で検証した研究でも、冬季に増加する傾向が報告されています2)。SADの原因は、日照時間の減少、日照時間減少によるビタミンD低下、セロトニンへの影響、気温の低下など、諸説あります。ただ、臨床現場において、SADの概念があることを明確に認識しておくことは、患者さんへの症状推移の予測や治療方針の決定、病状説明に役立つかもしれません。1)Wehr TA, et al. Am J Psychiatry. 1989;146:829-839.2)大槻 秀樹ほか. 日本救急医学会. 2009;20:763-771.

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第91回 年末年始急展開の3事件、「アデュカヌマブ」「三重大汚職」「町立半田病院サイバー攻撃」のその後を読み解く

第6波到来、デルタ株とは異なる対策必要にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。国内の新型コロナウイルスの新規感染者は1月8日、9日と連続で8,000人を超え、感染第6波が本格的に到来しました。9日からは沖縄県、山口県、広島県で「まん延防止等重点措置」が適用されています。これまでに、オミクロン株はデルタ型より感染力が強い一方で、肺まで達して重症化するリスクは低いことなどがわかってきました。しかし、感染力が格段に強いため、感染拡大のスピードも早く、国内外で医療機関のみならずさまざまな社会インフラへの影響が出始めています。本連載でも繰り返し書いてきたように、「空気感染」をしているとしか考えられない事例も増えているようです。感染拡大が先行して進んだ沖縄の状況について、1月7日付の朝日新聞は「デルタ株とは別の病気」というタイトルで沖縄県の専門家会議の議論を紹介、座長である藤田 次郎・琉球大学教授が以下のコメントをしています。「国の基準はデルタ株を前提として作られているが、臨床医の感覚では別の病気。インフルエンザなら薬を飲めば熱が下がって数日で職場復帰できるが、コロナは休む期間が長い。このため、社会インフラに与える影響が大きい」。日本では、第5波を教訓に、病床確保など第6波に備えた対策を取ってきたはずですが、それはあくまでもデルタ株の感染を踏まえての対策だったと言えます。その病態を大きく変化させたオミクロン株には、さまざまな対策や規制の抜本的な見直しが必要だと言えそうです。岸田 文雄首相は1月11日、水際対策の2月末までの現状骨格維持や、ワクチンの大規模接種会場の再開設などを表明しましたが、いずれも従来の路線の延長であり、新機軸はありません。第5波の時のように、対策が後手後手にならなければいいのですが……。アデュカヌマブ承認、日本では結論持ち越しさて今回は、このコラムで昨年取り上げたいくつかの話題が、年末年始で急展開を迎えていましたので、まとめておさらいしておきたいと思います。まずはアルツハイマー型認知症の治療薬「アデュカヌマブ」です。2021年12月22日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会には、アデュカヌマブ(商品名:アデュヘルム、バイオジェン ・ジャパン)の承認について、「現時点で得られたデータから、本剤の有効性を明確に判断することは困難であり、今後実施される適切なデザインの臨床試験の成績等に基づき有効性及び安全性について再検討し、その結果に応じて再度審議する必要がある」と、結論を持ち越しました。主な議論の内容として、「申請の根拠とされた2つの 国際共同第III相試験の結果に一貫性がない」「脳内アミロイドβプラーク低下の臨床的意義が確立していない」「本剤の投与によって、脳の浮腫や出血などがみられる」などが挙げられています。アデュカヌマブについては、米国のFDA(食品医薬品局)が承認した2021年6月、本連載の「第62回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(前編)」「第63回 後編」でも詳しく書きました。日本の結論持ち越し決定が出る直前の12月17日、欧州のEMA(欧州医薬品庁)は承認しないよう勧告を行っており、厚労省の判断が注目されていました。結局日本は米国と欧州の中間的な結論を選択、米国で行われている第IV相試験の結果や今後実施予定とされる新たな臨床試験の結果次第、ということになったわけです。ちなみに、「臨床的意義が確立していない」と言われた脳内アミロイドβプラークを低下させる薬剤としては、同じくバイオジェン社がlecanemab、イーライリリー社がdonanemabの開発を進めており、いずれも2022 年にFDA から迅速承認を得られる可能性がある、とされています。今年も認知症薬の承認を巡って、医療界だけでなく、世間や株価が大騒ぎしそうです。三重大病院汚職事件、残るは元教授の公判のみ次は、三重大付属病院の臨床麻酔部の医師らが、小野薬品工業、日本光電工業の社員と起こした汚職事件です。津地裁は12月28日、医療機器の納入で業者に便宜を図った見返りに、上司の元教授が代表を務める団体に200万円の賄賂を提供させたとして、第三者供賄罪に問われた三重大病院元講師(47)に懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年2月)の判決を言い渡しました。この事件については、2020年9月に「第25回 三重大病院の不正請求、お騒がせ医局は再び崩壊か?」で取り上げて以降、幾度も書いてきました。この事件で逮捕・起訴された三重大病院臨床麻酔部の元医師3人、小野薬品工業の社員2人、日本光電工業の社員3人の計8人のうち、これまでに7人の公判が津地裁で開かれ、いずれも執行猶予付の有罪判決が出ています。残るは一連の事件の首謀者とされる元教授の公判ですが、年明けにも開かれる予定です。なお、元教授は保釈を請求し、昨年11月に保釈を認める決定が出ています。この事件については、小野薬品工業が昨年8月に外部調査委員会の報告書を公開、事件について「MRにとってグレーゾーンの中で起きた事件であると言っても過言ではない」と指摘、奨学寄付金と取引誘引との関係については業界全体で検討すべき課題だ、と提言しています。一体何が問題だったのか、元教授の判決を待って本連載でも改めて考えてみたいと思います。町立半田病院、電子カルテのサーバーが復旧最後は徳島県つるぎ町の町立半田病院で2021年10月末に起こったランサムウエアによる病院システムへのサイバー攻撃の事件です。同病院ではこの攻撃で患者約8万5,000人分の電子カルテが閲覧できなくなっていましたが、年末にサーバーが全面復旧、2022年1月4日から約2ヵ月ぶりに全13診療科で通常診療が再開しました。この連載では、「第86回 世界で猛威を振るうランサムウエア、徳島の町立病院を襲う」で同事件を取り上げ、「同病院は11月26日に会見を開き、身代金は支払わず電子カルテのシステムを一からつくり直す、と表明しました」と書きました。結局、復旧を依頼した外部のセキュリティー会社から戻ってきたサーバーでカルテを閲覧できることが確認できたため、システムを一から再構築する必要はなくなった、とのことです。徳島新聞などの報道では、病院は復旧の具体的な方法などについては、「今後のセキュリティー対策に関わるので公表しない」とのことです。また、当面は安全対策として、メンテナンスなどに必要な外部との接続は行わず、専門家らでつくる有識者会議に諮った上で接続を試みるとしています。さらに、バックアップの方法やVPN(仮想プラベートネットワーク)の構築方法なども有識者会議に検討してもらうそうです。12月29日付の読売新聞は、この事件に関連し「『身代金』ウイルス、国内11病院が被害…救急搬送や手術に支障も」と題する記事を掲載しています。それによれば、同紙の取材によって2016年以降、国内の少なくとも11病院がランサムウエアによる被害を受けていたことがわかったそうです。救急搬送の受け入れや手術の停止、外来診療の制限などの被害が出ており、医療機関が攻撃対象になるケースは増加傾向にある、とのことです。なお、同じく読売新聞の報道によれば、厚労省は2021年度中にも医療機関向けの新たな情報セキュリティー指針を策定する予定で、電子カルテなどのバックアップデータについては病院のネットワークから切り離して保管することなどを盛り込む方針とのことです。今年は診療所・病院の区別なく、あらゆる医療機関がサイバー攻撃の対策に本腰を入れる必要がありそうです。

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正常な老化と初期認知症における脳ネットワークの特徴

 正常な老化と認知症による認知機能の変化に関してその根底にあるメカニズムを解明するためには、脳ネットワークの空間的関係とそのレジリエンスのメカニズムを理解する必要がある。藤田医科大学の渡辺 宏久氏らは、正常な老化と初期認知症における脳ネットワークの特徴について報告を行った。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年11月22日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・異種感覚統合(multisensory integration)やデフォルト・モード・ネットワークなどの脳のハブ領域は、ネットワーク内およびネットワーク間の伝達において重要であり、老化の過程においても良好に維持され、これは代謝プロセスにおいても重要な役割を担っている。・一方、これらの脳のハブ領域は、アルツハイマー病などの神経変性認知症の病変に影響を及ぼす部位である。・聴覚、視覚、感覚運動のネットワークなどに問題が生じた一次情報処理ネットワークは、異種感覚統合ネットワークの過活動や認知症を引き起こす病理学的タンパク質の蓄積につながる可能性がある。・細胞レベルでは、脳のハブ領域には多数のシナプスが含まれており、大量のエネルギーが必要となる。・これらの領域では、ATP関連の遺伝子発現が多くみられ、PETで示されているように高いグルコース代謝が認められる。・重要なのは、ATP産生の中心にあるミトコンドリアの数とその機能が、10年ごとに約8%減少するということである。・認知症患者は、多くの場合大量のATPを必要とするユビキチン・プロテアソームおよびオートファジー・リソソームシステムの機能障害を有している。・エネルギーの供給が低いにもかかわらず需要が高い場合には、疾患リスクが上昇する可能性がある。・エネルギーの供給と需要のバランスが悪いと、病的なタンパク質の蓄積を誘発し、認知症発症に重大な影響を及ぼす可能性がある。・脳のハブ領域における認知症リスクの脆弱性は、このエネルギーバランスの不均衡により説明可能であると考えられる。

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オミクロン株での重症度や死亡率、他の変異株と比較/JAMA

 南アフリカ共和国におけるCOVID-19第4波はオミクロン株が原因とされている。同国・Netcare Ltd South AfricaのCaroline Maslo氏らは、第4波初期におけるCOVID-19の入院患者の特徴や転帰について第1~3波それぞれの初期の入院患者と比較し、JAMA誌オンライン版2021年12月30日号のリサーチレターで報告した。第4波では年齢が若く、併存疾患のある患者が少ないこと、入院や急性呼吸器疾患を発症する患者が少なく、重症度と死亡率も低いことが示された。 本研究は、南アフリカ共和国全土に、1万床超の急性期病院49施設を有するNetcare Ltd South Africaで実施された。南アフリカ共和国では、2020年6~8月(従来株)、2020年11月~2021年1月(ベータ株)、2021年5月~9月(デルタ株)の3つの波が発生し、その後2021年11月15日から再び増加し始め、12月7日にコミュニティ陽性率が26%に達した。そこで、各波で陽性率が26%に達するまでの期間(第1波:2020年6月14日~7月6日、第2波:2020年12月1日~23日、第3波:2021年6月1日~23日、第4波:2021年11月15日~12月7日)におけるCOVID-19の入院患者について、患者の特徴、酸素供給・人工呼吸の必要性、ICU入院、入院期間、死亡率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・各波の初期に病院で治療された患者数は、最も多かった第3波で6,342例に対し、第4波では2,351例と差がみられた。一方、第1~3波では新型コロナウイルス陽性で救急に来院した患者における入院患者の割合は68~69%だったのに対し、第4波では41.3%だった。・入院患者の年齢中央値は第4波のほうが若く(第4波:36歳、最も高かった第3波:59歳、p<0.001)、女性の割合が高かった。・併存疾患のある患者は第4波で有意に少なく、急性呼吸器疾患を呈する割合は低かった(第4波:31.6%、最も高かった第3波:91.2%、p<0.001)。・第4波に入院した971例のうち、ワクチン接種者は24.2%、非接種者は66.4%、接種不明が9.4%だった。・酸素供給を必要とした患者は第4波で有意に低く(第4波:17.6%、第3波:74%、p<0.001)、人工呼吸を受けた患者も同様に低かった。・ICU入院患者は、第4波で18.5%に対し、第3波では29.9%だった(p<0.001)。・入院期間中央値は、第1~3波の7〜8日から第4波では3日に減少した。・死亡率は、第1波19.7%、第3波29.1%に対し、第4波では2.7%と低かった。 著者らは本研究の限界として、遺伝子型判定ができなかったこと、追跡最終日(12月20日)の時点で患者の7%がまだ入院していること、患者の行動や入院プロファイルが各波で異なることなどを挙げている。各波の違いが獲得免疫や自然免疫に影響されるかどうか(2021年12月時点で、同国の成人人口の44.3%がワクチン接種済みで、人口の半分以上が新型コロナウイルスへの曝露経験がある)、またオミクロン株が他の変異株よりも病原性が低いかどうかの判断にはさらなる研究が必要としている。

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新型コロナの後遺症、入院患者と自宅療養者で違い/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症での一般診療医(GP)受診率について、COVID-19で入院を要した患者(入院患者)と入院を必要とせずコミュニティで療養した患者(コミュニティ療養者)で差があることを、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのHannah R. Whittaker氏らがイングランド住民を対象としたコホート研究で明らかにした。コミュニティ療養者では、時間の経過とともに受診率が低下する後遺症もあったが、不安や抑うつなど受診が継続している後遺症があり、ワクチン接種後に受診率の低下が認められる後遺症があることも明らかにされた。これまでいくつかの観察研究で、COVID-19回復後の持続的な症状および新たな臓器機能障害は報告されているが、それらは主に重篤症状の入院患者でみられたもので、コミュニティ療養者の長期アウトカムを比較した研究はごくわずかで、いずれも小規模で選択バイアスの掛かったものであった。また、大規模な住民ベースのコホート研究での経時的評価やCOVID-19ワクチン接種後のアウトカムの評価も行われていなかった。BMJ誌2021年12月29日号掲載の報告。イングランドのCOVID-19後遺症によるGP受診率を調査 研究グループは、COVID-19入院患者とコミュニティ療養者の急性期症状回復後の後遺症でのGP受診率を調べるとともに、コミュニティ療養者の受診率の経時的変化およびワクチン接種後の受診率の変化を調べた。データソースとして、イングランドのGP 1,392人が寄与する臨床診療研究データリンク(Clinical Practice Research Datalink Aurum[CPRD Aurum])を用いた。 対象者は、2020年8月1日~2021年2月14日にCOVID-19と診断された45万6,002例(男性44.7%、年齢中央値61歳)。診断後、2週間以内に入院した患者(1万8,059例)もしくはコミュニティ療養を受けた患者(43万7,943例)で、フォローアップ期間は最長9.2ヵ月であった。解析では、非COVID-19患者からなるネガティブ対照群(3万8,511例)と、パンデミック前のインフルエンザ患者のコホート群(2万1,803例)も設定し評価が行われた。 主要アウトカムは、新規の症状、疾患、処方および医療サービス利用を目的としたGP受診率で、入院患者vs.コミュニティ療養者、感染前vs.感染後とそれぞれ比較した。医療サービス利用についてはCox回帰法および負の二項回帰法を用いた。 解析は、ネガティブ対照群とインフルエンザ患者群と順次実施。コミュニティ療養者については、COVD-19診断後のアウトカムを経時的に記録し、さらに、負の二項回帰法を用いて、COVID-19後の症状を有した療養者についてワクチン接種前後の比較も行った。コミュニティ療養者は嗅覚・味覚障害が、入院患者は静脈血栓塞栓症が最も高頻度 ネガティブ対照群およびインフルエンザ患者群と比較して、コミュニティ療養者群、入院患者群ともに、複数の後遺症でのGP受診率が有意に高率であった。 コミュニティ療養者群のGP受診で、感染前の12ヵ月間と比べて最も頻度が高かったのは、嗅覚または味覚もしくは両方の障害(補正後ハザード比[HR]:5.28、95%信頼区間[CI]:3.89~7.17、p<0.001)、静脈血栓塞栓症(3.35、2.87~3.91、p<0.001)、肺線維症(2.41、1.37~4.25、p=0.002)、筋肉痛(1.89、1.63~2.20、p<0.001)。また、COVID-19診断後の医療サービス利用の増大も認められた(1.15、1.14~1.15、p<0.001)。COVID-19診断後4週以上で最も頻度の高かったアウトカム(絶対発生率)は、関節痛(2.5%)、不安症(1.2%)、そしてNSAIDの処方(1.2%)であった。 入院患者群のGP受診で、感染前の12ヵ月間と比べて最も頻度が高かったのは、静脈血栓塞栓症(補正後HR:16.21、95%CI:11.28~23.31、p<0.001)、悪心(4.64、2.24~9.21、p<0.001)、パラセタモールの処方(3.68、2.86~4.74、p<0.001)、腎不全(3.42、2.67~4.38、p<0.001)。また、COVID-19診断後の医療サービス利用の増大も認められた(発生率比:1.68、95%CI:1.64~1.73、p<0.001)。COVID-19診断後4週以上で最も頻度の高かったアウトカム(絶対発生率)は、静脈血栓塞栓症(3.5%)、関節痛(2.7%)、および息切れ(2.8%)であった。 コミュニティ療養者群では、不安や抑うつ、腹痛、下痢、全身疼痛、悪心、胸部圧迫感、耳鳴での受診が、フォローアップ期間中継続して認められた。また、コミュニティ療養者群ではワクチン接種前と比べて1回目のワクチン接種後に、神経障害性疼痛、認知障害、強オピオイドおよびパラセタモール使用を除き、すべての症状、処方、医療サービス利用についてGP受診率の低下が認められた。虚血性心疾患、喘息、胃・食道疾患についてもGP受診率の低下がみられた。

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新型コロナ、異種ワクチン接種の有益性を確認/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの異種接種について、1回目接種がアデノウイルスベクターワクチンのChAdOx1 nCoV-19(ChAd、AstraZeneca製)またはmRNAワクチンのBNT162b2(BNT、Pfizer-BioNTech製)いずれの場合も、2回目接種がmRNAワクチンのmRNA-1273(m1273、Moderna製)の場合は、一過性の反応原性を増大することが示された。遺伝子組換えスパイク蛋白ナノ粒子ワクチンのNVX-CoV2373(NVX、Novavax製)は、BNTのプライム接種群で非劣性が示されなかった。英国・オックスフォード大学のArabella S. V. Stuart氏らによる無作為化試験の結果で、「複数のワクチンが、BNTまたはChAdでプライミング後の免疫完了に適していた。今回の結果は、異種ワクチンによる接種スケジュールを支持するもので、ワクチン接種の迅速なグローバル展開を促進することになるだろう」と述べている。Lancet誌2022年1月1日号掲載の報告。ChAd、BNT、m1273、NVXによる混合プライミングスケジュールを検討 研究グループは、同一スケジュールで異なるCOVID-19ワクチンを柔軟に用いることが、迅速な展開を促進するために重要であるとの認識から、ChAd、BNT、m1273、NVXを組み込んだ混合プライミングスケジュールについて検討した単盲検無作為化非劣性試験「Com-COV2試験」を実施した。 試験は、ChAdまたはBNTの単回接種を地域で受けた50歳以上を対象とし、各接種群内で3群(試験全体では計6群)に1対1対1の割合で無作為に割り付け、同一ワクチン、m1273またはNVXの2回目接種(初回接種後8~12週に)を行った。 主要エンドポイントは、異種vs.同種スケジュールのELISA法で測定した血清SARS-CoV-2抗スパイクIgG濃度の幾何平均比(GMR)で、2回目接種後28日時点で評価。GMRの片側98.75%信頼区間[CI]値が0.63超を非劣性と定義した。 主要解析は、ベースラインで血清陰性であったper-protocol集団で実施。安全性解析は、試験ワクチンの接種を受けた全被験者を対象に行われた。GMRは、ChAd/m1273群10.2、BNT/m1273群1.3 2021年4月19日~5月14日に、イングランドの9地点で、ChAd(540例、女性47%)またはBNT(532例、女性40%)の単回接種を受けた計1,072例が無作為化を受けた。ChAd群の異種ワクチンによる2回目接種までの期間中央値は9.4週間(範囲:4.7~12.0)、BNT群は同9.6週間(8.0~12.0)であった。 ChAd群では、2回目接種から28日後の幾何平均抗体濃度(GMC)は、ChAd/m1273群2万114 ELISA laboratory units[ELU]/ mL(95%CI:1万8,160~2万2,279)、ChAd/NVX群は5,597 ELU/mL(4,756~6,586)で、いずれもChAd/ChAd群(1,971 ELU/mL[1,718~2,262]に対して非劣性が認められた。ChAd/ChAd群と比較したGMRは、ChAd/m1273群10.2(片側98.75%CI:8.4~∞)、ChAd/NVX群2.8(2.2~∞)であった。 BNT群では、BNT/BNT群(GMC:1万6,929 ELU/mL[95%CI:1万5,025~1万9,075])に対する非劣性は、BNT/m1273群(2万2,978 ELU/mL[2万597~2万5,636])では示されたが、BNT/NVX群(8,874 ELU/mL[7,391~1万654])では示されなかった。BNT/BNT群と比較したGMRは、BNT/m1273群は1.3(片側98.75%CI:1.1~∞)、BNT/NVX群は0.5(0.4~∞)であった。ただし、NVX群もワクチン接種後28日のGMCは18倍の上昇が認められた。 重篤な有害事象は15件報告されたが、いずれも免疫獲得とは関連していないとみなされた。

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コンセンサスベースとエビデンスベース診療ガイドラインの比較(解説:折笠秀樹氏)

 診療ガイドラインの質に関する調査結果である。エビデンスベースの土俵で比較したら、エビデンスベースの診療ガイドライン(GL)のほうがコンセンサスベースGLよりも良かった、という当然の結果であった。 循環器関係のACC/AHAガイドラインが12本(1,434推奨)、がん関係のASCOガイドラインが69本(1,094推奨)、合計2,528推奨を研究対象とした。各推奨について、著者の2人がペアとなり、次のことを調べた。コンセンサスベースGLかエビデンスベースGLかの別、用いたグレーディングシステム、推奨度(強・弱)、エビデンスの質(高・中・低)である。推奨度の付け方としては、GRADEシステムというのが有名である。日本の診療ガイドラインは、近年では、ほぼそれに準拠して作られているのではないかと思う。 エビデンスが低質である推奨は、どれくらいあっただろうか。循環器のほうは、コンセンサスGLで100%(200/200)が低質、エビデンスベースGLで25%(304/1,234)が低質であった。がんのほうは、コンセンサスベースGLで82%(292/358)、エビデンスベースGLで15%(112/736)が低質であった。いずれもコンセンサスベースGLのほうで、低質なエビデンスの割合が顕著に多かった。 次に、GRADEシステムに準拠した方法で推奨度が付与されていないと、それは「不適切」と評価された。そして、エビデンスの質が低いのに、強く推奨されるとなっていたら、それは「不一致」と評価された。エビデンスの質が低ければ、推奨度は弱くなるはずだからであろう。コンセンサスベースGLのほうが2.1倍(循環器)、2.9倍(がん)、「不一致」の傾向が強かった。「不適切かつ不一致」については、コンセンサスベースGLのほうが2.6倍(循環器)、5.1倍(がん)と高かった。 コンセンサスに基づく診療ガイドラインは、不適切かつ不合理だと言わんかのような結果であった。しかし、その評価基準はエビデンスベースのGRADEシステムであり、当然の結果だと思う。コンセンサス派はそれに対抗しているので、不満足な結果になったのも当たり前だと思う。コンセンサスベースGLの中にはいい加減なものが多いかもしれないが、イデオロギーの違いを浮き彫りにしただけのように思えてならない。

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第45回 因果関係とは?【統計のそこが知りたい!】

第45回 因果関係とは?因果関係(Causal relationship)は、「項目間に原因と結果に関係があると言い切れる関係」を意味します。たとえば広告費と売り上げの関係をみると、「広告費を増やすと売り上げが多くなる」が通説です。「広告費を増やす」という行為が原因で、「売り上げが多くなる」という結果が導かれるので、両者の間には因果関係があります。原因と結果の関係は、「原因→結果」の一方通行です。「原因があって結果がある」という時間的順序が成り立っています。また、身長と体重の関係性でいえば、身長が高いと体重が重いのか、体重が重いと身長が高いのかがわからないので、両者の因果関係は定かではありません。因果関係があれば必ず相関関係は認められますが、相関関係があるからといって必ずしも因果関係が認められるわけではありません。因果関係と相関関係は、図のように2つの事象とA とBの関係性を表しています。「相関関係があるからといって因果関係がある」と言い切れないため、両項目の時間的順序などを検討して、因果関係を考察します。両者に因果関係があるかを解明するには、統計解析を行う必要があります。ちなみに、共分散構造解析は因果関係を解明するのに使われる代表的な統計解析手法です。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第12回 オッズ比は、なぜ臨床研究で使われるのか?「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問9 多変量解析を学ぶ前に知っておくべき統計の基礎を教えてください(その1)質問22 ロジスティック回帰分析の事例

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2022年度改定でリフィル処方箋がいよいよ本格導入か【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第81回

明けましておめでとうございます。昨年は、最初から最後まで新型コロナに翻弄され続け、さらに医薬品の流通問題も勃発するなど、忙しい1年だったのではないでしょうか。残念ながら半分以上は解決していないという気もしますが、本年は薬剤師が腰を据えて前向きに業務に取り組める1年になればいいなと思います。さて、2022年は診療報酬の改定があるため、年末から議論が本格化しています。まずは、診療報酬全体および医科・歯科・調剤の改定率が決定しました。鈴木俊一財務相と後藤茂之厚生労働相は12月22日、予算をめぐる大臣折衝で22年度の診療報酬改定率を正式に決定した。診療報酬本体は0.43%増(国費300億円程度)。看護の処遇改善に0.20%増、不妊治療の保険適用に0.20%増を確保しつつ、リフィル処方箋の導入・活用促進による再診の効率化で▲0.10%、小児の新型コロナウイルス感染防止対策にかかる加算措置(医科分)の期限到来で▲0.10%を計上したため、実質的な改定率は0.23%増となる。(中略)本体の0.23%分をパイとした各科ごとの改定率は医科0.26%増、歯科0.29%増、調剤0.08%増。医科を1とした場合の配分比率「1:1.1:0.3」は名目上、維持した。(2021年12月23日付 RISFAX)調剤はわずか0.08%増ですが、財源が乏しいなかで減らなくてよかったなという印象です。注目すべきは、リフィル処方箋の導入・活用促進が再診の効率化という目的で突如盛り込まれたことでしょう。これに関しては、この翌日に日本医師会から「議論が必要」という実質的に異議を申し立てるような意見が出ているため、まだ予断を許さない状況ですが、おそらく部分的にであっても導入されるのではないかと思います。その他、薬価の引き下げ、OTC類似品や湿布薬の保険給付の見直し、後発医薬品関連の加算、薬剤師によるフォローアップへの評価などが今回の論点になりそうです。毎回のことですが、薬局に影響があり、かつ始まってからでは遅いのが薬価の引き下げへの対応です。4月1日になった瞬間に薬価が下がってしまうので、早めに薬局の在庫が適正かどうかを確認し、もし過剰であれば他店への譲渡や返品などをおすすめします。薬剤師のフォローアップを患者・医師ともに評価この報酬改定の議論の中で、薬剤師の業務に対する喜ばしい評価がありましたので紹介します。2021年12月1日の中央社会保険医療協議会(中医協)の議論において、2020年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の結果が報告されました。本調査の目的は、2020年度の調剤報酬改定の影響やかかりつけ薬剤師・薬局の取り組み状況などを検証することです。ちなみに、2020年度改定のトピックスとしては、重複投薬解消の取り組みの評価や地域体制加算の要件の見直し、同一薬局利用促進などの評価の見直し、薬剤師による調剤後のフォローアップの評価、調剤基本料の適正化などがありました。その報告の中で、以下のような結果が示されています(一部抜粋)。服薬期間中のフォローアップを受けた患者は、かかりつけ薬剤師指導料などの同意状況にかかわらず、「よかった」という回答が100%であった(患者への調査結果より)糖尿病患者のフォローアップを薬局に指示した場合、保険医療機関が感じるメリットとして、「患者が正しく服用できるようになった」が82.5%、「アドヒアランスが向上した」が67.5%であった(診療所への調査結果より)吸入薬指導を薬局に指示した場合、保険医療機関が感じるメリットとして、「患者が正しく吸入できるようになった」が94.0%、「アドヒアランスが向上した」が69.3%であった(病院への調査結果より)これは、何ともうれしい結果ですね。これらは報酬改定の議論で正式に提出されている資料ですので、報酬への好影響を期待せずにはいられません。もし今回の報酬に反映されなかったとしても、目の前の患者さんや医師が認めてくれているというやりがいを噛みしめつつ、さらにメリットを感じていただけるように服薬指導やフォローアップの質を高めていってもらえればいいなと思います。本コラムでは、患者さんのため、地域のために薬剤師が活躍することを願って、本年も話題のニュースをピックアップしてお届けしていきます。2022年もどうぞよろしくお願いいたします。参考1)「令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和3年度調査)の報告案について」(中医協 検-5-23.12.1)2)「かかりつけ薬剤師・薬局の評価を含む調剤報酬改定の影響及び実施状況調査報告書(案)<概要>(中医協 検-6-13.12.1)

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ドイツで産んでみた(4) ドイツでの育児【空手家心臓外科医のドイツ見聞録】第9回

今回もドイツでの子育てについて、引き続き書いちゃいます。子供が産まれて早速、“Elternzeit”(育休)を1ヵ月間申請しました。「1ヵ月でいいの? 双子なのに、大丈夫?」院長には心配そうにされましたが、あんまり休みすぎるのもなーと思っての決断でした。34週での早産であったため、子供たちは1週間ほどはNICUでの入院となりました。ちなみにGreifswald大学のNICUでは380gで生まれた子供を救命して、ニュースにまでなったこともある施設です(ちょうど退院前にその子が受診に来ている姿を見かけましたが、5歳くらいで走り回っていました)。子育てに協力的なドイツの空気退院後は夫婦2人で必死に毎日を過ごしました。以前、このブログで紹介させてもらったへバメ(産婆)に加え、家政婦さん(保険を使って無料で来てくれます)にもフルで来てもらいました。Greifswald大学病院から妻と子供たちが退院したときの写真です。双子なので両手に子供を持っています。ドイツは公的支援だけでなく、街全体が子育てに協力的な印象があります。街でベビーカー(「キンダーバーゲン」と言います)を押していて、自分で店の扉を開けたことはありません。誰かしら、どこからか走ってきて、わざわざ開けてくれるのです。ちょっとした段差に出くわして、どうしようかと立ち止まったことがありました。そのときも、近くにいた小さいお婆さんが杖を振りかざして、道端でタバコを吸って談笑していた若いお兄さんの集団に何やら怒鳴りつけました。その結果、お兄さんたちが慌ててタバコの火を消して、ゾロゾロとベビーカーをみんなで持ち上げてくれたりしました。その際もお兄さん達からは「気付かなくて申し訳ない」と言われました。ドイツでは「子供に優しくするのは当たり前」が根付いている印象が残っています。

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英語で「痛みに強い」は?【1分★医療英語】第10回

第10回 英語で「痛みに強い」は?I see you are in pain.(痛みがありそうですね)Yes, it’s really bad. I have a high pain threshold.(はい、とてもひどい痛みです。痛みに強いほうなのですが)《例文1》He has a really high pain threshold.(彼は非常に痛みに強いです)《例文2》She said her pain was 20 out of 10. She may have a low pain threshold.(痛みは10点満点中20点だそうです。彼女は痛みに弱いのかもしれません)《解説》“threshold”は「閾値」を意味する単語で、“pain threshold”は「痛みの閾値」という意味になります。“high pain threshold”は「痛みの閾値が高い」、つまり「痛みに強い」という意味です。似た表現に“tolerance”というものもあり、同じく「閾値」を意味します。厳密には“threshold”は「痛みを感じ始める境界」を指し、“tolerance”は「何とか我慢できる痛みの境界」を指しますが、いずれも同じような文脈で使われます。「痛みの閾値」は人それぞれですが、米国では患者の人種的・文化的な背景がさまざまで、日本よりもさらに個人差が大きい印象です。日本では麻酔なしで行われる手技が全身麻酔で行われたり、オピオイドの処方のハードルが低かったりと、臨床現場では痛みに対するアプローチの違いが見受けられます。講師紹介

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第94回 喫煙者はより孤立して孤独になっていく

英国イングランドを代表する50歳以上の8,780人を12年間追跡したところ喫煙者は齢を重ねるほどに非喫煙者に比べてより社会的に孤立して孤独になっていました1,2)。孤立して孤独な人ほど喫煙することが先立つ試験で示されていますが、今回の試験は喫煙のせいで孤立や孤独の度合いがどうやら深まっていくことを初めて明らかにしました1)。喫煙は社交の助けになるとの主張を今回の結果は支持していません。むしろその逆で、非喫煙者に比べて喫煙者は家族や友人との交流をより失っていき、近所付き合いや趣味がより乏しくなり、一人で住むことが多くなります。そのような傾向は年齢、性別、貧困や社会的地位を考慮しても認められました。推移を追った今回の観察試験では喫煙と孤立や孤独の関連の原因を突き止めることはできていませんが、喫煙で身体が傷むことで出不精になってしまうことがその一因かもしれません。喫煙は息切れ、肺や心臓などの病気を生じやすくし、その結果社交が途絶えがちなる恐れがあります。または、喫煙で生じ易くなる不安やうつなどの精神の不調が人との関わりを減らしているとも考えられます。あるいは、喫煙者の友人もまた喫煙者であることが多く、ゆえに早く死んでしまって寂しくなっていくのかもしれません。社会が喫煙を相容れなくなりつつあること、とくに間接喫煙の害を減らすための禁煙の決まりが広がっているなどの環境要因の寄与もありそうです。今後の試験で喫煙が孤立/孤独を招く原因を調べる必要がありますが、ともあれ喫煙が社交を促すという考えはおよそ正しくないようです2)。すでに判明している身体への数々の悪影響に加えて喫煙が気の持ちようや社会生活も害しうることを示唆した今回の試験結果が新年に際して禁煙を誓う人のそのいっそうの動機づけとなることを研究者は望んでいます1)。参考1)New findings suggest smoking increases social isolation and loneliness / Imperial College London2)Philip KE, et al.Lancet Reg Health Eur. 2022 Jan 2. [Epub ahead of print]

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コロナワクチン副反応、もっとも影響する因子は?

 カルフォルニア大学のAlexis L Beatty氏らは新型コロナワクチン接種後に参加者が報告した副反応に関連する可能性のある因子を評価した。ワクチンを商品ごとで比較することで、その要因が、フルドーズのワクチン接種、ワクチン商品名、年齢の若さ、女性、新型コロナウイルス既感染であることが明らかになった。JAMA Network Open誌2021年12月22日号で掲載の報告。 研究者らは、本研究をオンライン上で実施。対象者は2020年3月26日~2021年5月19日に新型コロナワクチンを1回以上接種し、スマートフォンまたはインターネットにアクセスできる18歳以上で、参加者は健康状態(新型コロナ関連のイベント含む)に対する毎日、毎週、毎月の調査を完了した。 参加者から報告された副反応とその重症度を多変量ロジスティック回帰モデルで解析し、候補因子には、年齢、性別、人種、民族性、主観的な社会的地位、新型コロナ感染歴、持病の有無、薬物の使用、ワクチン接種量、およびワクチン商品名が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・参加者1万9,586例の年齢中央値(IQR)は54歳(38~66歳)で、そのうち1万3,420例(68.8%)は女性だった。・アレルギー反応またはアナフィラキシーは、ファイザー製(BNT162b2)またはモデルナ製(mRNA-1273)を1回接種した8,680例のうち26例(0.3%)で、ファイザー製またはモデルナ製を2回接種またはJ&J製(JNJ-78436735)を1回接種した1万1,141例のうち27例(0.2%)で報告された。・副反応に関連する最も強い因子はワクチンの投与量(ファイザー製かモデルナ製2回接種、またはJ&J製1回接種vs.ファイザー製かモデルナ製1回接種)で、オッズ比[OR]は3.10(95%信頼区間[CI]:2.89~3.34、p

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